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特表2022-530264乳児バッテン病の治療のための髄腔内および静脈内組合せ遺伝子療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(54)【発明の名称】乳児バッテン病の治療のための髄腔内および静脈内組合せ遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20220621BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220621BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220621BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220621BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220621BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20220621BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220621BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220621BHJP
   A61K 38/46 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
A61K48/00
C12N7/01 ZNA
A61K9/16
A61K35/76
A61P25/00
A61P25/28
C12N15/864 100Z
C12N15/55
C12N15/12
A61K38/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564486
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2020030427
(87)【国際公開番号】W WO2020223322
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/840,360
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514299550
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
(71)【出願人】
【識別番号】521473011
【氏名又は名称】ティモシー ジェイ.ミラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ジェイ.ミラー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェイ.グレイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA31
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA31
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB21
4C076CC01
4C084AA13
4C084CA01
4C084CA17
4C084CA18
4C084CA20
4C084DC22
4C084MA41
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA15
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA15
4C087ZC75
(57)【要約】
CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドの髄腔内投与および該ポリヌクレオチドの静脈内投与の組合せを含んでなる、それを必要とする対象においてIBDまたはIBD関連障害を治療する方法が提供される。CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドは野生型CLN1ポリヌクレオチドである。別の態様において、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドは該ポリヌクレオチドのコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含んでなり、またはその相補体はヒト細胞中での発現のためにコドン最適化されている。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において乳児バッテン病(IBD)またはIBD関連障害を治療する方法であって、CLN1遺伝子を含んでなるポリヌクレオチドを含んでなる第1のAAVウイルス粒子の有効量の髄腔内投与およびCLN1遺伝子を含んでなるポリヌクレオチドを含んでなる第2のAAVウイルス粒子の有効量の静脈内投与を行い、それによりIBDまたはIBD関連障害を治療することを含んでなる、方法。
【請求項2】
前記髄腔内投与が前記静脈内投与に先行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のAAVウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドおよび/または前記第2のAAVウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドが、野生型CLN1遺伝子配列、またはコドン最適化されたCLN1遺伝子配列を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドおよび/または前記第2のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドが、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性、任意選択的に配列番号1に対して100%の同一性を有するコドン最適化されたCLN1遺伝子配列を含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドおよび/または前記第2のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドが、配列番号3に対して少なくとも約90%の同一性、任意選択的に配列番号3に対して100%の同一性を有するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象がヒト患者である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記髄腔内投与および前記静脈内投与が症状発症後に行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記髄腔内投与および前記静脈内投与が症状発症前に行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2のウイルス粒子が、AAV2、AAV8、AAV6、AAV8、およびAAV9ウイルス粒子から独立して選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記AAVウイルス粒子が、野生型カプシドタンパク質、突然変異型カプシドタンパク質、組織向性カプシドタンパク質、または野生型カプシドタンパク質と比較して変更されたトロピズムを有する改変されたカプシドタンパク質のうちの1つまたは複数を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記AAVウイルス粒子がAAV9ウイルス粒子である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
髄腔内投与のための前記有効量が、約1.0×1013vg/kg~約1.0×1016vg/kg、好ましくは1.0×1014vg/kg~1.0×1015vg/kgである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
静脈内投与のための前記有効量が、約1.0×1012vg/kg~約2.0×1015vg/kg、好ましくは1.0×1013vg/kg~2.0×1014vg/kgである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドおよび/または前記第2のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドがプロモーターに作動可能に連結している、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドおよび/または前記第2のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドがエンハンサーに作動可能に連結している、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドおよび/または前記第2のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドがイントロンに作動可能に連結している、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドおよび/または前記第2のウイルス粒子の前記ポリヌクレオチドがポリアデニル化シグナルに作動可能に連結している、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のウイルス粒子および/または前記第2のウイルス粒子が、5’から3’方向に、AAV ITR、エンハンサー、プロモーター、イントロン、ヒトCLN1遺伝子を含んでなるポリヌクレオチド、ポリアデニル化部位、およびAAV ITRを含んでなるベクターゲノムを含んでなる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記エンハンサーがCMVエンハンサーであり、前記プロモーターがニワトリベータアクチンプロモーターであり、前記イントロンがハイブリッド/改変されたMVMイントロンであり、かつ/または前記ポリアデニル化部位がウシ成長ホルモンポリアデニル化部位である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のウイルス粒子および前記第2のウイルス粒子が同一のベクターゲノムを含んでなる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記障害が、乳児、遅発乳児、若年、または成人発症型神経セロイドリポフスチン症である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
薬学的に許容される担体中の前記第1のウイルス粒子および/または前記第2のウイルス粒子を含んでなる医薬組成物ならびに請求項1~21のいずれか一項に記載の方法による使用のための使用説明書を含んでなる、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月29日に出願された米国仮出願第62/840,360号の優先権の利益を主張し、該仮出願の内容は参照により全体が全ての目的のために本明細書に援用される。
【0002】
配列表の組込み
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は参照により全体が本明細書に援用される:配列表のコンピュータ読取り可能な形式のコピー(ファイル名:ABEO_004_01WO_SeqList_ST25.TXT、作成日:2020年4月27日、ファイルサイズ:約5.6キロバイト)。
【背景技術】
【0003】
乳児ニューロンリポフスチン症(乳児バッテン病もしくは「IBD」)または乳児神経セロイドリポフスチン症(INCL)は、CLN1遺伝子における突然変異により引き起こされ、常染色体劣性障害である。1p32に位置するCLN1遺伝子は、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(PPT1)と呼ばれるリソソーム酵素をコードする。PPT1欠損細胞は、自家蛍光性貯蔵材料を蓄積させ、機能不全となり、神経炎症、ニューロン喪失、および神経変性に繋がる。CLN1における突然変異を有する一部の小児は、症状のより後の発症およびより遅い疾患進行を有し、これは若年発症疾患に似ており、より典型的にはCLN3遺伝子における突然変異と関連付けられる。過去の治療としては、酵素置換療法、遺伝子療法および神経幹細胞の投与が挙げられる。
【発明の概要】
【0004】
それを必要とする対象においてIBDまたはIBD関連障害を治療する方法であって、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドの髄腔内投与およびその後の該ポリヌクレオチドの静脈内投与を行い、それによりIBDまたはIBD関連障害を治療することを含んでなる、またはから本質的になる、更にまたはからなる、方法が本明細書において提供される。1つの態様において、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドは野生型CLN1ポリヌクレオチドを含んでなる。別の態様において、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドのコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含んでなり、またはその相補体はヒト細胞中での発現のためにコドン最適化されている。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号1もしくは配列番号2のヌクレオチド配列、もしくはこれらのそれぞれに対して少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列またはこれらの相補体を含んでなり、等価物はコドン最適化されたヌクレオチドにおいて同一である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実例的なCLN1発現カセットのマップを示す。
図2図2は、scAAV9/CLN1療法を投与されたマウスにおけるPPT1の血清酵素活性を示す。IT=腰椎髄腔内注射;IV=静脈内注射;Het=異種;KO=ノックアウト。
