(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(54)【発明の名称】がん、炎症または免疫介在性炎症性疾患の防止および処置のためのカンナビノイドおよび医療用マッシュルームの固定した用量の組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20220621BHJP
A61K 36/068 20060101ALI20220621BHJP
A61K 36/07 20060101ALI20220621BHJP
A61K 36/074 20060101ALI20220621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220621BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20220621BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220621BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220621BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220621BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220621BHJP
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A61P 25/02 20060101ALI20220621BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220621BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220621BHJP
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A61P 13/12 20060101ALI20220621BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20220621BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220621BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220621BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220621BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220621BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220621BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220621BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220621BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220621BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20220621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220621BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220621BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220621BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K36/068
A61K36/07
A61K36/074
A61P35/00
A61P37/00
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A61P11/06
A61P11/00
A61P17/06
A61P29/00 101
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A61P7/06
A61P25/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P21/00
A61P17/10
A61P17/00
A61P19/08
A61P37/02
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A61P37/06
A61P31/04
A61P31/14
A61P21/04
A61P35/02
A61P5/14
A61P43/00 105
A61K45/00
A61K31/352
A61K31/05
A61K31/192
A61K31/7028
A61K9/72
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/19
A61K9/14
A61K9/10
A61K9/16
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/70 401
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021559480
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 IL2020050337
(87)【国際公開番号】W WO2020188577
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521437987
【氏名又は名称】アルビト・エルシーエス・ファーマ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ラメンスドルフ,イツァク
(72)【発明者】
【氏名】レビー,ヨナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA07
4C076AA09
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4C206ZC06
(57)【要約】
哺乳類対象における免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置することするのに有用な組成物が開示される。組成物は、大麻由来の化合物および医薬用マッシュルームの相乗的な組合せを含む。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類対象において免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置するのに有用な組成物およびそれらのあらゆる組合せであって、前記組成物は、
a.大麻由来の化合物および
b.医薬用マッシュルーム
の相乗的な組合せを含む、上記組成物。
【請求項2】
免疫介在性炎症性疾患またはがんを相乗的に処置するのに有用な相乗的な組成物およびそれらのあらゆる組合せであって、前記組成物は、
c.CB1またはCBD受容体にアゴニスト作用を有する大麻由来の化合物およびそれらのあらゆる組合せ;
d.パターン認識受容体(PRR)にアゴニスト作用を有する医薬用マッシュルーム
を含み、
前記大麻由来の化合物は、治療的に抗炎症性であり、前記医薬用マッシュルームは、哺乳類対象において免疫刺激性である、上記組成物。
【請求項3】
前記免疫介在性炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);乾癬、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー;巨細胞動脈炎;GN、糸球体腎炎;若年性特発性関節炎、リウマチ性多発性筋痛;SAPHO、滑膜炎、座瘡、膿疱症、骨増殖症、骨炎、全身性エリテマトーデス;血栓性/特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン病、クローン病、多発性筋炎/皮膚筋炎、ヴェグナー肉芽腫症、ヴェグナー血管炎、乾癬、ベーチェット病、多発動脈炎、高安動脈炎、移植片対宿主病、多発動脈炎、サルコイドーシス、成人発症スチル病、化膿性汗腺炎、クリオグロブリン血症性血管炎、壊疽性膿皮症、川崎病、再発性多発性軟骨炎、抗リン脂質抗体症候群、クリオグロブリン血症性血管炎、化膿性汗腺炎、特発性膜性、再発性多発性軟骨炎、セリアック病、慢性C型肝炎、重症筋無力症、骨髄異形成症候群、天疱瘡、難治性喘息、グレーブス病、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、SAPHO症候群、多中心性網組織球症、B型慢性肝炎、アミロイドーシス、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記パターン認識受容体(PRR)が、Toll様受容体(TLR)、マンノース受容体、デクチン1およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記医薬用マッシュルームが、冬虫夏草、舞茸(グリフォラ・フロンドサ)、ターキーテイル(トラメテス・ベルシコロル、コリオルス・ベルシコロル)、霊芝(ガノデルマ・ルシダム)、チャーガ(イノノタス・オブリクス)、椎茸(レンティナス・エドデス)、アガリクス・ブラゼイ・ムリル、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記大麻由来の化合物が、カンナビノイド、テルペン、フェノール化合物およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
カンナビノイドが、テトラヒドロカンナビノイド(d9-THC)、テトラヒドロカンナビノイド(d8-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA-d9)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV/THC-C3)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール酸(CBNA)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、およびそれらのあらゆる組合せの少なくとも1つである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
テルペンが、モノテルペンまたはセスキテルペンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
フェノール化合物が、O-グリコシド型のカンナフラビンA、カンナフラビンB、カンナビシンD、およびそれらのあらゆる組合せの少なくとも1つである、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
吸入器、シガレット、錠剤、カプセル剤、丸剤、凍結乾燥剤、粉剤、乳剤、顆粒剤、クリーム剤、軟膏剤、ペースト剤、ローションゲル、液剤、溶液剤、パッチおよびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される方式で投与可能なように構成される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
即時放出、遅延放出、持続放出、制御放出およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される方式で投与可能なように構成される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項12】
可溶化剤、安定剤、緩衝液、張度調節物質、増量剤、粘度増強剤/低下剤、界面活性剤、キレート剤、アジュバントおよびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される成分をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項13】
免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置する方法およびそれらのあらゆる組合せであって、
c.組成物を提供する工程であって、前記組成物は、a.大麻由来の化合物およびb.医薬用マッシュルームの相乗的な組合せを含む、工程;および
d.前記組成物を哺乳類対象に投与する工程
を含む、上記方法。
【請求項14】
免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置する方法およびそれらのあらゆる組合せであって、
e.CB1またはCBD受容体にアゴニスト作用を有する大麻由来の化合物およびそれらのあらゆる組合せ、ならびにパターン認識受容体(PRR)にアゴニスト作用を有する医薬用マッシュルームを含む組成物を提供する工程;および
f.前記組成物を哺乳類対象に投与する工程
を含み、前記大麻由来の化合物は、治療的に抗炎症性であり、前記医薬用マッシュルームは、前記哺乳類対象において免疫刺激性である、上記方法。
【請求項15】
哺乳類対象において免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置するのに有用な組成物およびそれらのあらゆる組合せであって、
c.パターン認識受容体(PRR)にアゴニスト作用を有する少なくとも1つの医薬用マッシュルーム;および
d.少なくとも第2の医薬用マッシュルーム
を含む、上記組成物。
【請求項16】
前記免疫介在性炎症性疾患を処置するのに有用な組成物が、冬虫夏草Mマッシュルーム抽出物およびTHCを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項17】
前記免疫介在性炎症性疾患を処置することが、酸化窒素分泌の阻害を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記免疫介在性炎症性疾患を処置するのに有用な組成物が、霊芝マッシュルーム抽出物およびTHCを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項19】
前記免疫介在性炎症性疾患を処置することが、IL-6分泌を減少させることからなる、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記免疫介在性炎症性疾患を処置するのに有用な組成物が、冬虫夏草Cs-4マッシュルーム抽出物THCを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項21】
前記免疫介在性炎症性疾患を処置することが、TNFα分泌を減少させることからなる、請求項15に記載の組成物。
【請求項22】
前記免疫介在性がんを処置することが、CBD、ならびに冬虫夏草(M)マッシュルーム抽出物および霊芝マッシュルーム抽出物からなる群から選択されるマッシュルーム抽出物を含む組成物によって提供される、請求項1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、がん、炎症または免疫介在性炎症性疾患の新規の処置のための手段および方法に関する。
より詳細には、本発明は、がん、炎症または免疫介在性炎症性疾患の防止および処置のための、カンナビノイドおよび医療用マッシュルームの相乗的な相互作用および固定した用量の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
