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特表2022-530375歯用ホワイトニングフィルム、その製造プロセスおよびそのようなフィルムの使用方法
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  • 特表-歯用ホワイトニングフィルム、その製造プロセスおよびそのようなフィルムの使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】歯用ホワイトニングフィルム、その製造プロセスおよびそのようなフィルムの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/38 20060101AFI20220622BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20220622BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A61K8/38
A61K8/81
A61K8/24
A61Q11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562310
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 GB2020051000
(87)【国際公開番号】W WO2020217054
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】1905667.0
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521458144
【氏名又は名称】ビーソルブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リーズ、エイミー
(72)【発明者】
【氏名】グラント、サラ、リンゼイ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス、イアン、ハーバート
(72)【発明者】
【氏名】クライトン、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】リビングストン、マーク、アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーノック、モイラ
(72)【発明者】
【氏名】カレン、ジョン、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】マクファーレン、メラニー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB281
4C083AB282
4C083AC122
4C083AC151
4C083AC152
4C083AC171
4C083AC272
4C083AC441
4C083AC461
4C083AC462
4C083AC491
4C083AC531
4C083AC851
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD212
4C083AD252
4C083AD272
4C083AD372
4C083AD531
4C083AD571
4C083AD661
4C083BB41
4C083CC41
4C083DD12
4C083EE35
(57)【要約】
歯用ホワイトニングフィルム、その製造プロセスおよびそのようなフィルムの使用方法本発明は、歯用ホワイトニングフィルムを提供する。歯用ホワイトニングフィルムは、非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素の一方または両方を含む歯科用漂白剤と、1または複数のポリリン酸塩であって、前記1または複数のポリリン酸塩は1または複数の環状ポリリン酸塩を含む、1または複数のポリリン酸塩と、1または複数の水溶性のフィルム形成ポリマーと、1または複数の可塑剤と、1または複数の乳化剤とを含み、ここで、フィルムは、約50μm~約500μmの厚さを有する。また、約50μm~約150μmの厚さを有する1または複数のそのようなフィルムと、歯科用アライナーとを含むキットも提供される。また、このフィルムの製造プロセスと、そのようなフィルムを使用した歯の漂白方法も一緒に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯用ホワイトニングフィルムであって、
非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素の一方または両方を含む歯科用漂白剤であって、前記非過酸化水素系漂白剤と過酸化水素とが約0.01重量%~約35重量%の総量で存在する、歯科用漂白剤と、
約3重量%~約15重量%の総量の1または複数のポリリン酸塩であって、
1または複数の環状ポリリン酸塩を含む、1または複数のポリリン酸塩と、
約40重量%~約95重量%の総量の1または複数の水溶性のフィルム形成ポリマーと、
約0.1重量%~約15重量%の総量の1または複数の可塑剤と、
約0.1重量%~約10重量%の総量の1または複数の乳化剤と
を含み、
前記歯用ホワイトニングフィルムが、約50μm~約500μmの厚さを有する、歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項2】
前記非過酸化水素系漂白剤が、式(I)のペルオキシカルボン酸を含み、
-R -C(=O)-O-O-H (I)
式中、Rは、一価の有機基であり
は、二価の有機架橋基であり、
nは、0または1であり、nが0のとき、Rは存在せず、R基は-C(=O)-O-O-H基に直接結合するようになる、請求項1に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項3】
が、C1~10アルキル基;C6~10アリール基;および環系に5~10個の原子を有するヘテロアリール基から選択され、前記環系の原子は、C、N、OおよびSから選択され、
は、置換または非置換のC1~10アルキレン基であり、
およびRは、独立して、カルボニル基の形の酸素、ヒドロキシルまたはハロから選択される1~6個の置換基で置換されていてもよい、請求項2に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項4】
前記非過酸化水素系漂白剤が6-フタルイミドペルオキシカプロン酸である、請求項1から3のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項5】
前記過酸化水素-ポリマー複合体が過酸化水素-ポリビニルピロリドン複合体を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項6】
前記1または複数の環状ポリリン酸塩が、式(II)で定義され、
【化1】
(II)
式中、aは、3~10、好ましくは4~8、より好ましくは6の整数であり、Mは、水素およびアルカリ金属を含む群のうちの1または複数から選択され、好ましくはH、NaまたはK、より好ましくはNaである、請求項1から5のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項7】
前記1または複数の環状ポリリン酸塩がヘキサメタリン酸ナトリウムを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項8】
前記1または複数の環状ポリリン酸塩が、約2重量%~約9重量%の総量で存在する、請求項1から7のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項9】
前記1または複数のポリリン酸塩がさらに、式(III)の線状ポリリン酸塩を含み、
【化2】
(III)
式中、bは、2~5、好ましくは3または4、より好ましくは3の整数であり、Mは、水素およびアルカリ金属を含む群のうちの1または複数から選択され、好ましくはH、NaまたはK、より好ましくはNaである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項10】
前記線状ポリリン酸塩がトリポリリン酸ナトリウムを含む、請求項9に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項11】
前記線状ポリリン酸塩が、1重量%~6重量%の総量で存在する、請求項9または請求項10に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項12】
前記1または複数のポリリン酸塩が、2重量%~9重量%の量のヘキサメタリン酸ナトリウムと、1重量%~6重量%の量のトリポリリン酸ナトリウムとを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項13】
前記水溶性のフィルム形成ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸またはその塩、アルキレン基が2または3個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールおよびそれらのコポリマー、ならびに多糖類のうちの1または複数を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項14】
前記1または複数の可塑剤が、ポリオール、例えばグリセロール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、単糖類、オリゴ糖類、ソルビタール(sorbital)およびソルビタンを含む群から選択され、前記ポリアルキレングリコール、または前記ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルのアルキレン基は、独立して、C1~5アルキレン、好ましくはメチレン、エチレンまたはプロピレンから選択される、請求項1から13のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項15】
前記1または複数の乳化剤が、脂肪酸誘導体、レシチンおよびポリソルベートを含む群から選択される、請求項1から14のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項16】
0.1重量%~12重量%の量の水をさらに含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項17】
前記歯用ホワイトニングフィルムがさらに、着色料、ゲル化剤、香料、甘味料、酸味料、酸化防止剤およびキレート剤を含む群から選択される1または複数の更なる成分を含む、請求項1から16までのいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項18】
以下の条件:
前記着色料が、FD&C Blue No.1またはそのレーキであること;
前記ゲル化剤が、多糖類およびハイドロコロイド系接着剤を含む群から選択されること;
前記香料が、メントール、ペパーミントおよびアルキルアルカノエートを含む群から選択され、前記アルキルアルカノエートのアルキル基は直鎖状または分岐状であってもよくかつ1~8個の炭素原子を含んでいてもよく、前記アルキルアルカノエートのアルカノエート基は1~5個の炭素原子を含んでいてもよいこと;
前記甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、シクラメート、エリスリトール、マンニトール、ソルビタールおよびキシリトールを含む群のうちの1または複数であること;
前記酸化防止剤が、トコフェロール、tert-ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびエチレンジアミン四酢酸またはその塩を含む群から選択される1または複数であること:
前記酸味料がリン酸であること;
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸またはその塩であること
のうちの1または複数を満たす、請求項17に記載の歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項19】
歯科用アライナーと共に使用するための、請求項1から18のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルムであって、前記歯用ホワイトニングフィルムは、約50μm~約150μmの厚さを有する、歯用ホワイトニングフィルム。
【請求項20】
前記歯科用アライナーと、請求項19に記載の1または複数の歯用ホワイトニングフィルムとを含む、キット。
【請求項21】
歯用ホワイトニングフィルムの製造プロセスであって、前記プロセスは、少なくとも以下の段階:
非過酸化水素系歯科用漂白剤および過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素の一方または両方を含む歯科用漂白剤であって、前記非過酸化水素系歯科用漂白剤と過酸化水素とが約0.01重量%~約35重量%の総量で存在する、歯科用漂白剤と、約3重量%~約15重量%の総量の1または複数のポリリン酸塩であって、前記1または複数のポリリン酸塩は1または複数の環状ポリリン酸塩を含む、1または複数のポリリン酸塩と、約40重量%~約95重量%の総量の1または複数の水溶性のフィルム形成ポリマーと、約0.1重量%~約15重量%の総量の1または複数の可塑剤と、約0.1重量%~約10重量%の総量の1または複数の乳化剤とを、水と混合して、歯用ホワイトニング水性液体を提供する段階;
前記歯用ホワイトニング水性液体を基材に適用して、前記歯用ホワイトニング水性液体を担持する基材を提供する段階;
前記歯用ホワイトニング水性液体を乾燥させて、前記基材に歯用ホワイトニングフィルムを提供する段階であって、前記歯用ホワイトニングフィルムは約50μm~約500μmの厚さを有する、段階
を含む、プロセス。
【請求項22】
前記混合がさらに、着色料、ゲル化剤、香料、甘味料、酸味料、酸化防止剤およびキレート剤を含む群から選択される1または複数の更なる成分を混合する段階を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記混合と前記適用との間に、
前記歯用ホワイトニング水性液体を脱気して、脱気された歯用ホワイトニング水性液体を提供する段階
をさらに含む、請求項21または22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記歯用ホワイトニング水性液体が、前記歯用ホワイトニング水性液体の総重量を基準にして60重量%超の水と、前記歯用ホワイトニングフィルムを形成する成分を40重量%またはそれ以下で含む、請求項21から23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
- 前記歯用ホワイトニングフィルムを前記基材から分離する段階
をさらに含む、請求項21から24のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項26】
請求項21から25のいずれか1項に記載のプロセスで得られる歯用ホワイトニングフィルムの製造方法。
【請求項27】
歯を漂白する方法であって、前記方法は、少なくとも以下の段階:
請求項1から19のいずれか1項に記載の歯用ホワイトニングフィルムを、対象の1または複数の歯に適用する段階
を含む、方法。
【請求項28】
前記歯用ホワイトニングフィルムが、50μm~150μmの厚さを有し、前記歯用ホワイトニングフィルムを適用する前記段階の後に、対象の1または複数の歯に歯科用アライナーを適用する段階をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯用ホワイトニングフィルムを提供する。また、このフィルムの製造プロセスと、そのようなフィルムを使用した歯の漂白方法も一緒に提供される。
