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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】密閉型電動機冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/18 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
H02K9/18 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563235
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2020029669
(87)【国際公開番号】W WO2020219781
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】62/838,147
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521301840
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・タイコ・アイピー・ホールディングス・エルエルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】ウォルゲムス,タイラー・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP06
5H609QQ03
5H609RR26
5H609RR31
5H609RR41
(57)【要約】
密閉型電動機(14)を冷却するためのシステムは、電動機冷却冷媒流路(24)に沿って配設されるように構成される密閉型電動機(14)のハウジング(60)を含む。ハウジング(60)は、密閉型電動機(14)の固定子(62)の少なくとも一部分を取り囲むように構成され、冷媒ループ(16)から冷媒を受け取るように構成された環状空洞(78)を含む。システムはまた、環状空洞(78)と固定子(62)との間に位置決めされるように構成されたスリーブ(72)であって、固定子(62)の中心軸(120)に概ね平行に向けられた複数の排出ポート(90)を含む、スリーブ(72)を含む。複数の排出ポート(90)は、冷媒を環状空洞(78)から固定子(62)に向かって排出するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉型電動機を冷却するためのシステムであって、
電動機冷却冷媒流路に沿って配設されるように構成された前記密閉型電動機のハウジングであって、冷媒ループから冷媒を受け取るように構成された環状空洞を含み、かつ前記密閉型電動機の固定子の少なくとも一部分を取り囲むように構成されている、ハウジングと、
前記環状空洞と前記固定子との間に位置決めされるように構成されたスリーブであって、前記固定子の中心軸に概ね平行に向けられ、前記環状空洞から前記固定子に向かって前記冷媒を排出するように構成された複数の排出ポートを含む、スリーブと、を備える、システム。
【請求項2】
前記複数の排出ポートが、前記スリーブの円周の周りに均一に間隔を置いている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の排出ポートが、前記スリーブの周りに非対称に間隔を置いているか、または
前記複数の排出ポートのうちの少なくとも1つの排出ポートが、前記複数の排出ポートのうちの別の排出ポートの断面積よりも大きいもしくは小さい断面積を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の排出ポートが、前記冷媒の第1の部分を前記環状空洞から前記固定子の第1の端部巻線に向かって誘導するように構成された第1の複数の排出ポートと、前記冷媒の第2の部分を前記環状空洞から前記固定子の第2の端部巻線に向かって誘導するように構成された第2の複数の排出ポートと、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の複数の排出ポートの第1の数量が、前記第2の複数の排出ポートの第2の数量よりも多いまたは少ない、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の複数の排出ポートが、前記第1の端部巻線に直接接触するように前記冷媒の前記第1の部分を誘導するように構成され、前記第2の複数の排出ポートが、前記第2の端部巻線に直接接触するように前記冷媒の前記第2の部分を誘導するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記固定子を備え、前記固定子が、前記固定子の一対の端部巻線間に軸方向に位置決めされた中央部分を備え、前記スリーブが、前記中央部分の第1の端部面から前記中央部分の第2の端部面に延在し、前記複数の排出ポートが、前記冷媒を前記固定子の前記一対の端部巻線にわたって誘導するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記電動機冷却冷媒流路を備え、前記電動機冷却冷媒流路が、前記冷媒ループに沿って配設された凝縮器から前記密閉型電動機に、かつ前記密閉型電動機から前記冷媒ループに戻るように前記冷媒を誘導するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記電動機冷却冷媒流路が、前記環状空洞を前記冷媒ループに流体的に結合する入口ラインを備え、かつ前記入口ラインに沿って配設され、前記入口ラインを介して前記環状空洞に入る前記冷媒の流れパラメータを制御するように構成された電子膨張弁を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記電動機冷却冷媒流路が、前記環状空洞に流体的に結合され、かつ前記環状空洞から前記密閉型電動機の軸受に向かって補助冷媒流を誘導するように構成された出口ラインを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記ハウジング内に形成され、かつ前記環状空洞と流体連通している出口ラインであって、前記冷媒の流れを前記環状空洞から受け取るように構成されている、出口ラインと、
