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特表2022-530312バイオプロセスシステムのための羽根車組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】バイオプロセスシステムのための羽根車組立体
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/02 20060101AFI20220622BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C12M1/02 A
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557216
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2020061849
(87)【国際公開番号】W WO2020221790
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/841,855
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・ユーエスエー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・バレット
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ケニー
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029CC01
4B029DB01
4B029DB02
4B029DF08
(57)【要約】
バイオプロセスシステムのための羽根車組立体は、ハブと、ハブに枢動可能に接続された少なくとも1つのブレードと、を含み、少なくとも1つのブレードは、第1の脚部と、第1の脚部からある角度で延びる第2の脚部と、を含む。少なくとも1つのブレードは、第1の脚部がハブから概ね外向きに延びる第1の位置と、第2の脚部がハブから概ね外向きに延びる第2の位置との間で回転可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオプロセスシステムのための羽根車組立体であって、
ハブと、
前記ハブに枢動可能に接続された少なくとも1つのブレードと、を含み、前記少なくとも1つのブレードは、第1の脚部と、前記第1の脚部からある角度で延びる第2の脚部と、を含み、
前記少なくとも1つのブレードは、前記第1の脚部が前記ハブから概ね外向きに延びる第1の位置と、前記第2の脚部が前記ハブから概ね外向きに延びる第2の位置との間で回転可能である、羽根車組立体。
【請求項2】
前記第1の脚部は、前記第2の脚部の高さより高い高さを有する、請求項1に記載の羽根車組立体。
【請求項3】
前記第1の脚部は、前記第2の脚部の高さの1.2~3倍、例えば前記第2の脚部の高さの1.5~2.5倍の高さを有する、請求項1または2に記載の羽根車組立体。
【請求項4】
前記少なくとも1つのブレードは、前記ハブから延びるシャフトを介して前記ハブに枢動可能に接続される、請求項1から3のいずれか一項に記載の羽根車組立体。
【請求項5】
前記シャフトは、前記ハブの上面、側面、または傾斜面と、本質的に平行である、請求項4に記載の羽根車組立体。
【請求項6】
前記シャフトは、水平なシャフトである、請求項4または5に記載の羽根車組立体。
【請求項7】
前記少なくとも1つのブレードは、リビングヒンジを介して前記ハブに枢動可能に接続される、請求項1から3のいずれか一項に記載の羽根車組立体。
【請求項8】
前記少なくとも1つのブレードは、3つのブレード、4つのブレード、5つのブレード、または6つのブレードである、請求項1から7のいずれか一項に記載の羽根車組立体。
【請求項9】
前記少なくとも1つのブレードは、前記ハブの回転方向が変更されると前記第1の位置と前記第2の位置との間で枢動するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の羽根車組立体。
【請求項10】
可撓性バイオプロセスバッグであって、請求項1から9のいずれか一項に記載の羽根車組立体を含む、可撓性バイオプロセスバッグ。
【請求項11】
前記ハブは、前記可撓性バイオプロセスバッグの壁、例えば底部壁に、任意選択的には前記壁または前記底部壁に取り付けられた羽根車プレートを介して、回転可能に取り付けられる、請求項10に記載の可撓性バイオプロセスバッグ。
