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特表2022-529943がんの処置における使用のための、標的指向性のマスクされたI型インターフェロン(IFNAおよびIFNB)と腫瘍抗原に対する抗体とを含む融合タンパク質組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】がんの処置における使用のための、標的指向性のマスクされたI型インターフェロン(IFNAおよびIFNB)と腫瘍抗原に対する抗体とを含む融合タンパク質組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/21 20060101AFI20220620BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220620BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220620BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220620BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220620BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220620BHJP
   C07K 14/56 20060101ALI20220620BHJP
   C07K 14/565 20060101ALI20220620BHJP
   C07K 14/555 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220620BHJP
【FI】
A61K38/21
C07K19/00 ZNA
C07K16/30
C07K7/08
C12N15/11 Z
C12N15/13
C07K14/56
C07K14/565
C07K14/555
A61P35/00
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561663
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 US2020028296
(87)【国際公開番号】W WO2020214690
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/920,140
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521452094
【氏名又は名称】クウィクセル セラピューティクス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ストーバー デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】モリソン シェリー
(72)【発明者】
【氏名】バスササワット アレックス
(72)【発明者】
【氏名】トリン カーム
(72)【発明者】
【氏名】アユーブ ジョージ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC42
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA22
4C084DA23
4C084NA13
4C084NA15
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA16
4H045DA17
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
マスクされたIFNを含む融合タンパク質組成物、およびマスクされたIFNを作製する方法が、本明細書において開示される。その結果として、マスクされたIFNを、Mabまたはその結合断片に融合させて、治療様式として患者に投与することができ、がん、免疫学的障害、および他の疾患を処置する方法を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド配列
を含む組成物であって、該ポリペプチド配列が、I型インターフェロン(IFN)の活性をマスクし、かつ該組成物が、腫瘍関連抗原に結合する抗体に融合している融合タンパク質をさらに含む、前記組成物。
【請求項2】
可動性ペプチドリンカーをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
腫瘍関連プロテアーゼ切断部位をさらに含む、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記I型インターフェロンがIFNα1を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
前記I型インターフェロンがIFNα2を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記I型インターフェロンがIFNα4を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
前記I型インターフェロンがIFNα5を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記I型インターフェロンがIFNα6を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記I型インターフェロンがIFNα14を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記I型インターフェロンがIFNβ1を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記I型インターフェロンまたはその機能的変異体が、表IIに示されるようなI型インターフェロンから選択される、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
前記腫瘍関連抗原がCD138を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記腫瘍関連抗原がCD20を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記腫瘍関連抗原がメソテリンを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
前記腫瘍関連抗原が5T4を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
前記腫瘍関連抗原が、表Iに示されるような腫瘍関連抗原から選択される、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
a. 腫瘍関連抗原に特異的に結合する、重鎖および/または軽鎖を含む抗体;
b. I型インターフェロンのN末端が、該抗体重鎖および/または軽鎖のC末端に融合している、I型インターフェロン;ならびに
c. (SEQ ID NO: 14)を含み、それにより該I型インターフェロンのC末端に付加されている、インターフェロンマスク
を含む、標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項18】
可動性ペプチドリンカーをさらに含み、前記I型インターフェロンのN末端が、前記抗体重鎖および/または軽鎖のC末端に融合している、請求項17記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項19】
可動性ペプチドリンカーをさらに含み、インターフェロンマスク(SEQ ID NO:14)が、前記I型インターフェロンのC末端に付加されている、請求項17または18記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項20】
前記抗体と前記可動性ペプチドリンカーとの間に挿入された腫瘍関連プロテアーゼ切断部位をさらに含む、請求項19記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項21】
前記I型インターフェロンと前記インターフェロンマスクとの間に挿入された腫瘍関連プロテアーゼ切断部位をさらに含む、請求項17~19のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項22】
前記I型IFNまたはその機能的変異体が、表IIに示される、請求項17~21のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項23】
前記抗体が、表Iに示される腫瘍関連抗原に結合する、請求項17~22のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項24】
前記抗体がCD138に結合する、請求項17~22のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項25】
前記抗体がCD20に結合する、請求項17~22のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項26】
前記抗体がメソテリンに結合する、請求項17~22のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項27】
前記抗体が5T4に結合する、請求項17~22のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFN。
【請求項28】
請求項1~16のいずれか一項記載の組成物または請求項17~27のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFNを作製する、方法。
【請求項29】
請求項1~16のいずれか一項記載の組成物または請求項17~27のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFNを含む、薬学的組成物であって、
(i)任意で、該薬学的組成物が、がんの処置を含む治療法における使用のためのものであり、任意で、
(a)該がんが固形腫瘍において見出されるがんを含むか;または
(b)該がんが造血系において生じ、かつ
(ii)任意で、該薬学的組成物が、1つまたは複数の抗悪性腫瘍剤をさらに含む、
前記薬学的組成物。
【請求項30】
請求項1~16のいずれか一項記載の組成物または請求項17~27のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFNを含む、キット。
【請求項31】
対象においてがんを処置する方法であって、請求項1~16のいずれか一項記載の組成物または請求項17~27のいずれか一項記載の標的指向性のマスクされたIFNの治療的有効量を該対象に投与する工程を含み、任意で、該対象がヒト対象である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月15日に出願された米国特許仮出願第62/920,140号に対して優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に完全に組み入れられる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:165802000140.txt、記録日:2020年4月14日、サイズ:24.7 KB)。
【0003】
連邦政府支援の研究下で行われた発明に対する権利の記述
該当しない。
【0004】
発明の分野
本明細書に記載される本発明は、がん治療法および他の免疫学的障害もしくは疾患の治療法の分野に関する。具体的には、本発明は、腫瘍抗原結合タンパク質に融合させて、ヒトにおける標的指向性がん治療法のためのビヒクルとして使用することができる、マスクされたI型インターフェロン(IFN)組成物に関する。本発明はさらに、がんならびに他の免疫学的障害および疾患などの、障害または疾患の処置に関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
がんは、世界的に冠状動脈疾患の次の2番目に多い死因である。数百万人もの人々が、毎年がんで死亡し、米国単独において、がんは、年間50万人を優に超える人々を死亡させ、2017年には1,688,780の新たながん症例が診断された(American Cancer Society)。心疾患由来の死亡は有意に下落してきているが、がんに起因する死亡は、概して上昇中である。医学の発展が現在の傾向を変化させない限り、今世紀の初頭に、がんが主たる死因になることが予測される。
【0006】
いくつかのがんは、高い割合の死亡率を有するとして際立っている。骨髄腫を含む血液悪性腫瘍は、米国だけでも年間50,000人の死亡をもたらす(American Cancer Society, 2018)。加えて、肺がん(すべてのがんによる死亡の18.4%)、乳がん(すべてのがんによる死亡の6.6%)、大腸がん(すべてのがんによる死亡の9.2%)、肝臓がん(すべてのがんによる死亡の8.2%)、および胃がん(すべてのがんによる死亡の8.2%)は、世界中のすべての年齢で両方の性別について、がんによる死亡の主要な原因に相当する(GLOBOCAN 2018)。これらのおよび実質的にすべての他のがん腫は、原発腫瘍から離れた部位へ転移し、非常にわずかな例外はあるが、転移性疾患が致命的である点で、共通の致死の特徴を有する。さらに、その原発がんを最初に生き延びたがん患者についてさえ、その生活が劇的に変わる共通の経験が示されている。多くのがん患者は、再発または処置の失敗の可能性を意識することによって陥る強い不安を経験する。多くのがん患者はまた、処置後の身体的衰弱も経験する。さらに、多くのがん患者は、その疾患の再発を経験する。
【0007】
がん治療法は、過去数十年にわたって改善され、生存率は上昇してきているが、異質の要素からなるという性質ゆえに、がんは依然として、複数の処置様式を利用する新たな治療戦略を必要としている。これは特に、解剖学的に困難な部位の固形腫瘍(例えば、神経膠芽腫、頭頚部の扁平上皮がん、および肺腺がん)の処置において当てはまり、それらは、時には標準的な放射線療法および/または化学療法に限定される。それにもかかわらず、これらの治療法の有害な効果は、患者の生活の質を低減させる重度の副作用に加えて、化学療法耐性および放射線療法耐性であり、これは、局所領域での再発、離れた転移、および第2の原発腫瘍を促進する。
【0008】
さらに、モノクローナル抗体(mAb)(G. Kohler and C. Milstein, Nature 256:495-497 (1975)(非特許文献1))の治療的有用性は、現実化している。モノクローナル抗体は現在、移植、がん、感染症、心血管疾患、および炎症において治療法として承認されている。異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能を有する。そのような機能の差は、様々な免疫グロブリンアイソタイプについて別個の3次元構造に反映されている(P. M. Alzari et al., Annual Rev. Immunol., 6:555-580 (1988)(非特許文献2))。
【0009】
加えて、IFNαおよびIFNβ(I型)ならびにIFNγ(II型)を含むインターフェロンは、多くのがんに対する直接の抗増殖効果および多数の抗腫瘍免疫療法効果の両方を有する、抗がん免疫の不可欠な媒介物質である。しかし、IFNαは、複数のヒトがんに対する効力を示しているが、全身毒性を引き起こさずに腫瘍部位でIFNの有効な濃度を達成することができないことにより、その臨床的有用性は現在まで限定されている。
【0010】
全身毒性のために、いくつかのグループは、IFNを腫瘍部位に直接運ぶモノクローナル抗体の腫瘍ターゲティング能力を用いることによって、この問題にアプローチしている。Huang, et al., J. Immunol. 179(10), pp. 6881-6888 (2007)(非特許文献3)およびVasuthasawat, et. al., J. Immunol. 36(5), pp. 305-318 (2013)(非特許文献4)を参照されたい。初期の研究は、リンパ腫上に発現しているCD20にIFNαを標的指向させる抗CD20-IFNα2タンパク質、および多発性骨髄腫上に発現しているCD138を標的とする抗CD138-IFNα2融合タンパク質を用いていることが注目される。Vasuthasawat, et. al., MAbs 8(7), pp. 1386-1397 (2016)(非特許文献5)を参照されたい。これらのアプローチは、大きな治療的有望性を示しており、現在、ヒト臨床治験において試験され、商業的に開発されているが、いくつかの欠陥がある。
【0011】
腫瘍関連抗原を標的とする抗体結合特異性を用いることは、IFNがそのままで注射される場合に達成されるよりも多くのパーセンテージ(%)のIFNを、腫瘍の部位に送達することが注目されるが、付加されたインターフェロンは依然として、腫瘍に関連しない身体全体にわたって発現しているインターフェロン受容体により認識され結合される。したがって、Mab融合IFNは依然として、全身曝露および身体全体にわたるIFN受容体との相互作用のために、毒性を誘導し、かつ/または増加したクリアランスを有し得る。
【0012】
前述から、がんおよび免疫学的疾患の処置において新たな処置パラダイムが必要とされることが、当業者には容易に明らかであろう。
【0013】
IFNをがん細胞に送達することに関連する現在の欠陥を考慮して、IFNの活性をそれが腫瘍に到達するまで阻害するマスクされたIFNを利用し、がん、免疫学的障害、および他の疾患を処置する新たなかつ改善された方法を提供することが、本発明の目的である。そのような必要を満たす使用のための組成物、キット、および方法が提供される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】G. Kohler and C. Milstein, Nature 256:495-497 (1975)
【非特許文献2】P. M. Alzari et al., Annual Rev. Immunol., 6:555-580 (1988)
【非特許文献3】Huang, et al., J. Immunol. 179(10), pp. 6881-6888 (2007)
【非特許文献4】Vasuthasawat, et. al., J. Immunol. 36(5), pp. 305-318 (2013)
【非特許文献5】Vasuthasawat, et. al., MAbs 8(7), pp. 1386-1397 (2016)
【発明の概要】
【0015】
本発明は、腫瘍関連抗原(TAA)の全範囲に結合する抗体、抗原結合断片、および融合タンパク質組成物を提供する。さらなる態様において、融合タンパク質は、I型インターフェロンを含む。さらなる態様において、IFNは、腫瘍細胞に到達するまでその活性が低減されるかまたは無にされるようにマスクされる。さらなる態様において、TAAは、表Iに示される。好ましい態様において、TAAは、固形腫瘍に関連している。1つの態様において、TAAはCD138を含む。さらなる態様において、TAAはCD20である。さらなる態様において、TAAはメソテリンである。別の態様において、TAAは5T4である。さらに別の態様において、IFNまたは機能的に活性を有する変異体は、表IIに示される。好ましい態様において、IFNはIFNA2を含む。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、標的指向性のマスクされたIFNを含む。好ましい態様において、標的指向性のマスクされたIFNは、IFNA1を含む。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、標的指向性のマスクされたIFNを含む。好ましい態様において、標的指向性のマスクされたIFNは、IFNA14を含む。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、標的指向性のマスクされたIFNを含む。好ましい態様において、標的指向性のマスクされたIFNは、IFNB1を含む。
【0019】
別の態様において、本開示は、標的指向性のマスクされたIFNを生じる方法を教示する。
【0020】
別の態様において、本開示は、ヒトにおいてがん、免疫学的障害、および他の疾患を処置する方法を教示する。
【0021】
好ましい態様において、本開示は、TAAに結合するMAbに融合しているマスクされたIFNで、がんを処置する方法を教示する。
【0022】
態様のいずれかのいくつかにおいて、がんを処置するための方法は、ヒト対象などの対象に、本明細書に記載される標的指向性のマスクされたIFNのいずれかなどの、組成物のいずれかまたは融合タンパク質のいずれかの治療的有効量を投与する工程を含む。
【0023】
また、本明細書に記載される標的指向性のマスクされたIFNのいずれかなどの、組成物のいずれかまたは融合タンパク質のいずれかの治療的有効量を含む、薬学的組成物も提供される。態様のいずれかのいくつかにおいて、薬学的組成物は、がんの処置を含む治療法における使用のためである。態様のいずれかのいくつかにおいて、がんは、固形腫瘍において見出されるがんを含むか;またはがんは、造血系において生じる。態様のいずれかのいくつかにおいて、薬学的組成物は、1つまたは複数の抗悪性腫瘍剤をさらに含む。
【0024】
また、本明細書に記載される標的指向性のマスクされたIFNのいずれかなどの、組成物のいずれかまたは融合タンパク質のいずれかを含むキットなどの、キットも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】マトリプターゼST 14は、抗CD138融合抗体の重鎖からIFNマスクを切断する。
図2】マトリプターゼST 14は、抗CD138(N297Q)非グリコシル化融合抗体の重鎖からIFNマスクを切断する。
図3】マトリプターゼST 14は、抗5T4融合抗体および抗メソテリン融合抗体の重鎖からIFNマスクを切断する。
図4】マスクされた抗5T4融合抗体およびマスクされた抗メソテリン融合抗体は、アンマスクされた融合タンパク質に比べて低減した親和性でIFNα2受容体に結合する。
