(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(54)【発明の名称】鼻腔のサンプリング方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220621BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61B10/00 500
A61M25/00 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562182
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2020000293
(87)【国際公開番号】W WO2020217097
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520390737
【氏名又は名称】ロケット サイエンス ヘルス コープ.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】アルト,デイビッド ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】アービング,ケネス,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】オクスリー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】クーブロフ,ケンザ,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】リード,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】クーツ,ジョシュ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップセン,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】アラン,ニック
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,メーガン
(72)【発明者】
【氏名】マコーディック,エバン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB20
4C267BB38
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、対象の鼻腔または対象の鼻腔の嗅覚領域から生物学的材料を収集するための組成物、方法、システム、および装置である。いくつかの実施形態では、生物学的材料は、鼻腔の標的化されたサブ領域、例えば、嗅覚領域の標的化されたサブ領域から収集され、このような生物学的材料は、標的化されたサブ領域に特異的である。いくつかの実施形態では、標的化されたサブ領域から収集された生物学的材料は、その局在化に従って保存される。いくつかの実施形態では、生物学的材料は、脳脊髄液、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、特定の製剤が、鼻腔内に位置する生物学的材料の収集を容易にするために、鼻腔内の領域に送達される。
【選択図】
図2D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の嗅覚領域から生物学的材料を収集する方法であって、前記方法は、
a.生物学的材料を捕捉するように構成された製剤を提供する工程と、
b.送達オリフィスを備えた送達デバイスを患者の鼻腔に挿入する工程と、
c.前記送達デバイスを介して、前記製剤を、前記患者の嗅覚領域、または前記患者の嗅覚領域の標的化されたサブ領域に送達する工程と、
d.前記製剤が、前記生物学的材料を捕捉することを可能にする工程と、
e.前記製剤およびその中に捕捉された前記生物学的材料の少なくとも一部を引き出し、それによって前記生物学的材料を収集する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記製剤の送達が、前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域に行われるように前記送達オリフィスが配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
引き出すときに、前記製剤および/または捕捉された前記生物学的材料の組成を保存する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的材料が、脳脊髄液、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の病原体がウイルスまたはその一部または誘導体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスがSARS CoV-2である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記送達デバイスがカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを含み、前記送達デバイスを挿入する工程は、カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを前記患者の鼻腔に挿入することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の鼻孔から前記嗅覚領域までの鼻腔の長さを求め、求めた長さに基づいて所定の深さまで前記カニューレおよび/または前記マイクロ流体チャネルを挿入することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記鼻腔内に送達オリフィスを正確に配置するための解剖学的基準点を提供するように、前記患者の顔面に参照デバイスを配置する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的材料が、前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域から捕捉される、請求項1~から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記送達デバイスが、前記カニューレおよび/もしくは前記マイクロ流体チャネル、前記送達オリフィス、前記製剤、ならびに/または、前記鼻腔の嗅覚領域、および/もしくは嗅覚領域の標的サブ領域以外の嗅覚領域からの前記捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成されるシースを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シースが、前記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置された保護コーティングを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シースが、前記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置されたカバーまたはスリーブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために粘液産生を増加させるかまたは粘液産生を減少させるように前記患者を誘導する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために血流を増加させるかまたは血流を減少させるように前記患者を誘導する工程をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために頭蓋内圧を増加させるように前記患者を誘導する工程をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするためにエネルギーを適用する工程をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記エネルギーを適用する工程は、UV/VIS/IR光、オームの法則に従う製剤の加熱、または送達デバイス内の加熱された要素からの伝導を介して製剤に熱を適用することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記製剤による生物学的材料の捕捉を容易にするために、電界および/または磁界が適用される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記送達デバイスは、製剤の流れが連続的な流れとして引き出されるように、製剤の流れを嗅覚領域または嗅覚領域の標的化されたサブ領域に送達するように構成される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的材料の収集を増加させるために、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法を反復する工程をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記製剤が、請求項108~174のいずれか1つに記載の製剤である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
患者の鼻腔から生物学的材料を収集する方法であって、前記方法は、
a.生物学的材料を捕捉するように構成された製剤を提供する工程と、
b.送達オリフィスを含む送達デバイスを、患者の鼻腔または前記鼻腔の標的化されたサブ領域に挿入する工程と、
c.送達装置を介して、前記製剤を患者の鼻腔に送達する工程と、
d.前記送達された製剤が前記生物学的材料を捕捉することを可能にする工程と、
e.前記製剤およびその中に捕捉された生物学的材料の少なくとも一部を引き出す工程、
とを含む、方法。
【請求項24】
前記製剤の送達が前記鼻腔の標的化されたサブ領域に行われるように前記送達オリフィスが配置される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
引き出すときに、前記製剤および/または前記捕捉された生物学的材料の組成を保存する工程をさらに含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記生物学的材料が、脳脊髄液(CSF)、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の病原体がウイルスまたはその一部もしくは誘導体を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルスがSARS CoV-2である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記送達デバイスがカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを含み、前記送達デバイスを挿入する工程は、前記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを前記患者の鼻腔に挿入することを含む、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記患者の鼻孔から嗅覚領域までの鼻腔の長さを求め、前記求めた長さに基づいて所定の深さまで前記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを挿入する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記鼻腔内に送達オリフィスを正確に配置するための解剖学的基準点を提供するように、前記患者の顔面に参照デバイスを配置する工程をさらに含む、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記生物学的材料が前記鼻腔の標的領域から捕捉される、請求項23~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記送達デバイスが、カニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、送達オリフィス、製剤、ならびに/または前記鼻腔の非標的領域からの捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成されたシースを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記シースが、前記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置された保護コーティングを備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記シースが、前記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置されたカバーまたはスリーブを備える、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために粘液産生を増加させるか、または粘液産生を減少させるように前記患者を誘導する工程をさらに含む、請求項23~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために血流を増加させるかまたは血流を減少させるように前記患者を誘導する工程をさらに含む、請求項23~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために頭蓋内圧を増加させるように前記患者を誘導する工程をさらに含む、請求項23~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするためにエネルギーを適用する工程をさらに含む、請求項23~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記エネルギーを適用する工程は、UV/VIS/IR光、製剤のオームの法則に従う加熱、または送達装置内の加熱された要素からの伝導を介して製剤に熱を適用することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記製剤による生物学的材料の捕捉を容易にするために、電界および/または磁界が適用される、請求項23~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記送達デバイスは、前記製剤の流れが連続的な流れとして引き出されるように、前記製剤の流れを前記鼻腔または前記鼻腔の標的サブ領域に送達するように構成される、請求項23~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記生物学的材料の収集を増加させるために、請求項23~42のいずれか一項に記載の方法を反復する工程をさらに含む、請求項23~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記製剤が、請求項108~174のいずれか1つに記載の製剤である、請求項23~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
患者の鼻腔から生物学的材料を収集するための装置であって、前記装置は、
a.生物学的材料を捕捉するように構成された製剤を含む第1の本体と、
b.患者の鼻腔内に位置決めするように構成され、第1の本体に流体的に接続された送達オリフィスを備える、第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルと、
c.前記患者の鼻腔から生物学的材料を捕捉するために、第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを介して前記患者の鼻腔に製剤を送達するための展開機構と、
d.前記患者の鼻腔から捕捉された生物学的材料を収集するための収集デバイス
とを備える、装置。
【請求項46】
前記製剤の送達が鼻腔の標的化されたサブ領域に行われるように、前記送達オリフィスが構成される、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記製剤の送達が鼻腔の嗅覚領域に行われるように、前記送達オリフィスが構成される、請求項45に記載の装置。
【請求項48】
前記製剤の送達が嗅覚領域の標的化されたサブ領域に行われるように、前記送達オリフィスが構成される、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記生物学的材料は、脳脊髄液(CSF)、前記患者の微生物叢の1つ以上の微生物、前記患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象の1つ以上のバイオマーカーである、請求項45~48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項50】
前記1つ以上の病原体がウイルスまたはその一部もしくは誘導体を含む、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記ウイルスがSARS CoV-2である、請求項50に記載の装置。
【請求項52】
前記生物学的材料が、鼻腔の標的化されたサブ領域から捕捉される、請求項45~51のいずれか一項に記載の装置。
【請求項53】
前記生物学的材料が前記鼻腔の嗅覚領域から捕捉される、請求項45~51のいずれか一項に記載の装置。
【請求項54】
前記生物学的材料が、前記鼻腔の嗅覚領域の標的化されたサブ領域から捕捉される、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
前記装置は、前記第1の本体、前記第1のカニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、前記送達オリフィス、前記収集デバイス、前記製剤、ならびに/または鼻腔の非標的領域から捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成されるシースを備える、請求項45~55のいずれか一項に記載の装置。
【請求項56】
前記シースは、前記第1の本体、前記第1のカニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、前記送達オリフィス、前記収集デバイス、前記製剤ならびに/または前記嗅覚領域の非標的サブ領域からの捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成される、請求項45~55に記載の装置。
【請求項57】
前記シースが、前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置された保護コーティングを備える、請求項55または56に記載の装置。
【請求項58】
前記シースが、前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置されたカバーまたはスリーブを備える、請求項55または56に記載の装置。
【請求項59】
前記第1の本体が、前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルに取り外し可能に連結された第1の容器を備える、請求項45~58のいずれか一項に記載の装置。
【請求項60】
前記収集デバイスが、前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルに取り外し可能に連結された第2の本体を備える、請求項45~59のいずれか一項に記載の装置。
【請求項61】
