(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】結腸直腸癌又はその前癌段階を診断又は予後診断するin vitroでの方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20220622BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220622BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220622BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z ZNA
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561853
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060517
(87)【国際公開番号】W WO2020212378
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520258116
【氏名又は名称】セルビソ ガレゴ デ サウーデ
(71)【出願人】
【識別番号】520258105
【氏名又は名称】フンダシオン インスティテュート デ インベスティガシオン サニタリア デ サンティアゴ デ コンポステーラ (フィディス)
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディアス ラガーレス アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ロペス ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】クルヘイラス マルティネス アナ ベレン
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス カサノバ アイトル
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS10
(57)【要約】
本発明の方法は、患者から得たリキッドバイオプシーにおける遺伝子LINC00473プロモーターのメチル化状態の決定を意味する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸癌及び/又はその前癌段階を診断するin vitroでの方法であって、患者から得たリキッドバイオプシーにおいて少なくとも遺伝子LINC00473のメチル化状態を決定することを含み、健康な対照被験体で測定される遺伝子LINC00473のメチル化の参照レベルと比較して、遺伝子LINC00473のより高いレベルのメチル化は、被験体が結腸直腸癌及び/又はその前癌段階を患っていることを示す、方法。
【請求項2】
結腸直腸癌を予後診断するin vitroでの方法であって、患者から得たリキッドバイオプシーにおいて少なくとも遺伝子LINC00473のメチル化状態を決定することを含み、対照患者で測定される遺伝子LINC00473のメチル化の参照レベルと比較して、遺伝子LINC00473のより高いメチル化のレベルは、前記患者の予後が不良であることを示す、方法。
【請求項3】
前記リキッドバイオプシーが血漿、血液又は血清の試料である、請求項1又は2に記載のin vitroでの方法。
【請求項4】
前記前癌段階が結腸直腸腺腫、好ましくは進行性結腸直腸腺腫である、請求項1~3のいずれか一項に記載のin vitroでの方法。
【請求項5】
遺伝子LINC00473のメチル化状態が、少なくともプロモーター領域のCpGで決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載のin vitroでの方法。
【請求項6】
遺伝子LINC00473のメチル化状態が、少なくとも染色体位置Chr6:166402081とChr6:166402638との間に位置するプロモーター領域のCpGで決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載のin vitroでの方法。
【請求項7】
遺伝子LINC00473のメチル化状態が、少なくともChr6:166402638、及び/又はChr6:166402474、及び/又はChr6:166402463、及び/又はChr6:166402457、及び/又はChr6:166402416、及び/又はChr6:166402379、及び/又はChr6:166402375、及び/又はChr6:166402364、及び/又はChr6:166402081を含む群から選択される染色体位置に位置するプロモーター領域のCpG、好ましくは、cg06545143、及び/又はcg08886973、及び/又はcg21306006を含む群から選択されるCpGにおいて決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載のin vitroでの方法。
【請求項8】
前記結腸直腸癌及び/又はその前癌段階の診断が画像技術、好ましくは結腸内視鏡検査によって確認される、請求項1~7のいずれか一項に記載のin vitroでの方法。
【請求項9】
結腸直腸癌及び/又はその前癌段階の診断及び/又は予後診断のための、少なくとも遺伝子LINC00473のメチル化状態のin vitroでの使用。
【請求項10】
結腸直腸癌及び/又はその前癌段階の診断及び/又は予後診断のための、少なくとも遺伝子LINC00473のメチル化状態を決定するための試薬を含むキットのin vitroでの使用。
【請求項11】
前癌段階が結腸直腸腺腫、好ましくは進行性結腸直腸腺腫である、請求項9又は10に記載のin vitroでの使用。
【請求項12】
遺伝子LINC00473のメチル化状態が、少なくともプロモーター領域のCpGで決定される、請求項9~11のいずれか一項に記載のin vitroでの使用。
【請求項13】
遺伝子LINC00473のメチル化状態が、少なくとも染色体位置Chr6:166402081とChr6:166402638との間に位置するプロモーター領域のCpGで決定される、請求項9~12のいずれか一項に記載のin vitroでの使用。
【請求項14】
遺伝子LINC00473のメチル化状態が、少なくともChr6:166402638、及び/又はChr6:166402474、及び/又はChr6:166402463、及び/又はChr6:166402457、及び/又はChr6:166402416、及び/又はChr6:166402379、及び/又はChr6:166402375、及び/又はChr6:166402364、及び/又はChr6:166402081を含む群から選択される染色体位置に位置するプロモーター領域のCpG、好ましくは、cg06545143、及び/又はcg08886973、及び/又はcg21306006を含む群から選択されるCpGにおいて決定される、請求項9~13のいずれか一項に記載のin vitroでの使用。
【請求項15】
前記結腸直腸癌及び/又はその前癌段階の診断が画像技術、好ましくは結腸内視鏡検査によって確認される、請求項9~14のいずれか一項に記載のin vitroでの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に関する。特に、本発明は、結腸直腸癌(CRC)及び/又はその前癌段階を診断及び/又は予後診断するin vitroでの方法に関する。本発明の方法は、好ましくは患者から得たリキッドバイオプシーにおける遺伝子LINC00473のメチル化状態の決定を含み、確立された参照対照レベルに対する遺伝子LINC00473のより高いレベルのメチル化は、結腸直腸癌の存在、その前癌段階、及び/又は疾患の予後不良の指標である。
【背景技術】
【0002】
CRC(結腸癌、直腸癌、又は腸癌としても知られる)は、結腸又は直腸(大腸の一部)での癌の発症である。結腸直腸癌の大部分は腺癌である。これは、結腸の組織内に多数の腺があるためである。これらの腺は、遺伝子レベルで多くの変化を起こすと、良性から浸潤性の悪性結腸癌に移行するものとして予測可能に進行する。結腸の腺腫、特に進行性結腸直腸腺腫(AA:advanced colorectal adenoma)は、悪性腺癌の良性バージョンであるが、除去しないと悪性になる可能性がある(通常、悪性になり結腸癌につながる傾向があるため、除去される)。
【0003】
