(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】ハイブリダイゼーション組成物ならびに組成物を調製および使用するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6832 20180101AFI20220620BHJP
C12Q 1/6841 20180101ALI20220620BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220620BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20220620BHJP
【FI】
C12Q1/6832 Z
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563397
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 US2020029123
(87)【国際公開番号】W WO2020219451
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】モレルップ,イェンス
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QS28
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、ハイブリダイゼーションにおける使用、例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)における使用のためのハイブリダイゼーション緩衝液に関する。スルホン溶媒とポリビニルスルホン酸またはその塩とを含むハイブリダイゼーション緩衝液および組成物、ならびにそれを調製および使用する方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5~約30%(v/v)の濃度のスルホン溶媒と、
式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III):
【化1】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、Lは、存在する場合、共有結合またはC
1~6脂肪族であり、R
2は、存在する場合、共有結合、C
1~6脂肪族、フェニル、または1~3個の窒素を有する6員ヘテロアリール環であり、R
2は、1もしくは2つのSO
3H基またはその塩で置換されているが、ただし、R
2が共有結合である場合、1つのみのSO
3H基またはその塩が存在するものとし、R
2は、-R
3、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
3、-N(R
3)
2、および-SR
3から独立して選択される1~2つの基で場合によって置換されており、各R
3は、独立して、水素またはC
1~6アルキル基であり、nは10より大きい整数である]
のスルホン酸ポリマーまたは式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III)のうちのいずれか1つの塩と
を含むハイブリダイゼーション緩衝液であって、前記スルホン酸ポリマーまたはその塩が、約5~約50%(w/v)の濃度で存在する、ハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項2】
R
1が水素である、請求項1に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項3】
R
1がC
1~6脂肪族である、請求項1に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項4】
Lが共有結合である、請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項5】
LがC
1~6脂肪族である、請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項6】
Lがメチレンである、請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項7】
水をさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項8】
前記スルホン酸ポリマーまたはその塩がポリビニルスルホン酸またはその塩である、請求項1から7のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項9】
前記スルホン溶媒の濃度が約10%~約20%(v/v)である、請求項1から8のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項10】
前記スルホン溶媒が、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項11】
前記スルホン溶媒がスルホランである、請求項1から9のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項12】
前記スルホン酸ポリマーまたはその塩の濃度が約20%~約40%(w/v)である、請求項1から11のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項13】
硫酸デキストランを20%(w/v)以下の濃度でさらに含む、請求項1から12のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項14】
ミクロ粘度測定法で測定した場合、25℃において、約60mPa.s以下の粘度を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項15】
2~8℃で少なくとも2カ月間安定している、請求項1から14のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項16】
2~8℃での少なくとも2カ月間の貯蔵後、均質である、請求項1から15のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項17】
前記ハイブリダイゼーション緩衝液が、2~8℃での少なくとも2カ月間の貯蔵後、均質性を維持し、前記均質性が、エリオグラウシンを有する前記ハイブリダイゼーション緩衝液の遠心分離後、前記ハイブリダイゼーション緩衝液の透明性を目視により評価することにより決定される、請求項1から16のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項18】
緩衝剤、塩、促進剤、キレート剤、洗剤、遮断剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加の構成成分をさらに含む、請求項1から17のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項19】
NaClおよび3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)をさらに含む、請求項1から18のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項20】
約20%(w/v)以下の濃度の促進剤、
塩、および
緩衝剤
をさらに含み、
前記スルホン溶媒が約10%(v/v)の濃度のスルホランであり、
前記スルホン酸ポリマーまたはその塩が約30%(w/v)の濃度である、
請求項1から19のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載のハイブリダイゼーション緩衝液、および少なくとも1種の核酸プローブを含む、ハイブリダイゼーション組成物。
【請求項22】
核酸配列をハイブリダイズする方法であって、
少なくとも1種の核酸プローブを標的核酸配列にハイブリダイズするのに少なくとも十分な期間、前記少なくとも1種の核酸プローブおよびハイブリダイゼーション緩衝液を前記標的核酸配列に適用するステップを含み、前記ハイブリダイゼーション緩衝液が、約5~約30%(v/v)の濃度のスルホン溶媒と、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III):
【化2】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、Lは、存在する場合、共有結合またはC
1~6脂肪族であり、R
2は、存在する場合、共有結合、C
1~6脂肪族、フェニル、または1~3個の窒素を有する6員ヘテロアリール環であり、R
2は、1もしくは2つのSO
3H基またはその塩で置換されているが、ただし、R
2が共有結合である場合、1つのみのSO
3H基またはその塩が存在するものとし、R
2は、-R
3、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
3、-N(R
3)
2、および-SR
3から独立して選択される1~2つの基で場合によって置換されており、各R
3は、独立して、水素またはC
1~6アルキル基であり、nは10より大きい整数である]
のスルホン酸ポリマーまたは式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III)のうちのいずれか1つの塩とを含み、前記スルホン酸ポリマーまたはその塩が、約5~約50%(w/v)の濃度で存在する、方法。
【請求項23】
前記標的核酸配列がin situ生体試料中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標的核酸配列を、約65℃以上の温度で変性させるステップをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種の核酸プローブを前記標的核酸配列にハイブリダイズするのに十分な期間が、4時間以下である、請求項22から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記標的核酸への前記少なくとも1種の核酸プローブのハイブリダイゼーションが50℃以下の温度で行われる、請求項22から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
8℃以下の温度での貯蔵から前記ハイブリダイゼーション緩衝液を得るステップ、
プローブを前記ハイブリダイゼーション緩衝液と合わせる前に前記ハイブリダイゼーション緩衝液を混合することなく、前記ハイブリダイゼーション緩衝液を、前記少なくとも1種の核酸プローブと合わせるステップ
をさらに含む、請求項22から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記スルホン溶媒が、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記スルホン溶媒がスルホランである、請求項22から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ハイブリダイゼーション組成物を調製する方法であって、
ハイブリダイゼーション緩衝液を、ある温度で少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間貯蔵するステップと、
続いて、前記ハイブリダイゼーション緩衝液を、少なくとも1種の核酸プローブと合わせて、ハイブリダイゼーション組成物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項31】
前記ハイブリダイゼーション緩衝液が0℃より高い温度で貯蔵される、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、両方とも引用することにより本明細書の一部をなすものとする、2019年4月25日に出願した米国仮出願第62/838,813号および2019年5月16日に出願した米国仮出願第62/848,964号に対する出願期日および優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、ハイブリダイゼーション方法において使用するための、例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)方法において使用するためのハイブリダイゼーション緩衝液に関する。より一般的には、本開示は、細胞学、組織学、および分子生物学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ハイブリダイゼーションは、重要な、周知の核酸の特性である。DNAの二重ヘリックス構造は、塩基がある特定の方式で対になった場合(A+TまたはG+C)、反対のストランドの塩基との水素結合により安定化する。ハイブリダイゼーションの基本的例において、核酸フラグメントまたは配列は、相補的核酸フラグメントまたは配列に結合する。ハイブリダイゼーションアッセイおよび他の方法は、標的核酸、例えば、DNAまたはRNAと特異的に結合するように設計されている核酸プローブを使用する。1つの種類のハイブリダイゼーションアッセイ、in situハイブリダイゼーション(ISH)は、試料中での標的核酸への核酸プローブのハイブリダイゼーションを含み、この場合、試料はin vivoであってもよいし、または、例えば固定されていても、もしくはガラススライドに接着されていてもよい。プローブは、標識することによって、蛍光または明視野顕微鏡/スキャナーの使用によりプローブ-標的ハイブリッドの同定を可能にすることができる。核酸標的に対して、プローブは典型的には、二本鎖核酸または一本鎖核酸、例えば、DNA、RNA、または類似体である。一部の実施形態では、プローブは、放射性標識、例えば、31P、33P、32S、非放射性標識、例えば、ジゴキシゲニンおよびビオチン、または蛍光標識を使用して標識することができる。このような標識したプローブを使用して、標的配列における遺伝的異常を検出し、例えば、出生前障害、がん、および他の遺伝的疾患または感染症についての価値のある情報を得ることができる。
【0004】
核酸ハイブリダイゼーションアッセイの効率および精度は主に、3つの主要な要因のうちの少なくとも1つに依存する:a)変性(すなわち、例えば、2本の核酸ストランドの分離)条件、b)復元(すなわち、例えば、2本の核酸ストランドの再アニーリング)条件、およびc)ハイブリダイゼーション後の洗浄条件。
【0005】
従来のハイブリダイゼーション方法、例えば、ISHアッセイは、二本鎖核酸標的を変性させるためにホルムアミド含有溶液を使用してきた。ホルムアミドは、変性溶媒としては非常に有効であるが、ホルムアミドは、有毒性の危険な材料であり、使用および廃棄に関しては厳重な規制下にある。さらに、ホルムアミドの使用は、使用される条件および核酸フラグメントまたは配列に応じて、ハイブリダイゼーションアッセイを完了するのに必要とされる時間が増加する。例えば、変性ステップの後には、より長い時間を消費するハイブリダイゼーションステップが続き、これは、例えば従来の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)では、プロトコルは14~24時間かかり、72時間までかかることさえある。
【0006】
核酸鎖の2本の相補ストランドを再アニーリング(すなわち、ハイブリダイズする)ステップは、ハイブリダイゼーションを使用するアッセイの時間を消費する態様である。核酸塩基のワトソンクリック結合部位に支障を与え、よって、相補的核酸塩基間の水素結合を撹乱する、カオトロピック剤、例えば、ホルムアミド、グアニジウム水素、およびウレアは、相補鎖の溶融温度(Tm)を低下させるために使用されてきた。しかし、カオトロピック剤の使用はTmを低下させるが、これらの薬剤は、カオトロピック剤を含まない水溶液中でのハイブリダイゼーションと比較して、ハイブリダイゼーション時間を長引かせる。
【0007】
ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)組織についてin situハイブリダイゼーションを実施するのに必要とされる時間に関して幅広いばらつきを示す。例えば、一部の過去のハイブリダイゼーション緩衝液が終夜のインキュベーションを必要とするのに対し、ある特定の改善された組成物は、1~2時間のインキュベーションしか必要としない(例えば、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US20110229975およびUS20110236997を参照されたい)。短いインキュベーション期間が好ましく、このような利点をもたらすハイブリダイゼーション緩衝液が望ましい。IQFISH Fast Hybridization Bufferは、過去の催奇性ホルムアミド組成物を超える著しい改善として、Agilent Technologies、Inc.により発表され、これは、in situハイブリダイゼーション技術を用いて働く作業員に対する安全面での利点を示している。改善された緩衝液はまた、ハイブリダイゼーションに対して必要とされる時間を1~2時間へと有意に低減させた。
【0008】
しかしながら、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液のより速いインキュベーション時間は極めて望ましいものであり、著しい改善ではあるが、ハイブリダイゼーション緩衝液には、さらに改善して、より安定した、使用しやすいハイブリダイゼーション緩衝液を得ることができるある特定の特徴が存在する。したがって、1つまたは複数の追加の改善、例えば、より低い粘度、より高い安定性、より高い均質性、およびより柔軟性のある貯蔵および混合の必要条件を示しつつ、短い1~2時間のインキュベーションを維持するハイブリダイゼーション緩衝液に対する必要性が依然として当技術分野に存在する。
【0009】
ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液は、例えば、ガラススライドの間に形成されるキャピラリーフィールドにおいて遅い、非強力な拡散を示す。これは、ハイブリダイゼーション緩衝液の機能性が存在しない空気空間を残し得るので望ましくない。
【0010】
ある特定の既存のISHハイブリダイゼーション緩衝液は、一般的に-18℃以下の温度で貯蔵しなければならない。このような貯蔵温度において、このような緩衝液は、凝固して、大きな沈殿物を形成するおよび/または相分離を示す傾向にある。したがって、使用前に、多くのハイブリダイゼーション緩衝液は、融解し、20~25℃まで平衡化させ、次いで、広範囲にわたり混合して、沈殿物を可溶化させ、液相を均質化しなければならない。使用直後には、これらのハイブリダイゼーション緩衝液は-18℃未満の温度で再凍結しなければならない。したがって、このようなハイブリダイゼーション緩衝液は、凍結と融解による損傷を受けやすく、凍結と融解のサイクル約10回までしか耐えることができない。
【0011】
ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液はまた、低温において不均質を示し、ある場合には、温度平衡化および混合プロセスに対する特別な注意が必要とされる。場合によっては、別個の装置、例えば、Dako Omnis Mixing Deviceを、使用前に、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液中で、プローブ生成物の融解および均質化のために使用しなければならない。
【0012】
加えて、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液は不安定さを示す。例えば、溶媒として炭酸エチレンを利用する緩衝液は、炭酸エチレンの加水分解により不安定さを示し得る。炭酸エチレン加水分解は温度依存性であり、したがって、炭酸エチレンを含む緩衝液は、66℃より上の温度での使用に対してあまり望ましくない。
【0013】
その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、MatthiesenらのWO2009/144581は、少なくとも1個の分子を標的にハイブリダイズするための方法および組成物を提供している。この方法および組成物は、例えば、ハイブリダイゼーションにおけるホルムアミドの使用を排除する、またはホルムアミドへの依存性を低減させることができる。これらの組成物は、少なくとも1種の極性非プロトン性溶媒を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量で含む水性組成物を含む。
【0014】
その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、MatthiesenのWO2010/097707は、ハイブリダイゼーション用途においてプローブおよび標的を別々に変性させるための方法および組成物を提供する。この方法および組成物は、例えば、ハイブリダイゼーション用途におけるホルムアミドの使用を排除する、またはホルムアミドへの依存性を低減させることができる。これらの組成物は、少なくとも1種の極性非プロトン性溶媒を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量で含む水性組成物を含む。
【0015】
Battersbyらの米国特許出願公開第20110236997号は、ハイブリダイゼーションアッセイに対する方法および試薬について記載している。特定のスルホン酸ポリマーおよびハイブリダイゼーション条件は、より短いインキュベーション時間をもたらすと言われている。
【発明の概要】
【0016】
1つの態様として、本開示は、約5~約30%(v/v)の濃度のスルホン溶媒と、および式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III):
【化1】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、Lは、存在する場合、共有結合またはC
1~6脂肪族であり、R
2は、存在する場合、共有結合、C
1~6脂肪族、フェニル、または1~3個の窒素を有する6員ヘテロアリール環であり、R
2は、1もしくは2つのSO
3H基またはその塩で置換されているが、ただし、R
2が共有結合である場合、1つのみのSO
3H基またはその塩が存在するものとし、R
2は、-R
3、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
3、-N(R
3)
2、および-SR
3から独立して選択される1~2つの基で場合によって置換されており、各R
3は、独立して、水素またはC
1~6アルキル基であり、nは10より大きい整数である]
のスルホン酸ポリマーまたは式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III)のうちのいずれか1つの塩とを含むハイブリダイゼーション緩衝液であって、スルホン酸ポリマーまたはその塩が、約5~約50%(w/v)の濃度で存在する、ハイブリダイゼーション緩衝液を提供する。一部の実施形態では、R
1は水素である。他の実施形態では、R
1はC
1~6脂肪族である。ある特定の実施形態では、Lは共有結合である。他の実施形態では、LはC
1~6脂肪族である。追加の実施形態では、Lはメチレンである。
【0017】
一部の実施形態では、本発明の技術のハイブリダイゼーション緩衝液は水をさらに含む。一部の実施形態では、スルホン酸ポリマーまたはその塩はポリビニルスルホン酸またはその塩である。他の実施形態では、スルホン溶媒の濃度は約10%~約20%(v/v)である。追加の実施形態では、スルホン溶媒は、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。他の実施形態では、スルホン溶媒はスルホランである。
【0018】
一部の実施形態では、本発明の技術のハイブリダイゼーション緩衝液は、約20%~約40%(w/v)の濃度でスルホン酸ポリマーまたはその塩を含む。他の実施形態では、本発明の技術のハイブリダイゼーション緩衝液は、硫酸デキストランを20%(w/v)以下、あるいは15%(w/v)以下、あるいは10%(w/v)以下の濃度でさらに含む。
【0019】
追加の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、ミクロ粘度測定法で測定した場合、25℃において、約60mPa.s以下、あるいは約50mPa.s以下、あるいは約40mPa.s以下の粘度を有する。ある特定の実施形態では、本発明の技術のハイブリダイゼーション緩衝液は、2~8℃で、少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間安定している。他の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、2~8℃での少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間の貯蔵後、均質である。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、2~8℃での少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間の貯蔵後、均質性を維持し、均質性が、エリオグラウシンを有するハイブリダイゼーション緩衝液の遠心分離後、ハイブリダイゼーション緩衝液の透明性を目視により評価することにより決定される。
【0020】
一部の実施形態では、本発明の技術のハイブリダイゼーション緩衝液は、緩衝剤、塩、促進剤、キレート剤、洗剤、遮断剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加の構成成分をさらに含む。ある特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、NaClおよび3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)をさらに含む。
【0021】
他の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、約20%(w/v)以下、あるいは約10%(w/v)以下の濃度の促進剤、塩、および緩衝剤をさらに含み、スルホン溶媒は約10%(v/v)の濃度のスルホランであり、スルホン酸ポリマーまたはその塩は約30%(w/v)の濃度である。一部の実施形態では、本発明の技術のハイブリダイゼーション緩衝液は少なくとも1種の核酸プローブをさらに含む。
【0022】
別の態様では、本開示は、核酸配列をハイブリダイズする方法であって、少なくとも1種の核酸プローブを標的核酸配列にハイブリダイズするのに少なくとも十分な期間、少なくとも1種の核酸プローブおよびハイブリダイゼーション緩衝液を標的核酸配列に適用するステップを含み、ハイブリダイゼーション緩衝液が、約5~約30%(v/v)の濃度のスルホン溶媒と、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III):
【化2】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、Lは、存在する場合、共有結合またはC
1~6脂肪族であり、R
2は、存在する場合、共有結合、C
1~6脂肪族、フェニル、または1~3個の窒素を有する6員ヘテロアリール環であり、R
2は、1もしくは2つのSO
3H基またはその塩で置換されているが、ただし、R
2が共有結合である場合、1つのみのSO
3H基またはその塩が存在するものとし、R
2は、-R
3、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
3、-N(R
3)
2、および-SR
3から独立して選択される1~2つの基で場合によって置換されており、各R
3は、独立して、水素またはC
1~6アルキル基であり、nは10より大きい整数である]
のスルホン酸ポリマーまたは式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III)のうちのいずれか1つの塩とを含み、スルホン酸ポリマーまたはその塩が、約5~約50%(w/v)の濃度で存在する、方法を提供する。
【0023】
本発明の技術の一部の実施形態では、標的核酸配列はin situ生体試料中に存在する。他の実施形態では、現在の技術の方法は、標的核酸配列を、約65℃以上の温度で変性させることを含む。他の実施形態では、現在の技術の方法は、標的核酸配列を、約80℃以上の温度で変性させることを含む。他の実施形態では、現在の技術の方法は、標的核酸配列を、約60℃~約95℃の温度で、例えば、約60℃~約70℃、または約70℃~約80℃、または約80℃~約90℃、または約90℃~約95℃またはこれら端点のいずれかの間の任意の温度で変性させることを含む。他の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、変性温度が約72℃、約82℃、または約92℃である場合、強いシグナルを生成する。ある特定の実施形態では、少なくとも1種の核酸プローブを標的核酸配列にハイブリダイズするのに十分な期間は4時間以下である。他の実施形態では、標的核酸への少なくとも1種の核酸プローブのハイブリダイゼーションは、50℃以下の温度で行われる。
【0024】
一部の実施形態では、現在の技術の方法は、8℃以下の温度での貯蔵からハイブリダイゼーション緩衝液を得るステップ、およびプローブをハイブリダイゼーション緩衝液と合わせる前にハイブリダイゼーション緩衝液を混合することなく、ハイブリダイゼーション緩衝液を、少なくとも1種の核酸プローブと合わせるステップをさらに含む。
【0025】
他の実施形態では、本方法は、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、およびこれらの混合物からなる群から選択されるスルホン溶媒の使用を含む。一部の実施形態では、スルホン溶媒はスルホランである。
【0026】
追加の態様では、現在の技術は、ハイブリダイゼーション組成物を調製する方法であって、ハイブリダイゼーション緩衝液を、ある温度で少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間貯蔵するステップと、続いて、ハイブリダイゼーション緩衝液を、少なくとも1種の核酸プローブと合わせて、ハイブリダイゼーション組成物を形成するステップとを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は0℃より高い温度で貯蔵される。
【0027】
一部の実施形態では、ポリビニルスルホン酸の塩は、意図した目的に適したナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩または任意の他の塩であってよい。しかし、ハイブリダイゼーション緩衝液における使用に適したポリビニルスルホン酸の任意の塩を使用することができることを認識されたい。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、硫酸デキストランまたは別の促進剤をさらに含むが、ただし、20%(w/v)以下、あるいは15%(w/v)以下、あるいは10%(w/v)以下の濃度で含み、本開示は、Lovis 2000 Mミクロ粘度計で測定した場合、25℃において、60mPa.s以下、あるいは50mPa.s以下、あるいは40mPa.s以下の粘度を有するハイブリダイゼーション緩衝液を提供する。加速安定性試験を含めた安定性試験は、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液が、2~8℃での少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間の貯蔵後、安定し、および/または均質であることを実証している。
【0028】
別の態様として、本開示は、核酸配列をハイブリダイズする方法を提供する。本方法は、標的核酸配列を準備するステップと、ハイブリダイゼーション組成物の少なくとも1種の核酸プローブを標的核酸配列にハイブリダイズするのに少なくとも十分な期間、本明細書中に開示されているハイブリダイゼーション組成物を標的核酸配列に適用するステップとを含む。標的核酸配列は、in situ生体試料中に存在することができ、本方法は、標的核酸配列を、約66℃~約80℃以上の温度で変性させるステップおよび/またはハイブリダイゼーションステップをさらに含むことができ、少なくとも1種の核酸プローブおよび標的核酸配列は、4時間以下の間、約55℃~約50℃以下の温度にある。一部の実施形態では、本方法は、2~8℃の温度での貯蔵からハイブリダイゼーション緩衝液を得るステップ、およびハイブリダイゼーション緩衝液を事前に混合することなく、ハイブリダイゼーション緩衝液を、少なくとも1種の核酸プローブと合わせて、ハイブリダイゼーション組成物を形成するステップをさらに含む。プローブとハイブリダイゼーション緩衝液を合わせて、ハイブリダイゼーション組成物が生成されたら、ハイブリダイゼーション組成物をFISHなどのハイブリダイゼーション方法での使用前に混合する。
【0029】
別の態様として、本開示は、ハイブリダイゼーション組成物を調製する方法を提供する。本方法は、ハイブリダイゼーション緩衝液を、少なくとも1種の核酸プローブと合わせて、ハイブリダイゼーション組成物を形成するステップ、およびハイブリダイゼーション組成物を、ある温度で、少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間、例えば、0℃より高い温度で貯蔵するステップを含む。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液の一部の実施形態は均質であり、使用前の混合は必要としないが、プローブを含有するハイブリダイゼーション組成物は、ある特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション方法で使用する前に混合すべきである。
【0030】
本開示は、例えば、多種多様な貯蔵条件にわたり均質であり、安定しているハイブリダイゼーション緩衝液および方法を提供する。例えば、本開示のある特定の実施形態は、凍結および融解に敏感ではなく、従来の技術の組成物よりも高い温度で貯蔵された場合安定している。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液の安定性の増加はまた、約66℃より上、例えば、約80℃の温度での変性を支持することができる。本開示のハイブリダイゼーション緩衝液はまた、ある特定の過去の既存のハイブリダイゼーション緩衝液より低い粘度を示し、したがってキャピラリーフィールド、例えば、スライドとスライドカバーとの間の空間における混合、ピペット操作および拡散を促進する。
【0031】
追加の態様では、本開示は、少なくとも1種の核酸配列、スルホラン、ポリビニルスルホン酸またはその塩、および1つまたは複数の追加の構成成分を含むハイブリダイゼーション組成物を提供する。追加の構成成分は、緩衝剤、塩、促進剤、キレート剤、洗剤、遮断剤、またはこれらの組合せであってよい。
【0032】
本開示はまた、均質性の増加および安定性の増加により、貯蔵しやすく、使用しやすいハイブリダイゼーション緩衝液を提供する。一部の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液より高い温度、例えば、0℃より高い温度で貯蔵された場合安定している。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液の安定性の増加はまた、高温変性などのステップを含むハイブリダイゼーション方法を支持する。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液はまた、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液よりも低い粘度を示し得る。本開示のこれらの特徴は、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液と比較した場合、当業者により認識されることになる他の利点の中でも、キャピラリーフィールドにおける混合、ピペット操作および拡散を含めたハイブリダイゼーション方法における利点を提供する。
【0033】
ある特定の好ましい実施形態では、本開示は、少なくとも1種の核酸、約13%(v/v)の濃度のスルホラン、約30%(w/v)の濃度のポリビニルスルホン酸またはその塩、約10%(w/v)の濃度の硫酸デキストラン、約600mMの濃度のNaClおよび約40mMの濃度のMOPSを含むハイブリダイゼーション組成物を提供する。
【0034】
また別の態様によると、本開示は、ハイブリダイゼーションプロトコルおよびアッセイ、例えば、以下に記載されているものなどに使用するための、本明細書に記載されているようなスルホランおよびPVSAまたはその塩を含むハイブリダイゼーション緩衝液の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本開示のFISHハイブリダイゼーション緩衝液が、ある特定の既存のFISH緩衝液より安定していることを示すグラフ表示である。
【
図2】本開示のFISHハイブリダイゼーション緩衝液は、ある特定の既存のFISH緩衝液よりも粘性が低いことを示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、スルホン溶媒とポリビニルスルホン酸またはその塩とを含むハイブリダイゼーション緩衝液を提供する。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は水をさらに含む。ハイブリダイゼーション緩衝液は、ハイブリダイゼーション方法、例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)における使用に適している。ISHは、遺伝的構造または遺伝的事象の可視化のために使用される方法であり、これは、一部の実施形態ではガラススライド上に配置された、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)、分裂中期スプレッド、サイトスピン、組織学的スメアまたは他の生物学的材料で実施することができる。塩基対プローブは、ISH染色プロセスの間に、標的材料、例えば、DNAまたはRNAに標識され、これによって標的材料内の関連する遺伝的情報のその後の識別および定量化が可能となる。着色したスライドは、一部の実施形態では、蛍光顕微鏡または明視野顕微鏡を用いて検査し、収集した情報の解釈は、診断用、予後または研究目的に使用することができる。
