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特表2022-529720レナリドミドまたは他の免疫調節剤の持続投与
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】レナリドミドまたは他の免疫調節剤の持続投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220616BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 31/4035 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220616BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P7/06
A61P35/02
A61P29/00
A61P37/02
A61K31/454
A61K31/4035
A61K31/5377
A61K47/38
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/40
A61K47/36
A61K47/02
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/70 401
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562881
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 US2020029159
(87)【国際公開番号】W WO2020219470
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】62/837,057
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/945,028
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521460332
【氏名又は名称】スタートン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボロヴィンスカヤ、マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】プラコジャニス、フォーティオス
(72)【発明者】
【氏名】モディ、ニサーグ
(72)【発明者】
【氏名】レイザー、タマンナ
(72)【発明者】
【氏名】ハートウィグ、ロッド エル
(72)【発明者】
【氏名】オリバー、ジェームズ シー
(72)【発明者】
【氏名】レヴィントーヴァ、ユリヤ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA36
4C076AA51
4C076AA53
4C076AA72
4C076BB11
4C076BB31
4C076CC07
4C076CC14
4C076CC27
4C076DD09
4C076DD21
4C076DD37
4C076DD55
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE38
4C076EE39
4C076FF31
4C076FF67
4C084AA17
4C084MA16
4C084MA27
4C084MA32
4C084MA37
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA07
4C084ZA55
4C084ZB07
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4C084ZB26
4C084ZB27
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC11
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4C086BC73
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA16
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4C086MA35
4C086MA37
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA07
4C086ZA55
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
治療を必要とする対象に対して、免疫調節イミド化合物を含む製剤を持続的に投与する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、多発性骨髄腫、低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群に起因する輸血依存性貧血、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、血液癌、または固形腫瘍癌を治療するために使用される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫、低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群に起因する輸血依存性貧血、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、血液癌、固形腫瘍癌、または炎症性疾患を治療する方法であって、
治療を必要とする対象に対して、免疫調節イミド化合物と、薬学的に許容される担体とを含む製剤を持続的に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、
前記免疫調節イミド化合物のAUCが標準治療の場合に得られる曝露量(AUC)の10~60%となるように、または、
前記免疫調節イミド化合物の1日用量が標準治療の1日用量の10~75%となるような投与速度で、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記免疫調節イミド化合物の血中濃度が、2.5~50mgの前記免疫調節イミド化合物を1日1回経口投与した場合の10時間~16時間後の時点での血中濃度と同等になるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記免疫調節イミド化合物の血中濃度が、2.5~50mgの前記免疫調節イミド化合物を1日1回経口投与した場合の12時間後の時点での血中濃度と同等になるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、または14日間にわたって、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の方法であって、
前記免疫調節イミド化合物は、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト、及びイベルドミドからなる群から選択される、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記免疫調節イミド化合物は、レナリドミドである、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記レナリドミドの投与速度が16~1400μg/時となるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記レナリドミドの定常状態血漿中濃度が3.5~140μg/Lの範囲となるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、
当該方法は、新たに診断された多発性骨髄腫を治療するためのものであり、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記レナリドミドの投与速度が185~725μg/時になるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記レナリドミドの定常状態血中濃度が19~70μg/Lの範囲となるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、
当該方法は、多発性骨髄腫の維持治療のためのものであり、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記レナリドミドの投与速度が70~285μg/時となるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記レナリドミドの定常状態血中濃度が7.5~28μg/Lの範囲となるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項14】
請求項7に記載の方法であって、
当該方法は、慢性リンパ性白血病を治療するためのものであり、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記レナリドミドの投与速度が30~145μg/時となるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、前記レナリドミドの定常状態血中濃度が3.5~14μg/Lの範囲となるように、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、注入によって、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、静脈内注入または皮下注入によって、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、皮下注入によって、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の方法であって、
前記薬学的に許容される担体は、水、カルボキシメチルセルロース(CMC)、Tween80、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、デキストロース、PEG400、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記薬学的に許容される担体は、水とPEG400とを含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、
前記薬学的に許容される担体は、水とPEG400とを5:1の比(v/v)で含む、方法。
【請求項22】
請求項1~15のいずれかに記載の方法であって、
前記製剤は、経皮製剤、持続放出性もしくは徐放性の錠剤もしくはカプセル剤、または留置用剤の形態である、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記経皮製剤は、液体経皮製剤、半固形経皮製剤、ポリマーマトリクス経皮製剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、
前記経皮製剤は、経皮パッチの形態である、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記経皮パッチは、リザーバパッチ、マイクロリザーバパッチ、マトリクスパッチ、粘着性パッチ、及び持続放出性経皮フィルムからなる群から選択される、方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法であって、
前記経皮製剤は、液体製剤及び/または半固形製剤の形態である、方法。
【請求項27】
請求項22に記載の方法であって、
前記経皮製剤は、マイクロニードルを使用して投与される、方法。
【請求項28】
請求項22~27のいずれかに記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップは、予め定められた期間にわたって、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、7日に1回、または10日に1回、前記製剤を持続的に投与することを含む、方法。
【請求項29】
請求項22~28のいずれかに記載の方法であって、
前記対象に前記製剤を持続的に投与する前記ステップの後に、前記対象の血液サンプルを取得するステップと、
前記血液サンプルの薬物動態学的評価を実施するステップと、
前記薬物動態学的評価に応じて前記経皮製剤を調節するステップと、
調節された前記経皮製剤を前記対象に投与するステップと、をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、治療を必要とする対象に対する免疫調節剤の持続投与を含む方法に関する。より詳細には、本開示は、免疫調節イミド化合物(免疫調節剤)を、所定の毎時間投与量で所定の日数にわたって持続的に投与することに関する。驚くべきことに、この持続投与方法は、標準的なパルス投与レジメンと比較して、毒性(例えば、好中球減少)を軽減しながら、薬剤の抗癌活性または抗炎症活性を向上させた。
【背景技術】
【0002】
免疫調節イミド化合物としては、サリドマイドまたはサリドマイドの類似体(サリドマイド化合物ファミリーと総称する)が挙げられ、これらは、免疫調節作用、抗血管新生作用、抗炎症作用、抗増殖作用などの多面的な抗骨髄腫特性を有している。サリドマイド誘導体としては、レナリドミド、ポマリドミド、イベルドミド、アプレミラストなどが挙げられる。
【0003】
下記の化学式Iとして示される、レナリドミド(3-(4-アミノ-1-3-ジヒドロ-1-オキソ-2H-イソインドール-2イル)-2、6-ピペリジンジオン)は、経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬である。レナリドミドは、例えば、デキサメタゾンとの併用による多発性骨髄腫(MM)の治療、自家造血幹細胞移植(自家HSCT)後の維持治療としてのMMの治療、追加の細胞遺伝学的異常を伴うまたは伴わない5q欠失異常を伴う低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群(MDS)に起因する輸血依存性貧血の治療、あるいは、マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療であって、ボルテゾミブとリツキシマブ製剤との併用による濾胞性リンパ腫(FL)または辺縁帯リンパ腫(MZL)の前治療歴を含む2つの前治療後に疾患が再発または進行した患者の治療に適応される。レナリドミドは、2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、または25mgの力価の経口剤形として入手可能である。
