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特表2022-530472酸化剤/燃料タイプのガス状予混合物の火炎燃焼用の焼結ナノ材料で作られたバーナー
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  • 特表-酸化剤/燃料タイプのガス状予混合物の火炎燃焼用の焼結ナノ材料で作られたバーナー 図1
  • 特表-酸化剤/燃料タイプのガス状予混合物の火炎燃焼用の焼結ナノ材料で作られたバーナー 図2
  • 特表-酸化剤/燃料タイプのガス状予混合物の火炎燃焼用の焼結ナノ材料で作られたバーナー 図3
  • 特表-酸化剤/燃料タイプのガス状予混合物の火炎燃焼用の焼結ナノ材料で作られたバーナー 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】酸化剤/燃料タイプのガス状予混合物の火炎燃焼用の焼結ナノ材料で作られたバーナー
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/02 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
F23D14/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563367
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2020050699
(87)【国際公開番号】W WO2020217028
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】1904291
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521464916
【氏名又は名称】アンリ ベグー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンリ ベグー
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AA04
3K017AA05
3K017AB06
3K017AE03
3K017AF03
(57)【要約】
本発明は、酸化剤および燃料を備えるガス状混合物を供給する火炎バーナーに関するもので、前記混合物は大気圧より高い圧力で多孔質壁を通過し、孔の平均断面は10-5m未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤および燃料を備えるガス状混合物によって供給される火炎バーナーであって、前記燃料が水素であり、前記混合物が大気圧より高い圧力で無触媒ナノ粒子焼結体からなる多孔質壁を通って通過し、前記壁の孔の平均断面積が10-5m未満であり、前記多孔質壁の外表面で、前記壁を構成する材料との触媒反応なしに火炎が形成されることを特徴とする火炎バーナー。
【請求項2】
空気が酸化剤として作用し、水素が燃料として作用する、請求項1に記載の火炎バーナー。
【請求項3】
空気が酸化剤として作用し、水素およびメタンが燃料として作用する、請求項1または2のいずれかに記載の火炎バーナー。
【請求項4】
純酸素が酸化剤として作用し、1つまたは複数のガスが燃料として作用する、請求項1に記載の火炎バーナー。
【請求項5】
前記ガス状混合物が大気圧よりも高い圧力で前記多孔質壁を通って通過し、前記孔の平均断面積がナノメートルであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の火炎バーナー。
【請求項6】
前記ガス状混合物が準化学量論的混合ガスであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の火炎バーナー。
【請求項7】
前記ガス状混合物の成分の1つが過剰であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の火炎バーナー。
【請求項8】
