(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20220620BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20220620BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20220620BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220620BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220620BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20220620BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/06
C08K3/22
C08K5/00
C08K3/01
B60C1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563046
(86)(22)【出願日】2020-04-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020029998
(87)【国際公開番号】W WO2020220010
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(72)【発明者】
【氏名】シープウォッシュ、エリン
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
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3D131BB07
3D131BC31
3D131BC51
4J002AC011
4J002AC061
4J002DA046
4J002DD038
4J002DD048
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4J002ET018
4J002FD146
4J002FD157
4J002GN01
(57)【要約】
(i)ポリイソプレンエラストマーを含むゴム構成成分、(ii)硫黄系硬化剤、(iii)酸化亜鉛、及び(iv)共晶組成物を含む、加硫性ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫性ゴム組成物であって、
(i)ポリイソプレンエラストマーを含むゴム構成成分と、
(ii)イオウ系硬化剤と、
(iii)酸化亜鉛と、
(iv)共晶組成物と、を含む、加硫性ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム構成成分は、60重量%超の前記ポリイソプレンエラストマーを含む、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項3】
前記ゴム構成成分は、70重量%超の前記ポリイソプレンエラストマーを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項4】
前記ゴム構成成分は、80重量%超の前記ポリイソプレンエラストマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項5】
前記ゴム構成成分は、90重量%超の前記ポリイソプレンエラストマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項6】
前記ポリイソプレンエラストマーは天然ゴムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項7】
共晶組成物は、式Cat
+X
-zYによって定義され、式中、Cat
+はカチオンであり、X
-は対アニオン(例えば、ルイス塩基)であり、zは、前記対アニオン(例えば、ルイス塩基)と相互作用するY分子の数を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項8】
Cat
+は、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、又はスルホニウムカチオンであり、X
-はハロゲン化物イオンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項9】
前記共晶組成物は、I型、II型、III型、及びIV型共晶組成物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項10】
前記共晶組成物は、アンモニウム化合物を、メタルハライド、メタルハライド水和物、又は水素結合供与体と化合させることによって形成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項11】
前記アンモニウム化合物アンモニウム化合物は、式IIによって定義されてよく、
(R
1)(R
2)(R
3)(R
4)-N
+-Φ
-
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して水素若しくは一価の有機基であるか、又は代替的に、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの2つが結合して二価の有機基を形成し、Φ
-は対アニオンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項12】
前記アンモニウム化合物は、N-エチル-2-ヒドロキシ-N,N-ジメチルエタンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(コリンクロリドとしても知られる)、及びN-ベンジル-2-ヒドロキシ-N,N-ジメチルエタンアミニウムクロリドからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項13】
前記アンモニウム化合物は、2-クロロ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム(クロルコリンクロリドとも呼ばれる)、及び2-(クロロカルボニルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリドからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項14】
前記水素結合供与体は、アミン、アミド、カルボン酸、及びアルコールからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項15】
前記水素結合供与体は、脂肪族アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、N,N’-ビス(2アミノエチル)ピペラジン、ピペラジノエチルエチレンジアミン、テトラエチレンエピタンアミン、プロピレンアミン、アニリン、及び置換アニリン、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項16】
前記水素結合供与体は、尿素、1-メチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、チオ尿素、尿素、ベンズアミド、及びアセトアミド、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項17】
前記水素結合供与体は、フェニルプロピオン酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、コハク酸、クエン酸、及びトリカルバリル酸、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項18】
前記水素結合供与体は、脂肪族アルコール、フェノール、置換フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、レゾルシノール、置換レゾルシノール、グリセロール、及びベンゼントリオール、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項19】
前記メタルハライドは、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、塩化鉄、臭化鉄、及びヨウ化鉄、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項20】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり1.5重量部超の酸化亜鉛を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項21】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり2.0重量部超の酸化亜鉛を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項22】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり約0.005~約3重量部の前記共晶組成物を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項23】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり約0.01~約1重量部の前記共晶組成物を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項24】
前記加硫性組成物は、補強充填剤、樹脂、及び蝋を更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項25】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり25重量部未満の油を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項26】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり15重量部未満の油を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項27】
前記加硫性組成物は油を欠いている、請求項1~26のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項28】
前記硫黄系硬化剤は硫黄である、請求項1~27のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項29】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり約0.8~約2.5重量部の硫黄を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の加硫性組成物。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の加硫性組成物から調製された加硫物。
【請求項31】
前記加硫物は、重車両用タイヤの部品である、請求項1~30のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項32】
前記加硫物は、重車両用タイヤのトレッド又はアンダートレッドである、請求項1~31のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項33】
前記重車両用タイヤはオフロード用タイヤである、請求項1~32のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項34】
前記重車両用タイヤは航空機用タイヤである、請求項1~33のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項35】
前記加硫物は、20%未満の加硫戻り率によって特徴付けられる、請求項1~34のいずれか一項に記載の加硫物。
【請求項36】
