(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】コーティングされた活性粒子を有する電着性電池電極コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220620BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220620BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220620BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220620BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220620BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220620BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220620BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220620BHJP
H01G 11/02 20130101ALI20220620BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20220620BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20220620BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20220620BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20220620BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20220620BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20220620BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20220620BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20220620BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220620BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20220620BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20220620BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/38
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01G11/02
H01G11/46
H01G11/32
H01G11/50
H01G11/86
H01G11/68
H01G11/70
H01G11/06
H01M4/131
H01M4/134
H01M4/136
H01G11/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563282
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020019667
(87)【国際公開番号】W WO2020219158
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】オークス, ランドン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘルリング, スチュアート ディー.
(72)【発明者】
【氏名】オーラー, ヘイリー エル.
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AA02
5E078AA05
5E078AB01
5E078AB02
5E078AB03
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5E078BA27
5E078BA44
5E078BA47
5E078BA52
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5E078BA55
5E078BA60
5E078BB36
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5E078HA03
5E078HA05
5H017AA03
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5H050CB12
5H050DA09
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5H050EA01
5H050EA08
5H050EA12
5H050EA15
5H050EA24
5H050GA22
(57)【要約】
本発明は、保護コーティングを含む電気化学的活物質と、電着性結合剤と、水性媒体とを含む電着性コーティング組成物を対象とする。また本明細書には、基材をコーティングする方法、ならびにコーティングされた基材および蓄電装置も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着性コーティング組成物であって、
保護コーティングを含む電気化学的活物質と、
電着性結合剤と、
水性媒体とを含む、電着性コーティング組成物。
【請求項2】
前記保護コーティングが、金属化合物または複合体を含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項3】
前記金属化合物または複合体が、(i)金属カルコゲン、(ii)金属プニクトゲン、(iii)金属ハロゲン化物、(iv)金属オキシハロゲン化物、(v)金属オキシ窒化物、(vi)金属リン酸塩、(vi)金属炭化物、(vii)金属オキシ炭化物、(viii)金属炭素窒化物、(ix)橄欖石、(x)ナシコン型構造、(xi)多金属イオン構造、(xii)金属有機構造もしくは複合体、(xiii)多金属有機構造もしくは複合体、または(xiv)金属炭素系コーティングを含む、請求項2に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項4】
前記保護コーティングが、金属酸化物コーティングを含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物コーティングの前記金属酸化物が、チタンの酸化物を含む、請求項4に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項6】
前記チタンの酸化物が、チタニアを含む、請求項5に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物コーティングの前記金属酸化物が、アルミニウムの酸化物を含む、請求項4に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項8】
前記アルミニウムの酸化物が、アルミナを含む、請求項7に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物コーティングが、シリカを含む、請求項4に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項10】
前記金属酸化物コーティングが、ジルコニアを含む、請求項4に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項11】
前記保護コーティングが、炭素系コーティングを含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項12】
前記炭素系コーティングが、金属炭酸塩を含む、請求項11に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項13】
前記炭素系コーティングが、炭酸リチウムを含む、請求項12に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項14】
前記保護コーティングが、非金属化合物または複合体を含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項15】
前記非金属化合物または複合体が、(i)非金属酸化物、(ii)非金属窒化物、(iii)非金属炭素窒化物、(iv)非金属フッ化物、(v)非金属有機構造もしくは複合体、(vi)または非金属オキシフッ化物を含む、請求項14に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項16】
前記電気化学的活物質が、リチウムを組み込むことができる材料を含み、前記リチウムを組み込むことができる材料が、LiCoO
2、LiNiO
2、LiFePO
4、LiCoPO
4、LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li(NiMnCo)O
2、Li(NiCoAl)O
2、炭素被覆LiFePO
4、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項17】
前記電気化学的活物質が、リチウム変換可能な材料を含み、前記リチウム変換可能な材料が、硫黄、LiO
2、FeF
2およびFeF
3、Si、アルミニウム、スズ、SnCo、Fe
3O
4、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項18】
前記電着性結合剤が、フルオロポリマーを含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項19】
前記電着性結合剤が、分散剤をさらに含む、請求項18に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項20】
前記電着性結合剤が、pH依存性レオロジー修飾剤を含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項21】
前記pH依存性レオロジー修飾剤が、アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤を含む、請求項20に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項22】
前記pH依存性レオロジー修飾剤が、酸膨潤性レオロジー修飾剤を含む、請求項20に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項23】
硬化剤をさらに含む、請求項20に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項24】
前記電着性結合剤が、イオン性フィルム形成樹脂を含む、請求項1に記載の電着性コーティング組成物。
【請求項25】
基材をコーティングする方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の電着性コーティング組成物を基材上に電気泳動的に堆積させるステップを含む、方法。
【請求項26】
集電体と、前記集電体の少なくとも一部分に形成されたコーティングと、を備える、コーティングされた基材であって、前記コーティングが、請求項1に記載の電着性コーティング組成物から堆積される、コーティングされた基材。
【請求項27】
前記集電体が、アルミニウム、銅、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、導電性炭素、導電性プライマーコーティング、または導電性多孔質ポリマーを含む、請求項26に記載のコーティングされた基材。
【請求項28】
前記コーティングされた基材が、正極を含む、請求項26に記載のコーティングされた基材。
【請求項29】
前記コーティングされた基材が、負極を含む、請求項26に記載のコーティングされた基材。
【請求項30】
前記集電体が、前処理組成物で前処理される、請求項26に記載のコーティングされた基材。
【請求項31】
蓄電装置であって、
(a)請求項26に記載のコーティングされた基材を含む電極と、
(b)対電極と、
(c)電解質と、を備える、蓄電装置。
【請求項32】
前記蓄電装置がセルを備える、請求項31に記載の蓄電装置。
【請求項33】
前記蓄電装置が、電池パックを備える、請求項31に記載の蓄電装置。
【請求項34】
前記蓄電装置が、二次電池を備える、請求項31に記載の蓄電装置。
【請求項35】
前記蓄電装置が、コンデンサを備える、請求項31に記載の蓄電装置。
【請求項36】
前記蓄電装置が、超コンデンサを備える、請求項31に記載の蓄電装置。
【請求項37】
前記蓄電装置が、擬似コンデンサを備える、請求項31に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府による支援の通知
本発明は、エネルギー省によって付与された政府契約第DE-EE0007266号に基づく政府の支援を受けて行われたものである。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、コーティングされた活性粒子を有する電着性コーティング組成物、および水溶性電着によって塗布される電池電極コーティングを対象とする。
【背景技術】
【0003】
背景情報
エレクトロニクス業界では、小型で軽量な電池を電源とするより小型の装置を製造する傾向がある。炭素質材料などの負極、およびリチウム金属酸化物などの正極を有する電池は、比較的高い電力および低い重量を提供することができる。このような電極を製造するための結合剤は、通常、溶媒溶解性または水溶性スラリーの形態で負極または正極と組み合わされる。溶媒溶解性スラリーは、安全、健康、および環境の危険性をもたらす。多くの有機溶媒は、毒性および可燃性であり、本来は揮発性であり、発癌性を有し、リスクを軽減して環境汚染を低減するための特別な製造制御を伴い、水溶性スラリーは、水にさらされることによる活物質の劣化に部分的に起因して、接着性および/または電池性能の低い満足のいかない電極を製造することがしばしばある。一度塗布すると、結合した構成成分は、電極内の相互接続性を失うことなく、充電および放電サイクル中の大きな体積膨張および収縮に耐えることができなければならない。電極内を電子が移動しなければならず、リチウムイオン移動性は、粒子間の電極内の相互接続性を必要とするため、電極内の活性構成成分の相互接続性は、特に充放電サイクル中の電池性能において非常に重要である。特に、発がん性材料の使用および環境汚染をすることなく、電池性能を向上させることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本明細書に開示されるのは、保護コーティングを含む電気化学的活物質と、電着性結合剤と、水性媒体と、を含む、電着性コーティング組成物である。
【0005】
また、基材をコーティングする方法が本明細書に開示され、本方法は、保護コーティングを含む電気化学的活物質、電着性結合剤、および水性媒体を含む電着性コーティング組成物を基材上に電気泳動的に堆積させることを含む。
【0006】
コーティングされた基材が本明細書にさらに開示され、本コーティングされた基材は、集電体、および集電体の少なくとも一部分に形成されたコーティングを含み、コーティングは、保護コーティングを含む電気化学的活物質、電着性結合剤、および水性媒体を含む、電着性コーティング組成物から堆積される。
【0007】
蓄電装置がさらに本明細書に開示され、本蓄電装置は、(a)集電体と、集電体の少なくとも一部分上に形成されたコーティングと、を含む電極であって、コーティングが、保護コーティングを含む電気化学的活物質と、電着性結合剤と、水性媒体とを含む電着性コーティング組成物から堆積される、電極と、(b)対電極と、(c)電解質とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
上述したように、本発明は、保護コーティングを含む電気化学的活物質と、電着性結合剤と、水性媒体とを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる電着性コーティング組成物を対象とする。
【0009】
本発明によれば、「電着性コーティング組成物」という用語は、印加された電位の影響下で導電性基材上に堆積させることができる組成物を指す。
【0010】
本発明によれば、電着性コーティング組成物は、保護コーティングを含む電気化学的活物質を含む。本明細書で使用される場合、「保護コーティング」という用語は、下層材料を損傷する刺激(例えば、湿気、紫外線、熱、pHなど)への曝露から、下層材料への損傷を抑制または防止することを意図して、別の材料の表面に塗布される材料の層を指す。特に、本発明の保護コーティングは、電着プロセス中に生じる水性媒体の顕著なpH変化への曝露を含む、電着性コーティング組成物の水性媒体への曝露による下層電気化学的活物質の劣化を防止する。保護コーティングは、活物質のそのような劣化を防止する任意の材料を含み得る。保護コーティングは、例えば、(i)金属酸化物、金属硫化物、もしくは金属硫酸塩などの金属カルコゲン、(ii)金属窒化物などの金属プニクトゲン、(iii)金属フッ化物などの金属ハロゲン化物、(iv)金属オキシフッ化物などの金属オキシハロゲン化物、(v)金属オキシ窒化物、(vi)金属リン酸塩、(vi)金属炭化物、(vii)金属オキシ炭化物、(viii)金属炭素窒化物、(ix)橄欖石、(x)ナシコン型構造、(xi)多金属イオン構造、(xii)金属有機構造もしくは複合体、(xiii)多金属有機構造もしくは複合体、または(xiv)金属炭酸塩などの炭素系コーティングなどの金属化合物または複合体を含み得る。金属化合物または複合体を形成するために使用され得る金属としては、アルカリ金属、遷移金属、ランタン、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、ガリウム、アルミニウム、およびインジウムが挙げられる。金属はまた、ホウ素および/または炭素と化合されてもよい。保護コーティングは、例えば、(i)非金属酸化物、(ii)非金属窒化物、(iii)非金属炭素窒化物、(iv)非金属フッ化物、(v)非金属有機構造もしくは複合体、(vi)または非金属オキシフッ化物などの非金属化合物もしくは複合体を含み得る。保護コーティングはまた、電気化学的活物質が2つまたは2つより多くの異なる保護コーティング材料でコーティングされるこれらの保護材料の組み合わせを含み得る。保護コーティングを含む電気化学的活物質は、異なる保護コーティングによってコーティングされた電気化学的活物質の混合物も含み得る。
【0011】
保護コーティング材料は、保護コーティングが、活物質の水性媒体への直接的な曝露を抑制するのに十分に非多孔質であるが、コーティングを通してリチウムイオン移動性を保持するように選択され得る。保護コーティングは、電着性コーティング組成物中の水または他の処理ステップに存在する外来水が活物質に接触することを防止することができる。保護コーティングは、電気化学的活物質の表面上の少なくとも部分的なコーティングを含み、電気化学的活物質の全表面の少なくとも25%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも85%が保護コーティングで覆われるようにしてもよい。電気化学的活物質は、必要に応じて、保護コーティングで完全にコーティングされてもよい。本明細書で使用される場合、保護コーティングが、電気化学的活物質の表面上に、少なくとも95%、例えば少なくとも99%、例えば100%の量で存在する場合、電気化学的活物質は、「完全にコーティングされている」とみなされるであろう。保護コーティングを含む電気化学的活物質は特に限定されず、対象となる蓄電装置の種類に従って好適な材料を選択することができる。
【0012】
