(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(54)【発明の名称】導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20220617BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20220617BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/00 290H
H01B1/12 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562780
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2020089098
(87)【国際公開番号】W WO2020224630
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】201910386211.6
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513222359
【氏名又は名称】シェンズェン カプチェム テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CAPCHEM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Shabo Tongfuyu Industry Zone, Maluan Street, Pingshan District, Shenzhen, Guangdong 518118 China
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】趙 大成
(72)【発明者】
【氏名】燕 民翔
(57)【要約】
従来の固体コンデンサにおける導電性ポリマーの電気伝導率が低く、電解質にドーパントを添加する従来の方式には脱ドープがあるという問題を解決するために、本発明は、次の一般式1の化学式で示される化合物を含むポリマーモノマーを重合して得られたセグメントを含む、導電性ポリマーを提供する。
(式中、Yは、NHとSのいずれかから選択され、R1及びR2は、それぞれ独立して、H又は任意に置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基、任意に置換されたシクロアルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたアラルキル基、任意に置換されたアルコキシ基又はヒドロキシ基、及びカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基から選択され、かつR1及びR2のうちの少なくとも1つは、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基である。)また、本発明は、上記導電性ポリマーを含むコンデンサ及びその製造方法を開示する。本発明に係る導電性ポリマーは、低いESR値を有し、電気的特性が安定する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式1の化学式で示される化合物を含むポリマーモノマーを重合して得られたセグメントを含む、ことを特徴とする導電性ポリマー。
(式中、Yは、NHとSのいずれかから選択され、R1及びR2は、それぞれ独立して、H又は任意に置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基、任意に置換されたシクロアルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたアラルキル基、任意に置換されたアルコキシ基又はヒドロキシ基、及びカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基から選択され、かつR1及びR2のうちの少なくとも1つは、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基である。)
【請求項2】
前記アルキル基は、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分岐状のC1~C18アルキル基から選択され、前記シクロアルキル基は、置換もしくは非置換のC5~C12シクロアルキル基から選択され、前記アリール基は、置換もしくは非置換のC6~C14アリール基から選択され、前記アラルキル基は、置換もしくは非置換のC7~C18アラルキル基から選択され、前記アルコキシ基は、置換もしくは非置換のC1~C18アルコキシ基から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電性ポリマーを含む、ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項4】
次の一般式1の化学式で示される化合物を含むモノマー溶液を得るステップと、
(式中、Yは、NHとSのいずれかから選択され、R1及びR2は、それぞれ独立して、H又は任意に置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基、任意に置換されたシクロアルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたアラルキル基、任意に置換されたアルコキシ基又はヒドロキシ基、及びカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基から選択され、かつR1及びR2のうちの少なくとも1つは、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基である)、
