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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】イオン源および中性子発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/26 20060101AFI20220620BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20220620BHJP
   H05H 6/00 20060101ALI20220620BHJP
   H05H 3/06 20060101ALI20220620BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
H01J27/26
H01J37/08
H05H6/00
H05H3/06
G21K5/08 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562130
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2019050060
(87)【国際公開番号】W WO2020214197
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/836,481
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521456645
【氏名又は名称】シャイン テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ピーファー グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】シソン リチャード
【テーマコード(参考)】
2G085
5C101
【Fターム(参考)】
2G085BA02
2G085BA06
2G085BA17
2G085DA03
5C101DD09
5C101DD14
5C101DD25
5C101DD30
5C101DD33
(57)【要約】
核反応発生装置は、ガスを収容しかつ標的を含むように構成されたチャンバを含む。核反応発生装置はまた、チャンバ内に設けられたフィラメントと、チャンバに対する第1の正電圧をフィラメントに印加するように構成された電圧源とを含む。第1の正電圧は、熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度にフィラメントを加熱するように構成され、複数の熱イオンは、ガスをイオン化してチャンバ内に陽イオンを発生させるように構成される。標的は、陽イオンが標的と相互作用したときに核反応が発生するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを収容するように構成されたチャンバと、
前記チャンバ内に設けられたフィラメントと、
前記チャンバに対する第1の正電圧を前記フィラメントに印加するように構成された電圧源と
を含む、イオン源であって、
前記第1の正電圧は、熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度に前記フィラメントを加熱するように構成され、
前記複数の熱イオンは、前記ガスをイオン化して陽イオンを発生させるように構成される、
前記イオン源。
【請求項2】
前記イオン源が、前記フィラメントに囲まれた加速グリッドを含み、
前記電圧源が、前記チャンバに対する第2の正電圧を前記加速グリッドに印加するように構成され、前記第2の正電圧が、前記第1の正電圧よりも大きい、
請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
フィラメントガイドをさらに含み、前記フィラメントが、フィラメント間隔を維持するために、前記フィラメントガイドに通されるか、または前記フィラメントガイドの周りに巻かれるように構成される、請求項1に記載のイオン源。
【請求項4】
前記フィラメントまたは前記加速グリッドのうちの少なくとも1つがタングステンまたはタングステン合金を含み、前記フィラメントガイドが非導電性耐火素材を含む、請求項2に記載のイオン源。
【請求項5】
前記非導電性耐火素材がセラミックを含む、請求項4に記載のイオン源。
【請求項6】
前記フィラメントおよび加速グリッドを取り囲む抑制グリッドを含み、前記電圧源が、前記抑制グリッドに第3の負電圧を印加するように構成される、請求項2~5のいずれか一項に記載のイオン源。
【請求項7】
前記加速グリッドおよび前記抑制グリッドがそれぞれ、陽イオンがそこを通過することを可能にするように構成された複数の開口部を含み、
前記加速グリッドと前記抑制グリッドとの間の電位差のために、前記加速グリッドを通過する前記陽イオンが、前記抑制グリッドに向かって加速するように構成される、請求項6に記載のイオン源。
【請求項8】
前記チャンバが1ミリトール未満の圧力を維持するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のイオン源。
【請求項9】
前記チャンバが0.1ミリトール未満の圧力を維持するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のイオン源。
【請求項10】
ガスを収容するように構成され、かつ標的を含むチャンバと、
前記チャンバ内に設けられたフィラメントと、
前記チャンバに対する第1の正電圧を前記フィラメントに印加するように構成された電圧源と
