(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】切削工具の検査と交換のための自動システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20220622BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220622BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20220622BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20220622BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B23Q17/09 B
B23Q17/00 D
B23Q3/155 E
B23Q3/155 G
B23Q3/155 B
B25J13/08 A
B23Q17/24 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551883
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 IB2019051663
(87)【国際公開番号】W WO2020178613
(87)【国際公開日】2020-09-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389712
【氏名又は名称】レイフ・アンドレアス・アンデルセン
(71)【出願人】
【識別番号】521389723
【氏名又は名称】ダヴィデ・カプト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】レイフ・アンドレアス・アンデルセン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・カプト
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
3C707
【Fターム(参考)】
3C002EE03
3C002HH07
3C002HH09
3C002KK04
3C002KK05
3C029DD01
3C029DD08
3C029DD20
3C029FF01
3C707AS05
3C707AS14
3C707ES03
3C707ET08
3C707KT01
3C707KT05
(57)【要約】
工作機械の切削工具インサートの状態を評価するための方法および自動システムは、検査装置および工具摩耗評価のための処理ソフトウェアを含む。このようなシステムは、後処理ソフトウェアによって提供される評価に基づいて、またはユーザー定義の設定に基づいて、切削工具インサートを操作し、摩耗または破損したときにそれらを交換するための手段を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の切削工具インサート(6,8)の摩耗状態を検出するための自動システムであって、各切削工具インサート(6,8)は、工作機械マガジン内または工具ホルダー(3)を安全に取り扱うために適合された限られたスペース内における工具ホルダー(3)のそれぞれの工具本体(4)に収容され、前記システムは、
前記工作機械マガジンから、または前記限られたスペースから、摩耗検査の対象となる前記切削工具インサート(6,8)を収容する前記工具ホルダー(3)の1つをピックアップすることができる操作手段と、
前記工作機械から分離された、ピックアップされた工具ホルダー(3)を安定して保持することができる支持体(12)と、
前記ピックアップされた工具ホルダー(3)に収容された前記切削工具インサート(6,8)関連する摩耗状態データを検出することができる検査装置(10)と、
検査された切削工具インサート(6,8)それぞれの検出された摩耗状態データを収集することができるデータ管理プラットフォームと、
(i)前記切削工具インサート(6,8)の有効摩耗状態を直接、または前記検出された摩耗状態データを事前に確立された工具摩耗状態データのセットと比較することによって評価することができる制御ユニットと、
a)前記摩耗検査によって摩耗が検出された一体型切削工具インサート(8)を前記工具ホルダー(3)から最終的に取り外し、新しいものと交換するための手段、またはb)前記摩耗検査によって少なくとも1つの摩耗していない切削面(5)を有すると検出された個別の切削工具インサート(6)を前記工具ホルダー(3)から最終的に取り外し、前記個別の切削工具インサート(6)の摩耗していない切削面(5)が有効な動作位置に再配置されるように前記工具ホルダー(3)の前記工具本体(4)に最終的に再配置するための手段と、
を備える、自動システム。
【請求項2】
前記操作手段は、取り外し可能エンドエフェクタを最終的に支持する手首(13)が設けられたロボット(14)を備え、前記取り外し可能エンドエフェクタは、前記工作機械マガジンから、または前記限られたスペースから取り除かれ、前記支持体(12)に配置されている前記工具ホルダー(3)を把持することができるグリッパー(11)、または検査される前記切削工具インサート(6,8)の表面から汚れおよび他の不純物を除去することができるブラシ状のデバイス(15)、または他の固体、液体、および気体の手段である、請求項1に記載の自動システム。
【請求項3】
前記検査装置(10)は、カメラ、レーザースキャナー、顕微鏡、または類似の装置、またはこのような装置の任意の組み合わせである、請求項1または2に記載の自動システム。
【請求項4】
前記ピックアップされた工具ホルダー(3)を安定して保持するための前記支持体(12)が回転テーブル(12)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項5】
前記ロボット(14)は、摩耗検査の対象となる前記切削工具インサート(6,8)を収容する前記工具ホルダー(3)の周りで前記検査装置(10)を移動することができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項6】
前記工具ホルダー(3)の前記工具本体(4)に収容された摩耗検査の対象となる前記切削工具インサート(6)は、摩耗状態が互いに独立して検出される複数の切削面(5)が設けられた個別の切削工具インサート(6)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項7】
前記工具ホルダー(3)に収容された摩耗検査の対象となる前記切削工具インサート(8)は、前記工具ホルダー(3)に固定された一体型切削工具インサート(8)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項8】
