(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-28
(54)【発明の名称】サイクリッククーロメトリーの方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20220621BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20220621BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20220621BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20220621BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20220621BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220621BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/387
G01R31/385
G01R31/382
G01R31/389
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572279
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2019035568
(87)【国際公開番号】W WO2020246972
(87)【国際公開日】2020-12-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521529525
【氏名又は名称】ジーレクトリック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XILECTRIC,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ワイス、スティーブン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ルメイ、チャールズ アール.
(72)【発明者】
【氏名】フェレンツ、アンドリュー
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA51
2G216BA61
5H030AA09
5H030AS08
5H030FF27
5H030FF41
(57)【要約】
サイクリッククーロメトリーを使用して電気化学セルを診断するシステム、デバイス、および方法が論じられている。例示的なバッテリー診断システムは、電気化学セルを励起するための対称的な充電電流および放電電流を生成するための電流発生器、および電気化学セルの性能を評価するためのサイクリッククーロメータを備える。サイクリッククーロメータは、モニタされたセル電圧を特定の設定値に向けて維持するために、充電電流を印加するための充電時間、または放電電流を印加するための放電時間のうちの少なくとも1つを調整することができる。充電または放電時間の調整は、電流を第1の電流方向から第2の電流方向に逆転させるための電流スイッチタイミングを変更することによって達成することができる。サイクリッククーロメータは、充電または放電サイクル中に1つ以上の電気的パラメータを測定し、測定された電気的パラメータを使用して性能メトリックを生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルを試験するためのシステムであって、
前記電気化学セルをそれぞれ充電および放電するために、サイクリング期間内に対称な充電電流および放電電流を生成するように構成された電流発生器と、
サイクリッククーロメータであって、
前記電流発生器に結合されたコントローラ回路であって、
前記電気化学セルのモニタされたセル電圧を特定の設定値に向けて制御するために、充電時間または放電時間のうちの少なくとも1つを調整し、
前記調整された充電時間または前記調整された放電時間のうちの少なくとも1つに従って、前記充電電流および前記放電電流を使用して前記電気化学セルを電気的にサイクルさせるように前記電流発生器を制御する、ように構成された、コントローラ回路と、
1つ以上の電気的パラメータを測定し、前記測定された1つ以上の電気的パラメータを使用して前記電気化学セルの性能メトリックを生成するように構成された測定回路と、を含む、サイクリッククーロメータと、を備える、システム。
【請求項2】
前記電流発生器が、単極直流源を使用して方形波電流を生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラ回路が、前記充電電流から前記放電電流に逆転するための電流スイッチタイミングを変更することによって、前記充電時間または前記放電時間を調整するように構成され、前記充電電流および前記放電電流が、反対の電流方向を有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
スイッチを含み、前記コントローラ回路からの制御信号に応答して、
前記電気化学セルを充電するための前記充電電流を生成するために、前記スイッチのうちの第1の1つ以上のみを閉じ、
前記電流スイッチタイミングに従って、前記電気化学セルを放電するための前記放電電流を生成するために、前記スイッチのうちの第2の1つ以上のみを閉じる、ように構成された電流スイッチ回路を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記スイッチの1つ以上が、FETトランジスタである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記測定された1つ以上の電気的パラメータが、前記電気化学セルの電圧または電流応答を含み、前記制御回路が、前記モニタされた電圧または電流応答を使用して前記電流スイッチタイミングを決定または更新するように構成されている、請求項3~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラ回路が、比例積分(PI)コントローラまたは比例積分微分(PID)コントローラを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記モニタされた電圧または電流応答が、
前記調整された充電時間および前記調整された放電時間を含む全フレームにわたる平均またはピークセル電圧、
前記調整された充電時間にわたる平均またはピークセル電圧、
前記調整された放電時間にわたる平均またはピークセル電圧、
全フレームにわたる平均またはピークセル電流、
前記調整された充電時間にわたる平均またはピークセル電流、または、
前記調整された放電時間にわたる平均またはピークセル電流、のうちの1つ以上を含む、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラ回路が、
前記モニタされた電圧または電流応答を使用して、超過充電時間または超過放電時間の決定を含む前記電流スイッチタイミングを決定し、
前記決定された超過充電時間だけ前記充電時間を増加または減少させる、または、前記決定された超過放電時間だけ基本放電時間を増加または減少させる、ように構成されている、請求項6~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記超過充電時間または前記超過放電時間が、各々が指定されたスイッチングタイマ分解能の持続時間を有するティックのカウントによって表される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラ回路が、
電気化学セル試験環境の周囲温度情報、または、
前記電気化学セルの充電状態または健全性状態、のうちの1つ以上をさらに使用して前記電流スイッチタイミングを決定するように構成されている、請求項6~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記測定回路が、
サイクリング期間の少なくとも一部の間に印加された総電荷の量を決定し、
印加された総電荷の前記決定され量を使用して自己放電率を決定し、前記自己放電率が、前記電気化学セルの前記セル電圧を前記特定の設定値に維持するために必要とされる印加電流を表す、ように構成された性能メトリック発生器を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記サイクリッククーロメータが、前記サイクリング期間の前記指定された部分の間に前記印加された総電荷の量を測定するように構成されたクーロンカウンタを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記サイクリッククーロメータが、フレームごとに印加された総電荷(QPF)の量を含む、前記印加された総電荷の量を決定するように構成されている、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
前記サイクリッククーロメータが、フレーム内で経時的に印加された電流を積分することによって前記QPFを決定するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記性能メトリック発生器が、経時的なQPFの傾向を生成し、前記生成されたQPFの傾向の傾きを使用して前記自己放電率を決定するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記サイクリッククーロメータが、
充電期間中にのみ印加された総電荷の第1の量、および、前記充電期間に続く放電期間中にのみ印加された総電荷の第2の量を決定し、
印加された総電荷の前記第1の量と印加された総電荷の前記第2の量との間の差を使用して前記QPFを決定する、ように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記サイクリッククーロメータが、前記充電期間中のみの第1の総ティックカウントを使用して印加された総電荷の前記第1の量を決定し、前記放電期間中のみの第2の総ティックカウントを使用して印加された総電荷の前記第2の量を決定するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記測定された1つ以上の電気的パラメータが、前記電気化学セルのセル電圧を含み、前記性能メトリック発生器が、(1)充電期間中の充電電圧または放電期間中の放電電圧のうちの少なくとも1つ、および(2)前記印加電流、を使用して、前記電気化学セルの等価直列抵抗(ESR)を決定するように構成されている、請求項12~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記性能メトリック発生器が、前記印加された総電荷の量の関数としてESR曲線を生成し、印加された総電荷の特定の量での前記ESR曲線の傾きを使用して、失われたクーロン当たりのESR変化率を決定するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記性能メトリック発生器が、
異なる試験条件下で複数のESR変化率を決定し、前記異なる試験条件の各々が、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表され、
前記パラメータセットにわたって前記複数のESR変化率の表現を生成する、ように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記性能メトリック発生器が、前記充電電圧と平均セル電圧との間の差、または前記放電電圧と前記平均セル電圧との間の差のうちの少なくとも1つを使用して前記電気化学セルの前記ESRを決定するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記性能メトリック発生器が、前記充電電圧および前記放電電圧の平均または加重平均を使用して前記平均セル電圧を決定するように構成されている、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記性能メトリック発生器が、
異なる試験条件下で複数の自己放電率を決定し、前記異なる試験条件の各々が、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表され、
前記パラメータセットにわたって前記複数の自己放電率の表現を生成する、ように構成されている、請求項12~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記複数の自己放電率の前記表現が、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記サイクリッククーロメータに通信可能に結合された出力デバイスを備え、前記出力デバイスが、前記測定された1つ以上の電気的パラメータまたは前記電気化学セルの前記生成された性能メトリックを表示するように構成されている、請求項1~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記出力デバイスが、複数の試験条件にわたる複数の自己放電率、または複数の試験条件にわたる複数のESR変化率のうちの1つ以上を表示するように構成されている、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記出力デバイスが、前記パラメータセットから選択された2つのパラメータによって各々が表された、複数の試験条件にわたる前記複数の自己放電率を表す三次元(3D)損失率マップを表示するように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記出力デバイスが、前記パラメータセットから選択された2つのパラメータによって各々が表された、複数の試験条件にわたる前記複数のESR変化率を表す三次元(3D)ESR率マップを表示するように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
電気化学セルを試験するための方法であって、
電流発生器を介して、サイクリング期間において、充電時間の充電電流および放電時間の放電電流を印加することによって、前記電気化学セルを電気的にサイクリングさせることであって、前記充電電流および前記放電電流が、対称であり、かつ反対方向を有する、電気的にサイクリングさせることと、
測定回路を介して、前記電気化学セルの前記電気的サイクリング中に、1つ以上の電気的パラメータを測定することと、
コントローラ回路を介して、前記電気化学セルのモニタされたセル電圧を特定の設定値に向けて制御するために、前記充電時間または前記放電時間を調整することと、
測定回路を介して、前記測定された1つ以上の電気的パラメータを使用して前記電気化学セルの性能メトリックを生成することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記充電時間または前記放電時間を調整することが、前記充電電流から前記放電電流に逆転するための電流スイッチタイミングを更新することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記測定された1つ以上の電気的パラメータが、前記電気化学セルの電圧または電流応答を含み、前記電流スイッチタイミングを更新することが、前記モニタされた電圧または電流応答を使用することによるものである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記充電時間または放電時間を調整することが、超過充電時間だけ前記充電時間を増加または減少させることを含み、前記超過充電時間が、各々が指定されたスイッチングタイマ分解能の持続時間を有するティックのカウントによって表される、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記充電時間または放電時間を調整することが、超過放電時間だけ前記放電時間を増加または減少させることを含み、前記超過放電時間が、各々が指定されたスイッチングタイマ分解能の持続時間を有するティックのカウントによって表される、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記性能メトリックを生成することが、
前記サイクリング期間の指定された部分の間に印加された総電荷の量を決定することと、
印加された総電荷の前記決定された量を使用して自己放電率を決定することであって、前記自己放電率が、前記電気化学セルの前記セル電圧を前記特定の設定値に維持するために必要とされる印加電流を表す、決定することと、を含む、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記印加された総電荷の量が、前記フレームの時間に対応するフレームごとに印加された総電荷(QPF)を含み、前記自己放電率を決定することが、経時的なQPFの傾向の傾きを使用することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記QPFを決定することが、フレーム内で経時的に前記印加された電流を積分することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記QPFを決定することが、
充電期間中にのみ印加された総電荷の第1の量、および前記充電期間に続く放電期間中にのみ印加された総電荷の第2の量を決定することと、
印加された総電荷の前記第1の量と印加された総電荷の前記第2の量との間の差を使用して前記QPFを決定することと、を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
印加された総電荷の前記第1の量が、前記充電期間中にのみ第1の総ティックカウントを使用することによって決定され、印加された総電荷の前記第2の量が、前記放電期間中にのみ第2の総ティックカウントを使用することによって決定される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記測定された1つ以上の電気的パラメータが、前記電気化学セルのセル電圧を含み、前記性能メトリックを生成することが、(1)充電期間中の充電電圧または放電期間中の放電電圧のうちの少なくとも1つ、および(2)前記印加電流、を使用して、前記電気化学セルの等価直列抵抗(ESR)を決定することを含む、請求項35~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記性能メトリックを生成することが、
前記印加された総電荷の量の関数として、ESR曲線を生成することと、
印加された総電荷の特定の量での前記ESR曲線の傾きを使用して、失われたクーロン当たりのESR変化率を決定することと、を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
異なる試験条件下で複数のESR変化率を決定することであって、前記異なる試験条件の各々が、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表される、決定することと、
前記パラメータセットにわたって前記複数のESR変化率の表現を生成することであって、前記表現が、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、生成することと、を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記性能メトリックを生成することが、
