(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(54)【発明の名称】焼成層状複水酸化物及びポリマーを含む成形用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220617BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20220617BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220617BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20220617BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20220617BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20220617BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220617BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20220617BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20220617BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20220617BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220617BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/67
A61K8/73
A61K8/36
A61K8/27
A61K8/26
A61K8/81
A61K8/64
A61K8/85
A61Q1/14
A61Q19/10
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563137
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2020005198
(87)【国際公開番号】W WO2020218787
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0047252
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519051964
【氏名又は名称】エイチ アンド エー ファーマケム カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】H&A PHARMACHEM CO., LTD
【住所又は居所原語表記】48, Bucheon-ro 186beon-gil, Wonmi-gu Bucheon-si Gyeonggi-do 14558, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ホン グン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン ア
(72)【発明者】
【氏名】カン,ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジャ イン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB271
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB371
4C083AB372
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC581
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC792
4C083AD011
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD431
4C083AD432
4C083AD611
4C083AD621
4C083AD622
4C083BB26
4C083CC01
4C083CC03
4C083CC23
4C083CC25
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
4C083FF04
(57)【要約】
本発明は、焼成層状複水酸化物(layered double hydroxide)及びポリマーを含む成形用化粧料組成物に関し、より詳しくは、有効成分、焼成層状複水酸化物、ポリマー及び溶媒を含む成形用化粧料組成物、並びにその製造方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分、焼成層状複水酸化物、ポリマー及び溶媒を含む成形用化粧料組成物。
【請求項2】
0.01~50重量%の有効成分、10~60重量%の焼成層状複水酸化物、0.5~20重量%のポリマー及び10~60重量%の溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項3】
0.1~48重量%の有効成分、15~55重量%の焼成層状複水酸化物、1~18重量%のポリマー及び15~55重量%の溶媒を含むことを特徴とする請求項2に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項4】
1~45重量%の有効成分、20~50重量%の焼成層状複水酸化物、2~15重量%のポリマー及び20~50重量%の溶媒を含むことを特徴とする請求項3に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項5】
前記有効成分が、保湿剤、美白剤、抗シワ剤、紫外線遮断剤、育毛剤、ビタミン又はその誘導体、アミノ酸又はペプチド、抗炎症剤、ニキビ治療剤、殺菌剤、女性ホルモン剤、角質溶解剤及び天産物からなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項6】
前記焼成層状複水酸化物が、下記構造式を有することを特徴とする請求項1に記載の成形用化粧料組成物:
