(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】積層造形のための3Dモデルの層厚を決定する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20220620BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20220620BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20220620BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220620BHJP
【FI】
B29C64/386
G06T19/00 A
B33Y50/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541455
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2020061486
(87)【国際公開番号】W WO2021018425
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シュタール、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バイス、ダニエル
【テーマコード(参考)】
4F213
5B050
【Fターム(参考)】
4F213AR12
4F213AR13
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL12
4F213WL85
5B050BA09
5B050BA13
5B050CA07
5B050DA10
5B050EA07
5B050EA15
5B050EA16
5B050EA18
5B050EA28
5B050FA02
5B050FA09
(57)【要約】
本発明は積層造形装置により生成するための3次元モデル(1)層厚(t)を決定する方法に関し、方法は、適応スライシングアルゴリズムにしたがって層厚(t)を決定するステップであって、層(2)の厚さは、水平方向(x;y)から層(2)を少なくとも部分的に囲む3Dモデル(1)の表面要素(s)の法線ベクトル(n)の傾きに基づいて、関係を通して計算される、適応スライシングアルゴリズムにしたがって前記層厚(t)を決定するステップを含み、方法は、さらに、3Dモデル(1)の少なくとも1つの表面要素(s)に、決定ステップにおいて前記少なくとも1つの表面要素(s)の法線ベクトル(n)の傾きに対する関係をそれぞれ異なって変更する1つ以上の選択可能な異なる精度要件から精度要件を選択的に課すステップを含むことによって特徴付けられ、前記1つ以上の選択可能な異なる精度要件は、変更された関係を通して、層厚(t)が、変更されていない関係を通して決定された層厚(t)よりも小さい値または大きい値を得ることを可能にする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形装置により対応する3次元物体(1)を生成するための3次元モデル(1)の層厚(t)を決定する方法であって、
前記方法は、
適応スライシングアルゴリズムに従って前記層厚(t)を決定するステップであって、層(2)の厚さは、基準精度要件(R)を規定する関係を通して計算され、水平方向(x;y)から前記層(2)を少なくとも部分的に囲む3Dモデル(1)の表面要素(s)の法線ベクトル(n)の傾きに基づいている、適応スライシングアルゴリズムに従って前記層厚(t)を決定するステップを含み、
前記方法は、さらに、
前記3Dモデル(1)の少なくとも1つの表面要素(s)に、決定ステップにおいて前記少なくとも1つの表面要素(s)の前記法線ベクトル(n)の傾きに対する関係をそれぞれ異なって変更する1つ以上の選択可能な異なる精度要件から精度要件を選択的に課すステップを含み、
前記1つ以上の選択可能な異なる精度要件は、
前記変更された関係を通して、前記層厚(t)が、前記変更されていない関係を通して決定された前記層厚(t)よりも小さい値を得ることを可能にする高精度要件と、
変更された関係を通して、前記層厚(t)が、前記変更されていない関係を通して決定された前記層厚(t)よりも大きい値を得ることを可能にする低精度要件(L)とのうちの少なくとも1つを含み、
前記基準精度要件(R)は、前記低精度要件(L)と前記高精度要件との間であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記関係を通して同じ層(2)に対応する表面要素(s)に対して計算され、前記1つ以上の異なって変更された関係を通して課された前記層厚(t)の中で、最小値が前記層厚(t)として決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上の精度要件が選択的に課されてもよい前記3Dモデル(1)の1つ以上の表面要素(s)を選択するステップをさらに備えることによって特徴付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上の精度要件が課されてはならない前記3Dモデル(1)の1つ以上の表面要素(s)を選択するステップをさらに備えることによって特徴付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記3Dモデル(1)をディスプレイ上でユーザに表示するステップと、
