(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(54)【発明の名称】顆粒球コロニー刺激因子を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07K 14/535 20060101AFI20220617BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220617BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C07K14/535
A61P7/00
A61K38/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562841
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2020028996
(87)【国際公開番号】W WO2020219395
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518377997
【氏名又は名称】タンベックス バイオファーマ ユーエスエー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー レニー ホップ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA06
4C084BA44
4C084DA19
4C084MA16
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA20
4C084ZA511
4C084ZA512
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA11
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA23
4H045GA24
4H045GA25
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書では、とりわけ、封入体(IB)から顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を単離及び/又は精製するための組成物及び方法が提供される。本開示のいくつかの実施形態は、IBに含有される組換えG-CSFの折り畳みを最適化することによって、改善された純度及び/又は機能的活性を有する生物学的に活性で正しく折り畳まれたG-CSFを調製するための方法に関する。そのような方法によって得られるG-CSF、それを含む医薬組成物、並びにそれを必要とする対象における疾患の治療及び/又は予防のための方法も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入体(IB)から顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を単離及び/又は精製するための方法であって、
(a)前記IBに含有されている前記G-CSFを、変性剤を含む可溶化緩衝液で可溶化すること、及び
(b)順次段階的希釈プロセスを介して、前記(a)からの可溶化物を、チオール酸化還元対の還元型のみを含む折り畳み緩衝液で希釈することにより、可溶化された前記G-CSFの折り畳みを開始して、折り畳まれたG-CSFを含む折り畳み混合物を得ること、を含む、方法。
【請求項2】
生物学的に活性な顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を調製するための方法であって、
(a)G-CSFを含有する封入体(IB)を、変性剤を含む可溶化緩衝液で可溶化すること、及び
(b)順次段階的希釈プロセスを介して、前記(a)からの可溶化物を、チオール酸化還元対の還元型のみを含む折り畳み緩衝液で希釈することにより、可溶化された前記G-CSFの折り畳みを開始して、改善された純度及び/又は機能的活性を有する折り畳まれたG-CSFを含む折り畳み混合物を得ること、を含む、方法。
【請求項3】
前記得られたG-CSFが、80%を超える純度を有する生物学的に活性で正しく折り畳まれたG-CSFを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記折り畳まれたG-CSFを回収することをさらに含む、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記G-CSFを含有するIBが、可溶化の前に懸濁緩衝液に懸濁される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁緩衝液が、約7.0~8.0の範囲内のpHで約20mM~60mMのトリスを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記懸濁緩衝液が、約7.6のpHで約40mMのトリスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記可溶化緩衝液中の前記変性剤が、穏やかな変性界面活性剤、強力な変性界面活性剤、イオン性界面活性剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記可溶化緩衝液中の前記変性剤が、N-ラウロイルサルコシン(サルコシル)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ココアンフォアセテート、ドデシル硫酸リチウム、オクチル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記変性剤が、陰イオン性界面活性剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記可溶化緩衝液中の前記陰イオン性界面活性剤が、サルコシルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
サルコシルが、約0.2重量%~約5.0重量%の範囲内の量で前記可溶化緩衝液中に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
サルコシルが、約0.2重量%、約0.56重量%、約1.0重量%、又は約2.0重量%の量で前記可溶化緩衝液中に存在する、請求項11又は12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記可溶化緩衝液が、約7.5~約9.0の範囲内のpHで、約20mM~60mMのトリス、約0.2%~約5.0%のサルコシルを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記可溶化緩衝液が、約8.4のpHで、約40mM、約2.0%のサルコシルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記懸濁緩衝液と前記可溶化緩衝液との体積比は、最終pHが約7.5~約7.8となるように調整される、請求項5~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記順次段階的希釈プロセスが、前記(a)からの可溶化物中の前記変性剤の濃度を徐々に低減することを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記変性剤濃度を徐々に低減するプロセスが、以下、
(i)前記可溶化緩衝液を、G-CSFを含有するIBが懸濁されている前記懸濁緩衝液と混合すること、
(ii)(i)からの可溶化物を注射用水(WFI)で希釈して、希釈された可溶化物を形成すること、
(iii)(ii)からの前記希釈された可溶化物に折り畳み緩衝液を添加して折り畳み混合物を得ること、及び
(iv)(iii)からの前記折り畳み混合物をWFIでさらに希釈すること、
の1又は複数を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記可溶化緩衝液と(i)における前記懸濁緩衝液との体積比が、約1:1である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
WFIに対する(i)からの前記可溶化物の体積比が、約1:1である、請求項18又は19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(ii)からの前記希釈された可溶化物に対する前記折り畳み緩衝液の体積比が、約1:1である、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
WFIに対する(iii)からの前記折り畳み混合物の体積比が、約1:1である、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記チオール酸化還元対の還元型が、システイン、グルタチオン、ペニシラミン、N-アセチル-ペニシラミン、2-メルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトピルビン酸、メルカプトエタノール、モノチオグリセロール、γ-グルタミルシステイン、システイニルグリシン、システアミン、N-アセチル-L-システイン、ホモシステイン、又はリポ酸(ジヒドロリポアミド)の還元型である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記チオール酸化還元対の還元型が、還元型グルタチオン(GSH)である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記チオール酸化還元対の還元型が、システインである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記システインが、約20μM~200μMの範囲内の濃度で前記折り畳み緩衝液中に存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記システインが、約40μM、約50μM、約80μM、又は約160μMの濃度で前記折り畳み緩衝液中に存在する、請求項25又は26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記折り畳み緩衝液が、前記折り畳み混合物中のシステインの最終濃度が約80μMになるように前記可溶化物に添加される、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記折り畳まれたたG-CSFを回収することが、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、金属アフィニティークロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー(MMC)、遠心分離、透析ろ過、及び限外ろ過からなる群から選択される1又は複数の手法を含む、請求項4~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、DEAEセファロースクロマトグラフィーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーがCMセファロースクロマトグラフィーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記透析ろ過及び/又は限外ろ過が、ポリエーテルスルホン膜を備える、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記G-CSFが、ヒトG-CSF(hG-CSF)である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記IBが、G-CSFを発現する組換え細胞から得られ、発現されたG-CSFは、前記細胞内でIBを形成する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組換え細胞が、原核細胞又は真核細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、強力な変性剤、強力な還元剤、酸化還元反応、及び/又は重金属を含まない、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記強力な還元剤が、尿素又はジチオスレイトール(DTT)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記重金属が、銅である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか一項に記載の方法によって精製又は単離された顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)。
【請求項40】
治療有効量の請求項39に記載のG-CSF及び薬学的に許容される補助物質を含む医薬組成物。
【請求項41】
前記医薬組成物が、液体組成物、凍結乾燥物、又は粉末である、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
対象の疾患を治療又は予防するための方法であって、治療有効量の請求項39に記載のG-CSF及び/又は請求項40又は41に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項43】
前記疾患が、好中球減少症である、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年4月24日に出願された米国仮特許出願第62/838,226号明細書に対する優先権の利益を主張する。上記参照出願の開示は、図面を含むその内容全体を参照により本明細書に明示的に援用される。
【0002】
本開示は、概して、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、特に原核細胞で産生された封入体(IB)からの組換えヒトG-CSFの単離及び/又は調製のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
コロニー刺激因子3(CSF-3)としても公知の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、造血前駆細胞の分化及び増殖、並びに成熟好中球の活性化を調節するコロニー刺激因子群に属している。特に、G-CSFは骨髄を刺激して顆粒球や幹細胞を産生し、血流に放出することが報告されているため、血液学や腫瘍学の分野で医療によく使用されている。
【0004】
組換え技術の出現により、異種又は外来遺伝子の発現を介して特定のタンパク質を産生する目的で、様々な宿主生物を遺伝子形質転換するための手法が広く開発されてきた。特に、生物学的に活性な組換えタンパク質の合成は、商業的に重要なポリペプチドの製造にとって重要な課題である。多くの場合、組換えポリペプチドは、宿主細胞内で適切に折り畳まれることができず、通常、誤って折り畳まれた、度々変性したポリペプチドからなるアモルファスタンパク質凝集体を形成する。これらの凝集体は、細胞を顕微鏡で観察する際に非常に屈折性の高い領域として現れるため、封入体(IB)又は屈折体として公知である。G-CSFの場合、酵母や哺乳類細胞などの様々な真核生物、及び細菌などの原核生物で組換え生産が現在可能である。組換えにより産生されたG-CSFの形態は、発現に使用される宿主生物の種類による。G-CSFが非哺乳類宿主細胞、特に原核細胞で組換え産生される場合、G-CSFタンパク質は概して非天然型で発現し、溶解性が制限された不活性IBの成分であることがよくある。多くの場合、組換え宿主細胞で形成されたIBは複雑な二次構造を有し、密に凝集している。G-CSFの場合、一般的に使用される非哺乳類宿主細胞で発現する不活性なIBからの生物学的に活性な組換えG-CSFタンパク質の産生も困難であると報告されている。
【0005】
概して、IBからの組換え発現タンパク質の精製は、宿主細胞からのIBの抽出と、それに続く精製されたIBの可溶化とを含む。初期の採取、可溶化、及び再生のステップに関連する様々な技術的問題のために、IBから組換えタンパク質を回収することはしばしば困難である。IBで産生される組換えG-CSFタンパク質の単離及び精製のための既存のプロセスは、概ね複雑で、時間を要し、単位コストが高い。さらに、これらのプロセスには、強力な変性剤、強力な還元剤、酸化還元反応、及び/又は重金属が組み込まれていることがよくある。さらに、これらの薬剤の多くは、大規模な生産規模でのコストがかかることや、ステンレス鋼の製造工場で腐食性があることなどの課題を抱えている。
