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特表2022-529773新生児オピオイド離脱症候群を処置するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(54)【発明の名称】新生児オピオイド離脱症候群を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/485 20060101AFI20220617BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A61K31/485
A61P25/36
A61K9/08
A61K47/38
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561651
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060811
(87)【国際公開番号】W WO2020212549
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/835,711
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591095465
【氏名又は名称】キエシ・フアルマチエウテイチ・ソチエタ・ペル・アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】チェッラ,マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,メラン アン
(72)【発明者】
【氏名】クラフト,ウォルター カール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB22
4C076CC01
4C076DD43
4C076DD43Z
4C076EE31
4C076EE31G
4C076EE32
4C076EE32G
4C076FF11
4C076FF67
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB23
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA57
4C086NA06
4C086NA10
4C086ZC39
4C086ZC51
(57)【要約】
ブプレノルフィンを含む製剤は、オピオイド離脱症候群を処置するために有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブプレノルフィンまたはその薬学的に許容される塩を含む、噴射剤不含水溶液の形態の、オピオイド禁断症候群の処置に使用するための医薬製剤であって、エタノールを実質的に含まず、1~90日の間からなる期間、舌下および/または口腔内投与される、医薬製剤。
【請求項2】
前記期間が3~70日の間からなる、請求項1に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項3】
前記オピオイド禁断症候群が新生児オピオイド離脱症候群(NOWS)である、請求項1または2に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項4】
前記ブプレノルフィンが8~12マイクログラム/kg出生時体重の初回量において、1日3回、24~36マイクログラム/kg出生時体重の総1日用量で新生児に投与され、前記新生児のFinnegan評価スコアが18~24である場合、前記初回量が維持され、前記新生児の前記Finnegan評価スコアが24を超える場合、前記ブプレノルフィンの前記用量は、4~6マイクログラム/kg出生時体重の漸増により、最大26~34マイクログラム/kg出生時体重の最大用量まで増大され、1日3回、78~102マイクログラム/kg出生時体重の総1日用量で投与され、前記新生児のFinnegan評価スコアが18を下回る場合、ウィーニングが開始される、請求項3に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項5】
前記ブプレノルフィンが約10マイクログラム/kg出生時体重の初回量において、1日3回、約30マイクログラム/kg出生時体重の総1日用量で投与され、前記新生児の前記Finnegan評価スコアが18~24である場合、前記初回量が維持され、前記新生児の前記Finnegan評価スコアが24を超える場合、前記ブプレノルフィンの前記用量は、約5マイクログラム/kg出生時体重の漸増により、最大約30マイクログラム/kg出生時体重の最大用量まで増大され、1日3回、約90マイクログラム/kg出生時体重の総1日用量で投与され、前記新生児のFinnegan評価スコアが18を下回る場合、ウィーニングが開始される、請求項4に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項6】
(i)唯一の有効成分としての、製剤の容量に対して0.005~0.02%w/vのブプレノルフィンまたは薬学的に許容されるその塩;
(ii)製剤の容量に対して0.6~10%w/vの増粘剤;および
(iii)5.0~7.0のpHを提供するのに十分な量の緩衝剤
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記ブプレノルフィンがその塩酸塩の形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項8】
5.2~6.8のpHを有する、請求項6または7に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項9】
5.5~6.5のpHを有する、請求項8に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項10】
25±2℃で500~2300mPasの粘度を有する、請求項6から9のいずれか一項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項11】
25±2℃で700~2100mPasの粘度を有する、請求項10に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項12】
前記増粘剤がセルロース誘導体である、請求項6から11のいずれか一項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項13】
前記増粘剤がヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムである、請求項12に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項14】
前記緩衝剤がクエン酸およびクエン酸ナトリウムで作製される、請求項6から13のいずれか一項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項15】
塩基として表される、製剤の容量に対して0.05~0.01%w/vのブプレノルフィン塩酸塩;
製剤の容量に対して1.5%w/vのヒドロキシエチルセルロース、または製剤の容量に対して6.0%w/vのカルボキシメチルセルロースナトリウム;
製剤の容量に対して0.12%w/vの無水クエン酸;
製剤の容量に対して1.13%w/vの無水クエン酸ナトリウム;および
注射用水
から本質的になる、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新生児禁断症候群(Neonatal abstinence syndrome)の処置に関する。特に、本発明は、新生児オピオイド離脱症候群を有する乳児を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新生児禁断症候群(NAS)は、母親から移されたオピオイドの突然の離脱に関連する、出産後の期間の徴候および症状の複合体である。主な発現症状には、筋肉の緊張の増大、自律神経の不安定性、易刺激性、吸引反射の低下および体重増加の障害などが挙げられる。
【0003】
新生児オピオイド離脱症候群(NOWS)は、新生児禁断症候群(NAS)のサブセットであり、オピオイド薬物からの新生児の離脱を指し、他の薬物離脱症候群の存在下で起こることがある。NOWSは、中枢神経系および自律神経系ならびに胃腸管に主に関与する一般的な多系統疾患である。米国においては、子宮内のオピオイド曝露に続く新生児の離脱は、典型的には、母親の妊娠中の、違法なまたは処方されたオピオイドの持続的な使用および/または乱用の結果である。出生により、胎児の物質曝露が突然中断され、回復の長期化およびより長い入院を伴う重度の健康上の合併症を生じることのある、急性の離脱症状を引き起こすことがある。離脱は、重度かつ激しいことがあり、曝露された新生児の推定60%~80%が、症状を管理するために薬理学的介入を必要とする(Kraft, Walter K.; Stover, Megan W.; Davis, Jonathan M. Neonatal abstinence syndrome: Pharmacologic strategies for the mother and infant Seminars in Perinatology 40.3 (Apr 1, 2016): 203-212、およびTolia VN, Patrick SW, Bennett MM, et al. Increasing incidence of the neonatal abstinence syndrome in U.S. neonatal ICUs. N Engl J Med. 2015;372(22): 2118- 2126を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0004】