コンデンサ素子を前記モノマー溶液に含浸させ、含浸後のコンデンサ素子を取り出して乾燥させた後、コンデンサ素子を酸化剤溶液に含浸させて、重合反応を行い、コンデンサ素子を封止し、コンデンサを得るステップとを含む、ことを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記アルキル基は、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分岐状のC1~C18アルキル基から選択され、前記シクロアルキル基は、置換もしくは非置換のC5~C12シクロアルキル基から選択され、前記アリール基は、置換もしくは非置換のC6~C14アリール基から選択され、前記アラルキル基は、置換もしくは非置換のC7~C18アラルキル基から選択され、前記アルコキシ基は、置換もしくは非置換のC1~C18アルコキシ基から選択される、ことを特徴とする請求項4に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤溶液は、p-トルエンスルホン酸鉄(III)のエタノール溶液又はn-ブタノール溶液である、ことを特徴とする請求項4に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記乾燥操作において、温度を50℃~150℃とする、ことを特徴とする請求項4に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記重合反応において、30℃~200℃の範囲で温度を段階的に上げてから段階的に下げ、0~60%の範囲で湿度を段階的に0%に下げ、反応時間を5~20hとする、ことを特徴とする請求項4に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記酸化剤溶液への含浸操作を真空含浸操作とする、ことを特徴とする請求項4に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記真空含浸操作の真空度を-0.05~-0.10MPaとする、ことを特徴とする請求項9に記載のコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサの技術分野に関し、具体的には、導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電解コンデンサに比べて、固体電解コンデンサは、電気伝導率が高く、熱安定性に優れている固体導電性材料を電解質として用いることにより、一般的な電解コンデンサの全ての特性を有するだけでなく、優れた信頼性、長い耐用年数、高周波及び低インピーダンス、耐高リプル電流などの特性を有し、かつ液漏れしやすく、耐用年数が短いという液体電解コンデンサの欠点を克服する。中国電子情報産業の急速な発展に伴い、近年の発展動向から見ると、固体電解コンデンサは、一般的な低電圧電解コンデンサを徐々に代替し、かつ21世紀の電子情報産業の主力製品の一つとなる。
【0003】
固体電解コンデンサの性能に対する人々の要求が高まるにつれ、導電性高分子ポリマーの電気伝導率をさらに向上させることにより、コンデンサのESR値を低下させることは、研究者が追求している共通の目標となる。ドープは、ポリマー導電性を向上させるための効果的な方法であり、化学共役二重結合を有する高分子材料に対して、ドーパントを添加することにより酸化又は還元されてより良好な電気化学活性を得ることができる。ドープによりバンドギャップを減少させ、自由電荷の移動抵抗を低減するという目的を達成することにより、共役高分子の導電性を大幅に向上させ、その電気伝導率を数桁から数十桁向上させることができる。ポリマーの共役構造により、大きなπ電子は、高い電子流動性を有し、電子非局在化の程度が高い。現在のドープ方法では、通常、特定のドーパント(例えば、ヨウ素単体、塩化鉄など)をポリマー系に導入し、その電子解離性が低いため、電子を失うか又は部分的に失って酸化され、P型ドープが発生し、また、それ自体の優れた電子親和力により、電子を得るか又は部分的に得て還元され、n型ドープが発生して、ポリマーの電気伝導率を向上させる。例えば、従来技術では、ポリスチレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのドーパントを用いて導電性高分子材料をドープすることにより、電気伝導率を向上させることが多い。
【0004】
現在、通常、外部ドーパントを添加する方式でコンデンサの性能を向上させるが、ドーパントと共役高分子は、共存性が低く、分散性が低いなどの問題が存在するため、電気伝導率のさらなる向上を妨げている。そして、特に、現在、一般的に使用されるドーパントがドープされたポリマー分散体を固体電解コンデンサに用いると、充電及び放電プロセスにおいて、脱ドープ現象が常に発生し、その結果、固体電解コンデンサの容量引き出し率が急激に低下し、ESR値が急激に増加して、固体電解コンデンサは性能が急激に低下して、故障する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、固体電解コンデンサに用いたときの導電性ポリマー分散体の電気伝導率が低くなく、電解質にドーパントを添加する従来の方式にある脱ドープ現象を抑制できる導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決手段を採用する。