を含む、核反応発生装置であって、
前記第1の正電圧は、熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度に前記フィラメントを加熱するように構成され、
前記複数の熱イオンは、前記ガスをイオン化して前記チャンバ内に陽イオンを発生させるように構成される、
前記核反応発生装置。
【請求項11】
前記陽イオンが前記標的と相互作用すると核反応が起こるように、前記標的が構成される、請求項10に記載の核反応発生装置。
【請求項12】
前記標的が、前記チャンバの壁の内面に配置されるか、前記チャンバの壁の外面に配置されるか、または前記チャンバの壁に統合されるかの少なくとも1つである、請求項10または11に記載の核反応発生装置。
【請求項13】
前記フィラメントを取り囲む加速グリッドを含み、
前記電圧源が、前記チャンバに対する第2の正電圧を加速グリッドに印加するように構成され、
前記第2の正電圧が、第1の正電圧よりも大きい、
請求項10~13のいずれか一項に記載の核反応発生装置。
【請求項14】
前記フィラメントおよび加速グリッドと同心でありかつそれを取り囲む抑制グリッドを含み、
前記電圧源が、前記チャンバに対する第3の負電圧を前記抑制グリッドに印加するように構成される、
請求項13に記載の核反応発生装置。
【請求項15】
前記加速グリッドおよび前記抑制グリッドがそれぞれ、陽イオンがそこを通過することを可能にするように構成された複数の開口部を含み、
前記加速グリッドと前記抑制グリッドとの間の電位差のために、イオン化領域から前記加速グリッドを通過する前記陽イオンが、前記抑制グリッドに向かって加速するように構成される、
請求項14に記載の核反応発生装置。
【請求項16】
前記標的が固体の金属水素化物形成素材から構成される、請求項10~15のいずれか一項に記載の核反応発生装置。
【請求項17】
前記固体の金属水素化物形成素材がチタンまたはチタン合金である、請求項16に記載の核反応発生装置。
【請求項18】
前記標的がチタンまたはチタンの合金を含む、請求項10~17のいずれか一項に記載の核反応発生装置。
【請求項19】
前記標的が、前記チャンバの内面または前記チャンバの内面に設けられる低水素溶解度金属上に提供される層を含む、請求項10~18のいずれか一項に記載の核反応発生装置。
【請求項20】
前記標的がチタンまたはチタンの合金を含み、前記チャンバの内面または前記低水素溶解度金属の少なくとも1つがステンレス鋼を含む、請求項19に記載の核反応発生装置。
【請求項21】
前記チャンバが1ミリトール未満の圧力を維持するように構成されている、請求項10~20のいずれか一項に記載の核反応発生装置。
【請求項22】
前記チャンバが0.1ミリトール未満の圧力を維持するように構成されている、請求項10~21のいずれか一項に記載の核反応発生装置。
【請求項23】
前記フィラメントまたは前記加速グリッドの少なくとも1つがタングステンまたはタングステン合金を含み、前記フィラメントガイドが非導電性耐火素材を含む、請求項10~22のいずれか一項に記載の核反応発生装置。
【請求項24】
前記非導電性耐火素材がセラミックを含む、請求項23に記載の核反応発生装置。
【請求項25】
イオンを発生させるための方法であって、
ガスを収容するチャンバ内にフィラメントを提供することと、
熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度に前記フィラメントを加熱するために、前記チャンバに対する第1の正電圧を前記フィラメントに印加することと、
前記ガスをイオン化して、前記チャンバのイオン化領域で陽イオンを発生させることと
を含む、前記方法。
【請求項26】
前記フィラメントに囲まれた加速グリッドを前記チャンバ内に提供することと、
前記チャンバに対する第2の正電圧を前記加速グリッドに印加することであって、前記第2の正電圧が前記第1の正電圧よりも大きい、前記印加することと
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の正電圧を印加するステップと前記第2の正電圧を印加するステップとが同時である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記チャンバ内の圧力を1ミリトール未満に維持することを含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記チャンバ内の圧力を0.1ミリトール未満に維持することを含む、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
核反応を発生させるための方法であって、
ガスを収容するチャンバ内にフィラメントを提供し、かつ前記チャンバに前記フィラメントを取り囲む標的を提供することと、
熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度に前記フィラメントを加熱するために、前記チャンバに対する第1の正電圧を前記フィラメントに印加することと、
前記ガスをイオン化して、前記チャンバのイオン化領域で陽イオンを発生させることと
を含む、前記方法。
【請求項31】
前記フィラメントに囲まれた加速グリッドを前記チャンバ内に提供することと、
前記チャンバに対する第2の正電圧を前記加速グリッドに印加することであって、前記第2の正電圧が前記第1の正電圧よりも大きい、前記印加することと
