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特表2022-530403エクソンスキッピング戦略による網膜ジストロフィーの処置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】エクソンスキッピング戦略による網膜ジストロフィーの処置方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220622BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220622BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220622BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P27/02
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K31/7125
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562973
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2020061450
(87)【国際公開番号】W WO2020216895
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】19305541.5
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】518126247
【氏名又は名称】フォンダシオン・アジル・デ・アヴューグル
【氏名又は名称原語表記】FONDATION ASILE DES AVEUGLES
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】515028470
【氏名又は名称】フォンダシオン・イマジネ
【氏名又は名称原語表記】FONDATION IMAGINE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ロゼ,ジャン-ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】バーニー,イリス
(72)【発明者】
【氏名】ペロー,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,ジョスリーヌ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA33
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、タンパク質切断をバイパスし、網膜損傷を軽減するための、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>A突然変異を含む、ナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異により生じる早期終止コドンにより説明される網膜ジストロフィーに患っている個体におけるCEP290エクソン36のスキッピングに関する。ここで、対照個体及びCEP290 c.4723A>Tナンセンス変異を有する2名の患者からの線維芽細胞を研究し、内因性基礎スキッピングと突然変異誘発性スキッピングとの両方から生じるエクソン36の低レベルの自然スキッピングを示す。2名の患者の線維芽細胞においてエクソン36をスキッピングすることにより生じた最小限の短縮と変異のないCEP290 mRNAは、中心体に局在するタンパク質アイソフォームに翻訳され、一次繊毛の形成が可能となるが、伸長した軸糸を有する。CEP290プレmRNAの核酸配列に相補的な配列番号:1で示される配列からなり、ここで、ドナースプライス部位(H36D)をコードするmRNAをターゲッティングするAONを使用して、エクソン36の認識を遮断することによりスプライシングを変化可能であり、オープンリーディングフレームを維持しながら、タンパク質切断をバイパスすることが可能となり、ほぼ全長のCEP290タンパク質の産生がもたらされる。それらは、患者細胞において、選択的にスプライシングされたmRNA及び短縮されたタンパク質の存在量を増加させ、軸糸長を短くすることができた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CEP290プレmRNAの核酸配列に相補的な配列番号:1で示される配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、
ここで、ドナースプライス部位(H36D)をターゲッティングする前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソン36の認識を遮断することによりスプライシングを変化可能であり、オープンリーディングフレームを維持しながら、エクソン36に早期終止コドンを導入する任意の突然変異に関連するタンパク質切断をバイパスすることを可能にし、ほぼ全長のCEP290タンパク質の産生をもたらす、
アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
アンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピングの実行を必要とする対象におけるアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピングを行うための方法であって、
対象のターゲット細胞に、一定量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達する工程を含み、
ここで、対象は、スプライシングを修飾する突然変異並びに/又はエクソン36におけるナンセンス変異もしくはエクソン36もしくはターゲット細胞の機能性及び/もしくは生存に重要な遺伝子における上流エクソンにおけるフレームシフト変異により早期終止コドンを生じさせる突然変異により生じる網膜ジストロフィーを患っており、
ここで、CEP290遺伝子の前記核酸配列は、前記エクソン36のESE配列及びエクソン36/イントロン36境界付近のドナースプライス部位を含む配列からなる群より選択され、
ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより、突然変異によって対象のターゲット細胞において網膜ジストロフィーが引き起こされる遺伝子由来のプレmRNAにおいてアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピングが行われる、
方法。
【請求項3】
対象が、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異により引き起こされる網膜ジストロフィーを患っている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
網膜ジストロフィーが、レーバー先天黒内障及び他の早期発症型重度網膜ジストロフィー(LCA様)、桿体-錐体ジストロフィー(網膜色素変性症)、錐体-杆体ジストロフィー、加齢性黄斑変性を含む黄斑ジストロフィー、ジュベール症候群を含む網膜に関連する何等かの繊毛関連疾患、シーニア-ローケン症候群、バルデー-ビードル症候群、メッケル及びメッケル様症候群、レフサム症候群、シュタルガルト病、アッシャー症候群、遺伝性視神経症、先天性静止性夜盲、色弱及び色覚異常からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、オリゴデオキシリボヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)オリゴヌクレオチド、モルホリノオリゴヌクレオチド、トリシクロDNAアンチセンスオリゴヌクレオチド、U7又はU1媒介アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド結合、ナノ粒子複合アンチセンスオリゴヌクレオチド、2’-O-MeRNA/ENAキメラオリゴヌクレオチド及び2’-O-メチル-ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
CEP290遺伝子の核酸配列に相補的な配列からなり、スプライシングを変化させ、エクソン36におけるナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異によりCEP290 mRNAに挿入された早期終止コドンをコードするエクソンを、前記突然変異を有する対象において除外するのに必要であり、
ここで、CEP290遺伝子の前記核酸配列は、ESEモチーフを含む配列であり、
ここで、前記配列は、前記突然変異エクソンのエクソンスプライシングエンハンサー(ESE)配列及び
エクソン36に早期終止コドンを導入するCEP290遺伝子のエクソン36に存在するナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異を有する細胞においてCEP290の機能を回復させるのに使用するためのドナースプライス部位突然変異を含む配列からなる群より選択される、
アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
CEP290遺伝子に存在するc.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する前記細胞が、繊毛細胞である、請求項6記載の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号:1に示される核酸配列からなる、請求項6記載の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも15ヌクレオチドの長さを有する、請求項6記載の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
ナンセンス変異又はエクソン36内のフレームシフト変異もしくはCEP290遺伝子における上流エクソン変異により生じるエクソン36における早期終止コドンを有する対象に硝子体内投与される、請求項6記載の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
切断タンパク質をもたらすエクソン36における早期終止コドンの出現をもたらすCEP290遺伝子のエクソン36に位置するナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異を有する対象における網膜ジストロフィーを処置する方法であって、
ナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソン内のフレームシフト変異により生じる早期終止コドンを含有するエクソン36のスプライシングをモデュレーションする工程を含み、
ここで、前記方法を、CEP290タンパク質をコードするエクソン36を含むプレmRNAを、早期終止コドンを有する突然変異エクソンの配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)に曝露することにより行う、
方法。
【請求項12】
前記対象が、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、CEP290エクソン36のドナースプライス部位を含む配列に相補的である、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号:1に示される核酸配列を含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号:1に示される核酸配列からなる、請求項11~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
ナンセンス変異又はCEP290遺伝子におけるエクソン36もしくは上流エクソン内のフレームシフト変異により生じるエクソン36における早期終止コドンを有する対象における網膜ジストロフィーの処置に使用するための、請求項6~10のいずれか一項記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド(単独又は本発明のベクターを伴う)を含有する、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、遺伝子療法の分野におけるものであり、特に、エクソンスキッピング戦略は、網膜ジストロフィーを処置するのに使用される。
【0002】
発明の背景
レーバー先天黒内障(LCA、MIM204000)は、一群の新生児期発症かつ重症の網膜ジストロフィーであり、小児期の難治性失明の主な原因である(頻度1:30000;西欧における盲学校に通う小児の20%)[1]。網膜ジストロフィーは、典型的には、大きな遺伝的、アレル的及び生理病理学的不均一性を示す非症候群性疾患として生じ、治療剤の開発が困難である[2]。繊毛形成及び維持[3]に関与する幅広く発現された中心体タンパク質をコードするCEP290(MIM610142)における突然変異は、LCAタイプ10(LCA10;MIM611755)と呼ばれるこの疾患の主な原因である[4、5]。早期発症の視力低下にもかかわらず、LCA10個体は、インタクトな視覚脳経路を有する中枢光レセプターの長期間(30年超)の温存を示し、これは、遺伝子病変の矯正に組み込まれた治療法を開発する条件を生じる[6]。LCAの全症例それぞれの10%及び2.5%に関与する非常によく知られているc.2991+1655A>G(p.Cys998)及びc.4723A>T(p.Lys1575)の変異を含む数多くのLCA10発生突然変異が報告されている[5、7]。c.2991+1655A>G変化により、深いイントロンクライプティックスプライス部位が活性化され、mRNAにおけるフレームシフト型疑似エクソンが導入される[8~11]。アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)は、その突然変異を有する初代線維芽細胞、IPSC由来3D網膜オルガノイド及びヒト化マウスにおいて、スプライシング機構をコンセンサススプライス部位に向け直し、タンパク質切断をバイパスするのに有効であることが証明されている[8、10、12]。その後、スプライスモデュレーションオリゴヌクレオチド(セポファルセン)の硝子体内注入の安全性及び臨床的意義(視力改善)を実証した第II/III相臨床試験(NCT03140969)が着手されている[11]。第II/III相臨床試験は進行中である(PQ-110-003、NCT03913143;患者におけるセポファルセンの多回投与、二重盲検、無作為化、疑似対照臨床試験)。c.4723A>T変異体は、他の大多数のLCA10突然変異と同様に、タンパク質を切断することが予測され、遺伝子増強療法に適している。しかしながら、このアプローチは、網膜疾患の分野において好ましいAAVベクターのカーゴ容量(<5Kb)を超えるCEP290 cDNAサイズ(7.4Kb)[13~15]と過剰発現毒性のリスク[16、17]との両方のために困難である。興味深いことに、繊毛代謝における重要な役割と一致して、CEP290突然変異は、眼-腎シニアローケン症候群(SLSN6、MIM610189)、眼-脳-腎ジョウバート症候群(JBTS5、MIM610188)及び胚致死メッケル症候群4型(MKS4;MIM611134)を含む更なるヒト表現型と関連している[18]。選択的にスプライシングされたコードCEP290 mRNAを低レベルで産生する内因性基礎エクソンスキッピングの観察から、疾患の重症度がCEP290量の関数であり、突然変異型アレルから細胞が生じる場合がある病因モデルが示唆される[19]。一致して、両アレル性CEP290切断突然変異を有するが、軽度の網膜表現型を有する個体からの線維芽細胞において、内因性基礎選択的スプライシング及び/又はナンセンスに関連する変化したスプライシングにより産生された低レベルのPTCを含まないCEP290 mRNAが特定されている[20~22]。体性フレーム回復メカニズムを介して疾患を軽減することは、AON媒介エクソンスキッピングを刺激して、ジストロフィン切断をバイパスし、疾患を減弱化されたベッカー筋ジストロフィーに切り替えるデュシェンヌ型筋ジストロフィーを患う患者由来のジストロフィン陽性筋線維における遺伝的復帰を暗示する。
【0003】
発明の概要
本発明は、CEP290遺伝子の核酸配列に相補的な配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、エクソン36のドナースプライス部位(H36D)をターゲッティングする前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、下記配列:配列番号:1を有し、スプライソソームによるエクソン36の認識を遮断することによりスプライシングを変化可能であり、オープンリーディングフレームを維持しながら、エクソン36に早期終止コドンを導入する任意の突然変異に関連するタンパク質切断をバイパスすることを可能にし、ほぼ全長のCEP290タンパク質の産生をもたらす、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。特に、本発明は、特許請求の範囲により定義される。
