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▶ ヴォリューション イミュノ ファーマシューティカルズ エスエイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20220620BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220620BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220620BHJP
   C07K 14/435 20060101ALN20220620BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P27/02
A61P27/06
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K48/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K31/573
A61K31/519
A61K31/365
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K38/16
A61K31/7088
C12N15/12 ZNA
C07K14/435
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563064
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2020055741
(87)【国際公開番号】W WO2020216513
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】1905810.6
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2000955.1
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)▲1▼ウェブサイトの掲載日: 2019年3月5日 ウェブサイトのアドレス:https://eventpilot.us/web/page.php?nav=false&page=IntHtml&project=ARVO19&id=3153906 ▲2▼学会開催日: 2019年4月28日~5月2日 (2)ウェブサイトの掲載日: 2019年3月27日 ウェブサイトのアドレス:http://investor.akaritx.com/news-releases/news-release-details/akari-therapeutics-provide-update-its-eye-disease-program-during
(71)【出願人】
【識別番号】514058533
【氏名又は名称】ヴォリューション イミュノ ファーマシューティカルズ エスエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン-デヴィズ,ワイン エイチ
(72)【発明者】
【氏名】コールダー,ヴァージニア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA49
4C084DC50
4C084MA58
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB17
4C085EE03
4C085GG10
4C086AA01
4C086BA17
4C086CB07
4C086CB09
4C086DA10
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZB21
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA50
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、増殖性網膜疾患を治療または予防する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における増殖性網膜疾患を治療または予防する方法。
【請求項2】
対象における増殖性網膜疾患を治療または予防する方法における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤。
【請求項3】
対象に、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物をコードする核酸分子である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における増殖性網膜疾患を治療または予防する方法。
【請求項4】
増殖性網膜疾患を治療または予防する方法における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物をコードする核酸分子である薬剤。
【請求項5】
薬剤が、最大で50のアミノ酸置換、挿入または欠失がなされた、配列番号2のアミノ酸19~168の配列を含むタンパク質であるか、またはそれをコードし、
タンパク質が、C5と結合して、コンバターゼによる補体C5の補体C5aおよび補体C5bへの開裂を防止し、かつLTB4に結合し、
配列番号4に示される成熟ノマコパン分子の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々が保持されており、LTB4結合残基の少なくとも5、10または15または各々、およびC5結合残基の少なくとも5、10または15または20または各々が、保持されているかまたは保存的改変を受けており、
LTB4結合残基が、Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、Asp103、およびTrp115であり(配列番号4による番号付け)、C5結合残基が、Val26、Val28、Arg29、Ala44、Gly45、Gly61、Thr62、Ser97、His99、His101、Met114、Met116、Leu117、Asp118、Ala119、Gly120、Gly121、Leu122、Glu123、Val124、Glu125、Glu127、His146、Leu147およびAsp149である(配列番号4による番号付け)、
請求項1もしくは3のいずれか一項に記載の方法または請求項2もしくは4のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項6】
LTB4およびC5結合残基の最大で2、3、4、5、10、15、20が、保存的改変を受けている、請求項5に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項7】
LTB4結合残基の少なくとも5、10または15または各々、およびC5結合残基の少なくとも5、10または15または20または各々が保持されている、請求項5または6に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項8】
LTB4結合残基の各々およびC5結合残基の各々が、保持されているかまたは保存的改変を受けている、請求項5~7のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項9】
LTB4結合残基の各々およびC5結合残基の各々が保持されているかまたは保存的改変を受けており、C5および/またはLTB4結合残基の最大で2、3、4、5、10、15、20が、保存的改変を受けている、請求項5~8のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項10】
LTB4結合残基の各々およびC5結合残基の各々が、保持されている、請求項5~9のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項11】
薬剤が、配列番号2のアミノ酸19~168の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むタンパク質であるか、またはそれをコードし、
前記タンパク質が、
(i)C5と結合して、コンバターゼによる補体C5の補体C5aおよび補体C5bへの開裂を防止し、かつLTB4に結合するか、または
(ii)LTB4に結合するが、減少したC5結合活性を有するかまたはC5結合活性を有しない、
請求項1もしくは3のいずれか一項に記載の方法または請求項2もしくは4のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項12】
薬剤が、配列番号2のアミノ酸19~168の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むタンパク質であるか、またはそれをコードし、
前記タンパク質が、
(i)C5と結合して、コンバターゼによる補体C5の補体C5aおよび補体C5bへの開裂を防止し、かつLTB4に結合するか、または
(ii)LTB4に結合するが、減少したC5結合活性を有するかまたはC5結合活性を有しない、
請求項1、3もしくは11のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは11のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項13】
薬剤が、配列番号2のアミノ酸19~168の配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むタンパク質であるか、またはそれをコードし、
前記タンパク質が、
(i)C5と結合して、コンバターゼによる補体C5の補体C5aおよび補体C5bへの開裂を防止し、かつLTB4に結合するか、または
(ii)LTB4に結合するが、減少したC5結合活性を有するかまたはC5結合活性を有しない、
請求項1、3、もしくは11~12のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4、もしくは11~12のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項14】
薬剤が、LTB4結合活性を示し、減少したC5結合性を示すかまたはC5結合性を示さないタンパク質であるか、またはそれをコードし、前記タンパク質が、1~30のアミノ酸置換がなされている配列番号4を含むかまたはそれからなり、
(i)配列番号4の114~124位に、以下の置換(a)~(j):
a.Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
b.Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
c.Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはProで置換されている;
d.Asp118が、Asn、Gln、Arg、Lys、Gly、Ala、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Met Pro、His、またはThrで置換されている;
e.Ala119が、Gly、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
f.Gly120が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
g.Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
h.Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHisで置換されている;
i.Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されている;
j.Val124が、Lys、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている
の1または2以上がなされており;または/および
(ii)配列番号4のAla44が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている、
請求項1、3、もしくは11のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4、もしくは11のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項15】
薬剤が、請求項14に規定されるタンパク質であるか、またはそれをコードし、
a.Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnで置換されており;
b.Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはPro、好ましくはSerで置換されており;
c.Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAlaで置換されており;
d.Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspで置換されており;
e.Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThr、好ましくはAlaまたはAspで置換されている、
請求項1、3、11もしくは14のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4、11もしくは14のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項16】
薬剤が、請求項14または15のいずれかに規定されるタンパク質であるか、またはそれをコードし、
配列番号4の114~124位において、
f.Met116が、Glnで置換されており;
g.Leu117が、Serで置換されており;
h.Gly121が、Alaで置換されており;
i.Leu122が、Aspで置換されており;
j.Glu123が、Alaで置換されている、
請求項1、3、11もしくは14~15のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4、11もしくは14~15のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項17】
薬剤が、請求項14~16のいずれか一項に規定されるタンパク質であって、Trp115が置換されていないタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~16のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~16のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項18】
薬剤が、請求項14~17のいずれか一項に規定されるタンパク質であって、Met114、Trp115、Asp118、Ala119、Gly120およびVal124が置換されていないタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~17のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~17のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項19】
薬剤が、請求項14~18のいずれか一項に規定されるタンパク質であって、配列番号28に示されるように配列番号4のアミノ酸114~124位の間にループ配列を有し、配列番号23に示されているもの以外に、配列番号4と比較して1~20の追加的な置換を有するタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~18のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5もしくは14~18のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項20】
薬剤が、請求項14~19のいずれか一項に規定されるタンパク質であって、配列番号23に示されているもの以外に、配列番号4と比較して2~15の追加的な置換を有するタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~19のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~19のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項21】
薬剤が、請求項14~20のいずれかに規定されるタンパク質であって、配列番号23に示されているもの以外に、配列番号4と比較して3~10の追加的な置換を有するタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~20のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~20のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項22】
薬剤が、請求項14~21のいずれかに規定されるタンパク質であって、配列番号4のAla44が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されているタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~21のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~21のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項23】
薬剤が、請求項14~22のいずれかに規定されるタンパク質であって、配列番号4のAla44がAsnで置換されているタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~22のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~22のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項24】
薬剤が、請求項14~23のいずれかに規定されるタンパク質であって、配列番号4のAsp149が、Gly、Gln、Asn、Ala、Met、Arg、Lys、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されているタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~23のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~23のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項25】
薬剤が、請求項14~24のいずれかに規定されるタンパク質であって、配列番号4のAla44がAsnで置換されており、配列番号4のAsp149がGlyで置換されているタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~24のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~24のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項26】
薬剤が、請求項14~25のいずれか一項に規定されるタンパク質であって、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸が、未改変形態に保持されているタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~25のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~25のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項27】
薬剤が、請求項14~25のいずれか一項に規定されるタンパク質であって、以下のアミノ酸:Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、Asp103、およびTrp115の1または2以上が置換されていないタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~26のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~26のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項28】
薬剤が、請求項14~27のいずれか一項に規定されるタンパク質であって、以下のアミノ酸:Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、Asp103、およびTrp115の全てが置換されていないタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~27のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~27のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項29】
薬剤が、請求項14~27いずれか一項に規定されるタンパク質であって、
a.配列番号4のアミノ酸5、6、11、13~15、20~21、24~27、29~32、35~41、45、47~48、50、52~60、64、66、69~81、83、84、86、90~94、97~104、112~113、115、125~129、132~139、145、148、および150がいずれも置換されていないか、または
b.配列番号4のアミノ酸5、6、11、13~15、18、20~21、24~27、29~32、35~41、43、45、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、97~104、112~113、115、125~129、132~139、145、148、および150がいずれも置換されていないか、または
c.配列番号4のアミノ酸5、6、11、13~15、18、20~21、24~25、27、30~32、35~41、43、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、98、100、102~104、112~113、115、126、128~129、132~139、145、148、および150がいずれも置換されていない
タンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは5、11もしくは14~27のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5、11もしくは14~27のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項30】
薬剤が、(i)配列番号2のアミノ酸19~168の配列、(ii)配列番号22、(iii)配列番号23、(iv)配列番号24または(v)配列番号25を含むかもしくはそれからなるタンパク質であるか、またはそれをコードし、
好ましくは、薬剤が、配列番号2のアミノ酸19~168の配列または配列番号23を含むかもしくはそれからなるタンパク質であるか、またはそれをコードする、
請求項1、3もしくは5~13のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは5~13のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項31】
薬剤が、配列番号2のアミノ酸19~168の配列を含むかもしくはそれからなるタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3、5~13、もしくは30のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4、5~13もしくは30のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項32】
薬剤が、配列番号22(バリアント1)を含むかもしくはそれからなるタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは14もしくは30のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは14のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項33】
薬剤が、配列番号23(バリアント2)を含むかもしくはそれからなるタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは14~30のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは14~30のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項34】
薬剤が、配列番号24(バリアント3)を含むかもしくはそれからなるタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは14もしくは30のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは14もしくは30のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項35】
薬剤が、配列番号25(バリアント4)を含むかもしくはそれからなるタンパク質であるか、またはそれをコードする、請求項1、3もしくは14もしくは30のいずれか一項に記載の方法または請求項2、4もしくは14もしくは30のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項36】
薬剤が、請求項1、2または5~35のいずれかに規定されるタンパク質の断片であるか、またはそれをコードし、タンパク質が、
(i)C5と結合して、コンバターゼによる補体C5の補体C5aおよび補体C5bへの開裂を防止し、かつLTB4に結合するか、または
(ii)LTB4に結合するが、減少したC5結合活性を有するかまたはC5結合活性を有しない、
前記請求項のいずれかに記載の方法または前記請求項のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項37】
配列番号2のアミノ酸19~168を含むタンパク質の機能的等価物が、(a)請求項5~35のいずれかに記載されているかまたは請求項36に記載されている断片からなる配列および(b)第2の配列を含む融合タンパク質であり、前記融合タンパク質が、
(i)C5と結合して、コンバターゼによる補体C5の補体C5aおよび補体C5bへの開裂を防止し、かつLTB4に結合するか、または
(ii)LTB4に結合するが、減少したC5結合活性を有するかまたはC5結合活性を有しない、
前記請求項のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項38】
前記第2の配列が、PAS配列である、請求項37に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項39】
前記融合タンパク質が、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号15);AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号16);APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号17)、SAPSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号18)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号19)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号20)およびASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号21)のうちの1つの複数コピー、好ましくは配列番号15~21のうちの1つの20~30または30コピーを含む、請求項37または38に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項40】
前記融合タンパク質が、(a)(i)図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168、または(ii)配列番号22、23、24もしくは25、
好ましくは、配列番号2のアミノ酸19~168または配列番号22からなるタンパク質を含む、請求項37~39のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項41】