【0004】
【化1】
【0005】
下記の化学式IIとして示される、ポマリドミド(4-アミノ-2-(2、6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン-1、3-ジオン)は、経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬でもある。ポマリドミドは一般的に、前治療歴(レナリドミドなど)を有し、前回の治療の終了時(またはその後すぐに)に疾患の進行が認められた多発性骨髄腫患者に対して、多くの場合はデキサメタゾンと組み合わせて使用される。ポマリドミドは、1mg、2mg、3mg、または4mgの経口剤形として入手可能である。
【0006】
【化2】
【0007】
下記の化学式IIIとして示される、サリドマイド(2-(2、6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドール-1、3-ジオン)は、経口カプセル剤の形態で入手可能なFDA承認薬でもある。サリドマイドは一般的に、多発性骨髄腫と新たに診断された患者の治療に、多くの場合はデキサメタゾンと組み合わせて使用される。サリドマイドには、50mg、100mg、150mg、または200mgの経口剤形として入手可能である。
【0008】
【化3】
【0009】
下記の化学式IVとして示される、アプレミラスト(N-[2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル]-2、3-ジヒドロ-1、3-ジオキソ-1H-イソインドール-4-イル]アセトアミド)は、錠剤の形態で入手可能なFDA承認薬でもある。アプレミラストは、活動性の乾癬性関節炎の患者の治療に適応される。アプレミラストは、10mg、20mg、または30mgの力価の経口剤形として入手可能である。
【0010】
【化4】
【0011】
下記の化学式Vとして示される、イベルドミド((3S)-3-[7-[[4-(モルホリン-4-イルメチル)フェニル]メトキシ]-3-オキソ-1H-イソインドール-2-イル]ピペリジン-2、6-ジオン)は、難治性多発性骨髄腫の治療薬として開発中である。
【0012】
【化5】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様では、治療を必要とする対象に対して、免疫調節イミド化合物を持続的に投与する方法が提供される。免疫調節イミド化合物は、サリドマイドまたはその類似体からなる群から選択される。サリドマイドの類似体としては、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト、イベルドミドが挙げられる。サリドマイドの他の類似体は、サリドマイドの代謝物、または、その類似体、N置換類似体、もしくはテトラフルオロ化類似体から選択することができる。
【0014】
特定の実施形態では、免疫調節イミド化合物(免疫調節剤)は、サリドマイドまたはその類似体(例えば、レナリドミド、ポマリドマイド、アプレミラスト、イベルドミド)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫調節イミド化合物であるレナリドミドは、レナリドミドの塩基、レナリドミドの共結晶、非晶質形態のレナリドミド、無水形態のレナリドミド、コーティング形態のレナリドミド、溶液形態のレナリドミド、特定の多形体または多形体の組み合わせとしての結晶形態のレナリドミド、レナリドミド塩、レナリドミドの異性体(そのラセミ体及びその個々のエナンチオマーを含む)、レナリドミドの固溶体、レナリドミドのプロドラッグ、レナリドミドの類似体、レナリドミドの誘導体、レナリドミドの代謝物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、免疫調節イミド化合物であるポマリドミドは、ポマリドミドの塩基、ポマリドミドの共結晶、非晶質形態のポマリドミド、コーティング形態のポマリドミド、溶液形態のポマリドミド、特定の多形体または多形体の組み合わせとしての結晶形態のポマリドミド、ポマリドミドの溶媒和物、ポマリドミドの塩、ポマリドミドの異性体(そのラセミ体及びその個々のエナンチオマーを含む)、ポマリドミドの固溶体、ポマリドミドのプロドラッグ、ポマリドミドの類似体、ポマリドミドの誘導体、ポマリドミドの代謝物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、免疫調節イミド化合物であるサリドマイドは、サリドマイドの塩基、サリドマイドの共結晶、非晶質形態のサリドマイド、被覆形態のサリドマイド、溶液形態のサリドマイド、特定の多形体または多形体の組み合わせとしての結晶形態のサリドマイド、サリドマイドの溶媒和物、サリドマイドの塩、サリドマイドの異性体(そのラセミ体及びその個々のエナンチオマーを含む)、サリドマイドの固溶体、サリドマイドのプロドラッグ、サリドマイドの類似体、サリドマイドの誘導体、サリドマイドの代謝物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、免疫調節イミド化合物であるアプレミラストは、アプレミラストのラセミ体、アプレミラストのR異性体、アプレミラストの塩基、アプレミラストの共結晶、非晶質形態のアプレミラスト、コーティング形態のアプレミラスト、溶液形態のアプレミラスト、特定の多形体または多形体の組み合わせとしての結晶形態のアプレミラスト、アプレミラストの溶媒和物、アプレミラストの塩、アプレミラストの固溶体、アプレミラストのプロドラッグ、アプレミラストの類似体、アプレミラストの誘導体、アプレミラストの代謝物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、免疫調節イミド化合物であるイベルドミドは、イベルドミドのラセミ体、イベルドミドのR異性体、イベルドミドの塩基、イベルドミドの共結晶、非晶質形態のイベルドミド、コーティング形態のイベルドミド、溶液形態のイベルドミド、特定の多形体または多形体の組み合わせとしての結晶形態のイベルドミド、イベルドミドの溶媒和物、イベルドミドの塩、イベルドミドの固溶体、イベルドミドのプロドラッグ、イベルドミドの類似体、イベルドミドの誘導体、イベルドミドの代謝物、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、免疫調節イミド化合物は、製剤の総重量の0.01%~95w/w%の範囲の量で製剤に含まれる。
【0015】
本開示の実施形態によれば、持続送達プラットフォームは、液体製剤、固形製剤、半固形製剤、エマルジョン製剤、ナノ粒子製剤、マトリクス製剤、フィルム製剤、パッチ製剤、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される製剤を含む。本開示の実施形態は、標準的な即時放出型の経口送達形態に関連する薬物動態学的挙動のピーク及び谷を緩和するために、持続的な徐放送達を提供するように製剤化することを意図している。また、本開示の実施形態は、経口、口腔、粘膜、直腸、経皮、局所、非経口、留置用剤の使用、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される投与経路を提供するように製剤化することを意図している。
【0016】
液体の実施形態では、製剤は、溶液、分散液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、自己乳化型製剤、デポ製剤、及びミセルからなる群から選択される。
【0017】
固形製剤の実施形態では、製剤は、カプセル剤、錠剤、スフェア、固体分散体、コーティングされた製剤、ミクロスフェア、ナノスフェア、微粒子、マイクロ粒子、ナノ微粒子、小袋、粉末、ホットメルト型、押出成形型、噴霧乾燥製剤、デポ製剤、微粉化型、ウエハ、及び造粒型からなる群から選択される。
【0018】
半固形製剤の実施形態では、製剤は、水中油型マルジョン、油中水型エマルジョン、軟膏、バーム、クリーム、座薬、ゲル、ブレンド、及びポリマー溶液からなる群から選択される。
【0019】
マトリクス製剤の実施形態では、製剤は、パッチ、ウエハ、及びフィルムからなる群から選択される。
【0020】
フィルム製剤の実施形態では、製剤は、可溶性ストリップ、分散性ストリップ、及び分散性パッチからなる群から選択される。
【0021】
留置用剤の実施形態では、製剤は、ホットメルト型、水性ポリマー組成物、溶媒性ポリマー組成物、デポ製剤、吸収性ポリマー組成物、及び生分解性ポリマー組成物からなる群から選択される。
【0022】
経皮送達の実施形態では、製剤は、リザーバパッチ、マイクロリザーバパッチ、マトリクスパッチ、マイクロニードル、マイクロプロトルージョン、マイクロブレード、ドラッグインアドヒーシブパッチ(drug-in-adhesive patch)、多層パッチ、及び、持続放出性または徐放性のフィルムからなる群から選択される。
【0023】
上記に列挙した実施形態のいずれにおいても、持続送達プラットフォームは、上記に列挙した実施形態またはそれらの任意の組み合わせから選択することができる。
【0024】
また、本開示の免疫調節イミド化合物によって治療可能であることが知られている疾患または状態、例えば、多発性骨髄腫、低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群に起因する輸血依存性貧血、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、血液癌、固形腫瘍癌、乾癬性関節炎、またはサイトカイン放出症候群を治療する方法であって、治療を必要とする対象に対して免疫調節イミド化合物を持続的に投与するステップを含む方法も提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、対象に対して免疫調節イミド化合物を所定の毎時間投与量で所定の日数にわたって持続的に投与することを含む。
【0025】
免疫調節イミド化合物は、該化合物と、薬学的に許容される担体とを含む製剤の形態で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、様々な毎時間投与量(μg/h)でのレナリドミドの持続投与の開始後の日数を関数とした腫瘍容積を、賦形剤またはレナリドミドを1日1回腹腔内注入した場合と比較して示す。
図2図2は、様々な毎時間投与量(μg/h)でのレナリドミドの持続投与の開始後の日数を関数とした体重を、賦形剤またはレナリドミドを1日1回腹腔内注入した場合と比較して示す。
図3図3は、レナリドマイド25mgを1日1回経口投与した場合の血漿中濃度を、3つの持続投与速度と比較して示す。
図4図4は、レナリドマイド25mgを1日1回経口投与した場合の血漿中濃度を、3つの持続投与速度と比較して示す。
図5図5は、レナリドミド10mgを1日1回経口投与した場合の血漿中濃度を、3つの持続投与速度と比較して示す。
図6図6は、レナリドミド5mgを1日1回経口投与した場合の血漿中濃度を、3つの持続投与速度と比較して示す。
図7図7は、多発性骨髄腫を異種移植したマウスの生存率を、様々な毎時間投与量(μg/時間)でレナリドマイドを持続投与した後の日数の関数として示したカプラン・マイヤープロットであり、賦形剤またはレナリドミドを1日1回腹腔内注入した場合と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される塩」という用語は、遊離塩基の酸付加塩または付加塩を含む。その範囲内の「薬学的に許容される塩」という用語には、すべての可能な異性体及びそれらの混合物、並びに、任意の薬学的に許容される代謝物、生体前駆体、及び/またはプロドラッグ、例えば、記載または説明した化合物とは異なる構造式を有するが、哺乳類などの対象、特にヒトへの投与時に、インビボでそのような化合物に直接的または間接的に変換される化合物を含む。
【0028】
本明細書で使用するとき、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用される。本明細書で使用するとき、「患者」という用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット)や霊長類(例えば、サル、ヒト)などの哺乳類、最も好ましくはヒトを指す。いくつかの実施形態では、対象は、家畜(例えば、ウマ、ブタ、ウシ)やペット(例えば、イヌ、ネコ)などの非ヒト動物である。特定の実施形態では、対象は、高齢のヒトである。別の実施形態では、対象は、ヒトの成人である。別の実施形態では、対象は、ヒトの子供である。さらに別の実施形態では、対象は、ヒトの幼児である。
【0029】
本明細書で使用するとき、「活性薬剤」または「治療剤」という用語は、疾患、障害または状態の予防、治療、処置及び/または診断のために使用される任意の分子、化合物、手段及び/または物質を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、「有効量」という用語は、疾患または症状の発症または再発の予防、疾患または症状の1以上の症状の予防、治療、軽減または改善、別の治療の予防効果の増強または改善、疾患または症状の重症度または継続期間の軽減または短縮、疾患または症状の1以上の症状の寛解、疾患または状態の進行の予防、疾患または状態あるいはその1以上の症状の緩和、及び/または、別の治療の治療効果の増強または改善、をもたらすのに十分な治療剤の量を指す。
【0031】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される」という用語は、米国の連邦政府または州政府の規制機関によって承認されているか、または、動物、より具体的にはヒトに使用するために米国薬局方、欧州薬局方、中国薬局方、または他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0032】
