(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】エタノールおよびアセトアルデヒドを含んでいる水-アルコール性の供給原料の精製方法
(51)【国際特許分類】
B01D 11/04 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
B01D11/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563066
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2020059739
(87)【国際公開番号】W WO2020216603
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】オージエ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ドレーガー ピエール オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4D056
【Fターム(参考)】
4D056AB17
4D056AC02
4D056AC09
4D056AC22
4D056BA06
4D056BA09
4D056CA02
4D056CA03
4D056CA22
4D056CA26
4D056CA33
4D056CA39
4D056DA01
4D056DA02
4D056DA06
4D056DA10
(57)【要約】
本発明は、水アルコール供給原料を精製する方法であって、a)向流式液-液抽出の工程であって、抽出セクションを含み、該抽出セクションは、頂部のところに前記水アルコール供給原料および工程b)を起源とする中間ラフィネートの少なくとも一部および底部のところに抽出溶媒を供給され、かつ、頂部のところで抽出流れおよび底部のところでラフィネートを生じさせ、抽出器中の平均温度10~40℃で抽出セクションを操作する、工程;b)向流式液-液逆抽出の工程であって、逆抽出セクションを含み、該逆抽出セクションは、頂部のところに0.5~5.0のpHを有している酸性水溶液を、底部のところに工程a)を起源とする抽出流れを供給され、かつ、頂部のところで抽出物および底部のところで中間ラフィネートを生じさせ、平均温度40~80℃で逆抽出セクションを操作する、工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、エタノール、アセトアルデヒドおよび不純物を少なくとも含んでいる水アルコール供給原料(1)の精製のための方法であって、
a) 向流式液-液抽出の工程であって、抽出器(2)を含んでいる抽出セクションを含み、該抽出器(2)は、頂部のところに前記水アルコール供給原料(1)および逆抽出工程b)に由来する中間ラフィネートの少なくとも一部によっておよび底部のところに抽出溶媒(3)によって給送され、かつ、頂部のところで抽出流れ(5)および底部のところで水、エタノールおよびアセトアルデヒドを含んでいるラフィネート(4)を生じさせ、前記抽出セクションを、抽出器中の平均温度10~40℃で操作する、工程;
b) 逆抽出セクションを含む向流式液-液逆抽出の工程であって、該逆抽出セクションは、逆抽出器(6)を含み、該逆抽出器(6)は、工程a)の抽出器とは相異なるものであり、頂部のところに0.5~5.0のpHを有している酸性水溶液(7)によって、および底部のところに工程a)に由来する抽出流れ(5)によって給送され、かつ、頂部のところで抽出物(8)および底部のところで前記中間ラフィネートを生じさせ、前記逆抽出セクションを、工程a)の抽出器中の平均温度とは相異なる逆抽出器中の平均温度40~80℃で操作する、工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)の抽出カラム(2)中の平均温度は、15~30℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)の逆抽出カラム(6)中の平均温度は、45~60℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)の逆抽出器は、断熱カラムであり、該断熱カラムは、頂部のところに前記酸性水溶液(7)によって、前記断熱カラムへの前記酸性水溶液の入来のための温度50~90℃、好ましくは60~85℃で給送される、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程b)の逆抽出カラム(6)に給送する前記酸性水溶液(7)は、2~4、好ましくは2.5~3.5のpHを呈する、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
水アルコール供給原料(1)は、水アルコール供給原料の全重量に対して、30重量%~70重量%のエタノール、好ましくは40重量%~60重量%のエタノール、水アルコール供給原料の全重量に対して、1重量%~30重量%のアセトアルデヒド、好ましくは5重量%~10重量%のアセトアルデヒド、および水アルコール供給原料の全重量に対して、0.5重量%~20重量%の不純物、特には1重量%~20重量%の不純物を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
水アルコール供給原料(1)は、少なくとも1種のアセタールおよび/またはヘミアセタール、特にジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールをさらに含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
水アルコール供給原料(1)は、レベデブ法における転化反応の出口のところのブタジエンの分離の工程に由来する水アルコール流出物である、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
抽出溶媒(3)は、有機溶媒、好ましくは非極性の有機溶媒、好適には6~40個の炭素原子、好ましくは10~20個の炭素原子を有する炭化水素の混合物である、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
抽出溶媒(4)は、ヘキサデカンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の逆抽出カラム(6)に給送する前記酸性水溶液(7)は、2重量%未満、好ましくは1重量%未満の、エタノールおよびアセトアルデヒドの組み合わせを含み、好適には、エタノールおよびアセトアルデヒドを含まない、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、エタノールおよびアセトアルデヒドを少なくとも含んでいる供給原料を、液-液抽出および逆抽出によって処理して、不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物の除去を最大にしながら、エタノールおよびアセトアルデヒドの回収を最適にすることを可能にする方法に関する。
