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特表2022-530193湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(54)【発明の名称】湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20220621BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 14/42 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 14/48 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20220621BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20220621BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B16/02 Z
C04B14/42 Z
C04B16/06 A
C04B16/06 B
C04B14/48 Z
C04B40/02
C04B18/14 F
C04B18/08 Z
C04B18/14 Z
C04B14/04 Z
C04B18/14 A
C04B14/28
C04B14/10 Z
B28B11/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560104
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 CA2020050466
(87)【国際公開番号】W WO2020206540
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】62/832,956
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520431166
【氏名又は名称】カービクリート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】メールダッド マホーティアン
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA02
4G055BA02
4G112PA03
4G112PA06
4G112PA10
4G112PA17
4G112PA22
4G112PA24
4G112PA27
4G112PA28
4G112PA29
4G112RA02
(57)【要約】
本発明は、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法に関し、特に、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、鋳型内で部分的又は完全に凝結され、鋳型の外側で事前調整され、次いで、養生チャンバ内で二酸化炭素で養生される。湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、任意に強化される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法であって、前記方法は、
スラグ系結合材と、骨材と、水と、を提供する提供ステップと、
前記スラグ系結合材と、前記骨材と、前記水と、を混合して、0.2を超える第1の水対スラグ系結合材重量比を含む非ゼロスランプコンクリート組成物を製造する混合ステップと、
前記非ゼロスランプコンクリート組成物を鋳型に移すことにより、前記非ゼロスランプコンクリート組成物を鋳造する鋳造ステップと、
前記非ゼロスランプコンクリート組成物を前記鋳型内で凝結させて、前記第1の水対スラグ系結合材重量比よりも小さい第2の水対スラグ系結合材重量比を含むスラグ系中間体を製造する凝結ステップと、
前記スラグ系中間体を脱型して、脱型中間体を製造する脱型ステップと、
前記脱型中間体を事前調整して、前記第1の水対スラグ系結合材重量比よりも小さく、かつ前記第2の水対スラグ系結合材重量比よりも小さい第3の水対スラグ系結合材重量比を含む脱型事前調整済みスラグ系中間体を製造する事前調整ステップと、