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の正電圧を印加するステップと前記第2の正電圧を印加するステップとが同時である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記加速グリッドと前記標的との間に配置された前記抑制グリッドに、前記チャンバに対する負電圧を印加することをさらに含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の正電圧を印加するステップ、前記第2の正電圧を印加するステップ、および前記負電圧を印加するステップが同時である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記加速グリッドおよび前記抑制グリッドがそれぞれ、陽イオンがそこを通過することを可能にするように構成された複数の開口部を含み、
前記方法が、
前記加速グリッドと前記抑制グリッドとの間の電位差を使用して、前記加速グリッドを通過して前記抑制グリッドに向かう陽イオンを加速させること
をさらに含む、
請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記標的に陽イオンを衝突させることをさらに含み、
衝突する前記陽イオンが、前記標的に注入されるか、または以前に注入されたイオンに衝突して核融合中性子を発生させる、
請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
以前に注入されたイオンを衝突イオンで衝突させた結果として、前記標的から二次電子を放出することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記抑制グリッドに印加された前記負電圧の結果として、前記抑制グリッドから前記標的に向かって前記二次電子を反射させることを含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項39】
前記チャンバ内の圧力を1ミリトール未満に維持することを含む、請求項30~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記チャンバ内の圧力を0.1ミリトール未満に維持することを含む、請求項30~39のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年4月19日に出願された米国仮出願第62/836,481号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本技術は、一般に、同じ物理的空間を共有するイオン源および加速器、ならびにイオンを発生させ、それらのイオンをイオン源で加速するための方法に関する。いくつかの態様において、イオン源からのイオンは標的に向かって加速し、核反応を起こして中性子を発生させ得る。したがって、本技術は、イオン源で核反応を起こすためのシステムおよび方法にも関連し得る。
【背景技術】
【0003】
背景
この項は、特許請求の範囲に記載された発明の背景または文脈を提供することを意図している。本明細書における説明は、追及され得るが、必ずしも以前に想起または追及されているものではない概念を含み得る。したがって、本明細書で別段の指示がない限り、この項に記載されていることは、本出願の説明および請求項の先行技術ではなく、かつこの項に含めることによって先行技術であると認められるものではない。
【0004】
イオン源は、一般に、イオン化を起こすチャンバ、チャンバ内に供給されるガス、およびイオン化エネルギー源を含む。従来の高電流イオン発生というアプローチは、一般に、RF励起、アーク放電、またはフィラメント補助放電の使用によるプラズマ発生に限定されており、これらは、操作および保守が困難な複雑な電子、磁気、および高真空の配置を必要とする。プラズマを発生させるためのこれらのアプローチは、一般に、チャンバ内に比較的高いガス圧を必要とし、これは、ソースによって発生させたイオンが、それらが発生したと同じ空間体積内で加速される必要がある場合に問題となる可能性がある。
【0005】
イオン源によって発生させたイオンは、質量分析、医療機器および診断、および半導体製造で使用される粒子加速器を含むが、これらに限定されない様々な用途で使用することができる。イオン源によって発生させたイオンは、標的に向かって加速することができ、中性子発生を含む核反応を起こすために使用され得る。従来の中性子源は、イオン化、加速、およびイオン化された種の標的融合のために個別の装置を採用している。これらの中性子源には、様々なイオン発生アプローチの適用、およびイオン抽出、イオン加速、ビーム集束、ビームステアリング、ビーム停止などの粒子加速器に固有の機能が含まれ得る。中性子源は、中性子ラジオグラフィ、材料科学、物性物理学、および材料の非破壊検査と評価など、様々な用途向けに開発されてきた。これらの装置には多くの欠点があり、利用可能なイオン電流が制限されて多くのアプリケーションに不十分な中性子収量が生じるか、または非常に複雑であるため、構築、保守、および操作が困難で費用がかかる。
【0006】
1つの例では、中性子は、重水素、トリチウム、またはこれらの組み合わせのイオンを発生させ、以下の反応のいずれかによって重水素および/またはトリチウムを含有させた水素化物標的にこれらのイオンを加速することによって発生させることができる。
D+T→n+He E=14.1MeV(1)
D+D→n+He E=2.5MeV(2)
反応(1)および(2)に基づく中性子源は、従来、輸送中にかなりのイオン損失をもたらす単一ビームの線形静電デバイスであり、過度の加熱が発生し、中性子収量が減少する。
【0007】
