IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】ヘアコンディショニング組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20220620BHJP
   A61K 8/892 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220620BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/892
A61K8/41
A61K8/42
A61K8/34
A61K8/31
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562999
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2020060611
(87)【国際公開番号】W WO2020216661
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】19171398.1
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】エイブリー,アンドリュー・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ディキンソン,ケルビン・ブライアン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB332
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC532
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC862
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB04
4C083BB06
4C083BB12
4C083CC33
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE29
(57)【要約】
本発明は、分岐有機ポリシロキサン、「水中油型」乳濁液を含むヘアケア組成物に関する。従来技術にもかかわらず、ヘアケア組成物をコンディショニングすることによってもたらされる利益を高める機会がなおも存在する。特に髪の傷んだ部分に、強化されたシリコーン沈着をもたらし得るヘアケア組成物に対する特定のニーズが存在する。従って、本発明の目的は、髪、特に傷んだ髪への強化されたシリコーン沈着をもたらし得るヘアケア組成物を提供することにある。これは、水及びカチオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤のブレンドの水性連続相と、分岐有機ポリシロキサン及び炭化水素油の分散相とを含む分岐有機ポリシロキサンの水性乳濁液を有するコンディショニングゲル相を含み、前記水性乳濁液が5ミクロン以上12ミクロン未満のDv(50)の粒径を有するヘアケア組成物によって達成することができることが認められた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:(RSiO3/2
[式中、
n=1であり、
Rはアルキル基、好ましくはメチル、エチル又はプロピルである。]
を有するシルセスキオキサンのモノマー単位及びポリジアルキルシロキサンのコポリマーセグメントを含む分岐有機ポリシロキサンの水性乳濁液を有するコンディショニングゲル相を含むヘアケア組成物であって、前記コンディショニングゲル相がカチオン性界面活性剤、高融点(25℃以上)の脂肪化合物、及び水性担体から形成されており、前記分岐有機ポリシロキサンの水性乳濁液が、水及びカチオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤のブレンドの水性連続相と、前記分岐有機ポリシロキサン及び炭化水素油の分散相とを含み、前記水性乳濁液が5ミクロン以上12ミクロン未満のDv(50)の粒径を有するヘアケア組成物。
【請求項2】
前記水性乳濁液が7ミクロン以上12ミクロン未満のDv(50)の粒径を有する、請求項1に記載のヘアケア組成物。
【請求項3】
前記分岐有機ポリシロキサンの前記炭化水素油に対する重量比が40:60~65:35である、請求項1又は2に記載のヘアケア組成物。
【請求項4】
前記分岐有機ポリシロキサンの前記炭化水素油に対する重量比が50:50~60:40である、請求項1~3のいずれか1項に記載のヘアケア組成物。
【請求項5】
前記分岐有機ポリシロキサンの前記炭化水素油に対する重量比が60:40である、請求項1~4のいずれか1項に記載のヘアケア組成物。
【請求項6】
前記分岐有機ポリシロキサンが、20℃にて100Hz~0.1Hzの周波数ウィンドウにわたりギャップサイズ0.5mm、固定ひずみ0.5%で実施される平行幾何形状を備えた応力制御レオメーターMCR501(Anton Paar、オーストリア)を使用して、10Hzで測定された2×10Pa~3×10Paの貯蔵弾性率を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のヘアケア組成物。
【請求項7】