前記ユーザが、前記3Dモデル(1)の前記ディスプレイ上に、1つ以上の選択可能な異なる精度要件のうちの精度要件が課されるべき前記表面要素(s)を選択的にマークすることを可能にするステップとをさらに備えることによって特徴付けられる、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記決定された層厚(t)が、最大値および最小値によって制約されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記選択的に課すステップは、製造される前記3Dモデル(1)の特徴および/または積層造形プロセスの特徴にさらに基づくことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法の3Dモデル(1)に対応する3次元物体(1)であって、
前記3次元物体(1)は、単一部品の歯科用ドリルテンプレートであり、前記ドリルテンプレートの頂部において、前記テンプレートが歯の上に載る部分またはドリルが案内される部分とは対照的に、課される精度要件は低精度要件(L)であり、前記テンプレートが歯の上に載る部分またはドリルが案内される部分において、課される精度要件は高精度要件であることを特徴とする、3次元物体(1)。
【請求項9】
コンピュータベースシステムに、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのコードを含む、コンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムを含む、コンピュータ読取可能記憶手段。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように適合されたコンピュータベースシステム。
【請求項12】
前記3Dモデル(1)をユーザに表示するためのディスプレイと、
前記ユーザが、前記3Dモデル(1)の前記ディスプレイ上で前記表面要素(s)を選択的にマークすることを可能にするための入力手段とをさらに含む、請求項11に記載のコンピュータベースシステム。
【請求項13】
前記コンピュータベースシステムは、前記3次元物体(1)を生成するための積層造形装置をさらに備えることを特徴とする、請求項11または12に記載のコンピュータベースシステム。
【請求項14】
前記積層造形装置によって生成された3D物体(1)を後処理するための後処理装置をさらに備えることを特徴とする、請求項13に記載のコンピュータベースシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置を有する積層造形システムに関する。本発明は、より詳細には、積層造形装置を用いて生成するための3次元モデルの層厚を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形では、3次元モデルは、液体印刷媒体、すなわち、UV放射の影響下で選択的に硬化される液体光硬化性樹脂の光ベースの硬化を通して層ごとに印刷される。SL(ステレオリソグラフィ)またはDLP(デジタル光処理)などの積層造形の一般的に知られているバリエーションでは、3D物体は、好ましくは、プラットフォームによって液体印刷媒体から逆さまに引き出される。印刷プロセスの期間は、他の要因の中でも特に、印刷される層の数に依存する。したがって、少数の厚い層で印刷するよりも3Dモデルを多くの薄い層で印刷する方が、時間がかかる。3Dモデルが印刷される層厚は、印刷方向(以下、z方向)における印刷プロセスの解像度を規定する。したがって、詳細な印刷およびz方向の高解像度のためには、印刷速度を犠牲にして薄い層を選ぶ必要がある。しかしながら、印刷される3Dモデルのジオメトリおよび印刷ボリュームにおけるその向きに応じて、z位置ごとに同じ解像度、すなわち層厚は必要ではない。法線ベクトルがz軸に垂直である表面要素は、法線ベクトルがz軸に平行である表面要素よりも、層厚が大きくても所望のジオメトリからの偏差が小さい。比較のために、これを球体の例を使用して
図1および
図2に示す。「ステップ効果」、したがって所望のジオメトリからの印刷された3Dモデルのずれは、中央部(z軸に対して垂直な面法線)よりも球体の上部および下部(z軸に対して平行な面法線)において、はるかに顕著である。上部および下部では、所望のジオメトリを正確にマッピングするために薄い層が必要であるが、中央部では、厚い層であっても、所望のジオメトリの良好な再現が可能である。
【0003】
いわゆる「適応スライス」法により、層厚の最大値が要求される再現精度(以下、標準または基準精度要件)に対して設定されるように、印刷される3Dモデルのジオメトリに基づいて局所的な層厚が計算され、したがって印刷プロセスの期間が最小化される。このような層の厚さの選択を
