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特表2022-529754カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体、複合体の製造方法、及びそれを用いた製品
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  • 特表-カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体、複合体の製造方法、及びそれを用いた製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(54)【発明の名称】カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体、複合体の製造方法、及びそれを用いた製品
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/41 20060101AFI20220617BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220617BHJP
   C07C 59/255 20060101ALI20220617BHJP
   C07C 59/265 20060101ALI20220617BHJP
   C07C 59/245 20060101ALI20220617BHJP
   C07C 229/08 20060101ALI20220617BHJP
   C07C 227/42 20060101ALI20220617BHJP
   C07C 227/16 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 33/00 20060101ALN20220617BHJP
【FI】
C07C51/41
A23L33/10
C07C59/255
C07C59/265
C07C59/245
C07C229/08
C07C227/42
C07C227/16
A61K33/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519651
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 KR2020005343
(87)【国際公開番号】W WO2020218834
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0047830
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0025022
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521143402
【氏名又は名称】ユン ジョンオ
(71)【出願人】
【識別番号】521143413
【氏名又は名称】コリア ニュー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジョンオ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4B018MD02
4B018MD04
4B018MD05
4B018MD10
4B018MD19
4B018ME10
4B018ME14
4B018MF03
4B018MF10
4C086HA07
4C086MA01
4C086NA11
4C086ZA16
4C086ZA45
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB15
4C086ZC52
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB10
4H006AD15
4H006AD33
4H006BS70
4H006BU32
4H006NB16
(57)【要約】
本発明は、ケイ素のイオン化に関連する技術であって、トリカルボン酸又はジカルボン酸を用いて、水溶性ケイ酸塩でケイ素を有機化してイオン化する技術に関する。この技術によって、電気化学分野だけでなく、飲み水、飲料を含む食料品及び医薬品を始めとする様々な分野に、有機化されたケイ素イオン複合体を含む製品を製造生産して供給することができる。特に、自然界でイオンとして存在しないケイ素を有機化して供給することにより、ケイ素ミネラルの不足による様々な病気を治療及び予防することができるものと期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法であって、
(1)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の中から選択される一つ以上のカルボン酸を溶解してカルボン酸水溶液を製造するステップと、
(2)製造されたカルボン酸水溶液のpHを1.0~13.0の範囲内で酸性又は塩基性に調整するステップと、
(3)pHが調整されたカルボン酸水溶液に水溶性ケイ酸塩化合物を溶解するステップと、
(4)選択的に陽イオンを添加するステップと、によって製造することを特徴とする、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法。
【請求項2】
前記(1)ステップで、前記ジカルボン酸がアミノ酸であることを特徴とする、請求項1に記載のカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法。
【請求項3】
前記(2)ステップで、前記酸性又は塩基性にpHを1.0~13.0の範囲内で調整することは、カルボン酸(Carboxylic acid)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)及びアミノ酸(amino acid)の中から選択して添加することにより行われることを特徴とする、請求項1に記載のカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法。
【請求項4】
前記(3)ステップで、前記水溶性ケイ酸塩化合物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びケイ素を含む水溶性ケイ酸塩であるケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、及び水溶性ケイ酸塩の製造過程でミネラルをさらに含んで製造された水溶性ケイ酸塩複合物質のうちの一つ以上を選択して溶解することを特徴とする、請求項1に記載のカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性ケイ酸塩の製造過程でミネラルをさらに含んで製造された水溶性ケイ酸塩複合物質は、水溶性ケイ酸塩の製造過程で選択的に添加された炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、三リン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、天日塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化鉄及び酸化マンガンの中から選択された一つ以上を含んで製造された水溶性ケイ酸塩複合物質であることを特徴とする、請求項4に記載のカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法。
【請求項6】
前記(4)ステップで、前記選択的に添加される陽イオンは、マグネシウム、カリウム、鉄、マンガン、ナトリウム、亜鉛、硫黄、カルシウム、リン、チタン及びジルコニウムの中から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載のカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法。
【請求項7】
前記選択的に添加される陽イオンは、当該陽イオンを含む物質をジカルボン酸又はトリカルボン酸水溶液に溶解して添加することを特徴とする、請求項6に記載のカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法。
【請求項8】
(4)ステップの後に、紫外線UV殺菌消毒、高温殺菌消毒、塩素消毒、二酸化ガス消毒、及びオゾン処理のうちの一つ以上の方法で殺菌することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の製造方法で製造された、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体、複合体の製造方法、及びそれを用いた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
