(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】被加工物キャリア装置、被加工物のコーティング方法及び被加工物
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20220620BHJP
C23C 8/24 20060101ALI20220620BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C23C14/24 T
C23C8/24
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560899
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2020060880
(87)【国際公開番号】W WO2020212582
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102019110158.1
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517137767
【氏名又は名称】エリコン サーフェイス ソリューションズ アーゲー,プフェフィコーン
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Surface Solutions AG,Pfaffikon
【住所又は居所原語表記】SCHWEIZ Pfaffikon CH-8808 Churerstrasse 120
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】メイラー、 ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】エバール、 ヒューバート
(72)【発明者】
【氏名】ネフ、 ピーター
【テーマコード(参考)】
4F100
4K028
4K029
【Fターム(参考)】
4F100AA12B
4F100AA15B
4F100AA37C
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
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4F100DA16A
4F100DA20A
4F100EH66B
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4F100GB51
4K028AA02
4K028AC03
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4K029BA55
4K029BA58
4K029BB02
4K029BD00
4K029CA01
4K029DB00
(57)【要約】
本発明は、被加工物(15)を保持及び移動させる被加工物キャリア装置(1)に関し、この被加工物キャリア装置(1)は、軸(3)を中心に回転するようにメインフレーム(4)に取り付けられた被加工物(15)を収容する被加工物キャリア(2)と、被加工物キャリア(2)に対して同様に軸(3)を中心に回転可能な駆動部と、駆動軸を中心にリング状に被加工物キャリア(2)上に配置され、かつ駆動軸から離間したホルダ軸(6)を中心に回転するように被加工物キャリア(2)上に取り付けられた複数の被加工物ホルダ(5)とを備える。ホルダ軸(6)は、被加工物ホルダ(5)が円錐状のクラウン構成(7)を形成するように軸(3)に対して延びる。さらに、本発明は、本発明による被加工物キャリア装置(1)を用いたコーティング方法及びコーティング方法によりコーティングされた被加工物又は基材(15)(例えば、ピン、射出ペン、ボール、ボールピン、ピストン、ノズルニードル等)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(15)を保持しかつ移動させるための被加工物キャリア装置(1)であって、
被加工物(15)を収容するための被加工物キャリア(2)であって、軸(3)を中心として回転するようにメインフレーム(4)に取り付けられる被加工物キャリア(2)と、
前記被加工物キャリア(2)に対して前記軸(3)を中心として同様に回転可能な駆動部と、
前記被加工物キャリア(2)上に前記駆動軸を中心としてリング状に配置され、前記軸(3)から離間したホルダ軸(6)を中心に回転するように前記被加工物キャリア(2)に取り付けられる複数の被加工物ホルダ(5)と
を備え、