前記融合タンパク質が、配列番号15の30コピーからなるPAS配列を含む、請求項40に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項42】
前記融合タンパク質が、配列番号30を含むか、またはそれからなる、請求項37~41のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項43】
前記融合タンパク質が、配列番号31を含むか、またはそれからなる、請求項37~41のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項44】
薬剤が、眼に局所的にまたは眼内に直接的に投与される、前記請求項のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項45】
薬剤が、眼に局所的に投与される、前記請求項のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項46】
薬剤が、眼内に直接的に、例えば、硝子体内にまたは脈絡膜上に投与される、前記請求項のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項47】
対象が、ヒトである、前記請求項のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項48】
増殖性網膜疾患が、自己免疫性ブドウ膜炎、感染性ブドウ膜炎、湿性加齢性黄斑変性症(脈絡膜血管新生)、乾性加齢性黄斑変性症(地図状萎縮)、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、視神経炎(例えば、緑内障関連視神経炎)、網膜静脈閉塞症および未熟児網膜症から選択され、好ましくは自己免疫性ブドウ膜炎である、前記請求項のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項49】
第2の増殖性網膜疾患治療の投与をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項50】
第2の増殖性網膜疾患治療が、抗炎症医薬、免疫調節療法(IMT)薬、生物学的応答修飾物質(BRM)薬、抗VEGF治療、および図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である第2の薬剤から選択される、請求項49に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項51】
(a)抗炎症医薬が、コルチコステロイドなどのステロイドであり、
(b)IMT薬が、メトトレキサート、アザチオプリン、またはミコフェノレートから選択され、
(c)BRM薬が、抗TNF剤、例えば、インフリキシマブまたはアダリムマブなどの抗TNFアルファ抗体またはその断片であり、
(d)抗VEGF治療が、ベバシズマブ(アバスチン)もしくはラニビズマブ(ルセンティス)などの抗VEGF-A抗体もしくはその断片、ペガプタニブ(マクジェン)などの抗VEGFアプタマー、またはアフリベルセプト(アイリーア)などの別の抗VEGFアンタゴニストであり、
(e)図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である第2の薬剤が、請求項1~43のいずれか一項に記載されている通りである、
請求項50に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項52】
請求項5~36のいずれかに記載の薬剤を眼に局所的に投与すること、および第2の増殖性網膜疾患治療を眼内に直接的に、例えば硝子体内にまたは脈絡膜上に投与することを含む、請求項49~51のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項53】
第2の増殖性網膜疾患治療が、請求項37~43のいずれかに記載の融合タンパク質である薬剤である、請求項52に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項54】
請求項5~31または36のいずれかに記載の薬剤を眼に局所的に投与すること、および請求項37~42のいずれかに記載の融合タンパク質である薬剤である第2の増殖性網膜疾患治療を眼内に直接的に投与することを含み、前記薬剤および前記融合タンパク質は各々、C5に結合して、コンバターゼによる補体C5の補体C5aおよび補体C5bへの開裂を防止し、かつLTB4に結合する、請求項52または53に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項55】
図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むか、またはそれからなるタンパク質を眼に局所的に投与すること、および請求項42に記載の融合タンパク質を眼内に直接的に投与することを含む、請求項54に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項56】
請求項5~30または32~36のいずれかに記載の薬剤を眼に局所的に投与すること、および請求項37~41または43のいずれかに記載の融合タンパク質である薬剤である第2の増殖性網膜疾患治療を眼内に直接的に投与することを含み、前記薬剤および前記融合タンパク質は各々、LTB4に結合するが、減少したC5結合活性を有するかまたはC5結合活性を有しない、請求項52または53のいずれかに記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項57】
請求項32に規定されるタンパク質を眼に局所的に投与すること、および請求項43に記載の融合タンパク質を眼内に直接的に投与することを含む、請求項56に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項58】
請求項5~30または32~36のいずれかに記載の薬剤を眼に局所的に投与すること、および抗VEGF治療である第2の増殖性網膜疾患治療を眼内に直接的に投与することを含む、請求項52に記載の方法または使用のための薬剤。
【請求項59】
前記抗VEGF治療が、ベバシズマブ(アバスチン)もしくはラニビズマブ(ルセンティス)などの抗VEGF-A抗体もしくはその断片、ペガプタニブ(マクジェン)などの抗VEGFアプタマー、またはアフリベルセプト(アイリーア)などの別の抗VEGFアンタゴニストである、請求項58に記載の方法または使用のための薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性網膜疾患を治療および予防する方法に関する。
【0002】
本文中に言及され、本明細書の最後に記載される全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
補体
補体系は、外敵の侵入に対抗する身体の自然防御メカニズムの欠くことのできない一部であり、炎症過程にも関与する。血清中および細胞表面の30種を超えるタンパク質が補体系の機能発揮および調節に関与している。近年、有益な過程および病的過程の両方に関連し得る補体系の約35の公知の成分だけでなく、補体系自体が、血管新生、血小板活性化および止血、グルコース代謝および精子形成のように多様な機能を有する少なくとも85の生物学的経路と相互作用することが明らかになった。
【0004】
補体系は、免疫系によって非自己として認識される物質の存在によって活性化される。(1)IgMおよびIgG複合体によって、または糖質の認識によって活性化される古典的経路;(2)非自己表面(特異的調節分子を欠如する)および細菌エンドトキシンによって活性化される第二経路;ならびに(3)病原体表面のマンノース残基へのマンナン結合性レクチン(MBL)の結合によって活性化されるレクチン経路という3つの活性化経路が存在する。これら3つの経路は、細胞表面の類似のC3コンバターゼおよびC5コンバターゼの形成による補体活性化の産生を招く、平行する連鎖的なイベントを含み、その結果、急性期炎症メディエーター(C3aおよびC5a)の放出および膜侵襲複合体(MAC)の形成を生じる。古典的経路(本明細書では、C1qによる場合は古典的であり、MBLによる場合はレクチンであると定義される)および第二経路に関与する、平行する連鎖を図1に示す。(補体経路の成分を文字「C」に続く「3」などの数字で表し、それにより補体タンパク質C3を表すようにすることが慣例である。これらの成分の一部は、補体系の活性化時に切断され、切断産物は数字の後に小文字で示される。したがって、C5は、慣例的にC5aおよびC5bと呼ばれる断片に切断される。補体タンパク質は、必ずしも数字の順番で作用するわけでないので、数字は、必ずしも作用の順番を示すわけではない。この呼称の慣例が、本出願に使用される。)
【0005】
古典的補体経路、第二補体経路およびレクチン補体経路は、本明細書においてまとめて補体経路と呼ばれる。C5bは、補体活性化の「後期」または「最終」イベントを開始する。これらは、最終補体成分が相互作用してMACを形成する一連の重合反応を含み、MACは、一部の病原体の細胞膜に孔を開け、そのことが病原体の死に繋がり得るか、または溶解を引き起こさずに身体自体の細胞を活性化する。最終補体成分には、C5b(膜侵襲システムの集合を開始する)、C6、C7、C8およびC9が含まれる。
【0006】
LTB4
ロイコトリエンB4(LTB4)は、記載された、最も強力な走化性および化学運動性エイコサノイドであり、インテグリンのアップレギュレーションを介して好中球の血管内皮への接着を促進する[1]。LTB4は、また、好中球に関する完全な分泌促進物質であり、その凝集を誘導し、微小血管透過性を増加させる。LTB4は、ナチュラルキラー細胞、単球および好酸球を動員および活性化する。LTB4は、スーパーオキシドラジカルの形成を増加させ[2]、組織の炎症を増強および延長するおそれがある、いくつかの炎症促進性サイトカインおよびメディエーターの産生を含む遺伝子発現をモジュレートする[3、4]。LTB4は、また、適応免疫応答の誘導および管理に役割を果たす。例えば、流入領域リンパ節への樹状細胞の輸送の調節[5、6]、肺T細胞からのTh2サイトカインIL-13の産生[7]、抗原特異的エフェクターCD8+ T細胞の動員[8]ならびにヒトBリンパ球の活性化および増殖[9]である。
【0007】
LTB4およびヒドロキシエイコサノイドは、BLT1およびBLT2 Gタンパク質共役受容体を経由してそれらの効果を媒介する[10、11]。ヒトBLT1は、LTB4に特異的な高親和性受容体であり(Kd 0.39~1.5nM;[12])、競合結合研究で20-ヒドロキシLTB4および12-エピLTB4だけがLTB4と置き換わることができる[13]。ヒトBLT2は、BLT1と比べてLTB4に対して20分の1の親和性(Kd 23nM)を有し、12-エピLTB4、20-ヒドロキシLTB4、12(S)-HETE、15(S)-HETE、12(S)-HPETEおよび15(S)-HPETEを含む、より広い範囲のエイコサノイドと結合することによって活性化される[13]。ヒトBLT2は、ヒトおよびマウスBLT1と45.2および44.6%のアミノ酸同一性を有し、一方で、ヒトBLT2とマウスBLT2とは、92.7%の同一性を有する[11]。
【0008】
ヒトBLT1は、内皮細胞および血管平滑筋細胞で発現すると最近記載されたものの、主として白血球の表面で発現する。ヒトBLT2は、より広い範囲の組織および細胞型で発現する。ヒト好中球の活性化、血管外遊出およびアポトーシスを阻害し[14]、炎症性関節炎[15]および腎虚血再灌流[16]のマウスモデルにおいて好中球浸潤によって起こる徴候(symptom)を軽減する、BLT1およびBLT2のいくつかの特異的アンタゴニストが記載されている。BLT1およびBLT2の両方は、LTB4およびヒドロキシエイコサノイドを経由して病的作用を媒介することができるが[17]、BLT1が、マウスにおけるコラーゲン誘発関節炎などのいくつかの病状に疑いなく優位な役割を果たすことが、ますます多くの研究によって示されている[18]。BLT1-/-欠損マウスは、また、炎症応答において好中球の遊走を方向づけることにBLT1が重要であることを強調した。特に、5LO欠損マウス系統を使用して、好中球上のBLT1のオートクリン活性化が、関節炎を起こした関節への好中球の動員に必要であることが示された[19]。
【0009】
いくつかの市販薬が、エイコサノイドを標的とする。これらには、ホスホリパーゼA2(PLA2)をモジュレートし、それにより、エイコサノイド前駆体であるアラキドン酸(AA)の放出を阻害するグルココルチコイド[20]、ならびにプロスタグランジンおよびトロンボキサンの合成を防止する非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および他のCOX2阻害剤が含まれる[21]。LTB4合成および他のロイコトリエンに必要な5-LOX酵素を阻害する(ジロートン;[22])か、またはシステイニルロイコトリエンの効果を媒介するCysLT1受容体に拮抗する(ザフィルルカストおよびモンテルカスト)[23]かのいずれかの、いくつかのロイコトリエン(LK)調節物質もある。LK調節物質は、経口的に利用可能であり、例えば喘息の治療に使用するためにFDAによって承認されている。LTB4またはその受容体に特異的に作用する薬物は、まだ販売されていない。
【0010】
眼症状
背景
本発明は、網膜での血管形成を伴う網膜症状である増殖性網膜疾患の治療に関する。例えば、血管は、網膜虚血によって引き起こされる血液供給の減少に応答して生成され得る。この新血管形成は、一般的に、視神経乳頭または網膜表面において新しい血管の生成を刺激する成長ホルモン血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に応答して生じる。しかし、これらの新しい血管は、特に脆弱であり、漏れ易く、容易に破裂して出血および重度視力喪失を招く可能性がある。
【0011】
このような疾患には、自己免疫性ブドウ膜炎、感染性ブドウ膜炎、湿性加齢性黄斑変性症(AMD)(脈絡膜血管新生)、乾性加齢性黄斑変性症(地図状萎縮)、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、視神経炎(例えば、緑内障関連視神経炎)、網膜静脈閉塞症および未熟児網膜症が含まれる。スタルガルト病およびポリープ状脈絡膜血管障害も含まれる。ブドウ膜炎が特に興味深い。
【0012】
これらの症状のある特定のものには現行の治療法が存在する。例えば、非感染性ブドウ膜炎の場合、治療は、抗炎症医薬、例えば、点眼薬として投与されるか、または眼にもしくはその周囲に注射されるか、経口で(口を介して)、または静脈内に投与されるステロイド(例えば、コルチコステロイド)、あるいは免疫調節療法(IMT)薬(例えば、メトトレキサート、アザチオプリン、およびミコフェノレート)、生物学的応答調節物質(BRM)薬(インフリキシマブまたはアダリムマブなどのTNFアルファに結合する抗体またはそれらの断片であり得る抗TNFアルファ剤)による、眼炎症の制御に焦点が当てられている。湿性AMDの場合、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、および糖尿病性網膜症の現行治療には、抗VEGF治療が含まれる。これらには、抗VEGF-A抗体またはそれらの断片(ベバシズマブ(アバスチン)、ラニビズマブ(ルセンティス)など)、抗VEGFアプタマー(ペガプタニブ(マクジェン)など)、ならびにヒトIgG1イムノグロブリンのFc部分に融合されている、ヒトVEGF受容体1および2の細胞外ドメインに由来する血管内皮増殖因子(VEGF)結合性部分からなる組換え融合タンパク質であるアフリベルセプト(アイリーア)などの他のVEGFアンタゴニストが含まれる。このような抗VEGF薬は、約1~2ヶ月毎に硝子体内に注射することができる。これらの治療は、未熟児網膜症に対しても提案されている。
【0013】
増殖性網膜疾患は、依然として満たされていない臨床ニーズである。
【0014】
補体阻害剤
WO2004/106369(Evolutec Limited[24])は、補体阻害剤に関する。開示される補体阻害剤の特定のサブセットは、C5に方向づけられ、補体活性化経路のいずれかによりC5がC5aおよびC5bに開裂されるのを防止する。このようなC5開裂阻害剤の特定の例は、Ornithdoros moubata種のマダニによって産生されるタンパク質であり、このタンパク質は、WO2004/106369の図4に示されるアミノ酸配列のアミノ酸19~168からなるタンパク質である。WO2004/106369では、このタンパク質は、名称「rVA576」、「EV576」および「OmCIタンパク質」で知られており、より最近には、「コバーシン(Coversin)」として知られている[25]。このタンパク質は、本明細書では「ノマコパン(nomacopan)」と称され、この名称は、このタンパク質のINNである。
【0015】
マダニにおいて、ノマコパンは、成熟ノマコパンタンパク質のN末端に、WO2004/106369の図4に示されるアミノ酸配列のアミノ酸1~18を含むリーダー配列を有するプレタンパク質として発現する。リーダー配列は、発現後に開裂除去される。成熟タンパク質は、WO2004/106369の図4および本出願の図2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸19~168からなる配列を有する。
【0016】
ノマコパンは、また、ロイコトリエンB4(LTB4)活性を阻害する能力を有する。LTB4と結合する能力は、当技術分野において公知の標準的なin vitroアッセイによって、例えば、標識LTB4への結合を競合するノマコパンと抗LTB4抗体との間の競合ELISAによって、等温滴定熱量測定によって、または蛍光滴定によって、実証され得る。
【0017】
WO2007/028968、WO2008/029167、WO2008/029169、WO2011/083317およびWO2016/198133などの、様々な適用におけるノマコパンまたはその機能的等価物の使用に関するいくつかのさらなる特許出願がある。増殖性網膜疾患の治療におけるノマコパンまたはその任意の機能的等価物の有効性が確認されている実験的証拠は、これらの応用では存在しない。
【0018】
本発明に至る研究において、本発明者らは、網膜結合タンパク質(RBP3)の注射によってこの疾患を誘導した実験的自己免疫性ブドウ膜炎モジュールで使用したマウスの網膜内にある細胞上に、LTB4受容体およびC5a受容体が共に存在していることを示した。これらの細胞の少なくとも一部は、網膜損傷の領域へと遊走し、そこでLTB4刺激に応答してVEGFを放出することが知られているM2マクロファージであると考えられる。さらに、硝子体内に注射すると、上記のような分子ノマコパン(LTB4に結合し、また、C5に結合することによって補体経路を阻害する)、ならびに本明細書ではPAS-ノマコパンおよびPAS-L-ノマコパンと称される、ノマコパンおよびLTB4特異的ノマコパン(または「L-ノマコパン」、これは、LTB4には結合するが、C5に結合することによって補体経路を阻害することはない)の両方の長期作用型バージョンは、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)モデルの臨床スコアおよび複合組織学的スコアを改善することが示された。これらの分子は、また、Th17細胞(およびIL-17)の集団を減少させた。Th17サブセットは、ヒトブドウ膜炎で検出されており、EAUにおいて疾患を媒介する。また、ノマコパン、L-ノマコパンおよび長期作用型ノマコパンは、局所投与したところ、これらのマウスの臨床スコアに対して効果を示した。これは、この分子が角膜を透過できるとは考えられていなかったため、驚くべきことであるとみなされる。
【0019】
本発明者らは、また、EAUの別のマウスモデルにおいて、RBP3(IRBPとしても公知である)による誘導が、網膜組織におけるVEGFレベルの有意な増加を招くことを示した。ノマコパン型タンパク質の硝子体内注射は、抗VEGF抗体の硝子体内注射と同様に、VEGFレベルの減少を招く(実施例4および図7A)。ノマコパンおよびそのバリアントがVEGFに対して直接的効果を及ぼすことは一切知られていないため、これは、少なくとも、このモデルにおけるVEGFの主な供給源であると考えられる上述のM2マクロファージのLTB4活性化の阻害による間接的効果であることが示唆される。ノマコパン型タンパク質によって好中球からLTB4をスカベンジすることは、また、網膜から末梢血へのLTB4濃度勾配を減少させ、それによりTh17細胞(実施例3に示されるように)およびマクロファージの炎症細胞輸送を減少させる効果を有すると考えられる。
【0020】
ノマコパンは、LTB4を阻害する能力を有し、したがって、単独または他の治療との組合せにおいて、増殖性網膜疾患の予防および治療に特に有利である。さらに、ノマコパンは、補体経路を阻害することができ(C5を阻害することによって)、例えば、補体経路が疾患病理に関与している場合、ある特定の利点を有する。LTB4を阻害するがC5を阻害しないノマコパンの改変バージョンも有用であり得、また、特に補体経路を阻害することが望ましくない可能性がある場合に有用であり得る。
【0021】
ノマコパンは、眼表面症状(例えば、眼の表面にこのタンパク質を投与することによるアトピー性角結膜炎、例えば、WO2018193120を参照)の潜在的な治療として以前に開示されているが、この分子が角膜を透過し、したがって眼表面症状ではない眼症状を治療するために局所的に適用し得ることは以前は知られておらず、この分子が、眼内に直接的に投与すると有効であり得ることも以前は知られていなかった。例えば、治療用分子は、眼内に直接的に投与した場合でさえ、様々な障壁(内境界膜およびブルッフ膜など)が存在するので、効果的であるように作用を及ぼす必要がある場所に到達できない可能性がある。実際に、様々な以前の補体阻害剤分子が眼症状に関して以前に試験されているが、有効であるとは見出されていない(例えば、[26]を参照)。
【0022】
したがって、本研究前は、ノマコパン型タンパク質が、局所投与または眼内への直接導入のいずれかによって増殖性網膜疾患を治療するために使用することができることは知られていなかった。さらに、ノマコパン型タンパク質を使用して、網膜組織のVEGFレベルを減少させることができることは知られていなかった。
【発明の概要】
【0023】
ノマコパン型タンパク質は、局所投与するとまたは眼内に直接的に導入することによって、実験的自己免疫性ブドウ膜炎マウスモデルの臨床スコアを減少させることがここに示されている。これは、ブドウ膜炎の治療に有用であるそのようなタンパク質の能力を実証するだけでなく、増殖性網膜疾患を治療するために、単独または他の治療との組合せにおいてそのようなタンパク質を使用することを支持する。ノマコパンは、さらに、補体経路(C5を阻害することによる)およびまたLTB4の両方を阻害する能力を有し、したがって、単独または他の治療との組合せにおいて、補体成分も存在する増殖性網膜疾患の予防および治療に特に有利である。このタンパク質の二重機能は、さらに、LTB4に結合するがC5には結合しないその改変バージョン(例えば、L-ノマコパン)が、補体成分が存在せずおよび/または補体系の阻害が不利であり得る増殖性網膜疾患の予防および治療に特に有利であり得るように操作することができる。この場合も、これは、単独または他の治療との組合せであり得る。
【0024】
実施例1では、ノマコパン型タンパク質の局所投与は、マウスモデルにおける実験的自己免疫性ブドウ膜炎の臨床スコアを減少させる。その後の例では、ノマコパン型タンパク質の硝子体内投与は、マウスモデルにおける実験的自己免疫性ブドウ膜炎の臨床スコアを減少させる。
【0025】
本発明者らは、それゆえ、マダニタンパク質ノマコパン(当技術分野および本明細書においてEV576およびOmCIとも称され[24]、以前には「コバーシン」と称されている)およびそのバリアントの投与を、自己免疫性ブドウ膜炎および他の増殖性網膜疾患を治療または予防するために使用できることを実証した。
【0026】
本発明は、それゆえ、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、増殖性網膜疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0027】
本発明は、また、増殖性網膜疾患を治療または予防する方法における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0028】
本発明は、また、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物をコードする核酸分子である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における増殖性網膜疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0029】
本発明は、また、増殖性網膜疾患を治療または予防する方法における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物をコードする核酸分子である薬剤を提供する。
【0030】
本発明は、また、対象における増殖性網膜疾患を治療または予防する方法であって、(a)図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量、および(b)第2の増殖性網膜疾患治療を、前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0031】
本発明は、また、増殖性網膜疾患を治療または予防する方法における使用のための、(a)図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤、および(b)第2の増殖性網膜疾患治療を提供する。
【0032】
本発明は、また、(a)図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物をコードする核酸分子である薬剤の治療または予防有効量、および(b)第2の増殖性網膜疾患治療を投与することを含む、増殖性網膜疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0033】
本発明は、また、増殖性網膜疾患を治療または予防する方法における使用のための、(a)図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物をコードする核酸分子である薬剤、および(b)第2の増殖性網膜疾患治療を提供する。
【0034】
本発明は、また、増殖性網膜疾患を治療もしくは予防するために必要とされる第2の増殖性網膜疾患治療の量を減少させるか、または増殖性網膜疾患を治療もしくは予防するために必要とされる第2の増殖性網膜疾患治療による治療期間を減少させる方法であって、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質もしくはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤または前記薬剤をコードする核酸分子の治療または予防有効量、および前記第2の増殖性網膜疾患治療を投与することを含む方法を提供する。
【0035】
実施例4は、ノマコパン型タンパク質が、EAUのマウスモデルにおいてVEGFレベルを効果的に減少させることができることを示す。ノマコパンおよびそのバリアントがVEGFに対して直接的効果を及ぼすことは一切知られていないため、これは、このモデルにおけるVEGFの主な供給源であると考えられる上述のM2マクロファージのLTB4活性化の阻害による間接的効果であることが示唆される。
【0036】
したがって、本発明の薬剤および方法は、本明細書の他の箇所に記載のように、例えば網膜組織におけるVEGFレベルを減少させることにより、増殖性網膜疾患を予防または治療することができる。例えば、網膜組織におけるVEGFシグナル伝達の減少による。そのような減少の効果は、ひいては、例えば、血管新生の減少および/または血管透過性の減少を起こす。
【0037】
本発明の薬剤および方法は、また、本明細書の他の箇所に記載のように、M2マクロファージのLTB4活性化を減少させることにより、増殖性網膜疾患を予防または治療することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
疾患
増殖性網膜疾患は、網膜での血管形成を伴う網膜症状である。例えば、血管は、網膜虚血によって引き起こされる血液供給の減少に応答して生成され得る。この新血管形成は、一般的に、視神経乳頭または網膜表面において新しい血管の生成を刺激する成長ホルモン血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に応答して生じる。しかし、これらの新しい血管は、特に脆弱であり、漏れ易く、容易に破裂して出血および重度視力喪失を招く可能性がある。考え得る増殖性網膜疾患には、自己免疫性ブドウ膜炎、感染性ブドウ膜炎、湿性加齢性黄斑変性症(脈絡膜血管新生)、乾性加齢性黄斑変性症(地図状萎縮)、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、視神経炎(例えば、緑内関連)、網膜静脈閉塞症および未熟児網膜症が含まれる。他の増殖性網膜疾患には、スタルガルト病およびポリープ状脈絡膜血管障害が含まれる。