【0004】
発明の詳細な説明
CEP290と網膜ジストロフィー、例えば、レーバー先天黒内障(LCA)との間の関係をより良く理解するための試みにおいて、発明者等は、CEP290遺伝子の異なる領域について研究し、CEP290遺伝子のエクソン36におけるc.4723A>T突然変異について研究してきた。特に、この突然変異により、エクソン36によりコードされるCEP290 mRNAの部分における早期終止コドンの出現がもたらされ、その結果、ナンセンス媒介mRNA分解(NMD)による突然変異mRNAの分解が生じかつ/又は機能しない切断タンパク質の翻訳がもたらされる。
【0005】
本発明者等は、コンセンサススプライス部位(ドナー及びアクセプタースプライス部位)をスプライソソーム(スプライシング機構)から隠すためにアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用してきた。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ドナースプライス部位を含む配列に相補的である。本発明者等は、CEP290エクソン36のAON媒介スキッピングがあらゆるCEP290突然変異、とりわけ、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つのCEP290突然変異に起因し、その結果、エクソン36に早期終止コドンが導入されたタンパク質切断をバイパスすると考えた。ここで、対照個体からの線維芽細胞を研究したところ、エクソン36は、低レベルの内因性スキップを受け、最小限に短縮されたCEP290 mRNA及び野生型中心体局在を保存するタンパク質を非常に低レベルで産生することが示された。c.4723A>T突然変異についてホモ接合性の無関係の2名の個体からの線維芽細胞を研究したところ、内因性と突然変異誘引スキッピングとの組み合わせにより、エクソン36のスキッピングが対照におけるより顕著であることが示された。エクソン36のスキッピングにより生じた最小限に短縮された変異のないCEP290 mRNAは、中心体に局在するタンパク質アイソフォームに翻訳され、一次繊毛の形成を可能にするが、対応する対照と比較して、伸長した軸糸を有する。患者及び対象線維芽細胞におけるエクソン36のドナーコンセンサススプライス部位に特異的なAONを使用して、AONにより、選択的にスプライシングされたmRNA及び短縮されたタンパク質の存在量が増加し、患者細胞における軸糸長を短くすることが可能であった。
【0006】
患者及び対象線維芽細胞におけるエクソン36のドナーコンセンサススプライス部位に特異的なAONを使用して、AONにより、選択的にスプライシングされたmRNA及び短縮されたタンパク質の存在量が増加し、患者細胞における軸糸長を短くすることが可能であった。
【0007】
本発明者らは、AONの投与により、エクソン36のスキッピングが誘引され、オープンリーディングフレームを維持し、驚くべきことに機能的である最小限に短縮されたCEP290タンパク質の産生が可能となることを示した。
【0008】
本発明において、本発明者らは、エクソン36に早期終止コドンを導入する突然変異により生じるタンパク質切断をバイパスし、網膜損傷を軽減するためのアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピング戦略の実現可能性を支持するデータを報告する。このようにして、本発明は、網膜ジストロフィーの処置のためのこのようなエクソンスキッピング戦略の使用を提供する。
【0009】
CEP290遺伝子の核酸配列に相補的な配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチド
第1の態様では、本発明は、CEP290遺伝子の核酸配列に相補的な配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、エクソン36のドナースプライス部位(H36D)をターゲッティングする前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、下記配列:配列番号:1を有し、スプライシング機構によるエクソン36の認識を遮断することによりスプライシングを変化可能であり、オープンリーディングフレームを維持しながら、エクソン36に早期終止コドンを導入する任意の突然変異に関連するタンパク質切断をバイパスすることを可能にし、ほぼ全長のCEP290タンパク質の産生をもたらす、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【0010】
特定の実施態様では、CEP290は、CEP290プレmRNAである。
【0011】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CEP290遺伝子のエクソン36のドナースプライス部位をターゲッティングし、成熟mRNAからこのエクソンを除去することにより、このエクソンにおける任意の切断突然変異をバイパスすることを可能にする。
【0012】
更なる実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、CEP290遺伝子のエクソン36は、c.4723A>T、c.4732G>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4714G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する。
【0013】
本明細書で使用する場合、「CEP290」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、CEP290遺伝子によりコードされるタンパク質を指す。CEP290は、繊毛と細胞質との間の移行域を橋渡しする繊毛ゲートの不可欠なコンポーネントである。このタンパク質は、このゲートの構造的完全性を維持するのに重要な役割を果たし、このため、繊毛機能を維持するのに重要な役割を果たす(Craige, B et al. The Journal of Cell Biology. 190, 927-40 (2010).)。この用語は、天然の「CEP290」及びその変異体並びにそれらの改変体を含むことができる。CEP290は、任意のソースに由来することができるが、典型的には、ほ乳類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類)CEP290、特に、ヒトCEP290である。例示的でネイティブなヒトCEP290アミノ酸配列は、アクセッション番号[EAW97414.1]でGenPeptデータベースにおいて提供され、CEP290をコードする例示的でネイティブなヒトヌクレオチド配列は、アクセッション番号[NM_025114.3]でGenBankデータベースにおいて提供される。
【0014】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」又はAONという用語は、選択された配列に相補的な一本鎖のDNA、RNA又は修飾核酸を指す。アンチセンスRNAを使用して、スプライシングをモデュレーションし又は特定のmRNA鎖に結合することによりこのmRNA鎖のタンパク質翻訳を妨げることができる。アンチセンスDNAを使用して、特定の相補的(コード又は非コード)RNAをターゲッティングすることができる。特定の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスRNAである。別の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスDNAである。
【0015】
オリゴヌクレオチドは、適切な相補配列、通常、ターゲットエクソンの正しいスプライシングに必要なプレmRNA分子内のRNA配列に対して設計され、それにより、ターゲットエクソンを成熟mRNAに組み込むであろうスプライシング反応を遮断し又はリーディングフレームを破壊することなく、突然変異エクソンを排除する。AONは、典型的には、それに相補的で、スプライシング反応を立体的に隠す配列に結合する。配列は、特異的であるように選択され、すなわち、AONは、プレmRNAの配列のみに相補的であり、他の核酸配列には相補的でない。本発明の実施に使用されるAONは、任意の適切なタイプ、例えば、オリゴデオキシリボヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、モルホリノ、トリシクロ-DNA-アンチセンスオリゴヌクレオチド、U7もしくはU1媒介AON又はそれらのコンジュゲート産物、例えば、ペプチドコンジュゲート又はナノ粒子複合体化AONであることができる。本発明の実施に利用されるAONは、一般的には、約10~50ヌクレオチド長であり、例えば、約10以下又は約15又は約20又は約30ヌクレオチド長以上であることができる。ターゲッティングされた相補配列のためのAONの最適な長さは、一般的には、使用される化学骨格及びターゲット配列に応じて、約15~約30ヌクレオチド長の範囲にある。典型的には、モルホリノ-AONは、約25ヌクレオチド長であり、2’PMO-AONは、約20ヌクレオチド長であり、トリシクロ-AONは、約15ヌクレオチド長である。
【0016】
本発明のAONは、当技術分野において周知の数多くの手法のいずれかを使用して、新たに合成することができる。例えば、b-シアノエチルホスホラミダイト法(Beaucage et al., 1981);ヌクレオシドH-ホスホナート法(Garegg et al., 1986;Froehler et al., 1986、Garegg et al., 1986、Gaffney et al., 1988)である。これらのケミストリーを市販されている各種の自動核酸合成装置により行うことができる。これらの核酸を合成核酸と呼ぶことができる。代替的には、AONをプラスミド中で大規模に産生することができる(Sambrook, et al., 1989を参照のこと)。AONを、公知の技術、例えば、制限酵素、エキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼを利用するものを使用して、既存の核酸配列から調製することができる。このようにして調製されたAONを単離された核酸と呼ぶことができる。
【0017】
AONは、安定化させることができ又は安定化されている。「安定化された」AONは、(例えば、エキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼを介して)in vivo分解に対して比較的抵抗性であるAONを指す。安定化は、長さ又は二次構造の関数であることができる。代替的には、AON安定化をホスファート骨格改変により達成することができる。本発明の好ましい安定化AONは、改変された骨格を有し、例えば、ホスホロチオアート結合を有し、最大活性を提供し、細胞内エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼによる分解からAONを保護する。他の可能性のある安定化改変は、ホスホジエステル改変、ホスホジエステル改変とホスホロチオアート改変との組み合わせ、メチルホスホナート、メチルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、p-エトキシ及びそれらの組み合わせを含む。また、化学的に安定化され、改変されたバージョンのAONは、「モルホリノ」(ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー、PMO)、2’-O-Metオリゴマー、2’-フルオロ(2’-F)オリゴマー、トリシクロ(tc)-DNA、U7核内低分子(sn)RNA、トリシクロ-DNA-オリゴアンチセンス分子(2009年4月10日に出願されたUS第61/212,384号:疾患の処置のためのトリシクロ-DNAアンチセンスオリゴヌクレオチド、組成物及び方法、この文献の完全な内容は、参照により本明細書に組み入れられる)、アンロック核酸(UNA)、ペプチド核酸(PNA)、セリノール核酸(SNA)、ねじれたインターカレーティング核酸(TINA)、アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、D-アルトリトール核酸(ANA)及びモルホリノ核酸(MNA)も含み、スプライスモデュレーションも研究されてきた。近年、2-チオリボチミジン及び5-(フェニルトリアゾール)-2-デオキシウリジンヌクレオチドを含有する核酸塩基改変AOについて、エクソンスキッピングを誘引することが報告されている(Chen S, Le BT, Chakravarthy M, Kosbar TR, Veedu RN. Systematic evaluation of 2'-Fluoro modified chimeric antisense oligonucleotide-mediated exon skipping in vitro. Sci Rep. 2019 Apr 15;9(1):6078.)。
【0018】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-MeRNA/ENAキメラオリゴヌクレオチドであることができる(Takagi M, Yagi M, Ishibashi K, Takeshima Y, Surono A, Matsuo M, Koizumi M.Design of 2'-O-Me RNA/ENA chimera oligonucleotides to induce exon skipping in dystrophin pre-mRNA. Nucleic Acids Symp Ser (Oxf). 2004;(48):297-8)。
【0019】
この効果に使用することができる他の形態のAONは、レンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス(ただし、これらに限定されない)に基づくウイルストランスファー法と組み合わせた、核内低分子RNA分子、例えば、U1又はU7にカップリングされたAON配列である(Denti, MA, et al, 2008;Goyenvalle, A, et al, 2004)。
【0020】
別の特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2’-O-メチル-ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドである。
【0021】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有するドナースプライス部位(H36D)を含む配列に相補的である。
【0022】
特定の実施態様では、CEP290エクソン36の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、突然変異CEP290 mRNA内に挿入されたエクソン36をスキッピングするのに必須である。
【0023】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:1の核酸配列を含む。
【0024】
より特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:1の核酸配列からなる。
【0025】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソン36における突然変異又はエクソン36に早期終止コドンを導入するエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異により生じる早期終止コドンを含有するCEP290 mRNAのエクソン36のスプライシングを増強するのに必須の核酸配列に相補的である。
【0026】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を含有するCEP290 mRNAのエクソン36のスプライシングを増強するのに必須の核酸配列に相補的である。
【0027】
更なる実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ナンセンス変異、例えば、c.4723A>Tを含有するCEP290 mRNAのエクソン36のスプライシングを増強するのに必須の核酸配列に相補的である。
【0028】
本明細書で使用する場合、「相補的」という用語は、「完全に相補的」及び「実質的に相補的」を含み、これは、通常、オリゴヌクレオチドとその対応するターゲット配列との間に、80%超、好ましくは、85%超、さらにより好ましくは、90%超、最も好ましくは、95%超程度の相補性が存在するであろうことを意味する。例えば、その配列とそのターゲット配列との間に1つのミスマッチを有する20ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドについて、相補性の程度は、95%である。特に、本発明は、ターゲット配列と少なくとも25%の配列同一性を有する変異体mRNA内に挿入されたエクソン36をスキッピングするのに必須のCEP290エクソン36の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【0029】
