IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフトの特許一覧

特表2022-530128複合粒子状物質除去及び窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)のための触媒セラミックキャンドルフィルタ
<>
  • 特表-複合粒子状物質除去及び窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)のための触媒セラミックキャンドルフィルタ 図1
  • 特表-複合粒子状物質除去及び窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)のための触媒セラミックキャンドルフィルタ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】複合粒子状物質除去及び窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)のための触媒セラミックキャンドルフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/22 20060101AFI20220620BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220620BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220620BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20220620BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B01J23/22 A
B01J37/08
B01J37/04 102
B01D53/86 222
B01D53/86 ZAB
B01D53/94 222
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563342
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2019072708
(87)【国際公開番号】W WO2020216460
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】19171394.0
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キム・ホーゴート・ペデルセン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム・ライマー・トーガセン
(72)【発明者】
【氏名】アナス・ヨート・ペデルセン
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA02
4D148AA06
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB08
4D148BA03Y
4D148BA07X
4D148BA08Y
4D148BA10X
4D148BA19Y
4D148BA22Y
4D148BA23X
4D148BA26Y
4D148BA27Y
4D148BA41X
4D148BB05
4D148CD05
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA21C
4G169BB01C
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BC16A
4G169BC26A
4G169BC43A
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC51A
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BD01C
4G169BD06C
4G169BE14C
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA27
4G169EB18X
4G169FB06
4G169FB14
4G169FB29
4G169FB57
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
(57)【要約】
本発明は、窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)で使用するための触媒であって、
・セラミックキャンドルフィルタ基材と、
・チタンの酸化物を含む酸化金属担体、及びバナジウムの酸化物を含む触媒金属酸化物を含み、バナジウム/チタンの質量比が0.03~0.27であるコーティングと、を含み、
・質量比は、バナジウム金属及びチタン金属の質量に基づいて計算され、
・当該触媒は、約1~約10重量%の触媒活性物質を含み、
・当該触媒金属酸化物は、当該酸化金属担体の表面上に吸着されている、触媒に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)で使用するための触媒であって、
セラミックキャンドルフィルタ基材と、
チタンの酸化物を含む酸化金属担体、及びバナジウムの酸化物を含む触媒金属酸化物を含み、バナジウム/チタンの質量比が0.03~0.27であるコーティングと、を含み、
質量比は、バナジウム金属及びチタン金属の質量に基づいて計算され、
前記触媒は、1~20重量%の触媒活性物質を含み、
