(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】ステレオリソグラフィ装置および樹脂材料の温度制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/129 20170101AFI20220620BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220620BHJP
B29C 64/277 20170101ALI20220620BHJP
【FI】
B29C64/129
B29C64/393
B29C64/277
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562909
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 FI2020050274
(87)【国際公開番号】W WO2020216999
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036309
【氏名又は名称】プランメカ オイ
【氏名又は名称原語表記】Planmeca Oy
【住所又は居所原語表記】Asentajankatu 6, 00880 Helsinki, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハマライネン サミ
(72)【発明者】
【氏名】ミリライラ ツォーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォリオ ヴィレ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP05
4F213AR06
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL43
4F213WL67
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
露光構成(501)であって、光放射を放出するように構成された放射素子(505)と、前記放射素子(505)からの光放射を部分的にマスキングすることによって露光パターンを形成するように構成されたマスキング素子(506)と、を含む、露光構成(501)と、前記光放射によってステレオリソグラフィ3D印刷で光重合される樹脂を保持するためにバット(401)がその上に配置可能な水平上面(503)を有するテーブル(502)と、を有し、前記マスキング素子(506)は前記水平上面(503)と熱的に接続して配置され、装置は、前記放射素子(505)から前記マスキング素子(506)へ光放射を放出するために前記放射素子(505)に連結され、前記マスキング素子(506)を閉じた状態に保持するために前記マスキング素子(506)に連結された、コントローラをさらに含み、前記コントローラは、前記放射素子(505)から前記閉じたマスキング素子(506)に光放射を放出することによって前記樹脂を前記バット内で加熱する、前記樹脂のための予熱プロセスを実行するように構成され、これにより、前記マスキング素子は前記マスキング素子に吸収された光放射によって加熱され、熱エネルギーはさらに、前記樹脂に伝達される、ステレオリソグラフィ装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオリソグラフィ装置であって、
露光構成(501)であって、
光放射を放出するように構成された放射素子(505)と、
前記放射素子(505)からの光放射を部分的にマスキングすることによって露光パターンを形成するように構成されたマスキング素子(506)と、を含む、露光構成(501)と、
前記光放射によってステレオリソグラフィ3D印刷で光重合される樹脂を保持するためにバット(401)がその上に配置可能な水平上面(503)を有するテーブル(502)と、を有し、
前記マスキング素子(506)は前記水平上面(503)と熱的に接続して配置され、前記装置は、前記放射素子(505)から前記マスキング素子(506)へ光放射を放出するために前記放射素子(505)に連結され、前記マスキング素子(506)を閉じた状態に保持するために前記マスキング素子(506)に連結された、コントローラをさらに含み、
前記コントローラは、前記放射素子(505)から前記閉じたマスキング素子(506)に光放射を放出することによって前記樹脂を前記バット内で加熱する、前記樹脂のための予熱プロセスを実行するように構成され、これにより、前記マスキング素子は前記マスキング素子に吸収された光放射によって加熱され、熱エネルギーはさらに、前記樹脂に伝達される、ステレオリソグラフィ装置。
【請求項2】
前記樹脂の温度を測定するための温度検出器(604)が前記装置内に設けられる、請求項1に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記コントローラは前記温度検出器(604)に結合され、前記温度検出器から樹脂温度データを受信し、前記コントローラは、前記ステレオリソグラフィ装置の前記予熱プロセスを制御する際に前記樹脂温度データを使用するように構成される、請求項2に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記マスキング素子(506)は、液晶要素を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記放射素子(505)は、発光ダイオード(LED)光源を含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記発光ダイオード光源はLED素子(601)のアレイを含み、その表面積は前記マスキング素子(506)の表面積と実質的に等しい、請求項5に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記装置は、前記放射素子(505)と前記マスキング素子(506)との間に冷却チャネル(901)を備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項8】
前記冷却チャネル(901)は平面であり、前記放射素子(505)に向けられた前記マスキング素子(506)の側面に沿って延在する、請求項7に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項9】