【請求項12】
前記ハブと前記壁、前記底部壁または前記羽根車プレートとの間に装着されたスパージャーをさらに含む、請求項11に記載の可撓性バイオプロセスバッグ。
【請求項13】
前記羽根車プレートに装着されたスパージャーをさらに含む、請求項11に記載の可撓性バイオプロセスバッグ。
【請求項14】
前記ハブは、複数の磁石を含み、前記羽根車組立体は、外部磁気駆動部などによって、磁気的に駆動されるように構成される、請求項10から13のいずれか一項に記載の可撓性バイオプロセスバッグ。
【請求項15】
前記可撓性バイオプロセスバッグは、ガンマ線照射などによって、事前に滅菌される、請求項10から14のいずれか一項に記載の可撓性バイオプロセスバッグ。
【請求項16】
前記可撓性バイオプロセスバッグは、約10L~約2500L、例えば50~2500Lの処理容量を有する、請求項10から15のいずれか一項に記載の可撓性バイオプロセスバッグ。
【請求項17】
バイオリアクターであって、剛性支持容器内に装着され且つ前記剛性支持容器によって支持された、請求項10から16のいずれか一項に記載の可撓性バイオプロセスバッグを含む、バイオリアクター。
【請求項18】
前記剛性支持容器は、前記羽根車組立体を駆動するように構成された磁気駆動部を含む、請求項17に記載のバイオリアクター。
【請求項19】
請求項1から9のいずれか一項に記載の羽根車組立体を動作させる方法であって、前記羽根車組立体の回転方向は、動作パラメータが所定の値に到達したら、変更される、方法。
【請求項20】
前記動作パラメータは、前記羽根車組立体が装着された容器または可撓性バイオプロセスバッグ内の液体の容量である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記動作パラメータは、前記羽根車組立体が装着された容器または可撓性バイオプロセスバッグ内の液体の粘度である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記動作パラメータは、細胞培養パラメータ、例えば、前記羽根車組立体が装着された容器、可撓性バイオプロセスバッグ、またはバイオリアクター内での細胞培養の細胞密度または生存細胞密度である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
バイオプロセスシステムのための羽根車組立体であって、
ハブと、
前記ハブに動作的に接続され、前記ハブから概ね外向きに延びる少なくとも1つのブレードと、を含み、
前記羽根車組立体は、約39.9mm~約44.1mmの高さを有し、
前記バイオプロセスシステムは、約50L~約2500Lの処理容量を有する、羽根車組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、バイオプロセスシステムおよび方法に関し、さらに具体的には、バイオプロセスシステムのための羽根車組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな容器、デバイス、構成要素、およびユニット動作が、生化学的および/もしくは生物学的プロセスを実行し、かつ/またはそのようなプロセスの液体および他の生成物を処理することで知られている。バイオ製剤製造プロセスで使用される容器を滅菌するのに関連する時間、費用、および問題点を回避するために、単回使用または使い捨てのバイオリアクターバッグおよび単回使用のミキサーバッグが、そのような容器として使用される。例えば、例として、哺乳動物、植物、または昆虫の細胞を含む生体物質(例えば、動物および植物の細胞)、ならびに微生物培養物が、使い捨てまたは単回使用のミキサーおよびバイオリアクターを使用して、処理され得る。
【0003】