前記被加工物ホルダ(5)内に配置された前記被加工物(15)及び/又は前記被加工物ホルダ(5)が円錐状のクラウン構成(7)を形成するように、前記ホルダ軸(6)は前記軸(3)に対して延びており、
前記駆動部(1a)は、円周上に配置される複数のリンクスロット(9)を有するクランクディスク(8)を備え、その各々の中に前記被加工物ホルダ(5)の駆動部(10)が延びており、それを介して動作時に前記被加工物ホルダ(5)が回転運動させられる、被加工物キャリア装置(1)。
【請求項2】
前記軸(3)と前記ホルダ軸(6)との角度は、5°~45°、15°~35°又は25°の角度である、請求項1に記載の被加工物キャリア装置(1)。
【請求項3】
前記リンクスロット(9)は、前記軸(3)に対して半径方向に配向された細長い楕円孔(9)として設計される、請求項1又は2に記載の被加工物キャリア装置(1)。
【請求項4】
前記クランクディスク(8)に対して回転可能な駆動カム(12)が、前記クランクディスク(8)の駆動開口(11)に円運動するように係合し、動作時に前記クランクディスク(8)を前記軸(3)に対して垂直に移動させることで、前記リンクスロット(9)を介して前記被加工物ホルダ(5)の回転運動を行わせる、請求項1~3のいずれか1項に記載の被加工物キャリア装置(1)。
【請求項5】
前記駆動カム(12)は、前記軸(3)に対して偏心して回転可能に取り付けられ、動作時に前記駆動開口(11)の端部において転動する駆動ローラ(14)を介して駆動作用を行う、請求項4に記載の被加工物キャリア装置(1)。
【請求項6】
前記被加工物ホルダ(5)の各々は、クランク状に設計され、2つの同軸に延びる端部の間に延びるクランク部(10)を備えており、その一方が前記被加工物キャリア(2)の軸受点に軸受端部(20)として回動可能に取り付けられ、他方が前記被加工物キャリア(2)の軸受開口に収容端部(21)として回動可能に配置される、請求項1~5のいずれか1項に記載の被加工物キャリア装置(1)。
【請求項7】
前記軸受点は、前記被加工物キャリア(2)の底部ディスク(25)に配置される、請求項6に記載の被加工物キャリア装置(1)。
【請求項8】
前記軸受端部(20)は、前記収容端部(21)に配置される被加工物支持スリーブ(22)を介して取り付けられる、請求項6又は7に記載の被加工物キャリア装置(1)。
【請求項9】
1つの被加工物キャリア(2)の前記被加工物ホルダ(5)の前記円錐状のクラウン構成(7)が、さらなる被加工物ホルダ(5)の底部ディスク(25)を抱持するように、複数の被加工物キャリア(2)が互いに配置され、それによって前記さらなる被加工物ホルダ(5)は、前記被加工物ホルダ(5)に配置される被加工物(15)によって形成される被加工物クラウン内に大部分が配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の被加工物キャリア装置(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の被加工物キャリア装置(1)を有する、コーティング構成(17)。
【請求項11】
基材(15)をコーティングするための方法であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載の被加工物キャリア装置(1)を提供するステップと、
被加工物ホルダ(5)に基材(15)を配置するステップと、
コーティング構成(17)において前記被加工物ホルダ(5)を移動及び回転させるステップと、
前記基材(15)にコーティング(154)を堆積させるステップと、
コーティングされた基材(15)を取り出すステップと
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって塗布されるコーティング(154)を有する基材(15)であって、平坦な、ルーフ形状又はドーム形状、球状及び/又は円錐形状を有する先端領域(151)を有する、基材(15)。
【請求項13】
前記コーティング(154)は、金属窒化物及び/又は金属炭化物を含む第1の層を少なくとも有し、前記コーティングは、好ましくは、第2の層を少なくとも有し、前記第2の層は、好ましくは、ta-C及び/又はa-C:H及び/又はa-C:H:Me及び/又はa-C:H:X及び/又はa-C:H:Me:X材料を含む非晶質炭素層であり、Meは、好ましくは、タングステン又は銅であるか又はそれを含み、Xは、好ましくは、シリコン又は窒素又は酸素であるかそれを含み、a:C:H:Meは、Meをドープした非晶質炭素層材料を示し、a:C:H:Xは、Xをドープした非晶質炭素層材料を示し、a:C:H:Me:Xは、Me及びXをドープした非晶質炭素層材料を示す、請求項12に記載の基材(15)。