各々がCレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表された異なる試験条件下で複数の自己放電レートを決定することと、
前記パラメータセットにわたって前記複数の自己放電率の表現を生成することであって、前記表現が、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、生成することと、を含む、請求項35~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記測定された1つ以上の電気的パラメータまたは前記測定された性能メトリックのうちの1つ以上をユーザインターフェース上に表示することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
機械によって実行されるとき、前記機械に請求項30~44のいずれか一項に記載の前記方法のいずれかを行わせる命令を含む、少なくとも1つの機械可読媒体。
【請求項46】
電気化学セルを試験するためのシステムであって、前記システムが、請求項30~44のいずれか一項に記載の前記方法のいずれかを行うための手段を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この文書は、概して電気化学セルに関し、より具体的には、サイクリッククーロメトリーを使用して電気化学セルのサイクル試験を行うためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クーロメトリーは、電気化学反応中に消費または生成された電気の総クーロンを測定する電気化学技術である。今日、クーロメトリー技術には2つの基本的なカテゴリーがある。定電位クーロメトリーは、ポテンシオスタットを使用して電気化学セルに定電位を印加する。定電流クーロメトリーは、ガルバノスタットを使用して電気化学セルに定電流を印加する。どちらの場合も、電気化学セルを通過する総電荷Qは、電流を時間の関数として積分することによって計算される。クーロメトリーは、電気化学の分野において多くのアプリケーションがある。例えば、クーロメトリーを使用して、バッテリー、燃料電池、または他の電気化学反応の性能を特徴付けることができる。
【0003】
リチウムイオン(Li-ion)バッテリーは、主要なバッテリー化学になりつつある。リチウムイオンバッテリーは、リチウムイオンが放電中に負極から正極に移動し、充電時に戻る充電式バッテリーの一種である。主にエネルギー密度が高いため、リチウムイオンバッテリーは、現代のバッテリー式電気自動車(BEV)で最も一般的なバッテリータイプになっている。始動バッテリー、照明バッテリー、点火バッテリーとは異なり、BEVのリチウムイオンバッテリーは、持続的な期間にわたって電力を供給し、比較的高い出力対重量比、比エネルギー、およびエネルギー密度によって特徴付けられている。また、自己放電率も低くなっている。
【0004】
サイクル寿命は、公称容量が特定の閾値(例えば、初期定格容量の80%)を下回る前にバッテリーが実行できる充放電サイクル数の尺度である。サイクル寿命は、サイクリング条件、化学的性質、セル設計、および製造品質に依存してよって大きく変わる。例えば、アプリケーションにおいてリチウムイオンバッテリーがどのように使用されるか依存して、リチウムイオンバッテリーは、数百サイクルしか持続しない重大な劣化を示す場合や、数千サイクル持続するように設計することができる場合がある。
【0005】
リチウムイオンバッテリーの乱用耐性またはサイクル寿命を改善する技術は、大きな商業的関心を有するであろう。しかしながら、何年間もサイクルすることができるリチウムイオン化学が存在することを考えると、新しい技術を証明すること、または既存の配合を繰り返してサイクル寿命を改善することさえ困難である。
【0006】
サイクル試験は重要なバッテリー認定試験である。一般的なバッテリー評価プロセスでは、下限電圧と上限電圧の間で固定電流の下で試験セルをサイクルさせて、サイクルの寿命全体にわたるバッテリーの性能を調査する。セルは、セルが製造業者の主張するサイクル寿命を満たしていることを立証するために、繰り返しの充放電サイクルにかけられる。温度、容量、インピーダンス、電力出力、放電時間などの様々なセル性能パラメータを、試験中にモニタおよび記録することができる。サイクル試験は、バッテリーの性能が最終製品の信頼性および寿命の期待に沿っていることを立証する。
【0007】
高精度クーロメーターは、リチウムイオンバッテリーのクーロン効率を50ppmの精度で測定することができる。クーロン効率メトリックは、バッテリーの充電に必要なクーロンを放電から得られたクーロンと比較する。被試験バッテリーに関連付けられたリスクを評価するために、厳格で幅広い試験条件下で追加のバッテリー固有の試験を実行することもできる。様々な動作環境および使用パターンでのセルの性能に関する知識は、様々なアプリケーションのバッテリー設計を最適化するのに役立ち得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この文書では、とりわけ、サイクリッククーロメトリーの技術を使用して、バッテリーセルなどの電気化学セルを診断するシステム、デバイス、および方法について論じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的なバッテリー診断システムは、電気化学セルを励起するための対称的な充電電流および放電電流を生成するための電流発生器、および電気化学セルの性能を評価するためのサイクリッククーロメータを備える。サイクリッククーロメータは、セル電圧を特定の設定値に維持するために、充電電流を印加するための充電時間、または放電電流を印加するための放電時間のうちの少なくとも1つを調整するためのコントローラ回路を含む。充電または放電時間の調整は、電流を第1の電流方向から第2の電流方向に逆転させるための電流スイッチタイミングを変更することによって達成され得る。測定回路は、充電または放電サイクル中に1つ以上の電気的パラメータを測定し、測定された電気的パラメータを使用してバッテリーメトリックを生成する。
【0010】
実施例1は、電気化学セルを試験するためのシステムであり、電気化学セルをそれぞれ充電および放電するために、サイクリング期間中に対称な充電電流および放電電流を生成するように構成された電流発生器と、サイクリッククーロメータであって、電流発生器に結合された、電気化学セルのモニタされたセル電圧を特定の設定値に向けて制御するために、充電時間または放電時間のうちの少なくとも1つを調整し、調整された充電時間または調整された放電時間のうちの少なくとも1つに従って、充電電流および放電電流を使用して電気化学セルを電気的にサイクルさせるように電流発生器を制御するように構成されたコントローラ回路と、1つ以上の電気的パラメータを測定し、測定された1つ以上の電気的パラメータを使用して電気化学セルの性能メトリックを生成するように構成された測定回路と、を含む、サイクリッククーロメータと、を備える。
【0011】
実施例2では、実施例1の主題は、任意選択で、単極直流源を使用して方形波電流を生成するように構成することができる電流発生器を含む。
実施例3では、実施例1~2のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、充電電流から放電に逆転するための電流スイッチタイミングを変更することによって、充電時間または放電時間を調整するように構成することができ、充電電流および放電電流が、反対の電流方向を有する、コントローラ回路を含む。
【0012】
実施例4では、実施例3の主題は、任意選択で、コントローラ回路からの制御信号に応答して、電気化学セルを充電するための充電電流を生成するために、スイッチのうちの第1の1つ以上のみを閉じ、電流スイッチタイミングに従って、電気化学セルを放電するための放電電流を生成するために、スイッチのうちの第2の1つ以上のみを閉じる、ように構成することができるスイッチを含む電流スイッチ回路を含む。
【0013】
実施例5では、実施例4の主題は、任意選択で、FETトランジスタであり得るスイッチの1つ以上を含む。
実施例6では、実施例3~5のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、電気化学セルの電圧または電流応答を含むことができる測定された1つ以上の電気的パラメータを含み、制御回路が、モニタされた電圧または電流応答を使用して電流スイッチタイミングを決定または更新するように構成されている。
【0014】
実施例7では、実施例6の主題は、任意選択で、比例積分(PI)コントローラまたは比例積分微分(PID)コントローラを含むことができるコントローラ回路を含む。
実施例8では、実施例6~7のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、調整された充電時間および調整された放電時間を含む全フレームにわたる平均またはピークセル電圧、調整された充電時間にわたる平均またはピークセル電圧、調整された放電時間にわたる平均またはピークセル電圧、全フレームにわたる平均またはピークセル電流、調整された充電時間にわたる平均またはピークセル電流、または、調整された放電時間にわたる平均またはピークセル電流、のうちの1つ以上を含むことができるモニタされた電圧または電流応答を含む。
【0015】
実施例9では、実施例6~8のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、モニタされた電圧または電流応答を使用して超過充電時間または超過放電時間の決定を含む電流スイッチタイミングを決定し、決定された超過充電時間だけ充電時間を増加または減少させる、または、決定された超過放電時間だけ基本放電時間を増加または減少させる、ように構成することができるコントローラ回路を含む。
【0016】
実施例10では、実施例9の主題は、任意選択で、各々が指定されたスイッチングタイマ分解能の持続時間を有するティックのカウントによって表すことができる超過充電時間または超過放電時間を含む。
【0017】
実施例11では、実施例6~10のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、電気化学セル試験環境の周囲温度情報、または、電気化学セルの充電状態または健全性状態、のうちの1つ以上をさらに使用して電流スイッチタイミングを決定する、ように構成することができるコントローラ回路を含む。
【0018】
実施例12では、実施例1~11のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、サイクリング期間の少なくとも一部の間に印加された総電荷の量を決定し、印加された総電荷の決定された量を使用して自己放電率を決定し、自己放電率が、電気化学セルのセル電圧を特定の設定値に維持するために必要とされる印加電流を表す、ように構成された性能メトリック発生器を含むことができる測定回路を含む。
【0019】
実施例13では、実施例12の主題は、任意選択で、サイクリング期間の指定された部分の間に印加された総電荷の量を測定するように構成されたクーロンカウンタを含むことができるサイクリッククーロメータを含む。
【0020】
実施例14では、実施例12~13のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、フレームごとに印加された総電荷(QPF)の量を含む印加された総電荷の量を決定するように構成することができるサイクリッククーロメータを含む。
【0021】
実施例15では、実施例14の主題は、任意選択で、フレーム内で経時的に印加電流を積分することによってQPFを決定するように構成することができるサイクリッククーロメータを含む。
【0022】
実施例16では、実施例14~15のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、経時的なQPFの傾向を生成し、生成されたQPFの傾向の傾きを使用して自己放電率を決定するように構成することができる性能メトリック発生器を含む。
【0023】
実施例17では、実施例14~16のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、充電期間中にのみ印加された総電荷の第1の量、および、充電期間に続く放電期間中にのみ印加された総電荷の第2の量を決定し、印加された総電荷の第1の量と印加された総電荷の第2の量との間の差を使用してQPFを決定する、ように構成することができるサイクリッククーロメータを含む。
【0024】
実施例18では、実施例17の主題は、任意選択で、充電期間中のみの第1の総ティックカウントを使用して印加された総電荷の第1の量を決定し、放電期間中のみの第2の総ティックカウントを使用して印加された総電荷の第2の量を決定する、ように構成することができるサイクリッククーロメータを含む。
【0025】
実施例19では、実施例12~18のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、電気化学セルのセル電圧を含むことができ、性能メトリック発生器が、(1)充電期間中の充電電圧または放電期間中の放電電圧のうちの少なくとも1つ、および(2)印加電流、を使用して、電気化学セルの等価直列抵抗(ESRを決定するように構成されている、測定された1つ以上の電気的パラメータを含む。
【0026】
実施例20では、実施例19の主題は、任意選択で、印加された総電荷の量の関数としてESR曲線を生成し、印加された総電荷の特定の量でのESR曲線の傾きを使用して、失われたクーロン当たりのESR変化率を決定する、ように構成することができる性能メトリック発生器を含む。
【0027】
実施例21では、実施例20の主題は、任意選択で、異なる試験条件下で複数のESR変化率を決定し、異なる試験条件の各々が、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表され、パラメータセットにわたって複数のESR変化率の表現を生成する、ように構成することができる性能メトリック発生器を含む。
【0028】
実施例22では、実施例19~21のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、充電電圧と平均セルとの間の差、または放電電圧と平均セル電圧の差のうちの少なくとも1つを使用して電気化学セルのESRを決定するように構成することができる性能メトリック発生器を含む。
【0029】
実施例23では、実施例22の主題は、任意選択で、充電電圧および放電電圧の平均または加重平均を使用して平均セル電圧を決定するように構成することができる性能メトリック発生器を含む。
【0030】
実施例24では、実施例12~23のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、異なる試験条件下で複数の自己放電率を決定し、異なる試験条件の各々が、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表され、パラメータセットにわたって複数の自己放電率の表現を生成する、ように構成することができる性能メトリック発生器を含む。
【0031】
実施例25では、実施例24の主題は、任意選択で、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含むことができる複数の自己放電率の表現を含む。
実施例26では、実施例1~25のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、サイクリッククーロメータに通信可能に結合された出力デバイスを含み、出力デバイスは、測定された1つ以上の電気的パラメータまたは電気化学セルの生成された性能メトリックを表示するように構成されている。
【0032】
実施例27では、実施例26の主題は、任意選択で、複数の試験条件にわたる複数の自己放電率、または複数の試験条件にわたる複数のESR変化率のうちの1つ以上表示するように構成することができる出力デバイスを含む。
【0033】
実施例28では、実施例27の主題は、任意選択で、パラメータセットから選択された2つのパラメータによって各々が表された、複数の試験条件にわたる複数の自己放電率を表す三次元(3D)損失率マップを表示するように構成することができる出力デバイスを含む。
【0034】
実施例29では、実施例27~28のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、パラメータセットから選択された2つのパラメータによって各々が表された、複数の試験条件にわたる複数のESR変化率を表す三次元(3D)ESR率マップを表示するように構成することができる出力デバイスを含む。
【0035】
実施例30は、電気化学セルを試験するための方法である。本方法は、電流発生器を介して、サイクリング期間において、充電時間の充電電流および放電時間の放電電流を印加することによって、電気化学セルを電気的にサイクリングさせることであって、充電電流および放電電流が、対称であり、かつ反対方向を有する、電気的にサイクリングさせるステップと、測定回路を介して、電気化学セルの電気的サイクリング中に、1つ以上の電気的パラメータを測定するステップと、コントローラ回路を介して、電気化学セルのモニタされたセル電圧を特定の設定値に向けて制御するために、充電時間または放電時間を調整するステップと、測定回路を介して、測定された1つ以上の電気的パラメータを使用して電気化学セルの性能メトリックを生成するステップと、を含む。
【0036】
実施例31では、実施例30の主題は、任意選択で、充電電流から放電電流に逆転するための電流スイッチタイミングを更新することを含むことができる充電時間または放電時間を調整することを含む。
【0037】
実施例32では、実施例31の主題は、任意選択で、電気化学セルの電圧または電流応答を含むことができる測定された1つ以上の電気的パラメータを含み、電流スイッチタイミングを更新することは、モニタされた電圧または電流応答を使用することによる。
【0038】
実施例33では、実施例31~32のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、超過充電時間だけ充電時間を増加または減少させることを含むことができる充電時間または放電時間を調整することを含み、超過充電時間は、各々が指定されたスイッチングタイマ分解能の持続時間を有するティックのカウントによって表される。
【0039】
実施例34では、実施例31~33のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、超過放電時間だけ放電時間を増加または減少させることを含むことができる充電時間または放電時間を調整することを含み、超過放電時間は、各々が指定されたスイッチングタイマ分解能の持続時間を有するティックのカウントによって表される。
【0040】
実施例35では、実施例30~34のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、サイクリング期間の指定された部分の間に印加された総電荷の量を決定するステップと、印加された総電荷の決定された量を使用して自己放電率を決定することであって、自己放電率が、電気化学セルのセル電圧を特定の設定値に維持するために必要とされる印加電流を表す、決定するステップと、を含むことができる性能メトリックを生成することを含む。