NOWSの徴候および症状は、急性のオピエート離脱を経る成人により経験されるものと類似するが、乳児は健康状態のすべての面について他者に依存するため、新生児に対してより高いリスクを生じる。
【0005】
NOWSの呈する徴候には、中枢神経系の過剰興奮性(振戦、びくつき、易刺激性、過活動性の筋肉反射および過剰な高調号泣)、自律神経系の調節解除および不安定性(頻呼吸、鼻翼呼吸、食欲亢進、体温の不安定性、不眠症、発汗、斑状の皮膚、欠伸およびくしゃみ)、ならびに胃腸管症状(下痢、嘔吐および授乳不良)が挙げられる(Hudak ML, Tan RC. The Committee on Drugs and the Committee on Fetus and Newborn. Neonatal Drug Withdrawal. Pediatrics. 2012;129; e540、およびKocheriakota P. Neonatal Abstinence Syndrome. Pediatrics. 2014;134(2): e547-561を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。痙攣は、一般的には稀であるが、特に医学的処置が遅れた場合には、重度オピオイド離脱の早期において新生児症例の2%~11%に生じると報告されている(Doberczak TM, Kandall SR, Wilets I. Neonatal opiate abstinence syndrome in term and preterm infants. J Pediatr 1991; 118: 933-7を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。米国の46の州におけるメディケイド嬰児の近年の大規模観察コホート試験は、痙攣の発生率が1705例の観察されたNAS症例のうち2.7%であったことを報告した(Desai, R.J., Hernandez-Diaz, S., Bateman, B.T. & Huybrechts, K.F. Increase in prescription opioid use during pregnancy among Medicaid-enrolled women. Obstet. Gynecol. 123, 997-1002 (2014)を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。NOWSを有する新生児は、多くの場合に授乳不良、嘔吐、悪心および下痢の組合せから生じる、体重減少または発育不良も経験することがある(Kocheriakota P. Neonatal Abstinence Syndrome. Pediatrics. 2014;134(2): e547-561を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。未処置のままである場合、NOWSの一部の症例は死にさえ至る(Sutter 2014)。オピエート離脱のあまり重度でない徴候および症状のいくつかは、数ヶ月持続することがある(Hudak ML, Tan RC. The Committee on Drugs and the Committee on Fetus and Newborn. Neonatal Drug Withdrawal. Pediatrics. 2012;129; e540を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0006】
NOWSの発症、持続期間および重症度は、いくつかの因子:オピエート曝露の種類、母胎間の薬物移行可能性、多剤曝露、オピエート曝露の時間および持続期間、胎盤および胎児の薬物濃度、排出速度、オピエート受容体の空間提示および密度、ならびに在胎期間に依存する(Hudak ML, Tan RC. The Committee on Drugs and the Committee on Fetus and Newborn. Neonatal Drug Withdrawal. Pediatrics. 2012;129; e540, and Kraft, Walter K.; Stover, Megan W.; Davis, Jonathan M. Neonatal abstinence syndrome: Pharmacologic strategies for the mother and infant Seminars in Perinatology 40.3 (Apr 1, 2016): 203-212を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0007】
この離脱症候群のリスクのある新生児の管理は、以下に基づく:
好ましくは母親の妊娠中の物質曝露の特定による、リスクのある新生児の特定;
非薬理学的ケアの早期の開始(この第一選択の治療は、母親および嬰児の両方に対して好適な支持的環境を提供し、ストレスへの曝露を最小化し、必要に応じて母乳授乳を奨励する);
離脱の症状および徴候をモニタリングする;ならびに
離脱の症状および徴候が非薬理学的ケアで管理することができないほど重度である場合に開始される、薬理学的ケア。
【0008】
Patrick SW, Schumacher RE, Horbar JD, et al. Improving Care for Neonatal Abstinence Syndrome. Pediatrics. 2016;137(5):e20153835を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
他の薬物離脱症候群の併発を有するかまたは有しないNOWSの処置についてFDAが承認した薬物は存在しないが、オピオイド置換が第一選択の薬物治療処置であろうという新生児学コミュニティ内での総意がある(Hudak ML, Tan RC. The Committee on Drugs and the Committee on Fetus and Newborn. Neonatal Drug Withdrawal. Pediatrics. 2012;129; e540, Kocheriakota P. Neonatal Abstinence Syndrome. Pediatrics. 2014;134(2): e547-561、およびJansson LM, Velez M, Harrow C. The opioid-exposed newborn: assessment and pharmacologic management. J Opioid Manag 2009;5(1):47-55を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。モルヒネは、子宮内のオピオイド曝露に続く新生児離脱の処置のために最も多くの場合に使用されるオピオイドであり、次にメサドンが続き、いくつかの病院はブプレノルフィンを使用する。モルヒネは薬理学的処置を必要とするNASの症例の80%超において使用されるが(Patrick SW, Schumacher RE, Horbar JD, et al. Improving Care for Neonatal Abstinence Syndrome. Pediatrics. 2016;137(5):e20153835を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、合意を得た標準治療または処置レジメンは存在せず(Kraft, Walter K.; Stover, Megan W.; Davis, Jonathan M. Neonatal abstinence syndrome: Pharmacologic strategies for the mother and infant Seminars in Perinatology 40.3 (Apr 1, 2016): 203-212を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、最適な薬理学的処置のプロトコールは、大規模で管理良好な試験において確立されていない。
【0010】
市販のモルヒネおよびメサドンの液体製剤は、いくつかの理由から新生児集団には好適でない。これらは不適切に高濃度のオピオイドを含有し、投与前に病院薬局内または新生児看護職員による即時製剤または希釈液の現地の調合を必要とし、投薬過誤のリスクを増大させる。市販の液体製剤は、高頻度で、新生児集団において禁忌であるかまたは所望されないアルコールおよび他の保存剤および賦形剤を含有する。アルコール不含のモルヒネ溶液は利用可能であるが、市販のメサドン溶液はアルコールを含有する。したがって、現在利用可能なNOWSの薬理学的処置は、新生児に、投薬過誤のリスク、即時製剤の現地での調合に関連する他の危険、ならびに新生児集団において禁忌であるかまたは所望されないアルコール、他の保存剤および賦形剤への曝露のリスクを残す。
【0011】
