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▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20220622BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20220622BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20220622BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K37/00 D
F25B41/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563254
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020061842
(87)【国際公開番号】W WO2020221784
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】102019206197.4
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーザー クリストフ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】シャドラー ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェトツル マリオ
【テーマコード(参考)】
3H062
3H065
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA16
3H062BB30
3H062CC02
3H062DD01
3H062FF07
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
3H065AA01
3H065BA02
3H065BB18
(57)【要約】
本発明は、ハウジング(4)と、センサ(29)と、ステッピングモータ(6)若しくはブラシレスDCモータと、弁座(7)と、弁座(7)と相互作用する弁本体(8)とを有する膨張弁(1)に関し、ステッピングモータ(6)又はブラシレスDCモータは、ロータ(10)と、ロータ(10)を取り囲むステータとを有し、ロータ(10)は、軸(13)と、永久磁石本体(14)に一体回転するように固定された永久磁石本体(14)とを有し、センサ(29)は、永久磁石本体(14)の軸方向位置及び/又は回転角度を検出するように形成される。このようにして、最適化された設置スペース要件を有すると同時に安価な膨張弁(1)を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(4)と、
センサ(29)と、
ステッピングモータ(6)若しくはブラシレスDCモータと、
弁座(7)と、
前記弁座(7)と相互作用する弁本体(8)とを含み、
前記ステッピングモータ(6)若しくはブラシレスDCモータが、ロータ(10)と、前記ロータ(10)を取り囲むステータとを有し、
前記ロータ(10)が、軸(13)と永久磁石本体(14)とを有し、
前記永久磁石本体(14)が、前記軸(13)に回転固定されて連結されており、
前記センサ(29)が、前記永久磁石本体(14)の軸方向位置及び/又は回転角度を検出するように形成される
ことを特徴とする自動車(3)の空調システム(2)、バッテリー冷却及び/又はオイル冷却のための膨張弁(1)。
【請求項2】
前記永久磁石本体(14)が、ポット状に形成され、信号発生領域(15)及びロータ領域(16)を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
【請求項3】
前記信号発生領域(15)が、前記センサ(29)に対向し、
かつ前記ロータ領域(16)が前記軸(13)を包囲する
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張弁。
【請求項4】
前記軸(13)が、第1長手方向端部領域(17)と第2長手方向端部領域(18)とを有し、
前記第1長手方向端部領域(17)に前記永久磁石本体(14)の信号発生領域(15)が回転固定されて配置され、
前記第2長手方向端部領域(18)に前記弁本体(8)を受け入れるためのめくら穴状凹部(19)を有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の膨張弁。
【請求項5】
前記軸(13)及び前記弁本体(8)が少なくとも部分的に弁本体ガイド(9)内に配置され、
前記軸(13)は、雄ネジ(21)を有し、前記弁本体ガイド(9)は、対応する雌ネジ(22)を有し、又はその逆であって、
前記軸(13)の回転に応答して、前記軸(13)の軸方向の調整が永久磁石本体(14)と共に行われ、