カンナビノイド(CBD、THCなど)は、公知の抗がん活性を有する有力な抗炎症剤であることがわかっているが、これらの化合物は、免疫介在性プロセスを弱めたり、抑制したり、または減少させる可能性があることも見出された。免疫介在性プロセスを減少させることは、一部の臨床的な徴候において正の影響を有する場合もあるが、免疫刺激および抗炎症性作用が必要なプロセス(例えばがん)に負の影響を及ぼす可能性もある。
【0003】
さらに、がんの処置に使用されるほとんどの化学療法剤は、腫瘍を破壊し、がんの進行を止め、加えて処置の経過中に健康な細胞および組織にダメージを与える可能性があり、さらに、がん免疫性への負の作用が、それらの有益な抗腫瘍作用を部分的に減らす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、抗がん処置として、さらに、他の免疫介在性炎症性疾患(IMID)のための処置として役立つ新しいより有効でより安全な薬剤への未だ満たされていない必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
抗がん処置として、さらに、他の免疫介在性炎症性疾患(IMID)のための処置として役立つ新しいより有効でより安全な薬剤への未だ満たされていない必要性があり、この場合、抗炎症性およびプロ免疫性の、主としてプロTh1タイプまたは関連する細胞作用(NK細胞刺激)の組合せが有益であるとみなすことができる。
【0006】
カンナビノイドは抗炎症性作用を有し、免疫性を抑制するが、医療用マッシュルームは、免疫性を刺激し、一方である程度の抗炎症性作用を有することがわかっており、したがって、特定の条件下で、それらの組合せは、特定の比率で、独特な予想外の範囲の相乗的な抗炎症性活性、加えて選択的なプロ免疫特性を有すると予想される。
【0007】
本発明の1つの目的は、哺乳類対象において免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置するのに有用な組成物およびそれらのあらゆる組合せであって、前記組成物は、a.大麻由来の化合物およびb.医薬用マッシュルームの相乗的な組合せを含む、上記組成物を開示することである。
【0008】
本発明の別の目的は、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
本発明の1つの目的は、免疫介在性炎症性疾患またはがんを相乗的に処置するのに有用な相乗的な組成物およびそれらのあらゆる組合せであって、前記組成物は、
a.CB1またはCBD受容体にアゴニスト作用を有する大麻由来の化合物およびそれらのあらゆる組合せ;
b.パターン認識受容体(PRR)にアゴニスト作用を有する医薬用マッシュルーム
を含み、
前記大麻由来の化合物は、治療的に抗炎症性であり、前記医薬用マッシュルームは、哺乳類対象において免疫刺激性である、上記組成物を開示することである。
【0009】
本発明の別の目的は、前記免疫介在性炎症性疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);乾癬、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー;巨細胞動脈炎;GN、糸球体腎炎;若年性特発性関節炎、リウマチ性多発性筋痛;SAPHO、滑膜炎、座瘡、膿疱症、骨増殖症、骨炎、全身性エリテマトーデス;血栓性/特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン病、クローン病、多発性筋炎/皮膚筋炎、ヴェグナー肉芽腫症、ヴェグナー血管炎(Wegener’s vasculitis)、乾癬、ベーチェット病、多発動脈炎、高安動脈炎、移植片対宿主病、多発動脈炎、サルコイドーシス、成人発症スチル病、化膿性汗腺炎(Hydradenitis supprativa)、クリオグロブリン血症性血管炎(Cryoglobulinaemic vasculitis)、壊疽性膿皮症、川崎病、再発性多発性軟骨炎、抗リン脂質抗体症候群、クリオグロブリン血症性血管炎、化膿性汗腺炎、特発性膜性、再発性多発性軟骨炎、セリアック病、慢性C型肝炎、重症筋無力症、骨髄異形成症候群、天疱瘡、難治性喘息、グレーブス病、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、SAPHO症候群、多中心性網組織球症、B型慢性肝炎、アミロイドーシス、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0010】
本発明の別の目的は、前記パターン認識受容体(PRR)が、Toll様受容体(TLR)、マンノース受容体、デクチン1およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0011】
本発明の別の目的は、前記医薬用マッシュルームが、冬虫夏草、舞茸(グリフォラ・フロンドサ(Grifola frondosa))、ターキーテイル(トラメテス・ベルシコロル(Trametes versicolor)、コリオルス・ベルシコロル(Coriolus versicolor))、霊芝(ガノデルマ・ルシダム(Ganoderma lucidum))、チャーガ(Chaga)(イノノタス・オブリクス(Inonotus obliquus))、椎茸(レンティナス・エドデス(Lentinus edodes))、アガリクス(アガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus Blazei Murill))、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0012】
本発明の別の目的は、前記大麻由来の化合物が、カンナビノイド、テルペン、フェノール化合物およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0013】
本発明の別の目的は、カンナビノイドが、テトラヒドロカンナビノイド(d9-THC)、テトラヒドロカンナビノイド(d8-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA-d9)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV/THC-C3)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール酸(CBNA)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA)、およびそれらのあらゆる組合せの少なくとも1つである、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0014】
本発明の別の目的は、テルペンが、モノテルペンまたはセスキテルペンである、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
本発明の別の目的は、フェノール化合物が、O-グリコシド型のカンナフラビン(Cannaflavin)A、カンナフラビンB、カンナビシン(Canabisin)D、およびそれらのあらゆる組合せの少なくとも1つである、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0015】
本発明の別の目的は、前記組成物が、吸入器、シガレット、錠剤、カプセル剤、丸剤、凍結乾燥剤、粉剤、乳剤、顆粒剤、クリーム剤、軟膏剤、ペースト剤、ローションゲル、液剤、溶液剤、パッチおよびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される方式で投与可能なように構成される、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0016】
本発明の別の目的は、前記組成物が、即時放出、遅延放出、持続放出、制御放出およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される方式で投与可能なように構成される、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0017】
本発明の別の目的は、前記組成物が、可溶化剤、安定剤、緩衝液、張度調節物質、増量剤、粘度増強剤/低下剤、界面活性剤、キレート剤、アジュバントおよびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される成分をさらに含む、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0018】
本発明の1つの目的は、免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置する方法およびそれらのあらゆる組合せであって、
a.組成物を提供する工程であって、前記組成物は、a.大麻由来の化合物およびb.医薬用マッシュルームの相乗的な組合せを含む、工程;および
b.前記組成物を哺乳類対象に投与する工程
を含む、上記方法を開示することである。
【0019】
本発明の1つの目的は、免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置する方法およびそれらのあらゆる組合せであって、
a.CB1またはCBD受容体にアゴニスト作用を有する大麻由来の化合物およびそれらのあらゆる組合せ、ならびにパターン認識受容体(PRR)にアゴニスト作用を有する医薬用マッシュルームを含む組成物を提供する工程;および
b.前記組成物を哺乳類対象に投与する工程
を含み、
前記大麻由来の化合物は、治療的に抗炎症性であり、前記医薬用マッシュルームは、前記哺乳類対象において免疫刺激性である、上記方法を開示することである。
【0020】
本発明の1つの目的は、哺乳類対象において免疫介在性炎症性疾患またはがんを処置するのに有用な組成物およびそれらのあらゆる組合せであって、前記組成物は、
a.パターン認識受容体(PRR)にアゴニスト作用を有する少なくとも1つの医薬用マッシュルーム;および
b.少なくとも第2の医薬用マッシュルーム
を含む、上記組成物を開示することである。
【0021】
本発明の別の目的は、前記免疫介在性炎症性疾患を処置するのに有用な組成物が、冬虫夏草Mマッシュルーム(Cordyceps M mushroom)抽出物およびTHCを含む、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0022】
本発明の別の目的は、前記免疫介在性炎症性疾患を処置することが、酸化窒素分泌の阻害を含む、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
本発明の別の目的は、前記免疫介在性炎症性疾患を処置するのに有用な組成物が、霊芝マッシュルーム抽出物およびTHCを含む、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0023】
本発明の別の目的は、前記免疫介在性炎症性疾患を処置することが、IL-6分泌を減少させることからなる、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
本発明の別の目的は、前記免疫介在性炎症性疾患を処置するのに有用な組成物が、冬虫夏草Cs-4マッシュルーム抽出物THCを含む、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【0024】
本発明の別の目的は、前記免疫介在性炎症性疾患を処置することが、TNFα分泌を減少させることからなる、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
本発明の別の目的は、前記免疫介在性がんを処置することが、CBD、ならびに冬虫夏草(M)マッシュルーム抽出物および霊芝マッシュルーム抽出物からなる群から選択されるマッシュルーム抽出物を含む組成物によって提供される、上記のいずれかで定義した通りの組成物を開示することである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】酸化窒素の標準参照曲線のためのプレート構成を示す。
【
図2A】冬虫夏草Cs-4(A)およびアガリクス・ブラゼイ(Agaricus Blazei)(B)を、5000個のPANC-1細胞と共に2時間、6時間、24時間、および72時間インキュベートした。XTT試薬キットを使用して生存率を測定した。
【
図3A】冬虫夏草Cs-4(A)、冬虫夏草M(B)、霊芝(C)、およびアガリクス・ブラゼイ(Agaricus Balzei)(D)、ターキーテイルRM(E)、椎茸(F)、ターキーテイルMS(G)、チャーガ(H)、および舞茸(I)を、10
5個のRAW細胞と共に24時間インキュベートした。上清中の分泌は、グリース(Greiss)試薬キットを使用して測定されなかった。
【
図4A】冬虫夏草Cs-4(A)、冬虫夏草M(B)、霊芝(C)、およびアガリクス・ブラゼイ(D)を、10
5個のRAW細胞と共に、CBDまたはTHC有りおよび無しで、24時間インキュベートした。上清中のIL-6およびTNFaを、マルチプレックス(Multiplex)によって測定した。
【
図5A】CBD(A)およびTHC(B)を、10
5個のRAW細胞と共に24時間インキュベートした。上清中の分泌は、グリース試薬キットを使用して測定されなかった。
【
図6A】霊芝(A+B)、アガリクス・ブラゼイ(C+D)、冬虫夏草Cs-4(E+F)、および冬虫夏草M(G+H)を、10
5個のRAW細胞と共に、DMSO、CBDまたはTHCと24時間合わせた。上清中の分泌は、グリース試薬キットを使用して測定されなかった。
【
図7A】霊芝、冬虫夏草M、アガリクス・ブラゼイ、冬虫夏草Cs-4、ターキーテイル(MS)(A)、チャーガ、舞茸、ターキーテイル(RM)および椎茸(B)を、7500個のPANC-1細胞と共に72時間インキュベートした。生存率を、XTT試薬キットを使用して測定した。
【
図8A】霊芝、冬虫夏草M、アガリクス・ブラゼイ、冬虫夏草Cs-4、ターキーテイル(MS)(A)、チャーガ、舞茸、ターキーテイル(RM)および椎茸(B)を、5000個のEGL-1細胞と共に72時間インキュベートした。生存率を、XTT試薬キットを使用して測定した。
【
図9A】CBDおよびTHCを、7500個のPANC-1(A)および5000個のEGL-1(B)細胞と共に72時間インキュベートした。生存率を、XTT試薬キットを使用して測定した。
【
図10A】霊芝(A)、冬虫夏草M(B)、冬虫夏草Cs-4(C)、およびターキーテイル(D)を、5000個のPANC-1細胞と共に、DMSO、CBDまたはTHCと72時間合わせた。生存率を、XTT試薬キットを使用して測定した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好ましい実施態様の詳細な説明
以下の説明は、本発明の全ての章にわたり、全ての当業者が前記発明を利用できるように提供され、この発明を実行する本発明者によって予期される最良の形態を記載する。しかしながら、本発明の全体的な原理は、これらの医学的状態の防止および処置のためのカンナビノイドおよび医療用マッシュルームの相互作用および固定した用量の組合せによって、がん、炎症または免疫介在性炎症性疾患および医学的状態の新規の処置のための手段および方法を提供するように具体的に定義されているため、様々な改変は、当業者にとって明白なままであるように適合される。
【0027】
本発明は、カンナビノイドを治療用マッシュルームと相乗的に組み合わせた組成物によって、がん、炎症または免疫介在性炎症性疾患を処置するための手段および方法を開示する。
【0028】
本発明は、抗炎症性作用と免疫刺激性作用との組み合わされた作用を発揮し、それによって免疫介在性プロセスを抑制したりまたは減少させたりすることなく抗炎症または抗がん薬として作用する組成物を開示する。さらに、本発明によって開示された組成物は天然産物由来であり、それゆえに、がん、炎症または免疫介在性炎症性疾患の発生および発症を抑制するための、より有効でより安全な薬剤の開発において重要な役割を果たし得る。