【請求項14】
前記コーティング(154)は、第1の層及び第2の層を含み、前記第1の層は、好ましくは、CrN及び/又はCrCを含み、前記第2の層は、好ましくは、ta-C及び/又はa-C:H及び/又はa-C:H:Me及び/又はa-C:H:X及び/又はa-C:H:Me:Xを含む、請求項13に記載の基材(15)。
【請求項15】
前記コーティング(154)は、第1の層及び第2の層を含み、前記第1の層は、好ましくは、TiN及び/又はTiNを含み、前記第2の層は、好ましくは、ta-C及び/又はa-C:H及び/又はa-C:H:Me及び/又はa-C:H:X及び/又はa-C:H:Me:Xを含む、請求項13に記載の基材(15)。
【請求項16】
前記コーティング(154)は、2層以上を含む多層コーティング系として設計され、前記コーティングは、第1の層と第2の層を含み、前記第2の層は、好ましくは、外層として堆積され、前記第1の層は、好ましくは、前記基材と前記第2の層との間に堆積される、請求項13~15のいずれか1項に記載の基材(15)。
【請求項17】
ピン、射出ピン、ボール、ボールピン、ピストン、ノズルニードルのいずれか1つとして設計される、請求項12~14のいずれか1項に記載の基材(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被加工物(基材)を移動させるための被加工物キャリア装置に関し、被加工物キャリア装置は、軸を中心に回転するようにメインフレームに取り付けられた被加工物を収容するための被加工物キャリアと、同様に被加工物キャリア装置に対して軸を中心に回転可能な駆動部と、被加工物キャリアに駆動軸を中心にリング状に配置され、駆動軸から離間したホルダ軸を中心に回転するように被加工物キャリアに取り付けられた複数の被加工物ホルダとを有する。本発明は、この種の被加工物キャリア装置における被加工物のコーティング方法及び被加工物に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の被加工物キャリア装置は、特に、真空システムで被加工物を加工するために、特に、真空システムで被加工物をコーティングするために使用される。これらは、コーティング室内の被加工物の全ての露出表面の均一なコーティングを確保するために、コーティング室内の被加工物キャリアユニット上で被加工物を移動させるために使用される。被加工物キャリアユニットは、ここでは、コーティング室内で円筒形又はピン形状の被加工物(例えば、ドリル、ノズルニードル等)を移動させるのに特に適している。この場合、被加工物は、回転軸を中心としてクラウン又はリング状に配置され、コーティング室内で回転軸を中心に移動する。全ての表面、特に、円筒周面の均一なコーティングを達成するために、被加工物は、自身の軸、すなわち、ホルダ軸を中心として回転する回転可能なホルダ内にこの目的のために配置される。したがって、コーティング中、被加工物は、回転軸の周り、及びホルダ軸と実質的に同軸である自身の長手方向軸の周りを移動する。このようにして、全ての表面が均一にコーティングされる。
【0003】
この種の被加工物キャリア装置は、例えば、EP1917380B1に示されている。この構成では、ホルダ軸は、駆動軸と平行に延びている。類似の被加工物キャリア装置は、EP1153155A1、US2014/0008857A1及びDE10803278A1から知られている。
【0004】
しかしながら、ホルダ軸が駆動軸と平行に延びる公知の被加工物キャリア装置の困難さは、これらの領域に顕著な先端又は顕著な頂部を有する被加工物にコーティングをほとんど塗布することができないことであり、これは、これらの頂部がホルダ軸を中心にした回転中に一点で移動又は残留しないからである。このため、この領域のコーティングが不十分になり得る。また、公知の被加工物キャリア装置では、被加工物が長い場合には、積層される被加工物セット(被加工物クラウン)の数が限られ、また、被加工物が比較的長い場合には、コーティング室内に配置できる被加工物キャリアの数が限られ、1回のバッチで処理又はコーティングできる被加工物の数が比較的少ないという問題があった。
【0005】
