(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】鏡像異性的に純粋なノルエピネフリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 213/02 20060101AFI20220620BHJP
C07C 215/34 20060101ALI20220620BHJP
C07B 53/00 20060101ALI20220620BHJP
C07C 225/16 20060101ALI20220620BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20220620BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20220620BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220620BHJP
【FI】
C07C213/02
C07C215/34 CSP
C07B53/00 B
C07C225/16
B01J23/44 Z
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562053
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2020059438
(87)【国際公開番号】W WO2020212157
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521454869
【氏名又は名称】エドモンド ファーマ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】EDMOND PHARMA S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ザッチェ、 マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ガッティ、 ピエル アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ジェルリ、 フルビオ
(72)【発明者】
【氏名】スバルバダ、 ダヴィーデ
(72)【発明者】
【氏名】ロンディナ、 ファビオ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA06
4G169AA14
4G169BA08B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE41A
4G169BE41B
4G169BE46A
4G169BE46B
4G169CB02
4G169CB57
4G169CB70
4G169CB77
4G169DA04
4G169DA08
4G169EA01Y
4H006AA02
4H006AC52
4H006AC81
4H006BA25
4H006BD70
4H006BE20
4H006BJ50
4H006BN10
4H006BN30
4H006BR30
4H039CA71
4H039CB30
(57)【要約】
鏡像異性的に純粋なノルエピネフリンの製造方法
本発明は、水素供与体移動下での接触水素化システムを使用する、鏡像異性的に純粋なノルエピネフリン(ノルアドレナリンとしても知られる)またはその付加塩の新規で効率的な製造方法に関する。本発明はまた、新規な中間体およびその製造方法を開示する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルエピネフリンまたはその付加塩の単一エナンチオマーの製造方法であって、以下の工程を含む方法:
a) 式(IV)の化合物を、
【化1】
(式中、Xはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、)
適切な溶媒中、補助塩基を使用して、不活性ガス雰囲気下で、ベンジルアミンと反応させ、得られた縮合生成物をカルボン酸との酸付加塩として単離して、式(III)の化合物を得、
【化2】
(式中、Rは水素、または脂肪族、脂環式もしくは芳香族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸の残基であり、)
b) 式IIIのベンジルアミノケトン酸付加塩のエナンチオ選択的還元により、式Vのベンジルアミノアルコールの単一のエナンチオマーを得、
【化3】
(式中、波線の結合を有する炭素原子は、(R)または(S)配置でよく)
c) 式Vの化合物の単一エナンチオマーの脱ベンジル化により、ノルエピネフリンの単一エナンチオマーを得、
d) ノルエピネフリンの単一エナンチオマーを遊離塩基またはその酸付加塩として単離し、を含む方法。
【請求項2】
式IIIの化合物において、Rが水素、カルボキシル基、1~17個の炭素原子を有するアルキル基、または12個以下の炭素原子のアリール基の群から選択され、前記アルキル、シクロアルキルおよびアリール基が、任意選択でさらなるカルボキシル基によって置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の式IVの化合物において、XがClであり、溶媒が水であり、補助塩基がトリエチルアミンまたはベンジルアミンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、前記カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、トルイル酸、o-フタル酸および酒石酸、好ましくはギ酸および酢酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程b)が、式IIIの化合物を、適切な触媒の存在下で水素または水素源と反応させて、式Vの化合物をエナンチオ選択的に得、任意選択で遊離塩基またはその酸付加塩として式Vの化合物を単離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記適切な触媒が、式VIによって定義される化合物の群から選択され、