【0037】
したがって、ISHは、破壊されていない形態学的構造の状況で、遺伝的構造および事象、例えば、増幅、欠失、転座および染色体コピー数の変化の迅速で正確な記載を提供する。ある場合には、遺伝子異常、これらの頻度と、これらの変化が宿る特定の細胞との間のリンクを、医師が検索することができる。
【0038】
一部の実施形態では、核酸プローブは、関連する濃度でハイブリダイゼーション緩衝液と合わせて、ハイブリダイゼーション組成物を形成する。ハイブリダイゼーション組成物は混合し、次いで、染色プロセスに使用する。これによって、目的の生物学的材料におけるプローブおよび標的ヌクレオチドの変性およびハイブリダイゼーションに適した環境が得られるのである。ハイブリダイゼーション組成物の1つの重要な機能は、DNA溶融温度を低下させ、これによってより低い温度でのハイブリダイゼーションを可能とし、よって組織損傷を低減させることである。
【0039】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液を超えるいくつかの利点を提供する。例えば、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、ある特定の実施形態では、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液よりも低い粘度(例えば、25℃において、1000mPa・s未満、または100mPa・s未満の粘度)を有するISHハイブリダイゼーション緩衝液を提供する。本開示のハイブリダイゼーション緩衝液に関連するより低い粘度は、キャピラリーフィールドにおけるハイブリダイゼーション緩衝液の急速および強力な拡散を促進する。これは、過去のハイブリダイゼーション緩衝液よりも有利である。これは、ガラススライド間に形成されるキャピラリーフィールドにおける遅い、非強力な拡散が、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液の機能性が存在しない空気空間を残し得るからである。本開示のハイブリダイゼーション緩衝液により示されるより低い粘度はまた、高い粘度緩衝液では困難なピペット操作および混合に関してユーザーの操作をより簡単にする。
【0040】
加えて、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液と比較した場合、改善された均質性および長期的貯蔵を提供する。一部の実施形態では、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、2~8℃で長期的に貯蔵することができ、これは、一般的に-18℃以下の温度で貯蔵しなければならないある特定の既存のISHハイブリダイゼーション緩衝液を超える著しい利点を提供する。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、このような貯蔵温度で多くの緩衝液に見られる程度まで、凝固し、大きな沈殿物を形成し、および/または相分離を示すことはない。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、-18℃以下の温度で貯蔵する必要がないので、これらは、融解し、20~25℃まで平衡化させ、次いで、広範囲にわたり混合して、沈殿物を可溶化させ、液相を均質化する必要もないし、使用後、-18℃未満の温度で再凍結する必要もない。その結果、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は凍結融解による損傷を回避する。本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、長期的貯蔵のために凍結する必要がなく、代わりに例えば、2~8℃などの温度で長期的に貯蔵することができるので、使いやすいという利点を提供する。
【0041】
ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液はまた、低温において不均質を示し、ある場合には、温度平衡化および混合プロセスに対する特別な注意が必要とされる。場合によっては、別個の装置、例えば、Dako Omnis Mixing Deviceを、使用前に、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液中で、プローブ生成物を融解および均質化のために使用する必要がある。しかし、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、長期貯蔵の間均質性を維持し、余分な混合ステップまたはデバイスを必要としない。
【0042】
加えて、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液は不安定さを示す。例えば、溶媒として炭酸エチレンを利用する緩衝液は、炭酸エチレンの加水分解により不安定さを示し得る。炭酸エチレンの加水分解は温度依存性であり、したがって、炭酸エチレンを含む緩衝液は、66℃より上の温度での使用に対してあまり望ましくない。しかし、本開示により提供されるハイブリダイゼーション緩衝液は、炭酸エチレンを含有せず、したがって高温でより安定している。例えば、本開示により提供されるハイブリダイゼーション緩衝液のある特定の実施形態は、80℃の温度で使用することができる。
【0043】
一部の実施形態では、本開示は、ハードウエア依存性の混合を必要とせず、自動化および手作業による取扱いを容易にする低粘度での使用が可能な新規ハイブリダイゼーション緩衝液を提供する。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液はまた改善された溶解性および安定性を示す。本開示のハイブリダイゼーション緩衝液の安定性は、2~8℃で許容される長期的貯蔵を提供し、この場合、これらの緩衝液は相分離または沈殿を起こすことなく均質の状態である。したがって、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、使用前に十分に混合する必要はない。したがって、本開示に基づくハイブリダイゼーション緩衝液は、2~8℃での貯蔵から直接使用過程の状況に移してもよい。
【0044】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液および組成物はまた、ある特定の既存のISH緩衝液と比較してより低い粘度を示す。理論に制約されることを望むことなく、高分子量構成成分、例えば、硫酸デキストラン(MW500.000)の濃度の低減が、より低い粘度に対する主な理由である可能性が高い。本開示の組成物および緩衝液は、既存の緩衝液と比較した場合、39%までの粘度低減(25℃において)を提供する。理論に制約されることを望むことなく、合成スルホネートポリマー、例えば、ポリビニルスルホネートナトリウム塩MW3,000~10,000(PVSA)の本発明の組成物への添加は、硫酸デキストラン(MW500,000)の減少に機能的に反作用することが予測され、これによって、本発明の組成物はより低い粘度でも高品質の染色結果を継続して提供するようになる。同様に、理論に制約されることを望むことなく、本開示の組成物の優れた性能および機能性は、合成スルホネートポリマー、例えば、PVSAまたはその塩の添加により維持されると考えられる。
【0045】
一部の実施形態では、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液および組成物は、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液に存在する炭酸エチレンおよび他の溶媒の代わりに、スルホン溶媒、例えば、スルホランを含む。理論に制約されることを望むことなく、スルホランは、炭酸エチレンと比較して、非常に高い化学的安定性および熱安定性を有すると考えられており、したがって本開示のハイブリダイゼーション緩衝液および組成物は、より高い貯蔵温度(2~8℃)で貯蔵することができ、より高い変性温度で使用することができる。ハイブリダイゼーションプロトコルにおいてより高い変性温度を利用するための能力は、標的核酸およびハイブリダイゼーション組成物のより効率的な変性を実施すること、ならびに/または全ハイブリダイゼーションプロトコルをより短い時間で実施することを可能にする。
【0046】
本開示のハイブリダイゼーション緩衝液および組成物はまた、市販のハイブリダイゼーション緩衝液で得た結果と類似の高品質のシグナル染色品質を提供する。理論に制約されることを望むことなく、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液および組成物の熱安定性は、ISHプローブ、例えば、SureFISHプローブに対する推奨と合致したより高い変性温度でのこれらの使用を可能にすると考えられている。
【0047】
表1は、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液と比較した、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液の様々な実施形態の特徴の比較を提供している。1つまたは複数の特徴を有していれば、ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液を超える著しい利点を提供することができることから、実施形態がこれらの特徴をすべて有する必要はないことは認識されるべきである。
【0048】
【0049】
本開示との関連で、以下の用語は以下の通り理解されるものとする:
【0050】
「ハイブリダイゼーション」とは、相補的核酸分子または配列への核酸分子または配列の結合を指す。「ハイブリダイゼーション緩衝液」とは、例えば、核酸プローブの標的核酸配列への結合を促進するためのハイブリダイゼーションプロトコルを実施するのに適合している組成物を指す。ハイブリダイゼーション緩衝液は、例えば、少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種の促進剤、および水を含んでもよい。「ハイブリダイゼーション組成物」は、ハイブリダイゼーション緩衝液および少なくとも1種の核酸プローブを含む組成物を指す。現在の技術のハイブリダイゼーション緩衝液および組成物は、様々な濃度における追加の構成成分を含むことを理解されたい。したがって、他に特定されていない限り、ハイブリダイゼーション緩衝液および組成物の溶媒濃度は、体積対体積(v/v)ベースで本明細書に提供されているのに対して、追加の固体構成成分濃度は、体積対重量(w/v)ベースで提供される。
【0051】
「ハイブリダイゼーションプロセス」とは一般的に、より大きな方法のある働き、ある期間、または一部分を指し、条件は1つの核酸が別の核酸をハイブリダイズするために提供される。ハイブリダイゼーションプロセスは、特に明記しない限り、ハイブリダイゼーション手順は、変性と再アニーリングの両方を組み込んでいると理解することができる(例えば、手順が別の変性ステップを含まない場合)。「ハイブリダイゼーションプロトコル」とは、ハイブリダイゼーションプロセスおよび1種または複数の他のプロセス、例えば、分取またはすすぎのプロセスを含む方法を意味する。
【0052】
「生体試料」とは、1種または複数の細胞または細胞断片の任意のin vivo、in vitro、またはin situ試料と理解されるものとする。これは、例えば、単細胞もしくは多細胞生物、組織切片、細胞学的試料、染色体スプレッド、精製された核酸配列、人為的に調製された核酸配列、例えば、生物学ベースのシステムによりまたは化学合成により調製されたものなど、マイクロアレイ、または他の形態の核酸チップであってよい。一実施形態では、試料は、哺乳動物の試料、例えば、ヒト、ネズミ、ラット、ネコ、またはイヌの試料であってよい。
【0053】
「核酸」「核酸鎖」および「核酸配列」とは、非標準的核酸塩基および/もしくは非標準的骨格(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはロックド核酸(LNA))、または任意の誘導体化形態の核酸を含む、自然発生のヌクレオチドおよび/または核酸類似体から形成された骨格を有するオリゴマーまたはポリマーを含めた、塩基対を使用して結合またはハイブリダイズするあらゆるものを意味する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ペプチド核酸」または「PNA」という用語は、ペンダント核酸塩基(自然発生のものおよび修飾されたもの)を有するポリアミド骨格を有する合成ポリマーを意味する。ペンダント核酸塩基、例えば、PNA上のプリンまたはピリミジン塩基は、リンカーを介して骨格に連結していてもよい。一実施形態では、PNAはN-(2-アミノエチル)-グリシン)骨格を有する。PNAは、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとするPCT/US02/30573、またはその中に引用されている参考文献のいずれかにより教示されているように合成する(および場合によって標識する)ことができる。PNA骨格は帯電していないので、PNAはしっかりと、高い配列特異性で、DNAおよびRNAとハイブリダイズする。よって、短いPNAプローブは、より長いDNAまたはRNAプローブに同等の特異性を示し得る。PNAプローブはまた、相補DNAまたはRNAへの結合においてより大きな特異性を示し得る。本明細書で使用される場合、「ロックド核酸」または「LNA」という用語は、少なくとも1つまたはそれよりも多くのLNAサブユニットを含むオリゴマーまたはポリマーを意味する。本明細書で使用される場合、「LNAサブユニット」という用語は、リボースの2’-酸素を4’-炭素に接続するメチレン架橋を含有するリボヌクレオチドを意味する。一般的には、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Kurreck、Eur.J.Biochem.,270巻:1628~44頁(2003年)を参照されたい。
【0055】
核酸および核酸類似体の例として、ヌクレオチドモノマーのポリマーも挙げられ、これには二本鎖および一本鎖のデオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)、そのアノマー形態、その合成および天然類似体などが含まれる。核酸鎖は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、その合成または天然類似体、またはこれらの混合物で完全に構成されていてもよい。本明細書で定義されたようなDNA、RNA、または他の核酸は、本開示の方法および組成物で使用することができる。
【0056】
「極性非プロトン性溶媒」とは、約2デバイ単位以上の双極子モーメント、周辺温度またはその付近の温度、すなわち、約20℃で、少なくとも約5%(体積)の水への溶解性を有し、およそ中性のpH、すなわち、5~9の範囲、または6~8の範囲のpHで著しい水素交換を受けない有機溶媒を指す。
【0057】
「水溶液」とは、水を含有する、少量でも水を含有する溶液であると理解されるものとする。例えば、1%の水を含有する溶液は水溶液であると理解されるものとする。
【0058】
「反復配列」とは、急速に再アニーリングする(およそ25%)および/または中程度に再アニーリングする(およそ30%)哺乳動物のゲノムの構成成分について言及していると理解されるものとする。
【0059】
「無毒性」および「より低い毒性」とは、ホルムアミドの毒性に関して定義するものである。ホルムアミドは有毒性であり、胎児に害を及ぼす可能性がある。一部の実施形態では、本発明の技術のハイブリダイゼーション緩衝液および組成物はホルムアミドを含有せず、ホルムアミドを含有するある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液よりも毒性が低い。
【0060】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書で使用される場合、完全に飽和した、または1つもしくは複数の不飽和の単位を含有する、直鎖(すなわち、非分枝)もしくは分枝の、置換もしくは非置換の炭化水素鎖、あるいは完全に飽和した、または1つもしくは複数の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式炭化水素または二環式炭化水素を意味する。完全に飽和した、または1つもしくは複数の不飽和単位を含有するこのような非芳香族単環式炭化水素または二環式炭化水素もまた、本明細書で「炭素環」、「環状脂肪族」または「シクロアルキル」と呼ばれている。脂肪族基は一般的に分子の残りに対して1つの結合点を有し得るが、ただし、例えば、それが分子内のリンカーである場合などには、1つより多くの結合点を有することもできる。一部の実施形態では、脂肪族基は1~6個の脂肪族炭素原子を含有するが、ただし、脂肪族基は、追加の炭素原子を有する1つまたは複数の置換基を有してもよい。
【0061】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液、組成物および方法に使用するためのスルホン溶媒は、スルホランおよびスルホン官能基を有する他の溶媒を含む。一部の実施形態では、スルホン溶媒は、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。一部の実施形態では、スルホン溶媒は環状スルホン構成成分、例えば、スルホランである。本開示の1つの態様は、ハイブリダイゼーションに使用するためのハイブリダイゼーション緩衝液またはハイブリダイゼーション組成物である。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は水性組成物を含んでもよい。一部の実施形態は、ハイブリダイゼーション緩衝液および少なくとも1種の核酸プローブを含むハイブリダイゼーション組成物に関する。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、標的核酸配列への核酸プローブのハイブリダイゼーションを促進するのに有効な量で少なくとも1種のスルホン溶媒を含む。標的核酸配列への核酸プローブのハイブリダイゼーションを促進するのに有効な量は、意図した目的に対して使用可能なレベルでハイブリダイゼーションを可能にする量である。例えば、スルホン溶媒の量がハイブリダイゼーションを可能にするのに有効かどうかを試験するための一つの方法は、本明細書に記載されているハイブリダイゼーション方法および組成物に使用された場合、このスルホン溶媒が検出可能なシグナルを生成するかどうか決定することである。
【0062】
