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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】自己接着性プリプレグ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
C08J5/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563058
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2020060918
(87)【国際公開番号】W WO2020216691
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】1905718.1
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504132032
【氏名又は名称】ヘクセル コンポジッツ、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローデス、マイケル
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB29
4F072AD28
4F072AD35
4F072AE01
4F072AE06
4F072AF04
4F072AF06
4F072AF30
4F072AG03
4F072AH43
4F072AJ40
(57)【要約】
第1側面及び第2側面を有する繊維強化層を含む自己接着性プリプレグであって、この繊維強化層の第1側面は、自己接着性樹脂組成物により予め含浸されている。この自己接着性プリプレグは、構造補強材として使用されてもよく、自動車産業、航空宇宙産業及び他の板金製造業において、油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼に直接接合させるのに特に適合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリプレグであって、第1側面及び第2側面を有する繊維強化層を含み、前記繊維強化層の前記第1側面が、自己接着性樹脂組成物により予め含浸されている、プリプレグ。
【請求項2】
前記繊維強化層の前記第2側面がまた、前記自己接着性樹脂組成物により予め含浸されている、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記繊維強化層の前記第2側面が、第2樹脂組成物により予め含浸されている、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記第2樹脂組成物が非接着性である、請求項3に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記第2樹脂組成物が内部離型剤を含む、請求項3又は4に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記第2樹脂組成物が、前記自己接着性樹脂組成物と、実質的に同じ硬化速度を有する、請求項3~5のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記自己接着性樹脂組成物が、140~170℃の温度にて、60分以内の間、加熱することで硬化可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
硬化された前記自己接着性樹脂組成物が、周囲温度にて少なくとも20MPaのラップせん断強度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項9】
硬化された前記自己接着性樹脂組成物が、周囲温度にて少なくとも100N/25mmの剥離強度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項10】
前記自己接着性樹脂組成物が、シラン変性エポキシ樹脂を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項11】
前記自己接着性樹脂組成物が、エポキシノボラック樹脂を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項12】
前記のエポキシノボラック樹脂を含む自己接着性樹脂組成物が、ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂又はフェノールノボラックエポキシ樹脂を含む、請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項13】
前記自己接着性樹脂組成物が、コアシェルゴム強化剤及び/又はカルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリルゴム強化剤又はアミン末端ブタジエン-アクリロニトリルゴム強化剤を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項14】
腐食防止剤を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項15】
前記腐食防止剤が、有機化合物の金属塩である、請求項14に記載のプリプレグ。
【請求項16】
前記腐食防止剤が、無機ポリリン酸塩である、請求項14に記載のプリプレグ。
【請求項17】
前記自己接着性組成物が、組成物の総重量に対して、
(a)1~45%の芳香族エポキシ樹脂;
(b)5~60%のノボラックエポキシ樹脂;
(c)1~10%の硬化剤;及び任意選択で、
(d)0.05~10%の腐食防止剤
を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項18】
前記自己接着性樹脂組成物がポリエーテルスルホン樹脂を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項19】
前記自己接着性組成物が、組成物の総重量に対して、
(a)1~50%の芳香族エポキシ樹脂;
(e)10~30%のポリエーテルスルホン;
(f)1~10%のエチレン酢酸ビニル共重合体;及び
(g)1~10%の硬化剤
を含む、請求項18に記載のプリプレグ。
【請求項20】
前記繊維強化層が、不織布繊維、好ましくはベール、又は不連続繊維フリースを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項21】
前記予め含浸された繊維強化層の前記第1側面及び/又は前記第2側面の前記樹脂の含有量が、30重量%~90重量%である、請求項20に記載のプリプレグ。
【請求項22】
前記繊維強化層が、織られた繊維又は布帛を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項23】
前記繊維強化層が不織布を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項24】
前記予め含浸された繊維強化層の前記第1側面及び/又は前記第2側面の前記樹脂の含有量が、30重量%~50重量%である、請求項22又は23に記載のプリプレグ。
【請求項25】
前記繊維強化層が、1平方メートルあたり200~400グラムの密度を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項26】
構造補強材として油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼に接合するための請求項1~25のいずれか一項に記載のプリプレグの使用。
【請求項27】
自己接着性プリプレグ又はセミプレグを調製するプロセスであって、自己接着性樹脂組成物のフィルムを、繊維強化層の第1側面に適用すること、任意選択で前記自己接着性樹脂組成物のフィルム又は第2樹脂組成物のフィルムを、前記繊維強化層の第2側面に適用すること、及び、前記フィルムコーティングされた層を真空下で圧縮することを含む、プロセス。
【請求項28】
スタックの両方の外部面が自己接着性である、請求項1~25のいずれか一項に記載される自己接着性プリプレグのスタック。
【請求項29】
物品を構造的に補強する方法であって、前記物品を、請求項1~25のいずれか一項に記載の自己接着性プリプレグの接着面、又は請求項28に記載の自己接着性プリプレグのスタックの接着面に接触させること、及び、インサイチューで前記プリプレグを硬化することを含む、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法により得られる、構造補強物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己接着性プリプレグ、自己接着性プリプレグを調製するプロセス、構造補強材としての自己接着性プリプレグの使用、自己接着性プリプレグを使用して物品を構造的に補強する方法及びこうした方法により得られる構造補強物品に関する。本発明は、自動車産業、航空宇宙産業、風力タービン及び他の板金製造業での構造補強材として油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼に良好な接合性を示す、自己接着性プリプレグの使用に特に関する。
【背景技術】
【0002】
プリプレグは、未硬化状態及び硬化準備が整っている樹脂に予め含浸されている繊維及び/又は織物(布帛)を説明するのに使用される用語である。繊維はトウ又は織物の形態であり得る。トウ又は織物は、一般にはフィラメントと呼ばれる複数の細繊維を含む。繊維材料は、各トウを形成するためのそれぞれ複数の繊維フィラメントを含有する複数の繊維トウの形態であってもよい。トウは織物を形成するために縫い付けられる又は織られてもよい。プリプレグにおける繊維強化材料及び樹脂の選択は、硬化プリプレグで形成された複合材料が使用されることになる用途、及びその用途に必要とされる特性に応じて変化する。
【0003】
複合材料は、自動車産業、航空宇宙産業、ならびに風力タービン産業を含む建設産業及び他の板金製造業で広く使用される。こうした複合材料が使用される手法は、関係する特定の用途に応じて変化するが、これは自動車産業では軽量剛性本体パネル、エンジンベイ、排気導管及び燃料系構成要素としての使用、航空宇宙産業ではエンジンブレード、ブラケット、内装、ナセル、プロペラ若しくはロータ、単一通路ウイング及び広胴ウイングとしての使用、建築産業では荷重支持パネル及び嵌め込みパネル、圧力パイプ、タンクライナー及び屋根としての使用、又は風力タービン産業ではロータブレード及びナセルなどとしての使用が挙げられる。いくつかの初期用途については詳細に文書化されている。例えば、1940年代前半のFord Motor Company(Detroit,Michigan,United States of America)による、プラスチック製自動車試作品用のフェノール樹脂複合材の製造における大豆繊維の使用、又は1940年代中盤のAero Research Limited(Duxford,Cambridgeshire,United Kingdom)によるSupermarine製Spitfireといった単座戦闘機型航空機のための、亜麻強化複合材製の胴体を制作するための亜麻の使用についてである。