バイオ製剤業界では、単回使用または使い捨てのコンテナが、ますます使用されている。そのようなコンテナは、ステンレス鋼シェルまたは容器などの外側剛性構造体によって支持された、可撓性または折り畳み可能なプラスチックバッグとすることができる。滅菌された使い捨てのバッグの使用により、容器をクリーニングする、時間のかかるステップが排除され、汚染の可能性が減少する。バッグは、剛性容器内部に位置付けられ、混合のための所望の流体で満たされ得る。処理されている流体に応じて、システムは、モニタリング、分析、サンプリング、および流体移動のためにバッグと連結された、いくつかの流体ラインならびに種々のセンサ、プローブ、およびポートを含み得る。例えば、複数のポートが、典型的にはバッグの前部に位置し、容器の側壁内の開口部を通じてアクセス可能とすることができ、これらは、センサ、プローブおよび/または流体サンプリングラインのための接続点を提供する。さらに、ハーベストポートまたはドレン管路付属品が、典型的には、使い捨てのバッグの底部に位置しており、容器の底部内の開口部を通じて挿入されるように構成され、バイオプロセスが完了した後でハーベストラインがバッグのハーベストおよび排水のためにバッグに接続されることを可能にする。
【0004】
典型的には、バッグ内部に配された攪拌器組立体が、流体を混合するのに使用される。既存の攪拌器は、上部駆動型(バッグ内へと下方に延びるシャフトを有するもので、シャフトには1つもしくは複数の羽根車が装着される)または底部駆動型(バッグおよび/もしくは容器の外側に位置付けられた磁気駆動システムもしくはモーターによって駆動される、バッグの底部に配された羽根車を有する)のいずれかである。大部分の磁気攪拌器システムは、バッグの外側にある回転磁気駆動ヘッドと、バッグ内部にある回転磁気攪拌器(この文脈では「羽根車」とも呼ばれる)と、を含む。磁気駆動ヘッドの動きにより、トルク伝達が可能になり、よって、磁気攪拌器の回転が可能になり、攪拌器が容器内部の流体を混合することができる。バッグおよび/またはバイオリアクター容器の外部の駆動システムまたはモーターに対する、バッグの内側の攪拌器の磁気結合は、汚染問題を排除し、完全に封入されたシステムを可能にし、漏れを防ぐことができる。駆動シャフトをバイオリアクター容器の壁に貫通させて攪拌器を機械的に回転させる必要がないので、磁気的に結合されたシステムは、駆動シャフトと容器との間にシールを有する必要性を排除することもできる。
【0005】
既存の単回使用の可撓性バイオプロセスバッグおよび関連する支持容器は、例えば50L~2500Lの範囲の、さまざまなサイズで利用可能である。これらの容量は、バイオプロセスシステムのおおよその最大動作容量を示す。そのようなシステムはまた、最大動作容量未満で、典型的には羽根車の高さの関数である最小動作容量まで、動作可能である。例えば、50Lのミキサーシステムは、約17Lまで動作可能とすることができ、2500Lのミキサーシステムは、約520Lまで動作可能とすることができる。ある状況では、ユーザーは、システムの規定された最小動作容量未満の容量を処理することを望む場合がある。しかしながら、既存のバイオプロセスシステムは、規定された最小動作容量未満では効果的な使用ができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を考慮して、現在の規定された最小動作容量未満の容量でのシステムの動作を容易にする、バイオプロセスシステムのための羽根車組立体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、バイオプロセスシステムのための羽根車組立体は、ハブと、ハブに枢動可能に接続された少なくとも1つのブレードと、を含み、少なくとも1つのブレードは、第1の脚部と、第1の脚部からある角度で延びる第2の脚部と、を含む。少なくとも1つのブレードは、第1の脚部がハブから概ね外向きに延びる第1の位置と、第2の脚部がハブから概ね外向きに延びる第2の位置との間で回転可能である。
【0008】
一実施形態では、バイオプロセスシステムのための羽根車組立体は、ハブと、ハブに動作的に接続され、ハブから概ね外向きに延びる少なくとも1つのブレードと、を含み、羽根車組立体は、約39.9mm~約44.1mmの高さを有し、バイオプロセスシステムは、約50L~約2500Lの処理容量を有する。
【0009】
第2の態様では、本発明は、前述したような羽根車組立体を含む可撓性バイオプロセスバッグを開示する。バイオプロセスバッグは、単回使用のバイオリアクターとして使用され得、高い動作容量および低い動作容量の両方で動作され得るという利点を有する。
【0010】
第3の態様では、本発明は、剛性支持容器内に装着され、これによって支持された、前述した可撓性バイオプロセスバッグを含む、バイオリアクターを開示する。
【0011】
第4の態様では、本発明は、前述したような羽根車組立体を動作させる方法を開示し、羽根車組立体の回転方向は、動作パラメータが所定の値に到達したら、変更される。
【0012】