図5】マスクされた抗CD20融合抗体およびマスクされた抗CD138融合抗体は、アンマスクされた融合タンパク質に比べて低減した親和性でIFNα2受容体に結合する。
図6】マスキングは、IFN受容体のIFNα融合タンパク質活性化を低減させるが、MST14は活性を回復させる。
図7】マスクされたIFNα活性を低減させる、および回復させる方法。図7(A)は、抗5T4融合抗体を示す。図7(B)は、抗メソテリン抗体を示す。
図8】ヒト末梢血単核細胞(「PBMC」)におけるIP-10の誘導。
図9】QXL138AMの構築物設計。
図10】QXL138AMの発現/精製の特徴決定。
図11】QXL138AMの質量分析計による重鎖および軽鎖の解析。
図12】QXL138AMのSDS-Pageによる特徴決定。
図13】SDS-Pageによるマスクされた融合抗体の特徴決定。
図14】ELISAによるマスクに対する融合抗体の結合。図14(A)は、マスク(ペプチド1)に対する結合を示す。図14(B)は、マスク(ペプチド2)に対する結合を示す。
図15】標的指向性の融合抗体対非標的指向性の融合抗体の特徴決定。図15(A)は、OVKATE細胞における増殖を示す。図15(B)は、OVCAR3細胞における増殖を示す。
図16】標的指向性の融合抗体対非標的指向性の融合抗体の特徴決定。図16(A)は、U266 MTS細胞における増殖を示す。図16(B)は、U266 MTS細胞における増殖を示す。
図17】IFNマスクの除去は、細胞増殖の阻害を回復させる。
図18】抗体ターゲティングおよびマスキングは、オフターゲットのIFNα誘導性細胞傷害活性の低減を助長する。図18(A)は、CD138マスクIFNαを伴うDaudi MTS細胞における増殖を示す。図18(B)は、CD20マスクIFNαおよびCD138マスクIFNαを伴うDaudi MTS細胞における増殖を示す。
図19】マスクされた/アンマスクされた、および標的指向性/非標的指向性の融合抗体の腫瘍細胞株細胞傷害活性。図19(A)は、U266 MTS細胞における増殖を示す。図19(B)は、OVCAR3 MTS細胞における増殖を示す。
図20】マスクされた/アンマスクされた、および標的指向性/非標的指向性の融合抗体の腫瘍細胞株細胞傷害活性。図20(A)は、OCI-My5.5 MTS細胞における増殖を示す。図20(B)は、H929 MTS細胞における増殖を示す。
図21】マスキングは、PBMCのIFNR活性化を低減させる。図21(A)は、用量依存的なSTAT1活性化を示す。図21(B)は、用量依存的なIP-10の誘導を示す。
図22】マスキングは、PBMCのIFNR活性化を低減させる。
図23】QXL138AおよびQXL138AMのインビトロでの機能研究。図23(A)は、QXL138A、QXL138AM、およびQXL138AM+プロテアーゼを示す。図23(B)は、抗CD20-IFNα、抗CD20-IFNα-マスク、および抗CD20-IFNα-マスク+プロテアーゼを示す。
図24】QXL138AおよびQXL138AMのヒト骨髄腫異種移植(H929)におけるインビボでの効力。
図25】QXL138AおよびQXL138AMのヒト骨髄腫異種移植(H929)におけるインビボでの効力。
図26】QXL138Aは、骨髄腫において標準治療の処置(ボルテゾミブ)との相乗作用を示す。
図27】QXL138Aは、骨髄腫において標準治療の処置(ボルテゾミブ)との相乗作用を示す。
図28】QXL138AMは、骨髄腫において標準治療の処置(ポマリドミド)との相乗作用を示す。
図29】QXL138AMは、骨髄腫において標準治療の処置(ポマリドミド)との相乗作用を示す。
図30】マトリプターゼST 14は、抗CD138融合物の重鎖から第2のIFNマスクを切断する。
図31】マスクされた抗CD138(マスク1)融合抗体およびマスクされた抗CD138(マスク2)融合抗体は、アンマスクされた融合タンパク質に比べて低減した親和性でIFNα2受容体に結合する。
図32】マスクされたIFNα活性を低減させる、および回復させる方法。図32(A)は、MSTを伴わない抗CD138融合抗体(マスク1およびマスク2)を示す。図32(B)は、MSTを伴う抗CD138融合物(マスク1およびマスク2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
インターフェロン(IFN)を含む融合タンパク質および組成物が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、提供される融合タンパク質および組成物は、IFNおよび抗体またはその抗原結合断片、例えば、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的である抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、インターフェロンはI型IFNである。いくつかの局面において、提供される融合タンパク質および組成物は、IFNおよびマスク、例えば、IFNとその受容体、例えばIFN-α受容体(IFNAR)との間の相互作用を遮断するポリペプチド配列を含む。いくつかの局面において、提供される融合タンパク質または組成物は、IFN、抗体またはその抗原結合断片、およびマスクを含む。提供される態様のいずれかのいくつかにおいて、融合タンパク質または組成物はまた、可動性ペプチドリンカーも含有する。いくつかの態様において、融合タンパク質または組成物はまた、プロテアーゼ切断部位、例えば、腫瘍関連プロテアーゼ切断部位も含有する。いくつかの局面において、例えば、腫瘍の部位のもしくはその近くの、または腫瘍微小環境(TME)におけるプロテアーゼ切断部位の切断は、IFNの「アンマスキング」をもたらし、IFNのその受容体に対する結合を可能にすることができる。いくつかの局面において、例えば、TAAに特異的である抗体またはその抗原結合断片は、融合タンパク質または組成物を、特定の部位または腫瘍もしくはがんの場所にターゲティングさせることができる。したがって、いくつかの局面において、提供される融合タンパク質および組成物は、がんまたは腫瘍などの疾患または障害を処置するために使用することができる。また、そのような融合タンパク質または組成物を作製する方法、例えば処置の方法におけるまたは治療法における、そのような融合タンパク質または組成物の使用に関連する方法、および、そのような融合タンパク質または組成物を含む薬学的組成物またはキットも提供される。
【0027】
本明細書にさらに記載されるように、標的指向性のマスクされたIFNを含む提供される態様は、非特異的活性が最小限に抑えられ、かつ融合タンパク質が腫瘍部位ではないインターフェロン受容体によって捕捉されないように、それが腫瘍の部位に到達するまでその活性が有意に低減され、かつ/または排除されるマスクされたIFNを含み、いくつかの理由で、利用可能なアプローチを上回る独自の利点を提供する。腫瘍の部位で、マスクを除去することができ、IFNの結合および活性が再活性化され、これは、腫瘍における効力を最大化し、かつ毒性を増加させずに融合タンパク質の有効濃度を増加させることができる。加えて、IFNに付加されている抗体の力で、融合タンパク質を、特定の腫瘍(例えば、抗体が特異的に結合するTAAを発現する腫瘍)にターゲティングさせることができる。特異的なターゲティングにより、IFNが、関心対象のがんに方向付けられ、非がん性組織または非腫瘍性組織を回避するであろう、より大きな機会が可能になる。
【0028】
セクションの概略
I.)定義
II.)抗体
III.)インターフェロン
IV.)IFNをマスクする方法
a. 利用可能なアプローチの議論
b. 本開示のIFNをマスクする方法
V.)腫瘍関連抗原(TAA)を発現するがんの処置
VI.)標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質カクテル
VII.)併用療法
VIII.)キット/製造物品
【0029】
本出願において参照される、特許文書、科学論文、およびデータベースを含むすべての刊行物は、あたかも各個々の刊行物が個別に参照により組み入れられるのと同じ程度まで、すべての目的でその全体が参照により組み入れられる。本明細書に示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開された出願、および他の刊行物に示される定義と反対であるか、または別のように一致しない場合には、本明細書に示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先される。
【0030】
本明細書において用いられるセクションの見出しは、組織化を目的とするだけであり、記載される主題を限定すると解釈されるべきではない。
【0031】
I.)定義:
別段の定義がない限り、本明細書において用いられるすべての技術分野の用語、表記、および他の科学用語、または用語法は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を有するように意図される。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語が、明瞭さのためおよび/または即座の参照のために本明細書において定義され、そのような定義が本明細書に含まれることは、当技術分野において概して理解されているものを上回る実質的な差を表すと、必ずしも解釈されるべきではない。本明細書において記載されるかまたは参照される技法および手順の多くは、当業者によって十分に理解され、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd. Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されている広く利用される分子クローニングの方法論などの従来の方法論を用いて、一般的に使用される。適宜、市販されているキットおよび試薬の使用を含む手順は、別段の注記がない限り、製造業者により定義されたプロトコールおよび/またはパラメータに従って概して行われる。
【0032】
商品名が本明細書において用いられる場合、別段の文脈による指示がない限り、商品名への言及はまた、商品名製品の製品製剤、ジェネリック薬物、および薬学的活性成分にも言及する。
【0033】
「進行がん」、「局所進行がん」、「進行疾患」、および「局所進行疾患」という用語は、関連する組織被膜を通して広がっているがんを意味し、American Urological Association(AUA)システム下のステージC疾患、Whitmore-Jewettシステム下のステージC1~C2疾患、ならびにTNM(腫瘍、結節、転移)システム下のステージT3~T4およびN+疾患を含むように意図される。概して、局所進行疾患を有する患者には手術は推奨されず、これらの患者は、臨床的に局在化した(臓器に限局された)がんを有する患者と比較して、実質的により好ましくない転帰を有する。
【0034】
「天然のグリコシル化パターンを変更すること」は、(根底にあるグリコシル化部位を除去すること、または化学的および/もしくは酵素的手段によってグリコシル化を欠失させることのいずれかによって)天然抗体配列において見出される1つもしくは複数の糖質部分を欠失させること、および/または天然抗体配列には存在しない1つもしくは複数のグリコシル化部位を付加することを意味するように、本明細書における目的で意図され、「天然のグリコシル化パターン」とは、用いられる抗体配列、細胞タイプ、および増殖条件の特定の組み合わせに起因する、天然の翻訳後グリコシル化パターンを指す。加えて、この句は、自然での、存在する様々な糖質部分の比率の変化を含む、天然タンパク質のグリコシル化の質的変化を含む。
【0035】
「類似体」という用語は、別の分子(例えば、TAAに関連したタンパク質)と構造的に類似しているか、または類似のもしくは対応する属性を共有する、分子を指す。例えば、TAAタンパク質の類似体は、TAAに特異的に結合する抗体またはT細胞が特異的に結合することができる。
【0036】
「抗体」という用語は、別段の明らかな指示がない限り、最も広い意味で用いられる。したがって、「抗体」は、天然に存在することができ、または、従来のハイブリドーマもしくはトランスジェニックマウス技術によって産生されるモノクローナル抗体など、人工であることができる。抗体には、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにこれらの抗体の抗原結合ドメインおよび/または1つもしくは複数の相補性決定領域を含有する断片が含まれる。本明細書において用いられる場合、「抗体」という用語は、TAAに特異的に結合し、かつ/または所望の生物学的活性を示す任意の形態の抗体またはその断片を指し、具体的には、(全長モノクローナル抗体を含む)モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片に、それらがTAAに特異的に結合し、かつ/または所望の生物学的活性を示す限り、及ぶ。任意の特異的抗体を、本明細書で提供される方法および組成物において用いることができる。したがって、1つの態様において、「抗体」という用語は、標的抗原に対する特異的結合部位を組み合わせで形成する、軽鎖免疫グロブリン分子由来の少なくとも1つの可変領域および重鎖分子由来の少なくとも1つの可変領域を含む分子を包含する。1つの態様において、抗体はIgG抗体である。例えば、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4抗体、または任意の公知の抗体アイソタイプである。本方法および組成物において有用な抗体は、細胞培養において、ファージにおいて、または、ウシ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、および類人猿を含むがそれらに限定されない様々な動物において生成させることができる。したがって、1つの態様において、本発明の抗体は、哺乳動物抗体である。初期抗体を単離するため、または変更された特異性または結合力の特徴を有するバリアントを生成するために、ファージ技法を用いることができる。そのような技法は、当技術分野において日常的であり、かつ周知である。1つの態様において、抗体は、当技術分野において公知の組換え手段によって産生される。例えば、組換え抗体は、抗体をコードするDNA配列を含むベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることによって、産生させることができる。宿主細胞において少なくとも1つのVL領域および少なくとも1つのVH領域を発現するDNA配列をトランスフェクトするために、1つまたは複数のベクターを用いることができる。抗体の生成および産生の組換え手段の例示的な記載には、Delves, ANTIBODY PRODUCTION: ESSENTIAL TECHNIQUES (Wiley, 1997);Shephard, et al., MONOCLONAL ANTIBODIES (Oxford University Press, 2000);Goding, MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE (Academic Press, 1993);およびCURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY (John Wiley & Sons, 最新版)が含まれる。本発明の抗体は、所望の機能の媒介における抗体の効力を増加させるために、組換え手段によって改変することができる。したがって、組換え手段を用いた置換によって抗体が改変され得ることも、本発明の範囲内である。典型的には、置換は保存的置換であろう。例えば、抗体の定常領域中の少なくとも1つのアミノ酸を、異なる残基で置き換えることができる。例えば、米国特許第5,624,821号、米国特許第6,194,551号、出願番号WO 9958572;およびAngal, et al., Mol. Immunol. 30: 105-08 (1993)を参照されたい。アミノ酸の改変には、アミノ酸の欠失、付加、および置換が含まれる。場合によっては、そのような変更は、望ましくない活性、例えば、補体依存性細胞傷害活性を低減させるために行われる。頻繁に、抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を共有結合性または非共有結合性のいずれかで連結することによって、標識される。多種多様な標識およびコンジュゲーション技法が、公知であり、化学文献および特許文献の両方において幅広く報告されている。これらの抗体を、正常のまたは欠損したTAAに対する結合についてスクリーニングすることができる。例えば、ANTIBODY ENGINEERING: A PRACTICAL APPROACH (Oxford University Press, 1996)を参照されたい。増殖、遊走、接着、軟寒天増殖、血管新生、細胞-細胞コミュニケーション、アポトーシス、輸送、シグナル伝達を含むがそれらに限定されないその後のインビトロアッセイ、および腫瘍成長の阻害などのその後のインビボアッセイを用いて、所望の生物学的活性を有する適している抗体を特定することができる。本明細書で提供される抗体はまた、診断応用においても有用であり得る。捕捉抗体または非中和抗体として、抗原の受容体結合または生物学的活性を阻害することなく特異的抗原に結合する能力について、それらをスクリーニングすることができる。中和抗体として、抗体は、競合結合アッセイにおいて有用であり得る。それらはまた、TAAまたはその受容体を定量するために用いることもできる。
【0037】
抗体の「抗原結合断片」または「抗体断片」(または単純に「抗体部分」)という用語は、本明細書において用いられる場合、TAA抗原(例えば、CD138、CD20、メソテリン、5T4、およびそれらのバリアント;表Iも参照されたい)に特異的に結合する能力を保持するTAA抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含される結合断片の例には、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab')2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え法を用いて、VL領域とVH領域とがペア形成して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作られることを可能にする合成リンカーによって、連結することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。そのような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含されるように意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技法を用いて取得され、断片を、無傷の抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングする。
【0038】
「Fc」という用語は、本明細書において用いられる場合、ヒンジ領域、CH2、および/またはCH3ドメインを含む領域を指す。
【0039】
本明細書において用いられる場合、任意の形態の「抗原」を、TAAに特異的である抗体を生成するために用いることができる。したがって、惹起抗原は、単独または当技術分野において公知の1つもしくは複数の免疫原性増強剤との組み合わせの、単一エピトープ、複数エピトープ、またはタンパク質全体であってもよい。惹起抗原は、単離された全長タンパク質、細胞表面タンパク質(例えば、抗原の少なくとも一部分をトランスフェクトした細胞を免疫する)、または可溶性タンパク質(例えば、タンパク質の細胞外ドメイン部分のみを免疫する)であってもよい。抗原は、遺伝子改変細胞において産生されてもよい。抗原をコードするDNAは、ゲノムまたは非ゲノム(例えば、cDNA)であってもよく、細胞外ドメインまたは細胞内ドメインの少なくとも一部分をコードする。本明細書において用いられる場合、抗原の文脈における「一部分」という用語は、適宜、関心対象の抗原の免疫原性エピトープを構成するための、最小数のアミノ酸または核酸を指す。アデノウイルスベクター、プラスミド、および非ウイルスベクター、例えばカチオン性脂質を含むがそれらに限定されない、関心対象の細胞の形質転換に適している任意の遺伝学的ベクターが、使用されてもよい。1つの態様において、本明細書における方法および組成物の抗体は、関心対象のTAAの細胞外ドメインの少なくとも一部分に特異的に結合する。
【0040】
本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、「生物活性剤」を構成するか、またはその一部であり得る。本明細書において用いられる場合、「生物活性剤」という用語は、抗原に結合し、かつ/または細胞殺傷毒素を増強する所望の生物学的効果を増強するかもしくは媒介する、任意の合成のまたは天然に存在する化合物を指す。1つの態様において、本発明において有用な結合断片は、生物学的に活性の断片である。本明細書において用いられる場合、「生物学的に活性の」という用語は、所望の抗原エピトープに結合し、かつ直接的にまたは間接的に生物学的効果を発揮することができる、抗体または抗体断片を指す。直接の効果には、増殖シグナルの調節、刺激、および/または阻害、抗アポトーシスシグナルの調節、刺激、および/または阻害、アポトーシスまたはネクローシスシグナルの調節、刺激、および/または阻害、ADCCカスケードの調節、刺激、および/または阻害、ならびにCDCカスケードの調節、刺激、および/または阻害が含まれるが、それらに限定されない。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「保存的置換」という用語は、当業者に公知であり、かつ概して、結果として生じた分子の生物学的活性を変更することなく行われ得る、アミノ酸および/またはアミノ酸配列の置換を指す。当業者は、概して、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変更しないことを認識している(例えば、Watson, et al., MOLECULAR BIOLOGY OF THE GENE, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p. 224 (4th Edition 1987)を参照されたい)。そのような例示的な置換は、好ましくは、表IIIに示されるアミノ酸に従って行われる。例えば、そのような変更は、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のいずれかでこれらの疎水性アミノ酸のいずれかの他のものを;アスパラギン酸(D)でグルタミン酸(E)をおよびその逆で;グルタミン(Q)でアスパラギン(N)をおよびその逆で;ならびにセリン(S)でスレオニン(T)をおよびその逆で、置換することを含む。他の置換もまた、タンパク質の三次元構造における特定のアミノ酸の環境およびその役割に応じて、保存的と考えることができる。例えば、グリシン(G)およびアラニン(A)は、頻繁に交換可能であることができ、アラニン(A)およびバリン(V)も同様であり得る。相対的に疎水性であるメチオニン(M)は、頻繁に、ロイシンおよびイソロイシンで、時にはバリンで交換することができる。リジン(K)およびアルギニン(R)は、アミノ酸残基の有意な特徴がその電荷であり、かつこれらの2つのアミノ酸残基の異なるpKが有意ではない場所で、頻繁に交換可能である。さらに他の変更を、特定の環境において「保存的」と考えることができる(例えば、本明細書における表III;"Biochemistry" 2nd ED. Lubert Stryer ed. (Stanford University)の13~15ページ;Henikoff et al., PNAS 1992 Vol 89 10915-10919;Lei et al., J Biol Chem 1995 May 19; 270(20):11882-6を参照されたい)。他の置換もまた、許容でき、経験的にまたは公知の保存的置換に従って決定され得る。