前記ハウジング内に形成され、かつ前記出口ラインと流体連通している半径方向排出ポートであって、前記冷媒の前記流れを前記出口ラインから受け取り、前記冷媒の前記流れを前記固定子の端部巻線上に誘導するように構成されている、半径方向排出ポートと、を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記出口ラインに沿って配設され、かつ前記出口ラインを通って前記環状空洞から排出された前記冷媒の前記流れの流量を制御するように構成された電子膨張弁を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
圧縮機を介して、冷媒流を冷媒ループに沿って誘導することであって、前記圧縮機が、密閉型電動機によって駆動される、誘導することと、
前記冷媒流の一部分を前記冷媒ループから前記密閉型電動機のハウジング内に形成された環状空洞の中に進路変更させることであって、前記ハウジングが、前記密閉型電動機の固定子の少なくとも一部分を取り囲み、スリーブが、前記環状空洞と前記固定子との間に半径方向に位置決めされている、進路変更させることと、
前記スリーブ内に形成された複数の排出ポートを介して、前記冷媒流の前記部分のある量を前記環状空洞から前記固定子に向かって誘導することであって、前記複数の排出ポートが、前記固定子の中心軸に概ね平行に向けられている、誘導することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記ハウジング内に形成され、かつ前記環状空洞と流体連通している流出路を介して、前記冷媒流の前記部分の別個の量を前記環状空洞から前記ハウジング内に形成された半径方向排出ポートに誘導することと、
前記半径方向排出ポートを介して、前記冷媒流の前記部分の前記別個の量を、前記固定子の端部巻線に向かって、前記密閉型電動機の軸受に向かって、またはそれらの両方に誘導することと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記環状空洞に流体的に結合された膨張弁を介して、前記冷媒流の前記部分の流量、前記冷媒流の前記部分の圧力、前記冷媒流の前記部分の相組成、またはそれらの組み合わせを制御することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
密閉型電動機であって、
前記密閉型電動機の固定子の周りに配設され、その中に形成され、冷媒ループから冷媒を受け取るように構成された環状空洞を備えるハウジングと、
前記環状空洞と前記固定子との間に位置決めされたスリーブであって、前記スリーブが、前記固定子の中心軸に概ね平行に向けられた複数の排出ポートを備え、前記複数の排出ポートが、前記環状空洞から前記冷媒を受け取り、前記固定子に向かって前記冷媒を排出するように構成されている、スリーブと、を備える、密閉型電動機。
【請求項17】
前記複数の排出ポートが、前記冷媒の第1の部分を前記環状空洞から前記固定子の第1の端部巻線に向かって誘導するように構成された第1の群の排出ポートを備え、前記冷媒の第2の部分を前記環状空洞から、前記第1の端部巻線の反対側の、前記固定子の第2の端部巻線に向かって誘導するように構成された第2の群の排出ポートを備える、請求項16に記載の密閉型電動機。
【請求項18】
前記第1の群の排出ポートの累積断面積が、前記第2の群の排出ポートの累積断面積とは異なる、請求項17に記載の密閉型電動機。
【請求項19】
前記ハウジングが、その中に形成され、前記冷媒を前記ハウジングの内部から前記冷媒ループに沿って配設された蒸発器に向かって誘導されるように構成された排出管を備える、請求項16に記載の密閉型電動機。
【請求項20】
前記複数の排出ポートの各排出ポートが、各排出ポートによって画定されたそれぞれの流路が前記スリーブ内でかつ前記スリーブによって囲まれるように、前記スリーブを通って延在する、請求項16に記載の密閉型電動機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月24日に出願された「密閉型電動機冷却システム」と題する米国仮出願第62/838,147号からの優先権および利益を主張し、これらはあらゆる目的でその全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本項は、以下に説明される本開示の様々な態様に関し得る当技術分野の様々な態様を読み手に紹介することを意図する。この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を促進するために、読み手に背景技術の情報を提供するのに役立つと考えられる。したがって、これらの記述は、先行技術の承認事項としてではなく、この観点から読まれるべきであることを理解されたい。
【0003】
