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特表2022-530241CDK阻害剤と組み合わせたRANK経路阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(54)【発明の名称】CDK阻害剤と組み合わせたRANK経路阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20220621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220621BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20220621BHJP
   C07D 471/04 20060101ALN20220621BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20220621BHJP
   C07D 401/14 20060101ALN20220621BHJP
   C07D 498/18 20060101ALN20220621BHJP
   C07D 249/08 20060101ALN20220621BHJP
   C07J 31/00 20060101ALN20220621BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220621BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20220621BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220621BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220621BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K31/519
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/04
A61K31/436
A61K31/4196
A61K31/565
A61K31/138
A61K39/395 N
C07D471/04 118Z
C07D487/04 140
C07D401/14
C07D498/18
C07D249/08 534
C07J31/00
C12N15/13 ZNA
C07K16/24
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564120
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 PT2020050017
(87)【国際公開番号】W WO2020222668
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】115483
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(31)【優先権主張番号】62/840,810
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521468947
【氏名又は名称】インスチトゥート デ メディシーナ モリクラール ジョアン ロボ アントゥネス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダ コスタ, ルイス アントニオ マルケス
(72)【発明者】
【氏名】デ アンジョ カシミロ, サンドラ クリスティナ カラ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
4C065
4C072
4C084
4C085
4C086
4C091
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF03
4C050GG04
4C050HH04
4C063AA03
4C063BB09
4C063CC29
4C063DD12
4C063EE01
4C065AA04
4C065BB10
4C065CC01
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH02
4C065HH04
4C065HH09
4C065JJ04
4C065KK01
4C065LL07
4C065PP04
4C065PP12
4C065PP15
4C072AA03
4C072BB03
4C072CC01
4C072CC12
4C072DD07
4C072EE09
4C072FF15
4C072GG07
4C072HH01
4C072UU01
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086BC50
4C086BC60
4C086CB05
4C086CB09
4C086CB22
4C086DA09
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB04
4C091BB07
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE04
4C091FF03
4C091FF06
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ01
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA09
4C091QQ01
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA23
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA14
4C206MA17
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
i)RANK経路阻害剤をii)CDK阻害剤と組み合わせて含む医薬組成物及び関連する方法が本明細書で提供される。CDK阻害剤による治療に対する癌細胞の反応性又は感受性を増加又は回復させる方法と、CDK阻害剤による治療に対する耐性又は低減された感受性を有する対象を治療する方法とが本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)RANK経路阻害剤をii)CDK阻害剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項2】
前記RANK経路阻害剤は、RANKとRANKリガンド(RANKL)との間の結合相互作用を阻害する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記RANK経路阻害剤は、オステオプロテゲリン(OPG)、そのRANKL結合断片又はRANK若しくはRANKLに結合する抗原結合タンパク質を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗原結合タンパク質は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗原結合タンパク質は、抗RANK抗体又は抗RANKL抗体の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれを超えるものを含むFab、Fab’、F(ab’)2又は単鎖Fvである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗原結合タンパク質は、RANKLに結合する、請求項3~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗原結合タンパク質は、
a.配列番号8の重鎖CDR1アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
b.配列番号9の重鎖CDR2アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
c.配列番号10の重鎖CDR3アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
d.配列番号5の軽鎖CDR1アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
e.配列番号6の軽鎖CDR2アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
f.配列番号7の軽鎖CDR3アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、又は
g.(a)~(f)の任意の2つ以上の組み合わせ
を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗原結合タンパク質は、
(A)軽鎖可変ドメインであって、
(i)配列番号1のアミノ酸配列或いは配列番号1に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む軽鎖可変ドメイン、
(ii)配列番号19を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
(iii)配列番号19からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン、又は
(B)重鎖可変ドメインであって、
(i)配列番号2のアミノ酸或いは配列番号2に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む重鎖可変ドメイン、
(ii)配列番号20を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、
(iii)配列番号20からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン
からなる群から選択される重鎖可変ドメイン、又は
(C)(A)の軽鎖可変ドメイン及び(B)の重鎖可変ドメイン
を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記変異体配列は、前記配列番号に対して少なくとも若しくは約80%、少なくとも若しくは約85%、少なくとも若しくは約90%又は少なくとも若しくは約95%の配列同一性を有する、請求項7又は8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗原結合タンパク質は、任意選択的にカッパ軽鎖を含むIgG1、IgG2又はIgG4抗体である、請求項3~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項3~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号16、配列番号17又は配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項3~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗原結合タンパク質は、
(A)軽鎖であって、
(i)配列番号3又は配列番号13のアミノ酸配列或いは配列番号3又は13に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む軽鎖、
(ii)配列番号21又は23を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖、
(iii)配列番号21又は23からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖
からなる群から選択される軽鎖、又は
(B)重鎖であって、
(i)配列番号4又は配列番号14のアミノ酸配列或いは配列番号4又は14に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む重鎖、
(ii)配列番号22又は24を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖、
(iii)配列番号22又は24からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖
からなる群から選択される重鎖、又は
(C)(A)の軽鎖及び(B)の重鎖
を含む、請求項3~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号5、6、7、8、9及び10のアミノ酸配列を含む、請求項3~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項3~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号16のアミノ酸配列及び配列番号28のアミノ酸配列を更に含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列及び配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項3~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項3~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤、任意選択的にセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、シトクロムP450(CYP450)3A阻害剤又は両方である、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記CDK4/6阻害剤は、網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質のリン酸化を阻害する、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記CDK4/6阻害剤は、構造I又は構造II:
【化8】

の構造を含む、請求項19又は20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記CDK4/6阻害剤は、構造I又は構造IIの構造を含み、且つA-Bの構造を更に含み、ここで、Aは、二環式構造を含み、及びBは、単環式構造を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
A-Bは、構造III、又は構造IV、又は構造V:
【化9】

の構造を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
構造III又はIVのBは、シクロペンタンである、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
構造VのBは、ピリミジンを含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記CDK4/6阻害剤は、
【化10】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記CDK4/6阻害剤は、
【化11】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記CDK4/6阻害剤は、
【化12】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記CDK阻害剤は、前記RANK経路阻害剤とは別にパッケージ化される、請求項1~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
ホルモン療法剤を更に含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
アロマターゼ阻害剤、ER標的剤、ラパマイシン若しくはラパマイシン類似体、抗HER2薬剤又はPI3K阻害剤を更に含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記アロマターゼ阻害剤は、レトロゾール、アナストロゾール又はエキセメスタンである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記ラパマイシン類似体は、エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス、ゾタロリムス及び32-デオキソ-ラパマイシンである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記ER標的剤は、フルベストラント又はタモキシフェンである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記抗HER2薬剤は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、T-DM1又はネラチニブである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記PI3K阻害剤は、タセリシブ、アルペリシブ又はブパルリシブである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項37】
(A)CDK阻害剤による治療に対する癌細胞の反応性又は感受性を増加又は回復させること、(B)癌を患う対象を治療することであって、任意選択的に、前記癌は、CDK阻害剤による治療に対して低減された反応性を示すか、又は前記対象は、CDK阻害剤で治療されるか若しくは治療されている、治療すること、(C)対象における転移癌の発生又は発症を遅延させること、(D)対象における腫瘍成長若しくは腫瘍量を低減させるか、又は腫瘍退縮を増加させることであって、任意選択的に、前記対象は、CDK阻害剤で治療されるか又は治療されている、低減又は増加させること、(E)癌を患う対象において、無進行生存期間、全生存又は米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の一般状態が悪化するまでの時間を増加させることであって、任意選択的に、前記癌は、CDK阻害剤に対して耐性であるか、又は低減された感受性を示す、増加させること、(F)対象における循環腫瘍細胞(CTC)のレベルを低減させること、或いは(G)これらの任意の組み合わせを行う、請求項1~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
CDK阻害剤による治療に対する癌細胞の反応性又は感受性を増加又は回復させること、対象における癌を治療すること、癌を患う対象における転移癌の発生又は発症を遅延させること、対象における腫瘍成長若しくは腫瘍量を低減させるか、又は腫瘍退縮を増加させること、CDK阻害剤に対して耐性であるか、又は低減された感受性を有する腫瘍又は癌細胞を有する対象において、無進行生存期間、全生存又は米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の一般状態が悪化するまでの時間を増加させること、及び/又は対象における循環腫瘍細胞(CTC)のレベルを低減させることに使用するための、請求項1~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
CDK阻害剤による治療に対する癌細胞の反応性又は感受性を増加又は回復させる方法であって、CDK阻害剤で治療されるか又は治療されている対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項40】
CDK阻害剤による治療に対する癌細胞の反応性又は感受性を増加又は回復させる方法であって、任意選択的にCDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む方法。
【請求項41】
CDK阻害剤で治療されるか又は治療されている対象において癌を治療する方法であって、任意選択的に前記CDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項42】
CDK阻害剤による治療に対して低減された反応性を有する癌を患う対象を治療する方法であって、任意選択的に前記CDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項43】
癌を患う対象を治療する方法であって、(i)前記癌の細胞は、RANK、CDK4、CDK6若しくはサイクリンDの1つ以上を過剰発現させるか、(ii)前記対象は、増加したレベルの循環腫瘍細胞(CTC)を有するか、又は(iii)これらの組み合わせであり、前記方法は、任意選択的にCDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項44】
癌を患う対象における転移癌の発生又は発症を遅延させる方法であって、前記対象は、CDK阻害剤で治療されるか又は治療されており、前記方法は、前記対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項45】
癌を患う対象における転移癌の発生又は発症を遅延させる方法であって、任意選択的にCDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項46】
CDK阻害剤で治療されるか又は治療されている対象における腫瘍成長若しくは腫瘍量を低減させるか、又は腫瘍退縮を増加させる方法であって、前記対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項47】
対象における腫瘍成長若しくは腫瘍量を低減させるか、又は腫瘍退縮を増加させる方法であって、任意選択的にCDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項48】
CDK阻害剤に対して耐性であるか、又は低減された感受性を有する腫瘍又は癌細胞を有する対象において、無進行生存期間、全生存又は米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の一般状態が悪化するまでの時間を増加させる方法であって、任意選択的にCDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項49】
対象における循環腫瘍細胞(CTC)のレベルを低減させる方法であって、任意選択的にCDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項50】
前記RANK経路阻害剤及び前記CDK阻害剤は、別々に投与される、請求項38に記載の使用のための医薬組成物又は請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記RANK経路阻害剤及び前記CDK阻害剤は、同時に前記対象に投与される、請求項38に記載の使用のための医薬組成物又は請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記RANK経路阻害剤は、皮下注射を介して前記対象に投与される、請求項38に記載の使用のための医薬組成物又は請求項39~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記CDK阻害剤は、前記対象に経口投与される、請求項38に記載の使用のための医薬組成物又は請求項39~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記RANK経路阻害剤は、2~6週間毎に1回、任意選択的に4週間毎に1回、前記対象に投与される、請求項38に記載の使用のための医薬組成物又は請求項39~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記RANK経路阻害剤は、2~8ヵ月毎に1回、任意選択的に6ヵ月毎に1回、前記対象に投与される、請求項39~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記CDK阻害剤は、前記対象に1日1回投与される、請求項39~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象は、癌を有し、及び前記癌は、RANK又はRANK-Lを発現する細胞を含む、請求項39~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記対象は、転移癌、切除不可能な腫瘍又はこれらの組み合わせを有する癌を有する、請求項39~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象は、乳癌を有する、請求項39~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記乳癌は、トリプルネガティブ乳癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記乳癌は、ホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性である、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
前記乳癌は、進行性乳癌及び/又は転移性乳癌である、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項63】
前記対象は、CDK阻害剤による治療に対する耐性又は低減された感受性を示すか又は示している、請求項39~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記RANK経路阻害剤は、RANKとRANKリガンド(RANKL)との間の結合相互作用を阻害する、請求項39~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記RANK経路阻害剤は、オステオプロテゲリン(OPG)、そのRANKL結合断片又はRANK若しくはRANKLに結合する抗原結合タンパク質を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記抗原結合タンパク質は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記抗原結合タンパク質は、抗RANK抗体又は抗RANKL抗体の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれを超えるものを含むFab、Fab’、F(ab’)2又は単鎖Fvである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記抗原結合タンパク質は、RANKLに結合する、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項69】
前記抗原結合タンパク質は、
a.配列番号8の重鎖CDR1アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
b.配列番号9の重鎖CDR2アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
c.配列番号10の重鎖CDR3アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
d.配列番号5の軽鎖CDR1アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
e.配列番号6の軽鎖CDR2アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、
f.配列番号7の軽鎖CDR3アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、又は
g.(a)~(f)の任意の2つ以上の組み合わせ
を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記抗原結合タンパク質は、
(A)軽鎖可変ドメインであって、
(i)配列番号1のアミノ酸配列或いは配列番号1に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む軽鎖可変ドメイン、
(ii)配列番号19を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
(iii)配列番号19からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン、又は
(B)重鎖可変ドメインであって、
(i)配列番号2のアミノ酸或いは配列番号2に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む重鎖可変ドメイン、
(ii)配列番号20を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、
(iii)配列番号20からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン
からなる群から選択される重鎖可変ドメイン、又は
(C)(A)の軽鎖可変ドメイン及び(B)の重鎖可変ドメイン
を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記変異体配列は、前記配列番号に対して少なくとも若しくは約80%、少なくとも若しくは約85%、少なくとも若しくは約90%又は少なくとも若しくは約95%の配列同一性を有する、請求項69又は70に記載の方法。
【請求項72】
前記抗原結合タンパク質は、任意選択的にカッパ軽鎖を含むIgG1、IgG2又はIgG4抗体である、請求項65~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項65~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号16、配列番号17又は配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項65~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記抗原結合タンパク質は、
(A)軽鎖であって、
(i)配列番号3又は配列番号13のアミノ酸配列或いは配列番号3又は13に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む軽鎖、
(ii)配列番号21又は23を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖、
(iii)配列番号21又は23からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖
からなる群から選択される軽鎖、又は
(B)重鎖であって、
(i)配列番号4又は配列番号14のアミノ酸配列或いは配列番号4又は14に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む重鎖、
(ii)配列番号22又は24を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖、
(iii)配列番号22又は24からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖
からなる群から選択される重鎖、又は
(C)(A)の軽鎖及び(B)の重鎖
を含む、請求項65~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号5、6、7、8、9及び10のアミノ酸配列を含む、請求項65~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号16のアミノ酸配列及び配列番号28のアミノ酸配列を更に含む、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列及び配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項65~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記抗原結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤、任意選択的にセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、シトクロムP450(CYP450)3A阻害剤又は両方である、請求項39~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記CDK4/6阻害剤は、網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質のリン酸化を阻害する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記CDK4/6阻害剤は、構造I又は構造II:
【化13】

の構造を含む、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
前記CDK4/6阻害剤は、構造I又は構造IIの構造を含み、且つA-Bの構造を更に含み、ここで、Aは、二環式構造を含み、及びBは、単環式構造を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
A-Bは、構造III、又は構造IV、又は構造V:
【化14】

の構造を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
構造III又はIVのBは、シクロペンタンである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
構造VのBは、ピリミジンを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記CDK4/6阻害剤は、
【化15】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項39~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記CDK4/6阻害剤は、
【化16】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項39~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記CDK4/6阻害剤は、
【化17】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項39~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記CDK阻害剤は、前記RANK経路阻害剤とは別にパッケージ化される、請求項39~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記対象にホルモン療法剤を投与することを更に含む、請求項39~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
