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特表2022-529922制御チャンバのための改良されたシールアセンブリを備えるベーンポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】制御チャンバのための改良されたシールアセンブリを備えるベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20220620BHJP
   F04C 14/22 20060101ALI20220620BHJP
   F04C 2/344 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
F04C15/00 A
F04C14/22 D
F04C2/344 331E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561046
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 IB2020053626
(87)【国際公開番号】W WO2020217144
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】62/837,302
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515188420
【氏名又は名称】スタックポール インターナショナル エンジニアード プロダクツ,リミテッド.
【氏名又は名称原語表記】STACKPOLE INTERNATIONAL ENGINEERED PRODUCTS, LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】バーヨ, トゥンジャイ
【テーマコード(参考)】
3H040
3H044
【Fターム(参考)】
3H040AA03
3H040BB11
3H040CC01
3H040CC21
3H040DD18
3H040DD40
3H044AA02
3H044BB05
3H044CC01
3H044CC21
3H044DD09
3H044DD28
3H044DD35
(57)【要約】
ベーンポンプは、ハウジングおよび制御スライドを備える。ロータは回転して、ハウジング吸入口を介して制御スライドのロータ受容空間へと潤滑剤を吸入し、吐出口を介して潤滑剤を吐出する。制御スライドが移動すると、制御スライドのロータに対する偏心量が変化して、吸入口と吐出口との間の差圧が増加および減少する。制御スライドは、容量増加方向へと付勢されている。制御スライドは、ハウジングに対して制御チャンバを画定する一つまたは複数のシールを有する。一つまたは複数のシールは、制御スライドの外面に形成された凹部に受容されるシールアセンブリを含む。シールアセンブリは、凹部に受容された基部要素と、基部要素に枢動可能に取り付けられハウジングの内周面を支持する軸受要素とを有する。枢動結合部は、互いに結合した雄型枢動連結部および雌型枢動連結部を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口および吐出口を有するハウジングと、
前記吸入口および前記吐出口に連通するロータ受容空間を有し、容量増加方向およびその反対の容量減少方向に枢動可能にハウジングに取り付けられている、制御スライドと、
複数のベーンを有し、前記ハウジングに取り付けられて前記制御スライドの前記ロータ受容空間内に配置されるロータであって、負圧下で前記吸入口を介して潤滑剤を前記ロータ受容空間へと吸入し正圧下で前記吐出口を介して前記ロータ受容空間から前記潤滑剤を吐出するように前記ロータ受容空間内で回転可能である前記ロータと、
前記ハウジングと前記制御スライドとの間に位置して、前記制御スライドを前記容量増加方向に付勢する弾性構造体と、を備えるベーンポンプであって、
前記制御スライドが前記容量増加方向へ移動すると、前記ロータと前記制御スライドとの間の偏心が増加して前記吸入口と前記吐出口との間の圧力差を増加させ、前記制御スライドが前記容量減少方向へ移動すると、前記偏心が減少して前記圧力差が減少し、
前記制御スライドは、前記制御スライドと前記ハウジングとの間に制御チャンバを画定する一つまたは複数のシールを有し、
前記制御チャンバは、前記制御スライドを前記容量減少方向に移動させるべく加圧された前記潤滑剤の供給源と連通しており、
前記一つまたは複数のシールは、前記制御スライドの外面に形成された凹部に受容されるシールアセンブリを含み、