前記弁本体(8)は、これにより、前記弁座(7)上に押し込まれるか、又は弁座(7)から持ち上げられる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の膨張弁。
【請求項6】
前記軸(13)は、前記軸(13)の第1長手方向端部領域(17)において、正の及び/又は物質間結合によって、前記永久磁石本体(14)の信号発生領域(15)に接続され、
前記軸(13)は、前記永久磁石本体(14)のロータ領域(16)に正の及び/又は物質間結合によって接続される
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の膨張弁。
【請求項7】
前記軸(13)が、雄ネジ(21)を有し、
弁本体ガイド(9)が、対応する雌ネジ(22)を有し、又はその逆を有し、
その結果、前記軸(13)の回転に応答して、前記永久磁石本体(14)とは独立して前記軸(13)の軸方向調整が行われ、
前記弁本体(8)が、前記弁座(7)上に押し込まれるか、又は前記弁座(7)から持ち上げられる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の膨張弁。
【請求項8】
前記信号発生領域(15)及び/又は前記永久磁石本体(14)が、前記センサ(29)から一定の距離を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の膨張弁。
【請求項9】
前記軸(13)が、前記永久磁石本体(14)に軸方向に移動可能に支持されている
ことを特徴とする請求項1から4及び8のいずれか1つに記載の膨張弁。
【請求項10】
前記永久磁石本体(14)が、前記永久磁石本体(14)及び前記軸(13)が軸方向の移動方向に連結されるように前記軸(13)に締結されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の膨張弁。
【請求項11】
前記センサ(29)が制御基板(5)に配置され、
スプリット入ポット(25)が設けられ、
前記スプリット入ポット(25)が前記ロータ(10)を囲み、ロータ側湿潤領域(26)をステータ側乾燥領域(27)から分離する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の膨張弁。
【請求項12】
前記ロータ領域(16)には、前記永久磁石本体(14)がいくつかの磁極(28)を有し、これらの磁極が、前記軸(13)から半径方向に離間して軸方向(12)に延びており、かつ円周方向に交番するように付加的に配置されている
ことを特徴とする請求項2から11のいずれか1つに記載の膨張弁。
【請求項13】
前記信号発生領域(15)が、前記永久磁石本体(14)が少なくとも1つの磁極対を有する
ことを特徴とする請求項2から12のいずれか1つに記載の膨張弁。
【請求項14】
前記軸(13)が、前記永久磁石本体(14)の信号発生領域(15)を突き抜けて延びる
ことを特徴とする請求項2から13のいずれか1つに記載の膨張弁。
【請求項15】
ポット状に形成され、信号発生領域(15)とロータ領域(16)とを有し、前記ロータ領域(16)内に、軸方向(12)に延び、円周方向に交互になるように追加配置されたいくつかの磁極(28)を有する
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1つに記載の膨張弁(1)のための永久磁石本体(14)。
【請求項16】
前記永久磁石本体(14)が、前記永久磁石本体(14)の信号発生領域(15)において、少なくとも1つの磁極対を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の永久磁石本体。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか1つに記載の膨張弁(1)と、
圧縮機(33)と、
蒸発器(34)と、
凝縮器(35)と、を備える自動車(3)の空調システム(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の空調システム用膨張弁に関する。また、本発明は、この種の膨張弁及びそれを備える自動車の空調システムのための永久磁石本体に関する。
【背景技術】
【0002】