重要なメンテナンスやサポート機器なしで、イオン収量の増加と長期間の連続操作が可能になるような、イオン源に関連する技術の改善と、低いバックグラウンド圧力で高率のイオンを発生させる方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
概要
一態様では、イオン源は、ガスを収容するチャンバ、チャンバの中心近くに設けられているフィラメント、フィラメントに囲まれた加速グリッド、および第1の正電圧をフィラメントに印加し、第2の正電圧を加速グリッドに印加するように構成された電圧源を含む。フィラメントに印加される第1の正電圧は、熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度にフィラメントを加熱するように構成される。第2の正電圧は、第1の正電圧よりも高い(より正である)。複数の熱イオンは、ガスをイオン化して、イオン化領域、例えば、フィラメントと加速グリッドとの間の領域を含む、チャンバ内の任意の場所で陽イオンを発生させるように構成される。第1および第2の正電圧は、接地電位に保持され得るチャンバの壁の電圧よりも実質的に上に保持される。これにより、装置の中心で電子が前後に振動する再循環電子トラップが作成され、低圧バックグラウンドガスのイオン化が発生する。この領域で発生したイオンは、電界構成により、構造の壁に向かって外側に加速する。いくつかの実施形態では、チャンバ内の圧力は1ミリトール未満であり得る。他の実施形態では、チャンバ内の圧力は、0.1ミリトール未満であり得る。
【0009】
第2の態様において、中性子発生装置は、ガスを収容するチャンバ、チャンバの中心近くに設けられているフィラメント、フィラメントに囲まれた加速グリッド、フィラメントと同心でフィラメントを囲む抑制グリッド、標的、並びに第1の正電圧をフィラメントに、第2の正電圧を加速グリッドに、および第3の負電圧を抑制グリッドに印加するように構成された電圧源を含む。特に指定のない限り、本明細書における電圧は、チャンバと比較して印加/言及/測定等されたものであり、例えば、フィラメント(または他の構造)に印加される電圧は、フィラメントとチャンバとの間の差分を言及している。フィラメントに印加される第1の正電圧は、熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度にフィラメントを加熱するように構成される。第2の正電圧は第1正電圧よりも大きい。複数の熱イオンは、ガスをイオン化して、フィラメントと加速グリッドとの間の領域を含む、チャンバ内のイオン化領域で陽イオンを発生させるように構成される。第1および第2の正電圧は、接地電位に保持され得るチャンバの壁の電圧よりも実質的に上に保持される。これにより、装置の中心で電子が前後に振動する再循環電子トラップが作成され、低圧バックグラウンドガスのイオン化が発生する。この領域で発生されたイオンは、電界構成により、構造の壁に向かって外側に加速する。抑制グリッドは、イオンのチャンバ壁との衝突から生じる二次電子がデバイスの中心に向かって加速するのを防ぎ、これは、電力を消費し、効率を低下させる効果である。
【0010】
第3の態様では、発生イオンの方法は、ガスを収容するチャンバにフィラメントとフィラメントによって囲まれた加速グリッドとを提供すること、熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度にフィラメントを加熱するために、フィラメントに第1の正電圧を印加すること、第1の正電圧よりも大きい第2の正電圧を加速グリッドに印加すること、ガスをイオン化して、フィラメントと加速グリッドの間の領域を含む、チャンバ内のイオン化領域で陽イオンを発生させることを含む。熱イオンはイオン化領域に閉じ込められ得る。
【0011】
第4の態様では、中性子の発生方法は、ガスを収容するチャンバに、フィラメント、加速グリッド、抑制グリッド、および標的を提供すること、熱イオン放出を起こしかつ複数の熱イオンを発生させる温度にフィラメントを加熱するために、フィラメントに第1の正電圧を印加すること、第1の正電圧よりも大きい第2の正電圧を加速グリッドに印加すること、ガスをイオン化して、フィラメントと加速グリッドの間の領域を含む、チャンバ内のイオン化領域で陽イオンを発生させることを含む。第4の態様では、加速グリッドは、フィラメントと同心でありフィラメントによって囲まれ、抑制グリッドは、フィラメントと同心でありフィラメントを取り囲み、標的は、抑制グリッドと同心であり抑制グリッドによって取り囲まれている。本方法は、抑制グリッドに負電圧を印加することをさらに含み得る。本方法は、抑制グリッドを通過する陽イオンを標的に衝突させることをさらに含み得る。衝突する陽イオンは、標的に注入されるか、以前に注入されたイオンに衝突して核融合中性子を発生させる。さらに、以前に注入されたイオンを衝突イオンで衝突させた結果として、二次電子が標的から放出され得る。フィラメントと加速グリッドとの間の電位差により、熱イオンがその間に閉じ込められ得る。標的と負電圧が印加されたグリッドへの抑制との間の電位差により、二次電子が抑制グリッドから標的に向かって反射され得る。
【0012】
さらなる本開示の特徴、利点、および実施形態が、以下の発明を実施するための形態、図面、および特許請求の範囲の検討から説明され得る。さらに、本開示の前述の要約および以下の発明を実施するための形態は、両者ともに例示的なものであり、請求される本開示の範囲をさらに限定することなくさらなる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示は、添付図面と併せて以下の発明を実施するための形態からより完全に明らかになるであろう。