本明細書で使用するとき、疾患または障害の「治療」または「治療する」という用語は、疾患または障害を改善することを意味し、例えば、疾患、その発症、またはその1以上の臨床症状を遅らせる、止める、または軽減することを意味する。また、この用語は、患者が認識できるか否かにかかわらず、1以上の身体的パラメータを軽減または改善することを指す。また、この用語は、疾患または障害を身体的及び/または生理学的に調節することを指す(例えば、認識可能な症状及び/または身体的パラメータを安定化することによって)。
【0033】
本明細書で使用するとき、疾患または障害の「予防」という用語は、疾患または障害の症状が明らかになる前に、本発明の化合物を対象に投与することを指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、患者または対象は、生物学的に、医学的に、または生活の質において利益が得られる治療を「必要としている」ものを指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、「類似体」、「誘導体」または「誘導体化された」という用語は、化合物またはその薬学的に許容される塩もしくはそれらの混合物の化学的修飾を含む。すなわち、「誘導体」は、所与の対象または用途において化合物の機能的活性を誘導することができる化合物の機能的等価物であり得る。
【0036】
本明細書で使用するとき、「組成物」及び「製剤」という用語は、特に明記しない限り、互換的に使用され得る。一般的に、製剤は、皮膚に適用するための独立型の非閉塞性経皮組成物として使用してもよいし、または、皮膚に適用するための経皮パッチ(パッチ製剤)の形態で、またはそれを調製のために使用してもよい。
【0037】
本明細書で使用するとき、「経皮送達」という用語は、皮膚を介して体循環に入る薬物の送達を意味し、これには、経皮組成物またはパッチによる閉塞性及び非閉塞性の送達が含まれる。
【0038】
本明細書で使用するとき、「局所送達」という用語は、皮膚を介して体循環に入らない薬物の送達を意味し、これには、局所組成物またはパッチによる閉塞性及び非閉塞性の送達が含まれる。
【0039】
本明細書で使用するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」及び本発明の文脈で使用される同様の用語は、特に明記しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を含むものと解釈されるべきである。本明細書で提供されるいずれかのもしくはすべての例、または例を示す用語(例えば、「など」、「例として」、「例示的」、「例えば」)の使用は、本発明をより良く説明することを意図しているにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0040】
本明細書で使用するとき、「持続的な送達」、「持続的に投与する」または「持続的な投与」という用語は、対象への薬剤または薬物の実質的に途切れない投与を指す。投与は、薬剤または薬物の供給を補充が必要な場合や、投与計画における次の用量を投与する必要がある場合を除き、ノンストップで(途切れなく)行われる。「持続的な送達」とは、薬剤または薬物の途切れない投与を意味し、また、投与速度または吸収速度が投与期間にわたって変動し得ることを意味する。
【0041】
本明細書で使用するとき、「治療薬」という用語は、疾患または障害を治療及び/または処置する目的で使用される任意の分子、化合物及び/または物質を指す。
【0042】
本明細書で使用するとき、「治療」及び「療法」という用語は、疾患または状態、またはそれらの1以上の症状の予防、治療及び/または処置に使用することができる任意の方法、組成物、及び/または薬剤を指す。特定の実施形態では、「治療」及び「療法」という用語は、低分子療法を指す。
【0043】
一態様では、レナリドミドを含む医薬組成物または医薬製剤を治療有効量で持続的に投与する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、レナリドミドを所定の毎時間投与量で持続的に投与する。いくつかの実施形態では、所定の毎時間投与量は、16~1400μg/時の範囲、例えば、30~750μg/時、30~145μg/時、70~285μg/時、または185~725μg/時の範囲であり、例えば、35μg/時、75μg/時、90μg/時、140μg/時、180μg/時、190μg/時、275μg/時、450μg/時、または700μg/時、あるいは、上記の任意の2つの数値間の範囲、例えば35~140μg/時、75~280μg/時、または190~700μg/時であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、レナリドミドを持続的に投与することによって、3~140μg/Lの範囲、例えば、3.5~140μg/L、3~75μg/L、3.5~75μg/L、3.5~14μg/L、7.5~28μg/L、19~70μg/L、9μg/L、18μg/L、または45μg/Lなどの免疫調節イミド化合物の定常状態血漿中濃度を達成する。
【0045】
いくつかの実施形態では、本方法は、免疫調節イミド化合物を所定の日数にわたって持続的に投与する。いくつかの実施形態では、所定の日数は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、または14日間である。別の実施形態では、所定の日数は、1~14日間、1~12日間、1~10日間、1~7日間、1~5日間、1~3日間、2~14日間、2~12日間、2~10日間、2~7日間、2~5日間、2~3日間、3~14日間、3~12日間、3~10日間、3~7日間、3~5日間、4~14日間、4~10日間、7~14日間、または7~10日間である。
【0046】
いくつかの実施形態では、毎時間投与量は、免疫調節イミド化合物を経口投与した0~24時間後、例えば、約1~24時間後、約5~24時間後、約5~23時間後、または約10~16時間後の血漿中濃度に相当する血漿中濃度を達成するように選択される。免疫調節イミド化合物の経口投与は、2.5~50mgの1日1回の経口投与、例えば、2.5mg、4.0mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、または50mgの1日1回または2日に1回の経口投与であり得る。「経口投与の0~24時間後の血漿中濃度に相当する」という表現は、実施例6~9の説明から理解できるであろう。例えば、経口投与の血漿中濃度対時間のグラフから、台形公式を用いて算出した0~24時間の区間の時間濃度曲線(AUC)下の面積を時間(24時間)で割ったものが、AUCに関連する1時間あたりの血中濃度となる。本開示の持続的投与方法の毎時間投与量によって達成される1時間あたりのAUCは、経口投与によって達成される経時的な薬物曝露と同様の薬物曝露をもたらす。本開示の持続的投与方法の毎時間投与量は、経口投与の0~24時間後の血中濃度に相当する血漿中濃度を達成する量である。別の実施形態では、本開示の持続的投与方法は、同一の化合物を経口投与した場合の0~24時間後のAUCに相当するAUCを達成する。
【0047】
いくつかの実施形態では、本方法は、免疫調節イミド化合物を、そのAUCが標準治療の場合に得られる曝露量(AUC)の10~60%の範囲となるように、持続的に投与する。標準治療は、例えば、500μgの免疫調節イミド化合物の1日1回の腹腔内注射であり得る。あるいは、標準治療は、例えば、2.5~50mgの免疫調節イミド化合物の1日1回の経口投与、例えば、2.5mg、4.0mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、または50mgの免疫調節イミド化合物の1日1回または2日に1回の経口投与であり得る。別の実施形態では、本方法は、レナリドミドを持続的に投与することにより、標準治療の場合に得られるAUCの約10~60%に相当するAUCを提供する。いくつかの実施形態では、標準治療は、2.5~50mgのレナリドミド、例えば2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、または25mgのレナリドミドの1日1回の経口投与、または、50mgのレナリドミドの2日に1回の経口投与である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本方法は、免疫調節イミド化合物(例えば、レナリドミド)を、2.5~50mgの免疫調節イミド化合物を1日1回経口投与した場合(例えば、2.5mg、5mg、10mg、25mgのレナリドミドを1日1回経口投与した場合)の10~16時間後の時点での血中濃度に相当する血中濃度(μg/L)を提供する投与量で、持続的に投与する。最も好ましい実施形態では、本方法は、免疫調節イミド化合物を、2.5~50mg免疫調節イミド化合物を1日1回経口投与した場合(例えば、5mg、10mg、25mgのレナリドミドを1日1回経口投与した場合)の12時間後の時点での血中濃度に相当する血中濃度(μg/L)を提供する投与量で、持続的に投与する。いくつかの実施形態では、本方法は、新たに診断された多発性骨髄腫を治療するためのものであり、レナリドミドの1日あたりの経口投与量は25mgである。いくつかの実施形態では、本方法は、多発性骨髄腫の維持治療のためのものであり、レナリドミドの1日あたりの経口投与量は10mgである。いくつかの実施形態では、本方法は、慢性リンパ性白血病を治療するためのものであり、レナリドミドの1日あたりの経口投与量は5mgである。
【0049】
いくつかの実施形態では、本方法は、免疫調節イミド化合物(例えば、レナリドミド)を、その1日用量(1日投与量)が、標準治療の1日用量の10~75%、例えば、15~70%、15~25%、40~50%、10~45%、45~70%、60~70%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%となるような投与量で持続的に投与する。いくつかの実施形態では、標準治療は、例えば、500μgの免疫調節イミド化合物の1日1回の腹腔内注射である。いくつかの実施形態では、標準治療は、FDA承認の免疫調節イミド化合物の1日1回の経口投与、例えば、5mg、10mg、または25mgのレナリドミドの1日1回経口投与である。
【0050】
様々な実施形態では、本方法は、多発性骨髄腫、低リスクまたは中等度1リスクの骨髄異形成症候群に起因する輸血依存性貧血、マントル細胞リンパ腫、固形腫瘍癌、または血液癌を治療するために使用され得る。サリドマイド化合物は、持続的に投与するために、溶解されるか、懸濁されるか、分散させられるか、または、薬学的に許容される担体または担体の組み合わせと均一に混合され得る。
【0051】
サリドマイドやサリドマイド類似体(例えば、レナリドミド、ポマリドマイド、アプレミラスト、イベルドミド)などの免疫調節イミド化合物の薬学的に許容されるすべての形態、例えば、遊離塩基、塩、多形体、溶媒和物、溶液、異性体、非晶質、結晶、共結晶、固溶体、プロドラッグ、類似体、誘導体、代謝物などが、本開示の方法に使用することが考えられる。免疫調節イミド化合物は、薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩または塩基塩、あるいはその溶媒和物(例えば、その水和物)などの形態であり得る。適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成され、その例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、糖酸塩(サッカラート)、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩がある。
【0052】
免疫調節イミド化合物を持続的に投与するための製剤は、免疫調節イミド化合物と、薬学的に許容される担体とを含む。薬学的に許容される担体は、製剤の他の成分(存在する場合)に適合するべきであり、かつ、対象(患者)の健康に有害であってはならない。持続的な投与が注入を含む場合、製剤の成分は、製剤の注入を容易にするように選択される。持続的に投与する製剤のための例示的な担体としては、これに限定しないが、水、カルボキシメチルセルロース(CMC)、Tween80、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、デキストロース、及びPEG400が挙げられる。製剤が液体形態である場合、免疫調節イミド化合物は、いくつかの実施形態では、約0.01~20mg/mL、0.05~5mg/mL、0.05~3mg/mL、0.1~4mg/mL、0.1~2.0mg/mL、または、約0.1~1mg/mLの濃度で存在している。
【0053】
免疫調節イミド化合物の製剤形態での持続的投与は、例えば、静脈内投与や皮下投与などによる注入療法によって達成することができる。注入療法では、患者の体内に挿入して固定したカテーテルなどの滅菌した細いチューブを使用して、薬剤を投与する。この目的のために、ポンプ送達システム、または、持続的注入を行うことができる他の任意の送達システム、例えばデポ注入や携帯型ポンプなどを使用することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、レナリドミドは、38~700μg/時の投与速度で持続的に投与される。いくつかの実施形態では、免疫調節イミド化合物は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、または少なくとも4日間にわたって持続的に投与される。いくつかの実施形態では、レナリドミドは、少なくとも14日間にわたって持続的に投与される。いくつかの実施形態では、レナリドミドを14日間にわたって持続的に投与し、そして、免疫調節剤による治療を1日中止した後、疾患が進行するまで、または、疾患再発を予防するために持続的に提供される維持療法として、レナミドを14日間のサイクルで持続的に投与する。
【0055】
