(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】エンテロウイルス阻害薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4745 20060101AFI20220620BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20220620BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220620BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20220620BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61K31/4745
C07D471/04 112A
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563068
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2020086835
(87)【国際公開番号】W WO2020216349
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】201910346258.X
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519255447
【氏名又は名称】アカデミー オブ ミリタリー メディカル サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ ルイユアン
(72)【発明者】
【氏名】チョン トン
(72)【発明者】
【氏名】シア ニンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】リー ソン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065AA18
4C065BB09
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ04
4C065KK05
4C065LL01
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4C065PP12
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
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4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA34
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
本出願は、医療技術分野の範囲内であり、そして特に9-[3-(6-アミノ)-ピリジル]-1-[(3-トリフルオロメチル)-フェニル]ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-2(1H)-オン(式I)、及びその医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、又はその水和物若しくはその溶媒和化合物、及びその化合物を含む医薬組成物に関し、その組成物は幅広い範囲のウイルスに抵抗するために用いられ、そして特にエンテロウイルス感染を治療するためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iにより示される化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物又はその溶媒和化合物:
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物又はその溶媒和化合物を含む、医薬組成物であって、
好ましくは、前記医薬組成物がさらに医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含み、特に前記医薬組成物が固形製剤、注射剤、外用剤、噴霧剤、液体製剤、又は配合製剤である、医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬的に許容可能な塩が、無機又は有機酸によって形成される塩及び無機又は有機塩基によって形成される塩、例えば:ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、メグルミン塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、よう化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫化水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、トリメチル酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピクリン酸塩、アスパラギン酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート及びパモ酸塩を含む、請求項1に記載の化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくは溶媒和化合物、又は請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ウイルス、例えばエンテロウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスによりもたらされる感染症(例えば手足口病)の治療のための薬剤の製造における請求項1に記載の式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物、又は請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項5】
宿主細胞(例えば、哺乳動物の細胞)におけるエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスの複製を阻害することのための薬剤の製造における請求項1に記載の式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物、又は請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項6】
必要とする哺乳動物における疾病を治療すること及び/若しくは予防すること又は必要とする哺乳動物におけるエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/若しくは帯状疱疹ウイルスの複製を阻害することの方法であって、前記方法は、請求項1に記載の式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物、又は請求項2に記載の医薬組成物の治療及び/又は予防有効量を必要とする哺乳動物へ投与することを含み、ここで前記疾病はウイルス、例えばエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスによりもたらされる感染症(例えば、手足口病)を含む方法。
【請求項7】
ウイルス、例えばエンテロウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスによりもたらされる感染症(例えば、手足口病)の治療における使用のための、請求項1に記載の式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物、又は請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
