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特表2022-530246自己位置推定及び環境地図作成の同時実行
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(54)【発明の名称】自己位置推定及び環境地図作成の同時実行
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220621BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564153
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2020061508
(87)【国際公開番号】W WO2020224996
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】19305570.4
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516373683
【氏名又は名称】テラビー エス ア エス
【氏名又は名称原語表記】TERABEE S.A.S
【住所又は居所原語表記】90 Rue Fabre, F-01630 Saint-Genis Pouilly, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルッフォ, マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】コーヴァーマン, ジャン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ズラッド, クシシュトフ
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG12
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
可動ロボットの位置測定と、ロボットによる物体のマッピングとを同時に実行する方法。方法が、第1の迂回経路に沿ってロボットの距離測定センサで得られた測定値に基づいて壁追従アルゴリズムを実行し、ロボットに物体の周りの連続位置間を移動させるステップと、ロボットが第1の迂回経路の連続位置にある間に、測定値を距離測定センサから収集するステップと、取得された測定値を初期の局地的スナップショットに統合し、物体の形状を得るステップと、第1の迂回経路から決定経路を構成するステップと、ロボットを後続の迂回において決定経路上で誘導するステップと、決定経路上のさらなる決定位置にロボットを配置するステップと、さらなる測定値を距離測定センサから収集するステップと、さらなる測定値を区域のさらなる局地的スナップショットに統合するステップと、走査マッチングアルゴリズムを遂行し、ロボットの実位置を決定するステップと、を含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ロボットの位置測定と、前記ロボットによる区域内の物体のマッピングとを同時に実行する方法であって、
少なくとも距離測定センサを有する前記ロボットを用意するステップであり、前記距離測定センサの光学的測定軸が、前記ロボットの基準フレームに対して静的に取り付けられており、さらに、前記ロボットが、前記少なくとも1つの距離測定センサによって、前記物体を検出することができる、用意するステップと、
前記ロボットを前記物体の周りで誘導することを可能にする壁追従アルゴリズムによって得られた第1の迂回経路に沿って、前記少なくとも1つの距離測定センサを用いて得られた複数の測定値に基づいて、前記壁追従アルゴリズムを実行し、前記ロボットに前記物体の周りの複数の連続する位置間を移動させるステップと、
前記ロボットが前記第1の迂回経路のそれぞれの前記連続する位置にある間に、前記複数の測定値を前記少なくとも1つの距離測定センサから収集するステップと、
前記複数の連続する位置でそれぞれ取得された前記複数の測定値を、前記区域の初期の局地的スナップショットに統合し、これにより、各第1の迂回の後に、前記物体の走査された形状を得るステップと、
前記第1の迂回経路から決定経路を構成するステップであり、前記決定経路が、前記ロボットを、後続の迂回において、前記物体の周りで誘導することが意図されている、構成するステップと、
前記ロボットを、後続の迂回において、前記決定経路上で誘導するステップと、
前記後続の迂回の間に前記決定経路上のさらなる決定位置に前記ロボットを配置するステップと、
前記ロボットが前記さらなる決定位置にある間に、さらなる測定値を前記少なくとも1つの距離測定センサから収集するステップと、
