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特表2022-530180有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤およびそのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(54)【発明の名称】有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤およびそのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/16 20060101AFI20220621BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220621BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20220621BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20220621BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20220621BHJP
   C10G 25/05 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B01J20/16
B01J20/28 Z
B01D15/00 K
C01B33/18 Z
C01B33/26
C10G25/05
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021550237
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 IB2020053840
(87)【国際公開番号】W WO2020217197
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】1901002478
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513160707
【氏名又は名称】ピーティーティー グローバル ケミカル パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボンガチャリア、ヤニー
(72)【発明者】
【氏名】ペンパンニ、シティポン
(72)【発明者】
【氏名】シャレオンパンニ、メッタ
(72)【発明者】
【氏名】ドンファイ、ワリーポーン
(72)【発明者】
【氏名】ウィトン、トンタイ
(72)【発明者】
【氏名】ルエンラン、プリーヤポーン
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4G072
4G073
4H129
【Fターム(参考)】
4D017AA04
4D017BA04
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA01
4D017DA06
4D017DA08
4D017EB07
4D017EB10
4G066AA22B
4G066AA30B
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA33
4G066DA07
4G066FA37
4G072AA25
4G072BB05
4G072BB15
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH21
4G072MM01
4G072MM14
4G072RR12
4G072TT08
4G072UU11
4G073BA52
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BD11
4G073BD21
4G073CE01
4G073FB50
4G073FD01
4G073FD15
4G073FD23
4G073GA12
4G073GA13
4G073GA14
4G073GA19
4G073UA06
4G073UB38
4H129AA02
4H129CA04
4H129DA07
4H129KA19
4H129KC10X
4H129KC10Y
4H129KC18Y
4H129KC33Y
4H129KD06X
4H129KD07X
4H129KD19X
4H129KD30X
4H129KD30Y
4H129NA05
4H129NA41
(57)【要約】
本発明は、有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤およびそのプロセスに関し、上記吸着剤は、高い電気陰性度を有する金属を少量用いて表面特性が改変された浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤であって、
高い電気陰性度を有する金属を少量用いて表面特性が改変された浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体であり、
前記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、2~15nmの範囲の小さい細孔および40~100nmの範囲の大きい細孔を含み、前記小さい細孔の前記大きい細孔に対する比は0~1である、吸着剤。
【請求項2】
前記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を1~20の範囲で有する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を2~10の範囲で有する、請求項2に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記高い電気陰性度を有する金属は、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、およびマグネシウム(Mg)から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸着剤。