絞り弁とも呼ばれる膨張弁は、流路断面積を局所的に狭めることによって、貫流する流体の圧力を低下させ、結果として、体積を増大させたり膨張させたりする弁である。空調システム、特に自動車では、このような膨張弁は冷媒の圧力を低下させ、これは通常、実質的に沸騰する液体として膨張弁に侵入する。それにより、膨張弁を通過するときに冷媒の圧力が低下するため、状態が等エンタルピ変化(例えば、液体温度の同時低下を伴う10barから1barの圧力低下)を受ける。弁内の膨張の目標は、液体が低い過熱(静止液体)で蒸発器に到達することである。冷媒は、その後、蒸発器に到達し、そこで、冷媒の液体部分の蒸発プロセスは、周囲領域から熱を吸収し、したがって、蒸発する。蒸発器(熱交換器)を流れる流体又は空気はそれぞれ冷却される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、先行技術から知られている電動膨張弁の場合には、弁位置を検出するために、通常、別個の永久磁石を有し、これらの永久磁石は膨張弁のロータに配置され、追加の組立工数を必要とするだけでなく、追加の設置スペースが必要となるという欠点がある。
【0004】
したがって、本発明は、特にコンパクトな構造によって特徴付けられる、電動膨張弁のための改良された、又は少なくとも別の実施形態を特定する課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、独立請求項1の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
本発明は、弁本体の位置を決める永久磁石を、弁本体の回転を行う永久磁石に一体化し、それにより、全体としてより少ない材料使用を達成するという一般的な考えに基づいているが、特に、位置磁石に現在必要とされる設置スペースの必要性も減らすことを目的としている。本発明による膨張弁は、例えば、空調システム及び/又は自動車のバッテリー冷却又はオイル冷却用の熱交換器(チラー)に使用することができ、ハウジングと、センサと、ステッピングモータ若しくはブラシレスDCモータと、弁座及びそれと相互作用する弁本体とを有する。弁本体は、いわゆる弁ニードルとして形成されることが好ましく、バネによって弁座に対してその閉位置に予張力を加えることができ、この種のバネを公差補償のために特に使用することができる。ステッピングモータ又はブラシレスDCモータは、ロータと、ロータを取り囲むステータ(例えば、ロータを取り囲み、ロータの軸方向に互いに離間して配置された少なくとも2つの電気コイルを含む)とを有する。これにより、ロータの回転によって、弁本体の調整、ひいては膨張弁の開閉が行われ、その後、ロータは弁本体と共に軸方向に調整される。ロータは、永久磁石本体と同様に軸を有し、それに回転的に固定された方法で接続される。軸の回転に応答して、弁座の方向又は弁座から離れる方向に、その軸方向調整が弁本体と共に行われる。永久磁石本体の軸方向位置及び/又は回転角度は、センサを介して検出され、したがって、膨張弁の開放位置又は閉鎖位置がそれぞれ監視される。本発明によれば、軸の回転に必要な永久磁石と、弁本体の位置を検知し、膨張弁の開状態を検知するために必要な永久磁石とを、永久磁石本体に一体化することにより、膨張弁の設置スペースを削減するだけでなく、永久磁石本体の製造に必要な材料使用量を削減することができる、特にコンパクトな構造の永久磁石本体を実現することができる。したがって、本発明による膨張弁は、費用効率が良く、資源を節約し、設置スペースを最適化した方法で製造することができる。
【0007】
本発明の有利な更なる変形例の場合には、永久磁石本体はポット状に形成され、信号発生領域及びロータ領域を有する。好ましくは、信号発生領域は、センサに面し、一方、ロータ領域は、軸を取り囲む。永久磁石本体のロータ領域が、軸の周囲に離間してリング状に配置されることにより、軸の一部を永久磁石本体のロータ領域内に配置することができ、これにより、省スペースで収容することができる。
【0008】
軸は、第1長手方向端部領域と第2長手方向端部領域とを有し、前記第1長手方向端部領域が永久磁石本体の信号発生領域内と共に回転固定されるように配置され、前記第2長手方向端部領域に弁本体を受け入れるためのめくら穴状の凹部を有すると有利である。これによって、特に設置スペースが最適化された実施形態を達成することもできる。
【0009】
軸及び弁本体は、弁本体ガイド内に少なくとも部分的に配置されることが好ましく、軸は、雄ネジを有し、弁本体ガイドは、対応する雌ネジを有する、又はその逆である。したがって、軸の回転に応じて、軸の軸方向調整が永久磁石本体とともに行われ、これにより、弁本体は、弁座に押し付けられるか、又は弁座から持ち上げられる。このようにして、センサは、永久磁石本体の軸方向の調整及び/又は回転を検出することができる。なぜなら、永久磁石本体は、永久磁石本体の回転に応じて、軸と共に軸方向に調整されるからである。言うまでもなく、代替的には、軸が雄ネジを有し、弁本体ガイドが対応する雌ネジを有すること、又はその逆を提供することができ、このとき、軸の回転に応じて、軸の軸方向調整が永久磁石本体とは独立して行われ、これにより、弁本体は、弁座に押し付けられるか、又は弁座から持ち上げられる。このように、センサは、この場合、永久磁石本体の回転のみを検出するが、これは、軸の回転に応答して、永久磁石本体ではなく軸のみが、この場合、軸方向に調整されるが、永久磁石本体は、その位置に軸方向に留まり、センサから同じ距離に留まる。
