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特表2022-529958連続細胞保持条件下におけるバイオリアクタ中でのメタン化法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】連続細胞保持条件下におけるバイオリアクタ中でのメタン化法
(51)【国際特許分類】
   C12P 5/00 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
C12P5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021561767
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060979
(87)【国際公開番号】W WO2020212621
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102019110387.8
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521190406
【氏名又は名称】エレクトロハエア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イムコ・ガストラ
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル・ホエル
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ラードン
(72)【発明者】
【氏名】ドリス・ハーフェンブラドル
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・ポップ
(72)【発明者】
【氏名】ミッヒ・ハイン
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・クヌーセン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ・フォルネロ
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AB03
4B064CA02
4B064CB17
4B064CC03
4B064CC10
4B064CC30
4B064CD01
4B064CD30
4B064DA16
(57)【要約】
本発明は、細胞保持条件下においてメタン生成微生物を培養し、細胞培養培地中の代謝水を連続的に除去しながら、メタン富化ガス組成物の連続生成工程において、バイオリアクタ中でメタン生成微生物によりH及びCOをメタンに変換する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン生成段階においてバイオリアクタ内のメタン生成微生物によりH及びCOをメタンに変換する方法であって、以下のステップ:
i.連続工程においてミネラルを含む好適な液体培養培地中で前記メタン生成微生物を培養するステップと、
ii.細胞保持条件下において前記メタン生成微生物を培養するステップと、
iii.前記メタン生成微生物を、CO及びHを含む少なくとも1つの供給ガスと接触させるステップと、
iv.前記バイオリアクタから前記培養培地中の代謝水を連続的に除去するステップと、
v.メタンまたはメタン富化ガス組成物を収集するステップと
を含み、
前記メタン生成生物の前記培養が、前記メタン生成段階の前に、以下のステップ:
前記メタン生成微生物の細胞分裂及び細胞増殖を可能にするために、窒素源を培養培地に供給することによって、前記培養培地内の前記窒素源の前記濃度を、0.2moL/L/日~0.005moL/L/日、好ましくは0.02moL/L/日~0.01moL/L/日の範囲に制御及び調節するステップと、
少なくとも1、9~最大200まで、または少なくとも20~最大120まで、好ましくは少なくとも60~最大100までであり、それぞれ、少なくとも0.5g/L~最大50g/Lまで、または少なくとも6.5g/L~最大31.3g/Lまで、または少なくとも18.3g/L~最大26.1g/Lまでの前記培養物中の前記微生物の乾燥重量に対応する、OD610として測定された前記培養培地中における密度まで前記メタン生成微生物を培養するステップと
を含む、細胞増殖段階を含む、前記方法。
【請求項2】
ステップi.が、以下の段階:
少なくとも1種のミネラル供給の減少を含む、培養培地を含有する好適な液体ミネラルでの連続工程における第1段階;続いて、
前記培養培地をリフレッシュすることを特徴とする第2段階;
場合により、続いて、少なくとも1種のミネラル供給の減少を含む、連続工程における第3段階
による、前記メタン生成微生物を培養する少なくとも1サイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップii.が、以下の段階:
細胞保持条件下における第4段階;続いて、
細胞無保持条件下における前記細胞の培養を特徴とする、第5段階;
場合により、続いて、細胞保持条件下における第6段階
による、前記メタン生成微生物を培養する少なくとも1サイクルを含む、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
メタン生成生物を培養する前記ステップが、以下:
前記培養培地中の窒素源濃度が、0.2moL/L/日~0moL/L/日の量、または0.02moL/L/日~0.005moL/L/日の量、好ましくは0.11moL/L/日~0.005moL/L/日の量となるように、前記メタン生成段階における窒素源の前記供給を制御及び低減すること
を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタン生成生物を培養する前記ステップが、以下:
硫化物源、好ましくは前記培養培地中のNaSの形態である硫化物源を提供することと、
前記培養条件を、嫌気性または条件的嫌気性に保つことと、
場合により、前記培養物を撹拌することと、
温度を32℃~85℃の範囲に維持することと
を更に含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記窒素源が、アンモニウム化合物、好ましくはNHOHもしくはNHClの形態であるアンモニウム化合物、または前述の組合せから選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
初期pH値を、pH9未満、pH8未満またはpH7の所与の値に設定するステップと、続く前記pH値を連続的に制御するステップと、を更に含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記代謝水の前記除去が、前記培養培地から過剰水を濾過するステップを含み、及び/または前記培養培地から過剰水を蒸発させるステップを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記培養培地から過剰水を濾過する前記ステップが、前記培養培地と接触する水について少なくとも1つの半透膜を用いる逆浸透により実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
過剰水を濾別する前記ステップが、以下のステップ:
前記培養培地と接触している少なくとも1つの多孔質膜、好ましくは0.4~0.1μm、特に好ましくは0.3μmの孔径を有する少なくとも1つの多孔質膜を通して濾過することによって、前記バイオリアクタから無細胞培養培地の画分を除去するステップと、
場合により、続いて、好ましくは少なくとも1つの更なる濾過ステップ、例えばナノ濾過、限外濾過によって、及び/または少なくとも1つの蒸留ステップによって、前記除去培養培地から前記ミネラルを濃縮するステップと、
場合により、前記濃縮ミネラルを前記バイオリアクタへと少なくとも部分的に再利用させるステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ミネラルを追加的に添加することによって、前記培養培地中の前記ミネラルの少なくとも1つの実体の前記濃度を制御し、かつ場合により調節するステップを更に含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのメタン生成微生物が、Methanobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrusもしくはこれらの混合物を含む、Archaeaまたはarchaebacteriaの群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
細胞保持条件下での前記メタン生成段階において、前記バイオリアクタ中の前記メタン生成微生物全体の少なくとも60%、好ましくは80%超が、5:1~3:1、好ましくは4:1~3:1、特に好ましくは3:1の長さ対幅の比を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン生成段階の窒素供給を低減した条件下であっても、バイオリアクタ中のメタン生成微生物によるH及びCOを用いて生物起源メタンを生成する高効率な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンは、化石燃料の中で炭素原子当たりのエネルギー密度が最も高く、酸素の存在下における燃焼によって、または燃料電池を用いて電気を生成することによって直接得られるいかなる他の天然ガスよりも、エネルギー変換の潜在能力がはるかに高い。メタンのエネルギー発生の可能性は世界市場においてますます重要になってきている。
【0003】
したがって、天然ガスとして、メタンは持続可能かつ再生可能なエネルギー源を構成し、今日では既に石炭及び他の化石燃料をますます代替している。
【0004】