前記触媒金属酸化物は、前記酸化金属担体の表面上に吸着されている、触媒。
【請求項2】
バナジウムの酸化物を含む前記コーティングの前記触媒金属酸化物が、五酸化バナジウム(V)を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
バナジウムの酸化物を含む前記コーティングの前記触媒金属酸化物が、加えて、タングステン及び/又はモリブデン及び/又はアンチモンの酸化物を含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
チタンの酸化物を含む前記コーティングの前記酸化金属担体が、二酸化チタンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
チタンの酸化物を含む前記コーティングの前記酸化金属担体が、加えて、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、又は混合物の酸化物、これらの酸化物のうちの少なくとも1つを含む混合酸化物若しくは化合物を含む、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記酸化金属担体が、1~1000nmの一次粒径を有する単一の又は凝集した二酸化チタンのナノ粒子のいずれかからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
バナジウム/チタンの質量比は0.03~0.27であり、質量比は、バナジウム金属及びチタン金属の質量に基づいて計算される、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
白金族金属を含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒を調製するためのプロセスであって、
a)セラミックキャンドルフィルタ基材を用意するステップと、
b)酸化チタンを含む酸化金属担体の粒子上に分散されたバナジウム化合物を含む1つ以上の触媒金属前駆体化合物を含む、水性含浸液体を用意するステップであって、
前記含浸液体は、
i.前記1つ以上の触媒金属前駆体化合物及び前記酸化金属担体を水に添加し、このように得られた混合物に酸を連続的に添加して、前記1つ以上の触媒前駆体金属化合物の表面電荷が負であり、前記酸化金属担体のゼータ電位が正である値で、前記混合物のpHを維持するステップと、
ii.前記1つ以上の触媒金属前駆体化合物を前記酸化金属担体の表面上に吸着させるステップと、任意選択的に、
iii.このように調製されたウォッシュコートスラリーの7超のpH値を得る量で、分散剤を、このように調製された混合物に添加するステップと、
iv.任意選択的に前記混合物を粉砕するステップと、によって調製される、水性含浸液体を用意するステップと、
c)前記得られた含浸液体を、前記セラミックキャンドルフィルタ基材に含浸させるステップと、
d)前記含浸されたセラミックキャンドルフィルタ基材を、150~600℃の温度で乾燥及び熱活性化して、前記1つ以上の金属前駆体化合物をそれらの触媒活性形態に変換するステップと、を含む、プロセス。
【請求項10】
バナジウム化合物を含む前記触媒金属前駆体化合物が、メタバナジン酸アンモニウムである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水性含浸液体が、その液体に可溶性の第一級アミンを含む、請求項9又は10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第一級アミンが、モノエチルアミンである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
自動車及び固定発生源からのオフガスを処理するための、並びに前記オフガスに含有される窒素酸化物を選択的に還元するための方法であって、前記オフガスを、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒に通過させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを用いる反応による窒素酸化物の選択的触媒還元(selective catalytic reduction、SCR)で使用するための触媒に関する。本発明は、加えて、このような触媒を調製するための方法に関し、この方法は、具体的には、酸化金属担体のナノ粒子上に分散された1つ以上の触媒金属前駆体化合物を含む、含浸液体の使用に基づく。触媒は、有利には、セラミックキャンドルフィルタに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
特にセラミックキャンドルフィルタに適用される場合、触媒は、不均質な触媒反応によるプロセスガスの処理に有用であり、ガラス産業における排出制御装置で広く使用されているが、他の産業からのオフガスの処理で使用することも検討されている。プロセスオフガス中の粉塵及び粒子状物質の除去のための触媒セラミックフィルタは公知である。触媒セラミックフィルタは、鉱物質、ガラス、セメントの製造、廃棄物焼却のような燃焼を伴う産業プロセスからの、又はバイオマス発電プラント並びに任意選択的に石炭焚きボイラー及びエンジンからの、プロセスガス若しくは原料ガスの浄化に特に有用である。フィルタキャンドルの形状のセラミックフィルタは、プロセスガスから粒子状物質を除去するため多くの産業で使用されている。これらは、利用可能な最も効率的な種類の集塵装置(dust collector)のうちの1つを構成し、粒子状物質に対して99%超の回収効率を達成することができる。フィルタは、アルカリ及びアルカリ土類ケイ酸塩又はアルミノケイ酸塩で作製されたセラミック繊維を含む様々なセラミック材料から作製することができる。
