(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ジスルフィド結合ペプチドの製造
(51)【国際特許分類】
C07K 1/113 20060101AFI20220617BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C07K1/113
C12M1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561655
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060691
(87)【国際公開番号】W WO2020212477
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518337832
【氏名又は名称】バッヘン・ホールディング・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・アイゼンフート
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ザムゾン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・オー・シェーンレーバー
(72)【発明者】
【氏名】パトリツィア・マルケッティ
【テーマコード(参考)】
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB15
4B029CC01
4B029DG08
4B029DG10
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4H045GA10
(57)【要約】
ジスルフィド結合ペプチドを製造する方法および装置であって、酸化剤の溶液、および少なくとも2つのスルフヒドリル基を含むペプチドの溶液を、反応容器内の酸化剤の平均濃度が、同時添加の間、本質的にゼロとなるような条件下で反応容器に同時に添加される、方法および装置が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分子内ジスルフィド結合を有するペプチドの製造方法であって、以下:
a)反応容器内に液体反応媒体を用意する工程であって、容器がその内容物の混合を可能にする、前記工程、
b)ペプチドの溶液を用意する工程であって、ペプチドが、少なくとも2つのスルフヒドリル基を含む、前記工程;
c)酸化剤の溶液を用意する工程;
d)反応容器の内容物を混合しながら、反応容器内の前記反応媒体に、空間的に離れた導入口から、酸化剤の前記溶液およびペプチドの前記溶液を同時に添加する工程であって、添加が、以下:
i)反応容器内の還元された状態にある前記ペプチドの平均濃度である濃度C1が、その酸化状態とは無関係に、ペプチド添加の終了時に、反応容器内のペプチドの最終濃度である濃度C0未満となり;
ii)酸化剤およびペプチドの同時添加の時間の間、反応容器内の酸化剤の平均濃度が、本質的にゼロに維持される;
ように行われる前記工程、および
e)ペプチド添加の終了を超えて、酸化剤の添加が継続される工程
を含む前記方法。
【請求項2】
反応容器に添加される酸化剤の総量が、完全に酸化されたペプチド中に存在するジスルフィド結合の総量の1.0~1.5当量に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)およびe)が、少なくとも1回、交互に繰り返される、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
工程e)の完了後に、反応容器内に含まれている過剰の酸化剤をすべて除去する工程であって、好ましくは、除去が、好適な還元剤の添加によって行われる、前記工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応容器の内容物の混合が、撹拌器によって、ガス通気によって、液体循環によって、またはそれらの任意の組合せによって達成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
低分子量化学種が、好ましくは膜ろ過によって、反応容器の内容物から除去される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
膜ろ過が、工程d)と同時に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酸化剤の前記溶液の流量が、モニタリングシステムによって、好ましくは反応容器内の酸化還元電位プローブによって発生したフィードバックシグナルによって制御され、このモニタリングシステムは、好ましくは反応容器、保持ループおよび/またはバイパスループ内に、またはこれらにおいて位置し得る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
好ましくは分取クロマトグラフィーによって、その酸化状態にあるペプチドを精製する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
酸化剤が、ヨウ素、過酸化水素、ジメチルスルホキシド、2,2’-ジピリジルジスルフィドおよびヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム水溶液からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応媒体のpHが、7.0未満、好ましくは5.0未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
スルフヒドリル基が、システイン側鎖の部分である、および/またはペプチドが、正確に2つのスルフヒドリル基を含む、および/またはペプチドが、ソマトスタチン、ランレオチド、オクトレオチド、ドタテート、エドトレオチド、アプロチニン、オキシトシン、(Arg8)-バソプレッシン、バソプレッシン、リナクロチド、ジコノチド、エプチフィバチド、デスモプレシン、プラムリンチド、カルシトニンおよびアトシバンからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程d)の間、C0/C1の比が、少なくとも10、より好ましくは少なくとも100、最も好ましくは少なくとも1000である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を行うために好適な装置であって、
a)容器の内容物を混合するための手段(3)が装備されている反応容器(1)であって、好ましくは、該容器の内容物を混合するための手段が、撹拌器またはポンピング回路である、前記反応容器;
b)前記反応容器への液体流入のための2つの空間的に離れた導入口(4);
c)その各々が前記導入口の1つの連結されている2つの保管容器(5)であって、1つの保管容器が、酸化剤を含む液体を含有し、もう一方の保管容器が、酸化されることになるペプチドを含む液体を含有する、前記2つの保管容器;および
d)導入口を介する、保管容器から反応容器への液体流入を行い、これを制御することを可能にする自動化ポンプ(6)。
を含む前記装置。
【請求項15】
反応容器の内容物に膜ろ過を施すための手段、好ましくは膜ろ過ユニット(7)、および液体を反応容器(1)から前記膜ろ過ユニット(7)に循環させて反応容器(1)に戻す保持ループ(15)をさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
反応容器内もしくはここに取り付けられた、または保持ループ内もしくはここに取り付けられた、または保持ループへのバイパス内もしくはここに取り付けられたモニタリングシステムをさらに備え、該システムが、前記自動化ポンプ(6)の少なくとも1つを制御するためにフィードバックシグナルを供給し、好ましくは前記モニタリングシステムが、酸化還元電位プローブを備える、請求項14または15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、工業スケールまたは実験室スケールでのペプチド合成の分野に関する。特に、1つまたはそれ以上のシスチン残基を含むペプチドの製造のための、少なくとも1つの分子内ジスルフィド結合を含むペプチドを製造するための改善された方法が開示されている。本発明は、このようなペプチドを効果的に製造する方法を対象とする。ジスルフィド結合は、多数のペプチド中に見出されており、それらは、ペプチドの三次構造を安定化するという点で、ペプチド活性に重要であることが多い。したがって、ジスルフィド結合ペプチドの化学合成は、商業的にかなり重要である。
【背景技術】
【0002】
化学的なペプチド合成は、一般に、当分野で周知であり、通常、ペプチドのC末端からN末端へと進行する(非特許文献1を参照されたい)。合成中に、第1のアミノ酸のアルファアミノ基と第2のアミノ酸のアルファカルボキシル基との間のペプチド結合の形成は、意図しない副反応よりも有利となるべきである。これは、好適な保護基の使用によって一般に実現される。
【0003】
化学的ペプチド合成への2種の標準的手法、すなわち、液相ペプチド合成(LPPS)および固相ペプチド合成(SPPS)が区別される。LPPSおよびSPPSに加えて、フラグメントが上述の技法の1つによって最初に合成され、次に、他の手法を使用して一緒に結合される、ハイブリッド手法を利用することができる。
【0004】
いわゆるFmoc SPPSは、一時的なアミノ保護基として、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)の使用によるものであり、SPPSの最も普及している形態である。成長中のペプチド鎖は、そのC末端アミノ酸を介して、不溶性ポリマー樹脂に固定される。このペプチドは、その配列を構成するFmoc保護アミノ酸の連続付加によって組み立てられる。
【0005】
アミノ酸付加の連続サイクルが行われ、各々は、a)樹脂結合ペプチドからのNα-保護Fmoc基の切断、b)洗浄工程、c)保護アミノ酸のカップリング、およびd)洗浄工程からなる。次に、このペプチドは、通常、固体支持体から切断され、保護基が除去されて、ペプチドが単離される。
【0006】
ジスルフィド結合ペプチドの合成は、通常、全長ペプチド配列の第1の合成と、その後の分子内ジスルフィド結合の形成を含む。この後者の工程では、分子内反応は、分子間ジスルフィド結合の形成と競合して、ジスルフィド結合した二量体および副生物として多量体をもたらす。これらの望ましくない副反応を抑制するため、いくつかの戦略が適用されてきた。
【0007】
例えば、特許文献1は、固体支持体からの切断前に、過酸化水素によるSPPS樹脂上での酸化を含む方法を開示している。しかし、この偽希釈手法は、その後の脱保護および固体支持体からの切断の間に、ジスルフィド結合の副反応をもたらす恐れがある。さらに、樹脂上での酸化のモニタリングは、溶液中の酸化反応のモニタリングよりも要求が厳しく、この手法の再現性は、再生可能樹脂のロードおよび膨潤の実現に強く依存する。あるいは、固体支持体上に酸化剤を固定化することが報告されている(PostmaおよびAlbericio、2014年)。しかし、これは、コスト集約的であり、感受性アミノ酸の酸化をもたらす恐れがある。
【0008】
最も一般的な戦略は、非常に希釈されたペプチドの溶液中で酸化反応を行うことである。酸化試薬、例えばヨウ素が、前記ペプチド溶液に、通常、添加されて、反応が開始する。選択肢として、特許文献2は、少なくとも2つのシステイン部分を含有するペプチドが、約0.5~10g/lで酸性水溶液に溶解されて、酸化剤を含有する緩衝溶液にペプチド溶液を徐々に添加する方法を教示している。この添加は、反応混合物中のスルフヒドリル、すなわち直鎖状ペプチドの濃度が、反応中に実質的にゼロに維持される条件下で行われる。同様に、非特許文献2は、窒素下、希釈ペプチド溶液(遊離チオール形態、0.1~10mM)をK3Fe(CN)6の10mM水溶液(20%過剰の酸化剤)にゆっくりと添加することによる、ジスルフィド結合形成の方法を開示している。
【0009】
しかし、上記の手法は、実用性に乏しいほど多量のペプチド溶液の取り扱いを必要とするので、この手法のスケール拡張性が制限される。TrpまたはMetの側鎖における副反応を回避する必要がある場合、非特許文献3は、安定で最適な割合の両方の遊離体を含有する反応溶液を生成するよう、反応混合物にペプチド溶液および酸化剤溶液を同時にかつ同じ速度で添加することを教示している。生成物品質を損なうことなしに溶媒使用量を低下させるため、非特許文献4、特許文献3、特許文献4は、酸化反応の完了後に透過液の再利用を伴う、ナノろ過の使用を教示している。非特許文献5は、ペプチドフラクションの縮合反応に膜ろ過を適用することを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,656,721号