DE202004009256U1には、被加工物がそのホルダ軸の周りにステップ状に回転する、被加工物の円錐クラウン構成が開示されている。これは、重要な領域における均一なコーティングを困難にすることがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、これらの欠点を少なくとも部分的に低減した、改善された被加工物キャリア装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、被加工物を移動させるための被加工物キャリア装置が提供され、この被加工物キャリア装置は、軸を中心として回転するようにメインフレームに取り付けられる被加工物を収容する被加工物キャリアと、被加工物キャリアに対して軸を中心として同様に回転可能な駆動部と、駆動軸を中心にリング状に被加工物キャリア上に配置され、駆動軸から離間したホルダ軸を中心に回転するように被加工物キャリア上に取り付けられる複数の被加工物ホルダとを有し、ホルダ軸は、被加工物ホルダが円錐状のクラウン構成を形成するように軸に対して延びており、駆動部は、円周上に配置される複数のリンクスロットを有するクランクディスクを備え、その各々の中に被加工物ホルダの駆動部が延びており、それを介して被加工物ホルダが動作中に回転運動することを特徴とする。
【0008】
本発明のさらなる態様及び特徴は、従属請求項、添付図面及び以下の本発明の好ましい実施形態の説明から生じる。
【0009】
次に、例示として、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に対応する本発明による被加工物キャリア装置の概略的な軸方向断面図を示す。
【
図2】第1の実施形態に対応する本発明による被加工物キャリア装置の断面図を示す。
【
図2a】被加工物ホルダ内の被加工物の上端の概略図を示す。
【
図3】複数の被加工物ホルダを有する本発明による被加工物キャリア装置の側面図を示す。
【
図5】
図2に示す被加工物キャリア装置の分解図を示す。
【
図8】本発明による方法の概略フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明による実施形態を示す。この実施形態に関する一般的な説明を最初に提供した後で、詳細な説明を提供する。
【0012】
また、本開示は、駆動軸を中心に回転するようにメインフレームに取り付けられた回転フレームと、同様に回転フレームに対して駆動軸を中心に回転可能な駆動部と、駆動軸から離間してホルダ軸を中心に回転するように回転フレームに取り付けられた複数の被加工物ホルダとを含む被加工物キャリアを有する被加工物キャリア装置に関する。
【0013】
被加工物キャリアを含む被加工物キャリア装置においてコーティング特性が改善される。ここで、被加工物ホルダ及びその中に配置される被加工物が円錐状のクラウン又はリング構成を形成するように、軸に対してホルダ軸が延びる。
【0014】
被加工物ホルダ内に配置され、かつ顕著な(例えば、平坦な、ルーフ又はドーム型の)頂部領域を有する細長い、コンパクトな又はピン形状の被加工物又は基材(例えば、ピン、射出ピン、ボール、ボールピン、ピストン又はノズルニードル)が、軸に対して斜めに突出し、コーティング室内の外側を指している。被加工物ホルダがその回転軸又はホルダ軸を中心に自動回転することにより、絶対的な最高頂部が、コーティング室を通る被加工物の頂部領域においてホルダ軸を中心とするリングに沿って移動し、それによって顕著な頂部がなくなり、頂部領域のより均一なコーティングを達成することができる。頂部領域がドーム状である場合、相対的な頂部は、ここでは、駆動軸に対して斜めに延びるホルダ軸及び/又は回転軸がそれぞれの被加工物の端部を貫通する点にあって、絶対的な頂部よりも横方向に下方にある。1つ以上の層でコーティングする場合、永久回転によるピストン又はピンのシリンダの回転において、頂部領域の均一なコーティングが確保される。一方、ホルダ軸が被加工物キャリアの回転軸と平行に延びる従来の被加工物キャリア装置では、頂部又は頂部領域は常に(点又は領域として)同じ最高位置にあり、したがって、いくつかの状況では、不均一又は不十分にのみコーティングされてしまう。ホルダ軸が斜めに延びるが、ホルダ軸を中心として均一な回転が実現されない場合でも、コーティングは、いくつかの状況において、特に頂部領域において均一ではない。
【0015】
さらに、ホルダ軸の円錐状のクラウン構成により、複数の被加工物キャリアを互いによりコンパクトに配置することが可能になる。実際には、複数の被加工物キャリアがスタックされる場合には、それぞれのクラウン構成が、次の被加工物キャリアがその被加工物に合致する切頭縁を形成するように、被加工物キャリアを互いに内部にスタックすることができる。このようにすることで、被加工物キャリアを、大部分はそこに配置される被加工物の長さに関わらず、互いに又は順に重ねてコンパクトに配置することができ、多数の被加工物を、最も狭い空間に配置して、比較的コンパクトなコーティング室内でコーティングすることができる。