【0039】
本発明者らは、実験的自己免疫性ブドウ膜炎のマウスモデルにおける実験において、ノマコパン、L-ノマコパン、PAS-ノマコパンおよびPAS-L-ノマコパンを試験した。ある特定の分子は局所的に投与した。ある特定の分子は硝子体内に投与した。実施例1および3に示されるように、ノマコパン型タンパク質は、このマウスモデルにおいて臨床スコアを減少させ得ることが示された。以下に提示されるデータは、これらの分子が、Th-17細胞の集団を減少させ、それによりIL-17レベルを減少させ得ることも実証する。本発明者らは、また、LTB4受容体(BLT1)が、このマウスモデルのマウス網膜内に浸潤する細胞で観察され得ることを示した。さらに、これらのノマコパン型分子は、LTB4に結合し、その作用を阻害することができる。
【0040】
試験した分子がLTB4シグナル伝達を減少させる能力は、網膜が損傷するとM2マクロファージが遊走して網膜の損傷領域に付着するという観察結果と一致する。これらのM2マクロファージは、その後、LTB4刺激に応答してVEGFを放出し、それにより新しい血管の生成が刺激される[35]。したがって、いかなる理論にも束縛されることは望まないが、ノマコパン型タンパク質の投与は、VEGFのレベルの減少を招き、それにより新しい血管の生成を減少および/または防止すると考えられる。この理論は、ノマコパン型タンパク質の投与がEAUのマウスモデルにおいて網膜組織のVEGFレベルを有意に減少させることを実証する実施例4および図7Aのデータと一致する。
【0041】
したがって、ノマコパン型タンパク質は、増殖性網膜疾患の治療または予防に有用であり得る。したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における増殖性網膜疾患を予防または治療する方法を提供する。加えて、本発明は、増殖性網膜疾患の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0042】
これらの疾患の存在は、当技術分野において十分に理解されている日常的な診断によって決定され得る。ある特定の症状の重症度をスコア付けすることもでき、それは、ある特定の治療が有効か否かの評価に有用である。
【0043】
ブドウ膜炎
自己免疫性ブドウ膜炎は、自己抗原に対する自己免疫反応によるか、または外部刺激による二次的な先天性炎症反応によって引き起こされるブドウ膜成分(虹彩、毛様体および脈絡膜)の炎症過程である。自己免疫性ブドウ膜炎は、前部、中間部、後部またはびまん性など、様々な解剖学的形態で存在し得る。前部ブドウ膜炎は、虹彩を冒す虹彩炎としてまたは毛様体を冒す虹彩毛様体炎として現れる、この疾患の最もよく見られる形態である。中間部ブドウ膜炎または硝子体炎は硝子体腔に関与し、毛様体扁平部に関与し得、後部ブドウ膜炎は、脈絡膜炎、脈絡網膜炎、および網脈絡膜炎の3つの種類に分けられる。網脈絡膜炎は、通常、トキソプラズマ症などの感染症を伴う。網脈絡膜炎は、びまん性病変の場合またはブドウ膜炎が多数の領域を冒す場合、全ブドウ膜炎と呼ばれる。
【0044】
ブドウ膜炎の種類は、国際ブドウ膜炎研究グループ(IUSG、International Uveitis Study Group)分類を使用して分類でき、ブドウ膜炎用語体系標準化(SUN、Standardization of Uveitis Nomenclature)グループを使用して、ブドウ膜炎の発症、期間、および経過の基準を定義することができる[27]。ブドウ膜炎は、主に20~50歳の人々が罹患するが、どの年齢でも生じる可能性があり、子供でさえ罹患する。ブドウ膜炎は、65歳またはそれよりも高齢の患者でも発症率が高い。
【0045】
ノマコパン型タンパク質は、実施例1および3に示されるように、自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)のマウスモデルにおいて臨床スコアおよび組織学的スコアを減少させることが示された。
【0046】
さらに、CD4+T細胞サブセットであるTh17細胞は、感染性および非感染性ブドウ膜炎のいくつかの形態に関与することが示されている炎症促進性サイトカインであるインターロイキン(IL)-17を産生する。IL-17は、IL-6、顆粒球コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球マクロファージ-CSF、IL-1、TGF-β、および腫瘍壊死因子(TNF)-αなどの他の炎症性サイトカインの産生を誘導する[28]。本実施例は、また、ノマコパン型タンパク質が、IL-17を発現するCD4+細胞のパーセンテージを減少させ得ることを実証する。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、これらの分子は、IL-17産生Th17細胞のレベルを減少させることができ、それはブドウ膜の炎症減少を招き、それによりブドウ膜炎の進行を減少させる。このように、ノマコパン型タンパク質は、自己免疫性ブドウ膜炎または感染性ブドウ膜炎の治療または予防に特に有用であり得る。
【0047】
VEGFは、血管新生を促進し、血管透過性を増加させることによって、炎症過程に重要な役割を果たす。VEGFの発現は、NFκBを含む、炎症カスケードのいくつかの主要なサイトカインに関連付けられる。網膜血管新生の発生におけるVEGFの重要性は十分に確立されている[29]。ノマコパン型タンパク質は、LTB4に結合し、その作用を阻害することができ、それによりM2マクロファージによるVEGF発現のレベルが減少すると提案されている。これは、ノマコパン型タンパク質が網膜組織のVEGFレベルを減少させることを示す実施例4および図7AのEAUマウスモデルで実証されている。結果として生じるVEGFレベルの減少は、新しい血管の生成を防止する。このように、ノマコパン型タンパク質は、自己免疫性ブドウ膜炎または感染性ブドウ膜炎の治療または予防に特に有用であり得る。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における自己免疫性ブドウ膜炎を予防または治療する方法を提供する。加えて、本発明は、自己免疫性ブドウ膜炎の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0049】
ある特定の実施形態では、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における感染性ブドウ膜炎を予防または治療する方法を提供する。加えて、本発明は、感染性ブドウ膜炎の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0050】
ある特定の実施形態では、自己免疫性ブドウ膜炎は、前部、中間部、後部またはびまん性ブドウ膜炎であり得る。好ましい実施形態では、本発明は、対象における前部ブドウ膜炎を予防または治療する方法を提供する。対象における前部ブドウ膜炎の予防または治療における使用のための、本発明の組成物も提供される。
【0051】
自己免疫性ブドウ膜炎を発生する危険がある対象は、自己免疫性ブドウ膜炎を予防するために本明細書において言及される薬剤の投与から利益を受け得る。ブドウ膜炎の危険因子には喫煙が含まれる。自己免疫性ブドウ膜炎の治療または予防に関しては、喫煙者であるかまたは喫煙者だったことがある対象が好ましい。一部の実施形態では、対象は、これらの危険因子のうち1または2以上を有し得るが、臨床徴候を一切示さない可能性がある。
【0052】
治療しようとする対象は、20歳から50歳の間であり得る。一部の実施形態では、対象は、65歳よりも高齢である。一部の実施形態では、対象は、18歳またはそれよりも高齢である。他の実施形態では、対象は年齢が18歳未満である。
【0053】
加齢性黄斑変性症
加齢性黄斑変性症(AMD)は、進行性で不可逆的な重度の中心視力喪失を引き起こす変性網膜眼疾患である。この疾患は、視力が最も高い領域である黄斑を損ない、60歳またはそれよりも高齢のアメリカ人の失明の主因の1つである。
【0054】
AMDには、湿性AMDおよび乾性AMDの2種類がある。湿性AMD(新生血管性AMDとも呼ばれる)は、急速に悪化する視力および重度障害を伴う。湿性AMDでは視覚機能が重度に損なわれ、最終的には炎症および瘢痕化により、罹患網膜の視覚機能の永続的な喪失が引き起こされる。湿性MDには、「古典的」および「不顕性」の2つのサブタイプがある。古典的サブタイプでは、血管造影法を使用すると眼科医が新しい血管をはっきりと視認できるが、不顕性サブタイプでは、漏出血管は不明瞭である。患者は、不顕性CNVおよび古典的CNVの両方の組合せを呈し得る[30]。
【0055】
湿性AMDは、特に、様々な刺激に応答した神経網膜内および神経網膜下の異常な血管新生によって特徴づけられる。この異常な血管成長は、出血することが多い漏出性血管の形成に繋がる。異常な血管成長は、VEGFによって活性化される。ノマコパン型タンパク質は、VEGFを活性化することが公知であるLTB4に結合し、それを阻害することができる。したがって、ノマコパン型タンパク質は、湿性AMDの治療に特に有効であり得る。
【0056】
乾性AMD(萎縮性AMDとも呼ばれる)は、症例の約80%を占め、一般的にゆっくりと進行し、両眼を同時に冒すことが多い。乾性AMDは、通常、軽度の視力喪失を引き起こすに過ぎない。乾性AMDは、網膜の背後に脂肪が沈着し、黄斑が薄くなって乾燥することによって特徴づけられる。
【0057】
AMDは、STARS質問票を使用して自己評価することができる[31]。AMDは、55歳よりも高齢の個人の中心窩の2乳頭直径内で評価される眼底病変に基づいて分類され得る。視認性のドルーゼンまたは色素異常を有しない対象は、AMDの所見を有しないとみなされるべきである。小核果とも称される小さなドルーゼン(<63μm)を有する人は、正常な加齢性変化を有し、後にAMDを発生する臨床的に意義のある危険増加はないとみなされるべきである。中程度のドルーゼン(≧63~<125μm)を有するが、AMDに関連すると考えられる色素異常を有しない人は、初期AMDを有するとみなされるべきである。大きなドルーゼンを有するかまたは少なくとも中程度のドルーゼンを伴う色素異常を有する人は、中等度のAMDを有するとみなされるべきである。新生血管性AMDまたは地図状萎縮に関連する病変を有する人は、後期AMDを有するとみなされるべきである[32]。
【0058】
AMDでは、局所的および全身的補体活性化の増加が観察されている。いくつかの補体遺伝子の多型は、AMDの危険を増加させる[33]。ノマコパンは、補体活性化因子C5を阻害することが公知である。したがって、C5に結合するノマコパン型タンパク質は、補体経路の活性化を阻害するため、AMDの治療に有効であり得る。
【0059】
LTB4受容体は、湿性型AMDのマウスモデルにおいてレーザー誘導性脈絡膜血管新生を促進することが示されており、VEGF mRNAの発現は、網膜虚血のいくつかの動物モデルにおいて、血管新生と空間的および時間的に相関する[34、35]。前述のように、ノマコパン型タンパク質は、LTB4を阻害することができる。これは、VEGFレベルの減少を招き得、それにより新しい血管の生成が防止される。したがって、ノマコパン型タンパク質は、AMDの治療または予防に有用であり得る。
【0060】
したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における湿性加齢性黄斑変性症を予防または治療する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、湿性加齢性黄斑変性症の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。湿性加齢性黄斑変性症は、不顕性、古典的またはそれらの組合せであり得る。
【0061】
さらに、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における乾性加齢性黄斑変性症を予防または治療する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、乾性加齢性黄斑変性症の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0062】
好ましい実施形態では、治療しようとする対象は60歳またはそれよりも高齢である。
【0063】
AMDを発生する危険がある対象は、AMDを予防するために本明細書において言及される薬剤の投与から利益を受け得る。AMDの危険因子には、喫煙、日光、人工脂肪(部分的に水素化された植物油など)、加工食品が多く新鮮な野菜が少ない食事、管理されていない高血圧および高コレステロール、糖尿病、高齢(60歳よりも高齢の患者は、より若年の患者よりも危険が大きい)および肥満が含まれる。
【0064】
これらの危険因子のうち1または2以上を有する対象が、AMDの治療または予防に関して好ましい。一部の実施形態では、対象は、これらの危険因子のうち1または2以上を有し得るが、臨床徴候を示さない可能性がある。
【0065】
糖尿病性網膜症
糖尿病は、ほぼ全ての組織の微小血管系に深刻な影響を及ぼす。糖尿病性網膜症は、微小動脈瘤、硬性白斑、出血および静脈異常によって特徴づけられる。高血糖は、霧視、暗色点または光の点滅、および突然の視力喪失に繋がる微小血管性網膜変化を誘導する[36]。
【0066】
糖尿病性網膜症には、背景網膜症(background retinopathy)、糖尿病性黄斑症および増殖性網膜症の3つの異なる種類がある。単純網膜症としても公知である背景網膜症は、血管壁のごく小さな腫れを伴う。それらは、ブレブとして公知であり、網膜上に小さな点として現れ、通常は、滲出液(血液タンパク質)の黄色い斑点を伴う。糖尿病性黄斑症は、黄斑が何らかの形態の損傷を受けた場合である。黄斑損傷のそのような原因の1つは、黄斑付近の血管が液体またはタンパク質を黄斑へと漏出させることによる糖尿病性黄斑浮腫である。増殖性網膜症は、網膜が閉塞して異常血管の成長を引き起こす、糖尿病性網膜症の進行性段階である。異常血管は、その後、眼内に出血し、網膜の剥離を引き起こし、視力に深刻な損傷を与える可能性がある。治療せずに放置すると、失明を引き起こす可能性がある[36]。
【0067】
VEGFは、糖尿病性網膜症の発生における重要な因子である。ノマコパン型タンパク質は、LTB4に結合し、それを阻害することができ、それはVEGFレベルの減少を招き得る。したがって、ノマコパン型タンパク質は、糖尿病性網膜症の治療または予防に有用であり得る。
【0068】
したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における糖尿病性網膜症を予防または治療する方法を提供する。さらに、本発明は、糖尿病性網膜症の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。糖尿病性網膜症は、背景網膜症、糖尿病性黄斑症または増殖性網膜症であり得る。
【0069】
治療を必要とする対象は、1型または2型糖尿病を有していてもよい。対象が糖尿病を罹患している期間が長くなるほど、および血糖レベルの管理が不十分な場合、糖尿病性網膜症を罹患する可能性がより高くなる。一部の実施形態では、対象は、少なくとも5、10、20、30または40年間にわたって糖尿病を罹患している。
【0070】
他の危険因子には、高血圧、高コレステロール、妊娠、タバコ使用およびアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系または先住民族であることが含まれる。
【0071】
糖尿病性網膜症を発生する危険のある対象は、糖尿病性網膜症を予防するために本明細書において言及される薬剤の投与から利益を受け得る。これらの危険因子のうち1または2以上を有する対象が、糖尿病性網膜症の治療または予防に関して好ましい。一部の実施形態では、対象は、これらの危険因子のうち1または2以上を有し得るが、臨床徴候を示さない可能性がある。
【0072】
視神経症
視神経症は、視神経の損傷後に生じる。視神経症の典型的な臨床所見は、視野欠損、色弱、および異常乳頭応答である。主な徴候は視力喪失であり、罹患した眼では色がかすかに色あせて見える。多くの場合、罹患するのは片方の目のみであり、患者は、医師が健康な目を覆うように指示するまで、色覚の喪失に気付かない可能性がある。
【0073】
視神経症の急激な発症は、視神経炎、虚血性視神経症、炎症性(非脱髄性)および外傷性視神経症の特徴である。圧迫毒性/栄養性視神経症では、徴候の漸進的進行が観察される。
【0074】
視神経症には、以下のものを含むいくつかの種類がある:
(a)視神経への血流が不十分である虚血性視神経症。虚血性視神経症には、視神経乳頭を冒し、視神経乳頭の腫れを引き起こす前部虚血性視神経症、および乳頭の腫れを伴わない後部虚血性視神経症が含まれる;
(b)視神経の炎症であり、視神経を覆っているミエリン鞘の腫れおよび破壊を伴う視神経炎。視神経炎は、単一孤立性視神経炎、再発性孤立性視神経炎、慢性再発性炎症性視神経症、視神経脊髄炎スペクトル障害、多発性硬化症関連視神経炎および分類された視神経炎形態に分類することができる。視神経炎は、緑内障にも関連している可能性がある;
(c)圧迫性視神経症。これは、眼窩内およびまれに視神経管内に病変を引き起こす腫瘍、感染症および炎症過程に起因する。病変は、視神経を圧迫し、視神経乳頭の腫れおよび進行性視力喪失を招く。関与する眼窩障害には、視神経膠腫、髄膜腫、血管腫、リンパ管腫、類皮嚢胞、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、炎症性眼窩偽腫瘍、および甲状腺眼症が含まれる;
(d)浸潤性視神経症。この場合、視神経は、腫瘍、炎症、および感染症を含む様々な過程によって浸潤される。視神経に浸潤する最も多く見られる炎症性障害は、サルコイドーシスである。日和見真菌、ウイルス、および細菌も、視神経に浸潤する可能性がある。浸潤が神経の近位部分で生じる場合、視神経が盛り上がる(elevated)可能性がある。検査時の神経外観は、罹患している神経の部分に依存する;
(e)直接または間接傷害への曝露時に視神経が損傷する外傷性視神経症。転倒も多く見られる原因であり、視神経症は、多系統外傷および重度脳傷害に関連する意識喪失がある場合に、最も多く生じる;
(f)ミトコンドリア視神経症。ミトコンドリアは、網膜神経節細胞のライフサイクルを維持する上で中心的な役割を果たす。というのは、網膜神経節細胞はエネルギー依存性が高いためである。ミトコンドリアDNAの遺伝子変異、ビタミンの枯渇、アルコールおよびタバコの乱用、およびある特定の薬物の使用は、ミトコンドリアの効率的な輸送に混乱を引き起こす可能性があり、それにより一次または二次視神経症が引き起こされる可能性がある;
(g)患者の食事に栄養が不足していることに起因する栄養性視神経症。栄養不足は、全身に影響を及ぼすため、栄養性視神経症を有する患者には、腕および脚の疼痛および感覚喪失(末梢神経障害)がよく見られる;
(h)毒性視神経症。その最も多く見られる原因は、メタノール中毒である;
(i)遺伝性視神経症。これは、典型的には、対称性両側性中心視力喪失として現れる。考え得る遺伝性視神経症には、レーバー遺伝性視神経症、優性視神経萎縮、ベール症候群、Berk-Tabatznik症候群が含まれる。
【0075】
したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における視神経症症状を予防または治療する方法を提供する。さらに、本発明は、視神経症症状の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0076】
一部の実施形態では、視神経症症状は、視神経が損傷している任意の症状を含む。視神経症症状は、視神経炎、虚血性視神経症、圧迫性視神経症、浸潤性視神経症、外傷性視神経症、ミトコンドリア視神経症、栄養性視神経症、毒性視神経症および遺伝性視神経症から選択することができる。好ましい実施形態では、視神経症症状は、緑内障関連視神経炎である。
【0077】
網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症は、網膜の血管障害である。これは、糖尿病性網膜症に次いで2番目に多く見られる失明の原因であり、主に60歳よりも高齢の患者で生じる。網膜静脈閉塞症には3つの種類がある。1つ目は、4つの網膜静脈のうちの1つが閉塞することによって引き起こされる網膜静脈分枝閉塞症である。2つ目は、主網膜静脈の閉塞によって引き起こされる網膜中心静脈閉塞症であり、3つ目は、網膜静脈の遠位枝で閉塞が生じる網膜静脈分枝閉塞症である。網膜中心静脈閉塞症は、通常、より重度の視力喪失を招く。網膜静脈閉塞症は、網膜毛細血管虚血の量に応じて、非虚血性型および虚血性型にさらに細分化することができる[37]。
【0078】
網膜静脈閉塞症は、光干渉断層撮影法を使用して診断することができる。これは、解像度が5ミクロンの走査型検眼鏡を使用して、網膜の高精細画像を撮影することを含む。これらの画像は、網膜の厚さを測定することによって、腫れおよび浮腫の存在を決定することができる。検眼鏡検査および蛍光眼底造影法を使用して、それぞれ網膜および網膜血管を検査することによって網膜静脈閉塞症を診断することもできる。
【0079】
網膜静脈閉塞症の2つの主な合併症は、虹彩および網膜血管新生に繋がる黄斑浮腫および網膜虚血である。網膜静脈に閉塞が生じると毛細血管に圧力が蓄積し、出血ならびに液体および血液の漏出に繋がる。その後、血管新生、新たな異常血管成長が生じ、そのため、血管新生性緑内障、硝子体出血、および後期または重症の場合には網膜剥離を招き得る[37]。VEGFは、網膜静脈閉塞症病態形成に主要な役割を果たす。というのは、虚血が発生するとVEGFが分泌され、それがさらなる血管漏出および網膜浮腫を招くからである[38]。
【0080】
ノマコパン型タンパク質は、LTB4に結合し、それを阻害することができ、それはVEGFレベルの減少を招き得る。したがって、ノマコパン型タンパク質は、糖尿病性網膜症の治療または予防に有用であり得る。したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における網膜静脈閉塞症を予防または治療する方法を提供する。さらに、本発明は、網膜静脈閉塞症の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。網膜静脈閉塞症は、網膜静脈分枝閉塞症、網膜中心静脈閉塞症または網膜半中心静脈閉塞症(hemicentral retinal vein occlusion)であり得る。
【0081】
一部の実施形態では、対象は、60歳もしくはそれよりも高齢であるか、65歳もしくはそれよりも高齢であるか、70歳もしくはそれよりも高齢であるか、または80歳もしくはそれよりも高齢である。好ましい実施形態では、対象は、65歳またはそれよりも高齢である。
【0082】
末熟児網膜症
未熟児網膜症(ROP)は、小児失明の主因の1つであり、最終的には牽引性網膜剥離を繋がり得る網膜血管新生により特徴づけられる。ROPは、未熟児で生まれた乳児の約20%が罹患する。これは、主に、妊娠32週より前に生まれたか、または生まれたときの体重が1500g未満の乳児に生じる。
【0083】
ROPには外見上の徴候がないため、妊娠32週より前に生まれたか、または体重が1.5kg未満の全ての未熟児は、眼科医によって毎週または2週間毎にスクリーニングされる。ROPの範囲および重症度は、伝統的に、ROP定義の国際分類に従って[39]、場所(ゾーン;I~III)、重症度(ステージ、1~5)、範囲(時計時間;1~12)、ならびに血管膨張および捻れ(および疾患)の点で記述される。
【0084】
血管は、通常、妊娠16~36週の間に発生し、VEGFは、胎児の血管新生において重要な役割を果たす。正常発生中に、網膜組織のより高い酸素需要に応答してVEGFが放出され、それが血管の発生に繋がる。しかし、早産児ではVEGFのレベルが上昇し、それは異常な血管増殖に繋がる[40]。
【0085】
したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における末熟児網膜症を予防または治療する方法を提供する。さらに、本発明は、末熟児網膜症の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0086】
一部の実施形態では、対象は、在胎週数27週より前に生まれたか、在胎週数27週から32週の間にまたは在胎週数>32週で生まれたが出生時体重が<1501グラムの未熟児である。
【0087】
前増殖性網膜疾患
対象は、前増殖性網膜疾患を有し得るか、有する疑いがあり得るか、または発生する危険があり得る。例えば、対象は、前増殖性網膜症を有し得る。前増殖性網膜症は、毛細血管の閉塞による慢性網膜虚血が起こったことを示す。前増殖性網膜症の臨床所見には、複数の綿花状白斑、静脈ビーディングおよび/またはルーピング(venous beading and/or looping)、複数の深い円形およびしみ状の出血、ならびに網膜内微小血管異常が含まれる。
【0088】
以前に言及されているように、増殖性網膜疾患は、VEGFによって活性化される血管新生によって特徴づけられる。VEGFは、血管透過性および血管新生を促進し、増殖性網膜疾患では血管の異常生成に繋がり得る。ノマコパン型タンパク質は、LTB4に結合し、それを阻害することができ、それによりVEGFレベルが減少し得る。これは、例えば、実施例4に示されている。
【0089】
したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象における前増殖性網膜疾患を予防または治療する方法を提供する。さらに、本発明は、前増殖性網膜疾患の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0090】
スタルガルト病
スタルガルト病は、網膜輸送タンパク質をコードするABCA4遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性黄斑ジストロフィーである。スタルガルト病は、小児における黄斑変性症の最も多い形態であり、有病率は、米国では10万人あたり約10~12.5人と推定されている。スタルガルト病を有する患者は、生後10年または20年以内に重度視力喪失を発生させ、ほとんど全ての症例で不可逆的な視力低下へと進行する[41]。
【0091】
病理には、脈絡膜血管新生が含まれ得、その場合は、硝子体内抗VEGF注射が実施される[42]。本発明者らは、ノマコパン型タンパク質が、増殖性網膜疾患におけるVEGFレベルを減少させ得ることを示した。
【0092】
したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象におけるスタルガルト病を予防または治療する方法を提供する。さらに、本発明は、スタルガルト病の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。
【0093】
ポリープ状脈絡膜血管障害
ポリープ状脈絡膜血管障害(PCV)は、脈絡膜血管系の疾患である。ポリープ状脈絡膜血管障害は、多くの民族の男性および女性の両方に存在し、色素上皮の漿液性剥離および一般的に網膜下線維症に繋がり得る滲出性変化によって特徴づけられる。証拠は、PCVを有する徴候性患者が、光線力学療法および抗VEGF治療により、重度視力喪失を起こすことなく完全な回復を示し得ることを支持する[43]。本発明者らは、ノマコパン型タンパク質が、増殖性網膜疾患におけるVEGFレベルを減少させ得ることを示した。
【0094】
したがって、本発明は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含む、対象におけるポリープ状脈絡膜血管障害を予防または治療する方法を提供する。さらに、本発明は、ポリープ状脈絡膜血管障害疾患の予防または治療における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を提供する。一部の実施形態では、薬剤は、光線力学療法と組み合わせて投与される。
【0095】
投与成績
対象は、治療の結果として、徴候の発生率の減少、徴候の軽減、徴候の発生もしくは再発生の阻害もしくは遅延、またはその組合せを有し得る。好ましくは、治療は、典型的な疾患症状の徴候の減少を生じる。例えば、増殖性網膜疾患治療のためのいくつかの臨床研究のエンドポイントとして視力が使用される。したがって、本発明による治療は、視力の改善を生じ得る。
【0096】
治療の結果として、対象は、例えば、特定の疾患の1つに関して上述の方法の1つを使用して、それらの臨床スコアの改善を示し得る。
【0097】
さらに、治療の結果として、対象は、血管新生の減少または血管増殖(例えば、眼内)の減少を示し得る。他の結果には、視力の改善、視力喪失の減少、視覚回復の増加、網膜中心厚の減少、および/または糖尿病性網膜症の重症度スコアの改善が含まれ得る。さらに、治療は、硝子体出血、虹彩または隅角の血管新生、血管新生性緑内障および/または網膜剥離の減少を招き得る。活性薬剤の投与後に観察される減少は、健康な個体、関連する増殖性網膜疾患のより重度形態または活性薬剤による治療前の患者で観察されるより重度形態を有する個体と比較して測定することができる。
【0098】
治療は、網膜炎症の減少、Th17細胞数の減少、RORgt/Tbetを発現するCD4+細胞数の減少(例えば、ブドウ膜炎において)を招き得る。
【0099】
治療は、また、必要とされる第2の疾患治療の量、またはそれによる治療の期間、または頻度の減少を招き得る。
【0100】