前記炭化水素油がイソヘキサデカン又は鉱油である、請求項1~6のいずれか1項に記載のヘアケア組成物。
【請求項8】
前記コンディショニングゲル相を形成するのに使用される前記カチオン性界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)、プロトン化ステアラミドプロピルジメチルアミン及びそれらの混合物から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のヘアケア組成物。
【請求項9】
前記コンディショニングゲル相を形成するのに使用される前記脂肪化合物が、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びそれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のヘアケア組成物。
【請求項10】
傷んだ毛髪への強化されたシリコーン沈着のための、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非直鎖有機ポリシロキサン、「水中油型」乳濁液を含むヘアケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーは余分な汚れや皮脂を除去することで髪を清潔にする。しかしながら、シャンプーを行うと、髪は濡れて、絡まり、概して管理できない状態に放置される可能性がある。髪が乾くと、髪の天然オイルやその他の天然のコンディショニング成分及び保湿成分が除去されるため、乾燥し、ざらざらした、光沢のない、又は縮れた状態のままになる場合が多い。髪や髪の一部が傷んでいると、シャンプーすると、シャンプーした通常の髪より髪の状態が悪くなることは間違いないと考えられる。髪をコンディショニングするために、多様なアプローチが開発されてきた。髪にコンディショニングの利点を提供する一般的な方法は、カチオン性界面活性剤及びポリマー、高融点脂肪化合物、低融点オイル、シリコーン化合物、及びそれらの混合物などのコンディショニング剤の使用によるものである。シリコーン類は公知であり、好ましいコンディショニング剤の一つである。
【0003】
従来技術にもかかわらず、ヘアケア組成物をコンディショニングすることによってもたらされる利益を高める機会がなおも存在する。特に髪の損傷した部分への、シリコーン沈着を強化し得るヘアケア組成物に対する特定のニーズが存在する。
【0004】
WO2016/041748は、コンディショニングゲル相を水性ポリジメチルシロキサンポリマー乳濁液と混合することによって得ることができるヘアケア組成物を開示しており、そのコンディショニングゲル相は、カチオン性界面活性剤、高融点(25℃以上)の脂肪化合物及び水性担体から形成され、前記水性ポリジメチルシロキサンポリマー乳濁液は、水並びにノニオン性及びカチオン性界面活性剤の混合物からなる水性連続相と、ポリジメチルシロキサンポリマー及び炭化水素油からなる分散相とを有し、前記ポリジメチルシロキサンポリマーは25℃で50,000~110,000cPの動粘度を有し、前記炭化水素油は40℃で1~35cStの動粘度及び25℃で0.76~0.87の比重を有しており、前記ポリジメチルシロキサンポリマーの前記炭化水素油に対する重量比は45:55~70:30である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/041748
【発明の概要】
【0006】
従って、本発明の目的は、髪への強化されたシリコーン沈着をもたらし得るヘアケア組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、傷んだ髪への強化されたシリコーン沈着をもたらし得るヘアケア組成物を提供することにある。
【0008】
驚くべきことに、上記の目的は、水及びカチオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤のブレンドの水性連続相並びに非直鎖有機ポリシロキサン及び炭化水素油の分散相を含む非直鎖有機ポリシロキサンの水性乳濁液を有するコンディショニングゲル相を含み、水性乳濁液が12ミクロン未満のDv(50)の粒径を有するヘアケア組成物によって達成することができることが分かった。
【0009】
従って、第1の態様では、本発明は、式:(RSiO3/2[式中、n=1であり、Rはアルキル基、好ましくはメチル、エチル又はプロピルである。]を有するシルセスキオキサンのモノマー単位及びポリジアルキルシロキサンのコポリマーセグメントを含む分岐有機ポリシロキサンの水性乳濁液を有するコンディショニングゲル相を含むヘアケア組成物であって、コンディショニングゲル相がカチオン性界面活性剤、高融点(25℃以上)の脂肪化合物、及び水性担体から形成されており、分岐有機ポリシロキサンの水性乳濁液が、水及びカチオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤のブレンドの水性連続相と、分岐有機ポリシロキサン及び炭化水素油の分散相とを含み、水性乳濁液が5ミクロン以上12ミクロン未満のDv(50)の粒径を有するヘアケア組成物を提供する。
【0010】
第2の態様では、本発明は、傷んだ毛髪への強化されたシリコーン沈着のための本発明による組成物の使用を提供する。
【0011】
