(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】腫瘍ワクチン接種方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20220620BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220620BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220620BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220620BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220620BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220620BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20220620BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220620BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220620BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20220620BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20220620BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K48/00
A61P25/00
A61P15/08
A61K9/08
A61K35/76
A61K35/15
C12N7/01 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562977
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2020053898
(87)【国際公開番号】W WO2020217226
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/NL2019/050451
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521022691
【氏名又は名称】ディーシープライム・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】DCPRIME B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】マンティング,エリック ハンス
(72)【発明者】
【氏名】シン,サトウィンダー カウア
(72)【発明者】
【氏名】ソマンダス,ヴィノッド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA45
4C076AA11
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
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4C076FF02
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4C084AA13
4C084MA02
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4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB091
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4C084ZC751
4C085AA03
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4C085GG01
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4C085GG05
4C085GG06
4C085GG10
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087BC83
4C087MA02
4C087MA17
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA81
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程と、第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程とを含む、それを必要とする対象において腫瘍を処置するまたは腫瘍に対する免疫応答を生成する方法を提供する。第1の組成物および第2の組成物はそれぞれ、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍性抗原)または抗原性ポリペプチドをコード化する核酸を含む。また、本明細書に記載の方法で用いるための抗原性ポリペプチドおよび組成物も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法であって、
腫瘍から遠位部位で該対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該第1の組成物が、非腫瘍抗原または該非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む、ワクチン接種工程;および、
腫瘍部位で該対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、該第2の組成物が、非腫瘍抗原または該非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む、腫瘍マーキング工程
を含み、ここで、該ワクチン接種工程と該腫瘍マーキング工程との間の期間が、約1日から約6カ月である、方法。
【請求項2】
対象にブースター組成物を投与することをそれぞれ含む1回以上のブースター工程をさらに含み、ここで、該ブースター組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1回以上のブースター工程が、該腫瘍マーキング工程の前に行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
腫瘍マーキング工程が、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍の近位に投与することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ワクチン接種工程が、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、胸骨内投与、皮内投与、経皮投与、経皮内投与、組織の間質腔への送達および非腫瘍組織への送達からなる群より選択される経路を介して第1の組成物を投与することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を皮内投与することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の組成物が皮内注射用に調製されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の組成物が、皮内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を筋肉内に投与することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の組成物が筋肉内注射用に調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1の組成物が、筋肉内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を腫瘍が存在する臓器系とは異なる臓器系に投与することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を腫瘍とは反対側の部位に投与することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ワクチン接種工程が、腫瘍マーキング工程の後に行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
腫瘍マーキング工程が、ワクチン接種工程の後に行われる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間が、ワクチン接種工程の結果として免疫応答を形成するのに十分である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間が、約2日から約21日である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
腫瘍が固形腫瘍である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
固形腫瘍が膠芽腫または卵巣癌である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
樹状細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
成熟樹状細胞がDCOneに由来する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第2の組成物が、腫瘍内投与用に調製される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第2の組成物が、腫瘍ターゲティング成分を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
腫瘍ターゲティング成分が腫瘍特異的ウイルスである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
腫瘍特異的ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
腫瘍特異的ウイルスが、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
腫瘍ターゲティング成分が腫瘍特異的ナノ粒子である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
腫瘍特異的ナノ粒子が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第2の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
樹状細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
成熟樹状細胞がDCOneに由来する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
第1の組成物および第2の組成物がそれぞれ、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてよい、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
対象が非腫瘍抗原に曝されていない対象である、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
対象が、以前に非腫瘍抗原に曝されたことがある、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
対象が、以前に非腫瘍抗原に対する免疫応答を形成している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
対象がヒトである、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
対象が、家畜動物および/または動物医療に適した動物である、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法であって、
腫瘍から遠位部位で該対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該第1の組成物が、非腫瘍リコール抗原または該非腫瘍リコール抗原をコード化する核酸を含む、ワクチン接種工程;および、
腫瘍部位で該対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、該第2の組成物が、リコール抗原または該リコール抗原をコード化する核酸を含む、腫瘍マーキング工程
を含む、方法。
【請求項40】
腫瘍マーキング工程が、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍の近位に投与することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ワクチン接種工程が、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、胸骨内投与、皮内投与、経皮投与、経皮内投与、組織の間質腔への送達および非腫瘍組織への送達からなる群より選択される経路を介して第1の組成物を投与することを含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を皮内投与することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
第1の組成物が皮内注射用に調製されている、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
第1の組成物が、皮内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項45】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を筋肉内投与することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
第1の組成物が筋肉内注射用に調製される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
第1の組成物が、筋肉内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を腫瘍が存在する臓器系とは異なる臓器系に投与することを含む、請求項39から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を腫瘍とは反対側の部位に投与することを含む、請求項39から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程が、時間的に分離されている、請求項39から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ワクチン接種工程が、腫瘍マーキング工程の後に行われる、請求項39から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
腫瘍マーキング工程が、ワクチン接種工程の後に行われる、請求項37から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間が、ワクチン接種工程の結果として免疫応答を形成するのに十分である、請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間が、約2日から約21日である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
腫瘍が固形腫瘍である、請求項37から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
固形腫瘍が膠芽腫または卵巣癌である、請求項37から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
第1の組成物が、リコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む、請求項37から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
樹状細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
成熟樹状細胞がDCOneに由来する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
第2の組成物が、腫瘍内投与用に調製される、請求項37から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
第2の組成物が、腫瘍ターゲティング成分を含む、請求項37から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
腫瘍ターゲティング成分が腫瘍特異的ウイルスである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
腫瘍特異的ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
腫瘍特異的ウイルスが、リコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸を含む、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
腫瘍ターゲティング成分が腫瘍特異的ナノ粒子である、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
腫瘍特異的ナノ粒子が、リコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
第2の組成物が、リコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む、請求項37から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
樹状細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
成熟樹状細胞がDCOneに由来する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
第1の組成物および第2の組成物がそれぞれ、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてよい、請求項37から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
対象が以前にリコール抗原に曝されていない対象である、請求項37から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
対象が、以前にリコール抗原に対する免疫応答を形成したことがある、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
対象がヒトである、請求項1から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
対象が、家畜動物および/または動物医療に適した動物である、請求項1から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法であって、
腫瘍から遠位部位で該対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該第1の組成物が、ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体または該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体をコード化する核酸を含む、ワクチン接種工程;および、
腫瘍部位で該対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、該第2の組成物が、ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体または該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体をコード化する核酸を含む、腫瘍マーキング工程
を含む、方法。
【請求項76】
対象にブースター組成物を投与することをそれぞれ含む1回以上のブースター工程をさらに含み、ここで、該ブースター組成物が、ジフテリア毒素もしくはその無害化変異体、またはジフテリア毒素もしくはその無害化変異体をコード化する核酸を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
1回以上のブースター工程が、腫瘍マーキング工程の前に行われる、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体がCRM197である、請求項75から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
腫瘍マーキング工程が、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍の近位に投与することを含む、請求項75から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
ワクチン接種工程が、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、胸骨内投与、皮内投与、経皮投与、経皮内投与、組織の間質腔への送達および非腫瘍組織への送達からなる群より選択される経路を介して第1の組成物を投与することを含む、請求項75から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を皮内投与することを含む、請求項75から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
第1の組成物が皮内注射用に調製されている、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
第1の組成物が、皮内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む、請求項81または82に記載の方法。
【請求項84】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を筋肉内に投与することを含む、請求項75から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
第1の組成物が筋肉内注射用に調製される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
第1の組成物が、筋肉内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む、請求項84または85に記載の方法。
【請求項87】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を腫瘍が存在する臓器系とは異なる臓器系に投与することを含む、請求項75から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
ワクチン接種工程が、第1の組成物を腫瘍とは反対側の部位に投与することを含む、請求項75から87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
ワクチン接種工程が、腫瘍マーキング工程とは時間的に分離されている、請求項75から88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
ワクチン接種工程が腫瘍マーキング工程の後に行われる、請求項75から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
腫瘍マーキング工程がワクチン接種工程の後に行われる、請求項75から90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間が、ワクチン接種工程の結果として免疫応答を形成するのに十分である、請求項90または91に記載の方法。
【請求項93】
ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間が、約2日から約21日である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
腫瘍が固形腫瘍である、請求項75から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
固形腫瘍が、膠芽腫または卵巣癌である、請求項75から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
第1の組成物が、CRM197またはCRM197をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む、請求項75から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
樹状細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
成熟樹状細胞がDCOneに由来する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
第2の組成物が、腫瘍内投与用に調製される、請求項75から98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