前記シールアセンブリは、前記凹部に受容された基部要素と前記基部要素に枢動可能に接続されて前記ハウジングの内面を支持する軸受要素とを有して、前記制御スライドが前記容量増加方向および前記容量減少方向に移動する際に前記制御チャンバをシールし、
前記基部要素および前記軸受要素のうちの一方が雄型枢動連結部を有し、前記基部要素および前記軸受要素のうちの他方が雌型枢動連結部を有し、前記雄型枢動連結部と前記雌型枢動連結部とは互いに結合されている、ベーンポンプ。
【請求項2】
前記制御スライドは、前記ハウジングに対する前記制御スライドの枢動結合部に対向する径方向突起を有し、前記径方向突起は前記弾性構造体と係合する面を有する、請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
前記シールアセンブリを受容する前記凹部は、前記径方向突起の一端に設けられている、 請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項4】
前記シールアセンブリの前記基部要素は前記雄型枢動連結部を有し、前記シールアセンブリの前記軸受要素は前記雌型枢動連結部を有する、請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項5】
前記雌型枢動連結部は、スロットを有する穴によって画定され、前記スロットは前記穴よりも幅が小さく、
前記雄型枢動連結部は、頭部よりも幅が小さい首部によって取り付けられた前記頭部によって画定され、
前記首部が前記スロットに延在している状態で、前記頭部が前記穴内に回動可能に受容される、請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項6】
前記雌型枢動連結部は、スロットを有する穴によって画定され、前記スロットは前記穴よりも幅が小さく、
前記雄型枢動連結部は、頭部よりも幅が小さい首部によって取り付けられた前記頭部によって画定され、
前記首部が前記スロットに延在している状態で、前記頭部が前記穴内に回動可能に受容される、請求項4に記載のベーンポンプ。
【請求項7】
前記雌型枢動連結部の前記穴および前記雄型枢動連結部の前記頭部は共に、部分的に円筒形状を有する、請求項5に記載のベーンポンプ。
【請求項8】
前記制御チャンバが唯一の制御チャンバであり、
前記シールアセンブリは、前記制御スライドの前記ハウジングへの枢動結合部から遠い側の前記制御チャンバの端部をシールする、請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項9】
前記一つまたは複数のシールは一つのみ設けられ、前記一つのみのシールは前記シールアセンブリである、請求項8に記載のベーンポンプ。
【請求項10】
前記制御チャンバは、前記ハウジングの前記吐出口に連通する入口ポートを有し、
前記制御チャンバへの加圧された前記潤滑油の供給源は、前記吐出口から吐出される潤滑剤である、請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項11】
潤滑剤を受け取る装置と、
前記潤滑剤の供給源を収容する潤滑剤サンプと、
ベーンポンプと、を備える車両であって、
前記ベーンポンプは、
前記潤滑剤サンプに連通する吸入口および前記装置に連通する吐出口を有するハウジングと、
前記吸入口および前記吐出口に連通するロータ受容空間を有し、容量増加方向およびその反対の容量減少方向に枢動可能にハウジングに取り付けられている、制御スライドと、
複数のベーンを有し、前記ハウジングに取り付けられて前記制御スライドの前記ロータ受容空間内に配置されるロータであって、負圧下で前記吸入口を介して前記潤滑剤を前記ロータ受容空間へと吸入し正圧下で前記吐出口を介して前記ロータ受容空間から前記潤滑剤を吐出するように前記ロータ受容空間内で回転可能である前記ロータと、
前記ハウジングと前記制御スライドとの間に位置して、前記制御スライドを前記容量増加方向に付勢する弾性構造体と、を備え、
前記制御スライドが前記容量増加方向へ移動すると、前記ロータと前記制御スライドとの間の偏心が増加して前記吸入口と前記吐出口との間の圧力差を増加させ、前記制御スライドが前記容量減少方向へ移動すると、前記偏心が減少して前記圧力差が減少し、
前記制御スライドは、前記制御スライドと前記ハウジングとの間に制御チャンバを画定する一つまたは複数のシールを有し、
前記制御チャンバは、前記制御スライドを前記容量減少方向に移動させるべく加圧された前記潤滑剤の供給源と連通しており、
前記一つまたは複数のシールは、前記制御スライドの外面に形成された凹部に受容されるシールアセンブリを含み、
前記シールアセンブリは、前記凹部に受容された基部要素と前記基部要素に枢動可能に接続されて前記ハウジングの内面を支持する軸受要素とを有して、前記制御スライドが前記容量増加方向および前記容量減少方向に移動する際に前記制御チャンバをシールし、
