(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】スライドの走査方法及び走査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
G01N35/04 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561680
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 DE2020100283
(87)【国際公開番号】W WO2020211901
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102019109962.5
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521452234
【氏名又は名称】ゲービング・トーマス
(71)【出願人】
【識別番号】521452245
【氏名又は名称】ドイスター・トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】ゲービング・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ドイスター・トーマス
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB15
2G058CB16
2G058GA01
2G058GE05
2G058HA04
(57)【要約】
【課題】スライドスキャナのロード及びアンロード作業に手間がかからず、あるスライドスキャナが故障しても未走査の試料が自動的に走査されて走査時間全体が短縮されるスライド走査方法及び装置を提供する。
【解決手段】スライドホルダ用の少なくとも一つの給送ユニット、少なくとも二つのスライドスキャナ、少なくとも一つの保管装置、及び、少なくとも一つの工業ロボット、を有する装置を用いてスライドを走査する方法であって、以下のステップ:
a)給送ユニットに、少なくとも一つのスライドを保持する少なくとも一つのスライドホルダをロードするステップ、
b)少なくとも一つのスライドホルダからスライドを取り出すステップ、
c)取り出したスライドをスライドスキャナのうちの一つに装填するステップ、
d)スライドスキャナのうちの一つからスライドを取り出すステップ、
e)スライドを保管装置に保管するステップ、
を有しており、ステップb)からe)は少なくとも一つの工業ロボットにより実施される、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置を用いてスライドを走査する方法であって、装置は以下のもの:
スライドホルダ用の少なくとも一つの給送ユニット、
少なくとも二つのスライドスキャナ、
少なくとも一つの保管装置、及び、
少なくとも一つの工業ロボット、
を有しており、該方法は以下のステップ:
a)給送ユニットに、少なくとも一つのスライドを保持する少なくとも一つのスライドホルダをロードするステップ、
b)少なくとも一つのスライドホルダからスライドを取り出すステップ、
c)取り出されたスライドを、スライドスキャナのうちの一つに装填するステップ、
d)スライドスキャナのうちの一つからスライドを取り出すステップ、
e)スライドを保管装置に保管するステップ、
を有しており、ステップb)からe)は少なくとも一つの工業ロボットにより実施される、スライド走査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、少なくとも一つのスライドホルダから全てのスライドが取り出されるまで方法ステップb)からe)が繰り返される、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、少なくとも一つの工業ロボットは多関節ロボット、望ましくは6軸、7軸、又は8軸の多関節ロボットである、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、少なくとも一つの多関節ロボットは、スライドをつかむためのグリッパを備えている、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の方法であって、以下のステップ:
-走査工程が完了したという情報を持つ情報信号をスライドスキャナから工業ロボットに伝達するステップ、
を有しており、この時スライドスキャナからのスライド取り出しはこの情報信号の受信後に行われる、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の方法であって、以下のステップ:
f)給送ユニットからスライドホルダを取り出すステップ、及び、
g)スライドホルダを、望ましくはスライドホルダ保管装置に保管するステップ、