電気化学的活物質は、正極の活物質として使用するための材料を含み得る。例えば、電気化学的活物質は、リチウムを組み込むことができる材料(リチウムインターカレーション/デインターカレーションによる組み込みを含む)、リチウム変換可能な材料、またはそれらの組み合わせを含み得る。リチウムを組み込むことができる電気化学的活物質の非限定的な例として、LiCoO2、LiNiO2、LiFePO4、LiCoPO4、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiMnCo)O2、Li(NiCoAl)O2、炭素被覆LiFePO4、およびそれらの組み合わせが挙げられる。リチウム変換可能な材料の非限定的な例としては、LiO2、FeF2、およびFeF3、アルミニウム、Fe3O4、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
電気化学的活物質は、負極の活物質として使用するための材料を含み得る。例えば、電気化学的活物質は、黒鉛、リチウムチタネート(LTO)、リン酸バナジウムリチウム(LVP)、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0014】
電気化学的活物質上の保護コーティングは、金属酸化物コーティングを含み得る。金属酸化物コーティングは、チタン、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、またはそれらの組み合わせの酸化物を含み得る。例えば、保護コーティングは、酸化チタン(例えば、チタニア(TiO2)、酸化アルミニウム(例えば、アルミナ(Al2O3))、シリカ、ジルコニア、またはそれらの組み合わせを含み得るか、本質的にそれらからなり得るか、またはそれらからなり得る。電極活物質上の金属酸化物コーティングはまた、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、ジルコニア、またはそれらの組み合わせの複数の層を含む、金属酸化物コーティングの複数の層を含み得る。
【0015】
電気化学的活物質上の炭素系コーティングは、炭酸塩コーティングなどのカーボネートコーティングを含み得る。炭酸塩は、特に、電気化学的活物質が正極のコーティングに使用される場合、例えば、炭酸リチウム(Li2CO3)などの金属炭酸塩を含んでもよい。炭酸リチウムコーティングは、電気化学的活物質を二酸化炭素で処理するステップによって作製され得る。
【0016】
保護コーティングは、電着性コーティング組成物の保管中および電着プロセス中に、水性媒体との接触から生じる劣化から下層の電気化学的活物質を保護するのに十分な量で電気化学的活物質の表面上に存在し得る。保護コーティングはまた、保護コーティングがコーティングされた電極活物質を組み込んだ結果として得られる電極の性能を著しく損なわないような量で存在し得る。好適な厚さは、約100nmまたは約100nm未満、例えば約0.1~50nm、例えば約0.2~25nm、例えば約0.5~20nm、例えば約1~10nmであり得る。
【0017】
保護コーティングは、当技術分野で既知の任意の手段によって電気化学的活物質に塗布され得る。例えば、保護コーティングは、原子層堆積(ALD)、分子層堆積(MLD)、化学気相堆積(CVD)、物理気相堆積(PVD)、真空堆積、電子ビーム堆積、レーザー堆積、プラズマ堆積、高周波スパッタリング、ゾルゲル、マイクロエマルジョン、連続イオン層堆積、機械融合、固形分拡散、コミリング、またはドーピングによって塗布され得る。複数の層が存在する場合、個々の層は各々、異なる方法によって、または塗布方法の組み合わせによって塗布され得る。
【0018】
驚くべきことに、本発明の電着性コーティング組成物中に保護コーティングを含む電気化学的活物質を使用することにより、著しく改善された電池性能を提供する電極として使用するための、基材上に電着によってコーティングを生成する電着性コーティング組成物の製造が可能になることが発見された。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、保護コーティングは、電着性コーティング組成物の水性媒体によって本来損傷され得る下層の電気化学的活物質に保護を提供し、電着プロセス中に電着浴内で生じる広いpH変化の間に電気化学的活物質を特異的に保護すると考えられる。例えば、以下の実施例で実証されるように、保護コーティングを含む電気化学的活物質は、組成物の保管中または電着中に劣化しにくいのに対し、未処理の電気化学的活性粒子は損傷を受け、コーティングされた電極が所望の機能を果たせなくなる可能性がある。具体的には、活物質に対する劣化により、電気化学的活物質が、充電サイクル中にセルがほとんどまたはまったく容量を保持しないように、電着性コーティング組成物を電着させるステップから形成されるコーティングされた電極を含む電気化学セル内で機能することができなくなることがある。対照的に、保護コーティングを含む電気化学的活物質は、充電サイクル中の著しく改善された容量によって示されるように、セル中で意図されたとおりに機能する電着性コーティング組成物を電着するステップによって形成される電極を生成することができる場合がある。保護コーティングは、保管中に安定していてもよいが、保護コーティング自体は、劣化が下層の電気化学的活物質の性能に実質的に影響しない限り、電着プロセス中に劣化する可能性がある。
【0019】
保護コーティングを含む電気化学的活物質は、電着性組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも45重量%、例えば少なくとも50重量%、例えば少なくとも55重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも91重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得、かつ、99重量%以下、例えば98重量%以下、例えば95重量%以下の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。保護コーティングを含む電気化学的活物質は、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、45重量%~99重量%、例えば50重量%~99重量%、例えば55重量%~99重量%、例えば60重量%~99重量%、例えば65重量%~99重量%、例えば70重量%~98重量%、例えば80重量%~98重量%、例えば90重量%~98重量%、例えば91重量%~98重量%、例えば91重量%~95重量%、例えば94重量%~98重量%、例えば95重量%~98重量%、例えば96重量%~98重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0020】
電着性コーティング組成物は、電着性結合剤をさらに含む。結合剤は、コーティング組成物の基材上への電着時に、保護コーティングを含む電気化学的活物質および他の必要に応じた材料などの、電着性コーティング組成物の粒子を一緒に結合する役割を果たす。本明細書で使用される場合、「電着性結合剤」という用語は、電着のプロセスによって導電性基材上に堆積させることができる結合剤を指す。電着性結合剤は、フィルム形成ポリマーを含み得、必要に応じて、他の必要に応じた成分に加えて、フィルム形成ポリマーと反応して電着されたコーティング組成物に硬化する硬化剤をさらに含み得る。電着性結合剤は、電着のプロセスによって導電性基材上に堆積させることができるものであれば特に限定されず、対象となる蓄電装置の種類に従って好適な結合剤を選択することができる。
【0021】
電着性結合剤のフィルム形成樹脂は、イオン性フィルム形成樹脂を含み得る。本明細書で使用される場合、「イオン性フィルム形成樹脂」という用語は、負電荷(アニオン性)イオンを伝える樹脂および正電荷(カチオン性)イオンを伝える樹脂を含む、電荷を伝える任意のフィルム形成樹脂を指す。したがって、好適なイオン性樹脂には、アニオン性樹脂およびカチオン性樹脂が含まれる。当業者によって理解されるように、アニオン性樹脂は、典型的には、コーティングされる基材が電着性浴中のアノードとして機能するアニオン性電着性コーティング組成物に使用され、カチオン性樹脂は、典型的には、コーティングされる基材が電着性浴中のカソードとして機能するカチオン性電着性コーティング組成物に使用される。以下でより詳細に説明するように、イオン性樹脂は、アニオン性樹脂またはカチオン性樹脂がそれぞれアニオン性塩基含有樹脂またはカチオン性塩基含有樹脂を含むように、樹脂のイオン性基を含む塩基を含み得る。本発明におけるイオン性フィルム形成樹脂としての使用に好適な樹脂の非限定的な例としては、とりわけ、アルキド樹脂、アクリル、メタクリル、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル、およびポリエステルが挙げられる。
【0022】
イオン性フィルム形成樹脂は、必要に応じて、活性水素官能基を含み得る。本明細書で使用される場合、「活性水素官能基」という用語は、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,Vol.49,page 3181(1927)に記載されているゼレウィチノフ試験によって決定されるように、イソシアネートと反応性である基を指し、例えば、ヒドロキシル基、一級または二級アミノ基、カルボン酸基、およびチオール基を含む。
【0023】
上述したように、イオン性樹脂は、アニオン性塩基含有樹脂を含み得る。好適なアニオン性樹脂としては、カルボン酸基またはリン酸基などの酸基などのアニオン性基を含む樹脂が挙げられ、これらは、塩基で少なくとも部分的に中和されてアニオン性塩基含有樹脂を形成し得る負電荷を付与する。活性水素官能基を含むアニオン性塩基含有樹脂は、活性水素含有アニオン性塩基含有樹脂と呼ばれ得る。
【0024】
電着性結合剤は、アニオン性セルロース誘導体などのイオン性セルロース誘導体を含み得る。アニオン性セルロース誘導体の非限定的な例としては、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(CMC)が挙げられる。CMCは、アンヒドログルコース環上のヒドロキシル基の一部分がカルボキシメチル基で置換されたセルロースエーテルである。セルロース誘導体は、50,000および2,000,000g/mol、例えば50,000~1,000,000g/mol、例えば100,000~700,000g/mol、例えば150,000~600,000g/mol、例えば200,000~500,000g/mol、例えば200,000~300,000g/mol、例えば400,000~500,000g/molの重量平均分子量を有し得る。アニオン性セルロース誘導体の非限定的な例としては、米国特許第9,150,736号、第4欄、第20行~第5欄、第3行に記載されているものが挙げられ、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
(メタ)アクリルポリマーの例は、(メタ)アクリルモノマーの混合物を重合させることによって調製されるものである。アニオン性(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルカルボン酸の使用からポリマーに導入されるカルボン酸部分を含み得る。好適なアニオン性(メタ)アクリルポリマーの非限定的な例としては、米国特許第9,870,844号、第3欄、第37行~第6欄、第67行に記載されているものが挙げられ、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本明細書に記載される組成物中での使用に好適な他のアニオン性樹脂の非限定的な例としては、米国特許第9,150,736号、第5欄、第4行~第41行に記載されるものが挙げられ、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
上述したように、アニオン性樹脂を水性媒体中に可溶化または分散させるように適合させる際には、少なくとも部分的に塩基で中和されることが多い。好適な塩基としては、有機塩基および無機塩基の両方が挙げられる。好適な塩基の非限定的な例としては、アンモニア、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、またはトリアルキルアミン、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、およびシクロヘキシルアミン;モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、またはトリアルカノールアミン、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、およびジエチルエタノールアミン;モルホリン、例えば、N-メチルモルホリンまたはN-エチルモルホリンが挙げられる。好適な無機塩基の非限定的な例としては、アルカリまたはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、および酢酸塩塩基(例えば、H3C(CR1R2)CO2M(式中、R1およびR2は、水素、アルキル、アルカノール、アルキルアミンなどであってもよく、M=アルカリまたはアルカリ金属であってもよい))が挙げられ、これらの具体的な例としては、水酸化カリウム、水酸化リチウム、および水酸化ナトリウムが挙げられる。樹脂は、樹脂中に存在するアニオン基の総数に基づいて、20~200パーセント、例えば40~150パーセント、例えば60~120パーセントの理論的中和によって少なくとも部分的に中和され得る。
【0028】
上述したように、イオン性樹脂は、カチオン性塩基含有樹脂を含み得る。好適なカチオン性塩基含有樹脂としては、スルホニウム基およびカチオン性アミン基などのカチオン性基を含有する樹脂が挙げられ、酸で少なくとも部分的に中和されてカチオン性塩基含有樹脂を形成し得る正電荷を付与する。活性水素官能基を含むカチオン性塩基含有樹脂は、活性水素含有カチオン性塩基含有樹脂と呼ばれ得る。
【0029】
本明細書に記載される組成物中での使用に好適なカチオン性樹脂の非限定的な例としては、米国特許第9,150,736号、第6欄、第29行~第8欄、第21行に記載されているものが挙げられ、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
理解されるように、カチオン性樹脂を水性媒体中に可溶化または分散するように適合させる際に、樹脂は、例えば、酸で処理するステップによって、少なくとも部分的に中和され得る。好適な酸の非限定的な例は、リン酸およびスルファミン酸などの無機酸、ならびにとりわけ、酢酸および乳酸などの有機酸である。酸の他に、リン酸二水素ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(dimethylhydroxyethylammonium dihydrogenphosphate)およびリン酸二水素アンモニウムなどの塩が使用され得る。カチオン性樹脂は、カチオン性基の総数に基づいて、カチオン性ポリマーの総理論的中和当量の少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%の範囲で中和され得る。可溶化または分散のステップは、中和または部分的に中和された樹脂を水性媒体と組み合わせることによって達成され得る。
【0031】
電着性結合剤は、必要に応じて、pH依存性レオロジー修飾剤を含み得る。pH依存性レオロジー修飾剤は、フィルム形成ポリマーおよび/または結合剤の一部分またはすべてを含み得る。本明細書で使用される場合、「pH依存性レオロジー修飾剤」という用語は、組成物のpHに基づいて可変のレオロジー効果を有する分子、オリゴマーまたはポリマーなどの有機化合物を指す。pH依存性レオロジー修飾剤は、組成物のpHの変化によって誘発されるpH依存性レオロジー修飾剤の著しい体積変化の原理に基づいて、組成物の粘度に影響を及ぼし得る。例えば、pH依存性レオロジー修飾剤は、pH範囲で可溶性であってもよく、特定のレオロジー特性を提供してもよく、レオロジー修飾剤の体積の減少による組成物の粘度の減少を引き起こす臨界pH値(pH依存性レオロジー修飾剤の種類を基準として、上または下)で不溶性であり、凝集していてもよい。組成物のpHと、pH依存性レオロジー修飾剤の存在による粘度との間の関係は、非線形であり得る。pH依存性レオロジー修飾剤は、電着性コーティング組成物が使用される電着の種類に応じて、アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤または酸膨潤性レオロジー修飾剤を含み得る。例えば、アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤は、アニオン性電着に使用され得るが、酸膨潤性レオロジー修飾剤は、カソード電着に使用され得る。
【0032】
本明細書における量の電着性コーティング組成物の結合剤中のpH依存性レオロジー修飾剤の使用は、電着による電極の生成を可能にし得る。pH依存性レオロジー修飾剤は、イオン基および/またはイオン塩基を含んでもよいが、そのような基は必要とされない。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、レオロジー修飾剤のpH依存性は、電着性コーティング組成物の電着を補助すると考えられる。というのも、コーティングされた基材の表面における電着浴のpHが、電着浴の残りの部分と比較して著しく異なるため、pH依存性レオロジー修飾剤がコーティングされた基材の表面において、または表面に近接して体積が著しく減少し、pH依存性レオロジー修飾剤が電着性コーティング組成物の他の成分とともにコーティングされた基材の表面に凝集するためである。例えば、アノード電着におけるアノード表面におけるpHは、電着浴の残りの部分と比較して著しく低下する。同様に、カソード電着における表面カソードにおけるpHは、電着浴の残りの部分より著しく高い。静的状態での電着浴に対する電着浴中にコーティングされる電極表面におけるpHの差は、少なくとも6単位、例えば、少なくとも7単位、例えば、少なくとも8単位であり得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤」という用語は、組成物のpHが増加するにつれて、組成物の粘度を増加させる(すなわち、組成物を厚くする)レオロジー修飾剤を指す。アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤は、約2.5または2.5を超える、例えば約3または3を超える、例えば約3.5または3.5を超える、例えば約4または4を超える、例えば約4.5または4.5を超える、例えば約5または5を超えるpHで粘度を増加させてもよい。
【0034】
アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤の非限定的な例としては、アルカリ膨潤性エマルション(ASE)、疎水基変性型アルカリ膨潤性エマルション(HASE)、スターポリマー、および本明細書に記載のpH値などの低pHでpHトリガーされるレオロジー変化を提供する他の材料が挙げられる。アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤は、エチレン系不飽和モノマーの残基を含む構成単位を有する付加ポリマーを含み得る。例えば、アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤は、以下の残基を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる構成単位を有する付加ポリマーを含み得る:(a)2~70重量%、例えば20~70重量%、例えば25~55重量%、例えば35~55重量%、例えば40~50重量%、例えば45~50重量%のモノエチレン系不飽和カルボン酸、(b)20~80重量%、例えば35~65重量%、例えば40~60重量%、例えば40~50重量%、例えば45~50重量%のC1~C6アルキル(メタ)アクリレート、ならびに(c)0~3重量%、例えば0.1~3重量%、例えば0.1~2重量%の架橋用モノマー、および/または(d)0~60重量%、例えば0.5~60重量%、例えば10~50重量%のモノエチレン系不飽和アルキルアルコキシレートモノマーのうち少なくとも1つ(重量%は、付加ポリマーの総重量に基づいている)。ASEレオロジー修飾剤は、(a)および(b)を含み得、必要に応じて(c)をさらに含み得、HASEレオロジー修飾剤は、(a)、(b)、および(d)を含み得、必要に応じて(c)をさらに含み得る。(c)が存在する場合、pH依存性レオロジー修飾剤は、架橋pH依存性レオロジー修飾剤と呼ばれ得る。酸基が低pHで高いプロトン化度(すなわち、中和されていない)を有する場合、レオロジー修飾剤は水に不溶であり、組成物を厚くしないが、酸がより高いpH値で実質的に脱プロトン化される(すなわち、実質的に中和される)場合、レオロジー修飾剤は可溶性または分散性(ミセルまたはマイクロゲルなど)になり、組成物を増粘させる。