スクリーニングは結腸直腸癌を予防し、それによる死亡を減少させるための効果的な方法であり、50歳~75歳で始めることを勧められる。結腸直腸癌の最もよく知られていて最も頻繁に使用されるスクリーニング検査は、糞便免疫化学検査(FIT)と呼ばれる。FITは、前癌又は癌の兆候である可能性がある便試料中の血液を検出する。異常な結果が得られた場合は、通常、結腸内視鏡検査が推奨され、これにより、医師は結腸及び直腸の内部を見て診断を下すことができる。結腸内視鏡検査中に、小さなポリープが見つかった場合は取り除くことができる。大きなポリープ又は腫瘍が見つかった場合は、生検を行って癌性かどうかを確認することができる。消化器病専門医は、結腸内視鏡検査を使用してこれらの腺腫及びポリープを見つけて除去し、浸潤性腺癌につながる遺伝的変化を獲得し続けるのを防ぐ。
【0004】
上で説明したように、FITは現在結腸直腸癌のスクリーニングに使用されているが、FITはAAに対する感度が低いことに留意することが重要であり、この種の患者のほとんどが誤って疾患がないと分類される可能性があることを意味する。その結果、FITは感度が低いために腺腫を特定することができない。さらに、FITは糞便試料を使用するため、コンプライアンスが低くなる。一方、結腸内視鏡検査は侵襲的技術であり、最も重篤な合併症は一般に胃腸穿孔である。さらに、結腸内視鏡検査は、今日、麻酔を伴う手技であり、結腸内視鏡検査のための腸の準備中に通常投与される下剤は幾つかの消化器系の問題と関連する。
【0005】
CRC又はAAに罹患するリスクのある一般集団をスクリーニングするために今日使用されている方法は、高率の偽陽性に関連していることに留意することが重要である。その結果、今日では大量の不必要なフォローアップ結腸内視鏡検査が行われている。
【0006】
本発明は、結腸直腸癌又は結腸直腸腺腫(特に進行性結腸直腸腺腫)を患うリスクのあるヒト被験体を識別又はスクリーニングするin vitroでの方法に焦点を合わせているため、上記の問題に対する明確な解決策を提供する。本発明の方法は、好ましくは、患者から得たリキッドバイオプシー(例えば、血漿、血液又は血清)に基づくことから、結腸直腸癌スクリーニングへのコンプライアンスの改善が期待される。さらに、本発明の方法は、高い感度及び特異度をもたらし、これは、結腸直腸癌及び結腸直腸腺腫の両方の検出のための強力で費用効果の高い方法であることを意味する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、結腸直腸癌及び/又はその前癌段階を診断又は予後診断するin vitroでの方法(以下、「本発明の方法」)に関する。本発明の方法は、好ましくは、低侵襲性生体試料である、患者から得たリキッドバイオプシーで実施される。本発明の方法は、高い感度及び特異度をもたらし、これは、本発明の方法が結腸直腸癌及び/又はその前癌段階の両方の検出のための強力で費用効果の高い方法であることを意味する。
【0008】
本発明の方法は、CRC又はAAに罹患するリスクのある一般集団をスクリーニングするために今日使用されている方法(FIT)と比較してより高い感度及び特異度を有することから、より低いパーセンテージの偽陽性と関連する。結果として、本発明に記載される方法は、フォローアップ結腸内視鏡検査の数を減らすのに明らかに役立ち、したがって、今日の患者のスクリーニング又は診断方法が改善される。本発明の方法が実施された後、患者が結腸直腸癌及び/又は前癌段階に罹患している可能性があると判断された場合、結果は結腸内視鏡検査によって確認される。しかしながら、患者が結腸直腸癌及び/又は前癌段階に罹患している可能性があると判断されない場合、結腸内視鏡検査を実施する必要はなく、本発明の方法によるルーチン検査が推奨される。
【0009】
特に、本発明の第1の実施の形態は、結腸直腸癌及び/又はその前癌段階を診断するin vitroでの方法であって、患者から得たリキッドバイオプシーにおいて少なくとも遺伝子LINC00473のメチル化状態を決定することを含み、健康な対照被験体で測定される遺伝子LINC00473のメチル化の参照レベルと比較して、遺伝子LINC00473のより高いレベルのメチル化は、被験体が結腸直腸癌及び/又はその前癌段階を患っていることを示す、方法に関する。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、結腸直腸癌及び/又はその前癌段階を予後診断するin vitroでの方法であって、患者から得たリキッドバイオプシーにおいて少なくとも遺伝子LINC00473のメチル化状態を決定することを含み、患者で測定される遺伝子LINC00473のメチル化の参照レベルと比較して、遺伝子LINC00473のより高いメチル化のレベルは、患者の予後が不良であることを示す、方法に関する。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、結腸直腸癌及び/又はその前癌段階の診断及び/又は予後診断のための、少なくとも遺伝子LINC00473のメチル化状態のin vitroでの使用に関する。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、結腸直腸癌及び/又はその前癌段階の診断及び/又は予後診断のための、少なくとも遺伝子LINC00473のメチル化状態を決定するための試薬を含むキットのin vitroでの使用に関する。
【0013】
好ましい実施の形態において、リキッドバイオプシーは、血漿、血液又は血清の試料である。血漿が、特に好ましい。
【0014】
好ましい実施の形態において、前癌段階は、結腸直腸腺腫、好ましくはAAである。
【0015】
好ましい実施の形態において、遺伝子LINC00473のメチル化状態は、少なくともプロモーター領域のCpGで決定される。
【0016】
好ましい実施の形態において、遺伝子LINC00473のメチル化状態は、少なくとも転写開始部位(TSS)の周辺3000bpであるプロモーター領域のCpGにおいて決定される。これは、TSSの1500bp上流又は1500bp下流を意味する。
【0017】
好ましい実施の形態において、遺伝子LINC00473のメチル化状態は、少なくとも染色体位置Chr6:166402081とChr6:166402638との間に位置するプロモーター領域のCpGで決定される。
【0018】
好ましい実施の形態において、遺伝子LINC00473のメチル化状態は、少なくともChr6:166402638、及び/又はChr6:166402474、及び/又はChr6:166402463、及び/又はChr6:166402457、及び/又はChr6:166402416、及び/又はChr6:166402379、及び/又はChr6:166402375、及び/又はChr6:166402364、及び/又はChr6:166402081を含む群から選択される染色体位置に位置するプロモーター領域のCpG、好ましくは、cg06545143、及び/又はcg08886973、及び/又はcg21306006を含む群から選択されるCpGにおいて決定される。
【0019】
好ましい実施の形態において、結腸直腸癌及び/又はその前癌段階の診断は、画像技術、好ましくは結腸内視鏡検査によって確認される。
【0020】
本発明の方法によれば、遺伝子LINC00473のメチル化状態を測定した後、スコア値を得て、このスコア値を、診断規則を規定する閾値と比較する。このスコア値が閾値よりも高い場合、対応する試料は陽性試料として分類され、これは、患者が結腸直腸癌及び/又はその前癌段階に罹患している可能性があることを示す。感度及び特異度の値を最適化するために、閾値が規定される。したがって、好ましい実施の形態において、本発明の方法は、a)被験体から得たリキッドバイオプシーにおいて、遺伝子LINC00473のメチル化状態を測定することと、b)リスクスコアを得るためにメチル化値を処理することとを含み、そしてc)得られたリスクスコア値の偏差又は変動が参照値と比較して特定された場合、これは、被験体が結腸直腸癌及び/又はその前癌段階を患っていることを示す。
【0021】
本発明の最後の実施の形態は、結腸直腸癌又はその前癌段階を診断及び治療する方法であって、a)ヒト被験体からリキッドバイオプシーを得ることと、b)遺伝子LINC00473のメチル化状態を検出することと、c)健康な被験体において測定される遺伝子LINC00473のメチル化の参照レベルと比較して、遺伝子LINC00473のより高いレベルのメチル化が特定された場合に、患者を結腸直腸癌又はその前癌段階と診断し、該患者に結腸内視鏡検査を行うこととを含む、方法に関する。結腸内視鏡検査は、結腸直腸癌又はポリープの除去を含み得る。