図3A図3Aは、4または12週齢時にCLN1 AAVベクターを髄腔内に投与されたCLN1ノックアウトマウスのコホートについての生存曲線を示す。図3Bは、20または26週齢時にCLN1 AAVベクターを髄腔内に投与されたCLN1ノックアウトマウスのコホートについての生存曲線を示す。
図3B図3Aは、4または12週齢時にCLN1 AAVベクターを髄腔内に投与されたCLN1ノックアウトマウスのコホートについての生存曲線を示す。図3Bは、20または26週齢時にCLN1 AAVベクターを髄腔内に投与されたCLN1ノックアウトマウスのコホートについての生存曲線を示す。
図4A図4Aは、4週齢時にCLN1 AAVベクターを髄腔内にまたは髄腔内+静脈内に投与されたCLN1ノックアウトマウスのコホートについての生存曲線を示す。図4Bは、20週齢時にCLN1 AAVベクターを髄腔内に、静脈内に、または髄腔内+静脈内に投与されたCLN1ノックアウトマウスのコホートについての生存曲線を示す。
図4B図4Aは、4週齢時にCLN1 AAVベクターを髄腔内にまたは髄腔内+静脈内に投与されたCLN1ノックアウトマウスのコホートについての生存曲線を示す。図4Bは、20週齢時にCLN1 AAVベクターを髄腔内に、静脈内に、または髄腔内+静脈内に投与されたCLN1ノックアウトマウスのコホートについての生存曲線を示す。
図5A図5Aは、症状発症前に異なる用量で異なる投与経路を介してCLN1 AAVベクターを投与されたCLN1ノックアウトマウスについての生存曲線を示す。図5Bは、症状発症後に異なる用量で異なる投与経路を介してCLN1 AAVベクターを投与されたCLN1ノックアウトマウスについての生存曲線を示す。
図5B図5Aは、症状発症前に異なる用量で異なる投与経路を介してCLN1 AAVベクターを投与されたCLN1ノックアウトマウスについての生存曲線を示す。図5Bは、症状発症後に異なる用量で異なる投与経路を介してCLN1 AAVベクターを投与されたCLN1ノックアウトマウスについての生存曲線を示す。
図6A図6A~6Bは、モリス水迷路における水泳速度評価を示す。
図6B図6A~6Bは、モリス水迷路における水泳速度評価を示す。
図7A図7A~7Bは、逆ワイヤーハングからの落下までの時間を示す。
図7B図7A~7Bは、逆ワイヤーハングからの落下までの時間を示す。
図8図8は、様々なマウス治療群についての相対的な生存時間に対する正規化された身体能力スコア(physical capacity score;PSC)を示す。
図9A図9Aは、新生仔としてのscAAV9/CLN1療法を投与された異種マウスにおける血清PPT1レベルを示す。図9Bは、新生仔としてのscAAV9/CLN1療法を投与された異種マウスにおける水泳速度を示す。
図9B図9Aは、新生仔としてのscAAV9/CLN1療法を投与された異種マウスにおける血清PPT1レベルを示す。図9Bは、新生仔としてのscAAV9/CLN1療法を投与された異種マウスにおける水泳速度を示す。
図10図10は、scAAV9/CLN1ベクターを用いて治療されたラットの異なる組織において測定されたPPT1酵素活性を示す。
図11図11は、scAAV9/CLN1ベクターを用いて治療されたラットにおけるAAV9に対する中和抗体のレベルを示す。
図12図12は、異なる時点におけるscAAV9/CLN1ベクターを用いて治療されたマウスにおけるIBD症状の発症の図表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
本開示の全体を通じて、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書が、引用を同定することによりまたはアラビア数字により参照される。アラビア数字により同定される刊行物の完全な引用は特許請求の範囲の直前に見出される。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本発明が関係する技術の状態をより充分に記載するために参照により全体が本開示に援用される。
【0007】
本技術の実施は、他に指し示されなければ、当業者の技術的範囲内である、有機化学、薬理学、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来技術を用いる。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989); Current Protocols In Molecular Biology (F. M. Ausubel, et al. eds., (1987)); the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, a Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987)).を参照。
【0008】
本発明の記載および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他に指し示さなければ、複数形も含むことが意図される。
【0009】
本明細書において使用される場合、「含んでなる」という用語は、組成物および方法は記載される要素を含むが、他を除外しないことを意味することが意図される。本明細書において使用される場合、から本質的になるという移行句(および文法的変形形態)は、記載される材料またはステップ、および記載される実施形態の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しない材料またはステップを包含することとして解釈されるべきである。そのため、「から本質的になる」という用語は、本明細書において使用される場合、「含んでなる」と等価であるとして解釈されるべきではない。「からなる」は、他の成分の微量より多くの要素および本明細書に開示される組成物を投与するための実質的な方法ステップを除外することを意味する。これらの各移行句により定義される態様は本開示の範囲内である。
【0010】
「約」という用語は、測定可能な値、例えば量または濃度および同種のものを指す場合に本明細書において使用される場合、指定される量の20%、10%、5%、1%、0.5%、または更には0.1%の変動を包含することが意味される。
【0011】
用語または「許容される」、「有効な」、もしくは「充分な」は、本明細書に開示される任意の成分、範囲、用量形態などの選択を記載するために使用される場合、前記成分、範囲、用量形態などは、開示される目的のために好適であることを意図する。
【0012】
また、本明細書において使用される場合、「および/または」は、付随して列記される項目のうちの1つまたは複数の任意および全ての可能な組合せの他に、選択肢(「または」)として解釈される場合に組合せの欠如を指すおよび包含する。
【0013】
「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」という用語は、本明細書において使用される場合、この名称と関連付けられる、パルボウイルス科ディペンドパルボウイルス属に属するウイルスのクラスのメンバーを指す。このウイルスの複数の血清型は遺伝子送達のために好適であることが公知であり、全ての公知の血清型は様々な組織種からの細胞に感染することができる。少なくとも11の順次に番号付けされたAAV血清型が当該技術分野において公知である。本明細書に開示される方法において有用な非限定的な例示的な血清型としては、11の血清型のいずれか、例えば、AAV2、AAV8、AAV9、またはバリアント血清型、例えば、AAV-DJおよびAAV PHP.Bが挙げられる。AAV粒子は、3つの主要なウイルスタンパク質:VP1、VP2およびVP3を含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる。1つの実施形態において、AAVは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV PHP.B、またはAAV rh74のAAVを指す。AAVは自己相補的AAV(scAAV)であってもよい。
【0014】
「細胞」という用語は、本明細書において使用される場合、任意選択的に対象または商業的に入手可能な供給源から得られる、原核または真核細胞を指すことができる。
【0015】
「真核細胞」は、モネラを除く生物界の全てを含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる。それらは、膜結合性の核を通じて容易に区別され得る。動物、植物、真菌、および原生生物は、真核生物、またはその細胞が内膜および細胞骨格により複雑な構造に組織化した生物である。最も特徴的な膜結合性の構造物は核である。特に記載されなければ、「宿主」という用語は、例えば、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞を含めて、真核宿主を含む。真核細胞または宿主の非限定的な例としては、類人猿、ウシ、ブタ、マウス、ラット、鳥類、爬虫類動物およびヒト、例えば、HEK293細胞および293T細胞が挙げられる。
【0016】
核または任意の他の膜結合性細胞小器官を通常欠いており、2つのドメイン、細菌および古細菌に分けられる「原核細胞」。染色体DNAに加えて、これらの細胞はまた、エピソーム上とも呼ばれる、環状ループ中に遺伝情報を含有することができる。細菌細胞は非常に小さく、大まかに動物ミトコンドリアのサイズ(約1~2μmの直径および10μmの長さ)である。原核細胞は3つの主要な形状:桿状、球状、およびらせん状を特徴とする。真核生物のような精巧な複製プロセスを経る代わりに、細菌細胞はバイナリー分裂により分裂する。例としては、バシラス(Bacillus)細菌、E.コリ(E. coli)細菌、およびサルモネラ(Salmonella)細菌が挙げられるがこれらに限定されない。
【0017】
「コードする」という用語は、核酸配列に適用される場合、そのネイティブな状態においてまたは当業者に周知の方法によりマニピュレートされた場合に、転写および/または翻訳されてポリペプチドおよび/またはその断片のためのmRNAを生成することができる場合に該ポリペプチドを「コードする」といわれるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖はそのような核酸の相補体であり、コーディング配列はそれらから導出され得る。
【0018】
「等価物」または「生物学的等価物」という用語は、特定の分子、生物学的、または細胞材料を指す場合に交換可能に使用され、所望の構造または機能性を依然として維持しながら最小の相同性を有するものを意図する。等価物ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの非限定的な例としては、それに対してもしくはポリペプチドもしくはポリヌクレオチド配列について少なくとも60%、もしくは代替的に少なくとも65%、もしくは代替的に少なくとも70%、もしくは代替的に少なくとも75%、もしくは代替的に80%、もしくは代替的に少なくとも85%、もしくは代替的に少なくとも90%、もしくは代替的に少なくとも95%の同一性を有するもの、またはそのようなポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドに対して高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドもしくはその相補体によりコードされるポリペプチドが挙げられる。高いストリンジェンシーの条件は本明細書に記載され、参照により本明細書に援用される。代替的に、その等価物は、参照ポリヌクレオチド、例えば、野生型ポリヌクレオチドに対して少なくとも70%、または代替的に少なくとも75%、または代替的に少なくとも80%、または代替的に少なくとも85%、または代替的に少なくとも90%、または代替的に少なくとも95%の同一性、または少なくとも97%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはそれに対する相補体によりコードされるポリペプチドである。最適化されたポリヌクレオチドまたはタンパク質に関する実施形態において、生物学的等価物は、不変を維持しながら参照ヌクレオチドもしくはアミノ酸の所望の同一性パーセントのヌクレオチドもしくはアミノ酸(例えば、それに対してもしくはポリペプチドもしくはポリヌクレオチド配列について少なくとも60%、もしくは代替的に少なくとも65%、もしくは代替的に少なくとも70%、もしくは代替的に少なくとも75%、もしくは代替的に少なくとも80%、もしくは代替的に少なくとも85%、もしくは代替的に少なくとも90%、もしくは代替的に少なくとも95%の同一性を有する)、またはそのようなポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドに対して高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドもしくはその相補体によりコードされるポリペプチドを有する。
【0019】
別の配列に対してある特定のパーセンテージ(例えば、80%、85%、90%、または95%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、アライメントされた場合に、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が2つの配列の比較において同じであることを意味する。アライメントおよび相同性または配列同一性パーセントは、当該技術分野において公知のソフトウェアプログラム、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1987) Supplement 30, section 7.7.18, Table 7.7.1に記載のものを使用して決定され得る。デフォルトのパラメーターがアライメントのために使用される。非限定的な例示的なアライメントプログラムは、デフォルトのパラメーターを使用するBLASTである。特に、例示的なプログラムとしては、以下のデフォルトのパラメーター:遺伝コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;記述(Descriptions)=50配列;ソート=高スコア;データベース=非重複、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIRを使用するBLASTNおよびBLASTPが挙げられる。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレス:ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLASTにおいて見出され得る。配列同一性および同一性パーセントは、それらをclustalW(ウェブアドレス:genome.jp/tools/clustalw/、最終アクセス2017年1月13日において利用可能)に組み込むことにより決定され得る。
