(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(54)【発明の名称】架橋性ポリマーを含有する配合物
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20220617BHJP
C08G 85/00 20060101ALI20220617BHJP
C08J 3/09 20060101ALI20220617BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220617BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220617BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220617BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220617BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220617BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
H05B33/22 D
C08G85/00
C08J3/09
H01L29/28 100A
H01L29/28 250G
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
H05B33/14 A
H05B33/10
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560976
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2020060366
(87)【国際公開番号】W WO2020212295
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ベアル、ゲーレ
(72)【発明者】
【氏名】レオンハルト、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツェン、シン-ロン
(72)【発明者】
【氏名】ハンブルガー、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ヒボン、パウリーネ
【テーマコード(参考)】
2C056
3K107
4F070
4J031
5F110
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056FD10
3K107AA01
3K107BB01
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5F110GG05
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5F110QQ06
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の架橋性ポリマーと少なくとも1種の有機溶媒とを含む配合物であって、少なくとも1種の架橋性ポリマーが配合物に少なくとも0.5g/Lの濃度で含有され、少なくとも1種の有機溶媒が少なくとも200℃の沸点を有し、少なくとも1種の有機溶媒に対する少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、30g/Lの濃度の架橋性ポリマーが60容量%以下のエタノールを配合物に添加すると沈殿し始めるようなものであることを特徴とする配合物、電子または光電子デバイスの調製のための、これらの配合物の使用、これらの配合物を使用した電子または光電子デバイスを調製するための方法、および電子または光電子デバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の架橋性ポリマーと少なくとも1種の有機溶媒とを含む配合物であって、前記少なくとも1種の架橋性ポリマーが少なくとも0.5g/Lの濃度で前記配合物に含有され、前記少なくとも1種の有機溶媒が少なくとも200℃の沸点を有し、前記少なくとも1種の有機溶媒に対する前記少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、30g/Lの濃度の前記架橋性ポリマーが60容量%以下のエタノールを前記配合物に添加すると沈殿し始めるようなものであることを特徴とする、配合物。
【請求項2】
前記配合物が、1種の有機溶媒を含むことを特徴とする、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記配合物が、1種の架橋性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
前記架橋性ポリマーが、45容量%以下、好ましくは35容量%以下、より好ましくは25容量%以下、最も好ましくは22容量%以下のエタノールを前記配合物に添加すると沈殿し始めることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の配合物。
【請求項5】
前記配合物が、25mPas以下の粘度を有することを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の配合物。
【請求項6】
前記配合物が、15~70mN/mの範囲の表面張力を有することを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の配合物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の溶媒が、1-メチルナフタレン、1-メトキシナフタレン、3-フェノキシトルエン、ヘキサン酸シクロヘキシル、およびイソ吉草酸メンチルから選択されることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の配合物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の架橋性ポリマーが、前記少なくとも1種の有機溶媒に対して0.5g/L以上の溶解度を有することを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の配合物。
【請求項9】
前記配合物中の前記少なくとも1種の架橋性の濃度が、0.5~50g/Lの範囲であることを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載の配合物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の架橋性ポリマーが、1,000~2,000,000g/モルの範囲の分子量M
wを有することを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載の配合物。
【請求項11】
前記架橋性ポリマーが、少なくとも1種の架橋性繰り返し単位を含有することを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載の配合物。
【請求項12】
前記架橋性ポリマー中の前記少なくとも1種の架橋性繰り返し単位の割合が、前記ポリマー中の全繰り返し単位の100モル%を基準として0.01~50モル%の範囲であることを特徴とする、請求項1~11の何れか1項に記載の配合物。
【請求項13】
前記架橋性ポリマーが、電荷輸送性、好ましくは正孔注入性および/または正孔輸送性を有する少なくとも1種の繰り返し単位を含有することを特徴とする、請求項1~12の何れか1項に記載の配合物。
【請求項14】
前記ポリマー中の電荷輸送性を有する前記少なくとも1種の繰り返し単位の割合が、前記ポリマー中の全繰り返し単位の100モル%を基準として10~80モル%の範囲であることを特徴とする、請求項1~13の何れか1項に記載の配合物。
【請求項15】
前記架橋性ポリマーが、ポリマー骨格として典型的に使用される、6~40個のC原子を有する芳香族構造を含有する少なくとも1種の繰り返し単位を含有することを特徴とする、請求項1~14の何れか1項に記載の配合物。
【請求項16】
ポリマー骨格として典型的に使用される、6~40個のC原子を有する芳香族構造を含有する前記少なくとも1種の繰り返し単位の前記ポリマー中の割合が、前記ポリマー中の全繰り返し単位の100モル%を基準として10~80モル%の範囲であることを特徴とする、請求項1~15の何れか1項に記載の配合物。
【請求項17】
電子または光電子デバイス、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機集積回路(O-IC)、有機薄膜トランジスタ(TFT)、有機ソーラーセル(O-SC)、有機レーザーダイオード(O-レーザー)、有機光起電(OPV)素子もしくはデバイス、または有機光受容器(OPC)の調製のための、請求項1~16の何れか1項に記載の配合物の使用。
【請求項18】
有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)の調製のための、請求項17に記載の配合物の使用。
【請求項19】
1つ以上の活性層を有する電子または光電子デバイス、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機集積回路(O-IC)、有機薄膜トランジスタ(TFT)、有機ソーラーセル(O-SC)、有機レーザーダイオード(O-レーザー)、有機光起電(OPV)素子またはデバイス、および有機光受容器(OPC)、特に好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイスであって、これらの活性層のうちの少なくとも1つが請求項1~16の何れか1項に記載の配合物を使用して生成される、電子または光電子デバイス。
【請求項20】
架橋度が高い架橋ポリマーを含有する層を有する電子または光電子デバイス、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイスを調製するための方法であって、
a)本発明の配合物を、堆積法によって基板または別の層に塗布し、
b)前記塗布した配合物を、前記少なくとも1種の溶媒を蒸発させることで乾燥させ、
c)前記架橋性ポリマーを架橋させる
ことを特徴とする、方法。
【請求項21】
堆積法として、印刷技法が使用されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
印刷技法として、インクジェット印刷が使用されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋が、高温を使用して行われることを特徴とする、請求項20~22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
特定の架橋度の少なくとも1種の架橋ポリマーを含有する層を有する電子または光電子デバイス、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイスを調製するための方法であって、この架橋度が、請求項1~16の何れか1項に記載の配合物を使用することで得られるものであり、
- この架橋度が、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1種の有機溶媒であり、それに対する前記少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、比較的少量のエタノールを前記配合物に添加すると30g/Lの濃度の前記少なくとも1種の架橋性ポリマーが沈殿し始めるようなものである、有機溶媒を使用することで上昇させることができることを特徴とし、