これら及び他の態様、特徴及び利点は、下記の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読むことにより、当業者に明らかになるであろう。誤解を避けるために、本発明の1態様の任意の特徴を、本発明の他の任意の態様で利用することができる。「含む(comprising)」という言葉は、「含む(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「構成されている(composed of)」とは限らない。言い換えれば、列記された段階又は選択肢は網羅的である必要はない。留意すべき点として、下記の説明に記載されている例は、本発明を明確にすることを意図するものであり、本発明をそれらの例自体に限定することを意図していない。同様に、別断の断りがない限り、全てのパーセントは重量/重量パーセントである。動作例及び比較例を除いて、又は別断で明瞭に示されている場合を除き、材料の量又は反応条件、材料の物性、及び/又は使用を示す本説明における全ての数字は、「約」という単語によって修飾されているものと理解されるべきである。「xからyまで」の形式で表される数値範囲は、x及びyを含むものと理解される。特定の特徴について、複数の好ましい範囲が「xからyまで」の形式で記述される場合、異なるエンドポイントを組み合わせた全ての範囲も想到されることは明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
コンディショニングゲル相
コンディショニングゲル相を形成するのに有用な好適なカチオン性界面活性剤の例には、下記一般式に相当する四級アンモニウムカチオン性界面活性剤などがある。
【化1】
【0013】
式中、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、(a)1~22個の炭素原子の脂肪族基、又は(b)最大22個の炭素原子を有する芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリール又はアルキルアリール基から選択され;Xは、ハライド(例えば、塩化物、臭化物)、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、硝酸リン酸塩、硫酸塩、及び硫酸アルキル基から選択されるものなどの塩形成性アニオンである。
【0014】
脂肪族基は、炭素及び水素原子に加えて、エーテル連結、及びアミノ基などの他の基を含むことができる。より長鎖の脂肪族基、例えば、約12個以上の炭素のものは、飽和又は不飽和であることができる。
【0015】
上記の一般式のそのような四級アンモニウムカチオン性界面活性剤の具体例は、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)、セチルピリジニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、タロウトリメチルアンモニウムクロリド、ココトリメチルアンモニウムクロリド、ジパルミトイルエチルジメチルアンモニウムクロリド、PEG-2オレイルアンモニウムクロリド及びこれらの塩であり、前記のクロリドは他のハライド(例えば、ブロミド)、アセテート、シトレート、ラクテート、グリコレート、ホスフェートナイトレート、サルフェート、又はアルキルサルフェートによって置き換わる。
【0016】
上記の一般式のカチオン性界面活性剤の好ましい種類において、Rは、C16~C22の飽和又は不飽和、好ましくは飽和のアルキル鎖であり、R、R及びRはそれぞれ独立に、CH及びCHCHOH、好ましくはCHから選択される。
【0017】
コンディショニングゲル相の形成に使用されるそのような好ましい四級アンモニウムカチオン性界面活性剤の具体例は、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)及びこれら混合物である。
【0018】
あるいは、1級、2級又は3級脂肪アミンを酸と組み合わせて使用して、本発明での使用に適したコンディショニングゲル相を提供するのに適したカチオン性界面活性剤を提供することができる。その酸はアミンをプロトン化し、ヘアケア組成物中でイン・サイツでアミン塩を形成する。したがって、そのアミンは効果的に、非永久的四級アンモニウム又は疑似四級アンモニウムカチオン性界面活性剤である。
【0019】
この種類の好適な脂肪アミンには、下記の一般式のアミドアミンなどがある。
【化2】
【0020】
式中、Rは12~22個の炭素原子を含む脂肪酸鎖であり、Rは1~4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立に、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0021】
上記一般式の適切な材料の具体例としては、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン,ステアラミドエチルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジエチルアミン、パルミタミドエチルジエチルアミン、パルミタミドエチルジメチルアミン、ベヘンアミドプロピルジメチルアミン、ベヘンアミドプロピルジエチルアミン、ベヘンアミドエチルジエチルアミン、ベヘンアミドエチルジメチルアミン、アラキドアミドプロピルジメチルアミン、アラキドアミドプロピルジエチルアミン、アラキドアミドエチルジエチルアミン、アラキドアミドエチルジメチルアミン、及びジエチルアミノエチルステアラミドがある。