【0020】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチドの間または2つの核酸分子の間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的のためにアライメントされ得る各配列中の位置を比較することにより決定され得る。比較された配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸により占有される場合、分子はその位置において相同的である。配列の間の相同性の程度は、配列により共有されるマッチするまたは相同的な位置の数の関数である。「無関連」または「非相同的」配列は、本開示の配列の1つと40%より低い同一性、または代替的に25%より低い同一性を共有する。
【0021】
本明細書において使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAがその後にペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は真核細胞中でのmRNAのスプライシングを含んでもよい。
【0022】
「遺伝子」は、転写および翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子産物」または代替的に「遺伝子発現産物」は、遺伝子が転写および翻訳された場合に生成されるアミノ酸(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を指す。
【0023】
「転写制御下」は、当該技術分野においてよく理解される用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常DNA配列の転写が、転写の開始に寄与する、または転写を促進するエレメントに作動可能に連結していることに依存することを指し示す。「作動可能に連結した」は、ポリヌクレオチドが、それらが細胞中で機能することを可能とする方式で並べられていることを意図する。1つの態様において、本発明は、下流の配列、例えば、自殺遺伝子、VEGF、165A VEGF、tet活性化因子などに作動可能に連結したプロモーターを提供する。
【0024】
「コードする」という用語は、ポリヌクレオチドに適用される場合、そのネイティブな状態においてまたは当業者に周知の方法によりマニピュレートされた場合に、転写および/または翻訳されてポリペプチドおよび/またはその断片のためのmRNAを生成することができる場合に該ポリペプチドを「コードする」といわれるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖はそのような核酸の相補体であり、コーディング配列はそれらから導出され得る。
【0025】
「単離された」という用語は、本明細書において使用される場合、他の材料から実質的に離れた分子または生物学的製剤または細胞材料を指す。
【0026】
本明細書において使用される場合、「機能的な」という用語は、任意の分子、生物学的、または細胞材料を修飾して、それが特定の指定される効果を達成することを意図するために使用され得る。
【0027】
本明細書において使用される場合、「核酸配列」および「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指すために交換可能に使用される。そのため、この用語は、一本鎖、二本鎖、もしくは多鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基もしくは他の天然の、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでなる、もしくは代替的にから本質的になる、更にもしくはからなるポリマーを含むがこれらに限定されない。
【0028】
「プロモーター」という用語は、本明細書において使用される場合、コーディング配列、例えば遺伝子の発現を調節する任意の配列を指す。プロモーターは、例えば、構成的、誘導性、抑制性、または組織特異的なものであってもよい。「プロモーター」は、転写の開始および率が制御されるポリヌクレオチド配列の領域である制御配列である。それは、調節タンパク質および分子がRNAポリメラーゼおよび他の転写因子などに結合し得る場所となる遺伝子エレメントを含有してもよい。非限定的な例示的なプロモーターとしては、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択的にRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、U6プロモーター、またはEF1プロモーターが挙げられる。一部の実施形態において、プロモーターはニワトリβ-アクチン(「CBA」)プロモーターである。
【0029】
ある特定の標的特異性を有する追加の非限定的な例示的なプロモーターが以下において本明細書において提供され、これらとしては、CMV、EF1a、SV40、PGK1(ヒトまたはマウス)、P5、Ubc、ヒトベータアクチン、CAG、TRE、UAS、Ac5、ポリヘドリン、CaMKIIa、Gal1、TEF1、GDS、ADH1、CaMV35S、Ubi、H1、U6、およびアルファ-l-アンチトリプシンが挙げられるがこれらに限定されない。合成由来プロモーターが遍在的または組織特異的な発現のために使用されてもよい。更に、その一部が上記されるウイルス由来プロモーターは、本明細書に開示される方法において有用なことがあり、例えば、CMV、HIV、アデノウイルス、およびAAVプロモーターがある。一部の実施形態において、プロモーターは、転写効率を増加させるためにエンハンサーに連結している。エンハンサーの非限定的な例としては、RSVエンハンサーまたはCMVエンハンサーが挙げられる。
【0030】
エンハンサーは、標的配列の発現を増加させる調節エレメントである。「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーターおよびエンハンサーの両方の機能を提供することができる配列を含有するポリヌクレオチドである。例えば、レトロウイルスの長鎖末端反復はプロモーターおよびエンハンサーの両方の機能を含有する。エンハンサー/プロモーターは「内因性」または「外因性」もしくは「異種」であってもよい。「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノム中の所与の遺伝子と天然に連結したものである。「外因性」または「異種」エンハンサー/プロモーターは、遺伝子マニピュレーション(すなわち、分子生物学技術)の手段により遺伝子に並置して置かれ、その結果、その遺伝子の転写が連結したエンハンサー/プロモーターにより指令されるものである。
【0031】
「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は交換可能に使用され、それらの最も広い意味において、アミノ酸、アミノ酸アナログまたはペプチド模倣物の2つまたはそれより多くのサブユニットの化合物を指す。サブユニットは、ペプチド結合により連結していてもよい。別の態様において、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどにより連結していてもよい。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなるものであり得るアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDおよびLの両方の光学異性体、アミノ酸アナログならびにペプチド模倣物を含めて、天然のおよび/または非天然もしくは合成のアミノ酸のいずれかを指す。
【0032】
本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語は、インタクトなレプリコンを含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる非染色体核酸であって、その結果、ベクターが、細胞内に置かれた時に、例えば形質転換のプロセスにより、複製され得るようなものを指す。ベクターはウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであってもよい。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、改変バキュロウイルス、パポウイルス(papovirus)、AAVベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクターおよび同種のものが挙げられる。アルファウイルスベクター、例えばセムリキ森林ウイルスベースのベクターおよびシンドビスウイルスベースのベクターもまた、遺伝子療法および免疫療法における使用のために開発されている。Schlesinger and Dubensky (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 5:434-439およびYing, et al. (1999) Nat. Med. 5(7):823-827を参照。核酸を送達するための例示的な非ウイルスベクターとしては、ネイキッドのDNA;単独でまたは陽イオン性ポリマーと組み合わせて陽イオン性脂質と複合体化したDNA;陰イオン性および陽イオン性リポソーム;DNA-タンパク質複合体、および、陽イオン性ポリマー、例えば不均質ポリリジン、定義される長さのオリゴペプチド、およびポリエチレンイミンと共に凝集したDNAを含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる粒子であって、一部の場合にはリポソーム中に含有されるもの;ならびにウイルスおよびポリリジン-DNAを含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる三元複合体の使用が挙げられる。ウイルスベクターの例としてはレトロウイルスベクターが挙げられる。
【0033】
実施形態において、ベクターは誘導性プロモーターを含んでなる。実施形態において、誘導性プロモーターは誘導性テトラサイクリンプロモーターである。Tet-OffおよびTet-On遺伝子発現システムは、Gossen & Bujard(1992;Tet-Off)およびGossen et al.(1995;Tet-On)により記載される調節される高レベル遺伝子発現システムへの即時アクセスを研究者に与える。Tet-Offシステムにおいて、遺伝子発現は、テトラサイクリン(Tc)またはドキシサイクリン(Dox;Tc誘導体)が培養培地から除去された時にオンにされる。対照的に、発現は、Tet-OnシステムにおいてDoxの添加によりオンにされる。両方のシステムは、様々な濃度のTcまたはDoxに応答して遺伝子発現が緊密に調節されることを可能にする。Tetシステムにおける最大発現レベルは非常に高く、強い構成的な哺乳動物プロモーター、例えばCMVから得られ得る最大レベルと好都合に匹敵する(Yin et al., 1996)。他の誘導性の哺乳動物発現システムとは異なり、Tetシステムにおける遺伝子調節は高度に特異的であるため、結果の解釈は多面的な効果または非特異的な誘導により複雑にされない。E.コリにおいて、Tetリプレッサータンパク質(TetR)はTn10トランスポゾン上のテトラサイクリン耐性オペロンの遺伝子を負に調節する。TetRは、Tcの非存在下でtetオペレーター配列(tetO)に結合することによりこれらの遺伝子の転写を遮断する。TetRおよびtetOは、哺乳動物実験系における使用のための調節および誘導の基礎を提供する。Tet-Onシステムにおいて、調節タンパク質は、TetRにおける4アミノ酸の変化により作出された「逆」Tetリプレッサー(rTetR)に基づく(Hillen & Berens, 1994; Gossen et al., 1995)。結果としてもたらされるタンパク質、rtTA(テトラサイクリンアクティベータータンパク質とも称される逆tTA)は、pTet-On調節因子プラスミドによりコードされる。この遺伝子は、治療遺伝子として別々のベクター中にあってもよく、または同じ遺伝子上にコードされてもよい。
【0034】
関連する実施形態において、ベクターは、テトラサイクリンアクティベータータンパク質をコードする核酸、およびテトラサイクリンアクティベータータンパク質の発現を調節するプロモーターを更に含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる。
【0035】
本明細書に記載のベクター、単離された細胞、ウイルスパッケージングシステム、および方法において有用な他の誘導性システムとしては、エクジソンによる調節、エストロゲン、プロゲステロン、二量体化の化学的誘導因子、およびイソプロピル-ベータ-D1-チオガラクトピラノシド(EPTG)によるものが挙げられる。
【0036】
本明細書において使用される場合、「組換え発現システム」または「組換えベクター」という用語は、組換えにより形成されるある特定の遺伝材料の発現のための1つまたは複数の遺伝子構築物を指す。
【0037】
細胞の集団は、表現型および/または遺伝子型において同一(クローン性)または非同一の1つより多くの細胞のコレクションを意図する。実質的に均質な細胞の集団は、予め選択されたマーカーにより測定されるような、少なくとも70%、または代替的に少なくとも75%、または代替的に少なくとも80%、または代替的に少なくとも85%、または代替的に少なくとも90%、または代替的に少なくとも95%、または代替的に少なくとも98%同一の表現型を有する集団である。
【0038】
「遺伝子送達媒体」は、挿入されたポリヌクレオチドを宿主細胞中に運搬することができる任意の分子として定義される。遺伝子送達媒体の例は、リポソーム、天然ポリマーおよび合成ポリマーを含めて、ミセル生体適合性ポリマー;リポタンパク質;ポリペプチド;多糖;リポ多糖;人工的なウイルスエンベロープ;金属粒子;ならびに細菌、またはウイルス、例えばバキュロウイルス、アデノウイルスおよびレトロウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクター、ならびに他の組換え媒体であって、当該技術分野において典型的に使用されており、様々な真核性および原核性宿主中での発現について記載されており、かつ遺伝子療法の他に、単純なタンパク質発現のために使用され得るものである。
【0039】