- この架橋度が、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1種の有機溶媒であり、それに対する前記少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、比較的多量のエタノールを前記配合物に添加すると30g/Lの濃度の前記少なくとも1種の架橋性ポリマーが沈殿し始めるようなものである、有機溶媒を使用することで低下させることができることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の架橋性ポリマーと少なくとも1種の有機溶媒とを含む配合物であって、少なくとも1種の架橋性ポリマーが少なくとも0.5g/Lの濃度で配合物に含有され、少なくとも1種の有機溶媒が少なくとも200℃の沸点を有し、少なくとも1種の有機溶媒に対する少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、30g/Lの濃度の架橋性ポリマーが60容量%以下のエタノールを配合物に添加すると沈殿し始めるようなものであることを特徴とする、配合物に関する。
【0002】
さらに、本発明はまた、電子または光電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセントデバイス、いわゆるOLED(OLED)の調製のための、本発明による配合物の使用に関する。
【0003】
さらに、本発明は、架橋度が高い架橋ポリマーを含有する層を有する電子または光電子デバイス、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイスを調製するための方法であって、
a)本発明の配合物を、堆積法によって基板または別の層に塗布し、
b)塗布した配合物を、少なくとも1種の溶媒を蒸発させることで乾燥させ、
c)架橋性ポリマーを架橋させる
ことを特徴とする、方法に関する。
【0004】
有機発光ダイオード(OLED)は、2つの電極の間に堆積させた多層スタックで構成される。良好な電気的性質とデバイス性能を保つには、異なる層間の明確な界面と低相互混合が重要である。
【0005】
架橋性材料は、多層の可溶性処理において非常に興味深いものである。実際、熱またはUV光を適用することにより、架橋性材料は、不溶性の膜に変換することができる。架橋度は、次の可溶性層の溶媒耐性を高めるための懸念事項である。可溶性OLEDは、インクジェット印刷することができ、OLEDスクリーン(TV、スマートフォン、スマートウォッチなど)にとって重要な高解像度パネルの実現を可能とする。
【0006】
課題は、架橋性材料を可溶化し、溶媒が架橋反応を弱めないうちにインクジェット印刷によって堆積させるのに好適な粘度、表面張力および沸点を有する、好適な溶媒を見つけることである。沸点が高いため、薄膜には溶媒残留物が認められる。膜において最良の材料特性を得るには、それらの材料との相互作用を知る必要がある。
【0007】
公知の技術水準から出発し、架橋性ポリマーを含有する配合物を提供することが本発明の目的であると考えることができる。架橋性ポリマーは、所望の電気光学的性質を有し、使用する溶媒または溶媒混合物に対して十分な溶解度を有していなければならない。溶媒は、得られた配合物が、印刷およびコーティング技法、たとえばインクジェット印刷によって処理できるように、架橋性ポリマーを十分な量で溶解するような性質を有し且つ対応する物理的性質、たとえば粘度および沸点を有するものを選択しなければならない。
【0008】
この目的は、本発明に従い、少なくとも1種の架橋性ポリマーと少なくとも1種の有機溶媒とを含有する配合物であって、少なくとも1種の有機溶媒に対する少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、少なくとも1種の架橋性ポリマーが60容量%以下のエタノールを配合物に添加すると沈殿し始めるものであるように、少なくとも1種の有機溶媒が選ばれることを特徴とする、配合物を提供することにより達成される。
【0009】
本発明の目的は、少なくとも1種の架橋性ポリマーと少なくとも1種の有機溶媒とを含む配合物であって、少なくとも1種の架橋性ポリマーが少なくとも0.5g/Lの濃度で配合物に含有され、少なくとも1種の有機溶媒が少なくとも200℃の沸点を有し、少なくとも1種の有機溶媒に対する少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、30g/Lの濃度の少なくとも1種の架橋性ポリマーが60容量%以下のエタノールを配合物に添加すると沈殿し始めるようなものであることを特徴とする、配合物である。
【0010】
「少なくとも1種の有機溶媒」という表現は、本願において使用する場合、1種以上、好ましくは1、2、3、4または5種、より好ましくは1、2または3種の有機溶媒を意味する。
【0011】
第1の好ましい態様において、本発明による配合物は、下記においては、第1の有機溶媒または本発明の有機溶媒とも言及する、1種の有機溶媒を含有する。より好ましくは、本発明による配合物は、1種の有機溶媒からなる。
【0012】
「少なくとも1種の架橋性ポリマー」という表現は、本願において使用する場合、1種以上、好ましくは1または2種、より好ましくは1種の架橋性ポリマーを意味する。
【0013】
第2の好ましい態様において、本発明による配合物は、1種の架橋性ポリマーを含有する。より好ましくは、本発明による配合物は、1種の架橋性ポリマーからなる。
【0014】
第3の好ましい態様において、本発明による配合物は、1種の架橋性ポリマーと1種の有機溶媒からなる。
【0015】
第4の好ましい態様において、架橋性ポリマーは、45容量%以下、より好ましくは35容量%以下、最も好ましくは25容量%以下、とりわけ最も好ましくは22容量%以下のエタノールを配合物に添加すると、沈殿し始める。
【0016】
本発明の配合物に添加されるエタノールは、ガスクロマトグラフィー(GC)により判定される99.5%以上の純度を有するべきである。
【0017】
本発明による配合物は、25mPas以下の粘度を有する。好ましくは、配合物は、1~20mPasの範囲、より好ましくは1~15mPasの範囲の粘度を有する。
【0018】
本発明の配合物および溶媒の粘度は、1°円錐円板回転ディスコメーター、Discovery AR3形式(Thermo Scientific)で測定される。この装置は、温度とせん断速度の正確な制御を可能とする。粘度の測定は、25.0℃(+/-0.2℃)の温度、および500s-1のせん断速度で行われる。各サンプルを3回測定し、得られた結果の平均値を求める。
【0019】
本発明による配合物は、好ましくは15~70mN/mの範囲、より好ましくは20~50mN/mの範囲、最も好ましくは25~40mN/mの範囲の表面張力を有する。
【0020】
有機溶媒は、好ましくは15~70mN/mの範囲、より好ましくは20~50mN/mの範囲、最も好ましくは25~40mN/mの範囲の表面張力を有する。
【0021】
表面張力は、FTA(First Ten Angstrom)1000接触角測角器を使用して、20℃で測定することができる。方法の詳細は、Roger P.Woodward、Ph.D.による「Surface tension measurements using the drop-shape method」の通り、First Ten Angstromから入手可能である。好ましくは、ペンダントドロップ法を使用して表面張力を判定することができる。この測定技法は、ニードルから液相または気相へと入る懸滴を使用する。懸滴の形状は、表面張力と比重と密度差との関係に起因する。ペンダントドロップ法を使用し、http://www.kruss.de/services/education-theory/glossary/drop-shape-analysisで、表面張力を懸滴のシルエットから計算する。一般に使用され市販されている高精度液滴輪郭分析ツール、First Ten Angstrom製FTA1000を使用して、全ての表面張力の測定を遂行した。表面張力は、ソフトウェアFTA1000により判定される。測定は全て20℃乃至25℃の範囲の室温で行った。標準的な手順は、新しい使い捨ての液滴分注系(シリンジおよびニードル)を使用して各配合物の表面張力を判定することを伴う。各液滴は1分間に亘って60回測定され、それが後に平均化される。各配合物について、3滴測定される。最終的な値は、これらの測定値を平均化したものである。ツールは、表面張力が既知の様々な液体に照らして定期的に試験が行われる。
【0022】
加えて、少なくとも1種の有機溶媒は、好ましくは大気圧で少なくとも200℃の沸点、より好ましくは少なくとも220℃の沸点、最も好ましくは少なくとも240℃の沸点を有する。
【0023】
第1の有機溶媒として好ましく使用できる有機溶媒を、下記の表に示す。
【0024】
【0025】
本発明による配合物は、2種以上の有機溶媒を含有する場合、第1の有機溶媒の他に、下記においては第2の有機溶媒とも言及する少なくともさらなる有機溶媒を含有する。
【0026】
好適で好ましい第2の有機溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、ベラトロール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、(-)-フェンコン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、安息香酸ブチル、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、安息香酸エチル、インダン、安息香酸メチル、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)-エタン、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0027】
驚くべきことに、本発明の有機溶媒を含有する本発明の配合物は、電子または光電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセントデバイスの調製に使用すると、1種以上の溶媒を使用する先行技術と比較して高い架橋度の架橋性ポリマーをもたらすことが発見されており、ここで、これらの1種以上の有機溶媒に対する少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度は、60容量%を超えるエタノールを配合物に添加すると少なくとも1種の架橋性ポリマーが沈殿し始めるようなものである。
【0028】
さらに、驚くべきことに、本発明の有機溶媒を含有する本発明の配合物は、電子または光電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセントデバイスの調製に使用すると、1種以上の溶媒を使用する先行技術に従い調製されたデバイスと比較して、有機エレクトロルミネッセントデバイスの効率の上昇をもたらすことが発見されており、ここで、これらの1種以上の有機溶媒に対する少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度は、60容量%を超えるエタノールを配合物に添加すると少なくとも1種の架橋性ポリマーが沈殿し始めるようなものである。
【0029】