【0041】
実施例36では、実施例35の主題は、任意選択で、フレームの時間に対応するフレームごとに印加された総電荷(QPF)を含むことができる印加された総電荷の量を含み、自己放電率を決定することは、経時的なQPFの傾向の傾きを使用することを含む。
【0042】
実施例37では、実施例36の主題は、任意選択で、フレーム内で経時的に印加された電流を積分することを含むQPFを決定することを含む。
実施例38では、実施例36~37のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、充電期間中にのみ印加された総電荷の第1の量、および充電期間に続く放電期間中にのみ印加された総電荷の第2の量を決定するステップと、印加された総電荷の第1の量と印加された総電荷の第2の量との間の差を使用してQPFを決定するステップと、を含むことができるQPFを決定することを含む。
【0043】
実施例39では、実施例38の主題は、任意選択で、充電期間中にのみ第1の総ティックカウントを使用することによって決定することができる印加された総電荷の第1の量、および放電期間中にのみ第2の総ティックカウントを使用して決定することができる印加された総電荷の第2の量を含む。
【0044】
実施例40では、実施例35~39のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、電気化学セルのセル電圧を含むことができる測定された1つ以上の電気的パラメータを含み、性能メトリックの生成することは、(1)充電期間中の充電電圧または放電期間中の放電電圧のうちの少なくとも1つ、および(2)印加電流、を使用して、電気化学セルの等価直列抵抗(ESR)を決定することを含むことができる。
【0045】
実施例41では、実施例40の主題は、任意選択で、印加された総電荷の量の関数としてESR曲線を生成するステップと、印加された総電荷の特定の量でのESR曲線の傾きを使用して、失われたクーロン当たりのESR変化率を決定するステップと、を含むことができる性能メトリックの生成することを含む。
【0046】
実施例42では、実施例41の主題は、任意選択で、異なる試験条件下で複数のESR変化率を決定することであって、異なる試験条件の各々が、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表される、決定するステップと、パラメータセットにわたって複数のESR変化率の表現を生成することであって、その表現が、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、生成するステップと、を含む。
【0047】
実施例43では、実施例35~42のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、各々がCレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表された異なる試験条件下で複数の自己放電率を決定することと、パラメータセットにわたって複数の自己放電率の表現を生成することであって、その表現が、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、生成することと、を含むことができる性能メトリックを生成することを含む。
【0048】
実施例44では、実施例43の主題は、任意選択で、測定された1つ以上の電気的パラメータまたは測定された性能メトリックのうちの1つ以上をユーザインターフェース上に表示することを含む。
【0049】
実施例45は、機械によって実行されるとき、機械に、サイクリング期間において、充電時間に充電電流および放電時間に放電電流を印加することによって電気化学セルを電気的にサイクルさせ、充電電流と放電電流とは対称であって反対方向を有し、電気化学セルの電気的サイクリング中に1つ以上の電気的パラメータを測定させ、電気化学セルのモニタされたセル電圧を特定の設定値に向けて制御するための充電時間または放電時間を調整させ、測定された1つ以上の電気的パラメータを使用して、電気化学セルの性能メトリックを生成させる、命令を含む少なくとも1つの機械可読媒体である。
【0050】
実施例46では、実施例45の主題は、任意選択で、機械によって実行されるとき、機械に、電気化学セルの電圧または電流応答を含む1つ以上の電気的パラメータを測定させ、モニタされた電圧または電流応答を使用して、充電電流から放電電流に逆転するための電流スイッチタイミングを更新させる、命令を含む。
【0051】
実施例47では、実施例45~46のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、機械によって実行されるとき、機械に、サイクリング期間の指定された部分の間に印加された総電荷の量を決定させ、印加された総電荷の決定された量を使用して自己放電率を決定させ、自己放電率は、電気化学セルのセル電圧を特定の設定値に維持するために必要とされる印加電流を表す、命令を含む。
【0052】
実施例48では、実施例47の主題は、任意選択で、フレームの時間に対応するフレームごとに印加された総電荷(QPF)を含むことができる印加された総電荷の量、および、機械によって実行されるとき、機械に、経時的QPFの傾向を生成させ、生成されたQPFの傾向の傾きを使用して、自己放電率を決定させる命令、を含む。
【0053】
実施例49では、実施例47~48のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、電気化学セルのセル電圧を含むことができる測定された1つ以上の電気的パラメータ、および、機械によって実行されるとき、機械に、(1)充電期間中の充電電圧または放電期間中の放電電圧のうちの少なくとも1つ、および(2)印加電流、を使用して、電気化学セルの等価直列抵抗(ESR)を決定させ、印加された総電荷の量の関数としてESR曲線を生成させ、印加された総電荷の特定の量でのESR曲線の傾きを使用して、失われたクーロン当たりのESR変化率を決定させる命令、を含む。
【0054】
実施例50では、実施例49の主題は、任意選択で、機械によって実行されるとき、機械に、異なる試験条件下で複数のESR変化率を決定させ、異なる試験条件の各々が、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表される、および、パラメータセットにわたって複数のESR変化率の表現を生成させ、その表現は、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、命令を含む。
【0055】
実施例51では、実施例47~50のいずれか1つ以上の主題は、任意選択で、機械によって実行されるとき、機械に、各々がCレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表される異なる試験条件下で複数の自己放電率を決定させ、および、パラメータセットにわたって複数の自己放電率の表現を生成させ、その表現は、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、命令を含む。
【0056】
実施例52は、機械によって実行されるとき、機械に、実施例30~44のいずれか1つ以上で論じられたような方法を実行させる命令を含む、少なくとも1つの機械可読媒体である。
【0057】
実施例53は、電気化学セルを試験するためのシステムである。システムは、実施例30~44のいずれか1つ以上で論じられたような方法を実行するための手段を含む。
この文書で論じられているサイクリッククーロメトリー技術は、電気化学セルおよびバッテリーを加速された様態で生成、製造、または保管するために利用される変数の相対的な性能効果の決定を改善するのに役立つ。サイクリッククーロメトリーは、セルの化学的性質、製造方法、材料の選択、または他の関心のある変数を最適化するのに役立ち得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書で論じられるサイクリッククーロメトリー技術は、購入可能な電気化学セルの品質を決定するために使用され得る。サイクリッククーロメトリーはまた、適切な方法で販売する製品に含める前に、セルの品質を非破壊的に特徴付けるために使用され得る。
【0058】
この概要は、本出願のいくつかの教示の概要であり、本主題の排他的または網羅的な取り扱いを意図するものではない。本主題に関するさらなる詳細は、詳細な説明および添付の特許請求の範囲に見出される。本開示の他の態様は、以下の詳細な説明を読んで理解し、その一部を形成する図面を見ると、当業者には明らかであり、その各々は、限定的な意味で解釈されるべきではない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的同等物によって定義される。
【0059】
添付の図面の図には、例として様々な実施形態が図示されている。そのような実施形態は実証的であり、本主題の網羅的または排他的な実施形態であることを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】サイクリッククーロメータシステムの例およびシステムが動作し得るある環境の一部を図示するブロック図である。
【
図2A】充電および放電電流を生成するために特定の電流スイッチタイミングで正確にタイミングを合わせた極性変化を提供するように構成された電流スイッチング回路の少なくとも一部の例を図示する概略図である。
【
図2B】充電および放電電流を生成するために特定の電流スイッチタイミングで正確にタイミングを合わせた極性変化を提供するように構成された電流スイッチング回路の少なくとも一部の例を図示する概略図である。
【
図2C】充電および放電電流を生成するために特定の電流スイッチタイミングで正確にタイミングを合わせた極性変化を提供するように構成された電流スイッチング回路の少なくとも一部の例を図示する概略図である。
【
図3A】充電および放電電流を生成するために特定の電流スイッチタイミングで正確にタイミングを合わせた極性変化を提供するように構成された電流スイッチング回路の少なくとも一部の別の例を図示する概略図である。
【
図3B】充電および放電電流を生成するために特定の電流スイッチタイミングで正確にタイミングを合わせた極性変化を提供するように構成された電流スイッチング回路の少なくとも一部の別の例を図示する概略図である。
【
図3C】充電および放電電流を生成するために特定の電流スイッチタイミングで正確にタイミングを合わせた極性変化を提供するように構成された電流スイッチング回路の少なくとも一部の別の例を図示する概略図である。
【
図4A】充電または放電ステップで超過時間を使用して充電時間または放電時間を調整する例を図示するタイミング図である。
【
図4B】充電または放電ステップで超過時間を使用して充電時間または放電時間を調整する例を図示するタイミング図である。
【
図4C】充電または放電ステップで超過時間を使用して充電時間または放電時間を調整する例を図示するタイミング図である。
【
図4D】充電または放電ステップで超過時間を使用して充電時間または放電時間を調整する例を図示するタイミング図である。
【
図4E】充電または放電ステップで超過時間を使用して充電時間または放電時間を調整する例を図示するタイミング図である。
【
図5】
図1のサイクルクーロメータシステムを使用する診断試験のためのバッテリー試験システムの例を図示するブロック図である。
【
図6A】充電および放電サイクル間の電流スイッチタイミングを制御するように構成された電流ステアリング回路の少なくとも一部の例を図示する図である。
【
図6B】
図6Aの電流ステアリング回路によって生成される順方向(充電)電流および逆方向(放電)電流の論理タイミングを例として図示するタイミング図である。
【
図7】サイクル試験において電気的パラメータを測定するためのデータ取得システム(DAS)およびDASが動作する環境の少なくとも一部を図示する図である。
【
図8】
図5の試験システムを使用して得られたような、限定ではなく例として、サイクル試験中の電圧および電流応答を図示するグラフである。
【
図9】限定ではなく例として、印加された総電荷の量に対してプロットされた被試験セルの等価直列抵抗(ESR)を図示するグラフである。
【
図10A】限定ではなく例として、自己放電率またはESR変化率などの、異なる試験条件下で計算された性能メトリックのグラフ表示を図示する。
【
図10B】限定ではなく例として、自己放電率またはESR変化率などの、異なる試験条件下で計算された性能メトリックのグラフ表示を図示する。
【
図10C】限定ではなく例として、自己放電率またはESR変化率などの、異なる試験条件下で計算された性能メトリックのグラフ表示を図示する。
【
図11】
図1を参照して説明したようなサイクルクーロメトリーを使用して被試験デバイス(DUT)の診断試験を行うための方法の例を図示するフローチャートである。
【
図12】サイクル試験中に取られた電気的測定値を使用して様々なバッテリーメトリックを生成するそれぞれの方法を図示するフローチャートである。
【
図13】サイクル試験中に取られた電気的測定値を使用して様々なバッテリーメトリックを生成するそれぞれの方法を図示するフローチャートである。
【
図14】本明細書で論じられる技法(例えば、方法論)のうちの任意の1つ以上が実行され得る例示的な機械のブロック図を一般的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0061】
バッテリーサイクラーは、制御された条件下でバッテリーを充電および放電し、とりわけ、スリッページレート、クーロン効率、エネルギー容量、レートケイパビリティ、または容量保持などの様々なバッテリーメトリックに基づいてバッテリー性能を評価するための装置またはツールである。従来、バッテリーサイクリングは、固定された電圧限度の間で行われる。充電中、バッテリーがプリセット充電電圧限度(充電設定値)に達するまで電流が流される。その後、バッテリーは放電電圧限度(放電設定値)に達するまで放電される。その後、充放電サイクルが続く。充放電レートは通常、固定のCレートによって決まる。例えば、定格が1アンペア時(Ah)の完全に充電されたバッテリーの場合、1Cレートで1時間1Aの放電電流、0.5Cレートで2時間500mA、または2Cレートで0.5時間2Aの電流を供給する。セルの非効率性はセルのサイクリング中に蓄積し、容量の損失(クーロンの損失)を引き起こす。セルが経年するにつれて、セルの内部抵抗が時間とともに増加する。
【0062】
クーロメトリーは、電気化学反応中に消費または生成されるクーロンの電気量を測定する電気化学技術である。従来、2つのクーロメトリー技術が使用されている。ポテンシオスタットクーロメトリー(定電位クーロメトリーとしても知られる)は、3電極セルを制御し、電気分析実験を実行するための電子デバイスであるポテンシオスタットを使用して、被試験バッテリーに一定の電位を印加する。ガルバノスタットまたはアンペロスタティッククーロメトリー(定電流クーロメトリーとしても知られる)は、負荷自体の変化を無視して、クーロメトリー滴定で電解セルを流れる電流を一定に維持するデバイスであるガルバノスタットを使用して、バッテリーに定電流を印加する。どちらの場合も、電気化学セルを通過する印加された総電荷の量(Q)は、電流を時間の関数として積分することによって計算され得る。
【0063】
クーロン効率(CE)は、バッテリーシステムの効率を表す。CEは、バッテリーから抽出された総電荷量(Q放電)の、全サイクルにわたってバッテリーに印加された総電荷の量(Q充電)に対する比率である。CEは、Cレートの強い関数である。低いCレートでは、寄生損失が発生するためにより多くの時間が使用され、その結果、測定されたCEメトリックが低くなる。遅いCレートは、データを拡散してセルを分化させるのに役立つが、遅いCレートは、ほとんどのアプリケーションで経験される使用条件を実際に表していない場合がある。
【0064】
高精度クーロメトリー(HPC)は、CEを特徴付ける手法であり、数千サイクル続くように作られた異なる化学的性質のセル間のセル性能の違いを改善された精度で検出することができる。従来の精密サイクラーと比較して、HPCシステムは、より高速なデータ処理、より正確な電流源、およびより安定した電圧測定を使用する。
【0065】
HPCは、バッテリーの化学的性質を評価するための承認された標準と見なされてきたが、いくつかの限界を有する。例えば、HPCは、低速の充放電サイクル下でリチウムイオンバッテリーのCEを測定するためによく使用される。HPCシステムの設計は、少なくとも充放電のサイクルに含まれる長時間のスケールのために、複雑になり得る。特に、電流源は、印加電流がフルサイクルに必要な長時間(例えば、20時間)にわたって一定のままであるように、非常に安定している必要がある。安定した高精度の電流源は高価であり、システムの全体的なコストに寄与する。より新しいシステムは、電子機器を温度制御環境内に維持して、パワー電子機器のドリフトを防ぐことさえある。場合によっては、HPCは、50百万分率(ppm)の精度までクーロン効率を測定し得る。
【0066】
HPCの基本的な前提は、より効率的なバッテリーが長持ちすることである。しかしながら、データによると、CEのみを使用してサイクル寿命を予測することは不十分な場合があることを示している。この限界を克服するために、サイクル寿命を予測するために、サイクル後の電荷移動抵抗をCEとともに使用することが提案されている。しかしながら、内部抵抗(IR)の従来の測定は、一般に、事後特徴づけを必要とするHPC中に実装できないため、これには課題がある。HPC試験プロトコルからの異なる試験セル間で失われた累積クーロンは同じではない。通常、電荷移動後の抵抗は、定義が不十分な状態で測定された単一のデータポイントである。HPCは、失われたクーロンの関数として電荷移動後の抵抗の増加を測定できないため、存在する可能性のある様々な損失メカニズムを適切に区別しない。
【0067】
エネルギー貯蔵ソリューションは、アプリケーションの要件によって定義される。電圧安定性または規制制御に関連するグリッドレベル貯蔵は、高周波で動作する短いサイクルを必要とする。自動車アプリケーションならびに再生可能エネルギーの統合は、大容量でより深い放電深度を備えたエネルギー貯蔵を必要とする。様々なアプリケーションのための最適化パック設計は、セルの性能および寿命の技術的および経済的モデルの両方を必要とする。しかしながら、サイクル寿命は、サイクリング条件に応じて大きく変わるため、ある条件に最適な設計が別の条件には理想的ではない場合がある。今日存在するツールを使用して、単純なバッテリーサイクラーを使用して電気化学的貯蔵耐久性に対する様々な動作条件の影響を証明することは困難である。さらに、現在のアプローチは遅く、耐久性に関して複雑なデータを提供する。
【0068】