【化4】
(式中、nは1または2の整数であり、R’およびArはトシル(Ts)、メシチル(Mts)、メシル(Mes)およびトリイソプロイルフェニル(Tris)の群から選択され、エチレンジアミン部分のフェニル基を有する2つの立体中心は(R、R)または(S、S)であり、)
請求項1で定義される式Vの化合物をエナンチオ選択的に得る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式VIの化合物においてnが1であり、触媒がC3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl]、C3-[(S,S)-teth-MtsDPEN-RuCl]、C3-[(S,S)-teth-MesDPEN-RuCl]、およびC3-[(S,S)-teth-TrisDPEN-RuCl]、好ましくはC3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl]の群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程c)が、適切な触媒の存在下で、式Vの化合物を水素または水素源と反応させることを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記適切な触媒が、パラジウムである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)およびc)が、任意に水を含有するC1~C3アルコール中で行われる、先行する請求項のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)およびc)がワンポット様式で行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式Vの化合物を遊離塩基またはその酸付加塩として単離することを含む、請求項1~11に記載の方法。
【請求項13】
ノルエピネフリンの単一の鏡像異性体が(R)-ノルエピネフリンで先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
シュウ酸または酒石酸付加塩としての(R)-ノルエピネフリンの調製のための、先行する請求項のいずれかに1項に記載の方法であって、以下の工程、
i) 補助塩基としてトリエチルアミンを用いて水中で2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンとベンジルアミンとを反応させ、
ii) 反応をギ酸または酢酸でクエンチし、アセトンの添加によりRがHまたはメチルである式IIIの化合物を沈殿させ、
iii) エナンチオ選択的還元のための触媒としてC3-[(S,S)-TETH-TsDPEN-RuCl]を使用して、メタノールおよび水の混合物中で式IIIの化合物を水素源としてのギ酸と反応させ、
iv) 活性炭上のパラジウムを反応混合物に添加してベンジル保護基を除去し、および
v) シュウ酸または酒石酸付加塩として(R)-ノルエピネフリンを沈殿させる、
を含む方法。
【請求項15】
式IIIの化合物。
【化5】
(式中、Rは水素、または脂肪族、脂環式もしくは芳香族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸の残基である。)
【請求項16】
Rが水素、カルボキシル基、1~17個の炭素原子を有するアルキル基、または12個以下の炭素原子のアリール基であり、前記アルキル、シクロアルキルおよびアリール基が、任意選択でさらなるカルボキシル基によって置換されている、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Rが水素またはメチルである請求項16に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素供与体移動下での接触水素化システムを使用する、鏡像異性的に純粋なノルエピネフリン(ノルアドレナリンとしても知られる)またはその付加塩の新規で効率的な製造方法に関する。本発明はまた、新規な中間体およびその製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
ノルアドレナリンまたはアテレノールとしても知られるノルエピネフリンは、カテコールアミン類に属する天然の化合物である。人体では、ノルエピネフリンは行動のために脳と身体を動員させることを主な機能とするホルモンと神経伝達物質であり、薬理学的には交感神経作動薬として用いられる。交感神経作動薬であるノルエピネフリンは、様々な橈骨筋や消化管の括約筋の血管収縮を引き起こすアドレナリン受容体を刺激する。さらに、ノルエピネフリンは心血管系における交感神経の主要な神経伝達物質であり、心血管緊張の緊張性および反射性変化の原因となる。
【0003】
ノルエピネフリンは化学的に左旋性エナンチオマーとして自然に生じる4-[(1R)-2-アミノ-1-ヒドロキシエチル]ベンゼン-1,2-ジオールであり、式Iに示す構造を有する:
【0004】
【0005】
(R)-ノルエピネフリンの現在の工業的製造方法は、異なる反応順序によって3,4-ジヒドロキシ-α-アミノアセトフェノン(アテレノンとも呼ばれる)を調製し、次いで、金属触媒を用いた水素化によって後者を還元して、ラセミノルエピネフリンを生成し、次いで、これは、L-(+)-酒石酸を用いたジアステレオ異性塩の形成によって分離されることを含む。
【0006】
米国特許第2,786,871号は、アテレノンが、3,4-ジヒドロキシ-α-クロロアセトフェノンをアンモニアと反応によって50%の収率で得られることを開示している。次いで、アルテレノンを水素化して、ラセミノルエピネフリンを得ることができる。この方法は収率が低く、反応混合物が薄黒くなり、薬学的使用に適さない着色された生成物を生じるという欠点を有する。
【0007】
WO 2013/008247は、3,4-ジヒドロキシ-α-ハロアセトフェノンをヘキサミン反応させ、次いで加水分解し、水素化してラセミノルエピネフリンを得る、アテレノンの製法を開示している。この方法はいずれにしても、有毒で変異原性である塩素化溶媒、好ましくはクロロホルムの使用を必要とする欠点を有し、その使用は工業的使用に限定される。さらに、水素化は、さらなる分解工程に供されなければならないラセミ物質を生じ、プロセスの収率を劇的に低下させ、廃棄物を増加させる。
【0008】
アテレノンの形成における主な問題は、カテコール部分と共存する第一級アミノ基が存在することであるので、アテレノン自体はカテコール部分が保護されている(例えば、アセチル化されている)か、またはアミノ基が保護されている(例えば、ベンジル化されている)誘導体によって代替的に置換されてもよい。とにかく、これらの選択肢の両方についての文献は非常に少ない。カテコール部分の保護の場合、主な欠点は2つの工程、保護および脱保護を加えなければならないことであり、これは、より長くより退屈な方法および精製するのが困難な不純物の形成の危険性を与え、保護/脱保護方法がこれらの理由のために、工業規模の方法ではほとんど使用されない。アミノ部分の保護の場合には、アンモニアの代わりにベンジルアミンを用いて縮合を行い、次いでベンジル基を同じ水素化工程によって除去することができる。いずれにせよ、文献によれば、このような化合物は安定ではない。実際、Egorovらによると(Org. Biomol. Chem., 2014, 12, 1518)、ベンジルアミンとの縮合2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンは、式IIに示される不安定なアミノケトンをもたらす。
【0009】
【0010】
同じ文献で報告されているように、化合物は非常に不安定であるため、それを単離することはできないが、それを迅速に別の化合物と反応させる必要がある。別の参考文献は、2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンのモノベンジルアミノ誘導体を調製する試みが成功しなかったことを報告している(Simonoff and Hartung, J. Am. Pharm. Assoc. 1946 Oct; and 35(10):306-9)。 さらに別の論文(Dakin、Proc. Roy. Soc., 76B,498(1905))には、ベンジルアミンと3,4-ジヒドロキシフェナシルクロリドとの反応の失敗がフェノール性ヒドロキシル基の存在によるものと予想されると記載されている。
【0011】
一般に、アテレノンまたはその誘導体の水素化に依存する(R)-ノルエピネフリンの製造のための全ての公知の方法は、ラセミ物質が得られ、時間の損失および廃棄物の増加を伴うエナンチオマーのさらなる分離を必要とするという主要な欠点を有する。
【0012】
例えば、米国特許第2,774,789号は、酒石酸、リンゴ酸またはN-ベンゾイル-L-トレオニンを用いたdl-ノルエピネフリンの分離を開示している。いずれにしても、169gのラセミ体から、約30~40gの(R)-ノルエピネフリンに相当する60~85gの酒石酸塩一水和物が得られるので、このような方法の収率はかなり低い。この量は理論モル量に対して47%の収率に相当し、これは、ラセミ体の出発量に対して23%の収率を意味し、すなわち生成物量の77%を浪費する。次に母液を回収し、ラセミ化して、再び分解すべきある種の原料を得ることができるが、これは面倒で時間のかかる作業である。この方法は収率、廃棄物の発生および必要な時間の観点から、明らかに非常に非効率的である。
【0013】
CN 108069863には、(-)-ジイソプロピルジイソピノカンフィルクロロボランのようなキラルボラン試薬によるアレノンの還元を記載するエナンチオ選択的方法が報告されている。報告された実施例は、少なくとも99.0%のエナンチオマー純度を得るために、医薬用途に適していることを示し、反応は-30℃のような非常に低い温度で行われなければならない。プラント内でこのような低温を維持することは簡単な仕事ではなく、このような低温で反応を行うのに適した装置のコストはプロセスの工業的な利用可能性を制限する。
【0014】
さらに、2.5~3.0モル当量と記載されるように、大過剰の還元試薬が必要である。実際、この特許の実施例に報告されているように、16.7gのアテレノンについては、150gもの量のボラン試薬を使用しなければならず、これは質量においてほぼ10倍である。次いで、試薬は消費され、廃棄物として廃棄され、いかなる手段によっても回収することができない。ボラン試薬は市場では直接入手できず、製造するのにかなり高価であり、用いる試薬についての安全性を、あきあきする手順で社内で製造しなければならず、不活性ガス下で制御された温度で貯蔵しなければならず、不安定な試薬であるため短時間で使用しなければならない。