【請求項5】
前記高い電気陰性度を有する金属は亜鉛である、請求項4に記載の吸着剤。
【請求項6】
前記高い電気陰性度を有する金属を0.1~10重量%の範囲で含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記高い電気陰性度を有する金属を0.5~5重量%の範囲で含む、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項8】
ナトリウム金属を7~15重量%の範囲で含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の吸着剤。
【請求項9】
有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するためのプロセスであって、
前記有機塩化物化合物を吸着させるために、前記有機塩化物化合物と混合された前記液体炭化水素を吸着剤に接触させ、より少量の前記有機塩化物化合物を有する前記液体炭化水素を得るステップを含み、
前記吸着剤は、高い電気陰性度を有する金属を少量用いて表面特性が改変された浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体であり、
前記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、2~15nmの範囲の小さい細孔および40~100nmの範囲の大きい細孔を含み、
前記小さい細孔の前記大きい細孔に対する比は0~1である、プロセス。
【請求項10】
前記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を1~20の範囲で有する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を2~10の範囲で有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記高い電気陰性度を有する金属は、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、およびマグネシウム(Mg)から選択される、請求項9から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記高い電気陰性度を有する金属は亜鉛である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記吸着剤は、前記高い電気陰性度を有する金属を0.1~10重量%の範囲で含む、請求項9から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記吸着剤は、前記高い電気陰性度を有する金属を0.5~5重量%の範囲で含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記吸着剤は、ナトリウム金属を7~15重量%の範囲で含む、請求項9から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記有機塩化物化合物は、塩化アルキル、塩化アリル、またはそれらの混合物から選択される、請求項9から16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記有機塩化物化合物は、1-クロロヘキサン、1-クロロ-2-メチルブタン、1-クロロペンタン、またはそれらの混合物から選択される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記有機塩化物化合物は1-クロロヘキサンである、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記液体炭化水素は、50~210℃の範囲で沸点を有する炭化水素である、請求項9から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記液体炭化水素は、トルエン、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族、またはそれらの混合物から選択される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
30~50℃の温度および大気圧~10バールの圧力で操作される、請求項9~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
より少量の有機塩化物化合物を有する前記液体炭化水素は、0.2ppmより低い有機塩化物化合物を有する、請求項9から22のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学分野に関し、具体的には、有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤およびそのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒改質は、原油精製から得られ低オクタン価を有するナフサを、より高いオクタン価を有するように変換することにおいて使用される化学プロセスである。触媒改質プロセスから得られる生成物は改質油と呼ばれる。最も使用される触媒は、シリカまたはシリカ-アルミナ複合体担体上の白金またはレニウムである。触媒の劣化を引き起こす白金またはレニウムのより大きい粒子への集合を阻止するために、上記触媒は塩素化される必要がある。
【0003】
しかしながら、改質プロセスから生成される水素ガスは、触媒表面上の塩化物と反応して塩化水素を形成する。生成された塩化水素は、不飽和炭化水素化合物と反応して有機塩化物化合物を形成する。塩化水素は腐食性が高く、プロセスにおける設備を損傷するおそれがある。有機塩化物化合物は塩化水素ほど腐食性ではないが、有機塩化物化合物は低温で塩化水素へと解離され腐食を引き起こすおそれがある。