【0042】
本明細書において用いられる「融合タンパク質」という用語は、当技術分野において公知のリンカーおよび方法を用いてC末端で本発明のIFNに融合している、本発明のタンパク質を意味する。例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,803,021号を参照されたい。本発明のタンパク質にIFNを融合させるために用いることができる例示的なリンカーには、
;Landar;Double Landar;1qo0E_1;IgG3ヒンジ;IgG3ヒンジΔcys;および/またはIgG1ヒンジΔcysが含まれるが、それらに限定されない。
【0043】
本明細書において用いられる「阻害する」または「阻害」という用語は、測定可能な量だけ低減させること、または全体的に阻止することを意味する。
【0044】
本明細書において用いられる「インターフェロン」という用語は、いくつかのウイルスの存在に応答して宿主細胞によって作られ、かつ放出されるシグナル伝達タンパク質のグループを意味する。典型的なシナリオにおいて、ウイルスに感染した細胞は、インターフェロンを放出して、近くの細胞がその抗ウイルス防御を高めるようにさせると考えられる。IFNは、病原体を根絶する手助けをする免疫系の保護的防御を引き起こすために細胞間のコミュニケーションに用いられる分子である、サイトカインとして公知のタンパク質の大きなクラスに属する。
【0045】
本明細書において用いられる「1型インターフェロン」または「I型インターフェロン」という用語は、免疫系の活性を制御する手助けをする、インターフェロンタンパク質の大きなサブグループを意味する。すべてのI型IFNは、IFNAR1鎖およびIFNAR2鎖からなるIFN-α受容体(IFNAR)として公知の特異的な細胞表面受容体複合体に結合する。本開示のI型インターフェロンの例示的なリストが、表IIに示される。
【0046】
「哺乳動物」という用語は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、およびヒトを含む、哺乳動物と分類される任意の生物を指す。本発明の1つの態様において、哺乳動物はマウスである。本発明の別の態様において、哺乳動物はヒトである。
【0047】
マスクされたIFNに言及する際の「マスク」という用語(「マスクされた」IFNとも示される)は、本発明の目的で、IFNARのサイトカイン相互作用および/または活性化を遮断する任意のペプチドまたはタンパク質を意味する。組換え手段を用いた置換によって「マスク」が改変され得ることは、本発明の範囲内である。アミノ酸の改変には、アミノ酸の欠失、付加、および置換が含まれる。
【0048】
本明細書において用いられる「標的指向性のマスクされたIFN」という用語は、ポリペプチドがIFNのカルボキシ末端に付加され、それによりIFNARに結合する能力が低減している、I型インターフェロンを意味する。マスクされたIFNは、標的指向性の結合タンパク質(すなわち、抗体)のカルボキシ末端への付加をさらに含む。組換え手段を用いた置換によって「標的指向性のマスクされたIFN」が改変され得ることは、本発明の範囲内である。アミノ酸の改変には、アミノ酸の欠失、付加、および置換が含まれる。
【0049】
「転移性がん」および「転移性疾患」という用語は、所属リンパ節にまたは離れた部位に広がっているがんを意味し、AUAシステム下でのステージD疾患およびTNMシステム下でのステージT×N×M+を含むように意図される。
【0050】
「分子認識」とは、宿主分子が第2の分子(すなわち、ゲスト)と複合体を形成することができる化学的事象を意味する。このプロセスは、水素結合、疎水性相互作用、イオン性相互作用を含むがそれらに限定されない、非共有結合性化学結合を通して起こる。
【0051】
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る、可能性のある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原エピトープに対して方向付けられる。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、異なるエピトープに対して方向付けられる(または特異的である)多数の抗体を含む。1つの態様において、ポリクローナル抗体は、複数の抗原エピトープを含有する単一の抗原内に異なるエピトープ特異性、親和性、または結合力を有する複数のモノクローナル抗体を含有する。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質の集団から得られているような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256: 495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991)に記載されている技法を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。これらのモノクローナル抗体は、通常ELISAによって測定される、少なくとも、約1μM、より普通には少なくとも約300 nM、典型的には少なくとも約30 nM、好ましくは少なくとも約10 nM、より好ましくは少なくとも約3 nM、またはより良いKdで、通常結合するであろう。
【0052】
「薬学的に許容される」とは、ヒトまたは他の哺乳動物と生理学的に適合性である、非毒性、不活性、および/または組成を指す。
【0053】
本明細書において用いられる場合、「一本鎖Fv」または「scFv」または「一本鎖」抗体という用語は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む抗体断片を指し、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。概して、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする。scFvの総説については、Pluckthun, THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0054】
本明細書において用いられる場合、「特異的な」、「特異的に結合する(specifically binds)」、および「特異的に結合する(binds specifically)」という用語は、標的抗原エピトープに対する抗体の選択的結合を指す。所与のセットの条件下で、適切な抗原に対する結合を無関連の抗原または抗原混合物に対する結合と比較することによって、結合の特異性について抗体を試験することができる。抗体が、適切な抗原に対して、無関連の抗原または抗原混合物に対してよりも少なくとも2、5、7倍、および好ましくは10倍多く結合する場合には、特異的であると考えられる。1つの態様において、特異的抗体は、TAA抗原にのみ結合するが、無関連の抗原には結合しないものである。別の態様において、特異的抗体は、ヒトTAA抗原に結合するが、TAA抗原と70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のアミノ酸相同性を有する非ヒトTAA抗原には結合しないものである。別の態様において、特異的抗体は、ヒトTAA抗原に結合するが、TAA抗原のアミノ酸配列と70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のパーセント同一性を有する非ヒトTAA抗原には結合しないものである。別の態様において、特異的抗体は、ヒトTAA抗原に結合し、かつマウスTAA抗原に結合するが、ヒト抗原に結合する程度がより高いものである。別の態様において、特異的抗体は、ヒトTAA抗原に結合し、かつ霊長類TAA抗原に結合するが、ヒト抗原に結合する程度がより高いものである。別の態様において、特異的抗体は、ヒトTAA抗原および任意の非ヒトTAA抗原に結合するが、ヒト抗原またはその任意の組み合わせに結合する程度がより高い。
【0055】
本明細書において用いられる場合、「処置すること」または「治療の」および文法的に関連する用語は、長期の生存、より低い罹患率、および/または代替の治療様式の副産物である副作用の減少などの、疾患の任意の結果の任意の改善を指し;当技術分野において容易に認識されるように、処置行為を必要としないが、疾患の完全な根絶が好ましい。
【0056】
II.)抗体
いくつかの態様において、標的指向性のマスクされたインターフェロン(IFN)などの提供される融合タンパク質、および組成物は、抗体またはその抗原結合断片を含む。提供される態様のいずれかのいくつかにおいて、抗体は、がんまたは免疫学的障害もしくは疾患などの疾患または障害に関連する抗原、例えば腫瘍関連抗原(TAA)である抗原に結合し、例えば特異的に結合し、認識し、標的とする。いくつかの局面において、抗原(例えば、TAA)に対する結合の力で、標的指向性のマスクされたIFNなどの提供される融合タンパク質は、がんまたは腫瘍の領域などの、治療のための関連する物理的位置にターゲティングされ得る。いくつかの局面において、記載される抗体またはその抗原結合断片を、例えば、本明細書で提供される標的指向性のIFN、抗体-IFN融合タンパク質、または標的指向性のマスクされたIFNのいずれかにおいて、本明細書で提供される融合タンパク質のいずれかのための構成要素として用いることができる。
【0057】
本発明の局面は、腫瘍関連抗原(TAA)およびTAAに関連したタンパク質などの、がんまたは腫瘍に関連する抗原に結合する抗体を提供する(表Iを参照されたい)。1つの態様において、TAAに関連したタンパク質に結合する抗体は、表1に示されるタンパク質のアミノ酸を含むTAAタンパク質に特異的に結合する抗体である。例えば、表Iに示されるタンパク質の1つのアミノ酸配列を含むTAAタンパク質に結合する抗体は、TAAバリアントおよびその相同体または類似体などの、TAAに関連したタンパク質に結合することができる。
【0058】
いくつかの局面において、TAAまたはTAAに関連したタンパク質に結合する抗体、例えば提供される態様の抗TAA抗体は、予後アッセイ、画像化、診断、および治療の方法論のために、がんにおいて特に有用である。いくつかの局面において、提供される態様の抗体は、治療用抗体、例えば、表Iに示されるTAAなどの、TAAに特異的に結合する治療用抗体である。同様に、そのような抗体は、(例えば、治療剤と組み合わされた場合に)、融合タンパク質において、がん、例えば卵巣がん、頭頚部がん、多発性骨髄腫、および他のがんの処置および/または予後判定において、これらの他のがんにTAAがまた発現しているかまたは過剰発現している程度まで、有用である。さらに、細胞内で発現される抗体(例えば、一本鎖抗体)を含む、提供される態様の抗体は、TAAの発現が関与しているがん、例えば、固形腫瘍における進行性もしくは転移性のがん、または他の進行性もしくは転移性のがんの処置において、治療的に有用である。1つの態様において、本明細書で開示されるTAA結合アッセイは、がんの検出における、例えば、免疫アッセイにおける使用のためである。
【0059】
いくつかの態様において、提供される融合タンパク質または組成物は、腫瘍関連抗原(TAA)、例えば、表Iに示される例示的なTAAから選択されるTAAに結合する抗体を含む。いくつかの態様において、TAAは、腫瘍の表面、例えば、腫瘍細胞またはがん細胞の表面上に発現している抗原である。いくつかの態様において、TAAには、本明細書に記載される任意のがんなどの、本明細書に記載される疾患または状態のいずれかに関連する任意の抗原が含まれる。いくつかの態様において、TAAは、腫瘍微小環境(TME)中に存在する細胞などの、腫瘍に関連する細胞の表面上に発現している抗原である。いくつかの態様において、TAAは、TME中に存在する抗原である。
【0060】
いくつかの態様において、提供される融合タンパク質または組成物は、血液悪性腫瘍などの、造血系に生じる腫瘍に関連する腫瘍関連抗原に結合する抗体を含む。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質または組成物は、CD138抗原に結合する抗体を含む。いくつかの態様において、抗体は、表Iに示されるTAAの1つに結合し、例えば特異的に結合する。
【0061】
いくつかの態様において、抗体は、融合タンパク質を含むか、または融合タンパク質に含まれる。いくつかの態様において、抗体は、本明細書で提供される融合タンパク質または組成物のいずれかに含まれる。いくつかの態様において、抗体は、表IIに示されるI型IFNなどの、1型IFNを含む融合タンパク質を含む。いくつかの態様において、抗体は、標的指向性のIFN-αをさらに含む、融合タンパク質を含む。いくつかの態様において、抗体は、標的指向性のマスクされたIFN-αをさらに含む、融合タンパク質を含む。
【0062】
いくつかの局面において、抗体は、抗原結合抗体断片などの抗体断片を含む。抗体断片の例には、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、一本鎖抗体分子、例えば、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、Fv、Fab'-SH、ダイアボディ、線状抗体、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、それらに限定されない。
【0063】
モノクローナル抗体などの抗体の調製のための様々な方法が、当技術分野において周知である。例えば、TAAに関連したタンパク質、ペプチド、または断片を、単離された形態またはイムノコンジュゲートされた形態で用いて適している哺乳動物宿主を免疫することによって、抗体を調製することができる(Antibodies: A Laboratory Manual, CSH Press, Eds., Harlow, and Lane (1988); Harlow, Antibodies, Cold Spring Harbor Press, NY (1989))。加えて、TAA GST融合タンパク質などのTAAの融合タンパク質もまた、用いることができる。特定の態様において、図1のアミノ酸配列のすべてまたは大部分を含むGST融合タンパク質を産生させ、次いで、適切な抗体を生成するための免疫原として用いる。別の態様において、TAAに関連したタンパク質を合成し、免疫原として用いる。
【0064】
加えて、コードされる免疫原に対する免疫応答を生成するために、当技術分野において公知の裸DNA免疫技法が(精製されたTAAに関連したタンパク質またはTAA発現細胞を伴ってまたは伴わずに)用いられる(概説については、Donnelly et al., 1997, Ann. Rev. Immunol. 15: 617-648を参照されたい)。
【0065】
表Iに示されるTAAタンパク質のアミノ酸配列を解析して、例えば、抗体を生成するための免疫原またはエピトープとして、TAAタンパク質の特異的領域を選択することができる。例えば、TAAアミノ酸配列の疎水性および親水性の解析を用いて、TAA構造における親水性領域を特定する。免疫原性構造を示すTAAタンパク質の領域、ならびに他の領域およびドメインは、Chou-Fasman、Garnier-Robson、Kyte-Doolittle、Eisenberg、Karplus-Schultz、またはJameson-Wolfの解析などの、当技術分野において公知の様々な他の方法を用いて、容易に特定することができる。親水性プロファイルは、Hopp, T. P. and Woods, K. R., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:3824-3828の方法を用いて生成することができる。ハイドロパシープロファイルは、Kyte, J. and Doolittle, R. F., 1982, J. Mol. Biol. 157:105-132の方法を用いて生成することができる。接触可能残基パーセント(%)のプロファイルは、Janin J., 1979, Nature 277:491-492の方法を用いて生成することができる。平均可動性プロファイルは、Bhaskaran R., Ponnuswamy P. K., 1988, Int. J. Pept. Protein Res. 32:242-255の方法を用いて生成することができる。βターンプロファイルは、Deleage, G., Roux B., 1987, Protein Engineering 1:289-294の方法を用いて生成することができる。したがって、これらのプログラムまたは方法のいずれかによって特定される各領域は、本発明の範囲内である。TAA抗体の生成のための好ましい方法は、本明細書で提供される実施例によってさらに例証される。免疫原としての使用のためにタンパク質またはポリペプチドを調製するための方法は、当技術分野において周知である。また、タンパク質と、BSA、KLH、または他の担体タンパク質などの担体との免疫原性コンジュゲートを調製するための方法も、当技術分野において周知である。いくつかの状況において、例えば、カルボジイミド試薬を用いる直接コンジュゲーションが用いられ;他の例においては、Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.によって供給されるものなどの連結試薬が有効である。TAA免疫原の投与は、多くの場合、当技術分野において理解されるように、適している期間にわたる、かつ適しているアジュバントの使用を伴う注射によって実施される。免疫スケジュール中に、抗体の力価を取得して、抗体形成の妥当性を判定することができる。
【0066】
TAAモノクローナル抗体は、当技術分野において周知の様々な手段によって産生させることができる。例えば、所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株を、概して公知であるように、抗体産生B細胞を不死化するKohlerおよびMilsteinの標準的なハイブリドーマ技術または改変版を用いて調製する。所望の抗体を分泌する不死化細胞株を、抗原がTAAに関連したタンパク質であるイムノアッセイによってスクリーニングする。適切な不死化細胞培養が特定された場合には、細胞を増大させることができ、インビトロ培養物からまたは腹水からのいずれかで抗体を産生させることができる。
【0067】
本発明の抗体または断片はまた、組換え手段によって産生させることもできる。TAAタンパク質の所望の領域に特異的に結合する領域はまた、複数の種が起源のキメラ抗体または相補性決定領域(CDR)移植抗体の状況において産生させることもできる。ヒト化TAA抗体またはヒトTAA抗体もまた産生させることができ、治療的状況における使用のために好ましい。非ヒト抗体のCDRの1つまたは複数で対応するヒト抗体配列を置換することによって、マウス抗体および他の非ヒト抗体をヒト化するための方法は、周知である(例えば、Jones et al., 1986, Nature 321: 522-525;Riechmann et al., 1988, Nature 332: 323-327;Verhoeyen et al., 1988, Science 239: 1534-1536を参照されたい)。また、Carter et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 4285およびSims et al., 1993, J. Immunol. 151: 2296も参照されたい。
【0068】
1つの態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、免疫グロブリン重鎖(VH、DH、およびJHセグメント)ならびに/またはκ軽鎖(VKおよびJK)遺伝子座に内在性のマウス可変セグメントを有するゲノム配列が、全部または一部、ヒト免疫グロブリン重鎖(VH、DH、およびJH)ならびに/またはκ軽鎖(VKおよびJK)遺伝子座の再編成されていない生殖系列可変セグメントを有するヒトゲノム配列で置き換えられているVelocImmuneマウス(Regeneron, Tarrytown, N.Y.)を用いて調製することができる。例えば、米国特許第6,586,251号、第6,596,541号、第7,105,348号、第6,528,313号、第6,638,768号、および第6,528,314号を参照されたい。
【0069】
加えて、本発明のヒト抗体は、再編成されていないヒト重鎖(μおよびγ)ならびにκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を、内在性のμおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的指向性変異と共に含有するHuMAbマウス(Medarex, Inc.)を用いて生成することができる(例えば、Lonberg, et al. (1994) Nature 368(6474): 856-859を参照されたい)。