したがって、最近の研究は、二酸化炭素及び水素から非常に効率的にメタンを生成することができるメタン生成菌、例えばArchaeaによる、メタンを生成する方法の開発及び改善に焦点を当てている。現在、最新技術は、メタン生成微生物を使用することによって生成されたメタンでガス組成物を富化するための、いくつかの試みについて記載している。Archaea、例えば、Methanothermobacter thermautotrophicu株であるUC 120910(ECH100またはECH0100)を用いたメタンの工業的生成のため、蓄積され市販されているものを定期的に使用してもよい。
【0005】
バイオメタン生成を、確立されたスケーラブルかつ信頼性の高い再生可能エネルギー源へとアップグレードすることは、特に連続工程の必要性のために、依然として課題であることが判明している。
【0006】
バイオリアクタ内において、メタン生成微生物を用いる水素の培養物は、以下のようにメタン化反応を触媒する:
CO+4H------->CH+2HO(式1)
【0007】
「代謝水」または「遊離水」とも呼ばれるこのメタン化工程(式1参照)によって生成された水は、バイオリアクタ中の一定の液体レベルを維持し、液量の増加に起因するバイオリアクタのオーバーフローを防止するために、下水道のメタン化工程中に連続的に排出されなければならない。したがって、この排出された水では、メタン生成微生物を維持し、効果的なメタン化を可能にするために重要なミネラル/栄養素(塩、イオン、微量栄養素)のような培地成分もまた失われる。代謝水の生成に関連する別の問題は、培養培地内の培地成分の希釈である。メタン生成生物は、増殖し、それら自体を維持するために一定の培地濃度を必要とするので、従来技術の濃縮培地保存溶液は、通常のメタン化速度を保証するためには連続して面倒な添加をしなければならない。新鮮な培地保存液のこの連続的な添加は工程の運転コストの重大な有害部分である。
【0008】
培地損失をなくす1つの方法は、希釈した排出水から化学成分を回収し再利用することである。一般に、バイオテクノロジープロセスのための培地回収システムは、充分には研究されていない。例えば、繊維状のグラム陰性シアノバクテリアであるArthrospira platensis(A.platensis)の生成/収穫については、培地回収戦略が知られている(Morocho-Jacome et al.,2015)。この戦略は、培養培地からA.platensisを除去し、元の無細胞培養培地を再使用する、異なるフィルタの複雑なカスケードからなる。しかしながら、A.platensisは代謝水を生成せず、したがってその増殖培地を希釈しない。したがって、この従来技術では、排出水中のミネラルを濃縮する必要がない。
過剰水を除去するためのいくつかの技術が存在する。周知の技術は蒸留であり、蒸発によって過剰水を除去することができる。水を除去するためのより最近の技術は、逆浸透(Reverse Osmosis:RO)である。ROを用いると、溶解した化合物を、高圧及びナノサイズの膜を用いることによって、水から除去することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Morocho-Jacome et al.,2015
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、記載された最新技術の欠点を克服すること、特に、メタン富化ガス組成物のためのスケーラブルで信頼性のある連続生成工程を提供することである。
【0011】
本出願の目的は、本発明の請求項1に明記されているような新規に開発された方法によって解決された。
【0012】
特に、記載した目的を達成するための、メタン生成段階においてバイオリアクタ内のメタン生成微生物によりH及びCOをメタンに変換する方法であって、以下のステップ:
i.連続工程においてミネラルを含む好適な液体培養培地中でメタン生成微生物を培養するステップと、
ii.細胞保持条件下においてメタン生成微生物を培養するステップと、
iii.メタン生成微生物を、CO及びHを含む少なくとも1つの供給ガスと接触させるステップと、
iv.バイオリアクタから培養培地中の代謝水を連続的に除去するステップと、
v.メタンまたはメタン富化ガス組成物を収集するステップと
を含む、方法が、提供される。
【0013】
本発明の方法は、メタン生成Archaeaを培養するステップを含み、このステップは、以前に記載され、医師に知られている、Archaeaの典型的な培養条件に基づく。そのような条件は、温度、圧力、体積、湿度、塩含有量、導電率、炭素含有量、窒素含有量、ビタミン含有量、アミノ酸含有量、ミネラル含有量、またはこれらいずれかの組合せを含む、培養物に影響する一般的なパラメータによって、医師の技能に従って影響及び制御される。
【0014】
本発明によれば、バイオリアクタ中でCO及びH含有ガス(1種)またはガス(複数種)からメタンを生成する方法においてメタン生成微生物を培養するステップは、例えば窒素源及び塩などの好適なミネラルまたは栄養素を提供する好適な液体培養培地中に該メタン生成微生物を保持することを含む。
【0015】
CO及びHは、例えば、純粋なガスとして適用され得る。COはまた、または代替的に、工業用ガスの供給を用いて送達されてもよい。そのような工業用ガスは、その供給源に応じて、極めて異なるガス組成を含んでもよい。それらは、空気と比較して、比較的多量のCOを含有するという点で主に共通している。それらは通常の(空気様の)部分量の酸素及び/または窒素を含有し得るが、しかしながら、それらの起源に応じて、酸素を含まなくてもよい。更に、それらは、以下の、具体的には一酸化炭素、水素及び硫化水素、他の硫黄化合物(スルフィド、ジスルフィド、チオール)、シロキサン(有機ケイ素化合物)、ハロゲン化化合物、アンモニア、ならびに有機塩素、すなわち農薬及び塩素化芳香族分子を有する他の合成有機化合物のうち、少なくとも1つの実質的な量を含有し得る。
【0016】
本発明にかかる新規の示唆された細胞保持ステップがなければ、または、すなわち従来技術の古典的な培養方法では、かなりの数の細胞がバイオリアクタから連続的に流出し、これらの細胞は、細胞分裂及び細胞増殖の更なるサイクルによって置き換えられなければならず、したがって、目的のメタン出力の生成のためでなく細胞の生成及び増殖のためのCO及びHの利用によって置き換えられなければならず、これは、システムの効率にとって好ましくない。あるいは、及び/または更に、流出した量を補償するのに充分な量の新規のメタン生成微生物を供給する選択肢があり得る。
【0017】
本発明の発明者らは、有利かつ驚くべきことに、細胞保持条件下においてバイオリアクタを運転することによって、CO及びHの供給が本質的にメタン生成に使用されるので、この条件がシステムの全体的な効率を高めることを見出した。このシステムの有効性は、細胞保持条件を適用しない同等の実験よりも、30%以上、または好ましくは50%以上であることが観察された。この有効性の計算に含まれる工程は、全体的なメタン化率を増加させながらの、コストの削減、栄養素の節約である。
【0018】
本発明によれば、本発明の意味における「段階」とは、本発明のバイオリアクタ中のメタン生成微生物の状態または状況を説明する。これは、メタン生成微生物に適用される特定の発酵条件、例えば、水素と二酸化炭素の分圧の比、または少なくとも1つの栄養素の特定の値もしくは範囲によって特徴付けられ、例えば、細胞をリアクタ中で保持(細胞保持)するか否かのアンモニウム及び/またはバイオリアクタの設定に適用される。
【0019】
本発明にかかる「細胞増殖段階」とは、細胞分裂及び細胞増殖によるメタン生成微生物のバイオマスの増加を主に特徴とする段階である。本発明にかかる「メタン生成段階」とは、細胞分裂及び細胞増殖よりも、メタン生成を主に特徴とする段階である。しかしながら、任意の細胞増殖段階の間、細胞はメタンを生成してもしなくてもよく、任意のメタン生成段階の間、バイオマス全体もまた増加し得る。
【0020】
本発明によれば、「細胞保持条件」という用語は、細胞、すなわちメタン生成微生物がバイオリアクタ内に保持されるか、または再利用されてバイオリアクタ中に再導入されることを可能にし、これを保証する、稼働中のバイオリアクタ中の条件を指す。連続工程で稼働中のバイオリアクタにおいてそのような細胞保持条件を可能にする多くの方法が可能であり、当業者は容易にアクセス可能である。
【0021】
増殖段階及び/またはメタン生成段階は、細胞保持条件下において細胞を培養することによって実施され得る。また、本発明にかかる細胞保持条件下における段階は、細胞無保持条件下において細胞を培養することによって行われる増殖段階またはメタン生成段階によって、交互に片方または両方で交互に隣接しすることも可能である。本発明にかかる「細胞無保持条件下における細胞の培養」とは、細胞、すなわちメタン生成微生物がバイオリアクタ内に保持されることを可能にせず、かつこれを保証しない、すなわち、メタン生成微生物がこの段階の間にバイオリアクタから流出するであろう、稼働中であるバイオリアクタ中の状態を意味する。
【0022】
本出願の文脈において、メタン化、またはメタン生成もしくはバイオメタン化とは、以下に記載される本発明を実施するのに好適なメタン生成微生物のリストに含まれるものなどのメタン生成微生物によって実施される、メタンまたはメタン富化ガス組成物の生成として理解される。
【0023】
特に、従来から知られており、本発明によれば好適なメタン化反応は、HとCOとを4:1の化学量論で消費する(上記式1参照)。
【0024】
本発明によれば、メタン生成微生物は、バイオメタンを生成するためにバイオリアクタ中で培養される。そのようなメタン生成微生物または独立栄養性メタン生成微生物は、嫌気性Archaea、または最近分類された耐気性Archaeaであってもよく、純粋な株、または複数の、すなわち2つ以上の株とのコンソーシア、またはメタン化が異種間の栄養共生的(syntrophic)交換によっても促進され得る混合培養物のいずれかであってもよい。