【0022】
ジメチルステアラミン、ジメチルソイアミン、ソイアミン、ミリスチルアミン、トリデシルアミン、エチルステアリルアミン、N-タロウプロパンジアミン、エトキシ化(5モルのエチレンオキサイドで)ステアリルアミン、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、及びアラキジルベヘニルアミンも有用である。
【0023】
特に好ましいものはステアラミドプロピルジメチルアミンである。
【0024】
使用される酸は、ヘアケア組成物中のアミンをプロトン化することができる有機酸又は鉱酸であることができる。好適な酸には、塩酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、及びそれらの混合物などがある。好ましくは、その酸は、酢酸、酒石酸、塩酸、フマル酸、乳酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
上記のカチオン性界面活性剤のいずれかの混合物もまた適切であり得る。
【0026】
カチオン性界面活性剤のレベルは、好適には、0.1~10重量%、好ましくは0.2~5重量%、より好ましくは0.25~4重量%の範囲である(ヘアケア組成物の総重量に基づくカチオン性界面活性剤の総重量による)。
【0027】
本発明の文脈における「高融点」とは、一般に、25℃以上の融点を意味する。一般に、融点は25℃~90℃、好ましくは40℃~70℃、より好ましくは50℃~約65℃の範囲である。
【0028】
高融点脂肪化合物は、単一の化合物として、又は少なくとも二つの高融点脂肪化合物のブレンド又は混合物として使用することができる。脂肪性化合物のブレンド又は混合物が使用される場合、融点は、ブレンド又は混合物の融点を意味する。
【0029】
この種類の適切な脂肪化合物は、一般式R-Xを有し、Rは脂肪族炭素鎖であり、Xは官能基(例えば、アルコール又はカルボン酸又はエステル若しくはアミドなどのそれらの誘導体)である。
【0030】
Rは、好ましくは、8~30個の炭素原子、好ましくは14~30個の炭素原子、より好ましくは16~22個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭素鎖である。
【0031】
Rは、炭素原子及び水素原子に加えて、エーテル連結、及びアミノ基などの他の基を含むことができる。好ましくは、Rは、8~30個の炭素原子、好ましくは14~30個の炭素原子、より好ましくは16~22個の炭素原子を含む直鎖アルキル鎖である。
【0032】
Xは好ましくは-OH基である。
【0033】
最も好ましくは、脂肪化合物は、一般式CH(CHOHの脂肪アルコールであり、nは、7~29、好ましくは15~21までの整数である。
【0034】
好適な脂肪アルコールの具体例は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びそれらの混合物である。セチルアルコール、ステアリルアルコール及びそれらの混合物が特に好ましい。
【0035】
上記の脂肪化合物のいずれかの混合物も好適であり得る。
【0036】
脂肪化合物のレベルは、好適には、0.01~10重量%、好ましくは0.1~8重量%、より好ましくは0.2~7重量%、最も好ましくは0.3~6重量%の範囲である(ヘアケア組成物の総重量に基づく脂肪化合物の総重量による)。
【0037】
カチオン性界面活性剤の脂肪化合物に対する重量比は、好適には1:1~1:10、好ましくは1:1.5~1:8、最適には1:2~1:5である。
【0038】
本発明での使用に適したコンディショニングゲル相は、界面活性剤二重層からなるゲル(Lβ)界面活性剤中間相として特徴付けることができる。
【0039】
このようなコンディショニングゲル相を調製するための一般的プロセスでは、カチオン性界面活性剤、高融点脂肪化合物、及び水性担体を加熱して混合物を形成し、これを剪断下で室温まで冷却する。その混合物は、冷却中に多くの相転移を経て、通常は、界面活性剤二重層からなるゲル(Lβ)界面活性剤中間相となる。その二重層は、成長、膨潤、又は折りたたまれて、延伸シート又は球状の小胞を形成し得る。
【0040】
好ましくは、ゲル(Lβ)界面活性剤中間相の形成は、混合物の温度を、それが、混合容器中で指定された範囲、一般に約55~約67℃の範囲内となるように維持することによって制御される。
【0041】
そのような好ましいプロセスの例において、脂肪化合物及びカチオン性界面活性剤は、第1の容器内で「共融解」して、等方相を形成することができる。共融解物は、代表的には、45~90重量%の一般式CH(CHOHの脂肪アルコール(式中、nは、7~29、好ましくは15~21の整数である。);10~40重量%の一般式[N(R)(CH(X)カチオン性界面活性剤(式中、RはC16~C22の飽和アルキル鎖であり、Xはハライドである。);及び0~15重量%の水(共融解物の総重量に基づく重量による)を含む。第1の容器中の共融解物は、代表的には、脂肪化合物を液相に維持するのに十分な温度(通常は約80~85℃)に維持する。次に、共融解物を、約50~約60℃の水が入った第2の容器に加え、共融解物と水を混和させる。第2の容器において、共融解物と水の混合物の温度を、それが56~65℃、好ましくは58~62℃、より好ましくは約60℃に維持されるように制御する。上記のような共融解物のカチオン性界面活性剤成分はまた、下記一般式の脂肪アミドアミンを含むことができるか、それからなることができる。