ベンチュリ効果型混合器を備えたことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の火炎バーナー。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の火炎バーナーを備えたボイラー。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の火炎バーナーを備えたガス調理器。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれかに記載の火炎バーナーを備えたオーブン。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれかに記載の火炎バーナーを備えたエアヒーター。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の火炎バーナーを備えた、水素を使用する自律型エアヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎発生器、より具体的には、特にボイラーまたはガス調理器またはエアヒーター用のバーナーの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現代において、地球温暖化を引き起こすCO2汚染、ディーゼルエンジンから発生する「粒子」、人体への毒性の高い窒素酸化物NOxなど、化石燃料による汚染に人々は気づき始めている。
【0003】
化石燃料の使用を制限するために、いわゆる「グリーン」エネルギーが開発されている。これらは、例えば、風力エネルギーまたは太陽光発電パネルから得られる太陽エネルギーを含む。
【0004】
このタイプのエネルギー源がもたらす問題は、気象条件に依存するための不規則な性質である。これにより、昼夜を問わず、ある日から別の日、ある週から別の週、ある季節から別の季節にエネルギーを再分配できるようにするために、これらのグリーンエネルギーからの電子を貯蔵する必要が生じた。
【0005】
このエネルギーは貯蔵される:
-直接、「二次電池」、つまり電気エネルギーを蓄積し、必要に応じて再分配できる充電式電池にエネルギーを蓄えることによって貯蔵される。これらの二次電池の主な欠点は、二次電池はリチウムなどの希少金属を含んでなり、これらの金属は、地球上に限られた量しか存在せず、抽出中に土壌汚染を引き起こすため、その組成にある。
【0006】
-または間接的に、水分子の電気分解によって水素を生成するためにエネルギーを使用することによって貯蔵される。この水素は圧力下で貯蔵され、必要に応じて再利用され、使用時に水分子のみを形成する。
【0007】
したがって、水素の形でエネルギーを貯蔵することは、需要に応じてエネルギーを供給できるようにするための将来の環境保護的で持続可能な解決策である。
【0008】
水素に蓄えられたエネルギーを使用するには、次の2つの方法がある。
【0009】
-燃料電池を使用して電気エネルギーを再生するか、
-または、水素を燃焼させ、その過程で得られたカロリーを使用する。
【0010】
燃料電池は、現在多くの技術分野で好まれている方法だが、限られた高価な資源である白金を少なからず含むという大きな欠点を有する。
【0011】
また、カロリーの生成に関しては、水素の燃焼が99%の効率を有するので最良の選択肢であるのに対し、燃料電池は電気を生成するための50%の効率を有し、燃料電池は約50%の効率、すなわち全体のエネルギー効率がわずか25%を有する加熱手段を供給するために使用されるであろうことを留意すべきである。このように、これらの利点は、水素の燃焼を可能にするバーナーを開発することへの関心を高める。
【0012】
この目的のために、本発明は、火炎バーナーの分野に関し、この火炎は、触媒がない状態で均一混合物の燃焼から生じる予混合火炎を生成する、酸化剤と燃料との酸化還元反応によって得られる。
【0013】
この種のバーナーは、触媒燃焼の原理に基づく触媒バーナーとは根本的に異なる。触媒燃焼は化学反応であり、炎の存在を特徴とする従来の燃焼とは異なる。主な違いは、燃焼プロセスを維持するために高温の代わりに触媒を使用することである。
【0014】
本発明が関係する従来の燃焼では、燃料は、炎を使用して点火することにより、高温で酸素の存在下で燃焼する。プロセスが開始されると、燃焼は、十分な量の燃料と酸素が供給され、および温度が高いままである限り継続する。
【0015】
触媒燃焼でも同じ化学反応が起こるが、燃焼プロセス、つまり無炎燃焼プロセスを維持するのは触媒、主に白金である。追加的に、触媒の存在は、燃焼を維持するために従来の燃焼のように高い温度を必要としない。
【0016】
先行技術