【0004】
いくつかの用途向けの複合材料は、使用を意図した場所で、関連する繊維強化材料及び樹脂マトリックスからインサイチューで(in-situ:その場で)製造され得る。だが、このアプローチについては製造プロセスの再現性及び結果として得られる複合材の均質性といった多数の問題が存在する。特に、繊維強化材料と樹脂マトリックスの混合物から気泡を十分に除去できていないために、最終複合材の望ましい物理的特性にばらつきが生じうる。こうした問題はプリプレグの使用によって大きく克服されてきた。プリプレグは、専門製造業者により、高度に一様で一貫した手法にて現地外で(オフサイトで)製造され得る。こうしたプリプレグは、プリプレグが共に粘着するのを防ぐために、2層の裏地の間に挟まれた状態で一般に供給されている。裏地層は、使用を意図する場所にて容易に取り外され得る。プリプレグは、熱及び圧力の印加に一般には関与する最終硬化工程に供される前に、金型にて、又はツール内で、又は真空バッグ内にて、手動又は自動レイアッププロセスを使用してレイアップ(構築)され得る。
【0005】
プリプレグのある程度の残留粘着度は、プリプレグが確実に十分に機能可能な状態を維持するためには、通常は望ましい。例えば、このようなプリプレグのある程度の残留粘着度は、手動でレイアップされた場合に複雑な型の形状をとるには、又は、硬化複合材料の構造的剛性を更に大きいものとする目的で、複数の層若しくはスタックを連続して(順次)レイアップした隣接するプリプレグへと接着し続けるためには望ましい。プリプレグの残留粘着性は樹脂マトリックスの組成に応じて変化し、プリプレグの粘着性と、型内部でプリプレグを成形可能とするプリプレグの可撓性すなわち「ドレープ」(“drape”)との間には、多くの場合トレードオフが存在する。特開平09-194612号公報には、例えば強化繊維及びマトリックス樹脂を含み、その粘着性Tが0.025MPa以上であり、ドレープ性Dが150GPa以下であるプリプレグが開示されている。この文献中では、粘着性Tは、0.11MPaの荷重の下、50×50mmのプリプレグ試料を圧着した後の剥離強度として定義され、ドレープ性Dは、3点曲げ試験により測定されたプリプレグの曲げ弾性率として定義される。
【0006】
特定の用途では、硬化前に基材へと直接接着することができるプリプレグを必要としている。これにより、適用される接着剤は分離フィルムを必要としなくなる。高い構造的剛性と軽量性の組合せを必要とする様々な用途(例えば航空機の床パネル)で使用され得るサンドイッチパネルを形成するためにハニカムコアへ接合することを目的とした、表面薄層又は表皮シートとしての自己接着性プリプレグの使用がよく知られている。欧州特許0798102号は例えば、ハニカム及び/又は発泡コア材料ならびに外層を有するサンドイッチ構造を開示する。このコア材料は、樹脂含浸繊維担体材料に基づき、硬化自己接着性プリプレグを用いて外層へ接続され、プリプレグは、繊維担体材料及び表面層を形成する補助繊維材料のコア層を含み、コア層の繊維担体材料は、補助繊維材料よりも単位面積あたりで大きな重量を有する点で特徴付けられ、表面層における繊維材料に対する樹脂の重量比はコア層における重量比よりも高い点で特徴付けられ、繊維担体材料及び補助繊維材料の繊維材料構造は、熱硬化性樹脂により含浸され、樹脂はB段階へと変換されている点で特徴付けられる。
【0007】
サンドイッチパネル用に、ハニカムコアに自己接着性プリプレグ表皮シートを接合する強度を上昇させる複数のアプローチは、表皮シートの自己接着面から延在している熱硬化性フィレット(fillet)又は熱可塑性フィレットを、硬化時にハニカムコアの管状構造物へと形成することに焦点を当てている。国際公開第2005/113652号は例えば、熱硬化性樹脂、硬化剤及び複数の熱可塑性ポリマーであって、それぞれの熱可塑性ポリマーのうち10%超が、プリプレグ樹脂に可溶である熱可塑性ポリマーを含む、繊維及びプリプレグ樹脂から構成されたプリプレグ組成物を開示する。結果として得られたプリプレグ組成物は、様々な用途に有用なハニカム構造を作製するための自己接着性プリプレグとして使用される。この文献は、予想に反し、プリプレグ樹脂中に部分的又は完全に可溶である、強化剤としての熱可塑性ポリマーの含有が、プリプレグが硬化時にハニカム構造物へ接合する一助となるプラスチック製フィレットの形成を更にもたらすことを教示している。欧州特許第1303570号は、サンドイッチパネルを形成するためにコア材料に適用される自己接着性プリプレグシートを形成するために、繊維と組み合わせて使用される樹脂組成物を開示している。プリプレグ樹脂は熱硬化性樹脂、硬化剤及び粘度調節剤を含む。プリプレグ樹脂は、プリプレグをコア材料に接合している間のフィレットの形成及びプリプレグ樹脂の流れ特性を制御するために使用される、例えばポリエーテルスルホン又はポリエーテルイミドの密集化粒子といった特定の熱可塑性粒子を更に含む。
【0008】
国際公開第2018/174217号は、フィレット形成に基づき、サンドイッチパネルにて自己接着性プリプレグ表皮シートをハニカムコアに接合することで、コアに接合される表皮シートの剥離強度が不十分となることを教示している。この文献は、第1熱硬化性樹脂を含浸させた繊維強化材料を含む、土台となるプリプレグ上へ、第2熱硬化性樹脂を含浸させた不織布を含有する自己接着性プリプレグを積層することにより、コア上への表皮シートのドレープ性を増加させることを含む、ハニカムコアへの自己接着性プリプレグ表皮シートの接合を向上させる方法を開示している。
【0009】
上記表皮シートとして自己接着性プリプレグを使用してサンドイッチパネルを作製する様々なアプローチは、特定の不都合に見舞われている。例えばこの不利益の例としては、樹脂成分として熱硬化性ポリマーに加えて熱可塑性ポリマーを含む必要性、又は追加の工業プロセス工程を必要とする可能性がある、プリプレグにおいて追加の不織布繊維もしくは織物層を使用する必要性などである。さらに、前述のアプローチ及びこの分野における多くの他のアプローチは、航空機の床パネルとして広く利用されているサンドイッチパネルを形成するためにプリプレグをハニカムコアに接合する特定の問題に関する。自己接着性プリプレグが有用性を見出している他の出願としては、例えば中国特許第202688253(U)号に開示されるような、プリント回路基板製造のための銅張積層板を製造するための接着性プリプレグストリップ、又は例えば特開2010-155877号公報に開示されるような、自動車にて使用するための電気モータの製造において、構造的構成要素を絶縁するようなものが挙げられる。ただし、プリプレグは自動車、風力タービン、建築及び他の板金製造業にて多くの異なる用途にて広く使用されている。こうした用途は多くの場合、構造的構成要素又は補強層として、油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼に接合されるプリプレグを必要とするが、こうしたプリプレグは、長期間にわたり不都合な又は極度の天候条件にさらされる可能性がある。また、伝統的な方法論は、こうした部分又は層を対象とする基材に接合する構造用接着剤の使用を一般には必要とする。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、上記問題のいくつかを克服し、及び/又は一般には向上をもたらすことを目的としている。
【0011】
本発明に従い、以降に説明するように、又は添付の特許請求の範囲のうちいずれか一項に規定するようにプリプレグ、使用、プロセス、スタック、方法及び物品を提供する。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様において、第1側面及び第2側面を有する繊維強化層を含むプリプレグを提供し、この繊維強化層の第1側面は、自己接着性樹脂組成物により予め含浸されている。本文脈における自己接着性は、周囲温度にて望ましい接着特性を提供する金属基材に接着するように適合される樹脂組成物を指す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
繊維強化層は、シート又は連続マット又は連続フィラメントの形態であり得る繊維材料を含む。他の実施形態において、繊維強化層は、天然繊維又は短尺であるステープルファイバー(staple fibre)を含んでよい。繊維材料は、各トウを形成するためのそれぞれ複数の繊維フィラメントを含有する複数の繊維トウの形態であってもよい。トウは織物を形成するために縫い付けられる又は織られてもよい。繊維強化層は、第1側面と第2側面を有する。一実施形態において、繊維強化層は実質的には平坦であり、この層の第1側面及び第2側面は、繊維強化材を含有する平面の上面及び底面によって画定される。他の実施形態において、繊維強化層は湾曲しており、この層の第1側面及び第2側面は、湾曲したその上面及び底面により画定される。更なる実施形態において、繊維強化層は平坦領域及び湾曲領域を有する不規則な表面を有する。層は相対的に薄くてもよく、相対的に狭い縁部(edge:端部)を有してもよい。いくつかの実施形態において、繊維強化材料の層は100μm、200μm、300μm、400μm、又は500μmの厚みを有する。他の場合では、繊維強化層は相対的に厚くてもよく、相対的に広い縁部を有してもよい。いくつかの実施形態において、繊維強化材料の層は、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上、900μm以上、又は1000μm以上の厚みを有する。特定の実施形態において、繊維強化層の第1側面又は第2側面のうち少なくとも1つは、層の縁部により画定されている。一実施形態において、繊維強化層は平坦であり、かつ相対的に厚く、第1側面は繊維強化層を含有する平面の表面により画定され、第2側面は繊維強化層の縁部を含有する平面により画定される。ここでは、2つの平面は互いに対して相互に直交している。他の実施形態において、繊維強化層又は第1側面及び第2側面のいずれも、幾何学的に規則的な表面により画定されない。
【0014】
繊維は、例えば綿、亜麻、麻、羊毛、絹、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維などの天然材料、例えばレーヨン、ビスコース、モーダルなどの半合成材料、又は例えば炭素、ポリエステル、ナイロン、アクリル、合成ガラスなどの合成材料からなり得る。いくつかの実施形態において、繊維強化材は炭素繊維又はガラス繊維を含む。
【0015】
一実施形態において、繊維強化材は、例えばベール、又は不連続繊維フリースといった不織布繊維材料の形態である。好適なガラス及び炭素ベール又は金属コーティング炭素ベールは、Technical Fibre Products Limited(Burnside Mills,Kendal,Cumbria,United Kingdom)からOptiveil(登録商標)の商品名で市販されている。