摩耗したものと交換された新しい一体型切削工具インサート(8)を正しく利用するためのオフセットを計算する手段をさらに備える、請求項7に記載の自動システム。
【請求項9】
任意の交換された摩耗した切削工具インサート(6,8)を収集するための収集手段をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項10】
摩耗が検出された切削工具インサート(6,8)と交換するために使用されるまだ使用されていない予備の切削工具インサート(6,8)を収容する切削工具インサートコンテナをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項11】
前記事前に確立された工具摩耗状態データのセットは、少なくとも1つの前記摩耗した切削工具インサート(6,8)が新しいものに交換されるたびに更新可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項12】
前記切削工具インサートの摩耗評価、工具耐用年数統計、および/または最適な工具交換戦略の示唆に関連するデータを示すことができるグラフィカルユーザーインターフェースをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の自動システム。
【請求項13】
工作機械の工具ホルダー(3)の工具本体(4)に収容された少なくとも切削工具インサート(6,8)の摩耗状態を自動的に検査する方法であって、摩耗検査される各切削工具インサート(6,8)に対して、前記方法は、
a)工作機械マガジンから、または前記工具ホルダー(3)を安全に取り扱うよう適合された限られたスペースから、検査される前記切削工具インサート(6,8)を収容する前記工具ホルダー(3)をピックアップする、または受容し、および前記切削工具インサート(6,8)の摩耗検査の間前記工具ホルダー(3)を安定して保持するための分離された支持体(12)に移す段階と、
b)前記切削工具インサート(6,8)を収容する対応する工具ホルダー(3)に保持された前記切削工具インサート(6,8)を洗浄する段階と、
c)前記切削工具インサート(6,8)の摩耗状態データを検出する段階と、
d)検査された切削工具インサート(6,8)の前記摩耗状態データをデータ管理プラットフォームに収集する段階と、
e)摩耗状態を確立するために、検出された切削工具インサート(6,8)の摩耗状態データを事前に確立された切削工具インサート(6,8)の摩耗状態データセットと比較する段階と、
f)a)前記摩耗検査によって完全に摩耗していると検出された一体型切削工具インサート(8)を前記工具ホルダー(3)から最終的に取り外し、摩耗していないものと交換する段階、またはb)少なくとも1つの摩耗していない切削面(5)を有する個別の切削工具インサート(6)を前記工具ホルダー(3)から最終的に取り外し、前記個別の切削工具インサート(6)の前記摩耗していない切削面(5)が有効な動作位置に再配置されるように前記工具ホルダー(3)の前記工具本体(4)に最終的に再配置する段階と、
を備える、方法。
【請求項14】
前記摩耗検査が開始される前に前記切削工具インサート(6,8)を収容する前記工具ホルダー(3)を識別する段階をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記個別の切削工具インサート(6)が複数の切削面(5)を備える場合、段階c)は、前記複数の切削面(5)のそれぞれの摩耗状態を検出することに関連する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
一体型切削工具インサート(8)から構成される前記切削工具インサートが摩耗検査を受けた結果摩耗していた場合、前記一体型切削工具インサート(8)全体は廃棄され、新しいものと交換される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
機械加工プロセスの知識を拡張し、さらなる最適化を提供するために、前記切削工具インサート(6,8)の前記摩耗検査の間に収集されたデータを統計的に分析する段階をさらに備える、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記切削工具インサート(6,8)の有効工具寿命の推定を改善/適応するための提案を提供するためにERPまたはプロセス監視システムなどの他の企業システムと連携する段階をさらに備える、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記工作機械における切削プロセスの安定性を監視する段階をさらに備える、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記工具ホルダー(3)が工作機械スピンドルにクランプされたままの状態で工具摩耗検査および工具インサートの交換が行われる、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の切削工具の摩耗状態を検出するための自動システムおよびその方法に関する。特に、本発明は、金属切削工作機械の破損および/または摩耗した切削工具を自動的に分析し、最終的に交換するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての機械加工プロセス中に、工具とワークピースの相互作用により、工具は摩耗し、破損する前に、または一般に、その状態がワークピースの品質などの機械加工プロセスの結果に悪影響を与える前に交換する必要がある。この摩耗メカニズムの速度は多くの要因に依存し、大きな変動を示す。従来の数値制御工作機械では、工作機械マガジン内の工具交換のための不必要な停止を回避するために、機械加工プロセスが設計されている。
【0003】
数値制御プログラマは、プロセスの持続時間よりも長い寿命を有する工具を使用するために、ワークピースの材料と目的のプロセス(つまり、ドリリング、ボーリング、ミリング)に適した工具を正確に選択する。このように、工具は、機械加工プロセス中に幾何学的および機械的特性を維持するため、切削中の性能は一貫している。この手順を適用すると、工具マガジンの工具を機械加工プロセス中に交換する必要はなく、プロセスが終了したときにのみ交換する必要がある。加工が長すぎたり、被削材の切削が困難な場合は、加工時間よりも長い寿命を有する工具を見つけることができない場合がある。このような場合、継続的なプロセスを保証するために、1つまたは複数の姉妹工具が使用される。姉妹工具は、ここでは元の工具と同じ工具として意図されている。これらの姉妹工具は工具マガジンに保管され、機械加工プロセス中に元の工具が摩耗すると、工具マガジンから工作機械によってピックアップされ、プロセスを継続するために元の工具を交換するために使用される。
【0004】