【0006】
したがって、組換えG-CSFの製造に関連する様々な技術的問題を克服するために、費用効果が高く、G-CSFの高回収率に対して安定しており、工業的に適用可能、例えば、商業生産規模で実装され得る、改善された生産方法と拡張可能な手順が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書では、とりわけ、高度に精製された活性型の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の調製及び/又は単離のための組成物及び方法が提供される。以下でより詳細に説明するように、本明細書に開示される方法は、細菌発現系で発現されるG-CSF、より具体的には、G-CSFが細菌細胞内の封入体の形態で発現される細菌系において特に有用である。そのような方法によって得られるG-CSF、それを含む医薬組成物、並びにそれを必要とする対象における疾患の治療及び/又は予防のための方法も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、封入体(IB)から顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を単離するための方法であって、(a)前記IBに含有されている前記G-CSFを、変性剤を含む可溶化緩衝液で可溶化すること、及び(b)順次段階的希釈プロセスを介して、(a)からの可溶化物を、チオール酸化還元対の還元型のみを含む折り畳み緩衝液で希釈することにより、可溶化された前記G-CSFの折り畳みを開始して、折り畳まれたG-CSFを得ること、を含む、方法に関する。
【0009】
一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、生物学的に活性なG-CSFを調製するための方法であって、(a)G-CSFを含有するIBを、変性剤を含む可溶化緩衝液で可溶化すること、及び(b)順次段階的希釈プロセスを介して、(a)からの可溶化物を、チオール酸化還元対の還元型のみを含む折り畳み緩衝液で希釈することにより、可溶化された前記G-CSFの折り畳みを開始して、改善された純度及び/又は機能的活性を有する折り畳まれたG-CSFを得ること、を含む、方法に関する。
【0010】
本開示に係るG-CSFを単離及び/又は調製するための方法の実施形態の実施において、以下の特徴のうちの1又は複数を含めてもよい。いくつかの実施形態では、前記得られたG-CSFが、80%を超える純度を有する生物学的に活性で正しく折り畳まれたG-CSFを含む。いくつかの実施形態では、前記方法が、前記折り畳まれたG-CSFを回収することをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記G-CSFを含有するIBが、可溶化の前に懸濁緩衝液に懸濁される。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液が、約7.0~8.0の範囲内のpHで約20mM~60mMのトリスを含む。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液が、約7.6のpHで約40mMのトリスを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の前記変性剤が、穏やかな変性界面活性剤、強力な変性界面活性剤、イオン性界面活性剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の前記変性剤が、N-ラウロイルサルコシン(サルコシル)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ココアンフォアセテート、ドデシル硫酸リチウム、オクチル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記変性剤が、陰イオン性界面活性剤である。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の前記陰イオン性界面活性剤が、サルコシルである。いくつかの実施形態では、サルコシルが、約0.2重量%~約5.0重量%の範囲内の量で前記可溶化緩衝液中に存在する。いくつかの実施形態では、サルコシルが、約0.2重量%、約0.56重量%、約1.0重量%、又は約2.0重量%の量で前記可溶化緩衝液中に存在する。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液が、約7.5~約9.0の範囲内のpHで、約20mM~60mMのトリス、約0.2%~約5%のサルコシルを含む。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液が、約8.4のpHで、約40mM、約2.0%のサルコシルを含む。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液と前記可溶化緩衝液との体積比は、最終pHが約7.5~約7.8となるように調整される。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記順次段階的希釈プロセスが、前記(a)からの可溶化物中の前記変性剤の濃度を徐々に低減することを含む。いくつかの実施形態では、前記変性剤濃度を徐々に低減するプロセスが、以下の操作の1又は複数を含む:(i)前記可溶化緩衝液を、G-CSFを含有するIBが懸濁されている前記懸濁緩衝液と混合すること、(ii)(i)からの可溶化物を注射用水(WFI)で希釈して、希釈された可溶化物を形成すること、(iii)(ii)からの前記希釈された可溶化物に折り畳み緩衝液を添加すること、及び(iv)(iii)からの前記折り畳み混合物をWFIでさらに希釈すること。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液と(i)における前記懸濁緩衝液との体積比が、約1:1である。いくつかの実施形態では、(i)からの前記可溶化物とWFIとの体積比が、約1:1である。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液と(ii)からの前記希釈された可溶化物との体積比が、約1:1である。いくつかの実施形態では、(iii)からの前記折り畳み混合物とWFIとの体積比が、約1:1である。いくつかの実施形態では、(b)でのG-CSFの折り畳みプロセスは、以下を含む:(i)(a)からの前記可溶化されたG-CSFを約14~24時間インキュベートすること、(ii)(i)からのインキュベートされた前記G-CSFの一次希釈をWFIで約1:1の体積比で実施すること、(iii)前記折り畳み緩衝液を添加し、(ii)から得られた希釈G-CSF混合物をさらに約20~24時間混合せずにインキュベートすること、及び(iv)(iii)から得られた前記希釈G-CSF混合物の二次希釈をWFIで約1:1の体積比で実施すること。
【0014】
いくつかの実施形態では、インキュベーションは、約2℃~約25℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、インキュベーションは約20±2℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、インキュベーションは約4℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、一次希釈及び/又は二次希釈は、前記G-CSF含有混合物をWFIに滴下することによって実施される。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記チオール酸化還元対の還元型が、システイン、グルタチオン、ペニシラミン、N-アセチル-ペニシラミン、2-メルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトピルビン酸、メルカプトエタノール、モノチオグリセロール、γ-グルタミルシステイン、システイニルグリシン、システアミン、N-アセチル-L-システイン、ホモシステイン、又はリポ酸(ジヒドロリポアミド)の還元型である。いくつかの実施形態では、前記チオール酸化還元対の還元型が、還元型グルタチオン(GSH)である。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液中のチオール酸化還元対の還元型は、システインである。いくつかの実施形態では、前記システインが、約20μM~200μMの範囲内の濃度で前記折り畳み緩衝液中に存在する。いくつかの実施形態では、前記システインが、約40μM、約50μM、約80μM、又は約160μMの濃度で前記折り畳み緩衝液中に存在する。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液が、システインの最終濃度が約80μMになるように前記可溶化物に添加される。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記折り畳まれたG-CSFを回収することが、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、金属アフィニティークロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー(MMC)、遠心分離、透析ろ過、及び限外ろ過からなる群から選択される1又は複数の手法を含む。いくつかの実施形態では、前記陰イオン交換クロマトグラフィーが、DEAEセファロースクロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、前記陽イオン交換クロマトグラフィーがCMセファロースクロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、前記透析ろ過及び/又は限外ろ過が、ポリエーテルスルホン膜を備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記G-CSFが、ヒトG-CSF(hG-CSF)である。いくつかの実施形態では、IBを含有するG-CSFは、G-CSFを発現する組換え細胞から得られ、発現されたG-CSFは、前記細胞内でIBを形成する。いくつかの実施形態では、前記組換え細胞が、原核細胞又は真核細胞である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される前記方法が、強力な変性剤、強力な還元剤、酸化還元反応、及び/又は重金属を含まない。いくつかの実施形態では、前記強力な還元剤が、尿素、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)塩酸塩、又はジチオスレイトール(DTT)である。いくつかの実施形態では、前記重金属が、銅である。
【0019】
一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示される方法によって精製又は単離された顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)に関する。
【0020】
関連する一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、治療有効量の本明細書に記載されるG-CSF及び薬学的に許容される補助物質を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、液体組成物、凍結乾燥物、又は粉末である。
【0021】
別の態様では、本開示のいくつかの実施形態は、対象の疾患を治療又は予防するための方法であって、治療有効量のG-CSF及び/又は医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、前記疾患は、好中球減少症である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、可溶化緩衝液中の変性剤の3つの非限定的な例示的濃度について示されるように、可溶化及び折り畳み操作中のG-CSFのタンパク質収率及び折り畳み速度に対する効果をグラフで示す図である。
【0023】
【
図2】
図2は、折り畳み緩衝液中のシステインの3つの非限定的な例示的濃度について示されるように、折り畳み操作中のシステインの存在下でのG-CSFの折り畳み効率を示すヒストグラムを示す図である。
【0024】
【
図3】
図3は、本開示のいくつかの実施形態に従って、G-CSF生成物の収率及び品質に対する折り畳み反応時間の影響を評価するために実施された実験の結果を要約するプロットを示す図である。
【0025】
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの実施形態に従って、G-CSF生成物の収率及び品質に対する折り畳み時間の影響を評価するために実施された別の実験の結果を要約するプロットを示す図である。
【0026】
【
図5】
図5は、
図3及び
図4に示した実験データのオーバーレイを示しており、ここに開示されている方法の一貫性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、とりわけ、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)及びG-CSFの組成物の精製及び/又は調製のための方法を提供する。本方法は、原核細胞で産生されたIBからのG-CSF(例えば、組換えヒトG-CSF)の産生の改善を提供する。本開示は、とりわけ、大腸菌などの組換え宿主細胞において産生されたIBからG-CSFを精製する方法であって、変性剤を含有する緩衝液中のIBからのG-CSFタンパク質の可溶化により、チオール酸化還元対の還元型のみを含有する折り畳み緩衝液で可溶化物を希釈して、可溶化されたG-CSFタンパク質を折り畳むことによって、折り畳まれたG-CSFを得ることを含み、前記希釈工程は、順次段階的希釈プロセスを介して実施される、方法を提供する。以下により詳細に記載されるように、本開示の方法は、改善された純度及び/又は機能的活性を有する生物学的に活性なG-CSFの調製に特に適している。
【0028】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての当技術分野の用語、表記法、及び他の科学用語又は専門用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解される意味を有することを意図している。場合によっては、一般に理解されている意味を持つ用語は、明確性及び/又は参照のし易さのために本明細書で定義され、本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野で概して理解されているものとの実質的な違いを表すと、必ずしも解釈されるべきではない。本明細書に記載又は参照される手法及び手順の多くは、当業者によって従来の方法論を使用して充分に理解され、一般的に使用されている。
【0029】
単数形の「1つ(a/an)」及び「前記(the)」には、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の参照が含まれる。例えば、「細胞」という用語は、それらの混合物を含む1又は複数の細胞を含む。「A及び/又はB」は、以下の選択肢の全てを含むために本明細書で使用される:「A」、「B」、「A又はB」、並びに「A及びB」。
【0030】
本明細書で使用される「約」という用語は、通常、およその意味を有する。近似の程度が文脈から明らかでない場合、「約」は、提供された値の±10%以内、又は提供された値を含む全ての場合において最も近い有効数字に丸められることを意味する。範囲が指定されている場合、それらには境界値が含まれる。
【0031】
本明細書に記載の本開示の態様及び実施形態は、「含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、及び「本質的になる(consisting essentially of)」態様及び実施形態を含むことが理解される。
【0032】
(a)、(b)、(i)などの見出しは、単に明細書及び特許請求の範囲を読みやすくするために提示されている。明細書又は特許請求の範囲における見出しの使用は、工程又は要素がアルファベット順又は番号順、あるいはそれらが提示される順序で実行されることを必要とするものではない。