【背景技術】
【0002】
ヒトの歯はもともとさまざまな色をしているが、飲食物や薬などの多くの要因によって影響を受ける可能性がある。例えば、ベリー類などの食べ物や、紅茶や赤ワインなどの飲み物の多くには、歯を着色させ得る色原体が含まれている。また、タバコは歯を黒くすることがある。酸性の果物や飲み物などの他の物質は、歯のエナメル質を侵食して歯を軟化させ、色原体が付着しやすい状態にすることで着色を促進し得る。そのため、歯を白くしてそのような着色を落としたいという要望がある。
【0003】
過酸化物とは、酸素-酸素の単結合を含む化合物の一種で、有機物を漂白する作用がある。一般的に、そのような化合物は、唾液中に存在する水分と接触すると、活性漂白剤である過酸化水素を放出する。過酸化水素は、歯の知覚過敏を強めることで歯に悪影響を及ぼし、かつ/または、歯肉などの軟部組織を刺激することで口腔粘膜に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、使用される過酸化物の濃度を上げることなく、過酸化物による漂白効果を高めることが望まれている。
【0004】
そのため、過酸化物系漂白剤の漂白効果を高めた歯用ホワイトニングフィルムが求められている。また、歯の耐着色性を向上させた歯用ホワイトニングフィルムが求められている。
発明の概要
【0005】
第1の態様では、歯用ホワイトニングフィルムであって、
- 非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素の一方または両方を含む歯科用漂白剤と、
- 1または複数のポリリン酸塩であって、当該1または複数のポリリン酸塩は1または複数の環状ポリリン酸塩を含む、1または複数のポリリン酸塩と、
- 1または複数の水溶性のフィルム形成ポリマーと、
- 1または複数の可塑剤と、
- 1または複数の乳化剤と
を含み、
ここで、フィルムは、約50μm~約500μmの厚さを有する、歯用ホワイトニングフィルムが提供される。
【0006】
一実施形態では、歯科用漂白剤は、非過酸化水素系漂白剤を含み、ここで、非過酸化水素系漂白剤は、式(I)のペルオキシカルボン酸を含み、
-R -C(=O)-O-O-H (I)
式中、
は、一価の有機基であり、
は、二価の有機架橋基であり、
nは、0または1である。
【0007】
nが0のとき、Rは存在せず、R基は-C(=O)-O-O-H基に直接結合している。nが1のとき、Rが存在する。R基およびR基は、独立して、カルボニル基の形の酸素、ヒドロキシルまたはハロ、特にFもしくはClから選択される1~6個の置換基で置換されていてもよい。
【0008】
一実施形態では、一価の有機基Rは、C1~10アルキル基;C6~10アリール基;および環系に5~10個の原子を有するヘテロアリール基から選択され、上記環系の原子は、C、N、OおよびSから選択され、二価の有機架橋基Rは、置換または非置換のC1~10アルキレン基であり、ここで、RおよびRは、独立して、カルボニル基の形の酸素、ヒドロキシルまたはハロ、例えばFもしくはClから選択される1~6個の置換基で置換されていてもよい。
【0009】
好ましい実施形態では、ペルオキシカルボン酸は、6-フタルイミドペルオキシカプロン酸(ε-フタルイミドペルオキシヘキサン酸、PAPとも呼ばれる)である。
【0010】
別の実施形態では、歯科用漂白剤は、過酸化水素-ポリマー複合体を含む。ポリマー複合体のポリマーは、カルボニル含有ポリマーであってもよい。ポリマー複合体は、後述する水溶性のフィルム形成ポリマーであってもよい。
【0011】
好ましくは、ポリマー複合体のポリマーは、ポリビニルピロリドンであってもよい。したがって、過酸化水素-ポリマー複合体は、過酸化水素-ポリビニルピロリドン複合体であってもよい。例えば、過酸化水素は、ピロリドン群のカルボニル基と水素結合を形成して、過酸化水素-ポリマー複合体を形成することができる。1つの過酸化水素分子は、ピロリドンの少なくとも1つのカルボニル基と水素結合を形成してもよい。典型的には、1つの過酸化水素分子が1つのカルボニル基と水素結合を形成するか、または1つの過酸化水素分子が2つの水素結合を形成し、それぞれが隣接する2つのピロリドン環のカルボニル基と結合する。したがって、そのような複合体のピロリドン基と過酸化水素とのモル比は、約1:1~2:1の範囲であってもよい。これにより、過酸化水素とカルボニル基との間の配位の程度に応じて、15~20重量%の過酸化水素と80~85重量%のポリビニルピロリドンとを含み得る複合体が得られることになる。
【0012】
別の実施形態では、歯科用漂白剤は、非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素-ポリマー複合体を含む。
【0013】
歯科用漂白剤は、存在する非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素の重量に関して約0.01重量%~約35重量%の総量でフィルム中に存在していてもよい。好ましくは、歯科用漂白剤は、約5重量%~約20重量%の総量で、より好ましくは約8重量%~約15重量%の総量で存在していてもよい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「重量」という用語は、特に明記しない限り、フィルム単体、すなわち任意のバッキングシートまたは支持体を含まない状態での乾燥重量に対する重量パーセントを表している。一実施形態では、1または複数の環状ポリリン酸塩は、式(II)で定義され、
【化1】
(II)
式中、aは3~10の整数である。
【0015】
好ましくは、aは4~8の整数である。より好ましくは、aは6である。Mは、水素およびアルカリ金属を含む群のうちの1または複数から選択される。好ましいアルカリ金属は、NaおよびKの一方または両方を含み、より好ましくはNaである。好ましくは、1または複数の環状ポリリン酸塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムを含む。
【0016】
1または複数の環状ポリリン酸塩は、フィルム中に約2重量%~約9重量%の総量で存在していてもよい。好ましくは、1または複数の環状ポリリン酸塩は、約3重量%~約7重量%の総量で存在していてもよい。
【0017】
一実施形態では、1または複数のポリリン酸塩は、1または複数の線状ポリリン酸塩をさらに含んでいてもよい。1または複数の線状ポリリン酸塩は、式(III)の化合物を含んでいてもよく、
【化2】
(III)
式中、bは2~5の整数である。
【0018】
好ましくは、bは3または4である。さらにより好ましくは、bは3である。Mは、水素およびアルカリ金属を含む群のうちの1または複数から選択される。好ましいアルカリ金属は、NaおよびKの一方または両方を含み、より好ましくはNaである。明確にするために記すと、式(II)および(III)の置換基Mは、独立して選択されてもよいが、好ましい実施形態では、Naなどの同じものであってもよい。
【0019】
好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、ジポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムおよびテトラポリリン酸ナトリウムを含む群から選択される。より好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、トリポリリン酸ナトリウムを含む。
【0020】
1または複数の線状ポリリン酸塩は、フィルム中に1重量%~6重量%の総量で存在していてもよい。好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、2重量%~5重量%の総量で存在していてもよい。より好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、3重量%~4重量%の総量で存在していてもよい。さらにより好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、約3.5重量%の総量で存在していてもよい。
【0021】
好ましい実施形態では、1または複数のポリリン酸塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムを含む。好ましくは、ヘキサメタリン酸ナトリウムがフィルム中に2重量%~9重量%の量で存在し、トリポリリン酸ナトリウムが1重量%~5重量%の量で存在する。より好ましくは、ヘキサメタリン酸ナトリウムが3重量%~7重量%の量で存在し、トリポリリン酸ナトリウムが2重量%~5重量%の量で存在する。さらにより好ましくは、ヘキサメタリン酸ナトリウムが3重量%~6重量%の量で存在し、トリポリリン酸ナトリウムが3重量%~4重量%の量で存在する。
【0022】
一実施形態では、水溶性のフィルム形成ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸またはその塩、アルキレン基が2または3個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールおよびそれらのコポリマー、ならびに多糖類のうちの1または複数を含む。
【0023】
多糖類の水溶性のフィルム形成ポリマーは、プルラン、ペクチン、デンプン、デキストリン、キトサン、アルギン酸、アルギン酸の塩およびセルロース誘導体を含む群のうちの1または複数のものであってもよい。
【0024】
適切なセルロース誘導体としては、カルボキシアルキルセルロースまたはその塩、およびヒドロキシアルキルセルロースまたはその塩が挙げられ、カルボキシアルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースのアルキル基は、独立して、C1~5アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルから選択される。好ましいヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0025】
好ましくは、水溶性のフィルム形成ポリマーは、ポリビニルピロリドン、プルラン、ペクチン、デンプン、カルボキシアルキルセルロースまたはその塩、アルキル基が独立してC1~5アルキルから選択されたヒドロキシアルキルセルロースまたはその塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、アルキレン基が2または3個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールおよびそれらのコポリマー、ポリアクリル酸またはその塩、ならびにそれらの組み合わせを含む群から選択されてもよい。
【0026】
水溶性のフィルム形成ポリマーは、歯科用漂白剤を形成し得る過酸化水素-ポリマー複合体のポリマーであってもよい。例えば、水溶性のフィルム形成ポリマーがポリビニルピロリドンの場合、それは歯科用漂白剤として過酸化水素との複合体で存在していてもよい。
【0027】
1または複数のフィルム形成ポリマーは、フィルム中に約40重量%~約95重量%の総量で存在していてもよい。好ましくは、1または複数のフィルム形成ポリマーは、約50重量%~約90重量%の総量で存在していてもよい。より好ましくは、1または複数のフィルム形成ポリマーは、約60重量%~約85重量%の総量で存在していてもよい。さらにより好ましくは、1または複数のフィルム形成ポリマーは、約65重量%~約80重量%の総量で存在していてもよい。
【0028】
一実施形態では、1または複数の可塑剤は、ポリオール、例えばグリセロール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、単糖類、オリゴ糖類、ソルビタール(sorbital)およびソルビタンを含む群から選択され、アルキレン基は、独立して、C1~5アルキレン、好ましくはメチレン、エチレンまたはプロピレンから選択される。好ましいポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの一方または両方である。好ましいポリアルキレングリコールモノメチルエーテルは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。好ましい可塑剤はグリセロールである。
【0029】
1または複数の可塑剤は、フィルム中に約0.1重量%~約15重量%の総量で存在していてもよい。好ましくは、1または複数の可塑剤は、約1重量%~約12重量%の総量で存在していてもよい。より好ましくは、1または複数の可塑剤は、フィルム中に約3重量%~約10重量%の総量で存在していてもよい。
【0030】
歯用ホワイトニングフィルムは、1または複数の乳化剤を含む。一実施形態では、1または複数の乳化剤は、イオン性乳化剤および非イオン性乳化剤から選択されてもよい。別の実施形態では、1または複数の乳化剤は、脂肪酸誘導体、レシチンおよびポリソルベートを含む群から選択されてもよい。
【0031】
好ましくは、乳化剤、例えば非イオン性乳化剤は、飽和脂肪酸誘導体、レシチンまたはポリソルベートを含む群から選択される。脂肪酸は、飽和または不飽和であってもよい。より好ましくは、非イオン性乳化剤は、オレイン酸および/またはリノール酸などの少なくとも1の不飽和脂肪酸、および任意にパルミチン酸および/またはステアリン酸などの少なくとも1の飽和脂肪酸、またはポリソルベートの一方または両方を含む。
【0032】
非イオン性乳化剤などのより好ましい乳化剤は、飽和または不飽和であってもよい脂肪酸およびポリソルベートから選択される。より好ましくは、非イオン性乳化剤などの乳化剤は、(i)オレイン酸および/またはリノール酸などの少なくとも1の不飽和脂肪酸、および任意にパルミチン酸および/またはステアリン酸などの少なくとも1の飽和脂肪酸、ならびに(ii)ポリソルベートの一方または両方を含む。ポリソルベートは、ソルビタール、ソルビタン、イソソルビドのポリエトキシル化エステルである。好ましい飽和脂肪酸誘導体としては、飽和脂肪酸のショ糖エステル、飽和脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリド、または飽和脂肪酸のソルビタンエステルが挙げられる。
【0033】
1または複数の乳化剤は、フィルム中に0.1%~10%重量の総量で存在していてもよい。好ましくは、1または複数の乳化剤は、1重量%~5重量%、より好ましくは2重量%~4重量%の総量で存在する。
【0034】
一実施形態では、歯用ホワイトニングフィルムは、水をさらに含んでいてもよい。水は、フィルム中に15重量%より低いか等しい量で、特に0.1重量%~15重量%の量で存在していてもよい。典型的には、歯用ホワイトニングフィルムは、3重量%~12重量%、好ましくは5重量%~10重量%の量の水をさらに含んでいてもよい。
【0035】
一実施形態では、歯用ホワイトニングフィルムは、着色料、ゲル化剤、香料、甘味料、酸味料、酸化防止剤およびキレート剤を含む群から選択される1または複数の任意の成分をさらに含んでいてもよい。着色料は、FD&C Blue No.1(ブリリアントブルーFCF)またはそのレーキであってもよい。ゲル化剤は、ハイドロコロイド系接着剤であってもよい。
【0036】
歯用ホワイトニングフィルムの他の成分、例えば
ポリビニルピロリドンのような水溶性のフィルム形成ポリマーや、ヒドロキシプロピルセルロースのような特定の多糖類のいくつかの種類がゲル化を示し得る。本開示の目的のために、歯用ホワイトニングフィルムの任意の更なる成分としてゲル化剤が存在する場合、これはゲル化挙動を示す可能性のある他の成分のいずれかとは別個に、またそれに加えて考慮される。
【0037】