通常、元の工具の状態は、機械加工プロセス中にチェックされない。実際、工具の寿命は、工具メーカーから提供された情報のみに基づいて推定され、機械加工プロセスの設計段階で検証される。
【0005】
このような設計段階では、多くの場合繰り返し、数値制御プログラマーがコンピューター支援製造(CAM)ソフトウェアを使用してプロセスをシミュレートし、工具のパフォーマンスとプロセス後のワークピースの品質を検証する。一連のテストを通じて、プログラマーは、プロセス条件で工具の実際の寿命をチェックし、工具がいつ摩耗するかを制御する。CAMから取得した情報、一般的な経験、および行われたテストに基づいて、設計中のプロセスで使用される工具の寿命が選択され、その後変更されないという意味で凍結されたパラメータになることがある。
【0006】
工具の寿命は、変更される前にそのプロセスで工具を使用できる期間として定義される。工具の寿命は、重要なパラメータである。これは、プロセス費用を最小限に抑えるために工具を早期に廃棄しないように工具を十分に使用すると同時に、工具の摩耗と破損に関連する様々な問題が発生するため使用しすぎないようにする必要があるためである。これは実際には、安全上の理由から、数値制御のプログラマーによって割り当てられた寿命は、常に控えめな値であり、特定の工具から取得できる実際の寿命と比較して公称工具寿命(つまり工具メーカーによって指定された)よりも短いことを意味する。
【0007】
工具の寿命がプログラマーによって選択され、プロセスが安定すると、設計段階が終了し、生産段階が開始される。生産段階では、工具の寿命(プログラマーによって割り当てられたもの)に達すると、工具はシステマティックに交換される。
【0008】
工具交換のための当技術分野で知られているいくつかの戦略があるが、それらのすべては手動プロセスを含む。例えば(i)作業シフト中(生産中、別の工具が使用されている場合、または姉妹工具が動作している場合)、(ii)機械で使用されているすべての工具が変更されたときの事前定義された時間(工具マガジン全体が空になり、新しい工具が補充される)、(iii)作業シフトの終了時、姉妹工具の数が作業シフト全体で継続的な操作を保証するのに十分な数である場合などに交換を行うことができる。いずれの場合も、オペレーターは、摩耗した工具を機械から引き出し、新しい工具と交換する必要がある。
【0009】
今日、機械加工会社では、工具の寿命を最大化し、全体的な工具コストを削減するために、いくつかの戦略が使用されている。
【0010】
関連する先行技術の文書として、特許文献1は、動作中に工作機械を監視および制御するための数値制御に実装された方法を開示し、これには、工具の状態(工具の破損、工具の摩耗)に関する情報を含むさまざまなソースから提供される信号の評価と、専用の数値制御プログラムを介した適切な反作用の実行が含まれる。工具の状態を評価するための数値制御によってトリガーできるロボットによって動かされるカメラが潜在的な情報源として開示されている。
【0011】
特許文献2は、光学デバイスを用いて工具の実際の状態を元の状態と比較することからなる、工具の摩耗を検出するための方法を記載している。この文書には、検査対象の表面に対して垂直に配置する必要のあるカメラを含む、この方法を実行するための装置の説明が含まれ、検査は、工具を使用していない場合に実行でき、カメラは工具マガジンに配置される。この文書には、固体、液体、気体の手段を使用して検査する前に工具を洗浄する必要があり、または画像を修正するための適切な画像処理ソフトウェアフィルターが必要であることも記載されている。システムは、工作機械の数値制御に接続して、写真をプロセスで使用される工具切削パラメータと関連付け、摩耗したときに工具を交換することができる。工具の元の形状と摩耗過程に関する情報をデータベースに保存することができる。
【0012】
特許文献3は、特許文献2で提示されたものと同様の工具摩耗を監視する方法を示し、複数のカメラとフリンジ投影法による色分析と体積分析を含む、摩耗を分析するための手法の詳細を提供する。検査中、工具は工具ホルダーに固定されており、水酸化ナトリウム溶液と専用工具で洗浄できる。
【0013】
また、特許文献4は、交換可能なラウンドインサート工具タイプの切削工具を使用し、加工プログラムを読み取る制御手段、耐用年数テストデータと工具データを保存するためのデータベース、および工具のネジを緩めるための工具ネジ緩め機構と、工具インサートを回転するための回転機構と、工具ネジ緩め機構及び工具回転機構を制御するための制御装置を含む工具のラウンドインサート回転のための自動システムを備えた自動切削システムについて説明している。切削工具のインサート位置を検出し、工具の摩耗を確認するためにカメラを使用する。特許文献5は、ラウンドインサート切削工具の回転位置を正確に調整するためのシステムを詳細に説明し、このシステムには、工具インサートのネジを緩め、回転したらネジを戻す手段が含まれている。
【0014】
ロットが多く、機械加工条件が厳しいため、生産シフト中に切削工具が摩耗することがよくある。これは、ロットが小さい場合、つまり材料の加工が難しい場合でも発生する。このため、ほとんどの企業は定期的に摩耗した工具を交換している。工具交換プロセスは通常、完全手作業であり、交換する工具の数に比例した時間と労力を要し、工具の切削部分を取り外すために必要な分解量と密接に関係している。時間と労力は、製造コスト、特に人件費として定量化できる。これは、高いにもかかわらず、すべての機械加工会社に必要となるものである。
【0015】
このコストに加えて、企業は工具の偶発的な破損に関連する他のコストを負担する必要がある。工具費に加えて、工具の破損の結果には、部品の損傷や機械の損傷が含まれる場合がある。これはたまにしか発生しないが、非常に高く、したがって望ましくない場合がある。摩耗または破損した機械部品を交換するためのメンテナンスコストに加えて、工具の破損の結果、損傷した部品の廃棄や、工具が寿命に達する前に摩耗した場合に必要な再作業が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/299865号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102012106139号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102014104581号明細書
【特許文献4】特許第6203864号公報