【0016】
別の実施形態において、繊維強化材は織物の形態である。本実施形態において、織物の縦糸と横糸は、繊維トウ又は繊維フィラメントから形成されてもよい。他の実施形態において、繊維強化材は不織布又は不織マットの形態である。この形態では、従来の製織プロセスの代わりに、例えばポリエステル糸といった非構造的な縫い糸を使用して不整合状態を回避するため、2つ以上の繊維トウの層を共に接合している。隣接する層における繊維トウ又はフィラメントは、例えば、両方の層を含有する2つの2次元平面における順方向の軸線に対して、第1層の繊維トウは-45°の角度であり、第2層の繊維トウは+45°の角度である、2層の一方向の繊維トウからなる織物など、互いに対して異なる空間的配向にあってもよい。そのような不織布は、互いに異なる角度では繊維トウの層の数に応じて二軸又は多軸であってもよい。繊維トウの層を共に保持するため、製織の代わりに縫い付けを使用することで、結果として得られる不織布のドレープ性を向上させ、これにより、型内にレイアップされた場合に、形成された織物及びプリプレグがそこから縮む、すなわち溝や波立ちを形成するといった傾向を低減させることで知られている。したがって、このタイプの設計された織物は、多くの場合ノンクリンプ・ファブリック(NCF)と呼ばれる。
【0017】
複合材に使用するための好適な織物及び不織布は、Chomarat Textiles Industries(Esher,Surrey,United Kingdom)、Hexcel Reinforcements UK Limited(Narborough,Leicestershire,United Kingdom)及びZhenshi Group Hengshi Fibreglass Fabrics Co.,Ltd.(Tongxiang Economic Development Zone,Jiaxing Zhejiang,314500 China)を含む、多くの専門製造業者から市販されている。一実施形態において、織物は、BB200、BB600又はBB1200などの炭素繊維又はガラス繊維の二軸の不織布である。
【0018】
ハイブリッド繊維又は混合繊維システムもまた想定され得る。ひび割れた(すなわち、伸張破断)又は選択的に不連続である繊維の使用は、本発明に従う製品のレイアップを促進させ、成形されるその能力を向上させるのに有利であり得る。
【0019】
繊維強化材内の繊維の表面質量は、一般には80~4000g/mの範囲である。いくつかの実施形態では、繊維の表面質量は、100~2500g/m、150~2000g/m、150~1200g/m、200~1200g/m、200~600g/m、もしくは200~400g/m、又はそれらの任意の組合せの範囲である。炭素フィラメントの数は、3000~320,000で変化することができ、また好ましくは6,000~24,000で変化することができる。ガラス繊維強化材には、600~2400tex(線密度)の繊維が特に適合する。
【0020】
繊維は、一方向の形態にて、又は不織布マット、織物、多軸織物もしくはノンクリンプ・ファブリックとして使用されてもよい。それらの強化形態の組合せもまた利用されてもよい。
【0021】
自己接着性樹脂組成物、及び存在する場合には、第2樹脂組成物は、プリプレグに存在する樹脂及び繊維強化材の総重量に基づき、樹脂の装填率が20~90重量%の範囲であるような量で繊維強化材上へ装填されてもよい。いくつかの実施形態において、繊維強化材はベール又は不連続繊維のフリース形態であり、樹脂の装填は、プリプレグ中に存在する樹脂及び繊維強化材の総重量に基づき20~90重量%、30~90重量%、40~90重量%、もしくは50~90重量%の範囲であるか、又はそれらの任意の組合せの範囲である。他の実施形態において、繊維強化材は織物、不織布又はノンクリンプ・ファブリックもしくはマットの形態であり、樹脂の充填は、樹脂及び繊維強化材の総重量に基づき20~90重量%、20~80重量%、20~70重量%、20~60重量%、20~50重量%、もしくは30~50重量%の範囲であるか、又はそれらの任意の組合せの範囲である。
【0022】
特定の用途では、強化材料は自己接着性樹脂組成物のための支持材として、及び他の機能的利点又は構造的利点をもたらすものとして作用してもよい。強化材料は、自己接着性樹脂組成物が、接合される2つの面の間で最適な最小接合ボンドラインの厚みで確実に存在するように、自己接着性樹脂組成物のための支持材としてのみではなく、接着層の厚みを制御するためのものとしても作用し得る。
【0023】
繊維強化層はまた、自己接着性樹脂組成物の硬化中に接着性組成物の流れを向上させ得る、及び/又はこれは取り扱い(ハンドリング)を向上させ得る。
【0024】
前述の実施形態において、強化材料は、その形態がベール、フリース、織物、またはそれ以外のものであるかどうかにかかわらず、自己接着性樹脂組成物の接着特性を、著しい程度で妨げることがあってはならないということが重要である。
【0025】
本発明の第1の態様において、繊維強化層の第1側面は、自己接着性樹脂組成物により予め含浸される。一実施形態において、繊維強化層の第1側面のみが樹脂組成物に予め含浸されるが、これは繊維強化層の第2側面が含浸されず、プリプレグがセミプレグであるようにするためである。更なる実施形態において、繊維強化層の第2側面は、プリプレグが対称となるように第1側面と同じ自己接着性樹脂組成物で予め含浸される。別の実施形態において、繊維強化層の第2側面は、プリプレグが非対称であるように自己接着性樹脂組成物の異なる特性を有する第2樹脂組成物に予め含浸される。プリプレグが使用される特定の用途に応じて、第2樹脂組成物は、例えば低粘着の接着性組成物などの自己接着性樹脂組成物に対し異なる特性を有する接着性組成物であってもよい。他の場合では、第2樹脂組成物は従来のプリプレグ樹脂マトリックスであってもよく、及び/又は実質的に若しくは完全に非接着性であってもよい。一実施形態において、第2樹脂組成物は実質的に非接着性であり、自己接着性樹脂組成物は、複数のプリプレグがプリプレグのスタックを形成するため連続してレイアップされる場合に、第2樹脂組成物へと接合され得る。本発明の最後の実施形態において、繊維強化層の第2側面に含浸させるためにより単純な配合を有する第2樹脂組成物の使用は、全体的な工業プロセスのコストを低減する役割を果たし得るプリプレグ又はプリプレグのスタックを形成する上で必要とされる、自己接着性樹脂組成物の量を減少させることができる。第2樹脂組成物としては、例えば硬化後の型からの物品の取り外しを促進させる、内部離型剤が挙げられ得る。
【0026】
本発明で使用される自己接着性樹脂組成物は、周囲温度及び高められた温度で、更には強化剤としてニトリルゴムを含まない状況であっても、良好なラップせん断強度で油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼への良好な接合性を示す。ただし、組成物中に強化剤としてこうしたニトリルゴム及び/又はコアシェルゴムを含むことにより、例えばひび割れの形成への耐性を増加させるなど、他の利点をもたらすことができる。一実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、周囲温度にて少なくとも20MPaである、鋼に対する鋼のラップせん断強度(重ねせん断強度)、又は亜鉛めっき鋼に対する亜鉛めっき鋼のラップせん断強度を有する。鋼に対する鋼のラップせん断強度は、British Standards Institution:英国規格協会(389 Chiswick High Road,London,W4 4AL,United Kingdom)から入手可能なBS EN2243-1:2005、又は国際標準化機構であるISO Central Secretariat(Chemin de Blandonnet 8,CP 401-1214,Vernier,Geneva,Switzerland)から入手可能であるISO 204:2009及び/若しくはISO 527-2:2012に従い測定され得る。更なる実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、20~40MPa、22~35MPa、25~35MPa、もしくは25~30MPa、又はそれらの任意の組合せの範囲で、鋼に対する鋼のラップせん断強度又はめっき鋼に対するめっき鋼のラップせん断強度を有する。
【0027】
自己接着性樹脂組成物は、硬化時に周囲温度にてアルミニウム-アルミニウム接合部で試験した場合には、良好な剥離強度を示す。アルミニウムに対するアルミニウムの剥離強度値は、British Standards Institution:英国規格協会(389 Chiswick High Road,London W4 4AL,United Kingdom)から入手可能であるBS EN2243-2:2005に従い測定され得る。一実施形態において、自己接着性樹脂組成物は周囲温度にて少なくとも80N/25mmの剥離強度を有する。他の実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、80~250N/25mm、85~230N/25mm、90~180N/25mm、95~150N/25mm、もしくは100~130N/25mm、又はそれらの任意の組合せの範囲で剥離強度を有する。
【0028】
別の実施形態において、硬化された自己接着性樹脂組成物は、70~160℃の初期硬化Tg(ピーク損失弾性率、E’’Tg)を有する。硬化Tgは、ASTMインターナショナル(100 Barr Harbor Drive,P.O.Box C700,West Conshohocken,Pennsylvania,19428-2959,USA)から得ることができる、ASTM D7028-7(2015)(動的機械分析(DMA)による高分子マトリックス複合材料のガラス転移温度(DMA Tg)用の標準試験法)に従い測定される。湿潤状態のTg又はホットウェットエイジング後の保持されたTgは、後硬化(post-cure)されていない、未加工の接着性組成物を用いて150℃で15分間等温硬化し、70℃で14日間水に硬化組成物をさらし、次いで同じ測定標準であるASTM D7028を使用して試料のTgを測定することによって測定される。保持されたTgは、(湿潤状態のTg/初期硬化Tg)×100のパーセンテージとして表される。
【0029】
更なる実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、80~150℃、90~145℃、もしくは100~140℃の範囲のうちいずれか1つで、又はそれらの任意の組合せの範囲で、初期硬化Tgを有する。一実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、70℃で14日間のホットウェットエイジング後、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%のE’’Tg保持を有する。
【0030】
