(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】銅張積層板およびプリント基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
H05K1/03 630H
H05K1/03 610H
H05K1/03 610S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562832
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2020071878
(87)【国際公開番号】W WO2020215838
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】201910337537.X
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514309583
【氏名又は名称】廣東生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】陳 広兵
(72)【発明者】
【氏名】曾 憲平
(72)【発明者】
【氏名】許 永静
(72)【発明者】
【氏名】朱 泳名
(57)【要約】
本開示は、銅張積層板およびプリント基板を提供する。前記銅張積層板は、誘電基板層と、前記誘電基板層の少なくとも1つの表面に位置する銅箔層とを備え、前記銅箔層において、鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量がs10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さい。前記銅張積層板は、-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さい受動相互変調PIMを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電基板層と、
前記誘電基板層の少なくとも1つの表面に位置する銅箔層と、
を備える銅張積層板であって、
前記銅箔層において、鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さい、銅張積層板。
【請求項2】
前記銅張積層板は、700MHz~2600MHzで-158dBcよりも小さい受動相互変調の値を有する、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項3】
前記銅箔のマット面粗さは0.5~3μmである、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項4】
前記誘電基板層は、
ポリマーマトリックス材料と、
フィラーと、
を含み、
前記誘電基板層の重量で計算すれば、前記ポリマーマトリックス材料は30~70重量%であり、前記フィラーは30~70重量%である、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックス材料は、変性または未変性のポリブタジエン樹脂、変性または未変性のポリイソプレン樹脂、および変性または未変性のポリアリールエーテル樹脂のうちの1種または複数種を含む、請求項4に記載の銅張積層板。
【請求項6】
前記誘電基板層は、10GHzで3.5よりも小さい誘電率および0.006よりも小さい損失係数を有する、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項7】
前記ポリブタジエン樹脂は、ポリブタジエン単独重合体樹脂またはポリブタジエン共重合体樹脂である、請求項5に記載の銅張積層板。
【請求項8】
前記ポリブタジエン共重合体樹脂はポリブタジエン-スチレン共重合体樹脂である、請求項7に記載の銅張積層板。
【請求項9】
前記変性のポリブタジエン樹脂は、ヒドロキシ末端ポリブタジエン樹脂、メタクリレート末端ポリブタジエン樹脂、およびカルボキシル化されたポリブタジエン樹脂から選ばれる1種または複数種である、請求項5に記載の銅張積層板。
【請求項10】
前記ポリイソプレン樹脂は、ポリイソプレン単独重合体樹脂またはポリイソプレン共重合体樹脂である、請求項5に記載の銅張積層板。
【請求項11】
前記ポリイソプレン共重合体樹脂はポリイソプレン-スチレン共重合体樹脂である、請求項10に記載の銅張積層板。
【請求項12】
前記変性のポリイソプレン樹脂は、カルボキシル化されたポリイソプレン樹脂である、請求項5に記載の銅張積層板。
【請求項13】
前記変性のポリアリールエーテル樹脂は、カルボキシル官能化ポリアリールエーテル、メタクリレート末端ポリアリールエーテル、ビニル含有末端ポリアリールエーテルのうちの1種または複数種である、請求項5に記載の銅張積層板。
【請求項14】
前記ポリマーマトリックス材料は、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂およびポリアリールエーテル樹脂以外の共硬化性ポリマー、ラジカル硬化モノマー、エラストマーブロック共重合体、開始剤、難燃剤、接着調整剤、および溶剤のうちの1種または複数種を更に含む、請求項5に記載の銅張積層板。
【請求項15】
前記誘電基板層は、補強材を含むか、または補強材を含まない、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項16】
前記銅箔と前記誘電基板層との間に位置する粘着剤層および/または樹脂フィルム層を更に備える、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の銅張積層板を備えるプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子材料の技術分野に属し、銅張積層板およびプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子情報技術の発展に伴い、デジタル回路は、情報処理高速化、信号伝送高周波化の段階に入り、増加し続けるデータを処理するために、電子機器の周波数はますます高くなり、この場合、回路基板の電気的性能がデジタル回路の特性に大きく影響を及ぼすため、プリント基板(PCB)の性能に対してより新たな要求を提出する。
【0003】