アロマターゼ阻害剤、ER標的剤、ラパマイシン若しくはラパマイシン類似体、抗HER2薬剤又はPI3K阻害剤を投与することを更に含む、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記アロマターゼ阻害剤は、レトロゾール、アナストロゾール又はエキセメスタンである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記ラパマイシン類似体は、エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス、ゾタロリムス及び32-デオキソ-ラパマイシンである、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記ER標的剤は、フルベストラント又はタモキシフェンである、請求項93に記載の方法。
【請求項97】
前記抗HER2薬剤は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、T-DM1又はネラチニブである、請求項93に記載の方法。
【請求項98】
前記PI3K阻害剤は、タセリシブ、アルペリシブ又はブパルリシブである、請求項93に記載の方法。
【請求項99】
請求項39~98のいずれか一項に記載の方法で使用するための、請求項1~38又は50~54のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、2019年4月30日出願の米国仮特許出願第62/840,810号明細書及び2019年4月30日出願のポルトガル国特許出願第115483号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書と同時に提出されたコンピュータ可読のヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により組み込まれ、以下のように識別される:2020年4月22日作成の130,214バイトASCII(テキスト)ファイル、ファイル名「53978A_Seqlisting.txt」。
【背景技術】
【0003】
乳癌は、全世界の全悪性腫瘍の約25%を占め、米国では女性における最も頻度の高い癌である(American Cancer Society.Cancer Facts and Figures 2019.Atlanta,GA:American Cancer Society,2019;及びGhoncheh et al.,Asian Pac J Cancer Prev 17:43-46(2016))。本年度のみでも、265,000件超の浸潤性乳癌の新規症例及び40,000件超のこの疾患による死亡例が発生することが推定される(American Cancer Society.Cancer Facts and Figures 2019.Atlanta,GA:American Cancer Society,2019)。
【0004】
そのエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の状態に基づき、乳癌は、3つのサブタイプの1つに分類される:ホルモン受容体(HR)陽性、HER2陽性及びトリプルネガティブサブタイプ。これらのサブタイプのうち、HR陽性乳癌が大部分を占める(Hart et al.,Nat Rev Clin Oncol 12:541-552(2015))。ホルモン療法(「内分泌療法」とも称される)は、HR陽性乳癌の主要療法と見なされており、これとしては、ロイプロリド、ゴセレリン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、タモキシフェン、トレミフェン及びフルベストラントなどの薬剤による治療が挙げられる。このようなホルモン療法によって達成された長期の成功があるものの、多数の患者は、最終的にホルモン療法に対する耐性を獲得し(Hoffmann et al.,J Natl Cancer Inst 96:210-218(2004))、他の癌治療を必要とする。
乳癌患者治療のためのサイクリン依存性キナーゼ4及び6(CDK4/6)阻害剤の出現は、ホルモン療法に対する耐性を示す癌症例が増えてきていることから生じた。CDK4/6阻害剤は、細胞周期のG1相からS相への移行中にサイクリンDと結合するキナーゼであるCDK4及びCDK6の作用を阻害することにより、癌細胞の成長を妨げるように機能するため、こうした薬剤は、有望な薬物の部類を示した。CDK4/6阻害剤を対象とする研究により、CDK4/6阻害剤で治療した患者の無進行生存期間(PFS)の増加が実証されており、これらの治療の治療有効性は、文書によって十分に立証されている。Pandey et al.,International Journal of Cancer 2018(doi.org/10.1002/ijc.32020)及びこの文献で引用される参考文献を参照されたい。その結果、米国食品医薬品局(FDA)は、乳癌の治療に対する3種類のCDK4/6阻害剤、すなわちパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブの使用を認可した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】American Cancer Society.Cancer Facts and Figures 2019
【非特許文献2】Atlanta,GA:American Cancer Society,2019
【非特許文献3】Ghoncheh et al.,Asian Pac J Cancer Prev 17:43-46(2016)
【非特許文献4】Hart et al.,Nat Rev Clin Oncol 12:541-552(2015)
【非特許文献5】Hoffmann et al.,J Natl Cancer Inst 96:210-218(2004)
【非特許文献6】Pandey et al.,International Journal of Cancer 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳癌患者は、過去及び現在も続けて、CDK4/6阻害剤で成功裏に治療されているが、全ての患者がこれらの薬剤に好反応を示すわけではなく、腫瘍がCDK4/6阻害剤に好反応を示した大半の患者は、最終的にこれらの薬剤に対する耐性を形成する。上記のPandey et al.,2018を参照されたい。このため、当技術分野において、CDK4/6阻害剤などのCDK阻害剤に対する耐性を備える患者を含む乳癌患者を治療可能である、新規な医薬組成物に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、核因子カッパβの受容体活性化因子(RANK)の発現レベルがCDK阻害剤に対する癌細胞の感受性と相関していることと、RANK経路を阻害することにより、こうした癌細胞をこれらのCDK阻害剤に対して感受性にすることとを実証するデータが初めて提示される。したがって、本開示は、i)RANK経路阻害剤をii)CDK阻害剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。例示的な実施形態では、医薬組成物は、i)RANK経路阻害剤をii)CDK4/6阻害剤と組み合わせて含む。
【0008】
本開示は、CDK阻害剤による治療に対する癌細胞の反応性又は感受性を増加又は回復させる方法であって、任意選択的に、CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤である、方法も提供する。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0009】
更に、対象における癌を治療する方法が本明細書で提供される。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0010】
癌を患う対象を治療する方法が本明細書で提供される。例示的な態様では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。任意選択的に、癌は、CDK阻害剤による治療に対して低減された反応性を有する。例示的な態様では、(i)癌の細胞は、RANK、CDK4、CDK6若しくはサイクリンDの1つ以上を過剰発現させるか、(ii)対象は、増加したレベルの循環腫瘍細胞(CTC)を有するか、又は(iii)これらの組み合わせであり、及び方法は、任意選択的にCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。
【0011】
癌を患う対象における転移癌の発生又は発症を遅延させる方法が本明細書で提供される。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0012】
対象における腫瘍成長若しくは腫瘍量を低減させるか、又は腫瘍退縮を増加させる方法も本明細書で提供される。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0013】
本開示は、癌を患う対象において、無進行生存期間(PFS)、全生存(OS)又は米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の一般状態が悪化するまでの時間を増加させる方法を更に提供する。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。任意選択的に、癌は、CDK阻害剤に対して耐性であるか、又は低減された感受性を有する。
【0014】
対象における循環腫瘍細胞(CTC)のレベルを低減させる方法が本明細書で更に提供される。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0015】
上記に関して、例示的態様の癌は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)に対して耐性であるか、又は低減された感受性を示す。例示的な実施形態では、RANK経路阻害剤は、RANKとRANKリガンド(RANKL)との間の結合相互作用を阻害する。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、オステオプロテゲリン(OPG)、そのRANKL結合断片又はRANK若しくはRANKLに結合する抗原結合タンパク質を含む。任意選択的に、抗原結合タンパク質は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体又は抗RANK抗体若しくは抗RANKL抗体の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ若しくはそれを超えるものを含むFab、Fab’、F(ab’)2又は単鎖Fvを含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、RANKLに結合する。場合により、抗原結合タンパク質は、デノスマブと呼ばれる抗体の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれを超えるものを含む。様々な場合、抗原結合タンパク質は、配列番号5、6、7、8、9及び10のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含み、且つ配列番号16のアミノ酸配列及び配列番号28のアミノ酸配列を更に含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列及び配列番号14のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号4のアミノ酸配列を含む。例示的な実施形態では、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)は、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、シトクロムP450(CYP450)3A阻害剤又は両方である。様々な態様では、CDK阻害剤は、網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質のリン酸化を阻害する。いくつかの態様では、CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤である。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、構造I又は構造II:
【化1】

の構造を含む。
【0016】
様々な態様では、CDK4/6阻害剤は、構造I又は構造IIの構造を含み、且つA-Bの構造を更に含み、ここで、Aは、二環式構造を含み、及びBは、単環式構造を含む。例示的な態様では、A-Bは、構造III、又は構造IV、又は構造V:
【化2】

の構造を含む。
【0017】
例示的な態様では、構造III又はIVのBは、シクロペンタンである。例示的な態様では、構造VのBは、ピリミジンを含む。様々な態様では、CDK4/6阻害剤は、パルボシクリブ、リボシクリブ若しくはアベマシクリブの構造又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0018】
様々な場合、医薬組成物は、追加の活性成分、例えば化学療法剤を含む。任意選択的に、医薬組成物は、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストロゾール又はエキセメスタン)、ER標的剤(例えば、フルベストラント又はタモキシフェン)、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス、ゾタロリムス及び32-デオキソ-ラパマイシン)、抗HER2薬剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、T-DM1又はネラチニブ)又はPI3K阻害剤(例えば、タセリシブ、アルペリシブ又はブパルリシブ)を含む。
【0019】
本明細書に開示される医薬組成物及び方法の更なる実施形態及び態様を下記で提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1-1】RANKをコードするレンチウイルスによって形質導入された細胞がRANKを安定的に過剰発現することを示すデータを提供する。図1Aは、RT-qPCRによって測定した、管腔BC細胞株(MCF-7及びT47D)及びこれらの誘導されたRANK OE(過剰発現)クローン中の相対的RANK mRNA発現のグラフである。MDA-MB-231は、対照として比較のために並行して試験した。Ct値は、18S遺伝子に対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。図1Bは、フローサイトメトリによって評価したRANKタンパク質レベルのグラフである。
図1-2】RANKシグナル伝達経路の活性化を示すデータを提供する。低血清培地中で24時間後、MCF-7及びT47D細胞又はこれらのRANK過剰発現対応物であるMCF-7OE及びT47DOEを1μg/mLの可溶性RANKリガンド(sRANKL)で0、5、10、20、40若しくは60分間(上パネル)又は0、5、10若しくは25分間(下パネル)刺激した。細胞溶解物を、指定のタンパク質(IκBα;NK-κB p65;ERK1/2;AKT)に対して又はそのリン酸化バージョン(p-IκBα(Ser32);p-NK-κB p65(Ser536);p-ERK1/2;p-AKT)に対して特異的な抗体を用いてウェスタンブロットした。β-アクチンを負荷対照として用いた。
図2】(図2A-2B)RANK OE細胞(MCF-7OE及びT47DOE)の表現型特性を、RANKを過剰発現しないこれらの親対応物と比較して示す、ウェスタンブロットからのデータを提供する。図2Aは、上皮マーカーβ-カテニンのタンパク質発現の減少並びにN-カドヘリン、ビメンチン、Snail及びSlugなどの間葉マーカー発現の増加を実証する。図2Bは、幹細胞マーカー:OCT4、NANOG及びSOX2のタンパク質発現の増加を実証する。β-アクチンを負荷対照として用いた。 (図2C)RANK OE細胞(MCF-7OE及びT47DOE)における、その親対応物と比較した球体形成能力(SFC)の指標としての、播種された1細胞当たりの球体%のグラフを提供する。接着細胞を非接着性条件下で培養し、7日後に(>50μmの乳房球体の数/播種細胞数)×100としてSFC(%)を測定した。
図3】RANK過剰発現がフルベストラントに対する感受性を低下させることを示すデータを提供する。細胞を96ウェルプレートに播種し、7日間フルベストラントに曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。図3は、フルベストラント濃度の関数としてのRFU(対照からの%)のグラフである。
図4】RANKの過剰発現がCDK4/6阻害剤(パルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブ)に対する感受性を低下させることと、更にオステオプロテゲリン(OPG-Fc)によるRANK経路遮断が療法に対する感受性を回復させたこととを実証する一連のグラフである。細胞を96ウェルプレートに播種し、異なる薬剤に7日間曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。図4の左側の3つのグラフは、MCF-7細胞、MCF-7OE細胞又はパルボシクリブ(上)、リボシクリブ(中)又はアベマシクリブ(下)で処理されたOPG-Fcで処理されたMCF-7OE細胞のグラフである。図4の右側の3つのグラフは、パルボシクリブ(上)、リボシクリブ(中)又はアベマシクリブ(下)で処理されたOPG-Fcで処理されたT47D細胞、T47DOE細胞又はT47DOE細胞のグラフである。
図5】RANKの過剰発現が、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ及びリボシクリブの単体又はフルベストラント若しくはエベロリムスとの組み合わせに対する感受性を低下させることと、更にオステオプロテゲリン(本実施例では完全長OPG(flOPG)を用いた)が療法に対する感受性を回復させたこととを実証する一連のグラフである。細胞を96ウェルプレートに播種し、異なる薬剤に7日間曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。図5の上部の4つのグラフは、MCF-7細胞、MCF-7OE細胞又はパルボシクリブ及びフルベストラント(左端)、パルボシクリブ及びエベロリムス(左から2番目)、リボシクリブ及びフルベストラント(左から3番目)若しくはリボシクリブ及びエベロリムス(右端)のいずれかで処理されたOPGで処理されたMCF-7OE細胞のグラフである。図5の下部の4つのグラフは、T47D細胞、T47DOE細胞又はパルボシクリブ及びフルベストラント(左端)、パルボシクリブ及びエベロリムス(左から2番目)、リボシクリブ及びフルベストラント(左から3番目)若しくはリボシクリブ及びエベロリムス(右端)のいずれかで処理されたOPGで処理されたT47DOE細胞のグラフである。
図6】MDA-MB-231 TNBC細胞が、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ及びリボシクリブに対して耐性があることと、RANK KD(ノックダウン)が療法に対する感受性を増加させたこととを実証するデータを提供する。図6Aは、RT-qPCRによって測定した、対照又はRANK shRNAでトランスフェクションしたトリプルネガティブBC細胞株MDA-MB-231における相対的RANK mRNA発現のグラフである。Ct値は、18S遺伝子に対して正規化した。図6Bは、MDA-MB-231TNBC細胞が、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ(左グラフ)及びリボシクリブ(右グラフ)に対して耐性があることと、RANK KDが療法に対する感受性を増加させたこととを実証するデータを提供する。細胞を96ウェルプレートに播種し、7日間パルボシクリブ(左グラフ)又はリボシクリブ(右グラフ)に曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図7】OPG-FcによるRANK経路の阻害が、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブに対するTNBC細胞株の感受性を増加させることを実証する一連のグラフである。TNBC細胞(MDA-MB-231(グラフの左カラム)、MDA-MB-468(グラフの中央カラム)又はMDA-MB-436(グラフの右カラム))を96ウェルプレートに播種し、OPG-Fcを用いて又は用いずに、7日間パルボシクリブ(上部行)、リボシクリブ(中央行)又はアベマシクリブ(下部行)に曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図8】CDK4/6阻害剤に応答したサイクリンD1/CDK4/CDK2の上方制御を実証するウェスタンブロットであり、ここで、CDK4の上方制御は、OPG-Fcを用いたRANK経路遮断によって抑止され、RANK OE細胞の感受性を回復させる。タンパク質発現は、ウェスタンブロットによって評価した。細胞(MCF-7又はMCF-7OE)を6ウェルプレートに播種し、パルボシクリブ又はOPG-Fcを含むパルボシクリブに72時間(図8A)若しくはOPG-Fcを含むパルボシクリブに7日間(図8B)曝露した。β-アクチンを負荷対照として用いて、サイクリンD1及びCDK4の発現の正規化されたレベルを示す(図8C)。
図9】RANK OE腫瘍がインビボで低下した増殖速度を有することを実証するデータを提供する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの第2胸郭の乳腺脂肪体にMCF-7GFP+Luc+(親)、MCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)又はMCF-7 GFP+Luc+及びMCF-7 RANK OE GFP+Luc+RFP+細胞(1:1)(ミックス)を植菌した(n=5/群)。腫瘍植菌後、腫瘍を生物発光によって実験終了まで毎週画像化した(12週間)。図9Aは、実験終了時に取られた生物発光の一連の代表的画像である。図9Bは、指定された細胞を植菌した後の時間(週)に対してプロットされた全フラックス(p/s)のグラフである。図9Cは、指定された細胞を植菌したマウス中の腫瘍のKi67陽性染色細胞%(免疫比)のグラフである。データは、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA又は対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図10】外因性sRANKLがMCF-7OE異種移植片成長に影響を及ぼさないことを実証する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの第2胸郭の乳腺脂肪体にMCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)細胞を植菌した(n=3~4/群)。マウスを、48時間ごとの0.5mgのヒトsRANKL(s.c.)又はビヒクル(PBS)で処理した。腫瘍植菌後、腫瘍を生物発光によって実験終了まで毎週画像化した(8週間)。図10Aは、実験終了時に測定された全フラックス(p/s)のグラフである。図10Bは、sRANKLを用いて(+)又は用いずに(-)処理したマウスから得たMCF-7 OE細胞由来腫瘍の、犠牲時点における腫瘍重量のグラフである。図10Cは、sRANKLを用いて(+)又は用いずに(-)処理したマウスから得たMCF-7 OE細胞由来腫瘍からのKi67陽性染色細胞のグラフである。データは、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA又は対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図11-1】RANKの過剰発現が循環腫瘍細胞(CTC)のレベルを増加させることを実証するデータを提供する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの尾静脈中にMCF-7GFP+Luc+(親)又はMCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)細胞を植菌した(n=3/群)。腫瘍植菌から2時間後及び実験終了まで毎週、腫瘍を生物発光によって画像化した。図11Aは、植菌後(p.i.)2時間、2週間p.i.、4週間p.i.、6週間p.i.又は8週間p.i.における、MCF-7親又はMCF-7 OE細胞を植菌されたマウスの生物発光の一連の代表的画像である。図11Bは、MCF-7又はMCF-7 OE細胞由来の腫瘍の全フラックス(p/s)のグラフである。図11Cは、エクスビボ生物発光及び剖検時観察によって評価したマクロ転移の数の表である。図11Dは、骨病変上の全フラックス(p/s)のグラフであり、図11Eは、肺病変上の全フラックス(p/s)のグラフである。図11Fは、フローサイトメトリによって定量化したCTC細胞(GFP+細胞)のグラフである。ここでは、犠牲時に心穿刺によって血液を回収し、CTCをフローサイトメトリによって定量化した。データ解析は、FlowJo V10ソフトウェアを使用して実施した。データは、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA又は対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図11-2】同上。
図12】管腔RANK OE腫瘍がインビボでパルボシクリブ及びフルベストラントに対して耐性があることを実証するデータを提供する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの第2胸郭の乳腺脂肪体にMCF-7GFP+Luc+(親)、MCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)又はMCF-7 GFP+Luc+及びMCF-7 RANK OE GFP+Luc+RFP+細胞(1:1)(ミックス)を植菌した(n=3~4/群)。腫瘍植菌後、腫瘍を生物発光によって実験終了まで毎週画像化した。植菌後12週間で、マウスを腫瘍サイズに基づいたグループに無作為抽出し、25mg/Kg/日のパルボシクリブ(p.o.)(経口強制飼養により)及び1mg/日のフルベストラント(s.c.)又はビヒクル(0.1Mの乳酸ナトリウム(Na Lactate)及び95%コーン油、5%DMSO)で処理した。図12Aは、親、RANK OE又はミックス細胞を植菌したマウスの腫瘍の全フラックス(p/s)のグラフである。図12Bは、剖検時に測定した腫瘍重量のグラフである。図12Cは、Ki67陽性染色細胞%のグラフである。図12Dは、RT-qPCRによって測定した腫瘍中の相対的サイクリンD1(CCND1)mRNA発現のグラフである。Ct値は、18S遺伝子に対して正規化した。データは、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA又は対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図13-1】RANK経路遮断がインビボでTNBC異種移植片をパルボシクリブに対して感受性にすることを実証するデータを提供する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの第4腹部の乳腺脂肪体の両側にMDA-MB-231 GFP+Luc+細胞を植菌した(n=2/群)。植菌後7週間で、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、1週間に2回の10mg/KgのOPG-Fc(i.p.)、25mg/Kg/日のパルボシクリブ(p.o.)又は組み合わせで治療した。図13Aは、実験設計の概略図である。図13Bは、剖検時に測定した腫瘍重量のグラフである。図13Cは、Ki-67又はホスホpRbで染色した細胞の画像であり、図13Dは、Ki67又はホスホpRbに対して陽性染色された細胞のグラフである。データは、平均±SEMとして示される。p値を、ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図13-2】同上。
図13-3】同上。
図13-4】同上。
図14】RANK経路遮断と組み合わせて、CDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)に対するトリプルネガティブ乳癌(TNBC;図14A)又はエストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌(図14B)の感受性を試験するための進行中のインビボモデルの概略図である。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの第4腹部の乳腺脂肪体の両側にMDA-MB-231GFP+Luc+、MCF-7GFP+Luc+(親)又はMCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)を植菌した(n=5/群)。腫瘍植菌後、腫瘍を生物発光によって実験終了まで毎週画像化する。腫瘍が約100mmに達したとき、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、実験プロトコルに従って治療する。
図15】骨再形成、乳腺発達、乳癌発症及び適応免疫におけるRANKの役割並びにRANKがER+RANK+乳癌に関与する方法を示す背景図である。
図16】本研究で従われる方法論を示す。図16Aは、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の構成及びTCGA内のエストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌(BC)又はエストロゲン受容体陰性(ER-)BCの症例の数を説明する画像である。TCGAのER+/HER2-陰性BC症例の数も示される。図16Bは、RANK過剰発現(RANK OE)細胞を作製するために、レンチウイルスベクターにパッケージ化されたRANK(TNFRSF11A)cDNAと接触するER+HER2-BC細胞の図である。相対的RANK mRNA発現の測定値は、右側のMCF-7過剰発現細胞(MCF-7OE)、T47D過剰発現細胞(T47DOE)、これらの親の非形質導入対応物(MCF-7、T47D)及びトリプルネガティブ乳癌細胞であるMDA-MB-231細胞のグラフに示される。図16Cは、図16Bに記載のRANK OE細胞又は親細胞を注射され、続いてマウスを撮像された同所移植マウスモデル(上)又は実験的転移モデル(下)の図である。
図17-1】本コホート中において、高いRANK発現は、5年全生存(OS)の低下に関連したことと、ER陰性乳房腫瘍におけるRANK発現がより高くても、全ER+乳癌の約5%は、上位25のER-陰性腫瘍と同一のRANK発現を有する(75%Q)こととを裏付けるデータを提供する。図17Aは、最適カットオフ(Cut-off Finderソフトウェア)及びログランク検定を用いてプロットした生存曲線を用いて、RANK発現に基づき二分された、TCGAからの女性BC患者のグラフである。図17Bは、ER-陰性BC腫瘍とER陽性BC腫瘍とを比較し、且つER陰性腫瘍の75Q内で比較した中央RANK発現のグラフである。結果は、平均±SEMとして示される。p値を、対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図17-2】同上。
図18-1】MCF-7OE、T47DOE及び親非形質導入対応物(MCF-7、T47D)の球体/播種細胞%(左カラム)及び球状体面積(中央カラム)を実証するグラフである。右カラムでは、グラフは、4種の細胞タイプのそれぞれに対して可溶性RANKL(sRANKL)で刺激したときの面積(96時間対0時間の倍率変化)を示す。
図18-2】化学療法抵抗性、EMT並びにRANK低発現細胞及びRANK高発現細胞の幹細胞性と関連した、示される遺伝子の発現のグラフである。
図19】ER陽性乳癌中のRANK発現とER陽性腫瘍中のRANK発現との関連性が腫瘍進行に影響を及ぼし得ることを示す図である。
図20】RANK OE細胞が特定のCDK4阻害剤に対して耐性であることを裏付けるデータを提供する。細胞を96ウェルプレートに播種し、異なる薬剤、すなわち3-ATA(図20A)又はCdk4阻害剤III(図20B)に7日間曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図21】RANK OE細胞が、pan-CDK阻害剤であるセリシクリブに対して耐性があり、セリシクリブが、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブに対して耐性を返さないことを裏付けるデータを提供する。細胞を96ウェルプレートに播種し、異なる薬剤に7日間曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図22-1】本研究に含まれる細胞株中のRANK発現を裏付けるデータを提供する。(図22A)親及びRANK OE細胞株中のRANKのRT-qPCR、(図22B)親及びRANK OE細胞株中のRANKのフローサイトメトリ。
図22-2】同上。
図23】OPG-FcによるRANK経路の阻害が、pRB、PIK3CA、PTEN、BRCA1及びEGFRの変異状況とは無関係に、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブに対するTNBC細胞株の感受性を増加させることを裏付けるデータを提供する。細胞を96ウェルプレートに播種し、異なる薬剤に7日間曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図24-1】OPG-FcによるRANK経路の阻害が、pRB、PIK3CA、PTEN、BRCA1及びEGFRの変異状況とは無関係に、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブに対するTNBC細胞株の感受性を増加させることを裏付けるデータを提供する。細胞を6ウェルプレートに播種し、異なる薬剤に6日間曝露し、薬剤を含まない培地で6日間回復させた。細胞をクリスタルバイオレットで染色し(図24B)、1%SDSで溶解し、570nMで培地の吸光度を測定した(図24A)。結果は、3つの複製の平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図24-2】同上。