前記基部要素および前記軸受要素のうちの一方が雄型枢動連結部を有し、前記基部要素および前記軸受要素のうちの他方が雌型枢動連結部を有し、前記雄型枢動連結部と前記雌型枢動連結部とは互いに結合されている、車両。
【請求項12】
前記制御スライドは、前記ハウジングに対する前記制御スライドの枢動結合部に対向する径方向突起を有し、前記径方向突起は前記弾性構造体と係合する面を有する、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記シールアセンブリを受容する前記凹部は、前記径方向突起の一端に設けられている、請求項11に記載の車両。
【請求項14】
前記シールアセンブリの前記基部要素は前記雄型枢動連結部を有し、前記シールアセンブリの前記軸受要素は前記雌型枢動連結部を有する、請求項11に記載の車両。
【請求項15】
前記雌型枢動連結部は、スロットを有する穴によって画定され、前記スロットは前記穴よりも幅が小さく、
前記雄型枢動連結部は、頭部よりも幅が小さい首部によって取り付けられた前記頭部によって画定され、
前記首部が前記スロットに延在している状態で、前記頭部が前記穴内に回動可能に受容される、請求項11に記載の車両。
【請求項16】
前記雌型枢動連結部は、スロットを有する穴によって画定され、前記スロットは前記穴よりも幅が小さく、
前記雄型枢動連結部は、頭部よりも幅が小さい首部によって取り付けられた前記頭部によって画定され、
前記首部が前記スロットに延在している状態で、前記頭部が前記穴内に回動可能に受容される、請求項14に記載の車両。
【請求項17】
前記雌型枢動連結部の前記穴および前記雄型枢動連結部の前記頭部は共に、部分的に円筒形状を有する、請求項15に記載の車両。
【請求項18】
前記制御チャンバが唯一の制御チャンバであり、
前記シールアセンブリは、前記制御スライドの前記ハウジングへの枢動結合部から遠い側の前記制御チャンバの端部をシールする、請求項11に記載の車両。
【請求項19】
前記一つまたは複数のシールは一つのみのシールであり、前記一つのみのシールは前記シールアセンブリである、請求項18に記載の車両。
【請求項20】
前記制御チャンバは前記ハウジングの前記吐出口に連通する入口ポートを有し、
加圧された前記潤滑油の前記制御チャンバへの前記供給源は、前記吐出口から吐出される潤滑油である、請求項11に記載の車両。
【請求項21】
前記装置は、エンジンもしくはトランスミッションまたはこれら両方である、請求項11に記載の車両。
【請求項22】
前記装置は、エンジンである、請求項11に記載の車両。
【請求項23】
前記装置は、トランスミッションである、請求項11に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第62/837,302号(出願日:2019年4月23日)に基づく優先権を主張するものであり、この米国特許出願の開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、ベーンポンプに関し、特に、制御チャンバをシールするための改良されたシールアセンブリを備えるベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
図2は、従来技術のベーンポンプに使用されているシールアセンブリ100を示している。このシールアセンブリは、ポンプハウジング内面に摺動可能に係合する軸受要素102と、それを支持する基部104とを有する。シールアセンブリ100は、後述する制御スライド18の一部に形成された凹部48に取り付けられている。
【0004】
本発明者は、従来のシールアセンブリ100には、2つの部品102、104が互いの位置が合うように配置されていないという欠点があることに気付いた。これにより、基部104がスライドシール溝48内でずれてしまい、軸受要素102との中心が合わなくなっている。それにより軸受要素102にかかる圧力が不均一になり、その結果、ポンプハウジングの内周面に対する軸受要素102の接触が不均一になる。
【発明の概要】
【0005】
本願はベーンポンプを提供する。ベーンポンプは、吸入口および吐出口を有するハウジングと、吸入口および吐出口に連通するロータ受容空間を有する制御スライドと、を備える。制御スライド18は、容量増加方向および反対の容量減少方向へ枢動可能にハウジングに取り付けられている。ロータは複数のベーンを備える。ロータは、制御スライドのロータ受容空間内に回転可能にハウジングに取り付けられる。ロータは、ロータ受容空間内で回転して負圧で潤滑剤を吸入口を介してロータ受容空間内へと吸引して加圧し、正圧で加圧潤滑剤を吐出口を介してロータ受容空間から排出する。制御スライドが容量増加方向へ移動すると、ロータと制御スライドとの間の偏心が増加して吸入口と吐出口との間の圧力差を増加させ、制御スライドが容量減少方向へ移動すると、偏心が減少して圧力差が減少する。ハウジングと制御スライドとの間に位置して、制御スライドを容量増加方向に付勢する弾性構造体を更に備える。