したがって、本発明のさらなる実施形態では、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質もしくはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤または前記薬剤をコードする核酸分子の治療または予防有効量を投与することを含む、網膜増殖性疾患を有する対象において、視力を改善し、臨床スコアを改善し、血管新生もしくは血管増殖(例えば、眼内の)を減少させ、視力喪失を減少させ、視覚回復を増加させ、網膜中心厚を減少させおよび/もしくは糖尿病性網膜症の重症度スコアを改善し、硝子体出血を減少させ、虹彩もしくは隅角の血管新生を減少させ、血管新生性緑内障および/もしくは網膜剥離を減少させ、炎症を減少させ、Th17細胞数を減少させ、ならびに/またはRORgt/Tbetを発現するCD4+細胞数を減少させる(例えば、ブドウ膜炎において)方法が提供される。これは、単独の場合または第2の網膜増殖性疾患治療を伴い得る。
【0101】
本発明は、また、網膜増殖性疾患を有する対象において、視力を改善し、臨床スコアを改善し、血管新生もしくは血管増殖(例えば、眼内)を減少させ、視力喪失を減少させ、視覚回復を増加させ、網膜中心厚を減少させおよび/もしくは糖尿病性網膜症の重症度スコアを改善し、硝子体出血を減少させ、虹彩もしくは隅角の血管新生を減少させ、血管新生性緑内障および/もしくは網膜剥離を減少させ、炎症を減少させ、Th17細胞数を減少させ、ならびに/またはRORgt/Tbetを発現するCD4+細胞数を減少させる(例えば、ブドウ膜炎において)方法における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質もしくはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤または前記薬剤をコードする核酸分子を提供する。
【0102】
本発明のさらなる実施形態では、対象における増殖性網膜疾患を治療または予防する方法であって、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質もしくはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤または前記薬剤をコードする核酸分子の治療または予防有効量を投与することを含み、薬剤は、例えば網膜組織においてVEGFレベルの減少を生じ、および/または薬剤は、例えば網膜組織においてVEGFシグナル伝達の減少を生じる、方法が提供される。
【0103】
本発明は、また、対象における増殖性網膜疾患を治療または予防する方法における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質もしくはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤または前記薬剤をコードする核酸分子である薬剤であって、薬剤は、例えば網膜組織においてVEGFレベルの減少を生じさせ、および/または薬剤は、例えば網膜組織においてVEGFシグナル伝達の減少を生じさせる、薬剤を提供する。
【0104】
本発明の薬剤は、上述のように、他の網膜増殖性疾患治療と組み合わせて使用することができる。本発明の薬剤と他の(本明細書において「第2の」と称される)網膜増殖性疾患治療との組合せは、本発明の薬剤による治療の非存在下で使用される量と比較して第2の薬剤の量が減少するか、または本発明の薬剤による治療の非存在下で使用される治療期間と比較して第2の薬剤による治療期間が減少するか、または第2の薬剤の投与が必要とされる頻度が減少するようなものであり得る。これは、ある特定の公知の治療の副作用に照らして有利である。したがって、第2の治療の量を減少させるか、第2の治療の投与頻度を減少させるか、または第2の治療の期間を減少させる方法であって、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質もしくはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤の治療または予防有効量を投与することを含み、必要に応じて前記第2の治療を投与することをさらに含む方法も提供される。
【0105】
第2の網膜増殖性疾患治療が使用される場合、好ましくは、第2の網膜増殖性疾患治療は、以下のものから選択される:抗炎症医薬、例えば、コルチコステロイドなどのステロイド、IMT薬、例えばメトトレキサート、アザチオプリン、およびミコフェノレート、BRM薬(例えば、抗TNFアルファ剤、例えば、インフリキシマブまたはアダリムマブなどの、TNFアルファに結合する抗体またはその断片)、抗TNFアルファ抗体またはその断片などの抗VEGF治療(ベバシズマブ、ラニビズマブ(ルセンティス)、抗VEGFアプタマー(ペガプタニブ(マクジェン)など)、またはアフリベルセプト(アイリーア、ヒトIgG1イムノグロブリンのFc部分に融合されている、ヒトVEGF受容体1および2の細胞外ドメインに由来する血管内皮増殖因子(VEGF)結合性部分からなる組換え融合タンパク質)などの別のVEGFアンタゴニスト。
【0106】
ノマコパン型タンパク質および第2の薬剤を使用する場合、それらは、一緒にまたは別々に投与することができる。まずノマコパン型タンパク質を投与し、次に第2の網膜増殖性疾患治療を投与してもよく、またはその逆であってもよい。
【0107】
したがって、本発明の薬剤が、1または2以上の他の網膜増殖性疾患治療と組み合わせて使用される場合、例えば、上記の方法では、これは、(i)第2の網膜増殖性疾患治療により網膜増殖性疾患を治療または予防する方法における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤、または(ii)図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤により網膜増殖性疾患を治療または予防する方法における使用のための第2の網膜増殖性疾患治療、または(iii)網膜増殖性疾患を治療または予防する方法における使用のための、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤および第2の網膜増殖性疾患治療、として説明することができる。(i)~(iii)の各々では、前記方法は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤を投与すること、および第2の網膜増殖性疾患治療を投与することを含む。
【0108】
一部の実施形態では、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤は、局所的に投与され、第2の網膜増殖性疾患治療は、局所的にまたは眼内に直接的に、例えば硝子体内にまたは脈絡膜上に、好ましくは、眼内に直接的に、例えば硝子体内にまたは脈絡膜上に投与される。
【0109】
一部の実施形態では、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤は、眼内に直接的に、例えば硝子体内にまたは脈絡膜上に投与され、第2の網膜増殖性疾患治療は、局所的に、または眼内に直接的に、例えば硝子体内にまたは脈絡膜上に投与される。
【0110】
一部の実施形態では、第2の網膜増殖性疾患治療も、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤である。
【0111】
治療が、第2の網膜増殖性疾患治療の量または期間における減少を生じる場合、減少は、本発明の薬剤の非存在下で使用される第2の治療の量と比較して、最大でまたは少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80%であり得る。
【0112】
治療が、第2の網膜増殖性疾患治療による治療の頻度における減少を生じる場合、これは、第2の網膜増殖性疾患治療の投与間の時間の最大で約1、2、3、4、5、6、7または8週間の増加を招き得る。
【0113】
対象
好ましい対象、薬剤、用量およびその他は、本明細書に開示される通りである。
【0114】
いかなる減少または増加へのいかなる参照も、治療がない場合における前記対象と比較される疾患パラメーターにおける減少または増加である。好ましくは、パラメーターは、定量でき、この場合、増加または減少は、好ましくは統計的に有意である。例えば、増加または減少は、治療の非存在下(例えば、前記治療が開始される前)のパラメーターと比較して、少なくとも3、5、10、15、20、30、40、50%またはそれよりも大きくてもよい。
【0115】
本発明の実施において薬剤が投与される対象は、好ましくは哺乳動物であり、好ましくはヒトである。薬剤が投与される対象は、増殖性網膜疾患の危険があるか、または増殖性網膜疾患を有する対象である。
【0116】
本発明の方法は、また、(i)対象が網膜増殖性疾患の危険を有するか、または網膜増殖性疾患を有するかどうかを判定すること、(ii)本発明の薬剤の投与前および/または後に実施され得る、網膜増殖性疾患の重症度を決定することの、1または2以上の追加的なステップを含み得る。
【0117】
本発明に使用すべき薬剤
本発明の一実施形態により、薬剤は、ノマコパン自体またはその機能的等価物である。以下において、「ノマコパン型タンパク質」という用語は、「図2に示されるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはその機能的等価物」についての略記として使用される。
【0118】
ノマコパンは、マダニOrnithodoros moubataの唾液腺から単離された。ノマコパンは、リポカリンファミリーの遠いメンバーであり、補体活性化を阻害することが示された最初のリポカリンファミリーのメンバーである。ノマコパンは、C5に結合し、C5コンバターゼによるC5のC5aおよびC5bへの開裂を防止することによって、古典的補体経路、第二補体経路、およびレクチン補体経路を阻害することで、活性(例えば炎症促進性)ペプチドであるC5aの産生およびMACの形成の両方を阻害する。ノマコパンは、ラット、マウスおよびヒト血清中でC5に結合し、C5コンバターゼによるC5の開裂を約0.02mg/mlのIC50で防ぐことが実証されている。
【0119】
したがって、ノマコパン型タンパク質は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168または図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸1~168を含むか、またはそれからなっていてもよい。図2に示されるタンパク質配列の最初の18アミノ酸は、C5の結合またはLTB4結合活性に必要とされないシグナル配列を形成するので、これは、必要に応じて、例えば組換えタンパク質産生の効率のために、省かれ得る。
【0120】
ノマコパンのC5結合特性
ノマコパンタンパク質は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して決定された1nMのKdでC5に結合することが実証されている[44]。ノマコパン型ペプチド(例えば、ノマコパンタンパク質の機能的等価物)は、好ましくは、好適には360nM未満、より好適には300nM未満、最も好適には250nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは150nM未満、最も好ましくは100nM未満、さらにより好ましくは50、40、30、20、または10nM未満、有利には5nM未満のKdでC5と結合する能力を保持し、その際、前記Kdは、好ましくは[44]に記載された方法により、表面プラズモン共鳴を使用して決定される。
【0121】
ノマコパンは、古典的補体経路、第二補体経路およびレクチン補体経路を阻害する。好ましくは、ノマコパン型タンパク質は、C5の全体的コンフォメーションを安定化するが、3つの活性化経路のC5コンバターゼによって標的化されるC5開裂部位を直接には遮断しないように、C5に結合する。C5へのノマコパンの結合は、C5の全体的コンフォメーションの安定化を招くが、コンバターゼ開裂部位を遮断しない。ノマコパンの機能的等価物も、好ましくはこれらの特性を共有する。
【0122】
C5は、C5コンバターゼ酵素によって開裂される(図1)。この開裂の産物は、アナフィラトキシンC5aおよび溶解複合体C5bを含み、C5bは、膜侵襲複合体(MAC)としても公知の、C5b、C6、C7、C8およびC9の複合体の形成を促進する。C5aは、好中球および好酸球の走化性、好中球の活性化、毛細血管の透過性増加および好中球アポトーシスの阻害を含む多くの病的炎症過程に意味づけられている高度に炎症促進性のペプチドである[45]。
【0123】
C5と結合してそれを阻害するモノクローナル抗体および小分子が、様々な疾患、特に、PNH、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスおよび移植片拒絶を治療するために開発されている[46]。しかし、これらのモノクローナル抗体の一部は、C5多型を有する対象からのある特定のC5タンパク質に結合せず、したがって、これらの対象には無効である[47]。好ましくは、ノマコパン型タンパク質は、野生型C5だけでなく、C5多型(エクリズマブによる治療を無効にするか、またはエクリズマブによる治療の効力を減少させる)を有する対象からのC5にも結合し、その開裂を阻害する。「C5多型」という用語は、野生型C5と比較して、どれも1または2以上であり得る挿入、欠失、アミノ酸置換、フレームシフト、短縮化、またはこれらの変化の1または2以上の組合せによって変化された任意のバージョンのC5を含む。ヒト対象において、野生型C5は、受託番号NP_001726.2;バージョンGI:38016947を有するC5タンパク質と考えられている。C5多型の例には、mAbエクリズマブの有効性を減少させる、アミノ酸位置885での多型、例えば、Arg885Cys(c.2653C>Tによってコードされる)、p.Arg885His(c.2654G>Aによってコードされる)およびArg885Serが含まれる[47]。
【0124】
C5多型、例えば、エクリズマブによる治療を無効にするか、またはエクリズマブによる治療の有効性を減少させるC5多型を有する対象からのC5を含む、C5と結合する薬剤の能力は、当技術分野において公知の標準的なin vitroアッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴、またはタンパク質をゲル上で標識C5と共にインキュベーションした後のウエスタンブロットにより決定され得る。好ましくは、ノマコパン型タンパク質は、野生型C5および/またはC5多型、例えば、エクリズマブによる治療を無効にする、もしくはエクリズマブによる治療の有効性を減少させるC5多型を有する対象からのC5のいずれかであるC5と、360nM未満、より好適には300nM未満、最も好適には250nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは150nM未満、最も好ましくは100nM未満、さらにより好ましくは50、40、30、20、または10nM未満、有利には5nM未満のKdで結合し、その際、前記Kdは、表面プラズモン共鳴を使用して、好ましくは[44]に記載される方法により決定される。
【0125】
これは、野生型C5およびC5多型、例えばエクリズマブによる治療を無効にするか、またはエクリズマブによる治療の有効性を減少させるC5多型を有する対象からのC5に対して、より高い、より低いまたは同じ親和性を示し得る。
【0126】
ノマコパン型タンパク質が補体活性化を阻害する能力は、また、薬剤が血清中で補体活性化を阻害する能力を測定することによって決定され得る。例えば、血清中の補体の活性は、当技術分野において公知または本明細書に記載される任意の手段によって測定することができる。
【0127】
ノマコパンのLTB4結合特性
ノマコパン型タンパク質は、また、エイコサノイド活性を阻害する機能を有すると定義され得る。ノマコパンは、また、LTB4と結合すると実証されている。ノマコパンタンパク質の機能的等価物もまた、ノマコパンタンパク質と類似の親和性でLTB4と結合する能力を保持し得る。
【0128】
ノマコパン型タンパク質がLTB4と結合する能力は、当技術分野において公知の標準的なin vitroアッセイ、例えば、標識LTB4への結合を競合するノマコパンと抗LTB4抗体との間の競合ELISA、等温滴定熱量測定または蛍光滴定によって決定され得る。蛍光滴定を使用して得られるデータは、ノマコパンがLTB4に、200から300pMの間のKdで結合することを示している。例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)中のLTB4(Caymen Chemicals、Ann Arbor、MI、USA)に対する結合活性は、分光蛍光計、例えば、LS 50 B分光蛍光計(Perkin-Elmer、Norwalk、CT、USA)で定量することができる。これは、以下のように実施され得る。
【0129】
PBS2mL中の100nM精製ノマコパン溶液を、磁器スターラーを備える石英キュベット(10mm経路長;Hellma、Muhlheim、Germany)中に加えた。温度を20℃に調整し、平衡に達した後、タンパク質のTyr/Trpの蛍光を280nmで励起させた(スリット幅:15nm)。最大発光に対応する蛍光発光を340nmで測定した(スリット幅:16nm)。PBS中の30μM LTB4リガンド溶液を、最大体積20μL(全試料体積の1%)まで段階的に添加し、30秒インキュベーション後に定常状態の蛍光を測定した。KD値の計算のために、初期蛍光強度100%に対してデータを規準化し、3μM N-アセチル-トリプトファンアミド溶液の滴定を使用してインナーフィルター効果を補正し、対応するリガンド濃度に対してデータをプロットした。次に、二分子複合体の形成に関する質量作用の法則に基づく非線形最小二乗回帰を使用して、公表された式(Breustedtら、2006)[48]を用いてOriginソフトウェアバージョン8.5(OriginLab、Northampton、MA、USA)によりデータをフィットした。
【0130】
ノマコパンは、1nM未満、より好適には0.9nM未満、最も好適には0.8nM未満、好ましくは0.7nM未満、より好ましくは0.6nM未満、最も好ましくは0.5nM未満、さらにより好ましくは0.4nM未満、有利には0.3nM未満のKdでLTB4と結合し得、その際、前記Kdは、蛍光滴定を使用して、好ましくは上記方法により決定される。ノマコパン型タンパク質は、好ましくはこれらの特性を共有する。
【0131】
C5およびLTB4の両方に結合する分子
本発明の一実施形態により、ノマコパン型タンパク質は、C5およびLTB4の両方に(例えば、野生型C5ならびにエクリズマブによる治療を無効にするかまたはエクリズマブによる治療の有効性を減少させるC5多型を有する対象からのC5の両方に、ならびにLTB4に)結合し得る。
【0132】
したがって、コバーシン型タンパク質は、C5コンバターゼによる補体C5の補体C5aおよび補体C5bへの開裂を防止するように、ならびにまたLTB4活性を阻害するように作用し得る。C5およびLTB4の両方に結合する薬剤を使用することが有利であり得る。C5およびエイコサノイド経路は、いずれも、増殖性網膜疾患で観察される病理であり得る。したがって、増殖性網膜疾患に関与する複数の経路を阻害する単一薬剤を使用することによって、単一の経路だけを阻害する薬剤を使用することと比較して、増強した効果を達成することができる。さらに、単一の分子を投与することに関連する実用上の利点がある。
【0133】
LTB4に結合するが、C5に結合しないかまたはC5に対する結合の減少を示す分子
C5に結合しないかまたはC5に対する結合の減少を示すが、LTB-4結合活性を保持するノマコパン型タンパク質は、例えば、WO2018/193121に開示されており、これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれている。減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持するこのようなノマコパン型タンパク質は、本発明の全ての態様に使用され得る。
【0134】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持するこのようなノマコパン型タンパク質は、以下の配列を含むか、またはそれからなっていてもよい。
【0135】
配列番号22(WO2018/193121の配列番号5)は、配列番号4が、Met114をGlnに、Met116をGlnに、Leu117をSerに、Asp118をAsnに、Ala119をGlyに、Gly120をSerに、Gly121をAlaに、Leu122をAspに、Glu123をAspにおよびVal124をLysに変更するように改変された改変ノマコパンのアミノ酸配列である。(ノマコパンバリアント1)
【0136】
配列番号23(WO2018/193121の配列番号6)は、配列番号4が、Ala44をAsnに、Met116をGlnに、Leu117をSerに、Gly121をAlaに、Leu122をAspに、Glu123をAlaにおよびAsp149をGlyに変更するように改変された改変ノマコパンのアミノ酸配列である。(ノマコパンバリアント2)
【0137】
配列番号24(WO2018/193121の配列番号7)は、配列番号4が、Ala44をAsnに、Met116をGlnに、Leu122をAspにおよびAsp149をGlyに変更するように改変された改変ノマコパンのアミノ酸配列である。(ノマコパンバリアント3)
【0138】
配列番号25(WO2018/193121の配列番号8)は、配列番号4が、Ala44をAsnに変更するように改変された改変ノマコパンのアミノ酸配列である。(ノマコパンバリアント4)。
【0139】
未改変ノマコパンポリペプチドと比較してC5に対する結合能力の減少を示す改変ノマコパンポリペプチドは、一部の好ましい実施形態では、C5に対する検出可能な結合を示さない可能性がある。
【0140】
C5結合は、例えば、配列番号4の未改変ノマコパンポリペプチドによって示される結合と比べて少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、15分の1、20分の1、50分の1、100分の1に減少または消失し得る。
【0141】
一部の実施形態では、C5結合性は、配列番号4の未改変ノマコパンポリペプチドと比べて少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%減少する。
【0142】
そのようなポリペプチドは、例えば、[49]に記載される方法、またはWO2018193121の実施例2に示される方法に従って、表面プラズマ共鳴(Surface Plasma Resonance)によって決定されるとき、1マイクロモルよりも大きなKDでC5に結合し得、および/または[50]において実施されたものに従ってまたは[50]において実施されたものと同様に実施されるCH50溶解アッセイにおいて、全プール正常血清中に0.02mg/mLの濃度で存在すると、ヒツジ赤血球溶解を10%未満に阻害し得る。C5に結合するそのようなポリペプチドの能力はまた、血清中の補体活性化を阻害する薬剤の能力を測定することによって決定され得る。
【0143】
ある特定の好ましい実施形態では、バリアント2が使用される。
【0144】
これらの分子は、LTB4に結合する分子の能力を共有するが、C5に結合しないか、またはC5に対して結合の減少を示すノマコパンの機能的バリアントである分子の例である。
【0145】
したがって、ノマコパンの機能的等価物は、(i)C5に結合するその能力を保持し、C5がC5コンバターゼによりC5aおよびC5bへと開裂されることを防止する、および/または(ii)LTB4に結合する能力を保持する、ノマコパンの相同体または断片であり得る。ある特定の実施形態では、機能的等価物は、特性(i)および(ii)を有する。他の実施形態では、機能的等価物は、特性(ii)を有するが、C5に対する結合が減少しているかまたはC5に結合しない(例えば、ノマコパンバリアント1~4のうちの1つ)。
【0146】
一部の実施形態では、本発明の薬剤は、吸血性節足動物に由来する。「吸血性節足動物」という用語は、適切な宿主から餌として血を吸う、昆虫、マダニ、シラミ、ノミおよびダニなどの全ての節足動物を含む。好ましくは、本薬剤は、マダニ、好ましくは、マダニOrnithodoros moubataに由来する。
【0147】
相同体は、例えば、Rhipicephalus appendiculatus、Rsanguineus、R.bursa、A.americanum、A.cajennense、A.hebraeum、Boophilus microplus、B.annulatus、B.decoloratus、Dermacentor reticulatus、D.andersoni、D.marginatus、D.variabilis、Haemaphysalis inermis、Ha.leachii、Ha.punctata、Hyalomma anatolicum anatolicum、Hy.dromedarii、Hy.marginatum marginatum、Ixodes ricinus、I.persulcatus、I.scapularis、I.hexagonus、Argas persicus、A.reflexus、Ornithodoros erraticus、O.moubata moubata、O.m.porcinus、およびO.savignyi.を含む他のマダニ種からのノマコパンタンパク質配列を含む、図2に明示的に特定されるノマコパン配列のパラログおよびオルソログを含む。
【0148】
「相同体」という用語は、また、イエカ属(Culex)、ハマダラカ属(Anopheles)およびヤブカ属(Aedes)の種、特にCulex quinquefasciatus、Aedes aegyptiおよびAnopheles gambiaeを含むカ種;ノミ種、例えばCtenocephalides felis(ネコノミ);アブ;スナバエ;ブユ;ツェツェバエ;シラミ;ダニ;ヒル;および扁虫からの同等のノマコパンタンパク質配列を含むことが意味される。ネイティブなノマコパンタンパク質は、O.moubataにおいて約18kDaの別の3つの形態で存在すると考えられており、「相同体」という用語は、ノマコパンのこれらの代替形態を含むことが意味される。
【0149】
図2に示されるノマコパン配列の相同体を同定する方法は、当業者に明らかであろう。例えば、相同体は、公的配列データベースおよび非公的配列データベースの両方の相同性検索によって同定され得る。好適には、公的に入手可能なデータベースが使用され得る。とはいえ、非公的または商業的に利用可能なデータベースは、特に、それらが公的データベースに表されていないデータを含むならば、等しく有用である。一次データベースは、一次ヌクレオチド配列または一次アミノ酸配列データの寄託サイトであり、公的または商業的に利用可能であり得る。公的に利用可能な一次データベースの例には、GenBankデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、EMBLデータベース(http://www.ebi.ac.uk/)、DDBJデータベース(http://www.ddbj.nig.ac.jp/)、SWISS-PROTタンパク質データベース(http://expasy.hcuge.ch/)、PIR(http://pir.georgetown.edu/)、TrEMBL(http://www.ebi.ac.uk/)、TIGRデータベース(http://www.tigr.org/tdb/index.html参照)、NRL-3Dデータベース(http://www.nbrfa.georgetown.edu)、Protein Data Base(http://www.rcsb.org/pdb)、NRDBデータベース(ftp://ncbi.nlm.nih.gov/pub/nrdb/README)、OWLデータベース(http://www.biochem.ucl.ac.uk/bsm/dbbrowser/OWL/)および二次データベースPROSITE(http://expasy.hcuge.ch/sprot/prosite.html)、PRINTS(http://iupab.leeds.ac.uk/bmb5dp/prints.html)、Profiles(http://ulrec3.unil.ch/software/PFSCAN_form.html)、Pfam(http://www.sanger.ac.uk/software/pfam)、Identify(http://dna.stanford.edu/identify/)およびBlocks(http://www.blocks.fhcrc.org)データベースが含まれる。商業的に利用可能なデータベースまたは非公的データベースの例には、PathoGenome(Genome Therapeutics Inc.)およびPathoSeq(以前はIncyte Pharmaceuticals Inc.のもの)が含まれる。
【0150】