香料は、メントール、ペパーミントおよびアルキルアルカノエートを含む群から選択されてもよく、ここで、アルキル基は直鎖状または分岐状であってもよくかつ1~8個の炭素原子を含んでいてもよく、アルカノエート基は1~5個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0038】
甘味料は、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、シクラメート、エリスリトール、マンニトール、ソルビタールおよびキシリトールを含む群のうちの1または複数から選択されてもよい。酸味料は、リン酸であってもよい。
【0039】
酸化防止剤は、トコフェロール(ビタミンE)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびエチレンジアミン四酢酸またはその塩を含む群から選択される1または複数のものであってもよい。
【0040】
キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸またはその塩であってもよい。キレート剤は、重金属イオンを封鎖することで、ペルオキシカルボン酸の分解を防ぐために使用することができる。
【0041】
別の実施形態では、歯用ホワイトニングフィルムは、単層であってもよい。更なる実施形態では、歯用ホワイトニングフィルムには、バリア層または支持基材などの任意の他の層が含まれていない。
【0042】
別の実施形態では、歯科用アライナーなしで使用できるフィルムは、50~250マイクロメートルの範囲の厚さを有し、より好ましくは、フィルムは、100~200マイクロメートル、さらにより好ましくは約150マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0043】
好ましくは、歯科用アライナーなしで使用できるフィルムは、50~70mm、より好ましくは約60mmの長さを有する。好ましくは、フィルムは、15~20mm、より好ましくは約17.5mmの幅を有する。
【0044】
歯科用アライナーなしで使用できるフィルムは、80~250mg、好ましくは130~200mg、より好ましくは約150mgの範囲の重量を有していてもよい。
【0045】
別の実施形態では、歯科用アライナーと共に使用できるフィルムは、50~150マイクロメートルの範囲の厚さを有し、より好ましくは、フィルムは、60~130マイクロメートル、さらにより好ましくは70~125マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0046】
好ましくは、歯科用アライナーと共に使用できるフィルムは、40~70mm、より好ましくは50~60mmの長さを有する。
好ましくは、フィルムは、8~20mm、より好ましくは10~12mmの幅を有する。
【0047】
歯科用アライナーと共に使用できるフィルムは、80~200mg、好ましくは90~160mgの範囲の重量を有していてもよい。
【0048】
第2の態様では、歯用ホワイトニングフィルムの製造プロセスが提供され、このプロセスは、少なくとも以下の段階を含む:
- 非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素の一方または両方を、非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素の約0.01重量%~約35重量%の総量で含む歯科用漂白剤と、約3重量%~約14重量%の総量の1または複数のポリリン酸塩であって、当該1または複数のポリリン酸塩は1または複数の環状ポリリン酸塩を含む、1または複数のポリリン酸塩と、約40重量%~約80重量%の総量の1または複数の水溶性のフィルム形成ポリマーと、約0.25重量%~約15重量%の総量の1または複数の可塑剤と、約0.1重量%~約10重量%の総量の1または複数の乳化剤とを、水と混合して、歯用ホワイトニング水性液体を提供する段階;
- 歯用ホワイトニング水性液体を基材に適用して、歯用ホワイトニング水性液体を担持する基材を提供する段階;
- 歯用ホワイトニング水性液体を乾燥させて、基材に歯用ホワイトニングフィルムを提供する段階であって、当該フィルムは約50μm~約500μmの厚さを有する、段階。
【0049】
ポリリン酸塩の基準量が15重量%を超えると、歯用ホワイトニング水性液体の安定性が損なわれることがわかった。この現象は、歯用ホワイトニング水性液体中のポリリン酸塩の装入量が10重量%を超えて上昇すると起こり始めた。ポリリン酸塩の含有量が15重量%を超えるキャスティング液は、ゲル化の傾向を示し、ポリリン酸塩を加えた直後にキャストできないキャスティング液を提供した。
【0050】
一実施形態では、歯用ホワイトニング水性液体は、60重量%を超える水(存在する水を含む歯用ホワイトニング液体の総重量を基準にして)、好ましくは70重量%~85重量%の水を含む。したがって、歯用ホワイトニング水性液体は、歯用ホワイトニングフィルムを形成する成分を40重量%またはそれ以下、好ましくは15重量%~30重量%で含んでいてもよい。
【0051】
一実施形態では、乾燥段階は、
- 歯用ホワイトニング水性液体を空気中で60℃未満の温度で乾燥させる段階
を含む。
【0052】
更なる実施形態では、空気中での歯用ホワイトニング水性液体の乾燥は、40~60℃未満、好ましくは40~55℃の範囲の温度で行われる。更なる実施形態では、乾燥は、例えば、乾燥オーブン、ホットエアストリームなどの乾燥機に基材上の歯用ホワイトニング水性液体を通過させることにより、0.2~2.0m/分の範囲、好ましくは0.5~1.5m/分の範囲の速度で行われてもよい。
【0053】
更なる実施形態では、乾燥段階は、80分またはそれより短い期間、好ましくは35分またはそれより短い期間、より好ましくは25分またはそれより短い期間で行われる。乾燥段階は、少なくとも8分の期間、好ましくは少なくとも15分の期間、より好ましくは少なくとも20分の期間で行われてもよい。したがって、乾燥段階は、8~80分、好ましくは15~35分、より好ましくは20~25分の期間で行われてもよい。
【0054】
別の実施形態では、混合段階は、高いせん断下、例えば、500s-1超、好ましくは1000s-1超、最大8000s-1までのせん断速度で行われてもよい。好ましくは、せん断速度は、1000s-1~4000s-1の範囲である。
【0055】
一実施形態では、混合段階はさらに、着色料、ゲル化剤、香料、甘味料、酸味料、酸化防止剤およびキレート剤を含む群から選択される1または複数の更なる成分を混合する段階を含む。
【0056】
別の実施形態では、本プロセスはさらに、混合段階と適用段階との間に、以下の段階を含む:
- 歯用ホワイトニング水性液体を脱気して、脱気された歯用ホワイトニング水性液体を提供する段階。
【0057】
脱気段階は、歯用ホワイトニングフィルムの成分を水と混合した後、脱気された水性キャスティング液を基材に適用する段階の前に行われてもよい。
【0058】
別の実施形態では、本プロセスはさらに、以下の段階を含む:
- 歯用ホワイトニングフィルムを基材から分離する段階。
【0059】
第3の態様では、第2の態様およびその実施形態のプロセスによって得られる歯用ホワイトニングフィルムが提供される。
【0060】
第4の態様では、歯を漂白する方法が提供され、当該方法は、少なくとも以下の段階を含む:
- 第1または第3の態様に記載の歯用ホワイトニングフィルムを、対象の1または複数の歯に適用する段階。本方法は、審美的な方法、特に単独で審美的な方法であってもよい。
【0061】
一実施形態では、フィルムは、5分超60分より短いかそれに等しい期間で、対象の1または複数の歯に適用される。好ましくは、歯用ホワイトニングフィルムは、15分~30分の期間で適用される。
【0062】
フィルムは、1または複数の歯の表面に、かつ/または、1または複数の歯の表面、咀嚼面および1または複数の歯の裏面全体に適用されてもよい。
【0063】
本方法はさらに、歯用ホワイトニングフィルムを適用する段階の後に、対象の1または複数の歯に歯科用アライナーを適用する段階を含んでいてもよい。したがって、歯用ホワイトニングフィルムは、歯と歯科用アライナーとの間にあってもよい。好ましくは、歯科用アライナーは、透明な歯科用アライナーである。
【0064】
歯科用アライナーと共に使用される場合、フィルムは、対象の1または複数の歯に5分超120分より短いかそれに等しい期間で適用される。好ましくは、歯用ホワイトニングフィルムは、45分~90分の期間で適用される。
【0065】
第5の態様では、歯科用アライナーと、第1の態様に記載の1または複数の歯用ホワイトニングフィルムとを含むキットであって、フィルムが50~150マイクロメートルの範囲の厚さを有する、キットが提供される。好ましくは、歯科用アライナーは、透明な歯科用アライナーである。
【0066】
好ましくは、フィルムは、60~130マイクロメートル、より好ましくは70~125マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0067】
好ましくは、フィルムは、40~70mm、より好ましくは50~60mmの長さを有する。好ましくは、フィルムは、8~20mm、より好ましくは10~12mmの幅を有する。そのようなフィルムは、80~200mg、好ましくは90~160mgの範囲の重量を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
次に、本発明の実施形態を、ほんの一例として、以下の添付図面を参照しながら説明する。
図1】非過酸化水素系漂白剤がPAPであった配合物について、本発明によるポリリン酸塩を含む歯用ホワイトニングフィルム(実施例1~3)を、ポリリン酸塩を含まない2つの比較例(番号1および2)と比較した、14回適用した後の歯の外因性着色の変化を示すグラフである。
図2】漂白剤が過酸化水素とポリビニルピロリドンとの複合体であった配合物について、本発明の実施例4によるポリリン酸塩を含む歯用ホワイトニングフィルムを、ポリリン酸塩を含まない比較例3と比較した、14回適用した後の歯の外因性着色の変化を示すグラフである。
図3】非過酸化水素系漂白剤がPAPであった配合物について、本発明の実施例1によるポリリン酸塩を含む歯用ホワイトニングフィルムを、ポリリン酸塩を含まない比較例1と比較した、10回適用した後の歯の外因性着色の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
PAPなどの非過酸化物および過酸化水素-ポリマー複合体のような歯科用漂白剤は、高い漂白効率を発揮しながらも、環境に優しく、ヒトにも安全に使用できる点で有利である。しかしながら、過酸化水素などの歯用ホワイトニング剤の濃度を上げると、歯や歯茎の知覚過敏を強める可能性があり、より低い濃度の漂白剤で歯用ホワイトニング効果が得られれば有利であることがわかっている。
【0070】
本明細書に記載される歯用ホワイトニングフィルムは、非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素の一方または両方を含む歯科用漂白剤と、1または複数のポリリン酸塩であって、1または複数のポリリン酸塩が1または複数の環状ポリリン酸塩を含む、1または複数のポリリン酸塩と、1または複数の水溶性のフィルム形成ポリマーと、1または複数の可塑剤と、1または複数の乳化剤とを含み、フィルムは、約50μm~約500μmの厚さを有する。
【0071】
さらに、本明細書に記載される歯用ホワイトニングフィルムは、歯科用アライナーと組み合わせて使用することができる。したがって、歯科用アライナーと、当該歯科用アライナーと共に使用する1または複数の歯用ホワイトニングフィルムを含むキットも提供される。
【0072】
歯の矯正には、従来の金属製のブレースに代えて、透明な歯科用アライナーを歯科矯正手法において使用するケースが増えている。これらのアライナーは、透明なプラスチック製の歯の印象材で、1日最大約20時間で最長2年間装着される。アライナーは、2週間ごとに新しいアライナーを使用するように設計されており、このアライナーは、歯型の位置が僅かに異なるため、時間の経過とともに歯の位置が徐々に変化し、望ましい状態になる。
【0073】
アライナーはそのように1日の大半で使用するため、過酸化物のジェルまたはガムシールドを使用することなどの従来の歯科医院外での歯用ホワイトニング方法は、歯科用アライナーがすでに定位置にあるため、実用的ではない。裏面にライナーが付いているホワイトニングストリップは、膨らんで歯とアライナーを圧迫する可能性があり、また、使用後にストリップを取り外さなければならず、要は歯科用アライナーも取り外さなければならないため、実用的ではない。歯をホワイトニングするジェルまたはペーストを歯科用アライナーのトレーの内側に適用し、次いでこのアライナーを歯に被せることは、アライナーと歯との間の密着度が高いため、ジェルまたはペーストがアライナーから押し出されてしまうので、実用的ではない。
【0074】
そのため、歯並びの標準的手順を妨げることなく、またその効果に影響を与えることなく、アライナーを装着した状態で歯に適用できる歯用ホワイトニングフィルムを提供することが有利である。このために、フィルムは、50~150マイクロメートル、より好ましくは60~130マイクロメートル、さらにより好ましくは70~125マイクロメートルの厚さを有することが好ましい。そのような厚さであれば、1または複数の歯を矯正するアライナーの機能を妨げたり、影響を与えたりすることなく、フィルムを1または複数の歯とアライナーとの間に配置することができる。また、フィルムは、40~70mm、より好ましくは50~60mmの長さを有することが好ましい。好ましくは、フィルムは、8~20mm、より好ましくは10~12mmの幅を有する。そのようなフィルムは、80~200mg、好ましくは90~160mgの範囲の重量を有していてもよい。
【0075】
本発明は、歯科用アライナーと共に使用するか否かに関わらず、環状ポリリン酸塩と、任意に線状ポリリン酸塩とを含む歯用ホワイトニングフィルムを提供する。そのようなフィルムは、漂白性の増強および耐着色性の向上の一方または両方を提供する。フィルムは、バリア層または支持基材などの更なる層の存在を必要としない。さらに、ポリリン酸塩の存在により、歯科用漂白剤の濃度が低くても、漂白効率の向上を実現できる。また、そのような歯用ホワイトニングフィルムの製造プロセス、およびそのようなフィルムを使用する方法も開示されている。
【0076】
歯用ホワイトニングフィルムは、水をさらに含んでいてもよい。水は、フィルム中に15重量%未満、特に0.1重量%~15重量%の量で存在していてもよい。典型的には、歯用ホワイトニングフィルムは、3重量%~12重量%、好ましくは5重量%~10重量%の量の水をさらに含んでいてもよい。
【0077】
歯用ホワイトニングフィルムは、着色料、ゲル化剤、香料、甘味料、酸味料、酸化防止剤およびキレート剤を含む群から選択される1または複数の更なる成分をさらに含んでいてもよい。
【0078】
歯用ホワイトニングフィルムは、フィルムの乾燥重量、すなわち水分を除いて乾燥させた成分の重量に関して定義され、フィルム単体、すなわちバッキングシートまたは支持体を一切含まないフィルムの乾燥重量の合計に対するパーセンテージ(すなわち重量%)で表される。非過酸化水素系歯科用漂白剤および/または過酸化水素、ポリリン酸塩、水溶性のフィルム形成ポリマー、可塑剤および乳化剤、ならびに任意に1または複数の更なる成分、および任意に水の割合は、乾燥フィルムの重量に対するパーセンテージで表すと、合計100重量%になるはずである。
【0079】
歯用ホワイトニングフィルムは、歯の表面形状に合わせて成形可能であり、かつ当該表面形状を帯びることができるような可撓性を有している。
【0080】
歯科用漂白剤
歯用ホワイトニングフィルムは、非過酸化水素系漂白剤および過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素の一方または両方を含む歯科用漂白剤を含む。