[M
2+
1-xM
3+
x(OH)
2]
x+(A
n-)
x/n・mH
2O
(式中、M
2+とM
3+は金属陽イオンであり、A
n-は陰イオンであり、0.2≦x≦0.33であり、nは1又は2であり、mは0.5~4である。)
【請求項7】
M
2+は、Ca
2+、Mg
2+、Zn
2+、Ni
2+、Mn
2+、Co
2+又はFe
2+であり、M
3+は、Al
3+、Cr
3+、Mn
3+、Fe
3+、Ga
3+、Co
3+又はNi
3+であり、A
n-は、OH
-、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、NO
3
-、CO
3
2-又はSO
4
2-であることを特徴とする請求項6に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項8】
前記焼成層状複水酸化物が、400~1,200℃の温度で焼成されることを特徴とする請求項1に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項9】
前記焼成層状複水酸化物が、500~1,100℃の温度で焼成されることを特徴とする請求項8に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項10】
前記焼成層状複水酸化物が、6~16時間焼成されることを特徴とする請求項1に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項11】
前記焼成層状複水酸化物が、8~14時間焼成されることを特徴とする請求項10に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項12】
前記ポリマーが、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、ナノセルロース、デンプン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、キサンタンガム、アカシアガム、グアーガム、カラギーナンガム、ゲランガム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸、プルラン、アルギン酸ナトリウム、キトサン、寒天、ゼラチン及びコラーゲンからなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項13】
前記溶媒が、水、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール及びそれらの混合物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の成形用化粧料組成物。
【請求項14】
i)層状複水酸化物を400~1,200℃の温度で6~16時間焼成、冷却する工程;及び
ii)有効成分及びポリマーを溶媒に溶解し、得られた溶液を前記焼成層状複水酸化物と混合し、撹拌する工程;
を含む成形用化粧料組成物の製造方法。
【請求項15】
前記層状複水酸化物が、下記の構造式を有することを特徴とする請求項14に記載の成形用化粧料組成物の製造方法:
[M
2+
1-xM
3+
x(OH)
2]
x+(A
n-)
x/n・mH
2O
(式中、M
2+とM
3+は金属陽イオンであり、A
n-は陰イオンであり、0.2≦x≦0.33であり、nは1又は2であり、mは0.5~4である。)
【請求項16】
M
2+は、Ca
2+、Mg
2+、Zn
2+、Ni
2+、Mn
2+、Co
2+又はFe
2+であり、M
3+は、Al
3+、Cr
3+、Mn
3+、Fe
3+、Ga
3+、Co
3+又はNi
3+であり、A
n-は、OH
-、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、NO
3
-、CO
3
2-又はSO
4
2-であることを特徴とする請求項15に記載の成形用化粧料組成物の製造方法。
【請求項17】
前記層状複水酸化物を500~1,100℃の温度で焼成することを特徴とする請求項14に記載の成形用化粧料組成物の製造方法。
【請求項18】
前記層状複水酸化物を8~14時間焼成することを特徴とする請求項14に記載の成形用化粧料組成物の製造方法。
【請求項19】
前記有効成分が保湿剤、美白剤、抗シワ剤、紫外線遮断剤、育毛剤、ビタミン又はその誘導体、アミノ酸又はペプチド、抗炎症剤、ニキビ治療剤、殺菌剤、女性ホルモン剤、角質溶解剤及び天産物からなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする請求項14に記載の成形用化粧料組成物の製造方法。
【請求項20】
前記ポリマーが、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、ナノセルロース、デンプン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、キサンタンガム、アカシアガム、グアーガム、カラギーナンガム、ゲランガム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸、プルラン、アルギン酸ナトリウム、キトサン、寒天、ゼラチン及びコラーゲンからなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする請求項14に記載の成形用化粧料組成物の製造方法。
【請求項21】
前記溶媒が、水、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール及びそれらの混合物から選ばれることを特徴とする請求項14に記載の成形用化粧料組成物の製造方法。
【請求項22】
