(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】ウィスコット・アルドリッチ症候群遺伝子ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、組成物、および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/55 20060101AFI20220622BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20220622BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220622BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220622BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220622BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220622BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220622BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220622BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220622BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220622BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220622BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20220622BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20220622BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20220622BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20220622BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N9/16 A ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
A61P37/02
A61P17/00
A61P7/00
A61K48/00
A61K35/17 A
A61K35/15 A
C12N5/0783
C12N5/0789
C12N5/078
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563323
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020029771
(87)【国際公開番号】W WO2020219845
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521464503
【氏名又は名称】シアトル チルドレンズ ホスピタル ディー/ビー/エー シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゲイ, ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】カーン, イラム エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マン, ジャスディープ
(72)【発明者】
【氏名】ローリングス, デイビッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ユーペン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050LL05
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA31
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB071
4C084ZB072
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA05
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZA89
4C087ZB07
(57)【要約】
本開示は、ヒトウィスコット・アルドリッチ症候群遺伝子を編集するための、改善されたゲノム編集組成物および方法を提供する。本開示は、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、またはX連鎖性好中球減少症(XLN)を含むが、これらに限定されない、WASの少なくとも一つの症状の予防、治療、または回復のためのゲノム編集された細胞をさらに提供する。本明細書において企図される組成物は、WAS遺伝子における欠損によって引き起こされる疾患、障害、および状態を有する対象に、可能性のある治癒的な解決を提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)遺伝子における標的部位を切断するホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)バリアントを含む、ポリペプチド。
【請求項2】
前記HEバリアントが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)バリアントである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、前記HEバリアントの生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項1または請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記生物学的に活性なフラグメントが、対応する野生型HEと比較して、1、2、3、4、5、6、7、または8個のN末端アミノを欠く、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記生物学的に活性なフラグメントが、対応する野生型HEと比較して、4個のN末端アミノ酸を欠く、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記生物学的に活性なフラグメントが、対応する野生型HEと比較して、8個のN末端アミノ酸を欠く、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記生物学的に活性なフラグメントが、対応する野生型HEと比較して、1、2、3、4、または5個のC末端アミノ酸を欠く、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記生物学的に活性なフラグメントが、対応する野生型HEと比較して、前記C末端アミノ酸を欠く、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記生物学的に活性なフラグメントが、対応する野生型HEと比較して、2個のC末端アミノ酸を欠く、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記HEバリアントが、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-SceI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141Iからなる群から選択されるLHEのバリアントである、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記HEバリアントが、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびI-SmaMIからなる群から選択されるLHEのバリアントである、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記HEバリアントが、I-OnuI LHEバリアントである、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記HEバリアントが、I-CreI、I-SceI、およびI-TevIからなる群から選択されるLHEのバリアントである、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントの24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、78、80、82、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、223、225、227、229、232、234、236、238、および240からなる群から選択されるアミノ酸位置でのDNA認識境界面において1個または複数のアミノ酸置換を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントの24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、78、80、82、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、223、225、227、229、232、234、236、238、および240からなる群から選択されるアミノ酸位置に少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントの24、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、75、76、78、80、82、108、116、135、138、143、155、156、159、168、178、180、182、184、186、188、190、191、192、193、195、197、201、203、207、209、225、228、231、232、233、238、247、254、および291からなる群から選択されるアミノ酸位置に少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、S24F、N32R、K34R、S35R、S35V、S36I、S36V、S36N、V37A、V37I、G38R、S40E、E42S、E42G、G44E、G44V、Q46K、Q46G、T48S、V68K、A70N、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、T82S、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、F168H、E178D、C180H、F182G、N184I、N184F、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K209R、K225L、K225Q、N228I、E231G、F232S、S233R、V238R、D247E、D247N、Q254RおよびK291Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、およびQ254Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、D247E、およびQ254Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36V、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、T82S、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225Q、E231G、F232S、S233R、およびV238Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24F、N32R、K34R、S35V、S36N、V37I、G38R、S40E、E42G、G44V、Q46G、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K209R、K225Q、F232S、V238R、およびQ254Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168H、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、Q254RおよびK291Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184F、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、D247E、およびQ254Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
前記HEバリアントが、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42G、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、N228I、F232S、S233R、V238R、D247N、およびQ254Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記HEバリアントが、配列番号6~12のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに対して少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、またはなおより好ましくは、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
前記HEバリアントが、配列番号6に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記HEバリアントが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
前記HEバリアントが、配列番号8に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
前記HEバリアントが、配列番号9に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記HEバリアントが、配列番号10に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記HEバリアントが、配列番号11に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記HEバリアントが、配列番号12に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記HEバリアントが、前記WAS遺伝子におけるポリヌクレオチド配列に結合する、請求項1~32のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記HEバリアントが、配列番号27に記載されるポリヌクレオチド配列に結合する、請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項35】
DNA結合ドメインをさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項36】
前記DNA結合ドメインが、TALE DNA結合ドメインおよびジンクフィンガーDNA結合ドメインからなる群から選択される、請求項35に記載のポリペプチド。
【請求項37】
前記TALE DNA結合ドメインが、約9.5個のTALE反復単位~約
【請求項38】
5個のTALE反復単位を含む、請求項35に記載のポリペプチド。
【請求項39】
前記TALE DNA結合ドメインが、前記WAS遺伝子におけるポリヌクレオチド配列に結合する、請求項36または請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項40】
前記TALE DNA結合ドメインが、配列番号28に記載されるポリヌクレオチド配列に結合する、請求項36~38のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項41】
前記ジンクフィンガーDNA結合ドメインが、2、3、4、5、6、7、または8個のジンクフィンガーモチーフを含む、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項42】
ペプチドリンカーおよびエンドプロセッシング酵素またはその生物学的に活性なフラグメントをさらに含む、請求項1~40のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項43】
ウイルス自己切断2Aペプチドおよびエンドプロセッシング酵素またはその生物学的に活性なフラグメントをさらに含む、請求項1~41のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項44】
前記エンドプロセッシング酵素またはその生物学的に活性なフラグメントが、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、鋳型依存性DNAポリメラーゼまたは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を有する、請求項41または請求項42に記載のポリペプチド。
【請求項45】
前記エンドプロセッシング酵素が、Trex2またはその生物学的に活性なフラグメントを含む、請求項41~43のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項46】
前記ポリペプチドが、配列番号27または配列番号29に記載されるポリヌクレオチド配列における前記ヒトWAS遺伝子を切断する、請求項1~44のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項47】
請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項48】
請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、mRNA。
【請求項49】
請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、cDNA。
【請求項50】
請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項51】
請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む、細胞。
【請求項52】
請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項53】
請求項49に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項54】
請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチドによって導入される1個または複数のゲノム改変を含む、細胞。
【請求項55】
前記細胞が造血細胞である、請求項50~53のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項56】
前記細胞が、造血幹細胞または前駆細胞である、請求項50~54のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項57】
前記細胞が、CD34
+細胞である、請求項50~55のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項58】
前記細胞が、CD133
+細胞である、請求項50~56のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項59】
前記細胞が、免疫エフェクター細胞である、請求項50~54のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項60】
前記細胞が、T細胞である、請求項58に記載の細胞。
【請求項61】
前記細胞が、CD3
+、CD4
+、および/またはCD8
+細胞である、請求項58または請求項59に記載の細胞。
【請求項62】
前記細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、請求項58~60のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項63】
前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項50~54のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項64】
請求項50~62のいずれか一項に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項65】
請求項50~62のいずれか一項に記載の細胞および生理学的に許容可能な担体を含む、組成物。
【請求項66】
細胞においてWAS遺伝子を編集する方法であって、請求項1~45のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項46~48のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または請求項49に記載のベクター;およびドナー修復鋳型を前記細胞に導入することを含み、前記ポリペプチドの発現が、WAS遺伝子における標的部位での二本鎖切断を生じ、前記ドナー修復鋳型が、前記二本鎖切断(DSB)の部位での相同組み換え修復(HDR)によって前記WAS遺伝子に取り込まれる、方法。
【請求項67】
前記WAS遺伝子が、WAS、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、またはX連鎖性好中球減少症(XLN)をもたらす1個または複数のアミノ酸変異または欠失を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞が、造血細胞である、請求項65または請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞が、造血幹細胞または前駆細胞である、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞が、CD34
+細胞である、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が、CD133
+細胞である、請求項65~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記細胞が、免疫エフェクター細胞である、請求項65または請求項66に記載の方法。
【請求項73】
前記細胞が、T細胞である、請求項71に記載の細胞。
【請求項74】
前記細胞が、CD3
+、CD4
+、および/またはCD8
+細胞である、請求項71または請求項72に記載の細胞。
【請求項75】
前記細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、請求項71~73のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項76】
前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項65または請求項66に記載の細胞。
【請求項77】
前記ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、mRNAである、請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
5’-3’エキソヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが、前記細胞に導入される、請求項65~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
Trex2またはその生物学的に活性なフラグメントをコードするポリヌクレオチドが、前記細胞に導入される、請求項65~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記ドナー修復鋳型が、WAS遺伝子配列5’の前記DSBに相同な5’相同アーム、ドナーポリヌクレオチド、およびWAS遺伝子配列3’の前記DSBに相同な3’相同アームを含む、請求項65~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記ドナーポリヌクレオチドが、前記WAS遺伝子における1個または複数のアミノ酸変異または欠失を修復するよう設計される、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記ドナーポリヌクレオチドが、WASポリペプチドをコードするcDNAを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記ドナーポリヌクレオチドが、WASポリペプチドをコードするcDNAに動作可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記5’および3’相同アームの長さが、約100bp~約2500bpから独立して選択される、請求項79~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記5’および3’相同アームの長さが、約600bp~約1500bpから独立して選択される、請求項79~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記5’相同アームが、約1500bpであり、前記3’相同アームが、約1000bpである、請求項79~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記5’相同アームが、約600bpであり、前記3’相同アームが、約600bpである、請求項79~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
ウイルスベクターを使用して、前記ドナー修復鋳型を前記細胞に導入する、請求項65~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記ウイルスベクターが、組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記rAAVが、AAV2由来の1個または複数のITRを有する、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記rAAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、およびAAV10からなる群から選択される血清型を有する、請求項88または請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記rAAVが、AAV2またはAAV6血清型を有する、請求項88~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記レトロウイルスが、レンチウイルスである、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記レンチウイルスが、インテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV)である、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
WAS、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、もしくはX連鎖性好中球減少症(XLN)、またはそれと関連する状態の少なくとも一つの症状を治療する、予防する、または回復させる方法であって、HSPCの集団を対象から回収すること、請求項65~93のいずれか一項に記載の方法によりHSPCの前記集団を編集すること、およびHSPCの前記編集された集団を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項96】
WAS、免疫系障害、またはそれと関連する状態の少なくとも一つの症状を治療する、予防する、または回復させる方法であって、免疫エフェクター細胞の集団を対象から回収すること、請求項71~75のいずれか一項に記載の方法により免疫エフェクター細胞の前記集団を編集すること、および細胞の前記編集された集団を前記対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下、2019年4月24日に出願された米国仮特許出願第62/837,996号に基づく利益を主張し、参照によりその全体が取り込まれる。
【0002】
配列表に関する記述
本出願と関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に取り込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、BLBD_117_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは約250KBで、2020年4月14日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
本開示は、改善されたゲノム編集組成物に関する。より具体的には、本開示は、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)遺伝子を編集するための、リプログラミングされたヌクレアーゼ、組成物、およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)は、X連鎖性劣性遺伝障害であり、およそ1:100,000出生数の推定発生率を伴う。
【0005】
WASは、ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質(WASp)をコードする遺伝子における変異によって引き起こされる。WASは、一般的に、感染(その後、適応および自然免疫不全と関連する)、微量血小板減少症、ならびに湿疹に対する増大した感受性によって特徴付けられる。しかしながら、WAS遺伝子変異に起因する広範な疾患重症度が存在する。WASの重篤な形態は、細菌およびウイルス感染、重篤な湿疹自己免疫、および/または悪性腫瘍(癌)、特に、リンパ腫または白血病と関連する。より軽度の形態は、血小板減少症ならびにあまり重篤でない感染および湿疹、またはときに感染および湿疹が存在しないことによって特徴付けられる。これらのより軽度の形態は、X連鎖性血小板減少症(XLT)およびX連鎖性好中球減少症(XLN)として言及される。
【0006】
WASの一つの可能性のある治癒は、骨髄、末梢血または臍帯血からの造血幹細胞移植である。しかしながら、WAS患者は、依然としてTリンパ球およびNK細胞機能が残存しているため、患者は、ドナー幹細胞が注入される前に、いくつかの「前処置」を受けるか、または化学療法薬および/もしくは全身照射を用いた処置を受けて、彼ら自身の免疫細胞を破壊しなければならない。HLA型クロスマッチドナーが存在しない場合、ほとんどの患者は、GVHDのリスクを減少するために、長期間免疫抑制剤の投与を受けている。
【0007】
遺伝子療法を使用して、WASを有する少数の患者をうまく治療し、これにより、彼らの出血の問題および免疫不全を治した。残念なことに、少なくとも1人の患者が、遺伝子療法ウイルスのDNAを患者の染色体の感受性領域に挿入する遺伝子療法ウイルスの結果として白血病を発症した。可能性のある、より安全な新しい遺伝子療法ウイルスを試験し、代替的な非ウイルス性遺伝子療法を開発するための研究が、現在進行中である。明らかに、遺伝子療法が、WASにより広く適用可能になるまでに、解決されるべき多数の問題が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一般的に、一部、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントおよびヒトウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)遺伝子における標的部位を切断するmegaTALを含む組成物、ならびにそれを使用する方法に関する。
【0009】
様々な実施形態では、ポリペプチドは、ヒトWAS遺伝子における標的部位を切断するホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)バリアントを含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、HEバリアントは、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)バリアントである。
【0011】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、HEバリアントの生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0012】
一部の実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型HEと比較して、1、2、3、4、5、6、7、または8個のN末端アミノ酸を欠く。
【0013】
特定の実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型HEと比較して、4個のN末端アミノ酸を欠く。
【0014】
様々な実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型HEと比較して、8個のN末端アミノ酸を欠く。
【0015】
さらなる実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型HEと比較して、1、2、3、4、または5個のC末端アミノ酸を欠く。
【0016】
特定の実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型HEと比較して、4個のC末端アミノ酸を欠く。
【0017】
ある特定の実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型HEと比較して、2個のC末端アミノ酸を欠く。
【0018】
様々な実施形態では、HEバリアントは、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-SceI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141Iからなる群から選択されるLHEのバリアントである。
【0019】