【0070】
別の態様において、本発明の完全ヒト抗体は、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を保有するマウス、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を保有するマウスを用いて生じさせることができる。そのようなマウスは、本明細書において「KMマウス」と呼ばれ、Tomizuka et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727およびTomizuka, et al.のPCT公報WO 02/43478に記載されている。
【0071】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリをスクリーニングするためにファージディスプレイ法を用いて、調製することもできる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当技術分野において確立されている。例えば、米国特許第5,223,409号;第5,403,484号;ならびにLadner et al.の米国特許第5,571,698号;Dower et al.の米国特許第5,427,908号および第5,580,717号;McCafferty et al.の米国特許第5,969,108号および第6,172,197号;ならびにGriffiths et al.の米国特許第5,885,793号;第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号および第6,593,081号を参照されたい。
【0072】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、免疫時にヒト抗体応答が生成され得るようにヒト免疫細胞がその中に再構成されているSCIDマウスを用いて、調製することもできる。そのようなマウスは、例えば、Wilson, et al.の米国特許第5,476,996号および第5,698,767号に記載されている。
【0073】
追加的に、本発明のヒト抗体は、抗体産生について不活性化され、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座で操作された、Xenomouseと呼ばれるトランスジェニックマウス(Amgen Fremont, Inc.、以前はAbgenix, Inc.)を用いた技法で作製することができる。ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスを調製する例示的な記載は、米国特許第6,657,103号において見出すことができる。米国特許第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号;および第5,545,806号;ならびにMendez, et. al. Nature Genetics, 15: 146-156 (1998);Kellerman, S. A. & Green, L. L., Curr. Opin. Biotechnol 13, 593-597 (2002)もまた参照されたい。
【0074】
上記の産生方法のいずれかは、TAA、またはTAAに対して85、90、91、92、93、94、95、96、9、98、もしくは99%の配列同一性を有する相同体もしくは断片もしくはポリペプチド配列に結合する、ある特定の能力を有する抗体を結果としてもたらす。抗体、その結合断片、およびそれを含む抗体薬物コンジュゲートのTAAに対する結合親和性(KD)は、1 mM以下、100 nM以下、10 nM以下、2 nM以下、または1 nM以下であり得る。あるいは、KDは、5~10 nM;または1~2 nMであり得る。KDは、1μM~500μMまたは500μM~1 nMであり得る。
【0075】
抗原結合タンパク質の結合親和性は、会合定数(Ka)および解離定数(Kd)によって決定される(KD=Kd/Ka)。結合親和性は、プロテインAでコーティングされたセンサー表面上に試験抗体を捕捉させ、この表面の上にTAAを流すことによって、例えばBIACOREにより測定され得る。あるいは、結合親和性は、プロテインAでコーティングされた針上に試験抗体受容体を捕捉させ、この表面の上にTAAを流すことで、例えばFORTEBIOにより測定することができる。当業者は、結合親和性を測定するために、当技術分野において公知の他の適しているアッセイを特定することができる。
【0076】
TAA抗原結合に関して本明細書において用いられる、タンパク質に「特異的に結合する」という用語は、抗原結合タンパク質が、TAA、およびTAA内の離散性ドメイン、または離散性アミノ酸配列に結合し、他の(例えば、関連がない)タンパク質に対して全く結合を有さないかまたは有意ではない結合を有することを意味する。しかし、この用語は、抗体またはその結合断片がまた、密接に関連した分子と交差反応性であり得る事実を排除しない。本明細書に記載される抗体およびその断片、ならびにこれらを含む融合タンパク質は、密接に関連した分子にそれらが結合するよりも少なくとも2、5、10、50、100、または1000倍高い親和性で、TAAに特異的に結合し得る。
【0077】
1つの局面において、本発明は、腫瘍関連抗原(TAA)に結合する抗体を含む。
【0078】
別の局面において、本発明は、固形がん腫瘍に関連する腫瘍関連抗原(TAA)に結合する抗体を含む。
【0079】
別の局面において、本発明は、造血系において生じる腫瘍に関連する腫瘍関連抗原に結合する抗体を含む。
【0080】
別の局面において、本発明は、CD138抗原に結合する抗体を含む。
【0081】
別の局面において、本発明は、CD20抗原に結合する抗体を含む。
【0082】
別の局面において、本発明は、メソテリン抗原に結合する抗体を含む。
【0083】
別の局面において、本発明は、5T4抗原に結合する抗体を含む。
【0084】
別の局面において、本発明は、PSCA抗原に結合する抗体を含む。
【0085】
別の局面において、抗体は融合タンパク質を含む。
【0086】
別の局面において、抗体は、表IIに示される1型IFNを含む、融合タンパク質を含む。
【0087】
別の局面において、抗体は、標的指向性のIFN-αをさらに含む、融合タンパク質を含む。
【0088】
別の局面において、抗体は、標的指向性のマスクされたIFN-αをさらに含む、融合タンパク質を含む。
【0089】
別の局面において、本発明は、以下の配列を有する重鎖をさらに含む、CD138に結合する抗体を含む。
【0090】
別の局面において、本発明は、以下の配列を有する重鎖をさらに含む、CD138に結合する抗体を含む。
【0091】
III.)インターフェロン
いくつかの態様において、標的指向性のインターフェロン(IFN)、例えば、標的指向性のマスクされたIFNなどの提供される融合タンパク質、および組成物は、インターフェロン(IFN)またはそのバリアントである構成要素を含む。いくつかの局面において、抗体またはその断片もしくは鎖、および「インターフェロンマスク」と融合しているI型IFNなどの、標的指向性のマスクされたIFNもまた提供される。
【0092】
いくつかの態様において、インターフェロン(IFN)またはそのバリアントと、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片とを含む融合タンパク質、例えば、抗体-IFN融合タンパク質または標的指向性のIFNが提供される。いくつかの局面において、IFNは、本明細書に記載される任意の型のIFNである。特定の局面において、提供される態様におけるIFNの例示は、任意の公知のI型IFNおよび本明細書に記載される任意、例えば表IIに示されるものを含む、I型IFNを含む。融合タンパク質中の例示的な抗体は、例えば、セクションIIまたは表Iにおける、本明細書に記載される任意を含む。態様のいずれかのいくつかにおいて、インターフェロンα受容体(IFNAR)のサイトカイン相互作用および/または活性化を遮断するペプチドまたはタンパク質などの;場合によってはインターフェロンマスクとも呼ばれる、「マスク」に付加されているかまたは接続されている、インターフェロン(IFN)またはそのバリアントが提供される。いくつかの局面において、マスクされたIFNが提供される。いくつかの局面において、提供されるマスクされたIFNにおけるIFNの例示は、任意の公知のI型IFNおよび本明細書に記載される任意、例えば表IIに示されるものを含む、I型IFNを含む。例示的なマスク、およびインターフェロンをマスクするための方法は、例えば、セクションIVにおける、本明細書に記載される任意を含む。いくつかの態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、表IIにおけるIFNから選択されるIFN構成要素を含む、「マスクされた」IFNを含む。
【0093】
いくつかの局面において、IFNは、疾患または障害の治療または処置のために使用されるタンパク質である。いくつかの局面において、提供される融合タンパク質および組成物は、がんまたは腫瘍などの疾患または障害の処置において有効であることができ、かつ/または抗がん剤または抗悪性腫瘍剤などの治療剤の有効性を増加させるために使用することができる、IFN構成要素を含有する。
【0094】
IFNは、いくつかのウイルスを含む病原体などの、身体における外来実体の存在に応答して、宿主細胞などの対象または宿主の細胞によって作られ、かつ放出されるシグナル伝達タンパク質のグループである。典型的なシナリオにおいて、ウイルスに感染した細胞は、インターフェロンを放出して、近くの細胞がその抗ウイルス防御を高めるようにさせると考えられる。
【0095】
IFNは、病原体を根絶する手助けをする免疫系の保護的防御を引き起こすために細胞間のコミュニケーションに用いられる分子である、サイトカインとして公知のタンパク質の大きなクラスに属する。インターフェロンは、ウイルス感染症から細胞を保護することによってウイルス複製を「干渉する」能力に由来して名づけられている。いくつかの局面において、IFNはまた、様々な他の機能も有する:(i)それらは、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージなどの免疫細胞を活性化する;かつ(ii)それらは、主要組織適合複合体(MHC)抗原の発現を増加させる力で抗原提示を上方制御することによって、宿主防御を増加させる。
【0096】
20種類よりも多い別個のIFN遺伝子およびタンパク質が、ヒトを含む動物において特定されている。それらは典型的に、3つのクラス:I型IFN、II型IFN、およびIII型IFNに分けられる。すべての3つのクラスに属するIFNが、ウイルス感染症と戦うためおよび免疫系の制御のために重要である。
【0097】
I型インターフェロン:すべてのI型IFNは、IFNAR1鎖およびIFNAR2鎖からなるIFN-α/β受容体(IFNAR)として公知の、特異的な細胞表面受容体複合体に結合する。IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ、およびIFN-ωを含むがそれらに限定されない13種類のI型インターフェロンが、ヒトに存在する。概して、I型インターフェロンは、侵入しているウイルスを身体が認識する時に産生される。それらは、線維芽細胞および単球によって産生される。しかし、I型IFN-αの産生は、インターロイキン-10として公知の別のサイトカインによって妨げられる。I型インターフェロンは、ひとたび放出されると、標的細胞上の特異的な受容体に結合し、これは、ウイルスがそのRNAおよびDNAを産生して複製することを阻止する、タンパク質の発現をもたらす。
【0098】
II型インターフェロン(ヒトにおけるIFN-γ):これはまた、免疫インターフェロンとしても公知であり、インターロイキン-12によって活性化される。さらに、II型インターフェロンは、細胞傷害性T細胞、および具体的にはI型Tヘルパー細胞によって放出される。しかし、それらは、2型Tヘルパー細胞の増殖を遮断する。前者は、Th2免疫応答の阻害およびTh1免疫応答のさらなる誘導を結果としてもたらし、これは、多発性硬化症などの衰弱性疾患の発症をもたらす。II型IFNは、IFNGR1鎖およびIFNGR2鎖からなるIFNGRに結合する。
【0099】
III型インターフェロン:IL10R2(CRF2-4とも呼ばれる)およびIFNLR1(CRF2-12とも呼ばれる)からなる受容体複合体を通したシグナル。最近の情報は、いくつかのタイプのウイルス感染症または真菌感染症におけるIII型IFNの重要性を実証する。
【0100】
概して、I型およびII型インターフェロンは、免疫応答を制御することおよび活性化することを担う。I型およびIII型IFNの発現は、細胞質受容体およびエンドソーム受容体による、ウイルス構成要素、特に核酸の認識時に、実質的にすべての細胞タイプにおいて誘導され得るが、II型インターフェロンは、IL-12などのサイトカインによって誘導され、その発現は、T細胞およびNK細胞などの免疫細胞に制限されている。
【0101】
いくつかの局面において、IFNおよびIFNを含有するかまたはそれに由来するタンパク質を、治療剤として使用することができる。提供される態様のいずれかのいくつかにおいて、融合タンパク質のIFN構成要素、例えば、標的指向性のマスクされたIFNは、がんなどの疾患または障害の処置のための治療剤として使用される。
【0102】
いくつかの局面において、インターフェロン療法は、いくつかのがんの処置として(化学療法および放射線との組み合わせで)用いられる。この処置は、血液悪性腫瘍;毛様細胞白血病、慢性骨髄性白血病、結節性リンパ腫、および皮膚T細胞リンパ腫を含む白血病およびリンパ腫において用いられ得る。いくつかの例において、再発性黒色腫を有する患者は、組換えIFN-α2bを受ける。
【0103】
がん治療法において利用可能なIFNを用いることでの主要な限界は、全身毒性を引き起こさずに腫瘍部位でIFNの有効な濃度を達成することができないことである。この限界を克服するために、IFNを腫瘍部位に直接運ぶモノクローナル抗体の腫瘍ターゲティング能力を用いることによって、この問題を解決するいくつかの試みが行われている。Huang, et al., J. Immunol. 179(10), pp. 6881-6888 (2007)およびVasuthasawat, et. al., J. Immunol. 36(5), pp. 305-318 (2013)を参照されたい。初期の研究は、リンパ腫上に発現しているCD20にIFNαをターゲティングさせる抗CD20-IFNα2タンパク質、および多発性骨髄腫上に発現しているCD138を標的とする抗CD138-IFNα2融合タンパク質を用いていることが注目される。Vasuthasawat, et. al., MAbs 8(7), pp. 1386-1397 (2016)を参照されたい。これらのアプローチは、大きな治療的有望性を示しており、現在ヒト臨床治験において試験され、商業的に開発されているが、これらの利用可能なアプローチのいくつかの欠陥がある。
【0104】
腫瘍関連抗原を標的とする抗体結合特異性を用いることは、IFNがそのままで注射される場合に達成されるよりも多くのパーセンテージのIFNを、腫瘍の部位に送達するが、付加されたインターフェロンは依然として、腫瘍に関連しない細胞または正常細胞などの、身体全体の細胞が発現しているインターフェロン受容体が認識して結合することができる。この結合は、腫瘍に到達するIFNがより少ないことおよび望ましくないオフターゲットの毒性の両方を、結果としてもたらし得る。そのような限界および欠陥を克服する態様が、提供される。
【0105】
したがって、腫瘍などの疾患または障害の処置に関連している場所または領域にIFNが到達する時まで、IFNの機能または活性を「マスクする」機構を提供することによって、これらの限界を克服することが、本発明の目的である。その時、IFNは「アンマスクされ」、活性および機能が、効率的にオンに切り換えられる。そのように、いくつかの態様において、腫瘍などの治療効果のための関心対象の場所でのみ「アンマスクされる」かまたは「活性化される」融合タンパク質、例えば、標的指向性のマスクされたIFNが提供される。いくつかの局面において、身体の残りの部分、例えば、一般に体循環におけるIFNの機能または活性のマスキングは、IFNの非特異的な活性を低減させるかまたは阻止し、かつまた治療剤、例えばIFNが、身体における非がん性細胞または非腫瘍性細胞に捕捉されるかまたはそれに吸い上げられるのを低減させるかまたは阻止することができる。いくつかの局面において、IFNの機能または活性のマスキング、および関心対象の場所、例えば腫瘍へのIFNのターゲティングは、提供される態様中に存在する抗体の力で、例えば、抗体による剤の特異的ターゲティングにより、IFNが結合し、かつ/または捕捉されるのを阻止することによって、治療剤(例えば、IFN)の濃度を効率的に増加させることができる。
【0106】
したがって、いくつかの態様において、本発明は、IFNが、ひとたび腫瘍に到達するとIFN受容体に選択的に結合する、抗体-IFN融合タンパク質を含む。
【0107】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、タンパク質分解性切断用の部位であるペプチドリンカーによって分離されている、IFNを含む。
【0108】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、「マスクされた」IFNを含む。
【0109】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、タンパク質分解性切断用の部位であるペプチドリンカーによって分離されている、「マスクされた」IFNを含む。
【0110】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、「マスクされた」IFNA1を含む。
【0111】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、タンパク質分解性切断用の部位であるペプチドリンカーによって分離されている、「マスクされた」IFNA1を含む。
【0112】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、「マスクされた」IFNA2を含む。
【0113】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、タンパク質分解性切断用の部位であるペプチドリンカーによって分離されている、「マスクされた」IFNA2を含む。
【0114】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、「マスクされた」IFNB1を含む。
【0115】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、タンパク質分解性切断用の部位であるペプチドリンカーによって分離されている、「マスクされた」IFNB1を含む。
【0116】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、表IIに示されるIFNから選択される、「マスクされた」IFNを含む。
【0117】
別の態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、タンパク質分解性切断用の部位であるペプチドリンカーによって分離されている、かつ表IIに示されるIFNから選択される、「マスクされた」IFNを含む。
【0118】
別の局面において、抗体-IFN融合タンパク質は、以下を含むIFNα2を含む。
【0119】
IV.)IFNをマスクする方法
以前に言及したように、本発明のIFN(表IIを参照されたい)の活性が、それが腫瘍に到達し、マスクが腫瘍関連プロテアーゼなどのプロテアーゼによって除去される時まで阻害される、標的指向性のマスクされたIFN組成物を提供することが、本発明の目的である。いくつかの局面において、標的指向性のマスクされたIFNなどの、提供されるマスクされたIFNは、処置されるべき疾患または障害の場所またはその近く、例えば、腫瘍微小環境などの、腫瘍またはその近くで「アンマスクされ」、インターフェロン受容体(例えば、IFNAR)に結合し、かつ/またはそれを活性化することができるようになる。いくつかの局面において、提供される融合タンパク質のアンマスキングまたは活性化は、腫瘍関連プロテアーゼなどの腫瘍の環境中のタンパク質による、ペプチドリンカーなどの構成要素の切断の力で起こる。
【0120】
(a)利用可能なアプローチの議論
この努力に関連する利用可能なアプローチは、限定されている。本開示は、本発明の技術的利点をさらに実証し、かつ示すために、利用可能なアプローチの説明を提示する。治療薬の腫瘍特異的送達を改善する以前のアプローチは、腫瘍関連プロテアーゼによって活性化される治療薬を創出することであった。このアプローチの例は、腫瘍関連抗原を認識するが、それらが正常細胞上に存在する抗原もまた認識するため、それらの効力が限定されいる抗体を取得し、それらが標的腫瘍に局在化した時にだけ抗原に結合するように、それらを改変することである。米国特許第8,563,269号(CytomX Therapeutics, San Francisco, CA)を参照されたい。いわゆる「Probody」は、腫瘍微小環境中に存在するプロテアーゼによって切断可能であるリンカーによって連結された、抗体結合部位を遮断する関連ペプチドを有する。1つの例において、腫瘍に局在化した時にだけ結合するように活性化される、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的な抗体であるセツキシマブが生み出された。Desnoyers, et. al., Sci. Transl. Med., 16:5(207) pp.207ra144 (2013)を参照されたい。この「Probody」においては、GSリンカーおよび次いで配列
が後に続く、セツキシマブの可変領域に結合するマスク配列が、抗体の重鎖のアミノ末端に付加された。その場合、下線の配列は、種々のヒトがん腫において上方制御されており、正常組織では最小の活性を有することが公知のプロテアーゼである、UPAおよびマトリプターゼの基質である。このprobodyは、非ヒト霊長類において改善された安全性および増加した半減期を実証した。
【0121】