【0025】
本発明の理解において、「バイオリアクタ」とは、リアクタを表し、バイオ反応容器、またはバイオ反応エンクロージャ、またはバイオ反応タンク、及び/または少なくともバイオ反応チャンバ、及び/またはセル、またはこれらの組合せのいずれかであって、また、最新技術で意図されるように、とりわけ例えば温度及び/または圧力の変化に耐えることができ、及び/または、例えば温度及び/または圧力が反応工程の前、後または最中に割り当てられているか、または維持されなければならない、いずれかの付与された値を維持することができ、ここで、本発明の実施に関連する意図された反応が行われてもよい。そのような反応は、微生物が関与する反応の分域に関連し、本明細書においてそれらの通常の生理学(例えば、代謝発酵、または好気性もしくは嫌気性の消化など)に言及し、そのため、好適な環境、好適な微生物の培養物、好適な培養培地及び適切な反応物が生じることを必要とするため、バイオ反応として理解される。本発明の意味におけるバイオリアクタは、開示された方法を可能にするために各変数の許容差の値内で確実に機能し、そして列挙されたステップを確実に経時的に実行することができると予想される。
【0026】
メタン生成微生物を培養するための好適なリアクタは、ほんの一例として、振盪タンク型バイオリアクタ、連続撹拌型タンクバイオリアクタ、間欠式撹拌型タンクバイオリアクタ、中空繊維膜型バイオリアクタ、気泡塔型バイオリアクタ、内部ループエアリフト型バイオリアクタ、外部ループエアリフト型バイオリアクタ、流動床型バイオリアクタ、充填床型バイオリアクタ、光バイオリアクタ、トリクルベッド型リアクタ、微生物電気分解セル等、及び/またはこれらの組合せであってもよい。
【0027】
バイオリアクタの動作モードは、バッチ工程、フェドバッチ工程及び連続工程に分類される。本明細書に提示される方法の異なる実施形態によれば、培養物の特定の動態またはメタンがここで抽出される利便性に最も密接に対処するリアクタを選択することができる。本発明の一実施形態では、気泡塔型リアクタ、もしくはエアリフト型バイオリアクタ、もしくは連続撹拌タンク型リアクタなどのその変形型、及び/または上記のいずれかを使用して、記載された方法を簡便に実行することができ、連続培養が好ましい。ここでは、栄養素、代謝産物、細胞数及びバイオマスの変動がほとんどない、ほぼ均衡した増殖が観察される。
【0028】
本発明によれば、本明細書に開示される方法は、「連続工程」におけるメタン生成微生物の培養に関する。ここで、このような連続性は、メタンの生成において連続性、及び培養において連続性であるとして理解され、コロニーの活性メンバーから不活性末端バイオマスを分離するステップは必要とされない。代わりに、該バイオマスまたはバイオ材料が活性培養のための更なる基質を提供し、栄養の利用可能性を高めることが有利であることが判明しているので、死んだバイオ材料を、いくつかの増殖の段階にわたって活性メンバーと共にリアクタ中で保持することが推奨される。メタン生成及び培養のこのような連続性の理解にはまた、好適な反応物(例えば、供給ガスなど)の連続的な供給が培養物に行われることで、培養物全体及びリアクタの動作段階中のメタン生成活性の任意のサイクルから得られた生成メタンの測定量(すなわち、メタンの収率)を有意に変更することなく、そのメタン生成タスクの実行を可能にするという理解も含まれる。
【0029】
連続的なメタン生成を確実にすることは、本発明の関連する特性あり、記載された方法のステップを実施する有利な効果である。本発明によれば、メタンは、単一の株または混合培養物からメタン生成Archaeaによって産生される。ここで、混合培養物は、複数の、したがって2つ以上の株もまた使用され得る培養物、もしくは複数の追加の種がメタン生成Archaeaと相互作用する培養物、またはこれらの任意の組合せのいずれかである。
【0030】
更に、培養培地から過剰水分及び/または過剰な代謝水もしくはいわゆる遊離水を、定期的または連続的に除去し、それによって、培地中の栄養素の正確な希釈及び/または分散を確実にすることは、本発明による方法の有利なステップである。本発明にかかる「代謝水」とは、代謝活性中及びメタン生成の工程中、すなわち主にメタン生成段階において、メタン生成生物によって生成される、水またはHO分子を指す。
【0031】
ステップiv.における本発明の方法の代替的な実施形態によれば、バイオリアクタからの培養培地中の代謝水の除去は、連続的に行われる代わりに、特定の時点で不連続的に行われる。
【0032】
本発明の方法の更なる実施形態によれば、ステップiは、以下の段階:
少なくとも1種のミネラル供給の減少を含む、培養培地を含有する好適な液体ミネラルでの連続工程における第1段階;続いて、
培養培地をリフレッシュすることを特徴とする第2段階;
場合により、続いて、少なくとも1種のミネラル供給の減少を含む、連続工程における第3段階
による、メタン生成微生物を培養する少なくとも1サイクルを含む。
【0033】
第1段階及び/または第3段階中の本発明の条件にかかる「少なくとも1つのミネラル」とは、古典的な細胞培養培地、例えば、窒素源及び/または塩に存在する、典型的なミネラルを指す。一実施形態によれば、「少なくとも1つのミネラル」とは、窒素源である。別の実施形態によれば、「少なくとも1つのミネラル」とは、塩、例えば塩化物含有塩である。塩化物は、NaCl、MgCl、KCl、NHCl、または当業者に周知である任意の他の好適な塩化物塩のアニオンとして、生理食塩水として溶解した塩中にそれぞれ存在することができる。供給が減少する「少なくとも1つのミネラル」とは、第1段階及び第3段階において、同じであっても異なっていてもよい。第2段階中の本発明にかかる「培養培地のリフレッシュ」とは、細胞培養培地を少なくとも部分的に変更することによって、または細胞分裂及び細胞増殖を引き起こす少なくとも1つの栄養素を添加することによって、実現することができる。細胞増殖及び細胞分裂を引き起こす栄養素は、当業者に周知であり、窒素源、硫黄源、亜リン酸及び細胞増殖因子の添加または増加を含む。培養培地のリフレッシュのための記載された選択肢の組合せもまた、本発明にかかる可能な選択肢である。この第2段階は、場合により、続いて第3段階を行うことができる。ここで、細胞は、少なくとも1つのミネラルの供給が減少した連続工程で再び培養される。次いで、第2段階は、少なくとも1回のサイクル内の連続工程において、2つの段階間に隣接する移行段階である。そのような「培養培地のリフレッシュ」とは、少なくとも1日、または少なくとも1日~5日間、または少なくとも1日~4日間、少なくとも1日~3日間にわたって、毎月、半年毎に適用することができるが、必ずしもそうとは限らない。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、連続工程における培養した細胞の必要性及び細胞による栄養素の消費に応じて、追加の栄養素が細胞培養培地へと連続的に供給される。
【0035】
本発明の方法の別の実施形態によれば、ステップii.は、以下の段階:
細胞保持条件下における第4段階;続いて、
細胞無保持条件下における細胞の培養を特徴とする、第5段階;
場合により、続いて、細胞保持条件下における第6段階
による、メタン生成微生物を培養する少なくとも1サイクルを含む。
【0036】
第5段階における本発明にかかる「細胞無保持条件下における細胞の培養」とは、細胞、すなわちメタン生成微生物がバイオリアクタ内に保持されることを可能にせず、かつこれを保証しない、すなわち、メタン生成微生物がこの段階の間にバイオリアクタから流出するであろう、稼働中であるバイオリアクタ中の条件を指す。この第5段階は、場合により、続いて第6段階を行うことができる。ここで、細胞は、細胞保持条件下において再び培養される。そして、第5段階は、少なくとも1回のサイクル中の細胞保持条件下における2段階間の移行段階である。
【0037】
本発明の発明者らは、そのような細胞無保持条件下においてメタン生成微生物を培養することが、リアクタの特定の運転時間において有利であり得ることを見出した。このような細胞無保持条件下におけるこの段階は、細胞分裂及び細胞増殖を促進することができ、これは、全体的なメタン化工程効率に正の効果を及ぼし得る。そのような無保持条件とは、少なくとも1日、または少なくとも1日~5日間、または少なくとも1日~4日間、少なくとも1日~3日間にわたって、毎月、半年毎に適用することができるが、必ずしもそうとは限らない。
【0038】
本方法内の本発明の別の実施形態によれば、メタン生成生物を培養するステップは、以下:
培養培地中の窒素源濃度が、0.2moL/L/日~0moL/L/日の量、または0.02moL/L/日~0.005moL/L/日の量、好ましくは0.11moL/L/日~0.005moL/L/日の量となるように、メタン生成段階における窒素源の供給を制御及び低減すること、を含む。
【0039】
メタン生成微生物は一般的に窒素源を必要とし、したがって、全ての公開された先行技術文献では、いずれかの方法における窒素の供給について記載している。にもかかわらず、本発明の発明者らは、驚くべきことに、本発明にかかる細胞保持条件下においてメタン生成微生物を培養することによって、安定し維持された細胞培養数が観察される一方で、メタン生成段階における窒素源の供給を大幅に減少させるか、または更には完全に停止し、依然として高く非常に安定化されたメタン化率を可能とすることができることを見出した。場合により、メタン化工程が顕著になり、細胞保持条件が適用される前に、充分に大きな微生物集団が確立される細胞保持条件下において細胞を培養する段階で、細胞を培養する前に増殖段階を行うことが可能である。2つの他の段階、例えば細胞無保持条件下において2つの細胞増殖段階が隣接する細胞保持条件下で細胞を培養する段階の実行はまた、場合により、そして異なっている。その理論に束縛されるものではないが、全てのメタン生成微生物がリアクタ内に保持される場合、細胞の増殖は、リアクタの始動開始時の「増殖段階」において顕著な量でのみ必要とされ、メタン生成段階中には必要とされないため、メタン生成段階中に細胞の窒素節約をもたらすと考えられる。しかしながら、充分な数の細胞集団がリアクタの始動時に直接適用される場合、増殖段階は必要ではない。