【0002】
本発明による方法は、有利には、レべデブ(Lebedev)法とも呼ばれるエタノールのブタジエンへの転化のためのより一般的な方法に統合され得る。それにより、転化反応器に由来する液体状流出物を精製しながら、ブタジエンに転化されなかったエタノールおよびアセトアルデヒドの回収を改善することが可能となる。
【背景技術】
【0003】
エタノールからブタジエンを製造する方法は、特に、米国チームによって第二次世界大戦の間にオストロミレンスキ(Ostromilenski)の研究から出発して開発された。
【0004】
この方法において、通過当たりの転化率は、50%未満であり、これは、エタノールおよびアセトアルデヒドの有意な再生利用を暗示している。さらに、異なる性質(飽和の、不飽和のまたは芳香族性の炭化水素、酸素ベースの生成物、例えば、アルコール、ケトン、アルデヒド、フェノール、酸、エステルまたはエーテル)のかつ大きく異なるモル質量の非常に多様な不純物が生じさせられる(50~10000g/mol)。
【0005】
エタノールおよびアセトアルデヒドの喪失をできる限り少なくしながらできる限り多くの不純物を除去することを目的として単位操作のラインを制定することがそれ故に必要である。経済的な観点から、ブタジエンの製造コストを低減させることは必須であり、これは、以下を必要とする:
a) エタノールおよびアセトアルデヒドの喪失をできる限り少なくすること、
b) 反応器中に不純物を再循環させないこと;これらの不純物は、ブタジエンについての選択性における降下をもたらすであろうかまたは受け入れられないレベルで蓄積し、パージを必要とし、それ故に、エタノールおよびアセトアルデヒドを喪失するだろう。
【0006】
触媒反応器の出口において、生じた流出物は、ブタジエン、エタノール、水、アセトアルデヒドおよび不純物を含んでおり、この流出物は、複数の単位操作を経て、不要な気体または液体の副生物を、形成されたブタジエンおよび「貴(noble)」化合物と呼ばれる化合物であるエタノール、水またはアセトアルデヒドから分離するようにし、ここで、液体状および気体状は、周囲の温度および圧力におけるものと理解される。
【0007】
周囲の温度および圧力で気体状にある副生物の中で、水素、一酸化炭素、二酸化炭素およびC1-C4のオレフィンおよびアルカンが言及されてよい。これらの副生物を、ブタジエンに豊富な流出物から除去して、要求される仕様を有するブタジエン生成物を得ることが必須である。周囲の温度および圧力で液体状にある副生物の中で、アセトン、ジエチルエーテル、ブタナール、ブタノール、ブタノン、酢酸エチル、クロトンアルデヒドおよび酢酸が言及されてよい。他の副生物が反応帯域中により少量で生じさせられ得る。文献の続きにおいて、用語「不純物(impurities)」は、数千の炭化水素または酸素ベースの化合物のこの組み合わせを表示することになる。
【0008】
米国チームの第1の方法スキームにおいて、エタノール、アセトアルデヒド、水および液体状副生物は、3基の蒸留塔のラインによって分離される(特許文献1)。エタノール、アセトアルデヒド、水および液体状副生物に豊富な流出物は、第1の蒸留塔に給送し、この第1の蒸留塔において、アセトアルデヒドに豊富な流出物が流出物の残りから分離される。第2の蒸留塔により、液体状副生物を、エタノールおよび水に豊富な流出物から分離することが可能となる。最後の蒸留塔により、エタノールを水から分離することが可能となる。Carbide & Carbon or Koppersによって1940-1960の期間に出願された方法特許の大半(特許文献2~5)は、スキームのこの部分を改善することに目標を置く。
【0009】
1945年に観察されたこの方法の課題の一つは、エタノールとアセトアルデヒドとの反応に特に由来するジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールの相当な形成であり、これは、反応剤(エタノール、アセトアルデヒド)の相当な喪失およびそれ故にブタジエンの収率における降下をもたらす。非特許文献1には、特に、ジエチルアセタール20kgが、形成されたブタジエンの重量(トン)当たりで生じることが指し示される。
【0010】
特許(特許文献6および7)において、液体状不純物は、少なくとも一部、液-液抽出によって除去される。反応器の出口のところの液体状流出物は、エタノール、アセトアルデヒド、水および不純物を含んでおり、この液体状流出物は、液-液抽出塔に給送する。このものは、底部においてスクラブ洗浄溶媒を給送され、この溶媒の目的は、供給原料を向流式でスクラブ洗浄することにある。このスクラブ洗浄セクションの出口のところで、抽出物は、主として、スクラブ洗浄溶媒および抽出された副生物(例えば、ジエチルエーテル)からなり、少量のエタノールおよびアセトアルデヒドを含む。この抽出物は、続いて、エタノールおよびアセトアルデヒドを再抽出することを目的として水によりスクラブ洗浄され、それ故に、エタノールおよびアセトアルデヒドの喪失が最小にされる。この単位操作のために採用されるスクラブ洗浄溶媒は、6~40個の炭素原子を有している炭化水素の混合物からなる。
【0011】
この構成において、液-液抽出工程の上流で、特に、反応器の出口のところの液体状流出物中に存在する未転化エタノールと未転化アセトアルデヒドの反応によって形成された、高比率のジエチルアセタールおよびエチルヘミアセタールは、スクラブ洗浄溶媒によって抽出される。これは、エタノールおよびアルデヒドの相当の取るに足らないではない喪失、それ故にブタジエン製造のコストの増加をもたらすという結果を有している。
【0012】
特許(特許文献8)には、それの一部について、特に特許(特許文献6または7)に記載されたレべデブ法からの、液-液抽出および逆抽出工程の間の水性逆抽出溶媒中の酸の存在によって触媒されるジエチルアセタールの分解による逆抽出によるエタノール、水およびアセトアルデヒドを含んでいる液体状流出物の精製のための方法が提供される。しかしながら、水相中に溶解した酸の使用によるこのような方法は消費をもたらし、それ故に、逆抽出溶媒中に導入された酸分子のいくぶん有意な喪失をもたらす。
【0013】
本発明による方法は、この酸消費の課題を制限することを目的とする。より一般的には、本発明は、この水性供給原料中に含有される不純物、特に、非極性の不純物または低極性の不純物の除去を最大にし、かつ、エタノールおよびアセトアルデヒドの喪失を制限しながら、エタノールおよびアルデヒドを含んでいる水アルコール性供給原料の精製を目的とする。レベデブタイプの方法、例えば、特許(特許文献6または7)において記載された方法にそれが有利に統合される場合、本発明の対象は、反応器の出口のところのブタジエンの分離の工程に由来する液体状流出物、より詳細には特許(特許文献6)の工程D1)に由来するエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物またはに特許(特許文献7)の工程B)由来するエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物を、前記液体状流出物中に含有される不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物(例えばジエチルエーテル)の除去を最大限にする一方で、反応器に再循環させられる未転化エタノールおよび未転化アセトアルデヒドの量を最適にすることによって精製することにあり、これは、酸の消費を最小限にしながら達成される。本発明により、それ故に、低減した酸の消費により、エタノールをブタジエンに転化させるためのレべデブ方法の全体収率において改善することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第2403742号明細書