腫瘍微小環境において活性化される抗体結合を有するProbodyを生み出すことに加えて、プロテアーゼで活性化されるインターフェロンαプロタンパク質を生み出すことが可能である。米国特許第8,399,219号(CytomX Therapeutics, San Francisco, CA)を参照されたい。その場合、IFN-αのためのペプチドマスク
は、切断可能な配列によってIFNαから分離される、一本鎖組換えIFNαのアミノ末端に配置された。結果として生じた構築物:
IFNαは、腫瘍微小環境において選択的に活性化されるIFNαを含有していた。VHMPLGFLGP (SEQ ID NO: 11)は、MMP-9の基質であることが教示される。
【0122】
(b)本開示のIFNをマスクする方法
マスクされたIFNおよび標的指向性のマスクされたIFNを含む、提供される融合タンパク質は、疾患または障害の場所またはその近くで、アンマスクされることができる。上述から、本開示のIFNをマスクする方法は、明らかに区別可能であり、任意の利用可能なアプローチを上回る利点を提供する。
【0123】
例えば、上記のように、提供される態様は、腫瘍などの疾患または障害の処置に関連している場所または領域にIFNが到達する時まで、IFNの機能または活性を「マスクする」機構、および、IFNに融合しているTAA特異的抗体の力での、腫瘍の場所への融合タンパク質の特異的な物理的ターゲティングを含む。したがって、本明細書に記載される融合タンパク質は、IFNが、腫瘍などの治療効果のための関心対象の場所でのみ「アンマスクされる」かもしくは「活性化される」こと;IFNの非特異的な活性が低減されること;IFNが、身体における非がん性細胞もしくは非腫瘍性細胞に捕捉されるかもしくはそれに吸い上げられるのが阻止されること;および/または毒性の増加を伴わずに治療剤(例えば、IFN)の濃度を効率的に増加させること、を含むがそれらに限定されない、複数の利点を提供する。
【0124】
態様のいずれかのいくつかにおいて、提供される融合タンパク質、例えば、標的指向性のマスクされたIFNは、疾患または障害、例えば腫瘍の部位またはその近くでのみアンマスクされる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、IFNが、ひとたび腫瘍の場所または領域に到達するとIFN受容体に選択的に結合する、抗体-IFN融合タンパク質を含む。
【0125】
いくつかの態様において、抗体-IFN融合タンパク質は、タンパク質分解性切断用の部位であるペプチドリンカーによって分離されている、IFNを含む。いくつかの局面において、ペプチドリンカーのタンパク質分解性切断は、例えば、腫瘍またはその近くで、IFNを「アンマスクする」かまたは活性化することができる。
【0126】
本開示に記載されるように、提供される態様は、本明細書におけるセクションIIIまたは表IIに記載されるものなどのIFNが、例えばセクションIIまたは表Iにおける、本明細書に記載されるような抗体に融合している、抗体-IFNを含む。IFNは次いで、腫瘍の部位でだけ活性になり、その受容体に結合するように「マスクされる」。未切断の状態において、理想的なペプチドマスクは、タンパク質(例えば、IFN)のその結合パートナー(例えば、IFNARなどのインターフェロン受容体)に対する結合を阻害し、切断後に、ペプチドマスクは、タンパク質のその結合パートナーに対する結合を阻害しない。本明細書で提供される態様において、例えば、腫瘍の部位またはその近くでの「マスク」の切断は、I型IFNがその受容体、例えばIFNARに結合し、その治療効果を発揮することを可能にする。
【0127】
以下は、例示的な態様を記載する。
【0128】
第1に、IFNα2を用いて、プロテアーゼ切断部位およびIFN結合を阻害する「マスク」を、CH3に融合した3'末端上に配置した。腫瘍の部位で、腫瘍微小環境内のプロテアーゼが、プロテアーゼ切断部位を切断して、マスクを放出し、IFNがその受容体に結合できるように遊離させることが、本開示によって企図される。
【0129】
プロテアーゼ切断部位およびIFN阻害マスクを有する組換え重鎖の構築用の核酸を取得し(ATUM, Newark, California)、その3'端に以下の融合物を生じることによって抗CD138-IFNα2の重鎖(H鎖)を改変するために用いた。
一重下線はIFNα2のカルボキシ末端を示し、二重下線はプロテアーゼ切断部位の配列を表し、点線下線はIFNα2マスクを表す。リンカー配列を小文字として示す。
【0130】
別の態様において、構築物は、
を含む。
【0131】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含む。
【0132】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、IFNα1をさらに含む。
【0133】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、IFNα2をさらに含む。
【0134】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、IFNα4をさらに含む。
【0135】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、IFNα5をさらに含む。
【0136】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CD138に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0137】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CD20に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0138】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、Her2に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0139】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CSPG4に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0140】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、PSCAに結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0141】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CEAに結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0142】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、RCCに結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0143】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、5T4に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0144】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、メソテリンに結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0145】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CD138に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0146】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CD20に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0147】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、Her2に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0148】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CSPG4に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0149】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、PSCAに結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0150】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CEAに結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0151】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、RCCに結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0152】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、5T4に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0153】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、メソテリンに結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0154】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含む。
【0155】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、IFNα1をさらに含む。
【0156】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、IFNα2をさらに含む。
【0157】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、IFNα4をさらに含む。
【0158】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、IFNα5をさらに含む。
【0159】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CD138に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0160】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CD20に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0161】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、Her2に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0162】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CSPG4に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0163】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、PSCAに結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0164】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CEAに結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0165】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、RCCに結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0166】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、5T4に結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0167】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、メソテリンに結合する抗体に融合したIFNα1をさらに含む。
【0168】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CD138に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0169】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CD20に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0170】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、Her2に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0171】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CSPG4に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0172】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、PSCAに結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0173】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、CEAに結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0174】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、RCCに結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0175】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、5T4に結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0176】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、
を含み、メソテリンに結合する抗体に融合したIFNα2をさらに含む。
【0177】
1つの態様において、「マスクされた」IFNは、(本開示の文脈内で定義されるような)マスクとしても作用して、IFNARをマスクする相乗的な能力を提供する、中和scFvを含む。
【0178】
標的指向性のマスクされたIFNなどの結果として生じた態様は、いくつかの理由で先行技術を上回る独自の利点を提供する。第1に、IFNは、それが腫瘍に到達するまでその活性が有意に低減され、かつ/または排除されるようにマスクされる。マスクが除去された時に、活性が再活性化され、これが腫瘍における効力を最大にする。第2に、C末端に連結されたマスクされたIFNを抗体のC末端に付加することによって、マスクされたIFNを特異的なTAAにターゲティングさせることができる。特異的なターゲティングにより、IFNが、関心対象のがんに方向付けられ、正常組織を回避するであろう、より大きな機会が可能になる。
【0179】
本開示は、以下を含むがそれらに限定されない、結果として生じた標的指向性のマスクされたIFNの一般的態様を企図する:
第1に、本明細書に示されるような組成物:
(i)抗体-リンカー-サイトカイン(例えば、IFN)-リンカー-プロテアーゼ切断(PC)部位-リンカー-マスク;および
第2に、本明細書に示されるような組成物:
(ii)抗体-リンカー-PC切断部位-リンカー-サイトカイン(例えば、IFN)。
【0180】
(ii)に示される組成物は、組成物中に存在するサイトカインの立体障害を通して部分的マスクとして作用する抗体の追加的な特性を有することを、当業者が認識し、理解するであろうことが認識される。
【0181】
いくつかの態様において、プロテアーゼ切断部位は、腫瘍関連プロテアーゼ切断部位である。本明細書で提供されるような「腫瘍関連プロテアーゼ切断部位」は、その発現が腫瘍細胞またはその腫瘍細胞環境に特異的である、プロテアーゼによって認識されるアミノ酸配列である。いくつかの態様において、例示的なプロテアーゼ切断部位には、腫瘍関連プロテアーゼ切断部位、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)切断部位、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼドメイン含有(a disintegrin and metalloprotease domain-containing)(ADAM)メタロプロテアーゼ切断部位、前立腺特異抗原(PSA)プロテアーゼ切断部位、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)プロテアーゼ切断部位、膜型セリンプロテアーゼ1(MT-SP1)プロテアーゼ切断部位、マトリプターゼプロテアーゼ切断部位(ST14)、またはレグマインプロテアーゼ切断部位が含まれる。いくつかの局面において、プロテアーゼ切断部位は、特異的なアミノ酸配列によって指定され得る。
【0182】
V.)腫瘍関連抗原(TAA)を発現するがんの処置
また、種々の治療、診断、および予防用の方法および使用において有用である、標的指向性のマスクされたIFNなどの融合タンパク質、または組成物も、本明細書において提供される。例えば、融合タンパク質および組成物は、がんまたは腫瘍などの、対象における種々の疾患および障害の処置において有用である。そのような方法および使用には、例えば、腫瘍またはがんなどの疾患または障害を有する対象に対する、融合タンパク質または組成物の投与を含む、治療用の方法および使用が含まれる。いくつかの態様において、融合タンパク質または組成物は、疾患または障害の処置をもたらすのに有効な量で投与される。使用は、そのような方法および処置における、ならびにそのような治療法を実施するための薬の調製における、融合タンパク質または組成物の使用を含む。いくつかの態様において、融合タンパク質または組成物は、例えば、治療法に従う、対象における種々の疾患および障害の処置における使用のためである。いくつかの態様において、方法は、腫瘍またはがんなどの疾患または障害を有するか、または有する疑いがある対象に、融合タンパク質または組成物を投与することによって実施される。いくつかの態様において、方法は、それにより対象における疾患または障害を処置する。
【0183】
いくつかの局面において、提供される融合タンパク質、例えば、標的指向性のマスクされたIFNは、腫瘍関連抗原(TAA)を発現するものを含む、腫瘍またはがんなどの疾患または障害の処置のための方法または使用において使用される。制限されたセットの組織または細胞において通常発現しているが、がん、例えば、固形腫瘍がんにおいても発現しているタンパク質としての本開示のTAAの特定は、本明細書で開示されるマスクされた融合タンパク質を利用する、そのようながんの処置に対する多数の治療的アプローチを切り開く。
【0184】
注目すべきことに、標的指向性の抗腫瘍療法は、標的とされるタンパク質が、正常な組織または細胞、さらには生命維持に必要な正常臓器組織上に発現している場合でさえも、有用である。生命維持に必要な臓器とは、心臓または結腸などの、生命を持続するために必要であるものである。生命維持に必要ではない臓器とは、除去することができ、個体が依然として生き延びることができるものである。生命維持に必要ではない臓器の例は、卵巣、乳房、および前立腺である。
【0185】
正常組織、さらには生命維持に必要な正常組織における標的タンパク質の発現は、タンパク質がまた過剰発現しているある特定の腫瘍のための治療薬としての、タンパク質に対するターゲティング剤の有用性を無効にしない。例えば、生命維持に必要な臓器における発現は、それ自体は有害ではない。加えて、前立腺および卵巣などの必要ではないとみなされる臓器は、死亡率に影響を及ぼさずに除去することができる。最後に、いくつかの生命維持に必要な臓器は、免疫特権のために正常臓器の発現によって影響を受けない。免疫特権臓器とは、血液-臓器関門によって血液から保護され、したがって免疫療法に接触可能ではない臓器である。免疫特権臓器の例は、脳および精巣である。
【0186】
したがって、本発明の標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質を含む、TAAタンパク質の活性を阻害する治療的アプローチは、TAAを発現するがん(例えば、肺、腎臓、前立腺、卵巣、乳房における固形腫瘍がん、および当技術分野において公知の他のタイプのがんなど)に罹患している患者のために有用である。治療的アプローチは、IFNA誘導性の殺傷(例えば、関心対象の腫瘍において「マスク」が除去され、IFNが再活性化される場合)、ADCC、CDC、および/または免疫調節を含む。加えて、TAAに結合する抗体はまた、がん細胞の機能を相乗的に調節し得る。加えて、さらに、「アンマスクされた」かまたは活性化されたIFNは、インターフェロン受容体(例えば、IFNAR)に対するIFNの結合の力で、抗腫瘍免疫または抗がん免疫に関与する免疫細胞の活性を調節することができる。TAAに結合する抗体の調節は、概して2つのクラスに分類される。第1のクラスは、それが腫瘍細胞増殖に関連するようにTAA機能を調節し、腫瘍細胞増殖の阻害もしくは遅延をもたらすか、またはその殺傷を誘導する。第2のクラスは、TAAタンパク質のその結合パートナーとのまたは他のタンパク質との結合または会合を阻害するための、様々な方法を含む。