結果として、本発明はまた、架橋度が高い架橋ポリマーを含有する層を有する電子または光電子デバイス、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイスを調製するための方法であって、
d)本発明の配合物を、堆積法によって基板または別の層に塗布し、
e)塗布した配合物を、少なくとも1種の溶媒を蒸発させることで乾燥させ、
f)架橋性ポリマーを架橋させる
ことを特徴とする、方法に関する。
【0030】
本発明はさらに、特定の架橋度の少なくとも1種の架橋ポリマーを含有する層を有する電子または光電子デバイス、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイスを調製するための方法であって、この架橋度が、本発明による配合物を使用することで得られるものであり、
この架橋度が、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1種の有機溶媒であり、それに対する少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、比較的少量のエタノールを配合物に添加すると30g/Lの濃度の少なくとも1種の架橋性ポリマーが沈殿し始めるようなものである、有機溶媒を使用することで上昇させることができることを特徴とし、
この架橋度が、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1種の有機溶媒であり、それに対する少なくとも1種の架橋性ポリマーの溶解度が、比較的多量のエタノールを配合物に添加すると30g/Lの濃度の少なくとも1種の架橋性ポリマーが沈殿し始めるようなものである、有機溶媒を使用することで低下させることができることを特徴とする、方法に関する。
【0031】
本発明による高い架橋度は、
- 本願の実験パートGに従い測定した場合に、本発明の配合物から形成された膜における架橋度が好ましくは15%より高く、より好ましくは50%より高いこと、または
- 本願の実験パートFに従い測定した場合に、形成された膜の損傷が好ましくは70%未満、より好ましくは30%未満であること
の何れかを意味する。
【0032】
堆積法として、当業者に公知の任意の種類の堆積法が使用できる。
【0033】
好適で好ましい堆積法としては、液体コーティング技法および印刷技法が挙げられる。好ましい堆積法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、エアロゾル噴射、インクジェット印刷、ノズル印刷、グラビア印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、スプレーコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、キスコーティング、マイヤーバーコーティング、2ロールニップ供給式コーティング、アニロックスコーター、ナイフコーティング、またはスロット染料コーティングが挙げられるが、これに限定されない。最も好ましい堆積法は、インクジェット印刷である。
【0034】
配合物は、当業者に公知の任意の種類の蒸発法で蒸発させることができる。好ましくは、配合物は、高温および/または減圧を使用して蒸発させる。
【0035】
架橋性ポリマーの架橋は、当業者に公知の任意の架橋法を使用して行うことができる。好ましくは、架橋は、高温および/または減圧を使用して、好ましくは高温を使用して行われる。
【0036】
架橋性ポリマーは、少なくとも1種の有機溶媒に対して、好ましくは0.5g/L以上の溶解度、より好ましくは3g/L以上、最も好ましくは10g/L以上の溶解度を有する。
【0037】
配合物中の架橋性ポリマーの濃度は、好ましくは0.5~50g/Lの範囲、より好ましくは1~30g/Lの範囲である。
【0038】
本発明による架橋性ポリマーは、少なくとも1つ、好ましくは1つの架橋性基を含有する、少なくとも1種、好ましくは1種の繰り返し単位を含むポリマーである。少なくとも1つの架橋性基を含有する繰り返し単位は、架橋性繰り返し単位とも命名される。
【0039】
本願において、ポリマーという用語は、ポリマー化合物およびオリゴマー化合物と、デンドリマーとの両方を意味するものと理解される。本発明によるポリマー化合物は、好ましくは10~10000個、より好ましくは10~5000個、最も好ましくは10~2000個の構造単位(即ち、繰り返し単位)を含有する。本発明によるオリゴマー化合物は、好ましくは3~9個の構造単位を含有する。ここでは、ポリマーの分枝因子は0(直鎖状ポリマー、分枝点なし)乃至1(完全分枝デンドリマー)である。
【0040】
本発明による少なくとも1種の架橋性ポリマーは、好ましくは1,000~2,000,000g/モルの範囲の分子量Mw、より好ましくは10,000~1,500,000g/モルの範囲の分子量Mw、最も好ましくは50,000~1,000,000g/モルの範囲の分子量Mwを有する。分子量Mwは、内部ポリスチレン標準に照らしてGPC(=ゲル浸透クロマトグラフィー)によって判定される。
【0041】
本発明による架橋性ポリマーは、共役、部分共役または非共役ポリマーの何れかである。共役または部分共役ポリマーが好ましい。
【0042】
架橋性繰り返し単位は、本発明に従い、ポリマーの主鎖または側鎖に組み込むことができる。しかし、架橋性繰り返し単位は、好ましくはポリマーの主鎖に組み込まれる。ポリマーの側鎖への組み込みの場合、架橋性繰り返し単位は、1価または2価の何れかとすることができ、即ち、ポリマー中で隣接する構造単位に対して1つまたは2つの結合の何れかを有する。
【0043】
本願の意味における「共役ポリマー」は、主としてsp2混成(または任意にsp混成も)炭素原子を主鎖に含有するポリマーであり、炭素原子はまた、対応する混成ヘテロ原子により置きかえられていてもよい。最も単純な場合には、これは、主鎖中に二重結合と単結合が交互に存在することを意味するが、たとえば、メタ結合フェニレンなどの単位を含有するポリマーも、本願の意味における共役ポリマーとみなすことも意図している。「主として」は、共役の中断を生じる自然に(自発的に)発生する欠陥が、「共役ポリマー」という用語を無意味にしないことを意味する。共役ポリマーという用語は同様に、共役主鎖と非共役側鎖とを有するポリマーに適用される。さらに、共役という用語は、主鎖が、たとえば、アリールアミン単位、アリールホスフィン単位、ある特定のヘテロ環(即ち、N、OもしくはS原子を介する共役)および/または有機金属錯体(即ち、金属原子を介する共役)を含有する場合、本願において同様に使用される。類似の状況が、共役デンドリマーにも当てはまる。これに対し、単位、たとえば、単純なアルキル架橋、(チオ)エーテル、エステル、アミドまたはイミド結合などは、非共役断片として明瞭に定義される。
【0044】
本願における部分共役ポリマーは、非共役セクション、特定の共役中断(たとえばスペーサ基)もしくは分枝によって互いに分離されている共役領域を含有するポリマー、たとえば主鎖中の比較的長い共役セクションが非共役セクションによって中断されているポリマー、または主鎖中で非共役であるポリマーの側鎖に比較的長い共役セクションを含有するポリマーを意味するものと理解されることを意図している。共役および部分共役ポリマーはまた、共役、部分共役または非共役デンドリマーを含有してもよい。
【0045】
本願における「デンドリマー」という用語は、多官能性中心(コア)から構築された高度に分枝した化合物であって、中心には分枝モノマーが規則的な構造で結合され、その結果樹状構造が得られる化合物を意味するものと理解されることを意図している。ここでは、コアとまたモノマーがいずれも、純粋に有機的な単位とさらに有機金属化合物または配位化合物の両方からなる任意の所望の分枝構造をとる可能性がある。ここで、「デンドリマー」は、たとえば、M.FischerおよびF.Voegtle(Angew.Chem.,Int.Ed.1999、38、885)によって記載されている通りに理解されることを一般に意図している。
【0046】
本願における「繰り返し単位」という用語は、少なくとも2つ、好ましくは2つの反応基を含有するモノマー単位から出発して、結合形成を伴う反応によりポリマー骨格にその一部として組み込まれ、そのため、結合した繰り返し単位として調製されたポリマー中に存在する単位を意味するものと理解される。
【0047】
本発明の配合物の架橋性ポリマーは、少なくとも1種の架橋性繰り返し単位を含有する。架橋性ポリマー中の少なくとも1種の架橋性繰り返し単位の割合は、ポリマー中の全繰り返し単位の100モル%を基準として0.01~50モル%の範囲、好ましくは0.1~30モル%の範囲、より好ましくは0.5~25モル%の範囲、最も好ましくは1~20モル%の範囲である。
【0048】
本発明の意味における「架橋性基Q」は、反応を受け、その結果不溶性化合物を形成できる官能基を表す。ここでの反応は、さらなる同一の基Q、さらなる異なる基Q、もしくはその任意の所望の他の部分、または別のポリマー鎖で起こる可能性がある。したがって、架橋性基は、反応基である。ここで、対応して架橋される化合物は、架橋性基の反応の結果として得られる。化学反応は、層中でも行うことができ、その場合は不溶性層が形成される。架橋は通常、熱により、またはUV、マイクロ波、X線もしくは電子照射により、任意に開始剤の存在下で支援することができる。本発明の意味における「不溶性」は、好ましくは、本発明によるポリマーが、架橋反応後、即ち、架橋性基の反応後に、室温での有機溶媒に対する溶解度が、本発明による対応する未架橋ポリマーの同じ有機溶媒に対する溶解度の3分の1以下、好ましくは10分の1以下であることを意味する。
【0049】
架橋性基Qを持つ繰り返し単位は、当業者に公知の全繰り返し単位から選択することができる。
【0050】
好ましい態様において、架橋性基Qを持つ繰り返し単位は、下記式(I):
【0051】
【0052】
(式中、
Ar1~Ar3は、出現する毎に、各場合において同一にまたは異なって、5~60個の芳香族環原子を有する単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族環系であって、これらは1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよく;
Rは、出現する毎に、同一にまたは異なって、H、D、F、Cl、Br、I、N(R1)2、CN、NO2、Si(R1)3、B(OR1)2、C(=O)R1、P(=O)(R1)2、S(=O)R1、S(=O)2R1、OSO2R1、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または3~40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、R1C=CR1、C≡C、Si(R1)2、C=O、C=S、C=NR1、P(=O)(R1)、SO、SO2、NR1、O、SまたはCONR1により置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IまたはCNにより置きかえられていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有する単環もしくは多環式の芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または10~40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または架橋性基Qであり、ここで、2つ以上のラジカルRはまた、互いに単環もしくは多環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環系を形成してもよく;