図25】OPG-Fcが細胞増殖に直接の影響を及ぼさないことを裏付けるデータを提供する。細胞を96ウェルプレートに播種し、7日間OPG-Fcに曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、一方向ANOVAを用いて計算し、p>0.05であれば非有意と見なした。
図26】RANKLによって誘発されるRANK経路活性化をOPG-Fcが中和することを裏付けるデータを提供する。タンパク質発現は、ウェスタンブロットによって評価した。細胞を6ウェルプレートに播種し、24時間血清飢餓状態に置き、示される時点の間、1μg/mlのRANKLに曝露した(図26A)。RANKL中和(図26B)のために、RANKLを37℃の血清枯渇培地±100ng/mlのOPG-Fc又は2.5μg/mlのMAB626中で60分間予インキュベートし、60分後にタンパク質を解析した。β-アクチンを負荷対照として使用し、FiJiを用いてバンド強度を定量化した。
図27】RANK経路遮断と組み合わせて、CDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)に対するTNBCの感受性を試験するためのインビボモデルの概略を提供する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの脇腹の両側から皮下植菌した(n=5/群)。腫瘍をキャリパーで測定する。腫瘍が約100mmに達したとき、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、実験プロトコルに従って治療する。
図28-1】RANK経路遮断がインビボでTNBC異種移植片をパルボシクリブに対して感受性にすることを裏付けるデータを提供する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの脇腹の両側からMDA-MB-231細胞を皮下植菌した(n=4~5/群)。植菌後6週間で、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、OPG-Fcの10mg/Kg(i.p.)3回/週;パルボシクリブ30mg/Kg/日(p.o.)又は組み合わせで処理した。図28A及び28Bは、2日ごとにキャリパーで測定し、式:Tvol=1/2(長さ×幅)を用いて計算した腫瘍体積のグラフである。図28Cは、剖検時の腫瘍重量のグラフである。図28Dは、剖検後の臓器の組織病理学的評価後に転移を有するマウス数のグラフである。図28Eは、剖検時に回収された血清中で定量化された破骨細胞特異性TRAcP 5bのグラフである。図28Fは、Ki67(左)及びp-pRb(免疫比)(右)の定量化を示す一対のグラフである。図28Gは、マウスの体重のグラフである。データは、平均±SEMとして示される。p値を、ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
図28-2】同上。
図28-3】同上。
図29】RANK経路遮断と組み合わせて、CDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)及び内分泌療法(フルベストラント)に対する管腔RANK OEの感受性を試験するためのインビボモデルの概略を提供する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの脇腹の両側から皮下植菌した(n=5/群)。腫瘍をキャリパーで測定する。腫瘍が約100mmに達したとき、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、実験プロトコルに従って治療する。
図30】RANK経路遮断と組み合わせて、CDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)に対するTNBCの感受性を試験するためのインビボモデルの概略を提供する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの脇腹の両側から皮下植菌した(n=5/群)。腫瘍をキャリパーで測定する。腫瘍が約100mmに達したとき、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、実験プロトコルに従って治療する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
医薬組成物
本開示は、i)RANK経路阻害剤をii)CDK阻害剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。例示的な態様では、CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤である。したがって、本開示は、i)RANK経路阻害剤をii)CDK4/6阻害剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。本開示は、i)RANK経路阻害剤、及びii)CDK4阻害剤若しくはCDK6阻害剤又はCDK4阻害剤及びCDK6阻害剤の両方を含む医薬組成物も提供する。
【0022】
例示的な態様では、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)は、RANK経路阻害剤と共にパッケージ化される。例示的な態様では、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)は、RANK経路阻害剤と共に製剤化され、その結果、本製剤は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)及びRANK経路阻害剤の両方を含み、本製剤を投与すると2つの成分が同時に投与される。例示的な態様では、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)は、RANK経路阻害剤とは別にパッケージ化される。例示的な態様では、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)は、RANK経路阻害剤とは別に製剤化され、その結果、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)は、RANK経路阻害剤とは別に投与され得、任意選択的に、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)は、RANK経路阻害剤の投与前に投与されるか、又はCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)は、RANK経路阻害剤の投与後に投与される。
【0023】
RANK経路阻害剤
本明細書で使用するとき、用語「RANK経路阻害剤」とは、RANKLがRANKに結合すると続いて生じるシグナル伝達を低減又は阻害する任意の化合物又は分子を指す。RANK経路については、Boyce and Xing,Current Osteoporosis Reports 5:98-104(2007)及びDarnay et al.,TRAFs in RANK Signaling.In:Madame Curie Bioscience Database[インターネット].Austin(TX):Landes Bioscience;2000-2013。入手先:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK6222/並びにKohli and Kohli,Indian J Endocrinol Metab 15(3):175-181(2011)で精査されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。RANKLがRANKに結合することで、NFκB、JNK、p38及び/又はMAPKシグナル経路の活性化がもたらされる。FEO、OFE、ODFR、OSTS、PDB2、TNFRSF11A、CD265、OPTB7、TRANCER及びLOH18CR1としても知られるRANKは、破骨細胞及びその前駆体の表面で発現する膜貫通受容体タンパク質である。RANKは、乳腺細胞及び癌細胞によっても発現する(Jones et al.,Nature 440:692-696(2006);Casimiro et al.,PLoS Once 8(5):e63153(2013),doi:10.1371/journal.pone.0063153;及びInfante et al.,J Experimental and Clin Cancer Res 38:12(2019)。RANK経路は、乳癌細胞及び前立腺癌細胞の遊走及び侵襲も媒介する(上記のCasimiro et al.,2013)。RANKは、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのメンバーであり、このファミリーの他のメンバーと同様に、4つの細胞外システイン豊富な疑似反復ドメイン(CRD)を有する。RANKをコードする遺伝子は、ヒト染色体18(アームq21.33)で見出され、RANKのアミノ酸配列は、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のウェブサイトで受託番号NP_003830.1(アイソフォーム1前駆体)、NP_001257878.1(アイソフォーム2前駆体)、NP_001257879.1(アイソフォーム3前駆体)、NP_001257880.1(アイソフォーム4前駆体)及びNP_001265197.1(アイソフォーム5前駆体)として見出され得る。RANKのアミノ酸配列は、配列番号29として本明細書に記載され、対応するmRNA配列は、配列番号30として提供される。ODF、OPGL、sOdf、CD254、OPTB2、TNFSF11、TNLG6B、TRANCE及びhRANKL2としても知られるRANKLは、TNFサイトカインファミリーのメンバーであり、オステオプロテゲリン(OPG)及びRANKのリガンドである。RANKLは、間質細胞及び骨芽細胞並びに乳腺細胞によって発現される。RANKLは、RANKを発現するヒト上皮癌細胞及びメラノーマ細胞の遊走をトリガする(上記のJones et al.,2006)。RANKLをコードする遺伝子は、ヒト染色体13(アームq14.11)で見出され、RANKのアミノ酸配列は、NCBIウェブサイトで受託番号NP_003692.1(アイソフォーム1)及びNP_143026.1(アイソフォーム2)として見出され得る。RANKLのアミノ酸配列は、配列番号31として本明細書に記載され、対応するmRNA配列は、配列番号32として提供される。RANKLがRANKに結合すると、RANKの細胞質ドメインは、RANKの3つの細胞質モチーフの1つを介して、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF5及びTRAF6を含むTNF受容体関連因子(TRAF)ファミリーのメンバーと相互作用し、NFκB及びMAPKシグナル伝達経路を活性化する(Jules et al.,JBC 290(39):23738-23750(2015))。RANKLがRANKに結合すると、TAB2を動員するTRAF6のポリユビキチン化がもたらされ、これが続いてTAK1の活性化をもたらす。TAK1は、下流キナーゼを活性化させ、これがNFκB、JNK及びp38の活性化をもたらして遺伝子の転写を駆動して、破骨細胞の分化をもたらす。RANKLの結合はまた、TRAF6を介したSrcキナーゼ経路の活性化をもたらし、これが破骨細胞の活性化をもたらす。TRAF6は、シグナル伝達も活性化して、NFAT1cの核への転座をもたらし、ここで、TRAF6は、NFκB及びAP1と協働する。上記のDarnay et al.。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「阻害する」及び「低減させる」並びにこれらに由来する語は、必ずしも100%の又は完全な阻害若しくは抑止又は低減を意味するわけではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する阻害及び/又は低減の様々な程度が存在する。この点において、本開示のRANK経路阻害剤は、RANK経路の活性を任意の量又はレベルまで低減又は阻害することができる。例示的な実施形態では、RANK経路阻害剤によって提供される低減又は阻害は、少なくとも又は約10%の低減又は阻害(例えば、少なくとも又は約20%の低減又は阻害、少なくとも又は約30%の低減又は阻害、少なくとも又は約40%の低減又は阻害、少なくとも又は約50%の低減又は阻害、少なくとも又は約60%の低減又は阻害、少なくとも又は約70%の低減又は阻害、少なくとも又は約80%の低減又は阻害、少なくとも又は約90%の低減又は阻害、少なくとも又は約95%の低減又は阻害、少なくとも又は約98%の低減又は阻害)である。
【0025】
例示的な実施形態では、RANK経路阻害剤は、RANKとRANKリガンド(RANKL)との間の結合相互作用を阻害する。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、RANKとRANKLとの間の結合相互作用の少なくとも又は約10%(例えば、結合相互作用の少なくとも又は約20%、結合相互作用の少なくとも又は約30%、結合相互作用の少なくとも又は約40%、結合相互作用の少なくとも又は約50%、結合相互作用の少なくとも又は約60%、結合相互作用の少なくとも又は約70%、結合相互作用の少なくとも又は約80%、結合相互作用の少なくとも又は約90%、結合相互作用の少なくとも又は約95%、結合相互作用の少なくとも又は約98%)を阻害する。
【0026】
例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、オステオプロテゲリン(OPG)又はそのRANKL結合断片を含む。TNFRSF11B、TR1、OCIF及びPDB5としても知られるOPGは、染色体8(アームq24.12)に位置する遺伝子によってコードされるタンパク質である。これは、破骨細胞形成を阻害するRANKLのデコイ受容体である。OPGの配列は、NCBIウェブサイトで受託番号NP_002537.3(アミノ酸22-401である成熟ペプチドである)として入手可能である。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、完全長のOPG分子(例えば、受託番号NP_002537.3のアミノ酸22-401である成熟OPGペプチド)を含む。様々な場合、RANK経路阻害剤は、RANKL結合断片を含み、任意選択的に、RANKL結合断片は、OPGのシステイン豊富ドメインを4つのみ含む(D1~D4)。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、抗体(任意選択的にIgG1抗体)のFcドメインに融合した、RANKL結合断片(例えば、4つのみのOPGのシステイン豊富ドメイン(D1~D4))を含む融合タンパク質である。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、Body et al.,Cancer 97(3 Suppl):887-892(2003)に記載され、AMGN-0007と示される阻害剤と同様又は同一である。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、Genway Biotech Inc.(San Diego,CA)のカタログ番号GQB-21D1E9、AB Biosciences(Concord,MA)のカタログ番号P7019F、Boster Biological Technology(Pleasanton,CA)のSKU:PROTO00300-1又はSigma(St.Louis,MO)の製品番号O9631として入手可能な阻害剤などのOPG-Fcタンパク質である。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、IgG1抗体のFcドメインに融合した、4つのみのOPGのシステイン豊富ドメイン(D1~D4)を含む融合タンパク質である。
【0027】
例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、RANK又はRANKLに結合する抗原結合タンパク質である。様々な態様における抗原結合タンパク質は、抗体、抗原結合抗体断片又は抗体タンパク質生成物である。本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、重鎖及び軽鎖を含み、且つ可変領域及び定常領域を含む、既知の免疫グロブリンフォーマットを有するタンパク質を指す。例えば、抗体は、ポリペプチド鎖の2つの同一のペアの「Y型」構造であるIgGであり得、各ペアは、1本の「軽」(一般的には分子量が約25kDa)及び1本の「重」鎖(一般的には分子量が約50~70kDa)を有する。抗体は、可変領域及び定常領域を有する。IgGフォーマットでは、可変領域は、一般に、約100~110又はそれを超えるアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、主に抗原認識に関与し、異なる抗原に結合する他の抗体と実質的に異なる。定常領域は、抗体が免疫系の細胞及び分子を動員することを可能にする。可変領域は、各軽鎖及び重鎖のN末端領域からできているが、定常領域は、重鎖及び軽鎖のそれぞれのC末端部分からできている。(Janeway et al.,“Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin Genes”,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4thed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999))。
【0028】
抗体のCDRの一般的な構造及び性質が当技術分野において記述されている。簡潔に述べると、抗体骨格において、CDRは、重鎖及び軽鎖可変領域内に埋め込まれ、それらは、抗原結合及び認識に大きく関与する領域を構成する。可変領域は、通常、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖CDRを含み(Kabat et al..,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;see also Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al..,1989,Nature 342:877-883)、それらは、フレームワーク領域(Kabat et al.,1991によってフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3及びFR4と呼ばれている;上記のChothia and Lesk,1987も参照されたい)中にある。
【0029】
抗体は、当技術分野において公知の任意の定常領域を含み得る。ヒト軽鎖は、ヒト軽鎖カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が挙げられるが、これらに限定されないいくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1及びIgM2が挙げられるが、これらに限定されないサブクラスを有する。本開示の実施形態は、抗体のこうしたクラス又はアイソタイプの全てを含む。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型又はラムダ型軽鎖定常領域、例えばヒトカッパ型又はラムダ型軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は、例えば、アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型又はミュー型重鎖定常領域、例えばヒトアルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型又はミュー型重鎖定常領域であり得る。したがって、例示的な実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含むアイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMの抗体である。
【0030】
抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、哺乳動物、例えばマウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター及びヒトなどによって産生される天然抗体に実質的に類似する配列を含む。この点において、抗体は、哺乳動物抗体、例えばマウス抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体及びヒト抗体などと考えることができる。特定の態様では、抗体は、ヒト抗体である。特定の態様では、抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。「キメラ抗体」という用語は、2つ以上の異なる抗体由来のドメインを含有する抗体を指す。キメラ抗体は、例えば、1つの種由来の定常ドメイン及び第2の種由来の可変ドメインを含有することができるか、又はより一般的に少なくとも2つの種由来のアミノ酸配列のストレッチを含有することができる。キメラ抗体は、同じ種内の2つ以上の異なる抗体のドメインを含有することもできる。「ヒト化」という用語は、抗体に関して使用する場合、本来の源の抗体より真のヒト抗体に類似した構造及び免疫機能を有するように操作されている、非ヒト源由来の少なくともCDR領域を有する抗体を指す。例えば、ヒト化は、マウス抗体などの非ヒト抗体からヒト抗体へのCDRの移植を含むことができる。ヒト化は、非ヒト配列をヒト配列に更に類似させるために選択アミノ酸置換も含むことができる。
【0031】
抗体は、例えば、パパイン及びペプシンなどの酵素により切断して断片にすることができる。パパインは、抗体を切断して、2つのFab断片及び単一のFc断片を産生する。ペプシンは、抗体を切断して、F(ab’)断片及びpFc’断片を産生する。本開示の例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、抗体の抗原結合断片である。本明細書で使用するとき、用語「抗原結合抗体断片」は、抗体の抗原に結合することができる抗体の一部分を指し、「抗原結合断片」又は「抗原結合部分」としても知られている。例示的な例では、抗原結合抗体断片は、Fab断片又はF(ab’)断片である。
【0032】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、抗体タンパク質生成物である。本明細書で使用するとき、用語「抗体タンパク質生成物」とは、様々な例では、抗体の構造に基づくが、天然には見出されない、いくつかの抗体代替物の任意の1つを指す。いくつかの態様では、抗体タンパク質生成物は、少なくとも約12~150kDaの範囲内の分子量を有する。特定の態様では、抗体タンパク質生成物は、更に高次の価数ではない場合、単量体(n=1)から二量体(n=2)、三量体(n=3)、四量体(n=4)までの価数(n)範囲を有する。いくつかの態様では、抗体タンパク質生成物は、完全な抗体構造に基づくもの及び/又は完全な抗原結合能を保持する抗体断片を模倣するもの、例えばscFv、Fab及びVHH/VH(後述)である。完全な抗原結合部位を保持する最小の抗原結合抗体断片は、専ら可変(V)領域からなるFv断片である。可溶性で柔軟なアミノ酸ペプチドリンカーを使用して、V領域をscFv(単鎖断片可変)断片に連結させて、分子を安定化させるか、又は定常(C)ドメインをV領域に加えて、Fab断片[断片、抗原結合性]を生成する。scFv断片及びFab断片の両方は、宿主細胞、例えば原核生物宿主細胞中で容易に産生することができる。他の抗体タンパク質生成物には、ジスルフィド結合安定化scFv(ds-scFv)、単鎖Fab(scFab)並びにオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なるフォーマットを含む、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディ又はミニボディ(ミニAb)のような二量体及び多量体抗体フォーマットが含まれる。最小の断片は、ラクダ類重鎖Ab及び単一ドメインAb(sdAb)のVHH/VHである。新規な抗体フォーマットを作製するために最も頻繁に使用される構築ブロックは、約15アミノ酸残基のペプチドリンカーによって連結された重鎖及び軽鎖(VH及びVLドメイン)由来のVドメインを含む単鎖可変(V)-ドメイン抗体断片(scFv)である。ペプチボディ又はペプチド-Fc融合体は、更に別の抗体タンパク質生成物である。ペプチボディの構造は、Fcドメインに移植された生物学的に活性なペプチドからなる。ペプチボディは、当技術分野において詳細に記述されている。例えば、Shimamoto et al.,mAbs 4(5):586-591(2012)を参照されたい。
【0033】
他の抗体タンパク質生成物としては、単鎖抗体(SCA)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及び二重特異性抗体又は三重特異性抗体などが挙げられる。二重特異性抗体は、5つの主要なクラス:BsIgG、付加IgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質及びBsAbコンジュゲートに分類することができる。例えば、Spiess et al..,Molecular Immunology 67(2)Part A:97-106(2015)を参照されたい。
【0034】
例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子であり、これは人工の二重特異性モノクローナル抗体である。BiTE(登録商標)分子は、異なる抗体の2つのscFvを含む融合タンパク質である。1つは、CD3に結合し、もう1つは、標的抗原に結合する。BiTE(登録商標)分子は、当技術分野で既知である。例えば、Huehls et al..,Immuno Cell Biol 93(3):290-296(2015)、Rossi et al..,MAbs 6(2):381-91(2014)、Ross et al..,PLoS One 12(8):e0183390を参照されたい。
【0035】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、RANKLに結合する。いくつかの態様では、抗原結合タンパク質は、非共有結合性且つ可逆性の様式でRANKLに結合する。例示的な実施形態では、抗原結合タンパク質の結合強度は、RANK及びRANKLの結合部位間の相互作用の強度の尺度である、その親和性の観点から説明することができる。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、RANKLに対して親和性が高く、このため、親和性の低い抗原結合タンパク質より短時間でより多くのRANKLに結合することになる。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、RANKLに対して親和性が低く、このため、親和性の高い抗原結合タンパク質より長時間でより少ないRANKLに結合することになる。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、平衡会合定数KAが少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1又は少なくとも1010-1である。当業者であれば理解するように、KAは、pH、温度及び緩衝液組成を含む因子による影響を受ける場合がある。
【0036】
例示的な実施形態では、RANKLへの抗原結合タンパク質の結合強度は、その感受性の観点から説明することができる。Kは、平衡解離定数、抗原結合タンパク質とRANKLとの間のkoff/konの比である。KとKAとは、逆相関の関係にある。K値は、抗原結合タンパク質の濃度(特定の実験に必要な抗原結合タンパク質の量)と相関しているため、K値が低い(低い濃度が必要である)ほど、抗原結合タンパク質の親和性が高まる。例示的な態様では、RANKLへの抗原結合タンパク質の結合強度は、Kの観点から説明することができる。例示的な態様では、抗原結合タンパク質のKは、約10-1M、約10-2M、約10-3M、約10-4M、約10-5M、約10-6M又はそれ未満である。例示的な態様では、抗原結合タンパク質Kは、マイクロモル、ナノモル、ピコモル又はフェムトモルである。例示的な態様では、抗原結合タンパク質のKは、約10-4~10-6M、又は約10-7~10-9M、又は約10-10~10-12M、又は約10-13~10-15Mの範囲内である。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、Kが約0.04nM以上のヒトRANKLに結合する。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、Kが約0.01nM~約20nM、0.02nM~20nM、0.05nM~20nM、0.05nM~15nM、0.1nM~15nM、0.1nM~10nM、1nM~10nM又は5nM~10nMのヒトRANKLに結合する。
【0037】
任意選択的に、抗原結合タンパク質は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体又はFab、Fab’、F(ab’)2若しくは単鎖Fvを含む。様々な態様では、RANK経路阻害剤は、抗RANK抗体又は抗RANKL抗体の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれを超えるものを含む。
【0038】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、RANKLに結合する。場合により、抗原結合タンパク質は、デノスマブと呼ばれる抗体の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれを超えるものを含む。デノスマブは、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願第03/002713号パンフレット及び米国特許第7,364,736号明細書で説明及び特許請求されている。デノスマブは、配列番号8の重鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号9の重鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号10の重鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号5の軽鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号6の軽鎖CDR2アミノ酸配列及び配列番号7の軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む。デノスマブは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)可変領域とを含む。LCの成熟型は、配列番号13に記載されており、HCの成熟型は、配列番号14に記載されている。シグナルペプチドを含む完全長LCは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。シグナルペプチドを含む完全長HCは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。様々な場合、抗原結合タンパク質は、配列番号5、6、7、8、9及び10のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含み、且つ配列番号16のアミノ酸配列及び配列番号28のアミノ酸配列を更に含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列及び配列番号14のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0039】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号8の重鎖CDR1アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、(b)配列番号9の重鎖CDR2アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、(c)配列番号10の重鎖CDR3アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、(d)配列番号5の軽鎖CDR1アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、(e)配列番号6の軽鎖CDR2アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、(f)配列番号7の軽鎖CDR3アミノ酸配列或いは1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、又は(g)(a)~(f)の任意の2つ以上の組み合わせを含む。任意選択的に、抗原結合タンパク質は、(A)(i)配列番号1のアミノ酸配列或いは配列番号1に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む軽鎖可変ドメイン、(ii)配列番号19を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、又は(iii)配列番号19からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインからなる群から選択される軽鎖可変ドメイン、又は(B)(i)配列番号2のアミノ酸或いは配列番号2に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む重鎖可変ドメイン、(ii)配列番号20を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、又は(iii)配列番号20からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインからなる群から選択される重鎖可変ドメイン、又は(C)(A)の軽鎖可変ドメイン及び(B)の重鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様では、抗原結合タンパク質は、任意選択的にカッパ軽鎖を含むIgG1、IgG2又はIgG4抗体である。任意選択的に、抗原結合タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか、配列番号16、配列番号17又は配列番号18のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗原結合タンパク質は、(A)軽鎖であって、(i)配列番号3又は13のアミノ酸配列或いは配列番号3若しくは13に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む軽鎖、(ii)配列番号21又は23を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は(iii)配列番号21又は23からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖からなる群から選択される軽鎖、又は(B)(i)配列番号4又は配列番号14のアミノ酸配列或いは配列番号4若しくは14に対して1つ若しくは2つのみのアミノ酸が異なるか、又は少なくとも若しくは約70%の配列同一性を有する変異体配列を含む重鎖、(ii)配列番号22又は24を含むポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖、若しくは(iii)配列番号22又は24からなるポリヌクレオチドの補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖からなる群から選択される重鎖、又は(C)(A)の軽鎖及び(B)の重鎖を含む。様々な場合、抗原結合タンパク質は、配列番号5、6、7、8、9及び10のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含み、且つ配列番号16のアミノ酸配列及び配列番号28のアミノ酸配列を更に含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列及び配列番号14のアミノ酸配列を含む。上記の変異体配列に関して、いくつかの態様では、変異体配列は、1つ又は2つのアミノ酸のみが異なるか、或いは引用された配列(例えば、配列番号1~10、13又は14)と少なくとも若しくは約70%の配列同一性、引用された配列と少なくとも若しくは約75%の配列同一性、引用された配列と少なくとも若しくは約80%の配列同一性、引用された配列と少なくとも若しくは約85%の配列同一性、引用された配列と少なくとも若しくは約90%の配列同一性、引用された配列と少なくとも若しくは約95%の配列同一性又は引用された配列と少なくとも若しくは約98%の配列同一性を有する。