宿主細胞(例えば、哺乳動物の細胞)におけるエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスの複製を阻害することにおいて使用するための、請求項1に記載の式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物、又は請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記エンテロウイルスがHEV-A、HEV-B、HEV-C又はHEV-Dサブタイプのウイルスである、請求項4~5のいずれか一項に記載の使用、請求項6に記載の方法、又は請求項7~8のいずれか一項に記載の化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物、又はその溶媒和化合物又は医薬組成物。
【請求項10】
前記エンテロウイルスがEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CA16、CA6、CA10、CB3又はEV71ウイルスである、請求項4~5のいずれか一項に記載の使用、請求項6に記載の方法、又は請求項7~8のいずれか一項に記載の化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物、又はその溶媒和化合物又は医薬組成物。
【請求項11】
前記エンテロウイルスがEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CB3又はEV71ウイルスである、請求項10に記載の使用、方法又は化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物又は医薬組成物。
【請求項12】
前記エンテロウイルスがEV-D68又はCB3ウイルスである、請求項11に記載の使用、方法又は化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物又は医薬組成物。
【請求項13】
標的細胞内のエンテロウイルスの複製を阻害することのための薬剤の製造における式Iの化合物、その立体異性体、その水和物又はその溶媒和化合物の使用であって、
好ましくは、前記エンテロウイルスがEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CA16、CA6、CA10、CB3又はEV71ウイルスである、
好ましくは、前記エンテロウイルスがEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CB3又はEV71ウイルスである、
好ましくは前記エンテロウイルスがEV-D68又はCB3ウイルスである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年4月26日に出願された中国特許番号第201910346258.X号からの優先権の利益に基づき、又は主張し、その開示はその全体において参照によって本明細書に取り込まれる。
【0002】
本出願は、医療技術分野に属し、そして、幅広い範囲のウイルス対策のための、特にエンテロウイルス感染によりもたらされる疾病の治療のための、具体的には9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オン(式I)、その立体異性体、その医薬的に許容可能な塩並びに/又はその溶媒和化合物及び/若しくはその水和物及び上記の化合物を含む医薬組成物の使用に関する。
【0003】
【背景技術】
【0004】
エンテロウイルスは、ピコルナウイルス科のエンテロウイルス属に属し、エンベロープのない、プラス鎖一本鎖RNAウイルスであり、主にポリオウイルス、コクサッキーウイルスA群、及びコクサッキーウイルスB群、エコーウイルス及び新規エンテロウイルスを含み、その中でコクサッキーウイルス及び新規エンテロウイルスは手足口病の主な病原体である。エンテロウイルス感染は、手足口病の重症例及び死の主要因である、ポリオのような重篤な神経学的合併症をもたらしうる。手足口病は、主にアジア太平洋地域において蔓延しており、そして台湾、シンガポール及びベトナムを含む多くの地域/国に大規模の蔓延がもたらされる。近年において、手足口病は中国大陸に広がり続けており、重症例及び死は年々増加しており、そして中国において子供の健康及び社会の安定性を深刻に脅かす公衆衛生上の問題になっており、それは地域社会の全ての区域からの大きな注意を引き付けている。一般的に言えば、ワクチンはウイルス感染性疾患と戦うために重要な手段であるが、手足口病は多数のエンテロウイルス感染により一般的にもたらされ、そしてワクチンは一つのエンテロウイルスのみと戦い、そして交差防御効果を欠いている。
【0005】
近年において、インフルエンザの頻発発生はヒト及び動物の生命及び健康を深刻に危機にさらしている。2003年末に発生した高病原性のトリのインフルエンザは、世界中の数千万もの家禽及び野鳥の死をもたらしただけでなく、250より多くの感染例がもたらされ、死亡率は60%に達していた。新型のA型インフルエンザは、2009年4月に北米で生じ、すぐに世界へと広がり、そして1万より多くの死をもたらした。人類は、ここ一世紀近くの間のインフルエンザには気付いているが、インフルエンザ(特に高病原性インフルエンザ)を予防すること及び治療することのための存在する医療技術は未だにとても弱い。インフルエンザ予防及び治療のために用いられうるわずかな薬物がある。その主なものは、3種類の薬物であり、M2イオンチャネル阻害薬のアマンタジン及びリマンタジン、(一般的に「タミフル」として知られている)ノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビル及びザナミビル、並びに幅広い範囲の抗ウイルス薬のリバビリンである。アマンタジンは何年もの間臨床的に用いられており、そしてインフルエンザ株の多くのサブタイプは、アマンタジンへの厳しい薬物耐性を発現させている。タミフルは高価であり、そしてタミフルへのウイルス耐性への報告は増加している。
【0006】
ヒトライノウイルス(HRV)は、一本鎖の小さなRNAウイルスの群であるピコルナウイルス科に属し、そして100より多くの血清型が今までのところ発見されている。HRVはヒトにおける風邪の主要因であり、そしてまた、急性及び慢性気管支炎並びに他の呼吸器疾患はHRVに関連している。ライノウイルス感染は自己限定的であるが、患者はぜんそく、鬱血性心不全、気管支拡張症、及び嚢胞性繊維症のような合併症を発生しうる。特に子供及び基礎疾患を有する者について、HRV感染は重篤な脳炎をもたらしうる。多数のHRV血清型のために、ワクチンを通じるHRV感染の予防は理論的に実現不可能である。インターフェロン(IFN)がHRV及び他のリボ核酸ウイルス感染を制御する主要物質として用いられうると一旦考えられたが、IFN治療は、確立したHRV感染に対して有効ではない。
【0007】
ヘルペスウイルス科はエンベロープ構造を有する二本鎖DNAウイルスの一種である。単純ヘルペスウイルス(HSV)は、天然において広く存在し、かつヒト及び多くの動物に感染しうるαサブファミリーに属し、そして特にヒトの皮膚組織に強い指向性を有する。ヘルペスウイルスは主に皮膚、粘膜及び神経組織を介して宿主に感染し、そして対応する病理学的な変化をもたらし、そしてヒトウイルス疾患の一般的な病原体である。単純ヘルペスウイルスは二つの血清型、HSV-1及びHSV-2に分けられうる。HSV-1はヒトの体に感染し、主に口唇ヘルペス、咽頭炎、角膜炎をもたらし、そしてまた散発性脳炎(sporadic encephalitis)及び他の重篤な疾病をもたらしうる。HSV-2は主に損傷した皮膚及び粘膜の感染を介して陰部ヘルペスをもたらしうる。近年、疫学調査においてHSV-1及びHSV-2が陰部ヘルペスをもたらす病原体の間で等しく重要であり、そして両方とも長期間体内で潜在的でありうることが分かった。潜在性感染過程の間、そのヘルペスウイルスのゲノムの構造及び機能は任意の方法において影響を受けず、又は破壊されず、そしてウイルス遺伝子転写及び発現に関した一連の制御は、低迷状態である。この過程において、完全なゲノム複製はないが、限定される局所的な遺伝子転写は存在し、そしてある条件下で増殖複製のステージに入る。今のところ、陰部ヘルペスの発生は迅速に増加し、そして容易に再発し、関連疾患の治療及び予防において大きな困難をもたらしている。
