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特表2022-530475遺伝子操作された微生物及びアルデヒド脱水素酵素活性の改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】遺伝子操作された微生物及びアルデヒド脱水素酵素活性の改善方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/53 20060101AFI20220622BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220622BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220622BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220622BHJP
   C12P 13/00 20060101ALI20220622BHJP
   C12P 7/24 20060101ALN20220622BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N1/19 ZNA
C12N1/21
C12N1/15
C12P13/00
C12P7/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563375
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020029793
(87)【国際公開番号】W WO2020219863
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】62/837,888
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/860,123
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/860,160
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521464961
【氏名又は名称】ジェノマティカ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】アミット エム.シャー
(72)【発明者】
【氏名】ハリッシュ ナガラジャン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC24
4B064AE01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD09
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB14
4B065CA08
4B065CA10
4B065CA16
4B065CA60
(57)【要約】
ヘキサメチレンジアミン、カプロン酸、又はカプロラクタムの生合成を増強又は改善する生合成法及び遺伝子操作された微生物が開示される。遺伝子操作された微生物は、選択されたアルデヒド脱水素酵素活性を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含む非自然発生の微生物であって、前記アルデヒド脱水素酵素は、基質としてのサクシニルCoA、アセチルCoA、又はサクシニルCoAとアセチルCoAの両方と比較して、基質としてのアジピルCoAに対してより大きな触媒効率を有し、及び/又は前記アルデヒド脱水素酵素は、サクシニルCoA、アセチルCoA、又はサクシニルCoAとアセチルCoA基質の両方と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな代謝回転数を有する、上記微生物。
【請求項2】
前記アルデヒド脱水素酵素が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3のアミノ酸配列を含まない、請求項1に記載の非自然発生の微生物。
【請求項3】
前記アルデヒド脱水素酵素が、サクシニルCoA基質と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな触媒効率を有する、請求項2に記載の非自然発生の微生物。
【請求項4】
アジピルCoA基質に対する前記アルデヒド脱水素酵素の触媒効率が、サクシニルCoA基質に対する特異性より少なくとも2倍高い、請求項1~3のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項5】
前記アルデヒド脱水素酵素が、サクシニルCoA基質と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな代謝回転数を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項6】
前記アルデヒド脱水素酵素が、アセチルCoA基質と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな触媒効率を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項7】
アジピルCoA基質に対する前記アルデヒド脱水素酵素の触媒効率が、アセチルCoA基質に対する触媒効率より少なくとも5倍高い、請求項1~6のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項8】
前記アルデヒド脱水素酵素が、アセチルCoA基質と比較して、アジピルCoA基質でより大きな代謝回転数を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項9】
前記非自然発生の微生物が、アルデヒド脱水素酵素をコードする外因性核酸を含まないことを除いて前記非自然発生の微生物と実質的に同一の対照微生物よりも多くのアジピルCoAをアジピン酸セミアルデヒドに変換する、請求項1~8のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。。
【請求項10】
前記アルデヒド脱水素酵素が、配列番号:4、7、11、15、17、19、24、25、27、28、31~33、36、38、40~42、44、45、47、53、58~60、63、65~67、74、75、77、80、82、84、86~88、90、91、94、95、97、100、101、103、107、109、111、112、117、134、135、137、145、146、148~150、152、157~159、164~167、176、187、及び188のいずれか1つの少なくとも25の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項11】
前記アルデヒド脱水素酵素が、配列番号7、28、60、又は107のいずれか1つの少なくとも25の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項12】
前記アルデヒド脱水素酵素が、配列番号7、28、60、又は107のアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項13】
前記アルデヒド脱水素酵素がNADHを補助因子として使用する、請求項1~12のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項14】
前記アルデヒド脱水素酵素が、配列番号53、77、82、94、及び152のいずれか1つの少なくとも25の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項15】
前記アルデヒド脱水素酵素が、NADH、NADPH、又はその両方を補助因子として使用する、請求項14に記載の非自然発生の微生物。
【請求項16】
アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸が、前記微生物に対して異種である、請求項1~15のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項17】
前記非自然発生の微生物が6-アミノカプロン酸経路を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項18】
前記6-アミノカプロン酸経路が、(i)アミノ基転移酵素、(ii)6-アミノカプロン酸脱水素酵素、又は(iii)アミノ基転移酵素と6-アミノカプロン酸脱水素酵素の両方を含む、請求項17に記載の非自然発生の微生物。
【請求項19】
前記微生物が、1種以上の6-アミノカプロン酸経路酵素をコードする1種以上の追加の外因性核酸をさらに含む、請求項17~18のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項20】
1種以上の前記6-アミノカプロン酸経路酵素をコードする外因性核酸が、前記微生物に対して異種である、請求項19に記載の非自然発生の微生物。
【請求項21】
前記非自然発生の微生物がヘキサメチレンジアミン経路を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項22】
前記ヘキサメチレンジアミン経路が、(i)6-アミノアカプロイルCoA転移酵素、(ii)6-アミノカプロイルCoA合成酵素、(iii)6-アミノカプロイルCoA還元酵素、(iv)ヘキサメチレンジアミンアミノ基転移酵素、(v)ヘキサメチレンジアミン脱水素酵素、又は(vi)酵素(i)~(v)の1つ以上の組み合わせを含む、請求項21に記載の非自然発生の微生物。
【請求項23】
前記微生物が、1種以上のヘキサメチレンジアミン経路酵素をコードする1種以上の追加の外因性核酸をさらに含む、請求項21~22のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項24】
1種以上のヘキサメチレンジアミン経路酵素をコードする前記外因性核酸が、前記微生物に対して異種である、請求項23に記載の非自然発生の微生物。
【請求項25】
前記非自然発生の微生物がカプロラクタム経路を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項26】
前記カプロラクタム経路がアミノ加水分解酵素を含む、請求項25に記載の非自然発生の微生物。
【請求項27】
前記微生物が、アミノ加水分解酵素をコードする1種以上の追加の外因性核酸をさらに含む、請求項25~26のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項28】
アミノ加水分解酵素をコードする前記外因性核酸が前記微生物に対して異種である、請求項27に記載の非自然発生の微生物。
【請求項29】
前記アルデヒド脱水素酵素が原核生物種に由来する、請求項1~28のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項30】
前記アルデヒド脱水素酵素が、Acidaminococcus、Collinsella、Peptostreptococcaceae、又はRomboustsiaに由来する、請求項29に記載の非自然発生の微生物。
【請求項31】
前記非自然発生の微生物が、Acinetobacter, Actinobacillus, Anaerobiospirillum, Aspergillus, Bacillus, Clostridium, Corynebacterium, Escherichia, Gluconobacter, Klebsiella, Kluyveromyces, Lactococcus, Lactobacillus, Mannheimia, Pichia, Pseudomonas, Rhizobium, Rhizopus, Saccharomyces, Schizosaccharomyces, Streptomyces, 及び Zymomonasの種を含む、請求項1~30のいずれかに記載の非自然発生の微生物。
【請求項32】
前記非自然発生の微生物が、それぞれ6-アミノカプロン酸経路、ヘキサメチレンジアミン経路、カプロラクタム経路、1,6-ヘキサンジオール経路、カプロラクトン経路、又は2つ以上の経路の組み合わせの酵素をコードする2、3、4、5、6、又は7つの外因性核酸を含む、請求項1~31のいずれかに記載の非自然発生の微生物。
【請求項33】
前記アルデヒド脱水素酵素が、さらに6-アミノカプロイルCoAと反応して6-アミノカプロン酸セミアルデヒドを生成する、請求項1~31のいずれかに記載の非自然発生の微生物。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物を、アジピン酸セミアルデヒドを生成するために充分な時間及び条件下で培養することを含む、アジピン酸セミアルデヒドを生成する方法。
【請求項35】
請求項1~33のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物を、6-アミノカプロン酸(6ACA)を生成するために充分な時間及び条件下で培養することを含む、6ACAを生成する方法。
【請求項36】
前記微生物、発酵ブロス、又はその両方から6ACAを回収することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1~33のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物を、ヘキサメチレンジアミンを生成するために充分な時間及び条件下で培養することを含む、ヘキサメチレンジアミンを生成する方法。
【請求項38】
前記微生物、発酵ブロス、又はその両方からヘキサメチレンジアミンを回収することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記非自然発生の微生物が、それぞれヘキサメチレンジアミン経路酵素をコードする2、3、4、5、6、又は7つの外因性核酸配列を含む、請求項34~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
請求項1~33のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物を、カプロラクトン、1,6-ヘキサンジオール、又はカプロラクタムを生成するために充分な時間及び条件下で培養することを含む、カプロラクタムを生成する方法。
【請求項41】
前記非自然発生の微生物、発酵ブロス、又はその両方からカプロラクタムを回収することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記非自然発生の微生物が、それぞれカプロラクタム経路酵素をコードする2、3、4、5、6、又は7つの外因性核酸を含む、請求項34~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記培養が糖を含む発酵ブロス中で行われる、請求項34~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記非自然発生の微生物が、Acinetobacter、Actinobacillus、Anaerobiospirillum、Aspergillus、Bacillus、Clostridium、Corynebacterium、Escherichia、Gluconobacter、Klebsiella、Kluyveromyces、Lactococcus、Lactobacillus、Mannheimia、Pichia、Pseudomonas、Rhizobium、Rhizopus、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Streptomyces、及びZymomonasの種を含む、請求項34~43 のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
請求項34~44のいずれか1項に記載の方法から合成された、生物由来の6-アミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、又はカプロラクタム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2019年4月24日に出願された米国仮特許出願第62/837,888号、2019年6月11日に出願された第62/860,123号、及び2019年6月11日に出願された第62/860,160号の利益を主張し、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
本出願は、「GNO0099WO配列表2.txt」と題された配列表を含み、これは2020年4月23日に作成され、サイズが319キロバイトである。この配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ナイロンは、ジアミンとジカルボン酸との縮合重合又はラクタムの縮合重合によって合成することができるポリアミドである。ナイロン6,6はヘキサメチレンジアミン(HMD)とアジピン酸の反応によって生成され、ナイロン6はカプロラクタムの開環重合によって生成される。従って、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、及びカプロラクタムはナイロン生成の重要な中間体である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナイロン中間体のいくつかを生成するように遺伝子操作されている微生物がある。しかし、遺伝子操作された微生物は、経路の中間体や最終生成物に対する望ましくない酵素活性の結果として、望ましくない副産物を生成する可能性がある。従って、そのような副産物及び不純物は、化合物を生合成するコスト及び複雑さを増加させ、所望の生成物の効率又は収率を低下させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要約)
本明細書において、6-アミノカプロン酸経路、カプロラクタム経路、ヘキサメチレンジアミン経路、カプロラクトン経路、1,6-ヘキサキサンジオール経路、又はこれらの経路の1つ以上の組み合わせを有する非自然発生の微生物が提供される。これらの微生物は、アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含む。アルデヒド脱水素酵素は、サクシニルCoA、アセチルCoA、又はサクシニルCoAとアセチルCoAの両方の基質と比較して、アジピルCoA基質に対して、より大きな代謝回転数、より大きな触媒効率、又はこれらの組み合わせを有する。この非自然発生の微生物は、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンの各生成物を充分な量で生成するために必要な酵素をコードする、追加の外因性核酸をさらに含み得る。場合によっては、これらの外因性核酸の1つ以上は、微生物に対して異種である可能性がある。
【0006】
6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンを生成するための方法も開示される。この方法は、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、及び/又はヘキサメチレンジアミンを生成する非自然発生の微生物を培養することを含むことができ、ここで微生物は、アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を発現する。この方法は、非自然発生の微生物を、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンを生成する条件下で充分な時間、培養することを含む。
【0007】
1つの態様において、アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含む非自然発生の微生物が提供され、ここで、前記アルデヒド脱水素酵素は、基質としてのサクシニルCoA、アセチルCoA、又はサクシニルCoAとアセチルCoAの両方と比較して、基質としてのアジピルCoAに対してより大きな触媒効率を有し、及び/又は前記アルデヒド脱水素酵素は、サクシニルCoA、アセチルCoA、又はサクシニルCoAとアセチルCoA基質の両方と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな代謝回転数を有する。
【0008】
1つの態様において、上記態様及び実施態様のいずれか1つの非自然発生の微生物を、アジピン酸セミアルデヒドを生成するのに充分な時間及び条件下で培養することを含む、アジピン酸セミアルデヒドを生成する方法が提供される。
【0009】
