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特表2022-530377伸縮性のある導電性ナノコンポジット粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】伸縮性のある導電性ナノコンポジット粒子
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20220622BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20220622BHJP
   C08F 220/54 20060101ALI20220622BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20220622BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20220622BHJP
   C08J 7/044 20200101ALI20220622BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20220622BHJP
   D06M 15/61 20060101ALI20220622BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C09D11/52
C08F220/18
C08F220/54
C08F20/18
C08F8/32
C08J7/044 CER
C08J7/044 CEZ
D06M15/53
D06M15/61
D06M15/263
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562313
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2020062011
(87)【国際公開番号】W WO2020221853
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】1904606
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521458281
【氏名又は名称】ユニベルシテ デ ポー エ デュ ペイ ド ラドゥール
(71)【出願人】
【識別番号】516086358
【氏名又は名称】サントル ナショナル デ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】レイノー,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】マルカスザア,ピエール
【テーマコード(参考)】
4F006
4J039
4J100
4L033
【Fターム(参考)】
4F006AA37
4F006AB24
4F006AB32
4F006AB56
4F006AB69
4F006BA07
4F006CA08
4J039AD09
4J039AE13
4J039BE22
4J039EA24
4J039FA03
4J100AL03P
4J100AL04P
4J100AM14Q
4J100HA55
4J100HC42
4J100HC43
4J100JA01
4J100JA07
4J100JA45
4L033AB04
4L033AC06
4L033AC15
4L033CA18
4L033CA48
4L033CA57
(57)【要約】
本発明は、伸縮性のある基材に印刷するための、C1~C6アルキルポリアクリレートホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む、電気伝導性ナノコンポジット粒子の使用に関する。本発明はまた、本発明に従って得られる、例えばプリンテッドエレクトロニクス又は接続された衣類の分野で使用可能な、印刷された伸縮性のある基材に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性のある支持体上に印刷するための、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む電気伝導性ナノコンポジット粒子の使用。
【請求項2】
前記印刷は、フィルムの形態で前記支持体上に前記ナノコンポジット粒子を堆積することによって、或いは前記ナノコンポジット粒子と少なくとも1つの溶媒を含む溶液又は懸濁液を前記支持体のファイバのすべて又は一部に含侵させることによって行われる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤は、端点を含む、17と19の間の親水性/親油性バランスを有する、請求項1又は請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ナノコンポジット粒子は、陽イオン界面活性剤である第2の界面活性剤をさらに含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ナノコンポジット粒子のコア直径は、200nm未満である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ポリアルキルアクリレート/ポリアニリン又はアルキルアクリレートと、α,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマー/ポリアニリンの重量比は、70/30~95/5で変化する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記コアは、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマーからなり、前記C1~C6アルキルポリアクリレートホモポリマーはn-ブチルポリアクリレートである、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