【0016】
ここで、軸と保持軸の角度は、5°~45°、15°~35°、特に25°をなす。この結果、円錐角度は10°~90°、30°~70°、又は50°になる。50°の角度は、コーティング結果を改善するために必要なホルダ軸の傾斜と、ホルダ軸を中心とした被加工物ホルダの回転が可能なホルダ軸の可能な傾斜との間の良好な妥協点を示すので、特に適していることが証明された。
【0017】
自身のホルダ軸を中心に回転させるために使用されるツールホルダの駆動は、複数のリンクスロットを有するクランクディスクを介して実行され、これらは円周上に配置され、各々が、リンクスロットの内側を延びる被加工物ホルダの駆動部分に係合する。被加工物キャリア装置の動作中、1つ以上の被加工物ホルダは、被加工物キャリアに対してクランクディスクを偏心揺動運動させる駆動要素に対して回転し、その際、被加工物ホルダを自動回転させるように被加工物ホルダの駆動部をリンクスロットを介して駆動する。ここで、クランクディスクは、軸に垂直な平面内で被加工物ホルダ内の揺動運動を行い、それによって各リンクスロット内の被加工物ホルダの全ての駆動部分を同時に移動させる。
【0018】
ここで、リンクスロットは、軸に対して半径方向に配向された細長い楕円孔として設計される。動作中に、被加工物ホルダの駆動部は、楕円孔の内側縁部に沿ってスライド転動を行う。
【0019】
この駆動は、クランクディスクに対して回転可能であって、クランクディスクの駆動開口に係合する駆動カムを介して行われるので、動作中は軸に対して垂直に移動し、リンクスロットを介して被加工物ホルダの回転運動を行う。この場合、駆動カムは円運動を示し、駆動カムの外側縁部は、クランクディスクの円形の駆動開口よりも大きい円を画定する。円運動駆動カムの動作中のクランクディスクの揺動又はクランク運動は、カム半径と駆動開口の開口半径との差の量に正確に対応する。
【0020】
駆動カムが、軸に対して偏心して回転可能に取り付けられ、かつ動作中にクランクディスクの駆動開口の端部で円運動する駆動ローラを介して駆動作用を発揮する一実施形態では、揺動運動は、特に低摩擦でクランクディスクに伝達される。
【0021】
複数の実施形態において、各被加工物ホルダは、クランク状の設計を有し、かつ2つの同軸に延びる端部の間を延びるクランク部を備えており、その一方が被加工物キャリアの軸受点における軸受端部として回転可能に取り付けられ、他方が被加工物キャリアの軸受開口における収容端として回転可能に配置される。ここで、クランク部は、リンクスロット又は楕円孔と相互作用して、動作中に、すなわちクランクディスクが駆動されているときに、これらのリンクスロット内で往復運動を行い、それによってホルダ軸を中心として回転運動を行う駆動部を形成する。しかしながら、二重軸受により、被加工物ホルダは被加工物キャリアに対して安定して回転可能に取り付けられる。
【0022】
一実施形態では、軸受点は、この場合、被加工物キャリアの底部ディスク内に配置され、例えば、軸受の端部が被加工物キャリア内の所定の位置で支持される円錐形の凹部又は円形の凹部の形態で配置される。
【0023】
収容端自体が被加工物キャリアの開口部に回転可能に配置されている実施形態と、軸受端部に被加工物支持スリーブが設けられ、それを介して軸受端部が受承されている実施形態とがある。このようにして、軸受端部と被加工物キャリアとの間で必要とされる滑り軸受に好適な材料ペアを提供することが可能になる。例えば、被加工物支持スリーブは、被加工物キャリアの軸受開口とスライドペアを形成することができ、それによってこの軸受領域におけるスライド抵抗が低減される。
【0024】
上述のように、被加工物キャリア装置によって、特に省スペースで多数の被加工物の配置を実現することができ、ここで、被加工物キャリアの被加工物ホルダの円錐状のクラウン構成がさらなる被加工物キャリアの底部ディスクを抱持するように複数の被加工物キャリアが互いに対して配置されることで、被加工物ホルダに配置された被加工物により形成される被加工物クラウン内にさらなる被加工物ホルダの大部分が配置される。
【0025】
また、本発明は、本願請求項の1つに記載の被加工物構成を有するコーティング構成にも関する。多数の被加工物によるバッチ式コーティングが可能であり、特に個々の被加工物の頂部領域におけるコーティング特性が改善される。
【0026】