米国特許5810577号は先行技術から知られており、2つの一連のパイプを備える触媒バーナーについて説明している。
-水素および/または炭化水素を含む少なくとも1つの燃料ガス供給パイプ。
-酸素や空気などの燃焼ガスの供給を可能にする少なくとも1つのパイプ。
【0017】
このバーナーは2つの燃焼ステージを有し、第2の燃焼ステージは、第1の段階を出るガス混合物が通過するモノリシックバーナー(monolithic burner)、およびバーナーと連絡する熱交換器である。第1の燃焼ステージは、燃料ガスを含むチャンバーが、燃料ガスを透過する触媒層によって燃焼ガスを含むチャンバーから分離される拡散バーナーである。バーナーの構造は、触媒作用のある非常に多孔質の材料でできており、気孔率は50%を超え、細孔径は0.001から100μmである。層の厚さは0.05から10mmの間である。燃料ガスはチャンバーに供給され、燃焼ガスはチャンバーに供給される。
【0018】
これは触媒ヘッドであって火炎バーナーではなく、壊れやすく複雑であり、その構成要素の1つが経年劣化したり、2つのステージの相対的な位置が不適応だったりすると、パフォーマンスが急速に低下する。
【0019】
米国特許4889481号も知られており、燃料および酸化性ガスの混合物を受け入れるための入口経路を備える表面燃焼放射熱デバイスに関する。バーナー本体は、供給経路に面する入口側と放射面を画定する出口側を有する。この触媒体は、入口側に隣接する多孔質セラミック材料の第1の層と、および前記放射面を画定する出口側に隣接する多孔質セラミック材料の第2の層とを備える。多孔質セラミック材料の第1の層は、少なくとも約0.01インチの厚さを有し、平均孔径が0.001ミリメートルから2.5ミリメートルの範囲である微細に相互接続された多孔質構造を有する。
【0020】
多孔質セラミック材料の第2の層は、少なくとも1.3ミリメートルの厚さ、および1.3から10ミリメートルの範囲の平均直径である粗い相互接続された多孔質構造を有する。前記第1の多孔質層の少なくとも外面および前記第2の多孔質層の実質的にすべての表面は、完全に緻密なセラミックコーティングと共に提供される。
【0021】
この特許は、本体の温度が高いほど波長が短くなることを指定しており、赤外線を放射してNOxを生成するために、セラミックを1400℃以上にすることを提案する。これは、火炎バーナーを含む説明とは関係のない説明である。
【0022】
米国特許2003143151号は、液体炭化水素から炭素ベースのナノ材料を合成するための、バーナーではなく、反応器を説明している。反応器は、酸素ガスおよび炭化水素燃料ガスの導入を可能にし、前記混合ガスから火炎を生成することを可能するような、1つまたは複数の入口と、液体炭化水素の原料(feedstock)の液滴を火炎に導入することを可能にする液滴放出デバイスと、およびこの燃焼システムで生成されたカーボンナノ材料を含む凝縮可能な生成物を収集することを意図される収集デバイスを備える。この燃焼システムは、火炎の下流に位置するオプションの反応ゾーンを含み得る。そのような反応ゾーンが存在する場合、炭化水素原料を火炎、反応ゾーン、またはその両方に導入することができる。
【0023】
欧州特許155082号も知られており、欧州特許1550826が説明する、光を放出し、サブマイクロメートルまたはナノメートルの寸法を有する一連の空洞を画定する構造を有する燃焼デバイスであって、触媒燃焼のプロセスが含まれ、前記キャビティの寸法および/またはそれらの相互の距離は、構造によって第1の波長を有する電磁波の放出および伝播を生じるように選択される、燃焼デバイスについてのデバイスについて説明する。それは火炎バーナーではなく、むしろ触媒燃焼システムである。
【0024】
フランス特許2944336は、炎の上流にあるデバイスについて説明している。この装置は、ナノ材料の端部での予混合物の火炎による燃焼を説明するのではなく、ビーズまたは多孔質材料のベッドが、ガスの流れの方向で、フレームアレスターの上流にあり、そのフレームアレスターは、ガスの流れの方向で、前記消炎器のかなり先に位置する火炎の上流にあることを説明している。いずれにせよ、ナノ材料については言及されていない。
【0025】
燃料入口、酸化剤入口、および燃料を酸化剤と混合するための出口。
【0026】