前記装置は、光学撮像検出器(802)が動作位置にあるときに、前記水平上面(604)の上方の作業領域の少なくとも一部が視野内にあるように向けられた、視野を有する光学撮像検出器(802)をさらに備える、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項10】
前記光学撮像検出器(802)から光学撮像データを受信するために、前記光学撮像検出器(802)に結合されたコントローラ(801)が、前記樹脂の前記予熱プロセスにおいて前記光学撮像データを使用するように構成される、請求項9に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項11】
前記コントローラ(801)は、前記光学撮像データからオブジェクトを認識し、そのような認識されたオブジェクトに基づいて決定を行うために機械ビジョンプロセスを実行するように構成される、請求項10に記載のステレオリソグラフィ装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のステレオリソグラフィ装置内の樹脂を予熱する方法であって、
前記テーブル(502)の前記水平上面(503)上に配置されたバット(401)上に樹脂を供給するステップと、
前記マスキング素子(506)の露光パターンを閉じるステップと、
前記放射素子(505)上に保持し、熱エネルギーが前記バット内の樹脂に伝達される前記マスキング素子を加熱するために前記放射素子から前記マスキング素子に光放射を放出するステップと、を含む、ステレオリソグラフィ装置内の樹脂を予熱する方法。
【請求項13】
温度検出器(604)によって樹脂温度を測定するステップと、
温度データを前記コントローラ(801)に送信ステップと、を含む、請求項12に記載のステレオリソグラフィ装置内の樹脂を予熱する方法。
【請求項14】
前記コントローラ(801)は、温度検出器(604)から受信した樹脂温度データが所望される場合に、前記予熱プロセスを停止するように構成されている、請求項12または13に記載のステレオリソグラフィ装置内の樹脂を予熱する方法。
【請求項15】
プログラムがコンピュータによって実行されると、請求項1から11のいずれか一項に記載のステレオリソグラフィ装置内の樹脂を予熱するために、
前記マスキング素子(506)の露光パターンを閉じるステップと、
前記放射素子(505)上に保持し、熱エネルギーが前記バット内の樹脂に伝達される前記マスキング素子を加熱するために前記放射素子から前記マスキング素子に光放射を放出するステップと、をコンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオリソグラフィ付加製造としても知られるステレオリソグラフィ3D印刷の技術に関する。特に、本発明は、フォトマスクベースの露光構成を有するステレオリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオリソグラフィは、所望のオブジェクトを製造するために適切な原料を光重合するために光放射が使用される3D印刷または付加製造技術である。原料は、樹脂の様式でプロセスに入る。ある量の樹脂を保持するためにバットが使用され、製造されるべきオブジェクトが構築プラットフォームの構築表面上で始まって、層ごとに成長するように、構築プラットフォームが垂直方向に移動される。光重合に使用される光放射はバットの上方から来てもよく、その場合、製造が進行することにつれて、構築プラットフォームは残りの樹脂を通って下方に移動する。本明細書は特に、光重合光放射がバットの下方から来て、製造が進行することにつれて構築プラットフォームが残りの樹脂から離れて上方に移動する、ステレオリソグラフィのいわゆる「ボトムアップ」変法に関する。
【0003】
ステレオリソグラフィ3D印刷に使用される樹脂は、樹脂の流動性および粘度が印刷プロセスに最適である推奨される動作温度を有する。多くの場合、推奨温度は典型的な室温よりも高い。公知の解決策では、樹脂は、バット内に一体化することができる加熱抵抗器によって加熱される。このような解決策の問題は、加熱エネルギーが最初にバット内に、次に樹脂内に伝達されるので、加熱プロセスが遅く、非効率的であることである。同様の理由から、温度変化が遅いため、樹脂の温度(加熱および冷却)を制御することは困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ステレオリソグラフィ装置およびステレオリソグラフィ装置内の樹脂の加熱が改善されるように作動させる方法を提示することを目的とする。
【0005】
第1の態様によれば、ステレオリソグラフィ装置は、光放射を放出するように構成された放射素子と、放射素子からの光放射を部分的にマスキングすることによって露光パターンを形成するように構成されたマスキング素子と、を含む、露光装置と、光放射によってステレオリソグラフィ3D印刷で光重合される樹脂を保持するためにバットがその上に配置可能な水平上面を有するテーブルと、を有し、マスキング素子は水平上面と熱的に接続して配置され、装置は、放射素子からマスキング素子へ光放射を放出するために放射素子に連結され、マスキング素子を閉じた状態に保持するためにマスキング素子に連結された、コントローラをさらに含み、コントローラは、放射素子から閉じたマスキング素子に光放射を放出することによって樹脂をバット内で加熱する、樹脂のための予熱プロセスを実行するように構成され、これにより、マスキング素子はマスキング素子に吸収された光放射によって加熱され、熱エネルギーはさらに、前記樹脂に伝達される。
【0006】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、樹脂の温度を測定するための温度検出器(604)が装置内に設けられる。
【0007】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、コントローラは温度検出器に結合され、温度検出器から樹脂温度データを受信し、コントローラは、ステレオリソグラフィ装置の予熱プロセスを制御する際に樹脂温度データを使用するように構成される。
【0008】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、マスキング素子は、液晶要素を含む。