【特許文献2】米国特許第4,216,141号
【特許文献3】WO2016/042066
【特許文献4】WO2013/156600
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】brochure「Solid Phase Peptide Synthesis Bachem - Pioneering Partner for Peptides」 published by Global Marketing、Bachem group、2014年6月
【非特許文献2】Annisら、Methods in Enzymology、289巻、198~221頁、1997年
【非特許文献3】Misicka and Hruby、Polish J.Chem.、68巻、893~899頁、1994年
【非特許文献4】Ormerodら、Org.Process Res.Dev.2015年、19巻、841~848頁
【非特許文献5】Marchettiら、Sustainable nanotechnology and the environment: Advances and achievements、2013年、1124巻、121~150頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
工業的スケールでの応用に好適な、ジスルフィド結合ペプチドを生成するための、単純で、信頼性の高く、スケール拡大が可能な費用効果の高い方法が当分野において依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、驚くべきことに、ペプチド溶液および酸化剤溶液の濃縮溶液を反応混合物に同時に添加する、そのような手順を見出した。この添加は、ジスルフィド結合を形成する酸化反応が、実質的に即時に起こり、同時添加中の酸化剤の濃度を実質的に一定かつ実質的にゼロと等価なレベルの状態にするように行われる。これは、酸化剤が、通常、反応の開始から過剰に使用される先行技術の教示とは対照的である。本発明による手順では、酸化剤の添加は、ペプチドの添加が完了した後に継続され、これにより、添加の終了時に過剰の酸化剤をもたらす恐れがある。予想外なことに、および過剰の酸化剤を回避するMisickaおよびHrubyの教示とは反対に、本発明者は、Trp側鎖の過剰酸化を観察しなかった。本発明の方法および装置は、驚くべきことに、高濃度で、高品質のジスルフィド結合したペプチドの生成が可能である。この理論によって拘泥されないが、これは、酸化反応の全時間にわたり、反応条件を精密に制御することによって実現されると考えられる。
【0014】
一般に、いくつかの略称および定義が、本出願の全体にわたり使用される:
Acm アセトアミドメチル
Boc tert.ブチルオキシカルボニル
Bzl ベンジル
Dpm ジフェニルメチル
DTE ジチオエリスリトール
DTT ジチオスレイトール
EDT 1,2-エタンジチオール
Fmoc 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
LPPS 液相ペプチド合成
Mmt メトキシトリチル
Mtt メチルトリチル
Phacm フェニルアセトアミドメチル
SPPS 固相ペプチド合成
StBu tert.ブチルメルカプト
tBu tert.ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
TIPS トリイソプロピルシラン
Trt トリチル
【0015】
特に明記しない限り、pHの値は、個々の水溶液が使用されることになる温度の場合に示されている。特に明記しない限り、用語「約」は、所与の数値のプラスまたはマイナス10%の偏差を意味する。
【0016】
アミノ酸は、その正式名称(例示:アラニン)、WIPO規格ST.25による3文字コード(例えば、Ala)または1文字コード(例えば、A)のいずれかによって互換的に称される。鏡像異性体が明示的に指定されていない限り、L-アミノ酸が一般に言及されている。しかし、本発明は、同様に、D-アミノ酸および他の立体異性体を使用して実施することができることに留意すべきである。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、互換的に理解される。特に示さない限り、ペプチド配列は、本明細書において、N末端(左)から始まり、C末端(右)で終わるよう示される。ペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸、すなわち、カルボキシル(-COOH)および第一級または第二級アミノ基(-NHR)を含む部分の間に少なくとも1つのペプチド結合(-CO-NH-)が存在することを特徴とする。したがって、用語「ペプチド」は、天然アミノ酸に由来するペプチド構造体に限定されないことを理解すべきである。「ペプチド」はまた、とりわけ、ペプチド誘導体、非天然アミノ酸を含むペプチド、D-アミノ酸を含むペプチド、および共有結合もしくは非共有結合により結合したリンカー、色素または他の部分を含むペプチドを含む。
【0018】
用語「類似体(単数)」または「類似体(複数)」は、本明細書で使用する場合、その配列が、アミノ酸部分の最大で50%の置き換えによって第1のペプチド配列から誘導されるペプチド、および/または前記第1のペプチド配列のアミノ酸部分の最大で10%の欠失によって第1のペプチド配列から誘導されるペプチド、および/または最大で10個のアミノ酸部分の追加によって、第1のペプチド配列から誘導されるペプチドに対して使用される。
【0019】
好ましい類似体は、第1のペプチド配列から、アミノ酸部分の最大で20%の置き換えによって、および/または前記第1のペプチド配列のアミノ酸部分の最大で10%の欠失によって、および/または最大で10個のアミノ酸部分の追加によって誘導される。
【0020】
用語「誘導体(単数)」または「誘導体(複数)」とは、本明細書で使用する場合、化学反応によって第1の化合物から得ることができる化合物を指す。その結果、誘導体は、置換基の存在または非存在によって、第1の化合物とは異なり得る。例えば、SPPSで使用するためのアミノ酸誘導体は、通常、少なくともアミノ保護基の存在によって、アミノ酸誘導体が誘導されるアミノ酸とは異なる。
【0021】
用語「保護基」は、本明細書で使用する場合、最も広義の意味では、その後の方法工程において、反応から官能基を遮断するため、例えばアミノ酸側鎖の副反応を防止するため、前記基の化学修飾によって分子に導入される基として理解される。アミノ保護基の例は、Boc基およびFmoc基であり、カルボン酸保護基の例は、メチルエステル、ベンジルエステルまたはtert.ブチルエステルのような非反応性エステルである。スルフヒドリル保護基の例は、例えば、Acm、Phacm、Trt、Mtt、Mmt、Dpm、Bzl、tBuおよびStBu保護基を含む。
【0022】
本出願の目的のため、用語「未精製の」および「粗製の」は、ペプチドの製造を指定するために互換的に使用され、これらは、合成プロセスおよび単離プロセスの本質的に直接的な生成物のことであり、特定の精製工程にまだ供されていない。化学合成は、通常、約40~80%の純度を有する粗製ペプチド製造物を生じる。
【0023】
本発明の文脈では、用語「精製された」は、特定の精製工程、例えば、分取クロマトグラフィーが施されたペプチド組成物を指定するために使用される。このような組成物は、高度にまたは部分的に精製されており、最大で100%の純度を有することがある。しかし、本発明は、有利には、粗製ペプチド組成物、部分的に精製されたペプチド組成物、および精製されたペプチド組成物に適用されることが理解されるべきである。
【0024】
特に明記しない限り、ペプチド純度は、本明細書において、「HPLC純度」として、すなわち205~230nmの間の波長において、すなわちペプチド結合の吸収極大において、UV検出による分析用逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で観察される相対ピーク面積として示される。言い換えると、この値は、波長205~230nmの間でのUV検出による分析用RP-HPLCによって得られたクロマトグラムにおいて観察されたすべてのピークの面積の合計によって、所与のピーク面積を除算した面積%として求められる。この尺度は、当分野において一般的な実作業であり、当業者は、生成物に特異的なRP-HPLCプロトコルを常套的に立案し、例えば、米国薬局方において説明されている確立されたガイドラインに準拠して定量を行う。ペプチド混入物を検出するためのRP-HPLCプロトコルの適応性は、LC-MSによってピーク純度を決定することにより常套的に評価される。その類似構造のために、すべてのペプチド構成成分は同じ吸収を有するという仮定の下では、RP-HPLC純度は、質量百分率[%(w/w)]として表される純度に対する代用として使用することができる。
【0025】
本発明は、とりわけ、少なくとも1つのジスルフィド結合を有するペプチドを製造する方法を対象とする。本明細書で使用する場合、表現「ジスルフィド結合」とは、酸化によって、2つのチオール(別名、スルフヒドリル)基の間に通常、形成される、パースルフィド結合(-S-S-)を指す。最も一般には、ペプチドは、2つのシステイン部分の側鎖の間で形成されるジスルフィド結合を含有する。このようなペプチドは、時として、シスチン含有ペプチドと称される。しかし、ジスルフィド結合は、ペプチド分子内の任意のスルフヒドリル含有部分の間に形成されることが理解すべきである。例えば、ホモシステイン基もしくはペニシラミン基のような他のアミノ酸の側鎖、またはペプチド分子に導入された任意の置換基もしくはリンカーに由来するスルフヒドリル基も同様に、ジスルフィド結合の形成に含まれる。スルフヒドリル基は、Acm、PhacmまたはMmt保護基のような保護基を有することができる。好ましくは、表現「スルフヒドリル基」とは、本明細書で使用する場合、「遊離の」、すなわち保護されていないスルフヒドリル基(-SH)を指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、少なくとも1つのスルフヒドリル基を有するペプチドは、「還元されたペプチド」と称することができる。通常、還元されたペプチドは、2つ以上のスルフヒドリル基を有する。本明細書で使用する場合、少なくとも1つのジスルフィド結合を有するペプチドは、「酸化されたペプチド」と称することができる。少なくとも1つのジスルフィド結合と少なくとも1つのスルフヒドリル基の両方を有するペプチドは、「酸化された」、「部分酸化された」、「還元された」または「部分還元された」と称することができる。
【0027】
本発明は、とりわけ、少なくとも1つの分子内ジスルフィド結合を有するペプチドの製造方法であって、以下:
a)反応容器内に液体反応媒体を用意する工程であって、容器がその内容物の混合を可能にする、工程;
b)ペプチドの溶液を用意する工程であって、ペプチドが、少なくとも2つのスルフヒドリル基を含む、工程;
c)酸化剤の溶液を用意する工程;
d)反応容器の内容物を混合しながら、反応容器内の前記反応媒体に、空間的に離れた導入口から、酸化剤の前記溶液およびペプチドの前記溶液を同時に添加する工程であって、添加が、以下:
i)反応容器内の還元された状態にある前記ペプチドの平均濃度である濃度C1が、その酸化状態とは無関係に、ペプチド添加の終了時に、反応容器内のペプチドの最終濃度である濃度C0未満となり;
ii)酸化剤およびペプチドの同時添加の時間の間、反応容器内の酸化剤の平均濃度が、本質的にゼロに維持される
ように行われる、工程;
および
e)ペプチド添加の終了を超えて、酸化剤の添加が継続される工程
を含む方法を提供する。
【0028】
本発明は、とりわけ、少なくとも1つの分子内ジスルフィド結合を有するペプチドの製造方法であって、以下:
a)反応容器内に液体反応媒体を用意する工程であって、容器がその内容物の混合を可能にする、工程;
b)ペプチドの溶液を用意する工程であって、ペプチドが、少なくとも2つのスルフヒドリル基を含む、工程;
c)酸化剤の溶液を用意する工程;
d)反応容器の内容物を混合しながら、反応容器内の前記反応媒体に、空間的に離れた導入口から、酸化剤の前記溶液およびペプチドの前記溶液を同時に添加する工程であって、添加が、酸化剤およびペプチドの同時添加の時間の間、反応容器内の酸化剤の平均濃度が、本質的にゼロに維持されるように行われる、工程;
および
e)ペプチド添加の終了を超えて、酸化剤の添加が継続される工程
を含む方法を提供する。
【0029】
本発明は、例えば、1つの遊離スルフヒドリル基および1つの保護スルフヒドリル基を含むペプチドに、または好適な保護基によって保護されている2つのスルフヒドリル基を含むペプチドに、好適な保護基により保護されているスルフヒドリル基の酸化を適用することができることを理解すべきである。このような実施形態では、保護基除去の速度は、分子間ジスルフィド結合形成の速度よりも速いことが好ましい。本発明の一部の実施形態では、ペプチドに含まれたスルフヒドリル基は、保護基によって保護されていない、すなわち、そのスルフヒドリル基は、遊離スルフヒドリル基である。本発明の一部の実施形態では、ペプチドは、少なくとも2つの遊離スルフヒドリル基を含む。本発明の他の実施形態では、ペプチドは、少なくとも1つの遊離スルフヒドリル基を含む。