【0035】
(a)モノエチレン系不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸などのC3~C8モノエチレン系不飽和カルボン酸、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0036】
(b)C1~C8アルキル(メタ)アクリレートは、C1~C6アルキル(メタ)アクリレート、例えば、C1~C4アルキル(メタ)アクリレートを含み得る。C1~C8アルキル(メタ)アクリレートは、非置換C1~C8アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはそれらの組み合わせなどを含み得る。
【0037】
(c)架橋用モノマーは、ポリエチレン系不飽和モノマー、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、ビスフェノールAジアリルエーテル、メチレンビサクリルアミド、アリルスクロースなど、ならびにそれらの組み合わせを含み得る。
【0038】
(d)モノエチレン系不飽和アルキル化エトキシレートモノマーは、重合性基、疎水性基、およびポリ(アルキレンオキシド)鎖の二価ポリエーテル基を有するモノマー、例えば約5~150個のエチレンオキシド単位、例えば6~10個のエチレンオキシド単位、および必要に応じて0~5個のプロピレンオキシド単位を有するポリ(エチレンオキシド)鎖を含み得る。疎水性基は、典型的には、6~22個の炭素原子を有するアルキル基(ドデシル基など)または8~22個の炭素原子を有するアルカリール基(オクチルフェノールなど)である。二価ポリエーテル基は、典型的には、疎水性基を重合性基に連結する。二価ポリエーテル基連結基および疎水性基の例としては、ビシクロヘプチル-ポリエーテル基、ビシクロヘプテニル-ポリエーテル基、または分岐C5~C50アルキル-ポリエーテル基が挙げられ、ビシクロヘプチル-ポリエーテルまたはビシクロヘプテニル-ポリエーテル基は、1つまたは1つより多くの環炭素原子上で、炭素原子あたり1つまたは2つのC1~C6アルキル基で必要に応じて置換されていてもよい。
【0039】
上述したモノマーに加えて、pH依存性レオロジー修飾剤は、他のエチレン系不飽和モノマーを含み得る。例えば、ヒドロキシル、アミノ、アミド、グリシジル、チオール、および他の官能基などの官能基で置換された置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー、フッ素を含有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、芳香族ビニルモノマーなどが挙げられる。あるいは、pH依存性レオロジー修飾剤は、そのようなモノマーを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、pH依存性レオロジー修飾剤は、そのモノマーの構成単位が、存在するとしても、pH依存性レオロジー修飾剤の総重量に基づいて、0.1重量%未満または0.01重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、そのモノマーを実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0040】
pH依存性レオロジー修飾剤は、アミド、グリシジル、またはヒドロキシル官能基を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、pH依存性レオロジー修飾剤は、アミド、グリシジル、またはヒドロキシル官能基を実質的に含まないか、または本質的に含まない場合、そのような基が存在するとしても、pH依存性レオロジー修飾剤に存在する官能基の総数に基づいて、1%未満または0.1%未満の量で存在する。
【0041】
pH依存性レオロジー修飾剤は、上述の量で存在する、メタクリル酸、エチルアクリレート、および架橋用モノマーの残基の構成単位を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0042】
pH依存性レオロジー修飾剤は、上述の量で存在する、メタクリル酸、エチルアクリレート、およびモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基の構成単位を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0043】
pH依存性レオロジー修飾剤は、上述の量で存在する、メタクリル酸、エチルアクリレート、架橋用モノマー、およびモノエチレン系不飽和アルキルアルコキシレートモノマーを含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。
【0044】
市販のpH依存性レオロジー修飾剤には、ACRYSOL ASE-60などのアルカリ膨潤性エマルション、各々Dow Chemical Companyから入手可能なACRYSOL HASE TT-615およびACRYSOL DR-180 HASEなどの疎水基変性型アルカリ膨潤性エマルション、ならびにATRP SolutionsからのfracASSIST(登録商標)プロトタイプ2などの原子移動ラジカル重合によって生成されるものを含むスターポリマーである。
【0045】
組成物のpH値の範囲にわたるアルカリ膨潤性レオロジー修飾剤の影響を示す例示的な粘度データは、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用し、#4の主軸を使用して、アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤のいくつかの非限定的な例について得られた。アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤ACRYSOL ASE-60、ACRYSOL HASE TT-615、およびACRYSOL DR-180 HASEを、脱イオン水溶液中の4.25%固形分で特徴付けた。低pHでのポリマーの限られた溶解度により、0.81%固形物でスターポリマー(fracASSIST(登録商標)プロトタイプ2)を調査した。ジメチルエタノールアミン(「DMEA」)の添加により、pHを調整した。pH値の範囲にわたるセンチポアズ(cps)での粘度測定を以下の表1に記載する。
【表1】
【0046】
表1に示されるように、全組成物の4.25重量%の水およびアルカリ膨潤性レオロジー修飾剤の組成物は、3~12のpH範囲内の3pH単位のpH値の増加に対して、少なくとも500cpsの粘度の増加、例えば少なくとも1,000cpsの増加、例えば少なくとも2,000cpsの増加、例えば少なくとも3,000cpsの増加、例えば少なくとも5,000cpsの増加、例えば少なくとも7,000cpsの増加、例えば少なくとも8,000cpsの増加、例えば少なくとも9,000cpsの増加、例えば少なくとも10,000cpsの増加、例えば少なくとも12,000cpsの増加、例えば少なくとも14,000cpsの増加、またはそれより大きい増加を有し得る。例えば、表1のACRYSOL ASE-60アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤について示すように、pHを約3.5~約6.5に増加させると、組成物の粘度が約19,000cps増加する。全組成物の4.25重量%の水およびアルカリ膨潤性レオロジー修飾剤の組成物は、pH値の対応する減少よりも組成物の粘度の対応する減少をもたらし得る。
【0047】
表1に示されるように、アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤の4.25重量%の溶液(溶液の総重量に基づいた重量%)は、#4の主軸を使用してブルックフィールド粘度計を使用して測定し、20RPMで動作したときに、約pH4~約pH7まで測定した場合、少なくとも1,000cps、例えば少なくとも1,500cps、例えば少なくとも1,900cps、例えば少なくとも5,000cps、例えば少なくとも10,000cps、例えば少なくとも15,000cps、例えば少なくとも17,000cpsの粘度増加を有し得る。全組成物の4.25重量%の水およびアルカリ膨潤性レオロジー修飾剤の組成物は、pH値の対応する減少よりも組成物の粘度の対応する減少をもたらし得る。
【0048】
表1に示されるように、アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤の4.25重量%の溶液(溶液の総重量に基づいた重量%)は、#4の主軸を使用してブルックフィールド粘度計を使用して測定し、20RPMで動作したときに、約pH4~約pH6.5まで測定した場合、少なくとも1,000cps、例えば少なくとも1,500cps、例えば少なくとも1,900cps、例えば少なくとも5,000cps、例えば少なくとも10,000cps、例えば少なくとも15,000cps、例えば少なくとも17,000cpsの粘度増加を有し得る。全組成物の4.25重量%の水およびアルカリ膨潤性レオロジー修飾剤の組成物は、pH値の対応する減少よりも組成物の粘度の対応する減少をもたらし得る。
【0049】
表1に示されるように、全組成物の0.81重量%のスターポリマーの水の組成物およびアルカリ膨潤性レオロジー修飾剤は、#4の主軸を使用してブルックフィールド粘度計を使用して測定し、20RPMで動作したときに、約pH4~約pH6.5まで測定した場合、少なくとも400cps、例えば少なくとも600cps、例えば少なくとも800cps、例えば少なくとも1,000cps、例えば少なくとも1,200cps、例えば少なくとも1,400cps、例えば少なくとも2,000cps、例えば少なくとも2,200cpsの粘度増加を有し得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「スターポリマー」という用語は、中央コアに接続されたいくつかの(3つまたは3つより多くの)直鎖からなる一般構造を有する分岐ポリマーを指す。ポリマーのコアは、原子、分子、または巨大分子であり得、鎖、または「アーム」は、可変長有機鎖を含み得る。アームの長さおよび構造がすべて等価であるスターポリマーは均質であると考えられ、長さおよび構造が可変であるものは不均一であると考えられる。スターポリマーは、スターポリマーがpH依存性レオロジー修飾を提供することを可能にする任意の官能基を含み得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「酸膨潤性レオロジー修飾剤」という用語は、高pHでは不溶性でありかつ組成物を厚くせず、低pHでは可溶性でありかつ組成物を厚くする、レオロジー修飾剤を指す。酸膨潤性レオロジー修飾剤は、約4または4未満、例えば約4.5または約4.5未満、例えば約5または約5未満、例えば約6または約6未満のpHで粘度を増加させ得る。
【0052】
pH依存性レオロジー修飾剤は、結合剤固形分の総固形分重量に基づいて、少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも75重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも85重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも93重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば100重量%の量で、また100重量%以下、例えば99重量%以下、例えば95重量%以下、例えば93重量%以下の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。pH依存性レオロジー修飾剤は、結合剤固形分の総固形分重量に基づいて、10重量%~100重量%、例えば20重量%~100重量%、例えば30重量%~100重量%、40重量%~100重量%、50重量%~100重量%、60重量%~100重量%、70重量%~100重量%、75重量%~100重量%、80重量%~100重量%、85重量%~100重量%、90重量%~100重量%、93重量%~100重量%、95重量%~100重量%、例えば50重量%~99重量%、例えば75重量%~95重量%、例えば87重量%~93重量%、10重量%~50重量%、例えば10重量%~30重量%、例えば10重量%~20重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0053】
pH依存性レオロジー修飾剤は、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、例えば少なくとも0.2重量%、例えば少なくとも0.3重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも1.5重量%、例えば少なくとも2重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得、かつ10重量%以下、例えば5重量%以下、例えば4.5重量%以下、例えば4重量%以下、例えば3重量%以下、例えば2重量%以下、例えば1重量%以下の量で存在し得る。pH依存性レオロジー修飾剤は、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%~10重量%、例えば0.2重量%~10重量%、例えば0.3~10重量%、例えば1重量%~7重量%、例えば1.5重量%~5重量%、例えば2重量%~4.5重量%、例えば3重量%~4重量%、例えば0.1重量%~0.4重量%、例えば0.1重量%~1重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0054】
本発明によれば、電着性結合剤は、必要に応じて、フルオロポリマーをさらに含み得る。フルオロポリマーは、電着性コーティング組成物の電着性結合剤の一部分を含み得る。フルオロポリマーは、ミセルの形態で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0055】
フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンの残基を含む(コ)ポリマーを含み得る。フッ化ビニリデンの残基を含む(コ)ポリマーの非限定的な例は、ポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)である。本明細書で使用される場合、「ポリフッ化ビニリデンポリマー」は、高分子量のホモポリマー、コポリマー、およびターポリマーを含む、ホモポリマー、コポリマー、例えばバイナリコポリマー、およびターポリマーを含む。このような(コ)ポリマーとしては、少なくとも50モル%、例えば、少なくとも75モル%、および少なくとも80モル%、および少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(二フッ化ビニリデンとしても公知である)の残基を含有するものが挙げられる。フッ化ビニリデンモノマーは、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、および本発明のフルオロポリマーを製造するために、フッ化ビニリデンと容易に共重合する任意の他のモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合してもよい。フルオロポリマーはまた、PVDFホモポリマーも含んでもよい。
【0056】
フルオロポリマーは、少なくとも50,000g/mol、例えば、少なくとも100,000g/molの重量平均分子量を有する高分子量PVDFを含んでよく、50,000g/mol~1,500,000g/mol、例えば、100,000g/mol~1,000,000g/molの範囲であってよい。PVDFは、例えば、KYNARの商標でArkemaから、HYLARの商標でSolvayから、およびInner Mongolia 3F Wanhao Fluorochemical Co.,Ltd.から市販されている。
【0057】
フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンの残基を含む(コ)ポリマーを含み得る。フルオロポリマーはまた、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーを含み得る。
【0058】
フルオロポリマーは、ナノ粒子を含み得る。本発明で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、1,000nm未満の粒径を有する粒子を指す。フルオロポリマーは、少なくとも50nm、例えば少なくとも100nm、例えば少なくとも250nm、例えば少なくとも300nmの粒径を有してよく、999nm以下、例えば600nm以下、例えば450nm以下、例えば400nm以下、例えば300nm以下、例えば200nm以下であり得る。フルオロポリマーナノ粒子は、50nm~999nm、例えば100nm~800nm、例えば100nm~600nm、例えば250nm~450nm、例えば300nm~400nm、例えば100nm~400nm、例えば100nm~300nm、例えば100nm~200nmの粒径を有し得る。フルオロポリマーはナノ粒子を含んでもよいが、より大きな粒子およびナノ粒子とより大きな粒子との組み合わせも使用され得る。本明細書で使用される場合、「粒径」という用語は、フルオロポリマー粒子の平均直径を指す。本開示で言及される粒径は、以下の手順により決定された:フルオロポリマーを、アルミニウム走査電子顕微鏡(SEM)スタブに取り付けられた炭素テープのセグメント上に分散させることによって、試料を調製した。余分な粒子を圧縮空気で炭素テープから吹き飛ばした。次いで、試料を、Au/Pdで20秒間スパッタコーティングし、次いで、高真空下で、Quanta 250 FEG SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)で分析した。加速電圧を20.00kVに設定し、スポットサイズを3.0に設定した。調製した試料上の3つの異なる領域から画像を収集し、ImageJソフトウェアを使用して、合計30個の粒径測定値のために10個のフルオロポリマー粒子の直径を各領域から測定し、合計30個の粒径測定値を一緒に平均して平均粒径を決定した。
【0059】
フルオロポリマーは、結合剤固形分の総重量に基づいて、少なくとも15重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば、少なくとも50重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%の量で電着性結合剤中に存在し得、かつ99重量%以下、例えば96重量%以下、例えば95重量%以下、例えば90重量%以下、例えば80重量%以下、例えば70重量%以下、例えば60重量%以下の量で存在し得る。フルオロポリマーは、結合剤固形分の総重量に基づいて、15重量%~99重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば40重量%~95重量%、例えば50重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば50重量%~70重量%、例えば50重量%~60重量%、例えば55重量%~65重量%の量で電着性結合剤中に存在し得る。
【0060】
フルオロポリマーは、電着性組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、例えば少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも1.3重量%、例えば少なくとも1.6重量%、例えば少なくとも1.9重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得、かつ10重量%以下、例えば7.5重量%以下、例えば6重量%以下、例えば4.5重量%以下、例えば3.7重量%以下、例えば2.9重量%以下の量で存在し得る。フルオロポリマーは、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%~10重量%、例えば0.5重量%~7.5重量%、例えば1重量%~6重量%、例えば1.3重量%~4.5重量%、例えば1.6重量%~3.7重量%、例えば1.9重量%~2.9重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0061】