【0029】
具体的には、本発明は、カンナビノイドと治療用マッシュルームとの相乗的な組合せを開示する。カンナビノイド(CBD、THCなど)は、抗がん活性を有することがわかっている有力な抗炎症剤であり、これはまた免疫介在性プロセスを弱めたり、抑制したり、または減少させたりもする。免疫介在性プロセスを減少させることは、免疫刺激および抗炎症性作用が必要なプロセス(例えばがん)に負の影響を及ぼす可能性がある。
【0030】
治療用マッシュルームは、主としてTH1、NKおよびマクロファージの極性化に影響を及ぼす免疫促進物質として公知である。これらの特性は、一部の免疫炎症プロセスにおいて、それらの公知の主張されている抗がんおよび調節作用に起因する可能性がある。
【0031】
医薬用マッシュルームによる免疫促進は、一般的に自然免疫を介して起こり、典型的には食細胞によって媒介される。これらの細胞は、侵入する病原体を摂取するか、または病原体の成分と相互作用し、いずれのケースにおいてもサイトカインおよびケモカインの分泌を介して自然免疫と適応免疫をさらに刺激する。細胞表面上のパターン認識受容体(PRR)、例えばToll様受容体(TLR)、マンノース受容体およびデクチン1は、微生物において保存された分子パターンを認識することによって応答を開始させる。マッシュルーム由来の免疫調節物質への関心がますます高まっている。例えばレンチナンは、日本でがんを有する患者の処置に広く使用されている。
【0032】
主として担子菌属由来(一部は由来の子嚢菌類由来)の真菌性生物活性多糖および医薬用マッシュルームが周知であり、はるか遠くのアジアで従来の食物や薬の一部として広く使用されており、この10年間、その医薬特性の理解と天然に生産された医薬品における利用のために懸命な調査の中心であり続けている。実際に、これらのバイオポリマー(主としてb-グルカンまたはヘテロ多糖)の一部は、すでに抗腫瘍薬、免疫促進薬または予防薬物として市販されている。これらのバイオポリマーの多くは食用マッシュルームによって生産されるという事実がさらに、これらのバイオポリマーは、それらの免疫調節、抗がん、抗微生物性、コレステロール低下、血糖低下および健康促進特性を利用するための、いかなる重篤な安全性の懸念もない新規の機能性食品および栄養補助食品の配合のための非常に優れた候補となっている。
【0033】
カンナビノイドを治療用マッシュルームと組み合わせることにより、免疫介在性炎症性疾患(IMID)および医学的状態ならびにがんなどの臨床症状に固有で有力な作用を有する新規の一連の組成が明らかになる。
【0034】
治療用マッシュルームはまた、組み合わされて、免疫介在性炎症性疾患(IMID)および医学的状態ならびにがんなどの臨床症状への治療作用を有する組成を明らかにする。
免疫介在性炎症性疾患(IMID)という用語は、本明細書の以下で使用される場合、表面上関連しないようであるが共通の炎症性経路を有する状態の群を集合的に述べるために使用される概念である。
【0035】
免疫介在性炎症性疾患(IMID)としては、これらに限定されないが、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);乾癬、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー;巨細胞動脈炎;GN、糸球体腎炎;若年性特発性関節炎、リウマチ性多発性筋痛;SAPHO、滑膜炎、座瘡、膿疱症、骨増殖症、骨炎、全身性エリテマトーデス;血栓性/特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン病、クローン病、多発性筋炎/皮膚筋炎、ヴェグナー肉芽腫症、ヴェグナー血管炎、乾癬、ベーチェット病、多発動脈炎、高安動脈炎、移植片対宿主病、多発動脈炎、サルコイドーシス、成人発症スチル病、化膿性汗腺炎、クリオグロブリン血症性血管炎、壊疽性膿皮症、川崎病、再発性多発性軟骨炎、抗リン脂質抗体症候群、クリオグロブリン血症性血管炎、化膿性汗腺炎、特発性膜性、再発性多発性軟骨炎、セリアック病、慢性C型肝炎、重症筋無力症、骨髄異形成症候群、天疱瘡、難治性喘息、グレーブス病、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、SAPHO症候群、多中心性網組織球症、B型慢性肝炎、アミロイドーシス、およびそれらのあらゆる組合せが挙げられる。
【0036】
用語「大麻由来の化合物」は、本明細書の以下で使用される場合、以降、カンナビノイド、テルペンおよびフェノール化合物を含む大麻植物に見出される化合物を指す。用語「カンナビノイド」は、本明細書の以下で使用される場合、以降、脳中の神経伝達物質放出を変更する細胞においてカンナビノイド受容体のリガンドである多様な化学物質のクラスを指す。カンナビノイドは、主として、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)植物からのマリファナ(大麻の花)およびハシシュ(圧縮大麻樹脂)で発見された。この植物は、80種を超える植物性カンナビノイドを含有する。マリファナの主要な活性成分は、精神賦活性のΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)であり、これは、部分アゴニストとしてカンナビノイド1(CB1)およびカンナビノイド2(CB2)受容体で作用する。マリファナ中に存在する他の重要な天然カンナビノイドは、非精神賦活性のカンナビジオール(CBD)、Δ9-テトラヒドロカンナビバリン(Δ9-THCV)およびカンナビクロメン(CBC)[1-3]である。それらのなかでもCBDが、これまで最大の関心が寄せられている。これは、CB1/CB2受容体アゴニストの作用に拮抗してΔ9-THCの向精神性および他の負の作用を中和することが示されており、これはCB1およびCB2受容体のインバースアゴニストとしての挙動を示すことを数々のデータが示唆している。これらの植物由来カンナビノイドの一部は、医療行為で使用され、例えばΔ9-THC(ドロナビノール)およびその合成アナログ、化学療法によって誘発された吐き気や嘔吐に対するナビロンであり、また食欲刺激薬としても使用される(例えばAIDS患者において)。Δ9-THCと組み合わされたCBD(ナビキシモルス)は、多発性硬化症における神経因性疼痛および痙直を緩和するために使用され、さらに、進行がんの疼痛における補助的な鎮痛処置として使用されている。
【0037】
用語「テルペン」は、本明細書の以下で使用される場合、様々な植物によって生産される有機化合物の大きい多様なクラスを指す。テルペンは、分子式C5H8を有するイソプレン単位から生合成的に誘導される。テルペンの基礎の分子式は、それが多重化したもの、すなわち(C5H8)nであり、式中、nは、連結されたイソプレン単位の数である。テルペンは、大麻にその芳香の多様性を付与する芳香性の油である。
【0038】
カンナビジオール(CBD)という用語は、本明細書の以下で使用される場合、様々な障害のための処置として近年ますます注目を集めている薬理学的に広範な薬物であるカンナビス・サティバ成分を指す。
【0039】
大麻由来化合物は、
カンナビノイド類:テトラヒドロカンナビノイド(d9-THC)、テトラヒドロカンナビノイド(d8-THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA-d9)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV/THC-C3)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール酸(CBNA)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCA);
テルペン類:モノテルペンおよびセスキテルペン;ならびに
フェノール化合物:O-グリコシド型のカンナフラビンA、カンナフラビンB、カンナビシンD
を含む。
【0040】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、既定の量または測定値または値の±25%を意味する。
用語「治療用マッシュルーム」または「医薬用マッシュルーム」は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、冬虫夏草、舞茸(グリフォラ・フロンドサ)、ターキーテイル(トラメテス・ベルシコロル、コリオルス・ベルシコロル)、チャーガ(イノノタス・オブリクス)、霊芝(ガノデルマ・ルシダム)、椎茸(レンティナス・エドデス)、アガリクス・ブラゼイ・ムリルおよびそれらのあらゆる組合せから選択されるマッシュルームを含む。
【0041】
冬虫夏草
背景:冬虫夏草は、ヒポクレア目のバッカクキン科属のなかでも最も多様な属である。すでに報告された400をこえる種のなかでも、最も多く記録されている種は、コルディセプス・シネンシス(Cordyceps sinensis)である。
【0042】
コルディセプス・シネンシス(C.sinensis)は、中国の医療に用いられる医薬用マッシュルームである。これは、3600mを超えるヒマラヤの山頂で天然に見出される。加えて、C.シネンシスは、商業的な成長のために、培養された菌糸体の抽出物から生産することができる。C.シネンシスは、中国薬局方では1964年から薬物として分類されている。
【0043】
従来の薬における使用:従来の東洋医学において、C.シネンシスは、疲労、食欲不振、腎臓の機能不全、結核、慢性気管支炎、男性のインポテンス、および性欲減退症(Chen PXら、2017)、心臓血管、免疫、内分泌腺、および神経系に関する健康状態を処置することに使用されてきた(Zhu JSら、1998)。
【0044】
加えてC.シネンシスは、免疫調節、抗がん、抗老化、抗酸化、および抗炎症活性を有することが報告されている(Tuli HSら、2014;Shashidhar MGら、2013;Nie Sら、2013)。
【0045】
抽出方法:C.シネンシスの様々な化合物は、水、メタノール、エタノール、トリプシン、MeOHおよびEtOAcなどの様々な媒体を使用することによって抽出することができる(Chen PXら、2013)。
【0046】
生物学的に活性な化合物
C.シネンシスの活性化合物としては、これらに限定されないが、以下のグループ:ヌクレオシド(コルディセピンおよびアデノシン)、多糖(C.シネンシスから単離された水溶性多糖(CPS1)、C.シネンシスから単離された水溶性多糖(CPS2)、および培養されたC.シネンシスから単離された酸多糖(APC)、ペプチド(シクロジペプチドおよびコルディミン(Cordymin))ならびにステロール(エルゴステロールおよびシトステロール)が挙げられる。
【0047】
前臨床研究:抗酸化剤などのC.シネンシス抽出物を多数の指標のための様々な前臨床研究に使用したところ(Vasiljevic JDら、2016;Wang J1ら、2012;Ji, D.-Bら、2009)、移植後動脈硬化の形成が低下し(Zhang,Yら、2011)、抗腫瘍性がみられた(Chen, Yら、2009)。
【0048】
薬理活性-炎症およびがん:多数の研究が、C.シネンシス(C.sinesis)の活性化合物は抗炎症性および抗がん特性を有することを示す。主要な薬理活性は、TNF-αおよびICAM-1などの炎症促進性サイトカインの弱化、加えてPCNA発現の低減(Zhangら、2011)、IL-2およびTGF-β分泌の阻害、ならびにIL-4分泌の強化(Jeongら、2002)によって媒介される。またCOX-2およびNFκBの阻害も示された(Wang J1ら、2012b)。
【0049】
【0050】
舞茸(グリフォラ・フロンドサ)
背景:グリフォラ・フロンドサは、暗い灰色がかった茶色の真菌であり、そのほとんどは、死んだ、死にかけた、または熟成した硬材、例えばオーク、ニレ、カエデ、ヌマミズキ、ブナノキ、およびクリなどの木の幹の切り株の根本またはその付近の地面に見出される。G.フロンドサは、主として日本の北部の領域、欧州諸国およびアメリカの北東の州に分布しており(Global Biodiversity Information Facility、www.gbif.or、2017)、さらに、亜熱帯地方の温帯気候の高地でも見出される場合がある(S.H. Hanら、1995)。これは、世界中で、舞茸/クモタケ(日本)、グレイツリーフラワー(gray tree flower)(中国)、シグノリナ(signorina)マッシュルーム(イタリア)および「ヘンオブザウッズ(hen of the woods)」(北アメリカ)などの様々な名称によって周知である。
【0051】
従来の薬での使用:G.フロンドサは、従来の中国および日本の「薬草研究」において医薬用マッシュルームとして重用されている。これは、脾臓(Chinese Herbalism Editorial Board、Zhonghua Bencao、Shanghai Science and Technology Press、Shanghai、1999、548~549頁)、胃、および肝臓(C. Zhouら、2013)を保護するとして様々な適応症で使用されており、また神経や気持ちを落ち着かせるためにも使用される場合がある(T. Mizuno、1995)。
【0052】
抽出方法:多糖:熱水→3%シュウ酸NH4(100℃)→5%NaOH溶液(30℃)(Mizuno Tら、1995)。グリフラン(Grifulan)(GRN):G.フロンドサを、2%グルコース、0.6%ポリペプトン、2%ショ糖および0.1%ダイズ油を含有する100mlの培地中で、pH4.5、25℃で14日間成長させた。菌糸体をろ過によって分離し、5%グルコースを含有する0.5%クエン酸緩衝液(pH4.0)中で、25℃で6日間インキュベートした。6日間のインキュベーションの後、混合物を遠心分離し、上清溶液を1倍量のエタノールで希釈し、沈殿を8M尿素中に溶解させた。溶液を、DEADE-セファデックス(Sephadex)A-25によってさらに精製して、汚染タンパク質を除去した。非吸着画分を水に対して透析し、エタノールで沈殿させ、続いて真空中で乾燥させた(Adachi Yoshiyukiら、1994)。
【0053】
生物学的に活性な化合物:G.フロンドサ抽出物は、多様な活性化合物、例えばグルカン(例えばNMF-5N、グリフォラン(Grifolan)LE、GFP2、GFPBW1)およびヘテロポリマー(例えばFII-3、FIII-1a、GFP1)を含有する。またG.フロンドサはトレハロース豊富な源でもあり(S.J. Huang、S.Yら、2011)、食品保存剤、甘味料およびワクチン安定剤として広く使用されてきた。
【0054】
調製された様々な舞茸画分のなかでも、D画分が、経口投与または注射かどうかにかかわらず、免疫系強化のために非常に有望であることが見出された。β-1,6分岐を有する主鎖としてβ-1,3-グルカンで主として構成される多くの抗腫瘍マッシュルーム多糖を除いて、D画分の多糖部分は、(1→3)分岐(1→6)-β-グルカンである。D画分のさらなる精製により、MD画分を得た(He, Xiruiら、2017)。
【0055】
前臨床研究:G.フロンドサから単離された多糖の生物活性が、多くの前臨床研究で、抗腫瘍活性、皮膚疾患の処置、免疫調節活性および抗酸化活性などの様々な指標に関して報告されている(He, Xiruiら、2017)。
【0056】