前記収集デバイスが、前記第2の本体と、前記第2の本体に連結された第2のカニューレとを備える、請求項45~60のいずれか一項に記載の装置。
【請求項62】
前記収集デバイスが、前記鼻腔から捕捉された際のその局在化に従って、完全性および前記生物学的材料を保存するように構成される、請求項45~61のいずれか一項に記載の装置。
【請求項63】
前記展開機構が、第1のプランジャに連結された第1のばねに連結された第1のアクチュエータを備える、請求項45~62のいずれか一項に記載の装置。
【請求項64】
前記装置は、前記送達オリフィスの位置決めを容易にするように、患者の鼻と連結するように構成されたクリップをさらに備える、請求項45~63のいずれか一項に記載の装置。
【請求項65】
前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、クリップに対して移動するように構成される、請求項64に記載の装置。
【請求項66】
前記収集デバイスが、第2のプランジャに連結された第2のばねに連結された第2のアクチュエータを備える、請求項45~65のいずれか一項に記載の装置。
【請求項67】
前記第1の本体がカープルを備える、請求項45~66のいずれか一項に記載の装置。
【請求項68】
前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルが可撓性カニューレである、請求項45~67のいずれか一項に記載の装置。
【請求項69】
前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルが伸縮式カニューレである、請求項45~67のいずれか一項に記載の装置。
【請求項70】
前記装置は、危険な力が前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを介して伝達されるのを防止するための機械的特徴を備える、請求項45~69のいずれか一項に記載の装置。
【請求項71】
前記機械的特徴が、力制限ばね、ラジアルスリップクラッチ、および/またはアキシャルスリップクラッチを含む、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域が、前記嗅覚領域内の個別のミリメートルの領域に局在化される、請求項45~71のいずれか一項に記載の装置。
【請求項73】
前記製剤が請求項108~174のいずれか一項に記載の製剤である、請求項45~72のいずれか一項に記載の装置。
【請求項74】
患者の鼻腔から生物学的材料を収集するためのシステムであって、前記システムは、
a.製剤を含むように構成された第1の本体と、
b.患者の鼻腔内に位置決めするように構成され、前記第1の本体に流体的に接続された送達オリフィスを備えた、第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネル、
c.前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを介して患者の鼻腔に製剤を送達するための展開機構と、
d.前記患者の鼻腔から生物学的材料を収集するための収集デバイスと、
e.前記生物学的材料を捕捉するように構成される製剤と
を備える、システム。
【請求項75】
前記製剤の送達が、前記鼻腔の標的化されたサブ領域に行われるように前記送達オリフィスが構成される、請求項74に記載のシステム。
【請求項76】
前記製剤の送達が前記鼻腔の嗅覚領域に行われるように前記送達オリフィスが構成される、請求項74に記載のシステム。
【請求項77】
前記製剤の送達が前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域に行われるように送達オリフィスが構成される、請求項76に記載のシステム。
【請求項78】
前記生物学的材料が、脳脊髄液(CSF)、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む、請求項74~77に記載のシステム。
【請求項79】
前記1つ以上の病原体は、ウイルスまたはその一部もしくはその誘導体を含む、請求項78に記載のシステム。
【請求項80】
前記ウイルスがSARS CoV-2である、請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
前記生物学的材料が前記鼻腔の標的領域から捕捉される、請求項74~80のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項82】
前記生物学的材料が前記鼻腔の嗅覚領域から捕捉される、請求項74~80のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項83】
前記生物学的材料が、前記鼻腔の嗅覚領域の標的化されたサブ領域から捕捉される、請求項82に記載のシステム。
【請求項84】
前記システムは、前記第1の本体、前記第1のカニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、前記送達オリフィス、前記収集デバイス、前記製剤、ならびに/または前記鼻腔の非標的領域から捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成されるシースを備える、請求項74~83のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項85】
前記シースが、前記第1の本体、前記第1のカニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、前記送達オリフィス、前記収集デバイス、前記製剤ならびに/または前記鼻腔の非嗅覚領域もしくは嗅覚領域の非標的サブ領域から捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成される、請求項74~83のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項86】
前記シースが、前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置された保護コーティングを備える、請求項84または85に記載のシステム。
【請求項87】
前記シースが、前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置されたカバーまたはスリーブを備える、請求項84または85に記載のシステム。
【請求項88】
前記第1の本体が、前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルに取り外し可能に連結された第1の容器を備える、請求項74~87のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項89】
前記収集デバイスが、前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルに取り外し可能に連結された第2の本体を備える、請求項74~88のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項90】
前記収集デバイスが、第2の本体と、前記第2の本体に連結された第2のカニューレとを備える、請求項74~89のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項91】
前記収集デバイスが、前記鼻腔から捕捉される際の生物学的材料の局在化に従って、完全性および生物学的材料を保存するように構成される、請求項74~90のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項92】
前記展開機構が、第1のプランジャに連結された第1のばねに連結された第1のアクチュエータを備える、請求項74~91のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項93】
前記装置が、送達オリフィスの位置決めを容易にするように前記患者の鼻と連結するように構成されるクリップをさらに備える、請求項74~92のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項94】
前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、前記クリップに対して移動するように構成される、請求項93に記載のシステム。
【請求項95】
前記収集デバイスが、第2のプランジャに結合された第2のばねに結合された第2のアクチュエータを備える、請求項74~94のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項96】
前記第1の本体がカープルを備える、請求項74~95のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項97】
前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、可撓性カニューレである、請求項74~96のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項98】
前記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、伸縮式カニューレである、請求項74~96のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項99】
前記システムは、危険な力がカニューレを通って伝達されるのを防ぐための機械的特徴を備える、請求項74~98のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項100】
前記機械的特徴が、力制限ばね、ラジアルスリップクラッチ、および/またはアキシャルスリップクラッチを含む、請求項99に記載のシステム。
【請求項101】
嗅覚領域の標的化されたサブ領域が、前記嗅覚領域内の個別のミリメートルの領域に局在化される、請求項74~100のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項102】
前記製剤が請求項108~174のいずれか一項に記載の製剤である、請求項74~101のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項103】
患者の診断を行う方法であって、前記方法は、
a.請求項1~44のいずれか一項に記載の方法を実行し、それによって、前記患者から生物学的材料を収集する工程と、
b.前記収集された生物学的材料を分析する工程と、
c.工程bの分析に基づいて、診断を行う工程
とを含む、方法。
【請求項104】
前記生物学的材料を分析する工程は、前記収集された生物学的材料中のバイオマーカー、病原体、および/または微生物を同定および/または定量化することを含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記同定および/または定量化されたバイオマーカー、病原体、および/または微生物を、対応する生理学的特徴および/または病状と相関させる工程をさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記生物学的材料を分析する工程は、ポイントオブケアアッセイシステムを使用することを含む、請求項103~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記ポイントオブケアアッセイシステムは、請求項1~44のいずれか一項に記載の送達デバイス、請求項45~73のいずれか一項に記載の装置、または請求項74~102のいずれか一項に記載のシステムからの前記収集された生物学的材料のサンプルを受け取るように構成される、請求項100に記載の方法。
【請求項108】
患者の鼻腔から生物学的材料を収集するための製剤であって、前記製剤は、鼻腔内に送達されると生物学的材料を捕捉するように構成されており、送達された製剤は、前記生物学的材料とともに鼻腔から引き出されるように構成される、製剤。
【請求項109】
前記製剤が前記鼻腔の嗅覚領域に送達される、請求項108に記載の製剤。
【請求項110】
前記製剤が、嗅覚領域の標的化されたサブ領域から生物学的材料を捕捉するように構成される、請求項108に記載の製剤。
【請求項111】
前記送達された製剤が、引き出されるときに捕捉された生物学的材料を保存するように構成される、請求項108~110のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項112】
前記生物学的材料が、脳脊髄液(CSF)、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む、請求項108~111のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項113】
前記製剤が特定の生物学的材料を捕捉するように構成される、請求項112に記載の製剤。
【請求項114】
前記製剤が緩衝生理食塩水を含む、請求項108~113のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項115】
前記緩衝生理食塩水が100mMリン酸緩衝生理食塩水である、請求項114に記載の製剤。
【請求項116】
前記製剤が1つ以上のゲル化剤および/または増粘剤を含む、請求項108~115のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項117】
前記製剤が、前記製剤に所望の粘度を提供するための粘度調整剤を含む、請求項108~116のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項118】
前記粘度調整剤が、グリセロール、ペクチン、およびポリエチレングリコールのうちの少なくとも1つを含む、請求項117に記載の製剤。
【請求項119】
前記粘度調整剤が製剤の25~75体積%を構成する、請求項117または118に記載の製剤。
【請求項120】
前記製剤が、前記患者の鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の流体よりも高い浸透圧を有する、請求項108~119のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項121】
前記製剤が、患者の鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の流体以下の浸透圧を有する、請求項108~119のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項122】
前記製剤の所望の浸透圧が、前記製剤中に塩、糖、デンプン、アルブミン、デキストラン、またはそれらの組み合わせを含めることによって達成される、請求項108~121のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項123】
前記送達された製剤が、製剤以外の流体の標的体積が鼻腔、嗅覚領域の領域または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域から引き出された後、前記浸透圧が標的浸透圧に等しくなるように調整された浸透圧を有する、請求項108~122のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項124】
所望の速度で、鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域から生物学的材料を捕捉するように、前記製剤の浸透圧が時間とともに変化するように構成される、請求項108~123のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項125】
前記製剤の浸透圧が、前記製剤に浸透圧調整剤を含めることによって時間とともに変化するように構成される、請求項124に記載の製剤。
【請求項126】
前記浸透圧調整剤が、1つ以上の浸透圧調整剤のマイクロカプセル化された粒子を含む、請求項125に記載の製剤。
【請求項127】
前記1つ以上の浸透圧調整剤が塩化ナトリウムを含む、請求項125または126に記載の製剤。
【請求項128】
前記マイクロカプセル化された粒子が、1つ以上の浸透圧調整剤を含む腸溶コーティングを含む、請求項125~127のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項129】
前記腸溶コーティングが、所定の時間内の間、所定の条件に曝露されると、前記1つ以上の浸透圧調整剤を放出するように構成される、請求項128に記載の製剤。
【請求項130】
前記所定の条件が、温度範囲、pH範囲、および所定の剪断力からなる群より選択される1つ以上の条件を含む、請求項129に記載の製剤。
【請求項131】
前記製剤が、鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の粘液産生を促進して、その結果、前記生物学的材料の捕捉を容易にする薬剤を含む、請求項108~132のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項132】
前記粘液産生を促進する薬剤がカプサイシンである、請求項131に記載の製剤。
【請求項133】
前記製剤が、鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の粘液の粘度を高めて、その結果、前記送達された薬剤が動くのを防ぎ、それによって、前記鼻腔、前記嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の送達された製剤の残留時間を増加させる、1つ以上の薬剤を含む、請求項108~132のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項134】
前記製剤は、鼻腔、嗅覚領域、または嗅覚領域の標的サブ領域に送達されると、液体状態から半固体状態に変化するように構成される、請求項108~133のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項135】
前記製剤は、鼻腔、嗅覚領域、または嗅覚領域の標的化されたサブ領域への送達時に架橋反応を開始するように構成される、請求項134に記載の製剤。
【請求項136】
前記製剤が2つ以上の試薬を含む、請求項135に記載の製剤。
【請求項137】
前記2つ以上の試薬は、架橋反応を開始し、それによって前記製剤を半固体状態に変えるために、鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域への送達時に混合するように構成される、請求項136に記載の製剤。
【請求項138】
前記製剤が非ニュートン流体を含む、請求項134~137のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項139】
前記製剤が、ヒトの体温とほぼ同じ温度で液体状態から半固体状態に変化する、請求項138に記載の製剤。
【請求項140】
前記製剤が、約35℃から約40℃の温度で液体状態から半固体状態に変化する、請求項138に記載の製剤。
【請求項141】
前記製剤が、約37℃の温度で液体状態から半固体状態に変化する、請求項138に記載の製剤。
【請求項142】
前記製剤がビンガムプラスチックを含む、請求項134~141のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項143】
前記製剤が、鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化サブ領域への送達中に剪断力を受けると、液体として挙動する、請求項142に記載の製剤。
