(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】眼障害を処置するための化合物および方法
(51)【国際特許分類】
C07D 211/62 20060101AFI20220622BHJP
C07D 405/06 20060101ALI20220622BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20220622BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20220622BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220622BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220622BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20220622BHJP
A61P 27/14 20060101ALI20220622BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220622BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220622BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20220622BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220622BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220622BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220622BHJP
C07D 409/14 20060101ALI20220622BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C07D211/62
C07D405/06 CSP
A61K31/472
A61K31/445
A61P27/02
A61P17/00
A61P27/04
A61P27/14
A61P29/00
A61P17/06
A61P17/08
A61P37/08
A61P37/06
A61P17/04
C07D409/14
C07D405/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559917
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 IB2020000288
(87)【国際公開番号】W WO2020212755
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518104223
【氏名又は名称】アズーラ オフサルミックス エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ホームズ,イアン
(72)【発明者】
【氏名】アルスター,ヤイル
(72)【発明者】
【氏名】バラッシュ,ヒラ
(72)【発明者】
【氏名】ボスワース,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエリ,オマー
(72)【発明者】
【氏名】グリーソン,マルク
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート,マーク,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブルク,ロバート エム.
(72)【発明者】
【氏名】ダン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB04
4C063BB09
4C063CC76
4C063CC97
4C063DD15
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC30
4C086GA02
4C086GA04
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA89
4C086ZB08
(57)【要約】
【解決手段】本明細書には、マイボーム腺機能不全、眼瞼炎、ドライアイ疾患、ならびにその他眼の前面における炎症性疾患および/または感染症を含む眼表面障害を処置するための組成物と方法が記載される。前記組成物と方法は、角質溶解活性、および抗炎症性またはその他望ましい活性を実証する角質溶解コンジュゲートを含む。前記組成物を眼瞼縁または周辺領域に局所投与することで、眼表面障害を抱える患者に治療利益が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物であって、
【化1】
式中、
R
1はアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールであり、該アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立して、H、シアノ、ハロ、エステル、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、前記アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルは任意選択で置換され、
R
5は-L-R
5aであり、Lは単結合、アルキル、またはヘテロアルキルであり、R
5aは存在しないか、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
6は、H、アルキル、またはヘテロアルキルであり、
各R
7は独立して、H、シアノ、ハロ、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはハロアルキルであり、
nは0~6であり、
Rは-L’-Dであり、
Dは角質溶解薬であり、ならびに
L’はリンカーである化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項2】
L’は1つ以上のリンカー基を含み、各リンカー基は、単結合、-O-、-S-、アルキル(アルキルエニル)、ヘテロアルキル(ヘテロアルキルエニル)、ジスルフィド、エステル、およびカルボニルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項3】
前記角質溶解薬は1つ以上の基(例えば角質溶解性基)を含み、各基(例えば角質溶解性基)は独立して、チオール、ジスルフィド、セレノール(例えばセレニド、ジセレニド)、およびカルボン酸からなる群から選択される、請求項1から2のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項4】
式(Ia)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物であって、
【化2】
式中、
R
1はアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールであり、該アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立して、H、シアノ、ハロ、エステル、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、前記アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルは任意選択で置換され、
R
5は-L-R
5aであり、Lは単結合、アルキル、またはヘテロアルキルであり、R
5aは存在しないか、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
6は、H、アルキル、またはヘテロアルキルであり、
各R
7は独立して、H、シアノ、ハロ、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはハロアルキルであり、
nは0~6であり、ならびに
Rは、少なくとも1つのオキソで置換されるアルキルまたはヘテロアルキルであり、さらに任意選択で置換される化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項5】
前記Rのアルキルまたはヘテロアルキルは1つ以上の置換基で置換され、各置換基は独立してアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノ、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、ハロ、オキソ、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルからなる群から選択され、前記ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは(例えばアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、ハロ、およびオキソからなる群から選択される1つ以上の置換基により)任意選択で置換される、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項6】
Rは
【化3】
であり、
Xは-O-または単結合であり、
R
8は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、またはハロアルキルであり、
R
9はアルキルまたはヘテロアルキルであり、該アルキルまたはヘテロアルキルは任意選択で置換される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項7】
前記R
9のアルキルまたはヘテロアルキルは1つ以上の置換基で置換され、各置換基は独立してアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノ、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、エステル、カルボン酸、ハロ、オキソ、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルからなる群から選択され、前記ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは(例えばアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノール、スルホン、アミド、エステル、ハロ、およびオキソからなる群から選択される1つ以上の置換基により)任意選択で置換される、請求項6に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項8】
R
6がHである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項9】
R
3がHである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項10】
nが0である、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項11】
R
1は、任意選択で置換されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項12】
R
1がヘテロアリールである、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項13】
R
1がベンゾフランである、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項14】
R
2とR
4はそれぞれ独立して、H、ハロ、アルコキシ、またはアルキルである、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項15】
R
2とR
4はハロである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項16】
R
2とR
4はクロロである、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項17】
R
5は、任意選択で置換されたアリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、またはヘテロアリール-アルキルである、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項18】
R
5は任意選択で置換されたアリール-アルキルである、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項19】
R
5は置換されたアリール-アルキルである、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項20】
R
5はスルホニルで置換されたアリール-アルキルである、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項21】
式(Ib)の構造
【化4】
を有している、請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項22】
式(Ic)の構造
【化5】
を有している、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項23】
Xは-O-であり、R
9はC
1-
6アルキル、-(CR
dR
e)
p(C=O)O(C
1-C
6-アルキル)、-(CR
dR
e)
pカルボシクリル、-(CR
dR
e)
pヘテロシクリル、または
【化6】
であり、
R
dとR
eはそれぞれ独立して、H、ハロ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオエテール、スルフィド、チオール、ジスルフィド、セレノ、ヘテロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、カルボシクリルアルコキシ、カルボキシル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクリルアルコキシであり、
R
10は-(C=O)C
1-
6アルキルであり、
pは1~6であり、ならびに
C
1-
6アルキルは、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、ジスルフィド、セレニド、ジセレニド、アミド、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルにより任意選択で置換される、請求項6から22のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項24】
Xは単結合であり、R
9はC
1-
6アルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり、前記C
1-
6アルキルは直鎖または分枝鎖の場合があり、任意選択でハロ、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、ジスルフィド、セレニド、ジセレニド、アミド、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルで置換される、請求項6から23のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項25】
R
9は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、-CH
2OH、-CH(CH
3)OH、-CH
2(OCH
2CH
2)
4OH、-CH
2CH
2(OCH
2CH
2)
4OH、
【化7】
である、請求項6から24のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項26】
R
9はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、CH
2OH、
【化8】
である、請求項23に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項27】
以下の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【化9-1】
【化9-2】
【請求項28】
以下の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【化10】
【請求項29】
請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項30】
眼投与に適している、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
局所眼投与に適している、請求項29から30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
個体の(例えば眼または皮膚)疾患または障害を処置する方法であって、請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物を前記個体に投与する工程を含む方法。
【請求項33】
前記眼疾患または障害は、眼瞼(例えば麦粒腫(物貰い)、眼瞼炎、リッドワイパー角膜上皮症、および霰粒腫)、眼表面(例えば、蒸発亢進型ドライアイ症候群および涙液減少型ドライアイ症候群を含むドライアイ疾患、および前部ブドウ膜炎)、および/または眼後部(例えば後部および全ブドウ膜炎)の炎症性疾病、眼周囲腺の異常(例えばマイボーム腺機能不全(MGD)および涙腺障害)、アレルギー型疾病(例えば湿疹、アトピー性皮膚炎、局所ステロイド治療薬に対し抵抗性があるアトピー性角結膜炎、および春季角結膜炎)、寄生(例えばニキビダニ眼瞼感染)、外科合併症(例えば角膜移植拒絶、角膜移植後緑内障、有水晶体角膜移植に付随する白内障、角膜移植患者の真菌感染症、およびLASIK後ドライアイ、および/または低い屈折転帰)、角膜異常(例えば炎症性角膜潰瘍、リウマチ性角膜潰瘍、コンタクトレンズ不快感、Thygeson点状表層角膜炎、および通常の角膜炎)、結膜異常(例えば虹彩毛様体炎、木質性結膜炎)、全身療法および/または自己免疫疾患による眼の合併症(例えば、少数関節型若年性関節リウマチ、移植片対宿主病、およびシェーグレン症候群)、ならびに/あるいは眼の前面の感染症を含む障害から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
皮膚疾患または障害は、皮膚の炎症性疾病(例えば皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、および乾癬)、皮膚の過角化(例えば毛孔性角化症、面皰性ざ瘡、および足裏の過角化症)、寄生(例えば、ニキビダニ関連の酒さ、ざ瘡、および帯状疱疹)、アレルギー(例えば蕁麻疹、接触皮膚炎、およびおむつかぶれ)、損傷(例えば日焼け)、および/または自己免疫疾患(例えば白斑)を含む障害から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
式(III)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物であって、
【化11】
Xは単結合または-O-であり、
R
8は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、またはハロアルキルであり、
R
9はアルキルまたはヘテロアルキルであり、該アルキルまたはヘテロアルキルは任意選択で置換される化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項36】
Xが単結合である、請求項35に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項37】
R
8がC
1-C
4アルキルである、請求項35から36のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項38】
R
9は、1つ以上の置換基により任意選択で置換されるアルキルであり、各置換基は独立して、-OHおよびアルキルからなる群から選択され、前記アルキルはアルキルまたはヘテロシクロアルキルにより任意選択で置換され、前記ヘテロシクロアルキルはさらに任意選択で置換される、請求項35から37のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項39】
R
9はC
1-C
4アルキル、-CH(CH
3)OH、-CH
2OH、または
【化12】
である、請求項35から38のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項40】
Xは-O-である、請求項35に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項41】
R
8はC
1-C
4アルキルであり、R
9は1つ以上の置換基により任意選択でさらに置換されるアルキルであり、各置換基は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、エステル、およびヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、前記エステルまたはヘテロシクロアルキルはさらに任意選択で置換される、請求項40に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項42】
前記エステルはアルキルでさらに置換され、該アルキルは1つ以上の置換基により任意選択で置換され、各置換基は独立して、-OHおよびアルキルからなる群から選択される、請求項41に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項43】
R
9は、C
1-C
4アルキル、
【化13】
である、請求項42に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項44】
前記C
1-C
4アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、またはtert-ブチルである、請求項35から43のいずれか一項に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年4月18日出願の米国仮特許出願第62/835,963号に基づく利益を主張するものであり、該仮出願はその全体を参照することで本明細書に引用される。
【背景技術】
【0002】
乾性角結膜炎に関連する眼炎症が原因で涙液産生が抑えられると推定される患者の涙液産生を増大するために、レスタシス(0.05%シクロスポリンA、Allergan)が食品医薬品局(FDA)により承認された。Xiidra(登録商標)(lifitegrast点眼液)5%は、ドライアイ疾患(DED)の兆候および症状を適応とする。
【発明の概要】
【0003】
本明細書中のある実施形態では、化合物、医薬(例えば眼用)組成物、および処置方法が提供される。特異的な実施形態では、本明細書に提供される処置方法は、眼および/または眼周囲の適応症あるいは異常の処置を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される組成物または化合物により、あるいはこれらを用いて処置される眼および/または眼周囲の適応症あるいは異常は、多因子性の病因および/または相互作用がある適応症または異常である。本明細書中のある実施形態では、眼またはその周囲(例えば、眼表面、眼瞼辺縁または眼瞼内面といった眼瞼など)に投与したときなどに多因子性の効果を有する化合物(および該化合物を含む組成物)が提供される。
【0004】
ある実施形態では、本明細書に提供される方法は、マイボーム腺機能不全(MGD)を処置する方法に関するものである。
【0005】
現在、MGDの処置に有用な承認薬物(pharmacological agents)は存在していない。マイボーム腺上の導管上皮の過角化から生じる末端管閉塞はマイボーム腺(MGD)の背後にある中枢機構であるという認識は、MGDの有効な処置に管閉塞の回復および腺内容物の除去が必要であると実証する臨床経験に一貫している(Nichols et al,2011;Lane et al,2012;Blackie et al,2015)。温湿布および熱/機械デバイス(例えばLipiFlow)は、末端管閉塞を回復させるためにマイボーム腺の内部温度をマイバムの正常融点(32℃~40℃)より上に上昇させるという試みに使用されている(Lane et al,2012)。あいにく温湿布は、融点が40℃未満の場合がある重度に閉塞した腺に対してこのような利益を達成することができない。現行のマイボーム腺の角化閉塞を取り除くための技術として、患者に大きな痛みが伴う物理的除去方法(例えばデブリドマンおよび腺プロービング)も挙げられる。
【0006】
MGDの期間後、眼表面に様々な段階の炎症性または細菌性疾患が観察される。その理由として、マイボーム腺閉塞は、分泌腺にあるマイバムのうっ滞による腺のさらなる劣化(Knop,IOVS,2011)、腺閉塞による機械的圧力と応力、さらには細菌性リパーゼ、毒性媒介物質、および/または炎症性媒介物質の下流放出に関連する細菌増殖の増加を含む一連の事象を引き起こすおそれがあるためである。これらの要因はすべて、腺が放出し得るマイバムの質および/または量を低下させ、結膜組織、角膜組織、および眼瞼組織の慢性機械的損傷を生じさせ、その後組織損傷および炎症性媒介物質の放出を引き起こすおそれがある。このため、多くのMGD患者には、結膜、角膜、涙腺、眼瞼、または杯細胞に影響を及ぼして、医学的ニーズが満たされていないドライアイ症候群または眼瞼炎などの併発状態を引き起こす炎症性疾患もある。
【0007】
例えば文献では、後部眼瞼炎およびMGDという用語はあたかも同様の意味を持つかのように使用されているが、これらの用語は交換可能ではない。後部眼瞼炎は後部眼瞼縁の炎症状態を説明するものであり、これに対し考えられる単に1つの原因はMGDである。その最初期段階では、MGDは後部眼瞼炎の臨床的症状の特徴に関連しない場合がある。この段階では、影響を受けた個体は徴候的な可能性があるが、もしくは無症状の可能性もあり、その状態は亜臨床的とみなされる。MGDが進行すると、症状が発症し、マイバムの発現性および質の変化や眼瞼縁の発赤といった眼瞼縁兆候がさらに視認可能となる場合がある。この時点でMGD関連の後部眼瞼炎が存在すると言われている。
【0008】
本明細書中のある実施形態では、角化症(例えばMGDなどにおける眼瞼角化症、眼表面角化症、および/または腺の詰まり)、微生物浸潤/感染症(例えば細菌浸潤/感染症)、ならびに/あるいは炎症(角化症に関連するか関連しない炎症)に関連する眼(または皮膚科学)障害を処置する方法が提供される。ある例では、皮膚および/または眼(および/または周囲組織/皮膚)の障害は、差動的に診断するのが困難であり、ならびに/あるいは複数の病因がある。例えばいくつかの例では、(1)炎症のみ、(2)角質溶解活性に関連する炎症、(3)角質溶解活性(例えば角化症を誘導する)と微生物浸潤の両方に関連する炎症、(4)角質溶解活性はあるが炎症および/または微生物浸潤なし、あるいはその他様々な組み合わせを鑑別するのは困難な場合がある。いくつかの例では、本明細書で提供される化合物および組成物は、鑑別診断(例えば同様の症状スコアなどが原因で困難な場合がある)を行うことなく、このような眼および/または皮膚科学適応症に使用することができる。さらに、多くの眼のおよび/または皮膚科学障害は、炎症、微生物浸潤、角質溶解活性、またはそれらの様々な組み合わせといった複数の病因に関わる。その結果、本明細書に記載されるものなど、多数の病因を標的とする治療薬は、根底にある疾病(例えば、角質溶解活性および/または微生物浸潤)と炎症またはドライアイなどの症状との両方を標的とするなどによって治療利益をもたらすのに有益である。
【0009】
そのため本明細書には、多因子性病因を有する異常があるものなど眼(例えば眼周囲)または皮膚科学障害を処置するための化合物、組成物、方法、および製剤が提供される。特異的な実施形態では、眼障害の非限定的な例として、MGD、ドライアイ、ならびに関連する炎症性および細菌性疾患などの表面障害が挙げられる。
【0010】
本明細書中のある実施形態では、式(Ia)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が提供され、
【0011】
【化1】
式中、
R
1はアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールであり、該アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立して、H、シアノ、ハロ、エステル、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、前記アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルは任意選択で置換され、
R
5は-L-R
5aであり、Lは単結合、アルキル、またはヘテロアルキルであり、R
5aは存在しないか、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
6は、H、アルキル、またはヘテロアルキルであり、
各R
7は独立して、H、シアノ、ハロ、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはハロアルキルであり、
nは0~6であり、
Rは-L’-Dであり、
Dは角質溶解薬(例えばそのラジカル)であり、ならびに
L’はリンカーである。
【0012】