薬理活性-炎症およびがん:数々の研究が、多くの抗腫瘍性多糖は、腫瘍細胞に直接作用するというより、宿主が媒介するメカニズムにより作用することを示してきた。G.フロンドサの多糖は、生体応答調整物質として有害な生物学的ストレスに耐え、腫瘍細胞の発達に対して免疫性を増加させるように宿主を助けるだけでなく、直接的に腫瘍細胞のアポトーシスも誘導する(He, Xiruiら、2017)。別の研究では、舞茸D画分が、Th-0細胞から変換されたTh-1細胞が優勢の免疫性の発生を誘導し、結果として細胞性免疫を刺激し、抗腫瘍作用を出現させることが示された(Inoue, Atsuyukiら、2002)。多数の研究が、舞茸は、免疫機能に対して顕著な有益作用を有することを確認した。舞茸は、マクロファージの作用だけでなく、腫瘍細胞を攻撃できる様々な他の免疫関連細胞、例えばナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性T細胞(Tc)の作用も促進する。舞茸はまた、インターロイキン-1、インターロイキン-2、およびリンフォカインを増加させることによってこれらの細胞の免疫関連の効率も増加させる。舞茸画分は、特定には、特異的な抗腫瘍作用を有するようであり、もしかすると結腸、肺、胃、肝臓、前立腺、脳、および他の臓器における腫瘍の成長を遅くする可能性がある。(注目すべきことに、D画分に対するいずれの調査参考文献は、MD画分にも適用され、これは、それらがグリフォラ・フロンドサ由来の同じベータ1,6/1,3グルカンであるためである。)(Mayell, Mark、2001)。
【0057】
【0058】
ターキーテイル(トラメテス・ベルシコロル、コリオルス・ベルシコロル)
背景:ターキーテイルは、世界中で死んだ丸太上に成長するマッシュルームの一種である。これは、シチメンチョウの尾羽のようなその茶色の環と黄褐色の見た目から、ターキーテイルと名付けられた。その学名は、トラメテス・ベルシコロルまたはコリオルス・ベルシコロルである。
【0059】
ターキーテイルは、従来の東洋医学において長年にわたり肺疾患を処置するために使用されてきた。日本では、ターキーテイルは、標準的ながん処置と共に与えられる場合、免疫系を強化するために使用されてきた。
【0060】
従来の薬での使用:免疫系のブースティング:抽出方法
T.ベルシコロルから得られた水性抽出物は、異なる免疫細胞への作用の調節および刺激を含む多様な生物学的活性を有し、加えて近年、がん細胞成長の阻害が実証された。T.ベルシコロルの熱水および標準化したエタノール-水抽出物から得られた様々な生物活性成分のなかでも、タンパク質結合多糖(PSK、クレスチンとしても公知)およびポリサッカロペプチド(PSP)は、強い生物学的活性を有していた(Habibi, Emranら、2015)。
【0061】
生物学的に活性な化合物:このマッシュルームから得られたポリサッカロペプチドは、免疫調節、抗腫瘍、および肝保護的な活性を有し、がん患者のための免疫調節および抗腫瘍薬として使用されてきた。密接に関連した多糖であるPSK(クレスチン)は、日本人の研究者によってC.ベルシコロルから単離されたものであり、免疫刺激性活性を有することが実証された。
【0062】
多糖K(PSK)は、ターキーテイルマッシュルームにおいて最もよく知られた活性化合物である。日本において、PSKは、がんを処置するのに使用される承認されたマッシュルーム製品である(Hobbs C.、2004;Jeong, Sang-Chulら、2015)。
【0063】
前臨床研究:PSKおよびPSPは、インビトロおよびインビボにおける実証された多様な免疫学的作用、特定には、網内系の活性化、サイトカイン調節(IFN-γ生産、IL-2生産)、樹状細胞生存の強化、T細胞成熟、ナチュラルキラー細胞活性、抗体産生、ならびに抗腫瘍および抗がん作用を有する。抽出物は、がん細胞のアポトーシスを活性化することによって発癌現象および腫瘍細胞成長を阻害することができる(Hobbs C.、2005)。
【0064】
【0065】
椎茸(レンティナス・エドデス)
背景:東洋では古代より、椎茸マッシュルーム(レンティナス・エドデス)は、医薬特性を有することが示された屈指の食用マッシュルームであり、今でもそうである。グルカン成分、特に、精製されたb-1,6分岐および三重らせん構造を有するb-1,3-D-グルカンであるレンチナンが、著しい抗腫瘍活性を有することが証明された。レンチナンはまた、免疫賦活薬であることも示されており、腫瘍細胞に対して直接的な細胞傷害作用を生じることなくマクロファージおよびT細胞の増殖を刺激すると考えられる(Ng, Mah-Lee、2002)。
【0066】
従来の薬での使用:L.エドデスは、数々の治療用途で使用される周知の大きい菌類(macrofungus)の1つである。これは、薬理学的特性が証明された数々のよく研究された調製物の源である。L.エドデスの医薬特性は、明王朝(1369~1644年)のころから研究されている。日本の帝国時代からの先人は、椎茸を精力と気力を増加させる「生命の錬金薬(elixir of the life)」としてみなしていた。L.エドデスの細胞内(子実体および菌糸体)で、さらに細胞外(培養培地)で、抗生物、抗発癌、抗がん、抗真菌、抗菌および抗ウイルス、抗糖尿病、脂質低下化合物が単離されている。これらの物質の一部は、レンチナン、レクチンおよびエリタデニンであった。椎茸マッシュルームは、低下した免疫機能を伴う疾患(AIDSなど)、がん、糖尿病、環境アレルギー、真菌感染、頻繁な流感および風邪、気管支の炎症のための医薬として、さらに、失禁症を制御するために使用される(Bisen, P.S.ら、2010)。
【0067】
抽出方法:酢酸エチル-凍結した椎茸マッシュルーム(2000g)を、80%メタノール水溶液(3000mL)および50%メタノール水溶液(3000mL)で、5℃で抽出した。抽出物を合わせ、室温、減圧下で、メタノールが除去されるまでロータリーエバポレーターで濃縮した。水性抽出物(200mL)を酢酸エチルで2回(300mL×2)分配した。合わせた酢酸エチル画分を、室温、減圧下で蒸発させ、続いて凍結乾燥機中で乾燥させた。酢酸エチル画分は、凍結重量の2.12%の椎茸マッシュルームを含むことを示した(Fang, Nianbaiら、2006)。
【0068】
エタノール沈殿および液体窒素中でのフリーズドライ-この方法により単離されたβ-D-グルカンは、レンチナンであることが見出された。炭水化物分析カラム、クロマトグラフ法を使用して行われた純度試験から、87.50%の有意なレンチナン純度が示された(Yap, Ann-Teck、およびMah-Lee Ng、2001)。
【0069】
粉末化した椎茸子実体(A)を、EtOEtおよびEtOHの1:1混合物を用いて42℃で8時間抽出した。抽出を3回繰り返した。得られた抽出物を合わせ、N2ガス下で蒸発させた。抽出可能な物質(脂質)をB画分として得た。椎茸粉末の残留物をEtOEtおよびEtOH混合物で抽出して、C画分を得た。抽出(脂質)の不溶性残留物を、グルカンの抽出のために、120℃で熱水で2時間処置した。残留物をE画分として得た。熱水で処理された椎茸粉末(A)をろ過して、可溶性グルカンを排除し、残留物を画分Dとして得た(Nanba Hiroakiら、1987)。
【0070】
生物学的に活性な化合物:科学的な調査により、健康促進活性を有するL.エドデスから多くの化合物が単離された。L.エドデスの子実体は、88~92%の水、タンパク質、脂質、炭水化物、加えて、ビタミンおよびミネラルを含有する。マッシュルームは、ビタミン、特に、紫外線(UV)光と熱の下でカルシフェロール(ビタミンD2)を生じるプロビタミンD2(エルゴステロール)の優れた源である。これはまた、Bビタミン、例えばB1(チアミン)、B2(リボフラビン)およびB12(ナイアシン)なども含有する。脂肪酸は、総脂質の3.38%を占め、相当量のアミノ酸を含む。グリコーゲン様の多糖に加えて、(1-4)-、(1-6)-D-グルカンおよび抗腫瘍性多糖、レンチナン、(1-3)-、(1-6)結合ヘテログルカン、ヘテロガラクタン、ヘテロマンナン、キシログルカンなどが同定された。遊離の糖のなかでも、トレハロース、グリセロール、マンニトール、アラビトール、マンノース、およびアラビノースが存在する。椎茸マッシュルームにおいて、食物繊維は、水溶性物質、例えばグルカン、ならびに塩、酸、およびアルカリでのみ抽出可能なタンパク質および水不溶性物質、例えば、細胞壁成分として存在するポリウロニド(酸性多糖)、ヘミセルロース、異糖鎖を有する-グルカン、リグニン、およびキチンからなる(Bisen, P.S.ら、2010)。椎茸マッシュルームにおける抗がん成分の同定に関して、子実体から抗腫瘍性多糖を単離し、レンチナンと名付けた。その構造は、β-(1→3)-グルカン(C6H10O5)nであることが確認され、平均分子量は5×105kDaであった。レンチナンは、椎茸マッシュルームにおける主要な抗腫瘍活性成分であることが確立された。しかしながら、哺乳動物は、レンチナンを消化するのに必要な酵素、β-1→3-グルカナーゼがなく、精製されたレンチナンは、経口投与される場合、抗腫瘍活性がないことが報告されている(Fang, Nianbaiら、2006)。
【0071】
前臨床研究:経口投与される椎茸マッシュルーム子実体は、一部の腫瘍のタイプに対して抗癌作用を有すること、およびこれらの作用は株特異的と考えられることが報告された。椎茸マッシュルームを含有する食物は、雌ICRマウスにおける肉腫-180細胞およびC3HマウスにおけるMM-46癌腫の成長を有意に低減させたが、他の腫瘍のタイプ、例えばB-16黒色腫、ルイス肺癌、またはmeth-A線維肉腫の成長に対してはほとんど作用がなかった。さらに、椎茸食物の抗がん作用は、マクロファージの活性化ならびにNKおよびキラーT細胞の両方の細胞傷害作用の増加を伴うことが見出されたことから、この腫瘍阻害活性の1つの可能性のあるメカニズムは免疫監視のブースティングに関与することが示唆される(Fang, Nianbaiら、2006)。
【0072】
薬理活性-炎症およびがん:椎茸マッシュルーム(レンティナス・エドデス)は、抗ウイルス、抗生物、抗炎症性、抗高血圧、および抗がん特性を有するとして記載されており、東洋では何千年もの間、つい最近では西洋でも、健康食品として人気であり続けている(Fang, Nianbaiら、2006)。
【0073】
レンティナス・エドデスは、その免疫調節作用のために、多くの注目を集めてきた。レンチナンは、一種の生体応答調整物質(BRM)として周知である。レンチナンの投与後、腫瘍抗原に対するNK(ナチュラルキラー)、CTL(細胞傷害性Tリンパ球)、LAK(リンフォカイン活性化キラー)活性およびDTH(遅延型過敏症)応答の増大が観察された。これらの活性は、レンチナンの抗腫瘍作用に関与する(Bisen, P.S.ら、2010)。
【0074】
【0075】
霊芝(ガノデルマ・ルシダム)
背景:霊芝は、担子菌であり、サルノコシカケ科属に属する菌褶のない真菌である。自然界では、霊芝は、高湿度で薄暗い木々が密集した山で成長する。霊芝は、主として死んだプラム、コナラ(guercus serrata)またはパソニア(pasonia)の木の乾燥した幹の上で繁茂するため、めったにみつからない。このような老木10,000本のうち、霊芝が成長しているのはおそらく2または3本であると予想され、それゆえに実際のところ極めて稀である。健康食品産業における霊芝のステータスは、比類ないものである。これは、5,000年にわたり東洋および西洋の知識と知恵を集結させたものである。健康食品としての、さらに高度に有力な薬としてのその有効性は、全てにおいて30年にわたる現代の科学的な調査によって実証されてきた。霊芝は、全く副作用がないと安全に主張することができる。
【0076】
ガノデルマ・ルシダムは、その免疫系における支持作用のために、アジアの医師や自然療法医により広く使用され、推奨されている天然の薬である。実験調査と少数の前臨床治験が、G.ルシダムが有望な抗がんおよび免疫調節特性を有することを示唆している。G.ルシダムを代替薬として摂取する流行が、がん患者において増加しつつある(Jin, Xingzhongら、2012)。
【0077】
従来の薬での使用:ガノデルマ・ルシダムは、中国、韓国、および日本では何世紀にもわたり治療薬として使用されてきた。この食用マッシュルームは、人間の生命力を保存し、寿命を長くするとみなされていた。加えて、ガノデルマ・ルシダムは、様々なヒト疾患、例えばアレルギー、関節炎、気管支炎、胃潰瘍、高血糖症、高血圧、慢性肝炎、肝障害、不眠、腎炎、神経衰弱、強皮症、炎症、およびがんを処置するために使用されてきた(Daniel Sliva、2003)。
【0078】
抽出方法:ガノデルマ・ルシダムのチップ化した子実体(1kg)を、エタノール(95%、1l)で室温で24時間抽出して、35gの固体抽出物を得た。エタノール抽出物をクロロホルムに懸濁し、飽和NaHCO3溶液で抽出した。次いでNaHCO3相を収集し、冷たいHCl溶液(6N)でpH3に調整した。得られた沈殿をクロロホルムによって抽出し、10.9gのエタノール可溶性および酸性の成分(ESAC)を黄色の固体として得た(Hu, Hongboら、2002)
ReishiMax GLp(商標)の活性な活性成分は、最大レベルの抽出可能な活性である13.5%多糖(β-1,3-グルカン)および6%トリテルペン(ガノデリン酸など)として標準化され、それに対して残りの80%は、製造元の技術報告によればヌクレオシド、脂肪酸、およびアミノ酸で構成されていた。粉末化した抽出物を95%エタノールと共に30分間音波処理し、上清を、無水エタノールを使用した連続した音波処理によってさらに抽出した。水不溶性の茶色の粉末、すなわちGLEを、ろ液から減圧下で回収した(0.45μmのポリプロピレンフィルターを介して)(Yuen, John WMら、2007)。
【0079】
南中国から収集されたG.ルシダムの子実体を洗浄し、崩壊させ、上述したように70℃で3時間、熱水で2回抽出した。34種の全ての熱水抽出物をプールし、PS濃縮画分を、75%(vol/vol)160GAO ET AL.エタノールの添加によって沈殿させた。PS濃縮画分を、セファデックスG-25が充填された1.6~100cmのカラムを使用した高性能陰イオン交換およびゲルろ過クロマトグラフィーによってさらに精製した(Gao, Yihuaiら、2005)。
【0080】
生物学的に活性な化合物:霊芝の有効性は、免疫系の刺激に関与する多糖画分、または様々ながんに対する細胞傷害性活性を実証するトリテルペンのいずれかに起因するものであった(Suarez-Arroyo, Ivette J.ら、2013)。
【0081】
生物学的に活性な多糖は、主としてβ-D-グルカンの形態であり、ガノデルマ・ルシダム由来の抗腫瘍活性は、主として分岐(1→3)-β-D-グルカンによって示された。
【0082】
主要な生物活性成分:G.ルシダムおよび関連の種の化学成分に関して300を超える報告が公開されている。G.ルシダムの子実体、菌糸体および胞子は、主としてトリテルペノイド(triterpeniod)、ステロール、ステロイド、脂肪酸、タンパク質、ペプチドおよび微量元素などのおよそ400種の異なる生物活性化合物を含有している(Babu, P. Dinesh、およびR. S. Subhasree、2008)。
【0083】
前臨床研究:ガノデルマ・ルシダムは、医薬用マッシュルームであり、マウスにおいて抗腫瘍活性を有することが報告されている。さらなる研究によれば、G.ルシダム多糖(PS)画分が、この抗腫瘍作用に関与することが示唆されている。12,13 G.ルシダムPSは、マクロファージ、Tリンパ球、およびNK細胞を活性化し、インビトロでヒト免疫細胞を使用して、さらにインビボでマウスにおいて、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)、およびインターフェロン(IFN)などのサイトカインの生産を誘導することができる。
【0084】
薬理活性-炎症およびがん:ガノデルマ・ルシダムは、構成的に活性な転写因子である核内因子カッパB(NF-κB)およびAP-1、を阻害し、それがウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA)およびその受容体uPARの発現の阻害を引き起こす。またガノデルマ・ルシダムは、高度に浸潤性の乳がんおよび前立腺がん細胞の細胞接着および細胞移動も抑制したことから、腫瘍の侵襲を低減するその効力が示唆される。したがって、ガノデルマ・ルシダムは明らかに、がん細胞を用いた実験で抗がん活性を実証したことから、乳がんおよび前立腺がんの代替療法のための栄養補助サプリメントとして見込みのある治療上の可能性を有する(Daniel Sliva、2003)。霊芝で処置した腫瘍は、E-カドヘリン、mTOR、eIF4G、およびp70S6Kの発現、ならびに細胞外調節キナーゼ(ERK1/2)の活性の低減を示した。霊芝は、翻訳に作用する生存および増殖シグナル経路に影響を与えることによってタンパク質合成および腫瘍増殖を抑制することから、霊芝が、乳がんや他のがんのための見込みのある天然治療剤であることが示唆される(Suarez-Arroyo、Ivette J.ら、2013)。