【0009】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、放射素子は、発光ダイオード(LED)光源を含む。
【0010】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、発光ダイオード光源はLED素子のアレイを含み、その表面積はマスキング素子の表面積と実質的に等しい。
【0011】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、装置は、放射素子とマスキング素子との間に冷却チャネルを備える。
【0012】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、冷却チャネルは平面であり、放射素子に向けられたマスキング素子の側面に沿って延在する。
【0013】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、装置は、光学撮像検出器が動作位置にあるときに、水平上面の上方の作動領域の少なくとも一部が視野内にあるように向けられた、視野を有する光学撮像検出器をさらに備える。
【0014】
ステレオリソグラフィ装置の実施形態では、光学撮像検出器から光学撮像データを受信するために、光学撮像検出器に結合されたコントローラが、樹脂の予熱プロセスにおいて光学撮像データを使用するように構成される。
【0015】
ステレオリソグラフィ装置の一実施形態では、コントローラは、光学撮像データからオブジェクトを認識し、そのような認識されたオブジェクトに基づいて決定を行うために機械ビジョンプロセスを実行するように構成される。
【0016】
第2の態様によれば、請求項1から11のいずれか一項に記載のステレオリソグラフィ装置内の樹脂を予熱する方法は、
-テーブルの水平上面上に配置されたバット上に樹脂を供給するステップと、
-マスキング素子の露光パターンを閉じるステップと、
-放射素子上に保持し、熱エネルギーがバット内の樹脂に伝達されるマスキング素子を加熱するために放射素子からマスキング素子に光放射を放出するステップと、を含む。
【0017】
本方法の一実施形態では、
-温度検出器によって樹脂温度を測定するステップと、
-温度データを前記コントローラ(801)に送信ステップと、を含む。
前記コントローラ(801)は、前記温度検出器(604)から受信した前記樹脂温度データが所望される場合に、前記予熱プロセスを停止するように構成されている、請求項12または13に記載のステレオリソグラフィ装置内の樹脂を予熱する方法。本方法の一実施形態では、コントローラが温度検出器から受信した樹脂温度データが所望される場合に、予熱プロセスを停止するように構成される。
【0018】
第3の態様によれば、コンピュータプログラムは、プログラムがコンピュータによって実行されると、
-マスキング素子(506)の露光パターンを閉じるステップと、
-放射素子(505)上に保持し、熱エネルギーがバット内の樹脂に伝達されるマスキング素子を加熱するために放射素子からマスキング素子に光放射を放出するステップと、をコンピュータに実行させる命令を含む。
【0019】
上述の本発明の実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用されてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態を一緒に組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面は本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【
図1】立体リソグラフィ装置を、その蓋を閉じた状態で正面図に示す。
【
図2】立体リソグラフィ装置を、その蓋を閉じた状態で側面図に示す。
【
図3】立体リソグラフィ装置を、その蓋が開いている状態で正面図に示す。
【
図4】立体リソグラフィ装置を、その蓋が開いている状態で側面図に示す。
【
図5】ステレオリソグラフィ装置の露光配置を示す。
【
図6】側面図における立体リソグラフィ装置の断面を示す。
【
図7】樹脂カプセルのためのホルダと樹脂カプセルとを含むステレオリソグラフィ装置を示す。
【
図8】閉じた蓋を有するステレオリソグラフィ装置を、側面図に示す。
【
図10】ステレオリソグラフィ装置のブロック図の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この詳細な説明で論じられるステレオリソグラフィ装置に関して、以下に留意すべきである。
【0022】
ステレオリソグラフィ装置は、ステレオリソグラフィ3Dプリンタ、またはステレオリソグラフィ付加製造装置とも呼ばれる。ステレオリソグラフィ装置は、歯科用オブジェクトを製造するための3Dプリンタであってもよい。これは、歯科用副木、模型、外科用ガイド、一時的充填物、および歯列矯正模型を真の精度および効率で作製するための3Dプリンタであってもよい。追加的または代替的に、ステレオリソグラフィ装置は、歯科用オブジェクト以外の任意のステレオリソグラフィ3D印刷可能オブジェクトの製造のための3Dプリンタであってもよい。
【0023】
図1から
図4は、ステレオリソグラフィ装置の一例を示す。この装置は、ステレオリソグラフィ3Dプリンタ、またはステレオリソグラフィ付加製造装置とも呼ばれる。装置の基本部分はベース部分101および蓋102であり、そのうち蓋102は、
図1および
図2に示す閉鎖位置と
図3および4に示す開放位置との間を移動できるように、ベース部分101に移動可能に結合されている。ここで、移動の方向は垂直であるが、これは要求事項ではない。ベース部分101に対する蓋102の移動は他の方向で行われ得る。この種の可動蓋の重要な利点は、進行中のステレオリソグラフィ3D印刷プロセスが、蓋102を閉じることによって任意の干渉外部光放射から保護され得ることである。
【0024】