印刷物は、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む少なくとも1つの導電性ナノコンポジット粒子を含む、印刷された伸縮性のある支持体。
【請求項9】
前記支持体は、熱可塑性ポリマー、エラストマーファイバ、及びこのようなファイバを含むファブリックからなる群から選択される、請求項8に記載の印刷された伸縮性のある支持体。
【請求項10】
前記伸縮性のある印刷された支持体は、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエチレン、エラスタンファイバ、天然又は合成ゴムファイバ、オレフィン、ポリエステル、ポリエーテル又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の印刷された伸縮性のある支持体。
【請求項11】
C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む導電性ナノコンポジット粒子であって、前記導電性ナノコンポジット粒子のコア直径は、200nm未満である、導電性ナノコンポジット粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性のある導電性材料の技術分野に関し、特に、弾性を必要とするプリンテッドエレクトロニクスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
私たちの生活において電子装置の存在は増し続けており、この傾向は、モノのインターネット(loT、Internet of Things)、及び次のあらゆる物事のインターネット(loE、Internet of Everything)の到来とともに、今後数年間で指数関数的になると予想される。
【0003】
IoEは、最新の技術的進歩、主にプリンテッドエレクトロニクスの世界で得られた進歩のおかげで実装することができる。プリンテッドエレクトロニクスは、特にシリカ上の従来のエレクトロニクスを補完するものとして、可撓性のコンポーネントの生産と、大きな表面への印刷を可能にする。従来の半導体技術で得られるデバイスの主な違いは、それらの厚さ、重さ、頑健性、及びコストにある。これらの品質は、新しい市場と製品の出現を可能にし、ポータブル電子装置又はスマートラベルなどの革新的な概念の発展に貢献している。この発展を持続できるようにするために、新しい技術的手法で取り除くべき技術的障害が依然としてある。特に、接続された衣類などの「ウェアラブル」のための、伸縮性及び可撓性のある基材への関心が高まっている。
【0004】
今日、伸縮性のある電子装置に工業的に適用されているソリューションは、2つの手法:1つは波及び馬蹄の形状に描かれたトラックを使用する回路工学、及び、もう1つは絶縁エラストマーマトリックスに埋め込まれた導電性ナノ粒子、典型的には金属ナノ粒子のナノコンポジット又はカーボンナノチューブ、並びに2つの手法の組み合わせに従う。これらの2つの手法には顕著な性能の限界があり、特性は、機械的応力下ではほとんど保たれない。これらの材料の開発は、デバイスの製造の複雑さによってさらに制限される。第1の手法では、伸縮性のない無機材料、典型的には金属が、エラストマー基材が変形される場合に伸長され得る幾何学的波パターンに従って構造化される。実現可能性は実証されているが、製造の複雑さとデバイス上の回路が占めるスペースは、顕著な制約をもたらす。第2の手法では、ナノコンポジットは、絶縁エラストマーマトリックス中の導電性フィラーの包含を利用する。カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤ、又は金属ナノ粒子などの材料が、導電性材料として用いられている。使途の広さ及び多数の材料の選択肢があるにもかかわらず、パーコレーションに依存する導電率は張力に非常に敏感であり、デバイスの小型化と周期的変形下での安定性の障害となっている。
【0005】
表皮エレクトロニクスなどの、伸縮性のあるプリンテッドエレクトロニクスの用途のために近年行われた開発は、100%の変形で、デバイスと湾曲面との密接な接触を可能にする。これらのデバイスの最も成功した概念は、伸縮性の相互接続部による能動コンポーネントの剛性アイランドの一体化に基づいている。しかし、歪み下で導電性能を維持できる導体の開発は、依然として重要課題である。
【0006】
これに関連して、本質的に伸縮性のある導電性材料はまだほとんどないが、うまくいけば、それらは、印刷又はコーティングなどの単純な製造プロセスに利用できるであろう。それにもかかわらず、克服するべき障害がまだいくつかあり、それらの開発は、低価格で簡単な方法、実装、及び変形下での特性の頑健性を考慮する。
【0007】
溶液として堆積でき、且つ、パターンを印刷できる、本質的に伸縮性で導電性の材料が、さらに望ましい。
【0008】
導電性ポリマーは、それらの可撓性と電気的及び機械的特性のため優れた候補である。残念ながら、これまで、高い導電率と高い伸縮性は、導電性ポリマーで同時に達成できなかった。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ナトリウムポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)は、溶液として堆積できる最高の導電率をもつ導電性ポリマーであるが、およそ5%の変形で破断を呈する。