一態様において、本発明に係る導電性ポリマーは、次の一般式1の化学式で示される化合物を含むポリマーモノマーを重合したセグメントを含む。
【化1】
(式中、Yは、NHとSのいずれかから選択され、R1及びR2は、それぞれ独立して、H又は任意に置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基、任意に置換されたシクロアルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたアラルキル基、任意に置換されたアルコキシ基又はヒドロキシ基、及びカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基から選択され、かつR1及びR2のうちの少なくとも1つは、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基である。)
好ましくは、前記アルキル基は、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分岐状のC1~C18アルキル基から選択され、前記シクロアルキル基は、置換もしくは非置換のC5~C12シクロアルキル基から選択され、前記アリール基は、置換もしくは非置換のC6~C14アリール基から選択され、前記アラルキル基は、置換もしくは非置換のC7~C18アラルキル基から選択され、前記アルコキシ基は、置換もしくは非置換のC1~C18アルコキシ基から選択される。
【0007】
別の態様において、本発明に係るコンデンサは、上述した導電性ポリマーを含む。
別の態様において、本発明に係るコンデンサの製造方法は、
次の一般式1の化学式で示される化合物を含むモノマー溶液を得るステップと、
【化2】
(式中、Yは、NHとSのいずれかから選択され、R1及びR2は、それぞれ独立して、H又は任意に置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基、任意に置換されたシクロアルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたアラルキル基、任意に置換されたアルコキシ基又はヒドロキシ基、及びカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基から選択され、かつR1及びR2のうちの少なくとも1つは、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基である)、
コンデンサ素子を前記モノマー溶液に含浸させ、含浸後のコンデンサ素子を取り出して乾燥させた後、コンデンサ素子を酸化剤溶液に含浸させて、重合反応を行い、コンデンサ素子を封止して、コンデンサを得るステップとを含む。
【0008】
好ましくは、前記アルキル基は、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分岐状のC1~C18アルキル基から選択され、前記シクロアルキル基は、置換もしくは非置換のC5~C12シクロアルキル基から選択され、前記アリール基は、置換もしくは非置換のC6~C14アリール基から選択され、前記アラルキル基は、置換もしくは非置換のC7~C18アラルキル基から選択され、前記アルコキシ基は、置換もしくは非置換のC1~C18アルコキシ基から選択される。
好ましくは、前記酸化剤溶液は、p-トルエンスルホン酸鉄(III)のエタノール溶液又はn-ブタノール溶液である。
好ましくは、前記乾燥操作において、温度を50℃~150℃とする。
好ましくは、前記重合反応において、30℃~200℃の範囲で温度を段階的に上げてから段階的に下げ、0~60%の範囲で湿度を段階的に0%に下げ、反応時間を5~20hとする。
好ましくは、前記酸化剤溶液への含浸操作を真空含浸操作とする。
好ましくは、前記真空含浸操作の真空度を-0.05~-0.10MPaとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る導電性ポリマーによれば、3,4-エチレンジオキシチオフェンの2’位と3’位の少なくとも1つに化学結合の方式でカルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基を自己ドープし導入して、ポリマーモノマーを得て、ポリマーモノマーのその場重合反応により得られた導電性ポリマーは、従来の電解質に比べて、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基により導電性ポリマーの導電性を効果的に向上させることができ、自由電子の移動により電気を伝導し、電荷の界面における移動効率を効果的に向上させることにより、電気伝導率を向上させ、かつ導電性ポリマーにおけるカルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基が化学結合により自己ドープされて導入されるため、導電性ポリマーは、ドープ安定性が高く、セグメント結合がより強く、該ポリマー分散体で固体電解コンデンサを製造すると、サイクル充放電特性を効果的に改善することができ、脱ドープ現象による、固体電解コンデンサの容量引き出し率が急激に低下し、ESR値が急激に増加するという問題がない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の解決しようとする技術的課題、技術手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。ここに記載する具体的な実施例は、本発明を解釈するものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0011】
本発明の一実施例に係る導電性ポリマーは、次の一般式1の化学式で示される化合物を含むポリマーモノマーを重合したセグメントを含む。
【化3】
(式中、Yは、NHとSのいずれかから選択され、R1及びR2は、それぞれ独立して、H又は任意に置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基、任意に置換されたシクロアルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたアラルキル基、任意に置換されたアルコキシ基又はヒドロキシ基、及びカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基から選択され、かつR1及びR2のうちの少なくとも1つは、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基である。)
R1及びR2に含まれるカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基により高分子電解質の電気伝導率をある程度で向上させることができ、上記高分子電解質は、低いESR値を有し、かつ導電性ポリマーにおけるカルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基が化学結合により自己ドープされて導入されるため、導電性ポリマーは、ドープ安定性が高く、セグメント結合がより強く、該ポリマー分散体で固体電解コンデンサを製造すると、サイクル充放電特性を効果的に改善することができ、脱ドープ現象による、固体電解コンデンサの容量引き出し率が急激に低下し、ESR値が急激に増加するという問題がない。
【0012】
なお、上記説明において、任意に置換されたアルキル基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたアルキル基を含み、任意に置換されたシクロアルキル基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたシクロアルキル基を含み、任意に置換されたアリール基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたアリール基を含み、任意に置換されたアラルキル基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたアラルキル基を含み、任意に置換されたアルコキシ基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたアルコキシ基を含む。
【0013】
いくつかの実施例では、上記アルキル基は、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分岐状のC1~C18アルキル基から選択され、上記シクロアルキル基は、置換もしくは非置換のC5~C12シクロアルキル基から選択され、上記アリール基は、置換もしくは非置換のC6~C14アリール基から選択され、上記アラルキル基は、置換もしくは非置換のC7~C18アラルキル基から選択され、上記アルコキシ基は、置換もしくは非置換のC1~C18アルコキシ基から選択される。
【0014】
本発明の別の実施例に係るコンデンサは、上述した導電性ポリマーを含む。
上記コンデンサは、アルミ固体電解コンデンサである。
【0015】
本発明の別の実施例に係るコンデンサの製造方法は、
次の一般式1の化学式で示される化合物を含むモノマー溶液を得るステップと、
【化4】
(式中、Yは、NHとSのいずれかから選択され、R1及びR2は、それぞれ独立して、H又は任意に置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基、任意に置換されたシクロアルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたアラルキル基、任意に置換されたアルコキシ基又はヒドロキシ基、及びカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基から選択され、かつR1及びR2のうちの少なくとも1つは、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの少なくとも1つを含む有機基である)、
コンデンサ素子を上記モノマー溶液に含浸させ、含浸後のコンデンサ素子を取り出して乾燥させた後、コンデンサ素子を酸化剤溶液に含浸させて、重合反応を行い、コンデンサ素子を封止して、コンデンサを得るステップとを含む。
【0016】
上記コンデンサ素子は、相互に積層巻回された正極、セパレータ及び負極を含む。
なお、上記説明において、任意に置換されたアルキル基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたアルキル基を含み、任意に置換されたシクロアルキル基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたシクロアルキル基を含み、任意に置換されたアリール基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたアリール基を含み、任意に置換されたアラルキル基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたアラルキル基を含み、任意に置換されたアルコキシ基は、その水素がカルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基のうちの1つ以上で置換されたアルコキシ基を含む。