フルオロポリマー対pH依存性レオロジー修飾剤重量比は、少なくとも1:20、例えば、少なくとも1:2、例えば少なくとも1:1、例えば少なくとも3:1、例えば少なくとも4:1、例えば少なくとも6:1、例えば少なくとも10:1、例えば少なくとも15:1、例えば少なくとも19:1であり得、かつ20:1以下、例えば15:1以下、例えば10:1以下、例えば6:1以下、例えば4:1以下、例えば3:1以下、例えば1:1以下、例えば1:2以下、例えば1:3以下であり得る。フルオロポリマー対pH依存性レオロジー修飾剤重量比は、1:20~20:1、例えば1:2~15:1、例えば1:1~10:1、例えば3:1~6:1であり得る。
【0062】
あるいは、電着性コーティング組成物は、フルオロポリマーを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性コーティング組成物は、フルオロポリマーが存在するとしても、結合剤固形分の総重量に基づいて、それぞれ5重量%未満または0.2重量%未満の量で存在する場合、フルオロポリマーを実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0063】
電着性結合剤は必要に応じて、分散剤をさらに含み得る。分散剤は、フルオロポリマー、電気化学的活物質、および/または以下にさらに記載されるように、水性媒体中に導電剤(存在する場合)を分散することを補助し得る。分散剤は、フルオロポリマーおよび/もしくは保護コーティングを含む電気化学的活物質、または存在する場合は導電剤などの電着性コーティング組成物の他の成分と相溶する少なくとも1つの相を含んでいてもよく、水性媒体と相溶性である少なくとも1つの相をさらに含んでいてもよい。電着性コーティング組成物は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの異なる分散剤を含み得、各分散剤は、電着性コーティング組成物の異なる成分の分散を補助し得る。分散剤は、固形分の成分(例えば、フルオロポリマー(存在する場合)などの電着性結合剤、保護コーティングを含む電気化学的活物質、および/または導電剤)および水性媒体の両方に相溶する相を有する任意の材料を含み得る。本明細書で使用される場合、「相溶性」という用語は、時間の経過とともに実質的に均一であり、かつ維持される他の材料とブレンドを形成する材料の能力を意味する。例えば、分散剤は、そのような相を含むポリマーを含み得る。分散剤およびフルオロポリマーは、存在する場合、共有結合によって結合されない場合がある。分散剤は、ミセルの形態で電着性コーティング組成物中に存在し得る。分散剤は、ブロックポリマー、ランダムポリマー、または勾配ポリマーの形態であってよく、分散剤の異なる相は、ポリマーの異なるブロックに存在するか、ポリマー全体にランダムに含まれるか、またはポリマー骨格に沿ってそれぞれ漸進的に高密度または低密度に存在する。分散剤は、この目的を果たすための任意の好適なポリマーを含み得る。例えば、ポリマーは、とりわけ、エチレン系不飽和モノマー、ポリエポキシドポリマー、ポリアミドポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリ尿素ポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリ酸ポリマー、および/またはポリエステルポリマーを重合するステップによって生成される付加ポリマーを含み得る。分散剤はまた、電着性コーティング組成物の結合剤の追加の成分として機能し得る。
【0064】
分散剤は官能基を含み得る。官能基は、例えば、活性水素官能基、複素環基、およびそれらの組み合わせを含み得る。本明細書で使用される場合、「複素環基」という用語は、環構造中の炭素に加えて、例えば、酸素、窒素、または硫黄などの少なくとも1個の原子を有する環状部分などの、環中に少なくとも2つの異なる元素を含有する環状基を指す。複素環基の非限定的な例としては、エポキシド、ラクタム、およびラクトンが挙げられる。加えて、エポキシド官能基が付加ポリマー上に存在する場合、分散剤上のエポキシド官能基は、β-ヒドロキシ官能性酸と反応後であってもよい。β-ヒドロキシ官能性酸の非限定的な例としては、クエン酸、酒石酸、および/または3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などの芳香族酸が挙げられる。エポキシド官能基の開環反応により、分散剤上にヒドロキシル官能基が得られる。
【0065】
酸官能基が存在する場合、分散剤は、少なくとも350g/酸当量、例えば少なくとも878g/酸当量、例えば少なくとも1,757g/酸当量の理論的酸当量を有し得、かつ17,570g/酸当量以下、例えば12,000g/酸当量以下、例えば7,000g/酸当量以下であり得る。分散剤は、350~17,570g/酸当量、例えば878~12,000g/酸当量、例えば1,757~7,000g/酸当量の理論的酸当量を有し得る。
【0066】
上述したように、分散剤は、付加ポリマーを含み得る。付加ポリマーは、後述するような1つまたは1つより多くのα、β-エチレン系不飽和モノマーに由来し、その残基からなる構成単位を含んでいてもよく、そのようなモノマーの反応混合物を重合して調製してもよい。モノマーの混合物は、1つまたは1つより多くの活性水素基含有エチレン系不飽和モノマーを含み得る。反応混合物はまた、複素環基を含むエチレン系不飽和モノマーを含み得る。本明細書で使用される場合、複素環基を含むエチレン系不飽和モノマーは、環構造内の炭素に加えて、例えば、酸素、窒素、または硫黄などの少なくとも1つのα、βエチレン系不飽和基、および少なくとも1つの原子を有する環状部分を有するモノマーを指す。複素環基を含むエチレン系不飽和モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、エポキシ官能性エチレン系不飽和モノマー、ビニルピロリドン、およびビニルカプロラクタムが挙げられる。反応混合物は、他のエチレン性不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、および以下に記載される他のものをさらに含み得る。
【0067】
付加ポリマーは、1つまたは1つより多くの(メタ)アクリルモノマーの残基を含む構成単位を含む(メタ)アクリルポリマーを含み得る。(メタ)アクリルポリマーは、1つまたは1つより多くの(メタ)アクリルモノマー、および必要に応じて他のエチレン系不飽和モノマーを含む、α、β-エチレン系不飽和モノマーの反応混合物を重合するステップによって調製することができる。本発明で使用される場合、「(メタ)アクリルモノマー」という用語は、アクリル酸、メタクリル酸、およびそこから由来するモノマー(アクリル酸およびメタクリル酸のアルキルエステルなどを含む)を指す。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、1つまたは1つより多くの(メタ)アクリルモノマーの残基に由来するか、または構成単位を含むポリマーを指す。モノマーの混合物は、1つまたは1つより多くの活性水素基含有(メタ)アクリルモノマー、複素環基を含むエチレン系不飽和モノマー、および他のエチレン系不飽和モノマーを含み得る。(メタ)アクリルポリマーはまた、反応混合物中のグリシジルメタクリレートなどのエポキシ官能性エチレン系不飽和モノマーとともに調製され得、得られたポリマー上のエポキシ官能基は、クエン酸、酒石酸、および/または3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などのβ-ヒドロキシ官能性酸と後で反応させて、(メタ)アクリルポリマー上のヒドロキシル官能基を得ることができる。
【0068】
付加ポリマーは、α、β-エチレン系不飽和カルボン酸の残基を含む構成単位を含んでよい。α、β-エチレン系不飽和カルボン酸の非限定的な例としては、アクリル酸およびメタクリル酸などの最大10個の炭素原子を含有するものが挙げられる。他の不飽和酸の非限定的な例は、マレイン酸またはその無水物、フマル酸およびイタコン酸などのα、β-エチレン系不飽和ジカルボン酸である。また、これらのジカルボン酸の半分のエステルが用いられ得る。α、β-エチレン系不飽和カルボン酸の残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも1重量%、例えば少なくとも2重量%、例えば少なくとも5重量%を含み得、かつ50重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。α、β-エチレン系不飽和カルボン酸の残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、1重量%~50重量%、2重量%~50重量%、例えば2重量%~20重量%、例えば2重量%~15重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%、例えば1重量%~5重量%を含み得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に基づいて、1重量%~50重量%、2重量%~50重量%、例えば2重量%~20重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%、例えば1重量%~5重量%の量でα、β-エチレン系不飽和カルボン酸を含む反応混合物に由来し得る。分散剤中のα、β-エチレン系不飽和カルボン酸の残基を含む構成単位を含めると、少なくとも1つのカルボン酸基を含む分散剤が得られ、分散体への安定性を提供するのに役立ち得る。
【0069】
付加ポリマーは、アルキル基中に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位を含んでよい。アルキル基中に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの非限定的な例としては、メチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル基中に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば少なくとも45重量%、例えば少なくとも50重量%を含み得、かつ98重量%以下、例えば96重量%以下、例えば、93重量%以下、例えば90重量%以下、例えば80重量%以下、例えば75重量%以下であり得る。アルキル基中に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、20重量%~98重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば30重量%~93重量%、例えば30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、例えば40重量%~80重量%、例えば45重量%~75重量%を含み得る。付加ポリマーは、アルキル基中に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に基づいて、20重量%~98重量%、例えば、30重量%~96重量%、例えば、30重量%~93重量%、例えば、30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、例えば、40重量%~80重量%、例えば、45重量%~75重量%の量で含む反応混合物に由来し得る。
【0070】
付加ポリマーは、アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位を含んでよい。アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの非限定的な例としては、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、およびドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも2重量%、例えば少なくとも3重量%、例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、例えば少なくとも20重量%を含み得、かつ70重量%以下、例えば60重量%以下、例えば55重量%以下、例えば50重量%以下、例えば40重量%以下、例えば35重量%以下であり得る。アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、2重量%~70重量%、例えば2重量%~60重量%、例えば3重量%~55重量%、例えば5重量%~50重量%、10重量%~40重量%、例えば15重量%~35重量%を含み得る。付加ポリマーは、アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に基づいて、2重量%~70重量%、例えば2重量%~60重量%、例えば3重量%~55重量%、例えば5重量%~50重量%、例えば10重量%~40重量%、例えば15重量%~35重量%の量で含む反応混合物に由来し得る。
【0071】
付加ポリマーは、ヒドロキシアルキルエステルの残基を含む構成単位を含んでよい。ヒドロキシアルキルエステルの非限定的な例として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも2重量%を含み得、かつ30重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。ヒドロキシアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%を含み得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%の量でヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物に由来し得る。分散剤中のヒドロキシアルキルエステルの残基を含む構成単位の包含は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む分散剤をもたらす(ただし、ヒドロキシル基は他の方法によって包含され得る)。ヒドロキシアルキルエステルの包含から生じるヒドロキシル基(または他の手段によって組み込まれる)は、ヒドロキシル基と反応する基を有する自己架橋用モノマーが付加ポリマーに組み込まれるときに、例えば、アミノプラスト、フェノールプラスト、ポリエポキシド、およびブロックポリイソシアネートなどのヒドロキシル基と反応する官能基を含む別に添加される架橋剤と、または付加ポリマーに存在するN-アルコキシメチルアミド基またはブロックイソシアナト(isocyanato)基と反応し得る。
【0072】
付加ポリマーは、複素環基を含むエチレン系不飽和モノマーの残基を含む構成単位を含み得る。複素環基を含むエチレン系不飽和モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、エポキシ官能性エチレン系不飽和モノマー、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、およびビニルカプロラクタムなどが挙げられる。複素環基を含むエチレン系不飽和モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも8重量%を含み得、かつ99重量%以下、例えば50重量%以下、例えば40重量%以下、例えば30重量%以下、例えば27重量%以下であり得る。複素環基を含むエチレン系不飽和モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、0.5重量%~99重量%、例えば0.5重量%~50重量%、例えば1重量%~40重量%、例えば5重量%~30重量%、8重量%~27重量%を含み得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%~50重量%、例えば1重量%~40重量%、例えば5重量%~30重量%、8重量%~27重量%の量で複素環基を含むエチレン系不飽和モノマーを含む反応混合物に由来し得る。
【0073】
上記のように、付加ポリマーは、自己架橋用モノマーの残基を含む構成単位を含んでもよく、付加ポリマーは、自己架橋用付加ポリマーを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「自己架橋用モノマー」という用語は、分散剤上に存在する他の官能基と反応して、分散剤または複数の分散剤間に架橋結合を形成し得る官能基を組み込むモノマーを指す。自己架橋用モノマーの非限定的な例としては、N-アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドモノマー、例えば、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、およびN-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ならびにブロックイソシアネート基を含有する自己架橋用モノマー、例えば、イソシアナト基が硬化温度でブロック解除される化合物と反応する(「ブロックされた」)イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。好適なブロッキング剤の例としては、イプシロン-カプロラクトンおよびメチルエチルケトキシムが挙げられる。自己架橋用モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも2重量%を含み得、かつ30重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。自己架橋用モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%を含み得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%の量で自己架橋用モノマーを含む反応混合物に由来し得る。
【0074】
付加ポリマーは、他のα、β-エチレン系不飽和モノマーの残基を含む構成単位を含んでよい。他のα、β-エチレン系不飽和モノマーの非限定的な例としては、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレンおよびビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどの有機ニトリル、塩化アリルおよびアリルシアニドなどのアリルモノマー;1,3-ブタジエンおよび2-メチル-1,3-ブタジエンなどのモノマージエン;ならびにアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)などのアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート(自己架橋であり得る)が挙げられる。他のα、β-エチレン系不飽和モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも2重量%を含み得、かつ30重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。他のα、β-エチレン系不飽和モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%を含み得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%の量で他のα、β-エチレン系不飽和モノマーを含む反応混合物に由来し得る。
【0075】
モノマーおよび相対量は、得られた付加ポリマーが100℃または100℃未満、典型的には-50℃~+70℃、例えば-50℃~0℃のTgを有するように選択されてよい。低温で許容できる電池性能を確保するために、0℃を下回る、より低いTgが望ましい場合がある。
【0076】
付加ポリマーは、重合性モノマーが溶媒または溶媒の混合物中に溶解し、フリーラジカル開始剤の存在下で変換が完了するまで重合する、従来のフリーラジカル開始溶液重合技術によって調製することができる。付加ポリマーを製造するために使用される溶媒は、任意の好適な有機溶媒または溶媒の混合物を含み得る。
【0077】