【0009】
出願WO2007/012736は、ポリアルキルアクリレート・コアとポリアニリン・シェルとを有する電気伝導性ナノコンポジット粒子を説明する。この粒子は、高い導電率と良好なフィルム形成特性の両方を有するコンポジットを得ることを可能にする。しかしながら、これらの粒子についての伸縮特性は実証されておらず、もちろん、引き伸ばされたときの導電特性の維持も実証されていない。
【0010】
これに関連して、出願人は、ポリアルキルアクリレート・コアとポリアニリン・シェルを有する電気伝導性ナノコンポジット粒子が予想外に、引き伸ばしても初期の高い電気伝導率が保持されるコンポジットを得ることを可能にすることを実証した。したがって、コンポジットのコア・シェル構成は、最大で300%の伸長の電気的連続体を得ることを可能にする。
【発明の概要】
【0011】
第一に、本出願は、伸縮性のある支持体上に印刷するための、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む、電気伝導性ナノコンポジット粒子の使用に関する。
【0012】
本発明の第2の目的は、印刷された伸縮性のある支持体であり、印刷された部分は、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む、少なくとも1つの導電性ナノコンポジット粒子を含む。
【0013】
最後に、本出願は、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含み、コアの特徴的な寸法、特にその直径が厳密には200nm未満である、電気伝導性ナノコンポジット粒子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
加えて、本発明の他の様々な特徴が、本発明の限定的ではない実施形態を例示する図面を参照しながらなされる補足説明から浮上する。
図1】本発明に係る伸縮性のある基材の導電率を調べるためのデバイスのレイアウトである。
図2】本発明に係る印刷された基材で得られる電気的連続性を検証するためのデバイスの写真である。
図3】引張試験中の印刷された熱可塑性ポリウレタン試験片の抵抗の推移を、時間(a)及び引き伸ばし(b)の関数として示すグラフである。
図4】引き伸ばし/解放サイクル中の、印刷された熱可塑性ポリウレタン試験片の抵抗(上部)と引き伸ばし(下部)の推移を示すグラフである。
図5】最大300%の引き伸ばし中の印刷された熱可塑性ポリウレタン試験片の抵抗の推移を示すグラフである。
図6】単一の引き伸ばし(a)中及び引き伸ばし/解放サイクル(b、c、及びd)中の伸縮性のあるテキスタイルの印刷された試験片の抵抗(上部)と引き伸ばし(下部)の推移を示すグラフである。
図7】伸縮性のあるファブリックの印刷された試験片での様々な連続する手動イベント中に得られた信号を示すグラフである。
図8】印刷されたLycra試験片の連続する引き伸ばし/解放中の時間の関数としての抵抗の推移を示すグラフである。
図9】引き伸ばしに応じた、引き伸ばし/解放サイクル中の印刷された伸縮性のある糸の試験片の抵抗の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願は最初に、伸縮性のある支持体上に印刷物を生成するための、ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む、電気伝導性ナノコンポジット粒子の使用に関する。
【0016】
本出願はまた、伸縮性のある支持体上にナノコンポジット粒子を堆積するための、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む、電気伝導性ナノコンポジット粒子の使用に関する。
【0017】
「ナノコンポジット」という用語は、1マイクロメートル未満のサイズのコンポジット粒子として理解される。コアのサイズ(直径)は一般に、20nm~700nmの範囲であり、シェルのサイズ(厚さ)は一般に、数nm~100nmの範囲である。「ナノコンポジット」及び「コンポジット」という用語は、本出願において、このナノコンポジットを表すために交換可能に用いられる。好ましい実施形態において、本発明に従って用いられる粒子は、200nm未満のコア直径を有する。ここでの直径は、懸濁液中の粒子の流体力学的サイズに対応し、動的光散乱又は薄膜によって測定できる。小さいサイズのコア、したがって、結果として得られる小さいサイズの粒子は有利に、その後のコンポジット材料中の導電経路の形成を促進することを可能にする。それはまた、非常に薄いコンポジットフィルムを調製すること、及び例えばスプレーによる、分散液の適用を促進することを可能にする。
【0018】
「ポリアニリン」は、ポリアニリン又はその誘導体の1つを意味する。ポリアニリン誘導体は、例えば窒素上又は芳香環上でアニリンモノマー単位が置換される、ポリマーである。芳香環上の置換基の例は、特にヒドロキシ基、ハロゲン原子、特に塩素原子、C1~C4アルキル基、特にメチル、エチル、及びイソプロピル、並びに、C1~C4アルコキシ基、特にメトキシ、エトキシ、n-又はiso-プロポキシ、及びn-、iso-、又はtert-ブトキシである。窒素原子は、例えば、1つ又は複数のC1~C4アルキル基で置換され得る。
【0019】
「ポリアニリンからなるシェル」という用語は、ポリアルキルアクリレート又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーのコアの表面に物理的に結合された(すなわち、吸着された)及び/又は化学的に結合された(すなわちグラフトされた)ポリアニリンからなる連続した又は不連続の堆積物として理解される。好ましくは、この堆積物は不連続である。好ましくは、シェルは、コアの表面上に吸着される。