R1は、出現する毎に、同一にまたは異なって、H、D、F、または1~20個のC原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、5~20個のC原子を有する芳香族および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカルであり、そこでは加えて、1個以上のH原子がFにより置きかえられていてもよく;ここで、2つ以上の置換基R1はまた、互いに単環または多環式の脂肪族または芳香族環系を形成してもよく;
破線は、ポリマー中の隣接する繰り返し単位への結合を表す)
の単位である。
【0053】
本願における「単環または多環式の芳香族環系」という用語は、6~60個、好ましくは6~30個、特に好ましくは6~24個の芳香族環原子を有する芳香族環系を意味するものと理解され、これは、必ずしも芳香族基のみを含有するとは限らず、代わりに、複数の芳香族単位が、短い非芳香族単位(10%未満のH以外の原子、好ましくは5%未満のH以外の原子)、たとえば、sp3混成C原子、またはOもしくはN原子、CO基などによって中断されていることもあり得る。したがって、たとえば系、たとえば、9,9’-スピロビフルオレンおよび9,9-ジアリールフルオレンなども、芳香族環系と解されることが意図されている。
【0054】
芳香族環系は、単環式でも多環式でもよく、即ち、1つの環を含有しても(たとえばフェニル)、縮合していても(たとえばナフチル)または共有結合していても(たとえばビフェニル)よい複数の環を含有してもよく、または縮合環と結合環との組み合わせを含有してもよい。
【0055】
好ましい芳香族環系は、たとえば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、[1,1’:3’,1’’]テルフェニル-2’-イル、クアテルフェニル、ナフチル、アントラセン、ビナフチル、フェナントレン、ジヒドロフェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、およびスピロビフルオレンである。
【0056】
本願における「単環または多環式のヘテロ芳香族環系」という用語は、5~60個、好ましくは5~30個、特に好ましくは5~24個の芳香族環原子を有する芳香族環系を意味するものと理解され、これらの原子の1個以上は、ヘテロ原子である。「単環または多環式のヘテロ芳香族環系」は、必ずしも芳香族基のみを含有するとは限らず、代わりに、短い非芳香族単位(10%未満のH以外の原子、好ましくは5%未満のH以外の原子)、たとえば、sp3混成C原子、またはOもしくはN原子、CO基などによって中断されていることもあり得る。
【0057】
ヘテロ芳香族環系は、単環式でも多環式でもよく、即ち、1つの環を含有しても、
縮合していてもまたは共有結合してもよい複数の環(たとえばピリジルフェニル)を含有してもよく、または縮合環と結合環との組み合わせを含有してもよい。完全に共役したヘテロアリール基が好ましい。
【0058】
好ましいヘテロ芳香族環系は、たとえば、5員環、たとえばピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、6員環、たとえばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、もしくは縮合基、たとえばカルバゾール、インデノカルバゾール、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェン、またはこれらの基の組み合わせである。
【0059】
単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族環系は、無置換でも置換されていてもよい。本願における置換は、単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族環系が、1つ以上の置換基Rを含有することを意味する。
【0060】
Rは、出現する毎に、好ましくは、同一にまたは異なって、H、D、F、Cl、Br、I、N(R1)2、CN、NO2、Si(R1)3、B(OR1)2、C(=O)R1、P(=O)(R1)2、S(=O)R1、S(=O)2R1、OSO2R1、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または2~40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基または3~40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、R1C=CR1、C≡C、Si(R1)2、C=O、C=S、C=NR1、P(=O)(R1)、SO、SO2、NR1、O、SまたはCONR1により置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IまたはCNにより置きかえられていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または10~40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)であり;ここで、2つ以上のラジカルRはまた、互いに単環もしくは多環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環系を形成してもよい。
【0061】
Rは、出現する毎に、より好ましくは、同一にまたは異なって、H、F、Cl、Br、I、N(R1)2、Si(R1)3、B(OR1)2、C(=O)R1、P(=O)(R1)2、1~20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基または2~20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基または3~20個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、R1C=CR1、C≡C、Si(R1)2、C=O、C=NR1、P(=O)(R1)、NR1、OまたはCONR1により置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、F、Cl、BrまたはIにより置きかえられていてもよい)、または5~30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~30個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または10~20個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)であり;ここで、2つ以上のラジカルRはまた、互いに単環もしくは多環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環系を形成してもよい。
【0062】
Rは、出現する毎に、最も好ましくは、同一にまたは異なって、H、1~10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基または2~10個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基または3~10個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、R1C=CR1、C≡C、C=O、C=NR1、NR1、OまたはCONR1により置きかえられていてもよい)、または5~20個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~20個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~20個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または10~20個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)であり;ここで、2つ以上のラジカルRはまた、互いに単環もしくは多環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環系を形成してもよい。
【0063】
R1は、出現する毎に、好ましくは、同一にまたは異なって、H、D、F、または1~20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカルであり、ここでは加えて、1個以上のH原子がFにより置きかえられていてもよく;ここで、2つ以上の置換基R1はまた、互いに単環または多環式の脂肪族または芳香族環系を形成してもよい。
【0064】
R1は、出現する毎に、より好ましくは、同一にまたは異なって、H、または1~20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカルであり;ここで、2つ以上の置換基R1はまた、互いに単環または多環式の脂肪族または芳香族環系を形成してもよい。
【0065】
R1は、出現する毎に、最も好ましくは、同一にまたは異なって、H、または1~10個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカルである。
【0066】
式(I)中の好ましい単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族基Ar1は、下記:
【0067】
【0068】
である。
【0069】
式E1~E12中のラジカルRは、式(I)中のラジカルRと同じ意味をとることができる。Xは、CR2、SiR2、NR、OまたはSを表すことができ、ここでもRは、式(I)中のラジカルRと同じ意味をとることができ;
Qは、架橋性基であり;
m=0、1または2であり;
n=0、1、2または3であり;
o=0、1、2、3または4であり;
p=0、1、2、3、4または5であり;
ただし、フェニレン基に関しては、合計(p+y)は5以下であり、合計(o+y)は4以下であり、ただし、各繰り返し単位において、yは1以上である。
【0070】
式(I)中の好ましい単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族基Ar2およびAr3は、下記:
【0071】
【0072】
【0073】
である。
【0074】
式M1~M23中のラジカルRは、式(I)中のラジカルRと同じ意味をとることができる。Xは、CR2、SiR2、OまたはSを表すことができ、ここでもRは、式(I)中のラジカルRと同じ意味をとることができる。Yは、CR2、SiR2、O、S、または1~20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル基または2~20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)(ここで、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基の1つ以上の隣接していないCH2基、CH基またはC原子は、Si(R1)2、C=O、C=S、C=NR1、P(=O)(R1)、SO、SO2、NR1、O、S、CONR1により置きかえられていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または10~40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)であり;ここでも、ラジカルRおよびR1は、式(I)中のラジカルRおよびR1と同じ意味をとることができる。