実施例1に記載する実験は、サリドマイド化合物の抗癌活性に、投与経路が関与することを示す。この実験では、H929多発性骨髄腫異種移植片を移植したSCIDマウスに、レナリドミドを含む製剤を、皮下注入によって持続的に投与するか、または、腹腔内注射によって1日1回投与した。この実験は、持続的投与の場合には、6μg/時間の毎時間投与量において、全ての動物において腫瘍サイズが効果的に減少させたが、より高用量の腹腔内注射の場合には、進行を遅らせたが、腫瘍サイズの成長を阻害しなかった、という予想外の結果を示した。図1を参照されたい。また、この実験は、持続的投与の場合には、体重の大幅な減少や血液毒性が見られないことを示した。図2及び表1を参照されたい。
【0056】
実施例1に記載した実験では、グループ2のSCIDマウスには、25mg/kg(20gmのマウスに対して500μg)を1日1回腹腔内投与するという標準治療を行った。グループ2の薬物動態学的プロファイルは、製剤投与の8時間後に2.9μg/mLの血中濃度Cmaxを示し、18時間後に0.013μg/mLの血中濃度を示した。別のデータは、製剤投与の8時間後に観察された血中濃度である0.29μg/mLよりも高い、または、製剤投与の18時間後に観察された血中濃度である0.013μg/mLよりも低い持続血中濃度は、毒性があるか、または効果がないことを示した。例えば、1日1回500μgを腹腔内投与した場合、持続血中濃度が、製剤投与の16時間後の時点で観察された濃度よりも高く、10時間後の時点で観察された濃度よりも低ければ、効果があり、非毒性である。所定の時間範囲で、投与量に応じた血中濃度を継続的に維持することは、安全かつ有効であり、ヒトにおいて活性をもたらすと予測される。
【0057】
また、サリドマイド化合物の持続的投与は、経皮送達システムを用いて達成することができる。上述の持続注入モデルは、経皮薬物送達の適用を模倣するために使用される。持続注入及び経皮送達は両方とも、経口薬物投与で観察される初回通過時の代謝抽出をバイパスする。持続注入の場合に観察される血中濃度目標値は、経皮パッチの場合に得られる血中濃度目標値と同等である。経皮パッチによる薬物投与は、単位時間(1時間)あたりの薬物単位(用量)に関して定量化することができる。そして、経皮パッチの表面積に応じて投与速度を調節することにより、特定の血中濃度を達成するのに十分な量の薬物を投与する。この特定の血中濃度は、この実施形態では、持続注入として効果があることが観察された目標濃度である。
【0058】
レナリドミドは、オンセットの低下または治療ウィンドウの低下の必要性を考慮しない、即時放出型(IR)の剤形(錠剤)で投与される。一般的に、IR錠剤の目的は、最初の吸収後の所定期間にわたって、治療ウィンドウ内の治療濃度を得るのに十分な薬物を提供することである。10~24時間のこの治療ウィンドウを考慮すると、オンセットの低下は、約10時間までの薬物の初期吸収を意味し、IR錠剤投与の0.5~3時間後に最大血中濃度が観察される。有効量の治療ウィンドウは、約10~24時間と考えられる。これにより、本明細書に開示されているように、観察された最大血中濃度は、所与の用量の治療ウィンドウの上限を超えない。毒性の可能性を効果的に減少させるためにIR錠剤の投与量をさらに減らすと、10~24時間の治療ウィンドウで得られる実際の用量は達成されない可能性が高く、これは、現在の標準治療であるIR錠剤の効果は期待できないことを示唆する。本明細書に記載されている実施形態は、治療ウィンドウ内の治療血中濃度を大幅に超えることなく、治療ウィンドウまで増加する徐放性の薬物放出及び送達を提供する。
【0059】
本開示によれば、本発明者らは、レナリドミドを送達期間中に実質的にゼロ次の動態を達成するのに有効な量で投与れば、レナリドミドを、多発性骨髄腫やレナリドミドが適応される他の疾患などを治療する目的で、低減され制御された持続送達方法(これに限定しないが、例えば、非経口、注入、皮下、経口、粘膜、口腔、局所、または経皮などの投与方法)を用いてヒトの身体に投与できることを見出した。本開示の投与方法は、記載された投与経路を介して、レナリドミドの定常状態放出を提供する。レナリドミドの約16~1400μg/時の投与速度、より好ましくは約38~700μg/時の投与速度が、患者における治療有効用量を達成するために必要とされる。現在、レナリドミドは、1日あたり約2.5~25mgが経口投与されているが、実際の治療有効ウィンドウは、約1~24時間の範囲に限定されると考えられている。
【0060】
実施例6及び実施例7は、25mgのレナリドミドを1日1回経口投与した場合と生物学的に同等の用量になると予測されるレナリドミドの持続的投与の用量範囲を例示する(新たに診断された多発性骨髄腫を治療する場合)。レナリドミドは、1日1回の25mgのレナリドミドの投与後の10~16時間後の時点の血中濃度に相当する用量で、持続的に投与される。例えば、レナリドミドは、1日1回の25mgのレナリドミドの投与の12時間後の血中濃度と同等の血中濃度が得られる用量で、持続的に投与される。
【0061】
実施例8は、10mgのレナリドミドを1日1回経口投与した場合と生物学的に同等の用量になると予測されるレナリドミドの持続的投与の用量範囲を例示する(多発性骨髄腫維持療法の場合)。レナリドミドは、1日1回の10mgのレナリドミドの投与後の10~16時間の時点の血中濃度に相当する用量で、持続的に投与される。例えば、レナリドミドは、1日1回の10mgのレナリドミドの投与後の12時間後の血中濃度と同等の血中濃度が得られる用量で、持続的に投与される。
【0062】
実施例9は、5mgのレナリドミドを1日1回経口投与した場合と生物学的に同等の用量になると予測されるレナリドミドの持続的投与の用量範囲を例示する(慢性リンパ性白血病を治療する場合)。レナリドミドは、1日1回のmgのレナリドミドの投与後の10~16時間の時点の血中濃度に相当する用量で、持続的に投与される。例えば、レナリドミドは、1日1回の5mgのレナリドミドの投与後の12時間後の血中濃度と同等の血中濃度が得られる用量で、持続的に投与される。
【0063】
実施例6~9では、例としてレナリドミドを使用して、レナリドミドの経口投与時のPKプロファイルに基づき、レナリドミドの持続投与時に達成するべき毎時間投与量及び定常状態における血漿中濃度を求めた。他の免疫調節イミド化合物の持続投与のための毎時間投与量及び定常状態血漿中濃度は、対応する免疫調節イミド化合物のPKプロファイルに基づいて同様に決定することができる。
【0064】
一実施形態では、免疫調節イミド化合物を持続的に投与する方法は、免疫調節イミド化合物の血漿中濃度を所定の期間にわたって所定の濃度に維持するために、免疫調節イミド化合物を含む経皮薬物送達システムまたは局所製剤を提供及び/または適用すること、及び、その使用方法を含む。別の実施形態では、投与頻度を減少させ、血中濃度を所定の範囲内に維持することによって、単純化されかつ改善された治療レジメンを提供する。
【0065】
本明細書に記載される経皮送達システム(TDS)は、所望の粘度の液体または半固形の形態、例えば、溶液、懸濁液、ナノ懸濁液、マイクロ懸濁液、分散液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ゲル、軟膏、クリーム、ペースト、ローション、ムース、またはバームの形態であり得る経皮製剤を含む。あるいは、経皮製剤は、経皮製剤を含むTDSの一部を形成してもよい。例示的なTDSとしては、これに限定しないが、局所製剤(例えば、皮膚または粘膜への閉塞性または非閉塞性の適用の場合)、ゲル、ローション、スプレー、定量経皮スプレー、エアロゾル、座薬、懸濁液、経皮パッチ、二層マトリクスパッチ、多層マトリクスパッチ、接着剤を有するまたは有さないモノリシックマトリクスパッチ、ドラッグインアドヒーシブパッチ(drug-in-adhesive patche)、マトリクスリザーバパッチ(任意選択で接着剤によって取り囲まれた別個のマトリクスリザーバを伴う)、マイクロリザーバパッチ、ヒドロゲルマトリクスパッチ、粘膜接着剤パッチ、接着剤システム、経皮適用テープ、マイクロニードルシステム、イオン泳動システム、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、製剤中の活性成分が安定した製剤を提供する。例えば、製剤は、常温保存可能であり、標準的な環境条件下で保存した場合、所定の期間にわたってその活性の少なくとも90%を維持する。別の実施形態では、製剤は、少なくとも3か月間、6か月間、9か月間、または1年間にわたって、常温保存可能である。
【0066】
いくつかの実施形態では、経皮システムまたは局所製剤は、液体またはゲルの形態であってもよいし、また、経皮パッチに組み込んでもよい。経皮製剤は、これに限定しないが、例えば、ポリマーマトリクスを含み得る。ポリマーマトリクスは、接着性剤であっても非接着剤であってもよく、これに限定しないが、例えば、ポリアクリル系接着剤などであり得る。マトリクスパッチとしては、単一のマトリクス層または複数のマトリクス層を有するパッチが挙げられる。
【0067】
本明細書に記載される経皮システムまたは局所システムの使用では、投与方法、治療する特定の状態、及び所望する効果に応じて異なる用量を用いる。製剤は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、またはそれ以上の期間にわたって、1日1回、経皮的に投与され得る。または、製剤は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、またはそれ以上の期間にわたって、1日に数回、経皮的に投与される。あるいは、経皮投与は、1日1回、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎、11日毎、12日毎、13日毎、または14日毎であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、経皮製剤または局所製剤は、経皮パッチの活性成分を所定の投与速度で所定の期間にわたって提供する。いくつかの実施形態では、所定の期間は、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日間、8~13日間、2週間、または15日間である。いくつかの別の実施形態では、所定の速度は、所定の期間における変動係数が約90%、85%、または80%未満の実質的に一定の速度である。
【0069】
さらに別の実施形態では、経皮製剤または局所製剤は、所定の期間にわたって、患者によるサリドマイド化合物(及び任意選択の他の薬物)の安定した吸収速度を提供する。いくつかの実施形態では、所定の期間は、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日間、8~13日間、2週間、または15日間である。いくつかの別の実施形態では、所定の速度は、一定の速度である。
【0070】
さらに別の実施形態では、経皮製剤または局所製剤は、所定の期間にわたって、患者において、経皮パッチの活性成分の所定の範囲の血中濃度を提供する。いくつかの実施形態では、所定の期間は、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日間、8~13日間、2週間、または15日間である。
【0071】
さらに別の態様では、経皮製剤または局所製剤は、所定の期間にわたって、患者において、経皮パッチの活性成分の治療範囲内の血漿中濃度を提供する。いくつかの実施形態では、所定の期間は、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日間、8~13日間、2週間、または15日間である。
【0072】
さらに別の態様では、本明細書に記載される経皮製剤または局所製剤は、所定の期間にわたって、患者において、活性成分の投与量の変動を低減することを可能にする。いくつかの実施形態では、所定の期間は、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日間、8~13日間、2週間、または15日間である。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される経皮製剤または局所製剤は、例えば、1日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、約8~13日間に1回、2週間に1回、約15~30日間に1回などの投薬レジメンで投与される。
【0074】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載される経皮送達システムを用いて治療した対象(患者)の血液試料に対する薬物動態学的評価が実施される。そして、薬物動態学的評価に応じて、経皮製剤を調節する。例えば、より小さいパッチ、より大きいパッチ、または複数の経皮パッチを対象に適用するように経皮製剤の用量を調節してもよいし、または、より多いまたはより少ない用量の活性成分を有するパッチを適用してもよい。いくつかの実施形態では、対象の要求に基づいて最適な治療結果を達成するために、製剤は、様々な投与強度またはパッチサイズで使用することができる。一実施形態では、2つ以上の経皮システムまたは局所製剤を対象に適用してもよい。また、いくつかの実施形態では、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、2~5個、2~4個、2~3個のパッチを対象に適用してもよい。また、別の実施形態では、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のパッチを対象に適用してもよい。
【0075】
マトリクス形成ポリマーまたはゲル形成ポリマーを使用して、経皮ゲル、リザーバパッチ、またはマトリクスパッチを形成することができる。また、当業者には明らかなように、多数のこのようなポリマーは、単独でまたは組み合わせて、特定の送達ビヒクル及び意図される使用(例えば、粘度、適用期間、粘着性など)に応じた量で使用することができる。例示的なポリマーとしては、これに限定しないが、セルロース及びその誘導体(これに限定しないが、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、Aquasolve(商標)ハイパーメロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロースブレンド、セルロースアセテートフタレート、プロピルメチルセルロースフタレートなど)、生分解性ポリマー(これに限定しないが、例えば、ゼラチン、キトサン、デンプン、ポリアクリル酸、ポリビニールなど)、ガム(これに限定しないが、例えば、グアーガム、コーパルガム、ジェラムガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アラビアゴム、トラガカント、カシアガム、カラヤガムなど)、多糖類(これに限定しないが、例えば、カラギーナン、寒天、ペクチン、マンナン、アルギン酸、デキストラン、プルランなど)が挙げられる。