【0020】
「ポリアルキルアクリレートホモポリマー」は、いくつかの同一のアルキルアクリレートモノマー単位の連結から得られるポリマーを意味する。
【0021】
本明細書での意味の範囲内で、「ポリアルキルアクリレート」という用語は、ポリアルキルメタクリレートを包含する。「C1~C6アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子(端点を含む)を含む、特に1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素鎖を表す。C1~C6アルキルポリアクリレートの例としては、特に、ポリメチルメタクリレート、メチルポリアクリレート、エチルポリアクリレート、エチルポリメタクリレート、n-プロピル又はイソプロピルポリアクリレート、n-プロピル又はイソプロピルポリメタクリレート、n-、sec-、又はtert-ブチルポリアクリレート、及びn-、sec-、又はtert-ブチルポリメタクリレートが挙げられる。好ましくは、C1~C6アルキルポリアクリレートは、n-ブチルポリアクリレートである。後者は有利なことに、-54℃のガラス転移温度を有し、これは、室温でフィルム形成特性を得ることを可能にする。本発明の変形例によれば、ポリアルキルアクリレートは、少なくとも部分的に架橋される。特に適切な架橋剤の例は、特にジアクリレート化合物、好ましくは1,6ヘキサンジオールジアクリレートである。後者は特に商標名SR238(R)(Cray Valley)で入手可能である。ポリアルキルアクリレートの架橋は、導電性コンポジットの機械的特性を変えること、特にその弾性を変えることを可能にする。
【0022】
本発明の好ましい変形例によれば、コアは、C1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなる。実際に、コア粒子上のアミド官能基の存在は、ポリアニリン・シェルとの適合性を改善すること、したがって、コアの被覆及び導電率を改善することを可能にすることが実証されている。したがって、理論に限定されることを望まないが、アミド官能基の存在は、ポリアニリンとの水素結合の確立を促進することが実証されている。本明細書での意味の範囲内で、「α,β-不飽和アミドコモノマー」という用語は、α,β-不飽和アミド又はそれらの誘導体を包含する。好ましくは、α,β-不飽和アミドは、エチレン系不飽和であり、より好ましくはアクリルアミドである。不飽和アミド誘導体は、二重又は三重結合上で、例えばメチル、エチル、及びプロピルなどのアルキル基で置換されたモノマーである。α,β-不飽和アミド誘導体の例としては、特に、アクリルアミド、及びその誘導体、例えばメタクリルアミドが挙げられる。C1~C6ポリアルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーは、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、又はランダムコポリマーであってよい。好ましくは、アルキルアクリレート型モノマー/α,β-不飽和アミドコモノマーの重量比は、90/10~99.5/0.5で変化する。
【0023】
好ましくは、ポリアルキルアクリレート/ポリアニリン又はアルキルアクリレートと、α,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマー/ポリアニリンの重量比は、45/55~98/2で変化し、好ましくは50/50と95/5の間である。特に、ポリアルキルアクリレート/ポリアニリン又はアルキルアクリレートと、α,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマー/ポリアニリンの重量比は、70/30~95/5で変化し、特に約75/25に等しく、特に75/25に等しい。
【0024】
本発明に従って用いられる粒子は、界面活性剤の存在により安定化されたポリアルキルアクリレート(又はアルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマー)の分散液中でのポリアニリンの重合によって得ることができる。界面活性剤は、好ましくは非イオン界面活性剤であり、少なくとも1つの他の非イオン又はイオン界面活性剤、特に陽イオン界面活性剤と随意的に混合される。それは好ましくは非イオン界面活性剤であり、なぜならイオン界面活性剤は、特にポリアニリンの重合中に、重合反応を不必要に妨げ得るからである。
【0025】
「非イオン界面活性剤」は、動作条件下で帯電しない界面活性剤を意味する。非イオン界面活性剤は、ポリアルキルアクリレート粒子の表面に物理的に吸着される(すなわち物理的に結合される)か又はポリアルキルアクリレートに組み込まれ(すなわち化学的に結合される)得る。好ましくは、非イオン界面活性剤は、ポリアルキルアクリレートに物理的に結合される。これは、非イオン界面活性剤の存在下でポリアルキルアクリレートの重合を行うことにより達成できる。
【0026】
非イオン界面活性剤は、特にアルキルフェノールアルコキシレート、アルコールアルコキシレート、アルキルアルコキシレート、アミンアルコキシレート、アルキルアミンオキシドを含む多様な化合物から、特にアルキルフェノールエトキシレート、アルコールエトキシレート、アルキルエトキシレート、又はEO/PO(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、アミンエトキシレート、又はアミンポリエトキシレートから選択できる。
【0027】