【請求項144】
前記製剤は、剪断力を受けない場合、半固体として挙動する、請求項143に記載の製剤。
【請求項145】
前記製剤の送達および部分的固化によって形成されたテールをさらに含む、請求項134~144のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項146】
前記テールが機械的に除去されるように構成され、それによって、前記捕捉された生物学的材料の除去を容易にする、請求項145に記載の製剤。
【請求項147】
前記製剤の半固体状態が、生物学的材料の局在化に従って、捕捉された生物学的材料を保存するように構成される、請求項134~146のいずれか一項に記載の製剤。。
【請求項148】
前記製剤が担体製剤として作用する、請求項108~147のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項149】
前記担体製剤がカプセル化されたナノ粒子を含む、請求項148に記載の製剤。
【請求項150】
前記カプセル化されたナノ粒子が、所定の時間の間、所定の条件に曝露されると分解するコーティング中でカプセル化される、請求項149に記載の製剤。
【請求項151】
前記所定の条件が、鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域に固有である、請求項150に記載の製剤。
【請求項152】
前記所定の条件が、温度、pH、および/または特定の生物学的材料との接触を含む、請求項150または151に記載の製剤。
【請求項153】
前記コーティングの分解が、担体製剤を半固体状態から液体状態に変化させるように構成される化学物質を放出する、請求項150~152のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項154】
前記製剤が、特定の生物学的材料を標的とするように、1つ以上の特定のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む、請求項108~153のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項155】
特定の生物学的材料を標的とするように、前記製剤が1つ以上の特定のアプタマーを含む、請求項108~154のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項156】
前記特定の生物学的材料がシスタチン-Cである、請求項154または155に記載の製剤。
【請求項157】
前記特定の生物学的材料がウイルスまたはその一部もしくは誘導体である、請求項154または155に記載の製剤。
【請求項158】
前記ウイルスがSARSCoV-2である、請求項157に記載の製剤。
【請求項159】
前記捕捉された生物学的材料を保存するための抗菌剤を含む、請求項108~158のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項160】
前記抗菌剤が25%v/vエタノールおよび/または5%w/vクエン酸を含む、請求項159に記載の製剤。
【請求項161】
前記製剤が微生物富化および保存材料を含む、請求項108~160のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項162】
前記微生物富化および保存材料が25%v/vトリプシン大豆ブロスを含む、請求項161に記載の製剤。
【請求項163】
前記製剤がヒドロゲルを含む、請求項108~162のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項164】
前記製剤が糖を含む、請求項108~163のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項165】
前記製剤がずり流動化またはせん断増粘である、請求項108~164のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項166】
前記製剤が水と非混和性である、請求項108~165のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項167】
前記製剤が水と混和性である、請求項108~166のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項168】
前記製剤が生物学的材料を保存するように構成される、請求項108~167のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項169】
前記製剤が生物学的材料の完全性を維持するように構成される、請求項108~168のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項170】
前記製剤が、鼻腔、嗅覚領域、または前記嗅覚領域の標的化されたサブ領域に送達された後、凝集体に変化するように構成される、請求項108~169のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項171】
前記製剤が、蒸発して製剤を凝集体に変える溶媒を含む、請求項170に記載の製剤。
【請求項172】
a)時間遅延後に反応するか、b)空気と反応するか、c)別個に導入された気体もしくは液体と反応するか、またはd)患者の体液と反応し、その結果、凝集体を形成する化学薬品を含む、請求項171に記載の製剤。
【請求項173】
前記製剤が、嗅覚領域から生物学的材料を吸収するように構成される、請求項108~172のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項174】
前記製剤が、製剤のボーラスとして提供、送達、および/または引き出しされる、請求項108~173のいずれか一項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年4月24日に出願された米国仮出願第62/838,169号の利益を主張し、この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ヒトの鼻腔は、鼻腔の特定の領域に独特に位置し得る様々なタイプの微生物の宿主である。鼻腔の形状と不均一性は、さまざまな場所にわたってそのように微生物の分布を生じるさまざまな機能を提供する。他のタイプの生物学的材料もまた鼻腔内に見られる。
【発明の概要】
【0003】
1つの態様において、本明細書において、患者の嗅覚領域から生物学的材料を収集する方法が提供され、上記方法は、a)生物学的材料を捕捉するように構成された製剤を提供する工程と、b)送達オリフィスを備えた送達デバイスを患者の鼻腔に挿入する工程と、c)上記送達デバイスを介して、上記製剤を、上記患者の嗅覚領域または嗅覚領域の標的化されたサブ領域に送達する工程と、d)上記製剤が、上記生物学的材料を捕捉することを可能にする工程と、e)上記製剤およびその中に捕捉された上記生物学的材料の少なくとも一部を引き出し、それによって上記生物学的材料を収集する工程と、を含む方法である。いくつかの実施形態において、上記製剤の送達が上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域に行われるように、上記送達オリフィスが配置される。いくつかの実施形態において、上記方法は、引き出すときに、上記製剤および/または捕捉された上記生物学的材料の組成を保存する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、脳脊髄液、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態において、上記1つ以上の病原体はウイルスまたはその一部または誘導体を含む。いくつかの実施形態において、上記ウイルスはSARS CoV-2である。いくつかの実施形態において、上記送達デバイスはカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを含み、上記送達デバイスを挿入する工程は、カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを上記患者の鼻腔に挿入することを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記患者の鼻孔から上記嗅覚領域までの鼻腔の長さを求め、求めた長さに基づいて所定の深さまで上記カニューレおよび/または上記マイクロ流体チャネルを挿入することをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記鼻腔内に送達オリフィスを正確に配置するための解剖学的基準点を提供するように、上記患者の顔に参照デバイスを配置する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域から捕捉される。いくつかの実施形態において、上記送達デバイスは、上記カニューレおよび/もしくは上記マイクロ流体チャネル、上記送達オリフィス、上記製剤、ならびに/または、上記鼻腔の嗅覚領域、および/もしくは嗅覚領域の標的サブ領域以外の嗅覚領域からの上記捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成されたシースを含む。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置された保護コーティングを備える。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置されたカバーまたはスリーブを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために粘液産生を増加させるかまたは粘液産生を減少させるように上記患者を誘導する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために血流を増加させるかまたは血流を減少させるように上記患者を誘導する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために頭蓋内圧を増加させるように上記患者を誘導する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするためにエネルギーを適用する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記エネルギーを適用する工程は、UV/VIS/IR光、オームの法則に従う製剤の加熱、または送達装置内の加熱された要素からの伝導を介して製剤に熱を適用することを含む。いくつかの実施形態において、電界および/または磁界が、上記製剤による生物学的材料の捕捉を容易にするために適用される。いくつかの実施形態において、上記送達デバイスは、製剤の流れが連続的な流れとして引き出されるように、製剤の流れを嗅覚領域または嗅覚領域の標的化されたサブ領域に送達するように構成される。いくつかの実施形態において、上記方法は上記生物学的材料の収集を増加させるために、本発明の方法を反復する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、段落[0008]に開示されているようなものを含む、本明細書に開示されている任意の製剤である。
【0004】
1つの態様において、本明細書において、患者の鼻腔から生物学的材料を収集する方法が提供され、上記方法は、a)生物学的材料を捕捉するように構成された製剤を提供する工程と、b)送達オリフィスを含む送達デバイスを、患者の鼻腔または上記鼻腔の標的化されたサブ領域に挿入する工程と、c)送達装置を介して、上記製剤を患者の鼻腔に送達する工程と、d)上記送達された製剤が上記生物学的材料を捕捉することを可能にする工程と、e)上記製剤およびその中に捕捉された生物学的材料の少なくとも一部を引き出す工程、とを含む。いくつかの実施形態において、上記製剤の送達は、上記鼻腔の標的化されたサブ領域に行われるように上記送達オリフィスが配置されている。いくつかの実施形態において、上記方法は、引き出すときに、上記製剤および/または上記捕捉された生物学的材料の組成を保存する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、脳脊髄液(CSF)、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態において、上記1つ以上の病原体は、ウイルスまたはその一部もしくは誘導体を含む。いくつかの実施形態において、上記ウイルスはSARS CoV-2である。いくつかの実施形態において、上記送達デバイスはカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを含み、上記送達デバイスを挿入する工程は、上記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを上記患者の鼻腔に挿入することを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記患者の鼻孔から嗅覚領域までの鼻腔の長さを求め、上記求めた長さに基づいて所定の深さまで上記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを挿入する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記鼻腔内に送達オリフィスを正確に配置するための解剖学的基準点を提供するように、上記患者の顔面に参照デバイスを配置する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は上記鼻腔の標的領域から捕捉される。いくつかの実施形態において、上記送達デバイスは、カニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、送達オリフィス、製剤、ならびに/または上記鼻腔の非標的領域からの捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成されたシースを含む。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置された保護コーティングを備える。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記カニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置されたカバーまたはスリーブを備える。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために粘液産生を増加させるか、または粘液産生を減少させるように上記患者を誘導する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために血流を増加させるかまたは血流を減少させるように上記患者を誘導する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするために頭蓋内圧を増加させるように上記患者を誘導する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料の捕捉および/または収集を容易にするためにエネルギーを適用する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記エネルギーを適用する工程は、UV/VIS/IR光、製剤のオームの法則に従う加熱、または送達装置内の加熱された要素からの伝導を介して製剤に熱を適用することを含む。いくつかの実施形態において、上記製剤による生物学的材料の捕捉を容易にするために、電界および/または磁界が適用される。いくつかの実施形態において、上記送達デバイスは、上記製剤の流れが連続的な流れとして引き出されるように、上記製剤の流れを上記鼻腔または上記鼻腔の標的サブ領域に送達するように構成される。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記生物学的材料の収集を増加させるために、上記方法を反復する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、段落[0008]に開示されているようなものを含む、本明細書に開示されている任意の製剤である。
【0005】
1つの態様において、本明細書において、患者の鼻腔から生物学的材料を収集するための装置が提供され、上記装置は、a)生物学的材料を捕捉するように構成された製剤を含む第1の本体と、b)患者の鼻腔内に位置決めするように構成され、第1の本体に流体的に接続された送達オリフィスを備える、第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルと、c)上記患者の鼻腔から生物学的材料を捕捉するために、第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを介して上記患者の鼻腔に製剤を送達するための展開機構と、d)上記患者の鼻腔から捕捉された生物学的材料を収集するための収集デバイスと、を備える。いくつかの実施形態において、上記製剤の送達が鼻腔の標的化されたサブ領域に行われるように、上記送達オリフィスが構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤の送達が鼻腔の嗅覚領域に行われるように、上記送達オリフィスが構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤の送達が嗅覚領域の標的化されたサブ領域に行われるように、上記送達オリフィスが構成される。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、脳脊髄液(CSF)、上記患者の微生物叢の1つ以上の微生物、上記患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象の1つ以上のバイオマーカーである。いくつかの実施形態において、上記1つ以上の病原体は、ウイルスまたはその一部もしくは誘導体を含む。いくつかの実施形態において、上記ウイルスはSARS CoV-2である。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、鼻腔の標的化されたサブ領域から捕捉される。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は上記鼻腔の嗅覚領域から捕捉される。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、上記鼻腔の嗅覚領域の標的化されたサブ領域から捕捉される。いくつかの実施形態において、上記装置は、上記第1の本体、上記第1のカニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、上記送達オリフィス、上記収集デバイス、上記製剤、ならびに/または鼻腔の非標的領域から捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成されるシースをさらに備える。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記第1の本体、上記第1のカニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、上記送達オリフィス、上記収集デバイス、上記製剤ならびに/または上記嗅覚領域の非標的サブ領域からの捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成される。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置された保護コーティングを備える。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置されたカバーまたはスリーブを備える。いくつかの実施形態において、上記第1の本体は、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルに取り外し可能に連結された第1の容器を備える。いくつかの実施形態において、上記収集デバイスは、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルに取り外し可能に連結された第2の本体を備える。いくつかの実施形態において、上記収集デバイスは、上記第2の本体と、上記第2の本体に連結された第2のカニューレとを備える。いくつかの実施形態において、上記収集デバイスは、完全性および上記生物学的材料を、上記鼻腔から捕捉された際のその局在化に従って保存するように構成される。いくつかの実施形態において、上記展開機構は、第1のプランジャに連結された第1のばねに連結された第1のアクチュエータを備える。いくつかの実施形態において、上記装置は、上記送達オリフィスの位置決めを容易にするように、患者の鼻と連結するように構成されたクリップをさらに備える。いくつかの実施形態において、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、クリップに対して移動するように構成される。いくつかの実施形態において、上記収集デバイスは、第2のプランジャに連結された第2のばねに連結された第2のアクチュエータを備える。いくつかの実施形態において、上記第1の本体はカープルを備える。いくつかの実施形態において、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、可撓性カニューレである。いくつかの実施形態において、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、伸縮式カニューレである。いくつかの実施形態において、上記装置は、危険な力が上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを介して伝達されるのを防止するための機械的特徴を備える。いくつかの実施形態において、上記機械的特徴は、力制限ばね、ラジアルスリップクラッチ、および/またはアキシャルスリップクラッチを含む。いくつかの実施形態において、上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域は、上記嗅覚領域内の個別のミリメートルの領域に局在化されている。いくつかの実施形態において、上記製剤は、段落[0008]に開示されているようなものを含む、本明細書に開示されている任意の製剤である。