【0010】
軸の雄ネジ及び対応する雌ネジは、一般に、回転運動が並進運動に変換される場合には、ネジ付スピンドルと類似して考えることができる。ネジ付スピンドルは、ネジ付ロッドで構成され、このときは円筒形の丸棒であって、その上に、単純な用途において台形状、鋭い、又は平らなネジ山が取り付けられている。特に測定値M5×0.25を有する鋭いネジ山は、コスト上の理由から特に有利である。
【0011】
本発明による解決策の有利なさらなる変形例では、ロータを取り囲み、ロータ側湿潤領域をステータ側乾燥領域から分離するスプリット入ポットが設けられる。このように本発明による膨張弁は、いわゆる湿式走行計として、冷媒にロータを配置した場合に、形成することができる。しかしながら、スプリット入ポットによって、比較的敏感なコイル及び制御基板の電子機器を確実に乾燥状態に保つことができ、それによって、それらは保護された方法で配置され、結果として、本発明による膨張弁は、長期間にわたり機能を維持することができる。
【0012】
その信号発生領域において、永久磁石本体は、少なくとも1つの磁極対を有すると有利である。N極及びS極からなる、この種の磁極対は、それぞれ比較的簡単な距離又は範囲測定、及び/又は、例えば3Dホールセンサなどの対応するセンサの膨張弁の開度に直接変換することができる回転角変化を提供する。非接触及びタッチレス距離検出は、この種の3Dホールセンサを介して行うことができ、これは、特に、3Dホールセンサを膨張弁の乾燥領域に配置することができるという大きな利点を提供し、一方、ロータ又は永久磁石本体は、それぞれ、湿潤領域に配置することができる。この種のセンサを介して、単一のセンサによって全ての空間方向を検出することが可能であり、これは、コストの利点をもたらすだけでなく、設置スペースの利点ももたらす。この種のホールセンサは、さらに、それぞれのホールセンサが位置する磁界が一定であっても信号を供給するという大きな利点を有する。これによれば、ホールセンサからのロータの回転位置の角度や距離、ひいては膨張弁の開弁状態を比較的容易に検出することができる。
【0013】
本発明による解決策のさらなる有利な実施形態では、軸は、永久磁石本体の信号発生領域を超えて延びる。これは、本発明による膨張弁の組立体の場合、バネが軸の第2長手方向端部領域の目隠し孔状凹部にまず(任意で)挿入され、続いて弁本体が差し込まれる場合、めくら穴状凹部から弁本体の最大伸長位置を制限するリング要素を、めくら穴状凹部に押し込むこともできるという大きな利点を提供する。この種のリング型要素での押付は、軸が永久磁石本体に支持されていないため、永久磁石本体を超えて延びる軸の場合には比較的容易に可能な迫台に押し付けなければならず、この場合、軸は永久磁石本体に支持されず、対応する迫台に直接支持されなければならない。これにより、ロータの大きな組立体の利点を達成することができる。
【0014】
本発明による解決策のさらなる有利な実施形態では、軸は、その第1長手方向端部領域において、正の及び/又は物質間結合によって、永久磁石本体の信号発生領域に接続される。これにより、例えば、軸は、対応する凹部又はローレット又はカラーをそれぞれ有し、対応する永久磁石本体の信号発生領域は、それと相補的に形成された負の輪郭を有することが考えられる。これにより、永久磁石本体と軸との間の確実な接続が達成され、この接続は、例えば接着剤を使用することによって付加的に補助することができる。永久磁石の軸と信号発生領域との間の比較的単純な正の及びトルク伝達接続は、例えば、軸における非円形カラーによって達成することができる。
【0015】
本発明はさらに、ポット状に形成され、ポット底部を形成する信号発生領域と、ポット壁を形成するロータ領域とを有し、そのロータ領域に、軸方向に延在し、円周方向に交互に追加的に配置された複数の磁極を有する、先の段落で説明した膨張弁用の永久磁石本体を特定する一般的な概念に基づく。この種の永久磁石本体は、それによって、予め製造された組立体として製造することができ、又は2つの部品として調達することができ、2つの部品は、対応する軸に確実に比較的容易に取り付けることができ、確実に軸に接続することができる。2つのハーフシェルを備えるこの変形例の場合、又は永久磁石本体の完全に製造された、すなわち1部品バージョンの場合には、永久磁石の信号発生領域における軸の回転固定のために、付加的に接着剤を使用することができる。ロータ領域のために、さらに、軸の大部分だけでなく、また、ニードル形状の弁本体の少なくとも一部だけでなく、その中の弁本体ガイドの少なくとも一部も受け入れることができ、したがって、それを特に設置スペースを最適化した方法で同様に配置することができる、特にコンパクトな構造の磁石は、本発明による、この種の永久磁石本体によって作成することができる。
【0016】
本発明は、さらに、前述の段落に記載された膨張弁の利点を空調システムに生かすことができるように、前述の段落に記載された圧縮機、蒸発器、凝縮器、及び膨張弁を備える自動車の空調システムを規定するという一般的な概念に基づく。