【特許文献2】米国特許第2403743号明細書
【特許文献3】米国特許第2393381号明細書
【特許文献4】米国特許第2395057号明細書
【特許文献5】米国特許第2439587号明細書
【特許文献6】仏国特許出願公開第3026100号明細書(特表2017-532318号公報)
【特許文献7】仏国特許出願公開第3026101号明細書
【特許文献8】仏国特許出願公開第3057467号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Toussaintら著、「Industrial and Engineering Chemistry」、1947年、第39巻、第2号、p.120-125
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明は、水、エタノール、アセトアルデヒドおよび不純物を少なくとも含んでいる水アルコール供給原料(1)の精製のための方法に関し、前記方法は、
a) 向流式の液-液抽出の工程であって、抽出器(2)を含む抽出セクションを含んでおり、該抽出器(2)は、頂部のところに前記水アルコール供給原料(1)および逆抽出工程b)に由来する中間ラフィネートの少なくとも一部によっておよび底部のところに抽出溶媒(3)によって給送され、かつ、頂部のところで抽出流れ(5)および底部のところで水、エタノールおよびアセトアルデヒドを含むラフィネート(4)を生じさせ、前記抽出セクションを、抽出器中の平均温度10~40℃で操作する工程;
b) 逆抽出セクションを含んでいる向流式の液-液逆抽出の工程であって、該セクションは、逆抽出器(6)を含み、該逆抽出器(6)は、工程a)の抽出器とは相異なるものであり、頂部のところに0.5~5.0のpHを有している酸性水溶液(7)によっておよび底部のところに工程a)に由来する抽出流れ(5)によって給送され、かつ、頂部のところで抽出物(8)および底部のところで前記中間ラフィネートを生じさせ、前記逆抽出セクションを、工程a)の抽出器中の平均温度とは相異なる逆抽出器中の平均温度40~80℃で操作する、工程
を含んでいる。
【0017】
本発明は、不純物の抽出および水、エタノール、アセトアルデヒドおよび不純物からなる供給原料、特にレベデブタイプの供給原料中に含有されるジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールの分解のための単位操作のラインに関する。
【0018】
驚くべきことに、本出願人は、2つの相異なるカラムを含んでいる特定の液-液抽出/逆抽出システムを課することによって、および再抽出工程を行うために用いられる水溶液のpHに加えて、所定数の操作パラメータ、例えば、抽出および逆抽出の温度を制御することによって、水アルコール供給原料からの不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物の抽出が最大限にされ、ジエチルアセタールおよびエチルヘミアセタールの再抽出が最適にされ、それ故に、エタノールおよびアセトアルデヒドの喪失が制限され、水性逆抽出溶媒を酸性にするために用いられる酸の消費が低減させられることを発見した。
【0019】
有利には、本発明による方法は、レベデブ法(またはレべデブタイプの方法)、すなわち、エタノールのブタジエン、特に1,3-ブタジエンへの転化のための方法に統合される。レベデブタイプの方法、例えば、特許FR 3 026 100またはFR 3 026 101に記載された方法にそれが有利に統合される場合、本発明による方法により、それ故に、比較的簡単な液-液抽出/逆抽出の方法によって、未転化反応剤の喪失を低減させながら、転化反応器に直接的に由来する流出物からのブタジエンの分離の後に得られた水アルコール流出物を効率的に精製すること、それ故に、その操作コストを低減させながら、エタノールからのブタジエンの製造のための方法の性能を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態の説明)
本発明によると、化合物1,1-ジエトキシエタン(ジエチルアセタールとも呼ばれる)、エチリデンジエチルエーテルまたはアセトアルデヒドジエチルアセタールは、本発明の説明において、ジエチルアセタール(diethyl acetal)またはDEAで表記される。それは、本発明によると、エタノールとアセトアルデヒドの縮合形として定義され得る。対応するヘミアセタールは1-エトキシエタン-1-オールまたはアセトアルデヒドエチルヘミアセタールであり、本発明の説明において、エチルヘミアセタール(ethyl hemiacetal)またはEHAと呼ばれる。
【0021】
本発明によると、抽出セクションまたは逆抽出セクション中の「平均温度(mean temperature)」は、抽出器(または逆抽出器)にわたって均等に分配された熱電対によって与えられる少なくとも2つの温度値の算術平均に従って計算される温度または抽出器(または逆抽出器)の中心に位置する熱電対を用いて決定される温度である。例えば、抽出カラム中の平均温度を決定するために2つの熱電対がある場合、一方の熱電対は、カラムの上半分に置かれ、第2の熱電対は、下半分に置かれ、好ましくは、カラムの上部分の熱電対は、下部分の熱電対と抽出カラムの底部との間の距離に等しい抽出カラムの頂部からの距離のとことにあるようにされる。抽出器(または逆抽出器)にわたって均等に配置された熱電対の数がより大きくなると、抽出器(逆抽出器)中の平均温度はより正確になる。
【0022】
本発明によると、表現「・・・と・・・との間(または・・・~・・・)(of between ... and ...)」は、間隔の限界値が記載された値の範囲内に含まれることを意味する。そのようなことが当該場合になかったならば、および、限界値が記載された範囲に含まれなかったならば、そのような詳細は、本発明によって提供されることになる。
【0023】
本発明は、水、エタノール、アセトアルデヒドおよび不純物を少なくとも含んでいる水アルコール供給原料の精製のための方法に関し、前記方法は、以下の工程:
a) 向流式液-液抽出の工程であって、抽出器(2)を含む抽出セクションを含み、該抽出器(2)は、頂部のところに前記水アルコール供給原料(1)および逆抽出工程b)に由来する中間ラフィネートの少なくとも一部によっておよび底部のところに抽出溶媒(3)によって給送され、かつ、頂部のところで抽出流れ(5)および底部のところで水、エタノールおよびアセトアルデヒドを含んでいるラフィネート(4)を生じさせ、前記抽出セクションを、抽出器中の平均温度10~40℃で操作する、工程;
b) 逆抽出器(6)を含む逆抽出セクションを含んでいる向流式液-液逆抽出の工程であって、該逆抽出器(6)は、工程a)の抽出器とは相異なるものであり、頂部のところに0.5~5.0のpHを有している酸性水溶液(7)によっておよび底部のところに工程a)に由来する抽出流れ(5)によって給送され、かつ、頂部のところで抽出物(8)および底部のところで前記中間ラフィネートを生じさせ、前記逆抽出セクションを、工程a)の抽出器中の平均温度とは相異なる逆抽出器中の平均温度40~80℃で操作する、工程
を含み、好ましくは、これらからなる。
【0024】
(水アルコール供給原料)
本発明による方法により、水、エタノールおよびアセトアルデヒドを含んでいる水アルコール供給原料からエタノールおよびアセトアルデヒドを抽出することが可能となる。前記水アルコール供給原料は、不純物、特に有機不純物も含んでおり、これは、大きく変動する性質のものであり得、例えば、飽和、不飽和または芳香族の炭化水素、酸素ベースの生成物であり、これらのうち、言及されてよいのは、アルコール、ケトン、アルデヒド、フェノール性の化合物、酸、エステルまたはエーテルであり、種々の不純物のモル質量は、50~10000g/molの範囲にわたってよい。典型的には、不純物は、アセトン、ジエチルエーテル、ブタナール、ブタノール、ブタノン、酢酸エチル、クロトンアルデヒド、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセンおよびヘキサジエンであり得る。
【0025】
本発明による方法における水アルコール供給原料は、場合によっては、すくなくとも1種のアセタールおよび/またはヘミアセタールも含み得る。特に、処理されるべき水アルコール供給原料は、ジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールを含み得る。ジエチルアセタールおよびエチルヘミアセタールは、エタノールとアセトアルデヒドとの反応の生成物であると知られている。
【0026】
本発明によると、用語「不純物(impurities)」は、それ故に、水以外のあらゆる化合物、特に、有機化合物、エタノールおよびアセトアルデヒドを示し、アセタールおよびヘミアセタール以外、特にジエチルアセタールおよびエチルヘミアセタール以外である。不純物は、例えば、飽和、不飽和または芳香族の炭化水素であり得、例えば、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセンおよびヘキサジエン、または酸素ベースの生成物、例えば、アセトン、ジエチルエーテル、ブタナール、ブタノール、ブタノン、酢酸エチルまたはクロトンアルデヒドである。
【0027】
特に、不純物のいくつかが、低極性とともに非極性と考えられ得るのは、それらが有機抽出相と水性抽出相との間での分配係数(特に重量による):好ましくは1以上、優先的には2以上を呈する場合である。
【0028】
本発明による精製方法は、それ故に有利には、水、エタノール、アセトアルデヒド、不純物および場合によるアセタールおよび/またはヘミアセタール、特にジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールを少なくとも含んでいる水アルコール供給原料によって給送される。
【0029】
好ましくは、水アルコール供給原料は、水アルコール供給原料の全重量に対して、30重量%~70重量%のエタノール、好ましくは40重量%~60重量%のエタノール、水アルコール供給原料の全重量に対して、1重量%~30重量%のアセトアルデヒド、好ましくは5重量%~10重量%のアセトアルデヒド、および水アルコール供給原料の全重量に対して、0.5重量%~20重量%の不純物、特に1重量%~20重量%の不純物を含む。供給原料が少なくとも1種のアセタールおよび/またはヘミアセタール、例えばジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールをさらに含む場合、前記水アルコール供給原料中のアセタールおよびヘミアセタールの重量による含有率は、好ましくは1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%である。
【0030】
有利には、前記水アルコール供給原料は、非凝縮物およびブタジエンの分離後の、エタノールのブタジエン、特に1,3-ブタジエンへの転化に由来する。前記水アルコール供給原料は、好ましくは、レベデブ方法における転化反応器の出口のところのブタジエンの分離の工程に由来する水アルコール流出物、例えば、特許FR 3 026 100のD1)に由来するエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物または特許FR 3 026 101の工程B)に由来するエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物と同類の流出物である。
【0031】
(不純物の抽出の工程a))
本発明によると、本発明による精製方法は、向流式液-液抽出の工程a)を含み、抽出器(2)を含む抽出セクションを含んでおり、抽出器(2)は、頂部のところに前記水アルコール供給原料(1)および逆抽出工程b)に由来する中間ラフィネートの少なくとも一部によっておよび底部のところに抽出溶媒(3)によって給送され、かつ、頂部のところで中間抽出物とも呼ばれる抽出流れ(5)および底部のところで水、エタノールおよびアセトアルデヒドを含んでいる、水アルコールラフィネートとも呼ばれるラフィネート(4)を生じさせる。
【0032】
本発明によると、前記抽出セクションは、抽出器中の平均温度10~40℃、好ましくは15~30℃で操作される。抽出器中の平均温度が10℃未満または40℃超であるならば、不純物、特に、非極性の不純物または低極性の不純物の抽出の有効性はより低い。
【0033】
工程a)の前記抽出セクションに給送する抽出溶媒および水アルコール供給原料は、有利には、それぞれ独立して、10~40℃の入口温度にある。
【0034】
有利には、工程a)の前記抽出セクションの圧力は、前記セクション中を通過する種々の流れが液体状の形態を維持するように調節される。好ましくは、工程a)の前記抽出セクションは、0.1~0.5MPa、優先的には0.2~0.4MPaの圧力で操作される。
【0035】
前記工程a)の抽出セクション中の滞留時間は、有利には、当業者に知られているように、回収度に関して所望の性能を得るように調節される。特に、前記工程a)の抽出セクション中の滞留時間は、0.5~10.0時間、好ましくは0.5~8.0時間、好適には1.0~6.0時間である。抽出セクション中の滞留時間は、水相の滞留時間として定義され、抽出セクションの出口におけるこの水相の容積による流量に対する抽出セクション中の考慮中の水相によって占められる全容積の比に対応する。