前記後続の迂回毎に、前記さらなる測定値を、前記区域のさらなる局地的スナップショットに統合するステップと、
前記さらなる局地的スナップショット毎に、前記初期の局地的スナップショットとの走査マッチングアルゴリズムを遂行し、前記物体に対する前記ロボットの実位置を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の迂回経路の後に前記決定経路を構成する前記ステップが、楕円形状、又は一連の直線及び円弧のうちのいずれか1つを前記物体の前記走査された形状にフィッティングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物体に対する前記ロボットの前記決定された実位置によってオドメトリ誤差を補正すること、及び前記補正されたオドメトリ誤差に対応してロボットの位置を制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらなる距離測定センサを有する前記ロボットを用意するステップをさらに含み、前記さらなる距離測定センサ及び前記少なくとも1つの距離測定センサが、単一点センサ、多画素センサ、及び単一点「狭」視野(FoV)飛行時間(ToF)センサ、又は多画素カメラからの別個の画素のうちのいずれか1つであり、前記ロボットに配置され、その結果、それらが発光するそれぞれのビームが、前記物体の高さを包含するように、互いからわずかな角度の伝播方向を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの距離測定センサが、前記ロボットに配置された3次元カメラであり、その結果、前記3次元カメラの視野は、前記物体の前記高さを包含する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記壁追従アルゴリズムを実行する前記ステップが、前記物体の張出部を検出するために、前記物体の前記高さの測定値をさらに含む前記複数の測定値に基づき、前記壁追従アルゴリズムが、検出された張出部を、前記検出された張出部が垂直方向に地面に投影されるところから立ち上がっている、前記物体の壁と考える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのマッピング及びナビゲーションにおける、自己位置推定及び環境地図作成の同時実行(SLAM)の分野にある。
【背景技術】
【0002】
従来技術の自己位置推定及び環境地図作成の同時実行(SLAM)手法では、世界における特徴が、カメラ又はレーザ走査器を利用して見出される。世界における特徴は、たとえば、角部、壁、窓、レーザ走査器によって生成される世界の2次元スライスを含むことがある。SLAMは、通常、地図と地図内のロボットの位置測定とを更新しながら環境を継続的にマッピングすることによって、地図におけるロボットの位置を見出すための技術である。SLAMの課題について著しい量の研究が存在してきた。最も普及している手法は、ラオ-ブラックウェル化粒子フィルタSLAM[4]又はHector SLAM[5]である。
【0003】
Hector SLAM手法は、「平面地図におけるレーザ走査(LIDAR)の統合化に基づく2D SLAMシステムと、慣性計測装置(IMU)に基づく統合化3Dナビゲーションシステムとを組み合わせる」[5]。
【0004】
従来のレーザ走査器は、回転する部品を含むデバイスである。たとえば従来のレーザ走査器は、自身を中心に回転し、測定データを統合する、1つの飛行時間(ToF)レーザセンサを備えることがある。
【0005】
走査マッチングは、たとえば、2つのレーザ走査又は点群の相対位置及び向きの回復に関する、周知の技術である。走査マッチングアルゴリズムの多くの異なる変形形態が存在し、中でも反復最近傍点(iterative closest point)(ICP)が最も普及している。アルゴリズムは、誤差計量、通常、マッチングされた対の座標間の自乗差の和などの、起点から基準点群までの距離、を最小化することが求められる、変換(並進移動及び回転の組み合わせ)を繰返し改定する。ICPは、3次元モデルの位置合わせに、広く利用されているアルゴリズムのうちの1つである[3]。
【0006】
図1を参照すると、ロボットによって識別されている周囲環境12の走査の例が含まれている(ロボットは図1に表示されていない)。x-y基準系を用いて2次元空間に表現された輪郭によって描かれた、周囲環境12が、示されている。周囲環境12は、2回の連続した走査の結果である、2つの異なる図形10及び11で表示されている。両方の図形間の差は、図形10が走査された位置からロボットが数度回転された後に、図形11がロボットによって連続して走査されたことである。
【0007】