前記脱型事前調整済みスラグ系中間体を二酸化炭素で養生して、前記湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造する養生ステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物の前記鋳造ステップが、プレス/圧縮を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラグ系結合材が、飛散灰、焼成頁岩、シリカヒューム、ゼオライト、GGBF(粉砕造粒高炉)スラグ、石灰石粉末、水硬性セメント及び非水硬性セメントからなる群から選択される少なくとも1つの他の結合材を含まないか、又はそれらと混合されたスラグである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記スラグが、製鋼スラグ、ステンレス製鋼スラグ、塩基性酸素転炉スラッジ、高炉スラッジ、亜鉛、鉄又は銅生産の副産物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記鋳造ステップの前に前記鋳型に強化材を配置する強化ステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記強化材が、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又はFRP強化鉄筋である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スラグの累積ケイ酸カルシウム含有量が、少なくとも20重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記事前調整ステップを実施して、前記湿式鋳造スラグ系コンクリートの体積の少なくとも1%の多孔度を増加させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物が、5mm~250mmの範囲のスランプ値を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物が、0.7~1.0の範囲の生コンクリートの圧縮係数試験を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スラグ系結合材が、還元製鋼スラグ、酸化製鋼スラグ、転炉製鋼スラグ、電気アーク炉(EAF)スラグ、塩基性酸素炉(BOF)スラグ、取鍋スラグ、高速冷却製鋼スラグ及び徐冷製鋼スラグ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される製鋼スラグである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記湿式鋳造スラグ系コンクリート製品が、プレキャストの鉄筋及び非鉄筋コンクリートパイプ、ボックスカルバート、排水製品、舗装スラブ、床スラブ、交通障壁、壁、マンホール、擁壁、舗装、タイル及び屋根材からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記湿式鋳造スラグ系コンクリートが、少なくとも5重量%のスラグ含有量を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物が、促進剤、遅延剤、粘度調整剤、空気混入剤、発泡剤、ASR(アルカリシリカ反応)阻害剤、洗い流し防止剤、防錆剤、収縮低減剤、コンクリート亀裂低減剤、可塑剤、超可塑剤、封止材、塗料、コーティング、減水剤、撥水剤、白華制御剤、ポリマー粉末、ポリマーラテックス及び加工性保持剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物が、セルロース繊維、ガラス繊維、マイクロ合成繊維、天然繊維、PP繊維、PVA繊維及び鋼繊維のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
CO養生が、追加の外部熱源及び/又はエネルギー源を含まない、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記養生ステップは、少なくとも5体積%の濃度のCOを含有するガスを用いて、チャンバ/密閉空間/容器/部屋内で行う、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記脱型ステップは、前記脱型中間体が少なくとも0.01MPaの圧縮強度を有するときに行う、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法に関し、特に、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、鋳型内で部分的又は完全に凝結され、鋳型の外側で事前調整され、次いで、養生チャンバ内で二酸化炭素で養生される。湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、任意に強化される。
【背景技術】
【0002】