特定の実施形態では、HEバリアントは、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、およびI-SmaMIからなる群から選択されるLHEのバリアントである。
【0020】
様々な実施形態では、HEバリアントは、I-OnuI LHEバリアントである。
【0021】
特定の実施形態では、HEバリアントは、I-CreI、I-SceI、およびI-TevIからなる群から選択されるLHEのバリアントである。
【0022】
一部の実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントの24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、78、80、82、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、223、225、227、229、232、234、236、238、および240からなる群から選択されるアミノ酸位置でのDNA認識境界面において1個または複数のアミノ酸置換を含む。
【0023】
さらなる実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントの24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、78、80、82、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、223、225、227、229、232、234、236、238、および240からなる群から選択されるアミノ酸位置に少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上のアミノ酸置換を含む。
【0024】
特定の実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントの24、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、75、76、78、80、82、108、116、135、138、143、155、156、159、168、178、180、182、184、186、188、190、191、192、193、195、197、201、203、207、209、225、228、231、232、233、238、247、254、および291からなる群から選択されるアミノ酸位置に1個または複数のアミノ酸置換を含む。
【0025】
特定の実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、S24F、N32R、K34R、S35R、S35V、S36I、S36V、S36N、V37A、V37I、G38R、S40E、E42S、E42G、G44E、G44V、Q46K、Q46G、T48S、V68K、A70N、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、T82S、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、F168H、E178D、C180H、F182G、N184I、N184F、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K209R、K225L、K225Q、N228I、E231G、F232S、S233R、V238R、D247E、D247N、Q254RおよびK291Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0026】
さらなる実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、およびQ254の少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0027】
様々な実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、D247E、およびQ254Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36V、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、T82S、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225Q、E231G、F232S、S233R、およびV238Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0029】
様々な実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24F、N32R、K34R、S35V、S36N、V37I、G38R、S40E、E42G、G44V、Q46G、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K209R、K225Q、F232S、V238R、およびQ254Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0030】
一部の実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168H、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、Q254RおよびK291Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0031】
さらなる実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184F、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、D247E、およびQ254Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0032】
特定の実施形態では、HEバリアントは、配列番号1~5に記載されるI-OnuI LHEアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに関連して、以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42G、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、N228I、F232S、S233R、V238R、D247N、およびQ254R、およびV238Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0033】
さらなる実施形態では、HEバリアントは、配列番号6~12のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに対して少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、またはなおより好ましくは、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0034】
特定の実施形態では、HEバリアントは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0035】
さらなる実施形態では、HEバリアントは、配列番号7に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0036】
様々な実施形態では、HEバリアントは、配列番号8に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0037】
特定の実施形態では、HEバリアントは、配列番号9に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0038】
一部の実施形態では、HEバリアントは、配列番号10に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0039】
特定の実施形態では、HEバリアントは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0040】
様々な実施形態では、HEバリアントは、配列番号12に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0041】
特定の実施形態では、HEバリアントは、WAS遺伝子におけるポリヌクレオチド配列に結合する。
【0042】
一部の実施形態では、HEバリアントは、配列番号27に記載されるポリヌクレオチド配列に結合する。
【0043】
さらなる実施形態では、本明細書において企図されるポリペプチドは、DNA結合ドメインをさらに含む。
【0044】
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、TALE DNA結合ドメインおよびジンクフィンガーDNA結合ドメインからなる群から選択される。
【0045】
特定の実施形態では、TALE DNA結合ドメインは、約9.5個のTALE反復単位~約15.5個のTALE反復単位を含む。
【0046】
さらなる実施形態では、TALE DNA結合ドメインは、WAS遺伝子におけるポリヌクレオチド配列に結合する。
【0047】
一部の実施形態では、TALE DNA結合ドメインは、配列番号28に記載されるポリヌクレオチド配列に結合する。
【0048】
様々な実施形態では、ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、2、3、4、5、6、7、または8個のジンクフィンガーモチーフを含む。
【0049】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるポリペプチドは、ペプチドリンカーおよびエンドプロセッシング酵素またはその生物学的に活性なフラグメントをさらに含む。
【0050】
さらなる実施形態では、本明細書において企図されるポリペプチドは、ウイルス自己切断2Aペプチドおよびエンドプロセッシング酵素またはその生物学的に活性なフラグメントをさらに含む。
【0051】
一部の実施形態では、エンドプロセッシング酵素またはその生物学的に活性なフラグメントは、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、鋳型依存性DNAポリメラーゼまたは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を有する。
【0052】
さらなる実施形態では、エンドプロセッシング酵素は、Trex2 またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0053】
様々な実施形態では、ポリペプチドは、配列番号27または配列番号29に記載されるポリヌクレオチド配列においてヒトWAS遺伝子を切断する。
【0054】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書において企図されるポリペプチドをコードする。
【0055】
さらなる実施形態では、mRNAは、本明細書において企図されるポリペプチドをコードする。
【0056】
特定の実施形態では、cDNAは、本明細書において企図されるポリペプチドをコードする。
【0057】
様々な実施形態では、ベクターは、本明細書において企図されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0058】
一部の実施形態では、細胞は、本明細書において企図されるポリペプチドを含む。
【0059】
ある特定の実施形態では、細胞は、本明細書において企図されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0060】
ある特定の実施形態では、細胞は、本明細書において企図されるベクターを含む。
【0061】
様々な実施形態では、細胞は、本明細書において企図されるポリペプチドによって導入される1個または複数のゲノム改変を含む。
【0062】
特定の実施形態では、細胞は、造血細胞である。
【0063】
特定の実施形態では、細胞は、造血幹細胞または前駆細胞である。
【0064】
特定の実施形態では、細胞は、CD34+細胞である。
【0065】
さらなる実施形態では、細胞は、CD133+細胞である。
【0066】
特定の実施形態では、細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0067】
一部の実施形態では、細胞は、T細胞である。
【0068】
特定の実施形態では、細胞は、CD3+、CD4+、および/またはCD8+細胞である。
【0069】
ある特定の実施形態では、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である。
【0070】
特定の実施形態では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0071】
一部の実施形態では、組成物は、本明細書において企図されるポリペプチドによって導入される1個または複数のゲノム改変を含む細胞を含む。
【0072】
様々な実施形態では、組成物は、本明細書において企図される1個または複数のゲノム改変および生理学的に許容可能な担体を含む細胞を含む。
【0073】
ある特定の実施形態では、細胞においてWAS遺伝子を編集する方法は、本明細書において企図されるポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはベクター;およびドナー修復鋳型を細胞に導入することを含み、ポリペプチドの発現が、WAS遺伝子における標的部位での二本鎖切断を生じ、ドナー修復鋳型が、二本鎖切断(DSB)の部位での相同組み換え修復(HDR)によってWAS遺伝子に取り込まれる。
【0074】
一部の実施形態では、WAS遺伝子は、WAS、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、またはX連鎖性好中球減少症(XLN)をもたらす1個または複数のアミノ酸変異または欠失を含む。
【0075】
特定の実施形態では、細胞は、造血細胞である。
【0076】
さらなる実施形態では、細胞は、造血幹細胞または前駆細胞である。
【0077】
特定の実施形態では、細胞は、CD34+細胞である。
【0078】
様々な実施形態では、細胞は、CD133+細胞である。
【0079】
特定の実施形態では、細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0080】
一部の実施形態では、細胞は、T細胞である。
【0081】
特定の実施形態では、細胞は、CD3+、CD4+、および/またはCD8+細胞である。
【0082】
ある特定の実施形態では、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である。
【0083】
特定の実施形態では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0084】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、mRNAである。
【0085】
様々な実施形態では、5’-3’エキソヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、細胞に導入される。
【0086】
さらなる実施形態では、Trex2またはその生物学的に活性なフラグメントをコードするポリヌクレオチドは、細胞に導入される。
【0087】
一部の実施形態では、ドナー修復鋳型は、WAS遺伝子配列5’のDSBに相同な5’相同アーム、ドナーポリヌクレオチド、およびWAS遺伝子配列3’のDSBに相同な3’相同アームを含む。
【0088】
様々な実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、WAS遺伝子における1個または複数のアミノ酸変異または欠失を修復するよう設計される。
【0089】
特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、WASポリペプチドをコードするcDNAを含む。
【0090】
さらなる実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、WASポリペプチドをコードするcDNAに動作可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットを含む。
【0091】
特定の実施形態では、5’および3’相同アームの長さは、約100bp~約2500bpから独立して選択される。
【0092】
特定の実施形態では、5’および3’相同アームの長さは、約600bp~約1500bpから独立して選択される。
【0093】
一部の実施形態では、5’相同アームは、約1500bpであり、3’相同アームは、約1000bpである。
【0094】
ある特定の実施形態では、5’相同アームは、約600bpであり、3’相同アームは、約600bpである。
【0095】
さらなる実施形態では、ウイルスベクターを使用して、ドナー修復鋳型を細胞に導入する。
【0096】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)またはレトロウイルスである。
【0097】
様々な実施形態では、rAAVは、AAV2由来の1個または複数のITRを有する。
【0098】
さらなる実施形態では、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、およびAAV10からなる群から選択される血清型を有する。
【0099】
特定の実施形態では、rAAVは、AAV2またはAAV6血清型を有する。
【0100】
一部の実施形態では、レトロウイルスは、レンチウイルスである。
【0101】
ある特定の実施形態では、レンチウイルスは、インテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV)である。
【0102】
特定の実施形態では、WAS、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、もしくはX連鎖性好中球減少症(XLN)、またはそれと関連する状態の少なくとも一つの症状を治療する、予防する、または回復させる方法は、HSPCの集団を対象から回収すること、HSPCの集団を編集すること、およびHSPCの編集された集団を対象に投与することを含む。
【0103】
特定の実施形態では、免疫系障害、またはそれと関連する状態の少なくとも一つの症状を治療する、予防する、または回復させる方法は、免疫エフェクター細胞の集団を対象から回収すること、免疫エフェクター細胞の集団を編集すること、および細胞の編集された集団を対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1A】
図1Aは、WAS megaTALおよびWAS megaTAL認識部位(配列番号47)の模式図を示す。
【
図1B】
図1Bは、ヒトウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)遺伝子のイントロン2におけるWAS megaTAL認識部位の位置を示す。エクソン2の下流の認識部位30塩基対(bp)および翻訳開始コドンの下流の162bp。
【
図2-1】
図2Aは、酵母表面提示アッセイにおけるWAS I-OnuIバリアントの結合活性を示す。
図2Bは、pH8下での酵母表面提示アッセイにおけるWAS I-OnuIバリアントの切断活性を示す。
【
図2-2】
図2Cおよび
図2Dは、リプログラミングされたWAS I-OnuI HEバリアントが、WAS標的部位に結合し、切断することを示す。I-OnuIバリアントライブラリー由来のリプログラミングされたWAS I-OnuI HEバリアントを、WAS標的部位に結合し、切断するそれらの能力について試験するために、六つのバリアント(WAS I-OnuI HEバリアントV6、V12、V18、V35、V37、およびV55)を、酵母表面提示アッセイにおいてそれらの結合および切断活性について比較した。
図2Cは、約500~約2800MFIの範囲にある、MFIによって測定した、WAS標的部位オリゴヌクレオチドに対する結合活性を示す。
図2Dは、pH7.0でのCa
++/Mg
++比によって測定した、全てのバリアントが示した、WAS標的部位オリゴヌクレオチドの切断活性を示し、これは、ヒトWAS遺伝子の効率的標的化を示している。
【
図3-1】
図3Aは、イタリック体の11、12、13、14、または15のTALE DNA結合ドメイン標的部位(配列番号47)を有するmegaTAL認識部位を示す。
図3Bは、変動するTALE DNA結合ドメインを有するmegaTALとして再配列したWAS I-OnuIバリアントが、TLRアッセイにおいて同等の発現レベル(%BFP発現)を有することを示す。
図3Cは、12個の反復可変残基(RVD)を含むTALE DNA結合ドメインを有するWAS I-OnuI megaTALが、11、13、14、または15個のRVDを有するmegaTALより高い切断活性(%mCherryとして表す)を有することを示す。
【
図3-2】
図3Dは、WAS I-OnuI megaTAL(V6、V12、V18、V35、V37、またはV55)が、TREX2(Tx2)発現の存在または不存在下で同等の発現レベル(%BFP発現)を有することを示す。
図3Eは、TREX2ともに発現したWAS I-OnuI megaTAL(V6、V12、V18、V35、V37、またはV55)が、WAS megaTAL認識部位の切断(%mCherry発現)を増大させることを示す。
【
図3-3】
図3Fは、mRNA遺伝子導入による、ヒト初代T細胞におけるWAS I-OnuI megaTAL(V6、V12、V18、V35、V37、または12RVDを有するV55)の切断効率(NHEJ%)を示す。提示したデータは、標準誤差を有する健康な対照男性ドナー三名からの三つの独立した実験の平均である。
【
図4-1】
図4Aは、WAS megaTAL V6、V12、V18、V35、V37、およびV55ならびにAAV GFP発現ドナー修復鋳型を遺伝子導入したヒト初代T細胞においてHDRを誘導する一般的な実験アプローチを示す。
図4Bは、WAS遺伝子座でのHDRストラテジーの模式図を示す。
【
図4-2】
図4Cは、遺伝子導入の2日後および15日後のCD4
+T細胞の生存率を示す。提示したデータは、一つの独立した実験からのものである。
図4Dは、遺伝子導入の2日後および15日後のCD4
+T細胞におけるGFP発現を示す。提示したデータは、一つの独立した実験からのものである。
【
図5-1】
図5Aは、WAS megaTAL V6、V12、V18、V35、V37、およびV55ならびに異なる量のAAV GFP発現ドナー修復鋳型を遺伝子導入したヒト初代CD34
+細胞においてHDRを誘導する一般的な実験アプローチを示す。
図5Bは、遺伝子導入の1日後および5日後のCD34
+細胞の生存率を示す。提示したデータは、二つの独立した実験の平均である。
【
図5-2】
図5Cは、遺伝子導入の1日後および5日後のCD34
+細胞におけるGFP発現を示す。提示したデータは、二つの独立した実験の平均である。
【
図6-1】
図6Aは、WAS megaTAL V35およびAAV GFP発現ドナー修復鋳型を遺伝子導入した初代CD34
+細胞の生存率のフローサイトメトリープロットを示す。
図6Bは、WAS megaTAL V35およびAAV GFP発現ドナー修復鋳型を遺伝子導入したGFP発現初代CD34
+細胞のフローサイトメトリープロットを示す。
【
図6-2】
図6Cは、遺伝子導入の1日後および5日後のCD34
+細胞の生存率を示す。示したデータは、標準誤差を有する健康な対照男性ドナー二名からの四つの独立した実験の平均である。
図6Dは、遺伝子導入の1日後および5日後のCD34
+細胞におけるGFP発現を示す。GFP陰性(非HDR)細胞のNHEJ率を、CRISPR編集推論(ICE)解析によって示し、処置条件の下に列挙した。示したデータは、標準誤差を有する健康な対照男性ドナー二名からの四つの独立した実験の平均である。
【
図6-3】
図6Eは、フローサイトメーターにおいてGFP発現によって測定したHDR率と比較した、デジタル液滴PCRによって測定したHDR率を示す。示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した試料からのGFPおよびddPCRによって測定したHDRの平均比である。
図6Fは、megaTAL mRNAとrAAV6ドナーの両方で処理した試料において計算した、NHEJ率に対するHDR率の比を示す。
【
図7-1】
図7Aは、同じ細胞モデルにおける代替のデザイナーヌクレアーゼの活性の直接比較を可能にする、合わせたWAS megaTAL(MT)、WAS TALEN(TA;配列番号41)およびWAS gRNA(RNP;配列番号42)認識部位を含有するTLRレポーター細胞株において使用したHDRストラテジーの模式図を示す。
図7Bは、遺伝子導入(WAS megaTAL V35 mRNA、WAS TALEN mRNAまたはTrex2を有するか、もしくは有さないWAS RNP)の4日後のレポーター細胞の生存率を示す。提示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。
図7Cは、遺伝子導入(WAS megaTAL V35 mRNA、WAS TALEN mRNAまたはTrex2を有するか、もしくは有さないWAS RNP)の4日後のレポーター細胞のNHEJ率(CRISPR編集推論(ICE)解析によって示す)を示す。提示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。
【
図7-2】
図7Dは、酵素(WAS megaTAL V35 mRNA、WAS TALEN mRNAまたはWAS RNP)とrAAV6ドナーの両方で処置した4日目でのレポーター細胞におけるGFP発現を示す。提示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。
図7Eは、酵素(WAS megaTALV35 mRNA、WAS TALEN mRNAまたはWAS RNP)とrAAV6ドナーの両方で処理した試料において計算した、NHEJ率(ICE解析によって測定した)に対するHDR率(GFP発現によって測定した)の相対比を比較する。提示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。
図7Fは、WAS megaTAL V35およびrAAV6ドナーまたはWAS megaTAL V35、Trex2(TX2)およびrAAV6ドナーで処理したレポーター細胞におけるGFP発現を示す。提示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
配列識別子の簡単な説明
配列番号1は、野生型I-OnuI LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)のアミノ酸配列である。
配列番号2は、野生型I-OnuI LHEのアミノ酸配列である。
配列番号3は、野生型I-OnuI LHEの生物学的に活性なフラグメントのアミノ酸配列である。
配列番号4は、野生型I-OnuI LHEの生物学的に活性なフラグメントのアミノ酸配列である。
配列番号5は、野生型I-OnuI LHEの生物学的に活性なフラグメントのアミノ酸配列である。
配列番号6~12は、ヒトWAS遺伝子における標的部位に結合し、切断するようリプログラミングされたI-OnuI LHEバリアントのアミノ酸配列である。
配列番号13~19は、ヒトWAS遺伝子における標的部位に結合し、切断するmegaTALのアミノ酸配列である。
配列番号20~26は、ヒトWAS遺伝子における標的部位に結合し、切断するmegaTAL-TREX2融合物のアミノ酸配列である。
配列番号27は、ヒトWAS遺伝子のイントロン2におけるI-OnuI LHEバリアント標的部位である。
配列番号28は、ヒトWAS遺伝子のイントロン2におけるTALE DNA結合ドメイン標的部位である。
配列番号29は、ヒトWAS遺伝子のイントロン2におけるmegaTAL標的部位である。
配列番号30~36は、ヒトWAS遺伝子のイントロン2における標的部位を切断するmegaTALをコードするmRNA配列である。
配列番号37は、TREX2タンパク質をコードするmRNA配列である。
配列番号38は、TREX2タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号39は、典型的なAAVドナー修復鋳型のポリヌクレオチド配列である。
配列番号40は、ヒトウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号41は、ヒトWAS遺伝子のイントロン2におけるWAS TALEN標的部位である。
配列番号42は、ヒトWAS遺伝子のエクソン1におけるWAS RNP gRNA標的部位である。
配列番号43は、典型的なAAVドナー修復鋳型のポリヌクレオチド配列である。
配列番号44は、WAS megaTAL、WAS TALENおよびWAS RNP 標的部位と合わせた典型的なレポーターベクターのポリヌクレオチド配列である。
配列番号45は、コドン最適化WAS cDNA配列を有する典型的なAAVドナー修復鋳型のポリヌクレオチド配列である。
配列番号46は、野生型WAS cDNA配列を有する典型的なAAVドナー修復鋳型のポリヌクレオチド配列である。
配列番号47は、TALE DNA結合ドメイン標的部位を有するmegaTAL認識部位である。
前述の配列において、Xは、存在するなら、任意のアミノ酸またはアミノ酸の不存在を指す。
【0106】
A.概要
本開示は、一般的に、一部、改善されたゲノム編集組成物およびその使用方法に関する。いかなる特定の理論によって束縛されるものではないが、本明細書において企図されるゲノム編集組成物を使用して、細胞におけるウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)タンパク質の量を増大させて、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、もしくはX連鎖性好中球減少症(XLN)、またはそれと関連する状態を含むが、これらに限定されない、WASと関連する症状を治療する、予防する、または改善する。したがって、本明細書において企図される組成物は、WAS遺伝子における欠損によって引き起こされる疾患、障害、および状態を有する対象に、可能性のある治癒的な解決を提供する。いかなる特定の理論によって束縛されるものではないが、WAS、XLT、XLN、免疫系障害、血小板減少症、または湿疹を導く1個または複数の変異および/または欠失を有するWAS遺伝子に、機能的WASタンパク質(WASp)をコードするポリヌクレオチドを導入する遺伝子編集アプローチが、WASpによって引き起こされる免疫学的および機能的欠損を救出し、可能性のある治癒的療法をもたらすことが企図される。
【0107】
様々な実施形態では、WASp機能を増大させるか、または回復させるための、ゲノム編集ストラテジー、組成物、遺伝子改変された細胞、例えば、造血幹細胞もしくは前駆細胞、または免疫エフェクター細胞、およびその使用方法が、企図される。いかなる特定の理論によって束縛されるものではないが、WASpの機能的コピーをコードするポリヌクレオチドを導入するための、WAS遺伝子のゲノム編集が、企図される。一実施形態では、WAS遺伝子の編集は、それが、造血幹細胞または前駆細胞(HSPC)において内因性プロモーターおよびエンハンサーの制御下にあるように、WASpの機能的コピーをコードするポリヌクレオチドを導入することを含む。HSPCの子孫における機能的WASp産生の回復は、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、XLT、XLN、またはそれと関連する状態を有する対象と関連する一つまたは複数の症状を有効に治療する、予防する、および/または改善する。一実施形態では、WAS遺伝子の編集は、それが、免疫エフェクター細胞において内因性プロモーターおよびエンハンサーの制御下にあるように、WASpの機能的コピーをコードするポリヌクレオチドを導入することを含む。免疫エフェクター細胞の子孫における機能的WASp産生の回復は、免疫系障害を有する対象と関連する一つまたは複数の症状を有効に治療する、予防する、および/または改善する。
【0108】
様々な実施形態で企図されるゲノム編集方法は、WAS遺伝子における転写因子結合部位に結合し、切断するよう設計されたヌクレアーゼバリアントを含む。特定の実施形態で企図されるヌクレアーゼバリアントを使用して、標的ポリヌクレオチド配列において二本鎖切断を導入し、ポリヌクレオチド鋳型、例えば、ドナー修復鋳型の存在下で、相同組み換え修復(HDR)、すなわち、WAS遺伝子へのドナー修復鋳型の相同組み換えをもたらし得る。ある特定の実施形態で企図されるヌクレアーゼバリアントはまた、細胞の塩基除去修復(BER)機構またはドナー修復鋳型の存在下での相同組み換えを使用して修復され得る一本鎖DNA切断を生じる、ニッカーゼとして設計することができる。相同組み換えは、二本鎖DNA切断を修復するための鋳型として相同なDNAを必要とし、標的部位に隣接する領域に対する相同性を生じる配列が、両側で隣接する標的部位での、治療遺伝子、例えば、WASをコードする発現カセットまたはポリヌクレオチドを含むドナーDNAの導入によって特定される無限の多様な改変を生じるよう活用することができる。
【0109】
一つの好ましい実施形態では、本明細書において企図されるゲノム編集組成物は、ヒトWAS遺伝子を標的とするホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTALを含む。
【0110】
DNA切断が、WAS遺伝子の第二のイントロンおよびWASpの機能的コピーをコードするポリヌクレオチドを含むドナー修復鋳型、すなわち、ドナー修復鋳型において生成される、様々な実施形態では、DSBは、DNA切断部位での相同組み換えによって、鋳型の配列を用いて修復される。好ましい実施形態では、修復鋳型は、ポリヌクレオチドおよびWASpの発現が、内因性WASプロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下にある部位において挿入されるよう設計されたWASpの機能的コピーをコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0111】
一つの好ましい実施形態では、本明細書において企図されるゲノム編集組成物は、HDR効率を増大させるためのヌクレアーゼバリアントおよび1個または複数のエンドプロセッシング酵素を含む。
【0112】
一つの好ましい実施形態では、本明細書において企図されるゲノム編集組成物は、ヒトWAS遺伝子を標的とするホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTAL、機能的WASpをコードするドナー修復鋳型、およびエンドプロセッシング酵素、例えば、Trex2を含む。
【0113】
様々な実施形態では、ゲノム編集された細胞が、企図される。ゲノム編集された細胞は、機能的WASpを含み、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、XLT、XLN、またはそれと関連する状態を含むが、これらに限定されない、WASの少なくとも一つの症状を治療する、予防するか、または改善する。
