(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】多孔質集電体上に堆積されたコンフォーマルコーティングを有する電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220622BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20220622BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220622BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20220622BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220622BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220622BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220622BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220622BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220622BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220622BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220622BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220622BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220622BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20220622BHJP
H01G 11/66 20130101ALI20220622BHJP
H01G 11/28 20130101ALI20220622BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/74 C
H01M4/62 Z
H01M4/04 Z
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/485
H01G11/66
H01G11/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563283
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 US2020019651
(87)【国際公開番号】W WO2020219156
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, オリビア エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヘルリング, スチュアート ディー.
(72)【発明者】
【氏名】モヒン, ジェイコブ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】オーラー, ヘイリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】エサリー, サミュエル エル.
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA09
5E078BA26
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA47
5E078BA73
5E078FA04
5E078FA12
5E078FA13
5E078FA14
5E078FA23
5E078FA25
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB08
5H017BB12
5H017BB13
5H017CC05
5H017CC07
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017HH03
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050BA18
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA10
5H050CA11
5H050CA17
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050DA10
5H050DA14
5H050EA08
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA13
5H050GA18
5H050GA22
5H050HA04
(57)【要約】
本発明は、複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体、及び該多孔質集電体の表面の少なくとも一部に存在するコンフォーマルコーティングであって、電気化学的活物質及び電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングを備える、電極に関する。本明細書では、電極を備える蓄電装置、及び電極を作製する方法も開示される。
【選択図】
図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極であって、
複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体と、
前記多孔質集電体の前記表面の少なくとも一部に存在するコンフォーマルコーティングであって、電気化学的活物質及び電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングと、
を備える、電極。
【請求項2】
前記コンフォーマルコーティングが、前記多孔質集電体の前記表面上及び前記開口部内に膜として存在する、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記開口部内に存在する前記膜が、前記開口部に延在する連続膜を含む、請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記開口部内の前記コンフォーマルコーティング膜の厚さが、前記多孔質集電体の前記表面上の前記コンフォーマルコーティング膜の厚さの50%以内である、請求項2に記載の電極。
【請求項5】
前記導電性材料上及び前記開口部内の前記コンフォーマルコーティングの厚さが、0.5ミクロン~1,000ミクロンである、請求項2に記載の電極。
【請求項6】
前記開口部が前記多孔質集電体の前記表面にわたって均一に分布している、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記開口部が500ミクロン以下の直径を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
前記開口部の直径が前記多孔質集電体の厚さの10倍以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記開口部が1,000ミクロン以下の平均最長寸法を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記コンフォーマルコーティングが、前記多孔質集電体の前記表面上に膜として存在し、前記開口部を充填していない、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記多孔質集電体が、アルミニウム、銅、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、導電性炭素、導電性コーティングを有する多孔質基材又は導電性ポリマーを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記電着性バインダがpH依存性レオロジー調整剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項13】
前記電着性バインダがフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項14】
前記電着性バインダが非フッ素化有機膜形成ポリマーを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項15】
前記電気化学的活物質が、LiCoO
2、LiNiO
2、LiFePO
4、LiFeCoPO
4、LiCoPO
4、LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li(NiMnCo)O
2、Li(NiCoAl)O
2、炭素被覆LiFePO
4、硫黄、LiO
2、FeF
2及びFeF
3、アルミニウム、SnCo、Fe
3O
4又はその組み合わせを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項16】
前記電気化学的活物質が、黒鉛、チタン酸リチウム、リン酸バナジウムリチウム、ケイ素、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物、リチウム金属、グラフェン又はその組み合わせを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項17】
前記コンフォーマルコーティングが導電剤をさらに含む、請求項1に記載の電極。
【請求項18】
前記電着性バインダが膜形成ポリマー及び架橋剤を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項19】
前記電極が正極を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項20】
前記電極が負極を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項21】
(a)請求項1のいずれかに記載の電極、
(b)対極、及び
(c)電解質
を備える蓄電装置。
【請求項22】
前記蓄電装置がセルを備える、請求項21に記載の蓄電装置。
【請求項23】
前記蓄電装置が電池パックを備える、請求項21に記載の蓄電装置。
【請求項24】
前記蓄電装置が二次電池を備える、請求項21に記載の蓄電装置。
【請求項25】
前記蓄電装置がキャパシタを備える、請求項21に記載の蓄電装置。
【請求項26】
前記蓄電装置がスーパーキャパシタを備える、請求項21に記載の蓄電装置。
【請求項27】
電極を作製する方法であって、
複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体を、電気化学的活物質及び電着性バインダを含む電着性コーティング組成物を含む浴に少なくとも部分的に浸漬させることと、
前記電着性コーティングから堆積されたコンフォーマルコーティングであって、前記電気化学的活物質及び前記電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングを、前記浴に浸漬させた前記多孔質集電体の一部に電着することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援の通知
本発明は、エネルギー省によって授与された政府契約番号DE-EE0007266の下で政府の支援によって行った。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、多孔質集電体から作製した電池電極、そのような電極を作製する方法及びその電極を含む蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
エレクトロニクス産業では、より小型でより軽量の電池から電力供給される、より小型の装置が製造される傾向がある。炭素質材料などの負極と、リチウム金属酸化物などの正極とを備える電池は、比較的高い出力を供給することができ、比較的軽量であることができる。そのような電極を製造するためのバインダは、通常、集電体に塗布される溶媒系又は水系スラリの形態で負極又は正極と組み合わされて、電極を形成する。いったん塗布されると、結合した成分は、電極内で相互接続性を失わずに、充放電サイクル中の大きな体積膨張及び収縮に耐えられる必要がある。電極中の活性成分の相互接続性が、特に充放電サイクル中の電池性能において極めて重要であるのは、電子が電極を通過しなければならず、リチウムイオン移動度が活性粒子間の電極内の相互接続性を必要とするためである。しかし、溶媒系スラリは、これらのスラリに利用される多くの有機溶媒が毒性及び可燃性であり、本質的に揮発性であり、発癌性であり、リスクを軽減し、環境汚染を低減するための特別な製造管理を伴うため、安全性、健康及び環境上の危険性をもたらす。これに対して、水系スラリは、蓄電装置に含まれる場合、接着性の低い及び/又は性能の低い不十分な電極を生じることが多い。さらに、集電体が電極の総重量を減少させ得る多孔質集電体などの不均一な形状及び/又は組成である場合、溶媒系及び水系スラリを集電体に塗布する従来の方法は困難であり得る。特に発癌性物質の使用及び環境汚染を伴わずに、より低い総重量における、電池性能の向上が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本明細書では、複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体と、多孔質集電体の表面の少なくとも一部に存在するコンフォーマルコーティングであって、電気化学的活物質及び電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングとを備える電極が開示される。
【0005】
本明細書では、(a)複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体と、多孔質集電体の表面の少なくとも一部に存在するコンフォーマルコーティングであって、電気化学的活物質及び電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングとを備える電極、(b)対極、並びに(c)電解質を備える、蓄電装置も開示される。
【0006】
本明細書では、電極を作製する方法であって、複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体を、電気化学的活物質及び電着性バインダを含む電着性コーティング組成物を含む浴に少なくとも部分的に浸漬させること、電着性コーティングから堆積されたコンフォーマルコーティングであって、電気化学的活物質及び前記電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングを、浴に浸漬させた多孔質集電体の一部に電着することを含む、方法もさらに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、表面に複数の開口部を有する例示的なワイヤメッシュの図である。
【
図2】
図2は、2本のワイヤ間の開口部を充填するコンフォーマルコーティングが堆積された、
図1のワイヤメッシュからの2本の隣接するワイヤの断面図である。
【
図3】
図3は、コーティングされたワイヤメッシュの異なる構成要素間の距離を示す追加のグリッド線を有する、
図2の同じ断面図である。
【
図4】
図4は、2本のワイヤ間の開口部を充填しないコンフォーマルコーティングが堆積された、
図1のワイヤメッシュからの2本の隣接するワイヤの断面図である。
【
図5A】
図5Aは、20μmスケールでの本発明の例示的な電極の光学画像である。
【
図5B】
図5Bは、20μmスケールでの本発明の例示的な電極の光学画像である。
【
図6A】
図6Aは、50μmスケールでの本発明の例示的な電極の光学画像であり、未コーティング部分及び縁部プロファイルを示す。
【
図6B】
図6Bは、50μmスケールでの本発明の例示的な電極の光学画像であり、完全コーティング部分を示す。
【
図7A】
図7Aは、5秒の堆積速度でコーティングされた本発明の例示的な電極の断面電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析であり、高倍率(100μmスケール)である。
【
図7B】
図7Bは、5秒の堆積速度でコーティングされた本発明の例示的な電極の断面電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析であり、低倍率(300μmスケール)である。
【
図8A】
図8Aは、10秒の堆積速度でコーティングされた本発明の例示的な電極の断面電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析であり、高倍率(100μmスケール)である。
【
図8B】
図8Bは、10秒の堆積速度でコーティングされた本発明の例示的な電極の断面電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析であり、低倍率(300μmスケール)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
上述のように、本発明は、複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体と、多孔質集電体の表面の少なくとも一部に存在するコンフォーマルコーティングであって、電気化学的活物質及び電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングとを備える、電極に関する。
【0009】
本明細書で使用する場合、「コンフォーマルコーティング」という用語は、下にある基材のトポグラフィ及び幾何学的形状に従う、比較的均一な厚さを有する連続膜を示す。例えば、多孔質基材では、コンフォーマルコーティングは、基材の表面にわたって比較的均一な外観及び厚さを有し、下にある基材表面をマッピングする。コンフォーマルコーティングについては、以下でより詳細に説明する。
【0010】
多孔質集電体は、任意の好適な導電性材料を含み得る。多孔質集電体は、例えば金属、金属合金及び/又はニッケルめっきプラスチックなどの金属化された基材を含み得る。さらに集電体は、例えば炭素繊維又は導電性炭素を含む材料などの複合材料を含む、非金属導電性材料を含み得る。金属又は金属合金は、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル及びその合金を含み得る。例えば金属又は金属合金は、冷間圧延鋼、熱間圧延鋼、ステンレス鋼、亜鉛金属、亜鉛化合物又は亜鉛合金でコーティングした鋼、例えば電気亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、合金化溶融亜鉛めっき鋼及び亜鉛合金でめっきした鋼などの鉄系金属、アルミニウム及び/又は1XXX、2XXX、3XXX、4XXX、5XXX、6XXX、7XXX若しくは8XXXシリーズのアルミニウム合金、並びにA356シリーズのクラッドアルミニウム合金及び鋳造アルミニウム合金、AZ31B、AZ91C、AM60B又はEV31Aシリーズのマグネシウム合金、チタン及び/又はチタン合金、ニッケル及び/ニッケル合金並びに銅及び/又は銅合金を含み得る。他の好適な導電性材料としては、導電性炭素、不織導電性炭素、導電性プライマコーティングでコーティングした材料、多層電池電極を作製するための予め作製した電池電極、導電性多孔質ポリマー及び導電性複合材を含む多孔質ポリマーが挙げられる。多孔質集電体は、炭素コート多孔質アルミニウム又は銅材料などの炭素コート導電性材料も含み得る。