【0036】
本発明によると、工程a)に給送する抽出溶媒は、有利には、有機溶媒、好ましくは非極性の有機溶媒である。好ましくは、工程a)に給送する抽出溶媒は、6~40個の炭素原子、好ましくは10~20個の炭素原子を有する炭化水素の混合物、または水-アルコール相との脱混合を可能にする任意の他の溶媒である。非限定的な方法で、前記炭化水素混合物は、脱硫ガスオイルまたはケロセン留分または代替的にフィッシャー・トロプシュタイプのユニットによって生じた炭化水素留分であり得る。好ましくは、工程a)に給送する抽出溶媒はヘキサデカンである。
【0037】
液-液抽出、特に、向流式液-液抽出が、2つの液相により操作し、相の一方は、連続的な相を構成し、他方は、相異なる滴体の形態で存在する分散相を構成することは当業者にとって周知である。連続的または分散の性質は、一方の相の他方に対する相対的な流量に依存する。周知の現象によると、分散相および連続相の性質は、これらの相の相対的な流量に依存する。それ故に、連続相の流量が分散相の流量を増大させることによって低減させられるならば、分散相は、連続的になることになり、逆もまた同様である。有利には、抽出セクションは、分散相の重量による流量に対する連続相の重量による流量の比:70未満、好ましくは35未満、好適には10未満、好ましくは3未満、好ましくは1.5未満で操作される。70超で、抽出セクションの流体力学機能化は妥協される。それは、抽出溶媒(有機相)が連続または分散の相を形成するかどうかの問題ではなく、この基準は、流動力学的基準である。好ましくは、抽出工程a)において、連続相は、有機相であり、分散相は、水相である。
【0038】
水アルコール供給原料および逆抽出工程b)に由来する中間ラフィネートの少なくとも一部からなる前記工程a)の前記抽出セクションの供給物の重量による流量に対する抽出溶媒の重量による流量(すなわち、抽出セクションに入る抽出溶媒の重量による流量)の比がより高くなるほど、工程a)の不純物の抽出はより効率的になる。しかしながら、流量の高い比は、工程a)の抽出セクションの頂部のところで生じた抽出流れ中の大きな割合のエタノールおよびアセトアルデヒドを抽出することにもつながり、結果として、エタノールおよびアセトアルデヒドの喪失を制限するために工程b)の間に必要な水溶液の流量を増大させることにつながる。抽出溶媒の重量による流量比対水性供給原料の重量による流量の比の値は、それ故に、エタノールおよびアセトアルデヒドの喪失を制限しながら、不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物の最大限を抽出するように調節される必要がある。水アルコール供給原料および工程b)に由来する中間ラフィネートの少なくとも一部からなる、工程a)に給送するための供給原料の重量による流量に対する抽出溶媒の重量による流量の比は、好ましくは0.1~5.0、優先的には0.2~2.0、好適には0.3~1.0である。
【0039】
抽出溶媒の重量による流量およびまた工程b)に給送する酸性水溶液の重量による流量(すなわち、逆抽出溶媒の重量による流量)は、有利には、工程b)の間に生じた抽出物が本発明による方法の前記工程a)に給送する水アルコール供給原料中に含有される非極性の不純物または低極性の不純物の最低50重量%、好ましくは最低60重量%、好適には最低70重量%、大いに好適には最低80重量%、実に一層には最低90重量%、および前記工程a)に給送する前記水アルコール供給原料中に含有されるエタノールおよびアセトアルデヒド(遊離および/または縮合された形態、例えば、ジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールの形態)の重量による全量の最高5重量%、好ましくは最高2重量%、好適には最高1重量%を含むように調節される。好ましくは、工程a)に給送する抽出溶媒の重量による流量に対する工程b)に給送する酸性水溶液の重量による流量(すなわち、逆抽出溶媒の重量による流量)の比は、0.1~5.0、好ましくは0.2~2.0、優先的には0.3~1.0、好適には0.4~0.5である。
【0040】
工程a)の前記抽出セクション中の2つの液相の間の接触は、有利には、抽出器内で行われる。異なる抽出器技術が想定され得る:抽出器は、例えば、充填カラム(packed column)、プラグフローカラム(plug-flow column)、撹拌型区画化カラム(有孔プレートを用いて、ディスクを用いてまたはリングを用いて、あるいは区画化されている)、さらには一組のミキサ-セトラまたはミキサ-遠心分離機であり得る。好ましくは、抽出器は、プラグフローカラムまたは撹拌型区画化カラムである。有利には、抽出工程a)において用いられる抽出器は、1~20段、優先的には2~8段の理論抽出段を含む。
【0041】
中間抽出物(または抽出流れ)(5)は、本発明による方法の工程a)の前記抽出セクションの頂部のところで生じさせられ、このものは、有利には、水アルコール供給原料からの非極性の不純物または低極性の不純物の最低50重量%、好ましくは最低60重量%、好適には最低70重量%、大いに好ましくは最低80重量%を含む。前記中間抽出物(5)は、本発明による方法に給送する水アルコール供給原料中に存在するエタノールおよびアセトアルデヒドを、それらの遊離および/または縮合の形態で含む。それ故に、工程a)における抽出セクションの頂部のところで生じた中間抽出物(5)は、大いにおそらくは、ジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールを含み、それは、場合によっては、本発明による方法に供給する水アルコール供給原料中に含まれ、かつ/または本発明による方法の間のエタノールとアセトアルデヒドとの、特に工程a)における前記抽出セクション中の反応によって形成される。
【0042】
前記工程a)の抽出セクションの底部のところで生じた水アルコールラフィネート(4)は、水および本発明による方法に給送する前記水アルコール供給原料中に含有されるエタノールおよびアセトアルデヒドの全量の80重量%~100重量%を含む。換言すると、本発明による方法に給送する水アルコール供給原料のエタノールおよびアセトアルデヒドの全量の80重量%~100重量%は、本発明による方法の工程a)の抽出セクションの底部のところで生じた水アルコールラフィネート(4)中に回収される。
【0043】
本発明による方法の工程a)は、不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物(例えばジエチルエーテル)の最大限、およびエタノールおよびアセトアルデヒド(遊離および/または縮合の形態)の最小限を抽出するように構成される。
【0044】