人体や食品に含まれている元素のうち、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)を除く元素の総称を、無機質又はミネラル(mineral)という。以前は、灰分とも呼ばれた。人体に含まれている元素のうち、96%程度が上記の4元素であり、無機質は全体の4%にしかならない。その中でも、比較的に量が多いものは、カルシウム(Ca)、リン(P)、カリウム(K)、硫黄(S)、ナトリウム(Na)、塩素(Cl)、マグネシウム(Mg)であり、その他の微量成分として、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ヨウ素(I)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、セレン(Se)、クロム(Cr)、フッ素(F)、ホウ素(B)、ヒ素(As)、錫(Sn)、ケイ素(Si)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などがある。
【0003】
つまり、ヒトの人体に含まれている元素のうち、96%程度が酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)からなる有機物であり、無機質は全体の約4%にしかならず、この4%をミネラル(mineral)と呼ぶ。
【0004】
本発明は、ミネラルの中でもケイ素に関連するものである。
【0005】
ケイ素は、人体に必要なミネラルの一種であり、物忘れ、忍耐力の欠如、骨粗しょう症、老化現象、新陳代謝の活性化、細胞の老化防止、及び治療に一定の役割を果たすことが知られているが、完全に機能がすべて解明されてはいない。
【0006】
ただし、毒性がなく、最近の報道によると、ケイ素が認知症患者の認知機能低下の抑制に効果を示すことが英国の大学で研究されて報道された。
【0007】
ミネラルを簡単に表現すると、鉱石の状態で存在するミネラルは無機物であり、地球上に存在するミネラルの種類は約70種類以上に達する。
【0008】
このような無機ミネラルなどが農業によって植物に吸収されてアミノ酸と結合された状態になり、この状態のミネラルは有機物である。ヒトが服用するミネラルは、食べ物に吸収されて存在する有機ミネラルがほとんどであった。
【0009】
例えば、セレンなどのミネラルは、無機ミネラル状態で摂取すると、吸収されないだけでなく、蓄積されて副作用がありうる。よって、正常な吸収のために、無機状態のセレンをアミノ酸と結合させ、有機状態に変化させて服用しなければならない。しかし、すべてのミネラルが必ずしもそうである必要はない。
【0010】
珪石の使用もそうであって、鉱石状態の珪石を水溶性ケイ素に作り、水溶性ケイ素を水に溶解してそれを飲用する形態で使用している。
【0011】
このような水溶性ケイ素は、NaSiO、NaSiO・5HO、NaSiO・9HO、NaSiO・10HOの形態で水に溶解できるように作られる。場合によっては、リン(P)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)などのミネラルとして使用できる元素を含む化合物を添加して1,500℃乃至2,000℃の温度で純度の高い二酸化ケイ素と炭酸ナトリウムを主原料とし、高温反応後に凝固させて粉末状に作られる。
【0012】
つまり、珪石を植物、動物、ヒトのすべてが使用可能な消化吸収体として使用することは、(1)鉱物である高純度のケイ素酸化物を提供するステップ、(2)提供されたケイ素酸化物を炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムと高温で合成反応させて水溶性ケイ素化合物に製造するステップ、及び(3)製造された水溶性ケイ素化合物を溶解するステップによって達成されてきた。しかし、水と反応しながらイオン状態を持続的に維持することができず、コロイド又はコロイダル状を呈する。
【0013】
このような水溶性ケイ素は、非常に高いアルカリ度を持っており、アルカリで安定した特性がある(より現象を考察すると、アルカリで安定したようであるが、実際には微細サイズのゲル状を形成し始め、最終的に粒子が互いに凝集して沈殿する。)。
【0014】
しかし、このように作られた水溶性ケイ素、又は水溶性ケイ素を主要材料として含む水溶性ケイ素化合物は、アルカリにのみ安定するだけであり、イオンに維持されることもできず、酸とアルコールには安定しない。
【0015】
つまり、これにより、動物、植物或いはヒトの消化器官での消化吸収を困難にする。よって、胃から消化器官をすべて通過するまで沈殿せず、イオン状態を維持する必要がある。
【0016】
また、このようなケイ素の様々な産業での利用可能性を得るためには、酸とアルカリの両方で水溶液中でのイオンの安定性を高める技術の開発から体系的に研究する必要性が台頭してきた。
【0017】
ミネラルとは、主に鉱石(特に黒雲母)に含まれている鉱物質である。ここには、半導体の製造に必要なゲルマニウムや公知の鉄、マンガンなどの様々な要素があり、これらは、地下水が地中を流れて石や岩盤から少しずつ溶け出て水に含まれ、これが地面に吸収される。
【0018】
このようなミネラルは、生命を持つすべての生命体には必ず必要な要素である。しかし、少しずつ地に染み込む量よりは、大規模の農業などによって、植物に吸収されてなくなる量が多くなるので、現在、地球上のすべての土地は、ミネラル成分がほぼ枯渇してしまったといっても過言ではない。
【0019】
このようなミネラル成分が土壌に存在しない場合、幾ら他の種類の肥料を豊富に与えても、植物は、栄養分を十分に吸収することができず、根が弱く、生長が遅く、収穫も減る。
【0020】
化学農法によって土壌のミネラルサイクルの崩壊が深刻である。土壌のミネラルサイクルは、堆肥や家畜の糞尿などの有機質肥料によって維持されるのである。このようにミネラルサイクルが遮断された土壌で生産された農産物には、ミネラルが欠乏するしかない。
【0021】
このような農産物を食べるしかない現代人の体のミネラルサイクルも崩壊するしかない。日増しに激増している生活習慣病と現代人の半分健康状態の最大の原因は、まさにこのミネラルの欠乏にあるといえる。
【0022】
世界的に有名な健康学者であるブラッグ、ウォーカー、ベニク博士などの警告によれば、ミネラルは、必ず食べ物(動物、植物)から吸収すべきであり、もし、水中にある無機ミネラルを吸収する場合や、自然から採取したミネラル原液を水に希釈して服用する場合には、人体の中枢機関を害するうえ、各種病気の原因になる。
【0023】
現在、医薬品に含まれているミネラルは、無機物が多い。もちろん、必要な分だけのミネラル摂取を目的としたものであり、人体に有害である程度ではない。人体に吸収されたミネラルは、有機物であれ無機物であれ、一時的にイオン化されてから必要な状態の有機物に再結合され、体内の必要な部分で酵素の役割を果たすか或いは組織に沈着する。つまり、少なくとも人体がミネラルを消化(吸収)するためにはイオン化されるべきであることが望ましい。ミネラルの特性のため、吸収過程で有機物の吸収力が良い場合はある。
【0024】
したがって、無機物であっても、ミネラルを有機化、イオン化する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで、本発明の目的は、水溶性ケイ素化合物を用いて、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体を提供することにある。
【0026】
本発明の他の目的は、水溶性ケイ素化合物を有機化して動物、ヒト及び植物の生長などに使用することができる、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造技術を提供することにある。
【0027】
本発明のまた他の目的は、水素イオン(pH)の変化に安定した、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造において、チタン、ジルコニウム、及びこれを含む様々なミネラルの添加方法を提供することにある。
【0028】
本発明のまた他の目的は、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造技術を用いて製造される、有機化されたケイ素イオン複合体を用いた様々な製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明者は、これまで水溶液中でのチタン及びジルコニウムのイオン安定化のための技術を開発し続けてきている者であって、これ以外の様々な物質のイオン化研究を行っており、2011年から様々なチタン及びジルコニウム関連イオンを用いる特許を出願してきた。
【0030】
一方、本発明の先行技術文献には、ケイ素、ジルコニウムなどのミネラルの摂取、植物又は動物への適用及び飲用のための様々な技術が開示されている。
【0031】