【0085】
ガノデルマ・ルシダム由来の多糖の活性は、β-グルカン多糖と結合する補体受容体3型(CR3受容体)を介して媒介されることが示唆された。マッシュルーム由来の多糖は、ナチュラルキラー細胞、T細胞、B細胞、およびマクロファージ依存性免疫系応答の刺激による宿主生物の免疫応答の活性化を介して間接的に腫瘍形成および腫瘍転移を防止することが実証された。ガノデルマ・ルシダムの新鮮な子実体から単離された多糖(PS-G)は、ヒト単球-マクロファージからのインターロイキン(IL)-1β、腫瘍壊死因子(TNF)-α、およびIL-6の生産、ならびにTリンパ球からのインターフェロン(IFN)-γの生産を刺激した。さらに、これらのPS-Gによって誘導されたサイトカインは、ヒト白血病細胞の増殖およびクローン形成能を抑制した。またPS-Gは、ホスファチジルイノシトール(PI)3-キナーゼ/Akt経路の活性化を介して自発的なFas媒介アポトーシスを阻害することによって、免疫応答も強化し、ヒト好中球から抗腫瘍作用を惹起した。加えて、PS-Gは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)およびプロテインキナーゼC(PKC)経路を介して好中球の食細胞作用を強化した。またガノデルマ・ルシダム由来の多糖は、化学的予防作用も実証し、これは、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)活性の誘導によって媒介された(Daniel Sliva、2003)。
【0086】
加えて、100種を超える高度に酸素処理された薬理学的に活性なラノスタン型トリテルペンが、ガノデルマ・ルシダムから単離された。
【0087】
【0088】
アガリクス・ブラゼイ・ムリル
背景:医薬用マッシュルームであるブラジルの多雨林からのアガリクス・ブラゼイ・ムリルは、感染、アレルギー、およびがんなどの様々な疾患の防止のために、従来の薬で、さらには健康食品として使用されてきた。他の科学者および本発明者らは、このような仮定を裏付ける科学的な証拠があるかどうかを調査した。アガリクス・ブラゼイMは、免疫調節性の多糖であるβ-グルカンが防府であり、炎症性腸疾患患者における抗炎症性作用に加えて、マウスモデルにおいて抗腫瘍、抗感染、および抗アレルギー性/喘息性の特性を有することが示されている。これらの作用は、自然免疫細胞、例えば単球、NK細胞、および樹状細胞のマッシュルームでの刺激、ならびにゆがんだTh1/Th2バランスおよび炎症の改善を介して媒介される(Hetland, Geirら、2011)。
【0089】
従来の薬での使用
アガリクス・ブラゼイは、日本で広く食べられており処方される医学上重要なマッシュルームである。
【0090】
アガリクス・ブラゼイは、従来、がん、糖尿病、高脂血症、動脈硬化症および慢性肝炎の防止のための健康食品として使用されてきた。
言い伝えによると、この地域の年配の人々は、隣接する社会地域の人々より重篤な疾患に罹りにくく、これは恐らく食物としてアガリクス・ブラゼイを使用していることに起因すると推測される。がんや慢性肝炎の他にも、このマッシュルームは、糖尿病、動脈硬化症および高脂血症などの様々な疾患に対する民間療法で使用されてきた(Hetland, Geirら、2008)。
【0091】
抽出方法:熱水、冷たいNaOH、次いで熱いNaOHでの繰り返しの抽出(Ohno, Naohitoら、2001)。高温水溶性画分の抽出。菌糸体画分(100g)を、熱水(500ml)で3時間、3回抽出した。懸濁液をろ過して、不溶性物質を除去した。減圧下で水性抽出物を蒸発させた後、等しい体積のエタノールを抽出物に添加し、沈殿した多糖を、8,000rpmで20分の遠心分離によって収集した。粗製多糖を水中に溶解させ、蒸留水に対して透析した。等しい体積のエタノールを再度透析物に添加し、懸濁液を10,000rpmで20分遠心分離した。得られた多糖画分を溶解させ、凍結乾燥した。これを以降、高温水溶性(hot water-soluble)(HWS)画分と称する。
【0092】
HWS画分からの抗腫瘍性多糖の単離:HWS画分(100mg)を100mlの水中に溶解させた。この溶液を、塩析のために100%飽和(NH4)2SO4に添加し、次いで120×gで15分遠心分離した。上清(FA)および沈殿(FB)を、セルロースチューブを介して蒸留水に対して透析した。この透析物を蒸発させて少量にし、次いで凍結乾燥した。FA(5mg)の水溶液を、0.5Mおよび1MのNaClを含有する蒸留水、次いで0.1NのNaOHのそれぞれ2000mlの段階的な溶出を用いたDEAE-セファロース(Sepharose)CL-6Bカラム(5.2×38cm)でのイオン交換クロマトグラフィーに供した。同じカラムで、蒸留水中の0~2MのNaClの勾配溶出を用いて第2のイオン交換クロマトグラフィーを実行した。活性な画分を、溶離剤として蒸留水を使用したセファロース4Bカラム(1.6×90cm)でさらに分離した(Mizuno, Masashiら、1999)。
【0093】
A.ブラゼイ(1kg)の乾燥させた菌本体を、クロロホルム/メタノール(1:1、v/v)(2L 3 3)で、還流下で3時間、直接抽出した。クロロホルム/メタノール抽出物を減圧下で濃縮して、茶色の抽出物(250g)を得た。クロロホルム/メタノール抽出物(200g)を、アセトン可溶性(160g)および不溶性(40g)画分に分割した。アセトン可溶性画分(35g)をさらに、n-ヘキサン不溶性(16g)および可溶性(14g)画分に分割した。n-ヘキサン不溶性画分(15g)をシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけ、エルゴステロール(2.4g)を活性物質として単離した(Takaku Takeshiら、2001)。
【0094】
崩壊させ乾燥させた子実体(3kg)を、還流下で、70~80℃で22時間、80%エタノールで抽出した。遠心分離および不溶性画分の除去の後、可溶性画分(約200g)をフリーズドライし、画分1と指定した。次いで不溶性物質(約2.5kg)を、還流下で、80~90℃の水で22時間抽出し、水溶性画分(約250g)を画分2と指定した。水不溶性残留物(約2kg)を、還流下で12時間加熱することによって、5%シュウ酸アンモニウムで3回抽出した。約20リットルの5%シュウ酸アンモニウム可溶性画分を4リットルに濃縮した。2リットルのこの濃縮した画分を、ミリポア(Millipore)のフィルター(ペリコン(Pericon)ミニカセット)での5kDaの分子量カットオフを用いた限外ろ過に供し、フリーズドライした。このフリーズドライした画分(最終産物、711g)を画分3と指定した。フリーズドライした不溶性残留物(309g)を画分4と指定した(Oshiman, Ko-ichiら、2002)。
【0095】
生物学的に活性な化合物
アガリクス・ブラゼイは、ブラジルを起源とし、その子実体に含有される数々の抗腫瘍性多糖の源である。これには、b-(1,6);b-(1,3)グルカン、酸性b-(1,6);a-(1,3)グルカン、および酸性b-(1,6);a-(1,4)グルカンが含まれる。ほとんどのマッシュルームグルカンと比べると、上記のグルカンは、より高い共通のb-(1,3)結合主鎖の代わりに、b-(1,6)グリコピラノースの主鎖を有する。子実体はまた、a-(1,4)グルカン主鎖およびb-(1,6)グルコピラノシド分岐を4:1の比率で有する380,000Daの抗腫瘍性の水溶性プロテオグルカン、加えて、1つはグルコースとリボースとからなる、グルコース、ガラクトースおよびマンノースを含有する2つの免疫促進性ヘテログルカン、およびキシログルカンも含有する。バイオリアクター中で浸された培養物において、A.ブラゼイはまた、マンノース、グルコース、ガラクトースおよびリボース基と非常に高い分子量(1000,000~10000,000Da)を有する、著しい抗腫瘍特性を示す細胞外プロテオグルカンも合成することができる(Giavasis Ioannis、2010)。
【0096】
前臨床研究:β-グルカンは、公知の抗腫瘍特性を有し、A.ブラゼイの2つの他の成分であるプロテオグリカンおよびエルゴステロールも同様である。A.ブラゼイの明らかな抗腫瘍作用は、β-1,3-グルカンに起因する。加えて、A.ブラゼイから抽出されたβ-1,6-グルカンは、マウスにおいて腫瘍退縮を誘導し、さらに、マウスモデルにおいて、A.ブラゼイ由来β-グルカンの毎日の補充は、卵巣および肺がん細胞の自然転移を低減した。またA.ブラゼイから単離されたβ-グルカン-タンパク質複合体は、マウスモデルにおいてMeth A線維肉腫に対して阻害作用を有することも示した(Hetland, Geirら、2008)。
【0097】
薬理活性-炎症およびがん:アガリクス・ブラゼイは、高度に分岐したβ1,3-/1,6-グルカンおよびプロテオグリカンなどの免疫調節物質が豊富である。これらは、自然免疫系の単球、樹状細胞(DC)、顆粒球、およびNK細胞上のCD11b/18(補体受容体3、CR3)、デクチン-1、およびToll様受容体2(TLR2)に対する公知のリガンドである。アガリクス・ブラゼイはまた、それぞれ白血病細胞においてアポトーシスを誘導し、腫瘍によって誘導された血管新生を阻害することが見出されているアガリチンおよびエルゴステロール(プロビタミンD2)、加えて、糖尿病に対して有用であり得る有力な血糖低下作用を有するイソフラボノイドを含有することも示されている。AbMは、線維肉腫、骨髄腫、卵巣、肺、および前立腺がんのマウスモデルにおいて、さらに、婦人科系のがん(NK細胞活性および生活の質の増加)および白血病に対するヒト研究において、抗腫瘍特性を有することが報告されている(Hetland, Geirら、2011)。
【0098】
【0099】
チャーガ(イノノタス・オブリクス)
背景:チャーガマッシュルーム(イノノタス・オブリクス)は、担子菌類のタバコウロコタケ科(Hymenochaetaceae)属に属する白色腐朽菌である。チャーガマッシュルームは、ロシア、西シベリア、アジア、および北アメリカにおいてがんを処置するための民間療法で使用されてきた。チャーガマッシュルームは、多くのポリフェノール化合物を含有し、抗細菌性、肝保護的な、および抗腫瘍特性を含む様々な生物学的活性を示すことが示されている(Ham, Seung-Shiら、2009)。
【0100】
従来の薬での使用:チャーガマッシュルームは、ロシアおよび西シベリアにおいて、胃の障害、さらにはがんの予防および処置のための民間療法として使用されてきた。チャーガは、その生物活性化合物に基づく、抗細菌性、抗アレルギー性、抗炎症性、および抗酸化性などのヒトの健康のための複数の天然の有益な特性を有すると主張されている(Kang, Ju-Heeら、2015)。これはまた、心臓、肝臓、および胃の疾患、加えて結核を防止および処置するためにも使用されてきた。さらにこれは、従来、ロシア、ポーランド、および多くのバルト諸国において16世紀から、消化器がん、心臓血管疾患、および糖尿病の処置のために使用されてきた(Kim, Yu Jinら、2011)。
【0101】
抽出方法:イノノタス・オブリクス試料を乾燥させ、粉末化し、-20℃で貯蔵した。粉末化した試料(500g)を、45~50℃で3時間、3Lのメタノール(99.8%)で2回抽出した。次いでメタノール画分(45g)をロータリーエバポレーションで蒸発させ、乳化し、水中に溶解させ、酢酸エチル(H2O:EtOAc、5:7、v/v)で3回抽出した。ロータリーエバポレーションの後に酢酸エチル画分(12g)を得て、乾燥させた抽出物をメタノールに再溶解させた。このストック溶液を、ジクロロメタンと混合したシリカゲル(60g、230~400メッシュ)を用いて真空クロマトグラフィー(N-2N、アイラ(Eyela)、日本、東京)に供した。使用された移動相は、ジクロロメタン中の増加するメタノールの勾配(0~100%)を用いたジクロロメタンおよびメタノールであり、次の泳動の3分前に100%ジクロロメタンでカラムを再平衡化した。画分化の成功をTLCによって確認した。3つの酢酸エチル抽出物画分のなかでも、最も生物活性を有する画分、すなわちVCHG画分1を選択し、H2O:MeOH(1:30、v/v)と混合したLiChroprep RP-18(25~40m)を含有する逆相カラム(ODS-C18)を使用して、30%メタノールから100%メタノールの範囲の勾配プログラム(移動相A:メタノール;移動相B:超純水)で、逆相(ODS-C18)カラムクロマトグラフィーに供した。4つの画分を単離したところ、そのうちの画分2が、最も高い生物活性を含有していた。画分2をさらに、ジクロロメタンと混合されたシリカゲル(200g、70~230メッシュ;メルク社(Merck Co.))を含有する順相シリカゲルカラム(2.4cm×15cm)を用いて100%ジクロロメタンから50%メタノールの範囲の移動相勾配によって溶出させるクロマトグラフィーによって分画した。流速は1.0mL/分であった。それにより2つの亜画分を得て、これらを亜画分1および2と指定し、両方とも生物活性を示した。亜画分1および2中の化合物を結晶化し、それらのMS(JEOL)、1H NMRおよび13C NMR(ブルカー(Bruker)DRX 500MHz)スペクトルを決定することによって分析した(Ham, Seung-Shiら、2009)。
【0102】
I.オブリクスの菌核(1.3kg)をメタノール(MeOH)で6回抽出して、抽出物(67.5g)を得て、これをn-ヘキサン、CH2Cl2、および酢酸エチル(EtOAc)で連続的に分配した。CH2Cl2画分(24g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、CHCl3/EtOAc勾配系(50:1→1:1)で溶出させて、13個の画分(画分MC1~13)を得た。化合物1(105.2mg)を、CHCl3およびMeOH溶媒下で画分MC3から再結晶させた。画分MC5を、n-ヘキサン/EtOAc(10:1→1:1)の勾配溶出を用いた繰り返しのカラムクロマトグラフィーに供し、結果として、10個の亜画分(画分MC5-1~MC5-10)を得た。化合物2(9.1mg)を、CHCl3およびMeOH溶媒下で画分MC5-5から再結晶させて、白色の結晶を得た。画分MC5-6(58mg)を、n-ヘキサン/EtOAc勾配(70分にわたりn-ヘキサン中EtOAc 5~100%、10分にわたり100%)を用いたMPLCに供して、化合物3(7.1mg)を得て、画分MC5-10(13mg)を、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液/MeOH勾配(5分にわたり水中MeOH 50~80%、15分にわたり80~100%、25分にわたり100%)を用いた半分取HPLCに供して、化合物4(2.2mg)を得た。化合物5(301.5mg)および6(8.7mg)を、CHCl3およびMeOH溶媒下で、それぞれ画分MC7およびMC10から再結晶させた。画分MC9を、n-ヘキサン/EtOAc(15:1→1:1)の勾配溶出を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供して、17個の亜画分(画分MC9-1~MC9-17)を得た。画分MC9-14を、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液/MeOH勾配(5分にわたり水中のMeOH 50~80%、15分にわたり80~100%、25分にわたり100%)を用いた半分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供して、化合物7(2.7mg)および8(3.2mg)を得た。EtOAc画分(12.4g)を、セファデックスLH-20カラムクロマトグラフィーに供し、100%MeOHで溶出させて、10個の画分(画分E1~10)を得た。画分E4(750mg)を、n-ヘキサン/EtOAcの勾配溶出(8:5→1:2)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、10個の亜画分(画分E4~1~E4~10)を得た。化合物9(2.4mg)を画分E4~3から単離し、画分E4~5を、水/MeOH勾配(30分にわたり水中MeOH 20~80%、5分にわたり80~100%、5分にわたり100%)を用いた半分取HPLCに供し、化合物10(1.2mg)を得た(Kim, Yu Jinら、2011)。