【0040】
更に、理論に束縛されるものではないが、メタン生成微生物の総細胞数が、メタン産生段階における窒素源の外部供給の長期的な減少または停止下でさえも経時的に安定したままである理由は、増殖段階に発生したメタン生成微生物の既存の細胞塊の自然なターンオーバー中の窒素が、メタン生成段階におけるArchaea生成サイクル中に新規の細胞を構築するために使用されるからであると考えられる。これは、例えば、窒素を含む死にかけているメタン生成微生物の栄養素が、分裂によって増殖する及び/または新規の細胞を構築するため、生きているメタン生成微生物によって再利用されることを意味する。
【0041】
本発明は、とりわけ、窒素源の外部供給、及び/または細胞培養培地内の窒素源(すなわち、アンモニア)の(得られた)濃度を制御するステップを特徴とする。これに関連して、制御とは、一定の監視下で保持され、したがって培養のこのパラメータを制御するだけでは不充分であり得るので、当該技術分野で知られている一般的な方法論及び測定機器を用いて、培養に関連するパラメータを一定の監視下で保持し、該パラメータまたは状態インジケータを本質的に測定するという、一般的な共通の意味で理解される。したがって、本発明の更なる実施形態は、特に、細胞培養培地内の窒素源濃度を連続的に調節することを含む。本出願の理解において、調節とは、適切な手段を用いて、パラメータ、例えば培養物の窒素源濃度の「所与の値」または所与の値スパンを積極的に維持することを意図している。
【0042】
本発明にかかる「所与の値」とは、所与の許容差、測定システム内の許容差、または培養物内の変動性もしくは培養物の多様性に起因する許容差を有する、定義された値であってもよい。ここで、該値はメタン化を可能にするのに適しているか、または所与の値は、所与の値と同じメタン化に対する効果を達成する好適な値の範囲であり得る。
【0043】
更に、メタン生成生物の培養物に提供される一般的な培養物または増殖培地は、それらの元素形態で、またはその任意の好適な非毒性塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、塩化物、硫黄源、例えば硫化水素もしくは元素硫黄、リン源、例えばリン酸塩、窒素源、例えばアンモニウム、硝酸塩または窒素ガスで、一般的な無機元素を含み得る。本発明にかかるメタン生成生物を培養するために利用される典型的な塩は、NaCl、KHPO、FeCl2-4HO、NaSeO、NaS、NHOH及びMgClである。
【0044】
本発明の別の実施形態によれば、メタン生成生物を培養するステップは、以下:
硫化物源、好ましくは培養培地中のNaSの形態である硫化物源を提供することと、
培養条件を、嫌気性または条件的嫌気性に保つことと、
場合により、培養物を撹拌することと、
温度を32℃~85℃の範囲に維持することと
を更に含む。
【0045】
本発明によれば、バイオリアクタ中でCOを含有する工業用ガスからメタンを生成する方法においてメタン生成微生物を培養するステップは、以下:培養培地中に好ましくはNaSの形態である硫化物源を提供することと、培養条件を、条件的嫌気性及び/または嫌気性に保つことと、場合により、培養物を撹拌すること(ここで、培養物の撹拌は、定期的に、間隔をおいて、連続的に、または可溶性培養物を少なくとも一定のゆっくりとした一定の運動で保持して行うことができる)と、培養物から代謝水を連続的に除去することと、温度を32℃~80℃の範囲、好ましくは50~70℃、またはおよそ62℃に保つことと、を含む。
【0046】
温度は、培養物内の選択された微生物種の存在に応じて変化し得る一方で、その各々は設定された温度の範囲内でより良好に増殖するが、メタン生成微生物のほとんどについて、温度の上昇は有害ではなく、細胞代謝、したがって代謝ターンオーバーまたはメタン化の最適化を支援することさえできる。工業用工程では、温度はエネルギー調節によって制御されなければならない。これに関して、温度制御を可能にすることによってエネルギー消費を削減することが有益な特徴と考えられるべきである。
【0047】
その結果、最適化された培養温度及び対応する水素溶解度と、エネルギー入力のためのコストとのバランスをとることが、極めて重要である。興味深いことに、本発明の方法は、大気圧において、32℃~85℃、または代替的に50~70℃、または更に代替的におよそ62℃の温度範囲で最も効率的であることが判明した。いくつかの実施形態によれば、本発明にかかる方法の1つ以上のステップが加圧雰囲気中で行われる場合、圧力は、好ましくは最大16bar、代替的には最大20bar、代替的には最大50bar、代替的には最大68bar、代替的には最大110bar、または更には最大420barになるように選択される。
【0048】
他の温度または圧力範囲では、水素溶解度を、比較特性として使用することができる。したがって、本発明はまた、1~10barに等しい範囲の圧力、または1~10barの間の圧力での培養工程にも言及する。高圧、例えば16bar、20bar、35bar、40barまたは60bar、及び対応して、大気圧における32℃~85℃の温度範囲、または代替的に50~70℃の温度範囲、または更に代替的には約62℃と同じ水素溶解度を可能にする高温もまた、包含される。
【0049】
メタン生成微生物は、一般に、最高で100℃はるかに超える、例えば140℃の複数の他の極端な温度範囲でも生存及び増殖し得る。したがって、上記の温度範囲は好ましい範囲の指標であるが、本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、メタン生成生物の培養は、メタン生成段階の前に、以下のステップ:
メタン生成微生物の細胞分裂及び細胞増殖を可能にするために、培養培地内の窒素源の濃度を、0.2moL/L/日~0.005moL/L/日、好ましくは0.02moL/L/日~0.01moL/L/日の範囲に制御及び調節するステップと、
少なくとも1、9~最大200まで、または少なくとも20~最大120まで、好ましくは少なくとも60~最大100までであり、それぞれ、少なくとも0.5g/L~最大50g/Lまで、または少なくとも6.5g/L~最大31.3g/Lまで、または少なくとも18.3g/L~最大26.1g/Lまでの培養物中の微生物の乾燥重量に対応する、OD610として測定された培養培地中における密度までメタン生成微生物を培養するステップと、を含む、細胞増殖段階を含む。
【0051】
培養物中における微生物のOD610(610nmでの光学密度)または簡単に言えば光学密度とは、各時点での細胞数または濃度を測定するための実行可能なパラメータである。所与の細胞数と培養物中の微生物の効率との間の直接的な関係は、普遍的に確立されているようには見えないが、本発明にかかる方法の結果の理解において、高密度培養はメタン生成及び収率に関して有利な結果をもたらす。
【0052】
特に、本発明にかかる培養物の光学密度(optical density:OD)は、当技術分野で公知の一般的な方法及び基準を利用して測定される。光学密度、またはむしろ細胞計数の形態としての濁度測定は、分光光度計を用いて行われ、典型的には600nm付近または600nmで操作されるものの、したがって他の波長が好適であり得る。
【0053】
光学密度は測定設定によって異なり得るので、所与の時点または増殖段階に培養物中に存在する細胞の量の尺度として、培養物中の微生物の乾燥重量またはバイオマス密度を示すことがしばしば有用である。当技術分野で公知の標準的な方法を用いて、異なる濃度で得られた培養物のいくつかの異なるOD値の曲線を構築し、それに応じて培養物の乾燥試料の乾燥重量を測定することによって、所与の増殖段階での所与の培養物のODの測定値と乾燥重量との間の相関を確立することが可能である。これにより、光学密度の関数として乾燥重量の一連のデータポイントが得られる。そのようなデータセットの回帰直線の傾きは、通常、乾燥重量と光学密度との間の相関を定義する。本発明者らによれば、本出願では、OD610=4の値は、おおよそ、lg/Lのバイオマス密度に変換される。
【0054】
本発明によれば、メタン生成微生物の培養物は、培養物へと充分な栄養素を供給し、同時に培養物から遊離水または代謝水を除去することによって、少なくとも14、好ましくは20超、また更には30超、更には40超、更には最大120または200のOD610を有する高密度培養物に誘導または導くことができる。したがって、本発明の方法は、様々な発達段階を通して、60~200間の測定可能なOD610;更には14~120間のOD610;更には20~120間のOD610;更には30~120間のOD610;更には40~120間のOD610;更には50~120間のOD610;更には50~100間のOD610;更には14~80間のOD610;更には20~80間のOD610;更には30~80間のOD610;更には40~80間のOD610;更には20~80間のOD610;更には30~40間のOD610;更には40~60間のOD610;更には20~40間のOD610を有する、メタン生成微生物の1つ以上の株の培養において適切に実施することができる。
【0055】
多数の細胞に対応する高い光学密度が増殖段階で得られ、バイオリアクタ内の培養物のメンバーをそれらの寿命の全段階にわたってそれらの最終段階まで保持することによって維持されるため、結果として、不活性細胞体の残りは培養物の活性メンバーに栄養素を提供することができる。
【0056】
好ましくは、本発明の更なる実施形態によれば、窒素源は、アンモニウム化合物、好ましくはNHOHもしくはNHClの形態であるアンモニウム化合物、または前述の組合せであるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、窒素源は、好ましくはNHOHの形態のアンモニウム化合物である。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、初期pH値を、pH9未満、pH8未満またはpH7の所与の値に設定するステップと、続くpH値を連続的に制御するステップと、を更に含む。