従来技術引用文献[2]が、疎なセンシングを用いた自己位置推定及び環境地図作成の同時実行(SLAM)を開示している。この文書は、単一の走査から環境の特徴を抽出するには不十分であるデータを提供する、非常に疎なセンシングを用いるロボットの課題に対処する。SLAMは、ロボットが移動して取得された、いくつかの走査を、複数の走査にグループ化するように変更されており、この方法は、オドメトリ誤差による高い測定不確実性の代わりに、より高いデータ密度を達成する。この意味で、従来技術引用文献[2]が、粒子フィルタの実装と合わせて、疎な設定を用いるロボットに、正当に効果的なSLAMアルゴリズムをもたらす。
【0008】
図14Aは、レーザ走査器によって取得された走査の通常の密度を示している。レーザ走査器を用いてロボット152によって収集された物体151の単一の走査は、走査される物体151の著しく高い空間的サンプリング密度153を有する。対照的に、図14Bは、そのような走査密度は疎であると考慮され得る、わずかに5つの半径方向に間隔を空けられた距離センサビーム154を使用して走査されたデータ密度を示している。通常、疎なセンシングは、走査の低い空間的サンプリング密度を示す。[2]
本発明が対処することを目指す課題の1つは、従来技術に対する代替解決策の実現である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、可動ロボットの位置測定と、ロボットによる区域内の物体のマッピングとを同時に実行する方法を提供する。方法が、少なくとも距離測定センサを有するロボットを用意するステップであり、ロボットが、少なくとも1つの距離測定センサによって、物体を検出することができる、用意するステップと、ロボットを物体の周りで誘導することを可能にする壁追従アルゴリズムによって得られた第1の迂回経路に沿って、少なくとも1つの距離測定センサを用いて得られた複数の測定値に基づいて、壁追従アルゴリズムを実行し、ロボットに物体の周りの複数の連続する位置間を移動させるステップと、ロボットが第1の迂回経路のそれぞれの連続する位置にある間に、複数の測定値を少なくとも1つの距離測定センサから収集するステップと、複数の連続する位置でそれぞれ取得された複数の測定値を、区域の初期の局地的スナップショットに統合し、これにより、各第1の迂回の後に、物体の走査された形状を得るステップと、第1の迂回経路から決定経路を構成するステップであり、決定経路が、ロボットを、後続の迂回において、物体の周りで誘導することが意図されている、構成するステップと、ロボットを、後続の迂回において、決定経路上で誘導するステップと、後続の迂回の間に決定経路上のさらなる決定位置にロボットを配置するステップと、ロボットがさらなる決定位置にある間に、さらなる測定値を少なくとも1つの距離測定センサから収集するステップと、後続の迂回毎に、さらなる測定値を、区域のさらなる局地的スナップショットに統合するステップと、さらなる局地的スナップショット毎に、初期の局地的スナップショットとの走査マッチングアルゴリズムを遂行し、物体に対するロボットの実位置を決定するステップと、を可能にさせる。
【0010】
好ましい実施形態では、第1の迂回経路の後に決定経路を構成するステップが、楕円形状、又は一連の直線及び円弧のうちのいずれか1つを物体の走査された形状にフィッティングすることを含む。
【0011】
さらなる好ましい実施形態では、方法が、物体に対するロボットの決定された実位置によってオドメトリ誤差を補正すること、及び補正されたオドメトリ誤差に対応してロボットの位置を制御することをさらに含む。
【0012】
さらなる好ましい実施形態では、方法が、さらなる距離測定センサを有するロボットを用意するステップをさらに含み、さらなる距離測定センサ及び少なくとも1つの距離測定センサが、単一点センサ、多画素センサ、及び単一点「狭」視野(FoV)飛行時間(ToF)センサ、又は多画素カメラからの別個の画素のうちのいずれか1つであり、ロボットに配置され、その結果、それらが発光するそれぞれのビームが、物体の高さを包含するように、互いからわずかな角度の伝播方向を有する。
【0013】
さらなる好ましい実施形態では、少なくとも1つの距離測定センサが、ロボットに配置された3D(3次元)カメラであり、その結果、3Dカメラの視野は、物体の高さを包含する。
【0014】
さらなる好ましい実施形態では、壁追従アルゴリズムを実行するステップが、物体の張出部を検出するために、物体の高さの測定値をさらに含む複数の測定値に基づき、壁追従アルゴリズムが、検出された張出部を、検出された張出部が垂直方向に地面に投影されるところから立ち上がっている、物体の壁と考える。
【0015】
本発明はここで、好ましい実施形態の詳細な説明を使用して、及び図面を参照して説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術の一例による、ロボットからSLAMシステムを用いて操作された連続走査の結果を示す図である。