本発明は、添付図面を参照して、非限定的な実施形態に関する以下の説明を読むことによって、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のある実施形態によるバイオリアクターシステムの正面図である。
図2図1のバイオリアクターシステムの簡略化した側面断面図である。
図3】本発明の別の実施形態による羽根車組立体の斜視図である。
図4】第1の動作モードを示す、図5の羽根車組立体の概略図である。
図5】第2の動作モードを示す、図5の羽根車組立体の概略図である。
図6a】付随的な脚部(depending leg portion)を有するブレードを備えた羽根車組立体の概略図であり、ブレードの側面図であり、反時計回りに回転している。
図6b】付随的な脚部を有するブレードを備えた羽根車組立体の概略図であり、ブレードの側面図であり、時計回りに回転している。
図6c】付随的な脚部を有するブレードを備えた羽根車組立体の概略図であり、ブレードの正面図であり、反時計回りに回転している。
図6d】付随的な脚部を有するブレードを備えた羽根車組立体の概略図であり、ブレードの正面図であり、時計回りに回転している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の例示的な実施形態を以下で詳細に参照し、その実施例は添付図面に例示されている。可能な限り、図面全体にわたって使用される同じ参照文字は、同じかまたは同様の部分を指す。
【0015】
本明細書で使用されるような用語「可撓性」または「折り畳み可能」は、柔軟であるか、または破損せずに曲げることができる、構造体または材料を指し、圧縮可能または拡張可能である材料も指すことができる。可撓性構造体の例は、ポリエチレンフィルムで形成されたバッグである。用語「剛性」および「半剛性」は、「折り畳み不可能」である構造体、すなわち、垂直力を受けて、折り曲げられたり、折り畳まれたり、別様に変形したりして細長い寸法を実質的に低減しない、構造体を説明するために互換的に本明細書で使用される。文脈に応じて、「半剛性」は、曲げることができるチューブまたは導管など、「剛性」要素よりも可撓性である構造体であるが、依然として通常条件下でおよび垂直力を受けて長手方向に折り畳まれないもの、を指すこともできる。
【0016】
本明細書で使用されるような用語「容器」は、場合によっては、可撓性バッグ、可撓性コンテナ、半剛性コンテナ、剛性コンテナ、または可撓性もしくは半剛性チューブを意味する。本明細書で使用されるような用語「容器」は、可撓性または半剛性である壁または壁の一部を有するバイオリアクター容器、単回使用の可撓性バッグ、ならびに、例えば、細胞培養/精製システム、混合システム、媒体/緩衝剤調製システム、および濾過/精製システム、例えば、クロマトグラフィーおよび接線流フィルターシステム、およびそれらの関連する流路を含む、生物学的または生化学的処理に一般的に使用される他のコンテナまたは導管を包含することが意図されている。本明細書で使用されるような用語「バッグ」は、例えば、内部の内容物のためのバイオリアクターまたはミキサーとして使用される、可撓性または半剛性コンテナまたは容器を意味する。
【0017】
本発明の実施形態は、バイオリアクターまたはバイオプロセスシステム、およびバイオリアクターまたはバイオプロセスシステムのための羽根車組立体を提供する。ある実施形態では、バイオプロセスシステムのための羽根車組立体は、ハブと、ハブに枢動可能に接続された少なくとも1つのブレードと、を含み、少なくとも1つのブレードは、第1の脚部と、第1の脚部からある角度で延びる第2の脚部と、を含む。少なくとも1つのブレードは、第1の脚部がハブから概ね外向きに延びる第1の位置と、第2の脚部がハブから概ね外向きに延びる第2の位置との間で回転可能である。
【0018】
図1を参照すると、本発明のある実施形態によるバイオリアクターシステム10が例示されている。バイオリアクターシステム10は、複数の脚16を有する基部14の上に装着された、概ね剛性のバイオリアクター容器または支持構造体12を含む。容器12は、例えば、ステンレス鋼、ポリマー、複合物、ガラス、または他の金属から形成され得、円筒形の形状とすることができるが、本発明の広範な態様から逸脱することなく、他の形状も利用され得る。容器12は、容器12内部に配された単回使用の可撓性バッグ20に支持を提供するリフト組立体18を装備することができる。容器12は、単回使用の可撓性バイオリアクターバッグ20を支持することができる限り、任意の形状またはサイズとすることができる。例えば、本発明の一実施形態によると、容器12は、10~2000Lの可撓性または折り畳み可能なバイオプロセスバッグ組立体20を受容し、支持することができる。