【0076】
接着剤ポリマーは、プラスチック、ポリマー、粘着剤、自己接着系などの様々な材料から作ることができ、また、粘着性を得るために追加の賦形剤を必要としてもよい。基本的な接着剤系は、シリコーン、ポリアクリル、ポリイソブチレン、ゴム、及び、それらの任意の組み合わせから、物理的混合または共重合によって選択される。これらの材料は、溶媒媒介、水媒介、物理的混合、押出し、共押出し、ホットメルトから得ることができ、あるいは、重合または非重合の材料として形成してもよい。
【0077】
適切なシリコーン接着剤としては、シリコーンポリマーや樹脂から作られた粘着剤(感圧接着剤)が挙げられる。樹脂に対するポリマーの比率を変更することで、様々なレベルのタックを達成することができる。市販されている有用なシリコーン接着剤の具体例としては、ダウコーニング社(Dow Corning)製の標準BIOPSA(登録商標)シリーズ(7-4400、7-4500、及び7-600シリーズ)、及び、アミン適合性(エンドキャップされた)BIOPSA(登録商標)シリーズ(7-4100、7-4200、及び7-4300シリーズ)が挙げられる。また、好ましい接着剤としては、BIO-PSA(登録商標)7-4101、7-4102、7-4201、7-4202、7-4301、7-4302、7-4401、7-4402、7-4501、7-4502、7-4601、及び7-4602が挙げられる。
【0078】
適切なポリイソブチレン接着剤は、適切な粘着性を有する粘着剤(感圧接着剤)である。ポリイソブチレンは、高分子量及び中分子量のポリイソブチレン、ポリブテン、及び鉱油の混合物を含み得る。具体的には、高分子量のポリイソブチレンは、分子量が、少なくとも約425、000のものである。中分子量ポリイソブチレンは、分子量が、少なくとも40、000、かつ、約425、000未満のものである。低分子量ポリイソブチレンは、分子量が、少なくとも100、かつ、約40、000未満のものである。市販の有用なポリイソブチレン接着剤の具体例としては、BASF社製のOppanol(登録商標)高分子量Nグレード50、50SF、80、100、及び150、並びに、Oppanol(登録商標)中分子量Bグレード10N、10SFN、11SFN、12SFN、12N、13SFN、14SFN、15SFN及び15Nが挙げられる。ポリブテンの具体例は、ソルテックス社(Soltex)から、様々な分子量のポリブテンとして、また、イネオス社(Ineos)から、様々な分子量のIndopol及びPanalaneとして市販されている。市販されている有用なポリイソブチレン接着剤の具体例としては、Duro-Tak(登録商標)87-6908が挙げられる。
【0079】
有用なアクリルポリマーとしては、架橋型、架橋可能型、非架橋型、架橋不能型、グラフト型、ブロック型、硬化型、及び非硬化型の感圧接着剤(PSA)としての、アクリル酸及びその誘導体の種々のホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどが挙げられる。これらのアクリルポリマーには、アルキルアクリレートまたはメタクリレートのコポリマーが含まれる。ポリアクリレートには、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの誘導体が含まれ、そのようなものとしては、これに限定しないが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、酢酸ビニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、またはオクチルアクリルアミドが挙げられる。アクリルポリマーは、ヒドロキシル部分もしくはカルボキシル部分またはそれらの組み合わせのレベルを有する官能性種、官能性部分を有さない非官能性種、ヒドロキシル部分もしくはカルボキシル部分よりも反応性が低い部分を有する非反応性種、例えば、メチル、エチル、プロピル、またはブチルのキャップドアクリルアミドであり得る。例示的なアクリルPSAは、これに限定しないが、Duro-Tak(登録商標)87-900A、Duro-Tak(登録商標)87-9301、Duro-Tak(登録商標)87-4098、Gelva(登録商標)GMS3083、Gelva(登録商標)GMS3253、Duro-Tak(登録商標)387-2510/87-2510、Duro-Tak(登録商標)387-2287/87-2287、Duro-Tak(登録商標)87-4287、Gelva(登録商標)GMS788、Duro-Tak(登録商標)387-2516/87-2516、Duro-Tak(登録商標)87-2074、Duro-Tak(登録商標)87-235A、Duro-Tak387-2353/87-2353、Gelva(登録商標)GMS9073、Duro-Tak(登録商標)87-2852、Duro-Tak(登録商標)387-2051/87-2051、Duro-Tak(登録商標)387-2052/87-2052、Duro-Tak(登録商標)387-2054/87-2054、Duro-Tak(登録商標)87-2194、Duro-Tak(登録商標)87-2196が挙げられる。
【0080】
スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)またはスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)などのゴムブロック共重合体から得られる他の感圧接着剤が開示される。
【0081】
フィルム形成増粘ポリマー、レオロジー特性調節増粘ポリマー、及び/または増粘ポリマー、これに限定しないが、例えば、デンプン及びその誘導体、ゼラチン及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、エチレン及びその誘導体、プロピレン及びその誘導体、エチレン-酢酸ビニル(EVA)及びその誘導体なども用いられる。フィルム形成ポリマー材料としては、メチルセルロース及びその誘導体、微結晶セルロース及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、アクリレート及びそれらの共重合体が挙げられる。これらの材料の具体例としては、BASF社製のKollidon(登録商標)12、17、30、90、及びVA64が挙げられる。他の例としては、クラレ社(Kuraray)製のエルバノールが挙げられる。ピュアコート(登録商標)、インスタントピュアコート(登録商標)、ピュアゲル(登録商標)、及びピュアデント(登録商標)は、グレイン・プロセッシング社(Grain Processing Corporation)製の様々なスターチグレードである。EVAの具体例としては、セラニーズ社(Celanese)製のAteva(登録商標)標準グレード、アンモニオアルキルメタクリレート共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L100-55、EUDRAGIT(登録商標)EPO、EUDRAGIT(登録商標)RL、EUDRAGITE(登録商標)100、PLASTOID(登録商標)B、ジメチルアミノエチルメタクリレート-ブチルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体)が挙げられる。
【0082】
いくつかの実施形態では、製剤は、任意選択で1以上の担体及び賦形剤を含む。任意選択の担体または賦形剤は、二重または複数の機能性を有してもよく、例えば、特定の賦形剤は、濃度、経皮システムのタイプ、及びその成分に応じて、例えば浸透促進剤(透過促進剤)として、または、例えば可塑剤として、またはその両方として機能してもよい。任意選択の担体または賦形剤としては、これに限定しないが、溶媒、可溶化剤、希釈剤、懸濁剤、分散剤、ゲル化剤、ポリマー、生分解性ポリマー、浸透促進剤、可塑剤、pH調整剤、緩衝剤、pH安定剤、乳化剤、補助乳化剤、界面活性剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、キレート剤、錯化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、粘質剤、皮膚刺激低減剤、抗酸化剤、酸化剤、粘着付与剤、充填剤、揮発性化学物質、及び、パッチまたはフィルム様製剤を調製するために必要な材料が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、製剤は、溶媒を含む。溶媒としては、例えば、C1~C20アルコール(これに限定しないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール、2-メチル-2-プロパノール(別名:t-ブチルアルコール)、ペンタノール、2、4-ジメチル-2-ペンタノール、3、5-ジメチル-3-ヘキサノール、及び、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19またはC20炭素原子を有するアルコール)、多価アルコール、グリコール(これに限定しないが、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン)、グリコールの誘導体、ピロリドン(これに限定しないが、例えば、Nメチル2-ピロリドン、2-ピロリドン)、スルホキシド(これに限定しないが、例えば、ジメチルスルホキシド(別名:DMSO)、及びデシルメチルスルホキシド)、ジメチルイソソルビド、鉱油、植物油、水、極性溶媒、半極性溶媒、非極性溶媒、パッチ製剤を調製するために使用することができる揮発性化学物質、これに限定しないが、例えば、エステル、ケトン、アルコール、アルカン、例えば酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘプタン、ヘキサン、シロキサン、エタノール、イソプロパノール、トルエン、及び、酸、例えば、酢酸、乳酸、レブリン酸、塩基などが挙げられる。
【0084】
いくつかの実施形態では、製剤は、界面活性剤、可溶化剤、乳化剤、または分散剤を含み、例えば、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、及び両性界面活性剤を含む。そのようなものとしては、例えば、プロピレングリコール、モノカプリレートI型、プロピレングリコールモノカプリレートII型、プロピレングリコールジカプリレート、中鎖トリグリセリド、プロピレングリコールモノラウレートII型、リノレオイルポリオキシル-6グリセリド、オレオイル-ポリオキシ1-6-グリセリド、ラウロイルポリオキシル-6-ギルグリセリド、ポリグリセリン1-3-ジオレイン酸、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノラウレートI型、ポリグリセリル-3-ジオレイン酸、カプリロアポロイルポリオキシル-8グリセリド、シクロデキストリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)、ポリソルベート/ポリエトキシ化ソルビタン型またはtween(登録商標)型の界面活性剤、ソルビタンエステルまたはSpan(登録商標)型の溶剤型界面活性剤、グリコール、ヘキシルエングリコール、Brij(登録商標)型の界面活性剤、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。DEGEE(別名:ジ(エチレングリコール)エチルエーテルまたは2-(2-エトキシエトキシ)エタノール)は、例えば、Transcutol(登録商標)(TC)、Transcutol(登録商標)P、Transcutol(登録商標)CG、Transcutol(登録商標)HP(フランス国リヨン州、ガッテフォセ社)、及び、Carbitol(TM)(米国ミシガン州、ダウケミカルズ社)などの様々な商品名で市販されている。Span(登録商標)またはTween(登録商標)界面活性剤は、これに限定しないが、Span20(登録商標)、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60、Span(登録商標)80、Span(登録商標)83、Span(登録商標)85、Span(登録商標)120、Tween20(登録商標)、Tween21(登録商標)、Tween40(登録商標)、Tween60(登録商標)、Tween61(登録商標)、Tween65(登録商標)、及びTween80(登録商標)から選択することができる。Brij(登録商標)は、様々な供給元(例えば、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich))から市販されている非イオン界面活性剤のグループであり、Brij(登録商標)93(平均Mn:約357)、Brij(登録商標)S100(平均Mn:約4、670)、Brij(登録商標)58(平均Mn:約1124)、Brij(登録商標)O10(平均Mn:約709、別名:Brij97、C18-1E10、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、C18H35(OCH2CH2)nOH、n~10)、Brij(登録商標)C10(平均Mn:約683)、Brij(登録商標)L4(平均Mn:約362、別名:ポリエチレングリコールドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、(C20H42O5)n)、BRIJ(登録商標)O20(平均Mn:約1、150、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、C18H35(OCH2CH2)nOH、n~20)、Brij(登録商標)S2MBAL(別名:Brij(登録商標)S2、ポリエチレングリコールオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、主成分:ジエチレングリコールオクタデシルエーテル、C18H37(OCH2CH2)2OH)、Brij(登録商標)S10(平均Mn:約711)、Brij(登録商標)S20、及び、Brij(登録商標)35(別名:Brij(登録商標)L23、C12E23、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、(C2H4O)nC12H26O)から選択することができる。界面活性機能を発揮するために製剤に含まれる界面活性剤の適切な量は、0.01~95%w/w、5%w/w未満、一般的に、4%、3%、2%、1%、または0.5%未満であり得る。溶媒/可溶化機能のための適当な量は5%~約50%であり得る。当業者には明らかなように、適切かつ十分な量を達成するために、量を増減させてもよい。