図3に示す。ステップ効果は、
図3に示されるようにz位置にかかわらず同じである。適応スライス法では、層の厚さが、水平方向から層を少なくとも部分的に囲む3Dモデルの表面要素の法線ベクトルの傾きに基づく関係を通して層の厚さが計算される適応スライスアルゴリズムにしたがって決定される。そのような表面要素の最小傾斜を有する法線ベクトルがz軸に垂直(または平行)であるとき、計算された層厚は最大(または最小)値を有する。回転非対称モデルでは、所定のz間隔に対して、法線がz軸と最小の角度を有する表面要素が常にそれぞれの層厚を支配する。さらに、計算された層厚は最小値および最大値によって制限される。この周知の適応スライス法により、標準的な精度要件などの一定の印刷精度を3Dモデル全体に対して達成することができる。
【0004】
Journal of Computer-Aided Design 第107巻(2019)89-101頁において、効率的なプロファイル解析に基づく適応スライスがH.Mao他によって開示されている。
【0005】
適応スライス法により、層の数をさらに減少させ、したがって印刷期間をさらに減少させることは不可能である。したがって、印刷期間を許容しなければならず、そうでなければ、より低い印刷品質を許容しなければならない。
【0006】
多くの歯科用3D物体では、3D物体の表面要素ごとに同じ印刷精度が要求されるわけではない。そのような3D物体の例は、ドリルテンプレート(drilling template)である。ドリルテンプレートの頂部では、テンプレートが歯の上に載っている部分またはドリルが案内される部分とは対照的に、特別な精度は必要ない。しかしながら、適応スライス法は、全体的な印刷品質を低下させることなく印刷時間のさらなる短縮を可能にするために、そのような歯科3Dモデルに柔軟に適用することができない。
【0007】
US2014/0203463 A1は、剛性、適合、および保持の同時目標を達成するために、異なる機械的特性を有する材料の複数の層を用いるドリルガイドを開示している。例えば、ドリルガイドを手術部位に安全かつ正確に適合させるために、剛性の外部シェルと軟質の内部とが一緒に使用される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の欠点を柔軟な方法で克服し、積層造形装置で生成するための3次元モデルの層厚を決定する方法を提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1に規定する方法によって達成される。従属請求項の主題事項は、さらなる発展に関する。
【0010】
本発明は、積層造形装置で生成するための3次元モデルの層厚を決定する方法(以下、修正適応スライス法)を提供する。方法は、層の厚さが、水平方向から層を少なくとも部分的に囲む3Dモデルの表面要素の法線ベクトルの傾きに基づく関係を通して計算される、適応スライシングアルゴリズムにしたがって層厚を決定するステップを含む。方法は、3Dモデルの少なくとも1つの表面要素に、決定ステップにおいて、前記少なくとも1つの表面要素の法線ベクトルの傾きに対する関係をそれぞれ異なって変更する1つ以上の選択可能な異なる精度要件から精度要件を選択的に課すステップをさらに含むことによって特徴付けられる。
【0011】
本発明の主な有利な効果は、3D印刷における既存の方法、すなわち上述の適応スライスの方法が、表面要素に対する精度要件を選択的に課すことをさらに可能にすることによって、印刷期間に関する印刷プロセスの改善を達成するようにさらに修正されることである。したがって、高精度要件を有する表面要素は比較的微細に印刷することができる一方で、低精度要件を有する表面要素は比較的粗く印刷することができる。それによって、例えば、ある表面要素に対する低精度要件を使用して、修正された適応スライス法において追加の層を節約することができ、したがって、印刷プロセスをさらに加速することができる。さらに、ある表面要素に対する高精度要件を使用して追加の層を印刷することができ、したがって、印刷プロセスを比較的長くすることなく、印刷精度を局所的にさらに高めることができる。
【0012】
本発明にしたがうと、選択可能な異なる精度要件は、高精度要件および低精度要件のうちの少なくとも1つを含むことができる。高精度要件は、変更された関係を通して、層厚が、基準精度要件に対応する変更されていない関係を通して決定される層厚よりも小さい値を得ることを可能にする。これにより、局所的に印刷精度を高めることができ、したがって、周知の適応スライス法のように3Dモデル全体に高精度要求を適用することととは対照的に、印刷期間の長期化を比較的少なくすることができる。低精度要件は、変更された関係を通して、層厚が、基準精度要件に対応する変更されていない関係を通して決定された層厚よりも大きい値を得ることを可能にする。これにより、局所的に印刷精度を低下させることができ、印刷期間をさらに短縮することができる。基準精度要件は、低精度要件と高精度要件との間にある。
【0013】