このような構成において、アセタールおよび/またはヘミアセタール、特にジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールは、場合により水アルコール供給原料中に存在し、かつ/または、本発明による方法の間に、特に抽出工程a)の間に形成され、このものは、抽出溶媒によって抽出流れ中に、不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物と共に、抽出工程a)の間に、前記アセタールおよび/またはヘミアセタールが遊離のエタノールおよび遊離のアセトアルデヒドよりはるかに低く極性である限りにおいて著しく抽出される。前記工程a)の抽出セクションの頂部のところで抽出された抽出流れ(5)は、逆抽出工程b)に給送する。
【0045】
(逆抽出工程b))
本発明によると、本精製方法は、向流式液-液逆抽出の工程b)を含み、その対象は、貴重な化合物、すなわち、エタノールおよびアセトアルデヒドを遊離な形態および/またはエチルヘミアセタールまたはジエチルアセタールのような縮合された形態で効率的に逆抽出することにある。
【0046】
本発明によると、向流式液-液逆抽出の工程b)は、逆抽出器(6)を含んでいる逆抽出セクションを含み、逆抽出器(6)は、工程a)の抽出器(2)とは相異なり、それは、頂部のところに0.5~5.0のpHを有している酸性水溶液(7)によって、および底部のところに工程a)に由来する抽出流れ(5)によって給送され、かつ、頂部のところで抽出物(8)および底部のところで中間ラフィネートを生じさせる。
【0047】
逆抽出セクションは、本発明により、工程a)の抽出器中の平均温度とは相異なる逆抽出器中の平均温度で操作され、40~80℃、好ましくは45~70℃、好ましくは45~60℃である。大いに好ましくは、工程a)における抽出セクションは、抽出器中の平均温度15~30℃で操作され、工程b)における逆抽出セクションは、逆抽出器中の平均温度45~70℃、特に45~60℃で操作される。80℃超の逆抽出セクション中の平均温度の値に関して、加熱するために必要とされるエネルギー消費における増大によって生じた製造コストにおける増大に加えて、逆抽出の効率における喪失を生ずる水相および有機相中の泡の形成のリスクがある。逆抽出セクション中の平均温度が40℃未満である場合、逆抽出の効率は、最適ではないようである。
【0048】
前記酸性水溶液および工程a)に由来する抽出流れは、有利には、工程b)の前記逆抽出セクションに、それぞれ独立に10~90℃、好ましくは40~90℃の入口温度で給送する。
【0049】
本発明の具体的な実施形態によると、逆抽出セクションは、断熱カラム(絶縁カラムと呼ばれる)を、逆抽出器として含み、これは、頂部のところに酸性水溶液を前記断熱カラム中への前記酸性水溶液の入口温度50~90℃、好ましくは60~85℃で、および底部のところに工程a)に由来する抽出流れによって給送される。前記断熱カラムへの工程a)に由来する抽出流れの入口温度は、抽出工程a)が行われる温度によって、すなわち、平均10~40℃で設定される。本発明のこの具体的な実施形態において、カラムの頂部と底部との間で生じさせられる温度勾配により、工程a)の抽出セクション中の平均温度とは相異なる断熱逆抽出カラム中の平均温度を得ることが可能となり、これは所望の効果、すなわち、工程a)に由来する抽出流れ中に含有されるエタノールおよびアセトアルデヒドおよび/またはジアセタールおよびヘミアセタールの最適化された再抽出を得るのに十分に高く、有利には、40~80℃である。
【0050】
有利には、前記逆抽出セクション中の圧力は、前記セクション中を通過する種々の流れが液体状の形態を維持するように調節される。好ましくは、工程b)の逆抽出セクションは、0.1~0.5MPa、優先的には0.2~0.4MPaの圧力で操作される。
【0051】
有利には、工程b)の逆抽出セクションは、0.5~10.0時間、優先的には0.5~8.0時間、好適には1~6.0時間の逆抽出セクション中の滞留時間、より正確には水相中の滞留時間により操作される。逆抽出セクション中の前記滞留時間は、前記工程b)の前記逆抽出セクションに給送する酸性水溶液により注入される水分子が前記工程b)の前記逆抽出セクションに由来する中間ラフィネート中に抽出されるのに必要とされる平均時間として定義される。この滞留時間は、RTDすなわちResidence Time Distribution(滞留時間分布)の測定によって従来から決定され、マーカー(着色剤その他)が随時入口のところに注入され、マーカーの濃度が出口のところで観察される。
【0052】
本発明によると、工程b)において用いられる逆抽出溶媒は、pH0.5~5.0、好ましくは2~4.0、好適には2.5~3.5を有している酸性水溶液である。工程b)に給送する前記酸性水溶液は、有利には、水溶液のpHが0.5~5.0、好ましくは2~4.0、好適には2.5~3.5になるように酸性化合物を添加することによって酸性にされた水である。酸性水溶液は、それ故に、限定なしで、強酸および/または弱酸を含有し得る。限定なしで、水は、弱酸、例えば、酢酸、または強酸、例えば、硫酸または硝酸により、好ましくは酢酸により酸性にされる。好ましくは、酸性水溶液は、酢酸により酸性にされた水であり、前記酸性水溶液は、前記酸性水溶液の全重量に対して、酢酸の重量で3重量%未満、好ましくは3.0重量%以下、好適には1.5重量%以下の含有率の酢酸を含むようにされる。
【0053】
さらに、工程b)に給送する前記酸性水溶液は、好ましくは、前記酸性水溶液の全量に対して、2重量%未満、好適には1重量%未満のエタノールおよびアセトアルデヒドの全量を含有し、すなわち、前記酸性水溶液中のエタノールおよびアセトアルデヒドの重量による含有率の合計は、前記酸性水溶液の全重量に対して、2重量%未満、好ましくは1重量%未満である。大いに好ましくは、前記酸性水溶液は、エタノールもアセトアルデヒドも含有していない。
【0054】
工程b)の前記逆抽出セクション中の2つの液相である有機相と水相の間の接触は、有利には、逆抽出器内で行われる。逆抽出器のための異なる技術が想定され得る:充填カラム、プラグフローカラム、撹拌型区画化カラム(有孔プレートを用いて、ディスクを用いてまたはリングを用いて区画化されている)あるいは一組のミキサ-セトラまたはミキサ-遠心分離機。好ましくは、逆抽出器は、プラグフローカラムまたは撹拌型区画化カラムである。有利には、逆抽出工程b)において用いられる逆抽出器は、1~20段、優先的には1~5段の理論段を含む。
【0055】
有利には、逆抽出セクション中の水相および有機相の重量による流量は、逆抽出セクションを脱出する有機相の流量(Qorga.脱出)に対する逆抽出セクションに入来する水素の重量による流量(Qaq.入来)の比(Qaq.入来/Qorga.脱出)が好ましくは0.1~5.0、優先的には0.2~2.0、好適には0.3~1.0になるように調節される。
【0056】
好ましくは、工程b)は、水相が逆抽出セクション中で連続相を構成し、有機相が前記工程b)の前記逆抽出セクション中で分散相を構成するように行われる。
【0057】
大いに有利には、水相は、工程a)の抽出セクション中で分散相を構成し、工程b)の逆抽出セクション中で連続相を構成する。
【0058】