1つの態様において、上記態様及び実施態様のいずれか1つの非自然発生の微生物を、6-アミノカプロン酸(6ACA)を生成するのに充分な時間及び条件下で培養することを含む、6ACAを生成する方法が提供される。いくつかの実施態様において、この方法は、微生物、発酵ブロス、又はその両方から6ACAを回収することをさらに含む。
【0010】
1つの態様において、上記態様及び実施態様のいずれか1つの非自然発生の微生物を、ヘキサメチレンジアミンを生成するのに充分な時間及び条件下で培養することを含む、ヘキサメチレンジアミンを生成する方法が提供される。いくつかの実施態様において、この方法は、微生物、発酵ブロス、又はその両方からヘキサメチレンジアミンを回収することをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記非自然発生の微生物は、それぞれがヘキサメチレンジアミン経路酵素をコードする、2、3、4、5、6、又は7つの外因性核酸配列を含む。
【0011】
1つの態様において、上記態様及び実施態様のいずれか1つの非自然発生の微生物を、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンを生成するのに充分な時間及び条件下で培養することを含む、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンを生成する方法が提供される。いくつかの実施態様において、この方法は、微生物、発酵ブロス、又はその両方から、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンを回収することをさらに含む。いくつかの実施態様において、前記非自然発生の微生物は、それぞれが6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミン経路酵素をコードする、2、3、4、5、6、又は7つの外因性核酸配列を含む。
【0012】
1つの態様において、開示された方法を使用して合成された、生物由来の6-アミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミン、又はカプロラクタムが提供される。
【0013】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3のアミノ酸配列を含まない。
【0014】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、配列番号4、7、11、15、17、19、24、25、27、28、31~33、36、38、40~42、44、45、47、53、58~60、63、65~67、74、75、77、80、82、84、86~88、90、91、94、95、97、100、101、103、107、109、111、112、117、134、135、137、145、146、148~150、152、157~159、164~167、176、187、及び188のいずれかの、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、配列番号4、7、11、15、17、19、24、25、27、28、31~33、36、38、40~42、44、45、47、53、58~60、63、65~67、74、75、77、80、82、84、86~88、90、91、94、95、97、100、101、103、107、109、111、112、117、134、135、137、145、146、148~150、152、157~159、164~167、176、187、及び188のいずれかの、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素はNADHを補助因子として使用する。
【0016】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、配列番号7、28、60、及び107のいずれかの、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素は、配列番号7、28、60、及び188のいずれかの、少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸配列と、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素はNADHを補助因子として使用する。
【0017】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、配列番号53、77、82、94、及び152のいずれかの、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素は、NADH、NADPH、又はその両方を補助因子として使用する。
【0018】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、サクシニルCoA基質と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな触媒効率を有する。いくつかの実施態様において、アジピルCoA基質に対するアルデヒド脱水素酵素の触媒効率は、サクシニルCoA基質に対する触媒効率の少なくとも2倍高い。
【0019】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、アセチルCoA基質と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな触媒効率を有する。いくつかの実施態様において、アジピルCoA基質に対するアルデヒド脱水素酵素の触媒効率は、アセチルCoA基質に対する触媒効率の少なくとも5倍高い。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素は、アセチルCoA基質と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな代謝回転数を有する。
【0020】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、6-アミノカプロイルCoAとさらに反応して、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドを生成する。
【0021】
いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含む非自然発生の微生物は、アルデヒド脱水素酵素をコードする外因性核酸を含まないことを除いて非自然発生の微生物と実質的に同一の対照微生物よりも多くのアジピルCoAをアジピン酸セミアルデヒドに変換する。
【0022】
いくつかの実施態様において、アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸は、微生物に対して異種である。
【0023】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、6-アミノカプロン酸経路を含む。いくつかの実施態様において、6-アミノカプロン酸経路は、(i)アミノ基転移酵素、(ii)6-アミノカプロン酸脱水素酵素、又は(iii)アミノ基転移酵素と6-アミノカプロン酸脱水素酵素の両方を含む。いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、1種以上の6-アミノカプロン酸経路酵素をコードする1種以上の追加の外因性核酸をさらに含む。いくつかの実施態様において、1種以上の6-アミノカプロン酸経路酵素をコードする外因性核酸は、微生物に対して異種である。
【0024】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、ヘキサメチレンジアミン経路を含む。いくつかの実施態様において、ヘキサメチレンジアミン経路は、(i)6-アミノカプロイルCoA転移酵素、(ii)6-アミノカプロイルCoA合成酵素、(iii)6-アミノカプロイルCoA還元酵素、(iv)ヘキサメチレンジアミンアミノ基転移酵素、(v)ヘキサメチレンジアミン脱水素酵素、又は(vi)酵素(i)~(v)の1つ以上の組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、微生物は、6-アミノカプロン酸塩を6-アミノカプロン酸セミアルデヒドに変換するカルボン酸還元酵素(CAR)などのヘキサメチレンジアミン経路酵素の1種以上をコードする1種以上の追加の外因性核酸をさらに含む。次に6-アミノカプロン酸セミアルデヒドは、ヘキサメチレンジアミンに変換することができる。いくつかの実施態様において、1つ以上のヘキサメチレンジアミン経路酵素をコードする外因性核酸は、微生物に対して異種である。
【0025】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物はカプロラクタム経路を含む。いくつかの実施態様において、カプロラクタム経路はアミノ加水分解酵素を含む。いくつかの実施態様において、微生物は、アミノ加水分解酵素をコードする1種以上の追加の外因性核酸をさらに含む。いくつかの実施態様において、アミノ加水分解酵素をコードする外因性核酸は、微生物に対して異種である。
【0026】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は1,6-ヘキサンジオール経路を含む。いくつかの実施態様において、1,6-ヘキサンジオール経路は以下の酵素を含む:6ACAから6-アミノカプロイルCoAへの変換を触媒する6-アミノカプロイルCoA転移酵素又は合成酵素;6-アミノカプロイルCoAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒する6-アミノカプロイルCoA還元酵素;6-アミノカプロン酸セミアルデヒドから6-アミノヘキサノールへの変換を触媒する6-アミノカプロン酸セミアルデヒド還元酵素;6ACAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒する6-アミノカプロン酸還元酵素;アジピルCoAからアジピン酸セミアルデヒドへの変換を触媒するアジピルCoA還元酵素;アジピン酸セミアルデヒドから6-ヒドロキシヘキサン酸への変換を触媒するアジピン酸セミアルデヒド還元酵素;6-ヒドロキシヘキサン酸から6-ヒドロキシヘキサノイルCoAへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサノイルCoA転移酵素又は合成酵素;6-ヒドロキシヘキサノイルCoAから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサノイルCoA還元酵素;6-ヒドロキシヘキサナールからHDOへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサナール還元酵素;6-アミノヘキサノールから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-アミノヘキサノールアミノ基転移酵素又は酸化還元酵素;6-ヒドロキシヘキサン酸から6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサン酸還元酵素;ADAからアジピン酸セミアルデヒドへの変換を触媒するアジピン酸還元酵素;及び、アジピルCoAからADAへの変換を触媒するアジピルCoA転移酵素、加水分解酵素、又は合成酵素。
【0027】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、アジピン酸塩又はアジピルCoAからカプロラクトンへの経路を含む。いくつかの実施態様において、アジピン酸塩又はアジピルCoAからカプロラクトンへの経路は、以下の酵素を含む:アジピルCoA還元酵素、アジピン酸セミアルデヒド還元酵素、6-ヒドロキシヘキサノイルCoA転移酵素又は合成酵素、6-ヒドロキシヘキサノイルCoA環化酵素又は自発的環化、アジピン酸還元酵素、アジピルCoA転移酵素、合成酵素、又は加水分解酵素、6-ヒドロキシヘキサン酸環化酵素、6-ヒドロキシヘキサン酸キナーゼ、6-ヒドロキシヘキサノイルリン酸環化酵素又は自発的環化、ホスホトランス-6-ヒドロキシヘキサノイラーゼ。
【0028】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物のアルデヒド脱水素酵素は、原核生物種に由来する。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素は、Acidaminococcus、Collinsella、Peptostreptococcaceae、又はRomboustsiaに由来する。
【0029】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、Acinetobacter, Actinobacillus, Anaerobiospirillum, Aspergillus, Bacillus, Clostridium, Corynebacterium, Escherichia, Gluconobacter, Klebsiella, Kluyveromyces, Lactococcus, Lactobacillus, Mannheimia, Pichia, Pseudomonas, Rhizobium, Rhizopus, Saccharomyces, Schizosaccharomyces, Streptomyces, 及び Zymomonasの種を含む。いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、大腸菌の菌株である。
【0030】
いくつかの実施態様において、培養は、糖を含む発酵ブロス中で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】サクシニルCoA及びアセチルCoAから6-アミノカプロン酸塩、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、カプロラクタムへの例示的な経路を示す。酵素は次のように指定される:A)3-オキソアジピルCoAチオラーゼ、B)3-オキソアジピルCoA還元酵素、C)3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素、D)5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素、E)3-オキソアジピルCoA/アシルCoA転移酵素、F)3-オキソアジピルCoA合成酵素、G)3-オキソアジピルCoA加水分解酵素、H)3-オキソアジピン酸還元酵素、I)3-ヒドロキシアジピン酸塩脱水酵素、J)5-カルボキシ-2-ペンテン酸還元酵素、K)アジピルCoA/アシルCoA転移酵素、L)アジピルCoA合成酵素、M)アジピルCoA加水分解酵素、N)アジピルCoA還元酵素(アルデヒド生成)、O)6-アミノカプロン酸アミノ基転移酵素、P)6-アミノカプロン酸脱水素酵素、Q)6-アミノカプロイルCoA/アシルCoA転移酵素、R)6-アミノカプロイルCoA合成酵素、S)アミド加水分解酵素、T)自発的環化、U)6-アミノカプロイルCoA還元酵素(アルデヒド生成)、V)HMDAアミノ基転移酵素、W)HMDA脱水素酵素、X)アジピン酸還元酵素、Y)アジピン酸キナーゼ、Z)アジピルリン酸還元酵素。
【0032】
図2】サクシニルCoAよりもアジピルCoAで活性を示すアルデヒド脱水素酵素溶解物データのグラフ表示である。
【0033】
図3】アセチルCoA及びサクシニルCoAよりもアジピルCoAに対して高い優先性を有する精製アルデヒド脱水素酵素を示す反応速度データのグラフ表示である。図3Aは、サクシニルCoA、アセチルCo-A、及びアジピルCoA基質に対する、配列番号によって示される様々なアルデヒド脱水素酵素の触媒効率を示す。図3Bは、それらの配列番号で示される様々なアルデヒド脱水素酵素の、アジピルCoA基質対サクシニルCoA基質の触媒効率の比を示す。図3Cは、それらの配列番号で示される様々なアルデヒド脱水素酵素の、アジピルCoA基質対アセチルCoA基質の触媒効率の比を示す。
【0034】
図4】リジンを出発点として使用する6-アミノカプロン酸及びアジピン酸塩の合成のための例示的経路を示す。
【0035】
図5】アジピルCoAを出発点として使用する例示的なカプロラクタム合成経路を示す。
【0036】
図6】ピルビン酸及びコハク酸セミアルデヒドから6-アミノカプロン酸塩への例示的な経路を示す。酵素は次のとおりである:A)HODHアルドラーゼ、B)OHED加水酵素、C)OHED還元酵素、D)2-OHD脱炭酸酵素、E)アジピン酸セミアルデヒドアミノ基転移酵素及び/又はアジピン酸セミアルデヒド酸化還元酵素(アミノ化)、F)OHED脱炭酸酵素、G)6-OHE還元酵素、H)2-OHDアミノ基転移酵素及び/又は2-OHD酸化還元酵素(アミノ化)、I)2-AHD脱炭酸酵素、J)OHEDアミノ基転移酵素及び/又はOHED酸化還元酵素(アミノ化)、K)2-AHE還元酵素、L)HODH蟻酸リアーゼ及び/又はHODH脱水素酵素、M)3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素、N)2,3-デヒドロアジピルCoA還元酵素、O)アジピルCoA脱水素酵素、P)OHED蟻酸リアーゼ及び/又はOHED脱水素酵素、Q)2-OHD蟻酸リアーゼ及び/又は2-OHD脱水素酵素。略語は次のとおりである:HODH=4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタン-1,7-二酸、OHED=2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸、2-OHD=2-オキソヘプタン-1,7-二酸、2-AHE=2-アミノヘプタ-4-エン-1,7-二酸、2-AHD=2-アミノヘプタン-1,7-二酸、及び6-OHE=6-オキソヘキサ-4-エン酸。
【0037】
図7】6-アミノカプロン酸からヘキサメチレンジアミンへの例示的な経路を示す。酵素は次のとおりである:A)6-アミノカプロン酸キナーゼ、B)6-AHOP酸化還元酵素、C)6-アミノカプロン酸セミアルデヒドアミノ基転移酵素及び/又は6-アミノカプロン酸セミアルデヒド酸化還元酵素(アミノ化)、D)6-アミノカプロン酸N-アセチル転移酵素、E)6-アセトアミドヘキサン酸キナーゼ、F)6-AAHOP酸化還元酵素、G)6-アセトアミドヘキサナールアミノ基転移酵素及び/又は6-アセトアミドヘキサナール酸化還元酵素(アミノ化)、H)6-アセトアミドヘキサナミンN-アセチル転移酵素及び/又は6-アセトアミドヘキサナミン加水分解酵素(アミド)、I)6-アセトアミドヘキサン酸CoA転移酵素及び/又は6-アセトアミドヘキサン酸CoAリガーゼ、J)6-アセトアミドヘキサノイルCoA酸化還元酵素、K)6-AAHOPアシル転移酵素、L)6-AHOPアシル転移酵素、M)6-アミノカプロン酸CoA転移酵素及び/又は6-アミノカプロン酸CoAリガーゼ、N)6-アミノカプロイルCoA酸化還元酵素。略語は次のとおりである:6-AAHOP=[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸及び6-AHOP=[(6-アミノヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸。
【0038】
図8】1,6-ヘキサンジオールにつながる例示的な生合成経路を示す。A)は、6ACAから6-アミノカプロイルCoAへの変換を触媒する6-アミノカプロイルCoA転移酵素又は合成酵素である;B)は、6-アミノカプロイルCoAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒する6-アミノカプロイルCoA還元酵素である;C)は、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドから6-アミノヘキサノールへの変換を触媒する6-アミノカプロン酸セミアルデヒド還元酵素である;D)は、6ACAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒する6-アミノカプロン酸還元酵素である;E)は、アジピルCoAからアジピン酸セミアルデヒドへの変換を触媒するアジピルCoA還元酵素である;F)は、アジピン酸セミアルデヒドから6-ヒドロキシヘキサン酸への変換を触媒するあるアジピン酸セミアルデヒド還元酵素である;G)は、6-ヒドロキシヘキサン酸から6-ヒドロキシヘキサノイルCoAへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサノイルCoA転移酵素又は合成酵素である;H)は、6-ヒドロキシヘキサノイルCoAから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサノイルCoA還元酵素である;I)は、6-ヒドロキシヘキサナールからHDOへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサナール還元酵素である;J)は、6-アミノヘキサノールから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-アミノヘキサノールアミノ基転移酵素又は酸化還元酵素である;K)は、6-ヒドロキシヘキサン酸から6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサン酸還元酵素である;L)は、ADAからアジピン酸セミアルデヒドへの変換を触媒するアジピン酸還元酵素である;そしてM)は、アジピルCoAからADAへの変換を触媒するアジピルCoA転移酵素、加水分解酵素、又は合成酵素である。