【0033】
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、ヒトにおける好中球減少症の治療に広く使用されている多機能サイトカインである。G-CSFは、主に骨髄間質からの線維芽細胞と内皮細胞とによって、及び免疫担当細胞(例えば、単球、マクロファージなど)によって産生される造血系統特異的サイトカインである。G-CSFの受容体(G-CSFR)は、サイトカイン及びヘマトポエチン受容体スーパーファミリーの一部であり、G-CSFR変異は重症先天性好中球減少症を引き起こす。G-CSF/G-CSFR結合の主な作用は、骨髄中の好中球の分化、増殖、動員、生存、及び走化性の刺激であり、血流への好中球の放出を制御する。さらに、内皮細胞の増殖及び移動、ノルエピネフリン再取り込みの減少、破骨細胞活性の増加、骨芽細胞活性の減少など、他の多くのG-CSF効果が報告されている。
【0034】
G-CSFの治療適応は広く報告されており、非好中球減少症患者感染症、生殖医療、神経障害、急性心筋梗塞後及び骨格筋の再生療法、並びにC型肝炎療法が含まれる。腫瘍学では、G-CSFは特に化学療法誘発性好中球減少症の一次予防に利用されるが、造血幹細胞移植にも使用可能であり、一部の骨髄性白血病の単球分化を引き起こし得る。
【0035】
ヒトG-CSF(hG-CSF)は、真核生物(例えば、酵母及び哺乳類細胞株)及び細菌(例えば、大腸菌)などの原核生物で産生され得る。産生されるhG-CSFの形態は、発現に使用される宿主生物の種類による。ヒトG-CSFmRNAは、分泌タンパク質に典型的な疎水性リーダー配列のコード配列を含む。hG-CSFが真核細胞で発現する場合、概して可溶性形態で産生され分泌される。一方、hG-CSFが原核細胞で産生される場合、産生されたhG-CSFは、溶解度が制限された封入体(IB)と称される細胞内コンパクト凝集体として形成される。概して、組換え宿主細胞で形成された封入体は複雑な二次構造を有し、密に凝集しており、顕微鏡下では明るいスポットとして現れる。宿主細胞における組換えタンパク質のIBの形成は、タンパク質の誤った折り畳みの兆候の1つであり、凝集は、本来の立体構造に到達できない部分的に折り畳まれたポリペプチド鎖の蓄積に起因することが報告されている。
【0036】
機能的に活性なG-CSFには、タンパク質に安定性をもたらすと考えられている36位/42位及び64位/74位のシステイン残基間に発生する2つの分子内ジスルフィド結合が含まれている。これらの分子のジスルフィド結合は構造を安定させ、比較的過酷な処理(一部のプロテアーゼ、高温、変性溶媒、極端なpH)に対して耐性を持たせ、ジスルフィド結合の還元後に変性を引き起こす。
【0037】
真核細胞からのG-CSFの産生には、現在多くの精製プロセスが利用可能である。細胞外真核生物を介したタンパク質分泌の達成は、細胞内原核生物を介したタンパク質発現と比較して、全く異なる技術を形成する。特に、いくつかの既存のプロセスが、組換え真核細胞(例えば、酵母細胞及び哺乳類細胞)によって発現され、培養培地に分泌される可溶性G-CSFのために開発されてきた。したがって、これらのプロセスは、大腸菌又は他の宿主細胞で発現される組換えG-CSFには容易に適用可能ではなく、G-CSFは溶解度が制限された封入体の形で産生される。例えば、大腸菌などの原核細胞での真核生物タンパク質の高レベルの発現は、細胞質での不溶性IBの形成に至ることがよくある。
【0038】
凝集したポリペプチドは通常誤って折り畳まれており(例えば、誤ったジスルフィドペアリング)、したがって生物活性がないため、生成物回収における重要な問題は、正しい3次元立体構造を再構成することである。概して、変性形態、例えば、発現されたG-CSFの生物学的に不活性な、折り畳まれていない、又は主に誤って折り畳まれた形態で蓄積される宿主細胞から、正しく折り畳まれた形態の機能的G-CSFタンパク質を得るには、複数の工程を経る必要がある。したがって、大腸菌細胞で産生されたG-CSFの場合、IBの可溶化と可溶化されたG-CSFの折り畳みは考慮すべき追加工程である。この場合、封入体を運ぶ細菌細胞は概ね分解される必要があり、封入体は、例えば、遠心分離又は精密ろ過によって収集され、次いで、可溶化緩衝液に溶解される。次に、変性したタンパク質は、その天然の立体構造の回復に有利な環境に移され、そこで、その天然の二次及び/又は三次構造の一部又は全てが回復される。その本来の立体構造を採用する前に、タンパク質は様々な半安定中間体を介して遷移する。折り畳み経路の初期段階の中間体は、結合しやすい疎水性ドメインを高度に露出しているため、凝集体を形成する傾向がある。分子内相互作用は濃度に依存しないのに対し、分子間相互作用は濃度に依存することが報告されている。タンパク質濃度が高いほど、分子間の誤った折り畳みのリスクが高くなり、逆もまた同様である。凝集を最小限に抑えるには、タンパク質濃度を概ね低く保つ必要があり、多くの場合、工業プロセスのボトルネックとなる。
【0039】
商業規模では、多段階プロセスによる収量の損失は非常に大きな影響を与える場合がある。さらに、IBの形態で産生された組換えタンパク質の折り畳みには、強力な変性剤、強力な還元剤、酸化還元反応、及び/又は重金属が組み込まれることがよくある。これらの薬剤の多くは、大規模な生産規模でのコストがかかることや、ステンレス鋼の製造工場で腐食性があることなどの課題を抱えている。
【0040】
以下により詳細に記載されるように、本開示は、商業的生産規模に特に適したG-CSFの改善された生産方法を提供する。
【0041】
G-CSFを調製するための方法
組換えにより産生されたG-CSFをIBから回収することはしばしば困難であり得るが、本明細書で提供される方法は、より良い回収をもたらす下流処理のために、不溶性形態での宿主細胞内の組換えG-CSFの蓄積を利用する。
【0042】
概して、組換えタンパク質生成物は、IBの総タンパク質含有量の少なくとも40%~50%に相当する。さらに、タンパク質凝集体は、遠心分離又は精密ろ過によって、溶解した細胞の可溶性成分から比較的簡単に分離され得る。したがって、封入体タンパク質の精製手順は、概して、可溶性形態で発現される同等のタンパク質の手順よりも少ない工程で済み、時間を節約し、損失を減らす傾向がある。そのような精製手順の最初の工程は、細胞からのIBの放出であり、これは概して、細胞破壊及び可溶性細胞成分からの不溶性IB材料の分離を伴う。このようなプロセスは比較的単純であると考えられている。細胞は、均質化などの機械的手法を使用して、又は化学的若しくは酵素的方法によって溶解され得る。可溶性細胞物質は、遠心分離及び緩衝液への再懸濁のサイクルによって封入体調製物から除去され得る。可溶性材料はろ過によって除去されてもよく、固定費及び運用費が削減され、スケールアップが容易になる。この工程の完了時に、得られる調製物は、本質的に、少量の汚染細胞破片を有するIBを含有する。所望により、ショ糖勾配での分画遠心分離を使用して、細胞破片や膜タンパク質などの汚染物質を除去してもよい。次に、精製された封入体画分をペレット化し、下流処理のために保存してもよい。
【0043】
IBが単離されると、それらは変性剤の存在下で可溶化され、次いで変性状態でさらに精製され得る。IBタンパク質精製スキームの重要な工程は、生物学的に活性な生成物を形成するための変性タンパク質の折り畳み(例えば、再生及び/又は再折り畳み)である。小さな単量体タンパク質の場合、折り畳みは比較的単純であるが、タンパク質が複数のポリペプチド鎖で構成されている場合、又はG-CSFなどの複数のジスルフィド結合を含有する場合、このプロセスは非常に複雑になる可能性がある。折り畳みプロセスが不充分な場合、活性タンパク質の回収率が全体的に低くなる可能性がある。
【0044】
本開示の一態様では、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、大腸菌などの組換え宿主細胞において産生されたIBからG-CSFを単離及び/又は精製するための方法であって、変性剤を含有する可溶化緩衝液中のIBからのG-CSFタンパク質を溶解した後で、チオール酸化還元対の還元型のみを含有する折り畳み緩衝液で可溶化物を希釈して、可溶化されたG-CSFタンパク質を折り畳むことによって、折り畳まれたG-CSFを得ることを含み、前記希釈工程は、順次段階的希釈プロセスを介して実施される、方法を提供する。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従って得られるG-CSFは、生物学的に活性な形態のG-CSF、例えば、単量体及び非変性状態にあり、造血前駆細胞の分化及び増殖、並びに造血系の成熟細胞の活性化を促進することができるG-CSFの形態又は分子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従って得られるG-CSFは、改善された純度及び/又は機能的活性を有する生物学的に活性なG-CSFを含む。
【0046】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、前記得られたG-CSFが、80%を超える純度を有する生物学的に活性で正しく折り畳まれたG-CSFを含む。いくつかの実施形態では、前記得られたG-CSFが、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を超える純度を有する生物学的に活性で正しく折り畳まれたG-CSFを含む。得られたG-CSFの精製の程度を定量化するための様々な方法は、本開示に照らして当業者に公知であろう。これらには、例えば、活性G-CSFの比活性を測定すること、又はSDS-PAGE分析によって最終生成物中のG-CSFの量を評価することが含まれる。開示される方法から得られたG-CSFの純度を評価するための例示的な方法は、得られたG-CSFの比活性を計算し、それを初期抽出物の比活性と比較し、それにより純度を計算する。
【0047】
本開示に従って得られたG-CSFの生物学的活性は、当技術分野で公知のいくつかの技術によって、例えば、当技術分野で公知のバイオアッセイによって、そして市販のG-CSFの標準的な活性と比較することによって決定され得る。例えば、本明細書に開示される方法から得られるG-CSFの生物学的活性は、Hammerling, U. et al. (J Pharm Biomed Anal 13, 9-20 (1995))によって記載された方法及び国際標準のヒト組換えG-CSFを使用して、細胞増殖(NFS-60細胞)の刺激に基づくアッセイによって決定され得る。このアッセイでは、G-CSFに反応するマウス細胞株NFS-60を、RPMI 1640培養培地などの適切な培地で培養し、2mM グルタミン、10%FCS、0.05mM 2-メルカプトエタノール、及び60ng/mL G-CSFを添加してもよい。活性試験では、細胞をG-CSFを含まない培地で2回洗浄し、96ウェルプレートに適切な濃度で、例えば、ウェルあたり2×104細胞で入れ、精製されたG-CSF及び標準G-CSFの濃度をそれぞれ変えて、37℃、4.5%CO2で3日間インキュベートする。続いて、細胞をXTT試薬(Thermo Fischer Scientific社)で染色し、マイクロタイタープレートリーダーで450nmの吸光度を測定してもよい。
【0048】
次に、本明細書に記載のように精製又は単離されたG-CSFで処理された細胞は、標準のG-CSFで処理された細胞と同等又はそれ以上に増殖することを示し得る。特に、本開示の方法に従って得られた精製G-CSFは、NFS-60増殖アッセイにおけるWHO参照標準を参照して、80%~100%の生物学的活性によって特徴付けられることを示し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように精製又は単離されたG-CSFは、改善された純度及び/又は機能的活性を有する正しく折り畳まれたG-CSFである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のG-CSFは、例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を超える純度など、80%を超える純度を有する。いくつかの実施形態では、得られたG-CSFは、比活性の有意な増加、例えば、少なくとも1×105IU/mgの比活性を示す。いくつかの実施形態では、比活性を、細胞増殖の刺激に基づく方法によって測定した場合、得られたG-CSFは、少なくとも1×106IU/mg、好ましくは少なくとも1×107IU/mg、より好ましくは2~9×107IU/mgの範囲内、最も好ましくは約1×108IU/mgの比活性を有する。
【0050】
可溶化
IBに含有されるG-CSFは、G-CSFタンパク質と接触させた時にG-CSFタンパク質の二次及び/又は三次構造の一部又は全てを除去する能力を有する化合物である、1又は複数の変性剤(可溶化剤とも称される)を含む可溶化緩衝液中の変性条件下で可溶化され得る。可溶化プロセス中に、IBに含有されるG-CSFは、変性剤で処理することによって溶解し、それによってG-CSFタンパク質の二次及び/又は三次構造の一部又は全てが除去される。天然のG-CSFタンパク質には存在しない分子間及び分子内相互作用は、可溶化プロセス中に破壊され、それによって可溶化緩衝液中のG-CSFの単量体分散をもたらす。本開示の方法での使用に適した変性剤は、タンパク質を展開することができ、よって、天然のタンパク質立体構造の減少又は喪失をもたらすことができる薬剤を包含する。本開示の方法での使用に適した例示的な変性剤には、これらに限定されないが、穏やかな変性剤、強力な変性剤、イオン性界面活性剤(例えば、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤)、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の変性剤は、例えば、タンパク質鎖を結合し、界面活性剤分子でコーティングすることによる、タンパク質を変性させるための界面活性剤作用メカニズムを特徴とする穏やかな変性剤を含む。陽イオン性、陰イオン性、及び両性イオン性界面活性剤を含むイオン性界面活性剤は、本開示の方法で使用するのに適した親水性界面活性剤である。可溶化緩衝液での使用に適したイオン性界面活性剤の非限定的な例には、N-ラウロイルサルコシン(サルコシル)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ココアンフォアセテート、ドデシル硫酸リチウム、オクチル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、コレ酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の穏やかな変性界面活性剤には、硫酸アルキル界面活性剤が含まれる。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の変性剤には、N-ラウロイル-サルコシン(すなわち、NLS又はサルコシル)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の変性剤には、サルコシルが含まれる。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の変性剤には、例えば、水分子間の水素結合を破壊することで、タンパク質の安定性を低下させることによる、タンパク質を変性させるためのカオトロピック作用メカニズムを特徴とする強力な変性剤が含まれる。本開示の方法での使用に適した強力な変性剤の非限定的な例には、尿素、塩酸グアニジン(GndHCl)トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)塩酸塩、ジチオスレイトール(DTT)、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、pH極値のもの(希釈された酸又は塩基)、強力な変性界面活性剤、塩(例えば、塩化物、硝酸塩、チオシアン酸塩、トリクロロ酢酸塩)、化学的誘導体化(硫化物分解、又は塩基でのシトラコン酸無水物との反応)、並びに、例えば、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール又はアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びジメチルスルフィド(DMS)などの溶媒が挙げられる。