スルホン溶媒の有効量の非限定的例として、例えば、約1%~約95%(v/v)が挙げられる。一部の実施形態では、スルホン溶媒の濃度は5%~60%(v/v)、または10%~60%(v/v)である。さらなる他の実施形態では、スルホン溶媒の濃度は1%~50%、5%~30%、10%、10%~20%、10%~30%であり、または10%~25%(v/v)もまた適している。一部の実施形態では、スルホン溶媒は、少なくとも約0.1%、0.25%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、11%、12%または13%(v/v)の濃度で存在する。他の実施形態では、スルホン溶媒は、最大で7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、または20%(v/v)の濃度で存在する。前述の最小値および最大値のいずれかを組み合わせて範囲を形成してもよいことは明示的に想定される。範囲内の最小値と最大値の間の任意の濃度を使用することができることもまた明示的に想定される。
【0063】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液はスルホン酸ポリマーまたはその塩を含む。一部の実施形態では、スルホン酸ポリマーは、一般式(I):
【化3】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、Lは共有結合またはC
1~6脂肪族であり、nは10より大きい整数である]
を有するスルホン酸ポリマーまたはその塩である。一部の実施形態では、R
1は水素である。一部の実施形態では、R
1はC
1~6脂肪族である。一部の実施形態では、Lは共有結合である。一部の実施形態では、LはC
1~6脂肪族である。一部の実施形態では、Lはメチレンである。一部の実施形態では、スルホン酸ポリマーまたはその塩は、一般式(Ia):
【化4】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族である]
のスルホン酸ポリマーまたはその塩である。一部の実施形態では、スルホン酸ポリマーまたはその塩はポリビニルスルホン酸またはその塩である。一部の実施形態では、スルホン酸ポリマーまたはその塩はポリアネトールスルホン酸(polyantholesulfonic)に関し、一般式(II):
【化5】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、R
3は水素またはC
1~6アルキルであり、nは10より大きい整数である]
のポリアネトールスルホン酸またはその塩である。
【0064】
一部の実施形態では、スルホン酸ポリマーまたはその塩は、一般式(IIa):
【化6】
のスルホン酸ポリマーまたはその塩である。一部の実施形態では、スルホン酸ポリマーまたはその塩はポリアネトールスルホン酸またはその塩である。
【0065】
上述の実施形態のいずれか1つでは、nは、10~200、10~150、10~100、10~90、10~80、10~70、20~150、30~150、40~150、50~150、60~150、70~150、80~150、90~150、100~150、50~120、60~120、70~120、80~120、90~120などの整数であってよい。
【0066】
上述の実施形態のいずれか1つでは、スルホン酸ポリマーまたはその塩は、約500~約1,000Da、約1,000~約2,000Da、約2,000~約4,000Da、約3,000~約5,000Da、約4,000~約6,000Da、約5,000~約7,000Da、約6,000~約8,000Da、約7,000~約9,000Da、約8,000~約10,000Da、約2,000~約20,000Da、約3,000~約20,000Da、約4,000~約20,000Da、約5,000~約20,000Da、約6,000~約20,000Da、約7,000~約20,000Da、約2,000~約9,000Da、約3,000~約9,000Da、約4,000~約9,000Da、約5,000~約9,000Da、約6,000~約9,000Da、約7,000~約9,000Da、または約8,000~約9,000Daの範囲の平均分子量を有してもよい。一部の実施形態では、平均分子量は、約1,000Da未満、約2,000Da未満、約3,000Da未満、約4,000Da未満、約5,000Da未満、約6,000Da未満、約7,000Da未満、約8,000Da未満、約9,000Da未満、約10,000Da未満、または約20,000Da未満である。前述の最小値および最大値のいずれかを組み合わせて範囲を形成してもよいことは明示的に想定される。範囲内の最小値と最大値の間の任意の平均分子量を使用することができることもまた明示的に想定される。
【0067】
実施例で実証された通り、より低い分子量のスルホン酸ポリマーは、他の高分子アニオン性ポリマーより良好な性能を有していた。よって、一部の実施形態では、スルホン酸ポリマーまたはその塩は一般式(III):
【化7】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、R
2は、共有結合、C
1~6脂肪族、フェニル、または1~3個の窒素を有する6員ヘテロアリール環であり、R
2は、1もしくは2つのSO
3H基またはその塩で置換されているが、ただし、R
2が共有結合である場合、1つのみのSO
3H基またはその塩が存在するものとし、R
2は、-R
3、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
3、-N(R
3)
2、および-SR
3から独立して選択される1~2つの基で場合によって置換されており、各R
3は、独立して、水素またはC
1~6アルキル基であり、nは10より大きい整数であり、好ましくは最大で、スルホン酸ポリマーまたはその塩が本明細書に記載の範囲内の平均分子量を有するような整数である]
のスルホン酸ポリマーである。
【0068】
一部の実施形態では、式(III)のスルホン酸ポリマーまたはその塩は、約500~約1,000Da、約1,000~約2,000Da、約2,000~約4,000Da、約3,000~約5,000Da、約4,000~約6,000Da、約5,000~約7,000Da、約6,000~約8,000Da、約7,000~約9,000Da、約8,000~約20,000Da、約2,000~約20,000Da、約3,000~約20,000Da、約4,000~約20,000Da、約5,000~約20,000Da、約6,000~約20,000Da、約7,000~約20,000Da、約2,000~約9,000Da、約3,000~約9,000Da、約4,000~約9,000Da、約5,000~約9,000Da、約6,000~約9,000Da、約7,000~約9,000Da、または約8,000~約9,000Daの範囲の平均分子量を有する。一部の実施形態では、平均分子量は、約1,000Da未満、約2,000Da未満、約3,000Da未満、約4,000Da未満、約5,000Da未満、約6,000Da未満、約7,000Da未満、約8,000Da未満、約9,000Da未満、約10,000Da未満、または約20,000Da未満である。前述の最小値および最大値のいずれかを組み合わせて範囲を形成してもよいことは明示的に想定される。範囲内の最小値と最大値との間の任意の平均分子量を使用することができることもまた明示的に想定される。
【0069】
一部の実施形態では、一般式(III)のnは、10~200、10~150、10~100、10~90、10~80、10~70、20~150、30~150、40~150、50~150、60~150、70~150、80~150、90~150、100~150、50~120、60~120、70~120、80~120、90~120などの整数であってよい。
【0070】
ハイブリダイゼーション緩衝液中のスルホン酸ポリマーの濃度は、アッセイにおいて核酸のハイブリダイゼーション速度に影響し得る。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液中のポリマーの濃度は、重量対体積で、約0.1~約40%の間、約0.2%~約15%の間、約0.2%~約10%の間、約0.2%~約9%の間、約0.2%~約8%の間、約0.2%~約7%の間、約0.2%~約6%の間、約0.2%~約6%の間、約0.5%~約5%の間、約1%~約5%の間、約1%~約4%の間、約0.5%~約4%の間、約0.5%~約3%の間、約1%~約2.5%の間、約5%~約40%の間、約10%~約35%の間、約15%~約30%の間、または約25%~約35%の間である。前述の最小値および最大値のいずれかを組み合わせて範囲を形成してもよいことは明示的に想定される。範囲内の最小値と最大値の間の任意の濃度を使用することができることもまた明示的に想定される。
【0071】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、当技術分野で公知のまたはあとで開発された様々な他の構成成分を含有してもよい。例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液は、緩衝剤、促進剤、キレート剤、塩、洗剤、および遮断剤のうちの1種または複数の構成成分を含有してもよい。
【0072】
一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は塩としてNaClを含む。NaClは、ハイブリダイゼーション緩衝液中に約1mM~約1200mMの濃度で存在してもよい。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は約600mMの濃度でNaClを含有する。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)を緩衝剤として含む。MOPSは、ハイブリダイゼーション緩衝液中に約1mM~約50mMの濃度で、および約6.0~約8.0のpHで存在し得る。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、約40mMの濃度で、約7.2のpHでMOPSを含有する。
【0073】
例えば、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は1種または複数の緩衝剤を含んでもよい。一部の実施形態では、緩衝剤は、3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸(MOPS)、SSC、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)、SSPE、PIPES、TMAC、TRIS、SET、クエン酸、リン酸緩衝液、例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、またはピロリン酸ナトリウム、およびこれらの組合せから選択される。緩衝剤は0.5×~50×の濃度で存在し得る。典型的には、緩衝剤は約2×~約10×の濃度で存在し得る。緩衝剤の濃度は、必要に応じて本発明の技術のハイブリダイゼーション緩衝液および組成物を中性pH付近で安定化させるために、約1mM~約500mMの範囲で調整することができる。
【0074】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は1種または複数の促進剤を含んでもよい。一部の実施形態では、促進剤は、ポリマー、例えば、FICOLL、PVP、ヘパリン、デキストラン、および硫酸デキストラン;タンパク質、例えば、BSA;グリコール、例えば、エチレングリコール、グリセロール、1,3プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはジエチレングリコール、およびこれらの組合せから選択される。例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液は、例えば、デンハルト溶液およびBLOTTO、ならびに有機溶媒、例えば、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、DMSOなどを含むことができる。促進剤は、約1%~約80%の濃度で存在し得る。典型的には、ホルムアミドは、ある特定の実施形態では、体積対体積で約1%~約75%で、または約25%~約75%の濃度で存在する。DMSO、硫酸デキストラン、およびグリコールは約5%~約20%の濃度で存在する。硫酸デキストランの分子量に応じて他の濃度の硫酸デキストランを使用することができることを認識されたい。ある特定の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は約5%~約20%(w/v)の硫酸デキストラン(sufate)を含有する。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は約10%(v/v)未満のホルムアミドを含有する。他の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液はホルムアミドを含有しない。
【0075】
一部の実施形態では、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、硫酸デキストラン(DS)を、従来のハイブリダイゼーション緩衝液より低い濃度で含む。一部の実施形態では、硫酸デキストランの濃度は、約20%(w/v)以下、あるいは約15%(w/v)以下、あるいは約10%(w/v)以下である。さらなる他の実施形態では、硫酸デキストランの濃度は、約1%~約20%、あるいは約5%~約15%(w/v)である。一部の実施形態では、硫酸デキストランは、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%(w/v)の濃度で存在することになる。他の実施形態では、硫酸デキストランは、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、約10.5%、約11%、約11.5%、約12%、約12.5%、約13%、約13.5%、約14%、約14.5%、約15%、約15.5%、約16%、約16.5%、約17%、約17.5%、約18%、約18.5%、約19%、約19.5%、または約20%(w/v)の濃度で存在することになる。前述の値のいずれかを組み合わせて範囲を形成してもよいことは明示的に想定される。ある特定の実施形態では、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は硫酸デキストランを約10%(w/v)の濃度で含む。
【0076】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、1種または複数のキレート剤を含んでもよい。一部の実施形態では、キレート剤は、EDTA、EGTA、またはその他から選択される。キレート剤は、約0.1mM~約10mM、あるいは約0.5mM~約5mMの濃度で存在し得る。
【0077】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、1種または複数の塩を含んでもよい。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウムなどから選択される。塩は、約1mM~約1200mMの濃度またはこれらの端点の間の任意の濃度で存在し得る。典型的には、塩は、約10mM~約500mMの濃度またはこれらの端点の間の任意の濃度で存在する。
【0078】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は1種または複数の洗剤を含んでもよい。洗剤として、Tween、SDS、Triton、CHAPS、デオキシコール酸などを挙げることができる。洗剤は、約0.01%~約10%、あるいは約0.1%~約1%(w/v)の濃度またはこれらの端点の間の任意の濃度で存在し得る。
【0079】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、1種または複数の核酸遮断剤、例えば、酵母tRNA、ホモポリマーDNA、変性サケ精子DNA、ニシン精子DNA、全ヒトDNA、COTl DNAなどを含み得る。ブロッキング核酸は、約0.05mg/mL~約100mg/mLの濃度またはこれら2つの端点の間の任意の濃度で存在し得る。
【0080】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液が、促進剤、例えば、硫酸デキストラン、グリコール、またはDMSOを含む場合、硫酸デキストランは約20%(w/v)以下(あるいは、約15%または約10%以下)の濃度で存在してもよく、グリコールは約0.1%~約10%の濃度またはこれら2つの端点の間の任意の濃度で存在してもよく、DMSOは、約0.1%~約10%またはこれら2つの端点の間の任意の濃度であってよい。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は促進剤としてDMSOを含まない。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、ホルムアミドを含まない、またはハイブリダイゼーション緩衝液が約10%未満、または約5%未満、または約2%未満、または約1%未満、または約0.5%未満、または約0.1%未満、または約0.05%未満、または約0.01%未満のホルムアミドを含有することを条件として、ホルムアミドを含む。
【0081】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液がクエン酸を含む場合、その濃度は約lmM~約50mMの範囲であってよく、pHは約5.0~約8.0の範囲であってよく、またはこれらの端点の間の任意の濃度であってよい。一部の実施形態では、クエン酸の濃度は約10mMであってよく、pHは約6.2であってよい。
【0082】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、例えば、細胞膜、例えば、サケ精子または少量の全ヒトDNAへの非特異的結合を低減させる薬剤を含んでもよいし、あるいは、例えば、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、例えば、標的、例えば、多量の全ヒトDNAもしくは反復を豊富に含むDNAへの反復配列の結合を遮断する遮断剤、または特定の遮断剤、例えば、PNAもしくはLNA断片および配列を含んでもよい。これらの薬剤は、約0.01μg/μL~約100μg/μLまたは約0.01μM~約100μMの濃度で、またはこれらの端点の間の任意の濃度で存在し得る。例えば、一部の実施形態では、これらの薬剤は、約0.1μg/μLの全ヒトDNA、または約0.1μg/μLのヒト以外のDNAであり、例えば、ニシン精子、サケ精子、または子牛胸腺DNA、または約5μMのブロッキングPNAである。
【0083】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液がハイブリダイゼーションアッセイに使用される場合、これらはハイブリダイゼーション組成物を形成するための1種または複数の核酸プローブをさらに含んでもよい。プローブは、検出可能な化合物、例えば、酵素、発色団、蛍光色素、およびハプテンで直接的にまたは間接的に標識されていてもよい。DNAプローブは、約0.1ng/μL~約100ng/μLの濃度で存在し得る。例えば、一部の実施形態では、プローブは約1ng/μL~約10ng/μLの濃度で存在し得る。PNAプローブは約0.5nM~約5000nMの濃度で存在し得る。例えば、一部の実施形態では、プローブは約5nM~約1000nMの濃度で存在し得る。