いくつかの実施形態では、L’は1つ以上のリンカー基を含み、各リンカー基は、単結合、-O-、-S-、ハロ、アルキル(アルキルエニル)、ヘテロアルキル(ヘテロアルキルエニル)、ジスルフィド、エステル、およびカルボニル(>C=O)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、各リンカー基は、単結合、-O-、-S-、ハロ、アルキル(アルキルエニル)、ヘテロアルキル(ヘテロアルキルエニル)、およびエステルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、各リンカー基は、アルキル(アルキレン)およびヘテロアルキル(ヘテロアルキレン)から選択され、該アルキル(アルキレン)およびヘテロアルキル(ヘテロアルキレン)は任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、オキソならびにアルキルおよびヘテロアルキルのうち1つ以上で置換されるL’は、アルキル(アルキレン)である。いくつかの実施形態では、アルキルまたはヘテロアルキルは、1つ以上のハロ、アルキル、またはハロアルキルで置換される。いくつかの実施形態では、アルキルまたはヘテロアルキルは、1つ以上のアルキルまたはハロアルキルで置換される。いくつかの実施形態では、L’は、単結合、-O-、-S-、ハロ、(C=O)、-(C=O)アルキル-、-(C=O)ヘテロアルキル-、-(C=O)O-、-(C=O)Oアルキル-、-(C=O)Oヘテロアルキル-、-(C=O)S-、-(C=O)Sアルキル-、-(C=O)Sヘテロアルキル-、アルキレン、またはヘテロアルキレンであり、アルキル、ヘテロアルキル、アルキレン、またはヘテロアルキルはそれぞれ任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、L’は、(C=O)、-(C=O)アルキル-、-(C=O)ヘテロアルキル-、-(C=O)O-、-(C=O)Oアルキル-、-(C=O)Oヘテロアルキル-、-(C=O)S-、-(C=O)Sアルキル-、-(C=O)Sヘテロアルキル-、アルキレン、またはヘテロアルキレンである。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは式(A)の構造を有しており、
【0014】
【化2】
式中、
Zは単結合、-O-、-S-、または任意選択で置換されたアミノであり、
G
1とG
2はそれぞれ独立して、水素、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、またはシクロアルキルであり、前記アルキルまたはシクロアルキルは任意選択で置換され、および
gは1~20である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、式(A)の1より多くのリンカーを含む。いくつかの実施形態では、Zは単結合または-O-である。いくつかの実施形態では、Zは単結合であり、G1とG2はそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、該アルキルまたはシクロアルキルは任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、Zは-O-であり、G1とG2はそれぞれ独立して、水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、該アルキルまたはシクロアルキルは任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、Zは単結合または-O-であり、G1は水素であり、G2はアルキルまたはハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Zは単結合または-O-であり、G1は水素であり、G2はメチルである。いくつかの実施形態では、Zは単結合または-O-であり、G1とG2はそれぞれ独立して水素である。いくつかの実施形態では、Zは単結合であり、G1は水素であり、G2はメチルである。いくつかの実施形態では、Zは単結合であり、G1とG2はそれぞれ独立して水素である。いくつかの実施形態では、Zは-O-であり、G1は水素であり、G2はメチルである。いくつかの実施形態では、Zは-O-であり、G1とG2はそれぞれ独立して水素である。
【0016】
いくつかの実施形態では、gは1~20である。いくつかの実施形態では、gは1~10である。いくつかの実施形態では、gは1~5である。いくつかの実施形態では、gは2である。いくつかの実施形態では、gは1である。
【0017】
いくつかの実施形態では、gは1または2であり、Zは単結合であり、G1は水素であり、G2はメチルである。いくつかの実施形態では、gは1または2であり、Zは単結合であり、G1とG2はそれぞれ独立して水素である。いくつかの実施形態では、gは1または2であり、Zは-O-であり、G1は水素であり、G2はメチルである。いくつかの実施形態では、gは1または2であり、Zは-O-であり、G1とG2はそれぞれ独立して水素である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、単結合、-O-、メチレン、
【0019】
【0020】
いくつかの実施形態では、リンカーは単結合、メチレン、
【0021】
【0022】
いくつかの実施形態では、Dはアルキルおよびヘテロアルキルから選択され、該アルキルまたはヘテロアルキルは任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、Dは、オキソならびに置換されたアルキルおよび置換されたヘテロアルキルから選択される基の1つ以上で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、アルキルは、-SH、-OH、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアルキル、あるいは置換または非置換のヘテロシクロアルキルから選択される基の1つ以上で置換される。いくつかの実施形態では、Dは、オキソならびに置換されたアルキルおよび置換されたヘテロアルキルから選択される基の1つ以上で置換されるヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルは、-SH、-OH、あるいは置換または非置換のヘテロアルキルから選択される基の1つ以上で置換される。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルは、-SH、-OH、アルキル、(C=O)アルキル、(C=O)ヘテロアルキル、および-NH(C=O)アルキルから選択される基の1つ以上で置換される。
【0023】
いくつかの実施形態では、Dは、-CH2OH、-CH(CH3)OH、-CH2(OCH2CH2)4OH、-CH2CH2(OCH2CH2)4OH、
【0024】
【0025】
【化5-2】
からなる群の1つ以上から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態では、Dは-CH2OH、-CH(CH3)OH、-CH2(OCH2CH2)4OH、-CH2CH2(OCH2CH2)4OH、
【0027】
【0028】
【0029】
いくつかの実施形態では、Dは、
【0030】
【0031】
【0032】
いくつかの実施形態では、Dは、
【0033】
【0034】
いくつかの実施形態では、Dまたは角質溶解薬は、
【0035】
【0036】
いくつかの実施形態では、Dは「角質溶解薬」ラジカルであり、該ラジカルは、放出、加水分解、またはその他の機構に際して、(例えば眼瞼辺縁といった眼の中またはその周囲など、個体または患者に投与されると)活性角質溶解薬を代謝またはその他の方法で産生する。いくつかの例では、(例えば加水分解またはその他の機構による)放出に際して、Dは複数の活性角質溶解薬を産生する。いくつかの例では、前記活性角質溶解薬は、-SH、-OH、COOH(またはCOO-)、またはジスルフィドのうち1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、前記活性角質溶解薬はカルボン酸である。いくつかの実施形態では、前記活性角質溶解薬は、酢酸、グリコール酸、乳酸、リポ酸、ピバリン酸、イソ酪酸、酪酸、プロピオン酸、ギ酸、および炭酸からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記活性角質溶解薬はチオールである。
【0037】
いくつかの実施形態では、Lは単結合によりDに結合される。
【0038】
ある例では、抗炎症性および/または抗微生物性部分(例えば、R’を差し引いた本明細書で提供される式の構造を有する)と角質溶解性部分(例えば、Dの構造で表されるおよび/または該構造を有する)との組み合わせが提供される。ある実施形態では、このような部分は、単結合であるリンカーにより接続されるラジカルであり、角質溶解性部分は(1)抗炎症性および/または抗微生物性薬剤と(2)1つ以上の活性角質溶解薬との両方を産生するために加水分解可能である。いくつかの実施形態では、このような部分は、加水分解可能なリンカーにより接続されるラジカルであり、該加水分解可能なリンカーは加水分解可能であり、それにより(1)抗炎症性および/または抗微生物性薬剤と(2)1つ以上の活性角質溶解薬との両方が(例えば、眼および/または皮膚への治療薬(例えば局所)投与後など、in vivoで)放出される。
【0039】
本明細書中のある実施形態では、式(Ia)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が提供され、
【0040】
【化10】
式中、
R
1はアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールであり、該アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立して、H、シアノ、ハロ、エステル、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、前記アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルは任意選択で置換され、
R
5は-L-R
5aであり、Lは単結合、アルキル、またはヘテロアルキルであり、R
5aは存在しないか、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
6は、H、アルキル、またはヘテロアルキルであり、
各R
7は独立して、H、シアノ、ハロ、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはハロアルキルであり、
nは0~6であり、ならびに
Rは、少なくとも1つのオキソで置換されるアルキルまたはヘテロアルキルであり、さらに任意選択で置換される。
【0041】
いくつかの実施形態では、R1は任意選択で置換されたアルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである。いくつかの実施形態では、R1は任意選択で置換されたアリールまたはヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、R1はヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、R1はベンゾフランである。いくつかの実施形態では、R1は
【0042】
【0043】
いくつかの実施形態では、R2とR4はそれぞれ独立して、H、ハロ、アルコキシ、またはアルキルである。いくつかの実施形態では、R2とR4はそれぞれ独立して、H、ハロ、またはアルキルである。いくつかの実施形態では、R2とR4はハロである。いくつかの実施形態では、R2とR4はそれぞれ独立してクロロである。いくつかの実施形態では、R3はH、アルキル、ハロ、ヘテロアルキル、またはシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R3はH、アルキル、またはハロである。いくつかの実施形態では、R3はHである。いくつかの実施形態では、R2とR4はそれぞれ独立してクロロであり、R3はHである。
【0044】
いくつかの実施形態では、Lは単結合である。いくつかの実施形態では、Lは結合であり、R5aは任意選択で置換されたアリールまたはヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Lはアルキルであり、R5aは存在しない。いくつかの実施形態では、Lはアルキルであり、R5aは任意選択で置換されたアリールまたは任意選択で置換されたヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、R5は任意選択で置換されたアリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、またはヘテロアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R5は任意選択で置換されたアリール-アルキルまたはヘテロアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R5は置換されたアリール-アルキルまたはヘテロアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R5は置換されたアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R5はスルホニルで置換されたアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R5はモノスルホニルで置換されたアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、スルホニル置換基はメチルスルホンである。いくつかの実施形態では、R5は
【0045】
【0046】
いくつかの実施形態では、R6はヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、R6は、-(C=O)アルキルまたは-(C=O)ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、R6はアルキルである。いくつかの実施形態では、R6はHである。
【0047】
いくつかの実施形態では、各R7は独立して、H、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、またはシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、各R7は独立して、H、ハロ、またはアルキルである。いくつかの実施形態では、nは1であり、R7はハロまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、nは2であり、R7は独立してハロまたはアルキルである。いくつかの実施形態では、nは0である。
【0048】
いくつかの実施形態では、R1はヘテロアリールであり、R2とR4はそれぞれ独立してハロであり、R5は置換されたアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R1はヘテロアリールであり、R2とR4はそれぞれ独立してハロであり、R3はHであり、R5は置換されたアリール-アルキルであり、R6はHまたはアルキルであり、nは0である。いくつかの実施形態では、R1はベンゾフランであり、R2とR4はそれぞれ独立してハロであり、R3はHであり、R5はスルホニルで置換されたアリール-アルキルであり、R6はHであり、nは0である。いくつかの実施形態では、R1はベンゾフランであり、R2とR4はそれぞれクロロであり、R3はHであり、R5はスルホニルで単置換されたアリール-アルキルであり、R6はHであり、nは0である。いくつかの実施形態では、R1は
【0049】
【化13】
であり、R
2とR
4はそれぞれクロロであり、R
3はHであり、R
5は
【0050】
【化14】
であり、R
6はHであり、nは0である。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記化合物は式(Ib)の構造またはその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0052】
【0053】
いくつかの実施形態では、前記Rのアルキルまたはヘテロアルキルは1つ以上の置換基で置換され、各置換基は独立してアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノ、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、ハロ、オキソ、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルからなる群から選択され、前記ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは(例えばアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、ハロ、およびオキソからなる群から選択される1つ以上の置換基により)任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、前記Rのアルキルは1つ以上の置換基で置換され、各置換基は独立して、アルキル、オキソ、ヘテロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、およびヘテロシクロアルキルから選択される。
【0054】
いくつかの実施形態では、Rは
【0055】
【化16】
あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物であり、
Xは-O-または単結合であり、
R
8は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、またはハロアルキルであり、
R
9はアルキルまたはヘテロアルキルであり、該アルキルまたはヘテロアルキルは任意選択で置換される。
【0056】
いくつかの実施形態では、Xは-O-であり、R8はアルキルまたはハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Xは-O-であり、R8はアルキルである。いくつかの実施形態では、Xは-O-であり、R8はメチルである。いくつかの実施形態では、Xは単結合であり、R8はアルキルまたはハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Xは単結合であり、R8はアルキルである。いくつかの実施形態では、Xは単結合であり、R8はメチルである。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記化合物は式(Ic)の構造あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を有する。
【0058】
【0059】
いくつかの実施形態では、Xは単結合である。いくつかの実施形態では、Xは-O-である。いくつかの実施形態では、Xは単結合または-O-であり、前記R9のアルキルまたはヘテロアルキルは1つ以上の置換基で置換され、各置換基は独立してアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノ、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、エステル、カルボン酸、ハロ、オキソ、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルからなる群から選択され、前記ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは(例えばアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノール、スルホン、アミド、エステル、ハロ、およびオキソからなる群から選択される1つ以上の置換基により)任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、前記R9のアルキルまたはヘテロアルキルは1つ以上の置換基で置換され、各置換基は独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、エステル、オキソ、およびヘテロシクリルからなる群から選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、Xは-O-であり、R9はC1-6アルキル、-(CRdRe)p(C=O)O(C1-C6-アルキル)、-(CRdRe)pカルボシクリル、-(CRdRe)pヘテロシクリル、または
【0061】
【化18】
であり、
R
dとR
eはそれぞれ独立して、H、ハロ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオエテール、スルフィド、チオール、ジスルフィド、セレノ、ヘテロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、カルボシクリルアルコキシ、カルボキシル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクリルアルコキシであり、
R
10は、H、-(C=O)C
1-
6アルキルであり、各R
10は組み合わさることにより任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルを形成し、
pは1~6であり、ならびに
C
1-
6は、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、ジスルフィド、セレニド、ジセレニド、アミド、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルにより任意選択で置換される。
【0062】
いくつかの実施形態では、Xは-O-であり、R9はC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、C1-6アルキルは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルにより任意選択で置換される。
【0063】
いくつかの実施形態では、Xは-O-であり、R9は
【0064】
【0065】
いくつかの実施形態では、各R10は独立して、水素または-(C=O)C1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、各R10は水素である。いくつかの実施形態では、各R10は-(C=O)C1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、前記-(C=O)C1-6アルキルのアルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態では、前記-(C=O)C1-6アルキルのアルキルは、メチルである。いくつかの実施形態では、前記-(C=O)C1-6アルキルのアルキルは、エチルである。いくつかの実施形態では、前記-(C=O)C1-6アルキルのアルキルは、プロピルである。いくつかの実施形態では、前記-(C=O)C1-6アルキルのアルキルは、イソプロピルである。いくつかの実施形態では、前記-(C=O)C1-6アルキルのアルキルは、tert-ブチルである。
【0066】
いくつかの実施形態では、各R10は一体になることで、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルを形成する。いくつかの実施形態では、RdとReはそれぞれ独立して、水素、ハロ、またはアルキルである。いくつかの実施形態では、RdとReはそれぞれ水素である。いくつかの実施形態では、pは1~5である。いくつかの実施形態では、pは1~3である。いくつかの実施形態では、pは1または2である。いくつかの実施形態では、pは1である。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、または1,3-ジオキサンである。
【0067】
いくつかの実施形態では、Xは単結合であり、R9はC1-6アルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり、前記C1-6アルキルは直鎖または分枝鎖の場合があり、任意選択でハロ、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、ジスルフィド、セレニド、ジセレニド、アミド、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルで置換される。いくつかの実施形態では、Xは単結合であり、R9はヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、Xは単結合であり、ヘテロアルキルは-(C=O)アルキルであり、該アルキルは-OHまたはヘテロシクロアルキルにより任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルはジチオランである。
【0068】
いくつかの実施形態では、Xは単結合または-O-であり、R9は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルである。
【0069】
いくつかの実施形態では、Xは単結合であり、R9はCH2OH、-CH(CH3)OH、-CH2(OCH2CH2)4OH、-CH2CH2(OCH2CH2)4OHである。
【0070】
いくつかの実施形態では、Xは-O-であり、R9は
【0071】
【0072】
いくつかの実施形態では、R9はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、CH2OH、
【0073】
【0074】
一実施形態は、式(I)の構造を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0075】
【0076】
一実施形態は、式(I’)の構造を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0077】
【0078】
一実施形態は、式(II)の構造を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0079】
【0080】
一実施形態は、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のいずれか1つの化合物などの本明細書に提供される化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。別の実施形態は、眼投与に適した医薬組成物を提供する。別の実施形態は、局所眼投与に適した医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、局所眼投与は、目蓋辺縁などの眼の中および/または周囲を対象とする投与である。いくつかの実施形態では、局所眼投与は、眼表面および目蓋の内部表面への投与である。
【0081】
いくつかの実施形態では、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のいずれか1つの化合物などの本明細書に提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは前記化合物を含む医薬組成物は、加水分解的にほぼ安定している(例えば、緩衝液または眼に許容可能な水性組成物などの水性組成物(例えば溶液)において安定している)。いくつかの実施形態では、前記化合物または医薬組成物は、水性溶媒において製剤化される。いくつかの実施形態では、前記化合物または医薬組成物は製剤化され、水性溶媒に蓄えられる。いくつかの例では、本明細書に提供される組成物または製剤は、水性組成物において化学的および/または物理的に安定している。
【0082】
いくつかの実施形態では、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のいずれか1つの化合物などの本明細書に提供される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、活性医薬品(例えば、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のラジカルの遊離形態であり、ここでRは負の電荷またはHである)および角質溶解薬に加水分解される。いくつかの実施形態では、前記化合物または医薬組成物は、眼空間において活性医薬品および角質溶解薬へと加水分解される。いくつかの実施形態では、前記化合物または医薬組成物は、眼空間においてエステラーゼにより活性医薬品および角質溶解薬へと加水分解される。いくつかの実施形態では、前活性医薬品は抗炎症薬である。いくつかの実施形態では、前記抗炎症薬はlifitegrastである。いくつかの実施形態では、前記角質溶解薬はカルボン酸である。いくつかの実施形態では、前記カルボン酸は、酢酸、グリコール酸、乳酸、リポ酸、ピバリン酸、イソ酪酸、酪酸、プロピオン酸、ギ酸、および炭酸からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記活性角質溶解薬はチオールである。
【0083】