ベース部分101には、ステレオリソグラフィ3D印刷プロセスで使用する樹脂を保持するためのバット401が設けられてもよい。バット401はステレオリソグラフィ装置の固定部分であってもよく、またはベース部分101は取り外し可能なバットを受け入れるためのホルダを備えてもよい。ホルダは例えば、バット401が配置可能な実質的に水平な上面を有するテーブルであってもよい。追加的または代替的に、ホルダは支持レール、位置合わせ補助具、ロック機構、および/またはバットを支持するように、および/またはバットが適切な位置をとり、適切な位置に留まることを確実にするように構成された他の同等の手段を備えてもよい。本明細書では、バット401へのすべての言及は、固定されたバットの構成と、取り外し可能なバット401を前記種類のホルダ内に受け入れることができる構成と、の両方をカバーすることを理解されたい。バット401の底部は、樹脂を光重合するために使用される光放射の種類に対して透明または半透明であってもよい。
【0025】
構築表面403を有する構築プラットフォーム402は、構築表面403がバット401に面するようにバット401の上方に支持される。この配置は、光重合放射がバットの下から来る、ステレオリソグラフィのいわゆる「ボトムアップ」変形に対して典型的である。バット401の底部は、透明または半透明である、または、光重合に使用される放射線の種類に対して選択的に透明または半透明にすることができる。
【0026】
移動機構が提供され、第1の極限位置と第2の極限位置との間の作業移動範囲内で構築プラットフォーム402を移動させるように構成される。これらのうち、第1の極限位置はバット401に近接した位置であり、第2の極限位置はバット401から離れた位置である。第1の極限位置では、構築表面403はバット401の底部に非常に近い。製造されるオブジェクトの第1の層は、構築プラットフォーム402が第1の極限位置にあるときに構築表面403上に光重合される。したがって、第1の極限位置において、構築表面403とバット401の底面との間の距離は、ステレオリソグラフィ3D印刷プロセスにおける1つの層の厚さのオーダーである。
【0027】
図3および
図4に示す位置は、第2の極限位置であってもよく、または少なくとも第1の極限位置よりも第2の極限位置に近くてもよい。ステレオリソグラフィ装置の作業領域は、製造されるオブジェクトがこの領域内に現れるので、ベース部分101と構築プラットフォーム402の第2の極限位置との間に存在すると言うことができる。構築プラットフォーム402は、オブジェクトの製造中に第2の極限位置まで、またはその近くまで移動する必要はなく、第2の極限位置は、オブジェクトが完成すると、製造されたオブジェクトを構築プラットフォーム402から容易に取り外すことができるようにするために最も有用であり得る。
【0028】
図1から
図4の実施形態では、構築プラットフォーム402を移動させるための移動機構は、ベース部分101の内側であり、ベース部分101の垂直面に見られる2つのスリット301、ならびに構築プラットフォーム402の水平支持部404によってのみ表される。蓋102をベース部分101に対して移動させるための同様に隠れた移動機構も存在する。この第2の可動機構は、ベース部分101の内側の部分および/または蓋102の内側の部分を含むことができる。基本的にすべての可動機構をベース部分101および/または蓋102のケーシング内に封入することは、そのような機構の可動部分によってユーザが負傷する可能性がないので、追加の安全性の利点を伴う。
【0029】
構築プラットフォーム402の水平支持部404は、図面においてのみ概略的に示されている。実際の実施において、構築プラットフォーム402のサポートは、構築表面403の配向が適切であることを保証するためのジョイントおよび/または微調整メカニズムのような、様々な先進的な技術的特徴を含み得る。しかしながら、そのような特徴はこの説明の範囲外であり、したがって、ここでは省略される。
【0030】
図1から
図4の例示的な立体リソグラフィ装置の別の特徴はユーザインターフェースであり、この例では、蓋102内にタッチセンシティブディスプレイ103を備えている。ユーザインターフェースは、蓋102および構築プラットフォーム402の動きを制御するためのボタンを含むが、これらに限定されない、装置とそのユーザとの間の対話を実施するための様々な機能を備えることができる。タッチセンシティブディスプレイは、特に、ステレオリソグラフィ装置が医療および/または歯科診療所のように、徹底的な洗浄および消毒が定期的に必要とされる環境で使用される場合に、ユーザインターフェースの有利な特徴である。タッチセンシティブディスプレイ103および/またはユーザインターフェースの他の部分を蓋102の前部に配置することは、ユーザインターフェースのそのような部分をユーザが容易にアクセスできるようにするので有利である。したがって、ユーザインターフェースの少なくともいくつかの部分は、ベース部分101に実装することができる。さらに別の可能性は、タブレットまたはスマートフォンのような、適切にプログラムされたポータブルユーザデバイスにおいて、ユーザインターフェースの少なくとも一部を実装することであり、その結果、ステレオリソグラフィ装置とポータブルユーザデバイスとの間で、近距離有線または無線通信が設定される。
【0031】
図5および
図6は、光放射を放出するのに適した放射素子505を含む露光構成501の一実施形態を示す。光放射は、好ましくは、ステレオリソグラフィ3D印刷プロセス中にバット401内の樹脂504の選択的光重合を引き起こすのに適している。光放射の波長スペクトルおよび強度は、ステレオリソグラフィ3D印刷プロセスに使用される樹脂の種類に基づいて選択されてもよい。
【0032】
「放射素子」は、光放射の完全な動作可能な源などを形成し得る素子を指してもよい。あるいは、放射素子は、他の要素、ユニット、および/または構造も含む完全な放射アセンブリの1つの要素として使用することができる。
【0033】
放射素子は、任意のタイプの放射源、例えば、白熱または他の熱放射源、ルミネセンス放射源、および/または電気アークまたはガス放電ランプを含むことができる。好ましい実施形態では、放射素子は発光ダイオード(LED)光源を含む。LED源は、1つのLED素子(601)または複数のLED素子、例えばLED素子のアレイ(601)を含むことができる。
【0034】
図5および
図6の実施形態では、露光構成501は、放射素子505からの光放射を部分的にマスキングすることによって露光パターンを形成するための、実質的に矩形のマスキング領域602を有する(
図5のバットの底部を通して見られる)マスキング素子506も備える。他の実施形態では、マスキング領域が異なる形状を有してもよい。
【0035】