受動相互変調(Passive Inter-Modulation)は、PIMと略称され、相互変調歪とも呼ばれ、RFシステムにおける各受動デバイスの非線形特性によるものである。大電力のマルチチャネルシステムにおいて、これらの受動デバイスの非線形により、動作周波数に対するいくつかの周波数成分が発生し、これらの周波数成分は動作周波数と混在して動作システムに入り、これらの不要な周波数成分が十分に大きければ、通信システムの正常動作に影響を及ぼす。スプリアス相互変調信号が基地局の受信帯域内にあると、受信機の感度は低下し、通話品質またはシステムキャリア干渉比の低下および通信システムの容量の減少を引き起こし、PIMは、システム容量を制限する重要なパラメータとなる。
【0004】
受動相互変調の問題として、初期は、主に、サーキュレータ、導波路、同軸コネクタ、デュプレクサ、アッテネータおよびアンテナ等の大電力マイクロ波デバイスに干渉を与える。プリント基板がますますマイクロ波回路分野における平板型集積RFフロントエンドの開発に広く適用されることに伴い、信号電力が増大し、PCB基板自体のPIM問題は、高性能RF回路の発展を阻害するバリケードとなる。現在、電子通信技術は、より速い伝送速度、より大きな伝送容量、より高い集積度へ発展し、現代のマイクロ波通信回路における大電力マルチチャンネル送信機、感度がより高い受信機、共用アンテナ、複雑な変調信号および密集した通信周波数帯は、いずれもPCB回路設計および製造における電力容量およびPIM指標に対して従来のPCB基板よりも高い性能要求を提出し、低PIM高性能の回路基板は、この分野の基礎および重要な技術となる。
【0005】
CN205793612UおよびCN107197592Aは、主にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を誘電絶縁層として選択し、低PIM高性能のセラミックス基板を作製する。
【0006】
しかし、依然として受動相互変調の値が低い銅張積層板と、銅張積層板を備えるプリント基板とを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の1つの目的は、-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さい受動相互変調性能を有する銅張積層板と、銅張積層板で調製されたプリント基板とを提供することにある。
【0008】
本開示の別の目的は、700MHz~2600MHzの条件でいずれも-158dBcよりも小さい受動相互変調性能を有し、且つ電子情報分野の高周波高速の要求を満たすことができる銅張積層板と、銅張積層板を備えるプリント基板を提供することにある。
【0009】
本発明の発明者は、鋭意研究を行った結果、銅張積層板の銅箔層における鉄元素、ニッケル元素、コバルト元素およびモリブデン元素がプリント基板のPIMを悪化することを発見した。銅箔層における鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さい場合、PIMが低いプリント基板を取得することができ、例えば、PIM値が-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さいプリント基板を取得することができる。
【0010】
銅箔層における各元素の重量含有量とは、該元素の重量を銅箔総重量で割ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、本開示は、
誘電基板層と、
前記誘電基板層の少なくとも1つの表面に位置する銅箔層と、
を備える銅張積層板であって、
前記銅箔層において、鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さい銅張積層板を提供する。
【0012】
一実施形態において、前記銅張積層板は、700MHz~2600MHzで-158dBcよりも小さい受動相互変調の値を有する。
【0013】
一実施形態において、前記銅箔のマット面粗さは0.5~3μmである。
【0014】
一実施形態において、前記誘電基板層は、
ポリマーマトリックス材料と、
フィラーと、
を含み、
前記誘電基板層の重量で計算すれば、前記ポリマーマトリックス材料は30~70重量%であり、前記フィラーは30~70重量%である。
【0015】
一実施形態において、前記ポリマーマトリックス材料は、変性または未変性のポリブタジエン樹脂、変性または未変性のポリイソプレン樹脂、および変性または未変性のポリアリールエーテル樹脂のうちの1種または複数種を含む。
【0016】
一実施形態において、前記誘電基板層は、10GHzで3.5よりも小さい誘電率および0.006よりも小さい損失係数を有する。
【0017】
一実施形態において、前記ポリブタジエン樹脂は、ポリブタジエン単独重合体樹脂またはポリブタジエン共重合体樹脂である。
【0018】
一実施形態において、前記ポリブタジエン共重合体樹脂はポリブタジエン-スチレン共重合体樹脂である。
【0019】
一実施形態において、前記変性のポリブタジエン樹脂は、ヒドロキシ末端ポリブタジエン樹脂、メタクリレート末端ポリブタジエン樹脂、およびカルボキシル化されたポリブタジエン樹脂から選ばれる1種または複数種である。
【0020】
一実施形態において、前記ポリイソプレン樹脂は、ポリイソプレン単独重合体樹脂またはポリイソプレン共重合体樹脂である。
【0021】
一実施形態において、前記ポリイソプレン共重合体樹脂はポリイソプレン-スチレン共重合体樹脂である。
【0022】
一実施形態において、前記変性のポリイソプレン樹脂は、カルボキシル化されたポリイソプレン樹脂である。
【0023】
一実施形態において、前記変性のポリアリールエーテル樹脂は、カルボキシル官能化ポリアリールエーテル、メタクリレート末端ポリアリールエーテル、ビニル含有末端ポリアリールエーテルのうちの1種または複数種である。
【0024】
一実施形態において、前記ポリマーマトリックス材料は、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂およびポリアリールエーテル樹脂以外の共硬化性ポリマー、ラジカル硬化モノマー、エラストマーブロック共重合体、開始剤、難燃剤、接着調整剤、および溶剤のうちの1種または複数種を更に含む。
【0025】
一実施形態において、前記誘電基板層は、補強材を含むか、または補強材を含まない。
【0026】
一実施形態において、前記銅張積層板は、前記銅箔と前記誘電基板層との間に位置する粘着剤層および/または樹脂フィルム層を更に備える。
【0027】