本発明によれば、第2のアミノ酸配列と少なくとも25%の同一性を有する第1のアミノ酸配列は、第1のアミノ酸配列が第2のアミノ酸配列と25%;26%;27%;28%;29%;30%;31%;32%;33%;34%;35%;36%;37%;38%;39%;40%;41%;42%;43%;44%;45%;46%;47%;48%;49%;50%;51%;52%;53%;54%;55%;56%;57%;58%;59%;60%;61%;62%;63%;64%;65%;66%;67%;68%;69%;70%;71%;72%;73%;74%;75%;76%;77%;78%;79%;80%;81%;82%;83%;84%;85%;86%;87%;88%;89%;90%;91%;92%;93%;94%;95%;96%;97%;98%;99%又は100%の同一性を有することを意味する。配列同一性は、多くの場合、% 同一性(又は類似性もしくは相同性)に関して測定される;%が高いほど、2つの配列はより類似している。比較のための配列のアラインメント法は、当技術分野において周知である。種々のプログラム及びアライメントアルゴリズムが、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math., 2:482, 1981;Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol., 48:443, 1970;Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:2444, 1988;Higgins and Sharp, Gene, 73:237-244, 1988;Higgins and Sharp, CABIOS, 5:151-153, 1989;Corpet et al. Nuc. Acids Res., 16:10881-10890, 1988;Huang et al., Comp. Appls Biosci., 8:155-165, 1992及びPearson et al., Meth. Mol. Biol., 24:307-31, 1994に記載されている。Altschul et al., Nat. Genet., 6:119-129, 1994には、配列アラインメント法及び相同性計算の詳細な考察が示されている。例として、アラインメントツールALIGN(Myers and Miller, CABIOS 4:11-17, 1989)又はLFASTA(Pearson and Lipman, 1988)を使用して、配列比較を行うことができる(Internet Program(登録商標) 1996, W. R. Pearson and the University of Virginia, fasta20u63 version 2.0u63, release date December 1996)。ALIGNでは、配列全体を互いに比較する、一方、LFASTAでは、局所類似性の領域を比較する。これらのアライメントツール及びそれらの各チュートリアルは、例えば、NCSAウェブサイトにおいてインターネット上で利用可能である。代替的には、約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較のために、Blast 2配列機能を、デフォルトパラメーター(11のギャップ存在コスト及び1の残基あたりのギャップコスト)に設定されたデフォルトBLOSUM62マトリックスを使用して利用することができる。短いペプチド(約30アミノ酸未満)をアライメントする場合、アラインメントは、デフォルトパラメーター(9の開始ギャップ、伸長ギャップ1ペナルティ)に設定されたPAM30マトリックスを利用するBlast 2配列機能を使用して行われるべきである。BLAST配列比較システムは、例えば、NCBIウェブサイトから入手可能である。Altschul et al., J. Mol. Biol., 215:403-410, 1990;Gish. & States, Nature Genet., 3:266-272, 1993;Madden et al. Meth. Enzymol., 266:131-141, 1996;Altschul et al., Nucleic Acids Res., 25:3389-3402, 1997及びZhang & Madden, Genome Res., 7:649-656, 1997も参照のこと。
【0030】
一部の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、突然変異CEP290 mRNA内に挿入されたエクソン36をスキッピングするのに必須のCEP290エクソン36の核酸配列に相補的な配列を含む。
【0031】
一部の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、突然変異CEP290 mRNA内に挿入されたエクソン36をスキッピングするのに必須のCEP290エクソン36の核酸配列に相補的な配列を含み、ここで、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:1で示される配列を含む。
【0032】
また、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの組み合わせを本発明に従って使用して、少なくとも1つの突然変異を含有するCEP290 mRNAのエクソン36のスプライシングをモデュレーションすることもできる。
【0033】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソンスキッピングを誘引可能であり、少なくとも1つの突然変異を含有するCEP290のエクソン36のスプライシングをモデュレーションするのに必須のCEP290遺伝子の核酸配列に相補的な配列からなる。
【0034】
特定の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:1で示される核酸配列を含む。
【0035】
典型的には、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも15ヌクレオチドの長さを有する。
【0036】
特定の実施態様では、本発明に従って使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107又は108ヌクレオチドの長さを有する。
【0037】
【表1】
【0038】
表1:2’-O-メチルRNA塩基及び全長ホスホロチオアート骨格を含有するオリゴヌクレオチド配列。H_センスは、センスオリゴヌクレオチドであり、対照として使用される。一方、H36D(+98-11)は、CEP290エクソン36/イントロン36の接合部におけるドナースプライス部位をターゲッティングするように設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)であり、H36ESE(+63+84)は、CEP290エクソン36内のESE配列に対して向けられている。
【0039】
イントロン内では、ドナー部位(イントロンの5’端)、分岐部位(イントロンの3’端付近)及びアクセプター部位(イントロンの3’端)が、スプライシングに必要である。ドナースプライス部位は、イントロンの5’端においてより大きく保存度の低い領域内に、ほとんど不変の配列GUを含む。イントロンの3’末端におけるアクセプタースプライス部位は、ほとんど不変のAG配列でイントロンを終結させる。
【0040】
特定の実施態様では、本発明は、スプライシングレギュラトリーモチーフ(ESE配列)を隠すための、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。特定の実施態様では、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:5で示される配列(H36ESE)を含む。特定の実施態様では、前記アンチセンスオリゴヌクレオチは、配列番号:5で示される配列(H36ESE)からなる。
【0041】
一部の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、突然変異CEP290 mRNAに挿入されたエクソン36をスキッピングするのに必須のCEP290エクソン36の核酸配列に相補的な配列番号:5で示される配列を含む。
【0042】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エクソン36 CEP290上の突然変異により生じるタンパク質切断をバイパスするためのスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)として使用される。典型的には、エクソン36をスキッピングするように設計されたSSOの投与により、オープンリーディングフレームを有する最小限に短縮されたmRNAの産生及び機能性である最小限に短縮されたCEP290タンパク質の産生を可能にすることにより、突然変異をバイパスすることが可能となる。スプライススイッチングオリゴヌクレオチドは、配列エレメントに結合し、スプライソソーム及び他のスプライシング因子による転写産物への接近を遮断することにより、プレmRNAのスプライシングを向ける。本発明の文脈において、本発明者らは、データベース(http://mfold.rna.albany.edu/及びhttp://rulai.cshl.edu/cgi-bin/tools/ESE3/esefinder.cgi)を使用して、エクソン36のドナースプライス部位周囲のCEP290プレmRNA中のターゲッティング可能な配列を特定した。
【0043】
特定の実施態様では、本発明者らは、データベースを使用して、H36ESE及び/又はH36Dの部位周囲のCEP290プレmRNAにおけるターゲッティング可能な配列を特定した。
【0044】
典型的には、前記方法は、エクソンスキッピング戦略と呼ばれる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「エクソン」という用語は、タンパク質をコードする核酸の規定された部分又は前処理(又は前駆体)RNAのいずれかの部分がスプライシングにより除去された後に成熟形態のRNA分子で表わされる核酸配列を指す。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)又は機能的形態の非コードRNA、例えば、rRNAもしくはtRNAであることができる。
【0046】
本明細書で使用する場合、「エクソンスキッピング」という用語は、一般的には、エクソン全体又はその一部が、所定の前処理RNAから除去され、それにより、成熟RNA、例えば、タンパク質に翻訳される成熟mRNAに存在することが除外されるプロセスを指す。本発明の文脈において、エクソンスキッピングは、エクソン36における突然変異をスプライソソーム機構からバイパスし(隠し)、選択的にスプライシングされたmRNA及び短縮されたタンパク質の存在量を増加させ、軸糸長を短くするのに使用される。このようにして、この戦略により、機能的な短いCEP290タンパク質を得ることが可能となる。このようにして、この戦略により、エクソン36における早期終止コドンの出現が妨げられる。
【0047】
したがって、スキッピングされたエクソンにより何等かの方法でコードされるタンパク質の一部は、発現形態のタンパク質には存在せず、典型的には、改変されているが、依然として機能的な形態のタンパク質が生じる。特定の実施態様では、スキッピングされたエクソンは、ヒトCEP290遺伝子に本来存在する突然変異エクソンであり、この突然変異エクソンは、切断されたCEP290タンパク質を形成することにつながる早期終止コドンを何等かの方法で生じるその配列における突然変異又は他の改変を含有する場合がある。
【0048】
本明細書で使用する場合、「エクソン36の早期終止コドンの出現を妨げる」、「エクソン36の認識を遮断する」又は「エクソン36における早期終止コドンを除去する」という用語は、エクソンスキッピング戦略を使用するスプライシングの修飾による、成熟mRNA中の前記エクソンの除去を指す(図1を参照のこと)。このため、本発明は、エクソンスキッピング技術を使用して機能性タンパク質を得るための方法を提供する。この方法は、タンパク質機能不全に関与するアミノ酸配列をコードするターゲティングされたエクソン36の成熟mRNAへの組み込みを遮断するか又は妨げることを含む。AONは、プレmRNAにおける相補的な必要配列に結合し、スプライシングの修飾を引き起こす。したがって、ターゲッティングされたエクソンは、タンパク質に翻訳される成熟mRNAには含まれず、ターゲッティングされたエクソンによりコードされるアミノ酸配列は、翻訳されたタンパク質から欠けている。このようにして、ほぼ全長のCEP290タンパク質である短い機能性タンパク質は、エクソンスキッピング戦略を行うことにより得られる。
【0049】
このため、エクソンスキッピングの戦略により、突然変異CEP290から翻訳されたタンパク質と比較して、CEP290タンパク質の機能及び/又は安定性が、少なくとも約10%、好ましくは、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はさらに100%の範囲で回復する。このようなタンパク質の回復をミクロレベルで観察することができる。例えば、タンパク質発現及び/又は局在化の回復は、免疫組織化学、免疫蛍光、ウェスタンブロット分析;繊毛集合の改善により評価されるタンパク質機能性の回復/改善及び/もしくは錐体機能の維持、回復/改善により又はマクロレベル(すなわち、視力等の臨床症状の改善/回復)で評価される。
【0050】
当業者であれば、タンパク質の機能性レベルを決定し又は測定し、例えば、処理プロトコールに応じて、機能性の向上又は低下のレベルを決定するための多くの方法が存在することを認識しているであろう。このような方法は、タンパク質の活性の測定又は検出等を含むが、これらに限定されない。このような測定は、一般的には、標準又は対照又は「正常」サンプルとの比較で行われる。加えて、タンパク質の機能性の欠如が、疾患過程に関与する場合、正しく機能するタンパク質の存在もしくは非存在を間接的に検出し又はタンパク質の機能性の欠如を改善することを意図した処理プロトコールの成功を測定するために、疾患症状を監視しかつ/又は測定することができる。特に、CEP290の機能性を当技術分野において認識されている幾つかの方法により測定することができる。一般的には、エクソン36における突然変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異により生じる早期終止コドンを含有するエクソン36の除去、特定の実施態様では、少なくとも1つの突然変異を含有するエクソン36の除去は、少なくとも1つのアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を使用することにより行われる。
【0051】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドをin vivoで単独又はベクターと会合して送達することができる。
【0052】
その最も広い意味において、「ベクター」は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞への移入を容易にすることを可能にする任意の媒体である。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在により生じるであろう分解の程度に対して、低下した分解で細胞に核酸を輸送する。一般的には、本発明に有用なベクターは、ネイキッドなプラスミド、非ウイルス送達系(エレクトロポレーション、ソノポレーション、カチオン性トランスフェクション剤、リポソーム、ナノ粒子等)、ファージミド、ウイルス、アンチセンスオリゴヌクレオチド核酸配列の挿入又は組み込みにより操作されたウイルス又は細菌ソースから得られる他の媒体を含むが、これらに限定されない。ウイルスベクターは、好ましいタイプのベクターであり、下記ウイルス:RNAウイルス、例えば、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス及びレンチウイルス由来ベクター)、ハリネズミ肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス及びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン-バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス由来の核酸配列を含むが、これらに限定されない。命名されていないが、当技術分野において公知の他のベクターを容易に利用することができる。
【0053】
典型的には、本発明のウイルスベクターは、アデノウイルス及びアデノ随伴(AAV)ウイルスを含み、これらは、遺伝子療法におけるヒトへの使用について既に承認されているDNAウイルスである。現在、12種類のAAV血清型(AAV1~12)が公知であり、それぞれ異なる組織指向性を有する(Wu, Z Mol Ther 2006; 14:316-27)。リコンビナントAAVは、依存性パルボウイルスAAVから得られる(Choi, VW J Virol 2005; 79:6801-07)。アデノ随伴ウイルス1型~12型を複製が欠損し、広範囲の細胞型及び種に感染可能なように操作することができる(Wu, Z Mol Ther 2006; 14:316-27)。さらに、熱及び脂質溶媒安定性;造血細胞を含む多様な系統の細胞における高いトランスダクション頻度;並びに重複感染阻害の欠如等の利点を有し、このため、複数の系列のトランスダクションが可能となる。加えて、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択圧の非存在下で100回以上の継代について組織培養で追跡されている。これは、アデノ随伴ウイルスゲノム組み込みは、比較的安定したイベントであることを意味する。アデノ随伴ウイルスは、染色体外でも機能することができる。