第2の組成物が、腫瘍ターゲティング成分を含む、請求項75から99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
腫瘍ターゲティング成分が腫瘍特異的ウイルスである、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
腫瘍特異的ウイルスが腫瘍溶解性ウイルスである、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
腫瘍特異的ウイルスが、CRM197またはCRM197をコード化する核酸を含む、請求項101または102に記載の方法。
【請求項104】
腫瘍ターゲティング成分が腫瘍特異的ナノ粒子である、請求項100に記載の方法。
【請求項105】
腫瘍特異的ナノ粒子が、CRM197またはCRM197をコード化する核酸を含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
第2の組成物が、CRM197またはCRM197をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む、請求項75から105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
樹状細胞が、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
成熟樹状細胞がDCOneに由来する、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
第1の組成物および第2の組成物はそれぞれ、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてよい、請求項75から108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
対象がヒトである、請求項75から109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
対象が、家畜動物および/または動物医療に適した動物である、請求項75から110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法であって、
該対象に腫瘍部位で非腫瘍抗原または該非腫瘍抗原をコード化する核酸を投与することを含み、ここで、該対象が、以前に該非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸をワクチン接種されたことがある、方法。
【請求項113】
対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法であって、
該対象に腫瘍部位でリコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸を投与することを含み、ここで、該対象が、以前に該リコール抗原または該リコール抗原をコード化する核酸をワクチン接種されたことがあり、かつ該抗原が非腫瘍抗原である、方法。
【請求項114】
対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法であって、
該対象に腫瘍部位でジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体または該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体をコード化する核酸を投与することを含み、ここで、該対象が、以前に該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体または該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体をコード化する核酸をワクチン接種されたことがある、方法。
【請求項115】
ジフテリア毒素またはその無害化変異体がCRM197である、請求項114に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年4月25日出願の“Pharmaceutical Combination”と題する欧州特許出願第19170999.7号、2019年7月16日出願の“Pharmaceutical Combination”と題する国際PCT出願PCT/NL19/50451号、および2020年1月15日出願の“Methods of Tumor Vaccination”と題する米国仮特許出願第62/961,554号基づく優先権を主張する。これらの各出願の開示内容全体を引用により本明細書中に包含させる。
【0002】
電子的に提出された配列表の引用
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【背景技術】
【0003】
背景
伝統的に、そして現在もなお、腫瘍治療用ワクチンの焦点は、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)によって開始され、それによってT細胞の活性化および腫瘍に対する免疫応答を形成(mount)する腫瘍抗原でのワクチン接種にある。
【0004】
このようなワクチン接種戦略の目標は、天然レパートリーから腫瘍特異的T細胞の集団を増殖させることであるが、腫瘍抗原の提示を通じて腫瘍関連の休眠またはアネルギーを逆転させ、それらの抗原に対する中枢性免疫寛容を破壊し、CD4+および/またはCD8+ T細胞のレパートリーの鈍化を克服することである。
【0005】
腫瘍特異的エピトープに対するT細胞を優先的に刺激する治療用腫瘍ワクチンを設計することの難しさは、腫瘍抗原の発現を減少させるために、あるいはT細胞および免疫系の他の細胞にとって阻害的な環境(腫瘍微小環境またはTME)を作り出すことによって、腫瘍が免疫制御を回避する傾向にあることにある。このようにして、腫瘍抗原を認識するT細胞レパートリーが不活性化され、不活性化または枯渇したT細胞集団をもたらす。
【0006】
現在のワクチン接種アプローチは、腫瘍によって特定の時期に発現される腫瘍抗原に依存する。このことは、腫瘍に対する自然選択圧が一般的に腫瘍に細胞死を生じさせるほど強くないため、これらのワクチン接種アプローチが腫瘍細胞の免疫回避性によって回避されていることを意味する。さらに、自己抗原ではない腫瘍特異的抗原を用いることは依然として困難であり、該自己抗原は一般的に免疫系によって寛容化を有するか、あるいは弱いT細胞介在性免疫応答を提供する。治療用腫瘍ワクチンの分野における現在の研究の焦点は、特に腫瘍ネオ抗原の同定にある。これらのネオ抗原はワクチン接種後にT細胞を十分に刺激し得るが、それらは一般的に患者特異的であるという内在的な欠点を有しており、従って、患者集団に広く適用される腫瘍ワクチンとしては適していない。また、それらは安定して発現されておらず、時間の経過とともに変化する可能性があり、正しいワクチン製剤を作製することはさらに困難である。上記から明らかなように、現在の腫瘍ワクチン接種アプローチは、腫瘍抗原によるワクチン接種に基づいており、所定の時点での腫瘍の抗原性状態に向けられており、したがって、腫瘍の抗原性状態を積極的に改変しない。
【0007】
従って、腫瘍によって発現される腫瘍抗原に依存せず、ワクチン接種時に最適なT細胞応答を提供する抗原を組み込んだ、改良された治療用腫瘍ワクチンおよび/またはワクチン接種戦略の必要がある。かかる改良された治療用腫瘍ワクチンおよび/またはワクチン接種戦略は、ヒトへの使用および家畜動物への使用の両方に適用可能であり得る。
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、“腫瘍抗原に依存しないワクチン接種”とも呼ばれる新規のワクチン接種戦略を提供する。腫瘍抗原に依存しないワクチン接種アプローチを設計することにより、免疫応答は、対象(例えば、ヒト対象)において免疫原性を有し、かつ外来(例えば、非ヒト)由来の抗原に対して起こる。そのような免疫原は、例えば、天然レパートリーからのT細胞を活性化することによって、または腫瘍に対する免疫応答ではなく、ある場合には、感染症に対する一般的なワクチン接種の結果として腫瘍が確立する前に生じた免疫応答である、以前の免疫応答の間に生じたメモリーT細胞および/またはメモリーB細胞を再活性化することによって、既存の免疫を活用することによって、強力な免疫応答を提供する。この原理は、上記の腫瘍抗原に基づくワクチン接種の制限を克服し、患者集団全体に適用可能である。加えて、腫瘍抗原に依存しないワクチン接種は、標的となり得る腫瘍抗原が少ない動物医療において価値があると考えられ、様々な動物種に適用可能なコスト効率の高い免疫療法への高い必要性がある。
【0009】
第一面において、ワクチン接種戦略は、免疫原として対象(例えば、ヒト対象)に対して外来性または外因性の抗原を含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン組成物)の投与(例えば、ワクチン接種工程)を含む。ある態様において、抗原は、免疫原性が高く、感染症に対する一般的なワクチン接種を介した場合を除いて、対象(例えば、ヒト対象)の免疫系が遭遇しないか、または殆ど遭遇しない抗原であり得る。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、非ヒト抗原を用いて行われる。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、非腫瘍抗原を用いて行われる。
【0010】
第二の面において、ワクチン接種戦略は、ワクチン接種に関連する第一の面で採用されたのと同じ抗原を用いて、腫瘍細胞またはその直接もしくは即時の環境(例えば、腫瘍部位または腫瘍微小環境(TME))を積極的にマーキングすること(例えば、腫瘍マーキング工程)を含む。ある例示的態様において、腫瘍またはその直接環境(例えば、腫瘍部位または腫瘍微小環境(TME))は、非腫瘍抗原(例えば、非ヒト抗原、非腫瘍抗原)の提示によって操作される。ある例示的態様において、腫瘍のマーキングに先立って、そのような免疫応答はすでに誘発されているか、または形成されている。
【0011】
ある例示的態様において、例えば、天然レパートリーからT細胞を活性化することによって、または目的の腫瘍に特異的な抗原ではない抗原に対する既存の免疫を利用する(tapping into)ことによって、対象(例えば、ヒト対象)において免疫原性があり、外来(例えば、非ヒト)由来であり、かつ強い免疫応答を提供すると予期される任意の抗原を用いて、(i)該抗原に対して所望の免疫応答を獲得するように該抗原に対してワクチンを接種する、および(ii)腫瘍部位または腫瘍微小環境での対応する抗原の提示を可能にすることにより、そのような免疫応答の標的として腫瘍をマーキングする。免疫原性組成物を投与する工程は、腫瘍マーキングの前または後に実施することができる。ある例示的態様において、1回以上のワクチン接種工程が、腫瘍マーキング工程に先立って実施される。
【0012】
従って、ある面において、腫瘍から遠位部位で該対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該第1の組成物が、非腫瘍抗原または該非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む、ワクチン接種工程;および、腫瘍部位で該対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、該第2の組成物が、非腫瘍抗原または該非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含み、ここで、該ワクチン接種工程と該腫瘍マーキング工程との間の期間が、約1日から約6カ月である、対象において腫瘍に対する免疫応答を生成する方法を提供する。
【0013】
ある例示的態様において、該方法は、対象にブースター組成物を投与することをそれぞれ含む1回以上のブースター工程をさらに含み、ここで、該ブースター組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む。ある例示的態様において、1回以上のブースター工程は、腫瘍マーキング工程の前に行われる。
【0014】
ある例示的態様において、腫瘍マーキング工程は、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍の近位に投与することを含む。
【0015】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、筋肉内投与、皮下投与(subcutaneous)、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、胸骨内投与、皮内投与(intradermal)、経皮投与(transcutaneous)、経皮内投与(transdermal)、組織の間質腔への送達および非腫瘍組織への送達からなる群より選択される経路を介して第1の組成物を投与することを含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を皮内投与することを含む。ある例示的態様において、第1の組成物は皮内注射用に調製されている。ある例示的態様において、第1の組成物は、皮内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を筋肉内に投与することを含む。ある例示的態様において、第1の組成物は筋肉内注射用に調製される。ある例示的態様において、第1の組成物は、筋肉内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む。
【0016】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を腫瘍が存在する臓器系とは異なる臓器系に投与することを含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を腫瘍とは反対側の部位に投与することを含む。
【0017】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、腫瘍マーキング工程の後に行われる。ある例示的態様において、腫瘍マーキング工程は、ワクチン接種工程の後に行われる。ある例示的態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間は、ワクチン接種工程の結果として免疫応答を形成するのに十分である。ある例示的態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間は、約2日から約21日である。
【0018】
ある例示的態様において、腫瘍は固形腫瘍である。ある例示的態様において、固形腫瘍は、膠芽腫または卵巣癌である。
【0019】
ある例示的態様において、第1の組成物は、腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む。ある例示的態様において、樹状細胞は、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である。ある例示的態様において、成熟樹状細胞はDCOneに由来する。
【0020】
ある例示的態様において、第2の組成物は、腫瘍内投与用に調製される。ある例示的態様において、第2の組成物は、腫瘍ターゲティング成分を含む。ある例示的態様において、腫瘍ターゲティング成分は腫瘍特異的ウイルスである。ある例示的態様において、腫瘍特異的ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。ある例示的態様において、腫瘍特異的ウイルスは、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む。ある例示的態様において、腫瘍ターゲティング成分は腫瘍特異的ナノ粒子である。ある例示的態様において、腫瘍特異的ナノ粒子は、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む。
【0021】
ある例示的態様において、第2の組成物は、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む。ある例示的態様において、樹状細胞は、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である。ある例示的態様において、成熟樹状細胞はDCOneに由来する。
【0022】
ある例示的態様において、第1の組成物および第2の組成物はそれぞれ、要すれば、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてよい。
【0023】
ある例示的態様において、対象は、非腫瘍抗原に曝されていない(ナイーブな)対象である。ある例示的態様において、対象は、以前に非腫瘍抗原に曝されたことがある。ある例示的態様において、対象は、以前に非腫瘍抗原に対する免疫応答を形成している。
【0024】
ある例示的態様において、対象はヒトである。ある例示的態様において、対象は、家畜動物および/または動物医療に適した動物である。
【0025】
他の面において、腫瘍から遠位部位で該対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該第1の組成物が、非腫瘍リコール抗原または該非腫瘍リコール抗原をコード化する核酸を含む、ワクチン接種工程;および、腫瘍部位で該対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、該第2の組成物が、リコール抗原または該リコール抗原をコード化する核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む、対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法を提供する。
【0026】
ある例示的態様において、腫瘍マーキング工程は、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍の近位に投与することを含む。
【0027】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、胸骨内投与、皮内投与、経皮投与、経皮内投与、組織の間質腔への送達および非腫瘍組織への送達からなる群より選択される経路を介して第1の組成物を投与することを含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を皮内投与することを含む。ある例示的態様において、第1の組成物は皮内注射用に調製されている。ある例示的態様において、第1の組成物は、皮内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を筋肉内投与することを含む。ある例示的態様において、第1の組成物は筋肉内注射用に調製されている。ある例示的態様において、第1の組成物は、筋肉内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む。
【0028】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を腫瘍が存在する臓器系とは異なる臓器系に投与することを含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を腫瘍とは反対側の部位に投与することを含む。
【0029】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程は、時間的に分離されている。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、腫瘍マーキング工程の後に行われる。ある例示的態様において、腫瘍マーキング工程は、ワクチン接種工程の後に行われる。ある例示的態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間は、ワクチン接種工程の結果として免疫応答を形成するのに十分である。ある例示的態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間は、約2日から約21日である。
【0030】
ある例示的態様において、腫瘍は固形腫瘍である。ある例示的態様において、固形腫瘍は、膠芽腫または卵巣癌である。
【0031】
ある例示的態様において、第1の組成物は、リコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む。ある例示的態様において、樹状細胞は、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である。ある例示的態様において、成熟樹状細胞はDCOneに由来する。
【0032】
ある例示的態様において、第2の組成物は腫瘍内投与用に調製される。ある例示的態様において、第2の組成物は腫瘍ターゲティング成分を含む。ある例示的態様において、腫瘍ターゲティング成分は腫瘍特異的ウイルスである。ある例示的態様において、腫瘍特異的ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。ある例示的態様において、腫瘍特異的ウイルスは、リコール抗原またはリコール抗原をコードする核酸を含む。ある例示的態様において、腫瘍ターゲティング成分は、腫瘍特異的ナノ粒子である。ある例示的態様において、腫瘍特異的ナノ粒子は、リコール抗原またはリコール抗原をコードする核酸を含む。
【0033】
ある例示的態様において、第2の組成物は、リコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む。ある例示的態様において、樹状細胞は、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である。ある例示的態様において、成熟樹状細胞はDCOneに由来する。
【0034】
ある例示的態様において、第1の組成物および第2の組成物はそれぞれ、要すれば、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてよい。
【0035】
ある例示的態様において、対象は、以前にリコール抗原に曝されている。ある例示的態様において、対象は、以前にリコール抗原に対する免疫応答を形成していた。
【0036】
ある例示的態様において、対象はヒトである。ある例示的態様において、対象は、家畜動物および/または動物医療に適した動物である。
【0037】
他の面において、腫瘍から遠位部位で該対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該第1の組成物が、ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体または該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体をコード化する核酸を含む、ワクチン接種工程;および、腫瘍部位で該対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、該第2の組成物が、ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体または該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体をコード化する核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む、対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法を提供する。
【0038】
ある例示的態様において、該方法は、対象にブースター組成物を投与することをそれぞれ含む1回以上のブースター工程をさらに含み、ここで、該ブースター組成物は、ジフテリア毒素もしくはその無害化変異体、またはジフテリア毒素もしくはその無害化変異体をコード化する核酸を含む。ある例示的態様において、1回以上のブースター工程は腫瘍マーキング工程の前に行われる。
【0039】
ある例示的態様において、ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体はCRM197である。
【0040】
ある例示的態様において、腫瘍マーキング工程は、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍の近位に投与することを含む。
【0041】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、胸骨内投与、皮内投与、経皮投与、経皮内投与、組織の間質腔への送達および非腫瘍組織への送達からなる群より選択される経路を介して第1の組成物を投与することを含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を皮内投与することを含む。ある例示的態様において、第1の組成物は皮内注射用に調製されている。ある例示的態様において、第1の組成物は、皮内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を筋肉内に投与することを含む。ある例示的態様において、第1の組成物は筋肉内注射用に調製される。ある例示的態様において、第1の組成物は、筋肉内注射に許容される希釈剤または溶媒を含む。
【0042】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を腫瘍が存在する臓器系とは異なる臓器系に投与することを含む。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を腫瘍とは反対側の部位に投与することを含む。
【0043】