【0030】
一実施形態では、濃度C1は、工程d)において、酸化剤とペプチドの同時添加の時間の間に低下する。
【0031】
本明細書で使用する場合、表現「反応容器内の濃度」は、表現「反応容器内に含まれる液体内の濃度」と同義とすることができる。
【0032】
本明細書で使用する場合、表現「平均濃度」は、ある体積内の物質の濃度を指すために使用され、これは、その体積内の前記物質の瞬間的かつ均一な分布に起因する、または起因すると思われる。例えば、反応容器内の還元されたペプチドの平均濃度は、反応容器内の還元されたペプチドのモル量を反応容器内の液体の全量によって除算することにより計算される。
【0033】
当業者は、工程a)の反応媒体の組成は、製造されることになるペプチドの特性によって影響を受けることを理解するであろう。好ましくは、反応媒体は、濃度C1以上で還元されたペプチドを溶解することが可能である。当業者は、反応容器内の還元されたペプチドの平均濃度C1は、反応容器内に含まれる液体内の添加されたペプチド溶液の瞬間的かつ均一な分布であると仮定することによって計算することができることを理解するであろう。還元されたペプチドは、酸化反応によって消費されることが予期され、その濃度は、経時的に変動し得る。平均濃度C1は、工程d)の期間にわたる時間中に、好ましくは平均化される。最も好ましくは、反応媒体は、濃度C0以上でペプチドを溶解することが可能である。C0とは、その酸化状態に無関係に、ペプチド添加の終了時における、反応容器内のペプチドの最終濃度のことである。言い換えると、C0は、酸化反応中に、反応容器内に含まれた液体内の全ペプチドの最大平均濃度として定義される。当業者は、C0が、通常、ペプチド溶液の濃度、添加されたペプチド溶液の量、ペプチド添加の終了まで添加される酸化剤溶液の量、および初期の反応媒体の量に基づいて計算されることを理解するであろう。反応容器の内容物に同時膜ろ過が施される場合、計算は、添加されたペプチド溶液の濃度、添加されたペプチド溶液の量、ならびに反応容器中、および適切な場合、保持ループ中に含まれる反応混合物の最終量に基づき得る。
【0034】
反応媒体が、酸化剤ともペプチドとも反応しないことが好ましい。一実施形態では、反応媒体は、酸化剤、還元されたペプチドおよび酸化されたペプチドに対して本質的に不活性である。反応媒体のpHは、ジスルフィド結合形成を支持するよう、およびジスルフィド結合を安定化するよう好ましくは選択される。一実施形態では、反応媒体のpHは、7.0未満、好ましくは5.0未満である。一実施形態では、反応媒体のpHは、7.0未満、6.5未満、6.0未満、5.5未満、5.0未満、4.5未満、4.0未満、3.5未満または3.0未満である。しかし、選択された酸化剤に応じて、(わずかに)塩基性のpH、例えばpH7.0~8.0の反応媒体を使用することが好ましいことがある。当業者は、反応媒体が、好ましくは高い極性であることを理解するであろう。
【0035】
本発明の一実施形態では、反応媒体は水溶液である。本発明の好ましい実施形態では、反応媒体は、水、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液またはギ酸水溶液を含む群から選択される。特に好ましい実施形態では、反応媒体は、以下:0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1%(v/v)のトリフルオロ酢酸水溶液、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%(v/v)の酢酸水溶液、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%(v/v)のギ酸水溶液からなる群から選択される。本発明の他の実施形態では、反応媒体は、上記の成分を含むことができる。本発明の他の実施形態では、反応媒体は、DMF、DMSO、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸、ジオキサン、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどのような1種またはそれ以上の有機溶媒をさらに含むことができる。さらに他の実施形態では、反応媒体は、DMF、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリルなどのような1種またはそれ以上の有機溶媒を含むことができるか、または本質的になることができる。
【0036】
用語「少なくとも2つのスルフヒドリル基を含むペプチドの溶液を用意する工程」は、最も広義の意味では、少なくとも2つのスルフヒドリル基を含むペプチドを含有する任意の液体組成物を得る工程と理解される。前記ペプチドは、当分野で公知の任意の手段によって得ることができる。例示として、前記ペプチドは、固相ペプチド合成(SPPS)または液相ペプチド合成(LPPS)またはそれらの組合せから得ることができる。スルフヒドリル基、例えばシステイン残基の酸化は、スルホン酸、例えば、システイン酸の形成をもたらす恐れがあり、ペプチド合成の間に回避される必要があることは、当業者に周知である。これは、ジフェニルメチル、アセトアミドメチルまたはフェニルアセトアミドメチル保護基のような好適なスルフヒドリル保護基の使用によって、および/または保護ガス下での作業によって、好ましくは窒素下の作業によって実現することができる。SPPSの後、ペプチドは、TFA、および水、トリイソプロピルシラン(TIPS)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、アニソール、チオアニソールまたは1,2-エタンジチオール(EDT)のような1種またはそれ以上の捕捉剤を含む切断カクテルを使用して、樹脂から通常、切断される。例えば、切断カクテルは、80~90%のTFA、および5~10%の水、TIPSおよびDTEまたはEDTのそれぞれを含むことができる。切断カクテルの他の例は、TFA/チオアニソール/アニソール/EDT(90:5:3:2)、TFA/水/TIPS(90:5:5)v/v/v、TFA/水/フェノール(90:5:5)v/v/v、TFA/EDT/H2O/TIPS(85:10:2.5:2.5)v/v/v/v、TFA/水/EDT/TIPS(90:5:2.5:2.5)v/v/v/v、TFA/水/DTE/TIPS(90:5:2.5:2.5)v/v/v/v、TFA/水/EDT/TIPS(90:4:3:3)v/v/v/v、TFA/水/EDT(90:5:5)v/v/v、TFA/DTE/H2O/TIPS 85:10:2.5:2.5(v/w/v/v)およびTFA/水/DTE(90:5:5)v/v/vを含む。次に、ペプチドは、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert.ブチルエーテル(MTBE)、または上記のエーテルと例えばアセトニトリルまたはヘキサンとの混合物のような有機抗溶媒を使用して、切断カクテルから一般に沈殿させる。あるいは、単純なポリペプチド鎖は、生物工学的方法から得ることもでき、場合により、続いて、化学的手段/合成手段によって修飾することができる。好ましくは、ペプチドは、SPPS、LPPSまたはそれらの組合せから得られる。より好ましくは、ペプチドは、Fmoc-SPPSを含む、またはこれからなる方法から得られる。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、工程b)の溶液に含まれるペプチドは、正確に2つのスルフヒドリル基を含む。本発明のさらなる実施形態では、ペプチドのスルフヒドリル基は、システイン側鎖の部分である。さらなる実施形態では、ペプチドは、正確に2つのシステイン部分を含む。本発明の一部の実施形態は、ソマトスタチン(CAS登録番号38916-34-6)、ランレオチド(CAS登録番号108736-35-2)、オクトレオチド(CAS登録番号83150-76-9)、ドタテート(CAS登録番号177943-88-3)、エドトレオチド(CAS登録番号204318-14-9)、アプロチニン(CAS登録番号9087-70-1)、オキシトシン(CAS登録番号50-56-6)、(Arg8)-バソプレッシン(CAS登録番号113-79-1)、バソプレッシン(CAS登録番号11000-17-2)、プラムリンチド(CAS登録番号151126-32-8)、リナクロチド(CAS登録番号851199-59-2)、ジコノチド(CAS登録番号107452-89-1)、エプチフィバチド(CAS登録番号188627-80-7)、デスモプレシン(CAS登録番号16679-58-6)、カルシトニン(CAS登録番号90779-69-4)およびアトシバン(CAS登録番号90779-69-4)からなる群から選択されるペプチドの製造に関する。上記の名称は当業者に周知であり、対応する化学構造/アミノ酸配列は、容易にかつ明確に特定することができる。例えば、INN(国際一般名)は、とりわけ、世界保健機関によってそのホームページ(https://www.who.int/)に公開されているリスト中に探索することができる。さらに、幅広く使用されており、明確な識別子である、CAS登録番号は、上記の化合物の化学構造を検索するために使用することができる。しかし、上記のペプチド名称は、前記ペプチドの特定の塩形態への制限を暗示するものではないことを理解すべきである。
【0038】
さらに、本発明は、上記のペプチドのジスルフィド結合した誘導体および類似体の製造に適用可能である。
【0039】
工程b)の溶液に含まれるペプチドは、例えば、塩化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭化水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、臭化物イオン、過塩素酸イオン、アンモニウムイオン、リン酸イオンまたは硫酸イオン、切断溶液の任意のイオン(例えば、TFAイオン)および/または保護基の残留物の陽イオンもしくは陰イオンのような、陰イオンまたは陽イオンのような、当分野で公知の任意の対イオンを場合により有することができることが当業者によって理解されよう。さらに、ペプチドは、例えば、トリイソプロピルシラン(TIPS)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、アニソール、チオアニソールまたは1,2-エタンジチオール(EDT)のような1種またはそれ以上の捕捉剤の痕跡物に、場合により、共有結合または非共有結合することができるか、またはジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ヘキサンまたはメチルtert.ブチルエーテルのような1種またはそれ以上の抗溶媒の痕跡物を含有してもよい。
【0040】
工程b)の溶液は、1つまたはそれ以上の上記のイオンおよび化合物、ならびに任意の付加物、ポリマー、または上記の化合物の化学反応によって形成される他の生成物を含むことができる。一実施形態では、工程b)の溶液は、30~90%の、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を超える純度を有することができる、粗製ペプチドまたは未精製ペプチドを含むことができる。一部の実施形態では、40~80%の純度を有する未精製ペプチドが使用される。一実施形態では、粗製ペプチド組成物は、SPPS後の切断カクテルから、ペプチドを沈殿させることによって得られる。好ましい一実施形態では、工程b)の溶液は、部分的にまたは高度に精製されたペプチド、すなわち分取クロマトグラフィーのような特定の精製工程が施されたペプチド組成物を含むことができる。
【0041】
工程b)の溶液は、好ましくは水溶液であってもよく、問題のペプチドを溶解するためのさらなる添加物を含むことができる。例えば、工程b)の溶液は、水性液体中に粗製または精製ペプチド製造物を溶解または希釈することによって得ることができる。水性液体は、例えば、純水、トリフルオロ酢酸水溶液[例えば、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1%(v/v)]、酢酸水溶液[例えば、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%(v/v)]、ギ酸水溶液[例えば、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%(v/v)]、酢酸カリウム水溶液[例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、200mMまたは300mM]または酢酸ナトリウム水溶液[例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、200mMまたは300mM]を含むことができるか、またはこれらから選択することができる。