本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、遺伝子送達媒体を使用して細胞または組織に送達され得る。「遺伝子送達」、「遺伝子移入」、「導入する」および同種のものは、本明細書において使用される場合、導入のために使用される方法にかかわらず、宿主細胞中への外因性ポリヌクレオチド(「導入遺伝子」と称されることがある)の導入を指す用語である。そのような方法としては、様々な周知の技術、例えばベクター媒介性の遺伝子移入(例えば、ウイルス感染/トランスフェクション、または様々な他のタンパク質ベースもしくは脂質ベースの遺伝子送達複合体によるもの)の他に、「ネイキッド」ポリヌクレオチドの送達を促す技術(例えばエレクトロポレーション、「遺伝子銃」送達およびポリヌクレオチドの導入のために使用される様々な他の技術)が挙げられる。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞中で安定的にまたは一過的に維持され得る。安定な維持は、典型的には、導入されるポリヌクレオチドが宿主細胞と適合性の複製起点を含有するか、または宿主細胞のレプリコン、例えば染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)もしくは核もしくはミトコンドリア染色体に組み込まれることを要求する。当該技術分野において公知および本明細書に記載されるように、哺乳動物細胞への遺伝子の移入を媒介することができる多数のベクターが公知である。
【0040】
本明細書において使用される場合、「コドン最適化された」という用語は、コーディング配列中に通常存在する1つまたは複数のコドンを同じ(同義の)アミノ酸のためのコドンで置換することによりコーディング配列の発現を増加させるように野生型コーディング配列(例えば、PPT1のコーディング配列)と比べて最適化されたコーディング配列を指す。一部の実施形態において、置換は、希少コドン(例えば、ヒトコドン)を最小化し、総GC含有量を増加させ、CpG含有量を減少させ、潜在性スプライスドナーもしくはアクセプター部位を除去し、かつ/またはリボソーム進入部位、例えばKozak配列を付加もしくは除去する。2017年12月21日に公開されたPCT国際出願の国際公開第2017/218450号パンフレット(参照により本明細書に援用される)は、コドン最適化されたCLN1遺伝子配列、コドン最適化されたCLN1遺伝子を製造する方法およびそれを使用する単剤療法の送達のための一般的方法を開示する。
【0041】
「プラスミド」は、染色体DNAから独立して複製することができる染色体DNAから分離した染色体外DNA分子である。多くの場合、それは環状かつ二本鎖である。プラスミドは、微小生物の集団内の水平遺伝子移入の機構を提供し、典型的には、所与の環境状態下での選択的利益を提供する。プラスミドは、競合的な環境ニッチにおいて天然に存在する抗生物質に対して耐性を提供する遺伝子を運搬してもよく、または代替的に、産生されるタンパク質は、類似した状況下で毒素として作用してもよい。
【0042】
遺伝子操作において使用される「プラスミド」は「プラスミドベクター」と呼ばれる。多くのプラスミドがそのような使用のために商業的に入手可能である。複製されるべき遺伝子は、特定の抗生物質に対して細胞を耐性にする遺伝子、および、この位置におけるDNA断片の容易な挿入を可能とするいくつかの一般的に使用される制限部位を含有する短い領域であるマルチプルクローニングサイト(MCS、またはポリリンカー)を含有するプラスミドのコピーに挿入される。プラスミドの別の主要な用途は大量のタンパク質を作るためである。この場合、研究者は、関心対象の遺伝子を宿すプラスミドを含有する細菌を増殖させる。細菌は、抗生物質耐性を付与するタンパク質を産生する場合にのみ、挿入された遺伝子から大量のタンパク質を製造するために誘導され得る。
【0043】
遺伝子移入がDNAウイルスベクター、例えばアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)により媒介される態様において、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその部分、および導入遺伝子を含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなるポリヌクレオチドを指す。アデノウイルス(Ad)は、相対的によく特徴付けられた、歴史的相同なウイルスの群であり、50を上回る血清型を含む。Adは宿主細胞ゲノムへの組込みを要求しない。組換えAd由来ベクター、特には野生型ウイルスの組換えおよび生成の潜在能力を低減させるものもまた構築されている。そのようなベクターは、供給元、例えばTakara Bio USA(Mountain View、CA)、Vector Biolabs(Philadelphia、PA)、およびCreative Biogene(Shirley、NY)から商業的に入手可能である。野生型AAVは、宿主細胞のゲノムに組み込まれる高い感染性および特異性を有する。Wold and Toth (2013) Curr. Gene. Ther. 13(6):421-433、Hermonat & Muzyczka (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470、およびLebkowski et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:3988-3996を参照。
【0044】
ポリヌクレオチドが作動可能に連結され得るプロモーターおよびクローニングサイトの両方を含有するベクターは当該技術分野において周知である。そのようなベクターは、インビトロまたはインビボでRNAの転写が可能であり、供給元、例えばAgilent Technologies(Santa Clara、Calif)およびPromega Biotech(Madison、Wis.)から商業的に入手可能である。発現および/またはインビトロ転写を最適化するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去、付加または変更して、余剰な、潜在的な不適切な選択的翻訳開始コドンまたは転写もしくは翻訳のいずれかのレベルで、発現に干渉しもしくはそれを低減させ得る他の配列を排除することが必要なことがある。代替的に、発現を増強するためにコンセンサスリボソーム結合部位が開始コドンのすぐ5’に挿入され得る。
【0045】
遺伝子送達媒体としてはまた、DNA/リポソーム複合体、ミセルおよび標的化されたウイルスタンパク質-DNA複合体が挙げられる。標的化抗体またはその断片も含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなるリポソームは、本明細書に開示される方法において使用され得る。細胞または細胞集団へのポリヌクレオチドの送達に加えて、細胞または細胞集団への本明細書に記載のタンパク質の直接的な導入は、タンパク質トランスフェクションの非限定的な技術により行うことができ、代替的に、本明細書に開示されるタンパク質の発現を増強しかつ/またはその活性を促進することができる培養条件は他の非限定的な技術である。
【0046】
本明細書において使用される場合、「シグナルペプチド」または「シグナルポリペプチド」という用語は、新たに合成された分泌または膜ポリペプチドまたはタンパク質のN末端に通常存在するアミノ酸配列を意図する。それは、特有の細胞位置へ、例えば、細胞膜を越えて、細胞膜中に、または核中にポリペプチドを方向付けるように作用する。一部の実施形態において、シグナルペプチドは局在化後に除去される。シグナルペプチドの例は当該技術分野において周知である。非限定的な例は、米国特許第8,853,381号明細書、同第5,958,736号明細書、および同第8,795,965号明細書に記載のものである。
【0047】
本明細書において使用される場合、「ウイルスカプシド」または「カプシド」という用語は、ウイルス粒子のタンパク質性シェルまたはコートを指す。カプシドは、ウイルスゲノムをカプシド被包する(encapsidate)、保護する、輸送する、および宿主細胞中に放出するために機能する。カプシドは、概して、タンパク質(「カプシドタンパク質」)のオリゴマー構造サブユニットを含む。本明細書において使用される場合、「カプシド被包された」という用語は、ウイルスカプシド内に封入されていることを意味する。
【0048】
本明細書において使用される場合、ウイルスまたはプラスミドに関する「ヘルパー」という用語は、ウイルス粒子または組換えウイルス粒子、例えば本明細書に開示される改変AAVの複製およびパッケージングのために必要な追加の成分を提供するために使用されるウイルスまたはプラスミドを指す。ヘルパーウイルスによりコードされる成分は、ビリオンの集合、カプシド被包、ゲノム複製、および/またはパッケージングのために要求される任意の遺伝子を含んでもよい。例えば、ヘルパーウイルスは、ウイルスゲノムの複製のための必要な酵素をコードしてもよい。AAV構築物との使用のために好適なヘルパーウイルスおよびプラスミドの非限定的な例としては、pHELP(プラスミド)、アデノウイルス(ウイルス)、またはヘルペスウイルス(ウイルス)が挙げられる。
【0049】
本明細書において使用される場合、「AAV」という用語はアデノ随伴ウイルスの標準的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、共感染させたヘルパーウイルスによりある特定の機能が提供される細胞中でのみ増殖する一本鎖DNAパルボウイルスである。AAVの一般的な情報および総説は、例えば、Carter, 1989, Handbook of Parvoviruses, Vol. 1, pp. 169- 228、およびBerns, 1990, Virology, pp. 1743-1764, Raven Press, (New York)において見出される。様々な血清型は、構造および機能の両方において、遺伝子レベルにおいてさえ、かなり密接に関連していることが周知であるので、これらの総説に記載されるものと同じ原理が、該総説の公開日より後に特徴付けられた追加のAAV血清型に適用可能であることが充分に予期される(例えば、Blacklowe, 1988, pp. 165-174 of Parvoviruses and Human Disease, J. R. Pattison, ed.;およびRose, Comprehensive Virology 3: 1-61 (1974)を参照)。例えば、全てのAAV血清型は、相同のrep遺伝子により媒介される非常に類似した複製特性を呈するようであり、全ては3つの関連するカプシドタンパク質、例えばAAV2において発現されるものを持つ。関連性の程度は、ゲノムの長さにわたる血清型の間の大規模な交差ハイブリダイゼーションを明らかにするヘテロデュプレックス分析;および「逆末端反復配列」(ITR)に対応する末端における類似した自己アニーリングセグメントの存在により更に示唆される。類似した感染性パターンはまた、各血清型における複製機能は類似した調節制御下にあることを示唆する。
【0050】
「AAVベクター」は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数の異種核酸(HNA)配列および1つまたは複数のAAV逆末端反復配列(ITR)を含む、から本質的になる、またはからなるベクターを指す。そのようなAAVベクターは、例えば、宿主細胞のトランスフェクションにより、repおよびcap遺伝子産物の機能性を提供する宿主細胞中に存在する場合に、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージングされ得る。実施形態において、AAVベクターは、プロモーター、少なくとも1つのタンパク質もしくはRNAをコードし得る少なくとも1つの核酸、ならびに/または感染性AAV粒子中にパッケージングされる隣接ITR内のエンハンサーおよび/もしくはターミネーターを含有する。カプシド被包された核酸部分はAAVベクターゲノムと称されることがある。AAVベクターを含有するプラスミドはまた、製造目的用の要素、例えば、抗生物質耐性遺伝子などを含有してもよいが、これらはカプシド被包されず、そのためAAV粒子の部分を形成しない。
【0051】
「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVウイルスベクター」または「AAVベクター粒子」または「AAV粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質およびカプシド被包されたポリヌクレオチドAAVベクターから構成されるウイルス粒子を指す。そのため、AAVベクター粒子の製造はAAVベクターの製造を必然的に含み、ベクターはAAVベクター粒子内に含有される。
【0052】
一部の実施形態において、AAVは複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、2つの145ヌクレオチド逆末端反復(ITR)を含む約4.7kbの長さである。AAVの複数の血清型がある。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV-1の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_002077において提供されており、AAV-2の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_001401およびSrivastava et al., J. Virol., 45: 555-564 (1983)において提供されており、AAV-3の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_1829において提供されており、AAV-4の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_001829において提供されており、AAV-5ゲノムはGenBankアクセッション番号AF085716において提供されており、AAV-6の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_00 1862において提供されており、AAV-7およびAAV-8ゲノムの少なくとも部分はそれぞれGenBankアクセッション番号AX753246およびAX753249において提供されており、AAV-9ゲノムはGao et al., J. Virol., 78: 6381-6388 (2004)において提供されており、AAV-10ゲノムはMol. Ther., 13(1): 67-76 (2006)において提供されており、AAV-11ゲノムはVirology, 330(2): 375-383 (2004)において提供されている。AAV rh.74ゲノムの配列は米国特許第9,434,928号明細書(参照により本明細書に援用される)において提供されている。米国特許第9,434,928号明細書はまた、カプシドタンパク質および自己相補的なゲノムの配列を提供する。1つの態様において、ゲノムは自己相補的なゲノムである。ウイルスDNA複製(rep)、カプシド被包/パッケージングおよび宿主細胞染色体組込みを指令するシス作用性配列はAAV ITR内に含有される。(それらの相対的なマップ位置のためにp5、p19、およびp40と命名された)3つのAAVプロモーターは、repおよびcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。2つのrepプロモーター(p5およびpi 9)は、(ヌクレオチド2107および2227における)単一のAAVイントロンの差次的なスプライシングと連結して、rep遺伝子からの4つのrepタンパク質(rep 78、rep 68、rep 52、およびrep 40)の産生を結果としてもたらす。Repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製の原因となる複数の酵素特性を持つ。cap遺伝子はp40プロモーターから発現され、3つのカプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3をコードする。選択的スプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位は3つの関連するカプシドタンパク質の産生の原因となる。単一のコンセンサスポリアデニル化部位はAAVゲノムのマップ位置95に位置する。AAVのライフサイクルおよび遺伝学はMuzyczka, Current Topics in Microbiology and Immunology, 158: 97-129 (1992)において総説されている。