前記加硫物は、18%未満の加硫戻り率によって特徴付けられる、請求項1~35のいずれか一項に記載の加硫物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2019年4月26日出願の米国特許仮出願第62/839,027号及び2019年4月30日出願の米国特許仮出願第62/840,778号の優先権を主張し、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、空気入りタイヤ用ゴム組成物、特にポリイソプレン系ゴム配合物に関する。
【背景技術】
【0003】
天然ゴムなどのポリイソプレンゴムは、空気入りタイヤの部品の製造に使用されることが多い。天然ゴムは伸張結晶化を受けるため、天然ゴムは、例えばトラック用タイヤ、バス用タイヤ、地下鉄用タイヤ、トラクタートレーラー用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用タイヤ、アースムーバー用タイヤ、及び他のオフロード(OTR)用タイヤなどの重車両用タイヤの部品に、比較的大きいレベルで有利に使用される。
【0004】
しかしながら、天然ゴムは、ゴムの加硫戻りの程度が比較的高い傾向にあり、これは、機械的強度及び動的弾性率などの望ましい特性の損失をもたらすと一般に理解されている現象である。加硫戻りは、硫黄加硫ゴム系内での硫黄架橋の破壊が原因であると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つ以上の実施形態は、(i)ポリイソプレンエラストマーを含むゴム構成成分、(ii)硫黄系硬化剤、(iii)酸化亜鉛、及び(iv)共晶組成物を含む、加硫性ゴム組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】様々な実験サンプルの共晶溶媒負荷の関数としてのゴムの加硫戻りのグラフプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、有利な特性バランスによって特徴付けられるポリイソプレン系ゴム加硫物の発見に少なくとも部分的に基づく。本発明の実施形態によれば、加硫物は、共晶組成物を含む加硫性組成物から調製される。予期せぬことに、ポリイソプレン系加硫性組成物中に共晶組成物を含めることにより、加硫戻りに対する抵抗性の増加及び強靭性の増加など、1つ以上の有利な特性が達成され得ることが発見された。
ポリイソプレン系加硫性組成物
【0008】
上記のように、本発明の加硫物は、ポリイソプレン系加硫性組成物から調製される。1つ又は2つ以上の実施形態によれば、ポリイソプレン系加硫性組成物は、ポリイソプレンエラストマー、共晶組成物、充填剤、硫黄系硬化剤、ステアリン酸、及び酸化亜鉛又は誘導体酸化亜鉛などの金属化合物を含む、加硫性ゴム構成成分を含む。他の任意追加成分もまた含まれていてよく、そうした成分としては、プロセス油及び/又はエクステンダー油、樹脂、蝋類、硬化促進剤、焦げ防止剤、劣化防止剤、酸化防止剤、及び当該技術分野において既知の他のゴム配合添加剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
加硫性ゴム構成成分
【0009】
1つ以上の実施形態において、加硫性ゴム構成成分は、ポリイソプレンエラストマーとも称され得るポリイソプレンポリマーと、任意選択的に、ポリイソプレンポリマー又は相補的ポリマー以外のエラストマーと称され得る1つ以上の付加的加硫性ポリマーと、を含む。ポリイソプレンポリマーとしては、合成ポリイソプレン及び天然ゴムが挙げられる。
【0010】
1つ以上の実施形態において、他の任意選択的な付加的加硫性ポリマーは、ゴム特性又はエラストマー特性を有する組成物を形成するために加硫可能なポリマーを含み得る。これらのエラストマーは、合成ゴムを含み得る。有用な合成ゴムは、共役ジエンモノマー(例えば、1.3-ブタジエン)の重合、共役ジエンモノマーと他のモノマー(例えば、ビニル置換芳香族モノマー)との共重合、あるいはエチレンと1種以上のα-オレフィン及び任意選択的に1種以上のジエンモノマーとの共重合から得られ得る。これらの付加的加硫性ポリマーは、イソプレンと共重合可能なモノマーとのコポリマーを含む合成イソプレン系ポリマーを含む。代表的なイソプレン系ポリマーとしては、例えば、ポリ(スチレン-co-イソプレン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリイソブチレン-co-イソプレン、及びポリ(イソプレン-co-ブタジエン)合成イソプレン系ポリマーが挙げられる。
【0011】
ポリイソプレンポリマーと共にゴム構成成分に含まれ得る例示的なエラストマーとしては、ポリブタジエン、ネオプレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、及びエピクロロヒドリンゴム、並びにこれらの混合物が挙げられ得る。これらのエラストマーは、無数の巨大分子構造、例えば、直線状、分岐状、及び星形構造を有することができる。これらのエラストマーにはまた、1種以上の官能単位が含まれてもよく、これには、典型的にヘテロ原子が含まれる。
【0012】
上述のように、ゴム構成成分は、少なくとも閾値量のポリイソプレンポリマーを含む。閾値量は、本発明の実施に相当の影響を与える量を含む。1つ以上の実施形態において、本発明の加硫性組成物のゴム構成成分は、ゴム構成成分の総重量に基づいて50重量%超のポリイソプレンエラストマー、他の実施形態においては55重量%超、他の実施形態においては60重量%超、他の実施形態においては65重量%超、他の実施形態においては70重量%超、他の実施形態においては75重量%超、他の実施形態においては80重量%超、他の実施形態においては85重量%超、他の実施形態においては90重量%超、他の実施形態においては95重量%超、他の実施形態においては97重量%超、他の実施形態においては99重量%超のポリイソプレンエラストマーを含む。特定の実施形態において、ゴム構成成分は、ポリイソプレンポリマー以外の加硫性ゴムを欠いているか、又は実質的に欠いている。特定の実施形態では、ゴム構成成分は、天然ゴム以外の加硫性ゴムを欠いているか、又は実質的に欠いている。
共晶混合物
【0013】
1つ以上の実施形態において、共晶組成物は、結合されるそれぞれの化合物の融点よりも低い融点を有する、生成化合物を提供する、2つ以上の化合物を化合させることによって形成される組成物を含む。本明細書の目的のために、共晶組成物は、共晶混合物、共晶錯体、又は共晶対と称され得る。化合される化合物のそれぞれは、共晶成分、共晶構成成分、共晶部材、又は共晶組成物を形成するための化合物(例えば、第1の化合物及び第2の化合物)と呼ぶことができる。それぞれの共晶成分の相対量、並びに観察が行われる温度に応じて、共晶組成物は、共晶液体又は共晶溶媒と称され得る液体の形態であり得る。所定の組成物については、それぞれの成分の相対量が共晶混合物の最低融点にあるか又はそれに近接している場合、組成物は深共晶溶媒と称され得るが、これはDESと称される場合もある。
【0014】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、共晶成分は化合し、あるいはそれ以外の形で反応又は相互作用して錯体を形成すると考えられている。したがって、共晶混合物、又は共晶化合物、共晶対、又は共晶錯体に対していかなる言及がなされる場合も、構成成分どうしが化合されてできる化合物及び反応生成物、又は複合体を含み、それぞれの構成成分よりも低い融点を有する組成物もたらす。例えば、1つ以上の実施形態において、有用な共晶組成物は、以下の式Iで定義され得る:
Cat+X-zY
式中、Cat+はカチオンであり、X-は対アニオン(例えば、ルイス塩基)であり、zは、対アニオン(例えば、ルイス塩基)と相互作用するY分子の数を指す。例えば、Cat+としては、アンモニウム、ホスホニウム、又はスルホニウムカチオンが挙げられ得る。X-としては、例えば、ハロゲン化物イオンが挙げられ得る。1つ以上の実施形態において、zは、深共晶溶媒を実現する数であるが、他の実施形態においては、zは、深共晶溶媒を達成しないならば、それぞれ対応する共晶構成成分よりも低い融点を有する錯体を実現する数である。
【0015】
1つ以上の実施形態において、有用な共晶組成物としては、酸と塩基との化合物が挙げられるが、その酸及び塩基としては、ルイス酸及び塩基、又はブレンステッド酸及び塩基を挙げることができる。1つ以上の実施形態において、有用な共晶組成物としては、第四級アンモニウム塩とメタルハライドとの化合物(I型共晶組成物と称される)、第四級アンモニウム塩とメタルハライド水和物との化合物(II型共晶組成物と称される)、第四級アンモニウム塩と水素結合供与体との化合物(III型共晶組成物と称される)、又はメタルハライド水和物と水素結合供与体との化合物(IV型共晶組成物と称される)が挙げられる。アンモニウム化合物の代わりに、スルホニウム又はホスホニウムの類似の化合物を採用することができ、それらは、当業者によって容易に想定することができる。
第四級アンモニウム塩
【0016】
1つ以上の実施形態において、第四級アンモニウム塩は、20℃で固体である。これらの又は他の実施形態において、メタルハライド及び水素結合供与体は、20℃で固体である。
【0017】
1つ以上の実施形態において、有用な第四級アンモニウム塩(アンモニウム化合物とも称され得る)は、以下の式IIによって定義され得る:
(R1)(R2)(R3)(R4)-N+-Φ-
式中、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して水素若しくは一価の有機基であるか、又は代替的に、R1、R2、R3、及びR4のうちの2つが結合して二価の有機基を形成し、Φ-は対アニオンである。1つ以上の実施形態において、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つは水素ではなく、他の実施形態においてはそれらのうちの少なくとも2つ、また他の実施形態においてはそれらのうちの少なくとも3つは水素ではない。
【0018】
1つ以上の実施形態において、対アニオン(例えば、Φ-)は、ハロゲン化物(X-)、硝酸塩(NO3
-)、テトラフルオロボレート(BF4
-)、過塩素酸塩(ClO4
-)、トリフラート(SO3CF3
-)、及びトリフルオロ酢酸塩(COOCF3
-)からなる群から選択される。1つ以上の実施形態において、Φ-はハロゲン化物イオンであり、特定の実施形態において、塩化物イオンである。
【0019】
1つ以上の実施形態において、一価の有機基はヒドロカルビル基を含み、二価の有機基はヒドロカルビレン基を含む。1つ以上の実施形態において、一価及び二価の有機基は、ヘテロ原子を含み、そのようなヘテロ原子は、例えば、酸素及び窒素、並びに/又はハロゲン原子などであるが、これらに限定されない。したがって、一価の有機基としては、アルコキシ基、シロキシ基、エーテル基、及びエステル基、並びにカルボニル基又はアセチル置換基を挙げることができる。1つ以上の実施形態において、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビレン基は、1個(又は適切な最小数)~約18個の炭素原子、他の実施形態においては1~約12個の炭素原子、また他の実施形態においては1~約6個の炭素原子を含む。ヒドロカルビル基及びヒドロカルビレン基は、分枝状、環状、又は直鎖状であってもよい。例示的な種類のヒドロカルビル基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアルキルアリール基が挙げられる。例示的な種類のヒドロカルビレン基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアルキルアリーレン基が挙げられる。特定の実施形態において、ヒドロカルビル基は、メチル基、エチル基、オクタデシル基、フェニル基、及びベンジル基からなる群から選択される。特定の実施形態において、ヒドロカルビル基はメチル基であり、ヒドロカルビレン基は、エチレン又はプロピレン基である。
【0020】
有用な種類のアンモニウム化合物としては、第二級アンモニウム化合物、第三級アンモニウム化合物、及び第四級アンモニウム化合物が挙げられる。これらの又は他の実施形態において、アンモニウム化合物としては、ハロゲン化アンモニウムが挙げられ、その例としては、塩化アンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、アンモニウム化合物は、第四級アンモニウム塩化物である。特定の実施形態において、R1、R2、R3、及びR4は水素であり、アンモニウム化合物は塩化アンモニウムである。1つ以上の実施形態において、アンモニウム化合物は非対称である。