【0058】
一実施形態によれば、本発明の発明者らは、驚くべきことに、初期pHを所与の値に設定した後、このpH値を本発明の様々な条件を通して実験全体にわたって維持することができることを見出した。予想外なことに、還元の連続段階(最大440時間)及び窒素源供給の完全な停止(最大216時間)下において、例えば、具体的にはNHOH化合物の欠けている塩基性OH部分の代用として更なる量の塩基を添加することなくNHOHの形態で、バイオリアクタを運転した後でさえ、これは、所与の値のpHを維持するために塩基(及び/または酸)の追加の供給を必要としない。したがって、所与の値でpHを連続的に制御及び調節するための時間及びコストを節約しながら、窒素源の供給が低減されるので、バイオリアクタを動作させるための工程コストを低減する利点が得られる。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、pHは、場合により連続的に制御され、及び/または代替的に更に調節され、すなわち所与の異なる値に維持されるように安定化される。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、所与の異なる値で保持されるようにpH値を連続的に制御及び調節するステップは、好適な量の塩基及び/または酸、例えばNaOH/HClまたはNHOH/HClを培養物に投与することによって行われる。
【0061】
本発明の別の実施形態によれば、代謝水の除去は、培養培地から過剰水を濾過するステップを含み、及び/または培養培地から過剰水を蒸発させるステップを含む。これをどのように行うことができるかという非限定的な1つの方法が、実施例1~3に開示されている。
【0062】
運転中のバイオリアクタにおいて培養培地から過剰水を蒸発させる手段は、当業者に周知である。これをどのように行うことができるかという非限定的な1つの方法が、工業規模で開示されている。実施例5を参照されたい。
【0063】
一実施形態によれば、培養培地から過剰水を濾過するステップは、培養培地と接触する水について少なくとも1つの半透膜を用いる逆浸透により実施される。逆浸透を実施する技術及び方法は、当業者に周知である。これをどのように行うことができるかという非限定的な1つの方法が、工業規模で開示されている。実施例4を参照されたい。
【0064】
濾過、例えば逆浸透によって水性細胞培養培地から過剰(代謝)水を分離すると、濃縮され回収された細胞培養培地が得られる。有利には、培養培地と接触している水に対して半透過性である少なくとも1つの膜は、デバイス、例えば培養培地と接触しており、バイオリアクタからの水の正味の流出をもたらす負圧下にあるチューブの近くに配置される。本発明にかかる限外濾過を用いて、全ての細胞をリアクタ内に保持し(細胞保持)、過剰水のみを細胞培養培地の可溶性成分から除去する。
【0065】
この回収された培地を再使用すると、バイオリアクタを作動させるのに必要である新鮮な培地保存液の量が減少する。廃水処理プラントへの排出のため地元当局によって設定された限界を超える濃度の化合物を含有する可能性があるので、コスト的動機に加えて、過剰水相中のミネラルを再利用するための法的な観点からの動機もまたあり得る。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、過剰水を濾別するステップは、以下のステップ:
培養培地と接触している少なくとも1つの多孔質膜、好ましくは0.4~0.1μm、特に好ましくは0.3μmの孔径を有する少なくとも1つの多孔質膜を通して濾過することによって、バイオリアクタから無細胞培養培地の画分を除去するステップと、
場合により、続いて、好ましくは少なくとも1つの更なる濾過ステップ、例えばナノ濾過、限外濾過によって、及び/または少なくとも1つの蒸留ステップによって、除去培養培地からミネラルを濃縮するステップと、
場合により、濃縮ミネラルをバイオリアクタへと少なくとも部分的に再利用させるステップと
を含む。
【0067】
適切な細孔径の濾過手段を用いて、全ての細胞をリアクタ内に保持し(細胞保持)、細胞培養培地の可溶性成分(細胞培養培地の無細胞画分)を有する生成された処理水のみを、バイオリアクタから除去する。精密濾過に好適な培養培地と接触する多孔質膜は、無細胞培養培地の除去された画分の連続流が可能である限り、バイオリアクタ内のどこにでも配置することができる。膜は、例えば、バイオリアクタの頂部の方向において細胞培養培地の表面の近くに配置することができるか、またはバイオリアクタの底部または近くに配向することができる。一例を図14に示す。ここで、実験室規模のリアクタには、電気分解装置によって生成されたH、及びCOが供給された。水素と二酸化炭素の流速は、典型的には、4:1の比に調整した。リアクタの生成された代謝水を、リアクタ内部に配置されたセラミックフィルタで除去した。この膜を用いて、溶解した栄養素を含有する完全な代謝水を除去し、細胞のみをリアクタ内に保持した。栄養素の損失のバランスを取るために、培地保存溶液を、排出量に従って投与した。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、無細胞培養培地の先に除去された画分の全ミネラルが完全に回収され、濃縮ミネラルは、バイオリアクタに再利用される。
【0069】
本発明の別の実施形態によれば、無細胞培養培地の先に除去された画分の全ミネラルは少なくとも部分的に回収され、濃縮ミネラルは、バイオリアクタに再利用される。少なくとも部分的または完全に回収されたミネラルの非限定的な例は、ニッケル、コバルト、鉄、カリウムまたはリンである。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、多孔質膜は、セラミック材料、ポリエチレンまたはステンレス鋼で作られる。
【0071】
代替的な実施形態では、細胞はまた、バイオリアクタから少なくとも部分的かつ時間的にのみ除去され、適切な多孔質膜を通過した後にリアクタへと戻されてもよい。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、ミネラルを追加的に添加することによって、培養培地中のミネラルの少なくとも1つの実体の濃度を制御し、かつ場合により調節するステップを更に含む。栄養素の損失のバランスを取るために、例えば培地保存溶液を、排出量に従って投与することができる。
【0073】
培養物にミネラルまたは栄養素を追加で添加するステップは、連続的または不連続的なモードで実行されてもよく、例えば、ナトリウム、タングステン、モリブデンまたはセレンなどのミネラルを含む。培養物にミネラルまたは栄養素を追加で添加するこのステップは、本発明を限定するものとして理解されるべきではなく、医師にとって有用であると考えられるべきである。メタン生成微生物は、一般に、複数のミネラルまたは栄養素の存在下でも生存及び増殖し得る。
【0074】
独立栄養性メタン生成微生物は、本明細書では、メタンの生合成を行うために、例えば二酸化炭素を還元することによって、それらの周囲環境との無機反応から栄養を誘導する微生物として意図される。独立栄養性微生物の例は、水素を利用することからそれらの栄養を誘導する水素資化性(hydrogenotrophic)微生物によって得られる。特に、水素資化性メタン生成微生物は、それらの代謝工程の一部として、水素及び二酸化炭素をメタンに変換することができる。生態系におけるメタン生成微生物の役割は、有機物の腐敗の最終段階において過剰な二酸化炭素及び発酵生成物の除去を補助するため、独特である。メタン生成の非存在下では、腐敗物質からの化合物に結合した大量の炭素が嫌気性環境に蓄積する。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのメタン生成微生物は、Methanobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrusもしくはこれらの混合物を含む、Archaeaまたはarchaebacteriaの群から選択される。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、細胞保持条件下でのメタン生成段階において、バイオリアクタ中のメタン生成微生物全体の少なくとも60%、好ましくは80%超が、5:1~3:1、好ましくは4:1~3:1、特に好ましくは3:1の長さ対幅の比を有する。
【0077】
実験によれば、本発明者らは、特に、細胞無保持条件(図17A図17Bを参照)下の匹敵する条件に対する、細胞保持条件下における様々な段階の間に、細胞形態のこのように顕著な変化を示した、試験メタン生成微生物Methanothermobacterthermautrophicus UC120910(ECH0100)を実施した。これらの形態変化は可逆的であるという予備的なヒントが存在する(データ示さず)。理論に束縛されるものではないが、上記の細胞無保持条件下における同等の条件に対する細胞保持条件下での細胞形態の観察された変化は、これらのメタン生成微生物を細胞保持条件下で培養した後に、特許請求される他のメタン生成微生物においても観察され得るという兆候がある。
【0078】
参考文献
Morocho-Jacome,A.,Mascioli,G.,Sato,S.,&Monteiro de Carvalho,J.(2015).Continuous cultivation of Arthrospira platensis using exhausted medium treated with granular activated carbon.Journal of Hydrology,522(1),467-474.