典型的には、2つのポリペプチドの間の(好ましくは、活性部位などの特定領域にわたる)30%よりも大きい同一性は、機能的等価性の指標、したがって、2つのタンパク質が相同性である指標であると考えられる。好ましくは、相同体であるタンパク質は、図2で特定されるノマコパンタンパク質配列(配列番号2)と60%よりも大きい配列同一性を有する。より好ましい相同体は、図2に示されるノマコパンタンパク質配列(配列番号2)とそれぞれ70%、80%、90%、95%、98%または99%よりも大きい同一性を有する。本明細書において言及される同一性パーセンテージは、BLASTバージョン2.1.3を使用して、NCBI(the National Center for Biotechnology Information;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって明示されるデフォルトパラメーター[Blosum 62行列;ギャップ開始ペナルティー=11およびギャップ伸長ペナルティー=1]を使用して決定されるものである。%同一性は、関連参照配列(例えば配列番号2のアミノ酸1~168または配列番号2のアミノ酸19~168)の完全長にわたり得る。
【0151】
したがって、ノマコパン型タンパク質は、参照配列、例えば図2、配列番号2のアミノ酸19~168または図2、配列番号2のアミノ酸1~168に対するある特定のアミノ酸配列同一性%への参照により、例えば、図2、配列番号2のアミノ酸19~168または図2、配列番号2のアミノ酸1~168と少なくとも60%,70%、80%、90%、95%、98%または99%の同一性を有する配列を含むか、またはそれからなるタンパク質として記載することができる)。ノマコパン型タンパク質が前記配列を含む場合、ノマコパン型タンパク質は、融合タンパク質(例えば第2のタンパク質、例えば異種タンパク質との)であり得る。適切な第2のタンパク質を以下に述べる。
【0152】
本開示の様々な態様および実施形態では、改変ノマコパンポリペプチド(例えば、ノマコパン型タンパク質)は、配列番号2および配列番号4の未改変ノマコパンポリペプチドと、1~50、2~45、3~40、4~35、5~30、6~25、7~20、8~25、9~20、10~15アミノ酸、最大で1、2、3、4、5、7、8、9、10、20、30、40、50アミノ酸が異なっていてもよい。これらは、置換、挿入または欠失であり得るが、好ましくは置換である。欠失がなされる場合、欠失は、好ましくは、最大で1、2、3、4、5、7または10アミノ酸の欠失(例えば、NまたはC末端からの欠失)である。したがって、変異体には、アミノ酸置換、例えばタンパク質の機能または活性に不利に影響しない保存的アミノ酸置換を含むタンパク質が含まれる。本用語は、また、天然生物学的バリアント(例えば、ノマコパンタンパク質が由来する種内の対立遺伝子バリアントまたは地理的変異)を含むことが意図される。野生型C5および/またはエクリズマブによる治療を無効にする、もしくはエクリズマブによる治療の有効性を減少させるC5多型を有する対象からのC5ならびに/またはLTB4と結合する改善された能力を有する変異体は、また、タンパク質配列中の特定の残基の系統的または定方向変異により設計され得る。
【0153】
これらの改変は、配列番号2および配列番号4に示されるノマコパンポリペプチドに対してなすことができ、分子は、依然として有用なままであり、結果として生じる改変ノマコパンポリペプチドが、(i)LTB4結合活性ならびに/またはさらに(ii)配列番号2および配列番号4に示されるノマコパンポリペプチドと同等のC5結合性を保持する限り、機能的バリアントであると見なされ、結合性は、例えば、本明細書の他で言及される試験を使用して決定することができる(例えば、これらの一方または両方に対する結合性は、未改変ノマコパンポリペプチドと比較して、少なくとも80、85、90、95%の結合性である)。本明細書の他に述べられるように、ノマコパンおよびL-ノマコパンは両方とも、自己免疫性ブドウ膜炎のマウスモデルの治療に有効であることが示されている。L-ノマコパンはLTB4に結合するが、C5には結合しない。ノマコパン様タンパク質は、C5に結合する能力および/またはLTB4に結合する能力を参照することによって定義され得る。LTB4に結合するものは、本発明において特に有用である。LTB4およびC5に結合するものも、本発明において特に有用である。
【0154】
LTB4に結合し、かつ、必要に応じてC5にも結合する機能的バリアントの要件を考慮して、改変をなす際に、ある特定の残基が改変から除外されるべきである。これらには、保存されているシステイン残基が含まれる。
【0155】
他の残基は、改変から除外されるべきであるか、または置換の場合は保存的な改変のみを受けるべきである。それらはLTB4結合残基である。機能的バリアントがLTB4およびC5に結合する実施形態では、以下に定義されるC5結合残基も、好ましくは改変から除外されるべきであり、または置換の場合は好ましくは保存的改変のみを受けるべきである。LTB4およびC5の結合性は比較的良好に理解されていることを考慮すると、ノマコパンに対して約65%の同一性パーセンテージを有し得るが、変更がLTB4結合性におよび必要に応じてC5結合性にも関与しない残基に限定されている分子を設計することは可能である。
【0156】
LTB4結合バリアントの場合、一部の実施形態では、成熟ノマコパン分子(例えば、シグナル配列を含む全長タンパク質の残基19~168に対応する配列番号4に示されている)の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、以下に示されるLTB4結合残基の少なくとも5、10または15または各々は、保持されているかまたは保存的改変を受けている。
【0157】
LTB4結合バリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、LTB4結合残基の少なくとも5、10または15または各々は、保持されているかまたは保存的改変を受けており、以下に示されるLTB4結合残基の最大で2、3、4、5、10、15、20は保存的改変を受けている。
【0158】
LTB4結合バリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、以下に示されるLTB4結合残基の少なくとも5、10または15または各々は保持されている。
【0159】
LTB4結合バリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、以下に示されるLTB4結合残基の各々は保持されているかまたは保存的改変を受けている。
【0160】
LTB4結合バリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、以下に示されるLTB4結合残基の各々は保持されているかまたは保存的改変を受けており、LTB4結合残基の最大で2、3、4、5、10、15、20は保存的改変を受けている。
【0161】
LTB4結合バリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、以下に示されるLTB4結合残基の各々は保持されている。
【0162】
C5およびLTB4に結合するバリアントの場合、一部の実施形態では、成熟ノマコパン分子(例えば、シグナル配列を含む全長タンパク質の残基19~168に対応する配列番号4に示されている)の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、LTB4結合残基の少なくとも5、10または15または各々は、保持されているかまたは保存的改変を受けており、以下に示されるC5結合残基の少なくとも5、10または15または20または各々は、保持されているかまたは保存的改変を受けている。
【0163】
C5およびLTB4に結合するバリアントの場合、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、LTB4結合残基の少なくとも5、10または15または各々、および以下に示されるC5結合残基の少なくとも5、10または15または20または各々は、保持されているかまたは保存的改変を受けており、LTB4結合残基およびC5結合残基の最大で2、3、4、5、10、15、20は保存的改変を受けている。
【0164】
C5およびLTB4に結合するバリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、LTB4結合残基の少なくとも5、10または15または各々、および以下に示されるC5結合残基の少なくとも5、10または15または20または各々は、保持されている。
【0165】
C5およびLTB4に結合するバリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、LTB4結合残基の各々、および以下に示されるC5結合残基の各々は、保持されているかまたは保存的改変を受けている。
【0166】
C5およびLTB4に結合するバリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、LTB4結合残基の各々、および以下に示されるC5結合残基の各々は、保持されているかまたは保存的改変を受けており、C5結合残基および/またはLTB4結合残基の最大で2、3、4、5、10、15、20は、保存的改変を受けている。
【0167】
C5およびLTB4に結合するバリアントの場合、一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸の各々は保持されており、LTB4結合残基の各々、および以下に示されるC5結合残基の各々は、保持されている。
【0168】
これらの領域の外部になされる改変は、保存的または非保存的であり得る。
【0169】
これらの実施形態の各々では、これらの6つのシステインアミノ酸残基間の間隔は、分子の全体的な構造を保存するために保持されていることが好ましい(例えば、分子は、図2のアミノ酸配列のアミノ酸1~168による配列のアミノ末端からカルボキシル末端に配列したときに32アミノ酸離れた、62アミノ酸離れた、28アミノ酸離れた、1アミノ酸離れたおよび21アミノ酸離れた距離で相互に間隔が空いた6つのシステイン残基を含む)。
【0170】
LTB4結合残基
LTB4との結合に関与すると考えられており、好ましくは未改変形態に保持されているか、または配列番号2もしくは配列番号4と比べて改変されている任意の分子の配列において保存的変更のみを受けている残基は、Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、Asp103、およびTrp115である(配列番号4による番号付け)。
【0171】
C5結合残基
C5との結合に関与すると考えられており、配列番号2もしくは配列番号4と比べて改変されている任意の分子の配列において未改変形態に保持され得る残基は、Val26、Val28、Arg29、Ala44、Gly45、Gly61、Thr62、Ser97、His99、His101、Met114、Met116、Leu117、Asp118、Ala119、Gly120、Gly121、Leu122、Glu123、Val124、Glu125、Glu127、His146、Leu147およびAsp149である(配列番号4による番号付け)。これらの残基は、LTB4に結合するが、C5に対する結合が減少するように改変されているノマコパンバリアントにおいて改変される残基である。
【0172】
LTB4および/またはC5結合残基
2つのヒスチジン残基His99およびHis101は、LTB4結合およびC5結合の両方に関与する。したがって、LTB4結合および/またはC5結合に関与する残基のリストは、Phe18、Tyr25、Val26、Val28、Arg29、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Ala44、Gly45、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Gly61、Thr62、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、Ser97、His99、His101、Asp103、Met114、Trp115、Met116、Leu117、Asp118、Ala119、Gly120、Gly121、Leu122、Glu123、Val124、Glu125、Glu127、His146、Leu147、Asp149である(配列番号4による番号付け)。
【0173】
LTB4に結合するが、C5に対する結合の減少を示すかまたはC5に結合しない分子のさらなる例
上述のように、C5に結合しないかまたはC5に対する結合の減少を示すが、LTB-4結合活性を保持するノマコパン型タンパク質は、例えば、WO2018/193121に開示されており、これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれている。減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持するこのようなノマコパン型タンパク質は、本発明の全ての態様に使用され得る。
【0174】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能力を保持する4つの例示的なノマコパン型タンパク質は、WO2018/193121に開示されており、具体的には、配列番号22(WO2018/193121の配列番号5、バリアント1)、配列番号23(WO2018/193121の配列番号6、バリアント2)、配列番号24(WO2018/193121の配列番号7、バリアント3)および配列番号25(WO2018/193121の配列番号8、バリアント4)に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。本実施例で言及されるL-ノマコパンは、バリアント2である。
【0175】
このようなタンパク質は、ノマコパン型タンパク質であり、したがってノマコパンと機能的に等価であるとみなされるが、それらのLTB4結合特性のみを共有し、C5に対する結合の減少を示すかまたはC5に結合しない。
【0176】
WO2018/193121において定義されているノマコパン型タンパク質は、以下により詳細に説明されており、本発明で使用することができる。
【0177】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持するこれらのタンパク質は、以下の配列を含むか、またはそれからなっていてもよい。
配列番号22(WO2018/193121の配列番号5)は、配列番号4が、Met114をGlnに、Met116をGlnに、Leu117をSerに、Asp118をAsnに、Ala119をGlyに、Gly120をSerに、Gly121をAlaに、Leu122をAspに、Glu123をAspにおよびVal124をLysに変更するように改変された改変ノマコパンのアミノ酸配列である。(ノマコパンバリアント1)
配列番号23(WO2018/193121の配列番号6)は、配列番号4が、Ala44をAsnに、Met116をGlnに、Leu117をSerに、Gly121をAlaに、Leu122をAspに、Glu123をAlaにおよびAsp149をGlyに変更するように改変された改変コバーシンのアミノ酸配列である。(ノマコパンバリアント2)
配列番号24(WO2018/193121の配列番号7)は、配列番号4が、Ala44をAsnに、Met116をGlnに、Leu122をAspにおよびAsp149をGlyに変更するように改変された改変コバーシンのアミノ酸配列である。(ノマコパンバリアント3)
配列番号25(WO2018/193121の配列番号8)は、配列番号4が、Ala44をAsnに変更するように改変された改変コバーシンのアミノ酸配列である。(ノマコパンバリアント4)
配列番号26(WO2018/193121の配列番号9)は、配列番号4のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間のループのアミノ酸配列である。
配列番号27(WO2018/193121の配列番号10)は、ノマコパンバリアント1における配列番号4(配列番号22)のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間のループのアミノ酸配列である。
配列番号28(WO2018/193121の配列番号11)は、ノマコパンバリアント2における配列番号4(配列番号23)のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間のループのアミノ酸配列である。
配列番号29(WO2018/193121の配列番号12)は、ノマコパンバリアント3における配列番号4(配列番号24)のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間のループのアミノ酸配列である。
【0178】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持するノマコパン型ポリペプチドは、改変ノマコパンポリペプチド(例えば、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイド結合活性を示し、減少したC5結合性を示す、またはC5結合性を示さない)として記載され得る。「改変ノマコパンポリペプチド」への言及は、配列番号2または配列番号4のいずれかの改変バージョン、すなわち、配列番号2のN末端に見られる18アミノ酸のシグナル配列を有するか、または有さないノマコパンポリペプチドへの言及として理解されたい。したがって、それらはノマコパン型タンパク質とみなすことができる。
【0179】
このようなポリペプチドは、ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイド結合活性を示し、減少したC5結合性を示すか、またはC5結合性を示さなくてもよく、1~30のアミノ酸置換がなされた配列番号4、但し、
(i)配列番号4の114~124位に、以下の置換(a)~(j):
a. Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
b. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
c. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはProで置換されている;
d. Asp118が、Asn、Gln、Arg、Lys、Gly、Ala、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、His、またはThrで置換されている;
e. Ala119が、Gly、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
f. Gly120が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
g. Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
h. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHisで置換されている;
i. Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されている;
j. Val124が、Lys、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている
のうち1または2以上がなされており;または/および
(ii)配列番号4中のAla44が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている]
または改変ノマコパンポリペプチドのN末端から最大5つのアミノ酸が欠失されているその断片を含み得る。
【0180】
本明細書に使用されるLK/E結合活性は、LTB4、B4イソロイコトリエンおよびその任意のヒドロキシル化誘導体、HETE、HPETEならびにEETを含むが、それに限定されないロイコトリエンおよびヒドロキシエイコサノイドに結合する能力を表す。LTB4結合性が、特に関心対象である。
【0181】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドは、下の説明により改変された、配列番号2もしくは4からなっているか、または下の説明により改変された配列番号2もしくは4を含んでいてもよい。
【0182】
配列番号2および配列番号4におけるノマコパンポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間のループを特徴とする。このループは、以下に示される配列を有する:
-Met-Trp-Met-Leu-Asp-Ala-Gly-Gly-Leu-Glu-Val- (配列番号26)
最初のMetは、配列番号4の114位および配列番号2の132位にある。
【0183】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないがLTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドにおいて、配列番号2または配列番号4のノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位に以下の置換(a)~(j):
a. Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnまたはAlaで置換されている;
b. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnまたはAlaで置換されている;
c. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはPro、好ましくはSerまたはAlaで置換されている;
d. Asp118が、Asn、Gln、Arg、Lys、Gly、Ala、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Met Pro、His、またはThr、好ましくはAsnで置換されている;
e. Ala119が、Gly、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはGlyまたはAsnで置換されている;
f. Gly120が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはSerまたはAsnで置換されている;
g. Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAlaまたはAsnで置換されている;
h. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspまたはAlaで置換されている;
i. Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThr、好ましくはAsp、Ala、GlnまたはAsnで置換されている;
j. Val124が、Lys、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはLysまたはAlaで置換されている
のうち1または2以上がなされるように改変されている。
【0184】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないがLTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドにおいて、配列番号2または配列番号4におけるノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位に以下の置換(a)~(j):
a. Met114が、Glnで置換されている;
b. Met116が、Glnで置換されている;
c. Leu117が、Serで置換されている;
d. Asp118が、Asnで置換されている;
e. Ala119が、Glyで置換されている;
f. Gly120が、Serで置換されている;
g. Gly121が、Alaで置換されている;
h. Leu122が、Aspで置換されている;
i. Glu123が、Asp、またはAlaで置換されている;
j. Val124が、Lysで置換されている
のうち1または2以上がなされるように改変することができる。
【0185】
改変ノマコパンポリペプチドにおいて、置換(a)~(j)のうち2、3、4、5、6、7、8、9、または10が存在する。好ましくは、置換(a)~(j)のうち2つ以上、5つ以上または8つ以上が存在する。
【0186】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないがLTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドにおいて、配列番号2または配列番号4におけるノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位に以下の置換:
a. Met114が、Glnで置換されている;
b. Met116が、Glnで置換されている;
c. Leu117が、Serで置換されている;
d. Asp118が、Asnで置換されている;
e. Ala119が、Glyで置換されている;
f. Gly120が、Serで置換されている;
g. Gly121が、Alaで置換されている;
h. Leu122が、Aspで置換されている;
i. Glu123が、Aspで置換されている;
j. Val124が、Lysで置換されている
が存在するように改変することができる。
【0187】
必要に応じて、上述の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、Trp115は置換されていない。好ましい改変ノマコパンポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間に、配列Gln-Trp-Gln-Ser-Asn-Gly-Ser-Ala-Asp-Asp-Lys(配列番号27)を有するループを有する。
【0188】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドにおいて、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位に以下の置換:
a. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnで置換されている;
b. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはPro、好ましくはSerで置換されている;
c. Gly121が、Ala、Asp、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAlaで置換されている;
d. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspで置換されている;
e. Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThr、好ましくはAspで置換されている
が存在するように改変することができる。
【0189】
より詳細な実施形態では;
a. Met116は、Glnで置換されている;
b. Leu117は、Serで置換されている;
c. Gly121は、Alaで置換されている;
d. Leu122は、Aspで置換されている;
e. Glu123は、Alaで置換されている。
【0190】
必要に応じて、上述のこの改変ノマコパンポリペプチドでは、Trp115は置換されていない。必要に応じて、この実施形態では、Met114、Trp115、Asp118、Ala119、Gly120およびVal124は、置換されていない、または本明細書の他で言及されたように保存的置換で置換されている。減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないがLTB-4結合能を保持する好ましい改変ノマコパンポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸位置114~124のベータHとアルファ2との間に、配列Met-Trp-Gln-Ser-Asp-Ala-Gly-Ala-Asp-Ala-Val(配列番号28)を有するループを有する。
【0191】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドにおいて、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位で以下の置換:
a. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnで置換されている;
b. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspで置換されている;
が存在するように改変することができる。
【0192】
より詳細な実施形態では;
a. Met116は、Glnで置換されている;
b. Leu122は、Aspで置換されている。
【0193】
必要に応じて、上述のこの改変ノマコパンポリペプチドにおいて、Trp115は、置換されていない。必要に応じて、この実施形態では、Met114、Trp115、Leu117、Asp118、Ala119、Gly120、Gly121、Glu123およびVal124は、置換されていない。減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する好ましい改変ノマコパンポリペプチドは、配列Met-Trp-Gln-Leu-Asp-Ala-Gly-Gly-Asp-Glu-Valを有する配列番号4のアミノ酸位置114~124(配列番号29)のベータHとアルファ2との間にループを有する。