特に、韓国特許出願第10-2017-0034531号(特許文献0015)では、請求項及び内容に、ジルコニウムが添加されたケイ酸塩飲料及びその製造方法について開示している。
【0032】
これに加えて、韓国特許出願第10-2002-0071408号では、二酸化チタン微粒子を含む植物生長促進用液状組成物について開示している。
【0033】
このような動物、植物又はヒトに適用しようとするケイ素、ジルコニウム、チタンの共通点は、無毒性のミネラルであるという点である。
【0034】
ジルコニウムは、生命体内で知られている役割はないが、ヒトには平均的に250mg程度含まれており、各種の食品にも少量含まれている。日常では、一部の製品や水道水の浄化にも使われている(出典:ウィキペディア)。
【0035】
チタンやケイ素の場合は、植物生長促進剤又は植物のための液状肥料として既に使われており、人体内にミネラルとして認定されている。チタンについては、まだ人体内における役割は確認されていないが、人体内に微量に存在していることが明らかになっている。
【0036】
しかし、これらの元素は、互いにそれぞれ異なる特性を持っている。
【0037】
例えば、ジルコニウムは、水溶性ジルコニウム化合物を水に溶解すると、pH4.5よりも低い水素イオン濃度で安定した様子を示す傾向があり、アルカリでは沈殿する傾向がある。低いpHでは、特別な添加剤なしにイオンを維持する傾向があるが、pHが上がり始めると急激に不安定になり、アルカリではすべて沈殿してしまう。
【0038】
また、チタンは、四塩化チタンや硫酸チタンなどの水溶性チタン化合物を水に添加すると、極めて短い時間(例えば、1秒より短い時間)の間に水と反応して沈殿物を作り出すので、水中にイオンとして存在することが非常に難しい。このチタンは、アルカリか酸かに関係なく、水と反応する速度が非常に速い。もちろん、イオンとして存在すると、アルカリよりは酸性に安定した物質である。
【0039】
また、水溶性ケイ酸塩であるケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウムは、水に溶解するとアルカリを呈するが、溶解する量に応じて、通常、pHは10.0乃至13.0である。この物質は、水に溶解して水溶液になるが、時間が経てば経つほど、水と反応して重さと体積を大きくし、低いpHで沈殿するか、長時間放置すると溶解後も吸湿性があって沈殿物を生成する。特にpHの低い酸性であるか、或いはアルコールの場合は溶解しない不溶性を示す。
【0040】
シリカゲルが吸湿性を持つ性質をそのまま示すのである。
【0041】
もう少し考察すると、
韓国特許出願第10-2016-7021929号では、安定化されたポリケイ酸塩について開示している。この発明による安定化されたケイ酸塩組成物は、発汗抑制剤として使用するのに非常に適し、皮膚に容認されるポリケイ酸と同等程度の優れた安定性を有し、アルミニウム塩とは異なり、全身毒性に関する安全性の問題がないという特性を有する。
【0042】
さらに、初期組成物のpH(2.5又は3.0乃至5.0)、及びゲル形成が起こるpH、すなわちpH6は、生理学的に許容可能な条件、しかも、ゲル形成反応は短時間内、典型的に5分~30分の間に起こる。組成物のpH移動によって生産されたゲルは、無臭及び無色である。よって、皮膚又は衣類に、目立つ汚れを残さないことに関する特許である。
【0043】
上記の発明は、次のステップを含む、安定化されたポリケイ酸を生産する方法を提供する。
(a)pH≧9.5を有するアルカリケイ酸塩溶液を製造するステップ、
(b)選択的にアルカリケイ酸塩溶液に成長遅延剤を添加するステップ、
(c)酸の添加によってpHを≦4.0に下げて、ポリケイ酸を含む組成物を形成するステップ、
(d)選択的に多価陽イオンを添加するステップ、
(e)塩基を添加して組成物のpHを、生理学的に許容可能なpHに上昇させて、ポリケイ酸を含む安定化された組成物を形成するステップ、
(f)選択的に組成物の安全性を増加させることができる成長遅延剤を添加するステップ、
(g)選択的に組成物の安全性を増加させることができる非水性溶媒を添加するステップ、及び
(h)選択的に発汗抑制組成物又は美容剤形内に導入するステップ。
【0044】
(c)酸の添加によってpHを≦4.0に下げて、ポリケイ酸を含む組成物を形成するステップと、
安定化されたケイ酸塩組成物を生産するステップを含んでおり、この特許によって記述された方法で得ることが可能な、安定化されたケイ酸塩組成物を提供している。
【0045】
つまり、まとめると、韓国特許出願第10-2016-7021929号は、pH2.5乃至pH3.0、pH5.0、生理学的に許容可能な条件であるpH6.0付近でゲル形成反応を起こすことを目的とし、平均20nm又はそれより小さい形状のケイ酸塩のゲル状態を調整することを目的とする。
【0046】
上記の発明を実施するための具体的な内容を参照すると、上記の発明は、ポリケイ酸のナノ粒子状又はコロイド状のケイ酸塩であり、クラスター半径が10Å未満であり、好ましくは、コロイド分散液は100nm未満、1nm~100nmの間、好ましくは20nmの平均直径を有する重合体ケイ酸ナノ粒子を含むことを説明している。
【0047】
このように水溶液中でケイ酸が様々なサイズの粒子を有することは、水にケイ酸塩を溶解する過程で水溶性ケイ酸塩の吸湿性を持つからである。このような吸湿性は、シリカゲルが除湿剤としての役割を果たす理由でもある。
【0048】
つまり、水溶性ケイ酸塩をいかなる措置もなく先に溶解する過程を経ると、ケイ酸塩は、水と反応してゲル化し始め、一度ゲル化した状態では水溶液内で再びイオン化されない。
【0049】
一方、韓国特許出願第10-2016-7024827号(特許文献35)の安定化された重合体シリケート組成物に関連する物質及び方法を用途の観点から考察すると、本発明と類似した用途の発明であることが分かる。
【0050】
特に当該発明の明細書[0056]を参照すると、本発明で使用されるカルボン酸を使用していることが分かる。また、[0058]では、エタノールで重合体シリケート組成物の吸湿性をコントロールする安定化剤の役割を期待することもある。
【0051】
この発明は、平均直径20nm以下の重合体ケイ酸及びナノシリケート粒子を含む、安定化された重合体シリケート組成物を製造することを目的としており、ここで安定化されたというのは、その粒子の平均直径とサイズが持続的にさらに大きくならずに維持される形態を意味する。これは、ある観点からは特許文献34と類似する。
【0052】
当該発明は、(a)可溶性シリケートの水溶液を9.5以上のpHで提供するステップ、
(b)前記シリケート溶液のpHを下げてシリケートの重合を引き起こして重合体ケイ酸及びナノシリケート粒子を形成するステップ、並びに
(c)ステップ(a)及び/又は(b)と同時又は順次に、ポリアルキレングリコール及び/又は糖を含む安定化剤を前記シリケート溶液に添加して、安定化剤が縮合されたシリケート形成を抑制する、安定化されたシリケート組成物を製造することを説明している。
【0053】
つまり、上記の発明は、重合を引き起こしてケイ酸及びナノシリケート粒子を形成し、その形成された粒子のサイズを安定化させる目的で安定化剤を使用し、その安定化剤中のカルボン酸を使用することができるということを[0056]で説明している。
【0054】
当該発明は、発明者らが最初からケイ素をイオンに作る目的を持つものでもなく、発明の際にケイ素をイオン化することについての知識がなかったものとみられる。
【0055】
上記(特許文献35)の発明者らは、[0068]で安定化された重合体シリケート組成物は、薬学又は栄養組成物として使用するためのものであることを主張している。
【0056】
しかし、栄養組成物として例を挙げると、ケイ素はミネラルであるが、ミネラルをヒト又は動物が摂取する最も安全な方法はイオンの形で摂取する方法であることを、当該分野における通常の技術者がよく知っている。
【0057】
特に、ミネラルを摂取する方法では、無機態ミネラルと有機態(キレート態)ミネラルを区分して、たとえイオンであっても、無機態ミネラルの摂取がヒトなどに有害であるおそれがあるという事実は、多様な媒体を介して誰でも容易に接することができる資料に該当する。インターネットサーチだけでも、無機態ミネラルを容易に接することができる。
【0058】
キレート(Chelate)とは?
キレートという単語は、ニッパーでモノをしっかりと把持することができる形状を化学結合に引用した単語である。
【0059】
ミネラルは、鉱物の一種であって、鉱石から抽出するので、鉱物質又は無機物とも呼ばれる。動物用飼料などに添加するミネラルも、鉱石から抽出されたものであって、これを無機態ミネラルという。しかし、動植物の体内では、ミネラルがこれとは異なる形態で存在するが、無機態ミネラルを動植物が摂取して体内で有機物とキレート結合したものであって、これをキレート態ミネラルという。
【0060】