【0008】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、高伝染性の人畜伝染病の病原体の一種である、水疱性口内炎をもたらしうる。その発病後の臨床症状は、手足口病、ブタ水疱症、及びブタ水疱ヘルペスの臨床症状とよく似ており、そしてそれらを区別することはたいてい困難である。その主な臨床的な特徴は、口唇、蹄冠(coronets)及び乳房上の小疱、潰瘍及び疥癬の出現である。ただれ及び潰瘍によりもたらされる疼痛は、動物における食欲の欠失及び二次的な乳房炎をもたらし、それらは動物の生産性の減少、そして死でさえも導き、畜産業に深刻な経済的損失をもたらしている。また一方で、VSVはヒトに感染し、インフルエンザ様症状を、そして重症例において死すらもたらしうる。
【0009】
要約すると、幅広い範囲の抗ウイルス薬のような特定の小分子の開発が至急求められている。トーリン化合物(Torin compound)は、セリン/スレオニンプロテインキナーゼである、ATP類似体であり、またプロテインキナーゼBとしても既知である。それは、mTOR/AKTシグナル経路における重要な因子であり、一連の生理学的な活性、例えば、細胞増殖、分化、アポトーシス及び代謝において重要な役割を果たし、そして腫瘍の発生に密接に関連されている。現在のところ、その化合物は前臨床試験を経ている。
【0010】
上記の手足口病(HFMD)は、様々なエンテロウイルスによりもたらされる子供の感染疾患であり、糞口又は呼吸器飛沫を介して広がり、そしてまたその感染は感染した人の皮膚又は水膨れからの液体との接触を介して生じうる。手足口病をもたらすそのウイルスは、ヒトエンテロウイルス(HEV)に属し、それはHEV-A、HEV-B、HEV-C、及びHEV-Dの4つのサブタイプに分けることができるが、その中でエンテロウイルス71(EV71)及びコクサッキーウイルスA群16型(Cox Asckievirus 16,CA16)が最も多く見られる。過去半世紀において、世界中の多くの場所において手足口病の多くの発生があり、多くの国にわたって広がり、手足口病は世界的に懸念される疾病になった。1990年代において、アジア、特に東南アジアでは手足口病の発生のピークに直面し、EV71感染により締められる手足口病の大規模な流行が、中枢神経症状を引き起こし、そして死の大きな増加に繋がった。
【0011】
現在のところ、市場には、エンテロウイルスを効果的に阻害しうる特定の抗ウイルス薬はない。現在前臨床試験中の抗エンテロウイルス薬は、主に以下のカテゴリー:1)ウイルスの吸着及び侵入を標的にする抗ウイルス薬、例えば可溶性ヒトクラスBスカベンジャー受容体メンバー2(SCARB2)、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)、ヘパリン又はヘパリン類似体、及び唾液酸(Saliva acid);2)ウイルスの脱殻時期を標的にする抗ウイルス薬、例えば脱殻阻害薬、WIN51711、BPROZ-194、及びBPROZ-112;3)ウイルスのRNA翻訳時期を標的にする抗ウイルス薬、例えばキナクリン、及びアマンタジン;4)ウイルスのタンパク質プロセシング期を標的にする抗ウイルス薬、例えば、2AプロテアーゼLVLQTMの基質アナログ及び3Cタンパク質AG7088の不可逆的なペプチド阻害薬を含むが;しかしながら、それらの大半は、単一のウイルスサブタイプに作用し、そして幅広い特性を有さず、そしてエンテロウイルスの高い変異性のためにウイルス自身を標的にする抗ウイルス薬は薬剤耐性をもたらす傾向がある。また、加えて、エンテロウイルスに対するいくつかのワクチン、例えば組換えVP1タンパク質ワクチン及び組換えDNAワクチンは開発中である。しかしながら、短い適用時期及び低い適用規模のために、十分な臨床的なフィードバックが未だに不足している。
【発明の概要】
【0012】
(適用の概要)
本出願の目的は、エンテロウイルスの臨床治療のための薬物の不足の観点における、新型のエンテロウイルス阻害薬を提供することである。
【0013】
本出願において、9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オン
【化2】
はエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス及び帯状疱疹ウイルスにより感染した細胞を保護すること、並びにウイルス複製を阻害することの機能を有し、そしてエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス及び帯状疱疹ウイルスによりもたらされる疾病の治療において非常に良い効果を示し;特に重大な抗エンテロウイルス活性を有し、かつ新たな抗エンテロウイルス薬として開発することができ、そしてそれゆえ幅広い範囲の適用可能性を有することを創造的研究を通じて発見された。
【0014】
化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンは、宿主細胞における、エンテロウイルスEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CB3及びEV71ウイルスの増殖を著しく阻害する。
【0015】
化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンは、宿主細胞のmTORタンパク質を標的にすることができ、そして続いてPI3K/Akt/mTORシグナル経路を制御し、それによってエンテロウイルスの複製を阻害し、明白な抗ウイルス活性を有し、そして抗エンテロウイルス薬を調製するために用いられうる。
【0016】
本出願の第一の側面は、式I、又はその医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物又はその溶媒和化合物により示される化合物を提供する、
【化3】
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】化合物濃度-mTORキナーゼ阻害率のフィッティングカーブを示す。
【0018】
【
図2】ラパマイシン及び式Iの化合物のウエスタンブロット結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願の第二の側面は、本出願に記載される式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物、又はその溶媒和化合物を含む、医薬組成物を提供する。
【0020】
好ましい態様において、本出願の第二の側面において記載される本医薬組成物は、さらに、医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含む。本医薬組成物は、必要に応じて、固形製剤、注射剤、外用剤、噴霧剤、液体製剤又は配合製剤において作られうる。
【0021】
本出願に従い、式Iの化合物は、ウイルス感染によりもたらされる細胞変性効果(CPE)から細胞を保護し、細胞内のウイルス複製を阻害し、細胞培養物中のウイルス核酸負荷を減らし、そしてまたウイルス感染したマウスのための完全な保護を提供しうる。
【0022】
長期研究後、本出願の発明者は、細胞内の式Iの化合物の新たな特徴を発見した:第一にin vitroの抗ウイルス試験において、式Iの化合物はマイクロモル濃度でのエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス及び帯状疱疹ウイルスにより感染した細胞のCPEを減らしうる;
【0023】
第二に、式Iの化合物は、エンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス及び帯状疱疹ウイルスにより感染した細胞のウイルス核酸負荷レベルを減らしうる;
【0024】
第三に、式Iの化合物はマイクロモル濃度でのエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス及び帯状疱疹ウイルスにより感染したマウスへの完全な保護を提供しうる。
【0025】
本出願の第三の側面は、ウイルス、例えばエンテロウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスによりもたらされる感染性疾患(例えば手足口病)の治療のための薬剤の製造において本出願において記載される、式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物又はその溶媒和化合物又は医薬組成物の使用を提供する。
【0026】