【0021】
1つ以上の実施形態において、アンモニウム化合物は、アルコキシ基を含み、式IIIによって定義され得る:
(R1)(R2)(R3)-N+-(R4-OH)Φ-
式中、R1、R2、及びR3のそれぞれは、独立して水素若しくは一価の有機基であるか、又は代替的に、R1、R2、及びR3のうちの2つが結合して二価の有機基を形成し、R4は二価の有機基であり、Φ-は対アニオンである。1つ以上の実施形態において、R1、R2、R3のうちの少なくとも1つは水素ではなく、他の実施形態においてはそれらのうちの少なくとも2つ、また他の実施形態おいてはそれらのうちの少なくとも3つは水素ではない。
【0022】
式IIIによって定義されるアンモニウム化合物の例としては、N-エチル-2-ヒドロキシ-N,N-ジメチルエタンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリド(コリンクロリドとしても知られる)、及びN-ベンジル-2-ヒドロキシ-N,N-ジメチルエタンアミニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
1つ以上の実施形態において、アンモニウム化合物は、ハロゲン含有置換基を含み、式IVによって定義され得る:
Φ--(R1)(R2)(R3)-N+-R4X
式中、R1、R2、及びR3のそれぞれは、独立して水素若しくは一価の有機基であるか、又は代替的に、R1、R2、及びR3のうちの2つが結合して二価の有機基を形成し、R4は二価の有機基であり、Xはハロゲン原子であり、Φ-は対アニオンである。1つ以上の実施形態において、R1、R2、R3のうちの少なくとも1つは水素ではなく、他の実施形態においてはそれらのうちの少なくとも2つ、また他の実施形態おいてはそれらのうちの少なくとも3つは水素ではない。1つ以上の実施形態において、Xは塩素である。
【0024】
式IIIによって定義されるアンモニウム化合物の例としては、2-クロロ-N,N,N-トリメチルエタンアミニウム(クロルコリンクロリドとも呼ばれる)、及び2-(クロロカルボニルオキシ)-N,N,N-トリメチルエタンアミニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
水素結合供与体化合物
【0025】
1つ以上の実施形態において、HBD化合物とも称され得る水素結合供与体化合物としては、アミン、アミド、カルボン酸、及びアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、水素結合供与体化合物は、炭化水素鎖構成成分を含む。炭化水素鎖構成成分は、少なくとも2個、他の実施形態においては少なくとも3個、また他の実施形態においては少なくとも5個の炭素原子を含む炭素鎖長を有し得る。これらの又は他の実施形態において、炭化水素鎖構成成分は、30個未満の、他の実施形態においては20個未満の、他の実施形態においては10個未満の炭素原子を含む炭素鎖長を有する。
【0026】
1つ以上の実施形態において、有用なアミンには、以下の式で定義される化合物が挙げられる:
R1-(CH2)x-R2
式中、R1及びR2は、-NH2、-NHR3、又は-NR3R4であり、xは少なくとも2の整数である。1つ以上の実施形態において、xは2~約10であり、他の実施形態においては約2~約8であり、また他の実施形態においては約2~約6である。
【0027】
有用なアミンの具体例としては、脂肪族アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、N,N’-ビス(2アミノエチル)ピペラジン、ピペラジノエチルエチレンジアミン、テトラエチレンエピタンアミン、プロピレンアミン、アニリン、及び置換アニリン、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
1つ以上の実施形態において、有用なアミドとしては、以下の式で定義される化合物が挙げられる:
R-CO-NH2
式中、Rは、H、NH2、CH3、又はCF3である。
【0029】
有用なアミドの具体例としては、尿素、1-メチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、チオ尿素、尿素、ベンズアミド、及びアセトアミド、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
1つ以上の実施形態において、有用なカルボン酸としては、単官能性、二官能性、及び三官能性有機酸が挙げられる。これらの有機酸としては、アルキル酸、アリール酸、及び混合アルキル-アリール酸が挙げられ得る。
【0031】
有用な単官能性カルボン酸の具体例としては、脂肪族酸、フェニルプロピオン酸、フェニル酢酸、及び安息香酸、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。二官能性カルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、及びコハク酸、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。三官能性カルボン酸の具体例としては、クエン酸及びトリカルバリル酸、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
アルコールの種類としては、モノオール、ジオール、及びトリオールが挙げられるが、これらに限定されない。モノオールの具体例としては、脂肪族アルコール、フェノール、及び置換フェノール、並びにこれらの混合物が挙げられる。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、レゾルシノール、及び置換レゾルシノール、並びにこれらの混合物が挙げられる。トリオールの具体例としては、グリセロール及びベンゼントリオール、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
メタルハライド
【0033】
メタルハライドの種類としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、及びフッ化物が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、これらのメタルハライドとしては、遷移メタルハライドが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、対応するメタルハライド水和物を容易に想定することができる。
【0034】
有用なメタルハライドの具体例としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、塩化鉄、臭化鉄、及びヨウ化鉄、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、対応するメタルハライド水和物を容易に想定することができる。例えば、塩化アルミニウム六水和物及び塩化銅二水和物は、上記のハライドに対応する。
共晶錯体の形成
【0035】
当業者であれば、適切なモル比で適切な共晶部材を選択して、所望の共晶組成物を提供することができる。当業者であれば、対に含まれる第1の化合物(例えば、ルイス塩基)と、対に含まれる第2の化合物(例えば、ルイス酸)とのモル比は、選択される化合物に基づいて変化することを理解するであろう。当業者には理解されるように、共晶溶媒の融点抑制には、最大融点抑制(すなわち深共晶溶媒)を生じる、第1の化合物と第2の化合物とのモル比である共晶点が含まれる。しかしながら、第1の化合物と第2の化合物とのモル比は、様々に変化させることができ、それでもなお、最低融点ではない(すなわち、最大抑制点ではない)とはいえ、共晶溶媒の融点の、第1及び第2の化合物の個々の融点に対する抑制をもたらすことができる。したがって、本発明の1つ以上の実施形態の実施には、共晶点外のモル比で共晶溶媒を形成することが含まれる。
【0036】
1つ以上の実施形態においては、共晶対に含まれるそれぞれの化合物、及び、対に含まれる第1の化合物の第2の化合物に対するモル比は、130℃未満の融点を有する混合物を生成するように選択され、他の実施形態においては、110℃未満、他の実施形態においては100℃未満、他の実施形態においては80℃未満、他の実施形態においては60℃未満、他の実施形態においては40℃未満、そして他の実施形態においては30℃未満の融点を有する混合物を生成するように選択される。これらの又は他の実施形態においては、共晶対に含まれるそれぞれの化合物、及び化合物どうしのモル比は、0℃超の融点を有する混合物を生成するように選択され、他の実施形態においては10℃超、他の実施形態においては20℃超、他の実施形態においては30℃超、他の実施形態においては40℃超の融点を有する混合物を生成するように選択される。
【0037】
1つ以上の実施形態においては、共晶対に含まれるそれぞれの化合物、及び、対に含まれる第1の化合物の第2の化合物に対するモル比は、所望の金属化合物を溶解する能力又は性能(溶解度又は溶解力と呼ばれ得る)を有する共晶溶媒を生成するように選択される。当業者には理解されるように、この溶解度は、飽和溶液を調製する場合に、所与の重量の共晶溶媒内に、指定された温度及び圧力の下で指定の時間をかけて溶解された金属化合物の重量に基づいて定量化することができる。1つ以上の実施形態においては、本発明の共晶溶媒は、温度50℃、大気圧下で、24時間にわたって酸化亜鉛を溶解させた場合に、100ppm超の溶解度を達成するように選択され、他の実施形態においては500ppm超、他の実施形態においては1000ppm超、他の実施形態においては1200ppm超、他の実施形態においては1400ppm超、他の実施形態においては1600ppm超の溶解度を達成するように選択される。なお、ここでppmは溶質重量対溶媒重量基準で測定される。
【0038】
1つ以上の実施形態において、共晶溶媒は、第1の化合物を第2の化合物と適切なモル比で化合させることによって形成され、溶媒組成物(すなわち、所望の温度で液体の組成物)が提供される。混合物は、様々な技術を使用することによって機械的に撹拌することができ、そのような技術には、固体状態混合技術又はブレンド技術が含まれるが、これらに限定されない。一般的に言えば、混合物は、視覚的に均質である液体が形成されるまで混合され、あるいは別の方法で撹拌される。また、混合物は、高温で形成されてもよい。例えば、共晶溶媒は、混合物を50℃超、他の実施形態においては70℃超、また他の実施形態においては90℃超の温度に加熱することによって形成されてもよい。混合物の加熱中、混合を継続してもよい。所望の混合物が形成されると、共晶溶媒を室温まで冷却してよい。1つ以上の実施形態において、共晶溶媒の冷却は、1℃/分未満の、制御された速度で行われ得る。
【0039】
1つ以上の実施形態において、有用な共晶組成物を市場で入手することができる。例えば、深共晶溶媒は、Scionix社から、商品名Ionic Liquids(イオン性液体)で市販されている。有用な共晶組成物はまた、米国特許出願公開第2004/0097755(A1)号及び同第2011/0207633(A1)号に記載されているように一般に知られており、その両者は、参照により本明細書に組み込まれる。
充填材
【0040】
上述のように、本発明の加硫性組成物は、1種以上の充填剤を含み得る。これらの充填剤材料は、補強充填剤及び非補強充填剤を含み得る。例示的な充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、及び種々の無機充填剤が挙げられる。
【0041】
有用なカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックが挙げられる。カーボンブラックのより具体的な例としては、超摩耗ファーネスブラック、中間超摩耗ファーネスブラック、高磨耗ファーネスブラック、高速押出ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、半強化ファーネスブラック、中級加工チャンネルブラック、ハード加工チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられる。
【0042】