冶金スラグは、一般的に埋め立てられる多量の廃棄物である。冶金スラグは、適切な条件下で結合材料として働くことがある。製鋼スラグを含む冶金スラグの新しい用途を見つける必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、湿式鋳造方法により、主結合材としての冶金スラグ及び二酸化炭素から作られる任意に強化したコンクリート製品の開発について説明する。
【0004】
一態様によれば、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法が提供され、本方法は、非ゼロスランプコンクリートの組成物を提供するステップであって、組成物は、スラグ系結合材と、骨材と、水と、を含む提供ステップと、スラグ系結合材、骨材及び水を混合して、0.2を超える第1の水対結合材重量比を含む非ゼロスランプコンクリートを製造する混合ステップと、非ゼロスランプコンクリートを鋳型に移すことにより、非ゼロスランプコンクリート組成物を鋳造する鋳造ステップと、非ゼロスランプコンクリートを鋳型内で部分的に又は完全に凝結させて、第1の水対結合材重量比よりも小さい第2の水対結合材重量比を含むスラグ系中間体を製造する凝結ステップと、スラグ系中間体を脱型して脱型中間体を製造する脱型ステップと、脱型中間体を事前調整して、第1の水対結合材重量比よりも小さく、かつ第2の水対結合材重量比よりも小さい第3の水対結合材重量比を含む脱型調整済みスラグ系中間体を製造する事前調整ステップと、脱型調整済みスラグ系中間体を二酸化炭素で養生して、調整済みスラグ系中間体を活性化し、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造する養生ステップと、を含む。
【0005】
別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートの鋳造ステップは、プレス/圧縮を含まない。
【0006】
別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグ系結合材は、飛散灰、焼成頁岩、シリカヒューム、ゼオライト、GGBF(粉砕造粒高炉)スラグ、石灰石粉末、水硬性セメント及び非水硬性セメントからさらになる群から選択される少なくとも1つの他の結合材を含まないか、又はそれらと混合されるスラグである。
【0007】
また別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグは、製鋼スラグ、ステンレス製鋼スラグ、塩基性酸素転炉スラッジ、高炉スラッジ、亜鉛、鉄、銅産業の副産物及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、鋳造ステップの前に鋳型に強化材を配置する強化ステップをさらに含む。
【0009】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、強化材は、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又は繊維強化ポリマー(FRP)強化鉄筋である。
【0010】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグの累積ケイ酸カルシウム含有量は、少なくとも20重量%である。
【0011】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、事前調整ステップは、湿式鋳造スラグ系コンクリートの体積の少なくとも1%の多孔度を増加させる。
【0012】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、5mm~250mmの範囲のスランプ値を有する。
【0013】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、生コンクリートに対する圧縮係数試験を有し、0.7~1.0の範囲の値を見出さなければならない。
【0014】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、製鋼スラグは、還元製鋼スラグ、酸化製鋼スラグ、転炉製鋼スラグ、電気アーク炉スラグ(EAFスラグ)、塩基性酸素炉スラグ(BOFスラグ)、取鍋スラグ、高速冷却製鋼スラグ及び徐冷製鋼スラグ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリートは、プレキャストの鉄筋及び非鉄筋コンクリートパイプ、ボックスカルバート、排水製品、舗装スラブ、床スラブ、交通障壁、壁、マンホール、擁壁、舗装、タイル及び屋根板からなる群から選択される製品にさらに加工される。
【0016】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリートは、少なくとも5重量%のスラグ含有量を含む。
