(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】複合ブレードの修理方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20220620BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20220620BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20220620BHJP
B29C 73/02 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
F02C7/00 D
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F01D5/28
B29C73/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563278
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2020000145
(87)【国際公開番号】W WO2020217006
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テシェ,マルク-エマニュエル・ジャン・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】モスト,バンサン・ベルナール・セルジュ
【テーマコード(参考)】
3G202
4F213
【Fターム(参考)】
3G202BA02
3G202BA09
4F213AR07
4F213AR14
4F213WA53
4F213WA67
4F213WA94
4F213WB01
4F213WM01
(57)【要約】
本発明は、いわゆる軸線方向(X)に延びる複合材料からなるブレード(1)を修復する方法に関し、該ブレード(1)は、根元(2)とブレード(3)とを含み、該根元(2)の反対側の軸線方向端部は、修復されるべき領域を含み、該ブレード(3)は、内面(4)の表面および外面(5)の表面を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向(X)に延在する複合材料で作られたブレード(1)を修理する方法であって、前記ブレード(1)は、根元(2)と、根元(2)の反対側の軸線方向端部が修理されるべき領域を含むブレード(3)とを備え、前記ブレード(3)は、内面(4)と外面(5)とを備え、
a)ブレード(1)を工具(10)内に位置決めするステップと、
b)少なくとも第1の箔(14)および少なくとも第2の箔(14)を、修復されるべき端部領域のレベルに、それぞれブレード(3)の内面(4)の表面および外面(5)の表面上に位置決めするステップであって、ブレードの内面(4)および外面(5)のそれぞれにおいて、各箔(14)は、ブレード(3)の対応する先端部(6)を越えて軸線方向に延在し、工具(10)の基準に対して配置された軸線方向端部(2)を有し、各箔(14)の前記端部(16)は、修復されるべき領域の軸線方向端部を画定し、前記箔(14)は、それらの間に再充填体積(19)を画定するステップと、
c)再充填体積(19)を、非重合樹脂または複合再充填ペーストなどのペースト状または流体状の再充填材料(20)で充填して、それによって、再充填材料(20)が再充填体積(19)を越えて延在しないようにするステップと、
d)前記材料(20)を焼成または重合することによって再充填材料(20)を硬化させるステップと、
e)箔(14)を除去するステップと、
からなるステップを備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記工具(10)は、基準面を形成し、前記ブレード(1)を前記工具(10)内で軸方向に位置決めするように前記ブレード根元(2)と協働する支持面(12、12a)を備え、前記工具(10)は、前記ブレード(1)を前記工具(10)内で軸線方向(X)に垂直な方向(Y)に位置決めするように、前記ブレード(1)の根元(2)またはブレード(3)に当接することができる停止部(13)をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)は、ブレード(1)が工具(10)に取り付けられる間に実行されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記箔(14)は、ステップ(b)の間、ブレード(1)上の所定位置に固定され、前記ブレード(1)と箔(14)とによって形成されたアセンブリは、ステップ(c)の前に工具(10)から取り外されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)において、箔(14)が工具(10)の基準面に対して軸線方向に位置決めされることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、再充填体積(19)を越えて延在する過剰な再充填材料(20)が、レベリングまたはスクレイピングによって除去されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブレード(3)の対応する先端部(6)、前記基準面および前記箔(14)は、前記再充填体積(19)を区切り、前記材料(20)は、前記ステップ(c)において前記体積(19)内に挿入され、完全に充填されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項および請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記再充填材料(20)が熱硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
閉鎖壁(21)が、箔(14)の前記端部(16)を覆って、再充填体積(19)を閉鎖し、再充填材料(20)が、前記再充填体積(19)に挿入または注入されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、ターボ機械ブレード、特に複合材料ブレードの修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の開示
ターボ機械ファンは、典型的には、例えば複合材料製のブレードを具備するロータを備え、ファンは、ブレードの外端部または先端部と協働するように位置された摩耗性材料を具備する内壁を備えるファンケーシングによって囲まれている。
【0003】
ブレード先端と摩耗性材料との間に摩擦が発生すると、特にブレードが複合材料で作られている場合、ブレード先端が損傷する危険性がある。このような損傷は、前述の頂点とファンケースとの間に隙間を生じさせ、ターボ機械の性能に悪影響を及ぼす。
【0004】
このような性能の劣化を避けるために、損傷したブレードの先端を再構築することが想定される。例えば0.2mm程度の非常に小さい寸法公差が、このような再構成における明細書によって与えられる。1つの解決策は、ブレードの頂部に樹脂を添加し、次いで硬化した樹脂を所望の寸法に機械加工することである。このような解決策は、複合ブレードの場合に実施するのが困難であり、その理由は、樹脂で再充填されたブレード先端領域は、動作中に破損または剥離する傾向を有する可能性があるからである。機械加工。更に、このような方法は、高価なマシニングセンタの使用を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような欠点を、簡単で、信頼性があり、かつ安価な方法で改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、いわゆる軸線方向に延在する複合材料で作られたブレードを修理する方法であって、前記ブレードが根元部とブレードとを備え、前記ブレードの軸線方向端部は、根元の反対側に修理されるべき領域を備え、本方法は、
a)ブレードを工具内に位置決めするステップと、
b)少なくとも第1の箔および少なくとも第2の箔を、修復されるべき端部領域のレベルに、それぞれブレードの内面および外面上に位置決めするステップであって、ブレードの内面および外面のそれぞれにおいて、各箔は、ブレードの対応する端部を越えて軸線方向に延在し、工具の基準に対して位置決めされる軸線方向端部を備え、各箔の前記端部は、修復されるべき領域の軸線方向端部を画定し、前記箔は、それらの間に再充填体積を画定するステップと、
c)再充填体積を、未硬化樹脂または複合再充填ペーストなどのペースト状または流体状の再充填材料で充填し、それによって、再充填材料が再充填体積を越えて延在しないようにするステップと、
d)前記材料を焼成または重合させることによって再充填材料を硬化させるステップと、
e)箔を除去するステップと、
からなるステップを備えることを特徴とする。
【0007】
このようにして、再充填材料が再充填される領域の軸線方向寸法は、再充填体積を画定する箔によって与えられる。したがって、硬化材料の硬化後に機械加工操作を行う必要はなく、これは、マシニングセンタの使用と同様に、再充填領域への損傷のリスクを回避する。
【0008】