本出願の第四の側面は、宿主細胞(例えば哺乳動物の細胞)におけるエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスの複製を阻害するための薬剤の製造において本出願において記載される、式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物又はその溶媒和化合物、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0027】
本出願の第五の側面は、必要とする哺乳動物の疾病を治療すること及び/又は予防することための方法又は必要とする哺乳動物のエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスの複製を阻害するための方法を提供し、その方法は、式Iの化合物、又はその医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物、又は本出願において記載される医薬組成物の治療及び/又は予防有効量を必要とする哺乳動物に投与することを含み、ここでその疾病は、ウイルス例えばエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び又は帯状疱疹ウイルスによりもたらされる感染性疾患(例えば手足口病)を含む。
【0028】
本出願の第六の側面は、ウイルス、例えば、エンテロウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスによりもたらされる感染性疾患(例えば、手足口病)の治療における使用のための、式Iの化合物、又はその医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物、又は本出願において記載される医薬組成物を提供する。
【0029】
本出願の第七の側面は、宿主細胞(例えば、哺乳動物の細胞)におけるエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び/又は帯状疱疹ウイルスの複製を阻害することにおける使用のための、式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物若しくはその溶媒和化合物、又は本出願において記載される医薬組成物を提供する。
【0030】
本出願の第八の側面は、標的細胞内のエンテロウイルスの複製を阻害することのための薬剤の製造における、本出願において記載される式Iの化合物、その立体異性体、その水和物又はその溶媒和化合物の使用を提供する。
【0031】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、HEV-A、HEV-B、HEV-C、又はHEV-Dサブタイプである。
【0032】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、EV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CA16、CA6、CA10、CB3、又はEV71ウイルスである。
【0033】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、EV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CB3、又はEV71ウイルスである。
【0034】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、EV-D68、又はCB3ウイルスである。
【0035】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、EV-D68である。
【0036】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、I/II/III型ポリオウイルスである。
【0037】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、CA16ウイルスである。
【0038】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、CA10ウイルスである。
【0039】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、CB3ウイルスである。
【0040】
ある態様において、本出願において記載されるエンテロウイルスは、EV71ウイルスである。
【0041】
本出願におけるI/II/III型ポリオウイルスは、ポリオウイルスI、ポリオウイルスII及びポリオウイルスIIIからなる群より選択される任意の型又はいずれか二つの型の混合した株又はいずれか三つの型の混合した株を意味する。
【0042】
また、本出願は、式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、及び/又はその医薬的に許容可能な溶媒和化合物又はその水和物、及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を意味する。
【0043】
また、本出願は、式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、及び/又はその医薬的に許容可能な溶媒和化合物又はその水和物、及び医薬的に許容可能な塩を含む、医薬組成物に関する。
【0044】
本出願において記載される式(I)の化合物の医薬的に許容可能な塩は、無機若しくは有機酸によって形成される塩、又は無機若しくは有機塩基によって形成される塩を含む。本出願は、これらに限定されないが:ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、メグルミン塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、よう化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫化水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、トリメチル酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸エステル塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピクリン酸塩、アスパラギン酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩を含む、上述の塩の全ての形態に関する。
【0045】
本出願において記載される医薬組成物は、様々な経路、例えば経口錠剤、カプセル剤、粉末剤、経口液剤、注射剤、及び経皮製剤を介して投与されうる。慣習の医薬的な行為に従い、医薬的に許容可能な担体は、希釈剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、潤滑剤、着色剤、芳香剤、又は他の慣習の添加剤を含む。典型的な医薬的に許容可能な担体は、例えば、微結晶性セルロース、デンプン、クロスポビドン、ポビドン、ポリビニルピロリドン、マルチトール、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム又はステアリン酸マグネシウム等を含む。
【0046】
本出願は、本出願において記載される式Iの化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物、又はその溶媒和化合物、及び少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物に関する。本医薬組成物は、異なる投与経路に従って様々な形態に調製されうる。化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンは、抗エンテロウイルスの治療のための、様々な医薬的に許容可能な製剤形態、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、経口液剤、注射剤にされうる。
【0047】
ある態様において、哺乳動物は、ウシ科、ウマ科、ヤギ亜科、イノシシ科、イヌ科、ネコ科、グリレス大目、霊長目を含み、その中で、哺乳動物はヒトであることが好ましい。
【0048】