【0017】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、少なくとも1つの促進剤、遅延剤、粘度調整剤、空気混入剤、発泡剤、ASR(アルカリシリカ反応)阻害剤、洗い流し防止剤、防錆剤、収縮低減剤、コンクリート亀裂低減剤、可塑剤、超可塑剤、封止材、塗料、コーティング、減水剤、撥水剤、白華制御剤、ポリマー粉末、ポリマーラテックス及び加工性保持剤をさらに含む。
【0018】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、少なくとも1つのセルロース繊維、ガラス繊維、マイクロ合成繊維、天然繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維及び鋼繊維をさらに含む。
【0019】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、CO養生は、追加の外部熱源/エネルギー源を含まない。
【0020】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、脱型調整済みスラグ系中間体は、少なくとも5体積%の濃度のCOを含有するガスを用いて、チャンバ/密閉空間/容器/部屋内で養生される。
【0021】
さらに別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品1mを製造する際の非ゼロスランプコンクリートの第1の水対結合材比は0.45であり、非ゼロスランプコンクリートを凝結させる時間は18時間である。
【0022】
さらに別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品1mの製造は、スラグの質量が350kg又は480kgで始まる。
【0023】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、脱型ステップは、脱型中間体が少なくとも0.01MPaの圧縮強度を有するときに起こる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本明細書に記載の一実施形態による湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法を示すプロセスブロック図である。
図2】本明細書に記載の一実施形態による鋳造及びCO養生ステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、添付図面を参照する。
【0026】
従来、コンクリート製造における結合材としては新焼結ポルトランドセメントが使用され、湿式鋳造セメント系プレキャストコンクリート製品は、一般的に熱と蒸気で養生される。対照的に、本発明の湿式鋳造スラグ系コンクリートは、コンクリート及びプレキャスト製品の製造において、ポルトランドセメントに代わる主な結合材として、冶金工場の副産物、及び好ましい実施形態では製鋼工場の副産物を使用する。加えて、コンクリートを養生する活性剤として二酸化炭素が使用され、そのプロセス中に隔離される。好ましい実施形態では、CO養生プロセス中に追加の熱又は蒸気を必要としない。任意に強化した、提案する湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、従来のセメント系プレキャスト製品と比較したとき、同等の又は優れた機械的特性及び耐久性を示す可能性があり、一方その製造による大気中への温室効果ガスの排出を削減する。また、提案する本発明は、スラグ系コンクリート製品に従来のセメントが使用されておらず、スラグ系コンクリート製品においては骨材含有量も少なくて済むため、天然資源の消費量も削減する。最終的に、提案する本発明により任意に強化された湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造することで、プレキャストコンクリート生産施設における生産率を向上させる可能性がある。
【0027】
[材料]
湿式鋳造スラグ系コンクリート56の製造における主な結合材は、好ましい実施形態では、鋼又はステンレス鋼の生産に由来するスラグ11である。また、亜鉛、鉄及び銅の生産による他の副産物材料をスラグ11として考えることができる。
【0028】
様々なスラグ11を、異なる鋼生産方法を実施する鋼工場から収集することができる。本明細書に記載の湿式鋳造スラグ系コンクリートの製造における主結合材として組み込むことができるスラグ11の種類の中には、ステンレス製鋼スラグ、還元製鋼スラグ、酸化製鋼スラグ、転炉製鋼スラグ、電気アーク炉スラグ(EAFスラグ)、塩基性酸素炉スラグ(BOFスラグ)、取鍋スラグ、高速冷却製鋼スラグ、徐冷製鋼スラグ、塩基性酸素転炉スラッジ、高炉スラッジ及びこれらの組み合わせがある。