「マスキング領域」は、放射素子によって放出される光放射を受け取り、および/またはそれによって照射されるように構成されたマスキング素子の表面の一部を指してもよい。追加的または代替的に、「マスキング領域」は、マスキング素子が放射素子によって放出され、マスキング素子の表面の一部に入射する光放射に対して、空間的および/または時間的に可変の透過特性および/または反射特性を有するように、マスキング素子の表面の一部を指してもよい。
【0036】
マスキング領域は、放射素子によって放射され、マスキング素子に入射されるべき光放射の空間強度分布に基づいて、部分的にまたは全体的に規定可能であってもよい。例えば、マスキング領域は、マスキング素子の少なくとも1つの表面の一部として画定可能であってもよく、ここで、放射素子によって放射されるべき光放射の強度は、マスキング素子の表面上の放射素子によって放射されるべき光放射の最大強度の少なくとも50%であるように構成される。
【0037】
「実質的に矩形のマスキング領域」とは、少なくとも1つの平面上に実質的に矩形の形状を有するマスキング領域の投影を指してもよい。実質的に矩形のマスキング領域は、好ましくは実質的に平面であってもよい。本明細書において、「実質的に矩形」という用語は、例えば、丸みを帯びた、またはベベルを帯びた角を有する矩形からなる、広義に使用される。
【0038】
「部分的にマスキングすることによって露光パターンを形成する」とは、放射素子によって放出される光放射がマスキング領域上に伝播し、マスキング領域から、光放射の一部がさらに作動領域内に伝播し得るように、マスキング素子を構成することを指してもよい。
【0039】
マスキング素子は、マスキング領域の少なくとも一部を形成する、放射素子によって放出される光放射に対する空間的に変化する透過率および/または反射率を有するシート、プレート、またはフィルムを含むことができる。シート、プレート、またはフィルムは、放射素子(例えば、ガラス、石英、プラスチック、および/またはサファイア)によって放出される光放射に対して透明または半透明な基板材料と、放射素子によって放出される光放射を部分的にマスキングするための基板材料上のマスキング材料(例えば、金属および/またはインク)とを含んでもよい。
【0040】
図5および
図6の実施形態では、マスキング素子506は、実質的に矩形の透過型液晶要素を含み、その外面はマスキング領域として作用する。他の実施形態では、マスキング素子は、同様のまたは他のタイプのマスキング素子、例えば、反射型液晶要素またはデジタルマイクロミラーデバイスを含むことができる。液晶素子を含む実施形態では、当技術分野で知られている任意の適切な液晶デバイス技術を使用することができる。
【0041】
透過性液晶素子は、例えば、第1の方向に沿って放射素子によって放出され、マスキング領域上に入射する第1の偏光フィルタ;放射素子によって放出される光放射に対して透明な第1の基板と、第1の基質板上に配置された第1の複数の透明電極、その少なくとも部分的に作業領域で生じる露光パターンを規定する形状と、ねじれたネマチック液晶層;第2の複数の透明電極、その少なくとも部分的に作業領域で生じる露光パターンを規定する形状と、放射素子によって放出される光放射の第2の基板透明電極と(ここで第2の複数の透明電極が第2の基板上に配置されてもよく)、第1の方向に垂直に配向されたその偏光軸を有する第2の偏光フィルタと、を含むことができる。
【0042】
図5および
図6の実施形態において、露光構成501はまた、放射素子505とマスキング領域602との間の(
図6に見られる)光路603を含む。
【0043】
当技術分野で一般的に知られているように、「光路」は、光放射が光学媒体または光学系を伝搬する間に取る経路を指してもよい。したがって、「放射素子とマスキング領域との間の光路」とは、放射素子からの少なくとも一部の光放射がマスキング領域に入射され得るように配置される露光構成の部分を指してもよい。一般に、露光構成は、放射素子とマスキング領域との間に複数の光路を備えることができる。また、露光構成は、複数の放射素子のいずれかと複数のマスキング領域のいずれかとの間に複数の光路を含んでもよい。
【0044】
露光構成は、反射光学的構成要素、例えば、ミラーおよび/またはビームスプリッタ、反射光学的構成要素、例えば、プリズムおよび/またはレンズ、回折光学的構成要素、例えば、ディフューザ、格子および/またはフレネルレンズ、および/または光路に沿ったファイバ光学的構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、光路は、前記構成要素がステレオリソグラフィ装置から除去される場合であっても存在し得る。いくつかの実施形態では、前記構成要素の除去が光路を破壊し得る。そのような場合、前記構成要素は、露光構成の動作の中心となり得る。いくつかの実施形態では、露光構成は、光路に沿って前記構成要素を全く含まなくてもよい。
【0045】
図5および
図6に示す実施形態は、印刷プロセスの前に樹脂を予熱するために使用されてもよい。露光構成501は、光放射を放出する放射素子505と、放射素子505からの光放射を部分的にマスキングすることによって露光パターンを形成するマスキング素子506とを備える。装置はテーブル502をさらに備え、このテーブルはベース部分の一部であってもよく、またはベース部分に取り付けられた別個の部分であってもよい。テーブルは、光放射によって光重合される樹脂を保持するためにバット401を配置することができる水平上面503を有してもよい。マスキング素子506は、水平上面と熱的に接続して配置されてもよく、すなわち、マスキング素子は、マスキング素子の熱エネルギーが上面503上に配置されたオブジェクト、例えばバット401の底部に効率的に移送され得るように配置されてもよい。一実施形態では、テーブル502は、マスキング素子を取り付けることができる開口部を含む。一実施形態によると、マスキング素子の(作用領域に対向する)上面は、テーブルの上面503と実質的に平面な表面を形成する。一実施形態では、上面503は、配置可能なバット401とマスキング素子との間に配置された透明フィルムを含む。
【0046】