【0042】
好ましくは、工程b)の溶液のpHの値は、工程a)において用意された液体反応媒体のpHの値と同じ範囲にある。他の実施形態では、工程b)の溶液は、DMF、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリルなどのような1種またはそれ以上の有機溶媒を含むことができる。他の実施形態では、工程b)の溶液は、DMF、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリルなどのような有機溶媒中、または有機溶媒の混合物中に、粗製もしくは精製ペプチド製造物を溶解または希釈することによって得ることができる。好ましくは、工程b)の溶液は、ペプチド以外の構成成分の内容物を最小化するよう製造され、この溶液は、工程a)で用意される液体反応媒体、または工程c)で用意される酸化剤のどちらか一方と反応させることができる。好ましくは、工程b)の溶液は、工程a)で用意される反応媒体と混和性である。
【0043】
工程b)の溶液中のペプチドの最適濃度は、ペプチドの分子特性に依存することが当業者によって理解され、当業者は、この濃度を常套的に最適化する。一般に、ペプチド濃度は、ペプチド凝集および/または沈殿を回避すると同時に、工程b)の溶液の量を少なく維持するよう選択することができる。一部の実施形態では、工程b)の溶液中のペプチドの濃度は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200mmol/l以上となるよう選択される。他の実施形態では、工程b)の溶液中のペプチドの濃度は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200g/l以上となるよう選択される。
【0044】
工程c)の溶液は、工程a)およびb)の溶液と好ましくは混和性であり得る。原理的に、スルフヒドリル鎖を酸化することが可能な任意の酸化剤が、工程c)において使用することができることが当業者によって理解されよう。好ましくは、酸化剤は、メチオニン、チロシンまたはトリプトファンの側鎖の酸化のような副反応に高い傾向を有していない。好ましくは、酸化剤は、ヨウ素、過酸化水素、2,2’-ジピリジルジスルフィド、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはヘキサシアノ鉄酸カリウム[K3Fe(CN)6]水溶液から選択される。
【0045】
一実施形態では、例えば、ヨウ化カリウム水溶液中のヨウ素の溶液は、1部のヨウ素対3部のヨウ化カリウム、または1部のヨウ素対3部のヨウ化ナトリウムとなるモル比で使用される。他の実施形態では、工程c)の溶液は、水中のジメチルスルホキシド、イソプロピルアルコール中の2,2’-ジピリジルジスルフィド、または水中の過酸化水素から選択される。本明細書で使用する場合、表現「酸化剤」は、スルフヒドリル基を酸化してジスルフィド結合を生成することが可能な化学部分に関する。したがって、酸化剤の濃度を示す場合、この濃度は、その酸化状態にある酸化剤の濃度を指す。当業者は、工程c)の溶液内の酸化剤の濃度は、反応容器への酸化剤の添加の所望の速度、反応容器への所望の流量、および酸化剤の分子特性に依存することを理解している。したがって、常套的作業の実体として、当業者は、目前の特定の役割のため、酸化剤の濃度を最適化する。
【0046】
一部の実施形態では、酸化剤の濃度は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400または500mmol/l以上であり得る。好ましくは、工程c)の溶液は、酸化剤以外の構成成分の含有量を最小化するよう製造され、この溶液は、工程a)で用意した液体反応媒体、または工程b)で用意したペプチド溶液のどちらか一方と反応させることができる。好ましくは、工程c)の溶液は、工程a)で用意した反応媒体と混和性である。一実施形態では、工程c)の溶液は水溶液である。好ましくは、溶液のpHの値は、反応容器内の好適な反応条件に有利となるように選択される。
【0047】
工程a)の反応媒体、ならびに工程b)およびc)の溶液の量は、酸化されることになるペプチドの総量、および所望の反応条件、特に、ペプチド添加の終了時における反応容器内のペプチドの所望の最終濃度C0に依存することが当業者によって理解される。当業者は、生成に特異的なペプチドの濃度C0を常套的に最適化する。一般に、ジスルフィド結合の入れ替わりによるペプチド凝集および多量体形成を回避すると同時に、ペプチド濃度C0をできるだけ高く維持することが有利となり得る。
【0048】
本発明の一部の実施形態では、濃度C0は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70g/lより高い。本発明の一部の実施形態では、濃度C0は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70mMより高い。本発明の一部の実施形態では、濃度C0は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70g/lほど高くはない。本発明の一部の実施形態では、濃度C0は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70mMほど高くはない。濃度C0/C1の比は、ペプチド特性および所望の反応条件に同様に依存することが当業者によって理解され、当業者は、目前の特定の役割に準拠して前記比を最適化することができる。例えば、比C0/C1は、少なくとも、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400または1500とすることができる。一実施形態では、C0/C1の比は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも100、最も好ましくは少なくとも1000である。この比を計算するため、C1は、工程d)の期間にわたる時間中に平均化される。
【0049】
本発明による方法の工程d)は、反応容器内の反応媒体へのペプチド溶液および酸化剤の溶液液の同時添加を含む。この添加は、容器の内容物を混合しながら、空間的に離れた導入口から行われる。当業者は、反応容器の内容物の混合が、任意の好適な手段によって実現されることを理解している。例えば、回転するインペラを含む撹拌器が使用される。このようなインペラは、反応容器内の液体の軸方向の流れ、混合流れまたは半径方向流れを引き起こす、乱流ミキサとすることができる。既知のインペラは、マリン-タイプ(marine-type)のプロペラ、ピッチ-ブレードタービン、フラット-ブレードタービンおよびフラット-ブレードパドルを含む。バッフルブレードの使用は、混合の改善に役立つことができる。あるいは、またはさらに、混合は、液体にガスを通気することによって実現することができる。あるいは、またはさらに、混合は、液体循環によって、例えば、ポンピング回路によって実現可能である。当業者は、通常、起泡を回避しながら、反応媒体内の物質の効率的な分布を実現するよう、混合手段を選択する。ペプチド溶液および酸化剤の溶液の導入口の位置決めは、反応容器の設計および混合手段に応じて様々であり得る。
図1は、様々な設計を示す。一般に、各溶液は、反応容器の上部から(すなわち、反応媒体の表面より上から)、反応容器の中央部において、または反応容器の底部からのいずれかで添加することができる。
【0050】
例えば、ペプチド溶液および酸化剤の溶液は、上部から添加することができる;ペプチド溶液は、中央部で酸化剤の溶液を添加しながら、上部から添加することができる;ペプチド溶液は、底部から酸化剤の溶液を添加しながら、上部から添加することができる;ペプチド溶液および酸化剤の溶液を中央部に添加することができる;ペプチド溶液は、上部から酸化剤の溶液を添加しながら、中央部に添加することができる;ペプチド溶液は、底部から酸化剤の溶液を添加しながら、中央部に添加することができる;ペプチド溶液は、中央部に酸化剤の溶液を添加しながら底部から添加することができる;ペプチド溶液は、中央部に酸化剤の溶液を添加しながら、底部から添加することができる;ペプチド溶液は、上部から酸化剤の溶液を添加しながら、底部から添加することができる;または、ペプチド溶液および酸化剤の溶液は、底部から添加することができる。
【0051】
一実施形態では、ペプチド溶液だけが上部から添加される。別の実施形態では、酸化剤の溶液だけが上部から添加される。別の実施形態では、両方の溶液が、反応媒体の表面より下から添加される。さらに、導入口は、反応容器の同じ側、対向する部位、または両方の位置の間に位置することができる。言い換えると:
図1のパネルj)に示されている通り、反応容器の上部から導入口の位置を計画する場合、導入口の両方の間の角度が、0°と360°の間の任意の角度をとることができ、ただし、それらが空間的に離れた状態にあることを条件とする。反応容器への試薬溶液の添加は、一般に、液体をそれぞれの導入口から流すことによって行われる。これを実現するのに好適な機械的手段が有用となり得る。例えば、液流は、真空吸引によって、窒素圧によって、またはポンプによって、推進される。本発明の一部の実施形態では、工程d)は、工程b)で用意された溶液の反応容器への流入を開始した後に、工程c)において用意された溶液の反応容器への流入を開始する工程を含むことができる。流入の制御は、任意の手段によって、好ましくは投入ポンプの使用によって実現することができる。
【0052】
反応容器への工程b)およびc)の溶液の流れの投入は、フィードバックループによって連続的とすることができる、および/または制御することができる。例えば、工程b)の溶液および/または工程c)の溶液の流量は、反応容器に含まれている液体の光学特性に基づいて制御することができる。一部の実施形態では、工程c)の溶液の流量は、反応容器内のモニタリングシステムによって発生したフィードバックシグナルによって制御される。このモニタリングシステムは、ディッププローブまたはフローセルの形態をとってもよく、反応容器内自体に設置することができるか、または一実施形態では、反応容器がポンピング回路の一部である場合、再循環ループ内に、またはそのようなループへのバイパス中に設置することができることが留意される。例えば、光度測定またはレドックス電位の測定は、反応容器への試薬の流量を調節するフィードバックシグナルを供給することができる。このような測定および対応する制御シグナルは、例えば、トランスミッションディッププローブまたはレドックス電極によって発生することができる。レドックス電極は、a)ペプチド溶液および酸化性溶液の同時添加の間に、反応容器内(および、必要に応じて、再循環ループ内)のレドックス電位を求めるため、およびb)投入ポンプにフィードバックシグナルを供給するために使用することができる。酸化反応における粗製ペプチド製造物を使用した場合に得られる複雑な混合物を使用した場合でさえも、この設定により、驚くべきことに、反応容器内のレドックス電位を制御することが可能となり、こうして、反応容器内の還元性化学基のモル量が、添加した酸化当量のモル量に相当する場合の等価な点またはそのわずかに下になるようにする。したがって、反応混合物内のレドックス電極から得られたフィードバックシグナルに基づいて、工程c)の溶液の流量を自動的に制御することが可能となる。本発明の一実施形態では、工程c)の溶液の流量は、反応容器内のレドックス電極によって発生したフィードバックシグナルに基づいて制御され、本方法の工程d)の間に、反応容器内のレドックス電位が、等量点のわずか下になるように調節される。本発明の一部の実施形態では、工程b)およびc)の溶液の反応容器への流入は、独立して、制御され、連続的に調節することができる。
【0053】
本発明による方法では、工程d)におけるペプチド溶液および酸化剤の溶液の添加は、酸化剤の平均濃度が本質的にゼロとなるよう、すなわち、酸化剤の量がジスルフィド結合形成に限定されるように行われる。これらの条件下で添加されたいずれの酸化剤も、酸化反応によって本質的に直ちに消費される。一部の実施形態では、酸化剤の平均濃度が、酸化剤の濃度を監視するための使用されるモニタリングシステムの検出限界未満である限り、酸化剤の平均濃度は本質的にゼロと見なされる。一部の実施形態では、これは、例えば、ディッププローブにより、反応混合物の色調を制御することによって実現することができる。一部の実施形態では、酸化試薬としてヨウ素を使用した場合、反応混合物内の酸化試薬の濃度は、反応混合物のバルクの色調が透明または黄色である限り、本質的にゼロである。一部の実施形態では、レドックス電極を使用して、平均して等価点またはそれ未満に求められた電位を維持するよう、等価点を求めて流量を制御することができる。