別の態様において、本開示は、以上のいずれか1項に記載の銅張積層板を備えるプリント基板を提供する。
【0028】
また別の態様において、本開示は、上記プリント基板を備える回路を提供する。
【0029】
更なる態様において、本開示は、上記プリント基板を備える多層回路を提供する。
【0030】
一実施形態において、前記プリント基板を備える回路または多層回路はアンテナに用いられる。
【0031】
本開示によれば、銅箔層における鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さいように制限することにより、-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さい受動相互変調性能を有する銅張積層板と、銅張積層板を備えるプリント基板とを提供することができる。
【0032】
また、-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さい受動相互変調性能を有して電子情報分野の高周波高速要求を満たすことができる銅張積層板と、銅張積層板を備えるプリント基板とを更に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の具体的な実施形態を参照しながら、本発明の実施例における技術案について明瞭かつ完全に説明し、明らかに、説明する実施形態および/または実施例は、本発明の実施形態および/または実施例の一部に過ぎず、全ての実施形態および/または実施例ではない。本発明の実施形態および/または実施例に基づき、当業者は、創造的な労働を行わない前提で取得する全ての他の実施形態および/または全ての他の実施例は、本開示の保護範囲内に含まれる。
【0034】
本開示において、全ての数値特徴は、いずれも測定された誤差範囲以内にあり、例えば、限定された数値の±10%以内、または±5%以内、または±1%以内にある。
【0035】
本開示に係る「備える」、「含む」または「含有する」は、前記成分に加え、他の成分を有してもよいことを意味し、これらの他の成分は、プリプレグに異なる特性を付与する。これに加え、本開示に係る「備える」、「含む」または「含有する」は、「ほとんど……で構成される」を含んでもよく、且つ、「である」または「……からなる」に置き換えてもよい。
【0036】
本開示において、特に明記されていない限り、量、割合等は、重量で計算される。
【0037】
本開示において、銅箔層は、銅箔と略称されることもある。
【0038】
本開示は、銅張積層板を提供し、
誘電基板層と、
前記誘電基板層の少なくとも1つの表面に位置する銅箔層と、
を備え、
前記銅箔層において、鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さい。
【0039】
好ましくは、鉄元素の重量含有量が7ppm以下であり、より好ましくは、5ppm以下である。
【0040】
好ましくは、ニッケル元素の重量含有量が7ppm以下であり、より好ましくは、5ppm以下である。
【0041】
好ましくは、コバルト元素の重量含有量が7ppm以下であり、より好ましくは、5ppm以下である。
【0042】
好ましくは、モリブデン元素の重量含有量が7ppm以下であり、より好ましくは、5ppm以下である。
【0043】
更に、前記銅箔層において、鉄、ニッケル、コバルトおよびモリブデン元素の重量含有量の和は、35ppm以下であってもよく、好ましくは、30ppm以下であり、より好ましくは、18ppm以下であり、更に好ましくは、12ppm以下であり、最も好ましくは、5ppm以下である。
【0044】
本発明の発明者は、鋭意研究を行った結果、銅張積層板の銅箔層における鉄元素、ニッケル元素、コバルト元素およびモリブデン元素がプリント基板のPIMを悪化することを発見した。銅箔層における鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さい場合、PIMが低いプリント基板を取得することができ、例えば、PIM値が-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さく、好ましくは、-160dBc(700MHz/2600MHz)以下、より好ましくは、-163dBc(700MHz/2600MHz)以下のプリント基板を取得することができる。
【0045】
700MHz~2600MHzでの受動相互変調の値とは、銅張積層板が700MHzと2600MHzとの2つの周波数の間で、反射法により測定された受動相互変調の値(PIM)を意味する。
【0046】
700MHz~2600MHzで-158dBcよりも小さい受動相互変調の値は、-158dBc(700MHz/2600MHz)として表すこともできる。
【0047】
PIMは、以下のように測定され得る。サンプルごとにそれぞれ9回の試験を行い、毎回1つの相互変調モデルおよび1つの周波数をそれぞれ選択し、Summitek Instruments PIM分析計を用いて試験し、9回の試験データの最大値をサンプルのPIM値として記録する。相互変調モデルの線路設計長さは、12インチ(ただし、12インチに限らない)の円弧状およびジグザグ状の線路(直線または他の任意の形状の線路であってもよい)であり、モデルの厚さがそれぞれ10mil、20milおよび30milのサンプルは、線幅24mil、48milおよび74milにそれぞれ対応し、周波数は、それぞれ700MHz、1900MHzおよび2600MHzを選択する。即ち、9回の試験データは、モデルの厚さ10mil、モデルの線幅24milの場合における700MHz、1900MHzおよび2600MHzで測定された3つのデータ、モデルの厚さ20mil、モデルの線幅48milの場合における700MHz、1900MHzおよび2600MHzで測定された3つのデータ、およびモデルの厚さ30mil、モデルの線幅74milの場合における700MHz、1900MHzおよび2600MHzで測定された3つのデータである。
【0048】
一実施形態において、銅箔のマット面粗さ(RZ)は0.5~3μmであってもよく、これにより、より良好なシグナルインテグリティを得ることができる。
【0049】