【0053】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、可溶化緩衝液は、カオトロピック剤を含まない。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液には、尿素、GdmCl、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、メルカプトエタノール、DTT、TCEP、ジチオスレイトール、又はDMSOは含まれない。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の変性剤には、陰イオン性界面活性剤が含まれる。本明細書に開示される方法及び組成物での使用に適した陰イオン性界面活性剤の非限定的な例には、硫酸アルキル、スルホン酸アルキル、及び胆汁酸塩が挙げられる。本開示での使用に適した陰イオン性界面活性剤の具体的な例には、ドデシル硫酸リチウム、オクチル硫酸ナトリウム、ペンタンスルホン酸ナトリウム、ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、4-ドデシルベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸ナトリウム塩一水和物、1-ブタンスルホン酸ナトリウムの陰イオン性界面活性剤、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム、1-ノナンスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。本開示での使用に適した胆汁酸塩の具体的な例には、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸ジアセテートメチルエステル、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム水和物、コール酸ナトリウム、硫酸コレステリルナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム、タウロリトコール酸ナトリウム、タウロヒオデオキシコール酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。本開示での使用に適した追加の陰イオン性界面活性剤には、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、リン酸ジヘキサデシル、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム、3,5-ジヨードサリチル酸リチウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ラウロイルサルコシン(サルコシル)、オクタン酸ナトリウム、及びTriton(商標)QS-15が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の陰イオン性界面活性剤には、N-ラウロイル-サルコシン(すなわち、NLS又はサルコシル)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液中の前記陰イオン性界面活性剤には、サルコシルが含まれる。いくつかの実施形態では、サルコシルが、約0.2重量%~約5.0重量%の範囲内の量で前記可溶化緩衝液中に存在する。例えば、いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液は、約0.2~5.0重量%、約0.5~4.0重量%、約1.0~3.0重量%、約1.5~2.0重量%、約0.2~3.0重量%、約0.5~2.0重量%、約1.0~2.0重量%の範囲内の量のサルコシルを含有する。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液は、約0.2重量%、0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量%、又は5.0重量%の量のサルコシルを含有する。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液は、約0.2重量%の量のサルコシルを含有する。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液は、約0.56重量%の量のサルコシルを含有する。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液は、約1.0重量%の量のサルコシルを含有する。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液は、約2.0重量%の量のサルコシルを含有する。
【0056】
前記可溶化緩衝液での使用に適した緩衝剤の例には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、MES、MOPS、又はアンモニウム及びそれらの塩又は誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液には、緩衝剤としてトリスが含まれる。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液には、モル濃度が約20mM~60mM、例えば、約20mM~40mM、約30mM~50mM、約40mM~60mM、約20mM~30mM、約30mM~60mM、及び約40mM~50mMの範囲内のトリスが含まれる。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液には、モル濃度が約20mM、30mM、40mM、50mM、又は60mMのトリスが含まれる。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液には、モル濃度が約40mMのトリスが含まれる。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液のトリスのモル濃度は、前記懸濁緩衝液のトリスのモル濃度と同様である。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液のトリスのモル濃度は、前記懸濁緩衝液のトリスのモル濃度とは異なる。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液に適したpHは、約7.5~9.0、例えば、約7.5~8.0、約8.0~8.5、約8.5~9.0、約7.5~8.5、約8.0~9.0の範囲内である。前記pH範囲は、IBの可溶化を最適化し、IBに含有されるG-CSFの望ましい特性を維持するように選択される。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液のpHは、約7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、又は8.0である。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液のpHは、約8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、又は9.0である。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液のpHは、約8.4である。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液には、pH8.4の40mMトリスが含まれる。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記G-CSFを含有するIBが、可溶化の前に懸濁緩衝液に懸濁されて、封入体懸濁液を形成する。前記懸濁緩衝液での使用に適した緩衝剤の例には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、MES、MOPS、又はアンモニウム及びそれらの塩又は誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液には、緩衝剤としてトリスが含まれる。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液には、モル濃度が約20mM~60mM、例えば、約20mM~40mM、約30mM~50mM、約40mM~60mM、約20mM~30mM、約30mM~60mM、及び約40mM~50mMの範囲内のトリスが含まれる。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液には、モル濃度が約20mM、30mM、40mM、50mM、又は60mMのトリスが含まれる。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液には、モル濃度が約40mMのトリスが含まれる。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液の適切なpHは、約7.0~8.0、例えば、約7.0~7.5、約7.2~7.6、約7.3~7.7、約7.4~7.8、約7.5~7.9の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液のpHは、約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、又は8.0である。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液のpHは、約7.6である。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液には、pH7.6の40mMトリスが含まれる。
【0060】
G-CSFを含有するIBを効率的かつ最大限に懸濁するためには、IB及び懸濁緩衝液の適切な比率が必要となる。本開示のいくつかの実施形態によれば、1グラム(例えば、ペレット質量)のIBあたり10g~100gの懸濁緩衝液が使用され、例えば、1グラムのIBあたり約20g~90g、約30g~80g、約40g~70g、約50g~60gの懸濁緩衝液が使用される。いくつかの実施形態では、1グラムのIBあたり約10g~50g、約20g~60g、約30g~70g、約40g~80g、約50g~90gの懸濁緩衝液が使用される。いくつかの実施形態では、1グラムのIBあたり約10g、20g、30g、40g、50g、60g、70g、80g、90g、又は100gの懸濁緩衝液が使用される。いくつかの実施形態では、1グラムのIBあたり約25gの懸濁緩衝液が使用される。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液のpHは、前記可溶化緩衝液のpHと同様である。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液のpHは、前記可溶化緩衝液のpHとは異なる。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液と前記可溶化緩衝液との体積比は、可溶化物の最終pHが、約7.6~約8.4、例えば、約7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、又は8.4となるように調整される。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液と前記可溶化緩衝液との体積比は、可溶化物の最終pHが約7.6となるように調整される。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液と前記可溶化緩衝液との体積比は、可溶化物の最終pHが、約7.8~約8.2、例えば、約7.8、7.9、8.0、8.1、又は8.2となるように調整される。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液と前記可溶化緩衝液との体積比は、可溶化物の最終pHが約8.0となるように調整される。
【0062】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液が、約8.4のpHで、約40mMのトリス、約2%のサルコシルを含む。本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液には、pH8.4で、40mMトリス、2%サルコシルが含まれる。
【0063】
懸濁したIBの効率的かつ完全な可溶化を確実にするために、適切な比率のIB(及び可溶化緩衝液)が必要である。本開示のいくつかの実施形態によれば、1グラムのIB(溶解ペレット塊)あたり10g~50gの可溶化緩衝液が使用され、例えば、1グラムのIBあたり約10g~30g、約15g~35g、約20g~40g、約30g~45gの可溶化緩衝液が使用される。いくつかの実施形態では、1グラムのIBあたり約10g~45g、約20g~35g、約25g~30g、約30g~50g、約25g~45gの可溶化緩衝液が使用される。いくつかの実施形態では、1グラムのIBあたり約10g、15g、20g、25g、30g、35g、40g、45g、又は50gの可溶化緩衝液が使用される。いくつかの実施形態では、1グラムのIBあたり約25gの可溶化緩衝液が使用される。
【0064】
いくつかの実施形態では、1グラムのIB(溶解ペレット質量)あたり10mL~100mLの可溶化緩衝液が使用され、例えば、1グラムのIBあたり約20mL~90mL、約30mL~80mL、約40mL~70mL、約50mL~60mLの可溶化緩衝液が使用される。いくつかの実施形態では、1グラムのIBあたり約10mL~50mL、約20mL~60mL、約30mL~70mL、約40mL~80mL、約50mL~90mLの可溶化緩衝液が使用される。いくつかの実施形態では、1グラムのIBあたり約10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、又は100mLの可溶化緩衝液が使用される。
【0065】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、懸濁されたIBの効率的かつ完全な可溶化を確実にするために、本開示の方法の可溶化時間は、概して、約4~48時間の範囲内である。いくつかの実施形態では、封入体懸濁液に可溶化緩衝液を添加した後、可溶化混合物を約4~48時間の範囲内の時間インキュベートする。いくつかの実施形態では、可溶化時間は、約4~42時間、約12~36時間、又は約18~30時間の範囲内である。いくつかの実施形態では、可溶化時間は、約4~24時間、約12~30時間、約18~36時間、約24~42時間、又は約30~48時間の範囲内である。いくつかの実施形態では、可溶化時間は約4~24時間である。いくつかの実施形態では、可溶化時間は約14~24時間である。
【0066】
折り畳み
IBで産生されたG-CSFを単離及び/又は精製するプロセスにおける重要な工程は、生物学的に活性な生成物を形成するための変性タンパク質の折り畳み(例えば、再生)である。理論的には、再生は変性剤を除去することによって達成可能である。ただし、実際には、折り畳みプロセスはより複雑であり、最適ではない再生により、タンパク質の凝集や不活性化が発生し、正しく折り畳まれたタンパク質の回収率が低くなることがしばしば起こり得る。特定の理論に拘束されることなく、タンパク質凝集の程度は環境パラメーターに依存する。培地のpHがタンパク質の等電点から遠く離れると、凝集が減少することがよくある。ただし、溶液のpHとタンパク質凝集度との関係は、はるかに複雑である。凝集は、概して、高温でのタンパク質分子間の衝突の可能性の増加に一部起因して、温度の上昇とともに増加する。折り畳み収率を最大化するために重要であると考えられる要因の1つは、変性剤の除去率である。変性剤の除去は、様々な技術によって達成され得る。これらには、希釈、透析、ゲルろ過、透析ろ過、及び固体支持体への固定化が含まれる。いくつかの実施形態では、変性剤の除去は、希釈によって達成され得る。公知のタンパク質折り畳み戦略の中で、希釈は概ね最も単純な方法の1つと考えられている。工業規模の適用では、希釈は、宿主細胞でIBとして発現される組換えタンパク質の折り畳みによく使用される。G-CSFを単離するためのいくつかの既存の方法では、希釈は、概して、可溶化タンパク質を含む溶液を、最適な希釈レベルに達するのに必要な量の変性剤を含む希釈剤と混合/希釈することによって1つの工程で行われる。変性剤の濃度が特定の閾値レベルを下回ると、組換えタンパク質は生物学的に活性な三次元立体構造を取り戻し始める。選択した折り畳み条件に応じて、折り畳みはミリ秒~数秒以内に開始する。ただし、この最初のバースト段階では、組換えタンパク質は凝集の影響を非常に受けやすくなる。凝集を最小限に抑えるには、タンパク質濃度を概ね低く保つ必要がある。