本発明で使用される自己接着性樹脂組成物は、長期間にわたる高められた温度での加熱を必要としない条件の下で硬化可能である。一実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、140℃~170℃の温度にて60分以内で加熱することにより硬化される。
【0031】
本発明で使用される自己接着性組成物の構成成分は、以下にて詳細に説明されるが、例えばこうした組成物は、硬化される組成物のために追加成分を必要としないように、既に硬化剤を含有する1部又は1成分(1K)エポキシ樹脂系を含んでもよい。一般論として、95%硬化は、望ましい機械的性能特性及び化学的性能特性をもたらすために、硬化された組成物の機械的性能及び耐熱性がその組成物にとって望ましい特性範囲内にあるよう、十分多い反応部位が消費されたエポキシ樹脂含有組成物を定義する。硬化の最終5%を得るために、追加時間及び追加エネルギーを費やすことは可能であるが、これは大幅な機械的特性の向上又は熱的な特性の向上にはつながらないであろう。示差走査熱量測定(DSC)は、95%硬化に到達する時間をモニタリングするために利用される。デジタル走査熱量測定を使用して硬化度を測定するために、硬化反応中に放出される熱は、完全硬化用の熱総量と関連付けられる。これは、以下のように測定され得る。参照樹脂試料を10℃/分の速度で10℃から250℃に加熱して完全硬化(100%)させ、発生した熱ΔHiを記録する。このとき、参照樹脂試料と同じ組成の特定の樹脂試料の硬化度は、所望の温度まで所望の速度で、所望の時間にわたる条件にて試料を加熱することによって、これらの条件にて試料を硬化し、この硬化反応により発生した熱ΔHeを測定することにより測定され得る。このとき、硬化度(硬化%)は、
硬化%=[(ΔHi-ΔHe)/ΔHi]×100[%]
(式中、ΔHiは、10℃から250℃で完全硬化されるまで未硬化樹脂を加熱することにより発生した熱であり、ΔHeは、所望の温度まで所望の速度で加熱された、特定の程度で硬化された樹脂により発生した熱である。)によって定義される。
【0032】
一実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、140℃~170℃の温度にて60分までに、好ましくは45分以内で加熱することにより95%硬化される。更なる実施形態において、接着性組成物は、150℃~160℃の温度にて20分までに、もしくは160℃~170℃の温度にて10分までに、又はそれらの任意の組合せにて95%硬化される。接着性組成物は、およそ170℃の温度で5分までに、好ましくは2.5分以内で硬化されてもよい。他の実施形態において、接着性樹脂組成物は、150℃まで150秒以内で、好ましくは120秒以内で組成物を加熱することにより硬化され得る。これは、本発明による自己接着性プリプレグが構造補強を得るために使用されることを意図している用途では望ましいものであり得、プリプレグが、できる限り素早くインサイチューで(その場で)基材へと接着され、硬化されることが重要である。
【0033】
自己接着性樹脂組成物は腐食防止剤を含んでもよい。これは、繊維強化層が、腐食過程を促進させる可能性がある炭素繊維又は他の導電性繊維を含む場合には特に望ましい。本発明に従うプリプレグ又はプリプレグで補強された構造が要素にさらされる可能性がある用途では、これは特に望ましい。腐食防止剤は、例えば特に、モリブデンオキソアニオンを含む塩であるモリブデン塩、亜硝酸カルシウム、希土類金属塩、リン酸亜鉛又は他のリン酸金属塩、特にクロム酸塩といったクロム塩、又はランタノイド化合物といった無機腐食防止剤を含んでもよい。いくつかの用途において、本発明による自己接着性プリプレグは、例えば風力タービンにおいてなど、不都合な又は極度の天候条件にさらされる可能性のある、油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼構造物に接着され得る。一実施形態において、腐食防止剤は、クロム酸塩又は他のクロム塩を含有しない無機腐食防止剤である。これは、こうした塩が時間を経て浸出し、環境中に混入する危険性に起因する。別の実施形態において、腐食防止剤は無機リン酸塩又はポリリン酸塩である。好適な無機リン酸塩又はポリリン酸塩としては、Heubach GmbH(Langelsheim,Germany)から市販されているHeucophos(登録商標)ZPA(オルトリン酸亜鉛アルミニウム)、Heucophos(登録商標)ZMP(オルトリン酸塩基性モリブデン酸亜鉛水和物)、Heucophos(登録商標)CMP(電気化学活性マグネシウム化合物で変性されたリン酸カルシウム複合体)、Heucophos(登録商標)ZAPP(ポリリン酸亜鉛アルミニウム水和物)、Heucophos(登録商標)SAPP(ポリリン酸ストロンチウムアルミニウム水和物)、Heucophos(登録商標)SRPP、Heucophos(登録商標)CAPP、Heucophos(登録商標)ZAM Plus及びHeucophos(登録商標)ZCP Plusが挙げられる。一実施形態において、無機腐食防止剤はポリリン酸ストロンチウムアルミニウム水和物である。
【0034】
腐食防止剤は、有機腐食防止剤を含んでもよい。効果的な有機腐食防止剤化合物は、例えば窒素、酸素、硫黄及びリンなどの孤立電子対を有するヘテロ原子、並びに吸収プロセスに都合がよい金属と相互作用するπ電子を有する構造部分を一般には含有する。窒素を含有する化合物としては、アミン、ピリジン誘導体、四級アンモニウム塩、トリアゾール誘導体、シッフ塩基、アミノ酸及びインダゾールが挙げられ得る。窒素原子及び硫黄原子を含有する化合物としては、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、及びチアゾール誘導体が挙げられ得る。硫黄を含有する化合物としては、チオ尿素誘導体及びスルホン酸塩が挙げられ得る。窒素及び酸素を含有する化合物としては、オキサゾール誘導体、フタルイミド及び植物抽出物/天然抽出物が挙げられ得る。いくつかの前述のクラスの有機化合物の非限定的な例としては、2-(4-ニトロフェニル)ベンゾイミダゾール、(6-メチル-3-オキソピリダジン-2-イル)アセタート、シッフ塩基、L-システイン、イミダゾリン異性体、N-デシル-3-アミノ-1,2,4-トリアゾール及びアデノシンが挙げられる。腐食防止剤は、有機化合物の金属塩であってもよい。好適な化合物の1つには亜鉛-5-ニトロイソフタラートがある。これは、Heucorin(登録商標)RZの商品名でHeubach GmbH(Langelsheim,Germany)から市販されている。一実施形態において、腐食防止剤は有機腐食防止剤と組み合わせた無機腐食防止剤を含む。無機腐食防止剤及び有機腐食防止剤は、腐食過程の抑制又は低減に関して相乗効果をもたらすことができる。一実施形態において、腐食防止剤は亜鉛-5-ニトロイソフタラートとポリリン酸ストロンチウムアルミニウム水和物の組合せを含む。
【0035】
腐食防止剤は、組成物の総重量に基づき、0.05~10重量%の量で、好ましくは組成物の総重量に基づき、0.5~2重量%の量で、自己接着性樹脂組成物中に存在することができる。無機腐食防止剤が有機腐食防止剤と組み合わせて使用される場合には、この組成物の総重量に基づき、無機腐食防止剤は0.5~2重量%の量で存在することができ、有機腐食防止剤は、0.01~0.5重量%の量で存在することができる。腐食防止の有効性は、塩水噴霧腐食試験により評価された。
【0036】
本発明における自己接着性樹脂組成物は、嫌気性接着剤を含む、1部又は1成分構造用接着剤に一般に使用される、いずれかの好適な重合可能な成分を含んでもよく、特には、例えばジメタクリラート及びトリメタクリラートといった多官能メタクリラートモノマーに基づくもの、エポキシ接着剤、反応性アクリル接着剤、特に単官能アクリラート又はメタクリラートモノマーに基づくもの、紫外線(UV)光硬化接着剤、特にビニルエーテル、ビニルエーテルエステル、ウレタンビニルエーテル及び脂環式エポキシに基づくもの、ポリウレタン、反応性ホットメルトポリウレタン(RHMU)、シアノアクリラート、ならびに、ポリスルホン/ポリエーテルスルホン(PES)、特にアミノフェニル官能性反応性ポリスルホンを含む反応性ポリスルホンが挙げられる。エポキシ樹脂系に基づく自己接着性樹脂組成物は、こうした系の可撓性、及び得ることができる広範囲の特性を考慮すると、特にプリプレグが非対称であり、自己接着性樹脂組成物に加え第2樹脂組成物を含む場合、本発明では特に好ましい。
【0037】
一実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、組成物の総重量で、
(a)1~45%の芳香族エポキシ樹脂;
(b)5~60%のノボラックエポキシ樹脂;
(c)1~10%の硬化剤;及び任意選択で
(d)0.05~10%の腐食防止剤、を含む。
【0038】
本発明の最後の実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、以降に説明するように、(a)少なくとも1種の芳香族エポキシ樹脂、加えて(b)少なくとも1種のノボラックエポキシ樹脂を含有する。成分(a)、(b)及び(c)は、触媒化作用を受けた一成分エポキシ樹脂系を共に形成する。本明細書にて言及される芳香族エポキシ樹脂は、存在する場合には、主鎖又は側鎖に少なくとも1種の芳香族単位を含有するエポキシ樹脂である。典型的には、芳香族エポキシ樹脂は、例えばグリシジルエーテルといった少なくとも1種の芳香族エポキシド部分を含み、存在する場合には、好ましくは樹脂の主鎖又は側鎖の末端位置にこれを含む。使用され得る芳香族エポキシ樹脂としては、例えばフェノール(フェノール及びホルムアルデヒド)とエピクロロヒドリンとの反応生成物、過酸エポキシ、グリシジルエステル、グリシジルエーテル、エピクロロヒドリンとアミノフェノールとの反応生成物、エピクロロヒドリンとグリオキサールテトラフェノールとの反応生成物などが挙げられる。上記にて言及されるフェノールとしては、多核フェノール(すなわち、少なくとも2種のフェノール官能基を有する化合物)が挙げられる。多核フェノールの典型例はビスフェノールである。
【0039】
芳香族エポキシ樹脂は、固体形態もしくは半固体形態、又はそれらのブレンドであり得る。好適なエポキシ樹脂は、単官能エポキシ樹脂、二官能エポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、及び/又は四官能エポキシ樹脂から選択される、2種以上のエポキシ樹脂のブレンドを含んでもよい。好適な二官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールF、ビスフェノールA(任意選択で臭素処理される)、フェノール、芳香族グリシジルアミン、ナフタレン、又はそれらの任意の組合せに基づくものが挙げられる。
【0040】