【0006】
スライドは一つまたは複数のシールを有し、これらは制御スライドとハウジングとの間に制御チャンバを画定している。制御チャンバは、制御スライドを容量減少方向に移動させるべく、加圧潤滑剤の供給源と連通している。
【0007】
一つまたは複数のシールは、制御スライドの外面に形成された凹部に受容されるシールアセンブリを含む。シールアセンブリは、凹部に受容された基部要素と基部要素に枢動可能に接続されてハウジングの内面を支持する軸受要素とを有して、制御スライドが容量増加方向および容量減少方向に移動する際に前記制御チャンバをシールする。基部要素および軸受要素の一方は雄型枢動連結部を有し、基部要素および軸受要素の他方は雌型枢動連結部を有する。雄型枢動連結部と雌型枢動連結部とは互いに結合されている。
【0008】
本開示の他の態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明、添付図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ベーンポンプの一例であり、カバーを外して内部構造を見えるようにした状態を示している。
【0010】
図2】従来技術のポンプに使用されているシールアセンブリの拡大図である。
【0011】
図3】本発明のシールアセンブリの一実施形態を示す拡大図である。
【0012】
図4図3のシールアセンブリを、その端面図と共に示した斜視図である。
【0013】
図5】ベーンポンプの別の例であり、カバーを外して内部構造を見えるようにした状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願は、吸入口14および吐出口16を有するハウジング12を備えるベーンポンプ10を提供する。ハウジングは、任意の構造または構成を有してもよく、図示された実施形態に限定されることを意図していない。吸入口14および吐出口16は、潤滑剤を能動的に圧送することを必要とする任意の装置に接続されてもよく、例えば、車両のエンジン、トランスミッションおよびその他の機械装置を含むがこれらに限定されない。
【0015】
吸入口14は、一般的に、潤滑剤サンプ(例えば、オイルサンプ)等の供給源から、または、概して密閉された空間内(例えば、トランスミッションハウジング内)から、負圧で潤滑剤を吸い込む。吐出口16は、一般的に、エンジンのオイルギャラリのような潤滑を必要とする装置へと正圧で潤滑剤を排出する。前述の正圧および負圧は、システムに応じて、互いに相対的であってもよいし、周囲の大気圧に相対的であってもよい。吸入口14および吐出口16はそれぞれ、シングルポートまたはマルチポート設計であってもよく、システム要件に応じて図示されたものよりもより複雑な構成を有してもよく、当技術分野では周知のものである。ハウジング12は、多くの場合、システム全体内の他の要素に接続するために、吸入口14および吐出口16からハウジング外部の入口ハウジングポートおよび出口ハウジングポート(図示せず)まで延在するチャネルを有する。また、ハウジング12は、圧力安全弁等の、本明細書で説明される発明に関係のない他の機能を備えてもよい。
【0016】
また、ポンプ10は、吸入口14および吐出口16に連通するロータ受容空間20を有する制御スライド18を備える。制御スライド18は、容量増加方向および反対の容量減少方向へ枢動可能にハウジング12に取り付けられている。図示されるように、制御スライド18は、枢動ピン22によって確立される枢動連結部を有する。制御スライド18は、その枢軸連結部/ピン22を中心に、容量増加方向および容量減少方向に枢動する。ロータ受容空間20は、図示されているように、制御スライド本体の厚さ方向に延びる本質的に円筒形の穴であってもよい。
【0017】
ロータ24は、制御スライド18のロータ受容空間20内に回転可能にハウジング12に取り付けられる。ロータ24は複数のベーン26を備える。ベーン26は格納可能であってもよく、ロータ受容空間20の内周面に接触させるべくベーン26を径方向外側に偏らせるためのバネまたは他の特徴(例えば、流体チャネル)を有する。ロータ24は、ロータ受容空間20内で(図では反時計回りに)回転可能であり、負圧の状態で潤滑剤を吸入口14を介してロータ受容空間20内に吸い込み、正圧の状態で潤滑剤を吐出口16を介してロータ受容空間20から吐出する。制御スライド18が容量増加方向へ移動することにより、ロータ20と制御スライド18との間の偏心が増加し、吸入口14と吐出口16との間の圧力差が増加する。反対に、制御スライド18が容量減少方向へ移動すると、偏心が減少し、圧力差が減少する。制御スライド18とロータ20との間の偏心によって制御される複数のベーン間のポケットの体積変化に基づいて、ロータ受容空間14の低圧側(吸入口14と重なっている側)とロータ受容空間14の高圧側(吐出口16と重なっている側)との圧力差を作り出す動作原理は周知であり、ここでは詳細に説明しない。