【0085】
グリコールは、アルコール族に属する小さな有機化合物のクラス(例えば、MWは通常150ダルトン未満)またはそのポリマーであり、2つのヒドロキシル(-OH)基が異なる炭素原子に結合している。グリコール類の最も単純なメンバーはエチレングリコール(別名:1、2-エタンジオール)であり、他のメンバーとしては、これに限定しないが、プロピレングリコール(別名:1、2-プロパンジオール)、ブチレングリコール(1、3-ブタンジオール)、1、4-ブタンジオール、ペンチレングリコール(1、2-ペンタンジオール)、ヘキシレングリコール(2、4-ペンタンジオール)、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、及び2-メチル-2-プロピル-1、3-プロパンジオールが挙げられる。同様に、上記のグリコールジオール、特にエチレングリコールの高分子量ポリマーを使用することができ、そのようなものとしては、これに限定しないが、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。PEGは、様々な分子量、一般的、約200g/mol~約1000万g/mol、例えば、PEG200、300、400、600、800、1000、1500、3350、4000、6000、8000、10000、20000、35000で入手可能である。異なる分子量のPEGは、同様の界面活性剤特性を有するが、より高分子量のポリマーは、いくつかのパッチ剤形において所望される増粘機能を付加するので、好適であり得る。
【0086】
浸透促進剤は、本発明の方法で使用するために製剤に含まれ得る。構造的に多様な化合物を含む多数の浸透促進剤が知られており、当業者には明らかなように、単独でまたは組み合わせて使用することができる。浸透促進剤としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ナタノール、ドデカノール、プロピレングリコール、グリセロール)、エーテルアルコール(これに限定しないが、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール誘導体、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、アゾン、尿素、ジメチルアセトアミド)、ピロリドン誘導体(例えば、1-メチル-4-カルボキシ-2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-ラウリル-4-メトキシカルボニル-2-ピロリドン)、テルペン(例えば、メントール、リモネン、テルピネオール、ピネン、カルボン)、テルペノイド、酢酸エチル、酢酸メチル、オクチサレート、ペンタデカラクトン、アクリルアミド、トリグリセリド(例えば、トリアセチン)、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエステル、精油、界面活性剤型促進剤(これに限定しないが、例えば、ブリジ、ラウリル硫酸ナトリウム、ツイーン、ポリソルベート)が挙げられる。製剤に含まれ得る他の全ての浸透促進剤は、「Percutaneous Penetration Enhancers (Eric W. Smith, Howard I. Maibach, 2005. Nov, CRC press)」に記載されているものである。いくつかの実施形態では、浸透促進剤は、0.01~95%w/wの範囲の量で含まれ得る。
【0087】
脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤には、脂肪酸、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール、または脂肪アルコール誘導体が、置換された脂肪酸部分、または置換された脂肪アルコール部分からなるものが含まれ、そのようなものとしては、例えば、促進剤の脂肪酸部分または脂肪アルコール部分がC4~C26の炭素鎖長を有するものが挙げられる。そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、脂肪酸エステル、特に、脂肪酸または脂肪酸部分がC4~C26またはそれより長い炭素鎖長を有するもの、とりわけ、C4、C5、C6、C7、C8、C10、C11、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24、及びC26またはそれらの任意の組み合わせを有するものが挙げられる。例えば、C12~26脂肪酸、アルコール及びそれらの誘導体、例えばC18のうちの1以上を、C4~C10(これに限定しないが、例えば、C4、C5、C6、C7、C8、C10)の短鎖脂肪酸と組み合わせてもよい。例示的な誘導体としては、これに限定しないが、ヒドロキシル、エチル、メチル、プロピル、ブチル、及びグリセリルから選択される1以上の追加基を含む、例えば本明細書に記載されたような置換脂肪酸または脂肪アルコールが挙げられる。
【0088】
例示的な特定の脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤としては、これに限定しないが、飽和、不飽和、一価不飽和、または多価不飽和の脂肪酸、例えば、オメガ-3、オメガ-6、オメガ-7、またはオメガ-9の脂肪酸が挙げられる。飽和、不飽和、一価不飽和、または多価不飽和の脂肪酸としては、これに限定しないが、例えば、C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24、またはC26、とりわけに、これに限定しないが、例えば、C14、C16、C18、またはC20の炭素鎖を有する脂肪酸が挙げられる。さらに、脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤には、分岐鎖飽和脂肪酸が含まれ、そのようなものとしては、これに限定しないが、例えばメチル分岐脂肪酸、例えばイソステアリン酸やエチル分岐脂肪酸などが挙げられる。また、脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤には、例えば、1以上のモノ不飽和脂肪酸またはその誘導体が含まれ、そのようなものとしては、これに限定しないが、5-ドデセン酸(C12:1)、7-テトラデセン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(C18:1)、バクセン酸(C18:1)、エライジン酸(C18:1)、パウリン酸(C20:1)、ゴンドイン酸(C20:1)、エルカ酸(C22:1)、15-ドコセン酸(C22:1)、17-テトラコセン酸(24:1)、ネルボン酸(C24:1)、キシメン酸(C26:1)、またはそれの誘導体が挙げられる。さらに、脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤には、例えば、オレイン酸(「OA」、C18:1)、及びオレイン酸誘導体が含まれる。オレイン酸誘導体としては、例えば、オレイン酸エチル(OAエチルエステル)、オレイン酸オレイル(OAオレイルエステル)、オレイン酸グリセリル(OAグリセリルエステル)、モノオレイン酸ソルビタン(オレイン酸ソルビタン、スパン(登録商標)80)、及びオレイルアルコール(cis-9-オクタデセン-1-オール)が挙げられる。さらに、脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤には、例えば、多価不飽和脂肪酸、及び多価不飽和脂肪酸誘導体が含まれる。多価不飽和酸としては、これに限定しないが、例えば、ヘキサデカトリエン酸(16:3)、リノール酸(C18:2)、ルメール酸(C18:2)、α-リノレン酸(C18:3)、γ-リノレン酸(C18:3)、カレンジン酸(C18:3)、ステアリドン酸(C18:4)、ミード酸(C20:3)、エイコサジエン酸(C20:3)、エイコサトリエン酸(C20:3)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、ドコサジエン酸(C22:2)、アドレナリン酸(C22:4)、オスボンド酸(C22:5)、テトラコサテトラエン酸(C24:4)、テトラコサペンタエン酸(C24:5)及びこれらの誘導体であって、これに限定しないが、アルコール及びエステル、例えばリノレイルアルコール(リノール酸の脂肪アルコール)が挙げられる。さらに、脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤には、これに限定しないが、飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸誘導体が含まれる。飽和脂肪酸としては、これに限定しないが、ステアリン酸(C18:0)、パルミチン酸(C16:0)、ミリスチン酸(C14:0)、及びラウリン酸(C12:0)が挙げられる。また、脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤には、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸エステル誘導体、及び脂肪酸誘導体が含まれる。そのようなものとしては、これに限定しないが、オレイン酸エチル、オレイン酸メチル、デシルオレイン酸、モノオレイン酸グリセリル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸イソプロピル(イソプロピルアルコールとパルミチン酸のエステル)、ミリスチン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル(ラウリン酸メチルエステル)、ラウリン酸グリセリル(ラウリン酸グリセリルエステル、モノラウリン、モノラウリン酸グリセロール)、ラウリン酸ラウリル、モノラウリン酸プロピレングリコールタイプI、モノラウリン酸プロピレングリコールタイプII(例えば、フランス国リヨンのガッテフォセ社(Gattefosse)から市販されているラウログリコール(TM)90)、乳酸ラウリル(ラウリルアルコールと乳酸のエステル)、及び酢酸ブチルが挙げられる。その代わりにまたはそれに加えて、脂肪酸またはアルコールの浸透促進剤は、1以上の脂肪酸またはアルコールを豊富に含む油、または、例えば植物由来油などの油の濃縮部分/画分の形態で提供され得る。例えば、油は、これに限定しないが、脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、及び多価不飽和脂肪酸を含み得る。目的の脂肪酸またはアルコールを含有するこのような油の濃縮画分を形成し、使用することができる。適切な脂肪酸を有する油としては、これに限定しないが、オリーブ油、マカダミア油、菜種油、ウォールフラワー種子油、マスタード種子油、ナツメグ、パーム油、及びココナッツ油が挙げられる。適切な油画分としては、例えば、C8、C10、C12、C14、C16、C18脂肪酸の1以上を豊富に含む「MCT油」または「LCT」油が挙げられる。
【0089】
脂肪アルコールの浸透促進剤には、これに限定しないが、飽和、一価不飽和、または多価不飽和の脂肪アルコールが含まれ得る。そのようなものとしては、これに限定しないが、ブタノール(C4)、ブチルアルコール(C4)、tert-ブチルアルコール(C4)、tert-アミルアルコール(C5)、3-メチル-3-ペンタノール(C6)、カプリルアルコール(C8)、ペラルゴンアルコール(C9)、カプリックアルコール(C10)、ウンデシルアルコール(C11)、ラウリルアルコール(C12)、トリデシルアルコール(C13)、ミリスチルアルコール(C14)、ペンタデシルアルコール(C15)、セチルアルコール(C16)、パルミトリーアルコール(cis-9-ヘキサデセン-1-オール、C16H32O)、ヘプタデシルアルコール(1-n-ヘプタデカノール、C17H36O)、ステアリルアルコール(C18:0)、オレイルアルコール(C18H36O、C18:1)、リノレイルアルコール(C18H34O、cis、cis-9、12-オクタデカジエン-1-オール)、ノナデシルアルコール(C19)、アラキジルアルコール(C20HO)、オクチルドデカノール(C20H42O、2-オクチルドデカン-1-オール)、ヘネイコシルアルコール(C21)、ベヘニルアルコール(C22H46O)、エルシルアルコール(cis-13-ドコセン-1-オール、C22H44O)、リグノセリルアルコール(C24)、及びセリルアルコール(C26)が挙げられる。飽和脂肪族アルコールの浸透促進剤としては、これに限定しないが、ラウリルアルコール(C12)、イソラウリルアルコール(C12、10-メチル-1-ヘンデカノール)、アンテイソラウリルアルコール(C12、9-メチル-1-ヘンデカノール)、ミリスチルアルコール(C14)、イソミリスチルアルコール(C14、12-メチル-1-トリデカノール)、アンテイソミリスチルアルコール(C14、11-メチル-1-トリデカノール)、セチルアルコール(C16)、イソパルミチルアルコール(C16、14-メチル-1-ペンタデカノール)、アンテイソパルミチルアルコール(C16、13-メチル-1-ペンタデカノール)、ステアリルアルコール(C18)、イソステアリルアルコール(C18、16メチル-1-ヘプタデカノール)、及びアンテイソステアリルアルコール(C18、15メチル-1-ペンタデカノール)が挙げられる。
【0090】