【0039】
図9】アジピン酸又はアジピルCoAからカプロラクトンへの例示的な経路を示す。酵素は次のとおりである:A.アジピルCoA還元酵素、B.アジピン酸セミアルデヒド還元酵素、C.6-ヒドロキシヘキサノイルCoA転移酵素又は合成酵素、D.6-ヒドロキシヘキサノイルCoA環化酵素又は自発的環化、E.アジピン酸還元酵素、F.アジピルCoA転移酵素、合成酵素、又は加水分解酵素、G.6-ヒドロキシヘキサン酸環化酵素、H.6-ヒドロキシヘキサン酸キナーゼ、I.6-ヒドロキシヘキサノイルリン酸環化酵素又は自発的環化、J.ホスホトランス-6-ヒドロキシヘキサノイラーゼ。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(詳細な説明)
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法、装置、及び材料は、本発明の実施において使用することができる。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供されているものであって、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書で参照されるすべての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
本明細書に開示されるのは、サクシニルCoA、又はアセチルCoA、又は両方の基質と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな触媒効率及び代謝回転数を有する外因性アルデヒド脱水素酵素(ALD)を発現するように遺伝子操作された非自然発生の微生物である。アジピルCoAは、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンの生合成的生成につながる経路の中間体(本明細書ではナイロン中間体と呼ばれる)である。これらのナイロン中間体の生成には、いくつかの異なる経路を使用することができる。いくつかの実施態様において、ナイロン中間体は、図1に示されるような経路から生成され得る。ナイロン中間体へのアジピルCoAを介する他の経路の詳細は、例えば米国特許第8,377,680号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
ナイロン中間体に至る様々な経路において、アシルCoAを対応するアルデヒドに還元することができるアシルCoA脱水素酵素は、アジピルCoAをアジピン酸セミアルデヒドに変換することができる(工程N、図1)。ただし、一部のアシルCoA脱水素酵素は、サクシニルCoA及びアセチルCoAとも反応する可能性がある。いくつかの実施態様において、サクシニルCoA、アセチルCoA、又は両方の基質よりもアジピルCoA基質に対して、より高い触媒効率、より大きな代謝回転数、又はその両方を有するアシルCoA脱水素酵素(アルデヒド生成)が開示される。これにより、効率が改善され、従ってナイロン中間体の生成が向上する。
【0043】
サクシニルCoA、アセチルCoA、又は両方の基質よりもアジピルCoA基質に対して、より大きな触媒効率、より大きな代謝回転数、又はその両方を有する酵素を同定するために、遺伝子adh(配列番号1)によりコードされるClostridium kluyveri DSM555の例示配列を使用して、他のアルデヒド脱水素酵素を同定した。相同的酵素は、表1に記載されているように同定された(アミノ酸配列は配列リストに示されている)。
【0044】
いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素又は配列は、BLASTによって同定される。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素は、表1のALDのアミノ酸配列の少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を共有する。
【0045】
サクシニルCoA、アセチルCoA、又は両方の基質よりもアジピルCoA基質に対して、より大きな触媒効率、より大きな代謝回転数、又はその両方を有するこれらのアルデヒド脱水素酵素は、遺伝的に非常に多様な生物に由来する。多くの場合、配列間の単純なアミノ酸配列の同一性は、それらの共通の機能を示すものではない。例えば、以下の表1に開示されたいくつかの例示的なアルデヒド脱水素酵素の対になった配列アライメントの結果を以下に示す。
【表1】
【0046】
これらのアルデヒド脱水素酵素は、複数の保存されたドメイン、例えばN末端ドメイン、C末端ドメイン、及びその活性部位のシステイン残基を有する。アルデヒド脱水素酵素は、ロスマン折り畳み(Rossmann fold)型ヌクレオチド結合構造を有する補助因子結合ドメインを含む。βαβ折り畳みとも呼ばれるロスマン折り畳みは、ベータ鎖-アルファらせん-ベータ鎖2次構造の交互のモチーフを特徴とする超2次構造である。β鎖は、βシートの形成に関与する。βαβ折り畳み構造は、FAD、NAD、及びNADPなどのジヌクレオチド補酵素を有する酵素で一般的に観察される。βαβ折り畳み構造は、最初のβ鎖とαらせんの間のタイトループの領域で、(GxGxxG)の特定のGlyリッチ配列と関連していた。さらに、補助因子結合ドメインは、基質CoAに結合するのと同じドメインでもある。これはAldの典型的な特徴であり、ここで、基質CoAが最初に結合して中間体を形成し、次に補助因子が結合して化学反応が完了し、水素化物移動を実行する。
【0047】
マルチプル配列アライメント及び隠れマルコフ(Markov)モデル(HMM)に基づいて、アルデヒド脱水素酵素は、European Bioinformatics Institute(pfam.xfam.org)からのPfamデータベースのPfam PF00171、ClanCL0099にグループ化される。これらの酵素は、酵素委員会の命名法(Enzyme Commission nomenclature)に従ってEC1.2.1として分類される。
【0048】
いくつかの実施態様において、ALD酵素は、サクシニルCoA、アセチルCo-A、又はその両方と比較して、アジピルCoAが基質である場合、より大きな触媒効率及び/又は代謝回転速度を有する。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素は、配列番号4、7、11、15、17、19、24、25、27、28、31~33、36、38、40~42、44、45、47、53、58~60、63、65~67、74、75、77、80、82、84、86~88、90、91、94、95、97、100、101、103、107、109、111、112、117、134、135、137、145、146、148~150、152、157~159、164~167、176、187、又は188のいずれかの少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素のアミノ酸配列は、配列番号1~4、7、11、15、17、19、24、25、27、28、31~33、36、38、40~42、44、45、47、53、58~60、63、65~67、74、75、77、80、82、84、86~88、90、91、94、95、97、100、101、103、107、109、111、112、117、134、135、137、145、146、148~150、152、157~159、164~167、176、187、又は188のアミノ酸配列から選択される。
【0049】
いくつかの実施態様において、サクシニルCoA、アセチルCoA、又は両方の基質と比較して、アジピルCoA基質に対して、より大きな触媒効率、より大きな代謝回転速度、又はこれらの組み合わせを有するアルデヒド脱水素酵素のアミノ酸配列は、配列番号7、28、60、及び107のいずれかの少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有する。いくつかの実施態様において、サクシニルCoA、アセチルCoA、又は両方の基質と比較して、アジピルCoA基質に対して、より大きな触媒効率、より大きな代謝回転速度、又はこれらの組み合わせを有するアルデヒド脱水素酵素のアミノ酸配列は、配列番号7、28、60、及び107のいずれかの少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0050】
いくつかの実施態様において、ALD酵素は、サクシニルCoA、アセチルCoA、又は両方の基質と比較して、アジピルCoA基質に対して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、又は5~25倍である触媒効率を有する。
【0051】
いくつかの実施態様において、前記酵素の既知の標準条件下での示された基質(例えばアジピルCoA)の示された生成物(例えばアジピン酸セミアルデヒド)への酵素的変換は、アジピルCoAのみに特異性を有さない酵素の酵素活性よりも、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、又は少なくとも90パーセント以上大きい。
【0052】
いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素は、さらに6-アミノカプロイルCoAと反応して6-アミノカプロン酸セミアルデヒドを生成する。
【0053】
酵素活性が低下した細胞は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して同定することができる。例えば酵素活性アッセイを使用して、酵素活性が低下した細胞を同定することができる。例えば、Enzyme Nomenclature, Academic Press, Inc., New York 2007を参照されたい。ADHの低下を決定するために使用できる他のアッセイには、GC/MS分析が含まれる。他の例では、NADH/NADPHのレベルをモニターしてもよい。例えばNADH/NADPHは、NADP/NADPHアッセイキット(例えばABCAM(商標)から入手可能なab65349)を使用して、比色分析又は分光法でモニターすることができる。
【0054】
開示されたALD酵素は、ナイロン中間体の生成のための経路で使用することができる。いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、アジピン酸セミアルデヒドの生成、又はアジピン酸セミアルデヒドを中間体として使用して生成される他のナイロン中間体の生成に使用され得る。
【0055】
いくつかの実施態様において、遺伝的に改変された細胞(例えば非自然発生の微生物)は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンなどのナイロン中間体を生成することができる。
【0056】
いくつかの実施態様において、ナイロン中間体は図1に記載の経路を使用して生合成される。いくつかの実施態様において、図1の経路が、本明細書に記載の遺伝的改変細胞(例えば非自然発生の微生物)で提供され、ここで、この経路は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、及びヘキサメチレンジアミンを生成するのに充分な量で発現される経路酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含む。
【0057】
いくつかの実施態様において、経路は図1に示されるようなHMD経路である。HMD経路は、本明細書に記載の遺伝的改変細胞(例えば非自然発生の微生物)で提供され、ここでHMD経路は、HMDを生成するのに充分な量で発現されるHMD経路酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含む。酵素は、1Aは3-オキソアジピルCoAチオラーゼであり;1Bは3-オキソアジピルCoA還元酵素であり;1Cは3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素であり;1Dは5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素であり;1Eは3-オキソアジピルCoA/アシルCoA転移酵素であり;1Fは3-オキソアジピルCoA合成酵素であり;1Gは3-オキソアジピルCoA加水分解酵素であり;1Hは3-オキソアジピン酸還元酵素であり;1Iは3-ヒドロキシアジピン酸脱水酵素であり;1Jは5-カルボキシ-2-ペンテン酸還元酵素であり;1KはアジピルCoA/アシルCoA転移酵素であり;1LはアジピルCoA合成酵素であり;1MはアジピルCoA加水分解酵素であり;1NはアジピルCoA還元酵素(アルデヒド生成)であり;1Oは6-アミノカプロン酸アミノ基転移酵素であり;1Pは6-アミノカプロン酸脱水素酵素であり;1Qは6-アミノカプロイルCoA/アシルCoA転移酵素であり;1Rは6-アミノカプロイルCoA合成酵素であり;1Sはアミド加水分解酵素であり;1Tは自発的環化であり;1Uは6-アミノカプロイルCoA還元酵素(アルデヒド生成)であり;1VはHMDAアミノ基転移酵素であり;及び、1WはHMDA脱水素酵素である。
【0058】
図1を参照すると、いくつかの実施態様において非自然発生の微生物は、以下の経路のうちの1つ以上を有する:ABCDNOPQRUVW;ABCDNOPQRT;又はABCDNOPS。アジピン酸セミアルデヒドを生成するためのALD酵素を含む他の例示的な経路には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,377,680号に記載されているものが含まれる。
【0059】
図1はまた、転移酵素又は合成酵素による6-アミノカプロン酸から6-アミノカプロイルCoA(図1、工程Q又はR)、続いて6-アミノカプロイルCoAの自発的環化によるカプロラクタムの形成(図1、工程T)の経路を示す。他の実施態様において、6-アミノカプロン酸は活性化されて6-アミノカプロイルCoAになり(図1、工程Q又はR)、続いて還元(図1、工程U)及びアミノ化(図1、工程V又はW)によりHMDAを生成する。6-アミノカプロン酸はまた、6-アミノカプロイルCoAの代わりに6-アミノカプロイル-リン酸に活性化することもできる。6-アミノカプロイル-リン酸は自発的に環化してカプロラクタムを生成することができる。いくつかの実施態様において、6-アミノカプロイル-リン酸は6-アミノカプロン酸セミアルデヒドに還元することができ、これは次に、図1に示すようにHMDAに変換することができる。いくつかの実施態様において、6-アミノカプロン酸は、アミノカプロン酸還元酵素(CAR)によって6-アミノカプロン酸セミアルデヒドに変換される。図1には示されていないが、アミノカプロン酸還元酵素は、図1に示されるようにアミノカプロン酸から6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒することができる。
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物はヘキサメチレンジアミン経路を有し、この経路は、(i)6-アミノアカプロイルCoA転移酵素、(ii)6-アミノカプロイルCoA合成酵素、(iii)6-アミノカプロイルCoA還元酵素、(iv)ヘキサメチレンジアミンアミノ基転移酵素、(v)ヘキサメチレンジアミン脱水素酵素、(v)又は酵素(i)~(v)の1つ以上の組み合わせを含む。他の実施態様において、非自然発生の微生物はヘキサメチレンジアミン経路を有し、この経路は、3-オキソアジピルCoAチオラーゼ(Thl)、3-オキソアジピルCoA脱水素酵素(Hbd)、及び3-オキソアジピルCoA脱水酵素(「クロトナーゼ」又はCrt)、5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素(Ter)、アミノ基転移酵素(HMD TA)、及びカルボン酸還元酵素(CAR)を含む。
【0060】
本明細書で使用される用語「非自然発生の(non-naturally occurring)」は、微生物(microbial organism)又は微生物(microorganism)に関して使用される場合、微生物が、参照される種の天然に存在する株(参照される種の野生型株を含む)に通常は見られない少なくとも1つの遺伝的改変を有することを意味することを意図する。遺伝的改変には、例えば、代謝ポリペプチドをコードする発現可能な核酸を導入する修飾、他の核酸の付加、核酸の欠失、及び/又は微生物の遺伝物質の他の機能的破壊が含まれる。そのような修飾には、例えば、参照される種の異種、同種、又は異種と同種の両方のポリペプチドのコード領域及びその機能的断片が含まれる。追加の修飾には、例えば、修飾が遺伝子又はオペロンの発現を変化させる非コード調節領域が含まれる。例示的な代謝ポリペプチドには、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路内の酵素が含まれる。
【0061】
代謝的修飾は、その天然の状態から変化した生化学反応を指す。従って非自然発生の微生物は、代謝のリペプチド又はその機能的断片をコードする核酸に遺伝的修飾を行うことができる。例示的な代謝的修飾が本明細書に開示される。
【0062】
本明細書で使用される用語「微生物の(microbial)」、「微生物(microbial organism)」、又は「微生物(microorganism)」は互換的に使用されており、古細菌、細菌、又は真核生物の群に含まれる微視的細胞として存在する任意の生物を意味することを意図している。従ってこの用語は、原核生物又は真核生物の細胞、又は微視的なサイズを有する生物を包含することを意図し、すべての種の細菌、古細菌、及び真正細菌、ならびに酵母や真菌などの真核微生物を含む。この用語はまた、生化学物質の生産のために培養できる任意の種の細胞培養物も含む。
【0063】
本明細書で使用される用語「CoA」又は「補酵素A」は、活性酵素系を形成するために多くの酵素(アポ酵素)の活性に、その存在が必要とされる有機補助因子又は補欠分子族(酵素の非タンパク質部分)を意味することを意図する。補酵素Aは、特定の縮合酵素で機能し、アセチル又は他のアシル基の移動、脂肪酸の合成と酸化、ピルビン酸の酸化、及び他のアセチル化で機能する。
【0064】
本明細書で使用される、化学式-OOC-(CH2)4-COO-(図1を参照)(IUPAC名ヘキサン二酸塩)を有する「アジピン酸塩」は、イオン化形態のアジピン酸(IUPAC名ヘキサン二酸)であり、そしてアジピン酸塩及びアジピン酸は、その中性又はイオン化形態のいずれか(その塩形態を含む)の化合物を指すために、全体を通して交換可能に使用できることが理解される。特定の形態がpHに依存することを当業者は理解している。
【0065】
本明細書で使用される、化学式-OOC-(CH2)5-NH2(図1を参照、6-ACAと略される)を有する「6-アミノカプロン酸塩」は、6-アミノカプロン酸(IUPAC名6-アミノヘキサン酸)のイオン化形態であり、6-アミノカプロン酸塩及び6-アミノカプロン酸は、任意のその中性又はイオン化形態(その塩形態を含む)の化合物を指すために、全体を通して交換可能に使用できることが理解される。特定の形態がpHに依存することを当業者は理解している。
【0066】
本明細書で使用される「カプロラクタム」(IUPAC名アゼパン-2-オン)は、6-アミノヘキサン酸のラクタムである(図1を参照、CPOと略される)。
【0067】
本明細書で使用される「ヘキサメチレンジアミン」(1,6-ジアミノヘキサン又は1,6-ヘキサンジアミンとも呼ばれる)は、化学式H2N(CH2)6NH2を有する(図1を参照、HMDと略される)。
【0068】
本明細書で使用される用語「実質的に嫌気性」は、培養又は増殖条件に関して使用される場合、酸素の量が、液体媒体中の溶存酸素の飽和の約10%未満であることを意味することを意図する。この用語はまた、約1%未満の酸素の雰囲気で維持される液体又は固体媒体の密閉されたチャンバーを含むことを意図している。