一実施形態において、銅箔における鉄元素、ニッケル元素、コバルト元素およびモリブデン元素の含有量は、電解銅箔の後処理工程により実現される。典型的な電解銅箔の後処理工程の流れは、油分除去→水洗→酸洗による錆除去→水洗→合金めっき液による電気めっき→水洗→パッシベーション→水洗→乾燥である。合金めっき液による電気めっきにおいて、鉄元素、ニッケル元素、コバルト元素およびモリブデン元素に対応する塩、例えば、硫酸鉄、硫酸モリブデン、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硝酸鉄、硝酸モリブデン、硝酸コバルト、硝酸ニッケル等を溶解することができる。合金めっき液における鉄元素、ニッケル元素、コバルト元素およびモリブデン元素に対応する塩の濃度、電流および温度等のプロセスパラメータを制御することにより、電解銅箔における銅箔内の鉄元素、ニッケル元素、コバルト元素およびモリブデン元素の含有量を調節することができる。
【0050】
銅箔層の厚さは、0.1~10OZであってもよく、好ましくは、0.2~5OZであり、更に好ましくは、0.5~2OZである。1OZは35μmを表す。
【0051】
誘電基板層は、ポリマーマトリックス材料およびフィラーを含む樹脂組成物で形成され得る。
【0052】
ここで、前記誘電基板層の重量で計算すれば、前記ポリマーマトリックス材料は30~70重量%であり、前記フィラーは30~70重量%である。
【0053】
好ましくは、誘電基板層は、補強材を含んでもよいし、補強材を含まなくてもよい。補強材を含む場合、前記ポリマーマトリックス材料およびフィラーを含む組成物は、前記補強材に付着されて誘電基板層を構成する。好ましくは、補強材は、ガラス繊維のような多孔質補強材である。
【0054】
好ましくは、ポリマーマトリックス材料は、変性または未変性のポリブタジエン樹脂、変性または未変性のポリイソプレン樹脂、および変性または未変性のポリアリールエーテル樹脂のうちの1種または複数種を含む。
【0055】
好ましくは、それを用いて作製された誘電基板層は、10GHzで約3.5よりも小さい誘電率および約0.006よりも小さい損失係数を有し、電子情報分野の高周波高速の要求を満たすことができ、且つ、10GHzで約3.5よりも小さい誘電率および約0.006よりも小さい損失係数を有するPCB基板は、PIM指標に対して、3.5よりも大きい誘電率および0.006よりも大きい損失係数を有するPCB基板よりも高い性能要求を提出する。
【0056】
好ましくは、ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーおよび他のポリマーのような各ポリマーの相対量は、用いられる具体的な銅箔層、所望の回路材料および回路積層体の性能および類似する考慮要素に依存してもよい。ポリアリールエーテルの使用が、銅箔と誘電金属層との結合強度を向上させることができ、ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーの使用が、積層体の耐高温性を向上させることができることは既に発見された。
【0057】
好ましくは、ポリブタジエン樹脂は、ポリブタジエン単独重合体または共重合体樹脂を含んでもよい。ポリブタジエン共重合体樹脂は、ポリブタジエン-スチレン共重合体樹脂であってもよい。変性のポリブタジエン樹脂は、ヒドロキシ末端ポリブタジエン樹脂、メタクリレート末端ポリブタジエン樹脂、およびカルボキシル化されたポリブタジエン樹脂から選ばれる1種または複数種であってもよい。
【0058】
好ましくは、ポリイソプレン樹脂は、ポリイソプレン単独重合体樹脂またはポリイソプレン共重合体樹脂を含んでもよい。ポリイソプレン共重合体樹脂はポリイソプレン-スチレン共重合体樹脂であってもよい。前記変性のポリイソプレン単独重合体樹脂またはポリイソプレン共重合体樹脂はカルボキシル化されたポリイソプレン樹脂であってもよい。
【0059】
好ましくは、変性のポリアリールエーテル樹脂はカルボキシル官能化ポリアリールエーテル、メタクリレート末端ポリアリールエーテル、ビニル含有末端ポリアリールエーテルのうちの1種または複数種であってもよい。
【0060】
具体的には、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂は、ブタジエン、イソプレンまたはその混合物に由来する単位を含む単独重合体および共重合体を含む。他の共重合性モノマーに由来する単位は樹脂に存在してもよく、例えば、好ましくは、グラフトの形態で存在する。例示的な共重合性モノマーは、ビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチルビニルトルエン、p-ヒドロキシスチレン、p-メトキシスチレン、α-クロロスチレン、α-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラクロロスチレン等のような置換および無置換のモノビニル芳香族モノマー、およびジスチリルベンゼン、ジビニルトルエン等のような置換および無置換のジビニル芳香族モノマーを含んでもよいが、これらに限定されない。少なくとも1種の前述した共重合性モノマーを含む組成物を使用してもよい。例示的な熱硬化性ポリブタジエンおよび/またはポリイソプレン樹脂は、ブタジエン単独重合体、イソプレン単独重合体、ブタジエン-スチレンのようなブタジエン-ビニル芳香族共重合体、イソプレン-スチレン共重合体のようなイソプレン-ビニル芳香族共重合体等を含んでもよいが、これらに限定されず、例えば、Crayvallyからのスチレン-ブタジエン共重合体Ricon100、または日本曹達からのポリブタジエンB-1000である。
【0061】
好ましくは、ポリブタジエン樹脂および/またはポリイソプレン樹脂は変性され得、例えば、樹脂はヒドロキシ末端の、メタクリレート末端の、カルボン酸エステル末端等の樹脂であってもよい。ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂は、エポキシ-、無水マレイン酸-、またはウレタン-で変性されたブタジエンまたはイソプレン樹脂であってもよい。ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂も架橋され得、例えば、ジスチリルベンゼンのようなジビニル芳香族化合物で架橋され、例えば、ジスチリルベンゼンで架橋されたポリブタジエン-スチレンである。例示的な樹脂は、広義でNippon Soda Co.(日本東京)およびCray Valley Hydrocarbon Specialty Chemicals(米国ペンシルベニア州エクストン(Exton))のようなメーカーによって「ポリブタジエン」に分類される。ポリブタジエン単独重合体とポリ(ブタジエン-イソプレン)共重合体との混合物のような樹脂の混合物を使用してもよい。シンジオタクチックポリブタジエンを含む組み合わせを使用してもよい。