【0103】
乾燥させたチャーガマッシュルーム(8kg)を、還流下で4時間、95%エタノールで3回抽出した。抽出物をろ過し、真空中で蒸発させ、エタノール抽出物(212.95g)を得た。次いでこのエタノール抽出物を蒸留水に懸濁し、n-ヘキサン、酢酸エチル、およびn-ブタノールで逐次的に分配した。n-ヘキサン画分(28g)を、ヘキサン-EtOAc勾配系(30:1~15:1~8:1~4:1~1:1、v/v、2L)を使用したシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーにかけて、11個の画分を得た(画分1~11)。画分1~10を、1Lの溶媒で溶出させることによって得た。画分11をヘキサン-EtOAc(0:100、v/v、2L)で溶出させた。画分15(360mg、白色の結晶)を最終的に、画分10の再結晶化によって精製した(650mg)。画分15の同定を、NMR分析によって行った。画分15の化学構造を1H NMRによって確認した(kang, Ju-Heeら、2015)。イノノタス・オブリクスからの水性抽出物(IOAE)を、200mlの温かい水(40℃)中の粉末化した子実体(10gm)を抽出することによって調製した(Mishra, S.K.ら、2013)。
【0104】
生物学的に活性な化合物:このマッシュルームの化学成分に対する以前の調査において、ラノスタン型トリテルペノイド、例えばイノトジオール、トラメテノール酸、およびイノノツオキシド(inonotsuoxide)が、抗腫瘍および抗真菌性活性を有することが報告されている。このマッシュルームにおいて、一部のフェノール化合物も見出された(Kim, Yu Jinら、2011)。
【0105】
I.オブリクスは、優れた生物活性化合物を含有する。I.オブリクス由来の3β-ヒドロキシ-ラノスタ-8,24-ジエン-21-アールが同定されており、I.オブリクスの食用マッシュルーム由来の高分子量、水溶性、リグニン様の物質が、1型ヒト免疫不全ウイルスのプロテアーゼを阻害することが報告されている。I.オブリクスの菌核から単離されたイノトジオールは、7,12-ジメチル-ベンズ[α]アントラセンを使用したマウス皮膚での2段階発癌現象試験において阻害作用を有することが報告されている。I.オブリクスの熱水抽出物は、ヒト結腸がん細胞(HT-29)の増殖に対して阻害活性を発揮する。それぞれ3β-ヒドロキシル-ラノスタ8,24-ジエン-21-アールおよびイノトジアール(inotodial)としての亜画分1および2、ならびにこれらの化合物は、抗突然変異および抗酸化活性を有する。亜画分3はまた、抗突然変異および抗酸化活性も有する(Chung, Mi Jaら、2010)。
【0106】
前臨床研究:チャーガ水性抽出物は、インビトロおよびインビボで結腸直腸がん細胞の増殖を抑制した。これは、アポトーシスのミトコンドリア固有の経路を活性化し、オートファジーを誘導し、細胞周期のS期を停止させた。チャーガ水性抽出物は、iNOSおよびCox-2ならびに炎症促進性サイトカインの発現を阻害し、腸上皮細胞の炎症を改善した。またこれは、p-カテニンおよびNF-κBシグナル伝達も下方調節したことから、結腸直腸がん細胞において抗増殖および抗炎症性活性を発揮した(Mishra, S. K.ら、2013)。
【0107】
薬理活性-炎症およびがん:エルゴステロール過酸化物は、HCT116、HT-29、SW620およびDLD-1CRC細胞株において、異なる感受性で、細胞増殖を阻害しただけでなくクローン産生性のコロニー形成も抑制した。これらのCRC細胞株で観察された成長阻害は、アポトーシスの結果であった。エルゴステロール過酸化物は、β-カテニンの核レベルを阻害し、最終的にc-Myc、サイクリンD1、およびCDK-8の転写の低減をもたらした。c-Myc、サイクリンD1、およびCDK-8は、がんにおいて細胞周期およびアポトーシスなどの悪性腫瘍を調節するβ-カテニンの重要な下流標的である(Kang, Ju-Heeら、2015)。用量依存性の方式でのプロカスパーゼ-9(pro-capsase-9)のレベルの低減および切断されたカスパーゼ-9の蓄積増加によって観察されるように、IOAEは、ヒトがん細胞株においてカスパーゼ-9を活性化した。続いてIOAEは、カスパーゼ-3を活性化し、その核の基質をポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(pARP)によって切断した(Mishra, S. K.ら、2013)。
【0108】
【0109】
CBD
背景:大麻は、集合的にカンナビノイドとして公知の一連の少なくとも66種の化合物の固有な源である。これらのなかでもほとんどが、大麻の主要な精神賦活性成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)の薬理作用について、さらに精神作用がないカンナビジオール(CBD)について知られている。カンナビノイド受容体に対する内因性アゴニストも発見されている。CB1受容体は、中枢および末梢ニューロンの末端に存在し、そこでこれらは、伝達物質放出を調節する。これはまた、一部の非神経細胞にも存在する。CB2受容体は、主として免疫細胞によって発現され、それらの役割の1つは、サイトカイン放出を変更することである。CBDは、CB1およびCB2受容体に対して、Δ9-THCより一層低い親和性を有し、その薬理学的な作用は、それほどよく特徴付けられていない。
【0110】
CB1およびCB2受容体はどちらも、Gi/oタンパク質を介して、アデニル酸シクラーゼに負にカップリングされ、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼに正にカップリングされる。CB1受容体はまた、Gi/oタンパク質を介して、特定のイオンチャネルにもカップリングされ、A型および内向き整流性カリウムチャネルにも正にカップリングされ、N型およびP/Q型カルシウムチャネルにも負にカップリングされ、さらに、D-タイプカリウムチャネルにもカップリングされる。CB1受容体はまた、Gsタンパク質を介してアデニル酸シクラーゼを活性化するように作用する場合もある。カンナビノイドCB1およびCB2受容体に関する追加のシグナル伝達メカニズムが提唱されており、これらの説明は、他所で見出すことができる(Pertwee, Roger G、2004)。説得力のある証拠によれば、カンナビノイドの使用、またはカンナビノイド受容体およびエンドカンナビノイド系の操作は、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸障害、およびがんにおける痛み、痙直および振戦を含む多くの疾患において、利益がある可能性があることが示唆される。CBDおよびCBD豊富な大麻抽出物の可能性のある臨床的な応用としては、抗炎症性および神経保護作用の発生、てんかん、不安障害、緑内障および吐き気の管理、ならびにΔ9-THCの一部の作用の調節が挙げられる。
【0111】
CBDは、中毒、鎮静および頻脈を含むTHCの一部の望ましくない作用に拮抗し、一方でそれ自体で鎮痛、制吐、および抗発癌性の特性に貢献することが実証されている。現代の臨床治験では、それにより、より高い用量のTHCの投与が許容されており、多発性硬化症における痙直、中枢性疼痛および下部尿路の症状、加えて、睡眠障害、末梢神経障害性疼痛、腕神経叢剥離の症状、リウマチ様関節炎および難治性がん性疼痛の処置における大麻ベースの抽出物のための臨床効果および安全性に関する証拠をもたらす。神経防護作用、薬物依存性、および新生物形成性の障害における大麻全体の抽出物の将来的な適用に関する見通しがさらに調査される。THCとCBDの組合せが、有害事象を低減させながら臨床効果を増加させるという仮説が裏付けられている(Russo、Ethan、およびGeoffrey W. Guy、2006)。
【0112】
従来の薬での使用:カンナビス・サティバL.(アサ科(Cannabaceae))は、中国において繊維および種子作物としての利用の長い歴史があり、その痩果(「種子」)に加えて他の植物部分は、ほぼ2000年にわたり中国の医学書での記録が認められる。東洋医学における大麻の主要な適用は痩果の使用に集中しているが、雌花序および他の植物部分に関する古来の適応症としては、カンナビジオール(CBD)およびΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)などのカンナビノイドに対する現在の調査対象である痛みや精神疾患などの状態が挙げられる(Brand, E. Joseph、およびZhongzhen Zhao、2017)。
【0113】
抽出方法:大麻の乾燥した花および葉を、CO2で、室温で抽出して抽出物を得て、これを蒸発乾固させ、茶色がかった固体を得た。抽出物の一部を、C18カラム(150mm×4.6mm、流速1ml/分)を使用したHPLC分析(アジレント(Agilent)1100)のためにメタノール中に溶解させた(Zhu JSら、1998)。
【0114】
前臨床研究:CBDは、そのインビトロおよびインビボでの腫瘍細胞に対する活性に基づき抗新生物剤みなされている。しかしながら、CBDがこの活性を媒介する正確な分子メカニズムは未だ解明されていない。CBDは、カンナビノイドおよびバニロイド受容体の活性化とは無関係に、乳がん細胞の細胞死を誘導した。電子顕微鏡法から、オートファジーとアポトーシスの共存と一致する形態が解明された。ウェスタンブロット分析は、これらの発見を確認した。CBDは小胞体ストレスを誘導し、その後、リン酸化されたmTORおよび4EBP1、ならびにサイクリンD1の減少したレベルにより示された通り、AKTおよびmTORシグナル伝達を阻害する。オートファジーおよびアポトーシスのシグナル伝達経路の間のクロストークをさらに分析することで、本発明者らは、MDA-MB231乳がん細胞において、ベクリン1が、CBD媒介アポトーシスの誘導において中心的な役割を果たすことを見出した。CBDは、ベクリン1とVps34との相互作用を強化するが、ベクリン1とBcl-2との会合を阻害する。加えて、CBDは、ミトコンドリア膜電位を低減し、BIDのミトコンドリアへの転移、シトクロムcのサイトゾルへの放出、最終的には乳がん細胞において固有のアポトーシス経路の活性化を引き起こす。CBDは、活性酸素種(ROS)の生成を増加させ、ROS阻害は、アポトーシスおよびオートファジーの誘導をブロックした。本発明者らの研究は、CBDで処置した乳がん細胞におけるアポトーシスとオートファジーとの複雑な相互作用を解明し、CBDの抗新生物剤としての見込みのある使用に対する継続調査の価値を強調した。
【0115】
薬理活性-炎症およびがん:カンナビジオール(CBD)は、大麻の主要な非精神賦活性の成分であり、その腫瘍細胞に対するインビトロおよびインビボの活性に基づき抗新生物剤とみなされる。カンナビノイドは、がんの成長と拡がりの中心となるシグナル伝達経路を調節することができる。それらは細胞周期の進行および走化性を阻害し、血管新生をブロックする。CBDは、インビトロで神経膠腫に対して細胞傷害性であり、腫瘍細胞移動を阻害する。加えて、CBDは、ヒト白血病細胞株において、古典的カスパーゼ経路を活性化し、NOX4およびp22(PHOX)機能を強化することによってアポトーシスを誘導する。近年の研究は、CBDが、乳がんの成長を阻害し、乳がん細胞株において転移のレギュレーターであるID1を下方調節することを報告している。さらに、CBDは、THCと協同して、神経膠腫細胞においてプログラム細胞死(PCD)を誘導する(Shrivastava, Ashutoshら、2011)。またカンナビノイドはアデニル酸シクラーゼの阻害も誘導し、イオンチャネルに影響を及ぼし、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、c-Jun N末端キナーゼ、およびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼを刺激することから、それらは、細胞生存または死の決定において全体的な役割を果たす可能性があることが示される(Vaccani, Angeloら、2005)。
【0116】
【0117】
THC
背景:近年、様々な一般的な疾患のための新規の治療剤として、カンナビノイド(マリファナ、カンナビス・サティバの活性成分)およびその誘導体に強い関心がもたれてきた。マリファナの主要な活性成分、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)の同定は、カンナビノイドは、特異的な細胞表面Gタンパク質共役カンナビノイド受容体:CB1およびCB2を活性化することによって機能するという発見をもたらした。CB1受容体は、特に脳に豊富であり、CB2受容体は、免疫系の細胞で高度に発現される。Δ9-THCの作用の多くは、カンナビノイド受容体によって媒介され、そのうちの少なくとも2つの型、CB1およびCB2が哺乳類組織中に存在する。
【0118】
カンナビノイドは、主として多数の異なる腫瘍細胞型においてアポトーシスを誘導するその能力のために、新規のがん治療剤であるとして提唱されている。THCは、マリファナの精神賦活性成分である。加えて、THCは、特異的なカンナビノイド受容体を活性化する内因性化合物であるエンドカンナビノイドアナンダミドおよび2-アラキドノイルグリセロールを模擬することによって、多種多様の生物学的作用を発揮する。
【0119】
カンナビノイドは、副作用の一部、例えば、多くの場合にがんに付随する吐き気および嘔吐、体重の減少、食欲の欠如および痛みの処置においてうまく使用されている。Δ9-THC(ドロナビノール)およびLY109514(ナビロン)は、がん化学療法に関連する吐き気および嘔吐を処置するために承認されている。がんの緩和処置においてカンナビノイドが使用されるにもかかわらず、カンナビノイドは、それ自体、腫瘍進行のための処置としてまだ使用されていない。
【0120】
腫瘍学におけるTHCの見込みのある将来的な使用の主な制限としては、大部分が知覚の異常からなる、場合によっては幻覚、精神不安、異常な思考、離人症および傾眠からなる主に中枢神経系のレベルでの有害作用を挙げることができる(Ligresti, Alessiaら、2006)。
【0121】
従来の薬での使用:カンナビス・サティバ(Cannabis Sativa)由来の抽出物は、何世紀にもわたり医薬目的と娯楽目的の両方のための使用されてきた。
抽出方法:種子および苞で構成される大麻を回収すること;種子から苞を分離すること;苞を溶媒で抽出し、それによって抽出物を生産すること、抽出物を、必要に応じて抽出物からΔ9-THCを分割するように配置されたクロマトグラフのカラムに通すこと(Webster, GR Barrie、2002)。
【0122】
Δ9-THCを、ハシシュから、向流分配:自動アセンブリ-200細胞、10mlの上および下の相のいずれか、溶媒系:石油-エーテル/メタノール/ジメチルホルムアミド/水、10:8:2:1によって得た。残留物の蒸発および石油-エーテルでの抽出の後、Δ9-THCが流動的な無色の油状物として単離される[α]25