【0022】
本発明の目的のため、以下の用語が定義される:
LINC00473(長鎖遺伝子間非タンパク質コーディングRNA(Long Intergenic Non-Protein Coding RNA)473)はRNA遺伝子であり、非コーディングRNAクラスに属する。LINC00473は、公開データベースで次のように識別され得る:HGNC:21160。Entrez Gene:90632。Ensambl ID:ENSG00000223414。UniProtKB:A8K010。
「結腸直腸癌」という用語は、小腸の下の腸管(すなわち、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸及び直腸を含む大腸(結腸))の細胞の癌を特徴とする医学的状態である。
「結腸直腸腺腫」という表現は、結腸直腸癌の良性で前癌性の段階であるが、それでも結腸直腸癌に進行するリスクが高い、腺腫性ポリープとも呼ばれる結腸の腺腫を指す。
「進行性結腸直腸腺腫」という表現は、少なくとも10mmのサイズを有する腺腫、又は組織学的に高度異形成若しくは絨毛成分が20%を超える腺腫、又は少なくとも10mmのサイズの鋸歯状病変若しくは異形成を指す。「進行性結腸直腸腺腫」の概念のより詳細な説明については、本発明の分野における一般的な知識に関連する以下の科学論文を参照されたい:[Rex DK, Boland CR, Dominitz JA, Giardiello FM, Johnson DA, Kaltenbach T, Levin TR, Lieberman D, Robertson DJ. Colorectal Cancer Screening: Recommendations for Physicians and Patients From the U.S. Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer. Gastroenterology. 2017 Jul;153(1):307-323. doi: 10.1053/j.gastro.2017.05.013. Epub 2017 Jun 9. PMID: 28600072]、[East JE, Atkin WS, Bateman AC, Clark SK, Dolwani S, Ket SN, Leedham SJ, Phull PS, Rutter MD, Shepherd NA, Tomlinson I, Rees CJ. British Society of Gastroenterology position statement on serrated polyps in the colon and rectum. Gut. 2017 Jul;66(7):1181-1196. doi: 10.1136/gutjnl-2017-314005. Epub 2017 Apr 27. Review. PMID: 28450390]。
「リキッドバイオプシー」という表現は、腫瘍由来の物質を含む可能性のある体液の任意の試料を指す。特に、リキッドバイオプシーは、循環腫瘍DNA等の腫瘍由来物質を含む可能性のある体液(例えば、血漿、血清、血液、唾液、脳脊髄液、又は尿)の任意の試料である。
「低侵襲生体試料」という表現は、患者からの採血に使用する細い針以外に有害な器具を使用することを必要としないため患者にとって害のない、患者の体から採取した任意の試料を指す。具体的には、低侵襲性生体試料は、本発明では、血液、血清、又は血漿試料を指す。
本明細書で使用する場合、「メチル化」という用語は、DNAメチルトランスフェラーゼ酵素の作用により、核酸、例えばDNAの領域の単数又は複数のシトシン塩基に付加されるメチル基の存在を意味すると理解される。
したがって、本明細書で使用する場合、「メチル化状態」という用語は、分析されている患者において測定されたメチル化のレベルを指す。「メチル化状態」は、参照レベル又は対照レベルと比較して、より高い/より低いレベルのメチル化であり得る。
本明細書で使用する場合、「CpGジヌクレオチド」、「CpGメチル化部位」又は同義のものは、ホスホジエステル結合によってグアニンに連結されたシトシンを示すと解釈されるものとする。CpGジヌクレオチドは、シトシン残基のメチル化の標的であり、コーディング又は非コーディング核酸内に存在し得る。非コーディング核酸は、ゲノム遺伝子のイントロン、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、プロモーター領域、又は遺伝子間領域を含むと当該技術分野で理解されている。
「標的CpG」という表現は、本発明において示差的にメチル化されることが見出された特定のCpGを指す。
「連続CpG」という表現は、示差的にメチル化されている可能性があるCpGを指し、転写開始部位(TSS)の上流又は下流1500bp(TSSの周辺3000bp)まで見られ得る。
本発明で使用する場合、「遺伝子のメチル化状態を決定すること」とは、上記遺伝子の発現を増加又は減少させることができる任意の調節配列も含む、該遺伝子の任意の領域のメチル化状態を測定することにより本発明の方法を実施することを意味する。特に、上記調節配列は、遺伝子の転写を開始するDNAの領域であるプロモーターを含む。プロモーターは、遺伝子の転写開始部位の近くに、同じ鎖上に、DNAの(センス鎖の5’領域に向かって)上流又は下流に位置する。
本明細書で使用される場合、「メチル化の対照レベル、参照レベル又はベースラインレベル」は、健康な患者からの対応する核酸において検出されるメチル化のレベルを意味すると理解されるものとする。したがって、この患者において、健康な患者で測定される「メチル化の対照レベル、参照レベル、又はベースラインレベル」と比較して「より高いレベルのメチル化」が測定された場合、所与の感度及び特異度で、患者はCRC又はAAを患っている可能性が高い。「参照値」は、閾値又はカットオフ値とすることができる。典型的には、「閾値」又は「カットオフ値」は、実験的、経験的、又は理論的に決定することができる。当業者によって認識されるように、閾値はまた、既存の実験条件及び/又は臨床条件に基づいて任意に選択され得る。試験の機能及びベネフィット/リスクバランス(偽陽性及び偽陰性の臨床結果)に応じて最適な感度及び特異度を得るには、閾値を決定しなければならない。好ましくは、当業者は、本発明の方法に従って得られたバイオマーカーレベル(又はスコア)を、規定された閾値と比較してもよい。典型的には、最適な感度及び特異度(したがって閾値)は、実験データに基づく受信者動作特性(ROC)曲線を使用して決定され得る。例えば、参照群においてバイオマーカーのメチル化レベルを決定した後、試験対象の生体試料中のバイオマーカーの測定メチル化レベルの統計的処理にアルゴリズム分析を使用して、試料分類に有意性を有する分類基準を取得することができる。ROC曲線の正式名称は、受信者動作特性曲線(receiver operation characteristic curve)としても知られる受信者操作特性(receiver operator characteristic curve)である。ROC曲線は、主に臨床生化学的診断検査に使用され、真陽性率(感度)及び偽陽性率(1-特異度)の連続変数を反映する包括的な指標である。ROC曲線は、画像合成法によって感度と特異度との関係を明らかにする。一連の異なるカットオフ値(閾値又は臨界値、診断検査の正常な結果と異常な結果との間の境界値)は、一連の感度及び特異度の値を計算するための連続変数として設定される。次いで、感度を垂直座標として使用し、特異度を水平座標として使用して曲線を描く。曲線下面積(AUC)が大きいほど、診断の精度が高くなる。ROC曲線では、座標図の左上端に最も近い点が、高感度及び高特異度の両方の値を持つ臨界点である。ROC曲線のAUC値は1.0~0.5である。AUCが0.5超である場合、AUCが1に近づくにつれて、診断結果はますます良くなる。AUCが0.5~0.7の場合、精度は低くなる。AUCが0.7~0.9の場合、精度は良好である。AUCが0.9より大きい場合、精度は非常に高くなる。このアルゴリズム的方法は、好ましくはコンピュータを用いて行われる。MedCalc 9.2.0.1医療統計ソフトウェア、SPSS9.0、好ましくはGraphPad Prism 6等の当該技術分野の既存のソフトウェア又はシステムをROC曲線の描画に使用することができる。