【0029】
好ましい実施形態におけるスラグ11の酸化カルシウム重量含有量は、10%超、好ましくは15%超、好ましくは20%超である。好ましい実施形態における酸化シリカ重量含有量は、6%超、好ましくは8%超、好ましくは12%超である。好ましい実施形態におけるスラグの全酸化鉄含有量は、40%未満、好ましくは30%未満である。好ましい実施形態における製鋼スラグ11は、累積ケイ酸カルシウム含有量が少なくとも20%であり、遊離石灰濃度が15%未満、好ましくは7%未満のスラグである。好ましい実施形態におけるスラグ11の嵩密度は1.0~2.0g/cmの範囲であり、見掛け密度は2.0~6.0g/cmで変化し得る。
【0030】
スラグ11は、本明細書に記載の湿式鋳造スラグ系コンクリート混合物に組み込まれる前に、(必要に応じて)より小さなサイズに粉砕してもよい。スラグ11の粉砕は、ボールミル、ロッドミル、自生ミル、SAGミル、ペブルミル、高圧粉砕ロール、VSI又はタワーミルのような任意の機械的機械で行うことができる。粉砕プロセスは、湿式でも乾式でも実行することができる。乾式サイズ縮小プロセスが好ましいが、湿式プロセスを選択してスラグを粉砕する場合、粉砕されたスラグは、粉砕後に完全に乾燥させる又は半乾燥させることができる。スラグを分級機に通過させることは、より粒径/粒度の小さいスラグ11を得るための代替オプションである。使用される分級機は当技術分野で公知であり、スクリーン、遠心分離機及びサイクロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
好ましい実施形態における粉砕又は分級されたスラグ11は、メッシュ#10(2000ミクロン)、好ましくはメッシュ#50(297ミクロン)、好ましくはメッシュ#200(74ミクロン)、好ましくはメッシュ#400(37ミクロン)を通過し、これらの各々を単独で又は少なくとも1つの他の結合材13と組み合わせて使用することができる。ふるいを利用して、粉砕後又は粉砕前のいずれかでスラグをスクリーニングしてもよい。したがって、適切な粒度分布を有するスラグ11を得るために、粉砕法及びスクリーニング法の1つ又は組み合わせを実行することができる。
【0032】
スラグ11は、少なくとも50m/kg、好ましくは150m/kg、好ましくは少なくとも200m/kgのブレイン繊度に粉砕及び/又はスクリーニングしてもよい。好ましい実施形態では、スラグ系湿式コンクリート中のスラグ11は、スラグの50パーセントが200ミクロン(D50=200μm)未満、好ましくは150ミクロン(D50=150μm)未満、好ましくは100ミクロン(D50=100μm)未満、好ましくは50ミクロン(D50=50μm)未満、好ましくは25ミクロン(D50=25μm)未満、好ましくは10ミクロン(D50=10μm)未満である。
【0033】
スラグ11の遊離石灰含有量は、混合物に組み込む前に、従来技術における任意の標準的な既知の方法で減少させてもよい。代替的に、スラグを最初に熟成させてスラグの遊離酸化カルシウム(遊離石灰)含有量を減少させ、次いで、混合物に組み込むことができる。湿式鋳造スラグ系コンクリートのスラグ11含有量は、コンクリートの重量の5%以上、好ましくは湿式鋳造スラグ系コンクリート又は非ゼロスランプコンクリート組成物の重量の20%以上であるべきである。
【0034】
スラグ系結合材14は、スラグ単独(すなわち別の結合材を含まないスラグ)、又はスラグとセメント系材料/ポゾラン材料などの少なくとも1つの他の結合材13との組み合わせをさらに含んでもよい。一例として、スラグ11は、少なくとも1つの他の結合材13と混合して、飛散灰、焼成頁岩、シリカヒューム、ゼオライト、GGBF(粉砕造粒高炉)スラグ、石灰石粉末、水硬性セメント、非水硬性セメント、及びこれらの組み合わせをさらに含むスラグ系結合材14を製造することができる。
【0035】
湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造における充填材として、天然又は人工の通常重量及び軽量骨材を含む様々な種類の骨材15をスラグ系湿式コンクリート製品に組み込むことができる。可能性のある軽量骨材の例としては、天然軽量骨材(例えば軽石)、膨張粘土骨材、膨張頁岩骨材及び膨張鉄スラグ骨材が挙げられる。その他の使用可能な骨材としては、砕石、製造砂、砂利、砂、再生骨材、花崗岩、石灰石、石英、チョーク粉末、大理石粉末、石英砂及び人工骨材が挙げられる。これらの骨材は、細骨材及び/又は粗骨材として混合物に組み込まれる。骨材含有量は、湿式鋳造スラグ系コンクリート又は非ゼロスランプコンクリート組成物の重量の90%まで高くすることができる。
【0036】