【0062】
好ましくは、ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマーはカルボキシル官能化されたものであってもよい。官能化は、分子内に、(i)炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合と、(ii)カルボン酸、酸無水物、アミド、エステルまたは酸ハロゲン化物を含む1つまたは複数のカルボキシル基とを有する多官能化合物を利用して行うことができる。1つの特定のカルボキシル基はカルボン酸またはエステルである。カルボン酸官能基を提供可能な多官能化合物の実例は、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、およびクエン酸を含む。特に、マレイン酸無水物がアダクトされたポリブタジエンは熱硬化性組成物に使用できる。適当なマレイン化ポリブタジエンポリマーは、市販により取得でき、例えば、CrayValleyに由来し、商品名がRICON 130MA8、RICON130MA13、RICON130MA20、RICON131MA5、RICON131MA10、RICON131MA17、RICON131MA20、およびRICON156MA17である。適当なマレイン化ポリブタジエン-スチレン共重合体は、市販により取得でき、例えば、Crayvallyに由来し、商品名がRICON184MA6である。
【0063】
好ましくは、熱硬化性ポリブタジエンおよび/またはポリイソプレン樹脂は、室温で液状であってもよいし、固体であってもよい。適当な液状樹脂は、約5000よりも大きい数平均分子量を有することができるが、通常、約5000(最も好ましくは、約1000~約3000)よりも小さい数平均分子量を有する。熱硬化性ポリブタジエンおよび/またはポリイソプレン樹脂は、少なくとも90wt%の1,2-付加した樹脂を含み、大量の突出したビニル基が架橋に使用できるため、硬化後に大きな架橋密度を呈する。
【0064】
好ましくは、ポリブタジエンおよび/またはポリイソプレン樹脂は、樹脂系全体に対してポリマーマトリックス組成物全体の100wt%、特に、約75wt%の量、より具体的に、約10~70wt%、更に具体的に、約20~約60または70wt%の量でポリマーマトリックス組成物に存在することができる。
【0065】
好ましくは、変性のポリフェニレンエーテル樹脂は、両末端の変性基がアクリロイル基であるポリフェニレンエーテル樹脂、両末端の変性基がスチレン基であるポリフェニレンエーテル樹脂、両末端の変性基がビニル基であるポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる1種であるか、またはそのうちの少なくとも2種の混合物である。
【0066】
好ましくは、変性のポリフェニレンエーテル樹脂は、以下の式(1)に示すとおりである。
【0067】
【化1】
式(1)において、aおよびbは、それぞれ独立して1~30の整数である。
Zは、式(2)または(3)で示された基である。
【0068】
【0069】
【化3】
式(3)において、Aは炭素数が6~30のアリーレン基、カルボニル基、または炭素数が1~10のアルキレン基であり、mは0~10の整数であり、且つ、R1~R3は、それぞれ独立して水素原子または炭素数が1~10のアルキル基である。
【0070】
式(1)における-(-O-Y-)-は式(4)で示された基である。
【0071】
【化4】
式(4)において、R
4およびR
6は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~10のアルキル基またはフェニル基であり、且つ、R
5およびR
7は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~10のアルキル基またはフェニル基である。
【0072】
式(1)における-(-O-X-O-)-は式(5)で示された基である。
【0073】
【化5】
式(5)において、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~10のアルキル基またはフェニル基であり、且つ、Bは、炭素数が6~30のアリーレン基、炭素数が1~10のアルキレン基、-O-、-CO-、-SO-、-CS-または-SO
2-である。
【0074】
炭素数が1~10のアルキル基は、好ましくは、炭素数が1~8のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数が1~6のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数が1~4のアルキル基である。炭素数が1~8のアルキル基の実例は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基を含んでもよい。異性体が存在する場合、全ての異性体を含む。例えば、ブチル基は、n-ブチル基、イソブチル基、およびt-ブチル基を含んでもよい。
【0075】
炭素数が6~30のアリーレン基の実例は、フェニレン基、ナフチレン基、およびアンスリレン基を含んでもよい。
【0076】
炭素数が1~10のアルキレン基は、好ましくは、炭素数が1~8のアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数が1~6のアルキレン基であり、更に好ましくは、炭素数が1~4のアルキレン基である。炭素数が1~10のアルキレン基の実例は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、およびシクロへキシレン基を含んでもよい。異性体が存在する場合、全ての異性体を含む。
【0077】
ハロゲン原子の実例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を含んでもよい。
【0078】
好ましくは、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量は500~10000g/molであってもよく、好ましくは、800~8000g/molであり、更に好ましくは、1000~7000g/molである。例示的なポリフェニレンエーテルは、Sabicからの、メタクリレート基が変性されたポリフェニレンエーテルSA9000であるか、または三菱化学からの、スチレン基が変性されたポリフェニレンエーテルSt-PPE-1であってもよい。