【化3】
【0042】
式中、Rは12~22個の炭素原子を含む脂肪酸鎖であり、Rは1~4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立に、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。この場合、第2の容器中の水は好適には、脂肪アミドアミンをプロトン化することができる0.01~3重量%の有機酸又は鉱酸を適切に含むものであろう。
【0043】
好ましいプロセスの別の例では、「共融解物」(上記のものなど)及び水を独立に混合容器に加え、混合物に加えられた水の温度を変えることによって共融解物と水の混合物の温度を制御する連続プロセスで混和することができる。水は単回で又は小分けで加えることができる。代表的には、第1の水容器を約40℃に維持し、混合容器にポンプで送りながら、第2の水容器を、水と共融解物の混合物の温度を上記のような必要な範囲内に収まるように変えるのに十分な温度に維持する。
【0044】
好ましいプロセスの別の例では、脂肪化合物とカチオン性界面活性剤を水性分散液中で組み合わせることができる。このプロセスによれば、水性分散液を調製し、その分散液は、代表的には、25~50重量%の水、4~20重量%の一般式CH(CHOH(nは7~29、好ましくは15~21の整数である。)の脂肪アルコール;1~5重量%の下記一般式の脂肪アミドアミンを含む。
【化4】
【0045】
式中、Rは12~22個の炭素原子を含む脂肪酸鎖であり、Rは1~4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立に、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である(分散液の総重量に基づく重量で)。好ましくは、水分散液の温度は、脂肪アルコールの融点より高く、好ましくは脂肪アルコールの融点より少なくとも5℃高く維持される。次に、一般式[N(R)(CH(X)のカチオン性界面活性剤(RはC16~C22の飽和アルキル鎖であり、Xはハライドである。)を、概して0.5~5重量%(混合物の総重量に基づく重量で)のレベルで、水分散液に添加及び混合することができる。
【0046】
好ましくは、カチオン性界面活性剤と水分散液との混合を、粘度の測定によってモニタリングして、粘度がプラトーに変化したときに混合が完了するようにする(概して、混合の約20~60分後)。混合が完了した後、脂肪アミドアミンを、上記のように適切な酸で中和する。好ましくは、水分散液とカチオン性界面活性剤との混合物の温度を、56~67℃、好ましくは58~65℃、より好ましくは約63℃に維持する。好ましくは、プロセスはバッチプロセスである。
【0047】
本発明での使用に適したコンディショニングゲル相を作製する別の好ましいプロセスは、カチオン性界面活性剤(代表的には一般式[N(R)(CH(X);RはC16~C22の飽和アルキル鎖であり、Xはハライドである。)の等方性水溶液を形成すること;並びに当該カチオン性界面活性剤の等方性水溶液と溶融脂肪化合物(代表的には、一般式CH(CHOHの脂肪アルコール;nは7~29、好ましくは15~21の整数である。)を混合することを含む。代表的には、脂肪アルコールは、カチオン性界面活性剤の等方性水溶液に添加する前に、それを液相に維持するのに十分な温度(通常は約80~85℃)に維持される。好ましくは、脂肪アルコールと等方性水溶液の混合物の温度は、55℃~65℃、より好ましくは58℃~62℃、そして最も好ましくは約60℃に維持する。
【0048】
水性非直鎖状有機ポリシロキサン乳濁液
本発明のヘアケア組成物は、コンディショニングゲル相を、水及びカチオン性界面活性剤又はノニオン性とカチオン性界面活性剤のブレンドからなる水性連続相と、非直鎖状有機ポリシロキサン及び炭化水素油からなる内部の分散相とを有する水性乳濁液と混合することで得られる。好ましくは、有機ポリシロキサンの上記油に対する重量比は、40:60~65:35、より好ましくは50:50~65:35、さらにより好ましくは55:45~65:35、最も好ましくは60:40である。
【0049】
本発明の非直鎖状有機ポリシロキサンは、式(RSiO3/2を有するシルセスキオキサンのモノマー単位:
[式中、
n=1であり;
Rは、アルキル基、好ましくはメチル、エチル又はプロピル、より好ましくはメチルである。]
及びポリジアルキルシロキサンのコポリマー部分[ここで、アルキル基は、好ましくはメチルであり、末端基は好ましくは-OHであり;最も好ましいポリジアルキルシロキサンはジメチコノールである。]
を含む。
【0050】