【0003】
典型的な動作温度は180~400℃以内であり、1つの単独設備が、数千のフィルタを備えてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このようなセラミックキャンドルフィルタ上に適用される新規な触媒を提供する。本発明による触媒を含浸させたセラミックキャンドルフィルタは、粒子状物質に対するフィルタ機能及びSCR機能の両方を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
それを作製する一法は、触媒基材上に堆積される、担体、典型的には少なくとも1つの無機塩基金属酸化物を含む層を適用することによって、触媒活性物質を基材に担持することである。好適な無機塩基金属酸化物は、例えば、TiO、SiO、Al、CeO、ZrO、La、並びにこれらの混合物及び組み合わせである。このような担体材料は、当業者に公知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく本発明に適用することができる。担体は、空気中、制御雰囲気中で乾燥及び任意選択的に焼成された後に、基材の表面に結合された多孔質の高表面積の層を提供する。
【0006】
触媒活性物質又はその前駆体は、担体上に堆積させた後、基材に含浸させることができ、最後に、このように触媒処理された基材は、製造プロセスにおいて又は設置時のいずれかで高温での焼成によって活性化される。
【0007】
本発明において、基材は、好ましくはセラミックキャンドルフィルタである。
【0008】
窒素酸化物(nitrogen oxides、NOx)の除去においてSCR触媒を動作させるとき、モノリシック基材の壁の細孔上又は細孔内に担持されている触媒の存在下で、反応I及びIIによる選択的触媒還元によって、窒素酸化物は、還元剤、通常はアンモニアを用いて遊離窒素に変換される:
4NO+4NH+O→4N+6HO I
NO+NO+2NH→2N+3HO II
【0009】
アンモニアを用いるSCR反応での触媒化合物活性物質は、それ自体が当該技術分野において公知である。典型的に用いられる触媒の名称をいくつか挙げると、酸化バナジウム、酸化タングステン、及びゼオライト材料であり、これらは、通常、例えば銅及び/又は鉄と交換され、単独で又はこれらの混合物としてのいずれかで使用される。オフガスからのNOxの還元のための最も一般的に使用される触媒は、チタニア担持酸化バナジウムであり、任意選択的に酸化タングステン、酸化モリブデン、又は酸化アンチモンで促進される。
【0010】
国際公開第2016/058713(A1)号は、酸化金属担体のナノ粒子上に分散された1つ以上の触媒金属前駆体化合物の水性ヒドロゾルを含む水性含浸液体を、布地フィルタ基材に含浸させることを含む、触媒処理された布地フィルタを調製するための方法について開示している。
【0011】
国際公開第2016/058713(A1)号(実施例1の方法を参照されたい)の開示によれば、0.42のV/Ti比に相当する0.58のNHVO/TiO比が使用される。
【0012】
国際公開第2016/150464(A1)号は、触媒処理されたセラミックキャンドルフィルタについて、並びに、プロセスオフガス又はエンジン排気ガス中に存在している炭化水素及び窒素酸化物と併せて、煤煙、灰、金属、及び金属化合物の形態の粒子状物質を除去するための、又はその粒子状物質のための、当該フィルタの使用について開示している。フィルタは、複合SCR及び酸化触媒を含む。触媒活性種は、酸化バナジウム、チタニア、及びパラジウムである。酸化バナジウムは、好ましくは五酸化バナジウムである。パラジウムは、好ましくは、フィルタの20~1000ppm/重量の量で存在する。チタニア上の酸化バナジウムは、複合SCR及び酸化触媒として機能し、Pdは酸化触媒として機能する。
【0013】
しかし、国際公開第2016/150464(A1)号は、酸化バナジウムとチタニアとの合計量については述べておらず、バナジウム対チタンの比の好適な範囲についての情報は存在しない。この開示は、2つの実施例を含む。実施例1は、V:Ti比が約1:2である、1.26重量%のバナジウム及び2.36重量%のTiでコーティングされたセラミックキャンドルフィルタに言及する。実施例2は、実施例1の触媒のCO酸化性能を示す。ウォッシュコートの乾燥質量又は使用される溶媒及び添加剤についての情報は存在しない。
【0014】
国際公開第2016/150465(A1)号はまた、触媒処理されたセラミックキャンドルフィルタ、並びに炭化水素及び窒素酸化物と併せて粒子状物質を除去するための、又はその粒子状物質のための、当該フィルタの使用についても開示している。触媒活性種はまた、酸化バナジウム、チタニア、及びパラジウムである。
【0015】
国際公開第2016/150464(A1)号では、複合SCR及び酸化触媒が、少なくともフィルタの分散側上及び/又は壁内に配置され、含パラジウム触媒がフィルタの透過側に配置されている。
【0016】
複合SCR及び酸化触媒は、好ましくは酸化バナジウム及びチタニアを含み、パラジウム触媒もまた、任意選択的に酸化バナジウム及びチタニアを含んでもよい。
【0017】
対照的に、国際公開第2016/150465(A1)号によるセラミックキャンドルフィルタは、少なくともフィルタの分散側上及び/又は壁内に配置された、複合SCR及び酸化触媒を含み、この複合SCR及び酸化触媒は、パラジウム、酸化バナジウム、及びチタニアを含む。