1つ以上の実施形態において、カーボンブラックは、ASTM D1510によって決定されるヨウ素吸収数によって定義されるように、60g/kg超の表面積を有し得、他の実施形態においては70g/kg超、他の実施形態においては80g/kg超、また他の実施形態においては90g/kg超の表面積を有し得る。これらの又は他の実施形態において、カーボンブラックは、The Brunauer,Emmet and Teller(「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,vol.60,p.309及びそれ以下に記載)によって決定されるように、約70~200m2/gの表面積を有し得、他の実施形態においては約100~約180m2/g、また他の実施形態においては約110~約160m2/gの表面積を有し得る。カーボンブラックは、ペレット化された形態又はペレット化されていない綿状形態であり得る。カーボンブラックの好ましい形態は、ゴム化合物を混合するために使用される混合機器のタイプに依存し得る。
【0043】
1つ以上の実施形態では、有用なカーボンブラックは、ASTM D1765によるN-300シリーズ又はそれ以下のカーボンブラックとして特徴付けることができる。これらのカーボンブラックとしては、例えば、N-100シリーズ、N-200シリーズ、及びN-300シリーズのカーボンブラックが挙げられ得る。例示的なN-100シリーズカーボンブラックとしては、N-100、N-115、N-120、N-121、N-125、N-134、及びN-135カーボンブラックが挙げられる。例示的なN-200シリーズカーボンブラックとしては、N-220、N-231、N-294、及びN-299が挙げられ得る。例示的なN-300シリーズカーボンブラックとしては、N-326、N-330、N-335、N-343、N-347、N-351、N-356、N-358、及びN-375が挙げられ得る。
【0044】
好適なシリカ充填剤の例としては、沈殿非晶質シリカ、湿潤シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ヒュームドシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0045】
1つ以上の実施形態では、シリカは、その表面積によって特徴付けることができるが、表面積は、その補強特性の尺度となるものである。ブルナウアー、エメット、及びテラー(「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,vol.60,p.309 et seq.に記載されている)は、表面積を決定するための広く認められている方法である。シリカのBET表面積は、概して450m2/g未満である。表面積の有用な範囲としては、約32~約400m2/g、約100~約250m2/g、約150~約220m2/gが挙げられる。
【0046】
1種以上のシリカを用いる場合には、シリカのpHは、概ね、約5~約7、あるいは、わずかに7より高い値とするが、他の実施形態においては、約5.5~約6.8である。
【0047】
1つ以上の実施形態では、シリカを充填剤として(単独で又は他の充填剤と組み合わせて)用いる場合、混合中にカップリング剤及び/又は遮蔽剤をゴム組成物に添加して、シリカとエラストマーとの相互作用を高めてもよい。有用なカップリング剤及び遮蔽剤が、米国特許第3,842,111号、同第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,674,932号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号、同第6,608,145号、同第6,667,362号、同第6,579,949号、同第6,590,017号、同第6,525,118号、同第6,342,552号、及び同第6,683,135号に開示され、これらは参照により、本明細書に組み込まれている。硫黄含有シリカカップリング剤の例としては、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィド又はメルカプト-オルガノアルコキシシランが挙げられる。ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドの種類としては、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィド及びビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィドが挙げられる。
【0048】
他の有用な充填剤材料としては、種々の無機充填剤及び有機充填剤が挙げられる。有機充填剤の例としては、デンプンが挙げられる。無機充填剤の例としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化鉄、マイカ、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)、及びクレイ(含水ケイ酸アルミニウム)が挙げられる。
樹脂
【0049】
1つ以上の実施形態において、本発明の加硫性組成物は、1種以上の樹脂を含んでもよい。当業者には理解されるように、樹脂は、可塑化樹脂及び硬化性又は熱硬化性樹脂を含み得る。有用な可塑化樹脂としては、脂環式樹脂、脂肪族樹脂、芳香族樹脂、テルペン樹脂、及びこれらの組み合わせなどの炭化水素樹脂が挙げられる。有用な樹脂が、様々な商標名で、様々な企業から市販されており、そうした企業には、例えば、Chemfax、Dow Chemical Company、Eastman Chemical Company、Idemitsu、Neville Chemical Company、Nippon、Polysat Inc.、Resinall Corp.、Pinova Inc.、Yasuhara Chemical Co.、Ltd.、Arizona Chemical、and SI Group Inc.、及びZeonが挙げられる。
【0050】
1つ以上の実施形態において、有用な炭化水素樹脂は、約30~約160℃のガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられてよく、他の実施形態においては約35~約60℃、また他の実施形態においては約70~約110℃のガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられてよい。1つ以上の実施形態において、有用な炭化水素樹脂はまた、その軟化点がそのガラス転移温度(Tg)よりも高いことによって特徴付けられてもよい。特定の実施形態において、有用な炭化水素樹脂は、約70~約160℃の軟化点を有し、他の実施形態においては約75~約120℃、また他の実施形態においては約120~約160℃の軟化点を有する。
【0051】
特定の実施形態において、1種以上の脂環式樹脂が、脂肪族樹脂、芳香族樹脂、及びテルペン樹脂のうちの1種以上と組み合わせて使用される。1つ以上の実施形態において、1種以上の脂環式樹脂が、樹脂の総量に対して、主重量成分(例えば、50重量%を超える成分)として使用される。例えば、使用される樹脂は、少なくとも55重量%を占める1種以上の脂環式樹脂を含み、他の実施形態においては少なくとも80重量%、また他の実施形態においては少なくとも99重量%を占める1種以上の脂環式樹脂を含む。
【0052】
1つ以上の実施形態において、脂環式樹脂は、脂環式ホモポリマー樹脂と脂環式コポリマー樹脂との両方を含み、脂環式コポリマー樹脂には、脂環式モノマー由来のもの、また脂環式モノマーに任意選択的に1種以上の他の(非脂環式)モノマーを組み合わせた(ただし、重量基準では、全モノマーの大部分は脂環式のモノマーである)もの由来のものが含まれる。好適で有用な脂環式樹脂の非限定的な例としては、シクロペンタジエン(「CPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びジシクロペンタジエン(「DCPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。環式脂肪族コポリマー樹脂の非限定例としては、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、CPD/テルペンコポリマー樹脂、DCPD/テルペンコポリマー樹脂、CPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C5留分コポリマー樹脂)、DCPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5留分コポリマー樹脂)、CPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C9留分コポリマー樹脂)、DCPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C9留分コポリマー樹脂)、CPD/芳香族-脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C5及びC9留分コポリマー樹脂)、DCPD/芳香族-脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5及びC9留分コポリマー樹脂)、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂)、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/スチレンコポリマー樹脂)、CPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/CPDコポリマー樹脂)、及びDCPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/DCPDコポリマー樹脂)が挙げられる。特定の実施形態において、脂環式樹脂は、上記の脂環式樹脂のうちの1種類の水素添加形態(すなわち、水素添加脂環式樹脂)を含んでもよい。他の実施形態において、脂環式樹脂は、任意の水素添加脂環式樹脂を除外する。言い換えれば、脂環式樹脂は水素添加されていない。
【0053】
特定の実施形態において、1種以上の芳香族樹脂が、脂肪族樹脂、脂環式樹脂、及びテルペン樹脂のうちの1種以上と組み合わせて使用される。1つ以上の実施形態において、1種以上の芳香族樹脂が、樹脂の総量に対して、主重量成分(例えば、50重量%を超える成分)として使用される。例えば、使用される樹脂は、少なくとも55重量%を占める1種以上の芳香族樹脂を含み、他の実施形態においては少なくとも80重量%、また他の実施形態においては少なくとも99重量%を占める1種以上の芳香族樹脂を含む。
【0054】
1つ以上の実施形態において、芳香族樹脂は、芳香族ホモポリマー樹脂と芳香族コポリマー樹脂との両方を含み、芳香族コポリマー樹脂には、1種類以上の芳香族モノマーに、1種類以上の他の(非芳香族)モノマーを組み合わせたもの(ただし、いかなるタイプのモノマーもその最大量を占めるのは芳香族である)に由来のものが含まれる。有用な芳香族樹脂の非限定例としては、クマロン-インデン樹脂及びアルキル-フェノール樹脂、並びにビニル芳香族ホモポリマー又はコポリマー樹脂を含み、例えば、これらの樹脂は、アルファ-メチルスチレン、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分若しくはC8~C10留分から得られるビニル芳香族モノマーのうちの、1種類以上に由来するものであってよい。ビニル芳香族コポリマー樹脂の非限定例としては、ビニル芳香族/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/C5留分樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂、及びDCPD/スチレンコポリマー樹脂)が挙げられる。アルキル-フェノール樹脂の非限定例としては、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(例えば、低重合度を有する樹脂などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂が挙げられる。特定の実施形態において、芳香族樹脂は、上記の芳香族樹脂のうちの1種類の水素添加形態(すなわち、水素添加芳香族樹脂)を含んでもよい。他の実施形態において、芳香族樹脂は、任意の水素添加芳香族樹脂を除外する。言い換えれば、芳香族樹脂は水素添加されていない。