いくつかの実施形態では、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のいずれか1つの化合物などの本明細書に提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは前記化合物を含む医薬組成物が提供される。ある実施形態では、前記組成物はさらに、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のいずれかのラジカルの遊離形態を一定量で含んでいる(前記遊離形態は、Rが負の電荷またはHであるラジカルである)。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、約1:99~約100:0の(例えば重量またはモル)比で、本明細書に提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のいずれかのラジカルの遊離形態(例えばRが負の電荷またはHである)とを含む(例えば、前記ラジカルの遊離形態とコンジュゲートとの全体量に対する前記ラジカルの遊離形態の量は、0%(体重またはモル)~99%である)。いくつかの実施形態では、前記ラジカルの遊離形態の相対量は、0%~約20%、0%~約10%、約0.1%~約10%、約0.1%~約5%、5%未満、2.5%未満、2%未満など、0%から約50%である(割合は、重量/重量またはモル/モルの割合である)。いくつかの例では、このような水性組成物は事前に製造されるか、またはそのラジカルの遊離形態に対して高濃度の化合物を維持するために適用時に製造される。いくつかの実施形態では、このような濃度の化合物は、水性組成物(表2および3など本明細書に記載の条件下にある水性組成物、例えばHEPES緩衝液など)において、組成物中に少なくとも45分間存在する。実施例の表2と3は、本明細書で提供される組成物の良好な安定性を説明するものであり、これらの列記はその開示に組み込まれる。さらにいくつかの例では、本明細書に提供される化合物は、個体(例えば眼(例えば眼周囲)への投与時または皮膚投与時などにおいて、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)の化合物のラジカルの遊離形態(例えばRは負の電荷またはHである)を放出する。より特異的な例では、個体においてエステラーゼが存在する場所に投与されると、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のラジカルの活性(遊離)形態(例えばRは負の電荷またはHである)(ならびに、角質溶解薬および/または(例えばそのさらなる加水分解により)活性角質溶解薬をさらに産生する薬剤)は速やかに放出される。
【0084】
一実施形態は、患者の眼疾患または障害を処置する方法を提供し、該方法は、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(I)、式(I’)、または式(II)のいずれか1つの化合物などの本明細書に提供される化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物を前記患者に投与する工程を含む。別の実施形態は、前記眼疾患または障害が、ドライアイ、リッドワイパー角膜上皮症(LWE)、コンタクトレンズ不快感(CLD)、コンタクトレンズ不快感、ドライアイ症候群、蒸発亢進型ドライアイ症候群、涙液減少型ドライアイ症候群、眼瞼炎、角膜炎、マイボーム腺機能不全、結膜炎、涙腺障害、眼の前面の炎症、眼の前面の感染症、眼瞼の感染症、ニキビダニ眼瞼感染、リッドワイパー角膜上皮症、および眼の前面の自己免疫障害から選択される方法を提供する。
【0085】
本明細書中のある実施形態では、眼(例えば眼周囲)または皮膚科学適応症(例えば、角質溶解活性、炎症、および/または微生物浸潤に関連)を処置する方法が提供され、該方法は、本明細書に提供される化合物または組成物を治療上有効量で投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される組成物(例えば本明細書に提供される方法に使用される)は、眼、周囲組織、または皮膚を対象とする本明細書に提供される治療上有効量(例えば、角化症/角質溶解活性、炎症、および/または微生物浸潤を処置するのに有効な濃度)の化合物を含む。ある実施形態では、本明細書に提供される(例えば医薬および/または眼用)組成物は、本明細書に提供される化合物の約0.1重量%~約10重量%を含む。
【0086】
眼および/または皮膚科学障害として、眼瞼(例えば麦粒腫(物貰い)、眼瞼炎、および霰粒腫)、眼表面(例えばドライアイ疾患および前部ブドウ膜炎)、および眼後部(例えば後部および全ブドウ膜炎)の炎症性疾病、眼周囲腺の異常(例えばマイボーム腺機能不全(MGD))、アレルギー型疾病(例えば湿疹、アトピー性皮膚炎、局所ステロイド治療薬に対し抵抗性があるアトピー性角結膜炎、および春季角結膜炎)、外科合併症(例えば角膜移植拒絶、角膜移植後緑内障、有水晶体角膜移植に付随する白内障、角膜移植患者の真菌感染症、およびLASIK後ドライアイ、および/または低い屈折転帰)、角膜異常(例えば炎症性角膜潰瘍、リウマチ性角膜潰瘍、およびThygeson点状表層角膜炎)、結膜異常(例えば虹彩毛様体炎、木質性結膜炎)、全身療法および/または自己免疫疾患による眼の合併症(例えば、少数関節型若年性関節リウマチ、移植片対宿主病、およびシェーグレン症候群)、ならびに/あるいは眼の前面の感染症が挙げられる。本明細書には、多因子性の病因および相互作用があると知られる眼および眼周囲の異常を処置するための組成物および方法が提供される。
【0087】
一実施形態は、式(III)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を提供し、
【0088】
【化25】
Xは単結合または-O-であり、
R
8は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、またはハロアルキルであり、
R
9はアルキルまたはヘテロアルキルであり、該アルキルまたはヘテロアルキルは任意選択で置換される。
【0089】
いくつかの実施形態では、R8は水素、アルキル、またはハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R8はC1-C4アルキルである。いくつかの実施形態では、R8はメチルである。
【0090】
いくつかの実施形態では、Xは単結合である。いくつかの実施形態では、R9は1つ以上の置換基により任意選択で置換されるアルキルであり、各置換基は独立して、-OHおよび任意選択で置換されたアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アルキルはアルキルまたはヘテロシクロアルキルで置換される。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキルはさらに任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、R9はOHで置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R9はOHおよびアルキルで置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R9はジチオランで置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R9はC1-C4アルキルである。
【0091】
いくつかの実施形態では、R9はC1-C4アルキル、-CH(CH3)OH、-CH2OH、または
【0092】
【0093】
いくつかの実施形態では、Xは-O-である。いくつかの実施形態では、R8はメチルであり、R9は1つ以上の置換基によりさらに任意選択で置換されるアルキルであり、各置換基は独立して、アルキル、ヘテロアルキル(例えばヒドロキシメチルまたはエステル)、およびヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、前記ヘテロアルキル(例えばヒドロキシメチルまたはエステル)あるいはヘテロシクロアルキルはさらに任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、R9は、任意選択で置換された1,3-ジオキサンでさらに置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R9は1,3-ジオキサンでさらに置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R9は、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサンまたは2-メチル-1,3-ジオキサンでさらに置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、R9は、1つ以上のヘテロアルキル置換基でさらに置換されるアルキルである。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキル置換基は-CH2OHまたは-O(C=O)C1-C4アルキルである。いくつかの実施形態では、R9はアルキルでさらに置換されるアルキルであり、該アルキルは、アルキルでさらに置換されるエステルによりさらに置換され、アルキルは1つ以上の置換基により任意選択でさらに置換され、各置換基は独立して、-OHおよびアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R9はC1-C4アルキルである。いくつかの実施形態では、R9は、メチルおよび-O(C=O)C1-C4アルキルでさらに置換されるアルキルである。
【0094】
いくつかの実施形態では、R9はC1-C4アルキル、
【0095】
【0096】
いくつかの実施形態では、C1-C4アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、またはtert-ブチルである。
【0097】
本明細書に記載のある実施形態では、個体の(例えば眼または皮膚)疾患または障害(例えば本明細書に記載の任意の疾患または障害)を処置する方法が記載され、該方法は、式(III)の化合物など本明細書に提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物(例えば本明細書に記載の任意の組成物)を前記個体に投与(例えば眼および/または皮膚へ局所投与)する工程を含む。
【0098】
参照による引用
本明細書で言及されるすべての公開公報、特許、および特許出願は、本明細書で特定される具体的な目的のために引用により本明細書に組み込まれるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0099】
特定の定義
本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかでない限り、複数の指示対象を含む。ゆえに、例えば「薬剤」への言及は、複数のこのような薬剤を含み、「細胞」への言及は、1以上の細胞(または複数の細胞)、および当業者に既知の同等物などへの言及を含む。分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性に関する範囲が本明細書で使用されると、範囲とその中の特定の実施形態との組み合わせ、および下位の組み合わせが、すべて包含されるように意図されている。数または数の範囲について言及するときの用語「約」は、言及される数または数の範囲が実験的な変動の範囲内の(または統計的実験誤差内の)近似値であることを意味し、ゆえに数または数の範囲は、明示された数または数の範囲の1%~15%で変動することがある。用語「含むこと(comprising)」(および、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「有すること(having)」、または「含むこと(including)」などの関連語)は、他の特定の実施形態では例えば、本明細書に記載の任意の合成物、組成物、方法、またはプロセスなどの実施形態が、記載された特徴「からなる」または該特徴「から実質的になる」場合があることを除外しないように意図されている。
【0100】
本明細書で使用するとき、用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、または「処置(treatment)」は、慢性または急性いずれかの治療シナリオにおいて疾患、病状(disease sate)、または適応症(例えばMGD)に関連する症状の低減、弱体化、軽減、改善、緩和、あるいは減少を含む。一実施形態では、処置は末端管閉塞の低減を含む。さらに、本明細書に記載の疾患または病状の処置は、このような疾患、病状、または適応症の処置のために先述の化合物または組成物の使用の開示を含む。
【0101】
「開放」という用語は、閉塞したマイボーム腺管またはオリフィスの除去(少なくとも部分的)および/あるいはマイボーム腺管またはオリフィスの開存性維持を指す。
【0102】
「角質溶解薬」および/または「角質形成剤(keratoplastic agent)」という用語は、本明細書で使用するとき、角化閉塞を軟化、破壊、溶解、可溶化、または緩和するか、あるいは角化閉塞形成を防ぐ薬剤を指す。具体的に、「角質溶解薬」という用語はケラチンの軟化と溶解を促すために使用される薬剤を、「角質形成剤」という用語はケラチン産生を減らすために使用される薬剤を指す。
【0103】
「アミノ」は-NH2ラジカルを指す。
【0104】
「シアノ」は-CNラジカルを指す。
【0105】
「ニトロ」は-NO2ラジカルを指す。
【0106】
「オキサ」は-O-(ラジカル)を指す。
【0107】
「オキソ」は=Oラジカルを指す。
【0108】
「チオキソ」は=Sラジカルを指す。
【0109】
「イミノ」は=N-Hラジカルを指す。
【0110】
「オキシモ」は=N-OHラジカルを指す。
【0111】
「ヒドラジノ」は=N-NH2ラジカルを指す。
【0112】
「アルキル」は通常、1~15個の炭素原子を有するなど、炭素原子および水素原子のみからなる直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖ラジカル(例えば、C1-C15アルキル)を指す。別段の定めのない限り、アルキルは飽和または不飽和である(例えば、少なくとも1つの炭素炭素二重結合を含むアルケニル)。本明細書に提供される「アルキル」の開示は、別段の定めのない限り、飽和された「アルキル」の独立した詳述を含むように意図される。本明細書に記載のアルキル基は一般的に一価であるが、二価の場合もある(本明細書で「アルキレン」基または「アルキルエニル」基とも記載される場合がある)。ある実施形態では、アルキルは1~13個の炭素原子(例えばC1-C13アルキル)を含む。ある実施形態では、アルキルは1~8個の炭素原子(例えばC1-C8アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは1~5個の炭素原子(例えばC1-C5アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは1~4個の炭素原子(例えばC1-C4アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは1~3個の炭素原子(例えばC1-C3アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは1~2個の炭素原子(例えばC1-C2アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは1個の炭素原子(例えばC1アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは5~15個の炭素原子(例えばC5-C15アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは5~8個の炭素原子(例えばC5-C8アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは2~5個の炭素原子(例えばC2-C5アルキル)を含む。他の実施形態では、アルキルは3~5個の炭素原子(例えばC3-C5アルキル)を含む。他の実施形態では、前記アルキル基は、メチル、エチル、1-プロピル(n-プロピル)、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、1-ブチル(n-ブチル)、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソ-ブチル)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)、1-ペンチル(n-ペンチル)から選択される。アルキルは単結合により分子の残部に結合する。通常、アルキル基はそれぞれ独立して置換される、または置換されない。本明細書に提供される「アルキル」の各詳述は、別段の定めのない限り、不飽和「アルキル」基の特異的および明示的な詳述を含む。同様に本明細書で別段の定めのない限り、アルキル基は、以下の置換基:ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、イミノ、オキシモ、トリメチルシラニル、-ORa、-SRa、-OC(O)Ra、-N(Ra)2、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)N(Ra)2、-N(Ra)C(O)ORa、-OC(O)-N(Ra)2、-N(Ra)C(O)Ra、-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2である)、-S(O)tORa(tは1または2である)、-S(O)tRa(tは1または2である)、および-S(O)tN(Ra)2(tは1または2である)のうち1つ以上により任意選択で置換され、各Raは独立して、水素、アルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、フルオロアルキル、カルボシクリル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、カルボシクリルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アラルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロアリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、あるいはヘテロアリールアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)である。
【0113】
「アルコキシ」は、アルキルが上記で定義されるようなアルキル鎖である、式-O-アルキルの酸素原子を介して結合されるラジカルを指す。
【0114】
「アルケニル」は、炭素原子と水素原子のみからなり、少なくとも1つの炭素炭素二重結合を含有し、かつ2~12個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖ラジカル基を指す。ある実施形態では、アルケニルは2~8個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルケニルは2~4個の炭素原子を含む。前記アルケニルは、「アルキル」基について記載されるように任意選択で置換される。
【0115】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」は通常、1~12個の炭素原子を有するなどラジカル基に分子の残部を結合させる直鎖または分枝鎖の二価アルキル基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、i-プロピレン、n-ブチレンなどを指す。本明細書で別段の定めのない限り、アルキレン鎖は、本明細書でアルキル基について記載されるように任意選択で置換される。
【0116】
「アリール」は、環炭素原子から水素原子を取り除くことにより単環式または多環式の芳香族炭化水素環系から誘導されるラジカルを指す。芳香族単環式または多環式の炭化水素環系は、水素と5~18の炭素原子からなる炭素とだけを含み、ここで、環系中の環の少なくとも1つは完全に不飽和であり、すなわち、ヒュッケルの理論に従い環状の非局在化(4n+2)π-電子系を含む。アリール基が誘導される環系として、ベンゼン、フルオレン、インダン、インデン、テトラリン、およびナフタレンなどの基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で特に別段の定めの無い限り、用語「アリール」または接頭辞「ar-」(「アラルキル」にあるものなど)は、1つ以上の置換基により任意選択で置換されるアリールラジカルを含むように意図され、前記1つ以上の置換基は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアラルキル、任意選択で置換されたアラルケニル、任意選択で置換されたアラルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたカルボシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)Ra、-Rb-OC(O)ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(tは1または2である)、-Rb-S(O)tORa(tは1または2である)、および-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは1または2である)から選択され、各Raはそれぞれ独立して、水素、アルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、フルオロアルキル、シクロアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、シクロアルキルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アラルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロアリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、あるいはヘテロアリールアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)であり、各Rbは独立して直接結合、あるいは直鎖または分枝鎖のアルキレンもしくはアルケニレン鎖であり、Rcは直鎖または分枝鎖のアルキレンまたはアルケニレン鎖であり、別段の定めのない限り、上記の置換基はそれぞれ非置換型である。
【0117】
「アラルキル」または「アリール-アルキル」は式-Rc-アリールのラジカルを指し、Rcは、例えばメチレンやエチレンなど上記で定義されるようなアルキレン鎖である。アラルキルラジカルのアルキレン鎖部分は、アルキレン鎖について上述されるように任意選択で置換される。アラルキルラジカルのアリール部分は、アリール基について上述されるように任意選択で置換される。
【0118】
「カルボシクリル」または「シクロアルキル」は、炭素原子と水素原子のみからなり、縮合環または架橋環の系を含み、3~15個の炭素原子を有する、非芳香族の単環式または多環式の炭化水素ラジカルを指す。ある実施形態では、カルボシクリルは3~10個の炭素原子を含む。他の実施形態では、カルボシクリルは5~7個の炭素原子を含む。カルボシクリルは単結合により分子の残部に結合する。カルボシクリルまたはシクロアルキルは、飽和される(C-C結合のみを含む)か、または不飽和(1つ以上の二重結合または三重結合を含む)である。飽和シクロアルキルの例として、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。不飽和カルボシクリルは「シクロアルケニル」とも呼ばれる。単環式シクロアルケニルの例として、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。多環式カルボシクリルラジカルとして、例えばアダマンチル、ノルボルニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル)、ノルボルネニル、デカリニル(decalinyl)、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが挙げられる。本明細書で特に別段の定めのない限り、用語「カルボシクリル」は、1つ以上の置換基により任意選択で置換されるカルボシクリルラジカルを含むように意図され、前記1つ以上の置換基は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、オキソ、チオキソ、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアラルキル、任意選択で置換されたアラルケニル、任意選択で置換されたアラルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたカルボシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)Ra、-Rb-OC(O)ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(tは1または2である)、-Rb-S(O)tORa(tは1または2である)、および-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは1または2である)から選択され、各Raは独立して、水素、アルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、フルオロアルキル、シクロアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、シクロアルキルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アラルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロアリール(随意にハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、あるいはヘテロアリールアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)であり、各Rbは独立して直接結合、あるいは直鎖または分枝鎖のアルキレン鎖もしくはアルケニレン鎖であり、Rcは直鎖または分枝鎖のアルキレン鎖もしくはアルケニレン鎖であり、上記置換基の各々は、別段の定めのない限り非置換型である。
【0119】
「カルボシクリルアルキル」は、式-Rc-カルボシクリルのラジカルを指し、Rcは上で定義されるようなアルキレン鎖である。アルキレン鎖およびカルボシクリルラジカルは、上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0120】
「カルボシクリルアルケニル」は式-Rc-カルボシクリルのラジカルを指し、Rcは上記で定義されるようなアルケニレン鎖である。アルケニレン鎖とカルボシクリルラジカルは、上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0121】
「カルボシクリルアルキニル」は式-Rc-カルボシクリルのラジカルを指し、Rcは上記で定義されるようなアルキニレン鎖である。アルキニレン鎖とカルボシクリルラジカルは、上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0122】
「カルボシクリルアルコキシ」は式-O-Rc-カルボシクリルの酸素原子を介して結合されるラジカルを指し、Rcは上記で定義されるようなアルキレン鎖である。アルキレン鎖およびカルボシクリルラジカルは、上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0123】
本明細書で使用するとき、「カルボン酸生物学的等価体」は、カルボン酸部分として同様の物理的、生物学的、および/または化学的な性質を示す官能基または部分を指す。カルボン酸生物学的等価体の例として以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
【0125】
「ハロ」または「ハロゲン」は、ブロモ、クロロ、フルオロ、またはヨードの置換基を指す。
【0126】
「フルオロアルキル」は上記で定義されるようなアルキルラジカルを指し、該アルキルラジカルは、例えばトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロメチル-2-フルオロエチルなど上記で定義されるような1つ以上のフルオロラジカルにより置換される。いくつかの実施形態では、フルオロアルキルラジカルのアルキル部分は、アルキル基について上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0127】
用語「ヘテロアルキル」は上記で定義されるようなアルキル基を指し、ここでは該アルキルの1つ以上の骨格炭素原子がヘテロ原子(適切な数の置換基または原子価により、例えば-CH2-は-NH-または-O-により置換される場合がある)で置換される。例えば、置換された各炭素原子は独立してヘテロ原子で置換され、ここで前記炭素は窒素、酸素、セレノール、または他の適切なヘテロ原子で置換される。いくつかの例では、置換された各炭素原子は独立して、酸素、窒素(例えば-NH-、-N(アルキル)-、-N(アリール)-、または本明細書中で企図される別の置換基を有するもの)、あるいは硫黄(例えば-S-、-S(=O)-、または-S(=O)2-)に対して置換される。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルはヘテロアルキルの炭素原子にて分子の残部に結合する。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルはヘテロアルキルのヘテロ原子にて分子の残部に結合する。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルはC1-C18ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルはC1-C12ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルはC1-C6ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキルはC1-C4ヘテロアルキルである。代表的なヘテロアルキル基として、-OCH2OMeまたは-CH2CH2OMeが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、本明細書に定義されるようにヘテロアルキルは、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルアルキルを含む。本明細書で特に別段の定めのない限り、ヘテロアルキル基はアルキル基について上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0128】