工具は、基準面を形成し、前記ブレードを工具内で軸線方向に位置決めするようにブレード根元と協働する支持面を備えることができ、工具は、軸線方向に垂直な方向に前記ブレードを工具内に位置決めするように、ブレード根元またはブレードに当接することができる停止部をさらに備える。
【0009】
ストッパは、例えば、ブレードの後縁に載置することができる。
【0010】
ブレード根元は、固定手段によって、工具の前記支持面および前記工具停止部と当接して保持されてもよい。固定手段は、ファスナを含むことができる。
【0011】
ブレード根元は、蟻継ぎ形状を有することができる。
【0012】
ステップ(c)は、ブレードが工具に取り付けられている間に実行できる。
【0013】
ステップ(b)において、前記箔は、ブレード上の所定の位置に固定することができ、前記ブレードおよび箔によって形成されたアセンブリは、ステップ(c)の前に、工具から取り外される。
【0014】
箔は、少なくとも1つのクランプのような固定装置によって、ブレード、特にブレードに固定することができる。
【0015】
ステップ(b)では、箔は、工具の基準面に対して軸線方向に位置決めすることができる。
【0016】
前記基準面は、例えば、ターボ機械のファンケースの摩耗性材料の表面をシミュレートすることができる。
【0017】
ステップ(c)では、再充填体積を越えて延在する過剰な再充填材料は、トリミングまたはスクレイピングによって除去することができる。
【0018】
シェービング工具またはスクレイピング工具は、余分な再充填材料を除去するために、箔の軸線方向端部に対して適用される、例えばシリコーンの可撓性部分を備えることができる。シェービングまたはスクレイピング作業は機械加工作業ではなく、このような作業は、このステップにおける再充填材料の流体またはペースト状の性質によって可能になる。
【0019】
再充填材料は、ヘラで再充填体積内に挿入することができる。
【0020】
ブレードの対応する端部と、基準面と、箔とは、閉鎖された再充填体積を画定し、材料は、ステップ(c)で前記閉鎖体積内に挿入されて、それを完全に充填する。
【0021】
このような方法は、再充填材料の硬化前にトリミングまたはスクレイピング工程を必要とせず、閉じられた再充填体積の寸法は所望の寸法に対応する。
【0022】
再充填材料は、シリンジを使用して再充填体積に注入することができる。
【0023】
再充填材料は、熱硬化性樹脂とすることができる。
【0024】
樹脂は、例えば、エポキシまたはポリウレタンベースの樹脂である。例えば、樹脂は、3mm未満の長さのガラス繊維のような短い強化繊維で充填される。あるいは、樹脂は、50~100ミクロンの直径を有するガラスビーズで充填されることができる。
【0025】
例えば、樹脂の収縮率は2%未満である。
【0026】
閉鎖壁は、再充填体積を閉鎖するように箔の前記端部を覆うことができ、再充填材料は、例えば、オリフィスまたは開口部を通して、前記再充填体積内に挿入または注入される。
【0027】
本発明は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる以下の説明を読むと、より良く理解され、本発明の他の詳細、特徴、および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、ブレードの修理方法の異なるステップを示す図である。
【
図2】工具に取り付けられたブレードの概略斜視図である。
【
図4】本方法における種々の連続した工程を示す、ブレード先端の概略図である。
【
図5】本方法における種々の連続した工程を示す、ブレード先端の概略図である。
【
図6】本方法における種々の連続した工程を示す、ブレード先端の概略図である。
【
図7】は、本発明の別の実施形態を示すブレード先端の概略図である。
【0029】
発明を実施するための形態
一実施形態による、ターボ機械用の複合ファンブレード1の修理方法が、
図1~
図6に概略的に示されている。
【0030】
ブレード1は、軸線Xに沿って延在し、
図2の底部に位置するダブテール形状のブレード根元2と、内面4の表面および外面5の表面を備える異形ブレード3とを備える。ブレード3は、ブレード根元2に連結された第1の軸線方向端部と、第1の端部とは反対の、先端部6(
図3)とも呼ばれる第2の軸線方向端部とを有する。根元2は、ブレードの先端部6に対向する2つの傾斜面7を有し、ファンのロータディスクの相補的な面との協働のための支持面を形成する。
【0031】
内面4の表面と外面5の表面は、前縁8と後縁9で会合する。前縁8は、ファンを通る気流の方向に対して、後縁9の上流に位置するものとする。
【0032】
ブレード1は、例えば、樹脂マトリックス中に埋め込まれた繊維布を含む複合材料から作られる。
【0033】