「より高いレベルのメチル化」という表現は、対照/参照として使用される被験体/患者で測定されるメチル化の量と比較した、核酸、例えばDNAの相対的なメチル化量の統計学的に有意な増加を指す。したがって、本開示では、「より高いレベルのメチル化」は、被験体又は患者から得た試料中の所与のゲノム領域のメチル化状態によって表されるベースラインレベルに対して決定される。例えば、「より高いレベルのメチル化」は、メチル化のベースラインレベルよりも少なくとも2%大きい場合があり、例えば、メチル化のベースラインレベルより少なくとも5%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも10%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも15%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも20%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも25%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも30%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも40%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも50%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも60%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも70%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも80%大きい、又はメチル化のベースラインレベルより少なくとも90%大きい場合がある。
「含む」とは、「含む」という言葉の前にある(follows)ものを包含するがこれに限定されないことを意味する。したがって、「含む」という用語の使用は、列挙された要素が要求される又は必須であるが、他の要素は任意であり、存在してもしなくてもよいことを示す。
「のみからなる」とは、「のみからなる」という句の前にあるものを「包含し、限定する」という意味である。したがって、「のみからなる」という句は、列挙された要素が要求される又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】結腸直腸組織試料におけるLINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルを示す図である。コホート1(A)及びコホート2(B)では、結腸直腸癌患者は、非腫瘍対照よりも有意に高いLINC00473のメチル化レベルを示した。LINC00473プロモーターのメチル化レベルを、(A)Infinium HumanMethylation450K BeadChip(450Kアレイ)によって分析し、(B)ピロシーケンスによって分析した。DNAメチル化データは、Aではβ値、Bではメチル化%として表される。水平線はメチル化レベルの中央値を表す。Pは、マン-ホイットニーU検定によって分析されたp値を示す。腫瘍は、結腸直腸癌を表す。
【
図2】結腸直腸組織試料におけるLINC00473プロモーターのメチル化に関する受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。コホート1(A)及びコホート2(B)のROC曲線下面積(AUC)は、結腸直腸癌患者と非腫瘍対照とを区別するためのLINC00473プロモーターのメチル化の高い診断精度を示す。Pは、ROC曲線のp値を示す。CIは、信頼区間である。
【
図3】臨床病期に応じた癌ゲノムアトラス(TCGA)による結腸直腸組織試料におけるLINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルを示す図である。結腸直腸癌患者の全ての病期が、(A)コホート1(I:0.55±0.023;II:0.53±0.018;III:0.45±0.028;IV:0.47±0.031)及び(B)コホート2(I:38.54%±7.67%;II:34.31%±2.11%;III:32.14%±2.84%;IV:35.31%±3.95%)において、それぞれの非腫瘍対照(コホート1:0.11±0.006;コホート2:5.84%±0.78%)よりも有意に高いLINC00473のメチル化レベルを示した。LINC00473のメチル化レベルを、(A)Infinium HumanMethylation450K BeadChip(450Kアレイ)によって分析してβ値として表し、(B)ピロシーケンスによって分析してメチル化%として表した。アスタリスク(
*)は、対照に対するP<0.0001を示す。p値をマン-ホイットニーU検定によって分析した。腫瘍は、結腸直腸癌を表す。
【
図4】腺腫におけるLINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルを示す図である。腺腫及び結腸直腸癌の患者は、非腫瘍対照よりも有意に高いLINC00473のメチル化レベルを示した。LINC00473プロモーターのメチル化レベルを、ピロシーケンスによって分析し、メチル化%として表した。水平線はメチル化レベルの中央値を表す。Pは、マン-ホイットニーU検定によって分析されたp値を示す。
【
図5】腺腫におけるLINC00473プロモーターのメチル化に関する受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。コホート3におけるROC曲線下面積(AUC)は、腺腫と非腫瘍対照とを区別するためのLINC00473プロモーターのメチル化の高い診断精度を示す。Pは、ROC曲線のp値を示す。CIは、信頼区間である。
【
図6】結腸直腸癌患者及び健康な対照の循環血漿DNAにおけるLINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルを示す図である。結腸直腸癌の患者は、健康な対照よりも有意に高いLINC00473のメチル化レベルを示した。LINC00473のメチル化レベルを、リアルタイムPCRによって3連で分析した。水平線はメチル化レベルの中央値を表す。Pは、マン-ホイットニーU検定によって分析されたp値を示す。
【
図7】正常対照に対する結腸直腸癌患者の循環血漿DNAにおけるLINC00473プロモーターのメチル化に関する受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。ROC曲線下面積(AUC)は、結腸直腸癌患者と健康な個体とを区別するためのLINC00473プロモーターのメチル化の高い診断精度を示す。Pは、ROC曲線のp値を示す。
【
図8】結腸直腸癌患者におけるLINC00473プロモーターのメチル化に関するカプラン-マイヤー生存分析を示す図である。結腸直腸癌患者を、その群のメチル化レベルの中央値(10%のメチル化)に対して、LINC00473メチル化がより高レベルか又はより低レベルかによって分類した。カプラン生存分析は、LINC00473の高いメチル化レベルがより短い全生存(OS)と有意に関連していることを示した(P=0.0256)。Pは、ログ-ランク検定のp値を指す。H(高)はメチル化レベル10%超を示し、L(低)はメチル化レベル10%未満を示す。
【
図9】進行性結腸直腸腺腫患者及び健康な対照の循環血漿DNAにおけるLINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルを示す図である。進行性結腸直腸腺腫患者は、健康な対照よりも有意に高いLINC00473のメチル化レベルを示した。LINC00473のメチル化レベルを、リアルタイムPCRによって3連で分析した。水平線はメチル化レベルの中央値を表す。Pは、マン-ホイットニーU検定によって分析されたp値を示す。
【
図10】正常対照に対する進行性結腸直腸腺腫の循環血漿DNAにおけるLINC00473プロモーターのメチル化に関する受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。ROC曲線下面積(AUC)は、進行性結腸直腸腺腫と健康な対照とを区別するためのLINC00473プロモーターのメチル化の高い診断精度を示す。Pは、ROC曲線のp値を示す。CIは、信頼区間である。
【