「ヘテロアルキレン」は、分子の一部分をその別の部分に結合させる、上記で定義される二価ヘテロアルキル基を指す。特に別段の定めのない限り、ヘテロアルキレンはアルキル基について上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0129】
「ヘテロシクリル」は、2~12個の炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子とを含む安定した3~18員の非芳香環ラジカルを指す。本明細書で特に別段の定めのない限り、ヘテロシクリルラジカルは、単環式、二環式、三環式、または四環式の環系であり、縮合した環系または架橋した環系を任意選択で含む。ヘテロシクリルラジカル中のヘテロ原子は任意選択で酸化される。1つ以上の窒素原子は、存在する場合、任意選択で四級化される。ヘテロシクリルラジカルは、部分的または完全に飽和される。ヘテロシクリルは、環の任意の原子により分子の残部に結合する。こうしたヘテロシクリルラジカルの例として、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、および1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で特に別段の定めのない限り、用語「ヘテロシクリル」は、1つ以上の置換基により任意選択で置換される上記で定義されるようなヘテロシクリルラジカルを含むように意図され、前記置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、オキソ、チオキソ、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアラルキル、任意選択で置換されたアラルケニル、任意選択で置換されたアラルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたカルボシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)Ra、-Rb-OC(O)ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(tは1または2である)、-Rb-S(O)tORa(tは1または2である)、および-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは1または2である)から選択され、各Raは独立して、水素、アルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、フルオロアルキル、シクロアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、シクロアルキルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アラルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロアリール(随意にハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、あるいはヘテロアリールアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)であり、各Rbは独立して直接結合、あるいは直鎖または分枝鎖のアルキレン鎖もしくはアルケニレン鎖であり、Rcは直鎖または分枝鎖のアルキレン鎖もしくはアルケニレン鎖であり、上記置換基の各々は、別段の定めのない限り非置換型である。
【0130】
「N-ヘテロシクリル」または「N-結合ヘテロシクリル」は、少なくとも1つの窒素を包含する上記で定義されるようなヘテロシクリルラジカルを指し、分子の残部に対するヘテロシクリルラジカルの結合点はヘテロシクリルラジカル中の窒素原子を介する。N-ヘテロシクリルラジカルは、ヘテロシクリルラジカルについて上述されるように任意選択で置換される。こうしたN-ヘテロシクリルラジカルの例として、1-モルホリニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、1-ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、およびイミダゾリジニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
「C-ヘテロシクリル」または「C結合ヘテロシクリル」は、少なくとも1つのヘテロ原子を包含する上記で定義されるようなヘテロシクリルラジカルを指し、分子の残部に対するヘテロシクリルラジカルの結合点はヘテロシクリルラジカル中の炭素原子を介する。C-ヘテロシクリルラジカルは、ヘテロシクリルラジカルについて上述されるように任意選択で置換される。こうしたC-ヘテロシクリルラジカルの例として、2-モルホリニル、2-または3-または4-ピペリジニル、2-ピペラジニル、2-または3-ピロリジニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
「ヘテロシクリルアルキル」は式-Rc-ヘテロシクリルのラジカルを指し、Rcは上記で定義されるようなアルキレン鎖である。ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルである場合、このヘテロシクリルは窒素原子にてアルキルラジカルに任意選択で結合する。ヘテロシクリルアルキルラジカルのアルキレン鎖は、アルキレン鎖について上記で定義されるように任意選択で置換される。ヘテロシクリルアルキルラジカルのヘテロシクリル部分は、ヘテロシクリル基について上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0133】
「ヘテロシクリルアルコキシ」は式-O-Rc-ヘテロシクリルの酸素原子を介して結合されるラジカルを指し、Rcは上記で定義されるようなアルキレン鎖である。ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルである場合、このヘテロシクリルは窒素原子にてアルキルラジカルに任意選択で結合する。ヘテロシクリルアルコキシラジカルのアルキレン鎖は、アルキレン鎖について上記で定義されるように任意選択で置換される。ヘテロシクリルアルコキシラジカルのヘテロシクリル部分は、ヘテロシクリル基について上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0134】
「ヘテロアリール」は、2~17個の炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子とを含む3~18員の芳香族環ラジカルに由来するラジカルを指す。本明細書で使用するとき、ヘテロアリールラジカルは、単環式、二環式、三環式、または四環式の環系であり、ここで、環系中の環の少なくとも1つは完全に不飽和であり、すなわちヒュッケル理論に従い環式の非局在化(4n+2)π-電子系を包含する。ヘテロアリールは縮合環系または架橋環系を含む。ヘテロアリールラジカル中のヘテロ原子は任意選択で酸化される。1つ以上の窒素原子は、存在する場合、任意選択で四級化される。ヘテロアリールは、環の任意の原子を介して分子の残部に結合する。ヘテロアリールの例として、アゼピニル、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズインドリル、1,3-ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、ベンゾ[b][1,4]オキサジニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、シクロペンタ[d]ピリミジニル、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、5,6-ジヒドロベンゾ[h]シンノリニル、6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2-c]ピリダジニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、フロ[3,2-c]ピリジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリミジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリダジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリジニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソキサゾリル、5,8-メタノ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、ナフチリジニル(naphthyridinyl)、1,6-ナフチリジノニル(naphthyridinonyl)、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、5,6,6a,7,8,9,10,10a-オクタヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル(phenothiazinyl)、フェノキサジニル(phenoxazinyl)、フタラジニル、プテリジニル(pteridinyl)、プリニル(purinyl)、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾロ(pyrazolo)[3,4-d]ピリミジニル、ピリジニル、ピリド(pyrido)[3,2-d]ピリミジニル、ピリド[3,4-d]ピリミジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、5,6,7,8-テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、5,6,7,8-テトラヒドロピリド[4,5-c]ピリダジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、チエノ[2,3-d]ピリミジニル、チエノ[3,2-d]ピリミジニル、チエノ[2,3-d]ピリジニル、およびチオフェニル(すなわちチエニル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で特に別段の定めのない限り、用語「ヘテロアリール」は、1つ以上の置換基により任意選択で置換される上記で定義されるようなヘテロアリールラジカルを含むように意図され、前記1つ以上の置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、オキソ、チオキソ、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアラルキル、任意選択で置換されたアラルケニル、任意選択で置換されたアラルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたカルボシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)Ra、-Rb-OC(O)ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(tは1または2である)、-Rb-S(O)tORa(tは1または2である)、および-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは1または2である)から選択され、各Raはそれぞれ独立して、水素、アルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、フルオロアルキル、シクロアルキル、(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、シクロアルキルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アラルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロアリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、あるいはヘテロアリールアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)であり、各Rbは独立して直接結合、あるいは直鎖または分枝鎖のアルキレンもしくはアルケニレン鎖であり、Rcは直鎖または分枝鎖のアルキレンまたはアルケニレン鎖であり、別段の定めのない限り、上記の置換基はそれぞれ非置換型である。
【0135】
「N-ヘテロアリール」は、少なくとも1つの窒素を包含する上記で定義されるようなヘテロアリールラジカルを指し、分子の残部に対するヘテロアリールラジカルの結合点はヘテロアリールラジカル中の窒素原子を介する。N-ヘテロアリールラジカルは、ヘテロアリールラジカルについて上述されるように任意選択で置換される。
【0136】
「C-ヘテロアリール」は上記で定義されるようなヘテロアリールラジカルを指し、分子の残部に対するヘテロアリールラジカルの結合点は、ヘテロアリールラジカル中の炭素原子を介する。C-ヘテロアリールラジカルは、ヘテロアリールラジカルについて上述されるように任意選択で置換される。
【0137】
「ヘテロアリールアルキル」は式-Rc-ヘテロアリールのラジカルを指し、Rcは上記で定義されるようなアルキレン鎖である。ヘテロアリールが窒素含有ヘテロアリールである場合、このヘテロアリールは窒素原子にてアルキルラジカルに任意選択で結合する。ヘテロアリールアルキルラジカルのアルキレン鎖は、アルキレン鎖について上記で定義されるように任意選択で置換される。ヘテロアリールアルキルラジカルのヘテロアリール部分は、ヘテロアリール基について上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0138】
「ヘテロアリールアルコキシ」は、式-O-Rc-ヘテロアリールの酸素原子を介して結合されるラジカルを指し、Rcは上記で定義されるようなアルキレン鎖である。ヘテロアリールが窒素含有ヘテロアリールである場合、このヘテロアリールは窒素原子にてアルキルラジカルに任意選択で結合する。ヘテロアリールアルコキシラジカルのアルキレン鎖は、アルキレン鎖について上記で定義されるように任意選択で置換される。ヘテロアリールアルコキシラジカルのヘテロアリール部分は、ヘテロアリール基について上記で定義されるように任意選択で置換される。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物は1つ以上の不斉中心を含み、これにより絶対的な立体化学の観点から(R)または(S)として定義されるエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性の形態を生じさせる。別段の定めのない限り、本明細書に開示される化合物の立体異性形態はすべて、本開示により企図されていることが意図される。本明細書に記載の化合物がアルケン二重結合を包含する場合、かつ別段の定めのない限り、本開示はEとZ両方の幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)を含むことが意図されている。同様に、考えられるすべての異性体のほか、そのラセミ体や光学的に純粋な形態、およびすべての互変異性体も含まれるよう意図される。用語「幾何異性体」は、アルケン二重結合のEまたはZの幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)を指す。用語「位置異性体」は、ベンゼン環周囲のオルト異性体、メタ異性体、およびパラ異性体といった、中心環周囲の構造異性体を指す。
【0140】
通常、任意選択で置換された基はそれぞれ独立して置換されるか、または置換されない。本明細書で提供される任意選択で置換された基の各詳述は、別段の定めのない限り、非置換の基と置換された基(例えば、ある実施形態では置換され、他の実施形態では置換されない)両方の独立し明示的な詳述を含む。別段の定めのない限り、置換された基は、以下の置換基:ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、イミノ、オキシモ、トリメチルシラニル、-ORa、-SRa、-OC(O)Ra、-N(Ra)2、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)N(Ra)2、-N(Ra)C(O)ORa、-OC(O)-N(Ra)2、-N(Ra)C(O)Ra、-N(Ra)S(O)tRa(tは1または2である)、-S(O)tORa(tは1または2である)、-S(O)tRa(tは1または2である)、および-S(O)tN(Ra)2(tは1または2である)のうち1つ以上により任意選択で置換され、各Raは独立して、水素、アルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、フルオロアルキル、カルボシクリル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、カルボシクリルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、アラルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロシクリルアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、ヘテロアリール(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)、あるいはヘテロアリールアルキル(ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルにより任意選択で置換される)である。
【0141】
本明細書に開示される化合物において、任意の原子への言及はその同位体への言及を含む。例えばHへの言及は、1H、2H、3H、またはそれらの混合物など、前記Hの任意の同位体への言及を含む。
【0142】
「薬学的に許容可能な塩」は酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。本明細書に記載されるマイボーム腺機能不全用の二重作用型薬物のうちのいずれか1つの薬学的に許容可能な塩は、すべての薬学的に適切な塩形態を包含することを意図している。本明細書に記載の化合物の好ましい薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な酸付加塩および薬学的に許容可能な塩基付加塩である。
【0143】
「薬学的に許容可能な酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的効果と特性を保持する塩を指し、この塩は、生物学的またはその他の点で不要ではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などの無機酸により形成される。同様に、脂肪族のモノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸(alkanedioic acids)、芳香族酸、脂肪族酸、および芳香族スルホン酸などの有機酸により形成される塩も含まれ、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。ゆえに典型的な塩として、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩(monohydrogenphosphates)、二水素リン酸塩(dihydrogenphosphates)、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩(dinitrobenzoates)、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。同様に、アルギン酸塩、グルコン酸塩、およびガラクトウロン酸塩などのアミノ酸の塩も企図されている(例えば、Berge S.M.et al.,“Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Science,66:1-19(1997))。塩基性化合物の酸付加塩は、いくつかの実施形態では、当業者が精通している方法と技法に従い塩を産生するために、十分な量の所望の酸に遊離塩基形態を接触させることにより調製される。
【0144】
「薬学的に許容可能な塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的効果と特性を保持する塩を指し、この塩は生物学的またはその他の点で不要なものではない。これら塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に添加することにより調製される。薬学的に許容可能な塩基付加塩は、いくつかの実施形態では、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または有機アミンなどの金属あるいはアミンで形成される。無機塩基由来の塩として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有機塩基由来の塩として、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、自然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、エチレンジアニリン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上述のBerge et al.を参照。
【0145】
マイボーム腺
マイボーム腺は眼瞼にある大きな脂線であり、皮膚とは異なり毛と関連するものではない。マイボーム腺は、水相の蒸発から涙液膜を保護する涙液膜の脂質層を産生する。マイボーム腺オリフィスは眼瞼縁の上皮側に位置し、粘膜側からわずか数百ミクロンである。マイボーム腺は上眼瞼と下眼瞼の両方にあり、マイボーム腺の量は上眼瞼の方が多い。1つのマイボーム腺は、長い中心管の周囲に環状に配されるとともに短い導管により中心管に接続される分泌性腺房の塊で構成される。中心管の末端部は表皮の内部成長により覆われ、この表皮は自由眼瞼縁を覆って、内瞼の境界付近の粘膜皮膚移行部のすぐ前方の眼瞼縁の後部にてオリフィスとして開く短い排出管を形成する。脂質で構成される油分泌物は、分泌性腺房内で合成される。脂質分泌物は体温に近い液体であり、「マイバム」と呼ばれる透明な流体として眼瞼縁の皮膚に送達される。脂質分泌物は上眼瞼と下眼瞼の縁に浅い貯蔵部を形成し、コレステロール、ろう、コレステロールエステル、リン脂質と、少量のトリグリセリド、トリアシルグリセロール、および炭化水素との複合混合物からなる。別個のマイボーム腺は、上眼瞼と下眼瞼における瞼板の長さにわたり並行かつ一列で配置されている。腺の範囲は瞼板の寸法にほぼ相当する。
【0146】
本明細書で使用するとき、「角化閉塞」という用語は、遮断の位置に関係のないマイボーム腺の遮断を指す。いくつかの実施形態ではこの遮断は完全なものであり、他の実施形態では部分的である。遮断の程度に関係なく、このような角化閉塞はマイボーム腺機能不全を引き起こす。いくつかの実施形態では、角化閉塞は、角化した材料と脂質で構成される。いくつかの実施形態では、角化閉塞はマイボーム腺オリフィスと排出管における遮断である。いくつかの実施形態では、角化閉塞は、眼瞼縁とマイボーム腺における上皮の角化によって引き起こされる。ある例では、角化閉塞(keratin obstruction)は幹細胞の移動または異常な分化により影響を受ける。いくつかの実施形態では、角化閉塞は、眼瞼縁および涙液膜への油の送達低下、ならびに、血圧上昇、結果として生じる拡張、腺房の萎縮、および分泌量低下を引き起こすマイボーム腺内部のうっ滞を生じさせる。ある例では、マイボーム腺の角化は退行性の腺の拡張と萎縮を引き起こす。
【0147】
眼表面疾患または障害
眼表面疾患は、ドライアイ症候群(蒸発亢進型DESおよび/または涙液減少型DES)、眼瞼炎、角膜炎、マイボーム腺機能不全、結膜炎、涙腺障害、コンタクトレンズ関連の疾病、および眼の前面の炎症性、伝染性、または自己免疫性疾患あるいは障害を含むがこれらに限定されない疾患の一群である。「マイボーム腺機能不全」という用語は、本明細書で使用するとき、末端管閉塞、腺分泌の質的または量的な変化、あるいはその両方を特徴とするマイボーム腺の慢性的で広範な異常を指す。MGDは、涙液膜の変化、眼刺激症状、炎症、または眼表面疾患を引き起こす場合がある。MGDの最も顕著な態様は、マイボーム腺開口部と末端の管の閉塞とマイボーム腺分泌の変化である。
【0148】
いくつかの例では、マイボーム腺機能不全(MGD)は、一般的に末端管閉塞および/または腺分泌における質的/量的変化を特徴とするマイボーム腺の慢性的で広範な異常である。末端管閉塞は導管上皮の過角化により引き起こされる(Nichols et al,Inv.Oph.& Vis.Sci.(2011);52(4):1922-1929)。このようなマイバムの質と発現の両方における変化は、涙膜の変化、眼刺激症状、および蒸発亢進型ドライアイなどの眼表面疾患をもたらす場合がある。MGDの主な臨床的結果は蒸発亢進型のドライアイ症候群であり、大規模集団に基づく試験(Bankok StudyおよびShihpai Eye Study)では、ドライアイ症状のある患者の60%超がMGDも抱えていると推計している(Schaumberg et al,Investigative Ophthalmology and Visual Science.(2011);52(4):1994-2005)。
【0149】
MGDはドライアイ症候群の主因である。ドライアイ症候群の発生は広範囲であり、米国だけでも約2000万人の患者が影響を受けている。ドライアイ症候群は、不適当な涙産生、または眼表面から過剰な水分蒸発のいずれかに起因する眼表面の障害である。角膜には血管がなく、酸素と栄養素の供給は涙液に依存するため、涙液は角膜の健康に重要なものである。涙液と涙液膜は脂質、水、および粘液で構成され、これらのいずれかが破壊されるとドライアイが生じるおそれがある。角化閉塞により引き起こされるようなマイボーム腺からの不適当量の脂質流出により過度の蒸発が生じ、それによりドライアイ症候群が生じる可能性がある。
【0150】
いくつかの実施形態では、マイボーム腺分泌の変化は、瞼板に指圧をかけて物理的にマイボーム腺を絞ることにより検出される。MGDのない対象では、マイバムは透明な油の集まりである。MGDでは、絞り出した材料の品質と絞り度(expressibility)の両方が変化する。マイバムの変化はマイボーム腺排出物としても知られ、変化した分泌物と角化した上皮材料の混合物で構成される。MGDでは、絞り出された脂質の質は、透明な流体から、粒子状物質と濃く不透明な練り歯磨きのような材料を含む粘性流体まで外観が変化する。マイボーム腺オリフィスは眼瞼の表面高さを超える隆起を呈する場合があり、これは詰まり(plugging)または膨れ(pouting)と称され、末端管閉塞およびマイボーム腺脂質と角化材料との混合物の押し出しを原因とするものである。
【0151】
閉塞性MGDは、以下:1)慢性的な眼部不快感、2)マイボーム腺オリフィス周囲の解剖学的異常(血管充血、粘膜皮膚移行部の前方または後方変位、または眼瞼縁の不規則性のうち1つ以上である)、および3)マイボーム腺の閉塞(細隙灯生体顕微鏡検法による腺オリフィスの閉塞発見(膨れ、詰まり、または隆起)、中程度の指圧によるマイバムの圧搾減少)のすべてまたは一部を特徴とする。
【0152】
現行のMGD症状を評価かつモニタリングするための方法として、患者へのアンケート、マイボーム腺圧搾、涙液安定性破壊時間、および指圧により確認されるような患者の腺数の判定が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0153】
いくつかの実施形態では、患者の症状は、患者に一連の質問を行うことにより評価される。アンケートにより眼部不快感に関連する症状の範囲を評価することができる。いくつかの実施形態では、このアンケートはSPEEDアンケートである。SPEEDアンケートとは、患者のドライアイ症状の頻度と重症度を評価するものである。このアンケートにより、当日、72時間後、および過去3か月の症状の発生を調べる。SPEEDスコアは、患者の症状の重症度範囲を提供するために、患者の質問に対する回答に基づき集計される。SPEEDアンケートは、1)どのようなドライアイ症状がいつ生じたのか、2)眼の乾燥、ザラつき、またはかゆみの頻度はどのくらいか、3)眼の痛みまたは刺激の頻度はどのくらいか、4)眼の熱傷または流涙の頻度はどのくらいか、5)眼精疲労の頻度はどのくらいか、および6)症状の重症度はどのくらいかなどの質問を含む。
【0154】
マイボーム腺の絞り度は、マイボーム腺機能を評価するために任意選択で求められる。正常な患者のマイバムは透明~淡黄色の油である。指圧を腺にかけると、マイバムが腺から分泌される。マイボーム腺の絞り度の変化は、考えられるMGD適応症の1つである。いくつかの実施形態では、圧搾中にかけられる物理力の量の定量化は、脂質の体積と脂質量の評価に加えてモニタリングされる。
【0155】