【0054】
他のベクターは、プラスミドベクターを含む。プラスミドベクターは、当技術分野において広く記載されており、当業者に周知である。例えば、Sambrook et al., 1989を参照のこと。ここ数年、プラスミドベクターは、抗原コード遺伝子をin vivoで細胞に送達するためのDNAワクチンとして使用されてきた。これらは、これに特に有利である。多くのウイルスベクターと同じ安全性の懸念を有しないためである。一方、ホスト細胞に適合するプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内に操作可能にコードされた遺伝子からのペプチドを発現することができる。一部の一般的に使用されるプラスミドは、pBR322、pUC18、pUCl9、pRC/CMV、SV40及びpBlueScriptを含む。他のプラスミドは、当業者に周知である。さらに、プラスミドを、DNAの特定のフラグメントを除去しかつ付加するために、制限酵素及びライゲーション反応を使用して特注設計することができる。プラスミドを各種の非経口、粘膜及び局所経路により送達することができる。例えば、DNAプラスミドを筋肉内、皮内、皮下又は他の経路により注入することができる。DNAプラスミドを鼻腔内スプレー又は液滴、直腸坐剤により及び経口的にも投与することができる。好ましくは、前記DNAプラスミドは、眼内経路(硝子体内、網膜下、脈絡膜上…)により注入される。また、DNAプラスミドを、遺伝子銃を使用して表皮又は粘膜表面にも投与することができる。プラスミドを水溶液中で与えることができ、金粒子上で乾燥させることができ又は別のDNA送達系(リポソーム、デンドリマー、コクリエート及びマイクロカプセル化を含むが、これらに限定されない)と会合させることができる。
【0055】
特定の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチド核酸配列は、異種レギュラトリー領域、例えば、異種プロモーターの制御下にある。また、プロモーターは、例えば、ウイルスプロモーター、例えば、CMVプロモーター又は任意の合成プロモーターであることもできる。
【0056】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用
第2の態様では、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピングの実行を必要とする対象におけるアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピングを行うための方法であって、対象のターゲット細胞に、一定量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達する工程を含み、ここで、対象は、スプライシングを修飾する突然変異並びに/又はエクソン36におけるナンセンス変異もしくはエクソン36もしくはターゲット細胞の機能性及び/もしくは生存に重要な遺伝子における上流エクソンにおけるフレームシフト変異により早期終止コドンを生じさせる突然変異により生じる網膜ジストロフィーを患っており、ここで、CEP290遺伝子の前記核酸配列は、前記エクソン36のESE配列及びエクソン36/イントロン36境界付近のドナースプライス部位を含む配列からなる群より選択され、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより、突然変異が対象のターゲット細胞において網膜ジストロフィーを引き起こす遺伝子由来のプレmRNAにおいてアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピングが行われる、方法に関する。
【0057】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピングを行うための方法において、ここで、対象は、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異により引き起こされる網膜ジストロフィーを患っている。これらの突然変異は、スプライシングを修飾し、ターゲット細胞の機能性及び/又は生存に重要な遺伝子におけるエクソン36に早期終止コドンを導入する。ここで、CEP290遺伝子の前記核酸配列は、前記エクソン36のESE配列及びドナー又はアクセプタースプライス部位(エクソン36/イントロン36境界周囲)を含む配列からなる群より選択され、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより、突然変異が対象のターゲット細胞において網膜ジストロフィーを引き起こす遺伝子由来のプレmRNAにおいてアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介エクソンスキッピングが行われる。
【0058】
本明細書で使用する場合、対象における「ターゲット細胞」という用語は、下記の非限定的なタイプの繊毛細胞、光レセプター、錐体細胞、桿体細胞、網膜上皮細胞、網膜双極性細胞、網膜神経節細胞、RPE細胞、水平細胞、アマクリン細胞及びミュラー細胞を含む眼細胞のうちの1つ以上である。
【0059】
繊毛の形成及び維持に関与し[3]、細胞分裂にも関与する(Valente, E.M.; Silhavy, J.L.; Brancati, F.; Barrano, G.; Krishnaswami, S.R.; Castori, M.; Lancaster, M.A.; Boltshauser, E.; Boccone, L.; Al-Gazali, L.; et al. Mutations in CEP290, which encodes a centrosomal protein, cause pleiotropic forms of Joubert syndrome. Nat. Genet. 2006, 38, 623-625.)広く発現されている中心体タンパク質をコードするCEP290(MIM610142)の突然変異は、LCA10型と呼ばれる疾患の主な原因である。
【0060】
したがって、特定の実施態様では、ターゲット細胞は、繊毛細胞である。本明細書で使用する場合、「繊毛」という用語は、本明細書において、細胞により発現される振動性/運動性繊毛、一次繊毛又は鞭毛を包含する。
【0061】
眼球内では、網膜は、眼球底部の壁を覆っている組織である。網膜組織は、光レセプター細胞層を含む3つの細胞層により構成される。光レセプターは、2つの部分、すなわち、連結繊毛を介して互いに連結された内側セグメントと外側セグメントとに分割される。この一次繊毛は、タンパク質をそれらが合成される内部セグメントから、光伝達が起こる外部セグメントに輸送するための必須構造である。CEP290遺伝子によりコードされるタンパク質は、連結繊毛の基部に局在している。機能の変化により、細胞内輸送の異常を誘引され、線毛構造欠損がもたらされかつ/又は光レセプター細胞内の外部セグメントの欠損もしくは短縮がもたらされる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「網膜ジストロフィー」という用語は、網膜の解剖学的構造及び/又は機能が変化する慢性及び進行性障害を指す。網膜は、視神経に近い眼の奥に局在し、「光レセプター」と呼ばれる何百万もの光感受性細胞から構成されている。網膜の目的は、水晶体が焦点を合わせた光を受け取り、光を神経信号に変換し、これらの信号を視覚認識のために脳に送る。光レセプター細胞に対する損傷が生じると、網膜は、適切に機能できなくなり、視覚情報を処理し、脳に伝えるのが難しくなる。
【0063】
特定の実施態様では、本発明の方法において、ここで、網膜ジストロフィーは、レーバー先天黒内障及び他の早期発症型重度網膜ジストロフィー(LCA様)、桿体-錐体ジストロフィー(網膜色素変性症)、錐体-杆体ジストロフィー、加齢性黄斑変性を含む黄斑ジストロフィー、ジュベール症候群を含む網膜に関連する何等かの繊毛関連疾患、シーニア-ローケン症候群、バルデー-ビードル症候群、メッケル及びメッケル様症候群、レフサム症候群、シュタルガルト病、アッシャー症候群、遺伝性視神経症、先天性静止性夜盲、色弱及び色覚異常からなる群より選択される。
【0064】
特定の実施態様では、本発明の方法において、ここで、網膜ジストロフィーは、レーバー先天黒内障(LCA)である。「レーバー先天黒内障(LCA)」という用語は、小児期の失明の一般的な原因(10%)である。レーバー先天黒内障は、出生時又は生後数か月以内に失明又は重度の視力障害をきたす最も重度の遺伝性網膜ジストロフィーである。レーバー先天黒内障は、早期発症型重度桿体-錐体ジストロフィー又は早期発症型重度錐体-桿体ジストロフィーとして現れる場合がある。
【0065】
特定の実施態様では、本発明の方法において、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)オリゴヌクレオチド、モルホリノオリゴヌクレオチド、トリシクロDNAアンチセンスオリゴヌクレオチド、U7又はU1媒介アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド結合、ナノ粒子複合アンチセンスオリゴヌクレオチド、2’-O-MeRNA/ENAキメラオリゴヌクレオチド及び2’-O-メチル-ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドからなる群より選択される。
【0066】
第3の態様では、本発明は、CEP290遺伝子の核酸配列に相補的な配列からなり、スプライシングを変化させ、エクソン36におけるナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異によりCEP290 mRNAに挿入された早期終止コドンをコードするエクソンを、前記突然変異を有する対象において除外するのに必要であり、ここで、CEP290遺伝子の前記核酸配列は、ESEモチーフを含む配列であり、ここで、前記配列は、前記突然変異エクソンのエクソンスプライシングエンハンサー(ESE)配列及びエクソン36に早期終止コドンを導入するCEP290遺伝子のエクソン36に存在するナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異を有する細胞においてCEP290の機能を回復させるのに使用するためのドナースプライス部位を含む配列からなる群より選択される、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【0067】
すなわち、本発明は、CEP290遺伝子の核酸配列に相補的な配列からなり、スプライシングを変化させ、エクソン36におけるナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異によりCEP290 mRNAに挿入された早期終止コドンをコードするエクソンを、前記突然変異を有する対象において除外するのに必要であり、ここで、CEP290遺伝子の前記核酸配列は、ESEモチーフを含む配列であり、ここで、前記配列は、前記突然変異エクソンのエクソンスプライシングエンハンサー(ESE)配列及びエクソン36に早期終止コドンを導入するCEP290遺伝子のエクソン36に存在するナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異を有する細胞においてCEP290の機能を回復させるのに適したドナースプライス部位突然変異を含む配列からなる群より選択される、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。
【0068】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、スプライスドナー部位(H36D)をターゲッティングする。
【0069】
特定の実施態様では、本発明の使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、ここで、エクソン36内に挿入された早期終止コドンは、CEP290 mRNAのc.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異により、ここで、CEP290遺伝子の前記核酸配列は、ESEモチーフを含む配列であり、ここで、前記配列は、前記突然変異を有する対象におけるCEP290遺伝子に存在する前記突然変異エクソンのエクソンスプライシングエンハンサー(ESE)配列及びc.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する細胞においてCEP290の機能を回復させるのに使用するためのドナースプライス部位を含む配列からなる群より選択される。
【0070】
特定の実施態様では、本発明の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、ここで、CEP290遺伝子に存在するエクソン36に早期終止コドンを導入するエクソン36に存在するナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異を有する前記細胞は、繊毛細胞である。
【0071】
特定の実施態様では、本発明の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、ここで、CEP290遺伝子に存在するc.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する前記細胞は、繊毛細胞である。
【0072】
特定の実施態様では、本発明の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:1の核酸配列からなる。
【0073】
特定の実施態様では、本発明の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、ここで、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも15ヌクレオチドの長さを有する。
【0074】
特定の実施態様では、本発明の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、ここで、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、,76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107又は108ヌクレオチドの長さを有する。
【0075】
特定の実施態様では、本発明の使用のためのCEP290遺伝子の核酸配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する対象に静脈内投与される。
【0076】
第4の態様では、本発明は、切断タンパク質をもたらすエクソン36における早期終止コドンの出現をもたらすCEP290遺伝子のエクソン36に位置するナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソンにおけるフレームシフト変異を有する対象における網膜ジストロフィーを処置する方法であって、ナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソン内のフレームシフト変異により生じる早期終止コドンを含有するエクソン36のスプライシングをモデュレーションする工程を含み、ここで、前記方法を、CEP290タンパク質をコードするエクソン36を含むプレmRNAを、早期終止コドンを有する突然変異エクソンの配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)に曝露することにより行う、方法に関する。
【0077】
特定の実施態様では、本発明の網膜ジストロフィーを処置する方法は、切断タンパク質をもたらす少なくとも1つの突然変異を含有するエクソン36のスプライシングをモデュレーションする工程を含み、前記方法を、CEP290タンパク質をコードするエクソン36を含むプレmRNAを、少なくとも1つの本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)に曝露することにより行う、方法に関する。
【0078】
特定の実施態様では、本発明は、切断タンパク質をもたらす早期終止コドンの出現をもたらすCEP290遺伝子のエクソン36に位置するc.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する対象における網膜ジストロフィーを処置する方法であり、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を含有するエクソン36のスプライシングをモデュレーションする工程を含み、ここで、前記方法を、CEP290タンパク質をコードするエクソン36を含むプレmRNAを早期終止コドンを有する突然変異エクソンの配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)に曝露することにより行う、方法に関する。