【0055】
特定の実施形態において、1種以上の脂肪族樹脂が、脂環式樹脂、芳香族樹脂、及びテルペン樹脂のうちの1種以上と組み合わせて使用される。1つ以上の実施形態において、1種以上の脂肪族樹脂が、樹脂の総量に対して、主重量成分(例えば、50重量%を超える成分)として使用される。例えば、使用される樹脂は、少なくとも55重量%を占める1種以上の脂肪族樹脂を含み、他の実施形態においては少なくとも80重量%、また他の実施形態においては少なくとも99重量%を占める1種以上の脂肪族樹脂を含む。
【0056】
1つ以上の実施形態において、脂肪族樹脂は、脂肪族ホモポリマー樹脂と脂肪族コポリマー樹脂との両方を含み、脂肪族コポリマー樹脂には、1種類以上の脂肪族モノマーに、1種類以上の他の(非脂肪族)モノマーを組み合わせたもの(ただし、いかなるタイプのモノマーもその最大量を占めるのは脂肪族である)に由来のものが含まれる。有用な脂肪族樹脂の非限定的な例としては、C5留分のホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分/C9留分コポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、C5留分/脂環式コポリマー樹脂、及びC5留分/C9留分/脂環式コポリマー樹脂、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。環式脂肪族モノマーの非限定例としては、シクロペンタジエン(「CPD」)及びジシクロペンタジエン(「DCPD」)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、脂肪族樹脂は、上記の脂肪族樹脂のうちの1つの水素添加形態(すなわち、水素添加脂肪族樹脂)を含んでもよい。他の実施形態において、脂肪族樹脂は、任意の水素添加脂肪族樹脂を除外する。言い換えれば、このような実施形態では、脂肪族樹脂は水素添加されていない。
【0057】
1つ以上の実施形態において、テルペン樹脂は、テルペンホモポリマー樹脂とテルペンコポリマー樹脂との両方を含み、テルペンコポリマー樹脂には、1種類以上のテルペンモノマーに、1種類以上の他の(非テルペン)モノマーを組み合わせたもの(ただし、いかなるタイプのモノマーもその最大量を占めるのはテルペンである)に由来のものが含まれる。有用なテルペン樹脂の非限定的な例としては、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂(例えば、L-リモネン、D-リモネン、更にはL-異性体及びD-異性体のラセミ混合物であるジペンテン)、β-フェランドレン、δ-3-カレン、δ-2-カレン、ピネン-リモネンコポリマー樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び芳香族変性テルペン樹脂、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、テルペン樹脂は、上記のテルペン樹脂のうちの1つの水素添加形態(すなわち、水素添加テルペン樹脂)を含んでもよい。他の実施形態において、テルペン樹脂は、任意の水素添加テルペン樹脂を除外する。言い換えれば、このような実施形態では、テルペン樹脂は水素添加されていない。
加工油
【0058】
1つ以上の実施形態において、本発明の加硫性組成物は、エクステンダー油とも称され得る加工油を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、加工油を欠いているか、又は実質的に欠いている。
【0059】
特定の実施形態において、用いられる油としては、従来から展延剤オイルとして用いられるものが挙げられる。使用し得る有用な油類又は展延剤としては、芳香族油、パラフィン系油、ナフテン系油、植物油(ヒマシ油以外)、低PCA油(例えば、MES、TDAE、及びSRAEなど)、及び重ナフテン系油が挙げられるが、これらに限定されない。好適な低PCA油としてはまた、野菜、木の実及び種子から採取できるものなど、様々な植物起源の油も挙げられる。非限定的な例としては、ダイズ油、ヒマワリ油、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野において一般的に理解されているように、油は、樹脂などの加硫性組成物の他の構成成分と相対的に比較される粘度を有する化合物を指す。
【0060】
1つ以上の実施形態において、油は、1分子当たり15個超の炭素原子を有する炭化水素化合物を含み、他の実施形態においては20個超、他の実施形態においては25個超、他の実施形態においては30個超の炭素原子、他の実施形態においては35個超の炭素原子、また他の実施形態においては40個超の炭素原子を有する炭化水素化合物を含む。これらの又は他の実施形態において、油は、1分子あたり250個未満の炭素原子を有する炭化水素化合物を含み、他の実施形態においては200個未満、他の実施形態においては150個未満、他の実施形態においては120個未満、他の実施形態においては100個未満、他の実施形態においては90個未満、他の実施形態においては80個未満、他の実施形態においては70個未満、他の実施形態においては60個未満、他の実施形態においては50個未満の炭素原子を有する炭化水素化合物を含む。1つ以上の実施形態において、油は、1分子当たり約15~約250個の炭素原子を有する炭化水素化合物を含み、他の実施形態においては約20~約200個、他の実施形態においては1分子当たり約25~約100個の炭素原子、他の実施形態においては1分子当たり約25~約70個の炭素原子、他の実施形態においては1分子当たり約25~約70個の炭素原子、他の実施形態においては1分子当たり約25~約60個の炭素原子、また他の実施形態においては1分子当たり約25~約40個の炭素原子を有する炭化水素化合物を含む。
【0061】
1つ以上の実施形態において、油は、25℃で、5mPa・s超の動的粘度を有する化合物を含み、他の実施形態においては10mPa・s超、他の実施形態においては15mPa・s超、他の実施形態においては20mPa・s超、他の実施形態においては25mPa・s超、他の実施形態においては30mPa・s超、他の実施形態においては35mPa・s超、また他の実施形態においては40mPa・s超の動的粘度を有する化合物を含む。これらの又は他の実施形態において、油は、25℃で、3000mPa・s未満の動的粘度を有する化合物を含み、他の実施形態においては2500mPa・s未満、他の実施形態においては2000mPa・s未満、他の実施形態においては1500mPa・s未満、他の実施形態においては1000mPa・s未満、他の実施形態においては750mPa・s未満、他の実施形態においては500mPa・s未満、他の実施形態においては250mPa・s未満、他の実施形態においては100mPa・s未満、また他の実施形態においては75mPa・s未満の動的粘度を有する炭化水素化合物を含む。1つ以上の実施形態において、油は、25℃で、約5~約3000mPa・sの動的粘度を有する化合物を含み、他の実施形態においては約15~約2000mPa・s、他の実施形態においては約20~約1500mPa・s、他の実施形態においては約25~約1000mPa・s、他の実施形態においては約30~約750mPa・s、他の実施形態においては約35~約500mPa・s、また他の実施形態においては約50~約250mPa・sの動的粘度を有する化合物を含む。
硬化剤
【0062】
上述のように、本発明の加硫性組成物は、硬化系を含む。硬化系は、ゴム硬化剤又は加硫剤とも称され得る硬化剤を含む。硬化剤は、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.20,pgs.365-468,(3rd Ed.1982)、特に、Vulcanization Agents and Auxiliary Materials,pgs.390-402、及びA.Y.Coran,Vulcanization,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,(2nd Ed.1989)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。1つ以上の実施形態において、有用な硬化系は、硫黄又は硫黄系硬化剤を含む。好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker's)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性加硫剤、及び不溶性ポリマー性硫黄が挙げられる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。当業者であれば、所望の硬化レベルを達成するために、加硫剤の量を容易に選択することができるであろう。
【0063】
1つ以上の実施形態において、硬化剤は、硬化促進剤と組み合わせて使用される。1つ以上の実施形態において、促進剤を使用して、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫ゴムの特性を改善する。促進剤の例としては、チアゾール加硫促進剤(例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、及びN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジル-スルフェンアミド(CBS)など)、及びグアニジン加硫促進剤(例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)など)が挙げられる。当業者であれば、所望の硬化レベルを達成するために、硬化促進剤の量を容易に選択することができるであろう。
金属活性化剤及び有機酸
【0064】
上述のように、本発明の加硫性組成物は、金属化合物を含む。1つ以上の実施形態において、金属化合物は活性化剤(すなわち、ゴムの加硫又は硬化を補助するもの)である。他の実施形態において、金属活性化剤は金属酸化物である。特定の実施形態において、金属活性化剤は、酸化亜鉛と有機酸(例えばステアリン酸)との間の反応又は相互作用を通じてその場で形成される亜鉛種である。他の実施形態において、金属化合物は、水酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物である。他の実施形態において、金属化合物は、酸化鉄などの鉄化合物である。他の実施形態において、金属化合物は、カルボン酸コバルトなどのコバルト化合物である。
【0065】
1つ以上の実施形態において、酸化亜鉛は、10m2/g未満のBET表面積によって特徴付けられる非官能化酸化亜鉛であり、他の実施形態においては9m2/g未満、また他の実施形態においては8m2/g未満のBET表面積によって特徴付けられる非官能化酸化亜鉛である。他の実施形態において、10m2/gを超えるBET表面積によって特徴付けられる酸化亜鉛粒子を含む、ナノ酸化亜鉛が用いられる。
【0066】
1つ以上の実施形態において、有機酸は、カルボン酸である。特定の実施形態において、カルボン酸は、飽和及び不飽和脂肪酸を含む脂肪酸である。特定の実施形態において、ステアリン酸などの飽和脂肪酸が用いられる。他の有用な酸としては、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、リノール酸、及びアラキドン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
他の成分
【0067】
ゴム配合において典型的に用いられる他の構成成分もまた、ゴム組成物に添加されてもよい。これらには、促進剤、促進活性剤、添加可塑剤、蝋、焦げ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着付与樹脂、強化用樹脂、脂肪酸(例えば、ステアリン酸)、解膠剤、及び劣化防止剤(例えば酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤)が含まれる。
成分量
ゴム