図11】組織からの進行性結腸直腸腺腫におけるLINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルを示す図である。進行性結腸直腸腺腫は、非腫瘍対照よりも有意に高いLINC00473のメチル化レベルを示した。LINC00473プロモーターのメチル化レベルを、ピロシーケンスによって分析し、メチル化%として表した。水平線はメチル化レベルの中央値を表す。Pは、マン-ホイットニーU検定によって分析されたp値を示す。
【
図12】組織からの進行性結腸直腸腺腫におけるLINC00473プロモーターのメチル化に関する受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。ROC曲線下面積(AUC)は、進行性結腸直腸腺腫と非腫瘍対照とを区別するためのLINC00473プロモーターのメチル化の高い診断精度を示す。Pは、ROC曲線のp値を示す。CIは、信頼区間である。
【
図13】ドロップレットデジタルPCR(ddPCR:droplet digital PCR)による結腸直腸癌の循環血漿DNAにおけるLINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルを示す図である。結腸直腸癌患者は、非腫瘍対照よりも有意に高いLINC00473のメチル化レベルを示した。LINC00473プロモーターのメチル化レベルを、ddPCRによって3連で分析した。水平線はメチル化レベルの中央値を表す。Pは、マン-ホイットニーU検定によって分析されたp値を示す。
【
図14】ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)によって分析した、正常対照に対する結腸直腸癌患者の循環血漿DNAにおけるLINC00473プロモーターのメチル化に関する受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。ROC曲線下面積(AUC)は、結腸直腸癌患者と健康な個体とを区別するためのLINC00473プロモーターのメチル化の高い診断精度を示す。Pは、ROC曲線のp値を示す。
【
図15】ドロップレットデジタルPCRによる進行性結腸直腸腺腫の循環血漿DNAにおけるLINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルを示す図である。進行性結腸直腸腺腫患者は、健康な対照よりも有意に高いLINC00473のメチル化レベルを示した。LINC00473のメチル化レベルを、ドロップレットデジタルPCRによって3連で分析した。水平線はメチル化レベルの中央値を表し、Pはマン-ホイットニーU検定によって分析されたp値を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0024】
実施例1.方法
実施例1.1.結腸直腸組織分析のための研究の参加者
本発明者らは、最初に、3つの独立したコホート(コホート1、コホート2、及びコホート3)を分析して、結腸直腸組織におけるLINC00473のDNAメチル化を調査した。コホート1は、原発性結腸直腸癌患者(n=273)及び非腫瘍対照(n=38)で表される。コホート2は、180人の原発性結腸直腸癌患者及び93人の非腫瘍対照を含む。また、コホート3には、12人の原発性結腸直腸癌患者、12人の腺腫患者、及び12人の非腫瘍対照がいる。
【0025】
さらに、本PCT出願の目的のため、本発明者らは、新たな独立コホート(コホート4)も分析して、結腸直腸組織におけるLINC00473のDNAメチル化を調査した。コホート4は、50人の結腸直腸腺腫患者(20人の確認された進行性結腸直腸腺腫患者を含む)及び10人の非腫瘍対照を含む。
【0026】
実施例1.2.450Kアレイによる結腸直腸組織のDNAメチル化データの分析
コホート1のDNAメチル化の結果を、公開データベース癌ゲノムアトラス(TCGA)で取得されたInfinium HumanMethylation450K BeadChipデータ(450Kアレイ)から分析した。450Kアレイ(Illumina)は、ヒトゲノムに沿って450000超のCpG部位をカバーし、各CpGのメチル化スコアは、0.0(完全にメチル化されていない)から1.0(完全にメチル化されている)の範囲のベータ(β)値として表される。
【0027】
実施例1.3.結腸直腸組織のバイサルファイトピロシーケンス分析
コホート2、コホート3及びコホート4のLINC00473プロモーターのDNAメチル化状態を、バイサルファイトピロシーケンスによって分析した。EZ-96 DNAメチル化キット(Zymo Research Corp.)を用いて約500ngのDNAをバイサルファイト変換した後、LINC00473プロモーターのDNAメチル化レベルをPyroMark Q96システム(Qiagen)により製造元の指示に従って分析した。CpG部位のメチル化の定量は、Pyro Q-CpG 1.0.9(Qiagen)を使用して取得した。プライマー配列(表1)を、PyroMark Assay Design 2.0(Qiagen)により設計した。表1は、ピロシーケンスによるLINC00473のメチル化分析用のプライマーを示す。
【0028】
【0029】
好ましい実施形態において、本発明で使用されるプライマー、好ましくは配列番号2のプライマーは、ビオチンの分子の組み込みによってビオチン化される。
【0030】
実施例1.4.リキッドバイオプシー分析のための研究の参加者
結腸直腸癌のリキッドバイオプシーにおけるLINC00473の分析のため、この研究は、治療及び手術の開始前の診断時(ベースライン)に前向きに採用された26人の進行性結腸直腸癌患者(ステージIII及びステージIV)を含んだ。患者の人口統計学的及び臨床的特徴を表2に示す。28人の健康な対照も研究に含んだ。結腸直腸癌患者の病状及び病期分類は、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学総合病院(CHUS:Complejo Hospitalario Universitario de Santiago de Compostela)の腫瘍学部門の腫瘍内科医によって取得された。表2は、結腸直腸癌患者の臨床的特徴を示す。
【0031】
【0032】
進行性結腸直腸腺腫のリキッドバイオプシーにおけるLINC00473の分析のため、この研究は5人の健康な対照及び12人の進行性腺腫患者を含んだ。リキッドバイオプシー分析のための個体はいずれも、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学総合病院(CHUS)で採用された。
【0033】
ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)による結腸直腸癌のリキッドバイオプシーにおけるLINC00473の分析のため、研究は、治療及び手術の開始前の診断時(ベースライン)に前向きに採用された5人の進行性結腸直腸癌患者を含んだ。10人の進行腺腫患者及び5人の健康な対照も研究に含んだ。患者及び対照を、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学総合病院(CHUS)で得た。
【0034】
実施例1.5.血液試料の収集及び血漿の分離
血液試料を、抗凝固剤としてEDTAを含む収集チューブを使用して静脈切開術によって得た。収集から2時間以内に、血液チューブの1回目の遠心分離(1500g、10分、4℃)で血液試料から血漿を分離した。血漿を1.5mLチューブに移し、2回目の遠心分離を行った(15000g、10分、4℃)。血漿を新しい1.5mLチューブに移し、-80℃で保存した。
【0035】
実施例1.6.血漿試料からの循環DNAの分離
血漿試料を解凍した後、QIAamp(商標)Circulating Nucleic Acid Kit(Qiagen)及び真空システムQIAvac 24 Plus(Qiagen)を製造業者の推奨に従って使用して、2mL~3mLの血漿から循環DNAを分離した。最終的に循環DNAを75μLの溶出バッファーで溶出し、この溶出液1μLを使用して、Quantus(商標)Fluorometer(Promega)を備えるQuantiFluor(商標)ONE dsDNAのキットにより循環DNAの濃度を定量した。定量後、循環DNAを-80℃で保存した。
【0036】
実施例1.7.循環DNAのバイサルファイト変換