【0079】
好ましくは、フィラーは、結晶シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、およびタルクから選ばれる1種または複数種であってもよい。フィラーは、中実、多孔質または中空粒子の形態であってもよい。フィラーとポリマーとの間の粘着を向上させるために、シラン、ジルコン酸塩またはチタン酸塩のような1種以上のカップリング剤を用いてフィラーを処理してもよい。使用時に、フィラーの量は、通常、誘電基板層の30~70重量%を占める。1つの例示的な非中空無機フィラーは、江蘇NOVORAYからのDQ2028Vであってもよい。1つの例示的な中空の無機フィラーは、3MからのiM16Kであってもよい。
【0080】
特定の性能またはプロセスを変更させるために、ポリマーマトリックス材料には、熱硬化性ポリブタジエンおよび/またはポリイソプレン樹脂および/またはポリフェニレンエーテル樹脂と共硬化可能な他のポリマーを添加してもよい。例えば、電気基板材料の絶縁耐力および機械的特性の経時安定性を向上させるために、樹脂系で分子量の低いエチレンプロピレンエラストマーを使用してもよい。本文で使用されるエチレンプロピレンエラストマーは、エチレンおよびプロピレンを主に含む共重合体、三元共重合体または他のポリマーである。エチレンプロピレンエラストマーは、更にEPM共重合体(即ち、エチレンとプロピレンモノマーとの共重合体)またはEPDM三元共重合体(即ち、エチレンとプロピレンとジエンモノマーとの三元共重合体)に分けることができる。特に、エチレンプロピレンジエン三元共重合体ゴムは飽和主鎖および主鎖における架橋しやすい不飽和度を有する。そのうちのジエンがジシクロペンタジエンである液状エチレンプロピレンジエン三元共重合体ゴムを使用してもよい。
【0081】
好ましくは、エチレンプロピレンゴムの分子量は、10000の粘度平均分子量よりも小さくなってもよい。エチレンプロピレンゴムは、マトリックス材料の性能、特に、絶縁耐力および機械的特性の経時安定性を保持する有効量で存在する。通常、この量は、ポリマーマトリックス組成物の総重量に対して、約20wt%、より具体的に、約4~約20wt%、更に具体的に、約6~約12wt%である。1つの例示的なエチレンプロピレンゴムは、lion CopolymerからのTrilene 67であってもよい。
【0082】
好ましくは、別のタイプの共硬化性ポリマーは、不飽和のポリブタジエンまたはポリイソプレンを含むエラストマーである。該成分は、主に1,3-付加したブタジエンまたはイソプレンおよびエチレン性不飽和モノマーであってもよく、例えば、スチレンまたはα-メチルスチレンのようなビニル芳香族化合物、アクリレートまたはメチルメタクリレートのようなメタクリレート、またはアクリロニトリルのランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよい。エラストマーは、ポリブタジエンまたはポリイソプレンブロックと、スチレンまたはα-メチルスチレンのようなモノビニル芳香族モノマーに由来可能な熱可塑性ブロックを有する線形またはグラフト型ブロック共重合体を含む固体、熱可塑性エラストマーであってもよい。このようなタイプのブロック共重合体は、スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体、スチレン-ブタジエンのジブロック共重合体、およびスチレンとブタジエンとを含む混合したトリブロックとジブロック共重合体を含む。例示的なKraton D1118は、混合したジブロック/トリブロックスチレンとブタジエンとを含む共重合体である。
【0083】
通常、不飽和ポリブタジエン-またはポリイソプレン-を含むエラストマー成分は、ポリマーマトリックス組成物全体に対して、約2wt.%~約60wt.%の量、より具体的に、約5wt.%~約50wt.%の量、または更に具体的に、約10wt.%~約40または50wt.%の量で樹脂系に存在する。
【0084】
特定の性能またはプロセスを変更させるために、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂およびポリアリールエーテル樹脂以外の他の共硬化性ポリマーを加えてもよく、ポリエチレンとエチレンオキサイドとの共重合体のようなエチレンの単独重合体または共重合体、天然ゴム、ポリジシクロペンタジエンのようなノルボルニルポリマー、水添スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、不飽和ポリエステル等を含んでもよいが、これらに限定されない。これらの共重合体のレベルは、通常、マトリックス組成物中のポリマー全体の50wt.%よりも低い。
【0085】
特定の性能またはプロセスを変更させるために、ラジカル硬化可能なモノマーを加えてもよく、例えば、硬化後の樹脂系の架橋密度を高める。適当な架橋剤として使用可能な例示的なモノマーは、例えば、ジ-、トリ-、またはより高いエチレン性不飽和モノマーを含み、例えば、ジスチリルベンゼン、トリアリスシアヌレート、テレフタル酸ジアリル、および多官能アクリレートモノマー(例えば、樹脂であり、SartomerUSA(ペンシルベニア州のニュータウンスクエア(NewtownSquare))から購入できる)、またはその組成物を含み、それらは全て市販により取得できる。使用時に、架橋剤は、ポリマーマトリックス組成物全体の約20wt.%の量、特に、1~15wt.%の量で樹脂系に存在する。
【0086】