【0015】
これらの全てを考慮すると、この製造プロセスはその多くの欠点のために、工業的製造には明らかに適していない。
【0016】
Kershaw NM ら「 タンパク質-リガンド・インタラクションの発見と発達のためのX線結晶学と計算ドッキング」、Curr Med Chem. 2013; 20(4):569-75には、式IVの化合物を保護し、還元しおよびベンジルアミンと反応させることによる化合物の調製が開示されている。
【0017】
【0018】
驚くべきことに、ノルエピネフリンの単一のエナンチオマーの製造のための他のエナンチオ選択的方法は知られていない。これは特に驚くべきことである。なぜなら、この分子は20世紀初頭に発見され、1世紀以上にわたって薬理学および患者ケアにおいて中心的な役割を果たしてきたからである。さらに驚くべきことに、同様の生物学的および薬理学的役割を果たす、アドレナリンまたはフェニレフリンなどのカテコールアミンクラスのほとんどすべての他の分子については、1つ以上のエナンチオ選択的製造方法が文献に報告されている。
【0019】
したがって、工業的製造に適し、医薬成分としての使用に適した、薬理学的に有用な(R)-ノルエピネフリンの効率的な製造方法が必要とされている。このような新規な方法の主な目的は、上記の欠点を考慮すると、一般的な化学プラントに適した条件を使用し、単純で、時宜を得て、費用効果の高い手順に従い、触媒試薬を使用し、少量の廃棄物を生成するエナンチオ選択的方法(すなわち、少なくとも99.0%以上のキラル純度を有する単一のエナンチオマーを生成する)の必要性である。また、この新規な方法は、容易に製造され、工業的製造のために十分な安定性を有し、毒性または突然変異誘発試薬を必要とせず、医薬製造に適した品質プロファイルを有する中間体を使用することを目的とする。
【発明の概要】
【0020】
本発明は新規な中間体上で行われる触媒的不斉水素化によるノルエピネフリンの単一エナンチオマーの調製のための新規で効率的なエナンチオ選択的方法を提供し、従来技術の上記の欠点の全てを克服する。新規方法の条件下で特に有用なのは、薬理学的に興味深い鏡像異性体である(R)-ノルエピネフリンの調製である。
【0021】
本発明は、以下の工程を含む、ノルエピネフリンまたはその付加塩の単一のエナンチオマーの製造方法を提供する:
a) 式(IV)の化合物を、
【0022】
【0023】
(式中、Xはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり)、
適切な溶媒中、補助塩基を使用して、不活性ガス雰囲気下で、ベンジルアミンと反応させ、得られた縮合生成物をカルボン酸との酸付加塩として単離して、式(III)の化合物を得、
【0024】
【0025】
(式中、Rは水素、または脂肪族、脂環式もしくは芳香族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸の残基であり、)
b) 式IIIのベンジルアミノケトン酸付加塩のエナンチオ選択的還元により、式Vのベンジルアミノアルコールの単一のエナンチオマーを得、
【0026】
【0027】
(式中、波線の結合を有する炭素原子は、(R)または(S)配置でよく、)
c) 式Vの化合物の単一エナンチオマーの脱ベンジル化により、ノルエピネフリンの単一エナンチオマーを得、
d) ノルエピネフリンの単一エナンチオマーを遊離塩基またはその酸付加塩として単離する。
【0028】
本発明のさらなる目的は、式IIIの新規な中間体である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1つの実施形態において、本発明は、ノルエピネフリンの単一エナンチオマーの調製のための新規な中間体を提供する。一実施形態では、ノルエピネフリンの単一の鏡像異性体が式(I)の(R)-ノルエピネフリンである。
【0030】
驚くべきことに、上記の式IIの不安定なベンジルアミノケトンは得られた縮合生成物が上記の一般式IIIのカルボン酸との酸付加塩として単離される場合、再現性があり、工業的に便利な方法で調製され得ることが見出された。
【0031】
一般式IIIにおいて、カルボン酸は、脂環式、モノ-またはジ-カルボン酸および芳香族モノ-およびジ-カルボン酸を含む任意の脂肪族であってよい。上記一般式IIIにおいて本明細書中で使用される場合、Rは水素、カルボキシル基、好ましくは1~17個の炭素原子のアルキル基、または好ましくは12個以下の炭素原子のアリール基であり、該アルキル、シクロアルキルおよびアリール基は任意選択でさらなるカルボキシル基によって置換されており、カルボン酸の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、トルイル酸、o-フタル酸、酒石酸などである。
【0032】
従って、本発明は、式IVの化合物を反応させることによる式IIIの化合物の製造方法を提供し、該方法は、
【0033】
【0034】
(式中、Xはハロゲン(F、Cl、Br、I)であり、)
式IVの化合物を、適切な溶媒中で、補助塩基を使用して、不活性ガス例えば窒素の雰囲気下で、ベンジルアミンと反応させ、得られた縮合生成物を、カルボン酸との酸付加塩として単離する。
【0035】