【0006】
1つの態様において、本明細書において、患者の鼻腔から生物学的材料を収集するためのシステムが提供され、上記システムは、a)製剤を含むように構成された第1の本体と、b)患者の鼻腔内に位置決めするように構成され、上記第1の本体に流体的に接続された送達オリフィスを備えた、第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネル、c)上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルを介して患者の鼻腔に製剤を送達するための展開機構と、d)上記患者の鼻腔から生物学的材料を収集するための収集デバイスと、e)上記生物学的材料を捕捉するように構成されている製剤と、
を備える。いくつかの実施形態において、上記製剤の送達は、上記鼻腔の標的化されたサブ領域に行われるように上記送達オリフィスが構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤の送達が上記鼻腔の嗅覚領域に行われるように、上記送達オリフィスが構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤の送達が上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域に行われるように、送達オリフィスが構成される。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、脳脊髄液(CSF)、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態において、上記1つ以上の病原体は、ウイルスまたはその一部もしくはその誘導体を含む。いくつかの実施形態において、上記ウイルスはSARS CoV-2である。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は上記鼻腔の標的領域から捕捉される。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は上記鼻腔の嗅覚領域から捕捉される。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、上記鼻腔の嗅覚領域の標的化されたサブ領域から捕捉される。いくつかの実施形態において、上記システムは、上記第1の本体、上記第1のカニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、上記送達オリフィス、上記収集デバイス、上記製剤、ならびに/または上記鼻腔の非標的領域から捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成されるシースを備える。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記第1の本体、上記第1のカニューレおよび/もしくはマイクロ流体チャネル、上記送達オリフィス、上記収集デバイス、上記製剤ならびに/または上記鼻腔の非嗅覚領域もしくは嗅覚領域の非標的サブ領域から捕捉された生物学的材料の汚染を最小化または防止するように構成される。いくつかの実施形態において、上記シースが、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置された保護コーティングを備える。いくつかの実施形態において、上記シースは、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルの周りに配置されたカバーまたはスリーブを備える。いくつかの実施形態において、上記第1の本体は、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルに取り外し可能に連結された第1の容器を備える。いくつかの実施形態において、上記収集デバイスは、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルに取り外し可能に連結された第2の本体を備える。いくつかの実施形態において、上記収集デバイスが、第2の本体と、上記第2の本体に連結された第2のカニューレとを備える。いくつかの実施形態において、上記収集デバイスは、上記鼻腔から捕捉された際の生物学的材料の局在化に従って、完全性および生物学的材料を保存するように構成される。いくつかの実施形態において、上記展開機構は、第1のプランジャに連結された第1のばねに連結された第1のアクチュエータを備える。いくつかの実施形態において、上記装置は、送達オリフィスの位置決めを容易にするように上記患者の鼻と連結するように構成されたクリップをさらに備える。いくつかの実施形態において、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、上記クリップに対して移動するように構成される。いくつかの実施形態において、上記収集デバイスは、第2のプランジャに結合された第2のばねに結合された第2のアクチュエータを備える。いくつかの実施形態において、上記第1の本体はカープルを備える。いくつかの実施形態において、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、可撓性カニューレである。いくつかの実施形態において、上記第1のカニューレおよび/またはマイクロ流体チャネルは、伸縮式カニューレである。いくつかの実施形態において、上記システムは、危険な力がカニューレを通って伝達されるのを防ぐための機械的特徴を備える。いくつかの実施形態において、上記機械的特徴は、力制限ばね、ラジアルスリップクラッチ、および/またはアキシャルスリップクラッチを含む。いくつかの実施形態において、嗅覚領域の標的化されたサブ領域は、上記嗅覚領域内の個別のミリメートルの領域に局在化される。いくつかの実施形態において、上記製剤は、段落[0008]に開示されているようなものを含む、本明細書に開示されている任意の製剤である。
【0007】
1つの態様において、本明細書において、患者の診断を行う方法が提供され、上記方法は、a)請求項1~44のいずれか一項に記載の方法を実行し、それによって、上記患者から生物学的材料を収集する工程と、b)上記収集された生物学的材料を分析する工程と、c)工程bの分析に基づいて、診断を行う工程と、を含む。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料を分析する工程は、上記収集された生物学的材料中のバイオマーカー、病原体、および/または微生物を同定および/または定量化することを含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記同定および/または定量化されたバイオマーカー、病原体、および/または微生物を、対応する生理学的特徴および/または病状と相関させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料を分析する工程は、ポイントオブケアアッセイシステムを使用することを含む。いくつかの実施形態において、上記ポイントオブケアアッセイシステムは、a)段落[0003]-[0004]に開示されているようなものを含む、本明細書に開示されている任意の方法、b)段落[0005]に開示されているようなものを含む、本明細書に開示されている任意の装置、またはc)段落[0006]に開示されているようなものを含む、本明細書に開示されている任意のシステムからの上記送達デバイスからの上記収集された生物学的材料のサンプルを受け取るように構成されている。
【0008】
1つの態様において、本明細書において、患者の鼻腔から生物学的材料を収集するための製剤が提供され、上記製剤は、鼻腔内に送達されると生物学的材料を捕捉するように構成されており、送達された製剤は、上記生物学的材料とともに鼻腔から引き出されるように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は、上記鼻腔の嗅覚領域に送達される。いくつかの実施形態において、上記製剤は、嗅覚領域の標的化されたサブ領域から生物学的材料を捕捉するように構成される。いくつかの実施形態において、上記送達された製剤は、引き出されるときに捕捉された生物学的材料を保存するように構成される。いくつかの実施形態において、上記生物学的材料は、脳脊髄液(CSF)、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、患者のメタボロームの1つ以上の成分、1つ以上の病原体、および/または関心対象である1つ以上のバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は特定の生物学的材料を捕捉するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は緩衝生理食塩水を含む。いくつかの実施形態において、上記緩衝生理食塩水は100mMリン酸緩衝生理食塩水である。いくつかの実施形態において、上記製剤は1つ以上のゲル化剤および/または増粘剤を含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、上記製剤に所望の粘度を提供するための粘度調整剤を含む。いくつかの実施形態において、上記粘度調整剤は、グリセロール、ペクチン、およびポリエチレングリコールのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、上記粘度調整剤は製剤の25~75体積%を構成する。いくつかの実施形態において、上記製剤は、上記患者の鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の流体よりも高い浸透圧を有する。いくつかの実施形態において、上記製剤は、患者の鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の流体以下の浸透圧を有する。いくつかの実施形態において、上記製剤の所望の浸透圧は、上記製剤中に塩、糖、デンプン、アルブミン、デキストラン、またはそれらの組み合わせを含めることによって達成される。いくつかの実施形態において、上記送達された製剤は、製剤以外の流体の標的体積が鼻腔、嗅覚領域の領域または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域から引き出された後、上記浸透圧が標的浸透圧に等しくなるように調整された浸透圧を有する。いくつかの実施形態において、所望の速度で、鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域から生物学的材料を捕捉するように、上記製剤の浸透圧が時間とともに変化するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤の浸透圧が、上記製剤に浸透圧調整剤を含めることによって時間とともに変化するように構成される。いくつかの実施形態において、上記浸透圧調整剤が、1つ以上の浸透圧調整剤のマイクロカプセル化された粒子を含む。いくつかの実施形態において、上記1つ以上の浸透圧調整剤は塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、上記マイクロカプセル化された粒子は、1つ以上の浸透圧調整剤を含む腸溶コーティングを含む。いくつかの実施形態において、上記腸溶コーティングは、所定の時間内の間、所定の条件に曝露されると、上記1つ以上の浸透圧調整剤を放出するように構成される。いくつかの実施形態において、上記所定の条件は、温度範囲、pH範囲、および所定の剪断力からなる群より選択される1つ以上の条件を含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の粘液産生を促進して、その結果、上記生物学的材料の捕捉を容易にする薬剤を含む。いくつかの実施形態において、上記粘液産生を促進する薬剤はカプサイシンである。いくつかの実施形態において、上記製剤は、鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の粘液の粘度を高めて、その結果、上記送達された薬剤が動くのを防ぎ、それによって、上記鼻腔、上記嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域内の送達された製剤の残留時間を増加させる、1つ以上の薬剤を含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、鼻腔、嗅覚領域、または嗅覚領域の標的サブ領域に送達されると、液体状態から半固体状態に変化するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は、鼻腔、嗅覚領域、または嗅覚領域の標的化されたサブ領域への送達時に架橋反応を開始するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は2つ以上の試薬を含む。いくつかの実施形態において、上記2つ以上の試薬は、架橋反応を開始し、それによって上記製剤を半固体状態に変えるために、鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域への送達時に混合するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は非ニュートン流体を含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、ヒトの体温とほぼ同じ温度で液体状態から半固体状態に変化する。いくつかの実施形態において、上記製剤は、約35℃から約40℃の温度で液体状態から半固体状態に変化する。いくつかの実施形態において、上記製剤は、約37℃の温度で液体状態から半固体状態に変化する。いくつかの実施形態において、上記製剤はビンガムプラスチックを含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化サブ領域への送達中に剪断力を受けると、液体として挙動する。いくつかの実施形態において、上記製剤は、剪断力を受けない場合、半固体として挙動する。いくつかの実施形態において、上記製剤は、上記製剤の送達および部分的固化によって形成されたテールをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記テールは機械的に除去されるように構成され、それによって、上記捕捉された生物学的材料の除去を容易にする。いくつかの実施形態において、上記製剤の半固体状態は、生物学的材料の局在化に従って、捕捉された生物学的材料を保存するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は担体製剤として作用する。いくつかの実施形態において、上記担体製剤はカプセル化されたナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、上記カプセル化されたナノ粒子は、所定の時間の間、所定の条件に曝露されると分解するコーティング中でカプセル化される。いくつかの実施形態において、上記所定の条件は、鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域に固有である。いくつかの実施形態において、上記所定の条件は、温度、pH、および/または特定の生物学的材料との接触を含む。いくつかの実施形態において、上記コーティングの分解は、担体製剤を半固体状態から液体状態に変化させるように構成される化学物質を放出する。いくつかの実施形態において、上記製剤は、特定の生物学的材料を標的とするように、1つ以上の特定のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む。いくつかの実施形態において、特定の生物学的材料を標的とするように、上記製剤が1つ以上の特定のアプタマーを含む。いくつかの実施形態において、上記特定の生物学的材料がシスタチン-Cである。いくつかの実施形態において、上記特定の生物学的材料はウイルスまたはその一部もしくは誘導体である。いくつかの実施形態において、上記ウイルスはSARSCoV-2である。いくつかの実施形態において、上記製剤は、上記捕捉された生物学的材料を保存するための抗菌剤を含む。いくつかの実施形態において、上記抗菌剤は25%v/vエタノールおよび/または5%w/vクエン酸を含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は微生物富化および保存材料を含む。いくつかの実施形態において、上記微生物富化および保存材料が25%v/vトリプシン大豆ブロスを含む。いくつかの実施形態において、上記製剤はヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は糖を含む。いくつかの実施形態において、上記製剤がずり流動化またはせん断増粘である。いくつかの実施形態において、上記製剤は水と非混和性である。いくつかの実施形態において、上記製剤は水と混和性である。いくつかの実施形態において、上記製剤は生物学的材料を保存するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は生物学的材料の完全性を維持するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は、鼻腔、嗅覚領域、または上記嗅覚領域の標的化されたサブ領域に送達された後、凝集体に変化するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は、蒸発して製剤を凝集体に変える溶媒を含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、a)時間遅延後に反応するか、b)空気と反応するか、c)別個に導入された気体もしくは液体と反応するか、またはd)患者の体液と反応し、その結果、凝集体を形成する化学薬品を含む。いくつかの実施形態において、上記製剤は、嗅覚領域から生物学的材料を吸収するように構成される。いくつかの実施形態において、上記製剤は、製剤のボーラスとして提供、送達、および/または引き出しされる。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法、装置、およびシステムは、下部鼻腔の形状とは異なる嗅覚領域から捕捉された生物学的材料を収集および保存することができる、堅牢な新規の鼻微生物叢サンプリングシステムを含む。いくつかの実施形態では、デバイスはクラスII診断デバイスであり、このデバイスは嗅覚領域の標的サンプリングを容易にする。いくつかの実施形態では、デバイスは、被覆され、微生物叢の微生物を含む生物学的材料を、さらなる分析のためのその局在化に従って保存するように構成された特殊な製剤を送達する伸縮式サンプリングカニューレを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本主題の特徴および利点のより良い理解は、例示的な実施形態およびそれに付随する図面を説明する以下の詳細な説明を参照することによって得られる。