涙液安定性破壊時間(TBUT)は、涙液安定性の代用マーカーである。涙膜不安定性は、ドライアイとMGDの中心的な機構である。TBUTが短いと、脂質層の不全(compromise)およびMGDの可能性が仄めかされる。TBUTは、まばたき後に涙膜に生じる最初の破壊までの時間として定義されるようなフルオレセイン破壊時間を調べることにより任意選択で測定される。フルオレセインは、市販のフルオレセイン浸漬片を生理食塩水で湿らせることにより任意選択で適用され、かつ下位の円蓋または眼球結膜に適用される。次いで患者は、数回まばたきをし、眼を動かすよう求められる。次いで、スリットランプ、コバルトブルーフィルタ、および4mmのビーム幅により破壊が解析される。患者はまばたきをするよう命じられ、最後のまばたきの上昇運動から第1涙膜破壊または乾燥スポット形成までの時間が測定値として記録される。
【0156】
他のMGD症状を評価する方法として、シルマー試験、眼表面染色、眼瞼形態解析、マイボグラフィー、マイボメトリー、干渉法、エバポリメトリー(evaporimetry)、涙液脂質組成解析、蛍光分析、メニスコメトリー(meiscometry)、モル浸透圧濃度解析、涙膜動態、蒸発、および涙液ターンオーバーの指標が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0157】
現行のMGD処置として、眼瞼の加温、眼瞼マッサージ、眼瞼衛生法、眼瞼の絞り出し、およびマイボーム腺プロービングが挙げられる。薬理学的な方法は、本明細書に記載の方法以前は使用されていなかった。
【0158】
眼瞼衛生法は主なMGDの処置と考慮されており、3つの要素:1)温罨法、2)眼瞼の機械的マッサージ、および3)眼瞼の清浄化からなる。眼瞼加温手順は、病理学的に変化したマイボーム腺の脂質を溶かすことによりマイボーム腺分泌を改善する。加温は温湿布またはデバイスにより達成される。機械的眼瞼衛生法には、スクラブの使用、機械的圧搾、および様々な溶液によるまつ毛と眼瞼縁の清浄化が挙げられる。眼瞼縁はさらに、低アレルギー性の固形石鹸、希釈型幼児用シャンプー、または市販の眼瞼スクラブにより任意選択で清浄化される。マイボーム腺の物理的な絞りは医師のオフィスで行われるか、あるいは家で患者によって行われる。この技術は、眼球に対する眼瞼の軽いマッサージから、互いに対してあるいは内瞼表面上の剛性物体と外部の眼瞼表面上の指、親指、または剛性物体(ガラス棒、綿棒、または金属パドルなど)との間に眼瞼を強制的に締め付けるものなど様々に存在する。内瞼表面上の剛性物体は、圧搾中に眼瞼を通って伝えられる力から眼球を保護し、腺にかけられる力の量を増大させるために安定した抵抗性を与える。
【0159】
加温により脂質が溶けるため眼瞼加温は制限されるが、角化材料の動きには対処されない。さらに、眼瞼加温は角膜の歪曲に起因して一時的な視力低下を引き起こす。機械的眼瞼衛生法も制限される。理由として、閉塞物を取り除くのに必要な力は相当であり、患者に激痛をもたらしかねないからである。機械的眼瞼衛生法の有効性は、処置中の関連疼痛に患者が耐える能力により制限される。MGDの他の治療は制限される。
【0160】
マイボーム腺圧搾によるマイボーム腺閉塞の物理的開放は、マイボーム腺分泌とドライアイ症状を改善するための許容可能な方法である。加えて、マイボーム腺管のプロービングが閉塞管を開くために使用されている。しかし、圧搾とプロービングの両方法は、本手順により誘導される疼痛、腺と管の構造に対して起こり得る物理的な発作、数日および数週で推計される一時的な効果により制限される。そのため、患者の快適さを改善する方法が必要とされており、これによりマイボーム腺と管に害は生じず、頻繁な来院への依存度を減らし、マイバム分泌が改善されることになる。
【0161】
「Compositions and methods for the treatment of meibomian gland dysfunction」と題した米国特許第9,463,201号には、眼に許容可能な担体における治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解薬の局所投与を含む、マイボーム腺機能不全の処置方法が記述される。この特許には、エブセレン(2-フェニル-1,2-ベンゾセレナゾール-3-オンなどの二硫化セレン(SeS2)または有機セレン化合物などの無機セレン(Se)化合物である角質溶解薬が含まれる。この薬剤により、MGDに関するDEWSレポートにより記載されるような「プラス(plus)」炎症性疾患ではなく、MGDの根本的な原因が処置されることになる。
【0162】
MGDの病因における炎症の役割が論議をかもしている。後部眼瞼炎およびMGDという用語は、同義ではない。後部眼瞼炎は後部眼瞼縁の炎症性疾病を説明するものであり、原因は様々であるが、考えられる単に1つの原因はMGDである(Nichols et al 2011)。その最初期段階では、MGDは後部眼瞼炎の臨床的症状の特徴に関連しない。MGDが進行すると、MGD関連の後部眼瞼炎が存在すると言われている。MGD関連の後部眼瞼炎は、マイボーム腺およびマイボーム腺オリフィスに影響を及ぼす。MGD関連の後部眼瞼炎は、フローラ変化、エステラーゼ放出、リパーゼ放出、脂質変化、および眼瞼炎症を特徴とする。マイボーム腺上皮の過角化(腺の内膜の肥厚)により、閉塞およびマイボーム腺分泌の質の低下が生じるおそれがあり、MGD関連の後部眼瞼炎の原因となるおそれもある。MGD関連の後部眼瞼炎の診断は、圧搾された分泌物の質の変化に関する実証、および/または腺機能の損失(絞り度の低下または損失)によるマイボーム腺圧搾を含む。マイボーム腺疾患に関するTFOSレポートでは、前部眼瞼炎および悪化した炎症性眼表面疾患が、局所眼ステロイドにより管理されるMGDに「伴う(plus)」疾患であることが留意される(Nichols et al 2011)。これら「プラス」疾病はMGDの早期から後期まで様々な重症度で存在する可能性があるため、MGDの根本的な非炎症性病態生理学とこれら共存的疾病に関連する炎症の両方を標的とし得る処置および/または併用処置が必要とされる。
【0163】
MGD関連の炎症性眼疾患は、眼瞼炎関連のMGDとは異なる機構を含む場合がある。
MGD関連の炎症性眼疾患は、Tリンパ球の活性化と炎症組織への移動に関与する炎症性カスケードを特徴とする。Tリンパ球浸潤は、涙腺刺激およびサイトカイン類のアップレギュレーションをもたらす場合がある。MGD関連の炎症性眼疾患に関係する場合がある典型的なサイトカインとして、インターロイキン1、インターロイキン4、インターロイキン6、インターロイキン8、インターフェロンγ、マクロファージ炎症タンパク質1α、および腫瘍壊死因子αが挙げられるが、これらに限定されるものではない。分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路を含むキナーゼ経路も、炎症性カスケードにおいて活性化される。この炎症プロセスは、ムチンを産生する杯細胞の損失、およびさらなる損傷を引き起こしかねない眼表面破壊をもたらす。
【0164】
ドライアイ症候群は乾性角結膜炎(KCS)とも知られており、その初期の原因から漸進的に分離される自立型疾患(self-sustaining disease)と考慮される。ドライアイ症候群は眼表面および眼周囲組織の炎症に関連する。炎症は、Tリンパ球の活性化、および結膜および涙腺中の組織を含む炎症組織への移動を特徴とする。炎症性サイトカイン、ケモカイン、およびマトリクスメタロプロテイナーゼも増加すると特定されている。
【0165】
ドライアイ疾患の動物モデルが確立され、検討されている(Barabino,et al,(Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2004,45:1641-1646))。Barabino,et al(Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2005,46:2766-2771)には、正常マウスを制御環境チャンバ中の低湿度環境にさらすと、涙液分泌、杯状細胞密度、およびドライアイ関連の眼表面兆候の獲得に有意な変化が生じることが記述されていた。しかし、単一の動物モデルは、ドライアイ病因の一因となる免疫、内分泌腺、ニューロン、および環境上の因子を十分に構成していない。
【0166】
抗炎症剤は、ドライアイ症候群を含む眼表面疾患または障害を処置するために使用することができる。コルチコステロイドはドライアイ疾患に有効な抗炎症性治療薬である。例えば、ドライアイがあり涙除去が遅れている患者64名を対象とする4週間の二重盲検無作為化試験では、ロテプレドノールエタボネート0.5%の眼科用懸濁液剤(Lotemax[Bausch and Lomb,Rochester,NY])の1日4回の投与は、一部の兆候と症状の改善においてその溶媒よりも有効であることがわかった(Pflugfelder et al,Am J Ophthalmol(2004);138:444-57)。ドライアイ疾患に関するTFOS 2007のレポートでは、「米国連邦規定において、『分類ラベリング』を受ける眼コルチコステロイドは、ステロイド使用の固有危険が望ましい浮腫および炎症の縮小を得るために受け入れられるとき、眼瞼および眼球結膜、眼球の角膜および前上葉区におけるアレルギー性結膜炎、赤瘡、表在点状角膜炎、帯状疱疹角膜炎、虹彩炎、毛様体炎、選択された伝染性結膜炎などの『ステロイド反応性炎症性疾病』を適応症とする。いくつかの例では、KCSはこのステロイド反応性炎症性疾病の列記に含まれている(Therapy Subcommittee of the International Dry Eye WorkShop,2007.Management and Therapy of Dry Eye Disease:Report of the Management and Therapy Subcommittee of the International Dry Eye WorkShop(2007).2007;5:163-178)」ことが結論付けられた。US FDAはこの結論に賛成していないが、短期間でステロイド、Lotemaxが、ドライアイ疾患に関連する炎症を処置するために一般的に使用されている。
【0167】
他の抗炎症剤として非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。NSAIDは、アラキドン酸からのプロスタグランジンおよびトロンボキサンの合成に関与する酵素であるシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)およびシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)を含むシクロオキシゲナーゼの活性を阻害するものである。プロスタグランジンおよびトロンボキサンシグナル伝達は、炎症および免疫の修飾に関係する。場合によりNSAIDは、眼表面の炎症の処置によりドライアイ疾患を処置するために使用される。
【0168】
ドライアイの処置は、涙液およびムチン産生を増強する薬剤によっても達成される。例えばP2Y2受容体のアゴニストは涙液およびムチン分泌を増大させることが認められている。この機構は、細胞内のカルシウムを上昇させて頂端側細胞膜においてクロリドチャネルを開くP2Y2シグナル伝達に関与すると考えられている。P2Y2受容体はプリン受容体のファミリーに属するものであり、この受容体は、プリンヌクレオシドおよびピリミジンヌクレオチドによる生来のアゴニズムに基づきそれぞれP1受容体およびP2受容体に分類されている。P2受容体はさらに、2つの型としてP2X受容体およびP2Y受容体へと生理学的に分けられる。P2Y受容体は、血小板凝集、免疫性、脂質代謝、および骨活性を含むダイバーシグナル伝達(diver signaling)に関係する。一部の試験は、網膜、毛様体、および水晶体を含む眼組織中のP2XおよびP2Yの受容体の存在も実証している。これら試験は、P2Y2受容体は眼表面に位置するプリン受容体の主要なサブタイプであると考えられると示唆している。P2Y2受容体はさらに、眼組織中の結膜上皮の杯細胞および漿液細胞、ならびにアカゲザルのマイボーム腺腺房細胞および管上皮細胞に位置することが実証されている。
【0169】
Lifitegrast
lifitegrastの化学名は、分子式C29H24Cl2N2O7Sを有する(S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロピオン酸であり、分子量は615.5である。Lifitegrastは一般的に、pH7.0~8.0でオスモル濃度範囲200~330mOsmol/kgである5%点眼液として投与される。lifitegrastの構造式は以下のとおりである。
【0170】
【0171】
Lifitegrastは、ドライアイ疾患(DED)の兆候および症状の処置を適応とする。Lifitegrastは、インテグリンリンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、すなわち白血球に見られる細胞表面タンパク質に結合し、LFA-1がその同族リガンド細胞間接着分子-1(ICAM-1)と相互作用するのを遮断する。ICAM-1はドライアイ疾患において角膜および結膜組織中に過剰発現される場合がある。LFA-1/ICAM-1の相互作用は、T細胞活性化および標的組織への移動をもたらす、免疫学的シナプスの形成に寄与する可能性がある。in vitro試験では、lifitegrastはヒトT細胞株においてT細胞がICAM-1に接着するのを阻害し、ヒト末梢血単核球において炎症性サイトカインの分泌を阻害することができると実証されている。ドライアイ疾患に対するlifitegrastの正確な作用機構は知られていない。lifitegrastに関するより多くの情報は、以下の米国特許第10,124,000号、7,314,938号、7,745,460号、7,790,743号、7,928,122号、8,084,047号、8,168,655号、8,367,701号、8,592,450号、8,927,574号、9,085,553号、9,216,174号、9,353,088号、9,447,077号、および9,890,141号に見ることができる。
【0172】
GW-559090
GW-559090の化学名は、分子式がC31H40N4O8、分子量596.7の(S)-3-(4-((4-カルバモイルピペリジン-1-カルボニル)オキシ)フェニル)-2-((S)-4-メチル-2-(2-(o-トリルオキシ)アセトアミド)ペンタンアミド)プロピオン酸である。GW-559090の構造式は次のとおりである:
【0173】
【0174】
GW-559090は、マウスDSモデルにおけるドライアイの他覚的徴候の改善を実証した有力なインテグリンα4アンタゴニスト(Ravensberg et al,Allergy(2006)61,1097-1103)である。この有力なインテグリンα4アンタゴニストは、おそらくは抗原提示細胞が排出リンパ節に移動するのを妨げ、結果としてドライアイの免疫サイクルを妨害することにより、眼表面の水準で局所的に作用すると認められている(Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.(2015)56(10),5888-5895)。
【0175】
マイボーム腺機能不全とドライアイ疾患用の薬物
二重作用型薬剤としての角質溶解コンジュゲート
本明細書には、マイボーム腺機能不全の非炎症性角質溶解性遮断成分、および涙液減少型を含む炎症関連ドライアイ疾患に同時に対処する二重作用型薬剤が記載される。本明細書に記載の角質溶解コンジュゲートは、(例えば、訓練された専門家または医師による)救急治療、あるいは(例えば、患者の管理下で、あるいは代替的に、訓練された専門家または医師による)長期治療のいずれかとして有用である。ある実施形態ではこの角質溶解コンジュゲートは、本明細書に記載される(例えばこの例に記載されるような)アッセイと方法を使用して試験される。本明細書に記載の角質溶解コンジュゲートは、薬剤の代謝から得られる一次代謝が角質溶解成分およびドライアイ疾患の炎症性成分の両方に対して作用するため、当該技術分野において相当な進歩を表す。
【0176】
一実施形態は、式(Ia)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を提供し、
【0177】
【化31】
式中、
R
1はアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールであり、該アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立して、H、シアノ、ハロ、エステル、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、前記アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルは任意選択で置換され、
R
5は-L-R
5aであり、Lは単結合、アルキル、またはヘテロアルキルであり、R
5aは存在しないか、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
6は、H、アルキル、またはヘテロアルキルであり、
各R
7は独立して、H、シアノ、ハロ、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはハロアルキルであり、
nは0~6であり、
Rは-L’-Dであり、
Dは角質溶解薬であり、ならびに
L’はリンカーである。
【0178】
いくつかの実施形態では、L’は1つ以上のリンカー基を含み、各リンカー基は、単結合、-O-、-S-、アルキル(アルキルエニル)、ヘテロアルキル(ヘテロアルキルエニル)、ジスルフィド、エステル、およびカルボニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記角質溶解薬は1つ以上の基(例えば角質溶解基)を含んでおり、各基(例えば角質溶解基)は独立して、チオール、ジスルフィド、セレノール(例えばセレニド、ジセレニド)、およびカルボン酸からなる群から選択される。
【0179】
ある態様では、本開示は、式(Id)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を提供し、
【0180】
【化32】
式中、
R
1はアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールであり、該アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立して、H、シアノ、ハロ、エステル、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、前記アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルは任意選択で置換され、
R
5は-L-R
5aであり、Lは単結合、アルキル、またはヘテロアルキルであり、R
5aは存在しないか、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
6は、H、アルキル、またはヘテロアルキルであり、
各R
7は独立して、H、シアノ、ハロ、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはハロアルキルであり、
nは0~6であり、
YはOまたはSであり、ならびに
Rは、少なくとも1つのオキソで置換されるアルキルまたはヘテロアルキルであり、さらに任意選択で置換される。
【0181】
ある態様では、本開示は、式(Ia)の構造を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を提供し、
【0182】
【化33】
式中、
R
1はアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールであり、該アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立して、H、シアノ、ハロ、エステル、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、前記アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルは任意選択で置換され、
R
5は-L-R
5aであり、Lは単結合、アルキル、またはヘテロアルキルであり、R
5aは存在しないか、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールは任意選択で置換され、
R
6は、H、アルキル、またはヘテロアルキルであり、
各R
7は独立して、H、シアノ、ハロ、アルコキシ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、またはハロアルキルであり、
nは0~6であり、ならびに
Rは、少なくとも1つのオキソで置換されるアルキルまたはヘテロアルキルであり、さらに任意選択で置換される。
【0183】
いくつかの実施形態では、前記Rのアルキルまたはヘテロアルキルは1つ以上の置換基で置換され、各置換基は独立してアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノ、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、ハロ、オキソ、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルからなる群から選択され、前記ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは(例えばアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、ハロ、およびオキソからなる群から選択される1つ以上の置換基により)任意選択で置換される。
【0184】
いくつかの実施形態では、Rは
【0185】
【化34】
であり、
Xは-O-または単結合であり、
R
8は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、またはハロアルキルであり、
R
9はアルキルまたはヘテロアルキルであり、該アルキルまたはヘテロアルキルは任意選択で置換される。
【0186】
いくつかの実施形態では、前記R9のアルキルまたはヘテロアルキルは1つ以上の置換基で置換され、各置換基は独立してアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノ、セレノール、セレニド、ジセレニド、スルホン、アミド、エステル、カルボン酸、ハロ、オキソ、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルからなる群から選択され、前記ヘテロシクリルおよびシクロアルキルは(例えばアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、チオール、チオエテール、ジスルフィド、セレノール、スルホン、アミド、エステル、ハロ、およびオキソからなる群から選択される1つ以上の置換基により)任意選択で置換される。
【0187】
いくつかの実施形態では、R6はHである。いくつかの実施形態では、R3はHである。いくつかの実施形態では、nは0である。いくつかの実施形態では、R1は任意選択で置換されたアルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである。いくつかの実施形態では、R1はヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、R1はベンゾフランである。いくつかの実施形態では、R2とR4はそれぞれ独立して、H、ハロ、アルコキシ、またはアルキルである。いくつかの実施形態では、R2とR4はハロである。いくつかの実施形態では、R2とR4はクロロである。いくつかの実施形態では、R5は任意選択で置換されたアリール、ヘテロアリール、アリール-アルキル、またはヘテロアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R5は任意選択で置換されたアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R5は置換されたアリール-アルキルである。いくつかの実施形態では、R5はスルホニルで置換されたアリール-アルキルである。
【0188】
ある実施形態では、前記化合物は式(Ib)の構造またはその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0189】
【0190】
ある実施形態では、前記化合物は式(Ic)の構造あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を有する。
【0191】
【0192】
いくつかの実施形態では、Xは-O-であり、R9はC1-6アルキル、-(CRdRe)p(C=O)O(C1-C6-アルキル)、-(CRdRe)pカルボシクリル、-(CRdRe)pヘテロシクリル、または
【0193】
【化37】
であり、
R
dとR
eはそれぞれ独立して、H、ハロ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオエテール、スルフィド、チオール、ジスルフィド、セレノ、ヘテロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、カルボシクリルアルコキシ、カルボキシル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクリルアルコキシであり、
R
10は-(C=O)C
1-
6アルキルであり、
pは1~6であり、ならびに
C
1-
6アルキルは、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、ジスルフィド、セレニド、ジセレニド、アミド、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルにより任意選択で置換される。
【0194】
いくつかの実施形態では、Xは単結合であり、R9はC1-6アルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり、前記C1-6アルキルは直鎖または分枝鎖の場合があり、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、チオール、ジスルフィド、セレニド、ジセレニド、アミド、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキルにより任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、R9は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、-CH2OH、-CH(CH3)OH、-CH2(OCH2CH2)4OH、-CH2CH2(OCH2CH2)4OH、
【0195】
【0196】
いくつかの実施形態では、R9はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、CH2OH、
【0197】
【0198】
一実施形態は、式(I)の構造を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0199】
【0200】
一実施形態は、式(I’)の構造を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0201】
【0202】
一実施形態は、式(II)の構造を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0203】
【0204】
一実施形態では、表1に提供される構造を有する角質溶解コンジュゲートまたはその薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
化合物の調製
本明細書に記載の反応に使用される化合物は、市販の化学物質および/または化学文献に記載される化合物から、当業者に既知の有機合成技術に従い作製される。「市販の化学物質」は、Acros Organics(Pittsburgh,PA)、Aldrich Chemical(Milwaukee,WI,including Sigma Chemical and Fluka)、Apin Chemicals Ltd.(Milton Park,UK)、Avocado Research(Lancashire,U.K.)、BDH Inc.(Toronto,Canada)、Bionet(Cornwall,U.K.)、Chemservice Inc.(West Chester,PA)、Crescent Chemical Co.(Hauppauge,NY)、Eastman Organic Chemicals,Eastman Kodak Company(Rochester,NY)、Fisher Scientific Co.(Pittsburgh,PA)、Fisons Chemicals(Leicestershire,UK)、Frontier Scientific(Logan,UT)、ICN Biomedicals,Inc.(Costa Mesa,CA)、Key Organics(Cornwall,U..)、Lancaster Synthesis(Windham,NH)、Maybridge Chemical Co.Ltd.(Cornwall,U.K.)、Parish Chemical Co.(Orem,UT)、Pfaltz & Bauer,Inc.(Waterbury,CN)、Polyorganix(Houston,TX)、Pierce Chemical Co.(Rockford,IL)、Riedel de Haen AG(Hanover,Germany)、Spectrum Quality Product,Inc.(New Brunswick,NJ)、TCI America(Portland,OR)tRans World Chemicals,Inc.(Rockville,MD)、およびWako Chemicals USA,Inc.(Richmond,VA)を含む、標準の商業的供給源から得られる。