ある例示的態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程とは、時間的に分離されている。ある例示的態様において、ワクチン接種工程は、腫瘍マーキング工程の後に行われる。ある例示的態様において、腫瘍マーキング工程は、ワクチン接種工程の後に行われる。ある例示的態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間は、ワクチン接種工程の結果として免疫応答を形成するのに十分である。ある例示的態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間は、約2日から約21日である。
【0044】
ある例示的態様において、腫瘍は固形腫瘍である。ある例示的態様において、固形腫瘍は、膠芽腫または卵巣癌である。
【0045】
ある例示的態様において、第1の組成物は、CRM197またはCRM197をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む。ある例示的態様において、樹状細胞は、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である。ある例示的態様において、成熟樹状細胞はDCOneに由来する。
【0046】
ある例示的態様において、第2の組成物は腫瘍内投与用に調製される。ある例示的態様において、第2の組成物は腫瘍ターゲティング成分を含む。ある例示的態様において、腫瘍ターゲティング成分は腫瘍特異的ウイルスである。ある例示的態様において、腫瘍特異的ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。ある例示的態様において、腫瘍特異的ウイルスは、CRM197またはCRM197をコード化する核酸を含む。ある例示的態様において、腫瘍ターゲティング成分は腫瘍特異的ナノ粒子である。ある例示的態様において、腫瘍特異的ナノ粒子は、CRM197またはCRM197をコードする核酸を含む。
【0047】
ある例示的態様において、第2の組成物は、CRM197またはCRM197をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む。ある例示的態様において、樹状細胞は、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性の成熟樹状細胞である。ある例示的態様において、成熟樹状細胞はDCOneに由来する。
【0048】
ある例示的態様において、第1の組成物および第2の組成物はそれぞれ、要すれば、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてよい。
【0049】
ある例示的態様において、対象はヒトである。ある例示的態様において、対象は、家畜動物および/または動物医療に適した動物である。
【0050】
他の面において、対象に腫瘍部位で非腫瘍抗原または該非腫瘍抗原をコード化する核酸を投与することを含み、ここで、該対象が、以前に該非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸をワクチン接種されたことがある、該対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法を提供する。
【0051】
他の面において、対象に腫瘍部位でリコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸を投与することを含み、ここで、該対象が、以前に該リコール抗原またはリコール抗原をコード化する核酸をワクチン接種されたことがあり、かつ該抗原が非腫瘍抗原である、該対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法を提供する。
【0052】
他の面において、対象に腫瘍部位でジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体または該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体をコード化する核酸を投与することを含み、ここで、該対象が、以前に該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体または該ジフテリア毒素もしくはその無毒化変異体をコード化する核酸をワクチン接種されたことがある、該対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法を提供する。
【0053】
ある例示的態様において、ジフテリア毒素またはその無害化変異体はCRM197である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1A-
図1Bは、4時間後および24時間後の、DCOne mDC細胞(n=3)によるサブユニットKLHタンパク質の取り込み(
図1A)と、OV90卵巣癌細胞(n=2)の標識化(
図1B)を示す。細胞外結合サブユニットKLH-FITCをクエンチするために0.08%のトリパンブルー(TB)を添加し、細胞内サブユニットKLH-FITCの割合を可視化した。
【
図2】
図2A-
図2Bは、4時間後および24時間後の、DCOne mDC細胞(n=3)によるβ-ガラクトシダーゼタンパク質の取り込み(
図2A)と、OV90卵巣癌細胞(n=2)の標識化(
図2B)を示す。細胞外結合β-ガラクトシダーゼ-FITCをクエンチするために0.08%トリパンブルーを添加し、細胞内β-ガラクトシダーゼ-FITCの割合を可視化した。
【
図3】
図3は、4時間後および24時間後の、OV90卵巣癌細胞(n=2)による タンパク質の取り込みを示す。細胞外結合CRM197-Alexa488をクエンチするために0.08%トリパンブルーを添加し、細胞内CRM197-Alexa488の割合を可視化した。
【
図4】
図4A-
図4Bは、ヒト化U87-MG膠芽腫モデルにおける腫瘍増殖阻害を示す。腫瘍サイズは、デジタルノギスを用いて1週間当たり3回測定した(
図4A)。注射したワクチン接種マウスにおける18日目の腫瘍サイズを
図4Bに示す。
【
図5】
図5A-
図5Bは、ヒト化A375黒色腫モデルにおける腫瘍増殖阻害を示す。腫瘍サイズは、デジタルノギスを用いて1週間当たり3回測定した(
図5A)。注射したワクチン接種マウスの30日目以降の腫瘍サイズを
図5Bに示す。
【
図6】
図6A-
図6Dは、マウスの血清中の抗KLH IgGレベル(
図6C-6D)およびIgMレベル(
図6A-6B)を経時的に示す。抗KLH IgG濃度および抗KLH IgM濃度(UI/mL)を、D0、D14および屠殺時に採取したマウス血清を用いてELISAにより測定した。1群あたりN=5匹のマウスを用いた。グラフは各群の抗KLH IgGおよびIgMの個別データを示す((
図6Aおよび
図6C)は膠芽腫群、(
図6Bおよび
図6D)は黒色腫群である)。2元配置分散分析(Two-way ANOVA)とダネットの多重比較検定を用いた。* 対 ビークル群、*<0.05、**<0.01、***<0.001、****<0.0001。
【
図7】
図7A-
図7Dは、4時間後および24時間後の、DCOne mDC細胞(n=2)によるCRM197タンパク質の取り込み(
図7A)と、DCOne前駆AML細胞(n=4)(
図7B)、OV90卵巣癌細胞(n=2)(
図7C)、U87 MG膠芽腫癌細胞(n=3)(
図7D)の標識化を示す。細胞外結合CRM197-Alexa488をクエンチするために0.08%トリパンブルーを添加し、細胞内CRM197-Alexa488の割合を可視化した。
【
図8】
図8A-
図8Bは、ヒト化OV90luc卵巣癌マウスモデルにおける腫瘍増殖を示す。腫瘍の体積(mm3)を、楕円体近似式(ellipsoid formula) (LxWxH)π/6で算出した(
図8A)。生物発光強度(photon/秒)が示されている(
図8B)。
【
図9】
図9は、生物発光強度(動物あたりの総光子束(Optical))の経時変化を示すイメージングデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
詳細な説明
本発明は、対象において腫瘍に対する免疫応答を生成する方法を提供する。この方法は、一般に、腫瘍から遠位部位で該対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程と、腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物が、同じ非腫瘍抗原(または同じ非腫瘍抗原をコードする核酸)を含む、腫瘍マーキング工程とを含む。
【0056】
本明細書で用いる用語“免疫応答”は、T細胞介在性および/またはB細胞介在性免疫応答を含む。T細胞の例示的な免疫機能は、例えば、サイトカイン産生および他の細胞における細胞毒性の誘導を含む。B細胞の機能には、抗体産生が含まれる。さらに、この用語はT細胞の活性化によって間接的に影響を受ける免疫応答、例えば、抗体産生およびサイトカイン応答性細胞、例えばマクロファージの活性化が含まれる。免疫応答に関与する免疫細胞には、B細胞およびT細胞(CD4+細胞およびCD8+細胞)などのリンパ球;抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞およびケラチン生成細胞、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、オリゴデンドロサイトなどのノンプロフェッショナル抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球および顆粒球などのミエロイド細胞が挙げられる。ある態様において、この用語は、T細胞介在免疫応答を意味する。免疫応答は、いくつかの態様において、T細胞依存性免疫応答であってもよい。当業者は、語句“腫瘍に対する免疫応答”はまた、(i)該ポリペプチドを負荷した自己または同種異系の樹状細胞を含む樹状細胞、または(ii)該ポリペプチドをコードする核酸を含むウイルス、の腫瘍内投与などの腫瘍内投与によって腫瘍微小環境に導入される非ヒト抗原性ポリペプチドに対する免疫応答を含むことを理解している。
【0057】
本明細書で用いる用語“T細胞依存性免疫応答”は、T細胞、B細胞またはT細胞およびB細胞の両方の集団のいずれかが活性化され、T細胞がさらに、T細胞およびB細胞ならびに他の免疫細胞がそれらの機能を実行する際に補助する免疫応答を意味する。
【0058】
本明細書で用いる用語“腫瘍”は、異常に速く増殖している細胞塊、例えば組織への言及を含む。新生物細胞を含む増殖は、“腫瘍”としても知られる新生物であり、一般に、対象の体内に別個の組織塊を形成する。腫瘍は、正常組織との構造的組織および機能的協調性の部分的または完全な欠如を示すことがある。本明細書で用いる腫瘍は、造血腫瘍ならびに固形腫瘍を包含することを意図する。ある態様において、腫瘍は固形腫瘍である。本明細書で用いる用語“腫瘍”は、腫瘍微小環境または腫瘍部位、すなわち、腫瘍内の領域および腫瘍組織の直接外側の領域である。ある態様において、腫瘍微小環境または腫瘍部位は、腫瘍組織の境界内にある領域である。ある態様において、腫瘍微小環境または腫瘍部位は、腫瘍の腫瘍間質性部分(これは、本明細書中、新生細胞の血漿膜と新しく形成された新生血管の血管壁との間に介在するすべてのものとして定義される)を含む。本明細書で用いる、用語“腫瘍微小環境”または“腫瘍部位”とは、腫瘍のすぐ周囲の領域も含む、腫瘍が存在する対象内の位置を意味する。
【0059】
腫瘍は、良性(例えば、良性腫瘍)であるか、または悪性(例えば、悪性腫瘍もしくは癌)であってもよい。悪性腫瘍は、大きく分けて3つのタイプに分類することができ、上皮構造に由来するものを癌腫と呼び、筋肉、軟骨、脂肪または骨などの結合組織に由来するものを肉腫と呼び、そして免疫系の構成要素を含む造血構造(血液細胞の形成に関わる構造)に影響を及ぼすものを白血病およびリンパ腫と呼ぶ。他の腫瘍としては、神経線維腫症が挙げられるが、これに限定されない。ある例示的態様において、腫瘍は膠芽腫である。ある例示的態様において、腫瘍は、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌、明細胞性卵巣癌、子宮内膜症性卵巣癌、粘液性卵巣癌または混合上皮性卵巣癌にさらに細分化され得る上皮性卵巣癌)である。
【0060】
固形腫瘍は、良性または悪性であり得る組織の異常な塊である。特定の態様において、固形腫瘍は、それを形成する細胞の種類によって命名される(肉腫、癌腫およびリンパ腫など)。肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例としては、脂肪肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、粘液肉腫およびその他の肉腫、中皮腫、滑膜腫、平滑筋肉腫、ユーイング腫瘍、大腸癌、横紋筋肉腫、膵臓癌、リンパ系悪性腫瘍、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、腺癌、基底細胞癌、汗腺癌、扁平上皮癌、甲状腺髄様癌、褐色細胞腫脂腺癌、甲状腺乳頭癌、乳頭状腺癌、乳頭癌髄様癌、気管支癌、肝細胞癌(hepatoma)、腎細胞癌、胆管癌、ウィルムス腫瘍、絨毛癌、子宮頸癌、精上皮腫、精巣腫瘍、膀胱癌、黒色腫、CNS腫瘍(例えば、神経膠腫、例えば、脳幹神経膠腫および混合神経膠腫、膠芽腫(例えば、多形性膠芽腫)、胚芽腫、星状細胞腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、上衣腫、シュワン腫、CNSリンパ腫、聴神経腫瘍、松果体腫、血管芽腫、髄膜腫、乏突起膠腫、網膜芽腫、神経芽腫および脳転移)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書に記載の方法で治療可能な癌腫としては、扁平上皮癌(様々な組織)、基底細胞癌(皮膚癌の一種)、食道癌、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、肺の小細胞癌および非小細胞癌を含む肺癌、結腸癌、甲状腺癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、副腎皮質癌、膵臓癌、汗腺癌、前立腺癌、乳頭癌、腺癌、脂腺癌、髄様癌、乳頭腺癌、非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ)または胆管癌、膀胱腺癌、腎細胞癌、絨毛癌、ウィルム腫瘍、精上皮腫、胎児性癌、子宮頸癌、精巣癌、鼻咽頭癌、骨肉腫、上皮性癌、子宮癌などが挙げられるが、これらに限定される。
【0062】
本明細書に記載の方法で治療可能な肉腫としては、筋肉肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫(osteogenic sarcoma)、脂肪肉腫、線維肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、内皮肉腫、骨肉腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫および他の軟部組織肉腫などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で用いる用語“対象”は、本明細書に記載の方法のレシピエント、すなわち、細胞性免疫応答を発現し得るレシピエントを意味し、それは哺乳動物である。特定の態様において、対象はヒトである。特定の態様において、対象は、家畜動物、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコなどである。特定の態様において、対象は、動物医療に適した動物、例えば、動物園の動物である。用語“患者”および“対象”は、互換的に用いられ得る。特定の態様において、対象は、腫瘍(例えば、固形腫瘍)を有するヒトであ。特定の態様において、対象は、腫瘍(例えば、固形腫瘍)を有する家畜動物である。特定の態様において、対象は、腫瘍(例えば、固形腫瘍)を有する動物医療に適した動物である。本明細書で用いる“動物医療に適した動物”とは、獣医師による処置に適した任意の動物であり、細胞性免疫応答を形成できる野生動物、家畜動物および動物園の動物を含むが、これに限定されない。
【0064】
本明細書で用いる用語“ポリペプチド”は、アミド結合(ペプチド結合)により直線的に連結されたアミノ酸モノマーから構成される分子を意味する。本明細書で用いるように、この用語は、本明細書で用いる用語“ペプチド”および“タンパク質”を相互互換的に包含し、該ポリペプチドの部分を含む。
【0065】
本明細書で用いる用語“核酸”は、mRNAまたはcDNAを含むDNAおよびRNA、ならびにそれらの合成同族体を意味する。核酸は、組換えまたは合成核酸であり得る。
【0066】
本明細書に記載のポリペプチドに関連して用いる用語“抗原”または“抗原性”は、一般的に、T細胞受容体、抗体または特定の体液性および/または細胞性免疫の他の要素により特異的に認識される少なくとも1つのエピトープを含む生物学的分子を意味する。例えば、ポリペプチドのMHCペプチド抗原複合体(complex)への細胞内プロセシングおよびその後の抗原提示に続いて、分子全体または分子の1以上の部分が認識され得る。本明細書で用いる用語“抗原性ポリペプチド”は、“ポリペプチド抗原”と互換的に用いられる。この用語は、該ポリペプチドの抗原性部分を含み、例えばポリペプチドの細胞内プロセシング後に、MHCペプチド抗原複合体として生成される。本明細書で用いる用語“抗原”または“抗原性”には、本明細書に記載のポリペプチドの少なくとも1つ、またはそれ以上の抗原性エピトープへの言及が含まれる。特定の態様において、“非腫瘍抗原”とは、本明細書中、腫瘍に由来しない抗原を意味する。例えば、特定の態様において、非腫瘍抗原は、外来抗原であってもよい。ある例示的態様において、非腫瘍抗原は、細菌毒素、例えば、ジフテリア毒素の非毒性変異体であってもよい。
【0067】
本明細書で用いる用語“抗原”または“抗原性”はまた、免疫原としてのポリペプチドでのワクチン接種後に、該ポリペプチドがT細胞受容体および/または抗体によって特異的に認識される能力を維持する限り、天然配列への欠失、付加および置換などの改変を含むポリペプチドを意味するためにも用いられ得る。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発、特定の合成手順、または遺伝子工学的アプローチによる意図的なものである場合もあれば、抗原を産生する宿主の突然変異のような偶発的なものである場合もある。合成抗原、例えばポリエピトープ、隣接エピトープおよび他の組換えまたは合成由来の抗原も包含される(Bergmann et al. (1993) Eur. J. Immunol. 23:2777 2781; Bergmann et al. (1996) J. Immunol. 157:3242 3249; Suhrbier, A. (1997) Immunol. and Cell Biol. 75:402 408; Gardner et al. (1998) 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, Jun. 28-Jul. 3, 1998;それらの内容全体は引用により本明細書中に包含される)。特定の態様において、抗原性ポリペプチドは、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個のCD4+ Tヘルパー細胞エピトープおよび/または少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個のCD8+ 細胞傷害性T細胞エピトープを含む。
【0068】
本明細書で用いる用語“免疫原性組成物”は、免疫原に対する免疫応答を必要とする対象において、該免疫原に対する特定の免疫応答を誘導する物質を意味する。組成物は、アジュバント、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含み得る。免疫原性組成物は、少なくとも2回、3回、4回または5回の免疫接種を時間間隔を空けて行うような、プライムブーストワクチン接種(prime-boost vaccination)において用いることができる。免疫原性組成物は、該免疫原を含む(同種異系の)樹状細胞であり得る。
【0069】
本明細書で用いる用語“免疫原”は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドに対して特異的な免疫応答を誘発することができるポリペプチドなどの化合物を意味する。免疫原はまた、抗原、すなわち抗原性ポリペプチドである。対照的に、抗原は、必ずしも免疫原ではない。免疫原は、ワクチン接種に用いられ(ワクチン組成物などの免疫原性組成物において)、腫瘍内送達のために調製された抗原性ポリペプチドは、そうではなくて、対象において誘発されるべき免疫応答の標的として、または既に誘発されている免疫応答の標的として、腫瘍をマーキングするために使用される。本明細書で用いる用語“免疫原”はまた、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドをコードする核酸を意味するために用いられる。加えて、抗原性ポリペプチドを記載する態様はまた、本明細書に記載の免疫原にも適用される。
【0070】
抗原性ポリペプチドと関連して本明細書で用いる用語“非ヒト”は、細菌ポリペプチド、古細菌ドメイン(Archaea domain)の菌類のポリペプチド、真菌ポリペプチドおよびウイルスポリペプチドを含む、ヒト由来ではないポリペプチを含む。また、植物ポリペプチドおよび非ヒト哺乳動物ポリペプチド、例えば非ヒト哺乳動物、齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ウマおよびロバ、ならびに鳥類(例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウなど)のポリペプチドも含まれる。また、カギアナカサガイ(Megathura crenulata)を含むカタツムリまたは他の軟体動物のポリペプチドも含まれる。この用語“非ヒト”はまた、合成ポリペプチド、すなわち、ヒトによって設計された人工的な配列を有するポリペプチドであって、天然には存在しないか、または天然で未だ同定されていないポリペプチドを包含する。加えて、この用語は、天然配列からのアミノ酸改変を含むヒトポリペプチドを含み、この改変はヒト対象において免疫原性を提供する。
【0071】
本明細書で用いる用語“腫瘍内”は、抗原性ポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍内への送達または輸送を意味する。本明細書に記載の抗原性ポリペプチドの腫瘍内送達または輸送の一例は、当技術分野で一般的に知られている投与経路である腫瘍内投与によるものである。腫瘍内投与のための別の経路として、抗原は、腫瘍に遺伝子配列を送達するために広く開発されている腫瘍特異的担体、例えば腫瘍溶解性ウイルスまたは遺伝子治療ベクターを介して腫瘍に送達されてもよい。そのようなビークルの使用は、複数の投与経路-腫瘍内投与に加えて-例えば、静脈内または腹腔内投与と、その後に腫瘍への該ポリペプチドをコードする核酸の送達をもたらすことを可能にする(Lundstrom, Diseases, 6(2):42 (2018); Alemany, Biomedicines, 2, p.36-49 (2014); Twumasi-Boateng et al., Nature Reviews Cancer 18, p.419-432 (2018);それらの内容全体は引用により本明細書中に包含される)。
【0072】
本明細書で用いる語句“腫瘍内送達のために調製される”は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは本明細書に記載の該ポリペプチドをコードする核酸が、腫瘍内送達に適合されている、および/または腫瘍内送達を可能にする形態であることを意味する。腫瘍内送達に用いられる調製物は、免疫系と腫瘍との間の相互作用に有益な効果を有するように構成され得る。例えば、自己由来または同種異系樹状細胞などの樹状細胞は、該ポリペプチドを負荷されてよく、そして腫瘍内投与時に、腫瘍に入るT細胞との直接的な相互作用を介して、および/または近隣(bystander)の抗原提示細胞を動員することによって間接的に、さらなる免疫刺激を提供することができる(Laurell et al., Journal for Immunotherapy of Cancer, 5:52 (2017); Wallgren et al., Scandinavian Journal of Immunology, 62, p.234-242 (2005)、それらの内容全体を引用により本明細書中に包含させる)。そのような調製物の別の例は、本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸が、腫瘍細胞に感染し、(i)腫瘍細胞内での該核酸の発現、および(ii)(その後の)該腫瘍細胞による該(発現された)ポリペプチドの細胞内プロセシングおよび抗原提示(MHC)を可能にする、腫瘍溶解性ウイルス(または腫瘍細胞内で選択的に複製する任意の他のウイルス)のような腫瘍特異的ウイルスを含む腫瘍標的化ビークルのような腫瘍送達ビークル内に構成され得ることを特徴とする。当業者は、ポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードする核酸を、体腔内送達のために調製するための他の方法および手段を十分に認識している。例えば、当業者は、腫瘍特異的ナノ粒子のような他の腫瘍標的送達ビークルを適用することができるか、または該ポリペプチドもしくは核酸を腫瘍内に送達するために、腫瘍内注射による腫瘍内投与を適用することができる。特定の態様において、本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製されたポリペプチドまたは核酸は、腫瘍標的化ビークル中に構成される。
【0073】
本明細書で用いる用語“腫瘍外”とは、例えば、対象の体内で、腫瘍およびすぐ周囲の組織(例えば、腫瘍微小環境を構成し得る組織)から離れた(例えば、遠位の)場所を意味する。
【0074】