フリーラジカル開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(α、γ-メチルバレロニトリル)、過安息香酸三級ブチル、過酢酸三級ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ三級ブチルおよび三級アミルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネートなどのモノマーの混合物中に可溶性であるものがある。
【0078】
必要に応じて、アルキルメルカプタンなどのモノマー、例えば、三級ドデシルメルカプタン、メチルエチルケトンなどのケトン、クロロホルムなどのクロロハイドロカーボンの混合物中に可溶性である連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤は、様々なコーティング塗布に必要な粘度を有する生成物を与えるように、分子量を制御する。
【0079】
付加ポリマーを調製するために、溶媒を最初に加熱して還流してもよく、フリーラジカル開始剤を含有する重合性モノマーの混合物をゆっくりと還流溶媒に添加してもよい。次いで、反応混合物を、重合性モノマーの混合物の総重量に基づいて、遊離モノマー含有量を、例えば1.0パーセントを下回るように、通常は0.5パーセントを下回るように低減するように、重合温度で保持する。
【0080】
本発明の電着性コーティング組成物での使用のために、上述したように調製された分散剤は、通常、約5,000~500,000g/mol、例えば、10,000~100,000g/mol、および25,000~50,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0081】
分散剤は、結合剤固形分の総重量に基づいて、2重量%~35重量%、例えば5重量%~32重量%、例えば8重量%~30重量%、例えば15重量%~27重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0082】
電着性結合剤は、必要に応じて、非フッ素化有機フィルム形成ポリマーをさらに含み得る。非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、本明細書に記載されるpH依存性レオロジー修飾剤とは異なる。非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、多糖類、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、キサンタンガム、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせを含み得る。これらの有機フィルム形成ポリマーの各々はイオン性であってよく、イオン性フィルム形成樹脂を含む。
【0083】
非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、存在するとしても、結合剤固形分の総重量に基づいて、0重量%~90重量%、例えば10重量%~80重量%、例えば15重量%~75重量%、例えば20重量%~60重量%、例えば25重量%~40重量%の量で存在し得る。
【0084】
非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも0重量%~9.9重量%、例えば0.1重量%~5重量%、例えば0.2重量%~2重量%、例えば0.3重量%~0.5重量%の量で存在し得る。
【0085】
電着性コーティング組成物はまた、本明細書に記載の非フッ素化有機フィルム形成ポリマーのいずれかまたはすべてを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。
【0086】
上述したように、結合剤は、必要に応じて、架橋剤をさらに含み得る。架橋剤は、水性媒体中に可溶性または分散性であり、pH依存性レオロジー修飾剤(pH依存性レオロジー修飾剤がこのような基を含む場合)および/または組成物中に存在する(存在する場合)活性水素基を含む任意の他の樹脂フィルム形成ポリマーと反応するべきである。好適な架橋剤の非限定的な例としては、アミノプラスト樹脂、ブロックポリイソシアネート、カルボジイミド、およびポリエポキシドが挙げられる。
【0087】
架橋剤として使用するためのアミノプラスト樹脂の例は、メラミンまたはベンゾグアナミンなどのトリアジンをホルムアルデヒドと反応させることによって形成されるものである。これらの反応生成物は、反応性N-メチルロール基を含有する。通常、これらの反応基は、それらの混合物を含むメタノール、エタノール、またはブタノールでエーテル化され、それらの反応性を緩和する。アミノプラスト樹脂の化学的調製および使用については、“The Chemistry and Applications of Amino Crosslinking Agents or Aminoplast”,Vol.V,Part II,page 21 ff.,edited by Dr.Oldring;John Wiley&Sons/Cita Technology Limited,London,1998を参照されたい。これらの樹脂は、MAPRENAL MF980などのMAPRENAL(登録商標)の商標で市販されており、Cytec Industriesから入手可能であるCYMEL 303およびCYMEL 1128などのCYMEL(登録商標)の商標で市販されている。
【0088】
ブロックポリイソシアネート架橋剤は、典型的には、イソシアネート基がイプシロンカプロラクタムおよびメチルエチルケトオキシムなどの材料と反応する(「ブロックされた」)、トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネート(これらのイソシアナトダイマーおよびトリマーを含む)などのジイソシアネートである。硬化温度では、ブロッキング剤は、(メタ)アクリルポリマーと関連するヒドロキシル官能基と反応性であるイソシアネート官能基を露出させるブロックを解除する。ブロックポリイソシアネート架橋剤は、DESMODUR BLとしてCovestroから市販されている。
【0089】
カルボジイミド架橋剤は、モノマーまたはポリマー形態、またはこれらの混合物であり得る。カルボジイミド架橋剤は、以下の構造を有する化合物を指す。
R-N=C=N-R’
式中、RおよびR’は、各々個別に、脂肪族基、芳香族基、アルキル芳香族基、カルボン酸基、または複素環基を含んでもよい。市販のカルボジイミド架橋剤の例としては、例えば、CARBODILITE V-02-L2、CARBODILITE SV-02、CARBODILITE E-02、CARBODILITE SW-12G、CARBODILITE V-10、およびCARBODILITE E-05などの、Nisshinbo Chemical Inc.から入手可能なCARBODILITEの商品名で販売されるものが挙げられる。
【0090】
ポリエポキシド架橋剤の例は、エポキシ含有(メタ)アクリルポリマー、例えば、他のビニルモノマーと共重合したグリシジルメタクリレートから調製したもの、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの多価フェノールのポリグリシジルエーテル;ならびに3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、およびビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-メチル)アジペートなどの脂環式ポリエポキシドである。
【0091】
架橋剤は、0重量%~30重量%、例えば5重量%~20重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~12重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得、重量%は、結合剤固形分の総重量に基づいている。
【0092】
架橋剤は、0重量%~2重量%、例えば、0.1重量%~1重量%、例えば、0.2重量%~0.8重量%、例えば、0.3重量%~0.5重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得、重量%は、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいている。
【0093】
あるいは、電着性コーティング組成物は、架橋剤を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。電着性コーティング組成物は、架橋剤が存在するとしても、結合剤固形分の総重量に基づいて、3%未満または1%未満の量で存在する場合、それぞれ、架橋剤を実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0094】
電着性コーティング組成物は、必要に応じて、接着促進剤をさらに含み得る。接着促進剤は、酸官能性ポリオレフィンまたは熱可塑性材料を含み得る。
【0095】
酸官能性ポリオレフィン接着促進剤は、エチレン-アクリル酸コポリマーまたはエチレン-メタクリル酸コポリマーなどのエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマーを含み得る。エチレン-アクリル酸コポリマーは、エチレン-アクリル酸コポリマーの総重量に基づいて、10重量%~50重量%、例えば15重量%~30重量%、例えば17重量%~25重量%、例えば約20重量%のアクリル酸、およびエチレン-アクリル酸コポリマーの総重量に基づいて、50重量%~90重量%、例えば70重量%~85重量%、例えば75重量%~83重量%、例えば約80重量%のエチレンを含む構成単位を含んでよい。かかる付加ポリマーの市販の例としては、Dow Chemical Companyから入手可能なPRIMACOR 5980iが挙げられる。
【0096】
接着促進剤は、結合剤固形分(接着促進剤を含む)の総重量に基づいて、1重量%~60重量%、例えば10重量%~40重量%、例えば25重量%~35重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0097】
あるいは、電着性コーティング組成物は、接着促進剤を実質的に含まなくてもよいか、本質的に含まなくてもよいか、または完全に含まなくてもよい。電着性コーティング組成物は、接着促進剤が存在するとしても、結合剤固形分の総重量に基づいて、1%未満または0.1%未満の量で存在する場合、それぞれ、接着促進剤を実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0098】
電着性コーティング組成物は、必要に応じて、硬化剤と活性水素含有樹脂との間の反応を触媒する触媒を含み得る。好適な触媒としては、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズオキシドおよびジオクチルスズオキシド)、ならびにそれらの塩(例えば、ジブチルスズジアセテート);他の金属酸化物(例えば、セリウム、ジルコニウム、およびビスマスの酸化物)、ならびにそれらの塩(例えば、スルファミン酸ビスマスおよび乳酸ビスマス)が挙げられるが、これらに限定されない。触媒はまた、グアニジンなどの有機化合物を含み得る。例えば、グアニジンは、米国特許第7,842,762号、第1欄、第53行~第4欄、第18行、および第16欄、第62行~第19欄、第8行に記載される環状グアニジンを含んでもよく、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。存在する場合、触媒は、結合剤固形分の総重量に基づいて、0.01重量%~5重量%、例えば0.1重量%~2重量%の量で存在し得る。
【0099】
あるいは、電着性コーティング組成物は、触媒を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。電着性コーティング組成物は、触媒が存在するとしても、結合剤固形分の総重量に基づいて、0.01%未満または0.001%未満の量で存在する場合、それぞれ、触媒を実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0100】
本明細書で使用される場合、「結合剤固形分」という用語は、「樹脂固形分」と同義に使用され得、上記のものなどの任意のフィルム形成ポリマー、および存在する場合、硬化剤を含む。例えば、結合剤固形分は、存在する場合、上述したように、pH依存性レオロジー修飾剤、フルオロポリマー、分散剤、接着促進剤、非フッ素化有機フィルム形成ポリマー、触媒、および別に添加された架橋剤を含む。結合剤固形分は、存在する場合、電気化学的活物質および導電剤を含まない。本明細書で使用される場合、「結合剤分散体」という用語は、水性媒体中の結合剤固形分の分散体を指す。
【0101】
電着性結合剤は、10重量%~100重量%、例えば、50重量%~95重量%、例えば、70重量%~93重量%、例えば、87重量%~92重量%の量のイオン性フィルム形成樹脂を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得、かつ架橋剤は、存在する場合、0重量%~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば8重量%~13重量%の量で結合剤固形分の総重量に基づいている。
【0102】
電着性結合剤は、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば、70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー修飾剤を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得、かつ架橋剤は、存在する場合、0重量%~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量で結合剤固形分の総重量に基づいている。
【0103】
電着性結合剤は、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー修飾剤;15重量%~99重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば40重量%~95重量%、例えば50重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば50重量%~70重量%、例えば50重量%~60重量%の量のフルオロポリマー;および0~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤(存在する場合)を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得、重量%は結合剤固形分の総重量に基づいている。
【0104】
電着性結合剤は、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー修飾剤;15重量%~99重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば40重量%~95重量%、例えば50重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば50重量%~70重量%、例えば50重量%~60重量%の量のフルオロポリマー;2重量%~35重量%、例えば5重量%~32重量%、例えば8重量%~30重量%、例えば15重量%~27重量%の量の分散剤;および0~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤(存在する場合)を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得、重量%は結合剤固形分の総重量に基づいている。
【0105】
電着性結合剤は、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー修飾剤;15重量%~99重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば40重量%~95重量%、例えば50重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば50重量%~70重量%、例えば50重量%~60重量%の量のフルオロポリマー;2重量%~35重量%、例えば5重量%~32重量%、例えば8重量%~30重量%、例えば15重量%~27重量%の量の分散剤;1重量%~60重量%、例えば10重量%~40重量%、例えば25重量%~35重量%の量の接着促進剤;0重量%~90重量%、例えば20重量%~60重量%、例えば25重量%~40重量%の量の非フッ素化有機フィルム形成ポリマー(存在する場合);および0~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤(存在する場合)を含み得るか、本質的にそれらからなり得るか、またはそれらからなり得、重量%は、結合剤固形分の総重量に基づいている。
【0106】
電着性結合剤は、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば、70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー修飾剤;1重量%~60重量%、例えば10重量%~40重量%、例えば25重量%~35重量%の量の接着促進剤(存在する場合);0重量%~90重量%、例えば20重量%~60重量%、25重量%~40重量%の量の非フッ素化有機フィルム形成ポリマー(存在する場合);および0~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤(存在する場合)を含み得るか、本質的にそれらからなり得るか、またはそれらからなり得、重量%は結合剤固形分の総重量に基づいている。
【0107】
電着性結合剤は、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%~20重量%、例えば0.2重量%~10重量%、例えば0.3重量%~8重量%、例えば0.5重量%~5重量%、例えば、1重量%~3重量%、例えば1.5重量%~2.5重量%、例えば1重量%~2重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0108】
本発明の電着性コーティング組成物は、電気化学的活物質が正極の活物質として使用するための材料を含む場合、必要に応じて、導電剤をさらに含み得る。導電剤の非限定的な例には、炭素質材料、例えば、活性炭素など、アセチレンブラックおよびファーネスブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、フラーレン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。負極用の電気化学的活物質としても導電剤としても使用され得るが、電気化学的活物質として黒鉛が使用される場合、典型的には導電性材料は省略されることに留意されたい。
【0109】
上述の材料に加えて、導電剤は、例えば、100m2/gを超えるBET表面積などの高表面積を有する活性炭素を含み得る。本明細書で使用される場合、「BET表面積」という用語は、定期刊行物“The Journal of the American Chemical Society”,60,309(1938)に記載されるBrunauer-Emmett-Teller法に基づき、ASTM D 3663-78基準に従って窒素吸着によって決定される比表面積を指す。いくつかの例では、導電性炭素は、100m2/g~1,000m2/g、例えば150m2/g~600m2/g、例えば100m2/g~400m2/g、例えば200m2/g~400m2/gのBET表面積を有し得る。いくつかの実施例において、導電性炭素は、約200m2/gのBET表面積を有することができる。好適な導電性炭素材料は、Cabot Corporationから市販されているLITX 200である。
【0110】
導電剤は、必要に応じて、保護コーティングを含む電気化学的活物質に関して上述したのと同じコーティング材料を含む保護コーティングを含み得る。
【0111】
導電剤は、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.5重量%~20重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば2.5重量%~7重量%、例えば3重量%~5重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0112】