このような状況で、ケイ素は、飲用が不可能なフッ酸(HF)を使用する場合を除いては、無機態ミネラルを作ることができない物質的特性を持っているので、その間イオンとして使用する方法が完全に排除されていた。つまり、無機態ミネラルも、人体の中に入ると、胃酸の中で溶解してイオンとして存在して消化吸収が可能であり、有機態ミネラルは、より安全な方法での摂取方法を保証するといえる。
【0061】
しかし、ケイ素は、水に接すると、水分を吸収して体積と重量を増やす高分子物質である重合体シリケート粒子となるため、この吸湿性反応を中断させてイオン状態を維持することが当該分野の難題であった。
【0062】
したがって、自然界の水の中に存在する極微量のSiOは、人体の健康上、大きな問題がない可能性があるが、高分子物質であるシリケート重合体粒子が人体に入って栄養組成物の役割を果たすというのは、発明者の主張であり、これまでミネラルを研究してきた開発者としては理解することが難しいのが事実であり得る。
【0063】
アミノ酸とキレートされたミネラルは、自然状態で存在する各種形態のミネラルよりも3~4倍の高い吸収利用率を示している。このようにキレート態ミネラルの吸収利用率が高い理由は、消化吸収メカニズムが違うからであるが、家畜が無機態ミネラルを摂取したときは、イオン化された急速イオンと、腸粘膜に存在する内在性タンパク質(integral protein)がキレート結合をしてから、これらがさらに分離され、担体タンパク質(Carrier protein)とキレート結合される複雑なイオン吸収過程を経なければならないのに対し、キレートミネラルは、このような複雑な過程を経ずにアミノ酸とジペプチド(dipeptide)が吸収される経路に沿って腸粘膜細胞に直ちに吸収される活性吸収方法で吸収されるからである。
【0064】
また、無機態ミネラルは、胃内でイオンとして分離されるときに2価の陽イオンを帯びるが、腸内に存在する陰イオンを帯びるリン酸、シュウ酸(oxalic acid)、フィチン酸(phytic acid)、繊維素などと結合してフッ素化物質になるので、吸収利用率が著しく低くなるのである。
【0065】
しかし、(特許文献35)の発明は、ケイ素を対象とする特許であり、高分子物質であるシリケート重合体は、動物又はヒトに関係なく、消化器官である胃内でイオンとして分離されない。よって、栄養組成物として使用するというのは、発明者らが、4価イオンであるケイ素が高分子シリケート組成物になったとき、胃酸溶液内でイオンとして分離されないという事実を全く知らずに開発したものか、或いは主張するものと思われる。
【0066】
したがって、無機態ミネラルは、胃でイオンとして分離されるため、やむを得ず必要な場合に医学的に使用されることも、動物の飼料に添加されることもあるが、高分子物質をそのような用途に使用するというのは、極微量であっても、ヒト又は動物にどんな影響を及ぼすか分からず、ミネラルを摂取する方法としては適さない。
【0067】
よって、少量でも高分子物質を生命体が飲用することについての資料では、澱粉、セルロースなどの天然高分子物質を除いては極めて異例な主張といえる。
【0068】
本発明の発明者は、従来のチタンとジルコニウムを有機化してイオンとして存在する過程でトリカルボン酸又はジカルボン酸を先ず溶解した溶液に、水溶性チタン化合物である四塩化チタンと硫酸チタンを溶解して、有機化されたチタンイオン状態を維持し、水溶性ジルコニウム化合物であるオキシ塩化ジルコニウムと硫酸ジルコニウムも同様の方法で溶解して、有機化されたジルコニウムイオン状態を維持する技術に成功したことがある。
【0069】
それは、金属イオンをもって様々な合金及び単一金属メッキを介して有機イオン状態で水溶液中に存在しているという事実を実験例及び実施例によって証明しており、特許として登録されている。特にキレート方式で金属を水溶液中でイオンとして存在するようにしても、電気化学的に利用が可能であるという点を証明したのである。
【0070】
つまり、電気メッキ方法で電気によって金属の酸化と還元過程をすべて示すことにより、金属イオンの挙動を介してチタンとジルコニウムがカルボン酸と結合して、有機化されたイオン状態で存在していることを確実に証明したのである。
【0071】
この過程でカルボン酸として他の種類のカルボン酸をさらに添加して、単一のカルボン酸を使用した場合に比べて、有機化されたイオンの安定状態をさらに改善することができることを実験によって確認することができた。
【0072】
[実験例1]タングステンイオンの安定化実験1
【0073】
本実験例1と実験例2は、水溶性ケイ酸塩と同様に、アルカリで安定した特性を持つタングステンのイオン安定化実験によってケイ酸塩の水溶液中でのイオン挙動を調べるために実施したものである。
【0074】
タングステン酸ソーダ18gとトリカルボン酸の1種類であるクエン酸18gとを60℃の水100mlに溶解した。
【0075】
溶解時に透明で綺麗に溶解したが、放置実験における48時間経過過程でスポンジ状の沈殿物を作り出し始めるが、タングステンイオンは凝集して沈殿し、再溶解が非常に難しい状態になった(前記沈殿物は、水溶液で分離してアンモニアに反応させて再溶解を行うことができる。しかし、実際、ケイ酸塩であった場合、再溶解は不可能である。)。
【0076】
ケイ酸塩の溶解状態を仮定してアルカリに安定したタングステンイオンでpH3.0状態での安定な状態を確認したが、トリカルボン酸でも完全に安定していないことを確認することができた。トリカルボン酸の量が不足したこともある。
【0077】
このように、物質のイオン化にはさまざまな変数が作用する。
【0078】
ところが、本発明者が調べたところによると、水溶性ケイ酸塩は、まるでアルカリに安定したように見えるが、実際にはアルカリでも安定したのではなく、水との反応が遅くなるのに過ぎず、金属の場合は、タングステンと同様に、アルカリで安定したように類似のイオン挙動を示すだけである。実際には、イオンではなく、コロイド又はコロイダル状に存在するが、肉眼では区分することができないほど透明であって、まるでイオンのように見えるだけである。このようなことは、高純度のエタノール反応試験によってイオンであるか否かを容易に確認することができる。高純度のエタノールに添加すると、コロイド又はコロイダル状のケイ酸塩水溶液は、透明な状態で自分の粒子の様子がすべてぼやけて見えるように示す。
【0079】
ケイ酸塩の実際の様子は、チタンと同様に、水と接するとすぐに水と反応し始め、吸熱反応と吸湿性の性質を示し、水分子を吸収して体積と質量を膨張させ、一度膨張した状態では再び当該溶液内でpHの変化などの方法によっては元の状態であるイオン状態に復帰しない。
【0080】
このような当該溶液内で沈殿した物質が再び元の状態であるイオン状態に復帰しない特性は、金属の中ではジルコニウムとチタンが類似の性質を持っているが、水中でイオン状態が壊れて一度に沈殿すると、フッ素などの猛毒性物質を使用しない限り、再び当該溶液内でpH調整などの方法ではイオン状態に回復しない。先立って実施した実験例でのタングステンは、アンモニアで沈殿物を溶解して再びイオン状態に作ることができたが、チタンとジルコニウムは不可能である。
【0081】
結局、沈殿物を濾過によって除去するしかない。
【0082】
水溶性ケイ酸塩も、水溶液中でコロイド又はコロイダル状に存在する状態では再びイオン状態に回復させることができない。一度沈殿したチタンが含水酸化チタンになったので溶解が不可能であるのと同様の理由である。
【0083】
つまり、水溶性ケイ酸塩は、タングステンのようにアルカリに安定した金属と同様に、アルカリでは外見上安定した様子を示すようであるが、実際には、水分との吸湿性が発現される速度がやや遅くなっただけであり、チタンとジルコニウムのように一度イオン状態が壊れると、水溶液中でコロイド又はコロイダル状に存在しながら、遅い速度で重合反応を起こし続けて存在するようになり、再びイオン状態に戻ることができないという特徴がある。
【0084】
本発明者がこれまでチタンやジルコニウムを水溶液中でイオン状態に維持することができた方法は、ジカルボン酸やトリカルボン酸を先ず溶解した水溶液を作った後、当該水溶液中に水溶性チタン化合物や水溶性ジルコニウム化合物を溶解して瞬間的にイオン状態になるときにカルボン酸と金属イオンとを結合する方式で金属イオンを有機化する方法を使用したからであった。このためには、必ずカルボン酸を先に溶解しなければならなかった。
【0085】
水溶性ケイ酸塩も、先ずチタニウムやジルコニウムのようにジカルボン酸又はトリカルボン酸を用いてカルボン酸水溶液を作り、水溶性チタン化合物や水溶性ジルコニウム化合物をカルボン酸水溶液で溶解して、沈殿する前に、カルボン酸と金属イオンとが複合体を形成するようにしたように、水溶性ケイ酸塩をカルボン酸水溶液で溶解して水溶液中でイオン状態にて溶解する過程でカルボン酸と結合する方式によって、水溶性ケイ酸塩を有機化してイオンとして存在するようにすることができることを見出し、本発明に至った。
【0086】