本明細書に記載の使用のための組成物は、対象の腫瘍に対して特異的に向けられた免疫応答を誘発する。当業者は、“特異的に向けられた”とは、腫瘍に対して特異的な免疫応答を意味することを理解する。特異性は、免疫応答の標的として非ヒト抗原性ポリペプチドで腫瘍をマーキングする工程と、該非ヒト抗原性ポリペプチドの抗原性部分(すなわち、標的)に対する免疫応答を誘発する工程によって導入される。したがって、特定の態様において、本明細書に記載の使用のための組成物は、該免疫応答の標的としてマークされた腫瘍に対する免疫応答を誘発するために使用するためのものである。特定の態様において、本明細書に記載の使用のための組成物は、該免疫応答の標的としてマークされた腫瘍に対する免疫応答を誘発するために使用するためのものである;ここで、該標的は、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドである。
【0075】
特定の態様において、本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は、免疫応答の標的として腫瘍をマーキングする目的を果たす(腫瘍をマーキングするためのポリペプチド/核酸)。したがって、特定の態様において、該ポリペプチドまたは腫瘍内送達のために調製された該核酸は、腫瘍を、腫瘍内送達後の免疫応答の標的としてマーキングする。
【0076】
本明細書で用いる用語“ワクチン接種工程”とは、本明細書に記載の方法(ワクチン戦略)において、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍性抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物を、腫瘍から遠位部位で対象に投与する工程を意味する。特定の態様において、本明細書に記載の方法のワクチン接種工程では、組成物は、腫瘍が存在する部位ではない(例えば、腫瘍部位ではない)部位で投与される。特定の態様において、本明細書に記載の方法のワクチン接種工程において、組成物は、腫瘍外の部位に投与される。本明細書で用いる用語“ブースター工程”とは、本明細書に記載の方法(ワクチン接種戦略)の工程であって、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含むブースター組成物を、腫瘍から遠位部位で対象に投与される工程を意味する。特定の態様において、ブースター工程は、ワクチン接種工程の後に実行され、ここで、ワクチン接種工程は、抗原に対する免疫応答をもたらし、ブースター工程は、抗原に対する免疫応答を増強する。特定の態様において、ブースター工程は、例えば、抗原ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)に対する既存の免疫を有する対象において、増強された免疫応答をもたらす。特定の態様において、本明細書に記載の方法におけるワクチン接種工程は、例えば、対象が、非腫瘍リコール抗原に対する既存の免疫を有するとき、ブースターステム(booster stem)である。
【0077】
本明細書で用いる用語“マーキング”、“マーク”または“マークされた”は、本明細書に記載の、抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍内送達による腫瘍の抗原性状態の能動的な操作を意味する。これは、該腫瘍細胞による該ポリペプチドの細胞内送達ならびにその後のプロセシングおよび提示を介した腫瘍細胞の直接標識を提供するか、あるいは(i)該腫瘍内の非腫瘍細胞による該ポリペプチドの細胞内送達ならびにその後のプロセシングおよび提示、または(ii)該腫瘍への該抗原性ポリペプチドの細胞外送達(すなわち、マーキング前の該腫瘍内に存在する細胞への細胞外送達)を介した、該抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む、または該抗原性ポリペプチドを負荷した樹状細胞を用いることによる、腫瘍の間接標識を提供する。
【0078】
本明細書で用いる用語“腫瘍マーキング工程”とは、本明細書に記載の方法(例えば、ワクチン戦略)における工程であって、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍性抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物を、腫瘍部位で対象に投与する工程を意味する。ある例示的態様において、腫瘍マーキング工程は、腫瘍細胞の細胞質への抗原の送達を促進する組成物、方法または技術の使用を含む。
【0079】
本明細書に記載の免疫原性組成物はまた、該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含むが、免疫原(免疫応答を誘発するためのポリペプチド/核酸)として、該非ヒト抗原性ポリペプチドで標識されている、または標識されるべき腫瘍に対する免疫応答を誘発する目的を果たす。したがって、特定の態様において、該免疫原は、該非ヒト抗原性ポリペプチドまたは核酸で標識されている、または標識されるべき腫瘍に対する免疫応答を誘発するために用いられ、これは、腫瘍内送達のために調製される。原理的に、何れかの抗原性ポリペプチドを腫瘍に導入して、新しい抗原性標的を生成することができる。特定の態様において、標的に対する免疫応答が本明細書に記載の免疫学的組成物の対象への投与後に誘発されるときに、何れかの抗原ポリペプチドを腫瘍に導入して、それぞれ、抗体および/またはT細胞受容体によって認識されるB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープである新たな抗原標的を生成することができる。
【0080】
当業者は、(i)本明細書に記載の腫瘍内送達のために調製された非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸(腫瘍をマーキングするためのポリペプチド/核酸)、および(ii)本明細書に記載の免疫原性組成物中の免疫原として構成される非ヒト抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸(免疫応答を誘発するためのポリペプチド/核酸)は、投与されたとき、その免疫原が、腫瘍のマーキング用ポリペプチドまたは核酸によって確立された1以上の(標的)エピトープに対して向けられる免疫応答を誘発するという点で一致することを理解する。
【0081】
したがって、例えば、(i)および(ii)のポリペプチドは、腫瘍内のマーキング用ポリペプチドのT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープが、免疫原として用いられたポリペプチドによって誘発されるT細胞および/またはB細胞応答によって認識されるか、またはそれと反応性であるという点で、免疫学的に一致している。したがって、(i)および(ii)のポリペプチドは、同じ非ヒト抗原性ポリペプチドに基づいており、要すれば、その同一の抗原性部分を、場合により、その少なくとも1つのB細胞および/またはT細胞エピトープを共有している(すなわち、免疫学的に一致している)ことが理解される。このようにして、誘発された免疫応答は、該免疫応答の標的としてマーキングされた腫瘍に特異的に向けられる。したがって、一方では免疫応答を誘発するために用いられる該ポリペプチドの剤形と、他方では腫瘍マーキングのために用いられる該ポリペプチドの剤形は、同じである必要はない。実際に、当業者は、ワクチン接種および腫瘍マーキングのために該ポリペプチドの異なる剤形を用いることが有益である可能性があることを理解している。
【0082】
本明細書で用いる用語“T細胞介在性免疫応答”は、T細胞が駆動する免疫応答を意味し、ここで、別の免疫応答またはさらなる免疫応答の誘発はT細胞の活性化に依存する。特定の態様において、免疫応答は、T細胞介在性免疫応答/T細胞依存性免疫応答である。当業者は、T細胞介在性免疫応答/T細胞依存性免疫応答を開始するための方法および手段、例えば、細菌-、真菌-、軟体動物-、カタツムリ-、昆虫-または植物由来の抗原を含むがこれらに限定されない多くの文献に記載されている好適な抗原の選択を介する方法および手段、または測定可能なT細胞応答が記載されている昆虫または植物由来の抗原、または化学的アジュバント、生物学的アジュバント、タンパク質、ウイルスワクチン、樹状細胞ワクチンもしくはワクチン組成物として投与可能な何れか他の組成物などの好適なアジュバントまたは担体を選択することによる方法および手段を十分に認識している(Bender et al., J. Exp. Med, 182:1663-1671 (1995); Bennett et al., Nature, 393:478-480 (1998); Kalinski and Moser, Nature、5:251-260 (2005); Pashine et al., Nature Medicine Supplement, 11:S63-S68 (2005)、これらの内容全体は引用により本明細書中に包含させる)。
【0083】
本明細書で用いる用語“腫瘍特異的ウイルス”は、腫瘍細胞において選択的に複製する能力を有する何れかのウイルスを含む。
【0084】
本明細書で用いる用語“腫瘍溶解性ウイルス”は、正常細胞と比較して腫瘍細胞を優先的に殺すウイルスを意味する。さらに、この用語は、ポリペプチドをコードする核酸構築物を担持するように設計され得るウイルスを意味し、この核酸構築物は、腫瘍細胞の感染後に該腫瘍細胞で発現される。
【0085】
本明細書で用いる用語“ナノ粒子”は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドなどの目的の化合物を担持することができ、腫瘍標的化または腫瘍特異的な部位でそれらの表面上で機能化することができる組成物を意味する。腫瘍細胞を積極的に標的化するように設計され得るナノ粒子の例は、ミセルおよびリポソームである。
【0086】
本明細書で用いる用語“樹状細胞”は、抗原性ポリペプチドなどの抗原をその細胞内に取り込むことができ、該抗原またはその免疫原性部分をMHCクラスI複合体もしくはMHCクラスII複合体と共に提示することができる、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)を意味する。この用語には、成熟度に応じて、未成熟樹状細胞(“imDC”)および成熟樹状細胞(“mDC”)の両方が含まれる。特定の態様において、樹状細胞は、成熟樹状細胞である。特定の態様において、樹状細胞は、2012年11月15日にブダペスト条約の条件下でDSMZに寄託された受託番号DSMZ ACC3189の細胞株DCOneの細胞から得られた成熟樹状細胞である。寄託されたDCOne細胞株から成熟樹状細胞を得る工程は、例えばEP2931878B1に記載されている。
【0087】
腫瘍部位からの距離などの測定可能な値に言及するとき、本明細書で用いる用語“約”または“およそ”とは、本明細書に記載の方法を実行するのに適切な、所定の値または範囲の±20%または±10%、±5%、±1%または±0.1%の変動を包含する。
【0088】
組成物および製剤
本明細書で提供される、第一面は、非腫瘍抗原(例えば、免疫原としての非ヒト抗原性ポリペプチド)を含むか、または非腫瘍抗原をコードする核酸(例えば、非ヒト抗原性ポリペプチドをコードする核酸)を含む第1の組成物(例えば、免疫原性組成物)を投与する(ワクチン接種)ことを含むワクチン接種工程に関する。特定の態様において、第1の組成物は、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む。特定の態様において、第1の組成物は、要すれば、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含んでいてよい。
【0089】
本明細書で提供される、第2の面は、非腫瘍抗原(例えば、免疫原としての非ヒト抗原性ポリペプチド)を含む、または非腫瘍抗原をコードする核酸(例えば、非ヒト抗原性ポリペプチドをコードする核酸)を含む第2の組成物(例えば、免疫原性組成物)を投与する(ワクチン接種する)ことを含む腫瘍マーキング工程に関する。特定の態様において、第2の組成物は、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む。特定の態様において、第2の組成物は、要すれば、1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含む。
【0090】
特定の態様において、本明細書に記載の非腫瘍抗原(例えば、非ヒト抗原ポリペプチド)は、2つの目的に役立つ。第一の目的は免疫応答を生成することである。特定の態様において、免疫応答は、免疫原性組成物中に免疫原として挿入されることにより、抗原(例えば、非ヒト抗原性ポリペプチド)に対するT細胞介在性免疫応答である。第二の目的は、該免疫応答の標的として腫瘍をマーキングすることである。当業者であれば、腫瘍マーキングおよび免疫応答の負荷/生成が、負荷された免疫応答がこのようにマーキングされた腫瘍に対して向けられるという点で一致していることが必要であることを直ちに理解することができる。“マッチしている”とは、誘発される(されるべき)免疫応答が、腫瘍に積極的に導入された抗原性ポリペプチドに対して特異的に向けられていることを意味する。特定の態様において、腫瘍のマーキングおよび免疫応答の誘発において、同じかまたは対応する抗原性エピトープが用いられる。したがって、特定の態様において、本明細書に記載の第1の組成物(例えば、免疫原性組成物)の対象への投与後に、同じ抗原に基づく免疫応答の標的として、マーキングされるべき腫瘍(または既にマーキングされている腫瘍)に対して特異的に向けられた免疫応答が誘発される。
【0091】
言い換えれば、マーキングのための第2の組成物中の抗原性ポリペプチドおよび第1の組成物中の免疫原とは、対象への第1の組成物の投与後に誘発される免疫応答が、同じかまたは少なくとも免疫原的に同じ抗原性ポリペプチドの腫瘍内送達後に、該抗原性ポリペプチドでマーキングされた腫瘍に対して向けられるという点で一致している。これは、本明細書に記載の免疫原性組成物の投与後に誘発される免疫応答が、腫瘍がマーキングされるべき(またはマーキングされる)少なくとも1つのT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープに特異的に向けられることを意味する。特定の態様において、該免疫原性組成物中の非ヒト抗原性ポリペプチドは、本明細書に記載の腫瘍のマーキングに用いられるポリペプチドに対応するポリペプチドである。
【0092】
特定の態様において、本明細書に記載の第1の組成物(例えば、免疫原性組成物)の投与後に誘発される免疫応答は、T細胞介在性免疫応答またはT細胞依存性免疫応答である。免疫細胞群を活性化する適当な免疫原および/またはアジュバントを同定することは、当業者の能力の範囲内である。当業者が適当な抗原を選択するのを助ける参考文献は、例えば、Bender et al., J. Exp. Med, 182:1663-1671 (1995); Bennett et al., Nature, 393:478-480 (1998); Kalinski and Moser, Nature, 5:251-260 (2005); Van Tenderloo et al., PNAS, 107:31, p. 13824-13829 (2010); Anguille et al., Blood, 12;130(15):1713-1721 (2017); Tacken et al., Blood, 106:4, p.1278-1285 (2005); Vigneron et al, Cancer Immunity, 13:15 (2013); および、Cheever et al, Clin Cancer Res;15:5323-5337 (2009)であり、それら全ての内容全体は引用により本明細書中に包含させる。当業者は、免疫原性組成物に関連して記載された抗原性ポリペプチドが、腫瘍内送達面にも関連しており、逆もまた同様であることを直ちに理解する。好適な抗原の例としては、ウイルス、細菌、真菌由来のタンパク質;アレルゲン、毒素および毒物、または鶏卵オバルブミンおよびジャイアントキーホールリンペット(Megathura crenulata)由来のキーホールリンペットヘモシアニンなどの様々な供給源のモデル抗原が挙げられる。特定の態様において、好適な抗原は、バクテリア由来のものである。特定の態様において、好適な抗原は、ジフテリア毒素である。特定の態様において、好適な抗原は、ジフテリア毒素の非毒性変異体である。特定の態様において、好適な抗原はCRM197である。他の好適な抗原性ポリペプチドは、対象の先行ワクチン接種において用いられたポリペプチドであり、例えば、本明細書中以下に、より詳細に記載されるリコール(recall)抗原などである。そのようなワクチン接種で用いられる一般的なワクチンは、異なる抗原性ポリペプチドを含んでもよく、これは、アジュバントの有無にかかわらず、異なる微生物(リコール)抗原を構成するという点で多価であり得る。
【0093】
本明細書で用いる用語“リコール抗原”は、以前に(例えば、対象に腫瘍が生じる前、または腫瘍マーキング工程の前に)対象が遭遇した抗原(例えば、抗原性ポリペプチド)を意味する。リコール抗原とは、対象が以前に遭遇したことがあり、対象に既存のメモリーリンパ球が存在する抗原である。特定の態様において、リコール抗原とは、例えば、以前の感染または予防接種の結果として、対象に既存のメモリーリンパ球が存在する抗原(例えば、抗原性ポリペプチド)を意味する。特定の態様において、リコール抗原は、ワクチン接種を介して対象が以前に遭遇した抗原ポリペプチドを意味する。特定の態様において、リコール抗原は、該対象に既存の免疫が存在する抗原性ポリペプチドである。
【0094】
当業者は、本明細書に記載の免疫原組成物に含まれる免疫原としての非ヒト抗原ポリペプチドに対する免疫応答の形成を行うために、常套的に適用できる複数の方法および手段を有する。
【0095】
免疫応答を細胞免疫に向けるアジュバントの選択において当業者を補助する参考文献は、例えば、Pashine et al., Nature Medicine Supplement, 11:S63-S68 (2005)およびAwate et al., Frontiers in Immunology, 4:114, p.1-10 (2013)であり、その内容全体は引用により本明細書宙に包含させる。そのようなアジュバントの例としては、アルミニウム金属塩、水中油型エマルジョン、リポソーム、トール様受容体アゴニストまたはそれらの組み合わせが挙げられる。他のアジュバントとしては、リポソーム、ビロソーム(virosome)、MF59、モンタニド、ISCOM、QS-21、アルミニウム、AS04、ポリI:C、MPL、GLA、イミキモド、CpG ODN、キチン、キトサン、β-グルカンまたはそれらの組み合わせが挙げられる(Temizoz et al. Int Immunol. 2016 Jul; 28(7): 329-338、その内容全体は引用により本明細書中に包含させる)。
【0096】
特定の態様において、本明細書に記載の方法に使用するための組成物(例えば、非腫瘍抗原を含む第1の組成物および非腫瘍抗原を含む第2の組成物)は、要すれば、非腫瘍抗原を含む樹状細胞;T細胞免疫応答誘発性アジュバント;非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含むT細胞免疫応答誘発性ウイルスまたはウイルス様粒子;あるいは、それらの組合せを含んでいてよい。
【0097】
一般的に、本明細書に記載の方法で使用するための組成物に関する態様が、例えば、(i)本明細書に記載の方法に用いるための非腫瘍抗原(例えば、非ヒト抗原性ポリペプチド)またはそれをコードする核酸、(ii)本明細書に記載の方法に用いるための免疫原性組成物、(iii)免疫応答を誘発するための方法、(iv)処置方法、および適当な場合には本明細書に記載の方法に用いるための他の面にも適用されることが明示的に想定されている。
【0098】
特定の態様において、本明細書に記載の方法は、第1の組成物および第2の組成物の使用を採用する。特定の態様において、第1の組成物は、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍性抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む。特定の態様において、第1の組成物は、抗原性ポリペプチドを含む。特定の態様において、第1の組成物は、抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む。特定の態様において、第1の組成物は、非腫瘍性抗原を含む。特定の態様において、第1の組成物は、非腫瘍性抗原をコードする核酸を含む。
【0099】
特定の態様において、第2の組成物は、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む(すなわち、第2の組成物は、第1の組成物と同じ抗原性ポリペプチド、または少なくとも免疫学的に第1の組成物と同じ抗原性ポリペプチド、あるいは該抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む)。特定の態様において、第2の組成物は、抗原性ポリペプチドを含む。特定の態様において、第2の組成物は、抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む。特定の態様において、第2の組成物は、非腫瘍性抗原を含む。特定の態様において、第2の組成物は、非腫瘍性抗原をコードする核酸を含む。
【0100】
特定の態様において、第1の組成物および/または第2の組成物は、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞を含み得る。特定の態様において、第1の組成物は、抗原性ポリペプチドまたは抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞を含む。特定の態様において、第2の組成物は、抗原性ポリペプチドまたは抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む樹状細胞を含む。特定の態様において、第1の組成物は、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む樹状細胞を含む。特定の態様において、第2の組成物は、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコード化する核酸を含む樹状細胞を含む。
【0101】
特定の態様において、樹状細胞は、かかる細胞が本明細書に記載の抗原性ポリペプチドを負荷される場合に、樹状細胞ワクチンとして用いられる。特定の態様において、組成物(例えば、第1の組成物または第2の組成物)は、前駆細胞株から分化した成熟樹状細胞を含む。特定の態様において、組成物(例えば、第1の組成物または第2の組成物)は、CD34陽性、CD1a陽性およびCD83陽性である成熟樹状細胞を含む。特定の態様において、樹状細胞は、2012年11月15日にDSMZに寄託された受託番号DSMZ ACC3189の細胞株DCOneの細胞である。例えば、その開示内容全体が引用により本明細書に組み込まれるWO2014/006058を参照のこと。例えば、特定の態様において、第1の組成物および/または第2の組成物はそれぞれ、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍性抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞株DCOneの樹状細胞を含む。樹状細胞の添加戦略(loading strategy)については、本明細書に記載する。当業者は、樹状細胞を免疫原性組成物の形態でどのように効果的に使用することができるかについて十分な指針を有しており、これは例えば、EP2931878 B1、WO2014/006058 A1、WO2009/019320およびSaxena and Bhardwaj, Trends in Cancer, 4:2, p.119-137 (2018)を含む複数の文献に記載されており、これらの内容全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0102】
特定の態様において、薬学的に有効量の組成物が投与される。本明細書で用いる、例えば第1の組成物または第2の組成物の“有効量”または“薬学的に有効量”とは、免疫応答を達成するのに必要な用量および期間で、有効な量を意味する。例えば、有効量は、要すれば樹状細胞に含まれる抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍性抗原)に対する免疫応答を誘導するのに十分な量である。有効量は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)でマーキング(mark)された腫瘍に対する免疫応答を誘導するのに十分な量である。
【0103】
本明細書に記載の第1の組成物および/または第2の組成物は、当業者に知られている何らかのアジュバントを含んでいてもよい。投与経路に関わらず、当業者に知られているアジュバントは、本発明の組成物内に包含される抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)の免疫原性を改善/増強するために採用され得る。アジュバントは、抗原(例えば、非腫瘍性抗原を含む組成物)の免疫原性を高めるが、必ずしもそれ自体が免疫原性である必要はない。
【0104】
アジュバントは、当業者によって、例えば、ワクチンに対する免疫応答を改善するために用いられてきた。アジュバントには、内因性のものと外因性のものがある。内因性アジュバントは、ワクチンとして用いられる死滅または弱毒化した細菌に由来するものである。外因性アジュバントは、抗原に非共有結合した免疫調節物質であり、免疫反応を高めるように製剤されている。
【0105】