図2】本発明の一例の実施形態による、ToFセンサを用いてビームを発光するロボットの概略図である。
図3図2と同一だが別の角度から見たロボットの概略図である。
図4】本発明による一例のシステムを用いて取得されたスナップショットの結果の図である。
図5A】物体の周りに描かれた決定経路を有する物体の一例を含む図である。
図5B】物体の周りに描かれた決定経路を有する物体の一例を含む図である。
図6】本発明の好ましい実施形態による、局地的スナップショットが得られ得る方法を例示するフローチャートの図である。
図7A】本発明の一例の実施形態による、センサ設定構成の概略図である。
図7B】本発明の一例の実施形態による、センサ設定構成の概略図である。
図8】物体の周りの決定経路上のロボットの行程上の2つの位置に、ロボットが示されている一例を示す図である。
図9A】ロボットから測定されるときの、及び操作するために壁追従アルゴリズムによって必要とされる、物体からの相対距離及び角度の概略図である。
図9B】ロボットから測定されるときの、及び操作するために壁追従アルゴリズムによって必要とされる、物体からの相対距離及び角度の概略図である。
図9C】ロボットから測定されるときの、及び操作するために壁追従アルゴリズムによって必要とされる、物体からの相対距離及び角度の概略図である。
図10】物体の周りの軌道が作成され得る方法の一例を示す図である。
図11】オドメトリ基準フレーム内のロボットの位置の変化を示す図である。
図12】世界、オドメトリ、ロボット、及びセンサ基準フレームの従属関係を示す図である。
図13A】張出部を有する物体の特殊な事例を示す図である。
図13B】張出部を有する物体の特殊な事例の地面投影を示す図である。
図14A】疎でないセンシングの例を示す図である。
図14B】疎なセンシングの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
要約すれば、本発明は、ロボットと区域内のロボットの近くに位置する物体との間の別個の距離測定センサを携行するロボットと、ロボットを所望の場所に配置する移動手段と、を含む下記の方法及びシステムによって具現化され得る。含まれる特徴のこのリストは、本発明を実施する単なる例示である。さらなる詳細は、本明細書の以下に記載されている。
【0018】
本発明によれば、方法は、以下のステップの実施を含み得る。
1.ロボットを区域内に配置される物体の周りで誘導することを可能にする壁追従アルゴリズムを実行し、ロボットに物体の周りの複数の連続する位置間を移動させること。
2.ロボットがそれぞれの決定位置にある間に、測定結果(点)を別個のセンサから収集すること。
3.ロボットの連続する決定位置で取得された測定結果を、区域の初期の局地的スナップショットに統合すること。
4.第1の局地的スナップショットから決定経路を生成すること。
5.ロボットを物体の周りの決定経路上で、後続の物体の周りの移動のために、誘導すること。
6.ロボットを、後続の移動中に、さらなる決定位置に配置すること。
7.ロボットがさらなる決定位置にある間に、測定結果を別個のセンサから収集すること。
8.ロボットの連続するさらなる決定位置で取得された測定結果を、区域のさらなる局地的スナップショットに統合すること。
9.さらなる局地的スナップショットに、初期の局地的スナップショットとの走査マッチングアルゴリズムを遂行し、物体に対するロボットの実位置を決定すること。
【0019】
発明の方法の実施の例
レーザ走査器(複数可)を使用する従来技術のSLAMと本発明のSLAM解決策(複数可)との間の主要な違いは、本発明が、レーザ走査器を使用せずに機能し、その代わりに複数の静的に取り付けられたToFセンサのアレイを活用することである。この文脈中の、静的に取り付けられた、は、ToFセンサがロボットの基準フレームに対して移動しないことを意味する。本発明で使用されるToFセンサは、赤外線(IR)に基づくことが好ましい。
【0020】
提示の例が、ToFセンサを活用するが、これらは、可能性がある距離測定センサの例であるにすぎない。実施例は、この構成で記載されていくことになるが、距離測定センサは、以下の列挙の、単一点センサ、多画素センサ、単一点「狭」視野(FoV)飛行時間(ToF)センサ、又は3Dカメラのうちのいずれか1つであることが理解される。
【0021】
ここで図2及び3を参照すると、これらは各々、物体21の隣の空間22にあるロボット20を示している。ロボット20の図は、図2では、第1の角度から、図3では第1の角度とは異なる第2の角度から見られている。ロボット20は、動作する空間22の3次元地図(図2及び3に表示されていない)を作成するように構成されている。
【0022】