【0054】
反応容器内の酸化剤の平均濃度は、前記平均濃度が、0.0005当量/l未満、0.0004当量/l未満、0.0003当量/l未満、0.0002当量/lまたは0.0001当量/l未満である場合、本質的にゼロと見なすことができる。1当量の酸化剤は、反応容器内の濃度C0にあるペプチドの量を完全に還元された状態から完全に酸化された状態に変換するために必要な酸化剤の化学量論量として定義されることを理解すべきである。本発明の一部の実施形態では、ペプチド溶液の流量および酸化剤の溶液の流量は、濃度C1、すなわち反応容器中に含まれる液体内の還元されたペプチドの平均濃度、および反応容器中に含まれる液体内の酸化剤の平均濃度が、同時添加時間の間に定常状態に到達するよう調節することができる。本発明の一部の実施形態では、濃度C1は、添加された溶液の量による希釈のために、同時添加時間の間に低下し得る。
【0055】
他の実施形態では、ペプチド溶液および酸化剤溶液の流量は、平均濃度C1が経時的に上昇するよう、調節することができる。
【0056】
工程d)の後、酸化剤の添加は、反応容器へのペプチド添加の終了を超えても継続する(工程e)。この添加は、酸化剤の平均濃度を本質的にゼロに維持しながら行うことができる。他の実施形態では、酸化剤の添加は、反応容器内の酸化剤の平均濃度がゼロを超えて上昇する恐れがある。
図2は、本発明の一実施形態による、反応容器内の経時的な還元されたペプチド、全ペプチドおよび酸化剤の平均濃度の進展を、概略的に示している。本発明のさらなる実施形態では、工程d)およびe)は、少なくとも1回、交互に繰り返される。本発明の一部の実施形態では、工程d)およびe)が少なくとも、2回、4回、6回、8回、10回または10回超で交互に繰り返される。
【0057】
本発明の一部の実施形態では、工程d)およびe)における反応容器に添加される酸化剤の総量は、工程e)の終了時に反応容器内に含まれる過剰(すなわち未反応)の酸化剤の量が、完全に酸化されたペプチド中に存在するジスルフィド(すなわち、-S-S-)結合の総量の少なくとも0.01当量、例えば少なくとも0.005、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.04、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95または1.00当量に相当するように選択される。本発明の一部の実施形態では、酸化剤の総量は、工程e)の最後の反復の終了時に反応容器内に含まれる過剰(すなわち未反応)の酸化剤の量が、完全に酸化されたペプチド中に存在するジスルフィド(すなわち、-S-S-)結合の総量の少なくとも0.01当量、例えば0.005、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.04、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95または1.00当量に相当するように選択される。本発明の一実施形態では、反応容器に添加される酸化剤の総量は、完全に酸化されたペプチド中に存在するジスルフィド(すなわち-S-S-)結合の総量の1.0~2.0当量、例えば約0.95、1.00、1.01、1.02、1.03、1.03、1.04、1.05、1.1、1.15、1.20、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00または2.04当量に相当する。
【0058】
一実施形態では、反応容器に添加される酸化剤の総量は、完全に酸化されたペプチド中に存在するジスルフィド結合の総量の1.0~1.5当量に相当する。本明細書で使用する場合、表現「1当量のジスルフィド結合の量」は、所与の量のジスルフィド結合を生成するために必要な酸化剤の化学量論量を定義するために使用される。例えば、1molのジスルフィド結合を生成するために、1molのヨウ素(I2)が必要である。
【0059】
本発明のさらなる実施形態では、工程e)の間に蓄積する恐れのある、いかなる過剰の酸化試薬も、続いて除去される。本発明の一実施形態では、工程e)の完了後に、反応容器内に含まれるいかなる過剰の酸化剤も、好適な還元剤の添加によって除去される。還元剤は、反応容器に固体または溶液として添加される。上記の目的に好適な還元剤は、酸化剤を低減するが、ペプチドのジスルフィド結合に本質的に影響を及ぼさないことが当業者によって理解される。本発明の一部の実施形態では、アスコルビン酸またはチオ硫酸塩が、過剰な酸化剤を除去するために使用される。当業者は、還元剤の量は存在する過剰の酸化試薬の量に好ましくは調節することができることを理解している。これは、例えば、還元剤の量を滴定することによって、または予測される過剰の酸化剤を還元するために必要な還元剤の化学量論量を計算することによって実現することができる。
【0060】
本発明の他の実施形態では、低分子量化学種は、反応容器の内容物から除去される。これは、反応容器の内容物に膜ろ過を施すことによって、好ましくは実現することができる。本発明の一実施形態では、膜ろ過は、本発明の方法の工程d)およびe)を実施する間、連続的に行われる。一実施形態では、膜ろ過は、工程d)と同時に実施される(同様に:行われる)。この実施形態では、膜ろ過は、工程d)の開始前または開始後に、および工程d)の終了前または終了後に開始することができる。好ましくは、膜ろ過は、工程d)の期間全体の間に行われる。一実施形態では、膜ろ過は、工程d)の期間全体の間に行われ、これ以降、継続される。工程d)の後に膜ろ過を継続する場合、膜ろ過は、生成物溶液を濃縮するため、および/またはダイアフィルトレーション(すなわち、ろ過中に代替緩衝液または溶媒の添加による塩およびまたは溶媒交換)するために使用することができる。他の実施形態では、工程e)が行われた後に、反応容器の内容物に膜ろ過が施される。好ましい実施形態では、膜ろ過は、低分子量化学種を同時に除去しながら、反応容器内の酸化されたペプチドを濃縮するために使用される。本明細書で使用する場合、用語「低分子量化学種」は、生成されるペプチドよりも低い分子量を有する、反応容器内に含まれる物質を指すことができる。
【0061】
膜ろ過は、圧力により推進される分離プロセスであり、このプロセスは、低分子、例えば緩衝液および溶媒分子は通過させるが、目的のペプチドの保持を可能にする、半透性膜の使用によるものである。本発明の目的のため、3kDa以下、例えば、3kDa、2kDa、1kDa、0.5kDa、0.2kDaまたはそれ未満の分子量カットオフを有する膜を使用することが好ましい。膜を通過する液体は、「透過液」または「ろ液」と称される一方、膜によって保持される試料は、「保持物」と称される。膜細孔の目詰まりを回避するため、タンジェンシャルフローろ過フォーマット(別名、クロスフローろ過)が、有利なことに使用される。例えば、クロス-フロー限外ろ過は、反応容器の内容物が液体循環によって混合される、実施形態において、優先的に使用される。
【0062】
本発明の目的のため、酸、塩基および有機溶媒と適合可能な膜を使用することが好ましい。特に好ましい実施形態では、0.5kDa未満の分子量カットオフを有するセラミック製またはポリマー製膜が使用される。しかし、膜が好適な分子量カットオフを実現する限り、フィルターは、例えば、プラスチック(例えば、ナイロン、ポリスチレン)、金属、合金、ガラス、セラミック、金属酸化物、セロファン、セルロースまたはコンポジット材料のようなろ過の状況において公知の任意の材料とすることができることを理解すべきである。フィルターは、疎水性であってもよく、または親水性であってもよい。フィルターの表面は、中性であってもよく、または正に荷電していてもよく、または負に荷電していてもよい。
【0063】
本発明によるさらなる実施形態では、本方法は、その酸化状態にあるペプチドを精製する工程をさらに含む。
【0064】
好ましくは、ペプチドは、工程e)およびいかなる過剰の酸化剤の任意選択の除去の完了後に精製が施される。本文脈において場合により使用される精製および単離の手段は、例えば、結晶化、凍結乾燥、1種またはそれ以上の電気泳動法(例えば、ゲル電気泳動またはキャピラリー(CE)電気泳動)、1種もしくはそれ以上の追加的な沈殿に基づく方法(例えば、塩溶または塩析)、1種もしくはそれ以上の透析法(透析)、および/または1種もしくはそれ以上のクロマトグラフィー法(例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC(RP-HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、フラッシュクロマトグラフィー(フラッシュ)、高速再流体液体クロマトグラフィー(Rapid Refluid Liquid Chromatography)(RRLC)、高速分離液体クロマトグラフィー(RSLC)、超迅速速液体クロマトグラフィー(UFLC)、逆相UFLC(RP-UFLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)または逆相UPLC(RP-UPLC)を含み、好ましくは、酸化されたペプチドに、少なくとも1つの次元の逆相HPLCが施される。
【0065】
本発明のさらなる態様は、本発明による方法を行うために好適な装置であって、
a)反応容器の内容物を混合するための手段が装備されている容器であって、好ましくは、容器の内容物を混合するための手段が、撹拌器、ポンピング回路、または撹拌器とポンピング回路である、反応容器;
b)前記反応容器への液流入のための2つの空間的に離れた導入口;
c)その各々が前記導入口の1つの連結されている2つの保管容器であって、1つの保管容器が、酸化剤を含む液体を含有し、もう一方の保管容器が、酸化されることになるペプチドを含む液体を含有する、2つの保管容器;および
d)導入口を介する、保管容器から反応容器への液体流入を行い、これを制御することを可能にする自動化ポンプ
を含む装置に関する。
【0066】
好ましくは、装置が作製されている材料はすべて、それらが曝露される試薬に(実質的に)不活性である。好ましくは、材料は、医薬品製品、化粧品ならびに/または食物および飲料に関する適用可能な法規に準拠し、すなわち、材料は、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(GMP)に好ましくは準拠している。さらに、静電気的な点火のリスクを最小化するため、導電性材料を使用することができる。
【0067】
本明細書において、表現「反応容器」または「反応器」は、目的の試薬を採取するのに好適であり、少なくとも1つの液体排出口を好ましくは有する、容器に使用される。反応容器は、その内容物の効率的な混合、およびその壁のリンスを可能にするような形状にされている。反応容器は、好ましくは閉じられ、すなわち、混入またはその内容物の意図しない放出を回避するのに好適である。反応容器は、物質のため、好ましくは液体のための追加の導入口および排出口を備えてもよい。このような導入口は弁を好ましくは備え、この弁は、意図的に、物質が反応容器内に入れられないまたは反応容器から取り出されない限り、閉じられている。好ましくは、追加の導入口および排出口を介した物質の移送は、中央またはローカル制御ユニットによって管理される、自動機器(例えばポンプおよび弁)によって推進されて制御される。本発明の装置の反応容器は、上で説明した、少なくとも2つの空間的に離れた液体用導入口を備えてもよい。一実施形態では、反応容器は、いかなる過剰の酸化剤も除去するため、反応容器に還元剤を導入することを可能にする、少なくとも1つのさらなる導入口を備える。一実施形態では、反応容器は、反応容器に緩衝液/洗浄用液体を導入することが可能な、少なくとも1つのさらなる液体用導入口を備える。後者の液体用導入口は、反応器内のスプレーヘッドに接続されている。
【0068】
反応容器は、例えば、金属、ガラス、エナメル、またはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリエーテルエーテルケトンのようなポリマーの任意の好適な材料から作製される。好ましくは、材料が曝露される試薬に対して本質的に不活性な材料が選択される。さらに、静電気的な発火のリスクを最小化するため、導電性材料を使用することができる。一部の実施形態では、保管容器は、ステンレス鋼またはハステロイ合金またはガラスから作製されている。反応容器のサイズおよび寸法は、意図されるスケールに従い選択することができる。例えば、(約)10~(約)300リットル、(約)20~(約)250リットル、(約)30~(約)200リットル、(約)40~(約)150リットル、(約)50~(約)100リットルまたは(約)60~(約)75リットルの内部体積を有する反応器を使用することができる。例えば、10、20、30、40、50、75、100、150、200または250リットルの内部体積を有する反応器を使用することができる。一部の実施形態では、反応容器は、(約)10~(約)30リットルの内部体積を有する。