【
図1】一実施形態による生物学的材料を収集するための方法における工程を示すフローチャートを示す。
【
図2A】鼻腔から生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、この実施形態は、鼻腔に挿入されるカニューレを含むデバイスを含む。
【
図2B】
図2Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、製剤保持する容器がカニューレに連結される。
【
図2C】
図2Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、製剤は鼻腔に送達される。
【
図2D】
図2Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、生物学的材料は製剤によって捕捉される。
【
図2E】
図2Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、回収容器(vessel)がカニューレに連結されて、生物学的材料を引き出して収集する。
【
図2F】
図2Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、製剤および捕捉された生物学的材料は、カニューレを通って回収容器に引き出される。
【
図3A】鼻腔から生物学的材料を収集するための別の実施形態の図解を示し、この実施形態は、可撓性バルブ(bulb)と、鼻腔に挿入されるカニューレとを備えるデバイスを含む。
【
図3B】
図3Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、この実施形態では、製剤は、可撓性バルブを押すことによって鼻腔に送達される。
【
図3C】
図3Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、生物学的材料が製剤によって捕捉される。
【
図3D】
図3Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、可撓性バルブは、生物学的材料を引き出して捕捉するために弛緩することが可能である。
【
図4A】鼻腔から生物学的材料を収集するための別の実施形態の図解を示し、この実施形態は、製剤を保持する容器、展開機構、および鼻腔に挿入されるカニューレを備える送達デバイスを含む。
【
図4B】
図4Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、製剤は、展開機構を押すことによって鼻腔に送達される。
【
図4C】
図4Aに従って生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、送達デバイスが鼻腔から取り外される。
【
図4D】
図4Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、生物学的材料は製剤によって捕捉される。
【
図4E】
図4Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、ウィッキング(wicking、吸い出し)材料で満たされた回収装置および回収カニューレが鼻腔に挿入される。
【
図4F】
図4Aによる生物学的材料を収集するための実施形態の図解を示し、ここでは、回収装置は、ウィッキング材料を使用してカニューレを通して製剤および生物学的材料を引き込む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
鼻腔に見られる生物学的材料は、バイオマーカー、病原体、ヒト微生物叢の微生物、ならびに人の健康および/または状態に関連する情報を提供する他の材料を含み得る。本明細書に開示されるのは、人の鼻腔から生物学的材料を収集するための組成物、方法、システム、および装置である。いくつかの実施形態では、生物学的材料は、鼻腔の嗅覚領域から収集される。いくつかの実施形態では、生物学的材料は、嗅覚領域の標的化されたサブ領域から収集され、そのような生物学的材料は固有であり、嗅覚領域の他のサブ領域、および鼻腔の他の非嗅覚領域とは異なる。いくつかの実施形態では、標的化されたサブ領域から収集された生物学的材料は、その局在化に従って保存される。いくつかの実施形態では、生物学的材料は、脳脊髄液、人の微生物叢の微生物、メタボローム、病原体、および関心対象であるバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、鼻腔内に位置する生物学的材料の収集を容易にするために、特定の製剤が鼻腔内の領域に送達される。
【0012】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての当技術分野の技術用語、表記法、および他の技術的および科学的用語または用語は、特許請求される主題が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有することを意図する。場合によっては、一般に理解されている意味を持つ用語は、明確にするため、および/またはすぐに参照できるように本明細書で定義され、本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野で一般に理解されているものとの実質的な違いを表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0013】
生物学的材料という用語は、本明細書で使用される場合、生物によって産生される材料を指し、脳脊髄液(CSF)、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、バイオマーカー、バイオマーカーのサブコンビネーション、1つ以上の病原体、を含む。または患者のメタボロームの1つ以上の成分、他の成分、またはそれらの任意の組み合わせを指す。
【0014】
製剤という用語は、本明細書で使用される場合、嗅覚領域および嗅覚領域内の標的化されたサブ領域を含む、鼻腔から生物学的材料を捕捉するように構成された組成物を指す。
【0015】
鼻腔という用語は、本明細書に開示される場合、少なくとも下部鼻腔、中鼻腔、および上部鼻腔を含み、上部鼻腔は、少なくとも嗅覚領域を含む。
【0016】
嗅覚領域という用語は、粘膜が嗅上皮および嗅覚腺を有する、上鼻甲介および隣接する鼻中隔の上方および上方の領域を指す。
【0017】
標的部位という用語は、本明細書で使用される場合、生物学的材料を捕捉するための鼻腔内の所望の位置を指す。鼻腔内の所望の位置には、嗅覚領域、下部鼻腔、中鼻腔、および/または嗅覚領域の標的化されたサブ領域が含まれる。
【0018】
標的サブ領域という用語は、本明細書で使用される場合、特定の生物学的材料が位置する、嗅覚領域および/または非嗅覚領域の特定の領域などの鼻腔の特定の領域を指す。
【0019】
バイオマーカーという用語は、本明細書で使用される場合、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定される特性を指す。バイオマーカーとは、本明細書で使用される場合、タンパク質、ペプチド、小分子、および核酸、微生物を指し得、それらの存在および/または濃度は、疾患または他の医学的状態を示唆もしくは診断するか、または脳内の何らかの生化学的不均衡を示す。
【0020】
CSFという用語は、脳脊髄液を指す。
【0021】
微生物叢という用語は、本明細書で使用される場合、特定の環境内の微生物(細菌、真菌、およびウイルスなど)の収集物、特に人体の中またはその中に生息する微生物の収集物を指す。
【0022】
サンプルという用語は、本明細書で使用される場合、患者の特定の場所から捕捉された生物学的材料を指す。サンプルとは、本明細書で使用される場合、鼻腔の嗅覚領域などの鼻腔内の特定の領域を含む、鼻腔内から回収された生物学的材料を指し得る。
【0023】
嗅覚サンプルという用語は、本明細書で使用される、微生物叢、メタボローム、CSF、関心対象である他のバイオマーカー、およびバイオマーカーまたは他のその構成成分の任意のサブコンビネーションを含む鼻腔の嗅覚領域から回収された生物学的材料を含むサンプルである。
【0024】
サンプリングという用語は、本明細書で使用される場合、患者の特定の場所から生物学的材料のサンプルを収集することを指す。例えば、嗅覚サンプリングとは、嗅覚領域から生物学的材料のサンプルを収集することを指す。
【0025】
捕捉するという用語は、取得するおよび回収すると交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、捕捉する(捕捉すること)という用語は、製剤によって標的部位から得られる生物学的材料を指す。
【0026】
本明細書で使用される収集する(収集すること)という用語は、標的部位から(対応する製剤の有無にかかわらず)捕捉された生物学的材料を引き出すことを指す。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物、方法、システムおよび装置は、癌、自己免疫疾患、中枢神経系の外傷を含むがこれらに限定されない、脳および脊髄に影響を与える多種多様な感染症を診断するために使用できる、低侵襲性で使用者および患者に優しい生物学的材料の収集および分析を提供する。いくつかの実施形態では、本開示による装置およびシステムは、鼻腔の嗅覚領域を含む鼻腔からの生物学的材料の収集、処理、および分析を統合、自動化、および小型化するプラットフォームを提供する。本明細書に記載の特定の実施形態は、研究者、臨床医、および第一応答者が、神経学的健康における治療および回復力を進歩させ、ヒトの能力を最適化するために、低侵襲性かつタイムリーな方法で生物学的材料(および/またはそこに含まれるバイオマーカー)を収集することを可能にする。
【0028】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年4月12日に出願された国際特許出願第PCT/CA2019/050455に記載されているように、標的化薬物送達および正確なボーラス局在化は、低侵襲カニューレならびに層流およびコアンダ効果を利用する送達で達成することができる。このアプローチを利用して、投与液量は鼻回廊(nasal corridor)の上部側面に付着し、人体測定の変動を考慮し、オペレーターの調整およびサイズ固有のカテーテルの必要性を軽減する。PCT/CA2019/050455に準拠したデバイスは、本開示に従う方法での生物学的材料の収集のために使用でき、トレーニング要件が低く、直感的な使用を可能にし、投与のための補助デバイスを必要としない小型で軽量のフォームファクタをデバイスに提供できる。
【0029】
最近のインビボ動的PTEスキャンは、ヒト鼻甲介がCSFクリアランスシステムの実質的な部分であることを示した(De Leon.M.J..Li.Y..Okamura.N..Tsui.W.H..Saint-Louis.L.A..Glodzik.L.....& Fossati.S.(2017).Cerebrospinal fluid clearance in Alzheimer disease measured with dynamic PET.Journal of Nuclear Medicine.58(9).1471)。CSF形成速度を0.3mL/minと仮定し(Spector.R..Snodgrass.S.R..& Johanson.C.E.(2015).A balanced view of the cerebrospinal fluid composition and functions: focus on adult humans.Experimental neurology.273.57-68)]、クリブリフォームプレート近くのリンパ管を介する1-20%の取り込みの潜在的範囲と仮定し(Sun.B.L..Wang.L.H..Yang.T..Sun.J.Y..Mao.L.L..Yang.M.F.....& Yang.X.Y.(2018).Lymphatic drainage system of the brain:A novel target for intervention of neurological diseases.Progress in neurobiology.163.118-143)、鼻リンパ管中の3~60μL/分のCSFの範囲は、本明細書に記載の方法および装置によるサンプリングに利用可能である。
【0030】
本開示は、鼻腔から生物学的材料を収集するために構成された、本明細書では製剤と呼ばれる組成物を提供する。いくつかの実施形態では、製剤は、嗅覚領域に特異的な生物学的材料を収集するように構成される。いくつかの実施形態では、製剤は、以下で論じられるように、収集された生物学的材料内の特定のバイオマーカーの回復を阻害または増強するように構成される。非限定的な例として、以下の表1に示すように、特にそのサンプルが脳脊髄液(CSF)の成分を含む場合、診断上の関心対象である多くのタンパク質バイオマーカーが、収集された生物学的材料に見出され得る。
【0031】
【0032】
ヘモペキシンは、遊離ヘムに結合するタンパク質であり、>50,000ng/mLでのその存在は、くも膜下出血後の脳虚血の予測因子である。50μLのサンプルでは、これは>2,500ng分析物の存在に相当する。
【0033】
C反応性タンパク質は、化膿性髄膜炎を診断するためのマーカーである。健常範囲は、50μLのサンプルで3,420~5,420ngである。50μLサンプルで8,625~37,125ngの増加は小児の髄膜炎の指標であるのに対して、50μLサンプルで6,610~20,310ngの範囲は成人の指標である。これはまた、結核性髄膜炎も同定でき、この場合には減少し、小児では0~2,495ng、成人では395~695ngの範囲に分類される。
【0034】
シスタチン-Cは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の潜在的なバイオマーカーである。50μLのサンプルにおける65~290ngのレベルの低下は、50μLにおける125~325ngの健康レベルと比較して、疾患を示す。
【0035】
特定の実施形態は、正常な鼻汁中の他の成分と比較して、CSFの収集を強化するCSFサンプリング製剤および装置を提供する。表2は、CSFを通常の鼻汁と区別するいくつかの要因を提供する。
【0036】
【0037】
標的徴候(Oh JW, Kim SH,Whang K.Traumatic Cerebrospinal Fluid Leak:Diagnosis and Management.Korean J Neurotrauma.2017;13(2):63-67):CSFが血液または鼻汁と混合された場合、CSFが濾紙上を遠くまで移動し、血液が接近して移動するため、2つの輪が表示される。これは、ターゲットサイン、ダブルリングサイン、またはハロサインと呼ばれる。デバイスの実施形態は、これを利用して、CSFを単離することができる(すなわち、存在する血液からCSFを単離するためのサンプル収集リザーバー内の積み重ねられた膜フィルター)。フィルター素材には、天然綿または合成繊維(ポリエステルなど)が含まれる。適切な材料には、イムノクロマトグラフィー装置で一般的に使用される(妊娠検査など)材料の適合が含まれる。好ましい材料には、天然綿繊維、処理されたポリエステル繊維、ニトロセルロース膜、またはポリカーボネートメッシュが含まれる。
【0038】
結合試験(Oh JW, Kim SH,Whang K.Traumatic Cerebrospinal Fluid Leak:Diagnosis and Management.Korean J Neurotrauma.2017;13(2):63-67):鼻からの排出物が乾燥吸着剤織物(すなわち、乾燥ガーゼ)を通過したとき、粘着性がない場合、CSFは透明になる可能性が高くなる。この工程は、鼻からのムチン分泌のために不明瞭で粘着性のある鼻汁を測定するためのテストである。適切な材料には、イムノクロマトグラフィー装置(妊娠検査など)で一般的に使用される材料の適合が含まれる。好ましい材料には、天然綿繊維、処理されたポリエステル繊維、ニトロセルロース膜、またはポリカーボネートメッシュが含まれる。
【0039】
グルコース酸化試験:鼻または耳の分泌物からのCSFグルコースは、CSF漏出を試験する際の古典的な方法である。一般に、グルコースオキシダーゼストリップは、サンプルの濃度が20mg/dLを超えると陽性の結果を示す。鼻汁の通常の濃度は10mg/dLのグルコースであるため、グルコース試験が陰性の場合は除外できる。しかし、患者の他の病状に応じて偽陽性率と偽陰性率が高いため、これは参照としてのみ使用されるべきである。さらに、濃度が5mg/dL未満の場合でも、涙液分泌を試験することができる。一方、血性鼻汁では偽陽性の結果が見られるが、患者の髄膜炎がすでに進行している場合は偽陰性の結果が見られる。CSF漏出の解釈と確認の前に、これらすべての臨床状態を考慮しなければならない。好ましい実施形態は、グルコースオキシダーゼ試験ストリップをサンプルリザーバーに組み込むか、またはサンプリングプロセスへの追加のステップとして実行され得る。
【0040】
グルコースおよび塩素濃度:血清グルコースレベルが0.5~0.67mg/dLである場合、より高い濃度は、CSFを示唆している。CSFの血糖値は、血清中の血糖値の影響を受けることには疑いの余地はないので、CSFの検出を確認する際には、2つのパラメーターを一緒に考慮することが重要である。塩素濃度レベルが100mEq/L以上のサンプルは、CSFを示す。好ましい実施形態は、サンプルリザーバーにグルコースおよび塩素テストストリップを組み込むか、またはCSFサンプリングを確認するためのサンプリングプロセスへの追加の工程として実行され得る。
【0041】