提案するスラグ系湿式コンクリート56は、加工可能なコンクリートである。(スランプゼロコンクリートとは対照的に)湿式コンクリートを製造するためには、十分な水を乾燥成分に加えるべきである。必要な含水量は、主結合材として選択されるスラグの粒径、骨材の湿分及び結合材の含有量に依存する。より微細な粉砕スラグはより多くの水を吸収するため、湿式コンクリートを製造するためにはより多くの含水量が必要となる。水対結合材質量比は、0.9、好ましくは0.8、好ましくは0.7、好ましくは0.6、好ましくは0.5、好ましくは0.4、好ましくは0.3又は好ましくは0.2とすることができる。例えば、D50が25ミクロンのスラグのみからなる結合材については、水対結合材比が0.4であれば、加工可能な湿式コンクリートをもたらすことができる。骨材が非常に湿っている場合は、混合物に水を追加する必要がない場合がある。
【0037】
必要に応じて、混合物に化学混和剤17を導入することができる。化学混和剤17を混合物に導入するとき、特定の特性を満たす。可能な化学混和剤17としては、促進剤、遅延剤、粘度調整剤、空気混入剤、発泡剤、ASR(アルカリシリカ反応)阻害剤、洗い流し防止剤、防錆剤、収縮低減剤、亀裂低減剤、可塑剤、超可塑剤、減水剤、撥水剤、白華制御剤及び加工性保持剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
必要に応じて、スラグ系湿式コンクリートに繊維を添加することができる。セルロース繊維、ガラス繊維、マイクロ合成繊維、マイクロ合成繊維、天然繊維、PP繊維、PVA繊維及び鋼繊維の1つ又は組み合わせを混合物に組み込むことができる。
【0039】
「ゼロスランプコンクリート」とは、スランプコーンを除去した後に測定可能なスランプを示さない、硬い又は極めて乾燥した稠度(consistency)をもつコンクリートと定義される。標準的な例示的なスランプ試験は、水硬性セメントコンクリートについてのASTM C143である。非ゼロスランプコンクリート16は、ASTM C143のような試験によって、スランプコーンを除去した後に測定可能なスランプを示す、硬くもなく極めて乾燥した稠度もないコンクリートである。本明細書におけるスランプ値は、ASTM C143規格に記載された方法を使用して評価される。
【0040】
湿式鋳造スラグ系コンクリート56の製造方法1は、プレキャストの鉄筋コンクリートパイプ、ボックスカルバート、排水製品、舗装スラブ、床スラブ、交通障壁、壁、マンホール、プレキャストの非鉄筋コンクリート(プレーン)舗装、擁壁、タイル及び屋根板を含むがこれらに限定されない様々な製品を製造するように適応させることができる。製品は、地域及び国の規格及び規則を満たすものとする。
【0041】
図1を参照すると、湿式鋳造スラグ系コンクリート56の製造方法10の一実施形態が提供される。
【0042】
(i)湿式鋳造スラグ系コンクリート56の製造
湿式鋳造スラグ系コンクリート56の方法1は、非ゼロスランプコンクリート16の組成物を提供し、スラグ11及び任意の少なくとも1つの他の結合材13(スラグ系結合材14を提供する)と、骨材15と、化学混和剤17と、繊維19と、水5と、を含むがこれらに限定されない組成物のすべての成分を均一に混合10することから始まる。本発明で使用される湿式鋳造スラグ系コンクリート56の水対結合材比は、乾式鋳造又はゼロスランプコンクリートの含水量よりも高くすべきである。好ましい実施形態では、混合非ゼロスランプコンクリート16は、0.2、好ましくは0.25、好ましくは0.3、好ましくは0.35、好ましくは0.4、好ましくは0.45、好ましくは0.5、好ましくは0.55、好ましくは0.6又は好ましくは0.65よりも大きい第1の水対結合材重量比を有する。「水対スラグ系結合材重量比」及び「水対結合材重量比」という用語は同等のものである。
【0043】
非ゼロスランプコンクリート16は、好ましくは5~250mmのスランプ範囲を有する。非ゼロスランプコンクリート16は、好ましくは少なくとも5分間加工可能である。混合10は、非ゼロスランプコンクリート16が分離又はブリーディングの兆候がないことを保証すべきである。好ましい実施形態における非ゼロスランプコンクリート16の圧縮係数試験は、0.7~1.0の範囲である。鋳造前の非ゼロスランプコンクリート16の温度は、好ましくは0℃~30℃である。好ましい実施形態における生の非ゼロスランプコンクリート16は、任意の従来の方法(例示的な標準試験は、ASTM C231 for Air Content of Freshly Mixed Concrete by the Pressure Method(圧力法による生コンクリートの空気量))で測定される空隙含有量がコンクリートの体積の15%を超えてはならない。圧縮係数試験は、BS 1881-103:1993及びBS EN 12350-4:2009(BS EN 12350-4:2009、Testing fresh concrete Part 4:Degree of compatibility)に記載されている。これで、適切に混合した非ゼロスランプコンクリート16を鋳造に移す準備が整った。