【0011】
多孔質集電体は、ロールツーロールコーティング法で使用できるように可撓性であり得る。例えば、多孔質集電体は、アルミニウム箔又は銅箔と同様の可撓性を有し得る。
【0012】
集電体の形状及び厚さは特に限定されないが、集電体は約0.5~1,000ミクロン、例えば1~500ミクロン、例えば1~400ミクロン、例えば1~300ミクロン、例えば1~250ミクロン、例えば1~200ミクロン、例えば5~100ミクロン、例えば5~75ミクロン、例えば5~50ミクロン、例えば10~25ミクロンの厚さを有することができる。
【0013】
多孔質集電体は、複数の開口部を含む表面を備える。開口部は、機械的手段(例えば集電体への開口部の打ち抜き)を介して集電体に付加され得るか、多孔質集電体を作製するために使用される製造方法(例えば製織、不織又はメッシュ集電体)から生じ得るか、又はそれぞれの組み合わせを含み得る。開口部は、集電体の表面に均一又は不均一に分布させることができる。例えば開口部は、集電体の表面上にパターンとして存在し得るか、又はランダムな配置で存在し得る。
【0014】
開口部は、任意の形状又は形状の組み合わせを含み得る。例えば開口部は概して円形であり、円形又は楕円形の形状を含み得る。又は、開口部は1個またはそれより多くの多角形を含み得る。開口部の形状は、規則的又は不規則的であり得る。
【0015】
開口部のサイズは特に限定されない。このサイズは、コンフォーマルコーティングが開口部に延在して、開口部の空隙全体にわたって膜を形成することができるように十分に小さいことが可能であるか、又は開口部がコンフォーマルコーティングによって充填されないように十分に大きいことが可能である。コンフォーマルコーティングは、開口部が特定のサイズを超える場合、開口部の空隙全体にわたって膜を堆積及び形成しない。開口部が充填されるか否かは、例えば開口部の形状、多孔質集電体の厚さ、選択された多孔質集電体の種類(例えば打ち抜き、メッシュなど)、開口部パターン及び堆積したコーティングの厚さなどの、いくつかの要因に依存する。例えば集電体がワイヤメッシュである場合、コンフォーマルコーティングは、メッシュのワイヤ上に概して均一の厚さで堆積する。開口部サイズが堆積したコーティングの厚さの2倍を超える場合に、堆積したコーティングが開口部を充填しないのは、コーティングが、その形成されたワイヤから開口部内に延伸するためである。開口部が堆積されたコーティング厚さの2倍を超える場合、各ワイヤから延伸するコーティングは開口部の中間にて接しない。例えば74ミクロンの開口部サイズ(多角形の形状を想定)は、37ミクロンの堆積コーティング膜厚で充填又は閉止される。
【0016】
図1は、表面に複数の開口部110を有する例示的なワイヤメッシュ100の図を示す。
図2は、メッシュからの2本の隣接するワイヤ200と、その上に堆積されたコンフォーマルコーティング300との断面図を示し、各ワイヤ200から延伸するコンフォーマルコーティング300は、開口部110にて接すると、2本のワイヤ200の間の開口部110を充填する。
図3は、グリッド線が追加された
図2の同じ断面図であり、グリッド線は、2つの長さ「z」によって表す2本のワイヤ200間の距離、セグメント長「x」によって表す各ワイヤ200の周囲のコンフォーマルコーティング300の厚さ、及びセグメント長Yによって表すワイヤ200の厚さを示す。
図2とは対照的に、
図4は、メッシュからの2本の隣接するワイヤ200と、その上に堆積されたコンフォーマルコーティング300との断面図を示し、各ワイヤ200から延伸するコンフォーマルコーティング300は、開口部110にて接することなく、2本のワイヤ200の間の開口部110を充填しない。これらの図に示すように、コンフォーマルコーティングは金属ワイヤの周囲に均一な厚さを有し、この厚さはコーティングを金属ワイヤの幾何学的形状に適合させ、コーティングされた電極のメッシュパターンを反映している。これは、均一な厚さを有するコーティングを塗布し、下にあるメッシュ(又は他の多孔質集電体)の形状を保持しない(又は形状に適合しない)非電着コーティングとは異なる。
【0017】
概して円形形状を有する開口部は、500ミクロン以下、例えば400ミクロン以下、例えば250ミクロン以下、例えば150ミクロン以下、例えば100ミクロン以下、例えば90ミクロン以下、例えば80ミクロン以下の直径を有し得る。概して円形の開口部は、少なくとも10ミクロン、例えば少なくとも20ミクロン、例えば少なくとも40ミクロン、例えば少なくとも50ミクロン、例えば少なくとも60ミクロン、例えば少なくとも70ミクロン、例えば少なくとも100ミクロンの直径を有し得る。概して円形の開口部は、10~500ミクロン、例えば10~400ミクロン、例えば10~250ミクロン、例えば10~150ミクロン、例えば10~100ミクロン、例えば10~90ミクロン、例えば10~80ミクロン、例えば20~500ミクロン、例えば20~400ミクロン、例えば20~250ミクロン、例えば20~150ミクロン、例えば20~100ミクロン、例えば20~90ミクロン、例えば20~80ミクロン、例えば40~500ミクロン、例えば40~400ミクロン、例えば40~250ミクロン、例えば40~150ミクロン、例えば40~100ミクロン、例えば40~90ミクロン、例えば40~80ミクロン、例えば50~500ミクロン、例えば50~400ミクロン、例えば50~250ミクロン、例えば50~150ミクロン、例えば50~100ミクロン、例えば50~90ミクロン、例えば50~80ミクロン、例えば60~500ミクロン、例えば60~400ミクロン、例えば60~250ミクロン、例えば60~150ミクロン、例えば60~100ミクロン、例えば60~90ミクロン、例えば60~80ミクロン、例えば70~500ミクロン、例えば70~400ミクロン、例えば70~250ミクロン、例えば70~150ミクロン、例えば70~100ミクロン、例えば70~90ミクロン、例えば70~80ミクロン、例えば100~500ミクロン、例えば100~400ミクロン、例えば100~250ミクロン、例えば100~150ミクロンの直径を有し得る。
【0018】
多角形形状を有する開口部は、1,000ミクロン以下、例えば500ミクロン以下、例えば400ミクロン以下、例えば250ミクロン以下、例えば150ミクロン以下、例えば100ミクロン以下、例えば90ミクロン以下、例えば80ミクロン以下の平均最長寸法を有し得る。多角形形状を有する開口部は、少なくとも10ミクロン、例えば少なくとも20ミクロン、例えば少なくとも40ミクロン、例えば少なくとも50ミクロン、例えば少なくとも60ミクロン、例えば少なくとも70ミクロン、例えば少なくとも100ミクロンの平均最長寸法を有し得る。多角形形状を有する開口部は、10~1,000ミクロン、例えば10~500ミクロン、例えば10~400ミクロン、例えば10~250ミクロン、例えば10~150ミクロン、例えば10~100ミクロン、例えば10~90ミクロン、例えば10~80ミクロン、例えば20~1,000ミクロン、例えば20~500ミクロン、例えば20~400ミクロン、例えば20~250ミクロン、例えば20~150ミクロン、例えば20~100ミクロン、例えば20~90ミクロン、例えば20~80ミクロン、例えば40~1,000ミクロン、例えば40~500ミクロン、例えば40~400ミクロン、例えば40~250ミクロン、例えば40~150ミクロン、例えば40~100ミクロン、例えば40~90ミクロン、例えば40~80ミクロン、例えば50~1,000ミクロン、例えば50~500ミクロン、例えば50~400ミクロン、例えば50~250ミクロン、例えば50~150ミクロン、例えば50~100ミクロン、例えば50~90ミクロン、例えば50~80ミクロン、例えば60~1,000ミクロン、例えば60~500ミクロン、例えば60~400ミクロン、例えば60~250ミクロン、例えば60~150ミクロン、例えば60~100ミクロン、例えば60~90ミクロン、例えば60~80ミクロン、例えば70~1,000ミクロン、例えば70~500ミクロン、例えば70~400ミクロン、例えば70~250ミクロン、例えば70~150ミクロン、例えば70~100ミクロン、例えば70~90ミクロン、例えば70~80ミクロン、例えば100~1,000ミクロン、例えば100~500ミクロン、例えば100~400ミクロン、例えば100~250ミクロン、例えば100~150ミクロンの平均最長寸法を有し得る。
【0019】
多孔質集電体の開口部のサイズは、標準米国メッシュ数に対して表されてもよい。標準米国メッシュは、粒状材料の粒径分布を表すために使用される。メッシュ数は、そのサイズ以下の粒子を通過させるメッシュフィルタに存在する開口のサイズに対応する。多孔質集電体は例えば、2,000ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数10、1,700ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数12、1,400ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数14、1,180ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数16、1,000ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数18、850ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数20、710ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数25、600ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数30、500ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数35、425ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数40、355ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数45、300ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数50、250ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数60、212ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数70、180ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数80、150ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数100、125ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数120、105ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数140、90ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数170、75ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数200、63ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数230、53ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数270、44ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数325、37ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数400、25ミクロンの開口部サイズを有するメッシュ数500又はより小さい開口部を有するより大きいメッシュ数を有することができる。
【0020】
開口部は、集電体の表面の表面積の少なくとも10%、例えば表面の表面積の少なくとも20%、例えば表面積の少なくとも30%を構成し得る。開口部は、集電体の表面の表面積の95%以下、例えば85%以下、例えば75%以下を構成し得る。開口部は、集電体の表面の表面積の10%~95%、例えば20%~85%、例えば30%~75%、例えば40%~60%、例えば45~55%を構成し得る。
【0021】
集電体は、コンフォーマルコーティングを堆積させる前に前処理組成物で任意に前処理され得る。本明細書で使用する場合、「前処理組成物」という用語は、集電体と接触すると、集電体表面と反応して、集電体表面を化学的に変化させ、表面に結合して保護層を形成する組成物を示す。前処理組成物は、第IIIB族及び/又は第IVB族金属を含む前処理組成物であり得る。本明細書で使用する場合、「第IIIB族及び/又はIVB族金属」という用語は、例えばHandbook of Chemistry and Physics,63rd edition(1983)に示されているようなCAS元素周期表の第IIIB族又は第IVB族に含まれる元素を示す。適用可能な場合、金属自体が使用され得るが、第IIIB族及び/又はIVB族金属化合物も使用され得る。本明細書で使用する場合、「第IIIB族及び/又はIVB族金属化合物」という用語は、CAS元素周期表の第IIIB族又は第IVB族に含まれる、少なくとも1つの元素を含む化合物を示す。集電体を前処理するための好適な前処理組成物及び方法は、米国特許第第9,273,399号、第4欄60行~第10欄26行に記載されていて、その引用部分は参照により本明細書に組み入れられている。前処理組成物は、正極又は負極を製造するために使用される集電体を処理するために使用され得る。
【0022】
集電体は任意に、コンフォーマルコーティングを堆積させる前にプライマコーティングでコーティングされ得る。プライマコーティングは、炭素系プライマなどの導電性プライマコーティングを含み得る。炭素系プライマは、炭素の任意の導電性同素体、例えばグラフェン、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛など、及びバインダ、例えば導電性無機バインダ、有機ポリマー系バインダ、複合体又はその組み合わせを含み得る。
【0023】
本発明によれば、コンフォーマルコーティングは、多孔質集電体の表面上に連続膜として存在する。膜は、連続膜が開口部に延在してその中に膜を形成するように、開口部内に存在し得る。多孔質集電体の表面上及び集電体の開口部内の膜は、比較的均一な厚さを有し得て、多孔質集電体の表面上及び開口部内のコンフォーマルコーティング膜の厚さは実質的に同じである。例えば、多孔質集電体の表面上及び開口部内のコンフォーマルコーティング膜の厚さに関して、厚さは互いに50%以内、例えば40%以内、例えば30%以内、例えば20%以内、例えば10%以内、例えば5%以内であり得る。
【0024】
コンフォーマルコーティングの電着によって、多孔質集電体に適合する正確な厚さでコーティングを堆積させることができ、厚さは、開口部の一部又は全部をコンフォーマルコーティングで充填するように選択され得る。例えば、電着後に形成されるコンフォーマルコーティングの厚さは、少なくとも0.5ミクロン、例えば1~1,000ミクロン(μm)、例えば5~750ミクロン、例えば10~500μm、例えば20~400ミクロン、例えば25~300ミクロン、例えば50~250μm、例えば75~200μm、例えば100~150ミクロンであり得る。
【0025】
上述のように、電極のコンフォーマルコーティングは、電着性コーティング組成物から多孔質集電体上に電着される。本明細書で使用する場合、「電着性コーティング組成物」という用語は、印加された電位の影響下で導電性基材上に堆積させることができる組成物を示す。電極のコンフォーマルコーティングを製造するために使用される電着性コーティング組成物は、電気化学的活物質及び電着性バインダを含み、それに由来するコンフォーマルコーティングは電気化学的活物質及び電着性バインダを含む。
【0026】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、電着によって電着性コーティング組成物を堆積させることにより、コンフォーマルコーティングが製造できるようになると考えられる。多孔質集電体に電極コーティングを塗布する代表的な方法では、コンフォーマルではないコーティング、即ち開口部及び集電体の表面で著しく異なる厚さを有するコーティングが塗布される。例えばメッシュ集電体上にドローダウン法によって塗布されたコーティングは、一定の厚さのコーティング及び電極を有する電極を生成するが、メッシュのワイヤ上のコーティングの厚さは、開口部内のコーティングの厚さよりも小さく、異なっている。具体的には、開口部内のコーティングは、ワイヤの上部及び下部に塗布されたコーティングの厚さにワイヤ自体の厚さを加えたものに等しくなるのは、その空隙を埋めるワイヤが開口部内に存在しないためである。ワイヤ上のコーティングの厚さと開口部の厚さとの差によって、コーティングされた表面全体の面エネルギー(又は電荷)密度の変動が生じるのは、より厚いコーティング及びより多くの活物質が存在する開口部において、電荷密度が大きくなるためである。電極が正極である場合、集電体の表面でこのように変動する電荷密度によっても、正極が、電極全体がそのようなより高い電荷密度を提供するわけではないことにもかかわらず、より高い電荷密度の領域を処理することができる、より高出力の負極と対となることが必要とされ、このことは好ましくない。コンフォーマルコーティングの電着により、集電体全体に実質的に均一な厚さ及び電極表面全体に実質的に均一な電荷密度を有するコーティングが生じる。
【0027】
電極のコンフォーマルコーティングは、架橋コーティングを含み得る。本明細書で使用する場合、「架橋コーティング」という用語は、電着性バインダの成分分子の官能基が反応して、電着性バインダの成分分子を架橋する共有結合が形成された、熱硬化性コーティングを示す。例えば以下に記載するように、電着性バインダは、膜形成ポリマー及び硬化剤を含み得て、膜形成ポリマーの官能基は、コンフォーマルコーティングの硬化中に、官能基が反応して共有結合を形成するように、硬化剤の官能基と反応性であり得る。以下に記載する電着性バインダの他の成分も、架橋剤及び/又は膜形成ポリマーの官能基と反応性の官能基を有し得て、コーティングの架橋にも役立ち得る。さらに、コンフォーマルコーティングは、架橋されているか否かにかかわらず、固体コーティングでもある。
【0028】
電極のコンフォーマルコーティングは、熱可塑性コーティングも含み得る。本明細書で使用する場合、「熱可塑性」という用語は、成分分子が分子間力によって可逆的に会合し、電着性バインダの成分分子を架橋するための共有結合を形成しない、非熱硬化性コーティングを示す。
【0029】
電気化学的活物質は、形成された電極が正極であるように、正極の活物質として使用するための材料を含み得る。例えば、電気化学的活物質は、リチウムを取り込むことができる材料(リチウムの挿入/脱離による取り込みを含む)、リチウム変換ができる材料、又はその組み合わせを含み得る。リチウムを取り込むことができる電気化学的活物質の非限定的な例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiFePO4、LiCoPO4、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiMnCo)O2、Li(NiCoAl)O2、炭素被覆LiFePO4及びその組み合わせが挙げられる。リチウム変換が可能な材料の非限定的な例としては、LiO2、FeF2及びFeF3、アルミニウム、Fe3O4並びにその組み合わせが挙げられる。
【0030】