【0018】
ロータ24は、どのような態様で動力を得てもよい。例えば、エンジンに使用される場合、ロータ24は、ベルトまたはチェーンによって駆動される歯車またはプーリに結合されることが多いが、動力系の別の要素によって直接駆動されてもよい。別の例として、ポンプは電気モータによって駆動されてもよい(特に電動車両)、または、エンジン駆動要素および/または電気モータの両方によって駆動されるように2つの入力接続を有してもよい(特にハイブリッド車両)。ロータ24が駆動される態様はこれに限定されず、任意の態様で行われてもよい。
【0019】
弾性構造体28がハウジング12と制御スライド18との間に配置されて、制御スライド18を容量増加方向に付勢する。図示された実施形態では、弾性構造体28は圧縮ばねであるが、その他の構造または構成を有してもよい。例えば、流体圧力装置が弾性構造として機能してもよいし、その他の種類のばねを使用してもよい。制御スライド18は、例えば、ピン22である制御スライド18のハウジング20への枢動接続部に対向して、径方向突起30を有する。径方向突起30は、弾性構造体18が係合する面32を有する。図示された実施形態では、ばね28の一端はその面32に係合し、他端はハウジング12に設けられた対向面34に係合する。図示されているように、ばね28はこれらの面32、34間で圧縮された状態で保持されており、これにより、制御スライド18を容量増加方向に付勢する反力を加えることができる。
【0020】
制御スライド18は、以下でさらに詳しく説明する一つまたは複数のシールを有し、これらは制御スライド18とハウジング12との間に制御チャンバ40を画定している。制御チャンバ40は、制御スライド18を容量減少方向に移動させるべく、加圧潤滑剤の供給源と連通している。図示の実施形態では、加圧潤滑剤は、制御チャンバ入口ポート42を介して制御チャンバ40に供給される。制御チャンバ入口ポート42は、例えば、チャネル43を介して、ハウジング12の吐出口16に(直接的または間接的に)連通してもよく、この場合、制御チャンバ40の加圧潤滑剤の供給源は吐出口16から吐出される潤滑剤となる。これは、吐出口16からの圧力がポンプの容量および圧力の調整するのを助けるべく利用される既知のフィードバックアプローチである。吐出口16からフィードバックされる圧力が高くなると制御チャンバ40内の圧力が高くなり、その結果、制御スライド18が弾性構造体28の付勢に抗して容量減少方向に移動する(また、その結果、ベーン26によって生成される圧力差が減少し、吐出口16から排出される潤滑剤の圧力が減少する)。反対に、吐出口16からフィードバックされる圧力が低下すると制御チャンバ40内の圧力が低下し、その結果、弾性構造体が制御スライド18を容量増加方向に移動させることができる(その結果、ロータ56Aによって生成される圧力差も増加し、吐出口16から排出される潤滑剤の圧力も高くなる)。このような技術を、ポンプの出力圧力および/または容量変位を平衡レベルまたはそれに近いレベルに維持するのに利用できる。
【0021】
図示されるように、ポンプ10は、ポンプ10の動作について複数の異なるレベルの制御を提供するべく、複数の制御チャンバ40、40’を有してもよい。例えば、ポンプ10は、要素40、42、43にそれぞれ対応する、図示のような入口ポート42’およびチャネル43’を有する第2の制御チャンバ40’も有してもよい。後述するシールアセンブリは、これらの制御チャンバの一つ以上をシールするために使用されてもよい。後述するシールアセンブリに従って設計された任意のシールに加えて、その他の種類のシールを他の場所に使用してもよい。
【0022】
図5に示すように、別の実施形態では、ポンプは一つの制御チャンバのみを有してもよい。図5の実施形態は、図1の実施形態と構造的に同様であり、したがって、共通の要素には、図5のそれらに「”」を付加した共通の参照番号を使用する。例えば、図5では、ポンプは10”と示され、一つの制御チャンバは40”と表記される。
【0023】