D-141°(EtOH;c=3.16w/w)。これは、Δ9-THCと7.90/o w/wのジメチルホルムアミドの混合物であり、これは、フェノール基の水素結合によって保持される。ジメチルホルムアミドの含量を、SMRシグナルの統合およびジメチルホルムアミド中のリチウムイソプロピレートでのTHCの滴定によって測定した。アミドを除去するために、この混合物を50~100倍量のCCl4中に溶解させ、水と共に2回振盪する。有機層を分離し、低温で、減圧下で溶媒を除去する。得られた粘性の油状物は、空気と光に曝露されたらすぐに薄黒くなる(Silva, M. Teresa A.ら、1968)。
【0123】
前臨床研究:腫瘍細胞の成長および生存は、細胞生存および増殖を調節する経路を介したシグナル伝達の増加に依存することが多い。これらのうち2つは、MAPKシグナル伝達経路(Ras/Raf-MAPK、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK1/2))およびPI3K/Akt経路を含む。CB1およびCB2カンナビノイド受容体の両方は、ヘテロ三量体Gi/o-タンパク質を介してこれらの経路にカップリングされる。ヒトCB1でトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、CP55940(高度に有力な非選択的CB1およびCB2アゴニスト)は、p42/p44 MAPK活性を時間および濃度依存性の方式で増加させ、これは、CB1アンタゴニスト/インバースアゴニストSR141716Aによって逆転した[26]。さらに、MAPKの活性化は、百日咳毒素によってブロックされたことから、CB1とMAPKとの間のシグナル伝達はGTP結合タンパク質を含むことが示唆される。CHO細胞をCB2でトランスフェクトした場合、CP55940がp42/p44 MAPK活性を増加させたため類似の結果が見られ、この作用は、SR144528(CB2選択的アンタゴニスト)と百日咳毒素の両方によってブロックされた。これらの研究からの結果は、CB1またはCB2受容体のいずれかの活性化が、MAPK経路を介したシグナル伝達の増加をもたらすことを示す(Alexander Amyら、2009)。
【0124】
薬理活性-炎症およびがん:THCは、数々の腫瘍細胞型においてアポトーシスを誘導することが示されている。カンナビノイドが、細胞生存およびアポトーシスを制御するシグナル伝達経路の差次的な調節を少なくとも部分的に介して腫瘍細胞を選択的に標的化することができるという証拠が増えつつある。しかしながら、カンナビノイドの抗腫瘍性作用の基礎をなすメカニズムの理解は不十分であり、証拠は、これらの作用が細胞型特異的であり得ることを示唆する。カンナビノイドによって(研究される細胞型およびカンナビノイドに応じて)正または負のいずれかに調節されることが報告されている2つのシグナル伝達経路は、RAS-MAPK/ERK経路およびPI3K-AKT経路である(Greenhough, Alexanderら、2007)。
【0125】
現在の文献における全体的な同意は、カンナビノイドが抗がん作用を有することを示しているが、D9-THCが、より低い濃度はがん細胞の増殖の増加をもたらし、より高い濃度は細胞増殖の減少を引き起こすという、がん細胞において二相性の作用を有することを示したいくつかの研究がある。例えば、100~300nMでのD9-THCは、NCl-H292(肺がん)およびU373-MG(膠芽腫)細胞の増殖率においてそれぞれ1.2および2倍の増加をもたらした。対照的に、より高い濃度のD9-THC(4~10lM)は細胞傷害性であり、アポトーシス細胞の数を増加させた(30~80%)。カンナビノイドは、CB2活性化を介して免疫系の抑制を引き起こし得ることが周知である(Alexander Amyら、2009)。
【0126】
【0127】
マッシュルーム抽出物およびカンナビノイドを含む本発明の組成物を、インビトロにおけるその抗炎症性および抗がん作用の両方に関して試験した。
この研究の目的は、以下を評価することであった:
a.RAW264.7細胞に対する異なるマッシュルーム抽出物、THCおよびCBDの抗炎症特性。
【0128】
b.PANC-1およびEGL-1細胞に対する異なるマッシュルーム抽出物、THCおよびCBDの抗がん特性。
本発明で上述された細胞株は、以下の通りである:
a.RAW264.7(ATCC(登録商標)TIB-71(商標))、マウスマクロファージ(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、米国メリーランド州ロックビル)。
【0129】
b.PANC-1(ATCC(登録商標)CRL-1469(商標))、ヒト膵臓癌。
c.EGL-1ヒト肝外胆管癌。
本明細書の以下で記載されるアッセイで試験されたマッシュルーム抽出物は、以下の通りである:
a.冬虫夏草Cs-4(マッシュルームサイエンス(Mushroom Science)、ロット番号W0001576、exp11/2020)。熱水/アルコール抽出物。
【0130】
b.冬虫夏草-M(リアルマッシュルーム(Real Mushrooms)、ロット番号18274、exp10/2020)。熱水抽出物。
c.ターキーテイルコロリウス(Turkey Tail Colorius)PSP(マッシュルームサイエンス、ロット番号1820004、exp07/2020)。熱水/アルコール抽出物。
【0131】
d.ターキーテイル抽出物(リアルマッシュルーム、ロット番号18305、exp11/2020)。熱水抽出物。
e.椎茸(マッシュルームサイエンス、ロット番号1800401、exp01/2020)。熱水/アルコール抽出物。
【0132】
f.霊芝抽出物415(リアルマッシュルーム、ロット番号18270、exp09/2020)熱水/アルコール抽出物。
g.アガリクス・ブラゼイ-フルスペクトル抽出物(マッシュルームサイエンス、ロット番号W0000008、exp08/2020)。熱水/アルコール抽出物。
【0133】
h.チャーガ(マッシュルームサイエンス、ロット番号W0001580、exp11/2020)。熱水/アルコール抽出物。
i.舞茸(マッシュルームサイエンス、ロット番号1802502、exp11/2020)。熱水/アルコール抽出物。
【0134】
j.CBD(カンナビジオール)、BOLファーマ(BOL Pharma)、ロット番号LG18086-36-2。CoA。
k.デキサメタゾン(ウェストワードファーマシューティカルズ社(West-ward Pharmaceuticals Corp)、カタログ番号0641-0367-25、ロット番号108381、exp.10/2020)。
【0135】
本明細書の以下で記載されるアッセイで使用されるマッシュルーム抽出物、カンナビノイド溶液および増殖培地を、以下の通り調製した。
マッシュルーム抽出物:
a.温かい注射用水(42℃)の総最終容量の2/3を、乾燥マッシュルーム粉末に添加した。
【0136】
b.懸濁液をボルテックス混合し、遠心分離した(4100rpm、室温、5分)。
c.水溶性画分を含有する上清をきれいなチューブに分離した。
d.総最終容量の5%のEtOHをペレットに添加し、ボルテックスで混合して、エタノール可溶性画分を抽出した。最終容量になるまで水を適量添加した。
【0137】
e.懸濁液をボルテックスで混合し、遠心分離した。得られた上清を合わせ、再び遠心分離して、死細胞片を除去して、50mg/mlの最終濃度を得た。
f.得られた溶液をセルストレーナー(40~70ミクロン)に通過させた。
【0138】
g.2つの追加のストックを、媒体(WFI中の5%EtOH)で調製した:10mg/mlおよび2mg/ml。
h.96μLの培地に、全ての試験物/媒体を4μLで細胞に添加し、2mg/ml、0.4mg/ml、および0.08の最終的な作業濃度(0.2%EtOH、4%WFI中)を得た。
【0139】
カンナビノイド溶液
a.THC-THCを媒体(5%DMSOを含有するWFI)で、1875μM、500μM、100μM、25μMおよび2.5μMの濃度に希釈した。全ての試験THCストック/媒体を、アッセイに応じて細胞で1:15~1:5に希釈した。
【0140】
b.CBD(314.46g/mol)-を、EtOH中に溶解させて10mg/ml(31.8mM)の濃度にした。5%DMSOを含む31.8mMエタノール溶液を合わせ、WFIで500μMの最終濃度に希釈することによって500μMストック溶液を調製した。得られた溶液をさらに媒体(5%DMSOを含有するWFI)で、500μM、375μM、125μM、25μMおよび2.5μMの濃度に希釈した。全ての試験CBDストック/媒体を、アッセイに応じて細胞で1:15~1:5に希釈した。
【0141】
c.デキサメタゾン(392.46g/mol)ストック溶液10mg/ml(25.47mM)。ストック溶液をさらに媒体(5%EtOHを含有するWFI)で、2.5μM、0.25μM、および0.025μMの濃度に希釈した。96μL培地に、全てのデキサメタゾンストックを4μLで細胞に添加し、100nM、10nM、および1nM(0.2%EtOHおよび4%WFI中)の最終的な作業濃度を得た。
【0142】
細胞培地の配合:RAW増殖培地:10%ウシ胎児血清(FBS)、4mMのL-グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(PS)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)高グルコース。
【0143】
細胞をLPSおよび試験物質と共にインキュベートすること:
a.細胞を80%の密集度で回収し、計数し、1×106/mlの最終濃度まで増殖培地に再懸濁した。
【0144】
b.細胞懸濁液を96ウェルのマイクロタイタープレートに植え付けた(細胞1×105個/100μl/ウェル)。各プレートを表1、表2および表3に示された通りに設計した。
【0145】
c.細胞を18~24時間インキュベートした(37±10℃、5%CO2)。
d.増殖培地を除去した;94μLの培地および4μLの媒体、試験物質、および対照を添加した。
【0146】
e.全てのウェルの内容物を上下に3回ピペッティングすることによって混合した。
f.プレートを2時間インキュベートした(37±1℃、5%CO2)。
g.全てのウェルに、LPS(10μl、100ng/mlの最終濃度のLPS)を添加した。
【0147】
h.全てのウェルの内容物を上下に3回ピペッティングすることによって混合した。
i.プレートを24±2時間インキュベートした(37±1℃、5%CO2)。
j.96-マイクロタイタープレートから、NO分泌アッセイのために培地を50μl収集し、残りをサイトカイン分泌アッセイのために-20℃で貯蔵した。
【実施例1】
【0148】
本発明の組成物の抗炎症特性評価するために、マッシュルーム抽出物およびカンナビノイドとのインキュベーション後におけるRAW細胞からの酸化窒素(NO)およびサイトカイン分泌のためのアッセイ、加えて生存率アッセイを行った。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
細胞増殖および生存率(XTTアッセイ)
a.XTT反応溶液を調製した。
b.各ウェルに50μlのXTT反応溶液を添加した。
c.プレートを加湿した雰囲気中(例えば37℃、5%CO2)でインキュベートした。
d.プレートを穏やかに振盪して、ウェル中に色素を均一に分配した。
e.サンプルの吸光度を、分光光度計(ELISAリーダー)を用いて、ブランクのようなバックグラウンド対照に対して450nmの波長で測定した。
f.参照吸光度を測定するために(非特異的な読み取りを測定するために)、620nmの波長を使用して、450nmの測定値から引いた。
g.細胞のアイドリングの吸光度は、全てのウェルで0.5~1.5であった。
【0153】
酸化窒素(NO)試験(グリース(Griess)試験)
a.スルファニルアミド溶液およびNED溶液をそのまま室温に平衡化した(15~30分)。
b.提供された0.1M亜硝酸塩標準を培養培地で1:1,000に希釈することによって、1mlの100μM亜硝酸塩溶液を調製した。
c.亜硝酸塩標準参照曲線のために、2本のカラム(16ウェル)を非結合96ウェルプレートで指定した。列B~Hのウェルに、50μlのアッセイ培地を分配した(
図1)。
d.100μlの100μM亜硝酸塩溶液を、列Aの残りの2つのウェルに添加した。即座に連続2倍希釈(50μl/ウェル)をプレートに沿って2連で実行して、亜硝酸塩の標準参照曲線(100、50、25、12.5、6.25、3.13および1.56μM)を生成し、ウェルの1.56μMのセットから50μlを捨てた。
e.亜硝酸塩の標準参照曲線のために、50μlのスルファニルアミド溶液を、全ての実験サンプルおよび一連の希釈物を含有するウェルに分配した。
f.プレートを、遮光して、室温で5~10分間インキュベートした。
g.全てのウェルに50μlのNED溶液を分配した。
h.プレートを、遮光して、室温で5~10分間インキュベートした。
i.30分間以内に、520nm~550nmのフィルターを用いたプレートリーダーで吸光度を測定した。
j.NO分泌の阻害は、細胞の生存率への作用がない(媒体対照と比較して95%を超える生存率)濃度でのみ関連するとみなされた。
図2に、生存率に関する代表的な結果を示す。
【0154】
結果:マッシュルーム抽出物
酸化窒素(NO)分泌
a.霊芝、アガリクス・ブラゼイ(Agaricus Blazai)、冬虫夏草Cs-4(2mg/ml)および冬虫夏草M(0.08mg/ml)が、2~3の独立した実験において、NO分泌NO分泌を阻害することにおける唯一の有効なマッシュルームであった(細胞の生存率への作用がまったくない)。
b.表4は、媒体対照、マッシュルーム抽出物での処置後のRAW細胞からのNO分泌、およびNO分泌の阻害%の計算(100%-NOマッシュルーム/NO媒体×100%)を記載している。冬虫夏草Mが、用量依存的と考えられるNO分泌を阻害することにおいて、最も有効であることが見出された。また霊芝とのインキュベーション後にも著しい阻害を観察できるが、阻害は最大濃度(2mg/ml)でしか観察することができなかった。
c.インビトロでは、活性のために(細胞の生存率に影響を与えることなく)極めて狭い範囲が存在したと考えられる。
d.ターキーテイル、舞茸、椎茸およびチャーガは、NO分泌への作用がなかった(表4を参照)。
e.
図3は、NO分泌の代表的な結果を示す。
【0155】
【0156】
サイトカイン分泌
a.霊芝、冬虫夏草M、アガリクス・ブラゼイ、および冬虫夏草Cs-4を、105個のRAW細胞/ウェルと共に、0.08~2mg/mlで24時間インキュベートした。
b.多重分析(CCL3/MIP1α、IL-6、IL-1β、TNFα、IL-10およびIL-6)のために、細胞からの培地を2連で収集した。
c.これらの条件下で、IL-4、IL-10およびIL-1βは分泌されなかった(検出限界未満であった)。
d.CCL3/MIP-1α分泌は、サンプルを1:20に希釈したとしても、検出限界を超えた。
e.表5のIL-6分泌は、媒体対照、マッシュルーム抽出物での処置後のRAW細胞からのIL-6分泌、およびIL-6分泌の阻害%(100%-IL-6マッシュルーム/IL-6媒体×100%)またはIL-6分泌の上昇%(IL-6マッシュルーム/IL-6媒体×100%-100%)の計算を記載している。
f.TNFα分泌 表6は、媒体対照、マッシュルーム抽出物での処置後のRAW細胞からのTNFα分泌、およびTNFα分泌の分泌%(TNFαマッシュルーム/TNFα媒体×100%)またはTNFα分泌の上昇%(TNFαマッシュルーム/TNFα媒体×100%-100%)の計算を記載している。
g.アッセイからの結果はまた、
図4にも示される。
【0157】
【0158】
【0159】
カンナビノイド抽出物
酸化窒素分泌:以下の表7に、カンナビノイド抽出物によるNO分泌に関する結果を示す。
a.CBDは、NO分泌を阻害することにおいて有効であり、15~20μMで細胞の生存率に影響を及ぼさなかったが、THCは20μMで影響があった。
b.ほとんど用量応答はなかった。活性のために(細胞の生存率に影響を与えることなく)極めて狭い範囲が存在する。
c.