【0079】
特定の実施態様では、本発明の方法において、ここで、治療上有効量の本発明のAONを、c.4723A>T突然変異を含むエクソン36におけるナンセンス変異又はエクソン36もしくは上流エクソン内のフレームシフト変異により生じるエクソン36における早期終止コドンを有する対象に投与する。
【0080】
特定の実施態様では、本発明の方法において、ここで、治療上有効量の本発明のAONを、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する対象に投与する。
【0081】
特定の実施態様では、本発明の方法において、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、上記されたドナースプライス部位又はアクセプタースプライス部位を含む配列に相補的である。
【0082】
特定の実施態様では、本発明の方法において、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:1で示される核酸配列を含む。
【0083】
特定の実施態様では、本発明の方法において、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号:1で示される核酸配列からなる。
【0084】
本明細書で使用する場合、「処置する」又は「処置」という用語は、予防的(prophylactic)又は予防的(preventive)処置の両方及び治癒的又は疾患修飾的処置を指す。これは、疾患に罹患するリスクにあるか又は疾患に罹患したと疑われる対象及び病気の対象又は疾患もしくは医学的状態を患っていると診断された対象の処置を含み、臨床的再発のサプレッションを含む。処置を、このような処置がない場合に予想される以上に、障害又は再発性障害の1つ以上の症状の予防し、治癒し、これらの発症を遅延させ、これらの重症度を低減し又は改善するために、医学的障害を有する対象又は最終的にその障害を獲得する場合がある対象に投与することができる。「治療計画」は、疾患の処置パターン、例えば、治療中に使用される投与パターンを意味する。治療計画は、導入計画及び維持計画を含むことができる。「導入計画」又は「導入期間」という表現は、疾患の初期処置に使用される治療計画(又は治療計画の一部)を指す。導入計画の一般的な目標は、処置計画の初期期間中に、対象に高レベルの薬剤を提供することである。導入計画は、医師が維持計画中に利用するであろうより高用量の薬剤を投与すること、医師が維持計画中に薬剤を投与するであろうより高頻度で薬剤を投与すること又はその両方を含むことができる「負荷計画」を(部分的に又は全体として)利用することができる。「維持計画」又は「維持期間」という表現は、例えば、対照を長期間(数か月又は数年)寛解状態に保つために、疾患の処置中に対象の維持に使用される治療計画(又は治療計画の一部)を指す。維持計画は、連続療法(例えば、定期的な間隔、例えば、週1回、月1回、年1回等で薬剤を投与すること)又は断続的療法(例えば、中断された処置、断続的な処置、再発時の処置又は特定の所定の基準[例えば、疼痛、疾患症状等]の達成時の処置)を利用することができる。
【0085】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、任意のほ乳類、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ及び霊長類を指す。特に、本発明において、対象は、CEP290エクソン36における突然変異に影響を受けているか又は影響を受けやすいヒトである。特定の実施態様では、対象は、c.4723A>T突然変異を含むエクソン36におけるナンセンス変異又はCEP290遺伝子のエクソン36もしくは上流エクソン内のフレームシフト変異により生じるエクソン36における早期終止コドンに影響を受けているか又は影響を受けやすいヒトである。別の実施態様では、対象は、CEP290のエクソン36におけるc.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異に影響を受けているか又は影響を受けやすいヒトである。特定の実施態様では、対象は、網膜ジストロフィーに罹患しているか又は罹患しやすいヒトである。とりわけ、対象は、LCAに罹患しているか又は罹患しやすい。
【0086】
本明細書で使用する場合、「投与する」又は「投与」という用語は、体外に存在する物質(例えば、単独で又はベクターを伴う本発明のAON)を対象内に、とりわけ、硝子体、房水、毛様体組織もしくは細胞及び/又は眼外筋、網膜(例えば、網膜剥離後)内又はさらに視床上腔に注入するか又は何等かの方法で物理的に送達する行為を指す。また、エレクトロポレーション又はソノポレーション手段も、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを(単独で又は本発明のベクターを伴って)送達するのに適していることができる。疾患又はその症状が処置される場合、物質の投与を典型的には、その疾患又はその症状の発症後に行う。疾患又はその症状が予防される場合、物質の投与を典型的には、その疾患又はその症状の発症前に行う。
【0087】
特定の実施態様では、ネイキッドなAONが投与される。一部の実施態様では、本発明の方法において、ここで、AONを眼内、硝子体内、網膜下、非経口、静脈内、脳室内又は髄腔内に送達する。特定の実施態様では、水溶液(ネイキッド)が、静脈内、筋肉内、硝子体内、網膜下、皮下及び腹腔内投与に特に適している。
【0088】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ネイキッド又は本発明のベクターを伴う)を、ナンセンス変異又はCEP290遺伝子におけるエクソン36もしくは上流エクソン内のフレームシフト変異により生じるエクソン36における早期終止コドンを有する対象に硝子体内投与する。
【0089】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ネイキッド又は本発明のベクターを伴う)を、CEP290遺伝子に少なくともc.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>A突然変異を有する対象に硝子体内投与する。
【0090】
「治療上有効量」は、対象に治療上の利益を付与するのに必要な活性剤の最少量を意図している。例えば、対象に対する「治療上有効量」は、病理学的症状、疾患の進行もしくは障害に関連する生理学的状態における改善又は障害に屈することに対する抵抗性を誘引し、改善し又は何等かの方法で引き起こすような量である。本発明の化合物の総1日使用量は、正常な医学的判断の範囲内で主治医により決定されるであろうことが理解されるであろう。任意の特定の対象についての特定の治療上有効用量レベルは、処置される障害及び障害の重症度;利用される特定の化合物の活性;利用される特定の組成物;対象の年齢、体重、一般的な健康、性別及び食事;投与のタイミング、投与経路及び利用される特定の化合物の排泄速度;処置の期間;利用される特定の化合物と組み合わせて使用されるか又は同時に使用される薬剤並びに医療分野において周知の要因等を含む各種の要因により決まるであろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルより低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで、用量を徐々に増加させることは、十分に当業者の範囲内である。ただし、製品の1日用量は、成人1日当たりに0.01~1,000mgの広い範囲にわたって変化させることができる。典型的には、組成物は、処置される対象への用量の症候的調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mg 有効成分を含有する。医薬品は、典型的には、約0.01mg~約500mg 有効成分、好ましくは、1mg~約100mg 有効成分を含有する。薬剤の有効量は、通常、0.0002mg/kg~約20mg/kg 体重/日、特に、約0.001mg/kg~7mg/kg 体重/日の用量レベルで供給される。
【0091】
医薬組成物
第5の態様では、本発明は、ナンセンス変異又はCEP290遺伝子におけるエクソン36もしくは上流エクソン内のフレームシフト変異により生じるエクソン36における早期終止コドンを有する対象における網膜ジストロフィーの処置に使用するための、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを(単独で又は本発明のベクターを伴って)含有する医薬組成物に関する。
【0092】
特定の実施態様では、c.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>Aからなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する対象における網膜ジストロフィーの処置に使用するための、本発明の医薬品(単独で又は本発明のベクターを伴って)に関する。
【0093】
また、本発明の医薬組成物は、薬学的又は生理学的に許容し得る担体、例えば、生理食塩水、リン酸ナトリウム等も含むことができる。該組成物は、通常、液体の形態にあるであろうが、常にそうである必要はない。適切な担体、賦形剤及び希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、メチル及びプロピルヒドロキシベンゾアート、鉱油等を含む。また、該製剤は、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、保存剤、緩衝化剤等も含むことができる。また、当業者であれば、核酸は、多くの場合、脂質(例えば、カチオン性脂質もしくは中性脂質又はこれらの混合物)と共に、多くの場合、リポソーム又は他の適切なミクロ又はナノ構造化材料(例えば、ミセル、リポ複合体、デンドリマー、エマルジョン、立方相、ナノ粒子等)の形態で送達されることも認識するであろう。
【0094】
典型的には、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ネイキッド又は本発明のベクターを伴う)が、例えば、前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜及び強膜等の眼の角膜及び内部領域に浸透し得るように、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ネイキッド又は本発明のベクターを伴う)を薬学的に許容し得る眼科用媒体中で送達することができる。薬学的に許容し得る眼科用媒体は、例えば、軟膏、植物油又はカプセル化材料であることができる。
【0095】
代替的には、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ネイキッド又は本発明のベクターを伴う)を硝子体、房水、毛様体組織もしくは細胞及び/又は眼外筋、網膜(例えば、網膜剥離後)に又はさらに視床上腔に直接注入することができる。また、エレクトロポレーション又はソノポレーション手段も、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを(単独で又は本発明のベクターを伴って)送達するのに適していることができる。
【0096】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ネイキッド又は本発明のベクターを伴う)を含有する医薬組成物を、ナンセンス変異又はCEP290遺伝子におけるエクソン36もしくは上流エクソン内のフレームシフト変異により生じるエクソン36における早期終止コドンを有する対象に硝子体内投与する。
【0097】
特定の実施態様では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ネイキッド又は本発明のベクターを伴う)を含有する医薬組成物を、CEP290遺伝子に少なくともc.4723A>T、c.4771C>T、c.4714G>T、c.4786_4790del、c.4791_4794del、c.4732G>T、c.4625_4626insCATG(35)、c.4792_4795del、c.4801C>T、c.4805C>T又はc.4811G>A突然変異を有する対象に硝子体内投与する。
【0098】
当業者であれば、投与されるAONの量が、望ましくない疾患症状の改善を誘引するのに十分な量であろうことを認識するであろう。このような量は、とりわけ、患者の性別、年齢、体重、全体的な身体状態等のような要因に応じて変化させることができ、ケースバイケースで決定することができる。また、この量を処置される状態の種類及び処置プロトコールの他の成分(例えば、他の薬剤、例えば、ステロイドの投与等)に従って変化させることができる。
【0099】
AONのウイルスベースの送達が選択される場合、適切な用量は、利用されるウイルス株、送達経路(筋肉内、静脈内、動脈内等)等の種々の要因により決まるであろう。
【0100】
当業者であれば、このようなパラメーターは、通常、臨床試験の間に算出されることを認識するであろう。症状の部分的又は間欠的な緩和であっても、レシピエントにとって大きな利益となる場合がある。加えて、患者の処置は、通常、単一のイベントではない。むしろ、本発明のAONは、得られた結果に応じて、数日間隔、数週間隔もしくは数か月間隔又はさらに数年間隔である場合がある複数の機会で投与される可能性があるであろう。これは、レーバー先天黒内障の治療に特に当てはまる。この疾患は、この処置により治癒されない、すなわち、タンパク質をコードする遺伝子が依然として欠損しているであろうし、コードされたタンパク質は、本発明のAONが投与されない限り、望ましくない不安定化機構、例えば、露出したタンパク質分解認識部位を依然として有するであろうためである。
【0101】
本発明を下記図面及び実施例によりさらに例証するものとする。ただし、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1図1:タンパク質切断をバイパスするCEP290プレmRNAのAON媒介スプライシング変化。CEP290プレmRNAにおけるエクソン突然変異(c.4723A>T、赤色)により、エクソン36内の早期終止コドン(PTC)が、CEP290 mRNAに導入される。スプライスドナー部位(H36D)をターゲッティングするAON(黒色)の投与により、エクソン36の認識を遮断することによってスプライシングが変化すると予測される。エクソン36の排除(CEP290Δ36)により、リーディングフレームを維持しながら、タンパク質切断をバイパスすることが可能となり、ほぼ全長のCEP290タンパク質の産生がもたらされるはずである。
図2A図2:早期終止コドンを包含するCEP290エクソン36の自然に生じる排除。基準としてのGUSB及びRPLP0遺伝子を使用するRT-qPCRにより測定された場合の、対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞における、(A)WT(灰色のバー)及び突然変異体(黒色のバー)全長アイソフォーム並びに(B)スキッピングされた(CEP290Δ36;斜線のバー)CEP290 mRNAの相対発現。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。値は、10回の独立した実験から得られた平均±SEMである。****p≦0.0001、n.s=有意差なし。
図2B図2:早期終止コドンを包含するCEP290エクソン36の自然に生じる排除。基準としてのGUSB及びRPLP0遺伝子を使用するRT-qPCRにより測定された場合の、対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞における、(A)WT(灰色のバー)及び突然変異体(黒色のバー)全長アイソフォーム並びに(B)スキッピングされた(CEP290Δ36;斜線のバー)CEP290 mRNAの相対発現。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。値は、10回の独立した実験から得られた平均±SEMである。****p≦0.0001、n.s=有意差なし。
図3図3:CEP290タンパク質産生に対するPTCコードエクソン36の自然排除の効果。対照細胞系統(C1~C3)及び突然変異線維芽細胞(P1及びP2)におけるCEP290タンパク質の免疫検出。β-アクチンを正規化のために使用した。CEP290タンパク質存在量の定量。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。値は、各サンプルにおけるCEP290及びβ-アクチン発現のコンピューター濃度測定分析により決定され、4回の独立した実験から得られた平均±SEMである。**p≦0.01、n.s=有意差なし。
図4図4:静止細胞におけるCEP290発現評価。各細胞系統における基底体でのCEP290免疫蛍光強度の定量(Cは、C1、C2及びC3のプール値を表わす)。各ドットは、(自動的に記録された)6つの顕微鏡視野からの個々の細胞におけるタンパク質のラベル強度を示す。実線は、平均を示す。****p≦0.0001、n.s=有意差なし。A.U.=任意の単位。