ブプレノルフィンは、NOWSの処置において魅力的な薬剤となるいくつかの特徴を有する。ブプレノルフィンは長時間作用型のμ-オピオイド受容体部分アゴニストおよびκ-オピオイド受容体アンタゴニストである。長い半減期および作用持続時間は、離脱を引き起こすことのある受容体占有の急速な変化を防止し、簡易化した投薬レジメンを開発することを可能とするであろう。舌下ブプレノルフィンは、メサドンに伴う心血管系への負担を有しないことを示す。心血管系への負担を有しないことに関連し、舌下ブプレノルフィンは成人において十分に確立された安全性プロファイルを有する。さらに、ブプレノルフィンは、オピオイドのうち、用量依存的でありブプレノルフィンの長い半減期に関連して天井効果を有する呼吸抑制の発生率が最も低い(Elkader A, Sproule B. Buprenorphine: clinical pharmacokinetics in the treatment of opioid dependence. Clin Pharmacokinet. 2005;44(7):661-80, Walsh SL, Preston KL, Stitzer ML, et al. Clinical Pharmacology of buprenorphine: ceiling effects at high doses. Clin Pharmacol Ther. 1994; 55:569-80, Ohtani M. Basic pharmacology of buprenorphine. Eur J Pain Suppl. 2007; 1:69-73, Heel RC, Brodgern RN, Speight TM, Avery GS. Buprenorphine: a review of its pharmacological properties and therapeutic efficacy. Drugs. 1979;17(2):81-110.dependent rat pups. BS Stoller et al.; Pediatric Anesthesia; 2004 14: 642-649を参照のこと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。しかし、ブプレノルフィンはエタノール含有溶液として利用可能である。
【0012】
さらに、エタノールを避けることに加えて、新生児集団の服薬遵守に好都合でありながら、治療レジメンを簡素化する目的で、ブプレノルフィンを投与するための新規の治療レジメンを提供することは有利であろう。
【0013】
上記の考察の観点から、新生児禁断症候群、特にNOWSを処置するためのより安全かつ有効な方法を開発する必要が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、オピオイド禁断症候群の処置のための新規の方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0015】
新生児オピオイド離脱症候群(NOWS)を処置するための新規の方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
よって、第1の態様においては、本発明は、ブプレノルフィンまたはその薬学的に許容される塩を含む、水溶液形態の噴射剤不含製剤であって、エタノールを実質的に含まず、1~90日の間からなる期間、より好ましくは3~70日の間からなる期間、舌下および/または口腔内投与される、製剤を対象とする。
【0017】
有利には、オピオイド禁断症候群は、新生児オピオイド禁断症候群、好ましくは新生児オピオイド離脱症候群(NOWS)である。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態は、ブプレノルフィンまたはその薬学的に許容される塩を含む、新生児オピオイド離脱症候群の処置に使用するための水溶液形態の噴射剤不含製剤であって、エタノールを実質的に含まず、前記ブプレノルフィンが8~12マイクログラム/新生児のkg出生時体重の初回量において、1日3回、24~36マイクログラム/kg出生時体重の総1日用量で投与される、製剤を指す。
【0019】
特定の一実施形態においては、前記新生児のFinnegan評価スコアが18~24である場合、初回量が維持される。
【0020】
そうでなければ、前記新生児のFinnegan評価スコアが24を超える場合には、前記ブプレノルフィンの用量は、4~6マイクログラム/kg出生時体重の漸増により、最大26~34マイクログラム/kg出生時体重の最大用量まで増大され、1日3回、78~102マイクログラム/kg出生時体重の総1日用量で投与される。
【0021】
あるいは、前記新生児のFinnegan評価スコアが18を下回る場合、ウィーニングが開始される。
【0022】
第2の態様においては、本発明は、ブプレノルフィンまたはその薬学的に許容される塩を含む、水溶液形態の噴射剤不含製剤であって、エタノールを実質的に含まない製剤の、オピオイド禁断症候群の処置のための医薬の製造における使用であって、前記製剤が、1~90日の期間、より好ましくは3~70日の期間、舌下および/または口腔内投与される、使用を指す。
【0023】
本発明は、ブプレノルフィンまたはその薬学的に許容される塩を含む有効量の製剤がそれを必要とする患者に投与される、対応する治療法も指す。
【0024】
定義
ブプレノルフィンに関連して、「薬物」、「有効成分」および「活性物質」という用語は、互換的に使用される。
【0025】
「新生児」、「新生子」および「乳児」という用語は、互換的に使用される。
【0026】
「オピオイド禁断症候群」および「オピエート離脱症候群」という用語は、互換的に使用される。
【0027】
「安全」という用語は、舌下投与に好適であり、新生児に忍容性良好であり、前記患者集団にとって有害、抗原性または毒性であり得る賦形剤を含まない、医薬製剤を意味する。
【0028】
「口腔内および/または舌下投与」という用語は、全身薬物デリバリーのために最も一般的に使用される、粘膜領域、すなわち物質が口腔粘膜(口腔の内側を覆う組織)を通して舌の下の組織から血中に拡散する薬理学的投与経路を包含する。口腔内/舌下経路は、GI管を回避し、よってこの方法において吸収される薬物は肝臓および初回通過代謝を回避し、全身循環へと直接アクセスする。
【0029】
「pH微小環境」という用語は、製剤を即時に囲む患者の口腔領域のpHを指す。
【0030】
すぐに使える製剤について、「物理的に安定」という表現は、長期の条件下(25℃±2℃、60%±2%相対湿度)、少なくとも1ヶ月の保存の間に有効成分および/または賦形剤の沈殿を実質的に呈さない製剤を指す。
【0031】
低い濃度の有効成分の決定に関する分析的な困難のために、「化学的に安定」という表現は、保存の際にブプレノルフィン含有量の±15%以下の変化を示し、少なくとも1ヶ月の保存の際に、薬物に関連する分解生成物を5%より高い量において有しない製剤を指す。
【0032】
「生物学的に同等」という用語は、異なる製品において、所定の有効成分について80%~125%のCmaxおよびAUC値を得ることを意味する。
【0033】
「治療有効量」という用語は、新生児に送達される場合に所望の生物学的効果を提供する有効成分の量を意味する。
【0034】
「処置」という用語は、緩和、治癒、症状緩和、症状軽減、疾患回復を誘導する療法のための治療的使用を指す。
【0035】
「本質的に~からなる」という用語は、必須の賦形剤として増粘剤および緩衝剤のみを含む製剤を示すために使用される。例えば、これは甘味剤および/または着香剤を含み得るが、賦形剤、例えば浸透強化剤(permeation enhancer)を含み得ない。
【0036】
「ウィーニング」という用語は、著しい離脱の不快感を避けるためのオピオイドの段階的な日々の減少からなる、病院内の適所における手順を指す。
【0037】
「Finnegan評価スコア」という用語を用いて、Loretta Finneganにより開発された、オピエートに曝露した乳児における離脱の評価において医療提供者を支援するための、Finnegan新生児禁断スコア付け手段(Finnegan Neonatal Abstinence Scoring Tool)(FNAST)が意味される。この手段は、乳児の離脱期間を通して評価されスコア付けされる、21の離脱徴候の列挙を含有する(Finnegan LP, Connaughton JF Jr, Kron RE, and Emich JP Addict Dis 1975, 2(1-2), 141-148)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ブプレノルフィンは、オピオイド受容体に対するその活性のために、オピオイド禁断症候群、特に新生児オピエート禁断症候群の処置のために首尾良く使用することができる。
【0039】
したがって、本発明の目的は、オピエート離脱症候群(OWS)に罹患した患者、好ましくは新生児OWS(以下、NOWS)に罹患した患者に対する舌下および/または口腔内投与による有効な処置のための安全な医薬製剤を提供することである。
【0040】
前記安全な製剤は、噴射剤不含の水性媒体中に溶解したブプレノルフィンを含むこととする。
【0041】
本発明の治療法は、経験的に得られた先行技術のレジメンと比較して、修正版Finneganスコア(modified Finnegan score)により測定された場合のより速やかな症状の安定化、補助的薬物の使用の減少、およびより短い処置の全体の長さを得ることを可能とする。