【0004】
供給流からの塩化水素および有機塩化物化合物の分離はいくつかの方法によって実施することができる。効率が高く、供給流中の他の炭化水素化合物への影響がない方法は、塩化水素および有機塩化物化合物で汚染された流れを、上記物質に特異的である吸着剤を含有する固定床式吸着装置に供することによる吸着プロセスである。
【0005】
通常は、アルカリ金属を促進剤として使用してアルミナにより、塩化水素を流れから除去し、1ppmより低い濃度にしておくことができる(米国特許第5,316,988号において開示されるように)。しかしながら、有機塩化物化合物の除去はより困難であり、有機塩化物化合物のための吸着剤に関するデータは限られている。
【0006】
米国特許第3,862,900号は、7~11オングストロームの範囲の細孔を有する10Xおよび13Xゼオライトを用いて有機塩化物化合物を除去するためのプロセスを開示している。13Xゼオライトが最も高い効率を有することが見出されている。
【0007】
米国特許第8,551,328B2号は、ケイ素のアルミニウムに対する比が1.25より低い13Xゼオライトが、ケイ素のアルミニウムに対する比が1.25である標準的な13Xゼオライトより、有機塩化物化合物(塩化ビニル)の良好な吸着効率を与えることを開示している。
【0008】
米国特許第3,864,243号は、4~6時間、900~1,000°Fの範囲の温度でか焼され、多孔性および高表面積を有するボーキサイト型アルミナ吸着剤を使用した、炭化水素化合物由来の有機塩化物化合物の吸着を開示している。有機塩化物を含有する炭化水素化合物の吸着効率は、室温および大気圧で85~96%であった。
【0009】
米国特許第5,107,061A号は有機塩化物化合物の吸着を開示しており、有機塩化物化合物は、50%のn-ブタン、30%の1-ブテン、15%の2-ブテン、3%のイソ-ブチレン、および2%のイソブテンを含む、ポリイソブチレン(PIB)の蒸留塔から出る炭化水素化合物に由来する50~100ppmの塩化2-ブチルおよび5~10ppmの塩化t-ブチルであった。NaXゼオライトを単独で使用するよりも、アルミナおよびNaXゼオライトである2種類の吸着剤の組み合わせが有機塩化物化合物の高い吸着効率を与えることが見出された。
【0010】
中国特許第103611495A号は、3種類の吸着剤を使用する有機塩化物化合物の吸着剤の調製を開示しており、3種類の吸着剤は、(1)ケイ素のアルミニウムに対する比が2~2.5の範囲であり、亜鉛(Zn)とのイオン交換を有するXまたはYゼオライト、(2)珪藻土であるマクロ多孔性無機材料、(3)ベントナイトおよびアタパルジャイトである、強度を促進するために使用される粘土を含んだ。ゼオライト中の亜鉛イオンを交換することおよび無機材料を適切な量で加えることにより、イオン交換がなく、無機材料が加えられていないゼオライトと比較すると、塩化ビニルの吸着効率が著しく増大され得ることが見出された。
【0011】
Arjang et al.、2018は、230~400m/gの範囲の比表面積および20nmの平均粒径を有するガンマ-アルミナ担体上の、8.5~105mg/Lの出発濃度を有する有機塩化物化合物の吸着を検討した。8.5mg/Lの有機塩化物化合物の出発濃度で最大96%までの吸着効率を与えることが見出された。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤およびそのプロセスに関し、上記吸着剤は、高い電気陰性度を有する金属を少量用いて表面特性が改変された浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤およびそのプロセスに関し、これらは以下の実施形態に従って説明される。
【0014】
本明細書で説明される任意の態様はまた、別段の定めがない限り、本発明の他の態様への適用を含むことを意味する。
【0015】
本明細書で使用される技術的用語または科学的用語は、別段の定めがない限り、当業者によって理解されるような定義を有する。
【0016】
本明細書において挙げられる任意の器具、設備、方法、または化学物質は、本発明のみにおいて特定の器具、設備、方法、または化学物質であるという別段の定めがない限り、当業者によって一般的に操作されるか、または使用される器具、設備、方法、または化学物質を意味する。
【0017】
特許請求の範囲または明細書における「含む」を伴う単数名詞または単数代名詞の使用は「1つ」を意味し、かつ「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、「1つ以上」も含む。
【0018】
以下、発明実施形態が、本発明の任意の範囲を限定するいかなる目的もなしに、示される。
【0019】
本発明は、有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤に関し、上記吸着剤は、高い電気陰性度を有する金属を少量用いて表面特性が改変された浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体である。
【0020】
本発明の一態様において、吸収剤は、約2~15nmの範囲の小さい細孔および約40~100nmの範囲の大きい細孔を含むシリカとアルミノケイ酸塩の複合体であり、小さい細孔の大きい細孔に対する比は0~1である。
【0021】
本発明の一態様において、シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を1~20の範囲で、好ましくは2~10の範囲で有する。
【0022】
本発明の一態様において、高い電気陰性度を有する金属は、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、およびマグネシウム(Mg)、好ましくは亜鉛から選択される。
【0023】
本発明の一態様において、吸着剤は、高い電気陰性度を有する金属を約0.1~10重量%の範囲で、好ましくは約0.5~5重量%の範囲で含む。
【0024】
本発明の一態様において、吸着剤は、ナトリウム金属を7~15重量%の範囲で含む。