電気化学的活物質は、形成された電極が負極であるように、負極の活物質として使用するための材料を含み得る。例えば、電気化学的活物質は、黒鉛、チタン酸リチウム(LTO)、リン酸バナジウムリチウム(LVP)、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物又はその組み合わせを含み得る。
【0031】
電気化学的活物質は、保護コーティングを任意に含み得る。保護コーティングは、例えば、(i)金属酸化物、金属硫化物、若しくは金属硫酸塩などの金属カルコゲン、(ii)金属窒化物などの金属プニクトゲン、(iii)金属フッ化物などの金属ハロゲン化物、(iv)金属酸フッ化物などの金属オキシハロゲン化物、(v)金属酸窒化物、(vi)金属リン酸塩、(vi)金属炭化物、(vii)金属酸炭化物、(viii)金属炭窒化物、(ix)オリビン、(x)NaSICON構造体、(xi)多金属イオン構造体、(xii)金属有機構造体若しくは錯体、(xiii)多金属有機構造体若しくは錯体、又は(xiv)金属炭酸塩などの炭素系コーティングなどの、金属化合物又は金属錯体を含み得る。金属化合物又は金属錯体を形成するために使用され得る金属としては、アルカリ金属、遷移金属、ランタン、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、ガリウム、アルミニウム及びインジウムが挙げられる。金属はまた、ホウ素及び/又は炭素と混合され得る。保護コーティングは、例えば(i)非金属酸化物、(ii)非金属窒化物、(iii)非金属炭窒化物、(iv)非金属フッ化物、(v)非金属有機構造体若しくは錯体、(vi)又は非金属酸フッ化物などの、非金属化合物又は錯体を含み得る。保護コーティングは、例えばチタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア又は炭酸リチウムを含み得る。
【0032】
電気化学的活物質は、電着性コーティング組成物及びそれから形成されたコンフォーマルコーティング中に、電着性組成物又はコンフォーマルコーティングの総固形分重量に対して、少なくとも45重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも91重量%の量で存在し得て、重量%以下、例えば99重量%以下、例えば98重量%以下、例えば95重量%以下の量で存在し得る。電気化学的活物質は、電着性コーティング組成物及びそれから形成されるコンフォーマルコーティング中に、電着性コーティング組成物又はコンフォーマルコーティングの総固形分重量に対して、45重量%~99重量%、例えば55重量%~98重量%、例えば65重量%~98重量%、例えば70重量%~98重量%、例えば80重量%~98重量%、例えば90重量%~98重量%、例えば91重量%~98重量%、例えば91重量%~95重量%、例えば94重量%~98重量%、例えば95重量%~98重量%、例えば96重量%~98重量%の量で存在し得る。
【0033】
上記のように、電着性コーティング組成物は、電着性バインダをさらに含む。電着性バインダは、基材上へのコーティング組成物の電着時に、電気化学的活物質及び他の任意の材料などの電着性コーティング組成物の粒子を互いに結合するのに役立つ。本明細書で使用する場合、「電着性バインダ」という用語は、電着のプロセスによって導電性基材上に堆積させることができるバインダを示す。電着性バインダは、膜形成ポリマーを含み得て、他の任意の成分に加えて、膜形成ポリマーと反応して電着コーティング組成物に硬化する硬化剤をさらに含み得る。電着性バインダは、電着のプロセスによって導電性基材上に堆積させることができる限り特に限定されず、目的の蓄電装置の種類に応じて好適な電着性バインダが選択され得る。
【0034】
電着性バインダの膜形成樹脂は、イオン性膜形成樹脂を含み得る。本明細書で使用する場合、「イオン性膜形成樹脂」という用語は、負に帯電した(アニオン性)イオンを担持する樹脂及び正に帯電した(カチオン性)イオンを担持する樹脂を含む、電荷を担持する任意の膜形成樹脂を示す。したがって、好適なイオン性樹脂として、アニオン性樹脂及びカチオン性樹脂が挙げられる。当業者によって理解されるように、アニオン性樹脂は典型的には、コーティングされる基材が電着性浴中でアノードとして作用する、アニオン性電着性コーティング組成物に使用され、カチオン性樹脂は典型的には、コーティングされる基材が電着性浴中でカソードとして作用する、カチオン性電着性コーティング組成物に使用される。以下でより詳細に説明するように、イオン性樹脂は、アニオン性樹脂又はカチオン性樹脂がそれぞれアニオン性塩基含有樹脂又はカチオン性塩基含有樹脂を含むように、樹脂のイオン性基を含む塩基を含み得る。本発明におけるイオン性膜形成樹脂としての使用に好適な樹脂の非限定的な例としては、アルキド樹脂、アクリル、メタクリル、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル及びポリエステルなどが挙げられる。
【0035】
イオン性膜形成樹脂は、活性水素官能基を任意に含み得る。本明細書で使用する場合、「活性水素官能基」という用語は、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,Vol.49,page 3181(1927)に記載されているZerewitinoff試験によって求められるようなイソシアネートと反応性の基を示し、例えばヒドロキシル基、第一級又は第二級アミノ基、カルボン酸基及びチオール基が挙げられる。
【0036】
上述のように、イオン性樹脂は、アニオン性塩基含有樹脂を含み得る。好適なアニオン性樹脂として、塩基によって少なくとも部分的に中和されてアニオン性塩基含有樹脂を形成し得る負電荷を付与するアニオン性基、例えばカルボン酸基又は亜リン酸基を含む樹脂が挙げられる。活性水素官能基を含むアニオン性塩基含有樹脂は、活性水素含有アニオン性塩基含有樹脂と称され得る。
【0037】
電着性バインダは、アニオン性セルロース誘導体などのイオン性セルロース誘導体を含み得る。アニオン性セルロース誘導体の非限定的な例としては、カルボキシメチルセルロース及びその塩(CMC)が挙げられる。CMCは、無水グルコース環上のヒドロキシル基の一部がカルボキシメチル基で置換されたセルロース性エーテルである。アニオン性セルロース誘導体の非限定的な例としては、米国特許第9,150,736号、第4欄20行から第5欄3行に記載されているものが挙げられ、その引用部分は参照により本明細書に組み入れられている。
【0038】
(メタ)アクリルポリマーの例は、(メタ)アクリルモノマーの混合物を重合することによって調製されるものである。アニオン性(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルカルボン酸の使用からポリマーに導入されるカルボン酸部分を含み得る。好適なアニオン性(メタ)アクリルポリマーの非限定的な例としては、米国特許第9,870,844号、第3欄37行から第6欄67行に記載されているものが挙げられ、その引用部分は参照により本明細書に組み入れられている。
【0039】
本明細書に記載の組成物での使用に好適である他のアニオン性樹脂の非限定的な例としては、米国特許第9,150,736号、第5欄4~41行に記載されているものが挙げられ、その引用部分は参照により本明細書に組み入れられている。
【0040】
上述のように、アニオン性樹脂を水性媒体に可溶化又は分散に適合させる際には、塩基によって少なくとも部分的に中和されることが多い。好適な塩基としては、有機塩基及び無機塩基の両方が挙げられる。好適な塩基の非限定的な例としては、アンモニア、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン又はトリアルキルアミン、例えばエチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン及びシクロヘキシルアミン;モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミン、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン及びジエチルエタノールアミン;モルホリン、例えばN-メチルモルホリン又はN-エチルモルホリンが挙げられる。好適な無機塩基の非限定的な例としては、アルカリ金属又はアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩及び酢酸塩塩基が挙げられ、その具体例としては、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化ナトリウムが挙げられる。樹脂は、樹脂中に存在するアニオン性基の総数に対して、理論的中和の20~200%、例えば40~150%、例えば60~120%で少なくとも部分的に中和され得る。
【0041】
上述のように、イオン性樹脂は、カチオン性塩基含有樹脂を含み得る。好適なカチオン性塩基含有樹脂としては、酸によって少なくとも部分的に中和され得る正電荷を付与してカチオン性塩基含有樹脂を形成し得る、カチオン性基を含有する樹脂、例えばスルホニウム基及びカチオン性アミン基が挙げられる。活性水素官能基を含むカチオン性塩基含有樹脂は、活性水素含有カチオン性塩基含有樹脂と称され得る。
【0042】
本明細書に記載の組成物での使用に好適であるカチオン性樹脂の非限定的な例としては、米国特許第9,150,736号、第6欄29行~第8欄21行に記載されているものが挙げられ、その引用部分は参照により本明細書に組み入れられている。
【0043】
認識されるように、カチオン性樹脂を水性媒体への可溶化又は分散に適合させる際に、樹脂は、例えば酸で処理することによって少なくとも部分的に中和され得る。好適な酸の非限定的な例としては、無機酸、例えばリン酸及びスルファミン酸、並びに有機酸、例えばとりわけ酢酸及び乳酸である。酸以外にも、リン酸二水素ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムなどの塩を使用できる。カチオン性樹脂は、カチオン性基の総数に対して、カチオン性ポリマーの全理論中和当量の少なくとも50%、又は場合によっては少なくとも70%の程度まで中和され得る。可溶化又は分散のステップは、中和された又は部分的に中和された樹脂を水性媒体と組み合わせることによって達成され得る。
【0044】
電着性バインダは、pH依存性レオロジー調整剤を任意に含み得る。pH依存性レオロジー調整剤は、膜形成ポリマー及び/又は電着性バインダの一部又は全部を含み得る。本明細書で使用する場合、「pH依存性レオロジー調整剤」という用語は、組成物のpHに基づいて可変レオロジー効果を有する分子、オリゴマー又はポリマーなどの有機化合物を示す。pH依存性レオロジー調整剤は、組成物のpHの変化によって誘導されるpH依存性レオロジー調整剤の有意な体積変化の原則に基づいて、組成物の粘度に影響を及ぼし得る。例えば、pH依存性レオロジー調整剤は、pH範囲にて可溶性であって、あるレオロジー特性を提供し得て、レオロジー調整剤の体積の減少による組成物の粘度の低下を引き起こす臨界pH値(及びpH依存性レオロジー調整剤の種類に基づいて、そのpHより上又は下)では不溶性であって、合体し得る。pH依存性レオロジー調整剤の存在による、組成物のpHと粘度との間の関係は、非線形であり得る。pH依存性レオロジー調整剤は、電着性コーティング組成物が用いられる電着の種類に応じて、アルカリ膨潤性レオロジー調整剤又は酸膨潤性レオロジー調整剤を含み得る。例えば、アルカリ膨潤性レオロジー調整剤をアニオン電着に使用してもよく、一方、酸膨潤性レオロジー調整剤をカソード電着に使用してもよい。
【0045】
本明細書の量で電着性バインダ中のpH依存性レオロジー調整剤を使用すると、電着による電極の製造が可能になり得る。pH依存性レオロジー調整剤は、イオン性基及び/又はイオン性塩基を含み得るが、そのような基は必要ではない。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、レオロジー調整剤のpH依存性が、電着性コーティング組成物の電着を補助すると考えられるのは、コーティングされる基材の表面における電着浴のpHの、電着浴の残りの部分との有意な差によって、pH依存性レオロジー調整剤がコーティングされる基材の表面又はその近くで体積の有意な減少を受け、コーティングされる基材の表面上で、電着性コーティング組成物の他の成分との、pH依存性レオロジー調整剤の合体が誘発されるためである。例えば、アノード電着におけるアノード表面のpHは、電着浴の残りの部分と比較して有意に低下する。同様に、カソード電着における表面カソードのpHは、電着浴の残りの部分よりも有意に高い。静的状態の電着浴に対する電着中のコーティングされる電極の表面でのpHの差は、少なくとも6単位、例えば少なくとも7単位、例えば少なくとも8単位であり得る。
【0046】
本明細書で使用する場合、「アルカリ膨潤性レオロジー調整剤」という用語は、組成物のpHが上昇するにつれて組成物の粘度を上昇させる(即ち、組成物を増粘する)レオロジー調整剤を示す。アルカリ膨潤性レオロジー調整剤は、約2.5以上、例えば約3以上、例えば約3.5以上、例えば約4以上、例えば約4.5以上、例えば約5以上のpHで粘度を上昇させ得る。
【0047】
アルカリ膨潤性レオロジー調整剤の非限定的な例としては、アルカリ膨潤性エマルジョン(ASE)、疎水性修飾アルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)、スターポリマー及び本明細書に記載のpH値などの低pHにてpH誘発性のレオロジー変化を与える他の材料が挙げられる。アルカリ膨潤性レオロジー調整剤は、エチレン性不飽和モノマーの残基を含む構成単位を有する付加ポリマーを含み得る。例えば、アルカリ膨潤性レオロジー調整剤は、(a)2~70重量%、例えば20~70重量%、例えば25~55重量%、例えば35~55重量%、例えば40~50重量%、例えば45~50重量%のモノエチレン性不飽和カルボン酸、(b)20~80重量%、例えば35~65重量%、例えば40~60重量%、例えば40~50重量%、例えば45~50重量%のC1~C6アルキル(メタ)アクリレート、並びに(c)0~3重量%、例えば0.1~3重量%、例えば0.1~2重量%の架橋性モノマー、及び/又は(d)0~60重量%、例えば0.5から60重量%、例えば10から50重量%のモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの少なくとも1つの残基を含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる構成単位を有する付加ポリマーを含み得て、重量%は付加ポリマーの総重量に基づいている。ASEレオロジー調整剤は、(a)及び(b)を含み得て、(c)を任意にさらに含み得て、HASEレオロジー調整剤は、(a)、(b)及び(d)を含み得て、(c)を任意にさらに含み得る。(c)が存在する場合、pH依存性レオロジー調整剤は、架橋pH依存性レオロジー調整剤と称され得る。酸基が低pHにて高度のプロトン化を有する(即ち、中和されていない)場合、レオロジー調整剤は水に不溶性であり、組成物を増粘しないのに対して、酸がより高いpH値にて実質的に脱プロトン化されている(即ち、実質的に中和されている)場合、レオロジー調整剤は可溶性又は分散性となり(ミセル又はミクロゲルなど)、組成物を増粘する。
【0048】
(a)モノエチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸などのC3~C8モノエチレン性不飽和カルボン酸並びにその組み合わせを含み得る。
【0049】
(b)C1~C8アルキル(メタ)アクリレートは、C1~C4アルキル(メタ)アクリレートなどのC1~C6アルキル(メタ)アクリレートを含み得る。C1~C8アルキル(メタ)アクリレートは、非置換C1~C8アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はその組み合わせを含み得る。
【0050】
(c)架橋性モノマーは、ポリエチレン性不飽和モノマー、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、ビスフェノールAジアリルエーテル、メチレンビスアクリルアミド、アリルスクロースなど、並びにその組み合わせを含み得る。
【0051】
(d)モノエチレン性不飽和アルキル化エトキシレートモノマーは、重合性基、疎水性基並びにポリ(アルキレンオキシド)鎖、例えば約5~150個のエチレンオキシド単位、例えば6~10個のエチレンオキシド単位及び任意に0~5個のプロピレンオキシド単位を有するポリ(エチレンオキシド)鎖の2価ポリエーテル基を有するモノマーを含み得る。疎水性基は、典型的には、炭素数6~22のアルキル基(ドデシル基など)又は炭素数8~22のアルカリール基(オクチルフェノールなど)である。2価ポリエーテル基は、典型的には、疎水性基を重合性基に結合する。2価ポリエーテル基結合基及び疎水性基の例は、ビシクロヘプチル-ポリエーテル基、ビシクロヘプテニル-ポリエーテル基又は分岐C5~C50アルキル-ポリエーテル基であり、ビシクロヘプチル-ポリエーテル基又はビシクロヘプテニル-ポリエーテル基は、1個またはそれより多くの環炭素原子上にて、炭素原子あたり1個又は2個のC1~C6アルキル基によって任意に置換され得る。
【0052】
上記のモノマーに加えて、pH依存性レオロジー調整剤は、他のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。例としては、ヒドロキシル、アミノ、アミド、グリシジル、チオール及び他の官能基などの官能基で置換された置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー;フッ素を含有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー;芳香族ビニルモノマー;などが挙げられる。又は、pH依存性レオロジー調整剤は、そのようなモノマーを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、pH依存性レオロジー調整剤は、モノマーの構成単位が存在するとしても、pH依存性レオロジー調整剤の総重量に対して、0.1重量%未満又は0.01重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、そのモノマーを実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0053】
pH依存性レオロジー調整剤は、アミド、グリシジル又はヒドロキシル官能基を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、アミド、グリシジル又はヒドロキシル官能基が存在するとしても、pH依存性レオロジー調整剤中に存在する官能基の総数に対して1%未満又は0.1%未満の量で存在する場合、pH依存性レオロジー調整剤は、そのような基を実質的に含まない又は本質的に含まない。
【0054】
pH依存性レオロジー調整剤は、上記の量で存在するメタクリル酸、エチルアクリレート及び架橋性モノマーの残基の構成単位を含み得、それから本質的になり得、又はそれからなり得る。
【0055】
pH依存性レオロジー調整剤は、上記の量で存在するメタクリル酸、エチルアクリレート及びモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基の構成単位を含み得、本質的にそれからなり得、又はそれからなり得る。
【0056】
pH依存性レオロジー調整剤は、上記の量で存在するメタクリル酸、エチルアクリレート、架橋性モノマー及びモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーを含み得、それから本質的になり得、又はそれからなり得る。
【0057】