【0068】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、組成物の全重量に基づいて、20重量%超のゴム構成成分を含み、他の実施形態においては30重量%超、また他の実施形態においては40重量%超のゴム構成成分を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、組成物の全重量に基づいて、90重量%未満のゴム構成成分を含み、他の実施形態においては70重量%未満、また他の実施形態においては60重量%未満のゴム構成成分を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、組成物の全重量に基づいて、約20~約90重量%のゴム構成成分を含み、他の実施形態においては約30~約70重量%、また他の実施形態においては約40~約60重量%のゴム構成成分を含む。
共晶組成物
【0069】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)、0.005重量部(pbw)より多くの共晶組成物を含み、他の実施形態においては0.01重量部より多くの、また他の実施形態においては0.02重量部より多くの共晶組成物を含む。これら又は他の実施形態において、加硫性組成物は、3pbw(phr)未満の共晶組成物を含み、他の実施形態においては1pbw(phr)未満、また他の実施形態においては、0.1pbw(phr)未満の共晶組成物を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約0.005~約3pbw(phr)の共晶組成物を含み、他の実施形態においては約0.01~約1pbw(phr)、また他の実施形態において、約0.02~約0.1pbw(phr)の共晶組成物を含む。
【0070】
1つ以上の実施形態において、共晶溶媒の量は、金属活性化剤(酸化亜鉛など)の投入量を基準にして説明することができる。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、加硫性組成物中に存在する共晶溶媒及び金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)の総重量に基づいて、2重量%超の共晶溶媒を含み、他の実施形態においては3重量%超、また他の実施形態においては5重量%超の共晶溶媒を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、加硫性組成物中に存在する共晶溶媒及び金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)の総重量に基づいて、15重量%未満の共晶溶媒を含み、他の実施形態においては12重量%未満、また他の実施形態においては10重量%未満の共晶溶媒を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、加硫性組成物中に存在する共晶溶媒及び金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)の総重量に基づいて、約2~約15重量%の共晶溶媒を含み、他の実施形態においては約3~約12重量%、また他の実施形態においては約5~約10重量%の共晶溶媒を含む。
金属化合物
【0071】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)、1.5重量部(pbw)超の金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)を含み、他の実施形態においては2.0pbw超、また他の実施形態においては2.5pbw超の金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、8.0pbw(phr)未満の金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)を含み、他の実施形態においては7.0pbw(phr)未満、また他の実施形態においては、6.0pbw(phr)未満の金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は約1.5~約8.0pbw(phr)の金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)を含み、他の実施形態においては約2.0~約7.0pbw(phr)、また他の実施形態においては、約2.5~約6.0pbw(phr)の金属活性化剤(例えば酸化亜鉛)を含む。
有機酸
【0072】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)、0.5重量部(pbw)より多くの有機酸(例えばステアリン酸)を含み、他の実施形態においては0.7重量部より多くの、また他の実施形態においては1.0重量部より多くの有機酸(例えばステアリン酸)を含む。これら又は他の実施形態において、加硫性組成物は、5pbw(phr)未満の有機酸(例えばステアリン酸)を含み、他の実施形態においては3pbw(phr)未満、また他の実施形態においては、2pbw(phr)未満の有機酸(例えばステアリン酸)を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約0.5~約5pbw(phr)の有機酸(例えばステアリン酸)を含み、他の実施形態においては、約0.7~約3pbw(phr)の、また他の実施形態においては、約1.0~約2pbw(phr)の有機酸(例えばステアリン酸)を含む。
充填材
【0073】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部(phr)当たり、0重量部(pbw)超の充填剤を含み、他の実施形態においては10pbw超、他の実施形態においては25pbw超、他の実施形態においては35pbw超、他の実施形態においては45pbw超、他の実施形態においては55pbw超、また他の実施形態においては65pbw超の充填剤を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、200pbw(phr)未満の充填剤を含み、他の実施形態においては150pbw(phr)未満、他の実施形態においては120pbw(phr)未満、他の実施形態においては100pbw(phr)未満、また他の実施形態においては80pbw(phr)未満の充填剤を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約0~約200pbw(phr)の充填剤を含み、他の実施形態においては約35~約120pbw(phr)、また他の実施形態においては約45~約100pbw(phr)の充填剤を含む。
カーボンブラック
【0074】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部(phr)当たり、0重量部(pbw)のカーボンブラックを含み、他の実施形態においては10pbw超、他の実施形態においては25pbw超、他の実施形態においては45pbw超、他の実施形態においては55pbw超、他の実施形態においては60pbw超、他の実施形態においては65pbw超、また他の実施形態においては75pbw超のカーボンブラックを含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、200pbw(phr)未満のカーボンブラックを含み、他の実施形態においては150pbw(phr)未満、また他の実施形態においては、100pbw(phr)未満のカーボンブラックを含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約10~約200pbw(phr)のカーボンブラックを含み、他の実施形態においては約40~約150pbw(phr)、また他の実施形態においては約50~約100pbw(phr)のカーボンブラックを含む。
シリカ
【0075】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)、0.1重量部(pbw)超のシリカを含み、他の実施形態においては2.5pbw超、また他の実施形態においては5.0pbw超のシリカを含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、50pbw(phr)未満のシリカを含み、他の実施形態においては30pbw(phr)未満、他の実施形態においては25pbw(phr)未満、他の実施形態においては20pbw(phr)未満、他の実施形態においては18pbw(phr)未満、また他の実施形態においては15pbw(phr)未満のシリカを含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約0.1~約50pbw(phr)のシリカを含み、他の実施形態においては約2.5~約30pbw(phr)、また他の実施形態においては約3~約20pbw(phr)のシリカを含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、シリカを欠いているか、又は実質的に欠いている。
充填剤比
【0076】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、カーボンブラックとシリカなどの他の充填剤化合物との比によって特徴付けることができる。1つ以上の実施形態では、カーボンブラックは、シリカなどの他の充填剤に対して過剰に使用される。1つ以上の実施形態では、シリカに対するカーボンブラックの量の比は、重量比に基づいて2:1超であり、他の実施形態においては3:1超、他の実施形態においては5:1超、他の実施形態においては7:1超、他の実施形態においては10:1超、他の実施形態においては15:1超、また他の実施形態においては20:1超である。
シリカカップリング剤
【0077】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、シリカ100重量部当たり、1重量部(pbw)超のシリカカップリング剤を含み、他の実施形態においては2pbw超、また他の実施形態においては5pbw超のシリカカップリング剤を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、シリカ100重量部当たり、20pbw未満のシリカカップリング剤を含み、他の実施形態においては15pbw未満、また他の実施形態においては10pbw未満のシリカカップリング剤を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、シリカ100重量部当たり、約1~約20pbwのシリカカップリング剤を含み、他の実施形態においては約2~約15pbwの、また他の実施形態においては約5~約10pbwのシリカカップリング剤を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、シリカカップリング剤を欠いているか、又は実質的に欠いている。
可塑化樹脂
【0078】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部(phr)当たり、0.1重量部(pbw)の可塑化樹脂(例えば、炭化水素樹脂)を含み、他の実施形態においては0.5pbw超、他の実施形態においては1.0pbw超、他の実施形態においては1.5pbw超、他の実施形態においては15pbw超、また他の実施形態においては25pbw超の可塑化樹脂(例えば、炭化水素樹脂)を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、150pbw(phr)未満の可塑化樹脂(例えば、炭化水素樹脂)を含み、他の実施形態においては120pbw(phr)未満、他の実施形態においては90pbw(phr)未満、他の実施形態においては80pbw(phr)未満、他の実施形態においては60pbw(phr)未満、他の実施形態においては45pbw(phr)未満、他の実施形態においては15pbw(phr)未満、他の実施形態においては10pbw(phr)未満、また他の実施形態においては3.0pbw(phr)未満の可塑化樹脂(例えば、炭化水素樹脂)を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約1~約150pbw(phr)の可塑化樹脂(例えば、炭化水素樹脂)を含み、他の実施形態においては約0.5~約15pbw(phr)、他の実施形態においては約1~約10pbw(phr)、他の実施形態においては約1.5~約3pbw(phr)、他の実施形態においては約15~約100pbw(phr)、また他の実施形態においては約25~約80pbw(phr)の可塑化樹脂(例えば、炭化水素樹脂)を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、可塑化樹脂を欠いているか、又は実質的に欠いている。