【0187】
したがって、がん患者は、好ましくは、腫瘍組織の免疫組織化学的評価、定量的TAA画像化、またはTAA発現の存在および程度を確実に示す他の技法を用いて、TAA発現の存在およびレベルについて評価することができる。この目的で、適用可能の場合には、腫瘍生検または手術検体の免疫組織化学解析が好ましい。腫瘍組織の免疫組織化学解析のための方法は、当技術分野において周知である。
【0188】
VI.)標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質カクテル
本発明の治療法は、単一の標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質、および異なるMAb(すなわち、マスクされたIFN融合タンパク質と同じTAAに結合する裸のMAb、または別のタンパク質に結合するMAb、または別のTAAに結合する別の標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質全体)の組み合わせまたはカクテルの投与を企図する。そのようなMAbカクテルは、異なるエピトープを標的とし、異なるエフェクター機構を活用するMAbを含有するか、または直接細胞傷害性のMAbを免疫エフェクター機能性に依拠するMAbと組み合わせるのと同じくらい、ある特定の利点を有することができる。そのような組み合わせでのMAbは、相乗的な治療効果を示すことができる。加えて、標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質は、様々な化学療法剤および生物学的剤、アンドロゲン遮断薬、免疫調節物質(例えば、IL-2、GM-CSF)、手術、または放射線を含むがそれらに限定されない、他の治療様式に付随して投与することができる。好ましい態様において、標的指向性のマスクされたIFNは、融合タンパク質形態で投与される。
【0189】
標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質製剤は、抗体を腫瘍細胞に送達することができる任意の経路を介して投与される。投与の経路には、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮内などが含まれるが、それらに限定されない。処置は概して、静脈内注射(IV)などの許容される投与の経路を介した、典型的には、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25 mg/kg体重を含むがそれらに限定されない範囲の用量での、標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質調製物の反復投与を含む。概して、1週当たり10~1000 mgの標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質の範囲の用量が、有効であり、かつ良好な耐容性を示す。
【0190】
転移性乳がんの処置におけるHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)での臨床経験に基づいて、MAb調製物のおよそ4 mg/kg患者体重のIVの初回負荷用量、およびそれに続く約2 mg/kgのIVの毎週用量が、許容される投薬レジメンに相当する。好ましくは、初回負荷用量は、90分以上の点滴として投与される。周期的維持用量は、初回用量が良好な耐容性を示したという条件で、30分以上の点滴として投与される。当業者によって認識されるように、様々な要因が、特定の症例において理想的な投与レジメンに影響を及ぼし得る。そのような要因には、例えば、使用されるTAA MAbの結合親和性および半減期、患者におけるTAA発現の程度、循環する分断されたTAA抗原の広がり、所望の定常状態の抗体濃度レベル、処置の頻度、および本発明の処置法(すなわち、標的指向性のマスクされたIFN)と組み合わせて用いられる化学療法剤または他の剤の影響、ならびに特定の患者の健康状態が含まれる。
【0191】
任意で、患者は、最も有効な投薬レジメンなどの決定を援助するために、所与の試料におけるTAAのレベル(例えば、循環するTAAおよび/またはTAA発現細胞のレベル)について評価されるべきである。そのような評価はまた、治療法全体を通して目的をモニタリングするためにも用いられ、他のパラメータ(例えば、膀胱がん治療法における尿細胞診および/もしくはImmunoCytレベル、または類推によって、前立腺がん治療法における血清PSAレベル)の評価と組み合わせて、治療的成功を判断するために有用である。
【0192】
本発明の目的は、融合タンパク質が結合する特異的なTAAを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害するかまたは遅らせる、標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質を提供することである。本発明のさらなる目的は、TAAに結合するそのような標的指向性のマスクされたIFNを含む融合タンパク質を用いて、特に、他の薬物または免疫学的に活性の処置と組み合わせた、特異的なTAAを見出すそのような標的指向性のマスクされたIFNを含む融合タンパク質を用いて、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて血管新生および他の生物学的機能を阻害し、それにより腫瘍成長を低減させる方法を提供することである。
【0193】
VII.)併用療法
いくつかの態様において、また、例えば、提供される融合タンパク質または組成物のいずれか、および化学療法剤または放射線などの追加の治療剤の使用を含む、併用療法を含む方法および使用も提供される。いくつかの態様において、提供される融合タンパク質または組成物を、抗がん剤または抗腫瘍剤などの疾患または障害の処置のための追加の治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0194】
いくつかの態様において、ヒト腫瘍を含む腫瘍が、化学療法剤、放射線、免疫調節療法、またはその任意の組み合わせなどの追加の治療剤と共に、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質で処置される場合には、相乗作用がある。換言すると、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質による腫瘍成長の阻害は、化学療法剤もしくは放射線またはその組み合わせと併用された場合に、期待されるよりも大きく増強される。相乗作用は、例えば、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質のみの処置から、または特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質および化学療法剤もしくは放射線での処置の相加効果から期待されるよりも大きい、併用処置での腫瘍成長の阻害によって示され得る。好ましくは、相乗作用は、寛解が、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質由来の処置からは、または特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質および化学療法剤もしくは放射線の相加的併用を用いた処置では期待されない所での、がんの寛解によって実証される。
【0195】
特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質、および化学療法、放射線、もしくは免疫調節剤の組み合わせ、または任意の1つ、2つ、もしくは3つの組み合わせを使用する腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法は、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質を、化学療法または放射線療法、およびその任意の組み合わせを始める前、その最中、またはその後(すなわち、化学療法および/または放射線療法を始める前およびその最中、その前およびその後、その最中およびその後、またはその前、その最中、およびその後)に投与する工程を含む。例えば、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質は、典型的には、放射線療法および/または化学療法を始める前の1~60日、好ましくは3~40日、より好ましくは5~12日に投与される。しかし、処置プロトコールおよび特定の患者の要求に応じて、方法は、最も効果的な処置を提供し、究極的には患者の命を延ばす様式で行われる。
【0196】
化学療法剤の投与は、非経口経路および経腸経路によって全身に、を含む、種々のやり方で達成することができる。1つの態様において、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質と化学療法剤とは、別々の分子として投与される。化学療法剤または化学療法の特定の例には、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、ポマリドミド、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(adriamycin)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(taxol)、ドセタキセル(taxotere)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、インターフェロンα、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ゲムシタビン、クロラムブシル、taxol、およびその組み合わせが含まれる。
【0197】
特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質との組み合わせで用いられる放射線の供給源は、処置される患者に対して外部または内部のいずれかであることができる。供給源が患者に対して外部である場合、治療法は、外照射療法(EBRT)として知られる。放射線の供給源が患者に対して内部である場合、処置は近接照射療法(BT)と呼ばれる。
【0198】
上記の治療レジメンは、追加のがんを処置する剤および/またはレジメン、例えば、ボルテゾミブ、ポマリドミド、および/または追加の化学療法、がんワクチン、シグナル伝達阻害剤、異常な細胞増殖もしくはがんの処置において有用な剤、抗体(例えば、WO/2005/092380(Pfizer)に記載されているような抗CTLA-4抗体)、またはIGF-1Rに対する結合によって腫瘍成長を阻害する他のリガンド、およびサイトカインとさらに組み合わされてもよい。
【0199】
がん処置において用いられる免疫調節治療薬の例には、抗(CTLA-4、PD-1、PD-L1、TIGIT、LAG3、T1B7-H3、B7-H4)、および当技術分野において公知の他のものが含まれるが、それらに限定されない。
【0200】
哺乳動物が追加の化学療法に供される場合、上記の化学療法剤が用いられてもよい。追加的に、増殖因子阻害剤、生物学的応答修飾因子、抗ホルモン療法、選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、血管新生阻害剤、および抗アンドロゲン薬が用いられてもよい。例えば、抗ホルモン薬、例えば、Nolvadex(タモキシフェン)などの抗エストロゲン薬、またはCasodex(4'-シアノ-3-(4-フルオロフェニルスルホニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-'-(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド)などの抗アンドロゲン薬が用いられてもよい。
【0201】
上記の治療的アプローチは、多種多様な外科的、化学療法、または放射線療法のレジメンのいずれか1つと組み合わせることができる。本発明の治療的アプローチは、すべての患者にとって、特に、化学療法剤の毒性に良好な耐容性を示さない人々にとって有利である、低減した投薬量の化学療法(もしくは他の治療法)の使用および/またはより頻度の低い投与を可能することができる。
【0202】
VIII.)キット/製造物品
本明細書に記載される実験室、予後判定、予防、診断、および治療用の応用における使用のために、キット、製造物品、システム、および装置は、本発明の範囲内である。そのようなキットは、バイアル、チューブなどのような1つまたは複数の容器を受けるように区画化されているキャリア、パッケージ、または容器を含むことができ、容器の各々は、方法において使用される別々の要素のうちの1つを、本明細書に記載される使用などの使用説明書を含む標識または挿入物と共に含む。例えば、容器は、本開示の1つの特異的なTAAまたはいくつかのTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質を含むことができる。キットは、標的指向性のマスクされたIFNを含む容器を含むことができる。キットは、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質のすべてもしくは一部、ならびに/またはがんおよび/もしくは他の免疫学的障害を検出するための診断アッセイを含むことができる。
【0203】
本発明のキットは、典型的には、上記の容器、ならびに、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジを含む、商業的なおよび使用者の観点から望ましい材料を含む、それに付随した1つまたは複数の他の容器;内容物および/または使用説明書を列記するキャリア、パッケージ、容器、バイアル、および/またはチューブの標識、ならびに使用説明書を伴う添付文書を含む。
【0204】
標識は、組成物が、特定の治療法または非治療的応用、例えば、予後判定、予防、診断、または実験室用の応用のために使用されることを示すように、容器上にまたは容器と共に存在することができ、インビボまたはインビトロいずれかでの使用のための指示、例えば本明細書に記載されるものも示すことができる。指示およびまたは他の情報もまた、キットと共にまたはキット上に含まれる挿入物または標識上に含まれ得る。標識は、容器上にあるかまたは容器に付随することができる。標識は、標識を形成する字、数字、または他の文字が容器自体に成形されるかまたはエッチングされる場合には、容器上にあることができ;標識は、例えば、添付文書として、容器も保持する入れ物またはキャリア内に存在する場合には、容器に付随することができる。標識は、組成物が、がんまたは他の免疫学的障害などの状態を診断する、処置する、予防する、または予後判定するために使用されることを示すことができる。
【0205】
「キット」および「製造物品」という用語は、同義語として用いることができる。
【0206】
本発明の別の態様において、製造物品は、本開示の特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質などの、組成物を含有する。製造物品は、典型的には、少なくとも1つの容器および少なくとも1つの標識を含む。適している容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が含まれる。容器は、ガラス、金属、またはプラスチックなどの種々の材料で形成され得る。容器は、1つもしくはいくつかの、特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質、および/または、1つもしくは複数の、標的指向性のマスクされたIFNの治療用量を保持することができる。
【0207】
容器は、代替的に、状態の処置、診断、予後判定、または予防に有効である組成物を保持することができ、かつ無菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈注射用溶液バックまたは皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであることができる)。組成物中の活性剤は、本開示の特異的なTAAに結合する標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質であることができる。
【0208】
製造物品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、および/またはデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含むことができる。これは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、スターラー、針、シリンジ、ならびに/または効能および/もしくは使用説明書を伴う添付文書を含む、商業的なまたは使用者の観点から望ましい他の材料を、さらに含むことができる。
【0209】
例示的態様
提供される態様には以下がある:
1)ポリペプチド配列
を含む組成物であって、該ポリペプチド配列が、I型インターフェロン(IFN)の活性をマスクし、かつ該組成物が、腫瘍関連抗原に結合する抗体に融合している融合タンパク質をさらに含む、前記組成物。
2)可動性ペプチドリンカーをさらに含む、態様1の組成物。
3)腫瘍関連プロテアーゼ切断部位をさらに含む、態様1または2の組成物。
4)前記I型インターフェロンがIFNα1を含む、態様1~3のいずれか1つの組成物。
5)前記I型インターフェロンがIFNα2を含む、態様1~3のいずれか1つの組成物。
6)前記I型インターフェロンがIFNα4を含む、態様1~3のいずれか1つの組成物。
7)前記I型インターフェロンがIFNα5を含む、態様1~3のいずれか1つの組成物。
8)前記I型インターフェロンがIFNα6を含む、態様1~3のいずれか1つの組成物。
9)前記I型インターフェロンがIFNα14を含む、態様1~3のいずれか1つの組成物。
10)前記I型インターフェロンがIFNβ1を含む、態様1~3のいずれか1つの組成物。
11)前記I型インターフェロンまたはその機能的変異体が、表IIに示されるようなI型インターフェロンから選択される、態様1~3のいずれか1つの組成物。
12)前記腫瘍関連抗原がCD138を含む、態様1~11のいずれか1つの組成物。
13)前記腫瘍関連抗原がCD20を含む、態様1~11のいずれか1つの組成物。
14)前記腫瘍関連抗原がメソテリンを含む、態様1~11のいずれか1つの組成物。
15)前記腫瘍関連抗原が5T4を含む、態様1~11のいずれか1つの組成物。
16)前記腫瘍関連抗原が、表Iに示されるような腫瘍関連抗原から選択される、態様1~11のいずれか1つの組成物。
17)a. 腫瘍関連抗原に特異的に結合する、重鎖および/または軽鎖を含む抗体;
b. I型インターフェロンのN末端が、該抗体重鎖および/または軽鎖のC末端に融合している、I型インターフェロン;ならびに
c. (SEQ ID NO: 14)を含み、それにより該I型インターフェロンのC末端に付加されている、インターフェロンマスク
を含む、標的指向性のマスクされたIFN。
18)可動性ペプチドリンカーをさらに含み、前記I型インターフェロンのN末端が、前記抗体重鎖および/または軽鎖のC末端に融合している、態様17の標的指向性のマスクされたIFN。
19)可動性ペプチドリンカーをさらに含み、インターフェロンマスク(SEQ ID NO:14)が、前記I型インターフェロンのC末端に付加されている、態様17または18の標的指向性のマスクされたIFN。
20)前記抗体と前記可動性ペプチドリンカーとの間に挿入された腫瘍関連プロテアーゼ切断部位をさらに含む、態様19の標的指向性のマスクされたIFN。
21)前記I型インターフェロンと前記インターフェロンマスクとの間に挿入された腫瘍関連プロテアーゼ切断部位をさらに含む、態様17~19のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFN。
22)前記I型IFNまたはその機能的変異体が、表IIに示される、態様17~21のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFN。
23)前記抗体が、表Iに示される腫瘍関連抗原に結合する、態様17~22のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFN。
24)前記抗体がCD138に結合する、態様17~22のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFN。
25)前記抗体がCD20に結合する、態様17~22のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFN。
26)前記抗体がメソテリンに結合する、態様17~22のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFN。
27)前記抗体が5T4に結合する、態様17~22のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFN。
28)態様1~16のいずれか1つの組成物または態様17~27のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFNを作製する、方法。
29)態様1~16のいずれか1つの組成物または態様17~27のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFNを含む、薬学的組成物であって、
(i)任意で、該薬学的組成物が、がんの処置を含む治療法における使用のためのものであり、任意で、
(a)該がんが固形腫瘍において見出されるがんを含むか;または
(b)該がんが造血系において生じ、かつ
(ii)任意で、該薬学的組成物が、1つまたは複数の抗悪性腫瘍剤をさらに含む、
前記薬学的組成物。
30)態様1~16のいずれか1つの組成物または態様17~27のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFNを含む、キット。