市販のpH依存性レオロジー調整剤としては、アルカリ膨潤性エマルジョン、例えばACRYSOL ASE-60、疎水性修飾アルカリ膨潤性エマルジョン、例えばそれぞれDow Chemical Companyから入手可能なACRYSOL HASE TT-615及びACRYSOL DR-180 HASE、並びに原子移動ラジカル重合によって生成されるものを含むスターポリマー、例えばATRP SolutionsのfracASSIST(登録商標)プロトタイプ2が挙げられる。
【0058】
組成物のpH値の範囲にわたってアルカリ膨潤性レオロジー調整剤の影響を示す例示的な粘度データを、20RPMにて#4スピンドルを使用して操作されるBrookfield粘度計を使用して、アルカリ膨潤性レオロジー調整剤のいくつかの非限定的な例について得た。アルカリ膨潤性レオロジー調整剤ACRYSOL ASE-60、ACRYSOL HASE TT-615及びACRYSOL DR-180 HASEを、脱イオン水の溶液中、固形分4.25%でキャラクタリゼーションした。スターポリマー(fracASSIST(登録商標)プロトタイプ2)は、低pHでのポリマーの溶解度が限られているため、固形分0.81%で調査した。ジメチルエタノールアミン(「DMEA」)を添加することによってpHを調整した。pH値の範囲にわたるセンチポアズ(cps)での粘度測定値を以下の表1に示す。
【表1】
【0059】
表1に示すように、水及び組成物全体の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー調整剤の組成物は、3~12のpH範囲内で3pH単位のpH値の上昇にわたって少なくとも500cpsの粘度の上昇、例えば少なくとも1,000cpsの上昇、例えば少なくとも2,000cpsの上昇、例えば少なくとも3,000cpsの上昇、例えば少なくとも5,000cpsの上昇、例えば少なくとも7,000cpsの上昇、例えば少なくとも8,000cpsの上昇、例えば少なくとも9,000cpsの上昇、例えば少なくとも10,000cpsの上昇、例えば少なくとも12,000cpsの上昇、例えば少なくとも14,000cpsの上昇、又はそれを超える上昇を有し得る。例えば、表1のACRYSOL ASE-60アルカリ膨潤性レオロジー調整剤について示すように、約3.5から約6.5へのpHの上昇は、組成物の粘度の約19,000cpsの上昇をもたらす。水及び組成物全体の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー調整剤の組成物は、対応するpH値の低下を上回る、組成物の粘度の対応する低下をもたらし得る。
【0060】
表1に示すように、重量%が溶液の総重量に基づく、アルカリ膨潤性レオロジー調整剤の4.25重量%溶液は、#4スピンドルを使用して、20RPMで操作されるBrookfield粘度計を使用して測定される場合、約pH4から約pH7まで測定したとき、少なくとも1,000cps、例えば少なくとも1,500cps、例えば少なくとも1,900cps、例えば少なくとも5,000cps、例えば少なくとも10,000cps、例えば少なくとも15,000cps、例えば少なくとも17,000cpsの粘度上昇を有し得る。水及び組成物全体の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー調整剤の組成物は、対応するpH値の低下を上回る、組成物の粘度の対応する低下をもたらし得る。
【0061】
表1に示すように、重量%が溶液の総重量に基づく、アルカリ膨潤性レオロジー調整剤の4.25重量%溶液は、#4スピンドルを使用して、20RPMで操作されるBrookfield粘度計を使用して測定される場合、約pH4から約pH6.5で測定したとき、少なくとも1,000cps、例えば少なくとも1,500cps、例えば少なくとも1,900cps、例えば少なくとも5,000cps、例えば少なくとも10,000cps、例えば少なくとも15,000cps、例えば少なくとも17,000cpsの粘度上昇を有し得る。水及び組成物全体の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー調整剤の組成物は、対応するpH値の低下を上回る、組成物の粘度の対応する低下をもたらし得る。
【0062】
表1に示すように、水と組成物全体の0.81重量%のスターポリマーのアルカリ膨潤性レオロジー調整剤の組成物は、#4スピンドルを使用して、20RPMで操作されるBrookfield粘度計を使用して測定される場合、約pH4から約pH6.5で測定したとき、少なくとも400cps、例えば少なくとも600cps、例えば少なくとも800cps、例えば少なくとも1,000cps、例えば少なくとも1,200cps、例えば少なくとも1,400cps、例えば少なくとも2,000cps、例えば少なくとも2,200cpsの粘度上昇を有し得る。
【0063】
本明細書で使用する場合、「スターポリマー」という用語は、中心コアに連結されたいくつか(3つまたはそれより多数)の直鎖からなる一般構造を有する分岐ポリマーを示す。ポリマーのコアは、原子、分子又は巨大分子であり得る。鎖、即ち「アーム」は、可変長有機鎖を含み得る。アームの長さ及び構造がすべて同等であるスター形状ポリマーは均質であると考えられ、可変長及び構造を有するものは不均質であると考えられる。スターポリマーは、スターポリマーがpH依存性レオロジー修飾を提供できるようにする任意の官能基を含み得る。
【0064】
本明細書で使用する場合、「酸膨潤性レオロジー調整剤」という用語は、高pHにおいて不溶性であり、組成物を増粘させず、より低いpHでは可溶性であり、組成物を増粘させるレオロジー調整剤を示す。酸膨潤性レオロジー調整剤は、約4以下、例えば約4.5以下、例えば約5以下、例えば約6以下のpHにて粘度を上昇させ得る。
【0065】
pH依存性レオロジー調整剤は、電着性バインダ中に、バインダ固形分の総固形分重量に対して、少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも75重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも85重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも93重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば100%の量で存在し得て、100重量%以下、例えば99重量%以下、例えば95重量%以下、例えば93重量%以下の量で存在し得る。pH依存性レオロジー調整剤は、電着性バインダ中に、バインダ固形分の総固形分重量に対して、10重量%~100重量%、例えば20重量%~100重量%、例えば30重量%~100重量%、40重量%~100重量%、50重量%~100重量%、60重量%~100重量%、70重量%~100重量%、75重量%~100重量%、80重量%~100重量%、85重量%~100重量%、90重量%~100重量%、93重量%~100重量%、95重量%~100重量%、例えば50重量%~99重量%、例えば75重量%~95重量%、例えば87重量%~93重量%の量で存在し得る。
【0066】
pH依存性レオロジー調整剤は、電着性コーティング組成物中に、電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、少なくとも0.1重量%、例えば少なくとも0.2重量%、例えば少なくとも0.3重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも1.5重量%、例えば少なくとも2重量%の量で存在し得て、10重量%以下、例えば5重量%以下、例えば4.5重量%以下、例えば4重量%以下、例えば3重量%以下、例えば2重量%以下、例えば1重量%以下の量で存在し得る。pH依存性レオロジー調整剤は、電着性コーティング組成物中に、電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、0.1重量%~10重量%、例えば0.2重量%~10重量%、例えば0.3~10重量%、例えば1重量%~7重量%、例えば1.5重量%~5重量%、例えば2重量%~4.5重量%、例えば3重量%~4重量%の量で存在し得る。
【0067】
本発明によれば、電着性バインダは、フルオロポリマーを任意にさらに含み得る。フルオロポリマーは、電着性コーティング組成物の電着性バインダの一部を構成し得る。フルオロポリマーは、ミセルの形態で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0068】
フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンの残基を含む(コ)ポリマーを含み得る。フッ化ビニリデンの残基を含む(コ)ポリマーの非限定的な例は、ポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)である。本明細書で使用する場合、「ポリフッ化ビニリデンポリマー」としては、ホモポリマー、コポリマー、例えばバイナリーコポリマー及びターポリマー、例えば高分子量ホモポリマー、コポリマー及びターポリマーを含む。そのような(コ)ポリマーとしては、フッ化ビニリデン(二フッ化ビニリデンとしても公知)の残基の少なくとも50モル%、例えば少なくとも75モル%、及び少なくとも80モル%、及び少なくとも85モル%を含有するものが挙げられる。フッ化ビニリデンモノマーは、本発明のフルオロポリマーを製造するために、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、及びフッ化ビニリデンと容易に共重合する任意の他のモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合され得る。フルオロポリマーは、PVDFホモポリマーも含み得る。
【0069】
フルオロポリマーは、少なくとも50,000g/mol、例えば少なくとも100,000g/molの重量平均分子量を有する高分子量PVDFを含み得て、50,000g/mol~1,500,000g/mol、例えば100,000g/mol~1,000,000g/molの範囲に及び得る。PVDFは、例えばArkemaから商標KYNARで、Solvayから商標HYLARで、及びInner Mongolia 3F Wanhao Fluorochemical Co.,Ltd.から市販されている。
【0070】
フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンの残基を含む(コ)ポリマーを含み得る。フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーも含み得る。
【0071】
フルオロポリマーはナノ粒子を含み得る。本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」という用語は、1,000nm未満の粒径を有する粒子を示す。フルオロポリマーは、少なくとも50nm、例えば少なくとも100nm、例えば少なくとも250nm、例えば少なくとも300nmの粒径を有し得て、999nm以下、例えば600nm以下、例えば450nm以下、例えば400nm以下、例えば300nm以下、例えば200nm以下であり得る。フルオロポリマーナノ粒子は、50nm~999nm、例えば100nm~800nm、例えば100nm~600nm、例えば250nm~450nm、例えば300nm~400nm、例えば100nm~400nm、例えば100nm~300nm、例えば100nm~200nmの粒径を有し得る。フルオロポリマーはナノ粒子を含み得るが、より大きな粒子及びナノ粒子とより大きな粒子との組み合わせも使用され得る。本明細書で使用する場合、「粒径」という用語は、フルオロポリマー粒子の平均直径を示す。本開示で言う粒径は、以下の手順によって求めた。アルミニウム走査電子顕微鏡(SEM)スタブに取り付けたカーボンテープのセグメント上にフルオロポリマーを分散させることによってサンプルを調製した。過剰な粒子を圧縮空気でカーボンテープから吹き飛ばした。次いで、サンプルをAu/Pdで20秒間スパッタコーティングした後、高真空下でQuanta 250 FEG SEM(電界放出電子銃走査電子顕微鏡)で分析した。加速電圧は20.00kV、スポットサイズは3.0とした。調製したサンプル上の3つの異なる領域から画像を採取し、ImageJソフトウェアを使用して、合計30個の粒径測定値のために10個のフルオロポリマー粒子の直径を各領域から測定し、合計30個の粒径測定値を一緒に平均して平均粒径を求めた。
【0072】
フルオロポリマーは、電着性バインダ中に、バインダ固形分の総重量に対して、少なくとも15重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば少なくとも50重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%の量で存在し得て、99重量%以下、例えば96重量%以下、例えば95重量%以下、例えば90重量%以下、例えば80重量%以下、例えば70重量%以下、例えば60重量%以下の量で存在し得る。フルオロポリマーは、電着性バインダ中に、バインダ固形分の総重量に対して、15重量%~99重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば40重量%~95重量%、例えば50重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば50重量%~70重量%、例えば50重量%~60重量%の量で存在し得る。
【0073】
フルオロポリマーは、電着性コーティング組成物中に、電着性組成物の総固形分重量に対して、少なくとも0.1重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも1.3重量%、例えば少なくとも1.9重量%の量で存在し得て、10重量%以下、例えば6重量%以下、例えば4.5重量%以下、例えば2.9重量%以下の量で存在し得る。フルオロポリマーは、電着性コーティング組成物中に、電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、0.1重量%~10重量%、例えば1重量%~6重量%、例えば1.3重量%~4.5重量%、例えば1.9重量%~2.9重量%の量で存在し得る。
【0074】
フルオロポリマーのpH依存性レオロジー調整剤に対する重量比は、少なくとも1:20、例えば少なくとも1:2、例えば少なくとも1:1、例えば少なくとも3:1、例えば少なくとも4:1、例えば少なくとも6:1、例えば少なくとも10:1、例えば少なくとも15:1、例えば少なくとも19:1であり得て、20:1以下、例えば15:1以下、例えば10:1以下、例えば6:1以下、例えば4:1以下、例えば3:1以下、例えば1:1以下、例えば1:2以下、例えば1:3以下であり得る。フルオロポリマーのpH依存性レオロジー調整剤に対する重量比は、1:20~20:1、例えば1:2~15:1、例えば1:1~10:1、例えば2:1~8:1、例えば3:1~6:1であり得る。
【0075】
又は、電着性コーティング組成物は、フルオロポリマーを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性コーティング組成物は、フルオロポリマーが存在するとしても、バインダ固形分の総重量に対して、5重量%未満又は0.2重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、フルオロポリマーを実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0076】
電着性バインダは、分散剤を任意にさらに含み得る。分散剤は、フルオロポリマー、電気化学的活物質、及び/又はさらに後述するように、導電剤(存在する場合)の水性媒体中への分散を補助し得る。分散剤は、フルオロポリマー及び/又は電着性コーティング組成物の他の成分、例えば電気化学的活物質、若しくは存在する場合には導電剤と相溶性である、少なくとも1つの相を含み得て、水性媒体と相溶性である少なくとも1つの相をさらに含み得る。電着性コーティング組成物は、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれより多くの異なる分散剤を含み得て、各分散剤は、電着性コーティング組成物の異なる成分の分散を補助し得る。分散剤は、固体の成分(例えば電着性バインダ、例えばフルオロポリマー(存在する場合)、電気化学的活物質及び/又は導電剤)及び水性媒体の両方に相溶性である相を有する任意の物質を含み得る。本明細書で使用する場合、「相溶性」という用語は、経時的に実質的に均質なままである材料が他の物質とブレンドを形成する能力を意味する。例えば、分散剤は、このような相を含むポリマーを含み得る。分散剤及びフルオロポリマーは、存在する場合、共有結合によって結合されていなくてもよい。分散剤は、ミセルの形態で電着性コーティング組成物中に存在し得る。分散剤は、ブロックポリマー、ランダムポリマー、又はグラジエントポリマーの形態であってもよく、ここで分散剤の異なる相は、ぞれぞれポリマーの異なるブロック中に存在するか、ポリマー全体にわたってランダムに含まれるか、又はポリマー主鎖に沿って徐々に高密度若しくは低密度となって存在する。分散剤は、この目的に役立つ任意の好適なポリマーを含み得る。例えばポリマーとしてはとりわけ、エチレン性不飽和モノマーを重合することによって製造される付加ポリマー、ポリエポキシドポリマー、ポリアミドポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリ尿素ポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリ酸ポリマー及びポリエステルポリマーを含み得る。分散剤は、電着性コーティング組成物の電着性バインダの追加の成分としても作用し得る。
【0077】
分散剤は官能基を含み得る。官能基としては、例えば活性水素官能基、複素環基及びその組み合わせを含み得る。本明細書で使用する場合、「複素環基」という用語は、その環内に少なくとも2つの異なる元素を含有する環式基、例えば環構造中に炭素に加えて少なくとも1つの原子、例えば酸素、窒素又は硫黄を有する環式部分を示す。複素環基の非限定的な例としては、エポキシド、ラクタム及びラクトンが挙げられる。さらに、エポキシド官能基が付加ポリマー上に存在する場合、分散剤上のエポキシド官能基はβ-ヒドロキシ官能性酸と後反応させられ得る。β-ヒドロキシ官能性酸の非限定的な例としては、クエン酸、酒石酸及び/又は芳香族酸、例えば3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸が挙げられる。エポキシド官能基の開環反応によって、分散剤上にヒドロキシル官能基が生じる。
【0078】
酸官能基が存在する場合、分散剤は、少なくとも350g/酸当量、例えば少なくとも878g/酸当量、例えば少なくとも1,757g/酸当量の理論酸当量重量を有し得て、17,570g/酸当量以下、例えば12,000g/酸当量以下、例えば7,000g/酸当量以下であり得る。分散剤は、350~17,570g/酸当量、例えば878~12,000g/酸当量、例えば1,757~7,000g/酸当量の理論酸当量重量を有し得る。
【0079】