また、米国特許5562440号が知られており、一端に燃料ガスおよび一次空気を受け入れるための入口開口部を有し、他端に出口開口部を有する通路を画定する細長い本体と、ならびに前記両端の間に縮小された面積を有するベンチュリとで形成されるバーナーの別の例を説明する。ベンチュリと出口の間の中間混合部分は、可燃性のガスおよび空気の混合物を提供するために、ガスと空気の混合を可能にする。本デバイスは、火炎を投射(project)することができる中央開口部を有する多孔質体と、および速度低下手段であって、前記混合部に設けられ、前記中央開口部から外側の多孔質体部材における混合物の速度が前記中央開口部に入る速度よりも低くなるように、出口に隣接する混合部の端部における混合物の速度を低下させる速度低下手段とを備え、その結果、前記出口の下流にある前記中央開口部を通って火炎が発火し、前記開口部の下流にある前記多孔質体の表面が放熱することができる。このバーナーは一酸化炭素を生成するため、水素を燃焼させるのではなく、炭素燃料を燃焼させることを意図される。
【発明の概要】
【0027】
従来技術のこれらの解決策はすべて、炎の質を完全に制御することを可能にしない複雑で壊れやすいバーナーヘッドに関連する。
【0028】
これらの欠点を改善するために、本発明は、細孔が10ミクロンよりも小さい多孔質壁を備える、空気-水素混合物が直接供給される単純化された火炎バーナーを提供する。
【0029】
その革新的な設計のおかげで、本発明によるバーナーは、安価であり、汚染をほとんど生成せず、その製造のために限られた資源を必要としない。バーナーはまた、任意のタイプの酸化剤/燃料混合物で、あらゆる比率で使用することもでき、さらに、フラッシュバックを防ぎながら炎をしっかりと保持することをさらに可能にする。これはまた、触媒燃焼システムの欠点、特に、バーナーの耐用年数を短縮する、触媒の消費を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1および図2は、本発明による酸化ケイ素ナノ粒子を含んでなる焼結材料で作られたバーナーを図示する。
【0031】
図3および図4は、バーナーを含んでなる本発明によるエアヒーターを示す。
図1図1は、バーナーの正面断面図である。
図2図2は、バーナーの正面図である。
図3図3は、本発明によるエアヒーターの変形の正面図である。
図4図4は、本発明による別のエアヒーターの変形の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1の目的は、酸化剤および燃料を備えるガス状混合物が供給されるバーナーに関するものであり、前記混合物は、大気圧よりも高い圧力で多孔質壁を通過し、前記多孔質壁の孔の平均断面積が10-5メートル未満である。
【0033】
本発明の文脈において、「バーナー」という用語は、それを供給する混合物の火炎によって燃焼を実行することができるデバイスを意味すると理解される。火炎による前記燃焼は、多孔質壁で起こる。
【0034】
本発明の文脈において、「酸化剤および燃料を備えるガス状混合物」という用語は、バーナーの出口の多孔質壁に混合して到着する酸化剤/燃料の組み合わせを意味する。実際、本発明によるバーナーは、予混合物から得られた水素の燃焼から生じる様々な技術的問題を解決するように設計されているが、少なくとも1つの酸化剤および燃料を備えるすべてのタイプのガス混合物と共に使用することができる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、「酸化剤および燃料を備えるガス状混合物」は、空気および水素を備える混合物である。空気中の酸素は酸化剤として機能し、水素は燃料として機能する。
【0036】
触媒を使用し、したがって触媒を損なわないように非常に高純度の水素を必要とする従来技術のバーナーとは異なり、本発明によるバーナーは、任意の品質の水素と共に使用することができる。
【0037】
本発明の代替の実施形態では、「酸化剤および燃料を備えるガス状混合物」は、空気、水素、およびメタンを備える混合物である。空気中の酸素は酸化剤として機能し、水素とメタンは燃料として機能する。
【0038】
別の代替の実施形態では、「酸化剤および燃料を備えるガス状混合物」は、純粋な酸素および1つまたは複数の燃料を備える混合物である。
【0039】
本発明の特定の実施形態では、混合物は化学量論的混合物である。本発明の文脈において、「化学量論的混合物」という用語は、すべての試薬の完全な消費を可能にするバランスの取れた混合物を意味する。
【0040】
したがって、空気/水素混合物の好ましいケースでは、化学量論的混合物は次の反応を起こす:
2+1/2O2=H2
すなわち、1モルのO2に対して、2モルのH2が追加される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、混合物は「準化学量論的」混合物である。本特許の文脈において、「準化学量論的」とは、酸化剤/燃料の化学量論比の±15%を含む混合物を意味する。
【0042】
したがって、空気/水素混合物の好ましい場合には、1モルのO2に対して、1.7から2.3モルのH2を加えることができることが理解される。
【0043】
本発明の特定の実施形態では、バーナーに供給するために使用される混合物は、その成分の1つを過剰に備える。
【0044】
より具体的な実施形態では、バーナーに供給するために使用される混合物は、過剰の燃料を備える。この種の実施形態は、例えば、過剰の燃料が水素である場合に還元媒体を得ることを可能にする。これは、冶金学の分野で特に有用である。
【0045】
より具体的な代替の実施形態では、バーナーに供給するために使用される混合物は、過剰の酸化剤を備える。この種の実施形態は、特に、燃焼温度を下げることを可能にする。
【0046】
さらにより具体的な実施形態では、バーナーに供給するために使用される混合物は、大過剰の空気および水素を備える。この種の実施形態は、排気筒(chimney)なしで直接加熱するために熱風を生成することを可能にする。
【0047】
より具体的な代替の実施形態では、バーナーに供給するために使用される混合物は、過剰な酸化剤でも燃料でもないガスを備える。この種の実施形態は、特に、燃焼時のガス状流体の温度を画定するために、冷却剤機能を有するガスを追加することを可能にする。例として、純粋な酸素/水素の化学量論的混合物にアルゴンを加えることが可能である。次に、カロリーはアルゴンの流れに委ねられ、O2とH2が混合され、燃焼によりH2Oになる。したがって、アルゴンの質量流量での燃焼によって生成されるカロリーのバランスは、アルゴン流体のデルタT℃によって特徴付けられる。
【0048】
その革新的な構造のおかげで、本発明によるバーナーは、いわゆる「部分的」混合物と共に作動することができる。したがって、代替の実施形態では、本発明による混合物は、空気などの酸化剤と、および水素を備えるガス状燃料の混合物とから構成される。混合物は、例えば、水素およびメタンの混合物であり得る。
【0049】
この代替実施形態の好ましいバージョンでは、混合物は、水素空気と別の燃料との混合物であり、混合物は、全体として、化学量論的比率内にある。
【0050】
さらにより好ましいバージョンでは、前記混合物は、上述のような「準化学量論的」混合物である。
【0051】
本発明による酸化剤/燃料混合物は、当業者に知られている同様のガスミキサーを使用して得ることができる。
【0052】
本発明の特定の実施形態では、酸化剤/燃料混合物は、ベンチュリ型ミキサーを使用して生成される。
【0053】
この種のミキサーは、その原理が当業者に知られているものであり、メインストリームに存在する酸化剤、および二次ストリームに存在する燃料の圧力を調整することによって、ユーザーが望む酸化剤/燃料混合物を得ることを可能にする。
【0054】
本発明の文脈において、「多孔質壁」という用語は、細孔の平均断面が10-5m未満である壁を意味すると理解される。この壁は「ミクロポーラス(microporous)」壁と呼ばれる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、壁の細孔の平均断面積は、10-6m未満、より好ましくは10-7m未満、さらにより好ましくは10-8m未満である。これらの好ましい実施形態のそれぞれは、本発明による壁を参照する場合に独立して適用される。
【0056】
したがって、本発明のさらにより好ましい実施形態は、上記のような混合物が供給されるバーナーを含んでなり、ガス混合物は、細孔の平均断面積が10-8m未満である壁を通って通過する。この壁は「ナノポーラス(nanoporous)」壁と呼ばれる。
【0057】
本発明による壁は、特に水素などの高い火炎伝播速度を有する燃料を使用する場合に、予混合物を使用するバーナーで起こり得るフラッシュバックの問題を解決することを可能にする。
【0058】
「フラッシュバック」という用語は、予混合火炎が安定せず、バーナーの上部で見かけの静的平衡の位置を離れ、新鮮なガス流を上ってバーナーに入る現象を意味すると理解される。
【0059】