【0067】
対照的に、IBで産生されるG-CSFの精製のための既存のプロセスと比較して重要な際立った特徴として、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態は、段階的希釈のプロセスを含む。以下により詳細に記載されるように、本開示のいくつかの実施形態では、可溶化物からの変性剤の除去は、段階的希釈手順において可溶化物中の変性剤濃度を徐々に減少させることによって達成され得る。折り畳み収率を最大化するために重要であると考えられる要因の1つは、変性剤の除去率であるため、これは開示される方法の重要な特徴の1つである。
【0068】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、可溶化工程後に、可溶化されたG-CSFの折り畳みは、順次段階的希釈プロセスを介して、例えば、チオール酸化還元結合又はチオール酸化還元系と称される、チオール酸化還元対の還元型のみを含有する折り畳み緩衝液内で、可溶化物を希釈して折り畳みを開始し、折り畳まれたG-CSFを得ることによって達成され得る。本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、順次段階的希釈プロセスは、可溶化物中の変性剤濃度を徐々に低減することを含む。いくつかの実施形態では、変性剤濃度を徐々に低減するプロセスが、以下の1又は複数を含む:(i)前記可溶化緩衝液を、G-CSFを含有するIBが懸濁されている前記懸濁緩衝液と混合すること;(ii)(i)からの可溶化物をWFIで希釈して、希釈された可溶化物を形成すること;(iii)(ii)からの前記希釈された可溶化物に折り畳み緩衝液を添加すること;及び(iv)(iii)からの前記折り畳み混合物をWFIでさらに希釈すること。上記のように、本明細書に開示される多段階折り畳みプロセスは、工業規模の用途において有利に実施することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、変性剤濃度の低下は、前記可溶化緩衝液に前記懸濁緩衝液を加えることによって達成される。いくつかの実施形態では、変性剤濃度の低下は、前記可溶化緩衝液に対する前記懸濁緩衝液の所望の比率に達するまで、前記可溶化緩衝液への前記懸濁緩衝液のゆっくりとした添加によって達成される。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液と前記可溶化緩衝液との体積比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、5:1、4:1、3:1、又は2:1である。いくつかの実施形態では、前記懸濁緩衝液と(i)における前記可溶化緩衝液との体積比が、約1:1である。いくつかの実施形態では、変性剤の濃度は、(i)における可溶化物にWFIを添加することによってさらに低減される。いくつかの実施形態では、変性剤濃度の低下は、前記可溶化物とWFIとの所望の比率に達するまで、例えば滴下することによって、WFIを可溶化物にゆっくりと添加することによって達成される。いくつかの実施形態では、(i)からの可溶化物とWFIとの体積比が、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、5:1、4:1、3:1、又は2:1である。いくつかの実施形態では、(i)からの可溶化物とWFIとの体積比が、約1:1である。
【0070】
いくつかの実施形態では、(ii)からの希釈した可溶化物に折り畳み緩衝液を加えることにより、変性剤の濃度をさらに低減する。いくつかの実施形態では、変性剤濃度の低下は、折り畳み緩衝液と希釈された可溶化物との所望の比率に達するまで、希釈された可溶化物への折り畳み緩衝液のゆっくりとした添加、例えば滴下によって達成される。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液と(ii)からの前記希釈された可溶化物との体積比が、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、5:1、4:1、3:1、又は2:1である。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液と(ii)からの前記希釈された可溶化物との体積比が、約1:1である。いくつかの実施形態では、変性剤の濃度は、(iii)の折り畳み混合物にWFIを添加することによってさらに低減される。いくつかの実施形態では、変性剤濃度の低下は、折り畳み混合物とWFIとの所望の比率に達するまで、折り畳み混合物へのWFIのゆっくりとした添加、例えば滴下によって達成される。いくつかの実施形態では、(iii)からの前記折り畳み混合物とWFIとの体積比が、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、5:1、4:1、3:1、又は2:1である。いくつかの実施形態では、(iii)からの前記折り畳み混合物とWFIとの体積比が、約1:1である。
【0071】
概して、本開示のG-CSFの単離及び/又は調製のための方法は、約2℃~約25℃、例えば、約4℃~約15℃、約10℃~約25℃、約15℃~約25℃、約20℃~約25℃、約15℃~約20℃、又は約10℃~約15℃の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、前記方法は、約4±2℃の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、前記方法は、周囲温度、例えば、概ね10℃を超えて、有利には室温、すなわち、20±2℃で実施され得る。周囲温度は10℃~30℃の間で変動し得、好ましくは15℃~25℃の間、より好ましくは17℃~23℃の間、そして特に好ましくは19℃~21℃の間である。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、約15℃~約25℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、約20±2℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、IBの懸濁、懸濁されたIBの可溶化、及びG-CSFの折り畳みは、異なる温度で実施される。いくつかの実施形態では、IBの懸濁、懸濁されたIBの可溶化、及びG-CSFの折り畳みは、同じ温度で実施される。いくつかの実施形態では、G-CSFの折り畳みは、約2℃~約25℃、例えば、約4℃~約15℃、約10℃~約25℃、約15℃~約25℃、約20℃~約25℃、約15℃~約20℃、又は約10℃~約15℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、G-CSFの折り畳みは約4±2℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、G-CSFの折り畳みは約4℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、G-CSFの折り畳みは約20±2℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、G-CSFの折り畳みは約20℃の温度で実施される。
【0072】
異なるタンパク質の折り畳みの速度は、1秒未満~数時間、さらには数日まで変化する可能性があることが文書化されている。これは、天然タンパク質に存在する正しいシステイン対を形成するためのジスルフィド結合の異性化が遅く、折り畳みにおける重要な律速段階を表すためである。このため、いくつかのシステイン残基(G-CSFなど)を含むポリペプチドのインビトロ折り畳みは、通常非常に遅く非効率的である。本明細書に開示されるいくつかの実施形態によれば、可溶化されたG-CSFの効率的かつ最大の折り畳みを確実にするために、本開示の方法の折り畳み反応時間は、概ね約12時間~48時間の範囲内であり、これは概して折り畳みプロセスの温度に依存する。いくつかの実施形態では、折り畳み緩衝液を可溶化物に添加した後、折り畳み混合物を約12時間~48時間の範囲内の時間インキュベートする。いくつかの実施形態では、折り畳み反応時間は、約12~24時間、約18~30時間、約24~36時間、又は約30~48時間の範囲内である。いくつかの実施形態では、折り畳み反応時間は、約12~30時間、約18~36時間、約24~48時間、約30~48時間、又は約18~24時間の範囲内である。いくつかの実施形態では、折り畳み反応時間は、約16~24時間である。いくつかの実施形態では、折り畳み反応時間は、約20~24時間である。
【0073】
いくつかの実施形態では、(b)でのG-CSFの折り畳みプロセスは、多段階プロセスであり、以下を含む:(i)(a)からのG-CSFを含有する可溶化物を約14~24時間インキュベートすること、(ii)(i)からのインキュベートされた前記G-CSFの一次希釈をWFIで約1:1の体積比で実施すること、(iii)前記折り畳み緩衝液を添加し、(ii)から得られた希釈G-CSF混合物をさらに約20~24時間混合せずにインキュベートすること、及び(iv)(iii)から得られた前記希釈G-CSF混合物の二次希釈をWFIで約1:1の体積比で実施すること。
【0074】
いくつかの実施形態では、一次希釈及び/又は二次希釈は、前記可溶化物及び/又はG-CSF含有混合物をWFIにゆっくりと加えることによって実施される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、連続モードで実施される。いくつかの実施形態では、一次希釈及び/又は二次希釈は、G-CSF含有混合物をWFIを含む容器に連続的に供給することによって実施される。折り畳みプロセスを連続的に実施することにより、公知の方法と比較して、時間の消費とコストを削減し、折り畳まれたタンパク質の収量を増やすことができる。本開示の方法は、特にその連続モードにおいて、IBタンパク質の迅速かつ効率的な処理を保証し、それにより、折り畳み効率又は生成物の均一性の変動などの不用意な変動を低減する。
【0075】
いくつかの実施形態では、温度制御された操作に適切に装備された混合容器で希釈を実行して、最小限の凝集でさえも排除することが有利である。いくつかの実施形態では、前記混合容器は、冷却供給装置又は冷却(冷凍)装置と熱的に結合されている。本開示の方法での使用に適した混合容器は、高速混合及び短い混合時間を保証する任意のミキサー、例えば、市販の管状ジェットミキサー又は静的ミキサーである。そのような装置は、所望の混合効率を達成するために使用され得る。前記ミキサーが高スループットの連続フローデバイスである場合、フローの正確な制御が特に重要である。このようなミキサーを使用すると、小規模では数ミリ秒、大規模では数秒という短い混合時間を実現できる。いくつかの実施形態では、前記混合容器は、可溶化物及び/又はG-CSF含有混合物をWFIを含む容器内に直接滴下すること(逆も又同様に)を可能にするように構成された滴下機構を備え、滴下速度は、所望の範囲内で調整又は設定可能である。
【0076】
いくつかの実施形態では、一次希釈は、約1:1の最終容量比に達するまで、WFIにインキュベートした可溶化物をゆっくりと添加することによって行われる。いくつかの実施形態では、一次希釈は、約1:1の最終容量比に達するまで、インキュベートした可溶化物にWFIをゆっくりと添加することによって行われる。いくつかの実施形態では、一次希釈ステップは、滴下メカニズムによって行われる。いくつかの実施形態では、滴下速度は、所望の範囲内で調整又は設定される。
【0077】
いくつかの実施形態では、二次希釈は、約1:1の最終容量比に達するまで、WFIに希釈したG-CSF混合物をゆっくりと添加することによって行われる。いくつかの実施形態では、二次希釈は、約1:1の最終容量比に達するまで、希釈したG-CSF混合物にWFIをゆっくりと添加することによって行われる。いくつかの実施形態では、一次希釈ステップは、滴下メカニズムによって行われる。いくつかの実施形態では、滴下速度は、所望の範囲内で調整又は設定される。
【0078】
いくつかの実施形態では、一次希釈及び/又は二次希釈は、G-CSF含有混合物をWFIを含む容器内へゆっくりと滴下することによって実施される。いくつかの実施形態では、一次希釈及び/又は二次希釈は、G-CSF含有混合物をWFIを含む容器内へ連続的に滴下することによって実施される。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、IBで産生されるG-CSFの精製のための既存のプロセスと比較して、別の重要な際立った特徴の実施を含む。可溶化後の折り畳みを促進するために、既存の精製プロセスは、チオール酸化還元対又はチオール酸化還元結合、例えば、還元型チオール剤と酸化型チオール剤との混合物を含む折り畳み緩衝液を組み込むことが多い。G-CSFの既存の精製プロセスで通常使用されるチオール酸化還元対は、還元型及び酸化型グルタチオン(GSH/GSSG)、システイン/シスチン、システアミン/シスタミン、ジチオスレイトール(DTT)/GSSG、及びジチオエリスリトール(DTE)/GSSGである。これまでのタンパク質精製研究では、以下を報告している:(i)システイン残基が組換えタンパク質の一次アミノ酸配列に存在する場合、ジスルフィド結合の正しい形成を可能にする酸化還元環境で折り畳みを達成する必要があること、及び(ii)ジスルフィドとチオールとの酸化還元系(例えば、還元型及び酸化型グルタチオン)の使用により、誤って形成されたジスルフィド結合の迅速な変換を促進することにより、標的タンパク質におけるジスルフィド結合の正しい形成が可能になること。
【0080】
対照的に、IBで産生されるG-CSFの精製のための既存のプロセスと比較して重要な際立った特徴として、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態は、酸化型チオール剤を含有しない折り畳み緩衝液を含む。特に、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液は、チオール酸化還元対の還元型(例えば、還元型チオール剤)のみを含む。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液は、1つの還元型チオール剤を含有する。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液は、2つの還元型チオール剤を含有する。しかし、他のいくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液は、3つの異なる還元型チオール剤を含有する。本明細書に開示される方法の折り畳み緩衝液での使用に適した還元型チオール剤には、システイン、グルタチオン、ペニシラミン、N-アセチル-ペニシラミン、2-メルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトピルビン酸、メルカプトエタノール、モノチオグリセロール、γ-グルタミルシステイン、システイニルグリシン、システアミン、N-アセチル-L-システイン、ホモシステイン、又はリポ酸(ジヒドロリポアミド)の還元型が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液中の還元型チオール剤は、GSH/GSSGチオール酸化還元対の還元型である(すなわち、GSH、表1及び実施例1及び2も参照)。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液中に存在する唯一の還元型チオール剤はGSHである。いくつかの実施形態では、酸化型グルタチオン(GSSG又はグルタチオンジスルフィド)を含有しない折り畳み緩衝液である。いくつかの実施形態では、本開示の折り畳み緩衝液は、還元型の酸化還元システイン/シスチンチオール酸化還元対のみを含有する。いくつかの実施形態では、酸化型の酸化還元システイン/シスチンチオール酸化還元対を含有しない折り畳み緩衝液である。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液中に存在する唯一の還元型チオール試薬はシステインである(表1及び実施例1及び2も参照)。特定の理論に拘束されることなく、前記折り畳み緩衝液中に存在するシステインがジスルフィド結合の形成を促進すると考えられる。いくつかの実施形態では、前記システインが、約20μM~約200μMの範囲内の濃度で前記折り畳み緩衝液中に存在する。いくつかの実施形態では、前記システインが、約40μM、約50μM、約80μM、又は約160μMの濃度で前記折り畳み緩衝液中に存在する。