上述のように、分散剤は付加ポリマーを含み得る。付加ポリマーは、以下に記載されるものなどの1つまたはそれより多くのα,β-エチレン性不飽和モノマーから誘導され得て、その残基を含む構成単位を含み得て、そのようなモノマーの反応混合物を重合することによって調製され得る。モノマーの混合物は、1つまたはそれより多くの活性水素基含有エチレン性不飽和モノマーを含み得る。反応混合物は、複素環基を含むエチレン性不飽和モノマーも含み得る。本明細書で使用する場合、複素環基を含むエチレン性不飽和モノマーは、少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和基と、環構造中に炭素に加えて少なくとも1つの原子、例えば酸素、窒素又は硫黄を有する、少なくとも環式部分を有するモノマーを示す。複素環基を含むエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、とりわけエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、ビニルピロリドン及びビニルカプロラクタムが挙げられる。反応混合物は、他のエチレン性不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸のアルキルエステル及び後述の他のものをさらに含み得る。
【0080】
付加ポリマーは、1つまたはそれより多くの(メタ)アクリルモノマーの残基を含む構成単位を含む(メタ)アクリルポリマーを含み得る。(メタ)アクリルポリマーは、1つまたはそれより多くの(メタ)アクリルモノマーを含むα,β-エチレン性不飽和モノマーと任意の他のエチレン性不飽和モノマーとの反応混合物を重合することによって調製され得る。本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリルモノマー」という用語は、アクリル酸、メタクリル酸、並びにアクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステルなどを含む、それに由来するモノマーを示す。本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、1つまたはそれより多くの(メタ)アクリルモノマーの残基を含む構成単位から誘導された、又はそれを含むポリマーを示す。モノマーの混合物は、1つまたはそれより多くの活性水素基含有(メタ)アクリルモノマー、複素環基を含むエチレン性不飽和モノマー、及び他のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。(メタ)アクリルポリマーはまた、反応混合物中のグリシジルメタクリレートなどのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを用いて調製されてもよく、得られたポリマー上のエポキシ官能基は、β-ヒドロキシ官能酸、例えばクエン酸、酒石酸及び/又は3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸と後反応されて、(メタ)アクリルポリマー上にヒドロキシル官能基を生成してもよい。
【0081】
付加ポリマーは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の残基を含む構成単位を含み得る。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の非限定的な例としては、アクリル酸及びメタクリル酸などの最大10個の炭素原子を含有するものが挙げられる。他の不飽和酸の非限定的な例は、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸又はその無水物、フマル酸及びイタコン酸である。また、これらのジカルボン酸のハーフエステルが用いられ得る。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、少なくとも1重量%、例えば少なくとも2重量%、例えば少なくとも5重量%を構成し得て、50重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、1重量%~50重量%、2重量%~50重量%、例えば2重量%~20重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%、例えば1重量%~5重量%を構成し得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に対して、1重量%~50重量%、2重量%~50重量%、例えば2重量%~20重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%、例えば1重量%~5重量%の量のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸を含む反応混合物から誘導され得る。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の残基を含む構成単位を分散剤に含めることにより、分散に安定性を提供するのに役立ち得る、少なくとも1つのカルボン酸基を含む分散剤が得られる。
【0082】
付加ポリマーは、アルキル基に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位を含み得る。アルキル基に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの非限定的な例としては、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル基中に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば少なくとも45重量%、例えば少なくとも50重量%を構成し得て、98重量%以下、例えば96重量%以下、例えば90重量%以下、例えば80重量%以下、例えば75重量%以下であり得る。アルキル基中に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、20重量%~98重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、例えば40重量%~80重量%、例えば45重量%~75重量%を構成し得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に対して、20重量%~98重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、例えば40重量%~80重量%、例えば45重量%~75重量%の量の、アルキル基中に1~3個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを含む反応混合物から誘導され得る。
【0083】
付加ポリマーは、アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位を含み得る。アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの非限定的な例としては、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート及びドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、少なくとも2重量%、例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、例えば少なくとも20重量%を構成し得て、70重量%以下、例えば60重量%以下、例えば50重量%以下、例えば40重量%以下、例えば35重量%以下であり得る。アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、2重量%~70重量%、例えば2重量%~60重量%、例えば5重量%~50重量%、10重量%~40重量%、例えば15重量%~35重量%を構成し得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に対して、2重量%~70重量%、例えば2重量%~60重量%、例えば5重量%~50重量%、10重量%~40重量%、例えば15重量%~35重量%の量の、アルキル基中に4~18個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを含む反応混合物から誘導され得る。
【0084】
付加ポリマーは、ヒドロキシアルキルエステルの残基を含む構成単位を含み得る。ヒドロキシアルキルエステルの非限定的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも2重量%を構成し得て、30重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。ヒドロキシアルキルエステルの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%を構成し得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に対して、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%の量のヒドロキシアルキルエステルを含む反応混合物から誘導され得る。ヒドロキシアルキルエステルの残基を含む構成単位を分散剤に含めると、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む分散剤が得られる(ただし、ヒドロキシル基は他の方法によって含まれ得る)。ヒドロキシアルキルエステルの包含から生じる(又は他の手段によって組み込まれる)ヒドロキシル基は、ヒドロキシル基と反応性の官能基、例えばアミノプラスト、フェノールプラスト、ポリエポキシド及びブロック化ポリイソシアネートを含む別個に付加された架橋剤と、又はヒドロキシル基と反応性である基を有する自己架橋性モノマーが付加ポリマーに組み込まれるときには、付加ポリマー中に存在するN-アルコキシメチルアミド基若しくはブロック化イソシアナト基と反応し得る。
【0085】
付加ポリマーは、複素環基を含むエチレン性不飽和モノマーの残基を含む構成単位を含み得る。複素環基を含むエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、とりわけエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、例えばグリシジル(メタ)アクリレートビニルピロリドン及びビニルカプロラクタムが挙げられる。複素環基を含むエチレン性不飽和モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも8重量%を構成し得て、99重量%以下、例えば50重量%以下、例えば40重量%以下、例えば30重量%以下、例えば27重量%以下であり得る。複素環基を含むエチレン性不飽和モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、0.5重量%~99重量%、例えば0.5重量%~50重量%、例えば1重量%~40重量%、例えば5重量%~30重量%、8重量%~27重量%を構成し得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に対して、0.5重量%~50重量%、例えば1重量%~40重量%、例えば5重量%~30重量%、8重量%~27重量%の量の複素環基を含むエチレン性不飽和モノマーを含む反応混合物から誘導され得る。
【0086】
上記のように、付加ポリマーは自己架橋性モノマーの残基を含む構成単位を含み得て、付加ポリマーは自己架橋性付加ポリマーを含み得る。本明細書で使用する場合、「自己架橋性モノマー」という用語は、分散剤上に存在する他の官能基と反応して、分散剤又は1を超える分散剤の間の架橋になり得る官能基を包含するモノマーを示す。自己架橋性モノマーの非限定的な例としては、N-アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドモノマー、例えばN-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、並びにブロック化イソシアネート基を含有する自己架橋性モノマー、例えばイソシアナト基が硬化温度にて脱ブロック化される化合物と反応(「ブロック化」)する、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。好適なブロック化剤の例としては、ε-カプロラクトン及びメチルエチルケトオキシムが挙げられる。自己架橋性モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも2重量%を構成し得て、30重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。自己架橋性モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%を構成し得る。付加ポリマーは、反応混合物に使用される重合性モノマーの総重量に対して、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%の量の自己架橋性モノマーを含む反応混合物から誘導され得る。
【0087】
付加ポリマーは、他のα,β-エチレン性不飽和モノマーの残基を含む構成単位を含み得る。他のα,β-エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン及びビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルなどの有機ニトリル類;アリルクロライド及びアリルシアニドなどのアリルモノマー;1,3-ブタジエン及び2-メチル-1,3-ブタジエンなどのモノマージエン;(自己架橋性であってもよい)アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)などのアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。付加ポリマーの総重量に対して他のα,β-エチレン性不飽和モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも2重量%を構成し得て、30重量%以下、例えば20重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。他のα,β-エチレン性不飽和モノマーの残基を含む構成単位は、付加ポリマーの総重量に対して、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%を構成し得る。付加ポリマーは、反応混合物中で使用される重合性モノマーの総重量に対して、0.5重量%~30重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%、2重量%~10重量%、例えば2重量%~5重量%の量の他のα,β-エチレン性不飽和モノマーを含む反応混合物から誘導され得る。
【0088】
モノマー及び相対量は、得られた付加ポリマーが100℃以下、典型的には-50℃~+70℃、例えば-50℃~0℃のTgを有するように選択され得る。低温にて許容可能な電池性能を確保するために、0℃未満のより低いTgが所望であり得る。
【0089】
付加ポリマーは、重合性モノマーを溶媒又は溶媒の混合物に溶解させて、変換が完了するまでフリーラジカル開始剤の存在下で重合させる、従来のフリーラジカル開始溶液重合技術によって調製され得る。付加ポリマーを製造するために使用される溶媒は、任意の好適な有機溶媒又は溶媒の混合物を含み得る。
【0090】
フリーラジカル開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(α,γ-メチルバレロニトリル)、過安息香酸t-ブチル、過酢酸t-ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-t-ブチル及び炭酸t-アミルパーオキシ2-エチルヘキシルなどのモノマーの混合物に可溶なものである。
【0091】
任意に、アルキルメルカプタン、例えばt-ドデシルメルカプタン;メチルエチルケトンなどのケトン類、クロロホルムなどのクロロ炭化水素類などの、モノマーの混合物に可溶性である連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤は、分子量を制御して、様々なコーティング用途に必要な粘度を有する生成物を与える。
【0092】
付加ポリマーを調製するために、溶媒を最初に加熱還流し、フリーラジカル開始剤を含有する重合性モノマーの混合物を還流溶媒にゆっくり添加してもよい。次いで、反応混合物を、重合性モノマーの混合物の総重量に対して、遊離モノマー含有量を1.0%未満、通常0.5%未満などに減少させるように重合温度に保持する。
【0093】
本発明の電着性コーティング組成物に使用するために、上記のように調製された分散剤は、通常、約5,000~500,000g/mol、例えば10,000~100,000g/mol、及び25,000~50,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0094】
分散剤は、バインダ固形分の総重量に対して、2重量%~35重量%、例えば5重量%~32重量%、例えば8重量%~30重量%、例えば10重量%~30重量%、例えば15重量%~27重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0095】
電着性バインダは、非フッ素化有機膜形成ポリマーを任意にさらに含み得る。非フッ素化有機膜形成ポリマーは、本明細書に記載のpH依存性レオロジー調整剤とは異なる。非フッ素化有機膜形成ポリマーとしては、多糖類、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、キサンタンガム、そのコポリマー又はその組み合わせを含み得る。
【0096】
非フッ素化有機膜形成ポリマーは、存在するとしても、バインダ固形分の総重量に対して、0重量%~90重量%、例えば10重量%~80重量%、例えば20重量%~60重量%、例えば20重量%~50重量%、例えば25重量%~40重量%の量で存在し得る。
【0097】
非フッ素化有機膜形成ポリマーは、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、少なくとも0重量%~9.9重量%、例えば0.1重量%~5重量%、例えば0.2重量%~2重量%、例えば0.3重量%~0.5重量%の量で存在し得る。
【0098】
電着性コーティング組成物はまた、本明細書に記載の非フッ素化有機膜形成ポリマーのいずれか又はすべてを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。
【0099】
上述のように、電着性バインダは、架橋剤を任意にさらに含み得る。架橋剤は、水性媒体に可溶性又は分散性であり、pH依存性レオロジー調整剤の活性水素基(pH依存性レオロジー調整剤がそのような基を含む場合)及び/又は組成物中に存在する(存在する場合)活性水素基を含む任意の他の樹脂性膜形成ポリマーと反応性であるべきである。好適な架橋剤の非限定的な例としては、アミノプラスト樹脂、ブロックポリイソシアネート、カルボジイミド及びポリエポキシドが挙げられる。
【0100】
架橋剤として使用されるアミノプラスト樹脂の例は、メラミン又はベンゾグアナミンなどのトリアジンをホルムアルデヒドと反応させることによって形成されるものである。これらの反応生成物は、反応性N-メチロール基を含有する。通常、これらの反応性基を、メタノール、エタノール、ブタノール(その混合物を含む)でエーテル化して、その反応性を緩和する。アミノプラスト樹脂の化学調製及び使用については、“The Chemistry and Applications of Amino Crosslinking Agents or Aminoplast”,Vol.V,Part II,page 21 ff.,edited by Dr.Oldring;John Wiley&Sons/Cita Technology Limited,London,1998を参照のこと。これらの樹脂は、MAPRENAL MF 980などの商標MAPRENAL(登録商標)で、及びCytec Industriesから入手可能なCYMEL 303及びCYMEL 1128などの商標CYMEL(登録商標)で市販されている。