【0069】
本明細書で使用される用語「浸透圧保護剤」、培養又は増殖条件に関して使用される場合、浸透圧調節剤として作用し、本明細書に記載の微生物が浸透圧ストレスに耐えるのを助ける化合物を意味することを意図する。浸透圧保護剤には、例えばベタイン、アミノ酸、及び糖トレハロースが含まれる。そのような非限定的な例は、グリシンベタイン、プラリンベタイン、ジメチルテチン、ジメチルスルホニオプロピオネート、3-ジメチルスルホニオ-2-メチルプロピオネート、ピペコリン酸、ジメチルスルホニオアセテート、コリン、L-カルニチン、及びエクトインである。
【0070】
本明細書で使用される用語「増殖共役した」は、生化学物質の生成に関して使用される場合、参照される生化学物質の生合成が微生物の増殖段階中に行われることを意味することを意図する。特定の実施態様において、増殖共役生成は義務的であり得、これは、参照される生化学物質の生合成が、微生物の増殖段階中に生成される義務的産物であることを意味する。
【0071】
本明細書で使用される「代謝的修飾」は、その天然の状態から変化した生化学反応を指すことを意図している。代謝的修飾には、例えば、反応に関与する酵素をコードする1つ以上の遺伝子の機能的破壊による生化学的反応活性の排除が含まれ得る。
【0072】
本明細書で使用される用語「遺伝子破壊」又はその文法的同等物は、コードされた遺伝子産物を不活性にする遺伝的改変を意味することを意図している。遺伝的改変は、例えば遺伝子全体の欠失、転写又は翻訳に必要な調節配列の欠失、遺伝子産物の末端切断をもたらす遺伝子の一部の欠失、又はコード化された遺伝子産物を不活性化する任意の様々な突然変異戦略によるものであり得る。遺伝子破壊の特に有用な方法の1つは完全な遺伝子欠失であり、これは、非自然発生の微生物での遺伝子復帰の発生を低減又は排除するためである。
【0073】
本明細書で使用される「外因性」は、参照される分子又は参照される活性が宿主微生物に導入されることを意味することを意図している。分子は、例えば、宿主染色体への組み込みなどによる宿主遺伝物質へのコード核酸の導入によって、又はプラスミドなどの非染色体遺伝物質として、導入することができる。従って、コード核酸の発現に関して使用される用語は、微生物への発現可能な形態のコード核酸の導入を指す。生合成活性に関連して使用される場合、用語は宿主参照生物に導入される活性を指す。供給源は、例えば宿主微生物への導入後に、参照活性を発現する同種又は異種のコード核酸であり得る。従って「内因性」という用語は、宿主に存在する参照される分子又は活性を指す。同様に、コード核酸の発現に関して使用される用語は、微生物内に含まれるコード核酸の発現を指す。
【0074】
「異種」という用語は、参照される種以外の供給源に由来する分子又は活性を指し、一方「同種」は、宿主微生物に由来する分子又は活性を指す。従って、コード核酸の外因性発現は、異種又は同種のコード核酸のいずれか又は両方を利用することができる。
【0075】
本明細書で使用される用語「約」は、記載された値の±10%を意味する。「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められることを意味する場合がある。従って、約5%は4.5%から5.5%を意味する。さらに、特定の数を参照すると、その正確な数も含まれる。例えば、約5%には正確な5%も含まれる。
【0076】
本明細書で使用される代謝回転数(kcatとも呼ばれる)という用語は、所定の酵素濃度[ET]に対して単一の触媒部位が実行する1秒あたりの基質分子の化学変換の最大数として定義される。これは、最大反応速度Vmaxと触媒部位濃度[ET]から次のように計算できる。
【0077】
Kcat=Vmax/[ET]。単位はs-1である。
【0078】
本明細書で使用される用語「触媒効率」は、酵素が基質を生成物にどれだけ効率的に変換するかの尺度である。触媒効率の比較は、異なる基質に対する酵素の優先度(すなわち、基質特異性)の尺度としても使用できる。触媒効率が高いほど、酵素はその基質を「優先」する。これは次の式から計算できる:kcat/KM、ここでkcatは代謝回転数で、KMはミカエリス定数であり、KMは反応速度がVmaxの半分になる基質濃度である。触媒効率の単位はs-1-1として表すことができる。
【0079】
本明細書で使用される用語「生物由来」は、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、又はヘキサメチレンジアミンの文脈で、これらの化合物が微生物内で合成されたことを意味する。
【0080】
複数の外因性核酸が微生物に含まれる場合、上記のように、その外因性核酸は参照されるコード核酸又は生合成活性を指すことが理解される。本明細書に開示されるように、そのような外因性核酸は、別個の核酸分子、ポリシストロン性核酸分子、又はこれらの組み合わせで宿主微生物に導入され得、依然として複数の外因性核酸と見なされ得ることがさらに理解される。例えば、本明細書に開示されるように、微生物は、所望の経路酵素又はタンパク質をコードする2種又はそれ以上の外因性核酸を発現するように遺伝子操作することができる。所望の活性をコードする2つの外因性核酸が宿主微生物に導入される場合、2つの外因性核酸は、例えば単一のプラスミド上の又は別々のプラスミド上の単一の核酸として導入することができ、単一の部位又は複数の部位で宿主染色体に組み込むことができ、それでも2つの外因性核酸と見なすことができるが理解される。同様に、3つ以上の外因性核酸が宿主生物に、任意の所望の組み合わせで、例えば宿主染色体に組み込まれていない、別個のプラスミド上で、単一のプラスミド上で、導入することができ、そしてプラスミドは染色体外の要素のままであり、それでも2つ以上の外因性核酸と見なされることが理解される。参照される外因性核酸又は生合成活性の数は、コード核酸の数又は生合成活性の数を指し、宿主生物に導入された別個の核酸の数を指すのではない。
【0081】
非自然発生の微生物は、安定した遺伝的改変を含むことができ、これは、その改変を失うことなく5世代を超えて培養することができる微生物を指す。一般に、安定した遺伝的改変には、10世代を超えて持続する改変が含まれ、特に安定した修飾は約25世代を超えて持続し、より具体的には、安定した遺伝的修飾は50世代を超えるであろう(無期限を含む)。
【0082】
遺伝子破壊の場合、特に有用な安定した遺伝的改変は遺伝子欠失である。安定した遺伝的改変を導入するための遺伝子欠失の使用は、遺伝的改変の前に表現型への復帰の可能性を減らすのに特に有用である。例えば、生化学物質の安定した増殖共役生成は、例えば一連の代謝的修飾内の1つ以上の反応を触媒する酵素をコードする遺伝子の欠失によって達成することができる。生化学物質の増殖共役生成の安定性は、複数の削除によってさらに強化することができ、破壊された各活性に対して複数の代償的復帰が発生する可能性を大幅に低減する。
【0083】
当業者は、本明細書に例示される代謝的修飾を含む遺伝的改変が、大腸菌などの適切な宿主生物、及びそれらの対応する代謝反応、又は望ましい代謝経路の遺伝子などの所望の遺伝物質に適した供給源生物に関連して、記載されることを理解するであろう。しかしながら、多種多様な生物の完全なゲノム配列決定及びゲノム科学の分野における高度なスキルを考慮すると、当業者は、本明細書で提供される教示及び指針を、本質的に他のすべての生物に容易に適用することができるであろう。例えば、本明細書で例示される大腸菌の代謝的改変は、参照される種以外の種からの同じか又は類似のコード核酸を組み込むことによって、他の種に容易に適用することができる。そのような遺伝的改変には、例えば、一般に種ホモログの遺伝的改変、特にオルソログ、パラログ、又は非オルソログ遺伝子置換が含まれる。
【0084】
オーソログは、垂直伝達(vertical descent)によって関連しており、異なる生物において実質的に同じか又は同一の機能に関与する1つ以上の遺伝子である。例えば、マウスエポキシド加水分解酵素及びヒトエポキシド加水分解酵素は、エポキシドの加水分解の生物学的機能のオルソログと見なすことができる。遺伝子は、例えばそれらが相同であることを示すのに充分な量の配列類似性を共有する場合、又は共通の祖先からの進化によって関連する場合、垂直伝達によって関連している。遺伝子は、必ずしも一、次配列の類似性が特定できない程度に共通の祖先から進化したことを示すのに充分な量の配列の類似性がなくても、三次元構造を共有する場合は、オルソログと見なすこともできる。オルソログ遺伝子は、約25%~100%のアミノ酸配列同一性の配列類似性を有するタンパク質をコードすることができる。また、25%未満のアミノ酸類似性を共有するタンパク質をコードする遺伝子であっても、それらの三次元構造が類似性を示す場合は垂直伝達によって生じていると見なすことができる。組織プラスミノーゲン活性化因子及びエラスターゼを含む酵素のセリンプロテアーゼファミリーのメンバーは、共通の祖先からの垂直伝達によって生じたと考えられている。
【0085】
オーソログは、例えば進化を通して、構造又は全体的な活性が分岐した遺伝子又はそれらのコードされる遺伝子産物を含む。例えば、1つの種が2つの機能を示す遺伝子産物をコードし、そのような機能が2番目の種で別個の遺伝子に分離されている場合、3つの遺伝子とそれに対応する産物はオルソログと見なされる。生化学的産物の生成について、当業者は、導入又は破壊される代謝活性を有するオーソロガス遺伝子が、非自然発生の微生物の構築のために選択されるべきであることを理解するであろう。分離可能な活性を示すオルソログの例は、別個の活性が2つ以上の種間又は単一の種内の別個の遺伝子産物に分離されている場合である。具体的な例は、2種類のセリンプロテアーゼ活性であるエラスターゼタンパク質分解とプラスミノーゲンタンパク質分解を、プラスミノーゲンアクチベーターとエラスターゼとして別個の分子に分離することである。2番目の例は、マイコプラズマ5’-3’エキソヌクレアーゼとショウジョウバエDNAポリメラーゼIII活性の分離である。第1の種からのDNAポリメラーゼは、第2の種からのエキソヌクレアーゼ又はポリメラーゼのいずれか又は両方に対するオルソログと見なすことができ、逆もまた同様である。
【0086】
対照的に、パラログは、例えば複製とそれに続く進化的分岐によって関連するホモログであり、類似又は共通であるが同一ではない機能を有する。パラログは、例えば同じ種又は異なる種に由来又は由来する可能性がある。例えば、ミクロソームエポキシド加水分解酵素(エポキシド加水分解酵素I)と可溶性エポキシド加水分解酵素(エポキシド加水分解酵素II)は、共通の祖先から共進化した2つの異なる酵素を表し、同じ種で異なる反応を触媒し異なる機能を有するため、パラログと見なすことができる。パラログは、互いに顕著な配列類似性を有する同じ種からのタンパク質であり、それらが相同であるか、又は共通の祖先からの共進化を通して関連していることを示唆している。パラログタンパク質ファミリーの群には、HipAホモログ、ルシフェラーゼ遺伝子、ペプチダーゼなどが含まれる。
【0087】
非オーソロガス遺伝子置換は、異なる種における参照された遺伝子機能の代わりになり得る、1つの種からの非オーソログ遺伝子である。置換には、例えば異なる種の参照された機能と比較して、起源の種において実質的に同じか又は類似の機能を実行できることが含まれる。一般に、非オーソロガス遺伝子置換は、参照される機能をコードする既知の遺伝子に構造的に関連するものとして識別可能であるが、構造的には関連しないが機能的に類似する遺伝子及びそれらの対応する遺伝子産物は、それでもなお、本明細書で使用される用語の意味に含まれる。機能的類似性は、例えば、置換されようとする機能をコードする遺伝子と比較して、非オーソロガスな遺伝子産物の活性部位又は結合領域における少なくともいくらかの構造的類似性を必要とする。従って、非オーソロガス遺伝子には、例えば、パラログ又は無関係の遺伝子が含まれる。
【0088】
従って、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成能力を有する非自然発生の微生物を同定及び構築する際に、当業者は、本明細書で提供される教示及び指針を特定の種に適用することで、代謝的修飾の同定はオルソログの同定及び包含又は不活性化が含まれ得ることを理解するであろう。類似又は実質的に類似の代謝反応を触媒する酵素をコードする参照微生物にパラログ及び/又は非オーソロガス遺伝子置換が存在する限り、当業者はこれらの進化的に関連する遺伝子を利用することもできる。遺伝子破壊戦略では、進化的に関連する遺伝子を宿主微生物、パラログ、又はオルソログ中で破壊又は削除して、活性を低減又は排除し、破壊の対象となる酵素活性の機能的冗長性が、設計された代謝的修飾を短絡させないようにすることもできる。
【0089】
オルソログ、パラログ、及び非オルソログ遺伝子の置換は、当業者に周知の方法によって決定することができる。例えば、2つのポリペプチドの核酸又はアミノ酸配列の検査は、比較された配列間の配列同一性及び類似性を明らかにするであろう。そのような類似性に基づいて、当業者は、タンパク質が共通の祖先からの進化を通して関連していることを示すのに、類似性が充分に高いかどうかを決定することができる。当業者に周知のアルゴリズム、例えばAlign、BLAST、Clustal Wなどは、生の配列の類似性又は同一性を比較及び決定し、重み又はスコアを割り当てることができる配列内のギャップの存在又は重要性を決定する。そのようなアルゴリズムも当技術分野で知られており、ヌクレオチド配列の類似性又は同一性を決定するために同様に適用可能である。関連性を決定するのに充分な類似性のためのパラメータは、統計的類似性、又はランダムポリペプチド内で同様の一致を見つける可能性を計算するための公知の方法に基づいて計算され、一致の重要性が決定される。2つ以上の配列のコンピューターによる比較は、所望であれば、当業者が視覚的に最適化することもできる。関連する遺伝子産物又はタンパク質は、高い類似性、例えば25%~100%の配列同一性を有することが期待できる。無関係なタンパク質は、充分なサイズ(約5%)のデータベースをスキャンした場合に偶然に発生すると予想されるものと本質的に同じ同一性を有することがあり得る。5%~24%の配列は、比較された配列が関連していると結論付けるのに充分な相同性を示す場合と示さない場合がある。データセットのサイズが与えられた場合にそのような一致の有意性を決定するための追加の統計分析を実行して、これらの配列の関連性を決定することができる。
【0090】
例えば、BLASTアルゴリズムを使用して2つ以上の配列の関連性を決定するための例示的なパラメータは、以下に示されるようなものであり得る。簡単に説明すると、アミノ酸配列アライメントは、BLASTPバージョン2.2.29+(2014年1月14日)及び以下のパラメータを使用して実行できる:マトリックス:0 BLOSUM62;ギャップオープン:11;ギャップ伸長:1;x_dropoff:50;期待:10.0;文字列サイズ:3;フィルタ:オン。核酸配列アライメントは、BLASTNバージョン2.0.6(1998年9月16日)及び以下のパラメータを使用して実行できる:一致:1;不一致:-2;ギャップオープン:5;ギャップ伸長:2;x_dropoff:50;期待:10.0;文字列サイズ:11;フィルター:オフ。当業者は、例えば比較の厳密性を増加又は減少させるために、及び2つ以上の配列の関連性を決定するために、上記のパラメータにどのような変更を加えることができるかを知っているであろう。
【0091】
所望であれば、本明細書に開示されている経路のいずれか(図に記載されているものを含む)を使用して、任意の経路中間体又は生成物を生成する非自然発生の微生物を生成できることが理解される。本明細書に開示されるように、中間体を生成するそのような微生物は、下流経路の酵素を発現する別の微生物と組み合わせて使用して、所望の生成物を生成することができる。しかしながら、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路の中間体を生成する非自然発生の微生物を利用して、中間体を所望の生成物として生成することができることが理解される。
【0092】
本明細書では、一般的に、代謝反応、その反応物、若しくは生成物が言及され、又は特に、言及された代謝反応、反応物、若しくは生成物に関連するか又はそれを触媒する酵素をコードする1種以上の核酸又は遺伝子が言及される。本明細書で特に明示的に述べられていない限り、当業者は、反応への言及はまた、反応物や反応の生成物への言及も構成することを理解するであろう。同様に、本明細書で特に明示的に述べられていない限り、反応物又は生成物への言及は反応も言及しており、これらの代謝成分のいずれかへの言及もまた、言及された反応、反応物、又は生成物を触媒する酵素をコードする遺伝子も言及している。同様に、代謝生化学、酵素学、及びゲノム科学の周知の分野を考慮すると、本明細書における遺伝子又はコード核酸への言及はまた、対応するコードされた酵素及びそれが触媒する反応ならびに反応物及び反応の生成物への言及も構成する。
【0093】
非自然発生の微生物は、1種以上の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路に関与する1種以上の酵素をコードする発現可能な核酸を導入することによって、生成することができる。生合成のために選択された宿主微生物に応じて、特定の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路の一部又はすべてについて、核酸を発現させることができる。例えば、選択された宿主が所望の生合成経路のための1種以上の酵素を欠損している場合、欠損酵素のための発現可能な核酸は、その後の外因性発現のために宿主に導入される。あるいは、選択した宿主がいくつかの経路遺伝子の内因性発現を示すが、他の経路遺伝子が欠損している場合、欠損酵素が6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成を達成するために、コード核酸が必要である。従って、非自然発生の微生物は、外因性酵素活性を導入して所望の生合成経路を得ることによって生成することができるか、又は所望の生合成経路は、1種以上の内因性酵素と共に、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸などの所望の生成物を生成する1種以上の外因性酵素活性を導入することによって得ることができる。
【0094】
選択された宿主微生物の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路の成分に応じて、非自然発生の微生物は、少なくとも1種の外因性に発現された6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路をコードする核酸、及び1つ以上のアジピン酸、6-アミノカプロン酸、又はカプロラクタム生合成経路をコードする全ての核酸までも含むであろう。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成は、対応するコード核酸の外因性発現を介して、経路酵素が欠損している宿主において確立することができる。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路のすべての酵素が欠損している宿主では、経路内のすべての酵素の外因性発現を含めることができるが、経路のすべての酵素は、たとえ宿主が経路酵素の少なくとも1つが含んでいても、発現され得ることが理解される。
【0095】
本明細書で提供される教示及び指針を考慮すると、当業者は、発現可能な形態で導入されるコード核酸の数が、選択された宿主微生物の酸経路のアジピン酸塩、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路の欠損と、少なくとも同等であることを理解するであろう。従って、非自然発生の微生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路を構成する上記酵素をコードする少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の、最大ですべての核酸を有することができる。いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物はまた、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成を促進又は最適化するか、あるいは宿主微生物に他の有用な機能を付与する他の遺伝的改変も含み得る。そのような他の機能の1つは、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路前駆体の1つ以上の合成の増強を含むことができ、前記前駆体としては、アジピン酸塩合成の場合のサクシニルCoA及び/又はアセチルCoA、又は6-アミノカプロン酸又はカプロラクタム合成(本明細書に開示されるアジピン酸経路の酵素を含む)の場合のアジピルCoA又はアジピン酸、6-アミノカプロン酸塩合成の場合のピルビン酸及びコハク酸セミアルデヒド、グルタミン酸、グルタリルCoA、ホモリジン、又は2-アミノ-7-オキソスバレート、又はヘキサメチレンジアミン合成の場合の6-アミノカプロン酸塩、グルタミン酸、グルタリルCoA、ピルビン酸、及び4-アミノブタナール、又は2-アミノ-7-オキソスバレートが挙げられる。