【0075】
使用した添え字は、下記の意味を有する:
k=0または1であり;
m=0、1または2であり;
n=0、1、2または3であり;
o=0、1、2、3または4であり;
q=0、1、2、3、4、5または6である。
【0076】
さらなる好ましい態様において、少なくとも1種の架橋性基Qを持つ繰り返し単位は、下記式(II):
【0077】
【0078】
(式中、Ar1は、5~60個の芳香族環原子を有する単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、これらは、式(I)に関して先に定義した通りの1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい)
の単位である。
【0079】
式(II)の架橋性繰り返し単位は、好ましくは式(IIa)~(IIm):
【0080】
【0081】
【0082】
(式中、
式(IIa)~(IIm)中のラジカルRは、式(I)中のラジカルRと同じ意味をとることができ、
Qは、架橋性基であり、
pは、0、1、2または3であり、
qは、0、1、2、3または4であり、
rは、0、1、2、3、4または5であり、
yは、1または2であり、
破線は、ポリマー中の隣接する繰り返し単位への結合を表し、
ただし、1つのフェニレン基に関しては、合計(p+y)は4以下であり、ただし、各繰り返し単位において、少なくとも1つのyは1以上であり、
ただし、1つのフェニレン基に関しては、合計(q+y)は5以下であり、ただし、各繰り返し単位において、少なくとも1つのyは1以上である)
の繰り返し単位から選択される。
【0083】
本発明による好ましい架橋性基Qは、以下に言及する基である:
a)末端もしくは環状アルケニルまたは末端ジエニルおよびアルキニル基:
好適な単位は、末端もしくは環状二重結合、末端ジエニル基、または末端三重結合、特に2~40個のC原子を有し、好ましくは2~10個のC原子を有する末端もしくは環状アルケニル、末端ジエニル、または末端アルキニル基を含有するものであり、ここで、個々のCH2基および/または個々のH原子はまた、先に言及した基Rにより置きかえられていてもよい。さらにまた好適なのは、前駆体とみなされ、二重または三重結合のインサイチュー形成が可能な基である。
【0084】
b)アルケニルオキシ、ジエニルオキシまたはアルキニルオキシ基:
さらに好適なのは、アルケニルオキシ、ジエニルオキシまたはアルキニルオキシ基、好ましくはアルケニルオキシ基である。
【0085】
c)アクリル酸基:
さらに好適なのは、最も広い意味でのアクリル酸単位、好ましくはアクリレート、アクリルアミド、メタクリレートおよびメタクリルアミドである。C1~10アルキルアクリレートおよびC1~10アルキルメタクリレートが特に好ましい。
【0086】
a)~c)の下で先に言及した基の架橋反応は、フリーラジカル、カチオンまたはアニオン機構だけでなく、環状付加によっても起こる可能性がある。
【0087】
架橋反応のための対応する開始剤を添加することも一助となり得る。フリーラジカル架橋に好適な開始剤は、たとえば、過酸化ジベンゾイル、AIBNまたはTEMPOである。カチオン性架橋に好適な開始剤は、たとえば、AlCl3、BF3、過塩素酸トリフェニルメチルまたはヘキサクロロアンチモン酸トロピリウムである。アニオン性架橋に好適な開始剤は、塩基、特にブチルリチウムである。
【0088】
ただし、本発明の好ましい態様において、架橋は、開始剤を添加せずに実行され、熱的にのみ開始される。この優先傾向は、開始剤が存在しなければ、デバイス特性の劣化を生じ得る層の汚染が防止できるという事実によるものである。
【0089】
d)オキセタンおよびオキシラン:
架橋性基Qのさらなる好適なクラスは、オキセタンおよびオキシランであり、これらは開環によってカチオン的に架橋する。
【0090】
架橋反応のための対応する開始剤を添加することも一助となり得る。好適な開始剤は、たとえば、AlCl3、BF3、過塩素酸トリフェニルメチルまたはヘキサクロロアンチモン酸トロピリウムである。同様に、光酸を開始剤として添加することもできる。
【0091】
e)シラン:
架橋性基のクラスとしてさらに好適なのは、シラン基SiR3であり、ここで、少なくとも2つの基R、好ましくは3つの基R全てが、Clまたは1~20個のC原子を有するアルコキシ基を表す。この基は、水の存在下で反応して、オリゴまたはポリシロキサンを生じる。
【0092】
f)シクロブタン基
先に言及した架橋性基Qは一般に、当業者に一般に公知であり、これらの基の反応に使用される好適な反応条件も同様である。
【0093】
好ましい架橋性基Qとしては、下記式Q1のアルケニル基、下記式Q2のジエニル基、下記式Q3のアルキニル基、下記式Q4のアルケニルオキシ基、下記式Q5のジエニルオキシ基、下記式Q6のアルキニルオキシ基、下記式Q7およびQ8のアクリル酸基、下記式Q9およびQ10のオキセタン基、下記式Q11のオキシラン基、ならびに下記式Q12のシクロブタン基:
【0094】
【0095】
が挙げられる。
【0096】
式Q1~Q8およびQ11中のラジカルR11、R12およびR13は、出現する毎に、同一にまたは異なって、H、1~6個のC原子、好ましくは1~4個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル基である。ラジカルR11、R12およびR13は、特に好ましくはH、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルであり、非常に特に好ましくはHまたはメチルである。使用した添え字は、下記の意味を有する:s=0~8;およびt=1~8。
【0097】
式Q1~Q11中の破線で示される結合、および式Q12中の破線で示される結合は、架橋性基の構造単位への結合を表す。
【0098】
式Q1~Q12の架橋性基は、構造単位に直接結合してもよく、あるいは、下記式Q13~Q24:
【0099】
【0100】
(式中、式Q13~Q24中のAr10は、Ar1と同じ意味をとることができる)
に図示するように、さらなる単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族環系Ar10を介して、間接的に結合してもよい。
【0101】
より好ましい架橋性基Qは、下記:
【0102】
【0103】
【0104】
である。
【0105】
式Q7aおよびQ13a~Q19a中のラジカルR11およびR12は、出現する毎に、同一にまたは異なって、H、または1~6個のC原子、好ましくは1~4個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル基である。ラジカルR11およびR12は、特に好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルであり、非常に特に好ましくはメチルである。
【0106】
式Q7bおよびQ19b中のラジカルR13は、出現する毎に、1~6個のC原子、好ましくは1~4個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル基である。ラジカルR13は、特に好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルであり、非常に特に好ましくはメチルである。
【0107】
使用した添え字は、下記の意味を有する:s=0~8およびt=1~8。
【0108】
最も好ましい架橋性基Qは、下記:
【0109】
【0110】
【0111】
である。
【0112】
好ましい基Q1~Q24、より好ましい基Q1a~Q24a、および最も好ましい基Q1b~Q24cにおいて、破線は、構造単位への結合を表す。これに関連して注目すべきことであるが、基Q12、Q12a、Q12bおよびQ24はそれぞれ、繰り返し単位の2個の隣接する環炭素原子に対する2つの結合を有している。他の架橋性基は全て、繰り返し単位に対して1つの結合しか有していない。
【0113】
ポリマーにおける式(I)または(II)の架橋性繰り返し単位の割合は、ポリマー中に構造単位として存在する共重合した全モノマーの100モル%を基準として、0.01~50モル%の範囲、好ましくは0.1~30モル%の範囲、より好ましくは0.5~25モル%の範囲、最も好ましくは1~20モル%の範囲である。これは、本発明による架橋性ポリマーが、式(I)または(II)の架橋性繰り返し単位の他に、式(I)および(II)の架橋性繰り返し単位とは異なるさらなる繰り返し単位も含有することを意味する。
【0114】
これらの繰り返し単位は、式(I)および(II)の構造単位とは異なるものであり、とりわけ、WO02/077060A1およびWO2005/014689A2において開示され、広く列挙されたようなものである。これらは、参照の目的で本発明の一部であるとみなされる。このさらなる繰り返し単位は、たとえば、下記のクラスに由来するものとすることができる:
群1:ポリマーの正孔注入性および/または正孔輸送性に影響を与える単位;
群2:ポリマーの電子注入性および/または電子輸送性に影響を与える単位;
群3:群1および群2からの個々の単位の組み合わせを有する単位;
群4:電気蛍光に代えて電気リン光が得られる程度に発光特性を変更する単位;
群5:一重項状態から三重項状態への移動を向上させる単位;
群6:結果として得られるポリマーの発光色に影響を与える単位;
群7:ポリマー骨格として典型的に使用される単位;
群8:結果として得られるポリマーの膜形態および/またはレオロジー特性に影響を与える単位。
【0115】
本発明による好ましい架橋性ポリマーは、少なくとも1種の繰り返し単位が電荷輸送性を有するもの、即ち、群1および/または2からの単位を含有するものである。
【0116】
ポリマー中の電荷輸送性を有する少なくとも1種の繰り返し単位の割合は、ポリマー中の全繰り返し単位の100モル%を基準として、10~80モル%の範囲、好ましくは15~75モル%の範囲、より好ましくは20~70モル%の範囲、最も好ましくは40~60モル%の範囲である。
【0117】
正孔注入性および/または正孔輸送性を有する群1からの繰り返し単位は、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール-パラ-フェニレンジアミン、トリアリールホスフィン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ-パラ-ジオキシン、フェノキサチイン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロール、およびフラン誘導体と、さらにはO、SまたはN含有ヘテロ環である。
【0118】
正孔注入性および/または正孔輸送性を有する好ましい繰り返し単位は、トリアリールアミン単位である。トリアリールアミン単位は、好ましくは下記式(III):
【0119】
【0120】
(式中、
Ar1~Ar3は、出現する毎に、各場合において同一にまたは異なって、5~60個の芳香族環原子を有する単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族環系であって、これらは1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよく;