図5図5:CEP290中心小体サテライトパートナーの局在及び存在量。RAB8A陽性繊毛の定量。値は、平均±SEM(各群についてn≧50繊毛)である。静止線維芽細胞における中心体でのCP110免疫蛍光強度の定量。値は、平均±SEMである。免疫ラベルを90~100% コンフルエント細胞から行った。全自動強度測定値を6つの視野から記録した。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。****p≦0.0001、n.s=有意差なし。A.U.=任意の単位。
図6A-B】図6.繊毛形成及び軸糸輸送。対照及び患者線維芽細胞における(A)線毛細胞の割合及び(B)繊毛軸糸の長さ。各細胞系統について、最低90個の繊毛細胞を考慮した。(C)IFT88陽性繊毛の定量。バーは、平均±SEM(各群についてn≧80繊毛)を表わす。Cは、C1、C2及びC3の値を再グループ化する。**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s=有意差なし。
図6C図6.繊毛形成及び軸糸輸送。対照及び患者線維芽細胞における(A)線毛細胞の割合及び(B)繊毛軸糸の長さ。各細胞系統について、最低90個の繊毛細胞を考慮した。(C)IFT88陽性繊毛の定量。バーは、平均±SEM(各群についてn≧80繊毛)を表わす。Cは、C1、C2及びC3の値を再グループ化する。**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s=有意差なし。
図7A図7:CEP290 mRNAに対するAON媒介エクソン36スキッピングの効果。(A)未処理又は単独でのリポフェクタミンもしくはH36Dアンチセンスオリゴヌクレオチドと会合させたリポフェクタミンにより24時間処理された、対照(C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞において発現されたCEP290転写産物のRT-PCR分析。アガロースゲルの画像は、突然変異エクソン36を取り囲むプライマーペアを使用して産生されたアンプリコンを示す。(B)RT-qPCRにより測定された場合の、対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞における全長(黒色のバー)及びエクソン36スキッピングされた(灰色のバー)CEP290 mRNAの相対的発現レベル。バーは、3回の独立した実験からの平均±SEMを示す。Cは、C1、C2及びC3のプール値を表わす。****p≦0.0001、n.s. 有意差なし。
図7B図7:CEP290 mRNAに対するAON媒介エクソン36スキッピングの効果。(A)未処理又は単独でのリポフェクタミンもしくはH36Dアンチセンスオリゴヌクレオチドと会合させたリポフェクタミンにより24時間処理された、対照(C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞において発現されたCEP290転写産物のRT-PCR分析。アガロースゲルの画像は、突然変異エクソン36を取り囲むプライマーペアを使用して産生されたアンプリコンを示す。(B)RT-qPCRにより測定された場合の、対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞における全長(黒色のバー)及びエクソン36スキッピングされた(灰色のバー)CEP290 mRNAの相対的発現レベル。バーは、3回の独立した実験からの平均±SEMを示す。Cは、C1、C2及びC3のプール値を表わす。****p≦0.0001、n.s. 有意差なし。
図8A図8.トランスフェクション条件の最適化。(A)未処理又は漸増用量(20nM~300nM)のH36Dオリゴヌクレオチドのトランスフェクション後の対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2の線維芽細胞から抽出された逆転写CEP290 mRNAのRT-qPCR分析。グラフに、3回の独立した実験からの全長(CEP290;黒色のバー)及びエクソン36スキッピング転写産物(CEP290Δ36;灰色のバー)の平均量(±SEM)を示す。Cは、C1、C2及びC3について得られた値を再グループ化する。***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s. 有意差なし。(B)未処理又は75nM H36Dオリゴヌクレオチドでの長くなる処理時間(4時間~72時間)の間に処理された対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞から抽出された逆転写CEP290 mRNAのRT-qPCR分析。グラフに、全長(CEP290;黒色のバー)及びエクソン36スキッピング転写産物(CEP290Δ36;灰色のバー)の量を示す。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。(C)未処理又は75nM H36Dで24時間もしくは48時間の間処理された対照(C3)及び突然変異体(P1及びP2)細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(D)処理時間に応じたCEP290タンパク質存在量の相対的定量。β-アクチンを正規化のために使用した。
図8B図8.トランスフェクション条件の最適化。(A)未処理又は漸増用量(20nM~300nM)のH36Dオリゴヌクレオチドのトランスフェクション後の対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2の線維芽細胞から抽出された逆転写CEP290 mRNAのRT-qPCR分析。グラフに、3回の独立した実験からの全長(CEP290;黒色のバー)及びエクソン36スキッピング転写産物(CEP290Δ36;灰色のバー)の平均量(±SEM)を示す。Cは、C1、C2及びC3について得られた値を再グループ化する。***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s. 有意差なし。(B)未処理又は75nM H36Dオリゴヌクレオチドでの長くなる処理時間(4時間~72時間)の間に処理された対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞から抽出された逆転写CEP290 mRNAのRT-qPCR分析。グラフに、全長(CEP290;黒色のバー)及びエクソン36スキッピング転写産物(CEP290Δ36;灰色のバー)の量を示す。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。(C)未処理又は75nM H36Dで24時間もしくは48時間の間処理された対照(C3)及び突然変異体(P1及びP2)細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(D)処理時間に応じたCEP290タンパク質存在量の相対的定量。β-アクチンを正規化のために使用した。
図8C図8.トランスフェクション条件の最適化。(A)未処理又は漸増用量(20nM~300nM)のH36Dオリゴヌクレオチドのトランスフェクション後の対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2の線維芽細胞から抽出された逆転写CEP290 mRNAのRT-qPCR分析。グラフに、3回の独立した実験からの全長(CEP290;黒色のバー)及びエクソン36スキッピング転写産物(CEP290Δ36;灰色のバー)の平均量(±SEM)を示す。Cは、C1、C2及びC3について得られた値を再グループ化する。***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s. 有意差なし。(B)未処理又は75nM H36Dオリゴヌクレオチドでの長くなる処理時間(4時間~72時間)の間に処理された対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞から抽出された逆転写CEP290 mRNAのRT-qPCR分析。グラフに、全長(CEP290;黒色のバー)及びエクソン36スキッピング転写産物(CEP290Δ36;灰色のバー)の量を示す。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。(C)未処理又は75nM H36Dで24時間もしくは48時間の間処理された対照(C3)及び突然変異体(P1及びP2)細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(D)処理時間に応じたCEP290タンパク質存在量の相対的定量。β-アクチンを正規化のために使用した。
図8D図8.トランスフェクション条件の最適化。(A)未処理又は漸増用量(20nM~300nM)のH36Dオリゴヌクレオチドのトランスフェクション後の対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2の線維芽細胞から抽出された逆転写CEP290 mRNAのRT-qPCR分析。グラフに、3回の独立した実験からの全長(CEP290;黒色のバー)及びエクソン36スキッピング転写産物(CEP290Δ36;灰色のバー)の平均量(±SEM)を示す。Cは、C1、C2及びC3について得られた値を再グループ化する。***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s. 有意差なし。(B)未処理又は75nM H36Dオリゴヌクレオチドでの長くなる処理時間(4時間~72時間)の間に処理された対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞から抽出された逆転写CEP290 mRNAのRT-qPCR分析。グラフに、全長(CEP290;黒色のバー)及びエクソン36スキッピング転写産物(CEP290Δ36;灰色のバー)の量を示す。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。(C)未処理又は75nM H36Dで24時間もしくは48時間の間処理された対照(C3)及び突然変異体(P1及びP2)細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(D)処理時間に応じたCEP290タンパク質存在量の相対的定量。β-アクチンを正規化のために使用した。
図9A-B】図9:タンパク質レベルでのAON処理効果及び繊毛に対する影響。(A)未処理又は75nM H36Dで48時間処理された対照及び突然変異細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(B)β-アクチンに対するCEP290タンパク質量の定量。バーは、3回の独立した実験からの平均値±SEMに対応する。=有意差なし。A.U.=任意の単位。(C)各細胞系統における基底体でのCEP290免疫蛍光強度の定量。各ドットは、6つの顕微鏡視野から自動的に記録された個々の細胞におけるタンパク質のラベル強度を示す。実線は、平均を示す。(D)静止線維芽細胞における中心体でのCP110免疫蛍光強度の定量。全自動強度測定値を6つの視野から記録した。(E)対照及び突然変異線維芽細胞における繊毛細胞の割合及び(F)繊毛軸糸の長さ。各細胞系統について、最低90個の線毛細胞を考慮した。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。p≦0.05、p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s=有意差なし。A.U.=任意の単位。
図9C図9:タンパク質レベルでのAON処理効果及び繊毛に対する影響。(A)未処理又は75nM H36Dで48時間処理された対照及び突然変異細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(B)β-アクチンに対するCEP290タンパク質量の定量。バーは、3回の独立した実験からの平均値±SEMに対応する。=有意差なし。A.U.=任意の単位。(C)各細胞系統における基底体でのCEP290免疫蛍光強度の定量。各ドットは、6つの顕微鏡視野から自動的に記録された個々の細胞におけるタンパク質のラベル強度を示す。実線は、平均を示す。(D)静止線維芽細胞における中心体でのCP110免疫蛍光強度の定量。全自動強度測定値を6つの視野から記録した。(E)対照及び突然変異線維芽細胞における繊毛細胞の割合及び(F)繊毛軸糸の長さ。各細胞系統について、最低90個の線毛細胞を考慮した。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。p≦0.05、p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s=有意差なし。A.U.=任意の単位。
図9D図9:タンパク質レベルでのAON処理効果及び繊毛に対する影響。(A)未処理又は75nM H36Dで48時間処理された対照及び突然変異細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(B)β-アクチンに対するCEP290タンパク質量の定量。バーは、3回の独立した実験からの平均値±SEMに対応する。=有意差なし。A.U.=任意の単位。(C)各細胞系統における基底体でのCEP290免疫蛍光強度の定量。各ドットは、6つの顕微鏡視野から自動的に記録された個々の細胞におけるタンパク質のラベル強度を示す。実線は、平均を示す。(D)静止線維芽細胞における中心体でのCP110免疫蛍光強度の定量。全自動強度測定値を6つの視野から記録した。(E)対照及び突然変異線維芽細胞における繊毛細胞の割合及び(F)繊毛軸糸の長さ。各細胞系統について、最低90個の線毛細胞を考慮した。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。p≦0.05、p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s=有意差なし。A.U.=任意の単位。
図9E図9:タンパク質レベルでのAON処理効果及び繊毛に対する影響。(A)未処理又は75nM H36Dで48時間処理された対照及び突然変異細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(B)β-アクチンに対するCEP290タンパク質量の定量。バーは、3回の独立した実験からの平均値±SEMに対応する。=有意差なし。A.U.=任意の単位。(C)各細胞系統における基底体でのCEP290免疫蛍光強度の定量。各ドットは、6つの顕微鏡視野から自動的に記録された個々の細胞におけるタンパク質のラベル強度を示す。実線は、平均を示す。(D)静止線維芽細胞における中心体でのCP110免疫蛍光強度の定量。全自動強度測定値を6つの視野から記録した。(E)対照及び突然変異線維芽細胞における繊毛細胞の割合及び(F)繊毛軸糸の長さ。各細胞系統について、最低90個の線毛細胞を考慮した。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。p≦0.05、p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s=有意差なし。A.U.=任意の単位。
図9F図9:タンパク質レベルでのAON処理効果及び繊毛に対する影響。(A)未処理又は75nM H36Dで48時間処理された対照及び突然変異細胞系統におけるCEP290タンパク質分析。(B)β-アクチンに対するCEP290タンパク質量の定量。バーは、3回の独立した実験からの平均値±SEMに対応する。=有意差なし。A.U.=任意の単位。(C)各細胞系統における基底体でのCEP290免疫蛍光強度の定量。各ドットは、6つの顕微鏡視野から自動的に記録された個々の細胞におけるタンパク質のラベル強度を示す。実線は、平均を示す。(D)静止線維芽細胞における中心体でのCP110免疫蛍光強度の定量。全自動強度測定値を6つの視野から記録した。(E)対照及び突然変異線維芽細胞における繊毛細胞の割合及び(F)繊毛軸糸の長さ。各細胞系統について、最低90個の線毛細胞を考慮した。Cは、C1、C2及びC3プール値に対応する。p≦0.05、p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001、n.s=有意差なし。A.U.=任意の単位。
図10図10.CEP290 mRNAに対するAON媒介エクソン36スキッピングの効果。RT-qPCRにより測定された場合の、対照(C1~C3)及び患者(P1及びP2)線維芽細胞における全長(黒色のバー)及びエクソン36スキッピングされた(灰色のバー)CEP290 mRNAの相対的発現レベル。バーは、3回の独立した実験からの平均±SEMを示す。Cは、C1~C3のプール値を表わす。****p≦0.0001、n.s. 有意差なし。