【0096】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物はアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を有し、このアルデヒド脱水素酵素は、アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成し、かつ配列番号1~4、7、11、15、17、19、24、25、27、28、31~33、36、38、40~42、44、45、47、53、58~60、63、65~67、74、75、77、80、82、84、86~88、90、91、94、95、97、100、101、103、107、109、111、112、117、134、135、137、145、146、148~150、152、157~159 、164~167、176、187、又は188のいずれかの、少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアルデヒド脱水素酵素から選択される。いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物はアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を有し、このアルデヒド脱水素酵素は、アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成し、かつ配列番号1~4、7、11、15、17、19、24、25、27、28、31~33、36、38、40~42、44、45、47、53、58~60、63、65~67、74、75、77、80、82、84、86~88、90、91、94、95、97、100、101、103、107、109、111、112、117、134、135、137、145、146、148~150、152、157~159 、164~167、176、187、又は188のいずれかの、少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアルデヒド脱水素酵素から選択される。
【0097】
他の実施態様において、非自然発生の微生物は、アジピルCoAと反応して、配列番号7、28、60、又は107のアミノ酸配列のいずれかの少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする、少なくとも1種の外因性核酸を有する。他の実施態様において、非自然発生の微生物は、アジピルCoAと反応して、配列番号7、28、60、又は107のアミノ酸配列のいずれかの少なくとも50、75、100、150、200、250、300、又はそれ以上の連続アミノ酸と、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする、少なくとも1種の外因性核酸を有する。
【0098】
一般に、宿主微生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、又はヘキサメチレンジアミン経路の前駆体を、天然に生成された分子として、又は所望の前駆体のデノボ生成、又は宿主微生物によって自然に生成される前駆体の生成の増加を提供する遺伝子操作された生成物として、生成するように選択される。宿主生物は、本明細書に開示されるように、前駆体の生成を増加させるように遺伝子操作することができる。さらに、所望の前駆体を生成するように遺伝子操作された微生物は、宿主生物として使用でき、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路の酵素又はタンパク質を発現するように、さらに遺伝子操作することができる。
【0099】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を合成する酵素能力を含む宿主から生成される。この特定の実施態様において、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路生成物の合成又は蓄積を増加させて、例えば6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路の反応を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生成に向けて駆動することが有用であり得る。合成又は蓄積の増加は、例えば上記の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路酵素のうちの1つ以上をコードする核酸の過剰発現によって達成することができる。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路酵素の過剰発現は、例えば、内因性遺伝子の外因性発現を通して、又は異種遺伝子の外因性発現を通して起こり得る。従って、天然に存在する生物は、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路酵素をコードする、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、すなわち、最大ですべての核酸の過剰発現を通して、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を生成する非自然発生の微生物を、容易に作成することができる。さらに、非自然発生の生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路における酵素の活性の増加をもたらす内因性遺伝子の突然変異誘発によって作成することができる。
【0100】
特に有用な実施態様において、コード核酸の外因性発現が使用される。外因性発現は、発現及び/又は調節要素を宿主及び用途に合わせてカスタマイズして、ユーザーが制御する所望の発現レベルを達成する能力を付与する。しかし、内因性発現はまた、誘導性プロモーター又は他の調節要素に連結された場合に、負の調節エフェクターを除去すること又は遺伝子のプロモーターを誘導することなどによって、他の実施態様でも利用することができる。従って、天然に存在する誘導性プロモーターを有する内因性遺伝子は、適切な誘導剤を提供することによってアップレギュレートされ得るか、又は内因性遺伝子の調節領域は、誘導性調節要素を組み込むように遺伝子操作され得、それにより、所望の時間における内因性遺伝子の発現増加の調節を可能にする。同様に、誘導性プロモーターは、非自然発生の微生物に導入された外因性遺伝子の調節要素として含めることができる。
【0101】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は1つ以上の遺伝子破壊を含み、この生物は、6-ACA、アジピン酸、及び/又はHMDAを生成する。破壊は、遺伝子破壊が酵素の活性を低下させるときに、アジピン酸、6-ACA、及び/又はHMDAの生成を生物増殖に共役させる酵素をコードする遺伝子で起こり、その結果、遺伝子破壊は、非自然発生の生物に対して、アジピン酸、6-ACA、及び/又はHMDAの生成増加を付与する。従って、いくつかの実施態様において、1つ以上の遺伝子破壊を含む非自然発生の微生物が提供され、この1つ以上の遺伝子破壊は、タンパク質又は酵素をコードする遺伝子で起き、ここで、1つ以上の遺伝子破壊は、生物のアジピン酸、6-ACA、及び/又はHMDAの生成の増加をもたらす。本明細書に開示されるように、そのような生物は、アジピン酸、6-ACA、及び/又はHMDAの生成のための経路を含む。
【0102】
方法において、1種以上の外因性核酸のいずれかを微生物に導入して、非自然発生の微生物を生成することができることが理解される。核酸を導入して、例えば6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路を、微生物に付与することができる。あるいは、コード核酸を導入して、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成能力を付与するために必要な反応のいくつかを触媒する生合成能力を有する、中間微生物を生成することができる。例えば6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路を有する非自然発生の微生物は、所望の酵素をコードする少なくとも2つの外因性核酸を含むことができる。アジピン酸生成の場合、少なくとも2つの外因性核酸が、サクシニルCoA:アセチルCoAアシル転移酵素と3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素、又はサクシニルCoA:アセチルCoAアシル転移酵素と3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素、又は3-ヒドロキシアジピルCoAと5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素、又は3-ヒドロキシアシルCoAとアジピルCoA合成酵素との組み合わせなどの酵素をコードすることができる。カプロラクタム生成の場合、少なくとも2つの外因性核酸が、CoA依存性アルデヒド脱水素酵素とアミノ基転移酵素、又はCoA依存性アルデヒド脱水素酵素とアミド加水分解酵素、又はアミノ基転移酵素とアミド加水分解酵素の組み合わせなどの酵素をコードすることができる。6-アミノカプロン酸生成の場合、少なくとも2つの外因性核酸が、4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタン-1,7-二酸(HODH)アルドラーゼと2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸(OHED)加水酵素、又は2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸(OHED)加水酵素と2-アミノヘプタン-1,7-二酸(2-AHD)脱炭酸酵素、3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素とアジピルCoA脱水素酵素、グルタミルCoA転移酵素と6-アミノピメロイルCoA加水分解酵素、又はグルタリルCoAベータ-ケトチオラーゼと3-アミノピメレート2,3-アミノムターゼの組み合わせなどの酵素をコードすることができる。ヘキサメチレンジアミン生成の場合、少なくとも2つの外因性核酸が、6-アミノカプロン酸キナーゼと[(6-アミノヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AHOP)酸化還元酵素、又は6-アセトアミドヘキサン酸キナーゼと[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AAHOP)酸化還元酵素、6-アミノカプロン酸N-アセチル転移酵素と6-アセトアミドヘキサノイルCoA酸化還元酵素、3-ヒドロキシ-6-アミノピメロイルCoA脱水酵素と2-アミノ-7-オキソヘプタン酸アミノ基転移酵素、又は3-オキソピメロイルCoAリガーゼとホモリジン脱炭酸酵素の組み合わせなどの酵素をコードすることができる。従って、生合成経路の2種以上の酵素の任意の組み合わせが、非自然発生の微生物に含まれ得ることが理解される。
【0103】
同様に、所望の生合成経路の酵素の組み合わせが、対応する所望の生成物の生成をもたらす限り、所望であれば、生合成経路の3種以上の酵素の任意の組み合わせが、非自然発生の微生物に含まれ得ることが理解され、例えば、アジピン酸生成の場合、酵素サクシニルCoA:アセチルCoAアシル転移酵素、3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素、及び3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素;又はサクシニルCoA:アセチルCoAアシル転移酵素、3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素、及び5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素;又はサクシニルCoA:アセチルCoAアシル転移酵素、3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素、及びアジピルCoA合成酵素;又は3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素、3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素、及びアジピルCoA:アセチルCoA転移酵素の組み合わせなどが含まれ得る。6-アミノカプロン酸生成の場合、少なくとも3つの外因性核酸が、4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタン-1,7-二酸(HODH)アルドラーゼ、2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸(OHED)加水酵素、及び2-オキソヘプタン-1,7-二酸(2-OHD)脱炭酸酵素、又は2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸(OHED)加水酵素、2-アミノヘプタ-4-エン-1,7-二酸(2-AHE)還元酵素、及び2-アミノヘプタン-1,7-二酸(2-AHD)脱炭酸酵素、又は3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素、2,3-デヒドロアジピルCoA還元酵素、及びアジピルCoA脱水素酵素、又は6-アミノ-7-カルボキシヘプタ-2-エノイルCoA還元酵素、6-アミノピメロイルCoA加水分解酵素、及び2-アミノピメレート脱炭酸酵素、又はグルタリルCoAベータ-ケトチオラーゼ、3-アミノ化酸化還元酵素、及び2-アミノピメレート脱炭酸酵素、又は3-オキソアジピルCoAチオラーゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸還元酵素、及びアジピン酸還元酵素の組合せなどの酵素をコードすることができる。ヘキサメチレンジアミン生成の場合、少なくとも3つの外因性核酸が、6-アミノカプロン酸キナーゼ、[(6-アミノヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AHOP)酸化還元酵素、及び6-アミノカプロン酸セミアルデヒドアミノ基転移酵素、又は6-アミノカプロン酸N-アセチル転移酵素、6-アセトアミドヘキサン酸キナーゼ、及び[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AAHOP)酸化還元酵素、又は6-アミノカプロン酸N-アセチル転移酵素、[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AAHOP)アシル転移酵素、及び6-アセトアミドヘキサノイルCoA酸化還元酵素、又は3-オキソ-6-アミノピメロイルCoA酸化還元酵素、3-ヒドロキシ-6-アミノピメロイルCoA脱水酵素、及びホモリジン脱炭酸酵素、又は2-オキソ-4-ヒドロキシ-7-アミノヘプタン酸アルドラーゼ、2-オキソ-7-アミノヘプタ-3-エン酸還元酵素、及びホモリジン脱炭酸酵素、又は6-アセトアミドヘキサン酸還元酵素、6-アセトアミドヘキサナールアミノ基転移酵素、及び6-アセトアミドヘキサナミンN-アセチル転移酵素の組み合わせなどの酵素をコードすることができる。同様に、所望の生合成経路の酵素の組み合わせが、対応する所望の生成物の生成をもたらす限り、所望であれば、本明細書に開示される生合成経路の4種以上の酵素の任意の組み合わせを、非自然発生の微生物に含めることができる。
【0104】
本明細書に記載の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成に加えて、非自然発生の微生物及び方法はまた、互いに、及び他の経路による生成物の生合成を達成することが当技術分野でよく知られている他の微生物及び方法と様々な組み合わせで利用することができる。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成物質の使用以外の、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を生成するための1つの代替法は、アジピン酸、6-アミノカプロン酸、又はカプロラクタム経路の中間体を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸に変換できる別の微生物の添加による。そのような方法の1つは、例えば6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路中間体を生成する微生物の発酵を含む。次に、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路中間体は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路中間体を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸に変換する第2の微生物の基質として使用することができる。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路中間体は、第2の生物の別の培養物に直接添加するか、又は6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路中間体の生成物質の元の培養物から、例えば細胞分離により、これらの微生物を枯渇させ、及びその後の発酵ブロスへの第2の生物の添加を利用して、中間の精製工程なしで最終生成物を生成することができる。
【0105】
他の実施態様において、非自然発生の微生物及び方法は、多種多様なサブ経路で組み立てて、例えば6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成を達成することができる。これらの実施態様において、所望の生成物の生合成経路を異なる微生物に分離することができ、そして異なる微生物を共培養して最終生成物を生成することができる。このような生合成スキームでは、最終生成物が合成されるまで、1つの微生物の生成物が2番目の微生物の基質になる。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成は、ある経路中間体を別の経路中間体又は生成物に変換するための生合成経路を含む微生物を構築することによって達成することができる。あるいは、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸はまた、同じ容器内で2つの生物を使用する共培養又は共発酵により、微生物から生合成的に生成することもでき、ここで、最初の微生物が、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸中間体を生成し、2番目の微生物が、中間体を6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸に変換する。
【0106】
本明細書で提供される教示及び指針を考慮すると、当技術分野の当業者は、非自然発生の微生物及び方法について、他の微生物と一緒に、サブ経路を有する他の非自然発生の微生物の共培養とともに、及び
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を生成するための当技術分野で周知の他の化学的及び/又は生化学的方法の組み合わせとともに、多種多様な組み合わせ及び並べ換えが存在することを理解するであろう。
【0107】