【0042】
さらに、エタノールの使用を避けることに加えて、本発明の治療法は、先行技術のレジメンよりも簡素であり、新生児集団の服薬遵守に好都合であることが判明した。
【0043】
本発明の製剤は、新生児、および小児または若者(adolescents)に投与することができる。
【0044】
本発明の製剤は、使用前に即時に溶解するための乾燥粉末の形態であるか、すぐに使える製剤の形態であることができる。
【0045】
再溶解するための乾燥粉末として調剤される場合、本製剤は公知の方法により調製することができ、a)粉末状の医薬製剤;b)薬学的に許容される水性媒体;c)シリンジ;d)医薬製剤、水性媒体およびシリンジを含有するための容器手段を含むキットとして提供することができる。
【0046】
すぐに使える製剤が、好ましく使用される。
【0047】
ブプレノルフィンは、塩基として、または無機もしくは有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびトルエンスルホン酸を用いて形成された薬学的に許容される塩の形態において利用される。
【0048】
好ましくは、ブプレノルフィンは塩酸塩として提供される。
【0049】
有利には、有効成分の濃度は、遊離塩基として表される場合、製剤の容量に対して0.005~0.02%w/v、好ましくは0.006~0.01%w/vである。
【0050】
本発明の特定の一実施形態においては、ブプレノルフィン塩酸塩の濃度は、遊離塩基として表される場合、製剤の容量に対して0.0075%w/vである。
【0051】
増粘剤の濃度は、製剤の容量に対して0.6%~10%w/vの間、好ましくは0.8%~8.0%w/vの間であることとする。増粘剤の種類および量は、製剤を可能なかぎり患者の舌の下に保持し、胃腸管を通した吸収を最小化するために、十分な粘度を達成するように適切に選択されることとする。
【0052】
同時に、基剤からの有効成分の放出、よってその局所吸収を妨害するほど粘度を高くするべきではない。
【0053】
より好ましくは、増粘剤の濃度は、製剤の容量に対して1.0~6.0%w/vの間であることができる。
【0054】
特定の一実施形態においては、前記濃度は、製剤の容量に対して1.0%w/v、または1.5%w/v、または2.0%w/v、または6.0%w/vである。
【0055】
有利には、増粘剤は、水溶性多糖、例えばアルギン酸塩、カラギーナン、ペクチン、セルロースの水溶性誘導体:アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースエステル、およびヒドロキシアルキルセルロースエステル、例えば酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、例えばカルボキシメチルセルロースおよびこれらのアルカリ金属塩;水溶性合成ポリマー、例えばポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸およびポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリクロトン酸から選択することができ;フタル化ゼラチン、コハク酸ゼラチン、架橋ゼラチン、シェラック、デンプンの水溶性化学誘導体、例えば3級または4級アミノ基、例えば必要に応じて4級化され得るジエチルアミノエチル基を有するカチオン変性アクリレートおよびメタクリレートも好適である。
【0056】
好ましくは、増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはカルボキシメチルセルロース(CMC)のアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩からなる群から選択される水溶性セルロース誘導体である。
【0057】
事実、前記クラスに属する増粘剤は好適な粘度を提供することができるが、ガムのクラスの他の薬剤、例えばキサンタンガムを用いると、製剤の粘度は高すぎることが判明した。
【0058】
有利には、25±2℃での製剤の粘度は、500~2300mPas(1mPasは1センチポアズに対応する)、好ましくは700~2100mPasであることとする。粘度は、任意の公知の方法により、例えばレオメーターを使用して決定することができる。
【0059】
有利には、本発明の製剤のpHは5.0~7.0、より有利には5.2~6.8、好ましくは5.5~6.5であることとする。
【0060】
実際に、7.0より高いpHにおいては、本発明の製剤はより低い化学的および物理的安定性を呈することがあることが見出された。
【0061】
その全体が本明細書において参照により組み込まれるEP 2 461 795において報告されたものとは対照的に、前記pH間隔は有効成分の唾液中への沈殿を避け、その吸収に好都合であることが見出された。
【0062】
理論により限定されるものではないが、これはpH微小環境(唾液/粘膜界面)に関する移行が起こらないためであり得る。
【0063】
粘膜付着試験の結果も、本発明の製剤が、特に水溶性セルロース誘導体が増粘剤として使用される場合に、基剤からの有効成分の放出を妨害することなく患者の舌の下へのその保持を可能とするための粘度に関する最適な性質を備えることを示している。
【0064】
さらに、インビトロ(in-vitro)の浸透実験によると、水溶性セルロース誘導体が使用される場合、本発明による好ましい製剤は、5.5~6.5のpH、および製剤の容量に対して1.0%~2.0%w/v、より好ましくは1.5%w/vの増粘剤の量を有する。このクラスの好ましい増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロースのようなものであることとする。前記賦形剤は、Natrosol 250 HX(商標)として市販されている。
【0065】
インビトロの浸透試験は、口腔粘膜を超える薬物の通過を擬態し、その放出の速度の決定を可能とする。
【0066】
上述のpHを提供することが可能な任意の緩衝剤、例えばナトリウム塩またはカリウム塩としてのリン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液を使用することができる。当業者は、適切な量を決定することとする。
【0067】
本発明の好ましい一実施形態においては、無水クエン酸および無水クエン酸ナトリウムが緩衝剤として使用される。
【0068】
本発明の製剤は、他の賦形剤、例えば着香剤および/または甘味剤も含有することができる。
【0069】
着香剤は、天然および合成の香味液から選択することができる。そのような薬剤の例示的な列挙には、揮発油、合成香味油、香味芳香剤(flavoring aromatics)、油、液体、含油樹脂または植物、葉、花、果実、茎に由来する抽出物およびそれらの組合せが挙げられる。例の代表的な列挙には、ミント油、ココアおよび柑橘油、例えばレモン、オレンジ、ブドウ、ライムおよびグレープフルーツ、ならびにリンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル、アンズまたは他の果実の風味を含む果実精が挙げられる。
【0070】
他の有用な着香味剤には、アルデヒドおよびエステル、例えばベンズアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、シトラール、すなわちアルファ-シトラール(レモン、ライム)、ネラール、すなわちベータ-シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、アルデヒドC-8(柑橘果実)、アルデヒドC-9(柑橘果実)、アルデヒドC-12(柑橘果実)、トリルアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、2,6-ジメチルオクタノール(青玉果)、および2-ドデセナール(シトラス、マンダリン)、それらの組合せ等が挙げられる。
【0071】
甘味剤は、以下の非限定的な列挙から選択される:グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、それらの組合せ;サッカリンおよびその様々な塩、例えばナトリウム塩;ペプチド甘味剤、例えばアスパルテーム;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;ステビア(Stevia rebaudiana)(ステビオシド);スクロースのクロロ誘導体、例えばスクラロース;糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール等。加水分解水添デンプン(hydrogenated starch hydrolysates)および合成甘味剤3,6-ジヒドロ-6-メチル-1-1-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシド、特にそのカリウム塩(アセスルファム-K)ならびにナトリウム塩およびカルシウム塩も企図される。他の甘味剤も使用することができる。
【0072】
典型的には、当業者は、甘味剤および/または着香剤を、新生児投与について安全と考えられるものの中から選択することとする。
【0073】