図11図11.Cep290del/delマウスにおけるCep290エクソン35の両アレル性排除により、複合ヘテロ接合性Cep290ptc/delマウスの両アレル性排除と比較したより軽度の網膜表現型が説明される。(A)P30(N≧9)におけるC57BL/6Jマウスと比較した、Cep290del/del及びCep290ptc/delにおける暗順応(暗順応;左グラフ)及び光順応(明順応;右グラフ)ERG記録。(B)対照、Cep290del/del及びCep290ptc/del網膜切片から測定されたONL厚みは、P30(N=3)での対応するCep2del/delと比較して、Cep290ptc/del網膜においてより重度の減少を示す。全てのデータを、post hoc Sidak検定による二元配置分散分析を使用して統計的に分析し、平均値±SEMとして示す。
【0103】
実施例1
材料及び方法
遺伝学的解析
P1とP2は、国境を越えたフランダース地域出身の明らかに非血縁の両親から生まれた2名の無関係単純症例であり、早期発症かつ重度の網膜ジストロフィーの分子診断のために、本発明者らのMolecular Diagnosis Unit of our Genetic Departmentに呼ばれた。患者DNAを網膜ジストロフィーに関与する199個の遺伝子のパネルベースの分子試験(補足材料、図S1)に供し、変異体データセットを、社内で開発されたPolywebシリーズのPolydiagソフトウェアを使用してフィルタリングした。明らかにホモ接合性のCEP290 c.4723A>T変異体についての両アレル性を、CEP290エクソン36に特異的なプライマーを使用して、親DNAのサンガー配列決定により評価した(補足資料、表S1)。書面によるインフォームドコンセントを全参加個体から取得した。研究は、Comite de Protection des Personnes「Ile-De-France II」により承認された(2015-03-03/DC 2014-2272)。
【0104】
スプライシングに対するナンセンスc.4723A>T(p.Lys1575)突然変異のin silico分析
スプライシングに対するc.4723A>T置換の結果を、以前に記載されたように[21]、幾つかの予測ソフトウェアを使用して評価した。
【0105】
細胞培養
線維芽細胞系統を、罹患対象(P1及びP2)及び3名の健康な個体(C1、C2及びC3)の皮膚生検から得た。それらの遺伝的及び臨床的特徴をまとめた表を補足資料、表S2に示す。初代線維芽細胞(15回継代未満)を以前に記載されたように[21]培養した。
【0106】
AON及びトランスフェクション
CEP290エクソン36のドナースプライス部位及びESEモチーフに特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を、ソフトウェア予測ツール(http://mfold.rna.albany.edu/及びhttp://rulai.cshl.edu/cgi-bin/tools/ESE3/esefinder.cgiそれぞれにおいてオンラインで入手可能なm-foldプログラム及びESEfinder3.0プログラム)を使用し、一般的推奨[23]に従って特定した。
【0107】
H36D(+98-11)及びH36ESE(+63+84)アンチセンスオリゴヌクレオチドの位置を図6に表わす。H36Dの配列は、下記:5’-UAGAAUCUUACCCAAGCCGUUU-3’(配列番号:1)のとおりであった。H36ESEの配列は、下記:5'-UAGUGAACUAUCAGCCUGUAGU-3'(配列番号:5)のとおりであった。
【0108】
これらのAONは、Eurofins Genomics(St Quentin Fallavier, France)により合成され、2’-O-メチルRNA及び全長ホスホロチオアート骨格を含有する。80% コンフルエント細胞を、10% ウシ胎児血清を補充したOpti-MEM中において、20~300nmol/Lの範囲の種々の濃度のAONで、Lipofectamine2000(Invitrogen)を使用し、製造メーカーの説明書に従ってトランスフェクションした。細胞をmRNA又はタンパク質分析のために、4~72時間で収集した。
【0109】
RNA調製及びcDNA合成
全RNAを、RNeasy Miniキット(Qiagen, Courtaboeuf, France)を使用し、製造メーカーのプロトコールに従って抽出した。全てのサンプルを、RNaseを含まないDNaseセット(Qiagen)によりDNase処理した。全RNAの濃度及び純度を、Nanodrop-2000分光光度計(Thermo Scientific, Illkirch, France)を使用して測定し、その後、-80℃で保存した。第一鎖cDNA合成を、3:1(vol:vol)の比でのランダムヘキサマー:アンカーオリゴ(dT)プライマーを含むVerso cDNAキット(Thermo Scientific)を使用し、製造メーカーの説明書に従って、抽出された500ng 全RNAから行った。1つのサンプルについての非逆転写反応物(酵素なし;RT-)を調製して、逆転写PCR(RT-PCR)及びリアルタイム定量PCR(RT-qPCR)実験についての対照として機能させた。
【0110】
RT-PCR
CEP290スプライシングアイソフォームを、4mM dNTP(Thermo Scientific)、0.4単位 Phusion High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Thermo Scientific)及び10μM 特異的プライマーペア(補足材料、図S1及び表S1)を含有する1×Phusion HFバッファー 20μl中で逆転写されたmRNA(2μl)から増幅した。テンプレート反応を陰性対照として使用しなかった(NTC)。PCRを下記条件:98℃で5分間の初期変性、続けて、98℃での20秒変性、60℃での15秒アニーリング及び72℃での30秒伸長の30サイクルで、2720 Thermal Cycler(Applied Biosystems, Courtaboeuf, France)において行った。PCR産物(5μl)を臭化エチジウムで染色した3% 低融点アガロースゲル中での電気泳動により分離し、UV光下で可視化し、切り出した。ゲル内PCR産物を、3500自動シーケンサー(Applied Biosystems, Foster City, USA)において、Big Dye TerminatorCycle Sequencing Kit v3.1(ABI PrismTM, Applied Biosystems, Foster City, USA)を使用してさらに配列決定した。
【0111】
RT-qPCR分析
CEP290 mRNAアイソフォームの存在量を、非スキッピング(「全長」と呼ばれる)又はスキッピングされたCEP290バージョンに特異的なプライマーを使用して測定した。プライマー配列を補足材料、図S1及び表S2に列記する。GUSB(NM_000181.3)及びRPLP0(NM_001002.3)mRNAを使用して、データを正規化した。各サンプルのcDNA(RNAseを含まないHO中において1:25で希釈された溶液 5μl)を、SYBR GREEN PCR Master Mix(Life Technologies)並びに300nM フォワードプライマー及びリバースプライマーを含有するバッファー(20μl)中において、下記条件:Taqポリメラーゼの活性化並びに95℃での10分間変性、続けて、95℃での15秒及び60℃での1分間を50サイクルで、リアルタイムでのPCR増幅に供した。融解曲線の分析を各増幅の終わりに、95℃で15秒間1サイクル、ついで、60℃から95℃への20分間の段階的な熱増加を使用して行った後に、増幅産物の特異性を決定した。データ分析及び方法を以前に記載されたように[8]行った。
【0112】
タンパク質分析
ウェスタンブロット分析のために、処理された細胞及び未処理の細胞からの全タンパク質を以前に記載されたように[21]抽出し、定量し、CEP290タンパク質の相対存在量を、各細胞系統における参照としてのβ-アクチンを使用するデンシトメトリーにより推定した。
【0113】
免疫細胞化学分析のために、細胞を12ウェルプレート中のカバーガラス上で24時間増殖させて、90%~100% コンフルエンスに到達させ、H36D(+98-11)AONを使用してトランスフェクションするか又は未処理のままのいずれかにした。24時間後、処理細胞及び未処理細胞を48~72時間血清枯渇状態にし、その後、冷メタノール固定及びARL13B、CEP290、CP110、IFT88、ペリセントリン、RAB8A、γ-チューブリン及び/又はアセチル化α-チューブリンの免疫ラベリングを行った。免疫蛍光画像を取得し、処理して、繊毛の存在量、軸糸の長さ、細胞内局在及び/又は染色強度を分析した。全ての実験手法及び分析方法は、Barny et al. 2018に記載されている。
【0114】
免疫細胞化学分析
細胞を12ウェルプレート中のガラスカバースリップ上で播種し、24時間後、以前に記載された条件において、H36D(+98-11)AONでトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞を無血清培地中において48~72時間インキュベーションした。血清枯渇後、細胞を冷メタノールで固定し(-20℃で7分間)、PBSで2回洗浄した。未処理線維芽細胞を同じ条件で処理した。細胞を透過させ、非特異的部位を、3% ウシ血清アルブミン及び0.5% TritonX-100を含有するPBS溶液中で1時間飽和させた。透過させた細胞を、3% ウシ血清アルブミン及び0.1% TritonX-100を含有するPBS中の一次抗体:抗ペリセントリンウサギ抗体(1:1000、Abcam)、抗ガンマ-チューブリンマウス抗体(1:500、Sigma-Aldrich)、抗CEP290ウサギ抗体(1:100、Novus Biologicals)、抗CP110ウサギ抗体(1:100、ProteinTech)、抗アセチル化α-チューブリンマウス抗体(1:1000;Sigma-Aldrich)、抗ARL13Bウサギ抗体(1:200、ProteinTech)、抗IFT88ウサギ抗体(1:100、ProteinTech)及び抗RAB8Aマウス抗体(1:50、Abnova)と共に4℃で一晩インキュベーションした。PBSで3回洗浄した後、細胞を、3% ウシ血清アルブミン及び0.1% TritonX-100を含有するPBS溶液中の二次抗体:Alexa-Fluor 488に結合させた抗ウサギIgGヤギ抗体及びAlexa-Fluor 568に結合させた抗マウスIgGヤギ抗体(1:1000;Life Technologies)と共に室温で1時間インキュベーションした。PBSでさらに3回洗浄した後、カバーガラスを、DAPI(DAPIを含むProLong Gold antifade試薬、Invitrogen)を含有するマウント培地を使用してスライド上に載せて、細胞核を染色した。免疫蛍光画像を、Zeissスピニングディスク顕微鏡を使用して得た。画像処理のための露光時間及び設定を、サンプル間比較を可能にするために、全てのサンプルについて一定にした。収集されたZスタックの数は、サンプル間で可変であったが、最大蛍光シグナルをキャプチャするために最適化した。デコンボリューションされた画像を、最大強度設定を有するImageJソフトウェアZ投影ツールを使用して1つの画像に投影させた。ガンマ-チューブリン染色により決定された中心体を中心とする16μm2の正方形に含まれる全蛍光を記録して、中心体周辺領域におけるCEP290及びCP110ラベルの強度を測定した。一体化された画素密度を、ImageJソフトウェアを使用して各正方形において定量した。最終画像を、ImageJソフトウェアを使用して生成した。
【0115】
統計
全ての統計的分析を、Prism6ソフトウェアを使用して行い、有意差を、post hocテューキー検定による一元配置分散分析を使用して決定した。C1、C2及びC3から得られたデータを免疫ラベル分析のために系統的にプールした。エラーバーは、SEMを反映する。
【0116】
結果
パネルベースの分子診断検査により、異なる重症度の先天性網膜ジストロフィーを有する2名の患者におけるCEP290 c.4723A>T創始者突然変異についてのホモ接合性が特定される
眼球外合併症を伴わない先天性網膜ジストロフィーに対処するベルギー及び/又はフランスフランダース出身の2名の明らかに無関係な非血縁散発性症例を研究した。1人目の個体(P1)は、出生時に眼振、光回避、遠視(+6ジオプトリーLRE)を呈し、錐体由来網膜電図を呈さなかったが、高度に低電圧化された桿体由来応答を呈した。同個体は、生涯の最初の10年間で、視力が自然に改善した。20歳の時、20/67(RE)及び20/50(LE)の視力(VA)を伴う管状視野を呈し、網膜血管は細く、視神経萎縮及び眼底に周辺色素沈着を認められた。初期症状は、早期発症の重度錐体-桿体ジストロフィーを示唆したが、このアウトカムは、早期発症の重度桿体-錐体ジストロフィーと呼ばれる桿体優性LCA様疾患と一致する。2人目の個体(P2)は、典型的なLCA10関連疾患、すなわち、眼振を伴う静止性先天盲、照明又は物体を追うことができないこと並びに平坦な錐体及び桿体由来の網膜電図応答を呈した。遺伝性網膜ジストロフィーについてのパネルベースの分子診断(190遺伝子)及びサンガーベースの家族性分離分析により、2症例においてフランダース創始者CEP290 c.4723A>T(p.Lys1575)突然変異についてのホモ接合性が特定された。
【0117】
in silico分析からCEP290 c.4723A>T突然変異によりナンセンス関連スプライシング変化が誘引されたことが示唆される
スプライスシグナル及びESS/ESE結合部位を精査する予測ソフトウェアソリューションを使用することにより、スプライシングに対するc.4723A>T突然変異の影響を分析した。c.4723の位置でアデニンがチミン(突然変異)又はグアニンにより置換されると、野生型配列と比較して、エクソン36のESS/ESE比が向上すると予測され、このため、スキッピングの感受性が増大する(シトシンによる置換ではこれらが起こるとは予想されない)(表2)。
【0118】
【表2】
【0119】
EX-SKIP及びHOT-SKIP予測プログラムによるESS及びESEモチーフにおけるc.4723位でのヌクレオチド変化の効果。WTアレル及びこの研究で特定された突然変異アレルをそれぞれ、青色及び赤色でラベルする。ESS=エクソンスプライシングサイレンサー;ESE=エクソンスプライシングエンハンサー。
【0120】
mRNA分析によりc.4723A>T媒介ナンセンス関連スプライシング変化及びエクソン36の基礎内因性選択的スプライシングが支持される
CEP290エクソン35及び37に特異的なプライマーを使用してc.4723A>T変異体をホモ接合性で有するP1及びP2皮膚線維芽細胞mRNAから生成されたRT-PCR産物のアガロースゲル分析及びサンガー配列決定(表を示さず)により、全長突然変異cDNA(CEP290)及びエクソン36を欠くPTCを含まない選択的スプライシング産物(CEP290Δ36)が検出された。対照線維芽細胞は、全長野生型cDNAを発現したが、CEP290Δ36産物は検出できず、両アイソフォームが特定されたヒト網膜と対照的であった。これらの観察は、CEP290エクソン36が網膜において内因性基礎スキッピングを受けること及びin silico分析と一致して、c.4723A>T変異体によりナンセンス関連スプライシング変化が誘引されることを示す(データを示さず)。興味深いことに、CEP290Δ36アイソフォームに特異的なプライマー(表を示さず)を使用するRT-qPCR分析により、対照線維芽細胞において生成物が検出された(図2B)。この観察により、P1及びP2突然変異線維芽細胞で立証されたCEP290フレーム回復における内因性基礎エクソンスキッピングのある程度の寄与が支持される。全長突然変異体/野生型cDNAに特異的なプライマー(表を示さず)を使用するRT-qPCR分析により、ナンセンスc.4723A>T変異を有するmRNAのナンセンス媒介RNA崩壊(NMD)を支持する対照において、対応する野生型と比較して、P1及びP2細胞系統における突然変異産物の存在量の減少が示された(図2A)。
【0121】
タンパク質分析によりc.4723A>Tナンセンス変異についてホモ接合性の患者線維芽細胞における中心体に局在するCEP290タンパク質が低レベルで検出される
血清枯渇P1及びP2線維芽細胞からのタンパク質抽出物のウェスタンブロット分析により、290KDa付近の最小量のCEP290産物が検出された(図3及び図4)。この産物は、免疫細胞化学分析に基づいて中心体に局在した(図4)。これらの結果から、エクソン36を欠くPTCを含まない選択的スプライシング産物が、野生型タンパク質と同様に中心体にリクルートすることができる安定なタンパク質に翻訳されることが示される。
【0122】
血清枯渇患者線維芽細胞の繊毛分析により中心体では明らかに正常なRAB8A局在が示されるが、軸糸の伸長は示されない
CEP290エクソン36は、RAB8Aに結合するCEP290ドメインに寄与する36個のアミノ酸をコードする。RAB8Aが中心体にリクルートされると、繊毛形成サプレッサーであるCP110が放出されるため、細胞の増殖から静止期への移行期に線毛形成が開始される[24~26]。興味深いことに、静止状態の線維芽細胞におけるRAB8A免疫ラベルにより、患者及び対照線維芽細胞の基底小体において同等の局在が示された。これは、エクソン36によりコードされる情報がないと、中心体でのRAB8Aのリクルートが変化しないことを示唆する(図6)。さらに、対照及びP1線維芽細胞の中心体において、同等のCP110存在量が観察された。これは、RAB8Aリクルート時の正しい放出を示す(図6A)。対照的に、P2細胞の中心体でのCP110量は、対照及びP1細胞より有意に高かった(p≦0.0001;図6A)。P2におけるCP110の蓄積をP1と比較して、CEP290Δ36aaタンパク質の存在量の減少と相関させることができた。正常なCP110放出及びCP110放出障害と一致して、繊毛の存在量は、正常範囲にあり、P1及びP2線維芽細胞それぞれで減少した(p≦0.001;図5B)。