本発明の有機ポリシロキサンの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合、好ましくは700,000Daを超え、より好ましくは800,000Daより大きく、さらにより好ましくは900,000Daより大きく、さらにより好ましくは950,000Daより大きく、最も好ましくは10,000,000Daより大きいが、典型的には1,400,000Da未満、好ましくは1,200,000Da未満である。誤解を避けるために、単位ダルトン(Da)は統一原子質量単位(u)としても知られている。
【0051】
平行幾何形状を備えた応力制御レオメーターMCR501(Anton Paar、オーストリア)を使用して、有機ポリシロキサン/炭化水素ブレンドの特性決定を行った。試験は、温度20℃にて、100Hz~0.1Hzの周波数ウィンドウにわたりギャップサイズ0.5mm、固定ひずみ0.5%で実行した。プレート端部の過剰なサンプルはトリミングした。荷重後、応力緩和のためにサンプルを60秒間放置した。データは、1ディケードにつき10ポイントの対数ステップで収集した。非直鎖状有機ポリシロキサン及び炭化水素油を含む分散相の貯蔵弾性率は、有機ポリシロキサン:油の重量比に感受性であり、上記で規定された重量比の場合、10Hzで、1×10Pa~2×10Paの範囲であることができる。
【0052】
炭化水素の留去後に、有機ポリシロキサンのレオロジーも特性決定した。これらの測定では、炭化水素が蒸発する間、質量を経時的に追跡した。その塊に炭化水素が残っていないことを示したら、有機ポリシロキサンサンプルを上記のように特性決定した。
【0053】
好ましくは、非直鎖状有機ポリシロキサンは、10Hzで測定して、2×10Pa~3×10Pa、好ましくは8×10Pa~2×10Pa、より好ましくは1×10Pa~1.6×10Paの範囲の貯蔵弾性率を有する。
【0054】
参照により本明細書に組み込まれるWO2015/122989及びUS2012/022210には、本発明の分岐有機ポリシロキサン及び有機ポリシロキサンの水性乳濁液を調製する方法が記載されている。
【0055】
理論に拘束されることを望むものではないが、分子レベルでは、複数の種類のトポロジー構造が、分子当たり2つより多い反応性基を含む分岐剤と、平均で2つの官能基を含む直鎖前駆体分子間の重縮合反応から得られると考えられている。このため、本発明の有機ポリシロキサンは、WO2015/122989及びUS2012/022210において、そのような反応の生成物を定義するために非直鎖状有機ポリシロキサンとして記載されている。そのような反応生成物は、当技術分野で公知の複数の種類のトポロジーポリマー構造を含み得る。そのような構造には、例えば分岐のものなどがある。
【0056】
本発明の非直鎖状有機ポリシロキサンは、分岐有機ポリシロキサンである。
【0057】
本発明の文脈における好適な炭化水素油には、約10~約50個の炭素原子を有する飽和の非極性直鎖若しくは分岐鎖脂肪族又は脂環式炭化水素、及びそれらの混合物などがある。
【0058】
本発明の文脈における好ましい炭化水素油は、軽質鉱油及びイソヘキサデカンである。
【0059】
鉱油は、石油から得られる透明な油性液体であり、そこからワックスが除去され、より揮発性の高い留分が蒸留によって除去される。250℃~300℃で蒸留される留分は鉱油と呼ばれ、それは、炭化水素の混合物からなり、炭化水素分子当たりの炭素原子の数は一般にC10~C40の範囲である。
【0060】
鉱油は、それの粘度の観点から特徴付けることができ、軽質鉱油は重質鉱油よりも粘度が低い。適した軽質鉱油は、一般に、40℃で3.9~5.0cStの動粘度及び25℃で0.810~0.830の比重を有する。そのような材料は、商品名Lytol(商標名)で市販されている。
【0061】
例えばPresperse Inc.,N.J.,U.S.A.から入手可能な商品名Permethyl 101Aで供給されるものなどのイソヘキサデカンは、本発明での使用に適した分子式C1634の分岐炭化水素である。それは、沸点約240℃の無色液体である。
【0062】
本発明の実施にとって重要なのは、分散相において、非直鎖状有機ポリシロキサンと炭化水素油の両方が、二つの異なる乳濁液の混合物ではなく、同じ液滴内にあることである。
【0063】
好ましい実施形態において、本発明で使用される水性乳濁液は、アルキルポリエチレングリコールエーテル、例えば、PEG-7プロピルヘプチルエーテルなどのノニオン性界面活性剤、及びセチルトリメチルアンモニウムクロリドなどのカチオン性界面活性剤のブレンドを含む水性連続相を有する。
【0064】
使用される界面活性剤の総量は、選択される特定の界面活性剤及び乳濁液の標的組成に応じて変化するが、一般に、水性乳濁液の0.84~2.51重量%の範囲である。水性乳濁液内の有機ポリシロキサン及び炭化水素を含む内部の分散相は、乳濁液の50重量%~73重量%の範囲であり得る。
【0065】
シリコーンを乳化するときに代表的に適用される他の界面活性剤の選択もまた、性能に悪影響を与えずに(この性能は毛髪上に沈着する内部相の作用に由来するものであることから)、上記の本発明の内部分散相の成分に適用することができる。例えば、ノニオン性乳化界面活性剤を使用せずに、カチオン性乳化界面活性剤のみを使用することも考えられ得る。
【0066】
乳濁液の内部分散相によって表されるコンディショナー製剤の重量%は、0.05~3.5%、好ましくは0.1~3%、より好ましくは0.2~2.75%、さらにより好ましくは0.5~2.5%の範囲であり得る。