【0040】
例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、RANKLとの結合に関してデノスマブと競合する完全ヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体又はFab、Fab’、F(ab’)2若しくは単鎖Fvを含む。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、デノスマブが結合するエピトープと結合する。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、更に低くない場合、デノスマブと同様であるか又は同じKDを有する。例示的な場合、RANKLとの結合に関してデノスマブと競合する抗原結合タンパク質は、インビトロの競合的結合アッセイにおいて、RANKLに結合するデノスマブの量を低減させる。例示的な態様では、RANKLに結合したデノスマブの量は、少なくとも若しくは約25%、少なくとも若しくは約30%、少なくとも若しくは約35%、少なくとも若しくは約40%、少なくとも若しくは約45%、少なくとも若しくは約50%、少なくとも若しくは約55%、少なくとも若しくは約60%、少なくとも若しくは約65%、少なくとも若しくは約70%、少なくとも若しくは約75%、少なくとも若しくは約80%、少なくとも若しくは約85%、少なくとも若しくは約90%又はそれを超えて減少する。RANKLに結合したデノスマブの減少した量を判定するために用いることのできる好適な競合的結合アッセイは、RANKLへの結合に関してデノスマブと競合する抗原結合タンパク質でデノスマブをインキュベートし、続いてRANKLを添加する工程を含む。RANKLに結合したデノスマブの量は、RANKLへの結合に関して競合する抗原結合タンパク質を用いて及び用いずに測定する。他の結合アッセイ、例えば抗原又はそのエピトープへの結合に関して別の抗原結合タンパク質と競合する抗体の能力を試験する競合的結合アッセイ又は競合アッセイは、当技術分野において既知である。例えば、米国特許出願公開第20140178905号明細書、Chand et al.,Biologicals 46:168-171(2017);Liu et al.,Anal Biochem 525:89-91(2017);及びGoolia et al.,J Vet Diagn Invest 29(2):250-253(2017)を参照されたい。また、2つの抗体を比較する他の方法が当技術分野で知られており、これとしては、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)が挙げられる。SPRを、抗体及び第2の抗体の結合定数を決定するために使用することができ、2つの結合定数が比較され得る。
【0041】
CDK阻害剤
例示的な実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、RANK経路阻害剤と組み合わせたCDK阻害剤を含む。本明細書で使用するとき、用語「CDK阻害剤」とは、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)を標的化する任意の化合物又は分子を意味する。様々な場合、CDKは、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4又はCDK6である。様々な態様におけるCDKは、CDK4若しくはCDK6又はこれらの組み合わせである。例示的な場合、CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤又はCDK4阻害剤若しくはCDK6阻害剤である。CDK阻害剤により提供される低減又は阻害は、100%の又は完全な阻害若しくは抑止又は低減でなくてもよい。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する低減又は阻害の様々な程度が存在する。この点において、CDK阻害剤は、CDK4及び/又はCDK6タンパク質を任意の量又はレベルまで阻害することができる。例示的な実施形態では、CDK阻害剤によって提供される低減又は阻害は、少なくとも又は約10%の低減又は阻害(例えば、少なくとも又は約20%の低減又は阻害、少なくとも又は約30%の低減又は阻害、少なくとも又は約40%の低減又は阻害、少なくとも又は約50%の低減又は阻害、少なくとも又は約60%の低減又は阻害、少なくとも又は約70%の低減又は阻害、少なくとも又は約80%の低減又は阻害、少なくとも又は約90%の低減又は阻害、少なくとも又は約95%の低減又は阻害、少なくとも又は約98%の低減又は阻害)である。
【0042】
好適なCDK阻害剤は、当技術分野で既知である。例えば、Fischer and Gianella-Borradori,Expert Opin.Investig.Drugs(2005)14(4):457-477、並びに国際特許出願国際公開第2003072062号パンフレット、同第2002096888号パンフレット、同第2003097048号パンフレット、同第2004097048号パンフレット、同第2004069137号パンフレット及び同第2003033499号パンフレットを参照されたい。例示的な態様では、CDK阻害剤は、アルボシジブ(フラボピリドール;Aventis-NCIとしても知られる)及びセリシクリブ(CYC202、(R)-roscovitine、Cyclacelとしても知られる)、UCN-01、インジスラム、BMS-387032、ON01910.Na、AZD-5438、ZK-CDK、JNJ-7706621、GPC-286199である。
【0043】
例示的な実施形態では、CDK阻害剤は、CDK4/6阻害剤である。本明細書で使用するとき、用語「CDK4/6阻害剤」とは、サイクリン依存性キナーゼであるCDK4及びCDK6を標的化し、これらの酵素活性、例えばキナーゼ活性を低減又は阻害する任意の化合物又は分子を指す。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、CDK4及びCDK6に作用して、細胞周期停止を誘発する。細胞周期の進行中、CDK4及びCDK6は、成長抑制タンパク質である網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)をリン酸化のために標的化し、Rbタンパク質は、リン酸化されると不活性化される。CDK4及びCDK6がCDK4/6阻害剤によって阻害されていると、Rbは、リン酸化されず(又はリン酸化が低減し)、その結果、Rbは、その成長抑制機能を自由に実行することができる。例示的な実施形態では、CDK4/6阻害剤は、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、シトクロムP450(CYP450)3A阻害剤又は両方である。様々な態様では、CDK4/6阻害剤は、網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質のリン酸化を阻害する。様々な態様では、CDK4/6阻害剤は、CYP4503Aの機能を阻害する。
【0044】
例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、構造:
【化3】

を含む。
【0045】
様々な態様では、CDK4/6阻害剤は、構造I又は構造IIの構造を含み、且つA-Bの構造を更に含み、ここで、Aは、二環式構造を含み、及びBは、単環式構造を含む。例示的な態様では、A-Bは、構造III、又は構造IV、又は構造V:
【化4】

の構造を含む。
【0046】
例示的な態様では、構造III又はIVのBは、シクロペンタンである。例示的な態様では、構造VのBは、ピリミジンを含む。
【0047】
様々な態様では、CDK4/6阻害剤は、
【化5】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0048】
様々な態様では、CDK4/6阻害剤は、
【化6】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0049】
様々な場合、CDK4/6阻害剤は、
【化7】

の構造又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0050】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物のCDK阻害剤は、CDK4阻害剤である。したがって、例示的な態様では、医薬組成物は、RANK経路阻害剤及びCDK4阻害剤を含む。本明細書で使用するとき、用語「CDK4阻害剤」は、CDK4の活性(例えば、キナーゼ活性)を低減又は阻害するが、CDK6の活性を低減又は阻害しない任意の化合物又は分子を指す。いくつかの態様では、CDK4阻害剤は、CDK4をコードする核酸を標的化する分子である。代表的な場合、CDK4阻害剤は、RNA干渉(RNAi)を媒介するアンチセンス分子である。RNAiは、標的mRNAが配列特異的な方法で分解される、植物及び動物における遺伝子調節の普遍的機構である(Sharp,Genes Dev.,15,485-490(2001);Hutvagner et al.,Curr.Opin.Genet.Dev.,12,225-232(2002)、Fire et al.,Nature,391,806-811(1998)、Zamore et al.,Cell,101,25-33(2000))。天然のRNA分解プロセスは、dsRNA特異的エンドヌクレアーゼダイサーによって開始され、長いdsRNA前駆体から、低分子干渉RNA(siRNA、短干渉RNAとしても知られる)と称される21~25ヌクレオチド長の二本鎖断片への切断を促進する(Zamore, et al., Cell.101,25-33(2000)、Elbashir et al.,Genes Dev.,15,188-200(2001)、Hammond et al.,Nature,404,293-296(2000)、Bernstein et al.,Nature,409,363-366(2001))。siRNAは、標的mRNAを認識して切断する巨大タンパク質複合体に組み込まれる(Nykanen et al.,Cell,107,309-321(2001)。細胞中のsiRNAの成熟におけるダイサーの必要条件は、様々な哺乳動物細胞中において、トランスフェクションされ且つ内因性の遺伝子の発現を阻害する合成21ヌクレオチドsiRNA二重鎖を導入することによって回避することができる(Elbashir et al.,Nature,411:494-498(2001))。例示的な態様では、CDK4阻害剤は、RNAiを媒介し、また様々な場合、これは、CDK4タンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA)発現の阻害に特異的なsiRNA分子である。本明細書で使用するとき、用語「siRNA」は、RNAiを誘導又は媒介することが可能である、約10~約50ヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)を含むRNA(又はRNA類似体)を指す。例示的な実施形態では、siRNA分子は、約15~約30ヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)又は約20~約25ヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)、例えば21~23ヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)を含む。siRNAは、二本鎖又は一本鎖であり得、好ましくは二本鎖である。
【0051】
代替的な態様では、CDK4阻害剤は、CDK4タンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA)発現の阻害に特異的な短ヘアピンRNA(shRNA)分子である。本明細書で使用するとき、用語「shRNA」は、約20以上の塩基対からなる分子を指し、ここで、一本鎖RNAは、回文塩基配列を部分的に含有し、且つその中に二本鎖構造(すなわちヘアピン構造)を形成する。shRNAは、折り畳まれてヘアピン構造になるsiRNA(又はsiRNA類似体)であり得る。shRNAは、典型的には約45~約60ヌクレオチドを含み、これは、約21のヌクレオチドアンチセンス及びヘアピンのセンス部分、約2~約6ヌクレオチド長の非ループ側上の任意選択的オーバーハング並びに例えば約3~10ヌクレオチド長であり得るループ部分を含む。shRNAは、化学的に合成することができる。代わりに、shRNAは、逆方向のDNA配列のセンス鎖とアンチセンス鎖とを連結し、テンプレートとしてDNAを用いてT7 RNAポリメラーゼでRNAをインビトロ合成することによって生成することもできる。いかなる理論又は機序にも束縛されるものではないが、shRNAが細胞に導入された後、shRNAは、約20塩基以上の長さ(例えば、典型的には21、22、23塩基)に分解し、RNAiを生じさせ、阻害作用をもたらすものと考えられる。したがって、shRNAは、RNAiを誘発し、したがって本開示の有効成分として用いることができる。shRNAは、好ましくは、3’突出末端を有し得る。二本鎖部分の長さは、特に限定されていないが、好ましくは約10以上のヌクレオチド、より好ましくは約20以上のヌクレオチドである。本明細書では、3’突出末端は、好ましくは、DNA、より好ましくは少なくとも2ヌクレオチド長のDNA、更により好ましくは2~4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
【0052】
例示的な態様では、CDK4阻害剤は、マイクロRNA(miRNA)である。本明細書で使用するとき、用語「マイクロRNA」とは、塩基がmRNA分子と対合して、翻訳抑制又は標的分解を介して遺伝子発現をサイレンシングする、小さい(例えば、15~22ヌクレオチドの)非コードRNA分子を指す。マイクロRNA及びその治療可能性は、当技術分野で説明されている。例えば、Mulligan, MicroRNA:Expression, Detection,and Therapeutic Strategies,Nova Science Publishers,Inc.,Hauppauge,NY,2011、Bader and Lammers,“The Therapeutic Potential of microRNAs” Innovations in Pharmaceutical Technology,pages 52-55(March 2011)を参照されたい。
【0053】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物のCDK阻害剤は、CDK6阻害剤である。したがって、例示的な態様では、医薬組成物は、RANK経路阻害剤及びCDK6阻害剤を含む。本明細書で使用するとき、用語「CDK6阻害剤」は、CDK6の活性(例えば、キナーゼ活性)を低減又は阻害するが、CDK4の活性を低減又は阻害しない任意の化合物又は分子を指す。いくつかの態様では、CDK6阻害剤は、CDK6をコードする核酸を標的化する分子である。代表的な場合、CDK6阻害剤は、RNA干渉(RNAi)を媒介するアンチセンス分子である。例示的な態様では、CDK6阻害剤は、RNAiを媒介し、また様々な場合、これは、CDK6タンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA)発現の阻害に特異的なsiRNA分子である。代替的な態様では、CDK6阻害剤は、代替的にはCDK6タンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA)発現の阻害に特異的な短ヘアピンRNA(shRNA)分子である。例示的な態様では、CDK6阻害剤は、マイクロRNA(miRNA)である。
【0054】
追加的活性成分
様々な場合、医薬組成物は、2種類以上のRANK経路阻害剤及び/又は2種類以上のCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)を含む。例えば、医薬組成物は、OPG、OPG-Fc及びデノスマブの少なくとも2つ並びにパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブの少なくとも2つを含む。様々な場合、医薬組成物は、RANK経路阻害剤以外及びCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤)以外の追加の活性成分を含む。例示的な場合、医薬組成物は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)及び化学療法剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を含む。
【0055】
本明細書に開示される医薬組成物に含めるのに好適な化学療法剤は、当技術分野で既知であり、これとしては、米国特許第6,630,124号明細書に記載されるように、白金配位化合物、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生物質、抗有糸分裂アルカロイド及びジフルオロヌクレオシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、白金配位化合物である。用語「白金配位化合物」は、白金がイオン形態で提供される、任意の腫瘍細胞成長阻害性の化合物を指す。いくつかの実施形態では、白金配位化合物は、cis-ジアミンジアコ白金(II)-イオン;クロロ(ジエチレントリアミン)-白金(II)塩化物;ジクロロ(エチレンジアミン)-白金(II)、ジアミン(1,1-シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)(カルボプラチン);スピロプラチン;イプロプラチン;ジアミン(2-エチルマロナト)-白金(II);エチレンジアミンマロナト白金(II);アクア(1,2-ジアミノジクロヘキサン)-スルファト白金(II);(1,2-ジアミノシクロヘキサン)マロナト白金(II);(4-カロキシフタラト)(1,2-ジアミノシクロヘキサン)白金(II);(1,2-ジアミノシクロヘキサン)-(イソシトラト)白金(II);(1,2-ジアミノシクロヘキサン)cis(ピルバト)白金(II);(1,2-ジアミノシクロヘキサン)オキサラト白金(II);オルマプラチン;及びテトラプラチンである。
【0057】
いくつかの実施形態では、シスプラチンは、本発明の組成物及び方法に使用される白金配位化合物である。シスプラチンは、Bristol Myers-Squibb CorporationからPLATINOL(商標)の名称で市販されており、水、滅菌生理食塩水又は他の適切なビヒクルで構成するための粉末として入手可能である。本発明において使用するのに適切な他の白金配位化合物は、既知であり、市販品を入手可能であり、且つ/又は既知の技術によって調製することができる。シスプラチン又はcis-ジクロロジアミン白金IIは、種々のヒト固形悪性腫瘍の治療において化学療法剤として長年使用され、奏効してきた。最近では、他のジアミノ-白金錯体も種々のヒト固形悪性腫瘍の治療において化学療法剤として有効性を示している。そのようなジアミノ-白金錯体としては、以下に限定されないが、スピロ白金及びカルボ白金が挙げられる。シスプラチン及び他のジアミノ-白金錯体は、ヒトにおける化学療法剤として広く使用されてきたが、それらは、高投与量レベルで送達されなければならず、このため、腎障害などの毒性問題を招き得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。トポイソメラーゼは、真核細胞のDNAトポロジーを変更することができる酵素である。トポイソメラーゼは、細胞機能及び細胞増殖に不可欠である。一般に、真核細胞中には、2つの種類のトポイソメラーゼ、I型及びII型が存在する。トポイソメラーゼIは、およそ100,000分子量の単量体酵素である。この酵素は、DNAに結合し、一過性の一本鎖切断を導入し、二重らせんをほどき(又は二重らせんがほどけるのを可能にし)、次いで切断部を再接合した後にDNA鎖から分離する。種々のトポイソメラーゼ阻害剤は、卵巣癌、乳癌、食道癌又は非小細胞肺癌に罹患しているヒトの治療に臨床有効性を示している。
【0059】
いくつかの態様では、トポイソメラーゼ阻害剤は、カンプトテシン又はカンプトテシン類似体である。カンプトテシンは、中国原産のカレンボク(Camptotheca accuminata)の木及びインド原産のクサミズキ(Nothapodytes foetida)の木によって産生される水不溶性の細胞毒性アルカロイドである。カンプトテシンは、多くの腫瘍細胞の成長を阻害する。カンプトテシン類似体クラスの化合物は、典型的には、DNAトポイソメラーゼIの特異的阻害剤である。カンプトテシン類似体クラスの化合物としては、トポテカン、イリノテカン及び9-アミノ-カンプトテシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
追加的な実施形態では、化学療法剤は、1991年4月2日発行の米国特許第5,004,758号明細書及び欧州特許第0321122号明細書として1989年6月21日に公開された欧州特許出願第88311366.4号明細書、1986年8月5日発行の米国特許第4,604,463号明細書及び1985年4月17日公開の欧州特許出願公開第0137145号明細書、1984年9月25日発行の米国特許第4,473,692号明細書及び1983年3月16日公開の欧州特許出願公開第0074256号明細書、1985年10月8日発行の米国特許第4,545,880号明細書及び1983年3月16日公開の欧州特許出願公開第0074256号明細書、1983年9月14日公開の欧州特許出願公開第0088642号明細書、Wani et al.,J.Med.Chem.,29,2358-2363(1986)、Nitta et al.,Proc.14th International Congr.Chemotherapy,Kyoto,1985,Tokyo Press,Anticancer Section 1,p.28-30で特許請求又は記載される、腫瘍細胞成長を阻害する任意のカンプトテシン類似体、特にCPT-11と呼ばれる化合物である。CPT-11は、4-(ピペリジノ)-ピペリジン側鎖が10-ヒドロキシ-7-エチルカンプトテシンのC-10位でカルバメート結合によって連結しているカンプトテシン類似体である。CPT-11は、現在、ヒト臨床試験が行われており、イリノテカンとも呼ばれる;Wani et al,J.Med.Chem.,23,554(1980);Wani et.al.,J.Med.Chem.,30,1774(1987)、1982年8月3日発行の米国特許第4,342,776号明細書、1990年9月13日出願の米国特許出願第581,916号明細書及び1991年3月20日公開の欧州特許出願公開第418099号明細書、1985年4月23日発行の米国特許第4,513,138号明細書及び1983年3月23日公開の欧州特許出願公開第0074770号明細書、1983年8月16日発行の米国特許第4,399,276号明細書及び1982年7月28日公開の欧州特許出願公開第0056692号明細書(各開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)。上記のカンプトテシン類似体クラスの化合物は、全て市販品を入手可能であり、且つ/又は上記の参考文献に記載されている技術を含む既知の技術によって調製することができる。トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン、イリノテカン及び9-アミノカンプトテシンからなる群から選択され得る。
【0061】
カンプトテシン類似体クラスの多種の化合物(それらの薬学的に許容される塩、水和物及び溶媒和物を含む)の調製及びそのようなカンプトテシン類似体クラスの化合物と、不活性で薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含む経口及び非経口の医薬組成物の調製は、1991年4月2日に発行された米国特許第5,004,758号明細書及び欧州特許第0321122号明細書として1989年6月21日に公開された欧州特許出願第88311366.4号明細書に詳細に記載されており、それらの教示は、参照により本明細書に援用される。
【0062】
なお更に他の実施形態では、化学療法剤は、複合抗生物質である。適切な抗生物質としては、ドキソルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン及びストレプトゾシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、抗有糸分裂アルカロイドである。一般に、抗有糸分裂アルカロイドは、カタランツス・ロゼウス(Cantharanthus roseus)から抽出することができ、抗癌化学療法剤として有効であることが分かっている。多くの半合成誘導体が化学的にも薬理学的にも研究されてきた(O.Van Tellingen et al,Anticancer Research,12,1699-1716(1992)を参照されたい)。本発明の抗有糸分裂アルカロイドとしては、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、パクリタキセル(PTX;タキソール(登録商標))及びビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。最後の2つの抗有糸分裂アルカロイドは、それぞれEli Lilly and Company及びPierre Fabre Laboratoriesから市販されている(米国特許第5,620,985号明細書を参照されたい)。本発明の例示的な態様では、抗有糸分裂アルカロイドは、ビノレルビンである。
【0064】
本発明の他の実施形態では、化学療法剤は、ジフルオロヌクレオシドである。2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロヌクレオシドは、抗ウイルス活性を有するとして当技術分野において公知である。そのような化合物は、米国特許第4,526,988号明細書及び同第4,808614号明細書に開示され、且つ教示されている。欧州特許出願公開第184,365号明細書は、これらの同じジフルオロヌクレオシドが腫瘍崩壊活性を有することを開示している。特定の態様では、本発明の組成物及び方法に使用される2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロヌクレオシドは、2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン塩酸塩、別名ゲムシタビン塩酸塩である。ゲムシタビンは、市販されているか、又は米国特許第4,526,988号明細書、同第4,808,614号明細書及び同第5,223,608号明細書に開示され、且つ教示されている多段階プロセスで合成することができ、これらの教示は、参照により本明細書に援用される。
【0065】
例示的な態様では、化学療法剤は、ホルモン療法剤である。例示的な態様では、医薬組成物は、CDK阻害剤と組み合わせたRANK経路阻害剤を含み、且つホルモン療法剤を更に含む。例示的な場合、ホルモン療法剤は、例えば、レトロゾール、タモキシフェン、バゼドキシフェン、エキセメスタン、ロイプロリド、ゴセレリン、フルベストラント、アナストロゾール又はトレミフェンである。例示的な態様では、ホルモン療法剤は、黄体形成ホルモン(LH)ブロッカー、例えばゴサレリン(gosarelin)又はLH放出ホルモン(RH)アゴニストである。例示的な態様では、ホルモン療法剤は、ER標的剤(例えば、フルベストラント又はタモキシフェン)、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス、ゾタロリムス及び32-デオキソ-ラパマイシン)、抗HER2薬剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、T-DM1又はネラチニブ)又はPI3K阻害剤(例えば、タセリシブ、アルペリシブ又はブパルリシブ)である。
【0066】
例示的な態様では、医薬組成物は、CDK4/6阻害剤と組み合わせたRANK経路阻害剤を含み、またKnudsen and Witkiewicz,Trends Cancer 3(1):39-55(2017)に記載されるように、CDK4/6阻害剤と組み合わせた任意の追加の活性成分を更に含む。本参考文献の表3は、臨床治験における多くの薬剤の組み合わせを記載しており、その少なくとも1つの活性成分がCDK4/6阻害剤である。例示的な態様では、医薬組成物は、CDK4/6阻害剤と組み合わせたRANK経路阻害剤を含み、且つAZD-2014、BYL719、BKM120、エベロリムス、PI3K阻害剤、T-DM1、パクリタキセル、TACE、放射線療法、ドセタキセル、Nab、カルボプラチン、シスプラチン、5FU、オキサリプラチン、セツキシマブ、トラスツズマブ、MEK162、アンドロゲン遮断、エンザルタミド、イブルチニブ、セリチニブ、MEK阻害剤、トラメチニブ、HDM201及び/又はMTOR阻害剤の任意の1つ以上を更に含む。
【0067】
例示的な態様では、医薬組成物は、CDK4/6阻害剤と組み合わせたRANK経路阻害剤を含み、また米国食品医薬品局(FDA)又は欧州医薬品庁(EMEA)、カナダ保健省、オーストラリア保健省薬品・医薬品行政局(TGA)、中国国家食品薬品監督管理局、日本国厚生労働省(MHLW)など、他の医薬品規制当局により認可された、CDK4/6阻害剤の添付文書上に列挙される活性成分を更に含む。したがって、いくつかの態様では、医薬組成物は、CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ)と組み合わせたRANK経路阻害剤を含み、またフルベストラント又はアロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストロゾール又はエキセメスタン)を更に含む。様々な場合、医薬組成物は、フルベストラント若しくはパルボシクリブ及びフルベストラント若しくはリボシクリブ及びフルベストラント又はパルボシクリブ及びアロマターゼ阻害剤若しくはリボシクリブ及びアロマターゼ阻害剤と組み合わせたアベマシクリブを含む。
【0068】
薬学的に許容される塩
例示的な態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、活性成分としてのRANK経路阻害剤及びCDK4/6阻害剤又はその薬学的に許容される塩を含む。こうした塩は、活性成分の最終的な単離及び精製中にその場で調製することができるか、又は遊離塩基官能基を好適な酸と反応させることによって個別に調製することができる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するために用いられ得る酸の例としては、例えば、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸並びに有機酸、例えばシュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸が挙げられる。
【0069】
代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びウンデカン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
塩基付加塩も、活性剤の最終の単離及び精製中或いはカルボン酸含有部分を薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩などの好適な塩基又はアンモニア若しくは有機第一級、第二級若しくは第三級アミンと反応させることにより、その場で調製することができる。薬学的に許容される塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウム塩などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属をベースとしたカチオン並びにとりわけアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム及びエチルアンモニウムを含む非毒性第四級アンモニア及びアミンカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどが挙げられる。