【0018】
したがって、国際公開第2016/150464(A1)号と国際公開第2016/150465(A1)号との間の差異は、前者が複合SCR及び酸化触媒中にパラジウムを含まないのに対し、後者は含む点である。
【0019】
用語「分散側」及び「透過側」は、それぞれ、未フィルタリング排気ガスに面するフィルタの流れ側、及びフィルタリングされたオフガス又は排気ガスに面する流れ側を指す。
【0020】
国際公開第2017/055344(A1)号は、オフガス又は排気ガス浄化のための触媒含有セラミック粉塵フィルタについて開示している。それは、触媒活性金属酸化物担体を形成するために、少なくとも1つの触媒活性金属及び酸化物担体を含む。好ましくは、少なくとも1つの触媒活性金属は、複合SCR及び酸化触媒、並びに含貴金属触媒を構成する。複合SCR及び酸化触媒は、好ましくは、バナジウム、タングステン、又はモリブデンの酸化物、及びチタニアを含み、含貴金属触媒は、好ましくはパラジウム触媒である。最も好ましくは、複合SCR及び酸化触媒は、酸化バナジウム及びチタニアを含む。パラジウムを、フィルタの20~1,000ppm/重量の量で存在させる。しかし、国際公開第2017/055344(A1)号は、ウォッシュコート内又はフィルタ上の、好ましいV/Ti比について、若しくは触媒活性物質の総量について、述べていない。
【0021】
R Barthos,A Hegyessy,G Novodarzski,Z Paszti and J Valyon:「Structure and activulity of Pd/V/TiO catalysts in Wacker oxidation of ethylene」,Appl Catal A 2017,531,90-105では、様々なPd、Ti、及びV量のPd/V/TiO触媒の触媒活性について検討した。V/TiO調製物は、それぞれ2.2重量%、又は4.6重量%、又は8.6重量%のバナジウムを含んでいた。
【0022】
チタニア上へのバナジウム及びバナジウム化合物の堆積は、当該技術分野において公知である。これは、例えば、K Bourikas,I Georgiadou,C Kordulis and A Lycourghiotis:「Mechanism of deposhition of vanadium-oxo species on the「anatase/electrolytic solution」 interface,J Phys Chem B 1997,101,8499-8506に記載されている。この科学論文では、著者は、それぞれ単一のTiOH 又はTiOH基によって生成された部位における比較的低いpH値及び比較的高いpH値での、バナジウム-オキソ種の吸着反応による堆積を示している。
【0023】
米国特許第2014/0271435(A1)号は、バナジウム及びチタンの酸化物を含む触媒で触媒処理された生体可溶性繊維の触媒処理されたフィルタ本体を開示しており、フィルタ本体中のアルカリ金属の総濃度は3000重量ppm未満であり、及び/又はフィルタ本体中のアルカリ土類金属(earth alkali metal)の総濃度は20重量%未満である。しかし、米国特許第2014/0271435(A1)号は、適用されるウォッシュコートの量、当該ウォッシュコート中のバナジウム及びチタンの量、並びにバナジウムのチタンに対する比について述べていない。
【0024】
国際公開第2018/018406(A1)号は、NOx除去のための担持触媒、モノリシック選択的触媒還元(SCR)触媒、その調製方法、及びNOx除去方法について開示している。担持触媒は、担体及び担体上に担持された触媒活性成分を含み、これは、バナジウム、アンチモン、並びにケイ素、アルミニウム、及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つの更なる成分を含む。好ましくは、バナジウムは、Vとして計算して1~10重量%の量で含有され、アンチモンは、Sbとして計算して1~20重量%の量で含有され、少なくとも1つの更なる成分は、それぞれSiO、Al、又はZrOとして計算して0.5~20重量%の量で含有される。
【0025】
本発明の発明者らは、ここで、驚くべきことに、この比を減少させることができること、すなわち、触媒のDeNOx活性に影響を与えることなく、使用することができるバナジウムを少なくすることができることを見出した。同時に、SO酸化物は削減され、その後、硫酸水素アンモニウム(ammonium bisulphate、ABS)の形成が少なくなる。
【0026】
したがって、本発明は、窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)で使用するための触媒であって、
セラミックキャンドルフィルタ基材(ceramic candle filter substrate)と、
チタンの酸化物を含む酸化金属担体、及びバナジウムの酸化物を含む触媒金属酸化物を含み、バナジウム/チタンの質量比が0.03~0.27であるコーティングと、を含み、
質量比は、バナジウム金属及びチタン金属の質量に基づいて計算され、
当該触媒は、1~20重量%の触媒活性物質を含み、
当該触媒金属酸化物は、当該酸化金属担体の表面上に吸着されている、触媒に関する。
【0027】
本発明による窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)で使用するための新規な触媒及び当該触媒を調製するためのプロセスについては以下に説明し、本発明は、以下に示す全ての実施形態を、個別でも、互いに組み合わせてでも包含する。
【0028】