例示の状況では、物体21は、ロボット20が動作する空間22の床23から垂直方向に突出している、荷物を運搬するパレットである。図2及び3の両方で、垂直方向の別個のセンサ25が物体21を走査するために使用される様子が、第1のビーム24によって示されている。ロボット20の第1の側面及び第2の側面にそれぞれ取り付けられた水平方向の別個のセンサ27が、衝突防止目的だけのために使用されている様子が、第2のビーム26によってさらに示されている。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、垂直方向の別個のセンサ25の各々は、ToFセンサであり、ToFセンサは、低発散のビームに整形された電磁スペクトルの近赤外領域の光を使用し、その赤外線ビーム(IRビーム)を、水平面から逸脱する方向に発光し、ここで、水平面は、床23の表面に実質的に平行であり、その上を垂直方向の別個のセンサ25を携行するロボット20が動作し得る。水平方向の別個のセンサ27の各々は、水平面に実質的に平行な方向にIRビームを発光するToFセンサである。
【0024】
回転機構の効果によって360°で周辺部を走査するレーザ走査器などの従来技術のSLAM解決策とは対照的に、本発明で使用される別個のセンサは、静的なデバイスであり、ロボットが期間中で実質的に固定された位置に配置されているいずれの単一の決定期間においても、環境の完全な表現は得られない。したがって図1の結果の代わりに、ロボット52が、物体54までの距離を測定し、それを空間55に関する単一の点51として表示している、図4に示されている結果が得られた。
【0025】
本発明によれば、別個のセンサを携行するロボットが、物体の周りを移動し物体を完全に迂回するようにプログラミングされている。このことは、図5A及び5Bの2例によって示されており、それぞれ、ロボット(これらの図には図示せず)は、それぞれ物体62、64の第1の迂回に影響を与えた後、第2の迂回から、物体62及び64の周り、決定経路61及び63上を移動し、ここで第1の迂回は、壁追従アルゴリズムに従っていた。各決定経路61及び63は、楕円フィッティングアルゴリズムの利用によって作成されることが好ましい。楕円形は、物体が第1の迂回の間に走査された後に壁追従アルゴリズムを用いて、楕円形を拡大縮小することによって、フィッティングされ、任意の位置で、物体の輪郭とロボットの輪郭との間の経路の重なり合いを防止する短い安全距離を導入する。経路の異なる形状は、たとえば、楕円形又はスーパー楕円形が使用され得る。図10は、そのような楕円形及び丸みを帯びた長方形状(円弧及び直線)の経路の一例を示している。
【0026】
張出部を有する物体の特殊な事例がさらに考慮される。張出部は、同一の物体の下部からはみ出して上方に延出する、物体の一部として定義され得る。図13Aは、物体140の張出部141が垂直方向に地面に投影されるような状況を示している。物体140の2次元の輪郭及びその張出部142が効果的に、2次元の輪郭に投影されるように、図13Bで示されている。
【0027】
ロボットが物体の周りを移動するので、別個のセンサによって取得される測定結果(点)は、統合され、物体を含む世界の局地的スナップショットが作成される。このことは、図6に示されおり、局地的スナップショットが本発明の一例の実施形態により得られ得る過程を、フローチャートが詳細に説明している。
【0028】
ここで基準フレームの従属関係を説明する図12を参照すると、各別個のセンサ135は、ロボット基準フレーム133内のロボットの中心位置に対して、画定されたその自身の位置を有する。オドメトリ基準フレーム132に対するロボットの位置及びロボット基準フレーム133に対するセンサの位置を有することで、変換するステップ(図6の「変換装置」とラベル付けられた四角)において、変換装置が、すべてのセンサ(図12では1つのセンサのみの例が示されている)によって収集された物体137の測定値136を得て、それをオドメトリ基準フレーム132に変換し、点(センサ基準フレーム134で収集された単一の測定値136)をオドメトリ基準フレーム132に効果的に配置する。集合させるステップ(図6の「集合装置」とラベル付けられた四角)では、集合装置は、すべての点を単一の点群に統合するローリングバッファを活用する。点群は、オドメトリ基準フレーム132内の単一の点の集合である。ゆえに図6は、世界基準フレーム内の単一の点の複数の集合を、点群1~点群nとラベル付けされた四角内に、示している。
【0029】
局地的基準フレーム(オドメトリフレーム)内のロボットの中心位置は、オドメトリのおかげで知られ、たとえばエンコーダがロボット動作時のホイールの回転数を計算する(図6では図示せず)。図11を参照すると、位置(a)にあるロボット中心121が、そのホイール123を数度回転させ、オドメトリ基準フレーム124内の位置(b)で終了する。
【0030】