【0071】
更に、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージドなどの低級ハロゲン化アルキル;デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロリド、ブロミド及びヨージドなどの長鎖ハロゲン化物;ベンジル及びフェネチルブロミドなどのハロゲン化アリールアルキル並びに他のものなどの活性剤で四級化することができる。これにより、水又は油に溶性又は分散性の生成物が得られる。
【0072】
薬学的に許容される担体
例示的な実施形態では、RANK経路阻害剤は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と共に製剤化される。例示的な実施形態では、CDK4/6阻害剤は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と共に製剤化される。投与経路、使用が意図される特定の活性剤(RANK経路阻害剤又はCDK4/6阻害剤)及び他の要因に応じて、RANK経路阻害剤又はCDK4/6阻害剤は、例えば、酸性化剤、添加剤、吸着剤、エアロゾル噴霧剤、気体排除剤、アルカリ化剤、抗ケーキング剤、抗凝固剤、抗菌保存剤、抗酸化剤、防腐剤、塩基、結合剤、緩衝化剤、キレート剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、洗浄剤、希釈剤、消毒剤、崩壊剤、分散剤、溶解促進剤、色素、皮膚軟化剤、乳化剤、エマルション安定化剤、充填剤、薄膜形成剤、風味増強剤、香味剤、流動促進剤、ゲル化剤、造粒剤、湿潤剤、潤滑剤、粘膜付着剤、軟膏基剤、軟膏剤、油性ビヒクル、有機塩基、錠剤基剤、顔料、可塑剤、研磨剤、保存剤、金属イオン封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶剤、安定剤、坐剤基剤、表面活性剤、界面活性剤、懸濁剤、甘味剤、治療剤、増粘剤、等張化剤、毒性剤、粘度増強剤、吸水剤、水混和性共溶媒、硬水軟化剤又は湿潤剤を含む1つ以上の追加の薬学的に許容される成分と混合され得る。
【0073】
例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、皮下注射用に製剤化される。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、ソルビトール、酢酸塩、ポリソルベート20、注射用の水及び水酸化ナトリウムでpH5.2に製剤化される。任意選択的に、RANK経路阻害剤は、4.7%のソルビトール、17mMの酢酸塩、0.01%のポリソルベート20、注射用の水及び水酸化ナトリウムでpH5.2に製剤化される。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、デノスマブであり、医薬組成物は、任意選択的に、4.7%のソルビトール、17mMの酢酸塩、0.01%のポリソルベート20、注射用の水及び水酸化ナトリウムでpH5.2に製剤化された60mgのデノスマブを含む。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、デノスマブであり、医薬組成物は、任意選択的に、4.6%のソルビトール、18mMの酢酸塩、0.01%のポリソルベート20、注射用の水及び水酸化ナトリウムでpH5.2に製剤化された120mgのデノスマブを含む。例示的な態様では、医薬組成物は、Prolia(登録商標)若しくはXgeva(登録商標)又はこれらのバイオシミラーを含む。
【0074】
例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、経口投与用に製剤化される。様々な場合、CDK4/6阻害剤は、カプセル剤に製剤化される。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、デンプングリコール酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及び硬ゼラチンカプセルシェルで製剤化される。淡オレンジ色、淡オレンジ色/カラメル色及びカラメル色の不透明カプセル剤シェルは、ゼラチン、赤酸化鉄、黄酸化鉄及び二酸化チタンを含有し、印刷用インクは、セラック、二酸化チタン、水酸化アンモニウム、プロピレングリコール及びシメチコンを含有する。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、パルボシクリブであり、任意選択的に、125mg、100mg又は75mgのパルボシクリブは、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、デンプングリコール酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及び硬ゼラチンカプセルシェルで製剤化される。淡オレンジ色、淡オレンジ色/カラメル色及びカラメル色の不透明カプセル剤シェルは、ゼラチン、べんがら、鉄黄及び二酸化チタンを含有し、印刷用インクは、セラック、二酸化チタン、水酸化アンモニウム、プロピレングリコール及びシメチコンを含有する。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、Ibrance(登録商標)又はそのジェネリック版である。
【0075】
例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、経口投与用に製剤化される。様々な場合、CDK4/6阻害剤は、錠剤に製剤化される。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、コロイド状二酸化ケイ素、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロースで製剤化される。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、リボシクリブであり、任意選択的に、200mgのリボシクリブは、コロイド状二酸化ケイ素、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロースで製剤化される。任意選択的に、錠剤は、フィルムコーティングを含み、フィルムコーティングは、任意選択的に、非活性成分として四酸化三鉄、べんがら、レシチン(大豆)、ポリビニルアルコール(部分的に加水分解した)、タルク、二酸化チタン及びキサンタンガムを含む。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、Kisqali(登録商標)又はそのジェネリック版である。
【0076】
例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、経口投与用に製剤化される。様々な場合、CDK4/6阻害剤は、錠剤に製剤化される。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、微結晶セルロース102、微結晶セルロース101、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素で製剤化される。例示的な態様では、錠剤は、混色成分、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、ポリエチレングリコール、タルク、鉄黄及びべんがらを含む。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、Verzenio(登録商標)又はそのジェネリック版である。
【0077】
例示的な態様では、医薬組成物は、追加の活性成分を含み、その活性成分は、フルベストラントである。例示的な態様では、フルベストラントは、注射、任意選択的に筋肉注射用に製剤化される。様々な場合、フルベストラントは、共溶媒としての10w/v%のアルコール(USP)、10w/v%のベンジルアルコール(NF)及び15w/v%の安息香酸ベンジル(USP)で製剤化され、共溶媒及び放出速度調整剤としてのヒマシ油(USP)で100w/v%にされる。例示的な態様では、500mgのフルベストラントは、共溶媒としての10w/v%のアルコール(USP)、10w/v%のベンジルアルコール(NF)及び15w/v%の安息香酸ベンジル(USP)で製剤化され、共溶媒及び放出速度調整剤としてのヒマシ油(USP)で100w/v%にされる。例示的な態様では、医薬組成物は、Faslodex(登録商標)又はそのジェネリック版を含む。
【0078】
例示的な態様では、医薬組成物は、追加の活性成分を含み、その活性成分は、エベロリムスである。例示的な態様では、エベロリムスは、経口投与用に、任意選択的に錠剤として製剤化される。様々な場合、エベロリムス、任意選択的に2.5mg、5mg又は10mgのエベロリムスは、非活性成分としてのブチル化ヒドロキシトルエン、ステアリン酸マグネシウム、ラクトース一水和物、ヒプロメロース、クロスポビドン及び無水ラクトースで製剤化される。例示的な態様では、医薬組成物は、Afinitor(登録商標)又はそのジェネリック版を含む。
【0079】
キット
本開示は、本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを含むキットを更に提供する。例示的実施形態におけるキットは、RANK経路阻害剤及びCDK阻害剤を含む。例示的実施形態におけるキットは、RANK経路阻害剤及びCDK4/6阻害剤、CDK4阻害剤又はCDK6阻害剤を含む。RANK経路阻害剤は、例えば、OPG、OPG-Fc、デノスマブなど、本明細書に記載されるもののいずれかであり得る。CDK4/6阻害剤は、例えばアベマシクリブ、パルボシクリブ、リボシクリブなど、本明細書に記載されるもののいずれかであり得る。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、皮下注射用に製剤化される。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、ソルビトール、酢酸塩、ポリソルベート20、注射用の水及び水酸化ナトリウムでpH5.2に製剤化される。任意選択的に、RANK経路阻害剤は、4.7%のソルビトール、17mMの酢酸塩、0.01%のポリソルベート20、注射用の水及び水酸化ナトリウムでpH5.2に製剤化される。代わりに、RANK経路阻害剤は、4.6%のソルビトール、18mMの酢酸塩、0.01%のポリソルベート20、注射用の水及び水酸化ナトリウムでpH5.2に製剤化される。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、使い捨てバイアル又は使い捨ての予充填シリンジとして提供される。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、経口投与、任意選択的に錠剤又はカプセル剤用に製剤化される。例示的な場合、CDK4/6阻害剤は、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、デンプングリコール酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及び硬ゼラチンカプセルシェルで製剤化される。淡オレンジ色、淡オレンジ色/カラメル色及びカラメル色の不透明カプセル剤シェルは、ゼラチン、べんがら、鉄黄及び二酸化チタンを含有し、印刷用インクは、セラック、二酸化チタン、水酸化アンモニウム、プロピレングリコール及びシメチコンを含有する。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、Ibrance(登録商標)又はそのジェネリック版である。例示的な場合、CDK4/6阻害剤は、コロイド状二酸化ケイ素、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロースで製剤化される。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、Kisqali(登録商標)又はそのジェネリック版である。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、微結晶セルロース102、微結晶セルロース101、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素で製剤化される。例示的な態様では、CDK4/6阻害剤は、Verzenio(登録商標)又はそのジェネリック版である。
【0080】
反応性、感受性及び耐性
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本明細書に開示される医薬組成物は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤に対する癌又は腫瘍(本明細書では病変とも称される)の反応性を向上させるのに有用である。したがって、本開示は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤による治療に対する癌細胞又は腫瘍細胞の反応性を増加させる方法を提供する。例示的な実施形態では、方法は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0081】
本明細書で使用する場合、用語「反応性」は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)又は他の同様の基準に従う、薬剤/化合物(例えば、CDK4/6阻害剤)又は他の治療(例えば、放射線療法)に対する癌細胞又は腫瘍の治療反応又は反応性の程度を指す。RECISTは、米国国立癌研究所(the National Cancer Institute of the United States)、カナダ国立癌研究所臨床試験グループ(the National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group)及びヨーロッパ癌研究治療学会(the European Organisation for Research and Treatment of Cancer)によって共同で作成された、腫瘍及び/又は癌細胞の進行、安定化又は反応性を評価するための一連の判定基準である。RECISTによれば、薬剤(例えば、CDK4/6阻害剤)での治療後に比較するためのベースラインを提供するために、特定の腫瘍が、評価(例えば臨床治験)の開始時に測定される。腫瘍の反応アセスメント及び評価基準は、Eisenhauer et al.,Eur J Cancer 45:228-247(2009)及びLitiere et al.,Journal of Clinical Oncology 37(13):1102-1110(2019)DOI:10.1200/JCO.18.01100で公開されている。要約すると、上記のEisenhauer et al.,2009のセクション4.3は、標的病変に対する客観的腫瘍反応を判定するために用いられる反応基準を以下のように教示している。
【0082】
【表3】
【0083】
理想的な事例では、薬剤又は他の治療の結果、CR又はPRがもたらされる。いくつかの態様では、SD又はPDの反応は、薬物が癌に対する効果的な治療ではないことと、腫瘍が治療に対して反応しなくなったこととを示すために用いられる。
【0084】
本開示の方法によって提供される、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤に対する腫瘍又は癌細胞の反応性の増加は、対照と比較して少なくとも又は約1%~約10%の増加(例えば、少なくとも又は約1%の増加、少なくとも又は約2%の増加、少なくとも又は約3%の増加、少なくとも又は約4%の増加、少なくとも又は約5%の増加、少なくとも又は約6%の増加、少なくとも又は約7%の増加、少なくとも又は約8%の増加、少なくとも又は約9%の増加、少なくとも又は約9.5%の増加、少なくとも又は約9.8%の増加、少なくとも又は約10%の増加)であり得る。本開示の方法によって提供される、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤に対する腫瘍細胞又は癌細胞の反応性の増加は、対照と比較して、少なくとも又は約10%~約95%超の増加(例えば、少なくとも又は約10%の増加、少なくとも又は約20%の増加、少なくとも又は約30%の増加、少なくとも又は約40%の増加、少なくとも又は約50%の増加、少なくとも又は約60%の増加、少なくとも又は約70%の増加、少なくとも又は約80%の増加、少なくとも又は約90%の増加、少なくとも又は約95%の増加、少なくとも又は約98%の増加、少なくとも又は約100%の増加)であり得る。例示的な態様では、対照は、本明細書に開示される医薬組成物で治療されていない癌若しくは腫瘍又は対象若しくは対象の集団であるか、或いは対象は、プラセボで治療されている。
【0085】
例示的な態様では、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤に対する反応性の増加は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)で過去に治療され、且つCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)に対して反応性であったが、時間の経過と共にCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)に対する反応性を喪失した、腫瘍又は癌細胞に対して達成される。例示的な態様では、腫瘍又は癌細胞は、第1の期間、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)で治療され、第1の期間の間、腫瘍又は癌細胞は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)での治療に対して反応性であったが、第1の期間の後に起きる第2の期間の間、腫瘍又は癌細胞は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)での治療に対する反応性が低下した。当業者であれば認識されるように、こうした腫瘍又は癌細胞は、治療に対する感受性を失ったもの及び/又は治療に対して耐性となったものであると理解される。例示的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)に対する腫瘍又は癌細胞の反応性を、第1の期間に観察された反応性のレベルまで増加させる。こうした場合、方法は、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)に対する腫瘍(又は病変)又は癌細胞の反応性を回復させるということが理解される。用語「回復させる」とは、過去の状態(例えば、治療に対する反応性の状態)に復元するか又は戻すことを意味する。したがって、本明細書では、CDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)による治療に対する腫瘍又は癌細胞の反応性を回復させる方法が提供される。
【0086】
本開示は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤による治療に対する癌細胞又は腫瘍の感受性を増加又は回復させる方法を提供する。例示的な実施形態では、方法は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。本明細書で使用するとき、「感受性」とは、腫瘍が薬剤/化合物、例えばCDK阻害剤(例えば、CDK4/6阻害剤)に反応する方法を指す。例示的な態様では、「感受性」とは、「治療に対して反応性である」ことを意味し、「感受性」及び「反応性」の概念は、薬剤/化合物治療に対して反応性の腫瘍又は癌細胞が、その薬剤に対して感受性であると言われる点において正の関連を示す。例示的な場合における「感受性」は、Pelikan,Edward,Glossary of Terms and Symbols used in Pharmacology(Pharmacology and Experimental Therapeutics Department Glossary at Boston University School of Medicine)に従って、特定の薬物用量に対して定性的に通常の方法で反応するための、他の能力と比較した集団、個体又は組織の能力として定義され。効果をもたらすのに必要な用量が少ないほど、反応系は、より感受性が高い。「感受性」は、用量効果曲線と横座標値又はこれに平行な線との交点を基準にして定量的に測定又は説明することができ、こうした点は、所与の効果の程度をもたらすのにまさに必要な用量に対応する。これと同様に、測定系の「感受性」は、所与の出力(効果)の程度をもたらすのに必要な最低入力(最小量)として定義される。例示的な態様では、「感受性」は、「耐性」とは反対であり、「耐性」の概念は、「感受性」と負の関連を示す。例えば、薬剤の治療に対して耐性のある腫瘍は、その薬物に感受性でも反応性でもなく、その薬物は、その腫瘍又は癌細胞に関して有効な治療ではない。本開示の方法によって提供される感受性の増加は、対照と比較して少なくとも又は約1%~約10%の増加(例えば、少なくとも又は約1%の増加、少なくとも又は約2%の増加、少なくとも又は約3%の増加、少なくとも又は約4%の増加、少なくとも又は約5%の増加、少なくとも又は約6%の増加、少なくとも又は約7%の増加、少なくとも又は約8%の増加、少なくとも又は約9%の増加、少なくとも又は約9.5%の増加、少なくとも又は約9.8%の増加、少なくとも又は約10%の増加)であり得る。本開示の方法によって提供される感受性の増加は、対照と比較して少なくとも又は約10%~約95%超の増加(例えば、少なくとも又は約10%の増加、少なくとも又は約20%の増加、少なくとも又は約30%の増加、少なくとも又は約40%の増加、少なくとも又は約50%の増加、少なくとも又は約60%の増加、少なくとも又は約70%の増加、少なくとも又は約80%の増加、少なくとも又は約90%の増加、少なくとも又は約95%の増加、少なくとも又は約98%の増加、少なくとも又は約100%の増加)であり得る。例示的な態様では、対照は、本明細書に開示される医薬組成物で治療されていない癌若しくは腫瘍又は対象若しくは対象の集団であるか、或いは対象又は対象の集団は、プラセボで治療されている。
【0087】
本明細書では、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤による治療に対する癌細胞又は腫瘍細胞の耐性を低減させる方法も提供される。例示的な実施形態では、方法は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。本開示の方法によって提供される、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤に対する腫瘍細胞又は癌細胞の耐性の低減は、対照と比較して、少なくとも又は約1%~約10%の低減(例えば、少なくとも又は約1%の低減、少なくとも又は約2%の低減、少なくとも又は約3%の低減、少なくとも又は約4%の低減、少なくとも又は約5%の低減、少なくとも又は約6%の低減、少なくとも又は約7%の低減、少なくとも又は約8%の低減、少なくとも又は約9%の低減、少なくとも又は約9.5%の低減、少なくとも又は約9.8%の低減、少なくとも又は約10%の低減)であり得る。本開示の方法によって提供される、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤に対する腫瘍細胞又は癌細胞の耐性の低減は、対照と比較して、少なくとも又は約10%~95%超の低減(例えば、少なくとも又は約10%の低減、少なくとも又は約20%の低減、少なくとも又は約30%の低減、少なくとも又は約40%の低減、少なくとも又は約50%の低減、少なくとも又は約60%の低減、少なくとも又は約70%の低減、少なくとも又は約80%の低減、少なくとも又は約90%の低減、少なくとも又は約95%の低減、少なくとも又は約98%の低減、少なくとも又は約100%の低減)であり得る。例示的な態様では、対照は、本明細書に開示される医薬組成物で治療されていない癌若しくは腫瘍又は対象若しくは対象の集団であるか、或いは対象又は対象の集団は、プラセボで治療されている。
【0088】
治療
更に、対象における癌を治療する方法が本明細書で提供される。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0089】
本明細書で使用する場合、「治療する」という用語及びそれに関連する表現は、必ずしも100%の又は完全な治療を意味するわけではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する処置には様々な程度がある。この点に関して、本開示の癌を治療する方法は、任意の量又は任意のレベルの治療を提供することができる。更に、本開示の方法によって提供される治療は、治療される癌の1つ以上の状態若しくは症状又は徴候の治療を含む場合がある。また、本開示の方法によって提供される治療は、癌の進行を緩徐化することを包含する場合がある。例えば、本方法は、癌に対するT細胞活性若しくは免疫応答を増強すること、腫瘍若しくは癌の成長若しくは腫瘍量を低減すること、腫瘍細胞の転移を低減すること、腫瘍若しくは癌細胞の細胞死を増加させること又は腫瘍退縮を増加させることなどにより、癌を治療することができる。上記に従い、対象における腫瘍成長若しくは腫瘍量を低減させるか、又は腫瘍退縮を増加させる方法が本明細書で提供される。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤で治療されるか又は治療されており、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0090】
様々な態様では、本方法は、癌の発症又は再発を、少なくとも1日、2日、4日、6日、8日、10日、15日、30日、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月、1年、2年、3年、4年又はそれを超えて遅延させるために治療する。様々な態様では、本方法は、対象の生存を延長するために治療する。例示的な態様では、本開示の方法は、転移癌の発生又は発症を遅延させることにより治療する。様々な場合、本方法は、新規転移癌の発生又は発症を遅延させることにより治療する。したがって、癌を患う対象における転移癌の発生又は発症を遅延させる方法が本明細書で提供される。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。
【0091】
例示的な場合、提供される治療は、臨床治験の観点から説明されるか、又は臨床治験から得られたデータによって裏付けされ得、治験のエンドポイントは、無進行生存期間(PFS)、全生存(OS)又は米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の一般状態が悪化するまでの時間である。様々な態様では、本開示は、癌を患う対象における、PFS、OS又はECOG一般状態が悪化するまでの時間を増加する方法を提供する。例示的な実施形態では、癌は、CDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤に対して耐性を有するか、又は感受性が低減されており、方法は、任意選択的にCDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。本明細書で使用するとき、用語「無進行生存期間」又は「PFS」は、治療された患者が癌の悪化なしに経験する時間(悪化を測定するために用いられているどのような指標によっても)を意味する。用語「全生存」は、患者が治療後にどの程度の期間生存したかを意味する。ECOG一般状態は、患者の疾患を評価し(例えば、どのように疾患が進行/退行するか、どのように疾患が患者の日常的生活能力に影響を及ぼすか)、適切な治療及び予後を決定するために医師及び研究者によって用いられるスケールに基づくグレード又はスコアである。ECOG一般状態は、以下の基準に従って決定される。
【0092】
【表4】
【0093】
例示的な態様では、提供される治療は、循環腫瘍細胞(CTC)のレベルを低減させることによるものであり得る。したがって、本開示は、対象におけるCTCのレベルを低減させる方法を提供する。例示的な実施形態では、方法は、任意選択的にCDK4/6阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。
【0094】
投与の経路及びタイミング
本明細書に開示される医薬組成物又は本明細書に開示される方法のRANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤、例えばCDK4/6阻害剤は、任意の好適な投与経路を介して対象に投与され得る。例えば、活性剤は、非経口、経鼻、経口、経肺、局所、経腟又は経直腸投与を介して対象に投与され得る。投与経路に関する以下の記載は、単に例示的な実施形態を説明するために提供され、決して範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0095】
例示的な態様では、本明細書に開示される医薬組成物又は本明細書に開示される方法のRANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤、例えばCDK阻害剤は、非経口投与用に製剤化される。「非経口」という用語は、消化管を介するのではなく、皮下、筋肉内、脊髄内又は静脈内などの他の何らかの経路を介することを意味する。非経口投与に適切な製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び対象のレシピエントの血液と製剤とを等張にする溶質を含有し得る、水性及び非水性の、等張滅菌注射用溶液並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤及び保存剤を含み得る、水性及び非水性の、滅菌懸濁液が挙げられる。活性剤(RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤)は、水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連する糖溶液、エタノール又はヘキサデシルアルコールなどのアルコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールなどのケタール、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド又は石鹸若しくは洗浄剤など、薬学的に許容される界面活性剤を添加した又は添加しないアセチル化脂肪酸グリセリド、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロースなどの懸濁化剤又は乳化剤及び他の医薬補助剤を含む、滅菌液体又は液体混合物など、医薬担体中の生理学的に許容される希釈剤とともに投与することができる。非経口製剤に使用することができる油としては、石油、動物油、植物油又は合成油が挙げられる。油の具体的な例としては、ピーナッツ油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン及び鉱物油が挙げられる。非経口製剤に使用するための適切な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。例示的な態様では、非経口投与用製剤としては石鹸が挙げられる。非経口製剤に使用するための適切な石鹸としては、脂肪酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な洗浄剤としては、(a)カチオン性洗浄剤、例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハロゲン化物及びアルキルピリジニウムハロゲン化物など、(b)アニオン性洗浄剤、例えば、アルキル、アリール及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリド硫酸塩及びスルホコハク酸塩など、(c)非イオン性洗浄剤、例えば、脂肪酸アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマーなど、(d)両性洗浄剤、例えば、アルキル-β-アミノプロピオネート及び2-アルキル-イミダゾリン第四級アンモニウム塩など、並びに(e)これらの混合物が挙げられる。例示的な場合、非経口製剤中に保存剤及び緩衝剤が存在する。注射部位での刺激を最小化又は除去するために、このような組成物は、約12~約17の親水性-親油性バランス(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含有し得る。このような製剤中の界面活性剤の量は、通常、約5重量%~約15重量%の範囲である。適切な界面活性剤としては、モノオレイン酸ソルビタンなどのポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子量付加物が挙げられる。いくつかの態様では、非経口製剤は、アンプル及びバイアル、シリンジなど、単位用量又は複数回用量の密封容器に入れて提供され、使用の直前に注射用の滅菌液体賦形剤、例えば水を添加することのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。いくつかの態様では、即時調合される注射用溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製される。
【0096】
例示的な態様では、RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤は、注射用に製剤化される。注射用製剤は、本開示によるものとする。注射用組成物用に有効な医薬担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages238-250(1982)及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,pages 622-630(1986)を参照されたい)。
【0097】
任意選択的に、RANK経路阻害剤は、皮下注射を介して対象に投与される。
【0098】