少なくとも前述のことについて、本発明者らは、バッテリー評価のための改善されたクーロメトリーの満たされていない必要性を認識した。本明細書に開示されるのは、サイクリッククーロメトリーのシステム、デバイス、および方法である。いくつかの実施形態によれば、サイクリッククーロメータは、小さなDCパルスを導入し、累積クーロン損失に起因する電圧降下を経時的に自動的に補償し、それにより、モニタされたセル電位を設定値に維持し得る。いくつかの例では、サイクリッククーロメータは、異なるセル条件下で試験セルを指定された設定値電圧に維持するために必要な印加クーロン率を決定し、こうして、特定の条件(例えば、温度、設定値電圧、または適用Cレート)での損失率を効果的にパラメータ化する。損失率曲線または損失率マップを生成し、パラメータ化された損失率を使用してユーザに提示することができる。
【0069】
本明細書で論じられるサイクリッククーロメトリーは、バッテリー診断システムに実装され得る。いくつかの実施形態によれば、バッテリー診断システムは、電気化学セルを励起するための対称的な充電電流および放電電流を生成するための電流発生器、および電気化学セルの性能を評価するためのサイクリッククーロメータを備える。サイクリッククーロメータは、モニタされたセル電圧を特定の設定値に向けて維持するために、充電電流を印加するための充電時間、または放電電流を印加するため放電時間のうちの少なくとも1つを調整するためのコントローラ回路を含む。充電または放電時間の調整は、電流を第1の電流方向から第2の電流方向に逆転させるための電流スイッチタイミングを変更することによって達成され得る。測定回路は、充電または放電サイクル中に1つ以上の電気的パラメータを測定し、測定された電気的パラメータを使用してバッテリーメトリックを生成する。
【0070】
本明細書で論じられるサイクリッククーロメトリーは、バッテリーサイクリングを改善し、バッテリーの性能および診断に関する完全な情報を提供する。例えば、サイクリッククーロメトリーは、任意の充電状態について所与のCレートまたは温度での容量損失を測定することを可能にする。一例では、研究者は、異なるプリセットセル電圧でのフェードレートを独立して調べることができる。フル放電深度サイクリングに関連付けられた損失を回避しながら、高電圧の安定性を研究することができる。
【0071】
サイクリッククーロメトリーは、CEおよび内部抵抗(IR)の同時測定を提供する。フルデューティサイクルの平均電圧は設定値に制御されるが、各半サイクルの電圧応答を使用してIR測定値を計算し得る。クーロンの非効率性が蓄積するにつれて、IRは経時的に増加する。従来のHPCは、HPC試験中にIR測定を行うことはできない。代わりに、HPC試験の完了後にIRの増加を測定しなければならない(したがって、そのように測定されたIRは、サイクル後の電荷移動抵抗としても知られている)。しかしながら、電荷移動後の抵抗は、定義が不十分な状態で測定された単一のデータポイントである。例えば、HPC試験後に異なる試験セル間で失われた累積クーロンは同じではない。対照的に、この文書で論じられているサイクリッククーロメトリーは、有利にCEおよびIRの増加の両方を同時に測定する。したがって、電荷移動抵抗の増加は、失われたクーロンの関数として表され得る。サイクル寿命を予測するにはIRおよびCEの両方が与えられる必要があるため、本明細書で論じられるサイクリッククーロメトリーは、サイクル寿命のより完全な全体像を提供し、現状のHPC技術を使用することから得られる情報を超える著しい進歩を提示する。
【0072】
この文書で論じられているサイクリッククーロメトリーの別の利点は、負荷条件に対するバッテリーの微分損失率を直接測定して提示することである(例えば、3Dプロットでグラフィカルに)。例えば、適用Cレートを低レベルから高レベルに繰り返すことによって、サイクリッククーロメトリーは、同じ試験でのCレートの関数としてバッテリー貯蔵(ゼロCレートに対応)およびサイクリング損失の両方についての洞察を自動的に提供し得る。サイクリッククーロメータシステムは、新しいリチウムイオン配合を証明し、アプリケーションでの商用セルの耐久性を特徴づけるために実装および展開することができる。
【0073】
この文書で論じられているバッテリー計測学は、様々なセル条件(温度、設定値電圧、適用Cレート、等)での損失率の直接測定を提供する。これは、バッテリー製造業者、貯蔵設計者、および材料供給者が、優れた洞察を得ながら、より速く反復することを可能にする。例えば、セル製造業者は、セルの忠実度に対する製造プロセスおよび設計の影響をすばやく測定することができる。同様に、材料開発者は、様々な動作条件でのセルの安定性に対する電解質添加剤または電極配合の影響を測定することができる。最後に、エネルギー貯蔵のエンドユーザは、サイクリッククーロメトリーを使用して、負荷要件に対して最高の性能を発揮するものをターゲットにする様々な商用製品を識別し、改善されたバッテリー管理アルゴリズムを開発することができる。従来のHPCテクノロジーと比較して、本明細書で論じられているサイクリッククーロメトリーは、様々なセル条件(例えば、とりわけ、Cレート、充電状態)でのバッテリーの性能をより良く特徴付け、開発中のバッテリーの正確な技術経済的評価を可能にし、バッテリー設計および開発を改善する。サイクリッククーロメトリーおよびデータ定式化によって生成されたエンジニアリングデータ(例えば、以下で論じられるような損失率曲線または損失率マップの形式の)を使用して、長寿命を必要とするエネルギー貯蔵の展開のために、改善されたバッテリー管理プロトコルおよび技術経済的モデルを作成し得る。
【0074】
図1は、サイクリッククーロメータシステム100およびシステム100が動作し得る環境の一部の例を図示するブロック図である。システム100を使用して、被試験デバイス(DUT)150での充放電サイクル動作中に印加された総クーロンを測定し、DUT150の内部状態に関する情報を得て、その性能を評価し得る。システム100は、電流源110、スイッチング回路120、およびプロセスコントローラ130を含む。設定電流または設定電圧を印加する従来のクーロメトリーとは対照的に、サイクリッククーロメータシステム100は、様々なバッテリー試験目的を達成するためにDUT150に、充電電流を印加するための充電時間または放電電流を印加するための放電時間を調整し得る。いくつかの実施形態によれば、充電時間または放電時間のうちの少なくとも1つの調整は、高い時間分解能でサイクリング期間における充電ステップと放電ステップとの間の電流スイッチタイミングを変更することによって達成され得る。一例では、サイクリッククーロメータシステム100は、プロセス変数を所望の状態に維持するために必要とされる印加されたクーロン率を測定し得る。別の例では、サイクリッククーロメータ100は、セル品質を決定するために、製造業者から受け取ったバッテリーの損失率を測定し得る。様々な例において、サイクリッククーロメータシステム100は、関心のある他の条件の中でもとりわけ、温度範囲、充電状態、または健全性状態などの異なるセル条件下で診断試験を行うことができる。
【0075】
DUT150は、バッテリー、燃料電池、フローセル、または他の電気化学セルなどの任意の電気化学セルであることができる。DUT150のクーロメトリー試験は、従来の2線式、3線式、または4線式接続を使用して行い得る。小さな印加電流を測定するためにノイズを最小化するために、測定変数におけるノイズに寄与するDUT150への外乱を最小化することが望ましい。一例では、DUT150は、サイクル試験中に厳密に制御された熱環境に置かれ得る。試験の前に、DUT150は、充電の設定された状態(フル充電時のエネルギーと比較して残っているエネルギー量を表す)で安定化されるか、健全な条件(新しいバッテリーと比較して、指定された性能を提供する能力を表す)の様々な状態を達成するためにエージングされ得る。
【0076】
電流源110は、ほとんどノイズなしで静かな電流を出力することができ、フルサイクリング期間中にDUT150を充電および放電するための電流を提供するように構成されたベンチトップまたは精密電源であり得る。電流源110は、ポテンシオスタットモードまたはガルバノスタットモードで動作し得る。出力電流は、特定のパラメータ値(例えば、振幅、サイクル周期、周波数、デューティサイクル、等)を備えた所定の波形を有し得る。一例では、電流源110は、正弦波源であり得る。別の例では、電流源110は方形波源であり得る。
【0077】
いくつかの例では、電流源110は、特定の振幅で一方向電流を提供するように構成された直流(DC)源であり得る。電流振幅は、プログラム可能であり得る。サイクリッククーロメータシステム100は、出力電流(例えば、充電電流または放電電流)を連続的に測定し得る。一例では、電流源110は、ガルバノスタットモードで安定した電流を出力し、充電および放電ステップ中に実質的に同じように機能し得る。一例では、電流源110は、基準、増幅器、感知抵抗器、およびフィードバック回路を含む単一の単極電流源であり、試験の持続の間、1桁のPPMレベルの安定性を提示するように構成され得る。
【0078】
電流源110に結合されたスイッチング回路120は、制御可能に(例えば、プロセスコントローラ130を介して)、DC電流出力電流の方向を交互にして、方形波122を生成し得る。特定の時間分解能Tを有するスイッチングタイマは、電流方向の交代の時間を計り得る。スイッチングタイマは、スイッチング回路120の一部であり得るか、さもなければ、スイッチング回路120に結合され得る。結果として得られる方形波は、各々がTの倍数の持続時間を有する正および負の位相を有する。スイッチングタイマの分解能Tは、周辺クロックの周波数(fクロック)に基づいて決定され得、T=1/fクロック秒である。例えば、5MHzのクロック周波数の場合、スイッチングタイマの分解能は200ナノ秒(nsec)である。一例では、Tは500ナノ秒未満である。別の例では、Tは1マイクロ秒(msec)未満である。さらに別の例では、Tは約5~10ミリ秒である。スイッチングされた電流は、サイクリングプロセス中にDUT150に印加され得る。
【0079】
電流源110が一定単極電流源であり、プロセスコントローラ130がスイッチング回路120を制御して方形波電流122を生成する場合、プロセスコントローラ130は、スイッチング回路120をさらに制御して、充電時間または放電時間のうちの少なくとも1つを調整して、平均セル電圧などの出力変数をプリセット設定に維持し得る。サイクリング期間は、充電時間t充電および放電時間t放電を含み、その両方ともが、所定であるかプログラム可能であり得る。サイクリング期間は、測定された特性が所望のセル状態に起因し得るように、被試験電気化学セル内で実際の電荷移動が発生するのに十分な長さであると同時に、充電および放電ステップに対するセル電圧応答がセル設定値から大幅に逸脱しないように十分に短くなるように選択され得る。一例では、サイクリング期間は10分未満である。別の例では、サイクリング期間は約5分である。さらに別の例では、サイクリング期間は約60秒である。あるいは、サイクリング期間は、所望の印加電流およびサイクルによって引き起こされるセルへの対応する摂動に基づいて決定され得る。一例では、充電時間t充電は、放電時間t放電に実質的に等しく、対称的な充電および放電ステップをもたらす。
【0080】
プロセスコントローラ130は、スイッチング回路を制御して、平均セル電圧などの出力変数をプリセット設定に向けて制御するために充電時間または放電時間のうちの少なくとも1つを調整する。一例では、充電または放電時間の調整は、充放電サイクル中に充電ステップから放電ステップに切り替えるタイミングを変更することによって達成し得る。電圧(ポテンシオスタットの)または電流(ガルバノスタットの)を制御する従来のサイクラーと比較して、本明細書で論じられるように充電または放電時間あるいは電流スイッチタイミングを調整することは、望ましい分解能で充電放電ステップのより正確で、なおかつ安定した制御を提供する。様々な例において、スイッチング回路120は、トランジスタなどの1つ以上の電圧制御スイッチを使用して電流方向を制御可能に切り替えることができ、その例は、
図2A~
図2Cを参照して以下で論じられる。あるいは、電流源110が、DUT150を充電するための第1の方向、またはDUT150を放電するための第1の方向とは反対の第2の方向のいずれかに電流を制御可能に出力する双方向源であってもよい。
【0081】
様々な例において、プロセスコントローラ130は、サイクリング期間中のDUT150の電圧または電流応答をモニタし、モニタされた電圧または電流応答を使用して電流スイッチタイミングを決定または更新し得る。プロセスコントローラ130は、特定の電気的パラメータ(例えば、平均セル電圧)を特定の設定値に維持するように、電流スイッチタイミングを決定または更新するように構成された比例積分(PI)コントローラまたは比例積分微分(PID)コントローラを含み得る。モニタされ、電流スイッチタイミングを制御するために使用される電圧または電流応答の例には、サイクリング期間にわたる平均またはピークセル電圧、平均またはピーク充電電圧、平均またはピーク放電電圧、サイクルの終了電圧、サイクリング期間にわたる平均またはピーク電流、DUT150の平均またはピーク充電電流、または平均またはピーク放電電流が含まれ得る。一例では、プロセスコントローラ130は、サイクル試験が実施される環境の周囲温度に関する情報を使用して、電流スイッチタイミングを決定または更新し得る。物理ベースまたは経験的に導出されたモデルは、モデルの予測制御に使用され得る。制御モデルは、電流スイッチタイミングの最適化のために多くの入力変数を使用することができる。いくつかの例では、充電状態、健全性状態、障害、または関心のある他のセル状態の情報を使用して、電流スイッチタイミングを決定または更新し得る。充電状態は、短期的なバッテリーケイパビリティの物差しであり、フル充電時のエネルギーと比較して残っているエネルギー量を表す。健全性状態は、長期的なケイパビリティの物差しであり、新しいバッテリーと比較して指定された性能を提供するための能力を表す。
【0082】
いくつかの例では、充電/放電ステップのタイミング制御は、充電または放電ステップに適用される超過時間Δtを含み得る。プロセスコントローラ130は、PIまたはPIDコントローラを使用して、使用される超過時間Δtを変更することによって、出力変数(例えば、電流または電圧)を所望の設定値に維持し得る。超過時間Δtは、正または負の値であり得る。例えば、正の超過充電時間は、充電時間をt充電+Δtまで増加させ、負の超過充電時間は、充電時間をt充電-Δtまで減少させる。同様に、正の超過放電時間は、放電時間をt放電+Δtまで増加させ、負の超過放電時間は、放電時間をt放電-Δtまで減少させる。あるいは、プロセスコントローラ130は、充電時間および放電時間の両方を調整し、フルサイクリング期間を一定であるように維持し得る(例えば、t充電+Δtのより長い充電時間、それに続いてより短い放電時間t放電-Δt)。
【0083】
超過時間Δtにより、充電時間の放電時間に対する比率が変化する。サイクリング期間の合計時間に超過充電時間Δtを足したものをフレームと呼ぶ。サイクル試験中、時間調整された充放電サイクルが、フレームごとに繰り返される。一例では、プロセスコントローラ130は、フレームごとベースで超過充電時間Δtを更新し得、その例は、
図4B~
図4Eを参照して以下で論じられる。
【0084】
超過時間Δtは、スイッチングタイマによって提供され得る。一例では、超過時間Δtは、スイッチングタイマ分解能Tの倍数であり得、Δt=k*Tである。最小の超過時間はTに等しい。スイッチング回路120によって提供されるそのような電流スイッチング技術は、充放電サイクルの安定した、超微調整(ティック、またはTの増分での)を可能にする。例えば、30秒の基本充電時間および30秒の基本放電時間で構成される60秒のサイクリング期間、およびT=200ナノ秒の時間分解能を有するスイッチングタイマの場合、最小超過充電時間は、t充電=30.0000002秒である。放電時間が、t放電=30秒の基本レベルにとどまる場合、これにより、デューティサイクルにおいて50.00000017%への超微細な変化をもたらす。超過時間Δtの使用はまた、充電対放電時間の比率を変化させる。フレームごとの印加された総クーロンは、超過時間Δtに基づいて計算することができる。印加されたクーロン率は、フレームごとの正味の印加された総クーロンをフレームの時間で割ることによって計算することができる。
【0085】
可能な最小の時間増分(すなわち、T)は、以下、ティックと呼ばれる。上記の例では、ティックは200ナノ秒であり得る。いくつかの例では、超過時間Δtは、スイッチングタイマ分解能Tの増分(k*T)、またはティック数「k」によって表され得る。例えば、プロセスコントローラ130は、充電ステップを「k」ティックだけ延長し得る。充電ステップまたは放電ステップに加算または減算され得る最小量は1ティックで、スイッチングタイマの分解能Tに相当する。充電ステップまたは放電ステップに特定数のティックを加算または減算することによって、プロセスコントローラ130は、出力変数(例えば、電流または電圧)を所望の設定値に維持し得る。このような充放電調整を実装する別の方法は、ティックカウントが正または負の値を取ることを可能にすることである。正のティックカウントは、正味の充電状態(例えば、放電時間よりも長い充電時間)の期間を表す。負のティックカウントは、正味の放電状態(例えば、放電時間よりも短い充電時間)の期間を表す。
【0086】
典型的に、長いサイクリング期間(例えば、20時間)を必要とする従来のHPCと比較して、サイクリッククーロメータシステム100は、実質的により短いサイクリング期間(例えば、約1分)で充放電プロセスをサイクルするように構成され得る。短い充放電時間のために、被試験電気化学セル(例えば、DUT150)は、典型的には、従来のバッテリーサイクラー技術によって設定された電圧限度に達することができない。代わりに、セルは初期セル電圧の上下で振動すると予想される。セルのクーロン非効率(自己放電)が発生すると、平均セル電圧は初期セル電圧を下回る。一例では、プロセスコントローラ130は、継続的または定期的に、DUT150の電圧および電流応答を、任意選択で他の出力変数とともにモニタし、正味の超過充電時間Δt(またはティックカウント)を調整して、平均セル電圧を制御された設定値に維持し得る。適切なタイミングの高速マイクロコントローラは、デジタル取得システムで動作して、測定されたバッテリー電流および電圧をサンプリングし得る。システムは、測定された入力変数(例えば、充電電流および放電電流)および測定された出力変数(例えば、DUT150の電圧および電流応答)の両方を平均して、ノイズを大幅に低減し得る。一例では、プロセスコントローラ130は、クーロンカウンタを使用して総印加クーロンを測定するか、または印加電流および実際の充電ティックに基づいて総印加クーロンを直接計算し得る。総印加クーロンを測定する例は、
図5を参照するなどして、以下で論じられる。
【0087】
様々な例において、サイクリッククーロメータシステム100は、印加電流(Cレート)、温度、およびプリセットセル電位などの特定の試験条件での電気化学セル(例えば、DUT150)の電荷損失または電荷損失率(自己放電率とも呼ばれる)をパラメータ化し得る。一例では、サイクリッククーロメータシステム100は、実質的にプリセット平均セル電圧になど、特定の条件にDUT150を維持するために必要な、印加された総電荷の量、または印加電流(印加されたクーロンの率)を測定し得る。平均セル電圧が制御されたままの場合(すなわち、平均セル電圧が設定値に保たれている場合)、正味の印加電流は、温度、電流、およびセル電位の特定の条件での電荷損失率である。従来の高精度クーロメトリーは、非常に遅い充放電サイクルを経る電気化学セルのCEを測定することしかできない。1時間当たりのクーロン非効率(CIE/h)は、セル電位の範囲全体で発生する可能性のある多くの損失メカニズム全体の平均損失率を表す正規化されたメトリックである。この文書で論じられているサイクリッククーロメトリーは、はるかに短い充放電サイクルでの電荷損失率を有利に評価し、Cレート、温度、プリセットセル電位を含む広範囲の試験条件に電荷損失率をパラメータ化する。いくつかの例によれば、異なるセル条件下で評価された電荷損失率は、損失率曲線または損失率マップとしてグラフで表すことができ、その例は、