本出願に従い、本医薬組成物は、いずれか一つの以下の経路において投与されうる:経口投与、噴霧吸入、直腸投与、経鼻投与、頬側投与、経腟投与、局所投与、非経口投与例えば皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、脳室内(intraventricular)、胸骨内及び頭蓋内の注射又は注入、又は移植片リザーバー(explant reser)の助けによる投与であって、ここで好ましい投与経路は経口、腹腔内又は静脈内投与である。
【0049】
経口投与される場合に、式Iの化合物は、これらに限定されないが、錠剤、カプセル剤、水性溶剤又は水性懸濁液を含む、経口許容可能な製剤の任意の形態において調製されうる。錠剤における使用のための担体は、また、ラクトース及びコーンスターチ、及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムを加えうる。カプセル剤における使用のための希釈剤は、一般的にラクトース及び乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液は、たいてい有効成分と適当な乳化剤及び適当な懸濁剤とを混合することによって用いられる。必要ならば、また、甘味料、香味料又は着色剤を添加でき、上記の経口調製形態に添加されうる。
【0050】
直腸的に投与される場合に、式Iの化合物は、一般的に、薬物と適当な非刺激性の賦形剤とを混合することによって調製される支持体の形態において調製されうる。本賦形剤は室温において固体状態において存在するが、直腸温度で溶解し、薬物を放出する。そのような賦形剤は、カカオバター、ミツロウ及びポリエチレングリコールを含む。
【0051】
局所投与される場合に、特に容易に到達可能な患部又は器官、例えば眼、皮膚、又は局所適用による下腹部の神経性疾患の治療のために、式Iの化合物を、異なる患部又は器官に従い、様々な形態の局所製剤において調製することができ、その特別な指示は以下のようである:
眼へ局所的に投与される場合に、式Iの化合物を、微粒化した懸濁物又は溶剤のような調製物の形態において製剤化することができ、用いられる担体は、あるpHを有する無菌の等張食塩水であり、ベンジルクロリドアルコキシド(benzyl chloride alkoxide)は、加えられうる又は加えられえない。加えて、眼への投与のために、また本化合物は、軟膏、例えばワセリン軟膏の形態において調製されうる。
【0052】
皮膚へ局所的に投与される場合に、式Iの化合物を、適当な形態、例えば軟膏、ローション、クリームにおいて調製することができ、ここで、その有効成分は一以上の担体において懸濁される、又は溶解される。軟膏における使用のための担体は、これらに限定されないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、乳化ろう、及び水を含む。ローション又はクリームにおける使用のための担体は、これらに限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、Tween-60、セチルエステルワックス、ヘキサデセニルアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を含む。
【0053】
下部消化管へ局所的に投与される場合に、式Iの化合物を、上記のような坐薬のような形態又はかん腸製剤の形態において調製することができ、また加えて、局所的な経皮パッチを用いうる。
【0054】
また、式Iの化合物を、無菌の注射可能な水性溶剤又は油性懸濁剤、又は無菌の注射可能な溶剤を含む、滅菌注射製剤の形態において投与することができ、ここで、使用可能な担体及び溶媒は、水、リンガー溶液及び等張の塩化ナトリウム溶液を含む。また、加えて、滅菌した非揮発性油、例えばモノグリセリド又はジグリセリドは溶媒又は懸濁媒として用いられうる。
【0055】
本明細書で記載されるように、「治療有効量」又は「予防有効量」は患者の疾病を治療又は予防するために十分であるが、合理的な医学的判断の範囲内で重大な副作用を防ぐために十分に低い量(合理的なベネフィット/リスク比)を意味する。本化合物の治療有効量は、因子、例えば、(例えば、化合物の効力、有効性及び半減期を考慮する)選択される特定の化合物、選択される投与経路、治療される疾病、治療される疾病の重篤性、及び治療される患者の年齢、サイズ、体重及び身体的疾患のような条件、治療される患者の病歴、治療の期間、併用療法の性質、所望される治療効果などで変化するだろうが、当業者によっていつでも日常的に決定されうる。
【0056】
加えて、異なる患者のための本適用において記載される式Iの化合物の特定の用量及び使用は、患者の年齢、体重、性別、自然な健康状態、栄養状態、化合物の活性の強さ、投与時期、代謝率、疾病の重篤度及び医師の客観的な判断を含む多くの因子に依存することに注意されるべきである。本明細書で、0.01~100mg/kg体重/日の用量を使用することが好ましい。
【0057】
薬物の上記の様々な製剤の形態は、製薬領域における慣習の方法に従って調製されうる。
【0058】
要約すると、先行技術と比較して、本適用は以下の利点及び効果を有する:
化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンは、エンテロウイルスEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CA16、CA6、CA10、CB3及びEV71ウイルスによりもたらされる細胞の感染、特にEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CB3及びEV71ウイルスによりもたらされる細胞の感染を阻害でき、そして幅広い範囲の抗ウイルス活性を有しうる。
【0059】
化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンは、宿主細胞のmTORタンパク質のATP結合領域に作用し、mTORタンパク質結合部位へのATPの結合することを競合的に阻害し、PI3K/Akt/mTORシグナル経路を遮り、そしてウイルスの転写及び複製を防ぎうる。
【0060】
(本適用を実施するための特定のモデル)
本適用の内容をよりよく理解するために、以下の試験及び結果を組み合わせ、さらに化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンの抗エンテロウイルス適用を示す。
【実施例】
【0061】
実施例1
化合物9-(6-アミノピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンの抗エンテロウイルス活性及び細胞毒性のin vitro試験
【0062】
本出願のin vitro抗ウイルス試験は、EV-D68、I/II/III型ポリオウイルス(3つのサブタイプの混合したワクチン株)、CA16、CA6、CA10、CB3(上記の全ての株はAcademy of Military Medical Sciencesにより提供され)、並びに(ATCCより購入した)EV71ウイルスを含む、様々なエンテロウイルスのサブタイプを含んでいた。その特定の方法を以下に示した。
【0063】
その中で、EV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CA16、CA6、CA10及びEV71ウイルスの活性を(ATCCより購入した)RD細胞によって試験した。その試験方法は以下の通りであった:
(1)化合物の溶解
(1)9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンの質量及び分子量に従って、試験される化合物をDMSOにおいて100mMに溶解した。
【0064】
(2)抗ウイルス活性のスクリーニング
(1)細胞維持溶液(DMEM+2%FBS、Gibco、カタログ番号:11995-065、1600-004)を用いて試験される化合物を希釈し、800μMの濃度にし、そして続いて試験される化合物を3倍勾配希釈にかけて、総数10の濃度に達し、そして続いてその希釈した化合物を白壁及び透明な底を有する96穴プレートにウエルごとに50μLずつ加えた。細胞コントロール群及びウイルスコントロール群の両方に、当量の細胞維持溶液を加えた。
(2)含まれるウイルスシードを-80℃から取り出し、室温で平衡化した。