マスキング素子506は、生成された放射線の選択された部分のみがバット401内の樹脂に到達することを可能にするために、放射素子505と、水平上面503上に配置されるバット401との間の適切な位置に設けられる。光重合樹脂と未重合樹脂との間の境界線における回折誘起の不正確さを回避するために、マスキング素子506を、現在影響を受けている樹脂の層にできるだけ近接して配置することが有利である。ここではステレオリソグラフィの「ボトムアップ」変形例を考えるが、これは、マスキング素子506がバット401の底面の下にあり、できるだけ近いことが最も有利であることを意味する。ステレオリソグラフィの「ボトムアップ」変形例の典型的な用途では、構築プラットフォームの構築表面は平坦であり、その結果、バット401の底部およびマスキング素子506も平坦である。
【0047】
放射素子がオンにされ、オンのままであり、光放射がマスキング素子506の方へ放出されると、光放射がマスキング素子に吸収され、それが温かくなる。マスキング素子は閉じてもよく、すなわち、マスキング素子は、放射素子からの光放射をできるだけマスキングするために黒色に変えられ、したがって、最も効率的な方法で温められる。マスキング素子506が水平上面503と熱的に接続しているので、水平上面503上に置かれたオブジェクト、すなわち、表面上に置かれたバットの底部に熱エネルギーが移送され、温められる。さらに、樹脂がバット401内に供給されるとき、樹脂は、マスキング素子506から伝達される熱エネルギーによって温められてもよい。
【0048】
ステレオリソグラフィ装置は、少なくとも1つのコントローラを備えてもよく、これについては以下でより詳細に説明する。
【0049】
一実施形態では、コントローラ605は、放射素子505およびマスキング素子506に結合されてもよく、コントローラ605は、放射素子からの光放射を放出し、マスキング素子を閉じたままにすることによって、樹脂がバット内の樹脂を加熱するための予熱プロセスを実行するように構成されてもよい。コントローラ605と放射素子505とマスキング素子との間の結合は、有線結合または無線結合とすることができ、あるいは、互いの代替として、または互いを増強するものとして、有線および無線素子の両方を備えることができる。
【0050】
一実施形態によると、放射素子505は、発光ダイオード(LED)素子601のアレイを含み得る発光ダイオード(LED)光源を含む。LED素子601のアレイは、マスキング素子506の表面積に実質的に等しい表面積を有することができる。したがって、放射素子から放出される光放射の強度は均一であってもよい。
【0051】
一実施形態では、ステレオリソグラフィ装置は、樹脂の温度を測定するための温度検出器604を備える。温度検出器は、樹脂から放出された赤外線エネルギーを検出する赤外線センサと、放射電力を電気信号に変換する手段とを含んでもよい。コントローラ605は温度検出器604と結合されて、電気信号、すなわち、温度検出器604からの樹脂温度データを受信してもよい。コントローラ605は、ステレオリソグラフィ装置の予熱プロセスを制御する際に前記樹脂温度データを使用するように構成されてもよい。コントローラ605は、温度検出器から樹脂温度データを常時受信してもよく、また、前記樹脂温度データ、すなわち閉ループシステムに基づいて予熱プロセスを調整してもよい。コントローラ605は、樹脂温度が望まれるとき、すなわち、温度検出器から受信された温度データが望まれるとき、予熱プロセスを行うように構成することができる。
【0052】
図7は、樹脂カプセル702を受容するためのホルダ701を備えるステレオリソグラフィ装置の一実施形態を示す。この装置は、複数の樹脂カプセルを受容するための2つ以上のホルダを含んでもよい。樹脂カプセル702は、樹脂カプセル702内部の樹脂に関する図形的または電気的に提示された情報702を含んでもよい。情報は、樹脂の最適な動作温度を含んでもよい。
【0053】
立体リソグラフィ装置に、
図8の実施形態のような光学撮像検出器を設けることによって、大きな利点を得ることができる。光学撮像検出器は、作動領域の少なくとも一部が光学撮像検出器の視野内にあるように、設置され、配向されてもよい。光学撮像検出器が、少なくとも1つの動作位置といくつかの他の位置との間で移動可能である場合、動作領域は、少なくとも光学撮像検出器が前記動作位置にあるときに、光学撮像検出器の視野内に現れるべきである。光学撮像検出器は、その視野内で光学的に検出することができるものを示す光学撮像データを生成することができるデバイスである。ほとんどの光学撮像検出器は(デジタル)カメラとして特徴付けることができるが、例えば、可視光以外の他の波長で動作する光学撮像検出器があり、これは必ずしも一般にカメラと呼ばれるわけではない。一般的な適用性を維持するために、光学撮像検出器という用語は、この説明において使用される。
【0054】
図8に示す立体リソグラフィ装置は、光学撮像検出器802から光学撮像データを受信するために光学撮像検出器802に結合されたコントローラ605を含む。コントローラ605は、ステレオリソグラフィ装置の操作を制御する、すなわち、樹脂に対する予熱プロセスにおいて、このような光学撮像データを使用するように構成することができる。このような制御のさらなる例は、本明細書において後により詳細に説明される。光学撮像検出器802とコントローラ605との間の結合は、有線結合または無線結合であってもよく、あるいは、互いの代替として、または互いを増強するものとして、有線および無線素子の両方を含んでもよい。
【0055】
コントローラ605は蓋102内に設置されてもよいが、代替的に、ベース部分101内に設置されてもよい。コントローラの機能性は、その一部は、蓋102内に配置された回路で実現することができる一方で、他の部分は、ベース部分101内に配置された回路で実現することができるように、分散することさえ可能である。コントローラを蓋102内に配置することは、ユーザインターフェースのような他の電子機器のかなりの部分が蓋102内に配置される場合、配線がより単純になる可能性があるため、有利であり得る。ユーザインターフェースは、グラフィックの明瞭性を高めるため、
図8には示されていない。
【0056】
コントローラ605は、機械ビジョンプロセスを実行して、光学撮像検出器802から受信した光学撮像データからオブジェクトを認識するように構成することができる。光学撮像データは、本質的に、光学撮像検出器802によって記録された画像のデジタル表現であり、機械ビジョンは、概して、画像から情報を抽出する手段である。したがって、機械ビジョンプロセスを実行することによって、コントローラ605は、光学撮像検出器802によって見られる様々なオブジェクトを認識することを可能にする情報を抽出することができる。コントローラ605は、そのような認識されたオブジェクトに基づいて決定を行うように構成されてもよい。