【0194】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドにおいて、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4中のAla44(配列番号2中のAla62)がAsn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されるように改変することができる。
【0195】
好ましい実施形態では、配列番号4中のAla44は、Asnで置換されている。
【0196】
配列番号4の44位(または配列番号2の62位)でのこの置換は、本明細書に記載される他の置換のいずれかと組み合わせてなされ得る。
【0197】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないがLTB-4結合能を保持する別の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位に以下の置換(a)~(j):
a. Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnまたはAla、例えばGlnで置換されている;
b. Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnまたはAla、例えばGlnで置換されている;
c. Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはPro、好ましくはSerまたはAla、例えばSerで置換されている;
d. Asp118が、Asn、Gln、Arg、Lys、Gly、Ala、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Met Pro、His、またはThr、好ましくはAsnで置換されている;
e. Ala119が、Gly、Asp、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはGlyまたはAsn、例えばGlyで置換されている;
f. Gly120が、Ser、Asp、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはSerまたはAsn、例えばSerで置換されている;
g. Gly121が、Ala、Asp、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAlaまたはAsn、例えばAlaで置換されている;
h. Leu122が、Asp、Glu、Asn、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspまたはAla、例えばAspで置換されている;
i. Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThr、好ましくはAsp、Ala、GlnまたはAsn、例えばAspまたはAlaで置換されている;
j. Val124が、Lys、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはLysまたはAla、例えばLysで置換されている
のうち1または2以上が存在し、かつ追加的に、配列番号4中のAla44(配列番号2中のAla62)が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAsnで置換されるように改変することができる。
【0198】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位に以下の置換:
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu117が、Serで置換されている;
c. Gly121が、Alaで置換されている;
d. Leu122が、Aspで置換されている;
e. Glu123が、Alaで置換されている
が存在し、かつ配列番号4中のAla44が、Asnで置換されるように改変することができる。
【0199】
本実施形態の好ましい態様では、配列番号4の114~124位に対応するアミノ酸残基は、配列番号28に示される通りである。
【0200】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位に以下の置換:
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu122が、Aspで置換されている
が存在し、かつ配列番号4中のAla44がAsnで置換されるように改変されている。
【0201】
本実施形態の好ましい態様では、配列番号4の114~124位に対応するアミノ酸残基は、配列番号29に示される通りである。
【0202】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、コバーシンポリペプチドは、配列番号4中のAsp149が、Gly、Gln、Asn、Ala、Met、Arg、Lys、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されるように改変することができる。一部の実施形態では、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4のAsp149がGlyで置換されるように改変される。配列番号4の149位(配列番号2の167位)でのこの置換は、本明細書に記載される他の置換のうちいずれかと組み合わせてなされ得る。
【0203】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位に以下の置換:
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu117が、Serで置換されている;
c. Gly121が、Alaで置換されている;
d. Leu122が、Aspで置換されている;
e. Glu123が、Alaで置換されている
が存在し、配列番号4中のAla44が、Asnで置換され、配列番号4のAsp149が、Gly149で置換されるように改変することができる。
【0204】
本実施形態の好ましい態様では、配列番号4の114~124位に対応するアミノ酸残基は、配列番号28に示される通りである。
【0205】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、ノマコパンポリペプチドは、配列番号4の114~124位で以下の置換:
a. Met116が、Glnで置換されている;
b. Leu122が、Aspで置換されている
が存在し、
配列番号4中のAla44が、Asnで置換され、配列番号4のAsp149が、Gly149で置換されるように改変することができる。
【0206】
本実施形態の好ましい態様では、配列番号4の114~124位に対応するアミノ酸残基は、配列番号29に示される通りである。
【0207】
本開示の様々な態様および実施形態では、減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドは、配列番号2および配列番号4における未改変ノマコパンポリペプチドと1~30のアミノ酸が異なる。配列番号2および配列番号4におけるノマコパンポリペプチドに任意の修復がなされ得るが、但し、結果として生じる改変ノマコパンポリペプチドが、未改変ノマコパンポリペプチドと比較してLK/E結合活性を示し、減少したC5結合性を示す、またはC5結合性を示さない。
【0208】
一部の実施形態では、配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸は、本発明の改変ノマコパンポリペプチドに保持されている。
【0209】
一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、配列番号4中のAsn60およびAsn84は、それぞれGlnで置換されている。この改変は、ポリペプチドを酵母において発現させた場合に、N結合型高グリコシル化を防止するために部位特異的変異誘発により実施することができる。
【0210】
一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、配列番号4中の以下のアミノ酸:Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、Asp103、およびTrp115のうち1または2以上が、LTB4との結合に関与すると考えられ、したがって、未改変形態で保持され得る。一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、これらのアミノ酸のうち少なくとも5、10もしくは15、または全てが、本発明の改変ノマコパンポリペプチドにおいて未改変形態で保持されている。減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、これらのアミノ酸のうち1または2以上が、保存的に置換され得る。減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、これらのアミノ酸のうち最大で5、10もしくは15、または全てが、本発明の改変ノマコパンポリペプチドにおいて保存的に置換されている。
【0211】
配列番号4中の以下の位置:5、6、11、13~15、20~21、24~27、29~32、35~41、45、47~48、50、52~60、64、66、69~81、83、84、86、90~94、97~104、112~113、115、125~129、132~139、145、148、および150のアミノ酸は、ノマコパンとTSGP2およびTSGP3との間で高度に保存されている。
【0212】
配列番号4中の以下の位置:5、6、11、13~15、18、20~21、24~27、29~32、35~41、43、45、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、97~104、112~113、115、125~129、132~139、145、148、および150のアミノ酸は、LTB4への結合に関与すると考えられ、および/またはノマコパンとTSGP2およびTSGP3との間で高度に保存されている。
【0213】
配列番号4中の以下の位置:5、6、11、13~15、18、20~21、24~25、27、30~32、35~41、43、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、98、100、102~104、112~113、115、126、128~129、132~139、145、148、および150のアミノ酸は、LTB4への結合に関与すると考えられ、および/またはノマコパンとTSGP2およびTSGP3との間で高度に保存されている。
【0214】
したがって、減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する一部の改変ノマコパンポリペプチドにおいて、上記アミノ酸は、未改変形態で保持されている。一部の実施形態では、これらのアミノ酸のうち少なくとも5、10もしくは15、または全てが、本発明の改変ノマコパンポリペプチドにおいて未改変形態で保持されている。一部の実施形態では、これらのアミノ酸のうち1または2以上が、保存的に置換され得る。一部の実施形態では、これらのアミノ酸のうち最大で5、10もしくは15、20、25、30、40、50または全てが、本発明の改変ノマコパンポリペプチドにおいて保存的に置換されている。
【0215】
本明細書に記載される改変ノマコパンポリペプチドは、典型的には、配列番号2または配列番号4と1~30、好ましくは2~25、より好ましくは3~20、さらにより好ましくは4~15のアミノ酸が異なる。典型的には、差異は、5~12、または6~10のアミノ酸変化である。例えば、1~30、または2~25、3~30、4~15、5~12、または6~10のアミノ酸置換が、配列番号2または配列番号4になされ得る。
【0216】
配列番号4のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間に配列番号27に示されるようなループを有する改変ノマコパンポリペプチドは、このループが存在する結果として配列番号4と比較して10のアミノ酸置換を有する。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載される改変ノマコパンポリペプチドは、好ましくは、配列番号22に示される置換以外に配列番号4と比較して(例えば配列番号27のループ中に)1~15、2~10、3~5、または最大で2、3、4もしくは5の追加的な置換を有する。
【0217】
配列番号28に示されるような、配列番号4のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間にループを有する改変ノマコパンポリペプチドは、このループが存在する結果として配列番号4と比較して5のアミノ酸置換を有する。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載される改変ノマコパンポリペプチドは、好ましくは、配列番号23に示される置換以外に配列番号4と比較して(例えば、配列番号28のループ中に)1~20、2~15、3~10、または最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10の追加的な置換を有する。追加的な置換には、好ましくは、本明細書の他の箇所に示されるような44位および149位の置換が含まれる。
【0218】
配列番号29に示されるように配列番号4のアミノ酸位置114~124(配列番号2のアミノ酸位置132~142)のベータHとアルファ2との間にループを有する改変ノマコパンポリペプチドは、このループが存在する結果として配列番号4と比較して2のアミノ酸置換を有する。したがって、一部の実施形態では、改変ノマコパンポリペプチドは、好ましくは、配列番号24に示される置換以外に配列番号4と比較して1~25、2~12、3~15、または最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15の追加的な置換(例えば、配列番号29のループ中の置換)を有する。追加的な置換には、好ましくは、本明細書の他の箇所に示されるような44位および149位の置換が含まれる。
【0219】
本明細書の他の箇所に示されるように配列番号4の44位に置換を有する改変ノマコパンポリペプチドは、好ましくは、配列番号4と比較して、1~25、2~12、3~15、または最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15の追加的な置換を有する。
【0220】
上記で明確に述べられる置換以外の置換は、好ましくは、例えば次の表による保存的置換である。第2列の同じブロック内、好ましくは第3列の同じ行にあるアミノ酸は、相互に置換され得る。
【0221】
【表1】
【0222】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する好ましい改変ノマコパンポリペプチドは、配列番号22、23、24、25のうち1つに示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなっていてもよい。
【0223】
減少したC5結合活性を有するか、またはC5結合活性を有さないが、LTB-4結合能を保持する改変ノマコパンポリペプチドの例には、以下が含まれる。
【0224】
1.ロイコトリエンまたはヒドロキシエイコサノイド結合活性を示し、減少したC5結合性を示すか、またはC5結合性を示さない改変ノマコパンポリペプチドであって、1~30のアミノ酸置換がなされた配列番号4を含み、但し、
(i)配列番号4の114~124位に、以下の置換(a)~(j):
a.Met114が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
b.Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている;
c.Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはProで置換されている;
d.Asp118が、Asn、Gln、Arg、Lys、Gly、Ala、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Met Pro、His、またはThrで置換されている;
e.Ala119が、Gly、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
f.Gly120が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
g.Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている;
h.Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHisで置換されている;
i.Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されている;
j.Val124が、Lys、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThrで置換されている
のうち1または2以上がなされており;または/および
(ii)配列番号3のAla44が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている、
改変ノマコパンポリペプチド;
または改変ノマコパンポリペプチドのN末端から最大5つのアミノ酸が欠失されているその断片。
【0225】
2.
(i)配列番号4の114~124位に、以下の置換(a)~(j):
a.Met114が、Glnで置換されている;
b.Met116が、Glnで置換されている;
c.Leu117が、Serで置換されている;
d.Asp118が、Asnで置換されている;
e.Ala119が、Glyで置換されている;
f.Gly120が、Serで置換されている;
g.Gly121が、Alaで置換されている;
h.Leu122が、Aspで置換されている;
i.Glu123が、Asp、またはAlaで置換されている;
j.Val124が、Lysで置換されている;
のうち1または2以上がなされており;または/および
(ii)配列番号3のAla44が、Asn44で置換されている
第1項に記載の改変ノマコパンポリペプチド;
または改変ノマコパンポリペプチドのN末端から最大5つのアミノ酸が欠失されているその断片。
【0226】
3.配列番号4の114~124位に置換(a)~(j)の1または2以上が存在する、第1項または第2項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0227】
4.置換(a)~(j)の2または3以上が存在する、第3項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0228】
5.置換(a)~(j)の5または6以上が存在する、第4項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0229】
6.置換(a)~(j)の各々が存在し、必要に応じてTrp115が置換されていない、第5項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0230】
7.第2項に定義されている置換(a)~(j)の各々が存在し、必要に応じてTrp115が置換されていない、第5項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0231】
8.Glu123がAspで置換されている、第7項に記載の改変ポリペプチドまたはその断片。
【0232】
9.配列番号27に示されるように配列番号4のアミノ酸114~124位の間にループ配列を有し、配列番号22に示されているもの以外に、配列番号4と比較して1~15の追加的な置換を有する、第1項~第8項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0233】
10.配列番号22に示されているもの以外に、配列番号27と比較して2~10の追加的な置換を有する、第9項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0234】
11.配列番号22に示されているもの以外に、配列番号27と比較して3~5の追加的な置換を有する、第9項または第10項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0235】
12.配列番号22からなるか、またはそれを含む、第1項~第8項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチド。
【0236】
13.
a.Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnで置換されており;
b.Leu117が、Ser、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、またはPro、好ましくはSerで置換されており;
c.Gly121が、Ala、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHis、好ましくはAlaで置換されており;
d.Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspで置換されており;
e.Glu123が、Asp、Ala、Gln、Asn、Arg、Lys、Gly、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThr、好ましくはAlaまたはAspで置換されている、
第1項~第5項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0237】
14.配列番号4の114~124位において、
a.Met116が、Glnで置換されており;
b.Leu117が、Serで置換されており;
c.Gly121が、Alaで置換されており;
d.Leu122が、Aspで置換されており;
e.Glu123が、Alaで置換されている、
第13項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0238】
15.Trp115が置換されていない、第13項または第14項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0239】
16.Met114、Trp115、Asp118、Ala119、Gly120およびVal124が置換されていない、第13項、第14項または第15項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0240】
17.配列番号28に示されるように配列番号4のアミノ酸114~124位の間にループ配列を有し、配列番号23に示されているもの以外に、配列番号4と比較して1~20の追加的な置換を有する、第1項~第5項または第13項~第16項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0241】
18.配列番号23に示されているもの以外に、配列番号4と比較して2~15の追加的な置換を有する、第17項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0242】
19.配列番号23に示されているもの以外に、配列番号4と比較して3~10の追加的な置換を有する、第17項または第18項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0243】
20.配列番号23からなるか、またはそれを含む、第1項~第5項または第13項~第16項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチド。
【0244】
21.
a.Met116が、Gln、Asp、Asn、Glu、Arg、Lys、Gly、Ala、Pro、His、またはThr、好ましくはGlnで置換されており;
b.Leu122が、Asp、Glu、Asn、Ala、Gln、Arg、Lys、Pro、またはHis、好ましくはAspで置換されている、
第1項~第4項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0245】
22.
a.Met116が、Glnで置換されており;
b.Leu122が、Aspで置換されている、
第21項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0246】
23.Trp115が置換されていない、第21項または第22項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0247】
24.Met114、Trp115、Leu117、Asp118、Ala119、Gly120、Gly121、Glu123およびVal124が置換されていない、第21項、第22項または第23項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0248】
25.配列番号29に示されるように配列番号4のアミノ酸114~124位の間にループ配列を有し、配列番号24に示されているもの以外に、配列番号4と比較して1~25の追加的な置換を有する、第1項~第4項または第21項~第24項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0249】
26.配列番号24に示されているもの以外に、配列番号4と比較して2~12の追加的な置換を有する、第25項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0250】
27.配列番号24に示されているもの以外に、配列番号4と比較して3~15の追加的な置換を有する、第25項または第26項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0251】
28.配列番号24からなるか、またはそれを含む、第1項~第4項または第21項~第24項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチド。
【0252】
29.配列番号4のAla44が、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、Lys、Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Pro、またはHisで置換されている、第1項~第11項または第13項~第28項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0253】
30.配列番号4のAla44が、Asnで置換されている、第29項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0254】
31.配列番号4のAsp149が、Gly、Gln、Asn、Ala、Met、Arg、Lys、Leu、Ser、Ile、Phe、Tyr、Pro、His、またはThrで置換されている、第1項~第11項または第13項~第30項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0255】
32.配列番号4のAla44がAsnで置換されており、配列番号4のAsp149がGlyで置換されている、第30項または第31項に記載の改変ノマコパンポリペプチド。
【0256】
33.配列番号4の6、38、100、128、129、150位にある6つのシステインアミノ酸が、未改変形態に保持されている、前記項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0257】
34.Asn60およびAsn84が各々Glnで置換されている、第1項~第11項、第13項~第19項または第21項~第27項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチド。
【0258】
35.以下のアミノ酸:Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、Asp103、およびTrp115のうち1または2以上が置換されていない、前記項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0259】
36.以下のアミノ酸:Phe18、Tyr25、Arg36、Leu39、Gly41、Pro43、Leu52、Val54、Met56、Phe58、Thr67、Trp69、Phe71、Gln87、Arg89、His99、His101、Asp103、およびTrp115の全てが置換されていない、第35項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0260】
37.