(3)ウイルス増殖培地(DMEM+2%FBS、Gibco、カタログ番号:11995-065、1600-044)を用いてウイルスシードを希釈し100TCID50にして、そしてその希釈したウイルスシードを96ウエルプレート上に、ウエルごとに50μLずつ加えた。等量のウイルス増殖溶液を細胞コントロール群に加えた。
(4)RD細胞を1*105/mLの濃度で96ウエルプレート上にウエルごとに100μLずつ播種し、そしてウエルごとに200μLの最終容量に達した。その薬物の終濃度を前処理濃度の0.25倍にした。
(5)そのRD細胞を試験するために4日間37℃で培養した。
(6)CellTiter-Glo(登録商標)luminescent cell viability assay reagent(Promega)の緩衝液を暗条件下で基質と混合し、ワーキングソリューションを調製した。
(7)96ウエルプレート中の培養培地を捨て、そのプレートを軽くたたくことによって乾燥させ、100μLの検出試薬を各ウエルに加え、そしてその96ウエルプレートをオービタルシェーカーによって4分間振とうし、細胞溶解を誘導した。暗条件下で15分間シグナルを安定化した後に、その化学発光ユニットをMD5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて測定し、そしてそのプレート読み取りプログラムはCellTiter-Gloプリセットプログラムだった。
【0065】
ウイルスの阻害率を計算することのための式は:阻害率(%)=(試験群の値-ウイルス群の平均値)/(細胞コントロール群の平均値-ウイルス群の平均値)*100
だった。
【0066】
阻害率-濃度曲線を、origin8.0 softwareを用いることによってS-curveに適合し、そして試験される化合物のIC50値を計算した。
【0067】
(3)細胞毒性の決定
(1)細胞維持溶液を用いて、試験される化合物を希釈し、400μMの濃度にし、そして続いて試験される化合物を3倍勾配希釈し、総数10濃度に達した。
(2)希釈した化合物を白壁及び透明な底を有する96ウエルプレートに加え、ウエルごとに100μLずつにした。等量の細胞維持溶液を細胞コントロール群に加えた。
(3)RD細胞を96ウエルプレート上に1*105/mLの濃度で、ウエルごとに100μLずつ播種し、そしてウエルごとに200μLの最終容量に到達させた。薬剤の終濃度は、前処理濃度の0.5倍であった。
(4)RD細胞を37℃で4日間培養し、試験することに用いた。
(5)CellTiter-Glo(登録商標)luminescent cell viability assay reagentの緩衝液を暗条件下で基質と混合し、ワーキングソリューションを調製した。
(6)96ウエルプレート中の培養培地を捨て、そのプレートを軽くたたくことによって乾燥させ、100μLの検出試薬を各ウエルに加え、そしてその96ウエルプレートをオービタルシェーカーによって4分間振とうし、細胞溶解を誘導した。暗条件下で15分間シグナルを安定化した後に、その化学発光ユニットを測定し、そしてそのプレート読み取りプログラムはCellTiter-Gloプリセットプログラムだった。
【0068】
各希釈度での薬物の阻害率を計算することのための式は:阻害率(%)=(コントロール群の平均値-試験群の値)/(細胞コントロール群の平均値-試験群の最小値)*100
だった。
【0069】
(4)データ分析
阻害率-濃度曲線を、origin8.0 softwareを用いることによってS-curveに適合し、そして試験される化合物のIC50値を計算した。同じ方法を用いることによって、CC50値を計算し、そして、その選択指数SI=CC50/IC50をIC50及びCC50に基づいて計算した。
【0070】
CB3ウイルスの活性をvero細胞によって試験した。その試験方法は以下のようである:
(1)化合物の溶解
(1)9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンの質量及び分子量に従い、試験される化合物をDMSOによって溶解し100mMにした。
【0071】
(2)抗ウイルス活性のスクリーニング
(1)(ATCCより購入した)Vero細胞を白壁及び透明な底を有する96ウエルプレートに1*105/mLの濃度でウエルごとに100μLを24時間前に播種した。
(2)そのプレートをウエルごとに200μLのPBSにより三回洗浄し、その細胞維持溶液を最後の回に100μL/ウエルで加えた。
(3)その細胞維持溶液(DMSO+2%FBS,Gibco、カタログ番号:11995-065、1600-044)を用いて試験される化合物を希釈し、800μMの濃度にし、そして続いて試験される化合物を3倍勾配希釈にかけ、総10濃度に達した。続いて、希釈した化合物を96ウエルプレートに、ウエルごとに50μL加えた。細胞コントロール群及びウイルスコントロール群の両方に等量の細胞維持溶液を加えた。
(4)CB3ウイルスシードを-80℃からとり、そして室温で平衡化した。
(5)ウイルス増殖培地(DMEM+2%FBS,Gibco、カタログ番号:11995-065、1600-044)を用いてウイルスシードを100TCID50に希釈し、そして希釈したウイルスシードを96ウエルプレート上に加え、ウエルごとに50μLにした。等量のウイルス増殖溶液を細胞コントロール群に加え、ウエルごとの最終容量は200μLであり、そして薬物の終濃度は前処理濃度の0.25倍だった。
(6)Vero細胞を37℃で5日間試験のために培養した。
(7)CellTiter-Glo(登録商標)luminescent cell viability assay reagentの緩衝液を暗条件下で基質と混合し、ワーキングソリューションを調製した。96ウエルプレート中の培養培地を捨て、そのプレートを軽くたたくことによって乾燥させ、100μLの検出試薬を各ウエルに加え、そしてその96ウエルプレートをオービタルシェーカーによって4分間振とうし、細胞溶解を誘導した。暗条件下で15分間シグナルを安定化した後に、その化学発光ユニットを測定し、そしてそのプレート読み取りプログラムはCellTiter-Gloプリセットプログラムだった。
【0072】
ウイルスへの薬物の阻害率を計算することのための式は:阻害率(%)=(試験群の値-ウイルス群の平均値)/(細胞コントロール群の平均値-ウイルス群の平均値)*100
だった。
【0073】
阻害率-濃度曲線を、origin8.0 softwareを用いることによってS-curveに適合し、そして試験される化合物のIC50値を計算した。
【0074】
(3)細胞毒性の決定
(1)Vero細胞を白壁及び透明な底を有する96ウエルプレートに1*105/mLの濃度で24時間前に播種し、ウエルごとに100μLにした。
(2)そのプレートを三回、ウエルごとに200μLのPBSによって洗浄し、そして100μL/ウエルの細胞維持溶液を最後の回で加えた。
(3)細胞維持溶液を用いて試験される化合物を希釈し、400μMn濃度にし、そして続いて試験される化合物を3倍勾配希釈し、総10濃度に達した。その希釈した化合物を上記の96ウエルプレートに、ウエルごとに100μL加え、ウエルごとの最終容量を200μLにし、そして薬物のスフ濃度を前処理濃度の0.5倍にした。等量の細胞維持溶液を細胞コントロール群に加えた。
(4)Vero細胞を37℃で5日間試験のために培養した。
(5)CellTiter-Glo(登録商標)luminescent cell viability assay reagentの緩衝液を暗条件下で基質と混合し、ワーキングソリューションを調製した。
(6)96ウエルプレート中の培養培地を捨て、そのプレートを軽くたたくことによって乾燥させ、100μLの検出試薬を各ウエルに加え、そしてその96ウエルプレートをオービタルシェーカーによって4分間振とうし、細胞溶解を誘導した。暗条件下で15分間シグナルを安定化した後に、その化学発光ユニットをMD5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて測定し、そしてそのプレート読み取りプログラムはCellTiter-Gloプリセットプログラムだった。
【0075】
各希釈度での薬物の阻害率を以下の式に従って計算した:阻害率(%)=(細胞コントロール群の平均値-試験群の値)/(細胞コントロール群の平均値-試験群の最小値)*100
【0076】