より長い炭素鎖長を有する脂肪アルコールまたは酸の浸透促進剤は非刺激性または皮膚保護効果を有するので、本明細書中に記載された方法で使用するために脂肪アルコールまたは酸の浸透促進剤を製剤中に含める場合には、より長い炭素鎖長を有する脂肪アルコールまたは酸の浸透促進剤を用いることが好ましい。そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、上述のC12~C26脂肪アルコールまたは酸、好ましくは、上述のC12~C18脂肪アルコールまたは酸、例えば、飽和、一価不飽和または多価不飽和アルコールまたは酸が挙げられる。これらは、脂肪酸/アルコールまたは脂肪酸/アルコール部分がC4~C10(すなわち、C4、C5、C6、C7、C8、C10、またはそれらの任意の組み合わせ)の炭素鎖長を有する、より短い炭素鎖長を有する浸透促進剤、例えば、酪酸(C4:0)、イソ酪酸(C4:0)、吉草酸(C5:0)、イソ吉草酸(C5:0)、レブリン酸(C5:0)、カプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ブタノール、ブチルアルコール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールの1以上と組み合わせてもよい。これらのより短い炭素鎖長を有する脂肪アルコールまたは酸の浸透促進剤は、好ましくは、より長い炭素鎖長を有する脂肪アルコールまたは酸の浸透促進剤よりも少ない量で製剤中に含まれ得る。例えば、より長い炭素鎖長を有する浸透促進剤は約1~10%で、より短い炭素鎖長を有する浸透促進剤は、約0.1~5%、より好ましくは約0.5~2%、例えば、約0.5~1%の量で製剤中に含まれ得る。
【0091】
本明細書に記載される製剤のための好ましい脂肪アルコールまたは酸の浸透促進剤としては、これに限定しないが、オレイン酸、オレイン酸エチル(OAエチルエステル)、オレイン酸オレイル(OAオレイルエステル、C36H68O2)、オレイン酸グリセリル(OAグリセリルエステル)、オレイン酸デシル、モノオレイン酸ソルビタン(オレイン酸ソルビタン、Span80)、モノオレイン酸グリセロール、及びオレイルアルコール(cis-9-オクタデセン-1-オール)、エライジン酸(C18:1)、ゴンドイン酸(C20:1)、エルカ酸(C22:1)、ネルボン酸(C24:1)、及びキシメン酸(C26:1)の1以上、またはそれらの誘導体が挙げられる。多価不飽和酸、例えば、ヘキサデカトリエン酸(16:3)、リノール酸(C18:2)、α-リノレン酸(C18:3)、γ-リノレン酸(C18:3)、カレンジン酸(C18:3)、ステアリドン酸(C18:4)、ミード酸(C20:3)、エイコサジエン酸(C20:3)、エイコサトリエン酸(C20:3)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、ドコサジエン酸(C22:2)、及びそれらの誘導体、これに限定しないが、アルコール及びエステル、例えばリノール酸(リノール酸の脂肪酸アルコール)なども用いられる。
【0092】
浸透促進剤(またはそれらの組み合わせ)は、使用期間中はヒトの皮膚を刺激しないこと、または、特に複数日にわたって使用される粘着性パッチの形態である場合、使用期間中はヒトの皮膚を刺激しない量で使用することが好ましい。多くの既知の浸透促進剤はヒトの皮膚を刺激し、特に、長期間使用する場合や、(例えばローションなどの局所塗布ではなく)閉塞性パッチまたは半閉塞性パッチの形態で使用する場合にはヒトの皮膚を刺激する。当業者には明らかなように、任意選択の浸透促進剤の量は、そのような刺激を回避するために十分に少なくする必要がある。本開示の製剤は、皮膚刺激性浸透促進剤または他の皮膚刺激性賦形剤を排除することが好ましく、もし、それらを使用する場合は、それらを刺激性のない少量だけ含むことが好ましい。
【0093】
本明細書に記載される本開示の製剤は、脆弱性を回避し、かつ、接着剤マトリクス層に対して柔軟性を付与するために、1以上の可塑剤を含み得る。可塑剤の必要性及び選択は、特定の接着剤及び組成に依存する。適切な可塑剤は、当技術分野でよく知られている。任意選択の可塑剤は、これに限定しないが、例えば、グリコール(とりわけ、これに限定しないが、例えば、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、プロピレングリコール)、高級アルコール(例えば、ドデカノール)、界面活性剤、セバシン酸エステル(例えば、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル)、クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル)、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、グリセロールまたはグリセロールエステル(例えば、グリセリントリアセテート、グリセリン)、糖アルコール(例えば、ソルビトール、スクロース)、酒石酸エステル(例えば、酒石酸ジエチル)、油(例えば、シリコーンオイル、鉱油)、トリアセチン、オレイン酸エステル、アジピン酸、及びアジピン酸ジイソプロピルから選択され得る。粘着性パッチ製剤、特にアクリルPSAパッチ製剤に含める場合、好ましい可塑剤としては、これに限定しないが、グリセロール及びグリセロールエステルが挙げられる。別の可塑剤は、「Handbook of Plasticizers by George Wypych, 2004, Chem Tec Publishing」(その全体は、参照により本明細書中に援用される)に記載されている。いくつかの実施形態では、可塑剤は、0.01~95%w/wの範囲の量で含まれる。
【0094】
別の任意選択の賦形剤としては、これに限定しないが、例えば、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液)、酸及び酸誘導体(例えば、カルボン酸、有機酸、無機酸、スルホン酸、ハロゲン化カルボン酸、ビニル系カルボン酸、塩酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸)、塩基及び塩基誘導体、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、及びトロメタミンから選択される1以上のpH調整剤及び緩衝剤が挙げられる。好ましくは、pH調整剤として、弱有機酸または弱有機塩基が用いられる。pH調節/緩衝剤または安定剤は、経皮製剤の適切なpHを維持するのに役立つ。
【0095】
さらに別の任意選択の賦形剤としては、これに限定しないが、例えば、乳化剤、補助乳化剤、界面活性剤、懸濁剤、保存剤、酸化防止剤、キレート剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、粘滑剤、皮膚刺激低減剤、粘着付与剤、充填剤、架橋剤、樹脂、結晶化阻害剤、及び粘土が挙げられる。
【0096】
そのような任意選択の乳化剤、補助乳化剤、界面活性剤、及び懸濁剤としては、これに限定しないが、モノグリセリド、ジグリセリド、ステアリン酸ポリオキシル、トリセテアレス-4リン酸とパルミトステアリン酸エチレングリコールとパルミトステアリン酸ジエチレングリコールとの混合物、ポリグリセリル-3ジイソステアリン酸エステル、ステアリン酸PEG-6とパルミトステアリン酸エチレングリコールとステアリン酸PEG-32との混合物、オレオイルポリオキシル-6グリセリド、ラウロイルポリオキシル-6グリセリド、カプリロカプロイルポリオキシ-8グリセリド、プロピレングリコールモノカプリレートI型、プロピレングリコールモノラウレートII型、プロピレングリコールモノラウレートI型、プロピレングリコールモノカプリレートII型、ポリグリセリル-3ジオレート、ステアリン酸PEG-6とステアリン酸PEG-32との混合物、レシチン、セチルアルコール、コレステロール、ベントナイト、ビーガム、水酸化マグネシウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリン酸カリウム、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、モノステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(ポロキサマー)、ソルビタンモノラウレート、ラノリンアルコール及びエトキシル化ラノリンアルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖ジステアレート、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ヘクトライト、ケイ酸アルミニウム、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80)、及びSpan(登録商標)界面活性剤製品(例えば、Span(登録商標)80、Span(登録商標)20)が挙げられる。
【0097】
皮膚軟化剤、湿潤剤、粘滑剤、及び皮膚刺激低減剤は、これに限定しないが、グリセリン、プロピレングリコール、鉱油、ペトロラタム、ラノリン、パラフィン、セチルアルコール、セチルエステルワックス、酸化亜鉛、及びジメチコンから選択され得る。
【0098】
保存剤及び安定剤は、これに限定しないが、メタ重亜硫酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸、ビタミンE、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、αトコフェロール、パルミチン酸アコルビル、プロピオン酸、重硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、モノチオグリセロール、アスコルビン酸ナトリウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、フェニルエチルアルコール、クロロキシレノール、クレゾール、ヘキセチジン、フェノキシエタノール、クロロブタノール、アスコルビン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、フェノール、安息香酸カリウム、デヒドロ酢酸、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、及び変色剤から選択され得る。
【0099】
キレート剤は、これに限定しないが、エデト酸ナトリウム、エデト酸、酒石酸、フマル酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、及びエデト酸二カリウムから選択され得る。
【0100】
充填剤は、これに限定しないが、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、デンプン、糖、二酸化チタン、タルク、シェラック、コロイド状二酸化ケイ素、カオリン、酸化マグネシウム、及び粘土から選択され得る。
【0101】
本明細書に記載のパッチを作製するための多くの適切な方法及びそれに対応する材料は、当技術分野で既知である。本発明の一実施形態によれば、パッチは、これに限定しないが、例えば、本明細書に記載されているように、バッキング層または剥離ライナー上に溶媒をキャストし、両者の間に挟むことによって形成される。
【0102】
バッキング層のための多くの適切な材料が知られており、そのようなものとしては、ポリマーフィルム、織物、及び不織材料、例えばシャワーや入浴などの活動によって外部水分が接着層に侵入するのを防止する連続フィルムが挙げられる。バッキング層は、好ましくは、閉塞性または実質的に閉塞性であるべきである。なお、送達機構に基づいて、非閉塞性バッキングも機能的であり得る。そのようなフィルムとしては、これに限定しないが、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、コポリマー、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。任意選択で、バッキングは、金属(これに限定しないが、例えばアルミニウム)を含む層状複合体、例えば、ポリエチレンテレフタレート-アルミニウム-ポリエチレン複合材料、または例えば、ポリエステル及びエチレン酢酸ビニル共重合体ヒートシール層(特にバッキングとして)、または例えばフルオロポリマー被覆ポリエステルフィルム(特に剥離ライナーとして)であり得る。適切なバッキング層としては、これに限定しないが、Scotchpak1006、1022、1109、9723、9732、9733(3M社)が挙げられる。
【0103】
剥離ライナーのための多くの適切な材料が知られており、そのようなものとしては、紙、及びポリマーフィルム材料が挙げられる。剥離ライナーは、取り外し可能であり、経皮システムの適用前に使い捨て可能である。剥離ライナーは、一般的に、フルオロカーボン、フルオロシリコーン、PTFE、及びシリコーンからなる群から選択される剥離コーティングでコーティングされる。また、剥離ライナーは、コーティングの代わりに、押出しや共押出しなどによって、剥離剤と組み合わせてもよい。そのようなフィルムとしては、これに限定しないが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、コポリマー、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。任意選択で、バッキングは、金属、これに限定しないが、アルミニウムや蒸着アルミニウムなどを含む層状複合体であり得る。適切な剥離ライナーとしては、これに限定しないが、3Mスコッチパック1022、9709、9741、9742、9744、及び9755(3M社)が挙げられる。
【0104】
投与用の免疫調節イミド化合物の種々の製剤は、以下の様々なプラットフォームの一般的な実施形態に記載されているように調製される。
【0105】
経口投与のための持続放出性または徐放性の錠剤またはカプセル製剤の一実施形態であって、免疫調節イミド化合物と、増粘性ポリマー(単独でまたは組み合わせて)と、フィルム形成ポリマー(単独でまたは組み合わせて)と、結合剤、充填剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(単独でまたは組み合わせて)と、を特定の方法で組み合わせ、圧縮して錠剤にするか、またはカプセルに充填してカプセル製剤を形成して、対象(患者)に経口投与する。
【0106】