本発明によれば、電着性コーティング組成物は、水を含む水性媒体をさらに含む。本発明で使用される場合、「水性媒体」という用語は、水性媒体の総重量に基づいて、50重量%超の水を含む液体媒体を指す。このような水性媒体は、水性媒体の総重量に基づいて、50重量%未満の有機溶媒、または40重量%未満の有機溶媒、または30重量%未満の有機溶媒、または20重量%未満の有機溶媒、または10重量%未満の有機溶媒、または5重量%未満の有機溶媒、または1重量%未満の有機溶媒、0.8重量%未満の有機溶媒、または0.1重量%未満の有機溶媒を含み得る。水は、水性媒体の総重量に基づいて、50重量%超、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも85重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば少なくとも99重量%、例えば少なくとも99.9重量%、例えば100重量%を含む。水は、水性媒体の総重量に基づいて、50.1重量%~100重量%、例えば70重量%~100重量%、例えば80重量%~100重量%、例えば85重量%~100重量%、例えば90重量%~100重量%、例えば95重量%~100重量%、例えば99重量%~100重量%、例えば99.9重量%~100重量%を含み得る。水性媒体は、1つまたは1つより多くの有機溶媒をさらに含み得る。好適な有機溶媒の例としては、酸素化有機溶媒、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、およびアルキル基中に1~10個の炭素原子を含有するジプロピレングリコールのモノアルキルエーテル、例えば、これらのグリコールのモノエチルおよびモノブチルエーテルなどが挙げられる。他の少なくとも部分的に水混和性の溶媒の例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびジアセトンアルコールなどのアルコールが挙げられる。電着性コーティング組成物は、特に、水性分散体などの分散体の形態で提供され得る。
【0113】
有機溶媒を水溶性配合物に添加して、所望の範囲内の粘度を修飾し得る。電着性コーティング組成物または他の水溶性配合物に添加された有機溶媒は、ポリマー膨潤を誘発して粘度変性を達成し得る。本明細書に記載されるpH依存性レオロジー修飾剤の使用は、組成物の環境への影響を減らすために所望の粘度標的を満たすために必要な有機溶媒の総量の減少を可能にし得る。したがって、電着性コーティング組成物における上述したpH依存性レオロジー修飾剤の使用は、以前に製造された水溶性配合物よりも低い揮発性有機含有量(VOC)を有する電着性コーティング組成物の製造を可能にし得る。本明細書で使用される場合、「揮発性有機含有物」または「VOC」という用語は、250℃未満の沸点を有する有機化合物を指す。本明細書で使用される場合、「沸点」という用語は、通常の沸点とも呼ばれる、101.325kPa(1.01325バールまたは1気圧)の標準大気圧での物質の沸点を指す。揮発性有機含有物は、揮発性有機溶媒を含む。本明細書で使用される場合、「揮発性有機溶媒」という用語は、250℃未満、例えば200℃未満の沸点を有する有機化合物を指す。例えば、本発明の電着性コーティング組成物のVOCは、500g/L以下、例えば300g/L以下、例えば150g/L以下、例えば50g/L以下、例えば1g/L以下、例えば0g/L以下であり得、0~500g/L以下、例えば0.1~300g/L以下、例えば、0.1~150g/L以下、例えば、0.1~50g/L以下、例えば0.1~1g/L以下の範囲であり得る。VOCは、以下の式に従って計算され得る。
【数1】
【0114】
有機溶媒は、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも、30重量%未満、例えば20重量%未満、例えば10重量%未満、例えば5重量%未満、例えば3重量%未満、例えば1重量%未満、例えば0.5重量%未満、例えば0.3重量%未満、例えば0.1重量%未満、例えば0.0重量%未満の量で存在し得る。
【0115】
水は、電着性コーティング組成物中に存在する水の総量が、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、例えば少なくとも45重量%、例えば少なくとも50重量%、例えば少なくとも55重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも65重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも75重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも85重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%であるように、水性媒体中に存在する。水は、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、99重量%以下、例えば95重量%以下、例えば90重量%以下、例えば、85重量%以下、例えば80重量%以下、例えば75重量%以下の量で存在し得る。水は、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、40重量%~99重量%、例えば45重量%~99重量%、例えば50重量%~99重量%、例えば60重量%~99重量%、例えば65重量%~99重量%、例えば70重量%~99重量%、例えば75重量%~99重量%、例えば80重量%~99重量%、例えば85重量%~99重量%、例えば90重量%~99重量%、例えば40重量%~90重量%、例えば45重量%~85重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば60重量%~75重量%の量で存在し得る。
【0116】
電着性コーティング組成物の総固形分は、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも3重量%、例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも7重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%であり得る。総固形分含有量は、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、60重量%以下、例えば50重量%以下、例えば40重量%以下、例えば30重量%以下、例えば25重量%以下、例えば20重量%以下、例えば15重量%以下、例えば12重量%以下、例えば10重量%以下、例えば7重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。電着性コーティング組成物の総固形分は、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~60重量%、例えば0.1重量%~50重量%、例えば0.1重量%~40重量%、例えば0.1重量%~30重量%、例えば0.1重量%~25重量%、例えば0.1重量%~20重量%、例えば0.1重量%~15重量%、例えば0.1重量%~12重量%、例えば0.1重量%~10重量%、例えば0.1重量%~7重量%、例えば0.1重量%~5重量%、例えば0.1重量%~1重量%、例えば1重量%~60重量%、例えば1重量%~50重量%、例えば1重量%~40重量%、例えば1重量%~30重量%、例えば1重量%~25重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば1重量%~15重量%、例えば1重量%~12重量%、例えば1重量%~10重量%、例えば1重量%~7重量%、例えば1重量%~5重量%であり得る。
【0117】
電着性コーティング組成物は、電着性コーティング組成物として使用する前に、水および必要に応じて有機溶媒で希釈される濃縮物の形態で包装され得る。希釈時に、電着性コーティング組成物は、本明細書に記載の固形分および水含有量を有するべきである。
【0118】
電着性コーティング組成物は、45重量%~99重量%、例えば70重量%~98重量%、例えば80重量%~98重量%、例えば90重量%~98重量%、例えば91重量%~98重量%、例えば91重量%~95重量%、例えば94重量%~98重量%、例えば95重量%~98重量%、例えば96重量%~98重量%の量の保護コーティングを含む電気化学的活物質;電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~20重量%、例えば0.2重量%~10重量%、例えば0.3重量%~8重量%、例えば0.5重量%~5重量%、例えば1重量%~3重量%、例えば1.5重量%~2.5重量%、例えば1重量%~2重量%の量の電着性結合剤;電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、40重量%~99重量%、例えば45重量%~99重量%、例えば50重量%~99重量%、例えば60重量%~99重量%、例えば65重量%~99重量%、例えば70重量%~99重量%、例えば75重量%~99重量%、80重量%~99重量%、例えば85重量%~99重量%、例えば90重量%~99重量%、例えば40重量%~90重量%、例えば45重量%~85重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば60重量%~75重量%の量の水;および必要に応じて、電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.5重量%~20重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば2.5重量%~7重量%、例えば3重量%~5重量%の量の導電剤を含み得るか、本質的にそれらからなり得るか、またはそれらからなり得る。
【0119】
電着性コーティング組成物のpHは、組成物が使用される電着の種類、ならびに電着性コーティング組成物に含まれる顔料、充填材などの添加剤によって異なる。特に電気化学的活物質の選択は、電着性コーティング組成物のpHに著しく影響を与えることがある。例えば、アニオン性電着性コーティング組成物は、約6~約12、例えば約6.5~約11、例えば約7~約10.5のpHを有し得る。対照的に、カチオン性電着性コーティング組成物は、約4.5~約10、例えば約5.5~約8、例えば約4.5~約5.5、例えば約8~約9.5のpHを有し得る。
【0120】
電着性コーティング組成物は、必要に応じて、pH調整剤をさらに含み得る。pH調整剤は、酸または塩基を含み得る。酸は、例えば、リン酸または炭酸を含み得る。塩基は、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、またはジメチルエタノールアミン(DMEA)を含み得る。電着性コーティング組成物のpHを所望のpH範囲に調整するために必要な任意の好適な量のpH調整剤を使用してもよい。
【0121】
本発明はまた、基材をコーティングするための方法も対象とする。電着性コーティング組成物は、任意の導電性基材上に電着させることができる。好適な基材は、金属基材、金属合金基材、および/またはニッケルめっきされたプラスチックなどの金属化された基材を含む。加えて、基材は、例えば、炭素繊維または導電性炭素を含む材料などの複合材料を含む非金属導電性材料を含み得る。本発明によれば、金属または金属合金は、冷間圧延鋼、熱間圧延鋼、亜鉛金属でコーティングされた鋼、亜鉛化合物、または亜鉛合金、例えば、電気亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、亜鉛めっき鋼、および亜鉛合金でめっきされた鋼を含み得る。1XXX、2XXX、3XXX、4XXX、5XXX、6XXX、7XXX、または8XXXシリーズのアルミニウム合金、ならびにA356シリーズのクラッドアルミニウム合金および鋳造アルミニウム合金も基材として使用され得る。AZ31B、AZ91C、AM60B、またはEV31Aシリーズのマグネシウム合金も基材として使用され得る。本発明で使用される基材は、チタンおよび/またはチタン合金も含み得る。他の好適な非鉄金属には、銅およびマグネシウム、ならびにこれらの材料の合金が含まれる。基材は、導電性材料を含む集電体の形態であってもよく、導電性材料は、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、およびそれらの合金、ならびにステンレス鋼などの金属を含み得る。他の好適な導電性基材としては、導電性炭素、導電性プライマーでコーティングされた材料、多層電池電極を調製するための予め作製された電池電極、導電性多孔質ポリマー、および導電性複合材を含む多孔質ポリマーが挙げられる。基材はまた、電気絶縁多孔質ポリマーを含み得、基材は、例えば、米国特許公開第2016/0317974号の段落[0054]~[0058]に開示される方法および装置によって、導電性裏材を使用してコーティングされる。基材はまた、炭素コーティングされた箔などの炭素コーティングされた導電性材料を含み得る。
【0122】
基材をコーティングするための方法は、上述したような電着性コーティング組成物を基材の少なくとも一部分に電着させるステップと、コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させて基材上に少なくとも部分的に硬化したコーティングを形成するステップと、を含み得る。本発明によれば、本方法は、(a)本発明の電着性コーティング組成物を基材の少なくとも一部分に電着するステップと、(b)コーティングされた基材を基材上の電着性コーティングを硬化させるのに十分な温度および時間まで加熱するステップとを含み得る。
【0123】
本発明の方法では、コーティングは、電着プロセスを介して基材の少なくとも一部分の上または上方に塗布される。このようなプロセスでは、電極および対電極(アニオン電着のカソードまたはカソード電着のアノードなど)を含む電気回路の電極(アニオン電着のアノードまたはカソード電着のカソードなど)として機能する導電性基材(前述のいずれか)を、本発明の電着性コーティング組成物に浸漬する。電極間に電流が流れ、コーティングを基材上に堆積させる。印加される電圧は、様々であり得、例えば、1ボルトのような低い電圧から数千ボルトのような高い電圧であり得るが、多くの場合、50ボルト~500ボルトである。電流密度は、多くの場合、1平方フィート当たり0.5アンペア~15アンペアである。組成物中の基材の滞留時間は、10~180秒であってよい。
【0124】
電気コーティング後、基材を浴から除去し、オーブンで焼き付けて、電着性コーティングフィルムを乾燥させ、および/または架橋させてよい。例えば、コーティングされた基材は、400℃または400℃未満、例えば300℃または300℃未満、例えば275℃または275℃未満、例えば255℃または255℃未満、例えば225℃または225℃未満、例えば200℃または200℃未満、例えば少なくとも50℃、例えば少なくとも60℃、例えば50~400℃、例えば100~300℃、例えば150~280℃、例えば200~275℃、例えば225~270℃、例えば235~265℃、例えば240~260℃の温度で焼成され得る。加熱の時間は、温度によって多少異なる。一般に、温度が高いほど、硬化に必要な時間は短くなる。通常、硬化時間は、5~60分などの少なくとも5分間である。硬化フィルム中の結合剤が架橋される(該当する場合)、すなわち、フィルム形成樹脂上の共反応基と架橋剤との間に共有結合が形成されるように、温度および時間は十分でなければならない。架橋された電着性結合剤は、下記の電解質の溶媒に実質的に耐性の溶媒であってよい。他の場合において、基材を電気コーティングし、浴から除去した後、コーティングされた基材は、周囲条件下で単に乾燥させることができる。本明細書で使用される場合、「周囲条件」は、10~100パーセントの相対湿度、ならびに-10~120℃の範囲の温度、例えば5~80℃、例えば10~60℃、例えば15~40℃を有する大気を指す。コーティングフィルムを乾燥させる他の方法としては、マイクロ波乾燥および赤外線乾燥が挙げられ、コーティングフィルムを硬化させる他の方法としては、電子ビーム硬化および紫外線硬化が挙げられる。
【0125】
本発明はまた、集電体と、集電体上に形成されたフィルムを含む電極を対象とし、フィルムは、上述した電着性コーティング組成物から堆積される。電極は、正極または負極であってよく、上述した電着性コーティング組成物を集電体の表面に堆積させてコーティングフィルムを形成し、続いてコーティングフィルムを乾燥および/または硬化させるステップによって製造することができる。
【0126】
電極のコーティングフィルムは、架橋コーティングを含み得る。本明細書で使用される場合、「架橋コーティング」という用語は、フィルム形成樹脂の官能基が架橋剤の官能基と反応して、電着性結合剤の成分分子を架橋する共有結合を形成したコーティングを指す。pH依存性レオロジー修飾剤、接着促進剤、および非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、存在する場合、架橋剤の官能基と反応性の官能基も有してもよく、コーティングを架橋する役割も果たしてもよい。
【0127】
集電体は、導電性材料を含み得、導電性材料は、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、およびそれらの合金、ならびにステンレス鋼などの金属を含み得る。例えば、集電体は、メッシュ、シート、または箔の形態のアルミニウムまたは銅を含み得る。集電体の形状および厚さは特に限定されないが、集電体は、約0.001~0.5mmの厚さを有し得る。
【0128】
加えて、集電体は、電着性コーティング組成物を堆積させる前に、前処理組成物で前処理され得る。本明細書で使用される場合、「前処理組成物」という用語は、集電体と接触すると、集電体表面と反応し、集電体表面を化学的に変化させ、それに結合して保護層を形成する組成物を指す。前処理組成物は、群IIIBおよび/またはIVB金属を含む前処理組成物であり得る。本発明で使用する場合、「IIIB族および/またはIVB金属」という用語は、例えば、Handbook of Chemistry and physics,63rd edition(1983)に示されているように、元素のCAS周期表のIIIB族またはIVB族にある元素を指す。該当する場合、金属自体が使用され得るが、基IIIBおよび/またはIVB金属化合物も使用され得る。本発明で使用される場合、「IIIB族および/またはIVB族金属化合物」という用語は、元素のCAS周期表のIIIB族またはIVB族にある少なくとも1つの元素を含む化合物を指す。好適な前処理組成物および集電体を前処理するための方法は、米国特許第9,273,399号、第4欄、第60行~第10欄、第26行に記載されており、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。前処理組成物を使用して、正極または負極を生成するために使用される集電体を処理することができる。
【0129】
リチウムイオン蓄電装置のための電極を調製するために、電気化学的活物質、導電剤、フルオロポリマー、pH依存性レオロジー修飾剤、および必要に応じた構成成分を含む電着性コーティング組成物は、構成成分を組み合わせて電着性コーティング組成物を形成するステップによって調製される。これらの物質は、撹拌器、ビーズミル、または高圧ホモジナイザーなどの既知の手段で撹拌することによって一緒に混合することができる。そのような組成物を調製するための例示的な方法を、以下の実施例に提示する。
【0130】
電着後に形成されるコーティングの厚さは、少なくとも0.5ミクロン、例えば1~1,000ミクロン(μm)、例えば5~750ミクロン、例えば10~500μm、例えば20~400ミクロン、例えば25~300ミクロン、例えば50~250μm、例えば75~200μm、例えば100~150ミクロンであってよい。
【0131】
本発明はまた、蓄電装置も対象とする。本発明による蓄電装置は、本発明の電着性コーティング組成物から調製された上記電極のうちの1つまたは1つより多くを使用するステップによって製造され得る。蓄電装置は、電極、対電極、および電解質を備える。電極、対電極、または両方は、1つの電極が正極であり、1つの電極が負極である限り、本発明の電極を含み得る。本発明の蓄電装置は、セル、電池、電池パック、二次電池、コンデンサ、擬似コンデンサ、および超コンデンサを含む。