同様に、宿主生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生成を増加させるための1つ以上の遺伝子破壊の導入のための所望の特性に基づいて、選択することができることが、当業者によって理解される。従って、遺伝的修飾を宿主生物に導入して遺伝子を破壊する場合、類似しているが同一ではない代謝反応を触媒するホモログ、オルソログ、又はパラログを同様に破壊して、所望の代謝反応が充分に破壊されていることを確実にすることができることが理解される。異なる生物間で代謝ネットワークに特定の違いが存在するため、当業者は、所定の生物で破壊された実際の遺伝子が生物間で異なる可能性があることを理解するであろう。しかし、本明細書で提供される教示及び指針を考慮すると、当業者はまた、方法を任意の適切な宿主微生物に適用して、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成を増加させる、目的の種の生物を構築するために必要な同族の代謝的改変を同定できることを理解するであろう。特定の実施態様において、増加した生成は、所望であれば、本明細書に開示されている通り、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成を生物の増殖に共役させ、そして6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生成を生物の増殖に、義務的に共役させることができる。
【0108】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路酵素のコード核酸の供給源は、例えば、コード化された遺伝子産物が参照される反応を触媒することができる任意の種を含み得る。そのような種には原核生物及び真核生物の両方が含まれ、特に限定されるものではないが、古細菌及び真正細菌を含む細菌、ならびに酵母、植物、昆虫、動物、及び哺乳動物(ヒトを含む)を含む。いくつかの実施態様において、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路酵素のコード核酸の供給源は、表1に示される。いくつかの実施態様において、アルデヒド脱水素酵素のコード核酸の供給源は、表1に示される。他の実施態様において、アルデヒド脱水素酵素のコード核酸の供給源は、Acidaminococcus、Collinsella、Peptostreptococcaceae、又は Romboustsiaである。いくつかの実施態様において、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路酵素のコード核酸の供給源は、Escherichia coli、Escherichia coli str. K12、Escherichia coli C、Escherichia coli W、Pseudomonas sp、Pseudomonas knackmussii、Pseudomonas sp. Strain B13、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas stutzeri、Pseudomonas mendocina、Rhodopseudomonas palustris、Mycobacterium tuberculosis、Vibrio cholera、Heliobacter pylori、Klebsiella pneumoniae、Serratia proteamaculans、Streptomyces sp. 2065、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas aeruginosa PAO1、Ralstonia eutropha、Ralstonia eutropha H16、Clostridium acetobutylicum、Euglena gracilis、Treponema denticola、Clostridium kluyveri、Homo sapiens、Rattus norvegicus、Acinetobacter sp. ADP1、Acinetobacter sp. Strain M-1、Streptomyces coelicolor、Eubacterium barkeri、Peptostreptococcus asaccharolyticus、Clostridium botulinum、Clostridium botulinum A3 str、Clostridium tyrobutyricum、Clostridium pasteurianum、Clostridium thermoaceticum (Moorella thermoaceticum)、Moorella thermoacetica Acinetobacter calcoaceticus、Mus musculus、Sus scrofa、Flavobacterium sp、Arthrobacter aurescens、Penicillium chrysogenum、Aspergillus niger、Aspergillus nidulans、Bacillus subtilis、Saccharomyces cerevisiae、Zymomonas mobilis、Mannheimia succiniciproducens、Clostridium ljungdahlii、Clostridium carboxydivorans、Geobacillus stearothermophilus、Agrobacterium tumefaciens、Achromobacter denitrificans、Arabidopsis thaliana、Haemophilus influenzae、Acidaminococcus fermentans、Clostridium sp. M62/1、Fusobacterium nucleatum、Bos taurus、Zoogloea ramigera、Rhodobacter sphaeroides、Clostridium beijerinckii、Metallosphaera sedula、Thermoanaerobacter species、Thermoanaerobacter brockii、Acinetobacter baylyi、Porphyromonas gingivalis、Leuconostoc mesenteroides、Sulfolobus tokodaii、Sulfolobus tokodaii 7、Sulfolobus solfataricus、Sulfolobus solfataricus、Sulfolobus acidocaldarius、Salmonella typhimurium、Salmonella enterica、Thermotoga maritima、Halobacterium salinarum、Bacillus cereus、Clostridium difficile、Alkaliphilus metalliredigenes、Thermoanaerobacter tengcongensis、Saccharomyces kluyveri、Helicobacter pylori、Corynebacterium glutamicum、Clostridium saccharoperbutylacetonicum、Pseudomonas chlororaphis、Streptomyces clavuligerus、Campylobacter jejuni、Thermus thermophilus、Pelotomaculum thermopropionicum、Bacteroides capillosus、Anaerotruncus colihominis、Natranaerobius thermophilius、Archaeoglobus fulgidus、Archaeoglobus fulgidus DSM 4304、Haloarcula marismortui、Pyrobaculum aerophilum、Pyrobaculum aerophilum str. IM2、Nicotiana tabacum、Menthe piperita、Pinus taeda、Hordeum vulgare、Zea mays、Rhodococcus opacus、Cupriavidus necator、Bradyrhizobium japonicum、Bradyrhizobium japonicum USDA110,Ascarius suum、butyrate-producing bacterium L2-50、Bacillus megaterium、Methanococcus maripaludis、Methanosarcina mazei、Methanosarcina mazei、Methanocarcina barkeri、Methanocaldococcus jannaschii、Caenorhabditis elegans、Leishmania major、Methylomicrobium alcaliphilum 20Z、Chromohalobacter salexigens、Archaeglubus fulgidus、Chlamydomonas reinhardtii、trichomonas vaginalis G3、Trypanosoma brucei、Mycoplana ramose、Micrococcus luteas、Acetobacter pasteurians、Kluyveromyces lactis、Mesorhizobium loti、Lactococcus lactis、Lysinibacillus sphaericus、Candida boidinii、Candida albicans SC5314、Burkholderia ambifaria AMMD、Ascaris suun、Acinetobacter baumanii、Acinetobacter calcoaceticus、Burkholderia phymatum、Candida albicans、Clostridium subterminale、Cupriavidus taiwanensis、Flavobacterium lutescens、Lachancea kluyveri、Lactobacillus sp. 30a、Leptospira interrogans、Moorella thermoacetica、Myxococcus xanthus、Nicotiana glutinosa、Nocardia iowensis (sp. NRRL 5646)、Pseudomonas reinekei MT1、Ralstonia eutropha JMP134、Ralstonia metallidurans、Rhodococcus jostii、Schizosaccharomyces pombe、Selenomonas ruminantium、Streptomyces clavuligenus、Syntrophus aciditrophicus、Vibrio parahaemolyticus、Vibrio vulnificusなどの種、並びに本明細書に開示されているか又は対応する遺伝子の供給源生物として利用可能な他の例示的な種(実施例を参照)である。しかし、現在395の微生物ゲノムとさまざまな酵母、真菌、植物、哺乳類のゲノムを含む550以上の種(これらの半分以上はNCBIなどの公開データベースで利用可能)について利用可能な完全なゲノム配列では、関連種又は遠隔種の1つ以上の遺伝子について、必要な6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成活性をコードする遺伝子(例えば、既知の遺伝子のホモログ、オルソログ、パラログ、及び非オルソログ遺伝子置換を含む)の同定、及び生物間の遺伝的改変の交換は日常的であり、当技術分野でよく知られている。従って、大腸菌などの特定の生物に関して本明細書に記載の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成を可能にする代謝的改変は、原核生物及び真核生物を同様に含む他の微生物に容易に適用することができる。本明細書で提供される教示及び指針を考慮すると、当業者は、1つの生物で例示される代謝的改変が他の生物に等しく適用され得ることを承知しているであろう。
【0109】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路が無関係の種に存在する場合などのいくつかの例では、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成は、例えば、参照された反応を置き換えるために類似しているが同一ではない代謝反応を触媒する無関係の種からのパラログの外因性発現によって、宿主種に付与され得る。異なる生物間では、代謝ネットワーク間に特定の違いが存在するため、当業者は、異なる生物間の実際の遺伝子使用が異なる可能性があることを理解するであろう。しかしながら、本明細書で提供される教示及び指針を考慮すると、当業者はまた、前記教示及び方法が、本明細書で例示されるものと同族の代謝的改変を使用してすべての微生物に適用されて、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を合成する目的の種において微生物を構築できることを理解するであろう。
【0110】
例えば、細菌、酵母、真菌、又は発酵プロセスに適用可能な他の様々な微生物のいずれかから、宿主微生物を選択することができ、及び細菌、酵母、真菌、又は発酵プロセスに適用可能な他の様々な微生物のいずれかで、非自然発生の微生物を作成することができる。例示的な細菌には、Escherichia coli、Klebsiella oxytoca、Anaerobiospirillum succiniciproducens、Actinobacillus succinogenes、Mannheimia succiniciproducens、Rhizobium etli、Bacillus subtilis、Corynebacterium glutamicum、Gluconobacter oxydans、Zymomonas mobilis、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Streptomyces coelicolor、Clostridium acetobutylicum、Pseudomonas fluorescens、及び Pseudomonas putidaから選択される種が含まれる。例示的な酵母又は真菌には、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Aspergillus terreus、Aspergillus niger、Pichia pastoris、Rhizopus arrhizus、Rhizobus oryzaeなどから選択される種が含まれる。例えば、大腸菌は遺伝子工学に適した充分に特性解析された微生物であるため、特に有用な宿主生物である。他の特に有用な宿主生物には、Saccharomyces cerevisiaeなどの酵母が含まれる。任意の適切な微生物宿主生物を使用して、代謝及び/又は遺伝的修飾を導入して、所望の生成物を生成することができることが理解される。
【0111】
非自然発生の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成宿主の発現レベルを構築及び試験するための方法は、例えば、当技術分野で周知の組換え及び検出方法によって実施することができる。そのような方法は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York (2001); 及び Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, MD (1999)に記載されている。
【0112】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生成経路に関与する外因性核酸配列は、特に限定されるものではないが、コンジュゲーション、電気穿孔法、化学的形質転換、形質導入、トランスフェクション、及び超音波形質転換を含む当技術分野で周知の技術を使用して、安定的又は一時的に宿主細胞に導入することができる。大腸菌又は他の原核細胞での外因性発現の場合、真核生物の核酸の遺伝子又はcDNA中のいくつかの核酸配列は、N末端ミトコンドリアの標的シグナル又は他の標的シグナルをコードすることができ、これらは、原核生物の宿主細胞に形質転換する前に、所望であれば除去することができる。例えば、ミトコンドリアリーダー配列の除去は、大腸菌での発現の増加をもたらした(Hoffmeister et al., J. Biol. Chem. 280:4329-4338 (2005))。酵母又は他の真核細胞での外因性発現の場合、遺伝子は、リーダー配列を追加せずにサイトゾルで発現するか、又はミトコンドリア標的化や宿主細胞に適した分泌シグナルなどの適切な標的化配列を追加することにより、ミトコンドリアや他のオルガネラを標的にするか、分泌を標的にすることができる。すなわち、標的化配列を除去又は含むための核酸配列への適切な修飾を外因性核酸配列に組み込んで、望ましい特性を付与することができることが理解される。さらに、遺伝子は、当技術分野で周知の技術を用いてコドン最適化に供して、タンパク質の最適化された発現を達成することができる。
【0113】
宿主生物において機能する発現制御配列に作動可能に連結された本明細書に例示されるような核酸であって、1つ以上の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路をコードする核酸を含む1つ以上の発現ベクターを構築することができる。微生物宿主生物での使用に適用可能な発現ベクターには、例えばプラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム、及び人工染色体が含まれ、宿主染色体への安定した組み込みのために機能可能なベクター及び選択配列又はマーカーが含まれる。さらに、発現ベクターは、1種以上の選択可能なマーカー遺伝子及び適切な発現制御配列を含むことができる。例えば、抗生物質又は毒素に対する耐性を提供するか、栄養要求性の欠乏を補完するか、又は培地に存在しない重要な栄養素を供給する、選択可能なマーカー遺伝子を含めることもできる。発現制御配列は、当技術分野で周知の構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含むことができる。2つ以上の外因性コード核酸が共発現される場合、両方の核酸は、例えば単一の発現ベクター又は別個の発現ベクターに挿入され得る。単一ベクターで発現の場合、コード核酸は、1つの共通の発現制御配列に作動可能に連結されるか、又は1つの誘導性プロモーターや1つの構成的プロモーターなどの異なる発現制御配列に連結され得る。代謝経路又は合成経路に関与する外因性核酸配列の形質転換は、当技術分野で周知の方法を使用して確認することができる。そのような方法には、例えば、mRNAのノーザンブロット又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの核酸分析、又は遺伝子産物の発現のための免疫ブロッティング、又は導入された核酸配列又はその対応する遺伝子産物の発現を試験するための他の適切な分析方法が含まれる。当業者には、外因性核酸が所望の生成物を生成するのに充分な量で発現されることが理解され、さらに、本明細書に開示される当業者に周知の方法を使用して、充分な発現を得るために発現レベルを最適化できることが理解される。
【0114】
いくつかの実施態様において、アジピン酸、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸などの所望の中間体又は生成物を生成するための方法が提供される。例えば、アジピン酸塩を生成するための方法は、アジピン酸経路を有する非自然発生の微生物を培養することを含むことができ、この経路は、アジピン酸を生成する条件下で充分な時間、アジピン酸を生成するのに充分な量で発現されるアジピン酸経路の酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含み、アジピン酸経路は、サクシニルCoA:アセチルCoAアシル転移酵素、3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素、3-ヒドロキシアジピルCoA脱水酵素、5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素、及びアジピルCoA合成酵素、又はホスホトランスアジピラーゼ/アジピン酸キナーゼ、又はアジピルCoA:アセチルCoA転移酵素、又はアジピルCoA加水分解酵素を含む。さらに、アジピン酸塩を生成するための方法は、アジピン酸経路を有する非自然発生の微生物を培養することを含むことができ、この経路は、アジピン酸を生成する条件下で充分な時間、アジピン酸を生成するのに充分な量で発現されるアジピン酸経路酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含み、アジピン酸経路は、サクシニルCoA:アセチルCoAアシル転移酵素、3-オキソアジピルCoA転移酵素、3-オキソアジピン酸還元酵素、3-ヒドロキシアジピン酸脱水酵素、及び2-エン酸還元酵素を含む。
【0115】