図1】イオン源および中性子発生装置の概略図を示している。
図2A】フィラメントガイドを含む図1のイオン源および中性子発生装置の断面図を示している。
図2B図1のイオン源および中性子発生装置の三量体断面図を示している。
図3図1のイオン源の分解断面図を示している。
図4図1のイオン源の制御システムを示しており、制御システムは、コントローラおよび電圧源を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
具体的に例示的な実施形態を示す図面に移る前に、本出願は、明細書または図面に示される詳細または方法論に限定されないことを理解されたい。また、用語は説明のみを目的としており、限定的なものと見なされるべきではないことも理解されたい。
【0015】
一態様では、イオン源は、フィラメント2、加速グリッド3、およびガスが供給されるチャンバを含む。別の態様では、中性子発生装置は、フィラメント2、加速グリッド3、抑制グリッド4、標的5、およびガスが供給されるチャンバを含む。すなわち、標的5(および、いくつかの実施形態では、抑制グリッド4)をイオン源(すなわち、フィラメント2および加速グリッド3)に追加して、中性子発生装置を形成することができる。イオン源と中性子発生装置の両方が本開示の範囲内にある。本明細書に記載されるすべてのイオン源を、本明細書に記載の中性子発生装置で使用することができる。本明細書に開示されるシステムはまた、イオン源および発散加速器として、または核融合炉として説明され得る。
【0016】
イオン源の一例では、フィラメント2は、タングステンまたはタングステン合金から構成され、加速グリッド3は、タングステンまたはタングステン合金から構成される。中性子源の一例では、フィラメント2はタングステンまたはタングステン合金で構成され、加速グリッド3はタングステンまたはタングステン合金で構成され、抑制グリッド4はタングステンまたはタングステン合金で構成され、標的5はチタンまたはチタン合金で構成されている(任意で、ステンレス鋼などの水素溶解度の低い金属で裏打ちされている)。様々な他の素材および素材の好ましい特性を以下に詳細に提供する。
【0017】
図1および2Aに示されるように、イオン源および/または中性子発生装置のチャンバは、円形断面を有する(すなわち、チャンバは、円筒形または球形であり得る)。図2Bは、実施形態における円形形状を有するイオン源および/または中性子発生装置の斜方断面図を示しており、すなわち、実施形態においてフィラメント2、加速グリッド3、抑制グリッド4、および/または標的5はそれぞれ円筒形に形成されている。しかしながら、チャンバの形状は、他の実施形態においてこのように限定されるものではない。他の例(図示せず)では、チャンバは、立方体、直方体、角錐、円錐などの形状を有し得る。チャンバの形状は、イオン源が使用される特定の用途に適合するようにカスタマイズされ得る。いくつかの例では、チャンバは、その中心軸に関して対称であり得る。他の例では、チャンバは、その中心軸に関して対称ではない場合がある。イオン源10は、構築が容易であり、従来のイオン源よりも交換が簡単である。
【0018】
フィラメント
フィラメント2は、イオン源および/または中性子発生装置の室の中央付近に設けられている。フィラメント2は、フィラメント2に正の所定の電圧を印加するように構成された電圧源20に接続され(以下でさらに詳細に説明される)、それによってフィラメント2を加熱する。フィラメント2は、示される実施形態における大電流熱イオンエミッタである。いくつかの実施形態では、電界による放出(例えば、均等電界による放出)が、熱イオン放出に加えて、またはその代わりに使用される。熱イオン放出では、フィラメント2が加熱されて、電子をフィラメント2に保持する引力に打ち勝つために必要な最小エネルギーを有する電子が供給され、その結果、フィラメント2から電子(熱イオン)が放出される。最小エネルギー(すなわち、仕事関数)は、固体表面(すなわち、フィラメント2)からフィラメント2のすぐ外側のチャンバ内の点まで電子を除去するために必要な最小の熱力学的仕事として定義される。仕事関数は、フィラメント2の素材特性およびフィラメント2の表面の汚染状態に依存する。フィラメント2は、溶融することなく最小のエネルギーで電子を供給するために加熱することができる任意の素材で作ることができる。好ましくは、フィラメント2は、多数の熱イオンが放出されるように仕事関数が低い素材から作られている。例えば、フィラメント2は、金属(例えば、タングステンまたはタングステン合金)製であり得る。様々な実施形態において、フィラメント2の素材は、高い電子放射率、低い蒸気圧、高い溶融温度、およびアブレーションおよびスパッタリングに対する耐性によって特徴付けられる。フィラメント2は、様々な実施形態において、六ホウ化ランタン、六ホウ化セリウム、トリエーテッドタングステン、アルミン酸バリウム、またはそれらの任意の2つ以上の混合物から構成され得る。
【0019】
図2A~2Bに示されるように、イオン源および/または中性子発生装置のいくつかの例では、フィラメント2は任意選択的に、フィラメント間隔を維持し、装置の全長にわたりフィラメント2を静止させる機械的支持を提供するように構成される1つ以上のフィラメントガイド2aに提供される。一例では、フィラメントガイド2aは、フィラメント2の一部をその中に受け入れるように構成された複数の開口部2b(例えば、穴、スロットなど)を含み得る(例えば、フィラメント2は、開口部にねじ込まれ、開口部からねじ出される)。この例では、開口部2bは、開口部を備えたフィラメントガイド2aに沿って均一または不均一なスペースであり得、フィラメント2は、開口部2bのすべてまたは一部で受け入れられ得る。開口部2bを備えたフィラメントガイド2aは、非導電性の耐火素材製である。いくつかの実施形態では、非導電性耐火素材は、セラミックであり得る。例示的なガラスには、ガラス、粘土、および金属酸化物が含まれる。特定の例として、フィラメント2はタングステンまたはタングステン合金であり得、フィラメントガイドはセラミックでできていてもよい。