図10A~
図10Bを参照するなどして以下で説明されている。
【0088】
いくつかの例では、サイクリッククーロメータシステム100は、他のトランスジューサの中でもとりわけ、分光計または音響スペクトル計を使用することによってなど、電流のステップ変化または電圧のステップ変化に対するDUT150の過渡応答を測定するように構成され得る。ステップ応答は、DUT150の周波数応答を示している。ステップ応答の情報は、セルモデルまたはセルアルゴリズムを確立するために使用され得、追加の機器の費用、またはサイクル試験を中断する必要無しで、インピーダンス分析から得られるものと同様の情報を提供し得る。過渡応答はまた、サイクリッククーロメトリーが、所与のセル条件での瞬間的な損失率を測定しながら、電荷移動抵抗の増加を継続的にモニタすることを可能にする。
【0089】
図2A~
図2Cは、充電および放電電流を生成するために特定の電流スイッチタイミングで正確にタイミングを合わせた極性変化を提供するように構成された電流スイッチング回路200の一部の例を図示する概略図であり、プロセスはまた、電流ステアリングとも呼ばれる。電流スイッチング回路200は、スイッチング回路120の実施形態であり得る。
図2Aに示されるように、電流スイッチング回路は、スイッチS1、S2、S3、およびS4、ならびに電流源110の実施形態である一方向DC電流源210を含む。すべてのスイッチが開いているとき、電流はDUT150に流れない。
図2Bは、スイッチS2およびS3が閉じられ(示されるように)、スイッチS1およびS4が開いているときの電流スイッチング回路200の等価回路を図示し、この場合、電流源210は、DUT150を充電するために順方向電流221を提供する。
図2Cは、スイッチS1およびS4が閉じられ(示されるように)、S2およびS3が開いているときの電流スイッチング回路200の等価回路を図示し、この場合、電流源210は、DUT150を放電するために逆電流222を提供する。
図2Aのスイッチの配置は、順方向および逆方向の両方のタイミングがオフである期間であるデッドタイムを可能にする。例えば、S4およびS2が同時にオンになるとすれば、DUT150は短絡することになる。
【0090】
スイッチS1、S2、S3、およびS4は、トランジスタまたは他の電圧制御スイッチングデバイスであり得る。一例では、スイッチS1、S2、S3、およびS4は、MOSFETトランジスタなどのFETトランジスタであり、開/閉状態は、閾値電圧に対して適切なゲート電圧を印加することによって達成され得る。順方向電流221(充電電流)および逆方向電流222(放電電流)は、充電および放電動作中に同じように機能する同じ単一電流源210からのものであるため、充電電流と放電電流との間の対称性は、より容易かつ確実に達成され得る。電流の対称性は、充電サイクルに存在するオフセットエラーが放電サイクルに存在する同じオフセットでキャンセルされるという利点を有する。単一の電流源を使用することはまた、充電および放電ステップ中の電流出力の安定性を改善するのを助ける。
【0091】
電流スイッチング回路200は、ナノ秒の時間スケールで電流方向を変更し得る(
図2Aの1つ以上のスイッチを開閉することによってなど)。電流スイッチング回路200は適切な電圧コンプライアンスを有し、その結果、極性が切り替えられたときに電流は値の実質的な変化を提示しない。一例では、電流スイッチング回路200は、スイッチS1、S2、S3、およびS4の動作を特定の精度で制御して、電流スイッチタイミングの微細制御を達成するように構成されたクロッキング回路を含む。例えば、システムクロック周波数が100MHzの場合、電流スイッチタイミングは、10nSの分解能を有し得る。
【0092】
図3A~
図3Cは、充電および放電電流を生成するために特定の電流スイッチタイミングで正確にタイミングを合わせた極性変化を提供するように構成された電流スイッチング回路300の一部の別の例を図示する概略図である。電流スイッチング回路300は、スイッチング回路120の実施形態であり得る。
図3Aに示されるように、電流スイッチング回路300は、2つのスイッチS4およびS5、2つのダイオードD1およびD2、電源310、および一方向電流レギュレータ320を含む。電源310および一方向電流レギュレータ320は、電流源を形成する。電源310および一方向電流レギュレータ320の両方が使用される場合、回路300は、DUT150に電流をソースし得る。電流レギュレータ320のみを使用する場合、回路は、DUT150から電流をシンクし得る。スイッチS4およびS5の状態は、どの構成が発生するかを決める。
【0093】
図3Bは、スイッチS4が閉じ、S5が開いているときの電流スイッチング回路300の等価回路を図示する。ダイオードD2は、閉じたスイッチとして機能し、順方向電流321を電源310からレギュレータ320を介してDUT150に渡して、DUT150を充電する。
図3Cは、スイッチS4が開いてS5が閉じているときの電流スイッチング回路300の等価回路を図示する。ダイオードD1は、この構成では閉じたスイッチとして機能し、逆電流322をDUT150からレギュレータ320およびS5を介してDUT150に戻す。したがって、逆電流322は、DUT150を放電する。この動作の利点は、DUT150との間で電流をシンクまたはソースするときに、電流レギュレータ320が同一の電流および極性条件下で動作し、その結果、回路動作の対称性により、電流調整回路動作における任意の小さな不可避の異常がキャンセルすることである。
【0094】
図4A~
図4Eは、超過時間Δtを使用したサイクリング期間における充電時間または放電時間の調整を示す図示するタイミング図である。調整は、超過時間Δtをスケジュールするプロセスコントローラ130からの制御信号に応答して、スイッチング回路120によって実行され得る。サイクリング期間(基本充電時間および基本放電時間からなる)および超過充電時間Δtが、フレームを形成する。一例では、基本充電時間および基本放電時間は各々30秒であり、60秒のサイクリング期間を与える。30秒の充電ステップは、電圧プロファイルが電気化学セル内で完全に発達するのを可能にするのに十分な長さである。超過時間Δtは、超過タイマティックの数によって表され得る。上記で論じたしたように、この文書のティックは、充電時間または放電時間の最小の増分(または減分)を指す。一例では、ティックは、スイッチングタイマの分解能T(例えば、5MHzのクロック周波数の場合200ナノ秒)に等しい持続時間を有する。
【0095】
比較のために、
図4Aは、超過時間のないフレーム(Δt=0)を図示している。放電動作は、充電ステップの直後に開始される。充電および放電のステップは対称的である。
図4Bは、例として、充電ステップに追加された正の超過充電時間(すなわち、Δt
充電または超過タイマティック>0)を図示し、これは、充電時間を30秒から30+Δt
充電秒に有効に増加させる。放電動作は、超過充電時間の直後に開始する。
図4Bのフレームは、60+Δt
充電秒である。
図4Cは、例として、負の超過充電時間(すなわち、Δt
充電または超過タイマティック<0)を図示し、これは、充電時間を30秒から30-Δt
充電秒に有効に減少させる。放電ステップは、短縮された充電ステップの直後に開始する。放電時間は、30秒のままである。そのため、
図4Cのフレームは、60-Δt
充電秒であり、60秒未満である。
【0096】
同様に、超過時間は、放電ステップに適用され得る。
図4Dは、例として、放電ステップに追加された正の超過放電時間(すなわち、Δt
放電または超過タイマティック>0)を図示し、これは、放電時間を30秒から30+Δt
放電秒に有効に増加させる。
図4Dのフレームは、60+Δt
放電である。
図4Eは、例として、負の超過放電時間(すなわち、Δt
放電または超過タイマティック<0)を図示し、これは、放電時間を30秒から30-Δt
放電秒に有効に減少させる。
図4Dのフレームは、60-Δt
放電であり、60秒未満である。サイクリッククーロメータシステム100は、フレームごとに連続的に繰り返し、各フレームの超過充電時間変数を更新し得る。
【0097】
図5は、
図1を参照して上記で論じたようなサイクルクーロメトリーを使用して、示されたDUT150などの電気化学セルの診断試験を行うように構成されたバッテリー試験システム500の例を図示するブロック図である。バッテリー試験システム500は、試験中に充電および放電電流を提供するための1つ以上の電流源510、DUT150と係合するためのインターフェースボード520、およびシステム500の様々な構成要素および回路を動作させるための制御信号を提供し、データ処理を実行し、バッテリー性能メトリックを評価し、バッテリー診断を生成するためのマイクロコントローラ530を含み得る。一例では、温度安定性を保証するために、バッテリー試験システム500の回路構成要素のいくつかまたはすべてが、温度が<±0.1℃に安定化された正確な温度制御環境内に含まれ得る。
【0098】
図1の電流源110の実施形態である電流源510は、サイクル試験中にDUT150に対して充電電流および放電電流を提供し得る。一例では、電流源110は、DC電流を提供するように構成された単一の単極電流源であり得る。電流の振幅は、マイクロコントローラ530を介してなど調整可能であり得る。単極電流源の例は、
図2A~
図2Cおよび
図3A~
図3Cを参照して上記で論じられている。
【0099】
インターフェースボード520は、2線式、3線式、または4線式接続を使用して試験システム500にDUT150を係合させ、DUT150に充電および放電電流を印加し、他の変数の中でも、DUT150からの電流および電圧を測定し得る。
図5に図示されるように、インターフェースボード520は、マイクロコントローラ530の制御下で、アナログ測定値をサンプリングおよびデジタル化するように構成されたデータ取得システム(DAS)521を含み得る。様々な例において、DAS521は、充電電流および放電電流をデジタル化するのに十分大きなダイナミックレンジを有し、同時に対象の信号を検出するのに十分細かい分解能を有する。一例では、バッター診断の精度を改善するために、DAS521の性能は、電流源510を超える性能を有し、その結果、試験から生じるであろうエラー源が正確に決定され得る。DAS521の例は、
図7を参照して以下で論じられる。一例では、インターフェースボード520は、マイクロコントローラ530およびDAS521から物理的に分離されて、様々なバッテリーサイズに対する柔軟な抵抗感知および電流源オプションを可能にし得る。
【0100】
いくつかの例では、インターフェースボード520は、DAS521の環境の温度を測定するための埋め込まれた温度センサー(図示せず)を含み得る。モニタされた温度に基づいて、マイクロコントローラ530は、インターフェースボード520上のDAS521を取り囲む電力抵抗器を使用してDAS521の温度を調整するなど、回路に熱的に安定した環境を調整可能に提供し得る。
【0101】
プロセスコントローラ130の実施形態であるマイクロコントローラ530は、電流源510を制御して特定の充放電電流を生成し、DAS521でのデータ取得を駆動し、サイクリングプロセスをモニタし、バッテリーメトリックを生成するようにプログラムされ得る。マイクロコントローラ530は、コマンドに応答し、測定結果を報告するために外部モニタ540と通信するための通信周辺機器を含み得る。一例では、バッテリー試験システム500は、マイクロコントローラ530およびDAS521のアナログ-デジタル変換器(ADC)を直接駆動する16MHzの温度補償水晶発振器(TCXO)上で動作する。マイクロコントローラ530は、位相ロックループを使用して、16MHzを40MHzシステムクロックの内部周波数に上げることができ、これは、8で分周されて5MHzとなる。この5MHzは、適用された水晶クロックと同じくらい正確であり、T=200ナノ秒の時間分解能で充電および放電期間を生成するために使用される32ビットタイマをクロックする。例えば、2秒の周期サイクルは、1秒または各々が200ナノ秒の持続時間(0.2ppmの分解能)を有する5*106ティックを有する。適切なタイミングを備えた高速マイクロコントローラ530は、DAQ521を動作させて、バッテリーの電流および電圧の両方をサンプリングし得る。
【0102】
マイクロコントローラ530は、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、または物理的活動情報を含む情報を処理するための他のタイプのプロセッサなどの専用プロセッサであり得る、マイクロプロセッサ回路の一部として実装され得る。あるいは、マイクロプロセッサ回路は、本明細書に記載の機能、方法、または技法を行う命令のセットを受信および実行し得る汎用プロセッサであってもよい。
【0103】
マイクロコントローラ530は、タイミングコントローラ531、バッテリーメトリック発生器534、および通信回路535を含む、1つ以上の他の回路またはサブ回路を備える回路セットを含み得る。回路またはサブ回路は、単独でまたは組み合わせて、本明細書に記載の機能、方法、または技法を行い得る。一例では、回路セットのハードウェアは、特定の動作を実行するように不変に設計されている場合がある(例えば、ハードワイヤード)。一例では、回路セットのハードウェアは、特定の動作の命令を符号化するように物理的に変更された(例えば、磁気的、電気的、不変の大量粒子の移動可能な配置、等)コンピュータ可読媒体を含む、可変的に接続された物理的構成要素(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単純な回路、等)を含み得る。物理的構成要素を接続する際に、ハードウェア構成物の基礎となる電気的特性が、例えば、絶縁体から導体に、またはその逆に変更される。この命令は、組み込みハードウェア(例えば、実行ユニットまたはローディングメカニズム)が、可変接続を介してハードウェア内に設定された回路のメンバーを作成して、動作時に特定の動作の一部を実行することを可能にする。したがって、コンピュータ可読媒体は、デバイスが動作しているときに、回路セットメンバーの他の構成要素に通信可能に結合される。一例では、物理的構成要素のいずれかが、1つを超える回路セットの1つを超えるメンバーで使用され得る。例えば、動作中、実行ユニットは、ある時点で第1の回路セットの第1の回路で使用され、第1の回路セットの第2の回路によって、または異なる時間に第2の回路セットの第3の回路によって再利用され得る。
【0104】
タイミングコントローラ531は、充電および放電サイクル中に印加するための方形波電流を生成するために電流源510に結合された方形波発生器532を含み得る。方形波発生器532は、スケジュールされた時間に動作可能に開閉し、それによって電流方向を変えるスイッチを含み得、その例は、
図2A~
図2Cおよび
図3A~
図3Cを参照して上記で論じられている。タイミングコントローラ531は、サイクリング期間において充電および放電ステップ間で電流スイッチタイミングを変更することによってなど、出力変数(例えば、平均セル電圧)をプリセット設定に維持するために、充電時間または放電時間のうちの少なくとも1つを調整するように構成された電流スイッチングコントローラ533を含み得る。
図1を参照して上記で論じたように、電流スイッチングのタイミング制御は、充電時間または放電時間に加算または減算された(
図4B~
図4Eに図示されたように)、持続時間によってまたは超過タイマティックのカウントによって表された超過時間Δtを含み得る。
【0105】
様々な例において、電気化学セルのシステムコントローラで定義された設定値への収束を加速するために、電流スイッチングコントローラ533は、充電時間または放電時間のうちの少なくとも1つを調整するか、1つ以上の入力変数、または充電状態または健全性状態などのセル条件に基づいて電流スイッチタイミングを更新し得る。一例では、電流スイッチングコントローラ533は、バッテリーメトリックおよびバッテリーメトリック発生器534から得られた診断情報を使用して、初期電流スイッチタイミング(プロセス制御アルゴリズムから推定されるような経験値に設定され得る)を修正して、より速い制御を達成し得る。一例では、電流スイッチングコントローラ533は、適切なタイミング制御戦略を予測するために、多くの出力変数(例えば、DUT150のインフレーム電圧および電流応答)からの情報を利用し得る。例えば、測定された平均セル電圧の外乱に応答して、電流スイッチングコントローラ533は、セル抵抗およびフインフレーム電圧応答の事前測定を使用して、DUT150を設定値により迅速に戻し得る。他のフィードフォワードまたはフィードバックコントローラの中でも、PI制御、PID制御などのシステムコントローラを使用して、オーバーシュートまたは振動をほとんど伴わずに、測定された出力変数の所望の設定値への収束を促進し得る。バッテリーメトリックおよび診断情報、ならびに上記で論じた制御戦略を使用して、DAQ521でのデータ取得など、システム500の様々な要素の動作を調整することもできる。
【0106】
マイクロコントローラ530およびDAS521は、適切な動作のために様々な電圧を必要とし得る。いくつかの例では、心臓フローティング「CF」タイプの変換器などの医療グレードの電力変換器を使用して、AC電力を電流源510、マイクロコントローラ530、およびDAS521から分離し、ライン周波数漏れ電流をほとんどなくし得る。ガルバニック絶縁バリアを設けて、マイクロコントローラ530(例えば、クーロンカウンタなどのその中の正確な計装)を外部モニタ540および電流源回路510から絶縁し得る。電流源が充電から放電の構成に逆転されるとき、電流源回路510からの絶縁は、電流源510が充電から放電の構成に逆転されることを可能にし得る。
【0107】
バッテリーメトリック発生器534は、DAS521によって提供される測定値を使用してバッテリーメトリックおよび診断情報を生成するように構成され得る。バッテリーメトリック発生器534およびDAS521は、信号の測定および処理を行う測定回路と総称される。一例では、バッテリーメトリック発生器534の少なくとも一部は、充電および放電サイクル中に電荷をカウントするための精密クーロンカウンタとして構成され得る。一例では、クーロンカウンタは、高精度の電圧基準を使用し得る。システムは、測定された入力変数および測定された出力変数を平均して、ノイズを大幅に低減し得る。
【0108】
一例では、バッテリーメトリック発生器534は、フレームごとに印加された総電荷(QPF、クーロン単位)の量を決定し得る。フレームクーロンの合計は、バッテリーサイクル試験中に印加された累積クーロンを表す。一例では、QPFは、DAS521の出力を使用して計算され得る。別の例では、バッテリーメトリック発生器534は、フレーム全体にわたって印加された電流を積分することによってQPFを計算することができる。一例では、QPFは、式(1)を使用して計算され得る。