このような操作条件下に、アセタールおよび/またはヘミアセタール、特にジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールは、場合により水アルコール供給原料中に存在し、かつ/または本発明による方法の間に、特にエタノールとアセトアルデヒドとの間の反応によって形成され、このものは、とりわけ、エタノールおよびアセトアルデヒドに分解し、これは、逆抽出セクションの水相中に、好ましくは、逆抽出セクションの連続相に再抽出され得て、それ故に、エタノールおよびアセトアルデヒドにおける喪失の回復を向上させることが可能となる。この分解により、それ故に、本発明による精製方法がレベデブ法に統合される場合に、反応剤の喪失を制限することおよび結果としてレベデブ法のブタジエンの収率を全体的に改善することが可能となる。
【0059】
本発明による方法の逆抽出工程b)は、逆抽出セクションの頂部のところで、抽出物(8)を生じさせ、抽出物(8)は、有利には、本発明の方法の工程a)に給送する水アルコール供給原料の不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物の最低50重量%、好ましくは最低60重量%、好適には最低70重量%、大いに好ましくは最低80重量%、実に一層には最低90重量%を含む。工程b)の逆抽出セクションの頂部のところで生じた抽出物(8)は、有利には、アセタールおよび/またはヘミアセタール、特にジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールの1.0重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好適には0.001重量%未満を含む。大いに好ましくは、工程b)の逆抽出セクションの頂部のところで生じた抽出物は、アセタールおよび/またはヘミアセタールを含んでおらず、特に、ジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールを含んでいない。
【0060】
工程b)に由来する抽出物は、続いて、例えば、精製/分離の工程において抽出溶媒を回収してそれを抽出工程a)に再循環させることができるように処理され得る。
【0061】
工程b)の逆抽出セクションは、底部のところで中間ラフィネートを生じさせ、この中間ラフィネートは、有利には、水、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む。前記中間ラフィネートの少なくとも一部、有利には前記全体的中間ラフィネートは、工程a)の抽出セクションの頂部のところに導入される。中間ラフィネート全体が抽出セクションに導入される場合でも、抜き出しは、有利には、連続的にまたは非連続的に前記中間ラフィネート上で行われ得、前記抜き出しは、パージと呼ばれ、この中間ラフィネート中の不純物の蓄積が制限される。
【0062】
驚くべきことに、本出願人は、2基の相異なる抽出器中の抽出(またはスクラブ洗浄処理)および逆抽出(または逆スクラブ洗浄処理)を操作することによって、逆抽出溶媒として酸性水溶液を用いることによって、および2基のカラムにおいて2つの相異なる温度を課すことによって、処理されるべき水アルコール供給原料、例えば、レベデブ法におけるような、エタノールのブタジエンへの転化のための反応器に由来する液体状流出物からの不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物の除去が非常に効率的でありながら一方で、エタノールおよびアセトアルデヒドの喪失が驚くべきことに制限されかつ逆抽出の水を酸性にするのに必要な酸の消費が大きく低減させられることを発見した。
【0063】
有利には、本発明による方法により、非極性の不純物または低極性の不純物の抽出の効率、特に、ジエチルエーテルの抽出の効率75重量%以上、好ましくは80重量%以上、および逆抽出の効率、特にエタノールおよびアセトアルデヒドの縮合された形態のジエチルアセタールの逆抽出の効率90重量%以上、好ましくは95重量%以上、好適には97重量%以上を達成することが可能となる。
【0064】
用語「抽出の効率(efficiency of extraction)」は、本発明により、ジエチルエーテルの抽出の効率を意味し、プロセスを脱出する、すなわち、逆抽出セクションの頂部のところで得られた抽出物中に存在するジエチルエーテル(DEE)の重量による流量(QDEE 抽出)対抽出セクションに入来する、すなわち、抽出セクションに給送する水アルコール供給原料中に存在するジエチルエーテル(DEE)の重量による流量(QDEE 入来)の比(QDEE 抽出/QDEE 入来)によって定義される。より詳細には、ジエチルエーテル(DEE)の抽出の効率は、以下の方法で計算される:抽出DEEの効率=[(逆抽出セクションの頂部を脱出する抽出物のDEEの重量含有率)×(逆抽出セクションの頂部を脱出する抽出物の重量による流量)/(水アルコール供給原料のDEEの重量含有率)×(水アルコール供給原料の重量による流量)]。
【0065】
用語「逆抽出の効率(efficiency of back-extraction)」は、ジエチルアセタールの抽出の効率を意味し、中間抽出物から逆抽出されたジエチルアセタールの重量による量対逆抽出セクションに入来する中間抽出物中に存在するジエチルアセタールの重量による量の比によって定義される。より詳細には、ジエチルアセタール(diethyl acetal:DEA)の逆抽出の効率は、以下の方法で計算される:逆抽出DEAの効率=1-[(逆抽出セクションの頂部を脱出する抽出物のDEAの重量含有率)×(逆抽出セクションの頂部を脱出する抽出物の重量による流量)/(逆抽出セクションに入来する中間抽出物のDEAの重量含有率)×(逆抽出セクションに入来する中間抽出物の重量による流量)]。
【0066】
抽出および逆抽出の効率を計算するための種々の考えられる流れのDEEおよびDEAの重量含有率は、当業者に知られているあらゆる方法によって、例えば、ガスクロマトグラフィーによって決定される。
【0067】
本発明による精製方法は、有利には、レベデブタイプの全体的な方法、すなわち、エタノールをブタジエンに転化させるための全体的な方法に、エタノールのブタジエンへの転化のための反応器の出口のところのブタジエンの分離の工程に由来する水アルコール液体状流出物の精製の工程として統合され得る。これは、レベデブタイプの方法では、エタノールをブタジエンに転化させるための反応器の出口のところの分離の工程に由来する水アルコール液体状流出物は、エタノールのブタジエンへの転化を特に起源とする水、および転化されなかったかまたは一部のみ転化された、反応剤である、エタノールおよびアセトアルデヒドを含んでいるためである。前記水アルコール液体状流出物は、有機分子、例えば、アセトン、ジエチルエーテル、ブタナール、ブタノール、ブタノン、酢酸エチル、クロトンアルデヒド、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセンまたはヘキサジエン、および場合によるアセタールおよび/またはヘミアセタール、特にジエチルアセタールおよび/またはエチルヘミアセタールからなる不純物も含む。本発明による処理方法がレベデブタイプの方法に統合される場合、活性化合物、すなわちエタノールおよびアセトアルデヒドの再循環の率が改善され、それ故に、レベデブ法のブタジエンの全体的収率の最適化を可能にし、これは、酸性化合物の消費、または水相の後処理に起因するかもしれなかった、さらなるコストを生じさせることなく達成される。