【0020】
いくつかの例では、イオン源10は、唯一つのフィラメント2を含む。他の例では、イオン源10は、フィラメントガイドに沿って間隔を置いて支持されている複数のフィラメント2を含み得る。他の実施形態では、チャンバ内で電子を放出するための他のアプローチおよび/または構造を使用することができ、本明細書のシステムおよび方法は、それに応じて適合させることができる。
【0021】
加速グリッド
フィラメント2によって少なくとも部分的に囲まれた加速グリッド3。フィラメント2および加速グリッド3は同心であり得るが、それは必須ではない。いくつかの例では、加速グリッド3は、その長さ方向に沿って間隔を置いて提供される複数の開口部(すなわち、穴、スロットなど)を含む固体素材であり得る。他の例では、加速グリッド3は、第1の方向(例えば、チャンバの長さに沿って)に延びる素材の平行なストリップまたは糸の第1のセット、および第1のセットと第2のセットとの間に開口が提供されるように、平行ストリップの第1のセットと交差し、横切る素材のストリップまたは糸の第2のセットを含むフレームワークまたはメッシュであり得る。開口部は、イオン化領域(例えば、加速グリッド3とフィラメント2との間)で発生された陽イオン(例えば、水素イオン)が、収集される加速グリッド3(イオン源)を通過する、または抑制グリッド4と標的5(中性子発生装置)に向かって加速することを可能にするように構成される。
【0022】
いくつかの例では、加速グリッド3は、フィラメント2と同じ素材でできている。他の例では、加速グリッド3は、フィラメント2とは異なる素材でできている。加速グリッド3は導電性素材でできており、イオン損傷に耐性であり得る。加速グリッド3は、アブレーションおよびスパッタリングに耐性のある高融点金属、例えば、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、またはそれらの任意の2つ以上の混合物または合金でできていてもよい。
【0023】
加速グリッド3は、加速グリッド3に正の所定電圧を印加するように構成された電圧源20に接続されている。加速グリッド3の電位は、フィラメント2の電位よりも高い(より正である)。例えば、加速グリッドに印加される所定の電圧は、+100100Vであり、一方で、フィラメント2に印加される所定の電圧は+100000Vであり得る。電位差(電圧バイアス)により、フィラメント2によって放出された熱イオンは加速グリッド3に向かって外側に加速する。フィラメント2と加速グリッド3の配置と電圧バイアスは、フィラメント2の熱イオン放出によって発生したエネルギーの高い熱イオン(電子)を閉じ込める低電位領域を作り出す。熱イオンはフィラメント2によって再吸収される可能性があるが、十分なエネルギーを有するものは捕捉される(フィラメント2と加速グリッド3の間に閉じ込められる)。捕捉されたエネルギーの高い熱イオンは、次の反応に従って、低密度の中性ガス分子に衝突するのに十分な時間、イオン化領域を循環する。
M+e→M+・+2e(3)
式中、Mはガス分子であり、eは、ガス分子と相互作用し、電子がガス分子から吐出されるように(電子イオン化)分子のイオン化エネルギーよりも大きいエネルギーを転送する電子(熱イオン)である。
【0024】
別の言い方をすれば、上記のように、電圧源は、第1の正電圧をフィラメントに印加し、第2の正電圧を加速グリッドに印加するように構成することができる。フィラメントに印加される第1の正電圧は、フィラメントから熱イオン放出が起こり、複数の熱イオンを発生させる温度に加熱するように構成される。第2の正電圧は、第1の正電圧よりも大きい(より正である)。複数の熱イオンは、ガスをイオン化して、フィラメントと加速グリッドとの間の領域を含む、チャンバ内のイオン化領域で陽イオンを発生させるように構成される。第1および第2の正電圧は、接地電位に保持され得るチャンバの壁の電圧よりも実質的に高く保持される。これにより、装置の中心で電子が前後に振動する再循環電子捕捉が形成され、低圧バックグラウンドガスのイオン化が発生する。この領域で発生されたイオンは、電界構成により、構造の壁に向かって外側に加速する。
【0025】
イオン化領域内の高エネルギー熱による衝撃によってイオン化されるガス状分子(例えば、水素)は、イオン化領域に正電荷を与え、それにより、熱イオン電流によって発生される蓄積された電子空間電荷の負電荷を低減する。加速領域3内の真空レベルは、外部真空源によって発生され、イオン化領域内の中性粒子との衝突の可能性を低減するレベルに維持される。例えば、イオン化領域内のガス圧は、10ミリトール以下、例えば、5ミリトール以下、または1ミリトール以下であり得る。イオン化領域のガス圧が低いと、イオンが収集前または標的5に衝突して中性子を発生する前にガス分子と衝突する可能性が低くなるため、イオン収量または中性子収量が増加する。
【0026】
抑制グリッド