【0109】
【0110】
いくつかの例では、バッテリーメトリック発生器534は、代わりに、充電中に印加された総電荷量(Q充電)および放電中に印加された総電荷量(Q放電)を計算し得る。この場合、バッテリーメトリック発生器534は、充電期間のみにわたって印加電流を積分することによって、充電中に印加された総電荷量(Q充電)を計算し得る。同様に、バッテリーメトリック発生器534は、放電期間のみにわたって印加された電流を積分することによって、放電中に印加された総電荷量(Q放電)を計算し得る。次いで、QPFは、式(2)を使用して計算することができる。
QPF=Q充電-Q放電
(2)
一例では、Q充電は、式(3)で与えられるように、平均充電電流I充電および充電中の総ティックカウント(N_ティック充電)を使用して計算され得る。一例では、Q放電は、式(4)で与えられるように、平均放電電流I放電および放電中の総ティックカウント(N_ティック放電)を使用して計算され得る。
【0111】
Q充電=T*N_ティック充電*I充電
(3)
Q放電=T*N_ティック放電*I放電
(4)
ティック当たりのクロック時間Tは、スイッチングタイマの分解能(T=1/fクロック)に等しい。一例では、ティック当たりの時間は、システムクロック周波数fクロック=5MHzの場合T=200ナノ秒である。
【0112】
別の例では、方形波発生器532は、単一の単極電流源からの対称波形を実装することができ、その結果、平均の充電電流および放電電流は、フレームのタイムスケールにわたって実質的に同一である。電流スイッチングコントローラ533は、超過充電ティックΔティック充電または超過放電ティックΔティック放電を印加することができる。この例では、QPFは、式(5)で与えられるように、平均ソース電流(I)と、充電期間と放電期間との間の超過ティックカウントの差を使用することによって計算され得る。
【0113】
QPF=T*(Δティック充電-Δティック放電)*I
(5)
別の例では、マイクロコントローラ530は、PIまたはPID制御アルゴリズムによって指示されるように、超過充電Δティック充電を提供して、所定の平均セル電圧を維持し得る。PIまたはPIDコントローラの積分項は、定常状態のエラーまたは平均セル電圧設定値からのオフセットを最小化するために使用される。システムが制御されており、システム制御アルゴリズムが適切に調整されている場合、積分項は、フレームごとに追加された超過充電Δティック充電の平滑化された推定値である。つまり、積分項は、制御変数(タイミング)であると同時に、フレーム当たりの総電荷(QPF)および総印加クーロン率の基礎でもある。これは、ノイズの多い電流源または測定された出力変数がある場合でも、PIまたはPID制御アルゴリズムの積分項の作用により、滑らかなクーロンおよび印加された総電荷値が得られる可能性があるため、サイクリッククーロメータの有益な特徴である。一例では、QPFは、式(6)で与えられるように、フレームタイミングを生成するために使用されるPIまたはPIDアルゴリズムの平均ソース電流(I)、ティック当たりのクロック時間(T)、および積分値(INT)によって計算され得る。
【0114】
QPF=T*INT*I
(6)
いくつかの例では、バッテリーメトリック発生器534は、時間に対してプロットされた総クーロン曲線を生成するために、時間の経過とともにQPFを傾向づけることができる。特定の時間における総クーロン曲線の傾きは、システムを制御状態に維持する(例えば、出力平均セル電圧が、制御レベルに保たれている)ために必要な有効な印加電流(印加クーロン率、自己放電率、または損失率とも呼ばれる)を表す。印加された総電荷および自己放電率の例は、
図8を参照するなどして、以下で論じられる。
【0115】
一例では、バッテリーメトリック発生器534は、印加された総電荷の関数として、DUT150の等価直列抵抗(ESR)を決定し得る。ESRは、セル電圧の変化(ΔV)(平均セル電圧810と比較した充電または放電ステップのセル電圧応答から得られるものなど)および印加電流の大きさ(ΔI)を使用して計算され得る。ESRを計算するために使用されるセル電圧は、サイクリング期間全体の平均電圧、あるいは、充電サイクルまたは放電サイクルのみの平均または端子電圧によって表され得る。一例では、ESRは、充電および放電電圧の差の半分に基づいて計算され、充電および放電ステップ中に使用される印加電流によって除算され電流スイッチングを中心に対称的に計算され得る。バッテリーメトリック発生器534は、印加された総電荷量の関数としてESRをさらにパラメータ化し(印加された総電荷の異なる値にわたってESR曲線を生成することによってなど)、印加された総電荷の変化に対するESR変化の率(dESR/dQ)を表す失われたクーロン当たりのESR変化率を決定し得、その例については、
図9を参照して以下で論じられる。
【0116】
上記で論じたような、QPF、印加された総電荷、自己放電率、ESR、およびESR変化率に加えて、またはその代わりに、バッテリーメトリック発生器534は、DUT150の周波数応答などの他のバッテリーメトリックまたは診断情報を生成し得る。バッテリーメトリック発生器534は、行われている電気化学試験および/または使用されているモニタデバイスに従って、バッテリーメトリックを生成し得る。いくつかの例では、バッテリー試験システム500は、とりわけ、分光計、超音波源およびセンサー、光ファイバーケーブル、または圧力トランスジューサを含み得る。
【0117】
通信回路535は、パーソナルコンピュータ(PC)またはモバイルデバイスなどの、データ処理、記憶、およびシステムユーザ(例えば、とりわけ、材料開発者、セル設計者、セル製造業者、アルゴリズムバッテリーエンジニア、品質管理および信頼性エンジニア)へのバッテリーメトリックおよび診断情報の提示を行い得る、モニタデバイス540とのデータ通信を確立するように構成される。バッテリーメトリックおよび診断情報は、表、チャート、トレンド、図、または任意の他のタイプのテキスト、表、またはグラフィックの表示形式で提示され得る。例えば、
図8および
図9のグラフ、またはその変形は、モニタデバイス540のディスプレイ上に提示され得る。一例では、モニタデバイス540は、とりわけ、異なるCレート、異なる温度、異なる設定値電圧、またはこれらの変数の任意の組み合わせなどの、個別にアドレス可能で指定された試験条件下で、印加される総電荷および/または自己放電レートを提示し得る。例えば、
図10A~
図10Bに示されるような損失率曲線または損失率マップは、モニタデバイス540のディスプレイ上に提示され得る。モニタデバイス540は、DUT150のステータスのアラート通知を生成し得る。モニタデバイス540はまた、システムユーザがサイクリングプロセスをモニタし(オンラインまたはオフラインモニタのいずれか)、1つ以上の試験条件変数(例えば、Cレート、セル電圧設定値、または温度設定値)をプログラミングするなど、マイクロコントローラ530への入力コマンドを用いてサイクリッククーロメトリーをプログラムすることを可能にするユーザインターフェースを含む。いくつかの例では、バッテリーメトリック発生器534の少なくとも一部は、バッテリーメトリックのオンライン測定を行い得るモニタ540内に実装され得る。
【0118】
図6Aは、サイクル試験中の充電および放電ステップ間の電流スイッチタイミングを制御するように構成された電流ステアリング回路600の少なくとも一部の例を図示する図である。
図1のスイッチング回路120の実施形態である電流ステアリング回路600は、電流スイッチングコントローラ533の実施形態であるマイクロコントローラ(MCU)610を含む。マイクロコントローラ610は、電流源110の実施形態である電流源630に結合され、これは、サイクル試験中にDUT150を励起するために方形波を生成し得る。マイクロコントローラ610は、スイッチ(例えば、
図2A~
図2Cおよび
図3A~
図3Cに図示されるような、FETトランジスタまたは他のタイプの電圧制御スイッチ)を含む電流ステアリング回路620のためのタイミング制御信号を生成して、マイクロコントローラ610によって提供されるタイミング制御信号に従って電流スイッチングを実施し得る。順方向(充電)電流および逆方向(放電)電流をDUT150に印加し得る。
図6Bは、電流ステアリング回路620からの順方向電流および逆方向電流の論理タイミングを例として図示するタイミング図である。順方向電流および逆方向電流は、電流スイッチタイミングに従ってスケジュールされた時間で交互になる。
【0119】
DUT150の電圧、電流感知抵抗器650の両端の電圧、およびDUT150を流れる印加電流などの電気的パラメータは、データ取得システム(DAS)640を使用して測定され得る。DAS640は、アナログ測定値を指定された精度レベルでデジタルデータに変換するためのアナログ-デジタル変換器(ADC)を含み得、データ記憶デバイスに記憶される。一例では、DASは、充電/放電電流をデジタル化するのに十分大きいダイナミックレンジを有し、同時に対象の信号を検出するのに十分細かい分解能を有する。一例では、DAS640の性能は、電流源630の性能を超える可能性があり、その結果、サイクリッククーロメトリープロセスは、サイクル試験中に発生し得るエラー源をより信頼性よく決定し得る。
【0120】
デジタルデータは、データ精度を高め、データ品質を向上させるために、とりわけ、オーバーサンプリング、フィルタリング、またはノイズシェーピングなどの技術を使用して前処理され得る。デジタルデータは、バッテリーメトリック発生器534によってなど、新しいデータフォームおよび性能仕様を生成するために、および/または、関心のある他の条件の中でも、DUT150の充電状態または健全性状態を特徴付けるバッテリーメトリックおよび診断を生成するために使用され得る。いくつかの例では、マイクロコントローラ610は、電流源630のステータス、DAS640からの測定値、およびバッテリーメトリック発生器534からのバッテリーメトリックおよび診断に関する1つ以上の情報を使用して、電流スイッチタイミングを更新し得る。
【0121】
図7は、サイクル試験において電気的パラメータを測定するためのデータ取得システム(DAS)740と、DAS740が動作する環境の少なくとも一部とを図示する図である。DAS740は、
図5に図示されるようなDAS521、または
図6のDAS640の一例であり得る。電流源630の実施形態である定電流源730は、DUT150に励起電流を提供する。セル固有のインターフェース720は、DUT150との物理的インターフェースであり、インターフェースボード520内に実装され得る。DAS740は、
図6を参照して上記で論じたように、DUT150のセル電圧および既知の抵抗値を有する電流感知抵抗器650の両端の電圧に基づくセル電流などのアナログ測定値の中から選択するためのマルチプレクサ(MUX)741を含む。DAS740は、アナログ測定値(例えば、電圧または電流)をデジタル化するためのアナログ-デジタル変換器(ADC)742を含む。一例では、ADC742は、高精度電圧基準(V
基準)および16MHzタイミング源750を用いて動作し得る。一例では、ADC742は、1秒当たり1250サンプル(SPS)などの特定のサンプリングレートでデジタル化された電圧および電流サンプルを連続的に提供するように構成される。
【0122】
一例では、ADC742は32ビット変換用に構成されており、そのうち28ビットはクーロンカウンタによって使用される。このデータレートおよび2.5V基準では、ADC742は約20ビットまで静かであり、その結果、1250SPSで採取されるサンプルは約2ppmまで静かであり得る。その後の平均化により、ノイズが大幅に減少する可能性がある。例えば、フレームが非常に短い(2秒の期間)場合でも、各半分には約1250のサンプルがある。このデシメーションは、追加の4ビットの分解能とほぼ同等である。
【0123】
DAS740は、デジタル化された測定値をMCU610に出力し得る。様々なメトリクスおよび診断情報は、ステップごとに印加される実際のクーロン、充電ステップの平均電圧、放電ステップの平均電圧、平均セル電位、充電ステップから計算された等価直列抵抗、電流スイッチングを中心に対称的に計算された等価直列抵抗、放電ステップから計算された等価直列抵抗、システムコントローラの積分値および比例項(つまり、PIコントローラまたはPIDコントローラの「P」および「I」項)、等を含む、当該測定値に基づいて生成され得る(例えば、バッテリーメトリック発生器534によって)。バッテリーメトリックの例は、
図8、
図9、および
図10A~
図10Bを参照するなどして、以下で論じられる。平均セル電位が設定値と実質的に同じである場合、システムは制御されていると判断され得る。制御されている場合、平均比例項(P)はゼロになる。
【0124】
図8は、限定ではなく例として、システム500を使用して得られたような、被試験バッテリーに行われたサイクル試験中の電圧および電流応答を図示するグラフである。限定ではなく例として、以下の方法を使用して、被試験バッテリーを組み立てることができる。カソードインクは、Thinky ARE-500プラネタリーミキサを使用して作成された。次に、9.42グラムのNMC532カソード、0.340グラムのTimcal C65カーボンブラック、および0.240グラムのPVDFをThinkyミキシングカップに添加した。次に、6.85グラムのNMPを添加し、混合物を1000RPMで合計10分間回転させ、インクの過度の加熱を防ぐために2回の短い休止を追加した。次に、カソードインクをアルミニウムホイルにキャストし、乾燥させ、電極に切断した。
【0125】
キャスおよび乾燥されたカソードは、グラファイトアノードを使用して手作りのポーチリチウムイオン試験セルを構築するために使用された。脱気後、組み立てられたバッテリーは電解質で満たされた。この例で使用した電解質は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジエチルカーボネート(EC/EMC/DEC 3/5/2 v/v)の混合物中の1M LiPF6であり、1%のビニレンカーボネートが含まれていた。
【0126】
このようにして作製したバッテリーセルに対してサイクル試験を行った。セルは4.3Vに充電され、
図1および
図5を参照して上記のようにサイクリッククーロメトリーを使用して試験にかけられた。サイクリッククーロメトリーは、60秒のサイクリング期間(30秒の基本充電時間および30秒の基本放電時間)、および0.5CのCレート(つまり、2時間の充電レート)で実行された。PIコントローラは、平均セル電圧を4.3V(設定値)に維持するように指示され得る。セルを45℃のオーブンに入れ、平衡化させた。
【0127】
平均セル電圧、充電電圧、および放電電圧が、継続的にモニタされ得、システム500を使用するなどしてデータは取得された。
図8に図示されるように、マイクロコントローラ520(例えば、PIコントローラ)は、タイミング変数を調整して、出力平均セル電圧を所望の設定電圧に維持する。平均セル電圧応答810は、ほぼ4.3Vの設定値に維持する。サイクリング期間の前半中に測定された平均充電電圧応答820は、時間とともに増加する。同様に、サイクリング期間の後半中に得られる平均放電電圧応答830は、時間とともに減少する。つまり、平均充電電圧および平均放電電圧の両方が、サイクル試験中に時間とともに成長する。
【0128】
図8にまた示されているのは、サイクル試験中の異なる時間における印加された累積電荷(第2のY軸にスケールが示されている)を表す総クーロン曲線840である。印加された総電荷は、時間とともに増加する。印加された総電荷は、フレームごとに印加された総電荷(QPF)の合計である。
図5を参照して上記で論じたように、QPFは、クーロンカウンタを使用して決定されるか、あるいは、式(1)に与えられるように、平均セル電圧を設定レベル(例えば、この例では4.3V))に維持するためにフレームごとに必要とされるティックの数に対応する電流を積分することによって計算され得る。いくつかの例では、式(3)および(4)に与えられるように、総印加電荷は、充電ステップのみ、または放電ステップのみについて計算され得る。あるいは、QPFは、式(2)、(5)、または(6)のうちの1つを使用して計算され得る。
【0129】
サイクリッククーロメトリーの各サイクリング期間に使用される有効充電または放電電流である印加クーロン率は、総クーロン曲線840を使用して決定され得る。印加クーロン率は、サイクリッククーロメトリーのサイクルごとに変化する。実効クーロン率は、サイクル期間全体で平均化され得る。被試験バッテリーが設定されたセル条件で安定している場合(例えば、バッテリーの平均セル電圧は、この例では、4.3Vの電圧設定値に実質的に維持されている)、平均して安定したセル条件を維持するために必要なサイクリッククーロメトリーからの印加クーロン率は、その条件での自己放電率と呼ばれる。一例では、自己放電率(または損失率)は、特定の時間での総クーロン曲線840の傾き(dQ/dt)を使用して決定され得る。この例では、総クーロン曲線840の急勾配、したがってより高い自己放電率が、試験の後の段階(例えば、100,000秒の後)よりも早い段階(例えば、100,000秒の前)で観察される。これは、固体電解質中間相(SEI)がさらに発達するにつれてセルが時間の経過とともにゆっくりとより効率的になるか、カソードの反応性が低下するためであり得る。
【0130】
平均セル電圧810、充電電圧820、放電電圧830、および総クーロン曲線840などの電圧および電流応答は、個別にアドレス可能で指定された試験条件下で得ることができる。各試験条件は、各々が複数の値をとる1つ以上の制御変数(例えば、Cレート、温度、サイクリングプロセス中のセル電圧設定値)によって表され得る。例えば、
図8に示す電圧および電流応答は、パラメータセット(Cレート=0.5C、温度=45℃、平均電圧設定値=4.3V)によって定義された特定の試験条件下で得られた。電圧または電流応答の異なるセットは、Cレート、温度、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を変更することによってなど、異なる試験条件下で生成され得る。
【0131】
図9は、限定ではなく例として、印加された総電荷(
図8の総クーロン曲線840によって表される累積クーロン)に対してプロットされた被試験セルの等価直列抵抗(ESR、オーム)を図示するグラフであり、両方とも、
図7を参照して上記のようなサイクル試験からの測定値を使用して決定された。ESRは、充電期間または放電期間中のセル電圧の変化および電流の変化(ΔI)を使用して決定され得る。一例では、ESRは、式(7)で与えられるように、充電電流(I
充電)に対する平均充電電圧(V
充電)820と平均セル電圧(V
平均)810との間の差の比を使用して計算され得る。あるいは、ESRは、式(8)で与えられるように、放電電流(I
充電)に対する平均放電電圧(V
放電)830と平均セル電圧(V
平均)810との間の差の比を使用して計算され得る。
【0132】
ESR=(V充電-V平均)/(I充電)
(7)
ESR=(V放電-V平均)/(I放電)
(8)
平均セル電圧、V平均、は、サイクリング期間の全体の平均電圧を表す。一例では、V平均は、充電および放電電圧の平均を使用して決定され得る。あるいは、V平均は、V充電およびV放電の加重平均を使用して決定され得る。V充電およびV放電の重み係数は、それぞれ、式(9)に与えられるように、充電中のティック数(N_ティック充電)および放電中のティック数(N_ティック放電)を使用してそれぞれ決定され得る。