【0017】
本発明は、このような膨張弁を、車両の空調システムと組み合わせて、又は独立した冷却回路において、熱交換器(チラー冷媒・冷却水回路)及び凝縮器によって、オイル冷却又はバッテリー冷却システムに使用するという考えにさらに基づいている。
【0018】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項から、図面から、及び図面に基づいた対応する図の説明から得られる。
【0019】
上述の特徴及び以下に説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、各特定の組合せのみならず、他の組合せ又は単独で、用いることができることは、言うまでもない。
【0020】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、図面に示され、以下の説明でより詳細に説明される。ここで、同一の参照符号は、同一、類似又は機能的に同一の構成を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による膨張弁を示す断面図である。
図2】本発明による永久磁石本体を示す詳細断面図である。
図3】本発明による膨張弁を備える空調システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1によれば、本発明に係る、自動車3(図3参照)の空調システム2用の膨張弁1は、ハウジング4と、センサ29と、制御基板5と、ステッピングモータ6又はブラシレスDCモータと、弁座7と、弁座7と相互作用する弁本体8と、ハウジング4にしっかりと接続された弁本体ガイド9とを有する。この場合、ステッピングモータ6又はブラシレスDCモータは、ロータ10と、ロータ10を取り囲み、ステータを形成する少なくとも2つのコイル11とを有する。軸方向12から見て、コイル11は、それによって互いにオフセット又は離間して配置される。ロータ10は、軸13と永久磁石本体14とを有し、永久磁石本体14は、回転固定された方法(特に図2を参照)で軸13に接続され、ポット形状のように形成されることが好ましく、信号発生領域15及びロータ領域16を有し得る。これにより、信号発生領域15は、制御基板5又はセンサ29にそれぞれ対向し、一方、ロータ領域16は、軸13の大部分を取り囲む。本発明によれば、センサ29は、永久磁石本体14の軸方向位置及び/又は回転角度を検出するように形成されている。図示の場合には、軸13も信号発生領域15の領域において永久磁石本体14に囲まれている。軸13は、第1長手方向端部領域17及び第2長手方向端部領域18(図2も参照)を有し、特に、回転固定された方法で一体固定にされ、永久磁石本体14の信号発生領域15内に前記第1長手方向端部領域17を有し、さらに、前記第2長手方向端部領域18に、弁本体8を受け入れるためのめくら穴状凹部19及びバネ20を有し、これらは、弁本体8に、弁座7に対する長手方向の予張力を与える。
【0023】
これにより、特に図1から理解できるように、軸13及び弁本体8は、弁本体ガイド9内に少なくとも部分的に配置され、次いで、これは、例えば、押圧又は接着によって、ハウジング4にしっかりと接続される。
【0024】
弁本体8を軸方向12に調整し、これにより本発明による膨張弁1をそれぞれ開閉するために、ロータ10の回転が行われ、軸方向調整は、好ましくは、軸13と弁本体ガイド9との間に配置されたネジ山によって行うことができる。この目的のために、軸13は、雄ネジ21を有し、一方、弁本体ガイド9は、雄ネジ21と相互作用する対応する雌ネジ22を有し、これにより、軸13の回転に応じて、軸13の軸方向調節が永久磁石本体14と一緒に行われ、弁本体8は、このようにして、弁座7に押し付けられるか、又は弁座7から持ち上げられる。これにより、ロータ10の回転は、ステータ又はコイル11にそれぞれ対応する電流を供給することによって行われる。このようにロータ10を回転させると、例えば図1に示す軸方向12の下方に調整され、その際、めくら穴状凹部19に配置されたバネ20が押されて荷重が掛かり、弁本体8に、ハウジング側の弁座7に対する予荷重を与える。ロータ10の反対の回転がコイル11への対応する電流の供給によって行われる場合、ロータ10は軸方向12において上方に調整され、それによってバネ20が弛緩し、弁本体8がめくら穴状凹部19に押し込まれるリング要素23に対してそのカラー24と当接するまで、弁座7に対する弁本体8の接触圧力がまず低減される。この状態でめくら穴状凹部19から弁本体8の最大伸長状態が達成されるので、ロータ10の更なる頂部への調整に応じて弁座7から弁本体8が離れる。
【0025】
次に、軸13の回転に応じて、軸13の軸方向の調整が永久磁石本体14と一緒に、又はそれとは別に行われ、これにより、弁本体8は、弁座7上に押し付けられるか、又は弁座7から持ち上げられ得る。