a.配列番号4のアミノ酸5、6、11、13~15、20~21、24~27、29~32、35~41、45、47~48、50、52~60、64、66、69~81、83、84、86、90~94、97~104、112~113、115、125~129、132~139、145、148、および150がいずれも置換されていないか;または
b.配列番号4のアミノ酸5、6、11、13~15、18、20~21、24~27、29~32、35~41、43、45、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、97~104、112~113、115、125~129、132~139、145、148、および150がいずれも置換されていないか;または
c.配列番号4のアミノ酸5、6、11、13~15、18、20~21、24~25、27、30~32、35~41、43、47~48、50、52~60、64、66、67、69~81、83、84、86、87、89、90~94、98、100、102~104、112~113、115、126、128~129、132~139、145、148、および150がいずれも置換されていない、
第1項~第36項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0261】
38.配列番号25を含むか、またはそれからなる、第1項または第2項に記載の改変ノマコパンポリペプチド。
【0262】
39.LTBに結合する、前記項のいずれか一項に記載の改変ノマコパンポリペプチドまたはその断片。
【0263】
断片
ノマコパンの機能的等価物には、ノマコパンタンパク質の断片が含まれ、但し、そのような断片は、(i)LTB4および/または(ii)C5(例えば、野生型C5、および/またはエクリズマブによる治療を無効にするかもしくはエクリズマブによる治療の有効性を減少させるC5多型)に結合する能力を保持する。好ましくは、機能的断片は、特性(i)および(ii)を有する。他の好ましい実施形態では、機能的断片は、特性(i)を有するが、減少したC5結合性を有するかまたはC5結合性を有さない。
【0264】
断片には、例えば、150アミノ酸未満、145アミノ酸未満であり、但しこれらの断片がLTB4におよび必要に応じてC5にも結合する能力を保持する、ノマコパンタンパク質配列(または相同体)に由来するポリペプチドが含まれ得る。
【0265】
断片には、例えば、少なくとも150アミノ酸、少なくとも145アミノ酸であり、但しこれらの断片がLTB4におよび必要に応じてC5にも結合する能力を保持する、ノマコパンタンパク質配列(または相同体)に由来するポリペプチドが含まれ得る。
【0266】
任意の機能的等価物またはその断片は、好ましくは、ノマコパン中に見出されるシステイン残基のパターンを保持する。例えば、前記機能的等価物は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸1~168による配列のアミノ末端からカルボキシル末端に配列したときに32アミノ酸離れた、62アミノ酸離れた、28アミノ酸離れた、1アミノ酸離れたおよび21アミノ酸離れた距離で相互に間隔が空いた6つのシステイン残基を含む。ノマコパンタンパク質の例示的な断片は、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14に開示されている。対応する断片をコードするDNAは、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13に開示されている。
【0267】
そのような断片としては、図2において本明細書に明示的に特定されるO.moubataノマコパンタンパク質の断片だけでなく、上記のようなこのタンパク質の相同体(例えば、バリアント)の断片も含まれる。相同体のこのような断片は、典型的には図2におけるノマコパンタンパク質配列の断片と60%よりも大きい同一性を有するが、相同体のより好ましい断片は、図2におけるノマコパンタンパク質配列の断片とそれぞれ70%、80%、90%、95%、98%または99%よりも大きい同一性を示す。好ましくは、このような断片は、上述のシステイン間隔を保持する。改善された特性を有する断片は、もちろん、野生型配列の系統的変異または断片化に続く適切な活性アッセイによって合理的に設計され得る。断片は、ノマコパンと同様のまたはそれよりも大きなLTB4に対する親和性を示し、必要に応じてノマコパンと同様のまたはそれよりも大きなC5に対する親和性を示し得る。これらの断片は、ノマコパンタンパク質の断片について上記されたサイズであり得る。
【0268】
上述のように、ノマコパン型タンパク質は、好ましくはLTB4に結合し、必要に応じてC5にも結合する。
【0269】
保守的置換
あらゆる置換は、好ましくは、例えば以下の表に記載の保存的置換である。第2列の同じブロック内にあり、好ましくは第3列の同じ行にあるアミノ酸は、相互に置換され得る。
【0270】
【表2】
【0271】
融合タンパク質
本発明により使用される機能的等価物は、例えば、ノマコパンタンパク質またはその機能的等価物をコードするポリヌクレオチドを、異種タンパク質配列のコード配列に対してインフレームでクローニングすることによって得られる融合タンパク質であり得る。
【0272】
本明細書に使用される「異種」という用語は、ノマコパンタンパク質またはその機能的等価物以外の任意のポリペプチドを表すことが意図される。可溶性融合タンパク質のN末端またはC末端のいずれかに含まれ得る異種配列の例は、以下:膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常領域(Fc領域)、PASもしくはXTENもしくは類似の構造不定のポリペプチド、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質のドメイン、シグナル配列、搬出配列、またはアフィニティークロマトグラフィーによる精製を可能にする配列である。これらの異種配列の多くは、発現プラスミドに挿入して市販されており、それは、これらの配列と融合されたタンパク質の特異的生物学的活性を顕著に損なうことなく追加的な特性を提供するために、これらの配列が一般的に融合タンパク質に含まれるからである[51]。このような追加的な特性の例は、体液中でより長く持続する半減期(例えば、Fc領域の付加またはPas化(Pasylation)[52]の結果として生じる)、細胞外局在、またはヒスチジン、GST、FLAG、アビジンもしくはHAタグなどのタグによって可能になるような、より簡単な精製手順である。融合タンパク質は、追加的に、リンカー配列(例えば1~50アミノ酸長を含有し得、それにより、構成成分がこのリンカーによって分離される。
【0273】
したがって、融合タンパク質は、ノマコパン様タンパク質を含むタンパク質の例であり、これらには、具体例としてPAS配列およびノマコパン型タンパク質配列を含むタンパク質が含まれる。PAS配列は、例えば、Schlapschy Mら[52]、およびEP2173890に記載されており、PAS化ノマコパン分子は、Kuhnら[53]に記載されている。PAS化(登録商標)は、タンパク質と、アミノ酸Pro、Ala、および/またはSerから構成されるコンフォメーション的に無秩序なポリペプチド配列との遺伝的融合を説明している。これは、XL Protein(http://xl-protein.com/)によって開発された技法であり、溶媒和したランダム鎖を大きな流体力学的体積で、それと融合されるタンパク質に結合させる簡単な方法を提供する。ポリペプチド配列は、ランダムコイル構造を採る。したがって、結果として生じる融合タンパク質の見かけの分子量は、融合タンパク質の実際の分子量よりも非常に大きい。これにより、生体システムにおける腎臓濾過によるクリアランス速度が大幅に減少する。適切なPAS配列は、EP2173890および[52]に記載されている。任意の適切なPAS配列が、融合タンパク質に使用され得る。例には、ランダムコイルコンフォメーションを形成し、アラニン、セリンおよびプロリン残基からなるかまたはから本質的になる(またはプロリンおよびアラニン残基からなるかまたはから本質的になる)少なくとも約100のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列が含まれる。これは、複数のアミノ酸リピートを含んでいてもよく、その際、前記リピートは、Ala、Ser、およびPro残基(またはプロリンおよびアラニン残基)からなるかまたはから本質的になり、同一アミノ酸残基の連続は、6つ以下である。プロリン残基は、配列のアミノ酸の4%よりも大きく40%未満を構成し得る。配列は、
ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号15);
AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号16);
APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号17);
SAPSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号18);
SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号19);
AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号20);および
ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号21)
または、これらの配列の全体もしくは部分としてのこれらの配列の環状並び替えバージョンもしくは多量体から選択されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、PAS配列中に存在するリピートのうち1つの5~40、10~30、15~25、18~20、好ましくは、20~30または30コピー、すなわち配列番号15~21のうち1つ、好ましくは配列番号15が存在し得る。好ましくは、PAS配列は、配列番号15の30コピーを含むか、またはそれからなる。好ましくは、PAS配列は、ノマコパン型タンパク質のN末端と(直接またはリンカー配列を介して)融合される。
【0274】
ある特定の好ましい実施形態では、ノマコパン型タンパク質は、配列番号2のアミノ酸19~168を含むか、またはそれからなっていてもよい(例えば、融合タンパク質は、(a)配列番号15の30コピーからなるPAS配列および(b)配列番号2のアミノ酸19~168を含み、その際、(a)は、(b)のN末端に直接またはリンカー配列を介して融合されている)。例示的な配列は、図2Dおよび配列番号30に提供されている。
【0275】
別の好ましい実施形態では、ノマコパン型タンパク質は、配列番号22、23、24または25を含むかまたはそれからなり得る(例えば、融合タンパク質は、(a)配列番号15の30コピーからなるPAS配列、および(b)配列番号22、23、24または25を含み、(a)は、(b)のN末端に直接的にまたはリンカー配列を介して融合されている)。好ましいバージョンは、配列番号22を含む。例示的な配列は、図2Eおよび配列番号31に提供されている。
【0276】
融合タンパク質は、追加的に、リンカー配列(例えば、1~50、2~30、3~20、5~10、2~4、3~5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10アミノ酸長)を含み得、成分は、このリンカーによって分離される。一実施形態では、リンカー配列は、単一のアラニン残基であり得る。
【0277】
本明細書の「PAS-ノマコパン」は、例えば上記のような、PAS化されているノマコパンの機能的等価物を指すことが意図されており、PAS-L-ノマコパンは、LTB4に結合するがC5には結合しない、PAS化されているノマコパンの機能的等価物を指すことが意図されている。実施例において試験したPAS-ノマコパン分子の配列は、図2Dおよび配列番号30に示されている。実施例において試験したPAS-L-ノマコパン分子の配列は、図2Eおよび配列番号31に示されている。PAS-ノマコパンおよびPAS-L-ノマコパンは、各々がより長い半減期を有するため投与頻度を少なくすることが可能であるという利点を有し、それは患者にとってより好適である。したがって、PAS-ノマコパンは、C5依存性経路およびLTB4依存性経路を両方とも阻害するという点でノマコパンの利点を兼ね備えているが、ノマコパンよりも投与頻度を少なくすることができるため、投与上の利点を提供する。したがって、PAS-L-ノマコパンは、LTB4依存性経路を阻害するがC5依存性経路を阻害しないという点でL-ノマコパンの利点を兼ね備えているが、L-ノマコパンよりも投与頻度を少なくすることができるため、投与上の利点を提供する。
【0278】
薬剤の調製
タンパク質およびその機能的等価物は、宿主細胞における発現により組換え形態として調製され得る。このような発現方法は、当業者に公知であり、[54]および[55]によって詳細に記載されている。ノマコパンタンパク質およびその機能的等価物の組換え形態は、好ましくは、グリコシル化されていない。好ましくは、宿主細胞は、大腸菌(E.coli)である。
【0279】
ノマコパンタンパク質およびその機能的等価物は、好ましくは、例えばそれがその中で発現される宿主細胞および/または細胞増殖培地の少なくとも1つの成分から分離された、単離形態である。一部の実施形態では、ノマコパンタンパク質またはその機能的等価物は、例えば、電気泳動またはクロマトグラフィーによって決定される、少なくとも90%、95%、または99%の純度に精製される。本発明のタンパク質および断片は、また、タンパク質化学の通例の技法を使用して調製することができる。例えば、タンパク質断片は、化学合成によって調製され得る。融合タンパク質を生成する方法は、当技術分野において標準的であり、熟練の読者に公知である。例えば、大部分の一般分子生物学、微生物学、組換えDNA技法および免疫学的技法は、[54]または[56]に見出すことができる。
【0280】
核酸分子としての薬剤
本発明のさらなる実施形態によると、薬剤は、ノマコパン型タンパク質をコードする核酸分子であり得る。例えば、対象において関連細胞によるノマコパン型タンパク質のin vivoまたはex vivoのいずれかの内因性産生を引き起こすために遺伝子療法が採用され得る。別のアプローチは、治療用遺伝子が血流または筋組織中に直接注射される、「裸のDNA」の投与である。
【0281】
好ましくは、このような核酸分子は、図2におけるヌクレオチド配列(配列番号1)の塩基55~507を含むか、またはそれからなる。このヌクレオチド配列は、シグナル配列を有さない図2におけるノマコパンタンパク質をコードする。図2におけるヌクレオチド配列の最初の54塩基は、補体阻害活性またはLTB4結合活性に必要とされないシグナル配列をコードする。あるいは、核酸分子は、シグナル配列を有するタンパク質をコードする、図2における核酸配列の塩基1~507を含むか、またはそれからなっていてもよい。
【0282】
投与様式
ノマコパン型タンパク質は、眼に直接的に投与してもよくまたは全身的に投与してもよい。ノマコパン型タンパク質は、好ましくは、眼の表面に直接的に、例えば局所的に(例えば、点眼剤または軟膏の形態で)、または眼内への直接導入(例えば、強膜によって画成される眼の境界内部への直接投与)によって投与される。眼の境界内部への直接投与の例には、硝子体内投与および脈絡膜上投与が含まれる。硝子体内投与(例えば、硝子体内注射)は当技術分野で周知である。脈絡膜上投与も実施され得る。
【0283】
局所投与
本発明者らは、眼に対するノマコパン型タンパク質の局所投与が、実験的UAEに影響を及ぼすことを観察した。これは、そのようなタンパク質が角膜を通過できるとは以前には考えられていなかったため、驚くべきことである。実施例1に示されるように、L-ノマコパン、ノマコパンおよびPAS-ノマコパンは全て、使用したUAEマウスモデルにおいて臨床スコアをある程度減少させた。これは、これらの分子が角膜を通過し眼内で効果を発揮することできることと一致する。
【0284】
ノマコパン型タンパク質による局所治療が、網膜増殖性疾患、つまり病理学的影響が眼内である疾患に効果を有するという事実は、ある特定の実施形態では、ノマコパン型タンパク質のいずれかを単独で、網膜増殖性疾患の治療に使用することができることを意味する。本発明のある特定の実施形態では、ノマコパン型タンパク質は、例えば、毎日、または1日2~5、3~4回、局所投与される。
【0285】
眼内への直接的投与
本発明の薬剤を眼内に直接的に導入すること、例えば、強膜によって画成される眼の境界内部に直接的に投与することは有利であり得る。ある特定の実施形態では、本発明の薬剤は、硝子体内に導入される。他の実施形態では、本発明の薬剤は、脈絡膜上に導入される。
【0286】
ある特定の実施形態では、本発明の薬剤は、硝子体内に導入される。硝子体内投与は当技術分野で周知である。本発明のある特定の実施形態では、硝子体内投与は、約4~6、4~8、4~10週間に1回実施される。
【0287】
他の実施形態では、本発明の薬剤は、脈絡膜上に導入される。脈絡膜上腔(SCS)は、強膜と脈絡膜との間にあり、後眼部の周囲を横切る潜在的な空間である。SCS内への薬剤導入は、脈絡膜、網膜色素上皮、および網膜を高い生物学的利用能で標的にしつつ、眼の他の場所では低レベルが維持される。実際、第III相臨床試験では、SCS薬物送達の安全性および有効性が調査されている。薬剤は、皮下注射針、マイクロニードル、マイクロステントを用いてSCSに投与することができる[57]。本発明のある特定の実施形態では、脈絡膜上投与は、約4~6、4~8、4~10週間に1回実施される。
【0288】
眼内への直接投与と組み合わせた局所投与
ノマコパン型タンパク質は、また、本明細書の他に述べられるように、第2の薬剤と組み合わせて使用され得る。ある特定の実施形態では、第2の薬剤は、眼内に直接的に導入される。この利点は、前記第2の薬剤の眼内への直接投与の実施が必要とされる頻度を減少させ得ることである。眼内への直接投与は、一般的に安全であるが、合併症の危険をある程度有する(例えば、感染症、眼内への主動脈の閉塞、網膜剥離、眼の出血および眼の水晶体に対する損傷)。さらに、これは、患者の通院が要求される医療処置である。網膜増殖性疾患を治療するため、そのような投与は、例えば、1~2ヶ月に1回実施され得る。したがって、これらの投与が実施される頻度を減少させることは有利だろう。
【0289】
したがって、ある特定の実施形態では、対象における網膜増殖性疾患を治療または予防する方法は、(i)本明細書で定義されるノマコパン型タンパク質を局所投与することおよび(ii)第2の網膜増殖治療を前記対象の眼内に直接的に投与することを含む。第2の網膜増殖治療は、本明細書の他の箇所で定義されている通りであってもよく、またはそれ自体がノマコパン型タンパク質であってもよい(例えば、第2の網膜増殖治療は、局所投与されるノマコパン型タンパク質と同じノマコパン型タンパク質であってもよく、または第2のノマコパン型タンパク質であってもよい)。
【0290】
第2の網膜増殖治療の例には、抗VEGF剤(例えば、ベバシズマブ(アバスチン)、ラニビズマブ(ルセンティス)などの抗VEGF-A抗体またはその断片)、抗VEGFアプタマー(ペガプタニブ(マクジェン)など))、またはアフリベルセプト(アイリーア、ヒトIgG1イムノグロブリンのFc部分に融合されている、ヒトVEGF受容体1および2の細胞外ドメインに由来する血管内皮増殖因子(VEGF)結合性部分からなる組換え融合タンパク質)などの別のVEGFアンタゴニスト、ステロイド(例えば、コルチコステロイド)、免疫調節療法(IMT)薬(例えばメトトレキサート、アザチオプリンまたはミコフェノレート)、生物学的応答修飾物質(BRM)薬(抗TNFアルファ剤、例えば、インフリキシマブまたはアダリムマブなどのTNFアルファに結合する抗体またはその断片)が含まれる。好ましくは、前記第2の薬剤は、抗VEGF剤である。
【0291】
ノマコパン型タンパク質が局所的に投与され、第2のノマコパン型タンパク質が眼内に直接的に投与される実施形態では、局所的に投与される薬剤は、長期作用型タンパク質(例えば、クリアランス時間を減少させるように設計されている配列を含む融合タンパク質)である必要はない。したがって、局所的に投与される薬剤は、例えば、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質であって、最大で150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160アミノ酸(好ましくは最大で150アミノ酸)長であるタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である薬剤であり得る。例えば、局所的に投与される薬剤は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはその機能的等価物である薬剤であり得、前記タンパク質が機能的等価物である場合、前記タンパク質は、融合タンパク質ではない(例えば、前記タンパク質は、前記タンパク質の相同体、前記タンパク質の断片、または本明細書の他の箇所で定義されている通りの相同体の断片である機能的等価物であり得る)。これらの実施形態では、眼内に直接的に投与される薬剤は、本明細書の他の箇所で定義されている融合タンパク質である機能的等価物であり得る。例として、局所的に投与される薬剤は、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168、配列番号22、23、24、25、好ましくは配列番号2のアミノ酸19~168または配列番号22からなるタンパク質であり得、および/または眼内に直接的に投与される薬剤は、(i)図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168、配列番号22、23、24、25、好ましくは配列番号2のアミノ酸19~168または配列番号22および(ii)本明細書で定義されているPAS配列、例えば配列番号15の30コピーからなる配列を含む融合タンパク質である。
【0292】
他の実施形態では、図2におけるアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸19~168を含むタンパク質またはこのタンパク質の機能的等価物である1つの薬剤は、局所的に投与され、第2の網膜増殖性疾患治療は、眼内に直接的に投与される。第2の網膜増殖疾患治療には、例えば、抗VEGF剤(例えば、ベバシズマブ(アバスチン)、ラニビズマブ(ルセンティス)などの抗VEGF-A抗体またはその断片)、抗VEGFアプタマー(ペガプタニブ(マクジェン)など)、またはアフリベルセプト(アイリーア、ヒトIgG1イムノグロブリンのFc部分に融合されている、ヒトVEGF受容体1および2の細胞外ドメインに由来する血管内皮増殖因子(VEGF)結合性部分からなる組換え融合タンパク質)などの別のVEGFアンタゴニスト、ステロイド(例えば、コルチコステロイド)、免疫調節療法(IMT)薬(例えばメトトレキサート、アザチオプリンまたはミコフェノレート)、生物学的応答修飾物質(BRM)薬(抗TNFアルファ剤、例えば、インフリキシマブまたはアダリムマブなどの、TNFアルファに結合する抗体またはその断片)が含まれ得る。好ましくは、前記第2の薬剤は、抗VEGF剤である。好ましくは、局所的に投与される薬剤は、図2(配列番号2)のアミノ酸配列のアミノ酸19~168、配列番号22、23、24、25、好ましくは配列番号2のアミノ酸19~168または配列番号22からなるタンパク質である。
【0293】
全身的投与
他の実施形態では、ノマコパン型タンパク質または薬剤は、全身的に、例えば皮下に投与される。
【0294】
治療または予防有効量
薬剤は、治療または予防有効量で投与される。「治療有効量」という用語は、関連症状、例えば網膜増殖性疾患を治療するために必要な薬剤の量を表す。これに関連して、「治療すること」は、障害の重症度を減少させることを含む。
【0295】
本明細書に使用される「予防有効量」という用語は、関連する症状、例えば網膜増殖性疾患を予防するために必要な薬剤の量を表す。これに関連して、「予防すること」は、例えば、薬剤の投与が開始される前には障害の存在が検出されない場合に、障害の重症度を減少させることを含む。障害重症度の減少は、例えば、視力の改善であり得る。
【0296】
減少または改善は、投与を行わず、本明細書に記載の薬剤もない場合の結果に対するものである。結果は、このような患者を評価するために使用される標準的な基準により評価される。これを定量できる範囲で、相対基準に少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%の減少または改善がある。
【0297】
全身的投与の場合、ノマコパン分子に基づいて算出される用量は、0.1mg/kg/日~10mg/kg/日(患者の質量と比較した薬物の質量)、例えば、0.2~5、0.25~2、または0.1~1mg/kg/日である。融合タンパク質(例えば、本明細書で述べられているような)はノマコパン分子よりも大きいため、そのようなタンパク質にはモル当量を使用することができる。したがって、ノマコパンの機能的等価物の場合、上述の用量のモル当量を使用することができる。例えば、ノマコパンおよび約600アミノ酸のPAS部分または本明細書で定義されるPAS部分を含む融合タンパク質、例えばPAS-ノマコパンの場合、0.1mg/kg/日のモル当量は、0.4mg/kg/日であり、したがって、用量は、0.4mg/kg/日~40mg/kg/日(患者の質量と比較した薬物の質量)、例えば、0.8~20、1~8、または0.4~4mg/kg/日であり得る。あるいは、これらの融合タンパク質の半減期がより長いことを考慮して、1用量あたり量をより大きくし、その用量をより低頻度で、例えば40mg~2g、50mg~1.5g、75mg~1gを1週間の期間にわたって、例えば週1回または2回の投与で投与し得る。
【0298】
治療または予防有効量は、追加的に、終末補体の阻害の点から定義することができ、例えば、終末補体活性(TCA)が、治療の非存在下での終末補体活性と比較して少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%減少していることを意味する量であり得る。用量および回数は、終末補体活性を所望のレベルに維持するために調整されてもよく、そのレベルは、治療の非存在下での終末補体活性と比較して例えば10%以下、例えば9、8、7、6、5、4、3、2、1%以下であり得る。
【0299】
治療または予防有効量は、追加的に、血漿中のLTB4レベル減少の点から定義することができ、例えば、血漿中のLTB4レベルが、治療の非存在下での血漿中のLTB4レベルと比較して少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%減少することを意味するか、またはLTB4レベルを正常レベルのある特定の範囲内(例えば、正常値の90~110%、正常値の85~115%)にする量である。用量および頻度は、血漿中のLTB4レベルを所望のレベルに維持するために調整することができ、所望のレベルは、治療の非存在下での血漿中のLTB4レベルと比較して、例えば90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%またはそれ未満、例えば9、8、7、6、5、4、3、2、1%またはそれ未満であり得るか、または正常レベルのある特定の範囲内(例えば、正常値の90~110%、正常値の85~115%)である。LTB4レベルは、日常的な方法によって決定することができる(例えば、イムノアッセイ。例えば、連続競合的結合技法(sequential competitive binding technique)[58]に基づく市販のR&D Systems アッセイを参照)。