特定の態様において、第1の組成物および/または第2の組成物は、T細胞免疫応答誘発アジュバントを含んでいてもよい。本明細書中アジュバントまたはウイルスまたはウイルス様粒子に関連して用いる用語“T細胞免疫応答誘発”とは、CD4+および/またはCD8+ T細胞免疫応答を増強するか、あるいはCD4+および/もしくはCD8+ T細胞活性化に向ける免疫応答を駆動することを意味する。当業者は、例えばリポソーム、ビロソーム、MF59、モンタニド、ISCOM、QS-21、アルミニウム、AS04、ポリI:C、MPL、GLA、イミキモド、CpG ODN、キチン、キトサン、β-グルカンまたはそれらの組み合わせなどの、この目的のために用いられ得るアジュバントをよく知っている(Temizoz et al. Int Immunol. 2016 Jul; 28(7): 329-338、その内容全体は引用により本明細書中に包含させる)。
【0106】
特定の態様において、特に非経腸投与のためにアジュバントを用いることができる。かかるアジュバントとしては、例えば、アルミニウム化合物(リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムなど)が挙げられる。抗原は、標準的なプロトコールに従って、アルミニウム化合物で沈殿させたり、アルミニウム化合物に吸着させたりすることができる。非経腸投与のための他のアジュバント、ならびに腫瘍内または腫瘍周囲の投与のためのアジュバントは、当業者に知られている。
【0107】
本明細書に記載の第1の組成物および/または第2の組成物は、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む、ウイルス、例えば、T細胞免疫応答誘発ウイルスまたはウイルス様粒子(VLP)を含み得る。本明細書に記載の組成物中に、または本明細書に記載の組成物として用いられ得るウイルスまたはVLPを設計および製造することは常套的な実験の範囲内である。このようなウイルス、とりわけT細胞免疫応答誘発ウイルスまたはVLPは、ワクチン接種の目的で詳しく記載されている。これは、例えば、Frietze et al., Curr Opin Virol., 18: 44-49 (2016); Koup and Douek, Cold Spring Harb Perspect Med, 2011;1:a007252に記載されており、これらの開示内容全体は引用により本明細書中に包含される。T細胞免疫応答誘発ウイルスまたはVLPの例としては、例えば、牛痘(ワクシニア)ウイルスまたはその誘導体、例えば改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、アデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルスおよびヒトパピローマウイルスに基づくVLP、B型肝炎ウイルスもしくは異なる腫瘍抗原を提示するように設計されたVLPが挙げられる。特定の態様において、本明細書に記載の組成物(例えば、腫瘍マーキング工程で用いられる第2の組成物)は、腫瘍溶解性ウイルスを含んでいてもよい。腫瘍溶解性であることが臨床的に試験されたウイルスとしては、アデノウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルスおよびワクシニアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
本明細書で用いる用語“医薬組成物”または“医薬製剤”とは、対象に投与したときの毒性に関して、そこに含まれる有効成分の生物学的活性を有効にする(例えば、そこに含まれる抗原性ポリペプチドを免疫原性にする)ことを可能にするような形態であり、許容できない毒性のある成分をさらに含まない製剤を意味する。“薬学的に許容される担体”とは、医薬製剤および/または組成物に含まれる成分のうち、有効成分以外のもので、対象に対して毒性のないものを意味する。薬学的に許容される担体には、安定化剤、賦形剤、緩衝剤、防腐剤などが含まれるが、これらに限定されない。特定の態様において、担体の選択は、特定の投与方法によって部分的に決定される。従って、様々な適切な製剤および組成物が存在する。例えば、腫瘍内投与、筋肉内投与および他の投与経路に適する様々な製剤および組成物が当技術分野で知られている。
【0109】
特定の態様において、医薬組成物は、防腐剤を含み得る。適切な防腐剤は、例えば、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウムおよび安息香酸ナトリウムが挙げられ得売る。特定の態様において、2種以上の防腐剤の混合物が用いられる。防腐剤またはその混合物は、一般的には、全組成物の約0.0001重量%~約2重量%の量で存在する。
【0110】
担体については、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)にさらに記載されている。薬学的に許容される担体は、一般的に、用いられた投与量および濃度で本明細書に記載の方法に従って組成物を投与された対象に対して非毒性であり、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:クエン酸、リン酸およびその他の有機酸などの緩衝剤;メチオニンおよびアスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;ゼラチン、免疫グロブリンまたは血清アルブミン等のタンパク質;防腐剤(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;塩化ヘキサメトニウム;3-ペンタノール;シクロヘキサノール;および、m-クレゾールなど);グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、アルギニン、リシンなどのアミノ酸;デキストリン、グルコース、マンノースなどの単糖類、二糖類およびその他の炭水化物;スクロース、トレハロース、ソルビトールまたはマンニトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤、ならびに/またはEDTAなどのキレート剤。
【0111】
特定の態様において、緩衝剤が組成物中に含まれる。適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸、リン酸カリウム、リン酸、および様々な他の酸および塩が挙げられる。特定の態様において、2種以上の緩衝剤の混合物が用いられる。緩衝剤またはその混合物は、一般的には、組成物全量に対して約0.001重量%~約4重量%の量で存在する。投与可能な医薬組成物を調製する方法は、当業者に知られている。例えば、Remingtonの、The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)を参照のこと。
【0112】
特定の態様において、本明細書に記載の組成物および製剤は、水溶液を含み得る。また、製剤または組成物は、本明細書に記載の方法を用いて処置される特定の適応症、疾患または病状(例えば、腫瘍タイプ)に有用な複数の有効成分を含んでいてもよい。かかる有効成分は、好適には、意図した目的に有効な量で組み合わせて存在する。
【0113】
製剤および組成物には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、頬投与、舌下投与または坐薬による投与のためのものが含まれる。製剤および組成物は、当業者に知られている様々な投与経路の何れか1つのためのものを含む。特定の態様において、組成物は非経腸的に投与される。本明細書で用いる用語“非経腸”とは、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、膣投与および腹腔内投与を含む。
【0114】
特定の態様において、組成物および製剤は、無菌液体製剤、例えば、懸濁液、エマルジョン、分散液、粘性組成物または等張水溶液として提供され、これらは、いくつかの態様において、選択されたpHに緩衝されてもよい。特定の態様において、組成物および製剤は、ゲル、他の粘性組成物および固体組成物として提供される。粘性組成物は、特定の組織との接触時間を長くするために、適切な粘度範囲内で配合することができる。液体または粘性の組成物は、担体を含むことができ、これは、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、水、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、グリセロール)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。
【0115】
滅菌された注射剤は、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤または賦形剤と混合して、組成物に溶媒を組み込むことによって調製することができる。組成物には、所望の投与経路および製剤に応じて、ゲル化剤や粘度向上剤、pH緩衝剤、湿潤剤、分散剤または乳化剤(メチルセルロースなど)、香料、着色料および/または防腐剤などの補助物質を配合することができる。適切な製剤を調製するために、当業者が入手可能な標準的なテキストを参考にすることもできる。
【0116】
また、組成物の無菌性および安定性を高めるために、キレート剤、抗菌防腐剤、緩衝剤および抗酸化剤などの様々な添加剤を加えることができる。組成物は、クロロブタノール、パラベン、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤により、微生物の作用を受けずに無菌状態を保つことができる。吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを用いることで、注射剤の吸収を延長させることができる。
【0117】
当業者は、本明細書に記載の抗原に対する免疫応答を形成する他の適切な免疫原性組成物を知っている。例えば、本明細書に記載の免疫原と、免疫原に結合した担体タンパク質とを含むサブユニットワクチンを使用するという選択肢もある。
【0118】
抗原性ポリペプチドおよび核酸
特定の態様において、本明細書に記載の方法で用いる組成物は、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍性抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む。特定の態様において、抗原性ポリペプチドが腫瘍内投与用の組成物中にある場合、抗原性ポリペプチドは、腫瘍を標的としているか、または腫瘍内投与用に調製されているか、あるいは抗原性ポリペプチドをコードする核酸は、腫瘍を標的としているか、または腫瘍内投与用に調製されているかのいずれかである。当業者であれば、腫瘍抗原に依存しないワクチン接種という新たな概念は、腫瘍のマーキングに関しても、既に記載のようにマーキングされた腫瘍に対して免疫応答を形成するワクチン接種に関しても、当技術分野で知られている複数の方法および手段で実現できることを理解できる。
【0119】
本明細書に記載の医学的方法において、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドを用いることにより、免疫応答の標的としての腫瘍のマーキングまたは標識が、インビトロまたはエクスビボではなく、インビボで起こる。
【0120】
より具体的には、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸は、当技術分野で一般的によく知られている種々の方法で、腫瘍内送達のために調製することができる。例えば、調製は、例えばポリペプチドまたは核酸を含む腫瘍標的化組成物を調製することによって、該ポリペプチドまたは核酸の腫瘍標的化を伴っていてもよい。腫瘍標的化組成物は、腫瘍特異的となるような方法でポリペプチドまたは核酸を含む。特定の態様において、腫瘍標的化されたポリペプチドまたは核酸を対象に投与すると、非腫瘍組織と比較して腫瘍組織に対する特異性に基づいて腫瘍内送達が効果的に行われることである。腫瘍特異性はまた、腫瘍内送達を提供するために腫瘍への標的化を可能にし得ることを示す。
【0121】
特定の態様において、腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸は、以下のうち1以上を用いて腫瘍を標的化する:例えば、該ポリペプチドをコードする核酸を含む、腫瘍溶解性ウイルスを含む、腫瘍特異的ウイルス;該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含む腫瘍特異的ナノ粒子。特定の態様において、該ポリペプチドまたは核酸は、該ポリペプチドまたは核酸に融合した腫瘍標的化抗体、ペプチド、小分子または核酸アプタマーを用いて腫瘍標的化される。
【0122】
本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸を腫瘍標的化する(対象への投与時に腫瘍内送達を達成するための)別の方法は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む腫瘍溶解性ウイルスを調製することを含み、このウイルスは、該核酸を腫瘍細胞内で発現させるように設計されている。腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞を特異的に標的化するために使用され得ることは、当技術分野において広く記載されており、例えば、Lawler et al., JAMA Oncol. 1;3(6):841-849 (2017); Howells et al., Front Oncol. 7:195 (2017)に記載されている(それらの内容全体は引用により本明細書中に包含される)。さらに、例えばWO2014138314 A1(その内容全体は引用により本明細書中に包含される)に例示されているように、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞と結合するように改変することができる。腫瘍溶解性ウイルスが、ポリペプチドをコードする核酸構築物を腫瘍細胞に送達するために用いられ得て、該ウイルスは、該ポリペプチドを腫瘍細胞にて発現するように改変されることも当技術分野でよく知られている(Hutzler et al., Scientific Reports, 7: 16892 (2017); Grossardt et al., Human Gene Therapy, 24:644-654 (2013); Andtbacka et al., Journal of Clinical Oncology, 22:25, p.2780-2788 (2015);それらの内容全体は引用により本明細書中に包含される)。該ポリペプチドのその後の細胞内プロセシングおよび該腫瘍細胞による抗原提示は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドでマーキングされた腫瘍を提供する。言い換えれば、特定の態様において、腫瘍内送達後に本明細書に記載の抗原性ポリペプチドは、本明細書に記載の該核酸が腫瘍の細胞内で発現された際に、該腫瘍細胞のMHC系によって提示され、それによって免疫応答の標的として該腫瘍をマーキングする。
【0123】
腫瘍標的化に用いられ得る腫瘍溶解性ウイルスの例は、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コクサッキーウイルス、マラバウイルス(Maraba virus)、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルスである(Lal and Rajala, Cancer Gene Therapy, DOI 10.1038/s41417-018-0018-1 (2018); Haddad, Frontiers in Immunology, 7:96 (2017); Bommareddy et al., Nature Reviews Immunology (2018);それらの内容全体は引用により本明細書中に包含される)。
【0124】
腫瘍溶解性ウイルスのような腫瘍特異的ウイルスは、非経腸投与に適した医薬製剤に調製され得る。このような製剤は一般に、例えば水性または油性の溶液、分散液、乳化剤および/または懸濁液などの担体を含む。非経腸投与は、特定の態様において、注射器、針またはカテーテルを用いる身体組織または体液への注射または点滴を含む。特定の態様において、担体は、水溶液、特定の態様において、蒸留滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水または他の薬学的に許容される注射用賦形剤である。非経腸投与様式の例としては、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与および腫瘍内投与が挙げられ、これらは当業者にはよく知られている。特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスなどの腫瘍特異的ウイルスの投与様式は、静脈内投与または腫瘍内投与である(Marelli et al., Frontiers in Immunology, 866 (2018);その内容全体は引用により本明細書中に包含される)。
【0125】
腫瘍溶解性ウイルスなどの腫瘍特異的ウイルスが投与されるべき用量は、薬学的に有効な用量、すなわち、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸を腫瘍に送達するのに十分な用量である。腫瘍特異的ウイルスの投与レジメンを決定することは、常套的に行われている。
【0126】
本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸を腫瘍標的化する(対象への投与時に腫瘍内送達を効果的に行うための)別の方法は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸を含む腫瘍特異的ナノ粒子を調製することを含み、後者は、送達後に腫瘍細胞内で該核酸を発現させるように設計されている。癌療法の分野では、例えば目的のポリペプチドを担持させた、または例えばそれと組み合わせたナノキャリアを含むナノ粒子が、特異的/選択的に腫瘍細胞を標的化(ホーミング)し、その後、例えばポリペプチドなどの薬剤を該腫瘍細胞に送達することに関連して広く記載されていることはよく知られている。ナノ粒子またはナノキャリアの腫瘍標的化のための方法および手段は一般に知られており、とりわけ、Olusanya et al., Molecules 23:907 (2018); Din et al., Int J Nanomedicine, 12:7291-7309 (2017); Alibakhshi et al., J Control Release, 268:323-334 (2017); および、US 2013/0330399 A1(それらの内容全体は引用により本明細書中に包含される)に記載されている。特定の態様において、抗原(例えば、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍性抗原)または抗原性ポリペプチドをコードする核酸)の腫瘍細胞の細胞質への送達を強化するために、ナノ粒子の使用、リポソームの使用、および光化学的プロセス(例えば、光化学的内在化)が用いられ得るが、これらに限定されない腫瘍特異的な送達方法が用いられ得る。
【0127】
光化学的内在化とは、光と光増感剤を用いて、膜不透過性の分子を標的細胞の細胞質内に導入する方法であるが、必ずしも標的細胞の破壊や死をもたらすものではない、送達方法を意味する。この方法では、内在化または移行すべき分子を光増感剤と組み合わせて細胞に適用する。適当な波長の光を細胞に照射すると、光増感剤が活性化され、細胞内区画膜(compartment membrane)が破壊され、その後、分子が細胞質に放出される。光化学的内在化では、光増感剤と光の相互作用を利用して細胞に影響を与え、分子の細胞内への取り込みを向上させることができる。 光化学的内在化、および様々な光増感剤は、PCT公開番号WO96/07432、WO00/54708、WO01/18636、WO02/44396、WO02/44395およびWO03/020309、米国特許第6,680,301号、同第5,876,989号に記載されており、これらの開示内容全体は、引用により本明細書中に組み込まれる。特定の態様において、光化学的内在化を用いて、抗原を腫瘍細胞の細胞質内に送達する。特定の態様において、光化学的内在化は、腫瘍細胞の細胞質への抗原の送達を強化するために用いられる。
【0128】
ナノ粒子またはその主要部分としてのナノキャリアは、高分子ナノ粒子、ミセル、リポソーム、ナノゲルまたはカーボンナノチューブであり得る。このような粒子または担体(キャリア)は、目的の化合物(ポリペプチドなど)を担持し、そのような粒子または担体を、例えば腫瘍細胞の表面上に発現した腫瘍抗原に特異的な抗体または抗体フラグメントで修飾することにより、腫瘍を積極的に標的化することができる(上記の参考文献も参照のこと)。ナノ粒子の腫瘍標的化部位は、原則として、ペプチド、オリゴペプチドもしくはポリペプチド、タンパク質、ホルモン、ビタミン、酵素、腫瘍抗原のリガンドまたは腫瘍抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメントなど、腫瘍細胞上に発現する分子に対して親和性を示す何らかの生物学的または化学的構造であり得る。特定の態様において、腫瘍標的化ナノ粒子の投与ならびにその後の腫瘍細胞への移行および結合の後、受容体介在性エンドサイトーシス(内在化)により、腫瘍細胞によるナノキャリアの取り込みを可能にし、それにより、例えば目的のポリペプチドの細胞内送達を提供し、これは、細胞内でプロセシングされ、その後、腫瘍細胞によってMHC複合体中の抗原として提示され得る。
【0129】
あるいは、腫瘍標的化ナノ粒子の投与およびその後の腫瘍への移行および貪食細胞または線維芽細胞などの免疫細胞を含む腫瘍内の非腫瘍細胞への結合後、受容体介在性エンドサイトーシス(内在化)により、該細胞によるナノキャリアの取り込みを可能にし、それにより、例えば腫瘍中で目的のポリペプチドの細胞内送達を提供し、それは細胞内でプロセシングされ、その後、該腫瘍内の該細胞によってMHC複合体中の抗原として提示され得る。本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸の腫瘍内送達のために用い得る腫瘍特異的(または腫瘍標的化された)ナノ粒子の具体例は、例えば、ポリ(プロピレン)サルファイド(PPS)ナノ粒子、金ナノ粒子、PLGAナノ粒子、人工エキソソーム、ミセルまたはデンドリマーである。
【0130】
特定の態様において、本明細書に記載の腫瘍特異的ナノ粒子は、非経腸投与に適した医薬製剤に調製される。このような製剤は、一般的に、例えば、水性または油性溶液、分散液、乳剤および/または懸濁液のような担体を含む。非経腸投与は、ある場合には、注射器、針またはカテーテルを用いる身体組織または体液への注射または点滴を含む。特定の態様において、担体は、水溶液であり、ある場合には、担体は、蒸留滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水または他の薬学的に許容される注射用賦形剤である。非経腸投与様式の例としては、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与および腫瘍内投与が挙げられ、これらは当業者にはよく知られている。特定の態様において、腫瘍特異的ナノ粒子の投与様式は、静脈内投与または腫瘍内投与である。
【0131】
投与される腫瘍特異的ナノ粒子の用量は、薬学的に有効な用量、すなわち、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸を腫瘍に送達するのに十分な用量である。当業者であれば、腫瘍特異的ナノ粒子の投与レジメンを決定することは常套的に行われる。
【0132】
本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸が腫瘍標的化されていない態様において、それらは、腫瘍内注射を可能にする形態であることにより腫瘍内送達のために調製される。当業者は、本明細書に記載の腫瘍標的化組成物もまた、腫瘍内に投与され得ることを直ちに理解する。当業者は、腫瘍内注射に適合され、例えば水性または油性溶液、分散液、乳剤および/または懸濁液のような担体を含んでいてもよい、医薬製剤を認識している。本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸が腫瘍標的化されていない場合、抗原性ポリペプチドおよび/または核酸は、樹状細胞中に含まれるか、または抗原性ポリペプチドは水性懸濁液もしくは溶液中にある。同様に、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは核酸が腫瘍標的化されていない態様において、抗原性ポリペプチドおよび/または核酸は、ウイルス中に含まれ得る。従って、抗原性ポリペプチドによる腫瘍のマーキングは、腫瘍細胞で起こり得るが、必ずしも腫瘍細胞自体による細胞内プロセシングおよび抗原提示を必要としないことが、本明細書中明示的に想定されている。例えば、そのような細胞内プロセシングはまた、貪食細胞などの免疫細胞-マクロファージが一例として挙げられる-または線維芽細胞を含む、腫瘍内の他の細胞タイプによって影響を受ける可能性がある。樹状細胞が腫瘍のマーキングに用いられるとき、腫瘍のマーキングは、樹状細胞が腫瘍内に注射される樹状細胞自体のMHC系を介した抗原プロセシングによって行われ得る。また、樹状細胞、特に同種異系樹状細胞は、NK細胞を含む内因性免疫細胞および腫瘍内の免疫応答を強制するクロスプライミング(cross-prime)樹状細胞を引き寄せ得ることも知られている(Laurell et al. 2017, J for Immunother. Of Cancer 5: 52、その内容全体は引用により本明細書中に包含させる)。
【0133】
理論はともかく、以前は‘手つかずの’免疫細胞を腫瘍に動員するか、または腫瘍マーキングの前に腫瘍に対して指向されていなかった既存の免疫を用いることにより、免疫寛容が破壊され、すなわち、腫瘍の腫瘍抗原に対して指向された免疫細胞がさらに動員される。
【0134】