冷凍サイクルの圧縮機は、電気電動機によって回転され得るシャフトによって駆動される。シャフトに結合された回転子の回転を駆動する固定子を形成する一連の巻線を電流が通過するにつれて、熱(例えば、熱エネルギー)が発生する場合がある。回転子および固定子は電動機ハウジング内に収容されており、電動機の動作中に熱が発生するにつれて温度の上昇を受ける場合がある。いくつかの圧縮機では、回転子は電磁軸受によって支持される場合があり、電磁軸受が熱を発生させ、電動機ハウジング内の温度をさらに上昇させる場合もある。したがって、冷却システムを介して冷却流体を電動機に提供して、熱を除去し、過熱によって生じる電動機の性能低下または運転停止を回避することができる。残念なことに、冷凍サイクルの電動機用のいくつかの冷却システムは、冷凍サイクルで低圧冷媒が利用された場合、固定子の一部分に冷却流体流の低減を受ける場合がある。このように、既存の電動機冷却システムの動作限界により、固定子に沿って大きな温度勾配(例えば、ホットスポット)が発生し、それによって、圧縮機および/または冷凍システムの全動作範囲に影響を与える場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態では、密閉型電動機を冷却するためのシステムは、電動機冷却冷媒流路に沿って配設されるように構成される密閉型電動機のハウジングを含む。ハウジングは、密閉型電動機の固定子の少なくとも一部分を取り囲むように構成され、冷媒ループから冷媒を受け取るように構成された環状空洞を含む。システムはまた、環状空洞と固定子との間に位置決めされるように構成されたスリーブを含み、スリーブは、固定子の中心軸に概ね平行に向けられた複数の排出ポートを含む。複数の排出ポートは、環状空洞から固定子に向かって冷媒を排出するように構成される。
【0005】
1つの実施形態では、方法は、圧縮機を介して、冷媒流を冷媒ループに沿って誘導することであって、圧縮機が、密閉型電動機によって駆動される、誘導すること、を含む。本方法は、冷媒流の一部分を冷媒ループから密閉型電動機のハウジング内に形成された環状空洞の中に進路変更させることであって、ハウジングが、密閉型電動機の固定子の少なくとも一部分を取り囲み、かつスリーブが、環状空洞と固定子との間に半径方向に位置決めされる、進路変更させること、を含む。本方法は、さらに、スリーブ内に形成された複数の排出ポートを介して、冷媒流の部分のある量を環状空洞から固定子に向かって誘導することであって、複数の排出ポートが、固定子の中心軸に概ね平行に向けられる、誘導すること、を含む。
【0006】
1つの実施形態では、密閉型電動機は、密閉型電動機の固定子の周りに配設されたハウジングを含む。ハウジングは、その中に形成された環状空洞を含み、環状空洞は、冷媒ループから冷媒を受け取るように構成されている。密閉型電動機はまた、環状空洞と固定子との間に位置決めされたスリーブであって、固定子の中心軸に概ね平行に向けられた複数の排出ポートを含む、スリーブ、を含む。複数の排出ポートは、環状空洞から冷媒を受け取り、固定子に向かって冷媒を排出するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一態様による、改善された冷却システムを利用し得る密閉型電動機を有する暖房、換気、空調、および/または冷凍(HVAC&R)システムの一実施形態の概略図である。
図2】本開示の一態様による、改善された冷却システムを含む密閉型電動機の一実施形態の断面側面図である。
図3】本開示の一態様による、改善された冷却システムを含む密閉型電動機の一実施形態の、図2の線3-3内で取られた部分断面側面図である。
図4】本開示の一態様による、改善された冷却システムを含む密閉型電動機の一実施形態の、図2の線4-4内で取られた部分断面側面図である。
図5】本開示の一態様による、密閉型電動機用の固定子の一実施形態の正面図である。
図6】本開示の一態様による、改善された冷却システムを含む密閉型電動機の一実施形態の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の1つ以上の特定の実施形態について以下で説明する。説明されるこれらの実施形態は、本開示の技術の例にすぎない。加えて、これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装形態のすべての特徴が本明細書で説明されていない場合がある。いかなるそのような実際の実装形態の開発においても、あらゆるエンジニアリングまたは設計プロジェクトにおけるような、システム関連およびビジネス関連の制約への準拠など、開発者の特定の目標を達成するために、実装形態に特有の多数の決定を行う必要があり、これは実装形態によって変更される場合があることを理解されたい。さらに、そのような開発努力は複雑で時間がかかる場合があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとっては、設計、製作、および製造の日常業務であることを理解されたい。
【0009】
本開示の様々な実施形態の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、および「the」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することが意図される。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。加えて、本開示の「1つの実施形態」または「一実施形態」への言及は、記載された特徴も組み込まれる追加の実施形態の存在を除外するように解釈されることが意図されないことを理解されたい。
【0010】
電動機(例えば、密閉型電動機)は、暖房、換気、空調、および/または冷凍(HVAC&R)システムの圧縮機を駆動するために利用することができる。電動機に供給される電流からの巻線抵抗および渦電流損失の結果として、電動機は動作中に熱を生成する。電動機によって生成された熱は、電動機ハウジングに熱エネルギーを伝達し、それによって電動機の温度が上昇する。したがって、冷却システムの少なくとも一部分は、熱エネルギーを吸収し、電動機の温度を低減させる(例えば、電動機を冷却する)ために電動機ハウジング内に含まれ得る。いくつかの実施形態では、冷却システムは、HVAC&Rシステムの冷媒ループから電動機ハウジングの中に冷媒を循環させて、電動機ハウジング内の熱エネルギーを吸収する。例えば、冷媒(例えば、冷却システムの冷却流体)は、HVAC&Rシステムの凝縮器から、かつ電動機ハウジングの中に誘導されて、電動機の動作中に発生した熱エネルギーを吸収する。次いで、冷媒は、電動機からHVAC&Rシステムの冷媒ループに戻るように誘導され得る。