好ましい実施形態では、式IVの化合物が2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン、すなわちX=Clである。実際、一般式IVの全ての化合物の中で、これは最も安定なものであり、工業的使用に最も適している。
【0036】
反応は酸素と反応混合物との間の接触を回避するために、不活性ガス、典型的には窒素の雰囲気下で行われる。実際、酸素が存在する場合、ラジカル酸化反応が起こり、生成物の純度およびプロセスの収率の両方を低下させることがある。
【0037】
反応に使用される補助塩基は、カテコール部分の少なくとも1つからプロトンを抽出すべきであるので、10以上のpKを有するように選択される;このような塩基は有機または無機であり得る。好適な無機塩基の例としては、金属水素化物、または水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシドおよびナトリウムtert-ブトキシドなどの金属水酸化物またはアルコキシドが挙げられる。適切な有機塩基の例としては、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エンまたは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、またはベンジルアミンなどのアミンが挙げられる。一般に入手可能であり、安全かつ安価であるトリエチルアミンの使用は、工業的観点から特に有利である。
【0038】
補助塩基は、2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンに対して1~10モル当量で、好ましくは1~5モル当量で、最も好ましくは1~2モル当量で使用される。
【0039】
ベンジルアミンは、2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンに対して1:1~1:10のモル比で使用することができる。工業的観点から特に有用なのは、1.5:1~5:1の比のモル過剰のベンジルアミンを2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンに使用することである。好ましくは過剰比が3:1~5:1、最も好ましくは4:1のモル過剰であるべきであり、これは収率と工業的コストとの間の最良の比を与える。
【0040】
適切な溶媒は、塩基性条件下で安定な有機溶媒、または水である。適切な有機溶媒には、エーテル、環状エーテル、炭化水素、ハロカーボン、スルホキシドまたはそれらの混合物が含まれる。このような溶媒の例はジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トルエン、キシレン、塩化メチレンまたはジメチルスルホキシドであるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、水は任意の有機溶媒と比較した場合、安全な溶媒であるので、溶媒として使用され、完全な溶液中の反応混合物を提供し、これは、不均質な反応系と比較した場合、安定で均一な反応系およびより速い反応時間を与える。
【0041】
反応の温度は、10℃と溶媒の還流温度との間、好ましくは20℃~60℃の間に保たれる。溶媒が水である好ましい実施形態では、35℃~50℃の温度が収率、純度および反応時間に関して最良の結果を提供する。より高い温度はより短い時間をもたらすが、より高い不純物プロフィールおよびより低い収率をもたらし、一方、より低い温度は延長された反応時間をもたらす。
【0042】
反応の完了後、混合物を一般式R-COOH(式中、Rは上で定義したとおりである)のモノカルボン酸またはジカルボン酸でクエンチする。好ましい実施形態では、カルボン酸はギ酸(R=H、化合物A)または酢酸(R=CH3、化合物B)である。
【0043】
【0044】
カルボン酸は縮合の間に使用される塩基の総モルに対して同等またはわずかに過剰量で、すなわち、反応に使用される補助塩基のモルおよびベンジルアミンのモルの両方をカバーするために、都合よく使用される。カルボン酸添加の最後のpHは水中のこのようなカルボン酸の希釈溶液の範囲であるべきであり、したがって、例えば、酢酸が使用される場合、pHは4付近であるべきである。これは、縮合生成物の中和および安定化を確実にする。pHが正しい範囲になると、生成物の酸付加塩が溶媒から直接沈殿するか、または水を使用する場合、水溶性溶媒を添加して、溶液から酸付加塩を沈殿させる。このような水溶性溶媒は、式IIIの化合物が可溶性でない溶媒の中から選択され;適切な溶媒はアルコール、環状エーテルまたはケトンであり;溶媒の選択は酸付加塩が酸性部分自体に基づいて異なる溶解特性を有するので、反応をクエンチするように選択されたカルボン酸に直接関連する。このような溶媒の例は、メタノール、イソプロパノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどであるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、水が溶媒として使用され、クエンチングのために酢酸またはギ酸が使用される場合、好ましい水溶性溶媒は、容易に入手可能であり、安価であり、収率および純度に関して最良の結果を与えるのでアセトンである。
【0045】
次いで、得られた生成物を濾過または他の類似の方法によって単離する。得られた生成物は、例えば、溶媒を用いた結晶化または粉砕によってさらに精製されてもよく、またはノルエピネフリンの単一の鏡像異性体を調製するためのプロセスの次の工程に供されてもよい。
【0046】