基材は、セラミックキャンドルフィルタである。上述のように、フィルタキャンドルの形状のセラミックフィルタは、プロセスガスから粒子状物質を除去するため、多くの産業で使用されている。これらは、利用可能な最も効率的な種類の集塵装置のうちの1つを構成する。本発明による触媒は、このような集塵装置に適用することができる。本発明の一実施形態では、セラミックキャンドルフィルタ基材と、チタンの酸化物を含む酸化金属担体及びバナジウムの酸化物を含む触媒金属酸化物を、バナジウム/チタンの質量比が0.03~0.27で含むコーティングと、を構成する多くの触媒が、並行して使用される。このような配置は当業者に公知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく使用することができる。
【0029】
バナジウムの酸化物を含むコーティングの触媒金属酸化物は、好ましくは五酸化バナジウム(V)を含む。それに加えて、これは任意選択的に、他の金属の酸化物、具体的にはタングステン及び/又はモリブデン及び/又はアンチモンの酸化物を含む。タングステン、モリブデン及びアンチモンの好ましい酸化物は、三酸化タングステン(WO)、三酸化モリブデン(MoO)及び五酸化アンチモン(Sb)である。
【0030】
チタンの酸化物を含むコーティングの酸化金属担体は、通常、二酸化チタンを含む。二酸化チタンは、アナターゼ、ルチル、ブルッカイト(brookit)、及びこれらの混合物から選択することができる。好ましくは、二酸化チタンは、少なくとも95重量%のアナターゼ、好ましくは少なくとも98重量%のアナターゼを含み、足して100重量%になる残部は、ルチル、ブルッカイト、又はルチルとブルッカイトとの混合物からなる。それに加えて、これは任意選択的に、別の金属の酸化物、具体的にはアルミニウム、ケイ素、セリウム、ジルコニウム、若しくは混合物の酸化物、又はこれらの酸化物のうちの少なくとも1つを含む混合酸化物若しくは化合物を含む。
【0031】
好ましくは、酸化金属担体は、レーザー回折粒径分析器によって測定して、1nm~1000nm、好ましくは20~200nmの一次粒径D50を有する単一又は凝集した二酸化チタンのナノ粒子のいずれかからなる。一次粒子は、粒子状物質の系における最小の識別可能な下位区分域である。一次粒子はまた、凝集体のサブユニットであってもよい。
【0032】
本発明によれば、バナジウム/チタンの質量比は、0.03~0.27、好ましくは0.7~0.27、最も好ましくは0.12~0.21である。誤解を避けるために、質量比は、バナジウム金属及びチタン金属の質量に基づいて計算される。好ましくは、本発明の触媒は、白金族金属を含まず、具体的にはパラジウムを含まない。
【0033】
触媒金属酸化物は、表面上に吸着若しくは沈降され、又は酸化金属担体の表面上に、含浸によって堆積され、その後、乾燥され、若しくはpH調整によって、すなわち、pH値を変化させることによる沈降によって堆積される。
【0034】
本発明の別の実施形態では、酸化金属担体は、チタンの酸化物、具体的には二酸化チタンのみならず、加えてバナジウムの酸化物、具体的には五酸化バナジウム、並びに任意選択的に、タングステン及び/又はモリブデン及び/又はアンチモンの酸化物、具体的には三酸化タングステン及び/又は三酸化モリブデン及び/又は五酸化アンチモンを含む。
【0035】
これは、具体的には、五酸化バナジウム(V)及び二酸化チタンTiO、並びに任意選択的に三酸化タングステン(WO)及び/又は三酸化モリブデン(MoO)及び/又は五酸化アンチモン(Sb)を含む再生又は未使用のSCR触媒が再使用される場合である。
【0036】
酸化金属担体がバナジウムの酸化物を含む場合、バナジウムのチタンに対する質量比を上述のように計算する場合、このバナジウムの酸化物を考慮する必要がある。
【0037】
本発明の触媒は、コーティングの1~20重量%、好ましくは2~10重量%を構成する。本発明で使用するとき、用語「触媒」は、セラミックキャンドルフィルタ基材及びコーティングを包含する。
【0038】
本発明はまた、窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)で使用するための触媒を調製するためのプロセスであって、
a)セラミックキャンドルフィルタ基材を用意するステップと、
b)酸化チタンを含む酸化金属担体の粒子上に分散されたバナジウム化合物を含む1つ以上の触媒金属前駆体化合物を含む、水性含浸液体を用意するステップと、
c)含浸液体を、セラミックキャンドルフィルタ基材に含浸させるステップと、
d)含浸されたセラミックキャンドルフィルタ基材を、150~600℃の温度で乾燥及び熱活性化して、1つ以上の金属前駆体化合物をそれらの触媒活性形態に変換するステップと、を含む、プロセスに関する。
【0039】
ステップb)に関して、バナジウム化合物を含む触媒金属前駆体化合物は、好ましくはメタバナジン酸アンモニウムである。本発明の触媒がタングステン及び/又はモリブデンの酸化物を含む場合、含浸液体は、好ましくはメタタングステン酸アンモニウム及び/又はヘプタモリブデン酸アンモニウムを含む。
【0040】
本発明によるプロセスのいくつかの用途では、セラミックキャンドルフィルタ基材は、より大きな表面積の基材を提供するために、セラミックキャンドルフィルタ基材の含浸前に予めコーティングされる。
【0041】
したがって、本発明の一実施形態では、セラミックキャンドルフィルタ基材は、ステップ(c)で含浸液体をセラミックキャンドルフィルタ基材に含浸させる前に、チタンの酸化物、及び任意選択的にアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、又は混合物の酸化物、これらの酸化物のうちの少なくとも1つを含む混合酸化物若しくは化合物を含む酸化金属担体と共に含浸される。