加工/エクスパンダー油
【0079】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)、0.1重量部(pbw)超の加工油(例えば、ナフテン系油)を含み、他の実施形態においては0.5pbw超、他の実施形態においては1pbw超、他の実施形態においては1.5pbw超、また他の実施形態においては2pbw超の加工油(ナフテン系油)を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、20pbw(phr)未満の加工油を含み、他の実施形態においては18(phr)未満、他の実施形態においては15pbw(phr)未満、他の実施形態においては12pbw(phr)未満、他の実施形態においては10pbw(phr)未満、他の実施形態においては8pbw(phr)未満、他の実施形態においては5pbw(phr)未満、また他の実施形態においては3pbw(phr)未満の加工油を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約0.1~約20pbw(phr)の油を含み、他の実施形態においては約0.5~約18pbw(phr)、他の実施形態においては約0.5~約15pbw(phr)、他の実施形態においては約1~約10pbw(phr)、他の実施形態においては約0.5~約18pbw(phr)、他の実施形態においては約1.5~約3.0pbw(phr)、また他の実施形態においては約2~約12pbw(phr)の油を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、油を欠いているか、又は実質的に欠いている。
可塑化添加剤
【0080】
1つ以上の実施形態では、可塑化樹脂及び加工油は、集合的に可塑化添加剤、可塑化成分、可塑化構成成分、又は可塑化系と呼ばれ得る。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)、0.5重量部(pbw)超の可塑化添加剤を含み、他の実施形態においては1pbw超、また他の実施形態においては1.5pbw超の可塑化添加剤を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、15pbw(phr)未満の可塑化添加剤を含み、他の実施形態においては12pbw(phr)未満、他の実施形態においては10pbw(phr)未満、他の実施形態においては5pbw(phr)未満、また他の実施形態においては3pbw(phr)未満の可塑化添加剤を含む。1つ又は2つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約0.5~約15pbw(phr)の可塑化添加剤を含み、他の実施形態においては約1~約10pbw(phr)、他の実施形態においては約1.5~約3pbw(phr)の可塑化添加剤を含む。
硬化性樹脂
【0081】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、2pbw(phr)未満の硬化性樹脂を含み、他の実施形態においては1pbw(phr)未満、また他の実施形態においては0.5pbw(phr)未満の硬化性樹脂を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約0.1~約8pbw(phr)の硬化性樹脂を含み、他の実施形態においては約0.5~約6pbw(phr)、また他の実施形態においては約2~約4pbw(phr)の硬化性樹脂を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、硬化性樹脂を欠いているか、又は実質的に欠いている。
硫黄
【0082】
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、硬化剤として硫黄を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)、0.1重量部(pbw)超の硫黄を含み、他の実施形態においては0.3pbw超、また他の実施形態においては0.9pbw超の硫黄を含む。これらの又は他の実施形態において、加硫性組成物は、6pbw(phr)未満の硫黄を含み、他の実施形態においては4pbw(phr)未満、他の実施形態においては3.0pbw(phr)未満、また他の実施形態においては2.0pbw(phr)未満の硫黄を含む。1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、約0.1~約5.0pbw(phr)の硫黄を含み、他の実施形態においては約0.8~約2.5pbw(phr)、他の実施形態においては約1~約2.0pbw(phr)、また他の実施形態においては約1.0~約1.8pbw(phr)の硫黄を含む。
プロセスの概要
【0083】
1つ以上の実施形態において、加硫性組成物は、加硫性ゴムと共晶溶媒とを混合してマスターバッチを作成し、続いて硬化剤をマスターバッチに加えることによって調製される。マスターバッチの調製は、1つ以上の補助的な混合ステップを用いて行われてもよく、その混合ステップでは、例えば、2つ以上の構成成分を混合することによって最初の混合物を調製した後で、1種以上の構成成分を順次、組成物に添加してもよい。また、従来技術を使用して、加硫性組成物の調整に追加的な構成成分を添加することもでき、そのような追加的な構成成分としては、カーボンブラック、追加の充填剤、化学的に処理された無機酸化物、シリカ、シリカカップリング剤、シリカ分散剤、加工油、加工助剤(例えば酸化亜鉛及び脂肪酸など)、及び劣化防止剤(又は抗酸化剤又はオゾン劣化防止剤など)が挙げられるが、これらに限られない。
【0084】
1つ以上の実施形態において、共晶組成物は、共晶組成物を加硫性ゴムに導入する前に調製される。換言すれば、混合物の第1の構成成分を混合物の第2の構成成分に予め化合させてから、その混合物を加硫性組成物に導入する。1つ以上の実施形態において、混合物の化合されるそれぞれの構成成分は、均質な液体組成物が観察されるまで混合される。
【0085】
1つ以上の実施形態において、共晶組成物は、共晶混合物を加硫性組成物に導入する前に、ゴム配合物の1種以上の成分と予め化合される。換言すれば、1つ以上の実施形態において、加硫性組成物の構成成分(例えば、酸化亜鉛などの金属化合物)を共晶混合物と化合して、事前化合物又はマスターバッチを形成してから、その事前化合物をゴムが混合されるミキサーに導入する。例えば、酸化亜鉛が共晶溶媒中に溶解されてから、ミキサー内のゴムへと導入されてもよい。他の実施形態において、共晶組成物は、事前化合物の微量成分であり、したがって共晶組成物と予め混合される構成成分は、共晶組成物の担体として作用する。例えば、共晶組成物は、より大きな体積の酸化亜鉛と化合されることができ、酸化亜鉛が、固体である酸化亜鉛と共晶組成物との化合物を、ミキサー内のゴムに送達するための担体として作用する。更に他の実施形態において、共晶対を構成する物質のうちの1つが、共晶組成物の固体担体として作用し、したがって、共晶組成物の第1の成分と第2の成分との化合は、ミキサー内のゴムに固体として添加され得る事前化合物を形成する。当業者であれば、所望の温度に固体組成物を維持するために、この性質の混合物が、他の共晶部材に対して過剰な量の第1又は第2の共晶対の構成物質を化合させることで形成されること理解するであろう。
【0086】
1つ以上の実施形態において、共晶溶媒は、ゴムマスターバッチの形成における開始成分として加硫性ゴムに導入される。その後、共晶溶媒が、ゴムとの高剪断で、高温下で混合される。1つ以上の実施形態において、共晶溶媒は、110℃を超える最低温度でゴムと混合され、他の実施形態においては130℃を超える最低温度で、他の実施形態においては150℃を超える最低温度でゴムと混合される。1つ以上の実施形態において、高剪断で、高温下での混合は、約110℃~約170℃の温度で行われる。
【0087】
他の実施形態において、共晶溶媒は、硫黄系硬化剤と共に、順次又は一度のいずれかで、加硫性ゴムに導入される。その後、共晶溶媒は、110℃未満の最大温度で加硫性ゴムと混合され、他の実施形態においては、105℃未満の最大温度で、また他の実施形態においては、100℃未満の最大温度で加硫性ゴムと混合される。1つ以上の実施形態において、硬化剤との混合は、約70~約110℃の温度で行われる。
【0088】
共晶溶媒と同様に、酸化亜鉛及びステアリン酸は、ゴムマスターバッチに開始成分として添加することができ、したがって、これらの成分は、高温下で、高剪断の混合をされることになる。あるいは、酸化亜鉛及びステアリン酸は、イオウ系硬化剤と共に添加することができ、それによって、低温下での混合のみをされることになる。
【0089】
1つ以上の実施形態において、酸化亜鉛は、共晶溶媒とは別にかつ個々に、加硫性ゴムに導入される。他の実施形態において、酸化亜鉛及び共晶溶媒は予め化合されて酸化亜鉛マスターバッチを形成するが、この酸化亜鉛マスターバッチは、酸化亜鉛が共晶溶媒中に溶解又は別の方法で分散される溶液を含み得る。その後、酸化亜鉛マスターバッチを加硫性ゴムに導入することができる。
【0090】
1つ以上の実施形態において、ポリイソプレンゴム(例えば、天然ゴム)は、粘度及び加工性の所望の特性を達成するために最初に素練りされる。ポリイソプレンゴムを混合した後、共晶溶媒などの他の成分を、本発明の1つ以上の実施形態による前処理されたポリイソプレンゴムに導入する。
混合条件
【0091】
1つ以上の実施形態において、加硫可能な組成物は、まず、加硫性ゴムと共晶溶媒とを、約140~約180℃の温度で混合し、又は他の実施形態においては、約150~約170℃の温度で混合して調製される。特定の実施形態において、最初の混合の後、組成物(すなわち、マスターバッチ)を、100℃未満の温度まで冷却し、他の実施形態においては、80℃未満の温度まで冷却してから、硬化剤を加える。特定の実施形態においては、約90~約110℃の温度で混合を続け、他の実施形態においては、約95~約105℃の温度で混合を続け、最終的な加硫性組成物を調製する。
【0092】
1つ以上の実施形態において、マスターバッチ混合ステップ、又はマスターバッチ混合ステップの1つ若しくは2つ以上のサブステップは、混合中に組成物が到達するピーク温度によって特徴付けることができる。このピーク温度は、落下温度とも称され得る。1つ以上の実施形態において、マスターバッチ混合ステップ中の組成物のピーク温度は、少なくとも140℃であり得るが、他の実施形態においては、少なくとも150℃、また他の実施形態においては、少なくとも160℃であり得る。これら又は他の実施形態において、マスターバッチ混合ステップ中の組成物のピーク温度は、約140~約200℃であり得るが、他の実施形態においては、約150~約190℃、また他の実施形態においては、約160~約180℃であり得る。
最終混合ステップ
【0093】
マスターバッチ混合ステップに続いて、硬化剤又は硬化剤系を組成物に導入し、混合を継続して、最終的に加硫性組成物を形成する。この混合ステップは、最終混合ステップ、硬化剤混合ステップ、又は産物混合ステップと称され得る。この混合ステップから得られる産物は、加硫性組成物と称され得る。
【0094】
1つ以上の実施形態において、最終混合ステップは、最終混合中に組成物が到達するピーク温度によって特徴付け得る。当業者であれば認識するように、この温度は、最終落下温度とも称され得る。1つ以上の実施形態において、最終混合中の組成物のピーク温度は、最高で130℃であり得るが、他の実施形態においては、最高で110℃、また他の実施形態において、最高で100℃であり得る。これら又は他の実施形態において、最終混合中の組成物のピーク温度は、約80~約130℃であり得るが、他の実施形態においては、約90~約115℃、また他の実施形態においては、約95~約105℃であり得る。
混合機器
【0095】