好適な固体又は半固体の芳香族エポキシ樹脂は、Araldite(登録商標)の商品名で、Huntsman Advanced Materials(Switzerland)(S.A.,Monthey,Switzerland)で市販されている。好適な高分子量の塩基性固体エポキシ樹脂としては、Araldite(登録商標)GT 6097、Araldite(登録商標)GT 6099、Araldite(登録商標)GT 6609、Araldite(登録商標)GT 6610、Araldite(登録商標)GT 6810-1、Araldite(登録商標)GT 7077及びAraldite(登録商標)GT 16099が挙げられる。好適な中程度の重量~低重量の塩基性固体エポキシ樹脂としては、Araldite(登録商標)GT 6063、Araldite(登録商標)GT 6063、Araldite(登録商標)GT 6064、Araldite(登録商標)GT 6071、Araldite(登録商標)GT 6084-2、Araldite(登録商標)GT 6703、Araldite(登録商標)GT 7004、Araldite(登録商標)GT 7071及びAraldite(登録商標)GT 7072が挙げられる。好適な半固体の塩基性エポキシ樹脂としては、Araldite(登録商標)GY 280及びAraldite(登録商標)LY1589が挙げられる。これらは、両方ともHuntsman Advanced Materialsから入手可能であり、Epokukdo YD-134及びEpokukdo YD-136は、Kukdo Chemical Company Limited(Seoul,South Korea)で市販されている。ただし、芳香族エポキシ樹脂は前述のものに限定されるわけではなく、エポキシ接着剤として一般に使用される他の固体及び半固体塩基性エポキシ樹脂を含む。これらは多くの製造業者及びメーカーから市販されている。
【0041】
芳香族エポキシ樹脂は、以下の化学式1により表されるシラン化合物
【化1】

とエポキシ樹脂とを反応させることによって調製されるシラン変性エポキシ樹脂であってもよい。
【0042】
化学式1において、Rは脂肪族又は芳香族アルキレン基であり、R、R及びRは独立して脂肪族アルキル基又は芳香族アルキル基である。化学式1の化合物から調製されたシラン変性エポキシ樹脂の使用は、欧州特許第2799509号にて説明され、関連するこの開示は、参照として本明細書に組み入れられる。本発明での使用に好適なシラン変性エポキシ樹脂としては、KSR-176、KSR-177、KSR-276、KSR-900などが挙げられ得る。これらは、Kukdo Chemical Company Limited(Seoul,South Korea)から市販されている。
【0043】
一実施形態において、シラン変性エポキシ樹脂は二官能エポキシ樹脂である。例えば、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテルに基づくシラン変性エポキシ樹脂であってもよい。更なる実施形態において、シラン変性エポキシ樹脂は多官能エポキシ樹脂である。二官能又は多官能シラン変性エポキシ樹脂によりもたらされる更に高次の官能性は、接着性組成物の特定の用途の性能を向上させるのに有用であり得る。
【0044】
更なる実施形態において、シラン変性エポキシ樹脂は、アルコキシシラン変性エポキシ樹脂又はアリールアルコキシシラン変性エポキシ樹脂である。例えば、化学式1においては、RはC~C20アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、及びアルキルアリーレン基からなる群から選択され得、R、R及びRは、C~C20アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアルキルアリール基からなる群からそれぞれ独立して選択されてもよい。
【0045】
シラン変性エポキシ樹脂は、170~1,000グラム/当量(g/当量)のエポキシ当量(EEW)を有し得る。好ましくは、シラン変性エポキシ樹脂は、170~700g/当量のEEWを有する。いくつかの実施形態において、シラン変性エポキシ樹脂は190~220g/当量、240~270g/当量、450~500g/当量、もしくは600~700g/当量の範囲で、又はそれらの任意の組合せのEEWを有する。
【0046】
シラン変性エポキシ樹脂は、組成物の総重量に基づき、1~15重量%の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、シラン変性エポキシ樹脂は、組成物の総重量に基づき、3~12重量%、4~10重量%、4~8重量%、もしくは5~7.5重量%の量で、又はそれらの任意の組合せで存在する。
【0047】
本発明者らは、シラン変性エポキシ樹脂を含有する自己接着性樹脂組成物が、室温及び高められた温度で、更には強化剤としてのニトリルゴムを含まない状況であっても、良好なラップせん断強度(重ねせん断強度)で油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼への良好な接合性をもたらすことを見出した。自己接着性樹脂組成物はまた、所望のガラス転移温度(ピーク損失弾性率、E’’Tg)を有し、これはホットウェットエイジング後にE’’Tgを良好に保持することを示す。
【0048】
本発明で使用される自己接着性樹脂組成物は、少なくとも1種のノボラックエポキシ樹脂を包含する。ノボラックエポキシ樹脂は、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、もしくはジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂、又はそれらの任意の組合せであってもよい。好適なノボラックエポキシ樹脂の例としては、Kukdo Chemical Company Limited(Seoul,South Korea)により製造されている、YDPN-631(フェノールノボラックエポキシ樹脂)、YDPN-638(フェノールノボラックエポキシ樹脂)、YDCN-500-1P(クレゾールノボラックエポキシ樹脂)、YDCN-500-4P(クレゾールノボラックエポキシ樹脂)、YDCN-500-5P(クレゾールノボラックエポキシ樹脂)、YDCN-500-8P(クレゾールノボラックエポキシ樹脂)、YDCN-500-10P(クレゾールノボラックエポキシ樹脂)、YDCN-500-80P(クレゾールノボラックエポキシ樹脂)、YDCN-500-90P(クレゾールノボラックエポキシ樹脂)、KBPN-110(ビスフェノールA(BPA)ノボラックエポキシ樹脂)、KBPN-115(BPAノボラックエポキシ樹脂)、KBPN-120(BPAノボラックエポキシ樹脂)、KDMN-1065、KDCP-130(ジシクロペンタジエン(DCPD)エポキシ樹脂)、KDCP-150(ジシクロペンタジエン(DCPD)ノボラックエポキシ樹脂)及びKDCP-130EK80、ならびに、日本化薬株式会社(Tokyo,Japan)から入手可能であるXD1000(DCPDノボラックエポキシ樹脂)、ならびに、Shin-A T&C(Seoul,South Korea)により製造されているSCT-150(フェノールノボラックエポキシ樹脂)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、ノボラックエポキシ樹脂はフェノールノボラックエポキシ樹脂又はジシクロペンタジエンエポキシ樹脂である。
【0049】
ノボラックエポキシ樹脂は、一般には組成物の総重量に基づき、5~60重量%の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、ノボラックエポキシ樹脂は、組成物の総重量に基づき、5~55重量%、6~50重量%、7~45重量%、もしくは8~45重量%の範囲のうちいずれか1つの量で、又はそれらの任意の組合せで存在してもよい。フェノールノボラックエポキシ樹脂又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂を含む組成物において、フェノールノボラックエポキシ樹脂又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂は、組成物の総重量に基づき、5~20重量%の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、フェノールノボラックエポキシ樹脂又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂は、組成物の総重量に基づき、5~18重量%、6~16重量%、8~14重量%、もしくは10~12重量%の範囲のうちいずれか1つの量で、又はそれらの任意の組合せで存在してもよい。ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂を含む組成物において、ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂は、組成物の総重量に基づき、5~60重量%の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂は、組成物の総重量に基づき、5~55重量%、10~50重量%、15~45重量%、もしくは20~45重量%の範囲のうちいずれか1つの量で、又はそれらの任意の組合せで存在してもよい。
【0050】
エポキシ樹脂の反応性は、そのエポキシ当量(EEW)により示され、EEWが低いほど、反応性は高くなる。エポキシ当量は以下のように計算することができる:(分子量エポキシ樹脂)/(分子あたりのエポキシ基の数)。別の方法では、以下のように定義され得るエポキシ価を用いて計算される:エポキシ価=100/エポキシ当量。分子あたりのエポキシ基を計算するには:(エポキシ価×分子量)/100である。分子量を計算するためには:(100×分子あたりのエポキシ基)/エポキシ価である。分子量を計算するためには:エポキシ当量×分子あたりのエポキシ基である。
【0051】
一実施形態において、フェノールノボラックエポキシ樹脂は150~250g/当量のEEWを有する。更なる実施形態において、フェノールノボラックエポキシ樹脂は、150~240g/当量、155~235g/当量、160~230g/当量、もしくは165~200g/当量の範囲のうちいずれか1つ、又はそれらの任意の組合せであるEEWを有する。
【0052】
一実施形態において、クレゾールノボラックエポキシ樹脂は150~250g/当量のEEWを有する。更なる実施形態において、クレゾールノボラックエポキシ樹脂は、160~240g/当量、170~230g/当量、180~220g/当量、もしくは190~215g/当量の範囲のうちいずれか1つである、又はそれらの任意の組合せであるEEWを有する。
【0053】
クレゾールノボラックエポキシ樹脂は、室温では概して固体である。更なる実施形態において、クレゾールノボラックエポキシ樹脂は、45~100℃、50~95℃、60~85℃、もしくは65~80℃、又はそれらの任意の組合せの範囲のうちいずれか1つである軟化点を有する。
【0054】