【0011】
場合によっては、凝縮器から電動機冷却システムに入る冷媒は、比較的低い圧力を有し得る。本明細書で使用されるとき、低圧冷媒は、ある圧力雰囲気下で約摂氏19度(華氏66度)の通常の沸点を有する冷媒を含み得る。本明細書で使用されるとき、「通常の沸点」は、ある圧力雰囲気下で測定された沸点温度を指し得る。結果として、電動機冷却システムは、電動機の固定子などの電動機ハウジング内の、ある特定の電動機構成要素に向かって不十分に冷媒を誘導する場合がある。実際、電動機冷却システム内で低圧冷媒を利用することは、例えば、固定子の端部巻線に向かって不十分な冷媒流を生じさせ、それによって、固定子の長さに沿って大きな温度勾配が発生する場合がある。したがって、典型的な電動機冷却システムは、低圧冷媒を使用する冷媒システムに十分な熱エネルギー移動を提供しない場合がある。
【0012】
本開示は、低圧冷媒がHVAC&Rシステムにおいて、特に電動機冷却に効果的に利用され得るように、固定子に沿った冷媒のさらにより均一な分配を促進するように構成される改善された電動機冷却システムに関する。したがって、改善された電動機冷却システムは、冷媒と電動機ハウジング内の電動機構成要素との間の熱エネルギー移動量を増加させ、それによって電動機の動作寿命および/または動作効率を向上させることができる。
【0013】
例えば、いくつかの実施形態では、改善された電動機冷却システムは、固定子と電動機ハウジングとの間に位置決めされるスリーブを含む。環状空洞は、電動機ハウジング内に形成されてもよく、かつスリーブと電動機ハウジングの内面との間に位置決めされてもよい。環状空洞は、HVAC&Rシステムから冷媒流を受け取るように構成され、スリーブ内に形成される複数の排出ポート(例えば、軸方向排出ポート)と流体連通している。動作中、冷媒は、排出ポートを介して環状空洞から排出され、それによって、冷媒が固定子の少なくとも一部分に直接接触して、固定子から熱エネルギーを吸収することを可能にする。実際、電動機冷却システムの排出ポートは、冷媒を固定子の特定の部分に向かって(例えば、固定子の端部巻線に向かって)誘導して、固定子にわたるさらにより均一な温度分布の発生を促進するように構成され得る。したがって、電動機冷却システムは、例えば、固定子の端部巻線での温度の急上昇(例えば、ホットスポット)を緩和または実質的に排除し得る。このように、本明細書で開示される電動機冷却システムの実施形態は、電動機の効率を改善し、圧縮機および/または冷凍システムの動作範囲を増加させることができる。
【0014】
本実施形態がシステムで使用され得る様態を示すのに役立つように、図1は、電動機14(例えば、密閉型電動機、電気電動機、油圧電動機、空気圧電動機など)によって駆動された圧縮機12を含む、暖房、換気、空調、および/または冷凍(HVAC&R)システム10の概略図である。図1で示される実施形態に示すように、圧縮機12は、冷媒ループ16に沿って配設され、圧縮機12は、冷媒ループ16内で冷媒を循環させるように構成される。圧縮機12から出る冷媒は、凝縮器18によって受け取られる。いくつかの実施形態では、凝縮器18は、空気が凝縮器18のコイルを越えて誘導されて、コイルを通って流れる冷媒から熱エネルギー(例えば、熱)を吸収するような空気冷却凝縮器である。他の実施形態では、凝縮器18は、冷媒を冷却流体(例えば、水)との熱交換関係に置く多管式熱交換器(shell and tube heat exchanger)であり得る。いずれの場合でも、冷媒は、熱エネルギーを凝縮器18の作動流体(例えば、空気、水、または別の適切な冷却流体)に伝達し、それによって、凝縮器18から出る冷媒の温度を低減させる。
【0015】
凝縮器18から出る冷媒は、冷媒ループ16に沿って膨張装置20に向かって続いていてもよい。膨張装置20は、冷媒の圧力を低減させるように構成され、これがまた、冷媒の温度をさらに低減させる。次いで、冷媒は、冷媒ループ16に沿って配設された蒸発器22に入る。蒸発器22を通って流れる冷媒は、作動流体(例えば、水および/または空気)から熱エネルギー(例えば、熱)を吸収する。いくつかの実施形態では、蒸発器22は、冷媒を冷却流体(例えば、水)との熱交換関係に置く多管式熱交換器である。他の実施形態では、蒸発器22は、冷媒を空気との熱交換関係に置く。蒸発器22の作動流体(例えば、水、空気、または別の適切な流体)は、建物、部屋、家、または別の調和された空間などの負荷を冷却するように構成され得る。次いで、蒸発器22から出る冷媒は、圧縮機12に再び入ることによって、冷媒ループ16を完了する。
【0016】
図1で示される実施形態に示すように、凝縮器18を出る冷媒の一部分は、T継手26(例えば、第1のT継手および/または第1の3方弁)を介して電動機冷却ループ24に進路変更され得る。弁28(例えば、ボール弁、蝶形弁、ゲート弁、グローブ弁、ダイヤフラム弁、および/または別の適切な弁)は、電動機冷却ループ24に沿って、電動機冷却ループ24を通る冷媒の流れに対してT継手26の下流に配設され得る。弁28は、冷媒ループ16から電動機冷却ループ24に進路変更される冷媒の量を調整するように構成され得る。いくつかの実施形態では、弁28はコントローラ30に結合されており、コントローラ30は、例えば、センサ29(例えば、赤外線カメラ、測温抵抗体、および/または熱電対などの温度センサ)によって監視された電動機14の温度に基づいて、弁28の位置を調整して、電動機冷却ループ24を通る冷媒の流れを制御するように構成される。電動機冷却ループ24を通って流れる冷媒は、電動機14のハウジング(例えば、図2を参照)の中に誘導されて、冷媒を電動機14の構成要素(例えば、固定子、回転子、および/または軸受)との熱交換関係に置く。したがって、冷媒は、電動機14から熱エネルギー(例えば、熱)を吸収して、電動機14の温度を低減させる。次いで、冷媒は、電動機14から冷媒ループ16に向かって戻るように誘導され、冷媒が蒸発器22に流れ込む。いくつかの実施形態では、電動機冷却ループ24は、ポンプ、エダクタ、圧縮機、または電動機冷却ループ24を通る冷媒の押し出しを促進する別の適切な装置などの流れ発生装置を含み得ることを理解されたい。