図1を参照すると、この図は、本発明による被加工物キャリア装置1の一実施形態の概略図を示す。被加工物キャリア装置1は、駆動部1aを有する1つ(又は複数)の被加工物キャリア2を備え、これは、軸3を中心に回転可能にメインフレーム4に取り付けられている。この場合、軸3を中心にリング状に配置された複数の被加工物ホルダ5が、駆動軸/軸3から離れて同心状に配置されたホルダ軸6に沿って設けられている。この場合、ホルダ軸6は、被加工物ホルダ5が円錐状のクラウン構成を形成するように軸3に対して傾斜している。
図1に示す配置は、上方に延びる円錐状のクラウン構成7を示す。ホルダ軸6の軸3に対する角度αは、略5°~45°である。ここで、被加工物キャリア装置1は、コーティング構成17のコーティング室内に配置されている。これは、真空コーティング処理を実行することができる場所である。
【0027】
駆動部1aは、クランクディスク8を備え、このクランクディスク8の円周には、楕円孔9として設計されるリンクスロットが設けられている。リンクスロット9は、被加工物ホルダ5によって貫通されて、被加工物ホルダ5のクランク状駆動部10に係合する。クランクディスク8の中心には、軸を中心に偏心して円運動する駆動カム12が噛合する円形の駆動開口11が設けられている。駆動カム12は、動作中に、すなわち、被加工物キャリアが被加工物キャリアに対して軸3を中心に回転するときに回転するカムシャフト13上に回転固定されるように設置されている。この場合、それはメインフレームに回転固定されるように設計され、又はメインフレームに対して軸を中心として自動回転させることができる。必要に応じて、カムシャフト13の回転方向及び回転速度をここで調整することが可能である。駆動カムは、回転可能な駆動ローラ14を備え、これは、駆動開口11内で転動することにより、クランクディスク8に揺動運動を伝達し、これはリンクスロット9に対応する運動を行わせ、これは、この場合、駆動部10又は被加工物ホルダ5のクランクに係合して、それらにホルダ軸を中心として対応する回転運動を行わせる。同時に、ホルダ軸は、軸3を中心に円運動するので、被加工物ホルダ内に配置された被加工物は、ホルダ軸を中心に回転するように軸3を中心に移動して、その際にコーティング構成17のコーティング室を通る経路を辿る。
【0028】
図2は、
図1に関連して説明したツールキャリア2の断面図、転がり軸受19を備えた駆動部10、駆動ローラ14を備えた駆動カム12、及びクランクディスク8を案内する中間支持板構成28の詳細を示す。カムシャフト13に連結された駆動カム12は、転がり軸受19を介して各被加工物キャリア2に回転自在に取り付けられている。
【0029】
図2aは、被加工物又は基材15(ここではノズルニードル)の上部領域又は先端領域(ここではシーリングヘッド151)を示しており、それのコーティングが特に重要であるコーティング中、全ての被加工物15は、軸3を中心として回転し、それぞれが被加工物15を貫通するホルダ軸6の周りを回転する。軸3に対するホルダ軸6の角度αの傾斜により、この頂部ゾーン152(リング)に沿ってホルダ軸6を中心に回転するときに、相対的な頂部が、円に沿って最上部から又はホルダ軸6を中心に周期的に上下するように、ホルダ軸6と同心に延びるリングに沿って配置される頂部ゾーン152がある。ホルダ軸6に対する絶対頂部153又は極は、最高頂部よりも横方向に下方にある。角度αだけ傾斜した配置によって、コーティング中に、絶対頂部153を含む頂部ゾーン152全体が非常に均一にコーティングされ、これは、シーリングヘッド151のシーリング機能にとって特に重要である。
【0030】
被加工物の端部における球状のシーリングヘッド151の代わりに、その先端が球状に丸められ得るシーリングコーンが形成される実施形態にも同じことが当てはまる。また、このような実施形態では、円錐側部及び円錐先端領域の特に均一なコーティングが確実に行われる。
【0031】
傾斜角度α及び軸3及び各ホルダ軸6を中心とした回転のおかげで、このようなノズルニードル又は射出ピン15を均一に被覆することが可能になる。特に、極又は頂部又は頂部ゾーン151及びそのような球の周面又は赤道ゾーンは、コーティング材料によって均一に湿潤される。これとは対照的に、ホルダ軸が垂直に延びる場合には、赤道ゾーンのみが許容可能なやり方で被覆される。
【0032】
典型的には、射出ピン又はノズルニードル(例えば、ピン、射出ピン、ボール、ボールピン、ピストン、ノズルニードル等)等の被加工物又は基材15用のコーティング154のコーティング材料は、典型的には、機能層として、又は0.1μm~10μmの層厚の多層コーティングにおいて、CrN/CrCと、カバー層として塗布され、0.1~10μmの厚さを有する第2のダイヤモンド状カーボン層とを含む。これに関連して、非晶質カーボン層a-C:H/a-C:H:Me/a-C:H:X(水素含有非晶質カーボン層)又はta-C(四面体水素フリー非晶質カーボン層)が実現される。