本発明にしたがうと、前記関係を通して、かつ1つ以上の異なって変更された関係を通して課された、同じ層に対応する表面要素について計算された層厚の中で、最小値が層厚として決定されるように、最も高い印刷精度を有する精度要件が層厚を支配することができる。
【0014】
本発明にしたがうと、選択的に課すステップは、製造される3Dモデルの特徴および/または製造プロセスの特徴に基づいて、ソフトウェアアルゴリズムを通して自動的に実行されてもよい。例えば、3Dモデルがドリルテンプレートである場合、ドリルテンプレートの頂部では、テンプレートが歯の上に載る部分またはドリルが案内される部分とは対照的に、精度要件は低く課されることができる。また、テンプレートが歯の上に載っている部分またはドリルが案内される部分では、精度要件が高く課されるかもしれない。ドリルテンプレートは、好ましくは、層ごとの印刷プロセスにおいて同じ光硬化性樹脂を使用することによって、単一部品として印刷される。あるいは、ソフトウェアアルゴリズムは、選択的に課すステップが手動で実行されることを可能にしてもよい。手動で選択的に課すステップでは、ユーザは、1つ以上の選択可能な異なる精度要件のうちの精度要件が課されるべき表面要素を3Dモデルのディスプレイ上に選択的にマークすることができる。マーキングは、キーボードまたはマウスおよびこれらに類するもののような入力手段を介して行うことができる。
【0015】
本発明にしたがうと、選択的に課すステップにおいて精度要件を選択的に課すことは、例えば、望ましくない印刷精度または印刷期間の延長を防止するために、様々な代替的な方法で更に制限することができる。第1の代替では、1つ以上の精度要件が選択的に課されてもよい3Dモデルの1つ以上の表面要素が選択されてもよい。代替的に、1つ以上の精度要件が課されてはならない3Dモデルの1つ以上の表面要素が選択されてもよい。
【0016】
本発明にしたがうと、決定される層厚は、最大値および最小値によって制約される。最大値および最小値は、ソフトウェアアルゴリズムにおいて予め設定されてもよく、または標準若しくは要件に対応してユーザによって手動で設定されてもよい。最大値および最小値の異なる対は、ユーザによって選択的に設定されてもよい。
【0017】
本発明は、コードを有するコンピュータプログラム、すなわち、コンピュータベースシステムに上記方法を実行させるためのソフトウェアアルゴリズムも提供する。コンピュータプログラムは、コンピュータベースシステムとは別個にまたは一緒に提供されるコンピュータ読取可能記憶手段に記憶されてもよい。コンピュータベースシステムは、3Dモデルをユーザに表示するためのディスプレイと、ユーザが、3Dモデルのディスプレイ上に表面要素を選択的にマークすること、またはソフトウェアアルゴリズムに関する設定情報およびこれに類するもののような他の関連情報を入力することを可能にするための入力手段とを有することができる。コンピュータベースシステムは、上記の方法を実行し、3Dモデルに対応する3D物体を生成するためのコンピュータベースの積層造形システムまたは装置として提供されてもよい。コンピュータベースシステムには、コンピュータベースの積層造形装置で生成された3D物体を後処理(洗浄、乾燥、硬化)するための後処理装置がさらに設けられてもよい。
【0018】
後続の説明では、例示的な実施形態を使用し、図面を参照することによって、本発明のさらなる態様および有利な効果をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、比較例にしたがう薄い層を有する3次元球状モデルである。
【
図2】
図2は、別の比較例にしたがう厚い層を有する別の3次元球状モデルである。
【
図3】
図3は、従来技術から知られている適応スライシングアルゴリズムを通して単独で決定された層を有する別の3次元球面モデルである。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態にしたがう修正された適応スライシングアルゴリズムを通して決定された層を有する別の3次元球状モデルである。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態にしたがう修正された適応スライシングアルゴリズムを通して決定された層を有する別の3次元球状モデルである。
【0020】
図面に示される参照番号は、以下に列挙される要素を示し、例示的な実施形態の後続する説明において参照される。
1.3Dモデル(物体)
2.層
t:層厚
n:法線ベクトル
S:表面要素
x,y:水平方向
L:低精度要件
R:基準精度要件
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、積層造形装置で生成するための3次元モデル(1)の層厚(t)を決定する方法を提供する。方法は、層(2)の厚さが、水平方向(x;y)から層(2)を少なくとも部分的に囲む3Dモデル(1)の表面要素(s)の法線ベクトル(n)の傾きに基づく関係を通して計算される、適応スライシングアルゴリズムにしたがって層厚(t)を決定するステップを含む。
図3は、先行技術においてよく知られている前記適応スライシングアルゴリズムにしたがって層厚(t)が決定される3Dモデル(1)の比較例としての球体を示す。