を有しており、この時ステップf)及びg)は好適には少なくとも一つの工業ロボットにより実施される、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の方法であって、給送ユニットは少なくとも一つの基礎プレート及び少なくとも一つの前壁を有している、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、基礎プレート上に載せられたスライドホルダが、重量により給送ユニットの前壁又は給送ユニット内に既に存在するスライドホルダに向かって移動するよう、給送ユニットが斜めに配置されている、方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の方法であって、スライドスキャナはそれぞれ回転可能なスライド収容部を有している、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の方法であって、工業ロボットは、スライドスキャナのうちの一つからスライドを取り出してそのスライドを保管装置に保管した後、直ちに、少なくとも一つのスライドホルダからスライドを取り出して、まだロードが行われていないスライドスキャナに装填する、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載の方法であって、全てのスライドスキャナにスライドがロードされるまでステップb)及びc)が繰り返される、方法。
【請求項12】
スライドを走査する装置であって、以下のもの:
A)スライドがロードされたスライドホルダを収容するよう構成された少なくとも一つの給送ユニット、
B)少なくとも二つのスライドスキャナ、
C)走査済のスライドを収容するための少なくとも一つの保管装置、
D)少なくとも一つの工業ロボットであって、
-給送ユニット内に配置されたスライドホルダからスライドを取り出し、
-各スライドスキャナにスライドをロードし、
-各スライドスキャナからスライドを取り出し、及び、
-スライドを保管装置に保管する、
ように構成された、少なくとも一つの工業ロボット、
を有する、スライドを走査する装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、
少なくとも一つの給送ユニットは基礎プレート及び前壁を備えており、
基礎プレートは好適には、一方の端部が高く、一方の端部が低い斜めの平面になっており、
前壁は好適には、基礎プレートの低い方の端部に配置されており、
基礎プレートの低い方の端部には好適には押さえが設けられている、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドの走査方法ならびに走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野とりわけ病理学の分野において細胞又は組織試料を載せたスライドを検査する必要がある。そのためにスライドを顕微鏡にセットして病理学者による観察を行うことができる。かなり以前より伝統的な顕微鏡は、スライドを走査し、取得データを保存し、画面上のデジタル画像として病理学者へ提供するスライドスキャナに置き換えられるようになっている。
【0003】
走査すべき個別のスライドを複数ロードできるローディング装置を備えるスライドスキャナが知られている。また、それぞれのスキャナ用に特別に構成され、スライドをロードできるマガジンを有するスライドスキャナも知られている。そのようなスライドスキャナは個々のスライドを次々に走査することができ、各走査工程の前に毎回スライドをスライドスキャナ内に装填する必要はない。
【0004】
特許文献1には、走査すべきスライドをロードできるマガジンを有する自動スライドスキャナが開示されている。
【0005】
特許文献2には、自動走査顕微鏡用スライド給送ユニットが開示されており、そのスライド給送ユニットはスライドを収容するためのマガジンを有しており、そのマガジンからのスライド取り出しには複雑な装置が用いられている。
【0006】
既知のスライドスキャナの短所として、ローディング装置又はマガジンへのスライド装填を手動で行わねばならないことが挙げられ、その際スライドは、スライドが通常収納されているスライドホルダから個々に取り出してローディング装置又はマガジン内へ移動させる必要がある。走査工程後、スライドは再び手動でローディング装置又はマガジンから取り出す必要がある。
【0007】
既知の自動スライドスキャナの短所としてはさらに、時々発生するスライドスキャナの故障時に、故障の時点でまだ走査されていなかったスライドの走査が行われるのが、そのスキャナが再びスタートモードに復帰した後、又は、未走査のスライドが別のスライドスキャナに載せ替えられた後になることが挙げられる。
【0008】
走査時間はスライドにより大きく異なることがあり、また、検査する試料材料の表面の大きさにも依存する。既知の装置及び方法におけるさらなる短所として、走査時間の長い試料が偶然にも多数ロードされたスライドスキャナは、走査時間が短い試料のみがロードされた第2のスライドスキャナよりはるかに長い時間が必要になることが挙げられる。さらに短所であるのは、2つのスライドスキャナを使用して全体の走査時間を短くするために、走査ジョブをまだ終了していないスライドスキャナから、走査ジョブをすでに完全に処理した別のスライドスキャナへと試料を載せ替えることが作業的にも時間的にも非常に手間がかかることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第97/03447号パンフレット