【0044】
(ii)強化
好ましい実施形態では、非ゼロスランプコンクリート16を鋳造する前に、鋳型を調製し、必要に応じて、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又はFRP強化鉄筋などの強化材を鋳型内に配置する。鉄筋の直径は、5mm~60mmの範囲で変化し、耐力強度は100MPa~2100MPaの範囲であり得る。強化材は、規則及び規格に従って設計される。
【0045】
(iii)鋳造20、配置及び凝結
生の調製済み非ゼロスランプコンクリート16は、適切な手段によって移され、従来技術の任意の既知の方法で調製された鋳型内で鋳造される。鋳型は、鋼、鉄、アルミニウム、プラスチック、FRP又は他の材料で作ることができる。鋳型は、脱型プロセス30を容易にするために、鋳造前に予め潤滑されるべきである。湿式鋳造コンクリート又はスラグ系中間体26は、内部又は外部の振動器によって、120秒以内で鋳型内に固められる。湿式鋳造コンクリート又はスラグ系中間体26は、鋳型内でプレス又は圧縮する必要はない。すなわち、好ましい実施形態におけるプロセスは、プレス又は圧縮を含まない。スラグ系中間体26は、水32の損失により、鋳型内で部分的に又は完全に凝結させることができる。
【0046】
鋳型を周囲温度及び湿度に保ち、自由水32を徐々に蒸発させ、結合材を部分的又は完全に水和及び硬化させることができる。蒸発速度は、温度、相対湿度、非ゼロスランプコンクリート16の混合物の初期含水量、製品の表面積、及び鋳型が風に曝されている場合の空気流に依存する。水和及び硬化速度は、スラグ系結合材14の成分及び化学組成に依存する。
【0047】
自然蒸発に加えて、好ましい実施形態では、加熱要素又はドラムヒーター又は床暖房マット又はファン又はヒーター又は送風機又はファンヒーターによる蒸発及び/又は加熱31の1つ又は組み合わせを使用して、蒸発速度を加速することができる。加熱要素/ワイヤ又は床暖房マット又はドラムヒーターは、鋳型の外面を覆うように設置される。これらの要素は、鋳型の壁を加熱し、最終的に蒸発プロセスを増加させて、コンクリートの湿分を減少させる。ファン、ヒーター、ファンヒーター及び送風機は、スラグ系中間体26の自由表面に向けて配置するのが最良であり、自由表面はスラグ系中間体26の上面であってもよい。これらの鋳造30ステップは、初期の水対結合材比が最大90%、好ましくは80%、好ましくは70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%又は好ましくは2%減少するまで継続し得る。コンクリートにおける上記の鋳造30方法のいずれかによって脱型中間体36内に生成される体積に関して定められる多孔度の増加は、コンクリート体積の70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%、好ましくは5%又は好ましくは1%である。スラグ系中間体26は、最終的に、非ゼロスランプコンクリート16の第1の水対結合材重量比よりも小さい第2の水対結合材重量比を達成する。
【0048】
脱型30により、脱型中間体36が製造される。スラグ系中間体26は、脱型前に少なくとも2時間、最大7日間、鋳型内で凝結させることができる。好ましい実施形態では、水和/凝結プロセスの結果としてコンクリートの圧縮強度が少なくとも0.01MPaであるとき、脱型を行い得る。
【0049】
(iv)事前調整40
事前調整40ステップは、CO養生50の前に、脱型中間体36(現在はスラグ系中間体26)の含水量を第3の水対結合材重量比までさらに減少させる。脱型中間体36を周囲温度及び湿度に保ち、自由水42を徐々に蒸発させることができる。脱型中間体36の蒸発速度は、温度、相対湿度、脱型中間体36の初期含水量、製品の表面積、及び鋳型が風に曝されている場合の空気流に依存する。脱型中間体36の事前調整ステップは、気密室、密閉空間チャンバ又は容器内で行うことができる。
【0050】