【0053】
AAVは、例えば遺伝子療法において、外来DNAを細胞に送達するためのベクターとしてそれを魅力的なものとする独特の特徴を持つ。培養中の細胞のAAV感染は非細胞傷害性であり、ヒトおよび他の動物の天然の感染はサイレントかつ無症候性である。更に、AAVは多くの哺乳動物細胞に感染して、インビボで多くの異なる組織を標的化する可能性を可能とする。更に、AAVは、緩徐分裂性および非分裂性の細胞に形質導入を行い、かつ転写的に活性の核内エピソーム(染色体外エレメント)として本質的にそれらの細胞の寿命にわたり持続することができる。AAVプロウイルスゲノムは、プラスミド中のクローン化DNAとして挿入され、組換えゲノムの構築を実現可能なものとする。更には、AAV複製およびゲノムカプシド被包を指令するシグナルがAAVゲノムのITR内に含有されるので、ゲノムの内部の約4.3kb(複製および構造カプシドタンパク質、rep-capをコードする)の一部または全ては外来DNAで置き換えられてもよい。AAVベクターを生成するために、repおよびcapタンパク質はトランスで提供されてもよい。AAVの別の有意な特徴は、それは極めて安定であり、頑強なウイルスであることである。それは、アデノウイルスを不活性化するために使用される条件(56℃~65℃で数時間)に容易に耐え、AAVの冷却保存の重要性をより小さいものとする。AAVは凍結乾燥さえもされ得る。そして、AAV感染細胞は重感染に対して耐性ではない。
【0054】
複数の研究は、筋肉における長期(>1.5年)の組換えAAV媒介性タンパク質発現を実証している。Clark et al., Hum Gene Ther, 8: 659-669 (1997); Kessler et al., Proc Nat. Acad Sc. USA, 93: 14082-14087 (1996);およびXiao et al., J Virol, 70: 8098-8108 (1996)を参照。Chao et al., Mol Ther, 2:619-623 (2000)およびChao et al., Mol Ther, 4:217-222 (2001)も参照。更に、筋肉は高度に血管形成しているので、Herzog et al., Proc Natl Acad Sci USA, 94: 5804-5809 (1997)およびMurphy et al., Proc Natl Acad Sci USA, 94: 13921- 13926 (1997)に記載されるように、組換えAAV形質導入は筋肉内注射後の全身循環中の導入遺伝子産物の出現を結果としてもたらしている。更に、Lewis et al., J Virol, 76: 8769-8775 (2002)は、骨格筋線維は、正確な抗体グリコシル化、フォールディング、および分泌のための必要な細胞因子を持つことを実証しており、筋肉は、分泌されるタンパク質治療の安定発現が可能であることを指し示す。rAAVゲノム中のAAV DNAは、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型からのものであってもよく、これには、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV PHP.BおよびAAV rh74が含まれるがこれらに限定されない。シュードタイプrAAVの製造が例えば国際公開第01/83692号パンフレットにおいて開示されている。他の種類のrAAVバリアント、例えばカプシド突然変異を有するrAAVもまた想定される。例えば、Marsic et al., Molecular Therapy, 22(11): 1900-1909 (2014)を参照。様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は当該技術分野において公知である。他の好適なAAV粒子は、2019年12月4日に出願された国際出願PCT/US2019/064396号明細書において記載されており、これは全体が、特にAAV粒子およびAAVカプシドタンパク質に関して、参照により本明細書に援用される。
【0055】
本明細書において使用される場合、「標識」という用語は、検出されるべき組成物、例えば、ポリヌクレオチドまたはタンパク質、例えば抗体に直接的または間接的に共役されて「標識された」組成物を生成する、直接的または間接的に検出可能な化合物または組成物を意図する。該用語はまた、挿入された配列の発現でシグナルを提供するポリヌクレオチドに共役される配列、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)および同種のものを含む。標識は、単独で検出可能であってもよく(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的変更を触媒してもよい。標識は、小スケール検出のために好適であり得るか、またはハイスループットスクリーニングのためにより好適であり得る。そのため、好適な標識としては、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、色素、および酵素を含めてタンパク質が挙げられるがこれらに限定されない。標識は単純に検出されてもよく、または定量化されてもよい。単純に検出される応答は、概して、その存在が単に確認される応答を含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる一方、定量化される応答は、概して、定量化可能な(例えば、数値的に報告可能な)値、例えば強度、偏光、および/または他の特性を有する応答を含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる。発光または蛍光アッセイにおいて、検出可能な応答は、結合に実際に関与するアッセイ成分と会合した発光団もしくはフルオロフォアを使用して直接的に、または別の(例えば、レポーターもしくはインジケーター)成分と会合した発光団もしくはフルオロフォアを使用して間接的に生成されてもよい。
【0056】
シグナルを生成する発光標識の例としては、生物発光および化学発光が挙げられるがこれらに限定されない。検出可能な発光応答は、概して、発光シグナルにおける、またはその存在における変化を含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなる。アッセイ成分を発光的に標識するための好適な方法および発光団は当該技術分野において公知であり、例えばRichard P. (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th ed.)において記載されている。発光プローブの例としては、エクオリンおよびルシフェラーゼが挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
好適な蛍光標識の例としては、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(商標)、およびテキサスレッドが挙げられるがこれらに限定されない。他の好適な光学色素は、Haugland, Richard P. (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th ed.)において記載されている。
【0058】
別の態様において、蛍光標識は、細胞または組織の表面中または上に存在する細胞成分、例えば細胞表面マーカーへの共有結合性取付けを促すために官能化される。好適な官能基としては、イソチオシアネート基、アミノ基、ハロアセチル基、マレイミド、スクシンイミジルエステル、およびハロゲン化スルホニルが挙げられるがこれらに限定されず、これらの全ては、蛍光標識を第2の分子に取り付けるために使用され得る。蛍光標識の官能基の選択は、リンカー、剤、マーカー、または第2の標識化剤のいずれかへの取付けの部位に依存する。
【0059】
蛍光標識の取付けは、細胞成分もしくは化合物に対して直接的に為されてもよく、または代替的にリンカーを介して為され得る。中間体への蛍光標識の間接的な連結における使用のための好適な結合ペアとしては、抗原/抗体、例えば、ローダミン/抗ローダミン、ビオチン/アビジンおよびビオチン/ストレプトアビジンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0060】
「組成物」は、活性ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体と、不活性(例えば、検出可能な標識)または活性(例えば、遺伝子送達媒体)の別の化合物または組成物との組合せを意味することが意図される。
【0061】
「医薬組成物」は、組成物をインビトロ、インビボまたはエクスビボでの診断的または治療的使用のために好適なものとする、不活性または活性の担体、例えば固体支持体との活性ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体の組合せを含むことが意図される。
【0062】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、任意の標準的な薬学的担体、例えばリン酸緩衝食塩水溶液、水、およびエマルション、例えば油/水または水/油エマルション、ならびに様々な種類の湿潤剤を包含する。組成物はまた、安定化剤および防腐剤を含むことができる。担体、安定化剤および佐剤の例について、Martin (1975) Remington’s Pharm. Sci., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton)を参照。
【0063】
診断または治療の「対象」は、細胞または動物、例えば哺乳動物、もしくはヒトである。対象は特有の種に限定されず、診断または治療に供される非ヒト動物が挙げられ、感染に供されるもの、または動物モデル、例えば、類人猿、ネズミ科動物、例えば、ラット、マウス、チンチラ、イヌ科動物、例えばイヌ、ウサギ科動物、例えばウサギ、家畜類、競技動物、および愛玩動物である。ヒト患者もまた該用語に含まれる。
【0064】
「組織」という用語は、生きたもしくは死亡した生物の組織または生きたもしくは死亡した生物に由来するもしくはそれを模倣するように設計された任意の組織を指すために本明細書において使用される。組織は、健常なもの、死亡したものであってもよく、かつ/または遺伝子突然変異を有してもよい。生物学的組織は、任意の単一の組織(例えば、相互接続されていてもよい細胞のコレクション)または生物の身体の臓器もしくは部分もしくは領域を構成する組織の群を含んでもよい。組織は、均質な細胞材料を含んでなる、もしくは代替的にから本質的になる、更にもしくはからなるものであってもよく、またはそれは複合構造物、例えば、例として肺組織、骨格組織、および/もしくは筋肉組織を含むことができる胸郭を含めて身体の領域中に見出されるものであってもよい。例示的な組織としては、以下の任意の組合せを含めて、肝臓、肺、甲状腺、皮膚、膵臓、血管、膀胱、腎臓、脳、胆道樹、十二指腸、腹部大動脈、腸骨静脈、心臓および腸に由来するものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
「IBD関連障害」という用語は、本明細書において使用される場合、正常な対象、症状を呈しない対象、または集団における発現レベルまたは活性と比べた対象におけるCLN1遺伝子の発現の減少または変更により引き起こされるまたはその症状である疾患、障害、症候群、または状態を指す。
【0066】
本明細書において使用される場合、対象において疾患を「治療すること」またはその「治療」は、(1)疾患の症状の素因があるもしくはそれを未だ示していない対象において症状もしくは疾患の発生を予防すること、(2)疾患を阻害しもしくはその発症を停止させること、または(3)疾患もしくは疾患の症状を寛解させもしくはその後退を引き起こすことを指す。当該技術分野において理解されるように、「治療」は、臨床結果を含めて、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本技術の目的のために、有益なまたは所望の結果は、検出可能なものであれ検出不可能なものであれ、1つまたは複数の症状の緩和または寛解、状態(疾患を含む)の程度の減少、状態(疾患を含む)の状態の安定化(すなわち、悪化させないこと)、状態(疾患を含む)、進行の遅延または緩慢化、状態(疾患を含む)、状況の寛解または一時的緩和、および軽快(部分的なものであれ全体的なものであれ)の1つまたは複数を含むことができるがこれらに限定されない。
【0067】