【0042】
ステップd)による含浸されたセラミックキャンドルフィルタ基材の熱活性化は、SCRユニットに含浸された基材を設置する前、又は含浸された基材を設置した後のいずれかで行うことができる。好ましくは、熱活性化温度は、200~450℃である。
【0043】
本発明で使用するとき、用語「熱活性化」とは、1つ以上の触媒金属前駆体化合物を、その触媒活性形態に変換するのに好適な温度で処理することを意味する。当業者は、1つ以上の所与の触媒金属前駆体化合物をその対応する触媒活性形態に変換するのに好適な温度範囲について知っている。当業者は、特許請求の範囲から逸脱することなく、この知識を適用することができる。
【0044】
本発明のプロセスが、既に五酸化バナジウム(V)及び二酸化チタンTiO、並びに任意選択的に三酸化タングステン(WO)及び/又は三酸化モリブデン(MoO)を含むステップa)における再生触媒を提供することを含む場合、水性含浸液体中の当該酸化物の前駆体の量は、最終コーティングA中のそれぞれの金属の意図される量を得るために、それに応じて低減することができる。当業者は、金属酸化物及び金属前駆体のそれぞれの量、例えば、再生触媒からの五酸化バナジウム(V)の量、及び最終含浸液体中のバナジウムの意図される量を得るのに必要なメタバナジン酸アンモニウムの量を計算することができる。同じことは、一方で再生触媒からの二酸化チタン、三酸化タングステン、三酸化モリブデン、及び五酸化アンチモンの使用に当てはまり、他方、未使用の二酸化チタン、メタタングステン酸アンモニウム及び/又はヘプタモリブデン酸アンモニウム及び/又はシュウ酸アンチモン(antimony oxalate)及び/又は酢酸アンチモンの使用にそれぞれ当てはまる。当業者は、この知識を使用して、特許請求の範囲から逸脱することなく、使用される再生触媒及び前駆体化合物の量を計算することができる。
【0045】
以下でより詳細に開示される水性含浸液体の調製において、酸化金属担体は、小粒子の形態で含浸溶液中に存在し、その一部は、好ましいサイズよりも大きい粒径に凝集する場合がある。
【0046】
第一級アミンは、凝集を防止するか、又は既に形成された凝集体を分解することが示されている。したがって、含浸液体に、第一級アミンのうちの1つ以上から選択される分散剤を添加することが好ましい。好ましくは、第一級アミンは、上の開示目的をもたらす量で添加されているとき、水性含浸液体に可溶性である。7個未満の炭素原子を有する第一級アミンは水溶性であり、したがって、本発明で使用するのに好ましい第一級アミンは、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、又はそれらの混合物である。これらのうち、最も好ましい分散剤は、モノエチルアミンである。
【0047】
7超のpH値、好ましくは8.5~10のpHの含浸液体を生じる量で第一級アミン分散剤が含浸液体に添加されるとき、良好な結果が得られる。
【0048】
当該技術分野において既知のように、効果的な触媒は、酸化金属担体上の触媒活性物質の単層被覆を必要とする。担体上の過剰な結晶質触媒活性物質の形成は、避ける必要がある。
【0049】
いわゆる平衡堆積方法(equilibrium deposition method)を単独で、又は第一級アミン分散剤と組み合わせて用いるとき、低温での熱活性化後の触媒活性物質の高度の分散が可能である。この方法では、逆帯電した金属化合物間の静電引力を利用して、逆帯電した金属化合物の表面上に、微細に分散させた形態で1つの金属化合物を結合させる。
【0050】
TiO及びV z-は、4~6のpH間隔で逆の表面電荷を有する。したがって、静電引力は、TiO上へのV z-の堆積を促進する。
【0051】
z-の溶解度の限定は、ルシャトリエの原理によって回避される。V z-がTiOH 部位に結合するとき、新たなV z-イオンが可溶化される。この連続プロセスは室温で行われ、撹拌及びpH調整のみを必要とする。
【0052】
当業者は、様々な酸化バナジウムが水溶液中に共存することを知っている。上記の添え字「x」は、バナジウム-酸素種中のバナジウム原子の数を表し、「y」は酸素原子の数を表し、「z」は、バナジウム-酸素種の電荷を表す。これらの共存バナジウム-酸素種の各々の性質及びこれらの種の各々の相対量は、水溶液のpH値及び各個々のバナジウム-酸素種の標準水素電極と比較した電位に応じて異なる。
【0053】
電気化学では、電位/pH図、E-PH図、又はpE/pH図とも呼ばれる、プールベダイアグラム(Pourbaix diagram)で、水性電気化学系の可能な安定(平衡)相をマッピングする。支配的なイオン境界(Predominant ion boundaries)は、線によって表される。プールベダイアグラムは当業者に公知であり、M Pourbaix:「Atlas of Electrochemical Equilibrium in Aqueous Solutions」,National Association of Corrosion Engineers,1974,ISBN 0-915567-98-9に開示されている。更に、バナジウム-酸素種に関するプールベダイアグラムは、K Post,RG Robins:「Thermodynamic diagram for the vanadium-water system at 298.15 K」,Electrochim Acta 1976,21,401-405、及びBM Weckhuysen,DE Keller:「Chemistry,spectroscopy ad the role of supported vanadium oxides in heterogeneous catalysis」,Catal Today 2003,78,25-46に記載されている。