【0300】
用量が示されるとき、これは、タンパク質またはその機能的等価物である薬剤の用量に関するものである。核酸分子である薬剤に適した用量を使用して、これらのレベルが生じ得る。用量は、存在する不活性タンパク質の存在を考慮して変えることができる(例えば、600アミノ酸PAS部分を有するPAS-ノマコパンは、ノマコパンの約4倍の分子量を有するため、モル当量はノマコパンの量の約4倍になる)。ノマコパンに関して提供される任意の用量のモル当量を、追加的な配列を含むその任意のノマコパン機能的等価物に使用することができる。モル当量は、日常的な方法を使用して算出することができる。
【0301】
終末補体活性は、当技術分野において公知の標準的なアッセイによって、例えば、Quidel CH50溶血アッセイおよびヒツジ赤血球溶解CH50アッセイを使用して測定することができる。
【0302】
用量を投与する必要がある回数は、関与する薬剤の半減期に依存する。ノマコパンタンパク質またはその機能的等価物は、例えば1日2回ベースで、毎日ベースで、または2、3、4日、5、6、もしくは7日毎にもしくはより頻繁に、例えば1日2回ベースでもしくは毎日ベースで投与され得る。半減期が延長されたバージョン、例えばPAS化ノマコパン分子は、より少ない頻度で投与され得る(例えば、2、3、4日、5、6、7、10、15または20日毎にまたはそれよりも頻繁に、例えば、1日1回または2日もしくはそれ以上に1回、または毎週)。
【0303】
用量の正確な投薬量および回数は、また、投与時での患者の症状に依存し得る。投薬量を決定する場合に考慮され得る要因には、治療または予防の必要性、患者における病状の重症度、患者の全身の健康状態、年齢、体重、性別、食事、投与の時間および回数、薬物の組合せ、反応の感受性および治療に対する患者の抵抗性または応答が含まれる。正確な量は、日常的な実験により決定することができるが、最終的には医師の判断にあり得る。
【0304】
投薬レジメンは、また、最初の「アブレーションレジメン(ablating regimen)」に続く、1または2以上の後続用量(例えば、維持用量)の形態を採り得る。一般的に、アブレーションレジメンは、後続用量よりも大きい。ノマコパンを例にすると、これは、0.6~1.2mg/kg、次に0.3~0.6mg/kgのアブレーションレジメンに続き、8~18、10~14、または11~13時間(例えば、約12時間)後の、例えば1日1回投与し得る0.45~0.9mg/kgの維持用量であり得る。
【0305】
PAS化バージョン(例えば、PAS-ノマコパン、例えば、本明細書の他の箇所に記載のような)の場合、適切なレジメンは、6~12mg/kg(例えば、600mg)、次に6~12mg/kg(例えば、600mg)のアブレーションレジメンに続いて、3~10、4~8、5~7日、例えば約7日後に、例えば1日1回投与し得る4~8mg/kg(例えば、400mg)の維持用量であり得る。
【0306】
1または2以上のアブレーション用量(ablating dose)は、維持用量より少なくとも1.5、2、または5倍大きくてもよい。アブレーション用量は、単回用量として、または特定の時間枠内(例えば2用量)の1または2以上の用量として投与され得る。典型的には、負荷用量は、単一の24時間中に投与される1、2、3、4または5用量である(または半減期が延長されたバージョンの場合、1週)。維持用量は、12、24、または48時間毎(または半減期が延長されたバージョンの場合、毎週、または2週間毎)などの間隔で繰り返され得る。正確なレジメンは、日常的な実験により決定することができるが、最終的に医師の判断にあり得る。維持用量は、初回アブレーション用量の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100%、または初回アブレーション用量の最大20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100%であり得る。
【0307】
さらなる実施形態では、治療経過にわたり同じ用量が使用される(例えば毎日または1日2回又は毎週)。
【0308】
好ましくは、ノマコパン型タンパク質の局所用量は、1用量あたり50から500μgの間、より好ましくは1用量あたり100から400μgの間、最も好ましくは1用量あたり200から300μgの間である。あるいは、用量は、1用量あたり500~2000、600~1500、700~1250または約1250μgであり得る。融合タンパク質の場合、用量は、モル当量の活性薬剤がもたらされるように選択することができ、例えばPAS-ノマコパンの場合は、1用量あたりの量が約4倍である(例えば、1用量あたり400から1600μgの間、最も好ましくは1用量あたり800~1200μgの間)。あるいは、用量は、1用量あたり2000~8000、2400~6000、2800~5000または約5000μgであり得る。
【0309】
組成物を局所的に適用する場合、通常は、ある特定の数の液滴またはある特定の長さの軟膏を眼に適用することが指示される。適用指示に従った際に正しい用量が確実に投与されるように、任意の組成物中のノマコパン型タンパク質の濃度を調整することは、当業者にとって日常的なことに過ぎない。例えば、1滴は通常約40μlであるため、0.5%重量/体積のノマコパンまたはL-ノマコパンを含む溶液の1滴は、200μgのノマコパンまたはL-ノマコパンを含む。同様に、2%重量/体積のPAS-ノマコパンまたはPAS-L-ノマコパンを含む溶液の1滴は、800μgのPAS-ノマコパンまたはPAS-L-ノマコパンを含む。PAS-ノマコパンまたはPAS-L-ノマコパンは、ノマコパンまたはL-ノマコパンの約4倍の分子量を有するため、2%重量/体積のPAS-ノマコパンまたはPAS-L-ノマコパンを含む溶液、0.5%重量/体積のノマコパンまたはL-ノマコパンを含む溶液は体積が等しい場合、同じモル当量のタンパク質のノマコパン部分をもたらす。類似用量のノマコパン型分子を、眼内への直接投与に使用され得る。組成物を眼内に直接適用する場合、例えば、10~50μlの体積を使用し得る。正しい用量が確実に投与されるように、任意の組成物中のノマコパン型タンパク質の濃度を調整することは、当業者にとって日常的なことに過ぎない。例えば、0.5%重量/体積のノマコパンまたはL-ノマコパンを含む溶液を50μl使用する場合、これは、250μgのノマコパンまたはL-ノマコパンを含む。同様に、2%重量/体積のPAS-ノマコパンまたはPAS-L-ノマコパンを含む溶液の1滴は、1000μgのPAS-ノマコパンまたはPAS-L-ノマコパンを含む。
【0310】
局所投与または眼内への直接投与用の組成物は、また、そのノマコパン型タンパク質濃度、例えば、0.1~20%重量/体積、0.2~15、0.25~10、0.5~5%重量/体積(例えば、そのPAS化バージョンの場合、0.4~80、0.8~60、1~40、2~20%重量/体積)の点から定義され得る。
【0311】
医薬製剤
薬剤は、一般的に、薬学的に許容される担体と共にまたは薬学的に許容される担体中にて投与される。「薬学的に許容される担体」という用語は、一般的に液体であるが、担体自体が毒性効果を誘導しないかもしくは医薬組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生を引き起こさない限り他の薬剤を含み得る。薬学的に許容される担体は、例えば、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどの液体または湿潤剤もしくは乳化剤などの補助物質、pH緩衝物質およびその他を含有し得る。したがって、採用される医薬担体は、投与経路に応じて様々である。薬学的に許容される担体の十分な議論は、[59]から入手可能である。好ましい実施形態では、薬剤は、液体であり得る光学的に許容される組成物中にて、例えば水またはPBSの溶液中にて投与される。
【0312】
薬剤は、必要に応じて、コロイド送達系(例えば、リポソーム、ナノ粒子、またはマイクロ粒子(例えば、[60]で論じられているような))を使用して送達され得る。これらの担体系の利点には、感受性タンパク質の保護、持続放出、投与頻度の減少、患者コンプライアンスおよび血漿レベルの制御が含まれる。
【0313】
リポソーム(例えば、合成および/または天然由来のリン脂質を含む)は、例えば、20nm、100または200マイクロメートル、例えば小型単層ベシクル(25~50nm)、大型単層ベシクル(100~200nm)、巨大単層ベシクル(1~2μm)または多重層ベシクル(MLV;1μm~2μm)であり得る。
【0314】
ナノ粒子(サイズが10~1000nmのコロイド担体)は、脂質、ポリマーまたは金属で製造することができる。ポリマーナノ粒子は、天然または合成ポリマー(例えば、キトサン、アルギン酸塩、PCL、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(グリコリド)、PLGA)からできていてもよく、ナノスフェア(分子がポリマーマトリックス内に均一に分布している)またはナノカプセル(ポリマー膜内に閉じ込められた薬物分子を保有する)として生成され得る。
【0315】
例えば、デンプン、アルギン酸塩、コラーゲン、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)でできているマイクロ粒子も使用され得る。
【0316】
代替的にまたは追加的にヒドロゲルが存在し得る。
【0317】
より大きな分子量の分子、例えば融合タンパク質の場合、例えば、より大きな体積(例えば、2~20ml)の投与を可能にするために、ヒアルロニダーゼなどの追加的な賦形剤も使用され得る。
【0318】
治療期間
好ましくは、治療過程は、少なくとも1、2、3、4、5もしくは6週間、または少なくとも1、2、3、4、5もしくは6ヶ月、または少なくとも1、2、3、4、5もしくは6年間継続される。治療経過は、好ましくは、対象の症状が減少するまで継続される。したがって、治療経過は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40週間の薬剤の(例えば毎日、1日おきまたは毎週)投与であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0319】
図1A】補体活性化の古典的経路および第二経路の模式図である。アナフィラトキシンを星形で囲む。
図1B】エイコサノイド経路の模式図である。
図2A】ノマコパンの一次配列を示す図である。シグナル配列に下線を付ける。システイン残基を太字で示す。ヌクレオチド番号およびアミノ酸番号を右に示す。
図2B】ノマコパンバリアントの例を示す図である。
図2C】LTB4に結合するが、減少したC5結合性を示すかまたはC5結合性を示さないノマコパンバリアントの例を示す図である。
図2D-2E】例示的なPAS-ノマコパン(D)およびPAS-L-ノマコパンの配列(E)を示す図である。
図3】免疫後21日目の局所処置7日後の個々の眼(n=12)の眼底検査の結果を示す図である。バーは、SDまたはSEMを示し、両側ノンパラメトリックt検定が適用されている。
図4】実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)モデルで使用したマウスの網膜内の細胞上にあるBLT1(LTB4受容体)およびC5a受容体を示す図である。画像は、硝子体に捕捉された浸潤細胞を示す。核は青色で、BLT1は緑色で、C5a受容体は赤色で示されている。両受容体を発現している細胞が存在する(黄色)。細胞は矢印で示されている。
図5】免疫後15日目の処置前の、および免疫後18日目のノマコパン型タンパク質の硝子体内投与後のEAUマウスの臨床スコアを示す図である。疾患の眼底検査評価を、個々の眼(n=16)について15日目(処置前)および22日目(処置後)に実施した。15日目および18日目に、EAUマウスを1~2ulの表示化合物を用いて硝子体内で処置した。代表的な眼底および対応する組織病理学的画像が、処置したマウス(各グループでn=3)の組織学的スコアを示す要約グラフと共に示されている(ノマコパン バーはSDまたはSEMを示し、両側ノンパラメトリックt検定が適用されている)。
図6】細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。(A~B)EAUマウスのCD4+浸潤細胞におけるRORgt/T.bet+発現(y軸はRORgt発現、x軸はTbet発現)。(C~D)CD4+細胞におけるRORgt+発現のみ(x軸はRORgt発現、y軸はFSC-H)。(E~F)CD4+細胞におけるT.bet発現のみ(x軸はT.bet発現、y軸はFSC-H)。(G~H)CD4+細胞におけるIL-17A発現(x軸はIL-17A発現、y軸はFSC-H)。図6b、6d、6fおよび6hの各々において、各ページの結果の一番上の行は生理食塩水で処置したEAUマウスであり、二番目はノマコパンで処置したマウスであり、三番目はPAS-ノマコパンで処置したマウスであり、四番目はPAS-L-ノマコパンで処置したマウスであり、五番目はデキサメタゾンで処置したマウスである。図6A、C、E、Gは、それぞれの発現レベルの要約グラフを示す。バーはSEMを示す。グラフは、各群の8匹マウスの平均を示す(DEX n=6)。
図7】(A)B10.RIIIマウスを使用した、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)のマウスモデルの網膜組織におけるVEGFレベルを示す図である。マウスの群を、ノマコパン(noma)、PAS-ノマコパン(PAS-noma)、抗VEGF抗体(抗VEGF)または生理食塩水で硝子体内処置した。誘導21日後に網膜組織を回収した。未誘導で未処置の健常なマウスを、受動対照(「健常ct」)として使用した。1硝子体内注射群あたりのマウスは6匹であり、未誘導未処置(「健常ct」)は2匹だった。ELISAアッセイを使用して網膜組織のVEGFレベルを分析した。全てのアッセイは、複製試料で2回実施した。(B)免疫後15日目の処置前の、および免疫後18日目のノマコパン型タンパク質の硝子体内投与後のEAUマウスの臨床スコアを示す。15日目および26日目に評価を実施した。(C)は、積算臨床スコアを示す。
【実施例
【0320】
実施例1~3の物質および方法
EAU誘導
EAUを、以前の記載[61]の通りに、C57/Bl6マウス(雌、5~7週齢、Charles River社)を、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)(Difco社、Voigt Global Distribution社、ローレンス、カンザス州)で補完された完全フロイントアジュバント(Complete Freud’s Adjuvant)(CFA社、Sigma-Aldrich社、ギリンガム、英国)で乳化されたPBS中300μgの光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)161~180ペプチド(SGIPYIISYLHPGNTILHVD、Cambridge Peptides社、ケンブリッジ、英国)でs.c.免疫することによって誘導した。マウスは、また、0.4μgの百日咳(Sigma-Aldrich社)をi.p.で受け取った。
【0321】
処置
網膜炎症を、以前の研究[62、]にしたがって14日目以降からモニターしてスコア付けした(14日目以降の網膜眼底検査によって評価して網膜炎症が検出された場合にのみマウスを研究に含めた)。マウスを、1、2および5日目に回収した(1群あたりn=6)。
【0322】
硝子体内投与の場合、免疫後15日目および18日目に、マウスを、1~2μlのノマコパン(5mg/ml)、PAS-ノマコパン(20mg/ml)、PAS-L-ノマコパン(20mg/ml)、デキサメタゾンまたは生理食塩水で処置した。局所投与の場合、マウスを、2~5μlのノマコパン(5mg/ml)、PAS-ノマコパン(20mg/ml)、L-ノマコパン(5mg/ml)、デキサメタゾン(マキシデックス;DEX)または生理食塩水で1日2回7日間処置した。処置前および処置後の網膜眼底検査によって疾患進行を臨床的に等級付けし、組織学的にスコア付けした。
【0323】
EAUスコア付け
定期的な眼底観察によって(例えば、Micron III眼底カメラ(Phoenix Research Labs社、プレザントン、カリフォルニア州)を使用))、マウスをEAUの所見について以前に記載の通りに定期的に評価した。臨床スコア付けは、網膜視神経乳頭、網膜血管、網膜組織浸潤および構造的損傷の観察に基づいていた。
【0324】
実験の終わりに各マウスから片方の眼を回収し、組織学的スコア付けのために固定および包埋した(例えば、除核し、4%グルタルアルデヒドで1時間固定し、少なくとも24時間10%ホルムアルデヒドに移し、包埋し、H&E染色のために処理し、組織学的に検査した)。免疫細胞浸潤のレベルおよび網膜損傷の程度に基づくEAUスコア付けの基準に従って、以前に記載の通りに[63]、スコアを0~5のスケールで割り当てた。単球、好中球およびT細胞浸潤の免疫蛍光染色を実施して、浸潤細胞集団に対するあらゆる変化を特定することができる。
【0325】
網膜フローサイトメトリーでは、網膜層を収集し、細かく切り刻み、濾過し、ex vivo刺激のために培地に再懸濁し(4時間)、細胞表面および細胞内マーカーを染色した64。
【実施例
【0326】
ノマコパン型タンパク質の局所投与によるEAUの治療
図3に示すように、ノマコパン(5mg/ml)、PAS-ノマコパン(20mg/ml)、L-ノマコパン(5mg/ml)の局所投与後、EAUマウスの臨床スコアは、生理食塩水のみで処置したマウスと比較してより低かった。こうした結果は、L-ノマコパンでは統計的に有意であった。ノマコパンおよびPAS-ノマコパン処置マウスの傾向を観察した。L-ノマコパン処置マウスの臨床スコアは、デキサメタゾン処置マウスの臨床スコアと一致していた。生理食塩水対照(10.33±0.666;n=12;P=0.048)と比べて、平均スコア±SEM;8.083±0.848;n=12)。処置マウスではCD4+T細胞数またはサブタイプに有意な変化はなかった。
【0327】
これらの結果は、試験分子が角膜を通過できるとは以前には知られていなかったため、驚くべきものである。未PAS化バージョンと比較して、PAS-ノマコパンの有効性が減少しているのは、PAS化バージョンの方が大型であるという事実を反映している可能性がある。
【実施例
【0328】
マウス網膜細胞におけるBLT1およびC5a受容体の共発現
BLT1およびC5a受容体を認識するモノクローナル抗体を使用し、DAPIで対比染色した(示されている核に対して青色に)UAEマウスのマウス網膜切片の共焦点顕微鏡検査は、炎症細胞で両受容体が発現されたことを示す。一部の個々の細胞は、両受容体を共発現したが、単一受容体発現細胞も多く観察された。こうした細胞の少なくとも一部は、網膜損傷の領域へと遊走し、そこでLTB4刺激に応答してVEGFを放出することが公知であるM2マクロファージであると考えられる(図4、7および実施例4を参照)。
【0329】
これは、ノマコパン型タンパク質が、そのような疾患(例えば、LTB4の関与および/または補体経路の関与がある疾患)の治療において有用な薬剤であり得るという本明細書で提示した他の結果と一致する。
【実施例
【0330】
ノマコパン型タンパク質の硝子体内投与によるEAUの治療
図5に示すように、15日目および18日目にノマコパン型タンパク質を硝子体内投与した後(ノマコパン(5mg/ml)、PAS-ノマコパン(20mg/ml)、PAS-L-ノマコパン(20mg/ml)、各々は1~2μlの体積でEAUマウスに投与された)、22日目に観察された臨床スコアは、概して対照(生理食塩水処置)マウスよりも低く、2つの時点(15日目および22日目)間の臨床スコアの増加は、対照(生理食塩水処置)マウスよりも処置マウスの方が少なかった。PAS-ノマコパンは、生理食塩水対照(12.36±1.014;n=16;P=0.0001)と比べた臨床スコア付け(平均スコア±SEM;3.813±1.014;n=16)によって決定したところ、硝子体内投与後の疾患進行を軽減した。
【0331】
図5は、また、様々な処置の複合組織学的スコアを示す。この場合も、ノモコパン(Nomocopan)型分子の各々による処置後の臨床スコアは、対照(生理食塩水処置)マウスと比較してより低く、対照(生理食塩水処置)マウスの複合組織学的スコアとPAS-L-ノマコパン(20mg/ml)処置マウスの複合組織学的スコアとの間には統計的有意差があった。
【0332】
例として、図5にも示されているように、網膜の折れ曲がり(retinal folding)(複合組織学的スコアの成分の1つ)は、対照では、PAS-L-ノマコパン(20mg/ml)処置マウスと比較して、視覚的に非常に異なっている。
【0333】
これらのデータは、ノマコパン型タンパク質が、硝子体内に注射された場合に生物学的に活性であること(つまり、ノマコパン型タンパク質は、ブルッフ膜および/または内境界膜を透過して脈絡膜内に存在する細胞に影響を及ぼす能力を有すること)を初めて示す。これは、ランパリズマブ[65]などの眼の治療のために試験されている他のタンパク性分子とは対照的である。
【0334】
また、EAUマウスのCD4+浸潤細胞におけるRORgt/T.bet+発現をフローサイトメトリーによって分析した(CD4+細胞におけるRORgt/T.bet細胞のパーセンテージを示す図6a~6bを参照。y軸はRORgt発現であり、x軸はTbet発現である)。RORgtおよびTbetは、Th17細胞型およびIL-17発現に関連するT細胞マーカーである。EAUマウスのCD4+浸潤細胞におけるRORgt/T.bet+発現細胞のパーセンテージは、対照(生理食塩水処置)マウスよりもノマコパン型タンパク質処置マウスの方が低かった。PAS-ノマコパン(20mg/ml)処置マウスのレベルが最も低く、これらのマウスにおけるレベルと対照(生理食塩水処置)マウスにおけるレベルとの差異は統計的に有意だった。2回の硝子体内処置(15日目および18日目)後、PAS-ノマコパン処置EAUマウスでも、生理食塩水対照(21.28±3.544;n=8;P=0.003)と比較して網膜二重陽性Th1/Th17(RORγtT-bet)細胞の有意な減少(4.717±2.627;n=8)が観察されたが、他のT細胞サブセットの発現レベルには有意差はなかった(データ非表示)。
【0335】
これらの細胞においてRORgt+発現のみおよびT.bet発現のみも分析した(図6c~6fを参照)。
【0336】
これらの細胞におけるIL-17Aの発現も分析した(図6g~6hを参照)。生理食塩水対照(27.47±3.461;n=8;P=0.02および0.0007)と比べて、Th17(IL-17ACD4)細胞の減少が、ノマコパンおよびPAS-ノマコパン処置群において検出された(平均%±SEM;それぞれ14.67±3.534および7.019±3.005、n=8)。
【実施例
【0337】
EAUマウスにおけるVEGFレベルおよびノマコパン型タンパク質の硝子体内投与による処置
材料および方法
EAU誘導
B10.RIIIマウス(雌、5~7週齢、施設内繁殖させた集団)を300μgの光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)161~180ペプチド(SGIPYIISYLHPGNTILHVD)でs.c.免疫することによってEAUを誘導した。EAUの適切なプロトコールは[61]に示されており、PBS中のIRBP(Cambridge Peptides社、ケンブリッジ、英国)を、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Difco社、Voigt Global Distribution社、ローレンス、カンザス州)で補完された完全フロイントアジュバントで乳化する。このプロトコールでは、マウスは、また、0.4μgの百日咳(Sigma-Aldrich社)をi.p.で受け取った。
【0338】
処置およびVEGF測定
最初の実験では、誘導後に網膜組織を回収してVEGFレベルを測定した。ELISAアッセイを使用して網膜組織のVEGFレベルを分析した。
【0339】
その後の実験では、誘導21日後に網膜組織を回収した。マウスの群を、誘導後15日目および18日目に、1~2μlのノマコパン(5mg/ml)、L-ノマコパン(5mg/ml)、PAS-ノマコパン(20mg/ml)、PAS-L-ノマコパン(20mg/ml)、抗VEGF抗体(50μg/ml)BioLegend(Ultra-Leaf精製抗マウスVEGF A抗体)または生理食塩水で硝子体内処置した。未誘導で未処置の健康なマウスを、受動対照として使用した(「健常ct」)。1硝子体内注射群あたりのマウスは6匹であり、未誘導で未処置の健常なマウス(健常ct」)は2匹だった。R&D社の、マウスVEGFによるELISAアッセイ(マウスQuantikine ELISA)を使用して、網膜組織のVEGFレベルを分析した。全てのアッセイを、複製試料で2回実施した。
【0340】
結果
これらの群の網膜組織におけるVEGFレベルは図7Aに示されている。最初の実験では、IRBPによる誘導は、正常対照と比較してVEGFレベルの有意な増加を招いた(データは示されていない)。「生理食塩水」を「健常ct」と比較すると図7Aでも増加を見出すことができる。
【0341】
図7Aは、PAS-ノマコパンが、このEAUモデルでは、網膜VEGF濃度の低減について抗VEGF抗体と少なくとも同じくらい有効であることを示す。ノマコパンおよびそのバリアントがVEGFに対して直接的効果を及ぼすことは一切知られていないため、VEGFレベルの減少は、このモデルにおけるVEGFの主な供給源であると推定される[35]M2マクロファージのLTB4に基づく活性化の阻害による間接的効果であると考えられる。
【0342】
L-ノマコパンおよびPAS-L-ノマコパンも試験したが、L-ノマコパンの利用可能な結果ははっきりしないものだった。結果がはっきりとしなかったのは実験誤差の結果であると考えられたため、本明細書には示されていない。
【0343】
ノマコパン型タンパク質により好中球からLTB4をスカベンジすることは、また、網膜から末梢血へのLTB4濃度勾配を減少させることにより炎症細胞輸送を減少させ、Th17細胞(実施例3に示される)およびマクロファージの活性化を阻害する効果を有すると考えられる。補体C5に対するノマコパンおよびPAS-ノマコパンの阻害効果による補体C5aおよび膜侵襲複合体の追加的な減少は、また、C5a濃度勾配を減少させ、Th細胞、好中球および単核/マクロファージを含む炎症細胞の活性化を減少させることにより、VEGFの二次放出をさらに減少させ得る。好中球の輸送が減少すると、放出に使用可能なLTB4の量も減少し得る。
【0344】
図7Bおよび7Cに示されているような臨床スコアが得られた。
【0345】
抗VEGF抗体は、このモデルでは炎症に対してほとんどまたは全く効果を及ぼさなかったが、ある特定の試験分子では炎症の抑制が観察された。
【0346】
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図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6a-1】
図6a-2】
図6b-1】
図6b-2】
図6b-3】
図6c-1】
図6c-2】
図6d-1】
図6d-2】
図6d-3】
図6e
図6f-1】
図6f-2】
図6f-3】
図6g
図6h-1】
図6h-2】
図6h-3】
図7A
図7B
図7C
【配列表】
2022530068000001.app
【国際調査報告】