中性子発生装置では、抑制グリッド4はフィラメント2を少なくとも部分的に囲んでいる。抑制グリッド4、フィラメント2、および加速グリッド3は同心である。抑制グリッド4は、加速グリッド3と同じ素材でできている。加速グリッド3のように、いくつかの例では、抑制グリッド4は、その長さ方向に沿って間隔を置いて提供される複数の開口部(すなわち、穴、スロットなど)を含む固体素材であり得る。他の例では、抑制グリッド4は、第1の方向(例えば、チャンバの長さに沿って)に延びる素材の平行なストリップまたは糸状の第1のセット、および第1のセットと第2のセットとの間に開口が提供されるように、平行ストリップの第1のセットと交差し、横切る素材のストリップまたは糸状の第2のセットを含むフレームワークまたはメッシュであり得る。抑制グリッド4の開口の位置は、加速グリッド3の開口の位置に対応する。抑制グリッド4の開口部は、イオン化領域から加速グリッド3を通過する陽イオンが抑制グリッド4を通過し、標的5に向かって加速することを可能にするように構成される。
【0027】
抑制グリッド4は、電圧源20に接続されており、電圧源20は、負の所定の電圧を抑制グリッド4に印加するように構成されている(以下でさらに詳細に説明する)。加速グリッド3とフィラメント2との間の領域内の陽イオンが加速グリッド3の近くにドリフトすると、それらは、加速グリッド3と抑制グリッド4との間の電位差によってイオン化領域から加速される。他の実施形態では、磁界を使用して、抑制グリッド4によって提供されるものと同様の効果を達成することができる。
【0028】
抑制グリッド4は、導電性素材からなり、イオン損傷に対して耐性であり得、例えば高質量の金属である。抑制グリッド4は、アブレーションおよびスパッタリングに耐性のある高融点金属、例えば、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、またはそれらの任意の2つ以上の混合物または合金でできていてもよい。
【0029】
標的
中性子発生装置において、標的5は、抑制グリッド4を少なくとも部分的に取り囲んでいる(例えば、標的5は、抑制グリッド4の上および/または下の領域を取り囲んでいない可能性がある)。標的5、抑制グリッド4、および加速グリッド3は同心である。標的5は、固体の金属水素化物形成素材でできていてもよい。標的5の素材は、完全に装填されたときに、標的5に提供される水素と標的5が作られる素材との間に1:1から2:1の比率が存在するように選択され得る。標的5の素材は、水素を吸収するのに親和性のある導電性金属または半金属、好ましくは核相互作用断面積が非常に小さい低質量素材であり得る。例えば、標的5は、炭素、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、イットリウム、スカンジウム、エルビウムまたはその任意の2つ以上の混合物または合金でできていてもよい。
【0030】
いくつかの例では、標的5は、チャンバ自体の壁である(またはそれに一体化されている)。他の例では、標的5は、チャンバの内面またはチャンバの外面に提供される層である。標的5が層である例では、標的5は、任意選択で、低水素溶解度金属によって裏打ちされ得るか、または低水素溶解度金属がチャンバ自体の壁を形成し得る。低水素溶解度の金属はステンレス鋼であり得る。
【0031】
標的5は、電圧源20に接続されておらず、接地電位(実質的に0V)に保持されている。加速グリッド3および抑制グリッド4の開口を通って外向きに移動した後、陽イオンは、抑制グリッド4と標的5との間の領域に入る。この領域では、陽イオンは加速を停止し、弾道的に移動して標的5に衝突する。衝突するイオンは、標的5に注入されるか、または以前に注入されたイオンに衝突して核融合中性子を発生させる。イオン化エネルギーで発生される陽イオンが水素同位体である中性子発生装置の例では、上記の反応(1)および(2)による水素同位体が標的5上の別の水素同位体と衝突して中性子を発生する可能性があるように、水素濃度が標的5上に蓄積する。
【0032】
エネルギーの高いイオンが標的5に衝突すると、約2~3個の二次電子が標的5の表面から放出される可能性があり、これは抑制グリッド4の電位よりわずかに高い電位に保持される。標的5と抑制グリッド4との間の電位差により、二次電子は反射されて標的5に戻り、加速グリッド3の電子加熱を低減し、加速グリッド3とフィラメント2との間に提供されるイオン化領域における不要な電子電流を防止する。他の実施形態では、磁界を使用して、抑制グリッド4によって提供されるものと同様の効果を達成することができる。
【0033】
電圧源とコントローラ
電圧源20は、チャンバの外部に提供される。電圧源20は、任意の既知の電圧源であり得る。コントローラ30が提供され、フィラメント2、加速グリッド3、および抑制グリッド4のそれぞれに供給される電圧を独立して制御するようにプログラムされ得る。コントローラ30は、フィラメント2、加速グリッド3、および抑制グリッド4のそれぞれに供給される電圧を変化させて、システムを調整するか、またはイオンまたは中性子の収量を変化させることができる。フィラメント2、加速グリッド3、および抑制グリッド4のそれぞれに供給される個々の異なる電圧をユーザが選択できるようにするために、制御パネルまたはディスプレイが提供され得る。
【0034】
上記のように、標的5は接地電位に保持され、抑制グリッド4は接地電位に対してわずかに負電圧に保持される。加速グリッド3は、接地電位に対して高い正電圧に保持され、フィラメント2は、加速グリッド3の電圧に対してわずかに正電圧に保持される。この電子配置は、不要な電気アークの可能性を低減し、アークまたは高エネルギー電子電流による損傷からフィラメント2を保護する。
【0035】
チャンバが円筒形である中性子発生装置の例では、(特定の用途によって決定される)所定の長さの円筒形中性子発生装置は、軸方向に整列され、均一で、等方性の中性子束を発生するように構成される。コンポーネントの円筒形の配置により、中性子発生装置は空間電荷の制限なしに高いイオン電流密度を発生することができる。