【特許文献5】特開2012-006119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、工作機械内の工具の摩耗状態を自動的にチェックするための装置および方法を提供することであり、したがって、機械加工プロセスに干渉することなく、それらの寿命を延ばすことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の態様では、本発明は、請求項1に示されるものなどの工作機械の工具インサートの摩耗状態を検出するためのシステムに関する。本出願の出願人は、実際、工作機械の切削工具インサートの摩耗状態を検出するシステムによって、上記の技術的問題を効果的かつ確実に解決できることを発見した。各切削工具インサートは、工作機械マガジン内、または前記工具ホルダーを安全に取り扱うように適合された限られたスペース内の工具ホルダーのそれぞれの工具本体内に収納され、システムは、
- 摩耗検査の対象となる工具インサートを収容する前記工具ホルダーの1つを、前記工作機械マガジンまたは前記限られたスペースからピックアップすることができる操作手段と、
- 工作機械から分離された、ピックアップされた工具ホルダーを安定して保持することができる支持体と、
- ピックアップされた工具ホルダーに収容された前記切削工具インサートに関連する摩耗状態データを検出することができる検査装置と、
- 前記検査された切削工具インサートのそれぞれについて、検出された摩耗状態データを収集することができるデータ管理プラットフォームと、
- 直接、または前記検出された摩耗状態データを事前に確立された工具摩耗状態データのセットと比較することによって、前記切削工具インサートの有効摩耗状態を評価することができる制御ユニットと、
- a)摩耗検査で摩耗が検出された一体型切削工具インサートを最終的に工具ホルダーから取り外して新しいものと交換するための手段、またはb)摩耗検査で少なくとも1つの摩耗していない切削面を有すると検出された一体型切削工具インサートを最終的に工具ホルダーから取り外して、個別の切削工具インサートの摩耗していない切削面が有効な動作位置に再配置されるように最終的に工具ホルダーの工具本体に再配置するための手段と、
を備える。このように、工具が摩耗検査を受けているときに機械加工プロセスを中断することなく、システムは機械加工会社の全体的な製造コストを削減することができる。したがって、実際の寿命の終わりまでの切削工具インサートの使用が最大化される。
【0019】
本発明の一実施形態では、摩耗検査される切削工具インサートを収容する工具ホルダーは、いくつかの他の工具ホルダーと共に工作機械マガジンに配置される。この実施形態では、操作手段は、工作機械マガジンから工具ホルダーをピックアップして、対応する切削工具インサートを摩耗検査にかけることができる。
【0020】
本発明の別の実施形態では、摩耗検査される切削工具インサートを収容する工具ホルダーは、交換される切削工具インサート工具が、オペレーターが安全に取り扱うことができる限られたスペース内でオペレーターが利用できる追加の領域に配置される。この実施形態では、操作手段は、上記のように工作機械マガジンからではなく、限られたスペースから工具ホルダーをピックアップすることができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、検査装置は、カメラ、レーザースキャナー、顕微鏡、または同様の装置、あるいはそのような装置の任意の組み合わせであり得る。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、切削工具インサートの摩耗状態データは、切削工具インサート表面の色、寸法、体積、形状、および幾何学的特性に関する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、操作手段は、工具インサートを収容する工具ホルダーを、工作機械マガジンから、または限られたスペースから摩耗検査が行われる支持体に移動することができるロボットを含む。本発明の好ましい実施形態によれば、ロボットは、必要に応じて選択された、交換可能なエンドエフェクタを最終的に支持する手首を備えている。
【0024】
このようにして、実行されるアクションに応じて、適切なエンドエフェクタをロボットの手首に固定することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、適切なエンドエフェクタは、工作機械マガジンからまたは、限られたスペースから取り外され、支持体上に配置される工具ホルダーをつかむことができる、空気圧膨張グリッパー、電気または空気圧マルチジョーグリッパーなどのグリッパーである。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、適切なエンドエフェクタは、検査を受ける切削工具インサートの表面から汚れおよび他の不純物を除去することができる、ブラシ状デバイスなどの洗浄デバイス、または他の固体、液体、および気体の手段である。
【0027】
このように、摩耗検査を開始する前に切削工具インサートを洗浄することで、切削工具インサートの表面に存在する不要な不純物が除去され、摩耗検査プロセスのパフォーマンスに悪影響を与えることがなくなる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、ピックアップされた工具ホルダーを安定して保持するための支持体は、回転テーブルである。このように、回転テーブルを回転させることにより、回転テーブルに固定され切削工具インサートを収容する工具ホルダーを検査装置の前で回転して切削工具インサートの摩耗検査を行うことができる。あるいは、本発明の別の実施形態によれば、ロボットは、摩耗検査を受ける切削工具インサートを収容する工具ホルダーの周りの検査装置の動き(回転など)を決定することができる。このように、工具ホルダーが工作機械のスピンドルに固定されたまま、工具ホルダーの周りの検査装置のこのような動きが実行される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、ロボットは、検査装置および回転テーブルに接続されている。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、ロボットは、カメラによってその動きが案内され、回転エンコーダまたは同様のシステムを備えた回転テーブルを使用して、例えば、カメラおよび/または工具のCADモデルによって取得された情報に基づいて計算された繰り返し可能な予め定義された位置に工具ホルダーを配向する。
【0031】
本発明の第1の実施形態によれば、摩耗検査の対象となる切削工具インサートは、複数の切削面を備えた個別の切削工具インサートである。
【0032】
このようにして、検査装置は、互いに独立して、切削工具インサートの切削面のそれぞれの摩耗状態を検出することができる。
【0033】
第1の実施形態の好ましい態様によれば、本発明のシステムは、切削工具インサートを工具ホルダーから取り外し、摩耗検査で摩耗していないと検出された切削工具インサートの切削面が有効な作動位置に配置されるように、切削工具インサートの切削面の新しい配向を有する構成でそれを収容する工具本体に再配置するための手段をさらに含む。