このようなカルボン酸を水溶性ケイ酸塩よりも先に溶解する過程は、イオン状態よりも大きいコロイド又はコロイダル状になる前に、カルボン酸と結合してイオン状態を維持することが技術の核心である。
【0087】
[実験例2]タングステンイオンの安定化実験2
タングステン酸ソーダ18g及びトリカルボン酸の一種である酒石酸18gにクエン酸9g及び純水を添加して100mlの溶液となるように溶解した。
【0088】
溶解時に透明で綺麗に溶解し、放置実験48時間経過後も透明に安定化された。
【0089】
当該溶液をアンモニアと硫酸でpH≦1.0乃至pH≦11.0の範囲に数回調整したが、安定した状態を維持した。
【0090】
この実験を介して、カルボン酸であっても、互いに異なる組み合わせが物質イオンを有機化し、pHを安定化させるのに役立つことが分かる。特にカルボキシ基が多いほど、水溶液中での物質イオンの安定化に役立つ。
【0091】
つまり、トリカルボン酸とトリカルボン酸の組み合わせ、又はジカルボン酸をさらに含むトリカルボン酸の組み合わせで物質イオンを水溶液中でさらに安定化させることができる。すなわち、イオンの安定化のためには、ジカルボン酸よりはトリカルボン酸がさらに好ましい。
【0092】
例えば、リンゴ酸-クエン酸、グリシン-リンゴ酸、グリシン-クエン酸-リンゴ酸、酒石酸-グリシン、酒石酸-リンゴ酸、酒石酸-クエン酸-グリシン、酒石酸-リンゴ酸-グリシン、酒石酸-クエン酸の組み合わせによって物質イオンを水溶液中でもう少し安定化させることができる。
【0093】
つまり、水溶性ケイ素化合物、水溶性チタン化合物、水溶性ジルコニウム化合物は、グリシン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸などのジカルボン酸とトリカルボン酸との組み合わせによって、有機酸との結合を経て有機化され、イオンとして安定化され得る。単一の有機酸を使用する場合、ジカルボン酸よりはトリカルボン酸を使用することがさらに好ましい。
【0094】
また、pH1.0以下から13.0に至るまで、自由に調整が可能である。
【0095】
このような変化は、いずれもヒト、動物、植物などに有害でない摂取が可能な材料を用いて行われる。
【0096】
この過程を経て、ケイ素イオンは、有機化され、水溶液中にイオンとして存在することができる。
【0097】
本発明は、ケイ素の有機化においてもチタンとジルコニウムほどの有機化順序が非常に重要であるという事実を、従来のチタンとジルコニウムを有機化してイオン状態に維持させることほど、順序が非常に重要であることを見出し、本発明に至った。
【0098】
水溶性ケイ素化合物は、水に溶かすと溶解するが、溶解し次第、水と反応するため、重量と質量が一定部分増加し始め、これにより、pHに応じて、沈殿量が増え、高いアルカリでは沈殿する様子が目に観察されない時間が長くなるが、低いpHの場合には、まるで完全に水に溶けない不溶性であるかのように沈殿する様子を直ちに確認することができる。このようにゲル化した状態は、再び当該水溶液中でさらにイオン化されない。
【0099】
例えば、ヒトの胃酸に該当するpH1.5又はそれ以下では、水溶性ケイ酸塩は、既にイオンではない状態で消化過程にて分解されてイオンとして存在することが不可能であり、ほとんどが沈殿する。この現象のため、アルカリ状態で完全に溶解させた水溶性ケイ酸塩は、pHを下げるとゲル化してシリカゲル状態に変わる。したがって、いくら水溶性ケイ酸塩をアルカリで完全に溶解したとしても、動物又はヒトの胃から消化器官内でイオン状態に維持できるという確信を持つことができなくなる。
【0100】
しかし、水溶性ケイ酸塩が水に溶解する過程で最優先的にジカルボン酸又はトリカルボン酸が溶解した状態で複合体を形成した場合、もはや吸湿性を発揮せず、イオン状態で安定することができることを見出し、本発明に至った。
【0101】
つまり、水溶性ケイ酸塩が水に溶解する過程で直ちに(イオンとして存在する短い時間で)カルボン酸と反応すると、もはや吸湿性の性質を持たないようにすることができる。これは、水溶性ケイ酸塩が水と反応してコロイド状に分散しているか、或いはコロイダル状に存在するのではなく、カルボン酸と複合体をなして最も小さいイオン状態で存在することを意味する。
【0102】
このように物質を有機化してイオン状態にすることができるということを、本発明者はこれまで確認してきた。チタンとジルコニウムにおいても、このような方法で有機化してイオン状態を維持させ、これがイオン状態であることを証明するために、電気メッキ方式で金属の酸化と還元過程を研究して、発明特許として証明したものである。
【0103】
ただし、ケイ素の場合は、金属ではないので、そのような過程で証明することはできなかったが、従来のチタンとジルコニウムの過程を経てカルボン酸との複合体を形成してイオン状態に維持することができることを間接的に説明することができる。
【0104】
(用語の定義)
本発明で使用する用語「ケイ素イオン複合体」について説明する。
【0105】
ケイ素をイオンとして存在するようにするためには、最小限の必須成分が必要である。
【0106】
また、それらの必須成分は、次のようにケイ素が持つ様々な特性のためである。
【0107】
第一、ケイ素は、フッ酸に溶解するが、フッ酸は、猛毒性物質であって、産業上利用が困難で危険である。これは、チタンとジルコニウムも同様である。また、チタンは、フッ酸以外にも、沸騰する硫酸で極微量の溶解が可能であるが、ケイ素は、沸騰する硫酸に溶解するという科学的証拠を、この技術の発明者は本発明の時点ですら見つけることができなかった。
【0108】
第二、ケイ素は、炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムなどとの合成を介して、ナトリウム-ケイ素の合成物質であるケイ酸ナトリウムになると、水に溶解可能な状態となる(しかし、同じ4価の金属であるが、チタンとジルコニウムは、ナトリウムと合成させても、水に溶解しない。つまり、同じ4価の金属であっても、各物質の特性が互いに異なる。)。
【0109】
第三、ケイ素を加工してケイ酸ナトリウムに作ったとしても、水に溶解する瞬間、水中にイオンとして存在する時間は非常に短く、ケイ素自体が透明に近いので、その時間を測定することは非常に難しい。しかし、チタンやジルコニウムも、水と接すると、硫酸チタン、硫酸ジルコニウムの場合でも、約1秒未満の非常に短い時間でのみイオンとして存在し、再び沈殿する様子を示す。ケイ素は、沈殿する様子を示さないが、水と反応する瞬間、短い時間内にコロイド又はコロイダル状に変わって水分を徐々に吸収しながら状態を維持してから互いに凝集して、時間が経過するにつれて不溶性沈殿物として沈む(この状態が高分子としてのシリケート重合体状態であるといえる。)。
【0110】
このようなケイ素の特性によれば、ヒトが触れることができ、食べることができる安全なイオンとしてのケイ素イオンを得る過程でケイ素を水に溶解し、ケイ酸ナトリウムを作るために、炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムなどの「ナトリウム」が添加され、合成され、このように作られたケイ酸ナトリウムを水に溶解する過程でイオンとして存在するようにするために、トリカルボン酸、ジカルボン酸の中から選択される一つ以上が必ずしも優先的に水に溶解しなければならないので、「ナトリウム」、「ケイ素」、「カルボン酸」、「水」が必須成分として入ればイオンとして存在することができる。このため、やむを得ず選択された用語が「ケイ素イオン複合体」である。例えば、塩化ナトリウムのように有機物がなくても水中にイオンとして存在しない物質の特性のためである。
【0111】
これはカリウム、カルシウムの場合も同様であって、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウムを用いても同じ結果を示す。
【0112】
ジカルボン酸とトリカルボン酸の中から選択される有機酸を組み合わせて先ずカルボン酸水溶液を製造し、製造されたカルボン酸水溶液に水溶性ケイ酸塩を溶解することにより、ケイ素が水と接触するか、或いは低いpHに接触しても、ケイ素が有機酸と結合された有機物イオンとして存在することになる。
【0113】
これは、胃酸溶液と類似したpH1.5からpH13.0までで安定した状態を維持するかの実験によって確認することができる。pHの変化にさらに安定するように、pH≦1.0でもゲル化したり沈殿したりせず、イオン状態を維持するようにすることができる。
【0114】
これは非常に重要である。
【0115】
一般に、シリコンは、人々が食べられない物として認識し易いが、実際地殻の表面はシリコンが大量に存在する環境であり、植物などから、ヒトはシリコンを摂取してきた。
【0116】
これまで知られているところによれば、ケイ素が人体中に不足している欠乏症が現れると、足関節と膝関節の形成不良、関節軟骨中のグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)含有量の減少、骨粗しょう症、結合組織の弾性欠如、皮膚老化、髪及び爪の損傷などを生じさせるものと知られている。