【特許文献2】独特許出願公開第602004002700号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来技術において既知の短所を克服するスライド走査方法を提供することである。そのため本発明の課題はとりわけ、スライドスキャナのロード及びアンロード作業に手間がかからず、あるスライドスキャナが故障しても未走査の試料が自動的に走査されて走査時間全体が短縮されるスライド走査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するための方法として、スライドホルダ用の少なくとも一つの給送ユニット、少なくとも二つのスライドスキャナ、少なくとも一つの保管装置、及び少なくとも一つの工業ロボットを備える装置を用いるスライドの走査方法が提供され、その方法は以下のステップ、
a)給送ユニットに、少なくとも一つのスライドを保持する少なくとも一つのスライドホルダをロードするステップ、
b)少なくとも一つのスライドホルダからスライドを取り出すステップ、
c)取り出したスライドをスライドスキャナの一つに装填するステップ
d)スライドスキャナの一つからスライドを取り出すステップ
e)スライドを保管装置に保管するステップ、
を含んでおり、ステップb)からステップe)は少なくとも一つの工業ロボットにより実行される。
【0012】
そのためこの方法においては、スライドスキャナのうちのどれが走査工程を実施するかには関係なく、走査すべきスライドを保持するスライドホルダは、走査工程まで給送ユニットにまとめて収納しておかれる。つまり、次々に走査する複数のスライドを個々のスライドスキャナに事前に手動でロードすることはない。個々のスライドスキャナには、前記少なくとも一つの中央給送ユニットからそれぞれ走査すべきスライドが自動的にロードされる。スライドスキャナのうちの一つが走査工程を完了すると、そのスライドは直ちに取り出されて保管装置に保管される。すると、給送ユニットから新しいスライドが取り出されて、最後に空になったスライドスキャナに装填される。こうすることにより全てのスライドスキャナが定期的に使用され、給送ユニット内に収納されている、これから走査すべきスライドの走査は、スライドスキャナの一つが故障しても自動的に行われる。
【0013】
特に急ぐ場合には、スライドホルダ又は個々のスライドを入れ替えることによりいつでも走査すべきスライドの順番を変更することができ、その際本発明の方法が中断されることはない。それにより、本発明の方法を中断することなく、個々の試料の優先度に応じて走査の順番を決定又は変更することができる。
【0014】
給送ユニットは、スライドホルダを収容するよう構成されている。好適には給送ユニットは、様々な製造メーカーの、スロット数も様々であるスライドホルダを無差別に次々に収容できるよう構成されている。有利な実施形態において給送ユニットは少なくとも一つの基礎プレート及び少なくとも一つの前壁を備えている。本発明においてはまた、本発明の装置が二つ以上の給送ユニットを備えられるため、様々な種類のスライドホルダのために様々な給送ユニットを使用することができる。
【0015】
好適には給送ユニットは、基礎プレート上に載せられたスライドホルダが重量により給送ユニットの前壁に向かって、又は、給送ユニット内に既に存在するスライドホルダに向かって移動するように斜めに配置されている。そのため給送ユニットの基礎プレートは斜めの平面を形成している。こうすることによりスライドホルダがロードされた給送ユニットにおいて、スライドホルダが常に前壁に接していることが確保される。
【0016】
有利な実施態様において給送ユニットはU字形であり、少なくとも一つの端部が前壁により閉じられている。U字形は好適には、そのU字形内にスライドホルダを上からセットできるように配置されている。給送ユニットの基礎プレートの平面が斜めになるよう、好適には、前壁付きの端部はもう一方の端部より低く配置されている。
【0017】
スライドホルダは、その中に複数のスライドを互いにほぼ平行に配置できるホルダである。スライドホルダには好適にはそれぞれ3から50枚のスライド用スロットが設けられている。スライドは好適には、スライドの一方の短辺が上に、もう一方の短辺が下に向くようにスロット内に配置されている。スライドは上の短辺のところでスライドホルダから引き出すことができる。
【0018】
好適にはスライドホルダからスライドを取り出すステップには振動ステップが含まれており、この振動ステップでは、工業ロボットがつかんだスライドが、スライドからの取り出し前及び/又は取り出し中に振動させられる。そのような振動運動を実施することにより、スライドホルダ内でつかえてしまったスライド、及び/又は、カバー工程における接着剤の残りによりくっついてしまったスライドを、損傷を与えずに取り出すことができる。
【0019】
スライドホルダ及び給送ユニットの構成として、給送ユニットには所定の方向を向いて配置されたスライドホルダのみがロードされていることが好適である。つまり、給送ユニットにスライドホルダをロードできるのは、スライドホルダの所定の面が給送ユニットの前壁に向いているようにスライドが方向づけされている場合のみである。これは、スライドホルダの一つの面に盛り上がり部又は突起部を設け、これが給送ユニットのロード領域内の対応するくぼみ又は凹部にはまり込むようにすることにより達成される。