【0017】
図2は、電動機14を通る電動機冷却ループ24内の冷媒の流路を示す電動機14の一実施形態の断面側面図である。図3は、電動機14の一実施形態の、図2の線3-3内で取られた部分断面側面図であり、図4は、電動機14の一実施形態の、図2の線4-4内で取られた部分断面側面図である。図2図4について以下で同時に述べる。図2で示される実施形態に示すように、電動機14は、ハウジング60、ならびにハウジング60内に配設された、固定子62、シャフト66に結合された回転子64、および軸受68(例えば、玉軸受、スリーブ軸受、磁気軸受、または他の適切な軸受)を含む。固定子62の中央部分70は、固定子62とハウジング60との間に位置決めされるスリーブ72によって取り囲まれてもよい。特に、スリーブ72は、中央部分70の第1の端部面74から中央部分70の第2の端部面76まで中央部分70の長さに沿って延在し得る。電動機14は、ハウジング60内に形成され、ハウジング60の内面とスリーブ72との間に半径方向に延在する環状空洞78を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のシール80(例えば、Oリング、ガスケット)は、スリーブ72内に形成されたそれぞれの溝内に位置決めすることができ、環状空洞78とハウジング60の内部領域81との間に流体シールを形成するように構成される。しかしながら、他の実施形態では、シール80は、スリーブ72から省いてもよいことに留意されたい。実際、そのような実施形態では、スリーブ72自体は、(例えば、圧縮嵌合を介して)ハウジング60の内面に当接して、スリーブ72とハウジング60との間の境界面を介して、環状空洞78から内部領域81への流体の流れを実質的に遮断するように構成され得る。
【0018】
いずれの場合も、図示する実施形態に示すように、ハウジング60は、電動機冷却ループ24が環状空洞78に冷媒の流れを誘導することを可能にする入口ポート82を含む。すなわち、環状空洞78は、入口ポート82に結合されている電動機冷却ループ24の入口ライン84を介して電動機冷却ループ24と流体連通することができる。上述のように、いくつかの実施形態では、電動機冷却ループ24に入る冷媒は、凝縮器18から排出された冷媒の一部分を含み得る。実際、入口ライン84は、入口ライン84が実質的に液体状態(例えば、凝縮状態)で冷媒を受け取ることができるように、凝縮器18の一部分または凝縮器18の下流の冷媒ループ16の一部分に流体的に結合され得る。いくつかの実施形態では、電子膨張弁86は、入口ライン84に結合され、冷媒が入口ポート82を介して環状空洞78に入る前に、実質的に液体状態から蒸気状態または液体と蒸気との混合物へと膨張するように構成され得る。電子膨張弁86は、コントローラ30に通信可能に結合することができ、コントローラ30は、電子膨張弁86を操作(例えば、制御)して、蒸気状態へと膨張される冷媒の量を制御するように構成され得る。このように、電子膨張弁86は、環状空洞78に入る冷媒の相組成(例えば、蒸気冷媒と液体冷媒の比率)を制御するように(例えば、コントローラ30によって提供される信号を介して)動作可能である。加えてまたは代替として、コントローラ30は、電子膨張弁86を操作して、例えば、環状空洞78に入る冷媒の流量および/または環状空洞78内の冷媒の圧力を制御することができる。
【0019】
図3および4に示すように、スリーブ72は、環状空洞78と流体連通し、環状空洞78からハウジング60の内部領域81の中に冷媒を排出する(例えば、矢印91によって表される)ように構成される複数のポート90(例えば、軸方向排出ポート)または通路を含み得る。具体的には、スリーブ72は、スリーブ72の第1の端部部分93内に形成され、第1の端部面74に近接するポート92(図3)の第1の群と、スリーブ72の第2の端部部分95内に形成され、第2の端部面76に近接するポート94(図4)の第2の群と、を含み得る。このようにして、ポート92の第1の群は、固定子62の第1の端部巻線98に向かって、かつそれにわたって第1の方向96に冷媒の流れを排出することができ、一方、ポート94の第2の群は、固定子62の第2の端部巻線102に向かって、かつそれにわたって第1の方向96とは概ね反対の第2の方向100に冷媒の流れを排出することができる。したがって、冷媒は、電動機14の動作中に比較的大量の熱エネルギー(例えば、熱)が発生し得る第1および第2の端部巻線98、102、および特に端部巻線98、102の部分(例えば、端部巻線98、102の基部および/または遠位端)に直接接触し得る。したがって、冷媒は、第1および第2の端部巻線98、102から熱エネルギーを吸収して、第1の端部巻線98、固定子62の中央部分70、および第2の端部巻線98に沿った温度勾配が低減されるか、または実質的にごくわずかになることを確実にすることができる。ポート90の各々は、各ポート90に沿ったそれぞれの流路がスリーブ72によって囲まれるように、スリーブ72を通って延在することを理解されたい。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポート90は、固定子62の中心軸120に対して概ね平行に(例えば、5度以内に)延在し得る。