a-C:H:Me[金属ドープしたタングステン、銅、又はその他]
a-C:H:X[シリコン、酸素、窒素、又は他のものをドープ]
【0033】
一般に、全てのPVD層並びにガス及びプラズマ窒化用途は、このデバイスで450°Cまで使用することができる。
【0034】
図3は、複数の被加工物キャリア2が入れ子状に配置された被加工物キャリア装置を示しており、下側被加工物ホルダの円錐状のクラウン構成7がそれらの上方に配置された被加工物ホルダ5を抱持している。ここで、被加工物ホルダは、駆動足部18によって回転するように設定されている。
【0035】
図4に被加工物ホルダの設計を示す。これは、軸受端部20と収容端部21との間にクランク状に屈曲するように配置された駆動部10として使用されるクランク部を備える。収容端部21には、被加工物支持スリーブ22が設置されており、その収容開口に被加工物が挿入され得る。
図2、
図2a及び
図3は、ピン状被加工物24、例えば、ノズルニードル又は射出ピン等を示している。
【0036】
図6(
図3の詳細A)は、駆動カム12の実施形態を示しており、これは、被加工物キャリア2に対して回転できるように、軸受ディスク26とカバーディスク27との間にラジアル軸受19を介して配置される。駆動ローラ32は、ピン31を介して偏心領域30上に配置され、クランクディスク8の駆動開口11内で円運動して、被加工物ホルダ5が回転する軸3を中心とした対応するクランク運動を行わせる。ここで、被加工物キャリア2は、カムシャフト13を介して被加工物ホルダ5に対して固定又は回動する駆動カム12に対して回転する。
【0037】
図7(
図2の詳細B)は、クランクディスク8の被加工物ホルダ5に対する作用を示す。ツールホルダ5に対するクランクディスク8の揺動運動は、リンクスロット9を対応して移動させ、これは被加工物ホルダ5の駆動部10に係合し、その結果、その揺動運動に追従してホルダ軸6を中心として回転運動させる。この場合、軸受端部20は被加工物キャリア2の底部ディスク25に取り付けられ、収容端部21は被加工物支持部22を介して軸受ディスクに取り付けられ、これはさらにカバーディスク27によって覆われる。
【0038】
クランクディスク8を(軸3に垂直な)その移動面で安定させるために、クランクディスクのガイド開口30が配置されるガイドスロット29を画定する支持板構成28が設けられる。支持板構成28が常にガイド開口29の端部を確実に含むように、ガイド開口29及び支持板構成28の直径がクランクディスク8の揺動に合致する。支持板構成28は、被加工物キャリア2及びガイド開口29を貫通するねじ32によって固定されている。
【0039】
この相対運動は、駆動カム12を回転固定して通過するシャフト13によって制御することができる。駆動カムは、例えば、メインフレームに対して回転固定されるように調整することができる。しかしながら、被加工物キャリア2の回転運動と逆方向に回転させて、被加工物ホルダの回転速度を上げることもできる。
【0040】
図8に示す本発明による、例えば、ジェットニードルとして形成された被加工物又は基材15をコーティングする方法の流れ図は、以下のA~Eのステップを含む。
【0041】
A 被加工物キャリア装置1を提供するステップ
B 被加工物ホルダ22内に基材15を配置するステップ
C コーティング構成17における被加工物ホルダ22又は基材15を移動及び回転させるステップ
D 基材15をコーティングするステップ
E コーティングされた基材15を除去するステップ
本発明のさらなる詳細及び変形は、特許請求の範囲内で当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0042】
1 被加工物キャリア装置
1a 駆動部
2 被加工物キャリア
3 軸
4 メインフレーム
5 被加工物ホルダ
6 ホルダ軸
7 円錐形クラウン構成
8 クランクディスク
9 リンクスロット/楕円孔
10 駆動部、クランク部
11 駆動開口
12 駆動カム
13 カム軸
14 駆動ローラ
15 被加工物、基材(例えば、ピン、射出ピン、ボール、ボールピン、ピストン、ノズルニードル等)
17 コーティング装置
18 駆動足部
19 転がり軸受
20 軸受端部
21 収容端部
22 被加工物支持部(スリーブ)
25 底部ディスク
26 軸受ディスク
27 カバーディスク
28 支持板構成
29 ガイド開口
30 スロット
31 偏心領域
32 ねじ
151 先端部、シーリングヘッド
152 頂部ゾーン
153 絶対頂部
154 コーティング
【国際調査報告】