【0114】
したがって、本明細書において企図される方法および組成物は、WASおよびそれと関連する状態の治療のための既存の遺伝子編集ストラテジーと比較して、飛躍的な改善を表す。
【0115】
組み換え(すなわち、操作された)DNA、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド合成技術、免疫アッセイ、組織培養、形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、精製ならびに関連する技術および方法は、本明細書を通して引用され、考察される、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学および免疫学における様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載される通り、一般的に行われ得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(IRL Press,Oxford Univ.Press USA,1985);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,NY);Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Edited by Julie Logan,Kirstin Edwards and Nick Saunders,2009,Caister Academic Press,Norfolk,UK;Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press,New York,1991);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,Ed.,1984);Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,Ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Next-Generation Genome Sequencing(Janitz,2008 Wiley-VCH);PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park,Ed.,3rd Edition,2010 Humana Press);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir andCC Blackwell,eds.,1986);Roitt,Essential Immunology,6th Edition,(Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988);Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology;ならびにAdvances in Immunologyなどの雑誌における研究論文を参照のこと。
【0116】
B.定義
本開示をより詳細に記載する前に、本明細書において使用される特定の用語の定義を提供することは、その理解に有用であり得る。
【0117】
別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと類似または均等な任意の方法および材料を、特定の実施形態の実施または試験において使用することができるが、組成物、方法および物質の好ましい実施形態が、本明細書において記載される。本開示の目的のために、以下の用語が以下に定義される。追加の定義は、本開示全体を通じて記載される。
【0118】
冠詞「a」、「an」、および「the」は、冠詞の文法的対象の一つ~一つより多く(すなわち、~少なくとも一つ、または~一つより多く)を指すために使用される。例として、「構成要素」は、一つの構成要素または一つ以上の構成要素を意味する。
【0119】
二者択一(例えば、「または」)の使用は、二者択一の一方、両方、またはその任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。
【0120】
用語「および/または」は、二者択一の一方または両方を意味すると理解されるべきである。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「約」または「およそ」は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%と同等に変動する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態では、用語「約」または「およそ」は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さの約±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さの範囲を指す。
【0122】
一実施形態では、範囲、例えば、1~5、約1~5、または約1~約5は、範囲によって包含されるそれぞれの数値を指す。例えば、一つの非限定的かつ単に例示的な実施形態では、範囲「1~5」は、表現1、2、3、4、5;または1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5.0;または1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5.0と均等である。
【0123】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さと比較して、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上である数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さとほぼ同じである、効果、例えば、生理学的効果を生じる参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0124】
本明細書全体を通して、文脈が別段必要としない限り、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、指定された工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を含むことを暗示するが、任意の他の工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群の排除を暗示するものではないことは理解される。「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものを含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された構成要素が、必要とされるか、または必須であること、および他の構成要素が存在し得ないことを示す。「本質的にからなる」とは、語句の後に列挙される任意の構成要素を含むこと、および列挙される要素について本開示において特定される活性または作用と干渉しないか、または関与しない他の構成要素に限定されることを意味する。したがって、「本質的にからなる」という語句は、列挙される構成要素が要求されるか、または必須であるが、列挙される構成要素の活性または作用に実質的に影響を与える他の構成要素が存在しないことを示す。
【0125】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある特定の実施形態」、「追加の実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」またはその組み合わせは、実施形態と関連して記載される特定の特性、構造または特徴が、少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所における前述の語句の出現は、必ずしも、すべて同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特性、構造、または特徴は、一つまたは複数の実施形態において任意の適切な様式で組み合わせられてもよい。また、一つの実施形態における特性の正の列挙は、特定の実施形態における特性を除外するための基礎としての役割を果たすことも理解される。
【0126】
用語「エクスビボ」は、一般的に、生物の外部の人工環境で、好ましくは、最小限の変化の天然の状態で、生きた組織内または上で行われる実験または測定などの、生物の外部で怒る活動を指す。特定の実施形態では、「エクスビボ」の手法は、生物から採取され、実験室装置において、通常、滅菌条件下で、典型的には、数時間または最大約24時間、ただし状況に応じて最大48時間または72時間を含む時間培養されるか、または調節される生きた細胞または組織を含む。ある特定の実施形態では、このような組織または細胞は、収集され、凍結され、その後、エクスビボ処理のため解凍され得る。生きた細胞または組織を使用して数日より長い間続く組織培養実験または手法は、典型的には、「インビトロ」であるとみなされるが、ある特定の実施形態では、この用語は、エクスビボと互換的に使用され得る。
【0127】
用語「インビボ」は、一般的に、生物内で起こる活動を指す。一実施形態では、細胞ゲノムは、インビボで操作され、編集され、または改変される。
【0128】
「増強する」または「促進する」または「増大させる」または「拡大する」または「強める」は、一般的に、ビークルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より大きな応答(すなわち、生理学的応答)を生じる、誘発する、または引き起こす、本明細書において企図されるヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞の能力を指す。測定可能な応答は、とりわけ、当技術分野における見解および本明細書の記載から明らかなHDRおよび/またはWASP発現の増大を含み得る。「増大した」または「増強した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、ビークルまたは対照によって産生される応答の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30回以上(例えば、500、1000回)(例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など1を超えるすべての整数および小数点を含む)である増大を含み得る。
【0129】
「減少する」または「低下する」または「少なくする」または「低減する」または「弱める」または「切除する」または「阻害する」または「そぐ」は、一般的に、ビークルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より小さな応答(すなわち、生理学的応答)を生じる、誘発する、または引き起こす、本明細書において企図されるヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞の能力を指す。測定可能な応答は、WASまたはそれと関連する状態、例えば、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、XLT、もしくはXLNと関連する一つまたは複数の症状における減少を含み得る。「減少」または「低減した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、ビークルまたは対照によって産生される応答の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30回以上(例えば、500、1000回)(例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など1を超えるすべての整数および小数点を含む)である減少を含み得る。
【0130】
「維持する」、または「保存する」、または「維持」、または「変化なし」、または「実質的な変化なし」、または「実質的な減少なし」とは、一般的に、ビークルまたは対照のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、本明細書において企図されるヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞が、実質的に類似または同等の生理学的応答(すなわち、下流の効果)を生じる、誘発する、または引き起こす能力を指す。同等の応答は、参照の応答と有意に異なっていないか、または測定可能なほど異なっていないものである。
【0131】
本明細書において使用される場合、「特異的結合親和性」または「特異的に結合する」または「特異的に結合した」または「特異的な結合」または「特異的に標的化する」という用語は、バックグラウンド結合よりも高い結合親和性での、一方の分子の別の分子への結合、例えば、DNAへのポリペプチド結合のDNA結合ドメインを記載する。結合ドメインは、例えば、約105M-1以上の親和性またはKa(すなわち、1/Mの単位での特定の結合相互作用の平衡会合定数)で標的部位に結合するか、または標的部位と会合する場合、それは、標的部位に「特異的に結合する」。ある特定の実施形態では、結合ドメインは、約106M-1、107M-1、108M-1、109M-1、1010M-1、1011M-1、1012M-1、または1013M-1.以上のKaで標的部位に結合する。「高親和性」結合ドメインは、少なくとも107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1、少なくとも1013M-1以上のKaを有する結合ドメインを指す。
【0132】
あるいは、親和性は、Mの単位(例えば、10-5M~10-13M、またはそれ未満)での特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義されてもよい。特定の実施形態で企図されるDNA標的部位に対する一つ以上のDNA結合ドメインを含むヌクレアーゼバリアントの親和性は、従来技術、例えば、酵母細胞表面提示、または結合会合、もしくは標識されたリガンドを使用した置換アッセイを使用して容易に決定することができる。
【0133】
一実施形態では、特異的結合の親和性は、バックグラウンド結合の約2倍、バックグラウンド結合の約5倍、バックグラウンド結合の約10倍、バックグラウンド結合の約20倍、バックグラウンド結合の約50倍、バックグラウンド結合の約100倍、またはバックグラウンド結合の約1000倍以上大きい。
【0134】
用語「選択的に結合する」または「選択的に結合した」または「選択的に結合している」または「選択的に標的化する」は、複数のオフターゲット分子の存在下で標的分子への一つの分子の優先的結合(オンターゲット結合)を記載する。特定の実施形態では、HEまたはmegaTALは、HEまたはmegaTALが、オフターゲットDNA標的結合部位に結合するよりも、約5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、100倍、または1000倍以上頻繁に、オンターゲットDNA結合部位に選択的に結合する。
【0135】
「オンターゲット」は、標的部位配列を指す。
【0136】
「オフターゲット」は、標的部位配列と類似するが、同一ではない配列を指す。
【0137】
「標的部位」または「標的配列」は、結合分子が、結合および/または切断する核酸の部分を定義する染色体または染色体外核酸配列であり、ただし、結合および/または切断に十分な条件が存在する。標的部位または標的配列の一つの鎖のみを参照するポリヌクレオチド配列または配列番号に言及するとき、ヌクレアーゼバリアントによって結合され、および/または切断される標的部位または標的配列が、二本鎖であり、参照配列およびその相補配列を含むことは、理解される。好ましい実施形態では、標的部位は、ヒトWAS遺伝子における配列である。
【0138】
「組み換え」は、相同末端結合(NHEJ)および相同組み換えによるドナー捕獲を含むが、これらに限定されない、二つのポリヌクレオチド間の遺伝子情報の交換プロセスを指す。本開示の目的のため、「相同組み換え(HR)」は、例えば、相同組み換え修復(HDR)機構を介した細胞における二本鎖切断の修復の間に起こる、このような交換の特定の形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「ドナー」分子を鋳型として使用して、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)を修復し、それは、ドナーから標的への遺伝子情報の伝達を導くので、「非クロスオーバー遺伝子変換」または「狭い区域の遺伝子変換」として様々に知られている。いかなる特定の理論によって束縛されるものではないが、このような伝達は、破壊された標的とドナーの間で形成するヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ修正、および/またはドナーが、標的の部分となる遺伝子情報を再合成するために使用される「合成依存性鎖アニーリング」、および/または関連するプロセスを含み得る。このような特定のHRは、多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全てが、標的ポリヌクレオチドに組み込まれるように、標的分子の配列の変化をもたらす。
【0139】
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の破壊を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含むが、これらに限定されない、様々な方法によって開始され得る。一本鎖切断と二本鎖切断の両方が可能である。二本鎖切断は、二つの別個の一本鎖切断現象の結果として生じ得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生をもたらし得る。ある特定の実施形態では、本明細書において企図される、ポリペプチドおよびヌクレアーゼバリアント、例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、megaTALなどが、標的化された二本鎖DNA切断のため使用される。エンドヌクレアーゼ切断認識部位は、いずれかのDNA鎖上にあり得る。
【0140】
「外因性」分子は、細胞に通常存在しないが、一つまたは複数の遺伝学的方法、生化学的方法または他の方法によって細胞に導入される分子である。例示的な外因性分子としては、小有機分子、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類、上記分子の任意の改変された誘導体、または上記分子の一つまたは複数を含む任意の複合体が挙げられるが、これらに限定されない。細胞への外因性分子の導入方法は、当業者に公知であり、脂質介在性伝達(すなわち、中性脂質およびカチオン性脂質を含む、リポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、バイオポリマーナノ粒子、リン酸カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン介在性伝達、およびウイルスベクター介在性伝達が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
「内因性」分子は、特定の環境条件下で、特定の発生段階において、特定の細胞に通常存在する分子である。追加の内因性分子には、タンパク質が含まれ得る。
【0142】
「遺伝子」は、このような制御配列が、コード配列および/または転写された配列に隣接しているかどうかにかかわらず、遺伝子産物をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を制御するすべてのDNA領域を指す。遺伝子には、プロモーター配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界領域、ターミネーター、ポリアデニル化配列、転写後応答エレメント、リボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位などの翻訳制御配列、複製開始点、基質付着部位、ならびに座位調節領域が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
「遺伝子発現」とは、遺伝子に含有される情報を遺伝子産物に変換することを指す。遺伝子産物は、遺伝子(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAもしくは任意の他のタイプのRNA)またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質の直接転写産物であり得る。遺伝子産物はまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集などのプロセスによって改変されるRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって改変されるタンパク質を含む。
【0144】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子操作された」または「遺伝子改変された」は、細胞中の総遺伝物質へのDNAまたはRNAの形態の余分な遺伝物質の染色体または染色体外付加を指す。遺伝子改変は、細胞のゲノム中の特定の部位を標的としても、または標的としなくてもよい。一実施形態では、遺伝子改変は、部位特異的である。一実施形態では、遺伝子改変は、部位特異的でない。
【0145】
本明細書で使用される場合、用語「ゲノム編集」は、遺伝子または遺伝子産物の発現を回復させる、修正する、破壊する、および/または改変する、細胞のゲノムにおける標的部位での遺伝物質の置換、欠失、および/または導入を指す。特定の実施形態で企図されるゲノム編集は、一つまたは複数のヌクレアーゼバリアントを細胞内に導入して、好ましくは、ドナー修復鋳型の存在下で、細胞のゲノムにおける標的部位で、または標的部位の近位でDNA損傷を生じることを含む。
【0146】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子療法」は、遺伝子もしくは遺伝子産物の発現を回復させる、修正する、もしくは改変する、または治療ポリペプチドを発現させる目的のための、細胞における総遺伝物質への余分な遺伝物質の導入を指す。特定の実施形態では、遺伝子もしくは遺伝子産物の発現を回復させる、修正する、破壊する、もしくは改変する、または治療ポリペプチドを発現させる目的のための、ゲノム編集による細胞ゲノムへの遺伝物質の導入は、遺伝子療法とみなされる。
【0147】
C.ヌクレアーゼバリアント
WAS遺伝子における標的部位をゲノム編集するのに適している、本明細書における特定の実施形態で企図されるヌクレアーゼバリアントは、一つまたは複数のDNA結合ドメインおよび一つまたは複数のDNA切断ドメイン(例えば、一つまたは複数のエンドヌクレアーゼドメインおよび/またはエキソヌクレアーゼドメイン)、ならびに任意選択的に、本明細書に企図される一つまたは複数のリンカーを含む。用語「リプログラミングされたヌクレアーゼ」、「操作されたヌクレアーゼ」、または「ヌクレアーゼバリアント」は、互換的に使用され、一つまたは複数のDNA結合ドメインおよび一つまたは複数のDNA切断ドメインを含むヌクレアーゼを指し、ヌクレアーゼは、WAS遺伝子における二本鎖DNA標的配列、好ましくは、ヒトWAS遺伝子の第二のイントロンにおける標的配列、より好ましくは、配列番号27に記載されるヒトWAS遺伝子の第二のイントロンにおける標的配列に結合し、切断するように親または天然に存在するヌクレアーゼから設計され、および/または改変されている。ヌクレアーゼバリアントは、天然に存在するヌクレアーゼから、または以前のヌクレアーゼバリアントから設計され、および/または改変されてもよい。特定の実施形態で企図されるヌクレアーゼバリアントは、一つまたは複数の追加の機能的ドメイン、例えば、DNA結合ドメイン、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、鋳型依存性DNAポリメラーゼまたは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を示すエンドプロセッシング酵素のエンドプロセッシング酵素ドメインをさらに含んでもよい。
【0148】
WAS遺伝子における標的配列に結合し、切断するヌクレアーゼバリアントの例には、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント(メガヌクレアーゼバリアント)およびmegaTALが挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
1.ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)バリアント
様々な実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼは、WAS遺伝子における二本鎖切断(DSB)を、好ましくは、ヒトWAS遺伝子の第二のイントロンにおける標的配列、より好ましくは、配列番号27に記載されるヒトWAS遺伝子の第二のイントロンにおける標的配列を導入するようにリプログラミングされている。「ホーミングエンドヌクレアーゼ」および「メガヌクレアーゼ」は、互換的に使用され、12~45塩基対の切断部位を認識する天然に存在するヌクレアーゼを指し、一般に、配列ならびに構造モチーフ:LAGLIDADG、GIY-YIG、HNH、His-Cys box、およびPD-(D/E)XKに基づき、五つのファミリーにグループ化される。
【0150】
「参照ホーミングエンドヌクレアーゼ」または「参照メガヌクレアーゼ」は、野生型ホーミングエンドヌクレアーゼまたは天然で見られるホーミングエンドヌクレアーゼを指す。一実施形態では、「参照ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、基礎活性を増大させるよう改変されている野生型ホーミングエンドヌクレアーゼを指す。
【0151】
「操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ」、「リプログラミングされたホーミングエンドヌクレアーゼ」、「ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント」、「操作されたメガヌクレアーゼ」、「リプログラミングされたメガヌクレアーゼ」、または「メガヌクレアーゼバリアント」は、一つまたは複数のDNA結合ドメインおよび一つまたは複数のDNA切断ドメインを含むホーミングエンドヌクレアーゼを指し、ホーミングエンドヌクレアーゼは、WAS遺伝子におけるDNA標的配列に結合し、切断するように、親または天然に存在するホーミングエンドヌクレアーゼから設計され、および/または改変されている。ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントは、天然に存在するホーミングエンドヌクレアーゼから、または別のホーミングエンドヌクレアーゼバリアントから、設計され、および/または改変されてもよい。特定の実施形態で企図されるホーミングエンドヌクレアーゼバリアントは、一つまたは複数の追加の機能的ドメイン、例えば、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、鋳型依存性DNAポリメラーゼまたは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を示すエンドプロセッシング酵素のエンドプロセッシング酵素ドメインをさらに含んでもよい。
【0152】
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)バリアントは、天然で存在せず、組み換えDNAテクノロジーによって、またはランダム変異誘発によって得ることができる。HEバリアントは、天然に存在するHEまたはHEバリアントにおいて、1個または複数のアミノ酸変更を行うこと、例えば、一つまたは複数のアミノ酸を変異誘発すること、置換させること、付加すること、または欠損させることによって得られ得る。特定の実施形態では、HEバリアントは、DNA認識境界面に対する1個または複数のアミノ酸変更を含む。
【0153】
特定の実施形態で企図されるHEバリアントは、一つまたは複数のリンカーおよび/または追加の機能的ドメイン、例えば、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、鋳型依存性DNAポリメラーゼもしくは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を示すエンドプロセッシング酵素のエンドプロセッシング酵素ドメインをさらに含んでもよい。特定の実施形態では、HEバリアントは、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、鋳型依存性DNAポリメラーゼまたは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を示すエンドプロセッシング酵素を用いて、HSPC細胞または免疫エフェクター細胞に導入される。HEバリアントおよび3’プロセッシング酵素は、例えば、異なるベクターもしくは別個のmRNAにおいて別個に、あるいは例えば、融合タンパク質として、またはウイルス自己切断ペプチドもしくはIRESエレメントによって分離されるポリシストロニックコンストラクトにおいて、一緒に導入されてもよい。
【0154】
「DNA認識境界面」は、核酸標的塩基と相互作用するHEアミノ酸残基ならびに隣接するその残基を指す。それぞれのHEについて、DNA認識境界面は、側鎖と側鎖および側鎖とDNAコンストラクトの広範なネットワークを含み、そのほとんどは、特定の核酸配列配列を認識するため必然的に固有である。したがって、特定の核酸配列に対応するDNA認識境界面のアミノ酸配列は、大きく変動し、任意の天然またはHEバリアントの特性である。非限定的な例として、特定の実施形態で企図されるHEバリアントは、天然のHE(または以前に生成されたHEバリアント)のDNA認識境界面に局在化した一つまたは複数のアミノ酸残基が変動する、HEバリアントのライブラリーを構築することによって誘導されてもよい。ライブラリーは、切断アッセイを使用して、それぞれ予測されるWAS標的部位に対する標的切断活性についてスクリーニングされてもよい(例えば、Jarjour et al.、2009.Nuc.Acids Res.37(20):6871-6880を参照のこと)。
【0155】
LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)は、ホーミングエンドヌクレアーゼの最もよく研究されたファミリーであり、主に、古細菌において、ならびに緑藻類および真菌類における細胞小器官DNAにおいてコードされ、最も高い全体的なDNA認識特異性を示す。LHEは、タンパク質鎖当たり一つまたは二つのLAGLIDADG触媒モチーフを含み、それぞれ、ホモダイマーまたは単鎖モノマーとして機能する。LAGLIDADGタンパク質の構造研究により、αββαββαにより特徴付けられ、このフォールドの第一のヘリックスに属するLAGLIDADGモチーフを伴う、高度に保存されたコア構造が同定された(Stoddard 2005)。LHEの非常に効率的かつ特異的な切断は、新規の高度に特異的なエンドヌクレアーゼをもたらすためのタンパク質スキャフォールドを表す。しかしながら、非天然または非基準の標的部位に結合し、切断するためのLHEの操作は、標的部位における塩基対位置の最大三分の二で、そのDNA接触点および切断特異性を変更するための、適当なLHEスキャフォールドの選択、標的遺伝子座の調査、推定標的部位の選択、およびLHEの広範な変更を必要とする。
【0156】
一実施形態では、リプログラミングされたLHEまたはLHEバリアントが設計され得るLHEとしては、I-CreIおよびI-SceIが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
リプログラミングされたLHEまたはLHEバリアントが設計され得るLHEの例としては、I-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、およびI-Vdi141Iが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
一実施形態では、リプログラミングされたLHEまたはLHEバリアントは、I-CpaMIバリアント、I-HjeMIバリアント、I-OnuIバリアント、I-PanMIバリアント、およびI-SmaMIバリアントからなる群から選択される。
【0159】
一実施形態では、リプログラミングされたLHEまたはLHEバリアントは、I-OnuIバリアントである。例えば、配列番号6~12を参照のこと。
【0160】
一実施形態では、WAS遺伝子を標的化するリプログラミングされたI-OnuI LHEまたはI-OnuIバリアントは、天然のI-OnuIまたはその生物学的に活性なフラグメント(配列番号1~5)から生成された。好ましい実施形態では、ヒトWAS遺伝子を標的化するリプログラミングされたI-OnuI LHEまたはI-OnuIバリアントは、既存のI-OnuIバリアントから生成された。一実施形態では、リプログラミングされたI-OnuI LHEは、配列番号27に記載されるヒトWAS遺伝子標的部位に対して生成された。
【0161】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するリプログラミングされたI-OnuI LHEまたはI-OnuIバリアントは、DNA認識境界面において1個または複数のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子を結合し、切断するI-OnuI LHEは、I-OnuI(Taekuchi et al.2011.Proc Natl Acad Sci U.S.A.2011 Aug 9;108(32):13077-13082)もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuI LHEバリアント、またはそのさらなるバリアントのDNA認識境界面と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む。
【0162】
一実施形態では、ヒトWAS遺伝子を結合し、切断するI-OnuI LHEは、I-OnuI(Taekuchi et al.2011.Proc Natl Acad Sci U.S.A.2011 Aug 9;108(32):13077-13082)もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuI LHEバリアント、またはそのさらなるバリアントのDNA認識境界面と少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を含む。
【0163】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、配列番号1~12のいずれか一つに記載されるI-OnuI、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントのDNA認識境界面における1個または複数のアミノ酸置換または改変を含む。