【0133】
【0134】
あるいは、ESRを計算するために使用されるセル電圧は、充電サイクルの平均または端子電圧(最大電圧)および放電サイクルの平均または端子電圧を使用して計算され得る。別の例では、ESRを計算するためのセル電圧は、時間に関して電流スイッチの周りで対称な平均充電電圧および平均放電電圧を計算することによって得られ得る。これらの例では、式(10)に与えられるように、V充電とV放電との間の差が、2および印加電流(I)で除算される。
【0135】
ESR=(V
充電-V
放電)/(2*I)
(10)
図9に図示するように、ESRは、自己放電反応がセルに蓄積するにつれて増加する。ESR曲線910の傾きは、失われたクーロン当たりのESR変化率(dESR/dQ)を表し、これは、各失われたクーロンがセル抵抗にどれほどダメージを与えるかを示す指標である。このサイクル試験では、サイクリング期間を60秒に設定した。時間スケールのため、ESRの計算は、実際の電荷移動中のバッテリーセルの低周波抵抗の直接測定を提供する。サイクル寿命の経験的相関には、損失率と電荷移動抵抗の増加の両方に関するデータが必要であることを考えると、本明細書で論じられるサイクリッククーロメトリーは、最先端のバッテリー計測学に対する著しい改善を表す。特に、本明細書で論じられるサイクリッククーロメトリーは、実験者が、失われたクーロンの関数として試験セルのESRの変化を測定することを可能にし、クーロメトリーは、各失われたクーロンがセル抵抗にどれほどダメージを与えるかを連続的な様態で有利に定量化する。
【0136】
図8を参照して上記で論じたように、総クーロン曲線840および曲線840から導出された自己放電率は、個別にアドレス可能で指定された試験条件下で得られ得る。いくつかの例では、複数の損失率が、異なる試験条件で決定され得る。各試験条件は、他の変数の中でもとりわけ、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表され得る。各パラメータは、複数のCレート、複数の温度、または複数の設定値電圧などの複数の値を取り得る。結果として生じる損失率は、当該変数の1つ以上にわたってパラメータ化された表現として表すことができる。一例では、パラメータ化された表現は、多次元配列を含む。別の例では、パラメータ化された表現は、損失率曲線もしくは損失率マップまたは表面などの多次元グラフを含み、その例は、
図10A~
図10Bを参照して以下で論じられる。
【0137】
いくつかの例では、損失率は、試験セルを設定値電位に維持するために必要とされる1日当たりの電荷損失量(Ah/日)によって表され得る。従来、エネルギー貯蔵の損失率は、電圧フェードによって表されている。電圧フェードは一般に解釈を必要とし、このため迅速で簡単な表現を提供しない。代わりに、本明細書で論じられる損失率マップは、異なる試験条件下で試験セルを設定値電位に維持するために必要とされる1日当たりの総電荷損失(Ah/日)に対してより簡単な解釈を可能にする。
【0138】
いくつかの例では、複数のESR変化率が、異なる試験条件で決定される場合がある。各試験条件は、他の変数の中でもとりわけ、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表され得る。各パラメータは、複数のCレート、複数の温度、または複数の設定値電圧などの複数の値を取り得る。結果として生じるESR変化率は、当該変数の1つ以上にわたってパラメータ化された表現として表すことができる。パラメータ化された表現の例には、
図10Cを参照して以下で論じられるESR変化率マップなどの多次元配列または多次元グラフが含まれる。
【0139】
図10A~
図10Cは、限定ではなく例として、自己放電率またはESR変化率などの、異なる試験条件下で計算された性能メトリックのグラフ表示を図示する。特に、
図10Aは、バッテリーのサイクル試験中に得られた異なる適用Cレート下での損失率曲線1010を図示するグラフである。この例では、セル電圧の設定値は4.4Vであり、サイクル試験は45℃の制御された温度で行われた。損失率曲線1010は、1日当たりの電荷損失の量(Ah/日)によって表され、異なる適用Cレートの下で測定され得る。
図10Aは、試験セルを設定値電位に維持するために、より高いCレートがより多くの電荷損失(Ah/日)をもたらすことを示している。
【0140】
図10Bは、異なるCレートおよび異なるセル電圧設定値によって表された様々な試験条件下での自己放電率(mA単位)の損失率マップ1020を図示する。単一バッテリーセルは、
図8を参照して上記で説明したものと同じタイプである。限定ではなく例として、自己放電率は、(1)4つの異なるCレート(0.25C、0.5C、0.75C、および1C)のうちの1つ、および(2) 4つの異なるセル電位(4.1V、4.2V、4.3V、および4.4V)のうちの1つ、の様々な組み合わせで測定され得る。結果として得られる損失率マップ1020は、バッテリーの放電率が、研究された条件において、セル電位の主要な関数であり、Cレートのマイナーな関数であることを示している。離散Cレートおよび離散セル電位は、一例であり、限定ではない。例えば、より細かい分解能、より広い範囲のCレート、または異なる平均セル電圧設定値を備えた損失率マップが生成され得る。損失率マップは、3D等高線図、表面プロット、メッシュプロットなど、または自己放電率が異なる色またはグレースケールによって表され得る2Dカラーマップまたはグレースケールマップとしてレンダリングされ得る。
【0141】
損失率マップ1020に示されるような様々な試験条件下で計算することができる複数の自己放電率と同様に、複数のESR変化率が、異なる試験条件下で計算することができる。
図10Cは、異なるCレートおよび異なるセル電圧設定値によって表された様々な試験条件下でのESR変化率(オーム/クーロン単位)を示すESR変化率マップ1030を図示する。単一バッテリーセルは、
図8を参照して上記で説明したものと同じタイプである。この非限定的な例では、ESR変化率は、(1)4つの異なるCレート(0.25C、0.5C、0.75C、および1C)のうちの1つ、および(2)4つの異なるセル電位(4.1V、4.2V、4.3V、および4.4V)のうちの1つ、の様々な組み合わせで
図9の総印加クーロングラフ当たりのESRの傾きから計算することができる。得られたESR変化率マップ1030は、失われたクーロン当たりのESRの変化が、研究された条件において、セル電位およびCレートの主要な関数であることを示している。離散Cレートおよび離散セル電位は、一例であり、限定ではない。例えば、より細かい分解能、より広い範囲のCレート、または異なる平均セル電圧設定値を備えたESR変化率マップが生成され得る。ESR変化率マップは、3D等高線図、表面プロット、メッシュプロットなど、または自己放電率が異なる色またはグレースケールによって表され得る2Dカラーマップまたはグレースケールマップとしてレンダリングされ得る。
【0142】
損失率マップ1020またはESR変化率マップ1030は、各データポイント(例えば、特定のCレートおよび特定のセル電位に対応する自己放電率、または特定のCレートおよび特定のセル電位に対応するESR変化率)が、ヒステリシス効果を調べるために、同様の構造の異なるバッテリーセルから計算されるような仕方で生成され得る。例えば、損失率マップ1020およびESR変化率マップ1030が各々、16個の試験条件(Cレートおよびセル電位ペア)に対応する16個のデータポイントを有するとき、16個のバッテリーを16個の試験条件にマッピングし、それぞれの試験条下で同時に試験され得る。結果として得られる16個のデータポイントは、次いで異なるバッテリーから得られる。これは、ヒステリシスを回避または実質的に低減し得る。ヒステリシスは、異なる試験条件下で1つのバッテリーを繰り返し試験している間に発生する可能性がある。例えば、高電圧でセルが1つの試験条件で損傷した場合、後続のデータポイントは、その時点から体系的にオフになる可能性がある。
【0143】
損失率マップ1020またはESR変化率マップ1030は、バッテリーのエージング後など、異なる時間にセルに対して生成され得る。一例では、初期マップ(初期損失率マップまたは初期ESR変化率マップ)が、新鮮なセルから生成され得る。次に、バッテリーを指定された期間(例えば、3~5日)オーブンに保管し、新しい試験を実行して、新しい損失率マップまたは新しいESR変化率マップを生成することができる。新しく生成されたマップと初期マップとの比較を使用して、経時的なバッテリー特性の変化を特徴付け得る。
【0144】
図11は、
図1を参照して上記で論じたように、サイクルクーロメトリーを使用して被試験デバイス(DUT)の診断試験を行うための方法1100の実施例を図示するフローチャートである。DUTの例には、バッテリー、燃料電池、フローセル、または他の電気化学セルなどの任意の電気化学セルが含まれ得る。方法1100は、バッテリー試験システム500などのバッテリー試験システムに実装され、実行され得る。一例では、方法1100の少なくとも一部は、
図1を参照して上記で論じたようなサイクリッククーロメータなどの装置に実装され得る。
【0145】
方法1100は、1110で始まり、そこでDUTが試験環境にロードされ得、試験条件変数が試験システムにプログラムされ得る。試験環境は、温度が<±0.1℃に安定化されている正確な温度制御環境であり得る。一例では、DUTは温度制御されたオーブンにロードされる。DUTは、システム500のインターフェースボード520を介するなどして、試験システムまたはデバイス(例えば、バッテリー試験システム500またはサイクリッククーロメータシステム100)と係合され得る。DUT接続の例には、他の最先端の接続構成の中でも、2線式、3線式、または4線式の接続が含まれ得る。試験システムまたはデバイスは、モニタデバイス540のユーザインターフェースを介するなどして、試験条件変数でプログラムされ得る。例えば、試験条件変数には、DUTの電圧設定値としても知られる設定セル電位が含まれる。別の例では、試験条件変数は、Cレートを含む。さらに別の例では、試験条件変数は、試験環境の設定温度を含む。試験条件変数の他の例には、とりわけ、サイクリング期間、基本充電時間、および基本放電時間が含まれ得る。
【0146】
1120で、電気サイクリングプロセスは、サイクリング期間の充電ステップ中に充電電流を印加することによって開始し、続いて、サイクリング期間の放電ステップ中に放電電流を印加する。充電および放電ステップは、指定された基本充電時間および指定された基本放電時間の間持続し得る。基本充電時間および基本放電時間は、プログラム可能であり得る。一例では、基本充電時間および基本放電時間は各々30秒であり、60秒のサイクリング期間を与える。30秒の充電ステップは、電圧プロファイルが電気化学セル内で完全に発達するのを可能にするのに十分な長さである。
【0147】
充電電流および放電電流は、電流源110などの電流源によって提供され得る。一例では、電流源は、一方向電流を提供するように構成された単一のDC電流源であり得る。反対方向の対称的な充電電流および放電電流を提供するために、電流の流れの方向は、順方向の流れ(充電電流)から逆方向の流れ(放電電流)への特定の電流スイッチタイミングで逆にされ得る。電流方向を逆転させることは、例えば、上記で論じたように、スイッチング回路120またはその変形(例えば、電流スイッチング回路200または300)を使用することによって達成され得る。電流の対称性は、充電サイクルに存在するオフセットエラーが放電サイクルに存在する同じオフセットでキャンセルされるという利点を有する。単一の電流源を使用することはまた、充電および放電ステップ中の電流出力の安定性を改善するのを助ける。
【0148】
1130で、1つ以上の電気的パラメータが、サイクリングプロセス中に(例えば、DUTの充電または放電中に)測定され得る。電気的パラメータの例には、とりわけ、サイクリング期間にわたる平均またはピークセル電圧、平均またはピーク充電電圧、平均またはピーク放電電圧、サイクル終了電圧、サイクリング期間にわたる平均またはピーク電流、平均またはピーク充電電流、平均またはピーク放電電流などの、DUTの電圧または電流応答が含まれ得る。一例では、1つ以上の電気的パラメータは、DAS 521またはその変形(例えば、DAS 640または740)を使用して測定され得る。測定されたパラメータは、前処理され、デジタル化され得る。
【0149】
1140で、DUTの平均電圧など、測定された出力変数をプリセットセル電圧設定値に維持するために、充電時間または放電時間のうちの1つ以上が調整され得る。そのような充電時間または放電時間のそのような調整は、例えば、プロセスコントローラ130または電流スイッチングコントローラ533によって自動的に制御され得る。一例では、充電時間または放電時間の調整は、サイクリング期間における充電ステップと放電ステップとの間の電流スイッチタイミングの変更を含み得る。一例では、電流スイッチングは、充電時間または放電時間に加算または減算される超過時間Δtを含み得る。例として、
図4A~
図4Eに図示されるように、充電時間または放電時間は、超過時間Δtによって独立して増加または減少され得る。超過時間Δtは、持続時間(例えば、ミリ秒またはマイクロ秒単位の)によって、あるいは、超過タイマティックのカウントによって表され得る。ティックは、スイッチングタイマ分解能Tの持続時間を有する。一例では、Tは、ほぼ200ナノ秒である。このため、充放電サイクルの安定した超微調整(ティック、またはTの増分の)が達成され得る。
【0150】
様々な例において、1130で測定された1つ以上の電気的パラメータは、サイクリング期間中のDUTの電圧または電流応答を含み得る。特定の電気的パラメータ(例えば、平均セル電圧)を特定の設定値に維持するように、モニタされた電圧または電流応答を使用して1140での電流スイッチタイミング(例えば、超過充電時間Δtまたは超過タイマティックカウント)を決定または更新し得る。一例では、超過充電時間Δtまたは超過タイマティックカウントは、試験の開始時にゼロに初期化され得る。他のフィードフォワードまたはフィードバック制御の中でも、PI制御、PID制御などのシステムコントローラを使用して、オーバーシュートまたは振動をほとんど伴わずに、測定された出力変数の所望の設定値への収束を促進し得る。電流スイッチタイミング(例えば、超過充電時間Δtまたは超過タイマティックカウント)は、継続的または定期的に更新され得る。一例では、電流スイッチタイミング(例えば、超過充電時間Δtまたは超過タイマティックカウント)は、フレームごとベースで更新され得る。いくつかの例では、充電時間または放電時間の調整を制御するために、1つ以上の入力変数が追加で使用され得る。一例では、電気化学セルの温度がモニタされ得る。別の例では、DUTの充電状態または健全性状態などのセル状態が、測定または推定され得る。これらのモニタされた変数のうちの1つ以上をさらに使用して、超過充電時間Δtまたは超過タイマティックカウントを更新し得、これは、電気化学セルの設定値平均電位への収束を加速し得る。一例では、初期電流スイッチタイミングが、より高速な制御を達成するために、電気的測定値、またはバッテリーメトリックおよび診断情報を使用して修正され得る。
【0151】
1150で、バッテリーメトリックが、バッテリーメトリック発生器534を使用してなど、測定された1つ以上の電気的パラメータを使用して生成され得る。バッテリーメトリックは、DUTの性能仕様を示したり、DUTの充電状態または健全性状態を特徴付け得る。一例では、バッテリーメトリックは、サイクリング期間の指定された部分の間に印加された総電荷の量を含む。一例では、バッテリーメトリックは、経時的に印加された総電荷の変化率に基づいて決定され得る自己放電率(損失率としても知られる)を含み得る。いくつかの例では、バッテリーメトリックは、DUTの等価直列抵抗(ESR)を含み得る。バッテリーメトリックの他の例には、とりわけ、ステップごとに印加された実際のクーロン、充電ステップの平均電圧、放電ステップの平均電圧、平均セル電位、またはシステムコントローラの比例および積分項(つまり、PIコントローラまたはPIDコントローラの「P」および「I」項)、が含まれ得る。バッテリーメトリックを生成する例は、
図12および
図13を参照するなどして、以下で論じられる。
【0152】
1160で、生成されたバッテリーメトリックは、ユーザまたはプロセスに提供され得る。一例では、バッテリーメトリックは、システムユーザに出力され、パーソナルコンピュータ(PC)またはモバイルデバイスなどのモニタ上に表示され得る。バッテリーメトリックおよび診断情報は、任意選択で他の測定値とともに、テキスト、表、またはグラフに提示され得る。例として、
図8に図示されるような印加された総電荷および自己放電率、
図9に図示されるようなESR曲線、および
図10A~
図10Bに示されるようなパラメータ化された自己放電率を表す損失率曲線または損失率マップが、出力デバイス上に表示され得る。システムユーザは、バッテリーメトリックに基づいて、さらなるアクションを取り得る(例えば、バッテリー診断を生成したり、さらなる試験を行う)。
【0153】
図12および
図13は、方法1100に従うなどして、サイクル試験中に行われた電気的測定値を使用して様々なバッテリーメトリックを生成するそれぞれの方法1200および1300を図示するフローチャートである。
図12に示される方法1200は、フレームごとに印加された総電荷(QPF、クーロン単位)の量を決定するための1210で開始する。QPFは、クーロンカウンタを使用して決定されるか、式(1)で与えられるように、フレーム全体内で経時的に印加電流を積分することによって計算され得る。一例では、QPFは、式(2)によって与えられるように、充電中に印加される総電荷と放電中に印加される総電荷との差から決定され得る。一例では、バッテリーメトリックは、充電中に印加される総電荷の量、または放電中に印加される総電荷の量を含み得、これらは、式(3)および式(4)に従ってそれぞれ決定され得る。一例では、QPFは、式(5)で与えられるように、充電期間と放電期間との間の超過ティックカウントの差を使用することによって、または、式(6)で与えられるように、フレームタイミングを生成するために使用されるPIまたはPIDアルゴリズムの積分値(INT)を使用することによって、計算され得る。1220で、QPFは、時間に対してプロットされた総クーロン曲線を生成するために経時的に傾向が取られ、その例が
図8に示されている。1230で、特定の時間での総クーロン曲線の傾き(dQ/dt)を使用するなどして、印加されたクーロン率(自己放電率としても知られる)が決定され得る。印加されたクーロン率は、システムを制御状態に維持する(例えば、出力平均セル電圧が制御レベルに維持されている)ために必要とされる有効印加電流を表す。
【0154】
自己放電率は、電気化学セルのセル電圧を特定の設定値に維持するために必要とされる印加電流を表す。いくつかの例では、印加された総電荷および自己放電率は、個別にアドレス可能で指定された試験条件下で決定され得る。各試験条件は、例えば、他の変数の中でも、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表され得る。各パラメータは、複数の値を取り得る。結果として生じる損失率は、当該変数の1つ以上にわたってパラメータ化された表現として表すことができる。一例では、パラメータ化された表現は、多次元配列を含む。別の例では、パラメータ化された表現は、損失率曲線もしくは損失率マップまたは表面などの多次元グラフを含む。