【0123】
別の注目すべき点として、繊毛の長さを測定したところ、対照と比較して、両患者細胞系統において統計学的に有意な軸糸伸長が観察された(対象では平均軸糸サイズ 3.9μmに対して、P1では平均軸糸サイズ 4.4μm及びP2では平均軸糸サイズ 4.9μm、p≦0.0001;図6C)。中心体でより少量のCEP290Δ36aaアイソフォームを発現するP2の繊毛は、対応するP1より有意に長い軸糸を示した(p≦0.01;図6C)。これにより、繊毛表現型の重症度と最小限に短縮されたCEP290細胞の量との間の相関が突然変異アレルから生成可能であることがさらに支持される。
【0124】
対照細胞において観察されたように、患者線維芽細胞におけるIFT88免疫ラベルにより、軸糸に沿った全てのこのIFT複合体Bタンパク質が明らかとなった(図6C)。このことから、患者細胞における異常な繊毛伸長が、IFT88により駆動される順行性輸送の欠陥とは関係しないと仮定される。
【0125】
コンセンサスドナースプライス部位をターゲッティングとすることによりCEP290エクソン36の用量依存的かつ時間依存的なスキッピングが可能となる
CEP290エクソン36及びスプライシングレギュラトリーエレメント周辺のRNAコンフォメーションを、スプライシングスイッチングAONを設計するために、m-foldプログラム及びESEfinder3.0プログラムを使用してin silicoで予測した。ドナー部位(H36D(+98-11))のいずれかをターゲッティングとする2’-O-メチル-ホスホロチオアート(2’-OMePs)AONを設計した(図1)。AONをmRNA分析前に24時間、150nMの最終濃度で患者及び対照線維芽細胞に送達した。H36D(+98-11)AONによる処理により、エクソン36を欠いた産物の存在量が有意に増加し、患者及び対照線維芽細胞それぞれにおける全長突然変異産物及び野生型産物の量を半分に減少させた(図7)。NMDにより、全長突然変異体の存在量は、対照細胞と比較して、患者において有意に減少した(図7B)。NMDを起こしやすいmRNAからPTCを含まないアイソフォームへの切り替えと一致して、患者線維芽細胞におけるエクソン36を欠く選択的プライシング産物の存在量は、H36D(+98-11)AONによる処理で対照での存在量と同等であった。トランスフェクション試薬単独での処理によっては、どの細胞系統でもCEP290発現は変化しなかった。
【0126】
用量依存性スキッピング効率を評価するために、患者及び対照線維芽細胞を、用量を増加させるH36D(+98-11)AONにより24時間処理した。これにより、エクソン36を欠く選択的スプライス産物の量が、75nmol/lのAON濃度でほぼ全ての細胞系統において最大に達したことが明らかになった(図8A)。この濃度において、処理時間に伴った選択的スプライス産物及びCEP290タンパク質の蓄積が観察された(図8B図8C及び図8D)。
【0127】
CEP290エクソン36及びスプライシングレギュラトリーエレメント周辺のRNAコンフォメーションを、スプライススイッチングAONを設計するために、m-foldプログラム及びESEfinder3.0プログラムを使用して、in silicoで予測した。ドナー部位(H36D(+98-11))及びエクソンスプライシングエンハンサー領域(H36ESE(+63+84))をターゲッティングする2’-O-メチル-ホスホロチオアート(2’-OMePs)AONを設計した。AONを患者及び対照線維芽細胞に150nMの最終濃度で送達し、トランスフェクションされた細胞をmRNA分析前に24時間培養中で維持した。H36ESE(+63+84)での処理は、エクソン36を欠く転写産物の相対存在量に影響を及ぼさなかったが、H36D(+98-11)AONによるトランスフェクションにより、エクソン36を欠く産物の存在量を統計的に有意に増加させ、患者及び対照線維芽細胞それぞれにおける全長突然変異産物及び野生型産物の量を半分に減少させた(図10)。NMDにより、全長突然変異体の存在量は、対照細胞と比較して、患者において有意に減少した(図10)。NMDを起こしやすいmRNAからPTCを含まないアイソフォームへの切り替えと一致して、患者線維芽細胞におけるエクソン36を欠く選択的プライシング産物の存在量は、H36D(+98-11)AONによる処理で対照での存在量と同等であった。トランスフェクション試薬単独での処理によっては、どの細胞系統でもCEP290発現は変化しなかった(図10)。
【0128】
AON媒介スキッピングによりタンパク質切断をバイパスすることが可能となるが、完全なCEP290機能が回復しない可能性がある
75nM H36D(+98-11)AONで48時間処理された対照細胞における全長CEP290 mRNAの存在量は、RT-qPCRにより測定された場合、未処理対照細胞における存在量の約60%であった(図8B)。これは、約40% 全長CEP290プレmRNAがエクソン36のAON媒介スキッピングを受けたことを示す。CEP290タンパク質(全長+Δ36aa)の量は、処理細胞及び未処理細胞において同等であった(図9A及び図9B)。これは、CEP290Δ36aaアイソフォームが安定であることを示唆している。ただし、処理細胞は、中心体におけるCEP290染色の中程度の減少を、統計的に有意差を有して示した(p≦0.05、図9C)が、CP110中心体染色の最小限の変化を示した(p≦0.05、図9D)。繊毛細胞の存在量は、平均軸糸長(3.9μm対3.6μm、p≦0.01、図9E)と同様に、わずかに減少する傾向があった(95.5%対92.5%、図9F)。まとめると、これらの結果から、CEP290Δ36aaアイソフォームにより、対応する野生型が妨害され、中心小体サテライトの解体を介して繊毛運動を損なう可能性があることが示唆される。ウェスタンブロット及び免疫細胞化学分析により決定されたように(図9A図9B及び図9C)、P1細胞における同じ処理により、CEP290Δ36aaタンパク質の存在量における非常に有意な増加が可能となった。興味深いことに、中心体におけるCEP290染色の強度は、処理された対照細胞の強度に達した(図9C)。一方、野生型CEP290を欠いた細胞におけるCEP290Δ36aaアイソフォームの発現レベルの上昇により、CP110特異的中心体染色の分散が増加したことから立証されたように(p≦0.001、図9D)、中心小体サテライトの動態が変化した。一貫して、繊毛細胞の割合は、軸糸長(4.4μm対3.5μm、p≦0.0001、図9E)と同様に、AON処理により減少する傾向があった(89%対79.8%)(図9F)。
【0129】
まとめると、ここでは、明らかに無関係な2名の個体における創始者CEP290 c.4723A>Tナンセンス変異を包含するエクソン36の内因性及び選択的排除により生じるPTCを含まないCEP290 mRNAの発現について報告する。血清枯渇時に、中心体に局在するCEP290アイソフォームが産生され、繊毛が産生されるが、著しい軸糸伸長により実証されるように、それらの産生が不適切であることが示される。
【0130】
実施例2
これまでに、2’OMePSアンチセンススプライススイッチングオリゴヌクレオチドを使用してCEP290エクソン36のドナースプライス部位をターゲットとすることにより、c.4723A>T(p.1575X、エクソン36)突然変異についてホモ接合性の患者由来線維芽細胞における繊毛代謝を改善することができることが実証された。さらに、WT C57BL/6Jマウスでの硝子体内送達経路を使用して、マウスにおけるオルソロガスなエクソン(エクソン35)のAON媒介スキッピングの概念を証明した(46)。以前に報告されたm35ESE AON(46)の硝子体内注入の治療効力を評価するために、ホモ接合性のエクソン35の内因性欠失を有するマウスモデル(Cep290del/del)及び早期終止コドンを有する複合ヘテロ接合性に欠失を有するマウス系統(Cep290del/PTC)を発生させた。ここでは、Cep290del/del及びCep290del/PTCの両マウス系統における網膜変性を報告した。
【0131】
材料及び方法
Cep290マウスモデルの発生
2つのCep290マウスモデルを、Imagine instituteにおいてCRISPR/Cas9システムを使用することにより発生させた。ガイドRNA(sgRNA)をCRISPOR(http://crispor.tefor.net/)により、Cep290遺伝子のコードエクソン35に早期終止コドン(PTC)を導入し、このエクソン(del35)をスキッピングするようにそれぞれ設計した。C57BL/6Jの4週齢メスマウスを、46時間~48時間の間隔で5IU PMSG(SYNCRO-PART(登録商標)PMSG 600 UI, Ceva)、続けて、5IU hCG(Chorulon 1500 UI, Intervet)の腹腔内注射により過剰排卵させ、C57BL/6Jのオスマウスと交配させた。翌日、接合体を卵管から回収し、ヒアルロニダーゼ(H3884, Sigma-Aldrich)に暴露して、卵丘細胞を除去し、ついで、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内のM2培地(M7167, Sigma-Aldrich)中に入れた。SgRNAをcas9(WT)タンパク質とハイブリダイゼーションさせ、C57Bl/6J接合体の前核に注入した。生存接合体をKSOM培地(MR-106-D, Merck-Millipore)に入れ、2細胞期まで一晩培養し、ついで、B6CBAF1偽妊娠メスの卵管に移した。いずれかの突然変異を有するマウスを、エクソン35に隣接する特異的プライマーを使用するサンガー配列決定によるゲノムDNAの遺伝子タイピングにより選択した。ヘテロ接合性マウスをC57BL/6Jマウスと逆交雑させて、潜在的オフターゲットを除去し、子孫を交配させ、ホモ接合性にエクソン35欠失を示す動物(Cep290del/del)及びPTCを有する複合ヘテロ接合性にエクソン35欠失を示す動物をそれぞれ得た。Cep290del/del及びCep290del/PTCマウスをLEAT Facility of Imagine Instituteにおいて、12時間の暗/明サイクル下で飼育し、維持し、その後、生後(P)30、60及び120日目(P30、P60及びP120)並びに18、21及び30日目(P18、P21、P30)それぞれにおいて、電気生理学的及び組織学的分析を行った。同じ齢の野生型C57BL/6Jマウスを全ての分析において対照として使用した。全ての動物手法をフランスにおける動物実験に関するガイドラインに遵守して行い、倫理的原則に従って行った。
【0132】
網膜電図検査
網膜電図(ERG)をげっ歯類用のCelerisTM ERG(Diagnosys LLC, Cambridge, UK)を使用して記録した。簡潔に、マウスを一晩暗順応させ、120mg/kg ケタミン及び16mg/kg キシラジンの筋肉内注射により麻酔した。瞳孔を0.5% トロピカミドの液滴及び10% フェニレフリンの液滴で散瞳させた後、電気的接触を確実にし、角膜の完全性を維持するために、角膜表面に無菌眼科用ゲルを塗布した。動物を、体温を38℃に維持するために、ERG手法全体についてCelerisTM加温支持体上で維持した。刺激及び記録をCelerisTM電極刺激器により生成し、接地電極を皮下に挿入した。暗順応ERGプロトコールは、刺激強度が0.01から3cd.s/m2まで増加させる4工程からなった。光順応ERGを、8分間の光順応後に記録した。明順応記録は、刺激を3から10cd.s/m2まで増加させる2工程からなった。統計的分析を、Prism6ソフトウェアを使用して行い、Cep290マウスモデルと同じ齢の野生型C57BL/6Jマウスとの間のa波振幅における有意差を、post hoc Sidak検定による二元配置分散分析を使用して決定した。
【0133】
組織学
マウスを頚椎脱臼により安楽死させた。眼を摘出し、直ちに4% パラホルムアルデヒドを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で12時間固定した。Imagine instituteの組織学プラットフォームにおいて、眼杯を、自動組織プロセッサー(ASP300S, Leica)を使用して、エタノールの連続勾配中で脱水し、パラフィン中に包埋し、その後、ミクロトーム切片化した(2×HM 340E, Microm France)。6ミクロン 連続切片を長手方向に切断し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。各スライドを、市販の撮像システム(NanoZoomer S210, Hamamatsu)を使用してスキャンし、NDPviewソフトウェアを使用して分析した。外核層の厚みを視神経(ON)からの距離(0.25、0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.75、2及び2.25mm)に対してプロットした。各群からの3匹のマウスをこの分析に含ませた。Cep290マウスモデルのONL厚みを、post hoc Sidak検定(Prism 6.0ソフトウェア, San Diego, CA)による二元配置分散分析により、同じ齢の野生型C57BL/6JマウスのONL厚みと比較した。
【0134】
結果
CRISPR-Cas9技術により、マウスCep290エクソン35に早期終止コドン(c.4749del、p.His1583Glnfs6)が導入され、それぞれ完全なエクソンを欠失させるのに効率的であることが証明された。Cep290PTC/PTC子孫が、Cep290PTC/+ × Cep290PTC/+交配から生まれたのはごくわずかであり、動物は、発達遅延、運動失調、水頭症、小脳発達欠陥、嚢胞腎、重度の網膜縮退を示し、P45を超えて生存できなかった(データを示さず)。対照的に、Cep290PTC/+ × Cep290del/+交配により、Cep290+/+、Cep290+/del、Cep290PTC/+及びCep290del/PTC動物が生まれた。これらの動物は生存し、正常に発達した。Cep290del/del光レセプターのERG応答は、P30の齢から低下し、P120に完全になくなった(図11A)。P30での組織学的分析により、野生型Cep290+l+網膜と比較して、外核層(ONL;光レセプター核)の厚みの中程度の減少が示された(図11B)。ONLの厚みは、P60までに有意に減少し、P120までに1~2層の核に減少した(図11B)。Cep290del/PTC動物における網膜変性は、より早く発生し、より急速に進行した。P14(開眼)時に、Cep290del/PTCマウスからの桿体及び錐体光レセプターの両方のERG応答が、有意に減少した(図11A)。組織学的構造は、この齢では正常に見えたが、ONLの厚さは、眼が開くにつれて非常に急速に減少し、P30では、1列の核のみに減少した(図11B)。
【0135】
結論
ヒト個体では、創始者c.4723A>T変異を含むCEP290遺伝子の35番目のコードエクソン(エクソン36)における切断型突然変異についてのホモ接合性及び複合ヘテロ接合性により、先天性又は早期発症かつ重度の非症候性網膜変性(それぞれLCA10及びEOSRD)が引き起こされる。一方、マウスでは、結果から、オルソロガスなエクソンにおける切断突然変異(c.4749del;Cep290PTC/PTC)についてのホモ接合性により、4型メッケル症候群(MKS4)を思わせる非常に重度の繊毛経路表現型が引き起こされることが示された。対照的に、リーディングフレームを変化させないエクソン35の欠失についてホモ接合性のマウスは、中等度で分離された網膜表現型を示した。これにより、エクソン35によりコードされる残基を欠くCEP290アイソフォームが幾らかの機能を維持するという見解が支持された。興味深いことに、c.4749delについて複合ヘテロ接合性で欠失を有するマウスは、中等度の眼球外異常を伴うLCAを思わせる重度の網膜疾患からなる中間の表現型を有していた。Cep290PTC/PTCにおける多臓器病変の発症及び重症度により、in vivoでのスプライシングの操作が妨げられるが、Cep290del/PTCモデルが、c.4749delを有するエクソン35のAON媒介スキッピングにより、LCA様疾患からCep290del/del EOSRD表現型への網膜変性を遅らせることができるかどうかを評価するのに理想的に適している(図11)。
【0136】
参考文献
本願全体を通して、種々の参考文献には、本発明が属する最新技術が記載されている。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み入れられる。
【0137】
【表3】



図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A-B】
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A-B】
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
【配列表】
2022530403000001.app
【国際調査報告】