【0117】
また、このようなケイ素の人体の中での生理作用は、次のとおりに知られている。
【0118】
(1)コラーゲン(collagen)、エラスチン(elastin)、ムコ多糖体(mucopolysaccharides)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)などの炭素骨格に結合され、架橋形成に関与する。
【0119】
(2)結合組織の構築や弾性に関与する。
【0120】
(3)骨の石灰化を促進する(骨の石灰化が旺盛な部位にケイ素の含有量が多い。)。
【0121】
(4)コラーゲン(callagen)の生成に必須的であり、骨形成初期過程でカルシウムの吸収を促進する(骨粗しょう症の予防)。
【0122】
(5)爪、髪、肌を弾力的かつ潤沢にする。
【0123】
(6)細動脈の弾性力を維持する(心血管系疾患の予防)。
【0124】
(7)アルミニウムの体内蓄積を防止する(アルツハイマー病の予防)。
【0125】
(8)骨と軟骨を含む他の結合組織の形成において機能する酵素であるプロリルヒドロキシラーゼの正しい機能の維持に必要である。
【0126】
また、臨床的な効能としては、骨粗しょう症、骨関節炎、関節リウマチ、皮膚健康及び皮膚老化、動脈硬化症、爪・髪の健康、アルツハイマー病などの予防・治療・維持を助けることが知られている。
【0127】
明確ではないが、動脈硬化性疾患が多い文明国では、精製食品を摂取する場合が多いため、ケイ素の摂取量が少なく且つケイ素の含有量が多い繊維質食品を摂取するヒトは、血清コレステロール(cholesterol)が低く、動脈硬化度も低いが、一般的に年を取るにつれて大動脈中のケイ素の含有量が低下する。
【0128】
それにも拘らず、ケイ素は、自然界で元素として存在しない。酸化物(silica)として存在し、ヒトは、植物類、特に繊維素が豊富な植物の繊維素を介して、アミノ酸と結合されて存在する元素であるケイ素を摂取することができたのである。
【0129】
ケイ素が最も多い食品の中にはアルファルファ(alfalfa)があり、カルシウム、マグネシウム、カリウム、シリコンなどが非常に豊富であって、消化器潰瘍、胃炎、肝臓疾患、湿疹、痔、喘息、高血圧、貧血、便秘、歯茎の出血、炎症、火傷、がん、浮腫などに活用されることもある。
【0130】
ケイ素の補充は、皮膚表面の真下の真皮と結合組織支持構造の厚さを増加させる。
【0131】
問題は、自然からの繊維質によって摂取することができるケイ素の量が足りなくなることであるが、本発明は、植物の代わりにケイ素を有機化して、イオン化された複合体を提供する。
【0132】
一方、カルボキシ基化合物は、カルボン酸(Carboxylic acid)であり、一般式RCOOHと通称される。
【0133】
有機化合物の種類として、液性はほとんど酸性である。カルボキシ基系の化合物は、ほとんど「~酸」という接尾辞が付く。
【0134】
他の炭化水素とは異なり、大きい規模の化合物が化学的に意味を持つが、代表的なものがアミノ酸、脂肪酸であるといえる。
【0135】
農業で使用する肥料を含む植物生長促進用、動物用、人体医学用、食用、化粧品用など、必要に応じる様々なカルボキシ基化合物との様々な形態の反応によって所望の結果を得ることができる。
【0136】
このようなカルボキシ基化合物のカルボキシ基の水素は、解離して酸性を示すので、カルボン酸という名前が付いた。
【0137】
このようにカルボン酸で区分すれば、カルボキシ基を1つ有するものをモノカルボン酸、カルボキシ基を2つ有するものをジカルボン酸、カルボキシ基を3つ有するものをトリカルボン酸とする。
【0138】
鎖状のモノカルボン酸は、脂肪や油脂の成分として広く分布するので、特に脂肪酸と呼び、脂肪酸は、添加剤としての役割を果たすことができるが、水溶性ケイ酸塩、チタン、ジルコニウムイオンを水溶液中で安定化させることは難しい。
【0139】
したがって、本発明において、水溶性ケイ酸塩化合物を水溶液中で安定化させることができるカルボキシ基化合物は、トリカルボン酸とジカルボン酸の中から選択される一つ以上のカルボン酸を使用することが適切である。さらに好ましくはトリカルボン酸である。
【0140】
よって、一つ以上のトリカルボン酸を用いて水溶性ケイ酸塩化合物を安定化させ、必要に応じて、一つ以上のジカルボン酸又はトリカルボン酸を溶解して製造したカルボン酸水溶液に水溶性ケイ酸塩化合物、水溶性チタン化合物及び水溶性ジルコニウム化合物を溶解するものをさらに含むことができる。
【0141】
この時、ジカルボン酸又はトリカルボン酸がアミノ酸であることを特徴とする。
【0142】
水溶性ケイ酸塩を酸性水溶液に作ろうとするときは、
一つ以上のジカルボン酸又はトリカルボン酸を最優先的に必ず溶解して作られたカルボン酸水溶液に水溶性ケイ酸塩化合物を溶解して、有機化されたケイ素イオン複合体を製造することを特徴とする(低い温度で水溶性ケイ酸塩が水との反応速度を最大限に下げた状態でカルボン酸と複合体を形成するようにする)。
【0143】
また、必要に応じて、添加されるチタン及びジルコニウムを添加する方法で、
一つ以上のジカルボン酸又はトリカルボン酸を溶解して作られたカルボン酸水溶液に水溶性チタン化合物を溶解して製造された、有機化された水溶性チタンイオン水溶液を製造することを特徴として作られたチタンイオン水溶液と、
一つ以上のジカルボン酸又はトリカルボン酸を溶解して作られたカルボン酸水溶液に水溶性ジルコニウム化合物を溶解して、有機化された水溶性ジルコニウムイオン水溶液を製造することを特徴として作られたジルコニウムイオン水溶液を、必要に応じて、有機化された水溶性ケイ酸イオンに添加して製造することを特徴とする。
【0144】
したがって、下記ステップを含む、水溶性ケイ酸塩化合物を用いて、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体を生産する方法である。
【0145】
(1)蒸留水又は飲用が可能な浄水にジカルボン酸又はトリカルボン酸の中から選択される一つ以上のカルボン酸を必ず最優先的に溶解してカルボン酸水溶液を製造するステップ、
(2)製造されたカルボン酸水溶液のpHを必要に応じて酸又はアルカリに調整するステップ、
(3)pHが調整されたカルボン酸水溶液に水溶性ケイ酸塩化合物を溶解するステップ、
(4)選択的に多価イオンを添加するステップ、及び
(5)有機化されたケイ素イオンを製造するステップで構成される。
【0146】
これらのステップのうち、(4)ステップで、有機化されたチタンイオン溶液及び有機化されたジルコニウムイオン溶液を添加するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0147】
これらのステップのうち、(1)ステップ乃至(3)ステップで、必要に応じて、ミネラルとして使用されるイオンをさらに添加することを特徴とする。
【0148】
この時、添加されるイオンは、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、カルシウム(Ca)、リン(P)である。
【発明の効果】
【0149】
本発明によれば、水溶性ケイ酸塩をイオン化して、飲用が可能な状態のケイ素イオン複合体に作ることができ、多様な産業分野に活用することができる。
【0150】
特に、ミネラルが足りない植物、動物、ヒトに対してミネラルの供給源としての役割及び医学、薬学の分野に活用することができ、従来のコロイド又はコロイダル状では消化器官による吸収を期待することが難しかった問題を解決して、有機化したイオン形態にして消化吸収が可能な状態に製造することができることを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0151】
図1】胃酸環境(pH1.5)下で沈殿したケイ酸塩を示す。
図2】酒石酸で製造された、有機化されたケイ素イオン複合体飽和溶液の蒸発による結晶構造図である。
図3】酒石酸で製造された、有機化されたケイ素イオン複合体の飽和溶液内での結晶構造図である。
図4】実施例3の酒石酸で製造された、有機化されたケイ素イオン複合体を金メッキ液に添加してメッキしたアクセサリー製品のメッキ表面を示す。
図5】実施例3の酒石酸で製造された、有機化されたケイ素イオン複合体でステンレスの表面に置換反応を実験した製品(左:置換反応未実施製品、右:置換反応実施表面)を示す。
図6】ステンレスの表面をケイ素イオンで置換した後、表面の撥水現象を確認する実験の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0152】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0153】
本発明によるカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体を説明するために、