【0019】
容器12は、可撓性バッグ20内部の流体レベルを見ることを可能にする、1つまたは複数ののぞき窓22、ならびに、容器12の下方領域に位置付けられた窓24を含み得る。窓24により、さまざまなセンサおよびプローブ(不図示)を可撓性バッグ20内部に挿入し位置付けるため、および、可撓性バッグ20に加えられるかまたは可撓性バッグ20から抜き取られる流体、ガスなどのため1つまたは複数の流体ラインを可撓性バッグ20に接続するために、容器12の内部にアクセスすることが可能となる。重要なプロセスパラメータを監視および制御するためのセンサ/プローブおよび制御装置は、例えば、温度、圧力、pH、溶解酸素(DO)、溶解二酸化炭素(pCO2)、混合速度、およびガス流量のうちの任意の1つまたは複数、およびそれらの組み合わせを含む。
【0020】
特に図2を参照すると、バイオリアクターシステム10の概略的な側面切取図が例示されている。この図に示すように、単回使用の可撓性バッグ20が、容器12内部に配され、これによって拘束される。実施形態では、単回使用の可撓性バッグ20は、適切な可撓性材料、例えば、ホモポリマーまたはコポリマーで形成される。可撓性材料は、USPクラスVI認証を受けたもの、例えば、シリコーン、ポリカーボネート、ポリエチレン、およびポリプロピレンとすることができる。可撓性材料の非限定的な例は、ポリマー、例えば、ポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ二塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ナイロン、シリコーンゴム、他の合成ゴムおよび/またはプラスチックを含む。ある実施形態では、可撓性材料は、例えば、GE Healthcare Life Sciencesから入手可能な、Fortem(商標)、Bioclear(商標)10およびBioclear 11積層物など、いくつかの異なる材料の積層物とすることができる。可撓性コンテナの一部は、実質的に剛性の材料、例えば、剛性ポリマー、例えば高密度ポリエチレン、金属、またはガラスを含み得る。可撓性バッグは、ガンマ線照射を使用するなど、事前に滅菌して供給され得る。バッグは、例えば、約10L~約2500L、例えば50~2500Lの処理容量を有し得る。
【0021】
可撓性バッグ20は、バッグの内側の底部中央に、好適には1つまたは複数の永久磁石を含む、磁気ハブ30に取り付けられた羽根車28を収容し、これは、やはりバッグ20の内側底部に位置付けられた羽根車プレート32上で回転する。羽根車28およびハブ30(および、いくつかの実施形態では羽根車プレート32)は、一緒になって羽根車組立体を形成する。容器12の外部にある磁気駆動部34は、可撓性バッグ20の内容物を混合するために磁気ハブ30および羽根車28を回転させるための原動力を提供する。図2は、磁気的に駆動された羽根車の使用を例示しているが、上部駆動型羽根車を含む、他のタイプの羽根車および駆動システムも可能である。スパージャー(不図示)が、好適には、羽根車プレートに統合されるか、または羽根車プレート(もしくはバッグの底部壁)と羽根車との間の別個のユニットとして、羽根車の下に位置し得る。次に、スパージャーからの気泡は、羽根車によって分散されて、バイオリアクター内で細胞培養の効率的な通気を達成する。
【0022】
次に図3を参照すると、本発明の別の実施形態による羽根車組立体200が示されている。羽根車組立体200は、ハブ210と、ハブ210に接続された少なくとも1つのブレード212と、を含む。ハブは、可撓性バイオプロセスバッグ20の壁、例えば底部壁に、任意選択的にはその壁または底部壁に取り付けられた羽根車プレートを介して、回転可能に取り付けられ得る。ハブ210は、ハブ210の中心を通って延びる垂直軸を中心として回転可能である。ある実施形態では、ハブ210は、可撓性バッグ20および容器12の外部に位置付けられた磁気駆動システムまたはモーター(例えば、図2のモーター34)によって駆動されるように構成された磁気ハブとすることができる。羽根車組立体200は、図3では、3つのブレード212を有するものとして示されているが、羽根車組立体200は、本発明の広範な態様から逸脱することなく、3つ未満のブレード(例えば、1つのブレードもしくは2つのブレード)または3つ超のブレード(例えば、4つ、5つ、もしくは6つのブレード)を有し得る。ブレード212は、ハブ210の周りで互いから等間隔とされ得る。例えば、羽根車組立体200が3つのブレード212を有する場合、ブレード212は、120°離間され得る。