【0068】
本発明の説明に組み入れられた図面および後に続く実施例は、例証として提示され、本発明による精製方法を制限するものではない。
【0069】
(図面のリスト)
図1は、本発明による方法の配置を図表で非限定的に示す。水、エタノール、アセトアルデヒドおよび不純物を含んでいる水アルコール供給原料(1)は、頂部のところで、液-液抽出セクション(2)に給送し、液-液抽出セクション(2)において、工程a)が行われる。液-液抽出セクション(2)はまた、頂部のところで工程b)の逆抽出セクション(6)に由来する中間ラフィネートによっておよび底部のところで抽出溶媒(3)によって給送される。抽出流れ(5)は、中間抽出物とも呼ばれるものであり、抽出セクション(2)の頂部のところで生じさせられる一方で、ラフィネート(4)は、抽出セクション(2)の底部のところで抜き出される。抽出流れ(5)は、底部のところで、工程b)の逆抽出セクション(6)に給送する。逆抽出セクション(6)は、頂部のところで、酸性水溶液(7)によって給送される。抽出物(8)は、逆抽出セクション(6)の頂部のところで抜き出される一方で、底部のところで中間ラフィネートが生じさせられる。前記中間ラフィネートは、液-液抽出セクション(2)に給送する。
【0070】
(実施例)
以下の実施例において、エタノール、アセトアルデヒド、水および不純物、特に非極性の不純物または低極性の不純物、例えばジエチルエーテル(不純物とみなされる)を、表1に与えられる組成で含んでおり3.65kg/時の重量による流量を有する水アルコール供給原料を処理する。
【0071】
【0072】
以下の実施例において、抽出および逆抽出のセクションを同一の以下の条件下に操作する:抽出および逆抽出のセクションの平均温度および逆抽出溶媒として用いられる酸性水溶液の酢酸の重量含有率のみが異なっている。
【0073】
抽出および逆抽出のカラムは相異なるカラムであり、いずれも、ECR Sulzerタイプであり、内部は40%のプレート開口を有し、内径は32mmであり、作用高さは1.8mである。
【0074】
抽出カラムに、底部のところでヘキサデカンを1.28kg/時の流量で給送する。逆抽出カラムに、頂部のところで酢酸によって酸性にされた水を給送し、この逆抽出溶媒の流量は0.56kg/時にある。
【0075】
抽出カラムを分散水相中で操作する。逆抽出カラムを連続水相中で操作する。
【0076】
撹拌速度を、両カラムにおいて、分散相の容積による割合が抽出カラムにおいて約15容積%および逆抽出カラムにおいて3容積%になるように調節する。
【0077】
抽出カラムは、頂部のところで抽出流れを生じさせ、抽出流れを、逆抽出カラムの底部のところに注入する。抽出カラムは、底部のところでエタノールおよびアセトアルデヒドを含んでいるラフィネートを生じさせる。逆抽出カラムは、カラムの頂部のところで抽出物をおよび底部のところで中間ラフィネートを生じさせ、中間ラフィネートを、抽出カラムの頂部のところに注入する。
【0078】
種々の実施例において、酸性水溶液(逆抽出溶媒)の酢酸濃度、それ故に、この酸性水溶液のpH、およびまた抽出および逆抽出のセクションの平均温度は変動する。下記の表2は、可変の操作条件および不純物ジエチルエーテルの抽出の効率およびジエチルアセタールの逆抽出の効率に関して得られた結果を要約する。
【0079】
ジエチルエーテル(DEE)の抽出の効率およびジエチルアセタール(DEA)の逆抽出の効率を、それぞれの例につい、説明中の上記に提示されたように、すなわち以下のように計算する。
【0080】
DEEの抽出の効率=[(抽出物のDEEの重量含有率)×(抽出物の重量による流量)/(水アルコール供給原料のDEEの重量含有率)×(水アルコール供給原料の重量による流量)]
逆抽出DEAの効率=1-[(抽出物のDEAの重量含有率)×(抽出物の重量による流量)/(中間抽出物のDEAの重量含有率)×(中間抽出物の重量による流量)]
抽出物および水アルコール供給原料のDEEの重量含有率および抽出物および中間抽出物のDEAの重量含有率をガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0081】
【0082】
実施例1は、従来技術による参照の場合を例証する。逆抽出溶媒の酢酸含有率3重量%および2つのカラムについての20℃に等しい操作温度により、ジエチルエーテル(DEE)の抽出の効率およびジエチルアセタール(DEA)の逆抽出の効率は、それぞれ、80重量%超(DEEの抽出の効率81%)であり、90重量%超(DEAの逆抽出の効率93%)であるため満足である。
【0083】
実施例2は、上記と同一の操作温度(両方のカラムにおいて20℃)において、逆抽出溶媒として用いられる酸性水溶液中の酢酸含有率が減少する(3重量%の代わりに1重量%)場合に、DEAの逆抽出の効率は大きく低下し、75重量%未満になることを示す。
【0084】
実施例3および4によると、両方のカラム(抽出および逆抽出)中の温度のジョイント増大、例えば実施例3についての40℃および実施例4についての50℃へのジョイント増大により、逆抽出の満足な効率(それぞれ92%および98%)を水性逆抽出溶媒中の低い酢酸含有率(1%)で取り戻すことが可能となる。しかしながら、DEEの抽出に関する効果は、DEEの抽出の効率が75%未満になるので有害である:より正確には、DEEの抽出の効率は、実施例3において72重量%であり、実施例4において43重量%である。
【0085】
実施例5は、本発明に合致するものであり、逆抽出溶媒として用いられる酸性水溶液中の酢酸の低い含有率の場合でも、抽出および逆抽出の間で2つの相異なる温度、特に、抽出カラム中の20℃の温度および逆抽出カラム中の50℃の平均温度を課すことにより、DEEの最適抽出を、81重量%に等しいDEEの抽出の効率で得ることおよびDEAの高い逆抽出を98重量%に等しいDEAの逆抽出の効率で得ることが可能となり、この逆抽出の効率は、従来技術による実施例1において得られた効率より高いことを明らかに実証する。
【0086】
それ故に、本発明による方法は、水、エタノール、アセトアルデヒドおよび不純物を含んでいる水アルコール供給原料を精製するために、非極性の不純物または低極性の不純物を最適な方法で抽出することおよび縮合した形態のエタノールおよびアセトアルデヒドの逆抽出を、大きく低減した酢酸の消費で改善することを可能にすることは明らかなようである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1】本発明による方法の配置を図表で非限定的に示す。
【国際調査報告】