オレフィンの反応サイトを有するポリエンの硬化反応を加速するために開始剤を樹脂系に加えてもよい。特に有用な開始剤としては、有機過酸化物であり、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-アミルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、パーオキシジカーボネートヘキサデシルエステル、パーオキシジカーボネートテトラデシルエステル、ジ-t-アミル-ヘキシルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ジ-t-ブチルパーオキシヘキシン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-アミルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、パーオキシカーボネート-2-エチルヘキサン酸t-ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ブタノンパーオキサイド、およびパーオキシシクロヘキサンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の混合物であり、それらが全て市販により取得できる。樹脂系において、2,3-ジメチル-2,3ジフェニルブタンのような炭素-炭素開始剤を使用してもよい。開始剤は、単独で使用してもよいし、合わせて使用してもよい。典型的な開始剤の量は、ポリマーマトリックス組成物全体の約1.5~約10wt.%である。
【0087】
電子部品に難燃性を持たせるために、難燃剤を樹脂系に加えてもよい。難燃剤は、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤から選ばれる1種または少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0088】
好ましくは、前記臭素系難燃剤は、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミドから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0089】
好ましくは、前記リン系難燃剤は、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,6-ジ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノベンゼン、または10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイドから選ばれる1種または少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0090】
1つの例示的な臭素系難燃剤は、米国AlbemarleからのBT-93Wであってもよい。
【0091】
1つの例示的な臭素系難燃剤は、米国AlbemarleからのXP-7866であってもよい。
【0092】
本開示におけるポリマーマトリックス材料中の溶剤として、特に限定されず、具体的な例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコール-メチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル系、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、エトキシエチルアセタート、酢酸エチル等のエステル系、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素系溶剤が挙げられる。上記溶剤は、単独で1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよく、好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶剤は、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤と混合して使用される。当業者は、自分の経験に応じて溶剤の使用量を選択することができ、得られた樹脂コロイド液が使用に適した粘度に達成すれば良い。
【0093】
粘度調整剤(具体的なポリマーマトリックス材料の混合物との相溶性に応じて選択する)を加えることにより樹脂組成物の粘度を調節し、フィラーの誘電複合材料からの分離、即ち、沈降または浮遊を遅延させることができ、且つ、通常の積層機器に合致する粘度を有する誘電複合材料を提供する。例示的な粘度調整剤は、例えば、ポリアクリル酸化合物、ナノフィラー、エチレン-プロピレン系ゴム等を含む。
【0094】
様々な添加剤を含んでもよく、具体的な例として、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤または潤滑剤等が挙げられる。これらの様々な添加剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0095】
好ましくは、誘電基板層は、オプション的なポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂、ポリアリールエーテル樹脂、他の共硬化性ポリマー、ラジカル硬化モノマー、エラストマーブロック共重合体、開始剤、難燃剤、接着調整剤、溶剤等で構成されたポリマーマトリックス材料とフィラーとを混合した接着剤を離型フィルムに塗布して樹脂フィルム層を取得してもよいし、上記ポリマーマトリックス材料とフィラーとを混合した接着剤に補強材を浸漬するまたは前記接着剤を補強材に塗布することにより、補強材を含む誘電基板層を製造してもよい。
【0096】
補強材は、好ましくは、適当な繊維を含み、特に、ガラス繊維(EおよびNEガラス)または高温ポリエステル繊維の不織布または織布の熱安定網を含む。このような熱安定性繊維強化物は、銅張積層板に比較的高い硬化収縮率および機械的強度を提供する。
【0097】
本開示の銅張積層板において、銅箔は誘電基板層と直接接触でき、銅箔と誘電基板層との間の粘着性を向上させるまたはその誘電性能を改善するために、その間に粘着剤層および/または樹脂フィルム層が更に含まれてもよい。粘着剤層は、2~15g/m2の塗布重量を提供するように溶液の形態で銅箔または誘電基板層の表面に塗布され、前記粘着剤層を取得する。樹脂フィルム層は、2~15g/m2の塗布重量を提供するように溶液の形態で銅箔または誘電基板層の表面に塗布され、前記樹脂フィルム層を取得する。
【0098】
本開示の銅張積層板において、誘電基板層の間に、樹脂フィルム層を備えてもよい。
【0099】
粘着剤層および/または樹脂フィルム層は、誘電基板層の構成と同じであってもよいし、異なってもよく、硬化しなくてもよいし、部分的に硬化してもよいし、完全に硬化してもよい。
【0100】