図5に、カンナビノイド抽出物のNO分泌への作用に関する結果も示す。
【0160】
【0161】
サイトカイン分泌
a.CBD(15μM)およびTHC(20μM)を、105個のRAW細胞/ウェルと共にインキュベートした。
【0162】
b.多重分析(CCL3/MIP1α、IL-6、IL-1β、TNFα、IL-10およびIL-6)のために、細胞からの培地を2連で収集した。
c.これらの条件下で、IL-4、IL-10およびIL-1βは分泌されなかった(検出限界未満であった)。
【0163】
d.CCL3/MIP-1α分泌は、サンプルを1:20に希釈したとしても、検出限界を超えた。
e.IL-6分泌:
i.CBDはIL-6分泌に影響を与えなかった。
f.TNFα分泌:
i.CBDはTNFα分泌に影響を与えなかった。
ii.THCはTNFα分泌に影響を与えなかった。
【0164】
結果は、
図4にも示される。
カンナビノイド抽出物と組み合わせたマッシュルーム抽出物
酸化窒素分泌:表8は、カンナビノイド有り/無しの、媒体対照、マッシュルーム抽出物での処置後のRAW細胞からのNO分泌、およびNO分泌の阻害%の計算(100%-NOマッシュルーム/NO媒体×100%)を記載している。
【0165】
a.DMSO、CBD(15μM)またはTHC(20μM)を、霊芝、冬虫夏草M、アガリクス・ブラゼイ(Agaricus Blazai)、および冬虫夏草Cs-4(0.08~2mg/ml)と組み合わせて、105個のRAW細胞/ウェルと共に24時間インキュベートした。
【0166】
b.細胞の培地を収集し、NO分泌に関して測定した(グリースNOキット)。
c.霊芝:THCは、霊芝(2mg/ml)によるNO分泌の阻害を著しく増加させた。CBDは、わずかな相加効果しかなかった。この組合せが、NO分泌阻害に関して最も有力な組合せと考えられる。
【0167】
d.冬虫夏草M(RM):THCは、冬虫夏草M(0.08mg/ml)によるNO分泌阻害を強化した。CBDは、このような作用を有していなかった。
e.冬虫夏草Cs-4(CS):THCとCBDの両方が、冬虫夏草Cs-4(2mg/ml)によるNO分泌の阻害を増加させた。
【0168】
f.アガリクス・ブラゼイ:THCとCBDの両方が、アガリクス・ブラゼイ(2mg/ml)によるNO分泌の阻害を増加させた。
g.冬虫夏草M 0.08mg/mlとTHC 20μMは、NO分泌阻害に関して最も有力な組合せである。
【0169】
【0170】
【0171】
サイトカイン分泌
a.DMSO、CBD(15μM)またはTHC(20μM)を、霊芝、冬虫夏草M、アガリクス・ブラゼイ(Agaricus Blazai)、および冬虫夏草Cs-4(0.08~2mg/ml)と組み合わせて、105個のRAW細胞/ウェルと共にインキュベートした。
【0172】
b.多重分析(CCL3/MIP1α、IL-6、IL-1β、TNFα、IL-10およびIL-6)のために、細胞からの培地を2連で収集した。
c.これらの条件下で、IL-4、IL-10およびIL-1βは分泌されなかった(検出限界未満であった)。
【0173】
d.CCL3/MIP-1α分泌は、サンプルを1:20に希釈したとしても、検出限界を超えた。
e.IL-6分泌(表9は、カンナビノイド有りおよび無しの、媒体対照、マッシュルーム抽出物での処置後のRAW細胞からのIL-6分泌、およびIL-6分泌の阻害%(100%-IL-6マッシュルーム/IL-6媒体×100%)またはIL-6分泌の上昇%(IL-6マッシュルーム/IL-6媒体×100%-100%)の計算を記載している。
【0174】
g.TNFα分泌:表10は、カンナビノイド有りおよび無しの、媒体対照、マッシュルーム抽出物での処置後のRAW細胞からのTNFα分泌、およびTNFαの分泌%(TNFαマッシュルーム/TNFα媒体×100%)またはTNFα分泌の上昇%(TNFαマッシュルーム/TNFα媒体×100%-100%)の計算を記載している。
i.CBD+霊芝(2mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してIL-6分泌を減少させた(炎症促進性作用)。
ii.CBD+冬虫夏草Cs-4(0.08mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してIL-6分泌を減少させた(炎症促進性作用)。・CBD+冬虫夏草Cs-4(2mg/ml)は、冬虫夏草Cs-4(2mg/ml)単独のIL-6分泌への阻害作用を減らした。・CBD+アガリクス・ブラゼイ(Agaricus balzei)(0.4mg/ml)は、アガリクス・ブラゼイ(Agaricus balzei)(0.4mg/ml)単独のIL-6分泌への阻害作用を減らした。
iii.THC+霊芝(0.08mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してIL-6分泌を減少させた。
iv.THC+冬虫夏草Cs-4(2mg/ml)が、両方の抽出物単独と比較してIL-6分泌を増加させた。・THC+冬虫夏草Cs-4(0.08mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してIL-6分泌を減少させた。・THC+冬虫夏草M(0.08mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してIL-6分泌を減少させた。
【0175】
h.TNFα分泌:
i.CBD+霊芝(2mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してTNFα分泌を減少させた。・THC+霊芝(0.4~2mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してTNFα分泌を減少させた。・CBD/THC+冬虫夏草Cs-4(2mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してTNFα分泌を増加させた。
ii.THC+冬虫夏草Cs-4(0.08mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してTNFα分泌を減少させた。
iii.THC+アガリクス・ブラゼイ(2mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してTNFα分泌を減少させたが、THC+アガリクス・ブラゼイ(0.08mg/ml)は、両方の抽出物単独と比較してTNFα分泌を増加させた。
iv.THC+霊芝(0.08mg/ml)は、IL-6分泌を最も減少させた。THC+冬虫夏草Cs-4(2mg/ml)は、IL-6分泌を最も増加させた。
v.THC+冬虫夏草Cs-4(0.08mg/ml)は、TNFα分泌を最も減少させた。
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
本明細書の上記で提供されるデータから、マッシュルーム抽出物とTHCまたはCBDとの組合せの抗炎症特性は、各成分単独のものとは著しく異なることを理解することができ、したがってマッシュルーム抽出物のTHCまたはCBDとの相乗的な抗炎症性作用が示される。
【0180】
表8は、マッシュルーム抽出物とTHCまたはCBDの組合せが、各成分単独に比べてNOの分泌の減少をもたらし、これらの組合せの抗炎症特性を増加させたことを示すことを具体的に示す。NO分泌の最大の阻害は、0.08mg/mlの冬虫夏草 Mと20μMのTHCの組合せで観察された。
【0181】
マッシュルーム抽出物とTHCまたはCBDの組合せのIL-6分泌への作用は、IL-6分泌の減少を示したが、一方でTHC+霊芝(0.08mg/ml)は、表9で示されるように、THC+冬虫夏草Cs-4(2mg/ml)は、IL-6分泌を最も増加させた。
【0182】
表10に、マッシュルーム抽出物とTHCまたはCBDとの組合せのTNFα分泌への作用を示す。TNFα分泌における最大の減少は、THC+冬虫夏草Cs-4(0.08mg/ml)で観察されたことから、これは抗炎症活性を示す。
【実施例2】
【0183】
マッシュルーム抽出物およびカンナビノイドの様々な組合せでの処置後のpanc-1およびegl-1細胞の生存率アッセイ
試験システム
a.PANC-1細胞(ヒト膵臓がん細胞)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、米国メリーランド州ロックビル)。
b.EGL-1細胞(ヒト肝外胆管癌)。
【0184】
細胞成長:
PANC-1/EGL-1細胞のための増殖培地:10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタミン、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(PS)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)高グルコース。
【0185】
EGL-1細胞のための増殖培地:10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタミン、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(PS)が補充されたRPMI-1640培地。
【0186】
PANC-1のためのアッセイ培地:アッセイ培地は、1%FBSのみを含有していた。
EGL-1のためのアッセイ培地:アッセイ培地は、DMEM低グルコース(1g/L)中に1%FBSのみを含有していた。
【0187】
実験設計:細胞を試験物質と共にインキュベートすること:
a.細胞を80%の密集度で回収し、計数し、75×103/ml(PANC-1)または50×103(EGL-1)の最終濃度まで増殖培地中に再懸濁した。
b.Panc-1細胞懸濁液を、細胞7500個/100μl/ウェルで、96ウェルのマイクロタイタープレートに植え付け、EGL-1細胞懸濁液を、細胞5000個/100μl/ウェルで、96ウェルのマイクロタイタープレートに植え付けた。
c.細胞を18~24時間インキュベートした(37±10℃、5%CO2)。
d.増殖培地を除去した;80μLのアッセイ培地および20μLの媒体、試験物質、および対照を添加した。各プレートを表11、表12および表13に示された通りに設計した。
e.全てのウェルの内容物を上下に3回ピペッティングすることによって混合した。
f.プレートを72±2時間インキュベートした(37±1℃、5%CO2)。
g.全てのプレート上の培地を100μlの培養培地で置き換えた。
【0188】
XTTアッセイ
a.XTT反応溶液を調製した。
b.各ウェルに50μlのXTT反応溶液を添加した。
c.プレートを加湿した雰囲気中(例えば37℃、5%CO2)でインキュベートした。
d.プレートを穏やかに振盪して、ウェル中に色素を均一に分配した。
e.サンプルの吸光度を、分光光度計(ELISAリーダー)を用いて、ブランクのようなバックグラウンド対照に対して450nmの波長で測定した。
f.参照吸光度を測定するために(非特異的な読み取りを測定するために)、620nmの波長を使用して、450nmの測定値から引いた。
g.細胞のアイドリングの吸光度は、全てのウェルで0.5~1.5であった。
【0189】
【0190】
【0191】
表13:カンナビノイド抽出物のプレートのセットアップ
【実施例3】
【0192】
がん研究の結果:マッシュルーム抽出物
【0193】
【0194】
a.7つのマッシュルーム抽出物を、0.5~10mg/mlでPANC-1またはEGL-1と共に72時間インキュベートした。
b.表12および表13は、最大の致死(最も低い生存率)をもたらすマッシュルームの用量を記載する。
【0195】
c.細胞の生存率を試験した(XTTアッセイ)。
d.EGL-1細胞は、細胞死に対して、PANC-1細胞より一層高い耐性を有していた。冬虫夏草M(RM)が最も有力なマッシュルームであり、霊芝がそれに続いた。
【0196】
e.PANC-1細胞:チャーガが最も有力なマッシュルームであり、霊芝およびターキーテイル(MS)がそれに続いた。
f.
図7および
図8に結果を示す。
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
結果は、アガリクスおよび冬虫夏草Cs-4(MS)と共にインキュベートされたEGL-1およびPANC-1細胞は両方とも、100%より高い生存率%を示したことを示す。
【0202】
マッシュルームが細胞の増殖または代謝に影響を及ぼすかどうかを調査するために、両方のマッシュルームを同じ濃度でEGL-1細胞に2時間、6時間、24時間、および72時間にわたり添加した。
図2で見られるように、冬虫夏草Cs-4のケースにおいて、72時間後にのみより高い生存率が観察されたことから、増殖作用が示される。しかしながら、アガリクス・ブラゼイのケースにおいて、2時間後でさえもより高い生存率(媒体と比較して)が観察されたことから、代謝の変化が示される。
【0203】
カンナビノイド抽出物
a.CBD(0.1~100μM)またはTHC(0.5~375μM)を、7,500個のPANC-1細胞/ウェル(膵臓癌)またはEGL-1細胞/ウェル(肝外の癌)と共に72時間インキュベートした。
【0204】
b.細胞の生存率を試験した(XTTアッセイ)。
c.EGL-1:
i.CBDは、40~100μMで有力であった(15~30%の生存率)。
ii.THCは、100~375μMで有力であった(15%の生存率、用量応答なし)。
【0205】
d.PANC-1:
i.CBDは、40~100μMで有力であった(35%の生存率、用量応答なし)。
ii.THCは、100~375μMで有力であった(35%の生存率、用量応答なし)。
【0206】
図9に結果を示す。
マッシュルーム抽出物とカンナビノイド抽出物との組合せ
a.DMSO、CBD(40μM)またはTHC(50μM)を、霊芝、冬虫夏草M、冬虫夏草Cs-4、およびターキーテイル(MS)抽出物(0.5~6mg/ml)と組み合わせて、7,500個のPANC-1細胞/ウェルと共にインキュベートした。
【0207】
b.THCとの組合せは、マッシュルームの抗がん性の作用を改善しなかった。
c.CBDとの組合せは、全てのマッシュルーム単独と比較して細胞生存率を減少させた。冬虫夏草M(RM)および霊芝とCBDとの組合せが、細胞の生存率を減少させることにおいて最も有力な組合せであった。
【0208】
THCまたはCBD有りおよび無しのマッシュルーム抽出物の組合せの相乗的な抗がん特性は、
図10で示されるように、THCまたはCBD有りおよび無しで細胞をマッシュルーム抽出物と共にインキュベートした後のPANC-1およびEGL-1がん細胞株の生存率によって実証される。
【0209】
マッシュルーム抽出物とCBDの組合せは、マッシュルーム抽出物単独と比べて抗がん作用の増加を示し、冬虫夏草(RM)および霊芝とCBDとの組合せで最も顕著な作用が観察された。
【実施例4】
【0210】
投与経路:カンナビノイドと医薬用マッシュルームの組合せは、経口投与、静脈内投与または局所投与のいずれかに製剤化される。
本発明の配合物は、望ましい濃度、有効量、用量レジメンおよび処置回数を有するようにさらに配合を発展させるために、これらに限定されないが、とりわけ追加成分または医薬賦形剤を含む。これらの成分としては、とりわけ、可溶化剤、安定剤、緩衝液、張度調節物質、増量剤、粘度増強剤/低下剤、界面活性剤、キレート剤、およびアジュバントが挙げられる。
【0211】
本発明の大麻組成物は、植物由来のシガレットを吸入することによって、または経口または静脈内投与によって投与される。吸入経路は、予め製造されたシガレットまたは手巻きのシガレットによって最も一般的に使用される。静脈内経路は、用量およびタイミングの正確な制御を提供する。カンナビノイド組成物は、口腔粘膜経路によっても送達される。
【0212】
経鼻投与(経鼻)は、局所で作用する物質のために、加えて、例えば気道に沿って吸収させるための点鼻薬の鼻内噴霧の通気のために使用することができる。このような物質は、吸入薬とも称され、例えば吸入麻酔薬である。
【0213】
経口投与 経口薬は、錠剤またはカプセル剤として摂取される。
錠剤:錠剤の溶解は、粒度および結晶形によって著しい影響を受ける可能性がある。溶解時間は、迅速な作用(迅速な溶解)のため、または持続放出のために(遅い溶解速度は、作用期間を延長させたり、または初期の高い血漿濃度を回避したりする)改変することができる。
【0214】
カプセル剤:カプセル剤は、活性物質を封入したゲル状の外包である。カプセル剤は、吸収を遅延させるために摂取後の一定時間無傷の状態を維持するように設計することができる。これはまた、同じ用量で迅速な吸収と持続的な吸収を生じさせるために、持続放出粒子と迅速放出粒子との混合物を含有していてもよい。
【0215】
経口持続放出:カプセル剤または錠剤での経口持続放出は、これらに限定されないが、不溶性の多孔質マトリックス中に活性成分を埋め込む方法によって達成され、この場合、溶解している薬物が、それが吸収できるようになる前に、マトリックスから出るその経路を生じさせる必要があり、持続放出製剤によって達成され、この場合、マトリックスが膨潤してゲルを形成し、それを介して薬物が放出され、または浸透圧による制御放出経口送達系によって達成され、この場合、活性化合物は、一方の末端にレーザードリル穴を有する透水性膜に包まれている。水が膜を通過するとき、薬物は孔を介して消化管に押し出され、そこで薬物を吸収することができる。
【0216】
溶液剤:医薬溶液剤は、広範囲にわたり治療剤の経口投与のための剤形として使用される。医薬溶液剤は、治療剤および様々な賦形剤が選択された溶媒系中に溶解されている液体製剤と定義される。医薬溶液剤は均一であり、すなわち治療剤および賦形剤は媒体中に溶解されている。
【0217】
非経口投与:非経口投与は、静脈内、皮下、筋肉内、および関節内投与を使用して実行される。薬物は、液体の形態で貯蔵されるか、または不安定な場合、凍結乾燥形態で貯蔵される。
【0218】
局所投与:局所製剤は、とりわけ、クリーム剤、軟膏剤、ペースト剤、ローション剤またはゲル剤を含む。
経皮送達:経皮送達は、例えば経皮パッチによって達成される。
【0219】
代替の投与経路は、坐剤、心室内、筋肉内、吸入、エアロゾル、および舌下である。
【国際調査報告】