【0057】
コントローラ605が認識することができるオブジェクトの一例は、樹脂カプセル、または樹脂カプセルによって搬送されるグラフィカルに表された情報である。この種のアプリケーションのためのいくつかの背景を提供するために、樹脂の取扱いのタスクを以下により詳細に説明する。
【0058】
図7および
図8は、樹脂カプセル702がホルダ701に収容された場合を示す。樹脂カプセル801の(光学撮像検出器802の視野内で可視である)可視面には、グラフィカルに表された情報の断片703が設けられている。
図7の例では、バーコードが使用されるが、QRコード(登録商標)、または樹脂カプセル702の色もしくは色の組み合わせ、またはその一部のような、任意の他の形態のグラフィカルに表された情報を使用することができる。グラフィカルに表された情報の使用は、光学撮像検出器で読み取ることができるという利点を含み、そのために、ステレオリソグラフィ装置において他の有利な使用もあり得る。
【0059】
グラフィカルに表された情報の断片703によって搬送される情報は、その特定の樹脂カプセル702に含まれるその樹脂だけに関連する有利な何かであるか、またはそれを明らかにする。追加的または代替的に、グラフィカルに表された情報の断片703によって搬送される情報は、その特定の樹脂カプセル自体に関連する何かであるか、またはそれを明らかにすることができる。前記情報は、例えば、樹脂カプセル702に含有される樹脂の識別子、樹脂カプセル702に含有される樹脂の量のインジケータ、樹脂カプセル702に含有される樹脂の製造日、樹脂カプセル702に含有される樹脂の賞味期限、樹脂カプセル702の固有の識別子、樹脂カプセル702に含有される樹脂の提供者のデジタル署名のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0060】
興味深い特別なケースとして、グラフィカルに表された情報の断片703によって搬送される情報は、パラメータデータの断片を含むことができる。一方、コントローラ605は、このようなパラメータデータの断片をステレオリソグラフィ装置の動作パラメータの値として使用するように構成されてもよい。このような動作パラメータの例には、樹脂の予熱温度、層露光時間、層厚、構築プラットフォームの移動速度、またはステレオリソグラフィ3D印刷における2つの連続する方法ステップの間の待ち時間、が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
光学撮像検出器の使用は、同じ光学撮像検出器をステレオリソグラフィ装置の他の目的にも使用できるという特別な利点を含む。このような他の目的は、樹脂タンクからのグラフィカルに表された情報を読み取るために使用されない場合であっても、光学撮像検出器の提供を実証することさえできる。これは、例えば、バット内の樹脂レベルを検出するために使用することができる。
【0062】
いくつかの場合においては、樹脂は、前述の樹脂の最適動作温度よりも温かくてもよい。例えば、印刷プロセス中に、樹脂は、最適動作温度を超えて温かくなることがある。したがって、一実施形態では、ステレオリソグラフィ装置は、マスキング素子を冷却し、バット401内の樹脂をさらに冷却するために、マスキング素子506と放射素子505との間に冷却チャネル901を含む。冷却チャネルは、一般に、流体冷却媒体が流れることができる通路として定義される。水などの液体は、比較的高い比熱容量を有することができ、したがって、流体冷却媒体として使用するのに比較的効率的である。しかしながら、ステレオリソグラフィ3D印刷の特定のフレームワークにおいては、それらも欠点を有する。例えば、水は、非常に強い紫外線、すなわち、光重合を引き起こすために樹脂の所望の部分に通過すべき波長を減衰させる。気泡は、水が加熱されると水中に形成されることがあり、これは、水を通る放射線の伝播に異常を引き起こす。水は、装置内の望ましくない部分に、または装置からさえも漏れることがあり、これは、あらゆる種類の害を引き起こし、危険さえ引き起こすことがある。
【0063】
これらの理由から、流体冷却媒体として冷却ガスを使用することがより有利であると考えられてきた。最も容易に入手可能な冷却ガスは空気である。
図9に概略的に示すように、空気は、適切な空気入口および出口を設けることによって、冷却チャネル901を通って流れるようにすることができる。空気の十分な流れを確保するために、前記冷却チャネル901に空気を強制的に通すように構成された送風機902をステレオリソグラフィ装置に装備することが有利である。
図9の概略図では、送風機902が冷却チャネル901に空気を送風するように、冷却チャネル901の入口またはその近くに示されている。追加的または代替的に、送風機は、冷却チャネル901から空気を引き込むように、冷却チャネル901の出口にまたはその近くで使用することができる。
【0064】
冷却ガスの強制流によって達成される最も重要な冷却メカニズムは強制熱対流であり、これは、冷却ガスが冷却チャネルの壁から熱を吸収し、吸収された熱が冷却チャネルの出口を通って流れるときに、吸収された熱を運び去ることを意味する。強制熱対流は、被冷却面とそれを通過して流れる流体冷却媒体との温度差が大きい場合、および流体冷却媒体の流れが強く乱流の場合に、最も効果的に働く。強い流れは、十分に強力な送風機902と、冷却ガスが流れなければならないすべてのチャンネルの十分に大きな断面を提供することによって、扱うのが容易になる。温度差をより大きくするために、ステレオリソグラフィ装置に予冷器を装備することが可能であり、この予冷器を通して、冷却ガスが冷却チャネル901に流入する前に流れるようにする。様々な種類の予冷器はそのようなものとして知られており、したがって、本明細書ではより詳細には説明しない。流れを乱流にするために、冷却チャネルは、任意の他の層流を乱し、乱流を引き起こす、いくつかの内部特徴および/または寸法を有するように設計されてもよい。
【0065】
一実施形態によると、冷却チャネル901は平坦であり、放射素子の方へ向けられるマスキング素子506のその側面に沿って延在する。
【0066】