【0034】
本発明の第2の実施形態によれば、工具ホルダーに収容された摩耗検査の対象となる切削工具インサートは、工具ホルダーに固定された一体型切削工具インサートである。このように、摩耗した一体型切削工具インサートの切削部分を交換するには、一体型切削工具インサート全体を交換する必要があり、これは、工具の寸法、つまり全長と直径に影響を与える可能性がある。
【0035】
第2の実施形態の好ましい態様によれば、本発明のシステムは、摩耗したものと交換される新しい一体型切削工具インサートを正しく利用するためのオフセットを計算するための手段をさらに含む。
【0036】
このようにして、交換された摩耗したものに対する摩耗していない一体型切削工具インサートの寸法の変化を補償することができる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、システムは、交換された摩耗した切削工具インサートを収集するための収集手段をさらに含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、システムは、摩耗が検出された切削工具インサートを交換するために使用される、まだ使用されていない予備の切削工具インサートを収容する切削工具インサートコンテナをさらに含む。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、事前に確立された工具摩耗状態データのセットは、摩耗した切削工具インサートの少なくとも1つが新しいものと交換されるたびに更新することができる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によれば、システムは、切削工具の摩耗評価、工具の耐用年数統計、および/または最適な工具交換戦略の示唆に関連するデータを示すことができるグラフィカルユーザーインターフェースをさらに含む。
【0041】
第2の態様では、本発明は、請求項13に示されるような工作機械の工具インサートの摩耗状態を検出するためのシステムに関する。
【0042】
本出願の出願人は、実際、上記の技術的問題は、少なくとも工作機械の工具ホルダーの工具本体に収容された切削工具インサートの摩耗状態を自動的に検査する方法によって効果的かつ確実に解決できることを見出した。本発明の第1の態様を参照して上記のようなシステムを利用する方法である。
【0043】
特に、摩耗検査される各切削工具インサートについて、この方法は以下の段階を含む:
a)機械工具マガジンから、または工具ホルダーを安全に取り扱うように適合された限られたスペースから、検査対象の切削工具インサートを収容する工具ホルダーをピックアップまたは受け取り、切削工具インサートの摩耗検査中に工具ホルダーを安定して保持するための取り外した支持体に移すステップ、
b)収容する対応する工具ホルダーの切削工具インサートを洗浄するステップ、
c)切削工具インサートの摩耗状態データを検出するステップ、
d)検査された切削工具インサートの摩耗状態データデータを管理プラットフォームで収集するステップ、
e)摩耗状態を確立するために、検出された切削工具インサート摩耗状態データを、事前に確立された切削工具インサート摩耗状態データのセットと比較するステップ、
f)a)摩耗検査で完全に摩耗していると検出された一体型切削工具インサートを最終的に工具ホルダーから取り外し、新しいものと交換するステップ、またはb)少なくとも1つの摩耗していない切削面を有する個別の切削工具インサートを最終的に工具ホルダーから取外し、個別の切削工具インサートの摩耗していない切削面が有効な動作位置に再配置されるように、工具ホルダーの工具本体に最終的に再配置するステップ。
【0044】
本発明の方法は、切削工具インサートを検査するための少なくとも1つの装置、および検査および切削工具インサート操作を実施するために規定された領域に配置することができる切削工具インサートを操作するための少なくとも1つの装置によって適用することができる。このような領域は、作業領域に近接した、検査及び操作プロセスを損なうことができる任意の汚染物質(すなわち切粉およびクーラント)から保護される定義された領域における、工作機械の内部にすることができる。
【0045】
本発明の方法は、切削工具インサートの交換作業中の監視の必要性を排除し、したがって、機械加工会社の全体的な製造コストを最小化する。
【0046】
さらに、工作機械が別のプロセスを実行している間に、すべての交換操作をオフラインで実行するために、本発明の方法を実施することができる。これにより、切削工具インサートの交換プロセスが機械加工プロセスに与える影響が最小限に抑えられ、機械加工時間が長くなり、機械加工会社の利益が向上する。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、方法は、工具ホルダーがピックアップされて摩耗検査が開始される前に、切削工具インサートを収容する工具ホルダーを識別する段階をさらに含む。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、工具ホルダーを識別する段階は、自動システムが作業領域の近く、工作機械の近く、または工具マガジン内に設置されるときはいつでも、数値制御とのインターフェース接続を含む。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によれば、数値制御は、切削工具インサートの数、工具マガジン内の位置などを含むいくつかの情報をシステムに伝達する。
【0050】
このようにして、検査と交換のサイクルは、マシンで実行されるプロセスのタイムスケジュールと同期される。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、検査される切削工具インサートを収容する工具ホルダーは、摩耗検査中に工具インサートを安定して保持するためのテーブルに移される。テーブルは回転テーブルであることが好ましい。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、回転テーブルは、角度位置決めの精度および再現性を確保するためのエンコーダ、照明システム、工具マガジン、および検査/交換プロセスを実行するのに有用な他の任意の工具を備えている。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、摩耗検査が開始される前に、摩耗検査を受ける切削工具インサートが識別される。
【0054】