【0211】
本明細書に記載の化合物の調製に有用な反応物の合成を詳述、またはこの調製を記載する論文への参照を提供する適切な参考図書および論文として、例えば“Synthetic Organic Chemistry”,John Wiley&Sons,Inc.,New York、S.R.Sandler et al.,“Organic Functional Group Preparations,”2nd Ed.,Academic Press,New York,1983、H.O.House,“Modern Synthetic Reactions”,2nd Ed.,W.A.Benjamin,Inc.Menlo Park,Calif.1972、T.L.Gilchrist,“Heterocyclic Chemistry”,2nd Ed.,John Wiley&Sons,New York,1992、J.March,“Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure”,4th Ed.,Wiley-Interscience,New York,1992が挙げられる。本明細書に記載の化合物の調製に有用な反応物の合成を詳述、またはこの調製を記載する論文への参照を提供する別の適切な参考図書および論文として、例えば、Fuhrhop,J. and Penzlin G.“Organic Synthesis:Concepts,Methods,Starting Materials”,Second,Revised and Enlarged Edition(1994)John Wiley&Sons ISBN:3 527-29074-5、Hoffman,R.V.“Organic Chemistry,An Intermediate Text”(1996)Oxford University Press,ISBN 0-19-509618-5、Larock,R.C.“Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations”2nd Edition(1999)Wiley-VCH,ISBN:0-471-19031-4、March,J.“Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure”4th Edition(1992)John Wiley&Sons,ISBN:0-471-60180-2、Otera,J.(editor)“Modern Carbonyl Chemistry”(2000)Wiley-VCH,ISBN:3-527-29871-1、Patai,S.“Patai’s 1992 Guide to the Chemistry of Functional Groups”(1992)Interscience ISBN:0-471-93022-9、Solomons,T.W.G.“Organic Chemistry”7th Edition(2000)John Wiley&Sons,ISBN:0-471-19095-0、Stowell,J.C.,“Intermediate Organic Chemistry”2nd Edition(1993)Wiley-Interscience,ISBN:0-471-57456-2、“Industrial Organic Chemicals:Starting Materials and Intermediates:An Ullmann’s Encyclopedia”(1999)John Wiley&Sons,ISBN:3-527-29645-X,in 8 volumes、“Organic Reactions”(1942-2000)John Wiley&Sons,in over 55 volumes、および“Chemistry of Functional Groups”John Wiley&Sons,in 73 volumesが挙げられる。
【0212】
特定および類似の反応物は、大半の公立図書館や大学図書館のほか、オンラインデータベースを介して入手可能な米国化学学会のChemical Abstract Serviceにより調製される既知の化学製品の指標により任意選択で識別される(詳細については、ワシントンDCの米国化学学会へ問い合わせをされたい)。既知ではあるがカタログ内で市販されていない化学物質は、特別な化学物質合成施設により任意選択で調製され、そこでは標準の化学物質供給施設の多く(例えば上記に列記したもの)が特別な化学合成サービスを提供している。本明細書に記載のマイボーム腺機能不全用の二重作用型薬物の薬学的な塩の調製と選択のための参考文献は、P.H.Stahl & C.G.Wermuth“Handbook of Pharmaceutical Salts”,Verlag Helvetica Chimica Acta,Zurich,2002である。
【0213】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の角質溶解コンジュゲートは、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(I)、または式(I’)のいずれか1つに提供される構造を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の角質溶解コンジュゲートは、式(II)に提供される構造を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の角質溶解コンジュゲートは、式(III)に提供される構造を有する。ある実施形態では、本明細書に記載されるような角質溶解コンジュゲートは純粋な化学物質として投与される。他の実施形態では、本明細書に記載の角質溶解コンジュゲートは、選択された投与経路、および例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005))に記載されるような標準薬務に基づき、薬学的に適切または許容可能な担体(本明細書では薬学的に適切(または許容可能)な賦形剤、生理学的に適切(または許容可能)な賦形剤、あるいは生理学的に適切(または許容可能)な担体とも呼ばれる)と組み合わされる。
【0214】
本明細書には、少なくとも1つの角質溶解コンジュゲート、あるいはその立体異性体、薬学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物、またはN-オキシドを1つ以上の薬学的に許容可能な担体ととともに含む医薬組成物が提供される。担体(または賦形剤)は、組成物の他の成分と適合可能であるとともに組成物のレシピエント(対象)に有害でない場合に、許容可能または適切である。
【0215】
一実施形態は、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(I)、または式(I’)のいずれか1つの化合物などの本明細書に提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。一実施形態は、式(II)の化合物などの本明細書に提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。別の実施形態は、眼投与に適した医薬組成物を提供する。別の実施形態は、局所眼投与に適した医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、局所眼投与は、眼瞼辺縁などの眼の中および/または周囲を対象とする投与である。いくつかの実施形態では、局所眼投与は、眼表面および眼瞼の内部表面への投与である。
【0216】
一実施形態は、式(II)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。別の実施形態は、眼投与に適した医薬組成物を提供する。別の実施形態は、局所眼投与に適した医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、局所眼投与は、眼瞼辺縁などの眼の中および/または周囲を対象とする投与である。いくつかの実施形態では、局所眼投与は、眼表面および眼瞼の内部表面への投与である。
【0217】
ある実施形態では、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(I)、または式(I’)のいずれか1つに記載されるような角質溶解コンジュゲートなどの本明細書に提供される化合物(またはその薬学的に許容可能な塩)は、例えば合成方法の工程のうち1つ以上で作製される未反応中間体または合成副産物などの他の有機小分子の約5%未満、約1%未満、あるいは約0.1%未満しか含まないという点で実質的に純粋である。
【0218】
適切な経口剤形として例えば、錠剤、丸剤、サシェ、硬ゼラチンカプセル、軟ゼラチンカプセル、メチルセルロース、または消化管で容易に溶ける別の適切な材料のカプセルが挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む、適切な無毒の固形担体が使用される(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005)を参照)。
【0219】
いくつかの実施形態では、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(I)、式(I’)、式(II)、または式(III)のいずれか1つに記載されるような角質溶解コンジュゲートは、眼への局所投与用の溶液または懸濁液として製剤化される。
【0220】
いくつかの実施形態では、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(I)、式(I’)、式(II)、または式(III)のいずれか1つに記載されるような角質溶解コンジュゲートは、注射による投与用に製剤化される。いくつかの例では、注射製剤は水性製剤である。いくつかの例では、注射製剤は非水性製剤である。いくつかの例では、注射製剤は、ゴマ油など油系製剤である。
【0221】
本明細書に記載されるような少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の投与量は、患者(例えばヒト)の状態、つまり相対的な健康状態、年齢、およびその他の要因に応じて異なる。
【0222】
医薬組成物は、処置(または予防)される疾患に適切な様式で投与される。適切な投与量および適切な投与期間と頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度、有効成分の特定の形態、ならびに投与方法などの因子により決定されることになる。一般に、適切な投与量および処置レジメンは、治療利益および/または予防利益(例えば、より頻度の高い完全寛解または部分寛解、より長い無病生存および/または全生存率、あるいは症状の重症度低下などの臨床アウトカムの改善)をもたらすのに十分な量で組成物を提供する。最適投与量は概して、実験モデルおよび/または臨床試験を使用して決定される。最適投与量は患者の体型、体重、または血液量に依存する。
【0223】
他の実施形態では、本明細書に記載の局所用組成物は、薬学的に適切または許容可能な担体(例えば、薬学的に適切(または許容可能)な賦形剤、生理学的に適切(または許容可能)な賦形剤、あるいは生理学的に適切(または許容可能)な担体)と組み合わされる。典型的な賦形剤は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005))に記載されている。
【0224】
角質溶解コンジュゲートを利用する処置方法
一実施形態は、患者の眼疾患または障害を処置する方法を提供し、該方法は、式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(I)、式(I’)、式(II)、または式(III)のいずれか1つの化合物などの本明細書に提供される化合物またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは該化合物を含む(例えば医薬)組成物を前記患者に投与する工程を含む。他の実施形態は、医薬組成物が局所眼投与に適した溶液または懸濁液の形にある方法を提供する。いくつかの実施形態では、局所眼投与は、眼瞼辺縁などの眼の中および/または周囲を対象とする投与である。いくつかの実施形態では、局所眼投与は、眼表面および眼瞼の内部表面への投与である。
【0225】
別の実施形態は、前記眼疾患または障害が、ドライアイ、リッドワイパー角膜上皮症(LWE)、コンタクトレンズ不快感(CLD)、ドライアイ症候群、蒸発亢進型ドライアイ症候群、涙液減少型ドライアイ症候群、眼瞼炎、角膜炎、マイボーム腺機能不全、結膜炎、涙腺障害、コンタクトレンズに関連する眼の前面の疾病および炎症、眼の前面の感染症、ならびに眼の前面の自己免疫障害から選択される方法を提供する。
【0226】
本明細書には、角質溶解コンジュゲートの患者への投与を含む、前記患者の眼表面障害を処置する方法が記載される。考えられる投与の分類として2つ存在する。1つは、医療従事者の補助により行われる。この分類は、角質溶解コンジュゲートの急性使用と維持的使用(acute and maintenance uses)の両方を含む。一実施形態では、急性使用には、より強力な角質溶解コンジュゲート(この薬剤の濃度または固有活性いずれかの観点から)が必要となる。一実施形態では、維持的使用により、固有活性が少ない低濃度の薬剤の使用が可能になる。一実施形態では、維持的使用は、医療従事者による定期的訪問時に患者に関係する。急性使用と維持的使用はともに、眼を保護するデバイスまたは装置の使用を任意選択で必要とする。一実施形態では、急性使用は医療従事者により行われ、維持的使用は患者または非医療従事者により行われる。考えられるもう1つの投与の分類は、医療従事者の積極的補助により行われるものではなく、患者が自身の眼瞼縁に角質溶解コンジュゲートを投与するものである。一実施形態では、このような投与が長期間にわたり行われる。このように患者が行う複数回投与の様式は、一言で言うと慢性投与である。通常、異なるまたは第2の角質溶解コンジュゲート製剤が、慢性使用または患者自身の使用に推奨される。一実施形態では、異なるまたは第2の製剤は、より低濃度の角質溶解コンジュゲートを利用する。別の実施形態では、異なるまたは第2の製剤は、第1の製剤よりも活性が低い角質溶解コンジュゲートを利用する。
【0227】
本発明の方法はさらに、マイボーム腺の閉塞の物理的除去、それに続く本明細書に記載の角質溶解コンジュゲートの慢性投与および/または維持的投与を含むことを理解されたい。
【0228】
一実施形態は、患者のマイボーム腺機能不全を処置する方法を提供し、該方法は、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物を前記患者に局所投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、マイバム産生を増強する。
【0229】
いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、角化閉塞が軽減するまで行われる。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、角化閉塞の軽減後も定期的に行われる。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、単回投与である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、定期的投与である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、1日1回行われる。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、1日2回行われる。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、1日2回より多く行われる。
【0230】
いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、溶液である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、点眼としての局所投与に適した溶液である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、ゲル、眼球インサート、スプレー、またはその他の局所眼投与方法である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、半固体である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、均質である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、分散体である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、親水性である。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、油性基剤を有している。いくつかの実施形態では、眼に許容可能な担体中に治療上有効量の少なくとも1つの角質溶解コンジュゲートを含む局所投与用組成物は、少なくとも1つの眼に許容可能な賦形剤を有している。
【0231】
一実施形態は、角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与を含む、患者のMGDを処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、週1回行われる。いくつかの実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、週2回行われる。いくつかの実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、1日おきに行われる。いくつかの実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、毎日行われる。いくつかの実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物の局所投与は、1日数回行われる。
【0232】
いくつかの実施形態では、前記方法は、急性治療シナリオにおける処置を含む。別の実施形態では、前記方法は、処置を受けていない患者の処置を含む。別の実施形態では、前記方法は、慢性治療シナリオにおける処置を含む。別の実施形態では、前記方法は、維持療法シナリオにおける処置を含む。急性治療シナリオでの角質溶解コンジュゲートの投与量は、慢性治療シナリオまたは維持療法シナリオに利用される角質溶解コンジュゲートよりも多くてもよい。急性治療シナリオでの角質溶解コンジュゲートは、慢性治療シナリオに利用される角質溶解コンジュゲートと異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、治療期間は、急性治療シナリオとして治療の初期段階に開始し、その後、慢性治療シナリオまたは維持療法シナリオに移行する。いくつかの実施形態では、急性治療シナリオで投与されるマイボーム腺開口薬物は角質溶解薬および/または角膜形成薬であり、慢性治療シナリオまたは維持療法シナリオで投与される薬物は角質溶解コンジュゲートである。
【0233】
ある臨床症状では、患者は、本明細書に記載の角質溶解コンジュゲートのうち1つからなる高濃縮製剤を配するなどによって最初にマイボーム腺の遮断を開くために、最初に医師または医療専門家による治療薬投与を必要とする場合がある。より高濃度の製剤が必要な場合、その投与には、眼表面または周囲組織への刺激または破壊の影響を最小限にするべく眼の遮蔽またはその他の活動が必要な場合がある。このような手順の後、患者は、マイボーム腺の開存性を維持するべく自宅で眼瞼縁に定期的に投与される、異なる角質溶解コンジュゲート製剤を投与される場合がある。この投与は、製剤活性および所望の治療薬プロファイルに応じて1日2回、1日1回、毎週、または毎月行うことができる。
【0234】
本明細書に記載の処置方法の一態様は、組成物の局所投与の場所である。一実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物は、眼に刺激が生じないように投与される。一実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物は眼瞼縁に投与される。
【0235】
本明細書に記載の処置方法の別の一実施形態は、眼の刺激を回避するべく眼に設けられる保護要素の使用である。本明細書に記載の製剤は通常非刺激性であるが、いくつかの実施形態(例えば、高濃度の薬剤、または感度の高い眼への使用時)では、保護要素は、患者の安全性と快適さのために追加の層を施す。一実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物が投与される間、薬剤が角膜および/または結膜に接触するのを低減し、それにより眼への刺激を低減するために、眼には眼シールドが施される。いくつかの実施形態では、この眼シールドはコンタクトレンズまたは眼カバーである。いくつかの実施形態では、この眼カバーは自己接着性を含む。一実施形態では、角質溶解コンジュゲートを含む組成物が投与される間、薬剤が角膜および/または結膜に接触するのを低減し、それにより眼への刺激を低減するために、眼瞼は眼球から引き離される。
【実施例】
【0236】
I.化学合成
溶剤、試薬、および出発材料を市販の供給業者から購入し、別段の記載がない限りそのまま使用した。別段の定めのない限り、すべての反応を室温で行った。出発原料は、商業的供給源から購入、または本明細書に記載の方法に従うか文献の手順を用いて合成した。
【0237】
略語
実施例および本明細書の他の部分では、以下の略語を使用した。
AcOH:酢酸
CD2Cl2:重水素化ジクロロメタン
CDCl3:重水素化クロロホルム
COMU:(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO-d6:ジメチルスルホキシド-d6
EtOAc:酢酸エチル
EtOH:エタノール
HCl:塩酸
H2O:水
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー
KHSO4:硫酸水素カリウム
MeCN:アセトニトリル
MeOH:メタノール
MgSO4:硫酸マグネシウム
mins:分
N2:窒素
NaHCO3:炭酸水素ナトリウム
NH4Cl:塩化アンモニウム
RT:保持時間
r.t:室温
sat.:飽和された
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
【0238】
解析方法
方法A:Phenomenex Gemini C18 5μm 150×4.6mm、A=水+0.1%ギ酸、B=MeOH、40℃、%B:0.0分 5%、0.5分 5%、7.5分 95%、10.0分 95%、10.1分 5%、13.0分 5%、1.5mL/分。
【0239】
方法B:Phenomenex Luna C18(2)3μm、50×4.6mm、
A=水+0.1%ギ酸、B=MeOH+0.1%ギ酸、45℃、%B:0.0分 5%、1.0分 37.5%、3.0分 95%、3.5分 95%、3.51分 5%、4.0分 5%、2.25mL/分。
【0240】
方法C:Phenomenex Luna C18(2)5μm 150×4.6mm、A=水+0.1%ギ酸、B=MeCN、40℃、%B:0.0分 5%、0.5分 5%、7.5分 95%、10.0分 95%、10.1分 5%、13.0分 5%、1.50mL/分。
【0241】
方法D:Phenomenex Luna C18(2)3μm、50×4.6mm、A=水 pH9(重炭酸アンモニウム10mM)、B=MeOH、45℃、%B:0.0分 5%、1.0分 37.5%、3.0分 95%、3.5分 95%、3.51分 5%、4.0分 5%、2.25mL/分。
【0242】
方法E:Waters Sunfire C18 3.5μm 50×4.6mm、A=水+0.1%ギ酸、B=MeCN、40℃、%B:0.0分 5%、1.0分 37.5%、3.0分 95%、3.5分 95%、3.51分 5%、4.0分 5%、2.25mL/分。
【0243】
方法F:Phenomenex Gemini NX C18 5μm 150×4.6mm、A=水+0.1%ギ酸、B=MeOH+0.1%ギ酸、40℃、%B:0.0分 5%、0.5分 5%、7.5分 95%、10.0分 95%、10.1分 5%、13.0分 5%、1.5mL/分。
【0244】
化学合成例1:
1-((イソプロポキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0245】
【0246】
Lifitegrast(250mg、0.410mmol)を無水DMF(5mL)に溶かした撹拌溶液に、1-クロロエチルイソプロピルカーボネート(81.2mg、0.490mmol)、続いて炭酸カリウム(73.0mg、0.530mmol)を加え、この混合物を55℃で2時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、水、続いて飽和ブライン溶液により連続洗浄した。有機質相を乾燥し(MgSO4)、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣をDMSOに溶かし、生成物を逆相分取HPLCにより精製した。生成物を含有する分画を組合せ、真空内で濃縮することにより約1/5の体積にした。混合物をEtOAcで希釈し、水、続いて飽和ブライン溶液により連続洗浄した。有機質相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2Oに溶かし、溶液を冷凍した。溶剤を凍結乾燥により蒸発させることにより、標題化合物をオフホワイト固形物(72mg、24%)として明らかにした。LCMS(方法A):Rt=7.87分;[M+H]+=745.3。1H-NMR(400MHz,CD2Cl2)δ 7.78-7.91(m,2H),7.76(d,J=2.1Hz,1H),7.67(d,J=7.8Hz,1H),7.57-7.64(m,2H),7.49-7.56(m,1H),7.31(d,J=7.8Hz,1H),6.83-6.93(m,1H),6.77(td,J=11.1,5.5Hz,1H),6.32(dd,J=20.4,8.5Hz,1H),5.17-5.28(m,1H),4.51-4.99(m,3H),3.78(s,2H),3.17-3.49(m,2H),2.98-3.07(m,3H),2.87(s,2H),1.49-1.56(m,3H),1.25-1.34(m,6H)。
【0247】
化学合成例2:
4-((2S)-3-(1-((イソプロポキシカルボニル)オキシ)エトキシ)-2-((S)-4-メチル-2-(2-(o-トリルオキシ)アセトアミド)ペンタンアミド)-3-オキソプロピル)フェニル4-カルバモイルピペリジン-1-カルボキシレート
【0248】
【0249】
3-[4-(4-カルバモイルピペリジン-1-カルボニル)オキシフェニル]-2-[[(2S)-4-メチル-2-[[2-(2-メチルフェノキシ)アセチル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]プロピオン酸(80mg、0.134mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶かした。1-クロロエチルイソプロピルカーボネート(50mL、0.327mmol)を加え、混合物を60℃で24時間撹拌した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(80mL、0.459mmol)および1-クロロエチルイソプロピルカーボネート(50mL、0.327mmol)を加え、混合物を60℃で2時間撹拌した。溶剤を真空内で蒸発させ、残渣をEtOAc(40mL)と飽和NaHCO3(aq)(20mL)とに分けた。層を分離し、有機質相を飽和ブライン溶液(20mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、10g SNAPカートリッジ)により精製し、EtOAc→20%アセトン-EtOAcで溶出することにより、[4-[3-(1-イソプロポキシカルボニルオキシエトキシ)-2-[[(2S)-4-メチル-2-[[2-(2-メチルフェノキシ)アセチル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]-3-オキソ-プロピル]フェニル]4-カルバモイルピペリジン-1-カルボキシレート(58mg、60%)をオフホワイト固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=8.36分(98.1%)[M+H]+=727.6。
【0250】
化学合成例3:
1-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0251】
【0252】
方法A:
Lifitegrast(20mg、0.0300mmol)、DIPEA(11mL、0.0650mmol)、およびDMF(1mL)の混合物に、N2雰囲気下で、tert-ブチル1-クロロエチルカーボネート(7.04mg、0.0400mmol)を加えた。反応混合物を60℃で48時間撹拌した。tert-ブチル1-クロロエチルカーボネート(5.9mg、0.033mmol)およびDIPEA(8.9μL、0.065mmol)を加え、反応混合物を60℃で4時間撹拌した。ヨウ化カリウム(5.4mg、0.0325mmol)を加え、反応混合物を60℃で72時間撹拌した。反応混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、この溶液をH2O(2×5mL)と飽和ブライン溶液(5mL)で連続洗浄した。有機質相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。次いで粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製した。
【0253】
方法B:
Lifitegrast(15mg、0.0244mmol)、tert-ブチル1-クロロエチルカーボネート(8.8mg、0.0487mmol)、および炭酸セシウム(8.0mg、0.0244mmol)の混合物をDMF(1mL)に溶かし、この混合物を室温で72時間撹拌した。反応混合物をシリンジフィルタに通し、粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製した。
【0254】
方法C:
Lifitegrast(15mg、0.0244mmol)、tert-ブチル1-クロロエチルカーボネート(8.8mg、0.0487mmol)、炭酸セシウム(8.0mg、0.0244mmol)、およびヨウ化カリウム(2.0mg、0.0122mmol)の混合物をDMF(1mL)に溶かし、この混合物を室温で72時間撹拌した。反応混合物をシリンジフィルタに通し、粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製した。
【0255】
方法D:
方法A、B、Cから得た3つの試料を組み合わせ(MeOH中の溶液として)、溶剤を真空内で蒸発させた。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製し、所望の分画を組み合わせ、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2O(2mL)に溶かし、溶液を冷凍した。溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(10.2mg、16%(組み合わせた収率))を白色固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=7.87分;[M+H]+=759.5 1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 9.15-9.20(1H,m),8.12(1H,d,J=2.3Hz),7.87(1H,br s),7.66-7.78(4H,m),7.53-7.58(1H,m),7.10-7.50(2H,br m),7.03-7.04(1H,m),6.62-6.69(1H,m),4.85-4.93(1H,m),4.60-4.84(2H,br s),3.52-3.94(2H,m),3.25-3.30(1H,m,H2Oピークにより部分的に不鮮明),3.13-3.15(3H,m),2.98-3.05(1H,m),2.76(2H,br s),1.39-1.46(12H,m)。
【0256】
化学合成例4:
1-クロロエチル((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルカーボネート
【0257】
【0258】
(2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール(0.40mL、2.78mmol)およびピリジン(0.45mL、5.56mmol)をDCM(2mL)に溶かした氷冷溶液に、1分かけて1-クロロエチルクロロホルメート(0.30mL、2.78mmol)を滴下し、この混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物をDCM(10mL)とH2O(10mL)とに分け、有機質相を分離した(フェーズセパレータ)。溶剤を真空内で蒸発させ、粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、イソヘキサン→EtOAcで溶出することにより、1-クロロエチル((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルカーボネートを黄色/緑色の油(508mg、72%)として得た。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 6.47(1H,q,J=5.8Hz),4.21(2H,d,J=7.3Hz),3.88(2H,dd,J=11.7,3.9Hz),3.60(2H,J=5.8Hz,2H),1.89-1.95(1H,m),1.73(3H,d,J=6.0Hz),1.30(3H,s),1.26(3H,s)。
【0259】
化学合成例5:
1-((((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メトキシ)カルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0260】
【0261】
Lifitegrast(100mg、0.162mmol)、1-クロロエチル(2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルカーボネート(123mg、0.487mmol)、およびDIPEA(110mL、0.650mmol)をDMF(1mL)に溶かした。混合物をN2下、60℃で18時間撹拌した。反応混合物をEtOAc(25mL)で希釈し、H2O(10mL)、飽和NaHCO3(aq)(10mL)、および飽和ブライン溶液(10mL)で連続洗浄した。有機質相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。次いで3つの精製方策を試みた。
【0262】
精製法A:
粗製材料の約4分の1をMeCN(2mL)に溶かし、分取逆相HPLCにより精製した。所望の分画を組み合わせ、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2O(2mL)に溶かし、溶液を冷凍した。溶剤を真空内で蒸発させた(凍結乾燥)。
【0263】
精製法B:
粗製材料の約4分の1をMeCN(2mL)に溶かし、分取逆相HPLCにより精製した。所望の分画を組み合わせ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。組み合わせた有機物をH2O(50mL)と飽和ブライン溶液(50mL)により連続洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2O(2mL)に溶かし、溶液を冷凍した。溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-((((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メトキシ)カルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(10.3mg、8%)を白色固形物として得た。
【0264】
精製法C:
残りの粗製材料に精製法Aから単離した材料を加え、これをMeCN(2mL)の溶液中で組み合わせて溶液とし、次いで分取逆相HPLCにより精製した。所望の分画を組み合わせ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。組み合わせた有機物を飽和ブライン溶液(50mL)により洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2O(2mL)に溶かし、溶液を冷凍した。溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-((((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メトキシ)カルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエートをオフホワイトの粘性固形物(39.1mg、29%)として得た。LCMS(方法F):Rt=7.78分;[M+H]+=831.6。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 9.18(1H,d,J=7.8Hz),8.12(1H,d,J=2.3Hz),7.88(1H,br s),7.65-7.78(4H,m),7.55(1H,td,J=7.8,1.8Hz),7.10-7.50(2H,br m),7.03-7.04(1H,m),6.68-6.73(1H,m),4.87-4.95(1H,m),4.61-4.81(2H,br s),4.19(2H,d,J=7.3Hz),3.50-4.00(6H,br m),3.27-3.31(1H,m,H20ピークにより部分的に不鮮明),3.13-3.14(3H,m),3.00-3.06(1H,m),2.76(2H,br s),1.89-1.96(1H,br m),1.48(1.5H,d,J=5.5Hz),1.44(1.5H,d,J=5.5Hz),1.31(3H,s),1.27(3H,s)。
【0265】
化学合成例6:
2-((((1-クロロエトキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(2,2-ジメチルプロパノエート
【0266】
【0267】
1-クロロエチルクロロホルメート(56mL、0.519mmol)をDCM(2mL)に溶かした溶液を窒素雰囲気下に置き、0℃に冷却した。ピリジン(56mL、0.693mmol)を加え、続いて[2-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシメチル)-3-ヒドロキシ-プロピル]2,2-ジメチルプロパノエート(200mL、0.346mmol)を加えて、この混合物を室温で3時間撹拌した。1-クロロエチルクロロホルメート(56mL、0.519mmol)およびピリジン(56mL、0.693mmol)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をDCM(10mL)とH2O(10mL)とに分け、層を分離した(フェーズセパレータ)。溶剤を真空内で蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、10g カートリッジ)により精製し、イソヘキサン→40%EtOAc-イソヘキサンで溶出することにより、2-((((1-クロロエトキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(2,2-ジメチルプロパノアート(91mg、69%)を無色の油として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 6.40(1H,q,J=5.8Hz),4.24-4.31(2H,m),4.06-4.18(4H,m),2.43-2.52(1H,m),1.82(3H,d,J=5.5Hz),1.19(18H,s)。
【0268】
化学合成例7:
2-((8S)-10-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)-5-メチル-8-(3-(メチルスルホニル)ベンジル)-3,7,10-トリオキソ-2,4,6-トリオキサ-9-アザデシル)プロパン-1,3-ジイルビス(2,2-ジメチルプロパノエート)
【0269】
【0270】
Lifitegrast(145mg、0.236mmol)、[2-(1-クロロエトキシカルボニルオキシメチル)-3-(2,2-ジメチルプロパノイルオキシ)プロピル]2,2-ジメチルプロパノエート(90mg、0.236mmol)、DIPEA(82mL、0.473mmol)、およびDMF(1mL)の混合物を封管の中60℃で加熱した。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製した。所望の分画を組み合わせ、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2O(3mL)に溶かし、溶液を冷凍した。溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、2-((8S)-10-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)-5-メチル-8-(3-(メチルスルホニル)ベンジル)-3,7,10-トリオキソ-2,4,6-トリオキサ-9-アザデシル)プロパン-1,3-ジイルビス(2,2-ジメチルプロパノエート)(81.1mg、36%)を白色固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=8.54分;[M+H]+=960.1。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 9.16(1H,d,J=7.8Hz),8.11(1H,d,J=2.3Hz),7.87(1H,br s),7.66-7.77(4H,m),7.53-7.57(1H,m),7.10-7.50(2H,br m),7.03-7.04(1H,m),6.68-6.74(1H,m),4.86-4.94(1H,m),4.72(2H,br s),4.15-4.26(2H,m),4.02-4.11(4H,m),3.50-3.90(2H,br s),3.26-3.29(1H,m,H2Oピークにより部分的に不鮮明),3.13-3.14(3H,m),2.98-3.07(1H,m),2.76(2H,br s),2.40-2.47(1H,m),1.48(1.5H,d,J=5.3Hz),1.44(1.5H,d,J=5.3Hz),1.10-1.11(18H,m)。
【0271】
化学合成例8:
1-(((3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロポキシ)カルボニル)オキシ)エチル(S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0272】
【0273】
1-((((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メトキシ)カルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(36mg、0.0433mmol)をTHF(1mL)に溶かした溶液に、2M HCl(aq)(0.50mL、1.00mmol)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物を水(10mL)で希釈し、溶液をEtOAc(2×10mL)により抽出した。組み合わせた有機物を飽和NaHCO3(aq)(10mL)、水(10mL)、および飽和ブライン溶液(10mL)で連続洗浄した。有機質相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製した。所望の分画を組み合わせ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。組み合わせた有機物を飽和ブライン溶液(50mL)により洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2O(2mL)に溶かし、溶液を冷凍した。溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-(((3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロポキシ)カルボニル)オキシ)エチル(S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(9.5mg、28%)を白色固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=7.14分;[M+H]+=791.5。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 9.16-9.21(1H,m),8.11-8.12(1H,m),7.88(1H,br s),7.66-7.78(4H,m),7.53-7.58(1H,m),7.10-7.50(2H,br m),7.03-7.04(1H,m),6.67-6.73(1H,m),4.87-4.93(1H,m),4.73(2H,br s),4.54-4.57(2H,m),4.09-4.18(2H,m),3.54-3.94(2H,br m),3.36-3.47(4H,m),3.27-3.31(1H,m,H2Oピークにより部分的に不鮮明 peak),3.13-3.15(3H,m),2.99-3.06(1H,m),2.76(2H,br s),1.82-1.89(1H,m),1.48(1.5H,d,J=5.3Hz),1.44(1.5H,d,J=5.3Hz)。
【0274】
化学合成例9:
2-((((1-クロロエトキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルジアセテート
【0275】
【0276】
1-クロロエチルクロロホルメート(53mL、0.494mmol)をDCM(2mL)に溶かした溶液をN2雰囲気下に置き、0℃に冷却した。ピリジン(60mL、0.741mmol)を加え、続いて[2-(アセトキシメチル)-3-ヒドロキシ-プロピル]アセテート(200mL、0.247mmol)を加えた。混合物を0℃で6.5時間撹拌した。ピリジン(20ml、0.250mmol)と1-クロロエチルクロロホルメート(26mL、0.250mmol)を加え、混合物を0℃で90分間撹拌した。1-クロロエチルクロロホルメート(26mL、0.250mmol)を加え、混合物を0℃で90分間撹拌した。混合物をDCM(10mL)およびH2O(10mL)により希釈した。層を分離し(フェーズセパレータ)、有機質相を真空内で蒸発させた。粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、10g カートリッジ)により精製し、イソヘキサン→40%EtOAcイソヘキサンで溶出することにより、2-((((1-クロロエトキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルジアセテート(34mg、46%)を無色の油として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 6.39(1H,q,J=5.8Hz),4.27(2H,d,J=6.0Hz),4.09-4.17(4H,m),2.38-2.47(1H,m),2.05(6H,s),1.81(3H,d,J=5.5Hz)。
【0277】
化学合成例10:
2-((8S)-10-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)-5-メチル-8-(3-(メチルスルホニル)ベンジル)-3,7,10-トリオキソ-2,4,6-トリオキサ-9-アザデシル)プロパン-1,3-ジイルジアセテート
【0278】
【0279】
[2-(アセトキシメチル)-3-(1-クロロエトキシカルボニルオキシ)プロピル]アセテート(34mg、0.115mmol)、Lifitegrast(71mg、0.115mmol)、およびDIPEA(40mL、0.229mmol)の混合物をDMF(1mL)に溶かし、混合物を60℃で72時間撹拌した。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製した。所望の分画を組み合わせ、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2O(3mL)に溶かし、溶液を冷凍した。溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、2-((8S)-10-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)-5-メチル-8-(3-(メチルスルホニル)ベンジル)-3,7,10-トリオキソ-2,4,6-トリオキサ-9-アザデシル)プロパン-1,3-ジイルジアセテート(34.4mg、34%)をオフホワイト固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=7.66分;[M+H]+=875.5。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 9.18(1H,d,J=7.8Hz),8.12(1H,d,J=2.3Hz),7.88(1H,br s),7.66-7.77(4H,m),7.53-7.58(1H,m),7.15-7.50(2H,br m),7.03-7.04(1H,m),6.67-6.73(1H,m),4.87-4.94(1H,m),4.73(2H,br s),4.14-4.23(2H,m),4.05(4H,d,J=6.0Hz),3.55-3.90(2H,br m),3.27-3.31(1H,m,H2Oピークにより部分的に不鮮明),3.13-3.14(3H,m),2.99-3.06(1H,m),2.76(2H,br s),2.35-2.41(1H,m),1.98-2.00(6H,m),1.48(1.5H,d,J=5.5Hz),1.44(1.5H,d,J=5.5Hz)。
【0280】
化学合成例11:
1-アセトキシエチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0281】
【0282】
Lifitegrast(60mg、0.0975mmol)、1-クロロエチルアセテート(18mg、0.147mmol)、およびDIPEA(34mL、0.195mmol)をDMF(0.90mL)に溶かしたものを、封管の中16時間、60℃で加熱した。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製することにより、1-アセトキシエチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(28mg、39%)をオフホワイト固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=7.45分;[M+H]+=701.5。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 9.13-9.16(1H,m),8.09(1H,d,J=2.3Hz),7.84(1H,s),7.63-7.74(4H,m),7.51-7.55(1H,m),7.28(2H,s),7.00-7.01(1H,m),6.74-6.79(1H,m),4.82-4.88(1H,m),4.70(2H,br s),3.61(2H,br s),3.23-3.29(1H,m,H2Oピークにより部分的に不鮮明),3.11(3H,m),2.94-3.03(1H,m),2.73(2H,br s),2.01(3H,s),1.39(3H,dd,J=17.9,5.5Hz)。
【0283】
化学合成例12:
1-(イソブチリルオキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0284】
【0285】
Lifitegrast(60mg、0.0975mmol)、1-クロロエチル2-メチルプロパノエート(22mg、0.146mmol)、およびDIPEA(34mL、0.195mmol)をDMF(0.90mL)に溶かしたものを、封管の中16時間、60℃で加熱した。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製することにより、1-(イソブチリルオキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(46mg、61%)を茶色固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=7.88分;[M+H]+=729.5。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 9.13-9.17(1H,m),8.09(1H,d,J=2.3Hz),7.84(1H,s),7.63-7.75(4H,m),7.50-7.55(1H,m),7.27-7.29(2H,m),7.01(1H,m),6.72-6.79(1H,m),4.80-4.89(1H,m),4.70(2H,br s),3.62(2H,br s),3.21-3.26(1H,m),3.11(3H,d,J=3.4Hz),2.94-3.03(1H,m),2.73(2H,br s),2.48-2.53(1H,m),1.39(3H,dd,J=22.9,5.5Hz),1.04(6H,dd,J=7.1,2.1Hz)。
【0286】
化学合成例13:
メチル(2R)-2-(((1-クロロエトキシ)カルボニル)オキシ)プロパノエート
【0287】
【0288】
1-クロロエチルクロロホルメート(339μL、3.14mmol)およびピリジン(381μL、4.71mmol)をN2下、0℃でDCM(2mL)に溶かした溶液に、(R)-メチル2-ヒドロキシプロパノエート(150μL、1.57mmol)をDCM(10mL)に溶かしたものを5分かけて滴下した。反応混合物を室温で16時間撹拌した*。混合物をDCM(30mL)で希釈し、溶液をH2O(30mL)で洗浄した。有機質相を分離し(フェーズセパレータ)、溶剤を真空内で蒸発させた。粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、イソヘキサン→15%EtOAc-イソヘキサンで溶出することにより、メチル(2R)-2-(((1-クロロエトキシ)カルボニル)オキシ)プロパノエート(275mg、75%)を無色の油として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 6.38-6.43(1H,m),5.04-5.10(1H,m),3.77(3H,m),1.84(3H,dd,J=6.0,4.1Hz),1.54-1.56(3H,m)。
【0289】
*代替的に、出発材料のほぼ完全な変換を確実にするために、追加の当量のクロロホルメート(最大0.54)を反応期間中に規則的に少量ずつ加えて、反応混合物を0℃→室温で最大40時間撹拌してもよい。
【0290】
化学合成例14:
1-((((R)-1-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0291】
【0292】
Lifitegrast(60mg、0.0975mmol)、メチル(2R)-2-(((1-クロロエトキシ)カルボニル)オキシ)プロパノエート(34mg、0.146mmol)およびDIPEA(34mL、0.195mmol)をDMF(0.90mL)に溶かしたものを、封管の中60℃で16時間加熱した*。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製することにより**、1-(((((R)-1-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(30mg、37%)をオフホワイト固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=7.62分;[M+H]+=789.5。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 9.14-9.21(1H,m),8.08(1H,d,J=1.8Hz),7.85-7.89(1H,m),7.63-7.74(4H,m),7.50-7.55(1H,m),7.28(2H,br s),7.00-7.01(1H,m),6.64-6.70(1H,m),4.97-5.04(1H,m),4.82-4.90(1H,m),4.64(2H,br s),3.64-3.66(5H,m),3.21-3.26(1H,m),3.11(3H,m),2.96-3.07(1H,m),2.73(2H,br s),1.39-1.48(6H,m)。
【0293】
*代替的に、この混合物をN2下、60℃で最大18時間撹拌してもよい。
【0294】
**加えて、所望の生成物を含有する分画を組み合わせて溶液を冷凍してもよい。溶剤を真空内で蒸発させてもよい(凍結乾燥)。
【0295】
化学合成例15:
以下の化合物を、1-((((R)-1-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエートについて記載したものと同様の方法により合成した。
【0296】
【0297】
化学合成例16:
(R)-2-((アリルオキシ)カルボニル)オキシ)プロピオン酸
【0298】
【0299】
メチル(R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)オキシ)プロパノエート(1.00g、5.05mmol)をTHF(1mL)およびH2O(1mL)に溶かした溶液を、0℃に冷却した。水酸化リチウム一水和物(254mg、6.06mmol)を加え、反応混合物を0℃で3時間撹拌した。水酸化リチウム一水和物(254mg、6.06mmol)を加え、反応混合物を室温で23時間撹拌した。水酸化リチウム一水和物(254mg、6.06mmol)およびメタノール(2mL)を加え、混合物を室温で90分間撹拌した。水酸化リチウム一水和物(254mg、6.06mmol)を加え、反応混合物を40℃で90分間加熱した。溶剤を真空内で蒸発させて体積を最大2mLにし、0℃に冷却した。この溶液を1M HClにより酸性化してpH1とし、H2O(10mL)で希釈し、EtOAc(2×10mL)により抽出した。組み合わせた有機物を飽和ブライン溶液(10mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、溶剤を真空内で蒸発させることにより、(R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)オキシ)プロピオン酸(412mg、47%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 5.88-5.97(1H,m),5.34-5.40(1H,m),5.25-5.30(1H,m),5.05(1H,q,J=7.2Hz),4.66(2H,td,J=3.4,1.8Hz),1.58(3H,d,J=6.9Hz)。
【0300】
化学合成例17:
2-((8S)-10-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)-5-メチル-8-(3-(メチルスルホニル)ベンジル)-3,7,10-トリオキソ-2,4,6-トリオキサ-9-アザデシル)プロパン-1,3-ジイル(2R,2R’)-ビス(2-(((アリルオキシ)カルボニル)オキシ)プロパノエート)
【0301】
【0302】
(R)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)オキシ)プロピオン酸(81mg、0.467mmol)、COMU(200mg、0.467mmol)、およびDIPEA(110mL、0.654mmol)をDCM(3ml)に溶かした溶液を、室温で10分間撹拌した。1-(((3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロポキシ)カルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(74mg、0.0935mmol)をDCM(2mL)に溶かした溶液を加え、この混合物を室温で18時間撹拌した。溶剤を真空内で蒸発させ、残渣をEtOAc(30mL)に溶かした。溶液を飽和NH4Cl(aq)(30mL)、H2O(30mL)、および飽和ブライン溶液(30mL)で連続洗浄した。有機質相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製することにより、2-((8S)-10-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)-5-メチル-8-(3-(メチルスルホニル)ベンジル)-3,7,10-トリオキソ-2,4,6-トリオキサ-9-アザデシル)プロパン-1,3-ジイル(2R,2’R)-ビス(2-(((アリルオキシ)カルボニル)オキシ)プロパノエ)(10mg、10%)を白色固形物として得た。LCMS(方法D):Rt=3.34分;[M+H]+=1103.8。
【0303】
化学合成例18:
(3R)-1-ヒドロキシ-7-((((R)-2-ヒドロキシプロパノイル)オキシ)メチル)-3-メチル-1,4,10-トリオキソ-2,5,9,11-テトラオキサトリデカン-12-イル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0304】
【0305】
2-((8S)-10-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)-5-メチル-8-(3-(メチルスルホニル)ベンジル)-3,7,10-トリオキソ-2,4,6-トリオキサ-9-アザデシル)プロパン-1,3-ジイル(2R,2’R)-ビス(2-(((アリルオキシ)カルボニル)オキシ)プロパノエート)(13mg、0.0113mmol)をDCM(2mL)に溶かした溶液を、N2下で撹拌した。フェニルシラン(5.6mL、0.0453mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)(1.3mg、0.00113mmol)を加え、混合物を室温で10分間撹拌した。溶剤を真空内で蒸発させた。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製し、所望の分画を組み合わせ、溶剤を真空内で蒸発させた。残渣を1:1のMeCN-H2O(2mL)に溶かし、溶液を冷凍した。次いで溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、(3R)-1-ヒドロキシ-7-((((R)-2-ヒドロキシプロパノイル)オキシ)メチル)-3-メチル-1,4,10-トリオキソ-2,5,9,11-テトラオキサトリデカン-12-イル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(3.5mg、33%)を白色固形物として得た。LCMS(方法F):Rt=7.31分;[M+H]+=935.7。1H-NMR(400MHz CDCl3)δ 7.90-7.91(1H,m),7.81-7.85(1H,m),7.72(1H,m),7.61-7.67(3H,m),7.44-7.55(1H,m),7.32(1H,d,J=7.8Hz),7.13(1H,br s),6.74-6.83(2.5H,m),6.64(0.5H,d,J=8.2Hz),5.26-5.32(1H,m),4.77(2H,br s),4.36-4.46(1H,m),4.12-4.32(7H,m),3.78(2H,m),3.44-3.51(1H,m),3.26(1H,dt,J=14.3,7.6Hz),3.05(3H,d,J=1.4Hz),2.70-2.96(4H,br m),2.48-2.55(1H,m),1.57(3H,t,J=5.5Hz,H2Oピークにより部分的に不鮮明),1.37-1.41(6H,m)。
【0306】
化学合成例19:
1-クロロエチル5-((R)-1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタノエート
【0307】
【0308】
炭酸水素ナトリウム(122mg、1.60mmol)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(14mg、0.0400mmol)、およびリポ酸(83mg、0.400mmol)をN2雰囲気下、DCM(3mL)に溶かした撹拌混合物に、H2O(3mL)、続いて1-クロロエチルスルホクロリデート(100mg、0.560mmol)をDCM(1mL)に溶かしたものを加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。有機質相を分離し(フェーズセパレータ)、溶剤を真空内で蒸発させることにより、1-クロロエチル5-((R)-1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタノエートを淡黄色ガム(130mg)として得て、これに対しさらに精製は行わなかった。
【0309】
化学合成例20:
1-(((S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノイル)オキシ)エチル5-((R)-1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタノエート
【0310】
【0311】
粗製1-クロロエチル5-((R)-1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタノエート(74mg、0.275mmol)をDMF(2.5mL)に溶かした。Lifitegrast(178mg、0.275mmol)とDIPEA(96mL、0.549mmol)を加え、混合物を60℃で16時間撹拌した。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製し、所望の分画を組み合わせ、溶剤の体積を40mLまで小さくした。この混合物をMeCNで希釈し、均一な混合物を産生した。溶液を冷凍し、溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-(((S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノイル)オキシ)エチル5-((R)-1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタノエート(9.1mg、4%)を白色固形物として得た。LCMS(方法C):Rt=7.97分;[M+H]+=847.1。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.81-7.89(2H,m),7.71-7.72(1H,m),7.57-7.65(3H,m),7.47-7.52(1H,m),7.28-7.31(1H,m),6.88(1H,td,J=10.8,5.3Hz),6.81(1H,m),6.27(1H,dd,J=10.8,8.0Hz),5.19-5.27(1H,m),4.75(1H,br s),3.81(1H,br s),3.39-3.58(2H,m),3.05-3.29(3H,m),3.03(3H,d,J=4.1Hz),2.87(2H,br s),2.31-2.48(3H,m),1.82-1.92(1H,m),1.38-1.74(11H,m)。
【0312】
化学合成例21:
メチル(R)-2-(トリチルオキシ)プロパノエート
【0313】
【0314】
メチル(R)-2-ヒドロキシプロパノエート(0.91mL、11.1mmol)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(210mg、1.74mmol)、およびピリジン(0.70mL)をMeCN(12mL)に溶かした撹拌溶液に、塩化トリフェニルメチル(2.38g、8.55mmol)を加え、混合物を16時間還流で撹拌した。反応混合物を冷まし、室温で24時間静置させ、次いでEtOAcとH2Oとに分けた。有機質相を1M NaHCO3(aq)、飽和NaHCO3(aq)、飽和Na2CO3(aq)、および飽和ブライン溶液で連続洗浄した。有機質相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させることにより、メチル(R)-2-(トリチルオキシ)プロパノエート(2.98g、77%)を淡黄色油として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.41-7.52(6H,m),7.18-7.35(13H,m),4.20(1H,q,J=6.7Hz),3.22(3H,s),1.37(3H,d,J=6.9Hz)。
【0315】
化学合成例22:
(R)-2-(トリチルオキシ)プロピオン酸
【0316】
【0317】
メチル(2R)-2-トリチルオキシプロパノエート(2.98g、8.60mmol)および水酸化ナトリウム(3.08g、77.0mmol)をMeOH(28mL)に溶かし、混合物を室温で72時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液をH2O(40mL)で希釈した。MeOHを真空内で蒸発させ、溶液をtert-ブチルメチルエーテルで洗浄した。水相に5M HCl(aq)を加えることにより酸性化してpH3とし、tert-ブチルメチルエーテルにより抽出した。有機質相を飽和ブライン溶液で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、溶液を濾過した。溶剤を真空内で蒸発させることにより、(R)-2-(トリチルオキシ)プロピオン酸(1.53g、54%)を淡黄色ガムとして得た。LCMS(方法E):Rt=2.87分、[M-H]-=331.2。
【0318】
化学合成例23:
1-クロロエチル(2R)-2-(トリチルオキシ)プロパノエート
【0319】
【0320】
(R)-2-(トリルオキシ)プロパン酸(100mg、0.301mmol)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(10mg、0.0301mmol)、およびNaHCO3(101mg、1.20mmol)をN2下、DCM(1.5mL)と水(1.5mL)に溶かした撹拌混合物に、1-クロロエチルスルホクロリデート(75mg、0.421mmol)をDCM(0.5mL)に溶かしたものを加え、混合物を室温で2時間撹拌した。溶液をフェーズセパレータに通し、濾液を真空内で蒸発させることにより、粗製1-クロロエチル(2R)-2-(トリチルオキシ)プロパノエート(130mg)を淡黄色固形物として得た。LCMS(方法E):Rt=3.53分(イオン化なし)。
【0321】
化学合成例24:
1-(((R)-2-(トリチルオキシ)プロパノイル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0322】
【0323】
1-クロロエチル(2R)-2-(トリチルオキシ)プロパノエート(100mg、0.253mmol)を無水DMF(2mL)に溶かした撹拌溶液に、DIPEA(88mL、0.506mmol)およびLifitegrast(125mg、0.193mmol)を加え、混合物をN2下、55℃で16時間撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)と飽和NaHCO3(aq)(20mL)で希釈し、層を分離した。有機質相を飽和ブライン溶液(20mL)により洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。粗製生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SP1、10g カートリッジ)により精製し、イソヘキサン→EtOAcで溶出することにより、1-(((R)-2-(トリチルオキシ)プロパノイル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(61mg、25%)を白色固形物として得た。LCMS(方法E):Rt=3.37分;[M+H]+=973.2(弱いイオン化)。
【0324】
化学合成例25:
1-(((R)-2-ヒドロキシプロパノイル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0325】
【0326】
方法A
1-(((R)-2-(トリチルオキシ)プロパノイル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(14mg、0.0144mmol)をN2下、室温で無水DCM(0.5mL)に溶かした撹拌溶液に、トリエチルシラン(110μL、0.0719mmol)を加え、続いてTFA(50μL)を滴下した。反応物を室温で73時間撹拌した。無水DCM(1mL)、トリエチルシラン(110μL、0.0719mmol)、およびTFA(50μL)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。
【0327】
方法B
1-(((R)-2-(トリチルオキシ)プロパノイル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(48mg、0.0493mmol)をN2下、室温で無水DCM(1.5mL)に溶かした撹拌溶液に、トリエチルシラン(79μL、0.493mmol)を加え、続いてTFA(150μL)を滴下した。混合物を室温で75分間撹拌した。
【0328】
方法C
方法AとBから得た2つの反応混合物を組み合わせ、DCM(30mL)と飽和NaHCO3(aq)(30mL)で希釈し、層を分離した。水相をDCM(20mL)で抽出し、組み合わせた有機物を飽和ブライン溶液(10mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させた。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製した。所望の分画を組み合わせ、溶液を冷凍した。溶剤を真空内で蒸発させ(凍結乾燥)、残渣を1:1のMeCN-H2Oに溶かし、冷凍し、真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-(((R)-2-ヒドロキシプロパノイル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(15mg、42%)を白色固形物として得た。LCMS(方法C):Rt=6.49分;[M+H]+=731.2。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.79-7.88(2H,m),7.72(1H,d,J=2.3Hz),7.57-7.68(3H,m),7.51(1H,td,J=7.9,3.5Hz),7.31(1H,d,J=7.8Hz),6.90-6.98(1H,m),6.80-6.86(1H,m),6.22-6.40(1H,m),5.24(1H,dd,J=14.0,6.2Hz),4.79(2H,s),4.24-4.37(1H,m),3.87(2H,br s),3.38-3.44(1H,m),3.21-3.32(1H,m),3.06(3H,d,J=10.5Hz),2.88(2H,s),1.55(3H,dd,J=12.4,5.5Hz),1.42(3H,dd,J=7.1,5.7Hz)。
【0329】
化学合成例26:
以下の化合物を、1-(((R)-2-ヒドロキシプロパノイル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエートについて上述したものと同様の方法により作製した。
【0330】
【0331】
化学合成例27:
1-(((S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノイル)オキシ)エチルピバレート
【0332】
【0333】
1-クロロエチルピバレート(40mg、0.243mmol)を無水DMF(1.6mL)に溶かした撹拌溶液に、DIPEA(85mL、0.486mmol)およびLifitegrast(130mg、0.201mmol)を加えた。混合物をN2下、40℃で72時間撹拌した。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製し、所望の分画を組み合わせ、ほぼ半分の溶剤を真空内で蒸発させた。溶液を冷凍し、溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-(((S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノイル)オキシ)エチルピバレート(40mg、22%)をオフホワイト固形物として得た。LCMS(方法C):Rt=7.66分;[M+H]+=743.1。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.80-7.91(2H,m),7.71(1H,d,J=1.8Hz),7.56-7.64(3H,m),7.49(1H,td,J=7.7,5.3Hz),7.29(1H,d,J=6.4Hz),6.81-6.89(2H,m),6.32(1H,q,J=7.8Hz),5.19-5.27(1H,m),4.74(2H,br s),3.78(2H,br s),3.41(1H,dd,J=14.4,5.7Hz),3.11-3.27(1H,m),3.03(3H,d,J=6.9Hz),2.85-2.94(2H,m),1.50(3H,dd,J=15.8,5.3Hz),1.15-1.19(9H,m)。
【0334】
化学合成例28:
1-((メトキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0335】
【0336】
Lifitegrast(205mg、0.333mmol)およびDIPEA(90mL、0.517mmol)を無水DMF(5mL)に溶かした。1-クロロエチルメチルカーボネート(40mg、0.289mmol)を加え、混合物を室温で16時間撹拌し、続いて40℃で2時間撹拌した。DIPEA(50μ、0.287mmol)を加え、混合物を50℃で20時間撹拌した。溶剤を真空内で蒸発させ、残渣をDCM(20mL)に溶かした。溶液を飽和NaHCO3(aq)(20mL)で洗浄し、層を分離した。有機質相を真空内で蒸発させ、粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、イソヘキサン→8:2EtOAc-イソヘキサンで溶出することにより、1-((メトキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(88mg、42%)を白色固形物として得た。LCMS(方法C):Rt=6.94分;[M+H]+=717.1。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.79-7.86(2H,m),7.70(1H,d,J=1.8Hz),7.57-7.64(3H,m),7.45-7.51(1H,m),7.28(1H,d,J=7.8Hz),6.75-6.80(2H,m),6.43(1H,t,J=8.5Hz),5.24(1H,s),4.72(2H,br s),3.59-4.00(5H,m),3.41(1H,dd,J=14.7,5.5Hz),3.21-3.29(1H,m),3.01(3H,d,J=3.7Hz),2.85(2H,s),1.51-1.64(4H,m)。
【0337】
化学合成例29:
1-((エトキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0338】
【0339】
1-クロロエチルエチルカーボネート(37mg、0.243mmol)をDMF(1.6mL)に溶かした撹拌溶液に、DIPEA(85mL、0.486mmol)およびLifitegrast(120mg、0.185mmol)を加え、混合物をN2下、40℃で16時間撹拌した。DIPEA(85mL、0.486mmol)と1-クロロエチルエチルカーボネート(37mg、0.243mmol)を加え、混合物を40℃で4時間撹拌した。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製した。所望の生成物を含有する分画を組み合わせ、冷凍し、溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-((エトキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(6.0mg、3%)をオフホワイト固形物として得た。LCMS(方法C):Rt=7.15分;[M+H]+=731.1。
【0340】
化学合成例30:
1-クロロエチルプロピオネート
【0341】
【0342】
塩化プロピオニル(7.0mL、80.1mmol)をN2雰囲気下に置き、0℃に冷却した。塩化亜鉛(THF中で0.7M、1.10mL、0.801mmol)を加え、続いて冷やしたアセトアルデヒド(5.40mL、96.1mmol)を加えた。反応混合物を0℃で2時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を真空内で蒸発させた。残渣をイソヘキサン(10mL)に溶かし、溶液を飽和NaHCO3(aq)(10mL)、H2O(10mL)、および飽和ブライン溶液(10mL)で連続洗浄した。有機質相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、溶剤を真空内で蒸発させることにより、1-クロロエチルプロピオネート(4.54g、41%)をオレンジ色の油として得た*。
【0343】
*この生成物は不純物の混合物を含有しており、これ以上精製することなくその後は粗製の状態で使用した。
【0344】
化学合成例31:
1-((エトキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート
【0345】
【0346】
Lifitegrast(100mg、0.162mmol)および1-クロロエチルプロピオネート(111mg、0.812mmol)の混合物をDMF(1mL)に溶かした。DIPEA(170mL、0.975mmol)を加え、混合物をN2下、60℃で18時間撹拌した。粗製生成物を分取逆相HPLCにより精製し、所望の分画を組み合わせ、冷凍し、溶剤を真空内で蒸発させる(凍結乾燥)ことにより、1-((エトキシカルボニル)オキシ)エチル(2S)-2-(2-(ベンゾフラン-6-カルボニル)-5,7-ジクロロ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルボキサミド)-3-(3-(メチルスルホニル)フェニル)プロパノエート(41.1mg、35%)をオフホワイト固形物として得た。LCMS(方法B):Rt=3.08分;[M+H]+=715.3。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.83-7.90(2H,m),7.73(1H,d,J=2.7Hz),7.65(1H,d,J=7.8Hz),7.59-7.61(2H,m),7.48-7.53(1H,m),7.31-7.33(1H,m),7.14(1H,br s),6.87-6.93(1H,m),6.82-6.83(1H,m),6.22-6.28(1H,m),5.21-5.28(1H,m),4.78(2H,br s),3.84(2H,br s),3.40-3.46(1H,m),3.20-3.31(1H,m),3.05(1.5H,s),3.04(1.5H,s)2.88(2H,br s),2.32-2.41(2H,m),1.53(1.5H,d,J=5.2Hz,H2Oピークにより部分的に不鮮明),1.50(1.5H,d,J=5.6Hz),1.11-1.17(3H,m)。
【0347】
II.生物学的評価
実施例1:ウサギ角膜ホモジネート安定性アッセイ
試験化合物におけるウサギ角膜ホモジネート安定性を、HPLC-MSを使用して判定した。本アッセイは、観察した加水分解をエステラーゼ依存性か否かに割り当てることができるように、2つの濃度のウサギ角膜ホモジネート(0.15mg/mLおよび0.45mg/mLの総タンパク質)を対象に行った。
【0348】
ウサギ角膜の均質化
それぞれ約50mgの5つのウサギ角膜(例えばNew Zealand Whites)をスライスし、小さく(1~3mm)薄い片になるまでメスおよび鉗子でこすった。これらを風袋計量されたバイアル(tared vial)に移して正確に秤量し、次いで10体積のPBS水溶液pH7.4で希釈した。
【0349】
試料を氷の上で断続的に冷却し、3分間せん断均質化を行い、続いて3000rpmで3分間遠心分離にかけた。上清をピペットで取り除きバイアルに移し、総タンパク質濃度を280nmで求めた。試料を-78℃で保管した。
【0350】
ウサギ角膜エステラーゼアッセイ
ストック溶液の調製:
10mM化合物ストックを96ディープウェルプレートの中で100μMに希釈した。10mM化合物ストック10μlを50mM HEPESのpH7.5緩衝液990μlに加えた。
化合物をさらに10μMに希釈した。100μM化合物100μlを50mM HEPESのpH7.5緩衝液900μlに加えた。
エステラーゼホモジネートを300ng/μlと900ng/μlに希釈した。
アッセイ条件:
ヒーター・シェーカー(heater shaker)を37℃に設定した。300または900ng/μlエステラーゼホモジネート75μlを、適切な96ウェルプレート(Run Plate)の要求されたウェルそれぞれ(2分、5分、10分、20分、および45分)に分注した。プレートを密封した後、37℃で5分間暖めた。
別の96ウェルPCRプレートを氷の上に置く(Kill Plate)。このプレートの各ウェルに100μlのMeCNを加え、0分、2分、5分、10分、20分、および45分のラベルを付けた。蒸発を最小限にするべくプレートを覆った。
T=0試料のみでは、100μlの冷たいMeCN停止液に50μlの300または900ng/μlエステラーゼホモジネート、続いて50μlの10μM化合物溶液を加えた。
残りの時点では、75μlの10μM化合物溶液を、T=45分の行から始まりT=2分の行で終わるRun Plateに加えた。
適切な時点で、アッセイ混合物100μlを、100μlの冷たいMeCNを含有するマッチングkill plateのウェルに加えた。
LCMS(Waters Xevo TQ-SまたはMicromass Ultima)により実行可能となると速やかに試料を解析した。
【0351】
親コンジュゲートと親濃度を適切な標準応答曲線に対して求め、それぞれの時点で対数-線形プロットの線形領域における親コンジュゲートのピーク面積を使用して親コンジュゲートの半減期(T1/2)を算出した。
【0352】
【0353】
【0354】
実施例2:水性加水分解の安定性アッセイ
試験化合物における水性安定性を、HPLC-MSを使用して判定した。試験化合物10mMのストック溶液をDMSOの中で調製した。10μlのDMSOストック溶液を、50mM HEPESのpH7.5緩衝液990μlまたは1:1(v/v)のアセトニトリル:水に溶かし、100μM溶液を作製した。最終DMSO濃度は1%であった。この溶液を室温に保ち、遅れを生じさせることなくLCMS(Waters Xevo TQ-SまたはMicromass Ultima)に注射した。追加の注射を適切な時点に行った。それぞれの時点で対数-線形プロットの線形領域における親コンジュゲートのピーク面積を使用して、親コンジュゲートの半減期(T1/2)を算出した。
【0355】
【0356】
【0357】
実施例3:実験用ドライアイ疾患マウスモデル
メスのC57BL/6マウス(6~8週齢)またはメスのHEL BCR Tgマウス(6~8週齢)を商業ルートで入手した。Niederkorn,et al.(J.Immunol.2006,176:3950-3957)およびDursun et al.(Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2002,43:632-638)に記載されるように実験用ドライアイを誘導させる。要するに、両側に位置づけたファンから一定の気流を送るとともに部屋の湿度を30%~35%に維持した有孔ケージの中で、マウスを乾燥ストレスに晒す。臭化水素酸スコポラミン(0.5mg/0.2mL;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を1日3回(午前8:00、正午12:00、午後5:00)、左右の後側腹部(alternating hind-flanks)に皮下注射し、疾患を増大させる。マウスを3週間、乾燥ストレスに晒す。未処置の対照マウスは、強制的に空気を送り込まない相対湿度50%~75%の非ストレス環境で維持する。試験動物を試験化合物に晒し、続いて涙液試料を取得して試験化合物の安定性を求め、組織試料を採取して炎症促進性バイオマーカーの存在を判定する。
【0358】
III.製薬剤形の調製物
実施例1:局所眼用途のための溶液
有効成分は表1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であり、濃度が0.1~1.5%w/vの溶液として製剤化した。
【国際調査報告】