ベータ-2トランスフェリン(タウタンパク質):ベータ-1トランスフェリンは、血清涙液、鼻分泌物、および唾液に遍在的に見出され、一方、ベータ-2-トランスフェリンは、CSF、外リンパ、および硝子体液にのみ観察される。ベータ-2トランスフェリンはCSFに特異的であるため、非常に高い感度と特異性を備えたよく知られたマーカーである。これは、脳内のノイラミニダーゼ活性の存在によるシアル酸の喪失によってトランスフェリンから生成され、したがって、ベータ2トランスフェリンは、CSF、外リンパ、房水内にのみ局在する。他の身体分泌液が存在しないことにより、CSFの鼻漏または耳漏(通常は頭部外傷、腫瘍、先天性奇形または手術の結果としての鼻漏または耳道へのCSFの漏出)の診断を確認する上でその検出は非常に貴重です(ベータ2トランスフェリン/タウタンパク質:http://www.viapath.co.uk/our-tests/beta-2-transferrintau-protein)。1975年に発見されたタウタンパク質は、主に軸索輸送と微小管の安定化に関与するニューロン内タンパク質である。CSFタウタンパク質は神経タンパク質であり、アルツハイマー病(AD)の診断のために一般的に評価される。鼻漏液中のタウタンパク質の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)測定は、鼻汁中のCSFの存在を検出し、CSF漏出の存在を伝えるための信頼できる関連マーカーである可能性がある(Oudart JB,Zucchini L,Maquart FX,et al.Tau protein as a possible marker of cerebrospinal fluid leakage in cerebrospinal fluid rhinorrhoea:A pilot study.Biochem Med(Zagreb).2017;27(3):030703)。好ましい実施形態は、サンプルリザーバー内のTAUタンパク質に対する抗体を有する横方向流動試験ストリップを組み込むか、またはCSFサンプリングを確認するためのサンプリングプロセスへの追加の工程として実行され得る。CSFサンプリング製剤の実施形態は、CSF液の選択的回収を増強するために、TAUタンパク質を含むサンプルに選択的に結合するための抗体または他の選択的要素を含み得る。
【0042】
ベータトレースタンパク質(BTP):プロスタグランジンDシンターゼとしても知られている、このタンパク質は、主に、中枢神経系(CNS)内のくも膜細胞、希突起膠細胞、および脈絡叢において合成される。ベータトレースタンパク質はまた、ヒトの精巣、心臓、血清にも存在する。これは、腎不全、多発性硬化症、脳梗塞、および特定のCNS腫瘍の存在によって変化する。この試験は、複数の研究でCSF鼻漏を診断するために使用されており、感度は92%、特異度は100%である(脳脊髄液(CSF)鼻漏の精密検査におけるベータトレースタンパク質試験の役割は何か?https://www.medscape.com/answers/861126-102445/what-is-the-role-of-beta-trace-protein-testing-in-the-workup-of-cerebrospinal-fluid-csf-rhinorrhea)。BTPは、プロスタグランジンDシンターゼとして同定された25kDaのタンパク質である。ほぼ20mg/Lで、アルブミンに次いで2番目に豊富なCSFタンパク質であり、CSF対血清の比率は33であり、すべてのCSF特異的タンパク質の中で最も高い(Bernasconi, Luca & Huber,Andreas.(2017).Beta-trace Protein Quantification for Diagnosis of CSF Leakage Syndrome.白紙)。好ましい実施形態は、サンプルリザーバー内のBTPを検出するための抗体を備えた横方向フローテストストリップを組み込むか、またはCSFサンプリングを確認するためのサンプリングプロセスへの追加のステップとして実行され得る。CSFサンプリング製剤の実施形態は、CSF液の選択的回収を増強するために、BTPタンパク質を含むサンプルに選択的に結合するための抗体または他の選択的要素を含み得る。
【0043】
例示の単純化および明確化のために、対応するかまたは類似の要素を示すために、図の間で参照番号を繰り返すことができる。本明細書に記載されている実施例の理解を提供するために、多くの詳細が示されている。実施例は、これらの詳細を伴うことなく実行できる。他の例では、説明されている実施例を曖昧にすることを避けるために、よく知られた方法、手順、および構成要素は詳細に説明されてはいない。説明は、本明細書に記載された実施例の範囲に限定されると見なされるべきではない。
【0044】
図1は、人の鼻腔、または具体的には、鼻腔の嗅覚領域から生物学的材料を収集するための例示的な方法100のフローチャートを示す。
図1に開示される例示的な方法は、
図1は、鼻腔の他の領域にも適用可能であり、嗅覚領域への言及は、鼻腔の別の標的領域、または鼻腔自体で置き換えられる。方法100は、102で鼻腔(嗅覚領域など)から生物学的材料を標的とするように構成された製剤を提供する工程と、104で患者の鼻腔に製剤送達デバイスを挿入する工程と、106で製剤を嗅覚領域に送達する工程と、108で製剤が嗅覚領域(その中の関心対象であるバイオマーカーを含む)から生物学的材料を捕捉することを可能にする工程と、110で製剤と捕捉された生物学的材料を引き出す工程と、112でその中の関心対象であるバイオマーカーを含む捕捉された生物学的材料を分析する工程とを含む。これらの各工程については、次のセクションで詳しく説明する。いくつかの実施形態では、引き出され捕捉された生物学的材料(すなわち、収集された生物学的材料)は保存される。いくつかの実施形態では、引き出され捕捉された生物学的材料は、鼻腔内でのその局在化に従って保存される。
【0045】
製剤の提供
いくつかの実施形態では、例示的な方法100は、102で製剤を提供する工程を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、鼻腔内の生物学的材料を標的とするように構成される。いくつかの実施形態において、製剤は、鼻腔内の標的部位のために構成される。いくつかの実施形態では、標的部位は嗅覚領域であり、製剤は、嗅覚領域内に含まれるバイオマーカーを含む特定の生物学的材料を標的とするように構成される。いくつかの実施形態では、そのような生物学的材料には、CSF、人の微生物叢からの微生物、メタボローム、および関心対象である他のバイオマーカーが含まれる。いくつかの実施形態において、標的部位は、鼻腔の標的化されたサブ領域、例えば、嗅覚領域内の標的化されたサブ領域であり、製剤は、標的化されたサブ領域内の特定の生物学的材料を標的化するように構成される。以下のセクションでは、嗅覚サンプリング用の製剤(嗅覚サンプリング製剤)を含む鼻腔サンプリング用の製剤(鼻腔サンプリング製剤)の例、ならびに特定の生物学的材料を標的とするように構成された製剤の例について説明する。本明細書で説明するように、サンプリングという用語は、特定の場所から生物学的材料のサンプルを収集すること、例えば、嗅覚領域からの生物学的材料の捕捉および引き出し(すなわち、嗅覚サンプリング)を指す。いくつかの実施形態では、嗅覚サンプリング製剤などの製剤は、緩衝食塩水を含む。いくつかの実施形態において、緩衝食塩水は、製剤に所望の粘度を提供するための粘度調整剤を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、経鼻投与のためにFDAまたはEMA承認された1つ以上の不活性成分から構成される。FDA不活性成分データベース(FDA Inactive Ingredient Database)、および「ヒト用医薬品のラベルおよび添付文書の添加剤」に関する欧州委員会ガイドラインの付属書(Annex to the European Commission guideline on ’Excipients in the labelling and package leaflet of medicinal products for human use’)の両方は、スプレーもしくはエアロゾル剤形、および/または鼻および吸入の投与経路のために承認された不活性成分の例を提供する目的で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
いくつかの実施形態では、製剤は、a)製品の実行可能性のために十分な貯蔵寿命を提供し、b)適切な容器充填ラインと一体化し、そしてc)分配システムと一体化する容器に保持される。例えば、製剤は、カープル(シングルまたはマルチチャンバー)、シリンジ(シングルまたはマルチチャンバー)、使い捨てピペット、ピペット、バルブシリンジ、ブローフィルシール容器(例えば、MicroDose(商標)単回使用ユニットまたは SwabDose(商標)単回使用ユニット)、ベローズ、マイクロ流体カートリッジ、単回用量リキッドカップ、バイアル、アンプル、ヒートシールバッグ(例えば、IVバッグ)、成形バッグ、またはカスタムコンポーネントアセンブリに保存されてもよい。例示的な製剤を以下に説明する。
【0047】
緩衝生理食塩水と粘度調整剤を含む製剤
いくつかの実施形態において、嗅覚サンプリングを含む鼻腔サンプリングのための製剤は、25~75%v/vの範囲のグリセロールなどの承認された粘度調整剤を含む100mMリン酸緩衝生理食塩水を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、25~75%v/vの範囲のペクチンなどの承認された粘度調整剤を含む100mMリン酸緩衝生理食塩水を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、25~75%v/vの範囲のポリエチレングリコール3350などの承認された粘度調整剤を含む100mMリン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、製剤は、水と非混和性である。いくつかのそのような実施形態では、製剤は、ボーラスを形成するために嗅覚領域に送達される。これらの実施形態では、微生物叢からの微生物、メタボローム、CSF、および/または関心対象であるバイオマーカーを含む生物学的材料は、嗅覚領域の標的部位から製剤ボーラスに拡散する。
【0049】
いくつかの実施形態では、製剤は水と混和性であり、嗅覚領域または他の鼻腔内領域の標的部位での患者の体液(例えば、粘液、CSF、血漿、血液、漿液腫液)よりも浸透圧が低い。例えば、血漿の浸透圧の範囲は、健康な人では275~299ミリオスモル/Kgであり、CSFと同様の浸透圧範囲を有する(平均270ミリオスモル/Kg)。しかし、そのような浸透圧範囲は疾患状態によって変化し、個人間で変化する可能性がある。いくつかの実施形態では、製剤は、個人間でこのサンプリング機能に適合するために、様々な浸透圧範囲の極端な下限よりも低い浸透圧になるように設計されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、製剤は水と混和性であり、標的部位での患者の体液と等しい浸透圧である。いくつかのそのような実施形態において、製剤からの液体は、患者の粘液層における関心対象である特定のバイオマーカーに結合し、そして関心対象であるバイオマーカーは、製剤に拡散する。
【0051】
いくつかの実施形態では、製剤は水と混和性であり、標的部位の患者の体液よりも高い浸透圧である。いくつかのそのような実施形態では、患者の粘液層からの液体が製剤に引き出される。いくつかの実施形態において、製剤の浸透圧は、適切な量の鼻腔液が標的部位から抽出された後に、標的部位の浸透圧と等しくなるように調整される。いくつかの実施形態において、製剤中の浸透圧は、塩、糖、デンプン、アルブミン、デキストラン、他の薬剤、またはそれらの組み合わせを加えることによって調整される。いくつかの実施形態において、適切な糖には、スクロース、グルコース、デキストロース、およびマンニトール、キシリトールなどの糖アルコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態において、製剤は、生物学的材料が適切な速度で標的部位から引き出されることを確実にするために、経時的に浸透圧を制御する化合物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、腸溶コーティングにカプセル化された生理食塩水または他の浸透圧調整剤のマイクロカプセル化粒子を含み、これは、温度、pH、剪断力などの特定の条件に曝露されると分解する。いくつかの実施形態において、このようなマイクロカプセル化された粒子のコーティングは、必要な時間の間、そのような条件に暴露されると分解する。
【0053】
いくつかの実施形態において、製剤は、生物学的材料の製剤ボーラスへの輸送を促進するためのヒドロゲルをさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、製剤は、標的部位からの生物学的材料の回収を増強する化合物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、標的部位での粘液産生を増加させるように構成されたカプサイシンまたは別の薬剤を含み、これは、製剤ボーラスへの関心対象であるバイオマーカーの流れを増加させる。いくつかの実施形態では、製剤は、粘液層を厚くして製剤ボーラスが移動するのを防ぎ、それによって生物学的材料を引き込むためのより良い滞留時間を可能にする薬剤を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、製剤は、その粘度を制御し、ずり流動化またはせん断増粘を行い、またはそれをビンガムプラスチックにして、製剤が生物学的材料の捕捉中に標的部位に留まるようにするためのゲル化剤、増粘剤、または他の薬剤を含む。
【0056】
架橋試薬を含む製剤
いくつかの実施形態において、製剤は、架橋反応を開始するために混合される2つ以上の試薬を含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の試薬は、送達デバイス内に含まれる。いくつかの実施形態では、2つ以上の試薬は、鼻腔への展開時に混合される。いくつかの実施形態では、混合の際に、試薬は架橋して半固体状態を形成し、より長い保持およびサンプリング時間を可能にする。いくつかの実施形態では、製剤の送達は、製剤の送達位置(すなわち、標的部位)から延びる軌跡を残し、これは、製剤の半固体テール部分を形成する。所望の滞留時間が完了すると、半固体製剤ボーラスの「テール」が機械的に除去され、そこに関心対象であるバイオマーカーを含む、保存された捕捉された生物学的材料が含まれる。いくつかの実施形態では、架橋製剤は、生物学的材料の保存をその局在化に従って可能にし、すなわち、標的部位から収集された生物学的材料は、鼻腔内の他の領域からの生物学的材料と混合されない。いくつかの実施形態では、製剤の架橋は、捕捉された生物学的材料を所定の位置にロックし、それにより、製剤が正確な生物学的材料の局在化のために標的領域に配置される場合、収集された生物学的材料の保存をその局在化に従って可能にする。いくつかの実施形態では、多成分構成要素(例えば、2つ以上の試薬の使用)は、製剤のより長い貯蔵寿命および製剤の展開時に輪郭の形成を可能にし、多様な解剖学的構造の大集団にわたるサンプリングを可能にする。
【0057】
非ニュートン流体を使用した製剤
いくつかの実施形態において、製剤は、非ニュートン流体を含み、その結果、製剤は、室温で保存されたときおよび展開されたときに液体であり、製剤は、ほぼヒトの体温の温度で半固体になり、半固体状態を形成して、より長い保持およびサンプリング時間を可能にする。いくつかの実施形態では、製剤は、約37℃の温度で半固体になる。いくつかの実施形態では、製剤は、約35℃~約40℃の温度で半固体になる。いくつかの実施形態では、製剤の送達は、製剤の送達位置(すなわち、標的部位)から延びるトレイル(trail)を残し、これは、製剤の半固体テール部分を形成する。いくつかの実施形態では、所望の滞留時間が完了する際に、半固体製剤ボーラスの「テール」が、機械的に除去され、これは捕捉された生物学的材料を含む。いくつかの実施形態では、単一成分の製剤が必要であり、製剤の輪郭は、展開時に形成されて、多様な解剖学的構造の大集団にわたるサンプリングを可能にする。いくつかの実施形態では、製剤の半固体状態は、捕捉された生物学的材料の保存を、その局在化に従って可能にする。いくつかの実施形態では、半固体製剤は、捕捉された生物学的材料を所定の位置にロックし、それにより、製剤が正確な生物学的材料の局在化のために標的領域に配置される場合、捕捉された生物学的材料の保存を、その局在化に従って可能にする。
【0058】
ビンガムプラスチック流体を含む製剤
いくつかの実施形態において、製剤は、ビンガムプラスチック流体を含み、それにより、剪断下での製剤の展開は、製剤を液体状態として挙動させ、標的領域への容易な展開を可能にする。いくつかの実施形態では、一旦、製剤が標的部位に配置されると、剪断力が除去され、ビンガムプラスチック流体により、製剤が半固体状態に戻り、固化して、より長い保持およびサンプリング時間を可能にする。いくつかの実施形態では、所望の滞留時間が完了する際に、製剤への剪断力の適用(例えば、吸引による)により、ビンガムプラスチックが液体状態に変換されて、容易な除去および抽出が可能になる。この実施形態の少なくとも1つの利点は、1つの単一の製剤が必要であり、製剤の輪郭が展開時に形成されて、多様な解剖学的構造の大集団にわたるサンプリングを可能にし、サンプリング製剤の液体の側面を通してのサンプリング後分析のための除去およびサンプルの取り扱いを容易にすることである。いくつかの実施形態において、製剤の半固体状態は、捕捉された生物学的材料の保存を、その局在化に従って可能にする。いくつかの実施形態では、半固体製剤は、捕捉された生物学的材料を所定の位置にロックし、それにより、製剤が正確な生物学的材料の局在化のために標的領域に配置される場合捕捉された生物学的材料の保存を、その局在化に従って可能にする。
【0059】
前述の例の任意の組み合わせを含む製剤
いくつかの実施形態において、製剤は、ビンガムプラスチック、架橋反応、および/または非ニュートン流体を使用する任意の組み合わせを含む、製剤の上記の例のいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前述の例の任意の組み合わせを含む製剤は、液体状態で展開され、標的部位で固化する。いくつかの実施形態では、前述の例のいずれかを含む製剤は、担体製剤として作用する。いくつかの実施形態では、担体製剤は、標的領域に特有の特定の条件下で分解するコーティングにカプセル化されているカプセル化されたナノ粒子をさらに含む。いくつかの実施形態では、そのような条件は、温度、pH、関心対象である特定のバイオマーカーとの接触を含む。いくつかの実施形態では、そのようなカプセル化された粒子のコーティングは、必要な時間の間、そのような条件に曝露される際に分解される。いくつかの実施形態において、カプセル化されたナノ粒子は、異なる所望の生物学的状態を反映するように、様々な特定の生物学的条件下で分解するように調整される。いくつかの実施形態では、コーティングの分解は、半固体状態で担体製剤と反応するように設計された化学物質を放出し、それをその液体状態に戻す。これらの実施形態の少なくとも1つの利点は、多様な解剖学的構造の大集団にわたるサンプリングを可能にする展開時の輪郭形成、およびサンプリング製剤の液体の態様を通して容易にされるサンプリング後分析のための除去およびサンプル処理を容易にすることを含む。
【0060】
特定の生物学的材料を標的とするように構成された製剤
いくつかの実施形態では、製剤は、標的部位に位置する特定の生物学的材料を標的化するように構成される。いくつかの実施形態では、標的部位に位置する特定の生物学的材料を検出、保存、単離、および/またはその回収を増強もしくは制限することが望ましい。具体的なアプローチの例を以下に説明する。
【0061】