【0081】
本明細書で使用される場合、「非過酸化水素系漂白剤」という用語は、過酸化水素(H)を含まない漂白剤である。非過酸化水素系漂白剤は、この薬剤が過酸化水素でない限り、酸素-酸素の単結合を含むという点で過酸化物であってもよいし、別の(非過酸化水素系)有機または無機の漂白剤であってもよい。しかしながら、非過酸化物系漂白剤は、水と接触すると過酸化水素を放出し得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、「過酸化水素-ポリマー複合体」という用語は、過酸化水素がポリマーと複合化している過酸化水素を含む歯科用漂白剤である。例えば、過酸化水素は、ポリビニルピロリドンなどのポリマーのカルボニル基と水素結合を形成して、複合体を形成することができる。このように、過酸化水素-ポリマー複合体は、遊離過酸化水素を含んでいない。「遊離過酸化水素」とは、水素結合を介して他の化合物と複合化するなど、他の化合物と結合していない過酸化水素を意味する。
【0083】
非過酸化水素系漂白剤は、ペルオキシカルボン酸を含んでいてもよい。ペルオキシカルボン酸は、式(I)を有してよく、
-R -C(=O)-O-O-H (I)
式中、Rは、一価の有機基である。
【0084】
好ましくは、Rは、C1~10アルキル基;C6~10アリール基;および環系に5~10個の原子を有するヘテロアリール基であってもよく、上記環系の原子は、C、N、OおよびSから選択される。より好ましくは、Rは、N-フタルイミド基である。
【0085】
は二価の有機架橋基であり、nは0または1である。nが0のとき、Rは存在せず、R基は-C(=O)-O-O-H基に直接結合している。nが1のとき、Rが存在する。Rは、好ましくは、置換または非置換のC1~10アルキレン基である。より好ましくは、Rは置換または非置換のC4~6アルキレン基であり、さらにより好ましくは、Rはペンチレン基(すなわち-(CH-)である。
【0086】
基およびR基は、独立して、カルボニル基の形の酸素;ヒドロキシル;およびハロ、特にFまたはClから選択される1~6個の置換基で置換されていてもよい。明確にするために記すと、2つの水素原子が同じ炭素原子から取り除かれ、1つの酸素原子で置換されて、カルボニル基を形成することができる。
【0087】
好ましい実施形態では、ペルオキシカルボン酸は、6-フタルイミドペルオキシカプロン酸(ε-フタルイミドペルオキシヘキサン酸、PAPとも呼ばれる)である。
【0088】
好ましくは、PAPなどのペルオキシカルボン酸の漂白剤が、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.01~10%の割合で存在する。より好ましくは、PAPなどのペルオキシカルボン酸の漂白剤は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.5~5.0%の割合で存在する。
【0089】
ペルオキシカルボン酸の漂白剤は、ペルオキシカルボン酸と炭水化物、例えばデキストリンとの複合体などの複合体として提供されてもよい。そのような複合体は、PAPなどのペルオキシカルボン酸の漂白剤を1~20%の割合で含んでいてもよく、残りはデキストリンなどの炭水化物である。典型的には、これらの複合体は、約10重量%~20重量%、例えば約11重量%または約17重量%のペルオキシカルボン酸、例えばPAPを含んでいてもよく、残りはデキストリンなどの炭水化物である。好ましくは、ペルオキシカルボン酸の漂白剤は、PAPとデキストリンとの複合体として提供される。そのような複合体の例としては、Solvay社からEURECO(商標)という商品名で販売されているものがある。
【0090】
PAPなどのペルオキシカルボン酸とデキストリンなどの炭水化物との複合体は、安定性が向上した、特に熱的および化学的安定性が向上した漂白剤を提供する。漂白剤は、デキストリン環内のように炭水化物と分子間で結合しているため反応性が低く、そのため分解に対する熱エネルギーの障壁となる。ペルオキシカルボン酸が分解され得る前に、複合体からペルオキシカルボン酸を解離させるためにはエネルギーが必要である。
【0091】
水性酸性条件では、ペルオキシカルボン酸の漂白剤は、過酸化水素の発生と共にゆっくりと分解する。例えば、ペルオキシカルボン酸PAPは、ゆっくりと分解して、ε-フタルイミドヘキサン酸(PAC)になる。しかしながら、これは歯用ホワイトニング効果を提供する主要なメカニズムではない。
【0092】
その代わりに、例えば唾液によって生じるアルカリ性条件では、過酸化水素ではなく、酸素と水との発生を伴ってペルオキシカルボン酸の漂白剤が分解する。例えば、アルカリ性条件では、PAPは、PAC、酸素および水に分解する。分解の速度および程度は、pHの増加とともに増加する。PAPなどのペルオキシカルボン酸の非過酸化水素系漂白剤を安定化させ、使用前にその分解を緩和するために、歯用ホワイトニングフィルム中に酸味料が存在していてもよい。
【0093】
代替的または追加的に、非過酸化水素系漂白剤は、亜塩素酸ナトリウムを含んでいてもよい。典型的には、亜塩素酸ナトリウムは、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して1%~5%の割合で存在していてもよい。
【0094】
代替的または追加的に、歯科用漂白剤は、過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素を含んでいてもよい。ポリマー複合体のポリマーは、水溶性のフィルム形成ポリマーであってもよい。例えば、過酸化水素はピロリドン群のカルボニル基と水素結合を形成して、複合体を形成することができる。1つの過酸化水素分子は、ピロリドンの少なくとも1つのカルボニル基と水素結合を形成してもよい。典型的には、1つの過酸化水素分子が1つのカルボニル基と水素結合を形成するか、または1つの過酸化水素分子が2つの水素結合を形成し、それぞれが隣接する2つのピロリドン環のカルボニル基と結合する。したがって、そのような複合体のピロリドン基と過酸化水素とのモル比は、約1:1~2:1の範囲であってもよい。これにより、過酸化水素とカルボニル基との間の配位の程度に応じて、15~20重量%の過酸化水素と80~85重量%のポリビニルピロリドンとを含み得る複合体が得られることになる。
【0095】
複合体のポリビニルピロリドンポリマーは、未架橋のポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとアクリル酸とのコポリマー、ビニルピロリドンとアクリル酸ビニルとのコポリマー、またはアルキル化ポリビニルピロリドンを含む群から選択される1または複数のものであってもよい。ポリビニルピロリドンは、好ましくは、100万~150万の範囲の重量平均分子量を、さらにより好ましくは約130万の重量平均分子量を有していてもよい。
【0096】
過酸化水素を含む適切なピロリドンポリマー複合体は、Ashland社からPeroxydone(商標)という商品名で販売されている。
【0097】
好ましくは、過酸化水素-ポリビニルピロリドン複合体などの過酸化水素-ポリマー複合体の歯科用漂白剤が、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.01~80%の割合で存在する。例えば、過酸化水素-ポリビニルピロリドン複合体の乾燥重量が80%の場合、フィルムの乾燥重量に対して過酸化水素が14.4%、ポリビニルピロリドンが65.6%に相当する。より好ましくは、過酸化水素-ポリビニルピロリドン複合体などの過酸化水素-ポリマー複合体は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して10~70%、さらにより好ましくは20~60%の割合で存在する。
【0098】
別の例として、過酸化水素-ポリマー複合体は、過酸化カルバミドとも呼ばれる過酸化水素-尿素複合体をさらに含んでいてもよい。この複合体は、過酸化水素と尿素とを同じ割合で含んでおり、過酸化水素の酸素と尿素の第一級アミンの窒素との間に水素結合が形成されている。
【0099】
非過酸化水素系歯科用漂白剤と過酸化水素とは、フィルム中に約0.01重量%~約35重量%の総量で存在していてもよい。好ましくは、非過酸化水素系歯科用漂白剤と過酸化水素とは、約5重量%~約20重量%の総量で、より好ましくは約8重量%~約15重量%の総量で存在していてもよい。明確にするために記すと、これらの割合は、例えば歯用ホワイトニングフィルム中に存在する過酸化水素-ポリマー複合体の割合ではなく、歯科用漂白剤の活性成分、すなわち非過酸化水素系歯科用漂白剤および/または過酸化水素に関して定義される。したがって、これらの割合は、非過酸化水素系歯科用漂白剤および過酸化水素の一方または両方を含み得るか、または本質的に構成され得るか、または構成され得る歯科用漂白剤活性について言及することができる。
【0100】
1または複数のポリリン酸塩
歯用ホワイトニングフィルムは、1または複数の環状ポリリン酸塩を含む1または複数のポリリン酸塩を含む。1または複数のポリリン酸塩は、フィルム中に約2重量%~約15重量%の総量で存在していてもよい。任意に、1または複数のポリリン酸塩は、1または複数の線状ポリリン酸塩をさらに含んでいてもよい。
【0101】
1または複数の環状ポリリン酸塩は、1または複数のメタリン酸塩を含んでいてもよい。メタリン酸塩は、一般式(PO のオキシアニオンで、nは3以上の整数である。メタリン酸アニオンは、中性種が酸化状態(I)のカチオンに対して一般式M(POを有するように、水素およびアルカリ金属を含む群のうちの1または複数のカチオンなどのカチオン性対イオンMによって電荷バランスをとっていてもよい。1または複数の環状ポリリン酸塩は、式(II)で定義されるメタリン酸塩であってもよく、
【化3】
(II)
式中、aは3~10の整数である。
【0102】
好ましくは、aは4~8の整数である。より好ましくは、aは6である。Mは、水素およびアルカリ金属を含む群のうちの1または複数から選択される。好ましいアルカリ金属は、NaまたはKであり、より好ましくはNaである。
【0103】
明確にするために記すと、式(II)の1または複数の環状ポリリン酸塩は、繰り返し単位[-P(=O)(OM)-O-]で定義され、「a」という用語は、存在する繰り返し単位の数を表す。式(II)の繰り返し単位の2つの自由結合を結ぶ円弧は、ポリリン酸塩の環状の性質を表すことを意図している。したがって、環状ポリリン酸塩は、式M(POで表すことができる。したがって、a=6のとき、ヘキサメタリン酸塩が提供される。
【0104】
MがHである場合、式(II)は環状ポリリン酸を提供する。Mがアルカリ金属である場合、式(IIa)の環状ポリリン酸塩などの環状ポリリン酸の塩が提供され、
【化4】
(IIa)
式中、Mは、好ましくはアルカリ金属のカチオンである。アルカリ金属のカチオンは、環状アニオン性ポリリン酸塩に電荷バランスを提供する。
【0105】
アルカリ金属カチオンは、酸化状態(I)を有していてもよい。好ましくは、Mは、NaまたはK、より好ましくはNaのカチオンである。好ましくは、1または複数の環状ポリリン酸塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムを含む。
【0106】
1または複数の環状ポリリン酸塩は、フィルム中に約2重量%~約9重量%の総量で存在していてもよい。好ましくは、1または複数の環状ポリリン酸塩は、約3重量%~約7重量%の総量で存在していてもよい。
【0107】
一実施形態では、1または複数のポリリン酸塩は、1または複数の線状ポリリン酸塩をさらに含んでいてもよい。1または複数の線状ポリリン酸塩は、式(III)の化合物を含んでいてもよく、
【化5】
(III)
式中、bは2~5の整数である。
【0108】
好ましくは、bは3または4である。さらにより好ましくは、bは3である。Mは、電荷バランスを提供するカチオンである。Mは、好ましくは、水素およびアルカリ金属を含む群のうちの1または複数のカチオン、すなわち酸化状態(I)のカチオンである。好ましいアルカリ金属カチオンは、NaまたはK、より好ましくはNaのカチオンを含む。
【0109】
明確にするために記すと、式(III)の1または複数の線状ポリリン酸塩は、繰り返し単位[-P(=O)(OM)-O-]で定義され、「b」という用語は、存在する繰り返し単位の数を表す。したがって、線状ポリリン酸塩は、式Mb+2O(POで表すことができる。したがって、b=3のとき、トリポリリン酸塩が提供される。
【0110】
MがHである場合、式(III)は線状ポリリン酸を提供する。Mがアルカリ金属である場合、式(IIIa)の線状ポリリン酸塩などの線状ポリリン酸の塩が提供され、
【化6】
(IIIa)
式中、Mは、好ましくはアルカリ金属のカチオンである。アルカリ金属のカチオンは、線状アニオン性ポリリン酸塩に電荷バランスを提供する。
【0111】
アルカリ金属カチオンは、酸化状態(I)を有していてもよい。好ましくは、Mは、NaまたはK、より好ましくはNaのカチオンである。末端の繰り返し単位[-P(=O)(O)-O-]は、アニオン電荷がMのカチオン電荷とバランスをとっている[-P(=O)(O)-O]で代替的に表すことができる。したがって、O-]-Mは、共有結合を表していない可能性がある。
【0112】
好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、ジポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムおよびテトラポリリン酸ナトリウムを含む群から選択される。より好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、トリポリリン酸ナトリウムを含む。
【0113】
1または複数の線状ポリリン酸塩は、フィルム中に1重量%~6重量%の総量で存在していてもよいが、ただし、1または複数のポリリン酸塩の総量は、約2重量%~約15重量%の範囲であることを条件とする。好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、2重量%~5重量%の総量で存在していてもよい。より好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、3重量%~4重量%の総量で存在していてもよい。さらにより好ましくは、1または複数の線状ポリリン酸塩は、約3.5重量%の総量で存在していてもよい。
【0114】
1または複数のポリリン酸塩は、メタリン酸塩などの環状ポリリン酸塩と、線状ポリリン酸塩とを含んでいてもよい。好ましくは、メタリン酸塩などの環状ポリリン酸塩は、フィルム中に2重量%~9重量%の量で存在し、線状ポリリン酸塩は、1重量%~6重量%の量で存在する。より好ましくは、メタリン酸塩などの環状ポリリン酸塩は、3重量%~7重量%の量で存在し、線状ポリリン酸塩は、2重量%~5重量%の量で存在する。さらにより好ましくは、メタリン酸塩などの環状ポリリン酸塩は、3重量%~6重量%の量で存在し、線状ポリリン酸塩は、3重量%~4重量%の量で存在する。
【0115】
1または複数のポリリン酸塩は、ヘキサメタリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムを含んでいてもよい。好ましくは、ヘキサメタリン酸ナトリウムがフィルム中に2重量%~9重量%の量で存在し、トリポリリン酸ナトリウムが1重量%~6重量%の量で存在する。より好ましくは、ヘキサメタリン酸ナトリウムが3重量%~7重量%の量で存在し、トリポリリン酸ナトリウムが2重量%~5重量%の量で存在する。さらにより好ましくは、ヘキサメタリン酸ナトリウムが3重量%~6重量%の量で存在し、トリポリリン酸ナトリウムが3重量%~4重量%の量で存在する。
【0116】
水溶性のフィルム形成ポリマー