本発明による多孔質壁は、実際には、「流れのマイクロ断面」、またはナノポーラス壁の場合は「流れのナノ断面」を形成し、材料の火炎燃焼を防止することによってバーナーのフラッシュバックを防止することを可能にする。
【0060】
フラッシュバックの場合に炎を止めるためにアンチフラッシュバック材料を使用することが従来技術から知られている。しかしながら、特に水素の燃焼の文脈において、フラッシュバックは、火炎の熱と接触したときに火炎を止める材料が損傷することになるようなものであることが留意されるべきである。したがって、本発明による多孔質壁は、使用中に損傷し得る火炎を止めるための材料を追加する必要なしに、フラッシュバックを防止することを可能にする。
【0061】
この種の壁はまた、バーナーに炎を維持することを可能にする。実際、材料の多孔質構造により、多数の通路が提供され、火炎の伝播速度よりも遅いバーナーの出口での予混合物の流速を可能にし、したがって火炎はバーナーに「保持」されたままになる。
【0062】
これらの2つの機能、つまりフラッシュバックがなく、炎のバーナーへの単純な保持は、化学量論的比率の混合物、またはその構成要素の1つが過剰に含まれる化学量論的比率の混合物でも、酸化剤および燃料を備えるすべてのタイプのガス混合物でバーナーを使用することを可能にする。
【0063】
温度が1400℃を超えたときの窒素酸化物を生成する反応は次のとおりです。
N2(空気)+O2→2NO
【0064】
本発明による多孔質壁は、有利には、燃焼温度を窒素酸化物の形成の閾値未満に維持することを可能にし、したがって、本発明によるバーナーによるNOxの生成を大幅に制限する。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、前記ミクロポーラス壁は、1つまたは複数の材料を含んでなり、前記材料を焼結することによって微細孔が形成される。本発明の理解を助けるために、「材料」という用語は、1つまたは複数の材料を同時にグループ化する。
【0066】
本発明の文脈において、「焼結」とは、エネルギー(熱、機械、レーザーなど)の投入によりシステムのエネルギーを最小化しながら、少なくとも1つの構成要素が溶融することなく、材料(粉末など)を固めることを意味すると理解される。
【0067】
焼結を使用して壁の細孔を形成することにより、非常に低い製造コストで10-5メートル以下の直径を有する細孔を製造することを可能にする。
【0068】
好ましい実施形態では、焼結される材料は、酸化ケイ素および酸化アルミニウムから選択される。
【0069】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ミクロポーラス材料は、焼結構造が得られるまで酸化ケイ素または酸化アルミニウムの温度を上げることにより得られる。このプロセスでは、温度が焼結される材料のガラス化温度よりも低いままであることが不可欠である。
【0070】
最も好ましい実施形態では、ミクロポーラス材料は、酸化ケイ素の温度を900から1000℃の間の温度に上げることによって得られる。
【0071】
本発明による第2の目的は、本発明による1つまたは複数のバーナーを備えるボイラーに関する。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、本発明によるボイラーは、空気/水素混合物と共に供給される。この種のボイラーには、水素の燃焼後に水だけを生成するという利点を有する。したがって、空気/水素混合物によって供給されるそのようなボイラーは、CO2を生成しないであろう。
【0073】
特定の実施形態では、本発明によるボイラーは、推進される熱風を生成するように、過剰の空気と水素の混合物と共に供給される。この種のボイラーは、水素の使用によりCO2を生成せず、余剰空気の使用によりNOxを生成しないという利点を有し、混合物の燃焼温度をNOxが発生する温度である1400℃以下に厳しく抑えることを可能にする。
【0074】
本発明による第3の目的は、本発明による1つまたは複数のバーナーを備えるガス調理器に関する。
【0075】
本発明の具体的な実施形態では、本発明によるガス調理器には、空気/水素の混合物が供給される。この種のガス調理器には、水素の燃焼後に水だけを生成するという利点を有する。したがって、空気/水素混合物によって供給されるそのようなボイラーは、CO2を生成しないであろう。
【0076】