【0017】
いくつかの実施例では、上記アルキル基は、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分岐状のC1~C18アルキル基から選択され、上記シクロアルキル基は、置換もしくは非置換のC5~C12シクロアルキル基から選択され、上記アリール基は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6~C14アリール基から選択され、上記アラルキル基は、置換もしくは非置換のC7~C18アラルキル基から選択され、上記アルコキシ基は、置換もしくは非置換のC1~C18アルコキシ基から選択される。
【0018】
いくつかの実施例では、上記モノマー溶液中のポリマーモノマーの質量パーセントは20%~40%である。
上記モノマー溶液中の溶媒として、従来の様々な有機溶媒、例えば、エタノールを用いることができる。
【0019】
いくつかの実施例では、上記酸化剤溶液中の酸化剤の質量パーセントは40%~65%である。
【0020】
いくつかの実施例では、上記酸化剤溶液は、p-トルエンスルホン酸鉄(III)のエタノール溶液又はn-ブタノール溶液である。
上記酸化剤溶液は、重合反応速度を低下させ、重合反応時間を適切に延長することができ、固体電解コンデンサ素子の十分な含浸に役立ち、導電性ポリマーの導電性と結晶性を向上させ、かつ導電性高分子ポリマーの電気化学的特性に悪影響を与える他の不純物が残らず、操作しやすい。そして、エタノール又はn-ブタノール溶媒は、沸点が低く、反応中に揮発し続け、残らないため、電気化学的特性に優れている導電性高分子ポリマーを得ることができる。
【0021】
いくつかの実施例では、上記乾燥操作において、温度を50℃~150℃とする。
【0022】
いくつかの実施例では、上記重合反応において、30℃~200℃の範囲で温度を段階的に上げてから段階的に下げ、0~60%の範囲で湿度を段階的に0%に下げ、反応時間を5~20hとする。
【0023】
いくつかの好ましい実施例では、上記乾燥操作において、温度を60℃~100℃とし、上記重合反応において、50℃~130℃の範囲で温度を段階的に上げてから段階的に下げ、0~40%の範囲で湿度を段階的に0%に下げ、反応時間を7~13hとする。
段階的な温度昇降と湿度低下により、重合反応の安定的な進行を効果的に促進し、揮発性溶媒と水分を除去することができる。
【0024】
いくつかの実施例では、上記酸化剤溶液への含浸操作を真空含浸操作とする。
より好ましい実施例では、上記真空含浸操作の真空度を-0.05~-0.10MPaとする。
真空含浸操作により、酸化剤溶液がコンデンサ素子により多く浸透しやすく、酸化剤とポリマーモノマーを十分に混合し、後続の重合反応を促進すると共に、含浸中に空気が入ることを回避することができる。
【実施例1】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
実施例1は、本発明に係る導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法を説明するためのものであり、該製造方法は、以下の操作ステップS1~S4を含む。
S1では、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2’-メタンスルホン酸をポリマーモノマーとして用いて、エタノールを溶媒として用いてポリマーモノマーを25%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子をモノマー溶液に2min含浸させ、コンデンサ素子を取り出して80℃の乾燥箱内で30min乾燥させた後、室温まで冷却し、
S2では、上記ステップで処理された素子を55%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄(III)のエタノール酸化剤溶液に真空含浸させ、真空度を-0.085MPaとし、コンデンサ素子をゆっくりと酸化剤溶液に入れ、温度を20~25℃に保持し、5min維持し、
S3では、含浸終了後、コンデンサ素子を取り出し、恒温恒湿器に入れて重合反応を行い、温度が50℃、湿度が30%の条件で、2h反応させ、温度を70℃に、湿度を20%に調節し、2h反応させ、温度を150℃に、湿度を0%に調節し、1h反応させ、温度を110℃に、湿度を0%に調節し、3h反応させ、
S4では、重合反応終了後、コンデンサ素子を封止して固体電解コンデンサに組み立てる。
【実施例2】
【0026】
実施例2は、本発明に係る導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法を説明するためのものであり、該製造方法は、以下の操作ステップS1~S4を含む。
S1では、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2’,3’-ジメチルスルホン酸をポリマーモノマーとして、エタノールを溶媒として用いてポリマーモノマーを27%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子をモノマー溶液に2min含浸させ、コンデンサ素子を取り出して90℃の乾燥箱内で30min乾燥させた後、室温まで冷却し、
S2では、上記ステップで処理された素子を60%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄(III)のエタノール酸化剤溶液に真空含浸させ、真空度を-0.09MPaとし、コンデンサ素子をゆっくりと酸化剤溶液に入れ、温度を20~25℃に保持し、5min維持し、