【0084】
一実施形態では、ハイブリダイゼーション緩衝液は、13%のスルホン溶媒(v/v)(例えば、スルホラン)、10%の硫酸デキストラン(w/v)、30%のポリビニルスルホン酸またはその塩(w/v)、600mM NaCl、40mM MOPS緩衝液pH7.2の混合物を含む。本開示の別の例示的ハイブリダイゼーション緩衝液は、14%(v/v)のスルホン溶媒(例えば、スルホラン)、10%の硫酸デキストラン(w/v)、30%のポリビニルスルホン酸(w/v)、600mM NaCl、40mM MOPS緩衝液pH7.2、および0.1μg/μlの全ヒトDNAの混合物を含む。また別の例示的なハイブリダイゼーション緩衝液は、15%の極性非プロトン性溶媒(v/v)(例えば、スルホラン)、10%の硫酸デキストラン(w/v)、30%ポリビニルスルホン酸またはその塩(w/v)、600mM NaCl、40mM MOPS緩衝液、pH7.2、および0.1μg/μLのヒト以外のDNA(例えば、ニシン精子、サケ精子、または子牛胸腺)または0.5%ホルムアミドまたは1%グリコール(例えば、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、またはグリセロール)を含む。
【0085】
一部の実施形態では、スルホン溶媒は、ハイブリダイゼーション緩衝液中に存在する唯一の極性非プロトン性溶媒である。他の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、1種または複数の他のまたは第2の極性非プロトン性溶媒を含む。一部の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は1種または複数の追加の溶媒(スルホランに加えて)を含む。例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液は、1種または複数の極性非プロトン性溶媒、例えば、ラクトン、ニトリル、亜硫酸塩、および/またはカーボネート官能基を有する溶媒を含み得る。このような溶媒は、これらの比較的高い誘電定数、高い双極子モーメント、および水への溶解度により区別される。ラクトン官能基を有する例示的極性非プロトン性溶媒はy-ブチロラクトン(GBL)であり、ニトリル官能基を有する例示的極性非プロトン性溶媒はアセトニトリル(AN)であり、亜硫酸塩官能基を有する例示的極性非プロトン性溶媒はグリコール亜硫酸塩/エチレン亜硫酸塩(GS)であり、およびカーボネート官能基を有する例示的極性非プロトン性溶媒は炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、またはエチレントリチオカーボネート(ETC)である。異なる極性非プロトン性溶媒は、ハイブリダイゼーション緩衝液に異なる特性を付与することができる。例えば、極性非プロトン性溶媒の選択は、ある特定の極性非プロトン性溶媒は時間の経過と共に分解し得るので、ハイブリダイゼーション緩衝液の安定性に寄与することができる。例えば、極性非プロトン性溶媒炭酸エチレンはエチレングリコール(比較的安定した分子である)、および二酸化炭素(水と相互作用して炭酸を形成できる)へと分解され、ハイブリダイゼーション緩衝液の酸性度を改変する。理論に拘束されることなく、炭酸エチレンの分解によるpHの変化は、ハイブリダイゼーションに対するハイブリダイゼーション緩衝液の有効性を低下させると考えられている。したがって、一部の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、炭酸エチレンを実質的に含まない、またはカーボネート官能基を有する極性非プロトン性溶媒を実質的に含まない。
【0086】
しかし、例えば、スルホラン、硫酸デキストランおよびPVSAまたはその塩を含有する本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、2~8℃でおよそ12カ月間貯蔵された場合、安定し、均質である。例えば、スルホランを約13%(v/v)の濃度で、ポリビニルスルホン酸を約30%(w/v)の濃度で、硫酸デキストランを約10%(w/v)の濃度で、NaClを約600mMの濃度で、およびMOPS緩衝液pH7.2を約40mMの濃度で含有するハイブリダイゼーション緩衝液は、2~8℃で貯蔵することができ、最小の混合を用いて使用することができる均質溶液をもたらす。
【0087】
本開示の別の態様によると、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液の一部の実施形態は、従来のハイブリダイゼーション緩衝液と比較して毒性がより低い。例えば、従来のハイブリダイゼーション溶液より低い毒性のハイブリダイゼーション緩衝液は、本明細書に記載されているように、ハイブリダイゼーション緩衝液がホルムアミドを含有しないことを条件とする、またはハイブリダイゼーション緩衝液が、約10%未満、もしくは約5%未満、もしくは約2%未満、もしくは約1%未満、もしくは約0.5%未満、もしくは約0.1%未満、もしくは約0.05%未満、もしくは約0.01%未満のホルムアミドを含有することを条件とするハイブリダイゼーション緩衝液を含み得る。本開示の他の実施形態はまた、ハイブリダイゼーション緩衝液がジメチルスルホキシド(DMSO)を含有しないことを条件とする、またはハイブリダイゼーション緩衝液が約10%未満、約5%未満、約2%未満、もしくは約1%未満、もしくは約0.5%未満、もしくは約0.1%未満、もしくは約0.05%未満、もしくは約0.01%未満のDMSOを含有することを条件とするハイブリダイゼーション緩衝液を含み得る。
【0088】
一部の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション方法およびハイブリダイゼーション緩衝液は、ゲノムDNA、染色体、染色体断片、遺伝子、および染色体異常、例えば、正常な状態または疾患と関連する転座、欠失、増幅、挿入、突然変異、または逆位などのin vivoまたはin vitro分析に対して有用である。さらに、本方法およびハイブリダイゼーション緩衝液は、感染物質の検出ならびにRNA、例えば、mRNAおよびその相補DNA(cDNA)の発現レベルの変化に対して有用である。
【0089】
他の使用は、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNAウイルス、DNAウイルス、低分子干渉RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、ノンコーディングRNA(ncRNA、例えば、tRNAおよびrRNA)、トランスファーメッセンジャーRNA(tmRNA)、ミクロRNA(miRNA)、piwi結合RNA(piRNA)、長鎖ノンコーディングRNA、核小体低分子RNA(snoRNA)、アンチセンスRNA、二本鎖RNA(dsRNA)、メチル化および他の塩基修飾、一塩基多型(SNP)、コピー数多型(CNV)、および、例えば、放射性同位体、蛍光分子、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)、または抗原で標識した核酸を単独で用いたもしくは非標識の核酸と組み合わせた、in vivoまたはin vitro分析を含む。
【0090】
本発明のハイブリダイゼーション方法およびハイブリダイゼーション緩衝液は、技法、例えば、ノーザンブロット、サザンブロット、フローサイトメトリー、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡法、化学発光、免疫組織化学法、仮想核型、遺伝子アッセイ、DNAマイクロアレイ(例えば、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(アレイCGH)、遺伝子発現プロファイリング、遺伝子ID、タイリングアレイ、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、およびin situハイブリダイゼーション、例えば、FISH、SISH、CISHを使用した核酸のin vivoまたはin vitro分析に有用である。本発明の方法およびハイブリダイゼーション緩衝液は、in vitroおよびin vivo試料、例えば、骨髄塗抹標本、血液塗抹標本、パラフィン包埋組織調製物、酵素的に解離した組織試料、骨髄、羊膜細胞、サイトスピン調製物、刷り込みなどの技術に使用することができる。
【0091】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、特定の用途に対して変動させることができる。例えば、スルホン溶媒、塩、促進剤、遮断剤、および/または水素イオン(すなわちpH)の濃度は、特定の用途に対して結果を改善させるために変動してもよい。例えば、スルホン溶媒の濃度は、シグナル強度およびバックグラウンド染色を改善するために変動してもよい。一般的に、溶媒の濃度が増加するにつれて、シグナル強度は増加し、バックグラウンド染色は減少する。
【0092】
加えて、本発明のハイブリダイゼーション組成物使用されるプローブの種類は、結果を改善するために変動させてもよい。例えば、本開示の一部の態様では、DNA/DNAプローブの組合せは、本発明のハイブリダイゼーション組成物のDNA/PNAプローブの組合せより低いバックグラウンドを示し得る。他方では、PNAプローブは、低い塩濃度および/または低い極性非プロトン性溶媒濃度で、DNAプローブより強いシグナルを示す傾向にある。実際のところ、PNAプローブはスルホランが存在しない場合もシグナルを示すのに対して、DNAプローブは、スルホランなしでは、弱いシグナルを示すか、またはシグナルを示さない。
【0093】
本発明の方法およびハイブリダイゼーション緩衝液は、細胞学、組織学、または分子生物学分野におけるすべての種類のハイブリダイゼーション用途において完全にまたは部分的に使用することができる。一実施形態に従い、第1または第2の核酸配列が生体試料に存在する。このような試料の例として、例えば、組織試料、細胞調製物、細胞断片調製物、および単離または富化された細胞成分の調製物が挙げられる。試料は、様々な組織、例えば、乳房、肺、結腸直腸、前立腺、肺、頭部と頸部、胃、膵臓、食道、肝臓、および膀胱、または他の関連組織ならびにその新生物;任意の細胞懸濁物、血液試料、微細針吸引物、腹水液、痰、腹膜洗浄物、肺洗浄物、尿、糞、細胞スクレープ、細胞スメア、サイトスピンまたは細胞標本に由来するものでよい。
【0094】
試料は、標準的プロトコルを使用して単離および処理することができる。細胞断片調製物は、例えば、細胞ホモジナイズ、凍結融解処理または細胞溶解により得ることもできる。単離した試料は、試料を得る目的に応じておよびその部位における慣例に応じて多くの異なる方式で処理することができる。多くの場合、試料は、その後の試料分析用の組織を保存するために様々な試薬で処理するか、あるいは試料を直接的に分析してもよい。試料を保つために広く使用されている方法の例は、ホルマリン固定、これに続くパラフィン包埋および冷凍保存である。
【0095】
分裂中期スプレッドに対して、細胞培養物は一般的に、分裂中期で細胞周期を停止するために、コルセミド、または別の適切な紡錘極破壊剤で処理する。次いで、細胞は、固定し、顕微鏡スライド上にスポットし、ホルムアルデヒドで処理し、洗浄し、エタノール中で脱水する。次いで、プローブを加え、試料を以下に論じる技術のいずれかにより分析する。
【0096】
細胞学は、生体試料からの個々の細胞および/または染色体スプレッドの検査を含む。試料の細胞診は、細胞の試料を得ることから始まり、これは典型的には、頸部試料の場合のように、領域をスクレープする、スワブするもしくはブラッシングことにより、または体液、例えば、胸腔、膀胱、もしくは脊柱などから得られる体液を収集することにより、または内部腫瘍の場合のように微細針吸引もしくは細針生検により、行うことができる。従来の手作業による細胞学的調製では、試料は液体懸濁材料に移し、次いで、流体中の細胞を、直接または遠心分離ベースのプロセシングステップにより、観察のためガラス顕微鏡スライド上に移す。典型的な自動化された細胞学的調製では、フィルターアセンブリーを液体懸濁液中に配置し、フィルターアセンブリーで細胞の分散と細胞のフィルター上への捕獲の両方を行う。次いでフィルターを取り外し、顕微鏡スライドと接触するように配置する。次いで、細胞を顕微鏡スライド上に固定してから、以下に論じた技術のいずれかにより分析する。
【0097】
細胞学的試料を使用する従来のハイブリダイゼーションプロトコルは、試料を含有するスライドをホルムアルデヒド緩衝液中に浸し、洗浄し、次いでエタノール中で脱水する。次いで、プローブを加え、試料をカバーガラスで覆う。スライドを試料中の任意の核酸を変性させるのに十分な温度(例えば、82℃で5分間)でインキュベートし、次いでハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な温度で(例えば、45℃で終夜)インキュベートする。ハイブリダイゼーション後、カバーガラスを取り外し、試料を高ストリンジェンシー洗浄(例えば、65℃で10分間)の対象下におき、これに続いて一連の低ストリンジェンシー洗浄(例えば、室温で2×3分間)の対象下におく。次いで、試料を脱水し、分析のために固定する。
【0098】
組織学は、組織の薄片中の細胞の検査を含む。組織学的検査用の組織試料を調製するために、組織の小片を、典型的にはホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドなどのアルデヒドである適切な固定剤中に固定し、次いで溶融パラフィンワックスに包埋する。次いで、組織試料を含有するワックスブロックを、ミクロトーム上で切断し、典型的には2~10ミクロンの厚さの、組織を含有するパラフィンの薄片を生成する。次いで、試料スライスを顕微鏡スライドに適用し、風乾し、加熱して、試料をガラススライド上に接着させる。次いで、残りのパラフィンを、適切な溶媒、典型的にはキシレン、トルエン、Clearify、Histo-Clearまたはその他に溶解する。次いで、これらいわゆる脱パラフィン溶媒を洗浄脱水化タイプの試薬で除去してから、以下で論じる技術のいずれかにより試料の分析を行う。別法として、スライスを凍結した試料から調製し、素早く10%ホルマリンまたは他の適切な固定剤中に固定し、次いで脱水試薬を注入してから、試料の分析を行ってもよい。
【0099】
組織学的試料を使用する従来のハイブリダイゼーション実験は、ホルマリン固定パラフィン包埋された組織試料を、2~6μmのセクションに切断し、スライド上に収集する。パラフィンを溶融し(例えば、60℃で30~60分間)、次いでキシレン(またはキシレン代用品)で、例えば、2×5分間洗浄することにより除去する(脱パラフィン)。試料を再水和し、洗浄し、次いで前処理する(例えば、95~100℃で10分間)。スライドを洗浄し、次いでペプシンまたは別の適切な透過剤で、例えば、37℃で3~15分間処理する。スライドを洗浄し(例えば、2×3分間)、脱水し、プローブを適用する。試料をカバーガラスで覆い、スライドを試料中の任意の核酸を変性させるのに十分な温度(例えば、82℃で5分間)でインキュベートし、これに続いてハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な温度(例えば、45℃で終夜)でインキュベーションを行う。ハイブリダイゼーション後、カバーガラスを取り外し、試料を高ストリンジェンシー洗浄(例えば、65℃で10分間)の対象下におき、これに続いて一連の低ストリンジェンシー洗浄(例えば、室温で2×3分間)対象下におく。次いで、試料を脱水し、分析のために固定する。
【0100】
本開示の組成物および方法は、細胞学的および組織学的試料に対して当技術分野で公知のすべてのタイプの核酸ハイブリダイゼーション技術において完全にまたは部分的に使用することができる。このような技術として、例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH;マルチカラーFISH、Fiber-FISHなどを含む)、発色性in situハイブリダイゼーション(CISH)、銀in situハイブリダイゼーション(SISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、染色体ペイント、およびアレイin situが挙げられる。
【0101】
本発明のハイブリダイゼーション方法および組成物において使用するのに適した分子プローブは、例えば、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許公開第2005/0266459号に記載されている。一般的に、プローブは、化学合成により、またはクローニング、ベクターへのDNAの挿入、ならびに適当な宿主細胞内でのベクターおよび挿入断片の増幅により特定のDNA配列を増幅させることにより調製することができる。一般的に使用されているベクターとして、細菌プラスミド、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、PI由来人工染色体(PAC)、または酵母人工染色体(YAC)が挙げられる。次いで、増幅したDNAを抽出し、精製し、プローブとして使用するために標識する。プローブを調製および/または合成するための方法は当技術分野で公知であり、例えば、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとするPCT/US02/30573に開示されている。
【0102】
一般的に、プローブの型により、ハイブリダイゼーションアッセイで検出し得る特徴の型が決まる。例えば、全核または全ゲノムDNAプローブを、種特異的プローブとして使用することができる。染色体ペイントは、単一の染色体タイプから誘導されるDNA配列を集めたものであり、分裂中期および間期核における特定の染色体タイプを同定し、ある特定の染色体の数をカウントし、転座を示し、またはクロマチンの染色体外断片を同定することができる。異なる染色体性のタイプはまた、特定の染色体を検出およびカウントするために、プローブハイブリダイゼーションの標的となり得る独特な反復配列を有する。独特な単一コピー配列を標的とするために、大きな挿入プローブを使用することができる。これら大きなプローブでは、ハイブリダイゼーション効率はプローブサイズと反比例する。より小さなプローブもまた、異常、例えば、欠失、増幅、逆位、重複、および異数性を検出するために使用することができる。例えば、違う色に着色した遺伝子座特異的プローブを、分割シグナルin situハイブリダイゼーションを介して転座を検出するために使用することができる。
【0103】
一般的に、野生型と突然変異体型複合体との間の熱安定性の差異は、プローブ長が増加するにつれて減少するため、密接に関連した配列を判別する能力は、ハイブリダイゼーションプローブの長さと反比例する。一般的に、長さが10hpより長いプローブが、目的の独特な生物または病態を正しく同定するために必要な配列多様性を得るために必要とされる。他方では、非常に短いオリゴマー(<10塩基対)における単一塩基(点突然変異)ほどの微妙な配列差異でも、非標的配列と比較した相補的核酸標的配列へのハイブリダイゼーションの判別を可能にするほど十分であり得る。