【0164】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)、配列番号6~12に記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントのDNA認識境界面、特に、位置24~50、68~82、180~203および223~240に位置するサブドメインにおいて1個または複数のアミノ酸置換または改変を含む。
【0165】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、78、80、82、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、223、225、227、229、232、234、236、238、および240からなる群から選択されるアミノ酸位置でのDNA認識境界面において1個または複数のアミノ酸置換または改変を含む。
【0166】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、78、80、82、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、223、225、227、229、232、234、236、238、および240からなる群から選択されるアミノ酸位置において1個または複数のアミノ酸置換または改変を含む。
【0167】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントのDNA認識境界面、特に、位置24~50、68~82、180~203および223~240に位置するサブドメインにおいて5、10、15、20、25、30、35、または40個以上のアミノ酸置換または改変を含む。
【0168】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、78、80、82、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、223、225、227、229、232、234、236、238、および240からなる群から選択されるアミノ酸位置でのDNA認識境界面において5、10、15、20、25、30、35、または40個以上のアミノ酸置換または改変を含む。
【0169】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの24、26、28、30、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、72、75、76、78、80、82、180、182、184、186、188、189、190、191、192、193、195、197、199、201、203、223、225、227、229、232、234、236、238、および240からなる群から選択されるアミノ酸位置において5、10、15、20、25、30、35、または40個以上のアミノ酸置換または改変を含む。
【0170】
一実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI配列全体におけるすべてに位置する追加の位置において1個または複数のアミノ酸置換または修飾を含む。置換され、および/または修飾され得る残基は、核酸標的と接触するか、または核酸骨格と、またはヌクレオチド塩基と、直接または水分子を介して相互作用するアミノ酸を含むが、これらに限定されない。
【0171】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断する本明細書において企図されるI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI配列番号1~5)もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの位置:24、32、34、35、36、37、38、40、42、44、46、48、68、70、75、76、78、80、82、108、116、135、138、143、155、156、159、168、178、180、182、184、186、188、190、191、192、193、195、197、201、203、207、209、225、228、231、232、233、238、247、254、および291からなる位置群から選択される少なくとも一つの位置において1個または複数の置換および/または修飾、好ましくは、少なくとも5個、好ましくは、少なくとも10個、好ましくは、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも20個、より好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも30個、なおより好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個を含む。
【0172】
さらなる実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)、もしくは配列番号6~12に記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの以下のアミノ酸置換:S24T、S24F、N32R、K34R、S35R、S35V、S36I、S36V、S36N、V37A、V37I、G38R、S40E、E42S、E42G、G44E、G44V、Q46K、Q46G、T48S、V68K、A70N、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、T82S、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、F168H、E178D、C180H、F182G、N184I、N184F、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K209R、K225L、K225Q、N228I、E231G、F232S、S233R、V238R、D247E、D247N、Q254RおよびK291Rの少なくとも5個、少なくとも15個、好ましくは、少なくとも25個、より好ましくは、少なくとも35個、またはなおより好ましくは、少なくとも40個以上を含む。
【0173】
ある特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12のいずれか一つに記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、およびQ254Rを含む。
【0174】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12のいずれか一つに記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、D247E、およびQ254Rを含む。
【0175】
一部の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12のいずれか一つに記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、S35R、S36V、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、T82S、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225Q、E231G、F232S、S233R、およびV238Rを含む。
【0176】
ある特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12のいずれか一つに記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの以下のアミノ酸置換:S24F、N32R、K34R、S35V、S36N、V37I、G38R、S40E、E42G、G44V、Q46G、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K209R、K225Q、F232S、V238R、およびQ254Rを含む。
【0177】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12のいずれか一つに記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、K156I、S159P、F168H、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、Q254RおよびK291Rを含む。
【0178】
さらなる実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12のいずれか一つに記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42S、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70Y、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184F、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、F232S、S233R、V238R、D247E、およびQ254Rを含む。
【0179】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、I-OnuI(配列番号1~5)もしくは配列番号6~12のいずれか一つに記載されるI-OnuIバリアント、その生物学的に活性なフラグメント、および/またはそのさらなるバリアントの以下のアミノ酸置換:S24T、N32R、K34R、S35R、S36I、V37A、G38R、S40E、E42G、G44E、Q46K、T48S、V68K、A70N、N75R、A76Y、S78T、K80R、K108M、V116L、K135R、L138M、T143N、S155G、S159P、F168L、E178D、C180H、F182G、N184I、I186N、S188R、S190T、K191G、L192T、G193H、Q195T、Q197R、S201G、T203S、K207R、K225L、N228I、F232S、S233R、V238R、D247N、およびQ254Rを含む。
【0180】
特定の実施形態では、ヒトWAS遺伝子に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、配列番号6~12のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントに対して少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、またはなおより好ましくは、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0181】
特定の実施形態では、I-OnuI LHEバリアントは、配列番号6~12のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0182】
特定の実施形態では、I-OnuI LHEバリアントは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0183】
特定の実施形態では、I-OnuI LHEバリアントは、配列番号7に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0184】
特定の実施形態では、I-OnuI LHEバリアントは、配列番号8に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0185】
特定の実施形態では、I-OnuI LHEバリアントは、配列番号9に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0186】
特定の実施形態では、I-OnuI LHEバリアントは、配列番号10に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0187】
特定の実施形態では、I-OnuI LHEバリアントは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0188】
特定の実施形態では、I-OnuI LHEバリアントは、配列番号12に記載されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性なフラグメントを含む。
【0189】
特定の実施形態では、配列番号27に記載されるヌクレオチド配列に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントは、配列番号6~12のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含む。
【0190】
2.MegaTAL
様々な実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントを含むmegaTALは、WAS遺伝子、好ましくはヒトWAS遺伝子の第二のイントロン中の標的配列、より好ましくは配列番号29に記載されるヒトWAS遺伝子の第二のイントロン中の標的配列、二本鎖切断(DSB)を導入するように再プログラムされる。「megaTAL」は、TALE DNA結合ドメインおよびWAS遺伝子におけるDNA標的配列に結合し、切断するホーミングエンドヌクレアーゼバリアントを含むポリペプチドを指し、任意選択で、一つまたは複数のリンカーおよび/または追加の機能的ドメイン、例えば、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼまたは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を示すエンドプロセッシング酵素のエンドプロセッシング酵素ドメインを含む。
【0191】
特定の実施形態では、megaTALは、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、鋳型依存性DNAポリメラーゼまたは鋳型非依存性DNAポリメラーゼ活性を示すエンドプロセッシング酵素と共に、細胞に導入することができる。megaTALおよび3’プロセッシング酵素は、例えば、異なるベクターもしくは別個のmRNAにおいて別個に、あるいは例えば、融合タンパク質として、またはウイルス自己切断ペプチドもしくはIRESエレメントによって分離されるポリシストロニックコンストラクトにおいて、一緒に導入されてもよい。
【0192】
「TALE DNA結合ドメイン」は、植物トランスクリプトームを操作するように植物転写活性化因子を模倣する、転写活性化因子様エフェクター(TALEまたはTALエフェクター)のDNA結合部分である(例えば、Kay et al.、2007.Science 318:648-651を参照のこと)。特定の実施形態で企図されるTALE DNA結合ドメインは、新規に操作されるか、または天然に存在するTALE、例えば、キサントモナス・カンペストリス病原型ヴェシカトリア(Xanthomonas campestris pv.vesicatoria)、Xanthomonas gardneri(キサントモナス・ガルドネリ)、キサントモナス・トランスルセンス(Xanthomonas translucens)、キサントモナス・アキソノポディス(Xanthomonas axonopodis)、キサントモナス・ペルフォランス(Xanthomonas perforans)、キサントモナス・アルファルファ(Xanthomonas alfalfa)、キサントモナス・シトリ(Xanthomonas citri)、キサントモナス・エウヴェシカトリア(Xanthomonas euvesicatoria)、およびキサントモナス・オリザエ(Xanthomonas oryzae)由来のAvrBs3ならびにラルストニア・ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)由来のbrg11およびhpx17から操作される。DNA結合ドメインをもたらし、設計するためのTALEタンパク質の例は、米国特許第9,017,967号、およびそこで引用される参考文献において開示されており、それらのすべては、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0193】
特定の実施形態では、megaTALは、その対応する標的DNA配列へのTALE DNA結合ドメインの結合に関与する、一つまたは複数の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。単一の「反復単位」(「反復」とも呼ばれる)は、典型的には、33~35アミノ酸長である。それぞれのTALE DNA結合ドメイン反復単位は、典型的には、反復の12位および/または13位において、反復可変二残基(RVD)を構成する1つまたは2つのDNA結合残基を含む。これらのTALE DNA結合ドメインのDNA認識のための天然(基準)コードは、12位および13位のHD配列が、シトシン(C)への結合を導き、NGがTに結合し、NIがAに結合し、NNがGまたはAに結合し、NGがTに結合するように、決定されている。ある特定の実施形態では、非基準(非定型)RVDが企図される。
【0194】
特定の実施形態で企図される特定のmegaTALにおける使用に適した非基準RVDの例としては、グアニン(G)の認識のためHH、KH、NH、NK、NQ、RH、RN、SS、NN、SN、KN;アデニン(A)の認識のためNI、KI、RI、HI、SI;チミン(T)の認識のためNG、HG、KG、RG;シトシン(C)の認識のためRD、SD、HD、ND、KD、YG;AまたはGの認識のためNV、HN;およびAまたはTまたはGまたはCの認識のためH*、HA、KA、N*、NA、NC、NS、RA、S*(ここで、(*)は、13位のアミノ酸が存在しないことを意味する)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態で企図される特定のmegaTALにおける使用に適したRVDのさらなる例としては、米国特許第8,614,092号において開示されたものが挙げられ、それは、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0195】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、3~30個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、megaTALは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のTALE DNA結合ドメイン反復単位を含む。好ましい実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、5~15個の反復単位、より好ましくは、7~15個の反復単位、より好ましくは、9~15個の反復単位、より好ましくは、9、10、11、12、13、14、または15個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。
【0196】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、3~30個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメイおよびTALE反復単位のセットのC末端に位置する20のアミノ酸を含む、追加の単一の切断TALE反復単位、すなわち、追加のC末端半分のTALE DNA結合ドメイン反復単位(本明細書において以下のどこかで開示されるCキャップのアミノ酸-20~-1)を含む。したがって、特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、3.5~30.5個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、megaTALは、3.5、4.5、5.5、6.5、7.5、8.5、9.5、10.5、11.5、12.5、13.5、14.5、15.5、16.5、17.5、18.5、19.5、20.5、21.5、22.5、23.5、24.5、25.5、26.5、27.5、28.5、29.5、または30.5個のTALE DNA結合ドメイン反復単位を含む。好ましい実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、5.5~15.5個の反復単位、より好ましくは、7.5~15.5個の反復単位、より好ましくは、9.5~15.5個の反復単位、より好ましくは、9.5、10.5、11.5、12.5、13.5、14.5、または15.5個の反復単位を含むTALE DNA結合ドメインを含む。
【0197】
特定の実施形態では、megaTALは、「N末端ドメイン(NTD)」ポリペプチド、一つまたは複数の TALE反復ドメイン/単位、「C末端ドメイン(CTD)」ポリペプチド、およびホーミングエンドヌクレアーゼバリアントを含むTALエフェクター構造を含む。一部の実施形態では、NTD、TALE反復、および/またはCTDドメインは、同じ種由来である。他の実施形態では、NTD、TALE反復、および/またはCTDドメインの一つまたは複数は、異なる種由来である。
【0198】
本明細書で使用される場合、用語「N末端ドメイン(NTD)」ポリペプチドは、天然に存在するTALE DNA結合ドメインのN末端部分またはフラグメントに隣接する配列を指す。NTD配列は、存在する場合、TALE DNA結合ドメイン反復単位が、DNAに結合する能力を保持する限り、任意の長さのものであってもよい。特定の実施形態では、NTDポリペプチドは、TALE DNA結合ドメインのN末端に少なくとも120~少なくとも140以上のアミノ酸を含む(0は、ほとんどのN末端反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態では、NTDポリペプチドは、TALE DNA結合ドメインのN末端に少なくとも約120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、または少なくとも140のアミノ酸を含む。一実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、キサントモナスTALEタンパク質の少なくとも約アミノ酸+1から+122~少なくとも約+1から+137のNTDポリペプチドを含む(0は、ほとんどのN末端反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態では、NTDポリペプチドは、キサントモナスTALEタンパク質のTALE DNA結合ドメインのN末端に少なくとも約122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、または137のアミノ酸を含む。一実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、ラルストニアTALEタンパク質の少なくともアミノ酸+1~+121のNTDポリペプチドを含む(0は、ほとんどのN末端反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態では、NTDポリペプチドは、ラルストニアTALEタンパク質のTALE DNA結合ドメインのN末端に少なくとも約121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、または137のアミノ酸を含む。
【0199】
本明細書で使用される場合、用語「C末端ドメイン(CTD)」ポリペプチドは、天然に存在するTALE DNA結合ドメインのC末端部分またはフラグメントに隣接する配列を指す。CTD配列は、存在する場合、TALE DNA結合ドメイン反復単位が、DNAに結合する能力を保持する限り、任意の長さのものであってもよい。特定の実施形態では、CTDポリペプチドは、TALE DNA結合ドメインの最終の全反復のC末端に少なくとも20~少なくとも85以上のアミノ酸を含む(最初の20のアミノ酸は、最終C末端全反復単位のC末端の半反復単位である)。特定の実施形態では、CTDポリペプチドは、TALE DNA結合ドメインの最終全反復のC末端に少なくとも約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、443、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、または少なくとも85のアミノ酸を含む。一実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、キサントモナスTALEタンパク質の少なくとも約アミノ酸-20~-1のCTDポリペプチドを含む(-20は、最終C末端全反復単位のC末端の半反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態では、CTDポリペプチドは、キサントモナスTALEタンパク質のTALE DNA結合ドメインの最終全反復のC末端に少なくとも約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1のアミノ酸を含む。一実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、ラルストニアTALEタンパク質の少なくとも約アミノ酸-20~-1のCTDポリペプチドを含む(-20は、最終C末端全反復単位のC末端の半反復単位のアミノ酸1である)。特定の実施形態では、CTDポリペプチドは、ラルストニアTALEタンパク質のTALE DNA結合ドメインの最終全反復のC末端に少なくとも約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1のアミノ酸を含む。
【0200】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、任意選択で、本明細書において他で企図される一つまたは複数のリンカーポリペプチドを用いて互いに結合された、標的配列に結合するよう操作されたTALE DNA結合ドメイン、標的配列に結合し、切断するようリプログラミングされたホーミングエンドヌクレアーゼ、ならびに任意選択で、NTDおよび/またはCTDポリペプチドを含む融合ポリペプチドを含む。いかなる特定の理論によって束縛されるものではないが、TALE DNA結合ドメイン、ならびに任意選択で、NTDおよび/またはCTDポリペプチドを含むmegaTALが、リンカーポリペプチドに融合され、それが、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントにさらに融合されることが、企図される。したがって、TALE DNA結合ドメインは、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントのDNA結合ドメインによって結合された標的配列から約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15ヌクレオチド離れているDNA標的配列に結合する。このように、本明細書で企図されるmegaTALは、ゲノム編集の特異性および効率を増大させる。
【0201】
一実施形態では、megaTALは、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントおよび約4、5、または6ヌクレオチド、好ましくは、リプログラミングされたホーミングエンドヌクレアーゼの結合部位の上流の6ヌクレオチド内であるヌクレオチド配列に結合するTALE DNA結合ドメインを含む。
【0202】
一実施形態では、megaTALは、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントおよびホーミングエンドヌクレアーゼバリアント(配列番号27)によって結合され、切断されるヌクレオチド配列の上流6ヌクレオチドである、配列番号28に記載されるヌクレオチド配列に結合するTALE DNA結合ドメインを含む。好ましい実施形態では、megaTAL標的配列は、配列番号29である。
【0203】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、1個または複数のTALE DNA結合反復単位ならびにI-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、I-Vdi141Iおよびそのバリアント、または好ましくは、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、SmaMIおよびそのバリアント、またはより好ましくは、I-OnuIおよびそのバリアントからなる群から選択されるLHEから設計されるか、またはリプログラミングされたLHEバリアントを含む。
【0204】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、NTD、1個または複数のTALE DNA結合反復単位、CTD、ならびにI-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、I-Vdi141Iおよびそのバリアント、または好ましくは、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、SmaMIおよびそのバリアント、またはより好ましくは、I-OnuIおよびそのバリアントからなる群から選択されるLHEバリアントを含む。
【0205】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、NTD、約9.5~約15.5個のTALE DNA結合反復単位、ならびにI-AabMI、I-AaeMI、I-AniI、I-ApaMI、I-CapIII、I-CapIV、I-CkaMI、I-CpaMI、I-CpaMII、I-CpaMIII、I-CpaMIV、I-CpaMV、I-CpaV、I-CraMI、I-EjeMI、I-GpeMI、I-GpiI、I-GzeMI、I-GzeMII、I-GzeMIII、I-HjeMI、I-LtrII、I-LtrI、I-LtrWI、I-MpeMI、I-MveMI、I-NcrII、I-Ncrl、I-NcrMI、I-OheMI、I-OnuI、I-OsoMI、I-OsoMII、I-OsoMIII、I-OsoMIV、I-PanMI、I-PanMII、I-PanMIII、I-PnoMI、I-ScuMI、I-SmaMI、I-SscMI、I-Vdi141Iおよびそのバリアント、または好ましくは、I-CpaMI、I-HjeMI、I-OnuI、I-PanMI、SmaMIおよびそのバリアント、またはより好ましくは、I-OnuIおよびそのバリアントからなる群から選択されるLHEバリアントを含む。
【0206】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、約122のアミノ酸~137のアミノ酸のNTD、約9.5、約10.5、約11.5、約12.5、約13.5、約14.5、または約15.5個の結合反復単位、約20のアミノ酸~約85のアミノ酸のCTD、およびI-OnuI LHEバリアントを含む。特定の実施形態では、NTD、DNA結合ドメイン、およびCTDのいずれか一つ、二つ、またはすべては、任意の適当な組み合わせで、同じ種または異なる種から設計することができる。
【0207】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、配列番号13~19のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含む。
【0208】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTAL-Trex2融合タンパク質は、配列番号20~26のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含む。
【0209】
ある特定の実施形態では、本明細書において企図されるmegaTALは、配列番号30~36のいずれか一つに記載されるmRNA配列によってコードされる。
【0210】
ある特定の実施形態では、megaTALは、TALE DNA結合ドメインおよび配列番号29に記載されるヌクレオチド配列を結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントを含む。
【0211】
特定の実施形態では、megaTALは、TALE DNA結合ドメインならびに配列番号13~19のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含む配列番号29に記載されるヌクレオチド配列に結合し、切断するI-OnuI LHEバリアントを含む。
【0212】
3.エンドプロセッシング酵素
特定の実施形態で企図されるゲノム編集組成物および方法は、ヌクレアーゼバリアントおよびエンドプロセッシング酵素を使用した細胞ゲノムの編集を含む。特定の実施形態では、単一ポリヌクレオチドは、リンカー、自己切断ペプチド配列、例えば、2A配列によって、またはIRES配列によって分離される、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントおよびエンドプロセッシング酵素をコードする。特定の実施形態では、ゲノム編集組成物は、ヌクレアーゼバリアントをコードするポリヌクレオチドおよびエンドプロセッシング酵素をコードする別個のポリヌクレオチドを含む。
【0213】
用語「エンドプロセッシング酵素」は、ポリヌクレオチド鎖の露出した末端を修飾する酵素を指す。ポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、RNA、DNAとRNAの二本鎖ハイブリッド、ならびに合成DNA(例えば、A、C、G、およびT以外の塩基を含有する)であってもよい。エンドプロセッシング酵素は、一つまたは複数のヌクレオチドを付加すること、一つまたは複数のヌクレオチドを除去すること、リン酸基を除去するか、もしくは修飾することおよび/またはヒドロキシル基を除去するか、もしくは修飾することによって、露出したポリヌクレオチド鎖末端を修飾し得る。エンドプロセッシング酵素は、エンドヌクレアーゼ切断部位において、またはせん断(例えば、微細ゲージ針、加熱、超音波処理、ミニビーズタンブリング、および噴霧)、電離放射線、紫外線照射、酸素ラジカル、化学加水分解剤および化学療法剤などの、他の化学的または機械的種ダウンによって生成される末端において末端を修飾してもよい。
【0214】
特定の実施形態では、特定の実施形態で企図されるゲノム編集組成物および方法は、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTALおよびDNAエンドプロセッシング酵素を使用した細胞ゲノムの編集を含む。
【0215】