【0020】
それにより、給送ユニット内で、給送ユニットのU字形の両方の側面に対して平行に配置されている、スライドホルダの外側に向いた2つの面を互いに区別することができる。同様に、そのような実施形態においては給送ユニットのU字形の2つの側面が互いに区別される。通常、個々のスライドは試料の染色及びカバー工程の後に手動で又は自動的にスライドホルダ内に差し込まれるため、全てのスライドはスライドホルダ内において同じ方向を向いている。給送ユニット内でスライドホルダの方向が決まっていることにより、給送ユニット内の全てのスライドが同じ方向を向いていることが確保されるため、走査すべきスライドがどの方向を向いているかを点検する必要がなくなる。スライドホルダのどの面を所定の面とするかは、個別に、及び、染色及びカバー工程の実行に応じて決定することができる。
【0021】
好適には給送ユニットは押さえを有しており、この押さえは、給送ユニットの前壁において先頭に配置されているスライドホルダが、給送ユニットから上に向かって取り出されないように配置されるものである。それにより、まだ完全に空になっていないスライドホルダが、スライド取り出しの際に意図せずに持ち上げられてしまい、それによりまだ走査されていないスライドが落下して破損してしまう可能性を防止できる。
【0022】
好適には押さえは、給送ユニットに配置された突起部又は隆起部である。スライドホルダを取り出すには、まず、スライドホルダを前壁から、それにより押さえから、給送ユニットのもう一方の端部の方向に動かし、次に上に向かって給送ユニットから取り出す必要がある。
【0023】
好適には工業ロボットは、前壁に接している先頭のスライドホルダからスライドを取り出す。場合によってはスライドホルダの全てのスロットにスライドが入っているわけではないため、工業ロボットは、空である可能性もある個々のスロットを次々につまんでみて、スライドが入っているスロットに到達すると、そこのスライドを取り出す。そうすることにより、スライドが、スライドホルダ内にスライドが存在する順番でスライドスキャナの一つに到達し、各スライドが走査されることが確保される。
【0024】
本発明の有利な実施形態において、本発明の方法はさらに以下のステップ;
f)給送ユニットからスライドホルダを取り出すステップ、及び、
g)スライドホルダを、望ましくはスライドホルダ保管装置に保管するステップ、
を有しており、ここでステップf)及びg)は好適には少なくとも一つの工業ロボットにより実施される。好適にはステップf)及びg)はステップc)の後、スライドホルダの全てのスライドが取り出された後に実施される。空になったスライドホルダは給送ユニットから除去され、給送ユニット内に配置されたさらなるスライドホルダのスライドを取り出して走査することができる。完全に空になったスライドホルダが取り出されると、後続のスライドホルダが自動的に前壁の方向に移動する。空になったスライドホルダを自動的に取り出すことにより、給送ユニットにはさらなるスライドホルダをロードするための場所が生まれる。
【0025】
本発明において「スライド」とは、走査すべき試料が載せられたスライドを指す。そのために試料は多くの場合、スライドガラスプレートとカバーガラス又は透明フィルムとの間に配置されている。スライドはまた、試料又は試料の所属の推論を可能にするコードを有することができる。
【0026】
本発明の方法においてはさらに、スライドコードを走査するステップが設けられている。また好適には、走査済のスライドがどの位置に、及び/又は、どの保管装置に保管されているかという情報も保存される。そのために好適には、保管装置への保管の前にスライド、とりわけスライドのコードが別のスキャナで取得され、走査済のスライドのそれぞれの保管場所がいつでも読み出し可能となっている。
【0027】
好適には、スライドをスライドスキャナで走査した後、スライドを保管する前に、スライドに損傷があるかどうかが点検される。それにより、ロード又はアンロード中に破損したスライド部分がどのスライドスキャナにも残っていないことが確保される。そのために望ましくはスライドの長さが点検される。長さの点検は望ましくは機械的に実行される。特に望ましくは、長さの点検のためにスライドはスイッチ、とりわけマイクロスイッチを通過させ、スライドが元の長さを有している場合のみ、スイッチを作動させる。スライドに損傷があると判断された場合、損傷のあるスライドの走査を行ったスライドスキャナに新しいスライドはロードされず、「ブロック中」として扱われる。しかしブロックされていないスライドスキャナは引き続き使用できるため、本発明の方法を引き続き実行することができる。
【0028】
本発明の有利な実施形態において、スライドスキャナにより走査できなかったスライド、及び/又は、スライドコードが読み取れなかったスライド、及び/又は、損傷があると判断されたスライドは、保管装置ではなく不良スライド用の別の収集装置に保管される。そうすることにより、これら不良スライドが後に保管装置から取り出されて観察されることがなくなる。このことは、手動で誤ってスライドホルダに挿入したスライドについても同様であり、もしそのスライドコードを読み取ることができない場合には、別の収集装置に保管される。