腫瘍マーキングに関して、当業者は、抗原性ポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードするmRNAなどの核酸を樹状細胞に負荷することに関連する方法および手段をよく知っている。例えば、Van Nuffel et al., ISBT Science Series, 8, 161-164 (2013); WO2014/006058 A1;WO2009/034172 A1(それらの開示内容全体は引用により本明細書中に包含させる)を参照のこと。さらに、当業者は、樹状細胞を腫瘍内に注射するための方法および手段をよく知っている。例えば、US 2004/0057935 A1; Cripe et al., Molecular Therapy, 23: 3, p. 602-608 (2015); Hirooka et al., Oncotarget, 9:2, p.2838-2847 (2018); Triozzi et al., Cancer, 89:12, p.2646-2654 (2000); Laurell et al., Journal for ImmunoTherapy of Cancer, 5:52 (2017)(それらの内容全体は引用により本明細書中に包含させる)を参照のこと。特定の態様において、腫瘍内送達のために調製された該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする該核酸は、腫瘍内投与のためのものであり、樹状細胞の形態である。特定の態様において、樹状細胞は、本明細書に記載の細胞株DCOneの細胞から得られた(成熟)樹状細胞であって、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする該核酸を含む。当業者は、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸(例えば、mRNA)を含む樹状細胞の腫瘍内投与に適した投与レジメンを常套的に決定することができる。本明細書に記載の抗原性ポリペプチドを含む水性懸濁液または溶液も同様である。
【0135】
腫瘍のマーキングは、腫瘍が本明細書に記載の抗原性ポリペプチドでマーキングされている限り、複数の異なる方法および手段を介して実施できることは明らかである。例えば、腫瘍マーキングは、腫瘍細胞または腫瘍内の他の細胞型による抗原性ポリペプチドの細胞内プロセシングによってのみ実施される必要はない。腫瘍内送達のために調製された抗原性ポリペプチドは、腫瘍細胞外であり、したがって、該腫瘍内の細胞によって内在化されないことも可能である。腫瘍内の細胞外抗原性ポリペプチドの存在は、本明細書に記載のワクチン接種工程によるマーキングの前に活性化された免疫細胞を引き付け得る。特定の態様において、このようなワクチン接種工程およびその後の免疫の生成は、腫瘍のマーキングに先立って行われる。
【0136】
さらに、腫瘍内送達のために調製されたポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は、特定の態様において、免疫応答に対する感受性を高めるように、ある場合において、少なくとも部分的に免疫寛容な腫瘍環境を免疫感受性の腫瘍環境に変換するように、またはTMEにおけるT細胞の(最適な)機能性を促進するように、腫瘍、特定の態様において、腫瘍部位またはTMEを調節する、ケモカインおよび/またはサイトカインなどの免疫調節化合物を伴う。そのような免疫調節化合物は、ある場合において、ポリペプチドの形態で、またはそのようなポリペプチドをコードする核酸として、本明細書に記載の腫瘍特異的ウイルス、腫瘍特異的ナノ粒子、樹状細胞または水性懸濁液もしくは溶液中に含まれる。特定の態様において、そのような免疫調節化合物の例は、例えば、GM-CSF、CCR5、XCL1、CCL20およびCCL21である(Mohan et al., Immunobiology, 223:477-485 (2018); He et al., Journal of Experimental & Clinical Cancer Research、29:37 (2010); Nguyen-Hoai et al., Cancer Gene Therapy, 19: 69-76 (2012);それらの内容全体は引用により本明細書中に包含される)。したがって、本発明の方法における使用のために、腫瘍内送達のために調製された該抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は、少なくとも部分的に免疫寛容な腫瘍(腫瘍部位またはTME)を免疫感受性の腫瘍部位もしくはTMEに変換し、および/または腫瘍部位もしくはTMEにおけるT細胞の機能性を促進する、免疫調節化合物(例えば、免疫調節ポリペプチドまたは該免疫調節ポリペプチドをコードする核酸)も含む組成物である。特定の態様において、免疫調節化合物は、免疫調節ポリペプチドまたは該免疫調節ポリペプチドをコードする核酸である。特定の態様において、免疫調節ポリペプチドは、GM-CSF、CCR5、XCL1またはCCL20、ヒトGM-CSF、CCR5、XCL1またはCCL20であるか、またはそれらをコードする核酸である。特定の態様において、そのような免疫調節化合物は、腫瘍部位またはTMEにおけるT細胞機能を促進する。
【0137】
本明細書で用いる用語“免疫寛容性TME”または“免疫寛容性腫瘍部位”は、腫瘍内の環境が抗腫瘍免疫応答に対する寛容性または非感受性を提供する、よく確立された現象を意味する。特定の態様において、腫瘍部位またはTMEは、腫瘍の外側の環境中、例えば、健康な細胞または健康な組織内またはその近くの環境中の標的に対して向けられた免疫応答と比較して、該TME内の腫瘍に対して向けられた免疫応答により寛容性であるか、またはより非感受性である場合、免疫寛容である。
【0138】
本明細書で用いる用語“免疫感受性TME”または“腫瘍感受性腫瘍部位”は、腫瘍が抗腫瘍免疫応答に対して感受性または影響を受けやすい状況を意味する。
【0139】
本発明の方法における使用のための抗原性ポリペプチドに関して、該ポリペプチドが腫瘍抗原ではないことは、本発明の一態様である。本明細書で用いる用語“腫瘍抗原”は、腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍ネオ抗原を含む腫瘍特異的抗原(TSA)の両方を含む。腫瘍関連抗原は、正常細胞上で観察されるよりも大量に腫瘍細胞の表面上に発現される抗原、または胎児発育中に正常細胞上で発現される抗原である。腫瘍特異的抗原とは、腫瘍細胞に固有の抗原であり、正常細胞に発現しない抗原である。腫瘍抗原という用語には、すでに同定されているTAAまたはTSAと、未だ同定されていないTAAまたはTSAとが含まれる。
【0140】
ヒト対象に免疫原性である限り、何れかの抗原性ポリペプチドを用いることができる。これには、ヒト由来および非ヒト由来の抗原性ポリペプチドの両方が含まれる。したがって、抗原性ポリペプチドは、ヒト対象において免疫原性であるヒト由来または非ヒト由来の抗原性ポリペプチドであり得る。特定の態様において、抗原性ポリペプチドは、非ヒト由来である。それにもかかわらず、用語“非ヒト抗原性ポリペプチド”に言及する面および/または態様において、その面または態様は、“ヒト抗原性ポリペプチド”に言及するように修正することができるか、または用語“ヒト抗原性ポリペプチド”をかかる面および/または態様に追加することができることを、明示的に想定している。ヒト対象において免疫原性であるヒト抗原性ポリペプチドは、例えば、胚ポリペプチド、卵巣ポリペプチドまたは精巣ポリペプチドである。これは、例えば、NY-ESO-1、WT-1およびMAGE抗原に適用される(例えば、Cheever et al, Clin Cancer Res;15:5323-5337 (2009); Vigneron et al, Cancer Immunity, 13:15 (2013)を参照のこと。その内容全体は引用により本明細書中に包含させる)。
【0141】
一面において、本明細書に記載されている方法の面における免疫原およびマーカーとして採用される非ヒト抗原性ポリペプチドが、腫瘍に対する免疫反応の一部として対象が以前に遭遇したものではないものである方法が提供される。このように、特定の態様において、抗原性ポリペプチドは非腫瘍抗原である。特定の態様において、抗原性ポリペプチドは、対象の免疫系によって以前に遭遇しておらず、したがって対象が免疫学的にナイーブである抗原であり得るか、または対象により以前に遭遇した抗原性ポリペプチドであるが、腫瘍に対する免疫応答の一部としてではなく、ある場合において保護免疫(メモリーT細胞および/またはB細胞)が存在する抗原性ポリペプチドであり得る。後者は、導入するのに時間がかかるが、その代わり、既存の免疫に入り込むか、または再活性化して、本明細書に記載の方法の原則的メカニズムに従って腫瘍に誘導する、新規な(デノボ)免疫応答を導入する必要がないため、非常に有益であり得る。従って、1つの態様において、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドは、潜在的なワクチン接種を意図したヒト集団の大部分によって(免疫系によって)遭遇することは殆どないか、または免疫が予め存在する(対象に存在する)抗原性ポリペプチドであり、ここで、該免疫は腫瘍に対して向けられていない。後者の形態の免疫は、例えば、A型および/またはB型肝炎、ジフテリア、破傷風、百日咳、インフルエンザ、インフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b)、ポリオ(ポリオ性骨髄炎)、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎)、ナイセリア髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(髄膜炎)またはロタウイルス(rotavirus)(ロタウイルス感染症)などの肝炎に対するワクチン接種を含む、人生の早い段階での感染症に対する以前のワクチン接種によって提供され得る。本明細書に記載の方法により用いるための非ヒト抗原ポリペプチドとして本明細書で明示的に想定されるのは、A型および/またはB型肝炎、ジフテリア、破傷風、百日咳、インフルエンザ、インフルエンザ菌B型、ポリオ、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌(肺炎)、ナイセリア髄膜炎菌またはロタウイルスを含む肝炎の1以上の免疫原性ポリペプチドである。特定の態様において、本明細書に記載の非ヒト抗原ポリペプチドは、該対象の以前のワクチン接種に用いられた微生物ポリペプチドである。特定の態様において、以前のワクチン接種は感染症に対するものであった。特定の態様において、以前のワクチン接種はA型肝炎および/またはB型肝炎;ジフテリア;破傷風;百日咳;インフルエンザ;インフルエンザ菌b型;ポリオ;麻疹;おたふくかぜ;風疹;水痘;ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、ナイセリア髄膜炎菌またはロタウイルスに対するものであった。当業者は、以前のワクチン接種で用いられたポリペプチドが、(i)サブユニットワクチン、(ii)不活化または弱毒化微生物、(iii)トキソイドワクチン(すなわち、不活化毒素を含むワクチン)の一部など、種々の形態で投与され得ることを理解している。
【0142】
特定の態様において、本明細書に記載の非ヒト抗原性ポリペプチドは、UniProtKB受託番号P08617(最終更新日:1988年8月1日-v1)で同定されたVP3を含む、A型肝炎ウイルス由来のVP3;UniProtKB受託番号P04958(最終更新日:2007年1月23日 - v2)で同定された破傷風トキシンを含む、Clostridium tetani由来の破傷風トキシン;UniProtKB受託番号P04977(最終更新日:1987年8月13日 - v1)で同定された百日咳毒素を含む、Bordetella pertussis由来の百日咳毒素; タンパク質 1987年8月13日-v1;UniprotKb受託番号R4R7Q5(最終更新日:2013年7月24日 - v1)で同定されたプロテインDを含む、Haemophilus influenzae由来のプロテインD;UniProtKB受託番号P03300(最終更新日:2007年1月23日 - v3)で同定されたVp1キャプシドタンパク質を含む、ポリオウイルス由来のVp1キャプシドタンパク質;UniProtKB受託番号P08362(最終更新日:1988年8月1日 - v1)で同定されたヘマグルチニンを含む、麻疹ウイルス由来のヘマグルチニン;UniProtKB受託番号Q77IS8(最終更新日:2004年7月5日 - v1)で同定された核タンパク質を含む、ムンプスウイルス由来の核タンパク質;UniprotKb受託番号P08563(最終更新日:2006年5月30日 - v2)で同定された糖タンパク質E1またはE2を含む、風疹ウイルス由来の糖タンパク質E1またはE2;UniprotKb受託番号P09310(最終更新日:1989年7月1日-v1)で同定された即時初期(immediate early)62(IE62)タンパク質を含む、水痘帯状疱疹ウイルス由来のIE62タンパク質;UniprotKb受託番号P03126(最終更新日:1986年7月21日-v1)、P03129(最終更新日:1986年7月21日-v1)、P06463(最終更新日:1988年1月1日-v1)またはP06788(最終更新日:1990年4月1日-v2)で同定されたE6またはE7タンパク質を含む、HPV16またはHPV18由来のE6またはE7タンパク質;Spr96/2021、PV7(7価)および/またはPV13(13価)、ある場合において肺炎球菌に由来するか、または肺炎球菌に基づく;UniprotKb受託番号Q7WYZ0(最終更新日:2003年10月1日 - v1)で同定されたナイセリアヘパリン結合抗原(NHBA)、UniprotKb受託番号B2CQ00(最終更新日:2008年5月20日 - v1)で同定された第H因子結合タンパク質(fHbp)またはUniprotKb受託番号Q9K105(最終更新日:2000年10月1日-v1)で同定されたナイセリアアドへシンA(nadA)を含む、Neisseria meningitides由来のNHBA、fHbpまたはnadA;UniprotKb受託番号P12473(最終更新日:2009年3月24日 - v2)で同定されたVP8またはUniprotKb受託番号P04509(最終更新日:2000年5月30日-v2)で同定されたVP6を含む、ロタウイルス由来のVP8またはVP6;ならびに、CRM-197と呼ばれるその無害化変種を含む、コリネバクテリウムジフテリア由来のジフテリア毒素によって形成される群より選択されるポリペプチドである。以前のワクチン接種で用いられたポリペプチドに言及する場合、該用語には、無害化された免疫原性変異体またはその一部も含まれることに留意されたい。特定の態様において、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドは、リコール抗原である。特定の態様において、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドは、微生物リコール抗原である。
【0143】
特定の態様において、選択された抗原性ポリペプチドは、免疫原としてのそのような抗原性ポリペプチドによるワクチン接種およびそのような抗原性ポリペプチドによる腫瘍マーキングが、該既存免疫を利用する(すなわち、該腫瘍に対する免疫応答を誘導するために、メモリーT細胞および/またはB細胞を活性化する)ように、対象における既存の免疫(例えば、メモリーT細胞および/またはB細胞の形態のメモリー免疫)と適合される。当業者は、抗原性ポリペプチドに対する免疫が存在するかどうかを容易に確立することができる。特定の態様において、既存の免疫は腫瘍の形成前に生成された。特定の態様において、既存の免疫は、対象の人生の早い時期、例えば、0~20歳の間の時期、1~12歳の間の時期、または1~6歳の間の時期に生成された。特定の態様において、既存の免疫は、約0-1歳、約0-2歳、約0-3歳、約1-3歳、約2-4歳、約3-5歳、約4-6歳、約5-7歳、約6-8歳、約7-9歳、約8-10歳、約9-11歳、約10-12歳、約11-13歳、約12-14歳、約13-15歳、約14-16歳、約15-17歳、約14-16歳、約15-17歳、約16-18歳、約17-19歳、約18-20歳の間の時期、1歳前の時点、2歳前の時点、3歳前の時点、4歳前の時点、5歳前の時点、6歳前の時点、7歳前の時点、8歳前の時点、9歳前の時点、10歳前の時点、11歳前の時点、12歳前の時点、13歳前の時点、14歳前の時点、15歳前の時点、16歳前の時点、17歳前の時点、18歳前の時点、19歳前の時点、20歳前の時点、25歳前の時点、30歳前の時点、35歳前の時点、40歳前の時点、45歳前の時点、50歳前の時点、60歳前の時点、70歳前の時点、80歳前の時点、90歳前の時点、100歳前の時点、または対象の生涯のうちのある時点で生成された。
【0144】
既存の免疫を活用するために、特定の態様において、本明細書に記載の免疫原性組成物を用いた少なくとも1回の免疫により、休眠免疫細胞を再活性化する。
【0145】
特定の態様において、本明細書に記載の方法の一面に用いられる抗原性ポリペプチドは、腫瘍に対する免疫応答の一部として対象が以前に遭遇しておらず、(i)免疫応答の一部としてヒト対象が遭遇していない(または殆ど遭遇していない)か、または(ii)免疫応答の一部として遭遇しているが、腫瘍に対する免疫応答ではなく、ここで、保護免疫が対象に存在する。
【0146】
特定の態様において、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドは、癌患者、例えば腫瘍に罹患している患者において免疫応答を形成する。特定の態様において、抗原性ポリペプチドは、本明細書に記載の方法を用いた潜在的なワクチン接種を意図した患者の少なくとも90%において免疫応答を誘導する。例えば、抗原性ポリペプチドは、本明細書に記載の方法を用いて、潜在的にワクチン接種を意図した患者の少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%に免疫応答を誘導する。このようにして癌患者に誘導された免疫応答は、患者の免疫系が以前にこの免疫原に遭遇していないという事実のために、新規な(de novo)応答であり得る。
【0147】
ある例示的態様において、抗原性ポリペプチドは、微生物ポリペプチドなどの非哺乳動物ポリペプチド、または合成ポリペプチドである。ある例示的態様において、抗原性ポリペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)を含む緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびジフテリア毒素で形成される群より選択される。
【0148】
本明細書で用いる用語“微生物ポリペプチド”は、細菌、古細菌、原生生物、真菌、単細胞植物およびウイルスを含む微生物のポリペプチドを意味する。
【0149】
特定の態様において、抗原性ポリペプチド(例えば、非ヒト抗原性ポリペプチド)は、細菌ポリペプチド、古細菌ドメイン(Archaea domain)の生物に由来するポリペプチド、真菌ポリペプチドまたはウイルスポリペプチドである。特定の態様において、抗原性ポリペプチドは、植物ポリペプチドである。また、非ヒト霊長動物、げっ歯類(例えば、マウスおよびラットなど)、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ロバなどの非ヒト哺乳動物のポリペプチド、鳥類(例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウなど)のポリペプチドも想定される。また、抗原性ポリペプチドは、カタツムリなどの軟体動物のポリペプチドであってもよく、例えばMegathura属またはMegathura crenulata属のポリペプチドであってもよい。
【0150】
特定の態様において、非哺乳動物抗原性ポリペプチドは、ヒト対象に投与したとき、哺乳動物ポリペプチドよりも免疫原性が高いため、哺乳動物ポリペプチドではない抗原性ポリペプチドが本明細書に記載の方法に用いるものとして見いだされる。好適な非哺乳動物抗原性ポリペプチドの例としては、例えば、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)を含む緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0151】
抗原性ポリペプチドの一例は、Megathura crenulataのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)である。KLHは、KLH1(アミノ酸配列は、UniProtKB-Q53IP9に提供される。最終更新日:2014年2月19日 - v2)またはKLH2(アミノ酸配列は、UniProtKB-Q1MVA1に提供される。最終更新日:2006年5月30日 - v1)のいずれかであり得る。KLHは、免疫原性の高い抗原の一例であり、普遍的な免疫原およびワクチン担体として広く用いられてきた。
【0152】
抗原性ポリペプチドの別の例は、ジフテリア毒素であり、この用語は、交差反応物質(CRM)-197などのその無害化された変異体を含む。特定の態様において、抗原性ポリペプチド(例えば、非腫瘍抗原)は、CRM197である。特定の態様において、ジフテリア毒素は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。特定の態様において、ジフテリア毒素の無害化変異体は、アミノ酸残基位置52のグリシン(G)がグルタミン酸(E)で置換されていることを除いて、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するCRM-197である。この用語はまた、少なくとも100、少なくとも200または少なくとも300の連続的なアミノ酸残基長を有する配列番号1あるいは配列番号1の一部と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するジフテリア毒素の変異体を含む。特定の態様において、連続的なアミノ酸長は、配列番号1の位置1~385によって示されるアミノ酸領域内にあるか、またはアミノ酸領域である。あるいは、そのような変異体は、1~50、1~20、または1~10のアミノ酸残基が欠失、挿入または置換されていることを除いて、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。そのような変異体は、本明細書に記載の抗原性および/または免疫原性を示す。
【0153】
用語“%配列同一性”は、本明細書中、最大%の配列同一性を達成するために配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入後、目的のアミノ酸配列中のアミノ酸と同一であるアミノ酸の%として定義される。アライメントのための方法およびコンピュータプログラムは、当技術分野でよく知られている。配列同一性は、目的のアミノ酸配列の実質的に全長、ある場合には全長(完全長)にわたって計算される。当業者は、あるアミノ酸配列における連続したアミノ酸残基が、別のアミノ酸配列における連続したアミノ酸残基と比較されることを理解する。
【0154】
特定の態様において、ジフテリア毒素が抗原性ポリペプチドの腫瘍内送達のために用いられる本明細書に記載の方法において、腫瘍は、HB-EGF受容体を発現する腫瘍である。特定の態様において、HB-EGF受容体を発現する腫瘍は、卵巣腫瘍;肺腫瘍;膀胱腫瘍;胃腫瘍;膵臓腫瘍;乳房腫瘍;肝臓腫瘍(例えば、肝細胞癌);脳腫瘍(例えば、膠芽腫);星細胞腫;脳幹神経膠腫;混合神経膠腫;乏突起膠腫;視神経膠腫;およびその他の脳に由来する腫瘍(例えば、退形成性星細胞腫、線維性星細胞腫、毛細血管性星細胞腫);神経芽腫;ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;組織球性リンパ腫または未分化大細胞リンパ腫;ならびに、白血病(例えば、AML、CMLまたはALL)からなる群より選択される。特定の態様において、HB-EGF受容体を発現する腫瘍は、卵巣癌;肺癌;膀胱癌;胃癌;膵臓癌;乳癌;肝細胞癌;脳腫瘍(例えば、膠芽腫);神経芽腫;ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;組織球性リンパ腫または未分化大細胞リンパ腫;ならびに、白血病(例えば、AML、CMLまたはALL)からなる群より選択される悪性腫瘍である。
【0155】
また、本明細書では、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドをコードする核酸が提供される。特定の態様において、本明細書に記載の方法で用いるためのCRM197をコードする核酸が提供される。
【0156】
本明細書に記載のタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列は、当技術分野で一般的に利用可能な方法および手段によって生成することができる。例えば、当業者は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするDNA配列を生成する方法、ならびに一般的に知られている組換えDNA技術を用いて該DNA配列を有する核酸分子を製造および単離する方法を理解し得る。特定の態様において、核酸分子の配列は、宿主細胞中での発現のためにコドン最適化される。このようにして、特定の宿主細部で高レベルの発現に有利なコドンが用いられる。特定の態様において、核酸分子は、当業者に知られている組換えDNA技術を用いて発現ベクターに挿入される。発現ベクターは、宿主細胞において本明細書に記載の融合タンパク質の発現を指向する。特定の態様において、これらの発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの一部として、宿主細胞中で複製可能である。さらに、特定の態様において、発現ベクターは、(i)CMVまたはSV40プロモーターなどの強力なプロモーター/エンハンサー、(ii)リボソーム結合部位および開始コドンなどの最適な翻訳開始配列、および/またはKOZAKコンセンサス配列、および(iii)タンパク質が真核細胞で発現されるときのポリ(A)シグナルを含む転写終結配列、を含む。好適な発現ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスなどのプラスミドおよびウイルスベクターを含む。当業者は、用いられる発現ベクターが、組換えタンパク質の発現に用いられる宿主細胞に依存することを理解し得る。特定の態様において、発現ベクターは、細菌細胞を含む原核細胞における、または、酵母細胞および哺乳動物細胞などの真核宿主細胞における核酸の発現に適している。好適な例は、哺乳動物発現ベクターpCMV4である。