前記工程(ii)において、有効成分、ポリマー、溶媒及び焼成層状複水酸化物の重量比がそれぞれ0.01~50重量%、0.5~20重量%、10~60重量%及び10~60重量%であることを特徴とする請求項14に記載の成形用化粧料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成層状複水酸化物(layered double hydroxide)及びポリマーを含む成形(molding)用化粧料組成物に関する。より詳しくは、有効成分、焼成層状複水酸化物、ポリマー及び溶媒を含む成形用化粧料組成物、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性材料の開発により、化粧品原材料に、より高い安定性を与えるための様々な機能化方法が広く研究されてきた。特に、光、熱及び空気中の酸素が機能性原材料の生物学的活性を著しく低下させることはよく知られている。そのため、様々な化粧品有効成分を安定化するための新しい機能化技術を開発する必要がある。
【0003】
そのような化粧品有効成分の送達システムの一つとして、層状複水酸化物(LDH)が注目されている。層状複水酸化物は、層状構造の無機化合物であり、その形状は、地層のラメラのように層状になっている。LDHは基本的に、二酸化炭素などの小さな気体分子からDNAなどの生体高分子まで様々な陰イオンを吸収できる構造的特性を有する無機材料である。また、層に捕集された分子は、無機層との静電相互作用によってエネルギー的に安定に保つことができる。陰イオンはイオン交換によって吸収又は放出されるという特徴がある。無機層は、アルカリ金属から遷移金属まで様々な組成で構成されているため、触媒、磁性材料、電子材料などの前駆体物質として使用することができる。
【0004】
最近、特定の分子結合を利用してLDHナノ材料を自己組織化するメカニズムや、無機層の表面反応を選択的に誘導することで特定の環境における層内の陰イオンの放出を制御するメカニズムが発見され、ガスセンサーや薬物送達材料としても注目されている。特に、層間に存在する静電引力が化学的に最小化されている場合、それは1nm厚さのナノ層に分離することができる。これは、LDH材料の応用性を爆発的に高める起爆薬となり、LDHは、ナノエレクトロニクス、磁気光学、ナノセンサーなどの分野に適用されている。
【0005】
また、機能性有機分子の吸着能力に優れたLDHナノ層は、化粧品有効成分の吸着能力の向上と化学環境調節による放出制御などの技術開発に基づく新たなバイオカプセル化(bio-encapsulation)材料として注目されている。LDHの利用例として、特許文献1(韓国 特開第10-2018-0109205号)は、リポソームを層状複水酸化物と混合した後、粉砕して、リポソームが層状複水酸化物の層間に吸着されたカプセルを形成することによって、2次的にナガイモ(Dioscorea polystachya)の果実の抽出物を安定化させた、ナガイモの果実の抽出物及び層状複水酸化物を含む化粧料組成物を開示している。
【0006】
一方、化粧品の開発により、様々な目に見える化粧品への関心が増加している。化粧品の有効成分による効能や効果も重要であるが、消費者が使用前に、化粧品の外観を見て購入するケースが増えている。特に、エッセンスやクリームなどの可視カプセル剤形が販売されており、凍結乾燥によりヒアルロン酸やコラーゲンなどが見える形態の剤形などもある。このような時代の変化に伴い、消費者を視覚的に満足させる様々な形状の化粧品が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国 特開第10-2018-0109205号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の技術的課題は、有効成分を安定して皮膚に効率的に送達できるだけでなく、成形性に優れた様々な形状に自由に成形可能な化粧品組成物を供することである。
【0009】
また、本発明の別の技術的課題は、前記成形用化粧料組成物を効果的に製造するための製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、有効成分、焼成層状複水酸化物、ポリマー及び溶媒を含む成形用化粧料組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、i)層状複水酸化物を400~1,200℃の温度で6~16時間焼成し、冷却する工程;及び、ii)有効成分及びポリマーを溶媒に溶解し、前記焼成層状複水酸化物と混合し、撹拌する工程;を含む成形用化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の一態様によれば、有効成分、焼成層状複水酸化物、ポリマー及び溶媒を含む成形用化粧料組成物が提供される。
【0014】
本発明の成形用化粧料組成物は、好ましくは0.01~50重量%、より好ましくは0.1~48重量%、さらに好ましくは1~45重量%の有効成分を含む。本発明の成形用化粧料組成物において、有効成分の量が0.01重量%未満の場合、有効成分による効能が弱くなり、有効成分の量が50重量%を超えると、化粧料組成物の成形において問題となる可能性がある。
【0015】
本発明において、有効成分による特別な制限はない。本発明において、有効成分の例には、保湿剤、美白剤、抗シワ剤、紫外線遮断剤、育毛剤、ビタミン又はその誘導体、アミノ酸又はペプチド、抗炎症剤、ニキビ治療剤、殺菌剤、女性ホルモン剤、角質溶解剤及び天産物からなる群から選ばれる一つ以上であってもよいが、これらに限定されない。
【0016】
保湿剤の例には、クレアチン、ポリグルタミン酸、乳酸ナトリウム、ヒドロプロリン、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、フィトステリル、コレステロール、シトステロール、プルラン、プロテオグリカンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
美白剤の例には、アルブチン及びアルブチン誘導体、コウジ酸、ビサボロール、ナイアシンアミド、ビタミンC及びビタミンC誘導体、プラセンタ、アラントインなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
抗シワ剤の例には、レチノール、レチノール誘導体、アデノシン、カンゾウ抽出物、オタネニンジン抽出物、コウライニンジン抽出物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
紫外線遮断剤の例には、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