【0025】
一態様において、上記金属は、イオン交換または含浸などの一般的に知られている方法を用いて、シリカとアルミノケイ酸塩の複合体吸着剤に加えられてもよい。
【0026】
一態様において、シリカとアルミノケイ酸塩の複合体吸着剤は、一般的に知られている方法を用いて調製されてもよく、粉末の形態、形成プロセスに供されない、またはアルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、粘土、もしくはそれらの混合物から選択されるがそれらに限定されないバインダを使用した形成プロセスに供した、またはバインダを使用しない形成プロセスに供した微粒で使用されてもよい。
【0027】
本発明の一態様において、本発明は、有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するためのプロセスに関し、プロセスは、上記有機塩化物化合物を吸着させるために、有機塩化物化合物と混合された液体炭化水素を吸着剤に接触させ、より少量の有機塩化物化合物を有する液体炭化水素を得るステップを含み、上記吸着剤は、高い電気陰性度を有する金属を少量用いて表面特性が改変された浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体である。
【0028】
本発明の一態様において、本発明による分離するためのプロセスにおいて使用される吸着剤は、上述したような吸着剤から選択されてもよい。
【0029】
本発明の一態様において、有機塩化物化合物は、塩化アルキル、塩化アリル、またはそれらの混合物から選択される。好ましくは、有機塩化物化合物は、1-クロロヘキサン、1-クロロ-2-メチルブタン、1-クロロペンタン、またはそれらの混合物、最も好ましくは1-クロロヘキサンから選択される。
【0030】
本発明の一態様において、液体炭化水素は、50℃より高い沸点を有する炭化水素である。好ましくは沸点は約50~210℃の範囲である。液体炭化水素は、トルエン、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族、またはそれらの混合物から選択されてもよい。
【0031】
本発明の一態様において、本発明による分離するためのプロセスは、30~50℃の温度および大気圧~10バールの圧力で操作される。
【0032】
本発明の一態様において、本発明によるプロセスは、液体炭化水素中の有機塩化物化合物を分離することができ、吸着剤に接触させる前の有機塩化物化合物の濃度は2~200ppmの範囲である。より少量の有機塩化物化合物を有する液体炭化水素を与える吸収剤に接触させた後、有機塩化物化合物の濃度は0.2ppmより低い。
【0033】
本発明の一態様において、有機塩化物化合物を含有する上記液体炭化水素を吸着剤に接触させる段階は、バッチまたは連続的な形態で操作されてもよく、吸着剤は固定床式システム、移動床式システム、または流動床式システムにおいて使用されてもよく、逐次もしくは並行して連続的に使用されてもよい。
【0034】
以下の実施例は、本発明の実施形態を示すためのものであり、いかなる形でも本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0035】
有機塩化物化合物の液体炭化水素からの分離効率に対する吸着剤の効果を検討するために、いかなる形でも本発明の範囲を限定するいかなる目的もなしに、トルエン中の1-クロロヘキサンを、液体炭化水素中の有機塩化物化合物の例として使用した。
吸着剤の調製
シリカとアルミノケイ酸塩の複合体の調製
【0036】
ケイ酸ナトリウム溶液、または加熱されるとケイ素の酸化物および水酸化アルミニウムを与える溶液、または加熱されるとアルミニウムの酸化物を与える溶液を約30~70℃の温度の水に混合することによって、浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体の調製のステップを行った。ケイ素のアルミニウムに対する種々の比を表1に示す。次いで、pHを5.5~8.5に調整し、混合物をさらに1時間以上撹拌した。その後、pHを9~11に調整し、混合物をさらに3~24時間撹拌した。得られたゲルを洗浄し、約100~120℃の温度で乾燥し、約500~700℃の温度でか焼した。
ナトリウム(Na)浸出を用いた処理
【0037】
上述の方法から調製された約1gのシリカとアルミノケイ酸塩の複合体を、約200mLのイオン交換水に溶解し、約80℃の温度で約30分間撹拌した。これを上述のとおりに繰返して所望のナトリウム含有量を得た。次いで、混合物を遠心分離した。得られた固体を約100℃の温度で約12時間乾燥した。その後、残存有機物質を、大気環境下、約630℃の温度で約3時間、か焼によって除去した。
高い電気陰性度を有する金属を用いた処理
【0038】
浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体、または上述の方法から調製したNa浸出で処理したシリカとアルミノケイ酸塩の複合体を、硝酸亜鉛、塩化物、または酢酸塩から選択される金属塩溶液を使用した含浸法によって、表1に示す種々のサンプルの重量パーセントで指定される量で高い電気陰性度を有する金属(この場合、亜鉛)を用いた表面特性の改変に供した。次いで、混合物を約100℃の温度で約12時間乾燥した。その後、有機物質を除去するために、混合物を、約400~550℃の温度で約2~4時間、高温でか焼した。
【0039】
上述の方法から得られた吸着剤を、N-物理吸着手法によって分析して表面積および細孔サイズを決定した。結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
吸着剤に関する吸着効率の試験
【0040】
使用する前に、吸着剤を約110℃の温度でオーブンで乾燥して水分を除去した。次いで、2~200ppmの範囲の濃度の1-クロロヘキサンを有する1-クロロヘキサンを含有するトルエンを使用して、約1gの吸着剤に約2時間接触させた。液相を分析して、残存する1-クロロヘキサンを、電子捕獲型検出器(ECD)を備えたガスクロマトグラフィによって決定した。次いで、得られた結果を算出のために使用して、以下の方程式から吸着効率および吸着された1-クロロヘキサンの量を決定した。結果を表3に示す。