【0067】
乳濁液の特徴の一つは、粒子サイズである。これは、例えば、当技術分野でよく文書化されているレーザー回折粒径分析法によって測定することができる。乳濁液の粒子サイズを特徴づけるために使用できるいくつかのパラメーターがある。たとえば、パラメーターDv(50)は、すべての分散材料の集団の50%が含まれる、粒子直径の範囲に対する上限を表す。
【0068】
本発明の水性乳濁液は、少なくとも5ミクロン~12ミクロン未満、より好ましくは少なくとも6ミクロン又は少なくとも7ミクロンであるが典型的には11ミクロン以下、好ましくは10ミクロン以下、より好ましくは8ミクロン以下、さらにより好ましくは7ミクロン以下、さらにより好ましくは6ミクロン以下であるDv(50)値の粒径を有する。
【0069】
本発明の水性乳濁液は、5ミクロン~12ミクロン未満のDv(50)、好ましくは7ミクロン~12ミクロン未満のDv(50)の粒径を有する。
【0070】
粒径が大きくなるにつれて、消費者が嫌う髪のコーティング感の可能性がより重要になる。このため、粒径を12ミクロン未満のDv(50)に制限することが好ましい。
【0071】
乳濁液の粒径は、当業者に公知の方法によって制御することができる。本発明の乳濁液及び比較乳濁液は、レーザー回折粒径測定を使用して、より具体的には、Hydro 2000SM分散ユニットを備えたMalvern Instruments Mastersizer 2000粒径アナライザー(Malvern Instruments, UK)を使用して特性決定した。
【0072】
製品形態及び任意成分
本発明のヘアケア組成物は、主に、毛髪繊維の潤滑、滑らかさ、柔らかさ、扱いやすさ、並び、ボディフィケーション、成形力及び輝きなどの毛髪特性を改善するために、対象者の毛髪及び/又は頭皮への局所塗布を意図している。
【0073】
本発明のヘアケア組成物は、代表的には、毛髪に塗布され、その後、部分的に洗い流される「リンスオフ」組成物である。
【0074】
特に好ましい製品形態は、髪のトリートメント(通常はシャンプー後)及びそれに続くすすぎのためのコンディショナーである。
【0075】
一般に、そのような組成物は、毛髪(好ましくは、シャンプーされ、次に水ですすがれた毛髪)に塗布され、次いで、毛髪を通して作用する。次に、好ましくは、組成物を約1~3分間髪に浸透させてから、水で髪から洗い流す。代表的には、組成物約1g~約50gが毛髪又は頭皮に塗布される。
【0076】
本発明のヘアケア組成物は、一般に、総重量に基づく重量で約20%~約95%の水、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%又は少なくとも70%、しかし代表的には94%以下、好ましくは93%以下、より好ましくは92%以下、さらにより好ましくは91%以下、さらにより好ましくは90%以下、さらには80重量%以下の水を含む。低級アルキルアルコール及び多価アルコールなどの他の有機溶媒も存在していてもよい。低級アルキルアルコールの例には、エタノール及びイソプロパノールなどのC~Cの一価アルコールなどがある。多価アルコールの例には、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、及びプロパンジオールなどがある。上記の有機溶媒のいずれかの混合物を使用することもできる。
【0077】
本発明のヘアケア組成物はまた、性能及び/又は消費者の許容度を高めるために他の任意成分を組み込んでもよい。適切な任意成分には、防腐剤、着色剤、キレート剤、抗酸化剤、香料、抗菌剤、ふけ防止剤、カチオン性コンディショニングポリマー、スタイリング成分、日焼け止め、タンパク質及び加水分解タンパク質などがあるが、これらに限定されない。
【0078】
第2の態様において、本発明は、傷んだ髪への強化されたシリコーン沈着のための本発明による組成物の使用に関する。
【0079】
髪の傷んだ表面へのシリコーンの強化された沈着は、シリコーンの標的をそれが必要とされる領域に絞り、コンディショニングをあまり必要としない領域を不必要にコーティングしないことから、利点を提供する。傷んでいない領域へのシリコーンの送達は、製品のユーザーにとって望ましくない、重い、コーティング感に寄与する可能性がある。
【0080】
次に、下記の実施例を参照することにより、本発明をさらに説明する。実施例においては、別断の指定がない限り、すべてのパーセンテージは総重量に基づく重量基準である。
【実施例
【0081】
例1:シリコーン沈着に対する本発明の組成物の効果
下記の表1に示された成分を有するヘアコンディショニング組成物を調製した。コンディショナー実施例1、2、3、4及び5は、本発明による組成物を表す。
【0082】
表1において、実施例乳濁液1、2、3、4及び5は、本発明による水性有機ポリシロキサン乳濁液を表す。実施例乳濁液1~5は、分岐有機ポリシロキサン/イソヘキサデカンとセチルトリメチルアンモニウムクロリド、PEG-7プロピルヘプチルエーテ(Dow Conrningなど)の乳濁液であるが、粒径は変動する。実施例乳濁液1の水性乳濁液は、1.5ミクロンDv(50)の粒径を有する。実施例乳濁液2の水性乳濁液は、2.6ミクロンDv(50)の粒径を有する。実施例乳濁液3の水性乳濁液は、4.2ミクロンDv(50)の粒径を有する。実施例乳濁液4の水性乳濁液は、7.16ミクロンDv(50)の粒径を有する。実施例乳濁液5の水性乳濁液は、11.03ミクロンDv(50)の粒径を有する。