用語「DNAエンドプロセッシング酵素」は、DNAの露出した末端を修飾する酵素を指す。DNAエンドプロセッシング酵素は、平滑末端または付着末端(5’もしくは3’オーバーハングを有する末端)を修飾してもよい。DNAエンドプロセッシング酵素は、一本鎖または二本鎖DNAを修飾してもよい。DNAエンドプロセッシング酵素は、エンドヌクレアーゼ切断部位において、またはせん断(例えば、微細ゲージ針、加熱、超音波処理、ミニビーズタンブリング、および噴霧)、電離放射線、紫外線照射、酸素ラジカル、化学加水分解剤および化学療法剤などの、他の化学的または機械的種ダウンによって生成される末端において末端を修飾してもよい。DNAエンドプロセッシング酵素は、一つまたは複数のヌクレオチドを付加すること、一つまたは複数のヌクレオチドを除去すること、リン酸基を除去するか、もしくは修飾することおよび/またはヒドロキシル基を除去するか、もしくは修飾することによって、露出したDNA末端を修飾し得る。
【0216】
本明細書において企図される特定の実施形態での使用に適したDNAエンドプロセッシング酵素の例としては、5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ、5’フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ホスファターゼ、加水分解酵素および鋳型非依存性DNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0217】
本明細書において企図される特定の実施形態での使用に適したDNAエンドプロセッシング酵素の追加の例としては、Trex2、Trex1、膜貫通型ドメインを有さないTrex1、Apollo、Artemis、DNA2、Exo1、ExoT、ExoIII、Fen1、Fan1、MreII、Rad2、Rad9、TdT(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)、PNKP、RecE、RecJ、RecQ、ラムダエキソヌクレアーゼ、Sox、ワクシニアDNAポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼIII、エキソヌクレアーゼVII、NDK1、NDK5、NDK7、NDK8、WRN、T7-エキソヌクレアーゼ遺伝子6、トリ骨髄芽球症ウイルス統合タンパク質(IN)、ブルーム、南極ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ、ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)、ApeI、マングビーンヌクレアーゼ、Hex1、TTRAP(TDP2)、Sgs1、Sae2、CUP、Pol mu、Polラムダ、MUS81、EME1、EME2、SLX1、SLX4およびUL-12が挙げられるが、これらに限定されない。
【0218】
特定の実施形態では、本明細書において企図される細胞ゲノムを編集するためのゲノム編集組成物および方法は、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTALおよびエキソヌクレアーゼを含むポリペプチドを含む。用語「エキソヌクレアーゼ」は、3’または5’末端のいずれかにおいてホスホジエステル結合を破壊する加水分解反応を介して、ポリヌクレオチド鎖の末端のホスホジエステル結合を切断する酵素を指す。
【0219】
本明細書において企図される特定の実施形態での使用に適したエキソヌクレアーゼ例としては、hExoI、酵母ExoI、大腸菌ExoI、hTREX2、マウスTREX2、ラットTREX2、hTREX1、マウスTREX1、ラットTREX1、およびラットTREX1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0220】
特定の実施形態では、DNAエンドプロセッシング酵素は、3’または5’エキソヌクレアーゼ、好ましくは、Trex1またはTrex2、より好ましくは、Trex2、なおより好ましくは、ヒトまたはマウスTrex2である。
【0221】
D.標的部位
特定の実施形態で企図されるヌクレアーゼバリアントは、WAS遺伝子における任意の適当な標的配列に結合する設計することができ、天然で生じるヌクレアーゼと比較して、新規の結合特異性を有することができる。特定の実施形態では、標的部位は、プロモーター、エンハンサー、リプレッサーエレメントなどを含むが、これらに限定されない、遺伝子の制御領域である。特定の実施形態では、標的部位は、遺伝子またはスプライス部位のコード領域である。特定の実施形態では、ヌクレアーゼバリアントおよびドナー修復鋳型は、治療ポリヌクレオチドを挿入するよう設計することができる。特定の実施形態では、ヌクレアーゼバリアントおよびドナー修復鋳型は、内因性WAS遺伝子制御エレメントまたは発現調節配列の制御下で、治療ポリヌクレオチドを挿入するよう設計することができる。
【0222】
様々な実施形態では、ヌクレアーゼバリアントは、X染色体上に位置する、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)遺伝子における標的配列を結合し、切断する。WAS遺伝子は、Arp2/3複合体とのその相互作用を介して、アクチンフィラメント認識を制御するRho型GTPaseについてのエフェクタータンパク質をコードする。WASpは、アクチンフィラメント認識および病原性細菌による感染の際のアクチン台の形成を仲介し、核におけるアクチン重合作用を促進し、これにより、損傷されたDNAの遺伝子転写および修復を制御し、核のアクチン重合作用を促進することによって、DNA損傷に応答した相同組み換え(HR)修復を促進し、これが、二本鎖切断(DSB)の駆動能を導く。WASはまた、ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質(WASp)、血小板減少症1(X連鎖性)(THC)、湿疹-血小板減少症-免疫不全症候群、重篤な先天性好中球減少症、X連鎖性(SCNX)、および免疫不全2(IMD2)としても言及される。特定の実施形態で使用される例示的なWASおよびWASp参照配列番号としては、ENSG00000015285、ENSP00000365891、ENSP00000410537、ENST00000376701、XP_016885275.1、XP_011542279.1、NM_000377.2、NP_000368.1、XM_017029786.1、XM_011543977.2、XP_016885275.1 XP_011542279.1、P42768、Q9BU11、Q9UNJ9、A0A024QYX8、NC_000023.11、NG_007877.1、BI910072、CF529565、U19927、およびCCDS14303.1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
特定の実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTALは、WAS遺伝子における二本鎖切断(DSB)、好ましくは、ヒトWAS遺伝子の第二のイントロンにおける標的配列、より好ましくは、配列番号27に記載されるヒトWAS遺伝子の第二のイントロンにおける標的配列を導入する。特定の実施形態では、リプログラミングされたヌクレアーゼまたはmegaTALは、配列「TTTC」を切断することによって、配列番号27に記載されるWAS遺伝子の第二のイントロンにおける標的部位において二本鎖切断を導入するI-OnuI LHEバリアントを含む。
【0224】
好ましい実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTALは、二本鎖DNAを切断し、DSBを配列番号27または29に記載されるポリヌクレオチド配列に導入する。
【0225】
好ましい実施形態では、WAS遺伝子は、ヒトWAS遺伝子である。
【0226】
E.ドナー修復鋳型
ヌクレアーゼバリアントを使用して、標的配列におけるDSBを導入してもよく、DSBは、一つまたは複数のドナー修復鋳型の存在下で相同組み換え修復(HDR)機構を通じて修復されてもよい。特定の実施形態では、ドナー修復鋳型を使用して、配列をゲノムに挿入する。特定の好ましい実施形態では、ドナー修復鋳型を使用して、治療WASポリペプチドまたはそのフラグメント、例えば、配列番号40をコードするポリヌクレオチド配列を挿入する。特定の好ましい実施形態では、WASポリペプチドの発現が、内因性WASプロモーターおよび/またはエンハンサーの調節下にあるように、ドナー修復鋳型を使用して、治療WASポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を挿入する。
【0227】
様々な実施形態では、ドナー修復鋳型は、ドナー修復鋳型を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、例えば、レンチウイルス、IDLVなど、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、またはワクシニアウイルスベクターを用いて細胞を形質導入することによって、造血細胞、例えば、造血幹細胞もしくは前駆細胞、またはCD34+細胞に導入される。
【0228】
特定の実施形態では、ドナー修復鋳型は、DSB部位に隣接する一つまたは複数の相同アームを含む。
【0229】
本明細書で使用される場合、用語「相同アーム」は、標的部位においてヌクレアーゼによって導入されるDNA切断に隣接するDNA配列と同一であるか、またはほぼ同一であるドナー修復鋳型における核酸配列を指す。一実施形態では、ドナー修復鋳型は、DNA切断部位の5’のDNA配列に同一であるか、またはほぼ同一である核酸配列を含む5’相同アームを含む。一実施形態では、ドナー修復鋳型は、DNA切断部位の3’のDNA配列に同一であるか、またはほぼ同一である核酸配列を含む3’相同アームを含む。好ましい実施形態では、ドナー修復鋳型は、5’相同アームおよび3’相同アームを含む。ドナー修復鋳型は、DSB部位にすぐ隣接するゲノム配列に対する相同性、またはDSB部位由来の任意の数の塩基対内のゲノム配列に対する相同性を含み得る。一実施形態では、ドナー修復鋳型は、相同な配列の任意の介在する長さを含む、約5bp、約10bp、約25bp、約50bp、約100bp、約250bp、約500bp、約1000bp、約2500bp、約5000bp、約10000bp以上のゲノム配列に相同である核酸配列を含む。
【0230】
特定の実施形態で企図される相同アームの適当な長さの例は、独立して選択され、相同アームのすべての介在する長さを含む、約100bp、約200bp、約300bp、約400bp、約500bp、約600bp、約700bp、約800bp、約900bp、約1000bp、約1100bp、約1200bp、約1300bp、約1400bp、約1500bp、約1600bp、約1700bp、約1800bp、約1900bp、約2000bp、約2100bp、約2200bp、約2300bp、約2400bp、約2500bp、約2600bp、約2700bp、約2800bp、約2900bp、または約3000bp以上の相同アームが挙げられるが、これらに限定されない。
【0231】
適当な相同アーム長のさらなる例としては、約100bp~約3000bp、約200bp~約3000bp、約300bp~約3000bp、約400bp~約3000bp、約500bp~約3000bp、約500bp~約2500bp、約500bp~約2000bp、約750bp~約2000bp、約750bp~約1500bp、または約1000bp~約1500bpの相同アームが挙げられるが、これらに限定されない。
【0232】
特定の実施形態では、5’および3’相同アームの長さは、約500bp~約1500bpから独立して選択される。一実施形態では、5’相同アームは、約1500bpであり、3’相同アームは、約1000bpである。一実施形態では、5’相同アームは、約200bp~約600bpであり、3’相同アームは、約200bp~約600bpである。一実施形態では、5’相同アームは、約200bpであり、3’相同アームは、約200bpである。一実施形態では、5’相同アームは、約300bpであり、3’相同アームは、約300bpである。一実施形態では、5’相同アームは、約400bpであり、3’相同アームは、約400bpである。一実施形態では、5’相同アームは、約500bpであり、3’相同アームは、約500bpである。一実施形態では、5’相同アームは、約600bpであり、3’相同アームは、約600bpである。
【0233】
F.ポリペプチド
ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、megaTAL、および融合ポリペプチドを含むが、これらに限定されない、様々なポリペプチドが、本明細書において企図される。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1~26に記載されるアミノ酸配列を含む。「ポリペプチド」、「ポリペプチドフラグメント」、「ペプチド」および「タンパク質」は、対照的に既定されない限り、従来の意味に従い、すなわち、アミノ酸の配列として、互換的に使用される。一実施形態では、「ポリペプチド」は、融合ポリペプチドおよび他のバリアントを含む。ポリペプチドは、様々な周知の組み換え技術および/または合成技術のいずれかを使用して調製することができる。ポリペプチドは、特定の長さに限定されず、例えば、これらは、全長タンパク質配列、全長タンパク質のフラグメント、または融合タンパク質を含み得、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ならびに天然に存在するのと、天然に存在しないのの両方の、当該技術分野で公知の他の修飾を含み得る。
【0234】
本明細書において使用される、「単離されたタンパク質」、「単離されたペプチド」、または「単離されたポリペプチド」などは、細胞環境から、および細胞の他の成分との関連からのペプチドまたはポリペプチド分子のインビトロ合成、単離、および/または精製を指し、すなわち、それは、インビボ物質と有意に関連しない。
【0235】
特定の実施形態で企図されるポリペプチドの例としては、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、megaTAL、エンドプロセッシングヌクレアーゼ、融合ポリペプチドおよびそのバリアントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
ポリペプチドは、「ポリペプチドバリアント」を含む。ポリペプチドバリアントは、1個または複数のアミノ酸置換、欠失、付加および/または挿入において、天然に存在するポリペプチドと異なっていてもよい。このようなバリアントは、天然に存在してもよいか、または例えば、上記のポリペプチド配列の一つまたは複数のアミノ酸を修飾することによって、合成的に生成されてもよい。例えば、特定の実施形態では、ポリペプチドに1個または複数の置換、欠失、付加および/または挿入を導入することによって、ヒトWAS遺伝子における標的部位に結合し、切断する、ホーミングエンドヌクレアーゼ、megaTALなどの生物学的特性を改善することが望ましくてもよい。特定の実施形態では、ポリペプチドは、本明細書において企図される参照配列のいずれかに対して少なくとも約65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%,85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含み、典型的には、バリアントは、参照配列の少なくとも一つの生物学的活性を維持する。
【0237】
ポリペプチドバリアントは、生物学的に活性な「ポリペプチドフラグメント」を含む。生物学的に活性なポリペプチドフラグメントの例としては、DNA結合ドメイン、ヌクレアーゼドメインなどが挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「生物学的に活性なフラグメント」または「最小の生物学的に活性なフラグメント」は、天然に存在するポリペプチド活性の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、または少なくとも5%を保持するポリペプチドフラグメントを指す。好ましい実施形態では、生物学的活性は、標的配列に対する結合親和性および/または切断活性である。ある特定の実施形態では、ポリペプチドフラグメントは、少なくとも5~約1700アミノ酸長のアミノ酸鎖を含み得る。ある特定の実施形態では、フラグメントは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700以上のアミノ酸長であることは、理解される。特定の実施形態では、ポリペプチドは、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントの生物学的に活性なフラグメントを含む。特定の実施形態では、本明細書において記載されるポリペプチドは、「X」として示される一つまたは複数のアミノ酸を含んでもよい。「X」は、アミノ酸配列番号に存在する場合、任意のアミノ酸を指す。一つまたは複数の「X」残基は、本明細書において企図される特定の配列番号に記載されるアミノ酸配列のN末端およびC末端に存在してもよい。「X」アミノ酸が存在しない場合、配列番号に記載される残りのアミノ酸配列は、生物学的に活性なフラグメントとみなされ得る。
【0238】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、例えば、配列番号6~12またはmegaTAL(配列番号13~19)の生物学的に活性なフラグメントを含む。生物学的に活性なフラグメントは、N末端切断および/またはC末端切断を含んでもよい。特定の実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型ホーミングエンドヌクレアーゼ配列と比較して、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントの1、2、3、4、5、6、7、または8つのN末端アミノ酸の欠失、より好ましくは、対応する野生型ホーミングエンドヌクレアーゼ配列と比較して、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントの4つのN末端アミノ酸の欠失を欠くか、または含む。特定の実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型ホーミングエンドヌクレアーゼ配列と比較して、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントの1、2、3、4、または5つのC末端アミノ酸の欠失、より好ましくは、対応する野生型ホーミングエンドヌクレアーゼ配列と比較して、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントの2つのC末端アミノ酸の欠失を欠くか、または含む。特定の好ましい実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、対応する野生型ホーミングエンドヌクレアーゼ配列と比較して、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントの4つのN末端アミノ酸および2つのC末端アミノ酸の欠失を欠くか、または含む。
【0239】
特定の実施形態では、I-OnuIバリアントは、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8つの以下のN末端アミノ酸:M、A、Y、M、S、R、R、Eの欠失;および/または以下の1、2、3、4、もしくは5つのC末端アミノ酸:R、G、S、F、Vの欠失を含む。
【0240】
特定の実施形態では、I-OnuIバリアントは、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8つの以下のN末端アミノ酸:M、A、Y、M、S、R、R、Eの欠失または置換;および/あるいは以下の1、2、3、4、もしくは5つのC末端アミノ酸:R、G、S、F、Vの欠失または置換を含む。
【0241】
特定の実施形態では、I-OnuIバリアントは、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8つの以下のN末端アミノ酸:M、A、Y、M、S、R、R、Eの欠失;および/または以下の1つまたは2つのC末端アミノ酸:F、Vの欠失を含む。
【0242】
特定の実施形態では、I-OnuIバリアントは、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8つの以下のN末端アミノ酸:M、A、Y、M、S、R、R、Eの欠失または置換;および/あるいは以下の1つまたは2つのC末端アミノ酸:F、Vの欠失または置換を含む。
【0243】
上述の通り、ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、切断、および挿入を含む様々な方法で変更され得る。このような操作方法は、当該技術分野で一般的に知られている。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAにおける変異により調製することができる。変異誘発およびヌクレオチド配列変更の方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492),Kunkel et al.,(1987,Methods in Enzymol,154:367-382),米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.,(Molecular Biology of the Gene,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)およびそこで引用される参考文献を参照のこと。対象となるタンパク質の生物活性に影響を与えない適当なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルにおいて見られ得る。
【0244】
ある特定の実施形態では、バリアントは、一つまたは複数の保存的置換を含有する。「保存的置換」は、ペプチド化学の当業者が、実質的に変化させるべきポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標特性を予測するように、アミノ酸が、類似の特性を有する別のアミノ酸に置換されているものである。修飾は、特定の実施形態で企図されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造において成されてもよく、ポリペプチドは、少なくともおよそ有するポリペプチドを含み、所望の特徴を有するバリアントまたは誘導体ポリペプチドをコードする機能的分子を依然として得る。均等な、または改善されてさえいる、バリアントポリペプチドを生成するために、ポリペプチドのアミノ酸配列を変更させることが望ましいとき、当業者は、例えば、例えば、表1に従い、コードDNA配列のコドンの一つまたは複数を変更させることができる。
【表1】
【0245】
アミノ酸残基が、生物学的活性を無効にすることなく、置換され得る、挿入され得る、または欠損され得る、決定のガイダンスが、DNASTAR、DNA Strider、Geneious、Macベクター、またはベクターNTIソフトウエアなどの、当該技術分野において周知のコンピュータプログラムを使用して見ることができる。好ましくは、本明細書において開示されるタンパク質バリアントにおけるアミノ酸変更は、保存的アミノ酸変更、すなわち、同様に荷電した、または荷電していないアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変更は、それらの側鎖において関連する、アミノ酸のファミリーの一つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、四つのファミリー:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)アミノ酸に、一般的に分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、ときに、芳香族アミノ酸としてまとめて分類される。ペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の適当な保存的置換は、当業者に公知であり、一般的に、得られた分子の生物学的活性を変更することなく、成され得る。当業者は、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が、生物学的活性を実質的に変更しないことを認識する(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照のこと)。
【0246】
二つ以上のポリペプチドの発現が望ましい、一実施形態では、それをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書において他で開示されるIRES配列によって分けることができる。
【0247】
特定の実施形態で企図されるポリペプチドは、融合ポリペプチド、例えば、配列番号12~26を含む。特定の実施形態では、融合ポリペプチドおよび融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。融合ポリペプチドおよび融合タンパク質は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。
【0248】
別の実施形態では、二つ以上のポリペプチドは、本明細書において他で開示される一つまたは複数の自己切断ポリペプチド配列を含む融合タンパク質として発現され得る。
【0249】
一実施形態では、本明細書において企図される融合タンパク質は、一つまたは複数のDNA結合ドメインおよび一つまたは複数のヌクレアーゼ、および一つまたは複数のリンカーおよび/または自己切断ポリペプチドを含む。
【0250】
一実施形態では、本明細書において企図される融合タンパク質は、ヌクレアーゼバリアント;リンカーまたは自己切断ペプチド;ならびに5’-3’エキソヌクレアーゼ、5’-3’アルカリエキソヌクレアーゼ、および3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、Trex2)を含むが、これらに限定されないエンドプロセッシング酵素を含む。
【0251】
融合ポリペプチドは、シグナルペプチド、細胞透過性ペプチドドメイン(CPP)、DNA結合ドメイン、ヌクレアーゼドメインなど、エピトープタグ(例えば、マルトース結合タンパク質(「MBP」)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、HIS6、MYC、FLAG、V5、VSV-G、およびHA)、ポリペプチドリンカー、およびポリペプチド切断シグナルを含むが、これらに限定されない、一つまたは複数のポリペプチドドメインまたはセグメントを含み得る。融合ポリペプチドは、C末端がC末端に、N末端がN末端に、またはN末端がC末端にも結合し得るが、それらは、典型的には、C末端がN末端に結合する。特定の実施形態では、融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順であり得る。融合ポリペプチドまたは融合タンパク質はまた、融合ポリペプチドの所望の活性が保存される限り、保存的に修飾されたバリアント、多型バリアント、対立遺伝子、変異体、部分配列、および種間相同体を含み得る。融合ポリペプチドは、化学合成方法によって、または二つの部分間の化学結合によって生成されてもよく、または一般的に、他の標準的な技術を使用して調製されてもよい。融合ポリペプチドを含むライゲーションされたDNA配列は、本明細書において他で開示される適切な転写調節エレメントまたは翻訳調節エレメントに動作可能に連結される。
【0252】
融合ポリペプチドは、任意選択的で、ポリペプチド内の一つまたは複数のポリペプチドまたはドメインを連結するために使用することができるリンカーを含んでもよい。ペプチドリンカー配列は、ポリペプチドドメインがそれらの所望の機能を発揮できるように、それぞれのポリペプチドが、その適切な二次構造および三次構造に折り畳まれるのを確実にするのに十分な距離で、任意の二つ以上のポリペプチド成分を分離するために利用され得る。このようなペプチドリンカー配列は、当該技術分野における標準的な技術を使用して、融合ポリペプチドに組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の要因に基づいて選択され得る:(1)可動性の伸長された立体構造を取り入れるそれらの能力;(2)それらが、第一および第二のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用し得る二次構造を取り入れることができないこと;および(3)ポリペプチド機能的エピトープと反応し得る疎水性または荷電した残基の欠如。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly残基、Asn残基、およびSer残基を含有する。ThrおよびAlaなどの他の中性に近いアミノ酸も、リンカー配列において使用され得る。リンカーとして有用に利用され得るアミノ酸配列としては、Maratea et al.,Gene 40:39-46,1985;Murphy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258-8262,1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号において開示されるものが挙げられる。特定の融合ポリペプチドセグメントが、機能的ドメインを分離し、立体干渉を防止するために使用され得る非必須N末端アミノ酸領域を含有するとき、リンカー配列は、必要とされない。好ましいリンカーは、典型的には、組み換え融合タンパク質の一部として合成される、可動性アミノ酸部分配列である。リンカーポリペプチドは、間のすべての整数値を含む、1~200アミノ酸長、1~100アミノ酸長、または1~50アミノ酸長であり得る。
【0253】
例示的なリンカーには、以下のアミノ酸配列:グリシンポリマー(G)n;グリシン-セリンポリマー(G1-5S1-5)n(式中、nは少なくとも1、2、3、4、または5の整数である);グリシン-アラニンポリマー;アラニン-セリンポリマー;GGG(配列番号48);DGGGS(配列番号49);TGEKP(配列番号50)(例えば、Liu et al.,PNAS 5525-5530(1997)を参照のこと);GGRR(配列番号51)(Pomerantz et al.1995、上記);(GGGGS)n(式中、n=1、2、3、4または5)(配列番号52)(Kim et al.,PNAS 93,1156-1160(1996.));EGKSSGSGSESKVD(配列番号53)(Chaudhary et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号54)(Bird et al.,1988,Science 242:423-426)、GGRRGGGS(配列番号55);LRQRDGERP(配列番号56);LRQKDGGGSERP(配列番号57);LRQKD(GGGS)2ERP(配列番号58)が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、可動性リンカーは、DNA結合部位とペプチド自体の両方をモデル化することができるコンピュータプログラム(Desjarlais & Berg,PNAS 90:2256-2260(1993),PNAS 91:11099-11103(1994))を使用して、またはファージディスプレイ方法によって合理的に設計することができる。
【0254】
融合ポリペプチドは、本明細書に記載されるポリペプチドドメインのそれぞれの間、または内因性オープンリーディングフレームとドナー修復鋳型によってコードされるポリペプチドの間のポリペプチド切断シグナルをさらに含み得る。加えて、ポリペプチド切断部位は、任意のリンカーペプチド配列に配置することができる。例示的なポリペプチド切断シグナルには、タンパク質分解酵素切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、稀な制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)、および自己切断ウイルスオリゴペプチドなどのポリペプチド切断認識部位が含まれる(deFelipe and Ryan,2004.Traffic,5(8);616-26を参照のこと)。
【0255】
適切なタンパク質分解酵素切断部位および自己切断ペプチドは、当業者に公知である(例えば、Ryan et al.,1997.J.Gener.Virol.78,699-722;Scymczak et al.(2004) Nature Biotech.5,589-594を参照のこと)。例示的なタンパク質分解酵素切断部位としては、ポティウイルスNIaタンパク質分解酵素(例えば、タバコエッチウイルスタンパク質分解酵素)、ポティウイルスHCタンパク質分解酵素、ポティウイルスP1(P35)タンパク質分解酵素、ビオウイルスNIaタンパク質分解酵素、ビオウイルスRNA-2-コードタンパク質分解酵素、アフトウイルスLタンパク質分解酵素、エンテロウイルス2Aタンパク質分解酵素、ライノウイルス2Aタンパク質分解酵素、ピコルナ3Cタンパク質分解酵素、コモウイルス24Kタンパク質分解酵素、ネポウイルス24Kタンパク質分解酵素、RTSV(イネツングロ球形ウイルス)3C様タンパク質分解酵素、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様タンパク質分解酵素、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子およびエンテロキナーゼの切断部位が挙げられるが、これらに限定されない。その高い切断ストリンジェンシーにより、TEV(タバコエッチウイルス)タンパク質分解酵素切断部位が好ましく、一実施形態では、例えば、EXXYXQ(G/S)(配列番号59)、例えば、ENLYFQG(配列番号60)およびENLYFQS(配列番号61)(式中、Xは、任意のアミノ酸を表す)(TEVによる切断は、QとGの間またはQとSの間で生じる)が好ましい。
【0256】
ある特定の実施形態では、己切断ポリペプチド部位は、2Aもしくは2A様部位、配列またはドメインを含む(Donnelly et al.,2001.J.Gen.Virol.82:1027-1041)。特定の実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、アフトウイルス2Aペプチド、ポティウイルス2Aペプチド、またはカルジオウイルス2Aペプチドである。
【0257】
一実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2Aペプチド、ゾーシーアシグナウイルス(TaV)2Aペプチド、豚テシオウイルス-1(PTV-1)2Aペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択される。
【0258】
2A部位の例は、表2に提供される。
【0259】
表2:例示的な2A部位は、以下の配列を含む:
【表2】
【0260】
G.ポリヌクレオチド