S3では、含浸終了後、コンデンサ素子を取り出し、恒温恒湿器に入れて重合反応を行い、温度が40℃、湿度が40%の条件で、2h反応させ、温度を60℃に、湿度を20%に調節し、2h反応させ、温度を130℃に、湿度を0%に調節し、1h反応させ、温度を105℃に、湿度を0%に調節し、4h反応させ、
S4では、重合反応終了後、コンデンサ素子を封止して固体電解コンデンサに組み立てる。
【実施例3】
【0027】
実施例3は、本発明に係る導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法を説明するためのものであり、該製造方法は、以下の操作ステップS1~S4を含む。
S1では、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2’-酢酸をポリマーモノマーとして、エタノールを溶媒として用いてポリマーモノマーを26%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子をモノマー溶液に2min含浸させ、コンデンサ素子を取り出して100℃の乾燥箱内で30min乾燥させた後、室温まで冷却し、
S2では、上記ステップで処理された素子を50%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄(III)のn-ブタノール酸化剤溶液に真空含浸させ、真空度を-0.085MPaとし、コンデンサ素子をゆっくりと酸化剤溶液に入れ、温度を20~25℃に保持し、5min維持し、
S3では、含浸終了後、コンデンサ素子を取り出し、恒温恒湿器に入れて重合反応を行い、温度が50℃、湿度が35%の条件で、2h反応させ、温度を60℃に、湿度を25%に調節し、3h反応させ、温度を140℃に、湿度を0%に調節し、2h反応させ、温度を105℃に、湿度を0%に調節し、4h反応させ、
S4では、重合反応終了後、コンデンサ素子を封止して固体電解コンデンサに組み立てる。
【実施例4】
【0028】
実施例4は、本発明に係る導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法を説明するためのものであり、該製造方法は、以下の操作ステップS1~S4を含む。
S1では、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2’,3’-コハク酸をポリマーモノマーとして、エタノールを溶媒として用いてポリマーモノマーを26%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子をモノマー溶液に2min含浸させ、コンデンサ素子を取り出して130℃の乾燥箱内で30min乾燥させた後、室温まで冷却し、
S2では、上記ステップで処理された素子を55%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄(III)のn-ブタノール酸化剤溶液に真空含浸させ、真空度を-0.09MPaとし、コンデンサ素子をゆっくりと酸化剤溶液に入れ、温度を20~25℃に保持し、5min維持し、
S3では、含浸終了後、コンデンサ素子を取り出し、恒温恒湿器に入れて重合反応を行い、温度が60℃、湿度が30%の条件で、2h反応させ、温度を100℃に、湿度を0%に調節し、2h反応させ、温度を150℃に、湿度を0%に調節し、2h反応させ、温度を110℃に、湿度を0%に調節し、3h反応させ、
S4では、重合反応終了後、コンデンサ素子を封止して固体電解コンデンサに組み立てる。
【実施例5】
【0029】
実施例5は、本発明に係る導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法を説明するためのものであり、該製造方法は、以下の操作ステップS1~S4を含む。
S1では、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2’-メトキシメタンスルホン酸をポリマーモノマーとして、エタノールを溶媒として用いてポリマーモノマーを25%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子をモノマー溶液に2min含浸させ、コンデンサ素子を取り出して150℃の乾燥箱内で30min乾燥させた後、室温まで冷却し、
S2では、上記ステップで処理された素子を55%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄(III)のエタノール酸化剤溶液に真空含浸させ、真空度を-0.085MPaとし、コンデンサ素子をゆっくりと酸化剤溶液に入れ、温度を20~25℃に保持し、5min維持し、
S3では、含浸終了後、コンデンサ素子を取り出し、恒温恒湿器に入れて重合反応を行い、温度が40℃、湿度が40%の条件で、1h反応させ、温度を80℃に、湿度を20%に調節し、2h反応させ、温度を130℃に、湿度を0%に調節し、2h反応させ、温度を100℃に、湿度を0%に調節し、3h反応させ、
S4では、重合反応終了後、コンデンサ素子を封止して固体電解コンデンサに組み立てる。
【実施例6】
【0030】
実施例6は、本発明に係る導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法を説明するためのものであり、該製造方法は、以下の操作ステップS1~S4を含む。