31)対象においてがんを処置する方法であって、態様1~16のいずれか1つの組成物または態様17~27のいずれか1つの標的指向性のマスクされたIFNの治療的有効量を該対象に投与する工程を含み、任意で、該対象がヒト対象である、前記方法。
【実施例
【0210】
本発明の様々な局面を、以下のいくつかの実施例によってさらに説明し、かつ例証するが、そのいずれも、本発明の範囲を限定するようには意図されない。
【0211】
実施例1:抗CD138に融合した標的指向性のマスクされたIFNα2(抗CD138-IFNα2)の特徴決定
本実施例においては、マトリプターゼST 14を用いて、IFNマスクがH鎖から切断され得ることが示される。簡潔に述べると、抗CD138-IFNα2および抗CD138-IFNα2-マスクを、上記に示される手順を用いて生成した。本開示のIFNをマスクする方法を参照されたい。改変された重鎖を、次いで、適切なL鎖と共に293T細胞において一過性に発現させ、抗CD138-IFNα2-マスクを生じた。SDS-PAGE解析による確認により、融合タンパク質は、適切なサイズのH鎖およびL鎖を有してH2L2分子に正確にアセンブルされたことが示された。次いで、FACS解析により、改変された融合タンパク質がCD138発現細胞に結合したことが示された。
【0212】
ウエスタンブロットを介して結果として生じた解析により、マトリプターゼST 14がIFNマスクをH鎖から切断できることが示された。マスクを有さない抗CD138-IFNα2を、対照として用いた(図1を参照されたい)。
【0213】
実施例2:抗CD138非グリコシル化(N297Q)に融合した標的指向性のマスクされたIFNα2(抗CD138-IFNα2 N297Q)の特徴決定
本実施例においては、マトリプターゼST 14を用いて、IFNマスクがH鎖から切断され得ることが示される。簡潔に述べると、MST14(R&D Systems)で処理する試料については、50 ugの抗体を、0.5 ugのMST14と1時間、37℃でインキュベートした。次いで、1 ugの各々の精製抗体を、95℃への加熱によって変性させ、約2%のβ-メルカプトエタノール(Thermofisher)で還元し、4-12% Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動した。4 ugの各々の非還元抗体を、95℃への加熱によって変性させ、5% PO4 SDS-PAGEゲル上で泳動した。結果として生じた解析により、マトリプターゼST 14が、非グリコシル化融合抗体上のIFNマスクを効率的に切断することが示される。マスクを有さない抗CD138-IFNα2を、対照として用いた(図2を参照されたい)。
【0214】
実施例3:抗5T4および抗メソテリンに融合した標的指向性のマスクされたIFNα2融合抗体の特徴決定
本実施例においては、マトリプターゼST 14を用いて、IFNマスクが複数の標的に対する融合抗体上のH鎖から切断され得ることが示される。簡潔に述べると、MST14(R&D Systems)で処理する試料については、50 ugの抗体を、0.5 ugのMST14と1時間、37℃でインキュベートした。次いで、1 ugの各々の精製抗体を、95℃への加熱によって変性させ、約2%のβ-メルカプトエタノール(Thermofisher)で還元し、4-12% Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動した。4 ugの各々の非還元抗体を、95℃への加熱によって変性させ、5% PO4 SDS-PAGEゲル上で泳動した。結果として生じた解析により、マトリプターゼST 14が、5T4およびメソテリン融合抗体上のIFNマスクを効率的に切断することが示される。マスクを有さない抗CD138-IFNα2を、対照として用いた(図3を参照されたい)。
【0215】
実施例4:IFNα2受容体に対するマスクされた融合抗体の結合
本実施例においては、本開示の複数のマスクされた融合抗体が、IFNα2受容体に結合できることが示される。簡潔に述べると、Immulon 2 HBプレート(Thermofisher)を、10 ug/mLのIFNαR2(R&D Systems)で一晩、4℃でコーティングし、2% BSA(Fisher)で最低限2時間、室温でブロッキングした。次いで、PBS+0.05% Tween(Sigma)で3回、ウェルを洗浄した。示された抗体濃度で、一晩、4℃で表面を覆った。次いで、PBS+0.05% Tweenで3回、ウェルを洗浄した。結合した抗体を、PBS+1% BSAにおいて1:3000希釈された抗ヒトκ-AP(Southern Biotech)で検出した。AP基質(Sigma)の添加後の吸光度の変化を、Biotek EPOCH ELISAリーダーを用いて410 nmでアッセイした。結果により、マスクされた5T4、メソテリン、CD20、およびCD138抗体は、アンマスクされた5T4、メソテリン、CD20、およびCD138融合抗体と比較してより低い親和性でIFNαR2に結合する(図4および図5を参照されたい)。
【0216】
実施例5:マスクされたIFNα活性を低減させる、および回復させる方法
本実施例においては、マスクされたIFN融合タンパク質(抗CD138-IFNα2)が、I型IFNシグナル伝達経路を活性化しないことが示される。活性化は、次いで、マトリプターゼST 14処理後に回復させることができた。簡潔に述べると、HEK-Blue(商標)IFN-α/β細胞(Invivogen, San Diego, CA)を用いて、I型IFNシグナル伝達経路の活性化を、分泌型胚アルカリホスファターゼ(SEAP)を発現するレポーター遺伝子を用いて検出し、処理された細胞の上清中のアルカリホスファターゼ活性を定量することによって、遺伝子活性化をモニタリングした。HEK-Blue(商標)IFN-α/β細胞を、hIFNα2、MST14を伴わない抗CD138マスクIFNα2、MST14を伴う抗CD138マスクIFNα2;および抗CD138-IFNα2と24時間インキュベートした。結果により、マスクされた抗CD138-IFNα2におけるIFNα活性は、アンマスクされたタンパク質において見られるものの10%未満に低減していることが見出され;IFNα2活性は、マトリプターゼ/ST14処理後にほぼ100%に回復されたことが示される(図6を参照されたい)。
【0217】
実施例6:マスクされたIFNα活性を低減させる、および回復させる方法
本実施例においては、本開示の複数のマスクされた融合抗体が、IFNα活性を低減でき、回復できることが示される。簡潔に述べると、HEK Blue IFNa/b細胞(Invivogen)を、1×10e4細胞/ウェルの密度(50 uL/ウェル)で96ウェル組織培養プレート(Fisher)中に播種した。50 uL/ウェルの組換えIFNa(Novus Biologicals)または示された抗体(5T4もしくはメソテリン)を、示された濃度で一晩、37℃で細胞とインキュベートした。50 ugの抗体を0.5 ugのMST14(R&D Systems)と1時間、37℃でインキュベートすることによって、MST14で切断された抗体を調製した。次いで、10 uLの上清を、90 uL/ウェルのQuanti-Blue基質(Invivogen)を含有するプレートに添加した。吸光度の変化を、Biotek EPOCH ELISAリーダーを用いて630 nmで読み取った。結果により、マスクされた抗5T4-IFNαおよびマスクされた抗メソテリン-IFNαにおけるIFNα活性は、マスクが切断された時と比較しておよそ1~2対数、低減していたことが示される(図7(A)および図7(B)を参照されたい)。
【0218】
実施例7:PBMCにおいてIP-10誘導を低減させる方法
本実施例においては、本開示の複数のマスクされた融合抗体が、IP-10誘導を低減できることが示される。簡潔に述べると、新たに解凍されたヒトPBMC(Human Cells Biosciences)を、冷たいRPMI+10% FBS(Invitrogen)で1回洗浄し、約1×10e6細胞/ウェルの密度(1 mL/ウェル)で12ウェルプレート(Themofisher)中に播種した。記載される実験を続行する前に1時間の、細胞に対する300 nMの非融合抗CD138 IgG1の添加で、任意のFc受容体および/またはCD138抗原発現を遮断/低減させた。次いで、組換えヒトIFNa(Novus Biologicals)または示された抗体(5T4もしくはメソテリン)を、細胞に添加して、さらに7時間、37℃でインキュベートさせた。50 ugの抗体を0.5 ugのMST14(R&D Systems)と1時間、37℃でインキュベートすることによって、MST14で切断された抗体を調製した。7時間のインキュベーション後に、細胞を3分間、500×gでスピンダウンし、各試料由来の20 uLの上清を、ELISAによりIP-10について(Abcam)、製造業者のプロトコールに従ってアッセイした。結果により、抗5T4融合抗体および抗メソテリン融合抗体の両方において、マスクがIP-10誘導を低減させることが示される(図8を参照されたい)。
【0219】
実施例8:マスク融合タンパク質を作製する方法
本実施例においては、QXL138AMの構築物設計および特徴決定が示される。簡潔に述べると、当技術分野における標準的な方法を用いて、抗CD138 IgG1を作製する。重鎖アイソタイプはヒトγ1であり、軽鎖アイソタイプはヒトκである。マスクは、本明細書に記載されるように生成した。本開示のIFNをマスクする方法を参照されたい。QXL138AM(抗CD138-IFNα2-切断可能リンカー-マスク)と示される結果として生じた構築物は、IgG重鎖(黄色で示される)(SEQ ID NO: 6)、融合タンパク質リンカー(SGGGGS)(SEQ ID NO: 3)、IFNα2(緑色で示される)( SEQ ID NO: 7)、切断可能リンカー
(青色で示される)(SEQ ID NO: 16)、および本開示のマスク(紫色で示される)(SEQ ID NO: 15)を含む(図9を参照されたい;全配列がSEQ ID NO: 17に示され、シグナルペプチドを有さない全配列がSEQ ID NO: 18に示される)。
【0220】
図9に示される構築物を、TunaCHOにおいて14日間、一過性に発現させた。力価は179 mg/Lに到達し、標準的な方法を用いてプロテインAクロマトグラフィーによって精製した(Lake Pharma, Belmont, CA)(図10)。重鎖および軽鎖のさらなる解析を、標準的な方法を用いて質量分析計によって評価した(Lake Pharma, Belmont, CA)(図11)。
【0221】
実施例9:抗体-サイトカイン-マスクの構造的完全性の判定
本実施例においては、QXL138AMの抗体-サイトカイン-マスク構築物の構造的完全性を判定した。簡潔に述べると、2つのロットのQXL138AMを、還元SDS-PAGEによって評価した。MST14(R&D Systems)で処理する試料については、8 ugの抗体を、約125 ngのMST14と15分、37℃でインキュベートした。次いで、2 ugの各々の精製抗体を、95℃への加熱によって変性させ、約2%のβ-メルカプトエタノール(Sigma)で還元し、4-12% Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動した。ロット2を、マトリプターゼ(MST14)での前処理+/-で評価した。結果により、抗体-サイトカイン-マスク構造は、精製された場合に無傷のようであることが示される。さらに、マスクは、抗体-サイトカインタンパク質の破壊を伴わずにMST14によって放出される(図12を参照されたい)。
【0222】
実施例10:融合タンパク質の構造的完全性および切断特異性の判定
この実施例においては、複数の融合抗体の構造的完全性、およびMST14によってマスクを切断する能力を判定した。簡潔に述べると、MST14(R&D Systems)で処理する試料については、50 ugの抗体を、0.5 ugのMST14と1時間、37℃でインキュベートした。1 ugの各々の精製抗体を、95℃への加熱によって変性させ、約2%のβ-メルカプトエタノール(Thermofisher)で還元し、4-12% Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動した。4 ugの各々の非還元抗体を、95℃への加熱によって変性させ、5% PO4 SDS-PAGEゲル上で泳動した。10 ugの示されるマスクされた抗体を、100 uLの無血清RPMI(Invitrogen)中で4時間、1×10e6個のRPMI 8226S細胞とインキュベートした。4時間後に、細胞を3分間、500×gでスピンダウンし、10 uLの上清を、95℃への加熱によって変性させ、約2%のβ-メルカプトエタノール(Thermofisher)で還元した。残った細胞を、次いで再懸濁し、一晩37℃でインキュベートさせた。次いで、およそ24時間後に、細胞を穏やかにスピンダウンし、上記のように加工処理した。結果により、マスクされた融合抗体は、正確なサイズのようであり、MST14によって特異的に切断されることが示される(図13(A)を参照されたい)。
【0223】
並行した設定において、10 ugの示されるマスクされた抗体を、1 mLの無血清RPMI(Invitrogen)中で24時間、37℃で、1×10e6個のRPMI 8226S細胞とインキュベートさせた。およそ24時間後に、細胞を、上記の段落において言及されるようにスピンダウンし、上清を、プロテインAアガロース(Sigma)で免疫沈降させた。試料を、上記に示されるように変性させて還元し、4-12% Bis-Tris SDS-PAGEゲル上で泳動した。結果により、マスク抗CD138融合抗体を8226S細胞にターゲティングすることは、インビトロでマスクの切断に影響を及ぼさないことが示される(図13(B)を参照されたい)。
【0224】
実施例11:融合抗体をマスキングペプチドに結合させる方法
本実施例においては、複数の融合抗体が、本開示のいくつかのペプチドマスクに特異的に結合することが示される。参照のために、以下の2つのペプチドマスクを試験した。
ペプチド1(マスク1):
ペプチド2(マスク2):
【0225】
簡潔に述べると、ストレプトアビジンでコーティングされたプレート(Pierce)を、50 uMの各々の示されたペプチド(Thermofisher)で最低限2時間、室温で表面を覆った。次いで、PBS+0.05% Tweenで3回、ウェルを洗浄した。示された濃度の抗体を、次いで、一晩、4℃で結合させた。PBS+0.05% Tween(Sigma)で3回、ウェルを洗浄した。結合した抗体を、PBS+1% BSAにおいて1:3000希釈された抗ヒトκ-AP(Southern Biotech)で検出した。AP基質(Sigma)の添加後の吸光度の変化を、Biotek EPOCH ELISAリーダーを用いて410 nmでアッセイした。結果により、ペプチド1は、試験したIFN融合抗体のすべてに結合することが示される(図14(A)を参照されたい)。追加的に、ペプチド2は、ペプチド1に比べて様々な程度で、試験したIFN融合抗体のすべてに結合する(図14(B)を参照されたい)。
【0226】
実施例12:標的指向性の融合抗体対非標的指向性の融合抗体の特徴決定
本開示の融合抗体を、いくつかの細胞株において試験して、標的指向性の融合抗体対非標的指向性の融合抗体の有効性を比較した。簡潔に述べると、1×10e4細胞/ウェル(50 uL/ウェル)の各細胞株を、96ウェル組織培養プレート(Becton Dickinson)中に播種した。翌日、細胞を、50 uL/ウェルの示された濃度の各々の示された抗体で処理した。6日後に、20 uL/ウェルのMTS試薬(Promega)をプレートに添加した。吸光度の変化を、Biotek EPOCHリーダーで490 nmで読み取った。結果により、標的指向性の融合抗体は、非標的指向性の融合抗体よりも有効であることが示される(図15(A)および図15(B)を参照されたい)。
【0227】
別の実験において、1.5×10e4個のU266細胞/ウェル(50 uL/ウェル)または1×10e4個のCAPAN-2細胞/ウェル(50 uL/ウェル)を、96ウェル組織培養プレート(Becton Dickinson)中に播種した。50 uL/ウェルの示された濃度の各々の示された抗体で、U266細胞は同じ日に処理したが、CAPAN-2細胞は翌日に処理した。処理の6日後に、20 uL/ウェルのMTS試薬(Promega)をプレートに添加した。吸光度の変化を、Biotek EPOCHリーダーで490 nmで読み取った。結果により、標的指向性の融合抗体は、非標的指向性の融合抗体よりも有効であることが示される。加えて、マスクされた融合抗体は、切断されたバージョンよりも有効性が低い(図16(A)および図16(B)を参照されたい)。
【0228】
実施例13:抗CD138-IFNα2を用いて細胞増殖を阻害する方法
本実施例においては、IFN融合タンパク質(抗CD138-IFNα)が、がん細胞(すなわち、Daudi細胞)において細胞増殖を阻害することが示される。がん細胞の増殖の阻害は、IFNマスクが所定の位置にある間は有意に減少していた。IFNマスクを除去した後に、細胞増殖の阻害が回復された。簡潔に述べると、Daudi細胞を、hIFNα2、MST14を伴わない抗CD138マスクIFNα2、MST14を伴う抗CD138マスクIFNα2;および抗CD138-IFNα2と3日間インキュベートし、MTSアッセイを用いて増殖を測定した。増殖は、非処理細胞と比べてパーセンテージ(%)として表されることが注目される。結果により、IFNマスクの除去は、細胞増殖の阻害を回復させることが示される(図17を参照されたい)。
【0229】
実施例14:オフターゲットのIFNα誘導性細胞傷害活性を低減させる方法
本実験においては、マスクの能力が、オフターゲットのIFNα誘導性細胞傷害活性を低減させることが示された。簡潔に述べると、1×10e4細胞/ウェル(50 uL/ウェル)の各細胞株を、96ウェル組織培養プレート(Becton Dickinson)中に播種した。50 uL/ウェルの示された濃度の各々の示された抗体を、プレートに添加した。3日後に、20 uL/ウェルのMTS試薬(Promega)をプレートに添加した。吸光度の変化を、Biotek EPOCHリーダーで490 nmで読み取った。MST14(R&D Systems)で処理する試料については、50 ugの抗体を、0.5 ugのMST14と1時間、37℃でインキュベートした。結果により、CD138融合タンパク質および切断されたCD138融合タンパク質は、CD138細胞に対して遊離のIFNαよりもおよそ50倍、効力が低く、マスクされたCD138融合タンパク質は、CD138細胞に対してIFNαよりもおよそ1000倍、効力が低いことが示される(図18(A)を参照されたい)。追加的に、マスキングは、細胞培養において約10倍、オンターゲット活性またはオフターゲット活性を低減させる。細胞表面に対する抗体ターゲティングは、およそ100倍、活性を増強する。標的指向性のアンマスクされた融合タンパク質は、非標的指向性のマスクされた融合タンパク質よりもおよそ10,000倍、効力が高い(図18(B)を参照されたい)。
【0230】
実施例15:マスクされた融合タンパク質対アンマスクされた融合タンパク質、および標的指向性の融合タンパク質対非標的指向性の融合タンパク質の腫瘍細胞株細胞傷害活性
本開示のマスクされた融合タンパク質対アンマスクされた融合タンパク質、および標的指向性の融合タンパク質対非標的指向性の融合タンパク質を用いた、様々な細胞株の細胞傷害活性を比較する研究を、以下のプロトコールを用いて行った。簡潔に述べると、1.5×10e4個のU266、H929、またはOCI-My5.5細胞/ウェル(50 uL/ウェル)を、96ウェル組織培養プレート(Becton Dickinson)中に播種した。追加的に、1×10e4個のOVCAR3またはBCMW1細胞/ウェル(50 uL/ウェル)を、96ウェル組織培養プレート(Becton Dickinson)中に播種した。50 uL/ウェルの示された濃度の各々の示された抗体で、U266、H929、またはOCI-My5.5細胞は同じ日に処理したが、OVCAR3またはBCMW1細胞は翌日処理した。U266、H929、またはOCI-My5.5を、20 uL/ウェルのMTS試薬(Promega)をプレートに添加すること、およびBiotek EPOCHリーダーで490 nmでの吸光度の変化を測定することによって、処理の4日後にアッセイした。OVCAR3またはBCMW1細胞を、処理の6日後に同様にアッセイした。結果により、抗原ターゲティングは、マスクされた融合抗体およびアンマスクされた融合抗体の抗増殖効果を、それらの非標的指向性のカウンターパートと比べて増加させることが示される。加えて、インターフェロン部分のマスキングは、アッセイした細胞株において、融合抗体の抗増殖効果を、それらのアンマスクされたカウンターパートと比べて低減させる(図19および20を参照されたい)。
【0231】
実施例16:PBMCのIFNR活性化を低減させる方法
本実験においては、新たに解凍されたヒトPBMC(Human Cells Biosciences)を、冷たいRPMI+10% FBS(Invitrogen)で1回洗浄し、約1×10e6細胞/ウェルの密度(1 mL/ウェル)で12ウェルプレート(Themofisher)中に播種した。実験を続行する前に1時間の、細胞に対する167 nMのヒトFc Block(Becton Dickinson)の添加で、任意のFc受容体発現を遮断/低減させた。組換えヒトIFNa(Novus Biologicals)または示された抗体を、細胞に添加して、さらに7時間、37℃でインキュベートさせた。50 ugの抗体を0.5 ugのMST14(R&D Systems)と1時間、37℃でインキュベートすることによって、MST14で切断された抗体を調製した。7時間のインキュベーション後に、細胞を3分間、500×gでスピンダウンし、各試料由来の20 uLの上清を、ELISAによりIP-10について(Abcam)、製造業者のプロトコールに従ってアッセイした。
【0232】