好ましくはないが、本発明による製剤は、浸透強化剤、例えばプロピレングリコールおよびポリオキシル水添ヒマシ油誘導体、例えばポリオキシル40水添ヒマシ油(Kolliphor RH40(商標)として市販されている)も含有することができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態においては、製剤は以下の組成を有する:塩基として表される場合、製剤の容量に対して0.05~0.01%w/vのブプレノルフィン塩酸塩、製剤の容量に対して1.5%w/vのヒドロキシエチルセルロース、製剤の容量に対して0.12%w/vの無水クエン酸、製剤の容量に対して1.13%w/vの無水クエン酸ナトリウム、および注射用水。そのpHは6.0±0.3であることとする。
【0075】
本発明の代替的な好ましい実施形態においては、製剤は以下の組成を有することができる:塩基として表される場合、製剤の容量に対して0.05~0.01%w/vのブプレノルフィン塩酸塩、製剤の容量に対して6.0%w/vのカルボキシメチルセルロースナトリウム、製剤の容量に対して0.12%w/vの無水クエン酸、製剤の容量に対して1.13%w/vの無水クエン酸ナトリウム、および注射用水。そのpHは6.0±0.3であることとする。
【0076】
舌下および/または口腔内投与の動物モデルにおいて、前述の組成を有する水性製剤は、Kraft et al., Pediatrics 2008, 122(3), e601-607において開示されているアルコール製剤に対して生物学的に同等であると判明したことが見出された。理論により限定されるものではないが、エタノールは通常は吸収に好都合であり得、これはむしろ驚くべきことであるように思われる。
【0077】
したがって、本発明の好ましい一実施形態においては、製剤は、唯一の有効成分としてのブプレノルフィンの薬学的に許容される塩、増粘剤、5~7.0のpHを提供するのに適切な量の緩衝剤、ならびに適宜、着香剤および/または甘味剤のみからなることとする。
【0078】
特に、本方法において使用される製剤は、エタノールを実質的に含まない。エタノールを実質的に含まないことにより、製剤が1wt.%未満のエタノール、好ましくは0.5wt.%未満のエタノール、より好ましくは0.1wt.%未満のエタノール、さらにより好ましくは0.01wt.%未満のエタノールを含有し、さらにより好ましくはエタノールを含有しないことが意味される。
【0079】
本発明による製剤は、公知の方法によって調製することができる。
【0080】
特定の一実施形態においては、本発明の製剤は、以下の工程によって調製される:
(i)好適な量のブプレノルフィンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくはその塩酸塩を、適切な容器中で水中に溶解し、濃縮された透明な溶液を得る工程;
(ii)適宜、工程(i)において得られた溶液をろ過により滅菌する工程;
(iii)並行して、妥当な量の緩衝剤を、透明な溶液が得られるまで好適な容積測定用容器内で水中に溶解する工程;
(iv)適宜、工程(iii)において得られた溶液を加熱により滅菌する工程;
(v)妥当な容量のブプレノルフィン濃縮溶液を緩衝剤溶液に添加し、ブプレノルフィンの所望の最終濃度、好ましくは0.05~0.01mg/mL(遊離塩基として)を、連続撹拌下で混合しながら得る工程;および
(vi)適切な量の増粘剤を、連続撹拌下で増粘剤が完全に溶解し、透明で均質な溶液が得られるまで、工程(v)の溶液にゆっくりと添加する工程。
【0081】
好ましくは、水は注射用水(WFI)である。
【0082】
工程(i)において、濃度は、0.1~0.5mg/ml、好ましくは0.2~0.4mg/mlで変動し、より好ましくは0.324mg/mLである。
【0083】
有利には、工程(i)および(iii)における容器は、任意の好適な材料、例えばプラスチックまたはガラスで作製することができる。
【0084】
工程(ii)および(iv)の滅菌手順は、当該技術分野において公知の方法により実行されることとする。
【0085】
特に、工程(ii)におけるフィルタの間隙率および工程(iv)における加熱の温度は、当業者により好適に調節されることとする。
【0086】
最終製剤は、無菌条件下で、好適な容器中に分配されることとする。
【0087】
有利には、本発明による製剤は、任意の重症度のオピオイド禁断症候群の処置のために使用することができる。
【0088】
好ましくは、本発明の製剤は、他の薬物への曝露を有するかまたは有しないオピオイド離脱症候群(OWS)に罹患した患者の処置、より好ましくはNOWSに罹患した新生児の処置のために使用することができる。
【0089】
後者の症例においては、典型的には、ブプレノルフィン投薬量は1日あたり10~110マイクログラム/kg出生時体重の間、好ましくは1日あたり30~90マイクログラム/kg出生時体重の間で変動することができ、2回以上の投薬に、好ましくは3回の投薬に分けて、1~90日、好ましくは3~70日にわたる期間、投与することができる。
【0090】
処置の用量および持続期間は、いずれにせよ、新生児の体重および新生児禁断症候群の重症度に依存して、医師により調節されることとする。
【0091】
NOWSの処置のために使用される場合、製剤は舌の下にシリンジにより注がれ、続けて、嚥下を減少させるために新生児の口内におしゃぶりを挿入してもよい。
【0092】
0.1~2.5mlの間、より有利には0.5~2.0mlの間からなる容量の任意の市販のシリンジを使用することができる。
【0093】
0.5mlまたは1.0mlのシリンジを、好ましく使用することができる。
【0094】
シリンジは、プラスチック、ガラスまたは任意の好適な材料、好ましくはプラスチック、より好ましくはシクロ-オレフィンポリマー(COP)で作製することができる。
【0095】
例えば、Becton Dickinson(New Jersey、USA)からのシリンジが好適であろう。
【0096】
本発明の好ましい一実施形態においては、すぐに使える製剤は、シリンジ中、好ましくはCOP中に、ルアーロックを有しないプレフィルド(pre-filled)として提供されるであろう。
【0097】
例として、好適なプレフィラブルシリンジは、Gerresheimer AG(Dusseldorf、Germany)から市販されている。
【0098】
これらが新生児に用いられる場合、前記プレフィラブルシリンジは針を有さず、好ましくは誤飲の事例において新生児の窒息を避けるのに十分に大きい好適なキャップを備えることとする。
【0099】
代替的な一実施形態においては、本発明の医薬製剤を、すぐに使える水溶液または好適な水性媒体中で再構成される粉末のいずれかの形態において、好適なシリンジと組み合わせて含む包装を提供することができる。
【0100】
典型的には、在胎期間(GA)≧36週であり、好ましくは3回の連続するFinnegan評価スコアの和≧24を有する新生児が処置されることとする。Finneganスコアの定義は、Kraft KW et al., New Engl J Med, 2017, 376 (24)-2341-2348においても報告されている。Finnegan評価スコアの詳細は、手動で、またはappとも称されるモバイルアプリケーション、すなわち、携帯端末、例えば電話、タブレットまたは他の電子器具上で実行されるように設計されたコンピュータープログラムまたはソフトウェアアプリケーションを通して行うことができる。
【0101】
新生児禁断症候群についての症状スコアは、2020年2月20日にオンラインで公開されたChervoneva I et al J Perinatology https://doi.org/10.1038/s41372-020-0606-4において報告されているように確立することもできる。
【0102】
本発明の治療法によると、新生児は、ブプレノルフィン製剤の舌下投薬を、10マイクログラム/kgの開始用量にて8時間毎に受けることとする。
【0103】
他のパラメーター、例えば処置の持続期間は、症状の重症度、出生時の体重、性別等に基づき、医師により調節されることとする。
【0104】
好ましい薬量学スキームによると、初回量は先行技術に対してより高く(8~12マイクログラム/kg、好ましくは10マイクログラム/kg対5~6マイクログラム/kg)、より速い用量漸増(up-titration)を有する。用量の増加は、前の用量のパーセンテージ(25%)よりもむしろ、固定された一定量(4~6マイクログラム/kg、好ましくは5マイクログラム/kg)に基づく。ウィーニングは、好ましくはより速い(15%対10%)。最終的に、用量が開始用量と同じ値に戻ると、投与の頻度は8時間毎から12時間毎、次に24時間毎へと移動する。特に好ましい投薬レジメンにおいては、初回量は8~12マイクログラム/kg、好ましくは10マイクログラム/kg、1日3回、24~36マイクログラム/kg、好ましくは30マイクログラム/kgの総1日用量である。Finnegan評価スコアが18~24である場合、初回量が維持される。Finnegan評価スコアが24を超える場合、用量は4~6マイクログラム/kg、好ましくは5マイクログラム/kg漸増により、最大26~34マイクログラム/kg、好ましくは30マイクログラム/kg、1日3回、78~102マイクログラム/kg、好ましくは90マイクログラム/kgの総1日用量に増大される。Finnegan評価スコアが18を下回る場合、ウィーニングが開始される。上記の量においては、マイクログラム/kgは出生時の体重のkgあたりのマイクログラムを表す。
【0105】