一実施形態では、コントローラが命令を含むコンピュータプログラムを備えるメモリに接続され、命令はプログラムがコンピュータによって実行されると、ステレオリソグラフィ装置内の樹脂を予熱するためにコンピュータに、
-マスキング素子506の露光パターンを閉じるステップと、
-放射素子505上に保持し、熱エネルギーがバット内の樹脂に伝達されるマスキング素子を加熱するために放射素子からマスキング素子に光放射を放出するステップと、を実行させる。
【0067】
図10は、一実施形態によるステレオリソグラフィ装置の一例の一部を示す概略ブロック図である。
【0068】
コントローラ1001は、装置の操作において中心的役割を有する。構造的かつ機能的には、少なくとも1つの内蔵メモリまたは着脱可能メモリを含むことができる1つ以上のメモリに記憶された機械可読命令を実行するように構成された1つ以上のプロセッサに基づくことができる。
【0069】
蓋機構1002は、作業領域を開閉する蓋を移動させる目的を果たす、機械的および電気的部分を含む。
【0070】
構築プラットフォーム機構1003は、構築プラットフォームをその第1の極限位置と第2の極限位置との間で移動させる目的を果たす、機械的および電気的部分を含む。構築プラットフォーム機構1003は、また、構築プラットフォームの正しい角度位置決めを確実にする役割を果たす部品を含んでもよい。
【0071】
樹脂送達機構1004は、樹脂をバット内にポンピングし、場合によっては、未使用の樹脂をバットから何らかの長期的リポジトリ内に排出する目的を果たす機械的および電気的部品を含む。
【0072】
露光装置1005は、ステレオリソグラフィ3D印刷プロセス中に樹脂の選択的光重合を引き起こす放射線を制御可能に放出する目的を果たす、機械的、電気的、および光学的部品を含む。
【0073】
リーダおよび/またはセンサブロック1006は、リーダまたはセンサとして分類することができるすべてのデバイスを含む。例えば、ステレオリソグラフィ3D印刷プロセス中に樹脂を光重合すること以外の目的を果たす、前述の種類のすべての光学撮像検出器、ならびに光放射エミッリーダおよび/またはセンサブロック1006に属する。
【0074】
ステレオリソグラフィ装置は、他のデバイスとデータを交換するためのデータインターフェース1007を含んでもよい。データインターフェース1007は、例えば、何らかの他のデバイスから、どのような種類のオブジェクトがステレオリソグラフィ3D印刷によって生成されるべきかを記述する3Dモデリングデータを受信するために使用され得る。データインターフェース1007は、ステレオリソグラフィ装置の操作に関する診断データを監視コンピュータなどの他のデバイスに提供するために使用することもできる。
【0075】
ステレオリソグラフィ装置は、1人以上のユーザと情報を交換するためのユーザインターフェース1008を含んでもよい。ユーザインターフェース1008は、ステレオリソグラフィ装置の隣のユーザとの即座の対話を容易にするための有形のローカルユーザインターフェース手段を含んでもよい。追加的または代替的に、ユーザインターフェース1008は、例えば、スマートフォンまたは他のパーソナルワイヤレス通信デバイスなどの別個のユーザのデバイスにインストールされたネットワークまたはアプリケーションを介して、ステレオリソグラフィ装置の遠隔動作を容易にするためのソフトウェアおよび通信手段を備えてもよい。
【0076】
ステレオリソグラフィ装置は、電力分配ネットワークからのACなどの動作電力を、装置の種々の部分によって必要とされる電圧および電流に変換し、そのような電圧および電流を前記装置の前記部分に安全かつ確実に送達するように構成された電力ブロック1009を含んでもよい。
【0077】
実施例の実施例は、ソフトウェア、ハードウェア、アプリケーションロジック、またはソフトウェア、ハードウェアおよびアプリケーションロジックの組合せで実施することができる。例示的な実施形態は、本明細書で説明される様々な方法に関する情報を格納することができる。この情報は、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、RAMなどの1つ以上のメモリに格納することができる。1つ以上のデータベースは、例示的な実施形態を実施するために使用される情報を記憶することができる。データベースは、本明細書に記載する1つ以上のメモリまたは記憶装置に含まれるデータ構造(例えば、レコード、テーブル、アレイ、フィールド、グラフ、ツリー、リストなど)を使用して編成することができる。例示的な実施形態に関して説明した方法は、例示的な実施形態のデバイスおよびサブシステムの方法によって収集および/または生成されたデータを1つ以上のデータベースに格納するための適切なデータ構造を含むことができる。
【0078】
例示的な実施形態の構成要素は、教示に従ってプログラムされた命令を保持し、本明細書に記載されたデータ構造、テーブル、記録、および/または他のデータを保持するためのコンピュータ可読媒体またはメモリを含むことができる。例示的な一実施形態では、アプリケーション論理、ソフトウェア、または命令セットは、種々の従来のコンピュータ可読媒体のいずれか1つに保持される。本明細書の文脈では、「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータなどの命令実行システム、機器、または装置によって、またはそれに関連して使用するための命令を含み、記憶し、通信し、伝播し、または搬送することができる任意の媒体または手段とすることができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータのような命令実行システム、装置、またはデバイスによって、または関連して使用するための命令を含む、または格納することができる任意の媒体または手段であってもよい、コンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の適切な媒体を含むことができる。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、伝送媒体などを含むが、これらに限定されない多くの形態をとることができる。
【0079】
技術の進歩に伴い、本発明の基本概念を様々な方法で実施することができることは、当業者には明らかである。したがって、本発明およびその実施形態は上述の例に限定されず、その代わりに、特許請求の範囲内で変更することができる。
【国際調査報告】