【0069】
反応容器は、保護雰囲気下で作業するように適合される。例えば、反応容器は、真空源に連結することができる第1の制御可能な弁、窒素のような不活性ガス源に連結することができる第2の制御可能な弁、および電子式または機械式圧力制御装置を備えることができる。好ましくは、弁は、例えば中央制御ユニットによって、自動的に操作される。他の実施形態では、反応容器は、窒素のような不活性ガス源に連結された制御可能な弁だけを備えて、保護ガスで容器の液体内容物を覆うことが可能である。
【0070】
温度制御を可能にするために、反応容器は、ジャケット付き反応器とすることができる。好ましくは、反応器内の温度センサは、反応器のジャケット内の冷却流体または加熱流体の循環を制御するフィードバックシグナルを供給する。
【0071】
本明細書において、表現「保管容器」は、その内部に目的の物質を好適な条件下で保管することができる、容器に使用することができる。当業者は、例えば、物質の完全性、または所与のプロセスの規格によるプロセス安全性を保つよう、状況に応じて好適な条件を規定することができる。保管容器は、例えば、金属、ガラス、エナメル、またはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリエーテルエーテルケトンのようなポリマーの任意の好適な材料から作製される。一部の実施形態では、保管容器は、ステンレス鋼またはハステロイ合金から作製されている。保管容器のサイズは、意図される合成のスケールに従い選択することができる。一部の実施形態では、保管容器は、(約)1~(約)100リットル、例えば(約)1、2、5、10、15、20、25または30リットルの内部体積を有する。一部の実施形態では、保管容器は、(約)5~(約)20リットルの内部体積を有する。
【0072】
温度制御を可能にするために、保管容器は、ジャケット付きとすることができる。好ましくは、反応器内の温度センサは、容器のジャケット内の冷却流体または加熱流体の循環を制御するフィードバックシグナルを供給する。
【0073】
一部の実施形態では、保管容器は、保護ガスを含有するようにさらになされている。例えば、容器は、圧力制御装置、真空源に連結することができる制御可能な弁、および窒素のような不活性ガス源に連結することができる第2の制御可能な弁を備えることができる。
【0074】
保管容器はそれぞれ、液体用導管を介して、反応容器の導入口に連結されている。本発明の方法に関して上で詳述されている通り、前記導入口は、空間的に離れており、個々の試薬が、その中に含まれる液体表面に反応器の上部から添加されるよう、または作用剤が液体表面より下から添加されるように位置されている。保管容器から反応容器への液体流量は、投入ポンプと本明細書において称することがある、ポンプによって好ましくは制御される。当業者は、手近にある特定の装置の寸法、および使用される試薬の予期される濃度に依存して、投入ポンプの規格を常套的に決定する。
【0075】
一実施形態では、装置は、反応容器内にモニタリングシステムをさらに備えることができ、このシステムは、反応容器への酸化剤の溶液の流量を調節する投入ポンプにフィードバックシグナルを供給する。一実施形態では、装置は、反応容器内にモニタリングシステムをさらに備えることができ、このシステムは、反応容器へのペプチド溶液の流量を調節するポンプにフィードバックシグナルを供給する。一実施形態では、装置は、反応容器内にモニタリングシステムをさらに備えることができ、このシステムは、反応容器へのペプチド溶液の流量を調節するポンプに、および反応容器への酸化剤の溶液の流量を調節するポンプにフィードバックシグナルを供給する。一実施形態では、装置は、反応容器内にモニタリングシステムをさらに備えており、このシステムは、導入口を介して、保管容器から反応容器への液体流入を行い、これを制御する自動化ポンプの少なくとも1つを制御するためにフィードバックシグナルを供給する。
【0076】
好ましい実施形態では、酸化剤の前記溶液の流量は、モニタリングシステムによって、好ましくは反応容器内の酸化還元電位プローブによって発生したフィードバックシグナルによって制御され、このモニタリングシステムは、好ましくは反応容器、保持ループおよび/またはバイパスループ内に、またはこれらにおいて位置し得る。
【0077】
好ましい実施形態では、装置は、反応容器内にもしくはここに取り付けられた、または保持ループ内にもしくはここに取り付けられた、または保持ループへのバイパス内にもしくはここに取り付けられたモニタリングシステムをさらに備えており、このシステムは、前記自動化ポンプ(6)の少なくとも1つを制御するためにフィードバックシグナルを供給し、好ましくは、前記モニタリングシステムは、酸化還元電位プローブを備える。
【0078】
モニタリングシステムは、例えば、UV、Vis、NIR、IR(例えば、ラマンプローブ)のためのディッププローブ、または酸化還元電位プローブ、例えば好適なPtまたはAu電極のような、好適なスペクトル範囲を有する光学プローブを備えてもよい。ディッププローブの使用の代替として、前記センサは、フローセルの形態にあってもよく、そのような実施形態において、保持ループまたはバイパスループに一体化されており、この場合、反応容器は、再循環回路の部分となっている。前述の実施形態の各々において、モニタリングシステムを使用して、還元されたペプチドの濃度、全ペプチドの濃度、酸化試薬の濃度、任意の他の生成物もしくは酸化反応の遊離物の濃度、および/または上記のいずれかの間の比を決定するために好適な任意のパラメータを監視することができる。特に、反応容器内の溶液の特定の光学特性またはレドックス電位は、モニタリングシステムによって決定することができる。1つまたはそれ以上のモニタリングシステムを使用して、例えば光学プローブおよびレドックスプローブは、いくつかのパラメータを並行して監視することができる。
【0079】
本明細書で使用する場合、表現「レドックス電位」または「酸化還元電位」または「ORP」は、電子を放出するまたは取り込む溶液の傾向を反映する。レドックス電位は、ミリボルト(mV)での単一電圧として示される。レドックス電位は、支持電極と参照電極との間の電圧を測定することによって求めることができる。本明細書で使用する場合、表現「レドックスプローブ」、「orp電極」、「レドックス電位プローブ」および「レドックス電極」は、互換的に使用され、支持電極および参照電極が単一構成部に構築された構成を含む。このような設定は、レドックス組合せ電極と称することができる。
【0080】
一実施形態では、モニタリングシステムは、反応容器内の酸化剤の濃度を監視することが可能であり、反応容器への酸化剤の溶液の流量を調節するポンプにフィードバックを供給する。一実施形態では、モニタリングシステムは、反応容器内の酸化剤と還元されたペプチドとの比を監視することが可能であり、反応容器への酸化剤の溶液の流量を調節するポンプにフィードバックを供給する。一実施形態では、モニタリングシステムは、反応容器内の酸化剤と還元されたペプチドとの比を監視することが可能であり、反応容器への還元されたペプチドの溶液の流量を調節するポンプにフィードバックを供給する。好適なモニタリングシステムは、とりわけ、好適なスペクトル範囲を有するトランスミッションディッププローブ、例えば、UV-Vis用のトランスミッションディッププローブ、およびレドックス電極、例えば好適なPt電極またはAu電極を含む。
【0081】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明による方法を行うために好適な装置であって、
a)反応容器の内容物を混合するための手段が装備されている容器であって、好ましくは容器の内容物を混合するための手段が、撹拌器またはポンピング回路である、反応容器;
b)前記反応容器への液流入のための2つの空間的に離れた導入口;
c)その各々が前記導入口の1つの連結されている2つの保管容器であって、1つの保管容器が、酸化剤を含む液体を含有し、もう一方の保管容器が、酸化されることになるペプチドを含む液体を含有する、2つの保管容器;
d)導入口を介する、保管容器から反応容器への液体流入を行い、これを制御することを可能にする自動化ポンプ;および
e)反応容器内の酸化剤の濃度を監視することが可能であり、前記自動化ポンプの少なくとも1つを制御するためフィードバックシグナルを供給する、モニタリングシステム
を含む装置に関する。
【0082】
本明細書で使用する場合、表現「化合物の濃度を監視する」は、問題とする化合物の絶対濃度または相対濃度と直接または間接的に関係するパラメータのいずれかを測定することを記載するために使用される。モニタリングシステムは、センサ、例えばUV-VisまたはNIR(近赤外)のためのトランスミッションディッププローブのような好適なスペクトル範囲を有するトランスミッションディッププローブ、または好適なPt電極もしくはAu電極のようなレドックス電極を備えてもよい。モニタリングシステムは、制御装置ユニットをさらに備えてもよく、このユニットは、センサ入力値(実際の値)とユーザーの入力値(目標値)を受信し、投入ポンプの動作に必要な任意の調節値を計算し、1つまたはそれ以上の投入ポンプに適切な制御シグナルを供給する。
【0083】
一実施形態では、モニタリングシステムは、反応容器内の液体の酸化還元電位を監視することが可能であり、反応容器への還元されたペプチドの溶液の流量を調節するポンプに、および反応容器への酸化剤の溶液の流量を調節するポンプにフィードバックを供給する。一実施形態では、モニタリングシステムは、反応容器内の液体の酸化還元電位を監視することが可能であり、反応容器への還元されたペプチドの溶液の流量を調節するポンプにフィードバックを供給する。一実施形態では、モニタリングシステムは、反応容器内の液体の酸化還元電位を監視することが可能であり、反応容器への酸化剤の溶液の流量を調節するポンプにフィードバックを供給する。一部の実施形態では、モニタリングシステムは、白金電極、好ましくは、セラミック製隔膜を有する複合型白金リング電極のような複合型白金電極を備える。
【0084】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明による方法を行うために好適な装置であって、
a)反応容器の内容物を混合するための手段が装備されている容器であって、好ましくは容器の内容物を混合するための手段が、撹拌器またはポンピング回路である、反応容器;
b)前記反応容器への液流入のための2つの空間的に離れた導入口;
c)その各々が前記導入口の1つの連結されている2つの保管容器であって、1つの保管容器が、酸化剤を含む液体を含有し、もう一方の保管容器が、酸化されることになるペプチドを含む液体を含有する、2つの保管容器;
d)導入口を介する、保管容器から反応容器への液体流入を行い、これを制御することを可能にする自動化ポンプ;および
e)反応容器内のレドックス電位を監視することが可能であり、前記自動化ポンプの少なくとも1つを制御するためフィードバックシグナルを供給する、モニタリングシステム
を含む装置に関する。
【0085】
一部の実施形態では、モニタリングシステムは、レドックス電位プローブ、好ましくは、金属組合せ電極、最も好ましくは複合型白金電極を備える。
【0086】
一実施形態では、装置は、反応容器の内容物に、例えば、限外ろ過またはナノろ過による膜ろ過を施すための手段をさらに備えてもよい。好ましくは、これは、ポンピング回路に反応容器を一体化することによって実現され、こうして、液体/保持液は、クロスフローろ過ユニットを介して、反応容器からこの反応容器へと循環して戻される。本発明のこの態様の例示的な実施形態は、
図3および5に示されている。ろ過ユニットから取り出された透過液は、緩衝液、捕捉剤および還元された酸化剤のような任意の低分子化合物を好ましくは含む。
【0087】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明による方法を行うために好適な装置であって、
a)反応容器の内容物を混合するための手段が装備されている容器であって、好ましくは容器の内容物を混合するための手段が、撹拌器またはポンピング回路である、反応容器;
b)前記反応容器への液流入のための2つの空間的に離れた導入口;
c)その各々が前記導入口の1つの連結されている2つの保管容器であって、1つの保管容器が、酸化剤を含む液体を含有し、もう一方の保管容器が、酸化されることになるペプチドを含む液体を含有する、2つの保管容器;
d)導入口を介する、保管容器から反応容器への液体流入を行い、これを制御することを可能にする自動化ポンプ;および
e)反応容器の内容物に膜ろ過を施すための手段
を含む装置に関する。
【0088】