【0104】
一実施形態では、少なくとも1セットのin situハイブリダイゼーションプローブは、上で定義されたような、およびその開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第7,105,294号に記載されているような1種または複数のPNAプローブを含んでもよい。PNAプローブを合成するための方法は、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとするPCT/US02/30573に記載されている。代わりに、または加えて、上で論じた技術のいずれにおける少なくとも1セットのハイブリダイゼーションプローブは、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとするWO99/14226に記載されているような1種または複数のロックド核酸(LNA)プローブを含んでもよい。2’炭素と4’炭素との間の追加の架橋結合により、LNA骨格はハイブリダイゼーションのために予め組織されている。LNA/DNAおよびLNA/RNA相互作用は、より高い溶融温度により示される通り、対応するDNA/DNAおよびDNA/RNA相互作用よりも強い。よって、ハイブリダイゼーションに必要とされるエネルギーを減少させる本発明の組成物および方法は、LNAプローブを用いたハイブリダイゼーションに対して特に有用である。
【0105】
一実施形態では、プローブは、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許公開第2005/0266459号に記載されているような検知可能な標識(プローブ-標的ハイブリッドの検出を可能にする分析的に識別可能なシグナルを提供する分子)を含んでもよい。検知可能な標識は、プローブに直接結合していても、または、例えばリンカーを使用することにより、プローブに間接的に結合していてもよい。酵素的および化学的プロセスを含めた、当技術分野で公知の任意の標識方法を、本発明の方法および組成物に使用されるプローブを標識するために使用することができる。他の実施形態では、プローブは標識されない。
【0106】
一般的に、in situハイブリダイゼーション技術、例えば、CGH、FISH、CISH、およびSISHは、細胞の染色体の遺伝子または遺伝子断片へ異なるストリンジェンシーでハイブリダイズする、大きな、主に特定されていない核酸プローブを利用する。大きなプローブを使用することによって、in situハイブリダイゼーション技術は非常に感受性が強くなる。しかし、従来のハイブリダイゼーションアッセイにおける大きなゲノムプローブの使用の成功は、例えば、ゲノム全体にわたり存在する反復配列に由来する所望しないバックグラウンド染色のブロッキングに依存する。このようなブロッキングステップは時間がかかり、高価である。以下で論じるように、本発明の方法およびハイブリダイゼーション緩衝液は、このようなブロッキングステップに対する必要性を有利に低減および/または排除する。しかし、一実施形態では、反復配列は、例えば、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとするPCT/US02/30573で開示されているように当技術分野で公知の方法に従い抑制することができる。
【0107】
結合したプローブは、細胞学的および組織学的試料において、蛍光色素(例えば、FISH)、有機クロモゲン(例えば、CISH)、銀粒子(例えば、SISH)、または他の金属粒子(例えば、金促進蛍光in situハイブリダイゼーション、GOLDFISH)を用いて直接的または間接的に検出され得る。よって、検出方法に応じて、試験される試料から得た細胞の集団は、蛍光顕微鏡法または従来の明視野光学顕微鏡を介して可視化することができる。
【0108】
細胞学的および組織学的な試料に対するハイブリダイゼーションアッセイは、特定のDNA配列の数、サイズ、および/または場所を決定するための重要なツールである。例えば、CGHでは、全ゲノムを着色し、異常なコピー数を有する領域の検出のために正常な基準ゲノムと比較する。典型的には、対象組織由来および正常な対照組織由来のDNAは異なる色で着色されたプローブで標識する。DNAのプールを混合し、正常な染色体の分裂中期スプレッドに加える(またはアレイ-またはマトリックス-CGHに対してはマイクロアレイチップに加える)。次いで、色の比率を比較して、異常なコピー数を有する領域を同定する。
【0109】
FISHは典型的には、多色画像化が必要とされる場合および/またはプロトコルがシグナルの定量化を求める場合使用される。この技術は一般的に、細胞学的試料を調製し、プローブを標識し、標的染色体およびプローブを変性させ、プローブを標的配列にハイブリダイズさせ、シグナルを検出することを必要とする。典型的には、ハイブリダイゼーション反応は、標的とされた配列の場所、サイズ、または数が、蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、または他の適切な計測手段を使用して決定できるように、これらを蛍光染色する。全ゲノムから数キロ塩基までの範囲のDNA配列を、FISHを使用して研究することができる。FISHはまた、分裂中期スプレッドおよび間期核に対して使用することもできる。
【0110】
FISHは、分裂中期染色体、間期核、クロマチン繊維、および裸のDNA分子上の反復および単一コピーDNA配列をマッピングするため、ならびに大きな反復したファミリー、典型的にはリボソームDNAおよび主要な直列アレイファミリーの局在化を介して染色体識別および核型分析のために、成功裏に使用されている。FISHの最も重要な用途の1つは、ヒトおよび他の真核生物のモデル種における単一コピーのDNA配列、特に疾患関連遺伝子の検出、ならびに感染性物質の検出である。FISHは、例えば、出生前診断、血液がん、および固形腫瘍における染色体異数性;遺伝子異常、例えば、がん遺伝子増幅、遺伝子欠失、または遺伝子融合;染色体構造異常、例えば、転座、重複、挿入、または逆位;隣接遺伝子症候群、例えば、微小欠失症候群;様々な治療法の遺伝的作用;体細胞中のウイルス核酸および染色体中のウイルス統合部位を検出するために使用することができる。マルチカラーFISHでは、各染色体は別の色に染色され、これによって、異常な染色体が誘導された正常な染色体を決定することを可能にする。このような技術として、多重FISH(m-FISH)、スペクトル核型分析(SKY)、結合二元比標識化(COBRA)、色変化核型分析、交差種カラーバンディング、高分解能マルチカラーバンディング、テロメア多重FISH(TM-FISH)、スプリットシグナルFISH(ssFISH)、および融合シグナルFISHが挙げられる。
【0111】
CISHおよびSISHは、FISHと同じ用途の多くに使用することができ、例えば、組織病理学用途において、根底にある組織形態の分析を可能にするという追加の利点を有する。FISHが実施された場合、ハイブリダイゼーション混合物は、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第6,730,474号に記載されているように、はっきりと異なり、バランスのとれたプローブ対のセットを含有してもよい。CISHに対しては、ハイブリダイゼーション混合物は、1種または複数の従来の有機クロモゲンを用いた検出用に構成されたプローブの少なくとも1セットを含有してもよく、SISHに対しては、ハイブリダイゼーション混合物は、銀粒子を用いた検出用に構成されたプローブの少なくとも1セットを含有してもよく、これは、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Powell RD et al.,“Metallographic in situ hybridization”、Hum.Pathol.,38:1145~59(2007)に記載されている通りである
【0112】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、ブロッティングおよびプロービング(例えば、ノザンブロッティング、ノザンブロッティングなど)を含むハイブリダイゼーションならびにアレイが関与するすべてのタイプの分子生物学技術において完全にまたは部分的に使用することもできる。
【0113】
本開示の方法は、スルホン溶媒と、PVSAまたはその塩とを含むハイブリダイゼーション緩衝液を、核酸分子または配列のハイブリダイゼーションにおいて使用することを含む。本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は前記方法において特に有用である。
【0114】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液を使用するハイブリダイゼーション方法は、ハイブリダイゼーション緩衝液および少なくとも1種の核酸プローブを、二重鎖の形態である可能性が最も高い標的核酸配列を含む試料に適用することを含み得る。普通、プローブが標的配列とハイブリダイズするためのアクセスを確保するために、試料ならびにハイブリダイゼーション緩衝液および少なくとも1種の核酸プローブを含むハイブリダイゼーション組成物は、混合し、加熱して、標的核酸を変性させる。変性の間、スルホン溶媒は標的配列と相互作用し、標的配列の変性および標的ストランドへのプローブの再アニーリングを促進する。本開示で特定されたスルホン溶媒は、このプロセスを有意にスピードアップさせ、ハイブリダイゼーションの厳しさおよび毒性を低減させる。
【0115】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液を使用するハイブリダイゼーションは、従来のハイブリダイゼーション緩衝液を用いて実施されるハイブリダイゼーションと同じアッセイ方法論を使用して実施することができる。しかし、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液はより短いハイブリダイゼーション時間を可能にする。例えば、加熱前処理、消化、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄、およびマウントのステップは、体積、温度、試薬およびインキュベーション時間の点から、従来の組成物に対する条件と同じ条件を使用することができる。当技術分野で公知の従来のハイブリダイゼーションプロトコルには大きなばらつきが存在する。例えば、一部のプロトコルは、次のハイブリダイゼーションステップの前に、プローブの存在なしでの潜在的二重鎖ヌクレオチドの別個の変性ステップを特定している。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、当技術分野で公知の従来のハイブリダイゼーションプロトコルのいずれかにおいて使用することができる。
【0116】
あるいは、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液を使用するハイブリダイゼーションアッセイは、例えば、ハイブリダイゼーション時間を減少させること、変性および/もしくはハイブリダイゼーション温度を増加もしくは減少させること、ならびに/またはハイブリダイゼーション体積を増加もしくは減少させることにより、従来の方法論から変更および最適化することができる。
【0117】
本開示のまた別の態様に従い、ハイブリダイゼーションエネルギーは、ハイブリダイゼーション緩衝液および少なくとも1種の核酸プローブを含むハイブリダイゼーション組成物を加熱することにより提供される。よって、ハイブリダイズするステップは、ハイブリダイゼーション組成物の加熱および冷却のステップを含んでもよい。
【0118】
一部の実施形態では、変性およびハイブリダイゼーションステップは別々に生じ得る。例えば、試料は、プローブなしで溶液を用いて変性され、その後プローブとハイビリダイズされてもよい。
【0119】
本開示のさらなる態様は、核酸をハイブリダイズするための十分な量のエネルギーを提供するプロセスが、マイクロ波、高温槽、ホットプレート、電熱線、ペルチェ素子、誘導加熱、または加熱灯の使用により実施される加熱プロセスを含む方法を含む。
【0120】
別の態様によると、本開示は、ハイブリダイゼーションプロトコルを含む方法であって、ハイブリダイゼーションプロトコルを、約4時間未満、あるいは約3時間未満、あるいは約2時間未満、あるいは約1時間未満実施する、方法を提供する。
【0121】
例えば、一部の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、変性温度が約60℃~約95℃またはこれらの端点の間の任意の温度であり、イブリダイゼーション温度が約20℃~約60℃またはこれらの端点の間の任意の温度である場合、強いシグナルを生成する。他の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、変性温度が約60℃~約70℃、または約70℃~約80℃、または約80℃~約90℃、または約90℃~約95℃またはこれらの端点のいずれかの間の任意の温度であり、ハイブリダイゼーション温度が約20℃~約30℃、または約30℃~約40℃、または約40℃~約50℃、または約50℃~約55℃、または約55℃~約60℃またはこれらの端点のいずれかの間の任意の温度である場合、強いシグナルを生成する。他の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、変性温度が約72℃、約82℃、または約92℃であり、ハイブリダイゼーション温度が約37℃、約40℃、約45℃、約50℃または約55℃である場合、強いシグナルを生成する。他の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、変性時間が約0分間~約10分間またはこれら2つの端点の間の任意の時間であり、ハイブリダイゼーション時間が約0分間~約24時間またはこれら2つの端点の間の任意の時間である場合、強いシグナルを生成する。他の実施形態では、本発明の組成物は、変性時間が約0分間~約5分間またはこれら2つの端点の間の任意の時間であり、ハイブリダイゼーション時間が約0分間~約8時間またはこれら2つの端点の間の任意の時間である場合、強いシグナルを生成する。他の実施形態では、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、変性時間が約0分間、約1分間、約2分間、約3分間、約4分間、または約5分間であり、ハイブリダイゼーション時間が約0分間、約5分間、約15分間、約30分間、約60分間、約180分間、または約240分間である場合、強いシグナルを生成する。ある場合には、例えば、RNA検出、変性プロセスが必要とされないことが当業者により理解されている。
【0122】
したがって、本発明の組成物を使用するハイブリダイゼーションプロセスは、8時間未満に実施されてよい。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーションプロセスは6時間未満に実施される。他の実施形態では、ハイブリダイゼーションプロセスは、約4時間以内、あるいは約3時間以内、あるいは約2時間以内、あるいは約1時間以内、あるいは約30分間以内、あるいは約15分間以内、あるいは約10分間以内、あるいは約5分間以内に実施される。ハイブリダイゼーション時間は変化するので、強いシグナルを生成するため、および/またはバックグラウンドを低減させるために、プローブの濃度を変動させてもよい。例えば、ハイブリダイゼーション時間が減少すると、プローブの量を増加させて、シグナル強度を改善することができる。他方では、ハイブリダイゼーション時間が減少すると、プローブの量を減少させて、バックグラウンド染色を改善することができる。
【0123】
一部の実施形態では、本発明の方法およびハイブリダイゼーション緩衝液は、ハイブリダイゼーションの間、ブロッキングプロセスまたは遮断剤を実質的に含まない。従来のハイブリダイゼーションプロトコルでは、ブロッキングプロセスは、例えば、標的DNAへの反復配列の結合をブロッキングすることにより、シグナルおよびバックグラウンド強度を改善するために利用される。本発明の方法およびハイブリダイゼーション緩衝液では、遮断剤として、全ヒトDNA、ブロッキング-PNA、COT-1DNA、または任意の他の供給源からのDNAを使用する必要性がないこともある。しかし、バックグラウンドレベルは、例えば、細胞膜への非特異的結合を低減させる物質、例えば、少量の全ヒトDNAまたはヒト以外の起源のDNA(例えば、サケ精子DNA)を、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液を使用するハイブリダイゼーション反応物に添加することにより、さらに低減させることができる。
【0124】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、ハイブリダイゼーションプロセスで使用されるプローブ核酸配列の濃度を有意に低減させる可能性をさらに提供する。一般的に、プローブの濃度は、従来の濃度と比較して2分の1~8分の1低減させることができる。例えば、HER2 DNAプローブおよびCEN17 PNAプローブが本発明のハイブリダイゼーション緩衝液と共に使用される場合、これらの濃度は、従来のハイブリダイゼーション緩衝液とのこれらの濃度と比較して低減させることができる。この特徴は、ブロッキングDNA、例えば、ブロッキング-PNAまたはCOT1に対するいかなる要求も存在しないことと相まって、従来の手動のシステムで使用されていた従来の10μL以下の体積と比較して、自動化装置システムでのプローブ体積の増加を可能とし、これによって、以下により詳細に論じられているように、蒸発による損失を低減させる。
【0125】
プローブ濃度の低減はまたバックグラウンドを低減させる。しかし、プローブ濃度の低減は、ハイブリダイゼーション時間と反比例する、すなわち、濃度が低いほど、長いハイブリダイゼーション時間が必要とされる。それにもかかわらず、極めて低濃度のプローブが本発明のハイブリダイゼーション緩衝液と共に使用される場合でも、ハイブリダイゼーション時間は、依然として従来のハイブリダイゼーション緩衝液より短い。
【0126】
本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、多くの場合、従来のハイブリダイゼーション緩衝液よりも良好なシグナル対ノイズ比を可能にする。例えば、ある特定のプローブを用いた、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液による1時間のハイブリダイゼーションは、従来のハイブリダイゼーション緩衝液中での終夜のハイブリダイゼーションと類似のバックグラウンドおよびそれよりも強いシグナルを生成する。
【0127】