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】細胞保持条件下において多孔質膜フィルタを用いて、アンモニウム還元条件下においてpHを調節することによる、過剰な代謝水の濾別(予備実験、細胞保持実験1)。段階/条件(水平座標):運転時間(h)。垂直座標:A:OD610。B:WD(L/L/日)。C:変換率(%)。段階/条件:a:細胞増殖、b:細胞保持(フィルタ試験)、c:細胞無保持下におけるメタン生成、d:細胞保持下における生成、e:細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成、f:アンモニア供給なしで細胞保持を伴うメタン生成。
図2】細胞保持条件下において多孔質膜フィルタを用いて、アンモニウム還元条件下においてpHを調節することによる、過剰な代謝水の濾別(予備実験)。細胞保持実験1.段階/条件(水平座標):a.細胞増殖、b.細胞保持フィルタ試験、c.細胞保持を伴わない生成、d.細胞保持を伴う生成、e.細胞保持及びアンモニア還元を伴う生成、f.アンモニア供給なしで細胞保持を伴う生成。垂直座標平均及び標準偏差。A:OD610。B:VVD(L/L/日)。C:変換率(%)。
図3】細胞保持条件下において多孔質膜フィルタを用いて、アンモニウム還元条件下においてpHを調節することによる、過剰な代謝水の濾別(予備実験)。細胞保持実験1.水平座標:運転時間(h)、垂直座標:D:CO流量(L/分)、E:NH供給(g/L/日)。F:NaOH供給(M/L/日)。G:NH 濃度上清(g/L)、段階/条件:a:細胞増殖、b:細胞保持フィルタ試験、c:細胞保持を伴わない生成、d:細胞保持下における生成、e:細胞保持及びアンモニア還元下における生成、f:アンモニア供給なしでの細胞保持下における生成。
図4】アンモニウム還元条件下において初期設定pH値を調節する必要のない多孔質膜フィルタを用いることによる、細胞保持条件下における過剰な代謝水の濾別(細胞保持実験2)。水平座標:運転時間(h)、垂直座標:A:OD610。B:WD(L/L/日)。C:変換率(%)。段階/条件:a:細胞増殖、b:細胞無保持下におけるメタン生成、c:移行1及び2、d:細胞保持下におけるメタン生成、e:細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成。
図5】アンモニウム還元条件下において初期設定pH値を調節する必要のない多孔質膜フィルタを用いることによる、細胞保持条件下における過剰な代謝水の濾別(細胞保持実験2)。段階/条件(水平座標):a:細胞増殖、b:細胞保持を伴わないメタン生成、c:移行1及び2、d:細胞保持下におけるメタン生成、e:細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成。垂直座標平均及び標準偏差:A:OD610。B:VVD(L/L/日)。C:変換率(%)。
図6】アンモニウム還元条件下において初期設定pH値を調節する必要のない多孔質膜フィルタを用いることによる、細胞保持条件下における過剰な代謝水の濾別(細胞保持実験2)。水平座標:運転時間(h)、左の垂直座標:D:CO流量(L/分)、E:NH供給(g/L/日)、右の垂直座標:G:NH 濃縮上清(g/L)。段階/条件:a:細胞増殖、b:細胞保持を伴わないメタン生成、c:移行1及び2、d:細胞保持下におけるメタン生成、e:細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成。
図7】過剰な代謝水を除去するためにフィルタを用いた、細胞保持条件下におけるメタン生成及び培養培地成分再利用(細胞保持実験3)。水平座標:運転時間(h)。垂直座標:A:OD610。B:VVD(L/L/日)。C:変換率(%)。段階/条件:a.細胞保持下における細胞増殖、b.細胞保持下におけるメタン生成、c.細胞保持下におけるメタン生成及び栄養素回収、d.細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成、e.アンモニア供給なしの細胞保持下におけるメタン生成。
図8】過剰な代謝水を除去するためにフィルタを用いた、細胞保持条件下におけるメタン生成及び培養培地成分再利用(細胞保持実験3)。段階/条件(水平座標):a.細胞保持下における細胞増殖、b.細胞保持下におけるメタン生成、c.細胞保持下におけるメタン生成及び栄養素回収、d.細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成、e.アンモニア供給なしの細胞保持下におけるメタン生成。垂直座標平均及び標準偏差。A:OD610。B:WD(L/L/日)。C:変換率(%)。
図9】過剰な代謝水を除去するためにフィルタを用いた、細胞保持条件下におけるメタン生成及び培養培地成分再利用(細胞保持実験3)。水平座標:運転時間(h)、垂直座標:D:CO流量(L/分)、E:標準供給に対するNH供給(%/100)、標準供給の50%、25%及び0%への減少を示す。段階/条件:a.細胞保持下における細胞増殖、b.細胞保持下におけるメタン生成、c.細胞保持下におけるメタン生成及び栄養素回収、d.細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成、e.アンモニア供給なしの細胞保持下におけるメタン生成。
図10】逆浸透フィルタを用いることによる、細胞保持条件下における過剰な代謝水の濾別(細胞保持実験4)。水平座標:運転時間(h)、垂直座標:A:OD610。C:変換率(%)。段階/条件:a:細胞保持及び培地回収なしのメタン生成、b:細胞保持及び培地回収下におけるメタン生成。
図11】細胞保持条件下における蒸発による、過剰な代謝水の除去(細胞保持実験5)。5日間にわたるMethanothermobacter thermautrophicus UC120910(ECH0100)を含む工業規模リアクタの運転。水平座標:運転時間(h)。左の垂直座標:(A.)pH、(B.)OD、右の垂直座標:(C.)リアクタ質量(kg)。リアクタ質量とはリアクタ内の液体培地及びバイオマスの重量であり、リアクタ自体の重量を考慮したスケールで決定された。
図12】細胞保持条件下における蒸発による、過剰な代謝水の除去(細胞保持実験5)。5日間にわたるMethanothermobacter thermautrophicus UC 120910(ECH0100)を含む工業規模リアクタの運転。水平座標:運転時間(h)。左の垂直座標:(D):リアクタの入口ガスにおけるH:COの比、(E)リアクタへのバイオガスの流量(Nm3/時)。右の垂直座標:(F)リアクタの出口からのガス流である、生成ガス中におけるCOの割合。
図13】細胞保持条件下における蒸発による、過剰な代謝水の除去(細胞保持実験5)。5日間にわたるMethanothermobacter thermautrophicus UC 120910(ECH0100)を含む工業規模リアクタの運転。グラフは、(A.)リアクタ質量(kg)、(B.)OD、(C.)リアクタへのバイオガスの流量(Nm3/時)を示す。リアクタ質量とはリアクタ内の液体培地及びバイオマスの重量であり、リアクタ自体の重量を考慮したスケールで決定された。
図14】バイオリアクタ細胞培養培地内における、多孔質フィルタを用いることによる、過剰な代謝水の除去のためのリアクタ設定(例えば、細胞保持実験1及び細胞保持実験2)。実験設定.a:セラミックフィルタ、b:リアクタ、c:代謝水。実験室規模のリアクタには、電気分解装置によって生成されたH、及びCOが供給された。水素と二酸化炭素との流速は、4:1の比に調整した。培養物の温度は62.5℃であり、メタン化反応は大気圧で起こった。リアクタの生成された代謝水を、リアクタ内部に配置されたセラミックフィルタで除去した。この膜を用いて、溶解した栄養素を含有する完全な代謝水を除去し、細胞のみをリアクタ内に保持した。栄養素の損失のバランスを取るために、培地保存溶液を、排出量に従って投与した。
図15】バイオリアクタの外側で逆浸透フィルタを用いることによる、過剰な代謝水の除去のためのリアクタ設定(細胞保持実験4)。実験設定.a:リアクタ、b:代謝水、c:R/O膜、d:細胞/栄養素。工業規模のリアクタには、電気分解装置によって生成されたH、及びバイオガス精製の副産物であるCOが供給された。水素と二酸化炭素との流速は、4.1:1の比に調整した。培養物の温度は62.5℃であり、メタン化反応は10barで生じた。生体触媒液をリアクタから取り出し、R/O膜を通過させて、生成した代謝水を除去した。細胞及びほとんどの溶解した栄養素は、膜を通過した後にリアクタに戻された。
図16】蒸発を用いることによる、過剰な代謝水を除去するためのリアクタ設定(細胞保持実験5)。実験設定.a:リアクタ、b:水蒸気、c:濃縮器、d:代謝水。
図17図17A:細胞無保持条件下における、増殖段階で培養した細胞に由来する定性的対照試料からの、実験1のMethanothermobacterthermautrophicus UC 120910(ECH0100)の細胞形態の写真。見て分かるように、より長い細胞が優勢であった。図17B:細胞保持条件下における増殖した試料からの、実験1のMethanothermobacter thermautrophicus UC 120910(ECH0100)の細胞形態の写真。見て分かるように、短い直線状の細胞が優勢であった。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0080】
以下の実施例は、本発明を該実施例に限定する意図なしに、記載された方法を意図通りに実行する実行可能な方法を示す。
【0081】
実施例1:細胞保持実験1
本発明の発明者らは、メタン富化ガス組成物のためのスケーラブルで信頼性のある連続生成工程において、メタン生成微生物によってH及びCOをメタンに変換する方法を提供するという課題を設定した。
【0082】