本明細書で使用されるとき、「平行」または「概ね平行」という用語は、共通の方向に延在するが必ずしも数学的またはユークリッド(Euclidean)平行関係によって制約されない特徴または要素間の空間関係を指す。他の実施形態では、ポート90は、中心軸120に対してある角度で延在し得る。例えば、ポート92、94の第1および第2の群は、環状空洞78から第1の端部巻線98または第2の端部巻線102に向かってそれぞれ半径方向内側に延在し得る。いくつかの実施形態では、ポート92、94の第1および第2の群は、それぞれの冷媒流を異なる流量で排出するように構成され得る。例えば、以下で詳細に述べるように、ポート90の数量および/またはポート90のサイズは、ポート92の第1の群が、第1の流量(例えば、比較的大きな流量)で環状空洞78から冷媒を排出することを可能にするように調整することができ、一方、ポート94の第2の群は、第2の流量(例えば、比較的低い流量)で環状空洞78から冷媒を排出することができる。このようにして、電動機冷却ループ24は、固定子62の長さに沿って、および/またはハウジング60内の他の電動機構成要素(例えば、回転子64、シャフト66)全体にわたって、温度変動(例えば、ホットスポット)を緩和または実質的に低減するように構成され得る。すなわち、ポート90のサイズ、数、および/または他の構成は、より大きな流量の冷媒を、固定子62の部分および/または電動機14の動作中により大きな熱負荷を受けることが予想されるハウジング60内の他の電動機構成要素に向かって排出するように選択されるか、または付勢され得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、ポート90は、入口ライン84から環状空洞78に入る実質的にすべての冷媒を排出するように構成され得る。ある特定の実施形態では、環状空洞78は、ハウジング60内に形成され、環状空洞78から冷媒の少なくとも一部分を受け取るように構成される出口ライン128と流体連通していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、出口ライン128は、蒸発器22、または冷媒ループ16の別の適切な区域に流体的に結合することができ、冷媒の一部分を蒸発器22に戻すように排出するように構成され得る。例えば、弁は、環状空洞78から蒸発器22への冷媒排出の流量を制御するために使用することができる。
【0022】
他の実施形態では、出口ライン128は、環状空洞78から、かつ軸受68に向かって冷媒流を誘導し、それによって、冷媒が軸受68に接触し、軸受68から熱エネルギーを吸収することを可能にするように構成され得る。一例として、図示する実施形態では、出口ライン128は、軸受68のインペラ側軸受130に向かって延在し、その上に冷媒の流れを誘導するように構成される。実際、出口ライン128は、補助冷媒流(例えば、矢印131によって表される)をインペラ側軸受130上に誘導することができる。ある特定の実施形態では、流れ制御装置132(例えば、追加の電子膨張弁、無段階制御弁)は、出口ライン128に結合することができ、出口ライン128を介して環状空洞78から排出する冷媒の流量を調節するように動作可能である。
【0023】
ある特定の実施形態では、弁28(例えば、図1を参照)、電子膨張弁86、流れ制御装置132、またはそれらの組み合わせは、ポート90を通って排出される冷媒の流量を制御するように(例えば、コントローラ30を介して)動作可能であり得る。言い換えれば、電動機冷却ループ24は、電動機冷却ループ24のポート90を通る冷媒流を調節するように構成されるアクティブ制御システムを含み得る。一例として、(例えば、コントローラ30からの入力に基づいて)電子膨張弁86を開放位置に向かって移動すると、環状空洞78に入る冷媒の流量を増加させることができ、したがって、ポート90を通して排出される冷媒の流量および/または排出圧力を増加させることができる。逆に、(例えば、コントローラ30からの入力に基づいて)電子膨張弁86を閉鎖位置に向かって移動すると、環状空洞78に入る冷媒の流量を減少させることができ、したがって、ポート90を通して排出される冷媒の流量および/または排出圧力を減少させることができる。いくつかの実施形態では、弁28、電子膨張弁86、および/または流れ制御装置132は、電動機冷却ループ24から省いてもよいことに留意されたい。そのような実施形態では、ポート90を介して排出される冷媒の流量は、例えば、凝縮器18内の冷媒圧力に対応し得る。すなわち、そのような実施形態では、電動機冷却ループ24は、受動制御システムを含み、電動機冷却ループ24を通る冷媒流は、凝縮器18、または冷媒ループ16の別の部分内の冷媒パラメータ(例えば、冷媒圧力)に基づいて決定される。
【0024】
いずれの場合でも、ポート90から排出される冷媒は、固定子62の第1および第2の端部巻線98、102からなど、ハウジング60内の電動機構成要素から相当量の熱エネルギー(例えば、熱)を吸収することができ、これにより、冷媒が蒸発して、冷媒蒸気または冷媒蒸気と液体冷媒との混合物になり得る。したがって、ハウジング60は、冷媒蒸気がハウジング60の内部領域81から排出され、(例えば、導管を介して)冷媒ループ16に向かって戻るように流れることを可能にする排出管140を含み得る。加えて、ハウジング60はまた、液体冷媒が(例えば、導管を介して)内部領域81から冷媒ループ16に向かって戻るように流れることを可能にする排出口142を含み得る。冷媒がスリーブ72から排出管140および/または排出口142に向かって流れるとき、冷媒はさらに、回転子64および/または軸受68などのハウジング60内の電動機構成要素からの熱(例えば、熱エネルギー)と接触し、それを吸収することができることを理解されたい。
【0025】