S1では、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2’,3’-ジメトキシメタンスルホン酸をポリマーモノマーとして、エタノールを溶媒として用いてポリマーモノマーを28%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子をモノマー溶液に2min含浸させ、コンデンサ素子を取り出して120℃の乾燥箱内で30min乾燥させた後、室温まで冷却し、
S2では、上記ステップで処理された素子を50%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄(III)のn-ブタノール酸化剤溶液に真空含浸させ、真空度を-0.09MPaとし、コンデンサ素子をゆっくりと酸化剤溶液に入れ、温度を20~25℃に保持し、5min維持し、
S3では、含浸終了後、コンデンサ素子を取り出し、恒温恒湿器に入れて重合反応を行い、温度が50℃、湿度が30%の条件で、2h反応させ、温度を70℃に、湿度を20%に調節し、2h反応させ、温度を140℃に、湿度を0%に調節し、2h反応させ、温度を105℃に、湿度を0%に調節し、3h反応させ、
S4では、重合反応終了後、コンデンサ素子を封止して固体電解コンデンサに組み立てる。
【実施例7】
【0031】
実施例7は、本発明に係る高分子電解質、コンデンサ及びその製造方法を説明するためのものであり、該製造方法は、以下の操作ステップS1~S4を含む。
S1では、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2’-メチルホスホン酸をポリマーモノマーとして、エタノールを溶媒として用いてポリマーモノマーを27%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子をモノマー溶液に2min含浸させ、コンデンサ素子を取り出して120℃の乾燥箱内で30min乾燥させた後、室温まで冷却し、
S2では、上記ステップで処理された素子を60%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄(III)のエタノール酸化剤溶液に真空含浸させ、真空度を-0.08MPaとし、コンデンサ素子をゆっくりと酸化剤溶液に入れ、温度を20~25℃に保持し、5min維持し、
S3では、含浸終了後、コンデンサ素子を取り出し、恒温恒湿器に入れて重合反応を行い、温度が60℃、湿度が30%の条件で、2h反応させ、温度を90℃に、湿度を20%に調節し、2h反応させ、温度を150℃に、湿度を0%に調節し、1h反応させ、温度を110℃に、湿度を0%に調節し、3h反応させ、
S4では、重合反応終了後、コンデンサ素子を封止して固体電解コンデンサに組み立てる。
【0032】
(比較例1)
本比較例は、本発明に係る導電性ポリマー、コンデンサ及びその製造方法を比較して説明するためのものであり、該製造方法は、以下の操作ステップS1~S4を含む。
S1では、3,4-エチレンジオキシチオフェンをポリマーモノマーとして、エタノールを溶媒として用いてポリマーモノマーを27%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子を該溶液に約2min含浸させ、100℃の乾燥箱内で30min乾燥させた後、室温まで冷却し、
S2では、上記ステップで処理された素子を55%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄(III)のn-ブタノール酸化剤溶液に真空含浸させ、真空度を-0.09MPaとし、コンデンサ素子をゆっくりと酸化剤溶液に入れ、温度を20~25℃に保持し、5min維持し、
S3では、含浸終了後、コンデンサ素子を取り出し、恒温恒湿器に入れて重合反応を行い、温度が50℃、湿度が30%の条件で、2h反応させ、温度を80℃に、湿度を20%に調節し、2h反応させ、温度を150℃に、湿度を0%に調節し、2h反応させ、温度を105℃に、湿度を0%に調節し、3h反応させ、
S4では、重合反応終了後、コンデンサ素子を封止して固体電解コンデンサに組み立てる。
【0033】
(性能試験)
上記実施例1~7及び比較例1で製造された固体電解コンデンサに以下の性能試験を行う。
自動電子部品アナライザーを用いてコンデンサの静電容量、損失値及び等価直列抵抗に試験を行い、試験方法については、一般的な固体電解コンデンサの測定を参照できるため、ここでは、説明を省略する。
そして、1.15倍の定格電圧の条件で、固体電解コンデンサを3秒充電してから3秒放電し、1000回繰り返した後、固体電解コンデンサの静電容量、損失値及び等価直列抵抗に試験を再び行う。
【0034】
得られた試験結果を表1に示す。
(表1)アルミ固体電解コンデンサの各性能試験結果(16V470μFコアパック)
【0035】
表1の試験結果によると、本発明に係る導電性ポリマーで製造された固体電解コンデンサは、低いESR値を有し、サイクル充放電後に容量減衰率がいずれも低くなり、最大の減衰率が-1.1%のみであり、その一方では、比較例1で一般的なモノマーで製造された固体電解コンデンサは、サイクル充放電後に容量減衰率が大きく、-7.3%であり、本発明の導電性ポリマーがサイクル充放電後に脱ドープ現象がほとんど発生しないことを示し、導電性ポリマーが安定性に優れているため、固体電解コンデンサの性能の安定性を確保し、固体電解コンデンサの耐用年数を大幅に延長する。
【0036】
以上の記載は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の構想及び原則内に行われた全ての修正、等価置換及び改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】