様々な場合、CDK阻害剤は、対象に経口投与される。経口投与に好適な製剤は、(a)水、生理食塩水又はオレンジジュースなどの希釈液中に溶解される有効量の本開示の類似体などの溶液;(b)それぞれ固体又は顆粒として所定量の活性成分を含有するカプセル剤、サシェ剤、錠剤、ロゼンジ剤及びトローチ剤;(c)散剤;(d)適切な液体中の懸濁液;並びに(e)好適な乳剤からなり得る。液体製剤としては、薬学的に許容される界面活性剤の添加を伴うか又は伴わない水並びにアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコール及びポリエチレンアルコールなどの希釈剤が挙げられ得る。カプセル剤の形態は、例えば、界面活性剤、潤滑剤並びにラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びトウモロコシデンプンなどの不活性充填剤を含有する一般的な硬質シェル又は軟質シェルのゼラチン型のものであり得る。錠剤の形態としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝化剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香味料並びに他の薬理学的に適合する賦形剤の1つ以上を挙げることができる。ロゼンジ剤の形態は、香料、通常、スクロース及びアカシア又はトラガント中の本開示の類似体並びに当技術分野で知られる賦形剤を更に含有する、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア、乳剤、ゲルなどの不活性基剤中の本開示の類似体を含むパステル剤を含み得る。
【0099】
RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤に関して、それぞれ例えば毎日(1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回)、1週間に3回、1週間に2回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、毎週、隔週、3週間に1回、毎月又は隔月を含む任意のレジメンに従って投与され得る。本明細書に開示される方法の例示的な態様では、RANK経路阻害剤及びCDK阻害剤の両方が投与される場合、RANK経路阻害剤及びCDK阻害剤は、別々に投与される。例示的な態様では、RANK経路阻害剤は、2~6週間毎に1回(2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回)対象に投与される。任意選択的に、RANK経路阻害剤は、4週間毎に1回対象に投与される。任意選択的に、RANK経路阻害剤は、2~8ヵ月毎に1回(2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、4ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、6ヶ月毎に1回、7ヶ月毎に1回、8ヶ月毎に1回)対象に投与される。様々な場合、CDK阻害剤は、1日1回対象に投与される。任意選択的に、RANK経路阻害剤は、注射、任意選択的に筋肉注射又は皮下注射を介して対象に投与される。様々な場合、CDK阻害剤は、対象に経口投与される。
【0100】
代替的な態様では、RANK経路阻害剤及びCDK阻害剤は、同時に対象に投与される。例示的な態様では、組成物は、オパイン製剤上で個別の製剤として投与され得る。
【0101】
投与量
活性剤(RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤)は、本明細書で説明されるような、CDK阻害剤による治療に対する癌細胞又は腫瘍の反応性を増加又は回復させ、転移癌の発生又は発症を遅延させ、腫瘍成長若しくは腫瘍量を低減させるか、又は腫瘍退縮を増加させ、無進行生存期間、全生存又は米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の一般状態が悪化するまでの時間を増加させ、且つ対象における循環腫瘍細胞(CTC)のレベルを低減させる方法において有用であると考えられ、したがって1種以上の疾患、例えば癌を治療又は予防する方法において有用であると考えられる。本開示の目的のため、投与される活性剤(RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤)の量又は用量は、例えば、妥当な期間にわたり、対象又は動物において、治療的又は予防的反応を生じさせるのに十分であるべきである。例えば、活性剤(RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤)の用量は、投与の時点から約1~約4日間又は約1~約4週間以上、例えば約5~約20週間以上の期間中に、本明細書で説明される癌を治療するのに十分であるべきである。特定の実施形態では、その期間は、更に長くなる可能性がある。用量は、特定の活性剤の有効性及び動物(例えば、ヒト)の状態並びに治療される動物(例えば、ヒト)の体重によって決定される。
【0102】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが当技術分野において公知である。本明細書の目的のため、腫瘍重量を比較することを含むアッセイ、腫瘍量を表す全フラックス射出又は各組が異なる用量を与えられる哺乳動物の組の間で1体の哺乳動物に所与の用量の活性剤を投与した際の増殖指数を提供するKi67陽性細胞の割合(例えば相対的割合)若しくはp-pRb-陽性細胞の割合を、臨床治験において哺乳動物に投与すべき開始用量を決定するために用いることができる。腫瘍重量、全フラックス又はKi67陽性細胞の割合(例えば相対的割合)若しくはp-pRb-陽性細胞の割合を測定する方法は、当技術分野で既知であり、且つ本明細書で説明される。
【0103】
活性剤(RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤)の用量は、特定の活性剤の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定される。通常、主治医は、年齢、体重、全身の健康状態、食事、性別、投与される活性剤、投与経路及び治療される状態の重症度などの種々の要因を考慮して、個々の各患者を処置する活性剤の投与量を決定する。一例としてであり、本開示を限定することを意図しないが、本開示の活性剤の用量は、治療対象の体重1キロ当たり約0.0001~約1g/日、体重1キロ当たり約0.0001~約0.001g/日又は体重1キロ当たり約0.01~約1g/日であり得る。
【0104】
制御放出性製剤
いくつかの実施形態では、活性剤が投与される身体に放出される様式が体内での時間及び位置に関して制御されるように、本明細書に記載される活性剤(RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤)は、デポー形態に改変され得る(例えば、米国特許第4,450,150号明細書を参照されたい)。活性剤(RANK経路阻害剤及び/又はCDK阻害剤)のデポー形態は、例えば、活性剤及びポリマーなどの多孔性又は非多孔性材料を含むインプラント可能な組成物であり得、活性剤は、材料によって封入されるか若しくは材料全体に拡散され、且つ/又は非多孔性材料の分解によって拡散される。次に、デポーは、対象の体内の所望の位置にインプラントされ、活性剤が所定の速度でインプラントから放出される。
【0105】
特定の態様における活性剤を含む医薬組成物は、任意のタイプのインビボ放出プロファイルを有するように改変される。いくつかの態様では、医薬組成物は、即時放出、制御放出、持続放出、長期放出、遅延放出又は二段階放出製剤である。制御放出のためのペプチドを製剤化する方法は、当技術分野において知られている。例えば、Qian et al.,J Pharm 374:46-52(2009)並びに国際公開第2008/130158号パンフレット、国際公開第2004/033036号パンフレット、国際公開第2000/032218号パンフレット及び国際公開第1999/040942号パンフレットを参照されたい。
【0106】
本組成物は、更に、例えば、ミセル若しくはリポソーム又は他の被包形態を含むことができるか、或いは長期の貯蔵及び/又は送達効果を提供するために長期放出形態で投与することができる。
【0107】
対象
本開示の例示的な実施形態では、対象は、マウス及びハムスターなどの齧歯目の哺乳動物及びウサギなどのウサギ目の哺乳動物、ネコ科動物(ネコ)及びイヌ科動物(イヌ)などの食肉目の哺乳動物、ウシ亜科動物(ウシ)及びイノシシ科動物(ブタ)などの偶蹄目の哺乳動物又はウマ科の動物(ウマ)を含む奇蹄目の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない哺乳動物である。いくつかの態様では、哺乳動物は、霊長目、セボイド(Ceboid)目若しくはシモイド(Simoid)目(長尾小型のサル(monkey))又は真猿亜目(ヒト及び短尾大型のサル(ape))の哺乳動物である。いくつかの態様では、哺乳動物は、ヒトである。任意選択的に、ヒトは、18歳以上の雌である。いくつかの態様では、ヒトは、雌である。様々な場合、対象は、閉経前/閉経期又は閉経後の女性である。
【0108】
例示的な態様では、対象は、癌又は腫瘍を有する。癌は、いくつかの態様では、急性リンパ球性癌(acute lymphocytic cancer)、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管又は肛門直腸の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢又は胸膜の癌、鼻、鼻腔又は中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性癌、大腸癌、食道癌、子宮頸癌、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、大網及び腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌(例えば腎細胞腫(RCC))、小腸癌、軟組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌並びに膀胱癌からなる群から選択されるものである。特定の実施形態では、癌は、頭頸部癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌及び食道癌、膵臓、消化管癌、胃癌、乳癌、子宮内膜癌及び結腸直腸癌、肝細胞癌、グリア芽腫、膀胱癌、肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、細気管支肺胞上皮癌からなる群から選択される。特定の実施形態では、腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)頭頸部癌、腎癌、トリプルネガティブ乳癌又は胃癌である。例示的な態様では、対象は、腫瘍(例えば固形腫瘍、血液悪性腫瘍又はリンパ性悪性腫瘍)を有し、医薬組成物は、対象中の腫瘍を治療するのに有効な量で対象に投与される。他の例示的な態様では、腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、頭頸部癌、腎癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、胃癌、リンパ腫又は白血病であり、医薬組成物は、対象中の腫瘍を治療するのに有効な量で対象に投与される。
【0109】
例示的な態様では、対象は、転移癌、切除不可能な腫瘍又はこれらの組み合わせを含む癌を有する。様々な態様では、癌又は腫瘍は、CDK阻害剤による治療に対する耐性又は低減された感受性を示すか又は既に示した。例示的な態様では、対象は、乳癌、任意選択的に管腔乳癌又はトリプルネガティブ乳癌を有する。様々な場合、乳癌は、ホルモン受容体(HR)陽性及び/又はHER2陰性である。様々な態様では、乳癌は、進行性乳癌及び/又は転移性乳癌である。様々な態様では、対象は、内分泌療法を受けた後に進行したHR+/HER2-進行性又は転移性乳癌を有する。いくつかの態様では、対象は、過去に癌が拡散/転移した後に内分泌療法及び化学療法で治療された、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行性又は転移性乳癌の患者である。様々な場合、対象は、閉経後の女性において過去にホルモン療法(Arimidex(化学名:アナストロゾール)、Aromasin(化学名:エキセメスタン)及びFemara(化学名:レトロゾール)で治療されたことがないHR+/HER2-進行性又は転移性乳癌を有する。様々な場合、対象は、閉経後の女性においてホルモン療法で治療された後に成長したHR+/HER2-進行性又は転移性乳癌を有する。特定の態様では、対象は、初回内分泌療法としてのHR+ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陰性の進行性又は転移性乳癌を患う閉経前/閉経期又は閉経後の女性である。任意選択的に、対象は、初回内分泌療法として又は内分泌療法中の疾患進行後、HR+、HER2-の進行性又は転移性乳癌を患う閉経後の女性である。例示的な態様では、ホルモン受容体は、エストロゲン受容体(ER)である。様々な態様では、対象は、内分泌療法を受けた後に進行したER+/HER2-進行性又は転移性乳癌を有する。いくつかの態様では、対象は、過去に癌が拡散/転移した後に内分泌療法及び化学療法で治療された、エストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)進行性又は転移性乳癌の患者である。
【0110】
例示的な態様では、対象は、上記のKnudson and Witkiewicz,2017に記載される癌又は腫瘍を有する。例示的な態様では、対象は、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性リンパ腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、髄芽細胞腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、ラブドイド腫瘍、MPNST、胃癌、膵神経内分泌癌、膵管腺癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮細胞癌、神経膠腫、黒色腫、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、腎癌、大腸癌、食道癌又は前立腺癌を有する。
【0111】
様々な場合、癌は、RANK又はRANK-Lを発現する細胞を含む。様々な場合、癌は、RANK又はRANK-Lを過剰発現する細胞を含む。例示的な実施形態では、癌の細胞は、RANK、CDK4、CDK6又はサイクリンDの1つ以上を過剰発現させる。例示的な態様では、対象は、増加したレベルの循環腫瘍細胞(CTC)を有する。例示的な態様では、癌の細胞は、RANK、CDK4、CDK6若しくはサイクリンDの1つ以上を過剰発現させ、且つ/又は対象は、増加したレベルのCTCを有する。例示的な場合、方法は、任意選択的にCDK阻害剤と組み合わせてRANK経路阻害剤を対象に投与することを含む。例示的な実施形態では、対象は、CDK阻害剤で治療されるか又は治療されており、及び(i)癌の細胞は、RANK、CDK4、CDK6若しくはサイクリンDの1つ以上を過剰発現させるか、(ii)対象は、増加したレベルの循環腫瘍細胞(CTC)を有するか、又は(iii)これらの組み合わせであり、及び方法は、対象にRANK経路阻害剤を投与することを含む。いくつかの態様では、対象は、内分泌療法で治療されている。いくつかの態様では、対象は、内分泌療法中に疾患の進行を示した。様々な態様では、対象は、過去に癌が拡散/転移した後に内分泌療法及び化学療法で治療されている。いくつかの態様では、対象は、内分泌療法を受けた後に進行した進行性又は転移性乳癌を有する。
【0112】
例示的な態様では、癌又は腫瘍細胞は、上記のKnudson and Witkiewicz,2017に記載されるように内因性耐性の1つ以上のマーカーが陽性である。例示的な態様では、癌又は腫瘍は、RBの喪失、p16INK4の高い発現、サイクリンEの過剰発現若しくはサイクリンE1/E2の増幅、E2F過剰発現若しくはE2F3増幅、サイクリンD1の増幅若しくは転座、CDK4の増幅又はCDKN2Aの喪失を示す。例示的な態様では、癌又は腫瘍細胞は、上記のKnudson and Witkiewicz,2017に記載されるように耐性及び感受性の1つ以上の推定マーカーが陽性である。
【0113】
以下の実施例は、本発明を単に例示するために与えるものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例
【0114】
実施例1
別段の定めがある場合を除き、本実施例は、本明細書に記載される研究に用いられる材料及び方法を記載する。
【0115】
細胞培養
全ての細胞株を最初にATCCから入手した。ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231GFP+Luc+及びMCF-7GFP+Luc+(本明細書ではMDA-MB-231及びMCF-7によって指定される)は、Sergio Dias Lab(IMM)によって提供され、GFP-ルシフェラーゼレンチウイルス粒子によるレンチウイルス形質導入及び純粋GFP+細胞集団の細胞選別によって親細胞から誘導された。MDA-MB-436及びMDA-MB-468細胞は、Sergio Dias Lab(IMM)によって提供された。T47D細胞は、INSERMのPhilippe Clezardinによって提供された。MDA-MB-231、MDA-MB-436及びMDA-MB-468細胞を、10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、Gibco)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(10,000U/mLのペニシリン、10,000μg/mLのストレプトマイシン、Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)中で培養した。MCF-7及びT47D細胞を、0.01mg/mLのインスリン(Gibco)を追加的に補充した同じ培地で培養した。細胞を、37℃、5%CO2に保持した。
【0116】
RANK(TNFRSF11A)の過剰発現
レンチウイルス形質導入のために、MCF-7及びT47D細胞を6ウェルプレートに2×10細胞/ウェルの密度で播種した。播種から24時間後、培地を、異なる感染多重度(MOI)でRANKレンチウイルス過剰発現粒子(RANK(TNFRSF11A)過剰発現プラスミドpReceiver-Lv121(EX-O0007-Lv121)、GeneCopoeia)を含有する新鮮培地と交換した。細胞を、0.5μg/mL(MCF-7)又は1.5μg/ml(T47D)ピューロマイシン二塩酸塩(Sigma-Aldrich)で選択し、これは形質導入から3日後に開始した。RANK過剰発現(RANK OE)をRT-qPCRによって確認した。
【0117】
RANK(TNFRSF11A)ノックダウン
レンチウイルス形質導入のために、MDA-MB-231GFP+Luc+細胞を24ウェルプレートに4×10細胞/ウェルの密度で播種した。播種から24時間後、培地を、8μg/mlポリブレン(Sigma)及びRANK shRNA(h)レンチウイルス粒子(15~20μl/ウェル;sc-42960-V、Santa Cruz)又は対照shRNAレンチウイルス粒子(15~20μl/ウェル;sc-108080、Santa Cruz)を含有する新鮮培地と交換した。細胞を、0.5μg/mLピューロマイシン二塩酸塩(Sigma)で選択し、これは形質導入から3日後に開始した。RANK過剰発現KDをRT-qPCRによって確認した。
【0118】
RT-qPCR
mRNA発現のRT-qPCR解析のために、NZY Total RNA Isolationキット(Nzytech)を製造業者の指示書に従って用いて細胞を80~90%コンフルエントまで成長させ、全RNAを抽出した。全RNAをNanoDrop分光光度計(Thermo Ficsher Scientific)内で定量化した。全RNA(500ng~1μg)を、37℃で、RQ1 RNアーゼ非含有DNアーゼI(Promega)で製造業者の指示書に従って30分間処理した。DNアーゼIで処理したRNAを、NZY M-MuLV First-Strand cDNA Synthesisキット(Nzytech)及びOligo(dT)20プライマーを製造業者の指示書に従って用いて逆転写させた。
【0119】
TaqMan Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems)(製造業者の指示書に従う)並びにヒトRANK(PPH01102C、SA Biosciences)及びGAPDH(PPH00150F、SA Biosciences)用の特異的プライマーを用いて、cDNAをリアルタイムPCRによって増幅した。ハウスキーピング遺伝子GAPDHを用いて遺伝子発現を正規化し、相対的mRNA発現を、2-ΔΔCt法を用いて計算した。
【0120】
ウェスタンブロット
RANKLで刺激した際のRANK経路の活性化をウェスタンブロットによって解析した。この目的のため、4×10個の細胞を6ウェルプレートに24時間播種し、低血清培地(0.1%FBS、1%Pen/Strep)中で更に24時間血清飢餓状態に置いた。培地を、1μg/mLのヒトRANKL(Amgen)を含有する新鮮な低血清培地と交換し、合計細胞溶解物を異なる時点で得た。合計細胞溶解物を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(1:100、Santa Cruz)を含有するRIPA緩衝液を製造業者の指示書に従って用いて調製した。合計タンパク質を、Pierce BCA Protein Assay Kit(ThermoSicentific)を用い、製造業者の指示書に従って調製した定量化した。10%ポリアクリルアミドゲルを用いて、タンパク質をSDS-PAGEによって分解し、続いてiBlot(登録商標)2 Gel Transfer Device(Invitrogen)を製造業者の指示書に従って使用して、ニトロセルロース膜に転写した。
【0121】
β-アクチンの場合、PBS-0.1%Tween(登録商標)(PBST)中5%の脱脂粉乳(NFDM)中において又は他の抗体の場合、5%ウシ血清アルブミン(BSA)(Santa Cruz)中において膜を室温(RT)で1時間ブロックした。4℃で終夜、膜を下記の特異的抗体でインキュベートした:マウス抗βアクチン抗体(Ab6276;Abcam)、NFkB p65に対するポリクローナルウサギ(ab16502,Abcam)、ウサギモノクローナル抗体抗NF-kB p65(D14E12)(#8242,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗ホスホ-NF-kB p65(Ser536)(93H1)(#3033,Cell Signaling)、マウスモノクローナル抗体抗IkBα(L35A5)(#4814,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗ホスホ-IkBα(Ser32)(14D4)(#2859,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗ビメンチン(D21H3)(#5471,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗N-カドヘリン(D4R1H)(#13116,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗β-カテニン(D10A8)(#8480,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗Snail(C15D3)(#3879,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗Slug(C19G7)(#9585,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗E-カドヘリン(24E10)(#3195,Cell Signaling)、マウスモノクローナル抗体抗Nanog(hNanog.2)(145768-80,eBioscience)、マウスモノクローナル抗体抗Sox2(245610)(MAB2018,R&D systems)、マウスモノクローナル抗体抗OCT4(7F9.2)(MAB4419,Millipore)、ウサギモノクローナル抗体抗ホスホ-Rb(Ser807/811)(D20B12)(#8516,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗サイクリンD1(92G2)(#2978,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗サイクリンE(HE12)(05-363,Sigma)、ウサギモノクローナル抗体抗CDK2(78B2)(#2546,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗CDK4(D9G3E)(#12790,Cell Signaling)、ウサギモノクローナル抗体抗CDK6(DCS83)(#3136,Cell Signaling)。PBSTで洗浄した後、RTで、ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(HRP)特異性二次抗体:抗マウスHRP IgG及び抗ウサギHRP IgG(1:5000;Cell Signaling)で2時間膜をインキュベートした。Novex(登録商標)ECL HRP化学発光基質試薬キット(Invitrogen)(製造者の使用説明書に従う)及びCurix60プロセッサ(AGFA)又はAmersham(商標)Imager680(GE Healthcare Life Sciences)で現像したX線フィルム(Fujifilm)を用いて、タンパク質を検出した。正規化したタンパク質発現を、FIJIソフトウェア及びバンドデンシトメトリー解析を用いて計算した。
【0122】
フローサイトメトリ
RANK発現解析のために、トリプシン処理した細胞を洗浄し、4℃の暗所でヒトRANK(Amgen Inc.)に対する特異的なマウス抗体を用いて30分間インキュベートし、続いて洗浄し、4℃の暗所でcy5IgMとコンジュゲートしたヤギ抗マウス二次抗体(1:100;Dianova)を用いて30分間標識化した。染色後、標識化細胞を120gで遠心分離し、洗浄し、0.1%FBSを含む1×PBSに再懸濁し、LSR Fortessa(BD Biosciences,California,USA)上で取得した。データをFlowJoソフトウェアで解析した。
【0123】
腫瘍球体(tumorsphere)形成アッセイ
接着性の非コンフルエント細胞を採取し、3D Tumorsphere Medium XF(PromoCell)中で洗浄し、超低接着6ウェルプレート(Corning Inc.)中の同じ培地中に、10,000細胞/mlの密度で3重に播種した。7日後、1ウェル当たり直径>50μmの全ての腫瘍球体を測定することにより、腫瘍球体の平均サイズを計算した。乳房球体の数(>50μm/播種細胞数)×100として球体形成能力(SFC)(%)を測定した。
【0124】
生存度アッセイ
細胞を、パクリタキセル(Y0000698,Sigma)、ドキソルビシン塩酸塩(D2975000,Sigma)、パルボシクリブ(PD 0332991イセチオン酸塩,PZ0199,Sigma)、リボシクリブ(LEE011コハク酸塩,SC-488174,Santa Cruz)、アベマシクリブメシル酸塩(LY2835219,S7158,Selleckchem)、フルベストラント(S1191,Selleckchem)、エベロリムス(#73122,StemCell Technologies)、完全長ヒトOPG(SRP3132,Sigma)及びOPG-Fc(Amgen)と共に又はこれなしに、96ウェルプレート(2~5×10細胞/mL)に播種した。培地を2日ごとに交換した。7日後、1:10Alamar blue(Invitrogen)を各ウェルに添加し、インキュベーションから2時間後にInfinite M200マイクロプレートリーダー(Tecan)内で蛍光を測定した(励起:560nm;発光:590nm)。
【0125】
動物モデル
全ての動物実験は、Institutional Animal Welfare Bodyの審査を受けて承認され、国立団体Direccao Geral de Alimentacao e Veterinaria(DGAV)により認可を受けた。動物を伴う全ての研究では、マウスは、3Rの原則を適用した承認済み組織、国家及び国際ガイドラインに従って処理され、安楽死させられた。
【0126】
同所性異種移植片モデル
同所性MCF-7異種移植片モデルのために、4週齢のNOD SCIDガンマ(NSG)マウス(Charles River)に、乳癌細胞注入の6日前(第6日)に17β-エストラジオール皮下ペレット(60日放出、0.36mg/ペレット、Innovative Research of America)を補給した。ペレットは、中程度のイソフルラン麻酔下でマウスの肩甲骨中央領域にトロカールを用いて挿入した。
【0127】
成長の対数期に細胞を採取し、50%フェノールフリーマトリゲル溶液(Corning)中に2×10細胞/ml(MCF-7異種移植片)又は1.0×10細胞/ml(MDA-MB-231異種移植片)で再懸濁した。マウスの乳首基部に皮下注射することにより、100μLの細胞懸濁液を第2胸郭の脂肪体に直接に片側注射した。
【0128】
腫瘍成長を、週1回発光解析により監視した。マウスに100μl/10g体重(BW)のXenoLight D-Luciferin-K+Salt Bioluminescent Substrate(PerkinElmer)を注射し、4分後、これらを75mg/Kg BWのケタミン+1mg/Kg BWのメデトミジンで麻酔した。約6分後、発光をIVIS Lumina中でLiving Image3.0ソフトウェア(露光30秒間;視野D12.5cm;対象高さ:1.5cm)を用いて解析し、マウスを1mg/Kg BWのアチパメゾールで回復させた。
【0129】
MCF-7薬物感受性実験のために、マウスを生物発光によって測定した腫瘍サイズに基づいて無作為化し、パルボシクリブ25mg/Kg/日(p.o.)(PD 0332991イセチオネート,PZ0199,Sigma)及びフルベストラント1mg/日(s.c.)(S1191,Selleckchem)又はビヒクル(0.1Mの乳酸ナトリウム(L7900,Sigma)並びに95%コーン油(C8267,Sgma)、5%DMSO(Sigma))で治療した。
【0130】
MDA-MB-231薬物感受性実験のために、Balb/cヌードマウスを生物発光によって測定した腫瘍サイズに基づいて無作為化し(n=2/群)、パルボシクリブ25mg/Kg/日(p.o.);OPG-Fc 10mg/kg(i.p.)、週2回;又はパルボシクリブ+OPG-Fc10mg/Kgで治療した。
【0131】
マウスに0.25mg/Kg BWのペントバルビタールナトリウム(Eutasil)を投与することで犠牲にした。剖検時、原発腫瘍を採取して、パラフィン包埋又はスナップショットフリージング(snapshot freezing)のために2つの断片に切断した。臓器を採取してパラフィン包埋した。
【0132】
実験的転移モデル
NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの尾静脈中に、2.5×10細胞/mlで、MCF-7GFP+Luc+(親)又はMCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)細胞を植菌した(n=3/群)。腫瘍植菌から2時間後及び実験終了まで毎週、腫瘍を生物発光によって画像化した。
【0133】
CTC解析のために、犠牲前に、心穿刺により、5μlのEDTA、0.5M(pH8.0)を含む1.5mLの遠心管に静脈血を回収した。RTで、1×RBC Lysis Buffer Multi-species(eBioscience)によって13分間インキュベートすることによって赤血球を溶解した。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、2,000rpmで3分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞をFACS緩衝液に再懸濁した。BD Fortessa 2フローサイトメーター中で試料のGFP発現を解析した。
【0134】
免疫組織化学
Ki67及びp-pRb(Ser807/11)を検出するために、FFPE試料からの5μmの組織切片を免疫組織化学(IHC)によって染色した。PT Link Pre-Treatment Module for Tissue Specimens(Dako)内で、抗原賦活化溶液pH9.0を用いて、94℃で20分間脱パラフィン及び抗原賦活化を実施した。RTで10分間Preoxidase Blocking Solution(Dako)で内因性ペルオキシダーゼをブロックし、RTで20分間Protein Block Solution(Dako)でインキュベートすることにより全タンパク質をブロックした。スライドを、Antibody Diluent(Dako)中、ウサギ抗ヒトKi67一次抗体(1:100,MIB-1,Dako)又はウサギモノクローナル抗体抗ホスホ-Rb(Ser807/811)(D20B12)(1:400,#8516,Cell Signaling)で30分間インキュベートした。スライドを、EnVision(商標)Detection System、ウサギ/マウス(Dako)で製造業者の指示書に従ってインキュベートし、続いてDAB(Dako)で5分間インキュベートした。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、Quick-D封入剤(Klinipath)で封入し、明視野顕微鏡(Leica ICC50 HDカメラを備えるLeicaDM750)で可視化した。全核領域(ヘマトキシリン染色核領域)にわたるDAB染色核領域の割合を計算することによって免疫比を得た(5野、400×、ImageJソフトウェア)。
【0135】
統計解析
GraphPad Prism6ソフトウェアを用いてデータを解析した。各実験で実施された複製の回数は示されている。一方向ANOVA又は対応のないt検定(インビトロ実験);双方向ANOVA(腫瘍量及びマウスBW)によって統計を実施した。結果は平均±SEMとして示され、p値<0.05は有意であると見なされた。生存解析はカプラン・マイヤー法及びログランク検定並びにCutoff finderソフトウェアを使用した(Budczies et al.(2012),PLoS ONE7(12):e51862.)。