本明細書で使用する場合、表現「反応容器の内容物に膜ろ過を施す」とは、保持液、すなわちペプチド含有溶液が、反応容器内に含まれているか、またはリサイクルされる設定を記載する。先行技術の教示とは対照的に、本発明者らは、このような設定は、ペプチド酸化の完了を実現することが可能であり、酸化した生成物の純度を改善することが可能な点で有利であることを見出した。この理論によって拘泥されないが、これは、このような設定が、i)反応容器内の流体の量を維持すること、および/またはii)低分子量汚染物質の濃度を経時的に(本質的に)一定に維持することを可能にするからである可能性があると考えられる。
【0089】
一実施形態では、反応容器の内容物に膜ろ過を施すための手段は、反応容器に一体化された膜を含んでもよい(デッドエンド構成)。膜を通過する流れは、窒素圧を反応容器内の溶液に適用することによって推進される。
【0090】
一実施形態では、反応容器の内容物に膜ろ過を施すための手段は、膜ろ過ユニット、および液体/保持液を循環させて反応容器から膜ろ過ユニットを介して反応容器(クロスフロー構成)に戻すことが可能な液体用導管を含むことができる。この液体用導管は、保持ループと称することができる。一実施形態では、保持ループは、反応容器の排出口から現れ、膜ろ過ユニットを介して、反応容器の専用導入口に通じている。別の実施形態では、保持ループは、反応容器の排出口から現れ、膜ろ過ユニットを介して、保管容器の1つと同じ反応容器の導入口に通じている。この場合、前記保管容器は、保持ループを介して前記導入口に連結されており、すなわち保管容器から現れる液体用導管は、保持ループへと排出する。この後者の実施形態では、保持ループのフラックスは、フラックスが反応容器に入る前に、試薬を事前希釈するために使用される。
【0091】
保持ループを経由する液体のフラックスは、保持ループに一体化された再循環ポンプによって行うことができる。ポンプは、好ましくは、膜表面に1~5m/sの線速度を確保するような寸法であり得る。このループ内の圧力は、ポンプ性能により、および保持ループに一体化された圧力制御弁によって調節される。透過液の形成は、液体にかけられた圧力によって推進される。透過液は、膜ろ過ユニットから取り出される。あるいは、保持ループからの液体のフラックスは、再循環ポンプによって行うことができ、圧力が推進する透過液の形成は、反応容器に窒素圧をかけることによって得ることができる。
【0092】
膜ろ過ユニットは、好ましくは、クロスフロー構成とすることができる。クロス-フロー膜ろ過ユニットは、膜筐体を備えてもよく、これは、それぞれ透過液および保持液のための1つのフィード導入口および1つの排出口を有することができる。膜筐体は密封されており、膜モジュールを保持することができる。当業者は、酸化反応の詳細(例えば、生成物を保持するおよびろ別する)、および手近な装置に応じて、好適な膜モジュールを好ましくは常套的に選択することができる。共通の例は、多チャネルまたは単チャネルセラミック製膜から作製された円筒形モジュール、ポリマー膜から作製されているスパイラル型モジュール、膜カセットまたは中空繊維を含む。金属またはコンポジット膜も、同様に使用することができる。膜表面積は、所望の操作時間を実現するための寸法にすることができる。
【0093】
本発明の目的のため、本発明の方法に関して上記の通り、ナノろ過および限外ろ過用の膜を使用することが好ましい。10kDa以下、例えば、9kDa、5kDa、3kDa、2kDa、1kDa、0.5kDa、0.2kDaまたはそれ未満の分子量カットオフを有する膜を使用することができる。好ましい実施形態では、0.5kDa未満の分子量カットオフを有するセラミック製またはポリマー製膜が使用される。しかし、膜が好適な分子量カットオフを実現する限り、膜は、例えば、ポリマー(例えば、ナイロン、ポリスチレン)、金属、合金、ガラス、セラミック、金属酸化物、セロファン、セルロースまたはコンポジット材料のようなろ過の状況において公知の任意の材料とすることができることを理解すべきである。膜は、疎水性であってもよく、または親水性であってもよい。膜の表面は、中性であってもよく、正に荷電していてもよく、または負に荷電していてもよい。酸、塩基および有機溶媒に適合可能であり、使用される圧力および温度において安定な膜を使用することが好ましい。同様に、膜ろ過ユニットの筐体および封止は、これらの影響に対して好ましくは安定である。
【0094】
保持ループ内の温度制御を可能にするため、保持ループは、シェル型および管型熱交換器、プレート型熱交換器、プレート型およびフレーム型熱交換器、またはらせんプレート型熱交換器のような熱交換器を備えることができる。熱交換器内の加熱/冷却媒体の流れは、保持ループ内の保持液の流れと同じ方向(並流)、保持ループの流れに対向(向流)、または保持ループの流れと交差(交差流)とすることができる。交差向流および多重通過流のようなハイブリッド構成も同様に可能である。当業者は、必要な加熱/冷却を実現するのに好適なタイプおよび寸法の熱交換器を常套的に選択する。
【0095】
本発明の装置内の温度制御は、1つまたは2つのジャケット付き保管容器、ジャケット付き反応容器、および保持ループに一体化されている熱交換器の併用によって実現することができる。別の実施形態では、本発明の装置内の温度制御は、1つまたは2つのジャケット付き保管容器およびジャケット付き反応容器の併用によって実現することができる。別の実施形態では、本発明の装置内の温度制御は、1つまたは2つのジャケット付き保管容器および保持ループに一体化されている熱交換器の併用によって実現することができる。別の実施形態では、本発明の装置内の温度制御は、ジャケット付き反応容器および保持ループに一体化されている熱交換器の併用によって実現することができる。これらの温度制御手段は、装置内の液体の温度が、好ましくは+/-1℃の精度で-10℃~50℃、例えば、5~50℃または10℃~30℃の範囲から選択される任意の所望の温度に制御することができるよう、選択することができる。別の実施形態では、これらの温度制御手段は、容器内の液体の温度が、5℃~50℃の範囲から選択される任意の所望の温度に制御することができるよう、選択することができる。
【0096】
本発明の装置は、上に詳述されている通り、半連続形式で使用することができ、この場合、ペプチド溶液および酸化試薬の連続フィードが、ある特定の時間、反応容器にポンプ注入される。
【0097】
本発明の装置は、規定したペプチドの量の回分毎の酸化に加え、真に連続した形式で同様に使用することができ、この場合、ペプチド溶液および酸化剤の溶液用の保管容器は、それらの溶液を操作の間に、恒久的に再充填することが可能な導入口を有していてもよく、生成物は、保持ループから連続的に取り出されてもよい。好ましくは、このような設定では、酸化試薬の量は、反応容器内の溶液の酸化還元電位が、等価な点またはそれよりわずかに上の点にあることができるよう、すなわち、反応容器内の還元可能な基と酸化試薬とが等モル量存在するか、または還元可能な基よりも酸化試薬がわずかに過剰に存在するように投入される。好ましくは、保持ループからの生成物の取り出しは、圧力制御弁と反応容器への導入口との間の保持ループに位置する液体排出口によって行うことができる。好ましくは、液体排出口を使用して、保持ループから保持液のある特定の体積流量分を連続的に抜き出され、この体積流量分は、反応容器内の全再循環流の体積流量に比べると少ない。例えば、1分あたりに抜き取られる体積流量は、反応容器および保持ループに含まれる液体の全再循環流量の10%未満、例えば、8%、6%、4%または2%未満とすることができる。当業者は、例えば、保持ループ中の流速および反応速度に応じて、手近な役割のための流れの取り出しを常套的に最適化する。作業のこの様式は、迅速な反応およびシステム構成に好ましく、試薬は、保持ループ中に十分な滞留時間を有して、生成物の取り出し前に反応を完了させる。これは、以下に示される実験5の場合であった。
【0098】
好ましい一実施形態では、保持ループから取り出されたペプチド溶液のフィードは、好ましくはロード用ポンプによって、クロマトグラフィーカラム、例えば、RP-HPLCカラムに直接、ロードすることができる。別の実施形態では、保持ループから取り出されたペプチド溶液のフィードを保管槽内に採取することができる。場合により、保持ループから取り出されたペプチド溶液は、いかなる過剰な酸化剤を除去/クエンチするため、還元剤の溶液と混合される。保管槽内で採取されたペプチドに、さらなる精製、例えばRP-HPLC、サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーのようなクロマトグラフィーによる精製工程を施すことができる。
【0099】
本発明の装置は、酸化反応の反応条件を制御する多数の選択肢を提供する。上に詳述されている通り、本発明の装置は、反応容器内の還元されたペプチド、酸化試薬および酸化されたペプチドの濃度(例えば、反応容器への試薬の供給速度、および/または膜ろ過速度、すなわち透過液形成速度を調節することによる)、温度(例えば、容器ジャケット内の加熱/冷却媒体のフラックス、および熱交換器を調節することによる)および圧力(例えば、再循環ポンプ、圧力制御弁、適用される窒素流の制御による)、および低分子化合物の濃度(例えば、膜ろ過速度、すなわち透過液形成速度を調節することによる)を制御することが可能である。好ましくは、前記パラメータの調節は、1つまたはそれ以上の自動化機器によって行われ、この機器は、反応容器内または再循環ループ内の適切なセンサからの入力値を受信する。好ましくは、前記センサは、圧力センサ、温度センサ、および導電性プローブ、レドックスプローブおよび光学プローブ(例えば、UV-VisプローブまたはNIRプローブ)から選択される1つまたはそれ以上のセンサ含む。
【0100】
自動化制御機器が、ローカル制御ユニットであってもよく、または中央制御ユニットの部分であってもよい。前記中央制御ユニットは、監視制御およびデータ取得(SCADA)制御システムアーキテクチャの場合のように、様々な階層レベルの制御を形成するよう組織化される。例えば、制御ユニットは、1つまたはそれ以上の遠隔監視コンピュータを備えてもよく、このコンピュータは、周辺機器、および遠隔ターミナルユニット(RTU)、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)のような1つまたはそれ以上の周辺で機器、およびGUIパネルのようなユーザーインターフェースからデータを収集し、これらに制御コマンドを送信する。PLCおよび監視SCADAソフトウェアは、とりわけ、温度、圧力、酸化還元電位または導電性のセンサのような現場センサからの入力値を受信することができる。1つまたはそれ以上のSCADA監視コンピューティングプラットフォームは、生産実行システム(MES)とさらに相互作用することができ、次いで、このシステムは、エンタープライズリソースプランニング(ERP)システムと相互作用する。さらに、1つまたはそれ以上のSCADA監視コンピューティングプラットフォームは、専用データベースに特定の工程パラメータを送信することによりロギングタスクを実行することができる。一部の実施形態では、制御ユニットは、少なくとも1つのSCADAシステム、投入ポンプ、再循環ポンプおよび圧力制御弁の動作を制御するセンサおよびアクター(actor)を備える少なくとも1つのPLCを備える。一部の実施形態では、制御ユニットは、保持ループからの生成物の流出、反応容器からの液体の排出、追加試薬、例えば還元剤または緩衝液/洗浄用液体の反応容器への流入、ならびに容器ジャケットおよび/または保持ループの熱交換器を流れる加熱/冷却流体の流量をさらに制御する。一部の実施形態では、制御ユニットは、反応容器および反応容器の混合機器への保護ガス(例えば、窒素)の流量をさらに制御することができる。
【0101】
一部の実施形態では、制御機器は、反応容器中および再循環ループ中の液体の量をある範囲内の一定値に維持するよう調節される。当業者は、この条件下では、フィード流量、ろ過速度および保持液除去の速度(適用される場合)は相互依存することを直ちに認識するであろう。例えば、還元用容器内の酸化当量が増加は、ろ過速度の低下、および/またはペプチド溶液の流入の増大、および/または反応容器への緩衝溶液の投入のいずれかによって酸化当量の増加を相殺すると同時に、酸化剤の流入を減量することによって調節される。同様に、ペプチド溶液中に含まれる低分子汚染物質の濃度が上昇する場合、これは、ある量の緩衝溶液を反応容器に投与すると同時に、ろ過速度を増大することによって相殺される。当業者は、どのパラメータが、特に、目前の指定の酸化反応に影響するかを判定し、そのパラメータを制御するよう、このシステムを構成する。
【0102】
以下の態様は、本発明の装置の特に好ましい実施形態に関する。括弧内に示されている参照符号は、例示のために過ぎず、限定として解釈されるべきではない。
【0103】
第1の態様では、本装置は、
a)容器の内容物を混合するための手段が装備されている反応容器(1)であって、好ましくは、容器の内容物を混合するための手段が、撹拌器またはポンピング回路である、反応容器;