歯用ホワイトニングフィルムは、1または複数の水溶性のフィルム形成ポリマーを含む。水溶性のフィルム形成ポリマーは、フィルムに構造を提供し、歯用ホワイトニング時に漂白剤の放出を制御する。本明細書で使用される場合、「水溶性」ポリマーとは、1gのポリマーが30gまたはそれ以下の水に溶けるものをいう。例えば、1gのポリマーが25gの水に溶ける場合、ポリマーは水溶性であり得る。
【0117】
1または複数の水溶性のフィルム形成ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸またはその塩、アルキレン基が2または3個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールおよびそれらのコポリマー、ならびに多糖類を含む群から選択される1または複数のものであってもよい。
【0118】
多糖類の水溶性のフィルム形成ポリマーの例としては、プルラン、ペクチン、デンプン、デキストリン、キトサン、アルギン酸、アルギン酸の塩およびセルロース誘導体が挙げられる。適切なセルロース誘導体としては、カルボキシアルキルセルロースまたはその塩、およびヒドロキシアルキルセルロースまたはその塩が挙げられ、カルボキシアルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースのアルキル基は、独立して、C1~5アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルから選択される。好ましいヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0119】
好ましくは、水溶性のフィルム形成ポリマーは、ポリビニルピロリドン、プルラン、ペクチン、デンプン、カルボキシアルキルセルロースまたはその塩、アルキル基が独立してC1~5アルキルから選択されたヒドロキシアルキルセルロースまたはその塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、アルキレン基が2または3個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールおよびそれらのコポリマー、ポリアクリル酸またはその塩、およびそれらの組み合わせを含む群から選択されてもよい。より好ましくは、水溶性のフィルム形成ポリマーは、ポリビニルピロリドンと、プルラン、ペクチン、デンプン、カルボキシアルキルセルロースまたはその塩、アルキル基が独立してC1~5アルキルから選択されたヒドロキシアルキルセルロースまたはその塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー、ポリアクリル酸またはその塩を含む群から選択される1または複数の更なる水溶性のフィルム形成ポリマーとを含む。
【0120】
水溶性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースの塩、カルボマー、デキストリン、キトサン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーを含む群から選択されてもよい。
【0121】
ポリビニルピロリドンは、未架橋ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとアクリル酸とのコポリマー、ビニルピロリドンとアクリル酸ビニルとのコポリマー、またはアルキル化ポリビニルピロリドンを含む群から選択される1または複数のものであってもよい。本明細書で使用される場合、「アルキル化された」PVPという用語は、アルキル基で置換されたPVPを意味する。例えば、PVPは3位でアルキル置換されていてもよい。アルキル基は、直鎖状または分岐状のC1~5アルキルであってもよい。例示的なアルキル基としては、メチル基およびエチル基が挙げられる。上述のように、ポリビニルピロリドンは、歯科用漂白剤として過酸化水素との複合体で存在していてもよい。
【0122】
ポリビニルピロリドンは、好ましくは100万~150万の範囲の重量平均分子量を有していてもよく、さらにより好ましくは約130万の重量平均分子量を有している。適切なポリビニルピロリドンは、BASF社からKollidon(商標)という商品名で販売されている。
【0123】
ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースの一方または両方であってもよい。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースに関しては、ヒドロキシアルキル基は、独立して、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピルから選択されてもよく、一方、アルキルセルロースは、独立して、メチルセルロース、エチルセルロースおよびプロピルセルロースを含む群から選択されてもよい。好ましくは、ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシプロピルセルロースである。適切なヒドロキシプロピルセルロースは、Ashland社からKlucel(商標)という商品名で販売されている。
【0124】
カルボキシアルキルセルロースまたはその塩は、カルボキシメチルセルロースまたはそのアルカリ金属塩、例えばナトリウムであることが多い。好ましくは、カルボキシアルキルセルロースの塩は、カルボキシメチルセルロースナトリウムである。適切なカルボキシメチルセルロースナトリウムは、Hercules Inc社からBlanose(商標)の商品名で販売されている。
【0125】
典型的には、水溶性のフィルム形成ポリマーが、アルキレン基が2または3個の炭素原子を有するポリアルキレングリコールまたはそのコポリマーである場合、ポリマーまたはコポリマーは、200,000より低いかそれに等しい、特に20,000~200,000の範囲の分子量を有することが望ましい。
【0126】
特定の水溶性のフィルム形成ポリマーは、接着剤としても機能することもでき、歯用ホワイトニングフィルムを1または複数の歯に付着させるのに役立つ。そのような接着性のある水溶性のフィルム形成ポリマーは、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースの塩、カルボマー、デキストリン、キトサンおよびポリエチレングリコールを含む群から選択される1または複数のものであってもよい。ポリエチレングリコールは、ポリエチレンオキシドとしても知られており、接着性のある水溶性のフィルム形成ポリマーとして好ましい。
【0127】
接着性のある水溶性のフィルム形成ポリマーがカルボキシアルキルセルロースまたはその塩、特にアルカリ金属塩である場合、それは、好ましくは、カルボキシC1~5アルキルセルロース、またはそのナトリウム塩である。最も好ましくは、接着性のある水溶性ポリマーは、カルボキシメチルセルロースを含む。カルボキシメチルセルロースは、49,000~725,000、典型的には約95,000の重量平均分子量を有していてもよい。適切なカルボキシメチルセルロースナトリウムは、Ashland社からBlanose(商標)という商品名で販売されている。
【0128】
接着性のある水溶性のフィルム形成ポリマーが、ポリ(アクリル酸)としても知られているカルボマーである場合、それは、好ましくは、アクリル酸のホモポリマー;またはその塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、好ましくはナトリウムまたはカルシウムである。
【0129】
接着性のある水溶性のフィルム形成ポリマーがデキストリンの場合、それは、D-グルコース単位がα-(1→4)またはα-(1→6)グリコシド結合で結合したポリマーを含む。
【0130】
接着性のある水溶性のフィルム形成ポリマーがキトサンの場合、それは、ランダムに分布したβ-(1→4)結合のD-グリコサミンとN-アセチル-D-グルコサミンとを含む。
【0131】
水溶性のフィルム形成ポリマーは、好ましくは、ポリビニルピロリドンと、1または複数の接着性のある水溶性ポリマー、例えば上記で定義したものを含む。水溶性のフィルム形成ポリマーは、より好ましくは、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。代替的に、水溶性のフィルム形成ポリマーは、好ましくは、ポリビニルピロリドンと、炭水化物、例えば上記で定義したもの、特にペクチンとを含む。
【0132】
1または複数のフィルム形成ポリマーは、フィルム中に約40重量%~約95重量%の総量で存在していてもよい。好ましくは、1または複数のフィルム形成ポリマーは、約60重量%~約90重量%の総量で存在していてもよい。より好ましくは、1または複数のフィルム形成ポリマーは、約70重量%~約85重量%の総量で存在していてもよい。さらにより好ましくは、1または複数のフィルム形成ポリマーは、約75重量%~約80重量%の総量で存在していてもよい。
【0133】
可塑剤
歯用ホワイトニングフィルムには、可塑剤が存在している。好ましくは、可塑剤は生理学的に許容される可塑剤であることが望ましい。
【0134】
1または複数の可塑剤は、ポリオール、例えばグリセロール、アルキレン基がC2~5アルキレンから独立して選択されたポリアルキレングリコール、アルキレン基がC2~5アルキレンから独立して選択されたポリアルキレングリコールモノメチルエーテル、単糖類、オリゴ糖、ソルビタールおよびソルビタンを含む群から選択されてもよく、好ましくはエチレンまたはプロピレンである。好ましいポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの一方または両方である。好ましいポリアルキレングリコールモノメチルエーテルは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0135】
可塑剤は、親水性の可塑剤、例えば、ポリオール、例えばグリセロール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ソルビタールおよびソルビタンを含む群のうちの1または複数のものであってもよい。好ましい可塑剤はグリセロールである。
【0136】
1または複数の可塑剤は、フィルム中に約0.1重量%~約15重量%の総量で存在していてもよい。好ましくは、1または複数の可塑剤は、約1重量%~約12重量%の総量で存在していてもよい。より好ましくは、1または複数の可塑剤は、フィルム中に約3重量%~約10重量%の総量で存在していてもよい。歯科用漂白剤がPAPなどの非過酸化水素系歯科用漂白剤を含む場合、可塑剤は1~5重量%の範囲で存在していてもよい。歯科用漂白剤が過酸化水素-ポリマー複合体における過酸化水素を含む場合、可塑剤は8~12重量%の範囲で存在していてもよい。
【0137】
乳化剤
歯用ホワイトニングフィルムは、1または複数の乳化剤を含む。1または複数の乳化剤は、イオン性乳化剤および非イオン性乳化剤から選択されてもよい。
【0138】
好ましくは、非イオン性乳化剤は、飽和脂肪酸誘導体、レシチンまたはポリソルベートを含む群から選択される。脂肪酸は、飽和または不飽和であってもよい。より好ましくは、非イオン性乳化剤は、オレイン酸および/またはリノール酸などの少なくとも1の不飽和脂肪酸、および任意にパルミチン酸および/またはステアリン酸などの少なくとも1の飽和脂肪酸、またはポリソルベートの一方または両方を含む。
【0139】
ポリソルベートは、ソルビタール、ソルビタンおよびイソソルビドのポリエトキシル化エステルである。好ましい飽和脂肪酸誘導体としては、飽和脂肪酸のショ糖エステル、飽和脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリド、または飽和脂肪酸のソルビタンエステルが挙げられる。好ましい乳化剤は、ソルビタール、例えばAzelis社が供給するT80である。
【0140】
1または複数の乳化剤は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.1~10重量%の総量でフィルム中に存在してもよく、好ましくは2.0~2.5重量%の範囲である。
【0141】
任意の成分
歯用ホワイトニングフィルムは、着色料、ゲル化剤、香料、甘味料、酸味料、酸化防止剤およびキレート剤を含む群から選択される1または複数の任意の成分をさらに含んでいてもよい。着色料は、FD&C Blue No.1またはそのレーキであってもよい。
【0142】
ゲル化剤は、ハイドロコロイドであってもよい。典型的には、ゲル化剤は、接着剤としても機能するハイドロコロイドであってもよい。本明細書で使用される場合、「ハイドロコロイド」という用語は、疎水性基を含みかつ水の存在下でゲルを形成する、すなわち、液状の水相を含む固体ハイドロコロイドネットワークを有する不均質系である、植物、動物、微生物または合成物など任意の起源のものであってもよい親水性ポリマーを意味する。ハイドロコロイド系接着剤は、天然ガム、ポリアクリル酸、またはアルキル基がメチルまたはエチルであるポリアルキルアクリル酸から選択されてもよい。アルキル基は、メチルまたはエチル、すなわちポリメタクリル酸またはポリエタクリル酸であってもよい。天然ガムは、アルギン酸およびその塩、寒天、カラギーナン、トラガカントおよび多糖類ガムから選択されてもよい。より好ましくは、ハイドロコロイド系ゲル化剤が天然ガムの場合、それは、水溶性ポリマーと水不溶性ポリマー、特に多糖類との混合物、例えばトラガカンチンとバソリンポリマーとの混合物を含むトラガカントガムである。バソリンポリマーは、フコース、キシロース、アラビノース、ガラクツロン酸およびラムノースのポリマーであってもよい。
【0143】
あるいは、ハイドロコロイド系接着剤は、上記で定義したアクリル酸またはアルキルアクリル酸のポリマーであってもよい。高分子量ポリアクリル酸は、カルボマーとしても知られている。アクリル酸のポリマーは、架橋されていても架橋されていなくてもよい。架橋剤の例としては、アリルエーテルペンタエリスリトール、ショ糖のアリルエーテルまたはプロピレンのアリルエーテルが挙げられる。アクリル酸の架橋ポリマーは、Lubrizol Corporation社からCarbopol(商標)という商品名で販売されている。
【0144】
ポリアクリル酸は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩などの塩として提供されてもよい。架橋ポリアクリル酸、例えばジビニルグリコールで架橋されたものは、塩、例えばマグネシウム塩またはカルシウム塩、特に、ポリカルボフィルとしても知られているカルシウム塩として提供されてもよい。適切なポリカルボフィルは、Lubrizol Corporation社からNoveon(商標)という商品名で販売されている。
【0145】
ゲル化剤は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.1~10重量%の範囲で存在していてもよい。
【0146】
香料は、人工香料または天然香料であってもよい。香料は、メントール、ペパーミントおよびアルキルアルカノエートを含む群から選択されてもよく、ここで、アルキル基は直鎖状または分岐状であってもよくかつ1~8個の炭素原子を含んでいてもよく、アルカノエート基は1~5個の炭素原子を含んでいてもよい。好ましくは、アルキルアルカノエートのアルキル基は、1、2、5または8個の炭素原子を有し、アルキルアルカノエートのアルカノエート基は、1~5個の炭素原子、好ましくは1、4または5個の炭素原子を含んでいてもよい。好ましいアルキルアルカノエートは、酪酸メチル[リンゴ/パイナップル]、酪酸エチル[オレンジ/パイナップル]、酢酸イソアミル[バナナ/洋ナシ]、酪酸ペンチル[洋ナシ/アプリコット]、ペンタン酸ペンチル[リンゴ]、酢酸オクチル[オレンジ]である。
【0147】
ペパーミントは、歯用ホワイトニングフィルムの一般的な香料である。ペパーミント香料には、メントールのほか、メントン、メントフラン、シネオール、プレゴンなどの他の成分も含まれており、さらに微量成分も一部含まれている。