DNAバイサルファイト変換には、15ng~50ngの循環DNAを使用し、これらのサーモサイクリング工程:98℃8分、54℃60分、及び4℃に従って、製造業者の推奨に従い、EZ DNA Methylation-Lightning Kit(Zymo Research)を用いて変換を実施した。結合、L-脱スルホン化、及び洗浄の工程を含むカラムベースの精製後、バイサルファイト変換DNA(bis-DNA)を15μLの溶出バッファーで溶出し、-80℃で保存した。
【0037】
実施例1.8.リアルタイムPCRによるリキッドバイオプシーにおけるLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化分析
長鎖遺伝子間非タンパク質コーディングRNA473(LINC00473;以前の記号C6orf176)のプロモーター領域のメチル化状態を循環血漿DNAにおいて分析した。非コーディング遺伝子LINC00473(NCBI ID:90632;UCSC ID:uc063sul.1;Ensambl ID:ENSG00000223414;HGNC ID:HGNC:21160)は、染色体(chr)6の6q27位にあり、chr6:166401527~166402659に位置するそのプロモーター領域を含むCpGアイランドを持つ。さらに、LINC00473のプロモーター領域は、長鎖遺伝子間非タンパク質コーディングRNA 602又はLINC00602(NCBI ID:441177;UCSC ID:uc011egm.4;Ensambl ID:ENSG00000281832;HGNC ID:HGNC:43917)の本体とゲノム内で重複する。
【0038】
LINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルを、StepOne Plusシステム(Applied Biosystems)での定量的メチル化特異的PCRアッセイ(qMSP)を用いたリアルタイムPCRによって決定した。各反応物は、テンプレートとしてバイサルファイト変換DNA(bis-DNA)2μL、Power SYBR(商標)Green PCR Master Mix(ThermoFisher)10μl、並びにフォワードプライマー及びリバースプライマー(表3)各150nMを含み、総量20μlでメチル化又は非メチル化を検出した。反応を、MicroAmp(商標)Fast Optical 96-Well Reaction Plate(Applied Biosystems)で行った。StepOne Plusシステムのサーモサイクリング条件は次の通りにした:95℃で10分間、続いて94℃で15秒間、そして60℃で30秒間を50サイクル。反応中に汚染がないことを確認するために、各実行で非テンプレート対照として水を含めた。結腸直腸癌細胞株HCT-116及び正常白血球(NL)を、それぞれメチル化及び非メチル化の陽性対照として各分析で使用した。全ての試料及び対照を3連で分析した。ソフトウェアStepOne Real-Time PCR(Applied Biosystems)を使用して、メチル化及び非メチル化に特異的なプライマーを用いて、各反応の閾値サイクル(Ct)を決定した。各試料のDNAメチル化レベルを、Cottrell et al.(2007)に基づく以下の計算に従って、メチル化のパーセンテージ(%)として表した:
メチル化(%)=100/[1+2^(CTCG-CTTG)]
【0039】
この式では、CTCGはメチル化状態の閾値サイクルを表し、CTTGは非メチル化状態の閾値サイクルを示す。この計算では、メチル化レベルは0%~100%の範囲のメチル化となり得る。表3は、リアルタイムPCRによるLINC00473のメチル化分析用のプライマーを示す。
【0040】
【0041】
LINC00473のメチル化分析に使用されるフォワードプライマー及びリバースプライマーにより、LINC00473のプロモーター領域にある6つのCpG(表4)のメチル化状態を検出することができる。リアルタイムPCRによって増幅された配列(アンプリコン)に含まれるCpGの1つ(chr6:166402416)は、それぞれ450000CpG及び850000CpGを超えるメチル化状態を検出することができるマイクロアレイアッセイである、Infinium Human Methylation 450Kアッセイ及びInfinium MethylationEPICアッセイ(Illumina)によるcg08886973と呼ばれるCpGに対応する。また、これらのマイクロアレイは、それぞれ、この研究で分析されたLINC00473のアンプリコンの上流162ヌクレオチド及び下流282ヌクレオチドに位置するcg06545143(chr6:166402638)及びcg21306006(chr6:166402081)として同定されたLINC00473プロモーターからのその他のCpGを検出することができる。このタイプのマイクロアレイアッセイに含まれる3つのCpG(cg06545143、cg08886973、cg21306006)は、LINC00473のTSS1500プロモーター領域にあり、これは、その転写開始部位(TSS)の上流200ヌクレオチド~1500ヌクレオチドのプロモーターの領域である。先に示された染色体位置はいずれも、カリフォルニア大学のUCSC Genome Browser(https://genome.ucsc.edu/index.html)のバージョンGRCh37/hg19に準拠する。表4は、リアルタイムPCRによるメチル化分析で検出されたLINC00473のCpGを示す。
【0042】
【0043】
実施例1.9.ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)によるリキッドバイオプシーにおけるLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化分析
LINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルを、QX200システム(Bio-Rad)でのドロップレットデジタルPCR(ddPCR)によって決定した。まず、バイサルファイト変換DNA(bis-DNA)約2ng、SsoAdvanced(商標)PreAmp Supermix(Bio-Rad)25μl、フォワードプライマー及びリバースプライマーとメチル化用プローブ(Bio-Rad)とを含むカスタムBio-Radアッセイ(表5)0.5μl、並びにフォワードプライマー及びリバースプライマーと非メチル化用プローブとを含むカスタムBio-Radアッセイ(表5)0.5μlを使用して、総量50μlでマルチプレックス前増幅反応を行った。最終量を水で完成した。反応を、ProFlex PCR System(Applied Biosystems)の0.2ml PCRチューブ(Axygen)で行った:95℃で3分間、95℃で15秒間、56.2℃で4分間を10サイクル、そして4℃の最終保持工程。
【0044】
次に、先に得られた2μLの前置増幅産物、プローブ用ddPCRスーパーミックス(dUTPなし)(Bio-Rad)11μl、フォワードプライマー及びリバースプライマーとメチル化用プローブとを含むカスタムBio-Radアッセイ(表5)2.2μl、並びにフォワードプライマー及びリバースプライマーと非メチル化用プローブ(Bio-Rad)とを含むカスタムBio-Radアッセイ(表5)2.2μlを含む総量22μlでマルチプレックスミックス反応を行った。最終量を水で完成した。次いで、各混合反応物20μL及びDroplet Generation oil(Bio-Rad)70μlをそれぞれDG8(商標)カートリッジ(BIO-RAD)の試料ウェル及びオイルウェルに移し、QX200(商標)Droplet Generator(Bio-Rad)にロードした。液滴をカートリッジのドロップレットウェルに生成し、ddPCR 96ウェルプレート(Bio-Rad)に移して、C1000 Touchサーマルサイクラー(Bio-Rad)(95℃で10分間、95℃で15秒間及び56.2℃で30秒間を40サイクル、98℃で10分間、そして4℃の最終保持工程)にロードした。温度の増分勾配は、全ての工程で2.5℃/秒であった。次いで、96ウェルプレートをQX200(商標)Droplet Reader(Bio-Rad)で読み取った。反応中に汚染がないことを確認するために、各実行で非テンプレート対照として水を含めた。結腸直腸癌細胞株HCT-116及び正常白血球(NL)を、それぞれメチル化及び非メチル化の陽性対照として各分析で使用した。全ての対照を、前増幅工程の有無にて、各プレートに含めた。全ての試料及び対照を3連で分析した。データの分析を、QuantaSoftソフトウェア(Bio-Rad)を使用して実施した。