従来のハイブリダイゼーションアッセイ法はまた、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液を使用した場合、システムが手動であるか、半自動化されているか、または自動化されているかに応じて、変更および最適化することができる。例えば、半自動化または自動化システムは、短いハイブリダイゼーション時間、および本発明のハイブリダイゼーション緩衝液と混合する必要性の低減から恩恵を受ける。短いハイブリダイゼーション時間は、従来のハイブリダイゼーション緩衝液がこのようなシステムで使用される場合に遭遇する困難を低減することができる。例えば、半自動化および自動化システムに伴う1つの問題は、このようなシステムが、小さな試料体積(例えば、10~150μL)、高温、およびより長いハイブリダイゼーション時間(例えば、14時間)を必要とすることから、試料の著しい蒸発がハイブリダイゼーション中に生じ得ることである。よって、従来のハイブリダイゼーション緩衝液における構成成分の割合はかなり不変のものである。しかし、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液はより速いハイブリダイゼーションを可能にするので、蒸発は低減し、半自動化および自動化システムに使用されるハイブリダイゼーション緩衝液中の構成成分の割合がより柔軟になることを可能にする。
【0128】
本開示は、以下に続く非限定的例の助けを借りてより明確に理解することができ、これらの例は、本開示による組成物の好ましい実施形態を構成する。実施例、または他に示されている場合を除いて、明細書および特許請求の範囲に使用されている成分の量、反応条件などを表現するすべての数は、いかなる場合にも、「約」という用語で修飾されていると理解されるものとする。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値的パラメーターは、本明細書で入手しようとされた所望の特性に応じて異なってもよい近似値である。少なくとも、および特許請求の範囲の均等の原則の適用を限定しようとする試みとしてではなく、各数値的パラメーターは、有効桁数および普通の四捨五入手法を考慮して解釈されるべきである。
【0129】
広範な範囲を示す数値的範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、具体例に記載の数値的値は、できるだけ正確に報告される。しかし、いずれの数値も、そのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必ず生じるある特定の誤差を本来含有する。
【0130】
本明細書に記載されているいずれの範囲も、範囲の端点の間のすべての数を含むと考えられている。
【0131】
本明細書で引用されたすべての参考文献は、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0132】
以下に続く実施例は、本開示を例示するものであり、決して本発明を限定するものと考えられてはならない。
【実施例】
【0133】
[実施例1]
本開示によるハイブリダイゼーション緩衝液をFISH染色手順で試験した。ハイブリダイゼーション緩衝液の構成成分は表2に示されている。
【0134】
【0135】
[実施例2]
この実施例では、実施例1のハイブリダイゼーション緩衝液をプローブと合わせ、ハイブリダイゼーションアッセイで試験した。ハイブリダイゼーション緩衝液を、CY3/FITC標識を有するDNAベースのsureFISH RET break apart(BA)プローブまたはTexas Red/FITC標識を有するDNA/PNAベースの計数プローブHER2/CEN-17の希釈物である、Agilent Technologiesから入手可能なプローブと合わせて、ハイブリダイゼーション組成物を形成した。これらのハイブリダイゼーション組成物を使用して、FFPEヒト組織を有するスライド上でFISH染色を実施した。スライドは、扁桃組織、乳癌組織、腎臓組織および結腸組織を含有していた。試料は、本発明のハイブリダイゼーション組成物に適合させるために比較的高い変性温度(66℃に対して80℃)を使用したことを除いて、標準的組織学プロトコルに従いハイブリダイゼーション組成物で処理した。具体的には、組織学プロトコルを以下の通り行った:
1.キシレンおよびアルコール中の脱パラフィン化
2.アルコール中の再水和
3.前処理緩衝液中、マイクロ波での10分間の加熱前処理
4.37℃での浸漬によるペプシンによるペプシン処理
5.アルコール中の脱水
6.組織へのプローブ含有ハイブリダイゼーション緩衝液の適用
7.80℃で10分間の変性
8.45℃で2時間のハイブリダイゼーション
9.ストリンジェント洗浄緩衝液中での63℃で10分間のストリンジェント洗浄
10.アルコール中の脱水
11.蛍光マウント媒体へのマウント
12.蛍光顕微鏡法および染色品質の評価
【0136】
FISH染色手順の完了後、試料を分析して、Texas Red、CY3およびFITCに関連するフィルターを有する蛍光顕微鏡法を使用して、ハイブリダイゼーション組成物により染色品質を確定した。染色結果(シグナル品質)は0~3のスコアで付与され、スコア0はシグナルなしを示し、スコア3は最大シグナルを示す。スコア2以上は許容される染色結果を示す。スコアは2分の1および4分の1で付与されてもよい。表2のハイブリダイゼーション緩衝液を使用したFFPE組織に対する染色スコアが以下の表3に提供されている。プローブ濃度は、商業的に関連する1×の濃度に対して付与される。
【0137】
【0138】
商業的な関連するプローブ濃度と比べて低いプローブ濃度で試験したハイブリダイゼーション組成物は、上に記載されているように着色した場合、FFPE組織試料の高品質FISH染色を提供することをこれらの結果が実証している。
【0139】
[実施例3]
炭酸エチレンを含む既存のハイブリダイゼーション緩衝液と比較して、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液の安定性を加速安定性試験で分析した。本開示のハイブリダイゼーション緩衝液(試験)および比較対照として含まれたハイブリダイゼーション緩衝液は以下の構成成分を有していた:
【0140】
【0141】
安定性試験を促進させるため、表4のハイブリダイゼーション緩衝液に基づくプローブミックスを2~8℃、22℃および37℃で貯蔵した。温度2~8℃は所望の貯蔵を反映し、温度22℃および37℃は加速貯蔵を反映する。これは、Q規定およびアレニウス式に基づくモデルを使用して、保守的なQ10値1.8で計算した場合、より高い温度の1日は所望の貯蔵においてより大きな日数を反映するためである。結果を比較できるよう、本開示の試験ハイブリダイゼーション緩衝液と混合したプローブおよび比較対照ハイブリダイゼーション緩衝液を含有するハイブリダイゼーション組成物を調製した。試験ハイブリダイゼーション緩衝液と混合したプローブを含有するハイブリダイゼーション組成物を調製し、以下に記載されている様々な貯蔵条件下に移した。翌日、時間点ゼロ(T0)のFISH性能データを生成する。250μLの体積のねじ口のPEチューブをこの安定性実験で使用して、プローブミックス上の空気の体積を低減させた。プローブミックスを以下の表に従い命名し、指定された場所で貯蔵した。どの試験の前にも既存の緩衝液の混合をピペット混合で行った。均質性および安定性に対して最悪事例の条件を付与するために、本開示の緩衝液は混合しなかった。加えて、FISH性能試験のために試料を引き出す際には、これら試験試料からのピペット操作は液体体積の上側部分から行った。
【0142】
計算した加速貯蔵時間についての詳細は以下の通りである(表5および6):
【0143】
【0144】
【0145】
FFPE組織ブロックをこの実験で使用した。FFPE組織上での赤色および緑色シグナル強度を、以下に示されているように、以下の時間(T0、T1、T2およびT3)で実施した以下のFISH試験に従い分析した(表7):
【0146】
【0147】
FISHプロトコルは、37℃で30分間のペプシン浸漬、80℃で10分間の変性および45℃で120分間のハイブリダイゼーションを含んだ。
【0148】
HER2/CEN-17プローブからのTexas RedおよびFITCシグナルまたはsureFISH RET BAプローブからのCY3およびFITCシグナルに対して、0~3のスケールの標準的スコアリング手順に従い、組織にスコアを付けた。起こり得る不均質の影響をモニターするため、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液を含有する(試験)バイアルは、試験前に混合しなかった。対照として含まれた比較対照緩衝液は製造業者の指示に従い混合した。スコアリングは、2人の異なる観察者により実施され、盲検で実施し、スコアリングが完了した後、結果は非盲検とした。
【0149】
最初の魚試験は、安定貯蔵前、プローブミックスの各バッチに対してT0(表8)において実施した。T0での結果は以下の通りである:
【0150】
【0151】
プローブミックスの各バッチに対して、第2のFISH試験をT1(表9)において実施した。T1の結果は以下の通りである:
【0152】
【0153】
すべてのバイアルは使用前に室温に平衡化した。#A、Bバイアルはすべてプローブ適用前に混合したが(先端の混合)、残りのバイアルは混合しなかった。これは、バイアルCおよびDに対して不安定さと不均質の最悪シナリオを含めるために行う。赤色は赤色のシグナルスコアを示し、緑色は緑色のシグナルスコアを示す。
【0154】
第3のFISH試験は、安定貯蔵前に、プローブミックスの各バッチに対してT2において実施した。T2における結果は以下の通りである(表10):
【0155】
【0156】
第4のFISH試験は、安定貯蔵前に、プローブミックスの各バッチに対してT3において実施した(表11)。T3における結果は以下の通りである:
【0157】
【0158】
すべてのバイアルは、使用前に室温に平衡化した。#Aおよび#Bバイアルはすべてプローブ適用前に混合したが、残りのバイアルは混合しなかった。これは、バイアルB、CおよびDに対して不安定さと不均質の最悪シナリオを含めるために行う。
【0159】
加速安定性試験から収集したデータの分析は
図1に提示されており、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、37℃まで高い温度においても、比較対照ハイブリダイゼーション緩衝液よりもずっと良好に貯蔵に耐えることができることを実証している。
図1では、x軸は、5℃における加速開始からの同等日数を規定し、y軸は異なる標識に対する機能的FISH染色強度を規定している。これらのデータでは、スルホラン/PVSAナトリウム塩緩衝液の傾きはより小さいので、スルホランおよびPVSAナトリウム塩を含むハイブリダイゼーション緩衝液は、比較対照緩衝液より良い安定性を有することを示す。
【0160】
表12は、本開示(試験)の緩衝液を比較対照緩衝液と比較した場合の、異なる貯蔵条件での変化を実証するため、転置方式で平均データ(観察者1/観察者2の平均)を提供している。
【0161】
【0162】
結論として、加速安定性データは、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液、例えば、スルホランおよびPVSAナトリウム塩を含有する緩衝液を用いて調製したsureFISH RET BAまたはHER2/CEN-17プローブミックスの非常に良好な安定性を示す。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液は、比較対照ハイブリダイゼーション緩衝液と比較してより安定しており、混合が必要とされないので使用がより便利である。
【0163】
また、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液を含有するプローブミックスからの試料は、試験中のいかなる時も混合することなくチューブ上側から採取したので、プローブミックスを一度均質になるまで混合したら、これらは貯蔵温度(5℃、22℃および37℃)に関係なく均質のまま留まることもこれらのデータは示している。しかし、比較対照ハイブリダイゼーション緩衝液に対しては、使用前ピペットを用いて試料に対する先端の混合を実施した。したがって、生成されたデータは、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液に対する最悪シナリオに相当し、このシナリオでさえも、本発明の緩衝液は、比較対照緩衝液よりさらに優れていた。最後に、SAS-JMPソフトウエアベースの劣化/安定性モデルは、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液に対して、5℃で34カ月という安定性の最小値を予測している。
【0164】
[実施例3]
本開示のハイブリダイゼーション緩衝液を、キャピラリー分野における蒸発およびロバスト性について、およびFISHアッセイにおける性能について試験した。この実施例では、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液を、13%未満、14.3%および14.9%(v/v)スルホランを用いて調製し、溶媒濃度が水損失/相分離およびFISH性能に対するロバスト性にどのように影響を与えるか理解するためにこれらを比較した。
【0165】
試験した本開示の異なるハイブリダイゼーション緩衝液は、試験した異なるスルホラン溶媒濃度を示すために試験1、2および3と指定した(表13)。高精度メスフラスコを使用して、ハイブリダイゼーション緩衝液を5mL体積で調製し、これらのハイブリダイゼーション緩衝液は以下の構成成分を含んだ:
【0166】
【0167】
目視でのモニタリングを促進するための青色染料エリオグラウシンを使用することによって、ハイブリダイゼーション緩衝液の均質性を決定した。ホモジナイズされたハイブリダイゼーション緩衝液の1mLの試料を、ねじ蓋を有する試験管(2mL Sarstedt試験管)に加え、各チューブに加えた4μLの5%(w/v)エリオグラウシン溶液と均質になるまで混合した。次いで、エリオグラウシンを有する試料を、Ole Dich遠心機内で、5000×gで1時間、2℃または15℃において遠心分離した。各遠心分離後、ハイブリダイゼーション緩衝液試料を均質性および相分離について目視により評価した。以下の表14に提供されている結果は、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は均質であり、試験した条件下で均質性を維持することを実証している。
【0168】
【0169】
次に、調製したハイブリダイゼーション緩衝液は、キャピラリーフィールドを生成するためにスライド/カバーガラスのコーナーにスペーサーを備えたハイブリダイザー構成において、シミュレートした変性およびハイブリダイゼーション試験中、不均質に対するこれらのロバスト性について試験した。変性およびハイブリダイゼーション中の相分離は、青色染料の分布を濃青色相およびより透明な相へと変化させ、均質領域は画像から定量化することができる。
【0170】
これらの試験を実施するため、Flexスライドを下側スライドとして使用し、必要とされる染色領域(25×45mm)に切断したFlexスライドガラスを上側スライドとして使用した。Kaplonテープを25×45mmのflexガラスの4つのコーナーに加えて、キャピラリーギャップサイズを規定した。二重Kaplon層と共に、生成したキャピラリーフィールドは、計算体積値25mm×45mm×0.1mm=112.5mm3またはμLを有する。125μLのハイブリダイゼーション緩衝液を規定通りに使用して、このキャピラリーフィールドを満たす。
【0171】
80℃で10分間の変性および45℃で120分間のハイブリダイゼーションのシミュレーションを、標準的手動FISH染色手順の間に使用されるような2枚の湿らせたヒューミディティーストリップを有するハイブリダイザーで実施した。シミュレーション前およびシミュレーション後の拡散する試薬の画像を撮影して、均質な緩衝液領域のパーセントを計算した。
【0172】
以下の表に要約されたハイブリダイゼーションシミュレーションからの結果は、FISH手順の変性およびハイブリダイゼーションステップの間、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は均質であり、キャピラリーフィールドにおいて許容される均質性を維持することを実証している(表15)。
【0173】
【0174】
[実施例4]
様々なNaCl濃度を有する本開示のハイブリダイゼーション緩衝液をキャピラリーフィールド実験における性能について試験した。これらの例示的な本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は比較的高いNaCl濃度(例えば、13.1%(v/v)スルホラン、30%(w/v)PVSAナトリウム塩、10%(v/v)DS500、40mM MOPS pH7.2、および900mM NaCl)を有する。理論に制約されることを望むことなく、高いNaCl濃度はキャピラリーフィールドにおける蒸発を低減させると考えられている。この実施例では、作用の大きさおよび機能的な性能に対する作用を調べるために、4つの異なるNaCl濃度を試験した。
【0175】
2.5mLの以下の4種の本開示の例示的ハイブリダイゼーション緩衝液(表16)を生成し、試験した。1mLの各ホモジナイズされたハイブリダイゼーション緩衝液を、青色染料を有するスクリュートップ試験管(1mL Sarstedt試験管)に加えた。青色染料エリオグラウシン(ハイブリダイゼーション緩衝液1mL当たり4μLの5%(w/v)エリオグラウシン)を使用して、相分離の目視でのモニタリングを促進した。上記に記載されている遠心分離による均質性試験の後、すべての4種の緩衝液は均質な、透明な溶液であり、相分離は室温または15℃および2℃で観察されなかった。
【0176】
【0177】
次いで、様々なNaCl濃度を含有する、4種例示的な本開示のハイブリダイゼーション緩衝液をキャピラリーフィールドにおけるロバスト性に対して試験した。
【0178】
ハイブリダイゼーション緩衝液は、キャピラリーフィールドを生成するためのスライド/カバーガラスのコーナーにスペーサーを備えたハイブリダイザー構成において、シミュレートした変性およびハイブリダイゼーション試験中、不均質に対するこれらのロバスト性について以下に記載されている通り試験した。変性およびハイブリダイゼーション中の相分離は、エリオグラウシン染料の分布における濃青色相およびより透明な相への変化として観察される。次いで、均質領域を着色した緩衝液の画像から定量化した。
【0179】
これらの試験を実施するため、Flexスライドを下側スライドとして使用し、必要とされる染色領域(25×45mm)に切断したFlexスライドガラスを最上層として使用した。Kaplonテープを25×45mmのFlexガラスの4つのコーナーに加えて、キャピラリーギャップサイズを規定した。二重のKaplonテープ層と共に、生成したキャピラリーフィールドは、計算体積値25mm×45mm×0.1mm=112.5mm3またはμLを有する。125μLのハイブリダイゼーション緩衝液を規定通りに使用して、このキャピラリーフィールドを満たす。
【0180】
変性80℃で10分間の変性および45℃で120分間のハイブリダイゼーションのシミュレーションを、標準的なFISH染色手順の間に使用されるような2枚の湿らせたヒューミディティーストリップを有するハイブリダイザーで実施した。シミュレーション前におよびシミュレーション後の拡散する試薬の画像を撮影して、均質な緩衝液領域のパーセントを計算した。
【0181】
計算した領域は、均質領域の標準的な判定に基づき、結果は以下の通り要約される(表17):