【0136】
実施例2
本実施例は、RANK過剰発現癌細胞の生成及び特性評価を示す。LBC細胞は、通常低レベルのRANKを発現する。これに関連して、RANK発現レベルの効果を試験するため、親細胞株を用い、レンチウイルス形質導入によってRANK過剰発現(OE)細胞を生成した。要約すると、MCF-7及びT47D細胞のそれぞれをマルチウェルプレートに播種し、続いてRANKレンチウイルス過剰発現粒子を含有する新鮮培地に曝露した。細胞をピューロマイシン二塩酸塩で選択し、これは形質導入後3日で開始した。RANKの過剰発現をRT-qPCR(図1A)及びフローサイトメトリ(図1B)によって確認した。図1Aに示すように、MCF-7 OE細胞及びT47D OE細胞の両方が、その親対応物と比較してRANK発現の増加を示した。また、図1Bに示すように、T47D OE細胞は、フローサイトメトリによって決定して、親対応物と比較してより高いRANK発現を実証した。
【0137】
次に、MCF-7 OE細胞及びT47D OE細胞を可溶性RANKリガンド(sRANKL)で刺激し、続いてIkBα、NFkB、ERK及びAKTをウェスタンブロットリン酸化によって解析することによってRANK OE細胞の下流シグナル伝達を試験した。この目的のためにIkBαの分解も決定した。図1Cに示すように、刺激されたMCF-7 OE細胞及びT47D OE細胞は、RANK経路活性の増加を示した。
【0138】
上皮マーカー(β-カテニン及びE-カドヘリンを含む)、間葉マーカー(N-カドヘリン、ビメンチン、Snail及びSlugを含む)及び幹細胞マーカー(SOX2、Oct4及びNANOGを含む)の発現レベルを解析することにより、RANK OE細胞の表現型を試験した。図2Aに示すように、MCF-7 OE細胞は、β-カテニンの発現の減少及び間葉マーカーの発現の増加を実証した。図2Bは、MCF-7 OE細胞及びT47D OE細胞並びにこれらの親対応物の幹細胞マーカー発現レベルを示す。図2Bに示すように、OE細胞は、幹細胞マーカーSOX2、OCT4及びNANOGを過剰発現し、それにより、幹細胞様の特徴を実証する。
【0139】
RANK OE細胞の球体形成能力(SFC)を解析することによってRANK OE細胞表現型も特性評価した。要約すると、接着性の非コンフルエント細胞を採取し、洗浄し、超低接着マルチウェルに播種し、1ウェル当たり直径>50μmの全ての腫瘍球体を測定することにより、腫瘍球体の平均サイズを計算した。(>50μmの乳房球体の数/播種細胞数)×100として球体形成能力(SFC)(%)を測定した。このアッセイからのデータを図2Cのグラフにプロットする。ここに示されるように、RANK OE細胞(MCF-7 OE及びT47D OE細胞の両方)のSFC%は、低レベルでRANKを発現するこれらの親対応物よりも高かった。
【0140】
本実施例は、RANK OE LBC細胞の生成及びその親対応物と比較したこれらの細胞の表現型の差異を実証した。
【0141】
実施例3
本実施例は、RANK過剰発現が、CDK4/6阻害剤に対する感受性の減少と相関していることと、RANK経路遮断が、管腔乳癌(LBC)及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞をCDK4/6阻害剤に対して感受性にすることとを実証する。
【0142】
実施例2に示されるように、RANK OE LBC細胞は変化した表現型を示した。次に、RANK OE細胞もその親対応物と異なるかどうかを、LBCの治療に一般に用いられる標的化療法に対するこれらの反応によって試験した。具体的には、ホルモン療法に対するRANK OE細胞の反応性を試験した。要約すると、RANK OE細胞を、マルチウェルプレートに播種し、フルベストラントに7日間曝露した。細胞生存度をAlamar blueアッセイによって評価し、結果を図3に示す。この図に示すように、RANK OE細胞は、フルベストラントに対する感受性の低減を示した。
【0143】
類似の薬物感受性アッセイを用いて、CDK4/6阻害剤に対するRANK OE細胞の感受性を試験した。しかしながら、このアッセイでは、これに関連してRANK経路遮断の効果を試験するために、RANK OE細胞を、単体の又はRANK経路の阻害剤と組み合わせたCDK4/6阻害剤に曝露した。要約すると、RANK OE細胞をマルチウェルプレートに播種し、単体の又はOPG-Fcと組み合わせた、パルボシクリブ、リボシクリブ又はアベマシクリブに7日間曝露した。オステオプロテゲリン(OPG)は、RANKリガンド(RANKL)の生理学的に可溶性のデコイ受容体であり、OPG-Fcは、IgG1抗体のFcドメインと融合したOPGの4つのシステイン豊富ドメイン(D1~D4)のみを含む融合タンパク質である。細胞生存度をAlamar blueアッセイによって評価し、結果を図4に示す。図4に示すように、RANK OE細胞は、試験されたCDK4/6阻害剤のそれぞれに対する感受性の低減を実証した(赤い線)。興味深いことに、RANK OE細胞が、RANK経路の阻害剤(OPG-Fc)と組み合わせたCDK4/6阻害剤に曝露されると、CDK4/6阻害剤に対する感受性は、低レベルでRANKを発現する親対応物細胞によって実証されたものと同様のレベルに回復する。これらの結果は、RANK経路の阻害剤と組み合わせてCDK4/6阻害剤を使用することにより、CDK4/6阻害剤に対する感受性は、回復され得ることを示唆する。
【0144】
実施例4
本実施例は、高いRANK発現レベルはCDK4/6併用療法に対する耐性と相関することと、RANK経路の阻害によってCDK4/6併用療法に対する感受性が回復することとを実証する。
【0145】
上記のデータは、高いRANK発現レベルは、療法に対する耐性と関連することを示し、RANK経路の阻害により、化学治療に対する感受性が回復又は誘発されることを示唆する。これらの概念は、CDK4/6阻害剤併用療法に対するRANK OE細胞の感受性を、単体で又はRANK経路の阻害剤との更なる組み合わせで試験することによって更に裏付けられる。この研究では、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ及びリボシクリブを、フルベストラント又はエベロリムスと組み合わせてRANK OE細胞に曝露した。この併用療法を、続いて、単体で又はRANK経路の阻害剤であるOPGと組み合わせて試験した。OPG-Fcを利用する前述の実施例とは対照的に、このアッセイでは、完全長OPGタンパク質を用いた。このアッセイは、本質的には上記の実施例1~3で説明されるとおりに実施し、結果は図5に示す。
【0146】
図5に示すように、親対応物(黒棒線)と比較して増加した細胞生存度によって示されるとおり、RANK OE細胞は、CDK4/6阻害剤併用療法(パルボシクリブ+フルベストラント;パルボシクリブ+エベロリムス;リボシクリブ+フルベストラント;リボシクリブ+エベロリムス(赤棒線))に対する感受性の低減を示した。CDK4/6阻害剤併用療法を、RANK経路の阻害剤(OPG)と更に組み合わせると、CDK4/6阻害剤併用療法に対する感受性は、親対応物のレベルまで回復した。
【0147】
実施例5
本実施例は、RANK経路は、CDK4/6阻害剤に対するトリプルネガティブ乳癌(TNBC)の内因性耐性に寄与することと、RANKのノックダウン発現によるRANK経路の阻害により、CDK4/6阻害剤療法に対する感受性が回復することとを実証する。
【0148】
実施例2~4に記載される研究では、RANKを安定して過剰発現するように改変された管腔乳癌細胞を用いて、RANK発現レベルとCDK4/6阻害剤に対する感受性との関係を実証した。トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、CDK4/6阻害剤療法に対する耐性を過去に示している(Richard Finn et al.Breast Cancer Res 2009.Finn R et al SABCS 2008,Finn RS,et al.Cancer Res.2009;11(5):R77.https://doi.org/10.2147/BCTT.S46725 a review)。こうして、MDA-MB-231TNBC細胞によって示されるCDK4/6阻害剤に対する感受性を、RANKノックダウン(KD)クローンのそれと比較した。
【0149】
最初に、感受性アッセイで使用するためにRANK KDクローンを生成した。要約すると、MCF-7GFP+Luc+細胞をマルチウェルプレートに播種し、続いて、RANK shRNA(h)レンチウイルス粒子又は対照shRNAレンチウイルス粒子を含む新鮮培地に曝露した。ピューロマイシン二塩酸塩を用いて形質導入細胞を選択し、これは形質導入後3日で開始した。RANK shRNAレンチウイルス粒子に曝露された細胞によるRANK発現のノックダウンをRT-qPCRによって確認し、これらの細胞のRANK発現のレベルを、対照shRNAレンチウイルス粒子で形質導入した細胞によるRANK発現と比較した(図6A)。CDK4/6阻害剤に対する感受性は、TNBC RANK KD細胞(MDA-231 shRANK)、非形質導入TNBC細胞(MDA-231)又は対照レンチウイルス粒子で形質導入した(MDA-231sh対照)細胞を用いた点を除いて、本質的に前述の実施例で記載したとおりに試験し、アッセイの結果を図6Bに示す。図6Bに示すように、MDA-231細胞及びMDA-231 sh対照細胞の両方は、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ及びリボシクリブに対する耐性を実証した。興味深いことに、TNBC RANK KD細胞は、RANK発現細胞(MDA-231細胞及びMDA-231 sh対照細胞)と比較して、これらのCDK4/6阻害剤の両方に対して回復した感受性を実証した。
【0150】
実施例6
本実施例は、RANK経路は、CDK4/6阻害剤に対するトリプルネガティブ乳癌(TNBC)の内因性耐性に寄与することと、RANK経路の阻害によってCDK4/6阻害剤療法に対する感受性が回復することとを実証する。
【0151】
CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブに対する感受性は、LBC細胞の代わりにTNBC細胞(MDA-MB-231、MDA-MB-436、MDA-MB-468)を用いた点を除いて、本質的に前述の実施例に記載されるとおりに試験した。TNBC細胞を、単体の又はRANK経路阻害剤であるOPG-Fcと組み合わせたCDK4/6阻害剤に曝露した。結果を図7に示す。
【0152】
図7に示すように、TNBC細胞は、試験されたCDK4/6阻害剤のそれぞれに対する耐性を実証した。興味深いことに、細胞がRANK経路阻害剤(OPG-Fc)と組み合わせたCDK4/6阻害剤に曝露されると、OPG-Fcを含まないCDK4/6阻害剤で治療された細胞と比較して低減した細胞生存度によって示されるように、CDK4/6阻害剤に対する感受性は回復した。
【0153】
RANK経路遮断も、TNBC細胞をCDK4/6阻害剤に対して感受性にすることができる。3つのTNBC細胞株及び3つの利用可能なCDK4/6阻害剤のパネルを用いて、オステオプロテゲリン(OPG-Fc)が療法に対する感受性を回復したために、RANK経路がパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブに対する耐性を媒介することが実証される(図7)。
【0154】
実施例7
本実施例は、RANK経路の遮断が、サイクリン/CDK複合体に伴われるタンパク質の上方制御された発現を抑止することを実証する。
【0155】
RANK OE細胞がCDK4/6阻害剤に対して低感受性である理由を理解するために、サイクリン/CDK複合体に伴われるタンパク質の発現を解析した。要約すると、パルボシクリブに0時間、24時間又は72時間曝露したRANK OE(MDF-7 OE)細胞の細胞溶解物をウェスタンブロットすることによってサイクリンD1、CDK4、CDK6、サイクリンE及びCDK2の発現を解析して、親対応物細胞(低レベルのRANKを発現する;MCF-7細胞)の対応する発現レベルと比較した。RANK OE細胞は、親対応物細胞と比較してサイクリンD1、CDK4、サイクリンE及びCDK2の発現の増加を実証し、CDK4/6阻害剤に曝露されるとサイクリンD1、CDK4及びCDK2は増加した。
【0156】
RANK OE細胞及び低レベルのRANKを発現する対応する親細胞で同じアッセイを実施したが、但し、今回は、細胞を、単体の又は10ng/mL若しくは100ng/mLのOPG-Fcと組み合わせたパルボシクリブに7日間曝露した点が異なる。RANK経路をOPG-Fcで阻害すると、RANK OE細胞はCDK4の上方制御をそれ以上示さなかった。これらのデータは、サイクリン/CDK複合体に伴われるCDK4の上方制御は、RANK経路が阻害されると抑止されることを示唆する。
【0157】
実施例8
本実施例は、RANKを過剰発現するように改変された管腔BC細胞のインビボ成長の特性評価を実証する。
【0158】
癌細胞のインビボ成長に対するRANK発現の効果を決定するため、NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの第2胸郭の乳腺脂肪体に、(1)MCF-7GFP+Luc+(親)細胞、(2)MCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)細胞、又は(3)これらの組み合わせ(MCF-7 GFP+Luc+及びMCF-7 RANK OEを1:1比)(ミックス)を植菌した。本研究では、各群は5匹のマウスを含んだ。腫瘍植菌後、植菌した癌細胞から形成された得られた腫瘍を生物発光によって研究完了まで毎週画像化した(12週間)。植菌後12週間における一連の腫瘍の代表的画像を図9Aに示し、放射された光子/秒を表し、腫瘍量の定量化を可能にする全フラックスを図9Bに示し、増殖の指数を表すKi67陽性細胞の割合を図9Cに示す。これらの図に示すとおり、RANKを過剰発現する細胞から形成された腫瘍は、成長及び増殖速度の低減を示した。
【0159】
増殖速度の低減がRANKLの有効性に起因したものか否かを決定するため、NSGマウスに上記の親、RANK OE又はミックス細胞の1つを植菌し、ヒト可溶性RANKL又はビヒクル対照で皮下治療した。図10A~10Cに示すように、sRANKLの投与は腫瘍成長に影響を与えなかった。
【0160】
RANKを過剰発現する細胞がインビボでより侵襲性であったか否かを決定するために、実験的転移モデルを実施した。要約すると、NSGマウスの尾静脈に親又はRANK OE細胞を植菌した。各群は3匹のマウスを含んだ。植菌から2時間後、生物発光によって肺播種が確認され、腫瘍植菌後の毎週、実験終了まで、植菌癌細胞から形成された得られた腫瘍を画像化した。植菌後(p.i.)時間に対して指定された時点における一連の腫瘍の代表的画像を図11Aに示し、全フラックスを図11Bに示し、マクロ転移(剖検時のエクスビボ生物発光によって評価される)を図11Cに示し、骨病変上の全フラックス、肺上の全フラックス及び循環腫瘍細胞(CTC)の数を、図11D図11E及び図11Fにそれぞれ示す。これらの図に示すように、低レベルのRANKを発現する親細胞株と比較して、RANK OE細胞は、肺及び骨中では同等に転移性であるが、RANK OE細胞を植菌したマウスはCTC数の増加を示した。後者の観察は、より間葉性の表現型と一致し、攻撃的な潜在力を強化する。
【0161】
実施例9
本実施例は、RANKを過剰発現するように改変されたLBC細胞のホルモン療法と組み合わせたCDK4/6阻害剤に対するインビボ感受性を実証する。
【0162】
NSGマウスの第2胸郭の乳腺脂肪体に、(1)MCF-7GFP+Luc+(親)細胞、(2)MCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)細胞、又は(3)これらの組み合わせ(MCF-7 GFP+Luc+及びMCF-7 RANK OEを1:1比)(ミックス)を植菌した。本研究では、各群は3~4匹のマウスを含んだ。腫瘍植菌後、植菌した癌細胞から形成された得られた腫瘍を生物発光によって研究完了まで毎週画像化した。植菌後12週間で、マウスを腫瘍サイズに基づいて群に無作為化し、(A)フルベストラントと組み合わせた、7日間の腫瘍退縮用量のパルボシクリブ(Vijayaraghavan et al.,Nature Communications 8,article number 15916(2017);doi:10.1038/ncomms15916に基づいて)、又は(B)ビヒクル対照で治療した。全フラックスを図12Aに示し、剖検時の腫瘍重量を図12Bにグラフ化し、Ki67陽性細胞の割合(増殖の指数を表す)を図12Cに示し、CCND1(サイクリンD1)の発現を図12Dに示す。図12Aに示すように、併用治療(パルボシクリブ及びフルベストラント)は、MCF-7異種移植片中で退縮を誘発することができたが、MCF-7OE又は混合異種移植片に対してはできなかった(図12A)。MCF-7異種移植片に対する治療は、パルボシクリブ及びフルベストラントで治療しなかった腫瘍と比較しての、犠牲時の腫瘍重量の減少(図12Bに示すとおり)、増殖指数の減少(図12Cに示すとおり)及びCCND1発現の減少(図12Dに示すとおり)によって確認された。これらのデータは、RANKを過剰発現する細胞から形成された腫瘍は、インビボでのパルボシクリブ及びフルベストラントとの併用療法に対する耐性を示したことを実証する。
【0163】
実施例10
本実施例は、インビボでのRANK経路阻害が、乳癌細胞をCDK4/6阻害剤に対して感受性にするという概念実証を実証する。
【0164】
RANK経路遮断(OPG-Fc)と組み合わせたCDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)に対するTNBC異種移植片の感受性を試験するための予備研究を実施した。要約すると、NSGマウスの第4腹部の乳腺脂肪体の両側に、MDA-MB-231GFP+Luc+細胞を植菌した(n=2/群)。植菌後7週間で、マウスを腫瘍サイズに基づいて群に無作為抽出し、続いて(A)OPG-Fc(10mg/Kg、i.p.、1週間に2回)、(B)パルボシクリブ(25mg/Kg/日、p.o.)、又は(C)これらの組み合わせで治療した。実験設計の概略を図13Aに示す。実験全体を通して体重を測定し、結果を図13Bに示す。この図に示すように、体重は群間で変わりなかった。Ki67陽性細胞及びp-pRb陽性細胞の定量化によって測定した腫瘍の増殖指数を図13Dに示す。図13Cは、Ki67染色又はp-pRb染色細胞の一連の画像である。これらの図に示すように、パルボシクリブ及びOPG-Fcで治療した腫瘍は、Ki67及びp-pRb発現の有意な低減を実証した。これらのデータは、RANK経路遮断が、トリプルネガティブ腫瘍を、パルボシクリブなどのCDK4/6阻害剤による治療に対して感受性にすることを裏付けする。
【0165】
実施例11
本実施例は、管腔乳癌及びトリプルネガティブ乳癌の両方における、RANK経路遮断と組み合わせたCDK4/6阻害剤に対する感受性を試験するための2つの研究の設計を説明する。
【0166】
TNBCに対する第1の研究では、NSGマウスの第4腹部の乳腺脂肪体の両側に、MDA-MB-231GFP+Luc+細胞を植菌する(n=5/群)。腫瘍植菌後、腫瘍が約100mmに達するまで生物発光によって毎週腫瘍を画像化する(例えば、約4週間)。腫瘍が約100mmに達したら、マウスを腫瘍サイズに基づいて群に無作為化し、(1)プラセボ(0.1M乳酸ナトリウム、p.o.+PBS、i.p.)、(2)パルボシクリブ(25mg/kg/d、p.o.)、(3)OPG-Fc(3mg/kg、i.p.、毎週2回)、(4)OPG-Fc(10mg/kg、i.p.、毎週2回)、(5)(2)と(3)との組み合わせ又は(6)(2)と(4)との組み合わせで治療する。実験設計の概略を図14Aに示す。
【0167】
LBCに対する第2の研究では、NSGマウスに17βエストラジオールペレットを2日間補充し、その後、(1)MCF-7GFP+Luc+(親)又は(2)MCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)を植菌する。腫瘍植菌後、腫瘍が約100mmに達するまで生物発光によって毎週腫瘍を画像化する(例えば、約4週間)。腫瘍が約100mmに達したら、マウスを腫瘍サイズに基づいて群に無作為化し、(1)プラセボ(0.1M乳酸ナトリウム、p.o.+PBS、i.p.)、(2)パルボシクリブ(25mg/kg/d、p.o.)、(3)OPG-Fc(3mg/kg、i.p.、毎週2回)、(4)OPG-Fc(10mg/kg、i.p.、毎週2回)、(5)(2)と(3)との組み合わせ又は(6)(2)と(4)との組み合わせで治療する。実験設計の概略を図14Bに示す。
【0168】
研究終了時に全生存(OS)、腫瘍量及び腫瘍退縮を測定する。
【0169】
これらの研究では、RANK経路遮断と組み合わせたCDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)に対するTNBC(図14A)及びエストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌(管腔BC)(図14B)の感受性を試験する。CDK4/6阻害剤とRANK経路遮断との組み合わせは、腫瘍退縮を増加させ、全生存を増加させることが予期される。
【0170】
実施例12
本実施例は、トリプルネガティブ乳癌又は管腔乳癌を患うヒト対象を治療するためにデノスマブとCDK4/6阻害剤との組み合わせの安全性及び有効性を決定するための臨床治験の設計を説明する。
【0171】
1.トリプルネガティブ乳癌(TNBC)
TNBC試験に適格な患者の特性には、アントラサイクリン及びタキサンを含む進行性疾患向け化学療法レジメンを少なくとも2回且つ5回以下投与された、RECIST1.1に従って骨外性部位に測定可能な疾患を有する、切除不能又は転移性のトリプルネガティブ乳癌を患う18歳以上が含まれる。患者は適切な骨髄、肝及び腎機能並びに0~2の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の一般状態、のみならず3ヵ月以上の平均余命を有さなければならない。
【0172】
不的確な患者の特性(例えば重要除外基準)には、任意の治験薬の使用又は研究の4週間以内の治療、研究の3週間以内の化学療法又は放射線の使用、治療されて安定であるものを除く既知の脳転移及びデノスマブによる治療歴が含まれる。
【0173】
全ての患者は書面によるインフォームド・コンセントを提出しなければならず、研究の許可は中央倫理委員会から得る。全ての手順は、世界医師会(World Medical Association、WMA)ヘルシンキ宣言改訂版(WMA General Assembly,Tokyo,2004)、医薬品規制調和国際会議(International Conference for Harmonisation(ICH)of technical requirements for registration of pharmaceuticals for human use)、臨床試験実施基準(good clinical practice)並びに現地の倫理的及び法的要件に合致する。
【0174】
本治験プロトコルの目的は、第2相臨床治験における、CDK4/6阻害剤と組み合わせた、Q4Wでの120mg標準用量のデノスマブの活性を評価することである。試験されるべき追加のレジメンには、最初の2ヶ月間で2週間毎に120mg、続いて120mg Q4Wのレジメンが含まれる。治療は、疾患の進行、死、許容不可能な毒性、患者による同意の撤回又は臨床医による患者を中止させる決定に至るまで実施する。
【0175】
本研究の主要エンドポイントは、RECIST1.1に従って安定疾患(SD)、部分的奏功(PR)又は完全奏功(CR)を有する患者の総数によって定義される疾病管理率(DCR)である。副次的エンドポイントは、以下を含む。
【0176】
【表5】
【0177】
本研究は、以下の治験設計の1つに従い実施する:単一アーム、サイモンの2段階設計:全ての患者は120mg、Q4WのCDK4/6阻害剤及びデノスマブで治療される。EMBRACE試験の主治医選択治療(Treatment Physicians of Choice、TPC)アームの歴史的比較(Eribulin; The Lancet,Volume 377,ISSUE 9769,P914-923,March 12,2011 DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(11)60070-6);又は選択バイアス及び交絡を排除するためのCDK阻害剤+デノスマブ120mg Q4Wと主治医選択治療(TPC)との間での2:1無作為化(EMBRACE試験からのデータは2000年の最初の10年間からのものである);患者は、先行の化学療法レジメンの数(2又は>2)及び肝臓/肺への転移(はい/いいえ)で層別化される。
【0178】
2.管腔乳癌(LBC)
LBC試験に適格な患者の特性には、過去にCDK4/6阻害剤又は内分泌療法(ET)を受けていない、RECIST1.1に従って測定可能な疾患を有する(骨外性部位に)、切除不可能又は転移性のエストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR)のいずれかに陽性のc-erbB2陰性乳癌を患う18歳以上であることが含まれる。進行性疾患に対して1つの化学療法レジメンが許可される。閉経前の患者は、外科的又は化学的去勢を受けなくてはならない。
【0179】
患者は適切な骨髄、肝及び腎機能並びに0~2の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の一般状態、のみならず3ヵ月以上の平均余命を有さなければならない。
【0180】
不的確な患者の特性(例えば重要除外基準)には、任意の治験薬の使用又は研究の4週間以内の治療、研究の3週間以内の化学療法又は放射線の使用、治療されて安定であるものを除く既知の脳転移又はデノスマブによる治療歴が含まれる。
【0181】
全ての患者は書面によるインフォームド・コンセントを提出しなければならず、研究の許可は中央倫理委員会から得る。全ての手順は、世界医師会(World Medical Association、WMA)ヘルシンキ宣言改訂版(WMA General Assembly,Tokyo,2004)、医薬品規制調和国際会議(International Conference for Harmonisation(ICH)of technical requirements for registration of pharmaceuticals for human use)、臨床試験実施基準(good clinical practice)並びに現地の倫理的及び法的要件に合致する。
【0182】
本治験プロトコルの目的は、第2相臨床治験における、CDK4/6阻害剤と組み合わせた、Q4Wでの120mg標準用量のデノスマブの活性を評価することである。試験されるべき追加のレジメンには、最初の2ヶ月間で2週間毎に120mg、続いて120mg Q4Wのレジメンが含まれる。治療は、進行、死、許容不可能な毒性、臨床医の判断又は患者の同意の撤回まで行われる。
【0183】
本研究の主要エンドポイントは、RECIST1.1に従い安定疾患(SD)又は部分的奏功(PR)を有する患者の合計によって定義される、骨外性疾患(ESD)における客観的奏功率(ORR)である。副次的エンドポイントは、以下を含む。
【0184】
【表6】
【0185】
治験設計は以下の特徴を含む:(1)患者は、肺/肝臓転移の存在(はい/いいえ)、過去の化学療法及び内分泌療法の選択(NSAI/SERM)に関して層別化される;(2)骨転移を有さない患者は、CDK4/6阻害剤+ETとCDK4/6阻害剤+ETデノスマブ120mg Q4Wとの間で2:1に無作為化される;(3)骨転移を有する患者は、CDK4/6阻害剤+ET+ゾレドロン酸とCDK4/6阻害剤+ETデノスマブ120mg Q4Wとの間で2:1に無作為化される。
【0186】
実施例13
本実施例は、管腔乳癌及びトリプルネガティブ乳癌の両方において、RANK経路遮断との組み合わせでCDK4又はCDK6を遮断する阻害剤に対する感受性を試験するように設計された実験を説明する。
【0187】
本実施例は、管腔乳癌及びトリプルネガティブ乳癌の両方において、RANK経路遮断との組み合わせでCDK4を遮断する阻害剤に対する感受性を試験するように設計された実験を説明する。
【0188】
CDK4阻害剤に対する感受性は、LBC細胞(例えばMCF-7及びT47D)及びTNBC細胞(MDA-MB-231、MDA-MB-436、MDA-MB-468)を用いて、本質的に前述の実施例(実施例2~6)に記載されるとおりに試験される。LBC及びTNBC細胞をマルチウェルプレートに播種し、続いて単体の又はRANK経路阻害剤であるOPG-Fcと組み合わせたCDK4阻害剤に曝露する。本アッセイに用いられるCDK4阻害剤としては、3-ATA(3-アミノ-9-チオ(10H)-アクリドン)及びCDK4阻害剤III(5-(N-(4-メチルフェニル)アミノ)-2-メチル-4,7-ジオキソベンゾチアゾール、Ryuvidine)が挙げられる。細胞生存度は、本明細書に説明されるAlamar blueアッセイによって評価する。
【0189】
インビボでのTNBC又はLBC細胞のCDK4阻害剤に対する感受性を試験するために、NSGマウスの第4腹部の乳腺脂肪体の両側に、MCF-7GFP+Luc+(親)、MCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)又はMDA-MB-231を、本質的に本明細書で説明するとおりに植菌する。植菌から12週間後、マウスを腫瘍サイズに基づいて群に無作為化し、(A)CDK4阻害剤、(B)OPG、(C)(A)と(B)との組み合わせ、又は(D)ビヒクル対照で治療する。植菌後、腫瘍を生物発光によって研究終了まで毎週画像化する。全フラックス並びにKi67陽性及びホスホRb陽性細胞の定量化は、本明細書で説明するとおりに測定する。
【0190】
実施例14
本実施例は、管腔乳癌及びトリプルネガティブ乳癌の両方の成長における、RANK経路遮断との組み合わせでのCDK4又はCDK6発現の喪失又は減少を試験するように設計された実験を説明する。
【0191】
ある実験のセットでは、細胞を、CDK4を標的とするshRNAを含むレンチウイルスベクターを形質導入する。別の実験のセットでは、細胞を、CDK6を標的とするshRNAを含むレンチウイルスベクターを形質導入する。どちらの場合も、対照shRNAを用いる。
【0192】
CDK4若しくはCDK6ノックダウン(対照と比較して発現が減少)若しくはノックアウト(対照と比較して発現が完全に喪失)又は対照shRNAを含むLBC及びTNBC細胞をマルチウェルプレートに播種し、続いてRANK経路阻害剤であるOPG-Fcに曝露した。細胞生存度は、本明細書に説明されるAlamar blueアッセイによって評価する。
【0193】
インビボでの管腔乳癌及びトリプルネガティブ乳癌の両方の成長における、RANK経路遮断との組み合わせでの、CDK4又はCDK6発現の喪失又は減少を試験するために、NSGマウスの第4腹部の乳腺脂肪体の両側に、MCF-7GFP+Luc+(親)、MCF-7 RANK OE GFP+Luc+(RANK OE)、MDA-MB-231又はこれらのCDK4、CDK6、対照shRNAノックダウン対応物を、本質的に本明細書で説明するとおりに植菌する。植菌から12週間後、マウスを腫瘍サイズに基づいて群に無作為化し、(A)OPG又は(B)ビヒクル対照で治療する。植菌後、腫瘍を生物発光によって研究終了まで毎週画像化する。全フラックス並びにKi67陽性及びホスホRb陽性細胞の定量化は、本明細書で説明するとおりに測定する。
【0194】
実施例15
本実施例は、エストロゲン受容体陽性乳癌における上昇したRANK発現が幹細胞性の駆動因子であることを説明する。
【0195】
背景:骨再形成の重要な制御因子であるNFkB(RANK)-RANKリガンド(RANKL)経路の受容体活性化因子が、プロゲステロン誘導乳癌(BC)発症の主要な媒介物質であることが明らかになった。RANK発現は、トリプルネガティブBCにおいて特に高く、攻撃性及び予後不良と関連してきた。本研究は、エストロゲン受容体(ER)陽性BCにおける高いRANK発現の影響に取り組んだ。
【0196】
方法:RANK(TNFRSF11A)発現のインシリコ解析を、TCGA BCコホートで実施した。RANKを過剰発現するER+HER2-細胞株を、レンチウイルス形質導入によって得て、遺伝子の発現及び表現型の評価に標準アッセイを用いた。インビボの腫瘍成長を、同所性異種移植片中又は尾静脈植菌後に測定した。対応のないt検定を用いて2つ群の間で比較を実施した。生存解析は、カプラン・マイヤー法及びログランク検定を用いた。
【0197】
結果:RANK発現はER-乳房腫瘍でより高く(p<0.001)、5年全生存の低下と関連していた(HR=2.12(1.16-3.87)、p=0.012)。しかしながら、ER+腫瘍の5%は、ER-75%Q範囲内でRANKを発現することが判明した。RANKを過剰発現するER+細胞株(MCF-7OE及びT47DOE)を、下流経路の過剰活性化;間葉細胞及び幹細胞マーカーの上方制御;球体形成能力の向上によって特性評価した。インシリコでは、ER+腫瘍中の高RANK発現は、間葉性、幹細胞性と有意に相関した。インビボでは、MCF-7OE異種移植片は、親のものと比較して一貫してより小さかった。しかしながら、尾静脈植菌は、MCF-7及びMCF-7OE細胞が、肺及び骨格中で等しく転移性であったことを示し、MCF-7OE細胞を内部に有する動物は、より多くの循環腫瘍細胞を有した。
【0198】
結論:本発明者らのデータは、初めて、ER+BC中のRANK発現が無視できるものではなく、また特に転移性の環境では腫瘍進行に影響を及ぼし得ることを示す。
【0199】
実施例16
本実施例は、高RANK発現のエストロゲン受容体陽性乳癌の生物学的特徴を実証する。
【0200】
背景:RANK-RANKL経路は、骨再形成の重要な制御因子である。過去10年間において、RANK-RANKL軸は、プロゲステロン誘導乳癌(BC)発症の主要な媒介物質であることが明らかになった。RANK発現は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)において特に高く、攻撃性及び予後不良と関連してきた。管腔BCにおけるRANK発現は過去に評価されたことがない。図15を参照されたい。本研究の目的は、ER陽性(ER+)乳癌における高いRANK発現の生物学的影響が何であるかを決定することであった。
【0201】