【0157】
別法として、核酸分子を宿主細胞のゲノムに挿入することができる。特定の態様において、挿入は、宿主細胞における本明細書に記載の核酸分子の発現を確実にする遺伝子座または遺伝子領域内にある。
【0158】
好適な宿主細胞としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、マウス細胞、ラット細胞、ヒツジ細胞、サル細胞およびヒト細胞などの原核細胞および真核細胞が挙げられる。適当な真核生物宿主細胞の例としては、HEK293細胞、ハムスター細胞株CHOおよびBHK-21;マウス宿主細胞NIH3T3、NSOおよびC127;シミアン宿主細胞COSおよびVero;ならびに、ヒト宿主細胞HeLa、PER.C6、U-937およびHep G2が挙げられるが、これらに限定されない。適切な細胞は、ATCCおよびLife Technologiesなどの公的な供給源から入手可能である。多くのトランスフェクション技術が当技術分野で知られており、例えば、Graham et al., 1973. Virology 52: 456; Green et al., 2012. “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, CSHL Press; Davis et al., “Basic Methods in Molecular Biology”, 1986, Elsevier; and Chu et al., 1981. Gene 13: 197(それらの内容全体は引用により本明細書中に包含させる)を参照のこと。当業者は、これらの文献に記載の技術を用いて、1以上の外因性核酸分子を好適な宿主細胞に導入し得る。本明細書に記載の融合タンパク質を産生するための宿主細胞の例は、HEK293細胞である。
【0159】
本明細書に記載の抗原性ポリペプチドはまた、合成ポリペプチド、例えばヒト対象への投与時に強い細胞免疫応答を誘発するように設計されたポリペプチドであり得る。
【0160】
抗原性ポリペプチドが免疫原として投与するためのものであるとき、免疫応答の誘発を増強するように、さらにポリペプチドまたは複合パートナーを含んでいてもよい。従って、該免疫原は、該抗原性ポリペプチドおよび例えば担体タンパク質を含む融合ポリペプチドであり得る。
【0161】
投与方法
本発明は、対象における腫瘍(例えば、固形腫瘍)を処置するための方法を提供する。また、対象における腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法も提供する。そのような方法は、第1の組成物を遠位部に投与することを含むワクチン接種工程と、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍周囲に投与することを含む腫瘍マーキング工程とを含む。このような方法は、第1の組成物を腫瘍から遠位部位で対象に投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程と、第2の組成物を腫瘍部位で対象に投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程とを含む。第1の組成物および第2の組成物は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0162】
特定の態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を腫瘍から離れた部位に投与することを含む。特定の態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を腫瘍から遠位の部位に投与することを含む。特定の態様において、本明細書に記載のワクチン接種工程における免疫原性組成物(例えば、第1の組成物)の遠位部投与(distal administration)は、非経腸経路を介したものであり、これには、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与(intradermal)、節内投与(intranodal)、リンパ内投与および筋肉内投与が含まれ、これらはすべて当業者によく知られている。特定の態様において、本明細書に記載の免疫原性組成物(例えば、第1の組成物)の遠位部投与は、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、腹腔内注射、胸骨内注射、皮内注射、経皮注射(transcutaneous injection、transdermal injection)および組織の間質腔への送達からなる群より選択される投与方法によって送達される。
【0163】
特定の態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を投与することを含み、この投与は、腫瘍内投与ではなく、腫瘍外投与であり、ある場合には、筋肉内投与、皮内投与(intradermal)、静脈内投与、節内投与またはリンパ内投与、皮内投与、静脈内、またはこれらの組合せである。特定の態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を、腫瘍から遠位部位で筋肉内投与することを含む。
【0164】
特定の態様において、ワクチン接種工程は、第1の組成物を、腫瘍(例えば、腫瘍の端部または腫瘍の中心部)から少なくとも約0.1mm、少なくとも約0.2mm、少なくとも約0.3mm、少なくとも約0.4mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.6mm、少なくとも約0.7mm、少なくとも約0.8mm、少なくとも約0.9mm、少なくとも約1mm、少なくとも約2mm、少なくとも約3mm、少なくとも約4mm、少なくとも約5mm、少なくとも約6mm、少なくとも約7mm、少なくとも約8mm、少なくとも約9mm、少なくとも約10mm、少なくとも約15mm、少なくとも約20mm、少なくとも約25mm、少なくとも約30mm、少なくとも約35mm、少なくとも約20mm、少なくとも約25mm、少なくとも約25mm、少なくとも約30mm、少なくとも約35mm、少なくとも約40mm、少なくとも約45mm、少なくとも約50mm、少なくとも約60mm、少なくとも約70mm、少なくとも約80mm、少なくとも約90mm、少なくとも約10cm、少なくとも約20cm、少なくとも約30cm、少なくとも約40cm、少なくとも約50cm、50cm以上離れた部位に遠位投与することを含む。特定の態様において、ワクチン接種工程は、腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含み、ここで、腫瘍から遠位部位は、腫瘍(例えば、腫瘍の端部または腫瘍の中心部)から少なくとも約0.1mm、少なくとも約0.2mm、少なくとも約0.3mm、少なくとも約0.4mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.6mm、少なくとも約0.7mm、少なくとも約0.8mm、少なくとも約0.9mm、少なくとも約1mm、少なくとも約2mm、少なくとも約3mm、少なくとも約4mm、少なくとも約5mm、少なくとも約6mm、少なくとも約7mm、少なくとも約8mm、少なくとも約9mm、少なくとも約10mm、少なくとも約15mm、少なくとも約20mm、少なくとも約25mm、少なくとも約30mm、少なくとも約35mm、少なくとも約40mm、少なくとも約45mm、少なくとも約50mm、少なくとも約60mm、少なくとも約70mm、少なくとも約80mm、少なくとも約90mm、少なくとも約10cm、少なくとも約20cm、少なくとも約30cm、少なくとも約40cm、少なくとも約50cm、50cm以上離れた部位である。
【0165】
特定の態様において、ワクチン接種工程は、腫瘍が存在する臓器系とは異なる臓器系の部位に第1の組成物を遠位投与することを含む。特定の態様において、ワクチン接種工程は、腫瘍が存在する臓器系とは異なる臓器系に第1の組成物を投与することを含む。例えば、腫瘍が卵巣または卵巣内に存在する場合(例えば、上皮性卵巣癌)、ワクチン接種工程は、卵巣ではない臓器系の部位、例えば、肝臓、腎臓などに第1の組成物を遠位投与することを含む。本明細書で用いる用語“臓器”または“臓器系”とは、同様の機能を有する組織群を意味する。臓器系の例としては、筋肉系、消化器系(例えば、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓など)、呼吸器系(例えば、肺)、泌尿器系(例えば、腎臓、膀胱など)、生殖器系(例えば、男性生殖器および女性生殖器、卵巣、胎盤、前立腺など)、内分泌系、循環器系、神経系(例えば、中枢神経系および末梢神経系など)ならびに腸管系(例えば、皮膚、皮下組織など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
特定の態様において、ワクチン接種工程は、腫瘍部位に対向する部位に第1の組成物を遠位投与することを含む。特定の態様において、ワクチン接種は、腫瘍(腫瘍が存在する部位)に対向する部位で第1の組成物を投与することを含む。例えば、腫瘍が卵巣または卵巣内に存在する場合、ワクチン接種工程は、対側の卵巣または卵巣内に第1の組成物を遠位投与することを含む。例えば、腫瘍が左卵巣に存在する場合、ワクチン接種工程は、第1の組成物を右卵巣に遠位的に投与することを含む。例えば、腫瘍が卵巣または卵巣内に存在する場合、ワクチン接種工程は、第1の組成物を対側の卵巣に投与することを含む。例えば、腫瘍が左卵巣に存在する場合、ワクチン接種ステップは、第1の組成物を右卵巣に投与することを含む。
【0167】
特定の態様において、本明細書に記載の方法は、1回以上のワクチン接種工程を含む。特定の態様において、第2のワクチン接種工程、第3のワクチン接種工程、第4のワクチン接種工程、第5のワクチン接種工程、第6のワクチン接種工程、第7のワクチン接種工程、またはそれ以上のワクチン接種工程が行われる。当業者は、任意の、後続のワクチン接種工程が実行される場合、該後続のワクチン接種工程は、本明細書に記載のワクチン接種工程の態様のいずれかを組み込むことが想定されることを認識し得る。
【0168】
特定の態様において、腫瘍マーキング工程は、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍周囲に投与することを含む。特定の態様において、腫瘍マーキング工程は、腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む。特定の態様において、腫瘍マーキング工程は、第2の組成物を腫瘍内または腫瘍の近位部に投与することを含む。従って、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドを、本明細書に記載のように腫瘍内送達用に調製した使用が提供される。
【0169】
また、腫瘍に罹患している対象に対して免疫応答を誘発する方法であって、腫瘍に罹患している対象に、腫瘍内送達用に調製された、薬学的に有効量の抗原性ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を投与する工程;および、該対象者に、該ポリペプチドを免疫原として、または該免疫原をコードする核酸、および要すれば1以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤および/または希釈剤を含む、薬学的に有効量の免疫原性組成物を投与する工程、を含む方法を提供する。特定の態様において、(i)腫瘍内送達のために調製されたポリペプチド/核酸、(ii)免疫原性組成物、および(iii)本明細書に記載の医療用途、を提供する。
【0170】
かかる方法は、腫瘍内送達のために調製された、該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の腫瘍内送達後に、該ポリペプチドからMHCペプチド抗原複合体を産生させる工程をさらに含んでいてもよい。
【0171】
特定の態様において、本明細書に記載の方法による第1の組成物および第2の組成物の投与により、抗原性ポリペプチド またはMHCペプチド抗原複合体に対するT細胞介在性免疫応答が誘発される。
【0172】
本発明はまた、必要とする対象において腫瘍を処置する方法であって、(1)抗原性ポリペプチドまたは該抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の組成物を遠位部に投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該投与が腫瘍部位の遠位部で行われるワクチン接種工程;および(2)抗原性ポリペプチドまたは該抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む第2の組成物を腫瘍内または腫瘍周囲に投与することを含む腫瘍マーキング工程、を含む方法も提供する。従って、特定の態様において、本発明は、必要とする対象における腫瘍を処置する方法であって、(1)非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む第1の組成物を遠位部に投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該投与が腫瘍部位の遠位部で行われるワクチン接種工程;および(2)非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む第2の組成物を腫瘍内または腫瘍周囲に投与することを含む腫瘍マーキング工程、を含む方法を提供する。本発明はまた、必要とする対象における腫瘍を処置する方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程;および(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む方法も提供する。従って、特定の態様において、本発明は、必要とする対象における腫瘍を処置するための方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程;および(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む方法を提供する。
【0173】
本発明はまた、必要としている対象において腫瘍に対する免疫応答を生成する方法であって、(1)抗原ポリペプチドまたは該抗原ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の組成物を遠位部に投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該投与が腫瘍部位の遠位部で行われるワクチン接種工程;および(2)抗原ポリペプチドまたは該抗原ポリペプチドをコードする核酸を含む第2の組成物を腫瘍内または腫瘍周囲に投与することを含む腫瘍マーキング工程、を含む方法も提供する。従って、特定の態様において、本発明は、必要とする対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法であって、(1)非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む第1の組成物を遠位部に投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、該投与が腫瘍部位の遠位部で行われるワクチン接種工程と、(2)非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む第2の組成物を腫瘍内または腫瘍周囲に投与することを含む腫瘍マーキング工程とを含む方法を提供する。本発明はまた、必要とする対象において腫瘍に対する免疫応答を生成するための方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程;および(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む方法も提供する。従って、特定の態様において、本発明は、必要とする対象において腫瘍に対する免疫応答を生成する方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程;および、(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む方法を提供する。
【0174】
本発明はまた、必要としている対象において、腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導する方法であって、(1)抗原性ポリペプチドまたは抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む第1の組成物を遠位部に投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、投与が腫瘍部位の遠位部で行われるワクチン接種工程;および(2)抗原性ポリペプチドまたは抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む第2の組成物を腫瘍内または腫瘍周囲に投与することを含む腫瘍マーキング工程、を含む方法も提供する。従って、特定の態様において、本明細書は、必要とする対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導する方法であって、(1)非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む第1の組成物を遠位部に投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、投与が腫瘍部位の遠位部で行われる、ワクチン接種工程と、(2)非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む第2の組成物を腫瘍内または腫瘍周囲に投与することを含む腫瘍マーキング工程とを含む方法を提供する。本発明はまた、必要とする対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導する方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程;および、(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む方法も提供する。従って、特定の態様において、本発明はまた、必要とする対象において腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導する方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程;および、(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物が、非腫瘍抗原または非腫瘍抗原をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む方法を提供する。
【0175】
特定の態様において、本明細書に記載の方法の抗原ポリペプチドは、CRM197である。従って、本発明はまた、必要な対象における腫瘍を処置する方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物がCRM197またはCRM197をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程と、(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物がCRM197またはCRM197をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程とを含む方法も提供する。本発明はまた、必要としている対象において腫瘍に対する免疫応答を生成する方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物がCRM197またはCRM197をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程;および、(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物がCRM197またはCRM197をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程を含む方法も提供する。本発明はまた、必要としている対象者において腫瘍に対する免疫応答を誘発または誘導する方法であって、(1)腫瘍から遠位部位で対象に第1の組成物を投与することを含むワクチン接種工程であって、ここで、第1の組成物がCRM197またはCRM197をコードする核酸を含む、ワクチン接種工程;および、(2)腫瘍部位で対象に第2の組成物を投与することを含む腫瘍マーキング工程であって、ここで、第2の組成物がCRM197またはCRM197をコードする核酸を含む、腫瘍マーキング工程、を含む方法も提供する。
【0176】
特定の態様において、ワクチン接種工程および腫瘍マーキング工程は時間的に分離されている。従って、特定の態様において、ワクチン接種工程は、腫瘍マーキング工程の前に実行される。特定の態様において、腫瘍マーキング工程は、ワクチン接種工程の後に実行される。特定の態様において、腫瘍マーキング工程が実行される前に、ワクチン接種工程の後に一定の時間が経過している。特定の態様において、ワクチン接種工程後に経過した時間は、投与された第1の組成物内に包含された抗原ポリペプチドに対して対象が免疫応答を起こすのに十分な時間である。特定の態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の時間は、ワクチン接種工程の結果として免疫応答が形成されるのに十分である。
【0177】
例えば、ワクチン接種工程の結果、一次免疫応答が形成され得る。一次免疫応答の場合、一次免疫応答の形成には約7日から約21日かかり得る。別の例において、例えば、対象が既存の免疫を有している抗原ポリペプチドに反応して、ワクチン接種工程の結果として、二次免疫応答を形成し得る。二次免疫応答の場合、二次免疫応答の形成には約2日から約3日かかり得る。従って、特定の態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間は、約1日から約21日、約1日から約22日、約1日から約23日、約1日から約24日、約1日から約3週間、約1日から約4週間で、約1日から約5週間、約1日から約10週間、約1日から約15週間、約1日から約20週間、約1日から約25週間、約1日から約30週間、約1日から約35週間、約1日から約40週間、約1日から約45週間、約1日から約50週間、約1日から約1年、約1日から約2年、約1日から約3年、約1日から約4年、約1日から約5年、約1日から約10年、約1日から約15年、約1日から約20年、約1日から約25年、約1日から約30年、約1日から約30年以上、およびそれらの間の任意の期間である。特定の態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程との間の期間は、約1日から約1ヶ月、14日から約2ヶ月、1ヶ月から約3ヶ月、2ヶ月から約5ヶ月、4ヶ月から約6ヶ月、5ヶ月から約7ヶ月、6ヶ月から約8ヶ月、7ヶ月から約9ヶ月、8ヶ月から約10ヶ月、9ヶ月から約11ヶ月、10ヶ月から約12ヶ月、11ヶ月から約13ヶ月、12ヶ月から約14ヶ月、13ヶ月から約15ヶ月、14ヶ月から約16ヶ月、15ヶ月から約17ヶ月、16ヶ月から約18ヶ月、17ヶ月から約19ヶ月、18ヶ月から約20ヶ月、19ヶ月から約21ヶ月、20ヶ月から約22ヶ月、21ヶ月から約23ヶ月、22ヶ月から約24ヶ月、3ヶ月から約1年、6ヶ月から約1年、1年から約2年、1.5年から約3年、2年から約3.5年、2.5年から約4年、3年から約4.5年、3.5年から約5年、4年から約5.5年、4.5年から約6年、5年から約6.5年、5.5年から約7年、6年から約7.5年、6.5年から約8年、7年から約8.5年、7.5年から約9年、8年から約9.5年、8.5年から約10年、およびそれらの間の任意の期間である。
【0178】
特定の態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程の間の期間は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約20週間、約30週間、約40週間、約50週間、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約10年、約15年、約20年、約25年、約30年、またはそれ以上、およびそれらの間の任意の期間である。特定の態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程の間の期間は、約2日から約21日である。特定の態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程の間の期間は、約2日から約3日である。特定の態様において、ワクチン接種工程と腫瘍マーキング工程の間の期間は、約7日から約21日である。
【0179】
本明細書で言及される文献の内容は、それぞれ引用により本明細書中に包含される。
【0180】