(4)データ分析
【0077】
阻害率-濃度曲線を、origin8.0 softwareを用いることによってS-curveに適合し、そして試験される化合物のIC50値を計算した。同じ方法を用いることによって、CC50値を計算し、そして、その選択指数SI=CC50/IC50をIC50及びCC50に基づいて計算した。
【0078】
ウイルスに対する化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンの阻害活性の結果を以下の表1に示した:
【0079】
【0080】
本試験結果は化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンがエンテロウイルスEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CB3及びEV71への有意な阻害効果を有すること、そして高い選択安全性指数を有することを示した(表1)。これは、本化合物が二つのエンテロウイルスEVD68及びCB3に対する強力な阻害効果を有し、そして同時に確実な選択性を有することを示した。
【0081】
実施例2
【0082】
mTORキナーゼへの9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンの阻害活性の試験。
【0083】
実験方法:
反応バッファーの調製:
基礎緩衝組成物:50mM(mmol/L)HEPES(pH7.5)、1mM EGTA、0.01%Tween-20、10mM MnCl2、(用いる際に500mMより希釈した)2mM DTT。
(1) 基質緩衝液:1650μLの2.5×基質緩衝液を、1559.6μLの1×基礎緩衝液、89.2μLのGFP-4E-BP1(Thermo Fisherより購入した、18.5μMストック溶液、カタログ番号:PV4759)及び1.2μLのATP(10mM)から構成し、そして終濃度は0.4μM GFP-4E-BP1及び3μM ATPだった。
(2) mTORキナーゼ緩衝溶液:1650μLの2.5×mTORキナーゼ緩衝液を、1640.2μLの1×基礎緩衝液、及び9.8μLのmTOR(0.21mg/mLストック溶液)から構成し、そしてその終濃度は0.5μg/mLだった。
(3) 検出緩衝液:3960μLの2×検出緩衝液を、3797.1μLのTR-FRET緩衝希釈液(Thermo Fisherより購入したもの、カタログ番号:PV3574)、4.5μLのTb-抗-p4E-BP1抗体(Thermo Fisherより購入した、3.49μMストック溶液、カタログ番号:PV4745)、及び158μLのEDTA(500mMストック溶液)から構成し、そしてその終濃度は、2nM Tb-抗-p4E-BP1抗体及び10mM EDTAだった。
【0084】
試験手順:
(1) 5mMの試験される化合物を含む20μLの100%DMSO溶液を96ウエルプレートに加えた。
(2) その化合物をDMSOによって3回連続希釈した。
(3) 前手順の1μLの化合物をとり、19μLのmTORキナーゼ緩衝液により希釈し、そして別の96ウエルプレートに移した。
(4) 4μLの(Thermo Fisherより購入した、カタログ番号:PV4753)mTORキナーゼ溶液を384ウエルプレートに加えた。
(5) (3)において得られた2μLの化合物をとり、そしてmTORキナーゼ溶液を有する384ウエルプレートに加え、15分間室温でインキュベートした。
(6) 4μLの基質溶液を反応を開始するために加えた。
mTOR反応溶液の終濃度は、0.5μg/mL mTOR、0.4μM GFP-4E-BP1、3μM ATPだった。試験された化合物の終濃度は、50000、16666、5555、1851、617.3、205.8、68.58、22.86、7.62、2.54及び0.85nMだった。DMSO溶液の終濃度は1%だった。
(7) インキュベーションを室温で60分間行った。
(8) 10μLの検出バッファーを加えた。その終濃度は2nM Tb-抗-p4E-BP1抗体及び10mM EDTAだった。
(9) インキュベーションを室温で30分間行った。
(10) TR-FRET値をMD5マルチモードプレートリーダー(Molecular Devices)上で読み取った。その励起波長は340nmであり、その発光波長1は495nmであり、そしてその発光波長2は520nmだった。520nm/495nm読み取りの比をTR-FRET値として計算した。
【0085】
データ処理:
化合物のIC
50を非線形回帰式によってフィッティングした:
Y=Bottom+(Top-Bottom)/(1+10^((LogIC
50-X)*ヒルスロープ));
X:化合物濃度の常用対数値;Y:TR-FRET値(520nm/495nm)。
本試験結果を表2及び
図1に示した。
【0086】
【0087】
表2及び
図1の試験結果は、化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンがmTORキナーゼへの強力な阻害活性を有したことを示し、3.01nMのIC50を有しており、それはウイルス活性がmTORキナーゼ活性を阻害することにより阻害されるそのメカニズムがさらに検証された。
【0088】
実施例3
【0089】
mTORC1及びmTORC2への化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンの阻害活性の試験
【0090】
二つのmTOR複合体への合成化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンの阻害活性を試験するために、mTORC1及びmTORC2の阻害活性試験を実施した。mTORC1及びmTORC2が下流の基質のリン酸化を活性化することによって機能を働かせたので、mTORC1及びmTORC2への本化合物の阻害活性はmTORC1の下流の基質p70S6K1のThr389部位及びmTORC2の下流の基質AktのSer473のリン酸化レベルを検出することにより決定されると考えられる。
【0091】
試験方法:
化合物の前処理:
(1) RD細胞を10%FBS及び1×PS(各、100IU及び100μg/mLのペニシリン及びストレプトマイシン)を含むDEME培地中で37℃及び5%CO2で培養した。
(2) RD細胞(5×105細胞数/2mL培地)を6ウエルプレートに播種し、そして37℃及び5%CO2で24時間インキュベートした。
(3) その細胞をPBSによって一度洗浄し、そしてその細胞を栄養物を含まない無血清培地中で一晩培養した。
(4) 化合物の処方:
インスリン培地の処方:インスリンを10%FBS及び1×PSを含むDMEM培地中内で希釈し、インスリンの終濃度を167nMにした。
試験される化合物の前処理:その化合物をDMSO中に溶解し、試験される化合物の濃度を20mMにし、そして167nMインスリン培地中にその化合物を20μMの濃度に希釈した。
ラパマイシン溶液の調製:ラパマイシンをDMSO中に溶解し、10mMの濃度にし、そして167nMインスリン培地中にそのラパマイシンを20μMの濃度に希釈した。
(5) 各ウエル中の無血清培地を除去した。
(6) 2mLのDMSOを含む完全培地をコントロールキャリアとして各ウエルに添加した。DMSOの終濃度は0.2%だった。
(7) 2mLの20μMラパマイシン溶液及び2mLの20μMの試験される化合物を別々に指定したウエルに加えた。DMSOの終濃度は0.2%だった。
(8) その細胞を37℃及び5%CO2で2時間インキュベートした。
【0092】
タンパク質抽出及び濃度決定:
(1) その細胞を冷蔵したPBSによって一度洗浄し、そしてPBSを捨てた。
(2) 150μLの細胞抽出緩衝液(RIPA、APPLYGEN、カタログ番号:C1053)を各ウエル内に移し、細胞を溶解し、そして続いて生じた細胞溶液を30分間氷上でインキュベートした。
(3) 遠心分離を14000rpm(13000×g)で30分間4℃で行った。
(4) 上清を新たなエッペンドルフチューブに移し、そしてその細胞溶解物を-80℃で検査まで保存した。
(5) タンパク質濃度をBCA法によって決定した。
【0093】
(1) 100×プロテアーゼ阻害剤(Beyotime、カタログ番号:P1005):1mLの再蒸留水をプロテアーゼ阻害薬に加え、そしてその固形物が完全に溶解するまで穏やかに撹拌した。