本発明による第4の目的は、本発明による1つまたは複数のバーナーを備えるオーブンに関する。
【0077】
本発明の具体的な実施形態では、本発明によるオーブンには、空気/水素の混合物が供給される。この種のオーブンには、水素の燃焼後に水だけを生成するという利点を有する。したがって、空気/水素混合物によって供給されるそのようなボイラーは、CO2を生成しないであろう。
【0078】
例示的な実施形態
図1および図2は、316Lステンレス鋼のミクロン粉末から焼結されたリング(2)上に堆積された酸化ケイ素ナノ粒子(3)を含んでなる焼結材料で作られたバーナーを示す。
【0079】
これは堅牢で強固なミクロポーラス円筒部品を生成する。次いで、接続フランジ(5)およびプラグ(6)はリング(2)に接着される。相対圧力50mbarの空気と水素の化学量論的混合物は、ミクロポーラス円筒部品と同軸のチューブ(1)を通ってバーナー内に注入され、円筒チャンバー(7)に注入され、円筒チャンバーのベースは混合物を供給するラインと連絡しており、円筒チャンバーのケーシングはミクロポーラスである。炎は、リングを構成する材料と触媒反応することなく、リングの外面に形成される。
【0080】
ミクロポーラスまたはナノポーラスの壁を有するこの円筒形の部品は、空気および水素の化学量論的混合物を送達するラインによって直接供給される。
【0081】
(4)の火炎の追加は、空気および水素の化学量論的混合物の火炎燃焼の安定性と、バーナーの接続フランジ(5)およびプラグ(6)の400℃以下の温度の安定性を示す。
【0082】
したがって、バーナーは、2つの同軸および隣接する焼結円筒形リングを含んでなる管状ヘッドの形態であり、その円筒形内部チャンバーは、酸化剤および燃料を備えるガス状混合物を送達する同軸供給管によって供給される。2つの同軸リングは、マイクロポーラスまたはナノポーラスの壁を形成する。
【0083】
エアヒーターアプリケーション
本発明によるバーナーは、特にエアヒーターの製造に適している。
【0084】
エアヒーターは、本質的に、熱交換器が横切って延びる膨張チャンバーを通して空気を吹き込むモーターファンユニット(14)を備える。これらのエアヒーターは、ワークショップなどの大規模な施設を暖房することを意図され、通常は水平に配置される。言い換えれば、これらのエアヒーターは出口で実質的に水平な熱風流を生成し、この熱風は自然に上昇する傾向があるため、結果として部屋の空気層が層状になり、部屋の天井と床の間の温度差が非常に大きくなる。このような温度差は、15-30℃の範囲であることができる。
【0085】
エアヒーターは、室内で所与の快適な温度を達成するために、失われる熱量以上の熱量を提供する必要がある。この熱損失には、つまり壁による静的損失と、および内気の補充による動的損失の2種類がある。熱風の上昇による成層化のため、屋根からの熱の損失は非常に重要である。
【0086】
図3は、例えば、前述の図1および2を参照して説明したバーナー(1)を含んでなる本発明によるエアヒーターを示す。本発明によるこのバーナー(11)は、交換器チューブ(12)内に配置される。
【0087】
相対圧力50mbarの過剰な空気と水素の混合物(13)がバーナー(11)に注入される。扇風機(14)は、推進された空気の温度を上げるために、空気を交換器チューブ(12)に向かって推進する。このエアヒーターは、燃焼したガスを排出するための排気筒を備えておらず、二酸化炭素CO2と二酸化窒素NOxをゼロにすることで、部屋を暖房するための100%の熱効率を有する。
【0088】
図4は、図3に記載され、電力網などの他のエネルギー源に接続されることなく水素タンク(16)によって供給される同様のエアヒーターを示す。電気エネルギー(18)は水素燃料電池(17)によって供給され、水素燃料電池(17)自体は水素タンク(16)によって供給される。電気エネルギー(18)は、50mbarの空気を空気/水素ミキサー(20)に供給するための空気過給機に電力を供給する。空気/水素ミキサー(20)は、水素タンク(16)によっても供給される。水素タンク(16)によって供給されるエアヒーターは、水素(16)以外の外部エネルギー源がなく、100%自律的である。
【0089】
この100%自己完結型のエアヒーターは、ブドウの木(vines)や任意の他の霜に弱い作物の春の霜による損傷を防止するために使用することができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】