【0036】
様々な例示的な実施形態に示すようなイオン源および/または中性子発生装置の構成は、単なる例示である。本開示では少数の実施形態のみが詳細に説明されているが、多くの改変が可能である(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状および比率、パラメータの値、取り付け配置、素材の使用、色、本明細書に記載の主題の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、方向付け、画像処理およびセグメンテーションアルゴリズムなど)。一体的に形成されたものとして示されるいくつかの要素は、複数の部品または要素から構成され得、要素の位置は逆もあり得、変更することも可能であり、そして離散要素または位置の性質または数は改変または変化し得る。任意のプロセス、論理アルゴリズム、または方法ステップの順序または順序は、代替の実施形態に従って変更または再順序付けすることができる。添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、好ましい、および他の例示的な実装形態の設計、動作条件、および配置において、他の置換、改変、変更、および省略を行うことができる。
【0037】
本明細書で使用される、「約(approximately)」、「約(about)」、「実質的に」という用語、および類似の用語は、本開示の主題が関係する、当業者による共通かつ許容された使用法と調和した広い意味を有することが意図される。本開示を考察する当業者であれば、これらの用語は、これらの特徴の範囲を、提供された正確な数値範囲に限定することなく、記載され請求された特定の特徴の説明を可能にすることを意図していることを理解する筈である。したがって、これらの用語は、記載され請求された主題の非実質的または重要でない改変または変更が、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内にあるとみなされることを示すと解釈されるべきである。
【0038】
本明細書で使用される場合、「結合された」「接続された」という用語は、2つの部材を互いに直接的または間接的に接合することを意味する。このような接合は、静止(例えば、永久的)または移動可能(例えば、取り外し可能または解放可能)であり得る。このような接合は、2つの部材、もしくは2つの部材およびいずれかの追加の中間部材が互いに単一の一体として、または2つの部材、もしくは2つの部材およびいずれかの追加の中間部材が互いに接着して達成され得る。
【0039】
本明細書における要素の位置(例えば、「上(top)」、「下(bottom)」、「上(above)」、「下(below)」など)への言及は、図中の様々な要素の方向を説明するために単に使用される。様々な要素の配向は、他の例示的な実施形態に従って異なり得、そのような変形は、本開示に含まれることが意図されることに留意されたい。
【0040】
本明細書の実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に適切であるように、複数形から単数形および/または単数形から複数形に直すことができる。明確にするために、様々な単数形/複数形の置換が明示的に示され得る。
【0041】
本明細書に記載の主題および動作(例えば、電圧制御)の実施形態は、デジタル電子回路、または本明細書に開示される構造およびそれらの構造的同等物、またはそれらの1つ以上の組み合わせを含む、有形媒体、ファームウェア、またはハードウェア上に具体化されるコンピュータソフトウェアに実装することができる。本明細書に記載の主題の実施形態は、1つ以上のコンピュータプログラム、すなわち、データ処理装置による実行のために、またはデータ処理装置の動作を制御するために、1つ以上のコンピュータ記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つ以上のモジュールとして実装することができる。あるいは、またはさらに、プログラム命令は、人工的に発生させた伝搬信号、例えば、データ処理装置による実行のために適切な受信機装置に送信するための情報を符号化するために発生させる機械発生させた電気、光、または電磁信号に符号化することができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶装置、コンピュータ可読記憶基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリアレイまたは装置、あるいはそれらの1つ以上の組み合わせであり得るか、またはそれらに含まれ得る。さらに、コンピュータ記憶媒体は伝搬信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人工的に発生させた伝搬信号に符号化されたコンピュータプログラム命令のソースまたは宛先であり得る。コンピュータ記憶媒体はまた、1つ以上の別個の構成要素または媒体(例えば、複数のCD、ディスク、または他の記憶装置)であり得るか、またはそれらに含まれ得る。したがって、コンピュータ記憶媒体は、有形で非一時的であり得る。
【0042】
本明細書に記載の操作は、データ処理装置、または1つ以上のコンピュータ可読記憶装置に格納されるか、もしくは他のソースから受信したデータの処理回路により実行するように実装することができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
【国際調査報告】