したがって、本発明者らは、メタン生成微生物を培養するための新規なアプローチ、すなわち細胞保持条件を適用することによって試験を行った。メタン生成微生物を保持するための1つの方法は、メタン生成段階中に過剰に形成された代謝水を除去するための濾過によって、本発明者らによって試験された。このコンセプトは、リアクタ内部の細胞培養培地の表面近くの細胞培養懸濁液に浸漬された、精密濾過に適したセラミック・フィルタ・ユニットの形態で実現された(図14に示される実験設定の概略)。セラミックフィルタは、Katadyn Deutschland GmbH及びGuangzhou PUREEASY Hi-Tech CO.,LTDから供給され、孔径は、それぞれ0.3μm及び0.1μmであった。フィルタハウジングはA4ステンレス鋼部品から構成された。精密濾過を用いることにより、全ての細胞をリアクタ内に保持した(細胞保持)。
【0083】
その上、本発明者らはまた、細胞保持条件下における所与のメタン生成的なメタン生成微生物集団が、窒素源の供給が減少するかまたは完全に停止する条件下であっても、経時的に安定に維持され得るかどうかの仮説を試験することに関心があった。
【0084】
実験は、10Lのバイオリアクタ中で実施し、以下の異なる工程条件/段階で合計1,600時間以内に収めた:
a.細胞増殖。
b.細胞保持下におけるフィルタ試験。
c.細胞保持なし(無細胞)でのメタン生成。
d.細胞保持下におけるメタン生成。
e.細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成。
f.アンモニア供給なしの細胞保持下におけるメタン生成。
実験設定は簡略化した形で図14に示す。実験1のパラメータの測定に使用した機器及び情報を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
実験1の結果を、図1図2及び図3に示す。増殖段階(段階指標a)の持続時間は、培養物の密度が最大OD610 30まで増加した場合は165時間であり、続いて細孔径0.1μmのフィルタまたは細孔径0.3μmのフィルタを用いて細胞保持(段階指標b)について異なるフィルタ材料を試験する387時間の継続期間中にはOD610 80まで更に増加した。更なる細胞保持段階の全てについて0.3μmの細孔径を有するフィルタを選択した後、OD610は定常段階に到達した。ここで、細胞密度は、メタン生成段階の間、細胞保持なし(持続時間:97時間、段階指標c、図1及び図2も参照)、細胞保持条件(持続時間:221時間、段階指標d)、アンモニア還元条件(持続時間:440時間、段階指標e)及びアンモニア投与なしの段階(持続時間:216時間、段階指標f)で、非常に安定したままであった。したがって、アンモニウム還元条件を適用した後、または追加のアンモニウム供給の完全停止後でさえも、細胞密度が有利には全く影響を受けないままであったことが示される。
【0087】
細胞保持フィルタ試験段階では、2つのフィルタ(0,1μm及び0,3μm)を試験し、定性的に比較した。異なるフィルタの試験のために、2つの追加のポートを使用し、互いに隣接して同時に試験して、比較した。一方は0.1μmフィルタに使用され、もう一方は0.3μmフィルタに使用された。これらをRushtonインペラ間の細胞懸濁液に浸漬した。手順としては、真空ポンプを用いて、両方のフィルタ上の上清を手動で排出した。比較のために、流量、OD及び顕微鏡(40倍)を定性的に使用した。
【0088】
0.1μmフィルタの流れは遅く、真空ポンプの助けを借りて同じ体積に達するには、倍以上の時間が必要であった。両方のフィルタで、光学密度、及び濾液中の細胞数の定性的比較は同じであった。0.1μmフィルタのより低い流量は、より小さい表面にも起因し得る。真空ポンプの稼働時間が長くなると、流量の全体的な低減もまた認められた。より高い流量により、0.3μmの孔径であるフィルタを、以下の細胞保持の実験で使用した。
【0089】
上清のみの排出(細胞保持)と細胞懸濁液の排出(細胞保持なしの生成段階、図1図2及び図3、段階c)との間の問題のない切替えを検証するために、通常モードへの短時間の切替えを1週間行った。結果として、連続的なアンモニア投与により、細胞が再び再生を開始し、流出は起こらないことが示される。排出は手動で1日1回行った。
【0090】
メタン生成速度は工程の動力学の尺度であり、細胞懸濁液の体積当たり及び1日当たりのメタンの体積(以下ではWDと略す)によって示されることが多い。図1及び図2で見られるように、始動中における毎分0.75LのHから毎分0.945LのHへの流量の工程に関連した増加に起因して、初期増殖段階(それぞれ、60%または8,2L/L/日)中に、平均CO変換率、したがってWDは最も低く、標準偏差は最も高かった。フィルタ試験期間は、変換率及びWDの両方の大きな変動を伴う低下をもたらす実験設定の変化及び適応によって特徴付けられる。これらのより安定性が低い条件の間、平均変換率及びWDは、予想される高い標準偏差により後続の試験段階よりも低いままである。
【0091】
細胞保持なしの生成期間中、平均(多孔質膜による濾過)変換率は88%であり、細胞保持条件下での生成期間中の83%の率に匹敵した。細胞保持条件下におけるアンモニア還元(70%)及びアンモニア投与なし(75%)の両方の変換率は、細胞保持なしの生成期間及び細胞保持ありの生成期間の変換率よりも小さかった。それにもかかわらず、有利かつ驚くべきことに、適用されるシステムの実験設定の全体的な高効率を主張する細胞保持条件下において細胞を同時に培養する場合、そのような還元または停止されたアンモニウム供給条件下における変換率は、依然としてかなり高かった。
【0092】
CO変換に依存するWDは上記の変換率の傾向に従った。しかしながら、細胞保持なしの生成期間中の誤差限界内では、平均31.7L/L/日であるWDは、細胞保持段階中のWD(WD=35L/L/日)に対して統計的な有意差はなく、還元アンモニアを伴う細胞保持(WD=34、1L/L/日)及びアンモニア供給なしの細胞保持(WD=32、4L/L/日;図1及び図2、グラフ/バー「B」参照)は、細胞保持条件下でのみ、または少なくともアンモニウム供給の減少(または完全停止)と組み合わせた細胞保持条件下での適用されたシステムの実験設定の全体的に高い効率を更に示している。
【0093】
細胞保持段階の間、流量は2回増加した(第1回:1.2L H/分、第2回:1.47L H/分)。これは変換の2回の減少によって認識可能である。流量の第1の増加では変換の以前のレベル(90%)への回復があったが、第2の増加は、より低い変換(78%)を有する安定段階をもたらす。以前の流量増加と比較して、変換率が低く、WDの増加がない最後の流量増加は、これが既にリアクタにとって高すぎる流量であったという徴候であった。リアクタ内の撹拌機性能が制限されているせいで、最高ガス供給入力を生体触媒により完全に処理することができなかった。したがって、流量は1.2L H/0.3L COまで下降した。
【0094】
次に、本発明者らは、安定した細胞集団が確立されると、細胞がより低いアンモニア投与に耐えるという彼らの仮説を試験することに関心があった。アンモニアは増殖に必要であり、細胞は保持されているので、これ以上アンモニアを必要とすべきではない。この相関を試験し、以前の実験を検証するために、投与に半分のアンモニア濃度(1,2M NH4OH)の溶液を使用した。pHを制御するために、3モルの水酸化ナトリウムをポンプで添加した。
【0095】
減少段階におけるアンモニアの濃度は、NH4-濃度が、最初の250mg NH4+/Lから、アンモニア供給が減少した期間の最後には100mg NH4/Lまで、実験の最後には10mg NH4/Lまで、低下することを示す。NaOHの添加によってpH安定化を行った。
【0096】
低い標準偏差によって認識可能なわずかな変動のみを伴う、極めて安定した工程全体の生成期間(細胞保持なし、細胞保持、ならびに減少したアンモニア供給及びアンモニア供給なしの細胞保持)が、顕著である。
【0097】
したがって、本発明の発明者らは、驚くべきことに、本発明にかかる細胞保持条件下においてメタン生成微生物を培養することによって、細胞培養数を維持しながら(図1図2及び図3、特に、段階指標d(及び、追加的にはc))と比較した段階指標e及び段階指標f)、経時的な完全アンモニウム供給を伴う段階と比較して、依然として高く非常に安定化されたメタン化率がこれらの段階において観察されたように、メタン生成段階における窒素源の供給を大幅に減少させるか、または更には完全に停止することが可能である(本実施例では、その後の増殖段階)ことを見出した。
【0098】
細胞保持条件下で細胞を培養した場合、驚くべき効果が本発明者らによって認められた。実験によれば、本発明者らは、実施した種々の細胞保持実験で一般に観察され得る細胞無保持条件(図17A図17Bを参照)下の匹敵する条件に対する、細胞保持条件下における様々な段階の間に、細胞形態の顕著な変化を示した(細胞が有意に短くなった)、試験メタン生成微生物Methanothermobacter thermautrophicus UC120910(ECH0100)を実施した。
【0099】
培養培地へのNHOH供給の減少または停止後、NaOHの添加によってpH安定化を行った。
【0100】
しかしながら、本発明者らは、塩基(NaOH)の添加が有害であるためにpHが当初は非常に不安定となり、これは、以前のように所与の値で維持するように安定化するにはある程度の時間を必要とすることに気付いた。この好ましくない不安定なpH効果は、実験設定を最適化することで改善されるべきである。
【0101】
そうするために、また、一般的に、先の実験設定及び性能を更に分析及び改善するために、更なる実験を行った。
【0102】
実施例2:細胞保持実験2
細胞保持条件下においてメタン生成微生物を培養しながら代謝水を除去するための、別の長期方法を試験した。
【0103】