追加的に、同じ実験由来の細胞ペレットに対してウエスタンブロットを行った。細胞を、100 uL NDET(1% Nonidet P-40、0.4%デオキシコラート、66 mM EDTA、および10 mM Tris、pH 7.4)で溶解した。10 uL/試料を、95℃への加熱によって変性させ、約2%のβ-メルカプトエタノール(Thermofisher)で還元し、4-12% Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動した。タンパク質を、0.45 um PVDF膜(GE Healthcare)に移して、PBS+3% BSA(Thermofisher)で一晩、4℃でブロッキングした。次いで、膜を、PBS+3% BSAにおいて1:3000のウサギ抗pSTAT1(Cell Signaling)で一晩、4℃でブロットした。PBS+0.1% Tween(Sigma)での3回の10分の洗浄後に、ブロットを、PBS+3% BSAにおいて1:10000希釈された抗ウサギIgG-HRPと1時間、RTでインキュベートした。PBS+0.1% Tweenでの別の3回の10分の洗浄に続いて、ブロットを、SuperSignal West Pico HRP基質(Pierce)とインキュベートした。ブロット画像を、Azure 280(Azure Biosystems)を用いて捕捉した。ブロット画像捕捉の直後に、ブロットを、PBS+0.1% Tweenで3回洗浄し、PBS+3% BSAにおいて1:20000希釈されたウサギ抗GAPDHと一晩、4℃でインキュベートした。
【0233】
検出を、以前に記載したように達成した。最後に、ブロットを、10 mM Tris pH 6.8+2% SDS+0.7% β-メルカプトエタノールにおいて15分間、65℃まで加熱することによって剥がした。PBS+0.1% Tweenでの4回の10分の洗浄後に、ブロットを、PBS+3% BSAで再ブロッキングし、PBS+3% BSAにおいて1:1000希釈されたウサギ抗STAT1で一晩、4℃でブロットした。検出は、以前に記載した通りに従った。
【0234】
結果により、用量依存的なSTAT1活性化があり、マスクされた融合タンパク質は、等モル濃度のアンマスクされた融合タンパク質と比較してより低い効率でSTAT1を活性化することが示される(図21(A)を参照されたい)。加えて、図21(B)は、IP-10の用量依存的な誘導があり、マスクされた融合タンパク質は、等モル濃度のアンマスクされた融合タンパク質と比較してより低い効率でIP-10を誘導することを示す。
【0235】
別の実験において、新たに解凍されたヒトPBMC(Human Cells Biosciences)を、冷たいRPMI+10% FBS(Invitrogen)で1回洗浄し、約1×10e6細胞/ウェルの密度(1 mL/ウェル)で12ウェルプレート(Themofisher)中に播種した。実験を続行する前に1時間の、細胞に対する167 nMのヒトFc Block(Becton Dickinson)の添加で、任意のFc受容体発現を遮断/低減させた。組換えヒトIFNa(Novus Biologicals)または示された抗体を、細胞に添加して、さらに7時間、37℃でインキュベートさせた。50 ugの抗体を0.5 ugのMST14(R&D Systems)と1時間、37℃でインキュベートすることによって、MST14で切断された抗体を調製した。7時間のインキュベーション後に、細胞を3分間、500×gでスピンダウンし、各試料由来の20 uLの上清を、ELISAによりIP-10について(Abcam)、製造業者のプロトコールに従ってアッセイした。結果により、IFNαのマスキングは、IP-10誘導の効力を(10倍よりも多く)有意に低減させることが示される(図22を参照されたい)。
【0236】
実施例17:インビトロでのQXL138AMの機能研究
QXL138AMの機能的特徴決定の研究を、以下のプロトコールを用いて行った。簡潔に述べると、HEK Blue IFNa/b細胞(Invivogen)を、5×10e4細胞/ウェルの密度(50 uL/ウェル)で96ウェル組織培養プレート(Fisher)中に播種した。次いで、50 uL/ウェルの組換えIFNa(Novus Biologicals)または示された抗体を、示された濃度で一晩、37℃で細胞とインキュベートした。50 ugの抗体を0.5 ugのMST14(R&D Systems)と1時間、37℃でインキュベートすることによって、MST14で切断された抗体を調製した。次いで、10 uLの上清を、90 uL/ウェルのQuanti-Blue基質(Invivogen)を含有するプレートに添加した。吸光度の変化を、Biotek EPOCH ELISAリーダーを用いて630 nmで読み取った。結果により、(i)融合抗体標的指向性IFNαは、野生型IFNαのように効力を有する、(ii)非標的指向性抗体-IFNαは、野生型IFNαよりも100倍、効力が低い、(iii)マスクは、非標的指向性IFNαを遮断するのに有効である、および(i.v.)マスクは、CD138を発現する形質転換された(非腫瘍形成性)HEK細胞にターゲティングさせた場合でさえも、IFNα活性を低減させる、ことが示される(図23(A)および図23(B)を参照されたい)。
【0237】
実施例18:インビボでのQXL138AMの効力研究
QXL138AMの効力研究を、以下のプロトコールを用いて行った。簡潔に述べると、1×106個のH929細胞を、matrigel(BD)と共にNSGマウスの背中上にs.c.注射した。マウスを、感染後14、16、および18日目に、100 ug(5 mg/kg、左のグラフ)および300 ug(15 mg/kg、右のグラフ)のi.v.で処置した。腫瘍サイズ領域を、それらが1.4 cmよりも大きく成長するまで1週間に3回測定し、その時点で屠殺した。標的指向性の融合タンパク質を、非標的指向性の融合タンパク質と比較した。各々のマスクされたバージョンもまた比較した。結果により、(i)QXL138AMは、QXL138Aと同様に効力を有する、および(ii)単剤のQXL138AおよびQXL138AMは、処置後数ヶ月にわたって続く永続性のCRを達成できる、ことが示される(図24および25を参照されたい)。
【0238】
別の実験において、骨髄腫における標準治療(ボルテゾミブ)との相乗作用が示される。簡潔に述べると、5×106個のMM1-144細胞を、matrigel(BD)と共にNSGマウスの背中上にs.c.注射した。マウスを、感染後14、16、および18日目に、100 ug(5 mg/kg)の融合タンパク質単独i.v.で処置し、標的指向性のマスクされた融合タンパク質およびアンマスクされた融合タンパク質を、.38 mg/kgボルテゾミブi.v.との併用で、または.38 mg/kgのボルテゾミブi.v.単独で処置した。腫瘍サイズ領域を、それらが1.4 cmよりも大きく成長するまで1週間に3回測定し、その時点で屠殺した。結果により、マスクされたIFNαおよびアンマスクされたIFNαは両方とも、ボルテゾミブと共に使用された場合に相乗的であり、類似した効力を示すことが示される(図26を参照されたい)。
【0239】
別の実験において、1×106個のH929細胞を、matrigel(BD)と共にNSGマウスの背中上にs.c.注射した。マウスを、注射後14、16、および18日目に、100 ug(5 mg/kg)の融合タンパク質単独i.v.、.38 mg/kgボルテゾミブ単独i.v.、または.15 mg/kgボルテゾミブ単独i.v.で処置した。標的指向性の融合タンパク質(QXL138A)は、.38 mg/kgボルテゾミブi.v.、または.15 mg/kgのボルテゾミブi.v.との併用で処置した。腫瘍サイズ領域を、それらが1.4 cmよりも大きく成長するまで1週間に3回測定し、その時点で屠殺した。結果により、インビボでH929細胞において、QXL138Aとボルテゾミブとの相乗効果が示される(図27を参照されたい)。
【0240】
別の実験において、骨髄腫における標準治療(ポマリドミド)との相乗作用が示される。簡潔に述べると、1×106個のH929細胞を、matrigel(BD)と共にNSGマウスの背中上にs.c.注射した。マウスを、注射後14、16、および18日目に、100 ug(5 mg/kg)の融合タンパク質単独i.v.、または500 ug(25 mg/kg)ポマリドミド単独i.v.で処置した。アンマスクされた融合タンパク質(QXL138A)は、25 mg/kgポマリドミドi.v.との併用で処置し、腫瘍サイズ領域を、それらが1.4 cmよりも大きく成長するまで1週間に3回測定し、その時点で屠殺した。結果により、QXL138AMとポマリドミドとの相乗効果が示される(図28を参照されたい)。
【0241】
別の実験において、5×106個のMM1-144細胞を、matrigel(BD)と共にNSGマウスの背中上にs.c.注射した。マウスを、注射後14、16、および18日目に、100 ug(5 mg/kg)の融合タンパク質(QXL138A)i.v.単独、または非標的指向性の融合タンパク質i.v.単独、または25 mg/kgポマリドミドi.p.単独で処置した。25 mg/kgポマリドミドi.p.は、5 mg/kgの標的指向性の融合タンパク質(QXL138A)i.v.、または5 mg/kgの非標的指向性の融合タンパク質i.v.との併用で処置した。腫瘍サイズ領域を、それらが1.4 cmよりも大きく成長するまで1週間に3回測定し、その時点で屠殺した。結果により、QXL138Aとポマリドミドとの相乗効果が示される(図29を参照されたい)。
【0242】
実施例19:第2のマスクを用いた抗CD138に融合した標的指向性のマスクされたIFNα2(抗CD138-IFNα2-マスク2)の特徴決定
本実施例においては、マトリプターゼST 14を用いて、第2のIFNマスク(マスク2)が重鎖から切断され得ることが示される。簡潔に述べると、MST14(R&D Systems)で処理する試料については、50 ugの抗体を、0.5 ugのMST14と1時間、37℃でインキュベートした。次いで、1 ugの各々の精製抗体を、95℃への加熱によって変性させ、約2%のβ-メルカプトエタノール(Thermofisher)で還元し、4-12% Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動した。結果として生じた解析により、マトリプターゼST 14が、抗CD138融合抗体上のIFNマスク(マスク2)を効率的に切断することが示される(図30を参照されたい)。
【0243】
実施例20:IFNα2受容体に対する(マスク2を利用した)マスクされた融合抗体の結合
本実施例においては、本開示の(マスク2を利用した)マスクされた融合抗体が、IFNα2受容体に結合できることが示される。簡潔に述べると、Immulon 2 HBプレート(Thermofisher)を、10 ug/mLのIFNαR2(R&D Systems)で一晩、4℃でコーティングし、2% BSA(Fisher)で最低限2時間、室温でブロッキングした。次いで、PBS+0.05% Tween(Sigma)で3回、ウェルを洗浄した。示された抗体濃度で、一晩、4℃で表面を覆った。次いで、PBS+0.05% Tweenで3回、ウェルを洗浄した。結合した抗体を、PBS+1% BSAにおいて1:3000希釈された抗ヒトκ-AP(Southern Biotech)で検出した。AP基質(Sigma)の添加後の吸光度の変化を、Biotek EPOCH ELISAリーダーを用いて410 nmでアッセイした。結果により、マスク1およびマスク2は両方とも、IFNαR2に対する融合抗体の結合を阻害できることが示される(図31を参照されたい)。
【0244】
実施例21:マスクされたIFNα活性を低減させる、および回復させる方法
本実施例においては、本開示のマスク1およびマスク2が両方とも、IFNα活性を低減でき、回復できることが示される。簡潔に述べると、HEK Blue IFNa/b細胞(Invivogen)を、1×10e4細胞/ウェルの密度(50 uL/ウェル)で96ウェル組織培養プレート(Fisher)中に播種した。50 uL/ウェルの組換えIFNa(Novus Biologicals)または示された抗体(5T4もしくはメソテリン)を、示された濃度で一晩、37℃で細胞とインキュベートした。50 ugの抗体を0.5 ugのMST14(R&D Systems)と1時間、37℃でインキュベートすることによって、MST14で切断された抗体を調製した。次いで、10 uLの上清を、90 uL/ウェルのQuanti-Blue基質(Invivogen)を含有するプレートに添加した。吸光度の変化を、Biotek EPOCH ELISAリーダーを用いて630 nmで読み取った。結果により、マスクされた抗CD138-IFNα(マスク1)およびマスクされた抗CD138-IFNα(マスク2)におけるIFNα活性は、マスクが切断された時と比較して低減していたことが示される(図32(A)および図32(B)を参照されたい)。
【0245】
実施例22:抗PSCAに融合した標的指向性のマスクされたIFNα1(抗PSCA-IFNα1)の特徴決定
本実施例においては、マトリプターゼST 14を用いて、IFNマスクがH鎖から切断され得ることが示される。簡潔に述べると、抗PSCA-IFNα1および抗PSCA-IFNα1+マスクを、上記に示される手順を用いて生成する。本開示のIFNをマスクする方法を参照されたい。改変された重鎖を、適切なL鎖と共に293T細胞において一過性に発現させ、293T細胞において抗PSCA-IFNα1+マスクを生じる。SDS-PAGE解析による確認により、融合タンパク質は、適切なサイズのH鎖およびL鎖を有してH2L2分子に正確にアセンブルされることが示される。FACS解析により、改変された融合タンパク質はPSCA発現細胞に結合することが示される。
【0246】
結果として生じた解析により、マトリプターゼST 14がIFNマスクをH鎖から切断できることが示される。マスクを有さない抗PSCA-IFNα1を、対照として用いる。
【0247】
実施例23:抗PSCAに融合した標的指向性のマスクされたIFNα2(抗PSCA-IFNα2)の特徴決定
本実施例においては、マトリプターゼST 14を用いて、IFNマスクがH鎖から切断され得ることが示される。簡潔に述べると、抗PSCA-IFNα2および抗PSCA-IFNα2+マスクを、上記に示される手順を用いて生成する。本開示のIFNをマスクする方法を参照されたい。改変された重鎖を、適切なL鎖と共に293T細胞において一過性に発現させ、293T細胞において抗PSCA-IFNα2+マスクを生じる。SDS-PAGE解析による確認により、融合タンパク質は、適切なサイズのH鎖およびL鎖を有してH2L2分子に正確にアセンブルされることが示される。FACS解析により、改変された融合タンパク質はPSCA発現細胞に結合することが示される。
【0248】
結果として生じた解析により、マトリプターゼST 14がIFNマスクをH鎖から切断できることが示される。マスクを有さない抗PSCA-IFNα2を、対照として用いる。
【0249】
実施例24:インビボで標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質を利用して腫瘍成長を阻害する方法
腫瘍細胞におけるTAAの有意な発現は、正常細胞における制限的発現と共に、本開示のTAA、および好ましくは固形腫瘍がんにおいて発現しているTAAを、標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質療法のための良好な標的にする。したがって、ヒトがん異種移植マウスモデルにおいて発現しているTAAに結合する、標的指向性のマスクされたIFN融合タンパク質の治療的効力を評価する。
【0250】
腫瘍成長および転移形成に対するマスクされたIFN融合タンパク質の効力を、マウスがん異種移植モデル(例えば、皮下および同所性)において研究する。
【0251】
1:1希釈でMatrigelと混合した5×104~106個のがん細胞のSCIDマウスの右側腹部における注射によって、皮下(s.c.)腫瘍を生成する(共同研究)。腫瘍形成に対するマスクされたIFN融合タンパク質の効力を試験するために、マスクされたIFN融合タンパク質の注射を、腫瘍細胞注射と同じ日に開始する。対照として、マウスに、精製されたヒトIgGもしくはPBS;またはヒト細胞において発現していない無関連の抗原を認識する精製されたMAbのいずれかを注射する。予備的な研究において、腫瘍成長に対して、対照IgGまたはPBSの間でいかなる差も見出されない。腫瘍サイズを、ノギス測定によって決定し、腫瘍体積を、幅2×長さ/2として計算し、ここで、幅は最小の寸法であり、長さは最大の寸法である。直径が1.4 cmよりも大きい皮下腫瘍を有するマウスを、屠殺する。
【0252】
異種移植がんモデルの利点は、新生血管形成および血管新生を研究できることである。腫瘍成長は部分的に、新たな血管の発生に依存する。毛細管系および発生中の血液ネットワークは、宿主起源であるが、新生血管系の開始および構成は、異種移植腫瘍によって制御される(Davidoff et al., Clin Cancer Res. (2001) 7:2870;Solesvik et al., Eur J Cancer Clin Oncol. (1984) 20:1295)。新生血管形成に対する抗体および小分子の効果を、腫瘍組織およびその周囲の微小環境のIHC解析によるなどの、当技術分野において公知の手順に従って研究する。
【0253】
ヒトがんにおいて発現しているTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質は、インビボで腫瘍成長を阻害することが示される。
【0254】
実施例25:特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質の使用を通した、ヒトがん腫の処置のためのヒト臨床治験
腫瘍細胞に特異的に蓄積する、特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質を、本発明に従って合成し、ある特定の腫瘍および他の免疫学的障害、ならびに/または他の疾患の処置において使用する。これらの適応症の各々に関連して、2つの臨床的アプローチを成功裡に追求する。
【0255】
I.)補助療法:補助療法においては、患者を、化学療法剤もしくは薬剤もしくは生物製剤またはその組み合わせと併用して、特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質で処置する。プロトコール設計は、原発病変または転移病変の腫瘍量の低減、増加した無増悪生存、全生存、患者の健康の改善、疾患安定化、ならびに、標準的な化学療法および他の生物学的剤の通常の用量を低減できることを含むがそれらに限定されない例によって評価されるように、有効性に取り組む。これらの投薬量の低減は、化学療法剤または生物学的剤の用量関連毒性を低減させることによって、追加のおよび/または長期の治療を可能にする。
【0256】
II.)単独療法:腫瘍の単独療法における特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質の使用に関連して、特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質は、化学療法剤または薬剤または生物学的剤を伴わずに患者に投与される。1つの態様において、単独療法は、臨床的に、広範囲の転移性疾患を有する末期がん患者において実施される。プロトコール設計は、原発病変または転移病変の腫瘍量の低減、増加した無増悪生存、全生存、患者の健康の改善、疾患安定化、ならびに、標準的な化学療法および他の生物学的剤の通常の用量を低減できることを含むがそれらに限定されない例によって評価されるように、有効性に取り組む。
【0257】
投薬量
投薬レジメンは、最適な望ましい応答を提供するために調整されてもよい。例えば、特異的なTAAに結合する単一のマスクされたIFN融合タンパク質の注射が投与されてもよく、いくつかの分割用量がある期間にわたって投与されてもよく、または、治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に低減または増加させてもよい。本明細書において用いられる「単位剤形」は、処置されるべき哺乳動物対象のための単位投薬量として適した物理的に離散性の単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的担体を伴って、所望の治療効果を生じるように計算されたあらかじめ決定された量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形についての規格は、(a)特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質の独自の特徴、および達成されるべき特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためにそのような化合物を調合する技術分野における固有の限界、によって規定され、かつそれに直接依存する。
【0258】
臨床開発計画(CDP)
CDPは、補助療法および単独療法に関連して、本開示の特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質を使用したがんおよび/免疫学的障害の処置に従い、かつそれを開発する。治験は最初に、安全性を実証し、その後、反復用量において効力を確認する。治験は、標準的な化学療法と、標準療法+特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質とを比較する非盲検である。認識されるであろうように、患者の登録に関連して利用され得る1つの非限定的な判断基準は、当技術分野において公知の標準的な検出法によって決定されるような、特異的なTAAに結合するマスクされたIFN融合タンパク質の腫瘍における濃度である。
【0259】
本発明は、本発明の個々の局面の単一の例証として意図される、本明細書で開示される態様によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価である任意のものは、本発明の範囲内である。本発明のモデル、方法、およびライフサイクル方法論に対する様々な改変は、本明細書に記載されているものに加えて、前述の説明および教示から当業者に明らかになり、本発明の範囲内に入ることが同様に意図される。そのような改変または他の態様は、本発明の真の範囲および精神から逸脱することなく、実施することができる。
【0260】
(表I)選択腫瘍関連抗原
【0261】
(表II)インターフェロンおよび機能的変異体のリスト
【0262】
(表III)アミノ酸の略語
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【配列表】
2022529943000001.app
【国際調査報告】