育毛剤に特別な制限はないが、それは好ましくは血液循環促進剤及び/又は毛包刺激剤であってもよい。
【0021】
血液循環促進剤の例には、センブリ抽出物、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体、並びにガンマオリザノールなどがあるが、これらに限定されない。
【0022】
毛包刺激剤には、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、カンタリスチンキ及びニコチン酸ベンジルエステルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
ビタミン又はその誘導体の例には、ビタミンA(レチノール)及びその誘導体、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンD、ビタミンH、ビタミンK、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン、パンテノール、コエンザイムQ10、並びにイデベノンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
アミノ酸又はペプチドの例には、システイン、メチオニン、セリン、リシン、トリプトファン、アミノ酸エキス、上皮細胞増殖因子(EGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、クーパーペプチド、トリペプチド-1銅、トリペプチド-29、トリペプチド-1、アセチルヘキサペプチド-8、ニコチノイルトリペプチド-35、ヘキサペプチド-12、ヘキサペプチド-9、パルミトイルペンタペプチド-4、パルミトイルテトラペプチド-7、パルミトイルトリペプチド-29、パルミトイルトリペプチド-1、ノナペプチド-7、トリペプチド-10シトルリン(citrulline)、sh-ポリペプチド-15、パルミトイルトリペプチド-5、ジアミノプロピオノイルトリペプチド-33、r-クモポリペプチド-1などが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
抗炎症剤の例には、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾン、β-グルカン、カンゾウなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
ニキビ治療剤の例には、エストラジオール、エストロゲン、エチニルエストラジオール、トリクロサン、アゼライン酸などが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
殺菌剤の例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロカルバン(Halocarban)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
女性ホルモン剤に特別な制限はないが、エストロゲンが好ましい場合がある。エストロゲンとしては、エストラジオール、エチニルエストラジオール又は植物性エストロゲンであるイソフラボンなどが好ましい。
【0029】
角質溶解剤の例には、硫黄、サリチル酸、AHA、BHA、レゾルシンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
天産物の抽出物又はそれから得られた成分の例には、マンサク、オドリコソウ、フタバムグラ、ダイオウ、カンゾウ、アロエ、カモミール、ローズヒップ、セイヨウトチノキ、コウライニンジン、ヘチマ、キュウリ、ノリ、ワカメ、アサ、カタツムリ、ナガイモなどの抽出物やヒノキチオール、β-カロテンなどが含まれるが、これらに限定されない。さらに、酵母抽出物、コラーゲン、エラスチン、DHA、EPA、フレーバー成分などを使用することができる。
【0031】
本発明の成形用化粧料組成物は、焼成層状複水酸化物(LDH)を、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~55重量%、さらに好ましくは20~50重量%含む。本発明の成形用化粧料組成物において、焼成層状複水酸化物の量が10重量%未満の場合、有効成分を皮膚に送達する効率が低下する可能性があり、60重量%を超えると、化粧料組成物の成形において問題となる可能性がある。
【0032】
本発明において、LDHの組成は、下記構造式で示すことができる。
[M2+
1-xM3+
x(OH)2]x+(An-)x/n・mH2O
前記式中、M2+とM3+は、水滑石(brucite)の八面体サイトを特定する金属陽イオンあり、An-は、層間に位置した陰イオンを表し、M2+=Ca2+、Mg2+、Zn2+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Fe2+などであり、M3+=Al3+、Cr3+、Mn3+、Fe3+、Ga3+、Co3+、Ni3+などであり、An-はOH-、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、CO3
2-、SO4
2-などであり、固定された組成物状態で0.2≦x≦0.33であり、nは1又は2であり、mは通常0.5~4である。
【0033】
LDH構造の層間領域にある陰イオンは簡単に置き換えることができるため、ハロゲンイオンからDNAのような負電荷を持つ生体高分子だけでなく、コラーゲントリペプチドのようなバイオ物質及びAg、Au、Ptなどを含有する固体ナノ粒子もインターカレーション(intercalation)することができる。LDHの基本的な層状構造と、利用可能な金属陽イオン及び陰イオンの例を
図1に示す。LDHの製造は、熱水法、対流循環法、超音波法など、当分野で知られている方法に従って行うことができる。
【0034】
本発明において、LDHの焼成(calcination)は、当分野で知られている方法に従って行うことができ、それに特別な制限はない。本発明による一実施形態では、LDHの焼成は、LDHを炉内で約400~1,200℃の温度、より好ましくは約500~1,100℃の温度で、約6~16時間、より好ましくは約8~14時間、加熱することによって行う。
【0035】