例示的な調製方法としては、オプション的なポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂、ポリアリールエーテル樹脂、他の共硬化性ポリマー、ラジカル硬化モノマー、エラストマーブロック共重合体、開始剤、難燃剤、接着調整剤、溶剤等で構成されたポリマーマトリックス材料とフィラーとを混合した接着剤に補強材(Eガラスクロス)を浸漬するまたは前記接着剤を補強材に塗布することにより、クランプシャフトにより適当な単重を制御し、オーブンで乾燥して溶剤を除去し、誘電基板層を製造する。1枚または複数枚の誘電基板層を重ね合わせ、上下両面に銅箔をセットし、プレス機で60~120min真空ラミネートして硬化させ、硬化圧力を25~50Kg/cm2とし、硬化温度を180~220℃とし、銅張積層板を作製する。
【0101】
また別の態様において、本開示は、上記プリント基板を備える回路を提供する。
【0102】
更なる態様において、本開示は、上記プリント基板を備える多層回路を提供する。
【0103】
一実施形態において、前記プリント基板を備える回路または多層回路はアンテナに使用される。
【0104】
本開示によれば、銅箔層における鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さいように制限することにより、-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さい受動相互変調性能を有する銅張積層板と、銅張積層板を備えるプリント基板とを提供することができる。
【0105】
また、-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さい受動相互変調性能を有して電子情報分野の高周波高速要求を満たすことができる銅張積層板と、銅張積層板を備えるプリント基板とを更に提供することができる。
【0106】
以下、具体的な実施形態により本開示の技術案について更に説明する。以下の実施例および比較例において、特に明記されていない限り、百分率、割合等は重量で計算されるものである。
【実施例】
【0107】
本発明の実施例で調製された高速電子回路基材の選択原料は、以下の表に示すとおりであった。
【0108】
【実施例1】
【0109】
20gのポリブタジエン樹脂B1000、5gのスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体D1118、4gのエチレンプロピレンエラストマーTrilene 67、1gのマレイン化ポリブタジエン樹脂Ricon130MA8、1gの2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンPerkadox 30、12gの臭素系難燃剤BT-93W、70gの無機フィラーDQ2028Lを、トルエン溶剤に溶解させ、粘度50秒(No.4粘度カップで試験した)に調節した。1078ガラスクロスを接着剤に浸潤し、クランプシャフトにより単重を190gに制御し、オーブンで乾燥し、トルエン溶剤を除去し、1078プリプレグを作製した。6枚の1078プリプレグを重ね合わせ、上下両面に厚さ1OZの銅箔をセットし、プレス機で90min真空ラミネートして硬化させ、硬化圧力を25Kg/cm2とし、硬化温度を180℃とし、銅張積層板を作製した。銅張積層板の誘電基板層の成分と使用量、銅箔層の厚さ、マット面粗さ、鉄、ニッケル、コバルトおよびモリブデンの含有量、フィラーの使用料、銅張積層板の物理性能は、表2に示すとおりであった。
【0110】
[実施例2~16および比較例1~16]
実施例1と同じ方式で実施例2~16および比較例1~16のそれぞれの誘電基板および銅張積層板を調製し、違いとしては、銅張積層板の誘電基板層の成分と使用料、銅箔層の厚さ、マット面粗さ、鉄、ニッケル、コバルトおよびモリブデンの含有量、フィラーの使用量、銅張積層板の物理性能は、それぞれ表2~5に示すとおりであった。表2~5における誘電基板層のフィラーを含む成分の単位はグラムであった。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
本開示で言及された以下の性能の試験方法は以下のとおりであった。
銅箔のマット面粗さ:非接触レーザ法。
銅箔層における元素含有量の試験:誘導結合プラズマ質量分析法。
PIM:サンプルごとにそれぞれ9回の試験を行い、毎回1つの相互変調モデルおよび1つの周波数をそれぞれ選択し、Summitek Instruments PIM分析計を用いて試験し、9回の試験データの最大値をサンプルのPIM値として記録した。相互変調モデルの線路設計長さは、12インチの円弧状およびジグザグ状の線路であり、モデルの厚さがそれぞれ10mil、20milおよび30milのサンプルは、線幅24mil、48milおよび74milにそれぞれ対応し、周波数は、それぞれ700MHz、1900MHzおよび2600MHzを選択した。
Dk/Df試験方法:IPC-TM-650 2.5.5.5標準方法を採用し、周波数が10GHzであった。
分子量試験方法:国家基準GB T21863-2008-ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、テトラヒドロフランをリンス液として使用した。
【0116】
[物性分析]
実施例1-16から、鉄元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも小さく、モリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも小さいようにすることで、調製された誘電基板および銅張積層板は、-158dBc(700MHz/2600MHz)よりも小さい受動相互変調PIM性能を有して優れていることが分かった。実施例1~16で調製された銅張積層板は、電子情報分野における高周波高速の要求を満たすことができる。
【0117】
比較例1~16と実施例1~16との比較により、調製された誘電基板および銅張積層板は、その銅箔層鉄元素の重量含有量が10ppmよりも大きく、ニッケル元素の重量含有量が10ppmよりも大きく、コバルト元素の重量含有量が10ppmよりも大きく、および/またはモリブデン元素の重量含有量が10ppmよりも大きく、PIM性能が悪く、顧客のPIM性能に対する要求を満たすことができないことが分かった。
【0118】
明らかに、当業者は、本開示の精神および範囲から逸脱しない前提で、本発明の実施例に対して様々な変更および変形を行うことができる。これにより、本開示のこれらの修正および変形が本開示の特許請求の範囲およびその均等技術の範囲内に属すれば、本開示もこれらの変更および変形を含むことを意図する。
【国際調査報告】