Rは、出現する毎に、同一にまたは異なって、H、D、F、Cl、Br、I、N(R1)2、CN、NO2、Si(R1)3、B(OR1)2、C(=O)R1、P(=O)(R1)2、S(=O)R1、S(=O)2R1、OSO2R1、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または3~40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH2基は、R1C=CR1、C≡C、Si(R1)2、C=O、C=S、C=NR1、P(=O)(R1)、SO、SO2、NR1、O、SまたはCONR1により置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IまたはCNにより置きかえられていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有する単環もしくは多環式の芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または10~40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR1により置換されていてもよい)、または架橋性基Qであり、ここで、2つ以上のラジカルRはまた、互いに単環もしくは多環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環系を形成してもよく;
R1は、出現する毎に、同一にまたは異なって、H、D、F、または1~20個のC原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、5~20個のC原子を有する芳香族および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカルであり、そこでは加えて、1個以上のH原子がFにより置きかえられていてもよく;ここで、2つ以上の置換基R1はまた、互いに単環または多環式の脂肪族または芳香族環系を形成してもよく;
破線は、ポリマー中の隣接する繰り返し単位への結合を表す)
の単位である。
【0121】
トリアリールアミン単位は、より好ましくは式(III)の単位であり、ここで、Ar3は、2つのオルト位の少なくとも1つ、好ましくは1つにおいてAr4により置換されており、ここで、Ar4は、5~60個の芳香族環原子を有する単環または多環式の芳香族またはヘテロ芳香族環系であり、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい。
【0122】
ここでは、Ar4は、Ar3に直接、即ち、単結合を介して結合してもよく、あるいは連結基Xを介して結合してもよい。
【0123】
したがって、式(III)の構造単位は、好ましくは下記式(IIIa):
【0124】
【0125】
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびRは、先に示した通りの意味をとることができ、
q=0、1、2、3、4、5または6、好ましくは0、1、2、3または4であり、
X=CR2、NR、SiR2、O、S、C=OまたはP=O、好ましくはCR2、NR、OまたはSであり、
r=0または1、好ましくは0である)
の構造を有する。
【0126】
第2の態様において、式(III)の少なくとも1種の繰り返し単位は、Ar3が2つのオルト位の1つにおいてAr4により置換されており、加えて、Ar3が、置換されたオルト位に隣接するメタ位においてAr4に結合していることを特徴とする。
【0127】
したがって、式(III)の繰り返し単位は、好ましくは下記式(IIIb):
【0128】
【0129】
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびRは、先に示した通りの意味をとることができ、
m=0、1、2、3または4であり、
n=0、1、2または3であり、
X=CR2、NR、SiR2、O、S、C=OまたはP=O、好ましくはCR2、NR、OまたはSであり、
sおよびtは、それぞれ0または1であり、ここで、合計(s+t)=1または2、好ましくは1である)
の構造を有する。
【0130】
好ましい態様において、式(III)の少なくとも1種の繰り返し単位は、下記式(IV)、(V)および(VI):
【0131】
【0132】
(式中、Ar1、Ar2、Ar4およびRは、先に示した通りの意味をとることができ、
m=0、1、2、3または4であり、
n=0、1、2または3であり、
X=CR2、NR、SiR2、O、S、C=OまたはP=O、好ましくはCR2、NR、OまたはSである)
の構造単位から選択される。
【0133】
群1からのさらなる繰り返し単位は、下記式(1a)~(1q):
【0134】
【0135】
【0136】
(式中、R、k、mおよびnは、先に示した通りの意味をとることができる)
の構造単位である。
【0137】
式(1a)~(1q)において、破線は、ポリマー中の隣接する繰り返し単位への可能な結合を表す。式中に2つの破線が存在する場合、繰り返し単位は、隣接する繰り返し単位に対する1つまたは2つ、好ましくは2つの結合を有する。式中に3つの破線が存在する場合、繰り返し単位は、隣接する繰り返し単位に対する1つ、2つまたは3つ、好ましくは2つの結合を有する。式中に4つの破線が存在する場合、繰り返し単位は、隣接する繰り返し単位に対する1つ、2つ、3つまたは4つ、好ましくは2つの結合を有する。ここでは、これらは、互いに独立して、同一にまたは異なって、オルト、メタまたはパラ位に配置することができる。
【0138】
電子注入性および/または電子輸送性を有する群2からの繰り返し単位は、たとえば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシドおよびフェナジン誘導体であるが、トリアリールボラン、さらにはO、SまたはN含有ヘテロ環でもある。
【0139】
本発明によるポリマーが、正孔移動度に影響を与える構造と、電子移動度を上昇させる構造(即ち、群1および2からの単位)が互いに直接結合している群3からの単位を含有する、または正孔移動度と電子移動度の両方を上昇させる構造を含有することが好ましいことがある。これらの単位の中には、発光体として機能し、発光色を緑色、黄色または赤色にシフトすることができるものがある。したがって、これらの使用は、たとえば、元来は青色を発光するポリマーから他の発光色を生成するのに好適である。
【0140】
群4の繰り返し単位は、室温でも三重項状態から高効率で光を発する、即ち、電気蛍光ではなく電気リン光を呈することができ、それはエネルギー効率の上昇をもたらすことが多い。この目的に好適なのは、第1に36より大きい原子番号を有する重原子を含有する化合物である。先に言及した条件を満たすdまたはf遷移金属を含有する化合物が好ましい。ここでは、8~10族の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含有する対応する繰り返し単位が特に好ましい。ここでは、本発明によるポリマーに好適な繰り返し単位は、たとえば、様々な錯体、たとえば、WO02/068435A1、WO02/081488A1、EP1239526A2およびWO2004/026886A2に記載されているようなものである。対応するモノマーは、WO02/068435A1およびWO2005/042548A1に記載されている。
【0141】
群5の繰り返し単位は、一重項状態から三重項状態への移動を向上させ、群4の構造要素の支持体に利用されると、これらの構造要素のリン光特性を向上させるものである。この目的に好適なのは、特に、たとえば、WO2004/070772A2およびWO2004/113468A1に記載されているような、カルバゾールおよび架橋カルバゾール二量体単位である。また、この目的に好適なのは、たとえば、WO2005/040302A1に記載されているような、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、シラン誘導体および類似の化合物である。
【0142】
群6の繰り返し単位は、先に言及したものの他に、先に言及した基の分類に入らない、即ち、電荷担体移動度にほとんど影響しないか、有機金属錯体ではないか、一重項-三重項移動に影響を与えない、少なくとも1つのさらなる芳香族構造または別の共役構造を有するものである。このタイプの構造要素は、結果として得られるポリマーの発光色に影響を与えることができる。したがって単位によっては、発光体として利用することもできる。ここでは、6~40個のC原子を有する芳香族構造が好ましく、またはトラン、スチルベンもしくはビススチリルアリーレン誘導体も好ましく、これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい。ここでは、1,4-もしくは9,10-アントリレン、1,6-、2,7-もしくは4,9-ピレニレン、3,9-もしくは3,10-ペリレニレン、4,4’-トラニレン、4,4’-スチルベニレン、ベンゾチアジアゾールおよび対応する酸素誘導体、キノキサリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、ビス(チオフェニル)アリーレン、オリゴ(チオフェニレン)、フェナジン、ルブレン、ペンタセンもしくはペリレン誘導体(これらは、好ましくは置換されている)、または好ましくは共役プッシュ-プル系(供与体および受容体置換基により置換されている系)もしくは系、たとえばスクアリンもしくはキナクリドン(これらは、好ましくは置換されている)の組み込みが特に好ましい。
【0143】
本発明による好ましい架橋性ポリマーは、少なくとも1種の繰り返し単位が、ポリマー骨格として典型的に使用される、6~40個のC原子を有する芳香族構造を含有するものである。
【0144】
ポリマー骨格として典型的に使用される、6~40個のC原子を有する芳香族構造を含有する少なくとも1種の繰り返し単位のポリマー中の割合は、ポリマー中の全繰り返し単位の100モル%を基準として、10~80モル%の範囲、好ましくは15~75モル%の範囲、より好ましくは20~70モル%の範囲、最も好ましくは40~60モル%の範囲である。
【0145】
群7の繰り返し単位は、ポリマー骨格として典型的に使用される、6~40個のC原子を有する芳香族構造を含有する単位である。これらは、たとえば、4,5-ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10-テトラヒドロピレン誘導体、フルオレン誘導体、9,9’-スピロビフルオレン誘導体、フェナントレン誘導体、9,10-ジヒドロフェナントレン誘導体、5,7-ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体、ならびにcis-およびtrans-インデノフルオレン誘導体、さらには1,2-、1,3-もしくは1,4-フェニレン、1,2-、1,3-もしくは1,4-ナフチレン、2,2’-、3,3’-もしくは4,4’-ビフェニリレン、2,2’’-、3,3’’-もしくは4,4’’-テルフェニリレン、2,2’-、3,3’-もしくは4,4’-ビ-1,1’-ナフチリレン、または2,2’’’-、3,3’’’-もしくは4,4’’’-クアテルフェニリレン誘導体である。
【0146】
群7からの好ましい繰り返し単位は、下記式(7a)~(7q):
【0147】
【0148】
(式中、R、k、m、nおよびpは、先に示した通りの意味をとることができる)
の構造単位である。
【0149】
式(7a)~(7q)において、破線は、ポリマー中の隣接する繰り返し単位への可能な結合を表す。式中に2つの破線が存在する場合、繰り返し単位は、隣接する繰り返し単位に対する1つまたは2つ、好ましくは2つの結合を有する。ここでは、これらは、互いに独立して、同一にまたは異なって、オルト、メタまたはパラ位に配置することができる。
【0150】