いくつかの実施形態は、関心対象である特定の生物学的材料に対する特定のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体をさらに含む、上記に議論した例のいずれかによる製剤を含む、サンプリング製剤を標的とする特定の生物学的材料を提供する。いくつかの実施形態において、関心対象である特定の生物学的材料は、ウイルスまたはウイルスの一部もしくは誘導体である。例えば、いくつかの実施形態では、ウイルスはSARS CoV-2である。いくつかの実施形態において、関心対象である特定の生物学的材料は、シスタチンCである。
【0062】
いくつかの実施形態は、上記の例のいずれかによる製剤を含み、関心対象である特定の生物学的材料に対する特定のアプタマーをさらに含む、サンプリング製剤を標的とする特定の生物学的材料を提供する。いくつかの実施形態において、関心対象である特定の生物学的材料は、ウイルスまたはウイルスの一部もしくは誘導体である。例えば、いくつかの実施形態では、ウイルスはSARS CoV-2である。いくつかの実施形態において、関心対象である特定の生物学的材料は、シスタチンCである。
【0063】
いくつかの実施形態は、抗菌剤をさらに含む上記に議論した製剤例のいずれかによるサンプリング製剤を標的とする特定の生物学的材料など、生物学的材料の保存を補助するための抗菌特性を有する製剤を提供する。いくつかの実施形態において、抗菌剤は、25%v/vエタノールおよび/または5%w/vクエン酸を含む。
【0064】
いくつかの実施形態は、抗菌剤をさらに含む上記に議論した製剤例のいずれかによるサンプリング製剤を標的とする特定の生物学的材料など、生物学的材料の保存を補助するための抗菌特性を有する製剤を提供する。いくつかの実施形態において、抗菌剤は、ペプチドグリカンを含む微生物のみを除去するためのベータラクタム抗生物質を含む。
【0065】
いくつかの実施形態は、25%v/vトリプシン大豆ブロス(例えば、微生物性髄膜炎の検出と培養用)などの特定の微生物富化および保存材料をさらに含む、上記に議論した製剤例のいずれかによるサンプリング製剤を標的とする特定の生物学的材料などの特定の微生物を富化するための製剤を提供する。
【0066】
当業者が理解するように、上記の例で議論された特徴のいずれかまたはすべての組み合わせを含む製剤の他の特定の構成が、他の実施形態で提供され得る。
【0067】
デバイスの挿入
方法100は、104で鼻腔にデバイスを挿入することをさらに含む。いくつかの実施形態では、デバイスは、104で患者の嗅覚領域に近接して挿入される。いくつかの実施形態では、デバイスは、可撓性カニューレ、製剤を保持する容器であって、カニューレに流体的に接続されている、容器、および製剤を容器からカニューレに押し出すための展開機構を備える。適切な鼻カニューレは当技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、カニューレは伸縮式カニューレである。いくつかの実施形態では、カニューレは、製剤がカニューレから排出される送達オリフィスを備える。
【0068】
いくつかの実施形態では、デバイスは、挿入の安全性を高め、自己投与をサポートするために、患者の解剖学的構造上にデバイスを配置する特徴を含む。いくつかの実施形態では、デバイスは、
図2aを参照して以下で議論されるように、鼻および/または鼻孔の外部基部に対して位置する特徴を含む。いくつかの実施形態では、デバイスの挿入は、感触/患者の快適さによって行われる。
【0069】
いくつかの実施形態では、デバイスは、内部の鼻の解剖学的構造(例えば、篩板の下または蝶形骨洞の前方の嗅覚室の屋根)に対して配置されている。例えば、いくつかの実施形態では、デバイスは、危険な力がカニューレを介して伝達されるのを防ぐ機械的特徴(例えば、力制限ばね、ラジアルスリップクラッチ、および/またはアキシャルスリップクラッチ)を備える。一実施形態では、カニューレおよび送達システムは、デバイス内に浮き、ばねで装置に取り付けられる。いくつかの実施形態では、デバイスの本体からの力は、ばねを介してカニューレに伝達される。いくつかの実施形態では、カニューレが患者に接触するとき、ばねは、デバイスが患者に伝達できる最大の力を制限する。
【0070】
他の実施形態では、デバイスは、他の外部の顔の解剖学的構造に対して、例えば、鼻梁、頬骨、眉毛の下、または歯の前を参照して、配置される。別の実施形態では、デバイスは、鼻梁上に載っている一対の眼鏡として顔に配置されている。
【0071】
いくつかの実施形態では、デバイスは、鼻腔内の非標的領域からのカニューレの汚染を防止または最小化するように構成されたシースを含む。いくつかの実施形態では、シースは、鼻腔の非標的領域との生物学的材料および/または製剤の相互汚染を防止または最小化するように構成される。標的部位が嗅覚領域であるいくつかの実施形態では、非標的領域は、下部鼻腔、中鼻腔、および嗅覚領域以外の上部鼻腔の領域を含む。標的部位が嗅覚領域の標的化サブ領域であるいくつかの実施形態では、非標的化領域は、嗅覚領域の下部および中鼻腔ならびに非標的化サブ領域を含む。
【0072】
製剤の送達
方法100はさらに、製剤を、デバイスを通して鼻腔、例えば106における患者の嗅覚領域に送達する工程を含む。いくつかの実施形態では、鼻腔に沈着される場合、製剤は製剤ボーラスである。いくつかの実施形態では、製剤は、カニューレまたは他のマイクロ流体チャネルを使用して送達される。いくつかの実施形態では、製剤は、鼻腔または嗅覚領域の標的化されたサブ領域に送達される。いくつかの実施形態では、製剤は、カニューレのオリフィスを通してデバイスから排出され、オリフィスは、製剤を標的とされるサブ領域に送達するように配置される。いくつかの実施形態では、標的とされるサブ領域は、嗅覚領域内の個別のミリメートルの領域に局在化される。
【0073】
いくつかの実施形態では、製剤は、様々な機械的方法によって、例えば、ばね力、モーター力、空気圧、真空、または手によって提供される力によって、カープル(シングル、マルチチャンバー)、シリンジ(シングル、マルチチャンバー)、使い捨てピペット、ピペット、バルブシリンジ、ブローフィルシール容器(例えば、MicroDose(商標)シングルユースユニット)、ベローズ、マイクロ流体カートリッジからの製剤、または成形バッグから製剤を駆動して、装置を通って嗅覚領域に移動するように構成される。いくつかの実施形態では、製剤は、ポンプ(例えば、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、ギアポンプなど)によって動かされる。いくつかの実施形態では、製剤は、ポンプ(例えば、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、ギアポンプなど)によって提供される圧縮ガスによって、または圧縮ガスの貯蔵器(例えば、CO2シリンダー)によって動かされる。いくつかの実施形態では、製剤を動かすのに必要な力または圧力は、電気モーター、ボイスコイル、ソレノイド、または磁石によって提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、国際特許出願第PCT/CA2019/050455に開示されているような特徴を有するデバイスを使用して送達することができる。
【0074】
別の実施形態では、患者は、口からデバイスに息を吐き出すかまたは吸入して、空気圧または真空を提供して、製剤をデバイスから標的部位に追いやる。いくつかの実施形態では、デバイスは、デバイスが鼻に挿入されたときに患者の口の中に置かれるマウスピースを含む。いくつかの実施形態では、患者はマウスピースに息を吐き出す。いくつかの実施形態では、適用された圧力がピストンを動かし、それが製剤を装置からカニューレを通って標的部位に押し出す。いくつかの実施形態では、適用された圧力は、製剤で満たされたバッグまたはベローズをさらに圧縮する。いくつかの実施形態では、患者はマウスピースを通して吸入し、それにより、ピストンを動かす真空をもたらす。いくつかの実施形態では、移動ピストンは、製剤を、カニューレを通して標的部位に移動させる第2のピストンに接続されている。
【0075】
別の実施形態では、患者は、製剤を移動させるための空気圧または真空を提供するためにデバイスが挿入された状態で、鼻から息を吐き出すかまたは吸入する。いくつかの実施形態では、挿入されると、デバイスは、エラストマープラグで鼻孔を密封する(鼻の外側の顔面シールまたは鼻孔の内表面の放射状シールのいずれかによる)。いくつかの実施形態では、患者が鼻を通して吸引するとき、これは鼻孔に真空を引き込み、これは、製剤をデバイスから、カニューレを通して、そして標的部位に引き入れる。いくつかの実施形態では、デバイスは、上記のように鼻孔に対して密封するが、患者は、吹くように指示され、それによって、鼻孔内に圧力を構築する。いくつかの実施形態では、デバイスは、空気が鼻からデバイスに流れることを可能にするポートを備え、空気流がプランジャを押して、製剤をデバイスからカニューレを通って標的部位に押し出す。いくつかの実施形態では、患者は代替鼻孔を塞ぐか、またはデバイスは、第2の鼻孔を遮断するための第2のエラストマープラグを備え得る。
【0076】
別の実施形態では、製剤はまた、嗅覚領域の狭い形状内などの鼻腔内の毛細管力によって標的部位に吸い上げ(wick)られ得る。これは、製剤が嗅覚粘液に対して適切な表面張力と湿潤角を有している場合に発生する。いくつかの実施形態では、製剤を標的部位に吸い上げることは、患者の解剖学的構造に自然に生じる変動のために、一部の患者でのみ実行可能である。この実施形態では、製剤は、カニューレに接続されたバッグ内に含まれている。いくつかの実施形態では、カニューレは、嗅覚領域の狭い上部と接触して配置される。いくつかの実施形態では、バッグを部分的に押し下げてカニューレを製剤で満たし、製剤を嗅覚領域の狭い上部と接触させ、次に毛細管圧が製剤をバッグから嗅覚領域に引き込む。
【0077】
別の実施形態において、製剤は、重力によって鼻腔に供給される。いくつかの実施形態では、カニューレは、先端が鼻腔嗅覚領域内の標的部位に接触するように患者に挿入される。いくつかの実施形態では、製剤を保持する容器(例えば、IVバッグ)がカニューレに接続され、嗅覚領域の上に保持される。次に重力により、製剤が、容器からカニューレを通って嗅覚領域に押し込まれる。別の実施形態では、患者は、毛細管力を必要とすることなく、嗅覚領域が製剤を保持するように、頭を逆さまにして配置される(例えば、患者はテーブルに横になり、頭は後ろに傾けられる)。別の実施形態では、製剤およびカニューレが(嗅覚領域ではなく)鼻に部分的に挿入されるように、患者は頭を逆さまにして配置される。次に重力により、製剤はカニューレから鼻腔の上部を下って嗅覚領域に流れ込む。
【0078】
いくつかの実施形態では、製剤は、剛体(例えば、スプーン、綿棒)を使用して標的部位に直接配置することができる。いくつかの実施形態において、剛体は、配置を改善するために関節運動され得る。いくつかの実施形態では、剛体は内視鏡またはカニューレシースである。いくつかの実施形態において、製剤で飽和された綿棒は、標的部位に配置され、一定期間放置され、次いで、製剤を回収するために取り出される。
【0079】
生物学的材料の捕捉
方法100は、送達された製剤が108で生物学的材料を捕捉することを可能にすることをさらに含む。本明細書に開示されるように、「生物学的材料」という用語および関連する用語は、生物によって産生される物質を指し、脳脊髄液(CSF)、患者の微生物叢の1つ以上の微生物、バイオマーカー、バイオマーカーのサブコンビネーション、1つ以上の病原体、患者のメタボロームの1つ以上の構成要素、他の構成要素、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の病原体は、ウイルス、またはウイルスの一部もしくは誘導体である。例えば、いくつかの実施形態では、ウイルスはSARS CoV-2である。
【0080】
いくつかの実施形態では、製剤が標的部位(例えば、嗅覚領域)に送達されると、標的部位に位置する関心対象であるバイオマーカーなどの生物学的材料が、製剤ボーラスによって吸収され、および/または製剤は、関心対象であるバイオマーカーを周囲の組織や体液から製剤に直接拡散させる。いくつかの実施形態では、生物学的材料は、送達された製剤に付着する。
【0081】
いくつかの実施形態では、製剤による生物学的材料の捕捉中に、(患者の呼吸からの、またはデバイスによって生成された)空気流を使用して、製剤ボーラスから流体を蒸発させる。いくつかの実施形態では、患者は、適切なレベルの蒸発を確実にするために制御された呼吸数を提供する。いくつかの実施形態では、デバイスは、鼻に挿入された第2のカニューレと、ばね駆動ベローズ、扇風機、圧縮ガスのキャニスター、またはボーラス上に空気またはガスを送り込む他の供給源とを含む。これにより、ボーラスの浸透圧が増加し、標的部位から製剤によって追加の液体が吸収されるようになり、関連する生体物質のサンプルが製剤ボーラスに濃縮される。
【0082】
いくつかの実施形態では、製剤による生物学的材料の捕捉の準備をするために、患者は、a)粘液産生を増加させるか、b)粘液産生を減少させるか、c)血流を増加させるか、d)血流を減少させるか、またはe)頭蓋内圧を上昇させて、適用時の製剤ボーラスへの関心対象であるバイオマーカーの輸送を改善する。いくつかの実施形態では、患者は、薬物療法を使用して誘導される。
【0083】
いくつかの実施形態において、エネルギーは、生物学的材料を含む鼻腔流体の輸送を増強するために、および/または隣接する組織/流体から製剤へのバイオマーカー輸送を含む、生物学的材料の輸送を増強するために適用される。例えば、いくつかの実施形態では、熱は、UV/VIS/IR光、オームの法則に従う製剤の加熱、またはデバイス内の加熱された要素からの伝導を介して製剤に加えられる。いくつかの実施形態では、電場/磁場を適用して、関心対象であるバイオマーカーを含む生物学的材料を製剤に移動させる。いくつかの実施形態では、振動、音、または超音波エネルギーを適用して、製剤または患者を攪拌して輸送を増加させる。
【0084】
いくつかの実施形態では、デバイスは、鼻腔または嗅覚領域内の標的部位からの生物学的材料の回収を強化するために、製剤を繰り返し排出および回収することができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、回収を強化するために、ボーラスのごく一部をパルスインおよびパルスアウトすることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、デバイスは、デバイスから出て、標的部位を洗浄し、一連のボーラスまたは連続的な流れで回収される製剤の流れを生成する。
【0086】
製剤および捕獲された生物学的材料の回収
方法100は、110の嗅覚領域などの鼻腔内の標的部位から製剤および捕捉された生物学的材料を引き出す工程(すなわち、捕捉された生物学的材料を収集する工程)をさらに含む。いくつかの実施形態では、製剤および生物学的材料は、カニューレまたは他のマイクロ流体チャネルを使用して引き出される。いくつかの実施形態では、製剤および生物学的材料は、製剤の送達のために使用されるものと同じオリフィスおよびカニューレを介して引き出される。いくつかの実施形態では、製剤および生物学的材料は、製剤の送達のために使用される異なるオリフィスおよびカニューレを介して引き出される。いくつかの実施形態では、製剤および生物学的材料は、標的部位への送達の前に、製剤を収容するために使用されるものと同じ容器内に捕捉される。いくつかの実施形態では、製剤および生物学的材料は、標的部位への送達の前に、製剤を収容するために使用される容器とは異なる容器内に捕捉される。
【0087】
いくつかの実施形態では、圧力差は、製剤および生物学的材料を、標的部位から流体経路(例えば、カニューレまたはマイクロ流体チャネル)を通ってデバイス内に移動させる。いくつかの実施形態では、圧力差は、ばね力、モーター力、空気圧、真空、または手によって提供される力によって提供され、カープル(シングル、マルチチャンバー)、シリンジ(シングル、マルチチャンバー)、またはピペットのプランジャを動かす。いくつかの実施形態では、圧力差は、以前に圧縮された使い捨てピペット、ブローフィルシール容器(例えば、MicroDose(商標)単回使用ユニット)、ベローズ、マイクロ流体カートリッジ、または成形バッグの弛緩によって提供される。いくつかの実施形態では、圧力差は、ポンプ(例えば、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、ギアポンプなど)によって提供される。いくつかの実施形態では、真空は、真空にされた容器(例えば、バキュテナー、ボトル、機械加工されたチャンバー)によって、以前に圧縮された使い捨てピペット、バルブシリンジ、またはベローズの弛緩によって、またはポンプによって提供される。
【0088】
いくつかの実施形態において、患者は、口を通してデバイスに息を吐き出すかまたは吸入して、空気圧または真空を提供して、生物学的材料を含む製剤を標的部位からデバイスに移動させる。いくつかの実施形態では、患者は、空気圧または真空を提供するためにデバイスが挿入された鼻を通して息を吐き出すかまたは吸入して、生物学的材料を含む製剤を標的部位からデバイスに移動させる。いくつかの実施形態では、デバイスは、デバイスが鼻に挿入されたときに患者の口の中に置かれるマウスピースを含む。いくつかの実施形態では、患者はマウスピースを通して吸入する。いくつかの実施形態では、適用された真空は、ピストンを動かし、これは、標的部位からカニューレを通ってデバイス内に製剤を引き込む。いくつかの実施形態では、適用された真空はまた、製剤をバッグまたはベローズに引き込む。いくつかの実施形態では、製剤はまた、吸引キャニスターのような流体ノックアウトチャンバーに引き込むことができる。いくつかの実施形態では、患者はマウスピースに息を吐き出す。いくつかの実施形態では、適用された圧力がピストンを動かす。いくつかの実施形態では、移動ピストンは、製剤を、カニューレを通して標的部位に引き込む第2のピストンに接続されている。
【0089】
別の実施形態では、患者は、生物学的材料を含む製剤をデバイス内に移動させるための空気圧または真空を提供するために、デバイスが挿入された状態で鼻から息を吐き出すかまたは吸入する。いくつかの実施形態では、挿入されると、デバイスは、エラストマープラグで鼻孔を密封する(鼻の外側の面シールまたは鼻孔の内面の放射状シールのいずれかによる)。いくつかの実施形態では、患者が鼻を通して息を吐くとき、これは鼻腔内に圧力を作り出し、流体を標的部位からカニューレを通してデバイスに押し出す。いくつかの実施形態では、デバイスは上記のように鼻孔を密封するが、患者は吸入するように指示され、それによって鼻に真空を引き込む。いくつかの実施形態では、デバイスは、空気がデバイスから鼻に流れることを可能にするポートを備える。いくつかの実施形態では、デバイス内で、空気流がプランジャを動かし、これはカニューレを通して流体をデバイスに引き込む。いくつかの実施形態では、患者は、代替の鼻孔を塞ぐか、またはデバイスは、第2の鼻孔を遮断するための第2のエラストマープラグを備える。
【0090】
いくつかの実施形態では、生物学的材料を含む製剤は、毛細管圧を介して標的部位からデバイスに吸い上げられ、流体を吸収性綿棒、吸収性パッド、スポンジ、芯(wick)、または横方向フローアッセイストリップに引き込む。いくつかの実施形態では、先端に吸収パッドが取り付けられた細いアルミニウム棒などの剛体を使用して、標的部位での生物学的材料および製剤との接触を容易にする。いくつかの実施形態では、吸収性パッドが製剤に接触および吸収するように、剛体が鼻に挿入され、その後、パッドは鼻から引き出される。いくつかの実施形態では、パッドを圧縮して、製剤を標準的なサンプル保持容器に押し出す。いくつかの実施形態では、吸収パッド全体が、サンプル保持容器内の標準的な防腐剤の本体に配置される。いくつかの実施形態では、ロッドおよびパッドは、挿入中にパッドが汚染されないように被覆されている。
【0091】