本発明の好ましい実施形態によれば、工具ホルダーは、工作機械の数値制御から工具番号情報を検索することによって、またはバーコード、シリアル番号、または他の工具の識別コードまたは記号を直接スキャンすることによって識別される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態によれば、工具ホルダー内の切削工具インサートの有効位置は、カメラ、レーザースキャナー、顕微鏡、または同様の装置などの検査装置、またはそのようなデバイスの組み合わせによってチェックされる。
【0056】
このようにして、カメラによって取得された画像により、すべての測定値を較正するために、それぞれのホルダー内の切削工具インサートの有効位置を確認することができる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態によれば、工具ホルダー内の切削工具インサートの有効位置に関する情報は、検出された摩耗状態データを事前に確立された工具摩耗状態のデータセットと比較することができる制御ユニットに伝達される。このようにして、回転テーブルの角度位置を調整して、起こりうる偏差を補正することができる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、識別された後、摩耗検査の開始前に、摩耗検査を受ける切削工具インサートは、切削工具インサートの表面から汚れおよび他の不純物を除去するために洗浄される。この洗浄作用を実行するために、ブラシやその他の固体、液体、気体の手段など、いくつかの手段を使用することができる。
【0059】
本発明の好ましい実施形態によれば、切削工具インサートが完全にきれいになったら、その状態を評価するために検査し、交換を行う必要があるかどうかを判断することができる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、検査段階は、切削工具インサートの累積加工時間を、各工具についてエンドユーザーによって定義された、またはその工具のデータ管理プラットフォーム上で利用可能な工具寿命と比較する段階をさらに含む。工具寿命は、ここでは、例えば製造業者インサートによって提供されるもの、プロセスで使用される切削パラメータに連結された適切な数式(すなわちテイラーなど)によって得られるものなど、事前に定義された固定値として意図される。
【0061】
寿命にすでに達している場合、または寿命が工作機械での切削工具インサートの次の相互作用の間である場合は、工具インサートを交換する必要がある。それ以外の場合は、切削工具インサートを再度使用することができる。
【0062】
本発明の好ましい実施形態によれば、評価は、切削工具インサートの参照情報を、検査装置を介して取得された現在のものと比較することによってさらに達成される。切削工具インサートの参照情報は、切削工具インサートが新品の場合、システムを初めて使用する前、または切削工具インサートを最初に使用する前に取得したものである。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、切削工具インサートの摩耗のレベルは、参照画像と現在の画像との間の差異を二次元的に分析することによって、または元の切削工具インサート表面に追加の(または減少した)体積が存在するかどうかを特定するのに役立つ体積分析を実行することによって検出される。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、摩耗検査中に画像または画像から抽出された特徴は、切削工具インサート摩耗検査プロセスを追跡するためのデータ管理プラットフォームに保存される。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、対応するホルダーハウジングから切削工具インサートを取り外す段階は、対応するホルダーから切削工具インサートを緩めることによって達成される。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によれば、ネジは、電気または空気圧ドライバーによって緩めることができる。ネジのサイズは、カメラで撮影した画像、またはデータ管理プラットフォームに保存されている切削工具インサート情報から取得した画像に基づいて計算され、ネジを緩める操作を実行するために適切なドライバーまたはドライバービットが選択される。ドライバーの向きと位置は、カメラから収集した情報を使用して計算できる。この情報は、データ管理プラットフォームに保存され、切削工具インサートの参照情報が取得された場合に、切削工具インサートの交換時間を短縮するために次の検査で自動的に使用される。本発明の方法の第1の実施形態によれば、個別の切削工具インサートが複数の切削面を含む場合、段階c)は、切削工具インサートの複数の切削面のそれぞれの摩耗状態を互いに独立して検出することに関する。
【0067】
検査対象の個別の切削工具インサートの複数の切削面の少なくとも1つが摩耗していない場合、段階e)は、摩耗検査またはデータ管理プラットフォームによって摩耗していないと検出された個別の切削工具インサートの切削面が、インサートホルダー内の有効な動作位置に配置されるように、個別の切削工具インサートの切削面を再配向することからなる。
【0068】
このようにして、機械工具でアクティブであった個別の切削工具インサートの切削面が摩耗し、同じ個別の切削工具インサートの少なくとも別の切削面が摩耗していないことが検査によって検出された後、個別の切削工具インサートは、最初に工具インサートホルダーから取り外され、摩耗していない切削面によって個別の切削工具インサートが機械工具で再び適切に機能するように、再配置される。個別の切削工具インサートは、工具ホルダーの元のスロットに再配置され、ねじ込まれる必要がある。個別の切削工具インサートが基準位置で工具ホルダーに寄りかかっており、個別の切削工具インサートと工具ホルダーの穴が同心になったら、個別の切削工具インサートをネジとドライバーを使用して固定する。
【0069】
このプロセスは、工具インサートホルダーに収容されているすべての個別の切削工具インサートに対して繰り返すことができる。すべての検査と交換のサイクルが完了すると、次の機械加工プロセスで使用できる新しい切削面を用意するために、工具ホルダー上のすべての個別の切削工具インサートが配置される。逆に、検査対象の個別の切削工具インサートの複数の切削面がすべて摩耗した場合、摩耗した個別の切削工具インサートは廃棄され、新しいものと交換される。
【0070】
本発明の方法の第2の実施形態によれば、切削工具インサートが、摩耗検査を受けた後に摩耗する結果となる一体型切削工具インサートからなる場合、一体型切削工具インサート全体が廃棄され、新しいものと交換される。
【0071】