さらに、6-アミノカプロン酸を生成するための方法は、6-アミノカプロン酸経路を有する非自然発生の微生物を培養することを含むことができ、この経路は、6-アミノカプロン酸を生成する条件下で充分な時間、6-アミノカプロン酸を生成するのに充分な量で発現される6-アミノカプロン酸経路の酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含み、6-アミノカプロン酸経路は、CoA依存性アルデヒド脱水素酵素及びアミノ基転移酵素又は6-アミノカプロン酸脱水素酵素を含む。さらに、カプロラクタムを生成するための方法は、カプロラクタム経路を有する非自然発生の微生物を培養することを含むことができ、この経路は、カプロラクタムを生成する条件下で充分な時間、カプロラクタムを生成するのに充分な量で発現されるカプロラクタム経路酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含み、カプロラクタム経路は、CoA依存性アルデヒド脱水素酵素、アミノ基転移酵素、又は6-アミノカプロン酸脱水素酵素、及びアミド加水分解酵素を含む。
【0116】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生成を試験するための適切な精製及び/又はアッセイは、周知の方法を使用して実施することができる。三重培養などの適切な重複培養物は、試験する遺伝子操作された菌株ごとに増殖させることができる。例えば、遺伝子操作された生産宿主での生成物と副産物の形成を追跡することができる。最終生成物と中間体、及びその他の有機化合物は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、GC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析)、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)、又は当技術分野で周知の日常的な方法を使用する他の適切な分析方法などの方法で分析することができる。発酵ブロス中の生成物の放出もまた、培養上清で試験することができる。副産物及び残留グルコースは、例えばグルコース及びアルコールの屈折率検出器を使用するHPLC、及び有機酸用のUV検出器(Lin et al., Biotechnol. Bioeng. 90:775-779 (2005))、又は当技術分野で周知の他の適切なアッセイ及び検出方法によって定量することができる。外因性DNA配列からの個々の酵素活性もまた、当技術分野で周知の方法を使用してアッセイすることができる。
【0117】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸は、当技術分野で周知の様々な方法を使用して、培養物中の他の成分から分離することができる。そのような分離方法には、例えば、抽出方法、ならびに連続液液抽出、浸透気化、膜濾過、膜分離、逆浸透、電気透析、蒸留、結晶化、遠心分離、抽出濾過、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、及び限外ろ過を含む方法が含まれる。上記の方法はすべて当技術分野でよく知られている。
【0118】
本明細書に記載の非自然発生の微生物のいずれも、生合成産物を生成及び/又は分泌するために培養することができる。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成物質は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成生成のために培養することができる。
【0119】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生成のために、組換え株は、炭素源及び他の必須栄養素を含む培地中で培養される。プロセス全体のコストを削減するために、発酵槽内の嫌気性条件を維持することが望ましい場合、及び非常に望ましい場合がある。このような条件は、例えば、最初に培地に窒素を散布し、次にフラスコを隔膜とクリンプキャップで密封することによって得ることができる。嫌気性では増殖が観察されない菌株の場合、限定された通気のために隔膜に小さな穴を開けることにより、微好気性又は実質的に嫌気性の条件を適用できる。例示的な嫌気性条件は以前に記載されており、当技術分野でよく知られている。例示的な好気性及び嫌気性条件は、例えば、2011年5月24日に発行された米国特許第7,947,483号に記載されている。発酵は、本明細書に開示されるように、バッチ、流加バッチ、又は連続様式で実施することができる。
【0120】
所望であれば、培地のpHは、培地を望ましいpHに維持するために必要に応じて、NaOH又は他の塩基などの塩基又は酸を添加することにより、特に約7のpHなどの中性pHに維持することができる。増殖速度は、分光光度計(600nm)を使用して光学密度を測定することによって決定することができ、グルコース取り込み速度は、炭素源の枯渇を経時的に追跡することによって決定することができる。
【0121】
増殖培地は、例えば非自然発生の微生物に炭素源を供給することができる任意の炭水化物源を含むことができる。そのような供給源には、例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、及びデンプンなどの糖が含まれる。炭水化物の他の供給源には、例えば再生可能な原料及びバイオマスが含まれる。この方法で原料として使用できるバイオマスの例示的なタイプには、セルロース系バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、及びリグニン原料、又は原料の一部が含まれる。そのようなバイオマス原料は、例えばグルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、フルクトース及びデンプンなどの炭素源として有用な炭水化物基質を含む。本明細書で提供される教示及び指針を考慮すると、当業者は、上記に例示されたもの以外の再生可能な原料及びバイオマスもまた、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生成のための微生物の培養に使用できることを理解するであろう。
【0122】
上に例示したような再生可能な原料に加えて、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸微生物もまた、その炭素源としてのシンガス(syngas)上での増殖のために修飾することができる。この特定の実施態様において、1種以上のタンパク質又は酵素は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成生物において発現され、シンガス又は他のガス状炭素源の利用のための代謝経路を提供する。
【0123】
シンガス又は発生炉ガスとしても知られる合成ガスは、石炭及び炭素質材料(農作物及び残留物を含むバイオマス材料など)のガス化の主要な生成物である。シンガスは主にH2とCOの混合物であり、特に限定されるものではないが、石炭、石炭油、天然ガス、バイオマス、廃有機物を含むあらゆる有機原料のガス化から得ることができる。ガス化は一般に、高い燃料対酸素比の下で実行される。主にH2とCOであるが、シンガスにはCO2やその他のガスが少量含まれている場合もある。従って合成ガスは、COやさらにCO2などの費用効果の高いガス状炭素源を提供する。
【0124】
ウッド-リュングダール(Wood-Ljungdahl)経路は、CO及びH2からアセチルCoA及び他の生成物(例えば酢酸)への変換を触媒する。COとシンガスを利用できる生物はまた、一般に、ウッド-リュングダール経路に包含される同じ基本的な酵素セットと変換を通して、CO2とCO2/H2の混合物を利用する能力も有する。微生物によるCO2の酢酸へのH2依存性変換は、COも同じ生物によって使用でき、同じ経路が関与していることが明らかになるずっと前に認識されていた。多くのアセトゲン(acetogen)は、必要な還元当量を供給するために水素が存在する限り、CO2の存在下で増殖し、酢酸などの化合物を生成することが示されている(例えば、Drake, Acetogenesis, pp. 3-60 Chapman and Hall, New York, (1994)を参照)。これは、次の式で要約することができる。
【0125】
2CO2+4H2+nADP+nPi→CH3COOH+2H2O+nATP。
【0126】
従って、ウッド-リュングダール経路を有する非自然発生の微生物は、アセチルCoA及び他の所望の生成物の生成のために、CO2とH2の混合物も利用することができる。
【0127】
ウッド-リュングダール経路は当技術分野で周知であり、2つの分岐、すなわち(1)メチル分岐と(2)カルボニル分岐、に分離することができる12の反応からなる。メチル分岐はシンガスをメチルテトラヒドロ葉酸(メチル-THF)に変換し、一方カルボニル分岐はメチル-THFをアセチルCoAに変換する。メチル分岐における反応は、次の酵素によって順番に触媒される:フェレドキシン酸化還元酵素、蟻酸脱水素酵素、ホルミルテトラヒドロ葉酸合成酵素、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロ脱水酵素、メチレンテトラヒドロ葉酸脱水素酵素、及びメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素。カルボニル分岐の反応は、次の酵素又はタンパク質によって順番に触媒される:コバラミドコリノイド/鉄-硫黄タンパク質、メチル転移酵素、一酸化炭素脱水素酵素、アセチルCoA合成酵素、アセチルCoA合成酵素ジスルフィド還元酵素、及びヒドロメナーゼ、そしてこれらの酵素はまた、メチルテトラヒドロ葉酸:コリノイドタンパク質メチル転移酵素(例えばAcsE)、コリノイド鉄-硫黄タンパク質、ニッケル-タンパク質集合タンパク質(例えばAcsF)、フェレドキシン、アセチルCoA合成酵素、一酸化炭素脱水素酵素、及びニッケル-タンパク質集合タンパク質(例えばCooC)と呼ばれる。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路を生成するのに充分な数のコード核酸を導入するための、本明細書で提供される教示及び指針に従って、当業者は、少なくとも宿主生物に存在しないウッド-リュングダール酵素又はタンパク質をコードする核酸を導入することに関して、同じ遺伝子操作設計を実施することができることを理解するであろう。従って、修飾された生物が完全なウッド-リュングダール経路を含むように、微生物に1種以上のコード核酸を導入すると、シンガス利用能力が付与される。
【0128】
さらに、一酸化炭素脱水素酵素及び/又はヒドロゲナーゼ活性と共役した還元的(逆)トリカルボン酸回路はまた、CO、CO2及び/又はH2からアセチルCoA及び酢酸塩などの他の生成物への変換のために使用することができる。還元的TCA経路を介して炭素を固定できる生物は、以下の酵素の1つ以上を利用することができる:ATPクエン酸-リアーゼ、クエン酸リアーゼ、アコニターゼ、イソクエン酸脱水素酵素、α-ケトグルタレート:フェレドキシン酸化還元酵素、サクシニルCoA合成酵素、サクシニルCoA転移酵素、フマル酸還元酵素、フマラーゼ、リンゴ酸脱水素酵素、NAD(P)フェレドキシン酸化還元酵素、一酸化炭素脱水素酵素、及びヒドロゲナーゼ。具体的には、CO及び/又はH2から一酸化炭素脱水素酵素及びヒドロゲナーゼによって抽出された還元等価物は、還元的TCAサイクルを介してCO2をアセチルCoA又は酢酸塩に固定するために利用することができる。酢酸塩は、アセチルCoA転移酵素、酢酸キナーゼ/ホスホトランスアセチラーゼ、及びアセチルCoA合成酵素などの酵素によって、アセチルCoAに変換することができる。アセチルCoAは、ピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素及び糖新生の酵素によって、p-トルエート、テレパサレート、又は(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オキソブトキシ)ホスホン酸前駆体、グリセルアルデヒド-3-リン酸、ホスホエノールピルビン酸、及びピルビン酸に変換することができる。p-トルエート、テレフタレート、又は(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オキソブトキシ)ホスホン酸経路を生成するのに充分な数のコード核酸を導入するための、本明細書で提供される教示及び指針に従って、当業者は、少なくとも宿主生物に存在しない還元的TCA経路酵素又はタンパク質をコードする核酸を導入することに関して、同じ遺伝子操作設計を実施することもできることを理解するであろう。従って、修飾された生物が完全な還元的TCA経路を含むように、微生物に1種以上のコード核酸を導入すると、シンガス利用能力が付与される。
【0129】
本明細書で提供される教示及び指針を考慮すると、当業者は、炭水化物などの炭素源上で増殖したときに、生合成された化合物を分泌する非自然発生の微生物が生成され得ることを、理解するであろう。そのような化合物には、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸、ならびに6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路の中間代謝物のいずれかが含まれる。必要なのは、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生合成経路の一部又はすべての包含を含む、所望の化合物又は中間体の生合成を達成するために必要な酵素活性の1つ以上を遺伝子操作することである。従って、いくつかの実施態様は、炭水化物上で増殖したときに、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を生成及び/又は分泌し、及び炭水化物で増殖させた時に、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路に示される中間代謝物のいずれかを生成及び/又は分泌する非自然発生の微生物を提供する。例えば、アジピン酸を生成する微生物は、必要に応じて、中間体、例えば3-オキソアジピルCoA、3-ヒドロキシアジピルCoA、5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA、又はアジピルCoAから合成を開始することができる(図1を参照)。さらに、アジピン酸を生成する微生物は、中間体、例えば3-オキソアジピルCoA、3-オキソアジピン酸、3-ヒドロキシアジピン酸、又はヘキサ-2-エン二酸から合成を開始することができる。6-アミノカプロン酸を生成する微生物は、中間体、例えばアジピン酸セミアルデヒドから合成を開始することができる。カプロラクタムを生成する微生物は、必要に応じて、中間体、例えばアジピン酸セミアルデヒド又は6-アミノカプロン酸から合成を開始することができる(図1を参照)。
【0130】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物は、トランス-エノイルCoA還元酵素(TER)をコードする外因性に発現された核酸をさらに含む。TERは、5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoAと反応してアジピルCoAを生成する。いくつかの実施態様において、TERは既知のTERであり得、他の実施態様において、TER酵素は遺伝子操作される。いくつかの実施態様において、遺伝子操作されたトランス-エノイルCoA還元酵素は、配列番号189のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、ここで、遺伝子操作されたトランス-エノイルCoA還元酵素は、表2に示されている変種のアミノ酸配列変化のいずれかを含む。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0131】
いくつかの実施態様において、非自然発生の微生物はヘキサメチレンジアミン経路を有し、この経路は、(i)6-アミノアカプロイルCoA転移酵素、(ii)6-アミノカプロイルCoA合成酵素、(iii)6-アミノカプロイルCoA還元酵素、(iv)ヘキサメチレンジアミンアミノ基転移酵素、(v)ヘキサメチレンジアミン脱水素酵素、(v)又は酵素(i)~(v)の1種以上の組み合わせを含む。他の実施態様において、非自然発生の微生物はヘキサメチレンジアミン経路を有し、この経路は、3-オキソアジピルCoAチオラーゼ(Thl)、3-オキソアジピルCoA脱水素酵素(Hbd)、及び3-オキソアジピルCoA脱水酵素(「クロトナーゼ」、又はCrt)、5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素(Ter)、アミノ基転移酵素(HMD TA)、及びカルボン酸還元酵素(CAR)を含む。
【0132】
非自然発生の微生物は、本明細書に例示されるような当技術分野で周知の方法を使用して構築され、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を生成するのに充分な量で、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸経路酵素をコードする少なくとも1種の核酸を外因性に発現する。微生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を生成するのに充分な条件下で培養されることが理解される。本明細書で提供される教示及び指針に従って、非自然発生の微生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成を達成して、約0.1~200mM以上の細胞内濃度をもたらすことができる。一般に、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の細胞内濃度は、約3~150mM、具体的には約5~125mM、より具体的には約8~100mMであり、約10mM、20mM、50mM、80mM、又はそれ以上を含む。これらの例示的な範囲のそれぞれの間及びそれを超える細胞内濃度もまた、非自然発生の微生物から達成することができる。
【0133】
いくつかの実施態様において、培養条件は、嫌気性又は実質的に嫌気性の増殖、又は維持条件を含む。例示的な嫌気性条件は以前に記載されており、当技術分野でよく知られている。発酵プロセスの例示的な嫌気性条件は本明細書に記載されており、例えば2011年5月24日に発行された米国特許第7,947,483号に記載されている。これらの条件のいずれも、非自然発生の微生物で及び当技術分野でよく知られている他の嫌気性条件で使用することができる。このような嫌気性条件下で、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成物質は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を、5~10mM以上の細胞内濃度、及び本明細書に例示される他のすべての濃度で合成することができる。上記の説明が細胞内濃度に言及しているとしても、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成微生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸を細胞内で生成し、及び/又は生成物を培地に分泌することができる。
【0134】
培養条件は、例えば、液体培養法、ならびに発酵及び他の大規模培養法を含むことができる。本明細書に記載されるように、生合成産物の特に有用な収量は、嫌気性又は実質的に嫌気性の培養条件下で得ることができる。
【0135】
本明細書に記載されるように、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成を達成するための1つの例示的な増殖条件は、嫌気性培養又は発酵条件を含む。特定の実施態様において、非自然発生の微生物は、嫌気性又は実質的に嫌気性の条件下で、維持、培養、又は発酵され得る。簡単に言えば、嫌気性条件は酸素のない環境を指す。実質的に嫌気性の条件には、例えば、培地中の溶存酸素濃度が0~10%飽和で維持されるような、培養、バッチ発酵、又は連続発酵が含まれる。実質的に嫌気性の条件には、1%未満の酸素の雰囲気で維持された密閉チャンバー内の液体培地中又は固体寒天上で、細胞を増殖又は休止させることも含まれる。酸素のパーセントは、例えば、培養物にN2/CO2混合物又は他の適切な1つ以上の非酸素ガスを散布することによって維持することができる。
【0136】