特定の実施形態では、本明細書において企図される一つまたは複数のホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、megaTAL、エンドプロセッシング酵素、および融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、およびDNA/RNAハイブリッドを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり、組み換え、合成、または単離のいずれかであってもよい。ポリヌクレオチドには、プレメッセンジャーRNA(プレ-mRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、合成RNA、合成mRNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅したDNA、相補性DNA(cDNA)、合成DNA、および組み換えDNAが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、または修飾された形態のいずれかのタイプのヌクレオチドである、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、または少なくとも15000以上のヌクレオチド長、ならびにすべての中間の長さの、多量形態のヌクレオチドを指す。この文脈における「中間の長さ」は、6、7、8、9など、101、102、103など;151、152、153など;201、202、203などの、引用された値の間の任意の長さを意味することは、容易に理解されるだろう。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはバリアントは、参照配列に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%,76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%,85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0261】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、コドン最適化されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「コドン最適化」は、ポリペプチドの発現、安定性および/または活性を増大させるためにポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおけるコドンを置換することを指す。コドン最適化に影響する要因としては、(i)二つ以上の生物または遺伝子間のコドンバイアスの変動、もしくは合成的に構築されたバイアス表、(ii)生物、遺伝子、もしくは遺伝子セット内のコドンバイアスの程度の変動、(iii)前後を含むコドンの系統的変動、(iv)それらのデコードtRNAによるコドンの変動、(v)全体的または三重項の一つの位置のいずれかにおける、GC%によるコドンの変動、(vi)参照配列、例えば、天然に存在する配列に対する類似性の程度の変動、(vii)コドン頻度カットオフの変動、(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造特性、(ix)コドン置換セットの設計が基づくべき、DNA配列の機能についての従前の知識、および/または(x)それぞれのアミノ酸についてのコドンセットの系統的変動、および/または(xi)仮の翻訳開始部位の単離除去の一つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。
【0262】
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド」は、リン酸化糖とN-グリコシド結合した複素環窒素塩基を指す。ヌクレオチドは、天然の塩基、および非常に様々な当該技術分野で認識される修飾された塩基を含むことが理解される。このような塩基は、ヌクレオチド糖部分の1’位に一般的に位置付けられる。ヌクレオチドは、一般的に、塩基、糖およびリン酸基を含む。リボ核酸(RNA)では、糖はリボースであり、デオキシリボ核酸(DNA)では、糖はデオキシリボース、すなわち、リボースに存在するヒドロキシル基を欠く糖である。例示的な天然の窒素塩基としては、プリン、アデノシン(A)およびグアニジン(G)、ならびにピリミジン、シチジン(C)およびチミジン(T)(またはRNAの文脈では、ウラシル(U))が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合する。ヌクレオチドは、通常、一リン酸、二リン酸、または三リン酸塩である。ヌクレオチドは、糖部分、リン酸塩部分、および/または塩基部分で修飾されていないか、または修飾され得る(ヌクレオチド類似体、ヌクレオチド誘導体、修飾されたヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、および非標準ヌクレオチドとして互換的に称される;例えば、国際公開第92/07065号および国際公開第93/15187号を参照のこと)。修飾された核酸塩基の例は、Limbach et al.,(1994,Nucleic Acids Res.22,2183-2196)により要約されている。
【0263】
ヌクレオチドはまた、ヌクレオシドのリン酸エステルとみなされてもよく、エステル化は、糖のC-5に結合したヒドロキシル基上で生じる。本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオシド」は、糖とのN-グルコシド結合における複素環窒素塩基を指す。ヌクレオシドは、天然の塩基を含み、また周知の修飾された塩基を含むことは、当該技術分野で認識されている。このような塩基は、ヌクレオシド糖部分の1’位に一般的に位置付けられる。ヌクレオシドは、一般的に、塩基および糖基を含む。ヌクレオシドは、糖部分、および/または塩基部分で修飾されていないか、または修飾され得る(ヌクレオシド類似体、ヌクレオシド誘導体、修飾されたヌクレオシド、非天然ヌクレオシド、もしくは非標準ヌクレオシドとして互換的に称される)。また上述した通り、修飾された核酸塩基の例は、Limbach et al.,(1994,Nucleic Acids Res.22,2183-2196)により要約されている。
【0264】
ポリヌクレオチドの例としては、配列番号1~26をコードするポリヌクレオチドおよび配列番号30~36に記載されるポリヌクレオチド配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0265】
様々な例示的な実施形態では、本明細書において企図されるポリヌクレオチドとしては、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントをコードするポリヌクレオチド、megaTALs、エンドプロセッシング酵素、融合ポリペプチド、ならびに本明細書において企図されるポリヌクレオチドを含む発現ベクター、ウイルスベクター、およびトランスファープラスミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0266】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などは、参照ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、または本明細書において以下で定義されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語はまた、少なくとも一つのヌクレオチドの付加、欠失、置換、または修飾によって参照ポリヌクレオチドと区別されるポリヌクレオチドを包含する。したがって、用語「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」は、一つまたは複数のヌクレオチドが、付加もしくは欠失されているか、または修飾されているか、または異なるヌクレオチドで置換されているポリヌクレオチドを含む。この点に関して、変異、付加、欠失、および置換を含むある特定の変更が、参照ポリヌクレオチドに成され得、これによって、変更されたポリヌクレオチドが、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持することは、当該技術分野で十分に理解される。ポリヌクレオチドバリアントはまた、生物学的に活性なポリペプチドフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0267】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で標的核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。「ストリンジェントな条件」下でハイブリダイズさせることは、互いに少なくとも60%同一のヌクレオチド配列が、ハイブリダイズしたままである、ハイブリダイゼーションプロトコルを記載する。一般的に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度およびpHにおいて特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低いように選択される。Tmは、標的配列に対して相補的なプローブの50%が、平衡で標的配列にハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度、pHおよび核酸濃度下で)である。標的配列は、一般的に、Tmで過剰に存在するため、プローブの50%が、平衡で占有される。
【0268】
本明細書において使用される場合、列挙「配列同一性」、または例えば、「50%同一の配列」を含むことは、配列が、比較のウィンドウにわたってヌクレオチド対ヌクレオチド基盤またはアミノ酸対アミノ酸基盤で同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって二つの最適に整列させた配列を比較すること、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が、両方の配列で生じて、一致した位置の数を生じる、位置の数を決定すること、一致した位置の数を、比較ウィンドウ(すなわち、ウィンドウサイズ)における位置の総数で割ること、および結果を100倍して、配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算され得る。本明細書において記載される参照配列のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれ、典型的には、ポリペプチドバリアントは、参照ポリペプチドの少なくとも一つの生物活性を維持する。
【0269】
二つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関連性を記載するために使用される用語には、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的な同一性」が含まれる。「参照配列」は、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基長を含む、少なくとも12モノマー単位だが、多くの場合、15~18モノマーであり、多くの場合、少なくとも25モノマー単位である。二つのポリヌクレオチドは、それぞれ、(1)二つのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)二つのポリヌクレオチド間で異なる配列を含み得るので、二つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、配列類似性の局所領域を同定し、比較するための「比較ウィンドウ」にわたる二つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」は、少なくとも6つの連続する位置、通常、約50~約100、より通常、約100~約150の概念セグメントを指し、配列は、二つの配列が最適に整列された後、同じ数の連続する位置の基準配列と比較される。比較ウィンドウは、二つの配列の最適なアライメントのための、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアライメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA) のコンピュータ制御システム実装によって、または選択された様々な方法のいずれかによって生じる、精査および最善のアライメント(すなわち、比較ウィンドウにわたる最大パーセンテージの相同性をもたらす)によって行われ得る。例えば、Altschul et al.,1997,Nucl.Acids Res.25:3389によって開示されるBLASTファミリーのプログラムを参照されてもよい。配列解析の詳細な考察は、Unit 19.3 of Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc.,1994-1998,Chapter 15に記載されている。
【0270】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に生じる状態のそれと隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、フラグメントに通常隣接している配列から取り出されたDNAフラグメントを指す。特定の実施形態では、「単離されたポリヌクレオチド」は、相補的DNA(cDNA)、組み換えポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、または天然では存在せず、人の手により作製された他のポリヌクレオチドを指す。
【0271】
様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、megaTAL、およびエンドプロセッシング酵素を含むが、これらに限定されない、本明細書において企図されるポリペプチドをコードするmRNAを含む。ある特定の実施形態では、mRNAは、キャップ、一つまたは複数のヌクレオチドおよび/または修飾されたヌクレオチド、ならびにポリ(A)テールを含む。
【0272】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるmRNAは、エキソヌクレアーゼ分解からmRNAを保護し、mRNAを安定化させ、翻訳を促進するためにポリ(A)テールを含む。ある特定の実施形態では、mRNAは、3’ポリ(A)テール構造を含む。
【0273】
特定の実施形態では、ポリ(A)テールの長さは、少なくとも約10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、もしくは少なくとも約500以上のアデニンヌクレオチドまたは任意の中間にある数のアデニンヌクレオチドである。特定の実施形態では、ポリ(A)テールの長さは、少なくとも約125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、202、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、または275以上のアデニンヌクレオチドである。
【0274】
特定の実施形態では、ポリ(A)テールの長さは、約10~約500アデニンヌクレオチド、約50~約500アデニンヌクレオチド、約100~約500アデニンヌクレオチド、約150~約500アデニンヌクレオチド、約200~約500アデニンヌクレオチド、約250~約500アデニンヌクレオチド、約300~約500アデニンヌクレオチド、約50~約450アデニンヌクレオチド、約50~約400アデニンヌクレオチド、約50~約350アデニンヌクレオチド、約100~約500アデニンヌクレオチド、約100~約450アデニンヌクレオチド、約100~約400アデニンヌクレオチド、約100~約350アデニンヌクレオチド、約100~約300アデニンヌクレオチド、約150~約500アデニンヌクレオチド、約150~約450アデニンヌクレオチド、約150~約400アデニンヌクレオチド、約150~約350アデニンヌクレオチド、約150~約300アデニンヌクレオチド、約150~約250アデニンヌクレオチド、約150~約200アデニンヌクレオチド、約200~約500アデニンヌクレオチド、約200~約450アデニンヌクレオチド、約200~約400アデニンヌクレオチド、約200~約350アデニンヌクレオチド、約200~約300アデニンヌクレオチド、約250~約500アデニンヌクレオチド、約250~約450アデニンヌクレオチド、約250~約400アデニンヌクレオチド、約250~約350アデニンヌクレオチド、もしくは約250~約300アデニンヌクレオチドまたは任意の中間にある範囲のアデニンヌクレオチドである。
【0275】
ポリヌクレオチドの向きを記載する用語には、5’(通常、フリーのリン酸基を有するポリヌクレオチドの末端)および3’(通常、フリーのヒドロキシル(OH)基を有するポリヌクレオチドの末端)が含まれる。ポリヌクレオチド配列は、5’から3’の向き、または3’から5’の向きに注釈付けされ得る。DNAおよびmRNAについて、5’から3’の鎖は、その配列が、プレメッセンジャー(プレ-mRNA)の配列と同一であるため、「センス」鎖、「プラス」鎖、または「コード」鎖と指定される[DNAにおけるチミン(T)の代わりに、RNAにおけるウラシル(U)を除く]。DNAおよびmRNAについて、RNAポリメラーゼによって転写された鎖である相補的3’から5’鎖は、「鋳型」、「アンチセンス」、「マイナス」、または「非コード」鎖として指定される。本明細書で使用される場合、用語「逆向き」は、3’から5’の向きで書かれた5’から3’の配列、または5’から3’の向きで書かれた3’から5’の配列を指す。
【0276】
用語「相補的」および「相補性」は、塩基対形成規則によって関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、DNA配列5’ A G T C A T G 3’の相補鎖は、3’ T C A G T A C 5’である。後者の配列は、多くの場合、5’末端を左に、3’末端を右に有する逆相補鎖、5’ C A T G A C T 3’として書かれる。その逆相補鎖と等しい配列は、パリンドローム配列であると言われる。相補性は、核酸塩基の一部のみが、塩基対形成規則に従って一致する、「部分的」であり得る。または、核酸間に「完全な」または「総合的な」相補性が存在する。
【0277】
本明細書において使用される場合、用語「核酸カセット」または「発現カセット」は、RNA、およびその後のポリペプチドを発現することができる、ベクター内の遺伝子配列を指す。一実施形態では、核酸カセットは、対象となる遺伝子(複数可)、例えば、対象となるポリヌクレオチド(複数可)を含有する。別の実施形態では、核酸カセットは、一つまたは複数の発現調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリ(A)配列、および対象となる遺伝子(複数可)、例えば、対象となるポリヌクレオチド(複数可)を含有する。ベクターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個以上の核酸カセットを含み得る。核酸カセットは、カセット中の核酸が、RNAに転写され、必要に応じて、タンパク質またはポリペプチドに翻訳され、形質転換された細胞における活性に必要とされる適当な翻訳後就職を受け、適当な細胞内区画への標的化または細胞外区画への分泌によって、生物学的活性に適当な区画に移動されるように、ベクター内で位置的かつ順次配向される。好ましくは、カセットは、ベクターへの挿入準備完了に適合したその3’および5’末端を有し、例えば、それは、それぞれの末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。好ましい実施形態では、核酸カセットは、遺伝的障害を治療する、予防する、または改善するために使用される治療遺伝子の配列を含有する。カセットは、除去され、プラスミドまたはウイルスベクターに単一ユニットとして挿入され得る。
【0278】
ポリヌクレオチドは、対象となるポリヌクレオチド(複数可)を含む。本明細書で使用される場合、用語「対象となるポリヌクレオチド」は、本明細書において企図される、ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは阻害性ポリヌクレオチドの転写のための鋳型として働くポリヌクレオチドを指す。
【0279】
さらに、遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書において企図される、ポリペプチド、またはそのバリアントのフラグメントをコードし得る多くのヌクレオチド配列が存在することは、当業者により理解される。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を生じる。それにもかかわらず、コドン使用の違いに起因して変動するポリヌクレオチドは、特定の実施形態、例えば、ヒトおよび/または霊長類コドン選択に最適化されているポリヌクレオチドで、特に企図される。一実施形態では、特定の対立遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが提供される。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの、一つまたは複数の変異の結果として変更されている内因性ポリヌクレオチド配列である。
【0280】
ある実施形態では、対象となるポリヌクレオチドは、ドナー修復鋳型を含む。
【0281】
特定の実施形態で企図されるポリヌクレオチドは、それらの全体的な長さが、大きく変動し得るように、コード配列自体の長さにかかわらず、本明細書において他で開示される、プロモーターおよび/またはエンハンサーなど、非翻訳領域(UTR)、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、複数のクローニング部位、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、およびAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、転写後応答エレメント、ならびに自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどの、他のDNA配列と組み合わせてもよい。したがって、特定の実施形態では、ほぼ任意の長さのポリヌクレオチドフラグメントが、利用されてもよく、全長は、好ましくは、意図される組み換えDNAプロトコルにおける調製および使用の容易さによって制限されることが、企図される。
【0282】
ポリヌクレオチドは、当該技術分野で公知かつ利用可能な様々な十分に確立された技術のいずれかを使用して、調製され、操作され、発現され、および/または送達され得る。所望のポリペプチドを発現するために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適当なベクターに挿入することができる。所望のポリペプチドはまた、ポリペプチドをコードするmRNAを細胞に送達することによっても発現され得る。
【0283】
ベクターの例としては、プラスミド、自律的に複製する配列、および転位性エレメント、例えば、Sleeping Beauty、PiggyBacが挙げられるが、これらに限定されない。
【0284】
ベクターの追加の例としては、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、ラムダファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージ、および動物ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0285】
ベクターとして有用なウイルスの例の例としては、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えば、SV40)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0286】
発現ベクターの例としては、哺乳類細胞における発現のためのpClneoベクター(Promega);哺乳類細胞におけるレンチウイルス介在性遺伝子導入および発現のためのpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、およびpLenti6.2/V5-GW/lacZ(Invitrogen)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本明細書において開示されるポリペプチドのコード配列は、哺乳類細胞におけるポリペプチドの発現のため、このような発現ベクターにライゲーションされ得る。
【0287】
特定の実施形態では、ベクターは、エピソームベクターまたは染色体外で維持されるベクターである。本明細書で使用される場合、用語「エピソーム」は、宿主の染色体DNAに組み込むことなく、かつ分割宿主細胞からの段階的な喪失なく、複製することができるベクターを指し、当該ベクターが、染色体外またはエピソームで複製することを意味する。
【0288】
発現ベクターに存在する「発現調節配列」、「調節エレメント」、または「制御配列」は、ベクターの非翻訳領域である、複製起点、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(シャイン・ダルガーノ配列またはコザック配列)イントロン、転写後制御エレメント、ポリアデニル化配列、5’および3’非翻訳領域であり、これは、宿主の細胞タンパク質と相互作用して、転写および翻訳を行う。このようなエレメントは、それらの強度および特異性において変動し得る。利用されるベクターシステムおよび宿主に依存して、遍在性プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む、任意の数の適切な転写および翻訳エレメントが使用されてもよい。
【0289】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、発現ベクターおよびウイルスベクターを含むが、これに限定されない、ベクターを含む。ベクターは、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、一つまたは複数の外因性、内因性、または異種調節配列を含んでもよい。「内因性調節配列」は、ゲノムにおける所定の遺伝子と天然に連結されているものである。「外因性調節配列」は、その遺伝子の転写が、連結されたエンハンサー/プロモーターによって指示されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技術)によって遺伝子に対して近位におかれるものである。「異種調節配列」は、遺伝子操作されている細胞とは異なる種由来の外因性配列である。「合成」調節配列は、一つのさらなる内因性および/もしくは外因性配列、ならびに/または特定の療法に最適なプロモーターおよび/またはエンハンサー活性をもたらすインビトロまたはインシリコで決定された配列のエレメントを含んでもよい。
【0290】
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを開始し、転写する。特定の実施形態では、哺乳類細胞において作動するプロモーターは、転写が開始される部位のおよそ25~30塩基上流に位置するATリッチな領域、および/またはCNCAAT領域(式中、Nは、任意のヌクレオチドであってもよい)である、転写の開始から70~80塩基上流で見出される別の配列を含む。
【0291】
用語「エンハンサー」は、増強された転写をもたらすことができる配列を含有し、ある場合では、別の調節配列と関連するその向きにと関係なく機能し得るDNAのセグメントを指す。エンハンサーは、プロモーターおよび/または他のエンハンサーエレメントと協働的または相加的に機能することができる。用語「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方をもたらすことができる配列を含有するDNAのセグメントを指す。
【0292】
用語「作動可能に連結された」は、記載される構成要素が、それらが意図される様式で機能することを可能にする関係にある近位を指す。一実施形態では、用語は、核酸発現調節配列(プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)と第二のポリヌクレオチド配列、例えば、対象となるポリヌクレオチドとの間の機能的結合を指し、発現調節配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0293】
本明細書で使用される場合、用語「構成的発現調節配列」は、作動可能に連結された配列の転写を継続的または連続的に可能にするプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを指す。構成的発現調節配列は、非常に様々な細胞および組織タイプでの発現を可能にする「偏在性」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサー、あるいはそれぞれ、限定された様々な細胞および組織タイプでの発現を可能にする「細胞特異的」、「細胞タイプ特異的」、「細胞系統特異的」、もしくは「組織特異的」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであり得る。
【0294】
特定の実施形態での使用に適した例示的な偏在性発現調節配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルスサルウイルス40(SV40)(例えば、早期もしくは後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV) LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5、およびP11プロモーター、短い伸長因子1-アルファ(EF1a-ショート)プロモーター、長い伸長因子1-アルファ(EF1a-ロング)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)、真核生物翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、熱ショックタンパク質90kDaベータ、メンバー1(HSP90B1)、熱ショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA26遺伝子座(Irions et al.,Nature Biotechnology 25,1477-1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、欠損した負の対照領域、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター(Challita et al.,J Virol.69(2):748-55(1995))挙げられるが、これらに限定されない。
【0295】
特定の実施形態では、細胞、細胞タイプ、細胞系統または組織特異的発現調節配列を使用して、所望のポリヌクレオチド配列の細胞タイプ特異的、系統特異的、または組織特異的発現を達成する(例えば、細胞タイプ、細胞系統、または組織のサブセットのみにおいて、または発生の特定の段階中にポリペプチドをコードする特定の核酸を発現する)ことが望ましい。
【0296】
本明細書で使用される場合、「条件付発現」は、誘導性発現;抑圧可能な発現;特定の生理学的状態、生物学的状態、または疾患状態などを有する細胞または組織における発現を含むが、これらに限定されない、任意のタイプの条件付発現を指し得る。この定義は、細胞タイプまたは組織特異的発現を除外することを意図していない。ある特定の実施形態は、対象となるポリヌクレオチドの条件付発現をもたらし、例えば、発現は、細胞、組織、生物などを、ポリヌクレオチドを発現させる、または対象となるポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドの発現における増大もしくは減少を引き起こす処理または条件の対象にすることによって調節される。
【0297】
誘導性プロモーター/システムの例としては、グルココルチコイドまたはエストロゲン受容体をコードする遺伝子のためのプロモーターなどのステロイド誘導性プロモーター(対応するホルモンを用いた処理によって誘導可能)、メタロチオニンプロモーター(様々な重金属を用いた処理により誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンによって誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストン-制御可能なシステム(Sirin et al.,2003,Gene,323:67)、クミン酸塩誘導性遺伝子スイッチ(国際公開第2002/088346号)、テトラサイクリン依存性制御システムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0298】
条件付発現はまた、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することによっても達成され得る。ある特定の実施形態によれば、ポリヌクレオチドは、部位特異的リコンビナーゼにより仲介される組み換えのための少なくとも一つの(典型的には、二つの)部位を含む。本明細書で使用される場合、用語「リコンビナーゼ」または「部位特異的リコンビナーゼ」は、切除もしくは組み込みタンパク質、酵素、補因子または野生型タンパク質(Landy,Current Opinion in Biotechnology 3:699-707(1993)を参照のこと)、または変異体、誘導体(例えば、組み換えタンパク質配列もしくはそのフラグメントを含有する融合タンパク質)、フラグメント、およびそのバリアントであり得る、関連するタンパク質を含む。特定の実施形態での使用に適したリコンビナーゼの例としては、Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3 リゾルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1、およびParAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0299】
ポリヌクレオチドは、非常に様々な部位特異的リコンビナーゼのいずれかのための一つまたは複数の組み換え部位を含んでもよい。部位特異的リコンビナーゼの標的部位は、ベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターの組み込みに必要とされる任意の部位(複数可)に追加されることは、理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「組み換え配列」、「組み換え部位」、または「部位特異的組み換え部位」は、リコンビナーゼが認識し、結合する特定の核酸配列を指す。
【0300】
特定の実施形態では、本明細書において企図されるポリヌクレオチドは、一つまたは複数のポリペプチドをコードする、一つまたは複数の対象となるポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、複数のポリペプチドのそれぞれの効率的な翻訳を達成するために、ポリヌクレオチド配列は、一つまたは複数のIRES配列または自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列によって分離され得る。