本発明の他の特性は、本発明の例示のために示され、それらの限定として意図されない、以下の代表的な実施形態の説明の過程において明らかとなるであろう。
【実施例
【0106】
[実施例1]
【0107】
製剤1。
以下の製剤を調製した:
【0108】
【表1】
[実施例2]
【0109】
NOWSの処置。
無作為化多施設二重盲検化ダブルダミー並行群間比較試験において、他の薬物離脱症候群の併発を有するかまたは有しない新生児オピオイド離脱症候群(NOWS)を有する99名の嬰児を無作為化し、実施例1の製剤またはモルヒネ処置に加えて対応する適合したプラセボを投与する。
【0110】
薬理学的処置を、NOWSの徴候を示し、非薬理学的ケアに反応できなかった嬰児において、出産(delivery)の最大7日後に開始する。離脱徴候を、事前に定義された修正版Finnegan新生児禁断評価手段を使用して評価する。評価を、4時間(±1時間)毎に記録する。
【0111】
無作為化リストに従って、嬰児を2群のうち1群に割り付ける:
・試験群:嬰児は、実施例1の製剤の舌下用量を、10μg/kgの開始用量にて8時間毎に受ける(出生時体重により調節される)。
・対照群:嬰児は、モルヒネの経口用量を、0.07mg/kgの開始用量にて4時間毎に受ける(出生時体重により調節される)。
【0112】
薬理学的処置は、以下の段階;開始、増大、安定化、ウィーニングおよび中断からなる。処置および用量調節についての必要性の評価は、Finnegan新生児禁断スコア付け手段(FNAST)を使用して評価された離脱の臨床徴候に基づき、オピオイド処置の最後の投薬の少なくとも48時間後まで続けられる。薬物用量の再検討は毎日行われ、時宜にかなう用量調節を確実にするために、増大段階の間はより頻繁に行われる。
【0113】
フォローアップの持続期間は、最終のオピオイド処置投薬後6週および48時間である。顕著な離脱の再発のエビデンスを、病院内にとどまるすべての嬰児についてモニタリングする。必要とされた患者観察の期間の後(最後のオピオイド処置投薬の48時間後)に退院した嬰児については、主な介護者(親/後見人または養親)との毎日の電話連絡を最初の7日間継続し、乳児の健康状態を記録し、なんらかの離脱徴候の増大を特定する。
【0114】
その後、フォローアップ期間の継続中に、週毎の電話連絡を継続する。離脱徴候の顕著な増大は、薬理学的処置および再入院を必要とするほどに重度な再燃についての、臨床的再検討および評価を必要とする。
【0115】
試験の終了は、試験における最後の対象の6週の連絡時の最後のフォローアップとして定義する。
【0116】
神経発生的および全般的な健康状態を評価するための18ヶ月(±1ヶ月)のフォローアップ来院、ならびに試験処置の安全性の確認を、参加施設により行う。この評価は、試験の主な部分とは別に評価することとなる。
【0117】
対象選択基準
対象の募集
他の薬物離脱症候群の併発を有するかまたは有しない新生児オピオイド離脱症候群(NOWS)を有する99名の新生児を無作為化する。
【0118】
試験対象患者基準
新生児は、試験への登録に適格となるには、以下の試験対象患者基準のすべてを満たさなければならない:
1.出生前または後に親/法定代理人(地方条例による)により得られた、書面のインフォームドコンセント。
2.CDC成長チャートによる、在胎期間(GA)に対する出生時体重≧第3センタイル(3rd centile)
3.在胎期間≧36週
4.胎生期の最終月の間の、オピオイドへの曝露
5.処置を必要とする新生児オピオイド離脱症候群の徴候、および3回連続のFinnegan評価スコアの和が≧24、または単独スコア≧12
【0119】
除外基準
以下のいずれかの存在により、対象を試験登録から除外する:
1.QTc延長症候群の家族歴
2.先天性の大奇形または先天性感染のエビデンス
3.胎児性アルコールスペクトラム障害の徴候
4.最終30日における、週あたり平均3回以上と定義される、母親のアルコール乱用
5.排他的ではないが以下を含む、無作為化時点での医学的疾患:
a)静脈内グルコース療法を必要とする、新生児低血糖症(hypoglycaemia)
b)非侵襲的または侵襲的な呼吸管理を必要とする新生児呼吸器疾患
c)低酸素性虚血性脳症および痙攣
d)重度の高ビリルビン血症-AAPにより定義されるような交換輸血の閾値にあるかまたはそれを超えるビリルビン
e)血清アミノトランスフェラーゼの重度の上昇
f)抗生物質を用いた48時間を超える処置を必要とすることとなる、早期発症の新生児感染の確定または疑い
6.経口または舌下投薬に対して忍容不能
7.この試験プロトコールにおいて禁止されている投薬についての必要性
8.治験責任者の意見における、新生児を過度のリスクにさらすであろう任意の状態
9.同じ治療標的に対するプロトコールの規定の下で実施される、任意のプラセボ、実験的医療機器または生物学的物質の別の臨床試験への参加。NOWSおよびNAS以外の状態についての診断機器または処置に関与する試験への参加は、スポンサーの同意により許可することができる。非介入性の観察試験は許可される。
【0120】
対象の中止(withdrawal)
嬰児は、以下の理由のいずれかのために試験を中断する:
・治験責任者の意見における、対象が試験を継続することが安全でなくなる有害事象が発生する。この事例においては、妥当な措置が採用されることとなる。
・FNASTにより評価される場合の離脱徴候が、フェノバルビタールと組み合わせた最大用量の試験薬を用いて管理されない場合に、追加の薬物療法が必要とされる。
・>10週(>70日)として定義されるようなオピオイド療法の長期の要求、すなわち、オピオイド療法からウィーニングできない。この状況においては、嬰児の離脱は子宮内の多物質曝露により悪化している可能性がある。
・嬰児がフォローアップ不能である。
・親または後見人が同意を撤回する。
・嬰児の安全が、試験対象患者基準もしくは除外基準の違反、または許可されていない併用薬物の使用により影響を受ける。
・嬰児が別の施設へと転院する。
・スポンサーまたは規制当局または倫理委員会が、なんらかの理由のために、全体の試験を終了させるか、またはこの試験実施施設またはこの特定の対象について試験を終了させる。
【0121】
処置
薬物は、以下を含む:
実施例1の製剤:
液体調剤0.075mg/mL(試験処置)、舌下投与
有効成分:ブプレノルフィン
賦形剤:クエン酸緩衝液 pH6、ヒドロキシエチルセルロース
性状:透明溶液
プラセボ、ブプレノルフィンを有しない実施例1の製剤:
舌下投与
賦形剤:クエン酸緩衝液 pH6、ヒドロキシエチルセルロース
提示:透明溶液
硫酸モルヒネ注射 0.5mg/mlバイアル(参照処置)
有効成分:硫酸モルヒネ
賦形剤:米国薬局方に規定の水
性状:透明溶液
【0122】
モルヒネに適合したプラセボとして使用される注射用滅菌水は、静菌剤、抗微生物剤または追加の緩衝液を含有せず、単回投与容器においてのみ供給される、滅菌、非発熱原性の注射用水の調剤である。米国薬局方に規定の注射用水は、化学的にはHOと呼ばれる。
【0123】
投薬量および投与
開始用量
実施例1の製剤についての開始用量は、10μgのブプレノルフィン/kg体重(30μg/kg/日)である。
【0124】
投与の頻度
実施例1の製剤を、8時間毎に、モルヒネについての経口プラセボと共に投与する。モルヒネについての経口プラセボも、モルヒネの投与スケジュールに適合させるために、4時間毎に投与する。
【0125】
睡眠および授乳スケジュールを説明するために、各名目時点の前後に±1時間の間隔が存在する。
【0126】
投薬を特定の名目時間と異なった時間に行う場合、次の投薬を実際の投与の8時間後に行うように予定する。
【0127】
失われた投薬:嬰児が投与のすぐ後に吐き出すかまたは嘔吐する場合、投与は過剰投薬の可能性を避けるために繰り返さない。
【0128】
用量増大
用量漸増段階においては、3回の連続するFinnegan評価スコアの和が≧24であるか、または単独スコアが≧12であるか、または臨時追加用量が投与された場合に、用量増大が生じることとなる。
【0129】
臨時追加用量が必要とされないかぎり、1回以下の用量増大を各日行うことができる。
【0130】
用量漸増段階の間、用量は5μgのブプレノルフィン/kg体重の工程により増大し、すなわち、離脱の徴候が持続する場合、最初の10μg/kgの用量の後に、15、20、25および30μg/kgへの連続する用量の増大があり得る。したがって、必要な場合、4回の用量漸増工程の後に最大用量(90μg/kg/日)に達する。
【0131】
ウィーニング
ウィーニングの開始は、安定化の後、すなわちNOWSの徴候が管理される(さらなる薬物処置増大を伴わない48時間の期間として定義される場合)ときに始める。以前の3回のスコアの和が<18であり、どの単独スコアも>8でない場合、用量を1日1回15%低減する。
【0132】
以前の3回のスコアの和が≧28である場合、および処置する医師の裁量にて、定期的用量を、症状が管理されていた以前の投薬または投薬間隔へと戻す。
【0133】
投薬の中断
中断用量(cessation dose)はおよそ初回量(すなわち10μg/kg初回量の90~110%)である。これに達したら、投薬頻度を24時間について8時間毎から12時間毎へと低減し、その後投薬頻度を停止前に12時間毎から24時間毎へとさらに低減する。
【0134】
投薬の中断に続けて、嬰児を入院環境において少なくとも48時間観察し、その間、NOWSの症状のスコア付けを継続することとなる。
【0135】
参照処置投薬量
開始用量