自然蒸発に加えて、好ましい実施形態では、加熱要素又はドラムヒーター又は床暖房マット又はファン又はヒーター又は送風機又はファンヒーターによる蒸発及び/又は加熱41の1つ又は組み合わせを使用して、蒸発速度を加速することができる。加熱要素/ワイヤ又は床暖房マット又はドラムヒーターは、脱型中間体36の外面を覆うように設置される。これらの要素は、脱型中間体36の壁を加熱し、最終的に蒸発プロセスを増加させて、コンクリートの湿分を減少させる。ファン、ヒーター、ファンヒーター及び送風機は、脱型中間体36の自由表面に向けて配置するのが最良であり、自由表面は脱型中間体36の上面であってもよい。これらの事前調整40ステップは、初期の水対結合材含有量が最大90%、好ましくは80%、好ましくは70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%又は好ましくは2%減少するまで継続し得る。コンクリートにおける上記の事前調整40方法のいずれかによって脱型中間体36内に生成される体積に関して定められる多孔度の増加は、コンクリート体積の70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%、好ましくは5%又は好ましくは1%である。事前調整40は、第3の水対結合材重量比を有する脱型調整済みスラグ系中間体46を製造する。第3の水対結合材重量比は、(非ゼロスランプコンクリート16の)第1の水対結合材重量比よりも小さく、また(スラグ系中間体26の)第2の水対結合材重量比よりも小さい。
【0051】
事前調整40プロセスの終了時に、コンクリート中の残留水は初期含水量の5質量%を下回ってはならない。
(v)CO活性化/養生50
【0052】
次いで、形成された任意に強化された脱型調整済みスラグ系中間体46製品は、気密室、チャンバ又は容器内に配置される。二酸化炭素51ガスを導入して、脱型調整済みスラグ系中間体46を、5%、好ましくは10%、好ましくは20%、好ましくは30%、好ましくは40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは80%、好ましくは90%又は好ましくは99.5%の純度で、周囲温度でチャンバ/密閉空間/容器/部屋とすることができる密閉領域に養生させる。チャンバ/密閉空間/容器/部屋のゲージ圧は、0.1psi~100psiの範囲まで徐々に増加する。
【0053】
養生チャンバの好ましい代替例では、脱型調整済みスラグ系中間体46製品を気密布で覆い、密封することができる。次いで、これらの布で作られた空間にCO51を導入する。
【0054】
脱型調整済みスラグ系中間体46製品は、COガス51の下で5分間以上加圧され続けるが、CO養生50プロセスは48時間まで継続することができ、好ましい実施形態では、CO養生50に対して8時間である。チャンバ/密閉空間/容器/部屋の内部温度は発熱加速養生反応-「CO活性化プロセス」の結果として少なくとも0.1℃ずつ徐々に上昇し、その後低下する。活性化プロセスの終了時に、残っているCOがあれば排出される。
【0055】
以下の非ゼロスランプコンクリート特性を有する、本明細書に記載の湿式鋳造スラグ系コンクリート56の1立方メートル(m)に対する好ましい例を以下に示す。
【0056】
スラグ含有量=600kg、第1の水/結合材比=0.35、凝結時間=18時間。
【0057】
スラグ含有量=600kg、第1の水/結合材比=0.55、凝結時間=24時間。
【0058】
スラグ含有量=350kg、第1の水/結合材比=0.45、凝結時間=18時間。
【0059】
スラグ含有量=400kg、セメント=100kg、第1の水/結合材比=0.4、凝結時間=12時間。
【0060】
スラグ含有量=480kg、第1の水/結合材比=0.45、凝結時間=18時間。
【0061】
スラグ含有量=650kg、第1の水/結合材比=0.45、凝結時間=24時間。
【0062】
スラグ含有量=700kg、第1の水/結合材比=0.45、凝結時間=24時間。
【0063】
本方法は、上記の操作可能な/好ましい組成物に限定されない。さらに、非ゼロスランプコンクリート16に減衰混和剤(すなわち化学混和剤17)が含まれる場合、より低い含水量(より低い水対結合材比)が要求される場合がある。
【0064】
図2は、混合済みの非ゼロスランプコンクリート16を、少なくとも部分的な凝結が起こる適切な鋳型に鋳造20するステップを概略的に表している。脱型30ステップ及び事前調整40ステップは、1つの矢印によって表され、脱型調整済みスラグ系中間体46のCO養生50ステップは、好ましい実施形態ではCO養生チャンバ内で行われる。また、好ましい実施形態では、脱型中間体36の事前調整40はCOを使用するのではなく空気を用いて養生チャンバ内で行ってもよく、次いでCO養生50を行ってもよい。
【0065】
上記の説明は単に例示的なものであり、当業者であれば、開示された発明から逸脱することなく説明された実施形態に変更を加えることができることを理解するだろう。本発明の範囲内に入るさらに他の修正は、本開示の検討に照らして当業者には明らかであり、そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。
図1
図2
【国際調査報告】