本明細書において使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果を達成するために充分な量を意味することを意図する。治療的または予防的応用の文脈において、有効量は、問題とする状態の種類および重症度ならびに個々の対象の特徴、例えば全般的健康状態、年齢、性別、体重、および医薬組成物に対する許容性に依存する。遺伝子療法の文脈において、一部の実施形態において、有効量は、対象において欠損した遺伝子の部分的または全的な機能の回復を結果としてもたらすために充分な量である。他の実施形態において、AAVウイルス粒子の有効量は、対象において遺伝子の発現を結果としてもたらすために充分な量である。当業者は、これらおよび他の要因に依存して適切な量を決定することができる。
【0068】
「vg」という用語は、遺伝子療法のために提供されるウイルス単位を指し、典型的には対象のkg当たりのvgとして記載される。本明細書に記載の実験は、マウスを治療するために使用された量であり、治療されている対象がマウスではない場合、量は、治療されている対象、例えば、ヒト、乳児または新生児のために適切な量に変換されることが推論される。1つの態様において、投与される量はvg/kgにおけるものであり、したがって治療されている対象のサイズおよび体重における差異を考慮する。
【0069】
実施形態において、有効量は、問題とする応用のサイズおよび性質に依存する。それはまた、標的対象の性質および感受性ならびに使用における方法に依存する。当業者は、これらおよび他の考慮に基づいて有効量を決定することができる。有効量は、実施形態に依存して組成物の1または複数の投与を含んでなる、または代替的にから本質的になる、更にまたはからなるものであってもよい。
【0070】
本明細書において使用される場合、「投与する」または「投与」という用語は、対象、例えば動物またはヒトへの物質の送達を意味することを意図する。投与は、1つの用量において、連続的にまたは治療の全過程を通じて間欠的にもたらされ得る。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は当業者に公知であり、療法のために使用される組成物、療法の目的の他に、治療されている対象の年齢、健康または性別と共に変動する。治療医、または愛玩動物および動物の場合、治療獣医により選択された用量レベルおよびパターンを用いて単回または複数の投与は実行され得る。好適な投薬製剤および剤を投与する方法は当該技術分野において公知である。投与の経路もまた決定することができ、投与の最も有効な経路を決定する方法は当業者に公知であり、治療のために使用される組成物、治療の目的、治療されている対象の健康状態または疾患ステージ、および標的細胞または組織と共に変動する。投与の経路の非限定的な例としては、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、髄腔内、脳室下、硬膜外、脳内、脳室内、網膜下、硝子体内、関節内、眼内、腹腔内、子宮内、皮内、皮下、経皮、経粘膜、および吸入が挙げられる。
【0071】
本明細書において使用される場合、「改変された」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に適用される場合、1つまたは複数の欠失、付加、置換、またはこれらの任意の組合せに起因して野生型配列とは異なる配列を指す。
【0072】
本開示を実行するためのモード
それを必要とする対象においてIBDまたはIBD関連障害を治療する方法であって、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドの髄腔内投与およびその後の該ポリヌクレオチドの静脈内投与を行い、それによりIBDまたはIBD関連障害を治療することを含んでなる、またはから本質的になる、更にまたはからなる、方法が本明細書において提供される。任意選択的に、静脈内投与は髄腔内投与に先行してもよい。
【0073】
1つの態様において、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドはベクターゲノムの部分であり、かつポリヌクレオチドの送達は、ベクターゲノムを含んでなるウイルス粒子を投与することにより達成される。したがって、1つの態様において、対象において乳児バッテン病(IBD)またはIBD関連障害を治療する方法であって、有効量の、ポリヌクレオチドを含んでなるウイルス粒子の髄腔内投与および静脈内投与の組合せを含んでなる、方法が本明細書において提供される。
【0074】
ポリヌクレオチドの送達において用途を有するAAVベクター粒子、AAVベクター、およびカプシドタンパク質もまた提供される。ウイルス粒子は、AAVウイルス粒子、例えば、AAV9ウイルス粒子であってもよい。
【0075】
1つの態様において、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドは野生型CLN1ポリヌクレオチドを含んでなる。別の態様において、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなるポリヌクレオチドはCLN1のコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含んでなり、またはその相補体はヒト細胞中での発現のためにコドン最適化されている。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号1もしくは配列番号2のヌクレオチド配列、もしくはこれらのそれぞれに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列またはこれらの相補体を含んでなり、等価物はコドン最適化されたヌクレオチドにおいて同一である。1つの態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号3に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の同一性を有するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含んでなる。

配列番号1:ヒトのコドン最適化されたCLN1オープンリーディングフレーム(付加された停止コドンに下線を引いている)
ATGGCTTCTCCGGGGTGTCTGTGGCTGCTGGCAGTGGCACTCCTTCCCTGG
ACTTGCGCCAGCCGGGCTCTGCAGCACCTCGACCCTCCAGCCCCTCTTCCA
CTGGTGATTTGGCACGGAATGGGTGATTCCTGCTGTAATCCCCTGTCAATG
GGAGCCATCAAGAAGATGGTGGAGAAGAAGATCCCTGGAATCTACGTGCT
GTCACTGGAGATTGGAAAGACCCTGATGGAGGACGTCGAGAACTCCTTCT
TCCTCAATGTCAACTCTCAAGTGACCACCGTCTGCCAGGCCCTGGCCAAG
GACCCGAAGCTGCAGCAGGGGTATAATGCTATGGGGTTCAGCCAGGGAG
GACAGTTCCTTCGGGCTGTGGCCCAACGCTGCCCTAGCCCACCCATGATCA
ACCTGATCTCAGTGGGTGGCCAGCATCAGGGCGTGTTCGGACTTCCCCGG
TGTCCCGGGGAATCCTCTCATATCTGCGACTTCATCCGCAAAACTCTCAAT
GCAGGCGCTTATTCAAAGGTCGTCCAAGAGAGGCTGGTGCAAGCCGAGTA
CTGGCACGATCCCATTAAGGAGGACGTGTACAGAAATCACTCAATCTTTC
TGGCCGACATTAACCAGGAGAGGGGAATTAACGAATCATATAAGAAGAA
TCTCATGGCCCTCAAAAAGTTCGTCATGGTGAAGTTCCTTAACGATAGCAT
TGTGGACCCAGTGGACAGCGAATGGTTCGGATTTTACCGCTCAGGCCAGG
CAAAAGAAACCATCCCTCTCCAAGAGACTTCTCTTTACACCCAAGACAGA
CTTGGGCTTAAGGAAATGGATAACGCTGGTCAGCTGGTGTTCCTCGCCAC
CGAAGGTGACCATCTGCAGCTCAGCGAAGAGTGGTTCTACGCTCATATCA
TCCCGTTTCTTGGTTGATAA
【0076】
配列番号2(野生型CLN1)は、例えば、genenames.org/data/gene-symbol-report/#!/hgnc_id/HGNC:9325(最終アクセス2019年4月29日)に提供されることにより開示されるように、当該技術分野において公知であり、以下に示される:
ATGGCGTCGCCCGGCTGCCTGTGGCTCTTGGCTGTGGCTCTCCTGCCATGGACCTGCGCTTCTCGGGCGCTGCAGCATCTGGACCCGCCGGCGCCGCTGCCGTTGGTGATCTGGCATGGGATGGGAGACAGCTGTTGCAATCCCTTAAGCATGGGTGCTATTAAAAAAATGGTGGAGAAGAAAATACCTGGAATTTACGTCTTATCTTTAGAGATTGGGAAGACCCTGATGGAGGACGTGGAGAACAGCTTCTTCTTGAATGTCAATTCCCAAGTAACAACAGTGTGTCAGGCACTTGCTAAGGATCCTAAATTGCAGCAAGGCTACAATGCTATGGGATTCTCCCAGGGAGGCCAATTTCTGAGGGCAGTGGCTCAGAGATGCCCTTCACCTCCCATGATCAATCTGATCTCGGTTGGGGGACAACATCAAGGTGTTTTTGGACTCCCTCGATGCCCAGGAGAGAGCTCTCACATCTGTGACTTCATCCGAAAAACACTGAATGCTGGGGCGTACTCCAAAGTTGTTCAGGAACGCCTCGTGCAAGCCGAATACTGGCATGACCCCATAAAGGAGGATGTGTATCGCAACCACAGCATCTTCTTGGCAGATATAAATCAGGAGCGGGGTATCAATGAGTCCTACAAGAAAAACCTGATGGCCCTGAAGAAGTTTGTGATGGTGAAATTCCTCAATGATTCCATTGTGGACCCTGTAGATTCGGAGTGGTTTGGATTTTACAGAAGTGGCCAAGCCAAGGAAACCATTCCCTTACAGGAGACCTCCCTGTACACACAGGACCGCCTGGGGCTAAAGGAAATGGACAATGCAGGACAGCTAGTGTTTCTGGCTACAGAAGGGGACCATCTTCAGTTGTCTGAAGAATGGTTTTATGCCCACATCATACCATTCCTTGGATGA
【0077】
好適なCLN1遺伝子は、配列番号3:
MASPGCLWLLAVALLPWTCASRALQHLDPPAPLPLVIWHGMGDSCCNPLSMGAIKKMVEKKIPGIYVLSLEIGKTLMEDVENSFFLNVNSQVTTVCQALAKDPKLQQGYNAMGFSQGGQFLRAVAQRCPSPPMINLISVGGQHQGVFGLPRCPGESSHICDFIRKTLNAGAYSKVVQERLVQAEYWHDPIKEDVYRNHSIFLADINQERGINESYKKNLMALKKFVMVKFLNDSIVDPVDSEWFGFYRSGQAKETIPLQETSLYTQDRLGLKEMDNAGQLVFLATEGDHLQLSEEWFYAHIIPFLG
に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約99%の同一性または100%の同一性を有するPPT1タンパク質をコードする。PPT1タンパク質は、配列番号3から異なる1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個までのアミノ酸を有してもよい。PPT1タンパク質は、配列番号3から1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個までのアミノ酸が欠失されていてもよい。
【0078】
対象は、哺乳動物、例えば、ヒトであってもよい。ヒトは、ヒト乳児、例えば、約2か月~約24か月、約2歳~12歳、約2歳~5歳、または2歳~5歳であってもよい。
【0079】
ポリヌクレオチドは、追加のエレメントに作動可能に連結していることができ、例えば、ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結しており、かつ/またはプロモーターはニワトリベータアクチンプロモーターであり、かつ/またはポリヌクレオチドはエンハンサーに作動可能に連結しており、かつ/またはエンハンサーはサイトメガロウイルスエンハンサーであり、かつ/またはポリヌクレオチドはイントロンに作動可能に連結しており、かつ/またはイントロンはハイブリッド/改変されたMVMイントロンであり、かつ/またはポリヌクレオチドはポリアデニル化シグナルに作動可能に連結しており、かつ/またはポリアデニル化シグナルはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである。
【0080】
ポリヌクレオチドはポリヌクレオチドの送達用のベクターゲノムの部分であってもよく、かつ任意選択的に、ポリヌクレオチドを含んでなるベクターゲノムは、野生型カプシドタンパク質、突然変異型カプシドタンパク質、組織向性カプシドタンパク質、および野生型カプシドタンパク質と比較して変更されたトロピズムを有する改変されたカプシドタンパク質であって、任意選択的に肝臓脱標的化されている、改変されたカプシドタンパク質のうちの1つまたは複数を含んでなるウイルス粒子中にパッケージングされる。
【0081】
ベクターは、少なくとも1つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆末端反復(ITR)を含んでなるものであってもよく、例えば、ベクターは2つのAAV ITRを含んでなり、かつ/または2つのAAV ITRは同じヌクレオチド配列を有し、かつ/または2つのAAV ITRは異なるヌクレオチド配列を有し、かつ/またはAAV ITRはAAV2 ITRであり、かつ/またはウイルスベクターは自己相補的AAVゲノムである。
【0082】