【0132】
蓄電装置は、電解液を含み、一般的に使用される方法に従って、セパレータなどの部品を使用するステップによって製造することができる。より具体的な製造方法として、負極と正極とを、それらの間のセパレータとともに組み立て、得られたアセンブリを、電池の形状に従って、圧延または折り曲げて、電池容器に入れ、電解液を電池容器に注入し、電池容器を密封する。電池の形状は、コイン、ボタンまたはシートのように、円筒形、正方形、または平面であってもよい。
【0133】
電解液は液体であってもゲルであってもよく、電池として効果的に機能することができる電解液は、負極活物質および正極活物質の種類に従って蓄電装置に使用される公知の電解液の中から選択することができる。電解液は、好適な溶媒中に溶解された電解質を含有する溶液であってもよい。電解質は、リチウムイオン二次電池のための従来から公知のリチウム塩であり得る。リチウム塩の例としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiB(C6H5)4、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、LiB4CH3SO3Li、およびCF3SO3Liが挙げられる。上記電解質を溶解するための溶媒は特に限定されず、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートなどのカーボネート化合物;γ-ブチルラクトンなどのラクトン化合物;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2-エトキシエタン、テトラヒドロフラン、および2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル化合物;ならびにジメチルスルホキシドなどのスルホキシド化合物が挙げられる。電解液中の電解質の濃度は、0.5~3.0モル/L、例えば0.7~2.0モル/Lであってもよい。
【0134】
リチウムイオン蓄電装置の放電中、リチウムイオンは、負極から放出され、電流を正極に伝えることができる。このプロセスは、デインターカレーションとして知られるプロセスを含み得る。充電中、リチウムイオンは、正極中の電気化学的活物質から負極中に移動し、負極中に存在する電気化学的活物質中に埋め込まれる。このプロセスは、インターカレーションとして知られるプロセスを含み得る。
【0135】
電着性コーティング組成物は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。電着性コーティング組成物はまた、さらなる逃散性接着促進剤を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、「逃散性接着促進剤」という用語は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリエチル、リン酸トリメチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、およびテトラエチル尿素を指す。本明細書で使用される場合、逃散性接着促進剤を実質的に含まない電着性コーティング組成物は、全く存在しないとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の逃散性接着促進剤を含む。本明細書で使用される場合、逃散性接着促進剤を本質的に含まない電着性コーティング組成物は、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、全く存在しないとしても、0.1重量%未満の逃散性接着促進剤を含む。存在する場合、逃散性接着促進剤は、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、2重量%未満、例えば1重量%未満、例えば、0.9重量%未満、例えば0.1重量%未満、例えば0.01重量%未満、例えば0.001重量%未満の量で存在し得る。
【0136】
本発明によれば、電着性コーティング組成物は、フルオロポリマーを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。
【0137】
電着性コーティング組成物は、有機炭酸塩を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、有機炭酸塩が、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満または0.1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、有機炭酸塩を実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0138】
電着性コーティング組成物は、アクリル修飾フルオロポリマーを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、アクリル修飾フルオロポリマーが、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満または0.1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、アクリル修飾フルオロポリマーを実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0139】
本発明によれば、電着性コーティング組成物は、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、および/またはポリアクリロニトリル誘導体を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。
【0140】
電着性コーティング組成物は、有機炭酸塩を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、有機炭酸塩が、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満または0.1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、有機炭酸塩を実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0141】
電着性コーティング組成物は、アクリロニトリルを実質的に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、アクリロニトリルが、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満または0.1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、アクリロニトリルを実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0142】
電着性コーティング組成物は、実質的にグラフェンオキシドを含まない場合がある。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、グラフェンオキシドが、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、5重量%未満または1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、実質的にグラフェンオキシドを含まないか、または本質的に含まない。
【0143】
pH依存性レオロジー修飾剤は、カルボン酸アミドモノマー単位の残基を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、pH依存性レオロジー修飾剤は、カルボン酸アミドモノマー単位が、存在するとしても、pH依存性レオロジー修飾剤の総重量に基づいて、0.1重量%未満または0.01重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、カルボン酸アミドモノマー単位を実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0144】
電着性コーティングは、イソホロンを実質的に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、イソホロンが、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、5重量%未満または1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、イソホロンを実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0145】
電着性コーティングは、セルロース誘導体を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。セルロース誘導体の非限定的な例には、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(CMC)が挙げられる。CMCは、アンヒドログルコース環上のヒドロキシル基の一部分がカルボキシメチル基で置換されたセルロースエーテルである。
【0146】
電着性コーティングは、多官能性ヒドラジド化合物を含む、ヒドラジド化合物を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、ヒドラジド化合物が、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総結合剤固形分重量に基づいて、0.1重量%未満または0.01重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、ヒドラジド化合物を実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0147】
電着性コーティングは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはアクリルゴムを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはアクリルゴムが、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総結合剤固形分重量に基づいて、5重量%未満または1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはアクリルゴムを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。
【0148】
電着性コーティングは、ポリ(メタ)アクリル酸の総重量に基づいて、70重量%を超えるアクリル酸官能性モノマーを有するポリ(メタ)アクリル酸を実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、ポリ(メタ)アクリル酸が、存在するとしても、電着性コーティング組成物の全結合剤固形分重量に基づいて、5重量%未満または1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、ポリ(メタ)アクリル酸を実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0149】
電着性コーティング組成物は、脂肪族共役ジエンモノマー単位および芳香族ビニルモノマー単位の残基を含有する粒子状ポリマーを実質的に含み得ないか、本質的に含み得ないか、または完全に含み得ない。本明細書で使用される場合、電着性組成物は、特定のポリマーが、結合剤固形分の総重量に基づいて、5重量%未満または1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、そのような特定のポリマーを実質的に含まないか、または本質的に含まない。
【0150】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、広義には、オリゴマー、ならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を指す。用語「樹脂」は、「ポリマー」と交換可能に使用される。
【0151】
「アクリル」および「アクリレート」という用語は(意図された意味を変えることにならない限り)互換的に使用され、別途明確に示されない限り、それらのC1~C5アルキルエステル、低級アルキル置換アクリル酸、例えば、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸などのC1~C2置換アクリル酸、ならびにそれらのC1~C4アルキルエステルなどのアクリル酸、無水物、およびそれらの誘導体を含む。用語「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」は、指示された材料、例えば、(メタ)アクリレートモノマーのアクリル/アクリレートおよびメタクリル/メタクリレート形態の両方をカバーすることが意図されている。「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、1つまたは1つより多くの(メタ)アクリルモノマーから調製されるポリマーを指す。
【0152】
本明細書で使用される場合、分子量は、ポリスチレン標準物質を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって決定される。別途示されない限り、分子量は、重量平均ベースである。
【0153】
用語「ガラス転移温度」は、T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.(Ser.II)1,123(1956)およびJ.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook 3rd edition,John Wiley,New York,1989に従って、モノマー電荷のモノマー組成に基づいて、Foxの方法によって計算されたガラス転移温度である理論値である。
【0154】
本明細書で使用される場合、別途定義されない限り、実質的に含まないという用語は、成分が存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、5重量%未満の量で存在することを意味する。
【0155】
本明細書で使用される場合、別途定義されない限り、本質的に含まないという用語は、成分が存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で存在することを意味する。
【0156】
本明細書で使用される場合、別途定義されない限り、完全に含まないという用語は、成分が電着性コーティング組成物中に存在しないこと、すなわち電着性コーティング組成物の総重量に基づいて0.00重量%であることを意味する。
【0157】
本明細書で使用される場合、「総固形分」という用語は、本発明の電着性コーティング組成物の不揮発性成分を指し、特に水性媒体を除外する。総固形分は、少なくとも結合剤固形分、保護コーティングを含む電気化学的活物質、および存在する場合、導電剤を明示的に含む。
【0158】
詳細な説明の目的のために、本発明が、相反することが明示的に指定されている場合を除き、様々な代替的な変形およびステップシーケンスが想定され得ることが理解されるべきである。さらに、任意の動作例以外、または別途示される場合、値、量、パーセンテージ、範囲、部分範囲、および端数を表すものなどのすべての数は、用語が明示的に現れなくても、「約」という言葉が前にあるかのように読むことができる。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ、等価物の見解の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有意な桁の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。クローズまたはオープンエンドの数値範囲が本明細書に記載される場合、数値範囲内または数値範囲に包含されるすべての数、値、量、パーセンテージ、部分範囲、および端数は、これらの数、値、量、パーセンテージ、部分範囲、および端数がそれらの全体が明示的に書き出されたかのように、本出願の元の開示に具体的に含まれ、かつそれに属するものとみなされるべきである。
【0159】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の例において記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に得られる特定の誤差を本質的に含有する。
【0160】
本明細書で使用される場合、別途示されない限り、複数の用語は、別途示されない限り、その単数の対応物を包含することができ、その逆もまた同様である。例えば、本明細書では、「1つの(a)」フルオロポリマー、「1つの(an)」電気化学的活物質、およびpH依存性レオロジーを有する「1つの(a)」修飾剤を言及するが、これらの成分の組み合わせ(すなわち、複数)を使用することができる。加えて、本明細書では、「および/または」がある特定の例で明示的に使用され得るが、別途明記されない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。
【0161】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含有する」、および同様の用語は、本出願の文脈において「含む(comprising)」と同義であることが理解され、したがって、オープンエンドであり、追加の非記載または非列挙の要素、材料、構成成分、または方法ステップの存在を除外しない。本明細書で使用される場合、「からなる」は、任意の不特定の要素、構成成分、または方法ステップの存在を除外するために、本出願の文脈において理解される。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、特定の要素、材料、構成成分、または方法ステップ、記載されているものの「基本的かつ新規の特徴に物質的に影響を及ぼさないもの」を含むように、本出願の文脈において理解される。
【0162】
本明細書で使用される場合、「上(on)」、「上に(onto)」、「上に塗布される(applied on)」、「上に塗布される(applied onto)」、「上に形成される(formed on)」、「上に堆積される(deposited on)」、「上に堆積される(deposited onto)」という用語は、表面上に形成される、重ねられる、堆積される、または提供されるが必ずしも表面と接触しないことを意味する。例えば、基材「上に堆積される」電着性コーティング組成物は、電着性コーティング組成物と基材との間に位置する同じまたは異なる組成物の1つまたは1つより多くの他の介在コーティング層の存在を排除しない。
【0163】
本発明の特定の実施形態は詳細に説明されているが、本開示の全体的な教示に照らして、それらの詳細に対する様々な修正および代替案が開発され得ることが当業者によって理解されるであろう。したがって、開示される特定の構成は、添付の特許請求の範囲の全容ならびにその任意のおよびすべての等価物を与える本発明の範囲についてのみの例示であり、限定ではないことを意味する。
【0164】
したがって、上記を鑑みて、本発明は、これらに限定されないが、以下の態様に関する。
【0165】
態様1.電着性コーティング組成物であって、
保護コーティングを含む電気化学的活物質と、
電着性結合剤と、
水性媒体と、を含む、電着性コーティング組成物。
【0166】
態様2.前記保護コーティングが、金属化合物または複合体を含む、態様1に記載の電着性コーティング組成物。
【0167】
態様3.前記金属化合物または複合体が、(i)金属カルコゲン、(ii)金属プニクトゲン、(iii)金属ハロゲン化物、(iv)金属オキシハロゲン化物、(v)金属オキシ窒化物、(vi)金属リン酸塩、(vi)金属炭化物、(vii)金属オキシ炭化物、(viii)金属炭素窒化物、(ix)橄欖石、(x)ナシコン型構造、(xi)多金属イオン構造、(xii)金属有機構造もしくは複合体、(xiii)多金属有機構造もしくは複合体、または(xiv)金属炭素系コーティングを含む、態様2に記載の電着性コーティング組成物。
【0168】