【0026】
それにより、リング要素23は、めくら穴状凹部19内に押し込むことができ、ここで、弁本体8までの半径方向距離は常に保たれ、その結果、弁本体8は、リング要素23に対して非接触方式で配置される。軸13は、概して、上部領域、すなわち、バネ20よりも上の領域において、弁本体ガイド9内に摺動自在に取り付けることができる。
【0027】
さらに図1に示すように、ロータ10を取り囲むスプリット入ポット25が設けられており、これがロータ側湿潤領域26とコイル側/ステータ側乾燥領域27とを分離していることが分かる。このように、制御基板5は、ステータ又はコイル11と同様に、乾燥領域27内に、このような保護された方法で配置される。
【0028】
本発明に係る永久磁石本体14をより詳細に見ると(特に図2参照)、永久磁石本体14は、そのロータ領域16内に、軸13から半径方向に離間して軸方向12に延びる複数の磁極28(SN)を有し、さらに円周方向に交互に並ぶように配置されていることが分かる。その信号発生領域15において、永久磁石本体14は、図2によると、半円形のN極と半円形のS極とからなる少なくとも1つの磁極対を有する。軸13に対向し、軸13の第1長手方向端部30と3Dホールセンサとの間の距離を検出することができ、これにより膨張弁1の開状態を検出することができるセンサ29、特に3Dホールセンサ(図1参照)が、制御基板5に追加的に配置される。
【0029】
図1及び図2から理解できるように、ロータ10の軸13は、永久磁石本体14の信号発生領域15を貫通して延び、これはさらに、リング要素23の軸13の第2長手方向端部領域18におけるめくら穴状凹部19への圧入に応じて、バネ20及び弁本体8の挿入後に、永久磁石本体14を介してではなく、軸13自体を介してのみ支持が行われるという大きな利点を提供するが、これは、軸13が、図1及び図2による第1長手方向端部30を有する永久磁石本体14の信号発生領域15を越えて延びるためである。
【0030】
永久磁石本体14と軸13との間の接続は、それによって、正の接続及び/又は物質間結合を介して行われ、それによって、軸13は、その第1長手方向端部領域17において、確実な方法で、及び/又は物質間結合によって、永久磁石本体14の信号発生領域15に接続されることが考えられる。さらに、トルク伝達を可能にする確実な接続は、例えば、非円形の確実な接続体31と、それと相補的に形成された永久磁石本体14内の負の輪郭32とによって考えられる。トルク伝達は、永久磁石本体14と軸13との間で、この種の正の接続を介して行われ、それらの間の軸方向の調整を許容することができる。永久磁石本体14と軸13との間の回転固定接続は、接着剤、したがって物質間結合によって追加的に支持することができることは言うまでもない。永久磁石本体14と軸13との間の軸方向の相対調整は、この場合、妨げられるであろう。特にこの場合、永久磁石本体14は、永久磁石本体14及び軸13が軸方向の移動方向に結合されるように軸13に締結されることになる。これにより、例えば、信号発生領域15が、軸13の陽極の接続体31に半径方向に取り付けられた2つの半円形の磁極(南北)からなり、続いて陽極の接続体31に強固に接続されていることが考えられる。
【0031】
軸13は、磁化可能な粒子(フェルム、ネオジム等)が添加されたプラスチック、特に熱可塑性プラスチック、例えばポリアミド6で直接押出コーティングされ、永久磁石本体14がこのようにして製造されることも考えられる。焼結された代替物とは対照的に、これは、高い強度及び軸13への結合という利点を提供する。
【0032】
信号発生領域15とロータ領域16とを1部品の永久磁石本体14に一体化することにより、ロータ10を回転させ、それにより膨張弁1をそれぞれ開閉するために必要なロータ領域16と、膨張弁1の開状態又は閉状態をそれぞれ検出するために必要な信号発生領域15とを、単一の共通の永久磁石本体14に一体化することができ、それにより、永久磁石本体14はよりコンパクトな構造となる。
【0033】
また、一般に、信号発生領域15及び/又は永久磁石本体14が、センサ29から一定の距離を有することも考えられる。このように膨張弁1の調整は、この場合、永久磁石本体14の回転によってのみ行われる。これにより、軸13を永久磁石本体14内で軸方向に可動な方法で支持することができる。
【0034】
本発明による膨張弁1は、本発明による永久磁石本体14と共に、例えば、図3に示すように、圧縮機33、蒸発器34、及び凝縮器35を付加した、この種の空調システム2を備えた自動車3の空調システム2に用いることができる。
【0035】
したがって、本発明による膨張弁1によって、コスト効率が良く、機能的に一体化され、追加的に設置スペースが最適化された膨張弁1を製造することができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】