【0101】
ブロック化ポリイソシアネート架橋剤は、典型的には、イソシアナト基がε-カプロラクタム及びメチルエチルケトオキシムなどの物質と反応する(「ブロックされる」)イソシアナト二量体及びその三量体を含む、トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートである。硬化温度において、ブロック化剤は、(メタ)アクリルポリマーと結合したヒドロキシル官能基と反応性であるイソシアネート官能基を脱ブロック化して露出させる。ブロック化ポリイソシアネート架橋剤は、DESMODUR BLとしてCovestroから市販されている。
【0102】
カルボジイミド架橋剤は、モノマー形態若しくはポリマー形態又はその混合物であり得る。カルボジイミド架橋剤とは、以下の構造:
R-N=C=N-R’
を有する化合物を示し、式中、R及びR’はそれぞれ個別に脂肪族基、芳香族基、アルキル芳香族基、カルボン酸基又は複素環基を含み得る。市販のカルボジイミド架橋剤の例としては、日清紡ケミカル社から入手できる商品名カルボジライトで販売されているもの、例えばカルボジライトV-02-L 2、カルボジライトSV-02、カルボジライトE-02、カルボジライトSW-12 G、カルボジライトV-10及びカルボジライトE-05が挙げられる。
【0103】
ポリエポキシド架橋剤の例は、グリシジルメタクリレートを他のビニルモノマーと共重合させたものから調製したエポキシ含有(メタ)アクリルポリマーなどのエポキシ含有(メタ)アクリルポリマー、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの多価フェノールのポリグリシジルエーテル、並びに3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペートなどの脂環式ポリエポキシドである。
【0104】
架橋剤は、電着性コーティング組成物中に、0重量%~30重量%、例えば5重量%~20重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~12重量%の量で存在し得て、重量%はバインダ固形分の総重量に基づいている。
【0105】
架橋剤は、電着性コーティング組成物中に、0重量%~2重量%、例えば0.1重量%~1重量%、例えば0.2重量%~0.8重量%、例えば0.3重量%~0.5重量%の量で存在し得て、重量%は電着性コーティング組成物の総固形分重量に基づいている。
【0106】
又は、電着性コーティング組成物は、架橋剤を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。架橋剤が存在するとしても、バインダ固形分の総重量に対して、3%未満又は1%未満の量で存在する場合、電着性コーティング組成物は、それぞれ、架橋剤を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0107】
電着性コーティング組成物は、接着促進剤を任意にさらに含み得る。接着促進剤は、酸官能性ポリオレフィン又は熱可塑性材料を含み得る。
【0108】
酸官能性ポリオレフィン接着促進剤は、エチレン-アクリル酸コポリマー又はエチレン-メタクリル酸コポリマーなどのエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマーを含み得る。エチレン-アクリル酸コポリマーは、エチレン-アクリル酸コポリマーの総重量に対して、10重量%~50重量%、例えば15重量%~30重量%、例えば17重量%~25重量%、例えば約20重量%のアクリル酸、及びエチレン-アクリル酸コポリマーの総重量に対して、50重量%~90重量%、例えば70重量%~85重量%、例えば75重量%~83重量%、例えば約80重量%のエチレンを含む構成単位を含み得る。このような付加ポリマーの市販例としては、Dow Chemical Companyから入手可能なPRIMACOR5980iが挙げられる。
【0109】
接着促進剤は、(接着促進剤を含む)バインダ固形分の総重量に対して、1重量%~60重量%、例えば10重量%~40重量%、例えば25重量%~35重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0110】
又は、電着性コーティング組成物は、接着促進剤を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。接着促進剤が存在するとしても、バインダ固形分の総重量に対して、1%未満又は0.1%未満の量で存在する場合、電着性コーティング組成物は、それぞれ、接着促進剤を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0111】
電着性コーティング組成物は、硬化剤と活性水素含有樹脂との間の反応を触媒する触媒を任意に含み得る。好適な触媒としては、制限なく、有機スズ化合物(例えばジブチルスズオキシド及びジオクチルスズオキシド)及びその塩(例えばジブチルスズジアセテート)、他の金属酸化物(例えばセリウム、ジルコニウム及びビスマスの酸化物)及びその塩(例えばビスマススルファメート及びビスマスラクテート)が挙げられる。触媒は、グアニジンなどの有機化合物も含み得る。例えば、グアニジンは、米国特許第7,842,762号、第1欄53行~第4欄18行及び第16欄62行~第19欄8行に記載されているような環状グアニジンを含み得て、その引用部分は参照により本明細書に組み入れられている。又は、組成物は、刊行物国際公開第2019066029A1号に記載されているように、イミダゾールに主成分とする金属を含まない触媒を含み得る。触媒は存在する場合、バインダ固形分の総重量に対して、重量で0.01重量%~5重量%、例えば重量で0.1重量%~2重量%の量で存在し得る。
【0112】
又は、電着性コーティング組成物は、触媒を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。触媒が存在するとしても、触媒がバインダ固形分の総重量に対して、0.01%未満又は0.001%未満の量で存在する場合、それぞれ、電着性コーティング組成物は、触媒を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0113】
本明細書で使用する場合、「バインダ固形分」という用語は、「樹脂固形分」と同義に使用されて得て、上記のものなどの任意の膜形成ポリマー及び存在する場合は、硬化剤を含む。例えば、電着性バインダのバインダ固形分は、存在する場合、上述のように、pH依存性レオロジー調整剤、フルオロポリマー、分散剤、接着促進剤、非フッ素化有機膜形成ポリマー、及び別個に添加された架橋剤を含む。バインダ固形分は、存在する場合、電気化学的活物質及び導電剤を含まない。本明細書で使用する場合、「バインダ分散物」という用語は、水性媒体中のバインダ固形分の分散物を示す。
【0114】
電着性バインダは、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のアニオン性膜形成樹脂、及び存在する場合、0~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤を含み得、本質的にそれからなり得、又はそれからなり得て、重量%はバインダ固形分の総重量に基づく。
【0115】
電着性バインダは、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー調整剤、及び存在する場合、0重量%~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤を含み得、本質的にそれからなり得、又はそれからなり得て、重量%はバインダ固形分の総重量に基づく。
【0116】
電着性バインダは、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー調整剤;15重量%~99重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば40重量%~95重量%、例えば50重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば50重量%~70重量%、例えば50重量%~60重量%の量のフルオロポリマー;及び存在する場合、0重量%~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤を含み得、本質的にそれからなり得、又はそれからなり得て、重量%はバインダ固形分の総重量に基づく。
【0117】
電着性バインダは、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー調整剤;15重量%~99重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば40重量%~95重量%、例えば50重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば50重量%~70重量%、例えば50重量%~60重量%の量のフルオロポリマー;2重量%~35重量%、例えば5重量%~32重量%、例えば8重量%~30重量%、例えば15重量%~27重量%の量の分散剤;及び存在する場合、0から30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤を含み得、本質的にそれからなり得、又はそれからなり得て、重量%はバインダ固形分の総重量に基づく。
【0118】
電着性バインダは、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー調整剤;15重量%~99重量%、例えば30重量%~96重量%、例えば40重量%~95重量%、例えば50重量%~90重量%、例えば70重量%~90重量%、例えば80重量%~90重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば50重量%~70重量%、例えば50重量%~60重量%の量のフルオロポリマー;2重量%~35重量%、例えば5重量%~32重量%、例えば8重量%~30重量%、例えば15重量%~27重量%の量の分散剤;1重量%~60重量%、例えば10重量%~40重量%、例えば25重量%~35重量%の量の接着促進剤;存在する場合、0重量%~90重量%、例えば20重量%~60重量%、例えば25重量%~40重量%の量の非フッ素化有機膜形成ポリマー;及び存在する場合、0重量%~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤を含み得、本質的にそれからなり得、又はそれからなり得て、重量%は、バインダ固形分の総重量に基づく。
【0119】
電着性バインダは、10重量%~100重量%、例えば50重量%~95重量%、例えば70重量%~93重量%、例えば87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー調整剤;存在する場合、1重量%~60重量%、例えば10重量%~40重量%、例えば25重量%~35重量%の量の接着促進剤;存在する場合、0重量%~90重量%、例えば20重量%~60重量%、例えば25重量%~40重量%の量の非フッ素化有機膜形成ポリマー;及び存在する場合、0重量%~30重量%、例えば5重量%~15重量%、例えば7重量%~13重量%の量の架橋剤を含み得、本質的にそれからなり得、又はそれからなり得て、重量%はバインダ固形分の総重量に基づく。
【0120】
電着性バインダは、電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、0.1重量%~20重量%、例えば0.2重量%~10重量%、例えば0.3重量%~8重量%、例えば0.5重量%~5重量%、例えば1重量%~5重量%、例えば1重量%~3重量%、例えば1.5重量%~2.5重量%、例えば1重量%~2重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0121】
本発明の電着性コーティング組成物は、電気化学的活物質が正極用の活物質として使用するための物質を含む場合、導電剤を任意にさらに含み得る。導電剤の非限定的な例としては、活性炭、アセチレンブラック及びファーネスブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、フラーレン及びその組み合わせなどの炭素質材料が挙げられる。黒鉛は、負極の電気化学的活物質及び導電剤の両方として使用されてもよいが、黒鉛を電気化学的活物質として使用する場合、導電性材料は通常省略される。
【0122】
上述の材料に加えて、導電剤は、例えば100m2/gを超えるBET表面積などの高表面積を有する活性炭を含み得る。本明細書で使用する場合、「BET表面積」という用語は、定期刊行物“The Journal of the American Chemical Society”,60,309(1938)に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法に基づいて、ASTM D 3663-78規格に従って窒素吸着によって求められる比表面積を示す。いくつかの例において、導電性炭素は、100m2/g~1,000m2/g、例えば150m2/g~600m2/g、例えば100m2/g~400m2/g、例えば200m2/g~400m2/gのBET表面積を有することができる。いくつかの例において、導電性炭素は、約200m2/gのBET表面積を有することができる。好適な導電性炭素材料は、Cabot Corporationから市販されているLITX 200である。
【0123】
導電剤は、保護コーティングを含む電気化学的活物質に関して上述したのと同じコーティング材料を含む保護コーティングを任意に含み得る。
【0124】
導電剤は、電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、0.5重量%~20重量%、例えば0.5重量%~5重量%、例えば0.5重量%~3重量%、例えば0.5重量%~2重量%、例えば0.5重量%~1重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば2.5重量%~7重量%、例えば3重量%~5重量%の量で電着性コーティング組成物中に存在し得る。
【0125】
又は、電着性コーティング組成物は、導電剤を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、導電剤を含まない電着性コーティング組成物は、上記で使用される電気化学的活物質の1つと組み合わせて使用される導電剤に関連する。電着性コーティング組成物は、導電剤が、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、0.1重量%未満又は0.01重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、導電剤を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0126】
本発明によれば、電着性コーティング組成物は、水を含む水性媒体をさらに含む。本明細書で使用する場合、「水性媒体」という用語は、水性媒体の総重量に対して、50%を超える重量の水を含む液体媒体を示す。そのような水性媒体は、水性媒体の総重量に対して、50重量%未満の有機溶媒、又は40重量%未満の有機溶媒、又は30重量%未満の有機溶媒、又は20重量%未満の有機溶媒、又は10重量%未満の有機溶媒、又は5重量%未満の有機溶媒、又は1重量%未満の有機溶媒、0.8重量%未満の有機溶媒、又は0.1重量%未満の有機溶媒を含み得る。水は、水性媒体の総重量に対して、50.1重量%~100重量%、例えば70重量%~100重量%、例えば80重量%~100重量%、例えば85重量%~100重量%、例えば90重量%~100重量%、例えば95重量%~100重量%、例えば99重量%~100重量%、例えば99.9重量%~100重量%を構成し得る。水性媒体は、1つまたはそれより多くの有機溶媒をさらに含み得る。好適な有機溶媒の例としては、酸素化有機溶媒、例えばアルキル基中に1~10個の炭素原子を含有するエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールのモノアルキルエーテル、例えばこれらのグリコールのモノエチルエーテル及びモノブチルエーテルが挙げられる。他の少なくとも部分的に水混和性の溶媒の例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール及びジアセトンアルコールなどのアルコールが挙げられる。電着性コーティング組成物は、水性分散物などの分散物の形態で提供され得る。
【0127】
水は、電着性コーティング組成物の総重量に対して、電着性コーティング組成物中に存在する水の総量が、40重量%~99重量%、例えば45重量%~99重量%、例えば50重量%~99重量%、例えば60重量%~99重量%、例えば65重量%~99重量%、例えば70重量%~99重量%、例えば75重量%~99重量%、例えば80重量%~99重量%、例えば85重量%~99重量%、例えば90重量%~99重量%、例えば40重量%~90重量%、例えば45重量%~85重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば60重量%~75重量%の量であるように、水性媒体中に存在し得る。
【0128】
電着性コーティング組成物の総固形分含有量は、電着性コーティング組成物の総重量に対して、少なくとも0.1重量%、例えば少なくとも1重量%、例えば少なくとも3重量%、例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも7重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%であり得る。総固形分含有量は、電着性コーティング組成物の総重量に対して、60重量%以下、例えば50重量%以下、例えば40重量%以下、例えば30重量%以下、例えば25重量%以下、例えば20重量%以下、例えば15重量%以下、例えば12重量%以下、例えば10重量%以下、例えば7重量%以下、例えば5重量%以下であり得る。電着性コーティング組成物の総固形分含有量は、電着性コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~60重量%、例えば0.1重量%~50重量、例えば0.1%~40重量%、例えば0.1重量%~30重量%、例えば0.1重量%~25重量%、例えば0.1重量%~20重量%、例えば0.1重量%~15重量%、例えば0.1重量%~12重量%、例えば0.1重量%~10重量%、例えば0.1重量%~7重量%、例えば0.1重量%~5重量%、例えば0.1重量%~1重量%、例えば1重量%~60重量%、例えば1重量%~50重量%、例えば1重量%~40重量%、例えば1重量%~30重量%、例えば1重量%~25重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば1重量%~15重量%、例えば1重量%~12重量%、例えば1重量%~10重量%、例えば1重量%~7重量%であり得る、例えば1重量%~5重量%であり得る。
【0129】
電着性コーティング組成物は、45重量%~99重量%、例えば70重量%~99重量%、例えば80重量%~99重量%、例えば90重量%~99重量%、例えば91重量%~99重量%、例えば91重量%~99重量%、例えば94重量%~99重量%、例えば95重量%~99重量%、例えば96重量%~99重量%、例えば97重量%~99重量%の量の電気化学的活物質;電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、0.1重量%~20重量%、例えば0.2重量%~10重量%、例えば0.3重量%~8重量%、例えば0.5重量%~5重量%、例えば1重量%~3重量%、例えば1.5重量%~2.5重量%、例えば1重量%~2重量%の量の電着性バインダ;及び任意に、電着性コーティング組成物の総固形分重量に対して、0.5重量%~20重量%、例えば1重量%~20重量%、例えば2重量%~10重量%、例えば2.5重量%~7重量%、例えば3重量%~5重量%の量の導電剤を含み得、本質的にそれからなり得、又はそれからなり得る。