非イオン界面活性剤は好ましくは、端点を含む、12と20の間、特に17と19の間の親水性/親油性バランス(HLB)を有する。特に、それは、化学式I:
【化1】
のBrij(商標)S100という名称で知られる界面活性剤であり得る。
【0028】
使用される非イオン界面活性剤の量は、重要ではなく、大幅に変えることができる。したがって、小さな粒子の分散液は一般に、大きな粒子の分散液よりも大量の安定化する界面活性剤を必要とする。しかしながら、この量は、ポリアルキルアクリレート粒子を安定化させることを可能にするのに十分でなければならず、且つ、粒子の機械的特性及び導電特性を変えるほど大きすぎてはならない。本発明に係る粒子中に存在する非イオン界面活性剤は一般に、重量の1%~20%、より好ましくは重量の1~10%に相当し、重量による値は、シェルとコアの総乾燥質量に対して表される。
【0029】
本発明の特に好ましい変形例によれば、粒子は、コンポジットの導電率を改善できる化学的機能を有する第2の非イオン界面活性剤をさらに含む。例として、化学式II:
【化2】
の化合物などの、少なくとも1つのアミド官能基を有する非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0030】
化学式IIにおいて、Alkは、C1~C20、好ましくはC1~C15のアルキル基を表し、mは、1~100の整数を表す。好ましい変形例によれば、化学式IIに対応する化合物が用いられ、ここで、Alkは、C11アルキル基であり、mは、平均数6を表す。これは、Ninol(登録商標)(Stepan)という名称で市販されている。したがって、理論に限定されることを望まないが、コアの表面に存在するアミド官能基は、コア粒子のより良好なカバレッジを得ることを可能にし、また、ポリアニリンとの水素結合の確立を可能にすることが実証されている。したがって、これらの特性は、導電率を改善することを可能にする。
【0031】
好ましくは、この第2の非イオン界面活性剤は、シェルとコアの乾燥質量に対して重量の1%~20%に相当する。
【0032】
本発明に従って用いられる粒子は代替的に、導電性ポリマーと第2のイオン界面活性剤の間に電荷不適合性を生じないように、第2のイオン界面活性剤、特に第2の陽イオン界面活性剤を含み得る。例えば、陽イオン界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウムのファミリー、特にC4~C20アルキルトリメチルアンモニウムの界面活性剤から選択できる。特に、これは、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)であり得る。
【0033】
好ましくは、この第2のイオン界面活性剤は、シェルとコアの乾燥質量に対して重量の1%~20%に相当する。
【0034】
粒子が第1の非イオン界面活性剤と第2の非イオン又はイオン界面活性剤を含む場合、第1の非イオン界面活性剤と第2の非イオン又はイオン界面活性剤の質量比は好ましくは、端点を含む、50/50と30/70の間である。
【0035】
粒子は、特に、WO2007/012736出願に記載のプロセスによって合成されてよい。
【0036】
粒子は、分散液、特に水性媒体での、特に水中での分散液の形態で用いられてよい。粒子分散液の固形分は一般に、分散液の重量で1と60%の間、好ましくは重量で10~40%である。
【0037】
「伸縮性のある支持体」という用語は、破断せずに少なくとも1つの方向に少なくとも120%の伸長に耐えることができ、本発明に係るナノコンポジット粒子、又はこのような粒子から形成されたフィルムを印刷することができる材料を意味する。好ましくは、伸縮性のある材料は、少なくとも1つの方向に少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、又は少なくとも500%の伸長に耐えることができる。いくつかの実施形態では、伸縮性のある支持体は、同じ平面の第2の方向でよりも第1の方向でより大きい程度の伸縮性を含み得る。
【0038】
本発明に従って用いることができる伸縮性のある支持体の例としては、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、又はポリエチレンなどの、熱可塑性ポリマーが挙げられる。エラストマーファイバ及びこのようなファイバを含むファブリックも挙げられる。エラストマーファイバは、少なくとも400%引き伸ばすことができ、その後、元の形状に戻ることができることが知られている。エラストマーファイバの例としては、エラスタンファイバ(例えばLycra)、天然又は合成ゴムファイバ、オレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、又はそれらの組み合わせ、特に、エラスタンとポリエステルを含む弾性ファイバが挙げられる。上記の支持体の例の少なくとも1つを含む伸縮性のある支持体は、それらがこれらから構成されていなくても、本発明に従って用いることができる。
【0039】
一実施形態では、印刷された伸縮性のある支持体は、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエチレン、エラスタンファイバ、天然又は合成ゴムファイバ、オレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