【0029】
本発明の方法では、少なくとも二つのスライドスキャナが使用される。そのため本発明では少なくとも2つ、しかし走査すべきスライドの数によっては3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の数のスライドスキャナが用いられる。そのため本発明においては、スライドを貯蔵しておくためのローディング装置又はマガジンを持たない、安価でエラーの少ないスタンドアロン型のスライドスキャナを使用することが可能である。
【0030】
保管装置とは、走査工程の後にスライドを無作為に又は順序良く保管しておく装置である。好適にはスライドは、スキャナから取り出された順番、つまり保管装置に到着した順番で保管装置に保管され、その際、給送ユニット内で別の順番で配置されていたかどうかは関係しない。保管装置はまた、複数の部分保管装置で構成することもできる。そのような複数部分から成る保管装置においては、本発明の方法の実行中に、いっぱいになった部分保管装置を新しい部分保管装置と交換することができ、それは、交換工程中も走査済のスライドを保管するための別の部分保管装置が用意されているからである。
【0031】
「少なくとも一つの工業ロボット」とは、プログラム可能な一つ又は複数の機械であって、単独でもしくは協力しあって少なくとも方法ステップb)からe)を実施できるものを指す。工業ロボットが一つのみの場合、その工業ロボットは少なくとも方法ステップb)からe)を実施できる必要があり、そのためにその工業ロボットは好適にはロボットアーム、制御装置ならびにグリッパを有している。本発明においては、少なくとも方法ステップb)からe)を実施できる2つ以上の工業ロボットが設けられる。本発明の望ましい実施形態においては1つの工業ロボットのみが使用される。
【0032】
本発明の有利な実施形態において、この少なくとも一つの工業ロボットは多関節ロボットである。好適にはこの少なくとも一つの工業ロボットは6軸、7軸、又は8軸の多関節ロボットである。望ましくはこの多関節ロボットは、スライドをつかむためのグリッパを有している。好適にはスライドは、そのスライドをスライドホルダから取り出した多関節ロボットにより、スライドスキャナに装填される。
【0033】
スライドスキャナは、各スライドスキャナへのロード及びアンロードを工業ロボットにより行えるよう配置されている。スライドスキャナは同一平面内に配置することができる。また、とりわけ7軸又は8軸の多関節ロボットを使用する場合は、スライドスキャナを互いに隣に配置することも、上下に配置することもでき、スライドスキャナから成る壁を形成することも可能である。工業ロボットを取り囲むようにスライドスキャナの複数の壁を配置することもできる。
【0034】
本発明の方法は少なくとも以下のステップを有している:
a)少なくとも一つのスライドを保持する少なくとも一つのスライドホルダを、給送ユニットにロードするステップ、
b)少なくとも一つのスライドホルダからスライドを取り出すステップ、
c)取り出したスライドを、スライドスキャナのうちの一つに装填するステップ、
d)スライドスキャナのうちの一つからスライドを取り出すステップ、
e)スライドを保管装置に保管するステップ。
ステップb)からe)は少なくとも一つの工業ロボットにより実施される。
【0035】
有利な実施形態においてステップa)からe)は、上記記載の通りの順番で実施される。
【0036】
本発明の方法はさらなる方法ステップを有することもできる。本発明の有利な実施形態においてステップb)及びc)は、ステップd)及びe)を実施する前に、各スライドスキャナにスライドがロードされるまで何度でも繰り返される。
【0037】
望ましくは方法ステップb)からe)は、少なくとも一つのスライドホルダから全てのスライドが取り出されるまで、及び/又は、保管装置が完全にいっぱいになるまで、何度でも繰り返される。
【0038】
本発明においてはさらに、方法ステップb)からe)のうちの一つの方法ステップと同時に、方法ステップa)が再び実施される。そうすることにより本発明の方法では、本発明の方法の実施中に、給送ユニットにスライドホルダをさらにロードすることができる。
【0039】
本発明の有利な実施形態において、本発明の方法は、
-走査工程が完了したという情報を含む情報信号を、スライドスキャナから工業ロボットへ伝達するステップ、
を有しており、この時、この情報信号が受信された後に、スライドスキャナからスライドが取り出される。そうすることによりスライドスキャナは、走査工程が完了したという情報を伝達することができるため、スライドをスキャナから取り出すことができる。スライドスキャナの情報は、制御装置を介して少なくとも一つの工業ロボットに転送することができる。制御装置は工業ロボット自身の構成部分として構成することができる。
【0040】