群8の繰り返し単位は、ポリマーの膜形態および/またはレオロジー特性に影響を与えるものであり、たとえば、シロキサン、アルキル鎖またはフッ素化基、さらには特に堅牢もしくは柔軟な単位、液晶形成単位または架橋性基などである。
【0151】
式(I)または(II)の繰り返し単位の他に、同時に追加で群1~8から選択される1つ以上の単位も含有する本発明による架橋性ポリマーが好ましい。同様に、1つの群からの2つ以上のさらなる繰り返し単位が同時に存在することが好ましい場合がある。
【0152】
ここでは、式(I)または(II)の少なくとも1種の構造単位の他に、群7からの単位も含有する本発明によるポリマーが好ましい。
【0153】
本発明によるポリマーが、電荷輸送または電荷注入を向上させる単位、即ち、群1および/または2からの単位を含有することも同様に好ましい。
【0154】
本発明によるポリマーが、群7からの繰り返し単位と群1および/または2からの単位とを含有することがさらにより好ましい。
【0155】
本発明によるポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーの何れかであり、好ましくはコポリマーである。本発明によるポリマーは、直鎖状でも分枝でもよく、好ましくは直鎖状である。本発明によるコポリマーは、式(I)または(II)の1種以上の構造単位の他に、先に言及した群1~8からの1種以上のさらなる構造を潜在的に有してもよい。
【0156】
本発明によるコポリマーは、ランダム、交互またはブロック様構造を含有することができ、または複数のこれらの構造を交互に有することもできる。本発明によるコポリマーは、特に好ましくは、ランダムまたは交互構造を含有する。コポリマーは、特に好ましくはランダムまたは交互コポリマーである。ブロック様構造を有するコポリマーを得ることができる方法、およびこの目的のために特に好ましいさらなる構造要素については、たとえば、WO2005/014688A2に詳細に記載されている。これは、参照の目的で本願の一部である。この時点で同様に再度強調すべきことであるが、ポリマーは、樹枝状構造を有することもできる。
【0157】
式(I)または(II)の繰り返し単位を含有する本発明によるポリマーは一般に、1種類以上のモノマーの重合によって調製され、そのうちの少なくとも1種のモノマーがポリマー中に式(I)または(II)の繰り返し単位を生じるものである。好適な重合反応は、当業者には公知であり、文献に記載されている。C-CまたはC-N結合を生じる特に好適で好ましい重合反応は、下記のものである:
(A)スズキ重合;
(B)ヤマモト重合;
(C)スティル重合;
(D)ヘック重合;
(E)ネギシ重合;
(F)ソノガシラ重合;
(G)ヒヤマ重合;および
(H)ハートウィッグ-ブッフバルト重合。
【0158】
これらの方法により重合を行うことができる方法、および次いでポリマーを反応媒体から分離し精製することができる方法は、当業者に公知であり、文献、たとえばWO03/048225A2、WO2004/037887A2およびWO2004/037887A2に詳細に記載されている。
【0159】
C-C結合反応は、好ましくはスズキカップリング、ヤマモトカップリングおよびスティルカップリングの群から選択される;C-N結合反応は、好ましくはハートウィッグ-ブッフバルトカップリングである。
【0160】
したがって、本発明はまた、本発明による架橋性ポリマーを調製するための方法に関し、方法は、架橋性ポリマーがスズキ重合、ヤマモト重合、スティル重合またはハートウィッグ-ブッフバルト重合によって調製されることを特徴とする。
【0161】
本発明によるポリマーは、純物質として使用できるが、任意の所望のさらなるポリマー状、オリゴマー状、樹枝状または低分子量物質と共に、混合物としても使用することもできる。本発明における低分子量物質は、100~3000g/モル、好ましくは200~2000g/モルの範囲の分子量を有する化合物を意味するものと理解される。これらのさらなる物質は、たとえば、電子的性質を向上させ、またはそれ自体発光する可能性がある。上記および下記の混合物は、少なくとも1種のポリマー成分を含む混合物を表す。こうして、式(I)または(II)の繰り返し単位を含有する本発明による1種以上のポリマーと、任意に1種以上のさらなるポリマーとの混合物(ブレンド)からなる1つ以上のポリマー層を、1種以上の低分子量物質を使用して調製することができる。
【0162】
したがって、本発明はさらに、本発明による1種以上のポリマーと、1種以上のさらなるポリマー状、オリゴマー状、樹枝状および/または低分子量物質とを含むポリマーブレンドを含有する配合物に関する。
【0163】
上記のように、本発明は、本発明による1種以上のポリマーまたはポリマーブレンドを、1種以上の溶媒中に含む配合物に関する。こうした配合物を調製することができる方法は当業者に公知であり、たとえば、WO02/072714A1、WO03/019694A2、およびそこに引用された文献に記載されている。
【0164】
これらの配合物は、たとえば、表面コーティング法(たとえばスピンコーティング)または印刷法(たとえばインクジェット印刷)によって薄いポリマー層を生成するために使用することができる。
【0165】
架橋性基Qを含有する繰り返し単位を含有するポリマーは、たとえば熱または光誘発インサイチュー重合およびインサイチュー架橋、たとえば、インサイチューUV光重合または光パターン化などによる膜またはコーティングの生成に、特に構造化されたコーティングの生成に特に好適である。ここでは、両方の対応するポリマーを純物質として使用することが可能であるが、上記のように、これらのポリマーの配合物または混合物を使用することも可能である。これらは、溶媒および/または結合剤を添加して使用することも、添加せずに使用することもできる。先に記載した方法に好適な材料、方法およびデバイスは、たとえば、WO2005/083812A2に記載されている。可能な結合剤は、たとえば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルブチラールおよび同様に光電子的に中性のポリマーである。
【0166】
本発明の配合物の架橋性ポリマーは、塗布後に架橋され、その結果架橋ポリマーとなる。架橋性基は、特に好ましくはビニル基またはアルケニル基であり、好ましくはウィッティヒ反応またはウィッティヒ類似反応によってポリマーに組み込まれる。架橋性基がビニル基またはアルケニル基である場合、架橋は、フリーラジカルまたはイオン性重合によって起こすことができ、それは、熱的に、または放射線によって誘発することができる。好ましくは250℃未満の温度で、特に好ましくは230℃未満の温度で熱的に誘発されるフリーラジカル重合が好ましい。
【0167】
より高い架橋度を達成するため、架橋プロセス中に追加のスチレンモノマーが任意に添加される。添加されるスチレンモノマーの割合は、ポリマー中の構造単位として存在する共重合した全モノマーの100モル%を基準として、好ましくは0.01~50モル%、特に好ましくは0.1~30モル%の範囲である。
【0168】
こうして調製される架橋ポリマーは、通常の溶媒全てに不溶性である。こうして、それに続く層を塗布しても、再び溶解したり、部分的に溶解したりしない規定の層厚を生成することが可能である。
【0169】
架橋ポリマーは、好ましくは架橋ポリマー層の形態で生成される。架橋ポリマーがあらゆる溶媒に不溶性であるため、先に記載した技法を用いて、溶媒からこのタイプの架橋ポリマー層の表面にさらなる層を塗布することができる。
【0170】
溶液から処理される1つ以上の層と、低分子量物質の蒸着によって生成される層とが存在し得る、いわゆるハイブリッドデバイスを生成することも可能である。
【0171】
本発明による配合物は、電子または光電子デバイスの調製に使用することができる。
【0172】
したがって、本発明はさらに、電子または光電子デバイス、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機集積回路(O-IC)、有機薄膜トランジスタ(TFT)、有機ソーラーセル(O-SC)、有機レーザーダイオード(O-レーザー)、有機光起電(OPV)素子もしくはデバイス、または有機光受容器(OPC)、特に好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)の調製のための、本発明による配合物の使用に関する。
【0173】
先に言及したハイブリッドデバイスの場合、PLED/SMOLED(ポリマー発光ダイオード/小分子有機発光ダイオード)結合系という用語が、有機エレクトロルミネッセントデバイスに関して使用される。
【0174】
OLEDを製造できる方法は、当業者に公知であり、たとえば、一般的方法としてWO2004/070772A2に詳細に記載されており、これを個々のケースに対応して採用すべきである。
【0175】
上記のように、本発明による配合物のポリマーは、こうした方法で製造されるOLEDまたはディスプレイにおけるエレクトロルミネッセント材料として非常に特に好適である。
【0176】
本願の意味におけるエレクトロルミネッセント材料は、活性層として使用できる材料であるとみなされる。活性層は、層が、電場を加えると光を発することが可能であること(発光層)、ならびに/または正および/もしくは負電荷の注入および/もしくは輸送を向上させるものであること(電荷注入もしくは電荷輸送層)を意味する。
【0177】
本発明による配合物のポリマーは、特にOLEDの調製のためのエレクトロルミネッセント材料として使用される。
【0178】
本発明はさらに、1つ以上の活性層を有する電子または光電子部品、好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機集積回路(O-IC)、有機薄膜トランジスタ(TFT)、有機ソーラーセル(O-SC)、有機レーザーダイオード(O-レーザー)、有機光起電(OPV)素子またはデバイス、および有機光受容器(OPC)、特に好ましくは有機エレクトロルミネッセントデバイスであって、これらの活性層の少なくとも1つが本願による配合物を使用して生成される電子または光電子部品に関する。活性層は、たとえば、発光層、電荷輸送層および/または電荷注入層とすることができる。
【0179】
本願の文章、さらに以下の例は、主としてOLEDと対応するディスプレイに関する本発明による配合物の使用に向けられている。この説明の制約にもかかわらず、当業者は、さらなる進歩性を要することなく、他の電子デバイスにおける上記のさらなる使用のために、本発明による配合物を使用することも可能である。
【0180】
下記の例は、限定することなく本発明の説明を意図したものである。特に、関連する例が基礎とする定義された化合物のそこに記載された特徴、性質および利点は、他で特に断らない限り、詳細に記載されていないが特許請求の範囲の保護の範囲に含まれる他の化合物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【
図3】
図3は、OLED効率に対する正孔輸送層処理溶媒の影響を示す。
【0182】
例
パートA:
モノマーの合成
本発明による架橋性ポリマーPo2を調製するためのモノマーは、既に先行技術に記載されており、市販されているか、文献の手順に従い調製されるものであり、下記の表1に要約する:
【0183】
【0184】
パートB:
ポリマーの合成
本発明によるポリマーPo2の調製
本発明によるポリマーPo2は、WO2010/097155A1に記載の方法に従い、パートAに開示のモノマーからスズキカップリングによって調製される。
【0185】