いくつかの実施形態では、吸い上げ(wicking)要素は、サンプリング部位から鼻の外へ、デバイスに至る流路を提供する。いくつかの実施形態では、捕捉された生物学的材料を含む製剤は、流路(例えば、カニューレまたはマイクロ流体チャネル)を介して吸い上げられる。いくつかの実施形態では、吸収性のオープンセルフォームで満たされたカニューレが嗅覚領域中に配置され、カニューレの先端はフォームの露出部分を有する。いくつかの実施形態では、フォームが製剤に接触すると、製剤はフォームに吸い上げられ、カニューレを下る。いくつかの実施形態では、カニューレのベースで、流体は、吸収性フォームで満たされたチャンバーに吸い上げられる。いくつかの実施形態では、フォームは、捕捉された生物学的材料を保護するために凍結乾燥された防腐剤を含む。いくつかの実施形態では、フォームチャンバーは、ポイントオブケア診断を提供するために、横方向フローアッセイストリップによって置き換えられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、製剤の粘度は、サンプリングが完了した後に低下し、生物学的材料を含む製剤は、単に鼻から排出される。例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、製剤の粘度が減少するように、a)時間遅延後、b)空気とともに、c)別個に導入された気体または液体とともに、d)または患者の体液とともに、反応または崩壊する化学薬品を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、長鎖天然糖ポリマー(多糖)によって増粘される。いくつかの実施形態では、生物学的材料を含む製剤は、送達前に二重チャンバーカープル内で酵素と混合される。いくつかの実施形態では、酵素は、時間の経過とともに糖ポリマーを分解し、これにより、製剤の粘度が低下する。いくつかの実施形態では、次に、製剤は重力によって鼻から排出され、適切な容器(例えば、ボトル、ジャー、または横方向フローアッセイストリップ)に捕捉される。
【0093】
いくつかの実施形態では、生物学的材料を含む製剤は、凝集体に変化し、引張力で鼻から引き出され、その標的部位の局在化に従って生物学的材料の保存を可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、蒸発して製剤を凝集体に変換する溶媒(例えば、エタノール)を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、a)時間遅延後に反応するか、b)空気と反応するか、c)別個に導入された気体もしくは液体と反応するか、または患者の体液と反応して、凝集体を形成する化学剤を含む。いくつかの実施形態では、次に、凝集体は、製剤を回収するために、鼻から引っ張られるか、鼻から吹き飛ばされるか、または鼻から落ちる。
【0094】
いくつかの実施形態では、製剤は、患者の位置のために標的部位にのみ留まる。いくつかの実施形態では、患者の位置の変化により、製剤が鼻から排出されることが可能になる。
【0095】
いくつかの実施形態において、標的化されたサブ領域から捕捉された生物学的材料は、その局在化(ジオグラフィー)に関して保存される。
【0096】
収集された生物学的材料の分析
方法100は、112で生物学的材料を分析することをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、製剤によって捕捉されたバイオマーカー(例えば、タンパク質)などの生物学的材料は、診断を通知するために検出または定量化される。いくつかの実施形態において、分析は、1)ポイントオブケアアッセイシステム(例えば、横方向フローアッセイ)を用いて直ちに、ならびに/または2)後でおよび/もしくは別の部位で行われ、ここで、製剤は防腐剤と混合され得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、ポイントオブケア診断のために、製剤がデバイスから取り出され(例えば、使い捨てピペットで引き抜かれ)、別個のポイントオブケアシステム(例えば、横方向フローアッセイストリップ)に配置される。いくつかの実施形態では、ポイントオブケアシステムは、デバイス内に統合されている。例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、横方向フローアッセイストリップによって提供される毛細管圧によって回収され、製剤は、横方向フローアッセイストリップ内の標的部位から直接引き抜かれる。いくつかの実施形態では、製剤および/または生物学的材料を受け取るための回収容器は、製剤内に捕捉された、標的バイオマーカー(例えば、SARS-CoV-2病原体)などの特定の生物学的材料の存在を示すために色の変化を生じる化学物質を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、別の部位での診断のために、製剤は防腐剤溶液と混合され、輸送のために適切な容器に入れられる。いくつかの実施形態において、製剤は、デバイスから取り出され(例えば、使い捨てピペットで引き抜かれ)、防腐剤(例えば、凍結乾燥された防腐剤を含む瓶)を含む別個の容器に置かれる。いくつかの実施形態では、製剤は、防腐剤を含む輸送可能な容器(例えば、回収容器)に引き込まれ、これは、輸送のためにデバイスから取り外すことができるデバイス(例えば、カープル、またはシリンジ)に統合されている(例えば、回収容器には、生物学的材料を安定させるための防腐剤が含まれている場合がある)。いくつかの実施形態では、製剤は、輸送のためにデバイスから切り離すか、さもなければ取り外すことができる防腐剤を含むデバイスのセクションに引き込まれる。いくつかの実施形態において、製剤自体はまた、必要な防腐剤要素を含み得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、製剤は、収集された生物学的材料を保存し、その下流処理を可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、そのような下流処理には、16S配列決定、メタゲノム配列決定、トランスクリプトミクス、質量分析、および生細菌培養が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物、システム、方法、および装置に影響を与える要因は、1)適切な量の生物学的材料の収集、および2)サンプル調製工程を通した収集部位からの材料の適切な局所保存である。いくつかの実施形態では、鼻の解剖学的構造のジオグラフィーを考えると、正確な局所的サンプリングは、個別のミリメートルの範囲にある。
【0100】
例示的な装置および方法
以下でより詳細に説明するように、
図2A-2F、
図3A-3D、および
図4A-4Fは、鼻腔の嗅覚領域などの、患者の鼻腔から生物学的材料を収集するための例示的な実施形態を例証する。本明細書に記載の例示的な実施形態および方法はまた、本明細書に開示されるように、鼻腔の他の領域から生物学的材料を収集することにも適用可能である。
図2A-2Fは、共通のカニューレ202と、製剤をそれぞれ送達および回収するための別個の容器220および250を備えるデバイス200を使用する例示的な方法の工程を示す。
図3A-3Dは、カニューレ302および製剤の送達および回収の両方のために取り付けられたバルブ304を備えるデバイス300を使用する例示的な方法の工程を示す。
図4A-4Fは、製剤送達のためのカニューレ402を有する容器420と、製剤回収のためのカニューレ452を有する別の容器450とを備えるデバイス400を使用する例示的な方法の工程を示す。これらのサンプルデバイスの詳細とその動作を以下に説明する。
【0101】
図2Aに示すように、デバイス200は、可撓性、剛性、または適合性のカニューレ202を備える。いくつかの実施形態では、202のカニューレは、嗅覚領域を下部鼻腔からの汚染から保護し、生物学的材料を獲得段階中の汚染から保護するための被覆機構を組み込んでいる。いくつかの実施形態では、デバイス200は、製剤226を保持するための本体を有する容器220(
図2B)を備える。いくつかの実施形態では、容器220は、
図2Bに示すように、製剤226を容器220から排出するための展開機構224を備える。いくつかの実施形態では、容器220は、カニューレ202に取り外し可能に取り付けられている。いくつかの実施形態では、容器220は、カープル222を備える。
【0102】
いくつかの実施形態では、デバイス200は、鼻の外部ベースに対して配置されている。例えば、いくつかの実施形態では、
図2Aに示すように、デバイスは、クリップベース206に取り付けられたクリップ212を備える。クリップ212は、カニューレ202の正確な配置のための解剖学的基準点を提供し、カニューレ202の一貫した配置を維持する。
【0103】
いくつかの実施形態では、カニューレ202は、一般集団に適した固定長である。いくつかの実施形態では、カニューレ202は、患者の特定の測定値に設定される可変長のものである。例えば、いくつかの実施形態では、カニューレ202は、クリップ212に対して移動できるように、ベース206にスライド可能に取り付けられる。いくつかの実施形態では、カニューレ202は、配置を支援するための目盛り(例えば、カニューレ上のマーキング)を備える。例えば、カニューレ202の先端が嗅覚領域210に到達するが組織に損傷を与えないように、目盛りを使用して、カニューレを所定の深さまで挿入することができる。いくつかの実施形態では、所定の深さは、例えば、個々の患者に対してCTスキャンまたは耳鏡で事前挿入測定を行うことによって、または鼻腔のプール人体測定のデータベースを分析することによって決定される最大安全長を利用することによって決定される。
【0104】
いくつかの実施形態では、展開機構は、本明細書に開示されるような任意の送達機構を備える。例えば、
図2Bに示すように、展開機構224は、容器220に連結されており、展開機構224が作動されると、製剤226が容器220からカニューレ202を通って排出され、
図2Cに示すように、患者の嗅覚領域210に沈着されるように構成される。いくつかの実施形態では、展開機構は、ユーザによってアクティブ化される。いくつかの実施形態では、カニューレ202は、標的化されたサブ領域(図示せず)に製剤226を送達するように配置されたオリフィスを備える。
【0105】
いくつかの実施形態では、展開機構224は、ボタン、ばね、およびプランジャ(図示せず)を備える。ボタンが押されると、これによりばねが解放され、プランジャが移動して、製剤226を容器220から嗅覚領域210に押し込む。展開機構224は、他の実施形態では他の形態をとることができる。
【0106】
上記のように、いくつかの実施形態では、製剤は、嗅覚領域210の粘液よりも高い浸透圧を有する。いくつかの実施形態では、製剤は、浸透圧を増加させることと、完全に抽出することができる凝集性流体体を作り出すことの両方のための糖を含む。いくつかの実施形態では、浸透圧の増加は、
図2Dに示すように、嗅覚領域210に沈着した製剤226への特定のバイオマーカー標的240などの生物学的材料の取り込みに有利な浸透圧勾配を作り出す。いくつかの実施形態では、製剤226は、嗅覚領域210内の狭い空間への製剤226の分布を促進するためのずり減粘である。
【0107】
いくつかの実施形態において、製剤および/または生物学的材料の回収は、本明細書に開示されるような任意の回収機構を含む。例えば、
図2Eに示すように、いくつかの実施形態では、容器220はカニューレ202から切り離され、回収容器250と交換される。いくつかの実施形態では、回収容器250は、引き出された製剤および/または生物学的材料を保持するように構成された本体を備える。いくつかの実施形態では、回収容器250は、カープル252、展開ボタン254、ばね(図示せず)および/またはプランジャ(図示せず)を備える。
図2Fに示すように、展開ボタン254が押されると、ばねがプランジャを動かし、製剤226および生物学的材料240をカニューレ202を通して回収容器250に引き込む。いくつかの実施形態では、プランジャのシステム形状および移動速度が(例えば、湿らせることによって)制御されて、製剤226があまりにも速く引き込まれないことを確実にする(例えば、捕捉された生物学的材料の内容物への損傷を通じて分析結果に影響を与える、捕捉された生物学的材料240が受ける剪断力を最小化または防止し、ならびに全量の製剤および生物学的材料の代わりに空気が回収されることを最小化または防止する)。
【0108】
製剤226は、本明細書に開示される任意の製剤である。例えば、いくつかの実施形態では、
図2Fに示される製剤は、空気または他の手段(本明細書に記載される)への曝露時に架橋され、それにより、製剤を半固体状態に変化させる。いくつかの実施形態では、半固体製剤は、その標的部位の局在化に従って捕捉された生物学的材料の保存を容易にし、一方、半固体製剤は、252で容器内に引き出されて保存される。
【0109】
いくつかの実施形態において、カニューレ202は、生物学的材料の交差汚染および/または下部鼻の解剖学的構造からのカニューレ接種による嗅覚領域の汚染を防止または最小化するために被覆される。
【0110】
図3Aは、カニューレ302および可撓性バルブ304を含むデバイス300の別の実施形態を示す。
図3Bに示されるように、可撓性バルブ304を押すと、製剤226がカニューレ302を通って嗅覚領域210に押し込まれる。いくつかの実施形態では、カニューレ302は、標的化されたサブ領域(図示せず)に製剤226を送達するように配置されたオリフィスを備える。製剤は、本明細書に開示される任意の製剤である。
【0111】
図3Cは、生物学的材料240よりも高い浸透圧を有する製剤226を示し、そこに含まれる関心対象であるバイオマーカー240を含む生物学的材料の製剤226への取り込みに有利な浸透圧勾配を作り出す。
【0112】
図3Dに示すように、可撓性バルブ302は弛緩することができ、製剤226および生物学的材料240を、カニューレ302を通してバルブ304に引き込む。
【0113】
いくつかの実施形態において、カニューレ302は、生物学的材料の交差汚染および/または下部鼻の解剖学的構造からのカニューレ接種による嗅覚領域の汚染を防止または最小化するために被覆される。
【0114】
図4A-Dは、上記のデバイス200の動作と同様に、カニューレ402を通して製剤を排出するように構成された展開機構424を有する製剤226を保持する容器420を備えるデバイス400を示す。いくつかの実施形態では、容器420は、カープル422を備える。いくつかの実施形態では、カニューレ402は、標的化されたサブ領域(図示せず)に製剤226を送達するように配置されるオリフィスを備える。いくつかの実施形態では、展開機構は、本明細書に開示されるような任意の送達機構を含む。製剤は、本明細書に開示される任意の製剤である。
【0115】
図4Eに示すように、回収デバイス450を患者の鼻に挿入することができる。いくつかの実施形態では、回収デバイスは、引き出された後に製剤および/または生物学的材料を保持するための本体を含む。いくつかの実施形態では、回収デバイスは、製剤を嗅覚領域に送達するために使用されるカニューレとは異なる回収カニューレを備える。いくつかの実施形態では、回収カニューレは、回収容器に取り外し可能に連結されている。いくつかの実施形態では、回収デバイスは、本明細書に開示されるような任意の回収機構を備える。例えば、いくつかの実施形態では、回収デバイスは、ウィッキング材料で満たされたチャンバー454と、流体を吸い上げるように構成されたウィッキング材料で満たされた回収カニューレ452とを有する。いくつかの実施形態では、ウィッキング材料は、流体を吸い上げる天然または合成繊維、紡糸、織物、またはランダムに配向した物、および/または毛管を含む。いくつかの実施形態では、回収デバイス450およびウィッキング材料は、
図4Fに示されるように、患者の嗅覚領域210から製剤226および生物学的材料240を引き抜くために使用される。
【0116】
いくつかの実施形態において、カニューレ402は、生物学的材料の交差汚染および/または下部鼻の解剖学的構造からのカニューレ接種による嗅覚領域の汚染を防止または最小化するために被覆される。
【0117】
前述の議論は、本発明の主題の多くの例示的な実施形態を提供する。各実施形態は、本発明の要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、開示された要素のすべての可能な組み合わせを含むと見なされる。したがって、一実施形態が要素A、B、およびCを含み、第2の実施形態が要素BおよびDを含む場合、本発明の主題はまた、明示的に開示していなくても、A、B、C、またはDの他の残りの組み合わせを含むと見なされる。
【0118】
ヒトサンプル液中のハウスキーパータンパク質検出の例
脳脊髄液(CSF)-優勢なタンパク質タウおよびヒトプロスタグランジン-H2 D-イソメラーゼ(PTGDS)が、ヒトの体液中で首尾よく検出された。市販のサンドイッチELISAキットと定性的質量分析(LC-MS/MS)分析を使用して、ヒトCSF、鼻腔液(NF)、および鼻洗浄液(NL)を分析した。質量分析はCSFとNFの両方でPTGDSを検出したが、PTGDSはNLで検出するには希薄すぎる可能性があった。使用したELISAキットはCSF中のPTGDSを検出できなかったため、それ以上の使用は無効になった。タウタンパク質は、CSFで予想されるレベルでELISAによって検出された。質量分析はタウを検出できなかった-おそらくその天然の存在量が少ないためである。タウはCSF中でPTGDSよりも約1000倍低い濃度で存在し、この質量分析プロトコルの検出限界を下回っている可能性がある。ELISAは、NFからのタウとPTGDSの両方のレベルが過度に高く、NLではPTGDSのレベルが低いことを検出した。このデータは、分光分析によって裏付けられたものではなく、粘着性のある鼻の材料とELISAキットの検出システムとの間の非特異的な反応が原因である可能性がある。表3および4は、タウおよびPTGDSの検出分析の結果を提供し、ここで、リストされている最初の4つのサンプルはELISAサンプル希釈液で希釈され、最後にリストされているサンプル(プールされたヒト脳脊髄液)は合成CSFアナログ液で希釈した。
【0119】
【0120】
【0121】
サンプルのLC/MS/MS分析は、NFまたはNLのいずれにも見られないCSF中の追加の147個のタンパク質を検出することができた。これらのタンパク質は、鼻漏を経験している患者のCSF液浸潤を追跡するための潜在的なマーカーの選択肢を提供する。さらに、多数のCSF発生タンパク質がNFまたはNLのいずれかで検出された。定量的アプローチを使用して、選択したタンパク質の正常なベースライン値を確立でき、タンパク質レベルの増加に起因する中枢神経系の疾患を診断できる。最後に、質量分析により、NFでは発生しなかったNL内の多数のタンパク質が検出された(逆もまた同様である)。これは、ターゲットを絞ったサンプリングアプローチが、嗅覚系のジオメトリー的に異なる領域のタンパク質を捕捉するために非常に効果的である可能性があることを示している。サンプリング方法を調整することで、部位特異的疾患の迅速な検出および早期診断を提供できる。
【0122】
本開示の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態が単なる例としてのみ提供されることは当業者には明らかである。本開示から逸脱することなく、当業者には、多数の変形、変更、および置換が想到される。本明細書に記載の実施形態の様々な代替案、またはこれらの実施形態もしくは本明細書に記載の態様の1つ以上の組み合わせが、本開示を実施する際に使用できることを理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本開示の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物は、それによってカバーされることが意図されている。
【国際調査報告】