【0130】
電着性コーティング組成物のpHは、組成物が使用される電着の種類、並びに電着性コーティング組成物に含まれる顔料、充填剤などの添加剤に依存する。特に電気化学的活物質の選択は、電着性コーティング組成物のpHに有意に影響を及ぼす可能性がある。例えば、アニオン性電着性コーティング組成物は、約6~約12、例えば約6.5~約11、例えば約7~約10.5のpHを有し得る。対照的に、カチオン性電着性コーティング組成物は、約4.5~約10、例えば約4.5~約5.5、例えば約8~約9.5のpHを有し得る。
【0131】
電着性コーティング組成物は、pH調整剤を任意にさらに含み得る。pH調整剤は、酸又は塩基を含み得る。酸は、例えばリン酸又は炭酸を含み得る。塩基は、例えば水酸化リチウム、炭酸リチウム又はジメチルエタノールアミン(DMEA)を含み得る。電着性コーティング組成物のpHを所望のpH範囲に調整するために必要な任意の好適な量のpH調整剤が、使用され得る。
【0132】
電着性コーティング組成物は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。電着性コーティング組成物はまた、さらなる一時的接着促進剤を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、「一時的接着促進剤」という用語は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルシクロホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチルサクシネート、ジエチルサクシネート及びテトラエチル尿素を示す。本明細書で使用する場合、電着性コーティング組成物は、一時的接着促進剤を含むとしても、電着性コーティング組成物の総重量に対して、1%未満の重量で含む場合、一時的接着促進剤を実質的に含まない。本明細書で使用する場合、電着性コーティング組成物は、一時的接着促進剤を含むとしても、電着性コーティング組成物の総重量に対して、0.1%未満の重量で含む場合、一時的接着促進剤を本質的に含まない。一時的接着促進剤は、存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に対して、2重量%未満、例えば1重量%未満、例えば0.9重量%未満、例えば0.1重量%未満、例えば0.01重量%未満、例えば0.001重量%未満の量で存在し得る。
【0133】
本発明によれば、電着性コーティング組成物は、フルオロポリマーを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。
【0134】
電着性コーティング組成物は、有機炭酸塩を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、有機炭酸塩が存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に対して、1重量%未満又は0.1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、有機炭酸塩を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0135】
電着性コーティング組成物は、アクリル変性フルオロポリマーを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、アクリル変性フルオロポリマーが存在するとしても、電着性コーティング組成物の総バインダ固形分重量に対して、1重量%未満又は0.1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、アクリル変性フルオロポリマーを実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0136】
本発明によれば、電着性コーティング組成物は、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び/又はポリアクリロニトリル誘導体を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。
【0137】
電着性コーティングは、イソホロンを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。
【0138】
電着性コーティング組成物は、有機炭酸塩を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、有機炭酸塩が存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に対して、1重量%未満又は0.1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、有機炭酸塩を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0139】
電着性コーティング組成物は、アクリロニトリルを実質的に含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、アクリロニトリルが存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に対して、1重量%未満又は0.1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、アクリロニトリルを実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0140】
電着性コーティング組成物は、酸化グラフェンを実質的に含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、酸化グラフェンが存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に対して、5重量%未満又は1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、酸化グラフェンを実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0141】
pH依存性レオロジー調整剤は、カルボン酸アミドモノマー単位の残基を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、pH依存性レオロジー調整剤は、カルボン酸アミドモノマー単位が存在するとしても、pH依存性レオロジー調整剤の総重量に対して、0.1重量%未満又は0.01重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、カルボン酸アミドモノマー単位を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0142】
電着性コーティングは、イソホロンを実質的に含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、イソホロンが存在するとしても、電着性コーティング組成物の総重量に対して、5重量%未満又は1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、イソホロンを実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0143】
電着性コーティングは、イソホロンを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。
【0144】
電着性コーティングは、セルロース誘導体を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。セルロース誘導体の非限定的な例としては、カルボキシメチルセルロース及びその塩(CMC)が挙げられる。CMCは、無水グルコース環上のヒドロキシル基の一部がカルボキシメチル基で置換されたセルロース性エーテルである。
【0145】
電着性コーティングは、多官能性ヒドラジド化合物を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、多官能性ヒドラジド化合物が存在するとしても、電着性コーティング組成物の総バインダ固形分重量に対して、0.1重量%未満又は0.01重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、多官能性ヒドラジド化合物を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0146】
電着性コーティングは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム又はアクリルゴムを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム又はアクリルゴムが存在するとしても、電着性コーティング組成物の総バインダ固形分重量に対して、5重量%未満又は1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム又はアクリルゴムを実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0147】
電着性コーティングは、ポリ(メタ)アクリル酸の総重量に対して、70%を超える重量の(メタ)アクリル酸官能性モノマーを有するポリ(メタ)アクリル酸を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、ポリ(メタ)アクリル酸が存在するとしても、電着性コーティング組成物の総バインダ固形分重量に対して、5重量%未満又は1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、ポリ(メタ)アクリル酸を実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0148】
電着性コーティング組成物は、脂肪族共役ジエンモノマー単位及び芳香族ビニルモノマー単位の残基を含有する粒状ポリマーを実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、電着性組成物は、粒状ポリマーが存在するとしても、バインダ固形分の総重量に対して、5重量%未満又は1重量%未満の量で存在する場合、それぞれ、そのような粒状ポリマーを実質的に含まない、又は本質的に含まない。
【0149】
本発明は、本発明の電極を調製する方法にも関する。本発明の電極を作製する方法は、複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体を、電気化学的活物質及び電着性バインダ(上記のものなど)を含む電着性コーティング組成物を含む浴に少なくとも部分的に浸漬させることと、電着性コーティング組成物から堆積されたコンフォーマルコーティングであって、電気化学的活物質及び前記電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングを、浴に浸漬させた多孔質集電体の一部に電着することと、を含む。
【0150】
本発明の方法の電着プロセスにおいて、多孔質集電体は、対極と電気的に導通する電極として作用し、電着性コーティング組成物を含む浴には両方とも(少なくとも部分的に)浸漬されている。多孔質集電体は、アニオン電着におけるアノード又はカソード電着におけるカソードとして作用し得る。電極間に電流を流して、電着性コーティング組成物の固形成分を多孔質集電体に向かって移動させ、表面上及びその開口部内に連続膜として堆積させる。印加電圧は変化してもよく、例えば低くは1ボルト程度から高くは数千ボルト程度であり得るが、多くは50ボルト~500ボルトである。電流密度は、0.5アンペア/平方フィート~15アンペア/平方フィートであることが多い。組成物中の基材への印加電位の滞留時間は、10~180秒であり得る。
【0151】
方法は、浴から除去した後の電極の堆積したコンフォーマルコーティングを乾燥及び/又は硬化させることを任意にさらに含み得る。例えば、電着コーティング後、コンフォーマルコーティングを有する多孔質集電体を浴から取り出し、オーブン内で焼成して、電着コーティング膜を乾燥及び/又は架橋させてよい。例えば、コーティングされた基材は、400℃以下、例えば300℃以下、例えば275℃以下、例えば255℃以下、例えば225℃以下、例えば200℃以下、例えば少なくとも50℃、例えば少なくとも60℃、例えば50~400℃、例えば100~300℃、例えば150~280℃、例えば200~275℃、例えば225~270℃、例えば235~265℃、例えば240~260℃の温度で焼成され得る。加熱時間は温度に多少依存する。一般に、温度がより高いと、硬化に必要な時間がより短くなる。典型的には、硬化時間は少なくとも5分間、例えば5~60分間である。温度及び時間は、硬化膜中の電着性バインダが架橋される(適用可能な場合)、即ち、膜形成ポリマー上の共反応性基と架橋剤との間に共有結合が形成されるように十分であるべきである。他の場合には、電着コーティングし、浴からコンフォーマルコーティングを有する多孔質集電体を除去した後、コンフォーマルコーティングを有する多孔質集電体を周囲条件下で単に乾燥させ得る。本明細書で使用する場合、「周囲条件」は、10~100%の相対湿度及び-10~120℃の範囲の温度、例えば5~80℃、例えば10~60℃及び例えば15~40℃の温度を有する大気を示す。コーティング膜を乾燥させる他の方法としては、マイクロ波乾燥及び赤外線乾燥が挙げられ、コーティング膜を硬化させる他の方法としては、電子ビーム硬化及びUV硬化が挙げられる。
【0152】
本発明は、蓄電装置にも関する。本発明による蓄電装置は、本発明の上記電極の1つ以上を使用して製造され得る。蓄電装置は、本発明の電極、対極及び電解質を備える。電極、対極又はその両方は、1つの電極が正極であり、1つの電極が負極である限り、本発明の電極を構成し得る。本発明による蓄電装置としては、セル、電池、電池パック、二次電池、キャパシタ、擬似キャパシタ及びスーパーキャパシタが挙げられる。
【0153】
蓄電装置は、電解液を含み、セパレータなどの部品を使用することにより、一般的な方法で製造することができる。より具体的な製造方法としては、負極と正極をその間にセパレータを介して組み付け、得られた組立体を電池の形状に合わせて捲回し又は折曲げて電池容器に入れ、電解液を電池容器に注入して、電池容器を密封する。電池の形状は、コイン、ボタン又はシート、円筒形、正方形又は平坦であってもよい。
【0154】
電解液は、液体又はゲルであってもよく、電池として有効に作用できる電解液を、負極活物質及び正極活物質の種類に応じて、蓄電装置に用いられる公知の電解液の中から選択してよい。電解液は、好適な溶媒に溶解させた電解質を含む溶液であってよい。電解質は、従来公知のリチウムイオン二次電池用リチウム塩であってよい。リチウム塩の例としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiB(C6H5)4、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、LiB4CH3SO3Li及びCF3SO3Liが挙げられる。上記電解質を溶解させる溶媒としては、特に限定されないが、その例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びジエチルカーボネートなどのカーボネート化合物;γ-ブチルラクトンなどのラクトン化合物;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2-エトキシエタン、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル化合物;並びにジメチルスルホキシドなどのスルホキシド化合物が挙げられる。電解液中の電解質の濃度は、0.5~3.0モル/L、例えば0.7~2.0モル/Lであり得る。
【0155】
リチウムイオン蓄電装置の放電中、リチウムイオンは負極から放出され、電流を正極に運搬し得る。このプロセスは、脱離として公知のプロセスを含み得る。充電時には、リチウムイオンが正極の電気化学的活物質から負極に移動し、負極に存在する電気化学的活物質に埋め込まれる。このプロセスは、挿入として公知のプロセスを含み得る。
【0156】
本明細書で使用する場合、「ポリマー」という用語は、オリゴマー並びにホモポリマー及びコポリマーの両方を広く示す。「樹脂」という用語は、「ポリマー」と互換的に使用される。
【0157】
「アクリル」及び「アクリレート」という用語は互換的に使用され(互換的に使用されることが意図された意味を変えない限り)、特に明確に別途指摘しない限り、アクリル酸、その無水物及び誘導体、例えばそのC1~C5アルキルエステル、低級アルキル置換アクリル酸、例えばメタクリル酸、2-エチルアクリル酸などのC1~C2置換アクリル酸及びそのC1~C4アルキルエステルを含む。「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」という用語は、示された物質、例えば(メタ)アクリレートモノマーのアクリル/アクリレート及びメタクリル/メタクリレートの両方の形態を含むことを意図している。「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、1つまたはそれより多くの(メタ)アクリルモノマーから調製されたポリマーを示す。
【0158】
本明細書で使用する場合、分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって求められる。別途指摘しない限り、分子量は重量平均に基づいている。
【0159】
「ガラス転移温度」という用語は、T.G.Fox Bull.Am.Phys.Soc.(Ser.II)1,123(1956)及びJ.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook 3rd edition,John Wiley,New York,1989によるモノマー仕込物のモノマー組成に基づいて、Foxの方法によって計算されるようなガラス転移温度である、理論値である。
【0160】
本明細書で使用する場合、別途定義しない限り、実質的に含まないという用語は、成分が存在するならば、電着性コーティング組成物の総重量に対して、5重量%未満の量で存在することを意味する。
【0161】
本明細書で使用する場合、別途定義しない限り、本質的に含まないという用語は、成分が存在するならば、電着性コーティング組成物の総重量に対して、1重量%未満の量で存在することを意味する。
【0162】
本明細書で使用する場合、別途定義しない限り、全く含まないという用語は、成分が電着性コーティング組成物中に存在しない、即ち、電着性コーティング組成物の総重量に対して重量で0.00%であることを意味する。
【0163】
本明細書で使用する場合、「総固形分」という用語は、本発明の電着性コーティング組成物の不揮発性成分を示し、具体的に水性媒体を除外する。総固形分は、少なくともバインダ固形分、電気化学的活物質、及び存在する場合には導電剤を明示的に含む。
【0164】