1)トリカルボキシ基又はジカルボキシ基を有する有機酸であるクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、
2)アミノ酸の1種であるグリシン
を用いて、水溶性ケイ酸塩の有機化によるイオン化実験を行った。
【0154】
本発明を説明するために使用される水溶性ケイ酸塩は、NaSiO・9HOであるが、これに限定されず、NaSiO、NaSiO・5HO、NaSiO・10HO、及び水溶性ケイ酸塩の製造過程で製造されるミネラルが含まれている水溶性ケイ酸塩複合物質も構わない。分子内に水分子を含んでいる水和物は、不溶性沈殿物を作り出す可能性が一部あるが、低い温度で溶解する場合、特別なトラブルなくイオンとして存在するのに無理がない。一般的に、水溶性ケイ酸塩を製造する過程で、多様なミネラル成分を含む水溶性ケイ酸塩複合物質を作っており、主に使用されるミネラル成分は、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、カルシウム(Ca)、リン(P)である。
【0155】
これらのミネラル成分は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、三リン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、天日塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化マンガンなどの物質を添加して得られる。
【0156】
以下、詳細な実施例によって説明する。
【0157】
[比較例1]メタケイ酸塩の溶解実験
メタケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)をもって溶解実験を行った。
【0158】
進行過程で、
(1)メタケイ酸塩9水和物1gを500mlの純水に添加して溶解した。溶解は、透明に行われた。pHは12.23であった(デジタルpH測定器の測定偏差が存在する。)。
(2)前記溶液のpHを37%塩酸を用いて1.5に下げて状態を点検した。
(3)溶解したケイ酸塩は、凝集してゲル化した。
【0159】
[比較例2]メタケイ酸塩の溶解実験2(胃酸条件)
(1)250mlのビーカーに水150mlを充填し、37%塩酸試薬を用いてpHを人体の胃酸を基準とするために1.5に合わせた後、水を補充して250mlにした。
(2)前記(1)の溶液にメタケイ酸塩9水和物1gを添加した。
(3)ケイ酸塩は、一部解けたものの、溶解せずに沈殿した。
【0160】
前記比較例によって、メタケイ酸塩が胃酸でイオン状態にて単独で存在することができないことを確認することができる(図1)。
【0161】
また、メタケイ酸塩をナノ化するとしても、シリカゲルの形で存在するので、消化吸収されるには無理があることが分かる。
【0162】
また、このように沈殿した物質は、同じ溶液内で再びイオン化することができない。
【0163】
[実施例1]クエン酸を用いるメタケイ酸塩有機イオン複合体の製造実験
メタケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)をもって有機イオン化実験を行った。
【0164】
進行過程で、
(1)500mlのビーカーにクエン酸無水物20gを溶解した。
(2)そして、炭酸ナトリウムを用いてpHをアルカリ8.0に調整した(この調整は、メタケイ酸塩が中性以上のアルカリ状態でpHショックなしに溶解しやすいからであり、pHショックにより生じる不溶性不純物を防止するためである。)
(3)ケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)20gを機械攪拌環境でゆっくり溶解した(溶解過程で吸湿性と吸熱反応が発生した。)
(4)製造された、有機化されたケイ素イオン複合体は、透明な溶液であって安定しており、500mlに20gが十分に溶けてイオン状態を維持した(純粋なケイ素イオンの量に換算すると、約3.954g/Lに相当する。)。
(5)製造された、有機化されたケイ素イオン複合体100mlを分離して250mlのビーカーに移し入れた後、37%塩酸試薬でpH≦1.5以下に下げて安定性を確認した。約20日間確認したにも拘らず、安定した状態を維持した。この実験は、ヒトの胃酸の環境と類似した環境下でイオンとして存在することができるか否かを確認するためのものである。
(6)前記(5)の溶液のpHをアンモニアを用いてさらに13.0に変えてみた。安定性が維持された。
【0165】
カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体を生産製造する工程では、濾過するステップを必要とする。この濾過は、溶解時に発生しうるpHショックによって発生する不純物と物質中の不純物を濾過するためである。沈殿後、上澄み液を使用する沈殿濾過又はフィルタ濾過を行うことができる。
【0166】
また、製造過程で消毒を必要とすることができる。この場合、消毒は、紫外線UV殺菌消毒、高温殺菌消毒、塩素消毒、二酸化ガス消毒及びオゾン処理のうちの一つ以上の方法で殺菌することができる。
【0167】
クエン酸で製造された、有機化されたケイ素イオン複合体は、弱酸性又は弱アルカリ性にpHを調整するために、カルボン酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、アミノ酸を使用することができ、pHの調整範囲は1~13である。
【0168】
この過程によって飲み水、飲料などとして使用できる。しかし、酒石酸を用いた場合よりも安定すると感じられてはいない。
【0169】
[実施例2]リンゴ酸を用いるメタケイ酸塩有機イオン複合体の製造実験
メタケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)をもって有機イオン化実験を行った。
【0170】
進行過程で、
(1)500mlのビーカーにリンゴ酸20gを溶解した。
(2)そして、炭酸ナトリウムを用いてpHをアルカリ8.0に調整した(この調整は、メタケイ酸塩が中性以上のアルカリ状態でpHショックなしに溶解しやすいからであり、pHショックにより生じる不溶性不純物を防止するためである。)
(3)ケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)20gを機械攪拌の下にゆっくりと溶解した(溶解過程で吸湿性と吸熱反応が発生した。)。ケイ酸塩を溶解する温度が高いほど溶解速度が速くなる。有機酸との結合力を高めるためには低い温度でゆっくり溶解することがさらに適すると判断された。
(4)製造された、有機化されたケイ素イオン複合体は、透明な溶液であって安定しており、500mlに20gが十分に溶けてイオン状態を維持した(純粋なケイ素イオンの量に換算すると、約3.954g/Lに相当する。)。
(5)製造された、有機化されたケイ素イオン複合体100mlを分離して250mlのビーカーに移し入れた後、37%塩酸試薬でpH≦1.5以下に下げて安定性を確認した。約20日間確認したにも拘らず、安定した状態を維持した。
(6)前記(5)の溶液のpHをアンモニアを用いてさらに13.0に変えてみた。安定性が維持された。この実施例2も、比較的には酒石酸を用いた場合よりも安定してはいない。
【0171】
[実施例3]酒石酸を用いるメタケイ酸塩有機イオン複合体の製造実験
メタケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)をもって有機イオン化実験を行った。
【0172】
進行過程で、
(1)500mlのビーカーに酒石酸40gを溶解した。
(2)pHを調整するための手順を省略した。
(3)ケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)40gを機械攪拌の下にゆっくりと溶解した。
(4)有機化されたケイ素イオン複合体は、透明な溶液であって安定しており、500mlに40gが十分に溶けてイオン状態を維持した(純粋なケイ素イオンの量に換算すると、約7.908g/Lに相当する。)。酒石酸を用いたとき、なぜこのように多くの量のケイ酸塩を溶解することができるかについては追って追加の研究が必要であると思われる。
(5)有機化されたケイ素イオン複合体100mlを分離して250mlのビーカーに移し入れた後、37%塩酸試薬でpH≦1.5以下に下げて安定性を確認した。約20日間確認したにも拘らず、安定した状態を維持した。
(6)前記(5)の溶液のpHをアンモニアを用いてさらに13.0に変えてみた。安定性が維持された。
(7)酒石酸で製造されたケイ素イオン複合体溶液を常温で飽和溶液に作って、ゲル化有無を確認してみた。シリカゲルが形成されず、針状の新しい構造で沈澱することを確認することができた(図2)。
【0173】
[実施例4]酒石酸を用いるメタケイ酸塩有機イオン複合体の製造実験2
メタケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)をもって有機イオン化実験を行った。
【0174】
本実験の目的は、製造時に飽和溶液を作って溶液内でゲル化現象有無と結晶構造を確認することにある。
【0175】
進行過程で、
(1)500mlのビーカーに酒石酸60gを溶解した(完全に溶解したことを目視で確認した。)。
(2)pHを調整するための手順を省略した。
(3)ケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)60gを機械攪拌してゆっくりと溶解した(溶解過程で吸湿性と吸熱反応が発生した。)。
(4)ケイ酸塩は、完全に溶解してから、飽和溶液内で一部沈殿物を生成した。生成された沈殿物は、溶解していないケイ酸塩形態ではなく、針状構造を持つ形態であった。まるで植物性繊維素からみられるような繊維質を連想させる構造であった。この沈殿物は、再溶解が可能であった(図3)。
【0176】
[実施例5]グリシンを用いるメタケイ酸塩有機イオン複合体の製造実験
メタケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)をもって有機イオン化実験を行った。
(1)500mlのビーカーにグリシン20gを溶解した(完全に溶解したことを目視で確認した。)。
(2)pHを炭酸ナトリウムを用いて8.0に調整した。中性に該当するグリシンの場合、炭酸ナトリウムを少量だけ入れても容易にアルカリにすることができる。
(3)ケイ酸塩9水和物(NaSiO・9HO)20gを機械攪拌の下にゆっくりと溶解した(溶解過程で吸湿性と吸熱反応が発生した。)。
(4)ケイ酸塩は完全に溶解し、pH12.25を示した。pHをクエン酸、リンゴ酸、酒石酸などで下げて弱アルカリ飲用水に製作することができるレベルであった。
【0177】
このようなカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体の製造において、マグネシウム、カリウム、鉄、マンガン、ナトリウム、亜鉛、硫黄、カルシウム、リン、チタン、ジルコニウム陽イオンをさらに添加することができる。この場合、チタン及びジルコニウムは、前述したように、水溶液中でpHの変化に安定した、有機化されたイオンの形で添加することが好ましい。
【0178】
残りのミネラル成分は、水溶液中で容易にイオン化が可能な物質であって、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アスコルビン酸カルシウム(ascorbic acid calcium salt、Ca(C)、炭酸カルシウム(CaCO)、塩化カルシウム(CaCl)、酢酸カルシウムマグネシウム(Acetic acid calcium magnesium salt)、酢酸カルシウム(CCaO)、酢酸マグネシウム(CMgO)、炭酸マグネシウム・水酸化マグネシウム・5水和物[(MgCO・Mg(OH)・5HO]、塩化マグネシウム(MgCl)、クエン酸マグネシウム(Magnesium citrate)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、酢酸カリウム(CHCOOK)、塩化カリウム(KCl)、クエン酸カリウム(Potassium citrate)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、酢酸ナトリウム(CHCOONa)、クエン酸ナトリウム(Sodium citrate)、酸化鉄、塩化鉄、塩化亜鉛、酸化マンガン、リン酸ナトリウム、三リン酸ナトリウムなどの物質を溶解して得ることが可能な陽イオンであり、この他にも様々な水溶性物質によって得ることができる。
【0179】
このような陽イオンも、ジカルボン酸又はトリカルボン酸水溶液に溶解して添加することが好ましく、さらに好ましくは、トリカルボン酸水溶液に溶解して添加する。
【0180】
このように製造された、カルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体は、様々な用途に使用できる。例えば、飲用水の水質基準に適した飲料水、アミノ酸飲料、ミネラル飲料、アミノ酸ミネラル複合飲料、動物及びヒトにケイ素ミネラルを供給するための経口投与用薬学組成物、注射用薬学組成物、製パン、製菓、植物生長促進用肥料、洗浄剤、化粧品、医学用軟膏剤などの様々な用途に使用できる。
【0181】
洗浄剤の場合は、シャンプー、リンス、洗顔水、石鹸、台所用洗剤、洗濯石鹸、歯磨き粉などに、本発明のカルボン酸で有機化されたケイ素イオン複合体を一定部分添加して製造することができ、動物及びヒト用洗浄剤として使用可能である。
【0182】
[実施例6]メッキ実験
一方、実施例3で製造した、酒石酸を用いるケイ素イオン複合体に1Lの水を追加することにより、1Lあたりのケイ酸ナトリウムの濃度を50%下げて電気化学的イオン挙動を調べた。
【0183】
従来のチタンやジルコニウムも、有機化(キレート化)してイオンに作ったが、電気化学的に使用することができたためである。
【0184】
(1)実施例3の溶液に1Lの水を追加して2Lに作った溶液250ml
(2)シアン化金カリウム0.1g
(3)ラウリル硫酸ナトリウム0.01g以下の極微量を添加し、1Lの金メッキ液を製造した。
【0185】
イリジウムコーティングされたチタン電極を陽極として、1.5voltの直流電流を流して金属アクセサリー部品に金メッキを施し、その表面を確認した。金が不足する場合、金を少量ずつ補充しながら色と質感の変化を測定した。
【0186】
この実験は、メッキ厚さ測定器などでは、ケイ素が測定対象ではないので、ケイ素の厚さなどを測定することはできないが、質感や色などで、ケイ素がイオン挙動をしているかを確認するためであった。その結果は図4で確認することができる。
【0187】
金メッキの表面は、薄い青色がかかり、まるでガラス膜コーティングが施されたかのような質感を表現し、金固有の黄色は少し暗かった。
【0188】
電気メッキ液などのメッキ液で使用することができることを確認することができた。この現象は、ほとんどの電気メッキ液でも同様に現れた。したがって、本発明によるケイ素イオン複合体は、電気化学分野であるメッキ分野で金属を還元析出する過程で添加してガラスの質感をさらに得ることができるため、様々な用途に使用できるものと思われる。
【0189】
[実施例7]置換実験
また、本発明によって製造されてイオンとして存在しているケイ素イオン複合体が置換能力を持つかを確認するために、置換実験を行ってみた。
【0190】
この置換実験は、ケイ素が準金属であって他の金属のような置換反応を起こすのか、イオン状態であるので確認する必要性があったためである。
【0191】
置換実験は、実施例3で製造した溶液に水1Lを追加して2Lに作った溶液250mlに様々な金属を沈積しながら実施したので、ステンレスにおいて表面浄化能力とガラス膜コーティングのような質感を示す現象を確認することができた(図5)。日光下に表面を様々な角度から見たところ、ガラス破片のような光の散乱現象を見ることができ、触ってみたところ、若干のガラスの質感を感じることができた。また、当該表面は、水に対して疎水性を有し、水が付いていない(図6)。
【0192】
したがって、本発明は、単にミネラルとしての役割だけでなく、準金属のイオンとしてチタンとジルコニウムの金属を有機化してイオンに作ったにも拘らず、電気化学的に使用することができたのと同様に、電気化学(メッキ)を含む様々な産業分野に使用できるというのは確認した。
【0193】
本明細書で使用された用語は、特定の実施例を説明するためのもので、本発明を制限するためのものではない。本明細書で使用されているように、単数形は、文脈上異なる場合を明確に指摘するのではなければ、複数形を含むことができる。また、本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」及び/又は「含む(comprising)」は、言及した形状、数字、ステップ、動作、部材、要素及び/又はこれらグループの存在を特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素及び/又はグループの存在又は付加を排除するものではない。
【0194】
例えば、本発明で使用する有機酸、アミノ酸或いはカルボン酸の場合、当該有機酸、アミノ酸或いはカルボン酸のみを指し示すのではなく、そのような成分を含むナトリウム化合物或いはカリウム化合物或いはアンモニウム化合物を含むものである。
【0195】
以上、本発明の好適な実施例を例示的に説明したが、本発明の範囲は、このような特定の実施例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範疇内で適切に変更可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】