実際、本発明の第2の態様において、驚くべきことに、式IIIのベンジルアミノケトン酸付加塩は、式Vの新規なベンジルアミノアルコールにエナンチオ選択的に還元され得ることが見出された。
【0047】
式Vの新規中間体を脱ベンジル化して、ノルエピネフリンの単一エナンチオマーを得ることができる。
【0048】
好ましい実施形態において、ノルエピネフリンの単一の鏡像異性体は、(R)-ノルエピネフリンであり、(R)-ノルエピネフリンを調製するための本発明の方法の工程b)およびc)の順序はスキーム1に示され、式中、Rは上記で定義されるとおりである。
【0049】
【0050】
この方法は、工業的調製に最も適した方法で、中間生成物を単離することなく、工程b)およびc)の2つの還元を連続的に行って、ワンポットで実施するのが好都合である。それにもかかわらず、必要であれば、本発明の範囲を限定することなく、式Vの中間体またはその酸付加塩を単離することが可能である。
【0051】
上記スキームによる反応は、以下の工程を含む:
・ステップ1:式IIIの化合物を、適切な触媒の存在下、アルコール性またはヒドロアルコール性溶媒中で、水素または水素源と反応させて、式Vの化合物をエナンチオ選択的に得る。
・任意選択で、式Vの化合物をその遊離塩基または酸付加塩として単離する。
・ステップ2:式Vの化合物を、適切な触媒の存在下、アルコール性またはヒドロアルコール性溶媒中で、水素または水素源と反応させて、ノルエピネフリンの単一エナンチオマーを得る。
・ノルエピネフリンの単一エナンチオマーを遊離塩基またはその酸付加塩として単離する。
【0052】
上記のように、工業的製造のための最も有用なシステムはワンポット反応であり、この反応では、工程1が1つの触媒で完了し、得られた式Vの化合物を第2の触媒とその場で反応させて、保護ベンジル基を除去する。この方法では、ステップ1および2の両方とも、同じ溶媒混合物および同じ水素源を使用する。
【0053】
反応に使用される溶媒はC1~C3アルコールであり、メタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールが好ましく、メタノールが最も好ましい。溶媒は、任意選択で水を含有してもよい。好ましい実施形態では、9:1のメタノール/水混合物が反応媒体として使用される。
【0054】
水素源は、移動水素化システム下の分子状水素または水素供与体であってもよい。移動水素化は周知の方法であり、水素供与体の適当な例としては、水酸化カリウムを含むイソプロパノール、ギ酸/トリエチルアミン緩衝液、ギ酸ナトリウム緩衝液、ギ酸、またはそれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、ギ酸が使用され、これは、加熱下で水素および二酸化炭素に分解する。
【0055】
工程1におけるエナンチオ選択的還元のための適切な触媒は、「繋ぎなわ(tether)」タイプのスルホンアミド誘導体化ジフェニルエチレンジアミンとのルテニウム(II)錯体である。このような種類の触媒は、M. Wills らによって(J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 7318) およびR. Hodgkinson らによって(Organometallics, 2014, 33(19), 5517-5524)に開示されていており、一般式VIで表される。
【0056】
【0057】
上記式において、nは1または2の整数であり、スルホンアミド部分は、それぞれ基R’またはArに対応するアルキルスルホンアミドまたはアリールスルホンアミドであり得る。「テザー」側鎖は、3個(n=1)または4個(n=2)の炭素原子のアルキレン鎖である。エチレンジアミン部分のフェニル基を有する2つの立体中心は、(R、R)または(S、S)であり得る。(R、R)鏡像異性体を使用する場合、ノルエピネフリンの鏡像異性体の一方が得られ、(S、S)鏡像異性体を使用する場合、他方が得られる。特に、(S、S)エナンチオマーを使用する場合、薬理学的に活性な(R)-ノルエピネフリンが得られる。
【0058】
3個または4個の炭素原子の繋ぎなわ(テス)を有する式VIの市販の触媒の例には、C3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl]、[(S,S)-teth-MtsDPEN-RuCl]、C3-[(S,S)-teth-MesDPEN-RuCl]、C3-[(S,S)-teth-TrisDPEN-RuCl]、C4-[(R,R)-teth-TrisDPEN-RuCl]、C4-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl]およびC4-[(S,S)-teth-MsDPEN-RuCl]が含まれる。これらの式において、R’またはAr基はトシル(Ts)、メシチル(Mts)、メシル(Mes)またはトリイソプロイルフェニル(Tris)であり、接頭辞C3またはC4は、それぞれ3または4個の炭素原子を有するテザー(テス)の存在を示す。
【0059】
好ましくは、(R)-ノルエピネフリンの調製に使用される触媒がC3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl]、C3-[(S,S)-teth-MtsDPEN-RuCl]、C3-[(S,S)-teth-MesDPEN-RuCl]、およびC3-[(S,S)-teth-TrisDPEN-RuCl]の群から選択される。より好ましくは触媒がC3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl]であり、これは鏡像異性体純度、反応時間および触媒負荷に関して最良の結果を与える。