図5は、スリーブ72内に形成されたポート92の第1の群を示す固定子62の一実施形態の正面図である。明確にするために、ポート94の第2の群がポート92の第1の群と実質的に同様の様態でスリーブ72内に形成および配置されてもよいことに留意されたい。しかしながら、簡潔にするために、ポート92の第1の群について図5を参照して以下で述べる。ポート92の第1の群は、固定子62の中心軸120の周りに、対称もしくは均一な配置、または非対称配置で配列され得る。いくつかの実施形態では、ポート90のある特定の部分は、これらのポート90を通る冷媒流を遮断するように構成されるプラグ144を含み得る。したがって、スリーブ72は、電動機14の動作中に固定子62の他の部分よりも高い熱負荷を受ける場合がある固定子62の特定の部分に向かって冷媒を排出するように付勢され得る。例えば、いくつかの実施形態では、実証実験(例えば、センサ29を介した熱データ収集)または計算モデリングソフトウェアを使用した熱分析を使用して、電動機14の動作中に、固定子62の第1の側面部分146が、第1の側面部分146とは反対側の固定子62の第2の側面部分148よりも少ない熱負荷を受けるかどうかを決定することができる。したがって、そのような実施形態では、第2の側面部分148の近くに位置決めされたポート90に結合されたプラグ144の数量よりも多くの数量のプラグ144が、第1の側面部分146の近くに位置決めされたポート90に結合され、それによって、固定子62の第2の側面部分148に向かって冷媒流を付勢し得る。実際に、試験または分析を実施して、別の部分よりも多いまたは少ない熱負荷を受ける固定子62の任意の部分を決定することができ、プラグ144は、必要に応じて、ポート90のうちの1つ以上とともに利用され得る。このようにして、スリーブ72を有するポート90の配置は、電動機14の動作中に固定子62にわたって実質的にまたはさらにより均一な温度分布を達成するように調整され得る。
【0026】
他の実施形態では、プラグ144を使用してスリーブ72からの冷媒流排出を付勢する代わりに、固定子62のある特定の部分に近いポート90の数量を増加または減少させてもよいことに留意されたい。すなわち、例えば、固定子62の第2の側面部分148に向かって冷媒流を付勢するために、第2の側面部分148の近くに位置決めされるか、またはそこに形成されるポート90の数量は、固定子62の第1の側面部分146の近くに位置決めされるか、またはそこに形成されるポート90の数量と比較して増加させてもよい。したがって、冷媒は、スリーブ72の第1の側面部分146の近くに排出する冷媒の流量よりも大きい流量で、固定子62の第2の側面部分148に近いスリーブ72から排出され得る。さらに、ある特定の実施形態では、冷媒流は、スリーブ72内に配列された様々なポート90の断面積を増加または減少させることによって、固定子62の、ある特定の部分に向かって付勢され得る。一例として、固定子62の第2の側面部分148に冷媒流を付勢するために、第2の側面部分148の近くに位置決めされたポート90の断面積は、固定子62の第1の側面部分146の近くに位置決めされたポート90の断面積と比較して増加させてもよい。
【0027】
これらの技術に従って、冷媒流はまた、特に、ポート92の第1の群および/またはポート94の第2の群の前述のパラメータへの調整を介して、固定子62の第1の端部巻線98または第2の端部巻線102に向かって付勢することができることを理解されたい。例えば、第1の端部巻線98に向かって冷媒流を付勢するために、第2の端部巻線102に向かって誘導され得る冷媒の流量と比較して、スリーブ72は、ポート94の第2の群に含まれるポート90の数量よりも、ポート92の第1の群内のポート90がより多くの数量を含むように製造され得る。加えてまたは代替として、ポート92の第1の群は、ポート94の第2の群の累積断面積(例えば、ポート94の第2の群内のポート90の複合断面積)よりも大きな累積断面積(例えば、ポート92の第1の群内のポート90の複合断面積)を有するように構成され得る。
【0028】
図6は、電動機14を通る電動機冷却ループ24内の冷媒の流路を示す電動機14の別の実施形態の断面側面図である。いくつかの実施形態では、示すように、電子膨張弁86は、環状空洞78が凝縮器18から液体冷媒または実質的に液体冷媒の流れを受け取ることができるように、電動機冷却ループ24の入口ライン84から省いてもよい。このように、環状空洞78内の冷媒の圧力、したがって、ポート90を介して環状空洞78から排出される冷媒の流量は、凝縮器18内の冷媒圧力に対応し得る。したがって、比較的高い凝縮器圧力によって、ポート90が比較的大きな冷媒流量(例えば、冷媒91)を排出することを可能にすることができ、一方、比較的低い凝縮器圧力によって、ポート90が比較的低い冷媒流量(例えば、冷媒91)を排出することを可能にすることができる。言い換えれば、電動機冷却ループ24は、凝縮器18の圧力の制御を介して受動的に制御され得る。ある特定の実施形態では、ポート90は、冷媒が固定子62の第1および第2の端部巻線98、102に沿って実質的に液体として流れ得るように、冷媒を液体状態で環状空洞78から排出し得る。他の実施形態では、ポート90を通して冷媒を誘導することにより、冷媒が気化し、したがって、ポート90が第1および第2の端部巻線98、102に向かって冷媒蒸気を排出することが可能になり得る。さらなる実施形態では、ポート90は、液体冷媒と冷媒蒸気との混合物を排出し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、示すように、電子膨張弁86は、入口ライン84の代わりに出口ライン128に流体的に結合され得る。電子膨張弁86は、環状空洞78から排出し、ハウジング60内に形成される第1の軸方向出口ライン150および/または第2の軸方向出口ライン152に流れ込む冷媒の流量を制御するように(例えば、コントローラ30を介して)動作可能であり得る。