前述のように、図示の実施形態における制御チャンバ40(または40’または40”)を画定する一つまたは複数のシールは、制御スライド18の外面に形成された凹部48に受容されたシールアセンブリ46を含む。図1の実施形態では、シールアセンブリは制御チャンバ40の両端で使用されてもよく、シールアセンブリ46は、これらシールのいずれかまたは両方に使用されてもよい。図に示すように、シールアセンブリ46は、制御チャンバ40の遠位端において径方向突起30の一端側に設けられた凹部48内に配置されており、上述したように、径方向突起30は、弾性構造体28に係合し、ピン22における枢動接続部から離れて位置する面32を有する。同様に、制御チャンバ40は、一端で共通のシールアセンブリ46をチャンバ40’と共有してもよく、枢動ピン22での枢動接続部は、その制御チャンバ40’の他端である近位端を閉鎖している。(遠位および近位という用語は、枢動接続部を基準としている)。図5に示される他の実施形態では、制御チャンバ40”が唯一の制御チャンバであってもよく、シールアセンブリ46”は、制御スライド18”のピン22”におけるハウジング12への枢動接続部から離れた方の制御チャンバ40”の端部をシールしている。シールアセンブリ46”を受容する凹部48”は、図1の場合と同様に、径方向突起30”の端部に位置する。このような実施形態では、シールは、シールアセンブリ46”一つのみが設けられる。制御チャンバ40”の反対側/近位側の端部は、制御スライド18の枢動結合部の構造によって閉鎖されており、シール材は必要ない。
【0024】
シールアセンブリ46は、凹部48に受容された基部要素50と、基部要素50に枢着されハウジング12の内周面54を支持する軸受要素52とを有する。これにより、制御スライド18が容量増加方向および容量減少方向に移動する時に、制御チャンバ40がシールされる。基部要素50および軸受要素52の一方は、雄型枢動連結部56を有し、基部要素50および軸受要素52の他方は、雌型枢動連結部58を有する。図示の実施形態では、シールアセンブリ46の基部要素50は雄型枢動連結部56を有し、軸受要素52は雌型枢動連結部58を有する。雄型枢動連結部56および雌型枢動連結部58は、ハウジング内面54に沿う軸受要素52の枢動運動を可能にするように結合されている。
【0025】
図示の実施形態では、雌型枢動連結部58は、穴60よりも幅が小さいスロット62を有する穴60によって規定される。即ち、スロット62は、ボア62の直径よりも幅が小さい。雄型枢動連結部56はヘッド64によって画定され、ヘッド部64よりも狭いネック部66によって取り付けられている。即ち、ネック部66は、ヘッド部64を雄型枢動連結部56の残りの部分に接続している領域である。図示の実施形態では、雌型連結部58の穴60および雄型連結部56の頭部64は共に、部分的に円筒形であるが、他の実施形態ではこれらは異なる構成を有してもよい。首部66がスロット62に延在している状態で、頭部64が穴60内に回動可能に受容される。これにより、上述したように、ハウジング内面54に沿って軸受要素52が摺動する際に、軸受要素52が枢動運動可能となる枢動結合部が確立される。
【0026】
軸受要素52に対して枢動結合部が中心に位置するように保持されて、軸受要素52とハウジング内面54とが均一に接触するのを助けている。軸受要素52がその移動経路に沿ってハウジング内面54を摺動する際にも、枢動結合部により均一に接触するようになっている。
【0027】
基部要素50の残りの部分は、凹部48内に、円形、長円形または楕円形の部分68を有する。部分68は、他の形状または構成を有していてもよく、図示された実施形態に限定することを意図していない。例えば、2つの脚部を有するスプリットY字形状であってもよい。部分68は、どのような構成であっても、弾性を有し、軸受要素52をハウジング内面54に対して付勢して、シールを提供するように作用する。
【0028】
一実施形態では、軸受要素52は、十分な耐摩耗性を有し、ハウジング内面を摺動するために低摩擦性を有するもの等、任意の材料で形成されてもよい。例えば、PTFE(JTFEを含む)、PPS材料等のポリマーを使用してもよいし、その他の材料を使用してもよい。
【0029】
基部要素50は任意の材料によって形成されてもよく、一実施形態では、ACMポルカクリレート等のアクリレートで形成される。基部要素50は、好ましくは、軸受要素52をハウジング内面に対して付勢するための付勢力を提供するべく、圧縮する弾性のある材料で形成される。
【0030】
上述した様々な実施形態は、専ら本発明の構造的および機能的な原理を示すために与えられたものであって、限定的なものとして意図されたものではない。むしろ、本発明は、以下の特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある全ての変更、修正、および代替物を含むことを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】