1つの態様において、ポリヌクレオチドを含んでなるベクターゲノムは、エンハンサー、プロモーター、イントロン、ヒトCLN1オープンリーディングフレーム、およびポリアデニル化部位を含んでなる。更なる態様において、ポリヌクレオチドは、AAV ITR、エンハンサー、プロモーター、イントロン、ヒトCLN1オープンリーディングフレーム、ポリアデニル化部位、およびAAV ITRを含んでなる。より更なる態様において、ポリヌクレオチドは、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ハイブリッド/改変されたMVMイントロン、ヒトCLN1オープンリーディングフレーム、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化部位を含んでなる。より更なる態様において、ポリヌクレオチドは、突然変異体AAV ITR、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ハイブリッド/改変されたMVMイントロン、ヒトCLN1オープンリーディングフレーム、ウシ成長ホルモンポリアデニル化部位、および野生型AAV ITRを含んでなる。より更なる態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号1もしくは2、またはこれらのそれぞれの等価物を含んでなる。
【0083】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含んでなるウイルス粒子は、対象において機能的なCLN1(すなわち、PPT1タンパク質)を発現するための量で投与される。投与される量は、対象における機能的なCLN1(すなわち、PPT1タンパク質)の一過性のまたは長期的な発現のためのものであり得る。
【0084】
1つの態様において、髄腔内に投与される量は、静脈内に送達される量と同じまたは異なる。
【0085】
更なる態様において、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含んでなるウイルス粒子は、症状発症前または症状発症後に対象の髄腔内および静脈内に投与される。IBDを有する小児は、概して、2~24か月、多くの場合に約18か月までに症状を発症する。
【0086】
送達されるべき量は、治療されている対象および疾患と共に変動する。1つの態様において、量は中または高用量と考えられる。実例のみの目的のために、(例としてマウスを使用して)送達されるべき量は、約2.0×1011vg~約8.0×1011vgまたは2.0×1011vg/kg~約8.0×1011vg/kgである。更なる態様において、ポリヌクレオチドは、約7.0×1010vg~約8.0×1011vgまたは7.0×1010vg/kg~約8.0×1011vg/kgの量で送達される。より更なる態様において、投与は、症状発症前に約7.0×1010vg(またはvg/kg)~約8.0×1011vg(またはvg/kg)の量で送達される。より更なる態様において、ポリヌクレオチドは、約7.0×1011vg(またはvg/kg)~約8.0×1011vg(またはvg/kg)の量で投与される。
【0087】
1つの態様において、ヒトにおける髄腔内投与のためのウイルス粒子の量は約1.0×1012vg~約1.0×1017vgである。実施形態において、ヒトにおける髄腔内投与のための量は、約1.0×1012vg~約1.0×1014vg、約1.0×1013vg~約1.0×1015vg、約1.0×1014vg~約1.0×1016vg、約1.0×1015vg~約1.0×1017vg、約1.0×1013vg~約1.0×1014vg、約1.0×1014vg~約1.0×1015vg、または約1.0×1015vg~約1.0×1016vgである。
【0088】
1つの態様において、ヒトにおける静脈内投与のためのウイルス粒子の量は約1.0×1011vg/kg~約2.0×1016vg/kgである。実施形態において、ヒトにおける静脈内投与のための量は、約1.0×1011vg/kg~約2.0×1013vg/kg、約1.0×1012vg/kg~約2.0×1014vg/kg、約1.0×1013vg/kg~約2.0×1015vg/kg、約1.0×1014vg/kg~約2.0×1016vg/kg、約1.0×1012vg/kg~約2.0×1013vg/kg、約1.0×1013vg/kg~約2.0×1014vg/kg、約1.0×1014vg/kg~約2.0×1015vg/kgである。
【0089】
IBDの治療に加えて、方法は、CLN1遺伝子の発現と関連付けられる任意の障害、例えば乳児、遅発乳児、若年、または成人発症型神経セロイドリポフスチン症を治療するために使用されてもよい。それらは、CLN1の低いまたは異常な発現の結果としてもたらされる他のIBD関連障害のために使用することができ、該障害の一部は国際公開第2017/218450号パンフレット(参照により本明細書に援用される)において記載されている。
【0090】
薬学的に許容される担体中のCLN1ポリヌクレオチドを含んでなる医薬組成物および本明細書に開示されるような方法における使用のための使用説明書を含んでなるキットもまた提供される。
【0091】
AAVウイルス粒子を製造する方法
AAVウイルスベクターを製造するために様々なアプローチが使用され得る。実施形態において、パッケージングは、ヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドおよび細胞系を使用することにより達成される。ヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドは、ウイルスベクターの製造を促すエレメントおよび配列を含有する。別の態様において、ヘルパープラスミドはパッケージング細胞系のゲノムに安定的に組み込まれ、その結果、パッケージング細胞系はヘルパープラスミドを用いる追加のトランスフェクションを要求しない。
【0092】
実施形態において、細胞はパッケージングまたはヘルパー細胞系である。実施形態において、態様において、ヘルパー細胞系は真核細胞、例えば、HEK293細胞または293T細胞である。実施形態において、ヘルパー細胞は酵母細胞または昆虫細胞である。
【0093】
実施形態において、細胞は、テトラサイクリンアクティベータータンパク質をコードする核酸、およびテトラサイクリンアクティベータータンパク質の発現を調節するプロモーターを含んでなる。実施形態において、テトラサイクリンアクティベータータンパク質の発現を調節するプロモーターは構成的プロモーターである。実施形態において、プロモーターはホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(PGK)またはCMVプロモーターである。
【0094】
ヘルパープラスミドは、例えば、複製インコンピテントAAVをパッケージングするため、および複製コンピテントAAVの製造なしで、複製インコンピテントAAVを高い力価でパッケージングすることができるビリオンタンパク質を製造するために要求される全てのビリオンタンパク質をトランスでコードする複製インコンピテントウイルスゲノムに由来する少なくとも1つのウイルスヘルパーDNA配列を含んでなるものであってもよい。
【0095】
AAVをパッケージングするためのヘルパープラスミドは当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開第2004/0235174 A1号明細書(参照により本明細書に援用される)を参照。それにおいて記載されるように、AAVヘルパープラスミドは、ヘルパーウイルスDNA配列として、非限定的な例として、それらの各々の元々のプロモーターまたは異種プロモーターにより制御された、Ad5遺伝子E2A、E4およびVAを含有してもよい。AAVヘルパープラスミドは、所望の標的細胞のトランスフェクションの単純な検出を可能にするためにマーカータンパク質、例えば蛍光タンパク質の発現用の発現カセットを追加的に含有してもよい。
【0096】
本開示は、AAV粒子を製造する方法であって、本明細書に開示されるAAVヘルパープラスミドのいずれか1つ、および本明細書に開示されるAAVベクターのいずれか1つをパッケージング細胞系にトランスフェクトすることを含んでなる、方法を提供する。実施形態において、AAVヘルパープラスミドおよびAAVベクターはパッケージング細胞系に共トランスフェクトされる。実施形態において、細胞系は哺乳動物細胞系、例えば、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞系である。本開示は、本明細書に開示されるAAVベクターおよび/またはAAV粒子のいずれか1つを含んでなる細胞を提供する。
【0097】
医薬組成物
本開示は、本明細書に記載のAAVベクター、AAVカプシドおよび/またはAAV粒子のいずれか1つを含んでなる医薬組成物を提供する。典型的には、AAV粒子が療法のために投与される。
【0098】
本明細書に記載されるような医薬組成物は、薬理学の技術分野において公知のまたは開発された任意の方法により製剤化されてもよく、該方法としては、活性成分(例えば、ウイルス粒子または組換えベクター)を賦形剤または他のアクセサリー成分と接触させること、製造物を用量単位に分割またはパッケージ化することが挙げられるがこれらに限定されない。本開示のウイルス粒子は、望ましい特徴、例えば、増加した安定性、増加した細胞トランスフェクション、持続または遅延された放出、生体内分布またはトロピズム、インビボでのコードされるタンパク質のモジュレートまたは増強された翻訳、およびインビボでのコードされるタンパク質の放出プロファイルを有するように製剤化されてもよい。
【0099】
そのため、医薬組成物は、食塩水、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コア-シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ウイルスベクターをトランスフェクトされた細胞(例えば、対象への移植のため)、ナノ粒子模倣体またはこれらの組合せを更に含んでもよい。実施形態において、医薬組成物はナノ粒子として製剤化される。実施形態において、ナノ粒子は、自己集合した核酸ナノ粒子である。
【0100】
本開示による医薬組成物は、単回単位用量として、および/または複数の単回単位用量として、調製、パッケージ化、および/またはバルクで販売されてもよい。活性成分の量は、概して、対象に投与される活性成分の投薬量および/またはそのような投薬量の好都合な比率、例えば、そのような投薬量の2分の1もしくは3分の1などに等しい。本発明の製剤は、それぞれが、一緒になってウイルスベクターの安定性を増加させ、ウイルスベクターによる細胞トランスフェクションもしくは形質導入を増加させ、ウイルスベクターにコードされるタンパク質の発現を増加させ、かつ/またはウイルスベクターにコードされるタンパク質の放出プロファイルを変更する量の、1つまたは複数の賦形剤を含むことができる。実施形態において、医薬組成物は賦形剤を含んでなる。賦形剤の非限定的な例としては、溶媒、分散媒体、希釈剤、もしくは他の液体媒体、分散もしくは懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、増粘もしくは乳化剤、防腐剤、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0101】
実施形態において、医薬組成物は凍結保護剤を含んでなる。「凍結保護剤」という用語は、凍結の間の物質への損傷を低減または排除することができる剤を指す。凍結保護剤の非限定的な例としては、スクロース、トレハロース、ラクトース、グリセロール、デキストロース、ラフィノースおよび/またはマンニトールが挙げられる。
【0102】
更なる番号付けされた実施形態
本開示の更なる番号付けされた実施形態が以下のように提供される:
【0103】
実施形態1.それを必要とする対象において乳児バッテン病(IBD)またはIBD関連障害を治療する方法であって、CLN1オープンリーディングフレームを含んでなる第1のポリヌクレオチドの髄腔内投与およびCLN1オープンリーディングフレームを含んでなる第2のポリヌクレオチドの静脈内投与を行い、それによりIBDまたはIBD関連障害を治療することを含む、方法。
【0104】
実施形態2.前記髄腔内投与が前記静脈内投与に先行する、実施形態1に記載の方法。
【0105】
実施形態3.前記CLN1オープンリーディングフレームが、野生型CLN1ポリヌクレオチド、コドン最適化された配列、またはこれらのそれぞれに対して少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる、実施形態1または2に記載の方法。
【0106】
実施形態4.前記コドン最適化された配列が配列番号1である、実施形態3に記載の方法。
【0107】
実施形態5.前記CLN1オープンリーディングフレームが、配列番号3に対して少なくとも約90%の同一性を有するポリペプチド配列をコードする、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態6.前記対象がヒト患者である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態7.前記CLN1オープンリーディングフレームがプロモーターに作動可能に連結している、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態8.前記プロモーターがニワトリベータアクチンプロモーターである、実施形態7に記載の方法。
【0111】
実施形態9.前記CLN1オープンリーディングフレームがエンハンサーに作動可能に連結している、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態10.前記エンハンサーがサイトメガロウイルスエンハンサーである、実施形態9に記載の方法。
【0113】
実施形態11.前記CLN1オープンリーディングフレームがイントロンに作動可能に連結している、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態12.前記イントロンがハイブリッド/改変されたMVMイントロンである、実施形態11に記載の方法。
【0115】
実施形態13.前記CLN1オープンリーディングフレームがポリアデニル化シグナルに作動可能に連結している、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態14.前記ポリアデニル化シグナルがウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、実施形態13に記載の方法。
【0117】
実施形態15.前記ポリヌクレオチドの投与が、前記ポリヌクレオチドを含んでなるベクターを投与することを含んでなる、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態16.前記ベクターが、野生型カプシドタンパク質、突然変異型カプシドタンパク質、組織向性カプシドタンパク質、または改変されたカプシドタンパク質であって、野生型カプシドタンパク質と比較して変更されたトロピズムを有する、前記改変されたカプシドタンパク質のうちの1つまたは複数を含んでなるウイルス粒子中にパッケージングされる、実施形態15に記載の方法。
【0119】