実験2は、10Lのリアクタ中で実施し、以下の異なる工程条件/段階下にて運転時間合計6,000時間以内に収めた:
a.細胞増殖。
b.細胞保持なしでのメタン生成。
c.移行1及び移行2
d.細胞保持下におけるメタン生成。
e.細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成。
【0104】
実験設定は簡略化した形で図14に示す。実験2のパラメータの測定に使用した機器及び情報を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
実験2の結果を、図4図5及び図6に示す。培養物の密度が最大OD40まで増加した場合、増殖段階の持続時間は500時間であった。次の生成段階(1,100時間)では、細胞密度は、OD35~50の範囲内で安定したままであった(図4及び図5を参照されたい)。
【0107】
細胞保持モードを開始する前に、培養物の密度がOD40からOD18に減少した移行段階(c1:500時間)があった。この段階の間、ODは特異的に減少し、次いで移行段階内で、新規の細胞分裂及び細胞増殖インパルスが開始された。細胞保持段階(2,000時間)では、ODは200時間以内に60を超えるレベルまで増加し、続いて1.800時間の間、常にOD60~85の範囲内に留まった。アンモニア還元モードを開始する前に、細胞密度がOD40まで特異的に減少した、別の移行段階(c2:300時間)があった。アンモニア還元モード(1,600時間)では、細胞密度は200時間以内にOD80を超えるレベルまで増加し、続いて1,400時間の間、常にOD80~100の間の範囲内に留まった。
【0108】
平均CO変換率(81%)は、増殖段階において最も高かった。始動中における毎分0.05Lから毎分0.23L COへの流量の工程に関連した増加に起因して、初期増殖段階中に、WD(18.7L/L/日)は最も低く、標準偏差は最も高かった。
【0109】
しかし、細胞無保持条件下(細胞保持条件なし)でメタン生成段階を適用した場合、CO平均変換率は、57%のレベルで有害に減少した。有利には、メタン生成段階を細胞保持条件下で実施した後、CO平均変換率は、メタン生成段階中に71%まで増加した。興味深いことに、また驚くべきことに、アンモニア還元下で段階を適用した場合、CO変換率は、メタン生成段階中に75%のレベルまで増加した。その結果、より詳細には、VVDは、細胞保持なしの生成期間中において平均24.6L/L/日と最も低かった。体積生成率は、細胞保持段階(31.2L/L/日)中及び還元アンモニアを伴う細胞保持(32.4L/L/日)中で有意に高かった。細胞保持段階及びアンモニアが還元された段階の最中、流量に変化はなかった(1.2L H/分、0.30L H/分)。
【0110】
減少段階におけるアンモニアの濃度は、NH4-濃度が、最初の373mg NH4/L/日から、アンモニア供給が減少した期間の最後には224mg NH4/L/日まで低下することを示す(図6参照)。減少段階における細胞培養培地中のアンモニアの濃度は、NH4+-濃度が、最初の約250~200mg NH4/Lから、実験の最後アンモニア供給が減少した期間の最後には約100mg NH4+/Lまで低下することを示す。
【0111】
最も興味深いことに、また驚くべきことに、NHOH供給の減少を補償するためNaOHのような追加量の塩基を添加することによるpH安定化は、必要なかった(細胞保持実験1(予備実験)で行われたとおり)。対照的に、pHは、更なる実験全体にわたって、すなわち実験終了までの800時間にわたって、所与の値において、小さな誤差許容範囲内で安定したままであった。
【0112】
低い標準偏差によって認識可能なわずかな変動のみを伴う、極めて安定した工程全体の生成期間(細胞保持なし下、細胞保持下及び減少したアンモニア供給の細胞保持下)が、顕著である。
【0113】
実施例3:細胞保持実験3
実験3は、10Lのリアクタ中で実施し、以下の異なる工程条件/段階下にて3,500時間以内に収めた:
a.細胞保持下における細胞増殖。
b.細胞保持下におけるメタン生成。
c.細胞保持及び栄養素回収下におけるメタン生成。
d.細胞保持及びアンモニア還元下におけるメタン生成。
e.アンモニア供給なしの細胞保持下におけるメタン生成。
【0114】
実験3の結果を、図7図8及び図9に示す。細胞保持条件下における培養物の密度が最大OD60まで増加した場合、増殖段階の持続時間は550時間であった。細胞保持を伴う以下の連続メタン生成段階(980時間)において、細胞密度は、OD50~60の間で安定した。
【0115】
全部で1,100時間続く細胞保持条件下における栄養素回収の開始時に、培養物はOD55からOD33まで低下し、その後すぐにOD50以上に再増殖した。ODは、アンモニア還元(50%、25%)(550時間)の実験及びアンモニア投与なし(500時間)の実験の残りの期間にわたって安定したままであった。窒素源の供給の減少または完全な停止さえも、細胞密度に全く悪影響を及ぼさないことが示される。
【0116】
CO変換率に関するこれらの実験条件/段階の差は有意ではなく、したがって、異なる段階の様々な実験設定において、CO変換率が極めて同等であったという結論を示す。詳細には、平均CO変換率(74%)は、増殖段階及び栄養素回収段階で最も低く、細胞保持を伴うメタン生成段階及びアンモニア投与量を減少させた細胞保持段階の培地で中程度(79%)であり、アンモニアを添加しなかった場合に最も高かった(83%)。
【0117】
同様に、WDは、細胞増殖段階後の異なる試験条件において有意差はなく、26.5~34.4L/L/日の間で安定したままであった。詳細には、始動中における毎分0.035Lから毎分0.3L COへの流量の工程に関連した増加に起因して、初期増殖段階中に、VVD(25.9L/L/日)は最も低く、標準偏差は最も高かった。変換率の結果と同様であり、多少の変動があるためである。
【0118】
実施例4:細胞保持実験4
実験4は、3,500Lのバイオリアクタ中で実施し、以下の異なる工程条件/段階下にて200時間以内に収めた:
a.細胞保持及び培養培地成分の再利用を伴わないメタン生成。
b.細胞保持及び培養培地成分の再利用を伴うメタン生成。
【0119】
実験設定を図15に示す。実験4の結果を図10に示す。
【0120】
培地回収のために、逆浸透(R/O)膜/フィルタユニットを使用した。このフィルタ/膜ユニットでは、透水性フィルタ/膜を通過することができない細胞及びミネラルが残留液としてフィルタより前に蓄積され、適切な手段でリアクタにフィードバックされ、したがって細胞保持条件下においてリアクタシステムを作動させることができる一方で代謝水は、システムから除去される(透過液)。
【0121】
細胞保持及び培地回収を伴わない生成段階(38時間)では、ODは、OD34~36の範囲で安定していた。細胞保持及び培地回収を伴う生成が開始された後、細胞密度は51時間以内にOD50を超えるレベルまで増加し、続いて111時間の間、常にOD50~60の間の範囲内に留まった。
【0122】
実験の開始時、リアクタは約8時間後は常に停止した。リアクタの再起動後、変換率はシャットダウン前と常に同じ範囲であった。83時間の運転時間の後、リアクタを、中断することなく連続的に運転させた。CO変換率は90~100%の範囲で主に安定していた。
【0123】
培地回収及び細胞保持は、工程の安定性に悪影響を及ぼさず、反対に、工程の安定性は、細胞保持条件下及び培地再利用下で影響を受けないままであった。
【0124】
実施例5:細胞保持実験5
実験設定は簡略化した形式で図16に示す。
【0125】
A.短期実験:5日間の実験
4500~5000Lの充填体積を有する工業規模のリアクタを使用した。リアクタには、嫌気性消化装置から、およそ50%のメタン及び50%の二酸化炭素を含有するバイオガスを供給した。水素は水素タンクから供給した。バイオガス中のCO含有量は赤外線ガス分析計(infrared gas analyzer:IRGA)を用いて測定し、バイオガス及び水素の流速を調整して、4.0を超えるH:COの比を達成した。リアクタは工業規模で設置した。リアクタが空である場合、スケールは考慮された。したがって、測定される重量は、リアクタの内容物の重量のみである。リアクタの上部空間の温度は63℃であり、メタン化反応は大気圧で起こった。
【0126】
運転中は、リアクタの内容物を排出しなかった。リアクタから出た唯一の内容物は水蒸気の形態であった。リアクタの出口から出るガスを水蒸気で飽和させた。この水を濃縮し、排水容器から収集した。
【0127】
短期(5日間)実験5の結果を、図11及び図12に示す。
【0128】
図11に示す工業規模の実験では、初期リアクタ質量は、4850kgであった。
【0129】
この実験の最初の50時間にわたって、リアクタは水蒸気損失によって50kgの質量を失い、4800kgの重量が次の70時間にわたって維持された。
【0130】
内容物はリアクタの底部または他の場所から排出しなかった。
【0131】
B.長期結果:50日間の実験
内容物は、図12に示す50日間の実験期間中、リアクタから排出しなかった。バイオガス(50%メタン及び50%CO)及び水素を4を超えるH:CO比でリアクタに供給した。リアクタを63℃及び大気圧に維持した。バイオガス流量及び撹拌機の速度は、50日間で変動した。
【0132】
リアクタ質量の範囲は4750~4850kgであった。CH及びHO生成の増加の結果としてバイオガス流速が増加した場合(288~365時間)、質量が増加した。出口(生成物)ガス流で放出された水蒸気は、バイオメタン化反応における生体触媒によって生成されたHOを除去する唯一の手段であった。
【0133】
したがって、効率的な連続メタン化工程を実行しながら蒸発によって過剰な代謝水を除去することは、別の適切な選択肢であり、容易に実現できることが示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】