一実施形態において、ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂は200~300g/当量のEEWを有する。更なる実施形態において、ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂は、230~290g/当量、240~270g/当量、240~260g/当量、もしくは245~255g/当量の範囲のうちいずれか1つである、又はそれらの任意の組合せであるEEWを有する。一実施形態において、ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂はおよそ245~260g/当量のエポキシ当量を有する。
【0055】
ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂は、室温では概して固体である。更なる実施形態において、ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂は、60~90℃、65~75℃、68~78℃、75~85℃、もしくは79~81℃の範囲のうちいずれか1つ、又はそれらの任意の組合せである軟化点を有する。
【0056】
本発明で使用される硬化剤は、エポキシ接着剤に関して一般に使用される任意の単一の硬化剤、又は硬化剤の任意の組合せであってもよい。一実施形態において、硬化剤はアミン、又は潜在性アミン硬化剤である。アミンは、脂肪族、脂環式、芳香族、又は芳香族構造体であって、1つまたは2つ以上のアミノ部分を有するものであってよい。例示的なアミン硬化剤としては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、シアノグアニジン、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。例示的な硬化剤としては、ジシアノジアミド(DICY)といったジシアノポリアミドが挙げられる。4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)又は3,3’-ジアミノジフェニル(3,3’-DDS)、及び、DICYとDDSとの混合物はまた、潜在性アミン硬化剤として有益に使用され得る。アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、イソフタル酸ジヒドラジド(IDH)といったジヒドラジド、及びAncamine(登録商標)2441(Evonic Resource Efficiency GmbH,Marl,Germany)といったポリアミン、及びAnchor1040(Air Products Limited,Walton on Thames,Surrey,United Kingdom)といった三フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF3-MEA)複合体はまた、潜在性硬化剤として好適である。
【0057】
別の実施形態において、硬化剤は、イミダゾール硬化剤成分と組み合わせた尿素ベースの硬化剤成分の混合物である。イミダゾール硬化剤は、イミダゾール化合物又はイミダゾール付加物であってもよい。好適なイミダゾール硬化剤は、以下の成分群:2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウム-トリメリタート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウム-トリメリタート、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン粉末、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物脱水物、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物脱水物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロリド、2-フェニルイミダゾリン-2,4-ジアミノ-6-ビニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-1,3,5-トリアジンイソシアヌル酸付加物、又は2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-1,3,5-トリアジンの1つまたは複数から選択され得る。
【0058】
一実施形態において、1種または複数種の硬化剤は、例えば、接着性組成物の他の成分とは、硬化剤の硬化成分と樹脂マトリックスの残りの部分とが直接接触するのを妨げるために硬化剤をカプセル化することで分離されてもよい。一実施形態において、硬化剤は、組成物の総重量に基づき、1~10重量%の量で存在する。更なる実施形態において、硬化剤は、組成物の総重量に基づき、2~9重量%、3~8重量%、4~7重量%、もしくは5~6重量%の量で、又はそれらの任意の組合せで存在する。
【0059】
自己接着性樹脂組成物は、強化剤を更に含んでもよい。一実施形態において、強化剤は、カネカ株式会社(Tokyo,Japan)により、Kane Ace(登録商標)又はKane Ace MX(登録商標)の商品名で製造されたコアシェルゴムなどのコアシェルゴムを含む。そのようなコアシェルゴムの例としては、Kane Ace(登録商標)MX-150、MX-153、MX-154、MX-257、MX-134、MX-135、MX-136、MX-139、MX-267、MX-215、MX-217、MX-236、MX-550、MX-551及びMX553が挙げられ、これらはすべてエポキシ樹脂ベースである。コアシェルゴムは、組成物の総重量に基づき、5~30重量%の量で存在してもよい。更なる実施形態において、コアシェルゴムは、組成物の総重量に基づき、10~30重量%、15~30重量%、もしくは20~30重量%の量で、又はそれらの任意の組合せで存在する。
【0060】
別の実施形態において、強化剤はニトリルゴム又はニトリルゴム付加物を含む。好適なゴム強化剤としては、カルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル(CTBN)ゴム又はゴム付加物、及びアミン末端ブタジエン-アクリロニトリル(ATBN)ゴム又はゴム付加物などの官能化ブタジエンアクリロニトリル共重合体が挙げられる。例示的なCTBNゴム又はATBNゴムは、Schill and Seilacher “Struktol” GmbH(Hamburg、Germany)から、Struktol(登録商標)、Polydis(登録商標)3604、3611、3614及び3619の商品名で入手可能である。ニトリルゴムは、組成物の総重量に基づき、1~40重量%の量で存在してもよい。更なる実施形態において、ニトリルゴムは、組成物の総重量に基づき、2~35重量%、もしくは3~33重量%の量で、又はそれらの任意の組合せで存在する。一実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、ジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂及びニトリルゴム又はニトリルゴム付加物を含み、ニトリルゴム又はニトリルゴム付加物は、組成物の総重量に基づき、1~15重量%、好ましくは1~10重量%の量で存在する。別の実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、フェノールノボラックエポキシ樹脂又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂及びニトリルゴム又はニトリルゴム付加物を含み、ニトリルゴム又はニトリルゴム付加物は、組成物の総重量に基づき、10~40重量%、好ましくは20~40重量%の量で存在する。
【0061】
一実施形態において、接着性組成物は吸油剤を更に含む。吸油剤は、直鎖脂肪族の非極性付加物を有するエポキシ成分又は樹脂を含んでもよい。一実施形態において、吸油剤はこれまでに説明された種類のエポキシニトリルゴム付加物を含んでもよい。別の実施形態において、吸油剤は無機充填材を含む。無機充填材の粒子のサイズは、50ミクロン~500ミクロン、好ましくは100~200ミクロンの範囲であってもよい。好ましい無機充填材の1つはCaCOであり、その多孔質微細構造により追加の吸油性をもたらすことができる。好適なCaCO充填材は、Omya UK Limited(Steeple Morden,Royston,Hertfordshire,United Kingdom)からMinfil(登録商標)の商品名で入手可能である。他の実施形態において、吸油剤としては、シリカ、ヒュームドシリカ、カオリンクレー、又はポリプロピレン、ポリエチレン及びポリビニルといった吸収性ポリマーが挙げられる。吸油剤は、組成物の総重量に基づき、1~10重量%の量で、好ましくは組成物の総重量に基づき、5~10重量%の量で存在してもよい。
【0062】
更なる実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、組成物の総重量で、
(a)1~45%の芳香族エポキシ樹脂;
(b)5~60%のノボラックエポキシ樹脂;
(c)1~10%の硬化剤;
(d)0.05~10%の腐食防止剤;
(e)1~40%のゴム強化剤;及び
(f)1~10%の無機充填材、を含む。
【0063】
更なる実施形態において、前述の実施形態における成分(d)0.05~10%の腐食防止剤は省かれる。
【0064】
別の実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、組成物の総重量で、
(a)1~45%の1種または複数種のベース(無充填)のエポキシ樹脂;
(b)5~60%のノボラックエポキシ樹脂;
(c)1~10%の硬化剤;
(d)5~30%のコアシェルゴム;
(e)1~40%のニトリルゴム変性エポキシ樹脂;
(f)1~10%の無機充填材;
(g)0.05~0.5%の有機化合物の金属塩;及び
(h)0.5~2%の無機ポリリン酸塩、を更に含む。
【0065】
一実施形態において、本発明による接着性組成物は、硬化促進剤を更に含む。硬化促進剤は、置換尿素に基づくウロン型硬化促進剤であってもよい。好適な尿素ベース材料としては、Alzchem Group AG(Trostberg,Germany)から名称DYHARD(登録商標)で入手可能な範囲の材料、ならびに、UR200、UR300、UR400、UR600、及びUR700として市販されているものなどの尿素誘導体が挙げられる。一実施形態において、ウロン硬化促進剤は、4,4’-メチレンジフェニレンビス(N,N-ジメチル尿素)(CAS No.10097-09-3)であり、これはEmerald Performance Materials(Moorefield,New Jersey,USA)から、Omicure(登録商標)U52Mの商品名で市販されている。硬化促進剤は、組成物の総重量に基づき、1~15重量%、好ましくは5~10重量%の量で存在してもよい。
【0066】
更なる実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、組成物の総重量で、