【0054】
したがって、水性含浸液体は、好ましくは、
i.1つ以上の触媒金属前駆体化合物及び酸化金属担体を水に添加し、このように得られた混合物に酸を連続的に添加して、1つ以上の触媒前駆体金属化合物の表面電荷が負であり、酸化金属担体のゼータ電位が正である値で、混合物のpHを維持するステップと、
ii.1つ以上の触媒金属前駆体化合物を酸化金属担体の表面上に吸着させるステップと、任意選択的に、
iii.このように調製されたスラリーの7超のpH値を得る量で、分散剤を、このように調製された混合物に添加するステップと、
iv.任意選択的に混合物を粉砕するステップと、により調製される。
【0055】
市販のTiOなどのいくつかの市販の酸化金属担体は、約1μm、例えば800nm~1200nmの平均粒径D50を有する。この場合、1つ以上の触媒金属前駆体化合物及び酸化金属担体を水に添加することによって得られた混合物は、いわゆる「スラリー」である。本発明の一実施形態では、ステップiii)の後に得られた混合物は、ステップiv)において上述したように粉砕される。
【0056】
本発明で使用するとき、用語「スラリー」は、少なくとも1つの液体及び当該液体中に微細に分散された固体の不均質混合物を指す。少なくとも1つの液体は水であるが、上記のように、アミンなどの他の液体を更に含んでもよい。本発明によるスラリーの固体は、酸化金属担体、触媒金属酸化物を含む。酸化金属担体及び触媒金属酸化物は、少なくとも1つの液体中に懸濁又は分散される。共通の定義によれば、「懸濁液」は、1μm~100μmの平均粒径D50を有する固体粒子を含み、「分散体」は、1nm~1μmの平均粒径D50を有する固体粒子を含む。したがって、本発明の意味での「スラリー」は、平均粒径D50に応じて懸濁液又は分散体のいずれかであり得るが、不均質な混合物を常に扱っており、固体粒子は、静置されている場合、経時的に沈殿する。
【0057】
固体、すなわち、酸化金属担体及び触媒金属酸化物のそれぞれ、触媒前駆体金属化合物を水に添加し、続いて分散剤を添加し、続いて7超、好ましくは8~10のpHに調整し、続いて上記のように粉砕する場合、固体粒子は小さくなる。粉砕中、水、酸化物及び分散剤の混合物は、初期平均粒径D50に応じて懸濁液又は分散体からコロイド系に変化する。コロイド系は、懸濁粒子が分散体又は懸濁液の粒子よりも小さい系であり、粒子は、静置されている場合、経時的に沈殿しない。分散体からコロイドへの移行は、粒径だけでなく、液体及び固体の性質にも依存し、ある程度流動的である。本発明では、平均粒子径D50が90~110nmの範囲にある場合、水、酸化物、及び分散剤の混合物はコロイドになる。このコロイド系は、液体溶液のように挙動し、すなわち、少なくとも1つの液体と少なくとも1つの固体との均質混合物のように挙動し、少なくとも1つの固体は、静置されている場合、経時的に沈殿しない。本発明の文脈において、このコロイド系は、「含浸液体」と呼ばれる。含浸液体を使用して、酸化金属担体及び触媒金属酸化物を基材上に適用することができる。
【0058】
市販のTiOなどの酸化金属担体が90nm~110nmの範囲の平均粒径D50を有する場合、1つ以上の触媒金属前駆体化合物及び酸化金属担体を添加することによって得られた混合物は、既にコロイドであり、したがって上記に定義したような液体溶液である。この場合、ステップiv)による混合物の粉砕は、必須ではない。
【0059】
したがって、上記のステップi)、ii)及びiv)で使用するとき、用語「混合物」は、ステップi)において適用される酸化金属担体の平均粒径D50に応じて、上記で定義したスラリー及びコロイド系を指す。
【0060】
好ましくは、ステップ(i)及び(ii)におけるpH値は、2.5~5.5で維持される。
【0061】
1つ以上の触媒前駆体金属化合物の表面電荷が負であり、酸化金属担体のゼータ電位が正である値で液体のpHを維持するために、ステップa)で使用される酸は、好ましくは硝酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、及びこれらの混合物から選択される。より好ましくは、酸は、硝酸と、ギ酸、酢酸及びクエン酸のうちの少なくとも1つとの混合物から選択され、更により好ましくは、酸は硝酸である。
【0062】
ステップ(iv)では、スラリーを粉砕して、酸化金属担体及び触媒金属前駆体を含む粒子のサイズを調整する。一実施形態では、粉砕後の平均粒径D50は、レーザー回折粒径分析器及び/又は動的光散乱によって測定して、1nm~1000nm、好ましくは40~300nmである。
【0063】
好適なミルは、例えば、ビーズミル及びボールミルである。当業者は、粒子を含むスラリーを粉砕するのに好適であるミルについて知っている。当業者は、特許請求の範囲から逸脱することなく、当該方法を適用することができる。
【0064】
本発明の触媒は、自動車及び固定発生源(stationary sources)からのオフガスの処理、並びに当該オフガスに含有される窒素酸化物を選択的に還元するのに好適である。
【0065】
したがって、本発明は更に、自動車及び固定発生源からのオフガスを処理するための、並びに当該オフガスに含有される窒素酸化物を選択的に還元するための方法であって、オフガスを本発明の触媒に通過させることを特徴とする、方法に関する。