モルヒネの開始用量は、0.07mgのモルヒネ/kg体重(0.42mg/kg/日)である。
【0136】
投与の頻度
モルヒネを、4時間毎に投与する。
【0137】
実施例1の製剤についての舌下プラセボを、実施例1の製剤の投与スケジュールに適合させるために、8時間毎に投与することとなる。睡眠および授乳スケジュールを説明するために、各名目時点の前後に±1時間の間隔が存在する。投薬を特定の名目時間と異なった時間に行う場合、次の投薬を実際の用量投与の4時間後に行うように予定する。
【0138】
失われた投薬:嬰児が投与のすぐ後に吐き出すかまたは嘔吐する場合、投与は過剰投薬の可能性を避けるために繰り返さないこととする。
【0139】
用量増大
用量漸増段階においては、3回の連続するFinnegan評価スコアの和が≧24であるか、または単独スコアが≧12であるか、または臨時追加用量が投与された場合に、用量増大が生じる。
【0140】
臨時追加用量が必要とされないかぎり、1回以下の用量増大を各日行う。
【0141】
用量漸増段階の間、最初の0.07mgのモルヒネ/kg体重の用量の後、離脱の徴候が持続する場合、0.09、0.12、0.16および0.21mg/kgへの連続する用量の増大があり得る。
【0142】
したがって、必要な場合、4回の用量漸増工程の後に最大用量(1.25mg/kg/日)に達する。
【0143】
ウィーニング
ウィーニングの開始は、安定化の後、すなわちNOWSの徴候が管理される(さらなる薬物処置増大を伴わない48時間の期間として定義される場合)ときに始める。以前の3回のスコアの和が<18であり、どの単独スコアも>8でない場合、用量を1日1回15%低減する。
【0144】
以前の3回のスコアの和が≧28である場合、および処置する医師の裁量にて、定期的用量を、症状が管理されていた以前の用量へと戻す。
【0145】
投薬の中断
中断用量は、0.025mg/kgで4時間毎とする。
【0146】
投薬の中断に続けて、嬰児を入院環境において少なくとも48時間観察し、その間、NOWSの症状のスコア付けを継続することとなる。
【0147】
臨時追加用量
予定された用量の間に嬰児が単独スコア≧12を有する場合、実施例1の製剤またはモルヒネの臨時追加用量を、処置する医師の裁量にて投与する。
【0148】
臨時追加用量は、以前の用量と同じとする。
【0149】
臨時追加用量を、以前の用量の少なくとも1時間後、および次の予定された用量の1時間前に与える。
【0150】
最大用量に達したら、臨時追加用量は与えない。
【0151】
用量漸増期間の間の臨時追加用量の投与は、次の予定された用量時の用量増大の契機となる。
【0152】
ウィーニング期間中の臨時追加用量の投与は、用量増大の契機とはならない。
【0153】
治療の中断後に臨時追加用量を与える場合、嬰児を24時間観察する。
【0154】
盲検化を維持するため、活性薬およびプラセボの両方を同時に投与することとする。
【0155】
無作為化された処置期間:
試験処置:実施例1の製剤群
実施例1の製剤、1mLあたり0.075mgのブプレノルフィンの8時間毎の投与
モルヒネに適合したプラセボ
実施例1の製剤の最大用量は、1日あたり、体重のキログラムあたり90μgのブプレノルフィンである。
【0156】
参照処置:モルヒネ群
モルヒネ溶液、4時間毎の0.5mg/mlの投与
実施例1の製剤に適合したプラセボ
モルヒネの最大用量は、1日あたり、体重のキログラムあたり1.25mgである。
【0157】
投与
投与の頻度は試験処置について8時間、および参照処置については4時間であり、したがって、モルヒネのモルヒネプラセボは、実施例1の製剤群においては4時間毎に投与し、プラセボは比較基準群においては8時間毎に投与することとなる。
【0158】
睡眠および授乳スケジュールのための変更を可能とするために、薬物の各用量は、その用量についての名目時点の±1時間前後に投与する。
【0159】
経口モルヒネ/モルヒネプラセボの投与は、標準治療に従うこととなる。
【0160】
試験のスケジュール
可能性のある母親を、外来患者処置診療所を通して特定する。同意を得られたすべての嬰児を、FNASTによりNOWS等級付けすることとなる。薬理学的処置を、妥当な非薬理学的ケアの実施にも関わらずNOWSの持続する徴候を有する嬰児において、出産の最大7日後に開始する。GA≧36週であり3回の連続するFinnegan評価スコアの和が≧24であるか、または単独スコア≧12である嬰児を、無作為化に適格とする。
【0161】
試験を、各嬰児に対して以下のように行った:
・妊娠の最終月において使用されたオピオイドを確認するため、および試験における組み入れのための新生児の適格性を検証するための、母親に対する事前スクリーニング来院。この来院は、妊娠の最終月の間または出産後に実行することとなる。
・NOWSの徴候を示す嬰児に対するスクリーニング来院。来院は、出産後最大7日実行することとなる。
・嬰児を処置へと割り付け、最初の処置投与を提供するための、無作為化来院。
・処置期間:無作為化から、最後の用量の最大48時間後。処置期間は、最初の処置投薬から最大10週(70日)まで続けることができる。
・定期的なフォローアップを、病院からの退院前後の両方で継続し、顕著な離脱の再発を患う嬰児を特定することとなる。フォローアップの持続期間は、最終のオピオイド処置用量後6週および48時間となる。顕著な離脱の再発のエビデンスを、病院内にとどまるすべての嬰児についてモニタリングすることとなる。必要とされた入院患者観察の期間(最後のオピオイド処置投薬の48時間後)の後に退院した嬰児については、主な介護者(親/後見人または養親)との毎日の電話連絡を最初の7日間継続し、乳児の健康状態を記録し、なんらかの離脱徴候の増大を特定することとなる。その後、フォローアップ期間の継続中に、週毎の電話連絡を継続することとなる。
【0162】
さらなる長期の評価および試験処置の安全性の確認のための、18ヶ月(±1ヶ月)のフォローアップ来院。
【0163】
事前スクリーニング来院
事前スクリーニング来院を、妊娠の最終月におけるオピオイド使用の経歴を有する母親を特定するために実行する。
【0164】
スクリーニング来院
出産後、試験について適格な嬰児を特定するために、NOWSの徴候を有する嬰児に対する最大7日齢のスクリーニング来院を実行する。
【0165】
以下の情報を収集することとなる:
・NOWSスコア:事前に定義された修正版Finnegan新生児禁断評価手段(FNAST)を使用して、4時間(±1時間)毎に離脱徴候を評価することとなる
・在胎期間、性別
・人種/民族性
・出生体重、頭囲
・嬰児の尿の毒性学データ(任意)
・バイタルサイン:心拍数(HR)、呼吸数(RR)、末梢酸素飽和(SpO)、体温(BT)。血圧(DBP;MBP;SBP)は、施設の臨床上の規準に従って収集された場合に記録する
・血液学および血液化学データ:無作為化の前に決定された調査の結果を記録することとなる;全血球数(FBC)、尿素、クレアチニンおよび電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン)、グルコース、無作為化の前に臨床現場により収集された場合にはC反応性タンバク質
・意図された授乳選択肢:母乳授乳または人工授乳
・医学的疾患
・試験対象患者基準/除外基準
・AEおよび併用投薬の確認および記録。重篤でないAEはスクリーニング脱落のために収集しないこととする。
【0166】
無作為化から安定化
試験に参加するための嬰児の適格性が確認されたら、調査者は、IRTシステムを使用することにより、割り付けられた処置へと嬰児を無作為化することとなる。薬理学的処置を、NOWSの徴候を示し、非薬理学的ケアに反応できなかった嬰児において、出産の最大7日後に開始する。
【0167】
以下の情報を行うこととなる:
NOWSスコア:事前に定義された修正版Finnegan新生児禁断スコア付け手段(FNAST)を使用して、離脱徴候を評価して適格性をチェックおよび確認することとなる。離脱の徴候を、4時間(±1時間)毎に評価および記録することとなる。
無作為化:GA≧36週で3回の連続するFinnegan評価スコアの和が≧24であるか、または単独スコア≧12である嬰児を、2:1の比において、実施例1の製剤またはモルヒネのいずれかへと割り付けることとなる。処置用量を、出生時体重(時間0)により計算することとなる。
バイタルサイン:心拍数(HR)、呼吸数(RR)、末梢酸素飽和(SpO)および体温(BT)を、少なくとも1日1回収集されることとなるBTを除いて、NOWSスコアと同時に収集することとなる。血圧(DBP;MBP;SBP)を、現地の臨床現場により収集された場合に記録することとなる。
処置投与:処置用量を、出生時体重および4時間毎に評価および記録することとなるNOWSスコアにより計算することとなる。
授乳状態:この期間の間、すなわち無作為化から安定化までの、母乳授乳、人工授乳、混合授乳および母親の母乳摂取の割合。
肝機能試験(AST、ALT):処置安定化後、第1のウィーニング用量の前
実施例1の製剤の薬物動態のための、血液サンプリング。
さらなる併用投薬および有害事象、ならびにこれらにおける変化は既に報告されている。
【0168】
ウィーニングから処置の終了まで
以下の情報を収集する:
NOWSスコア:離脱の徴候を、FNASTを使用して4時間(±1時間)毎に評価および記録することとなる
バイタルサイン:心拍数(HR)、呼吸数(RR)、末梢酸素飽和(SpO)、体温(BT)を、NOWSスコアと同時に、しかし1日1回のみ、収集することとなる。血圧(DBP;MBP;SBP)は、施設の臨床上の規準に従って収集された場合に記録する