b)前記反応容器への液体流入のための2つの空間的に離れた導入口(4);
c)その各々が前記導入口の1つの連結されている2つの保管容器(5)であって、1つの保管容器が、酸化剤を含む液体を含有し、もう一方の保管容器が、酸化されることになるペプチドを含む液体を含有する、2つの保管容器;
d)導入口を介する、保管容器から反応容器への液体流入を行い、これを制御することを可能にする自動化ポンプ(6);および
e)反応容器の内容物に膜ろ過を施すための手段
を備える。
【0104】
第2の態様では、反応容器の内容物に膜ろ過を施すための手段は、膜ろ過ユニット(7)、および液体を反応容器から膜ろ過ユニットに循環させて反応容器に戻す保持ループ(15)を備えるか、またはこれらに相当する。
【0105】
第3の態様では、第2の態様による膜ろ過ユニット(7)は、クロス-フローろ過ユニットであり、好ましくは、膜ろ過ユニットは、0.5kDa未満の分子量カットオフを有するナノろ過膜モジュールを有する膜筐体を備える。
【0106】
第4の態様では、第2の態様による装置の保持ループ(15)は、再循環ポンプ(11)および圧力制御弁(10)をさらに含む。
【0107】
第5の態様では、上記の態様のいずれかによる装置は、少なくとも1つの温度制御手段をさらに備え、この手段は、ジャケット付き保管容器、ジャケット付き反応容器または保持ループ(15)に一体化した熱交換器からなる群から選択される。
【0108】
第6の態様では、上記の態様のいずれかによる装置の反応容器(1)は、追加の液体用導入口をさらに備え、好ましくは、液体用導入口により、緩衝液または洗浄用媒体を反応容器に供給することが可能になる。
【0109】
第7の態様では、上記の態様のいずれかによる装置は、反応容器内にセンサ(13)をさらに備え、このセンサは、前記自動化ポンプの少なくとも1つを制御するため、フィードバックシグナルを供給する。
【0110】
第8の態様では、第7の態様によるセンサは、光学的センサおよび酸化還元電位プローブから選択され、好ましくは、センサは、組合せ金属電極、最も好ましくは複合白金電極である。
【0111】
第9の態様では、第7または第8の態様による装置は、制御装置ユニットをさらに備え、このユニットは、反応容器内の前記センサから入力値を受信し、1つまたはそれ以上の投入ポンプに制御シグナルを供給する。
【0112】
第10の態様では、上記の態様のいずれかによる装置は、反応容器(1)内、保持ループ(15)内、または保持ループへのバイパス中に、温度センサ、圧力センサまたは光学的センサから選択される少なくとも1つのセンサをさらに備える。
【0113】
第11の態様では、上記の態様のいずれかによる装置は、中央制御ユニットをさらに備え、このユニットは、センサからの入力値を受信して、ポンプの動作、装置内の圧力、および場合により装置内の圧力を制御する。
【0114】
本発明による方法の実施形態のこれまでの説明および記載は、同様に、本発明による装置に適用可能であり、その反対でもあることに留意すべきである。
【0115】
実施した実験および実現された結果を含めた、以下の図および実施例は、例示目的のために提示されているに過ぎず、特許請求の範囲に限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】反応容器に還元されたペプチドおよび酸化剤を含有する溶液の導入口の様々な位置を示す図である。パネルa)~i)は、側面図からの反応容器を示しており、パネルj)は、両方の導入口の間を囲む(架空の)角度αを例示する上面図を示す。パネルa)~i)は、混合手段(3)によって混合される、反応媒体(2)の表面に対して、導入口(4)の可能な位置を例示している。
【
図2】本発明の方法の一実施形態における、工程d)およびe)の間の、経時的な反応容器内の還元されたペプチド(白丸)、全ペプチド(黒色三角形)および酸化剤(黒色菱形)の濃度変化のシミュレーションを示す図である。破線は、工程e)の開始を示す。
【
図3】本発明による装置の一実施形態を示す図であり、ここでは、反応容器(1)は、膜ろ過ユニットを含むポンピング回路に連結されている。還元されたペプチドおよび酸化剤(A、B)の溶液は、空間的に離れた導入口(4)から、反応容器(1)に供給される。反応容器(1)は、ミキサ(図示せず)を備えてもよい。保持ループ(15)が、クロスフローろ過ユニット(7)を介して、反応容器(1)の排出口から液体を循環させて、反応容器(1)に戻すことによって、反応容器(1)の内容物に膜ろ過が施される。保持ループ内の液滞流量および圧力は、再循環ポンプ(11)および圧力制御弁(10)によって運転されて制御される。形成された透過液(P)は、膜ろ過ユニット(7)から透過液槽(8)に排出される。
【
図4】比較実施例2により酸化されたペプチド(トレースi)、および実施例3により酸化された同じペプチド(トレースii)の分析用HPLCトレースを示す図である。本発明により酸化されたペプチド(トレースii)は、かなり少ないジスルフィド-結合オリゴマー(矢印によって強調されている領域を参照されたい)しか含有していないことが分かる。
【
図5】本発明の装置の別の実施形態を示す図であり、ここでは、
図3の装置は、保管容器Bから反応容器に試薬の流量を制御する投入ポンプにフィードバックシグナルを供給するモニタリングシステム(13)によってさらに補完されている。保持ループは、ナノろ過ユニットの前および後の圧力をモニタリングすることを可能にする、2つの圧力センサ(9)を含む。液体排水管(12)は、このシステムを空にすることができる。保持ループ内の液体排出口に連結されたライン(14)により、保持ループから生成物を連続的に抜き取ることが可能となる。このライン内のフラックスは、このラインと一体化されたポンプ(図示せず)によって推進される。
【
図6】比較実施例3により酸化されたペプチド(トレースa)、および実施例5.1により酸化された同じペプチド(トレースb)および実施例5.2の長期間運転(トレースc)の分析用HPLCトレースを示す図である。本発明の実施例5により酸化されたペプチドは、オリゴマー(楕円形状によって強調されている領域を参照されたい)であることが予期される、かなり少ない高分子量の混入物しか含有していないことが分かる。
【符号の説明】
【0117】
1 反応容器
2 反応媒体
3 混合手段
4 液体導入口
5 保管容器
6 投入するための液体用ポンプ
7 膜ろ過ユニット
8 透過液用の容器
9 圧力センサ
10 圧力制御弁
11 再循環するための液体用ポンプ
12 液体排出物
13 フィードバックセンサおよび制御機器
14 連続取り出し用ライン
15 保持ループ
【実施例】
【0118】
一般方法:
ペプチド1[H-D-Phe-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Cys-L-スレオニノール]およびペプチド2[(デアミノ-Cys1,D-Tyr(Et)2,Thr4,Orn8)-オキシトシン]は、標準法およびFmoc-アミノ酸誘導体を使用するSPPSによって合成した。ペプチド切断と保護基の同時切断は、少なくとも80%のTFA、水および捕捉剤を含む切断カクテルを使用して行った。未精製ペプチドは、抗溶媒としてジイソプロピルエーテルを使用して、切断カクテルから沈殿させた。
【0119】
比較実施例1:ペプチド1の酸化
一般手順によって生成した未精製ペプチド1を30%酢酸に溶解し、5%アセトニトリル水溶液で希釈し、1.3g/lの最終ペプチド濃度にした。0.01Mのヨウ素水溶液をこのペプチド溶液にゆっくり加えた。反応の完了後、未反応ヨウ素をアスコルビン酸の添加によって還元した。得られた最終ペプチド濃度は、分析用RP-HPLCによって求めると、0.95g/lであり、酸化されたペプチドの純度は90%であった。
【0120】
比較実施例2:ペプチド1の酸化
0.207Mヨウ化カリウム水溶液中の0.069Mのヨウ素溶液を、撹拌した30%酢酸水溶液110mlに連続して加えた。30%酢酸水溶液中の未精製ペプチド1の溶液(50g/l)を、位置の離れた導入口を介して連続的に添加した。同時添加中に、この反応混合物は赤褐色となり、ヨウ素の平均濃度がゼロより高いことを実証した。酸化反応の完了後、アスコルビン酸を添加することによって過剰のヨウ素をクエンチし、反応生成物を分析用RP-HPLCによって分析した。ジスルフィド結合オリゴマーの含有率は、12.03%であることが分かった。得られた最終ペプチド濃度は、17.5g/lであった。
【0121】
実施例3
ペプチド1の酸化
一般手順によって生成した未精製ペプチド1を30%酢酸水溶液に溶解し、50g/lの濃度にした。この溶液を撹拌した30%酢酸水溶液110mlに連続して加えた。0.207Mヨウ化カリウム水溶液中の0.069Mのヨウ素溶液を、位置の離れた導入口を介して、連続的に添加した。同時添加中に、この反応混合物はわずかに黄色となり、ヨウ素の平均濃度が本質的にゼロであることを実証した。ヨウ素溶液の添加を、ペプチド添加を超えて継続した場合、反応混合物の色調は赤褐色に変化した。酸化反応の完了後、アスコルビン酸を添加することによって過剰のヨウ素をクエンチし、反応生成物を分析用RP-HPLCによって分析した。ジスルフィド結合オリゴマーの含有率は、7.63%であると分かった。得られた最終ペプチド濃度は、17.5g/lであった。したがって、
図4に例示される通り、本発明による方法は、実施例2の先行技術の方法に比べて、ジスルフィド結合オリゴマーの量を63%に低下させることが可能である。さらに、得られた酸化されたペプチドの濃度は、実施例1の先行技術の方法による場合よりもかなり高い。
【0122】
実施例4
ペプチド2の酸化
一般手順によって生成した未精製ペプチドを60%酢酸水溶液に溶解し、100g/lの濃度にした。この溶液を酢酸の撹拌溶液に連続して添加した。同時に、0.227Mのヨウ化カリウム水溶液中の0.075Mのヨウ素の溶液を、位置の離れた導入口を介して添加した。前記同時添加中、この反応混合物はわずかに黄色となり、ヨウ素の平均濃度が本質的にゼロであることを実証した。ヨウ素溶液の添加がペプチド添加を超えて継続した場合、反応混合物の色調は褐色に変化した。アスコルビン酸を添加することによって過剰のヨウ素をクエンチし、反応生成物を分析用RP-HPLCによって分析した。得られた最終ペプチド濃度は27.8g/lであった。
【0123】
実施例5
ナノろ過によるペプチド1の酸化
一般手順によって生成した未精製ペプチド1を、50g/Lの濃度で30%酢酸水溶液に溶解した。0.159Mのヨウ化カリウム水溶液中の0.052Mのヨウ素の溶液を製造した。上記の2種の溶液を、それぞれ、第1および第2の保管容器に満たした。これらの保管容器を、位置の離れた導入口を介して撹拌した反応容器に連結した。前記反応容器は、ナノろ過システムのフィード槽として機能し、このシステムは、圧力センサおよび圧力制御弁を備える保持ループ、再循環ポンプ、ならびにセラミック製モノチャネル膜(ろ過面積は、0.0104m
2)を有するナノろ過ユニットをさらに含んだ。使用した装置の基本的な配置が
図3に例示されている。反応容器およびナノろ過システムの保持ループに、30%酢酸水溶液2Lを充填した。
【0124】
酸化反応は、粗製ペプチドの溶液およびヨウ素溶液を同時に反応容器に添加することによって開始した。同時添加中に、この反応混合物はわずかに黄色となり、ヨウ素の平均濃度が本質的にゼロであることを実証した。ヨウ素溶液の添加は、ペプチド添加を超えて継続した。ナノろ過システム内の液体循環は、試薬の反応容器への流入を開始する前に開始し、試薬添加の時間の間、維持した。保持ループ中の圧力は、23barに設定した。透過液および保持液の試料は、定期的な時間点で採取し、アスコルビン酸(試料0.5mL+0.5Mアスコルビン酸50μL)を添加することによってクエンチし、次に分析用RP-HPLCによって分析した。酸化反応の完了後、ナノろ過システムを除圧し、排液して保持液を回収した。アスコルビン酸を添加することによって保持液をクエンチし、反応生成物を分析用RP-HPLCによって分析した。
【0125】
5.1 短期間運転
全操作時間は約2.2時間とした。得られた最終ペプチド濃度は、5g/Lであり、純度は92.59%であった。ジスルフィド結合オリゴマーの含有率は、5%未満であることが分かった。
【0126】
5.2 長期間運転
全操作時間は、約9時間とした。得られた最終ペプチド濃度は、20g/Lであり、純度は90.44%であった。ジスルフィド結合オリゴマーの含有率は、5%未満であることが分かった。
【0127】
直鎖状ペプチドは、透過液中で検出されなかった。
【0128】
したがって、
図6に例示される通り、本発明による方法は、実施例3の方法に比べて、ジスルフィド結合オリゴマーの量を顕著にさらに低下させることが可能である。さらに、得られた酸化されたペプチドの濃度は、実施例1~4の先行技術の方法の場合よりも高く、ナノろ過システムの操作を調節することによってさらに上昇させることができる。
【国際調査報告】