【0301】
本明細書で使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」または「IRES」は、シストロン(タンパク質コード領域)のATGなどの開始コドンへの直接的な内部リボソーム侵入を促進し、これにより、遺伝子のキャップ非依存性翻訳をもたらすエレメントを指す。例えば、Jackson et al.,1990.Trends Biochem Sci 15(12):477-83)and Jackson and Kaminski.1995.RNA 1(10):985-1000を参照のこと。当業者によって一般的に利用されるIRESの例には、米国特許第6,692,736号に記載されるものを含む。当技術分野で公知の「IRES」のさらなる例としては、例えば、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、血管内皮増殖因子(VEGF)( Huez et al.1998.Mol.Cell.Biol.18(11):6178-6190)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、およびインスリン様成長因子(IGFII)、翻訳開始因子eIF4Gならびに酵母転写因子TFIIDおよびHAP4、Novagen(Duke et al.,1992.J.Virol 66(3):1602-9)から市販されている脳心筋炎ウイルス(EMCV)ならびにVEGF IRES(Huez et al.,1998.Mol Cell Biol 18(11):6178-90)などの、ピコルナウイルスから得られるIRES(Jackson et al.,1990)ならびにウイルスまたは細胞mRNA供給源から得られるIRESが挙げられるが、これらに限定されない。IRESはまた、ピコルナウイルス科、ジシストロウイルス科およびフラビウイルス科種のウイルスゲノムにおいて、ならびにHCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)において報告されている。
【0302】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、共通コザック配列を有し、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合、用語「コザック配列」は、リボソームの小さいサブユニットへのmRNAの初期結合を大いに促進し、翻訳を増大させる短いヌクレオチド配列を指す。共通コザック配列は、(GCC)RCCATGG(配列番号84)(式中、Rは、プリン(AまたはG)である)(Kozak,1986.Cell.44(2):283-92、およびKozak,1987.Nucleic Acids Res.15(20):8125-48)である。
【0303】
異種核酸転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を指示するエレメントは、異種遺伝子発現を増大させる。転写終結シグナルは、一般的に、ポリアデニル化シグナルの下流に見られる。特定の実施形態では、ベクターは、発現されるべきポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのポリアデニル化配列3’を含む。本明細書で使用される場合、用語「ポリA部位」または「ポリA配列」は、RNAポリメラーゼIIによる新生RNA転写物の終結とポリアデニル化の両方を指示するDNA配列を示す。ポリアデニル化配列は、ポリAテールをコード配列の3’末端に付加し、これにより、翻訳効率を増大させるのに寄与するmRNA安定性を促進することができる。切断およびポリアデニル化は、RNAにおけるポリ(A)配列によって指示される。哺乳類プレmRNAのコアポリ(A)配列は、切断-ポリアデニル化部位に隣接する二つの認識エレメントを有する。典型的には、ほぼ不変のAAUAAAヘキサマーは、U残基またはGU残基が豊富な、より可変のエレメントの上流の20~50ヌクレオチドに位置する。新生転写物の切断は、これら二つのエレメントの間で生じ、結合して、5’切断産物に最大250個のアデノシンを付加する。特定の実施形態では、コアポリ(A)配列は、理想的なポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)である。特定の実施形態では、ポリ(A)配列は、SV40ポリA配列、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンポリA配列(rβgpA)、そのバリアント、または当技術分野で公知の別の適当な異種もしくは内因性ポリA配列である。
【0304】
特定の実施形態では、一つまたは複数のホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、megaTAL、エンドプロセッシング酵素、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルスとウイルス方法の両方によって、造血細胞、例えば、CD34+細胞、または免疫エフェクター細胞に導入されてもよい。特定の実施形態では、ヌクレアーゼおよび/またはドナー修復鋳型をコードする一つまたは複数のポリヌクレオチドの送達は、同じ方法によって、もしくは異なる方法によって、および/または同じベクターによって、もしくは異なるベクターによってもたらされてもよい。
【0305】
用語「ベクター」は、別の核酸分子を移行または輸送することができる核酸分子を指すために本明細書において使用される。移行される核酸を一般的に連結させて、例えば、ベクター核酸分子に挿入される。ベクターは、細胞において自律的複製を指示する配列を含んでもよく、または宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。特定の実施形態では、非ウイルスベクターを使用して、本明細書において企図される一つまたは複数のポリヌクレオチドをCD34+細胞または免疫エフェクター細胞に送達する。
【0306】
非ウイルスベクターの例としては、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、および細菌人工染色体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0307】
特定の実施形態で企図されるポリヌクレオチドの非ウイルス送達の例示的方法としては、エレクトロポレーション、ソノポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ナノ粒子、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、DEAE-デキストラン仲介性移送、遺伝子銃、および熱ショックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0308】
特定の実施形態で企図される特定の実施形態での使用に適したポリヌクレオチド送達システムの例としては、Amaxa Biosystems、Maxcyte,Inc.、BTX Molecular Delivery Systems、およびCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されているものが挙げられるが、これらに限定されない。リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質が、文献に記載されている。例えば、Liu et al.(2003)Gene Therapy.10:180-187;およびBalazs et al.(2011)Journal of Drug Delivery.2011:1-12を参照のこと。抗体標的化送達、細菌由来送達、生きていないナノ細胞ベースの送達も、特定の実施形態では企図される。
【0309】
特定の実施形態で企図されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、典型的には、以下に記載される、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、もしくは頭蓋内注入)または局所適用によって、個々の患者に投与することによってインビボで送達され得る。あるいは、ベクターは、個々の患者から外植された細胞(例えば、動員された末梢血、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検など)または普遍的なドナー造血幹細胞などの細胞にエクスビボで送達され、その後、細胞を患者に再移植することができる。
【0310】
一実施形態では、ヌクレアーゼバリアントおよび/またはドナー修復鋳型を含むウイルスベクターは、インビボでの細胞の形質導入のため生物に直接投与される。あるいは、ネイキッドDNAまたはmRNAを投与することができる。投与は、注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない、血液または組織細胞との究極的接触に分子を導入するため通常使用される経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する適当な方法が利用可能であり、当業者に周知であるが、一つより多くの経路が、特定の組成物を投与するために使用でき、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりもより即時かつより有効な反応をもたらすことができる。
【0311】
本明細書において企図される特定の実施形態での使用に適したウイルスベクターシステムの例としては、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、およびワクシニアウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0312】
H.ゲノム編集された細胞
特定の実施形態で企図される方法によって製造されるゲノム編集された細胞は、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、もしくはX連鎖性好中球減少症(XLN)、またはそれと関連する状態を含むが、これらに限定されない、WASの少なくとも一つの症状の治療、予防、および/または回復のための改善された細胞ベースの治療を提供する。いかなる特定の理論によって束縛されるものではないが、本明細書において企図される組成物および方法を使用して、内因性WASp発現およびWASもしくはそれと関連する状態をほとんどもたらさないか、またはもたらさない1個または複数の変異および/または欠失を含むWAS遺伝子に、WASpの機能的コピーをコードするポリヌクレオチドを導入することができ、これにより、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、もしくはX連鎖性好中球減少症(XLN)を含むが、これらに限定されない、WASまたはそれと関連する状態を治療し、一部の実施形態では、潜在的に治癒するために使用され得る、より頑強なゲノム編集された細胞組成物を提供することが、信じられている。
【0313】
特定の実施形態で企図されるゲノム編集された細胞は、自己/自己遺伝子(「自己」)または非自己(「非自己」、例えば、同種、同系もしくは異種)であってもよい。本明細書で使用される場合、「自己」は、同じ対象由来の細胞を指す。本明細書で使用される場合、「同種」は、比較中の細胞と遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。本明細書で使用される場合、「同系」は、比較中の細胞と遺伝子的に同一である異なる対象の細胞を指す。本明細書で使用される場合、「異種」は、比較中の細胞と異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、細胞は、哺乳類対象から得られる。より好ましい実施形態では、細胞は、霊長類対象、任意選択で、非ヒト霊長類から得られる。最も好ましい実施形態では、細胞は、ヒト対象から得られる。
【0314】
「単離された細胞」は、天然に存在しない細胞、例えば、インビボ組織または器官から得られ、細胞外基質を実質的に含まない、天然に存在しない細胞、改変された細胞、操作された細胞などを指す。
【0315】
特定の実施形態では、細胞の集団は、編集すべき好ましい細胞タイプ(複数可)である一つまたは複数の特定の細胞タイプを含む。本明細書で使用される場合、用語「細胞の集団」は、本明細書において他で記載される、任意の数の同種もしくはヘテロ細胞タイプおよび/または同種もしくはヘテロ細胞タイプの組み合わせで構成される複数の細胞を指す。
【0316】
ゲノムが、本明細書において企図される組成物および方法を使用して編集され得る、細胞タイプの例としては、細胞株、初代細胞、幹細胞、前駆細胞、および分化した細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0317】
用語「幹細胞」は、(1)長期間の自己再生、または、元の細胞の少なくとも一つの同一コピーを生成する能力、(2)単一細胞レベルでの複数への分化、およびある場合では、一つのみの特定の細胞タイプへの分化、ならびに(3)インビボでの組織の機能的再生が可能な分化していない細胞である細胞を指す。幹細胞は、全能性、多能性、多分可能およびオリゴ/単能性として、その発生能により亜分類される。「自己再生」は、変更されていない娘細胞を生じ、特定の細胞タイプ(能力)を生じる固有の能力を有する細胞を意味する。自己再生は、二つの方法で達成することができる。非対称細胞分裂は、親細胞と同一の一つの娘細胞および親細胞とは異なり、前駆細胞または分化した細胞である一つの娘細胞を生じる。対称細胞分裂は、二つの同一の娘細胞を生じる。細胞の「増殖」または「拡大」は、対称的に分裂する細胞を指す。
【0318】
本明細書で使用される場合、用語「前駆体」または「前駆細胞」は、自己再生能力を有し、より成熟した細胞に分化する能力を有する細胞を指す。多くの前駆細胞は、単一系統に沿って分化するが、非常に広範な増殖能力を有し得る。
【0319】
特定の実施形態では、細胞は、初代細胞である。本明細書で使用される場合、用語「初代細胞」は、組織から単離され、インビトロまたはエクスビボでの成長のため確立された細胞を指すことが当該技術分野において知られている。対応する細胞は、もしあれば、非常に少ない集団の倍増を経験しており、それ故、連続する細胞株と比較して、それらがもたらされる組織の主要な機能的構成要素のより代表であり、したがって、インビボ状態のより代表的なモデルを表す。種々の組織から試料を得る方法、および初代細胞株を確立する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Jones and Wise,Methods Mol Biol.1997年)。本明細書において企図される方法において使用するための初代細胞は、臍帯血、胎盤血、動員された末梢血および骨髄からもたらされる。一実施形態では、初代細胞は、造血幹細胞または前駆細胞である。
【0320】
一実施形態では、ゲノム編集された細胞は、胚性幹細胞である。
【0321】
一実施形態では、ゲノム編集された細胞は、成人幹細胞または前駆細胞である。
【0322】
一実施形態では、ゲノム編集された細胞は、初代細胞である。
【0323】
特定の実施形態では、ゲノム編集された細胞は、造血細胞、例えば、造血幹細胞、造血前駆細胞、例えば、B細胞前駆細胞、または造血細胞を含む細胞集団である。
【0324】
造血細胞を得るための例示的な供給源としては、臍帯血、骨髄または動員された末梢血が挙げられるが、これらに限定されない。
【0325】
造血幹細胞(HSC)は、生物の生涯にわたる成熟血液細胞のレパートリー全体を生じる能力がある、造血前駆細胞(HPC)に傾倒して生じる。用語「造血幹細胞」または「HSC」は、骨髄系(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、ならびにリンパ系(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)、ならびに当該技術分野で公知のもの(See Fei,R.,et al.,米国特許第5,635,387号;McGlave,et al.,米国特許第5,460,964号;Simmons,P.,et al.,米国特許第5,677,136号;Tsukamoto,et al.,米国特許第5,750,397号;Schwartz,et al.,米国特許第5,759,793号;DiGuisto,et al.,米国特許第5,681,599号;Tsukamoto,et al.,米国特許第5,716,827号)を含む、生物の全ての血液細胞タイプを生じる多能性幹細胞を指す。致命的に照射された動物またはヒトに移植された場合、造血幹細胞および前駆細胞は、赤血球、好中球-マクロファージ、巨核球およびリンパ系造血細胞プールに再び繁殖することができる。
【0326】
本明細書において企図される方法および組成物での使用に適した造血幹細胞または前駆細胞の追加の例としては、CD34+CD38LoCD90+CD45RA-である造血細胞、CD34+、CD59+、Thy1/CD90+、CD38Lo/-、C-キット/CD117+、およびLin(-)である造血細胞ならびにCD133+である造血細胞が挙げられる。
【0327】
好ましい実施形態では、CD133+CD90+である造血細胞。
【0328】
好ましい実施形態では、CD133+CD34+である造血細胞。
【0329】
好ましい実施形態では、CD133+CD90+CD34+である造血細胞。
【0330】
造血階層を特徴付けるための様々な方法が存在する。一つの特徴決定方法は、SLAMコードである。SLAM(シグナル伝達リンパ球活性化分子)ファミリーは、>10個の分子の群であり、その遺伝子は、主に染色体1(マウス)上の単一の遺伝子座に縦列に位置し、すべてが、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのサブセットに属し、元々T細胞刺激に関与すると考えられている。このファミリーには、CD48、CD150、CD244などが含まれ、CD150は、創設メンバーであり、したがって、slamF1、すなわちSLAMファミリーメンバー1とも呼ばれる。造血階層に関する署名SLAMコードは、造血幹細胞(HSC)-CD150+CD48-CD244-;多能性前駆細胞(MPP)-CD150-CD48-CD244+;系統限定前駆細胞(LRP)-CD150-CD48+CD244+;共通の骨髄前駆細胞(CMP)-lin-SCA-1-c-キット+CD34+CD16/32mid;顆粒球-マクロファージ前駆細胞(GMP)-lin-SCA-1-c-キット+CD34+CD16/32hi;および巨核球-赤血球前駆細胞(MEP)-lin-SCA-1-c-キット+CD34-CD16/32lowである。
【0331】
特定の実施形態で企図される組成物および方法を用いて編集される好ましい標的細胞タイプとしては、造血細胞、好ましくは、ヒト造血細胞、より好ましくはヒト造血幹細胞および前駆細胞、なおより好ましくは、CD34+ヒト造血幹細胞が挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「CD34+細胞」は、その細胞表面にCD34タンパク質を発現する細胞を指す。本明細書で使用される場合、「CD34」は、細胞接着因子としてしばしば作用する細胞表面糖タンパク質(例えば、シアロムチンタンパク質)を指す。CD34+は、造血幹細胞と前駆細胞の両方の細胞表面マーカーである。
【0332】
一実施形態では、ゲノム編集された造血細胞は、CD150+CD48-CD244-細胞である。
【0333】
一実施形態では、ゲノム編集された造血細胞は、CD34+CD133+細胞である。
【0334】
一実施形態では、ゲノム編集された造血細胞は、CD133+細胞である。
【0335】
一実施形態では、ゲノム編集された造血細胞は、CD34+細胞である。
【0336】
特定の実施形態では、造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)を含む造血細胞の集団は、欠陥のあるWAS遺伝子を含む。細胞は、内因性WASp発現をほとんどもたらさないか、またはもたらさない、WAS遺伝子における一つまたは複数の突然変異および/または欠失を含んでもよい。特定の実施形態では、欠陥のあるWAS遺伝子を含むHPSCは、機能的なWASpを発現するように編集され、編集は、HDRによって修復されたDSBである。
【0337】
特定の実施形態では、ゲノム編集された細胞は、CD34+造血幹細胞または前駆細胞を含む。
【0338】
ゲノムが、本明細書において企図される組成物および方法を使用して編集され得る細胞タイプの他の例としては、免疫エフェクター細胞、例えば、NK細胞、NKT細胞、およびT細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0339】
様々な実施形態では、ゲノム編集された細胞は、本明細書において企図される組成物および方法によって編集されたWAS遺伝子を含む免疫エフェクター細胞を含む。「免疫エフェクター細胞」は、一つまたは複数のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞殺傷活性、サイトカインの分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導)を有する免疫系の任意の細胞である。特定の実施形態で企図される例示的な免疫エフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、TIL、およびヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)を含むが、これに限定されない、Tリンパ球である。一実施形態では、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む。一実施形態では、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む。
【0340】
用語「T細胞」または「Tリンパ球」は、当該技術分野で認識され、胸腺細胞、調節性T細胞、ナイーブTリンパ球、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含むことが意図される。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)またはTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)CD4+T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、腫瘍浸潤性細胞傷害性T細胞(TIL;CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、またはT細胞の任意の他のサブセットであり得る。一実施形態では、T細胞は、免疫エフェクターT細胞である。一実施形態では、T細胞はNKT細胞である。特定の実施形態での使用に適したT細胞の他の例示的な集団には、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞が含まれる。
【0341】
「強力なT細胞」および「若年T細胞」は、特定の実施形態で互換的に使用され、T細胞が、増殖能力を有し、かつ分化が同時に減少するT細胞表現型を指す。特定の実施形態では、若年T細胞は、「ナイーブT細胞」の表現型を有する。特定の実施形態では、若年T細胞は、以下の生物学的マーカーCD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122、CD127、CD197、およびCD38のうちの一つもしくは複数、またはすべてを含む。一実施形態では、若年T細胞は、以下の生物学的マーカーCD62L、CD127、CD197、およびCD38のうちの一つもしくは複数、またはすべてを含む。一実施形態では、若年T細胞は、CD57、CD244、CD160、PD-1、CTLA4、およびLAG3の発現を欠く。
【0342】
免疫エフェクター細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脊髄血液、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含むが、これらに限定されない、多数の供給源から得られ得る。
【0343】
特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞を含む造血細胞の集団は、欠陥のあるWAS遺伝子を含む。細胞は、内因性WASp発現をほとんどもたらさないか、またはもたらさない、WAS遺伝子における一つまたは複数の突然変異および/または欠失を含んでもよい。特定の実施形態では、欠陥のあるWAS遺伝子を含む免疫エフェクター細胞は、機能的なWASpを発現するように編集され、編集は、HDRによって修復されたDSBである。
【0344】
特定の実施形態では、ゲノム編集された細胞は、T細胞、NKT細胞、および/またはNK細胞を含む。
【0345】
特定の実施形態では、細胞集団は、編集されてもよい。細胞の集団は、編集されるべき標的細胞タイプの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%を含んでもよい。特定の実施形態では、CD34+造血幹細胞または前駆細胞は、細胞の集団から単離されるか、または精製され、編集されてもよい。他の実施形態では、末梢血単核細胞(PBMC)の集団は、編集されている免疫エフェクター細胞を含む。
【0346】
I.組成物および製剤
特定の実施形態で企図される組成物は、本明細書で企図される、一つまたは複数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、それを含むベクター、およびゲノム編集組成物およびゲノム編集された細胞組成物を含んでもよい。特定の実施形態で企図されるゲノム編集組成物および方法は、細胞または細胞の集団におけるヒトWAS遺伝子中の標的部位を編集するのに有用である。好ましい実施形態では、ゲノム編集組成物を使用して、造血細胞、例えば、造血幹細胞もしくは前駆細胞、CD34+細胞、免疫エフェクター細胞、T細胞、NKT細胞、またはNK細胞において、HDRによってWAS遺伝子を編集する。
【0347】
様々な実施形態では、本明細書において企図される組成物は、ヌクレアーゼバリアント、および任意選択で、エンドプロセッシング酵素、例えば、3’-5’エキソヌクレアーゼ(Trex2)を含む。ヌクレアーゼバリアントは、上で開示されたポリヌクレオチド送達方法、例えば、エレクトロポレーション、脂質ナノ粒子などを介して細胞内に導入されるmRNAの形態であってもよい。一実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTALをコードするmRNA、および任意選択で、3’-5’エキソヌクレアーゼを含む組成物が、上で開示されたポリヌクレオチド送達方法を介して細胞内に導入される。
【0348】
特定の実施形態では、本明細書において企図される組成物は、細胞の集団、ヌクレアーゼバリアント、および任意選択で、ドナー修復鋳型を含む。特定の実施形態では、本明細書において企図される組成物は、細胞の集団、ヌクレアーゼバリアント、エンドプロセッシング酵素、および任意選択で、ドナー修復鋳型を含む。ヌクレアーゼバリアントおよび/またはエンドプロセッシング酵素は、上で開示されたポリヌクレオチド送達方法を介して細胞内に導入されるmRNAの形態であってもよい。ドナー修復鋳型はまた、別個の組成物によって細胞に導入されてもよい。
【0349】
特定の実施形態では、本明細書において企図される組成物は、細胞の集団、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTAL、および任意選択で、ドナー修復鋳型を含む。特定の実施形態では、本明細書において企図される組成物は、細胞の集団、ホーミングエンドヌクレアーゼバリアントまたはmegaTAL、3’-5’エキソヌクレアーゼ、および任意選択で、ドナー修復鋳型を含む。ホーミングエンドヌクレアーゼバリアント、megaTAL、および/または3’-5’エキソヌクレアーゼは、上で開示されたポリヌクレオチド送達方法を介して細胞内に導入されるmRNAの形態であってもよい。ドナー修復鋳型はまた、別個の組成物によって細胞に導入されてもよい。
【0350】
特定の実施形態では、細胞の集団は、造血幹細胞、造血前駆細胞、CD133+細胞、およびCD34+細胞を含むが、これらに限定されない遺伝子改変された造血細胞を含む。
【0351】
特定の実施形態では、細胞の集団は、免疫エフェクター細胞、T細胞、CD8+CTL、TIL、NK細胞、およびNKT細胞を含むが、これらに限定されない遺伝子改変された造血細胞を含む。
【0352】
組成物には、医薬組成物が含まれるが、これに限定されない。「医薬組成物」は、単独、または一つまたは複数の他の療法様式と組み合わせて、細胞または動物への投与のための医薬的に許容されるまたは生理学的に許容される溶液に製剤された組成物を指す。所望の場合、組成物は、同様に、例えば、サイトカイン、成長因子、ホルモン、小分子、化学療法剤、プロドラッグ、薬剤、抗体、または他の様々な医薬的に活性な剤などの他の薬剤と組み合わせて投与されてもよいことも理解されるであろう。追加の薬剤が、組成物に悪影響を及ぼさないことを条件に、組成物に含まれ得る他の成分に実質的に制限はない。
【0353】
語句「医薬的に許容される」は、妥当な利益/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触した使用に適した、健全な医学的判断の範囲内にある化合物、物質、組成物、および/または投薬形態を指すように本明細書において利用される。
【0354】
「医薬的に許容される担体」という用語は、治療細胞が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビークルを指す。医薬担体の例は、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などのような、石油、動物、植物、または合成起源のものを含む、細胞培養培地、水および油であり得る。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液も、液体担体として、特に、注射可能な溶液のため利用することができる。特定の実施形態における適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。任意の従来の媒体または薬剤が、有効成分と互換性がない場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図される。追加の有効成分も、組成物に取り込むことができる。
【0355】
一実施形態では、医薬的に許容される担体を含む組成物は、対象への投与に適している。特定の実施形態では、担体を含む組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内投与もしくは動脈内投与)投与、腹腔内投与または筋肉内投与に適している。特定の実施形態では、医薬的に許容される担体を含む組成物は、脳室内投与、脊髄内投与、またはくも膜下腔内投与に適している。医薬的に許容される担体には、無菌の水溶液、細胞培養培地、または分散液が含まれる。医薬的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が、形質導入された細胞と互換性がない場合を除き、医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0356】
特定の実施形態では、本明細書において企図される組成物は、遺伝子修飾された造血幹細胞および/もしくは前駆細胞または機能的WASpをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む免疫エフェクター細胞ならびに医薬的に許容される担体を含む。
【0357】
特定の実施形態では、本明細書において企図される組成物は、遺伝子修飾された造血幹細胞および/もしくは前駆細胞または1個または複数の変異および/もしくは欠失を含むWAS遺伝子を含む免疫エフェクター細胞ならびに機能的WASpをコードする外因性ポリヌクレオチドならびに医薬的に許容される担体を含む。本明細書において企図される細胞ベースの組成物を含む組成物は、非経口投与方法によって投与することができる。
【0358】
医薬的に許容される担体は、治療されているヒト対象への投与に適しているように、十分に高い純度であり、十分に低い毒性でなければならない。それは、さらに、組成物の安定性を維持するか、または増大させるべきである。医薬的に許容される担体は、液体または固体であり得、組成物の他の構成成分と組み合わせたとき、所望のバルク、一貫性などを提供するために、計画された投与方法を念頭に置いて選択される。例えば、医薬的に許容される担体は、非限定的に、結合剤(例えば、予めゼラチン化されたメイズスターチ、ポリビニルピロリドンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、リン酸水素カルシウムなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)であり得る。本明細書において企図される組成物のための他の適切な医薬的に許容される担体としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0359】
このような担体溶液はまた、緩衝液、希釈剤および他の適切な添加剤を含有し得る。本明細書で使用される場合、用語「緩衝液」は、pHの有意な変化なしに、その化学組成が、酸または塩基を中和する溶液または液体を指す。本明細書において企図される緩衝液の例としては、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル溶液、水中の5%デキストロース(D5W)、正常/生理食塩水(0.9%NaCl)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0360】
医薬的に許容される担体は、組成物のpH約7を維持するのに十分な量で存在し得る。あるいは、組成物は、約6.8~約7.4の範囲、例えば、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、および7.4のpHを有する。さらに別の実施形態では、組成物は、pH約7.4を有する。
【0361】
本明細書において企図される組成物は、無毒性の医薬的に許容される培地を含んでもよい。組成物は、懸濁液であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「懸濁液」は、細胞が固体支持体に結合されていない非付着状態を指す。例えば、懸濁液として維持される細胞は、撹拌されるか、またはかき混ぜられてもよく、培養ディッシュなどの支持体に付着していない。
【0362】
特定の実施形態では、本明細書において企図される組成物は、懸濁液において製剤化され、ここで、ゲノム編集された造血幹細胞および/または前駆細胞は、許容される液体培地、例えば、整理食塩水または血清を含まない培地内で、静脈内(IV)バックなどで分散される。許容される希釈剤としては、水、PlasmaLyte、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム(生理食塩水)溶液、血清を含まない細胞培養培地、および例えば、Cryostor(登録商標)培地などの低温保存に適した培地が挙げられるが、これらに限定されない。