【0022】
本発明の方法は、3Dモデル(1)の少なくとも1つの表面要素(s)に、決定ステップにおいて前記少なくとも1つの表面要素(s)の法線ベクトル(n)の傾きに対する前記関係をそれぞれ異なって変更する1つ以上の選択可能な異なる精度要件の中から精度要件を選択的に課すステップをさらに含む。
図4は、本発明の実施形態にしたがって層厚(t)が決定される3Dモデル(1)の例としての球体を示す。この実施形態では、1つ以上の選択可能な異なる精度要件は、少なくとも低精度要件(L)を含み、これは、変更された関係を通して、層厚(t)が、変更されていない関係を通して決定された層厚(t)よりも大きい値を得ることを可能にする。
図4に示されるように、低精度要件(L)が選択され、太い円弧でマークされた上半球全体に課される。この最も単純な実施形態では、層厚(t)の決定において、低精度要件(L)を有する表面要素(s)は、それらの法線ベクトル(n)が全てz軸に垂直であるかのように処理され、したがって、決定ステップにおいて、前記表面要素(s)の法線ベクトル(n)の傾きに関する前記関係を変更する。それによって、これらの表面要素(s)は、
図3に示されるように、同じ層厚(t)をもたらさず、適応スライシングアルゴリズムにしたがって実際のジオメトリに基づいて変更されていない関係を通して計算される。
図4に示されるように、太い円弧でマークされた低精度要件(L)を有する上半球では、全ての層厚(t)が、
図3の3D球の比較例における対応する層(2)の最大値よりも大きい最大値を得る一方で、下半球では、適応スライシングアルゴリズムが通常通り、すなわち基準精度要件(R)で適用される。
【0023】
図5は、本発明の実施形態にしたがって層厚(t)が決定される3Dモデル(1)の例として別の球体を示す。
図5に示されるように、低精度要求(L)は、選択され、太い円弧でマークされた左上半球全体にのみ課され、したがって、低精度要求(L)を有さないがより高い基準精度要求(R)を有する右上半球によって支配される。この実施形態では、前記関係を通して同じ層(2)に対応する表面要素(s)について計算され、1つ以上の異なって変更された関係を通して課された層厚(t)の中で、最小値が層厚(t)として決定される。したがって、左上半球に課される低い精度要件(L)にもかかわらず、これらの表面要素(s)は、
図3に示されるように同じ層厚(t)をもたらす。したがって、適応スライシングアルゴリズムは、通常通り、すなわち基準精度要件(R)で適用される。
【0024】
本発明は、低精度要件(L)に限定されない。別の実施形態(図示せず)では、1つ以上の選択可能な異なる精度要件は、少なくとも、変更された関係を通して、層厚(t)が、基準精度要件(R)に対応する変更されていない関係を通して決定された層厚(t)よりも小さい値を得ることを可能にする高精度要件を含む。
【0025】
基準精度要件(R)は、低精度要件(L)と高精度要件との間にある。
【0026】
別の実施形態では、方法は、3Dモデル(1)をディスプレイ上でユーザに表示するステップと、1つ以上の選択可能な異なる精度要件からの精度要件が課される表面要素(s)を3Dモデル(1)のディスプレイ上でユーザが選択的にマークすることを可能にするステップとを含む。
【0027】
別の実施形態では、方法は、1つ以上の精度要件が選択的に課され得る3Dモデル(1)の1つ以上の表面要素(s)を選択するステップを含む。代替実施形態では、方法は、1つ以上の精度要件が課されてはならない3Dモデル(1)の1つ以上の表面要素(s)を選択するステップを含む。代替実施形態のいずれかを通して、精度要件を選択的に課すことを制限することができる。
【0028】
別の実施形態では、決定された層厚(t)は、ユーザによって事前設定または調整可能である最大値および最小値によって制約される。
【0029】
図1から
図3にそれぞれ示す3D球体の比較例も、本発明の方法によって得ることができる。例えば、
図1の3D球体は、表面全体、すなわち全ての表面要素(s)に高精度要件を課すことを通して得ることができる。これにより、高精度要件を有するすべての表面要素(s)は、それらの法線ベクトル(n)がすべてz軸に平行であるかのように扱われ、したがって、すべての層厚(t)は、
図3の3D球体の比較例における対応する層(2)の最小値以下である最小値を得る。
【0030】
例えば、
図2の3D球体は、低精度要件(L)を表面全体、すなわち全ての表面要素(s)に課すことを通して得ることができる。それによって、低精度要件(L)を有するすべての表面要素(s)は、それらの法線ベクトル(n)がすべてz軸に対して垂直であるかのように扱われ、したがって、すべての層厚(t)は、
図3の3D球体の比較例における対応する層(2)の最大値以上の最大値を得る。
【0031】
例えば、
図3の3D球体は、異なる高/低精度要件のいずれも表面全体に課さないこと通して得ることができる。これにより、全ての表面要素(s)が実際のジオメトリにしたがって処理され、したがって、適応スライシングアルゴリズムが通常通り、即ち、基準精度要件(R)で適用される。
【国際調査報告】