詳細な説明を目的として、本発明は、明示的に逆のことが記載されている場合を除いて、様々な代替の変形及びステップシーケンスが想定され得ることを理解されたい。さらに、任意の操作実施例以外、又は別途指摘しない限り、値、量、パーセンテージ、範囲、部分範囲及び分数を表すものなどのすべての数字は、その用語が明示的に出現しない場合でも、「約」という単語で始められているかのように読んでよい。したがって、反対のことが指摘されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、通常の概算技法を適用することによって解釈されるべきである。本明細書にクローズド又はオープンエンドの数値範囲が記載されている場合、数値範囲内の又は数値範囲に包含されるすべての数、値、量、パーセンテージ、部分範囲及び分数は、あたかもこれらの数、値、量、パーセンテージ、部分範囲及び分数が、その全体として明示的に記載されているかのように、本出願の元の開示に具体的に含まれ、それに属しているとして見なすべきである。
【0165】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載される数値は可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じるある誤差を本質的に含む。
【0166】
本明細書で使用する場合、別途指摘しない限り、複数形の用語は、その単数形の対応物を包含することができ、別途指摘しない限り、その逆も同様である。例えば、本明細書では「a(1つの)」フルオロポリマー、「an(1つの)」電気化学的活物質及び「a(1つの)」pH依存性レオロジーを有する改質剤に言及されているが、これらの成分の組み合わせ(即ち複数)を使用することができる。さらに、本出願では、「及び/又は」が、ある場合に明示的に使用され得るとしても、「又は」の使用は、別途具体的に記載しない限り「及び/又は」を意味する。
【0167】
本明細書で使用する場合、「含む(including)」、「含有する(containing)」及び同様の用語は、本出願の文脈では「含む(comprising)」と同義であると理解され、したがってオープンエンドであり、追加の記載されていない又は列挙されていない要素、材料、成分又は方法ステップの存在を排除しない。本明細書で使用する場合、「からなる」は、本出願の文脈において、いずれの明記されていない要素、成分又は方法ステップの存在を除外すると理解される。本明細書で使用する場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、本出願の文脈において、規定された要素、材料、成分又は方法ステップ「並びに記載されているものの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」を含むと理解される。
【0168】
本明細書で使用する場合、「上に(on)」、「上に(onto)」、「上に塗布される(applied on)」、「上に塗布される(applied onto)」、「上に形成される(formed on)」、「上に堆積される(deposited on)」、「上に堆積される(deposited onto)」という用語は、表面上に形成され、重ねられ、堆積され、又は提供されるが、必ずしも表面と接触している必要はないことを意味する。例えば、基材「上に堆積」された電着性コーティング組成物は、電着性コーティング組成物と基材の間に位置する同じ又は異なる組成物の1つまたはそれより多くの他の介在コーティング層の存在を排除しない。
【0169】
本発明の具体的な実施形態を詳細に説明したが、本開示の全体的な教示に照らして、その詳細に対する様々な修正及び代替案を案出できることが当業者には理解されよう。したがって、開示した特定の構成は、例示に過ぎず、添付された特許請求の範囲及びそのすべての均等物に与えられる本発明の範囲に関して限定するものではない。
【0170】
したがって、上記を考慮して、本発明は、以下の態様に関するが、これに限定されない。
【0171】
態様1.複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体と、前記多孔質集電体の表面の少なくとも一部に存在するコンフォーマルコーティングであって、電気化学的活物質及び電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングとを備える、電極。
【0172】
態様2.前記コンフォーマルコーティングが、前記多孔質集電体の前記表面上及び前記開口部内に膜として存在する、態様1に記載の電極。
【0173】
態様3.前記開口部内に存在する前記膜が、前記開口部に延在する連続膜を含む、態様1又は2に記載の電極。
【0174】
態様4.前記コンフォーマルコーティングが、前記多孔質集電体の前記表面上に膜として存在し、前記開口部を充填しない、態様1に記載の電極。
【0175】
態様5.前記開口部内の前記コンフォーマルコーティング膜の厚さが、前記多孔質集電体の前記表面上の前記コンフォーマルコーティング膜の厚さの50%以内である、態様1~3のいずれかに記載の電極。
【0176】
態様6.前記導電性材料上及び前記開口部内の前記コンフォーマルコーティングの厚さが0.5ミクロン~1,000ミクロンである、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0177】
態様7.前記開口部が前記多孔質集電体の前記表面にわたって均一に分布している、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0178】
態様8.前記開口部が500ミクロン以下の直径を有する、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0179】
態様9.前記開口部の直径が前記多孔質集電体の厚さの10倍以下である、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0180】
態様10.前記開口部が1,000ミクロン以下の平均最長寸法を有する、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0181】
態様11.前記多孔質集電体が、アルミニウム、銅、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、導電性炭素、導電性コーティングを有する多孔質基材又は導電性ポリマーを含む、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0182】
態様12.前記電着性バインダがpH依存性レオロジー調整剤を含む、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0183】
態様13.前記電着性バインダがフルオロポリマーを含む、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0184】
態様14.前記電着性バインダが、非フッ素化有機膜形成ポリマーを含む、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0185】
態様15.前記電気化学的活物質が、LiCoO2、LiNiO2、LiFePO4、LiFeCoPO4、LiCoPO4、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiMnCo)O2、Li(NiCoAl)O2、炭素被覆LiFePO4、硫黄、LiO2、FeF2及びFeF3、アルミニウム、SnCo、Fe3O4又はその組み合わせを含む、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0186】
態様16.前記電気化学的活物質が、黒鉛、チタン酸リチウム、リン酸バナジウムリチウム、ケイ素、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物、リチウム金属、グラフェン又はその組み合わせを含む、態様1~14のいずれかに記載の電極。
【0187】
態様17.前記コンフォーマルコーティングが導電剤をさらに含む、態様1~15のいずれかに記載の電極。
【0188】
態様18.前記コンフォーマルコーティングが架橋剤をさらに含む、先行する態様のいずれかに記載の電極。
【0189】
態様19.正極を備える、態様1~15又は17~18のいずれかに記載の電極。
【0190】
態様20.負極を備える、態様1~14又は18のいずれかに記載の電極。
【0191】
態様21.(a)先行する態様のいずれかに記載の電極;(b)対極;及び(c)電解質を備える、蓄電装置。
【0192】
態様22.セルを備える、態様21に記載の蓄電装置。
【0193】
態様23.電池パックを備える、態様21に記載の蓄電装置。
【0194】
態様24.二次電池を備える、態様21に記載の蓄電装置。
【0195】
態様25.キャパシタを備える、態様21に記載の蓄電装置。
【0196】
態様26.スーパーキャパシタを備える、態様21に記載の蓄電装置。
【0197】
態様27.電極を作製する方法であって、複数の開口部を含む表面を含む多孔質集電体を、電気化学的活物質及び電着性バインダを含む電着性コーティング組成物を含む浴に少なくとも部分的に浸漬させることと、前記電着性コーティングから堆積されたコンフォーマルコーティングであって、前記電気化学的活物質及び前記電着性バインダを含むコンフォーマルコーティングを、前記浴に浸漬させた前記多孔質集電体の一部に電着することと、を含む、方法。
【0198】
本発明の例示は以下の実施例であるが、以下の実施例は本発明をその詳細に限定するものと見なすべきではない。別途指摘しない限り、以下の実施例及び明細書全体におけるすべての部及びパーセンテージは、重量基準である。
【実施例】
【0199】
実施例
実施例1
分散剤の調製:分散剤は、2ステッププロセスを用いて調製した。第1のステップにおいて、機械式撹拌ブレード、熱電対及び還流冷却器を装着した4口丸底フラスコに、ジアセトンアルコール493.2グラムを添加した。ジアセトンアルコールを窒素雰囲気下で122℃の設定点まで加熱した。メチルメタクリレート290.4グラム、エチルヘキシルアクリレート295グラム、ブチルアクリレート51.5グラム、N-ビニルピロリドン187.3グラム及びメタクリル酸112.4グラムを含有するモノマー溶液を、別の容器内で完全に混合した。tert-アミルペルオクトエート9.1グラム及びジアセトンアルコール163.8グラムの開始剤溶液も、別の容器で調製した。開始剤溶液及びモノマー溶液を、それぞれ210分及び180分にわたって添加漏斗を使用して同時にフラスコに共供給した。開始剤及びモノマーの供給が完了した後、モノマー添加漏斗をジアセトンアルコール46.8グラムですすぎ、開始剤添加漏斗をジアセトンアルコール23グラムですすいだ。得られた溶液を122℃にて1時間保持した。次に、ジアセトンアルコール200グラムを反応装置に添加し、続いてtert-アミルペルオクトエート2.8グラム及びジアセトンアルコール24.5グラムの第2の開始剤溶液を30分にわたって添加した。溶液を122℃にて60分間保持した。次いで、tert-アミルペルオクトエート2.8グラム及びジアセトンアルコール24.5グラムの第3の開始剤溶液を30分にわたって添加した。次いで、溶液を122℃にて60分間保持した。60分間保持した後、溶液を100℃未満に冷却し、好適な容器に注入した。組成物の総固形分含有量は52.74%固形分として測定された。
【0200】
第2のステップにおいて、機械式撹拌ブレード、熱電対及び還流冷却器を装着した4口丸底フラスコに、ステップ1からの上記組成物462グラムを添加した。溶液を窒素雰囲気下で100℃の設定点まで加熱した。次に、ジメチルエタノールアミン32.8グラムを10分間にわたって添加した。添加後、溶液を100℃にて15分間保持し、次いで70℃まで冷却した。溶液が70℃に達したら、温(70℃)脱イオン水541.5グラムを60分間にわたって添加し、15分間混合した。混合後、分散剤を好適な容器に注入した。分散剤組成物の総固形分含有量は22.9%固形分として測定された。
【0201】
組成物の固形分含有量は、以下の手順によって求めた。Fisher Scientific製のアルミニウム秤量皿を、分析天秤を使用して秤量した。空の皿の重量を小数点第4位まで記録した。組成物約0.5g及びアセトン3.5gを予め秤量した皿に添加した。皿及び分散剤溶液の重量は、小数点第4位まで記録した。分散剤溶液を含む皿を実験室用オーブンに入れ、オーブン温度を110℃に設定し、1時間乾燥させた。残りの固形物質を含む予め秤量した皿を、分析天秤を使用して秤量した。残りの固形物質を含む皿の重量は、小数点第4位まで記録した。固形分含有量は、以下の式を使用して求めた:固形分%=100×[(残りの固形分を含む皿の重量)-(空の皿の重量)]/[(加熱前の皿組成物の重量)-(空の皿の重量)]。
【0202】
PVDF分散物の調製:脱イオン水96.27グラム、上記で調製した分散剤組成物121.85グラム(固形物質27.79グラム)及び消泡剤(Drewplus(商標))0.16グラムをプラスチックカップ内で混合した。得られた混合物を、1200RPMにて適度な渦を維持しながら、Cowlesブレードを使用して激しく撹拌した。ポリフッ化ビニリデン粉末(Asambly Chemicalから入手可能なRZ-49)64.8グラムを約0.5グラムの少量ずつ5分間にわたって添加しながら、混合を続けた。ポリフッ化ビニリデン粉末をすべて添加した後、混合をさらに45分間続けた。
【0203】
電着性コーティング組成物の調製及び電着:プラスチックカップに、pH依存性レオロジー調整剤2.232g(固形物質0.62g、Dow Chemical Co.から入手可能なACRYSOL HASE TT-615)、上記の水系PVDF分散物1.91g(固形物質0.62g)、水23g及びカルボジイミド架橋剤0.347g(固形物質0.149g、日清紡ケミカル株式会社から入手可能なカルボジライトV-02-L 2)を添加した。この混合物を遠心ミキサーで2000RPMSにて5分間混合した。次に、遠心混合物中に正極用の電気化学的活物質(ニッケルマンガンコバルト)25g(90重量%)を添加して、2000RPMSにて5分間混合した。次に、導電剤(Imerysから市販されている「Super P」カーボンブラック)1.389g(5重量%)を混合物に添加し、遠心ミキサーで2000RPMにて5分間混合した。最後に、DOW Chemical Co.製のヘキシルセロソルブ1.0gを組成物に添加し、遠心ミキサー内で2000RPMにて5分間混合した。絶えず撹拌しながら水170gの水を添加することによって、組成物を総固形分10%まで希釈した。30分間撹拌した後、電着コーティングを行った。200×200メッシュサイズ及び0.0029インチの開口サイズを有する5cm×8cmのアルミニウムメッシュ片(McMaster-Carr製の「Al Mesh Wire Cloth」)を電着性コーティング組成物に3cm浸漬させた。電着性コーティング組成物に3cm浸漬させた4cm×6cmのアルミニウム対極を、対極として使用した。電着性コーティング組成物を、電着の持続時間全体にわたって磁気撹拌器を使用して撹拌し、直流整流器を使用して電極に4種類の各種持続時間にわたって100Vの電位を印加した。電着後、コーティングしたメッシュを脱イオン水1カップですすぎ、一晩乾燥させ、次いで秤量して、電着中に堆積した材料の量を求めた。5秒、10秒、20秒及び30秒後の堆積は、それぞれ8.07mg/cm2、23.53mg/cm2、38.47mg/cm2及び36.33mg/cm2の量を生じた。
【0204】
各堆積時間のコーティングによって、コンフォーマルであり、アルミニウムメッシュ基材のメッシュ形状をマッピングした均一なコーティングが形成された。10秒の膜は、200ミクロンの(コンフォーマルコーティング層及び基材を含む)総厚で最良の外観及び均一性を有していた。適合するコーティング膜によって、コーティング領域のすべての開口部に延在する連続膜が形成され、コンフォーマルコーティング膜によって、下にあるメッシュ基材の幾何学的形状がマッピングされた。
【0205】
図5A及び
図5Bは、10秒の堆積速度でコーティングされた20ミクロンスケールのメッシュ基材の光学画像である。これらの画像は、電極のコンフォーマルコーティングの表面プロファイルを示す。
【0206】
図6A及び
図6Bは、10秒の堆積速度でコーティングされた50ミクロンスケールのメッシュ基材の光学画像である。
図6Aは、未コーティング部分及び縁部プロファイルを示し、
図6Bは、完全コーティング部分を示す。これらの画像は、電極のコンフォーマルコーティングの表面プロファイルを示す。
【0207】
図7A及び
図7Bは、5秒の堆積速度でコーティングされたメッシュ基材の断面電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析である。
図7Aは高倍率(100ミクロンスケール)であり、
図7Bは低倍率(300ミクロンスケール)である。これらの画像は、メッシュのワイヤ及び表面プロファイルに適合するコーティングを示す。
【0208】
図8A及び
図8Bは、10秒の堆積速度でコーティングされたメッシュ基材の断面電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析である。
図8Aは高倍率(100μmスケール)であり、
図8Bは低倍率(300μmスケール)である。これらの画像は、メッシュのワイヤ及び表面プロファイルに適合するコーティングを示す。
【0209】
比較例2
水系スラリの調製:水系スラリ組成物を以下のように調製した:プラスチックカップに、2.232gのpH依存性レオロジー調整剤(0.62gの固形物質、Dow Chemical Co.から入手可能なACRYSOL HASE TT-615)、実施例1に記載の水系PVDF分散物1.91g(固形物質0.62g)、水23g及びカルボジイミド架橋剤0.347g(0.149gの固形物質、日清紡ケミカル株式会社から入手可能なカルボジライトV-02-L 2)を添加した。この混合物を遠心ミキサーで2000RPMSにて5分間混合した。次に、遠心混合物中に正極用の電気化学的活物質(ニッケルマンガンコバルト)25g(90重量%)を添加して、2000RPMSにて5分間混合した。次に、導電剤(Imerysから市販されている「Super P」カーボンブラック)1.389g(5重量%)を混合物に添加し、遠心ミキサーで2000RPMにて5分間混合した。最後に、DOW Chemical Co.製のヘキシルセロソルブ1.0gを組成物に添加し、遠心ミキサー内で2000RPMにて5分間混合した。スラリを、200×200メッシュサイズ及び0.0029インチの開口サイズを有する5cm×8cmのアルミニウムメッシュ片(McMaster-Carr製の「Al Mesh Wire Cloth」)上に、可変ギャップ高さ15ミル(コーティング膜及び基材を含む総厚180ミクロンに達する)及び20ミル(コーティング膜及び基材を含む総厚220ミクロンに達する)の自動ドローダウンテーブルを使用してキャストした。上記の電着によってコーティングしたメッシュ基材とは対照的に、ドローダウン法によってコーティングしたメッシュ基材は、メッシュ基材上に均一なコンフォーマルコーティングを形成しなかった。得られたコーティング膜は均一ではなかった。さらに、目視検査により、細孔がなお露出し、コーティング膜によって充填されていないことが示されたように、コーティング膜はコーティング領域の開口部に延在していなかった。したがって、水系スラリをメッシュ基材に塗布しても、コンフォーマルコーティングを有する電極は得られなかった。
【0210】
本明細書に記載及び例示された広範な発明概念から逸脱することなく、上記の開示に照らして多数の修正及び変形が可能であることが当業者には理解されよう。したがって、前述の開示は、本出願の様々な例示的な態様の単なる例示であり、本出願及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある多くの修正及び変形が当業者によって容易になされ得ることが理解されるべきである。
【国際調査報告】