支持体上にナノコンポジットを「印刷する」という用語は、例えばナノコンポジットのフィルムを堆積することによって、或いは、ナノコンポジット粒子、又は溶媒中の分散ナノコンポジット粒子、好ましくはそれらの合成媒体中のナノコンポジット粒子を基材のファイバに含侵させることによって、基材上にナノコンポジットを堆積することとして理解される。堆積は、当業者に公知の任意の適切な技術によって行うことができる。フィルムの堆積としては、特に、液滴の堆積(ドロップキャスト)、スクリーン印刷、又は「ドクターブレード」型の器具を用いた堆積が挙げられる。
【0041】
一実施形態では、印刷は、ナノコンポジット粒子をフィルムの形態で支持体上に堆積することによって、或いは、ナノコンポジット粒子と少なくとも溶媒を含む溶液又は懸濁液を支持体のファイバのすべて又は一部に含侵させることによって行われる。
【0042】
出願人は、予想外に、伸縮性のある支持体上に印刷するために上記の粒子又はそれらを含有する分散液の使用が、伸縮性と導電性の両方がある、すなわち、その導電特性が、伸縮性のある支持体が特に300%を超える伸長まで引き伸ばされるときでさえも保持される、印刷物を得ることを可能にすることを実証した。加えて、導電特性はまた、伸縮性のあるキャリアの非引き伸ばし状態への解放時、並びに、数回の引き伸ばし/非引き伸ばし状態への解放サイクル後にも維持される。
【0043】
本発明の第2の目的は、印刷された伸縮性のある支持体であり、印刷は、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含む、少なくとも1つの導電性ナノコンポジット粒子を含む。
【0044】
本発明に係る印刷された伸縮性のある支持体は明らかに、それぞれの特徴を有し、伸縮性のある支持体上に印刷するためのナノコンポジット粒子の使用に関するセクションで説明した好ましい実施形態をとることができる。
【0045】
本発明に係る印刷された伸縮性のある支持体は、伸縮性のある導電性材料などとして用いることができる。場合によっては、それは、伸縮性のある電極の形成にも用いることができる。
【0046】
本出願は最終的に、C1~C6アルキルポリアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリアニリンからなるシェルと、非イオン界面活性剤とを含み、コアの特徴的な寸法、特にその直径が厳密には200nm未満である、電気伝導性ナノコンポジット粒子に関する。
【0047】
伸縮性のある支持体上に印刷するためのナノコンポジット粒子の使用に関するセクションで説明した様々な特徴及び好ましい実施形態は明らかに、それらの定義と矛盾しないという条件で、本発明に係るナノコンポジット粒子を特徴付けるために用いることができる。
【0048】
その特徴的なコア寸法、特に直径、が200nm未満である、本発明に係るナノコンポジット粒子は、伸縮性のある支持体上に堆積するためのそれらの使用に関して、そのコアがより大きい粒子よりも優れていることを示した。前述の先行出願WO2007/012736に記載されるものなどの粒子と比較して、それらは、実装(フィルムの形態での堆積又は製造がより容易な含浸)、材料の節約(従来技術と同様のパーコレーション速度を達成するために必要なポリアニリンが少ない)、及び導電率の点で利点を有する。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、より小さな導電性粒子の使用は、フィルム又は含浸堆積物内に導電性ポリマーのより緊密なネットワークが形成されることを可能にし、これは導電を促進するであろう。
【0049】
本発明に係る印刷された導電性基材は、ウェアラブル技術(英語で「ウェアラブル(wearables)」と呼ばれる、高度なコンピュータ及び電子要素を備える衣類又は装身具)、プリンテッドエレクトロニクスだけでなく、住宅用コーティング又は家庭用電気器具などの多様な分野で用いることができる。例えば、存在検出器及び歩行センサなどのデバイスが、本発明に従って得られている。
【0050】
本発明の最終目的は、本発明に係る印刷された導電性基材と同じ用途のための、本発明で説明されるナノコンポジット粒子のフィルムの、伸縮性のある導電性材料としての使用である。
【0051】
本発明では、特に明記しない限り、「約」値v1という用語は、0.9×v1と1.1×v1の間の範囲に含まれる値、つまりv1±10%、好ましくはv1±5%、特にv1±1%を意味する。
【0052】
本発明では、特に明記しない限り、値の区間は、それらの端点を含まない開区間を意味する。したがって、「より大きい」及び「より小さい」という用語は、狭義の不等式を指す。
【0053】
本発明では、特に明記しない限り、動詞「備える、含む(comprise)」及びその変形は、他の構成要素の存在を排除しないものとして理解されるべきである。特定の実施形態では、これらの用語は、「本質的にからなる」又は「からなる」と解釈されてよい。
【0054】
もちろん、本発明の異なる特徴、変形例、及び実施形態は、それらが互換性がないか又は相互に排他的でない限り、様々な組み合わせで相互に関連付けることができる。
【0055】
もちろん、他の様々な修正を、付属の請求項の範囲内で本発明に行うことができる。
【0056】
以下に提供する実施例は、その範囲を限定することなく本発明を説明することを意図している。
【0057】
実施例
実施例1:本発明に係る使用可能な粒子の合成
【0058】
ポリブチルアクリレート(PBuA)ラテックス・コアとポリアニリン(PANI)シェルを有する粒子を、合成した。使用した方法は、WO2007/012736に記載されている方法を採用している。
【0059】
1.1 コアの合成
最初に、界面活性剤を、水に導入し、完全に可溶化するまで攪拌した。可溶化後に、アクリルブトキシドモノマーを、攪拌しながら添加し、反応系を、油浴又はダブルジャケットを使用して70℃で加熱した。エマルジョンが安定化したときに、過硫酸アンモニウム開始剤を、添加した。反応時間は4時間であった。