本発明による一実施形態では、LDHの金属水酸化物の表面は、様々な材料を用いて表面の官能化及び表面の改質が可能である。例えば、LDHの表面は、ドデシル硫酸、ステアレートなどの材料で改質することができる。
【0036】
本発明の成形用化粧料組成物は、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは1~18重量%、さらに好ましくは2~15重量%のポリマーを含む。本発明の成形用化粧料組成物において、ポリマーの量が0.5重量%未満又は20重量%を超える場合、化粧料組成物の成形において問題となる可能性がある。
【0037】
本発明において、ポリマーは、例えば、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、ナノセルロース、デンプン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリル酸、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリグリコリド(PGA)、キサンタンガム、アカシアガム(アラビアガム)、グアーガム、カラギーナンガム、ゲランガム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸、プルラン、アルギン酸ナトリウム、キトサン、寒天、ゼラチン及びコラーゲンから選ばれる一つ以上を選ぶことができるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の成形用化粧料組成物は、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~55重量%、さらに好ましくは20~50重量%の溶媒を含む。本発明の成形用化粧料組成物において、溶媒の量が10重量%未満又は60重量%を超える倍、化粧料組成物の成形において問題となる可能性がある。
【0039】
本発明において、溶媒の例には、水、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の成形用化粧料組成物は、必要に応じて、安定化剤、酸化防止剤、潤滑剤などの成分をさらに含むことができる。
【0041】
本発明の別の態様によれば、i)層状複水酸化物を400~1,200℃の温度で6~16時間焼成し、冷却する工程;及びii)有効成分及びポリマーを溶媒に溶解し、前記焼成層状複水酸化物と混合して撹拌する工程;を含む成形用化粧料組成物の製造方法が提供される。
【0042】
前記製造方法の工程(i)において、層状複水酸化物の組成は前記と同じであり、焼成は、500~1,100℃の温度で8~14時間行うことが好ましい。
【0043】
前記製造方法の工程(ii)において、有効成分による特別な制限はなく、例えば、保湿剤、美白剤、抗シワ剤、紫外線遮断剤、育毛剤、ビタミン又はその誘導体、アミノ酸又はペプチド、抗炎症剤、ニキビ治療剤、殺菌剤、女性ホルモン剤、角質溶解剤及び天産物からなる群から選ばれる一つ以上であってもよいが、これらに限定されない。
【0044】
前記製造方法の工程(ii)において、ポリマーは、例えば、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、ナノセルロース、デンプン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、キサンタンガム、アカシアガム、グアーガム、カラギーナンガム、ゲランガム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸、プルラン、アルギン酸ナトリウム、キトサン、寒天、ゼラチン及びコラーゲンからなる群から選ばれる一つ以上であってもよいが、これらに限定されない。
【0045】
前記製造方法の工程(ii)において、溶媒は、例えば、水、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
前記製造方法の工程(ii)において、有効成分、ポリマー、溶媒及び焼成層状複水酸化物の重量比は、好ましくは、それぞれ0.01~50重量%、0.5~20重量%、10~60重量%及び10~60重量%、より好ましくは、それぞれ0.1~48重量%、1~18重量%、15~55重量%及び15~55重量%、さらに好ましくは、それぞれ1~45重量%、2~15重量%、20~50重量%及び20~50重量%である。
【0047】
本発明による成形用化粧料組成物の成形は、当分野で知られている方法に従って行い、様々な形状(丸いボール、立方体、貝殻形状、花形状、星形状、ハート形状、アルファベット形状、一般的な板形状など)を製造することができ、特別な制限はない。例えば、本発明による成形用化粧料組成物を、投入部を介して所望の形状の型にいれ、圧縮し、分離、乾燥することにより、様々な形状を作製することができる。
【0048】
また、本発明による成形用化粧料組成物は、その有効成分に応じて、クレンジング(cleansing)、発泡入浴剤、エッセンス、ボディウォッシュなどの様々な剤形の化粧品を提供することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の成形用化粧料組成物は、有効成分を安定した方法で皮膚内に効率よく送達するだけでなく、成形性に優れた様々な形状を有し、保管や携帯が便利な美的に優れた化粧品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】層状複水酸化物(LDH)の層状構造と組成を示した模式図である。
【
図2】実施例11において、本発明の成形用化粧料組成物を様々な形状に成形した後に撮影した写真である。
【
図3】比較例の成形用化粧料組成物を成形した後に撮影した写真である。
【
図4】実施例1で製造された組成物のゼータ電位をPhotal、ELS-Zを使用して測定した結果である。
【
図5】実施例1で製造された組成物の安定度をタービスキャンで測定した結果である。
【
図6】実施例1で製造された組成物の低温電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を以下の実施例でより詳細に説明する。しかし、本発明の保護範囲は実施例に限定されないことを理解しなければならない。
【0052】