本明細書に記載の培養条件は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の製造のために、スケールアップ及び連続的に増殖させることができる。例示的な増殖法には、例えば、流加バッチ発酵とバッチ分離;流加バッチ発酵と連続分離、又は連続発酵と連続分離が含まれる。これらのプロセスはすべて、当技術分野でよく知られている。発酵方法は、商業的な量の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成生成に特に有用である。一般に、及び非連続培養方法と同様に、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の連続及び/又はほぼ連続生成には、非自然発生の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成生物を、指数期の増殖を維持及び/又はほぼ維持するのに充分な栄養素及び培地中で培養することを含む。そのような条件下での連続培養は、例えば、1日、2、3、4、5、6、又は7日以上を含み得る。さらに、連続培養には、1週間、2週間、3週間、4週間、又は5週間以上、最大数か月が含まれる。あるいは、特定の用途に適している場合、生物を数時間培養することができる。連続的及び/又はほぼ連続的な培養条件はまた、これらの例示的な期間の間のすべての時間間隔を含み得ることが理解されるべきである。さらに、微生物を培養する時間は、所望の目的のために充分な量の生成物を生成するのに充分な期間であることが理解される。
【0137】
発酵方法は当技術分野で周知である。簡単に言えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成生成のための発酵は、例えば、流加バッチ発酵とバッチ分離;流加バッチ発酵と連続分離、又は連続発酵と連続分離に利用することができる。バッチ及び連続発酵方法の例は、当技術分野でよく知られている。
【0138】
相当量の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の連続生産のために、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成物質を使用する上記の発酵方法に加えて、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸生成物質はまた、所望であれば、例えば、生成物を他の化合物に変換するために同時に化学合成方法に供することができるか、又は生成物を発酵培養物から分離し連続的に化学変換に供して、生成物を他の化合物に変換することができる。本明細書に記載されるように、3-オキソアジピン酸塩、ヘキサ-2-エン二酸を利用するアジピン酸経路の中間体は、例えば、白金触媒上での化学水素化によってアジピン酸に変換することができる。
【0139】
本明細書に記載されるように、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、又はレブリン酸の生合成を達成するための例示的な増殖条件は、培養条件への浸透圧保護剤の添加を含む。特定の実施態様において、非自然発生の微生物は、浸透圧保護剤の存在下で、上記のように維持、培養、又は発酵され得る。簡単に言えば、浸透圧保護剤は、浸透圧調節剤として作用し、本明細書に記載の微生物が浸透圧ストレスに耐えるのを助ける化合物を意味する。浸透圧保護剤には、特に限定されるものではないが、ベタイン、アミノ酸、及び糖トレハロースが含まれる。このような非限定的な例は、グリシンベタイン、プラリンベタイン、ジメチルテチン、ジメチルスロニオプロピオネート、3-ジメチルスルホニオ-2-メチルプロピオネート、ピペコリン酸、ジメチルスルホニオアセテート、コリン、L-カルニチン、及びエクトインである。1つの態様において、浸透圧保護剤はグリシンベタインである。本明細書に記載の微生物を浸透圧ストレスから保護するのに適した浸透圧保護剤の量及び種類は、使用される微生物に依存することが当業者には理解されている。例えば、実施例XXIIに記載されているように、様々な量の6-アミノカプロン酸の存在下の大腸菌は、2mMのグリシンベタインの存在下で適切に増殖される。培養条件における浸透圧保護剤の量は、例えば、約0.1mM以下、約0.5mM以下、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下、約2.5mM以下、約3.0mM以下、約5.0mM以下、約7.0mM以下、約10mM以下、約50mM以下、約100mM以下、又は約500mM以下であり得る。
【0140】
経路をうまく遺伝子操作することは、充分な活性及び特異性を有する酵素の適切なセットを特定することを含む。これは、適切な酵素セットの特定、対応する遺伝子の生成宿主へのクローニング、発酵条件の最適化、及び発酵後の生成物形成のアッセイを含む。6-アミノカプロン酸又はカプロラクタムの生成のための生成宿主を遺伝子操作するために、1つ以上の外因性DNA配列を宿主微生物で発現させることができる。さらに、微生物は内因性遺伝子を機能的に削除することができる。これらの修飾により、再生可能な原料を使用する6-アミノカプロン酸又はカプロラクタムの生成が可能になる。
【0141】
いくつかの実施態様において、6-アミノカプロン酸のHMDAへの変換中に、環状イミン又はカプロラクタムの生成を最小にするか又はさらには排除することは、官能基(例えばアセチル、サクシニル)を6-アミノカプロン酸のアミン基へ付加して、これを環化から防御することを含む。これは、大腸菌においてL-グルタミン酸からオルニチンを生成することに似ている。具体的には、グルタミン酸は、まずN-アセチルグルタミン酸合成酵素によってN-アセチル-L-グルタミン酸に変換される。次にN-アセチル-L-グルタミン酸が活性化されてN-アセチルグルタミルリン酸になり、これが還元及びアミノ基転移されてN-アセチル-L-オルニチンが生成される。次に、N-アセチル-L-オルニチンデアセチラーゼによって、アセチル基がN-アセチル-L-オルニチンから除去されて、L-オルニチンが生成される。グルタミン酸からグルタミン酸-5-リン酸が生成された後に、グルタミン酸-5-セミアルデヒドに還元されると、(S)-1-ピロリン-5-カルボン酸(グルタミン酸-5-セミアルデヒドから自発的に生成される環状イミン)が生成されるため、このような経路が必要である。6-アミノカプロン酸からHMDAを生成する場合、この工程は、6-アミノカプロン酸をアセチル-6-アミノカプロン酸にアセチル化し、カルボン酸基をCoA又はリン酸基で活性化し、還元し、アミノ化し、そして脱アセチル化することを含み得る。
【実施例
【0142】
(実験)
実施例1.アジピルCoAに対する活性についてのアルデヒド脱水素酵素候補のスクリーニング
アルデヒド脱水素酵素(Ald)候補をコードする遺伝子を、複数の種のゲノムにおいて生物情報学的に同定した(表1)。各アルデヒド脱水素酵素をコードする遺伝子を合成し、大腸菌で発現させ、Ald活性を評価した。
【0143】
表1のAld酵素候補をコードする遺伝子を、構成的プロモーター下で低コピーベクターにクローン化し、構築物を標準的な技術を使用して大腸菌に形質転換した。形質転換体をLB培地中で抗生物質の存在下で35℃で一晩培養した後、細胞を室温で15,000rpmで採取した。溶解物を調製するために、細胞を、リゾチーム、ヌクレアーゼ、及び10mM DTTを含む化学溶解溶液に再懸濁し、室温で少なくとも30分間インキュベートした。得られた溶解物を使用して、アルデヒド脱水素酵素活性を試験した。
【0144】
溶解物(5μl)をアッセイ混合物に加えて、最終濃度が0.1Mのトリス-HCl、pH7.5、2.5mM アジピルCoA(AdCoA)、及び0.5mM NADH又は0.5mM NADPHいずれかである総量が20μLを得た。このアッセイを使用して、すべてのAld酵素候補をスクリーニングした。一部のAld候補は、サクシニルCoA(SuCoA)又はアセチルCoA(AcCoA)を基質として使用してアッセイした。AdCoA、SuCoA、及びAcCoAは、商行的供給業者から入手した。活性は、CoA基質の存在下でNADH又はNADPHの蛍光の線形的減少によってモニターした。NADH又はNADPHのいずれかを使用してアジピルCoAに対して有意に活性であったAldは、表3で陽性(+)とし、活性がほとんど又はまったくないものは陰性(-)で示した。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【0145】
実施例2.基質特異性を決定するためのアルデヒド脱水素酵素アッセイ
いくつかのアルデヒド脱水素酵素の基質優先性を決定するために、基質CoA枯渇アッセイを、サクシニルCoA及びアジピルCoA基質を使用して行なった。このアッセイでは、基質溶液は0.1 M トリス-HCl、pH7.5、1mMアジピルCoA、0.2mMサクシニルCoA、及び0.2mMアセチルCoAを含有し、過剰量の1.5mMのNADH又はNADPH補助因子を含有した。溶解物をアッセイ緩衝液に添加することにより反応を開始し、室温で2時間インキュベートした。反応を1%蟻酸でクエンチし、次にLC/MS分析法で評価して、残留基質CoAのそれぞれを定量した。Ald活性は、各CoA基質の%枯渇として測定した。アッセイ中に存在する別のCoA基質と比較して特定のCoA基質のより高い%枯渇は、特定の基質CoAに対する優先性を示した。図2は、Peptostreptococcaceae 細菌の経口アルデヒド脱水素酵素(配列番号7)、Acidaminococcus massiliensisのアルデヒド脱水素酵素(配列番号28)、Collinsella sp. のGD7アルデヒド脱水素酵素(配列番号60)、及びRomboutsia lituseburensisのDSMアルデヒド脱水素酵素(配列番号107)は、アッセイ混合物からのサクシニルCoAよりもはるかに多くのアジピルCoAを枯渇させたため、アジピルCoA優先性があると指定した。Porphyromonas gingivalis W83からのアルデヒド脱水素酵素(配列番号2)はサクシニルCoA優先性があることが見出された。
【0146】
実施例3.アルデヒド脱水素酵素のインビボアッセイ
アジピルCoA基質優先性を有することが実証されたアルデヒド脱水素酵素はまたインビボアッセイでも試験し、ここで、3-オキソアジピルCoAチオラーゼ(Thl)、3-オキソアジピル-CoA脱水素酵素(Hbd)、及び3-オキソアジピルCoA脱水酵素(「クロトナーゼ」又はCrt)、5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素(Ter)、及びアミノ基転移酵素(TA)をコードする遺伝子を発現する大腸菌株を、アルデヒド脱水素酵素(Ald)遺伝子を含有する構築物を用いて形質転換した。Thl、Hbd、Crt、Ter、TA大腸菌株は、Ald酵素を除いて、6-アミノカプロン酸(6ACA)の生成に必要なすべての経路酵素を含有した。Porphyromonas gingivalis W83Ald(配列番号2)、Peptostreptococcaceae bacterium経口Ald(配列番号7)、Acidaminococcus massiliensis Ald(配列番号28)、Collinsella sp. GD7Ald(配列番号60)、及びRomboutsia lituseburensis DSMAld(配列番号107)をコードする遺伝子を、構成的プロモーター下の低コピー数プラスミドベクターに別々にクローン化した。Ald遺伝子を発現するためのプラスミドを、標準的な技術を使用してThl/Hbd/Crt/Ter/TA株に形質転換した。次に、Ald遺伝子のいずれかを含む形質転換体を6-アミノカプロン酸(6ACA)生成について試験した。遺伝子操作された大腸菌細胞に最小培地中の2%グルコースを添加し、35°Cで18時間インキュベートした後、細胞を採取し、上清を6ACAについて分析用HPLC又は標準LS/MS分析法で評価した。表4に示すように、Thl、Hbd、Crt、Ter、及びTA遺伝子を含む大腸菌におけるAld酵素をコードする遺伝子の発現は、これらの菌株による6ACA生成をもたらした。
【表4】
【0147】
実施例4.アルデヒド脱水素酵素の反応速度特性解析
反応速度特性解析は、実施例1に記載された溶解物スクリーニングと同様の条件下で行なった。しかし、この場合、細胞溶解物の代わりに精製タンパク質を使用した。Acidaminococcus massiliensis Ald(配列番号28)、Collinsella sp. GD7Ald(配列番号60)、及びRomboutsia lituseburensis DSMAld(配列番号107)のそれぞれを、親和性クロマトグラフィーを使用して精製した。これらのアッセイでは、各基質CoAの濃度を変化させて、代謝回転数(kcat)、酵素の基質に対する酵素の親和性(KM)、各基質に対する選択した各Ald酵素の触媒効率(kcat/KM)を決定し、以下の表5に示した。
【表5】
【0148】
様々な基質を使用して様々なアルデヒド脱水素酵素の触媒効率(kcat/KM)を、比較のために棒グラフでプロットした(図3A)。サクシニルCoAに対するアジピルCoAのAldホモログの触媒効率(kcat/KM)を、アジピルCoAのkcat/KM対サクシニルCoAのkcat/KMの比率として計算した。図3Bは、アッセイした3つすべてのAld酵素が、サクシニルCoAよりもアジピルCoAに対して大きな触媒効率を有することを示す。図3Cは、アッセイした3つ全てのAld酵素が、アセチルCoAよりもアジピルCoAに対して大きな触媒効率を有することを示す。
【0149】
実施例5:アルデヒド脱水素酵素のインビボアッセイ
【0150】
アジピルCoA基質優先性を有することが実証されたアルデヒド脱水素酵素を、実施例3に記載の、3-オキソアジピルCoAチオラーゼ(Thl)、3-オキソアジピル-CoA脱水素酵素(Hbd)、及び3-オキソアジピルCoA脱水酵素(「クロトナーゼ」又はCrt)、5-カルボキシ-2-ペンテノイルCoA還元酵素(Ter)、及びアミノ基転移酵素(TA)をコードする遺伝子を発現する大腸菌株をまた、2種の追加の遺伝子であるカルボン酸還元酵素(CAR)(CAR-WP_003872682.1)及び別のTA遺伝子(HMD-TA WP_001301395.1)を、大腸菌染色体に組み込まれたAld遺伝子とともに形質転換する、インビボアッセイで試験した。Porphyromonas gingivalis W83Ald(配列番号2)、Peptostreptococcaceae bacterium経口Ald(配列番号7)、Acidaminococcus massiliensis Ald(配列番号28)、Collinsella sp. GD7Ald(配列番号60)、及びRomboutsia lituseburensis DSMAld(配列番号107)をコードする遺伝子を、構成的プロモーター下の低コピー数プラスミドベクターに別々にクローン化した。Ald遺伝子を発現するためのプラスミドを、標準的な技術を使用してThl/Hbd/Crt/Ter/TA株に形質転換した。これらの構築物を、実施例3に記載された6ACA生成について記載されたものと同じ条件及び試験に供した。構築物は、実施例3に記載されたLC/MS分析方法によって検出すると、HMDを生成することが示された。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2022530475000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジピルCoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを生成するアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも1種の外因性核酸を含む非自然発生の微生物であって、前記アルデヒド脱水素酵素は、基質としてのサクシニルCoA、アセチルCoA、又はサクシニルCoAとアセチルCoAの両方と比較して、基質としてのアジピルCoAに対してより大きな触媒効率を有し、及び/又は前記アルデヒド脱水素酵素は、サクシニルCoA、アセチルCoA、又はサクシニルCoAとアセチルCoA基質の両方と比較して、アジピルCoA基質に対してより大きな代謝回転数を有する、上記微生物。
【請求項2】
前記アルデヒド脱水素酵素が、配列番号:4、7、11、15、17、19、24、25、27、28、31~33、36、38、40~42、44、45、47、53、58~60、63、65~67、74、75、77、80、82、84、86~88、90、91、94、95、97、100、101、103、107、109、111、112、117、134、135、137、145、146、148~150、152、157~159、164~167、176、187、及び188のいずれか1つの少なくとも25の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の非自然発生の微生物。
【請求項3】
前記アルデヒド脱水素酵素が、配列番号7、28、60、又は107のいずれか1つの少なくとも25の連続アミノ酸と、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の非自然発生の微生物。
【請求項4】
前記非自然発生の微生物が6-アミノカプロン酸経路、ヘキサメチレンジアミン経路、及びカプロラクタム経路を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項5】
前記6-アミノカプロン酸経路が、(i)アミノ基転移酵素、(ii)6-アミノカプロン酸脱水素酵素、又は(iii)アミノ基転移酵素と6-アミノカプロン酸脱水素酵素の両方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項6】
前記ヘキサメチレンジアミン経路が、(i)6-アミノアカプロイルCoA転移酵素、(ii)6-アミノカプロイルCoA合成酵素、(iii)6-アミノカプロイルCoA還元酵素、(iv)ヘキサメチレンジアミンアミノ基転移酵素、(v)ヘキサメチレンジアミン脱水素酵素、又は(vi)酵素(i)~(v)の1つ以上の組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項7】
前記微生物が、アミノ加水分解酵素をコードする1種以上の追加の外因性核酸をさらに含む、請求項のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項8】
前記アルデヒド脱水素酵素が、Acidaminococcus、Collinsella、Peptostreptococcaceae、又はRomboustsiaに由来する、請求項1~7のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物。
【請求項9】
前記非自然発生の微生物が、Acinetobacter, Actinobacillus, Anaerobiospirillum, Aspergillus, Bacillus, Clostridium, Corynebacterium, Escherichia, Gluconobacter, Klebsiella, Kluyveromyces, Lactococcus, Lactobacillus, Mannheimia, Pichia, Pseudomonas, Rhizobium, Rhizopus, Saccharomyces, Schizosaccharomyces, Streptomyces, 及び Zymomonasの種を含む、請求項1~のいずれかに記載の非自然発生の微生物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物を、アジピン酸セミアルデヒドを生成するために充分な時間及び条件下で培養することを含む、アジピン酸セミアルデヒドを生成する方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の非自然発生の微生物を、6-アミノカプロン酸(6ACA)を生成するために充分な時間及び条件下で培養することを含む、6ACAを生成する方法。
【請求項12】
前記非自然発生の微生物、発酵ブロス、又はその両方から、6-アミノカプロン酸(6ACA)、ヘキサメチレンジアミン、カプロラクトン、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクタムを回収することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記非自然発生の微生物が、それぞれカプロラクタム経路酵素をコードする2、3、4、5、6、又は7つの外因性核酸を含む、請求項1012のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記培養が糖を含む発酵ブロス中で行われる、請求項1013のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1014のいずれか1項に記載の方法から合成された、生物由来の6-アミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、又はカプロラクタム。
【国際調査報告】