【0060】
合成を、水中で行う。以下の表1は、界面活性剤の性質(TA=界面活性剤)、界面活性剤の量(TA m%=界面活性剤の重量パーセンテージ、TA1/TA2=使用した2つの界面活性剤の質量比)、固形分、及び得られた粒子(ラテックス)の直径に関して用いた種々の条件をまとめたものである。これらの粒子は、本発明に従って用いられる導電性コンポジット粒子のコアを表す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1のアッセイ1の粒子を、WO2007/012736出願の条件に従って得る。
【0063】
1.2 ポリアニリン・シェル(PANI)の合成
PANIシェルを、以下のプロトコルを使用して得た。所望の量の塩酸アニリンを、合成に必要な量の水に溶解し、次いで、前のステップで合成したコアを、攪拌しながら加えた。反応系を、氷浴(フラスコ合成)により又は反応器合成の場合にはジャケットに接続されたクライオスタットを使用して5℃に冷却した。15分間の温度安定化後に、過硫酸アンモニウムの水性溶液を、混合による発熱を制御するために滴下して加えた。5℃で5時間後に、反応を止めた。導入量を、所望のPBuA/PANI比及び目標固形分パーセンテージレベルの関数として決定した。
【0064】
実施例2:様々な基材上でのコンポジットの堆積と導電率の測定
【0065】
このパートでの目的は、金属ケーブルがコンポジットに置き換えられている回路に挿入された発光ダイオード(LED)を使用して、デバイスの電気的連続性を視覚的に検証することである。これを行うために、LEDを、電源に接続されている導電性コンポジットの2つのストリップに接続する。デバイスのレイアウトを図1で提供する。
【0066】
以下の2つの導電性コンポジット、すなわち、(a)75/25のPBuA/PANI比、約120nmのコア直径、BrijS100とDTAB界面活性剤の混合物(表1のアッセイ4)、及び1.6S/cmの導電率を有する粒子のコンポジット、並びに(b)70/30のPBuA/PANI比、約180nmのコア直径、BrijS100とNinol L5界面活性剤の混合物(表1のアッセイ3)、及び1S/cmの導電率を有する粒子のコンポジット、を使用した。
【0067】
PET、TPU、及びファブリックなどの様々な基材が試験されている。すべてのケースで、使用した支持体及びコンポジットに関係なく、均一で規則的な堆積物が得られ、電気的連続体を得ること、すなわちLEDの点灯を可能にする。図2は、様々な、試験した基材を有するデバイスの写真を示す。
【0068】
実施例3:その上にコンポジットフィルム及びコンポジットが堆積される基材の引き伸ばしに対する抵抗の測定
a)熱可塑性ポリウレタン基材への堆積
【0069】
最初の一連の試験を、引き伸ばしの関数としての抵抗の変化を評価するために、熱可塑性ポリウレタン(TPU)で行った。75/25のPBuA/PANI比、約120nmのコア直径、BrijS100とDTAB界面活性剤の混合物(表1のアッセイ4)、及び1.6S/cmの導電率を有する粒子のコンポジットのフィルム(a)を、ドロップキャスト法によりポリウレタン基材上に堆積させた。別個の基材上に、70/30のPBuA/PANI比、約180nmのコア直径、BrijS100とNinol L5界面活性剤の混合物(表1のアッセイ3)、及び1S/cmの導電率を有する粒子のコンポジットのフィルム(b)を、同様にドロップキャスト法により堆積させた。引き伸ばし時の抵抗を測定するために、試験片を、Versatest電動ベンチの2つのジョーの間に配置する。下側のジョーは固定され、上側のジョーは可動である。電気的接触を、ケースレーで抵抗の測定を行っている間、ジョーの内側でフィルムと接触している金の針により提供する。牽引アームとケースレーを、引き伸ばしの制御を可能にする収集ソフトウェアに接続する。したがって、抵抗を測定しながら引張サイクルを実行できる。
【0070】
引き伸ばし試験プロトコル
この試験は、引き伸ばした状態での抵抗の値を求めることで構成される。2つのフェーズの引き伸ばしを検討する。1つは牽引アームが動いているときの引き伸ばし(50mm/分)中であり、もう1つは試験片を引き伸ばした後である。サンプルの抵抗は、試験片の長さ(電極間の距離)とその断面(幅と厚さの積)の比に比例する。引き伸ばすとき、長さは増加し、断面は縮小し、結果的に抵抗値が増加する。次いで、一旦引き伸ばされると、弛緩が起こり、抵抗値の減少につながる。引き伸ばし後の値であろうと、弛緩後の値であろうと、変化は、試験片が供される引き伸ばしに応じて線形である。加えて、引き伸ばし後と弛緩後の抵抗値の差は、およそ11%である。図3は、時間の関数としての、及び引き伸ばしの関数としての試験片の抵抗の推移を示す。
【0071】
試験片をまた、抵抗を測定しながら引張-解放サイクルに供する。図4は、引張サイクル中の時間の関数としての試験片の抵抗(上側の曲線)と引き伸ばし(下側の曲線)の推移を示す。これらのサイクル中に、引き伸ばしは、100%(弛緩位置)と150%(a)又は200%(b)の間である。抵抗の変動は、位置の変動に伴って極値から解放されかつ引き伸ばされた位置の値に到達するように変化する。抵抗自体の値よりも、この引き伸ばし-解放プロセス中に、抵抗の値が、パーコレーションの喪失ではなく試験片の幾何学的形状の差異のために変化することに注目することが重要である。加えて、様々なサイクル中に得られる最大値と最小値は、互いに近く、これは、試験片が様々な引き伸ばし中に劣化しないことを示す。抵抗を引き伸ばし/解放サイクル中に測定できることは、材料が、引き伸ばされたときにその導電率を保持していることを確認する。実際に、そうでなかった場合、電気的連続体は壊され、抵抗は測定できないであろう。したがって、基材上に堆積されたコンポジットフィルムは、伸縮性があり、劣化を起こさず、その導電率は、数回の引き伸ばし/解放サイクル後であっても維持される。