【0363】
ある特定の実施形態では、医薬的に許容される担体は、ヒトまたは動物起源の天然のタンパク質を実質的に含まず、ゲノム編集された細胞、例えば、造血幹細胞および前駆細胞の集団を含む組成物の保存に適している。治療組成物は、ヒト患者に投与されることが意図されており、したがって、ウシ血清アルブミン、ウマ血清、およびウシ胎児血清などの細胞培養成分を実質的に含まない。
【0364】
一部の実施形態では、組成物は、医薬的に許容される細胞培養培地において製剤化される。このような組成物は、ヒト対象への投与に適している。特定の実施形態では、医薬的に許容される細胞培養培地は、血清を含まない培地である。
【0365】
血清を含まない培地は、単純化され、より良好に定義された組成物、低減した程度の汚染物、可能性のある感染性物質源の除去、およびより低いコストを含む、血清含有培地よりもいくつかの利点を有する。様々な実施形態において、血清を含まない培地は、動物性のもを含まず、任意選択的に、タンパク質を含まない。任意選択的に、培地は、生物医薬的に許容される組み換えタンパク質を含有してもよい。「動物性のものを含まない」培地は、成分が、非動物供給源からもたらされる培地を指す。組み換えタンパク質は、動物性のものを含まない培地における天然の動物タンパク質を置き換え、栄養素は、合成、植物または微生物供給源から得られる。対照的に、「タンパク質を含まない」培地は、実質的にタンパク質を含まないと定義される。
【0366】
特定の組成物において使用される血清を含まない培地の例としては、QBSF-60(Quality Biological,Inc.)、StemPro-34(Life Technologies)、およびX-VIVO 10が挙げられるが、これらに限定されない。
【0367】
好ましい実施形態では、ゲノム編集された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む組成物は、PlasmaLyteにおいて製剤化される。
【0368】
様々な実施形態では、造血幹細胞および/または前駆細胞を含む組成物は、凍結保存培地において製剤化される。例えば、凍結保存剤を有する凍結保存培地を使用して、解凍後の高い細胞生存率の結果を維持してもよい。特定の組成物において使用される凍結保存培地体の例としては、CryoStor CS10、CryoStor CS5、およびCryoStor CS2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0369】
一実施形態では、組成物は、50:50のPlasmaLyte A対CryoStor CS10を含む溶液において製剤化される。
【0370】
特定の実施形態では、組成物は、マイコプラズマ、エンドトキシン、および微生物汚染物を実質的に含まない。エンドトキシンに関して「実質的に含まない」とは、生物学についてFDAが許可するよりも、細胞用量当たりのエンドトキシンが少ないことを意味し、これは、1日当たり5EU/体重1kgの総エンドトキシンであり、平均70kgの個人について、細胞用量当たり350EUである。特定の実施形態では、本明細書において企図されるレトロウイルスベクターを用いて形質導入された造血幹細胞または前駆細胞を含む組成物は、約0.5EU/mL~約5.0EU/mL、または約0.5EU/mL、1.0EU/mL、1.5EU/mL、2.0EU/mL、2.5EU/mL、3.0EU/mL、3.5EU/mL、4.0EU/mL、4.5EU/mL、もしくは5.0EU/mLを含有する。
【0371】
ある特定の実施形態では、一つまたは複数のリプログラミングされたヌクレアーゼをコードする一つまたは複数のmRNA、および任意選択で、エンドプロセッシング酵素を含むが、これらに限定されない、ポリヌクレオチドの送達に適した組成物および製剤が企図される。
【0372】
エクスビボ送達のための例示的な製剤はまた、リン酸カルシウム、エレクトロポレーション、熱ショックおよび様々なリポソーム製剤(すなわち、脂質仲介性遺伝子導入)などの、当該技術分野で公知の様々な遺伝子導入の使用を含み得る。以下でより詳細に記載される、リポソームは、水性流体の分画を包囲する脂質二重層である。DNAは、カチオン性リポソームの外部表面と(その電荷の力により)自発的に会合し、これらのリポソームは、細胞膜と相互作用する。
【0373】
特定の実施形態では、医薬的に許容される担体溶液の製剤化は、当業者に周知であり、例えば、経腸および非経口、例えば、血管内、静脈内、動脈内、骨内、脳室内、脳内、頭蓋内、脊髄内、くも膜下腔内、ならびに髄内投与および製剤を含む、様々な治療レジメンにおいて本明細書において記載される特定の組成物を使用するのに適した投薬および治療レジメンの開発である。当業者は、本明細書において企図される特定の実施形態が、医薬技術分野において周知であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,volume I and volume II.22nd Edition.Edited by Loyd V.Allen Jr.Philadelphia,PA:Pharmaceutical Press;2012に記載されるものなど、他の製剤を含んでもよいことを理解するであろう。
【0374】
J.ゲノム編集された細胞療法
特定の実施形態で企図される方法によって製造されるゲノム編集された細胞は、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、またはX連鎖性好中球減少症(XLN)を含むが、これらに限定されない、WASまたはWAS遺伝子における変異によって引き起こされる状態の予防、治療、および回復における使用のための改善された薬物製品をもたらす。本明細書で使用される場合、用語「薬物製品」は、本明細書において企図される組成物および方法を使用して生成される遺伝子改変された細胞を指す。特定の実施形態では、薬物製品は、遺伝子改変された造血幹細胞または前駆細胞、例えば、CD34+細胞を含む。遺伝子改変された造血幹細胞または前駆細胞は、造血細胞系統全体を生じる。特定の実施形態では、薬物製品は、遺伝子改変された免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞を含む。
【0375】
特定の実施形態では、編集される細胞は、非機能的または破壊された、切除された、もしくは部分的に欠失したWAS遺伝子を含み、これにより、WASp発現を低減するか、または取り除き、低いWASp発現または存在しないWASp発現と関連する状態を引き起こす。
【0376】
特定の実施形態では、ゲノム編集された細胞は、非機能的または破壊された、切除された、もしくは部分的に欠失したWAS遺伝子を含み、これにより、内因性WASp発現を低減するか、または取り除き、免疫系障害、血小板減少症、湿疹、X連鎖性血小板減少症(XLT)、またはX連鎖性好中球減少症(XLN)を含むが、これらに限定されない、WASの少なくとも一つの症状を治療する、予防する、または改善する機能的WASpをコードする、WAS遺伝子に挿入された、ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0377】
特定の実施形態では、ゲノム編集された造血幹細胞または前駆細胞は、WASを有すると診断された対象、または有することが疑われる対象に対する治癒療法、予防療法、または回復療法を提供する。
【0378】
様々な実施形態では、ゲノム編集組成物は、インビボでの遺伝子療法を必要とする対象の細胞、組織、または器官、例えば、骨髄への直接注射によって投与される。様々な他の実施形態では、細胞は、本明細書において企図されるリプログラミングされたヌクレアーゼを用いてインビトロまたはエクスビボで編集され、任意選択で、エクスビボで拡大される。次いで、ゲノム編集された細胞は、療法を必要とする対象に投与される。
【0379】
本明細書において企図されるゲノム編集方法における使用に好ましい細胞としては、自己/自己の遺伝子(「自分自身」)細胞、好ましくは、造血細胞を含む。特定の実施形態では、造血幹細胞または前駆細胞、例えばCD34+細胞が好ましい。特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞が好ましい。
【0380】
本明細書で使用される場合、用語「個体」および「対象」は、しばしば代替的に用いられ、リプログラミングされたヌクレアーゼ、ゲノム編集組成物、遺伝子療法ベクター、ゲノム編集ベクター、ゲノム編集された細胞、および方法を用いて治療され得るWASの症状を示す、任意の動物を指す。適切な対象(例えば、患者)は、研究室動物(マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモットなど)、家畜、および飼育動物またはペット(ネコもしくはイヌなど)を含む。非ヒト霊長類、および好ましくは、ヒト対象が含まれる。典型的な対象には、WASを有する、WASを有すると診断されたか、またはWASを有するリスクがあるヒト患者が含まれる。
【0381】
本明細書において使用される場合、用語「患者」は、本明細書において他で企図される、リプログラミングされたヌクレアーゼ、ゲノム編集組成物、遺伝子療法ベクター、ゲノム編集ベクター、ゲノム編集された細胞、および方法を用いて治療され得る、WASまたはWAS遺伝子における変異によって引き起こされる状態と診断されている対象を指す。
【0382】
本明細書において使用される場合、「治療」または「治療すること」は、WASまたはWAS遺伝子における変異によって引き起こされる状態の症状または病態に対する任意の有益または所望の効果を含み、一つまたは複数の測定可能なマーカーの最小の低減さえ含み得る。治療は、任意選択で、WASの進行の遅延を含み得る。「治療」は、必ずしも、WAS、またはそれらの関連する症状の完全な根絶または治癒を示すものではない。
【0383】
本明細書で使用される場合、「予防する」および「予防」、「予防された」、「予防すること」などのような類似の語句は、WASまたはWAS遺伝子における変異によって引き起こされる状態の出現または再発の可能性を妨げる、阻害する、または低減するためのアプローチを示す。これはまた、WASの発症もしくは再発を遅らせること、またはWASの出現または再発を遅らせることも指す。本明細書で使用される場合、「予防」および類似の語句はまた、その発症または再発前のWASの強度、作用、症状および/または負荷の低減を含む。
【0384】
本明細書で使用される場合、語句「の少なくとも一つの症状を回復させる」は、WASの一つまたは複数の症状を減少することを指す。特定の実施形態では、改善されるWASの一つまたは複数の症状としては、気管支炎(気道感染)、慢性下痢、結膜炎(目の感染)、中耳炎(中耳感染)、肺炎(肺感染)、副鼻腔炎(副鼻腔感染)、皮膚感染、上気道感染を含むが、これらに限定されない、一般的な感染;細菌、ウイルス、および他の微生物に起因した感染;ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、肺炎球菌(ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae))、およびブドウ球菌感染を含むが、これらに限定されない、細菌感染;湿疹;微量血小板減少症;X連鎖性血小板減少症(XLT)およびX連鎖性好中球減少症(XLN);ならびに白血病およびリンパ腫を含む癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0385】
本明細書で使用される場合、用語「量」は、臨床結果を含む、有益もしくは所望の予防または治療結果を達成するのに十分なヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞の「有効な量」または「有効量」を指す。
【0386】
「予防有効量」は、望ましい予防結果を達成するために十分なヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞の量を指す。典型的には、しかし必ずしもそうではないが、予防用量は、疾患の早期段階前または早期段階において対象において使用されるので、予防有効量は、治療上有効量よりも少ない。
【0387】
ヌクレアーゼバリアント、ゲノム編集組成物、またはゲノム編集された細胞の「治療上有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する能力などの因子に応じて変動し得る。治療上有効量はまた、任意の毒性または有害な作用が、治療上有益な作用が凌ぐものである。用語「治療上有効量」は、対象(例えば、患者)を「治療する」のに有効である量を含む。治療量が示されるとき、投与されるべき、特定の実施形態で企図される組成物の正確な量は、本明細書に照らし、患者(対象)の年齢、体重、症状の程度、および状態における個体差を考慮して、医師によって決定され得る。
【0388】
ゲノム編集された細胞は、骨髄切除療法を受けているか受けていない個体において、骨髄または脊髄血移植の一部として投与されてもよい。一実施形態では、本明細書において企図されるゲノム編集された細胞は、化学切除または放射線切除骨髄療法を受けた個体への骨髄移植において投与される。
【0389】
一実施形態では、ゲノム編集された細胞の用量は、対象に静脈内送達される。好ましい実施形態では、ゲノム編集された造血幹細胞は、対象に静脈内投与される。他の好ましい実施形態では、ゲノム編集された免疫エフェクター細胞は、対象に静脈内投与される。
【0390】
一つの例示的な実施形態では、対象にもたらされるゲノム編集された細胞の有効量は、すべての中間にある細胞用量を含む、少なくとも2×106細胞/kg、少なくとも3×106細胞/kg、少なくとも4×106細胞/kg、少なくとも5×106細胞/kg、少なくとも6×106細胞/kg、少なくとも7×106細胞/kg、少なくとも8×106細胞/kg、少なくとも9×106細胞/kg、もしくは少なくとも10×106細胞/kg、またはそれ以上の細胞/kgである。
【0391】
別の例示的な実施形態では、対象にもたらされるゲノム編集された細胞の有効量は、すべての中間にある細胞用量を含む、約2×106細胞/kg、約3×106細胞/kg、約4×106細胞/kg、約5×106細胞/kg、約6×106細胞/kg、約7×106細胞/kg、約8×106細胞/kg、約9×106細胞/kg、もしくは約10×106細胞/kg、またはそれ以上の細胞/kgである。
【0392】
別の例示的な実施形態では、対象にもたらされるゲノム編集された細胞の有効量は、すべての中間にある細胞用量を含む、約2×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、約3×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、約4×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、約5×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、2×106細胞/kg×約6×106細胞/kg、2×106細胞/kg~約7×106細胞/kg、2×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、3×106細胞/kg~約6×106細胞/kg、3×106細胞/kg~約7×106細胞/kg、3×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、4×106細胞/kg~約6×106細胞/kg、4×106細胞/kg~約7×106細胞/kg、4×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、5×106細胞/kg~約6×106細胞/kg、5×106細胞/kg~約7×106細胞/kg、5×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、または6×106細胞/kg~約8×106細胞/kgである。
【0393】
投薬量におけるいくらかの変動は、治療されている対象の状態に応じて必然的に生じる。投与の責任者は、いずれにしても、個々の対象に適切な用量を決定する。
【0394】
特定の実施形態では、内因性WASp発現をほとんどもたらさないか、またはもたらさないWAS遺伝子における1個または複数の変異および/または欠失を有する対象に、治療上有効量の本明細書において企図されるゲノム編集された細胞を投与することを含む、ゲノム編集された細胞療法を使用して、WAS、またはそれと関連する状態を治療する、予防する、または改善する。一実施形態では、ゲノム編集された細胞療法は、機能的内因性WASp発現を欠くが、WASpの機能的コピーをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0395】
様々な実施形態では、対象は、対象におけるWASp発現を増大するのに有効な、機能的WASpをコードする外因性ポリヌクレオチドを含むゲノム編集された細胞の量が投与される。特定の実施形態では、WAS遺伝子における1個または複数の有害な変異または欠失を含むゲノム編集された細胞における外因性ポリヌクレオチドからのWASp発現の量は、内因性WASp発現と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、もしくは少なくとも約1000倍、またはそれ以上増大される。
【0396】
当業者は、適当な投与経路および本明細書において企図されるゲノム編集された細胞を含む組成物の有効量である正しい投薬量を決定するために、慣習的な方法を使用することができる。また、ある特定の療法において、本明細書において企図される医薬組成物の複数回の投与が、療法を果たすために必要とされ得ることを認識することは、当業者に知られている。
【0397】
ゲノム編集された造血幹細胞および前駆細胞療法を用いた治療に適している対象を治療するために使用される主要な方法の一つは、輸血である。したがって、本明細書において企図される組成物および方法の主な目標の一つは、輸血の回数を低減するか、または輸血の必要性を排除することである。
【0398】
特定の実施形態では、薬物製品は、1回投与される。
【0399】
ある特定の実施形態では、薬物製品は、1年、2年、5年、10年、またはそれ以上の期間にわたって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上投与される。
【0400】
本明細書において引用されるすべての刊行物、特許出願、および登録された特許は、あたかもそれぞれの個々の刊行物、特許出願、または登録された特許が、参照により取り込まれることを具体的かつ個々に示されたかのように、参照により本明細書に取り込まれる。
【0401】
前述の実施形態は、明確な理解の目的で、説明および例示によって幾分詳細に記載されたが、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、ある特定の変更および修正がなされ得ることは、本明細書において企図される教示に照らして、当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、説明のみのため提供され、限定のため提供されるものではない。当業者は、本質的に類似する結果をもたらすよう変更または修正され得る様々な非臨界パラメータを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0402】
実施例1
ヒトWAS遺伝子のイントロン2における標的部位へのI-OnuIのリプログラミング
DNA認識境界面における可変アミノ酸残基を含有するモジュラーライブラリーを構築することによって、ヒトウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)遺伝子(
図1Aおよび1B)の第二のイントロンにおける標的部位に、I-OnuIをリプログラミングした。バリアントを構築するために、縮重コドンを、オリゴヌクレオチドを使用してI-OnuI DNA結合ドメインに組み込んだ。縮重コドンをコードするオリゴヌクレオチドをPCR鋳型として使用して、酵母株S.セレビシアにおいてギャップ組み換えによってバリアントライブラリーを生成した。それぞれのバリアントライブラリーは、N末端またはC末端I-OnuI DNA認識ドメインのいずれかに渡り、約10
7~10
8個の固有の形質転換体を含有した。得られた表面提示ライブラリーを、対応するドメインの半分の部位を含む標的部位に対する切断活性について、フローサイトメトリーによりスクリーニングした。
【0403】
N末端ドメインおよびC末端ドメインのリプログラミングされたI-OnuI HEを提示する酵母を精製し、プラスミドDNAを抽出した。PCR反応を行い、リプログラミングされたドメインを増幅し、続いて、S.セレビシアに形質転換して、リプログラミングされたドメイン組み合わせのライブラリーを創出した。WAS遺伝子に存在する完全な標的部位(配列番号27)を認識する完全にリプログラムされたI-OnuIバリアントを、このライブラリーから同定し、精製した。
【0404】
実施例2
ヒトWAS遺伝子のイントロン2を効率的に標的にする、リプログラムされたI-OnuIホーミングエンドヌクレアーゼおよびmegaTAL
最初のスクリーニングにおいて同定した、WAS遺伝子標的部位を標的とするリプログラミングされたI-OnuI HE上でランダム変異誘発を行うことによって、二次I-OnuIバリアントライブラリーを生成した。加えて、熱ショック後(45℃で30分間)、結合および切断条件下で表示ベースのフローソーティングを行い、熱安定性が向上したバリアントを単離しようとした。
図2Aおよび2B。
【0405】
二次I-OnuIバリアントライブラリーからのWAS I-OnuI HEバリアント(例えば、WAS I-OnuI HEバリアントV6、WAS I-OnuI HEバリアントV12、WAS I-OnuI HEバリアントV18、WAS I-OnuI HEバリアントV35、WAS I-OnuI HEバリアントV37、WAS I-OnuI HEバリアントV55)の選択により、定量を用いて酵母表面提示システムにおいてWAS標的部位に結合し、切断する能力を示した。
図2Cおよび2D。
【0406】
WAS遺伝子におけるイントロン2を標的とするI-OnuI HEの活性を、染色体に組み込んだ蛍光レポーターシステム(Certo et.al.,2011)を使用して測定した。WAS標的配列に結合し、切断する完全にリプログラミングされたI-OnuI HEを、HEをmegaTALとして再配列する哺乳類発現プラスミドにクローニングし、BFPに連結させ(発現を正規化するために)、次いで、蛍光mCherryタンパク質をコードするアウトオブフレーム遺伝子の上流に、WAS megaTAL標的配列を含有するよう操作したHEK 293T線維芽細胞の細胞株に個々に遺伝子導入した。インビボで、WAS megaTAL部位は、WAS遺伝子の第一エクソンの30bp下流かつATG翻訳開始コドン(
図1B)の162bp下流に局在している。megaTALによる埋め込み標的部位の切断、および続く、非相同末端結合(NHEJ)経路を介したDNA修復によって引き起こされる、小さな挿入または欠失の続く蓄積は、蛍光レポーター遺伝子を「インフレーム」に戻す三つの修復された遺伝子座のおよそ一つをもたらす。したがって、mCherry蛍光は、染色体に組み込まれた標的配列におけるエンドヌクレアーゼ活性の読み取りである。
【0407】
WAS I-OnuI megaTALに対する結合親和性を最適化するため、WAS I-OnuI V11を、11~15個のRVDを含有する一連のTALE DNA結合ドメインに融合させた。
図3A。遺伝子導入したバリアントの発現レベルは、これらの5つのコンストラクトにわたって一貫していた。
図3B。12個のRVDを有するWAS I-OnuI V11 megaTAL酵素は、TLR細胞株において最も高い活性を示し(
図3C)、したがって、12個のRVD構造を、代替的なWAS megaTAL酵素の試験のための標準として使用した。
【0408】
複数のリプログラミングされたWAS I-OnuI megaTAL(例えば、WAS I-OnuI V6 megaTAL、WAS I-OnuI V12 megaTAL、WAS I-OnuI V18 megaTAL、WAS I-OnuI V35 megaTAL、WAS I-OnuI V37 megaTAL、WAS I-OnuI V55 megaTAL)は、WAS標的部位に結合し、切断する能力を示し(部位上のヌクレアーゼ切断活性と一致する細胞染色体状況において増大したmCherry発現を示し)、それらの切断効率は、三つの初代修復エキソヌクレアーゼ2(Trex2;Tx2)の共発現によって有意に増大した。
図3Dおよび3E。
【0409】
図3Fは、リプログラミングされたWAS I-OnuI HEバリアントが、ヒト初代細胞におけるWAS標的部位を切断することを示す。ヒト初代細胞におけるWAS I-OnuI megaTALの切断効率を比較するために、六つの選択したI-OnuI WAS megaTAL mRNAコンストラクト(WAS I-OnuI V6 megaTAL、WAS I-OnuI V12 megaTAL、WAS I-OnuI V18 megaTAL、WAS I-OnuI V35 megaTAL、WAS I-OnuI V37 megaTAL、WAS I-OnuI V55 megaTAL)を、ヒト初代CD4
+T細胞に電気メッキした。WAS megaTAL標的部位でのNHEJ率は、5日目のCRISPR編集推論(ICE)解析(Synthego)によって決定した。提示したデータは、標準誤差を有する3人の健康な対照の男性ドナーからの三つの独立した実験の平均であり、%NHEJ率8~30%を示す。
【0410】
実施例3
WAS megaTALは
ヒト初代CD4
+T細胞において相同組み換え修復(HDR)を誘導する
六つの選択したI-OnuI WAS megaTAL mRNAコンストラクト(WAS I-OnuI V6 megaTAL、WAS I-OnuI V12 megaTAL、WAS I-OnuI V18 megaTAL、WAS I-OnuI V35 megaTAL、WAS I-OnuI V37 megaTAL、WAS I-OnuI V55 megaTAL)をヒト初代CD4
+T細胞に電気メッキして、ドナー鋳型を有するrAAV6を使用してHDRを誘導するそれらの能力を比較した。
図4Aは、実験アプローチを説明する。細胞生存率(フローサイトメトリーフォワードおよび側方散乱ゲーティングに基づく)およびHDR(GFP発現に基づく)のパーセンテージを、mRNA遺伝子導入およびAAV形質導入の2日後および15日後にフローサイトメトリーによって測定した。
図4Bは、GFP発現AAVドナー鋳型の構造を示す。HE切断部位は、ドナー鋳型を切断不能にするために、AAV 5’末端相同アームと3’末端相同アーム(それぞれのアームにおける部分配列)の間に位置する。
図4Cは、2日目および15日目のCD4
+T細胞の生存率を示し、
図4Dは、mRNA遺伝子導入およびAAV形質導入の2日後および15日後でのGFP発現を示す。GFP陰性細胞のNHEJ率を、CRISPR編集推論(ICE)解析(Synthego)によって決定し、それぞれ、megaTAL酵素の下に列挙した。評価したmegaTAL mRNAコンストラクトの中で、WAS I-OnuI V35 megaTALは、初代CD4
+T細胞における最高レベルのNHEJおよびHDRを示した。示したデータは、健康な対照の男性ドナーからの一つの実験である。
【0411】
実施例4
WAS megaTALは、初代ヒトCD34
+細胞においてHDRを誘導する
六つの選択したI-OnuI WAS megaTAL mRNAコンストラクト(WAS I-OnuI V6 megaTAL、WAS I-OnuI V12 megaTAL、WAS I-OnuI V18 megaTAL、WAS I-OnuI V35 megaTAL、WAS I-OnuI V37 megaTAL、WAS I-OnuI V55 megaTAL)をヒト初代CD34
+細胞に電気メッキして、DNAドナー鋳型を有するrAAV6を使用してHDRを誘導するそれらの能力を比較した。rAAV6コンストラクトは、
図4において説明するドナーと同一であった。
図5Aは、一般的な実験アプローチを説明する。細胞を、mRNA1μgを用いて遺伝子導入し、代替量(1~3%培養体積の範囲にある)のrAAV6ドナーを用いて形質導入した。細胞生存率(フローサイトメトリーフォワードおよび側方散乱ゲーティングに基づく)およびHDR(GFP発現に基づく)のパーセンテージを、mRNA遺伝子導入およびAAV形質導入の1日後および5日後にフローサイトメトリーによって測定した。
図5Bは、1日目および5日目のCD34+細胞の生存率を示し、
図5Cは、mRNA遺伝子導入およびAAV形質導入の1日後および5日後でのGFP発現を示す。実施例3で行ったヒトCD4
+ T細胞実験と一致して、WAS I-OnuI V35 megaTALは、初代ヒトCD34
+ HSCにおいてより高いHDR率を誘導することによって、他のバリアントよりも優れた性能を示した。示したデータは、単一のドナーを使用した二つの独立した実験を表すものである。
【0412】
実施例5
WAS I-OnuI V35 megaTALは
初代ヒトCD34
+細胞における高効率HDRを誘導する
実施例3および4の結果に基づき、動員したヒト初代CD34
+造血幹細胞および前駆細胞における追加試験のため、WAS I-OnuI V35 megaTALを選択した。動員したヒト初代CD34
+細胞を、mRNA1μgを用いて遺伝子導入し、2%培養体積のrAAV6ドナーを用いて形質導入した。細胞生存率(フローサイトメトリーフォワードおよび側方散乱ゲーティングに基づく)およびHDR(GFP発現に基づく)のパーセンテージを、それぞれ、
図6Aおよび
図6B中の代表的パネルに示すフローサイトメトリーによって測定した。
図6Cは、1日目および5日目のCD34
+細胞の生存率を示し、
図6Dは、mRNA遺伝子導入およびrAAV形質導入の1日後および5日後でのGFP発現を示す。rAAV形質導入のみ(megaTAL共送達なし)を対照として使用して、非HDR GFPバックグラウンドを測定した。示したデータは、標準誤差を有する健康な対照男性ドナー二名からの四つの独立した実験の平均である。
【0413】
GFP陰性(非HDR)細胞のNHEJ率を、CRISPR編集推論(ICE)解析(Synthego)によって決定し、標準誤差を有する、それぞれ異なる条件下に列挙した。
図6D。同じ試料のHDR率も、液滴デジタルPCR(ddPCR)によって測定し、GFP発現に基づき、フローサイトメーターによって測定したHDR率と比較した。
図6E。二つの方法は、HDRの分子量と発現GFPタンパク質の間の強い相関を示す。示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した試料からのGFPおよびddPCRによって測定したHDRの平均比である。
【0414】
megaTAL mRNAとrAAV6ドナーの両方を用いて処理した試料におけるNHEJ率に対するHDR率の比を計算した。
図6F。これらの所見は、CD34
+細胞におけるWAS I-OnuI V35 megaTALを使用した好ましいHDR:NHEJ比を示す。示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。
【0415】
WAS megaTAL仲介性HDRを通じてWAS遺伝子座内の内因性プロモーターの制御下で機能的なWAS cDNAを発現させるために、
図6Gに示す通り、コドン最適化(配列番号45)または野生型(配列番号46)cDNA配列のいずれかを有するmegaTAL特異的WAS cDNA rAAV6ベクターを構築した。配列番号45は、配列番号46(0.56kbの5’相同アーム)と比較して、わずかに長い5’相同アーム(0.69kb)を含有し、エクソン1における配列とWT cDNA配列との間の完全一致のため、より短い欠失(41bp対172bp)を含有する。このより小さい欠失は、コドン最適化WAS cDNA AAVを使用することより、配列番号45を使用したより高いレベルのHDRを可能にする。両方のAAVドナーは、
図5Aに概説する実験アプローチを使用して、ヒトCD34+HSCにおいて試験している。HDRおよびNHEJ率を、それぞれ、ddPCRおよびICE解析によって決定する。
【0416】
これらのデータは共に、操作したWAS megaTAL試薬を使用してヒトCD34+造血幹細胞および前駆細胞におけるWAS遺伝子座の効率的な編集を示す。
【0417】
実施例6
WAS I-OnuI V35 megaTALは、合わせた標的部位を有するレポーター細胞においてWAS TALENおよびWAS RNPよりも高いHDR:NHEJ比を誘導する
WAS I-OnuI V35 megaTAL仲介性遺伝子編集を、SCRAで開発された他の酵素(WAS TALENおよびWAS RNP)と比較するために、HEK 293T線維芽細胞の細胞株を操作して、蛍光GFPタンパク質をコードする遺伝子の真ん中に、合わせたWAS megaTAL(MT)、WAS TALEN(TA)およびWAS RNP(RNP)標的配列を含有させた。rAAV6形質導入によって送達させる切断GFPドナー鋳型の存在下で、WAS megaTAL mRNA、WAS TALEN mRNAまたはWAS RNP遺伝子導入によって誘導した二本鎖切断(DSB)は、それぞれ、GFP発現およびCRISPR編集推論(ICE)解析(Synthego)によって決定する、HDRまたはNHEJのいずれかによって修復する(
図7A)。
【0418】
図7Bは、酵素遺伝子導入およびAAV形質導入の4日後の細胞の生存率を示す。示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。
図7Cは、処理後の対応する標的部位におけるNHEJ率を示す。rAAVを伴う、または伴わないWAS megaTALで処理した試料のNHEJ率は、Trex2(TX2)タンパク質の共発現によって有意に増大し、WAS megaTALによって誘導したDSBの大部分を、NHEJを引き起こすことなく正確な自己アニーリングによって修復することを示す。示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。
図7Dは、酵素およびrAAV6で処理した細胞のGFP発現を示す。示したデータは、標準誤差を有する三つの独立した実験の平均である。三つの異なる酵素の相対的なHDR:NHEJ比(WAS RNPの比を1と設定する)を、
図7Eに示し、これは、WAS megaTALが、レポーター細胞において評価したのと同じ条件下で、WAS TALENおよびWAS RNPよりも有意に高いHDR:NHEJ比を誘導する可能性を有することを示している。
図7Fは、
図7Cに示す、megaTALとのTrex2と共発現後にNHEJ率の増大と対照的である知見である、megaTALとのTrex2の共発現が、rAAVの存在下でGFP発現によって測定したHDR率を増大させないことを示す。
【0419】
一般的に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲において開示された特定の実施形態に限定するものとして解釈されるべきではないが、このような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に、すべての可能な実施形態を含むものとして解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】