明確化かつ簡潔な説明の目的で、本明細書中、特徴を同じかまたは別個の面およびその態様の一部として記載する。例えば、ポリペプチドに関する態様はまた、そのようなポリペプチドをコードする核酸にも適用されてよく、逆もまた同様である。同じことが、例えば、使用のための製品、使用および方法形式で定義された医学的用途に関連する態様にも適用される。本発明をその具体的な態様を参照して説明してきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えたり、等価物を代用したりすることができることを、当業者は理解すべきである。本明細書に記載の方法の他の適切な変更および適応は、本明細書に記載の態様の範囲から逸脱することなく、適切な等価物を用いて行うことができることが、当業者には容易に明らかであり得る。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程または複数工程には、本発明の目的、精神および範囲に適応させるために、多くの変更を行うことができる。このような変更はすべて、添付の特許請求の範囲内であることが意図されている。ここまで特定の態様を詳細に説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、同じことがより明確に理解され得る。これらの実施例は、説明のためにのみ含まれており、限定することを意図していない。
【0181】
配列表
配列番号1:ジフテリア毒素
GADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQKGIQKPKSGTQGNYDDDWKGFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRRSVGSSLSCINLDWDVIRDKTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAKQYLEEFHQTALEHPELSELKTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHKTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS
配列番号2:ジフテリア毒素の受容体結合ドメイン(配列番号1のアミノ酸385-535)
KTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS
配列番号3:ジフテリア毒素の受容体結合ドメイン(配列番号1のアミノ酸387-535)
QPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS
【実施例】
【0182】
実施例
材料および方法
DCOne成熟樹状細胞(mDC)の作製
DCOne前駆細胞(2012年11月15日に受託番号DSMZ ACC3189でDSMZに寄託された細胞)を、WO2009019320 A2(その内容全体は引用により本明細書中に包含させる)に記載の方法により分化および成熟化させた。細胞を計数し、DCOne mDC細胞の表現型分析をフローサイトメトリー(FACSVerse; BDBiosciences)を用いて行った。
【0183】
卵巣癌細胞の培養
OV90卵巣癌細胞を、15% FBSおよび2% P/Sを含む媒体199/MCDB105培地(1:1)中、37℃にて5% CO2でインキュベーター中で培養した。OV90細胞はATCCから得た。
【0184】
DCOne mDCによる外来抗原の取り込み
DCOne mDCによる取り込みを、成熟中の4時間および24時間、終濃度10μg/mLの3つの異なる外来抗原について評価した。750,000細胞を、各条件の6ウェルプエートに播種した。用いる抗原は、CRM197-Alexa488、サブユニットKLH-FITCおよびβ-ガラクトシダーゼ-FITCであった。CRM197-Alexa488はFina Biosolutionsから購入した。サブユニットKLHはStellar Biotechnologies Incから購入した。β-ガラクトシダーゼをRocheから購入した。サブユニットKLHおよびβ-ガラクトシダーゼを、製造者プロトコールによりフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識キットを用いて、試験室内で蛍光色素FITCに結合させた。外来抗原の取り込みをフローサイトメトリーにより評価した。0.08%トリパンブルーを用いて、外部に結合したタンパク質をクエンチし、内在化したタンパク質のみを可視化した。
【0185】
外来抗原による腫瘍細胞の標識
OV90卵巣癌細胞の標識を、4時間および24時間、終濃度10μg/mLの3つの異なる外来タンパク質について評価した。100,000細胞を、各条件の96ウェルプエートに播種した。用いたタンパク質は、CRM197-Alexa488、サブユニットKLH-FITCおよびβ-ガラクトシダーゼ-FITCであった。インビトロでの腫瘍細胞の標識は、DCOne mDC細胞について上記のようにフローサイトメトリーにより評価した。
【0186】
ヒト化U87-MG神経膠芽腫マウスモデル
4週齢の免疫不全メスNOD/Shi-scid/IL-2Rγnull免疫不全マウス株(NCG;Taconic)に、骨髄機能廃絶化学療法(chemical myeloablative treatment)の2日後、5e4臍帯血由来CD34+造血幹細胞および前駆細胞(French Blood Bank)を静脈内(IV)注射で移植した。ヒト化マウスを、GM-CSF/IL3/IL4 流体ブーストおよびFlt3L組換えタンパク質で樹状細胞集団を増強させた。7日後、腫瘍生着のためにマウス右脇腹に1e6 U87-MG膠芽腫細胞/マウス(Sigma Aldrich)を皮下注射した。腫瘍生着の15日後、マウスを無作為化し、1群当たり5匹のマウスを含む異なるワクチン接種群に分けた。全てのマウスは、腹腔内(i.p.)ワクチン接種1回および腫瘍をマーキングするため腫瘍内(i.t.)注射1回を受けた。
【0187】
マウスは、以下のスケジュールで、腹腔内(i.p.)投与当たり100μg KLHまたは100μl PBSのi.p投与を受け、200,000 KLHを添加したDCOne mDCsまたは50μl中、100μg KLHをi.t.注射した:
群1(PBS/KLH)は、PBSワクチン接種の腹腔内(i.p.)投与1回(無作為化の1日後)、およびKLHによる腫瘍内(i.t.)注射1回(無作為化の8日後)を受けた。
群2(KLH/KLH)は、KLHワクチン接種のi.p.投与1回(無作為化の1日後)、およびKLHによるi.t.注射1回(無作為化の8日後)を受けた。
群3(PBS/KLH添加DCOne)は、PBSワクチン接種のi.p.投与1回(無作為化の1日後)、およびKLH添加DCOne mDC によるi.t.注射1回(無作為化の8日後)を受けた。
群4(KLH/KLH添加DCOne)は、KLHワクチン接種のi.p.投与1回(無作為化の1日後)、およびKLH添加DCOne mDC によるi.t.注射1回(無作為化の8日後)を受けた。
【0188】
サブユニットKLHは、Stellar Biotechnologies Incから購入した。腫瘍増殖の減少および免疫応答の誘導を測定した。
【0189】
ヒト化A375黒色腫モデルマウス
上記のようにCD34+幹細胞でヒト化し、およびサイトカインで流体ブーストを行った後、腫瘍生着のために、マウスの右脇腹に2e6 A375黒色腫細胞/マウス(Sigma Aldrich)を皮下接種した。腫瘍生着の15日後、マウスを無作為化し、1群当たり5匹のマウスを含む異なるワクチン接種群に分けた。マウスは、腹腔内(i.p.)ワクチン接種2回および腫瘍をマーキングするため腫瘍内(i.t.)注射1回を受けた。
【0190】
マウスは、以下のスケジュールで、腹腔内(i.p.)投与当たり100μl中、100μg KLHまたは100μl PBSのi.p投与を受け、200,000 KLHを添加したDCOne mDCsまたは50μl中、100μg KLHをi.t.注射した:
群1(PBS/KLH)は、PBSワクチン接種の腹腔内(i.p.)投与2回(無作為化の1日後および8日後)、およびKLHによる腫瘍内(i.t.)注射1回(無作為化の15日後)を受けた。
群2(KLH/KLH)は、KLHワクチン接種のi.p.投与2回(無作為化の1日後及び8日後)、およびKLHによるi.t.注射1回(無作為化の15日後)を受けた。
群3(PBS/KLH添加DCOne)は、PBSワクチン接種のi.p.投与2回(無作為化の1日後および8日後)、およびKLH添加DCOne mDC によるi.t.注射1回(無作為化の15日後)を受けた。
群4(KLH/KLH添加DCOne)は、KLHワクチン接種のi.p.投与2回(無作為化の1日後および8日後)、およびKLH添加DCOne mDC によるi.t.注射1回(無作為化の15日後)を受けた。
【0191】
サブユニットKLHをStellar Biotechnologies Incから購入した。腫瘍増殖の減少およびワクチン接種により誘発された免疫応答を測定した。
【0192】
実施例1.外来タンパク質の取り込み
DCOne mDCによるサブユニットKLH-FITCの取り込み
DCOne mDC細胞に、材料および方法セクションに記載の通り、4時間および24時間、成熟プロセス中に蛍光色素結合サブユニットKLHを負荷した。サブユニットKLHの内在化を、フローサイトメトリーを用いて分析した。トリパンブルーは、細胞表面結合抗原をクエンチし、表面結合抗原と内在化抗原を区別するために用いた。4時間後のDCOnemDCによるサブユニットKLH-FITCの観察された内在化は、54.6±8.8%であり、トリパンブルーで49.9±9.8%であり、24時間後に86.1±7.0%であり、トリパンブルーで81.7±8.0%であって、これらはDCOne mDCによる効果的な抗原取り込みを示している(
図1A)。
【0193】
サブユニットKLHでのOV90腫瘍細胞の標識化
OV90卵巣癌腫細胞を、材料および方法セクションに記載の通り、4時間および24時間、サブユニットKLH-FITCと共に培養した。本発明者らは、表面結合サブユニットKLH-FITCシグナルをトリパンブルーで消光することで示されるように、4時間後に、OV90細胞の13.5±2.6%が標識され、細胞内抗原を有する細胞では7.5±1.0%であり、24時間後には、OV90細胞の16.5±11.5%が標識され、細胞内抗原を有する細胞では9.5±3.8%が標識された(
図1B)。
【0194】
DCOne mDCによるβ-ガラクトシダーゼ-FITCの取り込み
DCOne mDCを、材料および方法セクションに記載のように、β-ガラクトシダーゼ-FITCと共に4時間および24時間インキュベートした。β-ガラクトシダーゼ-FITCの取り込みを、細胞外で結合したβ-ガラクトシダーゼ-FITCと内在化β-ガラクトシダーゼ-FITCを区別するために、トリパンブルーの不存在下または存在下でフローサイトメトリーを用いて測定した。
図2Aは、トリパンブルーの消光がシグナルにほとんど影響を与えなかった(34.5±10.2%)ため、4時間のインキュベーション後、DCOne mDCの39.7±10.7%がβ-ガラクトシダーゼ-FITCを内在化していることを示し、DCOne mDC中β-ガラクトシダーゼ-FITCの細胞内局在が示唆された。DCOne mDCによるβ-ガラクトシダーゼ-FITCの内在化は、24時間後に57.6±10.2%、トリパンブルーによる内在化は49.9±13.0%であり、細胞内β-ガラクトシダーゼ-FITCの内在化が示唆された。
【0195】
β-ガラクトシダーゼ-FITCによるOV90の標識化
卵巣癌細胞株OV-90を、4時間後および24時間後にβ-ガラクトシダーゼ-FITCで標識したところ、それぞれ11.3±8.9%(トリパンブルーで6.0±4.6%)および10.4±4.2%(トリパンブルーで6.5±3.6%)であり、β-ガラクトシダーゼ-FITCの表面結合および細胞内存在の両方を示した(
図2B)。
【0196】
DCOne mDCによるCRM197の取り込み
成熟プロセス中、DCOne mDCを、材料および方法セクションに記載のように、CRM197-Alexa488と共に4時間および24時間培養した。4時間および24時間後、DCOne mDCによる抗原CRM-197の取り込みを、上記のセクションで記載の通り、トリパンブルーの存在および不存在下でフローサイトメトリーを用いて分析した。本発明者らは、DCOne mDCの90.6±5.4%および99.4±0.1%が、それぞれ4時間および24時間後、効率的な内在化CRM-197を有し、トリパンブルー消光は結果に影響しなかった(それぞれ87.6±8.0%および99.5±0.2%;
図7A)ことを観察した。
【0197】
CRM197によるOV90腫瘍細胞の標識化
OV90腫瘍細胞による4時間後のCRM197-Alexa488の取り込みの割合は、82.0±2.5%であり、24時間後の標識は、98.2±0.1%まで増加した(
図3)。トリパンブルー消光は、シグナルに影響を与えず、これはCRM-197が主に、細胞内に存在することを示唆している(それぞれ4時間後および24時間後に、トリパンブルーで72.7±11.9%および97.6±1.4%)。
【0198】
DCOne mDCによる外来タンパク質の取り込みのインビボデータは、DCOne mDCが外来タンパク質の内在化に非常に効率的であることを示した。試験した全ての外来タンパク質、CRM197、KLHおよびβ-ガラクトシダーゼは、DCOne mDCによって非常によく取り込まれる。従って、DCOne細胞は、ワクチン接種および/または外来タンパク質の腫瘍内送達のための担体として用いることができる。
【0199】
卵巣癌細胞による外来タンパク質の取り込みのデータは、卵巣癌細胞が、DCOne細胞と比べて、外来タンパク質の内在化においてより特異的であることを示した。文献に記載されているように(例えば Miyamoto et al. Cancer Sci, 97(5):341-7 (2006);その内容全体は引用により本明細書中に包含される)、ジプテリア毒素/CRM197に対する特異的なHB-EGF受容体の存在により、腫瘍細胞では受容体介在性エンドサイトーシスによりCRM197が非常に効率的に取り込まれるが(Moya et al. J Cell Biol, 101(2):548-59 (1985);その内容全体は引用により本明細書中に包含される)、KLHおよびβ-ガラクトシダーゼの取り込みは低い。これらの知見は、腫瘍が外来タンパク質によってマークされ得ることを示している。これは、とりわけCRM197についての場合であり、したがって、CRM197に結合した他の外来タンパク質を腫瘍マーキングのための担体として用い得る可能性がある。
【0200】
実施例2.ヒト化U87-MG神経膠芽腫マウスモデルおよびヒト化A375黒色腫マウスモデルにおける腫瘍増殖阻害
U87-MGマウスは、PBSまたはKLHのいずれかのi.p.ワクチン接種1回およびKLHまたはKLH添加DCOne mDCのいずれかで腫瘍をマークするためのi.t.注射1回を受けた。腫瘍増殖を、デジタルノギスを用いて週に3回モニターした(
図4A)。腫瘍体積(mm3)を、以下の式に従って計算した:体積=(幅×長さ^2)/2。本発明者らは、18日目に、PBSを注射したマウスと比べて、ワクチン接種したマウスの腫瘍増殖が遅くなったことを観察し、KLH添加DCOneのi.t.注射が最も強い効果を示した(
図4B)。
【0201】
A375黒色腫マウスは、PBSまたはKLHのいずれかの2回のi.p.ワクチン接種、およびKLHまたはKLH添加DCOne mDCのいずれかで腫瘍をマークするための1回のi.t.注射を受けた。腫瘍増殖を、デジタルノギスを用いて週に3回モニターした(
図5A)。腫瘍体積(mm3)は、以下の式に従って計算した:体積=(幅×長さ^2)/2。U87-MGマウスと同様に、我々は、ワクチン接種したマウス群が、PBSを注射した群と比較して腫瘍増殖が遅くなったことを観察した(
図5B)。この効果は、KLH/KLHを添加したDCOneで処理したマウスで最も強かった。
【0202】
ヒト化マウスにおけるこれらのインビボデータは、ワクチン接種に続いて腫瘍内注射(腫瘍マーキング)を行うと、特にDCOne mDCを担体として用いて腫瘍マーキングを行ったときに、2つの別個の固形腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖が遅くなることを示している。統計的に有意ではなかったが、腫瘍増殖の遅延傾向は、2つの別個の固形腫瘍モデルにおいて一貫していた。
【0203】
実施例3.T細胞介在性KLH特異的抗体産生
腫瘍内注射および/またはワクチン接種に起因するKLHに対する可能性のある抗体反応をELISAにより定量した(D0、D14および屠殺)。U87-MGマウスおよびA375マウスの両マウスにおいて、処置群とPBS対照群との間で、抗KLH IgM濃度に関して経時的に有意差がないことが観察された(
図6A-
図6B)。しかしながら、驚くべきことに、KLH/KLH添加DCOne群のマウスが、屠殺時にPBS対照群よりも有意に多くの抗KLH IgMを産生していることが観察された(
図6C-
図6D)。このことは、T細胞依存性のIgMからIgGへのスイッチを示唆している(Geha et al., NEJM, 330:1008-1009 (1994);その内容全体は引用により本明細書中に包含させる)。
【0204】
実施例4.CRM197ワクチン接種
材料および方法
DCOne成熟樹状細胞(mDC)の生成
DCOne前駆細胞(2012年11月15日に受託番号DSMZ ACC3189でDSMZに寄託された細胞)を、PCT公報WO2009/019320(その内容全体は引用により本明細書中に包含させる)に記載の方法により分化および成熟化させた。細胞を計数し、DCOne mDC細胞の表現型分析をフローサイトメトリー(FACSVerse; BDBiosciences)を用いて行った。
【0205】
癌細胞の培養
DCOne AML前駆細胞を、10% FBSおよび2% P/Sを含むMEMα中、37℃にて5% CO2でインキュベーター中で培養した。OV90卵巣癌細胞を、15%FBSおよび2% P/Sを含むmedium199/MCDB105培地(1:1)中、37℃にて5% CO2でインキュベーター中で培養した。OV90細胞はATCCから入手した。U87MG膠芽腫細胞を、10%FBSおよび2%P/Sを含むEMEM培地中、37℃にて5%CO2で培養した。U87MG細胞はMerck社から入手した。
【0206】
DCOne mDCによる外来抗原CRM197の取り込み
DCOne mDC細胞による外来抗原の取り込みを、成熟中の4時間および24時間、終濃度10μg/mLの外来抗原について評価した。750,000細胞を、各条件の6ウェルプエートに播種した。用いる外来抗原は、CRM197-Alexa488(Fina Biosolutions)であった。外来抗原の取り込みをフローサイトメトリーにより評価した。0.08%トリパンブルーを用いて、外部に結合したタンパク質をクエンチし、内在化したタンパク質のみを可視化した。
【0207】
外来抗原CRM197による腫瘍細胞の標識
DCOne前駆AML細胞、OV90卵巣癌細胞、U87MG膠芽腫癌細胞の標識を、4時間および24時間、終濃度10μg/mLで評価した。100,000細胞を、各条件の96ウェルプエートに播種した。用いた外来抗原は、CRM197-Alexa488(Fina Biosolutions)であった。インビトロでの腫瘍細胞の標識は、DCOne mDC細胞について上記のようにフローサイトメトリーにより評価した。
【0208】
ヒト化OV90luc卵巣癌マウスモデル
複数のNCGに、5e4臍帯血由来CD34+造血幹細胞および前駆細胞を静脈内(IV)注射で移植した。腫瘍生着のために、マウスにルシフェラーゼを発現する5e6 OV90luc卵巣癌を皮下注射した。腫瘍サイズでマウスを無作為化し、1群当たり5匹を含む異なるワクチン接種群に分けた。ワクチン接種開始時の平均腫瘍サイズは80mm3であった。すべてのマウスに腹腔内(i.p.)ワクチン接種を2回行い、腫瘍をマーキングするために腫瘍内(i.t.)注射を1回行った。
【0209】
マウスは、以下のスケジュールで、腹腔内(i.p.)投与当たり50μg CRM197またはPBSのi.p投与を受け、25μg CRM197をi.t.注射した:
群1(PBS/PBS)は、PBSワクチン接種の腹腔内(i.p.)投与2回(無作為化後2週目および3週目)、およびPBSの腫瘍内(i.t.)注射1回(無作為化後4週目)を受けた。
群2(PBS/CRM197)は、PBSワクチン接種の腹腔内(i.p.)投与2回(無作為化後2週目および3週目)、およびCRM197の腫瘍内(i.t.)注射1回(無作為化後4週目)を受けた。
群3(CRM197/PBS)は、CRM197ワクチン接種のi.p.投与2回(無作為化後2週目および3週目)、およびPBSのi.t.注射1回(無作為化後4週目)を受けた。
群4(CRM197/CRM197)は、CRM197ワクチン接種のi.p.投与2回(無作為化後2週目および3週目)、およびCRM197のi.t.注射1回(無作為化後4週目)を受けた。
【0210】
CRM197は、Fina Biosolutions社から購入した。腫瘍の増殖抑制(キャリパー測定およびBLIイメージング)および免疫応答の誘導を測定した。
【0211】
DCOne mDCによるCRM197の取り込み
成熟プロセス中、DCOne mDC細胞を、材料および方法セクションに記載のように、CRM197-Alexa488と共に4時間および24時間培養した。4時間および24時間後、DCOne mDC細胞による抗原CRM-197の取り込みを、上記のセクションで記載の通り、トリパンブルーの存在および不存在下でフローサイトメトリーを用いて分析した。本発明者らは、DCOne mDC細胞の90.6±5.4%および99.4±0.1%が、それぞれ4時間および24時間後、効率的な内在化CRM-197を有したことを観察した。トリパンブルー消光はこれらの結果に影響しなかった(それぞれ87.6±8.0%および99.5±0.2%;
図7A)。
【0212】
CRM197によるDCOne前駆細胞の標識化
DCOne前駆細胞による4時間後のCRM197-Alexa488の取り込みの割合は、94.2±3.3%であり、24時間後の標識は、99.5±0.8%まで増加した。トリパンブルー消光は、シグナルに影響を与えず、これはCRM-197が主に、細胞内に存在することを示唆している(それぞれ4時間後および24時間後に、トリパンブルーで90.7±7.3%および98.8±1.7%;
図7B)。
【0213】
CRM197によるOV90腫瘍細胞の標識化
OV90腫瘍細胞による4時間後のCRM197-Alexa488の取り込みの割合は、82.0±2.5%であり、24時間後の標識は、98.2±0.1%まで増加した。トリパンブルー消光は、シグナルに影響を与えず、これはCRM-197が主に、細胞内に存在することを示唆している(それぞれ4時間後および24時間後に、トリパンブルーで72.7±11.9%および97.6±1.4%;
図7C)。
【0214】
CRM197によるU87MG腫瘍細胞の標識化
U87MG腫瘍細胞による4時間後のCRM197-Alexa488の取り込みの割合は、95.3±2.6%であり、24時間後の標識は、99.4±0.4%まで増加した。トリパンブルー消光は、シグナルに影響を与えず、これはCRM-197が主に、細胞内に存在することを示唆している(それぞれ4時間後および24時間後に、トリパンブルーで93.9±4.2%および98.8±0.7%;
図7D)。
【0215】
ヒト化OV90luc卵巣癌モデルにおける腫瘍増殖
腫瘍増殖を、処置の開始から週1回のノギス測定(calliper measurement)と光学的イメージングによりモニターした。OV90lucマウスに、PBSまたはCRM197のいずれかを2回i.p.で接種し、PBSまたはCRM197のいずれかで腫瘍をマーキングするために1回i.t.で注射した。腫瘍増殖を、デジタルノギスを用いて1週間ごとにモニターした。腫瘍の体積(mm3)を、楕円体近似式(ellipsoid formula) (LxWxH)π/6で算出した。
【0216】
CRM197を接種したマウスでは、PBSを注入したマウスと比較して、腫瘍体積に差は見られなかった(
図8A)。生物発光データによると、CRM197をワクチン接種したマウスにCRM197をi.t.で注射したところ、生物発光強度が有意に低下した(
図8Bおよび
図9)。これは、このCRM197ワクチン接種/CRM197 i.t.群において、OV90卵巣癌細胞の増殖が顕著に停止したことを示している。
【0217】
これらのヒト化マウスを用いたインビボデータは、CRM197のワクチン接種後の腫瘍内注射(腫瘍マーキング)が、癌細胞の増殖停止をもたらすことを示している
【0218】
実施例5.インビボ細胞毒性CRM197の概念実証
ヒト化腫瘍マウスモデルにおいて、CRM197を腫瘍非依存性抗原としてプライム・ブースト戦略を試験するために用いる。本試験の目的は、ワクチン接種プロトコールの最適化、腫瘍を確実に退縮させるための最適なマウスモデルを用いた初期実験の繰り返し、腫瘍部位での免疫活性化のための免疫組織化学を用いた腫瘍の評価である。
【0219】
ワクチン接種戦略
腹腔内ワクチン接種:
(1週目、移植前、1週目、移植後)
I. 生理食塩水を用いたワクチン接種(6匹のマウス)。
II. 生理食塩水を用いたワクチン接種(6匹のマウス)。
III. CRM197を用いたワクチン接種(6匹のマウス) 。
IV. CRM197を用いたワクチン接種(6匹のマウス)。
腫瘍内注射:
(移植後3週目)
I. 生理食塩水を用いた腫瘍内ワクチン接種(6匹のマウス)。
II. CRM197を用いた腫瘍内ワクチン接種(6匹のマウス)。
III. 生理食塩水を用いた腫瘍内ワクチン接種(6匹のマウス)。
IV. CRM197を用いた腫瘍内ワクチン接種(6匹のマウス)。
【0220】
本試験を、U87MG膠芽腫細胞株を用いたHB-EGF発現腫瘍を有するマウスで実施する。試験読み出しデータ(clinical readout)は、腫瘍の退縮/排除および生存率である。免疫細胞の腫瘍への浸潤を調べるため、腫瘍の免疫組織化学を評価する。血清分析を、抗CRM抗体を検出するために行う。ワクチン接種量は、50μgのCRM197/マウスである。腫瘍内投与量は25μg CRM197/マウスである。
【0221】
【配列表】
【国際調査報告】