【0083】
実施例乳濁液1、2、3、4及び5では、分岐有機ポリシロキサンの炭化水素油(イソヘキサデカン)に対する重量比は60:40である。
【0084】
髪に対するこれらの製品の性能を評価するために、最初に14%ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(1EO)の溶液で髪を洗浄して、既存の堆積物をすべて除去した。表1の配合例のそれぞれから達成された沈着を、比較例コンディショナーAから達成された沈着と比較した。
【0085】
比較例コンディショナーAは、粒径が約3ミクロンのDv(50)であるジメチコンとアモジメチコンの比率9:1のブレンドの水性乳濁液を含む比較例乳濁液を含む(例えば、Dow Corning)。
【0086】
比較例コンディショナーBは、粒径が2.5ミクロンDv(50)であるジメチコン/鉱油及びセチルトリメチルアンモニウムクロリド及び水とのWO2016/041748の乳濁液を含む(例えば、Dow Corning)。
【0087】
【表1】
【0088】
評価
実施例1~5及び比較例Aのコンディショナー組成物を、以下のように評価した。
【0089】
ここで報告するすべての試験において、製品を一定時間にわたり毛髪に付与し、次に一定時間にわたりすすぎを行い、放置して乾燥させるという、標準化された消費者関連の塗布プロトコールを使用した。製品から毛髪へのシリコーンの沈着を定量するため、2.5gの毛髪見本を最初に14%ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(1EO)の水溶液で洗浄した。毛髪1グラム当たり溶液0.1gを注射器から塗布し、濡れた髪に手で30秒間揉み込んだ後、水道水で4リットル/分の流量で洗い流した。このプロセスをもう1回繰り返してから、実施例コンディショナー又は比較例コンディショナーを塗布した。洗ってすすいだばかりの毛髪に注射器からコンディショナー0.2g/毛髪1gを塗布し、1分間揉み込んでから、1分間洗い流した。処理したスイッチを50℃で1~2時間乾燥させてから、シリコーン沈着を測定した。
【0090】
結果
蛍光X線技術を用いてシリコーン沈着を定量して、コンディショニング活物質内に含まれるケイ素元素を検出した。
【0091】
データは、毛髪の質量を基準にしたケイ素の百万分率として捕捉している。コンディショナー製品を洗い流した後に、塗布されたすべてのシリコンが髪に残った場合に達成されると考えられるppm値を参照することにより、沈着効率を計算することができる。沈着効率が1ということは、配合物中のすべてのケイ素が毛髪表面に沈着し、すすいだ後もそこに残っていたことを示すものと考えられる。コンディショナー配合物ごとに、バージンヘアタイプとブリーチヘアタイプのそれぞれについて、沈着効率データを表2に提供している。脱色した髪は、化学修飾のために損傷したことから、コンディショニングの必要性が高くなっている毛髪の例として使用される。
【0092】
【表2】
【0093】
上記のデータは、比較例コンディショナーAとほぼ同じ粒径を有する実施例配合物(実施例コンディショナー2)を比較した場合、バージンヘアへのシリコーンの沈着効率が比較例コンディショナーAとほぼ同じであることを示している。しかしながら、表2のデータは、比較例コンディショナーAと同じ粒径を有する実施例配合物(実施例コンディショナー2)を比較すると、ブリーチヘアへのシリコーンの沈着効率が比較例コンディショナーAよりかなり大きいこと、さらに、実施例配合物における乳濁液の粒径が大きいほど、ブリーチヘアへの沈着効率が大きいことも示している。
【0094】
ヘアコンディショナーからブリーチヘアへのシリコーンの沈着は、代表的には、バージンヘアより困難であり、一般に、後者と比べて前者では沈着効率が低くなる。
【0095】
ブリーチヘアへのシリコーンの沈着効率の最良の結果は、5ミクロン以上12ミクロン未満のDv(50)の水性乳濁液粒径で認められ得る。
【0096】
例2:
コンディショナー実施例2、実施例5及び比較例コンディショナーBの組成を下記のように評価した。
【0097】
ハーフヘッドサロン試験
専用のサロン施設での試験のため、長さ及び質感が混在する乾燥毛髪タイプから乾燥かつ損傷毛髪タイプを有するパネリスト36名を募集した。当試験プロトコールは、各パネリストの両側に塗布されたストリッピングシャンプーを使用し、次に、各組成物を、ハーフヘッドサロン試験で対照と比較した。組成物を、下記の表3に詳述されている特質について専門の評価員が評価した。一部の特質は有益と見なし、他の特質は悪いものと見なした。滑らかさは有益な特質であるが、縮れと乾燥は悪い特質である。差異が記録されたすべての場合において、実施例5は、滑らかさ(有益な特質)で実施例2及び比較例コンディショナーBより高く、縮れ及び乾燥(悪い特質)で実施例2及び比較例コンディショナーBより低い評点であった。
【0098】
【表3】
【0099】
・x/yにおけるxは対照製品の評点を示し、x/yにおけるyは試験製品の評点を示す。
・対照製品は、比較例コンディショナーAと同様に標準シリコーンを含むコンディショナーである。
【国際調査報告】