(a)1~50%の芳香族エポキシ樹脂;
(b)10~30%のポリエーテルスルホン;
(c)1~10%のエチレン酢酸ビニル共重合体;及び
(d)1~10%の硬化剤、を含む。
【0067】
好適な芳香族エポキシ樹脂及び硬化剤は、前述の通りである。自己接着性樹脂組成物はまた、前述した種類のウロンベースの硬化促進剤などの硬化促進剤を含んでもよい。
【0068】
好適なポリエーテルスルホン(PES)樹脂としては、粉末グレードのSumikaExcel(登録商標)3600P、4100P、4800P、5003P、5200P、5400P及び5900P、非強化ペレットグレードのSumikaExcel(登録商標)3600G、4100G及び4800G、ガラス繊維強化ペレットグレードのSumikaExcel(登録商標)3601GL30、3601GL20、4101GL30及び4101GL20が挙げられ、これらは住友化学株式会社(Tokyo,Japan)から市販されている。
【0069】
好適なエチレン酢酸ビニル共重合体としては、DuPont(商標)Elvax(登録商標)750、760、760Q、770、670、660、650Q、560、550、470、460、450、440、420、410、360、350、265、260、250、240W、220W、150、150W、40L-03、40W、4355、4320、4310、4260、760A、660A、560A、550A、470A、460A、450A、420A、360A、265A、260A、250A又は240Aが挙げられ、これらはE.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware,United States of America)から市販されている。
【0070】
本実施形態において、ポリエーテルスルホン及びエチレン酢酸ビニルを含有する自己接着性樹脂組成物はまた、吸油剤を含んでもよい。吸油剤は、直鎖脂肪族の非極性付加物を有するエポキシ成分又は樹脂を含んでもよい。一実施形態において、吸油剤はこれまでに説明された種類のエポキシニトリルゴム付加物を含んでもよい。別の実施形態において、吸油剤は無機充填材を含む。無機充填材の粒子のサイズは、50ミクロン~500ミクロン、好ましくは100~200ミクロンの範囲であってもよい。好ましい無機充填材の1つはCaCOであり、多孔質微細構造により追加の吸油性をもたらすことができる。好適なCaCOは、Omya UK Limited,Steeple Morden,Royston,Hertfordshire,United KingdomからMinfil(登録商標)の商品名で入手可能である。他の実施形態において、吸油剤としては、シリカ、ヒュームドシリカ、カオリンクレー、又はポリプロピレン、ポリエチレン及びポリビニルといった吸収性ポリマーが挙げられる。吸油剤は、組成物の総重量に基づき、1~30重量%の量で、好ましくは組成物の総重量に基づき、5~25重量%の量で存在してもよい。
【0071】
更なる実施形態において、自己接着性樹脂組成物は、組成物の総重量で、
(a)1~50%の芳香族エポキシ樹脂;
(b)10~30%のポリエーテルスルホン;
(c)1~10%のエチレン酢酸ビニル共重合体;
(d)1~10%の硬化剤;
(e)1~30%の無機充填材;及び
(f)1~5%の硬化促進剤、を含む。
【0072】
別の実施形態において、第1の態様における本発明によるプリプレグは、樹脂を予め含浸した繊維強化層の一方の側面又は両方の側面に粘着層を更に含む。自己接着性樹脂組成物、及び任意選択の第2樹脂組成物をプリプレグに予め含浸させた後に、例えば、好適な粘着樹脂のフィルムをプリプレグの表面に適用することにより、又はプリプレグの表面へと好適な樹脂組成物の溶液を噴霧することにより、粘着層をプリプレグに適用することができる。
【0073】
更なる態様において、本発明は、構造補強材としての油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼に接合するための、本発明による第1の態様のプリプレグの使用を提供する。油付着鋼又は油付着亜鉛めっき鋼は、更なる工業プロセス工程を必要とする構造物の部品を形成し得る。一実施形態において、プリプレグは、プレス加工又は加圧を受ける油付着又は油付着亜鉛めっき鋼ブランクに接合するためのものである。ブランクは、例えばドアのパネル又はトランク(boot)若しくはボンネットカバーといった自動車産業で使用するためのものであってもよい。他の実施形態において、プリプレグは、ナセル又はロータブレードを含む、風力タービン用の構成要素部品、又はナセル、プロペラ又はロータ、単一通路翼及び広胴ウイングを含む、航空宇宙産業用の構成要素部品において、構造補強材として使用されるためのものであってもよい。
【0074】
別の態様において、本発明は、自己接着性樹脂組成物のフィルムを繊維強化層の第1側面に適用すること、任意選択で、前記自己接着性樹脂組成物又は第2樹脂組成物のフィルムを前記繊維強化層の第2側面に適用すること、及び前記フィルムコーティングされた層を真空下で圧縮することを含む、自己接着性プリプレグ又はセミプレグを調製するプロセスを提供する。
【0075】
更なる態様において、本発明は、その第1の態様における本発明による自己接着性プリプレグのスタックを提供する。プリプレグは連続的にレイアップされてもよい。一実施形態において、プリプレグは非対称であり、プリプレグのスタックは、自己接着性である1つの最も外側の側面、及び標準的な樹脂マトリックスを含む1つの最も外側の側面を有する。こうした配置は、スタックの自己接着面が、この自己接着面を接合する構造体のみに構造的剛性を提供することを意図している場合には適切であり得る。別の実施形態において、自己接着性プリプレグのスタックの両面は、自己接着性であり得る。本発明の最後の実施形態において、スタックを作製するのに使用されるプリプレグは対称であり、唯一の樹脂組成物として自己接着性樹脂組成物を含んでもよい。代替的には、スタックにおけるプリプレグは非対称であり、自己接着性樹脂組成物側面が最も外側であるように非連続的にレイアップされ得る最後のプリプレグを除いて、連続的にレイアップされてもよい。スタックは、このスタックが使用されることを意図している特定の用途に応じて、望ましい厚みを得るためにプリプレグの複数のプライ(層)を含んでもよい。補修用途において、例えば最終製品の補修材は5mmの厚みを有してもよく、スタックは2~10個のプリプレグのプライ又は層を含んでもよい。他の実施形態において、スタックは2~100プライ、3~90プライ、4~80プライ、5~70プライ、6~60プライ、7~50プライ、8~40プライ、9~30プライ、もしくは10~20プライのプリプレグ、又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。他の用途において、プリプレグのスタックはより厚く、又はより薄くてもよい。例えば、リーフスプリング用途に関しては、プリプレグのスタックは、数mm~数cmほどの厚みであり得る。
【0076】
別の態様においては、本発明は物品を構造的に補強する方法を提供する。これは、その第1の態様における本発明による自己接着性プリプレグの接着面と物品とを、又は、前述した態様における本発明による自己接着性プリプレグのスタックの接着面と物品とを接触させること、及び、インサイチューで(その場で)プリプレグを硬化させることを含む。本発明による自己接着性プリプレグは、構造的剛性をもたらすため、及び/又は、例えば、稼働するボディシェルの部品又は他のボディパネル、例えばドア、ウイング、ボンネット、トランクカバー、バンパーなどの構造的構成要素の重量を低減するため、自動車産業にて使用されてもよい。一実施形態において、プリプレグは、Aピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラーなどを含むがこれらに限定されない、自動車の垂直の金属支持体又はほぼ垂直の金属支持体に構造補強をもたらすために使用される。
【0077】
更なる態様では、本発明は、前述の態様の本発明による方法によって得ることができる構造補強物品を提供する。
【実施例
【0078】
例1
接着性組成物1を、以下から調製した:
5.18gのKSR-177(Kukdo Chemical Company Limited(Seoul,South Korea)により製造されたシラン変性エポキシ樹脂)、5gのStruktol(登録商標)Polydis(登録商標)3611(Schill and Seilacher “Struktol” GmbH(Hamburg、Germany)により製造されたCTBNゴム)、12gのAraldite(登録商標)GT6071(Huntsman Advanced Materials(Switzerland)GmbH(Basel,Switzerland)により製造された1型ビスフェノールAエポキシ樹脂)、21.5gのKane-Ace(登録商標)MX-153(カネカ株式会社(Tokyo,Japan)により製造されたコアシェルゴム強化剤)、37.5gのXD1000(日本化薬株式会社(Tokyo,Japan)により製造されたジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂)、8gのMinfil L50 BT(Omya UK Limited,Royston,Hertfordshire,UKにより製造された炭酸カルシウム充填剤)、1gのHeucophos(登録商標)SAPP(Heubach GmbH(Langelsheim,Germany)により製造されたストロンチウムアルミニウムポリリン酸水和物である無機腐食防止剤)、0.12gのHeucorin(登録商標)RZ(Heubach GmbH(Langelsheim,Germany)により製造された亜鉛-5-ニトロイソフタラート有機腐食防止剤)、0.2gのAraldite(登録商標)DW 0135 Blue(Huntsman Advanced Materials(Switzerland)GmbH(Basel,Switzerland)により製造された無溶媒着色ペースト)、5gのDyhard(登録商標)100E(Alzchem Group Ag(Trostberg,Germany)により製造されたジシアンジアミド硬化剤)及び4.5gのOmicure(登録商標)U52M(Emerald Performance Materials(Moorefield,New Jersey,USA)により製造された硬化剤)。
【0079】
接着性組成物2を、以下から調製した。