加硫性組成物の全ての成分は、標準的な混合装置、例えば内蔵混合機(例えば、Banbury又はBrabender混合機)、押出機、捏和機、及び2ロールミルを用いて、混合可能である。混合は、単独で又は並行して行うことができる。上に示唆されるように、成分は、単一の段階で混合することができ、又は他の実施形態においては、2段階以上の多段階で混合することができる。例えば、第1の段階(すなわち、混合段階)において、マスターバッチ(典型的にはゴム構成成分及び充填剤を含む)が調製される。マスターバッチが調製されると、最終混合段階において、加硫剤をマスターバッチ内に導入して混合してもよく、この最終混合段階は、典型的には、比較的低温で実施され、それにより加硫のタイミングが早くなりすぎる可能性を減少させる。追加の混合段階(リミル(remill)と呼ばれることもある)を、マスターバッチ混合段階と最終混合段階の間に採用することも可能である。
タイヤの調製
【0096】
加硫性組成物は、標準的なゴムの成形、成型、及び硬化技術を含む、通常のタイヤ製造技術にしたがって、タイヤ部品に加工され得る。典型的には、加硫は、加硫性組成物を成形型内で加熱することによって行われ、例えば、加硫性組成物は、約140℃~約180℃に加熱され得る。硬化又は架橋されたゴム組成物は、加硫物と称され得、加硫物は、概して、熱硬化性の三次元ポリマー網状組織を含有する。他の成分(例えば、充填剤及び加工助剤)は、架橋された網状組織全体にわたって一様に分散してもよい。空気入りタイヤは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,866,171号、同第5,876,527号、同第5,931,211号、及び同第5,971,046号に記載されるように作製され得る。
加硫物の特性
【0097】
本発明の態様によれば、タイヤ部品(加硫物とも称され得るもの)は、有利な硬化特性によって特徴付けられ、その一方で、亜鉛種などの金属活性化剤を、比較的低濃度でしか含まない。
【0098】
1つ以上の実施形態において、加硫物は、ゴム100重量部当たり(phr)、2pbw未満の亜鉛しか含まず、他の実施形態においては1pbw未満の、また他の実施形態においては、0.7pbw未満の亜鉛しか含まないことによって特徴付けられる。
【0099】
1つ以上の実施形態において、タイヤ部品は、タイヤトレッドである。本明細書に概説されるように、トレッドは、亜鉛種などの金属活性化剤を限定された濃度のみでしか含まないが、そのトレッドはそれでもなお、室温でASTM規格のD-412にしたがって測定したときに、3MPaより大きい300%弾性率によって特徴付けられ、他の実施形態においては5MPaより大きい、また他の実施形態においては7MPaより大きい300%弾性率によって特徴付けられる。
産業上の利用性
【0100】
上記のように、本発明の加硫性組成物を硬化させて、様々なタイヤ部品を調製することができる。これらのタイヤ部品としては、タイヤトレッド、タイヤサイドウォール、ベルトスキム、インナーライナ、プライスキム、及びビード頂点が挙げられるが、これらに限定されない。これらのタイヤ部品は、乗用車用タイヤを含む様々な車両用タイヤに含まれ得る。
【0101】
特定の実施形態において、本発明の加硫物は、重車両用タイヤのトレッド又はアンダートレッドなどの重車両用タイヤの1つ以上の部品を含む。当業者には理解されるように、重車両用タイヤとしては、例えば、トラック用タイヤ、バス用タイヤ、TBR(トラック及びバス用タイヤ)、地下鉄用タイヤ、トラクター用タイヤ、トレーラー用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用タイヤ、アースムーバー用タイヤ、他のオフロード(OTR)用タイヤが挙げられる。1つ以上の実施形態では、重車両タイヤは、新品のタイヤ、並びに更生されたタイヤであってもよい。重車両用タイヤは、時には、それらの用途に応じて分類され得る。例えば、トラック用タイヤは、駆動タイヤ(トラックエンジンによって動力供給されるもの)及びステアタイヤ(トラックを操縦するために使用されるもの)として分類されてもよい。トラクタトレーラリグのトレーラーのタイヤもまた、別個に分類される。
【0102】
特定の実施形態では、重車両用タイヤは、比較的大きいタイヤである。1つ以上の実施形態では、重車両用タイヤは、17.5インチ超の全径(トレッドからトレッド)を有し、他の実施形態においては20インチ超、他の実施形態においては25インチ超、他の実施形態においては30インチ超、他の実施形態においては40インチ超、また他の実施形態においては55インチ超の全径を有する。これらの又は他の実施形態においては、重車両用タイヤは、10インチ超の断面幅を有し、他の実施形態においては11インチ超、他の実施形態においては12インチ超、また他の実施形態においては14インチ超の断面幅を有する。
【0103】
特定の実施形態では、重車両用タイヤはまた、それらの硬化時間(すなわち、t90を達成するために必要とされる時間量)によって特徴付けられる。1つ以上の実施形態では、グリーン(すなわち未硬化)重車両タイヤは、30分超の硬化時間を必要とし、他の実施形態においては1時間超、他の実施形態においては5時間超、他の実施形態においては10時間超、また他の実施形態においては16時間超の硬化時間を必要とする。
実験
【0104】
本発明の実施を実証するために、以下の実験でいくつかの加硫性組成物を調整した。加硫性組成物は、以下の表に示される成分及び混合順序を使用することによって調製した。全ての量は、特に明記しない限り、ゴム100重量部当たりの重量部で示されている。以下の表はまた、組成物及び/又は組成物から調製された加硫物に対して実施されたいくつかの分析試験の結果も示す。
【0105】
第1の実験セットにおいては、表Iに示されるゴム配合物及び混合順序を使用して、加硫性組成物を調製した。このゴム配合物は、重車両用タイヤのタイヤトレッドの製造に有用なゴム配合物を示すものであった。表Iに示すように、混合処理は、マスターバッチ混合ステップ及び最終混合ステップを含む、2工程混合処理であった。種々の混合ステップをBanburyミキサー内で行った。マスターバッチの調製中、ミキサーを75rpmで動作させ、組成物は160℃のピーク温度に到達した。その時点で、組成物をミキサーから落とし、約85℃未満まで冷却した。この時間点で、組成物を、最終混合段階用に特定された成分と共に、ミキサーに再導入した。混合を40rpm及び組成物のピーク温度約100℃で継続した。次に組成物をミキサーから落とし、組成物から分析試験目的のサンプルを得た。
【表1】
【0106】
加硫戻り率を160℃で60分間、MDRによって評価した。MDR評価はMDR 2000を用いて行った。それぞれの分析から得られたデータを表IIに示し、関連データを図にプロットする。表IIに記載されるように、天然ゴム、ブタジエンゴム、酸化亜鉛、及び共晶溶媒の量が、サンプルごとに提供される。
【表2】
【0107】
表IIのデータに示されるように、共晶溶媒の添加は、加硫戻りが2~4%改善し、ゴム構成成分の排他的ポリマーとして天然ゴムを含む配合物(すなわちサンプル5~8)において最大の改善が観察された。
【0108】
加硫物の動的レオロジー特性(例えばtanδ)は、約-100℃~約100℃の範囲にわたって、10Hzで実施した温度スイープ試験から得られた。
【表3】
【0109】
動的特性は、共晶溶媒の添加によるtanδの最小変化、及びG’@30℃でのわずかな増加を示しており、これは、MDRデータのMH-ML値で観察されるようにわずかに高い架橋密度に起因し得る(表III)。
【0110】
加硫物の引張機械特性(最大応力、弾性率、伸び量、及び強靭性)を、ASTM-D412に記載される標準的な手順を用いることによって測定した。
【表4】
【0111】
室温での張力は、化合物を含有する化合物については比較的変化しなかった。しかしながら、100℃では、DESを有しない制御化合物、特に100phrのNR化合物(化合物5~8)と比較して、最大12%の化合物を含有するDESについて強靭性が改善された。
【0112】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない様々な修正及び変更が当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態に正式に限定されるものではない。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫性ゴム組成物であって、
(i)ポリイソプレンエラストマーを含むゴム構成成分と、
(ii)イオウ系硬化剤と、
(iii)酸化亜鉛と、
(iv)共晶組成物と、を含む、加硫性ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム構成成分は、60重量%超の前記ポリイソプレンエラストマーを含む、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項3】
前記ポリイソプレンエラストマーは天然ゴムである、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項4】
共晶組成物は、式Cat
+X
-zYによって定義され、式中、Cat
+はカチオンであり、X
-は対アニオン(例えば、ルイス塩基)であり、zは、前記対アニオン(例えば、ルイス塩基)と相互作用するY分子の数を表す、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項5】
前記共晶組成物は、I型、II型、III型、及びIV型共晶組成物からなる群から選択される、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項6】
前記共晶組成物は、アンモニウム化合物を、メタルハライド、メタルハライド水和物、又は水素結合供与体と化合させることによって形成される、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項7】
前記アンモニウム化合物は、式IIによって定義されてよく、
(R
1)(R
2)(R
3)(R
4)-N
+-Φ
-
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは、独立して水素若しくは一価の有機基であるか、又は代替的に、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの2つが結合して二価の有機基を形成し、Φ
-は対アニオンである、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項8】
前記水素結合供与体は、アミン、アミド、カルボン酸、及びアルコールからなる群から選択される、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項9】
前記メタルハライドは、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、塩化鉄、臭化鉄、及びヨウ化鉄、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項10】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり1.5重量部超の酸化亜鉛を含み、前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり約0.005~約3重量部の前記共晶組成物を含む、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項11】
前記加硫性組成物は、補強充填剤、樹脂、及び蝋を更に含む、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項12】
前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり25重量部未満の油を含む、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項13】
前記硫黄系硬化剤は硫黄であり、前記加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり約0.8~約2.5重量部の硫黄を含む、請求項1に記載の加硫性組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の加硫性組成物から調製された加硫物であって、前記加硫物は、重車両用タイヤの部品であり、前記重車両用タイヤは、オフロード用タイヤ又は航空機用タイヤである、加硫物。
【請求項15】
前記加硫物は、20%未満の加硫戻り率によって特徴付けられる、請求項14に記載の加硫物。
【国際調査報告】