【0072】
図5は、最大300%の引き伸ばしが、コンポジットの劣化又は導電率の損失なしに、試験片で達成できることを示す。
【0073】
b)伸縮性のあるポリエステルテキスタイル基材への堆積
導電性コンポジットを、ファイバに導電性ポリマーを含浸させることによって、伸縮性のあるポリエステルファブリック上に堆積させる。ポリエステルファイバには本質的に伸縮性がないため、ポリエステルの伸縮性は、ポリエステルファイバの織り方に起因するものである。実施例2の2つの導電性コンポジット、つまり、(a)75/25のPBuA/PANI比、およそ120nmのコア直径、BrijS100とDTAB界面活性剤の混合物(表1のアッセイ4)、及び1.6S/cmの導電率を有する粒子のコンポジットと、(b)70/30のPBuA/PANI比、約180nmのコア直径、BrijS100とNinol L5界面活性剤の混合物(表1のアッセイ3)、及び1S/cmの導電率を有する粒子のコンポジットで、堆積を行った。試験したコンポジットのそれぞれについて、コンポジットが堆積される熱可塑性ポリウレタン基材で得られる挙動と同様の挙動、つまり引き伸ばし中の抵抗値の増加、が観察された。コンポジットを含浸したファブリックを引き伸ばし、引き伸ばした状態を保ったときに、安定化も観察され、その後、引き伸ばしが解放されたときに、値が減少する。加えて、ファブリックを引き伸ばし/解放サイクルに供すると、熱可塑性ポリウレタンでの試験で観察されるように、抵抗が変化する。図6は、引き伸ばしの関数としての抵抗の推移(a)と、異なる引き伸ばしモードでの引き伸ばし/解放サイクルにおける時間の関数としての抵抗の推移(b及びc)を示す。図6(d)のグラフは、その上にコンポジットが堆積される伸縮性のあるポリエステルファブリックが「粗い」引き伸ばしに供され、その後解放されたときに得られる信号を表す。この動きは、手動で行った。急な引き伸ばしは、スパイクを引き起こし、その後の解放は、抵抗の瞬時の減少をもたらし、これは数秒後にその元の値へ戻る。
【0074】
最後に、図7のグラフは、牽引と牽引の維持、又はインパルス(牽引とその後の瞬時の解放)などの、様々な連続する手動イベント中に得られた信号を表す。材料が連続するイベントに反応することに加えて、最初の抵抗値が迅速に(数秒で)得られることは、最高の結果である。実際に、これは、システムが引き伸ばしによって劣化しないことを意味する。
【0075】
したがって、コンポジットが堆積される、伸縮性のあるテキスタイル基材は、その伸縮特性を保持し、基材上に堆積されたコンポジットは、引き伸ばしサイクル中にその導電特性を保持する。
【0076】
c)Lycra基材への堆積
前述の2つのコンポジット((a)75/25のPBuA/PANI比、およそ120nmのコア直径、BrijS100とDTAB界面活性剤の混合物(表1のアッセイ4)、及び1.6S/cmの導電率を有する粒子のコンポジットと、(b)70/30のPBuA/PANI比、約180nmのコア直径、BrijS100とNinol L5界面活性剤の混合物(表1のアッセイ3)、及び1S/cmの導電率を有する粒子のコンポジット)をまた、Lycra上に堆積した。この基材のメッシュの性質は、前の例の基材で得られた挙動とは異なる挙動を生じさせる。図8は、試験片の連続する引き伸ばし/解放中の時間の関数としての抵抗の変化を示す。
【0077】
試験片の引き伸ばし中に観察されたパーコレーションの喪失(導電経路の喪失)にもかかわらず、おそらくコンポジットの再構成に関連する、その後の抵抗の安定化と、抵抗が弛緩後にその最初の値に戻ることは、Lycra基材上に堆積されたコンポジットの損傷又は劣化がなく、かつその導電率が維持されることを実証する。
【0078】
d)伸縮性のある糸への堆積
上記の2つの導電性コンポジットのそれぞれを、60%のエラスタンと40%のポリエステルで構成された別個の弾性糸にコーティングする。これを行うために、及び可能なすべての空気と糸の境界面を湿らせるために、糸を最初に、最大限に引き伸ばし、次いで、導電性コンポジットで被覆し、乾燥中も引き伸ばした状態に保つ。乾燥後に、熱可塑性ポリウレタンフィルムで又はテキスタイルで行った試験と同様の試験、すなわち引き伸ばしの関数としての抵抗の監視、を行った。観察された挙動は、前に観察された挙動と同じであり、抵抗は、引き伸ばし中に増加し、弛緩中に減少する。したがって、サイクルを、異なる引き伸ばし率で実行した。図9は、試験片が引き伸ばしのサイクルによって損傷されず劣化しないこと、及び導電率が引き伸ばし及び弛緩中に保持されることを示す。結果を、120%(a)、150%(b)、200%(c)、及び250%(d)の引き伸ばしで得た。
【0079】
実施例4:本発明を用いるデバイス
【0080】
a)存在検出器
コンポジットが堆積されているLycra支持体を、カーペットと有孔支持体との間に配置し、カーペットとLycraのペアが沈み込むことができるようにする。この印刷された材料の急激な引き伸ばしに対する高い感度は、引き伸ばしが小さいときでさえも、マット上の歩行の特徴的な信号の検出を可能にする。
【0081】
b)歩行検出器
コンポジットが堆積されているファブリック支持体を、靴下のかかとの下に取り付ける。したがって、各歩行は、材料に衝撃をもたらし、これは、測定される検出可能な抵抗ピークを生じさせる。したがって、抵抗の追跡は、各歩行を検出することを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】