15gのAraldite(登録商標)GT6099N(Jubail Chemical Industries Co.(JANA)(Jubail,Saudi Arabia)により製造された9型ビスフェノールAエポキシ樹脂)、30gのStruktol(登録商標)Polydis(登録商標)3611(Schill and Seilacher “Struktol” GmbH(Hamburg、Germany)により製造されたCTBNゴム)、27gのYD-136(Kukdo Chemical Company Limited(Seoul,South Korea)により製造された半固体のエポキシ樹脂)、9.78gのYDPN 638(Kukdo Chemical Company Limited(Seoul,South Korea)により製造されたフェノールノボラックエポキシ樹脂)、8gのMinfil(登録商標)L50 BT(Omya UK Limited,Royston,Hertfordshire,UKにより製造された炭酸カルシウム充填材)、1.1gのHeucophos(登録商標)SAPP(Heubach GmbH(Langelsheim,Germany)により製造されたストロンチウムアルミニウムポリリン酸水和物である無機腐食防止剤)、0.12gのHeucorin(登録商標)RZ(Heubach GmbH(Langelsheim,Germany)により製造された亜鉛-5-ニトロイソフタラート有機腐食防止剤)、0.2gのAraldite(登録商標)DW 0135 Blue(Huntsman Advanced Materials(Switzerland)GmbH(Basel,Switzerland)により製造された無溶媒着色ペースト)、4.8gのDyhard(登録商標)100E(Alzchem Group Ag(Trostberg,Germany)により製造されたジシアンジアミド硬化剤)及び4gのOmicure(登録商標)U52M(Emerald Performance Materials(Moorefield,New Jersey,USA)により製造された硬化剤)。
【0080】
樹脂マトリックス組成物3を、以下から調製した。
9.7gのSCT-150(Shin-A T&C(Seoul,South Korea)により製造されているクレゾールノボラックエポキシ樹脂)、9.7gのXD1000(日本化薬株式会社(Tokyo,Japan)により製造されたジシクロペンタジエンノボラックエポキシ樹脂)、16.5gのYDPN 638(Kukdo Chemical Company Limited(Seoul,South Korea)により製造されたフェノールノボラックエポキシ樹脂)、15.5gのAraldite(登録商標)GT6071N(Huntsman Advanced Materials(Switzerland)GmbH(Basel,Switzerland)により製造された1型ビスフェノールAエポキシ樹脂)、1.5gのAerosil(登録商標)R202(Evonik Resource Efficiency GmbH(Hanau-Wolfgang,Germany)により製造された疎水性ヒュームドシリカ)、1.5gのPAT(登録商標)-656/B3R(E&P Wurtz GmbH&Co.KG(Bingen am Rhein,Germany)により製造された内部離型剤)、19.4gのKane-Ace(登録商標)MX-153(カネカ株式会社(Tokyo,Japan)により製造されたコアシェルゴム強化剤)、6.8gのTechnicure(登録商標)ADH-J(A&C Catalysts,Inc.(Linden,New Jersey,USA)により製造された粉砕アジピン酸ジヒドラジド硬化剤)、5.82g MDU-11M(U52M)(Emerald Performance Materials(Moorefield,New Jersey,USA)により製造された硬化剤)、及び13.58gのEpikote(登録商標)828(Hexion Speciality Chemicals,Inc.(Columbus,Ohio,USA)により製造された中程度の粘度である液体エポキシレジン)。
【0081】
接着性組成物1又は接着性組成物2の試料フィルムを、BB600織物の150mm×150mm片の表面へと積層させ、樹脂マトリックス組成物3の試料フィルムを、BB600織物の各片の裏面へと積層させ、シングルプライの非対称自己接着性プリプレグを形成した。フィルム層に存在する接着性組成物1、接着性組成物2又は樹脂マトリックス組成物3の重量を計算し、プリプレグの総重量に基づき50%である接着剤/樹脂の総含有量を有する非対称プリプレグを得た。プリプレグを、ラップせん断強度試験のため、25mm×12.5mm(12.5mmオーバーラップさせる)に切断した。接着性プリプレグ1又は接着性プリプレグ2の非対称2プライを、接着性の側面を最も外側に、樹脂マトリックスの側面を最も内側の状態で積み重ね、清浄な亜鉛めっき鋼基材間に、150℃の温度で15分間にわたり硬化させた。結果として得られたラップせん断強度(MPa)を、BS EN2243-1:2005に従い測定した。
【0082】
接着性組成物1及び樹脂マトリックス組成物3を予め含浸させたBB600織物から作製した硬化プリプレグスタック(2プライ)は、0.9のSD値及び4.5のCV値を有する、19.5MPaの清浄な亜鉛めっき鋼におけるラップせん断強度を示した。不良の状態は、接着剤中で凝集した状態であった。
【0083】
接着性組成物2及び樹脂マトリックス組成物3を予め含浸させたBB600織物から作製した硬化プリプレグスタック(2プライ)は、1.9のSD値及び9のCV値を有する、21.2MPaの清浄な亜鉛めっき鋼におけるラップせん断強度を示した。不良の状態は、接着剤中で凝集した状態であった。
【0084】
例2
例1と同様に、接着性組成物1及び2及び樹脂マトリックス組成物3を調製した。
【0085】
接着性組成物1又は接着性組成物2の試料フィルムを、BB200織物の150mm×150mm片の表面へと積層させ、樹脂マトリックス組成物3を、BB200織物の各片の裏面へと積層させ、シングルプライの非対称自己接着性プリプレグを形成した。フィルム層に存在する接着性組成物1、接着性組成物2又は樹脂マトリックス組成物3の重量を計算し、プリプレグの総重量に基づき50%である接着剤/樹脂の総含有量を有する非対称プリプレグを得た。プリプレグを、ラップせん断強度試験のため、25mm×12.5mm(12.5mmオーバーラップさせる)に切断した。接着性プリプレグ1又は接着性プリプレグ2の非対称2プライを、接着性の側面を最も外側に、樹脂マトリックスの側面を最も内側の状態で積み重ね、清浄な亜鉛めっき鋼基材間に、150℃の温度で15分間にわたり硬化させた。結果として得られたラップせん断強度(MPa)を、BS EN2243-1:2005に従い測定した。
【0086】
接着性組成物1から作製した硬化プリプレグスタック(2プライ)は、0.7のSD値及び3.2のCV値を有する、22.6MPaの清浄な亜鉛めっき鋼におけるラップせん断強度を示した。不良の状態は、接着剤中で凝集した状態であった。
【0087】
接着性組成物2から作製した硬化プリプレグスタック(2プライ)は、1.1のSD値及び4.6のCV値を有する、24.7MPaの清浄な亜鉛めっき鋼におけるラップせん断強度を示した。不良の状態は、接着剤中で凝集した状態であった。
【0088】
例3
例1と同様に、接着性組成物1を調製した。
【0089】
接着性組成物1の試料フィルムを、BB200織物の150mm×150mm片の表面及び裏面上へと積層させ、シングルプライ対称自己接着性プリプレグ1を形成した。フィルム層に存在する接着性組成物1の重量を計算し、プリプレグの総重量に基づき50%である接着性組成物の総含有量を有する対称プリプレグを得た。プリプレグを、ラップせん断強度試験のため、25mm×12.5mm(12.5mmオーバーラップさせる)に切断した。接着性プリプレグ1の対称シングルプライを、清浄な亜鉛めっき鋼基材の間で、150℃の温度で15分間にわたり硬化させた。接着性プリプレグの2つの対称プライを順次積み重ね、清浄な亜鉛めっき鋼基材の間で150℃の温度で15分間にわたり硬化させた。接着性組成物1のシングルプライ対称プリプレグ及びダブルプライ対称プリプレグの両方の結果として得られたラップせん断強度(MPa)を、BS EN2243-1:2005に従い測定した。
【0090】
接着性組成物1から作製した硬化プリプレグ(1プライ)は、0.2のSD値及び0.8のCV値を有する、25.2MPaの清浄な亜鉛めっき鋼におけるラップせん断強度を示した。不良の状態は、接着剤中で凝集した状態であった。
【0091】
接着性組成物1から作製した硬化プリプレグスタック(2プライ)は、0.9のSD値及び3.7のCV値を有する、23.2MPaの清浄な亜鉛めっき鋼におけるラップせん断強度を示した。不良の状態は、接着剤中で凝集した状態であった。
【0092】
例4
例1と同様に、接着性組成物2を調製した。
【0093】
接着性組成物2の試料フィルムを、BB600織物の150mm×150mm片の表面及び裏面上へと積層させ、シングルプライ対称自己接着性プリプレグ2を形成した。フィルム層に存在する接着性組成物2の重量を計算し、プリプレグの総重量に基づき50%である接着性組成物の総含有量を有する対称プリプレグを得た。プリプレグを、ラップせん断強度試験のため、25mm×12.5mm(12.5mmオーバーラップさせる)に切断した。接着性プリプレグ1の対称シングルプライを、清浄な亜鉛めっき鋼基材の間で、150℃の温度で15分間にわたり硬化させた。接着性プリプレグの2つの対称プライを順次積み重ね、清浄な亜鉛めっき鋼基材の間で150℃の温度で15分間にわたり硬化させた。接着性組成物1のシングルプライ対称プリプレグ及びダブルプライ対称プリプレグの両方の結果として得られたラップせん断強度(MPa)を、BS EN2243-1:2005に従い測定した。
【0094】
接着性組成物2から作製した硬化プリプレグ(1プライ)は、1.8のSD値及び6.8のCV値を有する、26.2MPaの清浄な亜鉛めっき鋼におけるラップせん断強度を示した。不良の状態は、接着剤中で凝集した状態であった。
【0095】
接着性組成物1から作製した硬化プリプレグスタック(2プライ)は、1.4のSD値及び5.5のCV値を有する、24.9MPaの清浄な亜鉛めっき鋼におけるラップせん断強度を示した。不良の状態は、接着剤中で凝集した状態であった。
【0096】
本発明者らは、腐食防止剤を含有する自己接着性樹脂組成物を一方の側面に含浸させ、内部離型剤を含有する標準的な樹脂マトリックス組成物を他方の側面に含浸させたBB600又はBB200織物から本発明に従い調製された自己接着性プリプレグ(非対称プリプレグ)は、清浄な亜鉛めっき鋼にて良好なラップせん断強度を示したことを見出した。非対称な2プライのプリプレグは、BB600織物と比較してBB200織物については増加したラップせん断強度を示した。
【0097】
本発明者らは、腐食防止剤を含有する自己接着性樹脂組成物を両方の側面に含浸させたBB600又はBB200織物から、本発明に従い調製された自己接着性プリプレグ(対称プリプレグ)は、清浄な亜鉛めっき鋼にて良好なラップせん断強度を示したことを見出した。使用された試験織物(BB200及びBB600)において、織物のシングルプライ(1プライ)及び織物の2プライ(2プライ)のスタックを含むプリプレグ間のラップせん断強度には、ほぼ変化は見られなかった。最も良好なラップせん断強度結果は、BB200織物を使用した両方の接着性組成物について得られた。
【国際調査報告】