このように、摩耗した一体型切削工具インサートを新しいものと交換すると、工具ホルダーの一体型切削工具インサートの寸法が変わる可能性がある。この場合、本発明の好ましい実施形態によれば、この方法は、摩耗した一体型切削工具インサートの交換中にオフセットを測定および計算するための段階も含む。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の第1の実施形態で上記に開示された複数の切削面を有する個別の切削工具インサートからなる廃棄された摩耗した切削工具インサートの場合でも、または本発明の第2の実施形態で上記に開示された一体型切削工具インサートである場合でも、廃棄された摩耗した切削工具インサートは、廃棄または再コーティングの目的で、工具ビンなどの適切な切削工具インサート収集手段に収集される。
【0073】
本発明の好ましい実施形態によれば、摩耗した廃棄切削工具インサートを交換するために使用される新しい切削工具インサートは、工作機械で使用される同じタイプの切削工具インサートの新しい予備の切削工具インサートを収容する容器から適切な把持装置によって取り出される。本発明の好ましい実施形態によれば、適切な把持装置は、空気圧膨張グリッパー、内径用の電気または空気圧マルチジョーグリッパーなどである。
【0074】
本発明の好ましい実施形態によれば、すべての工具切削工具インサートを再び使用する準備ができたら、プロセスで検索されたすべての必要な情報がデータ管理プラットフォームに格納される。
【0075】
本発明の好ましい実施形態によれば、検査/交換プロセスが終了すると、信号が工作機械の数値制御またはオペレーターに送信される。
【0076】
このようにして、次の機械加工操作のための工具インサートの可用性が確認される。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によれば、評価の結果は、データ管理プラットフォームに保存され、さらなる分析のために保持される。本発明の好ましい実施形態によれば、特定の機械加工プロセスにおける切削工具インサートの摩耗プロセスに関する十分な量のデータが利用可能になると、システムは、機械加工プロセスの知識を拡張するために統計分析を実行し、コストと処理時間を最小限に抑え、操作の安全性やユーザーが定義したその他の主要なパフォーマンス指標を向上させるために、切削工具インサートの使用と交換を最適化する方法に関するいくつかの提案をユーザーに提供する。
【0078】
本発明の好ましい実施形態によれば、この情報は、システムによって、マシンのグラフィカルユーザーインターフェースを介してユーザーに利用可能にされる。本発明の代替の実施形態では、同じ情報が、モバイルデバイスおよびPCの両方のために開発された専用のアプリケーションを介してリモートでも利用可能にされる。好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、切削工具インサートの有効工具寿命の推定を改善/適応させるための提案を提供するために、ERPまたはプロセス監視システムなどの他の企業システムと連携する段階をさらに含む。
【0079】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、工作機械における切削プロセスの安定性を監視する段階をさらに含む。
【0080】
本発明の好ましい実施形態によれば、この方法はまた、定期的なレポートを発行し、ユーザーに送信する。
【0081】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面の裏付けとともに、非限定的な例として示される、好ましいが排他的ではない実施形態の以下の詳細な説明を検討することによってよりよく強調されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】工具ホルダーに収容されている切削工具インサートを摩耗検査するために回転テーブル上に配置されている工具ホルダーを概略的に示す。
【
図2】インサート洗浄ブラシを有するエンドエフェクタを備えたロボットを示す。
【
図3】カメラによる摩耗検査を受けた
図2に示す切削工具インサートを示す。
【
図4】4つの切削面をそれぞれ有する3つのインサートを有する個別の切削工具インサートを示す。
【
図5】4つの切削面を有する一体型切削工具エレメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
発明の詳細な説明以下の詳細な説明は、その内容を制限することなく、
図1から
図5に示される本発明の切削工具インサート検査/交換システムおよび関連する方法の特定の実施形態に言及する。
【0084】
特に
図1から
図4を参照すると、システムの第1の実施形態は、摩耗検査中に個別の切削工具インサート6を支持するピックアップされた工具ホルダー3を安定して保持することができる回転テーブル12を備える。システムはさらに、工具ホルダー3を保持し、それを回転テーブル12上に配置するためのグリッパー11が固定された手首13を備えたロボット14を備える。カメラ10は、支持アーム16を介してロボット14に固定されている。カメラ10は、個別の切削工具インサート6の摩耗状態を検出するための検査装置として使用される。
【0085】
図2は、
図1と同じシステムを示しており、手首13は、摩耗検査を受ける前に個別の切削工具インサート6の表面から汚れおよび他の不純物を除去することができるブラシ状のエンドエフェクタ15(
図1に示されるグリッパー11ではなく)を備えている。一方、
図3は、
図1と同じシステムを示しており、カメラ10によって達成される摩耗検査を容易にするために、ロボット14の手首13からすべてのエンドエフェクタが取り外されている。
【0086】
個別の切削工具インサート6を支持する工具ホルダー3が
図4に詳細に示され、工具ホルダーは、下部隆起17を介して回転テーブル12に固定されるシャンク1と、工具ホルダー3の取り扱いに使用されるフランジ2とを含む。さらに、工具本体4は、工具ホルダー3が個別の切削工具インサート6を支持することを可能にする。
図4において、3つの個別の切削工具インサート6が示され、それらの各々は、4つの切削面5と固定ネジ7とを有する。
【0087】
動作上、個別の切削工具インサート6の摩耗検査手順は、自動システムが作業領域の近く、工作機械の近く、または工具マガジンに設置される場合はいつでも、数値制御によって開始される。数値制御は、個別の切削工具インサートID番号や工具マガジン内の位置など、いくつかの情報をシステムに伝達する。個別の切削工具インサートは、機械の数値制御から工具番号情報を取得するか、RFIDを介して直接取得するか、カメラ10で工具のクイックレスポンスコード(QR)、バーコード、またはシリアル番号をスキャンすることによって識別される。
【0088】
図1に示すように、個別の切削工具インサート6を支持する工具ホルダー3は、ロボット14の手首13に固定されたグリッパー11によって、工作機械の工具マガジン上の位置からピックアップされる。次に、工具ホルダー3は、回転テーブル12上に配置される。個別の切削工具インサート6は、工具表面から不要な材料を除去するよう洗浄する必要がある。このために、