【0148】
好ましくは、着香料は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.1~10重量%、より好ましくは、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して1~5重量%の割合で存在する。
【0149】
甘味料は、砂糖代用品、例えば人工的な砂糖代用品または天然の砂糖代用品であってもよい。人工的な砂糖代用品は、スクラロースおよびシクラミン酸アスパルテーム、アドバンテーム、サッカリン、アセスルファムカリウムを含む群から選択される1または複数のものであってもよい。天然の砂糖代用品は、ステビア、エリスリトール、マンニトール、ソルビタールおよびキシリトールを含む群から選択されてもよい。好ましくは、甘味料はスクラロースである。
【0150】
好ましくは、甘味料は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.01~5重量%の割合で存在する。より好ましくは、酸味料は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.05~0.5重量%の割合で存在する。
【0151】
酸味料は、無機酸味料または有機酸味料であってもよい。リン酸が好ましい無機酸味料である。好ましい有機酸味料は、乳酸、リンゴ酸、酢酸、およびクエン酸を含む群から選択されるものであり、クエン酸が最も好ましい。
【0152】
好ましくは、酸味料は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.1~5重量%の割合で存在する。より好ましくは、酸味料は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して1.0~1.5重量%の割合で存在する。
【0153】
酸化防止剤は、トコフェロール(ビタミンE)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン、エチレンジアミン四酢酸またはその塩から選択される1または複数のものであってもよい。好ましい酸化防止剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0154】
好ましくは、酸化防止剤は、歯用ホワイトニングフィルムの重量に対して0.01~0.5重量%、より好ましくは歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.05~0.15重量%の割合で存在する。
【0155】
キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸またはその塩であってもよい。キレート剤は、重金属イオンを封鎖することで、ペルオキシカルボン酸の分解を防ぐために使用することができる。
【0156】
キレート剤は、乾燥した歯用ホワイトニングフィルムの0.1~5重量%の量で存在していてもよい。
【0157】
また、歯用ホワイトニングフィルムには、保存料が存在していてもよい。代表的な保存料は、ソルビン酸カリウム、安息香酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、サリチル酸およびその塩、ならびにトリクロサンを含む群から選択される1または複数の化合物であってもよい。
【0158】
好ましくは、保存料は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.01~5重量%の割合で存在する。より好ましくは、保存料は、歯用ホワイトニングフィルムの乾燥重量に対して0.05~0.5重量%の割合で存在する。
【0159】
本明細書では、歯のフィルムの製造プロセスも開示されている。このフィルムは、バリア層または支持基材などの更なる層の存在を必要としない。
【0160】
歯用ホワイトニングフィルムは、歯用ホワイトニング水性液体から調製される。歯用ホワイトニング水性液体は、歯用ホワイトニングフィルムの成分と水との混合物である。
【0161】
歯用ホワイトニングフィルムの非過酸化水素系漂白剤および水溶性のフィルム形成ポリマー成分は、水と混合して歯用ホワイトニング水性液体を提供することができる。水は、典型的には飲用水である。蒸留水または脱イオン水を使用してもよい。好ましくは、成分は、せん断下で水に加えられる。
【0162】
混合段階は、歯用ホワイトニング水性フィルムの1または複数の更なる成分の添加をさらに含んでいてもよい。1または複数の更なる成分は、着色料、ゲル化剤、香料、甘味料、酸味料、酸化防止剤およびキレート剤を含む群のうちの1または複数から選択されてもよい。
【0163】
せん断力および持続時間などの混合パラメーターは、製造プロセスの規模のほか、混合される歯用ホワイトニングフィルムの成分によっても異なる。これはまた、混合段階で用いられる装置の選択にも影響を及ぼす。
【0164】
典型的には、混合段階は、任意の水溶性のフィルム形成ポリマーと可塑剤とを、任意のあらゆるゲル化剤、更なるポリマーまたはガムと一緒に水に加えることによって開始される。典型的には、この段階で、任意の酸味料、および任意のあらゆる更なる成分、例えば着色料、甘味料またはその他の低レベルの添加物も加えられる。水溶性のフィルム形成ポリマー、およびその他の任意のポリマー成分またはガムは、初期の過剰な粘度上昇を防ぐような順序で加えられ、すなわち、最も低い粘度上昇をもたらすポリマーまたはガムが最初に加えられる。典型的には、熱に敏感な成分の任意の分解または揮発性成分の損失を防ぐために、任意のフレーバーが後の段階で混合される。実験室規模では、ペルオキシカルボン酸などの非過酸化水素系漂白剤、特にPAPとデキストリンなどの多糖類との複合体などを混合の終わり頃に組み込むことで、不必要に熱にさらされて分解してしまうのを防ぐことができる。工業的規模では、混合時の熱の蓄積が大幅に減少するため、非過酸化水素系漂白剤を混合段階のどの時点でも加えることができる。
【0165】
実験室規模のプロセスでは、50g~10kgの範囲のバッチサイズを用いることができる。そのような実験室規模のバッチサイズに適した混合装置としては、Silverson Machines Ltd社またはIKA England LTD社などのベンチトップ型ホモジナイザー、およびIKA England LTD社などのオーバーヘッド型スターラーが挙げられる。工業的規模のプロセスでは、10kg超のバッチサイズ、例えば15kg~40kg以上の範囲のバッチサイズを用いることができる。そのような工業的規模のバッチサイズに適した混合装置としては、Kilia(Fleischerei- und Spezial-Maschinen-Fabrik GmbH)社などの工業用ボウル切断機が挙げられる。
【0166】
例えば、PAPと多糖類との複合体または過酸化水素とポリビニルピロリドンとの複合体などの歯科用漂白剤を、1000~6000rpmの範囲のせん断速度で混合することができる。実験室規模で比較的少量の場合、せん断速度は、2000~6000rpmの範囲、好ましくは3000~4000rpmの範囲であってもよい。工業的規模で比較的大量の場合、せん断速度は、1500~2500rpm、好ましくは約2000rpmの範囲であってもよい。実験室規模で比較的少量の場合の混合時間は、5分~20分、好ましくは5分~10分の範囲であってもよい。工業的規模で比較的大量の場合、混合時間は、10~20分、好ましくは約15分の範囲であってもよい。
【0167】
各成分を水と混合して歯用ホワイトニング水性液体が提供されたら、それを基材に適用してもよい。歯用ホワイトニング水性液体は、浸漬、噴霧、ナイフオーバーローラーキャスティング、押出および射出成形などの既知のフィルム形成プロセスによって適用することができる。
【0168】
キャスター、スプレッダー、ダイまたはホッパーなど、歯用ホワイトニング水性液体を基材に適用するために、キャスティングデバイスを使用することができる。水性液体は、スプレッダーにポンプ供給してもよい。必要に応じて、発熱体により水性液体の温度を一定に保ち、液体の粘度を慎重に制御することも可能である。
【0169】
スプレッダーは、歯用ホワイトニング水性液体を基材上に均一に分配し、フィルムの厚さプロファイルを制御する。スプレッダーには、典型的には、歯用ホワイトニング水性液体をキャストするためのスロットがある。このスロットは、好ましくは、キャストフィルムの中央部と端部との間の静水圧が平衡になるように設計されている。好ましくは、歯用ホワイトニング水性液体は、一定の粘度、ひいては得られるフィルムの均一な厚さ分布を確保するために一定の温度に維持される。
【0170】
基材には、銅;銀メッキ銅;クロムメッキ鋼;ステンレス鋼;ポリビニルアルコールまたはゼラチンでコーティングされた金属;シリコンコートペーパーなどのペーパー;またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、特にシリコーン処理されたPET、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムなどのポリマーフィルムなど、さまざまな種類の材料を使用することができる。好ましくは、基材は、ペーパー、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの離型層でコーティングされたペーパー、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、特にシリコーン処理されたPETフィルムを含む。
【0171】
次いで、基材に担持された歯用ホワイトニング水性液体を乾燥させてもよい。例示的な乾燥方法としては、間接加熱、放射線による加熱および気流乾燥が挙げられる。
【0172】
一実施形態では、水分を含まないか、または水分量が低い空気供給流が、基材上の歯用ホワイトニング水性液体に向けられ、水蒸気を含んだ排気流が除去される。水分を含んだ排気流は、排出されるか、または凝縮器に通すことで液体の水を凝縮して分離する。
【0173】
基材上の歯用ホワイトニング水性液体の両面を乾燥させることが可能である。これは、乾燥した歯用ホワイトニングフィルムを一連の研磨されたローラーに巻き付け、空気供給流を露出した各表面に順に向けることで実現できる。
【0174】
空気供給流は、周囲温度であってもよい。あるいは、空気供給流は、加熱された空気供給流であってもよい。漂白剤PAPは75℃超で溶融し、二酸化炭素の発生とともに化学物質が分解してε-フタルイミドペンタノールになるため、加熱された空気流は60℃未満の温度を有することが望ましい。好ましくは、加熱された空気供給流は、常温よりも高い温度~60℃の範囲の温度を有していてもよい。より好ましくは、加熱された空気流は、25℃~55℃の範囲の温度、さらにより好ましくは45℃~55℃の範囲の温度を有していてもよい。加熱は、ベルトヒーターで0.2~2.0m/分の範囲のベルト速度、好ましくは0.5~1.5m/分の範囲の速度で行ってもよい。
【0175】
あるいは、加熱式ローラーまたは赤外線ランプなどの放射性ヒーターを用いて、水性液体を乾燥させてフィルムを提供することができる。これらは、基材上に担持された歯用ホワイトニング水性液体を、常温超60℃以下の範囲の温度、好ましくは25℃~55℃の範囲の温度に加熱してもよい。
【0176】
乾燥段階は、基材上に担持された歯用ホワイトニング水性液体の第1の表面を第1に乾燥させて、基材上に担持された第1の乾燥した歯用ホワイトニングフィルムを提供することを含んでいてもよい。歯用ホワイトニング水性液体の第1の表面は、支持体に隣接する第2の表面とは反対側の液体の外面であってもよい。次いで、第1の乾燥した歯用ホワイトニングフィルムを基材から分離してもよい。次いで、第1の乾燥した歯用ホワイトニングフィルムの第2の表面を第2に乾燥して、第2の乾燥した歯用ホワイトニングフィルムを提供してもよい。第1の乾燥と第2の乾燥とは、上述のように独立して行われてもよい。
【0177】
このようにして、フィルムの乾燥重量に対して15%未満の水を含む歯用ホワイトニングフィルムを提供することができる。含水率は、好ましくは、フィルムの乾燥重量に対して3~12%の範囲、より好ましくはフィルムの乾燥重量に対して5~10%の範囲、さらに一層好ましくはフィルムの乾燥重量に対して5~7%の範囲である。
【0178】
歯用ホワイトニングフィルムは、支持体、例えばプラスチックまたはペーパーの支持体、特にシリコーン離型層を有するペーパーの支持体に格納してもよいが、これは必須ではない。
【0179】
歯用ホワイトニングフィルムは、封止された包みなどの無菌包装で保存されていてもよい。封止された包みは、水密であってもよく、より好ましくは水密および気密である。この包みは、アルミ箔などの金属箔、または金属層でコーティングされたプラスチックフィルムでできていてもよい。
【0180】
本明細書に開示された方法で得られる歯用ホワイトニングフィルムは、歯を漂白する方法に使用することができる。本方法は、以下の段階を少なくとも含むことができる:
- 本明細書に記載されているようにして得られた歯用ホワイトニングフィルムを、対象の1または複数の歯に適用する段階。
【0181】
本方法は、審美的な方法であってもよい。好ましくは、本方法は、単独で審美的な方法である。本明細書で使用される場合、「単独で審美的な方法」という用語は、身体状態または適応症の治療または予防を包含しない審美的な方法を意味する。
【0182】
本方法では、まず、歯用ホワイトニングフィルムをその無菌包装から解放してもよい。その後、例えば、歯用ホワイトニングフィルムを支持体から剥がすことによって、任意の支持体が取り除かれる。歯用ホワイトニングフィルムが他の任意の他の層から取れたら、それを1または複数の歯に適用することができる。かかる適用は、歯科医師、歯科衛生士または歯科看護師の手を煩わせることなく、歯を白くしたい人なら誰でも簡単に行うことができる。
【0183】
歯用ホワイトニングフィルムは、非過酸化水素系漂白剤が歯に作用するように歯の表面に良好な接着性を提供することが可能ながらも、漂白時に口腔内で溶解するため、その後の対象によるフィルムの除去が不要である。例えば、歯用ホワイトニングフィルムは、接触してから10秒以内に歯に接着し得る。接着は、フィルムのPVP成分に唾液が作用して粘着性を持つことで起こる場合と、接着性のある水溶性ポリマーが存在することで起こる場合とある。歯用ホワイトニングフィルムは、歯に接触してから少なくとも15分間は歯に接着し得る。
【0184】
歯用ホワイトニングフィルムは、対象の1または複数の歯に5分超60分より短いかそれに等しい期間、好ましくは15分~30分の期間で適用することができ、その後、水溶性のフィルム形成ポリマー成分の水溶性により、口腔内でフィルムが崩壊する。そのため、使用後に対象が歯用ホワイトニングフィルムを取り除く必要はない。
【0185】
本明細書で使用される場合、「フィルム」という用語は、3つの相互に垂直な軸線で定義される寸法を有し、そのうち2つの寸法が3つ目の寸法よりも大きい物品のことを指す。典型的には、2つのより大きな寸法は、最小寸法よりも少なくとも1桁大きい。
【0186】
本発明の他の態様および実施形態は、「~を含む」という用語を「~からなる」という用語に置き換えた上述の態様および実施形態と、「~を含む」という用語を「~本質的にからなる」という用語に置き換えた上述の態様および実施形態とを提供するものである。
【0187】
本願は、文脈から要求されない限り、上述のいずれかの態様および実施形態相互のすべての組み合わせを開示するものであることを理解されたい。同様に、本願は、文脈から要求されない限り、好ましい特徴および/または任意の特徴のすべての組み合わせを、単独でまたは他の態様のいずれかと一緒に開示している。
【0188】
本明細書中で言及されているすべての文書は、あらゆる目的のために、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0189】