【0045】
各試料のDNAメチル化レベルを、次の計算に従ってメチル化のパーセンテージ(%)として表した:
メチル化(%)=[M/(U+M)]×100
【0046】
この式で、M(メチル化)はメチル化プローブ(FAMプローブ)の標的DNA分子のコピー/μlを表し、U(非メチル化)は非メチル化プローブ(HEXプローブ)の標的DNA分子のコピー/μlを示す。この計算では、メチル化レベルは0%~100%の範囲のメチル化となり得る。表5は、ddPCRによるLINC00473のメチル化分析用のプライマー及びプローブの配列を示す。これらの配列に基づいて、メチル化及び非メチル化用のプライマー及びプローブをそれぞれ含む2つのカスタムBio-Radアッセイを、製造業者の推奨に従ってBio-Radから取得した。プローブ用プライマーの比率:1.8、最終反応でのプライマー濃度:450nM、最終反応でのプローブ濃度:250nM。
【0047】
【0048】
ddPCRによるLINC00473のメチル化分析に使用されるフォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにプローブにより、LINC00473のプロモーター領域にある9つのCpG(表6)のメチル化状態を検出することができる。CpGの1つ(chr6:166402416)は、Infinium Human Methylation 450Kアッセイ及びInfinium MethylationEPICアッセイ(Illumina)によると、cg08886973と呼ばれるCpGに対応し、増幅された配列(アンプリコン)に含まれ、表5に示すメチル化プローブ及び非メチル化プローブで検出される。ddPCRによるメチル化分析で検出されたLINC00473の全てのCpG位置を表6に表す。表6に示される全ての染色体位置は、カリフォルニア大学のUCSC Genome Browser(https://genome.ucsc.edu/index.html)のバージョンGRCh37/hg19に準拠する。
【0049】
【0050】
実施例1.10.統計学的分析
コルモゴロフ-スミルノフ検定を最初に使用して、データの分布の正規性を評価した。続いて、データの比較にノンパラメトリックマン-ホイットニーU検定を使用した。結腸直腸癌を検出するためのLINC00473メチル化の診断精度を評定するため、受信者動作特性(ROC)曲線の作成を実施した。感度及び特異度の最大の組合せを提供するメチル化のカットオフポイントを取得できるヨーデン指標(Youden index)(J)を、次の式に従って計算した:J=感度+特異度-1(Fluss et al., 2005)。診断検査の有効性を測るため、陽性予測値(PPV)及び陰性予測値(predictive value:適中率)(NPV)を計算した:PPV=真陽性/(真陽性+偽陽性);NPV=真陰性/(真陰性+偽陰性)(Hajian-Tilaki, 2013)。生存分析を評価するため、カプラン-マイヤー法を実施し、ログランク(マンテル-コックス)検定を使用してメチル化群と非メチル化群との違いを調べた。SPSS又はGraphPad Prism 7.0のソフトウェアを統計分析及び図示に使用した。表したp値はいずれも両側検定で計算し、p<0.05の場合に有意であると見なした。
【0051】
実施例2.結果
実施例2.1.組織試料
実施例2.1.1.腫瘍組織におけるLINC00473のプロモーターのメチル化分析により結腸直腸癌患者の検出が可能になる
結腸直腸組織試料(ステージI、ステージII、ステージIII及びステージIVの273人の結腸直腸癌患者;及び38人の非腫瘍対照)のLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化レベルは、国際公開データベース癌ゲノムアトラス(TCGA)からのInfinium HumanMethylation450K BeadChip(450Kアレイ)による分析後に得られた(コホート1)。この分析では、450Kアレイのメチル化データは平均ベータ(β)値として表され、0.0~1.0で規定される。本発明者らは、450Kアレイでcg08886973として識別されたLINC00473プロモーター領域のCpGに分析の焦点を合わせた。この分析は、非腫瘍対照(0.11±0.006)よりも結腸直腸癌患者(0.51±0.011)において有意に(p<0.0001)高いメチル化レベルを示した(
図1A)。本発明者らがコホート2のLINC00473プロモーターのメチル化状態をバイサルファイトピロシーケンスによって分析した場合にも、同様の結果が得られた(180人の結腸直腸癌患者:33.93%±1.51%;93人の非腫瘍対照:5.84%±0.78%;p<0.0001)(
図1B)。この場合、ピロシーケンスから得られたメチル化値を、0%~100%で規定されるメチル化のパーセンテージ(%)で表した。全体として、これらのデータは、結腸直腸組織において分析されたLINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルが、非腫瘍個体と結腸直腸癌を有する患者とを区別することができることを示す。
【0052】
コホート1からの結腸直腸組織試料におけるLINC00473のメチル化レベルの受信者動作特性曲線(ROC)による分析は、0.94の曲線下面積(AUC)(p<0.0001;CI95%:0.91~0.97)で、結腸直腸癌患者(I、II、III、及びIV)を非腫瘍対照と区別するための非常に高い診断精度を示した(
図2A)。コホート2からも同様の結果が得られた(AUC=0.90;p<0.0001;CI95%:0.86~0.94)(
図2B)。これらの結果は、結腸直腸組織試料中のLINC00473プロモーター領域のメチル化状態の分析が、結腸直腸癌患者を識別するための優れた診断精度を持つことを示す。
【0053】
重要なことに、本発明者らが、コホート1(I:n=41;II:n=106;III:n=58;IV:n=35)及びコホート2(I:n=10;II:n=84;III:n=56;IV:n=28)におけるそれらの病期に従って結腸直腸癌患者を層別化した場合(
図3)も、結果は、非腫瘍対照(コホート1、n=38;コホート2、n=93)と比較して結腸直腸癌患者の各病期で有意に(p<0.0001)高いメチル化レベルを示した。
【0054】
実施例2.1.2.結腸直腸組織におけるLINC00473のプロモーターのメチル化分析により腺腫及び進行性結腸直腸腺腫の識別が可能になる
12人の非腫瘍対照、12人の腺腫患者及び12人の結腸直腸癌患者(コホート3)の結腸直腸組織におけるLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化レベルをバイサルファイトピロシーケンスによって分析し、メチル化%として表した。これらの結果は、腺腫(28.21%±%)のメチル化レベルが健康な対照(7.28%±0.81%)よりも有意に(p=0.0036)高いことを示した(
図4)。予想通り、結腸直腸癌患者(32.83%±5.19%)も、非腫瘍対照に対してメチル化レベルに有意な(P=0.002)違いを示した。重要なことに、腺腫におけるLINC00473のメチル化レベルは、結腸直腸癌患者と同様であった(P=0.3186)。これらのデータは、結腸直腸組織で分析されたLINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルが、非腫瘍個体と腺腫を有する患者とを区別することができることを示しており、LINC00473プロモーターのメチル化状態が結腸直腸癌の早期の検出に役立つ可能性があることを示唆する。
【0055】
受信者動作特性曲線(ROC)によるコホート3の非腫瘍試料及び腺腫試料からの結腸直腸組織試料におけるLINC00473のメチル化レベルの分析は、0.84の曲線下面積(AUC)(p=0.0047;95%CI:0.66~1.00)で腺腫を非腫瘍対照と区別するための非常に高い診断精度を示した(
図5)。これらの結果は、結腸直腸組織試料中のLINC00473プロモーター領域のメチル化状態の分析が、結腸直腸癌を発症するリスクのある結腸直腸腺腫を有する患者を識別するための優れた診断精度を持つことを示す。
【0056】