実施形態17.前記ベクターが少なくとも1つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆末端反復(ITR)を更に含んでなる、実施形態15に記載の方法。
【0120】
実施形態18.前記ベクターが2つのAAV ITRを含んでなる、実施形態17に記載の方法。
【0121】
実施形態19.前記2つのAAV ITRが同じヌクレオチド配列を有する、実施形態18に記載の方法。
【0122】
実施形態20.前記2つのAAV ITRが異なるヌクレオチド配列を有する、実施形態18に記載の方法。
【0123】
実施形態21.前記AAV ITRがAAV2 ITRである、実施形態19および20に記載の方法。
【0124】
実施形態22.前記ウイルスベクターが自己相補的AAVゲノムである、実施形態16~21のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態23.前記ベクターが、エンハンサー、プロモーター、イントロン、ヒトCLN1オープンリーディングフレーム、およびポリアデニル化部位を含んでなるポリヌクレオチドを含んでなる、実施形態15~22のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態24.前記ベクターが、AAV ITR、エンハンサー、プロモーター、イントロン、ヒトCLN1オープンリーディングフレーム、ポリアデニル化部位、およびAAV ITRを含んでなるポリヌクレオチドを含んでなる、実施形態15~22のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態25.前記ベクターが、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ハイブリッド/改変されたMVMイントロン、ヒトCLN1オープンリーディングフレーム、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化部位を含んでなるポリヌクレオチドを含んでなる、実施形態15~22のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態26.前記ベクターが、突然変異体AAV ITR、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ハイブリッド/改変されたMVMイントロン、ヒトCLN1オープンリーディングフレーム、ウシ成長ホルモンポリアデニル化部位、および野生型AAV ITRを含んでなるポリヌクレオチドを含んでなる、実施形態15~22のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態27.前記ポリヌクレオチドが、前記対象において機能的なCLN1を発現させるための量で投与される、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態28.前記ポリヌクレオチドが、前記対象における前記機能的なCLN1の長期的な発現のための量で投与される、実施形態27に記載の方法。
【0131】
実施形態29.髄腔内に投与される量が、静脈内に送達される量と同じまたは異なる、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
実施形態30.前記ポリヌクレオチドが症状前の前記対象の髄腔内に投与される、実施形態1~29のいずれかに記載の方法。
【0133】
実施形態31.髄腔内投与のためのベクターの量が約1.0×1014vg~約1.0×1015vgである、実施形態15~30のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態32.静脈内投与のためのベクターの量が約1.0×1013vg/kg~約2.0×1014vg/kgである、実施形態15~31のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態33.前記髄腔内投与および前記静脈内投与が症状発症後に行われる、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態34.前記髄腔内投与および前記静脈内投与が症状発症前に行われる、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
実施形態35.前記障害が、乳児、遅発乳児、若年、または成人発症型神経セロイドリポフスチン症である、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態36.前記ベクターがAAVベクターである、実施形態15~35のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
実施形態37.前記AAVベクターがAAV9ベクターである、実施形態37に記載の方法。
【0140】
実施形態38.前記AAVベクターが野生型カプシドタンパク質中にカプシド被包されている、実施形態36または37に記載の方法。
【0141】
実施形態39.前記AAVベクターが、野生型カプシドタンパク質と比較して変更されたトロピズムを有する改変されたカプシドタンパク質中にカプシド被包されている、実施形態36または37に記載のベクター。
【0142】
実施形態40.前記改変されたカプシドタンパク質が肝臓脱標的化されている、実施形態49に記載の方法。
【0143】
実施形態41.薬学的に許容される担体中の前記CLNポリヌクレオチドを含んでなる医薬組成物および実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法における使用のための使用説明書を含んでなる、キット。
【実施例
【0144】
実施例1
PPT1タンパク質を発現するAAVの髄腔内および静脈内投与
CLN1 ORFによりコードされるPPT1タンパク質を発現させるためにAAVベクターゲノムカセットを開発した。複数のAAVカプシド内にパッケージングされる自己相補的AAVゲノムからの最大の発現を提供するようにこのカセットを設計した。カセットは、5’から3’方向に、突然変異体AAV2 ITR、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ハイブリッド/改変されたMVMイントロン、コドン最適化されたヒトCLN1 ORF、ウシ成長ホルモンポリアデニル化部位、および野生型(WT)AAV2 ITRを含んでなる(図1)。発現カセットをHEK293細胞にトランスフェクトすることによりCLN1の発現を検証し、発現されたタンパク質をウエスタンブロットにより細胞および培地中で検出した。
【0145】
CLN1発現カセットを野生型AAV9カプシド内にパッケージングし、結果としてもたらされたAAVウイルス粒子を使用して、CLN1ノックアウトマウスの髄腔内および/または静脈内への投薬を行った。
【0146】
図2は、scAAV9/CLN1療法を投与されたマウスにおけるPPT1の血清酵素活性を示す。ベクターを野生型、異種およびCLN1ノックアウトマウスの髄腔内に7×1010または7×1011ベクターゲノムの用量で、または静脈内に7×1011ベクターゲノムの用量で注射した。ベクターを20週時に投与した。PPT1血清酵素活性を治療の4週、8週、および17~37週後に測定した。超生理学的なPPT1血清酵素活性レベルが全ての時点および投薬量において観察された。
【0147】
実施例2
PPT1タンパク質を発現するAAVの髄腔内投与および静脈内投与の組合せはCLN1ノックアウトマウスの寿命を向上させる
PPT1タンパク質を発現するAAVウイルス粒子を実施例1に記載されるように調製し、髄腔内および/または静脈内に投与された場合のCLN1ノックアウトマウスの寿命に対するそれらの効果について試験した。
【0148】
図3A~3Bは、scAAV9/CLN1を髄腔内に投与されたCLN1ノックアウトマウスの寿命を示す。影付きの区画は、非治療異種マウスについての生存範囲を示す。図3Aにおいて、様々な用量のベクターゲノムは、症状の発症前に1、4、および12週時に行った。結果は、scAAV9/CLN1の髄腔内投与は、早期に与えられた場合に用量依存的に生存を長期化させることを示した。図3Bにおいて、ベクターをCLN1ノックアウトマウスの髄腔内に7×1010または7×1011ベクターゲノムの用量で症状の発症後に20または26週時に注射した。結果は、症状発症後に投与されたより高用量のscAAV9/CLN1はCLN1ノックアウトマウスの生存を長期化させたが、生存利益は症状発症前のscAAV9/CLN1投与の生存利益と比較してはるかにより小さかったことを示した。
【0149】
図4A~5Bは、髄腔内投与、静脈内投与、または髄腔内投与および静脈内投与の組合せを介して様々な用量のscAAV9/CLN1を与えられたCLN1ノックアウトマウスの寿命を示す。影付きの区画は、非治療異種マウスについての生存範囲を示す。顕著なことに、図4Bおよび図5Bは、20週時(症状発症後)にscAAV9/CLN1を与えられたCLN1ノックアウトマウスについて、髄腔内投与および静脈内投与の組合せは、髄腔内または静脈内投与のみと比較して有意により大きい生存利益を与えたことを示す。
【0150】
実施例3
PPT1タンパク質を発現するAAVの髄腔内投与および静脈内投与の組合せは行動アッセイにおいてCLN1ノックアウトマウスの成績を改善させる
治療されたマウスに対して行動アッセイを行って、PPT1タンパク質を発現するAAVウイルス粒子の髄腔内および/または静脈内投与後の行動における改善を検出した。AAVウイルス粒子は実施例1に記載されるように調製した。
【0151】
水泳能力の試験において、マウス(非治療異種、非治療ノックアウト、4または20週時に様々な用量のベクターを用いて治療されたノックアウト)を、多数の視覚的手がかりを有する部屋中に位置する45cmの深さの水で満たされた122cmの直径のプールからなるモリス水迷路中に置いた。水の表面よりも上に広がるパターン化された円筒を手がかりにしてプラットフォームに逃れるために泳ぐための1日当たり4回の試行を2~3日にわたり各マウスに与えた。各試行のために、マウスをプール中の4つの可能な位置の1つに置き(無作為の順序)、次に目に見えるプラットフォームを見付けるために60秒を与えた。マウスがプラットフォームを見付けた場合、試行を終了し、動物をプラットフォーム上に10秒間留めた後に次の試行を開始した。プラットフォームが見付けられなかった場合、マウスをプラットフォーム上に10秒間置いた後に、次の試行を与えた。試験を異なる齢において実行し、水泳速度を測定した。図6A~6Bは結果を示す。顕著なことに、20週時にベクターを用いて治療されたノックアウトマウスの中で、ベクターの髄腔内投与および静脈内投与の組合せを与えられたノックアウトマウスは、有意により遅い疾患進行を示し、ベクターの髄腔内投与のみまたは静脈内投与のみを与えられたノックアウトマウスが死亡した時点である52週齢を超えて水泳速度を概ね維持した(図6B)。
【0152】
グリップ強度の試験において、マウス(非治療異種、非治療ノックアウト、4または20週時に様々な用量のベクターを用いて治療されたノックアウト)を大きい金属ケージの蓋上に置いた。蓋を穏やかに揺さぶって、マウスが金属グリッドを握るように誘導した。ケージの上部を次にひっくり返し、マウスが蓋から落下するまでの潜時を記録した。最大試行長さは60秒であった。試験を異なる齢において実行した。落下までの時間を測定した。図7A~7Bは結果を示す。顕著なことに、20週時にベクターを用いて治療されたノックアウトマウスの中で、ベクターの髄腔内投与および静脈内投与の組合せを与えられたノックアウトマウスは、ベクターの髄腔内投与のみまたは静脈内投与のみを与えられたノックアウトマウスよりも有意に遅い強度喪失を示し、これらの課題においてより良好な成績であった(図7B)。
【0153】
図8は、様々なマウス治療群についての相対的な生存時間に対する正規化された身体能力スコア(PSC)を示す。PSCは、異種マウスを1に正規化して、時間にわたる治療内平均についての曲線下面積(スプライン近似)から導出した。PSCを重量加速ロータロッド、およびワイヤーハングからのデータと組み合わせた。異種マウスについてのメジアン生存は712日に設定された。結果は、マウスの相対的な生存時間および相対的な身体能力の間の強い相関を示した。
【0154】
実施例4
AAVウイルス粒子発現PPT1タンパク質を投与されたCLN1ノックアウトマウスにおけるPPT1レベルおよびその生理学的効果の分析
新生仔におけるscAAV9/CLN1療法の効果を試験した。新生仔としての異種マウスの静脈内にベクター(2.8×1011vg)を投与した。血清PPT1レベル(図9A)および水泳速度(図9B)を異なる齢において試験した。結果は、超生理学的レベルの血清PPT1酵素活性の長期的な発現にもかかわらず、ベクター治療ヘテロ接合マウスに対する有害効果を示さない。
【0155】
scAAV9/CLN1ベクターを用いて治療されたラットの異なる組織においてもPPT1酵素活性を測定した。図10に指し示される用量および投与経路にしたがって媒体対照またはscAAV9/CLN1ベクターのいずれかを用いてラットを治療した。結果は、scAAV9/CLN1ベクターを用いて治療されたラットは、組織を越えて持続的な超生理学的レベルのPPT1酵素活性を示したことを示す。
【0156】
scAAV9/CLN1ベクターを用いて治療されたラットにおいてAAV9に対する中和抗体の生成もまた試験した。図11に指し示される用量および投与経路にしたがって媒体対照またはscAAV9/CLN1ベクターのいずれかを用いてラットを治療し、抗AAV9中和抗体の力価を4および12週時に測定した。結果は、ラットは、ベクターの投与経路(静脈内、髄腔内、または静脈内および髄腔内の組合せ)にかかわらずAAV9に対する中和抗体を発生させたことを示す。
【0157】
実施例5
AAVウイルス粒子の髄腔内投与および静脈内投与の組合せはCLN1ノックアウトマウスにおいて症状の発症を遅延させ、寿命を向上させる
図12は、異なる時点(1、4、12、20、および26週)において異なる投与経路(髄腔内または髄腔内+静脈内コンボ)を介してscAAV9/CLN1ベクターを用いて治療されたマウスにおける症状発症の図表を示す。影付きの区画は、非治療異種マウスについての生存範囲を示す。全体的に、scAAV9/CLN1ベクターを用いる早期治療はより大きい利益を提供したが、髄腔内投与および静脈内投与の組合せは、治療がより後の時点(例えば、20週)において投与された場合に単独での髄腔内投与よりも有意に大きい利益を提供した。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
【配列表】
2022530264000001.app
【国際調査報告】