本明細書で使用されている用語「および/または(かつ/または)」は、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれを、他のものと一緒に、または他のものなしに、具体的に開示しているものとみなされる。例えば、「Aおよび/またはB」は、あたかもそれぞれが本明細書に個別に記載されているかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBのそれぞれの具体的な開示とみなされる。
【0190】
本明細書で使用される場合、「飽和」という用語は、二重結合、三重結合または芳香族結合である炭素-炭素結合を一切含まない有機化合物または有機基のことを指す。同様に、「不飽和」という用語は、二重結合、三重結合または芳香族結合である1または複数の炭素-炭素結合を含む有機化合物または有機基のことを指す。この文脈では、「飽和」および「不飽和」という用語は、炭素原子と、窒素および酸素などのヘテロ原子との間の結合のことは指しておらず、例えば、カルボニル基を有する有機化合物は、不飽和有機化合物の定義に含まれることがある。
【0191】
本明細書で使用される場合、「ペルオキシカルボン酸」という用語は、-C(=O)-O-O-H基を含む有機化合物のことを指している。
【0192】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、水素原子の除去によって生成される一価のアルカンのことを指している。好ましくは、アルキルはC1~5アルキルであり、より好ましくはC1~3アルキルである。
【0193】
次に、本発明の特定の態様および実施形態を、一例として、以下の表を参照しながら説明する。
【実施例
【0194】
成分
Kollidon(登録商標)90Fは、BASF社が供給する1,000,000~1,500,000の範囲の重量平均分子量を有するポリビニルピロリドン系の水溶性のフィルム形成ポリマーである。
【0195】
Klucel JFは、IMCD社が供給し、Ashland Inc社が製造しているヒドロキシプロピルセルロース系の水溶性のフィルム形成ポリマーである。
【0196】
Nisso HPC-LMは、日本曹達株式会社が供給するヒドロキシプロピルセルロース系の水溶性のフィルム形成ポリマーである。
【0197】
Eureco HC-P11は、Solvay社が供給するβ-シクロデキストリンとの複合体であるPAP非過酸化水素系漂白剤(11重量%)である。
【0198】
Peroxydone K-90は、Ashland Inc社が供給する過酸化水素16~20重量%と分子量1,300,000を有するポリビニルピロリドンとの複合体から形成された歯科用漂白剤である。ペクチンは、CP Kelco社が供給する多糖類の水溶性のフィルム形成ポリマーである。
【0199】
Blanose 7LFは、カルボキシメチルセルロースナトリウムガムの水溶性のフィルム形成ポリマーで、その置換度は7、置換範囲は0.65~0.9、粘度は2%濃度で25~50mPa・sの範囲(スピンドル#1を60rpmで回転させて測定)であり、Hercules Inc社の一部門であるAqualon社が供給する。グリセロールは、Brenntag社が供給する可塑剤である。ソルビタールT80は、ポリソルベート80としても知られている乳化剤で、Azelis社が供給している。ペパーミントは、IMCD社が供給する香料である。ソルビン酸カリウムは、Claremont Ingredients社が供給する保存料である。スクラロースは、Azelis社が供給する甘味料である。リン酸は、Sigma-Aldrich社が供給する酸味料である。BHTはブチル化ヒドロキシトルエンで、Sigma-Aldrich社が供給する酸化防止剤である。トリポリリン酸ナトリウムは、Brenntag社が供給する線状ポリリン酸塩である。ヘキサメタリン酸ナトリウムは、Brenntag社が供給する環状ポリリン酸塩である。
【0200】
実験
後述のワンポットプロセスにより、さまざまな歯用ホワイトニングフィルムを調製する。各サンプルフィルムの成分の乾燥重量による質量を以下の表1に示す。表2は、実施例1(バッチ番号DEV04533)の組成物の完全な特性評価を、歯用ホワイトニング水性液体の重量に関して、湿った液体(「湿潤重量」)および水を含まない対応する組成物(「乾燥重量」)の成分割合として、対応する歯用ホワイトニングフィルムの組成と、乾燥後(含水率6重量%)および完全に水を除去した後(「完全乾燥」)に製造した両方とを一緒に示したものである。
【0201】
比較例1および2は、ポリリン酸塩を含まないか、または環状ポリリン酸塩を含まずに線状ポリリン酸塩のみを含む。実施例1~3は、ヘキサメタリン酸ナトリウムと任意にトリポリリン酸ナトリウムとを含む本発明の実施例である。
【0202】
バッチ番号DEV04536、DEV04533、DEV4534およびDEV04535の組成物にそれぞれ対応する比較例2および実施例1~3の薄いフィルムは、PVP(Kollidon 90F)、ε-フタルイミドペルオキシヘキサン酸β-シクロデキストリン複合体(Eureco HC-P11)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Blanose 7LF)、グリセロール、ソルビタール(ソルビタールT80)、香料、甘味料、保存料、酸味料およびポリリン酸塩の組み合わせを含む。
【0203】
水を含むすべての液体原料を、適切な大きさのステンレス鋼製ポットに直接秤量した。すべての固形物を個別に秤量して秤量ボートに載せた。水は72.33重量%の量で存在し、表1に示されている組成物が、残りの27.67重量%を形成していた。
【0204】
スクラロース、BHTおよびソルビン酸カリウムを、SHMP(ヘキサメタリン酸ナトリウム)およびPrayphos STPP FG GR SP(トリポリリン酸ナトリウム)と一緒にステンレス鋼製ポットに直接加えた。この混合物を、Ultra Turrax UT-50高せん断ミキサーを用いて、速度2で2分間撹拌した。Klucelを、速度3で6分かけて加えた。Kollidonを、速度3.5で11分かけて加え、Blanose 7LFを、速度3.5で2分かけて加えた。Eurecoを、速度3.5で5分30秒かけて加えた。得られた混合物の最終的な混合を、速度4で2分間行った。混合物を30分間脱気した。Sheen instrument社製のコーティングナイフ(S285638、1117/250mm)は、最終的なフィルムの厚さを適切なものにする高さに設定する(250ミクロン~1500ミクロンの間)。フィルムアプリケーター(1133N Sheen automatic film applicator)に適切な基材(PETまたはペーパー)を置き、ナイフを基材の上に置く。ナイフの前方にキャスティング液を広げ、アプリケーターで液体をペーパー上に均一にキャストする。次いで、Biofilm社が独自に開発したオーブンフードにペーパーを入れて乾燥させ、周期的に回転させることで、均一に乾燥させるようにする。このシートを60×20mmのストリップ状に切断し、10枚のストリップの平均重量が規定制限範囲内であることを確認した。
表1:歯科用漂白フィルム配合物
【表1】
表2:実施例1(DEV04533)の特性評価
【表2】
【0205】
前述の実験の項で述べたように、表3に示す配合物に従って、異なる歯科用漂白剤を利用した2つの更なるフィルムを調製した。実施例4および比較例3で示すこれらのフィルムは、ポリビニルピロリドンで複合化された過酸化水素(Peroxydone K-90)を漂白剤として用いて、乾燥重量に対して過酸化水素換算で6重量%となるように調製した。
表3:歯科用漂白剤配合物
【表3】
【0206】
外因性着色除去
表1および表3に示す配合物に従って調製したフィルムについて、牛歯に付着した外因性着色を除去する能力を試験した。この試験方法では、牛歯の試料を着色用ブロスの中で2週間の期間にわたってインキュベートし、毎日のブロス交換と歯磨きとによって、歯面にヒトの歯の外因性着色に匹敵する粘着力のある褐色の着色を形成する。
【0207】
この調査で使用した外因性着色除去法は、Stookey et al.In vitro removal of stain with dentifrices.J Dent Res 61(11):1236-1239,Nov 1982に記載されているものを変更および改良したものである。
【0208】
屠殺場から入手した牛の永久歯を使用して試験片を調製した。試験片は、4mm角の牛歯エナメル質を1.5cm角のアクリルブロックに装着したものを含んでいた。歯の四角い部分は、切断プロセス時にエナメル質が熱で損傷するのを防ぐため、湿潤状態でダイヤモンドのカッティングディスクを使用して除去した。歯型を用いて、歯のそれぞれの四角い部分を自己硬化型の歯科用アクリル樹脂に埋め込み、唇側のエナメル面を上に向けた1.5cm角のブロックを提供した。切断プロセスによって露出した歯質の領域はアクリル樹脂で封止しつつ、4mm角の表面のエナメル質は露出させたままにするように行った。完成した歯の試料を解剖顕微鏡で調べ、欠陥を有している場合は廃棄した。ポリエステルブロックの上面は、歯科用模型トリマーを使って、エナメル質の四角い部分の唇側の平らな表面と同じ高さになるように研削する。次いで、水を潤滑剤として用いて400グリットのエメリーペーパー上で、研削条痕がすべて除去されるまでハンドサンディングすることによって表面を滑らかにした。最後に、焼成カオリン(中央粒径1.2マイクロメートル)を綿布に含ませた水スラリーを用いて、それぞれの歯の試料の上面を手磨きした。完成した歯の試料を解剖顕微鏡で調べ、エナメル面に任意の欠陥が観察される場合は廃棄した。許容され得る試料を、蒸留水で十分に洗い流し、着色形成の準備ができるまでヒュミドールで低温保存した。
【0209】
エナメル質に人工的に着色したペリクルを形成するための準備として,試料を0.2MのHClで60秒間エッチングした後,炭酸ナトリウムの飽和溶液に30秒間浸漬した。最終的なエッチングは1%のフィチン酸で60秒間行い、その後、試料を脱イオン水で洗い流し、着色装置に取り付けた。
【0210】
着色装置は、着色用ブロスへの浸漬と試料の風乾を交互に行うように設計された。この装置は、アルミニウム製のプラットフォームベースからなり、その上には、電気モーターに接続されたテフロン(登録商標)製のロッド(直径1.9cm)が置かれており、減速ボックスによってロッドを1.5rpmの一定速度で回転させる。ネジ穴は、ロッドの長さに沿って一定の間隔で設けられた。歯の試料は、アクリル製のマウントの裏面にあるネジ穴にプラスチック製のネジを使ってロッドに取り付け、次いで、歯の試料をロッド上にネジ止めした。ロッドの下には、取り外し可能な300mL容量のトラフがあり、そこには着色用ブロスが入っていた。
【0211】
滅菌したトリプチケースソイブロス250mLに、インスタントコーヒー1.02g、インスタントティー1.02g、ブタ胃由来ムチン0.75g(Nutritional Biochemicals Corporation,クリーブランド(アメリカ合衆国オハイオ州))を加えて着色用ブロスを調製した。また、約50mLの24時間培養したマイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)の培養液を、着色用ブロスに加えた。次いで、歯の試料を取り付け、トラフ内に着色用ブロスを入れた装置を37℃のインキュベーターに入れ、試料が着色用ブロスと空気中とを連続的に回転するようにした。
【0212】
着色用ブロスは24時間ごとに1回交換し、10日間連続して行った。ブロスを交換するたびに、トラフと試料とをブラッシングし、脱イオン水で洗い流して、簡単に取れる付着物をすべて除去した。11日目に、0.03gのFeCl・6HOを加えて着色用ブロスを調整し、試料上の着色されたペリクル膜が十分に濃くなるまで,毎日ブロスの交換を続けた(L測定値は30~35)。次いで、試料を着色用ブロスから取り出し、脱イオン水で十分にブラッシングした後、ヒュミドールに入れ、使用するまで低温保存した。
【0213】
処置の準備として、試料を10個ずつの試料の同じ群に分け、各群はベースラインであるL着色スコアの平均値が同じになるようにした。処置は、メーカーの指示に従ってホワイトニング製品を日常的に適用することをシミュレートするように設計された。
【0214】
シミュレートを行う1日は、以下からなっていた:ストリップを適用する前に,歯の試料を水で10秒間手を使ってブラッシングし、人工唾液を1滴、歯面に垂らした。このストリップの一部を切断して歯の試料の上に配置し、その切片の裏側に人工唾液をもう1滴垂らした。このストリップを歯の試料に30分間放置し、5分ごとに人工唾液を1滴ずつ加えた。各手順の後に水洗を行った。歯の試料は、処置の間、水中で保管した。処置後、すべての歯の試料を水で十分に洗い流した。
【0215】
上記の手順を14回繰り返し、14日間の処置をシミュレートした。分光光度計による測定は、ベースライン時、3、7および14回目の処置適用後に行った。
【0216】
処置前後の歯に付いた着色ペリクル(外因性着色試料)の色および強度を、拡散照明、視野角8°、およびアパ-チャー3mmのミノルタCM-503i分光光度計(Minolta Camera Co.,アメリカ合衆国ニュージャージー州)を用いて拡散反射吸光度法で測定した。CIE(Commission Internationale de L'Eclairage:国際照明委員会)の「Recommendations on uniform color spaces.Color difference equations.Psychometric color terms」Suppl.2 to CIE publication 15(E-13.1)1971/(TC-1.3),1978,Paris:Bureau Central de la CIE,1978で定められた三刺激値L色空間を用いて、可視色スペクトル全体の吸光度測定値を得た。測定は、ターゲティングマスクを用いて、露出したエナメル質の4mm角のセグメントの中心を、直径3mmのターゲティングアパーチャーの上に直接合わせることで、毎回正確な位置に試料を置くことができた。Lスケールを用いて、各歯の試料を通して3回の吸光度測定を行った。
【0217】
有効性を評価するための主要な結果変数は、外因性着色(E)の全体的な変化であり、以下に示すCIELAB式(1)を用いて算出した。E=[(L+(a+(b1/2 (1)
【0218】
、aおよびbは、Lスケールの個々の構成要素の着色除去測定値を表している。これらの構成要素は、白色度(L)、赤-緑の色軸(a)、および黄-青の色軸(b)の具体的な変化を示すもので、これらも個別に分析した。各色係数(L、a、およびb)の試験前と試験後の測定値の差は、試験製品が既存の外因性着色(すなわち着色ペリクル)を減少させ、それによって歯の白さを増加させる能力を表している。データは標準的な表計算プログラム(Excel(商標),Microsoft(登録商標) Corporation,レドモンド(アメリカ合衆国ワシントン州))を用いて集計した。
【0219】
歯の試料は、乾燥状態でブロッティングし、室温で1分間風乾させた後に読み取った。試料が長時間空気に曝されていると、色のパラメーターが大きく変化するため、脱水およびその後の再水和の必要性を減らすために、露出時間を最小限に抑えた。各色係数(L、a、およびb)の試験前と試験後の測定値の差は、試験製品が歯の固有色に変化を加えたり、歯から外因性着色を除去したりする能力を表している。歯の色の変化を、色差式2を用いて比較した:ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2 (2)
【0220】