【0066】
本発明の実施形態では、本発明の触媒は、ガラス産業において、バイオマス発電プラントにおいて、廃棄物からのエネルギープラント(waste-to-energy plants)において、セメントプラントにおいて、及び化学産業における他の種類のプラントにおいて、排出制御装置におけるプロセスガスの処理のために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】実施例における試験結果を示す図である。
図2】実施例における粒径分布の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
実施例1
a)バナジン酸アンモニウム/チタニア含有含浸液体の調製
1. 160kgの脱塩水を70.4gのTiOと混合する。
2. 14.5kgのメタバナジン酸アンモニア(AMV)を連続撹拌下で添加する。NHVO/TiOの比は0.23である。
3. pHを監視し、連続的に高める。
4. pHを、濃硝酸で4.0~4.5の間隔に調節する。
5. 数時間後、液体のpHは一定のままであり、スラリーを、少なくとも5~10時間にわたって一定した撹拌下に置く。ただし、pHは、3時間毎に調節する必要がある。
得られたスラリーは黄色であり、5.58kgのエチルアミン(水中68%)(又はpHが約9.2~9.5になるまで)を添加する。
スラリーは淡黄色になり、その後90~110nmの粒径(D50)まで粉砕し、液体挙動を得る。
6. 液体を、575Lの0.12%エチルアミン溶液で希釈し、乾燥物質を約9重量%にする。
7. 任意選択的に、レオロジー変性剤及び/又は表面張力調整剤を添加して、液体特性を変更する。
【0069】
好適なレオロジー変性剤は、非イオン性又はイオン性の、分散剤又は増粘剤である。分散剤は、2,000~100,000の分子量を有するポリマー及び高分子電解質から選択することができる。これらの分散剤の典型的な官能基としては、ヒドロキシル(-OH)基、カルボキシル(-COOH)基、スルホネート(-SOH)基、サルフェート(-OSO-)基、アンモニウム(-NH )基、アミノ(-NH)基、イミノ(-NH-)基、及びポリオキシエチレン(-CHCHO-)基が挙げられる。
【0070】
好適な界面活性剤はまた、非イオン性であってもイオン性であってもよい。アニオン性界面活性剤は、例えば、サルフェート、スルホネート、カルボキシレート、及びホスフェートエステルである。カチオン性界面活性剤は、pH値に応じて、第一級、第二級、又は第三級アミン、及び第四級有機アンモニウム塩である。非イオン性界面活性剤は、以下から選択することができる:
エトキシレート:脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート(APE)、脂肪酸エトキシレート、エトキシル化脂肪酸エステル及び油、エトキシル化アミン及び/又は脂肪酸アミド、末端封鎖エトキシレート。
ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル:グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、スクロースの脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド。
アミンオキシド。
スルホキシド。
ホスフィンオキシド。
【0071】
上記に列挙したいくつかの物質は、レオロジー変性剤として及び表面張力調整剤としての両方で機能することができることが、上記の列挙から明らかである。これは、当業者に公知である。
【0072】
b)セラミックキャンドルフィルタ基材に水性含浸液体を含浸させる。このように得られた触媒のV/Ti比は、0.17である。
【0073】
実施例2
得られた触媒のV/Ti比が0.12であることを除いて、実施例1の方法を繰り返した。
【0074】
実施例3
得られた触媒のV/Ti比が0.21であることを除いて、実施例1の方法を繰り返した。
【0075】
実施例4
得られた触媒のV/Ti比が0.24であることを除いて、実施例1の方法を繰り返した。
【0076】
実施例5
得られた触媒のV/Ti比が0.27であることを除いて、実施例1の方法を繰り返した。
【0077】
試験
実施例2~5によって得られた水性スラリーの各々の一部を乾燥させ、このように得られた粉末を、500pmのNO、533ppmのNH、10体積%のO、4%のHO、及び残部のNを含有するガス組成で、NOのアンモニアSCRにて試験した。試験の結果を以下の表1に要約し、図1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
図1から明らかなように、本発明による実施例2~5の触媒に相当する粉末は、高温で非常に良好なNO変換活性を有する。また、0.20超、具体的には0.24超の値にTi/V比を増加させることは、より高い活性をもたらさず、活性は横ばいになることが明らかである。
【0080】
他方、SOの(不要な)酸化がTi/V比の増加と共に増加することは、窒素酸化物の選択的触媒還元の分野における当業者の全般知識である(例えば、Applied Catalysis b:Environmental 19(1998)103-117)を参照されたい)。
【0081】
したがって、本発明により、不要なSO酸化を最小限に制限しながら、最適なNO変換率を得ることが可能になる。
【0082】
粒径分布
実施例2~5で得られた粒子を8.75時間ビーズ粉砕した。その後、レーザー回折分析を用いて粒径(D50)を求めた。
【0083】
結果を図2に示す。
図1
図2
【国際調査報告】