処置投与:処置用量を、出生時体重および4時間毎に評価および記録することとなるNOWSスコアにより計算することとなる。
肝機能試験(AST、ALT)最後の処置用量の48時間後
授乳状態:この期間の間、すなわちウィーニングから処置終了までの、母乳授乳、人工授乳、混合授乳および母親の母乳摂取の割合
実施例1の製剤の薬物動態のための、血液サンプリング。
さらなる併用投薬および有害事象、ならびにこれらにおける変化は既に報告されている。
【0169】
処置終了期間の来院
以下の手順を行う:
NOWSスコア
バイタルサイン:心拍数(HR)、呼吸数(RR)、末梢酸素飽和(SpO)、体温(BT)、血圧(DBP;MBP;SBP)は、施設の臨床上の規準に従って収集された場合に記録する。
神経学的および行動評価
頭囲および体重および身長
授乳状態:この期間の間、すなわち処置終了から退院までの、母乳授乳、人工授乳、混合授乳および母親の母乳摂取の割合。
さらなる併用薬物および有害事象、ならびにこれらにおける変化は既に報告されている。
【0170】
フォローアップ
定期的なフォローアップを、病院からの退院前後の両方で継続し、顕著な離脱の再発を患う嬰児を特定することとなる。
【0171】
最後の投薬から48時間後の最初の7日の間:
a)嬰児が既に病院から退院している場合、主な介護者(親/後見人または養親)との毎日の電話連絡。以下の情報を記録することとなる:
一般的な健康状態
離脱徴候の増大
授乳状態:母乳授乳、人工授乳または混合授乳
さらなる併用投薬および有害事象、ならびにこれらにおける変化は既に報告されている。
b)嬰児が病院内にとどまっている場合、以下の情報を記録することとなる:
一般的な健康状態
離脱徴候の増大
授乳状態:この期間の間、すなわち最初の7日の、母乳授乳、人工授乳、混合授乳および母親の母乳摂取の割合。
さらなる併用薬物および有害事象、ならびにこれらにおける変化は既に報告されている。
【0172】
嬰児が退院したら、週毎の電話連絡を、最後の用量の6週+48時間まで継続する。以下の情報を記録することとなる。
一般的な健康状態
離脱徴候の増大
授乳状態:母乳授乳、人工授乳または混合授乳
さらなる併用薬物および有害事象、ならびにこれらにおける変化は既に報告されている。
【0173】
フォローアップ:18ヶ月(±1ヶ月)
18ヶ月(±1ヶ月)時のさらなる臨床評価を、参加試験施設にて集学的チームの医師により行い、一般的な健康状態、成長および長期の神経発生の評価ならびに成長パラメーターを評価する。この18ヶ月の臨床評価は、試験の最初の部分とは別に分析および評価され、最初の主要な臨床試験報告書の補遺の対象である。
【0174】
最初の6週および48時間の期間の後、さらなる臨床評価にて神経発達および健康全般状態の計画された正式な評価が行われることとなるまで嬰児および家族との連絡を維持するために、定期的な連絡を継続する。
【0175】
一般的な健康状態、成長および発達の18ヶ月の評価は、ベイリー乳幼児発達検査(BSDI)IIIを含む様々な測定、試験および質問表を使用する。
【0176】
調査
NOWSスコア
Finnegan新生児禁断スコア付け手段(FNAST)を使用して、NOWSの重症度を評価する。
【0177】
授乳状態
授乳状態を、電子患者記録(electronic patient record)から毎日収集する。(人工乳/母乳または混合授乳および母親の母乳摂取の割合)
【0178】
毒性学的な尿収集
一般的な臨床現場である病院において、現地の手順に従って行う。
【0179】
バイタルサイン
スクリーニング時、および無作為化から処置の終了まで、心拍数(HR)、呼吸数(RR)、末梢酸素飽和(SpO)、体温(BT)を収集することとなる。血圧(DBP;MBP;SBP)は、施設の臨床上の規準に従って収集された場合に記録する。
【0180】
無作為化から安定化まで、これらを、少なくとも1日1回収集されることとなるBTを除いて、NOWSスコアと同時に収集する。
【0181】
ウィーニングから処置の終了まで、これらをNOWSスコアの時間に1日1回収集する。
【0182】
血液学/血液化学および肝機能
施設の臨床上の規準に従って無作為化の前に調査が実施された場合には、調査の結果を、記録する;全血球数(FBC)、尿素、クレアチニンおよび電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウム カルシウム、リン)、グルコース、C反応性タンバク質。
【0183】
血液学および化学についてのベースラインを、無作為化の前に臨床現場により収集することとなる。
【0184】
肝機能試験分析(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT])を、最初の投薬後、安定化時および最後の処置投薬の48時間後の3回の機会に行う。
【0185】
薬物動態
PKのための血液サンプリングを、無作為化の日、次に処置の終了まで5±1日毎に行う。最初の血液サンプリングを、最初の投薬後に採取する。その後のサンプリングは、朝の投薬の後に行い、以下のサンプリング枠に適合するように時間を定めるべきである:1つの血液試料は投薬後0~2時間の時間枠内に、1つは投薬後2~4時間の時間枠内に、1つは投薬後4~8時間の時間枠内に採取するべきである。
【0186】
可能な場合、嬰児にとっての不快感を最小化するために、PK試料を通常の血液試料収集と同時に収集する。
【0187】
血液濃度を、検証されたHPLC-MS/MS方法を使用して決定する。
【0188】
実験室分析を、OECDの優良実験室規範(GLP)規則に従って実行する。分析手順は、別々の分析試験計画において説明することとなる。
【0189】
神経学的および行動評価
神経学的および行動評価を、処置期間の終了時に行う。
【0190】
有効性評価
主要有効性エンドポイント
処置の開始から試験薬の最後の投薬までの時間数として定義される、処置の持続期間。
【0191】
副次的有効性エンドポイント
処置の開始から最初の用量低減までの時間数として定義される、最初のウィーニングまでの時間
NOWSの症状に対する補助的薬物療法(フェノバルビタール)の使用
補助療法を用いた処置の合計時間
臨時追加用量(実施例1の製剤またはモルヒネ)の使用
投与された臨時追加用量の数
臨時追加用量に由来する合計用量のパーセンテージ
出生の日からNOWSに対する薬物処置の最終投薬の48時間後までの日数として定義される、オピオイド関連の入院の長さ
離脱の顕著な徴候の再発を経験することとして定義される、NOWSの再燃
NOWS再燃のための病院への再入院として定義される、再入院の発生
【0192】
安全性評価
舌下の実施例1の製剤または経口モルヒネの投与の間:
投薬前後での有害事象(AE)(すなわち、口腔の刺激または炎症、無呼吸、不飽和化、徐脈/頻脈、咳嗽、舌下薬物の即時の嚥下、吐き戻し、投与後に生じる嘔吐)を有する嬰児の数およびパーセンテージ
【0193】
試験中
無作為化から処置の終了まで、以下の情報を収集し、要約統計量を使用して提示する:
有害事象および有害薬物反応(ADR)。
肝臓酵素分析-機能試験(AST、ALT)を、最初の投薬後、安定化時および最後の処置投薬の後の3回の機会に行う。
バイタルサイン:心拍数(HR)、呼吸数(RR)、末梢酸素飽和(SpO)、体温(BT)をモニタリングし、増大および安定化段階の間にデータを収集する。
体重、頭囲、
血液学および血液化学:全血球数(FBC)、尿素、クレアチニンおよび電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウム カルシウム、リン)、グルコース、無作為化の前に施設の臨床上の規準に従って収集された場合にはC反応性タンバク質。
血圧(SBP、MBP、DBP)は、施設の臨床上の規準に従ってモニタリングする。
【0194】
処置期間の終了
最後の用量から48時間後、以下を記録し、要約統計量を使用して提示する:
バイタルサイン:心拍数(HR)、呼吸数(RR)、末梢酸素飽和(SpO)、体温(BT)。施設の臨床上の規準に従って収集された場合には血圧(SBP、MBP、DBP)
神経学的および行動評価
体重、身長および頭囲
すべての有害事象および有害薬物反応および併用投薬、ならびにこれらにおける変化は既に報告されている。
【0195】
倫理的、実際的および組織的な理由のために、臨床試験は、ブプレノルフィン製剤の最後の投薬が投与されるまで二重盲検条件下で、次いで機能的な盲検解除が行われることとなる。
【0196】
数値上の限界または範囲が本明細書において記載されている場合、端点が含まれる。また、数値上の限界または範囲内のすべての値および部分範囲は、明示的に全部書き出されているかのように、具体的に含まれる。
【0197】
本明細書において使用される場合、「a」および「an」等の語は、「1つまたは複数」の意味を有する。
【0198】
明らかに、上記の教示に照らして、本発明の無数の改変および変更が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、具体的に本明細書において記載されているようなものとは別に実践されてもよいことが理解されるべきである。
【0199】
上述のすべての特許および他の参照文献は、詳細に記載されているのと同じように、この参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【国際調査報告】