【0082】
当業者は、前記可溶化物に添加される前記折り畳み緩衝液の量を、混合物中の還元型チオール試薬の所定の最終濃度が得られるように調整可能であることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液が、システインの最終濃度が約20μM~約200μMになるように前記可溶化物に添加される。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液が、システインの最終濃度が約40μM、約50μM、約80μM、又は約160μMになるように前記可溶化物に添加される。いくつかの実施形態では、前記折り畳み緩衝液が、システインの最終濃度が約80μMになるように前記可溶化物に添加される。
【0083】
回収
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、折り畳み工程から得られたG-CSFを回収するプロセスをさらに含む。G-CSFの回収は、G-CSFを、宿主細胞の破片、凝集した折り畳まれていないタンパク質、二量体、多量体、及び/又はG-CSFの折り畳まれていないタンパク質など、発現/プロセシング系に存在する望ましくない不純物(これらは中間製品又は最終製品に存在してはならない)から本質的に分離することによって達成され得る。本明細書で使用される「不純物」という用語は、最も広い意味で、G-CSFの生物学的に活性な分子とは異なり、G-CSFの生物学的に活性な分子が純粋ではない物質を指す。不純物には、核酸、脂質、多糖類、タンパク質などの宿主細胞物質、培地、及びG-CSFの調製と処理に使用される添加物が含まれ得る。いくつかの実施形態では、不純物は、生物学的に不活性なモノマー形態、G-CSFの誤って折り畳まれた分子、G-CSFのオリゴマー及びポリマー形態、G-CSFの変性形態、及び宿主細胞タンパク質からなる群から選択される少なくとも1つの物質を含み得る。当業者は、目的の組換えタンパク質の変性形態が、概して、組換え生産プロセスの生成物として得られる組換えタンパク質の生物学的に不活性な、折り畳まれていない、又は主に誤って折り畳まれた形態を含むことを理解するだろう。いくつかの実施形態では、本開示による方法によって回収されたG-CSFは、回収工程から直接得られたバルク形態で商品化されてもよく、及び/又は特定の製剤、例えば、医薬組成物及び製剤へとさらに精製されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、折り畳まれたG-CSFの回収には、1又は複数のクロマトグラフィー法を含めてもい。クロマトグラフィー法の適切な例には、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、金属アフィニティークロマトグラフィー、及び混合モードクロマトグラフィー(MMC)が含まれるが、これらに限定されない。塩、酸、又はポリマーPEGによる沈殿など、非クロマトグラフィー分離法も検討され得る。開示される方法に適した他の非限定的な非クロマトグラフィー分離法には、遠心分離、抽出、透析、透析ろ過、及び限外ろ過が含まれる。
【0085】
ろ過法に関しては、折り畳み中に形成されるタンパク質凝集体であることが多い高分子粒子を除去するために、さらなる処理の前に折り畳まれたタンパク質をろ過工程に供することがしばしば有利である。本開示の方法のいくつかの実施形態では、折り畳まれたタンパク質溶液は、フィルターカスケード、例えば、10μm及び1.2μmのフィルターカスケードを通してろ過される。ろ過後、折り畳まれたタンパク質溶液は、下流の用途に適した条件で保存できる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法の回収プロセスは、細胞破片、不溶性汚染タンパク質、及び核酸沈殿物などの汚染物質を除去するための1又は複数の限外ろ過、精密ろ過、又は透析ろ過操作を含む。これらのろ過操作は、細胞の破片、汚染タンパク質、及び沈殿物を経済的かつ効率的に除去するための便利な手段を提供する。フィルター又はフィルター方式を選択する際に、上流の変化又は変動が発生した場合に堅牢な性能を確保することが重要であることは、当業者によって理解されるであろう。良好な清澄化性能と工程収率とのバランスを維持するように注意する必要がある。適切なフィルターの種類は、効果的な除去を達成するために、セルロースフィルター、再生セルロース繊維、無機ろ過助剤(例えば、珪藻土、パーライト、ヒュームドシリカ)と組み合わせたセルロース繊維、無機ろ過助剤及び有機樹脂と組み合わせたセルロース繊維、又はそれらの任意の組み合わせ、及びポリマーフィルターを利用可能である。ポリマーフィルターの適切な例には、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ろ過操作、例えば、透析ろ過工程及び/又は限外ろ過工程は、ポリエーテルスルホン膜を使用して行われる。いくつかの実施形態では、透析ろ過工程及び/又は限外ろ過工程は、Sius(商標) Hystream(商標)膜を使用して行われる。
【0087】
いくつかの実施形態では、折り畳まれたG-CSFが限外ろ過及び/又は透析ろ過された後、イオン交換クロマトグラフィーの1又は複数の工程を行うことができる。イオン交換クロマトグラフィーは、宿主細胞タンパク質、特に内毒素及び宿主細胞DNAなどの他の汚染物質を除去するために、単一のイオン交換クロマトグラフィーを使用して行われ得る。原則として、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)及び/又は陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)を適切に使用し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、1又は複数のイオン交換工程には、AEXとそれに続くCEXが含まれる。これらの例では、AEXを非結合モード(フロースルーのG-CSF)で使用できる一方で、残留変性剤、宿主細胞タンパク質、DNAなどの汚染物質が樹脂に結合するため、AEXとそれに続くCEXの順序で2段階のイオン交換クロマトグラフィーを必要とする。
【0089】
概して、AEX工程は、タンパク質のAEXクロマトグラフィーで公知の官能基のいずれか1つを使用して行われ得る。これらの群には、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)、第四級アミノメチル(Q)、及び第四級アミノエチル(QAE)が含まれる。これらは、バイオクロマトグラフプロセスで通常使用される機能的陰イオン交換群である。適切な市販の製品には、例えば、DEAE-Sepharose(登録商標)FF、DEAE-Sepharose(登録商標)CL-4B、Q-Sepharose(登録商標)FF、Q-Sepharose(登録商標)CL-4B、Q-Sepharose(登録商標)HP、Q-Sepharose(登録商標)XL、Q-Sepharose(登録商標)Big Bead、QAE-Sephadex(登録商標)、DEAE-Sephadex(登録商標)、Capto(商標)DEAE、Capto(商標)Q、Capto(商標)Q ImpRes、Source(商標)15Q、Source(商標)30Q、DEAE Sephacel(商標)、並びにMacro-Prep(登録商標)High Q、Macro-Prep(登録商標)DEAE、Nuvia(商標)Q、TOYOPEARL(登録商標)DEAE-650、TOYOPEARL(登録商標)SuperQ-650、TOYOPEARL(登録商標)QAE-550、Fractogel(登録商標)EMD DEAE、Fractogel(登録商標)EMD TMAE、Biosepra(商標)Q Ceramic HyperD、及びBiosepra(商標)DEAE Ceramic HyperDが含まれる。いくつかの特定の実施形態では、DEAE-Sepharose(登録商標)FFを用いたAEX工程が行われることにより、特に高い流量及び良好な生成物回収を可能にする。
【0090】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、選択された材料(例えば、CM Sepharose(登録商標)FF)を用いたCEX工程が行われることにより、特に高い流量及び良好な生成物回収を可能にする。これらの例では、酸性環境で正に帯電するという事実から、G-CSFは強力な結合剤であり、所望の緩衝液で、酸性化pH、少量、かつ高濃度で、塩化ナトリウムの直線勾配で溶出され得る。陽イオン交換クロマトグラフィーを実施するためのシステム及び方法は、当業者に周知である。概して、G-CSFは、その正の総電荷により、特定のpH範囲内で陽イオン交換マトリックスに結合する一方で、宿主細胞に由来する核酸、リポ多糖、及びタンパク質、並びにG-CSFのイオン性異性体及び異なるpH値を有する修飾形態のG-CSFのような汚染物質のほとんどは、結合することができず、フロースルーに現れるか、又は洗浄によって除去される。
【0091】
CEX樹脂に使用される適切な官能基には、カルボキシメチル(CM)、スルホネート(S)、スルホプロピル(SP)、及びスルホエチル(SE)が含まれるが、これらに限定されない。これらは、バイオクロマトグラフィープロセスで通常使用される陽イオン交換官能基である。適切な市販の製品には、以下が含まれるが、これらに限定されない:カルボキシメチル(CM)セルロース:AG(登録商標)50W、Bio-Rex(商標)70、カルボキシメチル(CM)Sephadex(登録商標)、スルホプロピル(SP)Sephadex(登録商標):カルボキシメチル(CM)セファロース:CL-6B、CM Sepharose HP、Hyper D-S ceramic (Biosepra(商標));スルホネート(S)セファロース:SP Sepharose(登録商標)FF、SP Sepharose(登録商標)HP、SP Sepharose(登録商標)15 XL、CM Sepharose(登録商標)FF、TSK gel(登録商標)SP 5PW、TSK gel(登録商標)SP-5PW-HR、Toyopearl(登録商標)SP-650M、Toyopearl(登録商標)SP-650S、Toyopearl(登録商標)SP-650C、Toyopearl(登録商標)CM-650M、Toyopearl(登録商標)CM-650Sなど;スルホプロピルマトリックス、特に製品として、SP Sepharose(登録商標)XL及びSP Sepharose(登録商標)FF(Fast Flow)及びS-Sepharose(登録商標)FF。いくつかの実施形態では、陽イオン交換材料は、スルホプロピル陽イオン交換材料である。本開示のいくつかの特定の実施形態では、CEXは、CM-Sepharose(登録商標)FFを用いて行われる。
【0092】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、折り畳みプロセス後に得られるG-CSF調製物のより高い生成物濃度を達成するために、折り畳まれたG-CSFタンパク質を透析又は透析ろ過して、不要な緩衝液成分などの汚染物質を除去することができる。特に、透析ろ過は、膜を通して小さな分子を洗浄し、目的の大きな分子を保持液に残す分別プロセスである。これは、塩の除去又は交換、界面活性剤の除去、結合分子からの遊離分離、低分子量物質の除去、又はイオン環境若しくはpH環境の急速な変化のための簡便かつ効率的な手法と広く見なされている。透析ろ過プロセスは、概して、スラリー濃度を一定に維持しながら、目的の生成物をスラリーから除去するために、精密ろ過又は限外ろ過膜を使用する。
【0093】
上記のように、G-CSFタンパク質、例えば、ヒトG-CSFは、真核生物(例えば、酵母及び哺乳類細胞株)又は細菌(例えば、大腸菌)などの原核生物において組換え産生され得る。産生されるG-CSFの形態は、発現に使用される宿主生物の種類による。G-CSFが真核細胞で発現する場合、概して可溶性形態で産生され分泌される。G-CSFが原核細胞で産生されると、生成物は不活性なIBとして形成され、概して二次構造を有し、密に凝集している。本開示のいくつかの実施形態では、前記G-CSFが、ヒトG-CSF(hG-CSF)である。いくつかの実施形態では、G-CSFを含有するIBは、G-CSFを発現する組換え細胞に由来し、発現されたG-CSFは、細胞内でIBを形成する。いくつかの実施形態では、前記組換え細胞が、原核細胞又は真核細胞である。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における1又は複数の緩衝液、例えば可溶化緩衝液は、変性剤に加えて還元剤(例えば、還元体)を含む。前記還元剤は、共有結合の分子内又は分子間タンパク質結合を形成し、非特異的結合形成を最小限に抑える傾向がある露出した残基を還元する手段として含めることができる。適切な還元剤は、還元型グルタチオン(GSH)、DTT、ジチオエリスリトール(DTE)、システイン、β-メルカプトエタノール、及びモノチオグリセロールである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における還元剤はDTTである。本開示のいくつかの実施形態では、可溶化緩衝液中の還元剤の濃度は、1~100ミリモル/L、好ましくは1~10ミリモル/Lである。
【0095】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示される前記方法が、強力な変性剤、強力な還元剤、酸化還元反応、及び/又は重金属を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における1又は複数の緩衝液(例えば、懸濁緩衝液、可溶化緩衝液、及び折り畳み緩衝液)は、還元剤を含有しない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における1又は複数緩衝液は、尿素、トリス(2-カルボキシエチルホスフィン(TCEP)塩酸塩、及び/又はDTTを含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における1又は複数の緩衝液は、重金属又はその塩を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における1又は複数の緩衝液は、重金属銅又はその塩を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における1又は複数の緩衝液は、CuSO4を含まない。
【0096】
上記のように、チオール酸化還元剤を含む折り畳み緩衝液は、様々な宿主細胞で組換え生産されたタンパク質の再生と正しい折り畳みを促進するための重要な要素であることが示されている。この目的で使用される最も一般的なチオール酸化還元剤は、酸化型及び還元型グルタチオン(GSH/GSSG)、システイン/シスチン、システアミン/シスタミン、(DTT)/GSSG、及び(DTE)/GSSGである。いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示される方法は、チオール酸化還元系などの酸化還元系を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における1又は複数の緩衝液(例えば、懸濁緩衝液、可溶化緩衝液、及び折り畳み緩衝液)は、酸化還元系を含有しない。他のいくつかの実施形態では、折り畳み緩衝液は酸化還元系を含有しない。いくつかの実施形態では、折り畳み緩衝液は、グルタチオン酸化還元系を含有しない。いくつかの実施形態では、折り畳み緩衝液は、システイン/シスチン酸化還元系を含有しない。
【0097】
必要に応じて、開示される方法の任意の所与の工程での試料のタンパク質濃度を決定することができ、任意の適切な方法を使用することができる。そのような方法は当技術分野で周知であり、以下を含む:1)ローリー(Lowry)法、ブラッドフォード(Bradford)法、スミス(Smith)法、金コロイド法などの比色法;2)タンパク質のUV吸収特性を利用する方法;及び3)同じゲル上の既知量のタンパク質標準との比較に依存する、ゲル上の染色タンパク質バンドに基づく視覚的推定。タンパク質濃度の定期的な測定は、前記方法を実施中の進行状況をモニタリングするのに役立ち得る。