(2) 溶解緩衝液:2mLの100×プロテアーゼ阻害剤及び2×ホスファターゼインヒビターカクテル錠PhosSTOP(Beyotime、カタログ番号:P1082)を100mLの細胞抽出物に加え、そしてそれが完全に溶解するまで穏やかに撹拌した。
(3) 電気泳動用ランニングバッファー:
10×MOPS緩衝液:52.33gのMOPS、30.29gのトリス塩基、10mLの0.5モル/L EDTA(pH 8.5)、及び5gのSDSを加え、400mLの再蒸留水に溶解し、溶解するまで撹拌し、7.5のpHに調節し、そして続いてその再蒸留水を加え、500mLの容量に到達させた;
1×MOPS:100mLの10×MOPSを、再蒸留水によって1000mLに希釈した。
(4) 1×トランスファーバッファー:100mLの(144gのグリシン、30.3gのトリス塩基、及び蒸留水を混合し1Lの容量に到達させた)10×トランスファーバッファー、及び400mLのメタノールを1500mLの再蒸留水に溶解し、そして続いて再蒸留水を加え2000mLの容量に到達させた。
(5) 10×PBS緩衝液(0.1M):PBS粉末(Solabio、カタログ番号:P1010)の5バッグを800mLの再蒸留水に加え、撹拌して溶解し、7.6のpHに調整し、そして続いて再蒸留水を加えて1000mLに到達させた。
(6) 1×PBS緩衝液:100mLの10×PBS緩衝液を再蒸留水によって1000mLに希釈した。
(7) 10% Tween-20:20mLのTween-20を180mLの再蒸留水に加え、そして十分に撹拌した。
(8) 1×PBST緩衝液:100mLの10×PBST緩衝液及び10mLのTween-20を混合し、そして再蒸留水によって1000mLに希釈した。
(9) 第一の抗体のインキュベーション:第一の抗体(Thermo Fisher、カタログ番号:B2H9L2及びPA5-85513)を0.1%Tween-20を含むブロッキング溶液(5%スキムミルク)によって1:1000の比で希釈した。
(10) 第二の抗体のインキュベーション:IRDye800CW ヤギ抗ウサギIgG(Abcam、カタログ番号:ab216773)を0.1%Tween-20を含むブロッキング緩衝液によって1:500の比で希釈した。
【0094】
ウエスタンブロット試験:
(1) 12μgの総タンパク質をSDS-PAGEの試料ウエルに加えた。電気泳動を120Vの一定電圧で青色のマーカーがゲルの末端に到達するまで行った。
(2) 120Vで、ゲル上のタンパク質をPVDF膜にBIO-RAD Trans-Blotを用いることによって40分間で移した。
(3) 移行後、ブロッキングバッファーを用いて室温で2時間ブロッキングを行った。
(4) その膜を対応する第一の抗体溶液によって定温度シェーカー上で4℃で一晩インキュベートした。
(5) その膜を1×PBST緩衝液によって3×10分間洗浄し、そして続いて第二の抗体溶液によって室温で1時間インキュベートした。
(6) その膜を1×PBST緩衝液によって3×10分間洗浄し、そしてOdyssey Infrared Imaging Systemによってスキャンし、現像した。
RD細胞を20μMのラパマイシン溶液及び20μMの式Iの化合物の溶液によって別々に処理し、そしてそのウエスタンブロット結果を
図2に示した。
【0095】
本試験結果は同じ検出条件下で、ラパマイシン及び化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンによって処理した細胞がp70のリン酸化発現レベルを著しく減らすことを示し、両方がmTORC1を阻害すると考えられることを示している。対照に、同じ条件下で、本化合物は、Aktのリン酸化レベルを著しく下方制御し、一方で陽性コントロールの薬物のラパマイシンは、Aktのリン酸化を阻害しないと考えられ、化合物9-(6-アミノ-ピリジン-3-イル)-1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-1H-ベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-オンがmTORC2を効果的に阻害しうる一方で、mTORC1を阻害することを示し、それによってmTOR阻害活性をよりよく発揮し、そして続いてウイルス複製及び増殖を阻害する。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iにより示される化合物、その医薬的に許容可能な塩、その立体異性体、その水和物又はその溶媒和化合物
を含む、ウイルスによってもたらされる感染性疾患を治療すること、又は宿主細胞におけるウイルスの複製を阻害することのための医薬組成物であって:
【化1】
ここで、前記ウイルスがエンテロウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス及び/又は帯状疱疹ウイルスである医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物がさらに医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含
む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が固形製剤、注射剤、外用剤、噴霧剤、液体製剤、又は配合製剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記エンテロウイルスがポリオウイルス、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルス、又は新規エンテロウイルスである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬的に許容可能な塩が、無機又は有機酸によって形成される塩及び無機又は有機塩基によって形成される塩を含む、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬的に許容可能な塩が、前記化合物のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、メグルミン塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、よう化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫化水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、トリメチル酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピクリン酸塩、アスパラギン酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホナート、p-トルエンスルホナート又はパモ酸塩である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記感染性疾患が手足口病である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記宿主細胞が哺乳動物の細胞である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記エンテロウイルスがHEV-A、HEV-B、HEV-C又はHEV-Dサブタイプのウイルスである、請求項
1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記エンテロウイルスがEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CA16、CA6、CA10、CB3又はEV71ウイルスである、請求項
1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記エンテロウイルスがEV-D68、I/II/III型ポリオウイルス、CB3又はEV71ウイルスである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記エンテロウイルスがEV-D68又はCB3ウイルスである、請求項11に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】