【0060】
このようにして得られた(R)-ノルエピネフリンは、HPLC分析によって評価すると、99%以上の高いエナンチオマー純度を有する。
【0061】
工程2で使用される触媒は、ベンジル基の脱保護に使用される一般的な触媒から選択される。好ましくは触媒はパラジウムであり、より好ましくは木炭上のパラジウムである。
【0062】
得られたノルエピネフリンの単一エナンチオマーは、遊離塩基またはその酸付加塩のいずれかとして回収される。工業的観点から特に有用なのは、(R)-ノルエピネフリンを酒石酸塩として単離して、薬学的に有用な活性成分(R)-ノルエピネフリン重酒石酸塩一水和物を得ることである。それにもかかわらず、本発明自体の範囲を限定することなく、例えば、必要に応じてさらに精製するために、異なる酸付加塩として単離することができ、第2の工程において、このような塩を重酒石酸塩に変換することができる。次いで、得られた生成物を濾過または他の類似の方法によって単離する。
【0063】
好ましい態様において、(R)-ノルエピネフリンは、さらなる精製が必要な場合にはシュウ酸塩として、または市販されている活性医薬成分を直接得るための酒石酸塩として回収される。
【0064】
好ましい実施形態では、したがって、(R)-ノルエピネフリンはシュウ酸または酒石酸付加塩として、以下の工程を含む方法によって調製される:
・補助塩基としてトリエチルアミンを使用して、2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンを水中でベンジルアミンと反応させる。
・反応物をギ酸または酢酸でクエンチし、アセトンの添加により式IIIの化合物を沈殿させる。
・エナンチオ選択的還元のための触媒としてC3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl]を使用して、メタノールおよび水の混合物中の式IIIの化合物を水素源としてギ酸と反応させる。
・活性炭上のパラジウムを反応混合物に添加して、ベンジル保護基を除去する。
・シュウ酸または酒石酸付加塩としての(R)-ノルエピネフリンを沈殿させる。
【0065】
したがって、本発明は、ノルエピネフリン、特に(R)-ノルエピネフリンの単一異性体を、99%を超えるエナンチオマー純度で高収率および高純度で調製するための、単純で、経済的で、効率的で、丈夫で、環境に優しい、適切な方法を開示する。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明をさらに説明する。
【0067】
実施例1
2-ベンジルアミノ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン酢酸塩(化合物B)の調製
水(1.3kg)および2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン(1kg)を不活性化反応器に入れる。得られた懸濁液に、トリエチルアミン(0.67kg)を30℃を超えることなく添加して、溶液を得る。ベンジルアミン(2.4kg)を50℃を超えずに滴下する。添加の終わりに、塊を50℃で約2時間撹拌下に保ち、次いで約10℃に冷却し、25℃を超えることなく窒素下でアセトン(1.6kg)および酢酸(1.8kg)の混合物を添加する。反応混合物を約10℃に冷却し、次いでアセトン(2kg)を添加し、生成物を濾過して、1kgの2-ベンジルアミノ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン酢酸塩を得る(乾燥後)。
【0068】
実施例2
2-ベンジルアミノ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン酢酸塩(化合物B)の調製
水(30g)および2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン(10g)を窒素下で反応器に装入する。ベンジルアミン(31g)を35℃を超えずに滴下する。添加の終わりに、塊を45℃で約2時間撹拌下に保ち、次いで約10℃に冷却し、25℃を超えることなく窒素下でアセトン(8g)および酢酸(18g)の混合物を添加する。反応混合物を約10℃に冷却し、次いでアセトン(72g)を加え、生成物を濾過し、次いでアセトン(27g)中に懸濁し、室温で約30分間撹拌し、次いで濾過して8gの2-ベンジルアミノ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン酢酸塩を得る(乾燥後)。
【0069】
実施例3
2-ベンジルアミノ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンホルメート(化合物A)の調製
水(45g)および2-クロロ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン(30g)を窒素下で反応器に装入する。得られた懸濁液にトリエチルアミン(20g)を30℃を超えることなく添加する。ベンジルアミン(72g)を45℃を超えずに滴下する。添加の終わりに、塊を撹拌下45~50℃で約2時間保持し、約10℃に冷却し、アセトン(24g)とギ酸(54g)の混合物を窒素下で25℃を超えることなく添加する。反応混合物を約10℃に冷却し、アセトン(48g)を加え、次いで生成物を濾過して39gの2-ベンジルアミノ-3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノン酢酸塩を得る(乾燥後)。