【0098】
開示される方法のいずれか又は全ての工程は、手動で、又は自動化されたシステム若しくはコンピュータ制御されたシステムの使用などの任意の簡便な自動化された手段によって行われ得ることに留意されたい。
【0099】
上述のように、本明細書に開示される多段階折り畳みプロセスの有利な特徴は、その拡張性であり、これにより、開示の方法を、ベンチスケール又はパイロットスケールから工業又は商業スケールまでの任意のスケールで実施することができる。特に、開示される方法は、大量のG-CSFを効率的に折り畳むか又は再折り畳むために展開することができる商業規模で適切な用途を見出すであろう。
【0100】
開示される組成物
一態様では、本開示は、本明細書に開示される方法によって精製又は単離された顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を提供する。いくつかの好ましい実施形態において、そのような方法によって得られる精製又は単離されたG-CSFは、生物学的に活性なG-CSFである。
【0101】
本開示の方法に従って得られた精製又は単離されたG-CSF、特にそのような方法によって得られた生物学的に活性なG-CSFは、治療用途に特に適し得る。したがって、本開示の一態様では、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、本明細書に開示されるような治療有効量の生物学的に活性なG-CSFを含み、治療的及び臨床的用途に適した医薬組成物に関する。
【0102】
本開示に係る医薬組成物は、ヒト用及び獣医用の組成物及び製剤を含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、本明細書に開示されるような生物学的に活性なG-CSFと、薬学的に許容される補助物質との混合物を含む。適切な薬学的に許容される補助物質には、G-CSF療法に有用な適切な希釈剤、アジュバント、及び/又は担体が含まれる。薬学的に許容される補助物質の非限定的な例には、医薬品投与に準拠した生理食塩水、溶剤、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張性遅延剤及び吸収遅延剤が含まれるが、これらに限定されない。補足的な活性物質もまた、組成物に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、緩衝液、塩、及び安定剤などの薬学的に許容される添加剤をさらに含む。本開示に従って得られたG-CSF及び医薬組成物は、(i)直接使用され得るか、(ii)さらに処理され、例えば、以下又は、例えば、国際公開第2008/124406号パンフレットにより詳細に記載されるように、ペグ化(PEG化)され、次いで、粉末形態、凍結乾燥物、又は液体形態で保存され得る。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は液体組成物である。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、凍結乾燥物又は粉末である。
【0103】
医薬組成物の有効成分としてのG-CSFは、静脈内、動脈内、腹腔内、胸骨内、経皮、経鼻、吸入、局所、直腸、経口、眼内、又は皮下経路を介して典型的な方法で投与され得る。投与方法は特に限定されないが、非経口投与が好ましく、皮下投与又は静脈内投与がより好ましい。
【0104】
いくつかの実施形態では、注射可能な使用に適した医薬組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌の注射可能な溶液又は分散液の即時調製のための無菌の粉末が含まれる。静脈内投与の場合、適切な補助物質には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。場合によっては、前記組成物は無菌である必要があり、容易な注射可能性が存在する程度まで流動性である必要がある。製造及び保管の条件下で安定している必要があり、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護する必要がある。前記補助物質は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムの使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールによって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどの多価アルコールを組成物に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらし得る。
【0105】
本明細書に開示されるようなG-CSFを含む医薬組成物中の適切なアジュバントの追加の例には、糖及び糖アルコールのような安定剤、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80のようなアミノ酸及び界面活性剤、並びに適切な緩衝物質が含まれるが、これらに限定されない。本開示の方法によるいくつかの実施形態では、精製/単離された生物学的に活性なG-CSFは、pH4.0、0.0025%ポリソルベート80、及び50g/Lソルビトールの10mM酢酸中で製剤化される。
【0106】
滅菌注射液は、上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせを含む適切な溶媒に必要な量の活性化合物を組み込み、必要に応じて、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。概して、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上記に列挙した中から必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これにより、有効成分の粉末に加えて、事前に滅菌濾過した溶液から任意の追加の所望の成分が得られる。
【0107】
経口組成物は、使用される場合、概して不活性希釈剤又は食用担体を含む。経口治療投与の目的で、活性化合物(例えば、本明細書に開示されるG-CSF及び/又はそれを含む医薬組成物)は、賦形剤とともに組み込まれ、錠剤、トローチ、又はカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態で使用され得る。洗口液として使用するための流体担体を使用して、経口組成物を調製することもできる。医薬的に適合性のある結合剤及び/又は補助材料を組成物の一部として含めてもよい。錠剤、ピル、カプセル、及びトローチには、以下の成分のいずれか、又は同様の性質の化合物を含めることができる:微結晶性セルロース、トラガカントガム、ゼラチンなどのバインダー;デンプン又は乳糖などの賦形剤;アルギン酸、Primogel(商標)、又はコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はSterotes(商標)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;ショ糖又はサッカリンなどの甘味料;又はペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジフレーバーなどの香味剤。
【0108】
吸入投与の場合、本開示の本明細書に開示される発明の対象のG-CSF及び/又は医薬組成物は、適切な推進剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザーからの適切なエアロゾルスプレーの形態で送達される。そのような方法には、例えば、米国特許第6,468,798号明細書に記載されている方法が含まれる。
【0109】
本明細書に開示される発明の対象のG-CSF及び/又は医薬組成物の全身投与はまた、経粘膜的又は経皮的手段によるものであり得る。経粘膜又は経皮投与の場合、浸透するバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野で概して公知であり、例えば、経粘膜投与用、界面活性剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、点鼻薬又は坐薬を使用して行うことができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で概して公知であるように、軟膏、軟膏、ゲル、又はクリームに製剤化される。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される発明の対象のG-CSF及び/又は医薬組成物はまた、坐剤(例えば、カカオバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて)又は直腸送達のための保持浣腸の形態で調製され得る。いくつかの実施形態では、本開示のG-CSF及び/又は医薬組成物はまた、当技術分野で公知の方法を使用するトランスフェクション又は感染によって投与され得る。
【0111】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、組換えG-CSFを身体からの急速な排除から保護する担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤は、標準的な技術を使用して調製され得る。これらの材料は、Alza社及びNova Pharmaceuticals社から商業的に入手してもよい。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号明細書に記載されているものなど、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えG-CSFは、インビボ及び/又はエクスビボでそれらの半減期を延長するようにさらに改変され得る。本開示の組換えG-CSFを修飾するのに適した公知の戦略及び方法論の非限定的な例には、以下が挙げられる:(1)ポリペプチドがプロテアーゼと接触するのを防ぐポリエチレングリコール(「PEG」)などの溶解性の高い高分子による本明細書に記載のポリペプチドの化学修飾、及び(2)本明細書に記載のポリペプチドを、例えば、アルブミンなどの安定なタンパク質と共有結合又は結合させること。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の組換えG-CSFは、アルブミンなどの安定なタンパク質に融合させることができる。例えば、ヒトアルブミンは、それに融合されたポリペプチドの安定性を高めるための最も効果的なタンパク質の1つとして公知であり、そのような融合タンパク質が数多く報告されている。
【0113】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えG-CSFは、1又は複数のポリエチレングリコール部分で化学的に修飾されている、例えば、PEG化されているか、同様の修飾により、例えば、PAS化されている。いくつかの実施形態では、PEG分子又はPAS分子は、インターフェロンの1又は複数のアミノ酸側鎖に結合している。いくつかの実施形態では、PEG化又はPAS化G-CSFポリペプチドは、1個のアミノ酸にのみPEG部分又はPAS部分を含有する。他の実施形態では、ペグ化又はPAS化G-CSFポリペプチドは、2個以上のアミノ酸上に、例えば、2個以上、5個以上、10個以上、15個以上、又は20個以上の異なるアミノ酸残基に結合したPEG部分又はPAS部分を含有する。いくつかの実施形態では、PEG鎖又はPAS鎖は、2000、2000超、5000、5,000超、10,000、10,000超、10,000超、20,000、20,000超、及び30,000ダルトン(Da)である。PAS化G-CSFポリペプチドは、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基を介して、PEG又はPASに(例えば、連結基なしで)直接結合されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の組換えG-CSFは、平均分子量20,000ダルトンのポリエチレングリコールに共有結合している。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、1又は複数のPEG化試薬を含む。本明細書で使用される場合、「PEG化(ペグ化)」という用語は、ポリエチレングリコール(PEG)をタンパク質に共有結合させることによってタンパク質を修飾することを指し、「PEG化(された)」は、PEGが結合したタンパク質を指す。様々な化学物質を使用して、約10,000ダルトン~約40,000ダルトンの所望の範囲のサイズを有するPEG又はPEG誘導体を、本開示の組換えポリペプチドに付着させることができる。いくつかの実施形態では、ペグ化試薬は、メトキシポリエチレングリコール-プロピオン酸スクシンイミジル(mPEG-SPA)、mPEG-酪酸スクシンイミジル(mPEG-SBA)、mPEG-コハク酸スクシンイミジル(mPEG-SS)、mPEG-炭酸スクシンイミジル(mPEG-SC)、mPEG-グルタル酸スクシンイミジル(mPEG-SG)、mPEG-N-ヒドロキシル-スクシンイミド(mPEG-NHS)、mPEG-トレシレート(tresylate)、及びmPEG-アルデヒドから選択される。いくつかの実施形態では、ペグ化試薬はポリエチレングリコールであり、好ましくは、前記ペグ化試薬は、タンパク質のN末端メチオニン残基に共有結合した平均分子量20,000ダルトンのポリエチレングリコールである。
【0115】
治療方法
本開示の方法に従って得られた精製又は単離されたG-CSF、特にそのような方法によって得られた生物学的に活性なG-CSFは、治療用途に特に適し得る。この文脈において、本開示のいくつかの実施形態は、対象の疾患を治療又は予防するための方法であって、治療有効量のG-CSF及び/又は医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法に関する。
【0116】
本明細書で使用される「投与」及び「投与すること」という用語は、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、及び局所投与、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない投与経路による、生物活性組成物又は製剤の送達を指す。この用語には、医療従事者による投与及び自己投与が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、生物学的に活性なG-CSFの治療効果を有する、本明細書に開示される方法によって得られる生物学的に活性なG-CSFの量を指す。
【0117】
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなG-CSF及び/又は医薬組成物は、その意図された投与経路と適合し得るように処方される。本開示のG-CSF及び/又は医薬組成物は、経口又は吸入によって与えられ得るが、それらは非経口経路を介して投与される可能性が高い。非経口投与経路の例には、例えば、静脈内、皮内、皮下、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸投与が含まれる。非経口投与に使用される液体又は懸濁液には、以下の成分が含まれ得る:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝液;及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの浸透圧を調整するための薬剤。pHは、一塩基性及び/又は二塩基性リン酸ナトリウム、塩酸、又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で、(例えば、約7.2~7.8、例えば、7.5のpHに)調整され得る。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、又はガラス若しくはプラスチック製の複数回投与バイアルに封入され得る。
【0118】