記号ΔL、Δa、およびΔbは、それぞれ白-黒、赤-緑、および黄-青の変化を表している。また、Lスケールの各構成要素を個別に分析し、処置によって最も影響を受ける色の範囲、具体的には白色度(L)、赤-緑の色軸(a)、および黄-青の色軸(b)の変化を調べた。算出されたΔEの値が大きいほど、歯の色の変化(例えば、歯の白さの増加)が大きくなり、ひいては歯の外因性着色の減少が大きくなる。
【0221】
有効性の解析は、評価可能な歯のデータに基づいていた。評価可能な歯とは、試験製品による処置を受け、処置前に着色測定を行い、ベースライン後の外因性着色の全体的な変化(すなわちΔE)のすべてのデータポイントを有していたすべての歯の試料と定義した。
【0222】
統計的検定は、処置を要因とした歯の色成分スコア(L、a、b)のベースラインからの変化の分散分析モデルを用いて行った。処置群間の比較は、主要および副次的有効性の各変数について、Student Newman-Keuls検定を用いて行った。記述統計量(例えば、平均値および標準偏差)は、処置群別に提示している。
【0223】
主要有効性エンドポイントは、14回のシミュレートを行った処置日数後の外因性着色のベースラインからの全体的なスコア変化(ΔE)であった。その結果を表4に示している。
【0224】
わずか3回の処置適用後に、すべてのホワイトニングストリップ製品は、ベースラインからほとんど変化しなかった第4群(比較例2、DEVO4536)と比較して、Lの有意な増加をもたらした。aおよびbのパラメーターは、対照と比較して有意な変化はなかった。第1群、第3群および第5群(実施例1、3および4、DEVO4533、4535および4537)では、第4群よりも有意に大きいΔE平均値を示し、第2群(実施例2、DEVO4534)では、数値的には良いΔEを示したが、統計的有意性には至らなかった。
【0225】
7回の処置適用後に、すべてのホワイトニングストリップ製品は、第4群(比較例2;DEVO4536)と比較して、再びLの有意な増加をもたらした。ベースラインからの変化により、第4群と有意差のあるΔE平均値が得られた。さらに、Lおよびbの両方で示される処置効果は、第5群(実施例4;DEVO4537)が残りの群よりも顕著であった。さらに、第5群のΔE平均値も有意であった。
【0226】
14回の処置適用後の群間の関係は、7回の適用後に観察されたものと対応していたが、その変化はより顕著なものであった。ベースラインからの変化(表4)で判断した処置効果は、第5群(実施例4;DEVO4537)が残り群よりも有意に大きかった。
【0227】
第4群(比較例2、DEVO4536)を除いて、すべてのホワイトニングストリップ製品は、すべての測定間隔、すなわち3、7および14回の処置適用後に、既存の外因性着色の蓄積の強度を減少させた。ホワイトニング効果が最も高く、残りの群から最も高い有意性を示したストリップは、第5群(実施例4、DEVO4537)であり、第1群(実施例1、DEVO4533)および第7群は、第2群、第3群、第4群(実施例2、DEVO4534、実施例3、DEVO4535および比較例2、DEVO4536)および第6群から統計的に有意であった。
【0228】
14回の適用後のベースライン値からの明度(L)の変化を図1および2に示す。
表4:外因性着色除去の有効性
【表4】
†平均スコア±標準偏差、n=10。同じ列の同じ上付き文字の値は統計的に異ならず、異なる上付き文字の値は、ANOVAおよび両側SNK検定に基づいてp<0.05で異なる。
【0229】
比較例1は、非過酸化物系漂白剤がPAPであり、ポリリン酸塩を含まない対照配合物の明度変化を示している。実施例3に示すように7重量%の環状ポリリン酸塩を加えると、比較例1の明度上昇2.23から実施例3の明度上昇3.23へとホワイトニングフィルムストリップの有効性が向上する。
【0230】
比較例2のフィルムは、実施例3の7重量%の環状ポリリン酸塩ではなく、7重量%の線状ポリリン酸塩を含んでいる。比較例2のフィルムは、ポリリン酸塩を含まない比較例1および同量の環状ポリリン酸塩を含む実施例3と比較して、明度の改善が不十分である。
【0231】
実施例2のフィルムでは、ポリリン酸塩総含有量がフィルムの10重量%に増加し、そのうち5重量%が環状ポリリン酸塩であり、5重量%が線状ポリリン酸塩である。これにより、ポリリン酸塩が存在しない比較例1のフィルムおよび7重量%の線状ポリリン酸塩を含む比較例2のフィルムと比較して、明度の上昇が改善される。したがって、環状ポリリン酸塩の存在下で線状ポリリン酸塩の濃度を7重量%未満に減らすと、明度上昇につながる。
【0232】
実施例1のフィルムは、実施例2の10重量%のリン酸塩総含有量と比較して減少した7重量%のポリリン酸塩総含有量を有しており、環状ポリリン酸塩と線状ポリリン酸塩との両方がフィルムの3.5重量%で存在するようになっており、実施例3と同等の7重量%のポリリン酸塩総含有量が得られる。実施例1は、明度変化が、実施例2の3.07、比較例1の2.23と比較して、4.90と有意な増加を示している。
【0233】
これらのフィルムについて、上述の試験方法を用いて、牛歯から外因性着色を除去する能力を試験した。14回の適用後のベースライン値からの明度(L)の変化を図1に示す。
【0234】
実施例1と3とを比較すると、同じようなポリリン酸塩の総量(乾燥フィルムの重量に対して7%)であれば、環状ポリリン酸塩と線状ポリリン酸塩との組み合わせにより漂白効果が向上することが明らかになる。また、実施例1と2とを比較すると、環状ポリリン酸塩と線状ポリリン酸塩との両方がフィルム中に存在する場合、両方のポリリン酸塩の量を5重量%~3.5重量%に減少させると、明度の改善効果が増大することが明らかになる。したがって、環状ポリリン酸塩と線状ポリリン酸塩とを各成分の約3.5重量%で組み合わせることで、相乗効果が得られることが明らかになる。
【0235】
比較例3および実施例4のフィルムは、歯科用漂白剤として、実施例1~3ならびに比較例1および2のような非過酸化水素系歯科用漂白剤ではなく、過酸化水素ポリマー複合体における過酸化水素を利用している。
【0236】
これらのフィルムについて、上述の試験方法を用いて、牛歯から外因性着色を除去する能力を試験した。14回の適用後のベースライン値からの明度(L)の変化を図2に示す。
【0237】
比較例3のフィルムはポリリン酸塩を一切含まないが、実施例4のフィルムは環状ポリリン酸塩と線状ポリリン酸塩との両方を3.5重量%含み、ポリリン酸塩の総含有量は7重量%である。実施例4は、ポリリン酸塩を含まないが同量の非過酸化水素系漂白剤を有する比較例3の明度変化が5.32であるのと比較して、6.25と有意な増加を示している。耐着色性の向上
【0238】
表1に示す配合物に従って調製した2枚のフィルムについて、歯に対する耐着色性の付与能力を試験した。
【0239】
この試験方法では、ペリクル層を形成するために前処理され、次いで着色されたハイドロキシアパタイト(HA)ディスクを利用する。
ペリクル層の形成
【0240】
人工唾液を社内の方法を用いて作製した。磁気撹拌子を含む1000mLビーカーに水(200mL)を加えた。磁気撹拌機は250rpmに設定した。NaCl(0.40g)、KCl(0.40g)、NaHPO・HO(0.78g)および尿素を加えて溶解した。完全に溶解したら、さらに一定量の水(750mL)をビーカーに加えた。CaCl・2HOを別途水(50mL)に溶解し、1000mLビーカーに加えた。次いで、HClまたはNaOHの緩衝液を用いて人工唾液溶液のpHを6に調整した。次いで、人工唾液ミックスのサンプル500mL採取し、これにブタ胃由来ムチン(PGM)(1.25g)を加えた。PGMを4回に分けて加え、磁気撹拌子を用いて950rpmで各添加後に約15分間、最終添加後に90分間混合して、PGM/人工唾液混合物の濁った淡黄色の溶液を得た(濃度2.5g/L)。HAディスクの片面を240グリットのシリコンカーバイドペーパーを使って研磨し、研磨面の色を色差計を使って測定した。各ディスクを、研磨面を上にしてペトリ皿に入れ、PGM/人工唾液混合物を皿に加えた。皿に蓋をして、37℃のオーブンに一晩入れて18時間経過させた。次いで、ディスクを取り出し、ペーパータオルで軽くたたいて乾かし、使用前に色を再度測定した。
着色用ブロスの配合および調製
【0241】
着色用ブロスの調製:ネスカフェゴールドブレンドコーヒー(1g)を150mLビーカーの沸騰した水(100mL)に溶かし、磁気撹拌子を用いて350rpmで5分間撹拌した。150mLビーカーの沸騰した水(100mL)にテトリーのティーバッグ1つを加え、磁気撹拌子を用いて350rpmで5分間撹拌した。紅茶とコーヒーの溶液を500mLのビーカーに一緒に加えた。次いで、濃縮ブルーベリージュース(30mL)を紅茶/コーヒー溶液に加えた。次いで、PGM(0.75g)を3回に分けて着色用ブロスに加え、各添加後に、磁気撹拌子を用いて950rpmで15分間、最終添加後に90分間、着色用ブロスを撹拌した。
【0242】
HAディスクは、それぞれ固有のペトリ皿に研磨面を上にして入れた。着色用ブロスは、ディスクの表面上にブロスを直接かけないように注意しながら、各ディスクが完全に浸るまで皿に加えた。ペトリ皿に蓋をしてラベルを貼り、37℃のオーブンの中に約72時間入れた。
【0243】
着色されたハイドロキシアパタイトディスクを、PAP非過酸化水素系漂白剤を利用しかつポリリン酸塩を含まない比較例1に従ったフィルムで10回処理するか、またはPAP非過酸化水素系漂白剤を利用しかつ環状ポリリン酸塩と線状ポリリン酸塩との両方を3.5重量%含み、ポリリン酸塩総含有量が7重量%である実施例1に従ったフィルムで10回処理した。
【0244】
前処理したハイドロキシアパタイトディスクは、ΔL%の値が低いほど着色度合いが低く、耐着色性が向上していることを示している。
【0245】
図3に示す明度変化の比較から明らかなように、実施例1の配合物に従って環状ポリリン酸塩と線状ポリリン酸塩との両方を3.5重量%含めると、リン酸塩を含有しない比較例1よりもハイドロキシアパタイトディスクの着色性が低くなることがわかった。
歯科用アライナー向けの歯用ホワイトニングフィルム
【0246】
歯科用アライナーと共に用いるためのさまざまな歯用ホワイトニングフィルムをワンポットプロセスで調製した。各サンプルフィルムの成分の乾燥重量に対する質量を、以下の表5に示す。
【0247】
バッチ番号19061および19088の組成物に対応する実施例5および6の薄いフィルムは、それぞれ、漂白剤および水溶性のフィルム形成ポリマーとしてそれぞれポリビニルピロリドンと複合化した過酸化水素(Peroxydone K-90)、グリセロール可塑剤、ポリソルベート80乳化剤、ペパーミント香料、スクラロース甘味料およびポリリン酸塩の組み合わせを含み、乾燥重量に対して過酸化水素換算で約7.4重量%となる。
【0248】
バッチ番号19059の組成物に対応する実施例7の薄いフィルムは、PVP(Kollidon 90F)とヒドロキシプロピルセルロース(HPC-LM)系の水溶性のフィルム形成ポリマーとの組み合わせ、ε-フタルイミドペルオキシヘキサン酸(PAP)β-シクロデキストリン複合体(Eureco HC-P11)の漂白剤、水溶性のフィルム形成ポリマーとしてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(Blanose 7LF)、グリセロール可塑剤、ソルビタールT80乳化剤、ペパーミント香料、スクラロース甘味料、ソルビン酸カリウム保存料、リン酸酸味料、BHT酸化防止剤およびポリリン酸塩を含み、乾燥重量に対して約1.1重量%のPAP漂白剤を提供する。
【0249】
水を含むすべての液体原料を、適切な大きさのステンレス鋼製ポットに直接秤量した。すべての固形物を個別に秤量して秤量ボートに載せた。水は82.04重量%の量で存在し、実施例5および6では、表5に記載された組成物が残りの17.96重量%を形成していた。水は72.67重量%の量で存在し、表5に示されている組成物が、実施例7の残りの27.33重量%を形成していた。
【0250】
スクラロース、(存在する場合)BHTおよびソルビン酸カリウムを、ヘキサメタリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムと一緒にステンレス鋼製ポットに直接加えた。この混合物を、Ultra Turrax UT-50高せん断ミキサーを用いて、速度2で2分間撹拌した。(存在する場合)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-LM)を、速度3で6分かけて添加した。(存在する場合)Kollidonを、速度3.5で11分かけて加え、(存在する場合)Blanose 7LFを、速度3.5で2分かけて加えた。(存在する場合)Eurecoを、速度3.5で5分30秒かけて添加した。得られた混合物の最終的な混合を、速度4で2分間行った。混合物を30分間脱気した。Sheen instrument社製のコーティングナイフ(S285638、1117/250mm)は、最終的なフィルムの厚さを適切なものにする高さに設定する(250ミクロン~1500ミクロンの間)。フィルムアプリケーター(1133N Sheen automatic film applicator)に適切な基材(PETまたはペーパー)を置き、ナイフを基材の上に置く。ナイフの前方にキャスティング液を広げ、アプリケーターで液体をペーパー上に均一にキャストする。次いで、Biofilm社が独自に開発したオーブンフードにペーパーを入れて乾燥させ、周期的に回転させることで、均一に乾燥させるようにする。このシートを、表6に示す所望の寸法に切断し、10枚のストリップの平均重量が規定制限範囲内であることを確認した。
表5:歯科用アライナーと共に使用するための歯科用漂白フィルム配合物
【表5】
【0251】
インビボでのフィルムの溶解特性に及ぼすアライナーの影響を評価するために、各バッチのフィルムのサンプルを上歯に適用し、透明な歯科用アライナーの存在があるときとなかったときで、フィルムが溶解するまでの時間を記録した。
表6:歯科用漂白フィルムの寸法および溶解時間
【表6】
【0252】
表6に示した溶解時間から、歯科用アライナーの存在がストリップの溶解時間を大幅に増加させることが明らかになる。理論に拘束されることを望むものではないが、これはアライナーの存在が歯科用漂白フィルムへの唾液の通過に対する障壁となり、フィルムを溶解するのに利用できる唾液の量を減少させるためだと考えられる。
【0253】
表6に示す厚さを有する歯科用漂白フィルムは、ストリップを歯に適用した後、すぐに歯科用アライナーを適用できることがわかった。幅が15mmを超えるストリップは、幅が広すぎて、余分なフィルムを歯の上や裏に回って折り曲げなければならず、フィルムを歯に接着させることが困難になるため、あまり好ましくないことがわかった。幅が15mmと狭いフィルムの方が、歯への装着が容易で、接着も早いことがわかった。この研究の結果、歯科用漂白フィルムは、厚さが50~150マイクロメートル、好ましくは60~130マイクロメートル、より好ましくは70~125マイクロメートル、幅が10~12mmの範囲のものが、歯科用アライナーと共に使用するのに好ましい。
【0254】
本開示の多くの変更および他の実施形態は、前述の説明で提示された教示の恩恵を有する本開示が属する技術分野の当業者には想起されるであろうし、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく本開示の変形および修正を行えることは、当業者には明らかであろう。そのため、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正および他の実施形態が添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が用いられているが、これらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的としたものではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】