経皮投与または局所投与のためのパッチ製剤の一実施形態であって、免疫調節イミド化合物と、感圧接着剤(単独でまたは組み合わせて)と、ポリマー、増強剤、結合剤、充填剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、または界面活性剤(単独でまたは組み合わせて)と、閉塞性または非閉塞性のバッキング層と、取り外し可能かつ使い捨て可能な剥離ライナーと、を特定の方法で組み合わせ、バッキング層と剥離ライナーとの間に接着剤マトリクスを積層させ、対象(患者)の皮膚にパッチを貼り付けて使用するまで、パウチ内に保存する。
【0107】
留置用剤の一実施形態であって、免疫調節イミド化合物と、ホットメルトポリマー(単独でまたは組み合わせて)と、ポリマー、増強剤、結合剤、充填剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、または界面活性剤(単独でまたは組み合わせて)と、を特定の方法で組み合わせ、投与のために対象(患者)に埋め込むことによって使用するまで、パウチ内に保存する。
【0108】
具体的な実施例
【0109】
実施例1:骨髄腫異種移植モデルにおけるレナリドミド持続注入の有効性
【0110】
メスのCB.17SCIDマウスの6つのグループ(各グループは10匹のマウスからなる)に、50%マトリゲル中の1×10個のH929多発性骨髄腫細胞を皮下注射した。腫瘍の平均サイズが100~150mmに達した後、iPrecioポンプを各マウスに外科的に埋め込んだ。投薬は、ポンプを埋め込んだ24時間後に開始した。対照群であるグループ1は、1日1回の腹腔内注射によって、賦形剤で治療した。グループ2は、1日1回の腹腔内注射によって、レナリドミドで治療した。グループ3~6の各グループは、互いに異なる毎時間投与量での持続皮下注入によって、レナリドミドで治療した。投薬は、14日間継続し、その後1日間休薬し、その後さらに14日間継続した。iPrecioポンプは、14日後に交換した。グループ2~6で使用する製剤は、担体として、20%のPEG400水溶液を含む。予め定められた時点で血液を採取し、分析した。
【0111】
下記の表は、6つのグループの1日用量(1日投与量)及び投与スケジュールを示す。
【0112】
【表1】
【0113】
図1は、6つのグループの各グループについて、治療開始後の日数(1日目は、治療を開始した日である)の関数として正規化された腫瘍体積を示す。レナリドミド144μgの1日用量で持続皮下投与したグループ3のみが、治療スケジュール中に腫瘍体積が減少した。グループ2は、グループ3よりも多い1日用量で、すなわち500μgの1日用量でレナリドミドを腹腔内投与したが、腫瘍体積の増加を抑制することができなかった。図2は、治療開始後の日数の関数として正規化された体重を示す(1日目は、治療を開始した日である)。グループ3は、有意な体重減少が見られた。
【0114】
図7のカプラン・マイヤープロット(Kaplan-Meier Plot)は、6つのグループの各グループについて、マウスの生存率を、治療開始後の日数の関数として示す(治療開始後の1~95日、1日目は処置が開始される日である)。レナリドミド144μgの1日用量で持続皮下投与したグループ3のみが、95日間生存した。グループ2は、グループ3よりも多い1日用量で、すなわち500μgの1日用量でレナリドミドを腹腔内投与したが、腫瘍体積の増加を抑制することができず、52日間生存したマウスはいなかった。
【0115】
下記の表1は、治療開始後8日目の各グループの白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、及び絶対好中球数(ANC)を示しており、グループ3~6では実質的な血液毒性は見られなかった。
【0116】
表1:治療開始後8日目の各グループの白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、及び絶対好中球数(ANC)
【0117】
【表2】
【0118】
SCIDマウスにおける多発性骨髄腫の実験は、3つの治療パラダイムを支持する薬物動態学的モデルデータを提供する。マウスモデル実験における標準治療は、500μgを1日1回腹腔内投与することである(グループ2参照)。この場合、血中濃度は、Cmax(最高値)で2.9μg/mLとなり、トラフ値で0.002μg/mLとなった。耐容血中濃度及び有効血中濃度の範囲は、10時間後の血中濃度から16時間後の血中濃度までの範囲であった。製剤投与の8時間後に観察された血中濃度である0.29μg/mLよりも高い、または、製剤投与の18時間後に観察された血中濃度である0.013μg/mLよりも低い持続血中濃度は、毒性があるか、または効果がない。所定の時間範囲で、投与量に応じた血中濃度を継続的に維持することは、安全かつ有効であり、ヒトにおいて活性をもたらすと予測される。
【0119】
実施例2:レナリドミド局所製剤の調製
【0120】
レナリドミド製剤は、薬学的に許容される形態のレナリドミドを、1種以上の賦形剤(または増強剤)及び溶媒と混合することによって調製される。それぞれの比率(w/w%)を下記の表に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
実施例3:ポマリドマイド局所製剤の調製
【0123】
ポマリドミド製剤は、薬学的に許容される形態のポマリドミドを、1種以上の賦形剤(または増強剤)及び溶媒と混合することによって調製される。それぞれの比率(w/w%)を下記の表に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
実施例4:サリドマイド局所製剤の調製
【0126】
サリドマイド製剤は、薬学的に許容される形態のサリドマイドを、1種以上の賦形剤(または増強剤)及び溶媒と混合することによって調製される。それぞれの比率(w/w%)を下記の表に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
実施例5:経皮パッチの作製
【0129】
パッチは、剥離ライナー上に材料をキャストし、接着剤を硬化させ、接着剤をバッキング層に積層させることによって、ドラッグインアドヒーシブ(drug-in-adhesive)ポリマーブレンドから形成することができる。このようにして作製された積層体は、一定面積のパッチにダイカットされる。
【0130】
【表6】
【0131】
実施例6:レナリドミド25mgを1日1回経口投与したときの血漿中濃度(1)
【0132】
レナリドミドの標準用量である25mgを1日1回経口投与し、7日間投与したときのレナリドミドの推定血中濃度についての薬物動態学的プロファイルを算出した。図3に示すように、経口投与した場合のレナリドミドの血中濃度は、24時間の投与期間において、Cmaxが522μg/L、Cminが5.2μg/Lの範囲であった(OralCpの線)。台形公式を用いて算出した時間濃度曲線(AUC)の面積は、0~24時間の区間で、2609μg/L/hrであった。この投与期間における、算術平均された1時間あたりAUCに関連する血漿中濃度は、108μg/Lであった(平均(X)AUC/hrRLD線)。すなわち、108μg/Lの一定の血中濃度は、経口投与法で得られる経時的な薬物暴露と同じになるが、高いピーク及び低いトラフは存在しなかった。AU目標値を確立する第2の方法は、投与期間の半分が推定値を上回り、投与期間の残りの半分が推定値を下回る、経口投与による血中濃度(μg/L)の推定値を特定することである。この例では、24時間の投与期間の中間点における血中濃度は52μg/L(PO12h値の線)であった。さらに、この例では、目標とされるTDS流束の血中濃度は、有効性が維持されるが毒性は経口投与よりも低いという実験データから決定される。
【0133】
第1の例では、TDS送達のための目標血中濃度は約108μg/Lであり、25mg/日での経口投与レジメンと同じ薬物曝露を提供する。この例では、TDSは、1日の経口AUCと同等の2600μg/L/時のAUCを提供する。
【0134】
第2の例では、TDS送達のための目標血中濃度は、約52μg/Lであり、25mg/日の経口投与レジメンで観察される投与期間の中間点に相当する薬物曝露を提供する。この例では、TDSは、1248μg/L/時のAUCを提供する。
【0135】
第3の例では、TDS送達のための目標血中濃度は、血液学的毒性の存在下で一般的に使用され、かつ有効であると考えられているレナリドミド15mgの隔日の投与量に基づいている。この用量では、レナリドミドの48時間にわたるAUCは、1536μg/L/hrであり、平均血中濃度は32μg/Lであった。投与期間中のTDS血中濃度は、TDSのCp線のピークでの32μg/L血漿中濃度に近似する。
【0136】
実施例7:レナリドミド25mgを1日1回経口投与したときの血漿中濃度(2)
【0137】
多発性骨髄腫の第1選択治療は、一般的に、1日25mgのレナリドミドの経口投与である。この治療レジメンでは、最大血漿中濃度Cmaxは1時間後の約500μg/Lであり、トラフ値は24時間後の約4μg/Lであった。この実施形態では、レナリドミドの697μg/時(10時間)~191μg/時(16時間)の持続投与は、成人の多発性骨髄腫における一次治療に有効かつ安全な範囲を示した(下記の表参照)。血中濃度の目標値は、低値19.1μg/Lから高値69.7μg/Lまでの範囲であった。一実施形態では、血中濃度の目標値は、453μg/Lの持続投与によって得られる45μg/時(12時間)であった。この方法では、レナリドミドの実際の1日用量は、1日1回25mgのパルス投与の場合に比べて56%減少した。また、レナリドミドを1週間にわたって持続投与した場合の総曝露量は、時間濃度曲線下面積(AUC0-168)で測定すると、レナリドミドを1日1回、7日間経口投与した場合に比べて68%低下した。
【0138】
レナリドミド25mgの1日1回の投与と生物学的に同等の用量で、レナリドミドを成人に持続投与したときの血中濃度及び用量範囲
【0139】
【表7】
【0140】
本実施形態のレナリドミドの1週間サイクルの血漿濃度の経時変化を示すグラフを図4に示す。図4は、1日1回25mg経口投与を模倣するレナリドミドのパルス的または持続的な投与の血中濃度を、3つのユニークな持続注入速度と比較したものである。
【0141】
実施例8:レナリドミド10mgを1日1回経口投与したときの血漿中濃度(3)
【0142】
多発性骨髄腫の維持療法では、通常、1日10mgのレナリドミドを経口投与する。この投与レジメンでは、最大血漿中濃度Cmaxは1時間後の約200μg/Lであり、トラフ値は24時間後の約4μg/Lであった。この実施形態では、レナリドミドの279μg/時(10時間)~76μg/時(16時間)の持続投与は、成人の多発性骨髄腫における一次維持療法に有効かつ安全な範囲を示した(下記の表参照)。血中濃度の目標値は、低値7.6μg/Lから高値27.9μg/Lまでの範囲であった。一実施形態では、血中濃度の目標値は、18.1μg/時の持続投与によって得られる181μg/L(12時間)であった。この方法では、レナリドミドの実際の1日用量は、1日1回10mgのパルス投与の場合に比べて57%減少した。また、レナリドミドを1週間にわたって持続投与した場合の総曝露量は、時間濃度曲線下面積(AUC0-168)で測定すると、レナリドミドを1日1回、7日間経口投与した場合に比べて68%低下した。
【0143】
レナリドミド10mgの1日1回の投与と生物学的に同等の用量で、レナリドミドを成人に持続投与したときの血中濃度及び用量範囲
【0144】
【表8】
【0145】
本実施形態のレナリドミドの1週間サイクルの血漿濃度の経時変化を示すグラフを図5に示す。図5は、1日1回10mg経口投与を模倣するレナリドミドのパルス的または持続的な投与の血中濃度を、3つのユニークな持続注入速度と比較したものである。
【0146】
実施例9:レナリドミド5mgを1日1回経口投与したときの血漿中濃度(4)
【0147】
慢性リンパ性白血病(CLL)の治療では、通常、1日5mgのレナリドミドを経口投与する。この投与レジメンでは、最大血漿中濃度Cmaxは1時間後の約100μg/Lであり、トラフ値は24時間後の約6μg/Lであった。この実施形態では、レナリドミドの139μg/時(10時間)~38μg/時(16時間)の持続投与は、成人におけるCLL治療の有効かつ安全な範囲を示した(下記の表参照)。血中濃度の目標値は、低値3.8μg/Lから高値13.9μg/Lまでの範囲であった。一実施形態では、血中濃度の目標値は、9.1μg/時の持続投与によって得られる91μg/L(12時間)であった。この方法では、レナリドミドの実際の1日用量は、1日1回5mgのパルス投与の場合に比べて58%減少した。また、レナリドミドを1週間にわたって持続投与した場合の総曝露量は、時間濃度曲線下面積(AUC0-168)で測定すると、レナリドミドを1日1回、7日間経口投与した場合に比べて68%低下した。
【0148】
レナリドミド5mgの1日1回の投与と生物学的に同等の用量で、レナリドミドを成人に持続投与したときの血中濃度及び用量範囲
【0149】
【表9】
【0150】
本実施形態のレナリドミドの1週間サイクルの血漿濃度の経時変化を示すグラフを図6に示す。図6は、1日1回5mg経口投与を模倣するレナリドミドのパルス的または持続的な投与の血中濃度を、3つのユニークな持続注入速度と比較したものである。
【0151】
図面に示された特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことに留意されたい。また、一実施形態の特徴は、本明細書に明示的に記載されていなくても、別の実施形態と共に用いてもよいことは、当業者であれば理解できるであろう。また、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にしないように、よく知られている構成要素やプロセスについては、説明は省略されている場合がある。
【0152】
様々な実施形態が開示されているが、その詳細な説明から、本発明のさらなる別の実施形態が当業者には明らかになるであろう。本発明は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な明白な側面において無数の改変が可能である。したがって、図面及び説明は、例示的なものであり、限定的なものではないと見なすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】