製造例1:ステアリン酸水酸化(AL/MG)(aluminum/magnesium hydroxide stearate)の合成
市販の製品をTaesan Chemical社(韓国)から購入して使用した。
【0053】
製造例2:ZnAl-層状複水酸化物(ZnAl-LDH)の合成
炭酸イオンを含有するZnAl-LDHを、以下の共沈法(coprecipitation)により合成した。0.2MのZn(NO3)2と0.1MのAl(NO3)3の混合溶液に、最終pHが7.0程度になるまで1MのNa2CO3溶液をゆっくり加えた。混合溶液を約70℃のオーブンに1日保管し、ろ過し、蒸溜水とエタノールで洗浄し、真空ポンプを使用して乾燥した。合成されたc-LDHの構造式は次の通りである:
[Zn4Al2(OH)12]CO3・xH2O
【0054】
製造例3:MgAl-層状複水酸化物(MgAl-LDH)の合成
炭酸イオンを含有するMgAl-LDHを以下の共沈法(coprecipitation)により合成した。0.2MのMg(NO3)2と0.1MのAl(NO3)3の混合溶液に最終pHが7.0程度になるまで1MのNa2CO3溶液をゆっくり加えた。混合溶液を約70℃のオーブンに1日保管し、ろ過し、蒸溜水とエタノールで洗浄し、真空ポンプを使用して乾燥した。合成されたc-LDHの構造式は次の通りである:
[Mg4Al2(OH)12]CO3・xH2O
【0055】
製造例4:ケイ酸MG/AL(aluminum/magnesium silicate)の合成
市販の製品をBYK-Chemie GmbH(ドイツ)から購入して使用した。
【0056】
実施例1:ビタミン含有成形用組成物の製造
下記表1の構成組成によれば、製造例1で得られたステアリン酸水酸化(AL/MG)を炉内で1,000℃の温度で12時間加熱し、次に20℃に冷却した。有効成分としてのレチノールとポリマーとしてのキトサンを水に溶解した後、焼成したステアリン酸水酸化(AL/MG)を混合し、20分間ミキサーで撹拌して、成形用の組成物を製造した。
【表1】
【0057】
実施例2:ペプチド含有成形用組成物の製造
下記表2の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表2】
【0058】
実施例3:美白剤含有成形用組成物の製造
下記表3の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表3】
【0059】
実施例4:天然抽出物含有成形用組成物の製造
下記表4の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表4】
【0060】
実施例5:クレンジング剤形の成形用組成物の製造1
下記表5の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表5】
【0061】
実施例6:クレンジング剤形の成形用組成物の製造2
下記表6の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表6】
【0062】
実施例7:クレンジング剤形の成形用組成物の製造3
下記表7の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表7】
【0063】
実施例8:発泡入浴剤の剤形の成形用組成物の製造1
下記表8の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表8】
【0064】
実施例9:発泡入浴剤の剤形の成形用組成物の製造2
下記表9の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表9】
【0065】
実施例10:エッセンス剤形の成形用組成物の製造
下記表10の成分及び組成を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって成形用組成物を製造した。
【表10】
【0066】
実施例11:成形用組成物の成形
実施例1~10で得られた成形用組成物を様々な形状の型に入れて成形した後、50~60℃の乾燥オーブンで6時間乾燥した(
図2)。
【0067】
比較例
焼成工程を経ていない層状複水酸化物を使用したことを除いては、実施例1に記載したのと同じ方法によって、ビタミン含有成形用組成物を製造した後、成形した(
図3)。
【0068】
実験例1:ゼータ電位の測定
実施例1で製造された組成物のゼータ電位をPhotal、ELS-Zを使用して測定した結果、-52.58mVであることが分かった(
図4)。
【0069】
実験例2:安定度の測定
実施例1で製造された組成物の安定度測定のためにタービスキャン(条件:40℃、6時間、70スキャン)を使用して測定した。その結果、△T、△BS変化が少ないため、組成物の安定度が確認された(
図5)。
【0070】
実験例3:低温電子顕微鏡撮影
実施例1で製造された組成物の写真は、低温電子顕微鏡(JEM1010、JEOL社製、日本)を使用して撮影した(
図6)。
【0071】
実験例4:経皮吸収促進効果の実験
人工皮膚であるStrat-M(登録商標)メンブレン(経皮拡散試験モデル)をFranz型拡散セル(経皮半自動拡散セル、LOGAN Instruments社、USA)に取り付けた。Franz型拡散セルの受容体セル(5mL)に50mMリン酸塩緩衝液(pH7.4、0.1MのNaCl)を加えた。拡散セルを32℃、600rpmで混合、分散し、実施例1の組成物50μLをドナーセルに加えた。所定の時間に応じて吸収・拡散を行い、吸収・拡散を行った皮膚の面積は0.64cm2であった。有効成分の吸収と拡散が終了した後、吸収されずに皮膚に残った残留物を、乾燥したkimwipes(登録商標)又は10mLのエタノールで洗浄した。有効成分が吸収・拡散した皮膚をチップ式ホモジナイザーでホモジナイズし、皮膚内に吸収されたレチノールを4mLのジクロロメタンで抽出した。次に、抽出液を0.45μmナイロンメンブレンフィルターでろ過した。レチノールの含有量は、以下の条件でHPLCにより測定した。その結果、経皮吸収量は0.364μgであるため、効率よく皮膚内に送達できることが分かった。
-カラム:C18(4.6×200mm、5μm)
-移動相:メタノール:ヘキサン=2:1
-流速:0.8mL/分
-検出器:UV275nm
【国際調査報告】