したがって、各別個のセンサの測定結果は、局地的基準オドメトリフレーム内の点として変換され、局地的スナップショットを作成する。これは、「既知の姿勢を用いたマッピング」として広く知られている。
【0031】
別個のセンサによって取得された点を統合するために、点が別個のセンサによって取得されるそれぞれの瞬間に、ロボットがどこに位置しているのかを知ることが必要である。この方法で、ロボットの場所(位置)及び別個のセンサの測定値は、作成されつつある空間の3D地図上の新たな点を決定することができる。
【0032】
ロボットの場所を決定するために、本発明は、別の既知の技術を活用し得る。好ましい例では、本発明は、オドメトリを活用する。オドメトリは、古い(先行の)位置に基づいて新たな位置を基本的に計算することである。たとえば、ロボットを移動させるホイールの回転数を計算することによって、位置のわずかな変化を検出することができる。
【0033】
表1は、従来技術のSLAMと本発明で達成されるSLAMとの間の主要な違いを要約している。
【表1】
【0034】
ロボットが物体の周りを移動する様子
ロボットは、以下で説明されているような2つの可能性のある事例のうちのいずれか1つにおいて、物体の周りを移動する。
【0035】
事例1では、ロボットは、物体の周りの第1の移動を行い、それを迂回する。ロボットは、第1の移動を開始する前に物体の形状を認知しておらず、壁追従アルゴリズムが実行され、第1の迂回が完了される。
【0036】
事例2では、ロボットは、後続の(事例1の第1の迂回の後の)、事例1中に移動した第1の迂回の後に生成された決定経路に沿って物体の周りを迂回する。実際、ロボットが事例1を既に実行しているので、物体は、事例2の前に既に少なくとも1度走査されている。
【0037】
事例1-第1の迂回/物体の周りの移動
ロボットは、「壁追従」アルゴリズムを使用し、第1の物体/パレットの走査を作成する。「壁追従」アルゴリズムが使用される方法は、たとえば参照文献[1]などで、当技術分野でよく知られており、この理由で本明細書では全体の詳細を説明しないことにする。壁追従アルゴリズムを用いて、ロボットは、物体の周縁部側面に相当する「壁」のセグメント表現を作成し、物体から離れる方向に一定の距離で平行に留まることを試行する。図9A及び9Bを参照すると、壁追従アルゴリズムによって操作するために必要とされる、物体106からのロボット105の相対的な距離101及び角度102の概略図が示されている。単一の画素センサ、たとえば、図9Aで表示されているような、2つの単一の画素センサが、利用されている場合、センサ測定値103及び104は、単純な三角関数を含む方程式のおかげで、ロボット105の中心から物体/パレット106までの距離101及び物体/パレット106への角度102を得ることができる。多画素距離センサが使用されている場合、多画素のうちの少なくとも2つからの信号を用いる単一の測定値107は、ロボット105の中心から物体/パレット106までの距離101、及び物体/パレット106への角度102を得るのに十分である。壁追従アルゴリズムは、距離101を一定に、角度102をゼロに維持するように構成されている。
【0038】
張出部を有する物体の特殊な事例は、考慮されるべきである。ここで図9C及び図7Bをそれぞれ参照すると、物体106のどこかに位置する張出部108が存在する場合、物体106の輪郭の最短の測定値が見出されるべきである。図7Bの破線で表示されているセンサビーム80~81の広がりによって示されているセンサの集合から、各測定値の第1の平面投影が遂行され、次に物体106の輪郭への最短の測定値が見出される。単一の画素センサが利用されている場合、たとえば、図9Cで表示されているような、2つの単一の画素センサが利用されている場合、センサ測定値110及び109が、センサの集合からの最短の投影されたセンサ測定値であり、したがって「壁追従」アルゴリズムへの入力情報として使用される。
【0039】
図7A及びBは、本発明の一例の実施形態によるセンサ設定構成の、正面視野の概略図を含む。各別個のセンサ(図7A及び7Bに図示せず)が、その発光するビームが、潜在的な張出部を含むパレットの全体高さを包含するように、隣接したセンサの隣接したビームからわずかな角度で伝播方向を有するように配置されている。このことは、センサホルダ82から物体83に伝播する破線で表示されたセンサビーム80~81の広がりによって示されている。図7Bは、物体が張出部86を含む特殊な事例を示す。そのような張出部は、センサビーム80~81によってさらに検出される。センサホルダ82は、ロボット基体84に堅固に取り付けられている。センサホルダ82及びロボット基体84は、図7で示されていないロボットの構成要素である。ロボットは、ロボットを移動させるように構成されているホイール85をさらに含む。
【0040】