【0155】
図13に示される方法1300は、フレームごとに印加された総電荷(QPF)の量を決定するための1310で開始する。1320で、フレームごとの充電および放電中のDUTの等価直列抵抗(ESR)が決定され得る。ESRは、式(7)および式(8)に従ってなど、セル電圧の変化(ΔV)(平均充電電圧820と平均セル電圧応答810または平均放電電圧830と平均セル電圧810との差から得られるような)および印加された電流を使用して計算され得る。一例では、ESRを計算するために使用される平均セル電圧は、サイクリング期間全体の平均電圧によって表され得る。平均セル電圧は、平均充電電圧および平均放電電圧の単純平均を使用して決定され得る。あるいは、平均セル電圧は、式(9)に従ってなど、充電中のセル電圧および放電中のセル電圧の加重平均を使用して決定され得る。別の例では、充電サイクルまたは放電サイクルのみの平均または端子電圧を使用して、ESRを計算するために使用されるセル電圧を決定し得る。別の例では、ESRを計算するために使用されるセル電圧は、式(10)によって与えられるように、時間に関して電流スイッチの周りで対称な平均充電および平均放電電圧を計算することによって得られ得る。
【0156】
1330で、ESR曲線が生成され得る。ESR曲線が、印加された総電荷に対してプロットされ、その例が
図9に示されている。1340で、失われたクーロン当たりのESR変化率が決定され得、これは、印加された総電荷の変化にわたるESR変化の率(dESR/dQ)を表す。失われたクーロン当たりのESR変化率は、各失われたクーロンがセル抵抗にどれほどダメージを与えるかを示す。本明細書で論じられるクーロメトリー技術は、各失われたクーロンがセル抵抗にどれほどダメージを与えるかを連続的な様態で有利に定量化する。
【0157】
様々な例において、1200の方法と1300の方法とは相補的であり得る。1340での失われたクーロン当たりのESR変化率の情報は、各失われたクーロンがセル性能にどれほどのダメージを与えるかの尺度である。1230での印加されたクーロン率(自己放電率)に関する情報は、失われたクーロンの生成率の尺度である。一緒に、1200および1300の方法によって生成されたバッテリーメトリックは、温度、Cレート、セル電位などの個々のアドレス可能な負荷条件でのセル劣化を理解するための新しいバッテリーメトリックを提示する。
【0158】
図14は、本明細書で論じられる技術(例えば、方法論)のうちの任意の1つ以上が実行され得る例示的な機械1400のブロック図を概して図示する。この説明の一部は、サイクリッククーロメータシステム100またはバッテリー試験システム500の様々な部分のコンピューティングフレームワークに適用し得る。
【0159】
代替の実施形態では、機械1400は、スタンドアロンデバイスとして動作し得、または他の機械に接続(例えば、ネットワーク化)され得る。ネットワーク展開では、機械1400は、サーバクライアントネットワーク環境において、サーバ機械、クライアント機械、またはその両方の処理能力で動作し得る。一例では、機械1400は、ピアツーピア(P2P)(または他の分散型)ネットワーク環境においてピア機械として作動し得る。機械1400は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチまたはブリッジ、もしくはその機械によって行われるアクションを指定する命令(シーケンシャルまたはその他の)を実行することができる任意の機械であり得る。さらに、単一の機械のみが図示されているが、「機械」という用語はまた、クラウドコンピューティング、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、他のコンピュータクラスタ構成などの、本明細書で論じられる方法論のうちのいずれか1つ以上を行うための命令のセット(または複数のセット)を個別にまたは共同で実行する機械の任意の集合を含むと解釈されるべきである。
【0160】
本明細書に記載されるような実施例は、論理またはいくつかの構成要素、もしくはメカニズムを含み得るか、またはそれらによって動作され得る。回路セットは、ハードウェア(単純な回路、ゲート、ロジック、等)を含む有形のエンティティに実装された回路の集合である。回路セットのメンバーシップは、経時的に、および基礎となるハードウェアの変動性に柔軟であり得る。回路セットは、単独または組み合わせて、動作時に指定された動作を実行し得るメンバーを含む。一例では、回路セットのハードウェアは、特定の動作を実行するように不変に設計されている場合がある(例えば、ハードワイヤード)。一例では、回路セットのハードウェアは、特定の動作の命令を符号化するように物理的に変更された(例えば、磁気的、電気的、不変の大量粒子の移動可能な配置、等)コンピュータ可読媒体を含む、可変的に接続された物理的構成要素(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単純な回路、等)を含み得る。物理的構成要素を接続する際に、ハードウェア構成物の基礎となる電気的特性が、例えば、絶縁体から導体に、またはその逆に変更される。この命令は、組み込みハードウェア(例えば、実行ユニットまたはローディングメカニズム)が、可変接続を介してハードウェア内に設定された回路のメンバーを作成して、動作時に特定の動作の一部を実行することを可能にする。したがって、コンピュータ可読媒体は、デバイスが動作しているときに、回路セットメンバーの他の構成要素に通信可能に結合される。一例では、物理的構成要素のいずれかが、1つを超える回路セットの1つを超えるメンバーで使用され得る。例えば、動作中、実行ユニットは、ある時点で第1の回路セットの第1の回路で使用され、第1の回路セットの第2の回路によって、または異なる時間に第2の回路セットの第3の回路によって再利用され得る。
【0161】
機械(例えば、コンピュータシステム)1400は、ハードウェアプロセッサ1402(例えば、中央処理ユニット(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、ハードウェアプロセッサコア、またはそれらの任意の組み合わせ)、メインメモリ1404、スタティックメモリ1406、またはマスストレージ1408のうちの1つ以上を含み得る機械可読媒体1422などの記憶デバイスを含み得、それらのいくつかまたはすべては、インターリンク(例えば、バス)1430を介して互いに通信し得る。機械1400は、ディスプレイユニット1410(例えば、ラスターディスプレイ、ベクトルディスプレイ、ホログラフィックディスプレイ、等)、英数字入力デバイス1412(例えば、キーボード)、およびユーザインターフェース(UI)ナビゲーションデバイス1414(例えば、マウス)をさらに含み得る。一例では、ディスプレイユニット1410、入力デバイス1412、およびUIナビゲーションデバイス1414は、タッチスクリーンディスプレイであってもよい。機械1400は加えて、1つ以上のセンサー1416(全地球測位システム(GPS)センサー、コンパス、加速度計、または他のセンサーなど)、信号発生デバイス1418(例えば、スピーカー)、およびネットワークインターフェースデバイス1420を含み得る。機械1400は、1つ以上の周辺デバイス(例えば、プリンタ、カードリーダ、等)と通信または制御するための、シリアル(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、パラレル、または他の有線または無線(例えば、赤外線(IR)、近距離無線通信(NFC)、等)接続などの出力コントローラ1428を含み得る。
【0162】
機械可読媒体1422などの記憶デバイスは、本明細書に記載の技術または機能のうちのいずれか1つ以上によって具現化または利用されるデータ構造または命令1424(例えば、ソフトウェア)の1つ以上のセットを格納する。命令1424は、完全にまたは少なくとも部分的に、メインメモリ1404内、スタティックメモリ1406内、マスストレージ1408内、または機械1400によるその実行中のハードウェアプロセッサ1402内に存在し得る。一例では、ハードウェアプロセッサ1402、メインメモリ1404、スタティックメモリ1406、またはマスストレージ1408の1つまたは任意の組み合わせは、機械可読媒体を構成し得る。
【0163】
機械可読媒体1422は単一の媒体として図示されているが、「機械可読媒体」という用語は、1つ以上の命令1424を格納するように構成された単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型または分散型データベース、および/または関連するキャッシュおよびサーバ)を含み得る。
【0164】
「機械可読媒体」という用語は、機械1400による実行のための命令を格納、符号化、または運ぶことができ、機械1400に本開示の技術のいずれか1つ以上を実行させる、もしくはそのような命令によって使用される、またはそのような命令に関連付けられたデータ構造を格納、符号化、または運ぶことができる、任意の媒体を含み得る。非限定的な機械可読媒体の例には、固体メモリ、ならびに光学および磁気媒体が含まれ得る。一例では、大量の機械可読媒体は、不変(例えば、静止)質量を有する複数の粒子を有する機械可読媒体を含む。したがって、大量の機械可読媒体は一時的な伝播信号ではない。大量の機械可読媒体の特定の例には、半導体メモリデバイス(例えば、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM))およびフラッシュメモリデバイスなどの不揮発性メモリ、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、およびCD-ROMおよびDVD-ROMディスク、が含まれ得る。
【0165】
命令1424はさらに、いくつかの転送プロトコル(例えば、フレームリレー、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、等)のうちのいずれか1つを利用するネットワークインターフェースデバイス1420を介する伝送媒体を使用して、通信ネットワーク1426を介して送信または受信され得る。通信ネットワークの例には、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、パケットデータネットワーク(例えば、インターネット)、携帯電話ネットワーク(例えば、セルラーネットワーク)、プレーンオールドテレフォン(POTS)ネットワーク、および、とりわけ、ワイヤレスデータネットワーク(例えば、WiFi(登録商標)として知られる電気電子技術者協会(IEEE)802.11ファミリの標準、WiMax(登録商標)として知られるIEEE802.16ファミリの標準)、IEEE802.15.4ファミリの標準、ピアツーピア(P2P)ネットワーク、が含まれる。一例では、ネットワークインターフェースデバイス1420は、通信ネットワーク1426に接続するための1つ以上の物理的ジャック(例えば、イーサネット(登録商標)、同軸、または電話ジャック)もしくは1つ以上のアンテナを含み得る。一例では、ネットワークインターフェースデバイス1420は、単一入力多出力(SIMO)、多入力多出力(MIMO)、または多入力単一出力(MISO)技術のうちの少なくとも1つを使用して無線通信するための複数のアンテナを含み得る。「伝送媒体」という用語は、機械1400による実行のための命令を格納、符号化、または運ぶことができる任意の無形の媒体を含み、そのようなソフトウェアの通信を容易にするためのデジタルまたはアナログ通信信号もしくは他の無形媒体を含む、と解釈されるべきである。
【0166】
様々な実施形態が、上記の図に図示されている。これらの実施形態のうちの1つ以上からの1つ以上の特徴を組み合わせて、他の実施形態を形成し得る。
本明細書に記載の方法の例は、少なくとも部分的に機械またはコンピュータで実施することができる。いくつかの例は、上記の例に記載された方法を行うように電子デバイスまたはシステムを構成するように動作可能な命令で符号化されたコンピュータ可読媒体または機械可読媒体を含み得る。そのような方法の実装は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高級言語コードなどのようなコードを含み得る。このようなコードには、様々な方法を行うためのコンピュータ可読命令が含まれ得る。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成することができる。さらに、コードは、実行中または他の時間に、1つ以上の揮発性または不揮発性のコンピュータ可読媒体に明確に格納することができる。
【0167】
上記の詳細な説明は、例示を目的としたものであり、限定的なものではない。したがって、開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられている同等物の全範囲とともに決定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルを試験するための方法であって、
サイクリング期間において、充電時間の充電電流および放電時間の放電電流を印加することによって、前記電気化学セルを電気的にサイクリングさせることであって、前記充電電流および前記放電電流が、対称であり、かつ反対方向を有する、電気的にサイクリングさせることと、
前記電気化学セルの前
記サイクリング
期間中に、
前記電気化学セルの1つ以上の電気的パラメータを測定することと、
前記電気化学セルのモニタされたセル電圧を特定の設定値に向けて制御するために、前記充電時間または前記放電時間を調整することと、
前記測定された1つ以上の電気的パラメータを使用して前記電気化学セルの性能メトリックを生成することと、を含
み、前記性能メトリックは、前記サイクリング期間中に前記電気化学セルに印加されるか前記電気化学セルから出力されるクーロンの量を示している、方法。
【請求項2】
前記充電時間または前記放電時間を調整することが、前記充電電流から前記放電電流に逆転するための電流スイッチタイミングを更新することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定された1つ以上の電気的パラメータが、前記電気化学セルの電圧または電流応答を含み、前記電流スイッチタイミングを更新することが、前記モニタされた電圧または電流応答を使用することによるものである、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記充電時間または放電時間を調整することが、超過充電時間だけ前記充電時間を増加または減少させることを含み、前記超過充電時間が、各々が指定されたスイッチングタイマ分解能の持続時間を有するティックのカウントによって表される、請求項
2または
3に記載の方法。
【請求項5】
前記充電時間または放電時間を調整することが、超過放電時間だけ前記放電時間を増加または減少させることを含み、前記超過放電時間が、各々が指定されたスイッチングタイマ分解能の持続時間を有するティックのカウントによって表される、請求項
2~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記性能メトリックを生成することが、
前記サイクリング期間の指定された部分の間に印加された総電荷の量を決定することと、
印加された総電荷の前記決定された量を使用して自己放電率を決定することであって、前記自己放電率が、前記電気化学セルの前記セル電圧を前記特定の設定値に維持するために必要とされる印加電流を表す、決定することと、を含む、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記印加された総電荷の量が
、フレームの時間に対応するフレームごとに印加された総電荷(QPF)を含み、前記自己放電率を決定することが、経時的なQPFの傾向の傾きを使用することを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記QPFを決定することが、フレーム内で経時的に前記印加された電流を積分することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記QPFを決定することが、
充電期間中にのみ印加された総電荷の第1の量、および前記充電期間に続く放電期間中にのみ印加された総電荷の第2の量を決定することと、
印加された総電荷の前記第1の量と印加された総電荷の前記第2の量との間の差を使用して前記QPFを決定することと、を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
印加された総電荷の前記第1の量が、前記充電期間中にのみ第1の総ティックカウントを使用することによって決定され、印加された総電荷の前記第2の量が、前記放電期間中にのみ第2の総ティックカウントを使用することによって決定される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記測定された1つ以上の電気的パラメータが、前記電気化学セルのセル電圧を含み、前記性能メトリックを生成することが、(1)充電期間中の充電電圧または放電期間中の放電電圧のうちの少なくとも1つ、および(2)前記印加電流、を使用して、前記電気化学セルの等価直列抵抗(ESR)を決定することを含む、請求項
6~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記性能メトリックを生成することが、
前記印加された総電荷の量の関数として、ESR曲線を生成することと、
印加された総電荷の特定の量での前記ESR曲線の傾きを使用して、失われたクーロン当たりのESR変化率を決定することと、を含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
異なる試験条件下で複数のESR変化率を決定することであって、前記異なる試験条件の各々が、Cレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表される、決定することと、
前記パラメータセットにわたって前記複数のESR変化率の表現を生成することであって、前記表現が、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、生成することと、を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記性能メトリックを生成することが、
各々がCレート値、温度測定値、またはセル電圧設定値のうちの1つ以上を含むパラメータセットによって表された異なる試験条件下で複数の自己放電レートを決定することと、
前記パラメータセットにわたって前記複数の自己放電率の表現を生成することであって、前記表現が、二次元または多次元配列、もしくは二次元または多次元グラフを含む、生成することと、を含む、請求項
6~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記測定された1つ以上の電気的パラメータまたは前記測定された性能メトリックのうちの1つ以上をユーザインターフェース上に表示することを含む、請求項
14に記載の方法。
【国際調査報告】