【0023】
ブレード212はそれぞれ、第1の脚部214と、第1の脚部214に対してある角度で位置付けられた第2の脚部216と、を含む。第2の脚部は、第1の脚部の高さh1より低い、高さh2を有し得る。h1:h2の比率は、例えば1.2~3、例えば1.5~2.5とすることができる。図5にも示されるように、ブレード212はそれぞれ、ハブ210から延びるシャフト218を介して、ハブ210に枢動可能に接続される。シャフト218は、概ね水平なものとして示されているが、傾斜しているか、または概ね垂直とすることもできる。シャフトは、例えば、ハブの上面、側面、または傾斜面と、本質的に平行であってよい。ブレード212は、ブレード212が水平なシャフト218の軸220を中心に回転することができるように、ハブ210に接続される。シャフト218は、ブレード212をハブに枢動可能に接続する1つの手法となり得るが、枢動アクションを提供する他の手段および機構、例えばリビングヒンジまたは可撓性材料も、可能である。
【0024】
図3は、第1の脚部214および第2の脚部216が異なる高さを有することを示すが、いくつかの実施形態では、第1の脚部214および第2の脚部216は、(同じかもしくは異なる高さを有する)異なる構成または外形を有し得る。さらに広範には、第1の脚部214および第2の脚部216は、以下で論じるように、異なる混合特徴を提供するように、互いとは異なる構成を有する。
【0025】
次に図4および図5を見ると、羽根車組立体200の動作が示されている。図4に例示されるように、羽根車が矢印Aで示される第1の方向に回転されると、ブレード212は、可撓性バッグ20内部の流体に逆らって動く。したがって、流体は、力F1をブレード212に及ぼし、これにより、ブレードはシャフト218を中心として、図6に示す位置まで回転する。この位置では、各ブレード212の高い方の脚部214が、概ね外向きに(例えば、軸方向および/または半径方向に)延び、バッグ20内部の流体を混合するのに利用される。
【0026】
図5に例示されるように、羽根車は、矢印Bで示される第2の反対方向にも回転され得る。この方向に回転されると、ブレード212は、可撓性バッグ20内部の流体に逆らって動き、流体は、力F2をブレード212に及ぼし、これにより、ブレードは、シャフト218を中心として図5に示す位置まで回転する。この位置では、各ブレード212の短い方の脚部216が、概ね外向きに(例えば、軸方向および半径方向に)延び、バッグ20内部の流体を混合するのに利用される。
【0027】
この点において、羽根車組立体200の回転方向は、どちらの脚部(すなわち、短い脚部216または高い方の脚部214)が混合に使用されるかを制御するために、選択され得る。したがって、低い容量での混合または処理が望ましい場合、羽根車は、流体を混合するために短い方の脚部216を上向きに延ばす方向に、回転され得る。処理容量が増大すると、羽根車の回転方向は切り替えられ得、流体を混合するために長い方の脚部214を上向きに延ばす。したがって、本質的に、羽根車組立体200の高さ(すなわち、最も高く延びるブレード部分の遠位先端部までの鉛直高さ)は、単に、羽根車組立体200を異なる方向に回転させることによって、変更され得る。
【0028】
図6により例示されるある実施形態では、ブレード212のそれぞれ(そして、第1の脚部214および第2の脚部216のうちの一方または両方)は、ハブ210の周辺部に隣接して下向きに延びる、付随的な脚部222を有し得る。この付随的な脚部は、ハブ210の上方表面より下で流体を混合するのに利用され得、これまで可能であったよりもさらに低い最小動作容量での処理を可能にし得る。
【0029】
したがって、本発明の羽根車組立体は、既存のバイオリアクターシステムが、これまで可能であったよりも低い最小動作容量で動作されることを可能にする。前述したように、バイオリアクターシステムの最小動作容量は、羽根車の高さに左右される。したがって、高さの低い羽根車を利用することによって、または、可撓性バッグの内容物を混合するのに利用される羽根車ブレードの高さを選択的に制御することによって、より低い最小動作容量が、既存のバイオリアクター容器において達成され得る。