【0070】
実施例4
2-ベンジルアミノ-1-(3’,4’-ジヒドロキシフェニル)-エタノール(式Vの化合物)の調製
イソプロパノール(90mL)、水(10mL)、ギ酸(3mL)、化合物B(20g)およびC3-[(S,S)-teth-MesDPEN-RuCl](30mg)をフラスコに入れる。混合物を30分間加熱還流し、次いでギ酸(6mL)を滴下する。混合物を2時間加熱還流し、イソプロパノール(100mL)で希釈し、アンモニアでpH 8に中和する。固体を濾過し、イソプロパノールで洗浄し、真空下で乾燥させて、2-ベンジルアミノ-1-(3’,4’-ジヒドロキシフェニル)-エタノール15 gを得た。
【0071】
実施例5
2-ベンジルアミノ-1-(3’,4’-ジヒドロキシフェニル)-エタノール(式Vの化合物)の調製
メタノール(180mL)、水(20mL)、ギ酸(6mL)、化合物B(40g)およびC3-[(S,S)-teth-MtsDPEN-RuCl](50mg)をフラスコに入れる。混合物を30分間加熱還流し、次いでギ酸(12mL)を滴下する。混合物を2時間加熱還流し、濃縮乾固し、水(200mL)およびイソプロピルエーテル(200mL)で希釈する。二相混合物をトリエチルアミンでpH 8に中和する。固体を濾過し、イソプロパノールで粉砕し、再び濾過し、最後に真空下で乾燥して、28gの2-ベンジルアミノ-1-(3’,4’-ジヒドロキシフェニル)-エタノールを得る。
【0072】
実施例6
(R)-酒石酸水素ノルエピネフリンの調製
化合物B(300g)、メタノール(1.8L)、水(1.2L)、C3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl](0.6g)およびギ酸(50mL)を反応器に入れる。混合物を加熱還流し、ギ酸(38mL)を滴下する。溶液を2時間加熱還流し、次いでPd/C 10%(30g)を添加する。混合物を加熱還流し、ギ酸(88 mL)を滴下して加える。3時間の還流後、混合物を濾過して触媒を除去し、L-(+)-酒石酸(261g)を添加する。溶液を真空下で濃縮し、残渣をエタノール(600mL)および精製水(200mL)に溶解する。溶液に播種し、冷却し、次いで濾過し、洗浄して、168gのノルエピネフリン酒石酸水素塩一水和物を得る。
【0073】
実施例7
(R)-酒石酸水素ノルエピネフリンの調製
化合物B(100g)、エタノール(450mL)、水(50mL)、C3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl](0.15g)およびギ酸(15mL)を反応器に入れる。混合物を60℃に1時間加熱し、ギ酸(15mL)を滴下する。溶液を2時間加熱還流し、次いで活性炭(10g)を添加する。混合物を濾過し、反応器に戻し、次いでPd/C10%(11g)を添加する。混合物を加熱還流し、ギ酸(15mL)を滴下する。3時間の還流後、混合物を濾過して触媒を除去し、L-(+)-酒石酸(87g)を添加する。溶液に播種し、冷却し、次いで濾過し、洗浄して、93gのノルエピネフリン酒石酸水素塩一水和物を得る。
【0074】
実施例8
(R)-ノルエピネフリンシュウ酸塩の調製
化合物A(35g)、メタノール(160mL)、水(18mL)、C3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl](0.07g)およびギ酸(5mL)を反応器に入れる。混合物を約50℃に1時間加熱し、ギ酸(5mL)を滴下する。溶液を3時間加熱還流し、次いで活性炭(3g)を添加する。混合物を濾過し、反応器に戻し、次いでPd/C10%(3.5g)を添加する。混合物を加熱還流し、ギ酸(5mL)を滴下する。約50℃で3時間後、ギ酸(5mL)を滴下する。約50℃でさらに2時間後、混合物を濾過して触媒を除去し、シュウ酸(8.6g)を添加する。溶液に播種し、冷却し、次いで濾過し、洗浄して、11gのシュウ酸塩ノルエピネフリンを得る。
【0075】
実施例9
(R)-ノルエピネフリン集酸塩の調整
メタノール(9L)、水(1L)、ギ酸(290mL)およびC3-[(S,S)-teth-TsDPEN-RuCl](4g)を反応器に入れる。化合物B(2kg)を溶液に添加する。混合物を約60℃で2時間加熱し、次いでギ酸(290mL)を滴下し、混合物を約60℃で3時間加熱する。ギ酸(290mL)を滴下し、混合物をさらに約60℃で2時間加熱し、次いで溶液を活性炭カートリッジ上で濾過し、反応器に充填し戻す。Pd/C 10%(200g)およびギ酸(290mL)を溶液に添加し、約60℃での加熱を2時間続け、次いでギ酸(290mL)を滴下して添加し、加熱をさらに2時間続ける。混合物を濾過し、シュウ酸二水和物(490g)を濾過した溶液に添加する。結晶化した混合物を冷却し、濾過し、乾燥させて、1kgのシュウ酸塩ノルエピネフリンを得る。
【0076】
実施例10
(R)-ノルエピネフリン酒石酸水素一水和物の調製
シュウ酸塩ノルエピネフリン(0.7kg)、メタ重亜硫酸ナトリウム(5g)、EDTA(5g)および水(4.6L)を反応器に入れる。約60℃で、炭酸カリウム(0.6kg)を添加し、次いで混合物を冷却し、濾過し、乾燥させて、530gのノルエピネフリン塩基を得る。この固体を水(500mL)およびエタノール(900mL)に懸濁し、L-(+)-酒石酸(470g)を加え、50℃に加熱して溶液を得、これを濾過して異物を除去した後、冷却して結晶化させる。固体を濾過し、洗浄し、乾燥して、890gのノルエピネフリン酒石酸水素塩一水和物を得る。
【国際調査報告】