本開示のそのような発明の対象のG-CSF及び/又は医薬組成物の用量、毒性、及び治療効果は、例えば、LD50(人口の50%に対する致死量)及びED50(人口の50%で治療効果のある用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。毒性効果と治療効果との用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を使用してもよいが、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を減らすために、影響を受ける組織の部位にそのような化合物を標的とする送達システムを設計するように考慮する必要がある。
【0119】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、哺乳類、例えば、ヒトで使用するための投与量の範囲を処方する際に使用することができる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本開示の治療方法で使用される任意の医薬組成物について、治療上有効な用量は、最初に細胞培養アッセイから推定可能である。細胞培養で決定されるように、IC50(例えば、症状の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて用量を処方することができる。このような情報は、ヒトの有用な用量をより正確に決定するために使用できる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定可能である。
【0120】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、好中球減少症及び好中球減少症関連の臨床的後遺症、慢性好中球減少症、好中球減少症及び非好中球減少症感染症、並びに細胞毒性化学療法後の発熱性好中球減少症のための、及び骨髄破壊的治療を受けている患者の好中球減少症とその後の長期にわたる重度の好中球減少症のリスクが高いと考えられる骨髄移植の期間の短縮のための入院の短縮からなる群から選択される、1又は複数の適応に関連する疾患の治療及び/又は予防に適している。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、末梢血前駆細胞(PBPC)の動員及び慢性炎症状態に関連する疾患の治療及び/又は予防に適している。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるG-CSF及び/又はそれを含む医薬組成物の長期投与は、細菌感染症のリスクを減らすために、進行したHIV感染症の患者における持続性好中球減少症の治療など、好中球数を増加させること及び感染関連のイベントの発生率と期間を低減することが示されている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるG-CSF及び/又はそれを含有する医薬組成物は、集中治療室の患者及び重症患者の臨床転帰、創傷/皮膚潰瘍/火傷の治癒及び治療、化学療法及び/又は放射線療法の強化、抗炎症性サイトカインの増加、光線力学療法の抗腫瘍効果の増強を改善するために示されている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるG-CSF及び/又はそれを含む医薬組成物は、異なる脳機能障害によって引き起こされる疾患の予防及び治療、血栓性疾患及びそれらの合併症の治療、並びに赤血球形成の照射後の回復のために示される。また、G-CSFの指標として報告されている他のすべての病気の治療にも使用され得る。
【0122】
したがって、本明細書に開示される方法によって得られる生物学的に活性なG-CSFを含む医薬組成物は、上記の疾患の1又は複数を治療又は予防するのに有効な治療量で患者、子供、又は成人に投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、好中球減少症の治療及び/又は予防に適している。
【0123】
本開示で言及される全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により援用されることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。
【0124】
本明細書で引用されるいかなる参考文献も先行技術を構成するとは認められない。参考文献における議論は、それらの著者が主張すること述べたものであり、本発明者は、引用される文書の正確性及び適切性に異議を唱える権利を留保する。科学雑誌の記事、特許文書、及び教科書を含む多くの情報源が本明細書で参照されているが、この参照は、これらの文書のいずれかが当技術分野の技術常識の一部を形成していることを認めるものではないことが明確に理解されよう。
【0125】
本明細書に記載されている常法の記載は、説明のみを目的としている。他の代替方法及び代替案は、本開示を検討する際に当業者には明らかであり、本出願の精神及び範囲内に含まれるものである。
【実施例】
【0126】
以下に説明する実施例では、いくつかのG-CSF折り畳み条件を評価し、最適化した。これらの実施例に記載されているG-CSFは、2つの分子内ジスルフィド結合を有する組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(rhG-CSF)であった。組換えrhG-CSFの配列は、大腸菌での発現によるN末端メチオニンの包含を除いて、天然のヒト顆粒球コロニー刺激因子配列と同一である。これらの実験では、rhG-CSFは非グリコシル化タンパク質である。
【0127】
以下に説明するすべてのスケールダウン精製実験は、AKTA Explorer(GE Healthcare社)及びOmnifitクロマトグラフィーカラムを使用して実施した。Agilent UV-Vis又はThermo Nanodropを使用して、インプロセスクロマトグラフィープール濃度を決定した。クォータースケール(4分の1規模)及び100Lの実験及び改変用材料の精製は、BPGクロマトグラフィーカラムを使用してAKTA Ready及びAKTA Pilotで実施した。限外ろ過/透析ろ過(UF/DF)は、クォータースケール用の手動システムと実験及び改変実行用の自動Millipore Mobiusシステムを使用して実施した。
【0128】
実施例1
可溶化及び折り畳みプロセスの開発
本実施例は、封入体に含有されるrhG-CSFが可溶化され、次いで折り畳まれて生物学的に活性なrhG-CSFタンパク質を生成する、非限定的な例示的なワークフローを示す。新たに記述された方法の主な原理は、rhG-CSF用に開発された多段階の折り畳みプロセスを含み、以下が含まれる:(i)懸濁緩衝液中のG-CSFを含有するIBの分散、(ii)変性剤(サルコシル)を使用したIBに含有されるrhG-CSFの可溶化、(iii)可溶化されたrhG-CSFの折り畳みを開始するためのチオール酸化還元対の還元型のみを含有する折り畳み緩衝液の使用、及び(iv)一連の希釈工程による変性剤濃度の低下。上記のように、本明細書に開示される多段階折り畳みプロセスは、商業的生産規模で有利に実施することができる。
【0129】
典型的な実験ワークフローでは、凍結封入体ペレットを、ペレット質量1グラムあたり緩衝液25グラムのトリス懸濁緩衝液(40mMトリス、pH7.6)内のブレンダーを使用して、懸濁段階で破壊した。前記凍結ペレットを懸濁緩衝液(25mL/凍結ペレット1グラム)と20秒間混合した後、室温で15分間穏やかに混合した。この工程は、可溶化工程の前に前記封入体の解凍を促進した。混合後、封入体懸濁液を、攪拌機により混合しながら密閉された使い捨て容器に移した。
【0130】
次に、変性剤としてサルコシルを使用して、その後の可溶化工程を実施した。前記封入体を可溶化緩衝液(40mMトリス、サルコシル、pH8.4)で溶解し、これを懸濁緩衝液と1:1の体積比で添加した。いくつかの実施形態では、前記可溶化緩衝液は、25mL/溶解物ペレット1グラムで添加した。特定の理論に拘束されることなく、前記変性剤は前記封入体を展開し、凝集に対する感受性を低下させると考えられる。これらの実験では、0.56%、1.0%、及び2.0%のサルコシル濃度を可溶化について評価した。0.56%、1.0%、又は2.0%のサルコシルを含有する可溶化緩衝液を添加すると、約5gの封入体が2時間で完全に可溶化されることが観察された。
【0131】
14~24時間のインキュベーション後、可溶化物中の前記可溶化緩衝液をWFIで1:1の体積比でさらに希釈し、折り畳み緩衝液(40mMトリス、0.8mMシステイン、pH7.8)を最終システイン濃度80μMになるように添加して、折り畳みを開始した。概して、1グラムの溶解物ペレットに対して10mLの折り畳み緩衝液を添加した。次に、折り畳み混合物を室温で約15分間混合し、続いて15~25℃で22±2時間、混合せずにインキュベートした。次に、前記折り畳み混合物をWFIで1:1に希釈し、さらに約15分間混合した。
【0132】
この折り畳み緩衝液の添加は、希釈による折り畳みのサルコシル濃度をそれぞれ0.5%、0.9%、及び1.8%に低下させた。試料は、0、4、6、20、及び24時間で逆相HPLCによって力価について分析した。
図1に示すデータは、可溶化及び折り畳み操作が、これら3つの緩衝液サルコシル濃度の全てにおいて実施でき、同様の量のタンパク質及び同様の再折り畳み速度となることを示した。
【0133】
さらに、システインは、逆相HPLC(RP-HPLC、
図2を参照)によってアッセイされるように、0.5%サルコシル濃度で40μM、80μM、及び160μMの3つの濃度で折り畳みを開始するのに有効であることが観察された。
【0134】
折り畳み混合物からのサルコシルの除去は、Dowex 1×8イオン交換樹脂(50-100メッシュ、54g/折り畳み混合物1kg)を40mMトリス(pH7.7)を含む洗浄緩衝液と共に室温で3時間使用して達成した。続いて、Dowex 1×8イオン交換樹脂をろ過によって除去した。さらに所望による回収工程で、洗浄したG-CSFタンパク質をデプスフィルターに通した。
【0135】
実施例2
サルコシル含有量の順次段階的低減の最適化
本実施例は、本開示のいくつかの実施形態に従って、rhG-CSFの調製中のサルコシル濃度の順次段階的低減を最適化するために実施した実験を説明する。これらの実験では、3セットの精製実験を通じてサルコシル折り畳み実験でいくつかのパラメーターを評価した。これらのパラメーターは、(i)タンパク質に対するサルコシルのグラム比、(ii)可溶化工程でのEDTA、グルタチオン、又はシステインの使用、(iii)折り畳み工程でのシステイン、グルタチオン、又は酸化還元系の使用、(iv)折り畳み工程でのサルコシル率(%)、(v)樹脂除去工程でのサルコシル率(%)、及び(vi)Dowexの量を含む。
【0136】
これらの実験で変更されなかったパラメーターには、室温での折り畳み、可溶化のための1.0%サルコシル緩衝液の使用、可溶化時間、折り畳み時間、及び界面活性剤除去樹脂、並びに混合時間が含まれる。
【0137】
最初の折り畳み試験では、洗浄したUSU実行11の封入体ペレットを使用した。各条件は20mgのIBで評価した。折り畳み後、試料をRP-HPLC力価で分析した。条件の組み合わせを評価し、一貫性を確保するために、実行11のIBで数回の試験の反復を行った(データは示さず)。次に、様々な条件を実行9のIBで評価して、供給原料間の一貫性を確認した。実行9のセットの実験のデータを表1に示す。
【表1】
【0138】
データは、タンパク質の総量と非還元率とを比較することによって評価した。表1に示されているデータセットでは、最初の条件は、その時点で進行中の大規模実行のパラメーターを使用した対照である。条件4及び条件5が最も有望な結果をもたらすことが観察された。特に、条件5では還元型グルタチオン(L-GSH)のみが使用された(例えば、酸化型グルタチオン(GSSG)はこの反応から除外された)。一方、条件4では、(条件5とは異なり)産生に新しい原材料を添加する必要はなかった。特定の添加剤の不在又は封入への影響は、クロマトグラフィーデータで観察できた。可溶化工程でシステインが存在する場合、疎水性の低い2つのピークが観察され得る。折り畳み混合物にシステインを添加しなかった場合、還元されたG-CSFが残った(データは示さず)。小規模での確認は、最良の折り畳み条件で実施した(例えば、以下の例3を参照)。
【0139】
実施例3
小規模での折り畳みの確認
上記の実施例2に記載されているようなスクリーニングフォーマットで特定された最良の折り畳み条件を、小規模の処理でさらに評価した。懸濁液を使用した対照は、実施例2で説明した対照条件をわずかに変更したものであり、封入体を最初にトリス緩衝液に懸濁し、Dowexをサルコシル1グラムあたり10gに増やしたが、他の全ての取り扱い及び比率は前の処理と同じとした。トリス懸濁液は、実施例2の条件4に対応していた。試験デザインを表2に示す。
【表2】
【0140】
小規模処理試験からの最終タンパク質収率を以下の表3に示す。
【表3】
【0141】
トリス懸濁液条件は、供給原料間の収率の一貫性と、対照条件の2倍の収率の増加を示した。この条件は、4分の1規模の産生、実験、及び改変の実行を進めるために選択された。対照における変更により、収率の改善は、トリスによる最初の懸濁液やサルコシル除去のためのDowexの量の影響を受けにくい。特定の理論に拘束されることなく、重要なパラメーターには、(1)タンパク質に対するサルコシルの比率、(2)折り畳み時のサルコシルの割合(%)、及び(3)サルコシル除去前の折り畳み混合物の希釈が含まれると考えられる。
【0142】
実施例4
折り畳みの動力学
本実施例では、G-CSF生成物の品質に対する折り畳み時間の影響を評価するために実施された実験について説明する。これらの実験では、2つの大規模改変ロットからの試料を使用して折り畳み時間を評価した。
【0143】
これらの実験では、折り畳み率は2つの改変実行からの試料で評価した:改変1及び改変2。これらの2つの改変実行の折り畳みは、上記の実施例3で説明したパラメーターに従った。折り畳みの開始時に試料をバルクから抜き出し、22℃のオートサンプラーに投入した。選択された時点で逆相注入を実施した。データを
図3及び
図4に示す。22時間での改変1のバルクのエンドポイントの逆相データを
図3に表す。データは両方のデータセットで類似しており、オートサンプラーの経時的アプローチが代表的であることを示している。どちらのデータセットでも、折り畳みプロセスは12~14時間以内に完了した。22時間よりも早く完了したため、改変2が興味深く、小規模な実験を実施して、折り畳み時間を短縮するメリットがあるかどうかを判断した。折り畳み段階で改変2から試料を取り出し、15時間の折り畳み時間の後にCM分取までプロセスを実施した。この実験から得られたデータは、より大きなスケールでのより長い折り畳み時間に匹敵した。15時間の折り畳みから得られたデータを表4に示す。
【表4】
【0144】
図5は、
図3及び
図4からの逆相HPLCのメイン(%)のデータセットのオーバーレイであり、本明細書に開示される方法の一貫性を示している。逆相HPLCによるメイン(%)の変化に示されるように、折り畳みの一貫した速度が改変1及び改変2で観察される。両方のソース材料の折り畳みプロセスは、12~14時間以内に完了した。
【0145】
実施例5
折り畳みの温度
これらの実験では、4℃での折り畳みを評価するために小規模な試験を実施した。試料は、周囲温度での折り畳みの開始時に実験2から抜き出した。この試料は、同一折り畳み時間の間、4℃に置いた。折り畳み効率は逆相分析によって決定した。表5のデータは、冷蔵温度で折り畳みにわずかな改善が見られたことを示していますが、これは変動の範囲内であり得る。
【表5】
【0146】
実施例6
システイン安定性
G-CSFの全ての産生において、折り畳み緩衝液(40mMトリス、0.8mMシステイン、pH7.8)を折り畳み開始日に調製した。これは製造において困難となり得るため、システイン安定性試験を実施した。システイン緩衝液の試料を、改変実行1から採取した。この緩衝液を室温で保存した。特定の時点で、保存した緩衝液を使用して、USU実行9のIBペレットの折り畳みを開始した。次に、非還元率(%)を逆相力価によって測定した。これは、緩衝液の安定性を判断するために使用した。本試験は、システイン緩衝液を室温で少なくとも2週間保存可能であることを示した。
【0147】
本開示の特定の代替案が開示されているが、様々な変更及び組み合わせが可能であり、添付の特許請求の範囲の真の精神及び範囲内で企図されることが理解されるべきである。したがって、本明細書に提示されている要約及び開示そのものに制限を加える意図はない。
【国際調査報告】