本研究の方法は、Cancer Genome Atlas(TCGA)乳癌(BC)コホート上で実施されるRANK発現のインシリコ解析を含んだ。TCGA BCコホートを用いて、RANK及び更に対象の遺伝子の発現を定量化した。図16A。RANKを過剰発現するER+HER2陰性(HER2-)細胞株を、レンチウイルス形質導入によって得て、遺伝子の発現及び表現型の評価に標準アッセイを用いた。ヒト乳癌細胞株MCF-7GFP+Luc+及びT47D細胞に、RANKレンチウイルス過剰発現粒子(EX-O0007-Lv121,GeneCoepoeia)を形質導入し、RANK過剰発現(RANK OE)をRT-qPCRによって確認した。図16B。インビボの腫瘍成長を、同所性異種移植片中又は尾静脈植菌後に測定した。全ての動物実験はDGAVの認可を受け、動物は、3Rの原則を適用した承認済み組織、国家及び国際ガイドラインに従って処理され、安楽死させられた。4週齢のNSGマウスに、17β-エストラジオール皮下ペレットを補充した。50%フェノールフリーマトリゲル溶液(Corning)中の2×10細胞を、第2胸郭の脂肪体又は尾静脈に注射し、腫瘍成長を、発光解析により週1回監視した。図16C
【0202】
結果
実験の1セットでは、RANK発現のインシリコ解析を、TCGA BCコホート中で実施した。図17Aに示すように、TCGA(n=1015)からの女性BC患者を、最適カットオフ(Cut-off Finderソフトウェア)及びログランク検定を用いてプロットした生存曲線を用いて、RANK発現に基づき二分した。図17Bは、中央RANK発現を、ER-腫瘍とER+BC腫瘍との間で、且つER-腫瘍の75Q内で比較したことを示す。結果は平均±SEMとして示される。p値を、対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。これらのデータは、RANK発現がER乳房腫瘍中でより高く、高いRANK発現(RANK-high)が5年全生存(OS)の低下に関連し、5%のER+BCは、ER-75%Q範囲内でRANKを発現することを示す。
【0203】
一連の実験では、NSGマウスの第2胸郭の乳腺脂肪体に、MCF-7、MCF-7OE又はMCF-7細胞とMCF-7OE細胞との1:1混合物を植菌した。図9Aは、実験終了時に取られた、生物発光解析からの一連の代表的画像である。図9Bは全フラックス(p/s)のグラフであり、図9Cは、Ki67の定量化のグラフである。データは、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA又は対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。これらのデータは、MCF-7OE異種移植片は、親のものと比較して一貫してより小さかったことを示す。
【0204】
接着細胞を非接着性条件下で培養し、乳房球体の数(>50μm/播種細胞数)×100として球体形成能力(SFC)(%)を測定し、7日後にFiJiソフトウェアを用いて球体を測定し、sRANKLあり及びなしで成長する乳房球体中で領域を比較した(図18A)。TCGA BCコホートを用いて、RANK及び更に対象の遺伝子の発現を定量化した(図18B)。
【0205】
実験の1セットでは、NSGマウスの尾静脈にMCF-7又はMCF-7OE細胞を植菌した(n=3/群)。腫瘍植菌から2時間後及び実験終了まで毎週、腫瘍を生物発光によって画像化した。図11Aは、生物発光解析からの一連の代表的画像である。図11Bは、全フラックス(p/s)のグラフである。図11Dは、骨病変上の全フラックス(p/s)のグラフである。図11Eは、肺病変上の全フラックス(p/s)のグラフである。図11Fは、フローサイトメトリによって測定した、GFP+細胞(循環腫瘍細胞(CTC)を表した)%のグラフである。この実験では、犠牲時に心穿刺によって血液を回収し、CTC(GFP+細胞)をフローサイトメトリによって定量化した。データ解析は、FlowJo V10ソフトウェアを使用して実施した。データは、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA又は対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。ここでは、尾静脈植菌は、MCF-7及びMCF-7OE細胞が、肺及び骨格中で等しく転移性であったことを示した。MCF-7OE異種移植片を有する動物は、より多くの循環腫瘍細胞を有した。
【0206】
結論(図19):これらのデータは、ER+BCにおけるRANK発現の関連性を初めて示す。ER+腫瘍中のRANK発現は、腫瘍進行に影響を与え得る。
【0207】
実施例17
本実施例は、RANK OE ER+HER2-乳癌細胞が、CDK4阻害剤に対して耐性であることを実証する。
【0208】
実施例3は、RANK OE ER+HER2-細胞は、CDK4/6阻害剤、すなわちパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブに対して耐性があり、OPG-FcによるRANKL遮断は、細胞をこれらの薬剤に対して感受性にすることができることを実証する。CDK4/6阻害剤はCDK4及びCDK6に対して異なる親和性プロファイルを有し(Wiedemeyer W.R.(2018)Resistance Mechanisms to Cyclin-Dependent Kinase Inhibitors.In:Yarden Y.,Elkabets M.(eds)Resistance to Anti-Cancer Therapeutics Targeting Receptor Tyrosine Kinases and Downstream Pathways.Resistance to Targeted Anti-Cancer Therapeutics,vol 15.Springer,Cham)、耐性は特定のCDKに関連し得るため、RANK OE細胞がCDK4及び/又はCDK6特異性阻害剤に対して等しく耐性であるかどうかを試験した(実施例13)。
【0209】
この疑問に取り組むため、CDK4阻害剤の存在下又は不在下での細胞成長を定量化した。要約すると、細胞を、96ウェルプレートに播種して、2つの異なる薬剤、すなわちCDK4阻害剤である3-ATA(図20A)又はCDK4阻害剤III(図20B)に7日間に曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果を図20A及び20Bに示す。図20Aは、CDK4阻害剤である3-ATAの存在下での細胞成長の定量化を提供し、図20Bは、別のCDK4阻害剤であるCDK4阻害剤IIIの存在下での細胞成長の定量化を提供する。結果は、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値であり、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
【0210】
図20A及び図20Bに示すように、RANK OE細胞は、最大2.5μMの両方のCDK4阻害剤に対して耐性であり、これらの細胞は、更により高い用量の3-ATAに対しても耐性であった。
【0211】
特異的なCDK6阻害剤は存在しないため、CDK6ノックダウン又はノックアウトRANK OE細胞株は、特異的なCDK6標的化に対する感受性に対処するように作られている。細胞株は、shRNAを用いて機能的に下方制御(例えばCDKノックダウン)されるか、又はgRNA/CRISPR-Cas9を用いてノックアウトされる。CDK6ノックダウン細胞株の細胞成長の定量化は、野生型細胞株と比較される。
【0212】
実施例18
本実施例は、CDK4/6阻害剤に対する耐性が他のCDKの補償効果に起因するものではないことを実証する。
【0213】
CDK4/6阻害剤に対する耐性が、パルボシクリブ耐性を誘起するとして前述されている他のCDK、すなわちCDK2の補償活性によって媒介されているか否かが問題とされた(van der Linden MH,Willekes M,van Roon E,et al.MLL fusion-driven activation of CDK6 potentiates proliferation in MLL-rearranged infant ALL.Cell Cycle(Georgetown,Tex.).2014;13(5):834-844.DOI:10.4161/cc.27757)。この疑問に答えるために、pan-CDK阻害剤であるセリシクリブ(ロスコビチン又はCYC202としても知られる)の存在下での細胞成長を解析した。要約すると、細胞を96ウェルプレートに播種し、異なる薬剤に7日間曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。
【0214】
結果を図21に示し、これは、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値を表し、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。セリシクリブは、CDK2/E、CDK2/A、CDK7及びCDK9の阻害剤である。これらのデータは、セリシクリブに対してRANK OE細胞が親(低RANK細胞よりも感受性が低かったことを示す(図21A)。更に、パルボシクリブとセリシクリブとの組み合わせは、予期された通り親MCF-7細胞中ではより効果的であった(図21B)が、RANK OE細胞中ではそうでなく、セリシクリブは、パルボシクリブ又はパルボシクリブ及びOPF-Fcの効果を増強しなかった(図21B)。これは、CDK4/6阻害剤に対する耐性が他のCDK(すなわちCDK2/E、CDK2/A、CDK7及びCDK9)の補償活動によって媒介されないことを示唆する。
【0215】
実施例19
本実施例は、OPG-Fcが、pRB、PIK3CA、PTEN及びBRCA1変異とは無関係にTNBC細胞株をCDK4/6阻害剤に対して感受性にすることを実証する。
【0216】
3つのTNBC細胞株のパネル(MDA-MB-231、MDA-MB-436及びMDA-MB-468)を用いて、実施例6は、オステオプロテゲリン(OPG-Fc)が療法に対する感受性を回復したために、RANK経路がパルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブに対する耐性を媒介することを実証する。次に、CDK4/6に対する耐性又はOPG-Fcの効果のいずれかが、pRB、PIK3CA、PTEN及びBRCA1などのTNBC中で頻繁に変異する遺伝子の変異状態に依存し得るかどうかが問題とされた。したがって、上記の解析を、3つの追加のTNBC細胞株(MDA-MB-157、HCC1937及びBT-20)を含むように拡大した(表1)。
【0217】
【表1】
【0218】
本研究に用いられた全細胞株中のRANKの発現を、RT-qPCR(図22A)及びフローサイトメトリ(図22B)によって評価した。Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)データベースから入手可能なRNAseqデータを表2に示す。RANK発現は、TNBC及び管腔細胞株の間では異種性であり、本研究に用いたRANK OE管腔細胞株は最高レベルのRANKを発現する。細胞株の遺伝子発現及び研究室誘導変性を定量化するために用いられる異なる方法が、データ間の一部の差異に寄与する(例えばT47D細胞株)。
【0219】
【表2】
【0220】
細胞を96ウェルプレートに播種し、異なる薬剤に7日間曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果を図23に示し、これは、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値を表し、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。これらのデータは、全ての細胞株で同じ効果が観察されたため、OPG-Fcは、pRB、PIK3CA、PTEN及びBRCA1変異並びにEGFRの増幅とは無関係にTNBC細胞株をCDK4/6阻害剤に対して感受性にすることを示唆する(図23)。これらの知見は、クローン原性アッセイによって確認された。要約すると、細胞を6ウェルプレートに播種し、異なる薬剤に6日間曝露し、薬剤を含まない培地で6日間回復させた。細胞をクリスタルバイオレットで染色し(図24B)、1%SDSで溶解し、570nMで培地の吸光度を測定した。結果を、図24Aに示し、細胞群体の画像を図24Bに提供し、結果は3つの複製の平均値を表し、平均±SEMとして示される。p値を、双方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
【0221】
実施例20
本実施例は、OPG-Fc単体は、細胞株の増殖に対して全く影響を有さないことを実証する。
【0222】
細胞を96ウェルプレートに播種し、7日間OPG-Fcに曝露した。培地を2日ごとに交換し、Alamar blueアッセイによって生存度を評価した。結果を図25に示し、これは、1アッセイ当たり4つの複製を有する少なくとも3つの独立したアッセイの平均値を表し、平均±SEMとして示される。p値を、一方向ANOVAを用いて計算し、p>0.05であれば非有意と見なした。これは、OPG-Fcの添加とともに観察されたCDK4/6有効性の増加は、細胞増殖に対するOPG-Fc又はRANK経路の直接の効果に関連しないことを示唆する。
【0223】
更に、OPG-FcはRANKLを中和可能であることも確認された。タンパク質発現はウェスタンブロットによって評価した。細胞を、6ウェルプレートに播種し、24時間血清飢餓状態に置き、示される時点の間、1μg/mlのRANKLに曝露した(図26A)。RANKL中和(図26B)のために、RANKLを37℃の血清枯渇培地±100ng/mlのOPG-Fc又は2.5μg/mlのMAB626中で60分間予インキュベートし、60分後にタンパク質を解析した。β-アクチンを負荷対照として使用し、FiJiを用いてバンド強度を定量化した。RANKL刺激は、ERK及びAKTなどのRANK下流因子のリン酸化を駆動する(図26A)。OPG-Fc又は抗RANKLモノクローナル抗体MAB626の存在下では、RANKL駆動RANK経路の活性化は低減した(図26B)。
【0224】
実施例21
本実施例は、CDK4/6阻害剤に対するTNBC RANK媒介耐性を実証し、OPG-Fcがインビボで腫瘍成長を低減させることを実証する。
【0225】
本明細書に提供されるデータは、ER+HER2-RANK OE細胞は、インビトロ及びインビボでの増殖速度は低下するが、侵襲性は増加することを特徴としたことを実証する(Gomes et al.2020(改訂))。同所移植モデルでは、MCF-7 RANK OE細胞は、インビボでパルボシクリブに対して耐性であると示された。パルボシクリブ及びOPG-Fcで治療した腫瘍中のKi67及びp-pRb発現の有意な低減によって示される、RANK経路阻害(OPG-Fc)がインビボでTNBC細胞をCDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)に対して感受性にすることを示す実験を実施した(実施例10)。
【0226】
これらの知見に基づいて、TNBC異所性異種移植片モデル中で、RANK経路遮断と組み合わせた、CDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)に対するTNBC BCの感受性を試験した(図27)。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの脇腹の両側から皮下植菌した(n=5/群)。腫瘍をキャリパーで測定する。腫瘍が約100mmに達したとき、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、実験プロトコルに従って治療した。パルボシクリブに承認される125mg/日のヒト等価用量(HED)は、マウスでは29.25mg/Kg/日と等しいため、30mg/Kg/日のパルボシクリブを21日間連続で使用した(Nair and Jacob,J Basic Clin Pharm.2016 Mar;7(2):27-31)。OPG-Fcを10mg/Kg 3x/週で用いた(HED291,6mg/15日間)。
【0227】
NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの脇腹の両側からMDA-MB-231細胞を皮下植菌した(n=4~5/群)。植菌後6週間で、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、OPG-Fcの10mg/Kg(i.p.)3回/週;パルボシクリブ30mg/Kg/日(p.o.)又は組み合わせで処理した。腫瘍の容積をキャリパーで2日おきに測定し、式:Tvol=1/2(長さ×幅)を用いて計算し、時間の関数としてプロットした腫瘍容積のグラフを図28A及び28Bに提供する。マウスの各群の剖検時腫瘍重量を図28Cのグラフに提供する。剖検後の臓器の組織病理学的評価後に転移を有するマウス数を図28Dの表に提供する。破骨細胞特異性TRAcP 5bを剖検時に回収された血清中で定量化し、sTRAcP 5Bのグラフを図28Eに提供する。Ki67及びp-pRbの定量化(免疫比)を、図28Fの一対のグラフに提供する。時間の関数としてプロットされたマウスの体重のグラフを図28に示す。データは、平均±SEMとして示される。p値を、ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001を用いて計算した。
【0228】
MDA-MB-231異種移植片は療法で退縮しなかったが、パルボシクリブによるCDK4/6阻害剤治療後に腫瘍成長の緩徐化を示し、これはOPG-Fcによって改善された(図28A、B)。したがって、Ki67及びp-pRbは、組み合わせで治療したマウス由来の腫瘍中で有意に低減した(図28F)。血清TRAcP 5b定量化によって確認・評価してOPG-Fcは破骨細胞活性を抑制した(図28E)。
【0229】
実施例22
本実施例は、RANK経路阻害剤及びCDK4/6阻害剤を含む併用治療の効果を試験するための追加の研究を実証する。
【0230】
RANK OE管腔乳癌細胞中でパルボシクリブ+フルベストラントと比較してパルボシクリブ+フルベストラント+OPG-Fcの効果を試験するためのインビボモデルを製造する。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの脇腹の両側から皮下植菌する(n=5/群)。腫瘍をキャリパーで測定する。腫瘍が約100mmに達したとき、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、実験プロトコルに従って治療する(図29)。
【0231】
更に、試験を、TNBC細胞(MDA-MB-157及びMDA-MB-468)中でパルボシクリブ単体と比較したパルボシクリブ+OPG-Fcの効果に拡大するためのインビボモデルを製造する。これらの2つの細胞株を選択することにより、MDA-MB-231よりも高いパルボシクリブIC50を有する細胞及び異なるRANK発現を有する細胞並びにpRB欠乏細胞株(MDA-MB-468)を試験することが意図される。NOD SCIDガンマ(NSG)マウスの脇腹の両側から皮下植菌する(n=5/群)。腫瘍をキャリパーで測定する。腫瘍が約100mmに達したとき、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為抽出し、図30に示す実験プロトコルに従って治療する。
【0232】
これらの実験の最後に、耐性及びOPG-Fc効果の分子メカニズムを解明するために腫瘍をディープカバレッジRNA-seqによって解析した。知見は、機能的に有効となる(例えば、細胞株、患者由来オルガノイド(PDO)、患者由来異種移植片(PDX)及びPDX由来の安定細胞株中で)。
【0233】
実施例23
本実施例は、実施例17~22で用いられた材料及び方法を説明する。
【0234】
細胞培養
BT-20及びMDA-MB-157細胞をATCCより購入した。ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231GFP+Luc+及びMCF-7GFP+Luc+(本明細書ではMDA-MB-231及びMCF-7によって指定される)は、Sergio Dias Lab(IMM)によって提供され、GFP-ルシフェラーゼレンチウイルス粒子によるレンチウイルス形質導入及び純粋GFP+細胞集団の細胞選別によって親細胞から誘導された。T47D細胞は、INSERMのPhilippe Clezardinによって提供された。MDA-MB-468及びHCC1937は、Fundacao ChampalimaudのRita Fior Labより提供された。MDA-MB-231及びMDA-MB-468細胞をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM,Gibco)中で、BT-20を改変イーグル培地(MEM、Gibco)中及びHCC1937をRPMI1640(Gibco)中で培養し、これらは、全て10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、Gibco)(MDA-MB-157に対して20%)、1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(10,000U/mLのペニシリン、10,000μg/mLのストレプトマイシン、Gibco)を補充した。MCF-7及びT47D細胞を、0.01mg/mLのインスリン(Gibco)を追加的に補充した同じ培地で培養した。細胞を、37℃、5%CO2に保持し、低い継代数で使用して、qPCRによってマイコプラズマ汚染に関して試験した。
【0235】
RT-qPCR
NZY Total RNA Isolationキット(#MB13402,Nzytech)を用いて、細胞の合計RNAを抽出した。DNアーゼIで処理したRNAを、NZY M-MuLV First-Strand cDNA Synthesisキット(#MB17301,Nzytech)及びOligo(dT)20プライマーを用いて逆転写させ、TaqMan Gene Expression Master Mix(#4369016,Applied Biosystems)並びにTNFRSF11A(#Hs00921372_m1,Applied Biosystems)及びGAPDH(#PPH00150F,SA Biosciences)用の特異的プライマーを用いて、cDNAをリアルタイムPCRによって増幅した。ハウスキーピング遺伝子GAPDHを用いて遺伝子発現を正規化し、相対的mRNA発現を、2-ΔCt法を用いて計算した。
【0236】
フローサイトメトリ
RANK発現解析のために、トリプシン処理した細胞を、マウスモノクローナル抗体抗RANK(#M331,Amgen Inc.)でインキュベートし、1:100でCy5とコンジュゲートしたAffiniPureヤギ抗マウスIgG(#115-175-205,Dianova)で標識化した。解析は、FlowJo V10ソフトウェアを使用して行った。
【0237】
インシリコ解析
乳癌細胞中の正規化RANK(TNFRSF11A)発現(log2 RPKM(Reads Per Kilobase Million))を、Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)データベース(https://portals.broadinstitute.org/ccle)から導出した。
【0238】
ウェスタンブロット
RANKLで刺激した際のRANK経路の活性化をウェスタンブロットによって解析した。この目的のため、4×10個の細胞を6ウェルプレートに24時間播種し、低血清培地(0.1%FBS、1%Pen/Strep)中で更に24時間血清飢餓状態に置いた)。培地を、1μg/mLのヒトRANKL(Amgen)を含有する新鮮な低血清培地と交換し、合計細胞溶解物を異なる時点で得た。RANKL中和のために、100ng/mlのOPG-Fc(PL-33324,Amgen)又は2.5μg/mlのMAB626(R&D)を用いて、RANKLを37℃の低血清培地中で60分間インキュベートした。合計細胞溶解物を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(1:100、Santa Cruz)を含有するRIPA緩衝液を製造業者の指示書に従って用いて調製した。合計タンパク質を、Pierce BCA Protein Assay Kit(ThermoSicentific)を用い、製造業者の指示書に従って調製した定量化した。10%ポリアクリルアミドゲルを用いて、タンパク質をSDS-PAGEによって分解し、続いてiBlot(登録商標)2 Gel Transfer Device(Invitrogen)を製造業者の指示書に従って使用して、ニトロセルロース膜に転写した。
【0239】
β-アクチンの場合、PBS-0.1%Tween(登録商標)(PBST)中5%の脱脂粉乳(NFDM)中において又は他の抗体の場合、5%ウシ血清アルブミン(BSA)(Santa Cruz)中において膜を室温(RT)で1時間ブロックした。4℃で終夜、膜を下記の特異的抗体でインキュベートした:RTで、マウス抗βアクチン抗体(Ab6276;Abcam)、ウサギポリクローナル抗ホスホ-ERK1/2(Thr-202/Tyr-204)(#sc-1682,Santa Cruz Biotechnology)、ウサギポリクローナル抗ERK1/2(c-14)(#sc-154,Santa Cruz Biotechnology)、ウサギポリクローナル抗ホスホAKT1/2/3(Ser-473)(D9E)(#sc-7985,Santa Cruz Biotechnology)、ウサギポリクローナル抗AKT1/2/3(H-136)(#sc-8312,Santa Cruz Biotechnology)。PBSTで洗浄した後、ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(HRP)特異性二次抗体:抗マウスHRP IgG及び抗ウサギHRP IgG(1:5000;Cell Signaling)によって2時間で膜をインキュベートした。Novex(登録商標)ECL HRP化学発光基質試薬キット(Invitrogen)(製造者の使用説明書に従う)及びCurix60プロセッサ(AGFA)又はAmersham(商標)Imager680(GE Healthcare Life Sciences)で現像したX線フィルム(Fujifilm)を用いて、タンパク質を検出した。
【0240】
生存度アッセイ
細胞を、パルボシクリブ(PD 0332991イセチオネート,PZ0199,Sigma)、リボシクリブ(LEE011サクシネート,SC-488174,Santa Cruz)、アベマシクリブメシル酸塩(LY2835219,S7158,Selleckchem)、3-ATA(sc-202414,Santa Cruz)、CDK4阻害剤III(sc-202988,Santa Cruz)、セリシクリブ(S1153,Selleckchem)及びOPG-Fc(PL-33324,Amgen)と共に又はこれらを含まずに、96ウェルプレート(2~5×10細胞/mL)に播種した。培地を2日ごとに交換した。7日後、1:10Alamar blue(Invitrogen)を各ウェルに添加し、インキュベーションから2時間後にInfinite M200マイクロプレートリーダー(Tecan)内で蛍光を測定した(励起:560nm;発光:590nm)。
【0241】
クローン原性アッセイ
コロニー形成アッセイのために、3,000~5,000細胞/ウェルを6ウェルプレートで平板培養し、試験薬物で6日間処理し、薬剤を含まない培地で更に6日間回復させた。細胞を2%PFAで10分間固定し、1%クリスタルバイオレット溶液(Sigma)で染色した。染色を1%SDSに可溶化し、Infinite M200マイクロプレートリーダー(Tecan)内で吸光度を570nmで測定した。
【0242】
動物モデル
全ての動物実験は、Institutional Animal Welfare Bodyの審査を受けて承認され、Direccao Geral de Alimentacao e Veterinaria(DGAV)により認可を受けた。動物を伴う全ての研究では、マウスは、3Rの原則を適用した承認済み組織、国家及び国際ガイドラインに従って処理され、安楽死させられた。
【0243】
異所性異種移植片モデル
異所性MDA-MB-231異種移植片モデルのために、成長の対数期に細胞を採取し、50%フェノールフリーマトリゲル溶液(Corning)中1.0×10細胞/mlで再懸濁した。4週齢のNOD SCIDガンマ(NSG)マウス(Charles River)の脇腹の両側に、100μlの細胞懸濁液を直接注射した。腫瘍成長を2日おきにキャリパーで監視し、腫瘍容積を、式Tvol=1/2(長さ×幅)を用いて計算した。腫瘍が100mmに達したら、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為化し、パルボシクリブ30mg/Kg/d(p.o.)、OPG-Fc10mg/kg(i.p.)3×/週、パルボシクリブ+OPG-Fc10mg/Kg又はビヒクルで21日間連続治療した。マウスに0.25mg/Kg BWのペントバルビタールナトリウム(Eutasil)を投与することで犠牲にした。剖検時、原発腫瘍を採取して、パラフィン包埋又はスナップショットフリージング(snapshot freezing)のために2つの断片に切断した。臓器を採取してパラフィン包埋した。
【0244】
免疫組織化学
Ki67及びp-pRb(Ser807/11)を検出するために、FFPE試料からの5μmの組織切片を免疫組織化学(IHC)によって染色した。PT Link Pre-Treatment Module for Tissue Specimens(Dako)内で、抗原賦活化溶液pH9.0を用いて、94℃で20分間脱パラフィン及び抗原賦活化を実施した。RTで10分間Preoxidase Blocking Solution(Dako)で内因性ペルオキシダーゼをブロックし、RTで20分間Protein Block Solution(Dako)でインキュベートすることにより全タンパク質をブロックした。スライドを、Antibody Diluent(Dako)中、ウサギ抗ヒトKi67一次抗体(1:100,MIB-1,Dako)又はウサギモノクローナル抗体抗ホスホ-Rb(Ser807/811)(D20B12)(1:400,#8516,Cell Signaling)で30分間インキュベートした。スライドを、EnVision(商標)Detection System、ウサギ/マウス(Dako)で製造業者の指示書に従ってインキュベートし、続いてDAB(Dako)で5分間インキュベートした。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、Quick-D封入剤(Klinipath)で封入し、明視野顕微鏡(Leica ICC50 HDカメラを備えるLeicaDM750)で可視化した。全核領域(ヘマトキシリン染色核領域)にわたるDAB染色核領域の割合を微積分することによって免疫比を得た(5野、400×、ImageJソフトウェア)。
【0245】
sTRAcP 5b ELISA
MouseTRAP(TRAcP 5b)ELISAキット(IDS)を製造者の使用説明書に従って使用して、TRAcP 5bをマウス血清中で定量化した。
【0246】
統計解析
GraphPad Prism6ソフトウェアを用いてデータを解析した。各実験で実施された複製の回数は示されている。一方向ANOVA又は対応のないt検定(インビトロ実験);双方向ANOVA(腫瘍量及びマウスBW)によって統計を実施した。結果は平均±SEMとして示され、p値<0.05は有意であると見なされた。
【0247】
本明細書中に引用される刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、あたかも各参考文献が参照により援用されるように個別且つ明確に示されているかのように、またあたかもその全体が本明細書に記載されているかのようであるのと同程度まで参照により本明細書に援用される。
【0248】
本発明の説明に関する(とりわけ以下の特許請求の範囲に関する)「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その」という用語並びに類似の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。「含む」、「有する」、「包含する」及び「含有する」という用語は、特記しない限り、オープンエンドの用語(すなわち「含むが、限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。
【0249】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に別段の指示がない限り、単にその範囲及び各端点にある別個の値の各々を個々に指す簡略法の役割を果たすものに過ぎず、別個の値及び端点の各々は、それが個々に本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0250】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるあらゆる例又は例示的な語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明を更に明らかにするものであり、別段の主張がない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書のいかなる表現も、特許請求されていない要素を本発明の実施に不可欠のものとして示していると解釈されるべきではない。
【0251】
本明細書には、本発明の好ましい実施形態が記載されており、それは、本発明を実行するために本発明者らに知られている最良の形態を含む。それらの好ましい実施形態の変形形態は、先の記載を読むことで当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形形態を採用することを期待し、また、本発明者らは、本明細書で具体的に記載されている形態以外で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用される法により認められる通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての変更形態及び均等物を含む。更に、上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、その全ての可能な変形形態において本発明に包含される。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19
図20
図21
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図22-2】
図23
図24-1】
図24-2】
図25
図26
図27
図28-1】
図28-2】
図28-3】
図30
【配列表】
2022530241000001.app
【国際調査報告】