さらに、結腸直腸腺腫及び進行性結腸直腸腺腫のメチル化状態を評価するため、本発明者らは、10個の非腫瘍対照及び50個の腺腫(20個の確認された進行性結腸直腸腺腫を含む)を含む組織試料の新たな独立したコホートにおけるバイサルファイトピロシーケンスによってLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化レベルを分析した。この分析は、健康な対照(5.70%±0.82%)よりも腺腫(20.96%±15.33%)において有意に(p<0.0001)高いメチル化レベルを示した。具体的には、この分析は、対照(5.70%±0.82%)よりも進行性結腸直腸腺腫(26.35%±19.66%)において有意に(p<0.0003)高いメチル化レベルを示した(
図11)。実際、受信者動作特性曲線(ROC)分析もまた、0.88のAUC(p<0.0008;95%CI:0.75~1.00)で進行性結腸直腸腺腫を非腫瘍対照と区別するための非常に高い診断精度を示した(
図12)。これらの結果は、LINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルが腺腫の検出、特に進行性結腸直腸腺腫の検出に有用であることを確認する。
【0057】
実施例2.2.リキッドバイオプシー
実施例2.2.1.リキッドバイオプシーにおけるLINC00473のプロモーターのメチル化分析は結腸直腸癌患者を検出する。
28人の対照及び26人の結腸直腸癌患者の血漿中のLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化レベル(%)をリアルタイムPCRで分析したところ、健康な対照(0.003%±0.009%)よりも結腸直腸癌患者(25.87%±32.73%)において有意に(p<0.0001)高いメチル化レベルが示された(
図6)。健康な個体に対してLINC00473のより高いメチル化レベルが26人中21人(81%)の結腸直腸癌患者で検出された。これらのデータは、リキッドバイオプシーで分析されたLINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルが健康な個体と結腸直腸を有する患者とを区別することができることを示す。
【0058】
受信者動作特性曲線(ROC)による血漿中のLINC00473のメチル化レベルの分析は、0.87の曲線下面積(AUC)(p<0.0001;CI95%:0.76~0.99)で結腸直腸癌患者を健康な対照と区別するための非常に高い診断精度を示した(
図7)。ROC曲線分析に基づき、ヨーデンの指標(Youden's index)の値を使用すると、血漿中のLINC00473のメチル化カットオフ0.30%が得られ、81%の感度(CI95%:61%~93%)及び100%の特異度(CI95%:88~100)で結腸直腸癌を検出することができた(表7)。このメチル化レベルのカットオフを使用して、結腸直腸癌の検出について、100%の陽性予測値(PPV)及び85%の陰性予測値(NPV)が得られた。これらの結果は、LINC00473プロモーター領域のメチル化状態のリキッドバイオプシーにおける非侵襲的分析が、結腸直腸癌患者を識別するための優れた診断精度を持つことを示す。表7は、結腸直腸癌検出の診断検査としてのLINC00473プロモーター領域のメチル化分析の特徴を示す。
【0059】
【0060】
さらに、結腸直腸癌患者の血漿中のLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化レベル(%)も、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)方法論を使用して評価した。この目的のため、本発明者らは、5人の対照及び5人の結腸直腸癌患者を使用した。これらの分析は、健康な対照(0.0%±0.0%)よりも結腸直腸癌患者(41.19%±28.79%)において有意に(p=0.005)高いメチル化レベルを示した(
図13)。健康な個体に対してLINC00473のより高いメチル化レベルが5人中5人(100%)の結腸直腸癌患者で検出され、ddPCRによるリキッドバイオプシーで分析されたLINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルが健康な個体と結腸直腸癌を有する患者とを区別することもできることを示す。さらに、受信者動作特性曲線(ROC)分析は、ddPCRによって得られた血漿中のLINC00473のメチル化レベルが、1.0の曲線下面積(AUC)(p<0.0062;CI95%:1.0~1.0)で結腸直腸癌患者を健康な対照と区別するための非常に高い診断精度を持つことを示した(
図14)。これらの結果は、ddPCRによるLINC00473プロモーター領域のメチル化状態のリキッドバイオプシーにおける非侵襲的分析が、結腸直腸癌患者を識別するための優れた診断精度を持つことを示す。
【0061】
実施例2.2.2.リキッドバイオプシーにおけるLINC00473のプロモーター領域のDNAメチル化レベルは結腸直腸癌患者の転帰を予測する
LINC00473プロモーターのメチル化レベルの生存に対する臨床的影響を、利用可能な臨床データを用いて、表2の25人の結腸直腸癌患者の血漿試料で調査した。結腸直腸癌患者は、その群のメチル化レベルの中央値(メチル化レベル10%)に対してi)LINC00473の高レベルのメチル化(H:メチル化レベル10%超)又はii)LINC00473の低レベルのメチル化(L:メチル化レベル10%未満)を提示するものとして分類した。この患者の層別化によると、カプラン-マイヤー分析は、LINC00473における高レベルのメチル化の存在が、全生存(OS)の短縮と有意に関連していることを示した[ハザード比(HR)=3.37、95%信頼区間(CI)=1.19~9.93、P=0.0256](
図8)。これらの結果は、リキッドバイオプシーにおけるLINC00473のメチル化状態が結腸直腸癌患者の臨床転帰を予測することができることを示しており、血漿中のLINC00473メチル化の分析が結腸直腸癌診断時の予後バイオマーカーとして有用である可能性を示唆する。
【0062】
実施例2.2.3.リキッドバイオプシーにおけるLINC00473のプロモーターのメチル化分析は進行性結腸直腸腺腫患者を検出する
5人の健康な対照及び12人の進行性結腸直腸腺腫患者の血漿中のLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化レベル(%)をリアルタイムPCRで分析したところ、健康な対照(0.0001%±0.0002%)よりも進行性結腸直腸腺腫患者(0.0676%±0.1195%)において有意に(p=0.0262)高いメチル化レベルが示された(
図9)。これらのデータは、リキッドバイオプシーで分析されたLINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルが健康な個体と進行性結腸直腸腺腫を有する患者とを区別することができることを示す。
【0063】
受信者動作特性曲線(ROC)による血漿中のLINC00473のメチル化レベルの分析は、0.85の曲線下面積(AUC)(p=0.00269;CI95%:0.65~1.0)で進行性結腸直腸腺腫を有する患者を健康な対照と区別するための非常に高い診断精度を示した(
図10)。ROC曲線分析に基づいて、血漿中のLINC00473のメチル化カットオフ0.000115が得られ、92%の感度及び80%の特異度で進行性腺腫を検出することができた(表8)。このメチル化レベルのカットオフを使用して、進行性結腸直腸腺腫の検出について、92%のPPV及び80%のNPVが得られた。これらの結果は、LINC00473プロモーター領域のメチル化状態のリキッドバイオプシーにおける非侵襲的分析が、進行性結腸直腸腺腫を有する患者を識別するための優れた診断精度を持つことを示す。表8は、進行性結腸直腸腺腫の検出のための診断検査としてのLINC00473プロモーター領域のメチル化分析の特徴を示す。
【0064】
【0065】
さらに、血漿中のLINC00473プロモーター領域のDNAメチル化レベル(%)も、5人の健康な対照及び10人の進行性結腸直腸腺腫患者でドロップレットデジタルPCRによって評価した。これらの結果は、健康な対照(0.0%±0.0%)よりも進行性結腸直腸腺腫患者(0.94%±0.99%)において有意に(p=0.038)高いメチル化レベルを示し(
図15)、ddPCRによるリキッドバイオプシーで分析されたLINC00473のプロモーター領域のメチル化レベルが健康な個体と進行性結腸直腸腺腫を有する患者とを区別することもできることを示す。
【配列表】
【国際調査報告】