【0030】
本明細書に開示される発明は、混合される容量に基づいて羽根車のブレードを変更する手段として記載されているが、ブレードは、任意の2つの望ましい混合モード、例えば、高速/低速、薄い/濃い液体などに応じて(ハブの回転方向を変えることによって)変更され得る。すなわち、ブレードの位置は、単一の羽根車組立体における2つの異なる混合モードをさらに広範に提供するために(羽根車の回転方向を変更することによって)変えられ得る。例えば、異なるモードは、高容量/低容量モード、または2つの異なる流体粘度/媒体(例えば、成分Aがより濃く、より薄い液体または粉末である成分Bを加える前に混合される必要がある、2部混合物)とすることができる。
【0031】
羽根車組立体の回転方向は、有利には、動作パラメータが所定の値に到達したとき、例えば、容器または可撓性バイオプロセスバッグ内の液体の容量がある特定のレベルに到達したときに、変更され得る。液体レベルは、例えばバイオリアクターがロードセル上に装着されると測定され得、ロードセル信号が、羽根車の回転速度および方向を制御する制御部に送信され得る。あるいは、動作パラメータは、容器/バッグ内の液体の粘度、または容器バッグ内での細胞培養についての細胞培養パラメータ、例えば細胞密度もしくは生存細胞密度とすることができる。これは、低い細胞密度で開始し、細胞密度が時間と共に増大する場合に、培養粘度の著しい増大をもたらす、細胞培養における攪拌を制御するのに有利である。
【0032】
本明細書で使用されるような、単数形で列挙され、単語「1つの(a)」または「1つの(an)」で始まる、要素またはステップは、複数の前記要素またはステップの排除が明示的に述べられていない限り、それらを排除するものではないことを理解されたい。さらに、本発明の「一実施形態」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることは意図していない。さらに、明示的に特段の記載がない限り、特定の特性を有する1つの要素または複数の要素を「含む(comprising)」か、「含む(including)」か、または「有する」実施形態は、その特性を有していない追加のそのような要素を含み得る。本発明を説明するために本明細書で使用されるような、方向を示す用語、例えば「上(up)」、「下(down)」、「上向き(upwards)」、「下向き(downwards)」、「上方(upper)」、「下方(lower)」、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「上(above)」、「下(below)」、ならびに任意の他の方向を示す用語は、添付図面におけるそれらの方向を指す。
【0033】
この書面の説明は、最良のモードを含む、本発明のいくつかの実施形態を開示するため、また、当業者が、任意のデバイスまたはシステムを製造および使用すること、ならびに任意の組み込まれる方法を実施することを含む、本発明の実施形態を実行するのを可能にするために、実施例を使用する。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者に想到される他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文字通りの言葉と異ならない構造的要素を有する場合、または、特許請求の範囲の文字通りの言葉とのわずかな差を有する同等の構造的要素を含む場合に、特許請求の範囲内にあることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
10 バイオリアクターシステム
12 バイオリアクター容器
12 支持構造体
14 基部
16 脚
18 リフト組立体
20 可撓性バッグ
20 可撓性バイオリアクターバッグ
20 バイオプロセスバッグ組立体
22 のぞき窓
24 窓
28 羽根車
30 磁気ハブ
32 羽根車プレート
34 磁気駆動部
34 モーター
200 羽根車組立体
210 ハブ
212 ブレード
214 第1の脚部
216 第2の脚部
218 シャフト
220 軸
222 付随的な脚部
A 第1の方向
B 第2の反対方向
F1
F2
h1 第1の脚部の高さ
h2 第2の脚部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6a)】
図6b)】
図6c)】
図6d)】
【国際調査報告】