本発明による修理方法の目的は、ブレード1の先端6を損傷した後に、該先端部6の元の幾何学的形状を再構成することである。ブレード1の先端部6の再充填とも呼ばれる再構成は、例えば0.2mmのオーダーの元のブレード1と同じ寸法公差で行われなければならない。この再構成は、ブレード3の対応する先端部6とファンロータの軸との間の軸線方向距離、従ってブレード3の対応する先端部6とブレード根元2のベアリング面7との間の軸線方向距離の特に完全な制御を必要とする。
【0034】
本発明による修理方法は、まず、工具10内でブレード1を位置決めし、ロックする全ての工程(E1)を含む。
【0035】
工具10は、固定支持体11と、2つの支持領域12と、支持体11に対して固定された停止部材13とを備えている。
【0036】
各支持領域12は、
図2のX軸線に沿ったブレード1の変位を上方に制限するように、ブレード根元2の相補的な支持面7のための支持体またはベアリングを形成することを意図した傾斜面12aを含む。
【0037】
ブレード根元部2の後縁9を形成する下流端または先端部もまた、工具10の停止部材13に当接し、軸線Xに垂直な軸線Yに沿った工具10に対するブレード1の位置決めを確実にする。
【0038】
爪型のクランプのような係止手段は、ブレード根元2のベアリング面7を支持領域12のベアリング面12a上に保持するように、
図2において上方に向けられた軸力Fを発揮する。
【0039】
工具10はさらに、ブレード頂点領域6の両側に、すなわちブレード1の内面4の表面および外面5の表面に対して配置された箔14を含む。各箔14の形状は、ブレード1の内面4の表面または外面5の表面の形状に適合される。各箔14は、ブレードの根元2に対向する第1軸線方向端部15と、反対側の第2軸線方向端部16とを有する。箔14の残りの工具10に対する第2の軸線方向端部16の位置は、例えば、前記第2の端部16を支持体11の支持領域17に押し付けることによって制御される。つまり、箔14の支持面7と第2端部16との軸線方向距離を制御することができる。箔14の側エッジ18は、ブレード3の先端6の後エッジ9と前エッジ8で会合する。
【0040】
次に、ブレード3および箔14の損傷した先端6は、再構成されるべき体積19を区切る。
【0041】
箔14は、工具10と一体にすることも、ブレード1と一体にすることもできる。後者の場合、箔14は、例えば、クランプなどの任意の適切な手段によってブレード先端6にクランプすることができる。
【0042】
次いで、ブレード1および箔14を工具10から取り外すことができる。
【0043】
次に、前述の体積19にペースト状または流体状の再充填材料20を充填することができる(ステップE、
図1および
図4)。この材料20は、例えば熱硬化性樹脂、例えばエポキシまたはポリウレタン系樹脂である。例えば、樹脂は、3mm未満の長さのガラス繊維のような短い強化繊維で充填される。あるいは、樹脂は、50~100ミクロンの直径を有するガラスビーズで充填されることができる。
【0044】
余分な熱硬化性材料20は、箔14への損傷を避けるために、例えば、可撓性シリコーン工具とすることができる工具を使用して、シェービングまたはスクレイピング工程(工程E3、
図1および5)において除去されることができる。特に、箔14の第2端部16とブレード根元2の支持面7との間の寸法の変更を避ける必要がある。
【0045】
次に、再充填材料20は、例えば焼成工程(工程E4、
図1)において、重合によって硬化される。このステップにおいて、再充填材料は、例えば、2%未満の収縮率を有する。箔14の第2の端部16の位置は、そのような収縮を考慮に入れるか、または予想するように調整することができ、したがって、収縮および硬化後に所望の寸法を得ることができる。
【0046】
次いで、箔14を除去することができ(ステップE5、
図1および6)、それにより、補修されたブレード1、すなわち、損傷した先端部6が再構成、再装填または再構築されたブレード1が、ブレード1の元の寸法を寸法許容範囲内で回復するようになる。
【0047】
図7に示される別の実施形態によれば、閉鎖壁21は、再構成されるべき体積19を閉鎖するように箔14の第2の端部16を覆うことができる。再充填材料20は、例えば、注射器によって、開口21aを通して前記体積19に挿入又は注入され、前記体積19を完全に満たすことができる。ブレード1、箔14、および閉鎖壁21は、再充填材料20を前記体積内に挿入または注入するステップの間、工具10の残りの部分の所定位置に保持することができる。
【0048】
次いで、前記材料20を、例えば焼成によって硬化させ、次いで再構成されたブレード1を工具10から取り外すことができる。
【国際調査報告】