図8は、物体92の周りのロボット90の行程上の2つの位置(a)及び(b)に、ロボット90が示されている一例を示している。第1の行程/物体92の周りの迂回を遂行するために、ロボット90は、壁追従アルゴリズムを使用する。ロボット90に取り付けられている2つのセンサ(図8に図示せず)は、互いから比較的小さな角度で放射を発し、ロボット90から物体92に延在する2つの破線93によって示されているように、物体92の方向に面している。結果として、本発明による方法及びシステムは、たとえば位置(a)にあるロボット90の方向に向けられている断片94のような、壁の断片を表現するセグメント(図8に図示せず)を作成する。ロボット90が位置(b)に進みだすと、壁追従アルゴリズムは、物体92の壁の断片95及び96に対応するセグメント(図8に図示せず)を作成する。壁追従アルゴリズムは、ロボット90と物体92との間の距離97を実質的に一定に維持するように、ロボットのホイールの速度を制御する。図9を参照すると、距離を定義する一例の距離101が、ロボットの中心とパレットセグメントの最も近い点との間の距離によって画定されている。
【0041】
事例2-後続の迂回/物体の周りの移動
第1の物体走査が、第1の物体の周りの迂回後に利用可能になると、その後続の物体の周りの移動へと続くことになる、走査された物体の周りの決定経路が、構成される。
【0042】
決定経路は、走査された物体(図5及び上記の対応する記載を参照のこと)に楕円形をフィッティングすること又は一連の直線及び円弧をフィッティングすること、のいずれかによって構成される。実際、楕円形を除く他の形状が、たとえばフィッティングされた楕円形の幅及び高さに基づいて生成され得、図10にあるような直線と接続された2つの半円の形状が作成され得る。楕円形のサイズは、パラメータ化され得る。
【0043】
物体の周りのロボットのすべての迂回の局地的スナップショットすなわち各迂回後に走査された形状を有すること、及び局地的スナップショットを物体形状の初期の局地的スナップショットと比較することは、物体に対するロボットの相対的位置をもたらす。
【0044】
ロボットは、オドメトリのみを無期限に使用して(たとえばロボットのホイールの回転数を計算するエンコーダ)、構成された決定経路に理論的に追従し得、しかしながら、実際の筋書きでは、ロボットは、ドリフトに遭遇し得、それによってホイールのエンコーダの回転数は、床との摩擦及び他の効果により、ロボットの変位を正確に表現せず、たとえば、ホイールは、その場でスピンし得、したがってオドメトリが移動を検出しても、ロボットは移動しない。
【0045】
ドリフトは、上述したように時間と共に蓄積し得るので、又はオドメトリが前の位置に基づいて計算された新たな位置に依存するという事実により、わずかなドリフト誤差をも含む新たな位置の測定での誤差が存在する場合、物体の2つの局地的スナップショット(たとえば初期のもの及び目下のもの)を走査マッチングすることによって、ドリフト蓄積を防止すること、及びそれらの間の相対的差異が何であるのかを見出すことが可能である。この相対的差異は、オドメトリにより、ロボットのドリフトを表現し、ロボットの計算された位置を補正するために使用され得る。
【0046】
参考文献
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[2] SLAM withsparse sensing, Kristopher R. Beevers, Wesley H. Huang, to appear in the 2006IEEE International conference on Robotics & Automation (ICRA 2006).
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[4] Grisetti,Giorgio, Cyrill Stachniss, and Wolfram Burgard. "Improved techniques forgrid mapping with rao-blackwellized particle filters." IEEE transactionson Robotics 23.1 (2007): 34.
[5] Kohlbrecher,Stefan, et al. "A flexible and scalable slam system with full 3d motionestimation." 2011 IEEE International Symposium on Safety, Security, andRescue Robotics. IEEE, 2011.
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14(a)】
図14(b)】
【国際調査報告】