【0182】
【0183】
次いで、様々なNaCl濃度を含有する本開示のハイブリダイゼーション緩衝液をFISH染色手順における性能について分析した(表18)。FISH染色試験は、異なるハイブリダイゼーション緩衝液中での商業的な関連するプローブ濃度0.125×および0.25×に対する相対濃度で、FFPE組織に対してHER2/CEN-17プローブを用いて実施した。15%(v/v)炭酸エチレン、20%(w/v)硫酸デキストラン、600mM NaClおよび10mMクエン酸塩緩衝液pH6.2を含有する比較対照緩衝液もまた参考のためおよび対照として含めた。
【0184】
FISH染色手順は、37℃で30分間のペプシン浸漬、80℃で10分間の変性および45℃で120分間のハイブリダイゼーションを含んだ。
【0185】
Texas RedおよびFITCに対する適当なフィルターを有する蛍光顕微鏡で使用された緩衝液に関して、観察者には盲検でスコアリングを実施した。0~3のスケールの標準的スコアリング手順に従い組織のスコアを付け、このスケールでは、0はシグナルなしを示し、3は最大シグナルを示し、2は許容される正シグナルを示した。FISH染色からの結果は以下の通りである:
【0186】
【0187】
結論として、低減するNaCl濃度を有する、試験した4種のハイブリダイゼーション緩衝液は、調製した時点で、および0および15℃での均質性試験後は均質である。試験した本開示のハイブリダイゼーション緩衝液はまた、非保護のキャピラリーフィールドにおいて蒸発に対するロバスト性を実証した。変化させたNaCl濃度は、キャピラリーフィールド性能に影響を与えることが観察された。理論に制約されることを望むことなく、NaCl濃度を改変することは、蒸気圧に変化を起こす可能性が高いと考えられている。平均均質染色領域は、NaClを900mMから300mMに低減させた場合、およそ18%(公称11.5%)低減した。
【0188】
FISH染色性能に関して、900mMから300mMへのNaClの低減は、プローブ濃度に応じて、赤色シグナルスコアを0.25~0.5わずかに増加させることをデータは示している。
【0189】
[実施例5]
スルホランの供給源が緩衝液の性能に影響を与えるかどうか決定するために、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液の均質性および性能を2つの異なる製造業者から入手したスルホランを用いて試験した。加えて、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液における低濃度ナトリウム-リン酸塩の包含を調査した。以下のハイブリダイゼーション緩衝液を試験した(表19):
【0190】
【0191】
均質性について試験するために、青色染料(ハイブリダイゼーション緩衝液1mL当たり4μLの5%(w/v)エリオグラウシンでのエリオグラウシン)を、ねじ蓋を有する試験管(2mL Sarstedt試験管)内の1mLの各ホモジナイズされたハイブリダイゼーション緩衝液に加えて、均質性を目視で容易にモニタリングするようにした。次いで、エリオグラウシンを有する試料を、Ole Dich遠心機内、5000×gで、0℃、2℃および15℃で1時間遠心分離した。各遠心分離後、試料を均質性および相分離について目視により評価した。結果は以下の通りである(表20):
【0192】
【0193】
均質性試験の結果は、本発明のハイブリダイゼーション緩衝液の性能において、製造業者1または2から入手したスルホランの間ではいかなる差異も示さない。
【0194】
次いで、異なる製造業者からのスルホランを用いた調製した本開示のハイブリダイゼーション緩衝液を、FISH染色手順性能試験の対象下においた。FFPE乳房組織について、異なるハイブリダイゼーション緩衝液中の商業的な関連するプローブ濃度0.125×および0.25×に対する相対濃度でHER2/CEN-17プローブを用いて試験を実施した。15%(v/v)炭酸エチレン、20%(w/v)硫酸デキストラン、600mM NaClおよび10mMクエン酸塩緩衝液pH6.2を含有する既存の緩衝液もまた参考のためおよび対照として含まれた。
【0195】
標準的なFISH染色手順は、37℃で30分間のペプシン浸漬、80℃で10分間の変性および45℃で120分間のハイブリダイゼーションを含んだ。
【0196】
スコアリングは、関連するフィルターを有する蛍光顕微鏡上の各スライドに対する変性温度についての情報を与えずに、盲検で実施した。スコアリングは標準的な0~3の範囲を利用した。0はシグナルなしを示し、3は最大シグナルを示し、2は許容される正シグナルを示す。結果は以下の表(表21)に提示されている:
【0197】
【0198】
FISH性能試験の結果は、均質性データと一致し、スルホラン製造業者は本開示の緩衝液に対していかなる作用もないことを実証している。
【0199】
[実施例6]
本開示のハイブリダイゼーション緩衝液を様々なハイブリダイゼーション温度で試験した。本発明のハイブリダイゼーション緩衝液はある特定の既存のFISHハイブリダイゼーション緩衝液より安定しているので、これらはより広い範囲のハイブリダイゼーション温度を支持することができると予測された。この実施例は、HER2/CEN-17およびSureFISH RET BAプローブを有するハイブリダイゼーション緩衝液組成物に使用された場合の本開示のハイブリダイゼーション緩衝液に対するハイブリダイゼーション温度を評価する。
【0200】
この実施例に使用された本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、13.1%(v/v)スルホラン、30%(v/v)PVSAナトリウム塩、10%(v/v)DS500、40mM MOPSpH7.2、および900mM NaClを含有していた。試験は、FFPE乳房組織に対して、商業的な関連するプローブ濃度0.125×および0.25×に対する相対濃度で、ハイブリダイゼーション緩衝液中のHER2/CEN-17とRETプローブミックスの両方を用いて実施した。37℃で30分間のペプシン浸漬および80℃で10分間の変性を含んだ標準的なFISH染色プロトコルを利用した。ハイブリダイゼーションを、35~50℃の範囲の試験温度で120分間、以下の通り実施した(表22):
【0201】
【0202】
スコアリングは、関連するフィルターを有する蛍光顕微鏡を使用して、ハイブリダイゼーション温度に関して盲検で実施した。FFPE組織は、標準的なスコアリング手順に従い、0~3のスケールでスコアを付けた。0はシグナルなしを示し、3は最大シグナルを示し、2は許容される正シグナルを示している。FISH染色からの結果は以下の通りである:
【0203】
【0204】
本開示結果のハイブリダイゼーション緩衝液を使用して、表23のデータは、38℃~50℃の広範囲のハイブリダイゼーション温度が、低濃度のHER2/CEN-17およびRET BAプローブセットを用いて許容されるシグナル強度を結果として生じることを明確に示している。
【0205】
[実施例7]
ある特定の既存のハイブリダイゼーション緩衝液は、多くの場合、キャピラリーフィールドにおいて、取扱い、ピペット操作、および拡散の面で難題を提示する高い粘度を示す。しかし、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、高品質FISH染色結果を依然として支持しながら、より低い粘度を示す。この実験では、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液の粘度は、関連する取扱い温度、例えば、15、20、25、32および37℃において比較対照ハイブリダイゼーション緩衝液の粘度と比較される。
【0206】
試験した本開示のハイブリダイゼーション緩衝液(試験)は、13%(v/v)スルホラン、10%(w/v)硫酸デキストラン、30%(w/v)ポリビニルスルホン酸ナトリウム塩、200mM NaClおよび50mMリン酸緩衝液、pH7.4を含有していた。比較対照ハイブリダイゼーション緩衝液は、15%(v/v)炭酸エチレン、20%(w/v)硫酸デキストラン、600mM NaClおよび10mMクエン酸塩緩衝液、pH6.2を含有していた。
【0207】
ローリングボール原理により作動するミクロ粘度計を25℃で較正し、製造業者の指示に従い使用した。本開示の試験ハイブリダイゼーション緩衝液または比較対照ハイブリダイゼーション緩衝液を装置に充填し、異なる温度での粘度および密度の記録を実施した。粘度および密度測定からの結果は以下の表に提示されている(表24):
【0208】
【0209】
この実験からのデータは
図2において要約されており、この中でy軸に粘度をプロットし、これに対してx軸には温度をプロットしている。このデータは、本開示のハイブリダイゼーション緩衝液は、25℃における、比較対照緩衝液に対する62.9mPa.sから38.3mPa.sへの粘度の低減を提供することを実証している。これは、粘度におけるおよそ40%の減少に相当する。より高い温度では、減少はわずかに40%を上回り、より低い温度では、減少はわずかに40%を下回る(上記の表を参照されたい)。これらの結果は、本開示の緩衝液は、比較対照ハイブリダイゼーション緩衝液と比較した場合、より低い粘度を示すことを確定している。
【0210】
例示的実施形態
本発明で開示された主題に従い提供される例示的な実施形態は、これらに限定されないが、以下を含む:
1.約5~約30%(v/v)の濃度のスルホン溶媒と、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III):
【化8】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、Lは、存在する場合、共有結合またはC
1~6脂肪族であり、R
2は、存在する場合、共有結合、C
1~6脂肪族、フェニル、または1~3個の窒素を有する6員ヘテロアリール環であり、R
2は、1もしくは2つのSO
3H基またはその塩で置換されているが、ただし、R
2が共有結合である場合、1つのみのSO
3H基またはその塩が存在するものとし、R
2は、-R
3、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
3、-N(R
3)
2、および-SR
3から独立して選択される1~2つの基で場合によって置換されており、各R
3は、独立して、水素またはC
1~6アルキル基であり、nは10より大きい整数である]
のスルホン酸ポリマーまたは式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III)のうちのいずれか1つの塩とを含むハイブリダイゼーション緩衝液であって、スルホン酸ポリマーまたはその塩が、約5~約50%(w/v)の濃度で存在する、ハイブリダイゼーション緩衝液。
2.R
1が水素である、実施形態1に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
3.R
1がC
1~6脂肪族である、実施形態1に記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
4.Lが共有結合である、実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
5.LがC
1~6脂肪族である、実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
6.Lがメチレンである、実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
7.水をさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
8.スルホン酸ポリマーまたはその塩がポリビニルスルホン酸またはその塩である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
9.スルホン溶媒の濃度が約10%~約20%(v/v)である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
10.スルホン溶媒が、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1~9のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
11.スルホン溶媒がスルホランである、実施形態1~10のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
12.スルホン酸ポリマーまたはその塩の濃度が約20%~約40%(w/v)である、実施形態1~11のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
13.硫酸デキストランを20%(w/v)以下、あるいは15%(w/v)以下、あるいは10%(w/v)以下の濃度でさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
14.ミクロ粘度測定法で測定した場合、25℃において、約60mPa.s以下、あるいは約50mPa.s以下、あるいは約40mPa.s以下の粘度を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
15.2~8℃で、少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間安定している、実施形態1~14のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
16.2~8℃での少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間の貯蔵後、均質である、実施形態1~15のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
17.ハイブリダイゼーション緩衝液が、2~8℃での少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間の貯蔵後、均質性を維持し、均質性が、エリオグラウシンを有するハイブリダイゼーション緩衝液の遠心分離後、ハイブリダイゼーション緩衝液の透明性を目視により評価することにより決定される、実施形態1~16のいずれかに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
18.緩衝剤、塩、促進剤、キレート剤、洗剤、遮断剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加の構成成分をさらに含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
19.NaClおよび3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)をさらに含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
20.約20%(w/v)以下、あるいは約10%(w/v)以下の濃度の促進剤、塩、および緩衝剤をさらに含み、スルホン溶媒が約10%(v/v)の濃度のスルホランであり、スルホン酸ポリマーまたはその塩が約30%(w/v)の濃度である、実施形態1~19のいずれか1つに記載のハイブリダイゼーション緩衝液。
21.実施形態1~20のいずれかに記載のハイブリダイゼーション緩衝液、および少なくとも1種の核酸プローブを含むハイブリダイゼーション組成物。
22.核酸配列をハイブリダイズする方法であって、少なくとも1種の核酸プローブを標的核酸配列にハイブリダイズするのに少なくとも十分な期間、少なくとも1種の核酸プローブおよびハイブリダイゼーション緩衝液を標的核酸配列に適用するステップを含み、ハイブリダイゼーション緩衝液が、約5~約30%(v/v)の濃度のスルホン溶媒と、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III):
【化9】
[式中、R
1は水素またはC
1~6脂肪族であり、Lは、存在する場合、共有結合またはC
1~6脂肪族であり、R
2は、存在する場合、共有結合、C
1~6脂肪族、フェニル、または1~3個の窒素を有する6員ヘテロアリール環であり、R
2は、1もしくは2つのSO
3H基またはその塩で置換されているが、ただし、R
2が共有結合である場合、1つのみのSO
3H基またはその塩が存在するものとし、R
2は、-R
3、ハロゲン、-CN、-NO
2、-OR
3、-N(R
3)
2、および-SR
3から独立して選択される1~2つの基で場合によって置換されており、各R
3は、独立して、水素またはC
1~6アルキル基であり、nは10より大きい整数である]
のスルホン酸ポリマーまたは式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)もしくは(III)のうちのいずれか1つの塩とを含み、スルホン酸ポリマーまたはその塩が、約5~約50%(w/v)の濃度で存在する、方法。
23.標的核酸配列がin situ生体試料中に存在する、実施形態22に記載の方法。
24.標的核酸配列を約65℃以上の温度で変性させるステップをさらに含む、実施形態22~23のいずれかに記載の方法。
25.少なくとも1種の核酸プローブを標的核酸配列にハイブリダイズするのに十分な期間が4時間以下である、実施形態22~24のいずれかに記載の方法。
26.標的核酸への少なくとも1種の核酸プローブのハイブリダイゼーションが50℃以下の温度で行われる、実施形態22~25のいずれかに記載の方法。
27.8℃以下の温度での貯蔵からハイブリダイゼーション緩衝液を得るステップ;プローブをハイブリダイゼーション緩衝液と合わせる前にハイブリダイゼーション緩衝液を混合することなく、ハイブリダイゼーション緩衝液を、少なくとも1種の核酸プローブと合わせるステップをさらに含む、実施形態22~26のいずれかに記載の方法。
28.スルホン溶媒が、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態22~27のいずれかに記載の方法。
29.スルホン溶媒がスルホランである、実施形態22~28のいずれかに記載の方法。
30.ハイブリダイゼーション組成物を調製する方法であって、ハイブリダイゼーション緩衝液を、ある温度で少なくとも2カ月間、あるいは少なくとも4、6、8、12、16、18または24カ月間貯蔵するステップと、続いて、ハイブリダイゼーション緩衝液を少なくとも1種の核酸プローブと合わせて、ハイブリダイゼーション組成物を形成するステップとを含む、方法。
31.ハイブリダイゼーション緩衝液が0℃より高い温度で貯蔵される、実施形態30に記載の方法。
【0211】
例示的または好ましい実施形態の前述の説明は、実施形態により定義される本発明を限定するよりむしろ例示するものと考えられるべきである。容易に認識されるように、実施形態に記載の本発明から逸脱することなく、上に記載された特徴の多くの変化形および組合せを利用することができる。このような変化形は、本発明の範囲からの逸脱とはみなされず、すべてのこのような変化形は、以下の実施形態の範囲内に含まれることが意図される。本明細書で引用されたすべての参考文献はそれら全体において参照により組み込まれる。
【国際調査報告】