本発明の有利な実施形態において工業ロボットは、スライドスキャナのうちの一つからスライドを取り出して該スライドを保管装置に保管した後に直ちに、少なくとも一つのスライドホルダからスライドを取り出し、このスライドを、まだロードされていないスライドスキャナ又は直近に空になったスライドスキャナに装填し、その際これは、その間に別のスライドスキャナから走査工程完了という情報の伝達があったかどうかには関係なく行われる。そうすることによりスライドスキャナの休止時間が短縮される。
【0041】
本発明の有利な実施形態においてスライドスキャナはそれぞれ、スライド用の回転可能な収容部を備えている。特に望ましくはこの収容部は、ロード時に垂直軸周りに90°回転するターンテーブルとして構成されている。従来技術におけるスライドスキャナの多くが備えるスライド用収容部においてスライドは、スライドスキャナの正面から見て横から装填するようになっている。工業ロボットによるスライド装填を容易にするためにスライド収容部は、ロード時に、スライドが正面から収容部に装填されるように回転する。
【0042】
本発明の課題はさらに、従来技術において既知の短所を克服するスライドスキャン装置を提供することである。そのため本発明のこの課題はとりわけ、本発明の方法を実施し得る装置を提供することとすることができる。
【0043】
この課題を解決するためのスライドスキャン装置は以下のものを有している。
A)スライドがロードされているスライドホルダを収容するよう構成された少なくとも一つの給送ユニット、
B)少なくとも二つのスライドスキャナ、
C)走査済のスライドを収容するための少なくとも一つの保管装置、及び、
D)少なくとも一つの工業ロボットであって、
-給送ユニット内に配置されたスライドホルダの一つからスライドを取り出し、
-各スライドスキャナにスライドをロードし、
-各スライドスキャナからスライドを取り出し、及び、
-スライドを保管装置に保管する、
ように構成されている少なくとも一つの工業ロボット。
【0044】
この本発明の装置はそれにより、本発明の方法を実施するように構成されている。そのため本装置により、本発明の方法を自律的に、連続的に、また、手動介入なしに実施することが可能である。本発明の装置の少なくとも一つの工業ロボットは、本発明の方法ステップ、とりわけステップb)からg)を実施することができる。先述の通り、これは望ましくは多関節ロボットの形である一つの工業ロボットとすること、又は、総体として全ての方法ステップを実施できる複数の工業ロボットとすることができる。好適には本発明の装置は、スライドを給送ユニットからスライドスキャナへ、及び、スライドスキャナから保管装置へと輸送するためのただ一つの工業ロボット、望ましくはただ一つの多関節ロボットのみを備えている。
【0045】
本発明の有利な実施形態において、少なくとも一つの給送ユニットには基礎プレート及び前壁が設けられており、基礎プレートは好適には斜めの平面で一端が低く、一端が高くなっており、前壁は好適には基礎プレートの低い方の端部に配置されており、基礎プレートの低い方の端部には好適には押さえが設けられている。
【0046】
本発明の装置の構成部品A)からD)は好適にはベースフレーム上に配置されている。
【0047】
本発明の装置の説明と本発明の方法の説明とは互いに補完しあっているため、方法について本発明の装置と関連付けて説明されている記述があれば、それは個別に又は組み合わせて、方法の記述と理解すべきである。また、装置について本発明の方法と関連付けて説明されている特徴があれば、それも個別に又は互いに組み合わせて、本発明の装置の特徴と理解すべきである。
【0048】
以下に図を用いて本発明を再度説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1には、スライドを走査する装置1が図示されており、該装置はベースフレーム2を有しており、ベースフレーム2の上に給送ユニット3、5つのスライドスキャナ4、5、6、7、8、工業ロボット9、及び、保管装置12が配置されている。
【0051】
給送ユニット3はスライドホルダ用のある種の滑り台を形成しており、そのためスライドホルダは、斜面の形の基礎プレート上に置かれると、低い位置に配置された前壁まで移動する。
【0052】
工業ロボット9は、6軸の多関節ロボットであり、スライド11を保持するグリッパ10を有する。スライド11は、給送ユニット3内に配置されたスライド保持部からグリッパ10を用いて取り出され、まだロードされていないスライドスキャナ4に装填されると、このスライドスキャナ4が走査工程を実施する。次にさらなるスライドを給送ユニット3から取り出し、まだロードされていないスライドスキャナ5、6、7、8に装填することができる。この工程は、スライドスキャナ4、5、6、7、8の全てにロードが行われるまで何度も繰り返すことができる。スライドスキャナ4、5、6、7、8のうちの一つが走査工程を完了したという情報が伝達されると、そのスライドスキャナからグリッパ10によりスライドが取り出され、保管装置12に保管される。すると、空になったスライドスキャナに、走査すべきスライドを再びロードできるようになる。
【符号の説明】
【0053】
1)装置
2)ベースフレーム
3)給送ユニット
4)スライドスキャナ
5)スライドスキャナ
6)スライドスキャナ
7)スライドスキャナ
8)スライドスキャナ
9)工業ロボット
10)グリッパ
11)スライド
12)保管装置
【国際調査報告】