態様4.前記保護コーティングが、金属酸化物コーティングを含む、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0169】
態様5.前記金属酸化物コーティングの前記金属酸化物が、チタンの酸化物を含む、態様4に記載の電着性コーティング組成物。
【0170】
態様6.前記チタンの酸化物が、チタニアを含む、態様5に記載の電着性コーティング組成物。
【0171】
態様7.前記金属酸化物コーティングの前記金属酸化物が、アルミニウムの酸化物を含む、態様4~6のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0172】
態様8.前記アルミニウムの酸化物がアルミナを含む、態様7に記載の電着性コーティング組成物。
【0173】
態様9.前記金属酸化物コーティングの金属酸化物が、シリカを含む、態様4~6のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0174】
態様10.前記金属酸化物コーティングの金属酸化物がジルコニアを含む、態様4~6のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0175】
態様11.前記保護コーティングが、炭素系コーティングを含む、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0176】
態様12.前記炭素系コーティングが、金属炭酸塩を含む、態様11に記載の電着性コーティング組成物。
【0177】
態様13.前記炭素系コーティングが、炭酸リチウムを含む、態様12に記載の電着性コーティング組成物。
【0178】
態様14.前記保護コーティングが、非金属化合物または複合体を含む、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0179】
態様15.前記非金属化合物または複合体が、(i)非金属酸化物、(ii)非金属窒化物、(iii)非金属炭素窒化物、(iv)非金属フッ化物、(v)非金属有機構造もしくは複合体、(vi)または非金属オキシフッ化物を含む、態様14に記載の電着性コーティング組成物。
【0180】
態様16.前記電気化学的活物質が、リチウムを組み込むことができる材料を含み、前記リチウムを組み込むことができる材料が、LiCoO2、LiNiO2、LiFePO4、LiCoPO4、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiMnCo)O2、Li(NiCoAl)O2、炭素被覆LiFePO4、またはそれらの組み合わせを含む、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0181】
態様17.前記電気化学的活物質が、リチウム変換可能な材料を含み、前記リチウム変換可能な材料が、硫黄、LiO2、FeF2およびFeF3、Si、アルミニウム、スズ、SnCo、Fe3O4、またはそれらの組み合わせを含む、態様1~13のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0182】
態様18.前記電着性結合剤が、フルオロポリマーを含む、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0183】
態様19.前記電着性結合剤が、pH依存性レオロジー修飾剤を含む、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0184】
態様20.前記pH依存性レオロジー修飾剤が、アルカリ膨潤性レオロジー修飾剤を含む、態様19に記載の電着性コーティング組成物。
【0185】
態様21.前記pH依存性レオロジー修飾剤が、酸膨潤性レオロジー修飾剤を含む、態様19に記載の電着性コーティング組成物。
【0186】
態様22.分散剤をさらに含む、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0187】
態様23.前記電着性結合剤が、イオン性フィルム形成樹脂を含む、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0188】
態様24.硬化剤をさらに含む、先行する態様の請求項のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物。
【0189】
態様25.基材をコーティングする方法であって、前記方法が、先行する態様のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物を基材上に電気泳動的に堆積させるステップを含む、方法。
【0190】
態様26.集電体と、前記集電体の少なくとも一部分に形成されたコーティングと、を備える、コーティングされた基材であって、前記コーティングが、態様1~24のいずれか1つに記載の電着性コーティング組成物から堆積される、コーティングされた基材。
【0191】
態様27.前記集電体が、アルミニウム、銅、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、導電性炭素、導電性プライマーコーティング、または多孔質ポリマーを含む、態様26に記載のコーティングされた基材。
【0192】
態様28.前記コーティングされた基材が、正極を含む、態様26または27に記載のコーティングされた基材。
【0193】
態様29.前記コーティングされた基材が、負極を含む、態様26または27に記載のコーティングされた基材。
【0194】
態様30.前記集電体が、前処理組成物で前処理される、態様26~29のいずれか1つに記載のコーティングされた基材。
【0195】
態様31.蓄電装置であって、
(a)態様26~30のいずれか1つに記載のコーティングされた基材を含む電極と、
(b)対電極と、
(c)電解質と、を備える、蓄電装置。
【0196】
態様32.前記蓄電装置が、セル、電池パック、二次電池、コンデンサ、超コンデンサおよび/または擬似コンデンサを含む、態様31に記載の蓄電装置。
【0197】
本発明を例示することは、以下の実施例であるが、しかしながら、本発明をそれらの詳細に限定するとみなすべきではない。別途示されない限り、以下の実施例における、ならびに本明細書の全体を通して、すべての部およびパーセンテージは、重量によるものである。
【実施例】
【0198】
実施例1:分散剤の調製
機械的撹拌ブレード、熱電対、および還流凝縮器を備えた4つ口の丸底フラスコに、493.2グラムのジアセトンアルコールを添加した。窒素雰囲気下で、ジアセトンアルコールを122℃の設定点まで加熱した。メチルメタクリレート290.4グラム、エチルヘキシルアクリレート295グラム、ブチルアクリレート51.5グラム、N-ビニルピロリドン187.3グラム、およびメタクリル酸112.4グラムを含有するモノマー溶液を、別の容器内で十分に混合した。9.1グラムのtert-アミルペルオクトエートと163.8グラムのジアセトンアルコールとの反応開始剤溶液もまた、別の容器内で調製した。開始剤およびモノマー溶液を、それぞれ210および180分にわたって添加漏斗を使用して、同時にフラスコに共投入した。開始剤およびモノマー供給が完了した後、モノマー添加漏斗を46.8グラムのジアセトンアルコールですすぎ、開始剤添加漏斗を23グラムのジアセトンアルコールですすいだ。得られた溶液を122℃で1時間保持した。次に、200グラムのジアセトンアルコールを反応器に添加し、続いて、2.8グラムのtert-アミルペルオクトエートおよび24.5グラムのジアセトンアルコールの第2の開始剤溶液を30分にわたって添加した。溶液を122℃で60分間保持した。次いで、2.8グラムのtert-アミルペルオクトエートおよび24.5グラムのジアセトンアルコールの第3の開始剤溶液を30分にわたって添加した。次いで、溶液を122℃で60分間保持した。60分間の保持後、溶液を100℃未満に冷却し、好適な容器に注いだ。樹脂溶液の総固形分は、52.74%の固形分であることが測定された。
【0199】
機械的撹拌ブレード、熱電対、および還流凝縮器を備えた4つ口の丸底フラスコに、上述したように462グラムの樹脂溶液を添加した。樹脂溶液を窒素雰囲気下で100℃の設定点まで加熱した。次いで、32.8グラムのジメチルエタノールアミンを10分間にわたって添加した。添加後、溶液を100℃で15分間保持し、次いで70℃まで冷却した。溶液が70℃に達すると、541.5グラムの温かい(70℃)脱イオン水を60分間にわたって加え、15分間混合した。混合後、樹脂分散体を好適な容器に注いだ。樹脂分散体の固形分含有量を、22.9%の固形分として測定した。この組成物を実施例2の分散剤として使用した。
【0200】
組成物の固形分含有量を、以下の手順によって決定した:Fisher Scientificのアルミニウム計量皿を、分析天秤を使用して計量した。空皿の重量を小数点以下4桁まで記録した。約0.5gの組成物および3.5gのアセトンを、事前に計量された皿に添加した。皿および分散剤溶液の重量を、小数点以下第4位まで記録した。分散剤溶液を含有する皿を実験室オーブンに入れ、オーブン温度を110℃に設定し、1時間乾燥させた。残りの固形分材料で予め計量した皿を、分析天秤を使用して計量した。残りの固形分材料を用いた皿の重量を、小数点以下4桁まで記録した。固形分含有量は、以下の式を使用して決定した:%固形分=100×[(残りの固形分を含む皿の重量)-(空の皿の重量)]/[(加熱前の皿組成物の重量)-(空の皿の重量)]。
【0201】
実施例2:フルオロポリマーおよび分散剤の分散体の調製
プラスチックカップに、96.27グラムの水、121.85グラム(27.8gの固形物)の実施例1からの分散剤、および0.16グラムの脱発泡剤(DREWPLUS)を入れた。得られた混合物を、適度な渦を維持しながら、Cowlesブレードを使用して激しく撹拌した。この混合を続けながら、64.85グラムのポリビニリデンジフルオリド粉末(RZ-49、Asambly Chemicalから市販)を少量ずつ添加した。すべてのポリビニリデン二フッ化物粉末を添加した後、さらに45分間混合を続けた。
【0202】
実施例3~8:金属酸化物コーティングされた活性粒子を含む電着性コーティング組成物およびその電着によって生成された正極の調製
以下のように、各実施例の構成成分を組み合わせることにより、電着性コーティング組成物を製造した。プラスチックカップに、0.59gのpH依存性レオロジー修飾剤の分散体(固形分0.17g、総固形分の0.6重量%;DOW Chemical Co.からのACRYSOL(商標)ASE-60)、2.89gの実施例2で調製したPVDFの分散体および分散剤(0.66gのフルオロポリマー固形分、総固形分の2.4重量%;0.28gの分散剤固形分、総固形分の1.0重量%)、1.69gのエタノール、ならびに21.9gの脱イオン水を添加した。この混合物を2,000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、各実施例について表2に特定されている、3つのレベルのうちのいずれかでチタニアまたはアルミナでコーティングされた(レベル1は最も薄い保護コーティング厚さを示し、レベル2は中間の保護コーティング厚さを示し、レベル3は最も厚い保護コーティングを示す)、6:2:2のNi:Mn:Coの比率を有するリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の金属酸化物コーティングされた電気化学的活物質25g(総固形分の90重量%)を混合物に添加し、混合物を2000RPMで5分間遠心混合器内で混合した(金属酸化物コーティングされた電気化学的活物質の各々は、Forge Nanoから市販されている)。次に、1.67g(総固形分の6重量%)の導電性材料(Imerysから市販されている「Super P」カーボンブラック)を混合物に添加し、混合物を2000RPMで遠心混合器内で5分間混合した。最後に、Hexyl CELLOSOLVE(商標)グリコールエーテル1.0gおよびDOWANOL(商標)PnBグリコールエーテル0.31g(各々DOW Chemical Co.から入手可能)を混合物に添加し、混合物を2000RPMで遠心混合器中で5分間混合した。800RPMの磁気撹拌バーを使用して、常時撹拌下にて脱イオン水を添加することにより、組成物を総固形分の10%まで希釈した。完全に製剤化された各電着性コーティング組成物のpHは、表2に報告されている。30分間の撹拌後、各組成物についてアニオン電着を実施した。電着性コーティング組成物中に8cm浸漬した8cm×11cm×20μmの炭素コーティングされたアルミニウム箔は、電着性コーティング組成物中に8cm浸漬した対電極(カソード)として、10cm×12cmのアルミニウム箔から2.7cmの分離でコーティングされる負極として機能した。電着性組成物を、電着の全期間を通して磁気撹拌器を使用して撹拌し、30Vの電位を、各組成物に対して3つの異なる時間の期間、直流整流器を使用して電極の両端に印加した。堆積後、フィルムを脱イオン水ですすいだ。10秒、20秒、および30秒の期間における堆積を測定し、各時点で測定された堆積された質量に対する線形適合によって計算される各電着性コーティング組成物の質量堆積速度を決定した。各組成物の質量堆積速度は、表2に含まれる。
【表2】
【0203】
比較実施例9:比較電着性コーティング組成物およびその電着により生成される正極の調製
実施例3~8の金属酸化物コーティングされた電気化学的活物質(Forge Nanoから市販されている非コーティング電極活物質)25gの代わりに、電気化学的活物質上に金属酸化物コーティングを含まない6:2:2のNi:Mn:Coの比率を有するリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の電極活物質25gを使用したことを除いて、実施例3~8と同様の手順および量の材料を使用して、比較電着性コーティング組成物を調製した。最終配合物のpHは11.41であった。比較電着性コーティング組成物を、実施例3~8と同様の手順で電着させ、0.222mg/cm2/sの質量堆積速度を、実施例3~8で使用されるのと同じ方法で決定した。
【0204】
実施例3~9の電極の評価
コインセルを、各実施例について上述のように、10秒間の期間、電着によって調製した正極から製造した。実施例3~8および比較実施例9のコーティングされた基材を245℃で10分間焼き付け、次いで、基材を、コインセル内の正極として使用する前に、Innovative Machine Corporationが提供するカレンダープレスを使用して焼き付けた後、35%の多孔性までプレスした。正極をリチウム金属負極と対にした。セパレータとして、セラミックコーティングされた厚さ20μmのセルガードセパレータを使用した。電解質は、エチレンカーボネート(「EC」)およびエチルメチルカーボネート(「EMC」)の溶媒混合物中の1.2MのLiPF
6を、EC:EMCの3:1の比率で含む。316ステンレス鋼ケーシングを使用してコインセルを製造し、1cm径を有する正極を、1.5cm径および60μLの電解液を有する負極と対にした。電池の試験を、0.1Cでの単一の形成ステップ、続いて、以下の表3に指定された各速度での3サイクルを使用して、Arbin電池テスターで実施した。電池サイクルを、レート試験が完了した後、1Cで電池をサイクルすることによって特徴付け、その結果を以下の表3に提供する。
【表3】
【0205】
実施例は、金属酸化物コーティングされた電気化学的活物質を含む本発明の電着性コーティング組成物を電着して製造された電極(実施例3~8)が、金属酸化物コーティングされた電気化学的活物質を使用しない同様の電着性コーティング組成物(比較実施例9)と比較して、コインセルの性能が著しく向上することを示している。
【0206】
実施例10:炭酸リチウムコーティングされた活性粒子およびそれらの電着により生成される正極を含む電着性コーティング組成物の調製
プラスチックカップに、pH依存性レオロジー修飾剤の分散体1.602g(0.07gの固形分、総固形分の0.4重量%;DOW Chemical Co.からのACRYSOL(商標)ASE-60)、13.203gの水、1.794gの実施例2で調製したPVDFの分散体および分散剤(0.41gのフルオロポリマー固形分、総固形分の2.5重量%;0.18gの分散剤固形分、総固形分の1.1重量%)、および1.021gのエタノールを添加した。この混合物を2,000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、リチウムニッケルマンガンコバルトオキシドの炭酸リチウムコーティングされた電気化学的活物質15g(総固形分の92重量%)(NCM111、#52、アルゴンヌ国立研究所から)を混合物に添加し、混合物を2,000RPMの遠心混合器中で5分間混合した。次に、0.652g(総固形分の4重量%)の導電性材料(Imerysから市販されている「Super P」カーボンブラック)を混合物に添加し、混合物を2000RPMで遠心混合器内で5分間混合した。最後に、Hexyl CELLOSOLVE(商標)グリコールエーテル1.354gおよびDOWANOL(商標)PnBグリコールエーテル0.423g(各々DOW Chemical Co.から入手可能)をスラリーに添加し、2000RPMで遠心混合器中で5分間混合した。800RPMの磁気撹拌バーを使用し、常時撹拌下にて脱イオン水160gを添加することにより、組成物を総固形分の10%まで希釈した。30分間の撹拌後、アニオン電着を実施した。電着性コーティング組成物中に3.1cm浸漬した4.2cm×8cmの炭素コーティングされたアルミニウム箔は、電着性コーティング組成物中に6cm浸漬した対電極(カソード)として、7.5cm×9.5cmのアルミニウム箔から2cmの分離でコーティングされる負極として機能した。電着性組成物を、電着の全期間を通して磁気撹拌器を使用して撹拌し、100Vの電位を、直流整流器を使用して電極の両端に10秒、20秒間および30秒間印加した。フィルムを溶液から除去し、後処理を行わずに乾燥させた。10秒後、20秒後、および30秒後の堆積で、それぞれ9.46mg/cm2、15.90mg/cm2、および22.27mg/cm2のコーティング質量を得た。
【0207】
比較実施例11:比較電着性コーティング組成物およびその電着により生成される正極の調製
実施例10で使用したカーボネートコーティングされた電気化学的活物質15gの代わりに、電気化学的活物質に保護コーティングを含まないリチウムニッケルマンガンコバルトオキシド(NCM111)の電気化学的活物質15gを使用したことを除いて、実施例10と同じ手順および量の材料を使用して、比較電着性コーティング組成物を調製した。比較電着性コーティング組成物を、実施例10と同じ手順を使用して電着した。10秒後、20秒後、および30秒後の堆積で、9.60mg/cm2、15.82mg/cm2、および21.12mg/cm2のコーティング質量を得た。
【0208】
実施例10~11の電極の評価
コインセルを、各実施例について上述のように、10秒間の期間、電着によって調製した正極から製造した。実施例10および比較実施例11のコーティングされた基材を245℃で10分間焼き付け、次いで、基材を、コインセル内の正極として使用する前に、Innovative Machine Corporationが提供するカレンダープレスを使用して焼き付けた後、35%の多孔性までプレスした。正極をリチウム金属負極と対にした。セパレータとして、セラミックコーティングされた厚さ20μmのセルガードセパレータを使用した。電解質は、エチレンカーボネート(「EC」)およびエチルメチルカーボネート(「EMC」)の溶媒混合物中の1.2MのLiPF
6を、EC:EMCの3:7の比率で含む。316ステンレス鋼ケーシングを使用してコインセルを製造し、1cm径を有する正極を、1.5cm径および60μLの電解液を有する負極と対にした。電池の試験を、0.1Cでの単一の形成ステップ、続いて、以下の表4に指定された各速度での3サイクルを使用して、Arbin電池テスターで実施した。電池サイクルを、レート試験が完了した後、1Cで電池をサイクルすることによって特徴付け、その結果を以下の表4に提供する。
【表4】
【0209】
本明細書に記載および例示される広範な本発明の概念から逸脱することなく、上述の開示に照らして、多数の修正および変形が可能であることが当業者によって理解されるであろう。したがって、前述の開示は、本出願の様々な例示的な態様の単なる例示であり、多数の修正および変形が、本出願および添付の特許請求の範囲の主旨および範囲内にある当業者によって容易に行われ得ることが理解されるべきである。
【国際調査報告】