ある特定の実施形態では、電子膨張弁86は、冷媒が第1および第2の軸方向出口ライン150、152に入る前に、環状空洞78内の実質的な液体状態から蒸気状態、または液体と蒸気との混合物へと冷媒を膨張させる(例えば、気化させる)ように構成され得る。しかしながら、他の実施形態では、電子膨張弁86は、第1および/または第2の軸方向出口ライン150、152が冷媒流(例えば、実質的に液体冷媒流)を出口ライン128から直接受け取ることができるように、出口ライン128から省いてもよいことに留意されたい。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1の軸方向出口ライン150および第2の軸方向出口ライン152は、それぞれ、第1の半径方向排出ポート154および第2の半径方向排出ポート156と流体連通してもよく、これらは、第1および第2の軸方向出口ライン150、152から固定子62に向かって、またはハウジング60内の別の適切な電動機構成要素に向かって冷媒を排出するように構成される。例えば、第1の半径方向排出ポート154は、冷媒の第1の流れ(例えば、矢印158によって表される)を固定子62の第1の端部巻線98に向かって、およびそれにわたって誘導するように構成され得、第2の半径方向排出ポート156は、冷媒の第2の流れ(例えば、矢印160によって表される)を、固定子62の第2の端部巻線102に向かって、およびそれにわたって誘導するように構成され得る。ある特定の実施形態では、第1の軸方向出口ライン150は、第3の半径方向排出ポート162(例えば、中心軸120に向かって角度を付けられた入口ポート)と流体連通してもよく、第3の半径方向排出ポート162は、インペラ側軸受130に向かって冷媒(例えば、補助冷媒流131)を誘導するように構成され得る。
【0031】
図示する実施形態では、電動機14は3つの半径方向排出ポート(例えば、半径方向排出ポート154、156、162)を含むが、他の実施形態では、任意の適切な数量の半径方向排出ポートがハウジング60内に形成され、中心軸120の周りに位置決めされ得る。一例として、いくつかの実施形態では、電動機14は、冷媒の流れをハウジング60内に配設された様々な構成要素の上に、またはそれらに向かって誘導するように構成されるハウジング60内に形成された1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または6つ超の半径方向排出ポートを含み得る。さらに、他の実施形態では、第1の軸方向出口ライン150、第2の軸方向出口ライン152、またはそれらの両方は、電動機冷却ループ24から省いてもよいことに留意されたい。そのような実施形態では、出口ライン128に入る冷媒は、ハウジング60に結合された導管を介してなど、冷媒ループ16に向かって戻る方に向かって誘導することができ、冷媒は蒸発器22に流れ込む。さらなる実施形態では、出口ライン128は、入口ライン84を通って環状空洞78に入るすべての冷媒がポート90を介して内部領域81の中に排出するように、ハウジング60から省いてもよい。加えてまたは代替として、電動機14は、上述の電動機冷却特徴のうちの任意の1つまたは組み合わせを含み得る。
【0032】
上記のように、本開示の実施形態は、電動機14の固定子62に沿った温度勾配を緩和または実質的に排除するのに有用な1つ以上の技術的効果を提供することができる。より具体的には、開示される電動機冷却システムは、従来の電動機冷却システム内で低圧冷媒を使用する場合、典型的には不十分な冷媒流を受け取る固定子62の特定の部分(例えば、端部巻線98、102)に向かって冷媒流を誘導するように構成される。実際、本明細書で述べる改善された密閉型電動機冷却システムは、低圧冷媒がHVAC&Rシステム10の電動機冷却ループ24内で効果的利用されて、電動機14を冷却することができるように、固定子62にわたって冷媒がさらにより分配されることを促進する。このようにして、改善された電動機冷却システムは、ハウジング60内の冷媒と電動機構成要素(例えば、固定子62)との間の熱エネルギー移動量を増加させ、それによって電動機14の動作寿命および/または動作効率を向上させることができる。
【0033】
本開示のある特定の特徴および実施形態のみを図示および説明してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された主題の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状および比率、パラメータの値(温度、および圧力など)、取り付け配置、材料の使用、色、向きなどにおける変形形態などの多くの修正および変更を想到し得る。任意のプロセスまたは方法ステップの順番または順序は、代替的な実施形態に従って変更または再順序付けされ得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨に収まるものとして、そのようなすべての修正および変更を網羅することが意図されていることを理解されたい。さらに、例示的な実施形態の簡潔な説明を提供するために、本開示を実施する最良の形態に関係しないもの、または主張する実施形態を実現するのに関係しないものなど、実際の実装形態のすべての特徴が説明されていない場合がある。いかなるそのような実際の実装形態の開発においても、あらゆるエンジニアリングまたは設計プロジェクトにおけるように、実装形態に特有の多数の決定が行われ得ることを理解されたい。そのような開発努力は、複雑で時間がかかる場合があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとっては、過度の実験を伴わない設計、製作、および製造の日常業務であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】