このようにして調製したポリマーPo2は、脱離基の除去後、表2に示すパーセンテージ(パーセンテージ=モル%)で構造単位を含有する。アルデヒド基を有するモノマーから調製されるポリマーPo2の場合、これらは、WO2010/097155A1に記載の方法に従うウィッティヒ反応による重合後、架橋性ビニル基に変換される。したがって、表2に列挙し、パートCで使用するポリマーは、元々のアルデヒド基に代わり架橋性ビニル基を有する。
【0186】
ポリマーのパラジウムおよび臭素含有量は、ICP-MSにより判定される。判定された値は、10ppm未満である。
【0187】
分子量Mwおよび多分散性Dは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(モデル:Agilent HPLC System Series 1100)(カラム:Polymer Laboratories製PL-RapidH、溶媒:0.12容量%のo-ジクロロベンゼンを含むTHF、検出:UVおよび屈折率、温度:40℃)によって判定される。較正は、ポリスチレン標準を用いる。
【0188】
【0189】
パートC:
ポリマーインクの調製
ポリマーを、下記の表3の例1~5に言及する純粋な溶媒のそれぞれと、ガラスボトル中で混合した。溶解は、アルゴン雰囲気中、磁気撹拌下室温で行った。ポリマーが完全に溶解した後、アルゴンで覆った状態で0.2μm PTFEフィルターを通してインクをろ過した。インクをインクジェット印刷に使用する場合、インクを20mbarの減圧で5分間、追加で脱気した。
【0190】
【0191】
パートD
沈殿試験:ポリマー-溶媒親和性
エタノール沈殿試験
ポリマーPo2の1.5ml溶液を、各溶媒を用いてガラスボトル中で30g/Lで調製した。高濃度のため、沈殿の開始の可視化が容易であった。磁気撹拌下、エタノールを混合物に滴加した。混合物が沈殿し始めた(乳白色に見えた)時点の添加したエタノールの量を記録した。
【0192】
アセトン沈殿試験
ポリマーPo2の1.5ml溶液を、各溶媒を用いてガラスボトル中で30g/Lで調製した。磁気撹拌下、アセトンを混合物に滴加した。混合物が沈殿し始めた(乳白色に見えた)時点の添加したアセトンの量を記録した。
【0193】
様々な溶媒を使用した様々なインクでポリマーPo2(30g/L)の沈殿を開始するのに必要なエタノールおよびアセトンの容量を下記の表4に示す。
【0194】
【0195】
パートE:
ポリマー薄膜の調製
例1~5の溶液をDMCカートリッジに充填する。インクジェットプリンタを使用して、20mm×20mmの大面積膜を堆積させる。膜を堆積させた後、10-3mbarの真空下で4分間乾燥させる。架橋反応を進行させるため、窒素雰囲気下(グローブボックス)、225℃のホットプレート上に膜を30分間置く。
【0196】
パートF:
ポリマー薄膜の安定性の特性評価
ポリマーインクを5g/Lで調製した。各インクでガラス基板上に4cm2の四角形の層を、362.86DPI(滴毎インチ)~1270DPIに調節した解像度で印刷した。湿膜を真空チャンバにおいて、10-4mbarで4分間乾燥させた。次いで、乾燥させた層を窒素雰囲気中、ホットプレート上225℃で30分間アニーリングして、膜内での架橋反応を開始させた。
【0197】
70nmの厚さを有するポリマー薄膜の溶媒耐性の試験を行うため、90plの3-フェノキシトルエン(3-PT)を各層の中央にインクジェット印刷によって滴下した(ポリマーが高溶解度を有する溶媒を使用して、架橋反応が成功したか否かを観察する)。5分間の浸漬後、真空チャンバにおいて10
-4mbarで4分間、3-フェノキシトルエンを乾燥させた。次いで、WO2018/104202A1に記載の方法に従う表面分析により、化学的損傷の特性評価を行った。損傷は、干渉法により観察し、損傷の断面を分析した。本発明の配合物を使用して処理した薄膜は、膜表面上に観察される小さな損傷が示すように、高い溶媒耐性を有する。結果を下記の表5、および
図1に示す。
【0198】
【0199】
表5からわかるように、ポリマーPo2の薄膜の損傷は、それぞれの配合物中のポリマーの沈殿を開始するのに必要なエタノールおよびアセトンの量が減少するにつれて少なくなる(表4参照)。
【0200】
これは、比較的少量のエタノールが配合物に添加された場合に30g/Lで沈殿するインク配合物から処理されたポリマー薄膜が、比較的多量のエタノールが配合物に添加された場合に30g/Lで沈殿するインク配合物から処理されたポリマー薄膜よりも、溶媒暴露に対して安定性が高いことを意味する。
【0201】
結果として、ヘキサン酸シクロヘキシルおよびイソ吉草酸メンチルから処理されたポリマー薄膜は、1-メチルナフタレン、1-メトキシ-ナフタレンおよび3-フェノキシトルエンから処理されたポリマー薄膜よりも、溶媒暴露に対して安定性が高い。
【0202】
高い架橋度は、元の厚さ70nmを基準として、損傷が好ましくは50nm未満、より好ましくは20nm未満であることを意味する。これは、損傷が好ましくは70%未満、より好ましくは30%未満であることを意味する。その結果として、ヘキサン酸シクロヘキシルおよびイソ吉草酸メンチルから処理されたポリマー薄膜は、高い架橋度を有する。
【0203】
パートG:
ポリマー薄膜における架橋度の定量化
ポリマーのDSC(示差走査熱量測定)を、周囲雰囲気下、TA analysis Discovery DSCを使用して遂行した。サンプル(約2mg)を、蓋を閉じた標準的なアルミニウムるつぼで測定した。サンプルのサーモグラムを、室温で開始して20K min-1の加熱速度で300℃までの単一の加熱勾配から記録した。温度範囲は、架橋反応が起こるように予備試験運転によって決定した。DSC測定は、ポリマー粉末とポリマー膜を用いて行った。粉末とるつぼとの間の最適な熱接触のため、粉末は、乳鉢で乳棒を用いて粉砕した。ポリマー膜は、50g/Lのポリマー溶液30μlをるつぼに注ぐことによって得た。るつぼを真空チャンバに2時間入れることで、ほとんどの溶媒を除去した。
【0204】
架橋度X(Sx):
【0205】
【0206】
ΔH(Sx)膜中のポリマーのエンタルピー
ΔH(S0)粉末中のポリマーのエンタルピー
本発明の配合物から処理した膜の架橋度は、好ましくは15%より高く、より好ましくは50%より高い。
【0207】
例1~5の5種のIJP溶媒から得られたポリマーPo2膜の膜からのDSC結果を、下記の表6に示す。
【0208】
【0209】
パートH:
溶液中での架橋の速度論的反応
架橋性ポリマーPo2を、様々な溶媒に50g/Lの濃度で溶解させた。ポリマー溶液のそれぞれを複数の1mlガラスボトルに分け、各ボトルを1つの特定の温度で加熱できるようにした。脱気し、アルゴンで覆った後、ボトルを密閉した。ホットプレート上に立つボトル全体(キャップを除く)を覆うアルミニウムブロックにボトルを入れた。これらのボトルのそれぞれを、非均質な溶液を回避するために撹拌しながら固定温度で3時間加熱した。加熱後、ボトルを冷水浴に入れて室温まで冷却した。加熱手順前後の溶液の粘度を、Thermo Scientific(商標)HAAKE(商標)MARS(商標)III Rheometerを使用することにより500s-1のせん断速度で室温で測定した。加熱温度に関する粘度の非常に急速な上昇は、迅速な速度論的反応の特徴である。本発明の配合物は、迅速な架橋反応をもたらす。
【0210】
結果として、30g/Lで比較的少量のエタノールを配合物に添加すると沈殿するインク配合物は、30g/Lで比較的多量のエタノールを配合物に添加すると沈殿するインク配合物よりも、迅速な架橋反応を有する。達成された結果を
図2に示す。
【0211】
パートI:
OLEDデバイスの効率:正孔輸送層処理溶媒の影響
作製方法の説明
予め構造化されたITOとバンク材料で被覆したガラス基板を、イソプロパノール中とその後の脱イオン水での超音波処理を用いて洗浄し、次いで、エアガンを使用して乾燥させ、続いてホットプレート上、230℃で2時間アニーリングした。
【0212】
ポリマー(たとえばポリマーP2)とWO2016/107668A1に記載されているような塩(たとえば塩D1)との組成物を使用した正孔注入層(HIL)を基板上にインクジェット印刷し、真空中で乾燥させた。次いで、HILを空気中225℃で30分間アニーリングした。
【0213】
HILの上に正孔輸送層(HTL)をインクジェット印刷し、真空中で乾燥させ、窒素雰囲気中180℃で30分間アニーリングした。正孔輸送層用の材料として、パートBの本願の例に記載するように、様々な溶媒に7g/Lの濃度で溶解させたポリマーPo2を使用した。
【0214】
緑色発光層(G-EML)を同様にインクジェット印刷し、真空乾燥させ、窒素雰囲気中160℃で10分間アニーリングした。緑色発光層用のインクは、全ての例において、2種のホスト材料(即ち、HM-1およびHM-2)と、3-フェノキシトルエン中12g/Lの濃度で調製した1種の三重項発光体(EM-1)とを含有していた。材料は、下記の比で使用した:HM-1:HM-2:EM-1=40:40:20。材料の構造は、下記である:
【0215】
【0216】
インクジェット印刷法は全て、黄色光の下、周囲条件下で遂行した。
【0217】
可溶性層を、Pixdro LP50プリンタによってDimatixカートリッジから印刷した。印刷法は、各層について、カートリッジからのインク印刷、真空チャンバでの溶媒除去、および熱処理の3工程で構成される。層は真空チャンバ内10-4mbar下で、3.5分間乾燥させた。
【0218】
次いで、デバイスを真空堆積チャンバに移し、そこで、一般的な正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、およびカソード(Al)の堆積を、圧力10-7mbarでの熱蒸発を使用して行った。次いで、グローブボックス内でデバイスの特性評価を行った。
【0219】
正孔阻止層(HBL)には、正孔阻止材料としてETM-1を使用した。材料は、下記の構造:
【0220】
【0221】
を有する。
【0222】
電子輸送層(ETL)には、ETM-1とLiQの50:50混合物を使用した。LiQは、リチウム8-ヒドロキシキノリネートである。
【0223】
最後に、Al電極を蒸着する。次いで、グローブボックスにおいて、カバーガラスを使用してデバイスを窒素中で密封し、周囲空気中で物理的特性評価を遂行した。
【0224】
OLEDは、アノードとカソードをDC源に接続し、電圧勾配を加えることによって特性評価した。次いで、較正したフォトダイオードを用い、様々な電圧で入射光子電流を測定した。
【0225】
同時に、発生した光電流を、Keithley製6485ピコアンペアメーターのフォトダイオードによって測定した。OLEDの発光効率は、輝度対電流密度の比:
【0226】
【0227】
として定義することができ、cd/A単位の発光効率がηL、cd/m2単位の輝度がL、およびmA/cm2単位の電流密度がjである。電流密度は、
【0228】
【0229】
によって計算され、電流がIであり、有効面積A=4.606mm2である。
【0230】
結果および考察
3つのOLEDデバイスを印刷し、そこで、正孔輸送処理溶媒の影響を調べた。HTLは、1-メチルナフタレン、3-フェノキシトルエンまたはイソ吉草酸メンチルの何れかから処理した。
図3に見られるように、HTLを1-メチルナフタレンで処理することにより得られたOLEDデバイスは、非常に低い発光効率を示し、一方、イソ吉草酸メンチルを使用してHTLを処理することにより得られたOLEDデバイスは、高効率を呈する。
【0231】
結果として、30g/Lで比較的少量のエタノールを配合物に添加すると沈殿する溶媒を含有するインク配合物は、HTLの処理に使用した場合、30g/Lで比較的多量のエタノールを配合物に添加すると沈殿する溶媒を含有するインク配合物よりも、高いOLEDデバイス効率を示す。
【国際調査報告】