図2に示すように、グリッパー11がロボット14の手首13から取り外され、ブラシ15に交換される。個別の切削工具インサート6が完全にきれいになったら、ブラシ15は、ロボット14の手首13から取り外され、カメラ10による摩耗検査が開始される。
【0089】
評価は、(同じ位置にある)個別の切削工具インサート6の参照情報を、検査装置を介して取得した現在の情報と比較することによって、または、摩耗を直接測定することによって行うことができる。個別の切削工具インサート6の参照情報は、新品の場合、システムを初めて使用する前、または個別の切削工具インサート6を初めて使用する前に取得したものである。個別の切削工具インサート6の摩耗の存在は、参照画像とカメラ10によって撮影された現在の画像との間の差異を分析することによって検出される。
【0090】
分析中にカメラ10によって撮影された写真または写真から抽出された特徴は、個別の切削工具インサート6の摩耗進展プロセスに関する更新された情報を追跡するためにデータ管理プラットフォームに保存される。
【0091】
個別の切削工具インサート6の累積加工時間は、エンドユーザーが定義した工具寿命、またはその個別の切削工具インサート6のデータ管理プラットフォームで利用可能な工具寿命と比較される。個別の切削工具インサート6の寿命は、ここでは事前定義された固定値として意図されている。
【0092】
寿命にすでに達しているか、数回の機械加工サイクルで達する予定の場合は、個別の切削工具インサート6を交換する必要がある。そうでなければ、個別の切削工具インサート6を再び使用することができる。
【0093】
個別の切削工具インサート6を交換する場合は、工具本体4から取り外す必要がある。この操作では、動作状態において個別の切削工具インサート6を工具インサートホルダー3に固定するネジ7を緩めるステップを含む。ドライバーは、電気または空気圧ドライバーとすることができる。ネジのサイズは、カメラ10の画像に基づいて計算されるか、またはデータ管理プラットフォームに格納された工具情報から取得され、ネジを緩める操作を実行するために適切なドライバーまたはドライバービットが選択される。ドライバーの方向と位置は、カメラ10を介して収集された情報を使用して計算できる。この情報は、データ管理プラットフォームに有利に格納され、個別の切削工具インサート6の参照情報が取得され、個別の切削工具インサート6の交換時間を短縮するために後の検査で自動的に使用される。
【0094】
次に、摩耗した個別の切削工具インサート6は、専用のグリッパー(図示せず)によってピックアップされ、交換された摩耗した個別の切削工具インサート6を収集するための適切な収集手段に配置される。摩耗した個別切削工具インサートをピックアップするために使用された同じグリッパーを使用して、複数の個別切削工具インサート6を収容する工具インサート保管庫から、廃棄される摩耗したものと同じタイプの新しい個別の切削工具インサート6がピックアップされる。システムは、追加の個別の切削工具インサート6をいつ補充するかをオペレーターに伝えるために、各工具インサート保管庫のレベルに関する情報を含むことができる。
【0095】
図4に示される本発明の特定の実施形態では、個別の切削工具インサート6は、複数の切削面5によって構成されることを意味するインデックス可能なタイプである。この場合、摩耗検査手順は、個別の切削工具インサート6のすべての切削面5をチェックするか、工具面のステータスに関するデータをデータ管理プラットフォームから取得する。すべての切削面5が摩耗すると、インデックス可能な個別の切削工具インサート6は使用できなくなり、交換する必要がある。逆に、少なくとも1つの切削面5が摩耗していない場合、自動システムは、選択された切削面5が次の機械加工操作で使用できるような構成で、個別の切削工具インサート6を再配向する。
【0096】
この検査および交換プロセスは、工具ホルダー3内のすべての個別の切削工具インサート6に対して繰り返される。
【0097】
検査/交換プロセスが終了すると、信号が機械の数値制御またはオペレーターに送信され、次の機械加工操作のための工具の可用性が確認される。
【0098】
新品または完全に摩耗していないためにすべての個別の切削工具インサート6を再び使用する準備ができたら、プロセスで検索されたすべての必要な情報はデータ管理プラットフォームに保存され、さらなる分析のために保持される。特定の機械加工プロセスにおける個別の切削工具インサート6の摩耗プロセスに関する十分な量のデータが利用可能になると、システムは、統計分析を実行し、コスト、処理時間、またはユーザーが定義したその他の主要なパフォーマンス指標を最小限に抑えるために、個別の切削工具インサート6の使用法と交換を最適化する方法に関するいくつかの提案をユーザーに提供する。この情報は、システムによってマシンのグラフィカルユーザーインターフェースを介してユーザーに提供されるが、モバイルデバイスとPCの両方用に開発された専用アプリを介してリモートでも同じ情報を提供できる。システムは、定期的なレポートを発行してユーザーに送信することもできる。
【0099】
特に
図5を参照すると、工具ホルダー3の第2の実施形態が示されている。この実施形態では、インサート工具は、一体型切削工具インサート8であり、これは、工具ホルダー3に固定され、4つの切削面9を有する単一のブロックによって実現されることを意味する。
【0100】
一体型切削工具インサート8が摩耗した場合、切削面9は、一体型切削工具インサート8全体を交換することによってのみ交換することができる。この場合、交換するたびに、基準の一体型切削工具インサート8の寸法に対して寸法が異なる可能性があるため、方法は、摩耗した一体型切削工具インサート8の交換中にオフセットを測定および計算する段階を含む。新しい一体型切削工具インサート8の寸法の測定は、工具プリセットと呼ばれ、基準値と測定値の差は、一体型切削工具インサート8が次のプロセスで使用される前に機械の数値制御に伝達される。
【0101】
当然のことながら、記載された好ましい実施形態の多くの修正および変形は、当業者には明らかであり、依然として本発明の範囲内にとどまっている。
【0102】
したがって、本発明は、非限定的な例としてのみ例示された、記載された好ましい実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0103】
1 シャンク
2 フランジ
3 工具ホルダー
4 工具本体
5 切削面
6 個別の切削工具インサート
7 固定ネジ
8 一体型切削工具インサート
9 切削面
10 カメラ
11 グリッパー
12 回転テーブル
13 手首
14 ロボット
15 エンドエフェクタ
16 支持アーム
17 下部隆起
【国際調査報告】