【0041】
【数1】
【0042】
【数2】
【表3】
【0043】
各吸着剤に関する吸着の等温線として示される吸着能力を使用して、ラングミュア等温式によって最大吸着量を算出した。結果を表4に示す。
【表4】
【0044】
上述のすべてから、本発明の目的において述べられたように、本発明による吸着剤は、有機塩化物化合物を液体炭化水素から効果的に分離することができると言うことができる。
本発明の最良の様式または好ましい実施形態
【0045】
本発明の最良の様式または好ましい実施形態は、本発明の説明において提供されているとおりである。
【0046】
[項目1]
有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するための吸着剤であって、高い電気陰性度を有する金属を少量用いて表面特性が改変された浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体である、吸着剤。
【0047】
[項目2]
上記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、2~15nmの範囲の小さい細孔および40~100nmの範囲の大きい細孔を含み、上記小さい細孔の上記大きい細孔に対する比は0~1である、項目1に記載の吸着剤。
【0048】
[項目3]
上記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を1~20の範囲で有する、項目1に記載の吸着剤。
【0049】
[項目4]
上記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を2~10の範囲で有する、項目3に記載の吸着剤。
【0050】
[項目5]
上記高い電気陰性度を有する金属は、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、およびマグネシウム(Mg)から選択される、項目1に記載の吸着剤。
[項目6]
上記高い電気陰性度を有する金属は亜鉛である、項目5に記載の吸着剤。
【0051】
[項目7]
上記高い電気陰性度を有する金属を0.1~10重量%の範囲で含む、項目1、5、または6のいずれか一項に記載の吸着剤。
【0052】
[項目8]
上記高い電気陰性度を有する金属を0.5~5重量%の範囲で含む、項目7に記載の吸着剤。
【0053】
[項目9]
ナトリウム金属を7~15重量%の範囲で含む、項目1に記載の吸着剤。
【0054】
[項目10]
有機塩化物化合物を液体炭化水素から分離するためのプロセスであって、上記有機塩化物化合物を吸着させるために、上記有機塩化物化合物と混合された上記液体炭化水素を吸着剤に接触させ、より少量の上記有機塩化物化合物を有する上記液体炭化水素を得るステップを含み、上記吸着剤は、高い電気陰性度を有する金属を少量用いて表面特性が改変された浸透構造を有するシリカとアルミノケイ酸塩の複合体である、プロセス。
【0055】
[項目11]
上記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、2~15nmの範囲の小さい細孔および40~100nmの範囲の大きい細孔を含み、上記小さい細孔の上記大きい細孔に対する比は0~1である、項目10に記載のプロセス。
【0056】
[項目12]
上記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を1~20の範囲で有する、項目10に記載のプロセス。
【0057】
[項目13]
上記シリカとアルミノケイ酸塩の複合体は、ケイ素のアルミニウムに対する比を2~10の範囲で有する、項目12に記載のプロセス。
【0058】
[項目14]
上記高い電気陰性度を有する金属は、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、およびマグネシウム(Mg)から選択される、項目10に記載のプロセス。
[項目15]
上記高い電気陰性度を有する金属は亜鉛である、項目14に記載のプロセス。
【0059】
[項目16]
上記吸着剤は、上記高い電気陰性度を有する金属を0.1~10重量%の範囲で含む、項目10に記載のプロセス。
【0060】
[項目17]
上記吸着剤は、上記高い電気陰性度を有する金属を0.5~5重量%の範囲で含む、項目16に記載のプロセス。
【0061】
[項目18]
上記吸着剤は、ナトリウム金属を7~15重量%の範囲で含む、項目10に記載のプロセス。
【0062】
[項目19]
上記有機塩化物化合物は、塩化アルキル、塩化アリル、またはそれらの混合物から選択される、項目10に記載のプロセス。
【0063】
[項目20]上記有機塩化物化合物は、1-クロロヘキサン、1-クロロ-2-メチルブタン、1-クロロペンタン、またはそれらの混合物から選択される、項目19に記載のプロセス。
[項目21]上記有機塩化物化合物は1-クロロヘキサンである、項目20に記載のプロセス。
【0064】
[項目22]
上記液体炭化水素は、50~210℃の範囲で沸点を有する炭化水素である、項目10に記載のプロセス。
【0065】
[項目23]
上記液体炭化水素は、トルエン、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族、またはそれらの混合物から選択される、項目22に記載のプロセス。
【0066】
[項目24]
30~50℃の温度および大気圧~10バールの圧力で操作される、項目10~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【0067】
[項目25]
より少量の有機塩化物化合物を有する上記液体炭化水素は、0.2ppmより低い有機塩化物化合物を有する、項目10に記載のプロセス。
【国際調査報告】